第8回 医療扶助に関する検討会 議事録

日時

令和4年8月25日(木) 16:00~18:00

場所

AP虎ノ門 会議室C+D(11階)
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル)

出席者(五十音順)

議題

(1)医療扶助に関する見直しに向けた整理(案)について
(2)その他

議事

議事録
○吉川保護事業室長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第8回「医療扶助に関する検討会」をオンライン会議で開催いたします。
 皆様方におかれましては、大変お忙しいところを御参加いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、兵庫県の藤本委員が都合により御欠席となっております。
 また、川又社会・援護局長は、公務の都合により遅れての出席となる予定です。
 それでは、会議冒頭のカメラの頭撮りがございましたら、ここまでとさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、以降の議事運営は尾形座長にお願いいたします。
〇尾形座長 こんにちは。それでは、早速、議事に入りたいと思います。
 本日は、議事としましては「医療扶助に関する見直しに向けた整理(案)について」ということでございます。
 これまで3回にわたりまして、医療扶助に関する見直しに向けた検討を重ねてきたところでございます。本日は、資料1-1として事務局がまとめた「医療扶助に関する見直しに向けた整理(案)」について御議論いただき、取りまとめを行ってまいりたいと思っております。
 なお、これまでの検討会でもお示しした医療扶助に関する基礎資料集を資料1-2として御用意しておりますので、こちらも適宜御参照いただければ幸いです。
 また、資料2といたしまして、7月29日に開催されました社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会における主な御意見も御用意してございます。
 それではまず、事務局のほうから資料1-1及び資料1-2につきまして御説明をお願いいたします。
○河合保護事業室長 事務局でございます。よろしくお願いいたします。
 まず、資料2のほうをお手元に御用意いただけますでしょうか。
 こちらは、先月29日に行われました社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会(第17回)におきまして、医療扶助の関係について御議論を賜った際にいただいた意見をまとめたものでございます。
 大きな項目としまして2つございまして、被保護者健康管理支援事業が一つ、もう一つは医療扶助についてということで2つに分かれております。
 主なものを御紹介しますと、まず、健康管理支援事業につきましては、1つ目ですけれども、ケースワーカーのみで支援を行うのでなくて、他制度・機関との連携や協働も進めるべきであるということ。
 あと、3つ目ですけれども、被保護者自身の健康意識・自尊感情の改善が必要である。そのため、周辺施策を含めた社会生活面のアプローチが重要であるということ。
 次に、医療扶助につきましては、1つ目の○ですけれども、医療扶助の適正化についてはこれまでの福祉事務所による取組によって改善、そして、状況把握が進んできていることは評価すべきであるといった御意見。
 3つ目の○につきましては、頻回受診の背景に孤独や医師への依存などがある中で、医師以外に本人の居場所をどうつくるかの検討が必要ということ。
 1つ飛ばして次の○で、医療扶助審議会の設置、審議内容の充実により、都道府県の医療に係る専門的知識をバックアップし、市区町村へ支援を可能とする体制整備が必要であること。
 次の○で、専門的な知識を有する人材の配置に課題があることや事務量の増加が伴うことから、各都道府県等と十分に協議して制度の具体化を進めることが必要であるということ。
 1つ○を飛ばして、最後の2つの○は国保加入の部分でございますが、こちらは両論ございまして、国保加入については慎重に議論を行うべきということ。
 もう一つは、医療扶助の在り方については課題を示した上で議論を始めるべきであるといった御意見をいただいたところでございます。
 簡単でございますが、資料2については以上となります。
 続きまして、今回の整理案につきまして資料1-1をお手元に御用意いただければと思います。
 こちらにつきましては、前回の検討会におきまして、座長より本検討会の取りまとめ案を事務局において作成するようにとの御指示をいただきましたので、今回の資料としてこの整理案を作成しております。
 まず1ページをお願いいたします。
 こちらは「はじめに」というところでございますが、生活保護法におきましては、前回改正、平成30年の附則の規定におきまして、施行後5年をめどとして施行状況について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講じることとされております。
 これを受けて、生活保護制度の見直しに向けては、昨年秋から6回にわたり地方自治体の実務者と協議を行い、取りまとめたこれまでの議論の整理を踏まえ、今年度からは困窮保護部会においてさらに議論を進めているところでございます。
 一方、医療扶助につきましては、医療扶助に対応したオンライン資格について制度的、実務的な課題を整理し、実現に向けた検討に行うことを加え、医療扶助に関する諸課題への対応方針に関する検討を行うことを目的として設置されたこの検討会において集中的な議論を深めてきたところでございます。
 本検討会におきましては、被保護者健康管理支援事業、医療扶助の適正化、医療扶助に関する都道府県等による関与といった大きく3つのテーマについて、有識者や自治体関係者の皆様方からヒアリングを行いつつ、4回にわたって議論を重ねてきたところでございまして、今回の取りまとめ案につきましては、これまで事務局から提示した論点を中心に、いただいた御意見を踏まえ、医療扶助に関する見直しに向けた整理というものを取りまとめたものとなってございます。
 続きまして、「2 総論」でございます。2ページをお願いいたします。
 総論におきましては、前回改正以降の状況や医療扶助の現状を振り返りつつ、今ほど申し上げた大きな3つのテーマに関して、4ページの主な検討事項を議論のフレームといたしまして、それぞれの論点をお示ししているものでございます。
 具体的にはということで、まずは被保護者健康管理支援事業のところでございますが、4ページをお願いいたします。
 着実な実施を図る観点からの福祉事務所と保健部局との連携について、事業実施に係る指標の設定・評価、各種データの効率的な収集・活用等に係る手法について、社会生活面に着目したアプローチについて、保護世帯における子供の事業利用の推進方策についてということが挙げられております。
 続きまして、医療扶助の適正化につきましては、頻回受診者の該当要件について、効果的な頻回受診対策に加え、重複投薬や多剤投与等に着目した方策について。もう一つが長期入院患者の退院促進に係るさらなる実効的な取組についてということが挙げられております。
 3つ目の医療扶助に関する都道府県による関与につきましては、改革工程表などにおいてガバナンス強化の必要性が指摘されていることを踏まえた都道府県によるデータに基づく適正化方策の推進についてと、都道府県による管内自治体や指定医療機関に対する助言・指導などの効果的実施方策についてということが挙げられております。
 6ページ以降の各論におきましては、これら3つのテーマに関し、それぞれ現状・課題というものと本検討会での議論を踏まえた対応の方向性という2つのものでそれぞれ整理しておりますので、順次御説明いたします。
 6ページをお願いいたします。
 まず、各論の一つでございます。被保護者健康管理支援事業につきましては、3つの視点から現状・課題を整理しております。
 現状・課題といたしまして、まず一つが効果的・効率的な実施体制の構築についてでございます。健康管理支援事業が施行されて以降、ほぼ全ての福祉事務所が取組を実施している一方、福祉事務所における保健医療専門職の在籍状況は様々であることや、専門職の在籍の有無によって各取組の実施状況が関係部局との連携状況に大きな差があること。あとは、庁内の関係部局との連携状況として、現状は国保部局等と連携している福祉事務所は限られているものの、連携している一部の事務所では、データ分析も含めた事業の企画段階から保険事業等の知見等の活用や、情報共有、専門職との相談などによって効果的に実施している取組事例が確認されていることが挙げられます。
 2つ目です。EBPMの観点からの事業の推進についてでございます。こちらにつきましては、効果的な事業実施のためには地域の健康課題を把握する必要があり、被保護者の健康課題の現状分析に当たっては、8割以上の福祉事務所ではレセプトを用いた分析が行われている一方、健診結果の活用は5割程度にとどまっていること。
 また、社会参加も含めて広く生活全般の環境を改善する視点も重要となるため、社会生活面の情報を活用した多角的な分析が重要となること。一部の福祉事務所では既に取組がなされているものの、収集する情報の標準化がなされておらず、ケースワーカーなどの個人の裁量に依存していることが多いこと。
 事業評価につきましては、被保護者健康管理支援事業の手引きにおいて、取組の目標・評価指標を設定し、当該評価指標に沿って事業評価を行うこととしておりますが、実際に事業の評価を設定している福祉事務所は3割未満と低調であることに加え、統一的な基準を求める声もあり、客観的な指標の設定や事業の評価方法を検討する必要があることなどが挙げられます。
 続きまして、7ページですけれども、事業の機能強化についてでございます。
 事業の対象者につきましては、精神疾患や依存症などを抱える方や孤独・孤立などの社会生活面での課題を有する方も含まれるため、社会生活面に着目したアプローチや社会参加などの支援を強化していくことが重要となりますが、現状としてそのような取組を実施する福祉事務所は限られていること。
 また、現在は40歳以上を事業の主な対象者とする福祉事務所が多く、子供の健康面に着目した支援の取組を実施する事務所は限られています。
 一方、モデル事業などにおいては、子供の学習・生活支援などの他施策と連携した取組も複数見られまして、これらにより、受診率の向上や健康意識に変化が見られるなど、一定の効果が出ていること。また、母子世帯に対する保健指導・生活支援を実施し、子供に介入することを通じてその家庭全体の生活習慣などが改善した事例も報告されていること。
 その際、ケースワーカーが子供に直接アプローチしにくい状況も踏まえ、効果的に事業につなげていくための取組方策が求められていることが挙げられております。
 なお、頻回受診指導と重複・多剤投薬などに着目した適正服薬に関する支援における現状と課題につきましては、2つ目のテーマである医療扶助の適正化にも関わることですので、後ほど御説明させていただきます。
 その上で、8ページの「対応の方向性」にお移りください。
まず、1つ目の効果的・効率的な実施体制の構築につきましては、健康管理支援事業が施行後間もないことから、まずは着実な実施を図るため、各地域の実情に応じて効果的・効率的な実施体制を構築することが重要であること。
 2つ目の○です。庁内の関係部局との連携について、保健部局とのさらなる連携強化のみならず、保険者として保険事業等に取り組め国保部局等の連携も重要と考えられること。特にデータ分析も含めたPDCAサイクルの各段階(企画・実施・評価)におきまして、実施段階での連携のみならず、企画段階での連携について、専門職や他制度の知見やノウハウを活用も含め、効果的な連携を推進していくことが適当であること。
 この際、庁内の関係部局からの連携協力を得られやすくするため、国が各段階での関係部局との連携事例を収集して横展開しつつ、福祉事務所自身がデータ分析を含めたPDCAサイクルによる取組を確立していくことで、関係部局に求める役割を明確化していくことが適当であること。なお、事例を横展開していく際には、その取組による政策的効果を併せて示すことが望ましいとの御意見もいただいております。
 また、関係部局との連携を進める上で、まずは健康管理支援の重要性についてケースワーカーの理解や認識を向上していくことも重要であること。福祉事務所が持つリソースなどを踏まえて連携したい内容を明確化し、その機能を有する部局と協働して実施することが望ましいとの御意見もいただいたところです。
 さらに、より効果的かつ効率的な実施体制としていくためには、国や都道府県、自治体関係部局に加え、医師会、歯科医師会及び薬剤師会などの医療関係団体や外部機関も含め、必要な関係機関との連携体制を構築することも重要であり、こうした連携体制を構築するため、国が医療関係団体や外部機関との連携事例を収集して横展開することが適当であることとしております。
2つ目のEBPMの観点からの事業の推進でございます。9ページでございます。
 データに基づく取組をより一層推進するため、手引きの中で例示されている評価指標なども参考に、国による参酌標準としての数値目標の設定も含め、標準化された指標づくりを進めていくことが適当であること。なお、アウトカム指標については根拠となるデータ収集などを行いつつ、社会のつながりも考慮した指標設定を検討することも必要であること。福祉事務所において、こうした指標を参考に、地域の実情を踏まえて適切な指標を設定した上で事業を実施し、評価していくことが適当であること。その際、この取組を一層推進していくため、都道府県による支援が重要であるとしております。
 こちらにつきましては、これまでの議論を踏まえた事務局の案を提示したものとなっております。
 続きまして、データ収集・分析につきましては、レセプトや健診情報の活用を基本としつつ、福祉事務所が効果的かつ効率的に行うために、先ほど申し上げた指標による評価を含め、福祉事務所でのデータ収集・分析に対し、都道府県による後方支援や国によるNDBを活用した全国データ分析の充実など、都道府県や国が支援等を行うことが適当であること。
 また、社会生活面の課題の把握を効果的かつ効率的に行うため、国において優先的に把握すべき社会生活面のスクリーニング項目を整理し、支援することが適当との御意見もいただいております。
 3つ目の事業の機能強化でございます。頻回受診の中には社会的孤立や者精神的不安に起因するものも多く、従来の頻回受診指導の仕組みでは効果が得られにくいといった課題なども踏まえ、その対応として頻回未改善者を変更し管理支援事業による保健指導・生活支援の対象に位置づけ、より丁寧な支援を行うことで頻回受診の改善につなげていくことが適当であること。
 10ページです。その際、適正な受診などが制限されることはあってはならず、精神疾患や社会的孤立などが頻回受診の一因となっている可能性も踏まえ、まずは受診回数や処方薬剤種類数などを用いてスクリーニングし、医療機関や医師と連携するなどが重要との御意見もいただいたところでございます。
 一方、受診者が抱えている健康課題に合っていない診療科への受診に対しましては、個々の状況に応じて、医師のほか、看護師や保健師その他の福祉サービス等との連携も図りつつ、相談援助機能の充実も併せた頻回受診対策を進めていくことが重要との御意見もいただいたところです。
 その上で、こうした支援も講じてもなお正当な理由なく保健指導・生活支援に従わない場合は、取組の実効性を持たせる観点から、現行でも求めている保護の変更、停止または廃止を見据えた措置を講じることも検討すべきであるとしております。
 今ほど申し上げた最後の4行の記述につきましては、これまでの検討会でお示ししてきたものではなく、今回の整理案の作成に当たって事務局の案を記載しているものです。
 若干御説明いたしますと、これまで指導を主として進められてまいりました頻回受診対策につきましては、未改善者の中には社会的孤立や精神的不安に起因する場合も多いといったことをデータでお示ししましたが、これに着目し、保健指導・生活支援といったものを行うとともに、居場所づくりなどの相談支援を充実するなど、支援面を強化することで頻回受診を改善し、本人の健康増進を図っていくことが適当と考えております。このような考えの下、取組の実効性を持たせるため、今回、充実を図る支援を受けること自体にも応じない方々につきましては、現行でも求めている措置を講じていくこととしてはどうかという考えから記載させていただいているものでございます。こちらの部分につきましては後ほど御議論いただければと思います。
 続いての○でございます。「また」ということで、事業の対象者に精神疾患や依存症の方などが含まれることも踏まえ、専門職による相談支援や居場所づくりも含め、生活支援に係る取組を強化していくことが適当であること。
 続きまして、子供に対する健康管理支援でございますが、これまでモデル事業を中心に実施してきておりますけれども、ケースワーカーが子供に直接アプローチしにくい状況も踏まえ、事業を効果的に進めていくことが重要であること。子供の学習・生活支援事業などと連携した取組事例も踏まえ、親も含めた世帯全体の支援の観点も含め、関係施策と連携しながら健康増進に係る普及啓発、相談支援、受診勧奨を推進していくことが適当であること。これと併せて、ケースワーカーなどが健康生活面で支援が必要な子供の把握に必要な項目を国が整理することが適当であることとしております。
 次の医薬品の適正使用に係る取組の推進につきましては、患者の健康増進の観点からも、医療扶助の適正な実施の観点からも重要であり、その際は適正な医薬品使用が制限されることはあってはならず、医学的に判断する必要があること。
 この点、来年1月に導入される電子処方箋の活用により、医療機関と薬局間で薬剤情報を共有できる環境が整っていくことで、複数の医療機関、薬局間での情報共有が進み、適正な服薬管理に資することが期待されること。また、こうした仕組みも活用しつつ、福祉事務所が庁内の関係部局や地域の医療機関及び薬局等の関係機関と連携し、さらに取組を進めていくことが求められること。具体的には、予防・健康づくりの観点から。健康管理支援事業において、医薬品の適正使用を支援する必要がある者に対し、薬剤師などの医療関係者による訪問支援や薬局などへの同行支援を行うほか、福祉事務所への専門的助言や協力援助なども行っていくことが重要であること。
 11ページをお願いいたします。
 その上で、このような支援に応じなかった場合や処方薬剤数が一定以上の方々に対して、薬剤師などの医療関係者との連携の上で適正な服薬に向けた指導を行うなど、予防・健康づくりと医療扶助適正化の両側面で取組を進めていくことが重要であること。
 ただし、処方薬剤数が一定以上の投与を受けている方々への指導に当たっては、それぞれの疾病状況を踏まえて医学的に判断する必要があるため、一律の基準を設けて医薬品の投与を是正することは適当ではないことに留意が必要との御意見もいただいたところでございます。
 続きまして、12ページをお願いいたします。
 2つ目でございます。医療扶助の適正化です。
 医療扶助の適正化につきましても、3つの視点から現状・課題を整理しております。
 まず1つ目でございますが、頻回受診対策です。
 これまでの取組の成果といたしまして、福祉事務所が受診回数の基準に該当する者数の年次推移を見ますと、令和2年度は平成16年度と比較して半数程度まで減少するなどしている一方、頻回受診指導を受けた方々のうち、指導後も改善に至らない者が約半数いる状況が続いていること。
 頻回受診指導について、福祉事務所がレセプトから対象者を抽出しているため、受診から実際の指導までに2か月程度のタイムラグが生じることに伴い、指導前に受診行動が習慣化してしまうことなどから、効果的な取組が難しく、頻回受診の傾向がある者に対する早期からのアプローチが求められていること。
 また、改革工程表2021におきましても、受診改正に係る基準の見直しについて検討が求められていることが挙げられます。
 13ページでございますが、重複・多剤投薬の対策につきましては、複数の医療機関・薬局から同一の向精神薬の投与を受けている者について、主治医などに確認の上、医療機関と協力して適正受診指導を行っていることですとか、薬局と連携した薬学的管理・指導の強化に向けた取組やモデル事業などを実施していること。
 一方、調剤費に係るレセプト点検につきましては、現状、診療内容と処方薬の整合性の確認を行うこととしておりますが、重複投薬などに特化した確認を必須としていないこと。さらに、近年では一般医療において高齢者のポリファーマシーに着目した対策が必要とされ、ガイドラインにおきましては5~6種類以上を多剤併用の目安と考えることが妥当との指摘がありますが、医療扶助における処方薬剤種類数を見ると、65歳以上の高齢者のうち、同一月内に15種類以上の薬剤の処方を受ける患者の割合は、薬剤が投与されている高齢者の約10%存在しており、医療全体と比較してその割合が高い可能性があること。
 医療保険における保険事業などでは、重複・多剤服薬者への訪問指導など、適正服薬を促す取組が進められており、健康管理支援事業においてもこのような適正化に関する取組や個別保健指導と集団健康教育による医薬品の適正使用に関する取組を実施している福祉事務所はあるものの、その実施数は限られていること。
 14ページですが、精神障害者などの長期入院対策につきましては、医療扶助の入院における傷病分類別レセプト件数の構成割合で見ますと、精神・行動の障害の割合が33%と医療保険の約10%と比較して高くなってございますけれども、精神・行動の障害による入院件数は過去10年間で減少傾向にあり、特に入院期間が5年を超える長期入院者数は減少していること。
 精神科病院に長期入院している被保護者の地域移行を推進するためには、福祉事務所と障害保健福祉部門との連携をさらに進めるとともに、生活支援の体制が整った居住環境を確保することが重要であり、これまでも入院の必要のない長期入院患者の退院・地域移行の実績の高い自治体では、専門性のある主体への外部委託や障害福祉担当部局との連携、救護施設などの活用により成果を上げている例があること。
 これらの取組により、入院期間が180日を超える者の数や入院の必要がないとされた方々のうち、福祉事務所による退院促進の措置が未対応の患者数はいずれも減少傾向にあることが挙げられます。
 続いて、「対応の方向性」でございます。
 これらの現状・課題を踏まえた対応の方向性として、まず1つ目の頻回受診対策については、先ほど御説明した健康管理支援事業の機能強化は9ページのところと重複するため、再掲としておりまして、こちらの説明は割愛させていただきます。
 その上で、15ページの2つ目の○に飛んでいただきまして、現在進めているオンライン資格確認の導入ですけれども、こちらの導入によりログ情報を集計し、生活保護システムと連携することで、福祉事務所で頻回受診の傾向がある者を把握することが可能となります。福祉事務所では、この仕組みを活用して、頻回受診の傾向がある者に対して早期の状況把握と助言等を行うことが適当であること。ただし、当該システムで把握できる受診状況は、医療機関ごとかつ医療機関窓口でのログ情報となるため、頻回受診指導対象者を正確に特定することができないことに留意が必要であること。
 改革工程表で検討が求められている頻回受診の指針改正の基準につきましては、その厳格化を行った場合、受診している被保護者からの反発や病状調査の件数増によるケースワーカーの業務量負担の増加につながることとなるといった御意見をいただいております。また、頻回受診者の推移等に係る制度との比較において、医療扶助で特異な状況が見られないということや、多制度では全国一律の回数の基準を定めての頻回受診指導は実施されていない現状なども考慮すると、特段基準の見直しを行う必要はないと考えるとしております。
 こちらにつきましては前回の検討会でお示しした論点をベースとしつつ、結論に関しては事務局としての案を提示したものとなってございます。
 2つ目でございます。重複・多剤投薬の対策です。こちらにつきましても先ほど御説明した健康管理支援事業の機能強化と重複するため、再掲としておりますので、説明は割愛させていただきます。
 その上で、16ページの下から2つ目の○に飛んでいただければと思います。
 3つ目の精神障害者等の長期入院対策のところでございますが、精神疾患を抱える者などの退院促進・地域移行は重要な課題であり、自治体における長期入院患者の状況把握に係る嘱託医協議の検討状況などを基に、福祉事務所自らが組織的に長期入院患者の特徴や退院の阻害となっている要因等を分析し、その結果に基づき、退院や地域移行に向けた継続的な支援体制の構築に努めるべきであること。
 その際、福祉事務所と障害精神保健部門との連携が重要でありますが、福祉事務所は、郡部福祉事務所を除き、基礎自治体単位で設置されている一方、連携先として想定される精神保健福祉センターは都道府県単位で設置されているなど、連携に当たっての課題があるため、都道府県において広域的な観点から専門的助言が行える体制の構築についても検討していく必要があることとしております。
 3つ目の医療扶助に関する都道府県等による関与のところでございます。17ページをお願いいたします。
 こちらにつきましても3つの視点から「現状と課題」を整理しております。
 まず、都道府県の役割についてですが、医療扶助の適正な利用に向けた取組について、これまでも保護の実施機関である福祉事務所において、ケースワーカーなどが被保護者への生活支援などを行っており、医療扶助の適正な利用に向けた取組もその一環として実施されているため、頻回受診対策等に係る制度全体の取組として一定の成果が認められること。
 一方、医療扶助や健康管理支援事業の取組状況におきましては、福祉事務所間において被保護者の健康課題の把握や健康保持・増進のための関係部局との連携、取組状況に地域差が生じておりまして、改革工程表においても指摘されるとおり、取組を効果的かつ効率的に進めるためには、広域の地方公共団体である都道府県が管内市町村の取組に対して後方支援を行うといったガバナンス強化のための役割が一層求められていること。
 また、改革工程表におきましては、「中長期的課題として、都道府県のガバナンス強化をする観点から、生活保護受給者の国保及び後期高齢者医療制度への加入を含めた医療扶助の在り方の検討を深める」と記載されていることが挙げられます。
 都道府県による市町村への支援の強化でございますが、生活保護におきましては、都道府県知事は市町村に対して保護の適正な実施や健康管理支援事業の効果的かつ効率的な実施などの必要な助言等を行うことができることとされておりますけれども、現状として、都道府県などは市町村に対し医療扶助の運用等に係る疑義照会があった際の回答対応にとどまっている場合が多いこと。
 また、医療扶助運営に当たって定められた通知におきましては、都道府県等の本庁には、医療扶助の決定実施に係る医学的判断などに関する諮問機関として医療関係者等で構成する医療扶助審議会の設置を推奨していますが、実際に当該審議会が設置・運用されている都道府県などは少なく、都道府県による市町村への関与は市町村から寄せられる個別事案に係ると会の回答などにとどまっていることが多いことが挙げられております。
 18ページをお願いいたします。
 都道府県等による医療機関への関与です。
 こちらにつきましては、生活保護法における指定等、指導・検査、指定取消・効力停止があり、都道府県等による指定医療機関に対する指導は年間700件程度、検査は数件から数十件程度、指定取消・効力停止はそれぞれ年間数件程度実施されていること。
 また、指定医療機関に対する個別指導は、関係機関からの情報提供や支払基金から提供される診療報酬請求データ等の分析結果などから得られる指定医療機関の特徴などを総合的に勘案し、個別に内容を審査した上で対象医療機関を選定することとしており、このうち、診療報酬請求データにつきましては、請求全体に占める被保護者に関する請求割合が高いことや、被保護者以外と比較して被保護者の診療報酬明細書などの1件当たりの平均請求点数が高いことなどを例示していること。
 一方、都道府県などにおきましては、医系職員の配置や医療扶助審議会の設置などが十分ではないことから、医療の専門的な見地からの効果的な指導・検査などの実施及び診療内容等に係る指摘が困難な実態があることに加え、医療機関への関与の手法が、指導の実施後は不正または不当な診療などが疑われる場合に検査を行うといった仕組みとなっており、指導と検査の間の段階的な関与の手法が求められていることが挙げられます。
 その上で、「対応の方向性」でございます。19ページをお願いします。
 これらの現状・課題を踏まえた対応の方向性につきまして、まず1つ目の柱でございます都道府県の役割でございます。
 市町村または福祉事務所単位では取組レベルに地域差が生じることは避けられないが、その縮減に向けて、管内複数市町村による広域での取組実施に係る調整や対応困難事例の対応に関する助言など、都道府県が広域的な支援のための一定の役割を担う仕組みが重要であること。
 また、改革工程表では、中長期的課題として、都道府県のガバナンスを強化する観点から、生活保護受給者の国保や後期高齢者医療制度への加入を含めた医療扶助の在り方の検討を深めると指摘されていること。この被保護者の国保等への加入につきましては、そもそも被保護者は保険料の負担能力がなく、また、その多くが医療扶助を受けており、国保等におけるほかの被保険者の保険料負担や保険財政に与える影響が大きいため、地方公共団体の意見を十分に踏まえた上で議論を行うことが適当とされていること。一方、医療扶助においても、他の医療保険制度のように都道府県による関与を強め、ガバナンスを強化していく必要があるとの御意見もいただいているところです。
 これまでの福祉事務所における頻回受診対策などの取組や成果も踏まえ、まずは健康管理支援事業の取組強化、都道府県による市町村への支援や指定医療機関への関与の強化に努めていくことが適当と前回の検討会でお示しした論点を書かせていただいております。こちらの論点につきましては、改革工程表の指摘に対してこれまで議論が十分になされていない部分となっております。このため、事務局としては後ほど委員の皆様から重点的に御意見を頂戴できればと考えております。
 2つ目、都道府県による市町村への支援の強化でございます。
 都道府県によるデータに基づく適正化方策の推進をはじめ、管内市町村への関与を強化するための実効的な支援方策として、まずは市町村における医療扶助と健康管理支援事業の取組評価に対して、国による参酌標準としての数値目標の設定も含め、標準化された指標づくりを進めていくことが重要との御意見をいただいたところです。一方、現状として、市町村によって評価指標の設定状況に違いがあることや、地域ごとの地理的特色や実情が異なることを踏まえると、統一的な指標に対する取組状況を都道府県が一律で分析することは難しいとの御意見もいただいたところです。
 以上を踏まえまして、国による標準化された評価指標例は示しつつ、都道府県が当該指標例を参考に、地理的特色や地域の実情を踏まえて適切な指標を設定することとし、それに沿った取組状況を都道府県が把握し、その結果を管内市町村に共有することが適当であること。なお、その際にも、地域ごとに地理的特色や実情が異なることに留意する必要があるとしております。
 こちらにつきましては、前回の検討会でいただいた意見を踏まえた上で、事務局としての案を提示している部分となっておりますので、記載内容について御意見があれば後ほど頂戴できればと考えております。
 続けさせていただきます。このような都道府県による市町村支援の取組を効率的かつ効果的に進めていくためには、まず、通知において都道府県等に設置を推奨している医療扶助審議会について、今ほど申し上げた広域的な支援を行うための機能を強化した上で法制上位置づけることも検討していくことが重要であること。
 なお、医療扶助審議会の在り方を検討する場合、会議体を設置することが目的となるなど、形骸化しないよう、審議内容を整理し、明確化することが適当との御意見もいただいたところです。まずはその設置状況などの実態を国が把握するとともに、都道府県の事務負担の観点も踏まえつつ、自治体関係者の意見も聴取して検討を進めていくことが適当であることとしております。
 3つ目でございます。都道府県等による医療機関への関与でございますが、現状、都道府県等が指定医療機関への指導を行う際、レセプトの分析結果などから得られるものとして、請求全体に占める被保護者の請求割合が高いことや、被保護者以外と比較して被保護者のレセプト1件当たりの平均請求点数が高いことなどの医療機関の特徴も総合的に勘案し、個別に内容を審査した上で対象医療機関を選定することとしております。
 指導対象となる医療機関を選定する際の総合的に勘案する項目として、頻回受診者や多種類の医薬品の投与を受けている者が多いことも考慮するよう示すことが適当であるとの御意見をいただいたところです。一方、指導対象の選定や指導結果の周知を行う場合、個々の患者における状態や地域の特性等が大きく影響している可能性もあることから、頻回受診者の人数や医薬品の種類の多寡を指導対象の選定基準とすることは慎重に判断すべきとの御意見もいただいたところです。
 これらの御意見も踏まえ、受診者の人数や多種類の医薬品の投与を受けている者の人数のみで判断するのではなく、専門性を有する関係者の意見も共有できる仕組みも検討することが適当と、こちらは前回の検討会でお示しした論点をベースに記載しておりますが、前回の検討会でいただいた御意見を踏まえた上で事務局の案を提示している部分となっておりますので、記載内容について御意見があれば後ほど頂戴できればと思っております。
 20ページの最後の○でございますが、「あわせて」ということで、都道府県等による指定医療機関に対する検査の前段階として、頻回受診への恣意的な誘導等が行われ、指導によってもその改善が見られない場合に、適正な対応を求めるための新たな措置を設けることなども検討していくことが適当としております。こちらにつきましては前回の検討会でお示しした論点をベースに記載しておりますが、議論が十分になされていない部分となっております。このため、記載内容について御意見があれば、後ほど頂戴できればと考えております。
 以上がこれまでの検討会において御議論いただいた医療扶助に関する見直しに向けた整理案でございます。本日御議論いただいた上で、これを取りまとめていただいた暁には、こちらの報告書の5ページに記載されているとおり、ここで提示された方向性を踏まえつつ、医療扶助の制度見直しについて、今後は困窮保護部会の場において検討を深めていくこととしたいと考えております。
長くなりましたが、御議論のほど、よろしくお願いいたします。
○尾形座長 ありがとうございました。
 本議題につきましては、本日御欠席の兵庫県の藤本委員から意見書を提出していただいておりますので、まず、参考資料2の藤本委員の意見書について事務局からお願いします。○河合保護事業室長 ありがとうございます。
 参考資料2をお願いいたします。
 「医療扶助に関する見直しに向けた整理(案)」における主な意見ということで、兵庫県福祉部地域福祉課長の藤本委員よりいただいております。
 読み上げさせていただきます。
 生活保護受給者の国民健康保険・後期高齢者医療制度への加入について、健康管理支援は、生活保護制度の目的である自立助長の一つとして重要であることから、多くの健康課題を抱えた被保護者に対して、医療と生活の両面において支援を行うことが重要である。国保等で保険者機能の一環として行っている特定保健指導などを利用できるメリットがある一方、国保等への加入に伴い、福祉事務所において、医療と生活の支援が一体となった健康管理支援が十分に行われず、自立助長の効果が低下することが懸念される。また、頻回受診対策などで一定の成果が出ているとともに、今後、被保護者健康管理支援事業の機能強化によって更なる効果が期待される中で、国保等の加入は被保護者の保険料負担や保険財政に与える影響等の課題もあり、慎重に対応することが必要である。
 2つ目です。都道府県の市町村支援について、データに基づく適正化方策の推進は、現状分析、データ提供やKPI目標を立てることで県内の生活保護の底上げにつながるのではないか。国による標準化された評価指標例は、1つの指標だけでなく、人口分布等地理的特色や地域の実情を踏まえて選択できるよう、複数の評価指標例を示すことが適当である。
 3つ目です。都道府県等による医療機関への関与について、都道府県等が指導対象となる指定医療機関を選定する際、専門性を有する関係者の意見を聴く仕組みとして、地域の実情などを考慮して医療扶助審議会の活用のみに限定しないこととすることが適当である。
 以上でございます。
○尾形座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの藤本委員の御意見も踏まえつつ、これから質疑、意見交換に移ってまいりたいと思います。
 先ほどの事務局からの説明にもありましたとおり、本日提示された整理案では、これまでの検討会でまだ十分な議論に至っていない事項、あるいはさらに議論を深める事項も何点かあるというお話でした。まずは、これまで十分な議論に至っていない事項のうち、大きなものとして、ただいまの藤本委員の意見書にもありましたように、19ページの都道府県の役割に記載されております被保護者の国保加入の問題につきまして御議論いただきたいと思います。その後、その他の事項について検討したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず、19ページの都道府県の役割に関する記載につきまして、御意見、御質問等を賜りたいと思います。いかがでしょうか。
 なお、発言をされる際はカメラに向かって挙手をお願いいたします。指名を受けた後、マイクのミュートを解除して御発言いただき、御発言終了後は再度マイクのミュートをお願いいたします。
 それでは、長島委員、どうぞ。
○長島委員 日本医師会の長島でございます。
 生活保護受給者の国保や後期高齢者医療制度への加入につきましては、財政負担を地方自治体などにつけかえることで国の財政責任や負担を減らそうとしているように見えます。脆弱な国保財政に対しての財政的な手当を講じない限り、国保制度等の破綻を招くおそれがあるのではないかと考えます。
 また、特定健診・保健指導など、加入者の健康管理は保険者が実施することになっておりますが、国保に生活保護受給者が加入した場合、市町村国保において財政面や人員面で必要な体制の確保ができるのか、疑問を感じるところであります。
 以上です。
○尾形委員 ありがとうございました。
 ほかはいかがでしょうか。
 太田委員、どうぞ。
○太田委員 太田です。
 国保の加入の問題についてのみお話ししたいと思います。
私も先のお二人と同じように消極的でございます。法制度から見て都道府県の関与、ガバナンスが国保ならあるのでということになっているのですが、国保を見ても、都道府県の関与というのは何を言っているかというと、市町村に保険財政の規律を守らせる。いわば標準保険料率などを示して、市町村に保険の論理に従った財政運営をやらせる。また、自分もその責任を負うということであって、比較的財政の局面に集中したマクロの関与にとどまります。被保険者の給付とか保険料を集めることは、今の体制でもあくまでも市町村の仕事です。その中で、市町村だって国保被保険者で保険料を滞納した人に払ってくれ、払ってくれと言いますけれども、頻回受診している人に一々ケースワーカーのように訪問したりはしないわけで、市町村の国保部局に被保護者の面倒まで見てもらって頻回受診に対するような手厚い支援ができるかというと、そんなことはないと考えられます。
 そういうふうに考えますと、結局、都道府県の関与、ガバナンスが効くからもうちょっとまともになるだろうというのは、制度を見ているだけでも机上の空論に見えるなという感じがいたしまして、目的手段合理性がないのでやめておいたらというのが本来になります。国保に統合し続けていたら、むしろスティグマの問題が減るのではないかということなら、目的手段合理性があるのでやったらと法律家としては言ってもいいのですが、それは皆さん危惧されているように、市町村財政の国保財政に対しては、収入はないのに支出だけが増えるという事態を招きますので、そちらはそれでもいいというならどうぞというのが私の個人的な見解ですが、今の目的でやるのは、国保に統合するのは目的手段合理性がないのでやめておいたほうがいいのではないかと思います。
○尾形座長 ありがとうございました。
 ほか、いかがでしょうか。
 新保委員、どうぞ。
○新保委員 ありがとうございます。
 このことについては、古くから議論が重ねられていると承知しています。もし今後議論を行うとすれば、生活保護受給者にとってどのような形が医療アクセス、治療や健康管理によりよく資するかという観点からの検討が十分になされることが望まれます。
 それから、1点関連事項なのですけれども、被保護世帯に資力が発生して、法63条による保護費の返還が求められる場合に、現在は医療扶助で対応した10割全額が返還の対象となっています。被保護者世帯は、生活保護の利用に伴ってやむなく国保、後期高齢者医療制度の適用除外となっている現状にあります。国保では3割自己負担、後期高齢者医療では一般所得者等は1割が自己負担となっております。返還の対象とするのは、これらの制度と同等の自己負担分の範囲にできるよう、これも古くからの課題と認識しているのですけれども、この点については早期に検討していただければと思うところです。
 以上です。
○尾形座長 ありがとうございました。
 今の点はいかがですか。事務局、何か考えはありますか。
○河合保護事業室長 現時点ではお答えする内容がないので、また考えたいと思います。
○尾形座長 ありがとうございました。
 鈴木委員、挙手されていますか。どうぞ。
○鈴木委員 横浜市の鈴木です。
 今、国保の保険料負担や保険財源の影響についてはほかの委員の方も御発言されていましたので、私のほうからはケースワーカー側の立場に立っての発言をさせていただきたいと思います。
 医療扶助は8つの扶助があるうち、どこの自治体もそうでしょうけれども、一番扶助費の金額としては占めている部分です。これは全国的に全てそうだと思うのですが、一方で、やはり現物給付ということもあるのか、健康ですとか医療扶助に関して、ケースワーカーに業務上意識してもらうことというのは非常に難しくて、そのことは今回の整理案にも健康管理支援の重要性についてケースワーカーの理解や認識を向上することも重要と書かれているとおりかなと思っています。
 本市においても、健康管理支援事業を実施する中で、ケースワーカーに医療、健康面の重要性というのを地道に周知して取り組んでいただいている。そういった中で、個々のケースワーカーが生活保護受給者の健康面なども見て個別の支援、関係機関との連携といった支援の輪が広がってきているというような状況です。
 国保加入はこうした取組に水を差す結果になるのではないかと。確認しますと、国保や後期高齢に加入しますと、ケースワーカーの多くは、健康管理支援は一義的には保険者が行う業務ではないかと意識してしまって、せっかくこうやって重要性が今議論されていて取り組もうというときに、逆に水を差す結果になるのではないかということを一番危惧しているところです。
 以上です。
○尾形座長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでしょうか。
 小塩委員、どうぞ。
○小塩委員 ありがとうございます。
 実は私、内閣府の審議会にも関係しており、立場が非常に難しいのですが、国保への移行については慎重に考えるべきだというのが私の個人的な考え方です。国保移行がガバナンスの面から見ていいと言い切る根拠はなかなか見つからないような気がします。国保に行くと基本的にフリーアクセスの世界に行くわけなのですが、そうすると、現在医療扶助を受けていらっしゃる方々の健康管理支援とか、あるいは自立の助長に対する行政側のグリップがかえって効かなくなるのではないか。しかも、財政面からいうと、確かに生活保護の財政は医療扶助がなくなる分だけよくなると期待できるのですが、その一方で市町村国保の財政は悪くなるので、あまり問題の解決にならないという気がしてならないのです。
 ただ、だからといって現状のままでいいというわけでは決してなくて、この報告書の案でも19ページの真ん中辺に書いてありますが、生活保護の医療扶助の中でのガバナンス強化をやはりしっかり考えないといけないと思います。今回の文章の中でもいろいろ指摘されていると思うのですが、現行の仕組みでは必ずしも十分でない、都道府県の関与をさらに強化することがやはり最低限必要になると思います。
 以上です。
○尾形座長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでしょうか。よろしいですか。
 太田委員、どうぞ。
○太田委員 国保加入以外の都道府県の関与に関する問題というのは別途議論したほうがよろしいでしょうか。ここでお話ししたほうがよろしいでしょうか。
○尾形座長 取りあえずはこの問題を少し整理してからにしたいと思いますので、この後お願いいたします。
 ほかはよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。皆様からいろいろ御意見を伺いましたが、全体としてこの19ページの表現については大体御賛同いただけた印象を持っておりますが、若干表現等で皆様の御意見を少し反映させなくてはいけないところもあるかもしれませんので、文言については少し考えさせていただくとして、基本的にはこの19ページの都道府県の役割のところはこの原案でいきたいと思いますが、いかがでしょうか。これは改革工程表2021で指摘されている事項なので、一応きちんとした答えを出さなければいけないものですから、皆様の合意を得たいと思います。基本的にはこの線で、必要があれば若干の表現の修正にとどめるということでよろしいでしょうか。
 (首肯する委員あり)
○尾形座長 ありがとうございました。それではそのように進めさせていただきます。
 国保加入については以上としたいと思います。
 それでは、その他の事項につきまして御議論をいただきたいと思います。御意見、御質問等お願いいたします。
 長島委員、どうぞ。
○長島委員 20ページの都道府県による医療機関への関与の一番下、30行目以降に関してですけれども、医療機関にはしかるべき理由や事情がある場合も十分想定されますので、例えば検査等を行う前に当該医療機関がもし希望すれば説明する機会を設けるなどして、医療機関との信頼関係が損なわれないような丁寧な対応をすべきと考えます。
また、少し遡ります。10ページの8行目及び15ページの8行目に、正当な理由なく保健指導・生活支援に従わない場合は、保護の変更停止または廃止を見据えた措置を講ずることを検討すべきとありますが、理由が正当かどうかということに対して慎重な判断をすべきと考えます。なぜなら、頻回受診の一因となり得る精神疾患や社会的孤立がこの保健指導や生活支援に従わない、あるいは従うことができない一因となるということも十分考えられますので、正当か正当でないかということに関しては、医学的な判断も含めて丁寧に判断していただきたいと思います。
 最後に、10ページあるいは15ページに記載されておりますが、適正な受診、適正な医薬品が制限されますと、病気の悪化や再発などの危険性が十分ありますので、医療機関、医師による医学的な判断は必須と考えますし、御本人の状況の丁寧な把握と評価は重要であるということを再度強調させていただきます。
 私からは以上です。
○尾形座長 ありがとうございました。ごもっともな御意見かと思います。
 林委員、どうぞ。
○林委員 ありがとうございます。
 私からは、同じく20ページの最後の部分なのですけれども、都道府県のガバナンス強化といたしまして広域的な支援が必要であるということは理解しておりますし、ただ、画一的に指導・検査に関しましては対象医療機関を選定するということではなく、個々の患者における状態や地域の特性といったものをしっかりと加味する意味でも、市町村を中心とした医療扶助審議会といったものをしっかりと活用していただいて、検討していっていただきたいと思っております。そういった中にも専門職をしっかりと入れて検討していただきたいと思っております。
 下から2つ目の○の部分に関しましては、記載の内容で賛同したいと思っております。
 以上でございます。
○尾形座長 ありがとうございました。
 太田委員、どうぞ。
○太田委員 ありがとうございます。
 私からも何点か申し上げたいと思います。主として3点ということになろうかと思います。第一が、19ページから20ページにかけての都道府県による市町村への支援の強化、あるいは後ろでも出てくる医療機関への関与の部分で、医療扶助審議会の改組、拡充に大分こだわられているようなのですが、それぞれやはり違うのではないかなという気がいたします。今の医療扶助審議会の建て付けを基本守るのであれば、これは都道府県が自分で行う医療扶助の在り方をまともにするためのものです。今問題にしているのはやはり市町村への支援、医療保険のような都道府県の関与がないということもあって、それに代わると言っては言い過ぎですが、市町村への関与、支援のための機関ですよね。そこに自分の行政をまともにするための審議会をかませるというのはやはり違うのではないか。市町村への監督の要素がどうしても入ってきますので、そういうことをやるための機関だと衣替えするのは変だろうと。むしろ市町村の支援に応じるということからすれば、端的に都道府県部局との連携を図るべきだろうということで、どうも変だなという気がいたします。
 まず変だなと思ったのは、16ページの、精神障害者のことを例にとった専門助言を行えるとするところでも、例えば医療扶助審議会の活用を考えているのですが、こういうのはむしろ精神保健福祉センターと市町村の福祉事務所が直接連携できる仕組みを考えるべきであって、そこに医療扶助審議会のような都道府県のやや外部性のある審議会を入れるというのはやはりおかしい。かえって制度としてややこしくなるのではないかなという気がいたします。だから、参考資料2で藤本部長もおっしゃられておりましたが、これが唯一の方法ではないというか、あまり適切な方法ではないものと考えられるものなのに、これを強めに出すというのは適切ではない。だから、私は医療扶助審議会への具体的言及は削ったほうがいいのではないかと何回か申し上げたのですが、今もそのように思います。
 あと、20ページの下から2番目の○にも言及がありますが、ここで問題になっているのは、やはり指定を行う権限を持っていることゆえの都道府県の医療機関への監督、指導ということになるわけです。今までのお話からしてお分かりいただけるかと思いますが、医療扶助審議会はそういうものではないので、そういうことであれば、やはり専門家などの性格も変わるでしょうし、あるいは、レセプト審査機関との関係が重要になってくるわけですから、この点でも具体的にこういう審議会の名前を出すのは適切ではないのではないかという気がいたします。それが大きな第1点です。
 それから、第2点目は、長島委員も言及された生活保護の指導、指示に従ってもらえないときに、生活保護の打ち切りのようなことを考えると直接書いている箇所でございます。例えば15ページとか、その前にもありまして、初出は10ページでございます。私は当初の案が出たときにここは削るべきだろうと。何となれば我々はきちんとこういうところまで、すなわち従ってもらえないときの対応まで議論していないのだから、そもそも削るべきではないかと申し上げたのですが、事務局からの案として今日議論してくれということでございましたので、にもかかわらず削るべきだと意見を述べます。最後で一気に議論したことにするにしてはテーマがやや重過ぎる。
 もちろん現行でもそういう通達が出ているということは私も存じ上げておりますし、法制上ももちろん可能であるとも思いますが、しかし、長島委員がおっしゃったように、正当な理由なく応じていないのかという判断は非常に難しく、この部分の打ち切るための、要するに保護の変更停止または廃止に行くための具体的な基準というのは厚生労働省自身も出していないわけです。今回の議論を踏まえて、言葉はあれですが、出す覚悟なり根性があるかと言ったら、絶対に出すということでもないわけでございます。そのときに、もっと手厚い支援をして、全員のためにならない頻回のようなものに対して対応しようという基本路線を取っているときに、何もやるつもりのない、一般論としては可能な、ある意味強面みたいなものを出さないと安心できないというのは、せっかく議論してきたことへの信頼性を害するのではないかなと思います。ということで、私はそもそもこれを削るべきだというのが第一案です。
 あえてそれでも他の先生方との御意見から残したいということがあった場合にも、やはりこの書き方は適切でないだろうと。先ほど事務局が比較的丁寧に説明してくださいましたけれども、そこにあっても、正当な理由なく保健指導・生活支援に従わないということの含意は、まず精神疾患とかの原因から予想されるわけでもないのにということと、それから、今回いろいろと充実させて丁寧に配慮することにしても、なお保健指導や生活支援を受けること自体に応じないというような限定をしているわけですよね。だったらそこら辺のことをきちんと書くべきではないか。上意下達のように従わない場合にすぐ打ち切ってしまう。正当な理由と言ったって、大抵の場合、従っていない正当な理由というのは法律家的にはあまりないと考えてしまう論点ですから、そこら辺のことをもうちょっと丁寧に言葉を尽くすべきではないかとは思います。だから、ここの書き方は私は非常に問題だろうと思っている次第です。
 最後に、ここは私としても何かいい案があるわけではないのですが、11ページの一番上の○というか2番目、薬剤師の医療関係者との連携の上で適切な服薬に向けた指導の部分、前回も申し上げましたけれども、やはりこういう服薬指導のような部分はそもそも被保護者の方が理解して薬をくれくれと言わないのが一番ではあるのだとは思いますが、よしんば薬をくれくれと言われても、医療関係者の方々が身体状況をきちんと把握して、いや、あなたには薬は必要ないといってブロックをするということがやはり専門職としては重要ではないかと。だから、適正な服薬に向けた指導というのはどうしても被保護者に向かっていますので、薬剤師等の医療関係者、医師が連携して、お互い不必要な薬は出さないように、相互牽制等というと書き方が物騒なので難しいのですが、お互い専門職としてきちんと自立した判断をする。それで不必要な薬は出さないようにするとともに、指導を行うなどという形で、こちらのほうは専門職へ期待しているところが大きいのだということをきちんと書き込んでいただいたほうがいいのではないかと思う次第でございます。
 以上です。
○尾形座長 ありがとうございました。
 それでは、鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 私も、今、他の委員からもありましたけれども、2点というか同じところなのですが、10ページ目の7行目からの記載についてまず意見を述べさせていただきたいと思います。
 先ほどもありましたけれども、「こうした支援も講じた上で」というところからの部分なのですが、我々、現場で生活保護を実施するに当たって非常に気をつけているところは、指導及び指示と相談及び助言をちゃんと分けて考えるということです。生活保護法では27条と27条の2という形で分けて記載されていて、表面上ではそんなことも思うかもしれませんけれども、やはり生活保護制度というのは措置制度であること、生活保護受給者と支援者のほうの非対称性なども含めて、ここをきちんと理解して実践することというのは非常に難しいことだと私は思っています。
 そういった中で、今回、(1)は被保護者、健康管理支援事業について書かれているところで、この事業自体は27条の2、相談及び助言に位置づけられていて、27条のほうの指導、指示ではないですよね。27条は法62条などにつながっていて、指示のとおりに従う義務が発生し、違反した場合の所定の手続を経た上の変更、停止、廃止等がありますけれども、支援を拒んだから62条につながるのかというと、私はそうではないと思います。「正当な理由なく」というような文言ですとか、先ほどの説明で健康管理支援事業とは分けて読んでもらいたいという思いがあるのは分かりましたけれども、やはり指導、指示と相談、助言は混同されやすい部分ですし、誤解を招きやすいというところなので、(1)に関してはまず削除をお願いしたいと思っています。逆に(2)の医療扶助の適正化で書くのであれば、やはり正当な理由がなくても、ほかの委員もおっしゃったように慎重な検討が必要だと思いますが、再掲の中で入れるのではなくて、ここは削除した上で別項目を設けて、どうしても書くということであれば、きちんと支援とは明確に分けて記載したほうがいいのではないかと思います。
 以上です。
○尾形座長 ありがとうございました。
 豊見委員、どうぞ。
○豊見委員 薬剤師会の豊見でございます。
 先ほど御指摘もあったように、専門家として服薬についての管理をしっかり進めていくということが重要であろうと思うわけでございますけれども、1点お尋ねしたいのですが、医療扶助審議会の在り方についてどのようなものであるべきかというような議論が今後どこかで行われるような想定があれば教えていただきたいのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
○尾形座長 これは御質問ですので、事務局、お願いします。
○河合保護事業室長 事務局でございます。
 今、御質問いただいた審議会の在り方でございますけれども、まずこの検討会で報告書をまとめていただいた後に困窮保護部会のほうに議論を合流させていきたいと思っていますので、そちらの中でも議論の中の一つとしてさせていただこうと考えております。
 以上です。
○豊見委員 ありがとうございます。
 となりますと、保護部会のほうでなかなか薬剤についての議論が今までも行われていなかったように思いまして、その点については重要と思われますので、議論の際には抜けないようにぜひ御指摘いただきたいなと。各都道府県、各地域で審議会が設置される際にも、改めてそのような方向で求めていただくようなことを御検討いただきたいと思います。よろしくお願いします。
○尾形座長 ありがとうございました。
 小塩委員、挙手されていましたか。
○小塩委員 ありがとうございます。
 私も、先ほどから議論になっています10ページ目の一番上のパラグラフについて意見を申し上げます。私もこの文章、特に後半部分が気になります。ここの趣旨は大変よく分かります。今まで以上に支援をします、それでもなかなか言うこと聞いてくれない人に対しては保護の変更、停止または廃止を考えますという取組の実効性を高めたいという意向は非常に分かるのですが、やはりちょっとどぎついという表現上の問題があります。先ほども御指摘がありましたように、指示とか命令と違うので、支援に従わないからすぐに保護の変更、停止または廃止につながるというのは問題があるかもしれません。
 それから、このもうちょっと後のところ、12ページの真ん中辺に、頻回受診を直せない人の状況が学術的な研究の成果でもある程度明らかになっているとありますね。確かに取組の実効性を高めることは重要だと思うし、ここは残してもいいのかなと思うのですが、やはり要らぬ誤解を招かないためにも、文章表現は少し丁寧に考えるべきだと思いますので、そこはぜひ考えていただければと思います。
 以上です。
○尾形座長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでしょうか。
 新保委員、どうぞ。
○新保委員 ありがとうございます。私も同じところで申し訳ありません。
 10ページ、15ページの変更、停廃止については、これまで皆様がおっしゃったことに本当に賛成です。十分な相談支援や対応がなされない中で、保護の変更や停廃止がなされないように、実効性のある頻回受診対策の在り方について、継続的なしっかりした検討をするというのは本当に重要だと改めて感じた次第です。
 この部分について以上です。
○尾形座長 ありがとうございました。
 明坂委員、どうぞ。
○明坂委員 明坂です。
 私も10ページの一番上の停廃止に係るところについて少し意見を述べさせていただきます。多分、こういった相談や機能の充実を図って対策、指導とか支援の働きかけをやっていくのであれば、かなり長期間にわたっての助言や働きかけになってくるのではないのかなと考えます。それでもなお、なかなかうまくいかない、拒否をされるという場面において、停廃止の検討自体はあってもいいのではないのかなとは思います。ただ、今、停廃止の決定とかについての理由づけ、なぜそうやるのかという理由に対して、しっかりとした理由がなければ、審査請求をよく受けるのです。それにおいて、そこがしっかりしていない、また、手続が十分でないことがあると、せっかくいろいろな手順を踏んでやってきたものが全部また元に戻ってしまうということもあって、実際問題としてそこまで至るケースというのは本当にごくまれなケースにはなるのではないのかなと現場としては考えております。
 以上です。
○尾形座長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでしょうか。
 それでは、いろいろな御意見が出ていますので、今の時点で事務局として答えられるところをお答えいただけますか。
○河合保護事業室長 ありがとうございます。
 まず、長島委員から医療機関の意見を聴くべきであるというお話がありました。我々としても、頻回受診者の人数や医薬品の種類の多寡のみで指導医療機関は選定されるべきではないといった御意見は頂戴しているところでございますので、こういった御意見も踏まえて、選定に当たっての医療の専門性を有する関係者の意見を共有する仕組みというのは考えたいと思います。基本的な流れとして、専門的な方々への意見を伺った後に個別の医療機関等からお話を聴くという形になるのではないかなという思いを巡らせしながらお聞きしていたのですが、いずれにしましても、個別の医療機関からの御意見をちゃんと聞いた上でということはさせていただきたいと考えておりますのが一点でございます。
 次に、太田先生からいただいた医療扶助審議会の性格といいますか、設置目的の部分でございます。我々が今考えていることとしては、先生もおっしゃられたように、市町村への支援というものをどういうふうにしていくか。今回、この医療扶助の関係では、都道府県から市町村に対する援助の規定が保護法上ありますけれども、実際は疑義照会に対する回答にとどまっているといったこともあり、これをどうするかという点が一つの論点になっていたと思います。
 したがいまして、我々が今考えている医療扶助審議会の射程でございますが、都道府県の医療に係る専門的知識を補強して、その上で市区町村への支援を強化することが一つの都道府県のガバナンスを強化することなのかなと思っていますので、例えば実施に関する広域的な課題の把握や対応方針の検討に係る技術的・専門的な助言について、都道府県から管内の福祉事務所の方々に対し、支援していくことをまずは考えておりますので、御紹介をさせていただきたいと思います。
 もう一つ、太田先生から適正な服薬に関する指導の部分で御意見をいただいた部分につきまして、先生のアドバイスとしては、11ページの1つ目の○のところについて、医療機関サイド、または薬局サイドでもきちんとチェックするようなことを書いたほうがいいのではないかという御指摘だと理解しております。この点については、10ページ最後の○のところで電子処方箋の活用というものが来年1月に予定されているという記述があります。その部分の2行目から4行目のところで少し表現しているつもりですけれども、「複数の医療機関・薬局間での情報共有が進み、適正な服薬管理に資することが期待される」と記載しておりますが、その上で、こうした仕組みを活用しながら、福祉事務所が更に取組を進めていくことが望まれるとしています。先生の御意見に対して100%応えられているか分かりませんが、そのような形で書かせていただいています。
 それと、保護の停廃止の部分につきましては御意見をいろいろと頂戴しました。ここで記載している趣旨としては、御説明させていただいたとおり、今回、保健指導・生活支援に関する機能強化をきちんと図っていく。その上で、今まで頻回受診指導という頻回受診に対するツールとしては指導しかなかったものを、それだけではなくて、頻回受診の中には精神的不安に起因するものが多いということも踏まえ、もう一段階支援できることは何かと考えたときに、居場所づくりですとか、そういった傾聴できる場所づくりといったものが一つあるのではないかということで、今回、健康管理支援事業の機能強化というものを御提案させていただいているところです。
 その上で、これらの取組の実効性を高める観点から、現行の通知上におきましても、御指摘いただいている10ページの最初の部分や15ページの最初の部分につきましては、このような対応が考えられるのかなと思って記載させていただいているところですが、支援の部分と停廃止の部分のところというのは一直線につなげていいのかといった御指摘は確かにあろうかと思いますので、その部分については、少し考えたいと思っております。
 他にも頂いていたかもしれませんが、取りあえず以上です。
○尾形座長 ありがとうございました。
 ただいまの事務局の回答も含めて、さらに御意見があれば。
 新保委員、どうぞ。
○新保委員 ありがとうございます。
 どこということではなくて全体的なことなのですけれども、昨日、第19回の社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会が行われました。これまでの議論の中間まとめ的な回で、資料も配付されたのですけれども、議論をとりまとめた資料の総論部分で、「生活保護に対する先入観や被保護者と被保護者以外の新たな生活困窮者との分断を断つため、エビデンスベースの議論を行うこと、生活保護制度の内と外を横断する新しい生活困難層にも届く支援を行うことが必要ではないか」という意見が記載されていました。個人的にはこの間の部会の議論における重要な指摘だと受け止めております。
 生活保護については、被保護者の現状や生活保護制度の本来の在り方が必ずしも正しく理解されない中で、外部から改革を求められてしまいがちではないかと感じています。このことが、被保護世帯だけではなく、ケースワーカーもとても苦しい状況にしてしまっていると考えます。
 本整理案の中でも、被保護者健康管理支援事業においてEBPMの観点からの事業の推進をするということが確認されているのですけれども、医療扶助全般においてエビデンスベースで制度や支援の在り方の検討ができるよう、今後も被保護世帯や福祉事務所の現状や声を踏まえた議論をぜひ継続していただくことをお願いしたいと思います。
 以上です。
○尾形座長 ありがとうございました。
 太田委員、どうぞ。
○太田委員 ありがとうございます。
 事務局からの御説明を聞いて、薬剤師等の専門職の位置づけについてはそちらのほうで読んでくれと言うならば読みますが、また、言い方が被保護者に対するものと大分違うなとは思わざるを得ませんが、そこは専門職の方々に期待したいと思います。
 医療扶助審議会に関しては、趣旨は分かりましたけれども、なぜそこで審議会をかまさないといけないのかという御説明にやはりなっていないのではないか。都道府県も特に医療機関の指定を通じて、首長部局、補助機関自ら生活保護に関する事務をやっているわけですよね。なぜそこで審議会という仕組みをかませるのか。かえって審議会というものをかませると、会議をやる日程調整から始まって、臨機応変は欠くわけですよね。だから、その点でどうも目的手段合理性を欠く。もうちょっと審議会なしにツーカーの仲に都道府県と市町村を置くことを考えたほうがいいのではないのかなとは思わざるを得ませんでした。
 以上でございます。
○尾形委員ありがとうございます。
 長島委員、どうぞ。
○長島委員 電子処方箋の活用による効果について説明させていただきます。
 一つ一つの医療機関、調剤薬局では、適正な薬剤の処方をしていた場合でも、複数の医療機関から処方された場合、患者さんにおくすり手帳等を持ってきていただいて、お金どんなものが出ているか把握できればいいのですけれども、持ってこないことも非常に多い。その場合は、複数の医療機関から、例えば同じ効能のものあるいは全く同じ成分のものが、いわゆる重複投薬されているということ。あるいは一緒に飲むと害が起こり得る、併用禁忌の薬が出ているということがあり得ます。今回、この電子処方箋のシステムが導入されますと、そこにできれば全ての医療機関、調剤薬局が参加していただけると、その患者さんがいただいている薬剤の情報が全部分かるだけではなくて、重複投薬や併用禁忌に関してはそういうものがありますよというお知らせが自動的に医療機関、薬局に来るという仕組みになっておりますので、そういう形で、重複投薬、併用禁忌に関して、今まで以上により適切な対応ができる。結果的に、これは保険制度に一切関わらず、全ての患者さんに対してより適切な薬剤の投薬が可能になるという仕組みでございます。
 私からは以上です。
○尾形座長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでしょうか。よろしいですか。
 小塩委員、どうぞ。
○小塩委員 追加で申し訳ないです。
 先ほど新保委員が非常に重要な御指摘をされたと思います。というのは、生活保護受給者に対する言われなき批判とか、あるいはいろいろな議論の混乱を避けるためには、データに基づいた分析とか政策評価が重要になるという御指摘だったと思います。これは非常に重要な点だと思います。
 EBPMの重視という点については、今回の報告書の中でも随所で指摘されていると思うのですが、これはもう少し意識的に厚生労働省の方も進めていただきたいと強く思います。文章の中にもありますように、ケースワーカーがこの分野で得意な自治体があれば、結構いろいろなことやっているという事例はあるのですが、大方の自治体ではなかなか難しい面があります。各自治体の近辺には、こういうことを専門にしている医学部の公衆衛生、あるいは社会学関連の専門家の方々もいらっしゃるので、そうした方々のご協力も得て、データでこういう効果がありましたよ、こういう施策をやればいいですよというエビデンスを見せるということが重要になると思うのです。
 先ほど頻回受診の話がありましたが、そこでも社会的な孤立が結構大きな要素になっているという指摘が出されました。これも、データを見て初めてはっきり分かったという面があるといます。社会的孤立をなくして頻回受診を低減するというのは、コストベネフィットから見ると結構割安といいますか、効果が非常に期待できる分野でもあります。そういうものを見つけ出すためにも、データに基づいた地道な実証研究はやはり重要だと思いますし、それを何らかの形でより一層進めるような仕組みをぜひ考えていただきたいと思いました。
 以上です。
○尾形座長 ありがとうございました。
 長島委員、どうぞ。
○長島委員 今の点に関してですけれども、NDB、ナショナルレセプトデータベースにおいて最近改正がされまして、公費補助、生活保護も含めたそこのところの項目も情報として提供できるとなりましたので、NDBのほうに例えば研究者等が情報提供をお願いされますときにそのところも含めて情報提供を依頼すると、そのような分析が可能なように今改善されております。
 私からは以上です。
○尾形座長 ありがとうございました。
 ほかはよろしいでしょうか。
 ありがとうございました。いろいろ御意見等をいただきましたが、細かいところのいろいろな表現を直すということは別にして、大きく2点ほど問題点がまだ残っているかと思います。
 一つは、10ページの最初の○のところです。ここは大分いろいろ御意見をいただきまして、やはり今の表現のままでは少しどうかという御意見が多かったように思いますので、ここは少し丁寧な記述に変えるということを考えたいと思います。
 もう一つが、20ページの医療扶助審議会の位置づけあるいは役割について御異論が出ているということであります。この辺については、恐らく都道府県のガバナンスということでこういう話が出ているのでしょうが、少し詰めるべき点があるかなと思います。あるいはその役割等をもう少し明確にすべきなのではないかと思いますので、特にこの2点については、よろしければ私と事務局でもう少し修正の案を考えさせていただきたいと思います。それでまたもう一回この会を開くということではなくて、皆さんに個別に御相談をさせていただこうと思いますが、そのような運びでよろしいでしょうか。
 (首肯する委員あり)
○尾形座長 ありがとうございました。それでは、そのように取り扱わせていただきたいと思います。
 それでは、本日用意した議題は以上でございますが、閉会に当たりまして、社会・援護局の川又局長から一言お願いいたします。
○川又社会・援護局長 社会・援護局長の川又でございます。
 4月から4回にわたってのこの医療扶助に関する集中的な御審議をどうもありがとうございました。生活保護の制度の見直しを考えていく上に当たって、医療扶助という部分では非常に大きな位置を占めていると思っております。
 まだ先ほど座長がおっしゃった幾つか修正すべき部分もございますけれども、基本的にこの検討会で整理されました御意見を踏まえまして、今後、生活困窮者自立支援制度及び生活保護部会においてしっかりと議論を引き継いでいきたいと考えております。
 これまでの先生方の審議に感謝申し上げます。どうもありがとうございました。
○尾形座長 ありがとうございました。
 本日は、委員の皆様におかれましては、大変お忙しいところ、長時間にわたりまして熱心な御議論をいただきまして、誠にありがとうございました。
 最後に、事務局から今後の予定についてお願いいたします。
○吉川保護事業室長補佐 事務局でございます。
 今後の予定といたしましては、10月に開催予定の社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会のほうに見直しに向けた整理というものを報告していく予定でございます。その部会においてさらに検討を進めていただいた上で、具体的な内容についても詰めていく予定でございます。
 また、部会での取りまとめの後、最終的な具体的方策というものを御報告させていただく場合もございますので、その際には引き続きよろしくお願いしたいと考えております。
○尾形座長 それでは、本日の議論は以上とさせていただきたいと思います。
 どうも長時間にわたりまして、ありがとうございました。