2022年7月20日 独立行政法人評価に関する有識者会議 労働WG(第43回) 議事録

日時

令和4年7月20日(水)13:00~15:31

場所

日比谷国際ビルCS 8D(8階)

出席者

今村主査、酒井構成員、志藤構成員、土井構成員、土橋構成員、宮崎構成員、安井構成員

議事

議事内容

○事務局
 定刻になりましたので、ただいまから「第43回独立行政法人評価に関する有識者会議労働WG」を開催いたします。事務局の政策立案・評価担当参事官室室長補佐の工藤でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。着座にて失礼いたします。
 構成員の皆様におかれましては、お忙しい中、お集まりいただき誠にありがとうございます。まず、本日の出席状況について御報告いたします。本日は、土井構成員、酒井構成員がオンラインでの御参加でして、大木構成員、関口構成員、三宅構成員が御欠席です。なお、本日の会議はオンラインでの御参加に配慮し、スクリーンの全景及び発言者が分かるように、カメラ及びスタッフを配置しておりますので御報告いたします。ここで、参事官の山田より御挨拶申し上げます。

○政策立案・評価担当参事官室参事官
 参事官の山田でございます。本日は、お集まりいただきありがとうございます。本日の独立行政法人評価に関する有識者会議労働WGは、本年1月以来の開催となります。皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局
 続いて、本日の議事について御説明いたします。本日の資料に関しては、お手元のタブレットに収納しておりますので、そちらを御確認いただければと思います。フォルダごとで共通の参考資料は別フォルダになっておりますので御確認いただければと思います。なお、参考資料3、4にお示ししている本年3月2日付けで改定されました総務大臣決定の指針については、昨年秋にデジタル庁の発足に伴う所要の改正がなされたものです。改めて、この場をお借りして事務局より御報告申し上げます。
 本会議の議題は、勤労者退職金共済機構の令和3年度業務実績評価及び中期目標期間見込評価に係る意見聴取を行うこととしております。法人からの各評価項目における評価の根拠について重点的に説明した後、評価内容を中心に皆様から御意見、御質問を頂きたいと存じます。
 議事の流れとしては、年度評価について一通り御意見を頂いた後で、見込評価の御意見をお伺いいたしますので、見込評価における法人の説明については、年度評価と重複を極力避けていただきますようお願い申し上げます。
 3つ目の議題であります業務・組織全般の見直しについては、独法通則法第35条の規定を根拠とし、主務大臣が中期目標終了時までに、法人の業務の継続又は組織の存続の必要性、その他業務及び組織全般にわたる検討を行い、その結果に基づき、業務の廃止若しくは移管又は組織の廃止、その他所要の措置を講ずるものでして、次期中期目標の内容に反映することを目的として実施するものです。これについても、本WGの御意見を賜りたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
 ここで傍聴の方に御連絡です。本日の会議の撮影に関しては頭撮り可としておりますが、撮影はここまでとさせていただきますので、御協力の程よろしくお願いいたします。この後は、進行を当WGの主査であります今村先生にお願いしたいと思います。それでは、今村先生、よろしくお願いいたします。

○今村主査
 今村です。皆様、どうぞよろしくお願いいたします。17年ぶりという突然の猛暑の中、お集まりいただき本当にありがとうございます。この件に関しては、おおむね2時間半の会議を予定しております。少々長丁場になりますが、円滑な議事運営に御協力いただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
 ただいまの事務局の説明について、何か御質問がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは、早速ですが議事に入りたいと思います。まず、令和3年度業務実績評価について御議論いただきたいと思います。はじめに法人から、法人の業務概要及び自己評価について御説明いただきます。この2つの説明が終わってから、質疑応答という流れで進めていきたいと思います。それでは、法人の業務概要及び評価の要約をお願いいたします。

○勤労者退職金共済機構理事(小林)
 勤労者退職金共済機構で総務担当理事をしております小林と申します。本日はよろしくお願いいたします。
 それでは、資料2-1を御覧ください。まず、1ページ、私どもの機構の設立目的でございます。中小企業退職金共済法の規定による中小企業退職金共済制度の運営と勤労者の計画的な財産形成の促進の業務を行うこととなっております。また、中小企業退職金共済制度には2つのジャンルがございます。一般の中小企業退職金共済制度と特定業種退職金共済制度です。特退共のほうは、建設業、清酒製造業、林業の3つの業種で運営しております。
 2ページを御覧ください。自己評価の項目の一覧です。私どもは今回、第1のⅠの1、一般の中小企業退職金共済事業、その下の2、建設業退職金共済事業、それから下のほうに第4としてその他業務運営に関する重要事項がありますが、この3つについて自己評価をAとさせていただいております。その他の項目については全てBという自己評価です。以下、A評価をしたものと、重要度、難易度「高」のものを中心に御説明いたします。
 3ページを御覧ください。一般の中小企業退職金共済事業についてです。一般の中小企業退職金共済事業の中期目標の内容としては大きな柱でいうと4本あります。(1)資産の運用、(2)確実な退職金の支給に向けた取組、(3)加入促進対策の効果的実施、(4)サービスの向上です。この4本柱は、この後で御説明する建退共、清退共、林退共、いずれも同じ柱立てになっております。
 それでは、4ページを御覧ください。指標の達成状況です。(1)資産の運用については、委託運用部分について各資産のベンチマーク収益率を確保することとなっており、4つの資産がありますが、外国株式以外はベンチマーク収益率を確保しております。(2)確実な退職金の支給に向けた取組です。こちらは退職金の未請求の方の数と未請求の退職金額、それぞれの割合を減らそうということです。令和3年度の実績値はいずれも未達成ということで、後ほど御説明いたします。(3)加入促進対策の効果的な実施については、いずれの指標も達成できております。5ページ、(4)サービスの向上についてです。いずれの指標も達成できておりますが、ホームページアクセス件数については、過去のこちらでの御議論も踏まえて、情報セキュリティの通信監視サービス分を除いた数字を出しておりまして、そちらも112.0%という達成率になっております。
 資産運用について御説明いたします。まず、9ページを御覧ください。令和2年度に2,588億円の運用益を上げた反動もあり、令和3年度の運用益は410億円と伸び悩みましたが、前年度に599億円の付加退職金支給が決められたという状況があったにもかかわらず、令和3年度末の利益剰余金の水準ですが、これは必要な利益剰余金水準が5,468億円となっておりますので、これをおおむね満たす5,272億円を確保しているところです。先ほど申し上げましたように、超過収益率については外国株式のみマイナスとなりましたが、6ページに戻っていただき、評定の根拠の資産運用の理由欄にありますように、短期的資金の逆流による前年度の大幅な上昇の反動が要因の1つとしてあったと思っております。あと、ウクライナ問題等イレギュラー要因による短期的な動きだというように考えております。
 8ページの左側のグラフを御覧ください。私どもは、異なる戦略を採用しているファンドを組み合わせておりますので、そのファンドの組み合わせによるスタイル分散、リスク分散効果は引き続き有効に機能しており、中期的に安定した収益を確保し得る体制が維持されていると考えております。
 令和3年度の取組です。お手数ですが、資料3-1の8ページを御覧ください。過去からの一連の改革、過去からの改革が全部載っております。こちらの6つ目の○です。基本ポートフォリオの見直しを昨年10月に実施し、資産構成を中期的に必要な収益を確保し得る内容に変更するため、期待収益率を引き上げました。これに伴い、期待収益率を引き上げましたので、リスク値や想定損失額も増えました。増えましたが、先ほど申し上げましたとおり、ほぼ利益剰余金の範囲内に収まる水準となっております。
 8ページの5つ目の○を御覧ください。委託運用資産のうち、パッシブ運用に関するマネージャー・ストラクチャー、これは運用受託機関の構成のことですが、その見直しも実施し、運用受託機関をどこにするかに加えて、契約形態の見直しも行っております。委託費用の引き上げをするなど運用効果の改善も実現しております。
 スチュワードシップ活動についてもお話したいと思います。これは資料2-1に戻っていただき、44ページです。スチュワードシップ活動の趣旨についてですが、私どもではこの活動を通じて我が国の資本市場の健全な成長を促し、その結果、年金等の資産運用を通じて勤労者の老後の生活の安定に資するという、6兆円の公的機関のアセットオーナーに与えられた使命を果たしていると考えております。この活動については、本格化してから4年目を迎えておりまして、運用受託機関の親会社のトップとの面談も定着しており、ユニークな取組として存在感を高めているところです。
 加えて、ガバナンス強化についてですが、同じく44ページです。ガバナンスの観点から、資産運用に携わる役職員の使命及び規範を明確にするための行動規範を策定したところです。資産運用業務については、運用実績や令和3年度も含めた一連の改革も含めて、資産運用評価報告書にも記載されておりますが、資産運用委員会から高い御評価を頂いているところです。
 次に、中退共の未請求対策です。確実な退職金の支給の取組については、目標値を達成できない状況が続いております。これは毎年御報告しておりますとおり、移行通算期間が2年から3年への延長という制度変更の影響が大きいものと考えております。資料2-1の10ページの左側の表を御覧ください。退職金額が10万円を超える階層では、6割から8割の方が移行通算制度の利用予定を請求しない理由に挙げております。拡充した制度の利用者が増えるのは悪いこととは言えないと考えており、この制度の利用者は最終的には退職金を請求する方だと思われますので、数字が上昇していることは必ずしも問題ではないものと考えております。一方、退職金5万円未満の階層では、手続が面倒との回答が増加傾向にあることについては、不正防止を念頭に置きつつ、手続負担の軽減を図り、現在の低水準の未請求率を維持してまいりたいと思っております。
 次は加入促進についてです。6ページを御覧ください。令和3年度もコロナ禍の影響があり、加入促進活動にとっては厳しい状況が続いておりましたが、説明会を対面方式からWEB方式に切り替えたり、電話などを活用したり、柔軟な対応を行っております。その結果、令和3年度は厳しい状況にもかかわらず、目標を16%余り上回る結果となりました。
 最後に、中退共のシステムについても若干触れたいと思います。これは業務運営の効率化のところでも盛り込まれている項目ですが、38ページを御覧ください。この中退共システム再構築は巨大プロジェクトのため、設計・開発業者の選定には非常に苦労したところですが、PMO支援のコンサルタントと協働して、無事に設計・開発工程を開始することができました。理事長以下、職員一丸となって取り組んでおりまして、40ページに会議体の参加状況を記載しておりますが、業務部門の職員も令和3年度下半期の半年間で延べ300人以上が会議に参画しております。組織を挙げた取組を実現しているところです。さらに、優秀なコンサルタントと協働作業しておりますので、役職員のITリテラシーやプロジェクト管理能力向上にも大きく寄与しており、人材養成面でも成果が上がっていると考えております。
 中退共事業の総括です。このように重要項目である資産運用については、難しい市場環境の中でも、強固な財務基盤、ガバナンスを確立するとともに、中期的に安定させるための施策も着実に実施してまいりました。加入促進対策も厳しい環境で目標の2割近くを上回る実績を上げました。システム化面では大プロジェクトを順調に進捗させております。さらに、専門分野の人材養成でも成果を上げていること等を勘案して、中退共について自己評価をAといたしました。
 続いて建退共についてです。12ページを御覧ください。4つの柱で目標を立てております。指標の達成状況は13ページになります。(1)資産の運用については、委託・運用部分は複合ベンチマーク収益率を確保するということで、これは4つの資産それぞれではなく全体で見るものですが、大きく目標を達成しております。(2)確実な退職金の支給に向けた取組については、長期未更新者の方に対する手帳更新等の手続の干渉は実施しておりますので目標は達成ということです。(3)加入促進対策の効果的実施、(4)サービスの向上は、いずれもほぼ100%達成しているところです。
 15ページ、評定の根拠を御覧ください。資産運用についてはKPIをクリアすることそのものが目的ではなく、必要な利回りを最低限のリスクで確保することが重要だと考えております。建退共は、専門的な人材の不足による組織体制が脆弱であること、マネージャー・ストラクチャーの見直しが遅れている等の課題があることを以前から指摘されておりましたが、当面の措置としての対応の道筋をつけたのが令和3年度だと考えております。
 具体的には、令和3年10月に予定運用利回りを3%から1.3%に引き下げ、令和4年4月からの委託運用部分に関する中退共との合同運用に向け、基本ポートフォリオの見直し、資産の移管作業を実施して完了しております。その結果、令和3年度末では、令和3年度末の必要な利益剰余金の不足額は534億円から104億円と大きく減少しております。なお、令和3年度の責任準備金の算定で、予定運用利回り引下げ前の算定額が保全されるよう調整した分が増加しておりますので、その影響を除くと不足額は更に縮小していたと考えております。
 指標としてもう1つ、長期未更新者数を中期目標期間の最終年度までに、前の中期目標期間終了時から減少させることを設定しているところです。長期未更新者に手続勧奨をするためには本人の住所把握が不可欠、必須ですが、建設業の期間労働者、建退共の対象となる労働者ですが、建設業の期間労働者は工事現場を点々とする場合が多く、また重層下請構造で雇用関係が複雑となりますので、労働者の方の住所や勤務先を把握し続けることが非常に難しい状況となっておりまして、基本的に長期未更新者というのは増加トレンドになるものだと考えております。
 長期未更新者の増加というのは、前の中期計画期間中から大きな課題であったと考えております。17ページを御覧ください。長期未更新者数は令和元年度以前は増加の一方でしたが、令和2年度からは対策の効果が表れて減少軌道に乗りました。令和3年度末には、5,000人以上目標を超えて達成しているところです。取り組んだ主な対策としては18ページの右上と真ん中の上ですが、住所を把握していない方の住所情報把握のために令和元年度から大規模調査を実施し、最終の手帳更新をした事業所5万所に対して協力要請を行い、2万4,000人分の住所情報を把握でき、そのうち9,000人の方が長期未更新者であることが判明しました。
 左下と真ん中の下の辺りを御覧ください。長期未更新者防止を目的とした対策についてでして、左が電子申請方式の導入や制度改正に合わせて共済契約者の方に通知や説明会を行ったこと、右側は被共済者本人に対して掛金納付状況を定期的に通知したこと、このような仕組にしたことも減少に効果を発揮したものと考えております。また、住所把握が困難な長期未更新者への対策としては、左上ですが、建退共適用の工事現場に見やすい標識を工夫することやマスメディアでの広報活動も拡充いたしました。
 事業全体の評価です。資産運用については、指標を達成しただけではなく、質的向上に資する取組を行ったこと、長期未更新者数は趨勢的に増加傾向であったものを令和2年度、3年度と続けて減少させていること、それ以外の指標はほぼ100%の達成状況ですので、総合的に勘案してAとしております。
 次に清退共です。20ページの指標達成状況を御覧ください。資産運用については、委託運用部分が中退共と合同運用ですので同じ数字が並んでおります。確実な退職金の支給に向けた取組は、長期未更新者に対する手続要請を行っておりますので達成しております。長期未更新者数については、建退共と同じように、前中期目標計画期間終了時よりも減少させるという目標もありますが、これも達成見込みです。こちらの数字は資料3-1の27ページにありますので、御確認いただければと思います。加入促進対策の効果的な実施については達成率が84.2%ですが、これは後ほど御説明いたします。
 21ページ、サービス向上については、いずれも達成しているところです。加入目標を下回っておりましたが、22ページに要因を分析しております。まず、22ページの一番下の枠です。清酒の製造業は免許がないと製造できませんが、既に93.3%の免許事業者が清退共制度に加入しております。
 記載のとおり、いろいろ対策は講じましたが、お酒の製造量についてのグラフが25ページにありますが、お酒の製造量がコロナ禍の影響で大きく落ち込んでいるということで、コロナ禍前、令和2年度は大きく落ち込みましたが、それより更に令和3年度は落ち込んでおります。令和元年度比で12.6%落ち込んでおりますが、生産量が減少している中で人を雇うという選択が難しい状況なのだろうと思っており、加入促進は極めて困難な状況の中で目標は達成できませんでしたが、20ページを御覧いただきますと、達成率については令和2年度の54.2%から84.2%まで戻している状況です。今後の新規加入についても、コロナの影響でお酒の製造量がどうなるかにもよりますが、コロナ禍前から期間雇用者は減少にありましたので厳しい状況は続くのではないかと思っております。

○今村主査
 すみません。途中で失礼ですが、そろそろ構成員の議論の時間に入りますのでテキパキとお願いいたします。

○勤労者退職金共済機構理事(小林)
 すみません。全体の評価ですが、加入促進の目標を除けば、おおむね100%は達成していると考えております。
 林退共については次を御覧ください。27ページ、達成状況についてです。資産運用は、委託運用部分が中退共と同じです。また、累積欠損金については、見直し後の解消計画に基づき解消に取り組んでまいりました。それから、確実な退職金の支給に向けた取組については、前期・中期目標より減少させるという目標も含めて達成見込みです。加入促進対索については、達成率が87.8%となっております。
 29ページ、評定の根拠の累積欠損金について御覧ください。累積欠損金は計画に基づいて解消に努めた結果、令和3年度末における累積欠損金は3億600万円となり、計画で定める累積欠損金の目安額7億6,200万円を下回る、剰余金として捉えれば上回るという、良い状態であったということです。
 それから、加入促進対策の効果的実施についても、林業の関係ではいろいろ対策には取り組んでまいりました。30ページにありますように、林業従事者は趨勢的に減少しており、その中でも年間の就業日数で期間雇用者の割合が減っておりまして、加入促進対策はなかなか厳しい状況でしたので達成率は87.8%ということです。林業従事者は今後の見込みも横ばいですが、通年雇用化の施策で期間雇用者は減少すると考えております。加入促進対策以外のところは目標を達成しており、林業の期間雇用者が継続的に減少する状況ですので加入促進は難しい状況で、全体の評価としてはBとしております。
 最後に、その他業務運営に関する重要事項です。大きな柱ですと42ページです。1、内部統制の強化、2、情報セキュリティ対策の推進等、3、退職金共済事業と財産形成促進事業との連携、4、資産運用における社会的に優良な企業への投資という4本柱です。資産運用については既に触れておりますので、それ以外の点で御説明いたします。
 44ページ、1、内部統制の強化については、独法通則法改正によりガバナンス強化が求められたことや情報セキュリティ問題の深刻化等を踏まえ、策定しましたローリングプランに基づいて取組を実施してまいりました。リスク管理コンプライアンス委員会、情報セキュリティ有識者委員会等のガバナンス体制を構築し、専門性の高い委員の助言に基づいて内部統制の強化を図っております。情報セキュリティ対策推進では、最低限の情報セキュリティを確保するため、情報システムと業務型システムの物理的分離を行い、記録媒体や情報端末の管理体制の確立も図り、標的型メール訓練、LANケーブル抜線訓練等も行い、情報セキュリティ有識者委員会では手厚い取組と評価されております。
 この項目は、ローリングプランに基づくガバナンス体制を確立し、それに基づき内部統制や情報セキュリティ対策等を強化し効果も出ていること、先ほど申し上げたスチュワードシップ活動も発展進化し、資産運用委員会からも高く評価されていること等から総合的に勘案すると、自己評価としてはAとしております。説明は以上です。

○今村主査
 ありがとうございました。それでは、今の御説明に対して御意見、御質問等がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。今日は担当課の御努力で、非常によく見えるスクリーンもありますので、オンラインで御参加の構成員も適宜御発言いただければと思います。発言の際は、できればカメラをそのときだけでもオンにしていただければ有り難いです。それでは、どうぞ御自由に御発言をお願いいたします。

○土橋構成員
 土橋です。ちょっと十分に理解できていないところもあるのですが、特にこの資産運用については、この一般と建設、清酒、林業と基本的には一緒に扱っているというか、同じ方法でやっているということになるのでしょうか。

○勤労者退職金共済機構理事(小林)
 委託運用部分については、合同で運用させていただいております。中退共に乗っかる形で、合同運用ということでございます。建退共については令和4年度からということです。

○土橋構成員
 特に昨年とかいろいろ情勢変化もあって、御説明ではポートフォリオの見直し等をいろいろやったようなのですが、これは通常もやっていることなのですか。それとも、昨年に限って非常に大きな変化を起こしたということでしょうか。

○勤労者退職金共済機構理事(西川)
 資産運用を担当しております西川のほうから御説明をさせていただきます。基本ポートフォリオの見直しについては、基本的には5年に1度と考えさせていただいております。というのは、私どもの資産運用の目標については、中期的に制度を安定的に維持していくだけの収益を上げるということを目標にしておりますので、中期計画の5年間を目処にしているということです。
 もう1つ申し上げられるのは、この基本ポートフォリオの資産構成を見直す場合、資産クラス毎に先々の収益の予想を行います。その際、経済の予測を基に行うわけですが、納得できるような経済予測が出ているのが大体5年先までなのです。それ以降は、そのまま横ばいに置かれているようなことが多いので、ある程度信頼のおける5年間の経済予測を基に、その向こう5年間の収益予想をベースにして資産構成等を決定しているということ、さらに財政検証も5年周期で行われることが多い、といったこともあって、5年に1度を基本に考えております。
 今回の場合は、超低金利の状況が続く中、固定金利の国債を中心に運用している自家運用の利回りが低下傾向を続けており、その分を、委託運用によってカバーする必要があったこと、などが見直しの背景です。

○今村主査
 いかがでしょうか。どうぞ。

○宮崎構成員
 御説明ありがとうございました。資料2-1の15ページ、建退共の所ですが、サービスの向上という記載の所に、電子申請方式の利用で令和3年度末時点ダウンロード件数3万8,509件という記載がありますが、この電子申請方式、いわゆる従来の証紙貼付型から切り替えたのは、累計でどの程度になっているのかというのが分かればお教えいただければと思います。併せて、何かこの指標に関して目標となるこの電子申請の切り替えの促進ですとか割合とか、何かお考えがあればお教えいただければと思います。

○勤労者退職金共済機構理事長代理
 建退共を担当しております岸川のほうからお答えをさせていただきたいと思います。この直近の6月末の数字で申し上げますと、建退共は共済契約を結んでおります事業者が全体で17万5,000ほどありますが、そのうち9,300を超える事業者の方に電子申請ができる形で契約をしていただいております。パーセントに直しますと、5%を超えたところです。また、実際のところはポイントという形で掛金を納付し、充当してはじめて成果になるというわけですが、掛金充当という金額ベースですと少し落ちまして、約2%という状況です。
 それから、今後の目標ですが、この中期計画の中では業務の効率化の所にも記載をさせていただきましたが、5年前はまずこの電子申請を導入しましょうというところで終わっています。ただ、こちらは予定どおり令和3年度から本格導入いたしまして、今申し上げたように、普及の段階という形になっています。建設技能者の処遇改善を図るということで、建設キャリアアップシステムというものを国が挙げて進めているのですけれども、退職金も処遇改善の1つの課題ですので、建設キャリアアップシステムと併せて進めるということをやっているところです。
 この中期計画で具体的な数値目標はないのですが、できれば今年度中に契約者数ベース、先ほど現況5%と申し上げましたけれども、1割ぐらいには持っていきたいということをお話しているところです。

○安井構成員
 安井です。2点御質問したいと思います。7月1日に資産運用の基本方針を公表されたので、その中身を拝見しました。3ページ目に「リスクシナリオ等による検証を行う」とありますが、検証を行うのは先ほどおっしゃっていた5年に1度のポートの見直しのときのみなのか、それとも、毎年ないし四半期に一度リスクシナリオを設定して、ポートの見直しなどをされるのかということをお伺いしたいです。とりわけ金融ショックを想定されているとあったのですけれども、それはどういったショックを想定しているかについて教えてください。こういった細かいことをお伺いするのは、やはりロシアとかスリランカとかいろいろな国々でデフォルトが起きていますし、今後も起きるかもしれませんから、そのときにどのように機動的に対応できるのだろうかということを知りたいというのが質問の趣旨です。
 2点目は、昨年、勤退共のホームページのアクセス状況について、当時いらっしゃった大地理事が考えてくださると理事長が御回答されています。これが議事録として厚労省のホームページにも公表されていますけれども、1年経過して、実際に分析されて、その内容を基にどのような利用者の利便性の向上させる施策を実施されたのかについて教えてください。説明資料に載っていなかったので、お伺いする次第です。以上です。

○勤労者退職金共済機構理事(西川)
 まず、リスクシナリオをどのように、あるいは基本ポートフォリオの見直しについてはどのようにやっているかということですが、これは毎年1度必ず基本ポートフォリオの定例検証というものを実施しています。その中で、フォワードルッキングなリスクシナリオとして、モンテカルロ・シミュレーションを使っています。万が一にも利益剰余金が枯渇することがないようにということで、1%タイルの水準で5年先に利益剰余金が枯渇しないような利益剰余金の水準を確保したいと考えているところです。現在の利益剰余金の水準は、おおむねそれに見合った数字になっているということです。
 これは先ほどのロシア、中国等の問題ともからむのですが、何かそういう大きな問題が起こったとき、これだけの利益剰余金をためていれば、右往左往せずに相場が戻るまで待つことができると考えているところです。ですので、御質問に対する回答としては、シナリオの見直しあるいは基本ポートフォリオのチェックについては毎年1度行っていますということと、それからロシア、中国のような不測の事態については、右往左往しないで状況を冷静に見極める余裕を持つことのできる、そうした利益剰余金の水準を確保することで対応していきたいと考えているということになります。
 なお、ちなみにですが、私どもの運用では、先進国の債券を中心に運用していますので、基本的にロシアの株式、債券というのは保有しておりません。

○勤労者退職金共済機構理事長
 1点補足させていただきます。基本方針を読んでいただきまして本当にありがとうございます。あれは6年間の血と汗と涙というか、全てが凝縮されたものだと思っていまして、読んでくださる方からは高く評価されているものであります。
 安井委員の御質問に老婆心ながら申し上げておくと、うちは委託運用なのです。ですから、うちがやっているわけではなくて、どういうアセット・マネージャーを選ぶかが大事なのです。
 ロシアの問題につきましては、SWIFT排除の決定が我が国で行われたのは日曜日だったと思いますけれども、その日のうちに資産運用の人間全員に機構の携帯で指示を出しまして、翌朝6時ぐらいからアセット・マネージャーに状況を全部聞けと。まずうちはロシアの債券を幾ら持っているのかと。これは6兆円のうち2,000万円でありました。それは大きな問題ではなくて、この問題をどう取り扱うのかということを、各アセット・マネージャーに全部ヒアリングを掛けました。我々資産運用の連中はみんなすごく張り切っていまして、それぞれ状況を報告してくれましたけれども、私が気にしているのはそうではなくて、どのアセット・マネージャーが一番いい情報を持っていて、一番頼りになるかということで、こういうときに明確に出てくるわけです。
 明らかに出てきたのは、米欧系のアセット・マネージャーの情報量のすごさです。距離的にも近いですし、歴史もあります。日本のアセット・マネージャーの残念ながら情報量の少なさ、これは外債ですからしょうがないのですけれども、そういうようなことを、我々としては、事が起こったときに直ちに行うことと、一方で基本ポートフォリオの改定とか設計図の改定については、よく周りを見ながら、かつ分析をしながら5年に1度位のペースでやっていくと、こういうことです。以上です。

○安井構成員
 ちょっと関連した質問ですがよろしいでしょうか。状況を確認されたときに、ロシアの債券が2,000万円とおっしゃられましたが、大変少額ではあるものの、先ほど西川理事は、先進国の債券、株に集中しているので、ロシアや中国は持っていないとおっしゃっていました。お二人の回答の食い違った理由を教えてください。また、もし仮にロシアとかスリランカとかの債券・株式を、委託先が持っていることが判明した場合、勤退共は契約上どういうふうに対応できるのでしょうか。

○勤労者退職金共済機構理事(西川)
 私のほうから御説明いたします。ロシア株については、もともと持っていたのはイギリスの鉱山会社の株でした。ところが、そのイギリスの鉱山会社のオーナーがロシア人で、ロシアにあった拠点が分社化してロシアで上場してしまい、その上場したロシアの株を割り当てられてしまったためにロシア株を保有することになった、という経緯があります。それがちょうどウクライナ問題のタイミングと重なってしまったために処分が出来ず、約2,000万円相当のロシア株を保有することになったという経緯ですので、特段私どもの指導に反したことをやっていたことではないと考えています。

○勤労者退職金共済機構理事長
 すみません。ちょっと付言しますと、そうなのですが、私はこんな時期にまだそんなのを持っているのかと。通常であれば、ウクライナ・ロシア関連は3か月ぐらい前に、そんなもの私だったら売っているということで、これは我々の指示違反ではないのですけれども、そういう指導はしております。

○安井構成員
 ちなみに、それを持っていたのは日系のファンドマネージャーだったということなのですか。

○勤労者退職金共済機構理事長
 いや、外資なのです。

○安井構成員
 外資は日系よりも情報を豊富に持っているものの、彼らの判断でロシア株を持っていたということでしょうか。

○勤労者退職金共済機構理事長
 ええ。

○安井構成員
 なるほど。それに関連してなのですが、先ほど申し上げたことの繰り返しなのですが、契約上3年委託なり、5年委託しているときに、例えばこういうリスクが高いアセットがあったら、それがヒアリングで分かったとして勤退共が取れる対応策というのはあるのでしょうか。

○勤労者退職金共済機構理事(西川)
 私ども定期的に運用状況については把握しております。ベンチマークについては先進国のベンチマークを使っていますので、運用受託機関は、基本的にはそれに沿ったような形で運用しております。理屈の上では、あえてリスクを取って発展途上国の株を買うことも可能ですが、よほどの理由がない限りはそれをやりませんし、もしそんなことをやるのであれば、定期報告のときにその報告を受けて、その段階で是正が必要と思えば是正を依頼することができます。
ただ、私どもが信用リスクについては非常にセンシティブになっているということは、あらかじめ契約のときには申しておりますので、あえてそういうリスクを取るところはないと認識しております。

○勤労者退職金共済機構理事長
 すみません。ついでに理事長の経営哲学について申し上げますと、この評価体系では取りあえず5年前はベンチマーク対比というものぐらいしか思い付かなかったものですから、そうなっているのですが、必ずしもベンチマークに勝つためだけにやっているわけではなくて、例えば債券はトリプルB以下は持っていません。なぜかというと、コーポレートリスクというかクレジットリスクは取らないという方針だからです。我々は賦課型ではなくて積立型だということです。
 それから、スマートベータをあえて入れています。ということは、儲かるときは少ないけれども、やられるときは少ないということです。ベンチマークだけを意識していれば、そんなのは全部撤廃したほうがいいに決まっているのですが、そこが経営哲学としては取っていないということであります。せっかくいい質問を頂いたので、私の経営哲学まで踏み込んで御説明させていただきました。

○安井構成員
 ということは、資料2-1の8ページの「外国株式アクティブファンド別の累積超過収益率」を見ると、「スマートベータ」が、結果としてベンチマーク対比大分マイナスになったけれども、これはある意味事前に分かっていたことだということですね。

○勤労者退職金共済機構理事長
 はい。だけど、それを言い訳にするつもりは全然なくて、5年間では必ず取り返してみせますよということで、そのためにはマネージャー・ストラクチャーを必死でやっていまして、前回は2時間で50先、100時間全部聞きました。だから、このマネージャーならクレジットリスクは取れるだろうとか、このマネージャーは無理だろうとか、そういうこともあって、その親会社とトップ面談でスチュワードシップをやっているということなのです。したがって、今はたまたまやられていますけれども、だからといってそれを軽視しているわけではなくて、それでも5年たてば必ず取り返せるという覚悟でやっています。以上です。

○勤労者退職金共済機構理事(小林)
 総務担当理事の小林から、ホームページのアクセスについて御答弁申し上げます。14ページを御覧いただきたいのですけれども、ホームページアクセス件数が増えた要因は分析をしておりまして、建退共につきましては令和3年10月から予定運用利回りを引き下げたという制度改正を行っていまして、その期間にアクセス件数がどっと増えたということもあり、またコロナ禍の影響もありますので、やはり手続をオンラインでできることはできる限りやろうということで、アクセス件数が増えているということが1点あるのかなと思っています。
 それから、もう1点は34ページ、財形制度で、毎年財形制度周知キャンペーンというのをやっていまして、いろいろ広報活動で工夫をしているところなのですが、それをホームページの中の特設サイトとしてアップしておりまして、この期間にホームページへのアクセス件数がぐっと増えていますので、特に若い人向けで訴求してやりたいと思っていますので、一定の広報効果があった結果がアクセス件数として表れているのではないかと考えています。以上です。

○安井構成員
 そのアクセス件数は、中身を解析されてその結果を元におっしゃったということでよろしいですか。去年のこの会議でも、アクセスをうまく分析して、どういった属性の人がどういった機構のページにアクセスしたかというのをやってくださいと、そしてそういうことは、アクセス解析サービスを使えばできるようになっていますよと、私も申し上げましたし、今村主査も敷衍してくださったのです。

○勤労者退職金共済機構理事(小林)
 大変恐縮ですけれども、属性ごとの解析ということではありませんが、例えば財形ですと若者向けのキャンペーンをホームページ等で載せてやった結果、転貸融資の若者が増えているというようなことは、アンケート調査等で分析をさせていただいておりますので、全体として広報としてホームページも活用して、それが効果が上がっているものと考えています。

○安井構成員
 これで最後にしますけれども、利用者の利便性向上に向けてウェブアクセスについて解析してくださると去年答えてくださいました。理事長が大地理事にすぐ指示して、翌日にもやってくださるということだったのですが、本日はその結果を知りたかったなというところです。以上です。

○今村主査
 すみません。アナリティクスを使えない理由とか、そういう事情でも何かあるのでしょうか。個人情報保護法とかいろいろな問題があって、WEBで情報公開しない人も大分増えていますので、その辺の事情というのはどうなのでしょうか。

○勤労者退職金共済機構理事(小林)
 特にそういう事情ということではなくて、全体の広報活動の中で私どもとして優先順位が高いというか、順番にこれをやっていこうということの中でやっており、検討材料としては挙がっていますので、今後も検討していきたいと思っているところです。

○今村主査
 ありがとうございます。どうぞ。

○勤労者退職金共済機構理事(西川)
 そういった自動的なアナリティクスはやっていないのですが、中退共の場合ですと、加入者、それから潜在的な加入者に対してアンケート調査をやっていまして、その中で、利用しているホームページのコンテンツや、ホームページで行いたい手続等の質問を行っています。現在、来年度に向けてホームページの抜本的な見直しをやっていまして、その中に、そうしたアンケート調査の結果も盛り込んでいきたいと考えているところです。その中で、おっしゃっていただいたような使い勝手の良さみたいなものを、利用者のほうから採点してもらえるような仕組みも入れられないかということで、ホームページ作成業者を募集する仕様書のほうに盛り込んでいるところです。

○今村主査
 ありがとうございます。先ほどの長期未更新者の議論でもアンケートを非常にしっかりと説得力のある説明をされていたと思いますので、是非そういうものをうまく取り入れて、更に前に進んでいただければと思います。そうしたら、土井委員のお手が挙がっていますので、土井委員どうぞよろしくお願いします。よろしければ、カメラをオープンにしていただいて。

○土井構成員
 土井です。御説明ありがとうございます。質問は電子化のシステムに関してです。運用のほうは、4つの資産を一括して委託運用されているというお話だったのですが、電子化のほうはそれぞれ個別にされているとすると、かえって手間になり、コストも高くなるように思うのですが、この辺りは一括して電子化するという、共通の部分をやって後はそれぞれに合わせてカスタマイズするというやり方もできると思うのですが、そういうような方式が取れない理由があるのであれば、その辺りを教えていただければと思います。よろしくお願いします。

○勤労者退職金共済機構理事(西川)
 システム担当の私からお答えいたします。そもそも経理ごとに退職金制度の内容自体がかなり異なりますので、業務系のシステムを完全に同じシステムに乗せるというのが難しいというのが実態です。ただ、共通基盤というサーバについては全経理相乗りさせていまして、そういった形でコストの低減は図っています。

○土井構成員
 分かりました。そういうやり方をされているとすると、規模の少ない所はどうしても電子化システムの負担は高くなると、そういう理解でよろしいでしょうか。コスト高になりますよね。

○勤労者退職金共済機構理事長代理
 はい。資産運用額が一番小さな清酒業や林業、これは特退共グループとして建設業と同じですが、規模が全然違いますので、同じようなものを導入すると、やはりコスト高になると考えています。

○土井構成員
 なので、電子化はされていないということなのですか。

○勤労者退職金共済機構理事長代理
 建設業、建退共は電子化を導入いたしましたけれども、清酒業と林業のほうは導入ということは当面検討していないということです。

○土井構成員
 分かりました。ありがとうございます。

○今村主査
 よろしいでしょうか。まだ、若干議論の時間は残っていますが、いかがでしょうか。これは必ず聞かなければいけないこと、例の長期未更新者、それから林退共、清退共の加入促進等は、構造的な要因が背後にあって、なかなか数値的な目標は達成できないと。しかし、先ほど私が申し上げましたように、長期未更新者に対してはきちんと分析をして、いろいろなアンケートをして、金額が大きい方は制度が改定されるまで待っているということ、金額が少ない方は面倒というような、非常に詳しく分析をされて戦略を取っておられるというのが非常に印象的なのですが、例えば30.1万人の住所が把握できていないとか、いろいろな構造的な要因がまだ残っていると思うのですが、それについては御努力の中でどういうふうに今後更にいかしていくかということをお聞かせいただければと思います。

○勤労者退職金共済機構理事長代理
 今、主査のほうからお話があったのは、建退共の長期未更新者のことで、18ページのちょうど真ん中にピンク色で住所情報を把握していない者が約30万人いるというところです。この4年間いろいろな調査をすることによって、長期未更新者対策の構造的な分析がようやくできて、こういう方々がどれだけいるかというのが分かってきました。住所を把握している方々に対しては、有効な対策というのがあって、これをどんどん進めていくことになりますけれども、これだけ調査をしても住所情報を把握できない人、この30万人を例えばゼロにしていくというのは、これは困難なことであろうと思っています。だからといってあきらめるというわけではありません。例えば18ページの左側、不特定多数の方を対象にする形でマスメディアを活用した広報というのをやっていますが、こちらについてもどういうメディアを使って、どの時期、どの時間帯、どういうセリフを使うのがいいのかというのは当然工夫をしていこうと思っています。
 この住所情報を把握できていない30万人の方ですが、丁寧に調査をしたことで、属性、特徴が分かってまいりました。簡単に申し上げますと、未更新の期間がいずれも10年以上の長い人であるということ、年齢層も高い、もしかするとお亡くなりになっているかもしれないということです。引き続き努力はしていきますが、制度的な手当としては、このまま残すのではなく、解消することも必要ではないかということで、厚労省さんとよく御相談させていただいて、当然、次もまた調査、広報はしっかりしていくつもりですけれども、次の5年ではここの部分をどうするかというところを、是非役所と一緒にメスを入れていきたいと考えています。

○今村主査
 ありがとうございます。住所の確認ができていないというのは何か機構のミスのように思われるのですが、これはもともと制度自体が、事業者に対して支援を行うという制度が発足だったので、その当時は個人の住所を聞くという前提がなく、それがここに来てこういうふうに問題になっているということです。最近については、全部住所を把握をしているという御努力をされているのだと思います。

○勤労者退職金共済機構理事長代理
 そうですね。10年前から住所を書いていただくという形になりましたので、ここ最近の方は住所が分からなくなっても追跡調査をして、そこはできるのですけれども、10年より前の方の追跡は難しくて、そういった方がほぼ30万人の中に入ってくるというところです。

○今村主査
 当初の制度設計の問題があって、大変な御負担を掛けると思いますけれども、是非できるだけの御努力をしていただければと期待しています。いかがでしょうか、私はつなぎで質問をしましたが、何かありましたら。いかがですか。オンラインの先生、いかがですか。
 これは見込評価にも関わってくることだと思うのですが、例えば一番最後、その他の事項でしたか、その他業務運営に関する重要事項という所の数量指標に関しては、退職金共済と財産形成促進事業との連携でという数値だけで、しかしセキュリティ問題とかいろいろなものが入ってきて、非常に質的な定性的な要素が大きいと思うのですが、つまり何が言いたいかというと、こういう問題というのは何かあったらそれで一瞬にして全てが崩壊してしまうというリスクの中で、勤労者退職金共済機構さんは目に見えないことに対して非常に外には伝わりにくい努力を組織の中でしていらっしゃるということをどういうふうに評価するかという、非常に重要な問題だと思うのです。
 理事長のリーダーシップの下で2つ非常に重要なことをやっておられて、資金運用とセキュリティに関してですけれども、私の言葉で申し上げると目利き人材の育成、それから、なおかつ外部の目利き人材との連携というのを、コミュニケーションを非常に密にして達成していらっしゃるというところです。これは評価項目になくて、評価の対象になりにくいと我々は見落としがちなのですが、非常に努力をしておられると。この前、経産省から出された未来人材ビジョンでも、縦割りの組織の中ではなくて、組織を横に連携してうまく動くような人材がこれから必要だと指摘されていますので、大変な努力だと思います。
 お聞きしたいのは、もう1つ、アンケートをして情報共有をするという、先ほど安井委員からもWEBの情報を利用するようにもっと努力をお願いしたいという話、組織内での人材育成、その人材に対してどういう情報を共有させていくかという、つまり6番目の資金運用規模という大変な公的な責任を持っている組織で、何か事があれば大変なことになるという中で、いかにそのための努力、事前にリスクを分散するか、回避するかという努力は、大変な努力で目に見えないと思うのです。2つのことを聞きたいのですが、目利き人材の育成、先ほどちょっとおっしゃっていましたけれども、会話を一生懸命して一人一人人材を見分けていくという大変な努力、それからいろいろなコンサルティングの企業に委嘱をするにしても、コンサルティングの人材だって幅があるわけで、その中で飛び切りいい人材をいかにして機構に引き付けるかとか、そういう問題は非常に大きな問題として残っていると思うので、その辺の目に見えない努力をどれぐらい成果の評価に反映できるかということ、もうちょっと努力の具体的な内容をお教えいただければ我々も納得できるかなと思うのです。
 2つのことです。人材の育成、外部の目利き人材との連携、それが1つです。もう1つは、経営情報の有効な取得とその組織内での情報共有の話です。その2つについて、これは数値目標としては余りきちんとうたってないのですが、実はものすごく重要なことだと思うのです。どこかポイントとして、まず人材育成についてお話いただければと思います。

○勤労者退職金共済機構理事長
 それでは、理事長からお話をいたします。最後でお話をしようかと思ったのですが、2年前のこの会議でも申し上げたように、うちの人材育成については、実務はものすごくよくできているのです。退職金を払う、退職金を集めるという、これは厚生労働省というか、役所の文化でうまくいくのです。法律に基づいてこつこつと、それ以外のことはやらない、これはこれで完結しているのです。ところが、資産運用やシステムというのは先端的な分野ですから、役所の文化では全く通用しません。事が起こって何かするというわけにはいかないのです。そのためには、2年前に申し上げましたが、例えば研修やOJTのようなもので養成できるわけがないのです。一番簡単にできるのは、大きなプロジェクトを掲げて優秀なコンサルタントを集めて、その人たちと徹底的に議論をして、その結果、いわゆるスキルだけではなくて、仕事に対する取組姿勢、これが大事なのですが、クライアントファースト、説明責任、これは役所の文化には全くないのですが、そこを明確にしていくということが大事なのだと思うのです。
 そこで一番苦労したことは、人材もいないのにプロジェクトができるのかと、まずそう言われるわけです。それを「俺がやるから大丈夫だ」というのを信頼してもらうのに、かなりのエネルギーが要りました。それができると、今度は相手のコンサルタントのトップが「そんなこともやって大丈夫か」という話になって、これは相手のクライアントのトップと話をしないといけないのです。
 さっき、先生がおっしゃったように、コンサルタントのファームにはピンからキリまであるし、優秀なファームなコンサルタントにもピンからキリまでいるわけです。そこで、最高の人を持ってくることはうちでは無理なのですが、最高の次ぐらいの人を持ってくるのは可能です。私もコンサルティング業界に4年ほどいましたが、一言で言えばクライアントのトップのレベルに合うものなのです。トップがぼんくらだったら、ぼんくらのコンサルタントが来るのです。だから、もし私の所に来ているコンサルタントがぼんくらだったら、私がぼんくらだと。優秀なコンサルタントが来れば優秀なのだと。こういうことなのです。それだけの話なのです。
 機構の中で何が大変だったかというと、資源を投入するかどうかなのです。予算を入れるかどうかです。さらにシステムについては中計期間を超える様な長期なプロジェクトはけしからんと、こういう話になるのです。だけど、今まで50年間何もやっていないわけだから、当然5年で解決できるようなプロジェクトはありません。私にとって大変ラッキーだったのは、厚生労働省の情報セキュリティのトップは、厚生労働審議官、ナンバー2だったわけです。ナンバー2の方と直接お話ができたので、割と上のほうから話が進んだということなのです。下から積み上げていたら、多分できなかったと思います。
 先ほど先生がおっしゃったように、その他業務運営に関する重要事項というのは、私にとっては「その他」なんかではないのです。これが、機構では最大の重要事項なのです。最後に少しお話しようと思いましたが、独立行政法人通則法が改正された年に私は着任いたしましたが、独立行政法人通則法の改正の趣旨は正にここなのです。だから、これが「その他」になっているのかよく分からないのです。私にとって、これ以上重要なものはないと思って取り組んできました。
 すみません。先ほど安井委員に厳しく怒られましたが、おっしゃるとおりなのです。私は覚えています。大地さんに当時言ったことを。これが民間でしたらトップが言えば翌日直ちに動くのですが、ここでは1年、2年は掛かるのです。私も来た頃は血気盛んだったから、そんなことは許さなかったのですが、70近くなって、大分年を取ってきて我慢強くなりました。
 要は、人材育成について言えば、大きいプロジェクトを一緒にやるのが一番大事で、さらにやるだけではなくて、トップがコミットして相手のトップとやり合う。だから、今回の中退共のプロジェクトも、通常はステアリングコミッティとかいろいろありますが、そのほかにトップミーティングを入れているのです。3か月に1回ぐらい、コンサルの社長と私とベンダーのトップとで行うミーティングです。つまり、下から上がってこないような話をそこで話すのです。教育はやはり上からなのです。子供にいくら英会話を勉強しなさいと言っても勉強しない。親がちゃんとしない限りはしないのと同じように、やはり教育というのは上からだと思っています。以上です。

○今村主査
 ありがとうございます。大分時間も近付いてきました。そういう御努力、例えば40ページに会議やりましたと、欄に人数を書いてありますけれども、これは聞き流しがちですけれども、こういうものを通じて、人材のエキスパートとの情報を共有して、組織にどんどん浸透させていくという、そういうレジリアントなフレキシブルなアジャイルな組織を作ってこられたと、そういうふうな理解でよろしいですか。

○勤労者退職金共済機構理事長
 そのとおりです。それに議事録を必ず取っています。役所の文化だと議事録はほとんど出てこないのですが、議事録を必ず書いて皆で共有するということを毎回やっています。そこで必ず私は発言しています。以上です。

○今村主査
 ありがとうございます。いかがでしょうか。

○安井構成員
 正にその他の業務の所なのですが、本当に素晴らしいことをなさっていると私も思っております。スチュワードシップの活動報告会等に力を入れる一報、勤退共の資産をESG投資に振り向けることなどは、投資効果についてまだ実証研究が不十分なところがあるため、ESG投資のリスクを取るよりもトップとのエンゲージメントを通じてより良い投資を行っていくと御説明を受けておりました。
 そういった中で、今年の骨太の方針を御覧いただきますと、「スタートアップ(新規創業)への投資」というのがあるのは御案内のとおりだと思います。この人口減少社会の中でスタートアップが本当に必要になってきていると思うのですが、どのようにサポートしていくかというところに、政府は、年金保険等の長期運用資金がベンチャーキャピタルやスタートアップに循環する流れの形成に取り組むとしています。もちろん、勤退共ではなかなかリスクは取りにくいということはあるかもしれませんが、だんだん利益剰余金も貯まってきて、ある程度リスクを取っていく余裕ができたのであれば、その一部分を使って、こういったスタートアップへの投資をしていくようなファンドに投資するとか、そういった試みをされていくのは、日本経済に貢献するのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○勤労者退職金共済機構理事長
 これは理事長ではないと話ができないと思いますので、私のほうから経営哲学を申し上げますと、まず個人的にはやりたくてしょうがないのです。個人的にはです。ただ、ここは、年金とうちとの圧倒的な違いは、うちは積立型なのです。年金は賦課型なのです。賦課型というのは自分の掛けているものは自分でもらわないのです。だから、何か問題が起こったときには、最終的には国から税金の補填がないわけではない。うちは、我々が失敗するとダイレクトにその人の退職金が減るわけです。したがって、過剰なリスクは取ってはいけないと思っているのです。
 これも、来た頃は、安井委員のようにちょっと実験してみないかという話もしたんだけれども、それは駄目だと、うちはスタッフがちゃんとしていますから、理事長の気持ちは分かるけれども、それはやってはいけませんよということでした。ですが、やはり0%の金利がずっともし続くとなると、4資産だけでいいのかなというのはずっと頭の中にあります。ただ、理事長として大方針を出しているのは、ほかのそういう機関でも評価が定まっていないチャレンジングな試みはすべきではないということです。なぜかというと、6兆円持っていると、いろいろな方がいろいろなことを言って、こういうのをやってみないかとか、いろいろあるのです。やらせたいという方も中にはいるわけですが、それはやはり我々の哲学としてはまずいだろうなと思うのです。私も70ですから、もうほかの仕事はしませんけれども、もうちょっと若ければ、ほかでやる話かなと思っています。ここでは申し訳ないけれども、残念ながらできないということです。

○安井構成員
 哲学についてよく理解できました。ありがとうございました。

○今村主査
 どうもありがとうございました。それではよろしいでしょうか。今日はもう1件ありまして、中期目標見込評価について御議論いただければと思います。年度評価と異なる部分のみ、評価の要約の記載内容を中心に、簡潔に御説明をお願いいたします。

○勤労者退職金共済機構理事(小林)
 それでは、資料の3-1に基づいて御説明申し上げます。2ページを御覧ください。自己評価の項目の一覧です。今回、見込評価につきましては、第1のⅠの1の一般の中小企業退職金共済事業につきましてはS、建設業退職金共済事業と第4のその他業務運営に関する重要事項、この2つにつきましてはAと自己評価させていただいております。その他の事項については全てBということにしております。
 今回は見込評価においてS評価にしました中退共を中心に、S評価にした理由を御説明申し上げたいと思います。今回御報告させていただくものは、まず一連の改革ですが、52ページを御覧ください。平成29年度のこちらの有識者会議でお示しさせていただいております第3期中期計画のときのローリングプランです。それに沿って実施をしてきたということです。
 右下の青い部分ですが、課題を書いています。第4期の中期計画の課題として、資産運用とシステムを上げています。この分野は、特に環境変化が大きい分野であったということに加えまして、私ども中退共の使命が、自力で退職金制度の導入が困難な中小企業の退職金制度導入を支援するということで、これを実現するために必要な分野であると考えており、以前は中小企業がなぜ独自の退職金制度を導入できなかったかというと、退職金の計算などの実務面が障害になっていましたが、ソフトウェアの発達でこの障害は低くなっていると考えられ、最近では超低金利の政策の下でということとサイバー攻撃の横行という環境で、資産運用と情報セキュリティの分野が障壁になっているのだと考えております。人生100年時代、機構は、今申し上げた障壁を取り除いた退職金制度をきちんと運営していくということが、非正規労働者の方も含めた労働者の老後の生活の安定の観点からますます重要だと考えています。
 左上の資産運用について取り組んだこととして、10ページを御覧いただきたいのですが、取組を一覧でまとめています。その左上に赤で囲んだ所、「機構の特性を踏まえ」という一文から始まっていますが、機構の特性は、先ほど理事長が申し上げましたとおり、賦課型ではなく積立型であるというような機構の特性を踏まえた上で、運用の基本方針は「安全かつ効率」ということを書いています。これは必要な収益を最低限のリスクで確保するということを定義いたしました。リスクテイクは累積剰余金の範囲内という方針を打ち立て、資産運用委員会や厚労省労政審との間に認識を共有することから開始をしました。また、基本ポートフォリオはゼロベースから見直し、その際に国内金利見通しについて、フィデューシャリー・デューティーの観点から、内閣府ではなく独自の見通しを使用したりもしております。厚労省の勤生課長をブリッジ役として、厚労省の労政審、資産運用委員会との間の情報、認識共有の体制を整えたというガバナンス改革も実施しております。
 その後も、運用受託機関の見直しやマネージャー・ストラクチャーの見直しもゼロベースからやっております。8ページの4つ目の○の所に書いてありますが、運用受託機関の見直しは、リスク分散体制のために行ったのですが、面談を100時間近く費やしていまして、この面談には理事長も参加をしているところです。
 7ページ目は自己評価Sについての考え方をまとめたものです。上から7つ目のポツの所です。こうした改革を実現することで、中退共における資産運用のあるべき姿のモデルを作り上げることができたと考えています。その結果、委託運用部分における特退共との合同運用も実現しました。これらの改革の総仕上げとして、これまで経理ごとに制定されていた資産運用の基本方針の一本化も図りました。内容的には基本ポートフォリオ、マネージャー・ストラクチャーの見直し、合同運用などの改革のエッセンスが全て盛り込まれています。
 その結果の運用実績についてですが、7ページの2つ目のポツを御覧いただければと思います。マイナス金利政策下にもかかわらず、この5年間で4,300億円の運用収益を出しております。今の低金利下の中で、1%という予定運用利回りを維持しております。かつ、800億円近い付加退職金支給が決定されてもなお、1,460億円の利益剰余金を積み上げて、リスクに見合う必要な水準をほぼ達成することができております。
 11ページに付けていますが、結果に対する資産運用委員会からの評価です。2つ目の○と4つ目の○の所ですが、資産運用委員会での熟議を経て実行したこの成果は、機構の資産運用業務を構築し直したといっても過言ではないと、それから独法通則法改正とそれを踏まえた中退法改正において求められたガバナンス強化とリスク管理体制の観点から顕著な成果を上げたと、高く評価をされています。
 7ページの3つ目のポツです。この資産運用で達成された強固な財務基盤が、加入促進の際のアピールポイントとなっております。加入者の増加が運用資産の残高を大きくしていまして、収益基盤の強化に寄与しております。この循環が車の両輪のように働いて、制度の持続可能性を高めている状況です。
 5つ目のポツです。システムの再構築プロジェクトですが、中退共システムは半世紀にわたってほとんど手付かずの状態でございまして、予定運用利回りが変更された場合に、システム対応に2年も掛かるというような状態に陥っていました。機構の情報セキュリティの観点で見ても、以前は不十分な知識で、属人的な対応を行っていたという実態がありました。
 その他業務運営に関する重要事項の情報セキュリティ対策の所でも御説明しましたが、46ページにシステム管理の取組の一覧を付けていますけれども、まずは情報系システム、業務系システムの物理的分離、USBメモリの取扱い厳格化などをやっています。物理的分離については、これを行った直後に世界的なサイバーテロが発生して、正に間一髪、深刻な被害を免れたと考えております。そうした緊急対応をしつつも、ガバナンスの構築をするという観点から、外部の有識者の方を招聘して、各種委員会を新しく作ったということが、左側のところに書いています。
 リスク管理、コンプライアンス委員会については、ガバナンスのプロの弁護士の方に来ていただき、委員会の議論を経てリスクマップを作成し、機構のテールリスクは情報セキュリティと資産運用の2つだということを役職員全体で共有しました。そして、当該分野に資源投入を集中させたということです。さらに、情報セキュリティのためのCIO補佐官報告会、情報セキュリティ有識者委員会を設けるとともに、主たる責任部署が情報セキュリティについては総務部であることの明確化を図るということで、これがガバナンス体制の構築ということです。
 また、第3期中期計画の最終年度に中退共システムの再構築プロジェクトを立ち上げたところですが、理事長のリーダーシップの下で総動員体制で取り組んでいます。これは、先ほど会議に参加した時間ということで御説明しましたが、45ページ、全体で業務部門の人間がどれぐらいこのプロジェクトに参加しているかということがお分かりいただけるかと思います。合計で1,303人の参加となっています。このような取組を行っている中で、先ほど理事長からも御説明申し上げましたが、人材養成について成果が出ているものと考えています。
 7ページに少し触れていますが、大プロジェクトをやっているということで、1つは資産運用の関係で、基本ポートフォリオ、マネージャー・ストラクチャー見直しという、年単位の大きなプロジェクトを行い、資産運用委員会でもいろいろ指摘を受けて、それに対応していく中で実践型OJTとなっていると考えています。システム再構築のほうも、優秀なコンサルタントとの協働作業をしていく中で、最高のOJTだということで、人材養成に大きな成果を出していると考えています。
 また、構築されたガバナンス体制が適切に機能するためには、統制環境や組織文化も重要だと考えています。これは内部統制の強化の項目とも関連しますが、7ページの下から2つ目のポツですが、以前機構の中で蔓延していたと思われる前例踏襲、他人任せの対応を一掃するため、公的な機関、金融を扱う専門機関として、高い職業倫理の徹底と文書決裁ルールの徹底による責任の明確化、この2つの重要性を理事長が折に触れて発信し、組織に根付かせてきています。高い職業倫理には、誠実さ(インテグリティ)、説明責任(アカウンタビリティ)、法令遵守(コンプライアンス)がありますが、そのうち機構に欠けていたのが説明責任だと考えており、そのような認識の下で、資産運用委員会やこちらの有識者会議での資料作成や説明も機構の説明責任を果たす一環と捉えて、機構全体で対応しているところです。
 このように、中退共は資産運用面で運用実績として1%の予定運用利回りを維持するために必要な剰余金水準を確保するだけの運用収益を上げました。不安定な単年度の超過収益率の動向ではなく、制度の安定性を中期的に確保している財務基盤を確立したこと、財務基盤の強化を通じて、持続可能性の向上につながる加入促進にも貢献したこと、中退共システムの再構築という巨大プロジェクトを着実に進めたこと、資産運用とシステム化におけるプロジェクトの実行過程で人材養成面でも成果を挙げたこと、中退共であるべきモデルを構築して他の共済制度にも波及させたことなど、独法通則法改正の趣旨に沿った改革を実現しました。機構全体の成果も複合的、重層的に寄与しておりますので、S評価にも相当すると考えました。
 あと、建退共についても御説明申し上げますが、おおむね3事業年度の報告と同様ですが、中期計画期間中の長期未更新者対策の取組によって、今村主査からもお話がありましたが、住所情報を把握できたものと、そうではないものの分別ということは、成果の1つと考えています。また、令和2年度末に導入した電子申請方式も、国が進める建設キャリアアップシステムとの連携強化を図って、普及促進フェーズに進んでおりますので、3事業年度と同様に、全体評価をAとしております。
 他の事業の評価項目は、おおむね3事業年度で御報告したとおりですので、説明は省略させていただきます。以上でございます。

○今村主査
 ありがとうございました。それでは今、報告のありました見込評価について、御意見、御質問等がありましたらお願いします。オンラインの先生、酒井先生、土井先生いかがですか。酒井先生、どうぞ。

○酒井構成員
 大した質問ではないので、何か最初にするのは恐縮なのですが、先ほど物理的にシステムを隔離することによってサイバーテロを免れたというようなお話があったかと思うのですが、こういうサイバーテロの脅威というのは高まっていて、更に新しい脅威に変わりつつあるように思われるのですが、機構では、基本的な考え方としてはどのように考えられているのでしょうか。その点をちょっと確認させていただけたらと思います。

○勤労者退職金共済機構理事(西川)
 それでは、システム担当の西川のほうから御説明いたします。おっしゃるとおりで、サイバー攻撃の内容というのは本当に日進月歩ですし、やっている相手もかつての愉快犯から、ビジネスとして行うものが現れ、最近では国が主体となった攻撃もあったと認識しております。そういった中で、以前はいかにサイバー攻撃に遭わないか、被害を防ぐかということを目指していたと思いますが、それが攻撃を受けて、例えばメールを開けてしまったときにどう対応するかという、そういう方向に切り替わっています。もちろん、標的型メール訓練等で、できるだけ開けないようにという工夫は凝らしているわけですが、基本的には、もし開けてしまったときに、被害を最小限に抑止するための対策も講じることが一番重要になっていると考えております。
 そのためにやっていることとしては、抜線訓練というものがあります。これは、一声、感染の恐れがある、と職員が叫んだときに、どのくらいのスピードで機構全体のLANケーブルを抜くことができるか、そしてその報告を集約して全ての端末で抜けたことを確認することができるかという訓練を、大体半年に一遍ぐらいはやっております。当初は、半日掛かったようなものが、最近では5分もあれば機構全体のLANケーブルを抜いて、全て結果が報告されるという状況になっておりますので、エスカレーションですとか、情報の伝達ですとか、そういった非常時、インシデント発生時の体制は整えることができたのではないかと考えているところです。

○酒井構成員
 分かりました。ありがとうございます。

○今村主査
 理事長、どうぞ。

○勤労者退職金共済機構理事長
 大変大事なことなので付言させていただきます。パワーポイントの51ページを御覧ください。うちのテールリスクは、先ほど説明があったように、資産運用と情報セキュリティです。情報セキュリティについて言うと、1,000万件の銀行口座番号付きの個人情報があります。私が来たとき、ちょっとやられれば直ちに全部出てしまうという状況でありました。このようなリスクは、ほとんど機構の人間は認知しておりませんでした。厚生労働省も多分そうだったと思います。
 私の経営哲学は、人間は必ず間違える、間違えることを前提にやるということです。当時、物理的分離と言ったときに猛反対がありました。予算は付けないと。その前にやることがあるだろうと。どこかの所の大問題は、物理的分離はされていたけれども、125万件の個人情報が出て、国会でも大変問題になりました。そういうことが起こるからこそ、物理的分離をするのだ、ということで来たときに総務部長に聞きました。「ここは、USBメモリって大体何本ぐらいあるのだ」と聞いたら、「さあ、数えたことありませんが、40本ぐらいですかね」という回答でした。「そんなに少ない訳ないだろう。私の感じでは300本はあると思うよ。調べろ」と言ったら、305本でした。
 先ほど抜線訓練と言ったけれど、抜線はするのだけれど、全部抜けているかどうか分からない。ケネディの13デイズという映画でありましたが、アメリカはキューバからミサイルが飛んできても全部打ち落とせると。本当だなと言ったら、分かっているミサイルは打ち落とせるのだと。つまり、分かっている線は抜ける。分かっていない線は、抜けなかったら全部出てしまうという状況だったのです。別にそれは批判しているわけではなくて、それが事実でした。
 そこでやったのがこの表です。このパワーポイントで、右側がかつてあった委員会、評議員会とか参与会とか運営委員会です。左側全部が着任して作った委員会です。一番上の資産運用委員会は資産運用テールリスクに対する陣立てです。その下のリスク管理からシステム化委員会までは、主に情報セキュリティなのです。情報セキュリティについて言えば、最初、慶應義塾大学の徳田教授に、土井構成員の今の上司かもしれませんが、彼が政府のCIO補佐官というか情報セキュリティ補佐官のトップをやっていまして、拝み倒して来てもらいました。その後、NICTのほうの理事長になられたので、今、井上大介さんほか、そうそうたるメンバーに来てもらっています。ここで見てもらっているというか、委員会と書いてありますが、相当議論するのです。
 あと、リスク管理・コンプライアンス委員会というのは、超一流ファームの超一流弁護士に来てもらっています。この方は会社法のプロ、ガバナンスのプロです。それから、情報セキュリティ有識者委員会はCIO補佐官を4人変えて、ようやくプロに来てもらいました。それから、システム化委員会というのは、当時情報セキュリティ機器を各事業部がほとんど勝手に買って勝手に使っていたという、そういう恐ろしい状態で、それを中央集権でもって全部こちらで見るようにしたということです。
 これは何を言っているかというと、これは今村先生と本当は今日ここを議論したかったのですが、我々の機構は独立行政法人なのですが、独任制でいいのかなということなのです。恐らく独立行政法人の中で、こんなすごいリスクのある法人というのはないと思うのです。例えば資産運用だけでしたらありますし、情報セキュリティだけならあるのだけれど、全く違った業務が2つくっついていて、そのリスクが半端ではないというのを独任制でなんて、私は民間でガバナンスというか代表取締役をやっていましたから、こんなのはあり得ないよねということで、この4つの委員会を作ったのです。ですから、これは独任制を補完する委員会なのです。ここが非常に大事でして、当初は相当議論しましたが、今は議論も絞られてきており、かなりワークしています。
 それから、今度は資産運用について言いますと、10ページですが、テールリスクを、左上の中計ローリングのときにローリング計画を作って、右下の赤い丸囲み、要するに基本方針の一本化、ここで決着するのですが、この間にこれだけのことをやっているのです。これだけのことをやっているのですが、実は資産運用における最大のリスクというのは、ほとんどのリスクは、1行目の厚生労働省による財政検証で決まるのです。我々が決めているのではないのです。ここでほとんど決まるのです。90%ぐらいです。ここは、厚生労働省の方によく考えていただきたいというのが1つです。
 それからもう1つは、ここに書いていないのですが、先ほどお話があったように、システムに予定運用利回りを変えるのが2年以上掛かるのです。この変化の激しいときに、ウクライナ侵攻があったと、アメリカが金利を上げている、では予定運用利回りを変えるといっても2年以上掛かる、本当にこれは大変だというので、システムの大改定プロジェクトをやったのです。
 だけれど、USBメモリは何本あるの、30~40本と言っていた段階で、そんな大プロジェクトをやったら、しかもうちはドメインが退職金なのです。「金」が付いているのです。世界のサイバーテロリストのロングリストには全部うちが載っている筈です。「金」が付いているのだから。「金」が付いている退職金が大プロジェクトをやったぞといった途端、世界各国からどんどんサイバーテロが来ると、だから物理的分離をしたと、こういうことなのです。
 それができない限りは何もできないのです。これは、最終的には厚生労働省さんのトップが理解してくれて、予算を付けてくれたというか、どちらかというとこちらで捻出したのですが、だけどここまで来ました。ここが最大のうちの問題なのです。ですから、今後は次の財政検証でどうなるかで、うちのリスクが決まるということなのです。あと、システムが終わるまでは、なんとかサイバーテロが来ないで欲しいということ。今、物理的分離をしていますから、大丈夫だとは思うのですが、でも万全というのはないのです。
 最後に一言だけ。私が非常に有り難かったのは、今年の土曜日の深夜に、かなり多くの情報がどんどん入ってきていて、これはDoS攻撃が起こったかもしれないという情報が入ったのです。そうしたら、土曜日の深夜ですよ。うちの若い職員2人が、電車に乗って機構に来て抜線してくれたのです。抜線しましたという報告が来たのです。これはうれしかったです。こういうところまで来ましたと、最後はちょっとPRですが、以上です。

○今村主査
 ありがとうございます。ちょっと言葉は悪いですが、例えば、bureaucratic red tapeというように、官僚主義的ことなかれ主義とか、PDCAで数値だけを目標にするという、評価の仕方自体に対する問題点も投げ掛けてくれたという非常に貴重なコメントだと思います。時間も限られていますので、土井委員、お待たせいたしました。どうぞよろしくお願いします。

○土井構成員
 土井です。どうも貴重なお話ありがとうございます。質問は2点ありまして、1点目は、機構全体でサイバーセキュリティ対策をされているということなのですが、システムとしては、ある意味4つのシステムが存在するわけなのですが、バックアップとかやり方が4つのシステムでは違っていると思うのですが、その辺りは問題なく行われているのかというところが、細かいことですが気になりましたので、そこを教えていただきたいということです。
 2点目は、先ほども今村主査から御指摘がありましたが、建退共でしたか、住所を追跡するのが難しいというのは制度的な問題であるわけで、そこを、本中期は致し方なかったかもしれませんが、次の中期に向けて、制度的な部分はもう変えようがないので、対処されて、コスト負担増加にならないようにどのようにされようとしているのか教えていただければ幸いです。よろしくお願いします。

○勤労者退職金共済機構理事(西川)
 システム担当の西川から、バックアップのお話について御回答いたします。確かに、業務系のシステムはそれぞれ持っているわけですが、バックアップについてはそれぞれの部署で取っております。ただ、データの収集方法等が違いますので、バックアップの方式については若干制度の間で異なるケースがありますが、バックアップについてはそれぞれに実施しております。

○勤労者退職金共済機構理事長代理
 2つ目、建退共関係の住所情報を把握していない長期未更新者について次の中期に向けてどう考えているかというところですが、今村先生から御質問があったときにもお答えしましたが、もちろん諦めるわけではありません。加入者全体を対象とする対策をより良いものにして、少しでもこの数を減らしていくことを目指していきたいと思っておりますが、この30万人を大幅に減らせるということはもう難しいということでございます。
 これは今、どういう状況になっているかと言いますと、長期未更新の方というのは、24か月以上掛金を納付していただいたけれども、3年以上更新なされていないという方です。したがいまして、退職金の請求があれば退職金をお支払いするということで、その分を責任準備金として積んではいるのですが、これが積んだままになっているというところです。そういった問題も含めて、この数をどのように減らしていく、あるいは、その責任準備金の分をどう対処していくのかといったことが問題になるかなと思っております。
 制度については機構だけで対処することができませんので、現計画の中で、こういった問題を明らかにすることができたというのが、自分たちにとっても1つの成果だと思っております。ではこれを次にどうするかなのですが、すみません、今ちょっと私からはどうしたいという答えを申し上げることはできませんけれども、建退共制度があります中退法の中にも、法律の目的として従業員の福祉の増進ということと、もう1つ、中小企業の振興に寄与するということがありますので、個々の労働者だけではなく、建設産業にとってどうすることがプラスになるのかということも踏まえて、厚労省、国土交通省ともよく相談して対応を考えていきたいと思っております。

○土井構成員
 どうもありがとうございました。建退共のほうは、今の御説明で理解できました。あと、最初の質問に対して、バックアップが一緒だったときにちょっと心配なのは、スケールの小さい、まだ電子化されていないところで2つありましたね。清酒と林業でしたか。そちらのほうは、多分、入力が手入力の部分、USBからの入力などがあって、ウイルスが入り込みやすいシステム、構成になっていると思うのですが、そこからバックアップの所に入ってしまうと、容易に入りやすいセキュリティホールになっているのではないかという心配があるのですが、その点は問題ないのですか。

○勤労者退職金共済機構理事(西川)
 ありがとうございます。おっしゃるとおりで、先ほどもハードウエアの面は手当てしても、どうしても人的なリスクがあるというお話がありましたが、USBメモリの扱いの部分というのは、ヒューマンエラーが発生する最たるものだと思っております。そのために、私どもは今、USBメモリの扱い方を非常に厳格にしております。業務系のシステムと情報系のシステムを物理的に分離していると申し上げましたが、使用するUSBも業務系と情報系では、厳格に分けて使用しております。
 例えば、もし業務系のデータを情報系にどうしても送らなくてはいけないというときには、一旦情報系のシステムに差したUSBは1週間使用することを禁じて、1週間たったところで、最新のウイルスチェックをかけて、ゼロデイウイルスへの対策をした上で、また使用するという、そのような厳格な扱いをすることで、まかり間違っても情報系から業務系にウイルスが入ることを防ぐような格好で対応しております。

○土井構成員
 どうもありがとうございました。安心しました。

○今村主査
 いかがでしょうか。どうぞ。

○志藤構成員
 質問とか意見というよりは、感想のようなものをちょっと述べさせていただきたいと思います。
 こちらの皆様が、本当にいろいろなリスクと、それからいろいろなハンディのある中で、こういう形で少しでも損をしない、少しでも増やしていけるようにということで、内部の体制も含めながら努力をしておられることに心から敬意を表したいと。感想として述べさせていただきました。ありがとうございました。

○今村主査
 貴重なコメントありがとうございます。機構の御努力、ここで通期でSという評価を今回御申請されているわけですが、各期ではそれごとに達成していると。しかし、通期で、それに加えて、業務方法指示を実現するために機構の中で独自に、先ほどの一覧表、組織表もありましたが、はるかに厳しい努力をされておられることがよく分かりました。
 それから、人材のスキルやコミットメントも非常に高くなっているというのですが、印象として、理事長の強いリーダーシップがあるから組織が回っているという印象があるのですが、もし理事長のリーダーシップがなくなるという言い方は変ですが、そういう監視がなくなったときに、本当に組織が動くかということについては、それがこのSの達成度にも関わると思うのですが、いかがでしょうか。組織が組織として独自に回るようなスキルとコミットメントがちゃんと達成されているかどうかという点ですが。

○勤労者退職金共済機構理事長
 それは私では分かりませんが、ただ、この会議で、2年ぐらい前から申し上げたと思いますが、私の最大の今の関心事というか使命は、次の理事長にどのような形でバトンタッチするのかということで、これが一番大事な仕事だとずっと申し上げてきました。この1年間、小林とか岸川とか西川とか、脇で見ている人は分かると思うのですが、私はどちらかというと次のことにものすごく一生懸命やっているのです。ただ、最近言い始めているのは、任期はあるよと。任期があるというのはどういうことかというと、新しい人が新しい目で見ることに意味があるのだから、私が交代した後は、いつまでも私のやり方をやっていては駄目なのだと。新しい人が新しいことを言ったときに、水野理事長はこうだったとか、そういうことを言ってはいけないと、新しい目で見直せと、どちらかというとそちらのほうが心配なのです。
 情報セキュリティについて、私がここまで来たなと思ったのは、深夜に若い人たちが駆け付けて抜線してくれたと、これはもう大丈夫だなというのが1つ。それから、資産運用については、基本方針をあそこまで書き込んでいますし、業務方針も書き込んでいますから、しかも資産運用委員の方は非常に立派な方がいらっしゃるので、そこはうまく継承していくかなと。あと、一番心配なのは、やはり制度問題なのです。これは厚生労働省さんに頑張ってもらうしかなくて、これは私が今やっているのは、厚生労働省さんから見ると、やや領空侵犯的な感じもあるのだと思いますが、やはり間に落ちるものを積極的に取りに行かないと、こういうことはうまくいかないのでやっていますが、それは次の理事長さんの方針次第でどうなるかは分かりません。そこは、私はコミットできないところであります。

○今村主査
 ありがとうございます。福澤諭吉の『学問のすゝめ』では、ナポレオンと今川義元を比較して、ナポレオンが捕らえられてもフランスの人たちは国を守り旧のフランスが残った。だけど、今川義元が捕らえられると駿河の国は一朝に滅びて痕なくなったという事例もあります。是非、そうやって御努力が継続することを期待しております。
 それでは、時間もそろそろとなりましたので、最後に法人の監事及び理事長から、年度中期目標期間における目標の達成状況等を踏まえて、今後の法人の業務運営等についてコメントを頂ければと存じます。最初に法人の監事から、続いて法人の理事長よりお願いします。

○勤労者退職金共済機構監事(鈴木)
 監事の鈴木です。隣におります塩田監事とともに監査業務を行っております。令和3事業年度の監事監査の結果につきましては、お手元の資料2-4の監査報告に記載のとおりでございます。法人の業務は、法令等に従い適正に行われており、指摘すべき重大な事項は認められませんでした。
 中期目標及び年度計画につきまして、若干意見を述べさせていただければと思います。監事といたしましては、重点化対象項目はもちろんのこと、そのほかの項目や課題についても本機構は真摯に取り組んでおり、おおむね期待に応える成果を上げてきたという印象を持っております。特に内部統制の取組につきましては、機構は持続可能な組織として制度の安定的な運営を行っていくことこそが公的機関として求められている使命と考え、統制環境の1つとして高い職業倫理が求められているということを、理事長が折に触れ繰り返し発信し、内部統制の強化に努めるとともに、統制活動としては、文書決裁規程を定着させ、責任の所在の明確化を図ったことは高く評価しております。コロナ禍という制約もあり、環境は厳しいですが、引き続き法令を遵守し、効率的、効果的な業務運営に努めていただきたいと思います。私からは以上でございます。

○今村主査
 ありがとうございます。それでは、法人の理事長よりお願いいたします。

○勤労者退職金共済機構理事長
 まず最初に、皆さん、今日は本当に大変いい議論をさせていただきました。気持ちよく帰れます。どうもありがとうございます。先ほどから申し上げていますけれども、私は平成27年10月1日に着任いたしました。これはエポックメイキングの年でして、その半年前の4月1日に改正独法通則法が施行された年であります。
 独法通則法改正の趣旨は、ガバナンスの強化でありまして、その一環として、機構は金融業務を行う中期目標管理法人に分類されたと理解しております。着任したときは、金融業務とは程遠い感じでありました。したがって、着任して直ちに着手したのはガバナンスの構築であります。民間企業に対しては、2006年5月の会社法の施行以来、2014年2月のスチュワードシップ・コード策定公表、2015年6月のコーポレート・ガバナンス・コードの全上場企業への適用と、矢継ぎ早のガバナンス改革が発せられ、その間、民間企業の代表取締役として株主総会、IR等で説明責任を果たしてきた者から見ると、着任直後の機構の状態は規程類の整備ができているだけで、ガバナンスはできていないのに等しい状況だったからであります。
 まずは、第3期中期計画期間中でありましたけれども、ローリングプランを断行いたしました。これと並行して内部統制の徹底も図りました。統制環境としては、先ほどから出てきましたけれども、機構は公的機関という側面と金融機関という側面の2つの面がありますので、高い職業倫理、通常の職業倫理よりも高い職業倫理を役職員に強く求めました。職業倫理というと誠実さとかが言われますが、これは倫理なのです。職業倫理といったら高潔性、誠実性もあるのですけれども、アカウンタビリティ、説明責任です。それからコンプライアンス、これは当たり前ですが、機構で明らかに欠けていたのは説明責任でした。世間の荒波に全くもまれていないので、先ほど厳しく御叱責を賜りましたけれども、説明責任については明らかに欠けておりました。ほかには4点、役職員に対し折に触れて話しております。
 1点目は、独立行政法人とは中央省庁から独立した法人組織であるという立法精神を理解して、独立の気力を持って職務に励んでほしいということです。誰かがやってくれるかなとか、厚生労働省から指示が来るまで待ってようとか、それでは駄目なのだと。独立の気力を持ってやるのが独立行政法人だと。金融業務の鉄則としては、問題が起こる前に対処するのだと。金融ショックが起こったらやりますよでは駄目なのだ、と。その前に対処するということなのです。
 2点目は、施策の結果は必ず総括して、失敗を成功の母につなげるということです。施策は失敗していいと言っています。その代わり、必ず総括をしろ、と。総括すれば成功の母につながる。問題は、総括しないからいつまでたっても何回やっても同じ失敗を繰り返すのだと。それだけはやめてほしいと。
 3点目は、施策の立案に当たっては、まずエビデンスを固めてほしいということです。調整から入るな、エビデンスを固めてくれと。エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング、これは民間では当たり前のことです。
 あとは、統制活動としては文書決裁ルールをはじめとした責任の所在の明確化です。誰が責任取るのということについては徹底いたしました。
 次に中期計画なのですが、中期計画というのは本来あるべき姿を到達目標として掲げて、そこに向かってエビデンスに基づく施策を立案し、その施策を実行するための資源投入を行って展開していくものです。この資源投入がなかなか難しいのです。私の経験ではなかなかできない。でも、それはおかしいのではないのかと。KPIというのは当然その進捗を測る有効な指標ではあります。カプラン教授のバランスト・スコアカードとかです。そうなのだけれど、それで終わってしまうのでは意味がないのです。要は、その結果はどうなったのかが問われるものなのだろうと思います。これが独法通則法で求められている中期目標管理法人の立法精神であると私は理解しております。
 ジョン・F・ケネディの言葉に「屋根の修理は晴れた日にしかできない」という言葉がありますが、ローリングプランで中退共の資産運用について言えば、まず行ったことは、中退共は平成20年に累積欠損金が3,500億円に上ったことの原因の分析をいたしました。エビデンスを固め、失敗を総括し、成功の母とする組織文化の構築に向けての第一歩でした。これは私の手元にありますし、この前、着任後の局長にも報告いたしました。
 今、ウクライナ問題の勃発により、グローバル経済の分断と、それに伴う世界的なインフレ圧力の高まりの対処として引き起こされている金融マーケットの大変動、それから国家間のサイバー戦争の脅威に対しては、屋根の修理はなんとか間に合いました。問題が起こる前に対処したわけであります。今までやってきたことは全て当たり前のことを愚直にやってきただけで、大向こうを唸らせるような施策はありません。民間だとこれでは許されないのです。大向こうを唸らせるような施策を一発入れないと株価が下がりますから。でも、ここはそういうことはないので、愚直にやらせてもらいました。ただ、どんな組織でも当たり前なのに、できていないことを変えることほど難しいものはないのだと思います。ここに改革の本質があるというのが、銀行、シンクタンク、メーカーと、異なる業態でガバナンス改革を担ってきた私の実感でありますし、改正独法通則法の精神もそこにあるというのが、私の理解であります。
 ローリングプランの実行の過程で、過去からの慣習にとらわれず、自ら変えるべきことは変えるという自浄作用が働き始めました。資産運用及びシステムといった先端分野における人材の飛躍的な底上げにもつながりました。この7年間、私の経営は勤労者退職金共済機構の前に、独立行政法人であるということを踏まえて行ってきたものであります。独立行政法人としてのガバナンスを構築したので、合併以来何年にもわたってできなかった資算運用における大改革の集成として、資産運用の基本方針も一本化ができたわけであります。
 機構に9年先んじている民間企業は、ガバナンスの整備に取り組んできましたが、会社法施行後16年たってもなお、先月行われた株主総会を見ると、不十分な先が散見されるのが実態であります。本日のテーマに戻れば、民間企業が10年以上の歳月を掛けて整備してきたガバナンスを、機構は6年足らずで整えたということを、どのように評価するのかということだと私は理解しております。この委員会は、独立行政法人の評価委員会であり、この6年間、機構の経営を評価してくれました。その評価が、我々役職員の励みになっております。本当にありがとうございます。感謝の言葉を申し上げて、私の話を終わります。ありがとうございました。

○今村主査
 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御発言内容について、御意見、御質問等がありましたら、どうぞ御自由にお願いいたします。オンライの先生方、いかがでしょうか。よろしいですか。それでは、大変熱のこもったコメントでありがとうございました。
 続いて、勤労者退職金共済機構の業務、組織全般の見直しについて議論していきたいと思います。はじめに、見直し内容について法人所管課からポイントを絞って簡潔に御説明いただきまして、その後に質疑応答という流れで進めていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○雇用環境・均等局勤労者生活課長
 それでは、法人所管課の厚生労働省勤労者生活課の課長の大隈です。よろしくお願いいたします。
 資料4を御覧ください。勤退機構の業務及び組織全般にわたる検討の結果並びに講ずる措置の内容の案です。1ページ目、前書きです。機構をめぐる環境の変化などを記載しています。新型コロナウイルス感染症あるいは気候変動等のグローバルな構造変化、人口減少・少子高齢化の進展などがございまして、金融市場についてもこうした環境の中で市場のボラティリティが高まっているということです。それに加えて、人口減少に伴って労働力不足に直面しているということで、ここでは、人への投資を通じて付加価値の向上を図ることの重要性、それから人生100年時代と言われる中で、長期化した人生を豊かに送る観点から現役世代における資産形成の重要性も高まっているかと思います。
 こうした中で、中小企業退職金共済制度については、引き続き安定的な運用、それから長期的に持続可能な制度とすることが求められていると考えています。そのためには、何より被共済者を安定的に確保するとともに、資産運用について安全かつ効率的な運用に務めていくことが不可欠だと思っています。それからもう1つ、財形制度に関しても、これは勤労者の生活の安定、財産形成という意味で、勤労者による貯蓄を原資とする長期・低利の融資が安定的に実施されることは引き続き重要かと思っています。
 こうしたこと踏まえて、機構について、次の5年間に向けて主要な事務、事業の見直しを以下のとおり考えていきたいと思っています。まず第1ですが、事務及び事業の見直しです。Ⅰ、中小企業退職金共済制度ですが、先ほど来出ています退職金積立金の運用が非常に重要なところです。この資産運用に当たり、これも先ほど来出ていますが、今年7月に資産運用の基本方針を機構で定めていただいています。この中退共制度の特徴である積立型の退職金制度でして、基本的に掛金収入と運用益だけが収入源であるという特徴を踏まえて、共済契約者、被共済者の利益のために、長期的観点から安全かつ効率的に実施するということで、将来にわたって退職金共済事業を安定的に運用していく上で必要となる収益を長期的に確保するということをまず目的とし、その上で、目標としては、それぞれの共済事業で中期的に必要となる利回りを最低限のリスクで確保するということで取り組んでいただきたいと思っています。
 それから、予定運用利回りの水準の設定が重要というお話も先ほどありましたが、これはリスクの水準と相互に関連する話でもありますので、機構からリスクに関する情報を適切に提供いただくことが重要かと思っています。それから、機構は資産規模6兆円を有する公的機関のアセットオーナーとして必要なスチュワードシップ活動に取り組んでいただきたいと考えています。
 2つ目、累積欠損金の処理についてですが、これは林退共に関連して累積欠損金を生じていますが、令和2年11月に累積欠損金解消計画を立てていますので、これに基づいて着実に累積欠損金の解消をやっていただきたいと考えています。
 3つ目、これも先ほどからお話が出ていますが、確実な退職金の支給に向けた取組です。こちらについては、現行の中期計画期間内の取組として成果が出ているアンケート調査による分析で、この企業間通算制度の利用拡大であったり、退職金額が少額の層については手続の負担を軽減するといったような、主な要因が分かってきたということですので、今後については行政と機構とでよく相談しながら、費用対効果の観点にも留意し、適正な未請求者比率の目標を設定した上で対応策を検討していきたいと考えています。それから、この中期計画期間内で住所情報が把握できた方々がいらっしゃいますので、この方々に対する取組を一層強化していきたいと考えています。
 4つ目ですが、加入促進対策です。中退共制度を長期的に持続可能とするためには、とにかく被共済者数の安定が必要で、そのためには加入促進が重要になってまいります。その前提としては、制度が安定的に運用されるための資産運用がございますが、その上でこの最近のコロナ禍においてオンライン説明会など加入促進の取組をやっていただいていますので、従来の加入促進方策に加えて、新たな取組を進めていただきたいと思っています。
 5つ目、業務の電子化についてです。まず、一般の中退共制度については、令和3年度から業務系システムの再構築プロジェクトを立ち上げていただいていますので、これを貫徹し、次期中期目標期間中、令和8年度に新システムの運用を開始していただきたいと思っています。利用者に対するサービス向上ということですが、情報セキュリティのシステム再構築プロジェクトの円滑な遂行を確保しながら、並行して取り組んでいただきたいと思っています。それから、建退共の電子申請方式について、これも建設キャリアアップシステムという行政のほうで取り組んでいるものと連携し、建退共の電子申請方式の利用を促進して、併せて一定の建設工事においては電子申請が標準化されることを目指し、オンライン申請の普及・拡充を図っていただきたいと考えています。
 各種の申請手続については、e-Govの活用などオンライン化の実現について検討をするということ、そのために必要な機構の中の体制についても検討していただきたいと考えています。
 Ⅱ、勤労者財産形成促進制度についてですが、ここは機構においては財形持家融資制度の部分を担っていただいていますけれども、こちらも現在の勤労者世帯の持家率などを見ると、引き続き必要な施策だと考えていますので、この財形持家融資制度の普及と利用促進に引き続き取り組んでいただきたいと考えています。
 第2の組織体制・業務全般に関する見直しについてです。4ページ目ですが、先ほどから非常に重要という議論になっていました内部統制の強化についてです。独法通則法の改正でガバナンスの強化が求められ、現行の中期計画期間で、機構にも非常に多くの取組をしていただいていますが、内部統制を引き続きしっかり進めていただきたいということです。具体的には、こちらに記載のとおり、統制環境として、例えば金融業務を行う公的機関にふさわしい高い職業倫理の徹底などに取り組んでいただきたいということと、統制活動として文書決裁ルールの徹底をはじめとした責任の所在の明確化の徹底を図っていただきたいと考えています。
 それから、資産運用についても、制定いただいた資産運用の基本方針にのっとって、仮に大きな環境変化が起これば改革に着手するといったような組織文化の定着も図っていただければと考えています。中期計画・年度計画の進捗状況については、PDCAサイクルを適切に機能させていただきたいと考えています。個人情報保護についても、先ほどから御意見いただいていますが、法律や機構の内部の規程に則って適切な取扱いを継続していきたいと考えています。情報セキュリティについても、サイバーセキュリティ基本法に基づく措置、インシデント発生時の迅速かつ適切な対応を確保するための組織体制と手順の浸透を引き続き図っていただきたいと考えています。
 最後に、専門人材の採用・育成です。これも御議論に出ていましたが、資産運用部門とシステム管理部門は特に業務に高い専門性が求められますので、専門的知識を有する人材を採用するというのが1つですが、もう1つは人材の育成としてOJT、資産運用委員会やシステムのプロジェクト、あるいはスチュワードシップ活動など、外部の専門家と接する機会なども多くあるかと思いますので、そうした機会も通じて専門的な人材の育成を図っていただきたいということです。説明は以上です。

○今村主査
 ありがとうございました。それでは、ただいまの説明について御意見、御質問等がありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。これからに関わることなので、御意見がありましたらどうぞお願いいたします。オンラインの先生はいかがでしょうか。安井委員、どうぞ。

○安井構成員
 最後の4ページ目の3番の専門人材の採用・育成なのですけれども、処遇体系の見直しということ、やはりこの資産運用部門、システム管理部門でも、特にサイバー系というのは最近その需要が高まっている部分で、賃金もかなり上がってきている部門だと思うのですけれども、そういった専門性の高い人材を獲得するために、ある程度競争的な賃金オファーをしないといけないと思うのですが、その辺はどのくらい機動的にできるのか。予算については多分上限等があるという中で、どうやって対応されていこうとしているのか。文章として書かれているのは、それはそれでいいのですが、本当にそこまでできるのかなというのがちょっと気になっているところです。

○雇用環境・均等局勤労者生活課長
 こちらは独法制度として予算の制約などがございますけれども、その範囲の中でできる部分は一定程度あると思います。あとは個別に、どういう人材がいるからどれくらい必要だとかいうような話の中で可能な部分もあるかと思いますので、そういう範囲でということです。

○勤労者退職金共済機構理事長
 44ページの給与水準の適正化のコメントが、従来からこう書かざるを得ないのだけど、適正化になっていないのです。マーケットデータから考えるなら、半分以下じゃないでしょうか。その程度のレベルの人で我慢をするのか、そうではないのかというような、かなり経営としては大事な問題で、取りあえず、今までは西川理事はほかに行ったら、当然倍は稼げるのだけど、やはりお国のためにという気持ちに訴えてやってもらっていますけど、持続可能ではありません。だから、この適正化をどう考えるか。いつまでも公務員と比べられたのでは、とてもじゃないけど仕事の内容が違いすぎるし、レベルが違うというのは失礼だけど、全然違いますから、そこは今後の問題としてやらないと持続可能ではないのです。
 更に言えば、うちがほとんどのお金を、自分の資産運用で稼ぎ出しているのです。掛金助成金というのは67億円ぐらいもらっていますけれども、人件費から何から何まで、基本的には全部自分の金で稼いでいるわけだから、余りつべこべ言うなよな、と。理事長に責任感があれば、そういう話になるわけです。そういう議論は、実は上のレベルではしています。ただし、どういう段階でどう踏み切るかというのはなかなか難しいので、タイミングだとかをよく見なきゃいけないのですけども、基本的に厚生労働省さんも、上のほうのレベルの人たちはそういう問題意識はあると思っていただいていいと思います。

○安井構成員
 ありがとうございました。

○今村主査
 ちなみに、機構はもう今、運営交付金というのはゼロですね。

○勤労者退職金共済機構理事長
 若干あるのです。

○勤労者退職金共済機構理事(小林)
 掛金助成とともに、運営費交付金として一部業務をするために若干ございますけれども、本当に僅かでございます。

○今村主査
 ありがとうございます。今の御指摘、安井委員の御指摘、非常に重要な御指摘で、ほかの機構でも同じ問題があって、限られた予算の中でいろいろと、こういう委員会では注文を受けるけど、それには予算が付きまとう問題だということは必ず指摘されるのですけれども、やはりこういう問題というのはフルーガルにいかざるを得ないところもあって、それこそ外部の委託という形での別の経費でその知識を吸収するとかという理事長の御努力は非常に重要だと思いますし、できれば優秀な人材を労働市場で正々堂々と引き寄せられるような、そういう賃金が実現すればいいなと思っています。その辺はとても重要でして、独法と政策側とで十分議論をして、できるだけ良い解決方法を検討していただければと思います。重要な御指摘、本当にありがとうございました。酒井委員、お願いいたします。

○酒井構成員
 私も同じで、専門人材の採用・育成というところに関して、質問ということではなくて、コメントという感じになるのですけれども、今、安井委員のほうからも御指摘ありましたけれど、やはり処遇体系の話ということで、主に給与面でいろいろと悩ましいところもあるというお話かと思います。これまでお話を伺っていると、やはりこういった業務が非常に特殊な側面を備えているのかなという印象を受けました。資産運用と同時にシステム管理を行うという、この勤退共独自の業務の性質といったものが非常に関わっているのかなというふうに思いました。そうであれば、やはり長期的な人材育成ということが重要になってくるのかなというふうに思いますので、このように書かれておりますけれども、こういった人材の採用・育成というのは、長期的な観点を忘れずに行っていくようなものであるというのが望ましいのではないかと思いますので、是非その方向で取り組んでいただけたらというふうに考えます。以上です。

○今村主査
 ありがとうございます。特にリアクションはありますか。

○勤労者退職金共済機構理事長
 ありがとうございます。長期的な観点が一番欠けているのです。だから、今度の第5期中期計画は、この独法通則法の考え方をそのまま読むと、厚生労働省さんが厚生労働大臣とともに長期的な視点で長期目標を作ってくれるということで、我々はそれを期待していますし、我々は長期的な視点のない長期目標は受けるつもりはありませんので、どうぞよろしくお願いいたします。

○今村主査
 ありがとうございます。土井委員、どうぞよろしくお願いします。

○土井構成員
 どうもありがとうございます。私もコメントになるのですけれども、今の最後の組織のところのガバナンスの話と情報セキュリティの話と専門人材の話、これは是非続けていただければ有り難いと思いますし、一方で、厚生労働省に限らず、他の独法でもやはりこの3点というのは非常に重要と思います。それがなかなか実現し得ないというのは、それぞれの独法が抱える問題もあるかとは思いますが、ここでできたものを、他の独法、特にまずは厚生労働省内の独法で共有していただいて、特に個人情報とかそういう意味で、情報セキュリティというところでは重要な側面を担われている厚生労働省の独法は多いと思いますので、まずそちらも併せて実施していただければと、厚生労働省のほうに、コメントというか、お願いできればと思います。よろしくお願いいたします。

○今村主査
 ありがとうございます。宮崎委員、どうぞ。

○宮崎構成員
 正にこの業務組織全般にわたる検討ということですので、今日のお話を伺っていて思ったことで、1つ長期的なこととして是非御検討いただければということでコメントさせていただきます。
 先ほど来お話を伺っていますと、理事長の独任制やガバナンスの問題、あるいは給与水準の制度の枠組みの課題なども伺っていますと、そもそも独立行政法人という枠組みでやっていくことが中長期的に見てフィットするのかということも、長期的な課題として検討いただければと思います。ほかの省庁などでも、特殊法人であったり株式会社形態ということで、運営費交付金にほぼ依存しない運営を行うのであれば、そういった選択肢もあって、実際の給与水準とか質の高い業務確保する観点から、どういった組織で運営を行っていくかが望ましいのかというのは、中長期的な課題としては選択肢としてはあるのかなと思っておりますので、そういった点も是非検討していただいた上で良い結論が出ればいいのではないかと思いますので、一応そういった視点があるということをお伝えしたいと思います。

○勤労者退職金共済機構理事長
 ありがとうございます。私から申し上げたいことは2点あります。経営の最大のイシューはトップのサクセッションプラン、これがないのです。それは、組織的にないというのが1つと、それからもう1つは余りにも性格の違う業務が2つくっついているという、つまり退職金を集めて払うという実務、しかも法律どおりにちゃんとやっていく業務と、資産運用とか情報セキュリティだとか先端的な分野があって、この2つを1人の理事長がやるというのは、なかなかやはり難しいのではないかということです。私の場合は、西川理事がいたからできたのであって、私ができたのではなく、西川理事がいなかったら多分できなかったと思います。多分、組織的に難しいのではないかというのが、これはずっと問題意識としてはあって、2年ぐらいかけて厚生労働省のトップの方にはお話はしてあります。
 それから次に、資産運用のように先端的な金融業務については、経営判断の重畳的な組織というのは、まず負けますよね。我々があって、その上に厚生労働省があるというのは、これはあり得ないです、経営判断としては。瞬時にそこで判断をし、資源を投入していかないと勝てない。例えば、日本のメガバンクでもなかなか苦しいと思いますが、メガバンクはそれで一貫しています。だんだん今、組織的には小さくなってきています。先端的な分野は大体パートナー制だとかですね。ですから、もともと無理なのではないかなというのは、別にここで言っているわけではなく、ペーパーとしても厚生労働省に提出していますが、やはりここを考えないと、次の5年というのは、どんな人がやってもなかなかうまくいかないのではないかなという問題意識は2年前から持っています。以上です。

○今村主査
 ありがとうございます。いかがでしょうか。

○安井構成員
 今のに関連してですが、サクセッションプランがないということなのですけれども、普通の上場企業ですと、指名委員会で次に誰が引き継いでいくかと考えるわけですよね。すみません、ちょっと勉強不足で恐縮なのですが、サクセッションプランがないというのはどういうことなのでしょうか。また、理想的にはどういうふうなサクセッションプランがあるとよいのでしょうか。

○勤労者退職金共済機構理事長
 私の理想としては、隣にいますけれども、総務担当理事が一緒に次の中期計画を作って、理事長の任期は5年ですから、私は作って退任しますが、それを持ち上がりで総務担当理事が理事長になるという。通常そうですよね。上場会社の場合には、経営企画担当の常務なり専務なりが一緒に社長と中期計画を作って、それが持ち上がるという、そういうのがないと、他人の作った中期計画は中期計画で、私は今やってみて、最後にちゃんとした中期計画を作るというのは結構大事なことでして、これはこれで意味があるかなと思っていますが、やはり本来は自分で作った中期計画をやっていくのではないかなと思います。これは、私にはどうしようもないことで、私自身は理事長の指名権限もないし、別に指名権限を与えろというのではありません。制度としてそれをやらないと、一言で言えば、制度として作らなくても出来る様な甘い組織だと思ってるんじゃないだろうなということを言っているのです。多分できないのではないかと思いますね、このままいくと。

○今村主査
 ありがとうございます。宮崎委員の発言をきっかけにして、組織の独立性ということについて議論を、今後の示唆を頂きました。先ほど、ちょっとナポレオンと今川義元の例を申し上げましたが、あれは福澤諭吉の「一身独立して一国独立す」という、そういう一節のところであります。正に処遇の問題も、個人が独立するために非常に重要な問題であります。そして、組織が独立性を維持して、これからオペレーションをより進めていくためには、やはり組織の独立が、全ては一身、個人個人の独立だということで、是非そういう幅広い視点で、いろいろな可能性を含めて御議論を続けていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。ほかになければ、これでよろしいでしょうか。
 それでは、これで勤労者退職金共済機構の業務・組織全般の見直しについての議論を終了いたします。法人所管課におかれましては、構成員の皆様から本日頂きました御意見等を踏まえて、見直し内容の修正等について御検討いただき、内容の最終的な確定をどうぞよろしくお願いいたします。
 以上で本日の議事を終了いたします。最後に事務局からお願いいたします。

○事務局
 今村先生、ありがとうございました。今後の流れについて御連絡いたします。本日、御議論いただきました勤労者退職金共済機構の令和3年度業務実績評価及び中期目標期間見込評価については、この後、本WGにおける御意見や、法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえまして、厚生労働大臣による評価を決定し、法人及び独立行政法人評価制度委員会に通知するとともに、公表をいたします。
 また、業務・組織全般の見直しの内容についても、同様に、本WGにおける御意見等を踏まえまして、厚生労働大臣が決定し、独立行政法人評価制度委員会に通知するとともに、公表をさせていただきます。決定したそれぞれの内容については、後日、構成員の皆様にもお送りいたしますので、よろしくお願いいたします。
 なお、中期目標期間見込評価及び業務・組織全般の見直しの内容については、独立行政法人評価制度委員会に通知後、同委員会において点検が行われまして、その点検結果に基づき出される意見を踏まえて、厚生労働省において次期中期目標案を作成することとなります。そして、その次期中期目標案について、来年1月以降、独立行政法人評価制度委員会の審議に付されることが予定されているため、次期中期目標案についても、来年1月頃本WGでの意見聴取を予定しておりますので、また御参集のほどよろしくお願いいたします。
 また、この後、労働政策研究・研修機構の有識者会議が開催されますが、本日御出席いただきました酒井構成員におかれましては、同機構が発行している『日本労働研究雑誌』の編集委員に就いている関係から、次の有識者会議WGには参加せず、本会議が終わりましたら退席されます。酒井先生、本当にありがとうございました。事務局からは以上です。

○酒井構成員
 ありがとうございました。失礼いたします。

○今村主査
 どうもありがとうございました。それでは、勤労者退職金共済機構に係る意見聴取はこれで終了とさせていただきます。円滑な議事運営に御協力いただき、ありがとうございます。委員の皆様には20分の休憩として、15時50分から労働政策研究・研修機構に係る意見聴取「第44回労働WG」を開催いたします。どうぞよろしくお願いいたします。お疲れさまでした。

 
(了)