第1回化学物質管理に係る専門家検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

日時

令和4年9月1日(木) 14:00~16:00

場所

TKP新橋カンファレンスセンター カンファレンスルーム16B
(東京都千代田区内幸町1-3-1 幸ビルディング16階)

議題

  1. (1) 化学物質管理に係る専門家検討会の設置等について
  2. (2) 濃度基準値の設定について
  3. (3) がん原性物質の対象範囲について
  4. (4) その他

議事

○化学物質評価室長補佐  それでは、本日は大変お忙しい中、御参集いただきましてありがとうございます。定刻になりましたので、第1回化学物質管理に係る専門家検討会を開催いたします。
 私は、本日座長に進行をお渡しするまでの間、司会を務めさせていただきます、厚生労働省化学物質対策課化学物質評価室の吉見と申します。よろしくお願いいたします。
 まず、本日の構成員の先生方の出席状況についてでございますが、15名の方に御出席をいただいております。本日、会場参加とオンライン参加の併用とさせていただいておりまして、15名中お2人はオンラインでの参加となっております。
 本日初回となりますので、出席の先生方をお一人ずつ御紹介させていただきます。お名前のみの御紹介で失礼いたします。構成員名簿を御覧ください。
 まず、尾崎委員でございます。続いて、小野委員でございます。城内委員でございます。髙田委員でございます。鷹屋委員でございます。武林委員でございます。平林委員でございます。宮内委員でございます。宮本委員でございます。最川委員でございます。川本委員でございます。宮川委員でございます。津田委員でございます。保利委員でございます。そして、山室委員でございます。
 なお、本日、大前委員と上野委員のお二人については、御欠席の連絡をいただいております。
 続いて、御案内ですけれども、本日の会議は公開としておりまして、傍聴者につきましてはウェブでの音声配信とさせていただいております。
 オンライン参加の先生方におかれましては、発言される場合を除きまして、マイクをミュートにしていただきますよう、お願いいたします。
 それから、会場とオンラインの併用としておりますので、御発言の際にはお名前を名乗っていただきますように、お願いをいたします。
 それでは、最初に、第1回化学物質管理に係る専門家検討会の開催に当たりまして、厚生労働省労働基準局安全衛生部長の美濃から一言御挨拶を申し上げます。
 
○安全衛生部長  美濃でございます。それでは、恐縮ですが、着座にて御挨拶申し上げたいと存じます。
 皆様方におかれましては、平素より労働安全衛生対策の推進、とりわけ化学物質管理の推進につきまして多大なる御尽力を賜り、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
 さて、今般、厚生労働省では、化学物質による労働災害を減少させるため、従来、特別則の対象となっていない化学物質への対策の充実・強化を主眼といたしまして、新たな化学物質規制を導入することとし、関係の政省令を改正したところでございます。
 この新たな化学物質規制におきましては、国によるばく露の上限となる基準等の制定、さらには危険性、有害性に関する情報伝達の仕組みの整備、拡充を前提といたしまして、事業者の方がリスクアセスメントを実施し、その結果に基づいて、国が定める基準の範囲内で、ばく露防止措置を適切に実施していただくこととなります。
 この制度を円滑に運用していくためには、労働者に健康障害を生ずるおそれのある化学物質のばく露の上限となる濃度基準、さらには、その測定方法並びに評価方法などにつきまして、技術的な基準を設定していくことが必要となっております。
 このため、本検討会を開催し、これらの基準につきまして、専門的な観点から御検討いただいた上で、御議論を踏まえて基準を設定していくことといたしました。
 また、今後、行政によるリスク評価、それに伴います特別則の対象物質の追加といった手法を採らないこととなりましたので、これを期に、従来の専門家検討会の体制を一新しまして、従来の検討会で併せて御検討いただいておりました、ばく露対策に関する事項も含めまして、この検討会で御検討いただく体制といたしたいと考えております。
 先生方におかれましては、それぞれの御知見、お立場から忌憚のない御意見、御議論をいただければと考えております。よろしくお願い申し上げます。
 
○化学物質評価室長補佐  続きまして、厚生労働省の職員を御紹介いたします。化学物質対策課長・安井でございます。化学物質評価室長・佐藤でございます。環境改善室長・平川でございます。化学物質国際動向分析官・大淵でございます。化学物質評価室長補佐の吉見でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、ここで検討会の座長の選任をしたいと思います。事務局案といたしましては、城内先生にお願いしたいと考えておりますけれども、いかがでしょうか。
(異議なし)
 ありがとうございます。それでは、城内先生に座長をお願いすることといたします。城内座長に以降の議事進行をよろしくお願いいたします。
 
○城内座長  城内です。今日は離れた場所からですけれども、進行役を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。
 
○化学物質評価室長補佐  本日の資料ですけれども、会場参加の先生方にはお手元にお配りをしております。1枚目が議事次第と、裏に配付資料一覧、そして、資料1から資料6までございます。御確認をお願いいたします。
 オンラインで参加いただいている先生方には、事前にメールで資料を送付させていただいておりますので、御確認をお願いいたします。
 それから、本日の資料は厚生労働省のホームページにあらかじめ掲載いたしておりますので、傍聴の方はそちらを御覧ください。
 なお、本日の会議は公開としておりまして、議事録を作成し、後日公表いたしますので、御承知おきください。
 それから、本日オンライン会議ということで、会場の参加の先生方も、御発言される際にはマイクを使っていただきますよう、お願いいたします。マイクを使わないと、ウェブの参加者に音声が伝わりませんので、よろしくお願いいたします。
 それから、開催要綱の3の構成の(3)に、座長に事故があるときは、座長代理を置き、座長代理は議事を整理するとされております。座長代理につきましては、城内座長から御指名があれば、お願いをいたします。
 
○城内座長  城内ですけれども、大前先生にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
(異議なし)
 
○化学物質評価室長補佐  ありがとうございます。それでは、座長代理は大前委員にお願いすることとして、以下の議事を進めたいと思います。
 それでは、城内座長に以下の進行をお願いいたします。
 
○城内座長  それでは、本日の議題に入ります。
 まずは、議題の1、化学物質管理に係る専門家検討会の設置についてですが、事務局より説明をお願いいたします。
 
○化学物質国際動向分析官  それでは、事務局、大淵より説明をさせていただきます。資料は、資料1、資料2、資料3―1、3―2、こちらを使って説明をさせていただきます。
 今回の検討会の設置についてということで、まず資料1からお願いいたします。開催要綱でございますが、開催の趣旨等につきましては、先ほど安全衛生部長の挨拶の中で申し上げましたので、私からは、資料1の2ページ目の構成員名簿のほうから御説明をさせていただきます。
 今回の検討会では、様々なテーマについて御議論いただく予定としておりますが、今回は先生方を大きく3つのグループでグルーピングをさせていただきました。会議については、作業部会のような形のものは設けずに、議論いただくテーマによってお集まりいただく先生方を変えていくというような形で考えておりまして、まず1つ目のグループとして、議題の内容にかかわらず全ての議題について御出席いただくのが、「全般に関する事項」に記載しております11名の先生方でございます。それから、真ん中よりちょっと下になりますが、「毒性に関する事項」について、3名の先生にお願いをしております。最後、「ばく露防止対策に関する事項」ということで、こちらも3名の先生にお願いをしておりまして、今回、第1回目の会議につきましては、全員の先生方に御参集をお願いしているところでございます。
 続きまして、資料2でございます。こちらは、改正されました労働安全衛生法の施行令、それから各種の省令についてのリーフレットでございます。今回の検討会で御議論いただく事項が、この法令改正とどういう形でつながっていくか御説明をさせていただきます。
 政令と省令で改正の枠組みができたわけでございますけれども、実際にそれを運用するに当たっては、まだまだ決めなければいけない技術的な事項が多々ございます。それを御議論いただくのが、この新しい専門家検討会ということでございます。
 具体的にはどういったところが当たるかということで、まず、資料の2ページを御覧ください。2ページの1―2、「リスクアセスメント対象物に関する事業者の義務」がございます。これの(1)のマル2、リスクアセスメント対象物のうち、一定程度のばく露を抑えることでと書いてあるところです。こちらで、厚生労働大臣が濃度基準値を設定して、事業場ではそれ以下になるように管理をしていただくというところがございまして、この物質ごとの濃度基準値の設定というのが、まずこの会議のテーマの1つとなります。
 それから、その下、(2)のところでございますけれども、がん原性の物質の関係、こちらはばく露の状況を30年間保存してくださいというのがございます。がん原性の物質、どこまでの範囲の物質を対象とするか、それもこの会議のテーマということになります。
 それから、同じ2ページの1―3、「皮膚等障害化学物質等への直接接触の防止」というのがございます。皮膚や眼に直接影響を与える物質ですとか、皮膚とか眼から入って、ほかの臓器に健康影響を与えるような物質について、保護具の着用が今回の改正で義務づけられております。その場合の対象となる物質の範囲についても、この検討会で御議論いただく予定としております。
 続きまして、4ページに参ります。1―8、「リスクアセスメント対象物に関する事業者の義務(健康診断等)」とございます。こちらの、まず(1)の中で、リスクアセスメント対象物で必要がある場合には、事業場で健康診断をするという規定で、その中で、通常の物質はその結果、記録を5年間ですけれども、がん原性物質については30年間保存してくださいといった義務がかけられております。このがん原性物質の範囲としては、先ほどの2ページで示したものと同じで、措置の内容がこちらは健康診断関係ということでございます。
 それから、同じくがん原性の物質については、1―8の中の「(2)がん原性物質の作業記録の保存」ということで、がん原性物質については、取り扱う作業があった場合に、作業記録を作成して、それを30年間保存するということも今回義務づけられました。その物質の範囲も、2ページ、それからただいまの4ページの上のところと同じでございます。
 こういったことをこの検討会で御議論いただくということになります。
 それをもう少し細かく示したものということで、資料3―1、「本検討会での当面の検討事項と今年度の検討スケジュール」というところでございます。1ページ目が、この検討会での当面の検討事項、2ページ目が、今年度の検討スケジュールとなっております。
 まず1ページ目の当面の検討事項でございますけれども、大きく、(1)から(4)までございます。
 まず(1)ですけれども、濃度基準値の関係でございます。濃度基準値をどのように決めていくかという考え方、それから、どんな物質から決めていくかといった優先順位の関係、個別の物質ごとの濃度基準値を設定していくこと、濃度基準値を定めるに当たってはどのように測定するかというのも重要なお話ですので、物質ごとの捕集方法ですとか分析方法といったことも議論してまいります。
 次に、(2)として、がん原性物質関係ということで、先ほどから何度も申し上げておりますけれども、がん原性物質ということでいろいろな措置の対象とする物質の基準について議論いただきます。
 続きまして、(3)ばく露測定関係ということで、今回の規制で労働者のばく露が濃度基準値を下回ることを確認することが事業場において必要になりますので、それをどういった形で測っていくかという、測定方法の中でも、測定をどのようにデザインするか、どういった人を対象にして測るか、どういったタイミングで測るか、そういったデザインの関係についての検討を行います。それから、少し違った切り口ですけれども、作業環境測定の中で個人サンプリング法というのを数年前に導入しておりますが、その対象物質の拡大についての検討もこの中で行っていきたいと思っております。
 次に(4)として、皮膚・眼対策関係ということで、先ほどのリーフレットの説明でも申し上げた、対象物質の特定方法、それから、どういった物質にどういった保護具を使ったらいいかという保護手袋等の選定の考え方も、検討会のテーマでございます。
 このうち(4)につきましては、来年度以降の検討事項ということで、本年度につきましては、(1)から(3)の事項を検討していきたいと考えております。
 あと、検討事項のうち濃度基準値につきましては、濃度基準値を定めなければいけない物質が非常にたくさんございますので、議論について今年度で全部終わるというわけではなくて、年度ごとに区切って順次検討していく計画で考えております。
 続きまして、2ページ目、2の今年度の検討スケジュールということで、順次説明してまいります。
 第1回、本日でございますけれども、テーマについては、ここに書いてあるとおり、濃度基準の設定の考え方、濃度基準値の設定物質の優先順位の考え方、対象物質の特定、がん原性物質の対象とする物質の基準の検討、こういったことを本日議論させていただきます。
 2回目につきましては、10月14日を予定しておりまして、お集まりいただく先生としては、コアメンバー+ばく露メンバーと書かせていただきましたが、このページの下にありますように、コアメンバーというのは、先ほどの構成員名簿で全般に関する事項について御議論いただく先生方、それから、ばく露メンバーというのは、同じく構成員名簿でばく露防止対策に関する事項に掲げた先生方でございます。これらの先生にお集まりいただきまして、マル1として、ばく露が濃度基準値を下回ることを確認するための測定方法の考え方、マル2として、作業環境測定(個人サンプリング法)の対象物質の拡大の検討、こういったことを予定しております。
 この議論について、第2回だけでは時間が足りない場合に備えまして、予備日ということで11月4日も設定しております。
 次に、第3回といたしまして、12月15日を予定しております。こちらはコアメンバーの先生、それから毒性メンバーの先生にお集まりいただく予定で、マル1として、濃度基準値の検討、約120物質を予定しております。マル2として、対象物質ごとの測定方法、捕集方法ですとか分析方法ということです。マル3として、今年度の検討事項の取りまとめということで、こちらも1回で議論が終わらないことを見込んで、予備日ということで来年の1月16日を予定しております。
 さらに、全体的な予備日ということで、1月30日も日程を確保させていただいております。来年1月末をめどに報告書をまとめていく。そういう計画で今年度は進めていきたいと考えております。
 その予備日の1月30日の下に、備考というところで少し書いておりますが、検討に当たっては、労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の専門家会議で検討された文献レビュー結果等を用いると書いておりまして、この検討会と別に研究所にも専門家の先生に御協力いただきまして会議を開いて、そこでレビュー等を行い、その結果をこちらの行政の検討会でも活用していくといった流れで、作業を進めてまいります。
 その研究所の専門家会議につきましては、資料3―2に概要を示しております。会議の趣旨は、今申し上げましたので、その次のこれまでの検討経過のところを御説明しますと、昨年、令和3年11月に初回を開きまして、今年の7月までに計3回御議論をいただいております。今後も開催していく予定となっておりますけれども、こちらの専門家会議で濃度基準値の関係につきまして文献を集めて、整理いただき、どんな基準値がいいかといった検討をしていただく予定となっております。
 以上、まず、この検討会の設置に当たっての説明でございます。
 
○城内座長  ありがとうございました。今の事務局からの検討会の議論の内容の説明について、何か御質問や御意見があれば、お願いしたいと思います。なお、本来であれば、座長がその場で委員の皆さんの御指名をさせていただいて、発言をお願いするところですが、ちょっと離れておりますので、御指名は吉見さんのほうからお願いしたいと思います。では、お願いいたします。
 
○化学物質評価室長補佐  御質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、ないようですので、城内座長、このまま進行をお願いいたします。
 
○城内座長  それでは、次に、議題2、濃度基準値の設定についてです。資料の説明をお願いいたします。
 
○化学物質対策課長  では、私のほうから資料4―1につきまして御説明をさせていただきます。今回、濃度基準値の議論をキックオフということでございますけれども、どのような考え方で濃度基準値を設定していくのかというところを、文献レビューという形で整理してございます。
 まず第1が、関係の文献のレビューでございますが、まずACGIH、これは米国政府労働衛生専門家会議ということで、一番多くの物質を最も歴史が古くやっているところでございますが、この中では3つ基準値というのがございます。1つはTLV-TWA、8時間の時間加重平均の基準ということでございまして、こちらはこの濃度に毎日繰り返しばく露されても、その職業人生を通じて健康に悪影響がないという基準でございます。
 もう一つが、短時間ばく露基準でございまして、こちらにつきましては、この値を超えると、不可逆的な生体組織へのダメージであったり、事故による障害、あるいは自己救命の阻害、労働効率の低下ということで、何らかの急性障害が発生するという基準でございます。
 もう一つは、Ceiling、天井値というものでございまして、こちらにつきましては急性中毒のように即効性のある影響がある物質については、これを超えると急性中毒の症状を呈する、場合によっては命に関わるということでございますので、この値はいついかなるときも超えてはならない値ということでございます。
 2つ目が、TLVの適用に関するACGIHの考え方でございまして、3つの数字がございますので、当然、その間の数字がございます。例えば、8時間ばく露基準を上回って短時間基準以下のものにつきましては、1回15分を超えず、かつ1労働日につき1時間以上間隔を置いた4回を超えない範囲内でのばく露と。
 それから、STEL、短時間ばく露が定められた物質についても、ごく短時間といえども8時間ばく露基準の5倍を超えないという前提で、3倍を超えないまで、3倍を超える一時的な増加については、先ほどと同じ、1回15分を超えず、1労働日につき1時間以上間隔を置いた4回を超えない限りにおいて、ばく露が許容されるということでございます。
 この3倍の根拠につきましては、毒性学の観点というよりは、短時間ばく露の幾何平均が2.0ということを考えて、全測定値の5%が幾何平均の3.13倍に収まるということに基づいて、3倍というのは決まっているということでございます。
 もう一つ、8時間働かない方、1日1時間、2時間しか働かないという方につきましては、8時間シフト中のばく露が1時間しかない場合は、残りの時間はばく露はゼロになるので、その1時間の間に8倍のばく露をしていいということではないということが明記されておりまして、こちらにつきましては、先ほどのSTELがないものについても3倍を超えないという形で運用する必要があるということでございます。
 それから、Ceiling値につきましては、連続測定をすることが原則でございますが、これができない場合につきましては、TLV-Cを超えていないことを検知できるような形のサンプリングをすべきであるという記載がございます。
 3つ目が、米国安全衛生庁ということで、これは日本で言うところの厚生労働省の安全衛生部に当たる行政機関でございまして、そちらが限度値を定めてございます。こちらは、先ほどのACGIHと違って、勧告値ではなくて、これを超えると法令違反を構成するという限度基準値でございます。こちらも基本的にACGIHと同じ考え方でございまして、まず8時間ばく露限度というのがございます。それから、許容される天井値というものがございまして、物質ごとに定められている最大時間を超えない範囲で許容される天井値を超えてもいいといったことが規定されているわけでございますが、この許容される天井値というのは、8時間加重平均の2倍から4倍ぐらいなのですけれども、これらの値につきましては、設定された年代が1970年代と古いということなので、実際にアメリカにおいても基本的にはこの値は使わずに、ACGIHの値を使っているという実態がございます。
 それから、限度値を遵守しているかどうかの確認方法につきましては、天井値については、連続測定できない場合は、15分間の時間加重平均値を使うといった規定がございます。
 また、限度値を遵守するための対策といたしましては、管理的対策または工学的対策をまず実施して、それでは完全に遵法できない場合に、個人用保護具やほかの保護具を使用するという優先順位を、法令上明確にしております。また、保護具の使用や技術的対策については、インダストリアルハイジニストといった資格者の関与を求めるという規定ぶりになってございます。
 次の3ページ、4でございますけれども、米国安全衛生庁においては、呼吸用保護具の選択とフィットテストにつきましても、法令で明記してございます。具体的には、まず、呼吸用保護具の種類別に定められた指定防護係数、これは例えば10とかいうことがありますが、それに限度値を乗じた値を最大使用濃度として、呼吸用保護具の外側の濃度がこの値を上回らないようにしなければならないということでございます。これは裏返して申し上げますと、要求防護係数の考え方でございまして、呼吸用保護具の外側の濃度を限度値で割ると必要な要求防護係数が出ますので、それを上回る指定防護係数を持っている呼吸用保護具を使うという趣旨でございます。
 また、フィットテストは、面体と皮膚の間から空気が漏れないことを確かめるテストでございますけれども、こちらにつきましても定期的に実施して、合格基準を満たすようにするということが義務づけられているということでございます。
 それから、5番の欧州連合における限度値の考え方につきましても、基本的に同様で、8時間加重平均の限度値と、短時間の限度値を設定してございまして、また、それを改善する方法についても、呼吸用保護具というのは最後の手段として一番低い優先順位に設定すべきであるという規定がございます。
 続きまして、濃度基準値の法令上の考え方でございます。今回定められました安衛則577条の2の第2項の安衛法の根拠でございますけれども、こちらにつきましては、労働安全衛生法第22条の委任省令ということでございまして、リスクアセスメントの実施を義務づける安衛法57条の3に基づく省令ではないということになります。ということは、法22条というのが健康障害を防止するための最低限の基準ということでございますので、リスクアセスメントの実施状況のいかんを問わず、この基準は上回ってはならない最低基準ということでございます。
 それから、4ページの2番でございますけれども、濃度基準値に関する規定内容ということでございます。577条の2の第2項につきましては、一定程度のばく露に抑えることによって、労働者に健康障害を生ずるおそれがないものについて、労働者がこれらのものにばく露される程度を基準値以下にしなければならないという規定ぶりとなってございます。これの意味するところは、全ての労働者のばく露が濃度基準値以下でなければならないということが1つと、もう一つ、ばく露というのはあくまで人間が吸い込む濃度でございまして、呼吸用保護具の内側の濃度になりますので、作業環境濃度を下げる方法に加えて、呼吸用保護具の適正な使用を許容しているということでございます。
 3つ目が、作業環境測定における管理濃度と今回の濃度基準値の違いということでございます。管理濃度につきましては、御案内のとおり、第3管理区分になった場合は、第1管理区分または第2管理区分になるように適切な措置を講じるということが義務づけられているという、ワンクッションあるわけでございますが、濃度基準値につきましては、直接上回ってはならないことになっておりますので、上回ってしまった状態で直接的に違反を構成するという厳しい規定となっております。
 ただ、反面、先ほど申し上げましたように、管理濃度は作業環境濃度を下げる必要がございますが、濃度基準値につきましては呼吸用保護具による方法も認められるという意味で、この点については緩いというところでございます。
 4番で、呼吸用保護具の選択による測定ということでございます。溶接ヒュームについて、呼吸用保護具の選択の方法を定める告示というのを定めてございます。こちらは、現時点では、限定的に適用しておりますけれども、その考え方自体は普遍性があると考えてございます。具体的には、均等ばく露作業、これは労働者にばく露される化学物質の量がほぼ均一であると見込まれる作業で、その方から最低限2人選んでいただいて、その方の呼吸用保護具の外側、呼吸域の濃度を測って、その最大値を濃度基準で割って、要求防護係数を出して、それを上回る指定防護係数を有する呼吸用保護具を選んでくださいという形で、基本的にACGIHと同じ考え方でございます。当然、要求防護係数が1を下回れば、呼吸用保護具は不要であるということでございます。
 5ページ目の5でございますけれども、呼吸用保護具のフィットテストにつきましても、同様に規定をしてございます。こちらの規定につきましても普遍性があるものと思っておりまして、具体的には、JIS T8150で定める方法によって、定性的フィットテスト、定量的フィットテストを行って、フィットファクタを出して、それで合格基準を満たすまで練習をしていただくといいましょうか、訓練をして、合格するまできちんとやっていただくということを年に1回するということでございます。
 第3が考察でございます。濃度基準値の種類及び適用につきましては、ACGIHは8時間加重平均と、短時間と、天井値の3つの基準がございますので、我が国においても基本的にこの3つを導入すべきではないかということでございます。
 それから、(3)、(4)でございますけれども、3つの値を入れる場合、特に8時間値と短時間値の間の数字をどうするか、ばく露につきましても、一定の考え方を整理する必要があるということで、ACGIHの考え方を参考にすべきではないかということでございます。
 続きまして、6ページの2番でございますが、濃度基準値を上回ってはならない労働者のばく露の考え方ということでございます。ACGIHとしては、労働者のばく露が限度値を上回ってはならないということでございまして、安衛則においても同様の規定ぶりをしておりますので、全ての労働者のばく露が濃度基準値を下回らなければならないという形に、法令上、ならざるを得ない。
 また、OSHAのほうでは、呼吸用保護具の外側の濃度が使用最大濃度を超えないといった選択の基準を設けておりますので、こちらも溶接ヒュームで既に定めておりますけれども、同様の基準を日本においても導入すべきではないかということでございます。
 それから、3番でございますが、ばく露を濃度基準値以下とするための改善の方法でございます。こちらもアメリカの米国安全衛生庁では、工学的対策を優先するという優先順位を法令上、明確にしてございますので、我が国においても基本的には同じような形で、何らかの形でこの優先順位を定める。既にリスクアセスメント指針で明記されておりますけれども、そういった形で明確にする。
 それから、呼吸用保護具につきましては、必要な指定防護係数を有するものとすべきですし、また、フィットテストの実施につきましても、何らかの形で定めていく必要があるという形で、まとめているところでございます。
 私からの説明は以上です。
 
○化学物質国際動向分析官  続きまして、資料4―2について、大淵から説明をさせていただきます。
 資料4―2、「特別則の対象物質に係る濃度基準値の設定について」ということで、この資料の趣旨としては、特別則の対象物質については、これまで作業環境測定を行い、管理濃度で管理していくというルールがあったわけですけれども、今回、新しい安全衛生規則の中に濃度基準値という考え方が導入されて、それとこれまでの特別則の物質の基準値の関係をどう整理するかということで、事務局として作ったペーパーでございます。
 まず第1の「概要」というところで、3つの観点で整理が必要かということで投げかけをしているものです。
 まず(1)として、特別則で作業環境測定の対象となっており、管理濃度が設定されている物質、例えば第1種有機溶剤等ですけれども、これについて、厚生労働大臣の基準、つまり濃度基準値を設定すべきかどうか。これについても大きく2つに分けて、含有量が法令で定める裾切り値を超えている場合と、それ以下の場合でどうするかというような整理です。
 それから、(2)として、特別則で作業環境測定の対象となっているが、管理濃度が設定されていない物質、例えば特化則の中のインジウム化合物などですけれども、これについて濃度基準値を設定すべきか。
 (3)として、特別則で作業環境測定の対象となっていない物質、例えば第3種有機溶剤等ですが、これについて、濃度基準値を設定すべきか。
 この3つの観点で整理をしていきます。
 まず最初に、現在の規制がどのようになっているかということの確認が、第2の「特別則の規制と安衛則の規制についてのレビュー」でございます。
 まず1として、「特別則の裾切り値と作業環境測定・管理濃度」というところで、こちらの1ページの表では、有機則、特化則、鉛則、四アルキル鉛則、それぞれ法令の名前が長いので略称で書かせていただいておりますけれども、それについて、法令上の適用の裾切り値がどうなっているか、それから、作業環境測定や管理濃度はどうなっているかということで整理をさせていただいております。
 ざっとで申し上げますと、有機則でいけば5%が裾切り値になっており、作業環境測定は、第1種と第2種有機溶剤で義務がかかり、管理濃度も全てございます。
 それから、特化則について申し上げますと、裾切り値は基本的には1%超ということで、一部例外の物質もございます。測定については、第1類物質と第2類物質が対象となっておりますが、溶接ヒュームにつきましては作業環境測定ではなく、マスクを選択したりするための測定ということになっております。管理濃度は、基本的にはあるのですけれども、インジウムなど一部の物質は例外的に管理濃度が設定されておりません。
 それから、鉛則につきましては、鉛合金の精錬については3%超というルールがございますけれども、他の業務については裾切り値がございません。測定対象につきましては、どういう鉛業務について測定するかというのが規則の中で決まっておりまして、管理濃度も設定されております。
 最後、四アルキル鉛則については、毒劇法の施行令を根拠にいたしまして、上限濃度の規制があるのですけれども、いわゆる裾切り値、下限濃度については規定がございません。作業環境測定については、測定義務がありませんので、当然、管理濃度も設定されていないという状況です。
 次の2ページに参りまして、今の表の補足説明ということで、2つ★をつけております。有機則の裾切り値が5%となっている理由、それから、特化則の裾切り値が1%となっている理由ということです。
 ざっとで申し上げますと、まず有機則の場合につきましては、法令ができたのが昭和30年代という非常に古い時代でございまして、まだ濃度の情報も十分に得られないような中で、あまり細かい規制を設けるのは難しいような状況があったということが、当時の資料に書かれております。
 2つ目の特化則につきましては、化学物質の取扱いでは、事業者が意図しないような化学物質の微量な混入、天然物の原料に含まれるとか、反応後の容器の中に残ってしまっているとか、そのようなことも想定されるので、あまり裾切り値を厳しくしてしまうと、実態に合わない規制になってしまうということで、1%を裾切りにしたというようなことが書かれております。
 続きまして、大きな2番、「安衛則の適用対象」ということで、ラベル表示、SDS、リスクアセスメントということでございます。これらについては、安衛則の別表第2に、ラベル、SDSの裾切り値の表がありまして、物質ごとに、ラベルの場合は何%が裾切り、SDSの場合は何%が裾切りということが載っております。どういう考え方で裾切り値を設定しているかというのが、平成27年8月3日付の行政の通達で示されていまして、根拠としては、GHSで有害性のクラスと区分がございまして、それに応じてラベル、それからSDSについて裾切り値を決めているということが書かれております。
 有害性の種類として、こちらの表では、急性毒性から、次の3ページの吸引性呼吸器有害性までございますけれども、ラベルとSDSで裾切り値が同じものもありますけれども、黄色い網掛けをしているものについては、ラベルのほうが裾切り値が高め、逆にいうと緩いというような形の裾切り値になっております。
 これで見ていただくと、例えば先ほど特別則の説明をしましたけれども、有機溶剤については有機則のほうで5%が裾切りになっておりましたが、有機溶剤ですと急性毒性が問題になるわけですけれども、この表での裾切り値は、ラベルでいけば1%、SDSのほうでも1%です。リスクアセスメントをする場合の裾切り値はどうなっているかというと、SDSの裾切り値が、イコール、リスクアセスメントの裾切り値ということになります。ですので、有機溶剤が有機則に従えば5%超が適用になるのですけれども、安衛則でリスクアセスメントをするときには1%が裾切り値ということになります。
 では、別の規則、特化則の関係で考えてみると、特化則は先ほど1%が裾切り値というところでお話ししましたが、特化則はいろいろな物質がありますけれども、この表で例えば発がん性ということで見ていただくと、3ページの表の上から5段目に発がん性がございます。発がん性で安衛則のリスクアセスメントをすると0.1%が裾切りということになりまして、特化則で対策するときと、安衛則でリスクアセスメントをするときとで裾切り値が異なっているという状況です。
 3ページの真ん中のところに、3、「まとめ」というのがございますけれども、これは、今説明した、特別則の上でのルール、それから、安衛則の上でのラベル、SDS、リスクアセスメントのルールを整理したものでございます。
 次に、第3、これらを踏まえた「考察」ということで、第1の「概要」で述べました3つの観点について、現状の法令を踏まえて整理をしたところです。
 まず1つ目、特別則で作業環境測定の対象となっており、管理濃度が設定されている物質、これについて濃度基準値をどうすべきかという話でございます。
 まず(1)として、特別則の適用を受ける場合、つまり、含有量が裾切り値超の場合につきましては、今現在、管理濃度があって、それで作業環境測定で管理をしております。そこに、もし新たな濃度基準値を設定したとすると、二重規制となってしまうため、新たな基準値の設定は不適当であると考えております。
 次に(2)として、同じ管理濃度対象物質でも、含有量が低くて特別則の適用を受けない場合でございますけれども、こちらについては、有機則、特化則の裾切り値の設定理由が、旧の有機則、それから旧の特化則の制定が非常に古いということで、その当時、化学物質の濃度情報を入手することが困難であったという状況がございます。
 現在はSDS制度があり、当時と比べて濃度情報を入手しやすくなっていることを踏まえると、裾切り値については、有機則や特化則の制定当時の考え方を維持する必要は必ずしもなく、ほかの物質と同様、GHSに基づく裾切り値と整合させることを検討すべきというように思っております。
 ただし、見直しに当たりましては、今後、特別則を一般則に整理統合することを含めた検討を行う予定としておりますので、その全体の在り方を検討する際に対応するのが適当であろうと考えます。
 その見直しまでの間につきまして、濃度によって作業環境測定による環境改善と、濃度基準値の遵守という異なった管理手法を使い分けることは、現場は非常に難しいことがございますので、濃度の高いところは管理濃度で、低いところは基準値というやり方は望ましくないと考えております。
 それから、2番として、作業環境測定の対象となっているけれども、管理濃度が設定されていない物質ということです。ここではインジウム等について例示をしておりますが、こちらはなぜ管理濃度を設定していないかというと、これまで管理濃度の検討会等で検討した結果、管理濃度の設定が困難とされた経緯がありまして、設定されていないものです。インジウム化合物の場合ですと、作業環境管理対策のみでは環境中濃度の低減が困難であり、保護具使用を前提とした規制としているため管理濃度を設定していないということで、補足しますと、インジウムは非常に低い濃度でも発がんのおそれがある物質ですので、その目標となる濃度まで下げようとすると、作業環境の改善だけでは難しいということで、保護具と組み合わせた対策を法令の中で位置づけております。こういった物質について、新たな濃度基準値を設定することは、現行規制との混乱を生じるおそれがございます。
 続きまして、3番として、特別則で測定の対象となっていない物質についてです。第3種有機溶剤、特化第3類物質、四アルキル鉛につきましては、過去の災害発生状況等を踏まえまして、大量漏えい等による高濃度ばく露の防止対策、分かりやすく言うと、急性中毒等の防止対策、これのみを義務づけているものでして、現行では、定期的な作業環境の測定を義務づけておりません。今回の法令改正は、特別則の適用のない化学物質を主眼とするもので、既存の特別則で規制されている物質について、新たな濃度基準値を設定すると、特別則の物質に対する規制強化となりまして、過去の判断との矛盾、それから今回の改正の趣旨に照らして適当ではないと考えております。
 また、溶接ヒュームにつきましては、先ほども説明しましたが、保護具選択のための測定を義務づけ、かつそのための濃度基準値も既に定められておりますので、新たな濃度基準値の設定は不要であると考えております。
 以上、事務局としての特別則の物質についての整理でございます。
 
○化学物質評価室長  続きまして、資料5―1の説明を始めます。濃度基準値を決める化学物質の分類の考え方と優先順位、年度ごとに決めていく目安となるような化学物質の数を御議論いただければと思います。
 ここに書いてある報告書の設定数というところなのですけれども、下のほうの※1にありますように、昨年度の7月に公表された、職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会報告書の中で、おおよそ年度ごとに設定すべき物質の数の目標みたいなものが設定されています。濃度基準値を決める対象なのですけれども、国、これは厚生労働省、環境省、経産省、そういったところがまとめて、化学物質のGHS分類を行っているのですけれども、分類されたおおよそ2,900物質について、年度に応じて設定してくださいという仕組みになっております。
 事務局のほうでは、この目安になるような数字に大体合うように、さらに情報量が多い化学物質から濃度基準値を設定してはどうかと考えております。
 まず令和4年度ですけれども、国のほうで、厚生労働省のほうで一つ一つ化学物質につきまして、有害性の情報と現場でのばく露の情報を基にリスク評価を行ってきた物質がございます。それを中心に濃度基準値を設定してはどうかと考えております。一番情報量が多い分類になります。おおよそ120物質ありまして、測定・分析方法があるものが約100、残りの20については測定・分析方法がないものとなっております。
 令和5年度ですが、約170と考えております。ここにACGIHですとかDFGとか、アルファベットの略字が書いてあるのですけれども、海外の機関の略称でして、下のほうに、例えば※3であれば、米国政府労働衛生専門家会議がACGIHというように、正式名称を書いてございます。海外の専門家の集まりでありますところで決めた数字があるものということで、令和5年度、拾っております。異なる機関、例えばここにありますように、ドイツや日本、アメリカ、そういったところで決めた濃度基準値的なものが2つあるもの、その2つある数字が一致しているといったものが60ぐらいあります。異なる機関で定められた濃度基準的なばく露限度といった数字が決められているのですけれども、その2つの数字が合っていない、異なっているものが110あります。いずれにせよ、何らかの数字を2つ持っているという化学物質になります。
 日本独自、オリジナルでゼロから濃度基準値を設定していくというのはなかなか大変な作業ですので、既に定められているようなばく露限度の数字があれば、それらを参考に我が国の濃度基準値を定めていくという作業を進めたいと思っております。
 令和6年度は、約180を目指しております。これは、とある機関で数字を1つ持っている物質を拾っています。ここにありますように3つ分類されていますけれども、数字が1つあるということで、令和5年度に比べて、令和6年度の対象となる物質は、情報量が少ないという状況です。ここまでは、物質について測定・分析方法が大体あるものです。
 令和7年度以降、約390をさらに年度ごとに分けていくのですけれども、職業ばく露限度ということで、何かしらの数字はあるのですが、測定・分析方法がない物質があります。これは何かといいますと、ばく露限度を決める基となったデータ、試験成績ですとか疫学データとか事故とか、そういった情報があって数字を決めたものの、実際に測っていない、測ったことがないということで測定・分析方法がないものです。こういったものが約390あります。
 こういった形で、まず今年度は、一番情報量が多い、国のほうで一回リスク評価を終わっているような物質を中心に、120をターゲットに濃度基準値の議論を進めていただきたいと思っております。
 資料5―2が、先ほどの1枚ペーパーで分類、グルーピングを行ったのですけれども、それの基となるような細かい分類の考え方です。GHS分類がある化学物質について濃度基準値を決めますので、GHS分類があると。それで、何かしらの濃度的な数字があるもの。そういった形で分類をいたしまして、細かい説明は割愛いたしますが、その中で、例えばここでピンクになっているのですけれども、国でリスク評価が終わっています、測定・分析方法がありますといったところのマル1―1。あと、リスク評価対象物質が終わっていて、測定・分析方法がない約20、マル1―2、これを令和4年度に決めてはどうかというような、細かい分類の仕分け表になっております。
 資料5―3が、これに基づきまして、令和4年度にターゲットとすべき約120の物質を拾ったものです。CASナンバー順に並べておりまして、拾ったところ、118あります。機械的に事務局のほうで拾った表でして、☆印がついているものが3つあるのですが、これはリスク評価を行った物質で拾ったのですけれども、実はこれは特定化学物質の第三類物質であるため、管理濃度的なものがありまして、濃度基準値は設定しないという、先ほど大淵が説明した資料のほうに含まれてしまう物質なので、実際には濃度基準値は設定しない物質です。そうしますと、115物質につきまして濃度基準値を設定していただくというようなリストになります。
 説明は以上です。
 
○城内座長  ありがとうございました。今の事務局からの説明について何か御質問や御意見があれば、委員の皆様、お願いいたします。
 
○化学物質評価室長補佐  保利委員、お願いします。
 
○保利委員  先ほど、資料4―2ですか、特別則で作業環境の対象となっているが、管理濃度が設定されていない、インジウム化合物等については、新たな濃度基準値を設定することはしないという御説明だったと思うのですけれども、もともとインジウムは管理濃度が設定できないということで、設定されていないわけですが、二次評価値が0.0003mg/㎥ですか、というのがあって、そこまで保護具でカバーしましょうというような話だと思うのです。そうすると、今回の濃度基準値に該当するのが、二次評価値の0.0003mg/㎥に該当するのではないかなという気がするのですけれども、そのような形にはしないということなのですかね。
 
○化学物質対策課長  はい、そういう形にはしないというように考えておりまして、インジウムにつきましては、インジウム告示という特別な告示がございまして、御指摘のあった0.0003mg/㎥を逆算した形で、必要な要求防護係数を満たしているマスクをすることを既に定めておりますので、そちらの規制で対応するというように考えてございます。
 
○保利委員  分かりました。
 
○化学物質評価室長補佐  武林委員、お願いします。
 
○武林委員  それぞれの資料についてあるのですが、まず1点目、資料4―1について御質問させていただきたいと思います。御説明によって、この濃度基準値についてよく理解ができましたが、この6ページのところに、濃度基準値を上回ってはならない労働者のばく露の考え方という御説明がありました。これは恐らく、その前の4ページにも関わっているかと思いますが、この(1)の最後のところに、この安衛則における規定は、労働者のばく露が濃度基準値を下回らなければならないことを求めている。このため、全ての労働者について、そのばく露が濃度基準値を下回ることが法令上求められているという記載があります。
 これは恐らく、ばく露の程度が濃度基準値を下回るという意味だと思いますが、この法令上求められるということについて、測定方法は別に定まったとして、この濃度基準値が決められたときに、評価方法、運用方法というのは、この委員会でいつ、どのように議論されるのか、あるいは、ここは決めずに、自律的管理なので、これはあくまでも健康障害防止のためなので、事業者側が自由にこれを使っていいという話なのか、この法令上求められるという点を、何らかの形で行政として確認するのかという点について、まず伺いたいと思います。
 
○化学物質対策課長  お答えいたします。資料3―1の裏に記載のとおり、ばく露が濃度基準値を下回ることを確認するための測定方法の考え方につきましては、第2回とその予備日で議論する予定でございます。
 
○武林委員  測定方法ではなくて、例えば、全ての労働者というのは、全員に測定をして、全員の数字が下回らなければいけないという話なのか、ある日、やや高い作業のことが当然あるわけですけれども、それも含めて全てとするのかという、運用によってこの数字の意味合いもかなり変わってきますし、本来の目的である健康障害の防止という観点でいくと、例えばTWAと時間加重平均値というのは比較的長いばく露を想定して、ACGIHを読んでも、1回の測定よりは、例えば1週間とか、ある程度平均的なばく露を代表するような評価をしろと書いてあるわけで、そのことと、法令上求められているという点をどのように整合させるかというのは、非常に重要な点かなと思いましたので、どこで議論されるかを確認したかったということです。
 
○化学物質対策課長  ありがとうございます。御指摘の点は、いわゆるデザインとサンプリング、要するに誰を測定の対象にして、サンプリング時間をどれぐらい、あるいは何回ぐらいやるのかということだと思いますが、そちらの議論も含めまして、第2回で議論させていただく予定でございます。
 
○武林委員  分かりました。ぜひそこを事前に十分準備いただきたい、検討いただきたいのは、あくまでも許容値をつくる側からしても、比較的、平均的な情報を使って、平均的な濃度として、それもそれぞれACGIHも日本産業衛生学会もその濃度を下回るとか上回ることだけをもって健康障害と結びつけるなと。むしろ総合的に、現場の判断も含めて、健康障害の防止に使えということの前提で決められていますので、この数字もACGIHなり日本産業衛生学会のものを参考にするのであれば、少しそこの点も踏まえてこの運用方法とか評価方法もぜひ御検討いただきたい、そういうお願いが1点目でございます。
 
○化学物質対策課長  ありがとうございます。次回、資料でお示しするときには、ACGIHの考え方などもレビューさせていただいて、ACGIHは御案内のとおり、基本的に最大ばく露している人間を探し出して、その方がばく露限度を上回っていないことをするというのが原則になっておりますけれども、そういった考え方のレビューをお示ししながら、議論いただきたいと考えてございます。
 
○化学物質評価室長補佐  では、尾崎委員、お願いいたします。
 
○尾崎委員  化学業界からお願いが若干ございます。化学工場というのは、やはり屋内のプラントと屋外のプラントがございます。あと、日常の作業と非日常、どちらかというと異常時というか緊急時というようなことに分けられます。日常的に屋外でばく露される機会があるというのは、例えばローリーからの原料の受入れとかそういうのがございますけれども、そういった屋外のところに関しては、今回その対象になるのか。私の実例でいいますと、環境基準というか作業環境測定をやって、2ppmの物質を扱っていたのですけれども、それをちょっと超えたり超えなかったりというのがあったので、マスクですね、保護具を着用しろということを指示してやっていました。そういうところも今回対象になるのかというのが1つの質問です。
 2つ目は、化学プラントも老朽化していますので、漏えいという異常事態が発生するわけです。漏えいというときは、物質にもよるのですけれども、規模にもよりますが、全従業員を出勤させて、土のうを積み上げたり、漏れたものを回収したり、おがくずで吸着させたり、そういうことをやるのですが、今回ここで濃度基準値としてTWA、それから短時間ばく露の値としてSTELが設けられますけれども、どこの基準を超えたら医者の先生、産業医の健康診断を行わなければならないかというところを、ちょっとお尋ねしたいと思います。
 
○化学物質対策課長  まず1点目の屋外についてでございますが、今回の法令は、屋内で作業を行う場合に濃度基準値を遵守しなければいけないという、法令上、そのような規定になってございますので、屋外につきましては、濃度基準値以下となる義務はかからないということでございます。だからといって、ばく露していいということではございませんので、そちらはリスクアセスメントして、できるだけ下げていくということにはなろうかと思います。
 それから、2点目の異常時の措置につきましては、明確に定められているところはございませんが、必要があった場合に、特別な健康診断を医師が必要であると判断した場合には行うという規定はございます。ただ、こちらは必ずしも異常時を想定してつくられた条文ではなくて、どちらかというと、新しい物質にばく露したときに、従来の特殊健診では対応できないものについて規定がございますので、今いただいた御指摘については、受け止めまして、どのようにするかというのは考えさせていただきたいと思います。
 
○尾崎委員  よろしくお願いします。
 
○化学物質評価室長補佐  ほかに御質問、御意見ございますか。武林委員、お願いします。
 
○武林委員  すみません、続けてになりますが、今度、資料4―2について質問させていただきたいと思います。
 考察のところで、特別則で作業環境測定の対象になって、管理物質があるということについて検討していただいておりますが、この(1)のところで、2つやることは二重規制だということを避けたいというのは非常によく理解できたのですが、もともとあり方検討委員会等の議論を伺ったり、学会等のお話を伺っている範囲では、むしろ現場の実情からすると、管理区分3が続いてしまうけれども、きちっと保護具の管理をすることによって、この自律的管理でやることによりばく露の程度のコントロールができるという発想からすると、新たな濃度基準値の設定は不適当というよりは、二重規制にならないような運用の方法を考えて、ある条件の範囲では、この濃度基準値を使ってもいいというようにしたほうが現実ですし、そのような議論はあったのではないかと理解しておりました。ここでは一切、作業環境測定値があるもの、管理濃度があるものはつくらないというのは、やや思い切った表現だったので、これの意図はどこにあるのかということを教えていただければと思います。
 
○化学物質対策課長  ありがとうございます。大淵の説明の資料2でちょっと説明を飛ばしてしまいましたが、第3管理区分になった場合の措置というのが7ページにございまして、第3管理区分になった場合は、従来であれば、第1か第2に下げるようにしなければいけないという規定しかなかったのですが、ここではマスクをきちんとつけさせると。そこでは、要求防護係数を計算した上で、それに見合うマスクを選ぶという規制の強化を行っております。ここの基準につきましては管理濃度を使っておりますけれども、基本的には要求防護係数を出すことで十分なばく露対策が取れるということでございますので、特別則の中でこのような規定をしているということを前提に、新たな濃度基準は設けないという形でございます。
 
○武林委員  ありがとうございます。最後にもう一点だけ、資料5の御説明について質問させていただきたいと思います。先ほどの御説明にもありましたが、基本的には濃度基準値は国として定める数字ということで、例えばACGIHとかの数字をそのまま使うのではなくて、最終的には日本としての数字を判断するということになると思いますが、その判断は、先ほどの日程の説明でいうと、第3回の検討会にあるように、この委員会で最終的に数字として決定されるのでしょうか。それとも、もう少し上の委員会などがあって、決定されるということなのでしょうか。
 
○化学物質対策課長  御質問ありがとうございます。こちらにつきましては、資料3―2ですね。多段階でやろうと考えてございまして、まず、労働安全衛生総合研究所のほうで委託事業によって文献のレビューを機械的に行いまして、それを労働安全衛生総合研究所の専門家会議の中で、いわゆる一次文献のレビューを含めた評価書原案というのを作っていただくと。そちらはもちろん専門家に一度見ていただきます。それをこちらの検討会に提出していただいて、第3回以降でそれぞれの物質について順番に御議論いただくと。それで、この検討会で数字について結論を出すという想定をしてございます。
 
○武林委員  分かりました。国が定める数字は非常に重い数字だと思いますので、この委員会の重みといいますか、基本的には、ACGIHの数字がいいよということではなくて、この委員会としての判断ということになると思いますので、第3回と多分予備日も必要になのかなと思いましたが、というのは、普通、許容値を定めるようなことを学会でやっていますと、1物質決めるのもかなりの時間をかけてやっていることが前提ですので、この中にメンバーの方もいらっしゃいますけれども、3時間で120物質というのはちょっとあまりに無理があるかなと思いました。それの運用方法もぜひ事務局で御検討いただいて、適切な数字が出るようにということをお願いとして申し上げたいと思います。
 以上でございます。
 
○化学物質対策課長  御指摘ありがとうございます。御指摘を踏まえまして、先ほど申し上げました多段階でやろうとしておりますので、まず安衛研のワーキンググループ、あるいは検討会で御議論いただいて、その中で、これはこの数字で簡単に決まるねというものと、ちょっとこれは御議論いただくべきではないかというのを一応仕分けしまして、御議論いただく必要があるようなものについて、重点的にここの検討会の場で御議論いただくという形で、できるだけ短時間でたくさんの物質が審議できるようにしたいと考えてございます。
 
○化学物質評価室長補佐  ほかに御意見、御質問ございますでしょうか。最川委員、お願いします。
 
○最川委員  建設業の最川ですけれども、建設というか、現場のほうから代表で来ているのは私だけなので、建設業の実情をちょっとお話しさせていただきます。
 化学物質、建設業で使っている製品、特に液体ですとか粉体ですとか気体、それはほぼ、今、化学物質の規制に当たるものを使っているのですけれども、特に液体関係は、有機溶剤ですとか接着剤ですとか、そういうものは建設業はほとんど製品なのです。1つの化学物質を取り扱うのではなく、いろいろな化学物質が入った製品を使っているのです。場所も、屋外であったり、屋内でも換気がよかったり、密閉されていたり、それぞれ扱っている場所が異なります。この委員会で例えば、基準値を下回っているか確認するのに測定をしなければならないともしなった場合には、建設業は1つとして同じ現場がないので、それぞれで測定をして下回っているのを確認しなければいけないというような、非現実的なことが起こりかねません。そこは単純に基準値を下回ることを全部確認しなければいけないという結論に持っていくということではなくて、ある程度基準値を下回っている事が想定出来るところは、測定は必要ないということにして頂かないと、建設業は本当に止まってしまうので、その辺の理解をお願いしたいなと思います。意見です。
 以上です。
 
○化学物質対策課長  ありがとうございます。こちらにつきましては、法令を制定する時点からずっと要望されている事項でございますので、建設業労働災害防止協会、それから労働安全衛生総合研究所と協力して、ある程度典型的な現場の測定を行って、こういう物質を使ってこういう作業を行う場合は、大体これぐらいのばく露があるというのを想定した上で、それに十分な余裕を持った呼吸用保護具を使うというような形で、リスクアセスメントと濃度基準値を遵守するというやり方を、我々は業種別マニュアルと言っていますけれども、そういったやり方も含めて実施ができるような形で検討していきたいと考えてございます。
 
○化学物質評価室長補佐  ほかに御質問、御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、会場からは御意見等はこれ以上ないようですので、城内座長、進行をお願いいたします。
 
○城内座長  いろいろありがとうございました。濃度基準値について、設定の考え方、設定の優先順位、令和4年度に設定する物質等、基本的な考え方について皆様の御了解が得られたものとして、次に進みたいと思います。
 本年度に設定する濃度基準値の具体的な検討は、12月15日の会合及び予備日で議論いただくことになります。
 次は、議題3、がん原性物質の対象範囲について、事務局から説明をお願いいたします。
 
○化学物質評価室長補佐  吉見から御説明をいたします。資料6を御覧ください。
 今回の改正省令に基づく新たな化学物質規制におきましては、この資料に該当条文も載せておりますけれども、厚生労働大臣が定めるがん原性物質については、作業記録及び健康診断の結果等について30年保存を義務づけております。このがん原性物質の範囲につきまして、今後、厚生労働大臣告示で定める予定にしてございます。
 このがん原性物質の範囲、どこまでにするかということでございますけれども、昨年7月の職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会報告書の中では、GHS分類で発がん性がある物質ということで提言をいただいておりました。ただ、この法令に基づいて事業者へ法令上の義務づけということになりますので、その負担も踏まえて、どこまでにするかということについては明確な根拠が必要と考えてございます。
 続いて2ページ目を御覧ください。このことを踏まえまして、記録の30年保存を義務づけるがん原性物質の範囲について、2ページ目に示すとおり、国によるGHS分類の結果、発がん性が区分1(区分1Aまたは区分1B)に分類されたものとしてはどうかと考えております。
 GHS分類の説明をここにつけておりますけれども、国連勧告の化学品の分類及び表示に関する世界調和システムの略称でございまして、国際的に統一された化学物質の危険有害性の分類方法でございます。この分類方法に基づいて国、具体的には厚労省、経産省、環境省で、化学物質の危険有害性の分類を実施しております。その結果は、労働安全衛生法に基づく化学物質のラベル表示・SDS交付対象物質の選定に活用しているほか、事業者がラベル・SDSを作成する際の参考情報として公表しております。
 発がん性については、ここの表にあるとおりの区分がございますけれども、区分1というのが、ヒトに対する発がん性が知られているまたは恐らく発がん性があるということで、1Aは、ヒトに対して疫学調査等の証拠がある。1Bは、恐らく発がん性がある物質とありますけれども、これは動物実験などである程度明確な証拠があるということでございます。
 それから、区分2のヒトに対する発がん性が疑われる、ここについては、動物実験などでの証拠が一部ございますが、まだその証拠が不十分である場合などが、区分2に該当いたします。
 表の下のほうの、上記区分以外の項目についてというところは、物質によっては当然、情報が十分でなく、区分ができないような場合もございますので、こういった場合は、分類できないですとか、逆に、明確に情報があって、発がん性がないとある程度明確に分かっているものについては、区分に該当しないというような表記になるものもございます。
 これに基づいて分類した場合、国の分類の結果、発がん性区分が1となるものが、今のところ、三百数十物質ございます。この国によるGHS分類の結果については、NITE、製品評価技術基盤機構のホームページで公表しておりまして、検索いただくことができるようになっております。
 続いて、3ページ目を御覧ください。今、発がん性区分1に分類されたものということで御説明をしたのですけれども、「ただし」として、以下のものについては、例外として除外すべきではないかと考えております。
 1つ目がエタノールでございます。エタノールは、御存じのとおり、いろいろなところで使われておりますけれども、こちらは発がん性の区分が1Aと分類はされておりますが、その分類の根拠は、アルコール飲料として大量に経口摂取した場合の健康有害性に基づくものということでございます。いわゆる消毒等で使ったりする場合の有害性ではなく、アルコール飲料、お酒として大量に飲んだときの有害性に基づくものということでございまして、業務として大量なエタノールを経口摂取することは通常想定されないことなどから、これは除外すべきではないかと考えてございます。
 続いて、マル2の対象物質を臨時的に取り扱う場合でございますけれども、臨時的に取り扱う場合であって、継続的なばく露が見込まれない場合は、ばく露量が少ないため、発がんのリスクは極めて低いと考えられます。極論を言えば、臨時の作業で1回使って、もうそれきり使わないというような場合でございます。こういった場合まで、全て30年保存とすることについては、非常に負担が大きいのに対して、実際のリスクは極めて低いと考えられることから、効果が少ないのではないかと考えてございます。
 「なお」、とございますけれども、現行の特化則の特別管理物質、この特別管理物質というのも、人体に対する発がん性などが明らかになったものとして指定されているものでございますが、これの作業記録の30年保存の範囲についても、常時作業に従事する労働者ということで限定をされておりまして、同様の考え方から、臨時的に取り扱う場合は除いてよいのではないかと考えております。
 その次については、今回のがん原性物質の範囲とは別に、現行、労働安全衛生法第28条第3項に基づく指針、いわゆるがん原性指針と呼ばれるものがございます。この対象物質が40物質ございます。これらについては、現行、作業記録等の30年保存を行政指導として勧奨しております。法令上の義務ではございませんけれども、努力義務的な性質で、行政指導ということで30年保存を勧奨しております。
 これらの物質については、大部分は発がん性区分1になるのですが、40物質中5物質ほどは区分1にならない物質がございます。そのような物質については、現在の行政指導による勧奨から義務づけとなると、これは規制強化になりますけれども、そこまで義務づけるということは根拠が薄いと考えておりますので、がん原性指針の対象物質のうち発がん性区分1の物質については、今回の安衛則第577条の2に基づく30年保存の義務対象とし、その他の物質、40物質中5物質は、引き続き、がん原性指針に基づき30年保存を勧奨するということで、義務づけの範囲からは除いて、引き続き行政指導として勧奨ということにしたいと考えてございます。
 今回、この省令改正によるがん原性物質の記録の30年保存については、作業記録については令和5年の4月、健康診断の関係は令和6年の4月の施行ということになってございます。したがいまして、早いところでは来年の4月から施行になりますので、本日御議論いただいた結果を踏まえまして告示の案を作成して、その後、パブリックコメント等、告示の制定の手続に進みたいと考えてございますので、御議論をお願いいたします。
 説明は以上です。
 
○城内座長  御説明いろいろありがとうございました。非常に重要な問題だと思いますが、今の事務局からの説明について何か御質問や御意見があればお願いいたします。
 
○化学物質評価室長補佐  尾崎委員、お願いいたします。
 
○尾崎委員  また化学業界からですけれども、がん原性物質の取扱いについてです。30年保管をしなければならない作業記録でございますけれども、例えば研究所の場合は、取扱いの物質が変わったりというのもありますし、どうやって記録を取っていくのかというのが非常に難しいのではないか。個人の名前は特定しなければいけませんし、物質の名前もやらなければいけないのですが、その後、取扱いをした日数が必要なのか、どの程度の項目が必要になってくるのかというのをちょっと教えていただきたいと思います。
 
○化学物質評価室長補佐  研究所につきましても、先ほど御説明したような臨時的に取り扱う場合は対象から除こうと考えておりますが、それ以外については、ある程度継続的に使うようなものについては対象になると考えております。どういった記録の仕方をするとかそういうことについては、実際運用に当たって分かりやすく示していきたいと考えております。
 
○尾崎委員  まとめたりなんかするという作業を、果たして研究所がやるかという、余計な仕事は多分彼らはやらないと思うので、作業負荷と効果というか、そこら辺をちょっと考えていかなければいけないですし、あと、記録を30年というところで、ぱっと思いつくのは、やはりコストがある程度かかるのです。なぜかというと、今からもう6、7年前でしょうか、恐らく皆さん記憶に新しいと思いますけれども、日本のメーカーの至るところでデータ改ざんが行われましたよね。そういうのを経営者は非常に脅威だと思って、どういう対応をするかというと、私がいた会社では、分析の組織が取った生データをずっと記録として取っておくということをやっているのです。多分今もやっていると思うのですけれども、それを段ボールに積み上げていって、そこのコストを製造の原価にかけてくるわけです。そういうことを実際にやる企業もあるということで、単純に30年取っておけばいいではないかという話もありますけれども、知恵も手法もないところに関しては、やはり紙ベースでそれを取っておくということになりますので、それイコール、コストだということを忘れないでいただきたいなと思います。
 
○化学物質対策課長  ありがとうございます。法令で現在定められている記録しなければいけない内容というのは、労働者の氏名と従事した作業の概要及び当該作業に従事した期間ということになっておりますので、割にシンプルなものを想定しているというのが1点と、紙というお話もございましたが、今回はデータを電子的に保存することも構わないという形で取り扱っておりますので、紙で保存する必要はないというところでございます。
 具体的にどのように保存するかとかにつきましては、また御議論を深めさせていただいて、通達などでお示しできればいいと思っておりますけれども、コストについては十分留意してまいりたいと考えております。
 
○化学物質評価室長補佐  最川委員、お願いいたします。
 
○最川委員  最川です。建設業も、特に塗装ですとか防水の材料には発がん性の区分1というのが結構あるのです。特に塗装業者さんなどは、区分1の材料を使うときもあるし、区分2とか3とかというところが――作業歴の話なのですけれども、作業歴を最終的にどう使われるかというのをちょっとお聞きしたいのです。それを例えば1時間やりました、30分やりましたというのを毎日それぞれの労働者について書くというのは、手間も現実的ではなくて、建設業界は残業時間上限規制に向けていろいろやっている中で、この規制だけでも相当の労力が必要になってくると思っていますので、健康診断はしようがないと思うのですけれども、特に作業歴は最終的にどう使われようとしているのかというのをちょっとお聞きしたいのです。安全に関係ないのではないかなと。
 逆に、こういう作業歴を残しておくと、最後、訴訟問題になって、こういうものを使った人ががんになったら、全部、そこの現場のせいというようになってしまう。そういうことにならないように、ちゃんとしっかりマスクを使っていても、その物質を使っていただけで、そこの現場が発がん性の物質を扱っていたと、そういう使われ方をしないかというのはすごく不安なのですけれども、どう使われるつもりで作業歴を残されるのかというのをちょっとお聞きしたいのです。
 
○化学物質対策課長  ありがとうございます。30年保存につきましては、特定化学物質障害予防規則、いわゆる特化則の特別管理物質につきましても、既に30年間の保存をかけております。30年間というのは、基本的に、ばく露してから発がんするまで非常に時間がかかるということで、例えば労災補償とかそういったものを受けるときに、エビデンスがないとなかなか認定ができないということ、そういったものに使うという想定もございますし、また、この間のいわゆる胆管がん事案のように、1つの事業場で同じがんが多数発生した場合に、その原因物質などを調べて対策を打つためにも、そういった記録を使うという趣旨でございます。
 
○最川委員  そうなのですけれども、結局、取り扱った時間だけを残しておくということになると、今回、濃度基準値を決めて、それ以下で作業していたとしたら結局影響がないということを決めるわけですよね。にもかかわらず、それを使っていたという記録だけ残ってしまうと、そこの取り扱っていた時間が発がんしたという累積に使われないですか。だから、守ろうとすると、そこはちゃんとマスクをして濃度基準以下にしていましたみたいな記録まで残さなければならなくなってしまう。30年後ぐらいに発がんしたのは、みんな建設業で働いていた人みたいな話になって、そういう訴訟のネタというのですか、記録して使っていましたよねみたいな話に使われるおそれをすごく感じていて、何のためにそれを作らなければいけないのか。訴訟を受けるためだけの書類を作らされているようなイメージなのですけれども。
 
○化学物質対策課長 御指摘ありがとうございます。まず、ちょっと事実関係として、発がん物質については、発がんを防止するための濃度基準というのはないのです。リスクなので、ちょっとばく露すると、ちょっとリスクがあって、大量にばく露すると、大きなリスクがあるということなので、急性毒性のように基準値をつくれないという性質がございます。ですので、仮に濃度基準値があったとしても、それはあくまでその物質の急性毒性に着目しておりまして、発がん性ということではないというのが1点でございます。
 それから、保存につきましては、そういった観点で、要するに、トータルで後で振り返ってどれぐらいのばく露であったかというのを知るに足る材料ということでございます。法令上はあくまで従事した作業の概要と当該作業に従事した期間ということですので、1日何時間やったということではなくて、例えば塗装であれば、この物質を使った作業を年間何日やったといったレベルでリスク評価自体はできるということですので、こちらにつきまして、具体的にどこまで建設現場に合わせた形で保存ができるのかというところについては、また御相談させていただきたいと思いますけれども、いわゆる作業日報みたいなものの保存という形になろうかなとは思っております。
 
○最川委員  また個別でお願いしたいのですけれども、なるべく書類は増やさない方向で御検討願いたいと思います。
 以上です。
 
○化学物質評価室長補佐  尾崎委員、お願いします。
 
○尾崎委員  対象物質を臨時的に取り扱う場合というところの文言なのですけれども、これは日化協の化学管理の人間のコメントなのですが、DNAを傷つける物質というのはいろいろありまして、単発的に1回ばく露しただけでもDNAを傷つけてしまうという物質もありますし、逆に、継続的に複数回以上ばく露しないとDNAを傷つけないというものもあるということなので、この対象物質を臨時的に取り扱うという言葉を因数分解していただいて、その物質による程度を明確にして、定義を明確にしていただきたいと思っております。
 
○化学物質評価室長補佐  物質によって当然リスクは違いますし、取り扱う状況は様々で、一律に全部基準というのは難しいと思うのですけれども、臨時的の解釈について、なるべく分かりやすく示すことを検討させていただきたいと思います。
 鷹屋委員、お願いいたします。
 
○鷹屋委員  鷹屋です。1つ前の議論で、課長のほうから、発がん性物質というのはリスクの大小で基準値は決められないということだったのですが、物質の記録の、そういった意味で、濃度、裾切り値というのは、GHSのラベルに載っていれば載っているというのに合わせていくのでしょうか。それとも、本当に少しでも入っていれば、可能性があれば対象になるというような考えなのか。これに関して、結局、裾切り値というものは当然決める必要があると思うのですが、どのようなお考えで進められるのか。
 
○化学物質評価室長補佐  裾切り値は、法令上、SDS交付が義務づけられている範囲ということになります。
 ほかに御意見、御質問ございますでしょうか。平林委員、お願いいたします。
 
○平林委員  平林でございます。記録についてでございますが、これは事業者が保存するということが前提になっているかと思いますが、逆に、労働者側からしますと、同じ業界で会社を替えたりということも起ころうかと思いますので、ここの議論からは少し外れた大きな話になってしまうのかもしれませんが、個人で持たせるといったことも御検討いただくというか、何かありますでしょうかということです。
 少なくともRIの取扱いなどは個人に持たせるというような面があったかと思いますので、ここでも化学物質のばく露の記録といったようなものは、その方が生涯どのくらい、どういったことにばく露されたかということが後々必要とされるリスク管理、リスク評価の基のデータになるということからすると、そういった観点も必要かなと思いますので、申し上げました。
 
○化学物質対策課長  ありがとうございます。御案内のとおり、放射線の場合は、いわゆる中央登録制度があって、データベースがある業界もあるのですけれども、化学物質については現時点でそのような記録を引き渡すような機関が制度的にないという状態でございます。こちらにつきましては、あり方検討会でもそういった御意見が出たと聞いておりますので、これは将来的な課題として、例えば何年間か保存した後には、どこかの機関に引き渡していいとか、そういった制度をつくれないかどうかということにつきましては、引き続き検討させていただきたいと思います。
 
○化学物質評価室長補佐 ほかに御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。尾崎委員、お願いいたします。
 
○尾崎委員  国によるGHS分類で発がん性区分1に区分された物質の中で、物質名が明確に書かれているものもあるのですけれども、漠と書かれている石油留分とか、ニュートラル潤滑油用基油というのがあるのですが、この辺がちょっと曖昧かなという気がしまして、日化協の会員様の中には、やはりこういう石油精製をやられている方もおられるのですけれども、そうなると、原油を入れてから製品を出荷するまで、全物質というか全製品が対象となってしまうということもありますので、非常に曖昧な対象になっているなというのを印象として持っております。
 精製のプラントは、これから経産省のスーパー認定を取っていくという動きがありますので、逆に、こういった化学物質に接する機会は非常に少なくなるのです。開放点検でもやはり5年とか7年という周期になってきますので、日常のところでいうと、こういった化学物質と接する機会が非常に少ないので、こういったところと、こういう漠とした曖昧な表現を掛け合わせると、何をしたらいいのかなという、現実と合っていないような気もするということです。
 
○化学物質対策課長  ありがとうございます。御指摘は、NITEのホームページに載っている発がん性区分が1のものの中に、石油留分やニュートラル潤滑油用基油というお名前のものがあるということで、ニュートラル潤滑油用基油は御案内のとおり、CAS番号も複数あったりして、非常に分類が難しいものでございますけれども、GHSでこのお名前で使っているということなので、これを小分けするということになると、まずGHSを小分けする必要があるというのが1点ございます。
 もう一つ、あえて小分けすることがいいのかという、つまり、小分けしてしまうと成分分析をすることが必要になってくるということで、むしろ石油留分やニュートラル潤滑油用基油というお名前で漠と捉えていたほうが、分析のコストが少なくなるという考え方もございますので、こちらにつきましては今後、どこまで細かくGHSを分けていくのかというところで御議論いただきたいなと考えております。
 
○尾崎委員  ああいう石油精製のところのマスのケミカルのほうは、やはり分析の費用は割合的に物すごく少ないのです。だから、分析しても、競争力にあまり影響はないと考えていますので、それはやっていただければいいのかなというのと、ある程度成分が分かっているものからスタートしているので、シミュレーションすれば成分は計算すれば大体分かるのです。蒸留計算というソフトもありますので、そういったところをベースにしてやってもいいのではないかなという気はいたします。
 
○化学物質対策課長  ありがとうございます。先ほど申し上げましたように、いずれにせよ、GHS、あるいはIARCでどのような区分けにしているかに関わってくるところでございますので、エビデンスがある形でどこまで小分けできるかというところは、この場ではなく、GHSの検討をする中での検討ということにはなってくると思いますけれども、そういった御意見があったということについては伝えたいと思います。
 
○化学物質評価室長補佐  ほか、ございますでしょうか。それでは、会場からは追加の御意見はないようですので、城内座長にお戻しいたします。
 
○城内座長  ありがとうございました。私はちょっと気になっていまして、最初、事務局のほうから、今日の検討の結果を踏まえて、令和5年4月からの施行となる告示の基を決めたいというお話だったと思うのですが、最川委員、それから尾崎委員からの記録に関する御意見ということで、これ以上議論しなくても告示ができるのか、ちゃんと議論したほうがいいのかが、私はちょっと分からなかったのですが、事務局はどう考えていますでしょうか。
 
○化学物質対策課長  どのような形で記録を残すかということにつきましては、省令の解釈ということになっておりますので、ここで御議論いただく必要はないということでございます。ここで御議論いただくのは、告示に定める物質というか、発がん性の基準だけを議論いただくということでございますので、本日の資料につきまして、限定的に御議論いただければ十分と考えてございます。
 
○城内座長  ありがとうございました。では、委員の皆様もそういう御理解をしていただいたということで、先に進みたいと思いますが、委員の皆様、よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでは、がん原性物質について、指定する物質の候補はまとまりました。がん原性物質に関する記録の保存については、令和5月4月からの施行となりますので、今回の結論をもって、事務局は、指定のための告示の制定の手続をお願いいたします。
 本日の議論は以上となります。構成員の皆様、長時間の御議論ありがとうございました。
 次に、その他ということで、事務局から何かございますでしょうか。
 
○化学物質評価室長補佐  先生方、長時間にわたって御議論いただきましてありがとうございました。
 本日の議事録につきましては、後日、先生方に御確認をいただいた上で、公開をさせていただきます。
 それから、次回の日程でございますけれども、途中の今後のスケジュールにもございましたが、10月14日、金曜日、午後3時から5時を予定しております。
 次回の議題は、ばく露が濃度基準値を下回ることを確認するための測定法の考え方ですとか、作業環境測定、個人サンプリング法の対象物質の拡大の検討などを予定しておりまして、構成員名簿に掲げる先生方のうち、全般に関する事項、それから、ばく露防止対策に関する事項の欄に掲載しております14名の先生方に御参集をいただく予定でございます。正式な開催案内につきましては、後日お送りさせていただきます。
 事務局からの連絡は以上でございます。
 
○城内座長  ありがとうございました。以上で第1回の化学物質管理に係る専門家検討会を閉会させていただきます。本日はありがとうございました。