第3回個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会議事録

労働基準局安全衛生部計画課

日時

令和4年8月1日(火)14:00~17:00

場所

労働委員会会館講堂(7階)
(東京都港区芝公園1-5-32)

議題

(1)事務局説明(論点1及び論点3関係)
(2)業界団体等ヒアリング
 ① 一般社団法人日本芸能従事者協会
 ② 協同組合日本イラストレーション協会
 ③ 森参集者(産業医科大学産業生態科学研究所教授)より報告
(3)フリーディスカッション(論点1及び論点3関係)
(4)事務局説明(論点2関係)
(5)フリーディスカッション(論点2関係)
(6)その他

議事

議事内容

○船井安全課長補佐 それでは、定刻になりましたので始めさせていただきます。本日は、大変お忙しい中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。ただいまより、第3回「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」を開催いたします。
 本検討会は、会議の資料及び議事録は原則公開としておりますが、カメラ撮影はここまでとさせていただきますので、よろしく御協力をお願いいたします。
 あと、本日は、鹿野委員、出口委員、中村委員、三柴委員、森委員の5名がオンラインでの参加となっております。
 それでは、以後の議事進行につきましては土橋座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○土橋座長 それでは皆様、よろしくお願いいたします。前回までの議論によりまして、本検討会で御議論いただく論点を大きく3つに分けて整理していただきました。今回は、前回御議論いただいたとおり、まず1つ目としまして、論点1と論点2についてヒアリングを行いながら議論を進めていくと。それから、2つ目としまして、論点2について、安衛法22条の改正方針を踏まえながら検討を進めていくという、大きく分けて2部構成で検討を進めていくこととさせていただきます。
 また、今回は日本芸能従事者協会の森崎様、日本イラストレーション協会の譽田様から、業界の実情についてヒアリングさせていただくほか、森委員から、産業医科大学で実施した調査について御報告いただくこととしております。短い時間ではありますが、効率的に議事を進めさせていただければと思いますので、是非御協力をお願いいたします。
 それでは、議事に入る前に事務局から資料の確認をお願いします。
○船井安全課長補佐 お手元に分厚い資料を配布しておりますが、右肩に資料ナンバーが振ってあります。資料1、2、3ということで、同じようなデザインのパワーポイント形式のスライド、これは事務局側が用意した資料です。それ以外に、資料4と資料5と資料6ということで、今回予定しておりますヒアリング団体様のほうから御提出いただいた資料です。最後に1枚紙で、毎回お配りしております参考資料として、検討会要綱ということで資料一式になっております。
 もし欠落しているものがありましたら、会議の途中でも結構ですので、手を挙げていただければ事務局の者が資料をお持ちいたします。
 それと、本日はヒアリングを3件予定しておりまして、非常に長丁場になりますし、会場は非常に暑い状況になっており、フリーディスカッションも長くなりますので、フリーディスカッションの途中で少し休憩を入れたいと思いますので、よろしくお願いいたします。以上でございます。
○土橋座長 よろしいでしょうか。それでは、議事に入ります。まず、議事の1番目です。まずは事務局から、論点1及び論点3に関して資料に基づき説明をお願いいたします。
○船井安全課長補佐 それでは、ちょっと番号が飛びますが、資料1と資料3について続けて御説明します。まず資料1、1枚めくって、右肩に「第2回検討会配布資料」と書いてあるもので、赤い点線で囲ってあると思います。この部分が論点1になりまして、これに該当する資料ということで、今回、現状と課題やそれを踏まえ、今後検討して議論を深めていただきたい論点(案)というものを準備しております。
 まず、スライドの3番目、現状と課題の所の(1)、「災害の発生状況」についてです。これまで資料でもお示ししたとおりですが、個人事業者や中小事業主につきましても、労働者と同様に業務上の災害は発生していると。ただ、これらの災害について、労働者の場合とは違って、網羅的に把握する仕組みがない状況があります。
 「災害の特徴」につきましては、個人事業者や中小事業主の方については、労災保険の特別加入の給付データという限られたデータからではありますが、労働者と比較して高い割合で業務上の災害が発生している可能性が窺えたという状況です。また、災害については、労働者か個人事業者かということで大きな違いは見られなかったわけですが、災害の中身について少し掘り下げて見ていきますと、被災者自身が、個人事業者自身が対策を取れば防げたのではないかという事案と、個人事業者自身ではなかなか対策が取り得なかった事案がみられたわけです。個人事業者自身が対策を取り得たものとしては保護具の関係があると思いますし、個人事業者自身ではなかなか対策が難しかったものとしては、例えば、荷物を運んだ先での設備の不備とか、何か作業を行う場面で、そこの場所で働いておられる別の事業者の労働者との混在、それを防ぐための連絡調整の不備などが考えられる状況でした。
 (3)の「対策の現状」といたしましては、これは資料からも傾向が分かったものとして、個人事業者の方は危険・有害業務に従事しているわけですが、教育を十分に受けている方が少ない状況。あと、労働者であれば、事業者の義務として、特殊健診という形で受診している健康診断について、ほとんど受けていない状況がありました。一方で、建設業の現場におきましては、労働者と個人事業者を分け隔てなく管理されているような状況も見受けられました。
 これに加えまして、前回までこの検討会で御議論いただいた際に出た意見のポイントとして、スライドの5枚目にまとめてあります。今、説明したことと関連する部分ですが、個人事業者の災害を詳細に把握して分析することが必要であるという御意見、あと、データをしっかり把握して検討することが重要なのですが、逆に、データが不十分だからといって検討をとめる理由にはならないのではないか。判例なども活用して、災害を防止するための取組について検討すべきだという御意見もありました。
 あと、(2)の「個人事業者自身による取組等」といたしましては、個人事業者による取組がしっかりと行われるように、情報伝達が必要であるとか、個人事業者の方が保護具をしっかり確実に使用するためには、事業者による周知だけではなく、実行性を確保するための取組も検討すべきではないかと。特に、教育については非常に重要であるということで、教育を受けていない人は現場に入れないとか、そういう強めの対策も必要なのではないかとか、あと、健康状態というのが、単にいわゆる健康だけではなくて、その健康の状態が要因となって事故や災害につながることもあるので、そういったことを防ぐための対策も必要ではないかということです。
 (3)として、「発注者による取組等」ですが、運送業や建設業の委員のコメントの中で多かったのが、発注者という、立場が強い方の影響が非常に大きいと。例えば、建設業では適正な工期の設定とか、運送業でいえば発注者側からの厳しい納期、こういったことが影響して労働災害につながり得るといった御指摘もありました。したがいまして、発注者側に対しても、何らかの規制も視野に入れた検討を行うことが必要ではないかという御意見がありました。
 それ以外にも、最近は発注とか請負とかでは収まらない仕事のやり方も増えてきておりますので、そういった仕事を仲介するプラットフォーマーなども含めた、「リスクを生み出す方々」に対する管理責任のあり方についても検討すべきではないかや、個人事業者に対する支援のあり方についても検討すべきではないかという御意見もありました。
 今申し上げた、この検討会で出た御意見とか各種のデータ、情報を踏まえて、事務局のほうで論点(案)としてお示しするものが7ページ目以降になります。まず(1)として、「検討の基礎となる災害の実態の深掘り」です。これは先ほど、資料でも委員会の指摘でもありましたが、個人事業者等の業務上の災害を網羅的、詳細に把握するためにはどういう仕組みや取組が必要なのかという観点。労働者であれば労働者傷病報告というものがありますので、こういった仕組みなども参考にしながら検討すべきではないかという観点です。
 (2)として、「個人事業者等自身による措置やその実行性を確保するための仕組みのあり方」です。個人事業者に必要な保護具を着実に使用していただいたり、立入禁止等の危険を確実に防止していただくための措置、これを守っていただくためにはどういう取組が必要なのかということです。労働者であれば、事業者が講じた措置を守ることについて罰則つきで義務がありますので、そういったものも参考にしながら御検討いただければと思います。
 次のページで、「危険・有害業務に係る安全衛生教育」についてです。受講率が低いので、これを確実に実施していただいて安全衛生に関する知識を身につけていただくためにはどういう対策が必要か。次の○にある、「個人事業者による機械等の操作・運転中の災害を防止するためには、どのような取組が必要か」。更に次のページ、「混在作業が行われている現場等において、個人事業者等にも確実に、その現場を仕切っている方の指導・指示を守っていただく、そのためにはどういう取組が必要か」です。建設業であれば、元方事業者の指導・指示は関係請負人というのを守っていただく、必要な事項を講じていただくことが義務づけられていますが、個人事業者については、条文だけで見るとこの網から少し漏れてしまっているような状況もあるので、その辺りを現場の実態に即した形でやっていただくためにはどうすべきか、そういう観点です。それと、健康診断の関係です。有害業務に関する健診、あと、一般健診も実施率が低い状況の中、健康状態が要因となって起きる災害も懸念されるので、どういう取組が必要なのかという観点です。
 次のページの(3)、「個人事業者以外も含めた災害防止のための発注者による措置のあり方」です。仕事を発注するときに、発注者が作業場所を指定するような場合、その作業場所において、危険なもの、有害なものがあって、それによって災害が生じることも考えられます。そういう災害をなくすためにはどういう取組が必要なのかという観点。あと、「個人事業者等の下請事業者の安全確保に影響を及ぼすような発注」で、例えば、非常に短い納期での発注とか、発注をした後に、一方的な条件変更とか契約にない業務を依頼したりと。あと、発注する際に、安全性が十分に確保されていない機械、工法、材料、こういったものを使用した作業指示があると。こういうことによって災害につながることも考えられますので、そういうのをなくすためにはどういう取組が必要なのかということです。
 次ページですが、「混在作業において、個人事業者を含む事業者間において、連絡調整とか情報共有不足による災害を防止するためには、どういう対策が必要か」ということです。これは先ほど出てきた、請負人がその場を管理する人の指示に従うためにはどうすればいいのかというのと裏返しの措置になってきますので、セットで議論する必要があるのではないかとなっております。
 続きまして、(4)です。(3)は発注者の取組ですが、(4)は「発注者以外の災害原因となるリスクを生み出す者等による措置のあり方」ということで、例えば、機械や設備を所有している方が、それを個人事業者に貸与して作業を行わせる場とか、例えば建築物とか、ある作業場所を管理する方が個人事業者等にその場所で作業を行わせるような場合、これは請負関係とは別に、機械の貸与とか建築物の貸与は行われることがあります。もちろん、発注者と重なる場合もあります。こういう場合に、機械とか建築物を貸与する立場の方としてどういう取組を行えばいいのかという観点で御議論いただければと思います。あと、最後の○ですが、発注者でない方が個人事業者の安全確保に影響を与えるということで、これは第1回、第2回でも議論になりましたが、プラットフォーマーなどの、実際請負関係にはないのですが、事実上、作業をコントロールしていたりとか、安全衛生に影響を及ぼすような条件を付けているケースがあるのではないかと。
 最後、(5)、「個人事業者や小規模事業者に対する支援のあり方」。どういう支援が必要か、誰がその支援を行う必要があるのかという観点です。
次ページ以降に、参考資料ということで何枚か紙を付けているのですが、今、整理した論点の中に、事業者とか個人事業者とか、発注者とか注文者とか、いろいろなプレイヤーが出てくるので、安衛法上、そういった事業者、元方事業者とか発注者というのがどう定義されているのかとか、又は定義されていないのかということを、用語の解説ということで整理させていただきました。
 次ページですけれども、安衛法の基本になっている事業者としての措置と請負関係に着目した措置がありまして、これらは法令上どういう形で規定されているのか。また、実態上、これらが単独で存在するのではなくて、重ね書きみたいな形で、事業者でありながら仕事を注文する、といったようなケースもあります。特に建設業の場合だと、この下の図にあるように、発注者がいて、注文者であって、更に事業者でもあって、注文者のうち、一番上に立つ特定元方事業者という方がいると。いわゆるゼネコンさんがこういう立場になると思いますが、その下に関係請負人がいると。それぞれについて、事業者の立場として、若しくは注文者、請負人の立場として、いろいろなことをやっていただかなければいけないという、重複しているイメージが分かるような図を書いております。
 最後の図については、先ほどの論点でいう(4)に該当する部分ですけども、これは発注者とは別に、機械とか建築物とかを貸与するような立場の方に対してどういう措置をお願いしていくかという議論なのですが、機械とか作業場所、建築物を貸与する人というのは、この図でいう所の右下の、上向きに赤い矢印が出ている所にいる人たちになるのですね。これは、発注、請負という関係の中にいない人たちなのですが、機械、設備を貸して、リスクを発生させ得るという状況になります。もちろん、こういった人たちが、左上にいる発注者になるケースもあるという状況です。
 資料1の説明は以上でございます。続きまして、資料3について御説明させていただきます。3ページです。これは論点3に該当するものでして、先ほどの資料1と同じ作りで御説明します。まず、「災害の発生状況」としましては、就業時間が週60時間を超える、月に換算すると80時間を超えるような時間外労働に相当するような働き方をしている事業主、自営業主やフリーランスの方は、いずれの業種でも割合的には労働者よりも高い傾向にあります。脳・心、精神についても、特別加入者について見ると、個人事業者でも発生していますし、「災害の特徴」についても、労働者に比べて脳・心、精神の年齢が高い状況にあるとか、業種的な特徴も見えてきましたし、規模的な観点でいうと、脳・心、精神は、ほとんどが従業員数10人未満で発生している状況です。あと、特徴的なところとして、フリーランスのストレスや悩みの原因は、労働者の場合と違って、人間関係というよりも売上げとか業績とか、資金繰りといったところが高い割合になっていると。
 「対策の現状」としましては、フリーランスの場合、健診の実施率が非常に低い状況であるとか、特別加入者で、脳・心疾患の事案について見ると、約半数は健康診断を受けていないと。フリーランスの9割近くがストレスチェックを受けていないとか、長時間労働とか心身の不調があった場合に、約3割は何も対処していないという形で、必ずしも関心が高くないというような状況が窺われます。発注者の関係についても、下の2つのポツにあるように、病気でもない限り仕事が断れないという状況とか、業務にない命令を発注者からされることもある。そういうように回答する人が20~25%いらっしゃる状況です。
 「前回までに出された意見のポイント」としては、こちらの資料にあるように、建設工事、特に公共工事の場合、工期短縮が非常に強く言われる中で、そのようなことが影響して、過重な労働とか非常にストレスフルな働き方が生じているのではないかという懸念があるという御指摘がありました。
 これも踏まえて、次ページ、「論点(案)」として書いてあります。まず、(1)として、「過重労働等の健康障害防止のための措置及びその実行性を確保するための仕組みのあり方」です。この(1)の中身を大きく2つに分けて、個人事業者自身による取組ということで、○が3つ書いてあります。個人事業者の方は、脳・心や精神にならないようにするためにはどういう取組が必要かとか、自らの就業時間の状況とか疲労の蓄積、ストレスの状況を把握することが重要ではないかと。そのための方法はどういうものが考えられるのか。こういった状況を踏まえて、非常に悪い状況があった場合、どういう所に相談していくのかとか、医師による面談も含めて適切な対応につなげるためにはどうすればいいのか。労働者であればそういう仕組みがしっかり法令上構築されているので、そういったものも参考にしながらやっていくためにはどうすればいいか。あと、個人事業者の脳・心、精神の事案の年齢は労働者に比べて高いこととか、健康診断の受診率が低い、こういう状況を踏まえてどういう対策が必要と考えるのかという観点です。
 あと、もう1つの「発注者等による取組」です。これは、中身的には心身の健康になりますが、論点1と枠組みとしては基本的に同じ作りになっております。最後の「個人事業者や小規模事業者に対する支援のあり方」についても基本的には同じ。どういう支援が必要か、誰が行うことが適当かということになっております。資料1と3についての説明は以上でございます。
○土橋座長 御説明ありがとうございました。ただいまのように、論点1については5つの論点について、論点2については2つの論点について。その1つ目については、個人事業者自身と発注者等というような整理をしていただいております。ただいまの説明につきましては、御質問、御意見があるかもしれませんが、ヒアリングの後にフリーディスカッションの時間がありますので、何かあればそのときにお願いしたいと思います。それでは、議事のほうを進めさせていただきます。議題2、業界団体の皆様からのヒアリングに移りたいと思います。それでは最初に、日本芸能従事者協会の森崎様、御説明をお願いいたします。
○森崎様 ありがとうございます。ただいま御紹介にあずかりました、私は、俳優で日本芸能従事者協会の代表理事を務めさせていただいております森崎と申します。本日は貴重な機会を頂きまして、誠にありがとうございます。
 さて、芸能従事者は、令和3年4月、特別加入労災保険の対象業種に認められ、その当時の業界人口は国勢調査で21万8,250名でした。私どもの協会は、東京労働局に承認された特別加入団体の全国芸能従事者労災保険センターと連携をしており、労災保険加入者は約400名おられ、ほかに俳優、音楽家、演芸家、モデル、スタッフなどの団体会員を含めますと約4万8,500名の会員がおり、日頃、安全衛生対策の呼び掛けや待遇の改善に努めております。
 お手元の資料、2ページ目を御覧ください。令和4年3月の局長通達で定義された芸能従事者は、2種類に分かれ、芸能実演家、いわゆるパフォーマーが左側の18業種と、右側の芸能制作関係、いわゆるスタッフの14業種と、それぞれそのほか類似の作業に従事する者とされています。これ以外にも数多くの業種があり、かつ複雑で、特にスタッフは同じ名称の業種が多くあります。例えば、舞台照明と映像照明で、技術の内容や働く場所は異なります。ちなみに、全国芸能従事者労災保険センターの加入者には、69業種の方がおり、なおかつ、副業の業種を兼業している方が非常に多くございます。右側は映画制作の撮影現場で出演者とスタッフが共有する2種類のスケジュール表です。上は1日ごとのスケジュールを示す香盤表で、前日、制作が配布をします。下は総合スケジュールで、クランクイン前までに決定され、いずれも細やかに日時と場所が指定されています。ハートの印をセーフティーチャンスとしてマークしていますが、この備考欄に危険なシーンや注意事項について記載され、共有します。映像の制作は80以上のパートが数えられ、ほかのジャンルとともに総合芸術と呼ばれており、プロデューサーや監督から、縦に指揮をされ、横に連携しながら仕事を進めます。
 次の3ページを御覧ください。今回頂きました御質問を会員のヒアリングやアンケート調査から回答を一覧にいたしました。おおむねこちらに沿って御説明をしてまいりたいと思います。まず、(1)個人事業者の割合はほぼ100%で、僅かですが、家族経営などの個人事務所を持つ自営業者がいる業種を9としています。スタントマンと照明のスタッフは危険度が高いため、雇用されている方がおり、照明スタッフの6割程度は雇用されています。(2)業務の依頼について、芸能実演家のほとんどがマネージャーなどの有料紹介者を介して依頼されるため、業務の提供や報酬は4ページの左下のチャートのように多角的な流れになっており、スタッフは発注者から直接依頼されることが多いです。
 3ページに戻りまして、(3)就業場所や就業日時、業務内容が依頼時に指示されるかどうかを○△×の記号でお示ししています。多くは依頼時に提示されますが、前日になって突然翌日の仕事を頼まれることがある業種もあります。資料の後半に参考としてアンケートをお示ししておりますが、14~18ページに、「待遇については事前告知が望ましい」、「口約束だけの就業状況に不安を感じる」、「契約書が存在しない」、「働く側に理不尽な労働条件を課せられないようなきちんとした契約をしてほしい」などの声が上がっています。
なお、文化、芸術分野の契約関係の構築については、文化庁で昨年から検討会議が設置され、私は委員をさせていただき、先週ガイドラインが公表されました。文化庁の調べでは、文化芸術分野の個人事業者は94.6%おり、そのうち業務委託契約書を交わしている方は12.7%しかいませんでした。契約上の安全に配慮した対等な取組が今後非常に重要と存じます。
 3ページに戻りまして、(4)業務の場所・日時・内容を申出により変更してもらうことはどの業種でもできておりません。(5)就業に当たっての拘束時間は移動やリハーサル、待ち時間を含めると、撮影などで長くなるケースは丸2日、48時間以上になることもございます。全体の拘束時間を10として、移動、リハーサル、本番にかかる割合をお示ししております。なお、実演家の各業種で未成年の個人事業者がおりますが、児童福祉法を遵守しているところは就業時間を制限しており、学校講演などでは、成人も含め、文化庁の指導が及んでいる団体は、移動時間も含めて就業時間を厳しく制限しています。
 次に、事故や災害の発生状況は、20ページの令和3年度に起きた労災の調査で、芸能実演家とスタッフともに74%程度起きており、41ページ、寝不足が原因のけがが38.8%、徹夜で仕事をしたことがあるが77%で、21~24ページの148件の報告には、多くのコロナ感染をはじめ、ステージなどからの転落などによる骨折、寝不足などによる通勤、移動中の交通事故があり、原因は25~28ページに、「毎日仕事の場所が変わることで設備の悪さに対応しきれない」、「安全対策が徹底されていない」、「人手不足」、「予算不足」、「劇場やホールの構造の問題」、「長時間で過重な労働」、「安全管理がされていない」などの声があり、現場の状況を良くするために思うこととしては、29~31ページに「発注側の理解」、「ハラスメントの排除」、「労働時間の制限」、「休憩時間と睡眠時間の確保」、「適正な人件費が必要」などが多いです。重度の骨折により歩行困難や視覚障害などの後遺障害もあり、精神疾患にはうつ、統合失調症、PTSD、メニエール病などがありますが、資料4の43ページを御参照ください。相談窓口で相談したことがある方が4.1%しかいません。コロナ禍で8名の芸能人の自殺報道がありましたが、不安定な就業実態と解決の道が開かれていない状況から、やむを得ないと存じております。
 次にリスクを軽減するための発注側からの調整のための連絡については、8ページ、平成10年に基準局安全衛生部から出された事務連絡「映画、テレビ番組等の制作番組、制作現場における労働災害防止について」で、労働災害防止措置を指導されていますが、現状は、45、46ページ、「管理者、指導者がいない、又はいい加減な指導」、「自己責任にされる」、「第三者機関がない」、「責任の所在が明確でない」という声が多く、事前の連絡調整を含め、どの業種もおおむね行われておらず、自己判断に委ねられるため起こった事件もあり、平成23年愛知県のモデルが、指示された撮影場所の発注者の自宅で、わいせつ行為を断ったら首を刺されて殺害されました。危険を感じても変更ができないので、事前に仕事を降りるしかなく、危険を回避する手立てがありません。2019年のフリーランス芸能関係者の調査には、「行かないと聞かされていたのに福島原発避難区域での撮影に連れていかれた。線量の高い地域へ行ったが、防具服を渡されることもなく、半袖に短パンのスタッフもいた」という声もあり、15~17ページ、こちらの言い分は通らない」、「健康と衛生に配慮した予算を組んでいただきたい」、「ルールを一本化してほしい」、「フランスや韓国のように法律で決めてほしい」などの声が多く、32ページ、仕事上、安全に関して不安に思ったことがある、88.5%もおり、不安の内容は、労働時間73%、危険な作業57.5%、居場所の環境52.4%、ハラスメント45.9%、人間関係45.1%、食べ物25.3%です。
 資料1の3ページに戻りまして、次に安全衛生管理としての教育研修ですが、発注者から安全研修は受けていません。5ページを御覧ください。昨年度、当協会は会員と加入検討者を対象に勉強会を11回実施いたしました。また、労災センターの加入者に月に1度以上メルマガを配信し、ヘルスケアのコラム、心理面のトレーニング、上手な病院などの掛かり方、劇場などでのコロナの感染防止ガイドライン、そして、労災保険に慣れていない方が多いため労災保険指定医療機関の探し方、契約書がない仕事で労災が起きた場合に備えての就業実態を証明するためのメモの書き方、事故発生時の保険申請書の書き方などを周知しております。
 次の質問で、安全衛生に関する研修や教育を受講することに対する支援・あっせんはありませんが、当協会では7ページの右下にありますように、ハラスメントや契約書などの研修やアンケート調査を協会会員や労災保険加入者などを対象に実施し、調査結果を周知しております。
 次に、仕事に関連する事故や災害を防止するための取組は、6ページにございます令和3年3月、総務省、文化庁、厚労省、経産省より連名で発出された「芸能従事者の就業中の事故防止対策等の徹底について」では、1、計画段階における安全性の検討、2、現場における災害防止措置に取り組むよう記載されています。2について当協会の研修では、この通達を各業種に置き換えたガイドラインの作成を指導しております。1の計画段階で安全性について検討できる部署は、業種によってケース・バイ・ケースですが、仮にテレビの場合は、4ページにお示しした請負構造の制作費が下りてくる各段階で、安全衛生対策の実施に必要な予算の確保のチャンスはあるのではないかと思います。最下層の下請に位置するスタッフや芸能実演家の声は、16~18ページ、「フリーランスだからと単価が安くなるのはおかしい」、「中間搾取が多くて現場に金が回ってこない」。28ページ、「国が芸術にかける姿勢が圧倒的に足りない国なので、予算が足りないので、技術者が無理をしないといけないことになり、移動やスケジュールがハードになり、身体的、精神的な部分もハードになる」、「芸術性ではなく利益ばかりを求めている」、「短い時間で作品を作らなければならず、十分な休養が取れないまま日々働いている」。29ページ、「現場予算が上がれば必然的に作業時間にも余裕が出ると思う」。現場の状況をよくするために思うこととして、「発注側の理解」、「十分な時間」、「人件費の底上げ」など切実な声が多く、19ページ、経費負担の適正性の調査では、報酬より経費が上回ることがある70.7%で、過分な負担を強いられています。少なくとも、安全衛生管理や研修のための支援が必要な状況と考えられます。
 次に、就業時間の把握はタイムカードなどがあるわけではないため、13ページ、仕事先で就業時間を把握されていない65.9%で、長時間就業にならないルールがない79.6%です。アクセシビリティ、これは手話通訳士などの演劇、映画などの観劇サポートの方や大道芸人など、作業や出演時間に物理的な時間制限がある業務に限り、厳密に時間を把握されています。長時間にならないための自主的なルールは、マジック、奇術やモデル、大道芸人、アクション、スタントなどの団体では、実演が長時間にわたり過度に集中が続くと疲れが出て危険なので、会員に注意を呼びかけているそうです。
 次に仕事先でストレスチェックを受けた業種はどこもなく、健康診断の受診状況は13ページのとおり、毎年受けている方が37.9%しかいませんでした。次に心身の健康確保に資する取組として、実施・支援しているものとしては、当協会では芸能従事者研究所を持ち、過重労働や健康リテラシー向上などの課題に取り組んでいます。芸能従事者の97.8%がストレスを感じていることに対し、厚労省ホームページのメンタルヘルスの解説にもありますとおり、ストレスの原因は環境的要因も一因と考えています。7ページの通達の(5)に、トイレ・更衣室を含めた環境整備がございますが、33ページ、トイレがないことがある61.6%、トイレがないとき公共のトイレに行った93.1%、我慢した25%、屋外でした15.4%で、このアンケートは女性の回答率が35.5%であるにもかかわらず、膀胱炎になったことがある方が19.1%もおり、相当高い確率と考えられます。36、37ページ以降の声に、「トイレの数が足りない」、「開演中はお客さんと共用」、「男女共用」、「野外のロケはそもそもトイレがなく、予算的に準備されない」、「休憩もなく、交代要員もいないため、昼食も食べずに10時間以上トイレに行かれなかった」、「急性腎盂腎炎で入院経験あり」などの指摘があり、更衣室については33ページに、仕事場に更衣室がないことがある87.7%で、トイレで着替えた68.7%、屋外で着替えた23.9%で、34、35ページに、「更衣室がないことが多すぎる」、「稽古場で男性は当たり前に衆人環視の中で着替えるという暗黙の了解があるのが気持ち悪い」、「安心して着替える場所がない」、「このような状況を上の人間が想像できるか、また下から上に提案できるような空気を作れるかにかかっている」など、切羽詰まった声が寄せられています。
 なお、7ページの通達(5)トラブルやハラスメントについて相談できる体制の整備やストレスの状況について配慮すること。とありますが、44ページ、ハラスメントが72.1%起きており、32ページ、仕事上安全に関して不安に思ったことがあるが88.5%、自殺願望が36.8%です。別途実施中のハラスメントアンケートでは、レイプされた方が10%を超えています。当協会では、ストレス対策と自殺予防のために、7ページ、「芸能従事者こころの119」と題したメンタルケアの相談窓口を6月1日に設置し、顔や声で人物を特定されるのを危惧することに配慮し、Web上のメール相談形式で、国家資格を持った臨床心理士に常時30名で対応していただき、さらに、7月からハラスメント専門カウンセラーによるハラスメントセミナーを開始いたしました。
 次に安全衛生管理について課題と感じていることは、令和3年の通達の3行目のとおり、芸能従事者には、労働者ではない、いわゆるフリーランスとして就業する者が含まれていますが、請け負う側の受注者だけでは解決できない安全衛生の確立に困っております。例えばスタッフが、必要な安全靴やヘルメットなどの防具が自己負担であったり、俳優がハードな役柄を演じたために、精神的なダメージを負ってカウンセリングが必要になっても、臨床心理士の相談は相場1回1万5,000円で健康保険は使えません。この状況では、健康な心身を守り快適で安全な職場のための安全対策が進みません。当協会も研修費用は僅かな会費から捻出しており、無償で実施しておりますが、芸能従事者は、労災保険料を含む安全経費が全て自己負担です。ただでさえ正当な報酬が得られていない中で、これ以上の負担は不可能で、個人事業者の安全衛生管理は立ち行きません。せめて、発注側に安全のための経費を払ってもらえるようにしていただきたいです。また、団体への研修費の支援や公的な相談窓口の設置を検討していただきたいです。
 4ページ右下にお示しいたしました、映画制作、演劇公演などには、初日、なか日、千秋楽という節目があり、クランクインや公演の初日には劇場にある稲荷神社で安全祈願をし、なか日には中打ち上げをしてストレスを解消し、結束を強めていました。このような慣例が安全経費の削減によりなくなってきています。その上の図のように、俳優は撮影当日、非常に多くの部署から数多くの指揮・命令を受けていますが、同時に安全配慮のための防寒具やサポーターを頂くなどのセーフティーチャンスも本来はたくさんあります。従前まで保護の対象とならなかった芸能従事者ですが、精一杯の自助努力はしてきたと思います。今後、芸能に従事する個人事業者が安心して快適に働ける環境整備のために、どうぞ前向きに検討していただければ幸いです。この度は貴重な機会を頂きまして誠にありがとうございました。
○土橋座長 どうもありがとうございました。ここで少し時間を取って御質問を受けたいと思いますが、皆様いかがでしょうか。御質問はございますでしょうか。小菅委員、どうぞ。
○小菅参集者 質問をさせていただきます。6ページに通達が出されております。これを見ると、宛先に各法人や団体が列記されていますが、この通達が出されたから、ここに記載の法人や団体と協力して安全対策の取組を行ったりはされているのか、通達の効果も含めて状況を教えてください。
○森崎様 はい、私どももこの通達の周知は尽力しておりますが、残念ながら御協力を得られたことはなく、協力要請をしている団体もあるのですが、今のところ御協力を得られたということは聞いておりません。
○土橋座長 ほかに質問はございますでしょうか。インターネット、大丈夫ですか。鹿野委員、手を挙げていらっしゃいますか。お願いします。
○鹿野参集者 ありがとうございます。鹿野と申します。1つ質問させてください。資料の4ページに請負構造と指揮命令形態という図式化したものが書かれているのですが、これを見ると、かなり下の第7次下請という所まで書いてあります。そして、第7次下請の直接の注文者は第6次下請の方のように見えるのですが、こういう業態において安全確保策は、もちろん各段階においてそれぞれに応じてということではあるかもしれませんけれども、直接の注文者が負うような形が適任なのか、それとも、もっと違う考え方でというか、指揮命令の実質とかを考えることがよいのか。こういう現場として、どういう方にそれを担っていただくのが適任と感じていらっしゃるのか、それについて教えてください。よろしくお願いします。
○森崎様 ありがとうございます。かなりケース・バイ・ケースになり、例えばこの5次下請のキャスティング業者がある場合もない場合もあったりでございます。ほかのアンケートで、例えば事故に遭った場合、誰に報告したらよいのかと質問しても、かなりばらばらな答えが返ってきておりまして、当事者も誰が責任者なのかが分からない状況です。その中で、例えば相談窓口といいますか、事故報告をさせてもらえる担当などを決めていただいて、仮に、皆さん共有している台本や先ほどの香盤表など全員が共有するものに、その連絡先を書いていただけたら有り難いと思います。
○鹿野参集者 ありがとうございました。
○土橋座長 時間の関係もございますので、追加の質問がある場合は、後ほどのフリーディスカッションの中でお願いいたします。それでは、森崎様、ありがとうございました。
続きまして、②に移ります。日本イラストレーション協会にお願いいたします。今日はオンライン参加されておりますが、譽田様から御説明をお願いいたします。
○譽田様 本日はお時間を頂き、この場に呼んでいただきまして、大変ありがとうございます。拙いかと思いますが、よろしくお願いします。資料について解説をしていきたいと思います。まず、当協会は、現在、組合員数が3,100名を抱えている、イラストレーターを中心とした、グラフィックデザイナー、ウェブデザイナー、漫画家さんなどが参加している、視覚表現を中心としたクリエイターさんの個人事業者の団体です。2008年に中間法人の組合として立ち上げ、現在に至っている状況です。
 2番目、個人事業者への業務の依頼はどのように行われるのか。当協会を通して行われているようなことはないです。音声は聞こえますか。
○土橋座長 はい、聞こえています。
○譽田様 大丈夫ですね。それぞれ個人の事業者が、それぞれで業務を行っている体制になっております。一部の協会の業務については、専門性のある組合員に当方が発注者となるケースもありますが、非常に規模的には小さいレベルです。
 3番目、作業場所や作業ボリューム、納期については、個人事業者が自ら選択できるのかという御質問を頂いたのですが、「作業場所」の選択はできているケースが多いように思われます。WebとかITデザインなどの場合、特定の制作環境に準拠して制作せざるを得ない場合が多いのですが、クライアント企業に出向するなどの対応を求められるケースというのはあります。また、「作業ボリューム」は個人制作者が選択できるかという点ですが、しっかりした請負契約を結べているケースは事前の話合いなどで合意の下で行われている場合が大半です。多くの事業者は請負契約によって仕事をこなしているような状況になっています。「納期」についても請け負うクリエイター側が選択できるケースはそれほど多くはありません。納期が守れるという前提で発注者が選ばれるケースが非常に多いです。口頭契約などによる下請法からすると、グレーゾーンな契約については、後から「作業ボリューム」や「納期」などが変わってトラブルになるなどのケースも若干存在はするのですが、こういったトラブルというのは事業歴が浅い受注者と法遵守の意識の低い発注者との間で多く起こるため、弊会では、三条書面の徹底など事業者の法務知識の底上げに日頃より腐心しております。2006年以降にかなり法改正がなされ、下請法の整備等に伴い、この辺の所は改善の傾向が見られます。
 次に、申し出について、変更してもらうことは可能かというお話ですが、契約の変更は可能な場合と難しい場合があります。「作業場所」については、専門性のある仕事ですので、機材・作業環境などは各自がカスタマイズして揃えていたり、どこでもできる仕事ではない場合が非常に多いです。逆に、上記で述べたような、発注側の作業環境に準拠する必要の強いゲーム制作、IT関連デザインなども、そこに行かなければ受注ができないというケースは、そちらに伺って契約者が制作を行うというケースも多々存在します。
 「作業ボリューム」については、個人事業者それぞれの力量や環境に応じた請負なのですが、契約時に付帯条項などで変更の必要な場合などの記載が事前に相談ができれば、可能なケースもあると思われます。ただし、これは契約書があって、規模や予算の大きな仕事での話であり、孫請、ひ孫請、それこそ先ほどおっしゃっていたような7次請までは行かないにしても、3次請、5次請というような世界の小さなイラストの仕事では、「作業ボリューム」や「納期」の短縮や少量化といった不利な依頼の変更については、クライアントを失う恐怖から、無理をしても請けているクリエイター事業者が非常に多いのではないかと見受けられます。
 次に、作業期間や実作業時間はどのようなものかということですが、以下、いろいろな業種があるので、1つずつ簡単にお答えしていきます。1日当たりの作業時間は多種多様です。明確な数字は把握していませんが、作業期間や実作業時間は請負契約の内容を達成するために、それぞれ個人個人でかなり変わるものと思われます。
 例えば、グラフィックデザイナーがよく受ける仕事として、カタログ/パンフレット/チラシ他広告物のデザイン制作などについては、期日の短いものは1週間程度で受注/制作/納品を行うものもあれば、期日の一般的なものは1か月から3か月程度の制作期間で発注/受注/納品を行っているケースが多くあります。また、Webサイトのデザイン/ホームページ/キャンペーンサイトのデザインなど、Webデザイナーの仕事に関しても、グラフィックデザイナーの主な仕事と同様のスパンで仕事の受発注が行われているケースが多いです。これらの期間は広告物の意味合いによって異なり、キャンペーンならキャンペーン期間、お店のオープンの告知であれば告知期間、セールならセール期間に相当した準備期間が作業期間とされます。
 次に、装丁制作/雑誌/出版物/漫画など編集物のデザイン。これはエディトリアルデザインというジャンルなのですが、こういうものは月刊誌や週刊誌、季刊誌など、月刊で発刊される社報、企業誌、フリーペーパーなど、それぞれの提示される発刊期間に応じて納期が決められており、それぞれデザイナー等がその納期に間に合うように、個人でそれぞれの技術に応じた時間を費やすという形になっております。
 また、イラストレーション制作では、様々なデザインのパーツの部分にいろいろなイラストがあります。これらは、あくまでも実際デザインの作業を受けている元請のパーツ制作であるので、制作期間は上記よりも短いケースが多いです。
 次に、漫画制作/ストーリー漫画/インターネットコミック/同人誌/アニメーターなどの方々の制作は、編集デザインとほぼ同じ形になっていくと思います。紙媒体でもネット媒体でも、月刊誌、週刊誌などの連載ものは発刊期間に合わせて納品しなければいけないため、制作時間の遅い者はプロとして生きていくのが難しい状況があります。一般の労働基準というものは通用しておらず、労働時間などに対する改革は、現状余り行われておりません。アニメーターはフリーランスが少なく、会社側の意識が高ければ実作業時間を管理できる可能性はあるのですが、制作とコスト安に苦しむブラックな環境のアニメーション制作会社が社会問題にもなっているのは周知の通りかと思います。
 上記のような「制作物」を作る前には、代理店や出版社、あるいはデザイン会社といった、「広告戦略」「広告企画」「出版企画」といったものが準備段階にあり、元請に近い制作者になればなるほど、早い段階から事業に関わり、制作期間がそれに応じて長くなる実態があります。
 また、「実作業時間」は、クリエイターそれぞれの技量の違いにより変わるのは先ほど述べたとおりです。精度の高い作品を作る作家であっても、時間が多く掛かってしまうと仕事にはならず、次の発注が取れません。発注者の納得する品質の納品物ができなければ契約になりません。一定以上の技量とスピードを獲得するまでの期間、1~3年ぐらいが多いと認識していますが、ここの期間に関しては誰も生活の責任を持ってくれるわけではないので、睡眠などを極限まで削ってでも、発注者の満足する納品をしなければ仕事が取れません。質が上がるまでやるという感覚は、若干、前時代的なのですが、この業界においては割と普通にそういった形で仕事が行われております。そういう環境に身を置いても制作物に心血を注ぐクリエイターの先人によって、高いレベルのコンテンツが作られ続けていることもまた事実で、この業界に、労災など、安心できるセーフティーネットが敷かれていなければ、継続的に日本がレベルの高いコンテンツを作るのは難しいのではないかと感じている次第です。
 ここで、下の部分に書いてある、「2020年クリエイター実態調査アンケート結果報告書」のデータとして、「休みが取れていますか?」という質問をアンケート調査で行っています(アンケート実態調査の20ページ)。このアンケート調査は、2013年から500人以上のクリエイターを生業とされている個人事業者の方々に取っているアンケートです。2013年から2年に一度ずつ定期的にアンケートを取っていて、これは2019、20年度のアンケートの回答になります。休暇が「十分取れている」「普通には休めている」という回答が、2年前の調査に比べて5.9%減って62.3%。さらに、「あまり休めていない」「ほとんど休みはない」「休みが全くない」という回答の合計も、前回調査より6%増の26.4%と、かなり休みが取りづらくなっている、より労働環境が悪化しているという実態が見て取れます。コロナなどの影響ももちろんあるのかと思いますが、業種によっても少し違いますので、この辺は後ほど資料を見ていただければと思います。イラストレーターとグラフィックデザイナーとWebデザイナーについて、それぞれどのような形で休みが取れているのかをグラフにしたものです。大体、3割から4割程度の人があまり休みを取れていないという実態が割とあからさまになっております。
 これは当協会に所属している組合員が割とこういう状態になっているというケースで出ているのですが、当協会の組合員は割と稼ぎのいい方々が多いのです。実態として、この業態のすそ野にいらっしゃる当協会に属されてないような方も含めると、もう少し数字が悪いのではないかという状況が見て取れるのが現状です。
 2、「個人事業者との連絡調整等」についてお答えをいたします。作業に関連する事故や災害、長時間就業や不規則な就業による健康障害につながるリスクにはどのようなものがあるかですが、大まかに言うと、長時間のデスクワークによる腰痛・腰椎ヘルニア・頚椎ヘルニア・頚椎炎。頚椎炎はパソコンネック、ストレートネックと言われるものです。それに伴う障害・睡眠障害・過労・痔瘻・精神疾患といったものが長時間のデスクワークを起因として起こっているケースが散見されます。また、同様に多いものとして、長時間のPC作業が原因による視覚障害・腱鞘炎・睡眠障害・過労・痔瘻などがあります。
 次に、営業や対人関係が苦手な方々が一定数おられまして、こういう方々が自律神経失調症・躁鬱病・精神疾患・ストレス性胃炎・ストレス性大腸炎・ストレス性疾患などにかかられているケースがアンケートで表示されています。
 最後に、クリエイティブワークにおける専門スキル以外の庶務の増大というのがあります。例えば、税務、法務、営業、経理など、インボイスの導入やマイナンバーの登録、確定申告、契約トラブル対応、保険や生活設計の構築、セカンドキャリア、老後の不安、生活の不安定。そういった、本人が制作でレベルを上げようと言う事とは別の、営業や経済的な様々な業務の負荷を想定をしてない方は結構多いのです。想定外のこういうケースに直面された方々が、やはり自律神経失調症や躁鬱病・精神疾患・ストレス性胃炎・ストレス性大腸炎・ストレス性疾患などになっているケースがよく見られます。
 これらの内容については、「クリエイターにとって労災が必要ですか」と問いかけた2021年に行った「仕事が原因による健康被害についての緊急アンケート」に詳細があります。これは非常に簡単な質問に答えていただいているのですが、労災が必要であるかないか、労災に関してフリーランスのクリエイターも対象として議題に上っていることを知っているかどうか等を、イラストレーター、グラフィックデザイナー、Webデザイナー、漫画家等の方々に対してアンケートを取っております。それぞれの方がどのような症状に悩まされているかということを最後のページで表示しております。ピンクが腰痛、一番左側が視覚障害、この辺が非常に多いです。また、ずっとモニターや手元を見続けている、紫外線のライトテーブルにずっとへばりついているという方が非常に多いので、視覚障害を患われて引退を余儀なくされる、あるいは生活困窮に陥られるという方はこの業界では意外と多いです。業界特有なのかなと思います。それぞれの個別の症状がこの後の表記にたくさん載っているので、実際に見ていただけるといいかと思います。
 このような形で、我々が思っている以上に様々な細かい事象に関して、それほど多くない原因によって起こっていると思われる次第です。これは短期間の2か月ぐらいのアンケートだったのですが、1,200人程度の回答者の回答ですので信憑性はかなり高いと思っております。
 少し戻りまして、先ほどの(2)と(1)のリスクがある場合に、制作会社と個人事業者との間でどのような連絡調整が行われているかという現状に関しての書き込みについてです。親事業者たる制作会社は、請負事業者たる個人事業者が入院・傷病などにより作業続行不可能になった場合、即座に本来は状況を共有し、管理側として対応が必要であることを、ある程度想定している事業者は多いです。他の請負事業者で代行できるような場合は、別の人間に担当を代わってもらうなど、話合いによって対応するケースが多いです。一方、これらの事項について明示的に契約書に盛り込まれていないことが多いです。
 請負事業者が制作続行不可能になって、代わりもおらず、納期に間に合わず、そのことによる損害が大きい場合、まれに個人対企業の裁判となってしまうケースもあるのですが、何千万単位の損失が生じるような場合は、個人がその責任を請け負うことは不可能ですので、請負事業者がその責任を負うケースがほとんどだと思います。このように、健康を害す状況が親事業者にも、自身の事業にも多くの損失と迷惑を掛けてしまうという意識から、精神的に追い詰められるなどして、更に負のループが発生し、自殺など二次的な災害に発展するケースもあります。昔から「健康でなくてはこの業界は務まらない」と言われている所以ではないかと思う次第です。
 次、2について、事故や災害。
○土橋座長 すみません。時間もありませんので、少し早めにまとめていただければと思います。
○譽田様 分かりました。すみません。(3)(2)について、事故や災害、健康障害を防止する観点から変更等を申し出ることは可能かということですが、契約に非常時における項目を入れる、あるいは率直に話ができる信頼関係を作れていれば、変更を申し出ることは可能です。最終的に納品可能な状況、遅れが発生しても最小限にするなど、経済的被害を最小にする努力を日頃から意識することで、最悪の事態は避けられると思います。そのためには、いろいろと全体像を把握してなければいけないのですが、できていないのが現状です。
 次に3番目、「個人事業者の安全衛生管理」について、教育・研修という点です。協会として、個人事業者に対して安全衛生に関する研修や教育を実施しているかについては、福利厚生や健康維持に関しては、年4回発行する会報を通じて協会員の暫定100名の組合員には提供しております。特に国民健康保険組合による助成が活用できる人間ドックについては、医療機関とタイアップして受診あっせんを行っておりまして、その他、各種保険、小規模企業共済の加入推奨、法務トラブルの相談窓口などを設置して、孤立によるプレッシャーやストレスを低減する施策を通じて、精神状態の安定を図るように努めております。
 次に、個人事業主自身が安全衛生に関する研修や教育を受講することに対する支援、あっせん等は行っているかについてですが、ここに書いてあるとおり、セミナー、研修で健康や安全衛生に関するテーマの講義を入れるように配慮しております。
 3番目、健康確保措置として、個人事業者の就業時間の把握は誰がどのように行っているのか。個人事業者が長時間就業にならないようにするための業界内の自主的なルールは存在するかですが、就業時間は把握されておりません。また、自主的なルール等も制定されていない状況です。不定期に実施される事業状況に関するアンケートの結果として、個人事業者の就業時間を類推できる程度に限られております。
 4番目、個人事業者に対するストレスチェックは行われているかですが、こちらも行われておりません。
 5番目、個人事業者の健康診断状況について把握しているかですが、協会で文芸美術国民健康保険の助成を周知することで、特定の医療事業者とのタイアップによる人間ドックのあっせんを実施しております。昨年度の人間ドックの受診者は390名。ここ数年は250~300名前後の参加者ですが、全体の7割は健康診断を受けてないという状況です。
 次、6番目、貴協会として、(3)で把握した就業時間、(4)のストレスチェックうんぬんと書いています。これも実施しておりません。ストレスチェックも行っておりません。
 7番、協会として、個人事業者の心身の健康確保に資する取組として実施・支援しているものにはどのようなものがあるかですが、未着手です。保険等を活用した経済的補償、生活保障に関する施策を中心として、JILLA AIDという形で、当協会に加盟している方々が入れる保険などを提供する告知を定期的に行っております。
 災害状況の把握、災害補償。これは把握ができておりません。届出制度もないです。組合員が現状どういう状況にあるかは個別には把握しておりません。
 個人事業者が被災する災害や健康障害について、傾向や特徴は見られるかですが、特徴としてデスクワークの長時間化が原因の疾病が多いこと、PCや過度の作業による視覚障害が多いこと、過度のストレスによる精神的疾病。これら3つの状況が非常に多いのではないかと感じております。
 10番目、協会として、再発防止の対策や留意事項について、会員に対して周知しているかですが、人間ドックと各種セミナーの周知で、定期的にリスク等を認識していただいて、保険等に入るように促す行為は行っております。
 11番目、事故発生時にトラブルが生じることはあるかです。賠償請求リスクなどがあることから、それらに対応する保険商品の開発には取り組んでおります。実際に提供もしております。
 最後、4の「課題等」についてです。個人事業者の安全衛生管理について、課題と感じていることはあるかについて、被雇用者とは異なり、個人事業者に安全衛生管理を求める機構や制度は存在してないのが現状です。作業工数や労働時間については、生活スタイルや発注者の意向により大きく左右されることから、日々の労働時間を前提として工程管理は行われていないのが実情です。また、当人たちが安全衛生管理を求めているかどうかに関しては不確定要素が非常に多いです。それでも、これまで、当協会のように、現在、私たちがやっているような積極的に各方面からの個人事業者支援の施策を講じた団体がほかにない状況でして、イラストレーター・デザイナーの団体に関しては、この点については非常に遅れていると感じております。
 最後、その他個人事業者に関連して課題と感じていることはあるかですが、社会的素養の欠如、ライフプランに関する意識が低いと感じております。キャリアの入口である20代で、まず社会性の習得が行われていない状況でプロになる方は割と多くいまして、ここに書いてあるようなアンバランスな状態でプロになってしまった故に、当初なかなかうまくいかない、事業として成りゆくまでに時間が掛かる方が多いです。30代で普通の会社の方は既存の平均的なライフプランやライフイベントが行われますが、クリエイターの場合、食べられるようになるまでに時間が掛かることで、普通のライフプランが、大体、5年、10年は後回しになっているケースが多いです。結果として、ピークアウト後のセカンドキャリアのようなものがなかなか描きづらくなっておりまして、苦しい50代を送っていらっしゃる事業者の方が非常に多いのです。そこにも書いてあるように、キャリアの出口が借金まみれであるとか、生活保護の人間を増やさないためにも、いろいろとライフプランや早めに計画をするように組合として、啓蒙・指導していきたいと思っています。
 長時間にわたり、申し訳ありません。聞いていただき、ありがとうございました。以上です。
○土橋座長 どうも、御説明ありがとうございました。それでは、質問がありましたらお受けしたいと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、後ほどのフリーディスカッションのときに、もしありましたら質問の時間があります。譽田様、説明をありがとうございました。
 それでは、続きまして、③です。森委員から、産業医科大学で実施した調査等についての御紹介があります。森委員は、今日はオンラインからの出席です。よろしくお願いします。
○森参集者 よろしくお願いいたします。私はこの検討会に、産業保健の専門家として唯一入っていますので、少し産業保健的な労働衛生的な考察を先にさせていただいた上で、我々の調査の内容を簡単に報告したいと思います。
 「個人事業主の健康確保の役割分担に関する考察」ということで、まず、通常の労働者であれば、事業者からどのような、ある意味サポートを受け、また一部、自己責任にしているかということの全体像を示した上で、それが個人事業主が本当に自己人責任でできるかという考察を最初にさせていただきたいと思います。4つに分けて説明をします。それぞれがプロセスになっているのですが、青は基本的に事業者が行うもの、緑が基本的に共同で行われるもの、黄色が多くの場合労働者個人が行うものというように、色分けしてあります。
 最初に、有害要因による健康影響の防止です。これを達成するためには、まず有害要因、ハザード、危険有害性の情報を入手し、有害性を評価した上で、ばく露を許容レベル以下にコントロールするということを行います。それができない場合には個人用保護具をはめていただいて、適切にこれを管理し、併せて特殊健診等の方法で健康影響を確認します。後で特に晩発で時間が掛かって出るような影響もありますので、プロセス全体の記録を保存します。これを見て分かるように、労働者を対象とした場合には、保護具以外のところは事業者が行っていくことになります。
 同じ健康障害要因でも、今日も出てきましたが、心理社会的健康障害要因と呼ばれるストレスとか、長時間労働については少し特徴がありますので、別のプロセスにしております。心理社会的健康障害要因の場合、まずストレスチェックとか労働時間を把握し上で、その後のプロセスを共同で行っていく。その上で、健康状態によっては就業上の配慮を行う。そして本人が自分で相談窓口を利用するといったような、共同で行われることがあるということが特徴であります。
 3つ目に、働く人の中には様々な健康状態の方がいらっしゃるために、職務適性の管理があります。また、病気を持った人が長く働くための両立支援という取組が今、一生懸命されていますが、これも類似のプロセスになります。この職務適性の管理というのは、労働者の健康状態と、それからその方の仕事の負荷のマッチングのプロセスであります。そういった意味で、このマッチングができているかどうかということを健康診断等の機会を利用して評価をして、それに応じた就業配慮を実施することが基本です。就業措置、就業配慮を実施するのは主に事業者の役割ですが、労働者が協力しないとできませんし、一部は治療継続とか生活習慣の改善等の職務適性を向上させるという努力で、これらは労働者自身が行わないといけない。これを定期的に見直していくという形で実施します。
 さらに、健康の保持増進に関しては、まず健康状態を把握します。しかし、なかなか健康状態を把握しただけでは自発的に適切な行動を取れないことが多く、労働者の、特にヘルスリテラシーが十分でないような状況においては、事業者がかなりかかわって、勧奨等の方法で手を入れて、最終的に必要な改善を個人で図ってもらうというプロセスが基本です。以上のようなプロセスが、一般の労働者に対しては労働安全法に基づき、今、実施されているというわけであります。
 こういったことを個人事業主に適用しようとした場合には、事業者側の行うタスクの一部は、もちろん発注者とか元から事業者が行うことがあるかもしれませんが、多くが個人事業主自身の自己責任で行わなければならないということになります。しかし、そのためには、個人事業主に十分なリテラシーがあり、時間があり、その他いろいろありますが、そのような状況にあるが前提になります。やはりそのような状況にあるかを理解した上でどこまで個人事業主の責任なのかという話をしていかないといけない、又はどうサポートしていくかということを考えなければならないということになるのではないかと思います。
 こういう逆引き的なきちんとした議論が必要ではないかと思ってます。私たちの研究室で約2、3万人規模の労働者を対象としたネット調査をやっていまます。その中の約1割が個人事業主だったのでした。これまでの議論の中では、個人事業主の安全衛生の実態という情報がたくさん出てきましたが、それが一般労働者と比べてどうなのかという議論が余り出ていないので、少し両者の比較を行ってみました。ただし、これはあくまでもネット調査なので、全ての、平均的な個人事業主かどうかというのは、私たちには分かりません。
 まず、6時間未満の睡眠時間であるということに対して、それぞれ企業規模に応じてどうなのかということなのですが、私たちの調査では、個人事業主は短時間睡眠者が少なかったという結果になりました。今日の話を聞いていても、こういった生活習慣の問題は、やはり平均値で捉えてはいけないのだ、多くの人が6時間以上の、つまり通勤がない分眠れるとか、いろいろなことがあると思うのですが、ただし、一部の人においては超長時間であるという問題をどうしていくかということなのかと思いました。
 2点目に、主観的健康観という指標があります。これは、かなり実際の健康状態と関連していて、免疫状態にも関係していると一般的に言われています。一方では、ある意味、自分は健康だから何もしなくてもいいという思い込みにつながる可能性がある指標であります。個人事業主は、働いている労働者よりも実は主観的健康観が高いという結果でありました。これは自己責任でやっているという自信とか、いろいろなことがあると思います。しかし、これが本当に全てプラスなのかどうなのかということも議論があるところです。
 そして健康診断に関して、既に、前回も調査結果が出ていましたが、性・年齢、業種・職種、収入、教育歴、婚姻状況という多くの要因を調整すると、1,000人以上の企業で働く人たちの毎年の健康診断受診に比べて、調整オッズ比0.27という、極めて受診率が低い結果でありました。さらに、この毎年のこと以上に問題、課題だと思うのは、5年間、全く健康診断を受けていませんというオッズ比が3.31あったということであります。つまり、健康診断が毎年受けられなくても、2年に1回、そういった考え方があるかもしれませんが、これが5年間何も受けていないという方が、企業に勤める労働者に比べて非常に割合が多いということであります。
 これを業種ごとに少し見てみました。それぞれの業種に含まれる人数が少ないので、何とも言えない部分もあります。前回、建設業の場合には、かなり力を入れていろいろなことをされているという話がありましたが、そこの結果を見ても、やはり建設業、運輸業においては、やはり安全に関わるということで、ほかよりも健診受診率が高いという結果が得られました。しかし、我々の調査では、約半数の人が健康診断を毎年は受けていないという結果でありました。5年以上受けていないという方は、他の業種に比べて、比較的少なかったという結果でもありました。
 健康診断などの結果に基づいて、きちんとした健康情報を得て健康行動を決めるか、これはヘルスリテラシーという指標が意味を持つわけでありますが、重回帰分析になっているので、これまでの表と少し違う見方になるのですが、やはり企業規模、事業場規模が小さくなればなるほどヘルスリテラシーが低いという有意な結果が出ました。つまり自己責任と言いつつ、自己責任ができるだけの自分の健康状態をチェックする機会があるのか、ヘルスリテラシーを持っているかということに関しては、まったくそうではないという結果でしたので、このことは自己責任とする場合には、かなり課題になってくるということであります。
 最後に、少しだけ話が違うデータをお示しします。別のネット調査でコロナワクチンの2回の基礎接種を行ったかということを、所属する企業規模で比較をしてみました。当初は比較的、個人事業主は高齢者も多いので接種率が高かったのですが、月を経るにつれて、接種率がずっと低く差が出て来るようになって、2021年12月の段階では勤労者、労働者に比べると個人事業主の接種率はかなり低かったという結果になりました。これも1万5,000人規模の全国データなので、ネット調査といっても、かなり実態を反映していると思っています。つまり副反応で休まないといけない、いろいろなことがあって予防接種も受けられなかったということであります。成年で、つまり高齢者が多いということを調整すると、もっと差が出てくるし、いろいろなことを調整して、業種とかも調整しても、大企業の労働者に比べて個人事業主は、0.41というオッズ比でした。
 実は、ここでは示していませんけれども、職域ワクチン接種が主に大企業で行われました。その影響を調整すると、基本的に1,000人未満も2から49人のところも差がなくなるのですが、個人事業者のそういった要素、つまり職域ワクチン接種がなかったという要素を差し引いても、かなり接種率が低かったという結果でありました。
 そういったことで、「まとめ」ですが、個人の健康行動の向上においても何らかのかなりの支援が必要だという実態があります。
後ろは参考資料で、ヒヤリ・ハットとか転倒経験も同じように聞いていますが、これもヒヤリ・ハット経験が少なかったことからすると、なかったわけではなくて、なかなかヒヤリ・ハットだと認識しなかったという要素もあるかもしれませんので、解釈に注意が必要だというように思います。以上、健康という側面からまとめて御報告させていただきました。ありがとうございました。
○土橋座長 御説明ありがとうございます。それでは、ただいまの説明について、質問等ございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。出口委員、発言希望でしょうか。
○出口参集者 はい。
○土橋座長 お願いします。
○出口参集者 出口です。よろしくお願いします。先ほどの資料は参考になりました。ありがとうございます。その中で、日本芸能従事者協会様、日本イラストレーション協会様にお聞きします。建設業では、契約する際に注文者から、見積条件書を作成し、安全、品質、掛かる費用の負担を明確にして見積書作成を依頼します。その後、見積書を徴集して、値段交渉や業者の力量に応じて契約先を選定し、書面による請負契約を取り交わします。
 日本イラストレーションの資料A4で契約時の付帯条項でしょうか。見積条件書とよく似た書面がありましたが、芸能従事者、イラストレーションのフリーランスの個人事業主が契約される際のプロセス、流れはどのようになっているのでしょうか。教えてください。
○土橋座長 それでは、まず、日本芸能従事者協会の森崎さんからお願いいたします。
○森崎様 かなり業種によってばらつきがあります。例えば、今回お示しした資料の3ページで言わせていただくと、実演家とスタッフで大別できるかと思います。流れとしては、3番の日時・場所・内容の提示の所に御質問が近いのかと思います。
 やはり、実演家の方は所属事務所などの仲介者がいる方が多いので、まず、そこから提案された日時が空いているかどうかを聞かれます。空いていたら、内容を承諾したら仮押さえというような形になります。その際に、こちらから見積りをして経費を計算して請求するという慣例はなかなかなく、見積りのために時間を頂くことも全くないです。
 恐らく、スタッフも同様の感じで、まず、日時を押さえられてしまって、例えば、結局、クランクインせず連絡がこなかったことも多かったり、仕事が実際にいつまでに実施されるかを報告しなければいけない決まりもないので、一方的に仮押さえが解消していることが間々あるような状況です。
○土橋座長 それでは、日本イラストレーション協会の譽田様、お願いします。
○譽田様 当協会で出しているアンケート調査の15ページをご参照下さい。契約書・発注書・見積書・納品書等についてです。これは、いわゆる三条書面についての実態調査です。見ていただくと、下請法がきちんと整備されてからは、かなり三条書面のやりとりが増えています。
 大体、6割程度の仕事が、このような書面による発注のやり取りをやった上で、請負契約として受発注しているケースです。ただ、もちろん、残りの何割かはこういうものが全くない状況ですが、かなり改善しつつある状況であるということはお伝えできるかと思います。以上です。
○出口参集者 ありがとうございます。
○土橋座長 では、三柴委員からお願いします。
○三柴参集者 御指名ありがとうございます。結局、見積書等の形式をどうするかといっても、業種の構造や力関係が重要になってくると思います。残念ながら、見積書等の内容が操作されてきた実態もみられるためです。ここは鹿野参集者の御指摘とも重なると思うのですが、お二方に伺いたいのは、こういう構造自体を変えないといけないというお考えなのか、それとも、もう少し緩やかに、新しい仕組みによる力学作りは必要だけれども、そうした構造までは変える必要はないとお考えなのか、そこだけ教えてください。
○土橋座長 森崎さん、よろしいでしょうか。お願いします。
○森崎様 ありがとうございます。ほぼ全般的にルールがない状況なので、双方とも必要ではないかと思います。
○土橋座長 譽田様、お願いします。
○譽田様 下請法によってかなり改善している面がありますので、可能であれば見積書の中などの付帯条項で、クライアントと受注者がある程度話し合える環境作りはしっかり醸成していったほうがいいというふうに思っております。以上です。
○三柴参集者 ありがとうございます。よく分かりました。
○土橋座長 時間も押しておりますので、議事を進めたいと思います。ヒアリングの御説明、ありがとうございました。
 それでは、議事の(3)フリーディスカッションです。ただいま御説明いただいた内容も踏まえ、初めに説明した論点ごとにフリーディスカッションをしたいと思います。論点として論点1と論点3がございましたので、それぞれについて御発言いただきたいと思います。まず、論点1に関連した御発言がございましたらお願いしたいと思います。小菅委員、お願いします。
○小菅参集者 論点1の所、幾つかまとめてでよろしいでしょうか。
○土橋座長 結構です。
○小菅参集者 まず、7ページの個人事業者の実態把握に関してです。個人事業者の被災状況についても、通常の労働者と同様の形式で把握すべきだと思います。例えば、死傷病報告等について、労災保険制度の特別加入団体に報告を義務付けるなども考えられるのではないかと思います。ただ、現状では、特別加入できる業種が限られていますし、加入も任意ですので、対象業種の拡大、特別加入の奨励も併せてやっていく必要があると思います。
 それから、立入禁止等の危険を防止するための措置など個人事業者に対する安全対策を講じるためには、情報がしっかり伝わっていることが大前提になります。安全対策が不十分な状況で作業をしている場合には、現場で、労働者、個人事業者は関係なく、安全への声掛けなど、環境作りが大切だと考えます。
 次に8ページの安全衛生の知識を確実に身につけさせる対策についてです。これまでも出ておりますが、業務契約に際しては、その作業に必要な安全対策を備えるに十分な情報を確実に伝えることや、安全講座等の受講について奨励していくことは必要だと思います。また、特別加入する際には、特別加入団体が労災防止のための安全教育をしっかりする、かつ、その安全教育が適正なものであるかについては、行政が定期的にしっかりチェックしていくことが必要になってくると思います。
 10ページ(3)の部分です。発注者からの安全衛生に係る情報提供は不可欠ですが、前回の報告の中にもありましたが、作業間の連絡及び調整不足が理由で労災が起きているケースが多いと思います。現在、安衛法の30条で元方事業者に連絡調整業務などの措置が規定されています。今後は混在作業を行っている全ての業種の事業者に、その対象を拡大することを検討してはどうかと思います。また、以前も発言しましたが、安衛法3条に規定される配慮は、建設工事の発注者等という形で書かれておりますが、これを建設業種以外の注文者にもしっかり広げ、かつ実効性を担保していく必要があるのではないかと思います。
 最後にプラットフォーマーについてです。以前から申し上げているところです。今、プラットフォーム事業者は使用者とされていませんが、プラットフォーマーが提供するアプリ等を使って働く者にとっては、そのアルゴリズムに従うしかなく、事実上そこから指示を受けて働いているわけです。ただ、それでも労働基準法上の労働者ではないということで、法保護の外に置かれています。
 ヨーロッパでは、プラットフォームの事業者が幾つかの判断基準を満たす場合に労働遂行の管理に相当するとみなすという指令案が出されています。日本でもこうした海外の事例を踏まえた上で、一定のプラットフォーム事業者について安全衛生法上の事業者とみなして、働く者の安全、健康を確保し、労災防止に努める責務の一端を担っていただくのも1つの形ではないかと考えます。続けて幾つか申し上げましたが、以上です。
○土橋座長 ありがとうございました。御意見いただきました。最後のプラットフォーマーは、論点3の内容ということですね。それでは、中村委員から、先ほどの森委員の説明について質問があるということです。まず、中村委員、お願いします。
○中村参集者 先生ありがとうございます。森先生というよりも、今の論点1との関連で言えば、個人事業主と言いながら、実際の現場で働いている小規模事業者とかなり似通っているのではないかと思っています。
 そういう目で見ると、先生のまとめで労働者の就労人数別に、例えば、健康状況などに差が出ていたので、ある意味、小規模事業者と個人事業主はかなり似通ったものの見方をして良いのかどうか、先生の見解をお聞きしたかったのです。
○森参集者 ありがとうございます。恐らく、小規模事業者の経営者と個人事業主はかなり近いところにあると思います。今回、2~49人というのは、あくまでも、そこで働いている労働者性のある人を主に取っているので、今回の調査では、そこは見えてこないかと思います。ですから、そこを調べていくと、個人事業主と小規模企業の経営者と言うか事業者はかなり近いことがあるのではないかと思っています。
○中村参集者 ありがとうございます。それから、今回聞きながら思っていたのは、事業主と言いながら小規模事業主と付いているのだけれども、まとめとしては、本当は小規模事業主の事業主を抜いたまとめをしていくのが適切なのでしょうね。むしろ、労働者と言ってしまったほうが、まとめとして分かりやすいような気がして聞いていました。
○森参集者 すみません。それについて、答えがありません。事業者なので誰にも指揮命令されないために起こることと、規模が小さいから起こることは、私は区別が付いていません。分析できていません。
○中村参集者 なぜそういう質問をしたかというと、例えば、リスクの分析をするときに、もし個人事業主に事業主という側面がかなりあるとすれば、自分でもやらなければいけないところがあるのだけれども、実態を考えたら自分の身を守るのが精一杯ではないかと思うのでそういう質問をいたしました。
○森参集者 ありがとうございます。ここは面白い議論なので、我々も少し検討したいと思います。
○中村参集者 どうもありがとうございました。
○土橋座長 論点1を中心に、フリーディスカッションを進めさせていただいております。三柴委員から発言がございます。お願いします。
○三柴参集者 再び御指名ありがとうございます。今出た、どこまで労働者かという議論については、安全衛生については、先行して労働者であるかどうかとは別次元で進めなければいけないと思っています。あるいは、安全衛生については労働者を広げて考えるというような考えでもよいと思います。諸外国の例を見ていても、そういう発想が必要かと思っています。
 それから、一番申し上げたいのは、今、3点大きな項目立てをしていただき非常に洗練された整理だと思いますが、そこに統括管理という視点を改めて重視していただいていいのかと思っています。
 うまく言えるか分からないのですが、現行の安衛法上の元方に対する規制で、その場の管理、1の場所なりをきちんと統括的に管理しなければいけないという枠組みがあります。結局、安全衛生では管理が重要になってくるから、労働者であるかはともかく、守るべき個人事業主等については、皆、誰か元締めを決めて、この方に総合的に管理していただく仕組みが必要ではないかと思います。
 この際、一番強行的な方法は、正に、業界団体等にそこを通じてでないと取引ができないというような形を取ることでしょうけれども、恐らく、そこまで規制を掛けるのは難しいと思います。現に、今頂いたお話でもそこまでやるのは難しいという、暗にそういうお話もあったと思います。
 そうすると、以前にも申し上げたように、今まである仕組みの中で、中小企業協同組合法という法律が作っている仕組みが、恐らく参考になるだろうと思います。この法律の趣旨は、結局緩やかな連帯を促すこと、互助すること、交渉力を向上するという3点がポイントになる法制度だと思います。団体との関係でメンバーに労働者としての保護を加えるという意味で、労働者協同組合法の考え方を参考に加えてもいいと思います。
 いずれにせよ、これを1つの参考にして、発注者側と、このような法に支えられた団体、緩やかな団体、協同組合のようなものが協議をしながら関係者を巻き込んで安全衛生を達成していくというような取っ掛かりを作ることが重要かと思っております。そういう枠組みが出来ると、協同組合単位での産業医の活用や、取引先に対して就業条件改善の依頼などを、団体として交渉力を持った上で行うことができるようになるのではないかというふうに考えております。
 最後に、ある意味、諸外国の中で先進的な方法を取っているのがオーストラリアです。これはILOと近い考え方を取っていると思います。ここでは取引の上流にあるものを全てPCBUという名称で義務付けの対象にして、事柄に応じて自分たちで連携して事業上の関係者の安全衛生に責任を負っていきなさいと。この事業に貢献するものは全てワーカーとして守ってあげなさいというような仕組みを法律上作って、いろいろ対策を進めています。
 ただ、結局、デジタルプラットフォーマーなどから相当技術的な抵抗に遭い、運用の面では四苦八苦していることも承知しております。その辺りは、また機会があればお伝えできればと思います。基本的な考え方として、協同組合法の枠組み、協議や交渉力を付けるという考え方は必要かと思っております。以上です。長くなり失礼しました。
○土橋座長 御意見ありがとうございました。ほかに御発言ございますか。清水委員、お願いします。
○清水参集者 論点3番の所で、10ページになると思います。個人事業者以外も含めた災害防止のための発注者による措置のあり方という所です。発注者が作業場所を指定する場合において、当該作業場所に存在する危険物や有害物質により個人事業者が災害にあわないためには、どのような対策が必要かというところで、危険物、有害物に関わる運送の部分では、冷蔵庫や冷凍庫に入って作業させられる場合があります。それは会社では分からないのです。配車されて発注者側の倉庫に行って初めて分かります。ここも規制していただくことが必要かと思います。
 2番目に、個人事業者等の下請事業者の安全確保に影響を及ぼすような発注というところで、ここは時間指定の話があったかと思います。本来、作業内容が分からない場合、配車組みの段階で時間指定をしてはいけないのですが、これは受注側と言うか、間に入っている物流子会社はその時間に合わせて発注指示をしていくのですけれども、ドライバーの作業は一定ではない。
 その作業自体は棚入れをしたり、商品の入替え、並べ替えをしたり、初めてのドライバーには全く分からないことが多々あります。それで作業を同じようにしろというのはなかなか難しいところで、あるドライバーだと発注者側の倉庫で強要されたり、それから、フォークリフトに乗ったり、クレーンに乗ったりということで、免許を持っている持っていないにかかわらず、そういう作業を強要されたりということが起きているということで、これも2024年問題を含めて考えていくと、どうしても発注者側を規制していかないとできないところで、荷主サイドや物流子会社を一生懸命責めても、その先のお客様のものですから規制できないのです。交渉に乗っていただけない。
 先日、トラック運送業界を取り巻く当面の諸課題についてということで、国交省の貨物課長の日野さんから報告がありました。やはり、運送業界27業種あるうちの交渉力としては最低で27位なのです。原価交渉もそうですし、作業環境の改善の交渉もそうですし、中小零細が多いものですから、どうしても業界的には最下位になってしまうと。
 やはり、労働衛生の観点からもここは改善してあげないと、ドライバーも高齢化していますので、ますます労災の問題なども発生するでしょうし、言わずと知れてそのままやっていたものが、高齢のドライバーが辞めて若いドライバーが行くと、全く慣れていない環境でやらざるを得ないなど、そういうことがあるのではないかと思います。以上です。
○土橋座長 論点1の(3)の関係の御意見を頂きました。先ほどの芸能従事者協会さんも、当日に行かないと何をやるか分からないというようなところがあったようで、少し関連するお話かと感じました。インターネットで、森委員から御発言希望です。森委員、お願いいたします。
○森参集者 個人事業主自身がしっかり実効性を担保することが大切です。事業者が周知するという話もあるのですが、工場等の構内に行くと、構内を走るための速度制限の標識が必ずあります。どの工場に行っても、運転されている方はそれを極めて厳守されている実態があります。その方々は外に出たらスピードリミットを守るかどうかは分からないにもかかわらず、ある意味、すごく遵守されている状況を見ると、やはり、必要性を周知するだけではなく、一歩踏み込んで、ルールを決めて守らせることが重要ではないかと思います。ルールの逸脱が見える形にすることによって、個人事業主の皆さんはかなり努力されるのではないかと思っています。
 労働安全衛生マネジメントシステムの世界、OHSMSの世界においては、必ずしも労働者に限定せずに構内全体を対象範囲にして、その構内全体を見渡すことが出来る者又は事業者が、働く人全体を管理しながら評価してPDCAを回していくという仕組みがあります。指揮命令とは関係なく管理できる方法論があるはずですので、周知などをするというよりも、一歩進んで、ルール化してルールをきちんと明示化していくような責任を果たしていただくようなことが必要ではないかというのが、論点2の関連で考えているところです。以上です。
○土橋座長 御意見ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。本多委員、お願いします。
○本多参集者 日本建設業連合会の本多と申します。恐れ入りますが、私どもは建設業界の立場、机上ではなく現実的なところの立場をお許しいただくことと、それから、前回お話したこととも重なりますが、併せて、御了承いただければと思います。論点1に関連して3点ほど申し述べたいと思います。
 まず、1つは、厚労省が示されている災害の特徴です。労働者よりも個人事業主や使用者、中小事業主のほうが高い割合で業務上の災害が発生している可能性を提示されております。そもそも、災害データが整備されていないこと、そして、それぞれの労働災害の詳細情報が存在しないこと、また、現時点では、災害の背景、原因、具体的な分析がほとんどできていないと認識しております。このことから、少なくとも、建設業界ですが、個人事業者等に関して労働者と同様の保護対象として扱うべきかという点については、拙速な対応は行わず、十分に時間を掛けた丁寧な対応が求められることをお話させていただきたいと思います。
 一言で個人事業者と申しても、先ほどからいろいろな御発表がございましたが、それぞれの業界、さらに、その業種によって位置付け、立場、労働条件、報酬は相当に異なっているように認識しております。確かに、芸能従事者、イラストレーターなどの方々は厳しい状況にあると認識しております。7月22日の日経新聞にも、芸能界のお話ですが、タイトルとして、過酷な労働環境、苦しむ個人事業主が紹介されておりましたので、聞き及んでおります。
 一方、建設業においては、一人親方とは、技能を身に付けて一人で稼ぐことができた段階で独り立ちする方々のことです。一人、あるいは少人数で仕事を完結するための請負契約は、請負の単価は必ずしも低いわけではございません。しかも、建設業法で事前に書面による契約を結ぶところも1つの特徴だと認識しております。
 そういうことで、労働者と比べて労働時間も決して長いわけではなく、そもそも、上位に管理されたくないことを魅力にしている人たちが多いのも事実です。仮に、20歳前後の若者や経験が浅い方が一人親方と自己申告しているケースもなくはありませんが、恐らく、そういう人たちの実態は労働者性を有する方で、この問題は、国交省主導で別途に建設業界としても検討しているところです。
 その意味で、少なくとも個人事業者のかなり多くの部分を占める建設業としては、第1回でも申し述べましたが、建設業の場合、現場の各事業者においては、そもそも、労働者と一人親方を同一に対応しており、区別して指導、管理していないことも申し述べたとおりです。
 一人親方の個人事業者については、例えば、危険な機械や足場であれば作業に使用しないなど、第一に自ら主体的な対応を講ずることを義務化し、その上で、教育など自ら対策を講ずることができない事項について、どのような対応をしているのかを検討するべきだと認識しております。先ほど、森参集者の研究発表の中にも、個人責任があり、その上で何らかの支援という御発言がございました。私どもとしては同じ感覚です。
 2つ目は、発注者に関する措置です。こちらも第1回と重なり誠に恐れ入ります。適正な発注者というのは、私どもから申し上げると、工事自体を発注する公共発注者や民間の発注者です。適正な工期と費用負担の2点がございます。まず、工期から申し上げます。
 建設業では、労働災害の発生には厳しい工期の存在があることは第1回で申し述べたとおりです。具体的には、工事受注に当たり建設物の発注者の提示、あるいは意向に基づき短工期で完成することを提案することのほか、工事施行中に当たっても、発注者から一層の工期短縮を求められることがございます。また、原発注者、一番上位の発注者ですが、原発注者の都合で工事に着手できなくても、あるいは、自然災害等で工事が中断しても契約自体の工期はそのままで、完成時期が変更されないこともございます。
 ちなみに、厚労省のことで恐縮ですが、労働基準局長様が7月26日の業界誌の取材に応じており、いろいろ掲載しておりました。2024年4月から建設業などの優良業種に適用する時間外労働の上限規制について、建設業の場合、工期が問題になっている、適正工期へのガイドラインもあり、業界だけでなく民間工事の発注者なども含めて適正工期の改善が必要と述べられております。上限規制適用までに、適正な工期による働き方改革の進展に期待感を示されたというふうに認識している次第です。
 恐れ入りますが、最後に、発注者に関連して必要な経費について申し述べさせていただきます。具体的に1例で御紹介したいと思います。昨年、リニア中央新幹線のトンネル工事現場において重大な労働災害が発生したことを受け、厚労省から、建設業の各業界に対して、山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策を徹底する旨の通知が発出されましたので、日建連とトンネル専門工事業協会、これはトンネルの工夫を雇用するトンネル専門会社107社で構成している協会ですが、この協会と一緒に専門部会を立ち上げ、去る5月に「トンネル切羽立ち入り判断基準の策定及び安全対策について」と題する報告書を作成し、現在、建設各社はその基準と対策を全国的に展開しているところです。
 この報告書については、5月の段階で、国交省、厚労省の担当官に対して御説明しておりますが、その巻末に、関係行政機関及び発注者に対する要望を説明させていただき、その際、先ほど申し上げたトンネル専門協の会長の方の率直な意見を伝えさせていただきました。
 工夫を抱えていらっしゃる企業を束ねる団体の長の方の御発言のポイントを2点だけ御紹介させていただきます。ポイントの1つですが、この方の言葉です。これまでのトンネル業界は、日数と1日の就労時間で生産性を上げてきたのが現状です。仕事を受注するには、工程を短縮して安価な価格で落札しなければならず、結果、無理な工程で施行しようとすれば、労働基準法、労働安全衛生法違反や事故につながることになるのではないかと懸念をしています。
 もう1点の意見です。過去の肌落ち災害の状況を見ると吹付けコンクリート厚さ、肌落ちしないように切羽の所にコンクリートを吹き付けるのですが、この吹付けの厚さが薄いと認識していますと。肌落ち災害を防ぐためには、必要な吹付けコンクリートの厚さが確保されていないので、切羽に立ち入って安全に作業ができるよう吹付けの施行を改善していただきたい。平成28年に厚労省のガイドラインが、その旨を策定して具体的なことが書いてございますが、一部の発注者はいまだ吹付けを承認していない状況です。
 こういうことを踏まえると、建設工事としては、発注者、いわゆる国の機関や地方の発注者、それから、民間発注者に対して、働く人の命、安全が第一である以上、適正工期や必要な費用に関して、実効の上がる対応を行っていただくための具体的な措置、取組を求めたいところでございます。業界の立場で恐縮ですが、業界の状況ということで御理解いただければ幸いでございます。以上です。
○土橋座長 御意見ありがとうございました。手が挙がっておりますが、大分、時間がたちましたので、ここで休憩を入れたいと思います。おおむね10分ですから、4時15分から再開したいと思います。一旦、休憩とさせていただきます。
(休憩)
○土橋座長 再開します。フリーディスカッションをやっておりますが、まず、論点1関係のところを行っています。御発言はございますでしょうか。鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木参集者 前半に不適切な取引関係のお話が様々な角度から出ていたと思います。私どもといたしましても、発注者との力関係を背景に契約外の仕事が発生するとか、短納期を強いられるといったことにより、下請事業者の長時間労働につながる、あるいは災害の発生原因になることは大きな課題だと認識しております。
 経団連では、会長の十倉が自ら「パートナーシップ構築宣言」の公表を会員企業に繰り返し呼び掛けていますが、不十分な点が依然ありますので、しっかりと取り組んでいきたいと思います。
 他方、先ほど日本イラストレーション協会の譽田様からは、下請法の整備によって改善したこともあるというお話もございました。また、政府においては、フリーランスの取引適正化のための新法の創設に向けた議論も進められていると伺っています。安全衛生の世界と取引法の世界を整理して総合的な対策を取っていくことが必要ではないかと思いました。
 もう1点申し上げます。資料11ページの連絡調整や情報共有不足による災害の防止という箇所です。情報共有によって災害を防止していく方向性は十分に理解する一方、例えば朝礼等で連絡調整が必ずしもできない産業もあろうかと思います。建設業界においては、長い歴史の中で特定元方事業者の責任として作業間の連絡調整が位置づけられ、労使協力の下で取り組んできていると思いますが、同様の仕組みがそのまま全ての業種に導入できるか、あるいはどのような伝達方法であれば措置の実効性を担保できるか。このようなことを実態に即して議論していくことが必要ではないかと思う次第です。若干抽象的なお話となりましたが、私からは以上でございます。
○土橋座長 鹿野委員、御発言をお願いします。
○鹿野参集者 3つほど申し上げます。先ほど、直前に「取引法と併せて総合的な観点から政策を進めるべきだ」という発言がありましたが、特に私は民法を専攻しておりますので、私も取引法と両方で考えるべきだというお考えには賛成です。ただ、その上で安全衛生の問題については、取引のルールに委ねるだけでは足りない部分があると思いますので、そういう意味で一定の規制を設ける必要があるのだろうと感じているところです。
 2点目です。資料の10ページの論点(案)の(3)に「個人事業者以外も含めた災害防止のための発注者による措置のあり方」というものが掲げられておりまして、その1つ目の○を見ておりますと、「発注者が作業場所を指定する場合において」ということが記載されております。その「発注者」とはどういうものを指すのかにもよりますが、先ほどのいろいろなお話を伺っておりますと、これも業界によって違いがあるとは思いますけれども、かなり複数の元請、下請、孫請、その下という段階がある場合も多いように思われます。それで、個人事業主との関係で言うと、直接の注文者ということではなく、もっと上の所が実際には場所、あるいはその他の業務について取り仕切っているスタイルがあるのではないかと感じたところです。
 そうしますと、そういう実際にコントロールできる立場にある人が一定の対応をするべきだという気がするのです。ただ、ここの記載にある「発注者」という概念が、そういうものを指しまたは含めるものだということであれば、それは記載に異論があるというわけではないのですが、そのように個人事業主と直接の請負関係にある者だけには限らないのだろうなということを、意見として申し上げておきたいと思います。
 3点目です。12ページの一番下の所でプラットフォーマーについての言及がある点です。先ほど三柴参集者からも話がありましたように、海外でいろいろな動きがあるところでもありますし、発注者つまり請負とも違うけれども、実質的にかなりのコントロールをしているという立場にあるプラットフォームも中にはあるように見受けられます。そういうものについても一定の基準を満たすものについては、安全衛生上の一定の責務を担うとすべきかいうことが検討として必要なのではないかと考えております。
○土橋座長 発注者というのは定義があるようで、先ほどの資料の14ページに書いてあります。一番上流側のことを言うのでしょうか。事務局からお願いできますか。
○船井安全課長補佐 「発注者」というのは用語の解説でも付けさせていただきましたが、注文者のうち誰からも請け負わずに仕事を注文している人ということになります。先ほど鹿野委員から御指摘いただいた、(3)の1個目の○で言う発注者というのはこれのことで、例えば一番分かりやすく言いますと、化学プラントを運営している製造会社がいます。その人は製造業の仕事は仕事でやっているのですが、化学設備や工場の改修工事をある程度の規模でゼネコンにお願いするといったような場合は、その化学プラントを運営している製造会社は、建設工事の仕事について言えば発注者になります。その発注した仕事の中のどこかに個人事業者、一人親方がいたとしても、その仕事をその場所でやってくださいと言っている発注者というのは、一番上位の化学プラントを運営している製造会社になるので、一人親方の直接の仕事を注文している直近上位ではなく、いわゆる誰からも請け負わずに仕事をやっている発注者ということになります。
○土橋座長 今の事務局の説明のようにはなっておりますが、先ほどの御発言の趣旨は分かりましたので、御意見ありがとうございました。
○鹿野参集者 ありがとうございました。
○土橋座長 中村委員、御発言をお願いいたします。
○中村参集者 お話を聞きながら思っていたのは、論点のところに関係して、個人事業者と発注者との業務内容の区分というのは、フローの中でどの部分は発注者の責任で、どの部分では共同で関与していて、どの部分では個人事業主というのを、先ほど森先生が安全衛生についてということでフローを掲げていたのだけれども、同じような目で災害防止の観点でも作って考える必要があるのではないかと思っていました。
 実際に私がいろいろな現場でよく聞く声は、これは主に発注者とか元方から言われるのですが、場合によっては偽装請負と取られかねないようなこともあるので、どこまで本当に安全上の注意としてやってよいのかということです。どの辺まではしっかりと言っていいのだということを言ってほしいという声がありました。そういう意味で言うと、発注者の責任という中でも、安全指導をすることは必要なのだけれども、どこまで言ってもいいのだということを、どこかの格好できちんと書いてもらって、業務についてはそれぞれの区分ごとに、発注者にはどのような責任があって、受注していく個人事業主にはどのような責任があるか。そういうところを明示しながら書いてもらえたらいいなと思っていました。
 本日の資料を見ていると、図としては確かにその図が出ているのだけれども、もう少しそこを詳しく業務フローに添う形で作られたほうが、より分かりやすいのではないかと思いました。
○土橋座長 ここで先ほどヒアリングで説明いただいた日本イラストレーション協会の譽田様から補足があるということですので、発言を認めたいと思います。お願いします。
○譽田様 (1)と(3)に関してのフリートークということで、最初の「検討の基礎となる災害の実態の深掘り」という件に関して、1つ視点をお話できればと思います。
 当協会でアンケート調査を10年取っている中で、個人事業者には大体3つぐらいの時期があるということはよく分かってきております。入口として、事業者の技術を身に付けるための時期、次に最大風速として、例えば年商1,000万円近い売上げを稼ぐような時期、出口として、だんだん仕事が減っていってセカンドキャリアにうまく向きあえるかどうかという時期。この3段階があります。
 そういうことに対応するために、保険やライフプランの話をずっとしているのですが、災害自体の深掘りに当たる話として、安全衛生の事案が起こる時期によって個人事業者というのはリスクが全く違うのです。
 例えば入口のまだ技術を磨いている時点でいろいろと方向転換を必要とする場合には、就職を考えたりとか、いろいろな方法があると思うのですが、一番稼いでいる最大瞬間風速で稼ぎをがんがん上げていて、寝てなくてというような時期に安全衛生の事案が起こった場合に、老後の生活から何から、保険などのライフプランも全て吹き飛んでしまうようなケースもあるので、時期的に守るべき時期というのがあるのだということを是非知っておいていただけると有り難いと思うので、議論にそういう点を加味していただければいいなと思います。
 ちなみに、当協会の会員の平均的な所属年数は約4年です。要は4年で事業者をやめてしまう方が非常に多いということなのです。圧倒的に多数というわけではないです。4割とか、そういう世界なのですが、そういうような方々が、最初の3年でプロになれなくてやめていくというようなケースが非常に多いのです。そこを越えてある程度稼げる時期を迎えられた方というのは、備えなり保険なりという安全衛生上のこともある程度サポートを自分でやって、老後に向かわれる方が非常に多いという状況があるということを、1つ意見として発言したいと思います。
○土橋座長 情報をありがとうございました。ほかに御発言はございますでしょうか。田久委員、お願いします。
○田久参集者 先ほど来各参集者からも出されていますが、特に小菅参集者から出された部分で、論点1の(1)の実態の深掘りの部分などは、言われたように特別加入団体の活用というものは是非していただいて、実態を早めに把握することを進めていただきたいということもあります。
 更に、先ほど来、何人の参集者からも出ているように、連絡調整や情報共有不足といった点で、建設や製造業には特定元方という形がありますが、こういうものも含めて、先ほど言った一定のコントロールができるプラットフォーマーなどは同じような位置付けをして、対策として組めないものかという私たちの考えも1つあるところです。
 更に、発注者に向けたということがあるのですが、発注者には様々ありまして、特に私たち建設労働組合の中では、本当に一人親方は直、いわゆる皆さんエンドユーザーに対する仕事も含めてあります。この人たちも発注者になります。そういった点では少し分けて、こういったところも対策は検討すべきではないかと思っています。
 先ほど来、譽田様からもありました安全経費の問題、それと安全対策をした場合でも事故が全くないということではないので、そういった点では補償の問題。こういったところの改善も並行して、この場ではないのですが、そういった関わる所に検討を進めてもらうようなことも、是非していただきたいと思っています。
 全体的に今回まとめられた論点のところは、まとまっているというように私も思っていますので、是非1つずつじっくり対策として検討していただいて、様々な意見を聞いて進めていただければと思っています。
○土橋座長 時間も押していますので、論点3に進めていきたいと思います。論点1の残りがございましたら結構ですので、いかがでしょうか。青木委員、どうぞ。
○青木参集者 住宅生産団体連合会の青木と申します。まず、契約の件でいろいろとお話がありまして、どういう契約をするのかというところが、業界の個人事業者の状況をいろいろ教えていただいたところで、余りにも違いがあって1つの個人事業者という形で括れないという感じがしました。
 契約にしても、例えば同じ建設業界でも、いわゆるゼネコンの世界と住宅の世界は違うのです。極端に言いますと、住宅業界というのは契約書というのはないケースが多いのです。住宅業界は、発注書と請書でお互いのやり取りをやってしまいます。受注金額の規模で、一定以下の形であれば、それでもいいというように建設業法で決まっているのです。業界ごとにそういった特性を見て、その業界に合わせたもの、例えば建設であれば建設業法において、住宅業界であれば、そういった一般的な請負契約をやらなくても大丈夫だというようなことを決めていただいて、もちろんその中には金銭のやり取りだけではなくて、契約条項として安全経費をどうするかとか、そういったことも当然うたうこともできるようになっていますので、そういった業界ごとの、例えば建設で言えば建設業法が決めているように、業界ごとにそういったものを細かなところは決めていって。安衛法で全ての個人事業者を同じように括るというのは、これだけ差があると難しいという気がします。
 例えば一番厳しいところに合わせた安衛法を作ってしまうと、そうではない業界にとっては非常に辛いというところが出てくると思うのです。ですから、安衛法を改正するにしても、それは最低限のところにして、個々においては各業界の建設業法に当たるような、そういった業法をいろいろ使って、その業界に合わせた形での諸々の対策が打てればいいのではないかというように感じました。
○土橋座長 論点3も含めて、御発言がありましたらお願いいたします。高山委員、お願いします。
○高山参集者 ITフリーランス支援機構の高山と申します。よろしくお願いいたします。手前どもは、ITエンジニアの中でフリーランスとして活躍する方々を支援している支援団体になります。今、様々なお話を伺っておりまして、随分違うなと思って伺っておりました。先ほどのお話もございましたとおり、業界、業種でフリーランスの状況というのは全然異なるのだなと思っております。
 手前どものITフリーランスの状況から言いますと、まず、自発的にフリーランスとして働くのか、労働者として労働契約を締結して働くのかというのは、御自身で決められるケースが結構多いのです。全てではありませんが、ほとんどの方が働き方を御自身で選択して働くという状況があります。働く形態としては、自分の空き時間を利用する、いわゆるシェアワーカーのような働き方で、御自宅とかカフェで、リモートで働いたりという働き方もあります。一方で、専業状態で1つの案件に従事したり、複数の案件を掛け持ちで、専業でやられているという方々も存在します。
 一方、お仕事をどうやって受注していくかというところですが、当然、御自身自ら、人づてで仕事をもらってということもあるのですが、最近は仲介事業者を介してお仕事を受注するケースが非常に増えてきています。また、仲介事業者を介さずに、いわゆるプラットフォーマーみたいな形で、インターネット上で完結するような受注形態もあるというのが最近の特徴になっております。
 そういったことを踏まえますと、冒頭で申し上げましたとおり、全ての業界を1つの枠組みでやっていくというのは難しいのかなと思っております。ですので、取組ごとに推進主体を決めまして、管轄の省庁と連携しながら、推進主体ごとに取組内容を決めていくとかというのが一番いいのだろうと思っています。
 先ほど少しお話が出ましたけれども、フリーランス新法の取組も進んでいると伺っておりまして、そちらのほうでも同じような課題を聞いております。いろいろな業界、業種のフリーランスの方々に対するガイドラインを1つのもので作るのはなかなか難しいという話も出ていると聞いておりますので、この安衛法に関しても同じような枠組みでやっていくのが一番いいのだろうと聞いていて思いました。
 手前どもITフリーランスの業界ではどういったことが必要かというところなのですが、これは労働者として働いているITエンジニアの方々と、就業状況、被災状況、リスクというところはほぼ同じだと考えておりますので、取り組む内容についてはほぼ同じでいいのかなというように思っています。
 具体的に申し上げますと、まずは、いわゆるヘルスリテラシー教育というところで、フリーランスの方々はなかなか雇われ先がないので、こういったことに注意しなさいとか、こういうところを学んで健康に留意しなさいというようなことを言われる機会はほぼないのです。なので、そういう教育を仲介事業者、発注事業者などが中心になってやっていくような枠組みというのがいいのかなと思っています。あとはストレス度チェックと健康診断なのですが、こちらも時間がないということで受けない方が非常に多い印象を受けております。これも先ほど申し上げたとおり、発注事業者、仲介事業者が積極的に案内していくという取組が一番いいのかなと思っています。
 ただ、発注事業者に対して過度な規制をかけると、個人事業主を活用しない、発注しないというリスクと言うか、発注控えというようなことも起こってくるように思いますので、ここは仲介事業者をうまく活用していって、仲介事業者に対してフリーランスの安全衛生対策を取らせていったりとか、あるいは業界団体にある程度委ねて取り組んでいくといったところが一番いいのではないかと考えております。
 最後になりますが、ITフリーランスを管轄する省庁というものは現在ございませんので、できたらこの機会に当業界を管轄する省庁も決めていただいて、先ほど申し上げたとおり、取組ごとにいろいろな議論をさせていただければいいかなというように思っています。
○土橋座長 ほかはいかがでしょうか。小野委員、お願いします。
○小野参集者 運輸・物流研究室の小野と申します。3点ほど簡略に申し上げたいと思います。
 1つ目は印象です。本日、ヒアリングを受けてちょっと思ったことがあります。働く場所、作業場所が大きく変わっていくような業種の個人事業主が集まっているような業界、それと、ある程度個人事業主は多いけれども、例えば本日のお話ですとイラストレーターの業界のように、基本的には8割以上の方が自宅でやっているというような業界、多分芸能従事者の業界についてはスタジオだとかロケ地だとか、演奏場所も変わるでしょうから、場所が変わっていくのだろうと思うのです。そういった形で労働災害の大きさというのは相当変わってくると思います。運送会社も建設業界もそうです。働く場所は変わってきます。そういう点で、感触で申しますと、個人事業主が多い業界だけれども、そのように作業場所が変わっていくというところに中心を置く、注目して対策を講じるのがいいのかな、効果が上がるのかなということを1つ感じました。
 もう1つ、論点の2つ目は、どちらかと言ったら過重労働、メンタルヘルス、健康管理なのですが、1番のところは大きく分かれていて、個人事業者自身、あるいは注文者、発注者という言葉が出ています。そして、運送業に特徴的なものとしては、12ページの(4)、発注者以外の災害原因となるリスクを生み出す者、これは運送業界で言えば着荷主になるのだと思います。こういった形で、基本的には業界の用語で言えば、真の荷主、これは発注者なのです。例えばメーカー、農産品の出荷団体とか、真の荷主という言葉で分けています。あとは荷主と言うと、元請の中間の同業者ということもあるので2つありますが、基本的には真の荷主、発注者です。そして、注文者、同業者も含めた元請、下請、今度は個人事業主自身、もう1つは納品先という着荷主です。対策を検討するに当たっては、建設業界も相当分けられるので、その部分の役割分担をしっかり対策を講じることが効果のあるものを分けて、それごとにしっかりと対策を検討していただけたら効果が上がるかなというのが2点目です。
 3点目です。これは法令上の問題です。先ほどありましたが、建設業法で頑張らないと、ここだけの問題ではうまくいかない問題があるように、運送業界もそうです。例えば5台以上の一般貨物トラック運送事業者だと、当然のように組織、会社を持っておりますので、従業員、労働者ということになりますが、そういった所に対しては事故が起きないように法令上の義務付けがあって、1つは運行管理者というのがあります。全体の運行を管理して、ドライバーの始業時に点呼を行います。一番重要なのはアルコールチェックですが、健康管理を行って、今日の天候の問題、仕事の内容を伝えます。その運行管理を行う人たちが点呼を行います。これは法令上で義務付けられています。帰ってきたときもそうで、乗務後点呼ということでアルコールチェックをし、仕事の内容等、必ずドライバーに対面で、現状は基本的には点呼を行わなければいけないという法令上の義務付けがあります。
 もう1つは整備管理者です。これも法令上の義務付けで設置しなければならないとなっています。例えば『空飛ぶタイヤ』という映画がありましたが、タイヤが外れて事故が起きて重大な損害を与える。そういったことが起きないように、車の整備をしっかりやって乗務しなさいということです。これは法令上の義務付けの整備管理者の設置義務があるのです。こういったことは、基本的には5台以上の会社、組織に対しては、設置する義務があるということなのです。
 ところが一方、個人事業主の場合です。軽貨物運送事業者の場合は、1人でもできるのですが設置義務がないのです。そういったことがあって。それを法令上で義務付けされるとアルコールチェックや健康管理、車両整備等の実施率が高くなっていきますので、業法との連携を取ってやっていかないと本当の効果が上がらないと思います。省庁間を横断的に連携していただきながら、対策に乗っていっていただくような、横のパイプも是非強めていただけたらと思います。
○土橋座長 ほか御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。活発な御議論をありがとうございました。本日の議論、フリーディスカッションの内容については、事務局において整理していただくことになります。次回の検討会においてもヒアリングが予定されているということですので、次回のヒアリングとフリーディスカッションの結果も、更に含めて取りまとめていくほうが今後の議論に資すると思います。そういった形で進めさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
(異議なし)
○土橋座長 では、そのようにさせていただきます。議事としては、あと4番と5番がございますが、時間の関係で(5)のフリーディスカッションは本日はやらないで、次回に延期させていただきます。本日は(4)の論点2の事務局からの説明のみを行いたいと思います。説明をお願いいたします。
○船井安全課長補佐 それでは資料2です。資料1、3と同じように赤く塗った所が論点ということで、この資料の該当部分になります。資料の2枚目ですが、これも第2回の検討会の配布資料ですが、安衛法第22条と同じ作りの条文について、どのように検討すべきかということの論点を前回お示しさせていただいて御議論いただいたと。私どもから提案させていただいたのは22条と同じ作りの条文として、20条、21条、23条、24条、25条とあるのですが、23条や24条についてはハード主体の規定であったり、関係省令が未制定であったりするため、20条、21条、25条を主に改正対象として議論してはどうかということで提案させていただきました。
 次のページですが、これを踏まえて第2回で御議論いただいた際の意見をまとめさせていただきました。大きく分けて4点ありました。1点目ですが、法第21条の関係の土砂崩壊危険場所を規定したようなものについて、土砂崩壊のリスクを誰が把握すべきなのか。さらに、事業者では知り得ないようなリスクがあった場合にどのようにするのか。このような部分については、事業者では知り得なかった土砂崩壊リスクというのは、正に論点1で今まで御議論いただいたような、発注者がその場所の危険性を知っているという部分で、論点1で議論いただくべきものかと思っております。2つ目の○、最高裁の射程を超えて本検討会で議論する必要があるのかという部分については、最高裁の判決を踏まえた対応、省令改正については、昨年度議論をして既に関係省令の交付をしておりますので、正にこういった部分について今回どうすべきかということを、この場で御議論いただくということにしております。そのほか、事業者による「周知」だけでは不十分なので、しっかりやっていただくためにはどのようなことが必要なのかとか、作業間の連絡調整、そういった部分については正に今、御議論いただいていた「論点1」でやるべき話なのだろうと整理させていただいております。
 続いて、どのような形で議論を検討していくべきかということですが、4ページにある第2回検討会で配布させていただいた資料ですが、これは法第22条の関係の省令について改正したときの考え方です。この考え方をベースにして、次のページにA、Bという形で、見た目は少し違うのですけれども、同じような表があります。こちらの表は、1ページ前と基本的に同じ考え方で、今回議論の対象となる法第20条、第21条とか、安全関係の規定をしている条文に、それぞれ表の中身を用語的に合わせた表になっております。基本的な考え方は一切変えていません。どのような場合にどのような措置にすべきという考え方は、22条の関係で整理した1枚前のスライドと全く同じような形で整理をしております。前回御議論させていただいた、22条のときに整理した考え方で議論を進めていくことでよろしいかというのが1点目です。これを御判断いただくにあたり、対象となる厚生労働省令というものが、どれぐらいあり、どのようなものかを少しまとめたものを示しております。こちらを御覧になっていただいた上で、今後、今申し上げた考え方でいいかを御議論いただきたいと思います。
 まず、20条の関係ですけれども、上に点線で囲った四角がありますが、これが安衛法第20条の直接の規定です。事業者は、次の危険を防止するため必要な措置を講じなければならないと。この法律条文の具体的な内容を決めているのが、下に検討対象と書いてある労働安全衛生規則であるとか、ボイラー及び圧力容器安全規則、クレーン等安全規則、ゴンドラ安全規則という関係省令です。ただ、規則全部というわけではなく、その中で20条に書いてあるような危険に関係する部分の規定が対象になります。典型的な対象条文は下に2つほど挙げさせていただいておりますけれども、ベルトの切断による危険を防止するために囲いを設けてくださいという規定、クレーンの関係であれば、クレーンと建設物等との間の距離をどのぐらい空けてくださいというような規定があります。
 これと同じように、次のページには21条の関係があります。安衛法第21条というのは、掘削、採石、荷役、伐木といった特殊な業務における危険であるとか、労働者が墜落する場所や土砂崩壊の恐れがある場所に関する危険を規制しています。21条の第1項と第2項で、それぞれ対象としているものが違います。1項については、安全衛生規則の「安全基準」という項目のうち、地山の掘削作業や採石作業、荷役作業、伐木、建築物の組立・解体作業の危険に関する規定を設けており、これが対象になってくると。2項については同じく、労働安全衛生規則の高所からの墜落・転落や飛来、崩壊等による危険、土石流による危険、このような部分の規定が対象になってくるということです。同じく、典型的な条文例の制定について載せております。
 続いて次ページ、23条についてです。事業者は、労働者を就業させる建設物その他の作業場について、通路、床面、階段、その他採光、照明について必要な措置を講じなければならないという規定があり、具体的な規定については、検討対象にあるように、労働安全衛生規則の「安全基準」のうち、通路や通路の照明、作業場の床面、警報設備、このような部分が関係してくる。安全衛生規則とは別に事務所衛生基準規則があり、こちらについては今申し上げた点について、事務所について個別に規則を設けて規定しておりますので、温度、空調、照度、騒音等について、全般的な事務所の室環境について定めている。具体的な条文は以下のとおりです。
 24条については、事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない。このような条文なのですが、関係する省令上の条文は未制定ですので、今回改正条文を検討する際の対象には含めなくてよいのではないかということでございます。
 25条関係については、労働災害の急迫した危険があるときの作業中止と退避ということで、検討対象については安全衛生規則の「安全基準」のうち、危険物の大量漏洩やトンネル工事における落盤、出水等、そのような際の退避に関する規定がありますので、これが対象になってくると。具体的な条文については下に書いてあります。論点2の関係資料については以上です。
○土橋座長 説明ありがとうございました。御意見もあろうところかと思いますが、時間の関係で、本件に関する御意見を頂くフリーディスカッションは次回に延期させていただきたいと思います。続いて、議事の6番となります。(6)その他。事務局側から何かありますでしょうか。
○船井安全課長補佐 その他の議題は特にありませんが、連絡事項といたしまして、次回の日程をお伝えします。正式には改めて御案内させていただきますけれども、次回については8月22日月曜日、本日同様中央労働委員会講堂において、14時からの開催を予定しております。
また、本日の議事録については、委員の皆様に御確認いただいた上で公開することとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
○土橋座長 それでは、これで終了させていただきます。本日は長時間にわたり活発な御議論をいただき、ありがとうございました。また、日本芸能従事者協会の森崎様、日本イラストレーション協会の譽田様、森委員におかれましては、御説明・質疑対応をありがとうございました。
それでは、以上で第3回「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」を閉会いたします。どうもありがとうございました。