第81回がん対策推進協議会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

令和4年9月5日(月)15:00~18:00

場所

オンライン開催

議題

  1. (1)会長の選任等について
  2. (2)今後の議論の進め方について
  3. (3)その他

議事

議事内容
○原澤がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第81回「がん対策推進協議会」を開催いたします。
 委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 事務局を務めさせていただきます健康局がん・疾病対策課の原澤でございます。よろしくお願いいたします。
 本協議会はYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきください。
 初めに、健康局長の佐原より一言御挨拶させていただきたいと思います。
 佐原局長、よろしくお願いいたします。
○佐原局長 健康局長の佐原です。
 第81回のがん対策推進協議会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
 初めに、委員の皆様方には、日頃から厚生労働行政への御理解と御協力を賜りまして厚く御礼を申し上げます。また、本日はお忙しいところ御参加いただきましてありがとうございます。
 今回、委員の交代がございましたので、改めて本協議会の位置づけ及び役割について簡単に御説明させていただきます。
 本協議会は、がん対策基本法に基づき設置されており、がん対策推進基本計画の案を作成、変更しようとするときに御意見をいただくものとされております。我が国におけるがん対策をよりよいものにするために、委員の皆様には次期計画の作成につきまして忌憚のない御意見をいただきたく存じます。よろしくお願いいたします。
 また、前回までの本協議会におきましては、第3期基本計画の中間評価を取りまとめまして、次期基本計画に向け、御意見をいただきました。今後は、今年度中の第4期がん対策推進基本計画策定に向けて各分野、さらに活発な御議論をいただければと思います。
 がん対策のさらなる推進に向けて、引き続き皆様方の御指導を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
○原澤がん対策推進官 佐原局長、ありがとうございました。
 この後、佐原局長は公務がございますので、途中で退席させていただきますので御了承ください。
 引き続き、会長が選任されるまでの間、事務局にて進行を務めさせていただきます。
 それでは、まず初めに委員の皆様方のご紹介をさせていただきます。お名前を呼ばれましたら、ミュートを解除いただき、一言御挨拶をいただければと思います。
 北海道テレビ放送株式会社東京編成業務部長、SODANE編集長、阿久津友紀委員です。
○阿久津委員 皆様こんにちは、北海道テレビの阿久津友紀と申します。
 20年前くらいから乳がん患者さんの取材をしておりましたところ、3年前に乳がんに罹患いたしまして、その後ドキュメンタリー番組の制作や、SODANEというウェブメディアを使いまして発信を続けております。10月には本も執筆というような予定でございまして、がん患者さんの生きづらい社会を何とかしたいという気持ちが強くありまして、今回このような機会をいただけたことを非常にうれしく思っております。精一杯努めさせていただこうと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 続いて、東北大学大学院医学系研究科・臨床腫瘍学分野教授、東北大学病院腫瘍内科長、公益社団法人日本臨床腫瘍学会理事長、石岡千加史委員です。お願いします。
○石岡委員 皆さんこんにちは、東北大学の石岡です。
 専門は今、御紹介いただきましたが、私は腫瘍内科学、がんの治療医でございます。この協議会には前回から参加させていただいております。がん医療、特にがん治療の視点から、専門的な見地からこの協議会に参加させていただきたいと思います。皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 続いて、認定特定非営利活動法人がんサポートコミュニティー事務局長、大井賢一委員です。
○大井委員 こんにちは、がんサポートコミュニティーの大井賢一と申します。
 多種多様な支援者が集って患者さんとご家族への専門家による心理社会的支援を提供する、2001年に設立した患者支援団体です。本部はアメリカにあるCancer Support Communityで、日米での患者を支援する立場ということで今回お声がけいただいたものと理解し、皆様と議論していきたいと思います。よろしくお願いします。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 続いて、九州大学大学院医学研究院・成長発達医学分野教授、一般社団法人日本小児・血液がん学会理事長、大賀正一委員です。
○大賀委員 皆さんこんにちは、九州大学の小児科の科長も務めております大賀正一と申します。
 日本小児血液・がん学会の理事長の2期目を拝命しまして、このがん対策推進協議会には以前から参加させていただいております。小児のがんの立場から、希少がんや様々ながん種がございますけれども、患者さんの視点で、そして医療者の視点で、地域の小児がん拠点病院の一つとして私が参加させていただき、お役に立てればと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 続きまして、学校法人日本社会事業大学社会福祉学部教授、公益社団法人日本医療ソーシャルワーカー協会副会長、小原眞知子委員です。
○小原委員 皆さんこんにちは、小原と申します。
 私の大学は厚労省委託の大学でございまして、若干ほかの大学と異なっている大学でございます。その中で私の専門は社会福祉学、特に医療と福祉というような分野でがんが専門でございまして、ソーシャルワーカーの教育、それから卒後教育、こういったことも含めて活動させていただいております。今回は2期目ということでございまして、特にがんと共生の領域に関しましてはがんの治療と、それから生活、こういった側面でぜひ貢献できたらと考えております。微力ながら、皆様とともに学ぶ機会を与えていただきましたことを感謝いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 続きまして、筑波大学医学医療系緩和医療学教授、特定非営利活動法人日本緩和医療学会理事長、木澤義之委員ですが、本日は御欠席と伺ってございます。
 続きまして、公益社団法人日本医師会常任理事、黒瀨巌委員です。
○黒瀨委員 皆様こんにちは、日本医師会の黒瀨でございます。
 6月に日本医師会の役員改選がありまして、私が新たに常任理事に選任されました。前任は羽鳥先生がこの協議会の委員を務めておったのですけれども、今回から私が公衆衛生、がん対策等の担当になりまして後を引き継ぐことになりました。
 期としては今回が1期目になります。どうぞよろしくお願いいたします。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 続きまして、株式会社松下産業ヒューマンリソースセンター長、齋藤朋子委員です。
○齋藤委員 皆様、はじめまして、松下産業の齋藤と申します。
 弊社は総合建設会社、社員240名の中小企業です。なぜ私のような者が委員になっているかというと、多分なのですが、日本対がん協会さんから日本がん大賞というものを第20回に拝受いたしまして、また両立支援ですね。社員との両立支援でいろいろなメディア等に取り上げていただいている企業でございます。
 ヒューマンリソースセンターという部署なのですが、社員の人生全体を支える部署としてワンストップで社員と家族の相談に乗っている部署です。その中で、もちろんがん、病気などの両立支援も私の仕事として位置づけられております。ですから、本当に社員と家族に接してきた現実のお話をさせていただきたいと思います。
 また、先生方からの知見も頂戴してどうやって医療と、企業と、患者本人の者三位一体で両立ができていくのかということを話し合えればと思っています。ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 続きまして、一般社団法人日本癌学会理事長、藤田医科大学がん医療研究センター特命教授兼センター長、佐谷秀行委員です。
○佐谷委員 皆さんこんにちは、佐谷でございます。
 今、御紹介いただきましたように日本癌学会の理事長を拝命いたしておりまして、主にがんの基礎研究に関する取りまとめをさせていただいておりますが、前任地の慶應義塾大学では臨床研究推進センターというところのセンター長を務めまして、いわゆる基礎研究をどのように実装化、つまり臨床に持ち込むかというところのトランスレーショナルリサーチと呼ばれる部分を担当いたしておりました。
 私自身、実はがんのサバイバーでもありますので、研究者、医師、そしてサバイバーとしてこの協議会で皆さんと議論できればと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 続きまして、慶應義塾大学医学部放射線科学教室教授、公益社団法人日本放射線腫瘍学会理事長、茂松直之委員です。
○茂松委員 どうもありがとうございます。慶應大学の放射線治療科の茂松直之でございます。
 私はJASTRO、日本放射線腫瘍学会の理事長を今年で6年務めておりまして、がんの治療というと、手術、放射線、化学療法の3本柱というふうになっております。佐谷先生が慶應におられる頃には非常にお世話になったのですけれども、このがん対策に関しても大分長いこと参加させていただいて、ここのいいところは発言すると結構すぐレスポンスしていただけるということがありますので、皆さんもぜひ言いたいことがあったら言ったほうがいいかなと私は思っていて、私が思っていたことが全然通じなかったのが、あっという間にこの会議から進んだこともあります。すばらしい会議だと思いますので、ぜひ御発言をしていただいてと思います。
 ただ、すごく細かい議事録が載りますので、あまり変なことを言わないほうがいいかもしれません。よろしくお願いいたします。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 続きまして、島根県健康福祉部医療統括監、谷口栄作委員です。
○谷口委員 失礼します。島根県健康福祉部の医療統括監をしております谷口といいます。
 全国衛生部長会のほうから参加させていただいております。都道府県とか政令指定都市とか、そういった現場の公衆衛生行政の立場から様々な発言をさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 続きまして、つるかめ診療所所長、一般社団法人日本在宅医療連合学会理事、鶴岡優子委員です。
○鶴岡委員 皆さんこんにちは、栃木県から参加しておりますつるかめ診療所所長の鶴岡優子と申します。
 私は、在宅医療に携わる臨床医として参加させてもらっています。在宅医療連合学会の理事と、地元の医師会の理事と拝命しておりまして、あともう一つ、地元ではつるカフェという市民と在宅医療を考える勉強会を主催しております。どうぞよろしくお願いします。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 続きまして、大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学教授、一般社団法人日本癌治療学会理事長、土岐祐一郎委員です。
○土岐委員 皆様こんにちは、今紹介いただきました大阪大学消化器外科の土岐と申します。一般社団法人日本癌治療学会の理事長をしております。
 日本癌治療学会は、外科、内科、放射線科、薬剤師、看護師等々、診療科を横断的、そして職種横断的にがん治療に携わる学会でございます。そこの理事長としてこの会に参加させていただいております。よろしくお願いいたします。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 続きまして、国立研究開発法人国立がん研究センター理事長、中釜斉委員です。
○中釜委員 皆さんこんにちは、国立がん研究センターの中釜です。
 私は本協議会にもこれまで委員として、がん対策についての協議に参加させていただきました。また、現在ではがん診療提供体制の在り方に関する検討会の構成員であり、あるいはがんゲノム医療中核拠点病院等の指定に関する検討会にも参画させていただいています。
 がん対策の果たす役割は非常に大きいと思いますので、このがん対策推進協議会において、ぜひ皆さんとともに課題についてどういう方向がいいかということを議論させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 続きまして、富山AYA世代がん患者会Colors代表、樋口麻衣子委員です。
○樋口委員 はじめまして、私は富山県のAYA世代の患者会の代表をしております樋口麻衣子です。
 私自身は2012年に甲状腺がんに罹患して、手術3回と、今まで放射線内照射を2回施行してきています。本職は看護師で、がん専門看護師として今は外来の化学療法センターを担当しているのと、あとはAYA世代の妊孕性の意思決定支援に関わらせていただいています。
 私は患者の一員として参加するのですけれども、今まで経験者の先輩方が現状を把握して行動して訴えたからこそ今の環境があることをすごく見てきたので、私は現場の声をちゃんと伝えて先輩方の歩みを引き継いでいきたいなと思っております。よろしくお願いします。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 続きまして、学校法人金沢医科大学医学部公衆衛生学非常勤講師、石川県がん安心生活サポートハウスソーシャルワーカー、一般社団法人日本サイコオンコロジー学会代議員、久村和穂委員です。
○久村委員 皆さんこんにちは、久村和穂と申します。前期に引き続き、委員を務めることになりました。
 私はもともとソーシャルワーカーでして、現在は石川県がん安心生活サポートハウスという金沢の町なかにあるがんサロンで若年世代や進行がんの患者さん、それから独り暮らしの患者さんや、あとは外見の変化や、仕事やお金の問題を抱える患者さんをサポートするプログラムを担当しております。
 金沢医科大学では、がんの患者さんの心理、社会的な苦痛やその支援に関する研究や教育を行っておりまして、日本サイコオンコロジー学会のほうではがん患者の気持ちのつらさの診療ガイドラインの作成などに携わっております。
 これまでの研究や、現場で学んできたことを生かしまして、次のよりよいがん対策につなげていけるよう、微力を尽くしてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 続きまして、特定非営利活動法人京都ワーキング・サバイバー理事長、一般社団法人全国がん患者団体連合会理事、前田留里委員です。
○前田委員 はじめまして、京都で働く世代のがん患者支援活動をしております京都ワーキング・サバイバーの理事長と、現在、全国がん患者団体連合会理事をしております前田と申します。
 私は、10年前に乳がんを罹患しましたサバイバーです。このたび、全がん連から資料として第4期がん対策推進基本計画に関する要望書を提出しておりますので、最後の議題の前に簡単に説明させていただければと思っております。精一杯務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 続きまして、公益財団法人福井県健康管理協会副理事長、一般社団法人日本消化器がん検診学会監事、松田一夫委員です。
○松田委員 福井県健康管理協会の松田でございます。
 私はもともと消化器外科医だったのですが、30年ほど前からは検診業務に専念をしておりまして、がん検診の研究にも従事しております。福井県内の5つのがん検診全てを統括する立場にもあります。
 私は、がん検診に関して意見を述べさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 続きまして、公益社団法人日本看護協会常任理事、森内みね子委員です。
○森内委員 森内です。どうぞよろしくお願いいたします。
 この協議会に出席をさせていただいて2年目になります。日本看護協会は専門看護師、認定看護師の輩出を行いながら、がん看護の充実に努めております。どうぞよろしくお願いいたします。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 続きまして、ダカラコソクリエイト発起人・世話人/カラクリLab.代表、谷島雄一郎委員です。
○谷島委員 谷島と申します。
 この協議会は言いたいことを発言していいというふうにおっしゃっていただいたので、本当にそうだといいなと思っております。
 私は、GISTという希少がんの患者です。10年前、34歳のときに長女の誕生と同時に罹患が分かりました。以来、再発、転移を繰り返しながら、様々な治療や治験への参加、遺伝子パネル検査なども受けて、今も自分のがんに効く新たな治療法を待ち望んでいる状況です。日々、最適な治療に対するアクセスの難しさや、ゲノム医療、未承認薬の問題等、希少がんを取り巻く様々な課題を当事者として現在進行形で実感しております。
 また、がん経験を新しい価値に変えるというのをテーマにしたダカラコソクリエイトというプロジェクトを立ち上げて運営しております。働く世代や、AYA世代のがん経験者の皆さんや、様々な分野、業種の方々と連携してソーシャルデザイン的発想でがんの社会的課題の解決を目指しております。
 本協議会では、自分の患者としての経験と、様々な当事者の声から感じている課題と思いを意見させていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 委員の御紹介は以上となります。
 続いて、資料の確認をさせていただきます。資料は厚生労働省のウェブサイトにも掲載してございます。
 議事次第、資料1-1から資料10まで及び参考資料1から参考資料6までがございますので、御確認ください。
 また、本日は参考人として静岡県立静岡がんセンター総長、本協議会の前会長でございます山口建参考人、国立がん研究センターがん対策研究所副所長の祖父江友孝参考人、国立がん研究センターがん対策研究所の高橋宏和参考人に御出席いただいておりますので、その点御承知おきください。
 それでは、議題(1)「会長の選任等について」に移りたいと思います。資料1-2を御覧ください。
 資料1-2「がん対策推進協議会令」でございます。本協議会の運用規定を定めた政令でございますが、第2条を御覧いただきますと、「協議会に、会長を置き、委員の互選により選任する。会長は、会務を総理し、協議会を代表する。会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。」とされてございます。
 本規定に基づきまして、委員の互選により会長を選任いただきたいと思います。事前に中釜委員より土岐委員を推薦いただき、土岐委員を互選いただいておりましたが、よろしいでしょうか。
(「異議ありません」と声あり)
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 それでは、土岐委員に本協議会の会長をお願いしたいと思います。皆様、よろしくお願いいたします。
○土岐会長 それでは、改めまして御挨拶申し上げます。
 このたびは、このがん対策推進協議会の会長に御推薦いただきまして誠にありがとうございます。全力を尽くしましてこの職務に当たりたいと思っております。
 先ほど佐原局長からございましたように、今期のこの協議会の使命といたしましては、山口前会長が中心になってまとめられました第3期の中間報告書に基づきまして第4期の計画案を作成する。そこがまず第一歩の職務でございます。
 しかも、後ほど事務局から説明があると思いますけれども、その期間に関しましては可能であれば年内ということを目指しております。非常にタイトなスケジュールで、皆様が大変御多忙中なのは重々承知の上なのですけれども、頻回に会議を重ねなければいけません。何とぞ協力をよろしくお願いします。
 先ほど来、委員の先生方がおっしゃっていますように、確実に委員の意見を全て拾い上げていくというスタンスで会をまとめていきたいと思っておりますので、皆様の御協力等々をよろしくお願いしたいと思います。
 以上が私からの御挨拶でございます。
○原澤がん対策推進官 土岐会長、ありがとうございます。
 続きまして、土岐会長より会長代理を御指名いただきたいと思います。
 土岐会長、よろしくお願いいたします。
○土岐会長 会長代理につきましては、以前よりこの協議会の委員をされておりまして日本のがん医療の中心でございます、国立がん研究センターの理事長でいらっしゃいます中釜斉先生を私からは指名したいと思います。よろしいでしょうか。
○原澤がん対策推進官 それでは、中釜会長代理より御挨拶を簡単にお願い申し上げます。
○中釜会長代理 どうも御指名いただきありがとうございました。
 私は先ほど土岐会長がおっしゃられたように、本協議会の中で挙がってくる課題について十分な議論を尽くして次期の対策に役立てるような方向性でこの協議会を
(通信環境不良)
○原澤がん対策推進官 中釜会長代理、すみません。御挨拶の途中から音声が消えてしまいました。
○中釜会長代理 すみませんでした。先ほど土岐会長がおっしゃられておりましたように、本協議会においては多くの課題が議論され、第3期の評価を踏まえてその課題が抽出されている段階です。第4期においてどのような対策が重要かということを十分に議論した上で次の日本のがん対策に貢献できるよう、土岐会長をサポートできるように努めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○原澤がん対策推進官 ありがとうございます。
 ここまででメディア等の撮影については終了とさせていただきますので、これ以降の映像等の御使用についてはお控えいただくよう御協力をお願い申し上げます。
 それでは、以降の進行は土岐会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○土岐会長 皆様、よろしくお願いいたします。
 本日、多数の議事を予定しておりますが、最後の議事の基本計画の見直しにできる限り時間を確保したいと思っていますので御協力をよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、早速ではございますけれども、次の議題に移りたいと思います。議題(2)の「報告事項」です。事務局より、資料2及び資料3を用いて「これまでのがん対策の歩みについて」、そして「各検討会の開催状況について」、続けて御説明をよろしくお願いいたします。
○原澤がん対策推進官 事務局でございます。
 それでは、資料2及び資料3について、続けて御説明をさせていただきたいと思います。
 まず資料2を御覧ください。「これまでのがん対策のあゆみ」でございます。
 おめくりいただきまして2ページ目でございますが、これまでの「がん対策のあゆみ」について時系列でお示ししております。御覧いただければと思います。
 続いて3ページ目を御覧ください。まず「がん対策基本法」が平成18年に成立して、これに基づいてがん対策を総合的かつ計画的に推進してまいりました。
 続けて4ページ目を御覧ください。こちらは第1期の「がん対策推進基本計画」、次の5ページ目が「第2期がん対策推進基本計画」、6ページ目が「第3期がん対策推進基本計画」の概要となってございます。今は、第3期の基本計画に基づいて種々の取組を進めていただいているという状況でございます。
 次のページ以降は、その各論に入ります。
 7ページ目、「1.がん予防」ということで、3つの柱の一つであるがん予防について、上の半分に1次予防(がんにならないための予防)について、下の半分に2次予防でがんの早期発見・早期治療として、がん検診の取組等について記載してございます。
 続いて8ページ目を御覧ください。3本柱の2つ目でございます「がん医療の充実」につきまして、上の囲みの中にがんゲノム医療について、左下の囲みの中にがん医療提供体制について、右下には希少がん・難治性がんに対する対策や、小児がん・AYA世代のがん、高齢者のがん対策についてそれぞれ記載してございます。
 続いて9ページ目を御覧ください。3本柱の3つ目でございます「がんとの共生」につきまして、左上は緩和ケアの現状の課題と取り組んできた施策について、右上はがん患者への就労支援・社会課題への対策について、左下には相談支援や情報提供についてや、社会連携に基づくがん対策・がん患者支援について、右下はライフステージに応じたがん対策といったように、それぞれ論点を整理して取り組むべき施策等について記載してございます。
 続いて10ページ目を御覧ください。4つ目、3本柱をさらに支える部分として基盤の整備という形で上のほうにはがん研究について、左下には医療現場も含めた人材育成について、右下は一般の方への普及啓発というところも含め、がん教育やがんに関する知識の普及啓発について、それぞれ取り組むべき施策等について記載してございます。
 これらの基本的な計画に基づいて進んでまいりましたが、次の11ページ目からお示ししているとおり、第3期のがん対策推進基本計画について、これまで本協議会におきまして中間評価を整理してまとめていただいたところでございます。「全体目標」について整理をしたペーパーが11ページ目になります。一番上の「がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんの克服を目指す。」といったところについては、ポイントとしては診療提供体制の整備が進められてきており、一定の進捗が認められるが、がんに係る正しい情報の提供やがん患者を含めた国民への普及啓発の推進が求められているといったことを記載していただいています。
 中間評価の概要について、全体目標についてもマル1のがん予防について、マル2のがん医療について、マル3の共生の部分についてもそれぞれ取りまとめていただき、御覧いただいているような記載事項がございます。
 12ページ目以降は、個別の分野ごとの中間評価の概要についておまとめしております。時間も限られておりますので内容について細かくは触れませんが、12ページ目では1次予防、2次予防について、13ページ目は医療の分野のがんゲノム医療から支持療法について、14ページ目は医療の分野の続きとして、希少がん、難治性がん対策から医薬品・医療機器の早期開発・承認等に向けた取組までをおまとめしております。
 15ページ目には、3つ目の共生の分野についておまとめしております。
 本資料の最後のページでございます。16ページ目は「これらを支える基盤の整備」の分野について、それぞれに概要をおまとめしておりますので、今後の議論の御参考にしていただければと思っております。
 資料2については以上でございます。
 続けて、資料3の御説明をさせていただきます。資料3は「各検討会の開催状況について」ということで、これまで御議論いただいているところの概要をおまとめしてお伝えしたいと思います。
 2ページ目を御覧ください。「がん対策推進協議会と基本計画に基づく主な検討会等について」ということで、がん対策推進基本計画の各分野に対応するように、お示ししているような検討会等において、分野別の御議論を進めていただいています。がん予防についてはがん検診のあり方に関する検討会において、がんとの共生についてはがんとの共生のあり方に関する検討会において、がん医療の充実については下に書いておりますとおり、がん診療提供体制のあり方に関する検討会とそれに付随する3つの拠点病院等に関するワーキンググループにおいて、それぞれ御議論いただいています。
 3ページ目を御覧ください。まず「がん検診のあり方に関する検討会の開催状況」でございます。令和4年2月より、このときは持ち回り開催でございますが、ここから御議論を進めていただいておりまして、計3回開催してございます。
 そちらの概要としては下の●でございますが、第4期基本計画に向けて受診率向上の取組、適切な精度管理、科学的根拠に基づく検診の実施という3つの観点から御検討いただいておりまして、改めまして検討会として意見を取りまとめていただいておりますので、協議会に後日御報告いただきたいと考えてございます。
 続いて4ページ目でございます。こちらはがん医療の充実分野についてで「がん診療提供体制のあり方に関する検討会等の開催状況」でございます。こちらは、それぞれ各ワーキンググループにおいてがん診療連携拠点病院等の指定要件に関する議論を行っていただいております。7月に開催した第14回の検討会においてその内容を御報告いただいております。概要といたしましては下の●の1つ目でございますが、それぞれのワーキンググループにおいて各拠点病院の指定要件の見直しに係る議論を進めていただいております。
 2つ目でございますが、各ワーキンググループで取りまとめた意見を、がん診療提供体制のあり方に関する検討会へ報告し、議論の上、8月1日に改定された整備指針を発出しております。今後ですが、主に診療提供体制の総論部分の御議論について、後日、協議会に報告予定となっております。
 5ページ目が、「がんとの共生のあり方に関する検討会の開催状況」でございます。こちらは第6回を5月に開催しており、また連携する「がんの緩和ケアに係る部会」は8月末に開催いたしまして、「終末期の緩和ケア」等について御議論いただいております。
 概要といたしましては、一番下の●の1つ目ですが、第4期基本計画に向けて、相談支援、社会連携、就労支援・社会課題への対策、小児・AYA世代や、高齢がん患者の支援等について、第3期計画における課題や今後の対策等について御議論をいただいております。
 後日、開催予定の第7回の当該検討会において、「がんの緩和ケアに係る部会」で取りまとめていただいた御意見も踏まえて議論を行い、第4期基本計画に向けた検討会としての提言を取りまとめていただく予定でございます。
 そこで取りまとめられた意見については、後日本協議会へ報告していただく予定となっております。
 事務局から駆け足でございますが、資料2、資料3の御説明は以上でございます。
○土岐会長 それでは、ただいまの事務局からの報告ですね。資料2及び資料3ですが、こちらにつきまして御質問がある方はウェブの「手を挙げる」を押していただけますでしょうか。
 特にございませんか。では、次へいって、また後ほどあれば挙手していただければと思います。
 それでは、続きまして議題(3)「今後の議論の進め方について」でございます。こちらについては、資料4を用いて説明をよろしくお願いいたします。
○原澤がん対策推進官 事務局でございます。
 それでは、資料4を御覧ください。「今後の議論の進め方について(案)」というものでございます。
 1枚おめくりいただきまして2ページ目でございます。一番上の●でございます。第3期がん対策推進基本計画及び第3期がん対策推進基本計画中間評価報告書を踏まえて、次期基本計画策定に向けた御議論を進めていただきたいと思っております。
 具体的には、先ほど検討会の検討状況を御説明させていただきましたが、2つ目の●で「がん検診のあり方に関する検討会」「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」「がんとの共生のあり方に関する検討会」における議論を取りまとめて本協議会に御報告いただきたいと思っております。
 その上で、本協議会においては、各検討会や厚生労働科学研究班からの報告内容等も踏まえて、次期基本計画に盛り込むべき事項について御議論いただきたいと思っております。
 続いて3ページ目を御覧ください。こちらはスケジュールでございますが、今の各検討会からの御報告については左下の濃い青色のところから本協議会に御報告、提言をいただくという形を想定しております。
 そして、左側から時系列で進んでございますが、全体の方向性に関する御議論を本日いただきまして、これから分野別の御議論を各検討会の提言の内容も御紹介しながら進めていただき、冒頭に土岐会長からもお話があったかと思いますが、年内に取りまとめの議論に入って、第4期がん対策推進基本計画の協議会としての案について、本年12月を目途に取りまとめていただきたいと考えております。
 その後、パブコメ等の所定の手続を踏まえまして、第4期がん対策推進基本計画の閣議決定に向けて進めていくということを考えてございます。
 簡単ではございますが、事務局からの御説明は以上でございます。
○土岐会長 いかがでしょうか。こちらの資料4のほうで大体のタイムスケジュールと今後の協議会の内容も分かったと思いますけれども、御質問等ございますでしょうか。
 それでは、また質問等があれば後ほどよろしくお願いします。
 続いて、議題(4)の「計画策定及び評価指標の考え方について」でございます。資料5に先立ちまして、事務局より背景について説明をよろしくお願いしたいと思います。
○原澤がん対策推進官 事務局でございます。
 参考資料のほうでございますが、参考資料6を御覧いただければと思います。この後、資料5において御説明いただく内容の中にロジックモデルというものが含まれてございます。そちらについて、なぜここでそういった話題が出てくるのかということを御説明させていただきます。
 一番上の○のところからでございます。今後御議論いただくがん対策の基本計画も踏まえて策定される第8次医療計画については、昨年の医療法改正の附帯決議を踏まえて、PDCAサイクルの実効性の確保のため、ロジックモデル等のツールの活用について検討が進められている状況でございます。
 がんにつきましては、医療計画の記載事項の5疾病・6事業の中の疾病の一つに位置づけられてございますので、医療計画とがん対策推進基本計画は整合性を取って策定していく必要がございます。
 また、都道府県循環器病対策推進計画の策定について、こちらは心血管疾患や脳卒中関連の対策の計画でございますが、令和2年10月に策定指針を通知してございまして、その中でおのおのの施策と解決すべき課題との連関を示すことが重要であり、ロジックモデルなどのツールの活用も検討する旨を記載していただいております。
 こういった背景も踏まえまして、今回のがん対策推進基本計画の中にもこういったロジックモデルの活用について一定程度、他の計画の検討状況も見ながら御検討いただく必要があると考え資料5の御説明をしていただくことにしておりますので、背景情報について御承知おきいただければと思います。
 事務局からは以上でございます。
○土岐会長ロジックモデルということで、PDCAサイクルというのはよく使うのですけれども、ロジックモデルというものの考え方等々も組み入れるべしというふうな御趣旨でございます。今日はそのロジックモデルも含めまして、資料5のほうで解説をお願いしたいと思っております。
 祖父江参考人から資料5のほうの説明をよろしくお願いいたします。
○祖父江参考人 御紹介いただきました祖父江です。
 国立がんセンターがん対策研究所の副所長をしておりますが、本職は阪大の環境医学の教授でありまして、隣に土岐先生がいるというので何か不思議な立ち位置でありますけれども、役割を務めさせていただきたいと思います。
 まず「アウトライン」ですが、今日はこういう話でいきます。ロジックモデルが真ん中にあります。
 次ですが、今、事務局のほうからお話があったように、このような経緯で進んでいます。私自身は、実はがん対策推進基本計画の第1期のときの策定にかなり深く関与させていただきました。それ以降、5年をめどに計画が更新されているという状況であります。
 次です。ちょっと小さいですが、それぞれの基本計画の中で全体目標、それから分野別施策と個別目標というものが記載されています。第1期のときは全体目標として1番、2番、死亡減少、それからQOLの向上とありますが、第2期のときは3番目に安心して暮らせる社会の構築というものが加わっております。それで、第3期のときに全体目標が多少表現が変わっておりまして、1番目、2番目は予防、検診、あるいは医療の実現、3番目はほぼ維持されて安心して暮らせる社会の構築ということになっています。
 一方、各チャプターの構成ですけれども、1期目から2期目に移るときは基本的な構造は変わらずに追加というような形になっていますけれども、第3期のときはかなり構成が変化していて項目も増える。こういう変遷をしてきています。
 次です。全体目標、分野別施策、個別目標という構成とともに、各章の中の構成がおおむねこれは1期、2期、3期と通じて共通な形が保持されていて、現状の記載、課題、そして取り組むべき施策という構成になっています。恐らく、今後この協議会の中で各テーマについて策定の順序としては現状を把握し、課題を抽出し、取り組むべき施策を考えて個別目標を設定する。こういう順番になるかと思うのですけれども、各テーマについてはいいのですが、それぞれが全体の中でどういう位置づけにあるか、その連携に関してなかなかそこを議論する場が少ないと思います。個別目標と全体目標のつながりがどうしても不明確になりがちだ。こういうときに、ロジックモデルというものが役に立つということで、次にいってください。
 今、原澤推進官のほうからありました、いろいろなほかの分野での施策の立案のときにもロジックモデルが活用されているということで、今回もがん対策基本計画の策定に対してここはちょっと押さえておこうということで、新たな委員の方ももちろんですけれども、既存の委員の方々もちょっとここを確認しようということでお話をさせていただくということになりました。
 私も実はロジックモデルの専門家ではありませんので、ちょっといろいろ調べてやっていまして、ネタの基を書いています。
 次です。「ロジックモデルとは」ということで読みますけれども、事業や組織が最終的に目指す変化・効果の実現に向けた道筋を体系的に図示化したもの、要は図のことですね。下に書いてあるような図のことなのですが、その構成要素としてはインプット、活動、アウトプット、アウトカム、主にはこの4つを考えるわけです。それで、インプット、活動、アウトプット、アウトカムという順番で実施者が行うことが前任者であり、その成果は後任者である。
 次です。各要素をもうちょっと見てみますと、例として食生活改善支援事業などを考えますと、インプットとしてはまず実施者がどんなことを投資するのかということで、資金、人材、時間、設備、技術など。それを用いてどんなプログラムを行うのか、教育、食事の提供、指導。それで、それの結果、直前の成果としてどれだけの活動が提供されたか、教育を受けた人数、講義回数など、これがアウトプットですね。
 その結果、プログラムによって対象者にもたらされた利益とか、あるいはプログラムによってどんな変化が起こったのか。対象者側に起きたこととしてのイベントがアウトカムというものです。知識の変化、態度の変化といったものでございます。
 次です。ですから、アウトプット、アウトカムというものの違いをまずは明確に意識する必要があって、アウトプットは実施者がしたこと、アウトカムは対象者に起こった変化ということです。
 実施者が行うことと、その結果、対象者に生じたことを混同しないようにしましょうということです。それで、出資者、スポンサーは単に実施者が何をしたかではなくて、実施者によってどんな変化がもたらされたのかを知りたい。こういう違いを意識する必要があるということです。
 次です。アウトカム側も段階によって3つほど分類されます。
 初期、知識や態度の変化、それで最終としては生活の状況や状態に生じた変化、その真ん中が習慣、新しい知識の結果生じた変化ということであります。
 最終アウトカムとして一番はっきりしているのは、疾病ですとか、死亡とか、そういったことですけれども、明確な危険因子とか、そういったもの、喫煙とか飲酒のようなものも最終アウトカムで、それを減らすということが最終アウトカムになり得るということであります。
 次です。今度は作成の手順、順番なのですけれども、1番目が最終アウトカムを決めるということです。それから、一番終わりのところですね。最終的に何を目指すのか。これをまず決めてから初期中間アウトカムを決め、それをもたらすための活動ですね。ステップ3、そしてそれをするためのインプット、それを直接評価するためのアウトプット。
 だから、後ろ側といいますか、最終の結果側から考えていきましょう。大きな目標のほうから考えていきましょうというのがロジックモデルの作成手順のまず大きな視点であります。
 次です。それぞれのコンポーネント、構成要素をつなげる矢印ですね。これがもしこうであればこうなる。if-thenの関係にあるということなんですね。ここがあまり飛び過ぎてはいけない。みんなが納得できるような連関といいますか、つながりがある。推論のチェーンと言っていますけれども、chain of reasoningがみんなが納得できるような結びつき方であるということが理想であります。飛躍をしてはいけませんということですね。
 次です。既にロジックモデルが幾つかの領域で適用されていて、これは健康日本21の次期健康づくり運動に向けた研究の中で辻先生が主任をされている厚生労働科学の研究班の報告書の中から幾つか例を取ってきたものです。これは、次期策定に関して既にまだ継続的に検討されているものです。
 次です。それで、まず先ほど言ったアウトカムとして喫煙と、これは明らかに各種の病気のリスク要因になっていますので、これ自体を下げるということが最終アウトカムになり得るわけですけれども、これを下げるためのいろんなプロセスのところに取組、対策とあります。
 赤字で、禁煙治療受診の促進とか、そんなことが書いてありますが、それのアウトプット、どれだけありましたかということで、禁煙治験オンライン実施件数の増加、これが直接その施策をやった活動の度合いということですが、それがさらにアウトカムとして結びつく。こういう一連のチェーンを記述したものがロジックモデルであります。
 次です。喫煙に並んで飲酒も様々な疾患のリスク要因ですので、これ自体を下げるということをアウトカムで設定して、それをするためのプロセス、取組対策として何がしかのことをし、それをどれだけ活動できたのかというのがアウトプットであります。最終は飲酒者を減らすということがアウトカムになっている。
 次です。今度は循環器疾患分野ということで、最終のアウトカムを疾患の死亡率の減少、あるいは入院率の減少、罹患がちょっと測りにくいということなのでしょうけれども、それをアウトカムとした場合の危険因子を低減することでその疾病を防ぐ。危険因子を防ぐための生活習慣の改善というものがその前の段階にある。こういう一連の流れのものを記述するというのがロジックモデルであります。
 次です。これは、糖尿病ですね。最終アウトカムが糖尿病腎症による透析患者数の減少、これをもたらすために包括的なリスク管理、その前の段階として生活習慣の改善、こういうような流れであります。
 次です。がん分野に関しても、健康日本21は健康づくり運動なので、ちょっと医療の部分は欠けています。予防検診に関しての要素を含んでいますけれども、罹患の増加の抑制、それから死亡の減少、これを最終アウトカムとしてそれをもたらすための生活習慣の改善、感染症対策、あるいはがん検診です。それで、中間アウトカムが第2弾にあるわけですけれども、それの中には成人喫煙率の減少と、前のロジックモデルではこれが最終アウトカムになっていましたけれども、その状況の設定によって最終アウトカムになったり、中間アウトカムになったりすることがあり得るということであります。
 次は「評価指標とデータソース」です。
 次です。「良い目標の条件」と、目標という何か中途半端な言い方が出てきましたが、おおむねアウトカム、アウトプットの両者を示すと考えていただいたらいいと思います。Objectivesの略語は目標ですけれども、よい目標というのは何か。
 SMART Objectives、これはアメリカなどではよく使われているようなのですけれども、SMARTという頭文字を取ったものであって、Specific:明確であること、Measurable:測定可能であること、Attainable/Achievable:達成可能であること、Realistic/Relevant:現実的であること、Time-bound:時間設定があること。
 目標、アウトカムとかアウトプットに関しては、この5つの条件を満たすということが求められるということであります。中でも、このMeasurableということですね。測定可能であるという、ここが評価指標を設定するということと関係してくるわけです。
 次はobjectivesの例として書かれていますが、例えば2009年と時間設定を設けて、○○県における脳卒中の症状に関する知識や救急車を呼ぶことの重要性を知っている人の割合を明確・現実的に定義されていて、○○%(2005年実施の○○調査の結果)から○○%に増加させる。この調査をやっていることで測定可能ですし、この目標に関しての数値設定をするということで、達成しているかどうかということも判断できるということであります。
 次です。これは皆さんも御承知のように、第3期においてはこの中間評価指標というものを設定することから山本先生は始められたわけですけれども、これはちょっと見にくくて小さいですが、指標が各行にあり、右端のほうに「用いる調査」と書いてあるんです。それで、用いる調査としてがん登録・統計、これは死亡とか罹患とかですね。それで、成人喫煙率などは国民健康・栄養調査が主には生活習慣に関してはずらっと並んでいますし、ウイルス関係ですと研究班の資料ですね。それから、がん検診ですと国民生活基礎調査、それから地域保健・健康増進事業報告といったものをそのデータソースとして用いる。ですから、Measurableと言うためにはデータソースをきちんと定義しておく必要があるということになります。
 次です。通常の指標として死亡率、罹患率、これは生存率も挙げるべきでしたが、それから喫煙率とか検診受診率、こういったものは罹患率とか生存率がまずがん登録ですね。これは、全国がん登録と院内がん登録全国集計と2つあります。それで、院内がん登録全国集計というのは拠点病院を主に対象とするものです。特例なのですが、全国がん登録というのは罹患率を測定する仕組みですね。そういうもので測られるものです。
 それから、その他人口動態統計は死亡ですね。国民健康栄養調査、地域保健事業報告、国民生活基礎調査等、国が行う既存統計の中から拾えるものは拾う。
 それから、現況報告は拠点病院、メインで取れているものですけれども、これから求められるものもある。
 それで、指標としてこういった既存の統計がある場合にモニタリングがしやすいということですけれども、必ずしもあるものの中だけで賄うというわけではなく、必要に応じて新しい指標は設定すべきですけれども、その際にはやはり計測システムのことからきちんと定義をする必要があります。
 特に患者体験指標のほうは、患者体験調査、遺族調査、これも独自の国立がんセンターに委託されてやっている事業ですけれども、やはりがんの共生の部分はこうした患者体験指標を中心とする数値を出していく必要がありますし、不足するようであれば測定システムをきちんと新たに設定をして計測モニタリングをする必要があります。
 それで、ちょっと18ページに戻っていただけますか。先ほどの「がん分野のロジックモデル」です。Measurableと、モニタリングをしましょうというのは当然なんですけれども、中身、ある指標に関してはここまで達成しましょうという数値目標を設定するということもあり得ます。
 そのために、例えば年齢調整罹患率の増加を抑制する、あるいは死亡率を減少させる。それを何%というレベルで行いますということを設定する場合に、その根拠というのがやはり求められるわけですね。それで、成人の喫煙率を何%減らすと何%死亡が下がるとか、あるいは検診の受診率を上げるとどの程度上がるか。こういったものをきちんと定量的に評価するにはある種の数理モデルが必要なんですけれども、そういったものが第3期策定のときにはあまり成熟していませんでした。
 ただ、その後、研究班がいろいろ実績を積み上げて、割と個別の主要ながんの部位に関しては、定量的に中間アウトカムをどう改善させると最終アウトカムがどのような減少の程度になるかというようなこともある程度は予測ができるようになってきています。こういったことをまた参考に、目標の数値設定が必要な場合はそのようなことをするし、数値設定をしないまでも設定した指標に関しては常に測定をし、モニタリングするということが必要になってくるかと思います。それはまた読んでください。
 最後に、海外あるいは都道府県の事例というものに触れたいと思います。
 私は1期のときに結構といいますか、海外の事例を勉強しろと言われて、1年くらい割とアメリカとかイギリスとか、あるいはオーストラリア、カナダ、主には英語圏ですけれども、幾つか回って勉強させてもらいました。もう十数年たっていますが、その頃の知識を多少探ってみますと、アメリカというのはがん計画は州単位で出しています。ですから、50州がそれぞれ独立したがん計画を立てる。そのための技術支援をCDCが行っています。
 それで、その中でそういうチームをつくって支援するとともに、右上のほうにCancer Plan Self-Assessment Toolとあります。ちょっと見にくいですけれども、こういったものを使って各州のがん計画を策定する担当者が各州のがん計画の出来栄えをチェックするというようなことをしていますので、こういったものが日本の計画のチェックツールとしても使えるかもしれません。
 次です。1つの例として「ルイジアナがん対策計画」です。ちょっと見えませんが、日本語で書いてあるところは大体その訳語なので、主要ながん種の動向が書いてあり、遺伝的腫瘍とか、性的マイノリティーとか、肥満とか、アメリカのがん計画の特徴といいますか、ちょっと弱点というのは、アメリカの医療というのはなかなかコントロールし難いので、医療の部分ががん計画から大きく抜けています。予防、検診、それから死亡、罹患とか、そういうようなものが中心になっています。
 ただ、アメリカなどでがんのリスク要因として割と肥満というのは重要なものなので、次ですが、肥満を減らすために社会環境アプローチが必要だということで、歩行とか自転車の仕様をサポートするインフラの増加とか、個人の努力だけではなくて社会構造、社会環境を改善することで個人の行動変容を促し、最終的に肥満を減らすということにつなげたいというようなところまで、がん計画の中に書いてあるんです。これは別にがんだけの話ではないんですけれども、割とその上流部分の変更といいますか、対策というものも書いたりしているというのはアメリカの特徴かもしれません。
 次です。イギリスはアメリカとは真逆で、国営の医療ですから医療をコントロールできるんです。ですから、主な構成として罹患の減少、生存率の向上とかありますけれども、患者の体験、治療選択、コメディカル、QOLの向上云々、割と医療の部分に直結したことが項目立てされていて、日本のがん計画に割と参考になるものが多いと思います。患者の待ち時間とか、そんなものまであります。
 次です。英国の場合、データを中央で管理するということが割とできていて、これはちょっと見にくいですが、地域別のがん成績表です。それで、これは各項目が死亡率とかワンイヤーザバイバルはちょっと拡大されていますけれども、それ以外にも紹介するのに1週間から4週間待った人の割合とか、あるいはエマージェンシーで受けたがん患者の数とか、そんなものがモニタリングされていて、例えばSurvival(One-year)のところですと、実は縦に地域がずらっと並んでいて、横のバーがある地域、自地域のワンイヤーサバイバルの値で、全国平均を見ますとここでちょっと足りていないというように、全体の分布とともに自分のところのサバイバルがどの位置づけにあるのかということが確認できるような資料を地域別に出しています。
 それで、地域というのはイギリスの場合、何かといいますと、ちょっと小さくて見えにくいですが、CCGと書いています。クリニカル・コミッション・グループというものなのですが、200から300の診療委託グループ、NHSの中で200から300くらいの単位を上げているんですけれども、大体人口規模でいうと日本の二次医療圏くらいです。20万、30万くらいなのですが、その200から300の地域ごとのがん成績表を国単位で、イングランドですけれども、イングランド単位で出している。
 こういうことは、実は日本でもできる基盤はあります。実際はちょっとできていませんが、全国がん登録があり、それから院内がん登録全国集計があります。だから、この程度のことは日本でもできるので、ぜひとも計画の中でこういうことを実現できるように道筋を立ててほしいという意味でもお出しします。
 次です。カナダのオンタリオなのですが、ちょっとこれも見にくいですが、ここの特徴は医療サバイバーシップ患者体験等の、日本でいえば共生に関する領域の指標をきちんと定義するということができています。それで、主な構成としてQOLと患者の体験とか、このようなことが書いてあります。
 そして次にいきますが、それを新しく指標を設定する、開発するというのにInstitute for Clinical Evaluative Sciences、専門家が寄ってたかって、がんに限らずこういう指標を設定するというような専門家集団を設定している。あるいは、がん登録に関してこのような手続を持って、このインスティテュート以外の研究者も利用可能な制度ができている。だから、指標の設定に関して、開発し、実測し、評価し、または考え直すというようなことをかなり積極的にやっている。このカナダのオンタリオ州というのは、私が巡った中では一番指標に関して専門的な取組ができているところだと思います。
 次です。国内的にも、都道府県レベルでがん対策推進計画の第3期のときに割と特徴的なところが幾つかあります。大阪の場合は、国全体としては全体目標を変更したわけですけれども、そのまま維持されていて、がん死亡の減少、がん罹患の減少、それからQOLの向上、さらに二次医療圏間の差の縮小、格差に関しても一つ表現をしているというところが特徴的だと思います。
 この全体目標を実現するために次ですが、右端に最終アウトカムといいますか、全体目標の記述があって、それに対して何が罹患の減少に貢献できるのかをがん予防・早期発見のところの矢印といいますか、それでつないでいる。ですから、罹患は予防で、死亡は予防、検診とともに医療のところからつながっている。
 次です。「患者支援の充実」のところで、緩和ケアに対する満足度の向上、あるいは相談支援センターに対する認知度の向上が患者、家族の生活の質の確保につながる。このような形のいわゆるロジックモデルというものが大阪府では利用されているというようなことであります。こういうことが我が国の都道府県レベルでの例の紹介でありました。
 以上、計画策定の際の基礎知識を幾つかの事例を踏まえて説明させていただきました。今後の議論の土俵づくりとして活用していただければ幸いに思います。
 以上です。
○土岐会長 祖父江参考人、本当にありがとうございました。どうも詳細な検討ありがとうございます。
 ただいまの御発表に関しまして、御質問等ございますでしょうか。
 中釜委員、どうぞ。
○中釜委員 中釜です。
 祖父江参考人、ありがとうございました。今日の御発表でこのロジックモデルという概念、その考え方も理解できたと思いますし、冒頭に事務局から説明がありました、PDCAサイクルの実効性の確保や、そこに関してこのロジックモデルのツールを活用することの有用性が示されていたと思います。恐らく今後も協議会の中でこのロジックモデルという考え方が示されると思うのですけれども、最初にお伺いしておきたいのは、どんなモデルやシステムでもやはりその弱点であるとか、落とし穴的なピットフォールみたいなものがあるのかなと思います。そういうものを意識しながら協議することは大事だと思いますので、現時点でその論理性については十分理解できたのですが、注意すべき点みたいなものはこのモデルの中にあるのか、その点についてお聞かせいただけますか。
○祖父江参考人 恐らく弱点というのはきちんとつなげられるのかというところですね。それがやはり主観的な部分がどうしても入って、人によってはつながっていると思っているんだけれども、ほかの人が見るとどうもつながっていない部分だというようなところが出てきているのだと思います。それで、そこを量的に検証するとか、第三者的に検証するということがなかなか難しいので、やはりコンセンサスでそれはつくっていくという辺りだとは思うんですけれども、そのつながりの確かさというようなところが弱点かもしれません。
○中釜委員 分かりました。今後の議論につないでいただくとありがたいと思います。
○土岐会長 齋藤委員、どうぞ。
○齋藤委員 先生、ありがとうございました。非常に勉強になる資料でした。
 質問と感想ですが、まず海外の状況の資料をたくさん例示していただきましたが、イングラインドで地域別がん成績表というものを出している。この地域別というのは、特に日本は保険者によってデータの集め方というのがそれぞれ個別になっている。そこが一つの問題点で、私どもも両立支援するのに家族のがん検診、がん予防に対してはちょっとまだ手薄だなと感じているのですが、この地域別がん成績表は包括して企業に勤めていらっしゃる方、それともそれも含めての全ての国民のがん、地域別のがん成績表ということでよろしいのでしょうか。
○祖父江参考人 そうですね。ですから、NHSが基本になっているので、要は税金でやっていますし、国として国民全体を包括的に把握していて、分ける単位としては地域、それだけです。ですから、保険者とか、職域とか、そういったものは存在していません。
○齋藤委員 それができている理由というのは、日本と何が違うのでしょうか。
○祖父江参考人 国できちんと個人情報を扱って、個人単位の情報を管理しているからじゃないですか。
○齋藤委員 どうもありがとうございました。
○土岐会長 ありがとうございます。
 ほかはよろしいですか。
 私から1点、このアウトプットとアウトカムなのですが、指標としては中間的なアウトカムを指標にするのが一番いいということなのでしょうか。なかなかアウトプットはアウトカムに今、言われたように必ずしも結びつくかどうか分からないという問題はあるのですけれども、我々の指標としては、その中間的なアウトカムが一番目標として設定すべきということで、どの辺りを設定していったらよろしいのでしょうか。
○祖父江参考人 ですから、最終アウトカムというのはやはり死亡、罹患の減少とか、QOLの向上とか、割とはっきりした、最終的にそれを改善すべきと言われるものだと思うのですけれども、それをそのまま確認するというか、そこまで改善されるのに時間がかかるということがあって、やはり中間的なアウトカムということを設定しないと、その改善の度合いというのは現実の問題を確認できないわけですね。
 ですから、適切な中間アウトカムを設定するというのが一番この基本計画の中で鍵になると思います。アウトプット、アウトカム、いずれでもいいと思いますが、できるだけアウトカムというのを意識する。その対象者に起こった変化というのがやはり最終アウトカムに近いものですので、それを適切に設定できる。そのことにみんな知恵を出して、中間アウトカムをきちんと設定するというのが計画の肝になる点だと思います。
○土岐会長 大井委員、いかがですか。
○大井委員 祖父江先生、ありがとうございます。ロジックモデルということでお話を非常に興味深く聞かせていただきました。
 第1期がん対策推進協議会の会長を務められた垣添忠生先生をはじめ、多くのステークホルダーとがん対策の15年を振り返る取り組みをしました。それを取りまとめている中でも、指標となる数値目標が期ごとに減ってきています。がん対策基本法第10条には、施策の具体的な目標や達成時期を定めることという記載があるにもかかわらず、期を重ねるごとに曖昧な計画になってきています。今、祖父江先生がおっしゃったような中間的な目標を定めるにしても、なかなか現状を把握することが難しく、その目標を考えるにも難しいのかなというふうに感じましたが、実態的にまず定めるという中間目標の数値というのはどの基点まで遡って考えていくべきでしょうか。
○祖父江参考人 そこは各領域で知恵を絞って考えるべきなのですが、第3期のときには中間指標としてこういうものを設定しました。既に実績があって、それに対してある数値があって評価が加えられている。これが今、第4期に向けての出発点だということはそうなんだと思います。それの出来栄え云々のことを含めてもちろん議論はすべきですけれども、出発点はやはり第3期の中間評価を一応みんなで確認するということだと思います。
○土岐会長 ありがとうございます。
 それでは、よろしいでしょうか。
 では、続きまして今日のメインでございます議題の(5)です。「がん対策推進基本計画の見直しについて」で、それの1つ目でございますが、「新型コロナウイルス感染症拡大を受けて」に入りたいと思います。
 まずは、コロナ禍におけるがん診療への影響ということで、石岡委員と高橋参考人より発表いただきます。
 まず最初に、石岡委員よろしくお願いします。
○石岡委員 よろしくお願いします。スライドは25枚ありますが、10分程度で説明させていただきます。
 「新型コロナウイルス感染症の蔓延下におけるがん薬物療法の影響調査」ですが、まずがん薬物療法というのは御承知のとおりがんに対する抗がん剤を用いた治療の影響の調査でございます。
 次です。この調査そのものは日本診療腫瘍学会が行いましたが、厚生労働省の科学研究費事業の一番上のほうの3行に書いています。新型コロナウイルス感染症に対応した新しい生活様式による生活習慣の変化及びその健康調査の解明に向けた研究、これが大きな研究で、その分担研究を日本医学会連合の門田会長が分担研究者となりまして、ここに記載の新型コロナウイルス感染症における直接的な健康影響及び他の疾患の医療に与えた影響の調査に関する研究という分担研究を行いまして、今日私が説明させていただきますのはその中の臨床内科グループの、その中のさらに下の研究1.新型コロナウイルス感染症の蔓延下におけるがん薬物療法の影響調査でございます。協力に当たりましたのは、下の研究協力者と書いてあります日本臨床腫瘍学会の会員委員会のメンバーでございます。
 次です。1回目の調査は下のほうに書いていますが、2020年の11月から2月の間、ちょうど1期と2期の新型コロナウイルスのウエーブの後の3期のちょうどピークの後くらいの期間に調査をいたしました。対象は、最初は日本臨床腫瘍学会の会員でございます。会員は約9,000名おりますが、1割強の994名が回答いたしました。回答方式はインターネット方式で、設問は60問でした。
 次です。2回目は少し後でして、第5波の山のすぐ後くらいの感じで行いました。ほぼ類似の調査で、2回目は少し少なくて749人が回答いたしました。
 次です。この2回目のときには、個人会員だけではなくて施設会員も調査したほうが、より精度の高いアンケート結果が得られるであろうということで、この施設というのは日本臨床腫瘍学会の認定施設のことを指しますけれども、この施設を対象に行いました。回答責任者が会員で、106施設から回答があったということでございます。実施期間は、先ほど申し上げた第5波の後です。
 次です。これを時系列にいたしますと、1回目の調査というのはこの青い横矢印で3波のとき、それから5波の後に2回目の調査を会員及び施設で行ったということでございました。それで、今日は施設アンケート結果を中心に概要を説明いたします。
 次です。これは会員アンケートのほうですが、この背景、バックグラウンドですが、回答者の大体72%が男性でした。年齢は40歳代が多かったです。それから、都道府県別は日本臨床腫瘍学会の会員の数にほぼ比例するような数でございます。
 次です。一方、施設アンケート結果のほうですけれども、これは先ほどの回答よりも男性の比率がやや多いことと、それから回答者の年齢が50代と少し年齢層が高い。これは、回答責任者の役職にある者は男性のほうがやや多くて少し年齢も高いということに由来するのではないかと思います。
 施設ですが、なぜか九州の施設からの回答が全くなかったということを一応メモしたいと思います。
 次です。回答施設ですけれども、大学病院が24%、国公立病院が34%、私立病院が27%、がんセンターが5%でございます。それで、回答者の95%が医師でした。
 次です。所属の医療機関は、多くは感染症指定医療機関、または感染症指定医療機関ではないけれども、独自の判断でCOVID-19患者を受け入れているという施設が非常に多かったです。93%の施設が、何らかの形でCOVID-19の感染者を受け入れているということでございます。それで、88%の施設が下のほうですけれども、専用病棟を設置した。42%の施設は手術件数を制限した。それから、9.4%の施設はこれから少し述べますが、化学療法の件数や内容に制限を加えたということです。手術よりも影響は化学療法のほうが少し小さいということです。
 次です。回答者の施設は、500床以上1,000床未満の比較的中規模から大規模の病院が多かったということです。
 次です。回答者は内科医が多くて、うちの学会は腫瘍内科医が多いですので、回答者の51%が腫瘍内科医で、そのほかに呼吸器、乳腺、消化管など、臓器別な診療を中心にしている医師からの回答、血液がその次に準じて多かったということです。
 次です。「がん薬物療法の診療の変化」につきましては、様々な質問をいたしました。このアンケートの期間に日本癌学会、癌治療学会、日本臨床腫瘍学会の3学会合同でCOVID-19感染に関係する診療に関するマニュアルを作成いたしまして、これを会員に配布いたしました。したがいまして、この会員施設もこういったアンケート結果を参考にして、自身の診療や医療機関の診療体制の構築に少し影響を受けたということが想定されております。
 実際、5波の時期においてがん薬物療法に変化があったかということに関しましては、このように大きく、少し、変わらなかった、がん薬物療法を実施していないというのはほとんどないんですけれども、これを見ますと、右の上に示す27.7%、施設回答で少し変わったという施設が大体27%、大きく変わったというのはほとんどないということです。
 それで、これを会員のアンケート、1回目、2回目と比較いたしますと、施設のほうが少し少ないということと、1回目のアンケート調査では少し変わったという施設が非常に多かったのですが、2回目のアンケートでは減ってきているということで、これはもしかすると3学会合同のQ&Aを参考にした施設があって、それの対応によって影響を受ける施設が少なくなったというふうに理解しております。
 次です。これは細かいところで全て説明はできませんが、この円グラフのうち、がん薬物療法に関して、COVID-19蔓延前の2020年の2月までと比較して第5波の時期におけるがん診療が変化したかということについて、治療を適用する際の影響があったかということについての質問がいろいろあります。
 例えば左上ですが、寛解状態、あるいは落ち着いた状態にある患者の維持療法を中断したとか、あるいはすぐ右側でQ4-4ですが、治療薬レジメンから内服薬レジメンに変更したというようなことです。こういったことは、先ほど申し上げた学会のQ&Aなどにも参考として書いておりますので、そういった対応をされた施設がどのくらいあったかということを示す図です。そうしますと、オレンジで示す部分が該当した、何らかの対応をしたという施設でございます。ざっと見て、全ての回答において10%から、質問によっては30%程度の影響を受けたということが見て取れます。
 なお、施設の数字がここにグラフに書いてありますけれども、会員アンケートの2回目の調査と比べて施設アンケートのほうが数値が少し大きいということが分かりました。ということは、恐らく施設アンケートに回答された先生のほうがその施設の対応状況を正確に最大限に把握しているのであろうということが読み取れました。
 次です。細かいことは述べませんけれども、ほかの質問がまた3つありまして、「該当あり」と回答したのが先ほど申し上げたように10から30%、施設アンケートのほうが会員アンケートよりも数値が少し大きかったということです。
 次です。実際にがんの薬物療法を患者さんに適用し始めて、その後に一番上に書いていますが、治療内容を変更したり、治療中止、延期、投与間隔の延長、あるいは薬の量を減量したとか、1回飛ばしたとか、そういったような対応をコロナ感染症の影響で実際どのくらい行われたかというアンケートでございます。これも、見方は先ほどと同じでございます。会員アンケートよりも施設アンケートのほうが、数字が少し多いところが多いということです。
 次です。これも概要をまとめますと、「該当あり」と答えたのは質問によりますけれども、0から15%、先ほど申し上げましたように施設のアンケートのほうが会員アンケートよりもその数字はやや多い傾向がありました。
 次は「患者数」です。COVID-19蔓延前と比較して、第5波の時期において患者数に変化があったかという質問です。これも5段階の質問をしております。右で赤丸で囲みましたけれども、かなり減った、少し減ったという回答がそれぞれ5%強、32%強ございました。これは会員アンケートの1回目、2回目、下に書いておりますけれども、1回目はかなり影響があって、少し減ったという施設が非常に多かったのですが、これが2回目には減少しているということが読み取れております。
 続きまして、「重症化リスクを有する患者へのがん薬物療法の対応」でございますけれども、がん薬物療法の対応、重症化リスクを持つ患者に対して対応を変更したかどうかということ、これにつきましても5段階でアンケートを調査いたしました。施設調査の結果は大きいグラフです。これは、ごくわずかに変更した、少し変更した、半数前後変更したという回答が全体で4割弱ありました。
 一方、変更しなかったというのは57%だったということでございます。全体としては何らかの変更があったというような4割に対しまして、会員の回答は35%前後でありますから、やはり施設の回答のほうがより精度が高いのかなと思います。
 次です。これからは患者さんからの要望、問合せの数に関するものでございます。1、2、3、4段階評価で、かなりあった、少しあったということですが、これは現場をかなり混乱させる原因になりました。1回目も2回目も個人の会員に対するアンケート調査ですが、それでは6割から7割の要望が非常にあって大変だったということですが、施設への問合せに関しましては大体合わせて58%でした。
 次です。問題は、ここが非常に大きな影響があったということです。がん治療後に終末期医療を迎えた患者さんに対する医療が施されるわけでありますが、この質問では終末期患者の診療に苦慮したかどうかということに関しまして4段階で質問しております。
 上の棒グラフですが、かなりあったが58%、少しあったが33%、合わせて92%の施設で何らかの少し以上の影響があったという大きな数字でした。これは、会員に1回目は質問しておりませんが、2回目の質問でもほぼ同じ88%が、かなり、または少し、終末期医療の患者の診療に苦慮したという意見でありました。
 次です。同様に終末期に関係するものです。入院での緩和ケア、みとりの予定であった患者さんが、面会や付き添いの禁止のため、在宅ケアあるいは在宅みとりにせざるを得なかったかどうかという質問です。これも4段階です。上に示しますように、かなりあった、少しあったを合わせますと7割近い69.7%でそういった対応をせざるを得なかったという回答でございます。これは会員のアンケートでも54%の回答でした。先ほどの質問とこの質問を合わせますと非常に大きな数字が出ておりまして、終末期医療には大きく影響があったのではないかということが推察されます。
 次です。これは緩和ケア体制、看護ケア体制、終末期のみとりに関することです。これに関しましては、満足度が低い、大いに不満があるというような回答はあまりなかった。おおむね、十分満足、そこそこ満足という回答結果でございました。
 次です。ここは読みませんけれども、この内容は厚労科研の全体の報告書の中の腫瘍内科グループの研究1として報告書がまとめられておりまして、その概要をピックアップしたものです。
 次です。まとめますと、がんの薬物療法に対して、がんの薬物療法は新型コロナウイルス感染症の蔓延下において外科手術ほど非常に大きな影響を受けたわけではないという印象を持っています。
 しかしながら、少なからずの影響はあったと思います。先ほど申し上げました3学会の合同指針、Q&Aの認知度はかなり高く、これは説明いたしませんけれども、アンケート調査で91%という高い認知率でした。そのため、恐らく注射薬のレジメンから内服薬のレジメンなどの変更とか、投与間隔を長めのレジメンに変更する。投与時間が短い、つまり院内滞在時間短めの治療法に変更する。あるいは、骨髄抑制で副作用が少ないレジメンに変更するなどのCOVID-19感染症のリスクを減らす工夫が各施設である一定の割合で行われていたことが読み取れます。
 それと、本来、治療を受けるべき患者がコロナ禍の影響で受けられていない状況、患者数が減ったということからの調査ですが、第5波の時期はその対策が講じられてきて、第1波、第2波のこれよりも少し改善された可能性があるということです。これは、施設調査は1回目と2回目を比較しておりませんので、会員の1回目の調査と施設の2回目の調査の比較からの推測です。
 それから、終末期のがん患者の診療に苦慮するということに関しましては、先ほど申し上げましたように非常に大きな影響があったということで、緩和ケア、終末期ケアの影響が多大であったことを認めるような結果であるということです。これは、予定外の患者の在宅ケアや在宅みとりの結果も非常に大きかったということからも裏づけられます。
 次です。「結論」ですが、COVID-19の蔓延ががん薬物療法に与えた影響は少なからずありました。特に、終末期ケアに関しての影響は非常に大きかったということでございます。
 次です。なお、この調査は第5期の終わりでございますが、御承知のとおり今は第7期でございます。第7期への影響というのも恐らく少なからずあろうと思いますが、まだ調査はしておりません。
 私はテストとして、宮城県におけるがん診療連携協議会に最近アンケート調査をいたしました。第7波の現在、入院や外来での影響がどの程度ありましたかということをアンケート調査いたしました。多少、かなり、施設によって違いますけれども影響がある中で、その理由といたしましてスタッフの問題を記載する施設が非常に多かったということが特徴的でございます。
 御承知のとおり、新型コロナウイルス感染症の7波では医師、看護師などの医療スタッフが感染、濃厚接触、あるいは自分の子供の保育園が休園してしまったために出勤できないなど、医療従事者の確保の問題が非常に大きな問題として各地域で取り上げられております。
 次です。そういったことで、日本臨床腫瘍学会では今後第7波の収束を見込んで、今年の11月から12月に3回目の調査を予定しているところでございます。
 以上、私から概要を御報告申し上げました。
○土岐会長 石岡委員、ありがとうございます。
 それでは、引き続いて資料7を高橋参考人より御説明をよろしくお願いしたいと思います。
○高橋参考人 よろしくお願いいたします。国立がん研究センターがん対策研究所の高橋と申します。
 私からは、「新型コロナウイルス感染症によるがん検診及びがん診療などへの影響」について御報告いたします。
 なお、この報告につきましては、本協議会の75回、昨年の3月にも一度報告しておりますので、それに引き続く追加報告となります。また、がん検診のあり方に関する検討会でも随時報告をしておりますので、同様の内容が一部含まれることを御容赦いただければと思います。
 次です。新型コロナウイルス感染症ですが、現在は第7波のさなかにありますが、特にがん検診やがん診療に大きな影響を与えたのが第1回目の波、そして第1回目の緊急事態宣言でした。詳しいことはこの後、説明しますが、影響は2020年度が大きく、2021年度は回復を示しております。
 次です。本検討に当たりましては、日本の全体を反映できる悉皆性の高いデータを分担研究者などに提出いただき、検討しております。
 がん検診の受診者数並びにがんの罹患者数、がんの受療行動について解析しており、こちらはがん検診の受診者数の動向です。出典は地域保健・健康増進事業報告で、一番新しい2020年度の報告となります。こちらの図は2020年度と、その前3か年年度の平均値を比較しております。また、がん検診の指針で推奨されている5つのがんについて、2020年度とその前の3か年年度の受診者数を集団検診と個別検診の別で示しております。
 左側から、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんとなりますが、いずれのがん種におきましても前3か年年度の平均よりも2020年度のほうが低くなっており、2020年度はがん検診の受診者数が日本全体の住民検診で減っていたということが示されています。
 特にこの中でも減少の度合いが大きかったのが一番左側の胃がんでして、赤色の個別検診、青色の集団検診別で見た場合、青色の集団検診の減りのほうが大きかったという傾向でした。がん種別でいえば胃がん検診、また集団、個別の検診の提供体制の別でいえば集団検診のほうが2020年度の集団検診の受診者数が大きく減ったというような傾向でした。
 次です。地域保健・健康増進事業報告は集計してから報告が出るまでに少しタイムラグがあるため、現時点で報告できるのは2020年度となります。
 一方で幾つかの自治体や保険者などから2021年度のデータも報告されています。それによりますと、悉皆性は高くはありませんが、2021年度につきましてはコロナ前前以前と同程度まで回復していたところ、または2020年度の減少の影響を受けて上下しているところなど、まちまちですので、こちらは悉皆性の高いデータが集計でき次第、御報告いたします。
 次です。こちらは2つ目のがんの罹患者数に関する検討です。出典は院内がん登録の2020年、こちらは年度ではなくて年の集計になりますが、2020年の全国集計で、それが男性と女性の別で代表的な5つのがん種について年別の年次推移を示しています。男性・女性いずれにおいても、傾向としては2019年までは増加傾向にあったがん登録者数が、2020年に少し下がっています。これは男性、女性かかわらず、どのがん種においても見られたため、2020年においてはほとんどのがん種のがんの登録者数が減ったといえます。
 次です。そのがんの登録者数の詳しい分析です。図の左側ががん検診で発見されたがん、右側ががん検診など以外での発見例となります。また、それぞれのグラフが左から右に向けて1月から12月の月別の登録数でして、赤い折れ線グラフは2020年が前4年の平均と比べてどのぐらい増減しているかという割合を示しています。赤いグラフが少し中でへこんでいるのは、2020年が前までのトレンドと比べて減っているというところを示しています。
 赤い折れ線グラフに注目すると、左側のがん検診の発見例のほうが右側のそれ以外と比べて落ち込みの度合いが大きいということが分かります。
 月別の変化を見ると、左側のがん検診の発見例は、5月、6月、7月は減少しており、その影響は10月、11月くらいまで続いていました。
 一方、右側のがん検診以外の発見例では、少し違った傾向であり、5月と8月に少し減少しましたが、がん検診発見例ほどの影響は受けていませんでした。
 一方で、がん検診以外の発見例においても、コロナの影響があったといったところは注目すべき点です。
 次です。こちらも詳細なデータとなります。左側が先ほどと同じがん検診の発見例、右側ががん検診以外の発見例で2020年と、その前年度との増減を比較しております。こちらで注目したいのは、特定警戒地域、これは特に第1波のときに感染が広がった下に示す東京や大阪などの13都道府県とそれ以外で分けて解析をしております。
 左側の図では、がん検診の発見例において特定警戒地域である赤の折れ線グラフのほうがそれ以外の地域の青の折れ線グラフよりも落ち込みの程度が大きいということを示しています。そのため、第1波の後に、特に4月から8月辺りにかけては特定警戒地域におけるがん検診発見例が減少したということが分かいますります。
 一方で、右側のがん検診以外の発見例は、それほど大きな影響はつかめないですが、特定警戒地域のほうがそれ以外と比べると発見例が少なくなった。ことが分かります。そのため、コロナの影響は地域別に見ると、特定警戒地域において、がんの登録数に大きかったと言えます。
 次です。こちらは2020年のがん登録をがんの部位別に見たもので、その前4年間の平均との比較となります。がん検診の対象となるがん、胃や大腸がんにおいては左側に位置しており、前4年の平均と比べると少し低い。低いというのは、2020年度のがん登録数が少なくなったという傾向を示しています。
 一方で、異なった傾向を示す右側の白血病や膵臓がんなどもあることも注目に値します。
 次です。がん登録数を指標として見た場合に、2020年は全体的に減少したということが言えます。全体の平均で4.6%減少しました。男女別では、男性では胃や大腸、女性では乳房や胃の登録者数が減少しました。
 がん登録数に関しても2021年が気になすりますが、冬頃には御報告できるかと思います。
 次です。こうした中、昨年、令和3年の11月には厚生労働省からプレスリリースが出ております。これは「院内がん登録2020年全国集計」が出たものに引き続いてということになりますが、ここでのポイントはがん検診の受診や医療機関への受診が遅れないようにすることが重要であり、がん検診などの必要な受診は不要不急の外出には当たらないということですので、この点を御留意いただきながら医療施設や病院などはがん検診の提供をしていただきたいと思います。
 次です。こちらは外科の手術件数の変化となります。こちらは会長の土岐先生より紹介、提供いただいた資料となります。NCDデータを基に外科の治療数についての解析をしておりまして、図の左側が胃がんの代表的手術、右側が直腸がんの代表的手術となっています。
 図の見方は、週単位の年別の推移でして、一番濃い折れ線グラフが2020年、コロナの年となります。また、薄い折れ線グラフがその前の2年となり、薄い折れ線グラフと濃い折れ線グラフの差がコロナによる影響と解釈できます。
 これによると、左側の胃の手術は薄い折れ線グラフと濃い折れ線グラフの差とが4月くらいから10月くらいまでかけて大きくなり、影響を受けたという評価ができます。
 右側の大腸の手術においても差は小さいですが、同じような傾向があります。 次です。一方で、こういった差が見られなかった術式もあります。具体的には肝がん、虫垂炎、弁置換形成術、膵がん、胆摘、大動脈弁置換術など、一般的に症状が重く出るような疾患に引き続く手術は、コロナ禍でもあまり大きな影響を受けなかったと評価思できます。
 次です。さらに詳細な解析をしており、感染程度の高い、低い、その間という地域に分けてその比較をしております。それで、左は直腸がんの手術で、右側が虫垂炎の手術となります。
 折れ線グラフが3つありますが、一番上が感染程度の高い地域で、以下、中ぐらい、低いとなります。左の直腸がんでは感染程度の高い地域のほうが薄い折れ線グラフと濃い折れ線グラフの差が大きい、つまり、コロナの影響を受けたといすえます。一方で右側の虫垂炎の手術は、地域別に分けてもそれほど変化はありませんでした。
 次です。こうしたことから、感染の程度の高い地域において症状の比較的少ない疾患、これは検診に関わるようながんを含むような疾患並びに緊急性の低い疾患になりますが、コロナの影響を受けて手術術数が減少したというところがいえます。
 次です。こうしたことから、当班ではこのような要因を検討しております。
 1つ目は、緊急事態宣言に伴う政府や専門学会への通知。
 2つ目は、がん検診の実施主体となります市区町村や保険者、事業主による実施の延期や中止。
 3つ目に、感染を受診者が恐れたということで受療行動が変わったことによる検診や医療の受診理解。
 4つ目は、それを受け入れる側のがんの検診実施機関や医療機関のキャパシティーが様々な要因で減ったといったところが考えられます。
 次です。では、一方で海外での報告を紹介します。こちらはアメリカの報告で、がん検診の受診者に電話でアンケートを取ったデータです。上の折れ線グラフが乳がんと子宮頸がんですが、2020年ではがくんと減っている。減った割合は乳がんでは約6%、子宮頸がんでは11%でした。
 下の3つの折れ線グラフは大腸がんに関わる検査でして、大腸がんに関して変化。大きくありませんでした。そのため、アメリカではがん種によって影響があるがんないがんがあったと報告されています。
 次です。オランダはがん登録の制度が進んでおり、がんに関連するデータが早く集計され、迅速な解析や報告が可能な国の一つです。こちらはオランダにおいてのがんの登録者数の変化を示しており、青い折れ線グラフが全てのがん、赤い折れ線グラフはその中でも皮膚がんを示しています。2020年の1月から4月までを週ごとに時系列で追っており、赤いバーのところはオランダでの緊急事態宣言が出された時点で大きくがんの登録者数が減りました。その中では特に皮膚がんの減りが大きかったという報告です。
 もう一つ特筆すべきところは、これは4月までのデータですが、秋にはこの論文が出ていたというデータ収拾・解析の速さは参考となるところがあると思います。
 次は同じオランダからのデータですが、こちらは大腸がんのステージ別の登録者数の変化となります。左上からステージが1、2、3、4と進んでおりますが、点線の予測数に比べると実線の登録数の減りはステージの1のほうが大きく、2、3、4と進むに従ってその減りの程度は小さくなることが分かいますります。オランダの大腸がんにおいてはステージが早い、程度の軽いがん種がより大きくコロナの影響を受けたという報告です。
 次です。では、日本のデータですが、先ほどの院内がん登録でのデータを紹介します。こちらは左上から大腸がんの0期、1、2、3、4期となり、オランダと同様、ステージの軽いほうの影響が大きく、減少が大きく見られました。大腸がんの進行度別の影響については、オランダと同じような傾向が日本でも見られたといえます。
 次です。こうした影響の分析について、アメリカがん学会からの報告によると、がんの診療にはそれぞれのフェーズがあり、それぞれのフェーズにおいてコロナの影響を受けたと評価されています。
 特に診療や治療へのアクセスが減ったということ、通常診療が遅れたということ、診断が遅れ、治療が遅れて、結果的にがんの死亡率の増加が懸念されていいます。これら診断や発見の減少に伴う死亡率の増加についてはまだ明らかな報告がされていませんが、引き続き注視します。
 次です。国際的な動向のまとめは、がんの罹患者数は減少し、多くの国においてがん検診に関するサービスは中断し、予定の手術は遅延や中止なども余儀なくされました。その後の中・長期的ながんの死亡率の増加が懸念されている状況となります。
 次は最後のスライドとなりますが、今後の対応策としては、引き続きこうした正しいデータに基づく適切な分析は継続する必要があると考えます。
 2つ目としては、がん検診やがん医療へのアクセスを有事においても確保すること。3つ目として、がん検診やがんの医療に関する適切な情報提供することが挙げられます。
 最後に、即時性のあるデータに基づく適切ながん対策が実行できる国もあることから、日本も可能な限りそのような体制を整備することが対応策としては考えられます。
 私からは以上です。
○土岐会長 高橋参考人、ありがとうございます。
 それでは、ただいまのコロナに関する2つの御発表、石岡委員、高橋参考人、こちらにつきまして御質問等がある委員の先生がおられましたら、挙手のほうをよろしくお願いいたします。
 黒瀨委員、どうぞよろしくお願いします。
○黒瀨委員 ありがとうございます。
まず、石岡先生、そして高橋先生、大変詳細な御検討と、そして丁寧な御説明ありがとうございました。
 高橋先生に何点か教えていただきたいんですけれども、まず1点目は資料の3ページからなのですが、がん検診の受診者数が減った。これは私どもも大変実感しているところでありますし、また、がんの登録者数ももちろん減っているということで、その原因として1つは、全体的に見るとがん検診以外の発見例というものよりも、やはりがん検診による発見例のほうが大きく下がっている。
 それは、もちろんその受診率の低下もあるのでしょうけれども、もう一つは精密検査を受ける率といいますか、要するに要精密検査となった方がどれくらい本当に受けられたのか。特に、内視鏡学会等からもいろいろと情報発信があって、あの当時、多分、胃カメラとか、あるいは大腸カメラの実施率もかなり減ったと思うんですね。ですから、そういった影響がかなり大きかったのではないか。むしろ、例えば肺がんとか、あるいは乳がんのようなCTとか、マンモグラフィーとか、そういったところである程度診断できるものに比べて、やはり胃がん、大腸がんで大きく精密検査率が下がったのかなというところを懸念しているのが1点です。
 それから、個別検診と集団検診の減少幅がかなり違うということでしたけれども、その原因は一体どこにあるのか、ある程度お考えがあったら教えていただきたいです。
 最後は、15ページ目に医療機関のキャパシティーの減少というところがあるんですけれども、第1波のときはそれ以降のときに比べると、実は医療機関がすごく暇だったんですよ。それほどスタッフの感染とかも問題になっていなかった時期ですし、むしろ通常診療で来られる患者さんは減っている状況で、逆に個別検診をやっているような医療機関というのは結構暇で、来たらいつでもすぐに受けられるような状況だったんですけれども、やはりそれでもキャパシティーの減少というのが実際に数値的に表れているのかというところをちょっと教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○高橋参考人 黒瀨委員、御質問ありがとうございます。
 まず1つ目の精密検査への影響への御懸念ですが、悉皆性の高いデータでいいますと、地域保健・健康増進事業報告の2020年のデータが出るのはもう少し時間がかかるので、それに基づいた議論は現段階では難しいですが、研究に参加、協力いただいている幾つかの医療機関からのデータによりますと、まちまちです。精密検査の受診率が高くなったり、低くなったりといったところがあるため、詳細なデータのとりまとめをお待ちいただきたいと思います。
 また、黒瀨委員が御懸念されているように、アクセスが悪くなって減ったのではないかということがあるかと思いますが、こちらもデータが限られており明確なデータは不足していますが、可能性としてはあるかと思います。
 一方で、海外の報告ではコロナ禍のほうが精密検査の受診率も上がったところもあるようですので、慎重に悉皆性の高いデータを評価したいと思います。
 2つ目の、個別検診と集団検診のうち集団検診のほうが影響を強く受けたというデータに関する御質問ですが、こちらにつきましては、第1波のときに、特に集団検診を実施している実施主体となる市区町村において、がん検診の提供が不要不急の医療に当たるのではないかというような観点から取りやめられたというところの影響を強く受けたと推測されています。
 一方で、個別検診のクリニックなどは、個々に受診者に対してがん検診をある程度提供できたことから、対応の温度差が、個別検診と集団検診の差になったのではないかと思います。
 もう一つ、評価の中で医療施設のキャパシティーが影響しているのではないかというところで、1波の時期はキャパシティーは十分あったということですが、今回の班の検討では、第1波のみならず、ほかのコロナの影響を受けた場合も検討しており、特に第5波、6波、7波となっていくに従って、医療従事者自身がコロナの感染や、家族などの感染によって就業できないような状況でキャパシティーが下がったことから、総合的に評価ころした状況です。
○黒瀨委員 ありがとうございました。
○土岐会長 それでは、続きまして松田委員よろしくお願いします。
○松田委員 高橋先生、どうも御報告ありがとうございました。
 先生の御発表ですと、まず最初に地域保健・健康増進事業報告で市区町村におけるがん検診の実施状況を見ると、とりわけ胃がん検診で受診者数が減り、集団検診が個別検診よりも減ったということでした。
 次にがん登録では、胃がん、大腸がんが減り、乳がん、子宮頸がんが減り、とりわけ早期のがんが減って、将来的にがん死亡率が増えるのではないかと懸念されるという御発表だったかと思うのですが、がん検診の受診者数が市区町村で減った理由についてお伺いしたいと思います。理由として受診者本人の受診控えなのか、あるいは提供側すなわち市区町村の検診の延期や対象者数の制限、どちらの要素が大きいのでしょうか。
 もう一つ、今日は先生の発表になかったのですが、職域のがん検診です。私どものところを含めて、実は職域におけるがん検診の受診者数はあまり減っていないという報告があろうかと思います。それはなぜでしょうか。従業員本人の受診控えがなく、職域におけるがん検診は法的な根拠がないにもかかわらず、他の労働安全衛生法に基づく健診と同様に、がん検診も受けることが義務化されているからでしょうか。その点、先生いかがでしょうか。
○高橋参考人 松田委員、御質問ありがとうございます。
 まず、1つ目の市町村におけるがん検診受診者数の減少した要因というところになりますが、要因分析の重みづけまではしておりませんが、恐らく受診者側、提供者側など複合的な要因が働いていたのではないかと推測します。
 当班ではほかにウェブによるアンケート調査をしておりまして、それによりますと、健常者に対してのがん検診の受診、受療行動への影響については、やはりコロナで受診するのが怖いからというような受療者側の要因がみられます。
 また、受診者側、提供者側いずれが大きな要因かという趣旨かと思いますが、それにつきましては、もう少し解析が必要ですが、4月から9月、10月ぐらいまでは影響を受け受診者数は減少しましたが、2020年度の後半にはそれを挽回するように各自治体や医療機関などが感染対策を取って受診者の増加に努めたため、受診者および提供者双方の影響が一時的にはあったという推測はされるかと思います。
 2つ目の質問として、職域の検診ではあまり減っていない背景として、労働安全衛生法に基づく法定健診の一環として、もしくは高齢者医療確保法に基づく定期検診の一環として、がん検診が実施されている場合もあり、これらにより保険者や事業主が中止や延期をとどまらせたため、住民検診と職域検診を比べた場合は、職域検診の影響のほうが少なかったと推測されます。
 それは、やみくもに職域における検診が提供されたというわけではなくて、提供者側の自助努力が。大きく貢献したと推測します。恐らく松田委員も福井県のデータをお持ちかと思いますが、年度の事業ですので、年度内に消化しようとするため、年度終わりに受診者が例年になく増加したデータでもありますため、これらが組み合わさって職域検診と、住民検診の違いとなったと考えられます。
 
○松田委員 ありがとうございます。また引き続き御報告いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○土岐会長 ありがとうございます。
 それでは、次に移りたいと思います。今後の議論に向けまして、都道府県のお立場ということで、谷口委員より資料8を用いて御説明をよろしくお願いいたします。
○谷口委員 島根県の谷口です。「島根県におけるがん対策~現状と課題~」と題して、常日頃、都道府県間でいろいろ意見交換をしていることを含めて幾つか意見を出したいと思います。
 これは島根県の地図ですが、ここでお話ししたいのは、どの都道府県も人口の偏り、偏在というのがあって、どうしても島根県の場合はここにあります出雲・松江圏域が県都と、あとは大学があるところですので、こちら側に大きな病院が集中して、西のほうにはあまり大きな病院がない。今、浜田医療圏に拠点病院がありますけれども、数年前までは益田医療圏にもあったのですが、益田医療圏はいろいろな形でちょっとなれないということで外れてしまったという経緯があります。島根県に限らず、どの都道府県においてもこういった状況はあろうかと考えているところであります。
 次は「一次予防」についてですけれども、島根県でも特に食生活改善、運動の促進ということで、減塩とか野菜摂取、そして運動習慣を増やすということで、現在もいろいろ取組をしているところであります。
 次ですが、島根県でも島根県内の49の構成団体で構成する推進協議会を母体にして県民運動を進めているところであります。
 次です。こういった取組をやってきたんですけれども、なかなか思ったように生活習慣が改善しないということで、2年前からモデル地区活動、働き盛り世代、そして食環境というところに少しターゲットを絞ってプロジェクトを開始して、コロナ禍で十分進んでいない部分もありますけれども、取組をしているところであります。
 次は先ほどお話ししたことで、こういったことをキャッチコピーにして県民にどう伝えていくかということで取組をしております。
 次です。そんな中で、国保のヘルスアップ事業と連携しながら、2番目のところで、オンデマンドを使った県民への研修・教育、普及啓発を現在進めております。なかなか県民に行政が思ったり専門家が思ったりしたことをどう伝えていくかということは非常に難しいということでいつも苦慮しているんですけれども、今回はこういう形で少し取組を進め出したところです。
 こういった中で、3番のところでマスメディアの協力というのが大変重要なんですけれども、なかなかその部分が、島根県の場合は大体通常価格の8分の1ぐらいの価格でいろいろな啓発活動をしてもらっているんですけれども、これは大変ありがたいなと思いつつ、そうはいってもばかにならないお金がかかっているということで、予算の確保に苦慮しております。
 次です。こういった状況を踏まえて、常日頃から健康づくりの応援アプリのようなものを今、様々にいろいろな業者がつくっておりますけれども、ばらばら過ぎてデータを集めることもできないし、こちらから何か発信することも非常に難しいし、大変高価であるという問題がありますので、できればそういったもののプラットフォームのようなものを国がつくって、それでプラスアルファでその上に乗せていくという在り方がいいのではないか。
 それから、それを使った自治体との双方向でのやり取りで、ある意味いろいろな情報をSNSで発信したり、そういうことがもっとできるような環境整備が必要ではないかというふうなことを我々は少し考えております。
 それから、企業での取組ですけれども、これもなかなか企業での取組が定着しないという課題があって、手を挙げたところだけになりますが、企業に参加してもらって健康度のようなものを測定して、その次のポツに書いてありますが、その健康度によって助成金とあります。これは必ずしも国ではなくて、保険者からこういうふうなことをするのもありなのかなと、インセンティブをどうつくるかということも常日頃、我々行政の中で考えているところであります。
 次は「環境へのアプローチ」ということで、食のほうでは今、国が「食環境戦略イニチアチブイニシアチブ」というものに取り組んでおりますので、これをさらに進めると同時にたばこの喫煙というのはがんの一次予防では大変大きな問題になります。
 この健康増進法が変わって随分よくなってきたと思いますけれども、さらにもう一歩進める上で、ちょっとこれは言い過ぎかもしれませんが、登録制度のようなものまで発展すると、運転免許のような形で吸う人がその免許を取るみたいな感じでさらに効果があるのではないかということを常日頃、行政の中で考えております。
 あとは、マスコミを活用したということでは、たまたま運動の話がここに書いてありますけれども、運動だけではなくて、SNSとかマスメディアの協力というのは、やはり県民なり国民に啓発する際に大変重要ですので、この辺りは都道府県、市町村ごとの独自性も必要ではありますけれども、国全体として何らかの取組が必要だと考えているところであります。
 次は、「二次予防」です。これは部位別の状況が書いてありますけれども、減っているものもあれば増えているものもあるということです。
 次は、がん検診の受診率です。現在は計画の目標で国民生活基礎調査をベースにしたものを使っておりますけれども、やはりこれだとなかなか職域の状況が十分に把握できないということで、職域の検診の場合は実は対策型検診にあまりなっていないというのもありますので、そういった課題を解決する必要があるだろうということを考えております。
 次です。精検受診率の向上についてもかなり頑張っていただいておりますけれども、なかなか医療機関のほうから情報が上がってこないとか、それから都道府県をまたぐとなかなかそれが困難になるという課題がございます。
 次です。あとは、先ほど人口の地域偏在の話をしましたけれども、人口が多いところは医療機関等もかなりありますが、人口が少ないところは検診を受ける医療機関そのものが少ないという課題もありますので、この辺りを集団検診等を少し踏まえながら、今後検診の資源をどういうふうに確保していくのかということを検討する必要があろうかと思います。
 次です。島根県ではその一つとして対策型検診、全国ではこういう事例はありますけれども、胃内視鏡検査というのは職域でかなり導入されておりますので、職域の検診を対策型にできないかということで読影体制、二重読影の体制整備を現在進めております。二重読影についてはオンラインを使ってもできますので、そういった意味ではオンラインを使った胃内視鏡検診を対策型検診として引き上げて、職域の検診をよりいいものにしていくことで受診率の向上を図ろうという取組であります。
 次は大腸がんの未受診者対策ということで、未受診者が大変多いものですから、少しナッジ理論等を活用した意識づけ、動機づけができるようなアプローチもしております。
 そういう中で我々がいろいろ現場で話していることとしては、職域におけるがん受診率が把握できる仕組みとか、場合によっては職域でやっている検診を今やってもいいし、やらなくてもいいということになっているんですけれども、できればそれを法制度化するとか、もう一歩踏み込んだ体制が必要ではないかというふうなことも考えております。
 それから、地域におけるがん検診体制の強化ということでは、先ほど話しましたように偏在がありますので、限られた資源の中でどういうふうに検診体制を構築して維持していくのかということでAI等を活用して、AIオンラインを活用してそういうことができないかということで幾つかの取組をしているということであります。
 それから、3番目です。これも同じようなことなんですけれども、「検診及び精密検査の結果の把握・管理体制の整備」ということで、行政はこういった検診のデータ、精密検査のデータを把握するために大変な労力を使っていますので、何とかここをマイナンバー等を使って、今マイナンバー保険証として登録されるような動きがございますので、情報がもう少し簡単に手に入るようにすることによって質の高い精度管理ができますし、データを集めることも簡単になりますし、評価もしやすくなるということで、こういったことも国全体で少し検討するといいのかなと思います。
 がん登録の活用も、そういったところに活用できるようなタイムリーな紹介ができるといいのかなと思います。
 次です。これについては先ほど少し話しましたが、プラットフォームができるとSNSを使って若い人とかに働きかけやすくなりますので、こういったことも必要だし、その検診を受けることがインセンティブになるような、一部の保険会社等がやっているようですけれども、生命保険料とか健康保険料へのインセンティブができるといいのではないかということであります。
 最後に「企業等への取組」ということで、職域のがん対策を計画の中ではしっかりと取り上げていただいて、法整備とまではなかなか一足飛びにはいかないかもしれませんけれども、何とか職域でのがん検診対策、がん対策をしっかり取り上げていく必要があるかなと考えているところです。
 次は、医療についてであります。先ほど話しましたように地域偏在、人口の偏在は医療の資源の偏在とも言えますので、拠点病院も人材確保に大変苦労をしております。例えば放射線治療医とか、あとは病理医とか、そういった方々の確保に大変苦労しているという現状がございます。
 次です。島根県でも、独自のネットワークをつくって何とか解決できないかということでいろいろ取り組んでいるところではありますけれども、なかなか難しいような状況がございます。
 そこで、次ですが、拠点病院の機能強化と同時に、地域にバランスよく拠点病院を配置するという視点があってもよろしいのではないかなということで、そういった意味でオンライン等を使ってしっかり質を担保した上でこのようなことを考える必要があるのではないかと考えているところです。
 それから、がん相談支援センターがあるようなところは拠点病院はいいんですけれども、がん患者は拠点病院にだけ受診しているわけではありませんので、オンライン等を通じた相談の支援の在り方のようなものについても地域の病院と一緒にネットワークを組んで取り組んでいく必要があるのではないかと考えております。オンライン相談体制などもできるといいなと考えているところです。
 次です。「課題」としてがん相談支援体制の認知度の向上ということで、なかなか島根県においてもどこに相談窓口があるのか分からないというのが行政の窓口に寄せられたり、知らなかったという声が寄せられるという現状があります。
 また、一方で、相談体制の維持ということで、相談員さんはいろいろな相談で大変忙しいというふうな声も聞いております。
 また、その悩み事も大変多岐にわたっているということで、教育、就労、妊孕性温存とか、ライフステージごとにいろいろな悩みがございます。
 次です。そういう悩みを個別に聞いておりますと、例えば高齢者世代ではコロナ禍におけるがんサロンの休止で仲間と悩み、不安を共有できる場が少なくなったとか、小児世代では定期の予防接種というのはがん治療で免疫が失われるわけですけれども、結構この再接種に大変なお金がかかるというふうな声も聞きますし、AYA世代においては居宅サービス費用、福祉用具の購入・貸与経費への支援等も、特に20代、30代の場合は支援体制がなくて自費で賄わなければならないという声も現場からは聞いております。
 次です。そういう中で、拠点病院には相談支援センターがありますので、相談支援センターがハブとなって患者の困り事とか、またはその周辺地域と別の医療機関にかかっておられる患者さんへの相談に乗るとか、例えば診療所などの看護師さんたちに寄せられた相談の相談に乗るとか、そういう体制を組んでいく必要があるのではないかと考えております。
 また、そこでいろいろ出た課題とか困り事を何とか支援する仕組み、先ほどの予防接種の話でもありますけれども、そういったものも必要ではないかと考えているところです。
 次ですが、さらにチャイルド・ライフ・スペシャリストというような制度というか、職種でしょうか。アメリカのほうでいろいろ研修した人が帰ってこられております。島根県にも島根大学にお一人いらっしゃいますけれども、こういった職種を持った人は国内35施設で49人と聞いておりますので、このような人たちが特に子供たちの患者、それから家族の相談・支援に乗るような体制がやはり必要だろう、より専門的に必要なのだろうというようなことを考えて、こういった人たちの配置をもう少し進める必要があるかなと考えております。
 次です。最後は教育についてのお話になりますけれども、がん教育に係る教育負担を減らすためにがんの教育外部講師の活用というのを進めております。全国で島根県は割と使われているほうなのですけれども、それでもまだまだ不十分であろうと考えております。
 がん教育については、学校はもちろんですけれども、行政、職域、そして公民館などの地域社会でいろいろな形で進められておりますので、こういった教育に関するネットワークのようなものがあってもいいのではないかというふうに我々は考えておりまして、こういうふうなものができないか、今いろいろと相談しているところであります。
 私からは以上です。ありがとうございました。
○土岐会長 ありがとうございます。
 ただいまの谷口委員の御発表をお聞きしまして、質問等がある委員の先生いらっしゃいましたら挙手をよろしくお願いいたします。
 齋藤委員、どうぞ。
○齋藤委員 谷口さん、ありがとうございました。
 本当に幅広い視点に基づいたプレゼンだったと思います。ありがとうございます。特に企業への取組、16ページのところですね。全く大賛成でございまして、中小企業でがんの両立支援が進まない理由はコストパフォーマンスということを経営者は考えられるわけで、どれだけがん検診にコストをかけても、では一体何になるのか。売上げ、利益に関わってくるのかというような議論になりがちでありました。
 当時、私のこのセンターができた2013年ごろに産業医の先生方とお話をする機会があって、まさにそこはすごく質問を受けたわけなんですね。それで、私としてはやはりそのコストパフォーマンスというところは答えられなかったんです。数値的に表せるかと言われたら、まだまだ表せない状況であったので答えられなかったのですが、こういった形で中小企業にもインセンティブを国から、または県から御提供いただくと、少しずつ広がっていくんじゃないかなというふうに思っております。
 ありがとうございます。
○土岐会長 大変重要な点をありがとうございます。
 ほかはございますか。
 私のほうから、やはり地方は人口も減っていますので、それをつなぐのがやはりデジタルフォーメーションというか、そういう技術が必要になってくると思うのですけれども、そのアプリとか、AIとか、そういったものを開発するのは物すごくお金がかかってやはり島根県単独では難しいと思うんですけれども、そこをほかの都道府県と連携するとか、情報共有するとか、そういったことは進められているのでしょうか。
○谷口委員 ありがとうございました。
 現在、都道府県においては一部の都道府県でそういうアプリを開発していますし、場合によっては市町村とか、そういったところで開発したり、またはそういうのを売り込んでいる業者もあります。それを個別にいろいろやると、やはりそれぞれがかなりの経費をかける必要がありますので、共通部分みたいなものが少しできるといいなと思います。例えば、感染症のほうでは今HER-SYS(ハーシス)が動いていますけれども、そういった基盤があって、その上にいろいろなオプションがついていくような形で、時間の部分というのはある程度共有しておいたほうがいいのではないか。そうすることによっていろいろなデータ収集にも役立ちますし、それから自治体ごとに発信していくときにも、マスメディアを使って広くということではなくて、その人に直接ストレートにいくということもありますので、何かそういう仕組みができるといいなと常日頃、考えているところです。
○土岐会長 ありがとうございます。
 ほかになければ次にいきたいと思います。続いて、「全体目標について」でございます。
 議論に先立ちまして、前会長として第3期中間評価の取りまとめをしていただきました山口参考人より御意見を頂戴したいと思います。
 山口参考人、よろしくお願いいたします。
○山口参考人 一応資料を用意しましたので、出していただこうと思います。
 前回、終了後、拍手で送り出されたものですから、今日この席にのこのこ出てくるのもどうかと思ったのですけれども、経験を話せということと、もう一つはスケジュールが非常にタイトなので、お手伝いできることはさせていただこうかなという気持ちでプレゼンさせていただきます。
 資料に入る前に、今日のこれまでの議論の中でロジックモデルというお話が出てまいりました。3期の基本計画を策定した時点では、こういうことはあまり意識されていなかったと思うんですけれども、評価の段階になってこの手法の話しが少し出てまいりました。
 それで、実際には第3期の基本計画が書かれた後で、国立がんセンターの情報センターの皆さんとか、それから厚労省の皆さんとで評価項目をいろいろつくっていただいてそれを用いてきたんですけれども、最初の段階で、評価項目という意識が薄かったものですから、採用されなかったという事情があります。
 もう一つの小さな事情ですけれども、公衆衛生学的なところに対しては割とやりやすいような手法のようなのですが、実際に医療現場での目標達成とか、がんとの共生の部分ですね。今までも全然やったことがないものを、さあ、どうやるかというようなところにはちょっと向かない部分もあったかに思います。ですので、私の今日のお話は、まず計画策定時点で評価項目を明確にしておかなければいけないということに多分、尽きるだろうなと思います。
 それでは、資料に沿ってお話をさせていただきます。
 まず、何といっても【スケジュール】が極めてタイトだと思います。第3期の基本計画は、多分1年半ぐらいで作成いたしました。評価の中間報告もそれに近い時間をかけているのですが、今回は多分4か月ぐらいの設定になるんですね。5分の1の期間で4期の基本計画を作成するという形になりますので、大変厳しい状況だと思います。
 したがって、いろいろな質疑、これからいろいろ議論が進んでいくと思いますけれども、議事終了後のメール送付に対して後日事務局より回答し、協議会の資料として残し、発言者の思いを担保しておく。こういう形もこれまでにつくり上げましたので、そういうものをぜひ活用していただきたいと思います。
 もう一点、あえて言えば、この協議会は厚生省の省令指定の協議会ではなくて、政府、内閣府からの命令で実践される。それは基本法に基づいて動かされる協議会、政令指定の協議会ですので、非常に役割が重い協議会になります。そういうところを勘案して、ぜひタイトなスケジュールでも頑張っていただきたいと思います。
 では、資料に沿って進めます。
 まず最初に第3期の基本計画、それから実際に評価した後の参考項目を述べています。
 第1の「全体目標」、ここで少し工夫が要るかもしれません。第3期の場合は「がんを知り、がん克服を目指す」という大目標になったんですけれども、ここはかなり議論がありました。医療関係者からは、「克服」は強すぎる。一方、患者会の皆さんからは、「克服」と書いてもらわないと目標がはっきり出ないということで大分ぶつかった挙げ句、「目指す」という言葉を入れて落としどころを探ったということになります。ここの議論は結構かかりますのでぜひ意識していただくことと、これが社会には強くインパクトを与えますのでこの点は重要だと思います。
 それから、次の3つの基本目標です。ここに、第1期、第2期で入っていた死亡率の低減目標を置かなかったという経緯があります。実はこの議論はあったのですが、この年齢調整死亡率という数値は基本計画を実践して、大きく動く指標では多分ないと思うんです。様々な医療の進歩等によって、あるいは様々な状況によって成果が出てくるものであって、基本計画の成果を評価するためにはその効果に直結するような指標がいいのではないかなと考えました。そういうこともあって、第3期では、基本目標には明確な数値は出さなかったわけです。
 もう一つ理由があって、第2期計画が中間段階でこの目標に未達の可能性が指摘されて、結局「がん対策加速化プラン」が策定をしたことになりました。かなり大きなエネルギーを割いて、ただ、それが直接基本計画の影響ではない部分があるのにというところもありました。このような経験からは、次の第4期において目標設定をどうするかというのはかなり慎重に行っていく必要があるのではないかと思います。
 あとは分野別の施策、これは中間報告の中に大体書いてあることですが、私が当時、会長として気になった部分が幾つか書いてあります。
 がんゲノム医療は道半ばですので、より強化が必要だと思います。
 それから、手術・放射線・薬物・免疫療法の部分ですけれども、実は3期の計画策定時には十分、用いられていなかった技術、薬剤がその後、大きく進歩しました。特に薬剤については、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤などの普及がその例です。これは難しいと思いますけれども、この分野の記載は画竜点睛を欠いたかなという気がしています。
 それから、支持療法は対象が非常に多彩なので、もう少し個々の項目を明確にし、選択と集中が必要かなと思います。
 それから、高齢者のがん、これは前期・後期高齢者を合わせると、現在がんと診断される患者さんの7割を占める大きな集団ですが、この点について評価があまりできなかったので、ぜひ継続をしてやる必要があるのではないかと思っております。
 それから、「がんとの共生」の部分ですが、これは日本のがん対策基本法、それから基本計画の最大の特徴です。他国にはこの分野をしっかりと置いているところは多分ないと思いますので、ここはぜひ力を入れていただきたいと思います。実際に評価してみて、緩和ケアがこの分野に入ることに関しては若干違和感がありました。“がん医療の充実”への移動がふさわしいと思っております。それで、支持療法、緩和ケアをセットで全身ケアの技術ということになります。
 がんとの共生に関しては、例えばQOLの向上とか、そういう整理ができるかなという気がして評価に携わっておりました。
 次のページを御覧ください。
 「基盤整備」に関しては人材育成について、どの人材をしっかり育成せねばならないという議論があまり十分ではなかったので、次のステップではその議論は必要だろうなと思います。
 次に、大きな枠組みで【基本計画・中間評価において改善を要する点】の書きぶりについて4点ほどまとめてあります。
 この多くは中間報告の最後の部分に書いてありますので、そこを御覧いただければお分かりいただけると思うのですけれども、まず1番は基本計画の各項目での「取り組むべき施策」というものがあるのですが、そこに「・・を検討する」「・・を推進する」「・・を充実させる」「・・の対策を講ずる」という記載が非常に多くみられました。個別目標が最後にしっかり記載されていて、達成時期とか数値目標などが明確にされている場合もあるんですけれども、それがない部分も多かった。結局、「個別目標」のまとめ方が不適切な項目があったので漠然とした記載にとどまり、結局、評価項目をうまく設定することができなかった。ですので、ぜひ正しい評価も踏まえて個別目標の充実を図っていただきたいと思います。
 2番目、そういう事情がありましたので評価項目がうまく設定できない部分がありました。例えば、難治がんとか高齢者のがんではそれがうまくいきませんでした。基本計画策定時にぜひ項目の評価を意識して記載して、それに応じた評価項目を明確にして、ここを明確にした上で基本計画を策定していただくことが正しい評価につながるだろうと思います。
 3番目、正しい評価のため、当該項目について基本計画を開始する前の実態、数値が存在することを確認して、そして計画を開始した後の一定期間で中間評価前に実態、数値の変化を調査することが望ましいと思います。
 4番目として、これはいろいろな考え方があるのですが、基本計画のボリュームは77ページありますが、多過ぎると私は思いました。国民や皆さんに読んでいただくためにはもう少しコンパクトに、2分の1から3分の1に圧縮できるのではないかと思います。
 その次の大きな項目ですが、【第4期基本計画で取り上げることが望ましい事項】、私の個人的な意見と、それから委員の皆様の意見を合わせた形で書いてありますけれども、まずはもちろん中間評価で達成状況不十分と判断された項目を重視する。
 2番目に、「がん医療の均てん」とともに「がん情報の均てん」へ進化させていただきたい。
 3番目に高齢者がん医療や難治がん治療に関する項目、なかなか難しいのですが、これを設定していただきたいなと思います。
 それから、多かった意見が、がん医療全般の評価に、単に数字だけではなくて質の評価を加えてほしいという意見がたくさんございました。
 最後に、がん診療連携拠点病院、小児がん拠点、それからがんゲノム医療中核拠点の指定要件が8月に既に通知されております。同時に、先ほども御説明があった各部会の議論も終了し、報告書が徐々に出てくるところがあります。前回、多分これはあまりできなかったのですが、今回はぜひこの内容を計画にしっかり取り入れて整合性を保っていただくということを最後にお願いをいたしたいと思います。
 以上、説明をさせていただきました。
○土岐会長 山口先生、どうもありがとうございます。一つ一つが本当に我々の心に染みるような貴重なサゼスチョンでございました。
 御質問等というのもおこがましいですが、ございますでしょうか。
 感想ではございますけれども、私は先生の後任としてこの会長を務めさせていただきまして、最後のほうに先生が、今日の一つのテーマでありました個別目標、アウトカムにどういうものを設定するか。非常に短い4か月という期間で適切なアウトカムを設定しなければいけないということで、本当にそこは重く考えております。ぜひここはきちんと推進していこうと思っております。ありがとうございます。
 よろしいでしょうか。
 それでは、参考資料を全がん連のほうから頂戴しておりますので、ここで前田委員から簡潔にこの参考資料の御説明をよろしくお願いいたします。
○前田委員 土岐会長、ありがとうございます。資料を提出しておりますが、議論の時間も残したいと思いますのでコンパクトに説明をさせていただきたいと思います。患者委員の前田です。
 全がん連では、加盟団体からの意見や患者体験報告書などから、第4期がん対策推進基本計画に向けての要望書ということでまとめております。10項目から成りますが、コンパクトな説明を心がけます。
 まず1つ目は「緩和ケアの推進」についてです。いまだ身体的苦痛や精神、心理的苦痛の緩和が十分に行われていないということから、抜本的な見直しを要望します。診断時の全員にアセスメントと情報提供、治療時のモニタリング、終末期のフォローアップと、いずれの時期においても必要な方に緩和ケアや支援制度が受け入れられる状況を構築していただきたいと思っております。
 2つ目です。「がん医療に関わる医師や医療スタッフ間の連携の強化」ということで、がん相談支援センターや他職種との連携やオンラインを活用し、セカンドオピニオン、妊孕性温存など、希望者が気兼ねなく受けられるように整備していただきたいと思います。
 3つ目は「希少がん対策と難治性がん対策の推進」です。これについては、均てん化と集約化のどちらも必要と考えています。希少がんセンターのブロック配置とネットワークを構築し、どの地域にいても専門家の治療や情報を集約できる仕組みづくりと研究の推進をお願いします。また、予後の改善が見られる取組は積極的に広げ、数値目標を決めて生存率の向上に努めていただきたいと思います。
 4つ目は「ライフステージに応じたがん対策の推進」、小児がんやAYA世代は長期のフォローアップが必要であることに加え、治療中や治療後すぐに直面する課題にも支援や制度が必要です。
 就学は、今後の未来に大きな影響を及ぼす重要な問題だと考えています。
 また、高齢者については質の違う問題も多いため、実態調査などを行ってガイドラインの作成が必要だと考えています。
 5つ目です。「がんゲノム医療の推進」については、遺伝情報に基づく差別を禁止する法律の早急な整備をまずお願いしたいと思います。
 そのほか、保険適用の拡大、倫理的・法的・社会的課題への対策と、患者・市民参画の推進をお願いいたします。
 6つ目は「支持療法の推進」です。支持療法に関する研究やガイドラインの策定、循環器科との連携、リンパ浮腫の治療が身近で受けられる整備をお願いしたいと思います。
 7つ目は、「薬剤の安定供給、新たなドラッグ・ラグの解消、患者・市民参画に基づく臨床試験の推進」です。これは、患者さんに必要なお薬が使えないという事態に関しての情報提供と、承認や供給に向けては全力で取り組んでいただきたいです。また、ゲノム医療と同様に、臨床試験に患者・市民が計画の段階から参画できるよう推進していただきたいと思います。
 8つ目は「がん患者の就労を含めた社会的支援の推進」です。がん患者の就労を含めた社会的支援ということで、早期からの情報提供、患者のアピアランスや心理サポート、職場での支援が必要で、家族や高齢者の配慮も大事だと思っています。また、がん検診から就労の継続、復職後の環境整備、または再就職を含め、相談窓口や支援につながれるよう体制づくりが求められています。
 9つ目、「ピア・サポートを含む精神心理的な支援とがん患者団体との連携の推進」です。都道府県はピア・サポーターを養成した後、安定して活躍できるよう、病院と連携して質の高いピアサポートが提供できる体制を構築していただきたいです。また、がん診断後の自殺防止の対策や公認心理師の活用など、心のケアの充実もお願いします。
 最後は、災害の対策です。感染症の流行や大規模災害などでもがん診療が維持できるようにBCPを検討していただき、また、情報は情報弱者に配慮し、速やかに正しく届く仕組みづくりもお願いしたいと思います。
 本日、コロナの影響の御発表もございましたが、CSRプロジェクトのがん患者への影響調査では5人に1人が治療を変更しており、がん患者さんの多くがテレビやラジオから情報を得ており、口コミの情報を信じて自己判断で治療や診断を延期した人が多いことも示されています。
 先ほど石岡委員が示されたように、医療者は学会合同の指針やQ&Aを91%の方が知っておられたのとは対象的に、がん患者や市民は正しい情報にたどり着けていない状況でした。また、ワクチン接種についても基礎疾患枠で優先接種を受けられたのは3割というデータもあります。若年者はかかりつけ医ががん治療医の場合が多いので、基礎疾患の定義も曖昧で、自治体によっては対応が違って多くの方が優先的に受けられませんでした。このような状況を踏まえて、今後は感染症対策もしっかりと検討していただきたいと思っています。
 駆け足になりましたが、要望書には現状と課題、要望を詳しく書いておりますので、今後の議論に向けて考慮していただければありがたいと存じます。
 以上です。
○土岐会長 前田委員、どうもありがとうございました。皆さんもこの要望書のほうを熟読よろしくお願いしたいと思います。
 それでは、事務局からよろしくお願いします。
○原澤がん対策推進 事務局でございます。
 それでは、最後の議題として資料10を御覧いただければと思います。事務局より「全体目標に係るがん対策推進基本計画の見直しについて(案)」という資料を提出いただいておりますので、御説明させていただきます。時間もないので簡潔に進めさせていただきます。
 2ページ目を御覧ください。こちらは何度か出てきますが、「第3期がん対策推進基本計画における全体目標」の3つの柱を記載しておりますので御参照ください。こちらの3つの目標、全体目標に対して中間評価をしていただいた結果を3ページ以降にお示ししております。
 3ページを御覧ください。第3期基本計画の全体目標の「がん予防」分野の中間評価でございます。一番下のところに、さらに推進が必要と考える事項と記載してございますが、年齢調整死亡率については減少傾向にあるが、それを引き続き低減させていくため、がん検診による早期診断を含む予防や治療の改善について、取組の対象の明確化や手法についての工夫などを含めて、国民が利用しやすいがん検診の体制について検討を進めていく必要があるといった御意見をいただいております。
 4ページ目から6ページ目にかけては、がんの年齢調整死亡率の部位別、年齢別等について記載しておりますので、適宜御参照ください。
 7ページ目までお進みいただければと思います。こちらは「がん医療の充実」分野の中間評価でございます。がん対策推進協議会としてさらに推進が必要と考える事項について一番下に記載してございますが、がん医療について一定の評価はできるものの、中間評価指標にないがん種や、小児がん、AYA世代のがん、高齢者のがん、希少がん、難治性がん等については、さらなる医療提供体制の充実と均てん化を目指し、改善すべき領域の明確化、対策に取り組む必要があるというようにまとめていただいてございます。
 8ページ目と9ページ目に「部位別の5年相対生存率」や「部位別の年齢調整死亡率」について記載しております。いまだ予後不良のがん種も一定存在するといったところが見受けられるかと思います。
 続いて、10ページ目までお進みください。こちらは「「がんとの共生」分野の中間評価」でございます。さらに推進が必要と考える事項において、こちらは病気や療養生活に関する相談支援や、患者と家族の悩みや負担に関する相談支援の体制整備について、ピアサポート体制の充実、相談支援センターやがん情報サービス等のさらなる周知といった取組が必要である、としていただいております。
 続いて、11ページ目を御覧ください。「前回の協議会でいただいた主なご意見」を項目ごとに記載しております。全て読み上げることはしませんが、全体としては、質的な評価指標、本日も何度か論点が出てきていますが、数値化できるものを数値化していくといったところや、質的な評価の追加といったところが必要ではないかという御意見ですとか、患者市民参画や人材育成等についても必要ではないかといった御意見がございました。
 がん予防については、受診率向上や諸外国比較といったものは引き続き行っていくこと、がん医療については小児・AYA世代のがんや希少がん、高齢者に対する対応、ネットワーク構築や連携体制の構築といった点に御意見をいただいています。
 共生分野については、情報提供、相談・支援、緩和ケアの充実、治療と仕事の両立支援、世代に応じた支援の充実や教育の支援、オンライン環境整備等々といった御意見を頂戴してございます。
 続いて、12ページを御覧いただければと思います。中間評価報告書の最後の「おわりに」から抜粋しております、第4期基本計画に向けた論点についておまとめいただいています。こちらは、先ほども山口参考人から御意見を頂戴しておりますので、私からの説明は割愛させていただこうと思います。
 最後、13ページ目から15ページ目までが論点でございます。13ページ目の論点と、14ページ目、15ページ目の論点は少し趣が違うので分けて御説明いたします。
 13ページ目、まずこちらで「第4期基本計画の方向性(案)」という形で、基本計画の構成についてこういった形で検討することとしてはどうかということを、事務局で整理しております。
 まず1つ目でございます。一番上の●で、全体目標の3本柱及び「これらを支える基盤の整備」といった構成については、これは引き続きいずれも重要な視点であるということで維持することとしてはどうかとしております。
 他方で、●の2つ目でございます。各分野の施策については、これまでの協議会における議論や中間評価報告書の内容も踏まえまして、新たな視点を盛り込みつつ、各施策の関連性等を考慮した上で、構成について項目の移動や統合、細分化が必要なものについては追加する等の検討をしてはどうかとしております。
 ここが基本計画の構成についてのお話でございます。
 続いて、14ページ目を御覧いただければと思います。
 14ページ目と15ページ目は、基本計画の全体目標に係る方向性ということで、以下に記載したようなことを今後議論することとしてはどうかというふうに書いております。特に、各分野の記載事項についてはこういった論点を中心にして、今後各回で堀り下げてさらに御議論いただこうと考えておりますので、そういった観点で御覧いただければと思います。
 まず14ページの上半分、「横断的事項について」ということで、1つ目の●は第3期基本計画では山口参考人のお話もありましたが、全体的な分かりやすいコンセプトは記載した一方で、全体に係る数値目標というものは設定されなかったということを踏まえ、次期基本計画ではどうするかといった論点があろうかと思います。
 他方で、いろいろ出ておりますとおり、各施策の進捗を評価、改善ということは重要なので、数値目標を掲げられる分野については積極的に数値目標を設定する方向で検討することとしてはどうかというふうに記載してございます。
 以上が、「横断的事項について」です。
 続いて、分野別のがん予防についてです。
 1つ目の●から、一次予防については引き続き健康日本21の方の見直しも今、議論されておりますので、そちらで設定される目標等と連携することとしてはどうかということ。
 2つ目の●で、がん検診の充実に向けて実施体制の見直しや実態把握の加速について盛り込むこととしてはどうかということ。
 評価については、施策の効果を測定するため、年齢調整死亡率及び年齢調整罹患率については引き続き採用することとしてはどうかということについて記載してございます。
 続いて、15ページ目です。14ページ目と同様の趣旨で「がん医療の充実」及び「がんとの共生」の分野についての今後の主な論点という形で記載してございます。
 まず、「がん医療の充実」分野について、1つ目の●から、地域間及び医療機関間における差についてどのように考えるかということ。
 診療提供体制の整備について、がん医療の高度化を踏まえ、拠点病院を中心とした集約化及び医療機関同士の連携の強化についても盛り込むこととしてはどうかということ。
 3つ目、評価については第3期で採用した5年生存率や患者体験調査のほか、中間評価における議論も踏まえ、拠点病院より収集する現況報告書の体制の項目も盛り込むこととしてはどうかということについて記載してございます。
 共生分野について、1つ目の●から、相談支援及び情報提供については、デジタル化の流れを考慮し、より効果的な手法について盛り込むこととしてはどうか。また、地域や社会との連携体制、医療・介護・福祉・産業保健等の各分野の連携強化及び世代特有の課題については引き続き盛り込むこととしてはどうかということ。
 評価については、質的な評価も重要であることを踏まえ、引き続き患者体験調査を用いることとしてはどうかといったことを主な論点として記載してございます。
 事務局からの資料の説明は以上でございます。
 また、本日御欠席の御連絡をいただいている木澤委員より、事前に本資料に関連して御意見を頂戴しておりますので、私のほうから御紹介させていただきます。
 緩和ケアの提供体制について、均てん化は大変重要だが、地域の事情に応じて集約化できるようにするのがよいと考える。
 特に、拠点病院以外の緩和ケアの充実等を考えると、その地域で優れた医師、例えば拠点病院の緩和ケアの医師と、緩和ケア病棟などにいる専門家が協力し合ってコンサルテーションを受けられる仕組みづくりが必要ではないかといった御意見をいただいております。
 また、チャットボットを活用した相談支援を検討すべきではないか。また、支持療法と緩和ケアを完全に分けて記載することは、治療と緩和ケアの統合を妨げるのではないかと危惧しており、がん医療の充実分野に小項目として、治療と緩和ケアの統合のような文言を入れるよう提案したい、といったことを御意見としていただいております。
 加えて、患者会から診断時のケアが全くなされていないというふうに聞いているので、診断時の緩和ケアの重要性について盛り込むべきではないかといった御意見と、がん診療が外来にシフトしていく中で、外来看護では質、量ともに不足しており、これらの対策について検討すべきではないかといった御意見を頂戴しております。
 長くなりましたが、事務局からは以上でございます。
○土岐会長 ありがとうございます。
 ただいまの資料10、特に黄色の部分での方向性ですね。こちらにつきまして、御質問や御意見をある方はお願いしたいと思います。本当に時間が厳しくて申し訳ございません。
 では、まず最初に石岡委員どうぞ。
○石岡委員 石岡でございます。
 全体の進め方について特に反対というわけではございませんが、先ほどからも今回は検討し、策定するまでの期間が4か月しかないという状況である。それから、今回は協議会の4割の委員が新しく入れ替わったという状況を考えますと、今の御説明も恐らく新しい委員の先生方はなかなか十分に前からの状況を把握するのも大変ではないかなという印象を持ちます。
 しかし、一方で、評価指標を今回、より明瞭化するというような課題もあって、冒頭で、その方向性に関するモデルの説明がありましたけれども、こうなってくると、その4か月の間に新しい第4期を策定するということに関しては、ぶっちゃけた話、これは事務方にかなり負担が大きくなるのではないかということが、やや懸念されます。
 なぜ懸念するかというと、私たち委員がどういったたてつけで4期を構成していくかということに関して、かなり事務方の出来合いのたたき台の賛否を問うような形にならないかというのが、やや懸念事項であります。これは、私のように2期目の者であればある程度意見は言えるかもしれませんけれども、新しく入った委員の先生方が十分そこの部分を業界に目を通して意見を言えるかどうかということが、やや懸念事項でございます。
 それともう一点ですが、このがん対策推進基本計画はあくまで基本計画で、実践するのは各都道府県の推進計画です。これは基本法の第12条に明確に記載されているとおりでございます。
 前回の第3期は、私は宮城県のがん対策推進協議会の委員をやりまして、1期、2期、3期と、ずっと策定に関わってまいりましたが、前回の基本計画はこの参考資料2によれば一応30年の3月に出したという形になっていますが、実質的には29年の10月1日にはもう出ていたんです。それをもって、各都道府県が30年の3月末までに各都道府県のがん対策推進計画を策定したんです。実質的には3か月ぐらいでやったんですけれども、5か月余裕があったんですね。
 今回は、令和4年12月までに急いでこの第4期の計画を策定するという状況下で、各都道府県ががん対策推進計画をつくるのに3か月しかない状況かというふうに理解いたしました。そうすると、各都道府県の独自性というのはほとんどなくなって、推進基本計画をただコピーアンドペーストするような形にならないかということが非常に懸念されます。
 そこで、お願いは、この状況では各都道府県のがん対策推進計画の策定のデッドラインをもう3か月ぐらい後ろに延期をする必要がないかということを私からは少し提案したいと思います。
 少し長くなりましたが、以上です。
○土岐会長 事務局、よろしくお願いいたします。
○原澤がん対策推進 回答させていただきます。
 石岡委員、御指摘ありがとうございます。前半部分の事務局の負荷については、御配慮と御心配をいただいているということかと思いますが、事務局としては最善を尽くして、論点をできる限り分かりやすく整理した上で御議論をしっかりいただきたいというふうに考えております。
 2点目の計画策定期間の話でございますが、こちらはすみませんが、多分誤解を与えてしまっている部分もあろうかと思いますので補足をさせていただきます。
 今回のがん対策推進基本計画の策定については、おっしゃっていただいたとおり、国でのお示しする方針を出すのは今年度末と想定をしております。その上で、各都道府県において計画を策定し、それを実施するというタイミングですが、令和6年度より開始するという形になりますので、令和5年度が丸ごと計画策定期間となります。こちらは医療計画等、他の計画との並びを取ってそのような計画の策定スケジュールにしているということも併せて御承知おきいただければと思います。
 事務局からの回答は以上でございます。
○石岡委員 私は誤解をしていました。そうすると、基本計画は政令に基づいているので、デッドラインを延ばすことはできないという理解でよろしいでしょうか。
 要するに、先ほど申し上げましたように、議論を重ねる時間がやはり足りないだろうというのが今日の非常に強い私の印象なんですけれども、例えば2か月なり、3か月なり、先延ばしするということはできないのでしょうか。
○原澤がん対策推進 ありがとうございます。事務局でございます。
 今いただいた御意見もあろうかと思いますが、今申し上げたとおり、ほかの計画との整合性も取りつつ御議論いただく必要があるというふうに事務局としては考えておりまして、他の計画との整合性を取っていくということを念頭に置いて考えると、おっしゃっていただいたとおり、年度末の閣議決定までの事務的手続等もございますので、そういった内容については年内に一定程度、整理して取りまとめていただく必要があると考えてございます。
○石岡委員 そうすると、令和5年の3月には基本計画を出すということになりますか。
○原澤がん対策推進 御認識のとおりでございます。
○石岡委員 分かりました。
○土岐会長 続きまして、黒瀨委員どうぞ。
○黒瀨委員 ありがとうございます。
 1点だけお願いなのですけれども、方向性といいますが、ある意味、視点というところでお願いがあるのですが、皆様方、本当に既によく御理解いただいていると思いますけれども、終末期、あるいは緩和ケアに関しましても、ますますその在宅での治療、あるいは在宅でのピアというのが重要性を増してくるでしょうし、需要も大きくなっていくというところで、やはりこのかかりつけ医の重要性というのは皆さんも御認識いただいているとおりだと思います。
 それで、実はかかりつけ医というのは、がんになる前からのいわゆる生活習慣を改善するという予防の部分から、あるいは検診を行うという診断の部分から、そして働きながら治療を受けられるという治療の部分、全ての段階においてかかりつけ医は関連してくるわけですので、ぜひこの基本計画の方向性の視点の中にかかりつけ医の役割、あるいはどういうところにどういうふうに関与していくのか。そして、かかりつけ医がどれだけ例えば在宅医療、あるいは緩和ケアに関わっていくのかというところをしっかりと目標設定していただく、あるいは役割を明確化していただくということを一つの視点としていただければと思います。
 以上でございます。
○土岐会長 事務局、かかりつけ医との関係性につきましては大丈夫ですか。
○原澤がん対策推進 事務局でございます。黒瀨委員、御意見ありがとうございます。
 今いただいたような視点も踏まえて整理を進めていければと思いますので、どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。
○黒瀨委員 ありがとうございます。
○土岐会長 ぜひ取り入れていきたいと思います。
 それでは、続きまして大井委員どうぞ。
○大井委員 先ほど事務局から、今後の検討のところで患者・市民参画、PPIについて取り上げられたかと思います。前田委員からも、治験等々に患者・市民の参画ということが要望書の中に記載されているということでご発言があったかと思います。
 この件に関して、がん対策基本法の中で患者、家族、遺族を代表する者を委員とすることが書き込まれたことは法律として画期的だと思います。
 ただ、私も含めてのことなのですが、その委員がどのように選ばれるかということに関して非常にブラックボックスになっていると思います。英国のNICEでは公募制を取っており4名が選抜されます。アメリカのFDAでは全疾患で、300名ほどが公募制より選抜されています。委員選抜制度と併せて委員教育制度というのもあり、委員として発言するための研修の機会も設けられています。今後、委員として患者、家族、遺族を代表する者ががん対策推進協議会に参画し、切れ目なく将来のがん対策に寄与していくために人材育成や世代交代という視点で非常に重要なことだと思いますので、ぜひ患者・市民参画について検討いただきたいと思っています。
○土岐会長 分かりました。PPIの教育、そしてどのように選んでいくかについてぜひ考えていきたいと思います。
 続きまして、森内委員どうぞ。
○森内委員 ありがとうございます。私のほうからは、3点意見です。
 まず、スライド13ページにあります例として出ているところでございますけれども、小児がん、AYA世代のがん、高齢者のがん対策の記載をそれぞれ分けたほうがよいのではないかということについては、小児・AYA世代ですとか、高齢者のライフステージによって、より細やかに配慮した上での取組、対策につながるというふうなことを考えますと、私どもはとても賛成でございます。これが1点目です。
 次は、14ページになります。通知目標についてでございます。通知目標を掲げる分野について、積極的に数値目標を設定できるものについては、その方向でということにつきましても大賛成でございます。
 ただ、これまでも意見として出されておりますように、量的な評価だけではなくて質的な評価指標についても取り入れていただくことの検討が必要だと考えております。
 例えば中間報告書の中で出ております、患者の3人に2人ががん相談センターについて知っているものの、利用したことがある人は、成人では14%、小児では35%弱にとどまっているというようなことが記されています。
 それで、相談支援センターを利用しなかった人は、なぜ利用しなかったのかですとか、どのようにしたら利用がさらに可能になるのかというような何らかの質的な評価を行いながら進めていくことが必要ではないかと思っております。
 3点目でございますが、スライドの15ページになります。「がん医療の充実」の分野について、これも中間報告書の中では、がんの遺伝的素因や晩期合併症等々、長期フォローアップを考慮した指標の検討が必要であるということが示されました。
 小児がんですとかAYA世代のがんについても、成人移行への治療継続の難しさなどの意見も挙がっておりましたので、これについても中間評価指標を検討していく必要があるのではないかということで、この中に小児・AYA世代のがんのことを入れられてはどうかと思っております。
 以上でございます。
○土岐会長 森内委員、どうもありがとうございます。
 続きまして、谷島委員どうぞ。
○谷島委員 ありがとうございます。
 まず総論のところなのですが、先ほどから議論の中で出ている目標設定と、評価と、それに伴うPDCAを明確化していくというところは非常に賛成でして、ただ、それを希少がん、小児がん、難治性がんを含めた全てのがんでやっていただきたいなと思っています。大事なことなので本当に2回言いたいんですけれども、全てのがんでそこをやっていただきたいと思っております。
 やはり自分の病気を忘れられているのではないかとか、仕方ないと諦められているのではないかとか、今まさにその絶望している患者さんや御家族のためにも、そこをきっちり意識して進めていただきたいなと思っております。
 あとは、各論のところで15ページにあった「がん医療の充実」分野についてのところ、集約化の部分についてなのですが、この地域間に及ぶ医療機関間における差とか、集約化及び医療機関同士の連携強化については、ここを強めていくことは非常に賛成しております。
 その中で、3点重点的にやっていただきたいなと思っている部分がございます。
 やはり希少がんにおいてはつながる医療機関、専門家によって本当に予後が変わってしまうと感じております。
 そこで、1点目はやはり各医療機関における希少がんのがん種ごとの診療実態をちゃんと把握して、それに患者が容易にアクセスできる情報として整備公開を進めていただきたいと思っております。それを患者が医療機関を選択する参考にすることで、ユーザー側の動きとしてもおのずと集約化が生まれる状況がつくっていけるのではないかと考えております。
 2つ目なのですが、その病気の専門家がどこにいて、どんな治療が受けられるのかというのを分かるようにしていく必要があるなと思っております。希少がんというのは、医療機関の実績以上にそのがん種の専門家である個人の意識がよりどころになっている場合が多いと思います。
 ですから、がん種ごとの専門家の情報を、患者が容易にアクセスできて、十分な専門性のある医師につながれる形で整備することが必要で、それが主治医が異動したときの対応や、医療機関同士のシームレスな連携にもつながると考えております。
 最後、3つ目です。それは、オンラインの活用やアプリケーションの開発等、DXを推進していくべきかと考えております。治療方針や病理診断のセカンドオピニオン等でオンラインを活用することで、患者が住む地域や体調にかかわらず、専門家及び専門性の高い医療機関へのアクセスが容易となって、地域間及び医療機関における差の是正につながると考えております。
 私のほうからは以上でございます。
○土岐会長 ありがとうございます。
 皆様の御意見には、後ほど事務局が関係するところは一括してお返事させていただきます。そこで、先に御意見を頂戴していきたいと思います。
 続きまして、久村委員どうぞ。
○久村委員 ありがとうございます。
 私からは、次期計画の構成で3本柱を維持することについて、それから全体目標の方向性についての異論というのは特にございませんけれども、1点、どの分野においても共通して、つまりがん検診やがん医療、それからがん相談支援等の全ての分野における格差の縮小という視点を取り入れていただけたらいいのではないかと考えています。
 前回の協議会の中で、がん対策における健康格差の問題について日本における主な死因別の死亡率の中でがんが最も格差が大きいという報告がありました。
 あとは、資料10の15ページの一番上の項目に「がん医療の充実」の分野について、地域間及び医療機関の間における差についてどう考えるかというふうに記載されていますし、山口先生や前田委員の報告の中にもがん情報の均てん化という内容があったかと思います。がん医療の分野だけではなくて、がん検診やがん情報、それから相談支援、そして心理的なケアですね。そして、ピアサポートへのアクセスという点においても世代間の格差やジェンダーやセクシュアリティーによる格差、それから障害の有無であるとか、家族や身寄りがないということによる格差の問題も、今後のがん対策全般において取り組むべき重要な課題のように思います。
 特にコロナ禍では、失業などで経済的な格差が拡大傾向にありますので、特定の地域、あるいは特定の社会、経済的な状況にいる患者さんが適切ながん医療や心理、社会的なサポートを利用しづらいであるとか、アクセスできないために不利益を受けることがないように、様々な状況にいる患者さんに対する配慮と、そして格差縮小の視点というものを入れていただけるといいのではないかと考えます。
 以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。
 続きまして、樋口委員どうぞよろしくお願いします。
○樋口委員 ありがとうございます。私のほうからは、2点お伝えさせていただきたいと思います。
 久村委員の話とも関連するのですが、今、評価の中で「がん医療の充実」の中で、現在県ごとに拠点病院を中心とした集約化と連携が図られていることが多いと思います。
 しかし、地方においてはどの拠点病院においても症例が少なく、対応できる体制が構築されていない分野もあります。例えば、希少がんや小児がん、AYA世代のがんなどがそうであるのですが、私のほうの地域でも対応できる人材がいないため、腫瘍の臓器がある担当の科が対応するしかないというような現状もございます。
 そのため、希少がん、小児がん、AYA世代のがんなどにおいては、拠点病院ではなくてブロックごとであったり、ブロックごとの対応ができるように施設を設定して連携の強化、対応できる人材、環境の確保をお願いしたいと思っております。
 もう一つの点においては「がんとの共生」になるのですが、緩和ケアの推進の中で家族は第2の患者と言われていることが多いです。
 しかし、現在、グリーフケアの実施は施設によりばらつきがあって、診療報酬などの整備もなされておりません。そのため、グリーフケアの体制がなかなか進まず、海外ではある一定期間、観察や訪問を義務づけるなどの地域もあり、その体制により進んでいる地域もございます。
 現在のように研修だけではなく、具体的な実施に向けての整備を検討していただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
○土岐会長 ありがとうございました。希少がん、AYA、難治がん等ですね。
 それでは、続きまして谷口委員いかがでしょうか。
○谷口委員 島根県の谷口です。
 基本的にはここに書いてあることで特に問題ないと思うのですが、私からは1点、新型コロナウイルス感染症の影響が今日も発表されておりましたけれども、恐らくこの影響というのはしばらく続くのではないかと私は考えていまして、今後新たな感染症が出てくるかもしれませんし、そういったことを考えると、こういった状況の中でどうするのかという視点が全ての分野において必要になるのではないかと考えております。
 以上です。
○土岐会長 ありがとうございます。
 それでは、一旦ここで事務局のほうからお返事できることがありましたらよろしくお願いします。
○原澤がん対策推進官 事務局でございます。
 ここまでいただいている御意見は基本的に今後、分野ごとの議論のところでさらに深掘りさせていただくことかと思いますので、今頂戴した御意見を踏まえて今後資料等を整理して、また御議論いただけるよう準備してまいりたいと思います。
 事務局からは、以上でございます。
○土岐会長 ほかはいかがですか。本日、発言されていない委員の方から御意見等、もしくはこの場で言っておきたいことがございましたら、よろしいでしょうか。
 それでは、大分時間もオーバーしてしまいました。今日は司会の不手際で申し訳ございません。本日の議事は以上となりますので、進行を事務局のほうにお返しいたします。よろしくお願いします。
○原澤がん対策推進官 事務局でございます。
 本日は、委員の皆様、活発に御議論いただきまして誠にありがとうございました。次回以降の日程につきましては、追って事務局より御連絡させていただきますので、どうぞよろしくお願いします。
 それでは、本日の会議はここまでとしたいと思います。本日はありがとうございました。

照会先

健康局がん・疾病対策課

代表03-5253-1111(内線2066)