第2回雇用保険制度研究会 議事録

日時

令和4年6月20日(月)16:00~18:00

場所

厚生労働省 専用第22会議室及びオンライン
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館18階国会議事堂側)

議事

議事内容

○長良雇用保険課長 それでは、定刻になりましたので「第2回雇用保険制度研究会」を開催いたします。
報道の皆様の頭撮りをなさっているのであれば、ここまでとさせていただきますのでよろしくお願いします。
本日は、後に御議論いただく内容を踏まえまして、雇用保険に関連いたしますフランス制度の有識者といたしまして早稲田大学名誉教授の鈴木宏昌様、それからデジタル技術の活用に関連いたしまして、有識者といたしまして厚生労働省デジタル統括アドバイザーの柴田利則様に臨時委員として御出席をいただいているところでございます。
申し遅れましたが、私、職業安定局雇用保険課長の長良と申します。本日は、よろしくお願いいたします。
それでは、議事に移ります。本日の議題は「雇用保険制度の概要」、それから「基本手当について」の2点ございます。
まず「(1)雇用保険制度の概要」でございますが、こちらは前回御議論をいただいた内容に関連する資料を中心といたしまして、事務局から資料を2点御用意しております。順次、御説明を申し上げます。
○山口調査官 それでは、資料の御説明をさしあげます。
まず資料1でございます。前回の研究会においていただきました、主な御意見について整理をしたものでございます。
幾つかにカテゴリー分けをしておりますけれども、まず制度全体に関わるお話といたしまして、雇用保険制度の中での各制度間の代替性、補完性という観点も重要であるという御指摘ですとか、あとは雇用保険制度が生計維持者を対象としていること自体の問い直しをしないと、週20時間という線引きの妥当性を評価できない。
また、適用要件と受給資格要件のずれの問題ですとか、制度が複雑で理解しにくいといった御指摘もございました。
また、適用の考え方に関しまして、掛け捨てということを含んだ上で極力広く労働者全体をカバーすることが重要なのではないかという御指摘とか、あとは雇用保険制度の保険事故の特殊性ということをきちんと踏まえる必要があるということで、特に保険としての特質、モラルハザードや逆選択が常に入ってくる点に留意が必要であるという御指摘がございました。
次に2ページでございますけれども、「他の社会保障制度との関係」性ということで何点か御指摘をいただいております。
雇用保険制度で足らざる部分を雇用保険制度で対応すべきなのか、それともほかの社会保障制度で対応すべきなのかというところを分けて考える必要があるということ。
また2ポツ目ですけれども、雇用保険で行うべき部分とそうでない部分を切り分けた上で、雇用保険制度の中で税財源を使って対応するという議論もあるのではないかという御指摘もございました。
また、イギリス、ドイツ、フランスにつきましては、失業給付制度だけではなくて失業扶助制度ということも横目で見ながら検討すべきである。その際に、制度の基本的な考え方、理念ということも踏まえて議論する必要があるという御指摘がございました。
また、「多様な働き方への対応」といたしまして、マルチジョブフォルダー、シフト制労働者、労働者類似の働き方の方々への対応という御指摘のほか、現在労働時間で適用基準を判断しておりますが、これを仮に所得要件ということに変えるとしても、本当にそれが効果的なのかという観点からの検証が必要であるという御指摘がございました。
次に、3ページでございます。こちらは制度の各論の部分についての御意見でありますが、基本手当につきましては運用上、失業認定がどのように行われているのかということをきちんと考えていく必要があるということで、本日、後半の議題ということになっております。
特に、失業認定はハローワークへの出頭を前提としているけれども、そぐわない事例もあるのではないかという御指摘がございました。
また、以前、公的統計を使って調査をしたところ、ある程度じっくり仕事を探す期間を設けることで定着率が上がることが分かったということで、こちらは後半の議題に関連をいたしまして、佐々木先生のほうから過去の調査の結果ということを少しお話しいただく予定にしております。
次が「育児休業給付」でございます。こちらは、制度創設当初は雇用継続の機能が専らであったところ、少子化対策、男性の育休促進ということで少し目的がシフトしてきているということで、雇用保険の役割がそろそろ終わっているのではないかという御指摘もございました。
また、育休を非正規が受給できていないのではないかという問題意識の中で、必ずしも雇用保険制度から切り出すべきという単一の答えだけではないと思うものの、制度の議論が必要であるという御指摘がございました。
また、財源の構成に関する御指摘ですとか、介護休業給付とセットでこれまで給付率を設定してきたということへの留意という御指摘もございました。
以上を踏まえまして、4ページのところでこの研究会の議論の前提となる基本的な雇用保険制度の考え方、また【保険事故である「失業」の特殊性】について整理をしてございます。
考え方ですけれども、そもそも論でありますが、労働者が労働力を使用者に提供して、その対象として賃金を得て生活を営むというサイクルの中で、労働力を提供する機会が「失業」という事故を内包しているという構造にございます。
また、失業の原因でありますけれども、個人が起こすということだけではなく、ある程度不可避的な社会経済現象であるということ、また、失業の発生が労働者の生活の安定のみならず社会全体にも悪影響を及ぼすということで、国として対応していく必要性ということを整理しております。
このため、憲法27条の「勤労権」の裏づけといたしまして、失業中の労働者の再就職までの間の生活の安定を保険形式で図るということで失業保険制度が設けられております。
この点に関連しまして、自らの労働によって生計を維持している労働者の生活の安定を図る制度として、我が国では保険制度を運営しているところでございます。
また、勤労権の裏づけである失業保険の給付を受けるということで、労働の義務を負っているということ、それからそもそも想定している失業というのが労働者の非任意的な失業であるということで、失業状態から脱却しようとする意思、能力、労働の意思と能力が必要であるということを求めております。
したがいまして、「失業時の労働者の生活の保障」のみならず、「失業者の早期再就職の促進」ということもこの制度において図る必要があると考えております。
また、保険事故である失業の予防と減少に資する附帯事業ということも併せて実証することで、雇用に関する総合保険という立てつけになっております。
また、【保険事故である「失業」の特殊性】でございますが、こちらは自然的事故ではなく社会的事故ということ、また、その発生率等について事前に一定の推定を行うことが難しいという特性がございます。
このような前提の下で保険事故の危険にさらされている一定の範囲の方を強制的に保険適用し、危険を分散するという仕組みを採ってございます。
他の社会保険制度との違いということをさらに強調いたしますと、健康保険や労災保険などが「労働者の所得能力の喪失」という点について保険事故があるのに対しまして、失業保険の保険事故は「労働者の所得の源泉の喪失」ということでありまして、能力については存在をしているということであります。
また、「労働の意思」という外形的に把握が困難な要件について判定する必要があり、そのため常にモラルハザードや逆選択の可能性が存在しているということでございます。
次に、資料2を御覧いただければと思います。前回、委員からいただいた御指摘に関する宿題の資料ということで何点かつけてございます。
まず2ページは諸外国の失業扶助制度ということで、イギリス、ドイツ、フランスについてサマリーをまとめてございます。詳しくは、後ろのほうの資料で御説明をさせていただければと思います。
まず3ページを御覧ください。「ドイツにおけるハルツ改革による失業手当・失業扶助の改革」という資料でございます。
各制度について、その基本的な考え方や理念を踏まえる必要があるということで、現行の給付の形を形づくっていたハルツ改革ということを少し丁寧に資料化したものでございます。
こちらは、今から20年前頃にドイツで10%を超える高い失業率というのが続いており、失業手当の支出金額が膨らむとともに、日本の生活保護に当たります社会扶助の受給者の中に、稼得能力があるにもかかわらず働いていないという方々が一定数存在をしていたという状況にございました。このため、2002年に失業者の半減などを目的とするハルツ改革という労働市場改革が行われております。その基本理念としましては、失業者の自助努力を呼び起こし、保障を約束するというものでございました。
この改革において、旧失業手当を「失業給付I」という形にして給付日数を削減するとともに、旧失業扶助と旧社会扶助の一部を統合し、「失業給付II」というものを創設しております。稼得能力を有する要保護者は失業給付IIで、稼得能力のない要保護者は社会扶助という形で、こちらは相互排他的に要件が設定されております。
この結果といたしまして、失業保険Iの受給者というのは大幅に減り、失業給付IIの受給者というのが倍増しております。また、社会扶助の受給者数は減少しているという状況にございます。
この改革の評価といたしましては、この改革と直結しているかどうかということは別といたしまして、その後、失業率が低下し、失業者数が減少し、社会保険加入義務のある雇用者数が増加をしたという点がございます。
一方で、就業人口に占める長期失業者の手当受給割合は横ばいということになっておりまして、特にミニジョブを中心に階層固定化、社会格差は拡大しているのではないかという懸念が指摘されております。
次に、4ページで「ミニジョブの雇用代替効果」という資料を入れております。直近のドイツの労働市場に関するIABの分析というものでございます。
ミニジョブというのはアルバイトの一種のようなものでございまして、雇用機会の拡大を目的に導入された制度であり、平均月収450ユーロ以下の場合は社会保険料や所得税などの労働者負担が免除されるという仕組みでございます。
一方で、ミディジョブというのはその少し上の所得階層でありまして、ミニジョブの所得制限を超えると一気に社会保障費負担が重くなってしまうということで、平均月収1,300ユーロまでは一定額負担額を緩和するという仕組みでございます。
このミニジョブについての評価ですけれども、2019年のコロナ前には700万人の方がミニジョブとして働いていましたが、コロナ危機の2020年には600万人まで急減しております。この点につきましては、日本の雇調金に相当いたします操短手当の対象にミニジョブがなっていなかったということも関連していると指摘をされております。
また、ミニジョブが少なくとも50万人以上の通常雇用を代替した可能性があるという推計ですとか、ミニジョブ制度の導入時に意図された通常雇用への橋渡し効果は期待よりも小さいといった指摘がなされております。
これに対して、現政権の今後の方針といたしましては、ミニジョブの月収上限を引き上げるとともに、ミニジョブに対する労働法遵守に関する取締りを強化するという方針が示されているところでございます。
5ページ、6ページは「失業給付I」に関して詳細な資料をつけているものでございます。
主だったところを御説明いたしますと、5ページの適用範囲のところで月収450ユーロ以下のミニジョブは対象になっていないという点でございます。
また、6ページを御覧いただきますと、受給手続のところで、通常、失業後に受給手続を行いますが、失業前であっても今後3か月以内に失業が見込まれるという場合には失業を申請することが可能、また、失業認定の仕組みといたしましてはオンラインまたは対面で失業登録できるとされております。
実績の欄を御覧いただきますと、受給者数が75万人、支給総額が150億ユーロとなっております。
次のページに出てきます失業扶助につきましては、受給対象者数が約400万人、支給総額は142億ユーロということになっておりますので、失業給付IIのほうが受給者数が多く、また支出規模については同程度であるということになっております。
それから、自営業者に対する措置といたしましては任意で継続加入が可能な仕組みが設けられているところでございます。
7ページを御覧ください。ドイツの失業扶助制度であります「失業給付II」の概要でございます。
基本理念のところを御覧いただきますと「支援と要請」というふうにございますが、要支援者自身が最大限努力をするということがまずあり、それが尽くされてもなお支援を必要とする場合には国から包括的な援助を受け取るという考え方が基本でございます。
それから、失業給付II・社会手当の受給要件といたしましては、資産調査、ミーンズテストが課されているほか、1日最低3時間の就労ができる者という要件が設けられております。
また、注のところですが、ミニジョブや短期労働等をしながらこの手当を受給するということも可能になっております。
給付水準といたしましては、給付額は月額で単身の場合は約4.6万円、夫婦の場合は5.7万円掛ける2ということで12万円弱、これに子供がいる場合は1人当たり4万円から5万円の加算という仕組みになっておりまして、給付期間は制限がございません。
なお、その下に給付制限という欄がございますけれども、こちらは渡邊先生のほうから御指摘をいただきまして、2019年に連邦憲法裁判所で違憲判決が出ている関係で内容が変更されております。特にその給付制限の度合いがきつ過ぎるといった話でございましたので、下の2つのポツの中身については最新の状況ではないということを申し添えたいと思います。費用負担については、一般財源で賄っているものであります。
次に、フランスの失業給付制度でございます。8ページを御覧いただければと思います。
沿革といたしましては、国が法定で保険制度を法律で定めるという形ではなく、労使の代表の合意によって定められた協定を政府が承認するという形であることがフランスの特色でございます。また、2001年に失業保険手当の支給と再就職活動の一体化ということを目的といたしまして、受給者が個別に計画を策定するという仕組みが導入されました。これは、2006年にPPAEという形で統合されております。
適用範囲といたしましては民間の賃金労働者全体という形でございまして、受給要件の中で一定の期間、加入を求めていますが、これは比較的緩い、少ない日数で支給対象となるという仕組みになっております。
また、正当な理由なく自己都合退職したものではないことという要件になっておりますが、近年この部分は一定程度の方に適用拡大をするという動きが認められております。給付日数としては、割と長めの設定であるということでございます。
それから、9ページを御覧いただきまして費用負担のところですけれども、労働者もその給与の一定割合、使用者のみが保険料を納めるということでありまして、労働者保険料につきましては2019年に廃止をされており、この代替として一般社会税、CSGが充当されるということになっております。
それから、実績といたしましては受給者数が272万人、支給額としては5兆円ほどという規模感でありまして、10ページに失業扶助の実績を記載しておりますけれども、受給者数が35万人、支給総額としては3000億円余りということで、AREのほうが規模感が非常に大きいということでございます。
それから、9ページのところで自営業者に対する措置ということがございまして、一定の要件を満たす場合に月額800ユーロを上限として6か月間支給されるという仕組みが設けられています。
それから、10ページでございます。こちらはフランスの失業扶助制度、ASSの概要であります。
基本理念といたしましては、国民連帯の原理に基づいて最低限の生活保障を行うということでありまして、受給要件に、離職前10年間に5年以上就業していたこととされております。
給付額といたしましては最低で7万円というような水準でありまして、給付期間は6か月でありますが、更新可能ということで実質制限がないような形になっております。
財源は、全額一般財源ということでございます。
次に、11ページでございます。イギリスの失業保険制度であります「拠出制求職者手当(JSA)」の概要ということで11ページ、12ページに記載がございます。
沿革といたしましては、1911年に国民保険制度の導入に伴いまして、失業給付もこれに含まれる形で創設をされ、1996年に求職者法というもので現在のJSAの形が導入をされております。
この当時、特にニューディール政策ということで、労働党政権の下で社会的排除に陥った方に個別に支援をするといった取組が盛んに行われていたという時期でございます。
適用範囲といたしましては、18歳以上、年金受給年齢未満の方ということでございまして、受給要件のところで一定の拠出期間を求めております。具体的には、過去2年間に国民保険料を26週分納付していたことなどでございます。
それから、給付額は定額ということになっておりまして、25歳以上の方が週74.7ポンド、月にいたしますと5万円ぐらいという低水準というか、そんなに高くはない水準でございます。
給付日数が最長182日、半年ぐらいということで、こちらもそこまで長くないといった水準でございます。
12ページを御覧いただきますと、費用負担のところで国民保険料として徴収とございます。年金と一緒に保険料を徴収するという形を取っておりまして、国庫負担は原則なしとなっております。
また、受給手続のところで、ジョブセンター・プラスに設置されたパーソナル・アドバイザーとの面談を通じて求職者協定を作成・合意をするということ。
それから、失業認定の仕組みの欄にございますが、1~2週間に1度、ジョブセンター・プラスに来所して、アドバイザーと面談して求職活動をチェックするということになっております。
実績のところを御覧いただきますと、受給者数が6.2万人、支給総額167億円相当ということで、ドイツ、フランスに比べて極めて支出規模が小さいということでございます。
また、自営業者につきましては適用外となっております。
13ページを御覧ください。こちらは、「所得調査制求職者手当」ということでございます。1996年の求職者法で同じく導入をされておりますが、※書きのところにございますように、行く行くは、2023年には普遍的給付というuniversal creditに統合される予定になっております。この点につきましては、低所得者向けの給付制度というものが複数存在していて非常に複雑であるということを踏まえまして、この普遍的給付に一本化するという動きがございます。
基本理念といたしましてはJSAが受給できない方、例えば保険料の拠出条件を満たさないとか、長期失業者でJSAを受け終わったというような方に対する給付でございます。資産要件があり、1万6000ポンド以下ということが要件になっております。
給付額といたしましてはJSAと同じ金額設定となっておりますが、普遍的給付に移行しますと、それぞれ1万円ちょっとぐらい給付額が上がるという予定になっております。
給付期間には制限はなく、財源は一般財源になっております。
また、規模感といたしましては受給者数12万人、それから4億4000ポンドということで、JSAよりは金額と人数が多いという状況でございます。
それから、14ページでございます。前回の研究会で御指摘をいただいた点なのですけれども、先に15ページを御覧いただければと思います。こちらは前回お出しをした資料でございますが、「適用労働者の範囲の変遷」といたしまして、平成元年にパートの方に適用拡大をし、その後、要件を緩和していく中で、平成13年に年収要件を廃止しております。このときの議論がどういうものだったのかということでお尋ねがあった点でございます。
14ページを御覧いただきますと、当時の雇用保険部会の報告書の中には、労働者が収入の多寡によらず、経済社会における重要な労働力であることが反映されるように年収要件を廃止するという記載がございます。
また、当時の雇用保険部会における議論といたしましては、例えば労働市場に一旦出ると、生計維持者か、家計補助的かということは、あまりその意思や能力とは関係ないという御指摘ですとか、それから年収というのは時間当たりの給与単価ということで決まってきてしまうので、時間とその期間という要件を設けた上で、さらに年収要件で縛るとなると、時間当たり単価の低い人たちを排除していくという思想になりやすいという御指摘。
また、パートの賃金は法定最賃に引っ張られるということが大きいところ、例えば東京と地方では法定最賃の水準に違いがあることによって、適用される、されないということが分かれてくるのもふさわしくないのではないかという御指摘がございました。
また、次に最賃程度でその年収要件を設定してはどうかということの御指摘ですとか、一番下でございますが、年収の壁という御指摘でありまして、年収というのはその時間を調整させるだけではなくて給与のアップに対するインセンティブを引き下げてしまうという効果もあるので、ほかの制度に先んじて年収要件を外したほうがいいのではないかという御指摘がございました。
最後に、16ページでございます。こちらは、失業給付の給付率が50から80%という形で低所得者層と高所得者層をそれぞれ配慮した形で設計されているのに対して、育児休業給付はなぜ単一の給付率なのかというお尋ねがあった点に関する資料でございます。
こちらは育児休業給付の制度を創設した当時でございますが、その当時の出産期の女性、大体44歳ぐらいまでの女性の方々が受けておられる平均的な失業給付の額というものと、それからその10か月分の育児休業給付の給付額が等しくなるように給付率を設計したものでございます。
10か月というのは、1年から健保法に基づく出産手当金の支給期間2か月を差し引いたということでありまして、その当時の女性の給付額というのを単一で捉えて給付率を設定し、その後、給付率を引き上げてきたという経緯があるものでございます。
御説明は以上でございます。
○長良雇用保険課長 今ほどの事務局からの説明につきまして、委員の皆様から御意見、御質問がございましたらよろしくお願いいたします。どなたからでも結構でございますが、何かコメントなどがありましたら併せておっしゃっていただけるとありがたいと思います。
特段、何かよろしいでしょうか。
それでは、次の御説明に移らせていただきますので、もし資料1、2に関連いたしまして何かコメントがあれば、後ほどでも結構でございますので、その際に御発言いただいてもと思います。
それでは、続きまして議題の2、「基本手当について」でございます。事務局から、資料3について御説明を申し上げます。
○伏木課長補佐 それでは、資料3について御説明いたします。雇用保険課で課長補佐をしております伏木と申します。よろしくお願いいたします。
第1回から先ほどのところまでは総論的な制度全体のお話でありましたけれども、各論といたしまして雇用保険の中の一番中核的な給付である基本手当について御議論いただければと思っております。
サブタイトルとして(効果的・効率的な再就職支援の在り方)ということをつけておりますが、その制度面、運用面、双方におきましてこういう視点が大事になってくるかなというふうに考えておりますので、また最後にも申し上げますけれども、サブタイトルをおつけしております。
早速資料の1ページからまいりますが、こちらは第1回にもお出しした資料で、特に青枠をつけておりますが、その受給資格要件として労働の意思及び能力があるにもかかわらず失業状態にあるということを要件としております。したがって、その労働の意思と能力があるということを確認するということが必要になってきます。その際、公共職業安定所、ハローワークに求職の申込みを行った者は労働の意思があると推定されるという形で運営をしております。以降、その詳細について御説明します。
2ページにまいります。こちらは「雇用保険制度」の「制度の概要」ということで、【目的】といたしまして前回の御議論でもありました生活の安定のみならず早期再就職の促進のために給付を行うものということです。
【特徴】として1つ、大きな集団でリスク分散を図っているということはもちろんですけれども、2つ目の赤字にもしておりますが、保険事故たる失業状態の判断においては「労働の意思」という外形的把握が困難な要件について判定する必要がある。したがいまして、ハローワークでの職業紹介と一体的に運営することにより、支給決定の際に実際の求職活動実績を直接確認することを通じて適正支給を確保しているということでございます。
こちらは、先進主要国においても大体同様かとは認識しておりますが、ハローワークにおいて一体的に行っているということがポイントになっております。
3ページにまいります。こちらも近しいことでありますけれども、右下に三角になった絵があります。職業紹介と、その左下に雇用保険・求職者支援制度とございまして、そこを一体的にやっているということを先ほど申し上げたわけですが、ハローワーク全体として見ますと、これに加えて企業に対する指導、支援ですね。雇用対策というふうに銘打っていますけれども、そうしたものも含めて三位一体で運営をしている。それでもって、一番上にありますが、雇用のセーフティーネットの中心的な機関としてハローワークが役割を果たしているということでございます。
4ページにまいります。「雇用保険(基本手当)の手続きの流れ」ということであります。
1番は離職票、まず会社を辞めたら会社からハローワークに被保険者ではなくなった届けを出していただいて、その後、離職票というものをお渡しします。2番目ですが、ここで求職の申込みをしていただきます。それで、その次に雇用保険部門において離職票を受理して受給資格決定を行います。受給資格は必要な被保険者期間があること、失業の状態にあることを確認して行います。この時点では入り口ですので、そこから先は3番の失業の認定というところで、4週間に1回失業状態にあったということを確認しながら、直近の4週間について失業の認定を行うという運用をしております。それで、その際、求職活動が低調な方がいらっしゃれば、ハローワークの職業相談部門に誘導するなどして再就職活動を行っていただくように運営をしております。
※の3番につけておりますが、原則2回以上応募ないし相談などの実績を求めています。
5ページにまいります。関連法令におきまして、このように書かれているということを参考としております。
まず雇用保険法の10条の2に書いておりますが、受給者は必要に応じて能力開発を図りつつ、誠実かつ熱心に求職活動を行うことにより、職業に就くように努めなければならないという規定が入っております。
その上で、15条が失業の認定の中核的な規定ですが、まず第2項のところで安定所に出頭し、求職の申込みをしなければならないということを法律上規定しております。
また、第5項ですけれども、失業の認定は求人者に面接したこと、云々と規定がございますが、こういうことを確認して行うものとするというふうに法律でここまで定めております。
6ページにまいりますと、「雇用保険業務取扱要領」ということで、実際のハローワークでの具体的な事務の詳細を定めているものであります。労働の意思、能力、職業に就くことができない状態というのはこのようなことが定められているということで御参考に御覧ください。
その次ですけれども、「労働の意思及び能力があるかどうかの確認」というところで6ページの下半分ですが、具体的にこのような運用をしているという部分があります。平成14年9月に新設と※がついておりますが、平成10年代に雇用保険財政がかなり厳しい状況になったとき、失業認定についても本来の役割に立ち戻ってこのような具体的な基準を定めて運用しているということでございます。
まず求職活動の回数、先ほど少し申し上げましたが、原則2回以上あることを確認できた場合に、他に不認定となる事由がある日以外の各日について失業の認定を行うとなっております。直近の4週間について認定すると申し上げましたが、具体的には日を単位として1日ずつ確認をするという形を取っております。
次に「求職活動の範囲」というものがございますが、単なる職業紹介機関への登録や紹介依頼のようなものではだめですよということも併せて規定をしております。
続きまして7ページです。労働の意思、能力の確認において慎重に取り扱うべきものというところを抜き書きしております。雇用保険の適用とも表裏なところもありますし、雇用保険制度においてその給付の対象としているのはこういう就職活動をしている人たちですよというのが表れている部分であります。
まず短時間就労を希望する者ということで、ここは被保険者となり得る求職条件を希望する者に限り、労働の意思を有する者と推定されるというふうにしてございます。これまで御説明していますが、週20時間、31日以上の雇用見込みということであります。
それから、非雇用労働へ就くことのみを希望している者についても、労働の意思を有する者として扱うことはできないということで、雇用労働で雇用保険適用就職というものを目指すというのが条件となっております。
一応ただし書きがございまして、両にらみのような状態というのはあり得る。自営の準備に専念するものではなくて、職業紹介に応じられる場合にはいいですよということにはしていますが、完全に非雇用労働だけを目指していますと言われると、これはちょっと雇用保険の給付対象ではないですということになっております。
その次の(ニ)のところは、特異な条件に固執される方は一応労働の意思がないものと推定される。実際には窓口でしっかりコミュニケーションを取るということでありますが、非現実的な条件にこだわられたりということがあると認定しないこともありますということです。
次に「就職した日又は自己の労働による収入があったかどうかの確認」ということで、まずは先ほど日を単位としてやっていますと言いましたが、就職した日があるときは認定は行わないというふうにしております。
それで、就職とはということですが、雇用関係に入るのはもちろん、請負、委任により云々とありますが、原則として1日の労働時間が4時間以上の者があった場合にその日が就職したというふうにしております。
この4時間というのも、週20時間を5日で割ると4時間ですので、基本的な考えで通底しているのは週20時間というのを就職状態、雇用保険の失業の反対側の就職という状態として設定しているということです。
また、ここでは自営なども入れていますけれども、これは要は就職活動に力を割ける状態かどうかということを評価するためにやっているので、別な活動を4時間以上しておられれば就職活動できないものとして扱っていますということです。
最後には、4時間未満であってもすぐには応じられないなどという場合があれば、これは意思、能力がないものとして取り扱うということです。こういったことを業務取扱要領のほうで定めて運用しております。
次に、8ページからは制度面、給付の仕組みということで御説明をいたします。「効果的な支援を行うための給付面の仕組み」ということで、雇用保険制度の基本手当の設計に当たりましてこういう思想でやっていますということが見えればと考えて資料をつくっております。
9ページにまいります。こちらは前回も御説明しておりますが、特定受給資格者ないし特定理由離職者、それからそれ以外の一般受給資格者という類型に分けて給付の設計をしております。
まず、倒産・解雇等の理由によりということで、就職に対する緊要度が高い、また準備をする時間的いとまがなかったというような状態に合わせた制度設計をしています。
一方で、上記以外、一般受給資格者は自己都合で計画的にお辞めになるという言い方がいいかどうかありますけれども、一定の給付制限期間を設定するなど、そういう設計をしております。
10ページにつきましては制度変遷ということで参考でありますが、前回の資料から受給資格要件の欄を追加しております。平成元年まで、1年のうちに6か月の被保険者期間ということにしておりました。それで、平成元年からはパートタイム、短時間労働者の被保険者類型ができましたので、そういう場合には通常の労働と比べて半分の評価がなされるような制度設計をしています。※2でいう短時間として働いていた期間は2分の1月でカウントしますというようなところでございます。
それから、平成19年にここは一本化をしておりまして、基本は2年のうちに12か月ということにしています。ただし、特定受給資格者については1年のうちに6か月ということで、一定のめり張りづけをしています。
平成21年は特定理由離職者、雇い止めなどで離職に至った方について特定受給資格者と同じようにするということが反映された内容となっています。
11ページは前回もお出ししており、参考の情報ですけれども、平成20年代前半はまだちょっと受給資格決定件数が多い状態でしたが、年々減少傾向で、ただ、令和2年度はコロナ禍において若干上昇、令和3年度はまたちょっと落ち着いているというのが足元の状況となっております。
12ページの受給者実人員につきましても、おおむね同様の傾向であります。
それから、13ページが「主要指標の推移」ですけれども、この中では平均受給日数の動きについて少し補足をしますと、平成21年頃はかなり長い期間で、その後、短くなっていって、足元も少し長くなっています。特定受給資格者の割合、倒産・解雇などで離職する方が増えてくると給付日数が長い方が相対的に増えてくるので、若干この平均受給日数のところが長くなるというのが特徴としてあります。
14ページにまいります。先ほどまでは基本手当の基本的な設計でしたけれども、これに加えて延長給付というものが制度としてございます。内容によってそれぞれですけれども、訓練を受講する方、それから難病、発達障害、あとは災害により離職したような方など、個別の事情に応じて延長給付を行う。それから、地域的に状況が悪いときに一定の日数の延長を行う広域延長給付や、一番下の地域延長給付というものがあります。全国延長給付というのは全国でものすごく悪いときにというものでありますが、これまで発動実績はありません。一応こういう延長給付の制度を設けております。
それで、すみませんが、これは資料におつけできていないのですが、コロナ禍におきましてはコロナの臨時特例法の中で、コロナの影響により離職を余儀なくされた方などについては60日延長するというものを入れております。
15ページにその実績が載っておりますが、平成23年度以降、まだリーマンの影響からか、延長給付を受給している方は一定数おりましたが、年々減少して、30年、元年にはほぼ少ない状況になっています。それで、令和2年度、3年度はコロナの延長給付を受ける方がかなり多くに上っておりまして、40万人台となっています。
16ページにまいります。延長給付のほかにもう一つ、早期再就職を促す仕組みとして再就職手当というものがございます。上半分に書いておりますとおり、所定給付日数の3分の1以上ないし3分の2以上、一定日数以上残して早くに就職いただいた方には、支給残日数に応じて一定割合を一時金としてお支払いをするという仕組みであります。
また、その下の就業促進定着手当というものもあります。これは、再就職手当を受けた方で6か月間定着した、かつ賃金が低下していた方ということが要件となっております。
次のページですけれども、制度変遷を入れております。再就職手当は平成12年に一度厳格化はしたのですが、その後、類似の拡充をしてきておりますし、また平成26年に定着手当を入れているということです。
18ページに支給状況を入れておりますが、再就職手当の支給状況としてはおおむね40万人前後で推移をしているところでございます。
次の19ページは定着手当の支給状況ですが、こちらは10万人前後で推移をしております。再就職手当を受けて賃金が低下して6か月定着した方というのが、再就職手当の4分の1くらいの水準でいらっしゃるかと理解しております。
その続きからは再就職状況ということで、実際のデータで再就職状況の推移を表しております。
21ページを御覧ください。基本手当受給者の再就職状況ということで、少し長めに、平成11年度から令和元年度までで取っています。それで、真ん中のちょっと右に黄色い箱でパーセンテージを書いていますが、こちらがその支給終了までに就職した方の割合ということで、おおむね60%前後で推移をしてきているということであります。それで、一番右側に主な制度改正ということで入れておりますが、例えば平成12年度、15年度に給付の内容を厳格化ないしめり張りづけの改正をしておりますが、それによって大きな影響が出ているということは観察されていないと考えています。
それから、平成21年度以降ですね。延長給付というものが入ってきて、まず平成21年度は55.3万人というオレンジの四角がありますが、それに始まって、年々縮小はしていっていますけれども、延長給付を受給している方が一定数いらっしゃいます。
それで、この黄色いパーセンテージは延長給付も加味した上でこのパーセンテージというふうになっておりますので、もちろんそんなに適格に調整できるものではない。事前に制度を入れる前に調整できるものではないですけれども、結果として平成20年代も60%ちょっと切るくらいの水準で推移をしているということであります。
22ページは、これを特定受給資格者に限定したものであります。御参考として説明は割愛します。
23ページは、特定受給者以外という形でお出しをしております。
それから、24ページです。こちらは議論の参考としてですが、先ほどのグラフでちょっと御説明し漏れていたのは、先ほどのグラフは雇用保険の基本手当を受給して1年以内に就職した人を100%としてグラフを作っています。すなわち、1年を超えて就職した方や、その後、結局就職しないという方はこのグラフの中には入っていないということです。経年で雇用保険の効果というのを測るときに条件をそろえないと、後から就職した人がどんどん入ってくると、前の年ほどよくなっていくみたいなところもあるので、そこは経年で比較するためにそのようにしているということです。
では、1年を超えてとか、就職しない方ということについて、過去にJILPTの調査シリーズというものがありましたので参考に御紹介するというものです。
まず左下に「基本的な再就職状況」というところがございます。まず全体として雇用保険の受給期間中に再就職先が見つかった人は4割程度であり、男女で差はあまり見られなかったということと、一方で受給期間終了後1年以上経過した調査時現在においても再就職先が見つかっていない人が4人に1人程度いたということになっております。こちらの調査時点は、平成25年度にハローワークで受給資格決定を受けた人について、調査期間として平成28年に調べたというものですが、どの年度においても一定数こうした方々がいるというのは実際に観察されるところです。
25ページにまいりますと、3番のところから「現在週20時間以上の雇用労働をしていない理由」というのを問うております。
まず男性の若年層のところでは、熱心に活動したけれども実らずという方がそれなりにいらっしゃった。中年層でも30%強いらっしゃった。また、女性の場合は「妊娠・出産・育児のため」という方が特に若年層で一定割合、中年層でもそれなりの割合いらっしゃった。それから、60歳以上の高齢層では「年金受給」であるとか貯蓄を使う、家族への依存というものもあったということです。
また、さらに「現在の具体的な生計維持手段」というのが4番にございますけれども、
60歳以上では「年金受給」が非常に多かった。それから男性の若年層、女性の60歳未満では「配偶者や親に依存」の比率が高かったという回答が見られます。
また、男性の中年層になると「アルバイト等」というのが多い。50代になると「蓄えがあり当面生活可能」というのが多くなっているということで、25ページの右側ですけれども、当初の調査の趣旨として「再就職できない理由及び生活の実態を調査する」というところについて、男性若年層は就職しても見つからないが、家族などに頼っている方が多い。中年層では、アルバイト等をしながら生活している。女性、高齢者は、貯蓄の存在や家庭の事情などから「再就職しない」人が多い。かなりパターナリスティックですけれども、そういう整理がなされているということです。
26ページに一定の政策インプリケーションとして、本人が満足できる質の高い再就職を促すためには、性別、年齢に応じたサポートが重要であるということがまとめとして付されております。
続きまして、27ページに「早期再就職者の推移」という数字を載せています。これは、基本的には再就職手当を受給した方の数で取っていますので、先ほど御紹介した数字とほぼ同じです。平成10年代だけちょっと特殊な制度になっていましたので、数字が二段書きになっています。それで、おおむね40万人前後という水準は大きく変わらず推移をしており、一方で受給資格決定件数、左側が年を追うごとに減ってきているということなので、右側の早期再就職者の割合というのを見ると、足元では30%前後と、だんだん高くなってきているというふうに見られます。
続きまして、28ページにまいります。こちらは基本手当の給付日数のテーブルと言っておりますけれども、年齢層や被保険者期間に応じて給付日数をこのように定めています。こちらは、特定受給資格者の表です。
それで、下にその基本手当の受給期間内に就職した割合を書いています。おおむね右にいくほど日数が長いので、割合としては高くなる傾向にはありますけれども、あとは日数を考えるときにこのテーブル、それから結果を見て、大きな穴がないかというところを確認しながら運営をしてきております。
そういった意味で、御参考として30ページに平成29年度の数字を入れております。これは、特定受給資格者について30歳以上35歳未満、それから35歳以上45歳未満の1年以上5年未満というところが90日と120ないし150日の二段書きになっているということです。これは平成28年度までに受け始めた方は90日、平成29年度に受け始めた方は120日、150日ということで、ちょうど比較できる。平成29年度に制度の見直しを行ったので、その前後について比較できるものとしてお出しをしています。
それで、下の表で※3、※4とついているところですが、改正前はその50%弱というところでやや低い水準だったものが、58.6%ないし60.3%ということで、そこを伸ばしただけ率が改善をして、この表の中である程度均衡が保たれたというふうに確認をしております。
駆け足で恐縮ですが、続けてまいります。
32ページからは「効果的・効率的な支援に向けたデジタル技術の活用状況」ということです。
33ページにまいります。制度の運用の部分に入ってまいりますが、まずハローワーク全体のお話で申し上げますと、ハローワークインターネットサービスというものがございまして、求人者、企業向け、それから求職者、労働者というか個人向けのサービス、それぞれございます。
34ページで、近年ここのハローワークサービスのオンライン化というものに取り組んでおりまして、令和2年の1月から順次機能を拡充中ということになっております。それで、もちろん求人の申込みなどもありますが、ここでは特に職業紹介、職業相談の部分についてオンラインでできるようにしていっていますよということを御紹介したいと思います。
中ほどに求人、求職、それぞれの矢印がありますが、オレンジのところの真ん中にオンライン職業相談、オンライン職業紹介というものがございます。こちらは令和2年から順次実施をしてきているということで、その下に写真がついておりまして、こんな感じでハローワーク側で対応していますよというものでございます。
35ページに「オンライン職業相談の概要と実施状況」ということで、実際現場でどんなふうにやっているかということも含めて今回確認をしております。令和2年9月から、オンラインでの職業相談がスタートしています。それで、令和3年度は1万3500件あまり、全体の職業相談件数としては1900万件ですのでまだ一部でありますが、やっております。主な利用者は若年、それからマザーズハローワークの利用者ということでございます。
下に矢印で整理しておりますけれども、コアとなる相談の時間というのは30分から60分、一定の時間、落ち着いて職業相談をするという形で対応しています。
それで、その前後に予約を受けて当てはめたり、事前の準備をしたり、それから終わった後は事後処理というものがあります。注2の欄にありますが、日程調整であるとか、オンラインの場合ですと相手方にここに入ってくださいと、今回Zoomで委員の先生方に入っていただいているように御連絡をするということ、それから事前準備としては機器の準備や接続の確認、最後は相談記録の入力もありますが、機器を片づけるというようなことも入っています。
また、オンライン相談の箱の※書きにありますが、途中で通信が途切れるみたいなことがあった場合にはしばらく様子を見て適宜対処するであるとか、ひどければ次回相談機会に回す、ないし電話での相談に切り替えるといった対応をしているというふうに聞きました。それほどトラブル件数がすごく多くて困っているという状況ではないとは聞いておりますけれども、実際にそうした場合にはこのような対応をしているということでありました。そういうことで、トータルの所要時間としては55分から85分と、単純に数字を足したもので整理をしております。
36ページは、雇用保険の手続についてオンライン化の状況を整理しております。
まず、赤枠で囲っております中の白い部分というのは、現状既に具体的にシステム改修などに動いている部分ということであります。
一応、下の流れを左から言いますと、会社に入職すると雇用保険の資格取得をします。それから、離職をすると資格喪失をします。それで、先ほど御説明したとおり離職票が届き、求職申込みのために来所する。その後は4週間に1回、失業認定というような流れで整理をしています。
それで、左から申しますと、まずはその会社が行う資格の取得や喪失の手続は、今は電子申請でかなり受け付けております。オンライン利用率50%ということで、それなりのパーセンテージかと思っております。
黄色いところは、今後、令和8年度にハローワークシステムの更改が予定されているので、そこに向けてエラーチェックや機能強化などということで計画をしているところです。
それから、離職票ですけれども、今は紙でお届けということなのですが、電子的にお渡しすることができるような仕組みを入れるように考えています。
また、失業認定のときには、今、受給資格者証という写真つきの紙の台帳というか、台紙みたいなものがございまして、毎度お持ちいただいて、そのときに何日分失業認定してお支払いしましたという記録、これは処分通知も兼ねているわけですけれども、お支払いをしますよということをお知らせするものとして運営しています。こちらはマイナンバーカードに代替していけないかということで、今年の10月から段階的にやっていけるように準備をしています。
それで、黄色い枠で今、受給資格者証にいろいろ印字するということがその処分通知も兼ねているというふうに申し上げましたが、そうしたところを電子的に通知できるような形というのも、ちょっと対応は先になるかと思いますが、検討中です。
それで、この失業認定日に来所して失業認定を行って結果を印字するという一連の流れは、その下に即時処理とつけておりますが、ハローワークにお越しいただいたその日のうちに一通り手続が終わるという形で運用をしています。その後、振込みまでに1週間程度を要しているということであります。
そういった形で、一連の流れの中でデジタル技術の活用というのは順次進めてきているところでありますが、失業認定に来所していただくというところは、今のところはその形で運用しているということでございます。
37ページは、こうしたデジタル技術のさらなる活用ということを考えるに当たってニーズ調査をして、ニーズが高いものについて手当てをしようとしていますよということですので、御参考であります。
38ページには、ハローワークの業務体制について関連データをお示ししております。
雇用保険の給付関係でいうと、受給資格決定が151万件、失業認定は656万件、合計800万件ほどという数字になっています。
それで、「雇用保険部門の職員数」は約5,500人程度、常勤、非常勤半分ずつくらいです。また、※の2つ目にありますが、適用業務といって資格取得、喪失とか、会社とのやり取りがメインになる職員も半分弱いるので、実際にはここまでの人数ではないですが、雇用保険部門の職員数は5,500人ということです。
それから、(職業相談関係)で先ほどとお示しした数字ですが、職業相談件数は1945万件、オンラインが1万3000件程度です。
それから、「職業紹介部門の職員数」は1万4600人ということで、常勤、非常勤、おおむね1対2くらいの水準です。こちらも純粋な職業紹介業務のほかに新規学卒支援、それから障害者の職場定着とか、そうしたことに従事する職員も一定数含まれているということであります。御参考程度です。
39ページです。「雇用保険の受給関連手続におけるデジタル技術の活用の要請」ということですが、この6月7日に閣議決定されました規制改革実施計画の中に次の記述が盛り込まれております。ちょっと長い文章ではあるんですけれども、bと書いてあるところの2行目くらいからです。「失業認定関連手続を含む雇用保険の受給関連手続の在り方について、デジタル技術を活用した行政サービスの見直しに知見のある者の意見も得ながら検討する場を速やかに立ち上げるとともに、客観的なデータ等に基づき、対応の方向性の検討を行い、1年を目途に結論を得る。」と、こうしたことも踏まえて本日柴田さんに御参加をいただいているということであります。また、併せて市町村取次ぎの対象者等の出頭が大きな負担となっている者については、この1年をめどに結論というのを待たずに、速やかに必要な対応を検討し、可能なものから順次措置するということも書かれてございます。
ここで言う検討する場というのが、この雇用保険制度研究会の中でと思っておりまして、本日こうした資料をお出ししています。
市町村取次ぎという後段の部分について補足で御説明します。
40ページの資料になります。「市町村の取次ぎによる失業認定について」ということで、特に離島であるとか、とてもハローワークから遠くにある市町村にお住まいの方々、具体的には往復6時間以上を要する市町村ということにしていますけれども、市町村長が安定局長の承認を受けた場合に、そこにお住みになっている方についてはその取扱いをしますということで、3番のような手続の流れで対応しています。
1番、2番は同じです。それで、2番は遠方ではあるのですけれども、最初のところはハローワークに来ていただいて受給資格の確認というのをしています。
3番のところですが、これは4週間に1回の失業認定ということですけれども、こちらは市町村役場に出頭して労働の意思、能力の確認をしていただいています。
それで、4番で必要な書類を取り次ぐという形で、ハローワークにその確認の結果を送っていただき、実際に行政処分としてはハローワークの所長が失業の認定、それから給付の支給ということを実施しています。こちらについても、速やかに何らかの負担軽減策が考えられないということが先ほどの閣議決定で指摘されているということでございます。
その続き、41ページからは「海外比較」として、特にフランスの仕組みについて比較をしています。
42ページをお開きください。先ほどもう少し詳細の資料がありましたけれども、失業認定に関わるところにフォーカスをして抜いています。それで、フランスについては受給要件としてその求職活動、(5)番のところでPPAE、個別就職計画というのをつくって、それに従った求職活動を求めているということであります。失業認定の仕組みとして、毎月1回雇用センターのサイトで、これは活動状況を更新するだけでやっている。その上で、職員との面談というのは計画の中で位置づけて実施している。その際、初回の面談は対面での実施を優先、ロックダウン時には遠隔でやっていたけれども、基本は対面での実施を優先している。
2回目以降はどちらもあり得るということなのですが、※書きにありますとおり、その接触頻度やフォローアップについて必要性に応じて対応している。最も強力なサポートが必要な人には定期的に対面でお話をしましょうということになっていますが、逆を言うとそれほど強力なサポートが必要でなければ、頻度というものとか手法についても合理化をしているということと理解しています。
これに対して、日本の場合はこれまで御説明してきたとおり、4週間に1回、全員出頭してきてくださいということでお話をして、必要であればその職業相談部門と連携をしながら再就職活動を後押ししているということであります。
一番下に、拠点数・職員数というのを参考でお載せしていますが、フランスはかなり数で言うと、今はもう少し減ったということも鈴木先生からいただいたのですけれども、日本と比べると倍ぐらいの体制があるというふうに理解してしまいます。
ただ、一方、給付日数も長いですし、給付の受給者数というのもかなり多いというふうには承知をしております。
最後の43ページ、「議論の観点」ということで整理をしております。
1つ目は、制度の在り方です。基本手当の受給要件ですとか、それから延長給付、再就職手当といったものについて御説明をしましたけれども、制度の在り方について御議論をいただければということです。
それから、2つ目は「保険事故としている「失業の考え方」とその確認の在り方」で、雇用保険の適用就職、週20時間以上とかというところの働き方を念頭に、それを確認して給付を行っていますけれども、その失業の考え方をどう捉えるか。それから、それをどのように確認するかということも併せて御議論いただければと思っております。
3つ目、4つ目は運用面のお話ですけれども、失業認定の運用の在り方で、先ほど少し申し上げた市町村取次ぎも含めてコメントなどいただければと思っておりますし、その際、デジタル技術を活用したサービス向上というのはどのように図れそうかというようなことについても御議論いただけるとありがたいです。
すみません。長くなりましたが、私からの説明は以上です。
○長良雇用保険課長 資料説明に引き続きまして、本日、佐々木先生に失業給付の受給期間と再就職行動につきまして御説明をお願いしております。資料は、画面共有をいたします。
佐々木先生、よろしくお願いいたします。
○佐々木構成員 どうもありがとうございます。大阪大学の佐々木です。
3枚ほどのスライドを用意させていただきましたので、手短に御説明したいと思います。
先ほどの説明で失業期間、言い換えれば仕事を探すサーチ期間が長ければ長いほど、より良いマッチングに結びつくのではないかという研究があるという内容の発言があったと思います。それに関して、我々は関連する研究をしたので、その研究について紹介したいと思っております。
まずは、そもそも「良いマッチング」とは、①に示すように、早く仕事が見つかるということ、サーチ期間が短いことであります。サーチ期間を決める要因の分析に関して、弊学の小原先生、京都大学の町北先生と私の3人で研究論文をまとめました。
「良いマッチング」が意味する2つ目は②に示すように、新たな職での定着率が高いということです。良い仕事に就けると居心地が良いわけですから、長い期間そこで働くことが想定されます。これに関しても、我々3人で取り組んだ研究があります。
「良いマッチング」が意味することの3つ目は、③のことです。少し②と被る部分がありますが、新たな仕事の賃金が以前より高くなることです。賃金が高いから、新たな職場で長期間働き続けると考えられます。
実は、我々は③についての研究は取り組んでおりません。新たな仕事が見つかった後の賃金を追跡調査することは技術的に難しいことと、当然ながら賃金だけで労働者は仕事を決めているわけではなく、例えば職場が家から近いというような非金銭的な要因も決め手にあることから、賃金だけで良いマッチングなのかを判断するのは難しいし、必ずしも適切だとは考えておりません。
次のポツですけれども、「個人の意思決定サーチ・モデル」という非常に単純なモデルから得られる知見をお話しします。雇用保険給付が手厚いと、「留保賃金」、すなわち受諾して良い最低の賃金は上がります。より選り好みをするようになることを意味します。それと同時に、雇用保険給付が手厚いほどサーチをする努力は下がることになります。
先ほど申し上げたとおり、例えば実際にハローワークに来所して、仕事を紹介してもらい、そして面接まで進むには努力が必要ですよね。努力をすることはコストでありますので、人間はできるだけそれを避けたいと思います。したがって、手厚い雇用保険給付があると、人間は努力をしたがらないということが考えられます。
そうすると、手厚い雇用保険給付があると失業期間は長くなりますし、そして質の高いマッチングが成立することが期待できます。これが意味するところは、雇用保険給付が手厚くなることにより留保賃金が高まるので、これまで以上に高い賃金を求めていきます。高い賃金じゃないと受け入れないということを意味するので、そういう状況で受け入れた仕事というのはきっと高い賃金だろうと考えられます。賃金の高い仕事に就くことは質の高いマッチングが成立したと解釈できます。
別の見方をすれば、雇用保険給付が有限の場合、残りの給付期間が短くなるにつれて、留保賃金は下がっていきます。早く就職しなければいけないので、徐々に求める仕事に対して妥協していくわけですね。選り好みをしていられなくなるわけです。と同時に、残りの給付期間が短くなるにつれ、これはまずいと感じ、さらに努力してサーチ活動をしようとします。
したがって、残りの給付期間が短くなるにつれて就職する確率は高くなります。しかし、そこでのマッチングの質は低くなる可能性があります。というのも、留保賃金が下がるということは賃金が低い仕事のオファーでも受け入れることになるからです。これが基本的な個人の意思決定サーチ・モデルから得られる知見です。
次のページをお願いいたします。
①と②、2つの研究で使ったデータは業務統計です。雇用保険業務統計と職業安定業務統計のことです。被保険者台帳の雇用保険被保険者番号と求職台帳ヘッダーの雇用保険被保険者番号を照合し、一致したものを抽出しております。ここでは2005年8月に離職した被保険者を対象とし、その数は約15万人だったと思います。一人一人のサーチ活動状況を2006年7月まで追跡しました。ですから、その期間中にハローワークに行って、仕事を紹介してもらい、面接を受けて、採否の結果を得るまでの記録が全て含まれております。
まず①のサーチ期間を決める要因の分析に関する研究では、「マッチング関数」の推定をしました。マッチング関数の推定から、求職者数や求人数によって表されるローカル労働市場の状況が個人の就職確率、すなわちハザード率、にどう影響を与えるのかを検証しました。
では、自分がいるローカル労働市場をどう定義するかについてですが、この研究では2通り考えました。1つ目は都道府県単位、すなわち私なら大阪府がローカル労働市場となります。2つ目はハローワーク単位で労働市場を分けます。例えば私が大阪府豊中市にあるハローワークに登録しているならば豊中市にあるハローワークがカバーしているエリアを一つのローカル労働市場として捉えます。
次に雇用保険給付が就職確率に及ぼす影響についても検証しております。ここでは、自発90日、自発120日などの給付日数の違い、そして自発と非自発と離職理由の違いに分けて分析しました。自発90日をベースとして、自発90日は自発120日よりも就職確率が高くなりました。ということは、さっさと就職することを意味します。また、自発120日は自発150日に比べて、就職確率が高くなりました。
反対に、自発90日と比べて非自発、これは日数に関係なく非自発のほうが、さっさと就職するという結果となりました。予期せずに仕事を失った場合、求職者は求職状態から早く脱出したいために、努力をして仕事を探すと考えられます。
その他に、サーチ期間が長くなると就職確率は全体的に低下しております。サーチ期間がワイブル分布に従っていると仮定して、データから分布のパラメータを推定したところ、負の期間依存性(negative duration dependence)であることがわかりました。これはサーチ期間が長引くと就職確率が低下することを意味します。
次のページをお願いいたします。
次に②の定着率のお話ですが、サーチ期間と定着率は、日本の場合はマイナスに相関していました。仕事探しのためのサーチの期間が長ければ長いほど、じっくり仕事を探すことができ、良質な仕事に就けるので定着率が高くなると想定していましたが、そうとはならず、定着率は低くなるという結果になりました。
しかも、給付期間残り59日目で初めて紹介件数が観察された求職者、そもそも留保賃金が高く、給付開始当初はサーチ努力を怠るような人達ですね。そうような求職者に限ると、このマイナスの相関関係一層強くなりました。解釈としては、残り59日目から急激に留保賃金が下がったとも考えられます。
ただ、この研究ではサーチ期間と定着率の相関関係がマイナスになりましたが、理論的な考え方はやはり間違えていなくて、ある程度じっくり探す期間があったほうが、より良いマッチングにつながるということはあり得ますし、事実、他の国の研究からはプラスの相関関係があると報告されています。
例えば、アメリカではプラスの関係があったと報告する研究があります。ただ、スロバキアやオーストリアの研究ではあまり関係がないという研究報告がありました。
日本と同様に、カナダの場合、サーチ期間が長ければ長いほど定着率が下がっているという研究結果となりました。以上から、サーチ期間と定着率の関係については一貫した結果が得られていないことをここで申し添えたいと思います。
下のところのグラフは少し見えづらいかもしれませんが、これはサーチ期間ごとに、次の新しい職場でどれくらい働き続けたのかを示しております。横軸が新しい職場での勤務日数です。折れ線の高さはサバイバル率といって、横軸の勤務日数に応じて、まだ新しい職場で働き続ける確率を示しています。定着率に近いものと考えて良いと思います。
それで、グラフの上部に折れ線の束がありますが、サーチ期間が短いほど、次の新しい職場で働き続けていることが分かります。
反対に、グラフの下部にある3つ折れ線に着目すると、サーチ期間が長かった人たちは、サバイバル率、または定着率が急激に下がっているのがわかります。つまり、離職してしまうということです。
日本の場合、全体的にサーチ期間と定着率がマイナス関係にありますが、両者は必ずしも線形な関係ではなくて、サーチ期間が長かった人の場合、急激に離職してしまうことから、非線形的な関係のようにみえます。
以上で、私の説明を終えたいと思います。
○長良雇用保険課長 ありがとうございます。
それでは、事務局からの説明、それから今の佐々木先生からの御発表につきまして各委員の皆様から御意見、御質問がございましたらよろしくお願いしたいと思います。
恐縮ですけれども、五十音順で酒井先生から御発言をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○酒井構成員 ありがとうございます。
事務局から丁寧な御説明ありがとうございました。また、佐々木先生からの御報告も大変勉強になりました。ありがとうございました。
私からは、細かいところを含めると、いろいろと本当はあるんですけれども、まず2点ほど申し上げたいと思います。
まず、先ほど佐々木先生からの御報告にありましたけれども、給付日数とそのマッチングの関係ということで、多分いろいろなエビデンスの見方というのがあるとは思うのですが、少なくとも所定給付日数を延ばすとそのマッチングがよくなるという一貫した結果は出ていないのかな、いろいろなことを総合すると必ずしも延ばすとマッチングがよくなるという結論ばかりではないのかなというふうに見て取りました。
私も以前ちょっとサーベイみたいなことをしてみて、諸外国も含めて、日本の研究も含めてこういった研究を見たときに、もう一つのマッチングの指標である再就職後の賃金に関しても、やはり失業期間が長いほど再就職後の賃金が低くなるというような研究もございましたので、それらを総合すると基本手当の所定給付日数を延ばす、あるいは給付額を上げるということに関しては、やはり多少慎重になるべきところがあるのではないかと考えるところです。
むしろこういった所定給付日数を考えるに当たっては、めり張りをつけるという視点も大事なのではないかと思います。先ほど事務局のほうから御説明がありましたけれども、再就職手当というものが基本的に給付率を上げてきたということで、その関連する資料のところで、給付制限期間内に就職されている方の割合が増えてきているように私は見て取れたんですね。
これが、やはり再就職手当を手厚くしてきたことの影響だとするならば、やはり自己都合退職の人たちですから、再就職手当によってなるべく給付制限期間内に就職するというのは非常にいいことだと思いますので、そういう方向で所定給付日数の在り方というのは考えていくべきなのかな、それは望ましい方向なのではないかなというふうに感じた次第です。
ただ、個人的にはもう少しエビデンスがあるといいなという気はしております。
2点目なのですが、ハローワークにおけるオンラインの活用事例ということで、前回私のほうからどういったところでハローワークにおいてオンラインが利用されているのか、そのプロセスを教えてほしいということを申し上げて、それに丁寧にお答えいただいたというふうに理解しています。やはり保険事故としての失業の特性上、モラルハザードが起きやすいという面を考えると、失業認定に当たってハローワークに出頭してもらうということ自体は非常に重要なことだというふうに理解しております。
ただ、一方で、その出頭が著しく困難であるような場合については、オンラインの活用を検討すべきというのも、またそのとおりだと考えております。
そこで、先ほど市町村取次ぎという話が出てきまして、恥ずかしながらこの市町村取次ぎということが行われているというのは、実は今回の説明で初めて私は知った次第なのですけれども、私が理解するところ、要はハローワークの職員の代わりに市町村の職員が失業認定を行うことだというふうに理解しておりますので、そうであるならば、そこまでして市町村の職員がわざわざ代わりにやるということであるならば、その部分に関してはむしろハローワークとその対象者の方をオンラインで結んで、失業認定といったものも含めてオンラインで行うということを検討してみてもいいのではないかなと考えます。
もしかすると事例としては少ない数かもしれませんけれども、それが今後のハローワークにおけるオンラインの利用ということを広げていくに当たって一つの試験的な運用というか、何かのエビデンスを提供していくことになるのではないかと考えるところです。ですので、その部分に関しては出頭の代わりにオンラインで行うということもあってもいいのではないかなと考えた次第です。
私のコメントは、今のところ以上になります。
○長良雇用保険課長 ありがとうございます。
それでは、佐々木先生、繰り返しで恐縮ですけれども、御意見などございましたらよろしくお願いいたします。
○佐々木構成員 ありがとうございます。
先ほど定着率とサーチ期間との相関関係のお話で、残念ながら日本ではマイナスの関係にあるとお話をしましたけれども、これは全体的な効果であって、当然その中にいる求職者というのは異質的でありますので、早く仕事が見つけたいという人もいれば、そんなに仕事に対して早く見つけなくても良い人もいます。ただ、彼らの仕事に対する本当の姿勢が観察できないという「情報の非対称性」の状態にあります。けれども、ある程度、求職者が非自発的失業なのか、自発的失業なのか、年齢が若いのか、そうではないのか、大卒なのか、そうではないのか、男性なのか、女性なのかなどの観察できる情報をもとに個人属性で分けた上で定着率とサーチ期間の相関関係を調べれば、ある程度は異質性を考慮することができるので、もっと違うような結果が得られると思います。
これは先ほどの報告の補足として、もう一つ③に関する賃金のお話ですが、賃金に関して既存の研究があります。結果から申し上げますと、これも一貫性のある研究結果は得られておりません。中には賃金が上昇したという結果もあります。
例えば、2004年の大日先生による日本のケースではそうでありましたし、ノルウェーのケースもそうでした。アメリカのケースでは、効果は小さいですが、サーチ期間が長ければ長いほど、次の仕事の賃金が高くなったという結果になっております。
サーチ期間と次の仕事の賃金との相関が全く関係ないという結果もありますし、マイナスの結果もあります。先ほどの定着率に関する研究と同様、一貫性のある結果は得られておりません。
先ほど申し上げた通り、求職者には異質性がありますので、その異質性を考慮した上で、どのような人の場合、マイナスやプラスの関係があるのかを丹念にチェックしたほうが良いと思います。
あともう一点、これはJILPTの研究ですか、長期失業者の話がありました。彼・彼女等を長期失業者と分類していますが、あまり労働の意欲がないようなので、彼・彼女等を失業者と呼んで良いのかどうかよく分かりません。仕事に就かない理由として自分に見合った仕事がないからということを理由に挙げていたと思いますが、彼・彼女等はもともと労働の意欲が低かったのか、それとも最初はそれなりに一生懸命仕事を探す意欲があったにもかかわらず、それがだんだんやる気がなくなって労働の意欲がなくなっていったのか。この識別は非常に重要なのかなと思います。これも異質性の問題に関連すると思いますが、このようなところをうまいこと見極めることができればと思いました。
あとは、DX化に関しては、基本的には時代の流れとしてできるだけ簡素化したほうがいいのかなと思います。特に、限られた職員で仕事をこなしている中、できれば簡素化して職員の負担を軽減することが必要でありますので、今、継続しているようなDX化というのは推進していけば良いと思います。
また、これまでは求職者はハローワークに何回も来所することになっています。これは非常にコストが掛かることなので、本来ならばこんなことは面倒なので早く仕事を見つけようと考えるところを、全部オンラインで手続きが可能になると、失業でいることのコストが低くなります。それが失業期間を長引かせることにならないかを危惧しますが、職員の負担を減らすという観点から、あとは効率化のためにもDX化を進めていったほうが良いかなとは思います。
以上でございます。
○長良雇用保険課長 ありがとうございます。
それでは、土岐先生よろしくお願いいたします。
○土岐構成員 よろしくお願いいたします。
酒井先生がおっしゃったことと重なるところもあると思っているのですけれども、基本手当受給者の再就職状況の21ページの資料などを見ておりますと、大体どの期間もおおむね6割ぐらいが支給終了までに就職されているということで、人々の行動に対して支給期間というものがかなり影響を与えているように見えます。
そうすると、恐らく非自発的失業の場合と自発的失業の場合とで最もいい形で給付日数を設定するということが重要になると思ってお話を聞いていて、それで佐々木先生のお話などを伺っていたときに思いましたのは、28ページ以降の資料でしょうか。そちらを見ていると、非自発的な失業の場合には給付日数と再就職率に一定の関係があるように見えますけれども、自発的失業の場合を見ていると、給付日数が延びたからといって就職率が必ずしも増えていないように思いました。
佐々木先生から先ほど、失業期間が長くなってしまうと、かえって定着率にマイナスの影響があるというようなお話もございましたので、自発的に失業をされた方について給付期間を長くするということについては慎重な検討が必要なのだろうと考えております。
加えて、非自発的に失業された方について、より再就職を促していくというときには、基本手当を支給する以外の方法で再就職を促すということで、職業訓練も併せて支援をしていく必要があるのかなと考えました。
それから、失業認定の確認というところで、モラルハザードを防ぐためには必ず今のところ対面で行っているということで、世界的にもそういった対応になっているということだったのですが、オンラインをうまく組み合わせて、必ずしも全員に対して初回から対面で失業認定をするという立てつけにしなくてもいいのではないかという感想を持ったところです。
モラルハザードが起こりやすい人とそうでない人というのは、もしかすると離職理由によって差があるようにお話を聞いていて思いましたので、その辺りで場合によっては対応を分けるということもあるのではないかと存じます。
私からは以上でございます。
○長良雇用保険課長 ありがとうございます。
続きまして、水島先生よろしくお願いします。
○水島構成員 水島でございます。
事務局の方におかれましては丁寧な資料作成、それから説明をいただき、ありがとうございました。また、佐々木先生、興味深い研究成果を御紹介いただき、ありがとうございました。
佐々木先生から、失業期間が長いと定着率が日本ではマイナスの関係であることを御紹介いただきました。素人考えで恐縮ですが、失業期間が長いと職場適応能力が下がるため、定着率が低くなるのではないか、と思いました。もし何かそうした研究がありましたら教えていただければと思います。
次に、議論の観点の1つ目に関連して再就職の支援等に関して、先ほど佐々木先生も御指摘いただいた24ページのJILPTの調査は私も非常に興味深く見ました。
私なりの理解ですが、3割は熱心に求職活動をしているけれども就職に結びつかない。こういう人々には、適切な支援を行うことによって早期の効率的な再就職が可能かもしれません。
しかし、じっくり探したいという4割、それから残りの3割ですね。この3割の人たちに労働の意思と能力があるのか、ちょっと疑問に思いましたが、失業段階では労働の意思と能力もあったけれども、次第に、例えば大学院に行って勉強してみようとか、そういう考えの変化というのはあるのかなと思いました。
4割と3割の人たちに早期の再就職を促進するのはなかなか難しいと思いますし、それを求めすぎてもいけないとも思います。
27ページの「早期再就職者の推移」を見る限りでは、再就職手当などは十分に機能していると感じました。
次に議論の観点の2点目ですけれども、「保険事故としている「失業」の考え方とその確認の在り方」で、週20時間以上は今回の議論だけでなくて、この検討会全体に関わる大きな問題ではないかと思います。
現行制度を前提にすると、週20時間で検討しなければなりませんが、ハローワークの求人、求職の実態がもし分かれば、教えていただければと思います。
週20時間以上の職を紹介していると理解しておりますけれども、その多くが40時間近くのフルタイムか、あるいは40時間の4分の3を念頭に置いた、30時間とか28時間ぐらいが割と多いのか、20時間ぎりぎりの求人、求職というのがそれなりにあるのか、もしお分かりになりましたら教えていただければと思います。
3点目と4点目ですが、私もDX化には賛同しますし、私自身が不勉強でしたが、すでにオンラインを活用した丁寧な職業相談等が行われていることを知りました。
推進していただければと思いますが、1つ注意しなければならないのは、DX化は効率化につながりますが、職員さんの負担がなくなるわけではなくて、場合によっては増えることもあることです。
その点、35ページで業務を具体的にお示しいただいたのは、非常に重要であると思いました。DX化すると楽になる、仕事が減るというイメージがありますけれども、実際にはそうでない部分がありますし、ハイブリッド的にオンラインでもやり、対面でもやるという方式は、現時点では割と手間がかかるのでは、と思いました。
もちろん、長期的に見た場合、そのような問題も乗り越えてDX化が進むことが望ましいと思います。現在は法律の規定がありますので、失業認定は来所が前提になっていることは理解しましたけれども、ほかの先生もおっしゃっていたと思いますが、失業認定の初回はもちろん来所すべきですが、離島の市町村取次ぎの例で酒井先生に御提案いただいたように、2回目以降はオンラインによる失業認定も可能なのではないか、と思いました。
もしオンラインで失業認定をすることについて、法制度がそうであること以外に、何か問題があるとか、システム的に難しいということであれば、教えていただければと思います。
長くなりましたけれども、以上です。
○長良雇用保険課長 ただいまの御質問と関連いたしまして、失業認定のオンラインの議論の経緯を若干御紹介いたします。
規制改革会議のヒアリングなどの場でも委員とディスカッションをした過程におきますと、失業認定の今の出頭というのは法律上の義務ではございますけれども、出頭することによって労働の意思があるということを推定するというのが、前回資料にもお出ししたとおり基本的な考え方として位置づけられてございまして、したがいましてこの出頭という行為自体の重要性というものがこの制度に取り込まれているということがございます。
もう一つは、オンラインなど、他の代替手段によります失業認定の確認というものを仮に行った場合においていわゆるチェックが従前にできるか、ひいては、濫給などが生ずる懸念はないかというような議論もございまして、そういったものに関連いたしましては、例えば諸外国の例、あるいは仮に例えばトライアルでそういった取組をやってみてその効果を検証するなどの方策、いろいろ検討すべきことがあるのではないかというような御議論があったということでございます。
それから、ハローワークの求人の関係についてはまた調べて、必要があれば資料として整理いたしたいと思います。
続きまして、順番を飛ばしまして、渡邊先生お願いできますでしょうか。
○渡邊構成員 御報告をいろいろありがとうございました。不明だった点もよく分かって、大変勉強になりました。
私のほうで気になりましたのは、雇用保険の目的は生活の安定と再就職の支援だというような点があったかと思います。この再就職支援の観点で申し上げますと、諸外国の例を見ますと、個別的にその求職者に対して計画を策定して、その計画どおりに支援というものがなされているかどうかといったものがある意味、日本で言う失業認定に相当するような活動になっているかと思います。
それに対して、日本の場合はそのような個別的な計画というものがきちんと立てられているのかどうか。個別事情に応じて、きちんとあらかじめ内容が定まっていれば、失業認定においてもそういった計画どおりに進んでいるかといったようなところで確認をすることができるようになると思いますし、そうであれば失業認定の在り方に大きな影響を与えるのではないかと思いました。
また、失業給付の給付日数の在り方というものを考える際にも、諸外国では給付の期間に定めのない失業扶助制度が後に用意されている。その上での失業保険制度の給付日数、支給期間の在り方と、日本のように給付日数に制限のないような失業扶助がない状態での失業保険の給付日数の定め方というのはやはり異なってくるのではないかと思われました。そうしますと、給付日数、支給期間によって、その後の再就職での定着率といったものに多少なりとも影響を与えるというのであれば、そのような扶助制度がないことに伴う点を考慮してやはり計画を立てなければいけないといいますか、制度の在り方を考えなければならないのではないかと思いました。
さらに、自己都合退職者の話も多少出ていたかと思いますが、もしお分かりになりましたら、諸外国でこのような自己都合退職者と会社都合などで退職している人に対しての取扱いの違いといったようなものがあるのか、ないのか。ある場合に、どういった違いがあるのかといったようなところもお示しいただくと、今の日本が行っている実務上、自己都合退職の場合には待機期間が長く取られているといったようなところをどう扱うべきかといった点の参考になるのではないかと思いました。
あと、もう一点だけ、基本手当の在り方とは異なってまいりますが、先ほど再就職に結びついていない女性の理由の中で、若年、中年層は妊娠・出産・育児といったような理由で就職していないといったようなことが挙げられていたかと思います。
ということは、育児休業給付を受け取った後に職場復帰や就労継続につながっているかどうかというのも確認が必要と思われました。雇用継続給付からの位置づけは外されましたが、育児休業給付そのものの在り方というものを雇用保険の中でやはり見直さなければならないのではないかといったような、そういった影響を与える事項ではないかと考えました。
私からは以上です。
○長良雇用保険課長 ありがとうございます。
それでは、ただいま諸外国の制度などの御質問がございましたので、自己都合の取扱いに関連いたしましてはまた改めて資料などは整えたいと思います。
1点申し上げますと、前回お出しした資料のとおり、自己都合に関してそもそも給付対象としていない国、典型的にはアメリカでございますが、そういった国があるというようなことは、雇用保険の制度を比較考量して考えるに当たって一つの参考になるのかなと思っているところでございます。
それでは、本日御出席の鈴木先生、フランスの資料などをお出しさせていただきましたが、もし何かコメントなどございましたらちょっと御紹介いただけると幸いでございます。よろしくお願いします。
○鈴木臨時委員 どうもありがとうございます。
今日の議論は、大変に私にとって参考になりました。雇用保険制度、それから様々な皆さんのコメント、非常に私にとって勉強になりますし、それから私の役割は多分フランスの雇用センターの当事者の人と実際にこれからヒアリングをしまして、その結果をこの研究会で一度、多分御報告する機会があるかなと思います。
私はもう大学を退職しまして、パリの近くに移住しましてから10年以上たちますので、会の主な内容については口を挟むことはありませんけれども、フランスの事例を日本の問題に沿った形で一度お話ししたいなと、そう考えております。
○長良雇用保険課長 ありがとうございます。
それから、本日雇用保険のオンラインの関連の資料なども提出させていただきましたが、柴田先生、何か感想など含めてでも結構でございますが、コメントがあればよろしくお願いいたします。
○柴田専門委員 柴田と申します。デジタル統括アドバイザーをやっております。よろしくお願いいたします。
私はデジタルとか、そこら辺についてお話ししたいと思います。ちょっとテクニカルなところもありますけれども、御容赦ください。
まず、ハローワークのほうで受給資格決定、それから失業認定ですね。そういったところは今きちんとしなければいけないんですけれども、オンラインでやるというときにまず一つのポイントとして本人確認というのがあります。本人確認というのは身元の確認と、それから当人認証、当人であるかどうかなんですけれども、それについては先ほど説明がありましたマイナンバーカードを使って、これはJPKIというサービスを使ってやるんですけれども、それが秋ぐらいに仕組みができるんです。
それで、来年ぐらいからそれを乗せたアプリケーション、職業紹介とか雇用保険、そういうところに使っていこうと今しているんですけれども、そういったところで一応できている。プラスその認証、本人確認を行った上で、ではオンラインということで会話をやりましょうか。これは対面と会話、対面とオンラインとどう違うかということなんですけれども、そこで労働の意思と労働の能力という話がありましたが、労働の能力は私もどういうふうに見られるか分からないんですけれども、出社して一応歩けるとか、病気になっていないとか、そういうことかも分からないですけれども、意思とかということでいくと、意思の確認というのは顔を見るだけではなくて、例えば客観的に何回どこかに応募したとか、そういったところもありますので、そういったところと併せて、では対面とオンラインと何が違うかというと、オンラインといってもこれも生体認証、大きく言えば見てというのが一番ですよね。それで、動きもありますので、ある程度というか、そこら辺のところは私は対面とそんなに変わらないのかなと思います。味をみるとか、匂いをかぐとか、そんなことは全然ありませんので、そういう意味では一対一で話すときで、コロナになって私たちこういうようなデジタルの技術を使い始めて結構たつんですけれども、かなりそこら辺は慣れてきたのかなと思っています。
ですから、労働の意思の確認ということでは、わざわざ行かなければいけないというのも、その意思があるというふうに見なされるという話もありましたけれども、本当にそこら辺はずっと要るのかなというのはちょっとあります。
もう一つは、先ほど集団の中にはいろいろな人がいるので、例えば放っておいても就職をどんどん探す人もいますから、そういうばらつきの中でオンラインということでやっていくとか、それが先ほど事務局の方からも言われました段階的にとか、そういうところにもつながると思うんです。
だから、こういう技術はどんどん取り入れて、それをどう適用するかということで、離島とか、そういうところも含めてやっていくというのは、一つのプロジェクトという観点からするとそういうやり方もあるのかなと思っております。
それから、いろいろと話をして、あるいはいろいろな人から聞いたりすると、オンラインでやると、ほかの人に聞かれるんじゃないかとか、のぞかれるんじゃないかとか、そういうようなところの不安もあったというふうに認識していますけれども、そういったところも一対一でやるし、かつ本人に関する情報なので、そこら辺は多分、本人が一番考えるのかなと。
例えば、会社のテレワークとかで重要機密の場合は周りに誰もいないようにとか、そういったところをガイド化するんですけれども、そういったものではなくて本人に関することなので、そこら辺は多分ノウハウも要るのでしょうが、今後きちんと一対一でも漏れないとか、聞かれないとか、あるいはノウハウが外に漏れるとかという話がありましたけれども、それも一対一なので、例えば情報漏洩で100人とか、1万人とか、1000万人が漏洩するという話でもないので、その辺は一対一ということをよく考えるべきかと思います。
あとは、いろいろと話をしていてディープフェイクとかということで、ゼレンスキーとかが演説しているものでディープフェイクはありましたけれども、そういったものもああいう一方通行だったらいいんでしょうけれども、やはり会話をするというときにそこら辺の技術というのはまだそこまでは至っていないのかなというところで、そういうところも心配する必要はないのかなと。
それで、メリットですが、私は介護とかもちょっとやっていて、そのときに思ったのが、とにかく何でもかんでも行かなければいけないんですよね。全ての手続というか、多くの手続で、それが非常に大変で、そこら辺は何とかできないかなということで実は厚生労働省のCIO補佐官だったんですけれども、そういうのもあって、要は例えばハローワークに行くとその時間と、待ち時間もあります。オンラインでやると、予約しておけばその予約の最適化で作業の平準化もできます。ですから、メリットもいっぱいあるんですよね。
あとは、オンラインだと、その画像を自分たちのところで録画しておけば、前の回との例えば顔色が違うとか分かりますし、そこら辺の体調の違いは分かるかもしれない。そういうメリットを多分引き出しながら、リスクというのもやはりちょっとはあると思うので、そういったところ、あるいは意思の確認というところでどこまでそれが有効かというのも確認しながら進めていくというのもあるのかなというふうに思っています。
すみません。デジタルの観点で言わせていただきました。以上です。
○長良雇用保険課長 ありがとうございます。
終わりの時間となりましたので、最後に山川座長に本日の議論の総括の御発言をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○山川座長 鈴木先生、柴田先生、ありがとうございました。また、委員の佐々木先生からも非常に有益なお話いただきました。
前回は、他の制度との関連も含めた巨視的な議論でしたが、今回は基本手当ということで、主たる制度でありますので、その趣旨とか目的をより有効に実現するにはどうしたらいいかという議論を本日はいただいたのではないかと思います。
そこで、早期再就職の促進ということが出てきて議論の対象になっていましたけれども、それを政策的にどう位置づけるのかの議論が必要かなと思いました。つまり、失業という事故に対する所得保障に加えて再就職の促進という目的があるのは、本質的な目的なのか、それともいろいろな点での積極的雇用政策の一環としての位置づけ、あるいは財政面での位置づけというのもあるかなと思いまして、それによって例えばサポートというものをどう考えるかとか、あとは満足度のようなものをどう位置づけるかという、失業給付制度の中での再就職の促進の位置づけをどう位置づけるかが変わってくるのかなと思いました。
それとの関係、失業認定と、それからオンラインが同時に関わってくることで、皆さんの議論を聞いて思ったのですけれども、やはりオンラインでやるとなると個別的な対応をどれだけ丁寧にやるかということがいろいろ指摘されていますけれども、渡邊先生の言われた再就職の個別的な計画とか契約をつくるものの役割が割と面白いかなと思いました。
実は、私はイギリスでジョブ・シーカーズ・アグリーメントに関してヒアリングに行ったんですけれども、ある種、個別的なテーラーメイドという色彩がある一方で、逆に当時のイギリスでしたので、これを守らないと失業給付は与えられませんよという労働者に対する拘束を課すという面もあって、これはフランスがどうなっているのか、鈴木先生に今度お伺いしたいところでして、それはある意味では切り捨てにならないように気をつける必要があるのですが、他方でオンライン化するとなるとやはり可視化は重要になるかなと思いまして、その個別の反応というよりも、ある種アグリーメントみたいな形で可視化するような工夫がオンライン化だと有益な意味を持つ可能性もあるかなと思ったところです。
ここがモラルハザードと、テーラーメイドにする実益というか有益さとのバランスの取り方がすごくこのアグリーメント方式を取ると難しいところがあるかなと思いましたけれども、オンライン方式では一つの工夫の在り方になるのかなと思ったところであります。
ということで、中核的な制度である割には基本的なところから議論しないといけない点が、実態も含めて各国の失業の捉え方の違いがいろいろな研究にも影響しているような感じがしたものですから、基礎的な議論のさらなる必要性も感じたところです。
本日はちょっと時間が延びてしまいましたけれども、大変ありがとうございました。
以上です。
○長良雇用保険課長 ありがとうございました。
それでは、予定の時間もまいりましたので、恐縮ですけれども、これをもちまして本日の研究会は終了いたします。
次回の日程、会場などの詳細は追って御連絡させていただきますのでよろしくお願いいたします。
本日は、お忙しい中ありがとうございました。