2022年7月12日 令和4年第2回目安に関する小委員会 議事録

日時

令和4年7月12日(火)13:00~15:52

場所

 三田共用会議所第四特別会議室(4階)

出席者

公益代表委員
 藤村委員長、鹿住委員、小西委員、中窪委員
労働者代表委員
 伊藤委員、小原委員、永井委員、仁平委員
使用者代表委員
 池田委員、大下委員、佐久間委員、新田委員
事務局
 青山大臣官房審議官、佐藤賃金課長、友住主任中央賃金指導官、
 高松調査官、杉山副主任中央賃金指導官、長山賃金課長補佐、尾崎賃金課長補佐

議題

令和4年度地域別最低賃金額改定の目安について

議事

○藤村委員長
 ただいまから第2回目安に関する小委員会を開催いたします。
第2回の目安小委員会を始めるに当たり、委員長として一言申し上げておきたいと思います。これから第3回、第4回に向かって労使双方の御意見を伺いながら、最終的に今年の取りまとめをしていきたいと思います。昨年度は審議が十分に尽されなかったということで、正に、この場で異例なことが起こったと、今年はそれが無いように十分に審議を尽くしていきたいと思っておりますので、労使双方、御協力をよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、お手元の資料について事務局から説明をお願いしたいと思います。
 
○尾崎賃金課長補佐
 事務局でございます。本日もお手元の資料のほかに、各種団体からの要望書を回覧しておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 次に配布資料ですが、資料№1~№5、参考資料№1~3の合計8点ございますが、今回は全て通しで御説明いたします。
 それでは、まず、資料№1を御覧ください。令和4年の賃金改定状況調査結果です。1ページ目は調査の概要です。真ん中の3(2)の辺りにありますが、対象は常用労働者が30人未満の企業に属する民営事業所です。その下の表を御覧いただき、調査事業所数は約1万6,000、集計事業所数は5,000弱、回収率は30%程度と、おおむね例年並みとなっております。
 調査の中身になりますが、まず3ページ目です。こちらは第1表ということで、今年1月~6月までに、賃金の引上げあるいは引下げを実施した、あるいは実施しなかったという区分で、事業所単位で集計したものとなります。左下の産業・ランク計を御覧ください。1月~6月までに賃金の引上げを実施した事業所の割合は36.9%となっていて、昨年よりも上昇しております。隣の賃金の引下げを実施した事業所の割合は1.3%となっていて、昨年よりも低下しております。さらに隣ですが、1月~6月に賃金改定を実施しない事業所のうち、7月以降も賃金改定を実施しない事業所の割合は46.8%で、昨年よりも低下しております。また、7月以降に賃金改定を実施する予定の事業所の割合は15.0%と、昨年より上昇しております。産業別に見てみると、1~6月までに賃金の引上げを実施した事業所の割合は、医療・福祉で最も高く、今年は63.2%となっております。
 続いて、4ページ目の第2表を御覧ください。平均賃金改定率を事業所単位で集計したものとなります。左上の産業・ランク計という所を御覧ください。今年の1月~6月までに、賃金引上げを実施した事業所の平均賃金改定率は3.5%と、昨年に比べて上昇しております。真ん中の賃金引下げを実施した事業所の割合は、-15.6%です。一番右になりますが、改定を実施した事業所と凍結した事業所を合わせて、今年1月~6月の事業所ごとの平均賃金改定率を集計したものですが、こちらは1.1%となっております。
 続いて、5ページ目の第3表です。賃金引上げを実施した事業所の賃金引上げ率の分布の特性値となっております。産業・ランク計の所を御覧ください。第1・四分位数が1.1%、中位数が2.1%、第3・四分位数が4.2%と、いずれも昨年より上昇しております。
 続いて、6ページの第4表です。こちらは賃金上昇率です。第4表の①は男女別の内訳を示しております。こちらの産業計・男女計という所を御覧ください。ランク計の賃金上昇率は1.5%となっております。1.5%という上昇率は、最低賃金が時間額のみで表示されるようになった平成14年以降、最大の水準となっております。ランク別では、Aランクで1.4%、Bが1.3%、Cが1.6%、Dが1.9%となっていて、Dランクが最も高くなっております。男女計で産業ごとに見ると、右から2番目の医療・福祉が最も高く2.2%となっております。男女別の賃金上昇率を見ると、左端の産業・ランク計ですが、中段の男性が1.0%、下段の女性が2.0%となっております。
 続いて、7ページ目の第4表②を御覧ください。こちらは一般・パート別の賃金上昇率です。左端の産業・ランク計で、中段の一般労働者では1.5%、パートで見ると、こちらも1.5%となっております。
 8ページには、賃金引上げの実施時期別の事業所数の割合、9ページは事由別の賃金改定未実施事業所の割合を参考表として付けております。10ページには付表も付けておりますので、適宜御参照いただければと思います。資料№1の御説明は以上になります。
 続いて、資料№2を御覧ください。生活保護と最低賃金の比較についてです。まず1ページ目のグラフを御覧ください。右上の四角囲みに説明がありますが、破線の△が生活保護水準で、生活扶助基準の人口加重平均に住宅扶助の実績値を加えたものになります。実線の◇が最低賃金額で、法定労働時間働いた場合の手取額を示しております。注3)にあるとおり、住宅扶助の実績値は直近の令和元年度のものですが、それ以外は令和2年度のデータで比べております。令和2年度で比べると、全ての都道府県において最低賃金が生活保護水準を上回っております。
 続いて、2ページです。また注3)を御覧ください。先ほどのデータを最低賃金のデータだけ令和3年度に更新したものになります。もちろん最低賃金は引き上がっておりますので、こちらでも全ての都道府県において最低賃金が生活保護水準を上回っております。
 3ページです。47都道府県について最新の乖離額を示すとともに、その変動について要因分析をしたものになります。列のCという所を御覧ください。こちらは、2ページのグラフで示した乖離額を時間額で換算したものです。列のDの額が昨年度の目安小委で示した乖離額です。△(マイナス)は最低賃金額が生活保護水準を上回っているということを意味していて、列のEが昨年度から今年度分の乖離額の変動ですが、△の幅が大きくなっているということを示しております。要するに、最低賃金と生活保護水準の差が大きくなっているということを意味しております。右端の4つの列は、この最賃と生活保護の差が大きくなった要因をe①~e④に分けております。今回は、e③で生活扶助基準の見直しも僅かにありますが、ほとんどがe①の最低賃金の引上げが影響しております。資料№2の説明は以上となります。
 続いて、資料№3を御覧ください。影響率と未満率に関する資料になります。前回の第1回の目安小委で全国計の数字については御説明いたしました。今回はランク別、更には都道府県別の数値となります。1ページは最低賃金に関する基礎調査によるものなので、原則30人未満の小規模事業所が対象になっております。表は過去10年を示しておりますが、一番右の列が令和3年度となっていて、まず、未満率をランク別に見ると、Aが1.9%、Bが1.7%、Cが1.7%、Dが1.5%とAランクが最も高くなっております。影響率をランク別に見ると、Aが17.4%、Bが14.9%、Cが15.4%、Dが15.9%と、こちらもAランクが最も高くなっております。
 続いて、2ページ目です。1ページと同じく(注1)に書いてあるとおり、原則30人未満の小規模事業所を対象としております。そちらの都道府県別の影響率・未満率の数字になります。グラフですが、まず上の破線が影響率です。一番高いのが右から4番目の青森県、次いで高いのが左から2番目の神奈川県となっております。最も低いのが、真ん中辺りにある香川県ということになります。次に、下の実線が未満率で、一番高いのが左から3番目の大阪府、一番低いのが右のほうの鳥取県となっております。
 3ページ目です。2ページと同様のグラフを、今度は賃金構造基本統計調査に基づいて示したものです。こちらの調査は(注1)にあるとおり、5人以上の事業所が対象となります。上の破線が同じく影響率ですが、左から2番目の神奈川県が一番高く、次いで3つ隣の埼玉県が高くなっていて、真ん中辺りの香川県が一番低くなっております。次に、下の実線の未満率ですが、左から5番目の埼玉県が最も高く、右のほうの島根県が最も低くなっております。資料3の説明は以上となります。
 続いて、資料№4を御覧ください。こちらは、令和3年の賃金構造基本統計調査を基に、各都道府県別の賃金分布を示したものになります。一般・短時間、一般、短時間の順でそれぞれA、B、C、Dランクの総合指数順に都道府県を並べております。最低賃金の張り付き具合については、影響率と未満率と同じように、かなり異なった傾向が見られるかと思います。個別の御説明は割愛させていただきますが、適宜御参照いただければと思います。
 続いて、資料№5を御覧ください。最新の経済指標の動向です。こちらは、今年もですが、昨年までと同様に内閣府の月例経済報告の主要経済指標を提出させていただいております。こちらの主立った指標については、第1回の目安小委で御説明いたしましたので、個別の御説明は割愛させていただきますが、適宜御参照いただければと思います。
 続いて、参考資料№1を御覧ください。こちらは前回、委員の皆様から御要望のありました資料をまとめたものになります。まず1ページ目を御覧ください。中小企業の生産性向上等に係る支援策の実績になります。前回お出しした資料は、真ん中の欄にある令和3年度支給件数の実績のみを書いておりましたが、委員の皆様からの御要望を踏まえて、左側に「応募・申請件数」、右側に「執行額」を追記しております。基本的には御覧いただいたとおりとなりますが、1点、留意点として、こういった補助金や助成金は、応募・申請から支給まで時間が掛かってしまって、場合によっては年度をまたがるということもあります。例えば、令和2年度に申請があって支給が令和3年度になるという場合には、この資料では申請件数には入りませんが、実績には入ってくるというような形になります。まさに、その一番下の人材確保等支援助成金は申請件数と実績が逆転しておりますが、それはそういった理由になります。必ずしも、この実績が応募・申請数の内数というわけではないという点について御留意いただければと思います。
 続いて、2ページ目ですが、業務改善助成金の執行状況の資料になります。前年度あるいは翌年度への繰越しというようなところもありまして、かなり複雑な形になっておりますが、右から2番目の⑥の執行額を御覧ください。令和2年度は6.6億円だったところ、令和3年度は28.9億円に増加しております。執行率も89.8%となっております。業務改善助成金については、昨年の中賃の答申でも御要望を頂いたところです。その後、昨年8月と10月、更には、今年1月にも累次の拡充や要件緩和をしたところで、執行額が大幅に増加しております。
 続いて、3ページ目です。業務改善助成金の都道府県別の実績になります。令和2年度と3年度、どちらも付けておりますが、令和3年度はどの都道府県でも増加しております。令和3年度で最も多いのが大阪府で238件となっております。
 続いて、4ページから倒産や休廃業の要因についての資料になります。まず、4ページの左のグラフですが、倒産件数は、2021年は6,030件と57年ぶりの低水準となっております。一方で、右のグラフになりますが、コロナ関連破たんの月別の件数を見ると、こちらは増加傾向にあります。
 続いて、5ページ目です。原因別の倒産状況の推移になります。原因別に見ると、赤い枠で囲ってありますが、「販売不振」が多くを占めていて、令和3年でいうと6,030件中4,403件となっております。
 続いて、6ページです。こちらは、人手不足関連倒産の推移になります。上の四角囲みですが、人手不足関連倒産の倒産全体に占める割合は、2020年で大体6%程度となっております。その中で要因別に見ると、グラフで言うと緑色の所ですが、「後継者難型」の倒産が最も多くなっております。
 最後の7ページです。倒産に限らず、休廃業や解散に関する資料になります。上の四角囲みですが、2022年の中小企業白書によると、休廃業と解散件数の増加の背景には、経営者の高齢化が一因にあるとされております。実際、右下のグラフを見ていただくと、休廃業、解散企業の代表者の年齢を見てみると、直近の2021年では、黄色が70代で40%強、紫が80代で20%となっていて、70代以上で6割を超えている数字となっています。参考資料№1としては以上です。
 続いて、参考資料№2を御覧ください。こちらも前回の目安小委で御説明した「足下の経済状況等に関する補足資料」のうち、更新した部分のみを抜粋したものになります。ページ数は、前回の資料と便宜上は同じにしておりますが、1枚をめくって4ページを御覧ください。連合の春季賃上げ妥結状況の結果になります。前回は第6回の集計を出しましたが、第7回の最終集計結果が出ましたので更新しております。今年の賃上げ率については2.07%、中小で1.96%となっております。
 9ページです。ランク別の有効求人倍率の推移になります。今年5月の数値が新しく出ましたので更新をしております。4月と比べてみると、5月はどのランクでもやや改善というような形になっております。
 10ページです。ランク別の新規求人数の水準の推移です。Aランクについては、前回、今年4月時点ですと、100を少し超えているというように御説明をしたかと思いますが、5月は98.9と僅かに下回っていて、一進一退の状況と言えるかと思います。
 14ページです。日銀短観による業況判断DIです。グラフの青色の宿泊・飲食サービス業を見ると、今年3月に比べると、新しく出た6月は改善傾向が見られております。先行きも改善はしておりますが、引き続きマイナスとなっております。参考資料№2の説明は以上になります。
 最後になりますが、参考資料№3を御覧ください。こちらも、前回御説明した主要統計資料の更新部分のみを抜粋したものになります。ページ数は前回と同じものを使っています。12ページを御覧ください。春季賃上げの妥結状況について、連合の第7回の最終回答集計を更新した資料になります。
 続いて、14ページです。こちらも同様に、夏季賞与・一時金の妥結状況について、資料の上半分の連合の結果を更新したものになります。
 26ページですが、中小企業景況調査の業況判断DIについて、今年4月~6月の数値が出ておりますので、こちらも更新をしております。表の一番右端ですが、合計、あるいはどの産業でも1~3月に比べて改善が見られております。
 最後の27ページは、そちらをグラフ化したものになります。大変長くなりましたが、資料の説明としては以上となります。
 
○藤村委員長
 どうもありがとうございました。今、御説明いただきました資料の内容について、何か御質問あるいは次回以降提出を求める資料がありましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。大下委員どうぞ。
 
○大下委員
 御説明ありがとうございます。1点、追加資料をお願いしたいと思います。前回の目安小委員会の際に、消費者物価について詳しい推移のグラフを御用意いただいております。本日、日銀が足下の6月の企業物価指数を公表しており、前年同月比9.2%上昇となりました。今回の審議の中で物価をどう見るかというのは、非常に重要な視点かと思います。これは、生計費と同時に企業の支払能力にも大きな影響を与えているのではないかと思いますので、是非、企業物価について、前回の目安でお示しいただいた消費者物価の動向に近いような形で、より詳しい、過去からのトレンドが分かる資料を御用意いただけると幸いです。よろしくお願いいたします。
 
○藤村委員長
 今、大下委員から新たな資料の追加がありましたが、この点について何か御意見はありますでしょうか。仁平委員どうぞ。
 
○仁平委員
 大下委員からご発言があった視点も大事だと思っております。やはり、消費者物価を含めて働く者を取り巻く環境も厳しさが増しておりますし、企業の状況も含めて確認しておくことは大事なことだと思います。以上です。
 
○藤村委員長
 労働側も御異議がないようですので、事務局において資料を御用意いただき、次回、提出をお願いしたいと思います。そのほか御意見、御質問はありますでしょうか。よろしいですか。ほかになければ、資料№1に関して私から一言申し上げたいと思います。毎月勤労統計調査では、通常の公表値のほか1年前と当月の両方で該当している事業所に限定した「共通事業所集計」というものも公表されております。賃金改定状況調査の結果では、第4表の①、②で前年6月と今年6月の労働者全体の平均賃金を比較し、賃金上昇率を計算していますが、毎月勤労統計調査の「共通事業所集計」のように、前年6月と今年6月の両方で在籍している労働者に限定した賃金上昇率は計算できるのでしょうか。質問です。
 
○佐藤賃金課長
 事務局からお答えいたします。計算すること自体は可能です。
 
○藤村委員長
 もし、労使の皆さんに同意していただければ、次回の目安小委員会でそのような数値を、例えば、第4表③という形で作成していただき、資料を事務局に準備していただきたいと思いますがいかがでしょうか。よろしいですか。ありがとうございます。それでは、事務局におかれましては、この資料第4表③の準備をお願いいたします。配布資料に関する議論は以上です。
 では次に、第1回のときに委員の皆様にお願いしたとおり、目安についての基本的な考え方を表明いただきたいと思います。はじめに、労働者側委員からお願いいたします。どうぞ。
 
○仁平委員
 どうもありがとうございます。はじめに私から総括的に3点ほど申し上げ、引き続き、各委員から補強的に意見を申し上げたいと思っております。
 まず1点目、基本認識として述べておきたいと思っているのは、日本経済の自律的成長に向けては「人への投資」が不可欠であり、そのためには最賃の引き上げが必要であるということを、申し上げておきたいと思っております。コロナ禍は、日本経済はもとより私たちの暮らしや雇用に大きな影響を及ぼしてまいりました。中賃でもこの2年間、その影響を意識した審議を行ってきたわけですが、現在はワクチン接種の進展など相まって、社会活動の正常化も進み、政府の各種支援策等による下支えもあり、経済は回復基調にあると思っております。
 今年に入っては原材料価格の高騰等のリスクもあり、先行きは楽観視できないわけですが、直近の動きとしては、前回の小委員会でお示しいただいた資料等における各種指標にも表れているとおり、経済は回復基調にあるという認識でおります。今後、重要な点は、政策効果によって支えられて持ち直し局面にある経済回復を、より自律的な成長軌道に乗せていくことであると思っております。そのためには、経済社会の活力の原動力となる「人への投資」が必要であり、その重要な要素の1つが最賃の引き上げにほかならないということを強調したいと思います。
 2点目は、今年の春季生活闘争で労働組合は、経済・社会の活力の原動力となる「人への投資」を積極的に求める「未来づくり春闘」に取り組みました。中小企業を含めて経営側も総じてこれに応えていただき、これまで以上の賃上げの広がりと賃金の底上げを図ることができたと考えております。今後は、労使で答えを出して来た、賃上げの流れを最低賃金の引き上げにつなげ、社会全体の賃金の底上げを図ることが大事であると考えています。この点は後ほど、ほかの委員より補強させていただきたいと思います。
 加えて、最低賃金近傍で働く労働者の生活安定という視点からは、昨今の物価上昇の観点も忘れてはならないと思っております。昨今、急激な物価上昇に見舞われる中で、私たち労働者、とりわけ最低賃金近傍で働く者の生活は苦しくなっております。この点も今年度の目安を考える上で重要な視点であると考えております。
 以上の認識を踏まえ、最後に3点目として、本年度の目安の方向について、若干申し上げたいと思います。昨年までの審議でも労働側は、現在の最低賃金は絶対額として最低生計費をまかなう水準として十分ではないという課題を指摘した上で、具体的な目標として、2010年の雇用戦略対話で合意した平均1,000円を大事にしつつも、あくまでそれは通過点であり、連合としては「誰もが時給1,000円」に到達すべきであると主張してまいりました。これを踏まえ今年度は、「誰もが時給1,000円」への通過点として、平均1,000円への到達に向けた目安が必要であるということを強調したいと思います。
 それと、地域間格差の是正の必要性についてです。地域間格差の是正は、労働側として近年の目安審議で最もこだわってきた点です。ここ数年、地方における懸命な努力もあり、最高額と最低額の割合の改善も進んできましたが、依然として額差は大きいわけです。昨年度は全ランク同額の目安を示すこととなったわけですが、今年度もC、Dランクの底上げにつながる目安を示すべきであると考えております。
 以上が労働側としての基本的な考えです。今年度の審議において、労働側としては、公益の先生方の知見も伺いながら、現場の実態を熟知する労使で議論を尽して結論を得ることができるよう、努力してまいりたいと思います。この後、各委員から補強の意見を述べさせていただきたいと思います。引き続きでよろしいですか。
 
○藤村委員長
 どうぞ。
 
○永井委員
 私からは、最低賃金は生活できる水準にすべきという観点で意見を述べたいと思います。まず、最低生計費をまかなう水準への引き上げをという視点です。基本的な認識として、現在の地域別最低賃金は、絶対額として最低生計費をまかなう水準として十分ではないという点を強調したいと思います。毎年の審議でも指摘しておりますが、現在の最低賃金の加重平均930円という水準では、年間2,000時間働いても、いわゆるワーキングプアの水準、年収200万円程度にとどまっております。この水準は国際的に見ても低位であり、最低賃金と平均賃金の中央値比較では日本は約45%と、OECDの31か国中でも下から5番目、ワースト5位となっております。
 なお、生計費という観点でいえば、連合では「連合リビングウェイジ」という最低限必要な賃金水準を試算しており、昨年12月に最新の結果を公表いたしました。この数値は、例えば一日の内食費は朝、昼、夜、合わせて670円というもので、決して華美な支出を含んではいないものですが、それでも、最も低い県であっても賃金は時間単価で950円を上回らなければ、単身でも生活できないといった結果が出ております。現在の最低賃金の水準は、これをも下回っていることを踏まえれば、最低賃金は生存権を確保した上で労働の対価として相応しいナショナル・ミニマム水準へしっかり引き上げるべきだと考えます。
 2点目は、至近の物価上昇を考慮した引き上げが必要であるという視点で述べたいと思います。昨今の急激な物価上昇が、働く者の生活に非常に大きな影響を及ぼしていることは本年度の審議においては重要なポイントの1つであろうと思います。ここ数年、消費者物価上昇率はゼロ近傍で推移しておりましたが、昨年後半から上昇局面に入り、5月には「持ち家の帰属家賃を除く総合」で2.9%の上昇に達しております。特に注目すべきは、前回の目安小委員会の資料でも示されておりますとおり、基礎的支出項目や1か月に1回以上購入する品目の伸びが顕著であるということです。こうした生活必需品等の切り詰めることのできない支出項目の上昇は、最低賃金近傍で働く者の生活を圧迫していると言えます。実質賃金を維持しなければ働く者の生活が苦しくなるばかりです。最低賃金近傍で働く者の厳しい生活実態を直視し、生活水準の維持向上の観点からも消費者物価上昇率を考慮した引き上げが必要だと考えます。
 私からは以上です。
 
○伊藤委員
 私からは、三要素のうち労働者の賃金の観点で少し補強意見を述べたいと思います。
本年度の春季生活闘争では、厳しい環境の中でも労使が真摯な議論を積み重ねた結果、賃上げに取り組むことができたと思っております。本年の賃上げの状況については、本日の参考資料№2にも最新の数値として記載されておりますが、連合、経団連の最新の集計結果でも、水準としてはコロナ禍前に戻りつつ、回復しつつあるのではないかと思っております。
 私の出身組織である基幹労連は、鉄鋼・造船・非鉄の業種で働く者を中心に組織化しておりますが、本年の賃上げ結果については多くの組織で今世紀最大の上げ幅を記録しております。特筆すべきは、大手よりも中小企業で賃上げ額が高いということです。これは先行き不透明かつ目まぐるしく変化する経済環境の中で、やはり中小企業にとって、正に、人こそが重要な経営資源なのだということで、「人への投資」の必要性について労使の認識を深めることができた、こうした結果であると認識しております。
 使用者側の先生方が、かねてから重視されてきた賃金改定状況調査第4表の数字についても1.5%であり、先ほどご報告がありましたが過去最高の数字です。ただ、残念ながら最低賃金近傍で働く者の多くは労働組合に組織されておりませんので、そうした意味で労使交渉の機会がありません。したがいまして、自らの労働条件決定にはほとんど関与することができません。だからこそ、労働組合に組織された労働者が労使交渉を通じて獲得した賃上げの流れを最低賃金の引き上げにつなげ、最低賃金近傍で働く者の労働条件向上に波及させていくことが重要だと考えております。
 それから、賃金との関係の意味でいえば、外部労働市場の賃金との均衡についても着目したいと考えております。本年度から主要統計資料に含めていただいたパートタイム労働者の募集賃金からも、着実な上昇傾向を見て取ることができます。また、その実額についても、募集賃金の加減であったとしても、全都道府県で最低賃金を90円以上上回る水準となっております。これは労働力人口が減少する現下の環境において、企業がその存続・発展に向け、賃上げを通じた人材確保に重きを置いていることの表れではないかと考えております。特にこれについては、今回の春季生活闘争でも多くの労使で共有された認識であると考えております。こうした労働市場の実態も踏まえた上で、本年度の目安は検討すべきであることを指摘したいと思います。
 私からは以上です。
 
○小原委員
 私からは、仁平委員からありました、本年度もC、Dランクの底上げにつながる目安を示すべきと申し上げた点について、補足的に意見を申し述べたいと思います。
 1つ目は、額差拡大を中賃としても重く受け止めるべきだということです。第1回目安小委員会でお示しいただいた主要統計資料にもありましたが、時間額統一当初の平成14年度、2002年度に104円であった最高額と最低額の額差は、これまでに改善された年は数回ありますが、令和3年度、2021年度には221円にまで拡大したということです。言うまでもなく、中賃はこれまでも法の原則、目安制度を基にするとともに、それらの趣旨や経緯を踏まえ、時々の事情を総合的に勘案して審議を行ってきたと認識しております。しかしながら、結果として額差が拡大してきた、この事実を中賃としても重く受け止める必要があると考えております。
 2つ目は、額差改善につながる目安を示すべきだということです。かねてから労働側は、最低賃金を含む賃金の地域間格差が、隣県、大都市への労働力流出の一因になっていると指摘しております。超少子高齢、労働力人口減少という構造的な課題を抱える中、最低賃金の地域間額差をこれ以上放置すれば、労働力流出により、政府が「新しい資本主義」の象徴としている、地方・地域経済への悪影響が懸念されると考えております。
 第1回目安小委員会、そして今回の小委員会でも回覧された地方自治体・各団体からの要望でも地域間額差の是正を求める声が多くあったと認識しております。また、令和3年度、2021年度に目安を上回る引き上げが行われたのは7県ですが、目安を1~4円上回る引き上げが行われたのは全てDランク県でした。更には、令和元年度、2019年度に、目安を2円以上上回る引き上げが行われたのも全てDランク県で、2円が11県、3円が1県ありました。これは正に、人材確保に対する地方の危機感の表れであると考えております。中賃としても、こうした地方の努力や声に応えるべく、額差改善につながる目安を示すことが必要であると考えております。私からは以上です。
 
○藤村委員長
 労働者側委員は以上でよろしいですか。では続きまして、使用者側委員からお願いをしたいと思います。
 
○佐久間委員
 それでは私から、今年度の目安審議における使用者側の見解を申し上げます。少々お時間をいただければと存じます。
はじめに中小企業を取り巻く経営環境について申し上げます。日本銀行が四半期ごとに公表している日銀短観において、全規模・全産業の業況判断DIを時系列で見ますと、コロナ禍で大きく落ち込んだ後、令和2年9月期以降、経済活動が再開する中で回復基調にあります。しかし、直近の令和4年6月期においても+2で、コロナ前の令和元年12月期の+4を下回っています。さらに6月期のDIを企業規模別にみると、大企業は+11、中堅企業は+3、中小企業は-2と規模が小さいほど厳しい状況にあります。
 中小企業庁が6月29日に公表した、中小企業景況調査によれば、今年の4月から6月期の全産業の業況判断DIは、-14.4と前期に比べ上昇傾向にあるものの、依然としてマイナス値を示しており、製造業は-12.7、非製造業も-15.1となっています。特に小規模事業者については、-15.9と回復の度合いが鈍い状況が続いています。製造業では家具・装備品、繊維工業、食料品、パルプ・紙・紙加工品が、非製造業ではサービス業、小売業、卸売業、建設業が上昇してきているものの、電気・情報通信機械器具・電子部品、印刷、窯業・土石製品など4業種が低下してきています。
 また、全国中央会が毎月取りまとめております、中小企業月次景況調査や、全国中央会会員の全国団体260団体に対して実施した緊急調査においても、景況感、売上高等、多くの指標で改善の傾向がみられます。しかしながら、飲食・サービス業をはじめ、「未だ経営状況がコロナ感染症拡大以前まで改善していない」といった声や、「売上は改善してきているが、原材料費等の高騰分、円安による輸入価格の上昇分を販売価格に転嫁できず、収益を圧迫している」、「ウクライナ情勢により、輸入材の入荷の目処が立たず、受注が減少している」といった声が多く聞かれています。
 中小企業の経営を取り巻く環境は、コロナ感染症の影響による景気の低迷に加え、ロシアのウクライナ侵攻に対する金融制裁や、天然ガス、石油等のエネルギー問題などの国際経済情勢の変化の影響を大きく受け、先行きへの不安、懸念が高まり、予断を許さない状況にあります。更に経営の基盤である電力、石油などの料金引上げのおそれ、デジタル化に対応するための人材不足、原材料等の上昇価格を取引価格へ転嫁することが遅れているほか、同一労働同一賃金の適正な運用、過去最高となる最低賃金の大幅引上げ、社会保険料の適用範囲の拡大、雇用保険料の引上げなど、賃金を含めた制度改正による負担増により一段と厳しさを増してきており、景況感の回復基調にある業種、企業と、経営状況が厳しい業種、企業とに格差が生じている状況であることを、御認識いただきたいと思います。
 以上を踏まえ、今年度の目安審議における使用者側の基本的な考え方を申し上げたいと思います。こうした経営環境のもと、政府が進める「成長と分配の好循環」を実現するには、生産性向上や取引適正化を通じた、企業による自主的な賃上げの促進が不可欠であります。デジタル化など生産性向上に資する支援策の拡充や、「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」をはじめとして、取引する企業同士が交渉しやすい土壌を整備することで、多くの企業の自主的な賃上げにつながることが期待されます。
 2022年中小企業白書によれば、中小企業は、自己資本比率が39.2%と低く、財務構成の是正が必要であるにもかかわらず、労働分配率は80%を超えており、大幅な最低賃金の引上げは生産性向上を実現して賃上げ原資を確保する前に企業経営を直撃し、事業の存続を危うくさせます。そのため、賃上げや新たな人材の確保により、現状の人員の維持が精一杯の企業が多い状況です。
 近年の最低賃金については、「コロナ感染症の影響が著しく、現行水準を維持することが適当」とされた令和2年度を除き、平成28年度引上げ額25円から、令和3年度28円にかけて、過去最高額を更新する引上げが行われてきました。中小企業においては、経営実態と乖離した最低賃金の引上げが実施されてきた結果、この間の影響率は二桁を示し、最も高かった令和元年には、影響率は実に16.3%に達しました。昨年10月には、最低賃金が更に大幅に引き上げられたことから、影響率は高止まりをしており、直接的な影響を受ける企業が増加していることは確実です。
 最低賃金制度は、最低賃金法第1条に規定されているとおり、賃金の低廉な労働者に対するセーフティーネットであることから、賃金引上げや消費の拡大といった政策を目的としたものではありません。加えて、同法第9条には、地域別最低賃金の決定に当たっては、「労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力」を考慮して定めなければならないと明記されています。
 しかしながら、最低賃金は、平成28年度以降、令和2年度を除き、引上げ率3%台の大幅な引上げが続き、多くの中小企業から経営実態を十分に考慮した審議が行われていないとの声が聞かれています。最低賃金は、企業の経営状況の如何にかかわらず、全ての労働者にあまねく適用されます。「消費拡大→設備投資増→企業業績改善→そして、賃上げ」という経済の好循環を機能させるためには、賃上げの原資である生産性を向上させ、企業の経営を改善していくことが大前提です。そのためには、まず中小企業の生産性を高めるための施策を、引き続き予算化していただくことで、将来に向けた安定的かつ応分の事業の利用ができ、経営の安定と賃上げへの意欲を促すことが肝要です。
 本日、厚生労働省事務局より、追加で御提示されました参考資料1において、政府の補助金・助成金の応募件数、実績件数の記載がされています。そこからは、35万7,321者の応募があり、うち24万1,966者に対して補助・助成が行われ、中小企業庁予算からの施策だけで見ると、約2倍の倍率であると読み取ることができます。我が国は357万8,000者あまりの中小企業が存在しており、支援の行き届いていない中小企業が多く存在していることが分かります。
 全ての中小企業に補助・助成をすることが難しいことは承知していますが、生産性の向上や価格転嫁も含む取引環境の適正化への支援等によって、企業の付加価値を向上させ、自発的に賃金引上げの原資を確保できる環境を、まずもって整備すべきであり、そのためにも各種支援策の拡充・強化が急務であります。
 近年、政府方針に配慮した目安審議が求められた結果、公益委員見解として、根拠が必ずしも明確でない大幅な引上げ目安が提示されてきました。昨年度は、コロナ感染症の影響がまだまだ厳しい中、最低賃金の過去最高の大幅引上げ、ランク毎の引上げ額の統一といった決定がなされてきました。その結果、地方最低賃金審議会における審議の混乱や、目安金額決定に対する不信感の声が各地から聞こえてきました。消費者物価指数や賃金上昇率といった生計費、賃金、支払能力に関する各種指標を見ても、近年のように3%を超えるような引上げの根拠は見当たりません。
 我々使用者側は、中小企業の実態や地域経済の実情を踏まえ、納得感のある目安を提示できるよう審議を進めていくことが必須であると考えています。今年度の審議においては、公・労・使でともに確認した各種調査結果や指標、データに基づき、明確な根拠に基づいた目安を提示すべく、最低賃金法で定められている決定の原則に沿って、慎重の上にも慎重に審議を行い、納得感のある引上額を決定していくべき旨を改めて主張します。
 なお、目安に関する小委員会報告においては、今年、公・労・使で議論を尽くした後に提示する目安額については、あくまで目安として、地方最低賃金審議会を拘束する性質ではないことをしっかりと明記していただき、地方の審議会が当該地域の実態を踏まえた地域別最低賃金額を答申すること、及び、発効日についても、自主性を発揮できることを確認したいと思います。
 使用者側は、各種統計表等に基づく調査審議を行うべきこと、中小企業の賃金引上げの実態を示し、先の三要素を総合的に表している「賃金改定状況調査結果」の、とりわけ第4表を重視する旨を主張してきました。この点、令和2年度、3年度は、「コロナ感染症という未曾有の影響があり、もはや通常の経済活動ができる状態とは言えない、特殊な事情であったことから、第4表に重点を置いた議論ができなかった」ということであり、今後も第4表を重視した上で、他の指標も勘案して目安審議を進めていくという従来のスタンスに変わりはありません。
 特にコロナ禍において雇用を維持しながら、必死に経営を継続してきた企業の「通常の事業の賃金支払能力」を最も重視して審議していく必要があると考えます。使用者側は、第4表を重視した審議を求めており、今年度の審議におきましても重ねてこの点を強調します。
 最後に、今年度の目安については、各種指標が令和2年度以前の数字に近づいてきているとはいえ、引き続きコロナ感染症の影響を受けている中小企業、また、急激な原材料費の高騰や物価の上昇、円安の進行、海外情勢等の影響を受けている中小企業の経営状況を各種資料から的確に読み取り、明確な根拠に基づいた納得感のある目安額を提示できるよう、慎重な審議を行うべき旨を主張いたします。
 今年度の目安審議における使用者側の見解は以上でございますが、各団体を代表する私ども使用者側の委員から補完・補足的な意見を述べさせていただければと存じます。ありがとうございました。
 
○池田委員
 ただいま佐久間委員からも発言がございましたが、私も賃上げにあたりましてはその原資である収益を増大させるべく、生産性が向上して企業の経営が改善するということを前提に、消費拡大から設備投資増、企業業績改善、そして企業の自主的な賃上げという、経済の好循環を機能させていくことが重要と考えております。
 その実現に向けて、中小企業に対する一層の支援が求められますが、産業構造上の上流から下流まで、企業規模にかかわらず目詰まりせずにスムーズに循環していくことが必要であり、そのための更なる取組の充実が不可欠であろうと考えています。私からは以上です。
 
○新田委員
 私からは昨年度の目安審議の状況と結果に関連して、一言申し上げたいと思います。昨年度の審議においては先ほど藤村委員長からも御紹介があったとおり、異例の採決が行われました。その影響もあったと思いますが、昨年度の各地賃での決定状況を見ますと、使用者側全員反対が47件のうち38件という、過去最高になりました。一方で、全会一致47件のうち僅か3件と、こちらは過去最低になり、非常に厳しい審議が地賃で行われた状況がうかがい知れるところです。
 加えて、経団連の団体会員であります各地方の経営者協会にアンケートをしたところ、答申の結果に対する受け止めとして、不満が87.2%、これにやや不満の4.3%を加えると91.5%が、答申の結果に対して不満を持っているという、非常に厳しいアンケート結果となりました。
 こうしたことにならないように、先ほど藤村委員長から労使の協力を求められる御発言があり、加えて労働者側の仁平委員からも、労使で議論を尽くしてしっかりと結論を得ることが必要という発言がありました。私もこの点については全く異論ございません。今年は採決することなく目安を示すことができるように、使用者側としてもその点については協力をしていくことを、改めて表明させていただきたいと思います。是非、公益委員の先生方並びに労働者側の先生方の御協力を得ながら進めさせていただければと思いますので、よろしくお願いします。私からは以上です。
 
○大下委員
 新田委員がお話されたこととほぼ同義になりますが、私ども商工会議所の関係者で地方の審議会の委員を務めている方々や、それ以外の各地商工会議所の委員や会員企業の方々にも、依然として昨年の審議に対する不満、不信は非常に根強いものがあります。こうした状況を、なんとか今回の審議で払拭をしなければならないと思っています。そのためには我々使用者側も含めて、しっかりとした審議を尽くしていくということが非常に重要と思っています。
 冒頭の佐久間委員からの話にもありましたが、企業物価の上昇等も含めて中小・小規模事業者の経営実態を十分に考慮するとともに、諮問に際して厚生労働大臣からもお話がありましたとおり、法が定める三要素に関する各種指標データに基づく明確な根拠の基で、納得感のある水準を決定すべきであると考えます。なおかつその中で、どのデータをどのように中賃として受け止めて、どのようなロジックで最終的な目安額の決定に至ったのか、地賃の審議の指針となるように示していくべきだと思います。なおかつ報道等で結果を知らされる中小企業の経営者や働く人たちも、納得感を持って受け止められるように、最終的な金額だけではなく、労使も含めてしっかりとした審議の結果を、地方あるいは社会に示していくということが、今回の審議に求められるのではないかと思っています。使用者側の一人として、しっかりとその役割を果たしていきたいと思います。私からは以上です。
 
○藤村委員長
 どうもありがとうございました。使用者側よろしいでしょうか。ただいま双方御主張いただきましたが、質問があればここでお願いしたいと思います。よろしいですか。お伺いしている限り、労使の主張にはかなり開きがありまして、このままこの形で続けていっても、なかなか一致点は見出しにくいだろうと思います。そこで公労、公使、個別に主張を伺いながら開きを詰めていきたいと思いますが、そういう方式でよろしいでしょうか。
 
(異議なし)
 
○藤村委員長
 分かりました。それでは公労会議から始めたいと思いますので、事務局から連絡事項をお願いします。
 
○尾崎賃金課長補佐
 それではまず公労会議から行うということですので、使用者委員の皆様は控室のほうに御案内させていただきます。
 
(使用者側退席)
 
〈第2回全体会議〉
○藤村委員長
 ただいまから第2回目の全体会議の開催をいたします。本日は本年度の目安取りまとめに向けて、労使双方から基本的な考えをお出しいただき、それに基づいて議論をしていただきました。その結果、双方の御主張がかなり明確になってきたと考えますが、まだまだ主張の隔たりは大きなものがあると考えております。そこで次回の目安小委員会において更なる御議論を行っていただき、目安の取りまとめに向けて努力をしていきたいと思います。それでは次回の日程と会場について事務局から連絡をお願いいたします。
 
○尾崎賃金課長補佐
 事務局でございます。次回の日程と場所については、追って御連絡いたします。
 
○藤村委員長
 それでは本日の小委員会はこれをもちまして終了といたします。どうもお疲れさまでした。