第115回労働政策審議会障害者雇用分科会(議事録)

日時

令和4年3月18日(金)10:00~12:00

場所

オンラインによる開催(厚生労働省 職業安定局第1会議室)

議事

○山川分科会長 定刻となりましたので、ただいまから第115回労働政策審議会障害者雇用分科会を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、お忙しいところを御参集いただきまして大変ありがとうございました。
本日は中川委員、小西委員が御欠席です。それから、山内委員におかれましては途中で御退席と伺っております。また、小西委員の代理といたしまして、社会福祉法人日本身体障害者団体連合会常務理事兼事務局長の菊地通雄様にお越し頂いております。よろしくお願いいたします。
○菊池代理 よろしくお願いいたします。
○山川分科会長 事務局では中村雇用開発企画課長が少し遅れて参加の予定です。
本日の分科会もZoomによるオンライン開催となります。開催に当たりまして事務局から説明があります。
○小林障害者雇用対策課課長補佐 障害者雇用対策課課長補佐の小林でございます、本日もZoomを使ったオンライン会議となっております。開催に当たりまして簡単ではありますが、オンラインについて操作方法のポイントを御説明いたします。本日、分科会の進行中は皆様のマイクをオフとさせていただきますが、御発言をされる際にはサービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックいただきまして、分科会長の許可があった後に、マイクをオンにして、お名前を名乗ってから御発言いただきますようお願いいたします。会議進行中トラブルがございましたら、事前にメールでお送りしております電話番号まで御連絡いただけますようお願いいたします。なお、通信遮断等が生じた場合には一時休憩とさせていただく場合もございますので、御容赦くださいますようお願いいたします。オンライン会議に係る説明については以上です。
○山川分科会長 それでは議事に入ります、カメラの頭撮りについてはここまでとなっておりますのでよろしくお願いいたします。
本日の議題は(1)が「障害者納付金制度の在り方について」、(2)が「その他」となっております。議題(1)はテーマが3つに分かれておりますので、各テーマの説明ごとに質疑応答を行っていただければと思います。
それでは、まず議題(1)の「障害者雇用納付金制度の在り方」関係について、事務局から説明をお願いします。
○小野寺障害者雇用対策課長 事務局、障害者雇用対策課長の小野寺です。資料1に基づきまして御説明申し上げます。今回は「障害者雇用納付金制度の在り方について」です。障害者雇用納付金制度全般の議論と関連いたします中小企業の障害者雇用促進関係、それから長期継続雇用の評価の関係を併せて御議論いただきたいと思っております。
まず、1点目の障害者雇用納付金制度の在り方関係につきまして、1ページ、納付金制度全般についての論点を載せています。納付金制度につきましては御承知の通り、障害者の雇用に伴います企業間の経済的負担を調整するということと併せまして、個々の事業主の更なる障害者雇用の取組を促進・継続するということを目的として運用されております。この目的は維持しつつ、財政の安定的な運用、併せまして事業主の具体的な取組を積極的に支援することも重要だと考えておりますので、この辺りを前提といたしまして、是非御意見をいただきたいと思っております。
2ページです。財政全般の主な意見といたしまして、これまでにいただいた意見を御紹介しております。まず1点目、雇用率の状況に基づきまして、納付金を減額又は増額するといった措置や、持続可能性と運用面での改善を図るという観点から、一定の上限等を設けるといった意見、併せまして助成金の予算の充実・確保ということの御意見を頂いております。
それから、雇用率の未達成企業から納付金を徴収して運用するという制度ですと財源が枯渇するということもあり得るので、枯渇するような場合には、緊急的な公的資金の投入を検討するといった御指摘も頂いております。
3ページです。納付金制度が運用されてからの財政の推移をお示ししております。このグラフでは、法定雇用率が一定の期間を水色と白色の帯で表現しております。御覧いただきますと、雇用率が一定の期間の前半については収入が上がっていって、後半については支出がそれを上回っていくという形で、実雇用率の改善が反映され、それに基づいて収支のバランスが崩れて、いわゆる積立金がなくなっていくという、数百億の剰余金などが手元にあっても数年後にはそれが急下降していくという形で、非常に乱高下を続けるスタイルになっています。
棒グラフの方ですが、支出の分類を区分けで示しております。紫色が助成金、オレンジ色が調整金、網掛けが報奨金です。制度創設当初におきましては、助成金の支出が大部分を占めておりました。これに比べると、直近ではそれが逆転しております。企業の皆様方の御努力あるいは障害者の皆様方の御努力で、雇用がここまで進んでまいりましたので、現状におきましては調整金、報奨金等の支出が大部分を占めていて、助成金に充てる財源が非常に少なくなっています。
4ページです。財政の細かい区分と将来推計までお示ししております。令和2年度の金額につきましては決算値ですので、確定した金額になります。御承知の通り令和3年の3月つまり令和2年度末に、法定雇用率が2.3%に引き上げられております。これについては年度末ぎりぎりでしたので、雇用率を達成できなかった企業の納付金が、令和3年度にフルに発生いたしました。それ自体の影響は令和4年度に反映されてくるということで、納付金の収入を御覧いただきますと、令和4年度に増加が見込まれているという形になっています。
また、この先の法定雇用率の引上げは5年度、令和5年4月の規定になっておりますが、これについての納付金の影響も令和6年度以降になりますので、ある意味前提条件であります法定雇用率等については現行の2.3%のまま、これまでの実雇用率の改善等の見込みから推計値を出しています。
支出の方ですが、支出は調整金等を中心に増え続けていっているという状況です。高齢・障害・求職者雇用支援機構の事務等経費につきましても一時的に増加をしておりますが、その辺りはシステム改修で、単年度の経常になりますので、効率的な運用を図りながらやっていくということですが、収支のバランスが令和4年度には崩れて、マイナス収支になっていく見込みが立っておりまして、令和2年度の確定値で355億余の剰余金が手元にありますが、これ自体も基本的には減少するという見込みです。引き続き、楽観視できるような財政状況ではないというのが現状です。
5ページです。調整金等の受給企業の状況についてお示しをしております。支出の大部分を占めております調整金、報奨金につきまして、それぞれ支給対象人数別の調整金、報奨金の受給企業数割合をプロットしております。左側が調整金の受給企業で1万5,417社です。この中で雇用義務の障害者数に対して10人未満の超過で調整金を受給されている企業が93.5%ということで大半を占めております。残りの10人以上の超過で調整金を受給している企業については、全体でも6.5%ですのでかなり少数ではありますが、金額を見ますと10人未満の雇用率以上の雇用をしている企業に支給している金額とほぼ同等の金額が受給されているという状況です。雇用義務を超えて大変多く雇われている企業というのは数少ないですが、こうした企業においては大変多く雇用されているという実態が反映されているかと思います。
右側の方が100人未満、実雇用率4%若しくは年間で72以上の雇用ということで、納付金、調整金のいわゆるコストの調整ということではない、小さいながらも多数の雇用をしていることを奨励する報奨金をお支払いしている企業です。こちらにつきましては、左に比べますと、少し個々の企業が雇い入れている障害者数が多くなっております。10人未満ということで受給をされている企業が6割強あります、合わせて50人未満まで加えますと、おおむね90数パーセントになってまいります。
ここまでが納付金財政の前半ですので、一度ここで御説明を終わらせていただきます。よろしくお願いいたします。
○山川分科会長 それでは、ただいま説明いただきました障害者雇用納付金制度の在り方関係について、質疑応答に移りたいと思います。御質問、御意見がありましたら、「手を挙げる」ボタンをクリックしていただいて、こちらで指名させていただいた後に、聴覚、視覚障害者の皆様への情報保障という観点から、お名前をおっしゃっていただいて御発言をお願いいたします。なお、山内委員は今日、途中退席の御予定と伺っておりますので、もし本日の残りの2つのテーマについても御発言を予定されておりましたら、この段階で御発言いただければと思っております。それでは、御質問、御意見を。竹下委員、お願いいたします。
○竹下委員 日本視覚障害者団体連合の竹下です。結論から申しまして、雇用納付金財源の問題としては、調整金とか報奨金の支出を抑えるべきではないかというのが結論です。理由は2つあります。1つは、障害者雇用がここまで進んでくる中で、多少、言葉が不適切になる覚悟で申し上げれば、障害者をたくさん雇えば金がもうかるというような印象を与えるべきではないだろうと思っております。少なくとも、雇われている障害者の人格的なこと、あるいは雇用されている職場において労働者としての十分な働きをしているということを念頭に置けば、障害者をたくさん雇えば報奨金、調整金がもらえるという感覚は、やはり広げるべきではないと思います。ただし、それをゼロにするかどうかはともかく、この支出を抑えていくということがまず理念としては必要ではないかというのが1点目です。
もう一点は、本来の助成金にこの雇用納付金制度の活用がメインとしてあるのではないかという思いを持っております。すなわち、障害者の職場における事業主の合理的配慮の提供であったり、あるいは障害者の職場における処遇改善であったり、そのための様々な工夫が必要になってくる中で、助成金による事業主への支援ということをきちんとやっていくことが、障害者自身の働きやすさを作り出すということになるわけですから、この助成金の要件や助成金の対象などをも含めて、前向きな検討がされるべきではないかと思っております。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。それでは、新田委員、お願いいたします。
○新田委員 経団連の新田です。御説明ありがとうございました。納付金財政の運営に関して意見を申し上げたいと思います。まず、そもそも現行の納付金制度は、障害者雇用が進展していけばいくほど納付金を納める企業が減っていって、調整金の支給が増えることになります。基本的に雇用率が引き上がっていかなければ、納付金財政は逼迫していきます。先ほどの資料の中でも、令和4年度から単年度収支が赤字になるという厳しい見込みが示されております。そういう構造的な問題を抱えているという問題意識を冒頭に申し上げたいと思います。そこで、当面は、電子申請の促進や業務のデジタル化といった業務経費の効率化を徹底していくこと、そして助成金については、PDCAをしっかり回して、利用頻度あるいは効果の低いものを中心にしっかり見直しを図っていく必要があると考えております。
加えて、障害者雇用がゼロという状況が数年続いた場合については、例えば納付金の金額を増額するなどの措置も検討してはどうかと思います。その上で、将来的な観点で申し上げれば、調整金や報奨金を減額すること、あるいは支給期間に上限を設けるといったことも考えられると思います。しかし、今申し上げたような措置は、障害者雇用に積極的に取り組んでこられた企業を対象とするもので、ディスインセンティブになる懸念もありますので、代替的なインセンティブの措置を講じるなど、慎重な検討が求められると考えております。
上限の設定等については、企業だけではなくA型事業所についても同様に講じられるべきと考えております。例えば、算定式から外すなど、雇用率の算定式におけるA型事業所の取扱いと併せて議論する必要があると考えております。私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。それでは、山口委員、お願いいたします。
○山口委員 おはようございます。資料1の4ページ、障害者雇用納付金財政の将来推計の表を見て、ちょっと意見を述べさせていただきます。これを見ていますと、令和4年度から収支差がマイナス、つまり赤字が生じて、令和5年度においては収入が減少したにもかかわらず、支出が増える計画になっています。安定的な収入と言いながら、収入先をいかに広げていくか、その際の徴収枠をどのように引き上げていくかの資料にも見えます。調整金、報奨金について規模別に一定額以上の金額を受領している事業者について、上限金額を設けていくことも必要ですが、まずは各事業の実施主体の事務、労務費用の効率化と、実施率や成果の上がっていない事業や助成金等の集約は、必要であると思います。私の意見は以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。続いて清田委員、どうぞ。
○清田委員 日本商工会議所の清田です。御説明ありがとうございました。意見として申し上げたいと思います。納付金制度の目的は、大きく2つあり、企業間の経済負担の調整と、加えて障害者雇用の促進継続という二面がある中で、現在の納付金の支出がほぼ調整金に偏っているということを踏まえますと、やはり障害者雇用の促進といった面に充てる予算を配慮していく必要があるのではないかなと思っております。一方で、財源は限られているという前提の中で考えますと、将来的にはですが、調整金の支給額や支給対象なども改めて見直して検討していく必要があるのではないかと感じております。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。それでは、次は冨高委員、どうぞ。
○冨高委員 連合の冨高です。納付金制度は、障害者雇用を企業が連帯して果たすべき社会的責任との理念に基づいた制度であると考えております。そのことを踏まえれば、納付金は、雇用義務を果たしている企業と果たしていない企業の経済的な負担のアンバランスを調整し、また、障害者雇用の促進と安定のために事業主が拠出するものであって、法定雇用率を達成できなかった企業へのペナルティとなるものではありません。障害者雇用は共生社会、ノーマライゼーションの理念の実現に向けて、社会全体で考えるべきものであり、納付金制度は事業主が共同で果たしていくべき責任というものを体現した制度だと考えております。
今後の障害者雇用政策を進めるに当たっては、基盤となる納付金財政を早急に安定化させることが重要であり、障害者雇用を進める企業に対して、財源枯渇を理由に調整金や報奨金が全く支給されない状態や、障害者雇用への支援が後退することはあってはならないと考えます。そのためにも、今後の納付と給付の在り方について、引き続き、検討を重ねつつ、まずは調整金等の支給制限などを検討する必要があると考えます。その上で、調整金等の支給金額の調整などを行っても、なお財源が逼迫するおそれがある場合には、緊急的に公的資金を投入できる仕組みなども検討する必要があると考えております。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。では、続いて長谷川委員、お願いいたします。
○長谷川委員 おはようございます。福島大学の長谷川です。最初のほうのスライドでも御説明がありましたが、納付金の目的は、事業主間の経済的な負担を調整するということと、障害者の雇用水準を全体として引き上げるということの大きく2つの目的があるのかと思います。1つ目の事業主間の経済的負担の調整の面で見ますと、確かに納付金制度が導入された当時というのは、対象となる障害者が身体障害者だけであって、社会的にもバリアフリー等が進んでいなかった中で、身体障害者を雇用するには一定の経済的負担が必要であって、もちろん身体障害といえども多様な障害があるので、それぞれに掛かるコストは違うけれども、一定程度、納得感のある目的とか制度だったのだと思います。ただ、現在はバリアフリーも進んできていて、身体障害があるからといって個々の事業主が、必ず何らかの経済的負担を負うということでもなくなってきているのかもしれないと思いますし、対象となる障害者が知的障害者や精神障害者にも広がってきている中で、障害者を雇うとコストが一律に掛かるというような考え方というのが、もはや納得のいくようなものではなくなってきているのかなと思っています。
そうだとすると、納付金制度がは何のためにあるのかという目的自体を考え直す必要があるのではないかなと、そういったときに来ているのではないかなと思っています。つまり、1人にこれだけコストが掛かるから、1人増えれば調整金で幾ら、100人になれば掛ける100というような考え方は、もはや説明がつきにくいのかなと思っております。そこの調整はとても難しいと思うのですが、頭数で調整金とか報奨金という形で払っていくというよりも、助成金として特にこの障害者を雇用した場合には、こういったコストが掛かったのでこれの分を助成するという形にしていったほうが、多様な障害への対応ができるのかなと感じています。とはいえ、助成金のための財源が自動的に増えるわけではないので難しいところなのですが、1つの考え方としては、調整金とか報奨金に財源が全部行ってしまうから助成金に残らないという考え方を改めるとすれば、調整金とか報奨金に一定の上限を設けるなどして財源を余らせて、その分を助成金に充てるということも1つなのかなと思っています。
もう1つは、A型事業所が非常に増えてきていて、これが納付金財源にも影響を与えているということをどう考えるかということも、とても重要な問題だと思っています。この点を納付金制度の中だけで調整するのは限界があると思っていて、そうだとすると、雇用義務制度の対象からA型事業所を外してしまうというのが適切な方法なのかなと思っていますが、このことについては今回の議論を越える所なので、また別の機会にお話しさせていただきたいと思っています。私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。では、影山委員、どうぞ。
○影山委員 横浜市立大学の影山です。結論から申しますと、現在のような調整金は、短期的には絞っていって、中長期的にはなくしていってもよろしいのではないかなと思っております。と申しますのは、納付金、調整金というのは、インセンティブメカニズムという側面があると思います。このようなメカニズムが機能するためには、雇用のコストと得られるもの、例えば戦力になってくれるとか、障害者を雇用すると社会の経営が改善するという面があります。こういったベネフィットを合わせて、例えばコストよりもはるかに大きな納付金を払わないといけないということになったり、そのコスト間をカバーするような調整金が出される場合には機能すると思います。
ただ、このようなベネフィットは簡単に手に入るわけではなくて、障害者の多様性というのがありますので、そのノウハウも簡単ではありません。つまり、インセンティブメカニズムが機能するというのは、単にコストを超えるというだけではなくて、やろうと思ったときに比較的容易にできなければなりません。ただ、そのノウハウというのが簡単ではないので、調整金というメカニズムは結局、不安を呼んでみたり、横展開、他の企業のまねをしてやってみようというような、こういうことにもつながりにくい面があると思います。そこで、調整金は絞っていって、むしろ企業が取り組みやすくなるようにきちんとアドバイスをしていくと、イメージ的にはコンサルティングを行っていくと、こういうような制度の整備に充てていったほうがよろしいのではないかと思います。
更に申し上げますと、実雇用率の還付の仕方にも手を入れていったほうがよいように思います。つまり、障害の多様性とか、企業の業務の多様性に対応して様々な取組が出てきております。例えば、施設外就労の受入れなどもあるのですが、こういった雇用しないけれども障害者の就労の場を確保しているような取組に対しては、実雇用率にカウントしていくと。若しくは、それが難しければ、それに準ずるような制度を設けて積極的に評価していくと、このようなことが必要なのではないかなと思っております。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。では、山内委員、どうぞ。
○山内委員 使用者側の山内です。途中で中座いたしますので、事前に送っていただきました後半部分に説明いただく資料の中身も含めて御意見させていただきたいと思います。まず、今議論されています納付金制度の財政です。今後ますます厳しくなることが予想される中で、障害者を雇い入れる事業主を対象に支援を充実させると。この限られた財源を効果的に運用するという根本的な考え方には賛成です。問題は、これをどのようにやりくりするかということですが、ここからは後半部分に御説明いただく予定の内容を踏まえてお話を差し上げます。特に問題なのは、中小企業において障害者の雇用数がゼロである企業が依然として多いことと、雇用率未達成企業が半分以上という実態をきちんと見据えて、これをどのように上げていくかということを考えることが必要であると考えます。
それを考えるに当たっては、御提案いただいた内容にノウハウの共有等があります。これも非常に大事なことだと思います。今は財源の話をしていますので、金銭的な部分の支援と非金銭的な支援の両面にわたって、とかく議論されがちな採用前のフェーズと採用した後、後半にお話しいただく長期雇用とか、様々なフェーズに応じた対応支援というのが発生いたします。先ほど触れたような、なかなか雇用が進まない中小企業の代表者の方々は、未経験な部分も多々あって、そこら辺の不安部分が多々あるかと思います。この不安を解消するための提案として、私ども企業では従業員のエンゲージメントを高めるために、例えば採用から配置、教育、退職までの一連を明らかに示してあげると。エンプロイージャーニーマップというものがあるのですが、このようなものを示してあげて、この時々に何が起こって、対処策とか自分がどう振る舞えばいいのかということを示してあげると。これは、経営の代表者の方々に示すのは、すごく重要なポイントかと思います。
その時々に起こり得ることに対して発生する費用とか、資金面の援助だということを示してあげることも、経営者にとってはサポートになるかなと思います。私どものような民間企業も、規模の小さい企業の代表者の方々からの相談は非常に頻繁にあります。例えば、採用したのだけれども、年を重ねるにつれて能力が少し減退していくと。それで、配置を考えるのだけれども自分の所ではどうにもならないと、これは素直に考えると当然起こり得るような事象です。それを一企業の負担に任せるのである場合は、今後の採用にはなかなか前向きにはなってくれないと。これを総合的にサポートするような、全体を俯瞰して見られるようなシステムを作っていくことが、雇用率を上げていくということではなくて、雇用を安定させて雇用を高めていくことには必要かなと感じました。総じて言いますと、財政の厳しい中でどこに投資するか、ここを全体を俯瞰して決めていくということに結び付けばいいかなと考えております。私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。それでは、倉知委員、お願いいたします。
○倉知委員 九州産業大学の倉知です。何人かの委員の方がおっしゃられたように、そもそもこの制度の趣旨というのは、障害のある方を雇用している企業と、していない企業の不公平感をなくしていくことだと思うのです。この観点は忘れてはいけないし、この原則にのっとって在り方を考えていかなければいけないだろうと思います。つまり、障害者雇用が進んでいけばこのような状況になるというのは当然のことだと思いますし、ほとんどの企業が法定雇用率を達成していけば調整金の支給という制度そのものは要らなくなると思いますし、そうなってくると助成金のほうに絞っていく必要があると思います。
ただ、現状においては調整金をもう少し維持してもいいのではないかなと思っています。そうなると、支出をどう減らしていくのか、収入をどう増やしていくか、この観点になるわけですが、収入を増やすというと納付金額を上げるということになります。そうなると、小さい企業の負担が結構大きくなるので、ここは慎重にやらなければいけないと、だとしたら支出をどう減らすかということがあるかと思います。
そのときに、幾つか意見があると思いますが、まず対象範囲の設定というところです。つまり、ほかの委員からも少し意見が出ましたが、障害福祉サービスの利用者、つまりA型の事業所になると思いますけれども、この利用者は納付金制度の対象から外していくと、障害福祉サービス費用を受給しているので外していくと。又は、そもそも実雇用率100%を超えた分について支給していくという考え方もあると思います。あとは、調整金の支給額の上限設定や期間を設定するとか、金額を減らすとか、こういうところで支出をどう減らしていくかということを考えていったらいかがかなと思います。私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。大変、有益な御意見をありがとうございました。財政問題の背景にあるのは、雇用率が改正されるごとに、その実現に向かって関係各所で努力、御尽力いただいているということの反映ではあるということで、そのこと自体は結構なことではないかと思います。しかし、先ほど事務局から説明があったようなことがあって、1つは構造的なといいますか、システムの設計自体に関わる根本的な問題が一方ではあって、他方で現状の財政の問題をどうするかという双方について御指摘を頂いたかと思います。特に、調整金とその他の支出との関係でメリハリの付け方を考えたほうがいいという点は、比較的共通していたように思われます。そのほかに、事業コストの在り方の問題等についてもいろいろ御意見を頂きました。また、ほかの制度との関連で議論する必要があるというような御指摘もいろいろ頂いたところですので、今日頂いた御意見を基に、また改めて方向性を御検討いただくということでよろしいでしょうか。事務局から何かありますか。
○小野寺障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長の小野寺です。経費の効率化、助成金の効果の検証なども含めて、限られた財源を効果的に集中投下していくというような御意見だったかなと思います。また将来的には構造的な課題という御指摘もありましたので、この辺りも視野に入れながら検討を進めていく方向性を整理していきたいと思います。ありがとうございました。
○山川分科会長 それでは特にありませんでしたら、議題(1)の2番目、中小企業における障害者雇用の促進関係について、事務局から説明をお願いいたします。
○小野寺障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長の小野寺です。資料1の6ページ以降になります。中小企業に対する障害者の納付金制度の適用範囲の拡大等について、頂いた意見を6ページに載せてあります。上の2つの意見は、適用範囲の拡大に向けて賛成の意見でありまして、納付金制度を1つの政策的なテコに使い、中小企業を中心とした企業の取組を促進していくこと、その際には様々な工夫や、あるいは支援を行う必要性について御意見を頂いております。
3つ目の意見は、対象範囲拡大には反対で、法的な拘束力で押し進めるより、マンパワーやノウハウの提供の支援を通じて個々の事業所の取組を後押ししていくべきという御意見です。4つ目の意見は少し観点が違いますが、企業の規模等により納付金の負担感が違うということで、その金額を一律に考えることについては、慎重に検討をする必要があるという御意見。最後の御意見は基本的には、中小企業の取組を進めていく上でのサポートの重要性についての御指摘と受け止めております。
7ページです。これまでの経緯等を含めて、少し状況の共有をさせていただきます。納付金制度については御承知のとおり、制度創設当時は300人以下の企業からは徴収をしないことで、中小企業に対して配慮をしつつスタートをしております。その後、平成20年の法改正で適用範囲を平成22年7月に200人超に、その後、平成27年4月に100人超にと段階的に引き下げ、今の措置の範囲に達しているところであります。引下げに当たり、納付金額5万円を4万円で対応をしている状況です。
8ページ、企業規模別の障害者の雇用の状況です。今、適用範囲の拡大を徐々に進めていった100~300人未満規模の企業の状況に着目して、左側の実雇用率を見ると、平成20年に引下げについて周知がなされ、その後、平成22年と平成27年と適用範囲の拡大していったわけですが、その辺りで改善が進んでいる。あるいは達成企業割合についても、その周辺において増加が見受けられる状況があり、納付金制度の適用が1つの後押しになっているのではないかと推察しているところです。
9ページです。そうは言いましても、障害者の雇用状況を足元で見ると、未達成企業割合で見れば85.3%が300人未満の企業、それから0人企業で見ると99.9%が300人未満の企業です。また今回新たに、43.5人まで対象範囲を引下げており、基本的に100未満のところで申し上げると、未達成企業のうちの9割以上が0人企業で、障害者雇用への取組が一歩も進んでいないところが多々ある状況になっております。
10ページです。今回の納付金制度の適用拡大の議論の際に、中小企業の経営環境と背景をしっかり踏まえるべきと御指摘もありましたので、影響があるような経営状況について載せております。まず1点目が最賃の引上げで、非常に引上げ率が高く推移をしてきた状況があります。また、将来にわたって、今後は社会保険の適用拡大も予定されておりますし、働き方改革の中で様々な法制度に対応をしていくということで、特に規模の小さな中小企業においては、それらの負担感が大きく受け止められている状況と思います。
11ページ以降が、中小企業での障害者雇用の状況についてです。左のグラフを御覧いただくと、雇用をしなかった理由として挙げられているのが、仕事の設定や手順の改善が難しかった、あるいは採用・選考等のノウハウが乏しい、配慮点について分からないということで、知見やノウハウの不足が見受けられるところであります。右に必要な支援として挙げられているのも関連する情報であったり、あるいは助言が十分にまだ行き渡っていないことが見受けられます。
12ページですが、中小企業全般で指摘がされております経営課題として、人材の確保・育成が大多数の企業から挙げられております。ハローワークでは、中小零細企業から求人を頂いておりますが、なかなか充足できない状況の中で、特に障害者が特性をうまく発揮できる仕事については、障害者を御紹介することもあるのですが、その中で比較的人材確保と障害者雇用はマッチして、好事例が生まれたりすることが多々あります。このようなことで、仮に雇っていただいて、うまく行った場合も雇用後の変化として挙がっておりますが、障害者と一口に言っても非常に個人差があり、必要な施設・設備等を整えたり、必要なサポート体制を作ると、能力を発揮することが分かったという声も聞かれているところであります。
13ページです。ハローワークでよくお示しをしているリーフレットの中の一部なのですが、中小企業においては、一人の採用が非常にシビアな重い意味を持っており、一方で個々において極めて戦力化が実現する可能性もあります。基本的に中小企業において、1人の採用において特性を捉えて、仕事に生かしていただく仕組み作りができれば、経営の改善に極めて有効である御指摘であったり、障害者を雇い入れたことにより職場の改善、あるいはよく言われます心理的安全性の向上ということで、企業全体の労働生産性が上がるといったメリットの指摘も多々見られるところであります。好事例を1つ1つ生んでいくことが極めて重要と思いますが、翻ると先ほど御指摘があった課題があり、やはり個々の企業が、取り組んでいく上で必要な情報や助言、あるいはノウハウ等の提供が十分ではない部分もあるかという現状です。
1ページに戻っていただいて、こういったことを踏まえまして、事務局として御検討をいただきたい方向性をお示ししております。1ページの水色の四角囲みの2点目です。今申し上げたように、中小企業についてはノウハウの不足等により、障害者雇用の取組が一歩も進んではいない企業も多々あります。達成企業割合についても、当然半数を下回っている状況になっております。
こうした中で、納付金制度の適用範囲を100人以下へ拡大することについては、慎重な検討が必要と考えておりますが、この辺をどのようにお考えになるのかということ、またノウハウ不足等の課題に対しての支援、個々の企業が障害者の雇入れを進めていっていただけることについての対応も、併せて御意見を頂ければと思っております。説明としては、以上です。どうぞ、よろしくお願いいたします。
○山川分科会長 今、説明を頂きました中小企業における障害者雇用の促進関係についての質疑応答に移りたいと思います。先ほどと同様に御質問、御意見がありましたら「手を挙げる」ボタンをクリックしていただいて、お名前をおっしゃってから御発言をお願いいたします。それでは清田委員、お願いします。
○清田委員 日本商工会議所の清田でございます。御説明ありがとうございました。意見として申し上げたいと思います。納付金制度の適用範囲の拡大については、反対という立場を継続して取らせていただきたいと思っております。資料にも記載いただいておりますけれども、現在の中小企業の雇用実態を考えますと負担金などでの法的拘束力で進めるのではなくて、ノウハウやマンパワー等による支援を充実していただきたいと思っております。100人未満の法定雇用率未達成企業の約9割がゼロ企業であることを考えますと、障害者雇用を行う十分な体制がない中で、強引に障害者雇用を進めることは、企業及び障害者双方にとって質の高い就労にはつながりづらいのではないかと懸念するところです。
また日本商工会議所で行った調査においても、この資料と同様に自社の業務に合った障害者を採用できない、障害特性を踏まえた配慮など受入れのノウハウが不足している、障害者が行う業務の切出し設定が困難であるという回答が上位を占める結果になりました。雇用する意思があっても採用や受入れに関するノウハウ、マンパワーがないというところが実情と思っております。
今後ハローワーク等で、今、議論されておりましたハンディキャップアセスメントで能力を可視化するというそういった視点から、質の高いマッチングと定着支援を進めることがまずは重要ではないかと思っております。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。では影山委員、お願いします。
○影山委員 横浜市立大学の影山です。御意見でございます。私は納付金は雇用義務が課されている企業には一律ちゃんと課していくべきではないかと思っております。と申しますのは公平感・不公平感というのもありますけれども、中小企業の場合、そのようなことをすると結局先ほどのデータにありますように、企業規模が小さくなれば小さくなるほど実雇用率が下がってまいります。
それは負担になるからではないかという考え方もあるのですが、一方で2018年6月1日現在の数字なのですが、新たに雇用義務が課されるようになった企業のデータを取り出しまして、この企業だけでその分の実雇用率を達成していると考えていきますと、計算しますと雇用率を達成している企業というのは、非常に小さな群ではほぼ1人雇っていればいいわけです。一方雇っていない場合はゼロにほぼ近いということになってきます。そのように考えて計算しますと、新たに雇用率を課されるようになった企業というのは、だいたい平均して5%ぐらい雇っているわけなのです。ということは、この企業群で5%も雇っていて、単に負担にしかならないのであれば、かなり経営が苦しくなってくると思います。
ということは、先ほど資料にも示されていましたが、実は障害者雇用というのは戦力にしながら雇用されている例も非常にたくさんあるということになります。こういう観点から納付金というのは広げていってもいいのではないか。
ただし小さい企業群というのはやはりノウハウを蓄積したり、自分たちで得たりするのは難しいので、こういった企業に対しては、ていねいに相談に乗っていくという制度をしっかりとしていく。更に先ほどと同じようになりますが、雇用という形でなくても就労の場を確保するような場合には、実雇用率若しくはそれに準ずる制度で評価していくということも、考えてもいいのではないかと思います。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。では山口委員お願いします。
○山口委員 愛知県中小企業団体中央会の山口です。まず記載されている論点の内容については賛成です。現時点では納付金制度の適用範囲を100人以下の企業に拡大することは慎重な対応が必要で、まずはノウハウ不足の課題に対して国からの障害者雇用に向けた支援を活用しながら、障害者の雇入れを進めていくことが円滑な対応につながります。
資金力、人材、資本等の経営資源が豊富な大企業に比べて、中小企業においては障害者の雇用数が乏しいのは、厚生労働省の資料からも明らかではありますが、大企業の系列や地域の優良企業としてある程度の人数規模を有している部門・部署の明確な組織体制、責任の所在が確立されてきた中小企業ならともかくも、各人が各部門を兼務しながらようやく組織体として確立させようとしている脆弱な企業では、1人の障害者を受け入れようとしても施設の整備や受入れに対する環境整備が整わず、障害者・健常者それぞれがとまどうことも多く、対応に苦慮します。
それにより施策としては障害者雇用促進アドバイザー、コンサルタントの派遣費用を納付金会計からまかなうことにより、更にコスト増が生じてしまいます。現在コロナ感染拡大の影響で、先行き不透明感が大きく、また令和4年10月からは雇用保険料財源の枯渇化に伴う保険料率の引上げがあり、それから厚生年金の適用拡大によって負担も増加していきます。そして高年齢者の70歳までの就業機会の確保のための努力義務、各種届出書類の増加なども見込まれて、労働関係に関する経費と労力は増加の一途をたどっています。
個別の制度だけではなく、負担の全体額や項目を勘案していただく必要があります。まずは障害者を個社に雇い入れようとする環境整備と、障害者を雇い入れることで付加価値を生み出しながら、社会的貢献につながるメリットを、障害者雇用が進まない事業者に気付かせていただくことが必要であると思います。私の意見は以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。では冨高委員どうぞ。
○冨高委員 連合の冨高です。中小企業の障害者雇用の促進を図るためには、企業と就労支援機関等の連携強化や、就労前後のフォローアップの徹底、支援人材の養成、助成金の周知等のあらゆる支援というものが重要であり、そのことが障害者雇用ゼロ企業の低減、ひいては、障害者の職場定着率の向上にもつながると考えています。
そのためにも、先ほど申し上げた通り、さまざまな支援や助成金の財源となる納付金制度を安定的なものとすることが重要であるとともに、限られた財源の中で、中小企業を念頭に、障害者雇用に取り組むための支援をより一層充実させ、障害者雇用の促進を図ることが必要だと考えております。
その上で、中長期的な検討事項となりますが、障害者雇用をより促進していく観点から、納付金の適用範囲に関しては、経済状況や雇用情勢等も勘案しつつも、例えば、100人未満企業のうち雇用率達成企業が約6割程度の一定の割合になった時点において、雇用率未達成の100人未満企業からの納付金の徴収を検討することも必要ではないかと考えております。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。では長谷川委員お願いします。
○長谷川委員 福島大学の長谷川です。私は1つ質問させていただきたいのですけれども、資料で出していただいたものの8ページ、企業規模別の障害者の雇用状況の特に左のほうなのですが、納付金の対象となっていない100人未満の事業主についても、平成22、23年ぐらいからしっかり実雇用率が伸びてきていると思うのです。もちろん納付金制度の対象となっている規模の企業と比べると少し低いですけれども、ただカーブの傾きは結構近くて、この辺りについて、厚生労働省はその要因というか背景みたいなものをどのように考えているのかと思いました。
というのも、納付金制度の対象としなくても、しっかり障害者雇用が進んできていることのと言えるのだろうか。それはなぜなのかというのを教えていただきたいと思ったからです。よろしくお願いします。
○山川分科会長 御質問ですが、事務局から何かありますか。
○小野寺障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長の小野寺です。平成20年以降の高まりについて、今詳細に分析している部分はありませんが、今申し上げたような納付金制度の措置というのも一定ありましたが、平成20年改正で例えば20時間までの労働時間の引下げというのをやっていまして、この辺りで多様な働き方の推進ということで、障害者雇用の広がりが一定後押しされたのではないかと思っています。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。長谷川委員何かありますか。
○長谷川委員 ありがとうございます。福島大学の長谷川です。300人未満の企業に広げたときというのは、確かに納付金制度の対象としたことで、そこの実雇用率がぐっと引き上がったというのはその通りで、効果があったと言えると思うのですけれども、それが100人未満の企業にやったときに同じことが言えるのだろうかという疑問があって、その辺りももう少し考えていいのかなと思いました。
私の意見としては、今いろいろと、先ほど愛知県の山口さんがおっしゃったように、中小企業の置かれている状況は非常に厳しいというのは理解していますので、今が納付金の対象を広げるときかというと、今ではないのではないかという認識をしていますし、先ほどのグラフを見てみると、やれるところはしっかり頑張ってきているというのも表れているのではないかと感じました。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。私は全くいろいろな面で専門外ですけれども、もしかして平成27年ぐらいから人手不足状況が影響しているのかなという感じも、素人ながらしたところです。では小原委員お願いします。
○小原委員 大阪大学の小原です。今の統計のところは平成20年というよりもう少し後のところからずっと増えてきた形だと思うのですけれども、やはり景気の影響はとても大きいと思います。どこでもそうですけれど、景気が少しよくなり雇用拡大するときは、マイノリティの雇用も上がる。女性の労働も同じように動くのですけれども、それがあったのではないかと思います。
全体として増えているところに、先ほど事務局のお話がありましたけれども、急にここのグループだけ増えたならば、制度の効果だったのだろうというのは理解できる。もっと吟味はしなくてはいけないと思うのですけれども、効果はあったのだろうなと思います。
ただ同時に、長谷川委員からあったように、それがほかの規模でも同じようにあったかについては、更に議論が必要かなと思います。
私が言いたかったのは、中小企業のノウハウの蓄積だとか、ていねいなサポートという話がいろいろなところで出てきていますが、先ほど1つ目の議題のところも、個別企業における雇入れを進めるように支援してというような言葉が出てくるのですが、1つ懸念することがあります。私は支援はすごく大事なことであり、絶対必要だと思っていますが、その上での懸念です。
いろいろな資料を見ていて気になったのが、中小企業はゼロ雇用が多いというのはその通りなのですけれども、同時に1人以上雇っている所も多いです。新しく雇えるようになったとか、もともと雇っている所も多い。いろいろなデータを見せてもらって思ったのは、非常にここのグループ、中小企業とまとめると分かりやすいのでそう呼んでいますけれども、ここでは異質性が大きい、分散が大きい。いろいろなタイプの企業が存在しているということです。
こういうようなグループの異質性が大きいところに、一絡げにした同じ政策を行うことは、メリットを与える、あるいは援助するというような政策であれ、ペナルティを与える政策であれ、非効率でうまくいかない可能性がある。いろいろな種類・タイプの企業があるのに、これらにターゲットを置くのは危険。平均的に似ているようなグループと同じように政策を行うのは、何か1つの政策を実施するのはとても効果があると思うのですけれども、異質性が大きいときに同じ政策をとるのは思ったほど効果がでない可能性も大きいです。
中小企業と言われたときに、もしかしたら私たちが思っていたほど、障害者雇用に関して規模の経済は働いていないという可能性もあります。もっと違う産業のタイプとか、地域のタイプとか職種とか、特定のところで雇いにくい、雇えないということが働いているなら、それを調べてから政策をとらないと。同じ政策を中小企業だからという、規模だけの側面で対策をとってしまうと、うまくいかない可能性があると思いました。
ではどうしたらいいかということをずっと考えていたのですけれども、属性を調べるのは大変なのですが、そしてこの間、私も気になっていろいろな研究を調べたのですけれども、属性差をしっかり示しているようなエビデンスは見当たらなくて。単に企業に聞きに行くだけでは不十分です。先ほどどんなサポートが必要ですかと細かく聞き取った資料がありましたが、とても有益な統計資料だと思うのですけれど、「どんな」ではなく「どこ」がというのを調べないといけないときは、当人に直接聞き取りしても多分わからない。何かそういうような情報が得られるといいな、政策を考える上でどんなタイプの企業というのが分かる資料があったらいいと思いました。もちろんこれは自戒も込めてなのですけれども。何か分かったら情報を共有したいと思います。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。それでは倉知委員お願いします。
○倉知委員 九州産業大学の倉知です。先ほど山口委員や清田委員がおっしゃっていたことが恐らく現状なのだと思います。でも今のままでは何も変わらないのも現状ではないかと思っていて、やはり100人未満の企業に対して、企業側も国もどうやって本気になって改善していくのか、それを示す必要があると思っています。
例えば支援側として企業に対して技術的な支援体制を強化するということを、もっと明確にしていくということがまず必要ではないか。それがあって、やはり意識を持ってもらうためには適用拡大はせざるを得ないのかなと思っています。
これは納付金を徴収することが目的ではなくて、どうしたら雇えるかという意識を持ってもらうためにです。
でも少し金額を安くするとか、少し徴収までの準備期間を設けるとか、徴収が目的ではないので、意識して改善していくというところを目的に置く必要があるのではないかと思います。ですから技術的支援を強化するという体制がないままで適用拡大にするのは、いい結果につながらないのではないかと、私は思っています。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。では大谷委員どうぞ。
○大谷委員 お世話になります。育成会の大谷です。皆さんの意見をお聞きしながら知的の保護の立場としてお話をさせていただきます。納付金制度の金額についての問題は、ちょっとここは立場上触れない方向性で行かせていただきます。働くという観点から考えたときに、正直なところを言いまして、雇用が増えるということについてはありがたいと思います。ただここにやはり大きな障壁というのがあると思います。今まで100人以上の所で培ってきた状況とこれからの状況は、かなり違ってくると思います。ただ今後ちょっと考えられることの中で、合理的配慮が今度企業にも義務化ということになってくると、そこの側面から考えるとやはり働くということは1つのステータスになるのかなと思います。
ただやはり全く分からないところに、障害がある人が入るということになると、なかなか続かないとかいろいろな問題が含まれてくると思います。私どもは地方ですので、地方で就労している方の状況を見ますと、3年未満で退職、辞めている人がかなり多い。特に知的の場合、40%ぐらい辞めてしまうというのが現実問題あります。ではその方たちが次へ、新しい方がそこに入られた、また辞めていくというような状況もあるので、ただ数字合わせになっては困るというのはものすごく大きく感じます。
そこに1つ原因としてあるのは、特別支援学校と企業との考え方のミスマッチの部分にあると思います。特別支援学校においての1つの方法として、就労に本当に合った状況を高等部に入ってから教えているかどうかということが、かなり大きなウエイトを占めると思います。身体的な障害がある方においてはまた違うのですけれども、特に知的面の障害、行動障害があるとかに対しては、かなりそことのミスマッチが生まれやすいということを理解していただきたいと思います。
その辺も含めての部分も考えていただきたい。本当に1人ずつ就労していけるというのはものすごく大変なことなので、それは促進していただきたいのですけれども、そのようなことも考えていくと、余りにも急ぎ過ぎるとミスマッチを起こして結局は辞めていく方が多く、そこにまた次の方が入っていく。特に高等部を卒業してから一般就労というパターンが増えてくる確率がありますので、それからすると余計増えるというのはないかなと思います。
ですので支援体制が十分できてからというほうが、私たちにとっては本当は今すぐにでも就労を増やしてほしいという気持ちはあるのですけれども、1日でも長く働いてもらうことを考えるとその辺はやはり続けて支援を、中小さんはもう少し勉強していただいて、それに合わせて進めていただくのが一番ベストかなと思います。
あくまでもこれは障害のあるほうの立場として話をさせていただいたのですけれども、よろしくお願いします。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。では日身連の菊地様、お願いします。
○菊地代理 ありがとうございます、日本身体障害者団体連合会の菊地と申します。今日は代理で出席しているのですが、御説明をお聞きした上でちょっと感じたことを述べさせていただきます。
ノウハウの支援ということが課題として、ノウハウの課題を克服しながら支援をしていきましょうという御説明がありましたけれども、ノウハウの支援ということについて私としては、一言でノウハウと言いましてもいろいろなことがあると思いまして、やはりきめ細かいノウハウを支援していくということが大切なのかなと思いました。
8ページの雇用率のグラフがありましたけれども、規模の大きいところの雇用率がやはり高い。だんだん規模が小さくなってくると、雇用率が低くなってくるというものが、規模に応じて雇用率のグラフがきれいに並んでいるのですけれども、皆さん御承知のように障害者の特性というのは多様でして、そういう意味では一言でノウハウと言っても一律にはやれないのかなと感じています。
つまり8ページのグラフでも、規模の大きい所というのは多様な障害特性に応じた方々を雇える業務もあるのかなと思います。いわゆる多様な業務があるから、障害特性に応じた方々も雇いやすいという面もあるのかなと思いました。逆に言いますと100人未満ということになりますと、業務というのはある程度固定された業務があるのかなということで、そうなってきますと障害特性もある程度の特性に特化された方々を雇う形になるのかなと感じまして、そういう意味ではそういう方々に対してのノウハウの支援というのはやはり業種とか、そういうものを踏まえた上でこういう障害特性の方々に対してはこういう業種がありますよというような、そういう事業者に対してのノウハウというものも必要なのかなと感じました。
あくまでも私見の域は出ないのですけれども、やはりノウハウということについては特に規模の小さい企業に対してのノウハウの支援というのが、きめ細かくやる事が必要なのかなと感じました。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。それでは下屋敷委員お願いします。
○下屋敷委員 全国精神保健福祉会連合会の下屋敷です。全くの感想で申し訳ございませんが、精神の障害のことをちょっと考えると、私は岩手で家族相談などをやっているのですけれども、特に多いのは発達障害系の方で、解雇とかになると自信を失って閉じこもるといったケースが結構多いのです。あと貧困の問題も絡みやすいので、本当に個々のケースが非常に差がある。中途障害なのでなかなか就労も難しいというのが私の実感です。
一律に中小企業の納付金のレベルを下げるというのは、これは慎重にしたほうがいい感じがするのです。今のような経済状況とかを見ますと。例えば中小企業ですと事業主の所得申告、青色申告の中で、経費をどう下げるかというのを身近なところで考えていると思います。例えば中小企業向けの税制の中で何かできないかとか、考えていいのではないかと感じるのです。
例えば身体障害者ですとバリアフリーの促進税制のようなものが確かあったと思うので、そういうような雇用関係の中小企業向けの税制のようなものも視野に入れていいのではないかと思いました。
それからあとはノウハウの蓄積の事例なのですけれども、例えば先ほど言った障害のほうから見ると再チャレンジしていくステップをどういう形で設けるかとか、例えば精神の場合、今ピアサポートという地域包括ケアシステムを精神障害者に適用するという中で、精神の障害を持った方が精神を持った方を支えるというのがあって、それを就労面でもなにかそういう事例、あるいは起業家ですね。障害を持った方が起業家をしていくことの手引きを作るとか、そういう障害者目線に立ったような何かがあっても、そういう事例が1つでもできてくると進むのではないかという感じです。
もう1つは社会環境の助成の中で、ここで語るのはどうかと思うのです。例えば今ネットのほうでやっているのは、交通運賃の割引運動をやっているわけです。例えば全国で4分の1ぐらい精神の場合バス運賃の割引になっていない。身体とか知的の場合はなっているのですがなっていない都道府県があるわけです。例えば栃木県などもそうです。岩手は5年ぐらい前に勝ち取ったのですけれども。
そういう社会環境の遅れというのを、私はすごく感じているのです。例えばこれはJR運賃。こういう言い方もあれですけれど、身体は昭和26年です。知的障害は平成3年ですか。精神はJR運賃はまだなのです。だから障害者と言っても社会参加、就労参加する根底になるような社会環境というのはかなり違うわけなのです。それと例えば私鉄でも今運賃の割引をやっているのは西鉄だけです。
そういうことを考えるとここで語ることではないのかもしれませんけれども、そういうものもやはり助成制度の敷衍した形で、社会環境を考えていくという何かをやってもらいたいというのが、私の雑駁な感想です。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。ほかに何か御意見等ありますでしょうか。この点については非常に多様な御意見を頂きました。ただ支援の重要性ということについては、御意見はほぼ一致していたのではないかと思います。またその中で非常に具体的な御提案もいただきまして、大変ありがとうございます。
これは私の全く個人的な、しかも他分野での経験の話でお役に立てるかどうか分かりませんが、外国人雇用の検討会に以前参加していまして、先ほど小原委員からもありましたように、中小企業各企業は非常に状況が違うのではないか、それをどうやって把握するかというお話があったところですけれども、外国人につきましてはハローワークの重要性ということで、ハローワークですから人手不足の企業は当然分かっていて、かつ外国人雇用状況届出の関係で外国人の雇用の状況もわかっている。そうすると人手不足の企業でしかし外国人雇用が少ないという所も分かるということで、そこに個別的にいろいろアドバイス等をしていくというようなことをしています。
障害者雇用の場合は求人の仕方自体に違いがありますから、ただちに同視はできないのですけれども、状況の把握ということでは、ハローワークというのは比較的しやすい立場にあるのかなと思ったところです。既にいろいろされているのではないかと思います。これは全く個人的なコメントです。
いずれも先ほどもありましたけれどもゼロ企業が1人雇用するとずいぶん状況が違ってくるということがありますので、その点はいろいろな前提というか支援のポイントになるのかなと思っています。皆様から有益な御意見を頂いたので、個人的なコメントをしてしまいました。
それでは特にありませんでしたら、3つ目の柱であります長期継続雇用の評価関係についての質疑応答に移りたいと思います。では事務局から説明をお願いします。
○小野寺障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長の小野寺です。それでは、資料1の14ページ以降になります。中高年齢者等、長期継続雇用に関する主な意見、これまで頂いたものをお載せしております。上2つにつきましては、長期継続雇用を維持し、障害者を支えていく意味で、企業の努力を雇用率制度の中で何らかの上乗せで評価、あるいはインセンティブを付与してほしいという御意見です。
一方で、長期継続雇用等に対しての雇用率での評価に関する直接的な御意見ではありませんけれども、実態として現場をいろいろ見ていくと、職場の環境によって様々な加齢現象、あるいはスキルダウンといった現象が出てくることについて、個人差があるという御意見、御示唆を頂いておりますので、お載せしております。最後に、こういった加齢等状況の変化に対して、企業が様々な措置をして、雇用を維持していくわけですが、その後に円滑に移行できる仕組みについて検討できないかといった意見を頂いております。
15ページ以降、状況を共有させていただきます。まず、15ページです。これも一覧でお示ししておりますが、年齢別の雇用者割合につきまして、3障害を平成20年と平成30年の10年間で変化を見ております。身体障害者につきましては、ほぼ変化していない状況で、中高年齢層の割合が大半を占めてきているところです。知的障害につきましては、平成20年も比較的若い層が多かったわけですが、10年後、年齢割合としてやはり34歳以下、特に24歳以下の割合が増えているということで、特別支援学校等からの新卒者の採用ルートが確立してきている現れかと思っております。この辺りも、10年後、20年後にこのボリュームゾーンが、皆さん中高年になるということですので、大きな課題なのかもしれません。精神障害につきましては、実数で見ますと、全ての年齢層で増加している状況ですけれども、構成比で見ますと、45~54歳という層が非常に大きくなっています。平成30年については、カウントベースで精神障害をカウントしてからかなりたってきているので、かなり新しい雇入れが進んだということで、中高年の年齢層が採用のボリュームゾーンになってきたのかというところです。この辺りは中高年齢層という意味で言えば、直下の課題になっていると思っております。
それから、中高年齢層の雇用継続に取り組んだ職場改善事例集がありまして、16ページにはその中から3つほど御紹介しております。1つ目の事例ですが、この方は知的障害でしたが、採用後何年か経ってから透析が必要になったということで、身体障害者手帳もお取りになったのかと思います。知的・身体の重複ということです。こういった治療をしながらということと、年齢とともに作業の負担が大きくなってくるということで、作業スピードが落ちてきて、体調を崩すことも増えたという事例ですが、これに対しては、治療に対応するために、短時間勤務に変更するとか、御自身のペースで作業ができる配置転換や、御本人の体調の変化などをきちんと把握するような情報シートを作って、それを支援者で共有するといった健康状態のフォロー体制を強化した事例です。
2つ目が、これも知的障害の方ですけれども、やはり作業の精度やペースが落ちてきたということで、御本人もグループ作業の中で周囲との差を負担と感じている状況と、途中で脳出血などで休職するような状況もあった方です。具体的な対応策にありますように、作業の精度が余り求められない形でのお仕事に転換することと、御自身のペースでやれる形での配慮がありました。あわせて、脳出血の休職からの復帰に際しては、短時間の勤務を導入するなどして、円滑な勤務、通常勤務に移行することで対応された例です。
3つ目です。これも知的障害で、加齢により体力の低下が目立ってきて、作業自体が非常に難しくなってきたということ、お一人で作業することで、報告・連絡・相談のタイミングがつかめなかったことがあった事例で、これに対して、作業自体を定型業務に移していって、よりその作業自体が定着する仕組みづくりということで、作業手順を明確化するなどの対応を図りました。また、相談しやすい形での二人一組での作業体制に変更したということです。
3つの事例を見ましても、様々課題が生じてきている中で、個々の状況に応じた形で勤務時間の変更や、職務の見直し、あるいはサポート体制を再構築する、強化するといったことで、対応されている事例です。
17ページです。これ以外にもこの事例集に載せております好事例の中で、共通的に取り組んだ内容を整理しております。今の3つの事例にも共通しますが、勤務時間・休暇制度の改善、あるいは職務の見直し、社内のサポート体制の整備といったことや、外部機関と連携したり、健康管理の仕組みづくり、生活面でのサポートも必要になるということで、家族を巻き込んで様々な体制を作っているということが整理されております。
それから、18ページには、また別の調査を御紹介しております。この調査では、雇用している中高年齢障害者に対して、生じてくる課題に様々な配慮を行った上で、その配慮を行ってもなお、課題が残存しているかどうかを企業にお聞きしておりまして、この課題が残存していると回答した企業が、身体障害の場合には2割程度であったのに対して、知的、精神、発達などその他の障害については、4割超ということで、より課題が残ることをお答えになった企業が多かったようです。
個々にそれぞれ見て整理をしておりますが、度数が多いほど課題が残っているとお答えになった企業が多いということです。例えば身体障害でいうと、運動機能が落ちたとか、視覚障害でいうと視力が落ちたといった形で、中高年齢層になって障害が重度化してくることが見受けられます。また、知的障害でコミュニケーションや精神障害で障害の状態の不安定さ、発達障害で集中力ということが指摘されていますので、この辺りも、もともと障害特性としてよく言われる特性かと思いますが、その辺りが目立ってくるということかと拝察されるところです。
これらに対してこの調査では、支援のポイントとして4つほど挙げております。先ほどの3つの事例紹介と好事例でも整理されておりました、仕事の内容や健康管理、外部機関の関係と加えて、仕事に対してのモチベーションの維持というのが1つ指摘されていて、そのための継続的な相談・対話が必要であるということで、体制の強化が求められるかと思ったところです。
次の19ページ以降、全国障害者雇用事業所協会のアンケートもお示しております。様々な課題が生じていることに対して、まず令和3年7月から8月にかけて調査を行っておりまして、その課題と必要な支援についてアンケートを実施していただいております。回答があった98社のうち、30社という多くの企業が回答を頂いた中に、長期継続雇用・高齢化に対する意見がありました。具体的な意見につきまして下に載せておりますが、好事例の事例集や、調査等々共通しますけれども、体力・気力、業務執行能力の低下、あるいは障害の進行といったような様々な課題が見られていて、それに対して業務の見直しであったり、勤務時間等で対応しているということです。あるいは能力の低下等で労働災害の発生や、安全面での課題ということをお感になっている企業もおられるようです。こういったことに対して、例えば個別に指導員を付けるといったことが考えられますが、経済的な余裕がないといった御意見も見受けられます。一定雇用の中で、雇入れを継続していくときに生じてくる課題で、それに対しての相談や調整に対応してもらえる窓口の設置についての御希望や、雇用が継続できない状況になったときに、企業から福祉等へ受け入れてもらえる体制づくりについての御意見が挙げられておりました。
これを踏まえて20ページには頂いた要望を載せておりまして、今の御意見等を踏まえた中で、相談できる体制を整備すること、あるいは必要なときに適切な福祉サービスを受けられるようにすることや、個々に生じる課題に対応する事業主に対しての支援の充実といった御要望が寄せられています。
1ページに戻っていただいて、水色の四角囲みの論点の一番最後になります。今御紹介したとおり、やはり中高年齢者について、個々に生じてくる課題は見受けられるわけです。その課題に対応して事業主の皆様が適切に個々に配慮や、体制の強化等様々な工夫をしておられることも事実かと思っております。そういった中ではありますが、例えば何年以上たったらとか、何歳以上はというような一律の形での就労の困難性を認めて、雇用率として評価していくのではなく、企業が個々に対応している様々な配慮に対して支援をしていくことで、中高年齢層の障害者の活躍を推進するということにしてはどうかと事務局としては考えており、御意見を賜れればと思っております。以上でございます。よろしくお願いいたします。
○山川分科会長 それでは、ただいま説明のありました長期継続雇用の評価関係について御発言がありましたらお願いしたいと思います。御質問、御意見等ございますでしょうか。では、新田委員どうぞ。
○新田委員 経団連の新田です。御説明ありがとうございました。長期継続雇用の評価については、先ほどの資料の14ページでも御紹介いただいたとおり、既に、塩野委員をはじめ、使用者側の委員から意見が表明されたところです。重ねての意見表明になることをお許しいただいて、発言をしたいと思います。
使用者側としては、一定の勤続年数を超えた場合には、例えば、1.0ではなく1.5カウントとする措置、あるいは、障害者の状態の変化に伴って作業に支障を来すようになったことを踏まえて、本人の了解のもとで週所定30時間以上の労働から週所定20時間以上の短時間に移行した場合には、0.5ではなく、1.0カウントするといった措置を御提案しているところです。
今後の障害者雇用については、先ほども他の委員からお話が出ておりましたが、雇用の質を重視していくべきという方向性は、この分科会の中でも一致していると認識しております。これまで、雇用率制度については、障害者の雇用数を軸に評価をしていますが、長期継続雇用の取組といった、正に、雇用の質を高める取組を新たな評価軸として加えることは、非常に意義のあることと考えます。
そして、長期継続雇用を評価することは、企業においては障害者の方々を継続的に雇用するインセンティブになりますし、障害者の方々にとっては、雇用の安定、将来に向けた希望にもつながると認識しております。
そこで、例えば、もにす認定の中では、成果、アウトカムの評価要素として障害者雇用における定着状況が挙げられております。具体的には、障害者の平均勤続年数が10年以上、あるいは、勤続年数が10年以上の障害者が半数以上といった複数の項目が制定されていると承知しております。こうした評価指標も十分に参考にしながら、雇用率のカウントにおいて長期継続雇用を評価する、加算することを検討すべきであることを重ねて申し上げたいと思います。私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。それでは、内田委員お願いします。
○内田委員 労働者側の内田です。御説明ありがとうございます。社会の高齢化が進んでいく中で、障害者雇用政策においても、障害者の高齢化や長期継続雇用の課題に関して、今後、対応の検討が必要だと考えております。そのことを踏まえて、まずは中高年齢層の障害者も安心して働き続けられる職場作りのためには、納付金制度や雇用保険を原資とする助成金の活用が重要であると考えます。
また、長期継続雇用に対する雇用率カウントに関しては、まず世代間等の公平感という観点も重要であり、加えて2004年に廃止が決まっております除外率の低減廃止への対応や、その他の雇用率カウント議論等も併せて偏りなく議論した上で、検討されるべきではないかと考えております。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。では、続いて塩野委員どうぞ。
○塩野委員 使用者側の塩野です。長期継続雇用の評価について、以前も発言をしましたが、改めて弊社の状況も含め、意見を述べたいと思います。親会社も含め、早くから積極的に障害者雇用に取り組んでいた企業ほど、現在、高齢化の課題を抱えています。親会社では弊社への出向者も含め、50代の身体障害のある社員が相当数います。一定の配慮を行った上でそれぞれの職場で各人の能力を発揮し、活躍をしてもらっていますが、中には、高齢化や障害の進行により、これまでの業務を担当することが難しくなるケースもあり、各職場において、担当業務の変更や異動等の配慮を個別に行っています。また、弊社では、主に知的障害のある社員を雇用しています。特例子会社ということもあり、通勤に配慮した就業時間を設定したり、知的障害のあるスタッフ5名に対してジョブコーチ1名を配置して日頃からきめ細かいサポートができるような体制作りなども行っています。
設立から10年たっていないこともあり、20代、30代が中心ですが、40歳に近くなると徐々にできないことが増えてくるスタッフもいます。通常はチームで業務を行いますが、他のメンバーと一緒に行動することが難しくなったり、これまでできていた業務ができなくなることもあります。その場合は、できる業務をチームではなく個人で担当してもらったり、ジョブコーチが個別に指導を行ったりしています。歳を重ねた障害のある社員については、個々人の障害特性や状況を踏まえた、よりきめ細かい配慮が求められています。このような長期継続雇用に向けた企業の取組について、雇用率制度の中で何らかの評価をしていただければ有り難いと思います。私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。それでは、次に影山委員お願いします。
○影山委員 横浜市立大学の影山です。御年齢という面もあるかと思いますが、御高齢になっても元気で働いている障害者の方もいらっしゃいますし、単純に年齢では切りにくい面もある気がいたします。また、業種によっても影響を受ける可能性があり、例えば、学習教育支援や情報通信、不動産、建設当たりは、より体調を悪化させたり、年齢がいくと働きにくくなる可能性があります。そういった意味でも一律で年齢で切っていくのは少し難しいのかもしれません。
こういった領域というのは、健常者の働き方という点でも課題があると言われておりますが、その影響もあるかもしれません。それよりも、こういった雇用率で対応していくというよりは障害者の方が働きにくくなった際に、支援をしていくような制度を作っていくべきではないかと思います。例えば、ある地域で企業とB型事業所が連携して施設内就労を実施している地域があります。施設内就労はお試し実習的な意味を持っており、企業に合っている方を雇用することにもつながっているのですが、一方、B型事業所から企業はいろいろなアドバイスを個別に受けることができます。
一方で、雇用では難しくなった方がいらっしゃった場合に施設内就労に移行する。更に、施設内就労でも難しい場合にはB型に行って、更に、それも難しい場合には生活介護に行くという、障害者の方の状況に合わせて対応できるという、そういう意味でも障害者の方は安心だと思いますし、企業も雇用では難しい方を雇用し続けるという負担感を軽減することができるといいますか、御担当者も安心であるということがあります。企業の状況も様々ですので、企業に合わせてアドバイスを行っていったり、その下で働いている多様な障害者の方に対応していく制度を整備していく意味では、このような連携の制度をベースにしながら個別に企業にコンサルテーションを行っていくこともあり得るのではないかと思います。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。では、大谷委員お願いします。
○大谷委員 育成会の大谷です。よろしくお願いします。知的の分野ですので、知的の場合でお話をいたしますと、この15ページの表にもありますように、最近、若い方が増えてきている現状があります。これは、手帳の所持率が変わってきていること。というのは、小学校に上がる前に就学前テストが全国で行われており、障害の可能性がある方のピックアップが進んできている関係上、今まではかなり重たかったり、それから御家族の関係上、手帳は絶対にいらないというようないろいろな面があったと思いますが、それが段々と進んできて、やはり障害ということに対する認識が進んできたとは思います。
そうすると、どうしても手帳の所持者も増えてくることになるので、これはどんどん数字的には増えるのかなと思います。その中で、生活面において、若い時代から行動力が少ないこともあるので、早い時期から年齢が上がるにつれて体力面も落ちてくる。それから、もともと知的障害ということは、通常、数字で表わしますと70という数字が掲示されているのですが、その部分で、それもまた少しずつ高齢になるところで落ちてくる。それから、作業においても記憶力が落ちるなどのマイナス面がどうしても働いてくると思います。
それぞれの特性があり、一概には言えませんが、私たち健常者の方々、皆さんと同じ健常者の方よりもどうしても少し早い高齢化が進むような状況が見受けられます。そうすると、どうしても同じように60歳、65歳まで勤務という方はなかなか難しい現状も生まれてくるとは思いますので、その中で雇用が在り方の調整、ただ、一番気になるのは所得面に難しい部分が生まれてくるということです。
一時期、A型のいろいろな問題があり、A型がかなり数年前になくなった状況があるのですが、そこからB型に行くなど、いろいろな雇用に変わった方々において一番難しかったのが所得の問題です。B型に行けば金額は一気に減る。2万円程の所得に変わることもありますので、そのようなことから考えますと、その面もやはり大きな課題にはなってくるのかなと、ただ、各企業が努力されて1人でできている作業を2人で作業するなど、いろいろな方向性を考えてはいただいていると思いますが、そこから次へのステップとして、次にA型へ移って行く、そこからまたB型へという、そのようなシステムの流れを作っていただくことで、ただし、そこに対しては生活的な支援の問題がかなりあると思います。一般就労をやっておられる方は、多くの方が1人で住まわれているという方向性も見出されておりますので、そのようなことを今度はグループホームであるとか、どこかへという方向性も考えていかなければいけないということで、1つの問題ではなく、そのようなことも全て絡んでいるのではないかと思います。
ただ、方向性としては、一般就労からA型への移行、また、A型からB型であるとか、また65歳になりますと今度は介護保険の適用などという、障害者にとっては大きな問題もありますので、その辺も加味した流れを構築していくのが大事ではないかと思います。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。それでは、竹下委員どうぞ。
○竹下委員 日視連の竹下です。私は継続雇用あるいは長期雇用という、そのような人たちがどんどん増えてきたというのは障害者雇用における非常に大きな前進だと思います。いわば、障害者自身もそうですが、事業主との大きな信頼等、それから双方の努力や工夫により職場における就労が安定してきたことの証が、継続的なあるいは長期雇用になっているのだろうと思います。そのような意味では、長期雇用者がどんどん増えてきているということは、極めて正常な障害者雇用が発展してきているということではないかと思います。
他方で、この雇用率の関係では、重度障害者のダブルカウント制度がスタートからあったわけです。いわば、重度障害者の就労を促進するために、このダブルカウント制度というのは一定の効果を持ったと思います。障害者権利条約を批准した今日において、このようなダブルカウント制度を、いつまでもこのまま置いておいて良いのかという議論もあるわけです。その中にあって、一人の障害者に対して負担を2倍という評価の仕方というのは少し見直す時期に来ているのではないかと思うわけです。
だからと言って大事なことは、現に稼働能力が低下する。あるいは体力も低下する中で、どのようなサポートが必要かということは間違いなく重要だと思うので、これは今回示されているように福祉との連携等を含めて、いかに職場における継続雇用をしていけるかというところで、その組合せを考えるべきではないかと思うわけです。
最後に、長期継続雇用といっても、例えば、20代から20年続けても40代。では、40代から10年継続したら50歳。例えば、それを同じ10年以上だから同じ評価になるかというと、多分、当たり前ですがそうではないと思います。そのような意味では、10年以上うんぬん、あるいは、年齢を単純に1つの基準にして評価していくのではなく、個人、個人の当該障害者の健康状態、体力状態に合わせた福祉的支援との組み合わせで、継続ができるようにしていくことが大事なのではないかと思っております。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。次に、清田委員お願いします。
○清田委員 日本商工会議所の清田です。意見として簡単に申し上げたいと思います。障害者雇用が増加している中で、長期継続雇用が進んでいくことは非常に良いことだと思いますが、高齢化等を踏まえて、支援策を充実させていく必要があると思います。。、雇用が困難な場合には支援を充実していくということは非常に重要であると認識しております。まずは就労困難性というものをしっかり緩和しながら、好事例の横展開や相談体制、個別サポート等の充実、それから福祉の連携強化等、支援の充実に取り組んでいただきたいと思っております。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。では、倉知委員どうぞ。
○倉知委員 九州産業大学の倉知です。長期雇用をすることにより、障害が重度化する方もいらっしゃれば、むしろ、職場に上手に適応していき、慣れることにより能力が向上する方もいらっしゃいます。それから、適応が上手くいくことにより、特に、精神障害の方などはそうだと思いますが、障害が軽度化していく方もいらっしゃいます。また、これも精神障害の方が多いと思いますが、長期雇用することにより、重くなったり軽くなったり様々な変化が見られると思います。ですから、一律ではない。もし、障害が重度化した場合ですと、現状では、ダブルカウントという制度があるわけです。要するに、短時間雇用になっても1人としてカウントするなど、あと、通常の勤務であれば、2人としてカウントする。このような仕組みもあるので、非常に個別性が高いことを一律に長期だからといって1.5にするのは馴染まないのではないかという気がしています。
先ほど、竹下委員もおっしゃったように、長期雇用は年齢もまちまちだと思います。障害の状況もまちまちですので、やはり個別性で判断して、今ある制度で十分対応できるのではないか。重度化した場合にはダブルカウント制度があり、軽度化した場合は、それはそれで良いわけですから、特に新しい仕組みで考えることは余り必要性を感じないなと思います。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。それでは、下屋敷委員お願いします。
○下屋敷委員 全国精神保健福祉会連合会の下屋敷です。長期雇用で先ほどのレジメの中で居住の問題が出ていましたが、私のグループホームは盛岡ですが、建設業界の方など、いろいろな業種の方が経営してきています。福祉だけでなく入り混じって来ているのです。ですから、そのような中で、制度外のアパート、例えば、見守り付きアパートです。精神障害者の方というのはグループホームよりは個人で住みたい方もおり、福島もあるのですが、そのような方は家族会のNPOが見守り付き住宅といいますか、有料の中で見守りをしていくという、そのような様々なケースが地域では出て来ている。多分、それは増えていくと思います。
そのような中で、余り長期、長期という論理ではなく、皆さんもおっしゃるようにいろいろ流動化するといいますか、いろいろな所があるのだというメッセージを、例えば、中ポツ支援センター中心に、例えば、地元商工会議所の中で、岩手などの推進事業等、障害者と農業関係者とのいろいろな連携等も進んでいるのですが、そのようなところで都市型の何かそのようなものをモデル的に、何か研究事業みたいなものを起こしていったらいいのではないかと思います。思い付きですがそう思いました。以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。こちらについても種々有益な御意見をいただき、大変ありがとうございます。本日はこのテーマについて幅広に御意見を伺った上で、また事務局で検討を進めていただく、そのような位置付けになっておりますので、本日、いろいろな御意見をいただきましたので、それを踏まえて更に事務局で検討を進めていただければと思います。では、議題(1)は以上ですが、よろしいでしょうか。では、議題(2)について事務局から何かありますか。
○小野寺障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長の小野寺です。議題(2)については、特に本日はございません。
○山川分科会長 特にないということですので、本日の議論はこれで終了となります。本日の障害者雇用分科会はこれで終了したいと思います。日程関係について事務局から連絡事項がありましたらお願いします。
○小林障害者雇用対策課課長補佐 障害者雇用対策課課長補佐の小林です。次回の日程については4月中旬の開催を予定しております。詳細は追って事務局より御連絡をいたします。以上です。
○山川分科会長 それでは、これで終了とさせていただきたいと思います。皆様、本日もお忙しい中、大変、ありがとうございました。散会いたします。