2022年7月19日 令和4年第3回目安に関する小委員会 議事録

日時

令和4年7月19日(火)13:01~15:32

場所

東京労働局1-1会議室
(九段第三合同庁舎11階)

出席者

公益代表委員
 藤村委員長、鹿住委員、小西委員、中窪委員
労働者代表委員
 伊藤委員、小原委員、永井委員、仁平委員
使用者代表委員
 池田委員、大下委員、佐久間委員、新田委員
事務局
 鈴木労働基準局長、青山大臣官房審議官、佐藤賃金課長、友住主任中央賃金指導官、
 高松調査官、杉山副主任中央賃金指導官、長山賃金課長補佐、尾崎賃金課長補佐

議題

令和4年度地域別最低賃金額改定の目安について

議事

<第1回 全体会議>
○藤村委員長
 では、ただいまから第3回目安に関する小委員会を開催をいたします。まず、お手元の資料について事務局から説明をお願いいたします。
 
○尾崎賃金課長補佐
 事務局でございます。本日もお手元の資料のほかに、各種団体からの要望書を回覧しておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 それでは、参考資料を御覧ください。前回の目安小委員会での委員からの追加要望資料となります。まず、1ページ目と2ページ目ですけれども、こちらは企業物価の状況の資料になります。1ページ目を御覧ください。企業物価指数の推移です。足下では前年同月比で9%を超える水準で推移しており、直近6月、こちらは速報値ですけれども、9.2%となっております。
 続いて、2ページ目を御覧ください。輸入物価指数の推移の資料になります。円ベースで見ますと、足下では30%を超える水準で推移しておりまして、直近の6月は、こちらも速報値ですけれども、46.3%となっております。
 続いて、3ページからが賃金改定状況調査結果に関する資料となります。3ページと4ページは概要の資料になりますので、5ページ目を御覧ください。前回は第4表の①と②をお示しいたしましたけれども、今回は委員からの御要望も頂きまして、第4表③を新たに作成しております。こちらの第4表の③は、第4表の①、②と同様に、集計対象となる事業所で昨年6月と今年6月の賃金を調査して賃金上昇率を計算しております。
 第4表①、②と違う点は何かと申し上げますと、一番下の(資料注)を御覧いただければと思います。第4表①、②については、集計労働者である3万533人全てから賃金上昇率を計算しております。一方で、本表の③は、昨年6月と今年6月の両方に在籍していた労働者である2万5,609人のみを対象とし、割合で申し上げますと83.9%の労働者に限定して、賃金上昇率を計算しております。言い換えますと、第4表③では、継続労働者のみを集計対象としておりますので、昨年6月に在籍していたものの今年6月には在籍していない退職者の方、あるいは昨年6月には在籍していなかったものの今年6月には在籍するようになった入職者の方は、第4表の③の集計対象には入っていないものとなっております。
 前置きが長くなって大変恐縮ですけれども、表の左上を御覧ください。4表③ですと、産業計・ランク計の賃金上昇率は2.1%となっております。ランク別に見ますと、A~Cランクが2.0%、Dランクは2.4%となっており、いずれも第4表①、②よりも高い上昇率となっております。
 続いて、縦に御覧ください。内訳を見てみますと、男性は1.7%、女性は2.4%、一般は2.1%、パートは2.1%となっております。第4表①、②と同様に、男性よりも女性が高い、あるいは一般パートで同水準といった傾向は変わりませんけれども、いずれも第4表①、②よりも高い水準となっております。参考資料の説明としては以上になります。
 
○藤村委員長
 どうもありがとうございました。今御説明いただきました資料の内容について、何か御質問、あるいは御意見があれば承りたいと思います。いかがでしょうか。大下委員、どうぞ。
 
○大下委員
 前回お願いした企業物価指数の資料について、追加資料としてご用意頂きましてありがとうございます。資料を見ても分かるとおり、国内企業物価、輸入物価とも、足下でここ数年にない上がり方を示しています。今回の中賃の審議は、消費者物価と企業物価、それぞれの物価が上がっていることをどのように見て取るかというところが、1つの鍵になるかと思います。これだけ企業物価指数が上がってまいりますと、当然、企業の支払い能力にも影響がありますので、この点を留意しながら、議論していくべきではないかということを、このグラフを見て改めて感じているところでございます。以上です。
 
○藤村委員長
 ありがとうございます。そのほかにございますか。よろしいですか。
では、配布資料に関する議論は以上といたします。前回の小委員会では、労使双方から、今年の目安審議に対しての基本的な考え方を表明いただきました。まず、労働者委員からは次のような主張がなされました。
 1点目ですが、直近2年はコロナ禍の影響を踏まえた審議を行ってきたが、現在は社会活動の正常化も進み、政府の各種支援策等にも支えられる中で、経済は回復基調にある。今後は、経済をより自律的な成長軌道にのせていくことが必要であり、そのためには、経済・社会の活力の源となる「人への投資」が必要である。その重要な要素の一つが最低賃金の引上げにほかならない。
 2点目は、本年の春季生活闘争で労働組合は「人への投資」を積極的に求め、中小企業を含めて経営側も総じてこれに応え、これまで以上の賃上げの広がりと底上げをはかることができた。労使で答を出した賃上げの流れを最低賃金の引上げにつなげ、最低賃金近傍で働く者の労働条件向上へ波及させるべきである。
 3点目として、現在の最低賃金の水準では、2,000時間働いても年収200万円程度と、いわゆるワーキングプア水準にとどまり、国際的に見ても低位である。また、連合が公表している、最低限必要な賃金水準では、最も低い県であっても時間単価で950円を上回らなければ単身でも生活できないとの試算結果が出ている。最低賃金は生存権を確保した上で労働の対価としてふさわしいナショナルミニマム水準へ引き上げるべきである。
 4点目は、急激な物価上昇が働く者の生活に影響を及ぼしている。基礎的支出項目等の伸びが顕著であり、生活必需品等の切り詰めることができない支出項目の上昇は、最低賃金近傍で働く者の生活を圧迫している。この実態を直視し、生活水準の維持・向上の観点から消費者物価上昇率を考慮した引上げが必要である。
 5点目、労働市場でも募集賃金の上昇が見られるが、これは労働力人口が減少する現下の環境において、企業が存続・発展に向けて賃上げを通じた人材確保に重きを置いていることの現れであり、この点も本年度の目安の決定にあたり考慮すべきである。
 6点目、地域間格差をこれ以上放置すれば、労働力の流出により、地方・地域経済への悪影響が懸念される。また、昨年度、目安を上回る引上げが行われたのは全てDランク県であり、これは人材確保に対する地方の危機感の現れである。
 7点目、以上を踏まえ、本年度は「誰もが時給1,000円」への通過点として、「平均1,000円」への到達に向けた目安が必要である。併せて、地域間格差の是正に向け、C・Dランクの底上げ・額差改善につながる目安を示すべきである。以上が労働側、労働者委員の主張でした。
 次に、使用者側委員の主張について申し上げます。
まず1点目です。中小企業を取り巻く経営環境について、企業規模や業種により、回復基調の格差が生じている。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響による景気の低迷に加え、ロシアのウクライナ侵攻に対する金融制裁や、エネルギー問題などの国際経済情勢の変化の影響を大きく受け、予断を許さない状況である。
 2点目、中小企業の労働分配率が80%と高い中、近年の最低賃金は過去最高額を更新する引上げが行われ、影響力も高止まりしており、多くの中小企業から、経営実態を十分に考慮した審議が行われていないとの声がある。
 3点目、今年度の目安については、引き続き新型コロナウイルス感染症や、急激な原材料等の高騰や物価の上昇、円安の進向、海外情勢等の影響を受けている中小企業の経営状況や、地域経済の実情を各種資料から的確に読み取り、各種データによる明確な根拠を基に、納得感のある目安額を提示できるよう、最低賃金法第9条に基づく3要素に沿って慎重な審議を行うべき。
 4点目、地方における昨年度の答申に対する不信・不満を払拭できるよう、地方が納得できる目安を示すべく議論を尽くしたい。
 5点目、目安額を導き出すロジックについても、地方最低賃金審議会の委員や、目安額を報道で知ることとなる労働者・企業が納得できるものを示すことが求められる。
 6点目は、「生産性が向上し、賃上げの原資となる収益が拡大した企業が、自主的に賃上げをする」という経済の好循環を機能させることが重要。スムーズな好循環の実現のため、中小企業に対する一層の支援を含め、産業構造上の上流から下流まで、企業規模に関わらない、更なる生産性の向上や価格転嫁も含む取引環境の適正化への支援等の充実が不可欠である。
 7点目、中央最低賃金審議会の目安額は地方最低賃金審議会を拘束する性質ではないことを小委員会報告に明記し、さらに地方最低賃金審議会は、地域別最低賃金額及び発効日について当該地域の実態を踏まえて決定できることを確認したい。
 8点目として、使用者側は、各種統計等に基づく審議を行うべきこと。中小企業の賃金引上げの実態を示し、3要素を総合的に表わしている「賃金改定状況調査結果」の、とりわけ第4表を重視する旨を従来から主張。令和2年度、3年度は、「コロナ感染症という未曾有の影響があり、もはや通常の経済活動ができる状況とは言えない特殊な事情であったことから、第4表に重点を置いた議論ができなかった」ということであり、今後も第4表を重視しつつ、他の指標も勘案して目安審議を進めていくスタンスに変わりない。特にコロナ禍においても雇用を維持しながら、必死に経営を維持してきた企業の「通常の事業の賃金支払い能力」を最も重視して審議していく必要がある。
 以上の御主張が、前回ございました。労使の皆様には、今、私が紹介したそれぞれの主張について、追加あるいは補足の意見があればお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。よろしいですか。では、この後は公労、公使で、個別に主張を伺いながら開きを詰めていきたいと思います。それでは、今日は公使会議から始めたいと思います。労働者側委員の皆さんは、控え室で一旦お待ちいただきます。
 
(労側委員退出)
 
<第2回 全体会議>
○藤村委員長
 それでは、ただいまから第2回目の全体会議を開催いたします。本日は本年度の目安の取りまとめに向けて、個別に意見を伺いながら、鋭意調整を進めてまいりました。しかしながら、現時点では依然として双方の主張の隔たりが大きいことから、本日の取りまとめは断念し、次回に持ち越すことにしたいと思います。よろしいですか。
 
(異議なし)
○藤村委員長 ありがとうございます。
 それでは、次回の日程と会場について、事務局から連絡をお願いいたします。
 
○尾崎賃金課長補佐
 事務局です。次回の日程と会場については、追って御連絡いたします。
 
○藤村委員長
 それでは、これをもちまして、本日の小委員会は終了といたします。どうもお疲れさまでした。