2022年8月1日 令和4年第5回目安に関する小委員会 議事録

日時

令和4年8月1日(月)15:00~21:55

場所

東京労働局1-2会議室
(九段合同第三庁舎11階)

出席者

公益代表委員
 藤村委員長、鹿住委員、小西委員、中窪委員
労働者代表委員
 伊藤委員、小原委員、永井委員、仁平委員
使用者代表委員
 池田委員、大下委員、佐久間委員、新田委員
事務局
 鈴木労働基準局長、青山大臣官房審議官、佐藤賃金課長、友住主任中央賃金指導官、
 高松調査官、杉山副主任中央賃金指導官、長山賃金課長補佐、尾崎賃金課長補佐

議題

令和4年度地域別最低賃金額改定の目安について

議事

<第1回 全体会議>
○藤村委員長
 それでは第5回目の目安に関する小委員会を開催いたします。例年は第4回目で終わるのですが、今年はもう1回追加をしていただきまして、しかも猛暑の中ご出席を賜りましてどうもありがとうございます。
 まずはお手元の資料について事務局からご説明お願いいたします。
 
○尾崎賃金課長補佐
 事務局でございます。本日もお手元の資料の他に各種団体からの要望書を回覧しておりますので適宜ご参照いただければと思います。
 本日の資料は参考資料のNo.1とNo.2の2点ございます。これまでの目安小委員会で提出した資料を更新したものとなっております。
 参考資料No.1の足元の経済状況等に関する補足資料をご覧ください。ページ数は第1回の資料と同じにしておりますが、1枚おめくりいただき2ページをご覧いただければと思います。
 内閣府の月例経済報告につきまして、7月分が新しく出ておりますので更新しております。表の下の方でございますが、先月6月の基調判断は「景気は持ち直しの動きが見られる」とされておりましたが、直近7月は、「景気は緩やかに持ち直している」とされております。
 また、右側の先行きの表現ぶり自体は先月と変わっておりませんが、その右の雇用情勢の部分につきまして、直近7月は「持ち直している」、また、消費者物価につきましては、「上昇している」となっております。
 続いて5ページ目は経団連の春季賃上げ妥結状況でございます。こちらは大手企業の最終集計が新しく出ておりまして、今年のアップ率は2.27%となっております。続いて9ページですが、ランク別の有効求人倍率の推移でございます。有効求人倍率につきましてはどのランクでも改善が見られておりますが、回復が遅れておりましたAランクでも直近6月では1.10となっております。
 最後に10ページでございますが、ランク別の新規求人数の水準の推移になります。こちらのグラフは2020年1月を100としたときの数値を出しておりますが、4月には全ランクで100を上回りましたが、直近の9月はAランクで98.5となっておりまして、足元では一進一退の状況ということになります。参考資料No.1は以上になります。
 続きまして、参考資料No.2の主要統計資料をご覧いただければと思います。表紙の裏側、12ページをご覧いただければと思いますが、春季賃上げ妥結状況でございます。更新しているのは右上の経団連の大手企業の最終集計が出ておりましたので、こちらを2.27%と更新しております。資料の説明としましては以上になります。
 
○藤村委員長
 どうもありがとうございました。ただいま説明いただきました資料の内容について、何かご質問がございましたらお願いをしたいと思います。よろしいですかね。それでは配付資料に関する議論は以上といたします。
 前回の小委員会においては、目安を取りまとめるべく、鋭意調整を進めましたが、目安額とその根拠理由について、公益委員として再度検討する時間が必要であることから、今回に持ち越したところでございます。本日は再検討したものをもとに取りまとめに向けた議論を行えればと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
 労使の方からこれまでの主張に追加等があればお願いをいたします。いかがでしょう。はい、永井委員どうぞ。
 
○永井委員
 ありがとうございます。追加ということでもないのですが、一言発言させていただきたいと思います。
 今回、目安額とその根拠・理由について時間をかけてお考えていただいたことには心より感謝申し上げたいと思います。最賃法第9条の3要素については、これまでの議論の中でも丁寧にお示しいただいたと考えております。
 その上で申し上げたいのは、明確で納得ができる内容で示された目安額が、地方最低賃金審議会でしっかりと議論されて、今年の改定額となったときに、適用となるのは、事業主と労働者であるということです。その上で私の方からは、目安は、やはり最賃法第1条にあるように、最賃近傍で働く賃金の低廉な労働者の生活の安定に繋がるものになると言える目安でありたいということです。
 この物価高の中、中高年の独身女性や、1人親など、時間給で働く多くの方々の生活がコロナと相まって、より厳しいものになっております。一般的な家庭の食卓に上がるはずのカレーライスでも、食材高騰で具を減らしたり、そんなことも現実にあります。最賃だけで解決できるものではないかもしれませんが、最賃でも解決しなければなりません。
 労働者はこの厳しい状況の中でも必死に働いてまいりました。労使の真摯な賃金交渉の結果が反映されるこの最賃において、最賃近傍の労働者の暮らしを少しでも良くしたい。繰り返しになりますが、目安はそういうことも背景に決めていくべきものだと考えております。以上です。
 
○藤村委員長
 わかりました。使用者側はよろしいですか?
 はい。永井委員から発言のありました内容、労働側が主張を変えたということではなくて、さらに補強するという、そういう内容だったかと思います。労使それぞれのご主張には特段の変更はないというふうに思われますので、全体会議で開きを詰めていくというのは難しいように思います。
 前回に引き続きまして、個別にご意見を伺いながら開きを詰めていきたいと思いますが、それでよろしいでしょうか?
 
(異議なし)
○藤村委員長
 ありがとうございます。それでは、それぞれ控え室にてお待ちをいただきたいと思います。 
 
<第2回 全体会議>
○藤村委員長
 ではただいまから第2回目の全体会議を開催いたします。お手元に公益委員見解を配付しておりますので、事務局から読み上げていただきます。よろしくお願いします。
 
○杉山副主任中央賃金指導官
 朗読します。令和4年度地域別最低賃金額改定の目安に関する公益委員見解、令和4年8月1日。
 1、令和4年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、次の表に掲げる金額とする。令和4年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安、Aランク、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪。31円。Bランク、茨城、栃木、富山、山梨、長野、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、広島。31円。Cランク、北海道、宮城、群馬、新潟、石川、福井、岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、徳島、香川、福岡。30円。Dランク、青森、岩手、秋田、山形、福島、鳥取、島根、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄。30円。
 2(1)目安小委員会は、今年度の目安審議に当たって、平成29年全員協議会報告の3(2)で合意された今後の目安審議の在り方を踏まえ、特に地方最低賃金審議会における自主性発揮が確保できるよう整備充実や取捨選択を行った資料を基にするとともに、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」及び「新しい資本主義実行計画工程表」並びに「経済財政運営と改革の基本方針2022」に配意し、最低賃金法第9条第2項の3要素を考慮した審議を行ってきた。
 ア 賃金。まず、賃金に関する指標を見ると、春季賃上げ妥結状況における賃金上昇率(規模計)は2%を超えており、ここ数年低下してきた賃金引上げの水準が反転している。また、賃金改定状況調査結果については、第4表①②における賃金上昇率(ランク計)は1.5%(最低賃金が時間額のみで表示されるようになった平成14年以降最大値)であったことに加え、継続労働者に限定した第4表③における賃金上昇率(ランク計)は2.1%となっている。この第4表は、目安審議における重要な参考資料であり、同表における賃金上昇率を十分に考慮する必要がある。ただし、第4表における賃金上昇率は、企業において労働者の生計費や賃金支払能力等を総合的に勘案して賃金決定がなされた結果であると解釈できるところ、今年の結果を見るに当たっては、今年4月以降に上昇している消費者物価の動向が十分に勘案されていない可能性があるという点にも留意が必要である。
 イ 労働者の生計費。また、労働者の生計費については、関連する指標である消費者物価指数を見ると、「持家の帰属家賃を除く総合」は今年4月に3.0%、5月に2.9%、6月に2.8%(対前年同月比)となっており、とりわけ「基礎的支出項目」といった必需品的な支出項目については4%を超える上昇率となっている。消費者物価指数については、基本的には、「基礎的支出項目」及び「選択的支出項目」の双方を含む「持家の帰属家賃を除く総合」を基に議論すべきであるが、必需品的な支出項目を中心とした消費者物価の上昇に伴い、最低賃金に近い賃金水準の労働者の中には生活が苦しくなっている者も少なくないと考えられる。このため、労働者の生計費については、最低賃金に近い賃金水準の労働者の購買力を維持する観点から、必需品的な支出項目に係る消費者物価の上昇も勘案し、今年4月の「持家の帰属家賃を除く総合」が示す3.0%を一定程度上回る水準を考慮する必要がある。
 ウ 通常の事業の賃金支払能力。一方、通常の事業の賃金支払能力については、一部の産業や企業ではなく全産業や企業全体の賃金支払能力を指すと解されるところ、関連する指標を見ると、法人企業統計における企業利益(売上高経常利益率)については、平成31年1~3月期は6.0%、令和2年4~6月期は4.4%、今年1~3月期は6.3%となっており、コロナ前の水準への回復が見られる。また、業況判断DIを見ても、日銀短観では、令和2年6月の▲31から今年6月には+2となっており、また、中小企業景況調査では、令和2年4~6月の▲66.7から今年4~6月には▲19.4となっているように、コロナ禍からの改善傾向が見られる。
 ただし、「宿泊業, 飲食サービス業」では、現在もコロナ禍の影響が見られ、今年1~3月期の売上高経常利益率は▲4.5%となっている。また、足下では、国内企業物価指数が9%を超える水準で推移している中で、多くの企業では十分な価格転嫁ができず、企業経営は厳しい状況にあると考えられる。
 このように、企業の利益や業況については、コロナ禍からの改善傾向は見られるものの、コロナ禍や原材料費等の高騰により賃上げ原資を確保することが難しい企業も少なくないことに留意する必要がある。
 エ 各ランクの引上げ額の目安。以上から、①賃金については、春季賃上げ妥結状況における賃金引上げの水準が反転していることに加え、今年の賃金改定状況調査結果第4表①②における賃金上昇率は、平成14年以降最大であるものの、当該結果には今年4月以降の消費者物価の上昇分が十分に勘案されていない可能性があること、②労働者の生計費については、必需品的な支出項目に係る消費者物価の上昇も勘案すれば、今年度の引上げ率は、今年4月の「持家の帰属家賃を除く総合」が示す3.0%を一定程度上回る水準とすることが考えられる。さらに、最低賃金について、政府が「できる限り早期に全国加重平均が1000円以上」となることを目指していることも踏まえれば、可能な限り最低賃金を引き上げることが望ましい。一方、③通常の事業の賃金支払能力については、企業の利益や業況において、コロナ禍からの改善傾向は見られるものの、労働分配率が比較的高い中小企業・小規模事業者においては、コロナ禍や原材料費等の高騰により賃上げ原資を確保することが難しい企業も少なくない。そうした中で、最低賃金は、企業の経営状況にかかわらず、労働者を雇用する全ての企業に適用され、それを下回る場合には罰則の対象となることも考慮すれば、引上げ率の水準には一定の限界があると考えられる。これらを総合的に勘案し、今年度の各ランクの引上げ額の目安(以下「目安額」という。)を検討するに当たっては3.3%を基準として検討することが適当であると考えられる。
 各ランクの目安額については、①賃金改定状況調査結果第4表における賃金上昇率はDランクが高いものの、今年1~6月の消費者物価の上昇率は、A・Bランクがやや高めに推移していること、②昨年度はAランクの地域を中心に雇用情勢が悪化していたこと等も踏まえて全ランク同額としたが、今年度はAランクにおいても足下では雇用情勢が改善していることから、A・Bランクは相対的に高い目安額とすることが適当であると考えられる。一方、③地域間格差への配慮の観点から少なくとも地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き続き上昇させていく必要があること等も考慮すれば、A・BランクとC・Dランクの目安額の差は1円とすることが適当であると考えられる。
 オ 政府に対する要望。目安額の検討に当たっては、最低賃金法第9条第2項の3要素を総合的に勘案することを原則としながら、今年度は4月以降に消費者物価が上昇したこともあり、結果として、この3要素のうち、特に労働者の生計費を重視した目安額とした。このため、今年度の目安額は、コロナ禍や原材料費等の高騰といった企業経営を取り巻く環境を踏まえれば、特に中小企業・小規模事業者の賃金支払能力の点で厳しいものであると言わざるを得ない。
 中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げしやすい環境整備の必要性については労使共通の認識であり、生産性向上の支援や官公需における対応を含めた取引条件の改善等に引き続き取り組むことを政府に対し要望する。
 生産性向上の支援については、可能な限り多くの企業が各種の助成金を受給できるよう一層の取組を求めるともに、特に、事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げ、生産性向上に取り組んだ場合に支給される業務改善助成金については、原材料費等の高騰にも対応したものとするなど、より一層の実効性ある支援の拡充を強く要望する。また、最低賃金について、地域間格差にも配慮しつつ、引き上げていくためには、特に、最低賃金が相対的に低い地域において、中小企業・小規模事業者が賃上げしやすい環境整備が必要である。このため、政府に対し、業務改善助成金について、最低賃金が相対的に低い地域における重点的な支援の拡充を強く要望する。
 さらに、下請取引の適正化については、「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」(令和3年12月)及び「取引適正化に向けた5つの取組」(令和4年2月)に基づき、中小企業・小規模事業者が賃上げの原資を確保できるよう、労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分の適切な転嫁に向けた環境整備を強く要望する。
 カ 地方最低賃金審議会への期待等。目安小委員会の公益委員としては、目安は、地方最低賃金審議会が審議を進めるに当たって、全国的なバランスを配慮するという観点から参考にされるべきものであり、地方最低賃金審議会の審議決定を拘束するものではないが、目安を十分に参酌しながら、地方最低賃金審議会において、地域別最低賃金の審議に際し、地域の経済・雇用の実態を見極めつつ、自主性を発揮することを期待する。また、中央最低賃金審議会が地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。
 また、今後、公益委員見解の取りまとめに当たって前提とした消費者物価等の経済情勢に関する状況認識に大きな変化が生じたときは、必要に応じて対応を検討することが適当である。
 なお、公益委員見解を取りまとめるに当たって参照した主なデータは別添のとおりである。
 (2)生活保護水準と最低賃金との比較では、昨年度に引き続き乖離が生じていないことが確認された。なお、来年度以降の目安審議においても、最低賃金法第9条第3項及び平成29年全員協議会報告の3(2)に基づき、引き続き、その時点における最新のデータに基づいて生活保護水準と最低賃金との比較を行い、乖離が生じていないか確認することが適当と考える。
 (3)最低賃金引上げの影響については、平成29年全員協議会報告の3(2)及び4(3)に基づき、引き続き、影響率や雇用者数等を注視しつつ、慎重に検討していくことが必要である。
 
○藤村委員長
 どうもありがとうございました。公益委員としては、この公益委員見解を小委員会の報告として、地方最低賃金審議会に示すように中央最低賃金審議会に報告をしたいと考えておりますが、よろしいでしょうか?
 
(異議なし)
 
○藤村委員長
 はい、ありがとうございます。それではこの公益委員見解を小委員会の報告として中央最低賃金審議会に示すように、中央最低賃金審議会に報告をしたいと思います。それでは目安に関する小委員会報告を取りまとめたいと思いますので、お願いいたします。
 よろしいでしょうか?では事務局から読み上げていただきます。お願いします。
 
○杉山副主任中央賃金指導官
 朗読します。中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告。令和4年8月1日。
 1 はじめに。令和4年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、目安額の根拠等についてそれぞれ真摯な議論が展開されるなど、十分審議を尽くしたところである。
 2 労働者側見解。労働者側委員は、直近2年はコロナ禍の影響を意識した審議を行ってきたが、現在は社会活動の正常化も進み、政府の各種支援策等にも支えられる中で経済は回復基調にあるとの認識を示した上で、今後重要なことは、経済をより自律的な成長軌道にのせていくことであり、そのためには、経済・社会の活力の源となる「人への投資」が必要で、その重要な要素の1つが最低賃金の引上げにほかならないと主張した。
 また、本年の春季生活闘争で労働組合は「人への投資」を積極的に求め、中小企業を含めて経営側も総じてこれに応え、これまで以上の賃上げの広がりと底上げを図ることができたと述べた上で、労使で答えを出した賃上げの流れを最低賃金の引上げにつなげ、最低賃金近傍で働く者の労働条件向上へ波及させるべきであると主張した。
 加えて、現在の最低賃金の水準では、年間2,000時間働いても年収200万円程度と、いわゆるワーキングプア水準にとどまり、国際的にみても低位であること、また、連合が公表している最低限必要な賃金水準では、最も低い県であっても時間単価で950円 を上回らなければ単身でも生活できないとの試算結果が出ていることも踏まえ、最低賃金は生存権を確保した上で労働の対価としてふさわしいナショナルミニマム水準へ引上げるべきであると主張した。
 さらに、昨今の急激な物価上昇が働く者の生活に影響を及ぼしていることや、特に基礎的支出項目等の伸びが顕著であり、生活必需品等の切り詰めることができない支出項目の上昇が最低賃金近傍で働く者の生活を圧迫していることを述べるとともに、この実態を直視し、生活水準の維持・向上の観点から消費者物価上昇率を考慮した引上げが必要であると主張した。なお、企業物価も上昇していることから、中小企業において円滑に価格転嫁をできるよう強力に支援を図り、もって最低賃金引上げに向けた環境を整備することが重要であるとも主張した。
 また、労働市場でも募集賃金の上昇が見られるが、これは労働力人口が減少する現下の環境において、企業が存続・発展に向けて賃上げを通じた人材確保に重きを置いていることの現れであり、この点も本年度の目安の決定にあたり考慮すべきであると主張した。
 そして、地域間の額差をこれ以上放置すれば、労働力の流出により、地方・地域経済への悪影響があるとの懸念を示すとともに、昨年度、目安を上回る引上げが行われたのは全てDランク県であり、これは人材確保に対する地方の危機感の現れであって中央最低賃金審議会としてもこの点を受け止めるべきとの認識を示した。
以上を踏まえ、本年度は「誰もが時給1,000円」への通過点として、「平均1,000円」への到達に向けてこれまで以上に前進する目安が必要であり、併せて地域間格差の是正に向けてC・Dランクの底上げ・額差改善につながる目安を示すべきであると主張した。
 労働者側委員としては、上記主張が十分に反映されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
 3 使用者側見解。使用者側委員は、中小企業を取り巻く経営環境について、企業規模や業種により、回復基調の格差が生じ、さらに、新型コロナウイルス感染症の影響による景気の低迷に加え、ロシアのウクライナ侵攻に対する金融制裁や、エネルギー問題などの国際経済情勢の変化の影響を大きく受け、予断を許さない状況であるとの認識を示した。
 加えて、中小企業の労働分配率が80%程度と高い中、近年の最低賃金は、過去最高額を更新する引き上げが行われ、影響率も高止まりしており、多くの中小企業から経営実態を十分に考慮した審議が行われていないとの声があると述べた。
 その上で、今年度の目安については、引き続き新型コロナウイルス感染症や、急激な原材料費等の高騰や物価の上昇、円安の進行、海外情勢等の影響を受けている中小企業の経営状況や、地域経済の実情を各種資料から的確に読み取り、各種データによる明確な根拠を基に、納得感のある目安額を提示できるよう、最低賃金法第9条における3要素に基づいて慎重な審議を行うべきと主張した。
 さらに、地方における昨年度の答申に対する不信・不満を払拭できるよう、地方が納得できる目安を示すべく議論を尽くしたいと述べ、目安額とそれを導き出すロジックについて、地方最低賃金審議会の委員や、目安額を報道で知ることとなる労働者・企業が納得できるものを示すことが求められると訴えた。
 また、「生産性が向上し、賃上げの原資となる収益が拡大した企業が、自主的に賃上げする」という経済の好循環を機能させることが重要であり、スムーズな好循環の実現のため、中小企業に対する一層の支援を含め、産業構造上の上流から下流まで、企業規模にかかわらない、さらなる生産性の向上や価格転嫁も含む取引環境の適正化への支援等の充実が不可欠であると主張した。
 中央最低賃金審議会の目安額は地方最低賃金審議会を拘束する性質のものではないことを小委員会報告に明記し、さらに地方最低賃金審議会は地域別最低賃金額及び発効日について、当該地域の実態を踏まえて決定できることを確認したいとの認識を示した。
 また、使用者側は、各種統計等に基づく審議を行うべきこと、中小企業の賃金引上げの実態を示し、3要素を総合的に表している「賃金改定状況調査結果」の、とりわけ第4表を重視する旨を従来から主張しており、令和2年度・3年度は、「コロナ感染症という未曾有の影響があり、もはや通常の経済活動ができる状況とは言えない特殊な事情であったことから、第4表に重点を置いた議論ができなかった」ということであり、今後も第4表を重視しつつ、他の指標も勘案して目安審議を進めていくスタンスに変わりないことを明言した。その上で、今年度はコロナ禍においても雇用を維持しながら、必死に経営を維持してきた企業の「通常の事業の賃金支払能力」を最も重視して審議していく必要があると主張した。
 使用者側委員としては、上記主張が十分に反映されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
 4 意見の不一致。本小委員会(以下「目安小委員会」という。)としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたところであるが、労使の意見が一致せず、目安を定めるに至らなかった。
 5 公益委員見解及びその取扱い。公益委員としては、今年度の目安審議については、平成29年全員協議会報告の3(2)で合意された今後の目安審議の在り方を踏まえ、加えて、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」及び「新しい資本主義実行計画工程表」並びに「経済財政運営と改革の基本方針2022」に配意しつつ、各種指標を総合的に勘案し、下記1のとおり公益委員の見解を取りまとめたものである。
 目安小委員会としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することとした。
 また、地方最低賃金審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記2のとおり示し、併せて総会に報告することとした。
 さらに、中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げしやすい環境整備の必要性については労使共通の認識であり、生産性向上の支援や官公需における対応を含めた取引条件の改善等に引き続き取り組むことを政府に対し要望する。
 生産性向上の支援については、可能な限り多くの企業が各種の助成金を受給できるよう一層の取組を求めるともに、特に、事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げ、生産性向上に取り組んだ場合に支給される業務改善助成金については、原材料費等の高騰にも対応したものとするなどのより一層の実効性ある支援の拡充に加え、最低賃金が相対的に低い地域における重点的な支援の拡充を強く要望する。
 下請取引の適正化については、「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」(令和3年12月)及び「取引適正化に向けた5つの取組」(令和4年2月)に基づき、中小企業・小規模事業者が賃上げの原資を確保できるよう、労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分の適切な転嫁に向けた環境整備を強く要望する。また、行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。
 以下、省略いたします。以上です。
 
○藤村委員長
 どうもありがとうございました。今の内容を小委員会報告として取りまとめようと思いますが、よろしいでしょうか?
 
(異議なし)
 
○藤村委員長
 ありがとうございます。それでは審議会で私から報告することとしたいと思います。事務局から中央最低賃金審議会の本審の日程の連絡をお願いいたします。
 
○尾崎賃金課長補佐
 事務局でございます。中央最低賃金審議会の本審は明日11時から厚生労働省にて行います。
 
○藤村委員長
 はい。そういうことで、皆様よろしくお願いいたします。それでは本日の小委員会はこれをもちまして終了といたします。また、小委委員会報告は、中央最低賃金審議会での報告前ではありますが、報告前であることを前提にマスコミに公表したいと思いますが、皆様よろしいでしょうか?
 
(異議なし)
 
○藤村委員長
 はい、ありがとうございます。ではそのようにさせていただきます。他に何かございますでしょうか?はい、佐久間委員どうぞ。
 
○佐久間委員
 はい、ありがとうございます。使用者側を代表して一言申し上げたいと存じます。今年度の目安小委員会につきましては、コロナ感染症の影響に加え、ロシアのウクライナ侵攻に伴う国際情勢、経済情勢の変化により、原材料やエネルギー価格の高騰等、取引価格へ転嫁することがなかなか進まず、中小企業においては、先行きへの不安感が高まり予断を許さない状況のもとに進められてきました。
 昨年は目安小委員会と中央最低賃金審議会が採決による決定となりましたが、今年度は公・労・使の三者構成による審議の重要性を改めて認識し、厚生労働省 賃金課の審議会運営面でのご支援を賜りながら、互いの信頼関係のもとに審議を尽くしてきました。こうした中、最低賃金引き上げの目安額は過去最高を更新しましたが、今回の審議に当たりましては、消費者物価指数、企業物価指数、賃上げの実態と春闘の状況、売上高対経常利益率、労働生産性などをはじめとする各種の中小企業や地域経済のデータと今まで以上に向き合い、傾向を分析し、時間をかけながら、真摯な議論をしてきた結果としてご提示いただいたものになったと認識しております。
 私ども委員は、特に今年度は、各種の指標をもとに、根拠ある、納得感のある審議を訴えがら、この審議に臨んでまいりました。使用者側としては、「意見が一致した」というものではなく、本年度も負担がかかる額ではありますが、意見の隔たりの大きい中、目安の取りまとめに向けて最大限のご尽力を賜りました、公益の先生方に、まず感謝を申し上げたいと存じます。
 また、労働側委員におかれましては、最後まで真摯な協議を続けていただきましたことに、敬意を表したいと思います。
 最後に公益委員の先生方、労働側委員の皆様、そして、厚生労働省事務局のご尽力に改めて感謝を申し上げます。ありがとうございました。
 
○藤村委員長
 ありがとうございました。はい。労働側委員、どうぞ。
 
○仁平委員
 ありがとうございます。労働側からも、この足下での急激な物価上昇を含めて大変難しい環境の中で、真摯に議論をいただいた使用者側の皆様方、それから労使の意見を調整いただき、目安を取りまとめいただいた公益の先生方、そして何より審議会の円滑な運営に多大なご尽力いただいた厚生労働省事務局の皆様に、改めて感謝を申し上げたいと思っております。
 私もこの間繰り返し申し上げてきたことでございますが、最低賃金の決定にあたっては、三者構成原則に基づくこの本審議会において、現場実態を熟知する労使が議論を尽くして合意形成を図るプロセスが大事だと思っております。とりわけ今年のように、労働者や企業を取り巻く状況が大きく変化している局面においてはなお一層大事だと思っております。
 秋以降、目安全協での審議が再開されることになると思いますが、労働側としては引き続き、公労使の三者構成を大事にして議論に臨んでまいりたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
 
○藤村委員長
 どうもありがとうございました。本日は長時間のご審議、本当にお疲れ様でございました。なんとか今年も取りまとめることができました。本当にありがとうございました。