薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会令和3年度第6回安全技術調査会議事録

日時

令和4年3月29日(火)10:00~12:00

開催形式

Web会議

出席者

 

出席委員:(10名)五十音順、敬称略



欠席委員:敬称略
 
  • 天野 景裕



国立感染症研究所:敬称略
 
  • 水上 拓郎



金沢工業大学:敬称略
 
  • 山口 照英



日本赤十字社:敬称略
     
  • 皆川 信也
  • 宮作 麻子
  • 宮田 茂樹
  • 金井 慶一
   


事務局:
 
  • 渡辺 顕一郎  (血液対策課長)
  • 菅原 高志     (血液対策課長補佐)
  • 佐野 圭吾     (血液対策課長補佐)
  • 東 雄一郎     (医薬品審査管理課審査調整官)
  • 太田 一実   (血液対策課主査)

 

議題

  1. 1.新型コロナウイルスのウイルスベクターワクチン接種者の採血制限について
  2. 2.「血漿分画製剤のウイルスに対する安全性確保に関するガイドライン」の一部改正について
  3. 3.その他

配布資料

資料ページをご参照ください。

議事

 

○佐野血液対策課長補佐 それでは、時間を少し経過してしまいましたが、出席の予定の先生がお揃いになられましたので、「血液事業部会令和3年度第6回安全技術調査会」のWeb会議を開催いたします。本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。
 本日はお忙しい中、御参集いただき誠にありがとうございます。この度、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、Webでの審議とさせていただきます。本日のWeb会議における委員の出席についてですが、天野委員より欠席との御連絡を頂いております。現時点で、安全技術調査会委員11名中10名の出席を頂いていることを御報告いたします。
 本日は参考人として、国立感染症研究所血液・安全性研究部より、水上拓郎第1室室長、金沢工業大学加齢医工学先端技術研究所の山口照英所長に御出席いただいております。また、日本赤十字社血液事業本部より、皆川信也経営企画部次長、宮作麻子技術部参事監、宮田茂樹血液中央研究所副所長、金井慶一経営企画部参事に御出席いただいております。
 続きまして、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告させていただきます。また、薬事分科会審議参加規程に基づいて、各委員の利益相反の確認を行いましたところ、岡崎委員、岡田委員から関連企業より一定額の寄附金、契約金などの受取の報告を頂きましたので御報告いたします。議題1につきましては、岡崎委員、岡田委員につきましては、意見を述べていただくことは可能ですが、議決には加わらないこととさせていただきます。他の委員につきましては、対象年度における寄附金・契約金等の受取の実績なし、又は50万円以下の受取であることから、特段の措置はありません。議題2に関しましては、対象年度における寄附金・契約金等の受取の実績なし、又は50万円以下の受取であることから、特段の措置はありません。これらの申告につきましては、ホームページで公開させていただきます。委員の皆様には会議の開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をおかけしておりますが、引き続き御理解、御協力を賜りますよう何卒よろしくお願いします。
 議事に入る前に、会場にお越しいただいている委員の皆様におかれましては、本日の資料の確認をお願いいたします。タブレット上に、マル1議事次第からマル15参考資料2-3までのPDFファイルが表示されているか御確認お願いいたします。ファイルが表示されていない場合や不足がある場合には、お近くの職員にお声掛けください。本日はWebでの審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行方法について御説明いたします。
 審議中に御意見、御質問されたい委員におかれましては、まず御自身のお名前と発言したい旨を御発言いただきますようお願いいたします。その後、座長から順に発言者を御指名いただきます。御発言いただく際は、マイクがミュートになっていないことを御確認の上で御発言ください。また、ノイズを減らすため、御発言が終わりましたらマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
 なお、発言者が多くなり、音声のみでの判別が難しいほど混雑した際は、一度、皆様の発言を控えていただき、発言したい委員についてはチャットにその旨のメッセージを記入していただくよう、事務局又は座長からお願いする場合がございます。その場合には、記入されたメッセージに応じて、座長より発言者を御指名いただきます。また、本日のWeb会議に際し、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、説明者においてマスクを着用したまま説明させていただく場合がございますので、御了承いただければと思います。
 まもなく議事に入りますので、カメラ撮影はここまででお願いいたします。それでは、以降の進行を濵口座長にお願いいたします。
○濵口座長 皆様、おはようございます。年度末のお忙しい中、御参集いただきましてありがとうございます。これまでの事務局からの御説明に関して御質問、御意見はありますでしょうか。
 それでは議事に入りたいと思います。議題1「新型コロナウイルスのウイルスベクターワクチン接種者の採血制限について」、事務局より資料1-1の第1項と第2項について説明をお願いいたします。
○佐野血液対策課長補佐 事務局です。資料1-1の第1項と第2項について御説明いたします。まず第1項についてです。資料1-1の1ページを御覧ください。こちらは、今までの新型コロナウイルスワクチンに対する対応についての経緯をまとめています。かいつまんで御説明いたしますと、新型コロナウイルスワクチン接種と採血制限については、これまで厚生労働科学研究班(「安全な血液製剤の安定供給に資する適切な採血事業体制の構築に関する研究」代表浜口功先生、以下「浜口班」という)で整理した知見を踏まえて、安全技術調査会で議論し対応方針を定めてきました。
 令和3年2月12日の安全技術調査会では、全ての種類の新型コロナワクチンについて、生ワクチンと同じく、接種後4週間を採血制限期間とすると献血者の安全性及び血液製剤の安全性を勘案しても問題無いであろうとする意見を暫定的にまとめ、引き続き知見を収集し改めて検討すべきとしていました。
 令和3年4月27日の安全技術調査会において、mRNAワクチン接種後の採血制限については、血液製剤の安全性の観点からは不活化ワクチンと同様に整理することが可能と考えられるが、献血者の安全性確保の観点から、接種後の発熱等が多く認められている期間を考慮し、以下のように、接種後48時間とすることとされております。
 今般、本邦においてウイルスベクターワクチン接種も進められていること等から、再度、浜口班において改めて知見の収集・整理を行うとともに、日本赤十字社の見解も確認し、当該ワクチンの採血制限について対応方針を定めることとしたいとなっています。
 それでは、第2項の御説明に移ります。資料1-1の2ページから3ページの中段までを御覧ください。浜口班の見解として、今回、浜口班においては、令和3年12月6日、令和3年12月21日、令和4年2月7日に研究班会議が開催されました。そこで、アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンのバキスゼブリア筋注の副反応や採血制限について知見を整理し、以下の(案1)を取りまとめています。
 内容としては、ウイルスベクターワクチン接種後の採血制限期間を接種後4週間とするとなっています。以下、浜口班で整理した知見の抜粋について御説明いたします。
 まず、令和3年12月に報告されましたアストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンに関する中間報告においては、発熱などの主要な副反応は48時間以内にほとんどが発生し、副反応は2回目より初回接種時に多いことから、接種後48時間の採血制限を設けることで、献血者の一定の安全性は確保できると想定されます。
 ただ、一方で、ウイルスベクターワクチンで非常に稀に発生しているTTS/VITTに関しては、若年層で頻度が高いことから、英国では令和3年4月以降、30歳以上の年齢制限を導入し、現在は40歳以上を対象として引き続き接種が継続されている状況です。
 本邦においては、ウイルスベクターワクチンの接種対象を40歳以上に絞っていることから、TTS/VITTの発生頻度は海外よりも更に低いことが想定されるものの、令和4年1月2日時点で、初回接種後の2例の疑い症例がPMDAに報告されています。なお、ウイルスベクターワクチンによるTTS/VITTの発生頻度は、英国、米国において、それぞれこちらに記載している数値となっています。
 TTS/VITT事例報告後、こちらは令和3年3月となっていますが、世界各国のウイルスベクターワクチン接種後の採血制限は変わっておりません。例えば、米国・カナダでは無制限、英国では48時間、欧州各国では14日~28日、シンガポールでは4週間と、おおむね4週間以内となっている状況です。
 また、欧州疾病予防管理センター(ECDC)、International Plasma Fractionation Association(IPFA)もTTS/VITTには関心を持ちつつも、令和4年2月7日時点で献血希望者に対する採血基準の変更をする必要はないという意見です。
 TTS/VITTの原因の1つとしては、抗PF4抗体産生の関与が疑われていますが、ほとんどのケースが3~4週間以内に発生しており、現時点においてウイルスベクターワクチン接種者の血液に抗PF4抗体が混入するリスクは低いことを考えると、4週間の採血制限により、献血血液の安全性は確保できると考えられるとなっております。
 一方で、抗PF4抗体の血小板活性は微量でも存在し、TTS/VITT発症後12週(こちら最新の論文では16週という報告もある)まで続くという報告もあります。しかしながら、TTS/VITTを発生した症例において、発生前に重度の頭痛等が発生していることを考慮すると、おおむね海外で取られている対応に準じ4週間の採血制限を設定しつつ、問診時に頭痛等の副反応の有無に加えて過去に血栓症等の既往がないか等を含めて確認することで、リスクの軽減を図ることが可能であると考えるという形になっています。
 引き続きTTS/VITTの発生頻度、抗PF4抗体との関わりを含め、詳細な検討が必要であるとなっています。
以上が3回にわたり実施されました浜口班で整理した知見の抜粋です。説明は以上です。よろしくお願いいたします。
○濵口座長 ありがとうございました。それでは、本件に関する研究班の見解について、本日、参加している水上参考人より補足の説明をお願いいたします。
○水上参考人 参考資料1-5をご覧ください。ファイル番号で言いますと、マル11というファイルかと思います。こちらのファイルが3回分の採血事業濵口班の班会議をまとめたスライドになります。先ほど佐野先生からも御報告頂きました通り、そちらでおおよそ我々の見解はまとまっているかと思います。参考資料1-5のうちのスライドの3枚目、こちらが順天堂大学の伊藤澄信先生が取りまとめてくださっております新型コロナワクチンの投与開始初期の重点的調査(コホート調査)健康観察日誌集計の中間報告(17)のまとめになります。このような解析から、発熱や倦怠感等、一般的な副反応項目に関する対応としては、48時間の献血制限である程度対応できるだろうと結論付けました。
 また、次の4枚目のスライドは、副反応項目の中で我々が非常に注目している血栓症(血栓塞栓症を含む。)(血小板減少症を伴うものに限る)(TTS)の頻度が本邦においてどの程度かを示した表となります。現状はアストラゼネカ社のワクチンに関しては接種者がそこまで増えてはおりませんので、おおよそ10万程度の接種回数になっています。その中で、班会議で検討していた段階では既に1例の発生報告があり、最終的に確定例として2例となっています。それが5枚目のスライドになります。
専門家による因果関係評価としましては、これはワクチンと症状名との因果関係が否定できない「α」というカテゴリーに入っているものです。他のコミナティなどのmRNAワクチンで用いられている「予防接種後副反応疑い報告書」の症状項目にも同様に、このTTSが報告対象に追加されましたので、今現在は情報収集されています。事例数に関しては、例えばコミナティに関しては現状で45例、それからスパイクバックス(モデルナ社)で7例ということで、このTTSは報告されておりますが、いずれも因果関係評価に関しては、情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できないものという「γ」のカテゴリーになっています。
 その一方で、アストラゼネカ社のバキスゼブリアに関しては、2例がαということでカテゴリーされていまして、さらに、その専門家の意見の所の中にも書いてあるとおり、ワクチン接種後30日以上たってからそういうのが出てきている例があることを、班会議の中でも日赤の宮田先生からの御指摘も頂いております。
 頻度としては、先ほど佐野先生にご説明いただいた、英国では6万人に1例、2回目で51万人のうち1例と、そういうケースに比べると、今はまだ打ち始めた段階ということで、たまたま2例が出たという可能性もありますし、このような頻度で上がってくる可能性もまだ全く分からないところなのですが、現状としては10万人中2例と、比較的高いことが懸念されているところです。
 一方で、スライドの7枚目に、ECDCのレポートとして、アストラゼネカ社のワクチンにおけるこういった血栓塞栓症の頻度についてやはり報告されており、頻度としては低くなっております。ただ、これがやはりワクチンが原因ということは明らかですし、9枚目のスライドにあるように、おおよそ接種後30日以内に発生していることも確定しているところかと思います。
 10枚目のスライドは、比較的最近のレビューと言うか、ブリーフレポートとして出たBloodにまとめられたものなのですが、このグループは、PF4がVITTと関係するということを一番初めに発表したグループとなるかと思います。彼らがフォローアップした65例を解析した最新のデータをこの時点で報告していまして、非常に興味深いことに、先ほど佐野先生が、当時は12週でこの抗体の活性が維持されるというところが、この段階では15週ぐらいまで維持されるという報告になっております。
 ただ、この論文の中でも、当時の班会議でも議論したのですが、基本的にワクチン接種から、このVITTのPre-VITTのsymptomが出てくるのは中央値として9日間ということで、大体4~30日というところが、一応、このPre-VITTのsymptomが出てくる状況になっているということなので、実際、VITTが起こってからの血小板抗体の活性の持続期間と、ワクチン接種からどの程度で好発して出てくるのかについては、若干、切り分けて議論する必要があるのかと考えているところです。
 さらに、そのPre-VITTのsymptomに関しては、11番のスライドで重度の頭痛がほぼ全例で認められているところから、研究班としましては、問診等で4週間ぐらいのある一定の期間を設定して、健康調査を詳細にすることで、Pre-VITTシンドロームに該当するような人を除外できるのではないかと考えております。
 また、12枚目以降は、現状のヨーロッパ各国におけるワクチンの献血制限についてですが、おおむね先ほどの佐野先生の報告にありましたとおり、最大で28日というところが続いているところになります。13枚目のスライドは、IPFA(国際血漿分画協会)が血漿分画のポジションペーパーとして出しているもので、現状としては特に規制を変える必要はないのではないかということを説明した資料になります。
 また、世界各国で献血制限が今もどのように現状進められているかということに関し、14枚目は英国のNHSの資料となります。もともと英国は7日の設定をされていたかと思うのですが、現状、コミナティとかいろいろなものが増えてきたことや、アストラゼネカのワクチン接種者に関しては年齢制限を設けていることが原因かもしれないのですが、現状は48時間という形になっています。
 15枚目のスライドを見ていただくと分かるのですが、こちらはシンガポールのHealth Science Authority Singaporeのホームページに出ているもので、こちらの場合、バキスゼブリアに関してはVirus vector based or live attenuatedというカテゴリーで、生ワクチンと同様のカテゴリーに入っていて、献血制限は4週間となっております。米国・カナダは献血制限なしということで、接種してすぐ献血できまるようになっているのですが、最新情報を確認したところ、現状においても特に変わっていないということです。それが16枚目のスライドです。
 18枚目は、最新の「The LANCET Haematology」で報告された、英国の血液エキスパートグループのパネルが出している、アストラゼネカワクチンのVITTの分類ですが、こちらも赤枠で囲っている所ですが、ワクチン接種後5~30日以内というのが1つの診断の基準になっていることを示しています。
 また、スライドの19枚目は、欧州のEMAがまとめているもので、同じように、大体3~4週間以内ということで現状取りまとめているものになります。
 一方で、我々も懸念しているところですが、実際に移植等によって、VITTがレシピエントの方で発症している例が報告されはじめているというものです。それが20枚目のスライドになります。こちらは英国における、13人のTTSを発症したドナーから26人のレシピエントに臓器移植された結果で、実際7例で血栓症が発生しているということで、そのうち3例、肝移植の方に関しては抗PF4抗体も検出されており、臓器移植や造血幹細胞移植等に関してはより注意が必要であることが示唆されているかと思います。
 21番のスライドです。これは英国のNational Blood Servicesが、骨髄移植のドナー条件に関する勧告の変更で、mRNAワクチン接種者に関しては当初7日の制限をしていましたが、それを14日に延期し、アストラゼネカのワクチンに関しては28日のままということとなります。献血に関しては世界各国で特に変わってないということもありますが、移植に関しては、よりマージンをとって28日と設定されている状況です。我々としては、以上の情報を参考にして、最終的に28日を提案させていただいた次第です、補足は以上です。
○濵口座長 ありがとうございました。続いて、事務局より、資料1-1の第3項についての説明をお願いします。
○佐野血液対策課長補佐 事務局です。資料1-1の3ページの第3項、日本赤十字社の見解について説明いたします。日本赤十字社においても、国内外におけるウイルスベクターワクチン接種によるTTS/VITTの報告を踏まえて、我々としては、下の(案2)としたいと提案されていることを承知しております。内容としては、採血制限の期間を6週間とするという内容となっております。内容については、私のほうでも3、4ページの中段に記載しておりますが、詳細な説明については、日本赤十字社のほうから御説明をよろしくお願いいたします。
○濵口座長 それでは、資料1-1の第3項の内容について、日本赤十字社より説明をお願いします。
○日本赤十字社血液事業部中央血液研究所宮田副所長 日本赤十字社の宮田です。資料1-2に従って御説明させていただければと思います。今回、アストラゼネカ社のワクチンを打った方の献血の受入に向けた検討ということでまとめておりますが、スライドの2番目を御覧ください。今回、このアストラゼネカ社ワクチンの採血制限に関して、特徴的なことが2つあります。1つは血液確保への影響ということで、アストラゼネカ社製ワクチンは本邦で非常に接種者が少ないということと、対象者が限定されているということですので、献血者確保に関して、インパクトが最低限であるということ。それから、一番大きな問題は、血液製剤の安全性に対して懸念が出てきているということで、先ほど、御説明いただいたように、ワクチン接種によって誘導された免疫応答による血栓性血小板減少症(VITT)があって、この原因となる抗PF4抗体が血液製剤の安全性に影響を与える理論的リスクがあるということになります。
 スライド3枚目です。このVITTの原因は抗PF4抗体なのですが、これはもともと自然免疫応答に関与している抗体で、健常者はほぼ全ての人が抗PF4抗体を産生するB-cellを持っており、このB-cellは通常、免疫寛容状態にありますが、ワクチン接種によって、ウイルスベクターワクチンの構成物の一部が血小板第4因子と複合体を形成することと、ワクチン接種によって炎症等が起こるということで、免疫寛容が解除されて抗PF4抗体が放出されます。ワクチン接種者のある一定頻度で(ワクチン接種後に8%ぐらいに検出されるという報告がある)、抗PF4抗体が放出されます。この抗PF4抗体の一部に非常に強い血小板活性化能を持つ抗体があって、これらは血小板や単球、好中球、血管内皮等を刺激して、トロンビンの過剰産生を来して、血小板減少や血栓症を来すというように理解されています。
 この抗PF4抗体については、先ほどお話したように、獲得免疫ではなくて、自然免疫応答が主に関与していると言われておりますので、血小板活性化能を持つIgG抗体が原因なのですが、ワクチン接種後4日目から血小板活性化能を持つ抗体が出てきて、2~3週間でピークを迎えて、その後16週間後には、中央値ですが消失すると推定されています。したがって、VITTの発症は大体、接種後4日目から30日程度の報告が多いということになります。
 次のスライドです。この抗PF4抗体というのは、実は非常に血小板活性化能が強いということが指摘されていて、まずin vivoですが、右側のNEJⅯの図を見ていただければと思うのですが、VITTを発症した患者さんというのは、治療として血漿交換が行われるのですが、5回の血漿交換が行われた場合、10倍程度に血液(抗体)が希釈されているというように考えられますが、その場合でも高い抗体価を維持して、かつ、血小板活性化能を維持したということです。左側の、先ほど御説明があったBloodの図ですが、これは、VITTの患者さんの血液、検体を4,000倍若しくは2,000倍に希釈しても、発症直後は非常に高い抗体価を維持しているということなので、かなり薄く希釈されても、血小板を活性化させるということになります。よって、VITT発生直後の方が献血をして受血区分に含まれた場合には、受血者の血小板や単球を活性化させて、血小板減少や血栓症を引き起こす可能性が理論的には否定できないというように考えられます。
次のスライドです。これも先ほどお話がありましたが、欧州疾病予防管理センターでこのVITTを取り上げていて(VITTとTTSは同義語ですが)、そこの四角に囲ってあるように、VITT発症の非常に早い段階での無症候の患者さんが全血やプラズマのドナーとなった場合には、例えば、採血時に出血のリスクがある。それから、ドナーの持つ抗PF4抗体がレシピエントに移行して血小板減少を来すリスクがある。それから、先ほどお話があった、VITTで亡くなった方の臓器を移植すると、それによってドナーの白血球がレシピエントに移行して血小板減少を来す可能性があるということです。ただし、これらVITTの発症早期に、無症候の状態で献血されるリスクは非常に低いだろうというように一番下に記載されています。
 次のスライドです。これも先ほどお話があった臓器移植においては、アストラゼネカワクチンを打ってVITTを発症して亡くなった13例からの臓器移植の結果の報告があります。ドナー10症例から27臓器が移植されたのですが、移植後に6名のレシピエントで、移植後9日以内に7つの重大な血栓症若しくは出血の有害事象が発生したと報告されています。先ほどもお話がありましたが、肝臓移植を受けたレシピエントで、移植後3日から22日の間に抗PF4抗体が検出された。これらの発症メカニズムとしては、移植片が抗PF4抗体によって血管内皮の障害や凝固障害を来しやすくなっていたということと、ECDCの懸念にあるように、リンパ球がレシピエントに移行し、抗PF4抗体が産生されるようになったというように推定されている。それを受けて、先ほど御説明がありましたが、骨髄ならびに末梢血幹細胞移植細胞の移植ドナーについては、接種後7日から28日目に提供不可期間が延長されております。もう1つ記載されているのは、幹細胞採取時に白血球を誘導するためにG-CSFを投与するのですが、このG-CSF投与自体が血栓症や血小板減少につながる炎症を引き起こす可能性があって、このG-CSF投与は、このアストラゼネカ製ワクチン接種者において、VITTにつながる免疫応答を悪化させる理論上のリスクがあるということで、ドナー保護の観点からも28日に延長したというように記載されております。
 次の資料を御覧ください。VITTがどれくらい発症するかということで、最大の症例数を報告したイギリスの報告ですが、その診断基準がテーブル1の所にありますが、先ほどもお話があったように、ワクチン接種後、5日から30日以内が定義になっていますが、その下にあるように、静脈血栓症のみで発症した患者の場合には、42日目まで見るべきだろうというように記載されています。これは、ワクチン接種後の前向き登録調査で、確定診断例が170、Probableと考えられる50症例のVITTが解析されています。全てワクチン接種後の初回投与後に発症しておられます。50歳未満の発症率は5万分の1、全体の死亡率は22%と、かなり重篤な血栓症です。右のスライドのDにあるように、なぜこの死亡率が高いかということなのですが、脳静脈血栓症、腹腔内静脈血栓症、深部静脈血栓症、肺塞栓症、冠動脈血栓症、脳動脈血栓症、これは静脈だけではなく動脈も含めて多彩な血栓症を発症して、複数の血栓症を発症する方もいらっしゃいます。したがって発症すれば非常に重篤になるということになります。
 その中のCを御覧ください。発症時の血小板数減少は必ずしも重症ではないのです。中央値は大体4万ぐらいになりますが、8万とか10万などということで、必ずしも血小板減少とは言えない血小板数でも発症していらっしゃいます。Bですが、大体ワクチン接種後30日までに発症されていますが、先ほどお話したように、静脈血栓症を伴う場合には42日目ぐらいまでに発症していらっしゃいます。
 次のスライドです。先ほどもお話があったように、各国のガイドラインでは、診断基準として、今は大体ワクチン接種後30日程度の発症になっているのですが、これはアメリカの血液学会の診断基準を取ってきたのですが、アメリカでは、やはり最大の猶予を見て、COVID-19の発症については、ワクチン接種後42日目まで見るべきだろうというように記載されています。そこに血小板数の記載もありますが、必ずしも強い血小板減少ではなくて、15万以下であれば診断基準に当てはまるということですので、血小板減少だけで診断するのはなかなか難しいところがあります。
 次のスライドです。VITTについては、先ほどもご説明のありました、またECDCの懸念があるように、発症早期または発症の直前(Pre- VITT)には、必ずしも血栓症が検出されなくても何らかの症状を伴って発症する。この左側の件については、先ほどお話があったように、後に脳静脈洞血栓症を伴った患者さんに関しては、そのときには特に血栓はなく頭痛のみで、多分、これは微小血栓が関係しているのかもしれませんが、頭痛のみで発症した患者さんがいらっしゃって、この論文では、VITTの発症の数日前から強い抗PF4抗体を保持する可能性が示唆されています。
 右側に「The New England Journal of Medicine」に報告されたVITTの報告を並べてみたのですが、最近はVITTというのは認知が進んでいるので、血栓症ではなくて、血小板減少だけで診断された、incidental findingという記載がなされているのですが、偶然見付かったというようなことも含めて、血小板減少だけで診断される症例が増えてきているように思われます。したがって、VITTの発症直前、若しくは発症しているが気が付かない、例えば血小板減少だけで無症候の場合については、献血時には自覚症状がないことから、問診時の確認によって除外することは困難かと思われるので、献血者の血中に存在する抗PF4抗体の血小板活性化能が、受血者の健康、血液製剤の安全性に影響を与える可能性は否定できないというように考えられます。
 各国における発症頻度ですが、Norwayが一番報告が高くて、2万6,000分の1ぐらい。英国については、先ほどのとおりで、初回接種で6万7,000分の1。これはJohnson & Johnsonのワクチンでも同じように起こると言われていて、米国では大体26万から58万分の1ぐらいで起こるというように報告されています。
そこで、本邦でのエビデンスもとても重要になるのですが、これも先ほど御説明があったように、次のスライドを見ていただければと思いますが、初回投与は5万8,000分の2件、2万9,000分の1ですので、世界で高いNorwayの報告と同様に、日本でも高い可能性があります。ちょっと1つ衝撃的だったのは確定診断、先ほどお話のあったαとされた症例の1つが2例目なのですが、接種後39日で報告されていて、そこに拡大しておりますが、接種後30日以上経過してから発症しているということです。これは海外の報告とも異なって、非常に多彩な動脈血栓症を、突然、ワクチン接種後39日後に腹痛、嘔吐、下痢、血便とかで発症して、翌日に心停止を来しております。多彩な腹腔内動脈血栓症で壊死を起こしたりしているということで、非常に重篤な血栓症です。したがって、日本のVITTに関する現状のデータでは、症例数が少ないため明確な議論はできませんが、海外の報告と比較して様相が異なって、より頻度が高く、ワクチン接種後長期間に影響を与えて、重篤な可能性が示唆されるということです。日赤としては、このような日本のデータも慎重に検討するべきというように考えております。
 最後に、献血者に与えるインパクトですが、まだ接種者が非常に少ないということと、現時点で、アストラゼネカ社製のワクチンを3回目以降に使うということがないので、今のところ、献血可能人口に占める割合は0.1%にも満たないということなので、献血者確保への影響は極めて軽微であろうと考えております。
 14枚目のスライドは、提案です。今お話しましたように、献血者確保への影響については極めて軽微であるとともに、VITT発症に係る免疫学的機序、無症候者に対する問診の限界、それから血小板活性化能を持つ抗PF4抗体が血液製剤に混入する可能性が排除できないことによる受血者の健康への影響を総合的に勘案した結果、献血者並びに血液製剤の安全性を最優先に考慮すべきと考えて、接種後6週間(42日)経過後ということで提案をさせていただいております。接種後にVITTを発症、若しくは発症が疑われる場合は、当面は受入不可としたいというように考えております。
説明は以上です。ありがとうございました。
○濵口座長 ありがとうございました。それでは、事務局より資料の残りの部分についての説明をお願いいたします。
○佐野血液対策課長補佐 濵口先生、ありがとうございます。日本赤十字社様側からも御説明ありがとうございました。水上先生も御説明をありがとうございます。以上の議論等や、現段階におけるウイルスベクターワクチンについての知見等を踏まえて、献血者の安全性及び血液製剤の安全性を総合的に勘案した上で、安全技術調査会として、ウイルスベクターワクチン接種後の採血制限を、(案1)又は(案2)とするか御審議いただきたいと思っております。なお、どちらにしても、ウイルスベクターワクチン接種後の採血制限については、引き続き知見を収集して、必要があれば、採血制限の期間等について再考することも必要と事務局としては考えているという状況です。よろしくお願いいたします。 
○濵口座長 ありがとうございました。今、事務局からありましたように、(案1)若しくは(案2)を軸に議論をということなのですが、ここに入る前に、もし御意見がありましたら、委員の先生方からお願いしたいと思います。特に、VITTの捉え方が、期間の延長に関わってくるかと思いますが、日本での接種例が海外と比べて多くないという状況の中で、VITTが、海外と比べてどうなのかというところですが、このワクチンの特殊性というか、そういった所を含めて、ここに関わられていると思われます脇田委員のほうから、何かコメントはありますか。
○脇田委員 特にございません。
○濵口座長 ありがとうございました。それでは、いかがでしょうか、(案1)、(案2)のVITTを少し考慮した形での採血期間についての議論をここから始めていきたいと思いますが。
 それでは、委員の先生方から、ただいま説明があった内容について、御不明な点や御質問、コメントがありましたらお願いします。どなたからでも結構です。どうでしょうか。岡崎先生、お願いします。
○岡崎委員 岡崎です。このPF4を産生する人ですね、そのPF4の抗体が輸血された患者さんに入ったときの影響というのは、いわゆる抗体の性状は多分一緒だと思うのですが、輸血された側の人の何かファクターというのは関係しているのですか。つまり、患者さん側の因子が何か影響があるのでしょうか。
○濵口座長 ありがとうございます。宮田先生のほうから何かコメントはありますか。
○日本赤十字社血液事業部中央血液研究所宮田副所長 大変貴重な御指摘だと思います。このVITTについては、ヘパリン起因性血小板減少症において、Autoimmune HIT (自然発症型ヘパリン起因性血小板減少症)というヘパリン投与に関与しない同様の症例に類似しているのですが、このヘパリン起因性血小板減少症については、私どもずっと診断のためのアッセイをやってきたのですが、岡崎先生の御指摘のように、血小板側の因子が非常に大きく関係していて、例えば、20人血小板ドナーを取ってくると、この抗PF4抗体に全く反応しない人と、非常に強く反応する人といて、非常にバリエーションがあって、この抗PF4抗体を測定するfunctional assay をするためには、血小板のドナーを選択することがとても重要になります。その原因としては、この非常に強い抗PF4抗体というのは、血小板の表面にヘパリン様のコンドロイチン硫酸というものがあるので、そこに血小板が活性化されてPF4が結合した場合、ヘパリンがなくても、コンドロイチン硫酸との結合によるPF4の微小な構造変化を、この非常に強い抗PF4抗体だと認識されるようになって、血小板活性化能を起こすというように言われています。
 したがって、今、岡崎先生からお話があったように、同じドナーさんから、この抗PF4抗体がレシピエントに移った場合でも、レシピエント側の血小板や、血小板の上にどれくらいPF4が乗っているかによって、活性化される、若しくは発症する頻度は変わってくるものというように思います。御説明はこれでよろしいでしょうか。
○岡崎委員 ありがとうございます。そうすると、無症候性のPF4の抗体を産生するようなドナーさんから取った抗体でも、患者さんにとっては有害になる場合があるという認識でよろしいですね。
○日本赤十字社血液事業部中央血液研究所宮田副所長 はい。理論的にはそのように考えられるかと思います。
○岡崎委員 ありがとうございます。
○濵口座長 ありがとうございます。今のやり取りの中で、少し追加でお聞きしたいことがあるのですが、海外においては、既に多数のこのアストラゼネカ社製のワクチンを接種された方からの血液が実際に献血に使われていると思うのですけれども、献血制限が余り長くないような状況の中で、レシピエントのほうで、輸血による血小板減少症というのが報告されている例は論文上であるのでしょうか。宮田先生、もし御存知でしたら教えてください。
○日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所宮田副所長 今のも大変貴重な御指摘だと思います。これは今のところ、あくまでも理論的なリスクということで、明確にこの抗PF4抗体が移行してレシピエントに血栓症や血小板減少症を来したという報告はないのですが、先生方も御存知のように、輸血をするだけで血栓症が増えるみたいな論文もちょっと出ていたりもしますし、輸血を受ける患者さんは、もともと血小板減少や血栓症を来しやすい患者さんが多いということですので、輸血した場合に、それがもともとレシピエントの病態によって起こった血小板減少や血栓症なのか、それとも輸血が原因で血小板減少や血栓症を起こしたのかというのはなかなか見極めが難しいということがあります。それから、今お話したように、このVITTは初回接種で起こったものがほとんどですので、海外ではほとんどの方はもう既に初回接種は終えていますので、そういう点から、理論的なリスクとして、全例、こういう抗PF4抗体を持っている血液がどれぐらいあるのかということや、それが移行した場合にどうなるかを判定するのは、すでに現時点では難しいということもあって、明確な報告はない可能性もあると考えております。
○濵口座長 ありがとうございます。一応、確認なのですが、各国の当局のほうでは、このことについて、一つ、採血期間を延ばすことについてのファクターとは考えていないということでよろしいでしょうかね。
○日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所宮田副所長 宮田からお答えしてよろしいですか。今お話したように、ほとんどが初回投与で起こっておりますので、今、各国では初回投与の患者さんがほとんどいないということで、見直す必要性がないのではないかとも推察しております。
○濵口座長 ありがとうございました。ほかの委員の先生方、いかがでしょうか。御質問、コメントがありましたらお願いします。大隈委員、どうぞ。
○大隈委員 関西医大の大隈です。確認させていただきたいのですけれども、VITTで前駆症状として重篤な頭痛がありますが、先ほどの報告では必発であるというような報告もありましたが、日本で確定しているこの2例、1つは頭痛があるという記載があるのですが、もう1つのほうはそういったものがないのですけれども、これは頭痛はあったのかどうかや、ほかにVITTを発症したのに頭痛がない例など、そういうものがあるのか、もし分かれば教えてください。
○濵口座長 ありがとうございます。水上参考人、この辺りはいかがでしょうか。
○水上参考人 水上です。貴重な御意見ありがとうございます。非常に申し訳ないのですけれども、私たちはここで伊藤先生のグループから報告されているものと、製薬メーカー等から上がってくるリストに基づいて書いていますので、書いていない所については、まだちょっと現状を把握していないというところになります。
○大隈委員 分かりました。必発と言わないまでも、かなり高頻度で起こるということであれば、こういった症状が出れば問診等で分かってくるのかなと思いますので、確認させていただきました。
○濵口座長 宮田先生から手が挙がっていますが、いかがでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所宮田副所長 日本でのこの39日目に起こったものについては、39日後に腹痛、嘔吐、下痢、血便ということで、この出てきた症状が全て腹腔内の血栓症で起こっておりますので、VITTは脳静脈洞血栓症が多いということで、頭痛が典型的な症状として挙げられているのですが、先ほどお話しましたように、イギリスでも腹腔内静脈や深部静脈血栓症で発症している患者さんがいますので、その場合には必ずしも頭痛を伴わないと考えられます。
 それから、私のスライドで少しお見せしたのですけれども、最近、VITTの認知が進んできていて、血栓症はなくて血小板減少だけで見付かっている症例も増えてきております。ですので、この場合にも頭痛等がなく血小板減少だけで見付かっているということがありますので、必ずしも全員が脳静脈洞血栓症を発症する、若しくはそれに伴うような血栓症があって頭痛を伴うというものではないと理解しております。
○大隈委員 分かりました。
○濵口座長 ありがとうございました。それでは長村委員、お願いします。
○長村委員 東大医科学研の長村です。御説明ありがとうございました。4週にするのか6週にするのか、本当にピンポイントのところなのかなと思うのですけれど、その辺りに関しては、日赤側は先ほどの39日後の腹痛があったということ、そういったことも考慮されてということでよろしいでしょうか。そこの日数に関してのところだけ両者の御見解を頂ければと思います。
 それから、もう1点、血小板が減少していることに関して、ドナーさんの献血のときにある程度の確認が、ものすごく血小板が減っていたら除外できるなど、ドナーさんの有害事象が何かあったのではないかということでチェックできる機構が働く可能性がありますでしょうか。その点をお願いします。
○濵口座長 そうしましたら、1つ目の日にちについて、4週若しくは6週という形で案が出てきていますが、そこについてのコメントをそれぞれ頂くということにしましょうか。では、まず研究班のほうからの水上参考人、4週についての説明をもう一回お願いします。
○水上参考人 貴重な御質問ありがとうございます。我々といたしましては、やはり大体30日以内に発生しているというところの、いろいろな国のガイドラインに従って、先ほど宮田先生のほうから、アメリカ血液学会のほうでは42日ということの話がありましたが、我々が調べていた当時の時点では、大体30日以内で発生してくるということと、献血制限がやはり最大で4週前後で行われているということから、最終的に4週という形の日数を決めさせていただきました。
○濵口座長 ありがとうございます。それでは宮田先生、お願いします。
○日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所宮田副所長 我々としても、大体30日までに発症するということで考えていましたが、やはり、日本で39日後に、突然、心停止を来すような症例があって、それが海外での報告と少し異なって、腹腔内の動脈に壊死を起こすような非常に重篤な疾患を来す方がいらっしゃったということが新たに分かりました。この専門家の見解の中にも、接種後30日以上経過してからの発症と書いてありますので、この日本のエビデンスを最大限重要視して、安全性を考えて、これは39日後に発症していますので、やはり42日にすることが最大限の安全性を確保するためには良いのではないかと考えた次第です。
○濵口座長 ありがとうございます。長村先生、次の質問をもう一回、お願いします。
○長村委員 ありがとうございます。私としては、先ほどの日数に関しては、実施する側の日赤の方の見解でよろしいのではないかと思います。もう1つは、献血をされた方の血小板数である程度チェックできるものでしょうかということです。問診・プラス・血小板数という。
○濵口座長 これは宮田先生からお答えできますか。
○日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所宮田副所長 先ほどのアメリカ血液学会や海外の学会の報告でもありますように、このVITTというのは、つまり、重篤な血栓症、血小板減少ではなくて、発症時の血小板数が15万以下であれば診断基準に当てはまるということで、これはヘパリン起因性血小板減少症と同じなのですが、血小板を活性化させて血小板が減るのですけれども、もともと30万あった人が15万になっても発症しているということになります。したがって、相対的に50%以上減少するというのがヘパリン起因性血小板減少症の診断基準でも言われていますので、ワクチン接種者の献血する前の血小板の数が幾つなのかがありませんので、なかなか血小板減少だけで引っ掛けるというのは難しくて、15万で引っ掛けてしまうと、本来何もない人も引っ掛かってしまうということがありますので、この疾患の特徴として、この血小板減少だけでスクリーニングするのはかなり困難だなと考えております。
○長村委員 ありがとうございます。
○濵口座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。まだ御発言されていない委員の方がおられましたら、何かコメントを頂きたいのですが。
○朝比奈委員 朝比奈でございます。御質問したかったことは、今までにほかの委員が御質問されていたので結構でございますが、やはり我が国で5万8,000件のうち2例発症していて、その1例が39日後の重篤なものであったということですので、ドナー保護の観点から、さらに、この抗体が非常に長期間活性を有するということと、それに対する反応性も宿主によって異なるということから考えますと、安全性を考えて、日赤の案が妥当かと思いました。
さらに、血液確保の観点からも、現時点では影響が少ないということですので、現状ではよいかと思います。今後、ウイルスベクターワクチンが我が国でも開発されてくるかと思いますが、もし、そういったものが恒久的に使われるようになった場合には、また情報を集めて再検討していけばいいのかと思いました。以上でございます。
○濵口座長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
○熊川委員 福岡大学病院の熊川です。先ほども挙がっておりました献血のシミュレーションの件で、地方の状況をちょっとコメントさせていただきたいと思います。先ほどの資料1-2の13ページで、献血影響数のシミュレーションで安定供給に支障がないということで、大きな点ではそうは思いますが、地方の基幹病院におりますと、血小板は有効日数が4日ということで厳しいので、血小板の供給状況が厳しいということで日赤からいつも連絡を頂いております。血小板だと、登録をされた献血ドナーさんが複数回献血してくださっていて、大体そういう方はいわゆる40歳以上の中年の方が多いように思いますので、実際はもう少し献血状況への影響が統計上よりは実感としてはあるのかなと思います。献血の制限はもちろん必要だとは思うのですけれども、データ的には安定供給に問題がないということは、地方におりますと少しどうかなと思うところがありますので、一応、その点をコメントさせていただきました。以上です。
○濵口座長 ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。荒戸委員、お願いします。
○荒戸委員 私も、朝比奈委員の御意見と全く同じです。加えまして、実際にアメリカでは献血制限はないのですけれども、血液学会の方で42日まで調査するということを言っていることから考えまして、6週間が安全確保の観点からは妥当かなと思います。以上でございます。
○濵口座長 ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。
今まで頂いた意見をまとめると、日本においてのVITTの発生に関しては、海外に比べても低くはなく、例数は少ないですが、むしろ頻度は高い可能性があります。しかも1例については、海外で言われているよりも少し長くたってから39日目に一応発症ということもあり、ドナーの安全確保ということをまず考えるところで、海外で言われている4週間を超えて設定することが妥当ではないかという意見だったかなと思います。
 もちろん、それに加えて、抗PF4抗体の発生というのが、まだ明確にレシピエントでどういう影響を及ぼすかについては更なる検討が必要かと思いますけれども、この辺りも加味するということで、海外の4週、マキシマム4週というのを少し超えることになりますが、6週というところで安全技術調査会の意見をまとめたいと思いますが、御異議のある方はいらっしゃいますか。
よろしいでしょうか。提案の内容について、もし修正が必要だという所がありましたら何か仰っていただければと思います。
ないようでしたら、第2案を安全技術調査会で一応まとめると、こちらのほうで日にちを決めるという形にしたいと思います。ありがとうございました。今回の見解を踏まえて、事務局においては通知の発出等の対応をお願いいたします。
 それでは、次に議題2「「血漿分画製剤のウイルスに対する安全性確保に関するガイドライン」の一部改正について」に移りたいと思います。事務局より説明をお願いします。
○佐野血液対策課長補佐 事務局です。「血漿分画製剤のウイルスに対する安全性確保に関するガイドライン」については、平成11年に発出されました。その後、2017年度から2019年度に実施されたAMED研究班において、最新の知見を踏まえ、改定に向けた検討が進められてきたところです。今般、今説明したAMED研究班結果を踏まえ、当該ガイドラインの改正案を作成しましたので、そちらの改正内容について、山口参考人よりお願いいたします。
○山口参考人 山口です。今般、取りまとめをさせていただいたガイドライン及びガイドラインのQ&Aについて、御説明をさせていただければと思います。このガイドラインについては、先ほどのAMEDの研究班の中に安全技術調査会の委員にも加わっていただいた形で、ガイドラインの一部改正案を取りまとめております。
 それでは、資料2を御覧いただけますか。資料2の新旧対照表を見ながら、御説明をさせていただければと思います。まず、新旧対照表の1ページの「目次」の所です。旧ガイドラインでは、ウイルスバリデーション、要するにウイルスのプロセス評価ということで書いていたのですけれども、実際に工程としていろいろ書かれているのがウイルスクリアランス試験の評価についてなので、「ウイルスクリアランス試験」ということで用語を統一しております。
 次に、下のほうに「序論」と書いてある所です。旧指針では、血漿分画製剤のウイルスに対する安全性を確保するためのプロセスバリデーション、この辺が少し変わってくるわけです。次ページの1.2で、当分の間、HIV、HCV、HBVを対象とすると書かれていたわけですが、ところが近年、NATの感度などが向上し、それ以外のウイルスについても安全技術調査会でも議論があったところです。そう考えたときに、ウイルスクリアランスの考え方についても、もう少し幅広いウイルスを評価すべきだということで、改正案を提示させていただきました。
 そこで1.1の目的の5行目に、「混入するリスクのあるウイルスに係る試験のタイミング及び試験法についての考え方を示す」と記載しました。さらに、製造工程でのウイルス検査、採血後情報などを勘案しながら、ウイルス安全対策を確保していくためのガイドラインという位置付けで書いております。
 次のページです。さらに、ウイルスの混入の可能性があることを踏まえて、1.2の「対象」の2ページの一番上です。対象においては、従来のHBV、HCV、HIVに加え、健康被害をもたらす可能性が指摘され血液に混入リスクのあるその他のウイルスも含むというように、血液に含まれるウイルス全般に関する安全性確保という記載にさせていただいております。
 「感染性因子」については1.3です。HBV、HCV、HIVに係る高い感度のスクリーニングが実用化されてきており、このことは、NAT試験の高感度化による現状を踏まえた説明とさせていただいております。さらにその6行ぐらい下に、このような背景に加えて、一方で国内外で複数の新興・再興感染症の発症が報告されており、そのことを踏まえると、この3種の従来のウイルスだけではなく、例示ではありますけれども、HAV、HEV、HTLV-1、ヒトパルボウイルスB19が挙げられるというように、具体的なウイルス名を書かせていただいております。
 次に、「安全性確保の基本」です。旧ではウイルス検査を実施する等、5つの項目を挙げていたのですけれども、いわゆる感染症情報等の事項についても、1.4で記載しております。
 1.5が「検査の限界」です。従来の検査の限界は、未知のウイルスというところで書いていたわけですけれども、もう少し明確に、「検査対象とされていないウイルスや未知のウイルス」というように、範囲を明確化しました。
 次が「序論」の最後になるかと思いますが、1.6の3ページの最後の所です。ウイルスクリアランス試験として、「原血漿への混入リスクのあるウイルスについて、その感染評価系がある場合には、当該ウイルスそのものに対するウイルスクリアランス能を評価しておくことが望ましい」という、少し具体的な記載を追記しております。
 次に、「2 原料」の2.3の「採血後情報及び輸血後情報システム」です。右と大きく変えている所は、「採血事業者等」ということで「事業」という言葉を入れました。これについては運営委員会等でも議論のあった、第2採血業者が将来出てくる可能性もあることから、採血事業者というものを追記させていただいております。
 次に、「3 製造及び検査」です。製造及び検査については、技術革新を踏まえた記載ぶりで書かせていただいております。最後の4行ですが、ウイルス除去技術及び不活化技術において導入をどういうように考えるか、どのようなウイルスを考慮して考えるかというところに関して、脂質膜を持つウイルスの除去・不活化というところで、要するにエンベロープウイルスについては、可能な限り頑健性の高い2つ以上の原理が異なるウイルスクリアランス工程を導入することとしております。従来は2つの異なる工程を取り組むこととしていたところから、まずエンベロープウイルスについてはこう書いております。さらに、脂質膜を持たない非エンベロープウイルスについては、頑健性の高い工程を少なくとも1工程導入することが望ましいとしました。この辺は、非エンベロープウイルスについては2つの工程を導入することがかなり難しいケースもあるので、このような記載にしております。この場合、もう1つ重要なポイントが、「頑健性の高い」というところです。後でQ&Aで簡単に説明しますけれども、CPMPが発出されていた昔のガイドラインで、頑健性の高いところの規定を後で少し引用しております。
 次のページです。出発原料を考慮したというところで、3.1の工程前検査です。幾つかの例示を挙げるとともに、必要に応じて遺伝子検査を実施するということについて、具体的に書かせていただいております。
 次が3.2の中間血漿分画物の管理です。この記載の改正は、中間原料製造業者という先ほどの対応です。そういう可能性もあるということで、その下の3.2の6、7行目ぐらいから、「製剤の製造業者が原料の受け入れ試験として適切なウイルス検査を実施する必要がある。ただし、中間原料製造業者により、既に適切なウイルス検査が実施されており、その詳細を確認できる場合」ということで、つまり十分なデータが得られる場合には、そのデータを使ってもよいという記載にしております。もう1つは、そういうデータに関しては、供与された中間原料製造業者からのデータを入手し、クリアランス能など、ウイルスに対する安全性を十分説明できるようにしなければならないということで、この点についてはQ&Aにも記載しております。
 次に、「4 ウイルスクリアランス試験」です。試験の目的は、基本的に変わっておりません。4.1の最後の所ですが、試験方法や得られたウイルス能の評価の妥当性を十分に説明できることが求められるというように、少し具体的に記載させていただきました。
このウイルスクリアランス試験に用いるウイルスの選択は、ノンスペシフィックモデルウイルスを使った広範なウイルスに関するクリアランス能を評価することが、まず求められております。その場合にDNAウイルス及びRNAウイルス、脂質膜の有無、粒子径の大小などを考慮して試験デザインをするということから、物理的・化学的な処理に対する抵抗性が高いものを選択することが望ましいというように記載しております。この改正の大きなポイントは、このような対応をとるためには、4種類以上の非特異的モデルウイルスを組み合わせることが必要になるはずだろうとしました。実はICHでは3種類のウイルスと書かれているのですけれども、これは非常に議論のあったところで、実際には多くのクリアランス試験において、4種類のウイルスが使われているという現状を踏まえた改正案になっております。
 次に4.3のウイルスクリアランス試験の設計です。設計については大きな変更はありませんが、旧ガイドラインでは、どのようにして製造工程を縮小した試験モデルを作るかというところを、製造業者がその製造工程を適切に反映した実験室規模ということで、これは8ページ目ぐらいに書かせていただいておりますが、そのスケールダウンの内容を少し具体的に記載しております。
 この4.3のもう1つのポイントとしては、(1)製造工程設計にあたっては、ウイルスを除去又は不活化できる、機序の異なる2つ以上の工程を採用するよう検討することが望ましいと書いております。すなわち似たような工程ではなく、機序の異なるウイルスクリアランス工程をできるだけ採用することが望ましいと指摘しております。さらに(4)は追記したもので、原血漿の混合により抗体が特定のウイルスの不活化に寄与する場合が幾つか知られておりますが、その場合には、抗体の中和活性を適切に評価できるアッセイ法を用いる必要があると記載しております。
 次が4.4.3の(4)です。旧指針では「ウイルスクリアランス指数の総和で」としか書かれていなかったところを、「製造工程の総ウイルスクリアランス指数は、」どのように計算するかというように、少し分かりやすくしました。
 4.4.3の(6)の最後、7ページの上段の(7)の前です。このようなクリアランス試験の挙動に関して考慮すべき事項として、例えば臨床検体では、HEVは脂質に覆われている場合と覆われていない場合があるということがしられていますので、「したがって、細胞培養由来ウイルスを用いたウイルスクリアランス試験結果の評価に際してはこのような臨床株との特性の違いに注意が必要である」ということを追記しております。
 次は8ページです。近年、非常に技術革新の目覚ましい核酸増幅検査についての記載を、一部修正させていただいております。核酸増幅検査に関する検査の有用性についての記載で、ちょうど真ん中辺りの行になりますけれども、「現在、NATを利用した定量的な解析法が開発されてきており、ウイルス標準品の単位設定にも用いられている」と。こういう定量的NATをウイルスクリアランス能の評価に用いる場合には、ウイルス粒子の除去などが適切に反映された試験法、要するに凝集体を含めたウイルス粒子の適切性を考える必要があると。これに関しては「血液製剤のウイルスに対する安全性確保を目的とした核酸増幅検査(NAT)の実施に関するガイドラインについて」を参考にすることを記載しております。
 もう1つ、統計処理として、前は6.2としていたのですけれども、最後の6.3に持ってきております。統計処理に関する記載については少し具体的に書かせていただいております。「ウイルスクリアランス工程特性解析試験におけるウイルス感染価やウイルスクリアランス指数等の算出には統計学的手法を用いる必要がある」ということを具体的に書いております。
 次が「用語」の定義です。「関連ウイルス」や「非特異的モデルウイルス」を、もう少し明確に書いております。「関連ウイルス」というのは、実際に混在することが知られているか、あるいは存在の可能性があるウイルス類と同一又は同種のウイルスで、必要に応じてウイルスクリアランス工程評価試験に用いられるものです。一方で、それが使えない場合には非特異的モデルウイルスを使うということで、9ページの最初にそれを記載しております。
 もう1つ新たな追加として区別したのが、「ウイルスクリアランス工程特性解析試験」です。これは原料血液及び製造に用いる工程由来のウイルスを対象として、製造工程がウイルスクリアランス能を確実に発揮するという面での特性(robustness)を解析の目的として、非特異的なノンスペシフィックモデルウイルスを用いた試験を想定して実施するというように記載しております。
 もう1つは、例えばHEVの議論があったかと思うのですけれども、「ウイルスクリアランス工程評価試験」というのは、存在が知られているか予測されるウイルスに関して製造工程が有するクリアランス能を解析することを目的に、通常は関連ウイルスや非特異的モデルウイルスを用いてウイルスクリアランス能を評価する試験です。
 最後のページは、最初のほうで御説明した用語の中の「頑健性の高い工程」で、これはCPMPの記載に合わせたものです。4log以上のウイルスクリアランス能のある工程を想定していますが、非常に高いウイルスクリアランス能のある工程であるということを意味しています。ただし、一方でウイルスクリアランスの試験データには誤差範囲として1logの差異もあり得ることから、4logが目標値であり、限度値を指すわけではないという説明をさせていただいております。
ガイドラインの新旧対照表についての御説明は以上です。
 次に、参考資料2-3を御覧ください。参考資料2-3のQ&Aについて、簡単に説明させていただきます。Q1です。「混入するリスクのあるウイルスに係る試験のタイミング及び試験法についての考え方を示す」とありますが、「試験」の指す内容の明示をしていただきたいということです。
ウイルス安全性については、製造工程におけるウイルス除去及び不活化の処理のみならず、製造工程の適切な段階でのウイルス検査を併用することにより安全性を確保することを目的としており、上記の「試験」というのは、ウイルスクリアランス試験に加えて、ドナースクリーニングや原血漿の受入れ試験、中間工程でのウイルス否定試験なども含めるということを明記しました。
 次にQ2です。「健康被害をもたらす可能性が指摘され血液に混入リスクのあるその他のウイルスも含む」とあるが、安全性確保の対象となるのは、病原性を有するウイルスに限定されるかどうかということです。
このガイドラインで挙げているウイルスは例示であって、多くの人の血漿をプールして製造される血漿分画製剤の安全性確保の対象とするウイルスは、現時点で病原性を有することが判明しているウイルスには限定していません。これについては、例えばHEVは一過性の感染というのがあったのですが、しかし様々な情報から、免疫不全者では一過性ではない場合もあるということで、それぞれの受血者に応じて、それぞれの病態が変わってくるということも考慮した記載であるとことを説明をしております。
 次がQ3、生物由来原料基準の「第2 血液製剤総則」の「2 血漿分画製剤総則」において検査の対象となっているHBV、HCV、HIV以外の血液に混入リスクのあるウイルスについても、原血漿や中間原料、製品の製造工程において検査の実施を求めているかということです。
「1.4 安全性確保の基本」に示すような想定されるリスクに応じて、ウイルスに対する安全性確保の対策を講じる必要がありますけれども、HBV、HCV、HIV以外のウイルスの汚染が想定される場合には、適切な工程でのウイルス検査の実施のほか、製造工程でのクリアランス能を評価する必要があるという回答をしております。このようなB、C、Iに関しては、感染した場合の重篤性を考慮して、原料基準では特出して求められているものです。本ガイドラインでは、それ以外の混入するウイルスの対応も求めているというところも記載いたしました。
 次がQ4です。原血漿や中間原料血漿、製品の製造工程で、HTLV-1についての対応を求められております。ただし、HTLV-1に関しては、後段にありますように、血漿分画製剤としてウイルス不活化/除去がなされていることや、保存前白血球処理が行われていること、更にHTLV-1については、様々な特徴を考えると、一律にウイルス検査が必要とまでは考えていないという回答をいたしました。
 次にQ6です。原血漿に関する最新の感染症情報を採血事業者より入手するということに関する御質問です。これに関してはA6の後段の部分になりますが、例えば遡及調査に関する情報などで、研究レベルでの情報も踏まえて、それぞれの情報によって対応を求めると。これはHIVやHEVで、ゲノム変異によりスクリーニングから漏れる可能性があるという論文も想定した回答となっております。
 3ページのQ8です。中間原料製造業者から、中間原料の製造工程に関わるウイルスクリアランス能などの安全情報が入手できない場合、どうすればいいかということです。中間原料のウイルス安全性に関しては、中間原料を用いて製造した製剤を提供する製造販売業者が責任を持って説明する必要があり、十分な情報が得られるような契約をすべきと考えられます。Drag Master File(DMF)においても、安全性に関する事項を共有することが求められているということを明記いたしました。
 次にQ9です。ウイルス工程特性解析試験において、非特異的モデルウイルスを選択する際の具体的な考え方という所です。先ほど述べたようにエンベロープの有無、ゲノムの種類、粒子径の大小、物理的・化学的処理に対する耐性等を考慮して、4種類以上のウイルスを選択する必要があるということです。これに関しては先ほども申したように、ICHの場でも議論のあったところですが、ICHの場合には3種類でという議論でした。ただ、このICHのガイドラインは、ウイルスの潜在があるというよりもウイルスの潜在が知られていない、あるいは知られているウイルスについても、病原性を持っていないウイルスしかないという、基本的に迷入ウイルスのみを考慮したようなガイドラインになっているところから、その差がここから出ているというような説明です。
 次のページで、Q13です。ウイルスクリアランス工程特性解析試験を実施する際に、統計学的手法を用いて算出する場合の留意点を明示してほしいということです。ウイルスクリアランス試験においては、評価対象である工程の前後での感染性を定量するためのアッセイを採用する場合には、十分な感度と再現性を有することが説明できることが必要であり、その際に統計学的に妥当な処理が行えるように、十分なサンプル数で実施することが求められているというコメントです。この辺に関しては、先ほど述べたICHのQ&Aにも同じような記載があり、1回の試験に関しては統計的処理が十分できるようなものを、それを繰り返し評価するために、少なくとも2回の試験をやる。ただ、2回の試験のそれぞれを合わせた形での統計処理を求めているわけではありません。もう1つ、感染性の試験については、例えば低濃度のウイルス試料を用いる場合、要するにウイルス感染価のダクションを見たときに、ウイルス試料のサンプリングの仕方によって統計学上の大きな誤差を生じることも考慮して試験を設計する必要があるというように記載しております。
 Q14は、ウイルスクリアランス試験に用いる測定法です。ウイルスクリアランス工程評価試験においては、明確な統計学的要件はないのでしょうかということで、これについては、対象とする関連ウイルスのクリアランス能の評価は、ウイルスクリアランス能工程特性解析の結果が使える場合には、その結果を用いて関連ウイルスに対する安全性を評価することも可能であるという回答をさせていただきました。
私からの説明は以上です。
○濵口座長 ただいまの説明につきまして、委員から御意見や御質問がございましたら御発言をお願いいたします。
○岡田委員 埼玉医大の岡田です。まず、序論の1.3の感染性因子に関して、HTLV-1が追加されているのですが、通常、プラズマでは感染しないので、あえてここに記載する必要はないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○山口参考人 これに関しては、感染症情報などで、そのウイルスについても記載があることから例示させていただきました。ただ、岡田先生がおっしゃるように、血漿分画製剤にした場合にはそこから感染するリスクは非常に低いということであれば、そこを除外することも可能かというように思います。
○岡田委員 分かりました。もう1つです。「3 製造及び検査」の所で、「脂質膜を持たないウイルスの除去・不活化については、頑健性の高いウイルスクリアランス工程を少なくとも1工程導入することが望ましい」という表現になっているのですけれども、これはガイドラインの表現として「望ましい」という表現になっているのかもしれませんが、各メーカーはウイルス除去膜若しくは液状加熱を導入している所が多いので、頑健性の高い工程が1つは入っていると思いますので、「望ましい」という表現よりももう少し進めて、「導入すること」若しくは「導入することに努める」ということで、「望ましい」よりも強い表現にしたほうがよいかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○山口参考人 この辺はすごく議論のあったところでございまして、岡田先生がおっしゃるように、多くの製剤においては、頑健性の高い工程が割と組まれているところが確かにございます。ただ、一方で幾つかのウイルスを対象とした製剤では、例えば2logしかいかないような工程を2つとか、そういうケースもございました。そういうことがございましたので、あえて「1工程を導入することが望ましい」としたのは、そういうケースを想定して記載させていただきました。ただ、皆様が、「望ましい」だけではなくて、「努めるべきである」とか、そういう表現のほうがより適切であるということであれば、そのように修正することも可能かなと思います。
○岡田委員 「望ましい」よりも、「努める」とかにしたほうが、私個人の考えとしてはよろしいかと思います。
○濵口座長 山口参考人、そこはそういう方向で大丈夫でしょうか。
○山口参考人 先生方がそのほうがよいということであれば。要するに、全部の製剤がそうなっていないというのが現実にあるのですけれども、ただ、これは今のガイドラインのリクワイアメントに合っていないと駄目だという話ではございません。そう書いたとしても、それを目指してほしいというところを書いておりますので、多分審査等においても、それほど大きな問題にはならないかというように思います。
○佐野血液対策課長補佐 事務局でございます。頂いた意見を参考に、こちらでも引き取りまして、記載ぶりについては検討させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○岡田委員 もう1つです。4番のウイルスクリアランス試験の4.3の(1)です。これは重要なのですけれども、「機序の異なる2つ以上の工程を採用するよう検討することが望ましい」ということで、これもまた「望ましい」となっているのですが、これはノーエンべロープのウイルスであっても、1logを超えるような除去・不活化ができる工程が、もう実際に導入されておりますので、これも本当は「工程を検討しなさい」ということを言いたいのですが、「努める」ということで、「望ましい」よりももっと強い表現にしたほうがよろしいかと思います。
○山口参考人 確かに意図として、本音はそういうところがあるのですが、現在、全てがそのようになっていないところを、「改良してください」というところの意図で「望ましい」にしたのですが、もし皆様の意見で、このまま引き取らせていただいて、最終的には事務局と詰めさせていただければと思います。
○岡田委員 ここの「望ましい」というのは、改定前も「望ましい」となっていて、大分年月がたっていて、その間に各メーカーはいろいろと検討されておりますので、そう考えると、もう望ましい段階を過ぎて、もう少し強い表現にしてもいいかなと思っています。
○濵口座長 頂いた意見は、事務局とも相談をしながら少しまた修正して、これはもう一度出すということになりますか。
○佐野血液対策課長補佐 そちらのほうは検討になるのかなとは思うのですが、基本的には記載整備の範疇に入るのかなと思っております。
○濵口座長 事務局のほうで取りまとめをしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。ほかはいかがでしょうか。
○内田委員 国衛研の内田です。2か所、細かい点です。1点目は、3.2の中間血漿分画物の管理のところです。先ほども説明のあったところですが、「ただし、中間原料製造業者により、既に適切なウイルス検査が実施されており、その詳細を確認できる場合はその限りではない。なお、当該中間原料については、中間原料製造業者により既に適切な試験が行われている必要がある」という所の「ウイルス検査」と「試験」は同じなのかどうか。この部分は、製剤の製造業者が原料を受け入れる場合に、基本的には中間原料製造業者が既に試験をしているので、試験をする必要はないけれども、その詳細が確認できない場合は試験が必要というように読むのでしょうか、それともここのウイルス検査と試験は違うのかというところが分かりにくいです。最初は、「製剤の製造業者が試験をする必要がある」と書いてあり、「ただし、中間製造業者が試験をしていれば必要はない」と書かれていて、「なお、中間製造業者は試験をしなければならない」と書かれているので、その関係が読みにくいと思いました。まずこの点なのですが、いかがでしょうか。
○山口参考人 この記載がややこしくなるのは、幾つかの項目をここの中に全て入れ込んでいるというところがございます。中間原料製造業者が指針等でも求められているウイルスに関しては試験をされていなければならないですし、そのことは当然そうなのですが、特定のウイルスに関しては、検査をしている場合としていない場合があると。そういうことも含めて、このような記載にさせていただいております。
 ですから、その辺の記載の意図は、2つのことをこの中に書いているので、場合によっては、記載整備でもう少し分かりやすくしたほうがいいのであれば分かりやすくしてもいいかなと思うのですが、意図としては、今言ったような状況でございます。
○内田委員 分かりました。もう少し分かりやすく書いていただくと良いと思います。Q&Aに書いていただくということでも良いかもしれません。読んでいて分かりにくいと思いました。
 もう1点は、4.3でクロマトグラフ装置を「クロマトグラフについては」と書かれていてクロマトグラフ装置という意味で使われているのですが、記載の内容にpHや温度ということも入っておりますので、「クロマトグラフィ工程については」というような形のほうが分かりやすいと思いますが、いかがでしょうか。
○山口参考人 分かりました。そこは確かにそうだと思います。「工程」と入れたほうが、これも記載整備だと思いますので、させていただければと思います。
○濵口座長 ほかはいかがでしょうか。
○荒戸委員 1点教えていただきたく思います。4.4.3の(6)の一番最後の所で、HEVの事例を入れていただいているのですけれども、先ほどの御説明の中では、臨床株でも脂質に覆われている場合と覆われていない場合があるということだったと思うのですが、それで間違いはないでしょうか。
 また、「したがって」以降の所で議論するのは、細胞培養由来ウイルスと言うよりも、どのタイプのモデルウイルスを用いてクリアランスを考えていくべきかということではないかと思うので、臨床株と細胞培養由来ウイルスの関係と、評価に用いるモデルウイルスとの関係が、ちょっと分かりにくいような気がしました。
○山口参考人 御指摘ありがとうございます。これは、原料は血漿分画製剤ですので、血漿由来のというように考えた場合には、献血者から頂いた、「臨床株」という言葉はちょっと引っ掛かるかもしれませんけれども、用いた評価というのが、まず基本原則になるであろうと。HEVは脂質に覆われたりしている場合があるということは、これは今回のケースではin vitroで実際に培養されているケースもございます。その場合には、脂質に覆われているというデータがございませんので、そういうケースを想定して書かせていただきました。
 ただ、最近、エクソソームなどでは、ウイルスがエクソソーム内に含まれてしまっている非エンベロープウイルスがあるという報告もございます。ただ、この辺は「例えば」というように書かせていただいていますので、そこまで全部ここに書いてしまうのは難しいと思いますので、事例としてはHEVを書かせていただいているということでございます。
 その「したがって」の後の話についても、細胞培養由来ウイルスでもHEVの系としてはこういうことに注意する。ただ、ほかのウイルスについて、全てこのような形でという話ではなくて、あくまでも例示としてはHEVの例示の話として書かせていただいているということでございます。いかがでしょうか。
○荒戸委員 分かりました。ただ、そうすると記載整備としては、HEVが出てくる前のところで文章を一旦切って、HEVが出てきてからは文章をずっとつなげて、HEVの事例である文章にしたほうが分かりやすいかなと思います。
○山口参考人 分かりました。そこは言われてみるとそうですね。「ある」というようにして、「例えば」にすれば、そのほうが分かりやすいということであれば、これも記載整備だと思いますので、ありがとうございました。
○濵口座長 ほかはいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、「血漿分画製剤のウイルスに対する安全性確保に関するガイドライン」の改正案については、幾つか御指摘いただいた点を、今後、事務局でも取りまとめるということで、提示した内容を御了承いただけるということでよろしいでしょうか。異議なしということで承りました。ありがとうございました。
 今回の見解を踏まえまして、事務局においては通知の発出等、対応をお願いします。また、血漿分画製剤のウイルスに対する安全性確保に関するガイドライン及びQ&Aに関しては、本日頂いた意見を踏まえて、事務局において山口参考人と相談しながら修正し、最終案の文言につきましては、座長に御一任いただけますでしょうか。
ありがとうございます。事務局においては、ただいまの点を踏まえて、事務連絡の発出等の対応をお願いいたします。
 最後に議題3「その他」です。事務局から何かございますでしょうか。
○佐野血液対策課長補佐 特にございません。
○濵口座長 ありがとうございました。本日の議題は以上となります。他に何か意見等はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。事務局に議事進行を戻します。
○佐野血液対策課長補佐 濵口座長、ありがとうございました。次回の安全技術調査会の日程は、別途御連絡差し上げます。これにて、血液事業部会令和3年度第6回安全技術調査会を終了いたします。ありがとうございました。
 
(了)