第15回 社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会 議事録

日時

令和4年6月17日(金) 14:30~17:00

場所

web会議
(AP虎ノ門:東京都港区西新橋1丁目6-15 NSC虎ノ門ビル11F)

出席者(五十音順)

議題

(1)生活困窮者に対する自立相談支援のあり方について
(2)被保護者に対する自立支援のあり方について
(3)「今後の福祉事務所における生活保護業務の業務負担軽減に関する調査研究」を踏まえた対応について

議事

(議事録)

○進士室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第15回「社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会」を開催いたします。
 委員の皆様方におかれましては、御多忙の折、御出席をいただきまして誠にありがとうございます。
 本日の委員の皆様の出欠状況でございますが、奥田委員、堀委員、松本委員及び宮脇委員は遅れて出席される予定です。
 また、駒村委員、松本委員及び宮本委員については途中退席される予定とお伺いしております。
 また、本日は内堀委員の代理として、福島県保健福祉部生活福祉担当次長の和田参考人、大森委員の代理として岡山市保健福祉局障害・生活・福祉部生活保護・自立支援課長の出原参考人、岡﨑委員の代理として高知市福祉事務所長の入木参考人、佐保委員の代理として日本労働組合総連合会生活福祉局長の小林参考人にお越しいただいております。
 また、被保護者及び生活困窮者の自立支援に関する議論の参考人といたしまして、釧路社会的企業創造協議会代表理事の櫛部武俊様にお越しいただいております。
 和田参考人、出原参考人、入木参考人、小林参考人、櫛部参考人の御出席につき、部会の御承認をいただければと思いますが、いかがでございましょうか。
(首肯する委員あり)
○進士室長 異議なしとさせていただきます。ありがとうございます。
 出席委員につきましては22名全員出席となってございまして、社会保障審議令に定める定足数の3分の1を満たしておりますので開催の要件を満たしております。
続きまして、本部会の取扱いについて御説明いたします。本部会の議事については公開となってございますが、今般の新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、会場での傍聴は報道機関の方のみとさせていただき、その他、傍聴希望者向けにユーチューブでライブ配信をしております。
 本部会では、これ以後の録音・録画を禁止させていただきますので、傍聴されている方はくれぐれも御注意ください。
 会場の報道関係者の皆様方におかれましては、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。
(カメラ退出)
○進士室長 それでは、これからの議事運営につきましては菊池部会長によろしくお願い申し上げます。
○菊池部会長 皆様、お忙しい中、本日も御出席賜りまして誠にありがとうございます。
 それでは、早速議事に入らせていただきます。
 本日の議事は、3つです。1つ目が「生活困窮者に対する自立相談支援のあり方について」、2つ目が「被保護者に対する自立支援のあり方について」、そして3つ目が「「今後の福祉事務所における生活保護業務の業務負担軽減に関する調査研究」を踏まえた対応について」、以上3つでございます。
 進め方としましては、まず事務局から議事の3つにつきまして、まとめて資料に沿って御説明をいただきます。次に、櫛部参考人からの御発表をいただきたいと思います。その後、まず櫛部参考人への質疑及び意見交換の時間を設けさせていただき、その後、議事の(1)から(3)についての質疑、意見交換の時間を設けさせていただきたいと思います。
 なお、本日は新保委員、奥田委員から資料の御提出がございましたので、資料5として配付をさせていただいております。
 それでは、まず事務局から御説明をお願いいたします。
○唐木室長 生活困窮者自立支援室長の唐木でございます。
 まず、資料1につきまして私から説明をさせていただきます。
 1つ目は「自立相談支援事業の機能強化」についてです。時間の関係もありますので、適宜割愛しながら説明をさせていただきます。
 2ページ目につきましては自立相談支援事業の概要について、3ページ目につきましては自立相談支援事業における新規相談受付等の実績をおつけしております。
 4ページ目を御覧ください。「自立相談支援事業の運営状況」ですが、直営が3割、6割は委託により運営されていまして、委託は社会福祉協議会が8割となっております。
 5ページ目をちょっと飛ばしまして、6ページ目を御覧ください。
 「支援会議・支援調整会議について」の資料でございます。関係機関のはざまで適切な支援が行われないというような事例の防止のために、平成30年の改正で「支援会議」が創設されました。
 一方、支援調整会議は支援プランの決定等を行い、継続的な支援の目的をするものでありまして、目的や対象者の範囲が異なります。そちらのほうについての整理を6ページ目につけさせていただいております。
 7ページ目を御覧ください。支援会議の設置状況ですが、左側のグラフ、約4割の自治体が設置済み、設置予定ありというような状況になっておりまして、効果としては関係機関間での情報共有や役割分担促進が挙げられてございます。
 8ページ目を御覧ください。熊本県玉名市での電気事業者との連携協定についての例というのをつけさせていただいておりまして、分野横断的な対応を「支援会議」を活用して行うことで包括的な支援の実施や地域課題の共有につなげている事例として挙げさせていただいております。
 9ページを御覧ください。こちらは、コロナ禍において対応しておりますセーフティーネット機能強化交付金の概要についてでございます。⑪のところが赤くなっておりますけれども、こちらは令和4年度の予備費におきましてプラットフォーム整備における10分の10の国負担分の措置というのを新たに追加させていただいております。
 その事業を活用して各地で取組を進めております。10ページ目はICT活用を行っている鹿児島県の例、11ページ目は外国人対応を行っている各地の例、12ページ目はプラットフォーム整備を行っております茨城県古河市の例をつけさせていただいております。
 2番、「関係機関との連携」についての御説明に移ります。
 14ページ目は、他制度との連携についての概要になっております。
 15ページ目ですけれども、自立相談支援事業におきましては地域のボランティアの見守り活動や居場所の提供など、インフォーマルなサービスも含めまして地域全体として生活困窮者を支援するということが重要とされているという根拠になっております。
 16ページ目は、困窮法の主な対象者の図というのをつけておりますので御覧ください。
 17ページ目も飛ばしまして18ページですが、コロナの影響によりまして新たに連携を強化した機関・分野についてです。行政機関におきましては、生活保護・福祉事務所、ハローワーク等が大きなパーセンテージにありますけれども、医療関係、年金関係、住宅関係、高齢者関係等々、そういったところが行政機関の中での連携先として挙げられております。
 続きまして19ページ、こちらは行政機関以外の部分ですけれども、社協が大きなパーセンテージを占めておりますが、33番の法曹関係の団体や、46番のフードバンク関係の団体、また45番の民生委員・児童委員というのも挙げられているところでございます。
 20ページは「自立相談支援機関とフードバンクとの連携状況」ですけれども、フードバンクから提供される食品の受け取り先として「生活困窮者支援団体」というのは約7割ということになっております。
 21ページを飛ばしまして22ページでございますが、こちらには社会福祉法人の「地域における公益的な取組」の実践事例をおつけしております。コロナ禍における食事の提供支援であったり、雇用情勢の悪化に伴い、生活困窮者に対する相談支援の実地等々の様々な活動を行っていただいているところでございます。
 続きまして3番、「委託の在り方を含む支援体制の確保」に移ります。
 24ページは「自立相談支援事業の支援員の配置状況」になっております。制度の施行当初から支援員の推移を見ますと、平成30年の見直し前後では支援員の人数はおおむね横ばいとなっておりましたが、コロナの影響が続いた令和2年度の各種支援員の人数というのは4種類見ていただいても増加をしているところでございます。
また、足下の専任の状況を見ますと、3職種につきましては約4、5割という形でございます。また、事務員の専任の割合というのは上昇傾向になっております。
 続きまして、25ページを御覧ください。こちらは「人口規模別の支援員の推移・支援員の経験年数」でございます。人口10万人当たりの支援員数の全体を見ますと、全体的におおむね増加傾向で推移しているというような状況になっております。
また、経験年数を見ますと、主任相談支援員では「5年以上」が最も高く、相談支援員、就労支援員では「1年以上3年未満」の割合が高くなっております。
 26ページは、委託先の選定に当たって出している自治体事務マニュアルを参考までにおつけしております。
27ページを御覧ください。こちらは、自立相談支援事業におけます委託先の選定状況になっておりますが、企画提案を考慮して調達している割合というのは約3割でございます。右肩のグラフを見ていただきますと、企画提案、質を評価して委託しているところのほうが、していないそれ以外のところに比べても新規相談件数やプランの作成件数というのは上がっているということになっております。
 28ページですけれども、こちらは法改正やコロナの影響を踏まえた人員配置の取組状況です。コロナ禍におきましては、人員配置の取組状況で具体的に増員を行ったという回答をした自治体が多くなっております。
 29ページはICTを活用したオンラインですけれども、ICTによるオンライン相談の割合は約2割にとどまっておりまして、利用しなかった理由というのは設備や機器がなかったということが最も高くなっております。
 30ページは参考ですけれども、「令和4年度の社会福祉推進事業」として自立相談支援事業における体制に関するもの、社協のオンライン化に関するもの、新たな相談者層に関するものや、あとは中間支援組織に関する調査研究というのを行う予定になってございます。
 31ページ以降が「特にご議論いただきたい点」ということで、32ページに明記をしております。
 「自立相談支援事業の機能強化・関係機関との連携」につきましては、新たな相談者層に対して他の機関との連携も含めて、その支援の在り方というのをどういうふうに考えるかという点、支援会議の取組を推進するための方策をどのように考えるかという点、自立相談支援事業におけるこうした地域との社会資源の開拓についてどのように考えるかという点、オンラインツールやSNSなどのICT活用の実態を把握した上で安全性を確保しつつ利用促進を図ることについてどのように考えるかという点を挙げております。
 「自立相談支援機関の支援体制の確保」につきましては、適切な人員体制についてどのように考えるかという点、または委託先の選定に当たってはどのような事項を考慮すべきかといった点を挙げさせていただいております。
 資料1の説明は以上です。
○進士室長 続きまして、資料2の「被保護者に対する自立支援のあり方について」、保護事業室長の進士から御説明をいたします。
 まず資料ですけれども、「自立支援プログラム」についてということで2ページを御覧ください。「生活保護受給者に対する「自立支援プログラム」について」ということで、中ほどを御覧いただければと思いますが、平成17年度より自立支援プログラムを導入させていただきました。
 その趣旨は1つ目の○ですけれども、経済的給付に加え、福祉事務所が組織的に被保護者の自立支援を行う制度への転換を目的として創設をされたものでございます。
 おめくりいただきまして次のページでございますけれども、平成16年12月の生活保護制度の在り方に関する専門委員会の報告書の抜粋でございます。これは先ほど申し上げた自立支援プログラムの契機となっているものでございまして、まず3ページにおきましては下線を引いていますけれども、自立支援の中に経済的自立ということだけではなく、日常生活自立、社会生活自立も含むということが明示されているということでございます。
 次のページを御覧ください。こちらも同じ報告書でございますけれども、上のほうで(1)「多様な対応」、(2)「早期の対応」、それから(3)「システム的な対応」の3点を可能とし、効果的な自立就労支援策を実施する制度とすることが必要だという考え方の下に自立支援プログラムを作成するということになってございます。
 次をおめくりください。こちらは平成22年7月に生活保護受給者の社会的居場所づくりと新しい公共に関する研究会の報告書というものを出していまして、そちらの抜粋をつけていますが、リード文を御覧いただければと思います。自立の3つの概念の関係性、「働くこと」の意味、当事者を尊重した支援の在り方等が明示されております。
 続きまして6ページを御覧ください。「自立支援プログラムの導入とその後の経緯等」ということで、先ほど御紹介した16年12月の専門委員会の報告書を受け、自立支援プログラムの導入が提言をされ、それを受けて17年3月に自立支援プログラムの基本方針、それから手引というものが通知、事務連絡においてお示しされています。
 その後、25年以降書いてあることにつきましては、自立支援プログラムの取組というものが一部事業化されてきているということでございまして、順に申し上げますと、25年3月のところからですけれども、生活保護受給者等就労自立促進事業、25年12月につきましては被保護者就労支援事業の法定化、それから次ですけれども、被保護者就労準備支援事業の予算化、続いて被保護者家計改善支援事業の予算事業化、最後は30年6月ですけれども、被保護者健康管理支援事業の創設ということでございます。
 7ページを御覧ください。ここから基本方針の中身について少しだけ触れていきますけれども、まず導入の趣旨ということで、上の箱を御覧いただければと思いますが、被保護者の世帯が抱えている問題は多様、社会的絆が希薄、保護の受給期間が長期化、保護の実施機関において十分な支援が行われていない状況というものを踏まえまして組織的に自立を支援する制度の転換を目的としてなされたということです。
 それから、策定の流れということで、①はまず管内の被保護者の状況の把握、②として個別支援プログラムを整備し、最後に③として支援の手順等を策定していくという流れになってございます。
 次のスライドを御覧ください。(自立の概念)ということでございまして、リード文を御覧いただきますと、自立支援プログラムは就労による経済的自立のためのプログラムのみならず、「日常生活自立」や「社会生活自立」を目指すプログラムを幅広く用意し、多様な課題に対応ということで設けられております。
 次を御覧ください。(個別支援プログラムの整備)ということで、下に9つの例示を載せておりますけれども、こちらは平成17年当時に国において類型化をしてあくまでも参考としてお示ししていた例になります。
 次のスライドを御覧ください。(自立支援プログラムによる支援の手順)ということでございまして、こちらも①から③で矢印が流れていますけれども、被保護者の本人による自立目標の設定ということで、右のほうに枠囲いで書いていますが、自立計画書なども作成してもらうということがありますし、さらにその上で個別支援プログラムを選定し、③で必要に応じて目標ですとかプログラムの見直しをしていくという流れになっています。
 なお、リード文の2つ目にございますけれども、今、申し上げた自立支援計画書についてはあくまでも実施機関が必要と認める場合ということでございまして、これを省略することは可能という運用になっています。
次のスライドです。次に(実施体制の整備)ということでございまして、リード文を御覧いただきます。自立支援プログラムの策定・実施に当たって中ほどにある3つのことをお願いしております。
 1つは左側からですけれども、「関係機関等の連携・協力」ということで、これは下の箱で想定される主な関係機関の例ということで明示をさせていただいております。さらに真ん中の箱ですけれども、「福祉事務所内での役割分担の明確化・組織的対応」、それから最後に右ですが、「都道府県等による実施機関等の支援」ということをお願いしているということです。
 次のスライドですけれども、自立支援プログラムの策定率ということで、リード文の1つ目に書いてありますが、令和2年度ベースで言うと98.9%ということでございます。
 それから、中ほどのグラフを見ていただきますと、左が策定自治体数、右が策定プログラム数となっていますが、経済的自立に関するものに比べて日常生活自立・社会生活自立に関するプログラムというものが相対的に少ないということでございます。
 13ページは省略いたします。
 14ページから19ページまでは、今、申し上げた個別支援プログラムのいろいろな自治体の事例というものをそれぞれ3つずつ付けております。これは、後ほど御参照いただければと思います。
 続きまして、20ページを御覧ください。「釧路市における自立支援プログラムの取組」ということで、リード文を御覧いただければと思うのですが、釧路市さんでは経済的自立を目的とした就労支援のみならず、日常生活上の課題の解消、あるいはその社会とのつながりを回復し、地域社会の一員として生活していくための支援など、個々の状況に応じた個別支援プログラムを整備し、自立を促進されているということです。
 具体的には中ほどにプログラムが3段書いてありますけれども、一番上の段のところがいわゆる経済的自立に関するようなものでございまして、さらに緑で塗り潰してある部分が細かいプログラムということになっていて、ここもインターンシップ事業、あるいは目的意識を持った求職活動などを実施されています。
 それから、中ほどの段が就労関係でもどちらかというと日常生活自立、社会生活自立に関するものですけれども、ボランティアプログラムとか体験プログラムというところです。ここについてはリード文の2つ目に書いていますが、地域の様々な事業者と協力をして中間的就労、あるいは有償・無償のボランティア活動などを行っています。
 一番下の段はそれ以外ということになりますが、多重債務の整理、DV被害者の安全確保といったいろんな資源を使って様々な属性に対して多様なプログラムを用意しているということです。
 それから、一番下の箱に参加者の声というものを載せております。左下をまず御覧いただければと思うのですけれども、「自分は年齢が高くて仕事は見つかるはずがないと思っていたが、就労支援で仕事に就くことができた。もう一度頑張ってみようと思う。」
それから、右の2つ目ですけれども、「週2回のボランティアのおかげで、就職することができた。社会復帰する第一歩だと思う。」
 つまり、リード文の2つ目の最後のほうに書いてありますけれども、受給者の自尊感情の回復といったことが見られるということでございます。
 21ページが釧路の自立支援プログラムの変換ということで、年々、最初の頃は経済的自立に関するプログラムということを行ってきたのですけれども、その後、就労体験ボランティアプログラム等、社会生活自立、日常生活自立に関するプログラムをどんどん拡大をさせていったということでございます。
 22ページについては、先ほど経緯で紹介をした通称ナビ事業といいますけれども、その概要。
 それから、次のスライドについては被保護者就労支援事業の概要。
 24ページにつきましては、被保護者就労準備支援事業の概要。
 25のページにつきましては、被保護者家計改善支援事業の概要。
 26ページにつきましては、被保護者健康管理支援事業の概要ということなので御参照いただければと思います。
 27ページを御覧ください。「個別支援プログラム実施事業」ということで、今、申し上げた個別に事業化されている取組以外の取組を支援するためにこの事業を実施しています。補助割合は2分の1なのですけれども、具体的には事業内容、左のほうの具体例のところを御覧いただければと思いますが、ここで金銭管理支援、債務整理援助、高齢者に対する訪問、見守り、あるいは中高生や養育者に対する支援といった多様なメニューが行われているということです。
 続きまして「ケースワーカーの役割及び関係機関との連携について」でございます。
 29ページですけれども、「ケースワーカーの職務等について」ということでリード文を御覧いただければと思います。「新福祉事務所運営指針」ということで1971年のものですけれども、この中で「保護の要否および程度を判定するため調査、決定手続、被保護者の生活指導等きわめて重要な役割をになうもの」というふうにされているのと、あとは「福祉事務所における活動の中核体」とされています。
 その職務内容としては2つに大別されますが、一つは「保護の要否確認と措置決定に関すること」と「ケース処遇に関すること」ということでございます。
 おめくりいただいて、今、申し上げたケース処遇に関しまして、この運営指針においてはケース処遇の方針を立てる際に「実施機関として提供できる給付」のみならず「その他サービスの内容、方法、時期等について具体的な方針を決定」するというふうにされています。
 おめくりください。今、その他サービスというふうに申し上げましたけれども、その際、関係機関との連携ということが重要になりますが、関係機関との連携についてはリード文を御覧いただければと思います。平成15年に「生活保護制度における福祉事務所と民生委員等の関係機関との連携の在り方について」ということで、このように下に書いてあるような形でお示しをしております。
さらに32ページを御覧ください。「生活保護における相談対応の手引き」ということで職員向けの手引ということなのですが、リード文の2つ目を御覧いただいて、この中で多様な関係機関との良好な関係づくりがよりよい援助を行っていく上で不可欠なものとして、いつでも相談し、協働できる環境を整備する必要性等を示しております。
 続いて、次のスライドです。先ほどから多様な課題というふうに申し上げていますけれども、直近の調査結果を拾っています。左のほうのグラフを御覧いただければと思うのですが、コロナの影響により、生保の申請につながった代表的なケースの特徴ということで、上から順にいくと、病気、不安定就労というところが割合を占めている。そういったある種の特徴、課題というものを複数抱えているかどうかというのを見たのが右のグラフになりますけれども、複数の課題、2個以上抱えている世帯が半数を超えているという状況です。
 次のスライドを御覧ください。「関係機関との連携にあたっての課題」ということで29年調査をお示ししていますが、下のグラフを御覧いただければと思いますが、「業務範囲外のこともケースワーカーに押し付けられること」というのが最も多い状況になっています。
 次のスライドを御覧ください。実務者協議におけるこれまでの議論の整理の抜粋でございます。下線のところを御覧いただければと思いますが、「基本的な方向」として被保護者の抱える課題が多様化する中で、ケースワーカーを中心に包括的な自立支援を行っていくため、複数の関係機関による支援を必要とする被保護者について、ケースワーカーと各事業の実施者、関係機関とが自立支援に係る計画の策定等を通じて役割分担を明確にし、緊密に連携を取りながら支援に取り組んでいく仕組みや、困窮者支援制度とのより一層の連携のための方策が必要とされています。
 36ページが、その実務者協議において「具体的な議論」ということでまとめているものですけれども、1つ目のポツを御覧いただきまして、ケースワーカーにはアセスメントを行い、必要な社会資源を組み合わせて支援していくコーディネーターのような役割が求められている。
 上から3つ目を御覧いただいて、多様な課題を抱える被保護者への対応に係る理念として、自立支援プログラムにおけるこの3つの自立の考え方というものを法律等において位置づけることが考えられる。
 それから、(関係機関との連携)の1つ目のポツですけれども、関係機関から被保護者への支援はケースワーカーの役割と認識され、関係機関の対応が消極的となり、連携がうまくいかないという課題がある。
 それから、次のポツですけれども、関係機関との連携のためには、例えば関係機関の役割を確認するため、会議体において調整を行った上で、自立支援に向けた計画を作成する仕組みを設けるなど、何らかの形での仕掛けづくりをする必要があるのではないかということでございます。
 それらを受けて、最後のスライドで「特に御議論いただきたい事項」でございます。
 (自立支援プログラムについて)ということで1つ目の○ですけれども、自立支援プログラムは平成17年導入以降、推進をしてきたということなのですが、ただ、一方で個別支援プログラムにより行われてきた取組というのは個別に事業化をされてきている中で、自立支援プログラムによる取組をどのように評価し、課題をどう考えるか。
 次の○ですけれども、自立支援プログラムにおいて日常生活自立・社会生活自立の観点から、ボランティア、就労体験、日常生活意欲の向上など、きめ細かな取組や、高齢者、ひとり親、中高生・養育者といった属性ごとの課題に応じた多様な取組が行われている自治体もある中で、地域の実情に応じてきめ細かな取組や多様な取組を一層進めることに当たっての課題をどう考えるか。
 次は(ケースワーカーの役割について)ですけれども、1つ目の○です。課題が多様化する中で包括的な支援が求められるが、改めてケースワーカーの役割をどう考えるか。
 その下の○ですけれども、自立支援プログラムについてこの3つの自立の概念を掲げているが、多様な課題を抱える被保護者に対する支援を行う上で、ケースワーカーがこれらの自立の概念に基づき支援を行っていくことを徹底するためにどのようなことが考えられるか。
 最後は(関係機関との連携について)ですけれども、多様な課題を抱える被保護者への支援に当たって不可欠である一方、課題等がある状況も踏まえて、その改善・強化をしていくために福祉事務所と関係機関との役割を明確にすること、それから情報共有を適切に進めていくことについてどう考えるか。
 最後でございますけれども、そのための方策について、関係機関との間で支援の調整を行うための枠組み、あるいは自立支援を計画的に行うための方策など、制度上どのようなことが考えられるかということでございます。 
以上でございます。
○池上課長 続きまして、資料3について保護課長、池上のほうから御説明いたします。
 こちらは、前回の部会で御報告した調査研究を踏まえた対応について御議論いただきたいと思って御用意させていただいたものでございます。
 まず1ページには、この検討の契機となった地方からの提案等に関する対応方針の抜粋を掲げさせていただいております。
 2ページからは前回お出しした資料と重なっておりますけれども、ケースワーカーの業務負担軽減に関する調査研究ということで、補助事業としてPwCコンサルティングのほうで実施をしていただきました。検討に当たりましては2ページの下のほうにございますけれども、駒村先生をはじめ有識者の先生方、それから自治体の方々にも入っていただいて検討されたものでございます。
 3ページ、4ページ、5ページがその報告の概要となっております。
 4ページの冒頭のところで書いてありますけれども、今回この検討に当たりましてはケースワーカーの物理的な負担の軽減よりもケースワークに必要な専門的な知識を外部から取り入れ、ケースワーカーが自信を持って安心して業務に当たり、質の高いケースワークにつなげることを目指すべきであるということをお示しいただいております。
 その後、4ページの下のほうで業務負担軽減の全体像を議論いただいています。この中では、今回の直接の御提案とは違うのですけれども、先ほどの資料2でも課題になっておりましたような関係機関との連携についての問題意識もお示しいただいたところでございます。
 その上で5ページですけれども、「外部委託の活用の検討」ということで書いていただいています。赤枠で囲ってある部分が、ケースワーカーの定期訪問に関する業務についての弾力化の御提言でございます。具体的な内容については、この後ろの資料で改めて御説明させていただきます。
 6ページは、これに関する国と地方の実務者協議における議論を御紹介させていただいています。
 7ページの資料を御覧ください。「生活保護における家庭訪問の基準について」ということで資料を御用意しております。報告書では先ほど申し上げたように、関係機関との連携を進めるための会議体についてなど、引き続きこの部会で御議論いただきたい内容も含まれているところでございますけれども、家庭訪問の基準の弾力化について具体的な提案をいただいておりますので、まずはこの点について対応したいと考えております。
 その関係で、家庭訪問の基準について今どうなっているかというのをまとめたのが7ページの資料でございます。上の囲みですけれども、家庭訪問の基準としては世帯の状況に応じて必要な回数を訪問することとし、少なくとも1年に2回以上訪問することとなっています。具体的には下の表にありますように、課題を大きく抱える方についてはより多くの頻度で訪問することとなっているところでございます。
 一方で、個別支援プログラムを活用している方については連絡調整によって3回目以上の家庭訪問とみなすことができる。それから、個別支援プログラムを活用している方のうち、一定の要件を満たす高齢者世帯については上記の連絡等を2回目以上の家庭訪問とみなすことができるとなっているところでございます。
 8ページを御覧ください。こちらが、報告書を受けての「家庭訪問の方法に関する取扱いの見直し」の案でございます。従来の取扱いが左側にありまして、見直し案が右側にあります。
 見直し案、右上のところですけれども、従来3回目以上の家庭訪問とみなすことができる場合として個別支援プログラムの関係機関との連絡が入っておりましたが、それと同様な取扱いをするものとして②支援関係者が参集する会議体にケースワーカーが参加する場合、その場での情報共有、それから③は被保護者就労支援事業、被保護者健康管理支援事業を実施する関係機関等との情報共有を入れてはいかがかと考えております。
 それから、下の段ですけれども、2回目以上の家庭訪問とみなすことができる場合、これは高齢者世帯についての取扱いですが、現在は(ア)と(イ)両方の要件を満たす場合の高齢者世帯についてそのような取扱いとなっておりますが、ここについては(ア)または(イ)のいずれかを満たす高齢者世帯について2回目以上の家庭訪問とみなすことができる場合としてはどうかという提案でございます。この見直しは、調査研究事業の研究会で御了承いただいた報告書どおりの内容となってございます。
 それから、弾力的な運用が認められるという基準をお示しはするのですけれども、世帯の状況に応じて必要があれば家庭訪問をしていただくという点についてはこれまでと変わるものではない取扱いにしたいと考えております。
 御説明は以上でございます。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、被保護者及び生活困窮者の自立支援に関して充実した意見交換ができますよう、釧路市生活保護担当課において自立支援プログラムの企画立案及び実施に携わられ、現在は生活困窮者支援に取り組まれております櫛部参考人より御発表いただきます。
 櫛部参考人には、20分程度で自立支援プログラムについて、その歴史的経緯も含め、これまでの取組における評価、今後の課題などについてお話しいただければと存じます。
 それでは、櫛部参考人、大変御無沙汰しております。よろしくお願いいたします。
○櫛部参考人 皆さん、どうもこんにちは。北海道釧路市の一般社団法人釧路社会的企業創造協議会の櫛部と申します。
 私は生活困窮の釧路市釧路管内の相談センター等もやっておりまして、70は超えましたけれども、頑張って、宮本先生が老兵は死なないんだというお話をされましたので、もうちょっと頑張っていきたいなと思っております。
 それでは、画面の共有をさせていただきたいと思います。これに基づいてお話をしていきたいと思います。
 私の町、北海道釧路市は昭和の時代、水産、石炭、紙パルプで発展し、22万人が暮らしておりました。これは、左側の上の図になります。資源経済が衰退し、人口は合併しても現在は16万人、衰退して減少しております。生活保護を受給する方の割合が1997年、平成9年から右肩上がりに増えまして、2012年、平成24年に55.13‰になりました。ちょっと見づらいですが、この上の一番高いところが一番増えていた時期です。
 そうした中で、希望を持って生きるために取り組んできたのが常識を覆す生活保護世帯の自立を支える取組だというふうに考えております。長らく自立といえば就労して保護をやめることと、すなわち稼働能力のオール・オア・ナッシングが問われる自立だったので、ワーカーも受給者も息苦しかったということになります。
 2003年、右側の上のほうになりますが、全体構図にあるようにモデル事業を受けましてこういう枠組みをつくりました。自立支援のモデルをやるときに、外部の委員に支援策を検討していただくというものを立ち上げました。
 当初、私ども実施機関がつくった案というのは、ハローワークへの誘導などのテクニカルな案だったんですね。
 ところが、委員の皆さんから、市民の委員の皆さんからは、エンパワーメントの視点がない。就労ありきでは参加しないのではないかという意見をいただきまして取組の支援策を見直しまして高齢者の御機嫌うかがい、介護利用者さんの話し相手に母子家庭の保護世帯のお母さんが相手になるというプログラムをつくったんですね。これに委員会の評価をいただいた上で、実践を社協の事業所、株式会社の介護事業所にお願いをして参加しました。
 そうしましたら、参加した女性が感想文に、利用者さんのおじいちゃんに、今日来てくれてありがとうと褒められた。私は褒められたことがないと書いてありまして、その衝撃は今でも忘れません。自己肯定感、自尊心から出発しなければならないということを強く意識したわけであります。
 次のページをお願いします。
 そこで、こんな言葉が参加した人たちから出てきました。これは公園整備の事業の中高年の男性たちなんですが、この真ん中に山本のおっちゃんという方がいて、この方はもう既に病気で亡くなられたんですが、無口で、お酒がもとで体を壊した。このおっちゃんが人のことを心配するようになったり、ちゃんとバスに乗って来られるかな、どんなバスに乗るのかなということを、ちゃんとみんなに教えてくれたり、そういうことをしているうちに昔の飲んべえの俺が上から見ているようだというふうに話すわけですね。こんな俺でも、この年になっても自分を変えることができるんだなというふうに語っておりました。
 また、ボランティアに参加したある方は、疲れて帰って来たら眠れるようになった。夜、寝られることがこんなにうれしい、こんなにいいものだなんて、ということをお話しするようになりました。
 こういうことを次々に聞くことによりまして、自己肯定感というのはやはり社会に参加したり、人に関わるということで生まれることなんじゃないかなというふうに気がつきました。
 また、自立というのは先ほどの前の絵にも描きましたが、人それぞれ、私どもを含めてなんですけれども、かけがえのない私という実存を得ることに尽きるのではないかなというふうに、私たちはこういう検討会で確認をしてきたところであります。
 次をお願いいたします。
 2021年、現在ですけれども、釧路市の自立支援プログラムはプログラム数が24、それから協力事業者は24、事業者は24ですが、行くところはさらにもうちょっと多くなって、1つの事業所で2つ、3つとありますので、数はもうちょっと多いんですが、参加者が876人、延べで1年間、昨年は5,987名が参加している。
 私はこの間、後輩のワーカーにお話を聞いて驚いたんですけれども、プログラムが年々増えているんですね。これは、現場のケースワーカーの努力というほかないというふうに、ちょっと胸が熱くなる思いはしております。いろいろな問題を抱えた方たちが増えておりますし、受給者の半分は高齢者だということを考えますと、個々の事情に合わせたプログラムを無数にといったら語弊がありますが、つくるということは大事かなと思っております。
 釧路市の自立支援の取組を概括的に述べますと、地域資源に協力いただいて取り組んでいるということであります。社会参加のプログラムとして受け入れてもらう。ボランティア先として受け入れてもらう。資源を企業も含め地域を広く求めて受け入れてもらったり、市民の参加を得てこのプログラムを練ってきたということが一つの特徴です。
 2つ目は、社会参加型のプログラムがあるように、ハローワークの一般就労と、家で鬱々と暮らしているという状態の間に地域に通う場、居場所をつくったことです。
 このような状態を、当時ハローワークの仕事でもない、家でも寝ているわけでもないから中間的就労と言おうというふうに表しました。
 それで、先ほども御紹介がありました2010年の生活保護受給者の社会的居場所づくりと新しい公共(に関する研究会報告書)の中には、こうした意味合いで自立論やストレングス、あるいは多様な働き方、あるいは公開性、地域性などが触れられております。また、この取組は2013年に成立した困窮法にも就労準備、あるいは就労訓練事業に反映されているというふうに思います。
 一般就労に至るステップアップの途中の段階にとどまらないということを私たちは考えてきました。それは、こういう居場所をつくっても働いているやつはいないじゃないかという批判がやはりあったからで、非常に悔しかったです。自尊心や誇りや笑顔、それ自体を回復することを目的にしようというふうに、さらに一歩進んで取り組もう。そういう活性化が、生活する力や働く力を生み出すということを私は実感しているところであります。働いて得た一定額の収入と、年金手当等、生活保護費などの社会保障とが組み合わさった生活、いわば社会参加しながら半就労・半福祉の働き方を格闘してきたなというふうに思っているところであります。その事例が、次の2つの取組ということになります。
 次をお願いします。
 市役所に勤めておりまして、退職後、2012年から先ほどのちょっと悔しい思いを持ちながらこの一般社団を立ち上げました。それで、生活保護の皆さんと生きる場として地場産業である漁業で使う漁網の仕立てをする。網そのものは外にあるんですけれども、それを海に浮かすためにちゃんと浮きとかいろいろなものをつけて仕立てる、編んでいくという作業があるんですね。これは、零細でやりたがる人がなかなかいない。魚が採れる網になって初めて成果報酬が得られる仕組みです。生活保護で生活が支えられ、技術を覚えることができるということが一番のアドバンテージでありました。
 最初は全く1円にもならなくて、仕立てができるようになって約10年であります。価値があるのは基幹産業のニッチ、隙間を埋めて衰退する製網技術を継承していることだというふうに思います。製網業者が廃業しつつある中、年間1,300反編む力が地域漁業の隙間を支えているんですね。
 この右下にいる方は整網会社の社長なんですが、ここがなかったら3年前にうちは辞めていたなとおっしゃっているんですね。そういう意味で、まさに地域の生活保護で支えられてきた人が地域を支えていると言えるかと思います。稼ぎも全員で240万ぐらいにようやくなりました。最初はゼロ円で、何か月かは1,000円ぐらいとか500円ぐらいでしたが、こうなりました。
 地域とつながっているから、そういう必要があるから、やらされているなんていうことはないんです。この人たちにあるのは、納期を守る誇りなんです。なんぼ無理をしても、家に帰ってもやるぞというぐらいで、迷惑をかけられないということをおっしゃっています。
 それから、一番こちら側から2人目の方は、保護はもらっているけれども、1か月誰ともしゃべったことがないとおっしゃっていました。その方は、11時に起きていた。なぜかと聞くと、1日2食でないと回らないということでしたが、そういう方がここに来て、病気はあるけれども、病気と付き合いながら参加をして稼いでいるという状態です。
 次のページをお願いします。
 もう一つが、2017年から取り組みました釧路市音別町の蕗づくりです。旧音別町は2005年釧路市と合併し、酪農と林業の町で、人口減少は止まりません。かつて1万人ぐらいいましたが、今では1,600人余りです。そこで、酪農を離農した農家の方、移り住んだ元看護師の方と一般社団音別ふき蕗団を立ち上げそれを支える音別部会を立ち上げました。
 自生する2メートルにもなる秋田蕗を畑で生産することを目指し、音別部会にはここにあるように属性も背景も違う多様な人たちが集まりました。地元の信金、知的障害者施設、オブザーバーですけれども、行政センターや農林課、地域包括、それから生活福祉事務所、東京のクリエイターそして私たちです。蕗で音別の町が有名になり、若い人から年配の方までどんな人も自信を持って生き生きと暮らせることをビジョンにしたことが属性化しなかったんじゃないかなというふうに思っております。
 奥さんが死んで気持ちが沈んだ方がここで救われたというのもありますし、昔取った杵柄でストレングス、その人の強みに気づくということもありますし、80代のおばちゃんたちが介護要らずで頑張っているというのもありますし、この商品化を通じて様々な関係人口を生み出して誇りと居場所を回復するということで、福祉と農業とお金と人を循環させながら持続可能な暮らしをつくりたいと願っています。
 5年余りがたちまして、50トンの蕗の生産を離農農家、生活困窮者、保護世帯の方、ひきこもりの若者、地区の高齢者が混ざり合って支えております。販売も、近隣や、九州の生協などに行ってきましたが、加工、流通、販売など多様なプレイヤーがそれぞれの持ち場を果たして元気になることによって地域を支えるということを目指しております。
 ここの取組は、生活困窮者の就労準備事業や生活保護の自立支援プログラムも組み合わせてこういうつくりをしているところであります。まさに御本人に寄り添って言うならば、活躍の場の支援こそ地域に足りないのかなと思っており、その多面的な可能性を持つ中間的就労の取組や、日常生活や社会生活の自立支援プログラムが私は必要だと思っております。社会的な課題の解決と、御本人の生きる場の課題等を解決すると位置づけて、社会的企業というものの育成にまでなるよう皆様方に検討していただければ大変ありがたいかなと思っております。
 最後に「まとめ」であります。4点ほど書いております。
 1点目なんですけれども、生活保護法27条の2ができた頃、私はこれを自治事務と言われて何だか分からなかったです。「相談助言」とあるんだけれども、これは何だ。
 ところが、この自立支援プログラムを始めてから、あぁ、自治事務というのはこういうことかな、地域につながっていくことかな。あるいは、地域資源に保護行政が開かれていくことかな。あるいは、可視化されていくことかなというふうに思いましたし、地域のことは地域が考えるということなのかなと思いましたが、一方、地方分権一括法から22年たちまして、最近、北海道新聞では、競わされて遠のく分権という記事も載っておりまして、果たしてこれは分権、あるいは自治として成立しているのか、やはり考えなければいけないことかなというふうに思っております。
 それから、プログラムの効果ですけれども、先ほどもありましたように組織的にということをうたわれてはおります。それは、経験則のあるワーカーが本当に減ってローテーション職場になったということが背景にあると思うんですが、なかなか課題は多いかと思います。
 生活困窮の分野では、この3つの自立論を2018年頃から年数回、4回ですかね。意欲・関係性・参加、経済的困窮改善、それから就労の各状況調査ということでチェックリストみたいな形で集計をしていたことがあります。それが、厚労省の推進事業を通して一般社団法人京都自立就労サポートセンターのKPSビジュアライズツールへ引き継がれてきたのかなというふうに私は思っております。
 社会的処方などという考えもある今日、稼働能力判定会議だけでは不十分でありまして、こうした困窮で開発されたツールを自立支援プログラムの中に導入することが必要かなと考えております。
 それから、重なり合いの問題です。受け渡しといった技術的な問題もあるでしょうが、私は評価では今、言ったことが貫かれる一体性が大事だと思います。
 もう一つは、やはり会議体です。ものすごく会議体は多いです。すごく多い。福祉事務所というのは、実は現業職員とか直接処遇職員ばかりで、いわゆるよそ見という言い方は悪いですが、そういうところに参加できるような余力がなかなかないのであります。そういう立てつけを根本的に変えてちょっと横が見られるようなことを考えないと、役所というのは組織体ですので、補助メニューには嘱託職員などありますけれども、力としてはやはりきちんとした正規の体制でそういう人たちがないと合議体にはなかなか参加できないのかなと、できれば困窮と生保の両方がそういう合議体、会議体に入っていくことが必要かと思います。
 それから、自立支援プログラムの問題点は、先ほど言いましたように社会と関わるメニューが全くといっていいほどありません。あの三百何ぼというのは、ほぼ子供支援です。大人の社会参加のプログラムは皆無に等しいわけで、それはやはり自己完結型福祉事務所から抜け出ていないというふうにも思われますので、そこが重要だと思います。
 最後は関係機関との連携なのですが、最近、私の知り合いの成年後見人からこういうことを言われました。経験がないワーカー、若いワーカー、これは仕方がない。でも、訪問もしなければ何もしない。例えば、大家から早く立ち退けと言われているのに行かないとか、後見人に社会福祉士がなったのをいいことに、新居を見つけるのも、引っ越しや廃棄処理を進めるのもそっちに頼んでくる。それで、後見人は事実行為はしなかったんじゃなかったのかというお話をし、一度は家庭訪問に行ってみたらと言ったら、私の辞書にはそういうものはないみたいな言動をされて、まいったという話もあります。
 あるいは、昨日、一昨日のあるZoomの会議で、関東近辺では保護の申請の場合には付添人はだめであるとか、3時までしか申請できないとか、そういうローカルルールは本当に自治事務なのでしょうか、それとも法定受託なのでしょうか。そういうところを曖昧にしたまま、何か溶けているように私には思えてなりません。ぜひ、委員の皆様方に御検討いただければと思います。
 最後に、釧路市の幣舞橋には昭和52年、1977年5月に道東の四季像がありまして、著名な彫刻家の舟越保武さん、佐藤忠良さん、柳原義達さん、本郷新さんというもう亡くなられた方が制作した裸婦像が45年前に建てられたんですね。市民のお金で建てました。
 そのときの新聞記事に、佐藤忠良氏はこう言っているんですね。無駄と言えば全く無駄な経費を使ったということになるかもしれないが、人生に必要な無駄が私たちの仕事だ、というふうに言いまして、やはり隙間、余白が必要だと、そういうものがこの自立支援プログラムや支援の中に、あるいは関係づくりの中にあってほしいなというふうに願って私の発言を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
○菊池部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、これよりまず櫛部参考人の御発表への質疑応答、あるいは、意見交換の時間を設けさせていただきたいと思います。何かおありの方は、ぜひ挙手ボタンでお知らせください。
 まず、それでは松本委員は15時40分頃に御退席予定ということですので、櫛部参考人の御発表以外の点も含めて何かあれば最初に御発言をお願いします。
○松本委員 松本でございます。御配慮いただきまして、ありがとうございます。申し訳ございません。
 櫛部参考人から釧路市の取組を御発表いただきましたけれども、率直に言ってすばらしい取組だと非常に感服いたしました。
 そこで、1点質問ですけれども、継続的な運営において何か課題があればコメントいただければ幸いです。
 また、議事2についてのコメントをいたしますことをお許しいただければと思います。
 資料2の37ページの「特に御議論いただきたい事項」にある(自立支援プログラムについて)(ケースワーカーの役割について)(関係機関との連携について)、それぞれに関わってくることではありますけれども、12ページ目の「自立支援プログラム策定率(令和2年度実績)」を見ますと、日常生活自立に関するプログラムを策定している自治体数が375あって、策定プログラム数が1,317というのは、経済的自立に関するプログラムを策定している894自治体及びプログラム数2,578と比べてみますと少ない状況にあると思います。
 一方で、33ページ目の「被保護者の抱える課題について」では、新型コロナウイルス感染症の影響によって生活保護の申請につながった代表的なケースの特徴では、病気、特にメンタルヘルスを含むものが38.4%と最も多い状況となっています。
 これらのことから、26ページにありますように、「事業概要」が書かれている被保護者健康管理支援事業は大変重要なポイントになると思いますけれども、一方でケースワーカーにとっては大変大きな負担となりますことから、保健部局等との連携を含めて健康管理支援事業に必ずしも寄らない在宅療養等についても、日常生活自立に関するプログラムの中で関係機関との連携によって進めていく必要があるものと私どもは考えております。
 私からは以上です。ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 前段部分につきまして、櫛部参考人から何かございますでしょうか。
○櫛部参考人 櫛部です。
 福祉事務所で自立支援プログラムを継続してやるためには、体制が要るということだと思います。都市部では1人のケースワーカーが80ケース、場合によってはもっと多く持っている場合があって、兼務でこの取組をするということは非常に厳しいかと思います。釧路市はいろいろと工夫をしまして、保護課の中にもう一つ、保護の分野のほかに福祉政策係というものをつくって、そこが生活困窮、自立支援、その他社協関係を含めて地域共生社会のいろいろを含めてやるということで、実際にケースを持つ数も非常に少なくしてウエイトをしながらやっていますので体制は要るだろう。
 もう一つ、先ほどのような新しい働き方を体制で考えるとするならば、やはり国の助成が5年ぐらいは必要だなと思ったり、マーケティングとか経理、財務といった福祉が苦手な分野を支援してもらう形で新しい働き方、いずれにしてもそういう体制は要るのではないかなというふうに思っております。
 以上です。
○菊池部会長 松本委員、よろしいでしょうか。
○松本委員 ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、お手が挙がっております駒村委員からお願いします。
○駒村委員 ありがとうございます。私も先に退室しなければいけませんので、まず櫛部さんのお話についてです。
 実際に伺ってお話を聞いたときからさらにバージョンアップしておりまして、懐かしくお聞きしました。「一日作さざれば一日食らわず」という言葉がある。これは禅の言葉ですけれども、これは「働かざる者食うべからず」などという意味では全然なくて、自分の一日一日を大事に過ごしていく、出番を大事にしていくという意味だと思いました。この実践がまさにここで行われているというのを改めて感じて、出番が極めて大事だということですね。この事業での働く意義というのは一体どういうことなのかがよく分かりました。ありがとうございました。
 今のはコメントで、本当はもう少しいろいろと議論したいところでございますが、先ほど申しましたように時間がございませんので事務局に関するコメントというか、意見ということで、生困のほうの資料のこれから議論を深めていただきたいという点について、今日の資料も拝見したんですけれども、金融機関が連携対象にあまり姿が出ていないことが少し気になっております。
 いろいろな問題がやはり起きるときに、金融機関というのはライフラインとして出てこないのかどうなのか。あるいは、もしかしたら先方である金融機関全体がそういうことを意識していない可能性もあるので、福祉と金融機関というのはあまりこれまで相性というか、出会いはなかったところだと思いますが、いろいろと連携する余地、これはいろいろ難しいことが正直ありますけれども、ぜひとも御検討いただければと思います。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 ただいまのご発言は、櫛部参考人に対するコメントということでよろしいでしょうか。
(駒村委員 首肯)
○菊池部会長 それでは、宮本委員も先に御退室と伺っていますので、先によろしければどうぞ。
○宮本委員 ありがとうございます。私も、事情でこの後、退室させていただきますが、せっかくの機会ですので櫛部参考人にお伺いしたいと思います。
 思い返すと、私は以前、北海道大学におりまして、大学院にお招きして櫛部モデルの話を伺ったのがもう15、16年前だと思います。これを考えると、櫛部参考人及び釧路モデルは15年間レジェンドであり続けているわけなんですけれども、確かにすばらしいと同時に複雑な思いにとらわれるというところもございます。
 なぜこのレジェンドは広がっていかないのだろうかということであります。今まさにそれを広げなければいけないということで、事務局から調査研究の結果も御紹介になりましたし、また、国と地方の実務者協議からの声も聞こえてきたということなんですけれども、ポイントは2つでございます。
 一つは非常に単純過ぎるようで、ひょっとしたらそうでもないような質問かもしれませんけれども、やはりこの15年間、レジェンドの地位を守り続けていることについての櫛部参考人の御感想といいますか、なぜ広がっていかないのか、何が障害になっているんだろうかということですね。
 その障害を考えたときに、事務局からも御紹介のあった様々な新しいプロポーザルというか、メニューというものをどういうふうに評価されるかという点でございます。
 特に、外部委託という問題に関わって3つの委託ということが示されたわけですけれども、その専門性を高めてもらうために様々な関係が大事になる。これは確かに釧路モデルからの経験を引き出しているようにも見えるんですけれども、そこをどう評価されるか。
 ただ、他方で家庭訪問の回数の見直しというところに引きつけられていくのが、その専門性を高めるという観点からどういうあれなのか。これは事務局に伺ったほうがいいのかもしれないのですけれども、そこはまたちょっと留保した上で、こうした外部委託をめぐる方向性について、釧路モデルというのは外部の力を利用するどころか、現在も櫛部参考人の後輩たちのケースワーカーがどんどんメニューを豊富化させている。
 ふき蕗団にしても、漁網のプロジェクトにしても、言ってみればケースワーク業務がスピンアウトしたというか、外にどんどん広がっていったような印象すらあるわけですけれども、それと比べると、確かにその重なり合う支援で外部の力を引き込んでいくというのは大事なのですが、大分、釧路モデルの経験と様相を異にするなという印象すらあるわけですけれども、その辺りをコメントいただければと思います。
 すみません、長くなりました。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 いかがでしょうか。
○櫛部参考人 櫛部です。
 広がらないというのは、結局はどこかのいい話を聞いてどうしようかと考えている限りは、それは無理だと。
 私たちだってどこかのいい話を聞いてやってきたわけではなく、ただただ15万人中10万円の住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金をいただく方が5万人近いというこの町の様々な課題を何とかしようということと、幸い釧路の場合はちょっとその余白というか、何をやっても頑張ればいいんじゃないかみたいな風土的なラフさもちょっとあるかなという気はすごくしております。
 それをいろいろな方たちが見に来て、いろいろな議員さんも来られ、いろいろしますけれども、多分、逆側の立場に立てば、何か胸いっぱいになるなという人たちもたくさんいると私は思っていて、私は全然まねる必要もないし、まねなくてもいいし、私は自分たちのここを何とかするためにやってきたので、レジェンドになりたいわけでも何でもないんですけれども、そういう意味では本当に自治事務的に結果として自分たちのことは自分たちでやってきたというだけかなという気はします。
 それから、外部委託というのは、家庭訪問の代わりをさせられるのは御免被りたいなという気持ちはありますよね。やはりいろいろな地域に通える場があったり、いろいろな居場所があったりという意味合いでは分かると思いますけれども、それがケースワーク業務の代わりというふうにされるのはどうかなと、ちょっと思っております。
 先ほどの成年後見人のお話などを聞きますと、そうは言っても本体のところでは結構大きな問題があるんじゃないかと思いますし、公的な生活保護の役割は一体何なのかということを、経験が2年、3年しかないワーカーがずっと通り過ぎていく中でどうやって蓄積していけばいいかということは、なかなか歯がゆい思いで私はおります。
 すみません、先生。
○菊池部会長 宮本委員、いかがでしょうか。よろしいですか。
(宮本委員 首肯)
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、朝比奈委員お待たせしました。どうぞ。
○朝比奈委員 ありがとうございます。市川市生活サポートセンターそらの朝比奈です。
 櫛部さん、大変御無沙汰しております。今日お話を改めて伺いまして、非常に訴えるところがあるのですが、一方でかなり構造をしっかりとつくられてきたという印象も持ちました。
 当初の外部の方々が入った会議、そこの中でやはり何をしていくのかということが様々な角度から議論されて、その結果としての出口づくり、居場所づくりが、会議に参加したメンバーも受け皿になってつくられていったというところが非常に重要なのかなと思っております。
 改めて「働く」ということの多義性も含めて学ぶところが多かったんですけれども、例えば就労準備とか、学習支援とか、それから重層事業での参加支援とか、もろもろ様々な領域で地域づくりに動く人たちの役割が今、議論されているところなのですが、どこか単一の事業体の提案とか発想とかというところだけに頼ってしまっていいのか、一事業者としても非常に私は疑問を持っています。
 そういう意味では、その事業の委託の在り方ということに関わって、こうした仕掛けをどのように埋め込んでいくかということも自治体として重要な地域づくりのための戦略なんじゃないかと思っているんですけれども、そこに何かもしお考えなりがあれば教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○櫛部参考人 私は役場出身なので、やはり役場の手の内といいますか、こうなればこうなるなというのは分かるんですが、ほとんどのうちの職員もそうですし、ワーカーもそうなのですが、そういうことはなかなか分かりにくくて、どうしても委託したんだから委託受託だという文化は一方では強くありますし、そこはなかなかやむを得ないことなのかなと思いつつ、私が大きな声を出せば止まっちゃうみたいなことがとても自分でも嫌だなというふうには思っているところであります。
 ただ、役所というのはなかなか縦のものは縦なものですから、福祉事務所の中でもちゃんと体制を取らないとやはりできないんですね。結局、そこの自立支援ということも、生活困窮ということも、いわゆる兼務ではそういう体制はできない。釧路はその辺は若干ウエイト方式で内部でいろいろと動かして、ワーカーにある程度、高齢のところは多く持ってもらったりとか、いろいろなことをやりながらそういう領域を広げて何とかここまできたということで、まだ課題はたくさんあって、自立支援の担当はなかなか少数派なのは、やはり担当の部局はこの主体である保護のワーカーがたくさんいますから、そことの絡みでは非常にしんどい思いをしているので、私たちとしてはそこを支えていくと言ったら語弊がありますが、応援しながらいければなということ考えています。
 あとは、食のネットワークとか任意の団体、地域食堂、こども食堂をフードドライブの皆さんとつくりながら、緩い、それこそウィークタイズですけれども、そういうものがあったらうまく回して、そして顔見せをお互いするみたいなことで、たまたま食料ではありますけれども、こういう支え合う関係の持続化というのは釧路は割と集まりやすいところがあるので、みんながここの危機感を共有しているというのが釧路の町の大きな特質なのかなというふうには思っております。
○朝比奈委員 ありがとうございました。
○菊池部会長 それでは、勝部委員お願いします。
○勝部委員  櫛部さん、御無沙汰しております。
 レジェンドに一生懸命ついていっている私たちなんですけれども、自立支援プログラムが発表されたときに本当に目からうろこで、就労不可という人たちは働いてはいけないみたいな世の中の風潮があって、そして家でじっとしていて、お酒をのんで、ギャンブルに行ってということで生活がうまく立ち行かないということを繰り返していて、どうしたらいいんだろうというときに、全ての人の居場所とか、役割とか、そういうものがちゃんと必要なんだということを提案されて、そしてそれも町の中の困り事からそこを支えるというところで役割を見つけていくということで、町の人たちからも尊敬されたりとか、御自身たちも自尊感情が上がっていくということについては、本当に多くの学びを感じたと思っています。
 それで、この釧路モデルと一般的な自立支援プログラムは似ているけれども、ちょっと違うみたいな感じになるのは何なのかなと思うときに、やはりプログラムに当てはめてしまっていくということと、本人から始まるというところが違うのか。本人から始まっていくプログラムなのか、プログラムにどこかに入れ込もうとしているというか、その辺りが随分違うから変わっていくんじゃないかなというふうな気持ちもしたんですけれども、やはりそうしていこうと思うと相当丁寧な本人さんたちとの関わりということが重要で、先ほど体制が重要なんじゃないかと言われたことはまさにそうなんだろう。
 前半の議論であった、年2回訪問を何とかみたいなレベルでは、なかなかその人のことを理解できたりとか、その人の強みとか、ストレングスに向き合っていくみたいなことが難しいのかなということを改めて実感をしながら、やはり全体の構成のところでこのプログラムを生かしていくという体制づくりをしっかり考えなければいけないなと思った次第です。
 それで、やはり就労だけがゴールではない、金銭的就労だけがゴールではないということで、経済的な就労にどうしても目が向きがちだったところを、そこを新たに気づかせていただいた釧路モデルの広がりということについて可能性を感じますし、そこが高齢者の社会参加とか、フレイルの問題とか、いろいろなところにつながっていくのだろうなというふうに思いました。
 感想です。ありがとうございます。
○菊池部会長 櫛部参考人、せっかくですので何かコメントいただけるとありがたいのですが。
○櫛部参考人 結局、困窮の相談などもそうなのですが、いわゆる一般就労できる人はできるんですよ。実際そういうことはやっていますし、それはできるんですね。
 ところが、そこがなかなか難しいのに、ここがやはり稼働年齢層だからとか、医療検討でいろいろとできない理由を消していくわけですね。そして、あなたはできるでしょうというような論法とかやり方がないとは言えないかなというふうに思うのですが、私の働き方は本人が自尊心や自己肯定感を回復したり、居場所で自分が救われたなという感情や、あるいはそこで生まれるストレングス的なもの自身がいわば新しい働き方をつくるんだと思っているということなんですね。
 それが、結果として一般就労のように賃金が高いということは今のこの瞬間ないけれども、これがちゃんと積み上がっていけばそこそこいくし、そしてそれはほかの年金とプラスということで、先ほど蕗の皮をむいているおばあちゃんも年金プラス、あの方は最賃をもらって皮をむいているわけですよ。そういうような組合せで生きていくというやり方もあるんだということを、やはり皆さん楽しそうですし、何とかしていきたいなというふうに思っているという、そういう働き方です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 あとは、岡部委員からお手が挙がっていますが、ほかにはいかがですか。よろしいですか。
 それでは、岡部委員お願いします。
○岡部委員 櫛部さんたちが進められている釧路モデルは先駆的活動であり、またこれだけ継続されている点について、私は次のようにみています。
 それは、ボトムアップで自立支援プログラム策定や社会的居場所をとらえニーズに合わせた資源調整や資源開発をされている点です。このことが、釧路モデルをこれまでパイオニアとして活動を持続・発展させていると考えております。
 地域の特性、住民のニーズ、資源配置について、担い手等について関係者が意見を出しあい、その上で活動を実施してきたということになります。この釧路モデルの全国的な広がりを考えるならば、自分たちの地域をどう考えるかをそこに携わっている人たちとミッションを共有し、ニーズの把握、資源配置等を話し合って自分たちの使えるプログラムを策定していく。これは、ある面では自分たちの地域づくり、仕事づくりを行っているともいえるのではないかと思います。この点について櫛部さんはどのようにお考えでしょうか。
○櫛部参考人 自立支援プログラムを役所の現職でやって、退職する寸前にある労働経済の先生から、一緒にやってきたんですけれども、何だ、コミュニケーションに偏っているじゃないか、居場所、居場所と言っても結局、誰一人として雇用なんかされていないじゃないかと言われたことが、後ろから鉄砲玉が飛んできたみたいな感じで非常に悔しいなという思いがありました。それで、退職してから残るとか、どこかのNPOに行くとかじゃなくて、やはりそれを続けていこうと思いました。
 そういう意味では、何とか役所の協力を得ながら、緊急雇用でつなぎながら、そうすると世の中、困窮の話になってつながってという中で、そこはぶれないでずっとこられたかなというふうに思っています。
 漁網であれ、蕗であれ、蕗なんかは本当に桃でもないし、アボカドでもないし、地味なんですけれども、ブランディングをして、人に優しい蕗、それで関係人口をちゃんとつくりながら、私たちの生活困窮の取決めは移住じゃないけれども移住っぽいというか、観光じゃないけれども観光っぽいというか、そういうような大きなくくりの中で生きていきたい。
 そこで仕事をつくっていき、蕗の現場に今、行くと受給者の皆さんが買いに来る人に、蕗を買いに来たんですか、どれぐらいですかということを何のあれもなく普通にちゃんとやっているのを見ると、マナー教育とか何も要らないぞと思って、あとは自分が自分たちのそういうことに自信を持っているとやはりそういうことができたりするんですよね。
 だから、私は地味かもしれないけれども、そういうものでそういう町にしていたいなということがそもそもあって、福祉を今やっているのか、何をやっているのかよく分からないときがあるんですけれども、もっともっといい、ひょっとしたら移住とつながっていることをやっているのかもしれませんし、つまり福祉の親戚のところでやっていないなというところを、それが福祉を見直しているなというか、人の大切さといいますか、彼らのすばらしさといいますか、網なんか物すごく立て込むときでも必死になってやって、いろいろあるんだけれどもちゃんと守って、やはり納期を守らないと漁師は困るしねということを普通に言うというのは、もうたまらなくうれしいなと思ってやっています。
 何の答えにもなっていませんが、すみません。
○岡部委員 ボトムアップ、地域づくり、仕事づくりをできればどのように行われてきたかをお尋ねしました。
○櫛部参考人 実施機関として自立と考えたときには、やはりハローワークにどうやって連れて行くんだという案を持っていましたけれども、委員の皆さんが、そんなことでは、エンパワーメントということをあんたは知っているかと言われて、知らなかったけれども知った振りをするしかなくて、僕らはやはり井の中の蛙で仕事をしていたんだなということを考え、そしてああいう御機嫌うかがいのような案を思いつくようになった。そうすると、公園の整備だとか、いろいろなところに隙間を見つけることができた。
 ただ、最初はやはり保護世帯の方を20人ぐらい集めてオリエンテーションするなんて、したことがないんですよ。そうすると、私はもう汗をかきました。すごく地域に貢献してくれなんて、こんなことを言って見透かされているんじゃないかとか、いろいろなことがありましたけれども、参加した保護世帯の方はそのときはもう一言もしゃべらないで怖かったですが、現場に行ったらすごくしゃべるようになって、いろいろな人のことを心配したりするようになって、こうしろというようなことではなくて、やはりこうしたいというニーズというか、気持ちというか、そこがやはりベースにないと、ある人から、これは強制労働でないかと言われたこともありますので、やはりそこの出し方というのはソフトな丁寧な場のつくり方、会議の仕方、それから僕らには及ばない公園緑化協会の人たちの参加とか、様々なそういうことで成り立っているんじゃないかなということをすごく感じましたし、そういう方たちが保護のほうに、こういうことがあったよとか、こういう人がこういうことでいいところがあったよとか言ってくれることがワーカーの気づきにもつながったかなと思っております。
○菊池部会長 よろしいでしょうか。
○岡部委員 どうもありがとうございます。
○菊池部会長 どうもありがとうございました。
 ということで、本日は我々のこの制度改正に向けた議論の第2回目ということで、これから本格的な議論が始まるというところで、まさにこの自立支援の分野の開拓者でもありレジェンドでもいらっしゃる櫛部さんから、私もなのですが、恐らく皆様も久しぶりに櫛部さんのお顔を拝顔して温かい気持ちになると同時に、大いなるエネルギーとパワーをいただけたなと思っております。
 櫛部さん、本当に今日はお忙しいところ貴重なお話をいただきましてどうもありがとうございました。
○櫛部参考人 こちらこそありがとうございます。失礼します。
○菊池部会長 様々な御意見をいただきましてありがとうございます。
 それでは、議題の(1)から(3)に戻ります。質疑応答、意見交換ということで皆様から御意見を賜りたいと存じます。どうぞ、挙手ボタンでお知らせいただければと思います。
 それでは、まず岡部委員からお願いいたします。
○岡部委員 生活困窮者における自立支援の在り方について意見を述べさせていただきます。
 自立相談支援機関は対人サービス機関であり、住居確保給付金以外制度資源を有していません。そのため他の関連専門職、専門機関・団体等との連携協働を図っていくことが必要と考えております。
 自立相談支援機関はワンストップ機関としての役割があります。先ずは相談を受け止め、関係機関、団体等の振り分け的な役割を担うという側面と、もう一つは伴走型支援と言われる継続的な支援を行う機関として位置づけられます。
 そこで、この点は必要ではないかということを述べさせていただきます。
 生活困窮者の自立相談支援機関は3職種、3名体制で業務を行っています。
 そこで例えば、生活保護の担当の現業員の配置基準は、都市部で標準数が80世帯、郡部で65世帯、また児童相談所の児童福祉司においても担当世帯数が、さらにはその機関でも人口別で標準数等を定めているところがあります。
 自立相談支援機関は福祉事務所の設置自治体に置くこととしていますが、その業務を担う人員の配置基準の積算根拠がありません。それは、置かれている人的体制の中で業務を行うということで理解をしているのですが、それでも今回のコロナ禍では財政支援を講じていますが、平時のような業務が遂行できない事態となっています。
 自立相談支援機関が地域住民の相談を受け止め、または経済的な支援を行い、その後、地域づくりにも関与するという、理念としてすばらしいものがありますが、自立相談の件数、関わる支援世帯数を考えますと何らかの基準、職員の配置基準の検討が必要ではないかとデータを見て、考えております。
 今後、人員体制について検討していただきたく要望として挙げさせていただきます。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、生水委員お願いします。
○生水委員 ありがとうございます。生水です。
 資料を踏まえて、5点お伝えさせていただきます。
 1点目は、資料1の7ページの支援会議についてですが、まだ4割の自治体しか設置していない現状ということでありましたので、資料1の8ページの玉名市が実地されている分野横断的な対応、また積極的なアウトリーチによる早期発見と支援の質の向上のためには、支援会議の義務化による設置促進の検討が必要ではないかと考えます。
 例えば、滋賀県では救急告示病院を受診された自殺未遂者、またはその御家族の方に対して、病院が個人情報提供の同意を得た上で保健所に支援要請を伝えて、保健所が市、町、自治体に連絡し、支援につなぐという仕組みがあります。
 野洲市ではこの仕組みに対応するために、県の保健所から自殺未遂者案件の通知を受けた健康推進課が、生活困窮者支援を所管する市民生活相談課に通知して支援会議を開催し、関係機関を集めて情報共有と役割分担を図っています。この支援会議を保健所からの通知の受け皿にすることで安心して迅速にチーム支援の体制ができるので、自殺未遂者の方に対する効果的な支援が可能となります。
 このように、支援会議の活用によって機能的なアプローチが可能となるところから、義務化による設置促進と、そのための支援策の検討を推し進めることが必要と考えます。
 2点目は、資料2の25ページの「被保護者家計改善支援事業について」ですが、自立支援プログラムに位置づけてこの事業は実地することになっております。お金に関する自立支援プログラムとしましては、ほかに金銭管理支援があります。この資料の中ほどに「別途」という記載がありますが、この家計管理の支援が自立支援プログラムの金銭管理支援、ここを指しているのであれば、それは家計改善支援事業とは全く異なる機能を持った事業であることから、まさに別途であり、しっかり両者を峻別した議論が必要であると考えます。
 3点目は、資料2の34ページの被保護者に対する自立支援の在り方についてですが、ここには連携に当たっての課題として役割分担、支援方針等の調整、個人情報守秘義務の対応などが挙げられております。
 37ページの検討事項にありますように、こうしたケースワーカーと関係機関との役割分担、情報共有、支援の調整を行うための方策の一つとして、生活困窮者自立支援法第9条の支援会議の枠組みを活用できるようにすることが連携に当たっての課題解決に必要ではないかと考えます。
 4点目は、資料2の18ページの社会生活自立についてです。ここで、NPO法人虐待どっとネット理事の中村さんからお手紙をいただきましたので紹介します。
 私は16歳のときに児童相談所の介入がありましたが、施設に入所できず、精神科病院を転々として、退院後は通信制高校を卒業し、病院に就職、必死で働いてお金をため、22歳で看護大学に進学しました。大学は僕にとってようやく乗れた普通のレールで、初めて自分の力で手に入れた成功体験です。自信にもなりました。
 だけど、看護大学の授業で過去の虐待体験のフラッシュバックが起こり、体調を崩し、生活費や学費の全てはアルバイト費用で賄っていたために授業料を払えば生活費がなくなり、休学すれば奨学金は止まってしまうという状況に陥りました。やっと手に入れた普通のレールから降りたくない。その一心で、今だけ生活保護を受けられませんかと役所に相談に行きましたが、そこで窓口の方に言われたのが、大学はぜいたく品です。絶望しました。気づいたら、病院でした。自殺を図っていました。大学に行くことはぜいたくなのでしょうか。
 このような内容です。
 生活保護のプログラムが将来的に自立できる力をつけられるように支援することを目的とするならば、こうした大学生が困窮したときに生活保護が活用できるような枠組みを検討することが必要ではないかと思います。
 最後に5点目です。資料3のケースワーク業務の外部委託ですが、これについては明確に反対します。私は自治体職員として働いてきましたが、国、そして自治体の最大の責務が国民、市民の命を守ることです。生活保護は最低生活保障であって命の問題ですので、ここは公権力のある自治体が命を守るサービスを自ら担うことが重要であって、職員が市民の困窮を肌で感じるケースワークを手放しては、重要な生活ニーズを把握するすべを失って、それが生活保護をはじめとする様々な福祉施策に反映されなくなるおそれがあります。
 以上、終わります。ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、和田参考人お願いします。
○和田参考人 ありがとうございます。和田です。
 まず議題の1についてでございます。コロナ禍によって顕在化しております課題や支援ニーズにつきまして積極的に対応していく必要がありまして、この点については重層的支援体制の構築とも連携して考えていくべき課題というふうに考えております。
また、法の趣旨や目的、生活保護制度との関係性を踏まえて、関係機関との役割分担を整理しまして、効果的な支援につながる方策の検討を速やかに進めることが重要であると考えております。
 次に、議題の2についてでございます。生活保護受給者の自立支援プログラムにつきましては、生活保護担当職員の経験不足を補いながら効率的に受給者の自立助長を行うということを可能にする点で評価できる取組であると考えております。複雑かつ多様な課題を抱える生活保護受給者の支援においては、関係機関との連携が不可欠でございます。関係機関との制度の理解の醸成を図りつつ、支援体制の構築を着実に進めていくことが重要であります。
 支援体制の構築に当たりましては、好事例の展開や研修などによりまして、現場の負担軽減を図っていただきますようにお願いをいたします。
 以上でございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、五石委員お願いします。
○五石委員 ありがとうございます。
 私からは2点ほど、主に議題2についてお話をさせていただければと思います。
 まず自立支援プログラムについてですけれども、資料2の3ページに生活保護制度の在り方に関する専門委員会の資料がございまして、これがまさに自立支援プログラムが開始されることになったきっかけなのだろうと思います。それで、この中の文章に「「利用しやすく自立しやすい制度へ」という方向の下に検討を進めてきた」という言葉があるのですけれども、私が問いたいのは、「利用しやすく自立しやすい制度へ」ということに対して自立支援プログラムが果たして正しい答えだったのかということです。
 先ほどの櫛部さんのお話を伺っていても、自立しやすい、あるいは出やすいということを目的にしたものではなかったのではないかと私は強く思いました。といいますのも、櫛部さんは半福祉・半就労という言葉を使っていらっしゃいましたけれども、むしろ保護を受けながらいかに自尊心を回復するか、いかにかけがえのない自分を取り戻すか、ここに櫛部さんの事業の趣旨があるのであって、必ずしも就労して保護を廃止する、出やすくするということが目的ではなかったのではないかと思います。
 そこがボタンの掛け違いがあって、結局、本日の資料2のデータを見ましても就労支援が圧倒的に多いですし、先ほどの委員の御質問の中でも、櫛部さんの行っている事業とほかでやっている事業は性格が違うのではないかということをおっしゃっていたと思いますけれども、そこの原因はやはりここのボタンの掛け違いにあるのではないかと思います。
 それで、入りやすく自立しやすい制度にするために、ではどうしたらいいのかという点に関しては、例えば韓国でも同じ時期に同じような議論がなされて、2015年に日本の生活保護法に当たる国民基礎生活保障法を改正し、扶助を単給化しました。つまり、早期に支援をするという意味で、例えば住宅扶助、あるいは家賃補助を早期に給付するような制度にしたわけです。そうすることによって、入りやすく出やすくしたということです。
 ですので、そもそも「利用しやすく自立しやすい制度へ」という方針に対して、自立支援プログラムが答えではなかったのではないか。むしろ生活保護制度における給付体系のそのものの見直しを考えたほうが、より答えに近づくのではないかと思います。
 それから、もし自立支援プログラムが出やすく、あるいは就労ということが目的でないのではあれば、やはり前回も申し上げたのですけれども、この指標として、評価指標として就労率ですとか、あるいは増収率というのが指標にはならないはずだと私は思います。それが1点目です。
 それからもう一点目なのですけれども、資料2の30ページでちょっと驚いたのですが、1971年の新福祉事務所運営指針が出されております。この指針はまだ生きているのか、その点を確認させていただければと思います。この指針は現在でも指針として有効なのかどうか、お伺いできればと思います。
 といいますのも、この指針の中では、福祉に関する総合福祉センターとしての機能が十分に発揮できるように福祉事務所を変えていくということが書かれているんですね。当時、1970年代に厚生省でも実験福祉事務所構想ですとか、全社協でも福祉センター構想が出て、生活保護だけではなく高齢者支援、障害者支援を含めた総合的な相談支援ができるように福祉事務所の体制を整えようという動きがあったのですけれども、その答えが出されないまま時が流れ、90年代に福祉事務所と保健所あるいは保健センターとの統合があったり、そして21世紀に入ると、高齢者、障害者、それから生困と、福祉事務所の外部にいろんな相談支援が出てきて、すると、それらを取りまとめなければいけないということになり、社会福祉法の中に重層的支援が位置付けられました。では福祉事務所は一体どうなったんでしょうか。先ほども櫛部さんがおっしゃっていたのですが、体制を整えるという意味ではやはり重層的支援を行政がしっかりとグリップするために、この福祉事務所の体制を重層の中に位置づけることによって、自治体が福祉に関する総合福祉センター、あるいは総合福祉の機能を十分に発揮させることができるのではないかというのが、私が思ったところです。
 以上になります。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 2点目は確認ということですので、お願いします。
○進士室長 事務局でございます。御指摘いただき、ありがとうございます。
 まず1つ目の専門委員会の報告書の関係で、利用しやすく自立しやすい制度というものが掲げられていたということで、これが結局実態を見てみると経済的自立、就労自立に偏っているというところで、ボタンの掛け違いがあったのではないかということの御指摘だと思います。
 それで、報告書の中においてはまさに五石委員から御指摘いただいていますけれども、必ずしも経済的な自立に限らず、日常生活自立、社会生活自立というものも含むということから、この報告書上は基本的には、利用しやすく自立しやすいというところの自立の部分というのはそういった部分も含まれているのだとは考えております。
 ただ、一方で、先ほど申し上げたとおり、その実態として経済的自立に関する部分のプログラム数というのが多いという状況があることを踏まえると、先ほど櫛部参考人からも御指摘をいろいろいただいていましたけれども、やはり日常生活自立や社会生活自立の部分もう少し押し上げていく必要があるのかなと考えております。
 その上で、前回も御指摘いただきましたけれども、いわゆるKPIの関係だったと思うのですが、現行、参加率もありますけれども、就労増収率ということになっていて、ここの観点の御指摘があったと思います。それで、今、申し上げたことを踏まえると、前回も少し、これはとある一面ということを私は申し上げたような気がしますけれども、全体としてこの自立は3つの自立というものを基に考えていくのだとすれば、そこは必ずしも就労増収率というところだけではなくて、もう少し日常生活自立、あるいは社会生活自立ということも評価し得るような指標を検討していくことが必要なのではないかと考えています。
 それから、2点目でございますけれども、1971年の通知を持ってきているのですが、これは効力があるのかどうかとの御指摘がありましたが、なかなかそこはお答えしにくいところがあります。
 ただ、御指摘があったのは、あくまでも今回これを用いたのはケースワークの在り方というところで少し変わらない部分というのもあるかと思って、そこの部分を使いたくて資料として使用させていただいたということです。
 ただ、五石委員がおっしゃるように、そのときから時代というのは変化していますので、その昔、福祉事務所というのが割と福祉全体を中心にやってきたという部分があったと思います。
 ただ、いろいろ介護であるとか障害であるとか分岐していく中で福祉事務所の役割というのが変わってきている部分があるので、そこは時代背景を踏まえていろいろ変わっている部分があるという意味では効力がなくなってきている部分があるということだと思います。
 以上になります。
○五石委員 ありがとうございます。
○菊池部会長 御質問は、まだ生きているのかという、そこの確認だったと思いますけれども、そこは生きているという答えでいいですか。
○進士室長 効力がなくなっているということではないということです。
○菊池部会長 事務局から応答していただくのはいいのですけれども、委員に発言の時間をできるだけ取りたいので、端的に最低限の答えということで、もし事務局からこれは応答したほうがいいという判断があれば手を挙げるなり何なりして合図してください。
 それでは、お待たせしました。出原参考人お願いします。
○出原参考人 ありがとうございます。私からは、資料3の内容につきまして発言をさせていただければと思います。
 各指定都市から実務を行う上での意見をいただいておりまして、8ページの「家庭訪問の方法に関する取扱いの見直し」について御意見をいただいておりますので御紹介をさせていただければと思っております。
 まず3回目以上の家庭訪問とみなすことができる場合ですが、1点目に支援関係者が参集する会議体については様々な場が想定されますが、対象者の個人情報に係る守秘義務規定が明確にされていることが前提であると考えられるため、その点については御明示いただきたいという御意見がございました。
 2点目に、見直し案では会議体や関係機関との情報共有のみで、3回目以上の家庭訪問とみなすことができるとされ、本人からの報告は必須でなくなっておりますけれども、この場合、複数課題を抱えている世帯については次のような懸念が考えられます。
 つまり、就労支援事業に参加している一人親世帯の方については、就労支援に関する状況は一定の状況把握は可能であると考えられますが、例えば世帯の子の養育の問題、資産活用等、ほかに大きな課題があった場合は、この方法のみで適切な実態把握が行いにくく、むしろ家庭訪問を行わないことによるリスクが高まるといったことが考えられます。
 今回、取扱いを見直すのであれば、より具体的な留意事項として、当該会議体や関係機関との情報共有で把握できる内容以外でもほかの大きな課題があるような場合はこれには含まれないなどといったような課長通知とか、別冊問答等での整理がしていただければありがたいといったような御意見でございました。
 3点目に、最初の2回を家庭訪問し、3回目以降は見直し案で、4回目以降であれば最長半年、または12回の家庭訪問であれば最長10か月間は家庭訪問をしなくてもよいということも考えられ、長期にわたる家庭訪問が実施されないということは、本来の訪問格付の意味から考えれば適切な実態把握が行えなくなるリスクが考えられると思っております。
 このため、見直し案により家庭訪問を行わない場合についても、例えば3回目以上の家庭訪問とみなすことができる、ただし、連続での実施は不可といったような一定の補足があることが必要ではないかといったような御意見がございました。
 次に、2回目以上の家庭訪問とみなすことができる高齢者世帯の場合についてですが、1点目に今回の見直しで個別支援プログラムを活用する場合というもともとの前提に変更がないのであれば、高齢者世帯に限定した場合、どのような個別支援プログラムを想定するのか、あるいは前段の会議体が個別支援プログラムと同等と捉えるのか。自治体ごとの対象者の選別の判断に大きく差が出ることが想定されるために、個別支援プログラムの策定及び選定時の留意事項について、通知あるいは別冊問答で具体的な整理をしていただければありがたいといったような御意見がございました。
 2点目に、高齢者世帯については自己の能力で日常的な管理を行えている場合でも、認知症等により生活状況に大きく変動する事例が、特に独居高齢者の場合はあるかと思われます。
 (イ)の要件につきましては、実施機関以外の目が入ることから問題ないと考えられますが、(ア)につきましては急激な生活状況の変化等により、最悪孤独死に至ることも想定される危険があります。
 リスク管理の観点からも、(イ)のみとする、または(ア)の要件の内容を見直すといった検討が必要ではないかといったような意見がございました一方で、日常生活に問題のある世帯についてはケースワーカーが対応しており、(ア)(イ)の要件を満たす世帯は限られるため、効果が現定的になるのではないかといった趣旨の御意見も数件ございました。
 このように、意見にそごがあるものもございましたけれども、そういったような現状の御意見でございます。
 ここでは時間の都合もあり、全てを御紹介することができませんが、この項目でほかにも御意見をいただいているものや、または資料3ページの「生活保護に関わる業務の負担軽減方策の全体像」についての御意見もいただいておりますので、この後、また後日そういった意見を取りまとめて事務局さんのほうにお送りさせていただきたいと思いますが、これはいかがでございましょうか。
 私からは以上でございます。
○菊池部会長 事務局からお願いします。
○池上課長 内容についてはほかの御意見も伺った上でと思いますけれども、後日、事務局宛てに御意見を取りまとめていただけるということであればお送りただければと思います。
○出原参考人 ありがとうございました。
○菊池部会長 そういうことですので、ぜひお寄せいただきたいと思います。自治体の意見を集約していただいて、今も貴重な非常にきめ細かな御指摘、御意見をいただきましてどうもありがとうございました。
○出原参考人 ありがとうございました。
○菊池部会長 議題3については、最後にまとめてコメントを事務局からいただきたいと思います。
 それでは、小林参考人お願いします。
○小林参考人 本日は、代理での発言機会をいただきありがとうございます。
 本日は、担い手である人材を確保するための処遇改善と財源の確保を強調しておきたいと思います。
 まず資料1の自立相談支援事業の機能強化に向けては、既にご指摘のあった体制面、とりわけ人員体制の強化を図る支援を国として行うことが包括的かつ伴走型支援のさらなる強化につながり、関連して支援会議の設置を促すことにもつながるのではないかと思っています。
 こうした人材確保のためにも、国としても担い手の処遇改善と雇用の安定を図り、人材の確保、定着を進めていくこと、それと同時にそのための財源確保が重要と考えます。また、その一環で支援員の賃金実態を把握することが必要と考えております。
 これらと同時に、資料2の「被保護者に対する自立支援のあり方について」も、やはり人材確保のための処遇改善と財源確保が重要と強調したいと思います。
 その他、資料1に沿って4点だけ簡潔に触れます。
 一つは、地域によって多くの外国人の方が暮らしていますので、地域特性に応じた体制強化や、その好事例の横展開が必要と考えております。
 次に、連携を強化していく機関として、資料1の18ページ目のグラフでは地域包括支援センターの割合が29.3%で、思ったより高くないという印象を私どもは持っていますが、相談支援機関という形態の連携として、例えば今後高齢者が増加していく中で地域包括支援センターとの連携強化を進めることが必要ではないかと思っております。
 また、ICTの活用ですが、相談しやすい環境整備につながればと思いますし、同時に相談を受ける側に対してもICTに関する研修を必要に応じて行えるよう、支援が必要ではないかと思っております。
 最後に委託に関してですが、事業の安定的運営やサービスの質の向上、それから継続的な支援、人材の確保やノウハウの継承、これらを図る観点から価格競争や単年度実績で評価するのではなく、一定期間事業を委託して支援の質や実績、地域とのつながりなど、総合的に判断することが必要ではないかと考えています。
 以上になります。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、勝部委員お願いします。
○勝部委員 まず人員体制の問題なのですけれども、先ほど岡部委員からもお話がありましたが、例えば人口割り、それから今回のコロナ禍での貸付け件数などについては都市部に相談が集中しているということで、大変大きな課題を抱えつつ、そしてこれからも、今も本当にまさにフォローし始めているということで、返済できなかったら終わりですかというとそういうことではないので、むしろこれからその人たちの生活再建はどうしていくのかということをきめ細かに対応していく必要があるというふうになってきました。
 コロナが大きな問題を社会的に映し出したということなのですけれども、これは実はそういう人たちが潜在的にいても、人口が大きな町ではなかなか掘り起こしが十分できていなかったとか、SOSを発見し切れない。それは人数が3人とかではできるわけがないので、そういうふうなことを考えますと、もちろん地域と一緒に発展をしていく体制をつくっていくということも重要なんですけれども、人口比に合わせる、あるいは相談件数と連動できるような体制づくりをしっかり考えていく必要があるというのは、次の展開としては重要かと思います。
 その上で、地域づくりとか、それからいろんな課題、支援策を開発していくというときに、プラットフォームの設置が大切ということで9ページに書かれていますが、プラットフォームをつくって何が課題かということを話し合っていくときの肝になってくるのはやはり支援会議だと思います。はざまの問題であったり、本人同意が得られないような課題でも、世の中、地域としてどうやってこの問題を解決していくか。ここをみんなで共有していかない限りは、結局相談支援機関がインフォーマルに助けていくということが進んでいくだけであって、町の課題としてそのことが共有されて支援策を全体としてつくっていくということになり切らないということが考えられますので、プラットフォームをつくることと支援会議というのはやはり必須にしていく必要があるのではないかと思います。
 それから、ケースワークの民間委託の話ですが、部分的な課題だということは言われているのですけれども、高齢者分野、障害者分野、児童分野、どんどん民営化が進み、困窮でも多くの民間委託ということになる中で、やはりこのセーフティーネットの部分が自治体としてどのくらい責任が持てるのかというところが非常に曖昧になっていくのではないかということを思います。実際に何が起こっているかが市役所の中でなかなか見えなくなっていくという中で、最後のとりでの生活保護という部分までもが民間委託化していくような形になっていくと、命を守るということの責任においてどうなっていくんだろうという不安が非常にあります。
 それから、最後は雇用の問題なのですけれども、やはり支える人たちが単年度契約であったり、有事の契約であったりということで委託をされていく中で、年限が非常に短い働き方であったりということが続いて、何度もこの場面でもお話ししていますが、3月までは支援者だけれども、4月以降は相談に来る人になっているというふうなことはどこの場面でも起きてしまうような、こういう不安定な労働条件の中では質の高い生活困窮の支援というのは難しいだろうと思いますので、ここの在り方というのも今後しっかり考えていくことが必要だと思います。
 それで、生水さんが先ほどちょっと言われた大学進学がぜいたく品かどうか。これは直接今回の中身のところとどうなのかというのはあるんですけれども、子供の貧困の問題、子供たちが社会の中でどう生きていくのか、困窮の問題を考えたときに貧困の連鎖を切っていくというところでもこの大学ということ、進学を選べた子たちが体を壊して辞めていくとか、生活保護になってそこで辞めざるを得ないということを社会としてそういうふうに決めていくということは一体どうなんだろうと、非常に切ない思いをして聞かせていただきました。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、竹田委員お願いします。
○竹田委員 ありがとうございます。
 櫛部さんの隣の町でして、同じ釧路ではございますが、実は違う自治体にはなっていますので違います。今日は櫛部さんのすばらしいお話も聞かせていただきましたので、資料2の論点に沿って発言をさせていただきたいと思っております。
 先ほどから、出ていますけれども、自立支援プログラムが今後の課題として挙げられていますが、やはり法の理念とこれから自立支援プログラム、そのKPIをどのように設定していくのかというところが一つの大きな課題ではないかと思っております。
 2点目として、今後、多様な取組を一層進めるに当たっての課題というところでございますが、この例示として書かれている対象者毎に考えますと、制度毎に自立支援に取り組む機関というのは多々ございまして、むしろその自立支援に取り組んでいない機関というのはないわけで、そういった関係する機関との連携ですとか役割分担、その自立支援という捉え方も様々だったりしますので、そういった福祉の関係機関との連携の在り方をどう整備していくのかということも一つのポイントなのかなと思っております。また、生活保護世帯に限定すべきなのか、それとも生活保護世帯に限定せず、ある程度一般サービスとしての展開も考えていくのかという辺りも法律的な部分であったり、必ずしも被保護者だけでカテゴライズする必要もないのかなとも考えますので、そういったところの在り方がポイントになるのかなと思っております。
 3点目として、ケースワーカーの役割ということで述べさせていただきますと、自立支援プログラムの選択肢があるという中で、本人自ら選択できる状態というのがやはり大切なのだろうと思っています。先ほどのお話の中でも、自立支援に資する新しいプログラムを開発していくですとか、自らが選択することが難しい場合に本人の力を引き出していくですとか、本人の強みを評価したりする様々な役割、さらにはその関係機関と連携する上でファシリテーターだったりコーディネーターとしての役割など、多々求められていて、そのケースワークというよりもソーシャルワークの機能だったり役割を発揮していくということが今の時代では求められているのかなと思っておりまして、そういったことをきちんと明文化していくということも必要なのかなと思っておりますし、併せて業務の負担を軽減していくということも必要なのかなと思っております。
 続いて、福祉事務所と関係機関の役割、連携ということを考えていきますと、私は社会福祉士として、後見人として実際に被保護者世帯の方と関わる中で、実質やはり後見人が選任されたりすると後見人任せになっているというのも実態かなと思ったりしています。
 それで、今回の資料の中にあるような、例えば被保護者への支援はケースワーカーの役割として認識されているというのは、これはやはり現場の本音といいますか、実態、潜在的にそのように認識されているということが多いのかなと思いますし、一方で、その業務範囲以外のこともケースワーカーに押しつけられるということとして、例えば入院したときの身元保証人の役割というのはいまだに求められたりですとか、何かトラブルが発生したときに仲介を求められたりということになると、やはり周りの相談支援機関がケースワーカーに対して期待する役割と、ケースワーカー自体が自認している役割に乖離があって、そういったところが連携する上でうまくいかないポイントの一つになるのではないかと思っています。
 また、見直し案の中で基本的には業務負担を図っていくということでは賛成ではありますけれども、ただ、一方で、会議体においても会議に参加しないケースワーカーがいたり、そもそも参加しないということで呼ばないという実態もあったりとか、開催する会議の目的も様々でして、単に参加して終わりということになると非常に手段が目的化していく懸念もありまして、もう少し細かな検討が必要なのかなと思っております。
 最後になりますけれども、やはり関係機関と関係を進める上でもケースワーカーの役割というのはこれまで以上に増えていくわけですし、さらに自立支援プログラムを充実させていくということになると、体制の整備も含めて様々に見直しをしていかなければならないのかなということを考えております。
 ただ、生活保護を受けられている方の福祉を考えると、お互いに押しつけ合うのではなくて、相互に連携しながらきちんと支援につながっていくような実効性を確保する上でも明文化、見直しをしていく必要があるのではないかと思っております。
 以上です。ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、堀委員お願いします。
○堀委員 どうもありがとうございます。労働政策研究・研修機構の堀と申します。
 私からは、議題(2)の37ページ、「特に御議論いただきたい事項」の上から2つ目の○にあります連携につきまして、私は若者の研究者ですので地域若者サポートステーション、サポステとの連携を基に発言をさせていただきたいと思います。
過去には、困窮支援とサポステというのはすみ分けをとても強調されておりまして、率直に申し上げて連携やリファーなどはあまりうまくいっていなかったように感じております。
 しかし、先般、困窮とサポステの連携を促す通達が出まして、とてもいいことだとは思うのですけれども、実際の連携について調べてみますと、かなりまだ地域差があり、またその支援の重複を恐れるあまり、支援に踏み込めないでいるというような実態もございます。ぜひ、さらに積極的に困窮支援と他機関との連携を進めていただければありがたく存じます。
 また、連携するといいましても、例えば同じ人に全く同じ支援を別々の機関がするという支援は避けなくてはいけないかもしれませんけれども、サポステのジョブトレーニングを使いながらパーソナルサポートセンターが就労支援をしたりですとか、あるいは一旦サポステから困窮支援にリファーしたとしてもフォローを継続するなど、ある程度重なりを持つ支援というのも有効ではないかと感じるところであります。
 サポステと困窮との連携を基に発言いたしましたが、他機関との連携につきましても同様の問題が生じる可能性があると思いますので、ぜひ重なりを持つ支援につきまして御検討いただければ幸いです。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 ただいまのご発言で感じたのですが、障害者施策でも今回雇用と福祉の連携ということでかなり進められているところで、こちらの分野でも雇用施策との重なりというのは確かに意識していく必要はあるのかなと思った次第でございます。ありがとうございます。
 すみません、お待たせしました。渡辺委員、お願いします。
○渡辺委員 ありがとうございます。
 私は資料2の34ページでしょうか、「被保護者の抱える課題について」というところと、少しお話ししたいと思うのですけれども、やはり社会がすごく大きく変わる中で生活困窮に陥るメカニズム自体が非常に急速に変わってきているのだと思います。生活保護ですとか生活保護受給者の方で、働けるし、働く能力はあるし、働く意志もあるし、働く意欲もあるんだけれども、働けない。今、働けないのでお金がない、生活ができない。生活の保護が必要だという方たちが非常に多く出てきていて、そこに関しては手厚い自立支援とか自立相談がなくても、何か状況が変わればうまくいく。
 例えば、それが一番如実に出ているのはコロナ禍の非正規の一人親家庭のお母様方で、本当にコロナということで仕事に行けなくなってしまうと、貯蓄も全くない中で生活ができなくてすごく厳しい。それで、子供も育てられないというふうになっています。
そういうときに使えるものというのがやはりこの国にはなかなかなかったので、住居確保給付金とか、ああいうものがありましたけれども、要はすごくそこで早く介入ができれば状況はよくなったのに、今はどういうことになっているかというと、2年以上そういうことが長引いている中で、非常に皆さんメンタルもやられている。
 ここに、被保護者の課題が重複しているというのがあるのですけれども、最初の時点では例えば一人親だけだったり、本当に課題とも言えないようなことだったのかもしれないのですが、なかなかそこで使えるものがない結果、メンタルも悪くなってしまいますし、就労もできないですし、ここにはないですけれども、子供が不登校になってしまったり、子供が中退したり、子供が不良になるとか、そういうふうな課題がどんどんくっついてしまっているので、五石先生もおっしゃっていらっしゃいましたが、本当にもう少し早い段階から介入できる仕組みというものが今の社会の中では必要になってきているのではないかと思います。
 生水委員のおっしゃっていた大学生の奨学金の問題も、社会が高度化して大学に行ったほうがより生活が安定する中で、チャンスはすごく出てきているのに、そこに的確なものがないということだと思います。
 この問題は、給付型の奨学金を受けながら困窮の人も大学に行けるようになったのは非常によくなったんだけれども、様々な事情でその方の生活がちょっと不安定になったときに、支給型の奨学金を受ける権利を持ったまま休学したり、そういったことが非常に今は難しくて、停止になってしまうと返済が生じてしまう。うちで見ている方でも1人いらっしゃるのですけれども、一人親家庭でお母様が濃厚接触で物すごく大変だったので、自分がアルバイトを増やした結果、単位が足りなくて留年になってしまうと、要は成績不良ということで給付型の奨学金は受けられなくなってしまうという問題が出てきています。
 でも、そこは手厚く、給付型の奨学金も受けながら生活保護も受けられるようにすることがいいのかというと、片やすごく頑張っていて、給付型奨学金を受けずに貸与型の奨学金を借りながら物すごく自分が一生懸命アルバイトをして大学生活を送っているという学生も多い中で、そこをどう考えるのかというのは非常に難しい問題だと思います。
 これに関して言えば非常に崖が大きくて、給付型奨学金を受けて学費とかももらいながらさらに生活保護で安定した生活を受けるか、全てを失うかという二択しか今はないのですけれども、例えば安心して休学ができて、体調が戻る間は生活保護を受給して、戻ったらまた給付型の奨学金をもらいながら大学に戻れるようにするとか、もう少しきめ細やかな設計があればよりよいのではないかと考えます。
 お伝えしたいのは、例えば困窮の一人親ですとか、ワーキングプアの問題ですとか、このような貧困家庭から出て行くお子さんの問題ですとか、困窮の人たちが非常にたくさんになってきていて、ただ、そこに対して今、制度があまり追いついていないということがあるので、少しそこの多様な方たちが困窮に陥るんだという中でどのような取組ですとか、どのような制度がよいのかということを考えていくことが必要だなということを今日の議論を伺いながら思いました。
 私のほうからは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 浦野委員、お願いします。
○浦野委員 ありがとうございます。4点ぐらいになるかと思いますけれども、ちょっとまとまりのない話になってしまうかもしれませんが、御容赦いただきたいと思います。
 金銭的、経済的、職業的な自立以前に日常生活の自立であるとか社会的な自立が必要、そこをもっと大切にするというお考えは、ごもっともな考え方だと思います。それには何よりもセルフエスティームを高めていく、その機会をきちんと確保していくということが非常に重要なのだろうと思います。
 私は、入所施設を法人で経営しております。養護老人ホームなどを経営しておりますが、その経験から言いますと、平均年齢でも八十何歳という方たちですから、今さら就職という話はあまり考えにくいんですけれども、そういう中でいかにしてセルフエスティームを高めていくかということを考えますと、例えば間もなく選挙がありますけれども、施設では不在者投票制度といって施設内で投票できるのですが、私どもは車を用意してできるだけ投票所に行きましょうというようなことをやったり、あるいは秋になると赤い羽根の共同募金活動がありますけれども、やはり養護老人ホームのお年寄りが駅前に出て街頭募金活動をやるとか、そういう形で社会との接点を持つ。
 そういうことが利用者の生活の質というものを非常に高めていくというふうに私は思っているのですけれども、そういう意味では施設ではない、この生活保護のクライアントにとっても、いかにしてまず自分の社会的な居場所であるとか、セルフエスティームを高めていくということを重視しないと、なるべく早く経済的自立というふうに焦るのはよくないんだろうなと、そんなふうに思っております。
 2点目ですけれども、ケースワーカーの訪問の話が何度か出ているんですけれども、みなし訪問とでも言うのでしょうか、これは私は現場のケースワーカーの皆さんがどう考えているんだろうかということがむしろ気になって、もしケースワーカーの方たちが、こんなに必要ないのに何回と決められているから行かなければならないので、無駄なことをやっているな、などという認識で本当に必要ないというのであれば、それはむしろ訪問回数を減らすというのも一理あるかと思うのですが、限られた人員、戦力で、本当は行かなければいけない、本当は家庭訪問をもっとしたいと思っているのに、みなし訪問で数を減らしてつじつまを合わせるという話であれば本末転倒なのだろうと思っております。
 それから、ケースワーカーに関連してもう一点ですけれども、ケースワーク、国民の生存権を守る公権力の立場として、これはきちんと福祉事務所でやらなければいけないんだという御議論は私も大変ごもっともだとは思うんです。
しかしながら、日本の行政機関の人事制度の中で、ケースワーカーの専門性というのを担保する仕組みがどれだけあるのだろうかという疑問はあります。数年で全く異なる分野に異動していく人たち、2、3年のローテーションで回していて、知見の蓄積、スキルの充実はなかなか図れない。これを、福祉専門職を専門職として組織の中で維持していく。一般の行政職とは違う専門職ですという位置づけでスキルを構築していきながら福祉の仕事をしていく。その体制をきちんと福祉事務所が構築できるのであれば、私は行政機関できちんとやるべきだ。
 もしそれができないんだとしたら、安かろうのアウトソーシングには反対ですけれども、ある種その福祉専門職集団というようなものを社会的に育成していって、例えばあまり大きく増えてはいないのかもしれませんけれども、独立社会福祉士事務所であるとか、そういう皆さん方をもっと育成して、そこにきちんと仕事を委託する。
 もちろん、その仕事については監査をきちんとやっていくということは必要ですけれども、いずれにしろ行政直営でやるからアウトソーシングをするかという議論ではなくて、いかに福祉の専門性を持った人材を専門職として確保していくかということが非常に重要なのではないかなと思っております。
 最後に4点目、社会資源の連携です。前回も申し上げましたけれども、これを私はぜひ市町村の社会福祉協議会のレベルで頑張っていただきたいと思っております。もちろん、我々自身が社会資源として持っているものをしっかり提供していくということは重要なんですけれども、音頭を取ってくださるところが必要で、その音頭を取ってくださるところとして最適なのは、従来は我々の活動としては都道府県内での事業を中心にやってきましたけれども、これから市町村単位でやっていくということでは、市町村の社会福祉協議会としっかりタッグを組んでやっていきたいと思っております。
 以上でございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、池永委員お願いします。
○池永委員 全民児連の池永でございます。私のほうから少しだけ発言させていただきます。
 ケースワーカーさんのことですけれども、36ページに「関係機関から被保護者への支援はケースワーカーの役割と認識され、関係機関の対応が消極的となり、連携がうまくいかないという課題がある。」ということが書かれていますが、この件に関しては同感です。
 私たちは生活困窮の方から相談があれば訪問、関係機関への繋ぎを致しますが多くはありません。
 地域の被保護家庭へも通常の民生委員児童委員活動として高齢者、障害者宅に友愛、見守り訪問をいたします。ただ若い世代の被保護者への訪問は、ケースワーカーに任せているような状況です。
 福祉事務所から生活保護開始、廃止の連絡はありますが、ケースワーカーから訪問の要請や詳しい情報の提供はありません。病気など色々問題も抱えている方だと思います。これからは福祉事務所と連絡を密にして情報も共有してケースワーカーと協力して支援をしていきたいと思います。
 ケースワーカーは2年で担当が代わります。事情は理解できますが、高齢、障害のある者にとって訪問回数の関係もあり、なじみ、信頼関係を築くのは大変で時間もかかると思います。
 先日ある高齢軽度知的障害の女性から聞かれました。あの人(ケースワーカー)代わったの?と残念がっていました。家庭訪問で色々聞かれるのも嫌だったけれど、それでも話ができるようにもなってきていたようです。
 コロナ禍でケースワーカーの家庭訪問もできなくなっていましたがこの頃やっと再開しています。
 私の意見です。人と人の信頼関係が大切なケースワーカーさんの仕事の業務委託は賛成できません。
 まとまりませんが、私の考えは以上でございます。ありがとうございました。
○菊池部会長 それでは、宮脇委員お願いします。
○宮脇委員 鳥取県湯梨浜町長の宮脇でございます。まずもって遅参したことをおわび申し上げます。私からは、日頃考えていることを1、2点申し上げさせていただければと思います。
 我が町など小さな自治体では社会福祉士のような専門職が少なかったり、限られた職員で生活困窮支援や被保護者への自立支援の業務を兼務している場合が見られます。対象者へきめ細かな支援を行えるかは、職員の専門的な知識習得の有無や担当の職員数に大きく影響される面があると考えております。
 また、生活保護の外部委託に関しましても、小規模な自治体では被保護者も少なく、その費用対効果の面で課題があることから、多くの場合、直営で業務を行っているという実情もございます。山間地域や離島等だけでなく、やはり各町村もそれぞれ課題を抱えています。国におかれましては、地域の実情に応じた人材確保などの支援をお願いいたしたいと思います。
 それから、先ほどケースワーカーのことについてお話がございました。ケースワーカーの業務は、被保護者への課題が多岐にわたる中で多様な役割を求められていると思っております。1つのポストに3年間というのは、私どもの役場でもそのように基本的にはしております。
 しかし、専門職の中にあっては、例えば防災ですとか、今のこのケースワーカー職をやる人ですとか、そういうのはそれより長くやろうという気持ちで、本人の気持ちもありますけれども、やっております。
 しかし、それも必ずしもなかなかうまくいく方法ではないなという局面にあったりもいたします。
 そのようなことから、業務の負担軽減につながるような対応について、引き続き今後も御検討いただければありがたいと思っております。ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 今、一巡目の御意見をいただいておりますが、まだ御発言いただいていない方で御発言がおありの委員はいらっしゃいませんでしょうか。
 ございませんようでしたら、お待たせしました。岡部委員、お願いいたします。
○岡部委員 どうもありがとうございます。では、私は議題2並びに議題3について意見を述べさせていただきたいと思います。
 1点目。先ほど五石委員から出された福祉事務所の関係で補足させていただきます。1953年に福祉三法下で福祉の総合的な機関として福祉事務所運営指針が出されています。そして、1971年に福祉六法下での福祉の総合機関として新福祉事務所運営指針が出されています。。その後、2000年に社会福祉法が制定され、措置から契約に移行するなかで行政の福祉総合相談機関としての位置づけということになりますが、それ以降は出されていません。基本的な考え方・組織・業務・人的体制は新福祉事務所運営指針が示していると考えていただいてよいと考えます。
 2点目。27条の2についてです。2005年から自立支援プログラムの導入が図られました。またそれに先立ち1999年に地方分権一括法が制定され、それまで機関委任事務として規定されていた生活保護法は、そこで法定受託事務、それと27条の2が自治事務となり、自立支援プログラムを自治事務として取り込むことになりました。
 社会福祉法の制定を受け生活保護法においても日常生活自立、社会生活自立、経済的自立と自立を非常に幅広く捉え、この自立支援プログラムが導入されることによって、これら自立に向けた多様な支援が行われるようになりました。
 櫛部さんが先ほど説明されたように、自立支援プログラムが開発・実施されていくことになります。生活保護の受給世帯の現状と今後を考えますと、日常生活自立、社会生活自立に向けた支援をより一層強化していく必要があると考えます。関連専門職、機関・団体等と連携・協働し、生活保護ケースワーカーが中心となり包括的な支援を行なっていけるよう取り組みの充実・強化を図っていく必要があると考えます。
 生活保護ケースワーカーは総合的相談、福祉六法担当職員という位置づけがされています。福祉六法に精通するする専門性を持った職員が支援を行っていく必要があります。そのための対策を講じていく必要があります。
 議題の3について、先程の関連で、地方分権一括法で法定受託事務と自治事務ということになりましたが、最低生活保障と最低生活保障に伴う指導指示は法定受託事務の位置づけ、相談助言等に関わる業務は自治事務となっています。そのことを念頭に置き、生活保護業務の負担軽減を慎重に取り扱う必要があると考えます。
 これは、先ほど生水委員がおっしゃられたように、最後のセーフティーネットとして、最後の拠りどころとして生活保護行政が住民・国民の生活を守る・支えるということで機能していただくことが、必要であると考えます。
 その上で、出されている職員の生活保護業務の業務負担軽減に関する調査研究を踏まえて、まず最初に行わなければいけないのは職員の量的な充足です。正規職員の増員を図っていくことが基本であると考えます。自治体によっては、会計年度任用職員を多く雇用されている所がありますが、できる限りそこは会計年度の任用職員の身分や業務の負担を考え、正規職員の増員を先ず図るということが必要ではないかと考えます。
 次に、生活保護業務の負担軽減を、支援の質の観点からとらえるならば、生活保護の業務は生活困窮者自立相談支援機関と同じように、その機関内でで業務が完結するということはありません。関連専門職、機関・団体等と連携・協働し生活再建を図っていくことになります。
 これらの機能を果たすためには支援の質を高めていく方策が必要です。これは仲介機能、調整機能です。コーディネーターの機能を業務として位置づけなければならないと考えます。また相談機能、側面的支援機能、権利擁護的機能を充実・強化していくことも必要と考えます。
 通知の改正において家庭訪問の見直し方針について基本的にはこの方向で良いと考えます。ただし先程お話ししたように、生活保護制度は最低生活保障の観点から生活の実態を把握し生活需要を検討する必要があります。また、世帯個々の生活課題に対して対人援助や支援の観点から、家庭訪問や関係機関の訪問は業務上必要不可欠です。
 そこで、今回の通知改正については、家庭訪問の取扱いの見直しについては、基本は現業員であるケースワーカーの家庭訪問が望ましいと考えます。それを代替、補完するということで関係機関・団体等と連携・協働して進めていくことが必要です。
また見直しの方針では、訪問格付基準は各実施機関においては年度の訪問計画を立てていますが、これを機械的に行うのではなく、必要に応じて家庭訪問を実施する、またあくまでもこれは最低限の基準であることを記していただければと考えます。
 それと、今日の改正案にあるように関連する会議体に参画していくことを促していくことも方策の1つと考えます。なお会議体においては、個人情報を共有する、支援情報を共有という側面があります。もう一方で、個人情報の保護、実施機関等の組織の情報保護の観点から、会議体でプロテクトできるような仕組みをつくっていただく必要があります。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 時間がちょっと経過しておりまして申し訳ございません。会場から、新保代理は資料もお出しいただいていますので、御発言をどうぞお願いします。
○新保委員 ありがとうございます。新保です。
 この資料に基づいて簡単に、「生活保護におけるケースワーカーの役割」ということでお話をさせていただきます。
 ケースワーカーというのはそもそも誰かということなのですけれども、社会福祉法第15条に規定されている「現業を行う所員」で、この所員は社会福祉主事でなければいけないと言われています。
 次のスライドなのですけれども、「ケースワーカーの役割」を簡単に図式化しました。法の目的である最低生活保障と自立の助長という2つを目指して様々な活動を行うのですが、そのことが憲法第25条の生存権の具現化という理念につながっていく極めて大切な役割を担っている方たちです。
 ではケースワーカーはどういう姿勢で支援をしているのかということで、これは全国のケースワーカーさんが皆さん持っていらっしゃる『生活保護手帳』なのですけれども、毎年最初のページに【生活保護実施の態度】というものを書いています。その冒頭に「あたたかい配慮のもとに生きた生活保護行政を行うよう、特に次の諸点に留意のうえ」とありまして、「被保護者の立場を理解し、そのよき相談相手となるようにつとめること。」というようなことも入っています。ケースワーカーは生活保護法の実施に向けて、まず法令の遵守から一人一人の立場に立って「常に研さんにつとめ、確信をもって業務にあたること。」というところまで、こういう姿勢で、態度でやっていくということが明らかになっています。
 次ですが、これはこの部会にもいらっしゃる岡部委員が生活保護における社会福祉実践のプロセスを生活保護の相談援助活動の具体的な内容に照らし合わせて書かれていたものです。とても具体的に、何をするのかということが分かる流れになっています。
 次は「ケースワーカーの役割」ですが、1つとても大きいのが生活保護法の第4条に補足性の原理です。条文を読んでいただきますと「その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」とありまして、簡単に言うと、足りないところを補う制度で、その方が何を必要としているのかということを把握して、その足りないところを過不足なくきちんと保障していくということです。
 確認をしなくてはならないのは、資産であったり、稼働能力に関連してということなのですが、通常であれば人には話したくないような非常に繊細な情報をお話ししていただかないと保護の実施ができないという、とてもデリケートな部分があります。高度な個人情報を扱って対応していきます。それをケースワーカーがやっています。
 そのように、本当にかなりオーダーメードに、必要に応じて対応しているのが、この生活保護の仕事の業務のメインかなだと思っています。
 2のところなのですが、「最低生活保障」と「自立の助長」の両面からアセスメントを実施しています。先ほどの岡部委員の図を見ていただくと分かりますが、生活保護以外の支援とかサービスの利用も含めて、被保護者本人の主体性や意向を尊重しながら「援助方針」を策定し、援助活動を実施しています。実施要領上、「関係機関と必要な連携を図ること」とされておりまして、関係機関との連携や協働によって相談援助活動は行われています。
 この被保護者の相談支援や生活保護の業務は、生活保護だけでは全く完結しなくて、ケースワーカーは、あらゆる機関の方たちと一緒にお仕事をしていくというような、もともとそういう性格のものではないかと思っています。
 次は「ケースワーカーの役割」なのですが、ケースワーカーが法の目的を達成するための諸業務を行うためには、社会福祉に関する知識や援助技術が本当に不可欠です。ゆえに、ケースワーカーは社会福祉主事であることが求められているのではないかと思います。
 先ほども、既にソーシャルワーク機能を担っているのではないかというお話がありましたし、岡部委員の著書のところでも『福祉事務所ソーシャルワーカー必携』というように、かなりソーシャルワーク的なことをやってきてはいますけれども、ここで言うところの「ケースワーク」というのは法の目的の達成に必要な相談援助や支援のことと理解できます。
 ケースワーカーが行うケースワークは、個別課題ごとの課題解決のための専門性を有する相談支援やサービスではありません。ケースワーカーの主な役割は、利用者が必要とする他施策による相談支援とかサービスが利用できるようにコーディネートしながら、本人の意向を尊重した相談援助・支援を実施することではないかと考えられます。
 ですので、ケースワーカーがいるからほかの支援は必要ないとか、ケースワーカーがいるから関わらなくいいというようなことではなくて、個々の利用者の状況に即して他施策による相談支援とかサービスが他の住民と同様に利用できるということがとても大事ではないかと思います。
次 は「ケースワーカーの役割」のまとめです。「被保護者」に関わる全て、例えば家族的機能とか個別課題の解決のための専門的な相談支援をケースワーカーに求められても、恐らくそれは本来の役割ではないので対応が難しいと思います。
 もう一つは、ケースワーカーは指導をするというような認識も持たれており、ゆえに「管理者」とか「指導者」としての役割が求められてしまうことも少なくないようですが、こうした求めが非常に利用者との関係構築の妨げになったり、利用者に不利益をもたらします。
 つまり、今、何に困っていて何が必要なのかという相談をケースワーカーにしないと、ケースワーカーは何が足りていて何が足りないか、どうしたらいいのかということを知ることができません。それは、今、困っていることだけではなくて、例えばお子さんのいる世帯であれば将来の進学を考えて早め、早めに準備をしたりしなければいけないこともあります。ケースワーカーは指導されるから嫌だというような関係がつくられてしまうと、本当に必要な保護の実施ができなくなり、生存権保障というところにも、影響すると思います。
 ここには指導・指示の条文を載せているのですけれども、指導・指示というのは「できる規定」で、「自由を尊重して必要な最小限度にとどめなければならない」、「意に反して強制し得るものと解釈してはならない」となっています。ケースワーカーは指導する人と理解されていたり、ケースワーカーは指導ばかりしているということがもし実態としてあるのであれば、それは違うのではないか。本来のケースワーカーの在り方というものをもう少しきちんと共有していく必要があるのではないかと思います。ケースワーカーも援助者であり、支援者である。それが基本姿勢だと思っています。
 「被保護者への対応はすべてCWに」となってしまうと、利用者だけではなくてケースワーカーや制度が孤立してしまいます。ゆえに、制度とかケースワーカーの役割の理解がすごく大事だと思っています。理解を促進するための取組は、まず福祉事務所とかケースワーカー、実施する側のほうでなされないといけませんし、外に発信するということを、やっていかないとならないと思います。
 今日は奥田委員からちょうど資料が提出されています。奥田委員の資料の12ページに、「生保は指導がメイン、生困は伴走がメインとなっている」と書かれていたりします、この⑮のところですね。もしこういうことがあるのであれば、本来ではないのかなというところです。一方で16、23と書いてあるところの⑪で、給付や貸付ではどうしても相談が「指導的」になると書かれているのですが、生活保護の難しさというのはそこだと思います。これは、生活困窮者支援で給付や貸付を担当されたときに、どうしても相談が給付などを伴うと指導的になるという御指摘なのですけれども、まさにそういう難しさを生活保護の実践のほうは持ちながらやっているということだと思います。
 給付をする支援も、それがない支援も、両方とも私は極めて関係構築が難しいと思うのですけれども、それらの支援の基本的な倫理とか基本姿勢は同じではないかと思っています。本来の地方公務員の方の役割は、住民のためにお仕事をする、地方自治法でいうところの「住民の福祉を増進する」というお仕事です。櫛部参考人もそうなんですけれども、私は、本当にたくさんの、誇りを持って働く自治体職員、ケースワーカーの方たちと出会ってきました。
 ただ、今、生活保護に対する誤解があったり、ケースワーカーの役割についてなかなか正しい理解がなされていない中で、住民のための仕事をしたいと思っている公務員の方たちの思いがストレートに届いていないのだとしたら、それはとても残念なことだと思います。
 生存権を支えていくという生活保護制度はとても大事な制度だと思いますので、なぜ本来の在り方の理解が広がらないのか、利用を躊躇する方々のお気持ちなどもよく受け止めながら、この制度をよりよく実施していくための方向性というものをここで検討できればと思っております。
 以上です。ありがとうございました。
○菊池部会長 どうもありがとうございました。
 時間が過ぎておりますので、先ほど奥田委員もいらしていたのですが、またちょっと出てしまわれたので、今後またこのテーマについても議論は続きますので、そのときにでも御発言いただければと思いますし、今日のところは奥田委員は資料を提出されていますので、そちらを皆さんも御覧いただければと思います。
 そういうわけで、今日は3つの議事につきまして御意見をいただきましたが、1つ目、2つ目につきましてはいただいた御意見等を踏まえて事務局でも検討していただき、また、議論を深めていきたいと思ってございます。ありがとうございます。
 そして、3つ目の議題についてでございますが、こちらも様々な御意見をいただいたところでございます。駒村座長がいらっしゃればと思うのですが、駒村委員もおられないので、たまたまというか、私も研究会の委員を拝命しておりましてその議論に参加しておりましたが、恐らく懸念、心配については多くの皆様と共有した中での議論をこの研究会で進めて参ったつもりでございます。
 それで、8名の委員の中で3名は自治体の方に参加をいただき、さらに自治体、それから社協などの支援団体などにヒアリングを重ね、それも踏まえて相当シビアな議論を重ねて、ケースワークの質を上げるという基準を立てて、その中でどこまで何ができるかというかなり激論を交わしてこの線でまとめさせていただいたという経緯があったということは、多分駒村先生にお伝えしてもそうだと言っていただけると思うのですけれども、一般論としては付託した事項について研究会での検討がなされたと。
 その検討は基本的には尊重するというのが原則ではあると思いますが、今日は皆様から慎重論も含め、出原参考人からはまさに自治体のお立場からの非常にきめ細かな御指摘、御意見をいただきましたし、岡部委員からも前提条件つきというようなお話がございましたので、私としてはそういった御懸念や御意見も踏まえてもう少し丁寧に、これは結局通知を発出してという形になると思いますので、その中でどういった配慮をしながら進めてもらうかというもう少し丁寧な形を事務局から御提示いただいて、基本的には進める方向で今日のところはお認めいただいて、ただ、その具体的なもう少しきめ細かな方向性については改めてこの部会でお示しをいただくという形で、その上で具体的に自治体に対して進めていただくという形でどうかと思うのですが、事務局はいかがですか。
○池上課長 保護課長でございます。
 ただいま部会長からお話のあったような形で、次回、改めて留意すべき事項などを整理した上でお示ししたいと思います。
 すみません。今日は時間を超過していて恐縮なのですが、1点だけ、誤解がないように少し補足させていただきたいと思います。
 生水委員のほうから、ケースワーク業務を外部委託することによって公的責任が後退することがあってはならないというような御意見を頂戴しました。
 今回御議論いただいたところで、後ほど御覧いただければと思うのですけれども、資料3の3ページで外部委託についてどういった全体像になっているかというのをお示ししているのですが、そこでは今回の訪問回数自体を外部委託するということは書かれてございません。ケースワーカーが家庭訪問する、その業務自体を外部委託してはというような話も中ではございましたけれども、そういうようなことはしないという結論になったところでございます。
 その上で、同じ3ページの専門性向上のための機会を増やすということで、関係機関との連携による支援の充実を考えていきましょうというような流れになっておりました。この調査研究の中では、物理的な負担の軽減よりも専門的知識を外部から取り入れ、質の高いケースワークにつなげることを目指すべきという基本的な考え方で御議論いただいておりましたので、関係機関と連携することによって訪問回数について柔軟化を図る余地があるのではないかというお話をいただいた次第でございますけれども、一方で、もちろんこれも前提にはなりますが、岡部委員のほうからも機械的に回数を減らすというようなものではないというお話をいただきました。
 そういった点も当然留意事項に入ってくると思いますし、そのような点も含めて、それから出原参考人のほうからも大変貴重な御意見をいただきましたので、改めて整理して事務局として資料を用意させていただこうと思います。失礼いたしました。
○菊池部会長 ということでございますが、いかがでしょうか。基本的には進める方向で、ただ、さらに事務局には細かい部分まで詰めてもう一度御提示いただくという形で、少し丁寧に進めたいと思うのですが、皆様よろしいでしょうか。御異論はございませんでしょうか。
(首肯する委員あり)
○菊池部会長 ありがとうございます。それでは、お認めいただいたということで進めさせていただきます。では、事務局のほうにはよろしくお願いいたします。
 どうもありがとうございました。予定の時間を大幅に超過してしまいましてどうも申し訳ございません。これにて本日の議事を終了させていただきます。
 最後に、次回の予定について事務局から御連絡をお願いいたします。
○進士室長 次回につきましては、7月上旬にオンラインでの開催を予定しております。正式な開催通知につきましては、別途御案内いたしますのでよろしくお願いいたします。
○菊池部会長 それでは、本日の議事は全て終了いたしましたので閉会とさせていただきます。
どうも御協力ありがとうございました。お疲れさまでした。