第6回 医療扶助に関する検討会 議事録

日時

令和4年6月9日(月) 15:00~17:00

場所

AP虎ノ門 会議室C+D(11階)
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル)

出席者(五十音順)

議題

被保護者健康管理支援事業の現状・課題について

議事

議事録
○吉川保護事業室長補佐 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第6回「医療扶助に関する検討会」をオンライン会議で開催します。
 皆様方におかれましては、大変お忙しいところを御参加いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は委員全員御出席となっております。
 また、本日は参考人として、豊中市福祉部福祉事務所、武本翔子様、京都大学大学院医学研究科社会疫学分野教授の近藤尚己様にも御出席いただき、被保護者健康管理支援事業における現状・課題等について御発表いただくとともに、議論に参加いただきたいと考えております。
 では、会議冒頭のカメラの頭撮りがございましたら、ここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、以降の議事運営は尾形座長にお願いいたします。
○尾形座長 こんにちは。
 それでは、早速議事に入りたいと思います。本日は、「被保護者健康管理支援事業の現状・課題」を議題としております。まず最初に、資料につきまして事務局から御説明をいただき、続けて武本参考人、近藤参考人の順に御発表いただきます。その後、皆さんからの質疑、議論を行いたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、資料1につきまして、事務局のほうから説明をお願いします。
○進士保護事業室長 事務局でございます。
 資料1を御覧いただければと思います。「被保護者健康管理支援事業の現状・課題について」ということでございます。
 まず、3ページを御覧いただければと思います。生活保護制度に関する国と地方の実務者協議におけるこれまでの議論の整理ということで、リード文の1つ目にございますが、生活保護制度の見直しの検討に当たって、昨年11月より6回にわたって自治体の実務者の方々と協議を行い、これまでの議論の整理という形でまとめをしております。
 おめくりいただければと思います。今、申し上げた取りまとめの内容について、今回健康管理支援事業ということで、そこの部分を抜粋したものをつけさせていただいております。現状と基本的な方向ということで、具体的には下3つのポツを御覧いただければと思います。
 まず、下から3つ目のポツです。健康管理支援事業は、施行後間もないことから、着実な実施を図るため、保健部局との連携など、効果的・効率的な実施体制を構築することが必要。
 その下のポツです。レセプトデータ等を用いたPDCAサイクルに基づく取組としていく観点から、事業の実施に係る指標の設定・評価、各種データの効率的な収集・活用等を推進していくことが重要。
 最後のポツです。例示的に3つぐらい書いてありますが、健康管理支援事業の機能強化について検討していくことが必要ではないかということで、1つ目として頻回受診者に対する健康管理支援の側面からの効果的な実施方法、2つ目として重複投薬、あるいは多剤投与等に着目した支援方策、3つ目として生活面に着目したアプローチの推進方策、そういった機能の強化を検討していく必要があるのではないかということでまとめていただいています。
 次のスライドにつきましては、今、申し上げた議論の整理における、特に健康管理支援事業部分に関しての具体的な議論ということで、自治体さんの御意見などを載せているということでございます。
 次のスライドは、前回のこの検討会においていただいた御意見について、健康管理支援事業の部分についてこういった形でまとめさせていただいているものです。
 続きまして、2の現状と課題ということで、8ページを御覧ください。まず、事業の創設までの経緯ということで、健康管理支援事業の経緯ということです。具体的には中ほど、平成30年6月に生活保護法を改正しまして、健康管理支援事業を法定化いたしました。下から2つ目の箱のところですが、令和3年1月に施行ということになっております。
 9ページは、健康管理支援事業の概要の絵になります。具体的に見ていただきたいのは、下の段「事業の流れ」というところでございます。事業の流れとしましては、マル1からマル4にございますように、そういうステップを踏んでいるということですが、マル1、現状・健康課題の把握ということで、要すれば、データ分析的なことを行っていただく。マル2、事業企画ですが、今、申し上げたデータ分析などに基づいて、自治体ごとに事業方針というものをつくっていただく。具体的には、そこにアからオとありますが、オの頻回受診指導を必須の取組として、アからエの取組については、実情に応じて任意に選択していただくという格好になっています。今、申し上げた方針に基づいて、マル3事業の実施ということで、実際に実施をしていただく。さらにはマル4事業評価ということになりますが、評価手法などに沿って評価を実施していただく。そういったことをお願いをさせていただいているということです。
 10ページは、昨年度やっていた社会福祉推進事業になりますが、「医療扶助の更なるガバナンス強化のための、保健医療施策全般との連携に関する調査研究」ということで、具体的には「目的」のところに何をやっているかということを書いています。まず、1つは健康管理支援事業の全国的な取組状況の把握ということ。もう一つは保健医療施策全般との連携に関する好事例の収集。そういったことを通じてよりよい連携・協働の在り方について検討いただいたということでございます。今、こちらの調査研究の検討委員会を立ち上げたのですけれども、まさに今日御出席いただいている京大の近藤先生に座長をしていただいたということでございます。後ほどいろいろデータが出てくるのですが、まさにここでアンケート調査、ヒアリング調査などをやっていますが、そこで得られたデータを資料として掲載しているということです。
 11ページから内容の話になってきます。健康管理支援事業の効果的・効率的な実施体制の構築ということで、おめくりいただいて12ページです。まず、福祉事務所の人員体制の変化ということで、リード文の1つ目を御覧いただければと思います。ケースワーカーの人員体制は、「施行前後で人数は変わらない」というのが約9割を占めています。それが左側のグラフになります。
 右側のグラフについては、保健医療専門職の人員体制の変化ということで、「在籍していない」というところがそれぞれの職種で最も多いわけですが、リード文の3つ目のところを御覧いただきますと、いずれかの専門職が事務所内に在籍しているというのが59.8%という状況になっています。
 おめくりいただいて、今度は各取組方策の実施状況についてです。左のグラフを御覧いただければと思います。最も多いのは「健診受診勧奨」で82.2%。次に多いのが「頻回受診指導」で60.1%。次に多いのは「医療機関受診勧奨」で50.1%ということになっていますが、取組方策によって実施状況にばらつきがあるという状況です。
 右のグラフは、今、申し上げた各取組方策を保健医療専門職の在籍の有無別に見たものです。保健医療専門職が在籍しているというのが濃い青のほうになっていますが、赤の点線の枠でくくってあるところを見ていただくと、医療機関の受診勧奨の実施状況は、保健医療専門職が在籍しているほうが高い割合になっているということがうかがわれます。
 おめくりください。次に庁内他部局との連携状況ということで、まず事業全体ということです。この後、先ほど御紹介したデータ分析の段階、あるいは企画段階、事業実施段階、事業評価段階とそれぞれ出てきます。まず、全体ということです。リード文の1つ目を御覧いただければと思います。庁内他部局と連携している福祉事務所は79.6%です。どこと連携しているかというのが左の表になりますが、最も多いのが健康増進担当課、次いで多いのが保健所/市町村保健センターということになっています。逆に申し上げると、その他の部局については、国保を含めて5%から20%程度ということになっています。
 右のグラフについては、庁内他部局との連携の有無ごとに専門職の在籍状況を見たものです。具体的には真ん中と一番下の帯のところを見ていただければと思うのですが、連携の「あり」「なし」で上下になっていますが、濃い青のほうが専門職が在籍しているということで、「庁内他部局との連携あり」のほうが、在籍しているというほうの割合が高くなっているということになっています。
 15ページは現状分析について連携状況を見たものです。左のグラフを御覧いただければと思います。こちらの被保護者全体の健康課題を把握するために活用したデータ・情報ということで、一番濃い青のところを見ていただければと思うのですが、医療扶助を活用しているというのが最も多いです。ただ、今回見ているのは庁内他部局との連携状況なので、そういった観点から見ると、赤枠でくくっていますけれども、被保護者の健診結果。これは健康増進法に基づく健康増進事業において行われていますので、そういう意味で他部局が持っているということなのですが、これが52.1。もう一つの赤枠のところは国保の話になりますが、被保護者以外の特定健診結果、あるいは被保護者以外のレセプトというのが、4.6、1.4ということで、いずれも非常に少ない数値となっている。
 右のグラフは、どちらかというと個別支援のために活用するデータということですが、これも先ほど申し上げた全体の、左のほうと同じ傾向になっているということでございます。
 16ページを御覧ください。今度は企画段階ですけれども、企画段階で庁内他部局と連携している福祉事務所というのは64.3%です。左のグラフがどこと連携しているかというのを示したものですが、これも健康増進担当課が最も多く、次に保健所/市町村保健センターということになっていて、逆に国保とその他の部局については10%未満ということになっています。
 次のページを御覧ください。今度は実施段階についての連携状況ということです。まず、左のグラフは取組方策別に連携方法を示しているものです。一番濃いところが健診の受診勧奨になっていますが、健診の受診勧奨については、他部局所管の事業と連携しているというほうが単独実施よりも多いことになっていますけれども、逆にそれ以外の取組については、福祉事務所単独で実施しているというほうの割合が高くなっているということです。
 右のグラフについては、連携して取り組んでいる場合の連携先ということですが、いずれの取組方策も健康増進担当課が最も多いということになってございます。
 おめくりください。次いで評価段階になります。リード文の1つ目を御覧いただければと思いますが、評価段階で連携を想定している福祉事務所というのは40.2%です。こちらも左のグラフを見ますと、どこと連携しているかということですけれども、こちらも健康増進担当課、保健所/市町村保健センターの順になっておって、国保とその他の部局との連携を想定している福祉事務所というのは10%未満です。
 右上のグラフを御覧ください。評価ということなので、評価指標の設定の有無を聞いています。濃い青のところ、設定しているというのが27.6%にとどまっているという状況。
 右下のグラフは評価指標の設定の有無別に連携状況を見ているものですが、濃い青のほうが評価指標を設定しているということです。見てみると、評価指標を設定しているほうが連携を想定しているというウエートが高くなっているということでございます。
 先に20ページを御覧いただければと思います。事例を幾つか集めています。取組事例を3つ拾っていますけれども、1つ目については、関係部局と外部有識者との連携の下、医療扶助に関するデータヘルス計画を作成されているという事例で、その中で関係部局あるいは専門職の役割を明確にして、企画段階から連携体制を構築されているという事例です。
 2つ目の事例はデータ分析の関係になりますが、健康医療情報だけではなくて、質的な情報なども用いた分析、あるいは国保との比較といった多様な情報を活用した個別支援を実施されているという事例。
 取組事例の3つ目は、国保データヘルス計画などを基に、医療扶助のデータヘルス計画をつくられているというもので、こちらは統括保健師さんを通じて、関係部局と組織的な連携により取組を実施されているという事例になっています。
 1枚戻って19ページは、昨年度行った社会福祉推進事業の取りまとめの概要ということになります。見ていただきたいのは左の四角の2つ目、現状と課題とありますが、2つのことをしています。1つは関係部局との連携状況ということで、1つ目のポツです。保健部局との連携は進みつつあるけれども、それ以外の部局との連携は低調と。
 次のポツです。段階別に見ると、企画段階、評価段階の連携というのが10%未満ということで、実施段階での連携というのは、健診の受診勧奨以外の取組では福祉事務所での単独実施が多いという状況。
 次のポツです。他の事業と協働で実施するというのは、対象要件などの違いからなかなか難しい側面もあるのですが、逆に類似事業の知見とかノウハウの活用、情報共有、専門職の相談等の連携によって効果的に実施している事例というのもあります。
 もう一つの視点はデータ分析・PDCAサイクルに係る取組状況ということです。1つ目のポツです。活用しているデータというのが医療扶助レセプトが最も多いという状況ですが、健診結果あるいはケースワーカーから得られた情報の活用が5割ぐらい。もう少し細かい話をすると、被保護者に対するインタビュー、あるいはアンケート結果、質的な情報のような話になりますが、これはほとんど活用されていない。次のポツです。評価指標を設定している福祉事務所は27.6%。その下のポツです。取組方策の実施率は、専門職が在籍しているほうが高い割合を占めているということです。
 そういったことを受けて、右上のほうに基本的な方向性とありますが、2つ書いています。1つは、PDCAサイクルに係る各段階ごとの各部局の知見・ノウハウ等の活用等による連携強化。もう一つは、データ分析・PDCAサイクルによる取組そのものの強化ということを挙げています。
 具体的に矢印で2つありますが、まず1つ目、各段階ごとの連携の推進ということです。1つ目のポツです。保健部局についてはさらなる連携強化が望まれる。次のポツです。一方で、保険者として保健事業に取り組む国保部局等との連携も重要ではないか。その次のポツです。保健事業等ではPDCAサイクルに沿った事業運営がなされており、本事業でも企画段階から他制度の類似事業のスキーム、あるいは知見・ノウハウを活用する連携が重要ではないかということが指摘されています。
 もう一つ、データ分析・PDCAサイクルに係る取組の強化ということで、マル1からマル3とありますが、そういったことが必要ではないかと言われていまして、1つは多角的なデータ分析ということです。健康・医療情報の横断的・総合的な分析が重要ではないか。あるいは社会生活面等に着目した多角的な分析も重要ではないか。マル2については目標・評価指標の設定。マル3については保健医療専門職の関与ということで、データ・課題の分析などのために専門職との連携・協力が重要ではないかということです。
 今、申し上げたマル1からマル3について、下の表になりますが、福祉事務所、広域行政を担う県、国ということで、それぞれこういう役割があるのではないかということを整理していただいているというペーパーになっています。
 21ページを御覧ください。前回のこの検討会において松本委員のほうから医師会との連携事例について御指摘がありましたので、我々のほうで調べたものを御紹介する次第です。3つあります。マル1ですが、地区医師会に保健指導に関する業務を委託している事例があります。2つ目は薬剤師会さんになりますが、服薬管理に関する業務を委託している事例。3つ目については、外部評価の段階で地区医師会の担当理事にも御参画いただいて外部評価を実施しているという事例がありましたので、御紹介させていただきます。
 22、23、24ページは、先ほど国保データヘルス計画という話もありましたが、その内容について御参考までにおつけしています。
 25ページ、EBPMの観点からの被保護者健康管理支援事業の推進ということで、26ページを御覧ください。現状分析・評価指標の設定状況ということです。左側の表については再掲になりますけれども、活用しているデータで最も多いのは医療扶助のレセプトということですが、次いで健診結果、あるいはケースワーカーから得られた情報という順番に多くなります。中ほどの「被保護者に対するインタビュー結果」あるいは「アンケート結果」ということについては、10.9、4.6%ということにとどまっていて、右下の点線で囲ってある部分ですが、今、申し上げたケースワーカーの情報等については、いろいろ聞き取りをしたところ、ケースワーカーの裁量によって情報収集しているということがうかがわれました。
 右上の表は、先ほどの再掲ですけれども、評価指標を設定しているというところが27.6%ということになっています。
 27ページを御覧ください。今、評価指標という話をしましたが、健康管理支援事業の手引きというところにおいて、下に図表6とありますけれども、あくまでも評価指標の例という形で、ストラクチャー、プロセス、アウトプット、アウトカムということで、評価項目を我々として挙げさせていただいている現状にはあります。
 次のページは、今年度の社会福祉推進事業ということになりますが、表題のような調査研究を考えています。何をやろうとしているかというのは下線を引いていますが、一番下です。まずは優先的に把握すべき社会生活面等のスクリーニング項目を整理して、標準的なフェイスシート案を作成するというのが1つ。もう一つが、この関係になりますけれども、この事業の目標・評価指標案の検討ということを少し考えているところです。
 29ページを御覧ください。これは前回の検討会でも御紹介させていただきましたが、現状、ナショナルデータベースを活用した全国データ分析を我々が行いまして、こちらについて都道府県等にも共有しているところですけれども、現状分析等に資するよう行うということでございます。
 次いで事業の機能強化ということで、31ページを御覧ください。生活支援の実施状況ということで、左側のほうを見てもらいますと、「保健指導・生活支援」というのが48.3%、次いで「主治医と連携した保健指導・生活支援」が18.9%ということになっています。
 右のほうは、それを保健医療専門職の在籍別に見ているものですが、これも同様の傾向で、保健医療専門職は在籍しているほうが実施割合が高いということになっています。
 32ページは、精神疾患や依存症の方への生活支援の取組事例ということで、2つ挙げています。マル1、委託先の専門職と連携して居宅生活支援等に取り組む事例。2つ目は、福祉事務所内に精神保健福祉士を雇用して、その方が中心になって多職種協働により居宅生活支援等に取り組む事例というものを挙げさせていただいています。
 33ページは、子どもの関係について少し触れています。左の表が受診率、右のほうが歯科の受診率ということになりますが、濃い青が医療扶助、薄い青が医療全体ということですが、特に15歳未満のところに着目していただくと、医療扶助のほうが受診率が低いということがうかがわれます。
 34ページは、子どもの健康生活支援の実施状況ということです。リード文の1つ目を御覧いただければと思いますが、子どもの関係については、これまでモデル事業として結構やってきたということですが、教育委員会と連携した取組、あるいは生活困窮の子どもの学習支援事業と連携した取組といったところを我々として把握しています。
 リード文の2つ目です。取組内容として具体的に歯科医療機関への受診勧奨、あるいは調理技術の習得や食育など食事を切り口とした取組が比較的多く見られる状況です。
 左のグラフは生活支援を行う上で課題を拾っているものです。上から多いということなのですが、一番多いのは「保護者の健康増進への意欲が乏しい」。次いで多いのは「ケースワーカーに時間的余裕がない」。次いで多いのが「保護者に病気や障害等があり対応が難しい」という順番になっております。
 35ページは子どもの関係の取組事例ということで、これも4つ挙げていますが、1つ目は教育委員会と連携した取組事例。2つ目は歯科医師会さんと連携した取組事例。3つ目は生活困窮の子どもの学習・生活支援事業と連携した取組事例。4つ目として健康管理支援事業の中で母子世帯も対象にした取組事例を挙げております。
 37ページを御覧ください。前回の検討会でコロナの影響も踏まえてという御指摘を松本委員からいただいていますので、こちらのほうをちょっとまとめています。コロナの感染拡大による健康管理支援事業の影響ということで、左のグラフを御覧ください。「影響はあった」というのが56.1%。では、どんな影響があったのかというのが右のグラフになっています。上から順に行きますと、「対面での実施が困難」「受診控え」「健診受診勧奨の制限」といった順番になっております。
 38ページは、健診の受診率について見ております。グラフの一番左が全国で、その右のほうが県別になっていますけれども、リード文を御覧いただいて、全国の受診率というのは、令和2年は平均で7.3%ということで、30年、令和元年と比べて微減しています。ただ、都道府県別に見ると、一部の地域では大きく減少しているような状況もあるということです。
 39ページです。今度は生活保護本体のような話になりますが、コロナの感染拡大前後における保護の申請等の動向を見たものです。真ん中の申請の動向のほうを御覧いただければと思うのですが、赤の縦棒のところが対前年伸び率になっています。ここが最も高くなっているのは2020年4月ということで、これは25%ですけれども、このタイミングというのは緊急事態宣言の第1回目だったということです。ただ、その後については減少したり増加したりということで、そういった推移をしているという状況です。
 40ページです。世帯類型別の保護開始世帯数の構成割合ということで、これも左、右で、令和元年、令和2年ということです。つまるところ、コロナ感染拡大前、感染拡大後と見ていただければと思うのですが、赤枠でくくってあるところがその他世帯ということになっていまして、ここは30.7から34.8ということで、4%程度高くなっている状況があるということです。
 41ページを御覧ください。今度はコロナの感染拡大前後でいわゆる相談に来る方の属性というものを見ています。特に見ていただきたいのは表の赤枠でくくってあるところです。青い横棒グラフは感染拡大前、赤い横棒グラフは感染拡大後ということで、要するに、感染拡大後のほうが増えているのはどこなのかというのを見たものです。具体的には5番、6番の若年の単身男性、単身女性、その下の中年の単身男性、単身女性というところが増えていますし、さらには11番の夫婦とお子さんから成る世帯というのも増えているという状況です。
 42ページは相談者の特徴について見たものです。どんな課題を持っているかという目で見ていただければと思うのですが、これもコロナの感染拡大前後で増えているものについて着目すると、6番の就職活動困難、14番の不安定就労(非正規雇用等)と12番の自営業・フリーランスといったところが相談者の特徴として増えているということです。
 43ページを御覧ください。これはコロナのデータとして取っていますけれども、具体的には生活保護の申請につながった方がどんな課題を持っているのかということを図示したものです。左のほうを御覧いただくと、多い順に行くと、病気、あるいは不安定就労といったところが多くなっています。さらに申し上げると、右のグラフですが、そういう個々の課題のようなものを複数持っているというところが半数を超えているという状況にあります。
 そういったことを踏まえて、論点ということで、45ページを御覧ください。現状・課題ということで整理していますが、1つ目、事業の効果的・効率的な実施体制の構築ということで、下線を御覧いただければと思います。専門職の在籍の有無によって、取組方策の実施状況あるいは他部局との連携状況に大きな差があります。
 2つ目のポツです。他部局との連携状況は、保健部局との連携は進みつつありますが、それ以外の部局との連携はあまり図られていません。連携して取り組む福祉事務所では、知見とかノウハウの活用、情報共有、専門職への相談など、必ずしも共同実施のような話でなくて、様々な形態で効果的に実施をされているということです。
 次に、EBPMの観点からの事業の推進ということです。1つ目のポツは、健診結果の活用は5割程度ということです。
 2つ目のポツについては、レセプトや健診結果だけでなくて、社会生活面の情報なども活用した多角的な分析も重要だと。一部の事務所では、被保護者へのインタビュー等によってそういった情報収集も行っていますが、収集する情報が標準化されておらず、ケースワーカーさんの個人の裁量に依存していることが多い。
 その下のポツです。評価指標を設定している福祉事務所というのは3割未満と低調。その中で各福祉事務所から統一的な基準を求めるような声もあって、各取組の達成状況等を評価する客観的な指標の設定、あるいは事業の評価方法を検討する必要があると。
 次に、事業の機能強化ということです。1つ目のポツですが、各取組方策の実施状況にばらつきがあります。2つ目のポツですが、対象者の中には精神疾患等の方がいらっしゃるので、今後、生活面に着目したアプローチ、あるいは社会参加など社会生活の支援を強化していくことが重要ではないか。3つ目のポツは子どもの関係を書いていますけれども、子どもについても健康面での課題が見られるので、健康管理支援事業の中で取組を推進していく方策を検討する必要があるのではないかということです。
 46ページ、それを踏まえて論点。まず、実施体制の構築ということです。1つ目の丸です。保健部局はさらなる連携強化が望まれる一方、国保部局等との連携も重要と考えると。そのときに関係部局との効果的な関わり方について、今、コロナで自治体さんは専門職の確保が難しいという状況も踏まえてどう考えるか。そこに「例えば」とつけていますけれども、データ分析も含めたPDCAサイクルの各段階において、実施段階における協働といった連携のみならず、企画段階や評価段階での連携について、専門職や他制度の知見・ノウハウの活用も含め、効果的な連携を推進していくことについてどう考えるか。
 2つ目の丸です。その際、関係部局との連携協力を得られやすくするためには、どんな取組が必要か。これも「例えば」とつけていますが、国が各段階での関係部局との連携支援を横展開しつつ、福祉事務所自身がデータ分析を含めたPDCAサイクルによる取組を確立させていくことで、関係機関に求める役割を明確化していくことについてどう考えるかということです。
 3つ目です。今、庁内連携の話をしてきましたけれども、それに加えて、医師会・歯科医師会・薬剤師会等の医療関係団体、あるいは外部機関との連携体制を構築することも重要と考えるが、そのための方策をどう考えるかということです。
 47ページ、EBPMの観点からの事業の推進ということです。1つ目の丸です。データに基づく取組については2つ観点があると思っていて、1つは対象者個々人に着目した観点。もう一つは福祉事務所としての施策展開の観点が重要だと思っています。
 そのときに、福祉事務所におけるデータに基づく取組をより一層推進するためにどんな方策が考えられるか。これも「例えば」とつけていますが、今、手引きの中で例示されている指標なども参考に、国による参酌標準としての数値目標の設定も含めて、福祉事務所ごとにそれぞれ指標を定めて、それを基に実施し、評価していく取組を促進することについてどう考えるか。
 2つ目がデータ収集・分析についてです。レセプト・健診情報の活用というものをベースにしつつ、福祉事務所が効果的・効率的に行うためにはどんな取組が必要か。これも「例えば」とつけていますが、福祉事務所でのデータ収集・分析に対して、都道府県による後方支援あるいは国によるデータ分析に係る環境整備など、都道府県、国が支援等を行っていくことについてどう考えるか。
 3つ目の丸です。事業対象者に精神疾患等の方が含まれるということも踏まえて、多角的な観点から社会生活面の課題の把握を効果的・効率的に行うための方策についてどう考えるかということで、これも「例えば」とつけていますが、優先的に把握すべき社会生活面のスクリーニング項目を国が整理することについてどう考えるかということです。
 最後のスライドは、事業の機能強化ということで、1つ目の丸です。事業の対象者に精神疾患等の方が含まれることも踏まえて、生活支援等に関する取組を推進していくことについてどう考えるか。これも「例えば」とつけていますが、この事業の中で相談支援・居場所づくりも含め、生活面に着目した支援を行っていくことについてどう考えるか。
 2つ目の丸は子どもの関係です。現在モデル事業として中心に行ってきていますが、健康管理支援事業の中でその取組を促進するための方策についてどう考えるか。その際、ケースワーカーが子どもに直接アプローチしにくいといった状況も踏まえて、効果的に事業につなげていくためにはどんな取組が必要か。これも「例えば」とつけていますが、この事業の中で推進するに当たって、現状子どもの学習支援事業などと連携して対象者の把握等が行われている事例も踏まえて、親も含めた世帯全体の支援の観点も含めて、関係施策との連携を推進していくことについてどう考えるか。また、ケースワーカーが健康生活面で支援が必要なお子さんの把握に必要な項目を国が整理していくことについてどう考えるか。
 最後に、コロナの影響により、対面での支援の制限、あるいは被保護者の受診控えがある中で、効果的な支援方法についてどう考えるか。ということでまとめさせていただいております。
 以上でございます。
○尾形座長 ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、資料2につきまして、武本参考人のほうから御発表をお願いいたします。
○武本参考人 よろしくお願いします。豊中市福祉事務所の保健師で、武本と申します。
 まず、自己紹介からさせていただきますが、私は保健師で、豊中市に入庁して17年目になりまして、ベテランと言われるようになりましたが、まだまだ分からないことがいっぱいです。母子保健分野に携わった後、健康づくり分野、健診のこととかをさせていただいた後、昨年度までは感染症対策でコロナにまみれた2年間ほどを過ごしておりまして、実は今年度からこちらの福祉事務所で仕事をさせていただいておりますので、今回このような機会をいただいたのですけれども、うまく説明できるかなという不安がありますが、どうぞよろしくお願いします。
 次のページは豊中市の概要と生活保護の状況ということで、こちらのスライドでお示ししさせていただいております。人口が約40万人の中核市となっております。面積が約36.6km2ということで、中核市の中では一番の人口密度ということで、かなり小さなまちですが、人は多いという形のまちです。大阪府の中央部北側に位置しておりまして、大阪府の全体のところを見ると分かっていただけるかと思うのですが、大阪市と隣接しておりまして、伊丹空港、大阪国際空港や新大阪駅などがすごく近くにありますので、交通網が充実していまして、郊外の住宅地として発展をしております。ただ、そういったことで、人口の流入が多くて、核家族化、転出入も多いまちになっています。高齢化率が25.8%という状況です。平成24年4月1日に中核市に移行したことによりまして、健康面で言いますと、豊中市保健所が24年から設立されておりますので、健康づくりについては保健所が本庁機能も持ちますし、実際保健センターのような形で健診の推進というところも全て行っているという形になっております。
 生活保護の状況ですけれども、被保護人員数が9,497人。前年からは少し減ってきていますが、1万人弱という数になります。被保護世帯数が7,513世帯。保護受給率が23.74‰という状況です。
 次のスライドは豊中市福祉事務所の職員体制になります。所長を筆頭にしまして、課長級の主幹が2人、その下に所長補佐ということで補佐級がおります。たくさん係がありまして、いわゆる生活保護実施、ケースワーカーがおるところが左側の福祉係と呼ばれる6係と施設係です。入院されている方や高齢者施設に入っておられる方の担当。面接係というのは新規の面接相談というところの係で、いわゆるケースワーカーが所属しているところになります。豊中市は南北に長いという特徴がありますので、北中部と南部という形で、2つの建屋でワーカーがおります。
 あと、適正化推進係、債権管理のことでしたり、企画・経理係というのは福祉事務所の庶務担当、労務管理のようなところを中心にやってもらっています。
 就労支援の担当では自立支援係があるのと、私が所属するのが医療介護係と言いまして、医療扶助・介護扶助に関する全般的なところをやっております。今からお伝えさせていただきます健康管理支援のようなところを中心に担っているのがこちらの係になります。
 職員が総勢161名。ケースワーカーが64名。こちらは医療介護係の係員としましては18名で実施しておりまして、そのうち健康管理支援員という位置づけでおりますのが5人です。保健師が3人と精神保健福祉士が1人で、今、1人欠員という形になっています。これ以外ではレセプトの点検員やケアマネジャーなど専門職が配置されております。
 次のページは、本市の被保護者への健康管理支援に関する取組の変遷となっております。平成22年度から健康管理支援員ということで、非常勤職員ですけれども、保健師1名を配置しまして、ケースワーカーとの同行による個別支援を開始しております。
 平成27年度には正職の保健師を健康管理支援員として配置しておりまして、健診の受診勧奨や健診受診後のフォロー事業を開始しました。これが後ほどお話ししますメニューのア、イ、ウに該当するものになっております。
 平成28年度には「豊中市医療扶助の適正な実施に関する方針」を策定しまして、事業としましては糖尿病等の重症化が疑われる者に対する個別支援を開始しております。必須事業メニューのエに該当するものを実施しました。
 平成29年度には健康管理支援員にさらに精神保健福祉士を配置しました。また、「第2期豊中市医療扶助の適正な実施に関する方針」を策定しております。
 平成30年度に、今まで自立支援係に健康管理支援員がいたのですけれども、少し所帯が大きくなったということもありまして、医療介護係、今の係を設置したというところです。
 令和2年になりまして、レセプト管理システムを用いた健康・医療データの分析をしやすいようにということで、少しレセプトのシステムも変更しまして、データ分析の実施を始めました。専門職員の体制強化に向けて、業務量の増加見込みや効果額の積算等を実施しました。
 また、「第2期医療扶助の適正な実施に関する方針中間評価と方針見直し」を策定しまして、令和3年度はさらに健康管理支援員の正職の保健師を1名増員することができました。また、一定時間改善が見られない頻回受診者への個別支援を開始しております。こちらが必須事業メニューのオに該当するものです。昨年度は「被保護者健康管理支援事業実施マニュアル」を策定させていただいております。
 次のページをお願いします。先ほどからお伝えしております「豊中市医療扶助の適正な実施に関する方針」について説明をさせていただきます。こちらは本市独自で全て策定しておりますが、現在は第2期の中間評価と方針見直しというもので動いております。
 こちらの策定目的ですが、医療扶助費の伸びや被保護者の高齢化、生活習慣病対策の重要性の高まり等の状況を踏まえて、医療扶助の「あるべき姿」と「取り組みの方向性」ということを明確にさせるために策定したということが1つ。もう一つは、内向きというのが、福祉事務所に対しても、主にはケースワーカーに対しても、外向き、関係部局や関係機関に対して、豊中市福祉事務所の医療扶助としては、市の財源の約半分は扶助費ですし、その半分のさらに半分が医療扶助費ということで、かなり多くを占めるということもありますので、市の方針として示して、こういうふうにやっていきたいということを発信するために策定しておるという形になっております。
 現在、第2期の中間評価をしたところで動いておりますが、第2期の方針における基本的な考え方としましては、第1期からさらなる取組の推進、客観的な評価指標と数値目標の設定、生活習慣に着目した取組の強化、生活の質に着目した取組の推進というものを入れております。
 方針の運用ですけれども、PDCAサイクルに沿って、年度ごとに実施スケジュールの決定と進捗状況の確認を実施しておりまして、今、まさにそちらの提出期限が迫っているという状況になっております。
 また、豊中市社会福祉審議会の中で進捗状況の報告を行うということをしながら、こちらは医師会の先生方も入っておられますし、大学の先生も入っておられるような審議会ですが、外部の意見を取り入れた進捗管理を実施しているという状況です。ちなみに、この方針の位置づけ的なところですが、豊中市の総合計画と豊中市健康づくり計画等の整合性を図りながら、豊中市国民健康保険保健事業実施計画、いわゆるデータヘルス計画の考え方も参考にして策定をしております。
 次のページが医療扶助の「あるべき姿」と「取り組みの方向性」を図式化したものです。左側の医療扶助のあるべき姿というのが、生活習慣病予防ほか、適切な健康管理を本人にしていただき、適切な受療行動に結びつける。また、適切な診療・投薬を実施してもらって適切な制度の適用。それにより被保護者にはQOLの向上、健康寿命の延伸をしてもらいたいというあるべき姿に対して、取り組みの方向性を示しているようなところです。
 次のページは、簡単な御紹介になります。第2期の方針は、A4で24ページのもので作成をしておるのと、概要版ということで、A3版両面ですが、策定をしております。このようなもので見ていただけるようになっております。
 次のページは「取り組み項目別の『判定結果』と『今後の対応』」ということで、評価指標や数値目標を左から2つ目、目標達成率とか、このようになりたいというところがありまして、実績等を載せております。その目標に対しての実績がAからBまでの判定をしておりまして、Bというのはもう少しかなというところになっておりますが、これに向けて健康管理支援員を含めたみんなで取り組んでいくということになっております。
 次のページ、被保護者健康管理支援事業の実施マニュアルにつきましては、このような形のサイクルでなっておるのですけれども、マニュアルの特徴ですが、この実施マニュアルをつくる前から「豊中市医療扶助の適正な実施に関する方針」に基づき、PDCAサイクルをこちらのマニュアルにも取り入れたという形になっております。
 また、事業メニューを国が示していただいた「ア」から「オ」と「その他」ということに分けて、マニュアルですので実施手順まで細かく記載しております。「その他」の項目においては、関係機関や関係部局との連携についても明記をしているというところと、コロナ禍においてつくったというのもありますので、コロナ禍においても持続可能な支援内容にしているという特徴があります。こちらのマニュアルの中にも数値目標を掲げ、さきに示した方針と整合性を持たせるようなものになっております。
 次のページは被保護者健康管理支援事業のメニューです。このような形になっておりまして、アの健診受診勧奨にしても幾つかメニューを分けていまして、全世帯に収入申告書のときに啓発媒体を送ってみたり、生活保護開始者への働きかけ。保護開始者の方には必ず健康管理支援員が面接をして、健診を受けてくださいねということをお願いしたりしております。
 イの医療機関受診勧奨につきましては、健診結果を保健所の健康づくりの健診担当の者からデータとしてもらっておりますので、それについて、要医療なのだけれども受診していない方につきましては、こちらからアクションを起こさせてもらっているというところを実施しております。
 次のページをお願いします。ウの保健指導・生活支援に対しましては、メタボリックシンドロームの基準・予備群に対してのアプローチということで、「動機づけ支援」「積極的支援」に準ずる方について、主に保健師が保健指導を実施しておるという状況です。
 エの重症化予防につきましては、主治医と連携したというところになるのですけれども、糖尿病の患者さんもたくさんいらっしゃるので、重点的には昨年度までは糖尿病患者への働きかけというところを中心にやっておりまして、あとは糖尿病治療中の方に対して、医療機関の先生がこの人はプログラムの対象ですという方につきまして、こちらの健康管理支援員がまたアプローチをするという、医療機関との連携を通じた事業も行っております。
 次のページをお願いします。オの頻回受診指導につきましても実施しているのと、その他として全体を支える取り組みといたしまして、福祉事務所内の連携というところで、ケースワーカーさんにしっかりと私たちがやっている事業を知ってもらわないといけないとか、なぜこの事業をやらないといけないかというところを知ってもらうためにということで、福祉事務所に来ていただいています嘱託医による講座をケースワーカーさん向けに実施したり、あとは私たち保健師や精神保健福祉士、ケアマネジャー等がおりますので、専門職員による日々のOJTと言われる研修を実施したりしております。
 関係部局・関係機関との連携というところでは、保健所の健診担当から健診データの授受や、保健指導担当と指導・啓発媒体の共有をさせていただいていたり、保健所主催の事例検討会。保健所ですので、感染症担当、難病担当等がおりますので、そういった事例検討会への参加。あとは豊中市三師会。毎年、顔の見える関係ということでの挨拶回りは欠かさず実施をしているという状況です。
 ケースワーカーとは常に支援経過を情報共有しながら健康管理支援を行っているというのが、豊中市の被保護者健康管理支援事業のメニューの紹介となっております。
 次のページは昨年度の主な取り組み例ということで、健診受診勧奨、左側のほうは、このような用紙を被保護者に渡して、あなただったらここの医療機関で受けられるよとか、医療機関の電話番号はここだよとか、こんな検査をするのだよとか、かなり細かなところまでお伝えして、このお手紙を渡して持って帰っていただくということで、かなり効果的な、数字としては受診率があるかなということになっております。
 右側、必須事業メニュー(エ)の主治医と連携した保健指導・重症化予防のところです。こちらは糖尿病の個別支援をしているよということで、こちらを医師会の先生方にお渡しして、先生方が「あなた、こんなものがあるから受けてみて」と言って被保護者の方に渡していただくチラシということで、作成させていただいております。
 次のページは、今後の課題・展開としまして4点挙げさせてもらっております。1つ目です。福祉事務所内の推進体制ということで、まだまだケースワーカーのほうに保健師とは何ぞやとか、健康管理とはどういうことだというところを分かってもらわないといけないなということで進めさせていただいております。ケースワーカーの主体である地区担当員を巻き込んだ事業展開ということで、これまでどおり研修を開催するということを続けていきたいなと思っています。
 今度の予定としましては、専門職員による研修を充実させていきたいということとか、あとはケースワーカーのケース検討会に対してもどんどん参加していきたいと思っているという状況です。
 次のページをお願いします。ケースワーカーさんが健診は何で受けなければいけないのかというところを目で見て分かるように、受けた人は将来こうなるのではないかとか、受けなかった人はこういうふうな形になって、被保護者のQOLも下がるし、扶助費も上がっていくのだというところの事例について、こういう書式でお見せしたりして、イメージを持っていただきやすいようなものをこちらとして作成したりしております。
 今後の課題・展開の2つ目としまして、先ほど厚労省の方もおっしゃっておりましたが、関係機関・関係部局との連携はさらなる強化が必要かなというところで、1つの自治体としても思っているようなところになっております。保健部局・介護部局との連携をすることで、費用面もそうですし、効率的な施策の実施を行うことが必要になってくるかと思っております。
 医療機関や薬局等と協働して、被保護者の健康管理について多方面からのアプローチが必要かと思いますし、こちらについては少しオンライン化のような話も進んでいますので、それにかなり期待を持っているようなところになっております。
 都道府県レベルでのデータの共有が困難なので、重複受診や処方の適正化へのハードルがあるというのが実際の課題になっております。特に自立支援医療や難病のデータなどは都道府県が持っているデータですが、そちらの部局に御連絡しても難色を示されるようなところもありまして、こちらは適正化について持っていきたいところなのですと理由をお伝えしても、少し仕事が忙しいので待ってくださいという形で頂けなかったりすることがあるので、そこは何とか都道府県レベルでお願いできないかなと思っているところです。
 これまでの取組としましても、市の三師会への挨拶回りを実施しまして顔の見える関係を構築しています。そのときには、医療扶助についての方針の説明と現状を会長や理事の先生方にお伝えさせていただいて、今の状況をまず知っていただくということを実施しております。
 部局との連携のところですが、今までも健診データの提供をしていただいたり、保健指導担当との啓発媒体等の共有はしておりましたけれども、今年度としましては、さらなる連携のために、定期的に健診担当、保健指導担当にミーティングを実施しようかなというところとか、あとは他方他施策の活用のために、中核市の特徴を生かして保健所へ難病の受給者証のデータ提供というのは一応お受けいただいたので、そういったものを実施していきたいなというところ。
 あとは、先ほどもお伝えしました自立支援医療のレセプトデータ、大阪府にデータ提供を何とかお願いできないかなと思って、チャレンジしようと思っているところです。
 次のページは、課題・展開の3つ目です。「精神及び行動の障害」に対する理解とアプローチということで、こちらは2つありますが、ケースワーカーに対して疾病理解を含むメンタルヘルスリテラシーの向上というのが、あの人、ちょっと大変だから入院させたいとか、入院適応でないような方についてもワーカーさんからの連絡が入ったりするような状況もありますので、精神疾患への理解というところを福祉事務所内からも向上していかないといけないかなというところ。
 あとは、長期入院者の地域移行についてもなかなか手がつけられていなかったところだったのですが、病院や関係機関との連携ということが必要かなというところで、課題として挙げさせていただいております。
 豊中市福祉事務所では平成29年度から精神保健福祉士が正職でこちらの医療介護係におりますので、その頃から研修は実施しておったのですけれども、シリーズ化することによってメンタルヘルスリテラシーの向上をさらに図っていきたいなということ。少し手をつけ始めようかというのが長期入院の精神障害者への地域移行について。大阪府のコーディネーターさんとの連携。また、施設係、入院している被保護者に対しての担当の係が入院先の病院に訪問に行くということがあるのですが、そのときに健康管理支援員が同席して、本当にこの人は退院できないかどうかというのを一件ずつ当たっていこうかという話をしております。
 市の関係部局(保健所の精神保健係、障害福祉課)との情報共有ということも実施していきたいなと思っております。
 次のページをお願いします。今後の課題の4つ目としまして、費用対効果の評価・分析もしていかないと予算、お金が取れないのでというところで、私たちがやっていることが本当に効果があるのかという分析をしていこうという話になっておりまして、今年度、医療扶助費、介護扶助費への効果を検証すべく、有識者、大学の経済学の担当の先生等にお願いしまして量的分析を行う予定にしております。そういったことを今年度も実施していけたらと考えております。
 豊中市の福祉事務所からの紹介は以上になります。ありがとうございました。
○尾形座長 どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、資料3につきまして、近藤参考人のほうから御発表をお願いいたします。
○近藤参考人 京都大学の近藤尚己です。よろしくお願いします。
 次のページに行ってください。私は医師でして、社会疫学という分野で公衆衛生の活動に資する疫学研究を行っています。被保護者健康管理支援事業については、その計画段階から幾つか意見を述べさせていただいたり、つくり込みに関する事業や、委員会等でも関わらせていただいています。今もやっていますが、高齢者の20万人ほどを追跡して、高齢者が元気に暮らせるまちづくり、どんなまちに暮らすと健康長寿でいられるのか、健康格差が縮まるのかというところを明らかにするような研究を進めてきました。
 そういうことをやっていくと、健康のリスクが高い方というのは、生活が困窮している方が多いということが分かりまして、そういうふうにすると、生活保護を受けておられる方々へどういうふうにアプローチしていったらいいのか、問題になってくるということが分かりまして、その後、生活保護の事業にも関わってくるようになりました。
 次をお願いします。今日の内容ですが、まずは社会疫学の観点で健康管理支援事業がいかに大事かということについて、私見を述べさせていただきます。その後、今日も課題に挙がっていますデータを活用するというのがこの事業を推進する上ですごく大事になってくる部分なのではないかと思いまして、そこについて3つの観点から御説明したいと思います。
 次をお願いします。これが社会疫学の分野が大事にしている健康に影響を与える要因に関する考え方です。生活習慣、運動や食事を整えることで健康になることができます。ただ、健康的な生活習慣をするには所得面や人とのつながり、孤立・孤独の問題。今、コロナで話題になっていますが、そういったこと。あと、住んでいる環境。この3つを併せて整えていかないと健康づくりに継続的に取り組むことは難しいということが様々なエビデンスで分かっています。つまり、個人の生活に加えて環境もつくっていくということが大事ということです。右下の図は、高齢者の閉じこもりの割合を示した棒グラフになっておりますが、所得が低い方のほうが社会生活、つまり、人とのつながりも薄いということが分かるデータになっています。こういった人とのつながりを維持するような環境づくりというのも大切だということが分かるかと思います。
 次をお願いします。その結果、様々な調査で分かるように、大人も子どもも生活保護の受給者で、生活習慣が望ましくない方向にある方が多いということが分かります。これは生活習慣病の罹患状況を生活保護受給者の場合で見たものです。
 次の図をお願いします。子どもでも暮らし向きにゆとりがないと答える世帯のお子さんのほうが野菜の摂取量が若干少ない傾向。そして、インスタントラーメン等の摂取も多い傾向があるということが分かっております。
 次をお願いします。社会疫学の様々な研究でもそういったつながりが足りないということが所得と同じぐらい、また、従来から言われている喫煙のようなよく知られた健康リスクにも匹敵するぐらい健康に影響を与える、死亡率を上昇させることにもつながるということが分かっております。
 次をお願いします。こういった欠乏状態、お金にしろ、時間にしろ、人のつながりにしろ、健康をつくるための資源が足りない状況だと、なぜ生活習慣が整えられないのかということに関してもいろいろな実験等の研究が行われております。これはインドやアメリカで行われた研究の結果ですけれども、欠乏状態になると、合理的な思考がしづらくなってしまうということが実験上も分かっています。具体的にはインドの農村で収穫前のお金も食料も少ないときと収穫後の心も満たされているときで認知力テストをやってみると、明らかに収穫前のほうがスコアが悪いということが分かってきます。
 次をお願いします。ですので、生活困窮されている方への健康支援というのは、物質面、お金や現物支給といったものも大事ですが、プラス社会ストレスをためない、そして心のゆとりができるような人のつながりをしっかりキープするような支援ということも必要。この両面で支援していくということが大事だということが分かるかなと思います。
 次をお願いします。これはリーマンショックの前後で子どもの健康状態を追跡したデータを分析してみたところ、独り親世帯の子どものほうが両親いる家庭よりリーマンショック後に肥満になるリスクが上がっていったなどということが分かりました。同様に、世帯所得で分けてみても、世帯所得が少ないおうちのほうが子どもが肥満になりやすくなっているということが分かりまして、先ほどの図にもありましたように、経済危機などが訪れると、そういう様々な面で欠乏状態にある子ども、家庭というコミュニティーがなかなかうまくいっていないような子どものほうが生活習慣もままならないということが起きてくるのかなと思います。その辺をどう支援していくのがいいのだろうかということが大事だと思います。
 次をお願いします。公衆衛生では健康づくりを支援するときに2つのタイプで考えます。1つが個別の支援あるいはリスクが高い方に対するハイリスクアプローチ。これが福祉で言うと選別主義に基づく支援ということになると思います。これはターゲットを絞って行いますので、非常に高い効果が期待できる反面、その対象者の方をスティグマづけする可能性に配慮する必要があると思います。被保護者の健康管理支援事業はまさに選別主義に基づくアプローチですので、スティグマづけを生まないようなやり方を考えていくことが大事になってくると思います。
 もう一つは環境づくり支援、ポピュレーションアプローチというものになりますが、その人の状況にかかわらず、全ての人がそこに生活しているだけで自然と健康になれるような環境をつくるというアプローチですけれども、同じ環境をつくってもその効果というのは御本人の状況によって異なりまして、人によっては逆効果になることもありますので、そういったことを配慮しながら。つまり、データを取ってしっかり効果をモニタリングしながらやっていくということが大切かと言われております。
 次をお願いします。こういった選別主義にしろ、包括主義にしろ、健康づくりを進めていくときにWHOが重視しているのがこの3つになります。生活環境を改善することが非常に大事だというのですが、それをやるためには、先ほどからキーワードに出ております組織の連携です。医療分野だけでは生活環境を整えることができませんので、様々な分野と連携していくこと。連携するためには、まず見える化することです。健康上、誰が困っているのか、どこにそういう方が多いのかというのを明らかにして、優先的に支援を届けていくということ。そして、活動を行った後、それをしっかり評価してPDCAを回していくということが大切だと言っております。
 次をお願いします。では、このデータ活用を具体的にどういうふうにやっていけばいいのかというのが、これからのお話になります。まず、優先順位をつけるためにデータをどういうふうに活用できるのかということを御説明します。これからの話は私たちが高齢者の地域包括ケアづくりの活動の中から学んだことが中心です。これがまさに健康管理支援事業にも応用できるのではないかと思いますので、その事例をお伝えしたいと思っております。優先するのは、個別支援を優先する。人を選ぶことと、優先的に地域をつくる対象となる環境づくりの対象地域です。この2つの選び方があるかなと思います。
 次をお願いします。これをやるときに大事なのが情報です。データから優先度が高い方を選んでいく。例えば健康管理支援なので、健康状態に関する情報は必要です。もう一つ、先ほどから言っている欠乏状態です。お金、経済状況や社会関係といったものが足りない人がどこにどれだけいるのかという条件も必要だと思います。
 もう一つは、既に介入方法が決まっているのであれば、その介入によって効果が上がり得る人はどこにいるのかといった視点で調査をすることもできるかと思います。こういうデータを基に優先順位をつけて介入をしていく。例えば先ほど豊中市の話でもありましたように、健診受診勧奨をするということであれば、健診未受診かどうかというのは、評価することで優先対象者を決めることができます。
 もう一つが優先地区の選定についてです。これについては支援のニーズが高い地域を調査していくことができます。具体的に被保護者が多い地区とか健康課題が大きな地区というのを選んでいくということがあります。
 次をお願いします。そのときに1つのデータ、例えば医療レセプトデータとか福祉事務所の管理データだけだと分かることが少ないです。そういったデータを連結して活用していくことで見えることが非常に多いなと感じます。これがその事例ですが、これは福祉事務所の生活保護の管理データと医療レセプトデータをくっつけて分析してみたときに分かったことです。生活保護受給者の世帯の中でも、独り親世帯であると、子どもが慢性疾患、喘息やアレルギー性鼻炎、アトピー、歯の疾患といったものが非独り親世帯よりも圧倒的に多いということが分かりまして、私たちも驚いた次第です。なので、独り親の世帯への支援が優先度が高いのではないかということが言えると思います。
 次をお願いします。同様に、健康管理支援事業でもテーマになっている頻回受診ですが、これもレセプトデータと管理データをくっつけることで誰が頻回受診しやすいかということが分かります。様々なデータを分析する中で3つ出てきたのがこれです。独居の方と就労がない方、外国籍の方。これは社会学的に考えると、コミュニティーが欠如しているというふうに結論できると思います。家庭や職場というコミュニティー、あとは日本というコミュニティーになじみにくいということです。こういったときに頻回受診をしやすくなる。居場所がないので医療機関につい足が向いてしまうということもあるのではないかと感じます。いずれにしても、そういった孤立対策が頻回受診対策のターゲットとして大事になってくるのではないかということが言えると思います。
 次をお願いします。これはついでですが、データを連結することで事業の費用対効果のようなこともできるかと思います。これはレセプトデータだけのことですけれども、それに子どもの月齢データなどを管理データからくっつけて見てみると、3歳児になったときの養育費が5,000円下がるタイミングで世帯全体で見ると、医療費が逆に増加してしまっているということが分かったというデータです。これは実際に受診や疾病の罹患も増えているということが分かりまして、メカニズムはもうちょっと研究する必要があるのですが、5,000円下がるということの心理的ストレスや様々なことが関係しているのではないかと考えています。いずれにしても、こういったお金の渡し方等をうまくすることで、健康面でもメリットを出すことができる政策を打てるということが分かる。そういったことを分析するためにも、データを連結して分析していくようなスキームが大事になってくるのではないかと感じております。
 次をお願いします。これは優先して事業を行うための地区を選定する方法です。私たちが神戸市とともに使っている介護予防の優先対象地区選定シートというものです。地域包括ケアの包括圏域ごとに要介護のリスクと、それを解決し得る地域資源について、アンケート結果を集計したものを塗り分けしたいわゆるヒートマップというものをつくります。そうすると、リスクが高くて地域資源が少ないエリアが一目瞭然で分かります。神戸市では本庁が各行政区の保健師や事務職員たちとワークショップを行って、どこで優先的にまちづくり活動をしましょうかということをディスカッションしました。その中で選ばれた幾つかの地区から優先的にその年の予算を全部使ってまちづくりを進めていくということをやっていきました。これは非常にシンプルだけれども使いやすくて分かりやすいということで評判になって、今も使っている資料になります。
 次をお願いします。ここからは別の自治体ですが、そういったものを継続評価して変化を見ることで改善がいいところと悪いところが一目瞭然に分かります。そういったデータも使いながら優先地区を選定していくことができるかと思います。このようなことも健康管理支援事業で行えるのではないかと思います。
 次をお願いします。こういったデータを使ってどうやって健康管理支援事業の効率を上げるかというお話です。
 次をお願いします。これも地域包括ケアづくりの経験からですが、先ほどWHOが推薦している3つの事項、環境改善、連携、データ活用というお話を最初に聞いたときに、日本の地域包括ケアづくりの中身と同じことを言っているなと思いました。では、地域包括ケアづくり、支援が本当に健康づくりに資するのかということを検証してみる必要があるのではないかと感じました。
 次をお願いします。私たちが行っている全国の自治体との協働の追跡研究、JAGES調査のフィールドを使いまして疑似実験のようなことをしてみました。
 次をお願いします。先ほどお示ししたようないわゆる地域診断のデータを使いまして、それを全ての自治体に配っています。そのまちの成績表みたいなものです。データを渡すだけだとなかなか使えないので、半分の自治体に使い方の支援を行いました。他部署が参加する地域包括ケア推進会議の場でそのデータを活用したワークショップを企画してやってみる。各部署でこのリスクが高いまちにどんなことができるかというものを一緒に考えるようなワークショップです。これはただ単に企画をつくるだけでなくて、これをやることで部署間の顔の見える関係が生まれるという非常に大きいメリットがあります。
 こういったことをやった自治体とそうでない自治体を比較してみた。3年間追跡してみたところ。
 次をお願いします。こういったまちづくりの活動で課題となっている男性高齢者の地域活動への参加が、積極支援した自治体で統計的に有意に参加率と参加するグループの数、両面で改善したということが分かりました。
 次をお願いします。その効果を所得別に見てみると、低所得の男性も高所得の男性も同じぐらいの効果があったということが分かりました。
 次をお願いします。これは私たちも驚いたのですが、死亡率の追跡もしてみたのですが、男性の死亡率も積極支援した自治体では下がったということが分かりました。
 次をお願いします。所得別の効果も低所得の方でも高所得の方でも同等だったということが分かりました。
 次をお願いします。実際何をやられたかというと、これが高齢者の「コミュニティー・サロン」、通いの場づくりの活動です。通いの場も男性がなかなか来てくれないということがよく言われるのですが、こういう他部署が入って、どうやったら男性に出てもらえるか、アイデア出しができることで、恐らく積極支援した自治体では、そういった男性が集まりやすいサロンができたということも一つあるのではないかと思っております。
 次をお願いします。データの活用のもう一つですけれども、今、言ったような効果的な施策は何かというのを探るエビデンスづくりです。これのためにもデータを連結して活用していくスキームがとても大事になってくると思います。
 次をお願いします。例えば生活保護の支援の場でもよくやられている同行受診。ボランティアの方やケースワーカーさんが同行して医療機関に受診したりすることが日本でも行われていますが、アメリカではボランティアの方を養成して、6か月ぐらい一緒に医療機関を受診して、適切な受療行動を支援するということがPatient Navigationという活動として広がっています。それに関して様々な実証研究がやられていて、頻回受診に関しては効果があるという結果とないという結果が混在しているような状況ですが、その他、健診受診率が向上したり、様々な効果が示唆されているということがあります。
 次をお願いします。今、国内でやられている子どもの支援の取組をマッピングしたものをお示ししていますが、例えば子ども食堂やこども宅食、そういう民間活動との連携も生活保護の方の支援では非常に重視されていますが、そうすると本当に効果があるのかということを評価していくことが大事になってくると思います。
 次をお願いします。これは江戸川区の事例ですが、先ほどの選別主義に基づく生活困窮者の方に優先的に食料支援、届けるような活動も全国で行われています。こういった好事例がせっかくあっても、横展開していくためには効果をしっかり評価して、見える化していくことが大切かなと思っております。
 次をお願いします。これは先ほどから話題になっている医療機関との連携を進めるような活動も行われております。これは厚労省の保険局が行っているいわゆる社会的処方のモデル事業、かかりつけ医と地域の福祉部署、そして地域包括支援センター等が連携して、生活困窮の状態にある患者さんを地域全体でケアしていくという枠組みづくりになっておりますが、これもモデルはできております。これをどうやって全国展開するかというときに評価がどうしても必要になってくると思っています。
 次をお願いします。このときに大事なのは評価するためのデータだと思います。幸い医療扶助や健康保険のデータが集まっておりますので、それを標準化された運営管理データ、フェイスシートのようなものと連携していくことで、非常に厳密なランダム化比較試験はしないまでも、事業を評価していくことができると思います。
 次をお願いします。まとめになります。
 次をお願いします。これは健康管理支援事業が始まる前の年に大学院生たちと福祉事務所の方々にインタビューをしに行った結果をまとめた論文から取ってきたものです。どんなことに期待したり、どんな課題があると思いますかということを聞いたのですが、目標設定の仕方が分からないとか、ケースワーカーの負担が増えるのではないかという不安があったのと同時に。
 次のページをお願いします。データ分析やデータ管理をどうやっていけばいいのかというところへの不安が非常に強いということが分かりました。
 次をお願いします。これは先ほど厚労省からも説明がありました昨年度やられた事業の報告書にもあったように、そこから現在もデータ分析や目標設定については非常に難しい課題を感じているところがあると伺っております。
 次をお願いします。以上を踏まえて、今後重点的に取り組むべきことをまとめたのが最後のスライドになります。まず大事なこととして、全国で自治体間比較ができるような被保護者のレセプトデータだけでなくて、生活に関するデータの標準化。いわゆるフェイスシートの標準化があると思います。全国で自治体間比較ができるようなフェイスシート項目が必要かなと思います。それを進めるためにも、データを集めることと活用することへのルールづくり、規制やインセンティブの仕組みが必要かなと思っております。これをするときに大事なのが国や都道府県によるデータ分析の支援だと思います。研究者が支援している例がありますが、これを全国展開していくと研究者が足りなくなってしまいますので、基礎自治体を支援する都道府県等が増えていく必要があると思いますし、それを促す仕組みというものが必要になってくるのではないかと思っております。
 そういうのをやりつつ、自治体で行われている他事業、その他とどんなふうにすり合わせていけばいいのかということも考えていくと思います。例えば生活困窮者自立支援事業とか、そういったものとの連携を具体的に探っていくことが必要だと思います。
 そういった事業を評価していくためにも、その下に「エビデンスに基づく施策展開のために」と書いてありますが、データを連結しやすくすること。先ほど豊中市からもありましたように、データを下さいと言ってもなかなか出してくれないという状況がある。そこを例えば国からもうちょっと協力してくださいというようなお勧めをしたり、協力した場合のインセンティブが出るとか、協力しやすくなるデータフォーマットをつくるとか、そういったことがあるといいのではないかと思います。
 そういうことをしながら、具体的な事業の連携モデルをつくって、エビデンスを示しながら横展開していくということが大事なフェーズになるのではないかと思っております。
 以上になります。
○尾形座長 ありがとうございました。
 それでは、ここから意見交換に移りたいと思います。まずは資料2と資料3を御発表いただきました参考人からの御発表について質疑応答を行います。その後、事務局が説明した資料1の主な論点について議論をしていきたいと思います。
 それでは、まず資料2及び資料3につきまして、何か御質問等がございましたらお願いいたします。松本委員、どうぞ。
○松本委員 ありがとうございます。日本医師会の松本です。
 資料2、豊中市における取組、大変参考になりました。ありがとうございました。資料1の最後の論点とも関係するわけですけれども、豊中市においては、新型コロナウイルス感染症によって支援事業にどのような影響が生じ、何か工夫などして対応したか、もし実例があれば教えていただければ幸いです。また、豊中市は中核市ということで、人口40万ということでございますので、全国の県によっては県庁所在地の規模に等しいぐらいだと思いますが、福祉事務所の体制や連携もしっかり取れていると思いましたが、もっと小さな自治体が事業を実施していく場合にどのようにしたらよいかとか、あるいは国や都道府県、外部の連携先からの支援が必要だと思われる点がありましたら、教えていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
○尾形座長 それでは、武本参考人、お願いいたします。
○武本参考人 ありがとうございます。
 まず、1点目のコロナ禍において工夫した点という御質問かと思うのですが、どうしても緊急事態宣言等が出ますと、家庭訪問に行けなかったり、そういったこともあって、直接対面での保健指導が難しかったという状況があったのですが、基本的にはそういったところへは電話連絡が中心になりましたが、逆にコロナという状況を使って啓発をしようというところになりまして、特に第1波、2波ぐらいのところで、私はそのとき保健所にいたので、そのときの分析をしていたのですけれども、まだ糖尿とか高血圧の人が重症化するというところが分かっていないときから、第1波の分析をする中で、糖尿病の人とか高血圧の人とか肥満の人とか、そういったのが相関する状況になりやすいというデータが豊中市としても出ておりましたので、それを福祉事務所と共有させてもらって、福祉事務所としてもこういった人が重症化しているから、コロナも怖いけど、健診というのもすごく大事なのだといったところをデータで見せながら、収入申告書等の配布で健診を受けようねというものをつくったというのが工夫した点かなと思っております。
 もう一つの小さな自治体さんがどういうふうにしていったらいいかというのは、こちらも手探りでずっとやっているところではあるのですけれども、豊中市もそうですが、人の確保というのがなかなか。豊中市も保健師3人、PSW1人で実施をしているところなので、もっともっと人が欲しいという状況にもあるのですが、それより小さな自治体さんになれば、そもそもその市町村にいる保健師の数が少ないと思いますので、そうなると、福祉事務所だけでやる事業がかなり難しくなるのではないかと思っております。豊中市としましても、保健所の健康づくりの分野と同じようなことといいますか、フィールドが福祉事務所は被保護者ですけれども、保健所は全市民のところで健康づくりのことをやっているので、そこをいかに一緒にやっていくかというところが本市としても課題だし、さらに少し規模の小さな自治体さんになると、そういう専門職を福祉事務所だけでなくて、市の専門職を全部集めて何か考えるということをやっていかないと難しいのかなと思ったりしました。
 以上です。
○松本委員 ありがとうございました。
○尾形座長 松本構成員、よろしいですか。
○松本委員 はい。
○尾形座長 それでは、ほかはいかがでしょうか。ございませんか。それでは、太田構成員、お願いします。
○太田委員 太田でございます。非常に勉強になるお話、ありがとうございました。
 豊中福祉事務所の武本参考人と近藤教授にそれぞれ1点ずつお伺いします。まず、武本参考人にお尋ねしたいのは、大阪府がなかなかデータをくれないとおっしゃっておられまして、その原因について確認させていただきたいと思います。個人情報保護条例のような法律的な問題で嫌がっているのかどうか。私、申し遅れましたが、法学部におりまして、今日の話は非常に勉強になるとともに、法律家がお役に立てそうなところがあまりないなと思いながら聞いていたのですけれども、法律的な問題なのか、それとも法律的な障害があるわけではないのですが、大阪府の行政組織上のリソースの問題として非常に面倒くさいといいますか、ほかの優先的な仕事があるので後回しにさせてくれという感じなのか。そこら辺を補充で御説明いただけるのであれば、お教えいただきたいということが第1点です。
 第2点目は近藤先生にお伺いしたいのですが、データの解析とか大規模データを集めた分析の仕方というものは、地方自治制度一般についても若干問題になっておりまして、私はそちらのほうで実務の方にお話を聞くこともあったのですが、一方において、データを解析する能力、あるいはそのデータというのは、言葉の性格上、たくさんあればあるほど確実性を増すということもあって、非常に中央集権的になりやすいといいますか、だったら、国がやり方を教えるだけでなくて、実際にそのデータを分析した結果まで出してしまえばいいというようなドライブがかかる議論をしたり、聞いたりすることがあります。他方において、支援しつつ、個々の分析はそれぞれの地方公共団体が地域の実情を踏まえてやるべきだという議論もあって、どちらももっともらしく聞こえるのだけれども、どうにもよく分からないと思うことがあります。
 最後のお話を聞いていると、国のなすべき支援のところもデータ分析の仕方の支援という形で聞こえたのですが、そうなると、個々の分析について地方公共団体それぞれが行うべきだとお考えになる理由、ないしはそうすることのメリットはどこら辺にあるとお考えになるでしょうか。その点をお教えいただければ幸いでございます。よろしくお願いいたします。
○尾形座長 それでは、まず武本参考人、お願いいたします。
○武本参考人 ありがとうございます。
 データのところは私も法律のところがまだまだ勉強しないと疎くて、申し訳ないのですけれども、自立支援医療のレセプトデータについては一応頂けるものなのだけれどもということで引継ぎ受けているような状況でして、頂けるのだが、大阪府の担当がなかなか。豊中に渡すと、ほかの市町村がくれと言ったときにも渡さないといけなくなるし、そうなると、たくさんの市町村があるので時間的になかなか難しいというところで、出すのを渋っているのだというようなところをちらっと聞いたりしていまして、そこを何とかというところで大阪府に言っていかないといけないなというのがあります。
 福祉事務所となると福祉畑になるので、こちらが大阪府に一旦頼むのも大阪府が福祉事務所の担当の部局にお願いするのですが、大阪府はまた大阪府の福祉部局から、データを持っているのが健康医療部という健康の部局になるので、そこからそこへの情報の伝達というところもなかなか壁があるようなところなのかなと思っています。
 もう一つ、難病のデータについてもなかなか難しいのが、担当健診のデータとかでしたら、生活保護法の29条調査とかの中で、健診のことは聞いてもいいというのが明記されているのですが、難病の法律ができたのが遅かったからではないかということは聞いてはいるのですが、難病のことが生活保護法の29条調査のところに明記されていないので、なかなかそこがうまく入らなくて、担当課としては渋っているところもあるような状況ということで、そこを何とかかいくぐれないかということで、法務・コンプライアンス課と連携しながら、難病のデータはもらえるようにしていこうという方針ではあります。
 以上です。
○尾形座長 それでは、続いて近藤参考人、お願いします。
○近藤参考人 ありがとうございます。非常に大事な点だと思います。国が併せてデータ分析をできる部分については、それはぜひ進めていいのではないかと思っております。ただ、今のところデータを国が吸い上げるという仕組みが法律上も難しくて、できない状況もあるのかなと思います。
 今、地域包括ケアのほうでやられているのは、国が標準調査票、生活圏域ニーズ調査という調査票を出して、それをすることを推奨し、その結果を提出してくださいと。提出とすると、インセンティブ交付金でインセンティブも出ますし、インセンティブ交付金指標でそこの自治体でやっている活動の情報も出るようになるのです。それを国が集計して閲覧できる地域包括ケア「見える化」システムというのを運用しています。それを各自治体やそれを支援する都道府県が使って、例えば県下の都道府県同士のベンチマーキングをしたり、その結果を介して支援していくということが、うまくいっているところではやられています。
 そういうふうに現場が使いやすいデータの仕組みを国がつくるというのが一つ現実的なところでできるかなと思います。それこそ頻回受診の状況とかそういうのは、今、図りましょうということを国も示しておりますので、国が分析したほうが早いのであれば、それをやればいいと思います。
 地域が独自に分析することの重要性というのは、それこそ地域包括ケアもそうですが、地域それぞれにある課題とか、地域の状況が異なりますので、一律に評価して、それだけでその地域のことが分かるかというと、そうではなくて、基本的な分析結果プラス地域独自の分析を各地域でできるようにするということが大切になってくるかなと思います。例えば先ほど言った通いの場づくりを進めたいとか、そこでの生活保護の方の参加も増やしたいということを自治体が考えたときに、では、それがうまくいっているのは自治体の中のどこの地区なのだろうかということが出てきます。その分析まで国でやってというのはなかなか難しいので、そういうときに機動的にデータをさらに追加で分析できるような仕組みがあるといいのだろうなと思います。
○尾形座長 ありがとうございました。
 太田委員、いかがでしょうか。
○太田委員 とても勉強になりました。ありがとうございました。
○尾形座長 それでは、新保委員、どうぞ。
○新保委員 お二人の参考人の方からの御報告を受けて、改めて健康管理支援事業の重要性を大変実感いたしました。近藤先生のお話からは、健康管理支援ということでいくと、保健と医療に視点が行ってしまうのですが、社会生活とか人とのつながりとか、生活面も一緒に考慮していかないと駄目だということがはっきり認識されました。もともとケースワーカーの活動は生活を包括的に見ていくので、支援をしている方たちが、生活保護の支援全体の中で、健康と生活、社会参加というところをしっかり結びつけて意識できるようにしていくとよいということを学ばせていただきました。
 質問は武本保健師にお願いしたいのですけれども、17年間行政の保健師として活動してこられた中で、今、福祉事務所の健康管理支援事業を担う保健師さんとして実践をされているわけですが、保健師として活動をされてくる中で、福祉事務所の生活保護のところに保健師がいらっしゃることの強みとか意義を改めてどのように感じられているかを教えていただきたいと思います。
 以上です。
○尾形座長 それでは、武本参考人、よろしくお願いします。
○武本参考人 ありがとうございます。
 まだ福祉事務所に来て2か月ぐらいですので、全体像を把握するのに非常に時間がかかってはいるのですが、私は16年間、健康医療部から出たことがなくて、保健分野ばかりだったので、私としては医療機関のドクター、先生方に対してハードルがそんなに高くないというか、気軽にと言ったら怒られますが、先生、これはどうですかとか、保健師としてこう思うのですけれども、この人にこの薬が本当に要るのですかとか、そういったことを気軽に聞けるような形だったのですが、福祉事務所に来ると、医療機関の先生がこう言っているから、これが絶対だとか、どうしてもそのようなこと。この人の精神面のしんどさはどういうことなのか先生に聞いてみてくださいとワーカーさんに言っても、いやいや、僕が先生に聞くなんてとんでもないというような感じで、どうしても医療機関に対しての敷居が高いようなところがあるので、その辺りでの医療とのかけ橋というか、そういったところ。
 あと、一応医療職なので、例えば医療の専門用語も、ワーカーさんがこれはどういう意味ですかというところもあるので、その辺りを私が分かる範囲でお伝えできるというところは、福祉事務所に保健師、医療職がおる強みかなと思っているという形です。
○尾形座長 ありがとうございました。
 新保委員、よろしいでしょうか。
○新保委員 はい。ありがとうございました。
○尾形座長 ほかはよろしいでしょうか。小塩委員、どうぞ。
○小塩委員 お二人の参考人の方々、非常に貴重な御報告、ありがとうございました。
 お二人にそれぞれ簡単な質問をさせていただきたいと思います。まず武本先生にお聞きしたいのですが、最後のページ、費用対効果についても分析を考えているという御報告があったのですが、具体的にどういうことをされているのか、ちょっと紹介していただければありがたいと思います。
 近藤先生におかれましては、データを使った詳細な分析を進められているということで、大変勉強になりました。先生の先ほどのお話を聞いていると、キーワードの一つとして連結というのがあったと思うのです。いろんなデータをつなげるということがあって、実際に紹介していただいた分析の中でも、レセプトデータのほかに生活環境が分かるようなデータを連結させていろんな分析がされているということでした。今までの先生の御経験で、そういう連結をして、社会経済的な因子とか、あるいは社会とのつながりといろんなアウトカムとの関係を分析する場合、どこがネックになっているかということを教えていただきたいのです。例えば所得がなかなか把握しにくいとか、あるいは社会とのつながりがデータとして把握しにくいとか、そういう御経験があれば教えていただければと思います。
 もう一つは介入の効果の評価の仕方ですが、先ほど介入を積極的にしている地域とそうでない地域でアウトカムがどう違うかということで、非常に興味深い研究成果の御紹介がありましたけれども、行政サイドから見ると、なかなかそういう実験というのは難しいかなと思うのですが、それに代わるような介入の効果を調べるような工夫というのはないでしょうか。それについて何か御意見があれば教えていただきたいなと思います。
 以上です。お願いします。
○尾形座長 それでは、まず武本参考人、お願いいたします。
○武本参考人 ありがとうございます。
 費用対効果の件については今年度から始めたところですので、つい2週間ほど前に大学の先生と、では、いざ何ができるかなというところを話し合ったところで、途中経過も途中経過、始まったところであるのですが、まずは市民健診というのを案内しておりまして、被保護者に受けていただいていますが、健診を受けた被保護者、受け続けている被保護者の方の医療扶助費と、ずっと受けていない方の被保護者の医療扶助費もどれぐらい違うかというところが手っ取り早く見られるのではないかというところが1つ。
 被保護者の健康管理支援事業では保健指導みたいなところもやっていますので、保健指導で介入した糖尿病の重症化予防みたいなところで、保健師が介入した人たちが何年後に医療扶助費がどれぐらいになっているのか、今、介入していない人たちがどうなっているのかというのも見ていけるのではないかというところで、今、話を進めているようなところです。
 以上です。
○尾形座長 ありがとうございます。
 それでは、近藤参考人、お願いします。
○近藤参考人 小塩先生、ありがとうございます。
 連結のボトルネックですけれども、連携した後のボトルネックとしては、データのクリーニングが非常に大変です。どこから来るかというと、自治体によってフォーマットが違うからというのがまずあります。そこはデータの時点でそろっていると非常にありがたいです。だから、KDBのようなデータを今、国もつくっているので、あれは今後活用が広がっていくのではないか。大事なところだと思っています。
 その前の段階で連結するときのハードルは、先ほど武本様からもありました、許可をいただくというところが、その自治体と相当な信頼関係をつくって、そこでデータを連結することのメリットを感じていただき、その優先度を上げてもらわないとなかなか前に進まないです。
 神戸市のように自治体の中でデータを積極活用しましょう、それで健康格差を縮めましょうということ、アジェンダを出してくれているところは非常に進みやすいです。そして、データ保護のための審議会、そういった組織体もつくってくれているので、審議は大変なのですが、それが通れば使えるということが予見できますので、頑張れるというのがあります。
 やっても出ないかもしれないということだと、なかなか私たちもそこにできないということがあります。だから、その辺をぜひ国とか県というレベルで後押ししていくと進みやすくなるのではないかと思っております。
 介入の効果・評価についてですが、今、共有されているこれは、先ほど疑似実験と申しましたように、これは実験しておらず、偶然私たちが16の自治体でデータを渡すだけでは使ってもらえないなという感覚があったので、その使い方をアドバイスしに行ったわけです。そういうところを見つけて、これを評価したいので、継続的にアドバイスを続けてくださいと各自治体の担当の研究者に伝えて、そのための標準化したようなガイドブック。最初の表紙、2枚目かどこかに入れておいたのですが、下のまちづくり支援ガイドとか組織連携ガイドを使ったコーチング支援をやってくださいということで、途中から支援の標準化も加えつつ、基本的には自治体の活動を支援して、その結果を観察するような研究になっています。なので、倫理的な課題はほぼなくて、それを小塩先生も非常にお詳しいいわゆる疑似実験のモデル、反実仮想モデルとか、そういった因果推論手法を用いて因果効果を示せるような統計的な調整を行って明らかにしたということになります。
 データがこうやって集まってきていれば、そういった自治体の特性によってバイアスがかかるのですが、そういう情報も集まっていますので、そこでの調整をすることができます。まずはそういうデータがあるということが前提になってくると思います。
○尾形座長 ありがとうございました。
 小塩委員、よろしいでしょうか。
○小塩委員 大変詳細な御説明、ありがとうございました。
○尾形座長 ありがとうございました。
 まだ御質問があるかもしれませんが、ちょっと時間が押しておりますので、先に進みたいと思います。
 参考人のお二人の方、大変詳細な御説明あるいはお答え、どうもありがとうございました。
 続きまして、ただいまの参考人からの御発表内容等も踏まえつつ、資料1に戻っていただきまして、主な論点につきまして皆さんから御意見等をいただきたいと思います。事務局から、効果的・効率的な実施体制の構築、EBPMの観点からの事業の推進、事業の機能強化という3つの観点から主な論点が整理されていますが、ちょっと時間が押しておりますので、この3つをまとめて皆さんから御意見を承れれば幸いです。それでは、松本委員、どうぞ。
○松本委員 ありがとうございました。では、手短に。
 46ページの論点ですが、3つ目の丸にありますように、地域の医師会や医療関係団体との連携は大変重要だと考えますし、このことは前にも発言しましたし、また、本日事例も御紹介いただきました。PDCAサイクルの実施段階での委託や評価での連携をお示しいただきましたが、企画を含めて各段階の実施における国や都道府県、自治体の他の部門、医師会などの医療関係団体や外部機関も含めた必要なステークホルダーの選出とステークホルダー間の役割の関係を国が整理していくことがよいのではないかと思いました。
 48ページの2つ目の丸にケースワーカーのことが書かれておりますが、そもそもこのような事業に積極的に参画できるケースワーカー自体が少ないことが問題であり、1人のケースワーカーが抱える件数が膨大であることや、保健所の減少もあって、保健所との連携も取りにくくなっているのではないかと思いました。
 3つ目の丸ですけれども、36ページから43ページにかけて、コロナウイルス感染症の影響ということでデータを提出いただきましてありがとうございます。参考にはなったのですけれども、1点お願いです。39ページ目の新型コロナウイルス感染症拡大の前後における保護の申請・決定の動向のグラフについてですが、コロナ禍の2020年とコロナ前の2019年を比較した対前年度伸び率の数字はよいとは思いますけれども、その後もコロナは継続しておりますので、2021年、2022年の対前年伸び率については、それぞれコロナ前の2019年と比較したグラフも示していただけると分かりやすいのではないかと思いました。
 以上です。
○尾形座長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでしょうか。鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 何点か要望等を含めて話をさせていただきたいと思います。横浜市でも健康管理支援のほうは取組をしておりまして、先ほど豊中市さんからも話がありましたが、国の資料にありますように、健康増進担当課のほうと一緒に取組をしていまして、医療専門職などを各区の生活支援課、生活保護の担当部署に人材派遣という形で配置をして取り組んでいます。そういった中で、医療専門職の安定的な配置が昨今なかなか難しくなってしまっているというところで、区の評判は非常にいいのですけれども、安定して同じ方が確保できなかったりするようなところがございます。
 また、先ほど質問でもあったように、横浜市も政令市なので18区あるのですが、それぞれに福祉事務所という形ですけれども、世帯数が多いところで8,000世帯ぐらい、小さいところで1,000世帯ということで、区の規模感が違う中で、なかなか一律にやりづらいところもあります。これは全国的に見ていけば、豊中市さんへの質問などでもあったように、それ以上に規模感が違いますので、詰めていく中では検討しなければいけないだろうなと思っています。
 また、他部署との連携につきましては、一生懸命取り組んでいるのですが、どうしても役所的に人の入れ替わりなどもありますから、毎年毎年そこは取り組まなければいけないというところですとか、昨今のコロナ禍では健康増進担当課のほうがコロナ対応に追われてしまって、どこまで協力していただけるかというのは、相手に左右されてしまうという課題もあるのかなと思っています。
 あと、大きく健康増進の話で言いますと、まず1つは、先ほどケースワーカーの業務の話などもございましたが、生活保護の目的として最低生活の保障と自立の助長。自立の助長としてどこまで健康の部分をやっていくのかというのは整理が必要かなと思っています。保護分野だけやるのか、他の連携の話が出ていましたけれども、今、困窮制度などでは、困窮が全部丸抱えするのではなくて、他の社会資源、関係機関などと連携して進めていくという方向になっていますので、今、生保と困窮の一体的な取り組みなどが進んでいる中では、保護分野が直接やるのではなくて、関係部局などと連携して取り組める仕組みをもっとつくっていけたらいいと思っています。
 そういう中で、逆に健康の分野というのが国民健康保険であったり、社会保険であったり、後期高齢者医療保険であったり、どうしても保険者側のほうの働きかけが強いのですけれども、各保険に加入される方も、生保もそうですが、ずっと生保というわけでもないですし、ずっと国保でもないですし、ずっと社保でもございませんので、そういった部分では、先ほど連結の話がありましたが、この保険の分野の連結、健康を切り口にどう一体的に見る部署があるのか。今、デジタルとか子どもの関係などは横断しての取組というのが言われていますけれども、健康などもそういう部分があるのではないかと思っています。
 最後に、医療費縮減の効果を出すというのが自治体ではかなり難しいかなと。アウトプットとして、健康管理支援などでも何人に働きかけて健診受診者何人にというのは出せますし、そこから受診につながった人数とかは出るのですけれども、実際に取り組んだことによる医療費縮減の効果。先ほど豊中市さんからも健診あり・なしで医療扶助費がどう変わるのかという話がございましたが、一方で、京都大の近藤先生の話の中であったように、医療などは通院だけではなくて、社会環境、置かれた本人の状況によってもかなり影響を受けますから、そういう中で健康管理の事業自体がどう縮減に結びつくのか。そこは自治体だけではなかなか難しい話かなと思いますので、引き続き御検討をお願いしたいと思います。
 以上です。
○尾形座長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでしょうか。小塩委員、どうぞ。
○小塩委員 では、手短に申し上げます。
 まず、他部局との連携が重要だというのは、まさしくそのとおりだと思いますし、好事例も先ほど紹介がありました。豊中市でも積極的にそういうことを推進されているという御紹介がありました。ただ、そういった連携がアウトカムにどういうふうにつなぐかというのを見せていただいて、連携を進めるほどこんないいことがありますよというのが客観的に分かれば、さらに連携が進むのではないかと思います。これはぜひ厚生労働省で音頭を取って、そういう連携の効果が見えるような工夫をしていただければと思います。
 2番目はEBPMについてです。これも非常に重要な論点だと思います。ただ、なかなか評価指標の導入まで行っていないというのが現状だと思います。先ほど近藤先生からも御指摘があったように、ここは標準化された指標づくりについて、もう少し国のリーダーシップが発揮されていいのではないかと思います。地方自治体それぞれで評価することはなかなか難しいと思いますので、これは標準化された指標づくりを推進するような仕掛けが必要だろうと思います。
 その関係で1つだけ追加で申し上げますと、従来いろいろ注目していた点のほかに、先ほど新保委員から御指摘があったように、社会とのつながりのような新しい観点も結構アウトカムに影響しますので、それについても積極的にデータとして収集するような工夫が必要ではないかと思いました。
 以上です。
○尾形座長 ありがとうございました。
 まだ何人かおられますが、私の不手際で時間になってしまいましたが、よろしければ少し延長させていただいて御意見を承りたいと思います。それでは、太田委員、どうぞ。
○太田委員 ありがとうございます。延長しておりますので、手短に1点申し上げます。
 豊中市の武本さんがおっしゃっていたところからちょっと気になったのですが、ケースワーカーに対してレクチャーといいますか、健康管理支援の重要性のようなものを言わないといけないと仰有っていたと思います。そこに質問をするチャンスがなかったのですが、ケースワーカーのほうが違う価値観で動いていて、説得をする必要があるのか、それとも単純に知らないだけだから、まず知ってもらう必要があるのかという点が若干気になりました。今後連携を進めるに当たって、福祉事務所の持っている能力のようなものと、保健部局の余裕、あるいは能力、リソースのようなものがどういう関係にあるのかということを見ながら、何を頼むのかを考える必要があるかと思いました。
 他方において、あまりに福祉事務所の方の能力がないということになると、ほぼ保健部局の方へ外注するような格好になり、しかし、これはこれで問題なのかもしれないなと思って、その相関関係をどういうふうにセッティングするかを考え、そのセッティングに応じて幾つかの標準スキームを考えるかという問題が出てくるのではないかと思った次第でございます。もしお教えいただけることがあれば、追加でお願いしたいと思います。
 私からの意見は以上でございます。どうも失礼いたしました。
○尾形座長 ありがとうございます。
 それでは、豊見委員、どうぞ。
○豊見委員 日本薬剤師会の豊見です。
 46ページのことで発言したいのですが、医薬品の重複投薬とか服薬の中断とかが大きな課題だと思うのですけれども、他部局との連携の中で薬務課との連携というのが数字にも出てきていないように思うのです。全国の薬務課の中にはポピュレーションアプローチとかハイリスクアプローチとか、そういった手法での事業をやっていらっしゃるところもあると思いますので、しっかりとその連携を進めていただいて、事業の企画段階からそういった観点も織り込んでいただければと思います。
 その下の段の各専門職の知見をPDCAサイクルの各段階で取り入れるということについても、各ステークホルダーの選出から踏まえて行っていただければと思います。
 以上です。
○尾形座長 ありがとうございました。
 ここまでの御指摘について、事務局として答えられることがあればお願いいたします。
○進士保護事業室長 事務局でございます。
 様々な御指摘をいただきありがとうございます。すみません。私が全て拾えているかどうか分からないのですけれども、一個一個行きますと、まず松本委員からいろいろ御指摘をいただいていまして、1つは、いわゆる企画段階のところを含めて、ステークホルダーの中で国として整理していく必要があるのではないかと。今、豊見委員からも同じような御指摘をいただいていますが、我々として、基本的には自治体のほうでどのような関係者を募っていくのかというのを主体的に考えていただくということがあるのかなと思いつつ、国としてどういうことがフォローできるのかということについては少し考えていきたいと思っています。
 松本委員からもう一つ、コロナの関係の資料で、2019年度と比較したデータも少し見てみたいというお話がありましたので、そこについては検討させていただければと思っています。
 鈴木委員から何点か御指摘いただいて、全て拾えているかどうか分からないのですけれども、1つは、生保の目的として自立の助長ということで、健康の部分というのは保護としてどこまでやるのかという話だったり、一方で、健康の分野というのは健康増進の担当部局といわゆるインシュアランスの保険のほうの部局も含めていろんなことがやられている中で、どういうふうにやっていくのかということ。これはなかなか難しい問題だと思っていまして、我々としては、生活保護は他方他施策というのがありますので、ヘルスの部局でいろいろ連携して取り組めるものについては、そこは優先的に取り組んでいくという発想が基本的に必要ではないかと思っています。
 その上で、インシュアランスの部分になると、要するに、生活保護受給者というのは特定健診・保健指導の対象外にされていますので、先ほどの近藤先生の言葉を借りれば、いわゆるハイリスクアプローチのようなものについては、ある程度生活保護の担当課でやっていく必要があるのではないかと考えております。
 鈴木委員のほうからもう一つ、いわゆる医療費の縮減の効果のような話で、自治体さんとして出していくのはなかなか難しいという話で、これは正直申し上げて国としてもなかなか悩ましい部分があると思っていますけれども、ただ、小塩先生からもいろんな取組の効果をちゃんと見ていくことが必要だということで、これまでも御指摘いただいていますので、縮減というところまで行けるのかどうか分かりませんが、いわゆるアウトカムというか、何か効果が示せるようなことについては、我々としても引き続き研究をさせていただきたいと思っています。
 小塩先生からいただいた御指摘で、今回は事連携についておっしゃっていましたが、その部分についてもアウトカムが分かるといいということについてなのですけれども、これも我々のほうでどんなことができるのかというのは、ちょっと中長期の話になってしまうかもしれませんが、研究させていただきたいと思っています。
 あと、評価指標の導入にまで至っていないと。我々的には健康管理支援事業の手引きで評価指標例のような感じのことまでしかお示しできていませんので、こちらについては、先ほど説明の中で今年度の推進事業の中でいわゆる評価指標、目標みたいなことを少し検討させていただくということを考えていますが、論点にも少し書きましたけれども、その中で参酌すべき標準というか、そういうものがどこまでできるのかということについては少し検討させていただきたいと思っています。
 太田先生からケースワーカーのレクチャーが重要ではないかという御指摘があったのですけれども、これは我々もそうだと思っていて、健康管理支援事業は令和3年1月からなので、まだ1年ちょっとしか経過していないのですが、研修を昨年度から始めていまして、まだ1回しかやっていないのですけれども、自治体のケースワーカーさんを対象に健康管理支援事業に関する研修ということで、第1回目は近藤先生にも御協力いただいて行わせていただいています。そういう取組を今年度も引き続きやっていくとともに、さらにケースワーカーさんが現場で、先ほど豊中市さんのほうからも専門用語が分からないとか、あるいは医療とのつなぎという話がありますので、そういうところの観点も含めて、研修内容の充実といったことも少し考えていきたいと思っています。
 以上です。
○尾形座長 ありがとうございました。
 ほかはいかがでしょうか。よろしいですか。
 ありがとうございました。
 それでは、御意見のある方からは一通り御意見をいただきましたので、本日の議論は以上とさせていただきたいと思います。司会の不手際で10分ほどオーバーしてしまいましたけれども、以上としたいと思います。
 事務局から今後の予定についての連絡をお願いいたします。
○吉川保護事業室長補佐 次回の第7回検討会につきましては、7月下旬を予定しております。日程、会場、開催方法等の詳細につきましては、追って御連絡をしたいと思います。
○尾形座長 それでは、以上をもちまして本日の議論を終了したいと思います。長時間にわたりまして熱心な御議論、ありがとうございました。