第10回全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会(議事録)

日時

令和4年7月7日(木) 14:00~17:00

開催方法

WEB開催

議事

議事内容
○岩佐推進官 それでは、定刻を若干過ぎましたが、ただいまより第10回「全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会」を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、カメラをオンにしていただきまして、参考人の先生方におかれましては、御発表もしくは御発言時のみ画像をオンにしていただくよう、よろしくお願いいたします。
本日は、委員、参考人の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。事務局を務めさせていただきます、厚生労働省健康局がん・疾病対策課の岩佐と申します。
また、今回より事務局の体制が変更になりました。がん・疾病対策課の市村が人事異動によりまして医政局研究開発政策課医療イノベーション推進室長となりまして、引き続き、この全ゲノム解析の実行計画の推進にも関わっていきます。
また、がん・疾病対策課には、増田、中原、両補佐が加わっておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
本日の出欠状況でございますが、杉山委員、森正樹委員、栗原委員より御欠席との御連絡をいただいております。他の先生方につきましては、御出席と伺っております。
また、参考人の先生方につきましては、時間の関係上、紹介は割愛させていただきますが、参考資料1の「委員名簿・参考人名簿」のほうを御参照いただければと思います。
続きまして、資料の確認をさせていただければと思います。資料は、厚生労働省のウェブサイトにも掲載してございますが、議事次第、資料1から4までがございますので、御確認いただければと思います。
また、本委員会につきましては、You Tubeにて配信をしておりますので、御承知おきいただければと思います。
本日、十分な協議を行っていただくため、3時間と、長時間になってございます。途中、休憩を挟んで、前半、後半に分けて協議を行っていきたいと考えております。
事務局からは以上でございます。
以降の進行につきましては、中釜委員長にお願いいたします。よろしくお願いします。
○中釜委員長 中釜です。皆さん、本日もよろしくお願いいたします。
まず、前回、第9回は持ち回り開催により、令和4年度のがん領域AMED研究方針等について御審議いただき、了承されましたことをここに報告したいと思います。
それでは、早速、がん・疾病対策課より、資料1「全ゲノム解析等に係る検討状況等について」の説明をお願いいたします。
○増田課長補佐 よろしくお願いいたします。がん・疾病対策課の増田です。
まず、資料1としまして、「全ゲノム解析等に係る検討状況等について」、御説明いたします。
資料を1枚おめくりいただきまして、2ページ目ですが、こちらは全ゲノム解析等実行計画の推進について、今年度の政府の方針として、経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる骨太の方針ですとか、新しい資本主義、また統合イノベーション戦略に掲載されております。
これまでと異なる記載としては、これまで蓄積されてきた「臨床情報や全ゲノム解析の結果といったものを連携させ搭載する情報基盤を構築」という文言が記載されております。この記載に関しましては、解析結果の還元ですとか、解析結果に基づく個別化医療の提供といった患者還元の視点は、引き続き持った上で、情報基盤を構築し、創薬に結びつけていくという意図が含まれているという認識でおります。
続きまして、令和4年度のスケジュールについて説明いたします。
前回、5月の持ち回り開催で、令和4年度のがん領域のAMED研究についてご審議いただきました。
今回、第10回といたしまして、主に議題が2つございます。1つ目が、AMED研究と厚労科研の令和4年度の方針について御議論いただきたいと思っております。そして、2つ目が「全ゲノム解析等実行計画2022(仮称)」(案)についてということで、従来、実行計画(第2版)としておりましたが、このたび2022と名称を変えさせていただいております。
そして、今後の開催方針としては、年度末までに数回を予定しておりまして、中間報告、最終報告、方針案となっております。この2022につきましては、夏中にはフィックスできればと考えており、次回の専門委員会でフィックスの方針で、具体的な日程については、まだ調整中でございますが、方針が決まりましたら御連絡いたします。
続きまして、4ページ目です。全ゲノム解析等の実施体制ですが、こちらは令和3年度と大きく変更ございません。
左下の緑枠のところですが、がん領域に準備室WGが追加となっております。こちらにつきましては、事業実施準備室の設置に向けた検討を行うWGとなっております。
次に、5ページ目です。こちらは、厚労科研中釜班の体制となります。先ほど申し上げましたように、一番右側に準備室WGが追加されておりまして、こちらで主にデータ利活用に向けて必要な役割や、準備室全体の役割ですとか、どんな部門が必要かといったフレームを検討するようなWGがこちらの準備室WGです。
続きまして、6ページ目です。こちらは、全ゲノム解析の厚労科研班の検討事項についてまとめたものとなります。左側が令和3年度、これまでの検討の実施事項となります。右側が今回の会議で取り扱わせていただきます令和4年度の検討と実施事項です。
全ゲノム解析等の推進に必要な事項を、4つのWG、患者還元WG、解析・データセンターWGとELSI、そして今回加わった準備室WGで検討してまいります。詳細に関しましては、この後、各研究班、研究チームから報告がございますが、簡単に令和4年度のところを申し上げますと、一番右上、患者還元WGで、電子的ICに応用可能な統一ICFの作成および管理体制の整備ということで、今までELSI WGでICFの作成について検討してまいりましたが、実際に作成し、その管理体制の整備まで含め行うことについては、患者還元WGのほうで引き継いでいく方針となります。
そして、患者還元WGでは、出口戦略の体制構築などについても検討を予定しております。
また、シークエンスなどの技術的な要件なども、患者還元WGでこれまで検討が行われてきましたが、その要件に基づいて、実際に実行していくところにつきましては、AMED研究班のC班で令和4年度から行う予定です。技術的な要件については、引き続き、厚労科研のWGでも検討を行っていくこととなります。
そして、これまで蓄積してきたデータを利活用するために、今後、データ利活用に係る検討が重要となりますが、こちらについては、準備室WGで検討を引き継ぐこととなります。
そして、解析・データセンターWGは、ゲノム解析のゲノムデータベース構築ですとか統一パイプライン、レポート作成システムや検体や臨床情報の集中管理システムに関して検討してまいりましたが、その実行については、AMED研究班(C班)で行っていきます。
専門的事項については、引き続き解析・データセンターWGで検討を行います。
そして、3つ目のELSI WGですが、ICFに係る部分については、患者還元WGと連携しながら行います。また、ELSI WGで令和4年度に新たに推進していくこととして、情報発信の在り方に加えて、PPIのスキームについて、患者還元WG、準備室WGと連携して検討を行ってまいります。
そして、準備室WGに関しましては、先ほど申しましたとおり、データ利活用ですとか準備室のフレームに関する検討を行っていくこととなります。
次に、7ページ目です。令和4年度のAMED研究班の概要です。
A班は、既存の3医療機関で400症例の患者還元を行いまして、今回、分担医療機関が追加となります。分担医療機関で各200症例の患者還元を行います。分担医療機関に関しまして、自施設で解析・レポート作成を行うA体制から、順次、B体制に移行を予定しております。AMED研究班のC班でレポート作成を予定しておりますので、そちらの準備が整い次第、B体制へ移行の予定です。
B班に関しましては、令和3年度に解析したデータが蓄積されてきておりますので、それを用いた研究を行ってまいります。
そして、C班に関しましては、一番下のところですが、マル1からマル6の6つのチームに分かれまして、各検討を行っております。この詳細に関しましては、追って、各研究チームの皆様より御発表いただく予定となっております。
続きまして、8ページ目です。AMED研究班A班の患者還元体制ですが、上のA体制に関しましては、シークエンス企業から得られたシークエンスデータを自施設で臨床解析を行い、レポートを作成する体制です。
B体制については、解析・データセンターで臨床解析を行い、作成されたレポートを医療機関で活用するといったスキームとなります。
最後に、9ページです。こちらは、AMED研究C班(解析班)の体制です。先ほど申しました6つのチームがこちらです。
詳細は割愛しますが、1つ目、集中管理チームでは、全ゲノム解析のデータですとか臨床情報、検体等の情報をひもづけて管理するシステムの構築を行ってまいります。
そして、2つ目、ゲノム解析チームでは、クラウド上での統一パイプラインの比較研究ですとか、その実施に際してのシステム運用とセキュリティ対策を検討し、それを事業実施組織につなげていくところが目標となります。
そして、マル3とマル4で臨床情報を収集して、またレポート作成をしていくところの検討が行われます。
マル5のデータ共有チームにつきましては、データ共有のシステムとか研究を支援するためのポータルサイトのアプリケーションの構築を行っていきます。
そして、最後、出口戦略チームに関しましては、例えば既承認薬を、臨床的適応のある患者さんに届けていくシステムの構築ですとか、戦略コホートに関しましては、全ゲノム解析の結果やオミックス解析結果に基づく新たな個別化医療を実現させるために、臨床試験などを行っていく。それが出口戦略チームとなっております。
私からの説明は以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
それでは、資料1の説明につきまして、委員の先生方から御質問、御意見がございましたらよろしくお願いいたします。
宮野委員、お願いいたします。
○宮野委員 資料の2ページ目を拝見したときの感想を述べさせていただきます。患者還元という視点が含まれているのだということで、口頭で説明がありましたが、文章から消えておりますと、患者さん側から見ますと、突き放された感じがするということと。アカデミアの側から見ますと、論文書きのプロジェクトなのかと取られる可能性もあるのではないかと思います。後のほうの説明では、そうではないのだということがあるのですが、2ページ目にこういう表現のされ方をしているのはいかがかと感じました。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
この点につきまして厚労省。
○増田課長補佐 宮野委員、非常に重要な御指摘をありがとうございます。
全ゲノム解析等実行計画の目的としましては、最終的に患者さんに還元していくというところが重要な目標であるということをしっかりと念頭に置いて、今後も進めていきたいと思っております。こちらに書いてある情報基盤構築ですとか創薬に結びつけるという記載に関しても、最終的に患者さんにしっかり還元していくのだというところを認識・共有した上で進めていくというところは、忘れないように進めていきたいと思っております。
○中釜委員長 よろしいでしょうか。
○宮野委員 ありがとうございます。
○中釜委員長 それでは、天野委員、お願いいたします。
○天野委員 ありがとうございます。御説明いただきまして、ありがとうございました。
今、資料1の2ページの部分で、全ゲノム解析等実行計画の推進に関する政府方針などをお示しいただきました。これに関して質問でございます。
今年の4月6日に日本医師会と日本医学会と連名で「遺伝情報・ゲノム情報による不当な差別や社会的不利益の防止」についての共同声明というものが出ておりまして、国は、遺伝情報・ゲノム情報による不当な差別や社会的不利益を防止するための法的整備を早急に行うこと。及び、関係省庁が、保険や雇用などを含む社会・経済政策において、個人の遺伝情報・ゲノム情報の不適切な取り扱いを防止した上で、いかに利活用するかを検討する会議を設置し、わが国の実情に沿った方策を早急に検討することという提言がなされています。
また、本年5月には、自由民主党の政務調査会の医療情報政策・ゲノム医療推進特命委員会からも「医療情報の利活用及びゲノム医療の推進に向けた提言」が出されていまして、この提言の中でも同様に、社会的な合意の下でのゲノム医療の健全な育成を図るため、遺伝因子の影響が強いと考えられるゲノム情報について、医療を含む多様な分野に関して、差別や社会的不利益を防止するための法令上その他の必要な措置を講じるという文言が入っております。
こういった医師会や医学会、また自民党からの提言を受けて、今回の全ゲノム解析等実行計画並びに厚生労働省のほうとして、どういった対応をされる予定かということについて教えていただければと思います。
○中釜委員長 御指摘について厚労省、お願いします。
○岩佐推進官 御指摘ありがとうございます。
今、いただいた御指摘、非常に重要な点であると我々としても認識しております。一方で、今回、全ゲノム解析等実行計画ということで、がんや難病の患者さんの全ゲノムを解析し、それらをどう利活用していくかというところに主眼を置いた形での体制の検討等々を進めさせていただいております。そういった中では、利活用の推進であったり、それが使われる際に、きちんと適切な形で使われるようにというところをしっかりと重点を置いて対応していく必要性があると考えており、それに資する検討もさせていただいていると考えております。
そういった、頂いている提言などの内容、特にゲノム情報による差別の禁止等々に関する検討というのは、ここでの議論のターゲットからちょっとずれるところはあると思いますけれども、引き続き、様々な場で検討がされて進めていかれるものと考えております。そういったところについても留意しながら進めていきたいと思っております。
○中釜委員長 ありがとうございます。
天野委員、今の説明でよろしいでしょうか。
○天野委員 ありがとうございます。
ゲノム情報の利活用と、こういった社会的不利益からの擁護、両輪でぜひ進めていただきたいと考えておりますので、重ねてよろしくお願いいたします。
○中釜委員長 続きまして、中村委員、お願いいたします。
○中村委員 これは以前から言っていることですけれども、準備室と出口戦略室がどういう関係にあるのかよく分かりませんし、実施組織をちゃんと早くつくるという形で進めないと、いろいろなものができてから実施組織ができるというのは、タイミング的におかしいと思いますので、そこをうまく整合性を持たせていただきたいのが1点です。
もう一点が、6ページを見るとAIが一番上に出てくるのですけれども、AIは結局、電子的ICに応用可能な統一ICFの作成および管理体制の整備。下のほうの解析・データセンターWGでは、人材育成のところにバイオインフォマティシャンと出てきますけれども、いろいろなデータを統合して、AIを活用して、創薬のシーズなり、本当に速やかに患者さんに還元する仕組みをつくっていく必要がある。
バイオインフォマティシャンというのは、宮野先生と私が20年ぐらい前から早く人材育成をしないといけないと言っていた分野で、もうちょっと先に進んで、AIを開発するのはすごく大事で、AIを使って創薬ターゲットを見つけるのも必要ですので、人材育成のところに遺伝カウンセリングは入っていますけれども、AIを活用できる人材を育てていく。しかも、リアルワールドのデータを使って人材育成というのが必要ですので、その文言をどこかに入れていただきたいと思います。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
今の御指摘に関して、厚労省、よろしいでしょうか。
○増田課長補佐 中村委員、ありがとうございます。
まず、2つ目にいただいたAIの件ですが、今回、ゲノム情報と臨床情報を収集し、情報基盤が構築されていきまして、そこのところの解析プラットフォームを活用したAI研究開発が今後、行われていくと思っております。アカデミアフォーラムや産業フォーラムが利活用を進めていくことになるかと思いますが、その際に、そういった解析プラットフォームを活用した研究開発においては、オン・ザ・ジョブトレーニングで教育という観点も取り入れていくということで、この事業の中でそういったAI研究開発の人材育成という機会を設けていくことができればと思っております。
また、そういったAIを活用できる人材の育成が必要な点についての記載について、御意見いただきありがとうございます。検討させていただきます。
また、1つ目でいただきました準備室WGにつきましては、事業実施組織がどうあるべきかということについては、非常に重要な点と思っております。現在、準備室WGにおいて、まず準備室の設置に向けた検討を行っております。準備室が設置されましたら、その準備室自体は、今後、事業実施組織となるときにどんな部門が必要であるのかといったところの検討を行っていくこととなりますので、まずは早急に準備室の設置に向けて、準備室WGでの検討を行っていく方針です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
今の説明でよろしいでしょうか。
○中村委員 これはずっと議論をやっているわけですけれども、実施組織が何をやるのかというのが見えないですし、ずっと公的なファンディングでやるのか、あるいはいずれ事業として独自に展開していくのかというのは、すごく重要な点ですので、そこを早い段階で明らかにして、どう社会に還元していくのかを見据えた検討が必要だと思いますので、よろしくお願いします。
AIに関しては、言っておられることはよく分かるのですけれども、そこまで重要と考えておられるのだったら、6ページのキーワードの中に明確に書いていただきたいと思います。本当に外せない分野だと思いますし、この分野だけじゃなくて、日本全体にとってAIをうまく使える人を育てるというのは重要ですので、このキーワードにはめ込んでいただきたいと思います。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。今の御指摘を入れていただくよう、よろしくお願いいたします。
ほかに御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
では、御意見なさそうですので、次に移らせていただきます。続きまして、AMEDより資料2-1「全ゲノム解析等に係るAMED研究について」、AMEDの土師課長よりお願いします。その後、AMED患者還元班(A班)の代表者研究者の先生方に資料2-2について説明をお願いしたいと思います。では、まずAMEDの土師課長、お願いいたします。
○土師参考人 AMED 土師でございます。
それでは、AMED研究につきまして、表紙にございます内容の順に沿って、お話しさせていただきたいと思います。
1枚めくっていただけますでしょうか。こちらはR4年度のAMED研究概要を示したものでございます。先ほどの厚労省の説明と重複するところもございますけれども、患者還元体制につきましては、令和3年度からの大きな変更点といたしまして、エキスパートパネル体制構築班でありますA班に、患者還元体制の整った医療機関を分担医療機関として追加することといたしております。また、エキスパートパネルの実施体制につきましては、自施設で完結体制、すなわちA体制から、解析・データセンターでレポートを作成するB体制に移行するということで、その検討を開始することといたしております。
右下のほうの四角の囲みにございますけれども、実際、この計画に従いまして分担機関を追加いたしまして、各班600例の新規患者の解析を予定しております。また、進捗に応じてになりますけれども、3班合計で200例の追加を予定しておりまして、全ゲノムプロジェクトといたしましては、令和4年度に最大で2000例の解析を予定しております。さらに、令和3年度に出検いたしました9900例でございますけれども、臨床情報の登録を行うとともに、蓄積した全ゲノムデータを用いた研究、全ゲノムプロジェクト全体での成果の取りまとめを行いたいと考えてございます。
1枚おめくりいただきまして、続きましてC班の概要でございますけれども、研究体制といたしまして、こちらも先ほど御説明ありましたけれども、従来のゲノム解析とかレポート作成、データ共有機能に加えまして、データ・検体の集中管理チーム、マル1のところにございます。それから、マル3のところにございます臨床情報収集チーム、マル5のところにあります出口戦略チームを追加いたしております。詳しくは、後ほどC班から発表させていただきます。
次のページになりますけれども、こちらはデータベースの構築進捗状況をまとめたものでございまして、A班の内容となっております。
左側のR3年度の囲みの部分になりますけれども、出検は3班、全班とも完了いたしております。解析・データセンターへの格納につきましても、前回、5月の時点で52%の進捗状況でございましたけれども、今回、94%という進捗状況となってございます。この右のカラムになりますけれども、データクオリティーに関しましては、塩基数、QVの品質基準ともに高い水準でクリアいたしております。
また、R4年度につきまして、右側の囲みで記しておりますけれども、一部、既に開始されているという状況になってございます。詳細はA班の各班から報告させていただきます。
次のページになりますが、こちらはB班の状況をまとめたものになります。ホールゲノムシークエンスにつきましては、出検は全班、6班とも完了いたしております。RNAシークエンスのサンプルにつきましても、品質基準を満たすものの出検が完了いたしております。
解析・データセンターへの格納につきましては、前回の時点で71%の進捗でしたが、今回、82%ということで、8割以上が完了しているという状況になってございます。こちらのデータクオリティーでございますけれども、塩基数、QVの品質基準ともに高い水準でクリアしてございます。RNAシークエンスの解析・データへの格納につきましても、一部が開始されているという状況となってございます。
続きまして、6ページ目になりますけれども、R4年度の春の調整費につきまして御説明さしあげたいと思います。こちらの提案のコンセプトでございますけれども、一番上に赤字で記しておりますとおり、大規模なロングリード解析による全ゲノム解析を主軸としたマルチオミックス解析実施のための実行可能性、さらには実施することの意義の検証をすることといたしておりまして、全ゲノム解析プラットフォームの高度化、創薬研究の基盤整備につなげていきたいと考えてございます。
この提案の背景にございますのは、大きく分けますと2つ、大きな世界情勢の変化がございます。
まず、1つ目は、よく御存じのとおり、ロングリード解析の技術革新が飛躍的に進んでいるということでございます。4月に「science」で報告されておりましたけれども、ロングリードシークエンスを使いましてヒトゲノムの完全長が解読されましたということで、これまで未解決であったところが解読された、あるいは見つかっていなかった新規遺伝子が見つかってきたということがございますし、下の「Cell Genomics」の論文を読みますと、数万、数十万の変異が検出されるということが報告されているというのが1つ目でございます。
2つ目は、がんのゲノム解析の全般の潮流でございますけれども、全ゲノム情報とエピゲノムの情報を組み合わせた統合解析が、がん種横断的かつ大規模に実施されているということで、マルチオミックス解析の大規模解析が実際に開始されているという状況になってございます。
これらの状況を受けまして、がん領域におけます研究開発は、ロングリードによる全ゲノム解析を主軸としたマルチオミックス解析が主流になると予想されまして、今回の春の調整費の措置を行っているところでございます。
1枚おめくりいただきまして、実際の調整費を投じた研究内容について概要をまとめてございます。具体的には、全ゲノムプロジェクト全体で310症例のロングリード解析を実施いたします。ショートリードのホールゲノムシークエンスでは、ドライバー変異が検出されない症例ですとか、ウイルス発がんや転座等の大きなゲノム異常など、ロングリード解析により初めて正確に解析が可能になる症例を中心に実施する計画としております。
さらに、各班におきまして、それぞれの出口戦略を見据えたマルチオミックス解析を実施いたしまして、実行の可能性、実施することの意義を検証したいと考えてございます。
A班におきましては、R3年度の経験に基づきまして、全ゲノムプロジェクトの恩恵を十分に受けられない患者さんへ、高精度な全ゲノム解析の成果を還元するための研究を行っていくこととしております。
また、C班におきましては、ロングリード解析をはじめとしたマルチオミックス解析をサポートするために、ロングリード解析パイプラインの構築などの高度化や、解析センターの強化としまして、システムの自動化、解析の高度化を進めてまいります。
AMEDといたしましては、この調整費を投資する研究所におきまして、ロングリード解析を主軸としたマルチオミックス解析の実施の意義を確認した後に、本格的な解析を開始いたしまして創薬研究の基盤整備を進めまして、研究開発を進めていきたいと考えてございます。
1枚おめくりいただきまして、こちらのAMEDの調整費措置によるマルチオミックス解析実施に向けて必要な検討事項として、現在考えておりますことをまとめてございます。重要な点といたしまして、現在、全ゲノムプロジェクト全体といたしまして、均質で標準的なマルチオミックス解析データが取得できますように、ホールゲノムシークエンス解析と同様にQCの要件を検討するとともに、各解析の実施要件、さらにはロングリード解析とショートリードによるホールゲノムシークエンスの組合せとかメチル化解析との統合解析といったものの検討を進めてまいります。
また、解析・データセンター関連でいきますと、統一解析パイプラインの対象となる解析ですとか、メチル化解析等、委託解析データの納品の流れというものの整理を行っているところでございます。
では、1枚おめくりいただきまして、続きまして、全ゲノムプロジェクトにおきます取りまとめの活動状況についてでございます。
全ゲノムプロジェクト全体での成果を取りまとめるために、B班を中心に統合解析のための会議を開催いたしました。それが1行目に書いてございます。
2行目以降はC班に関するものでございますけれども、将来的なAPIによる臨床情報の自動収集でありますとか、解析・データセンター体制によるレポート返却体制を確立するために、全ゲノムプロジェクトの各班、各チームが協力して検討を進めておるところでございます。
これらの検討が進みました暁には、臨床試験を支援するための臨床情報の自動収集体制の拡大ですとか、ゲノム医療中核拠点・拠点病院の参加を推進するための協議を開始したいと考えてございます。
1枚おめくりいただきまして、こちらは現在のEDC入力の進捗に関します状況をまとめたものでございます。令和3年度に出検いたしました9900例の臨床情報登録のためのEDC準備状況をまとめてございます。代表機関と分担機関に分けて進捗を調査いたしました。
一番上の行にございますマル1からマル3に関しましては、アカウント取得ですとかシステム設計に関する進捗状況。マル4は倫理審査に関する進捗状況でございます。
次のページに概況を記載させていただいております。
まず、全体的な進捗状況ですけれども、代表機関は入力開始準備が完了しつつございますけれども、分担施設においては準備に遅れが見られております。ですので、現在、早急に準備を整えているところでございます。また、倫理審査も完了しつつございまして、準備が整った施設において入力が開始されている状況でございます。
また、EDC入力を開始するに当たりまして、人的負担を削減するために、Excelで取り込むシステムの検討でもありました連携病院など、個別の設置が難しい場合の対応を併せて検討いたしております。
最後のページになりますけれども、令和4年度のスケジュールでございます。今年の秋頃に令和5年度の公募を実施したいと考えておりまして、3月にその内容を御紹介できればと考えてございます。
また、AMED研究班の合同会議は毎月実施いたしておりまして、次回は7月26日に実施予定でございます。10月以降の日程は、現在調整しているところでございます。
その他、後ろ向き検体の同意取得内容に関しまして、再同意の要件ですとか、使用するICFなどの要件が定まった後には、実施スケジュールの整理を開始したいと考えてございます。
AMEDからは以上でございます。
○中釜委員長 ありがとうございます。
続きまして、資料2-2について、A班、角南参考人、浦上参考人、上野参考人の順番で説明いたします。
○角南参考人 国立がん研究センター中央病院の角南と申します。よろしくお願いいたします。
次、お願いいたします。こちらのスライドは、先ほど来出ておりますので、進めていただけますでしょうか。ありがとうございます。
こちらは、今回の研究についての御紹介になります。昨年度に引き続きまして、全ゲノム解析の臨床実装を視野に入れた患者還元体制の構築を行っております。
概要といたしまして、今年度からは小児がんも対象に含めまして、エキスパートパネルを中心とした患者還元体制の構築を行っています。
2点目といたしまして、今後の臨床実装というところを中心に考えますと、現状のような手術の凍結検体のみではなかなかハードルがあるということもありますので、固定検体とか生検検体における全ゲノム解析のフィージビリティも検証しているところです。
3点目といたしまして、出口戦略班との連携というところを意識いたしまして、小児がん、希少がんを含む難治がんといったがん種を対象として臨床的有用性を検証してまいります。
実施施設ですけれども、右側の括弧がずれてしまっていて恐縮なのですけれども、今年度からの追加施設といたしまして、国立がん研究センター東病院、成育医療研究センターを加えまして、それぞれ100例ずつを予定しております。
次、お願いいたします。こちら、昨年度に引き続きまして、患者還元体制の構築におきましては、現在、保険で行われている遺伝子パネル検査のフローを中心に、全ゲノムにどういう形でアジャストしていくかということを考えております。今年度は、特にエキスパートパネルを中心と、オレンジの枠の中になりますけれども、東病院と合わせまして500例のエキスパートパネルの蓄積ができますので、その中での課題の共有とか、どういった形で進めていくかというところを構築していくことを中心としております。
次、お願いいたします。小児がんにつきましては、東京大学の加藤先生を中心に、こちらにお示ししているような体制構築が行われておりまして、違いといたしましては、Target sequencing、検証解析を行うことによりまして、小児がんにおける全ゲノムの意味というところを考える。また、エキスパートパネルにおきましても、小児がんを専門とする先生方でのエキスパートパネルというところが構築されております。
次、お願いいたします。臨床実装に適した検体の評価ですけれども、上の部分のシェーマは、現状では緑の枠の中の進行難治がんの患者さんの中でも、凍結検体のある術後再発症例のみが全ゲノムの対象となっておりましたが、昨年度の我々の経験上、進行症例、手術検体のないような症例におきましても、こういった全ゲノムの有用性というものはあるのではないかと考えまして、こういった対象を拡大するために、生検検体ですとか、また保険収載というものに対してのフィージビリティというものを評価するために、現在、検証を開始しております。
具体的には、下のポツの2つで表しておりますけれども、ホルマリンを含めた固定検体での病理ブロックにおけるフィージビリティ、もしくは凍結検体での生検検体において、外部の検査機関等々でも協力して、核酸抽出ですとか収載能力の評価といったスキームの構築を予定しております。
次、お願いいたします。3点目、出口戦略班との連携ですけれども、これまでの経験上、上の症例選択の部分ですが、希少がんとか遺伝性腫瘍の関連遺伝子の検出というところで、全ゲノム解析の臨床的有用性があるのではないかということを、領域的な解析から思っておりますので、そういった症例を中心に選択していく。プラス、今年度から新たに発足した出口戦略チームの臨床試験への登録症例というものも対象としております。
下の部分、青字に示しているところが出口戦略班の中での基本コホートへ登録する症例550例。東病院からは、オレンジ色の部分、直腸がんにおきまして戦略コホートへの登録ということを予定しております。
次、お願いいたします。こちら、まとめですので割愛させていただきまして、次にお進みください。こちらは、現在の進捗でございます。シークエンス企業との契約ですとか、新たなプロトコルの改正等がありまして、見かけ上、少し滞っているように見えてしまうかもしれませんが、同意に関しては準備を進めております。あとは、出検においても核酸抽出等の準備は進んでおりますので、今後、準備ができ次第、出検していく予定です。
エキスパートパネルの現状においては、こちらの数字にお示ししているとおりとなっておりまして、患者還元におきましては、生殖細胞系列においてのバリアントの検出というところが、1つ有用なのではないかと考えているほか、(2)に記載させていただいておりますけれども、現状の遺伝子解析では認められなかったような構造異常ですとか、そういったものを中心としたバリアントが多く認められているという点が臨床的有用性ではないかと考えております。
次、お願いします。課題といたしましては、こちらに3点挙げておりますけれども、確認検査をどうするのか。あとは、どこまでを返すのかというところにつきましては、今後の検討が重要な点ではないかと感じております。
以上です。ありがとうございました。
○中釜委員長 続きまして、浦上先生、お願いします。
○浦上参考人 12ページを御覧いただいて、次のスライド、お願いします。
我々の班は、ここに書いてありますようなタイトルで進めております。
患者さんに早く届けるということを大きな目的としています。そのために、この下に書いてある検討事項が幾つかありますが、細かいので余りお話ししませんが、特に解析パイプラインを早くするとか、レポート作成の効率化が今、課題になっています。
次は何回も出ていますので、次、お願いします。これも飛ばしてください。
体制としましては、今年度が静岡がんセンター400症例。ここにあるようながん種です。あと、追加施設として、近畿大学が200症例ということで、ここに書いてある症例をやっていくとなっています。
次、お願いします。これは、今、行っていますパイプラインを書いてありまして、ちょっと細かいので、これも省略しますけれども、今、DRAGENサーバーを使っていまして、1症例当たりの解析時間は8時間でピア解析が終わっている状況です。
次のスライド。現在、エキスパートパネルを100症例近く行っているのですけれども、レポートの作成から、いろいろ出てくる解析データを患者さんに返していく一連の流れを確立しておりまして、一部ですけれども、右隣にエキスパートパネル用のレポートの表紙を載せています。ただ、これはかなり負荷がかかる部分で、この辺の効率化が一番問題になっています。
次のスライド。出口戦略と出ていますが、がん種の組織型を円グラフにしたもので、我々のところから出ている組織型としては、肺腺がん、肺がんが半分ぐらいを占めているようなところです。
次をお願いします。今の状況ですけれども、同意取得数はここに書いてある4月、5月、6月と、80、113と順調にしていまして、出検数も41、58、110と順調に進んでいます。エキスパートパネルは毎月10症例以上こなしていまして、Actionable genomic alterationの検出が44症例になっていまして、Germlineのバリアントはちょっと少ないですけれども、2症例になっています。
患者さんに結果を返却したのが37症例になっています。6月では52症例、患者さんに返しております。
特筆する結果としては、全ゲノム特有の解析結果ということで、病理組織学的に組織型が分からなかった頭頸部の副鼻腔の腫瘍があったのですけれども、それが医師のほうから全ゲノムに回して何か情報が欲しいということを言われて行ったところ、PAX3-MAML3のデータが確認できて、であればBiphenotypic sinonasal sarcomaで間違いないということで診断確定できた。腫瘍であることが分かったというトピックスがありました。
次は、今の症例のCircos plotということで、これも細かいですけれども、2番と4番のところにPAX3とMAML3があったという図です。
次のスライドは、今度の癌学会でエキスパートパネルに関する演題を出しますということです。
次のスライド。これから生じた問題点、先ほども述べましたけれども、エキスパートパネルを効率化して、早く患者さんに返すという意味で、効率化して症例数をこなしていくというのが、今の一番大事な課題だと思います。
○中釜委員長 ありがとうございました。
続きまして、上野参考人、お願いいたします。
○上野参考人 がん研有明病院の上野です。よろしくお願いします。
次のスライド、お願いします。これは、我々の還元班の概要になりますけれども、各種の原発がんの患者さんから検体をいただいて、全ゲノムシーケンス、1次解析、レポート作成で患者さんに還元しまして、データベース。さらに、患者さんへの還元を強化するということで、AI等を用いた、患者さんへのゲノム異常の説明を強化していくという3点から成り立っております。
次、お願いします。これは実績になりますけれども、令和3年度、昨年度は同意を287例いただいて、235例出検で、既存検体のほうは全部終わっております。
令和4年度のほうは全部で600例で、我々のがん研から400件。さらに2つ加わっていただいて、慶應と阪大のほうから100例ずつということを予定しております。
次、お願いします。これが、現在、がん研のほうで今年度に想定される症例数になります。これは患者さんの最大の数になりますが、この数からすると400例というのは特に問題なくいくだろうと考えております。
次、お願いします。これが今年度の方針になりますけれども、昨年度から還元を始めておりますが、より丁寧かつ着実な患者還元を行っているということ。さらには、分担医療機関との研究拡大。さらに、症例数をきちんと確実に行っていくということ。さらに、出口戦略班のほうとも連携していくということになります。
間接的還元に関しましては、臨床情報収集も順調に進んでいる状況です。あとは、がん研内の情報解析チームと、データベースの構築について、還元のほうでも進めているところになります。
還元の強化、患者さんへの説明強化ということに関しましては、ICT/AI技術(AIアバター)を用いた説明資料コンテンツ、こちらも既に作成のほうが進んでおります。
次、お願いします。これが全体図になりますけれども、がん研があって、今年からは慶應・阪大、100例ずつを加えて、戦略コホートと連携しながら、また基本コホートとしましては、エキスパートパネルを通して患者さんに返していくことになります。
次、お願いします。こちらが現在の状況になりますけれども、5月、6月とエキスパートパネルのほうも進んできておりまして、6月の段階で118例のエキスパートパネルが終わっております。
その下の(1)、実際に返した患者さんは、5月の46から、6月末で69例の患者さん。内容としましては、somatic。germlineは2例済んでおります。
特筆する結果としましては、耳下腺腫瘍のNR4A3のenhancer hijacking、転座が見られる。平滑筋肉腫のRB1、CDK12のストラクチュアルバリアント。あと、germlineのバリアントとしまして、いわゆる循環器系のQT延長症候群あるいは不整脈源性心筋症等の異常が見つかっているということですが、こちらに関して、どういうふうに患者さんに戻していくのかというところが今、課題になっていると思います。
次、お願いします。これは、耳下腺の転座です。
次、お願いします。我々のほうで、産経新聞のほうに「がん患者の遺伝子ごとに治療 全ゲノム解析」の取材申込みがありましたので載せさせていただいたということと。
あと、先週の日本乳癌学会のシンポジウムのほうで、この還元班を含めた全ゲノム解析について御紹介させていただいたということになります。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの資料2-1及び2-2の説明につきまして、委員の先生方から御質問、御意見がありましたらお願いいたします。
では、天野委員、お願いいたします。
○天野委員 御説明ありがとうございました。資料2-2について2点質問がございます。
まず、資料2-2の4ページで、今年度の研究について、小児がんに対しても対象を拡大するという御説明をいただいたのですけれども、この場合の解析の対象は小児がんの患者さんのみという理解でよろしかったですか。それとも、以前、この委員会等でも議論がありましたが、親族も含めて解析を行っていく予定なのかということについて、まず教えていただければと思います。
○中釜委員長 今の点について、角南参考人、よろしいでしょうか。
○角南参考人 御質問ありがとうございます。
現状におきましては、小児がんの患者さんを対象に解析を実施すると認識しております。
以上です。
○中釜委員長 よろしいでしょうか。
○天野委員 ありがとうございます。
もう一点ですが、資料2-2の28ページで還元班の方針を御説明いただいたのですが、1点お願いになりますが、特にICTやAI技術を用いた説明資料コンテンツ作成につきましては、現在継続されているということですけれども、これについてもぜひ患者や家族等の意見を取り入れた作成を改めてお願いできればと思います。
以上でございます。
○中釜委員長 ありがとうございます。よろしくお願いします。
続きまして、中村委員、お願いいたします。
○中村委員 委員長にお伺いするのがいいと思うのですけれども、もう10回、専門委員会をやっていて、最初は日本が遅れているゲノム情報を活用した医療を推進するために、何が必要なのかというのを目的とした委員会だと思うのです。けれども、それぞれの議論で、先ほど出たロングリードとか、いろいろな付随的な解析は、この委員会のミッションとは別にしようという形で始まったと思うのですけれども、今、AMEDからの説明で調整費でやっている。研究としては非常に重要だと思うのですけれどもね。
その調整費、いつも思うのですけれども、一体、いつ、誰が、どういう形で決めて、この専門委員会と関係することなのかどうなのかということが不透明なままに、ずっと今日に至っていると思うのですけれども、そこを明確にしてください。もともとのゴールというのは、静岡がんセンターやがん研がやっているような形で、ゲノム情報を還元するために、どう知恵を絞っていくのかというミッションだったはずです。けれども、そこはどうなっているのか。ゲノム解析の予算が今年度つかない場合に、調整費でこういうことが始まるという形のオーソライゼーションは、一体、誰が、どのような形で行っているのかということを、いま一度、岩佐さんは歴史を知っているので、その辺りの考えを。ここは何をする専門委員会なのか。
AMEDの話を聞いていると、先ほど宮野先生が指摘したように、患者さんのためではなくて、論文を書くための研究が広がってきているのではないかという形で我々は解釈せざるを得ないのですけれども、いかがでしょう。
○中釜委員長 では、厚労省、お願いいたします。
○岩佐推進官 ありがとうございます。
まず、この専門委員会がどういうところをやっていくのかというところでございますが、全ゲノム解析実行計画というものをどういうふうな方向に進めていくのかというところの全体的なかじ取りというのを、しっかりと見ていっていただき、また御意見をいただき、適切な方向に、軌道修正等が必要であれば対応していくという形のものと考えてございます。
調整費についてというところでございますけれども、調整費自体は、AMEDにおける研究というのを、そのとき、そのときの状況を踏まえて適切に進めていくために、AMEDの中である程度方針を決めながら、また、それらを戦略推進本部などと調整しながら政府として決定しているところです。ただ、そういったものを実際にこの事業の中で、全ゲノム解析実行計画の一部として進めていく上では、この委員会の中できちんと説明しながら進めていくという形になると考えております。
先生おっしゃるように、調整費を決めていく過程の中で、どうしてもそこの決定の部分が、この委員会と直接つながっているわけではないというところがありますので、その点について、ここの委員会の中で決めていないような方向性で進んでいるのではないかという御意見なのかなと思っておりますが、我々としては、できる限りそこも含めて、この委員会の中で向かうべき方向性を決めながら、そこに向かって進めていけるようにしたいと考えております。
全体的な予算の確保なども、我々としても様々な取組をしている中で、この全ゲノム解析実行計画を適切に進めるための方法、いろいろな形で試行錯誤しながら進んでいるというところでございますので、また引き続き、御意見いただきながら進めていきたいと考えております。
○中村委員 回答しにくい質問をして申し訳ないですけれども、研究として重要な部分と、これからがん研究で必要な部分はよく分かりますけれども、今、例えばデータをどう集めて、企業へどう提供するのかという、もっと根源的な課題があると思います。クラウドのデータベースをいつ作るのか、データベースをどう整えるのかという観点で、そこは非常に大事だし、企業側もそれを待っておられると思いますし、薬剤の開発には絶対必要だと思います。
ですので、ゲノムの情報を社会に還元するための課題を解析していくのが、この専門委員会だと私は思っていますし、天野委員からも時々、患者さんの立場でいろいろなことをやってほしいという要望がありますけれども、そこのミッションを忘れないで、得られたゲノム情報で患者さんに還元できるものを、いかに還元できる体制をつくっていくのか。
あるいは、創薬の観点から、臨床情報とゲノムの情報を合わせて企業に提供する。そこが、この専門委員会の大きなミッションだと思いますので、何となく患者還元から外れて、研究者が研究をやっています、論文を書くために何かやっていますというのではなくて、大きなミッションをぜひ忘れないような形でやっていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
回答は、これ以上結構です。
○中釜委員長 御指摘ありがとうございました。
がんゲノム医療を推進するという大きな方向性と同時に、技術的な革新をどのように患者還元に活かしていくのかということも並行して考えていく必要があります。その点においても、専門委員会の先生方の御意見をこの場で共有しながら反映させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
続きまして、水澤委員、お願いいたします。
○水澤委員 ありがとうございます。
お三方の班長さんにはご発表いただきまして、ありがとうございます。皆さん、エキスパートパネルの役割が非常に重要で、負担が大きいということと、その効率化が重要だということをおっしゃっております。我々、難病の側でもその点は非常に大きな問題でして、具体的にこれまでやってこられて、効率化というものの中で、何かこういうふうにすればいいとか、こういう方向性で今、議論しているということがもしありましたら、教えていただければと思うのですが、いかがでしょうか。
○中釜委員長 では、今の水澤委員からの御指摘に関して、A班の3人の参考人の方、御発言いただけますでしょうか。
○角南参考人 ありがとうございます。中央病院の角南から回答させていただきます。
効率化にしては、我々もなかなか苦慮しているところではあるのですけれども、1点、保険で求められているエキスパートパネルとは違って、専門性の高い分野ではありますので、担当医ですとか、参加者を少し限定するような形で行うことによって、時間の調整というか、実際のエキスパートパネルを診療の中で行っている煩雑な部分を少し簡略化している部分があります。
もう一点、議論中のところではありますけれども、論点を少し絞るというところが重要かと思っておりまして、全部の遺伝子に関して、すごく深掘りするということだけではなくて、治療に結びつく部分ですとか診断、あとは遺伝性腫瘍に関わる部分。こういった患者還元に重要な遺伝子に論点を絞った検討というところを行っていくことも重要かと思っております。
以上です。
○中釜委員長 ほかに御意見ございますか。
○浦上参考人 静岡がんセンター 浦上からよろしいでしょうか。
○中釜委員長 お願いします。
○浦上参考人 我々、今、考えているのは、これからできますC班のレポートをもっと活用できればいいなと思っているところと。あと、角南先生もおっしゃられましたけれども、研究ですので、保険診療のエキスパートパネルと要件をどこまで緩和できるかということもちょっとあるのではないかなと思っています。
それくらいです。
○中釜委員長 追加で上野参考人、お願いします。
○上野参考人 がん研の上野ですけれども、最初、全ゲノムと、もともと保険のパネル検査で行っていたエキスパートパネルがあったわけですけれども、全ゲノムだと、あまりの情報量の多さに、どういう形で、何を議論するのかというところから始まったというところで、かなり混乱がありましたけれども、最近、大分落ち着いてきて、還元班の目的である患者さんに還元するという視点を中心に議論していくという体制がそれぞれできてきますので、そういう意味では、何を議論すべきなのかという点をきちんと意識しながらやることが大事だと思っています。
○水澤委員 どうもありがとうございました。大変参考になります。
○中釜委員長 次は、葛西参考人、お願いいたします。
○葛西参考人 ありがとうございます。
私も中村先生のお話に少し近いことなのですが、いろいろな分野でゲノムの解析が始まっていて、先ほどAMEDの調整費の話も出てまいりましたけれども、いろいろなプラットフォームが、当初は難病とがんぐらいのプラットフォームだけでしたけれども、現状、いろいろと使われ始めました。それからこの報告でも、まさにAMEDの調整費の事業がいいとか悪いと言っているわけではなくて、限りなくマルチオミックスなので、研究要素は高いと思います。
そういったものが使われてくる場合、2つのポイントがありまして、多分、産業側の方からすると、基礎研究的なものに協力しているのか、患者還元的に創薬として使っていくのかということのデータの利用目的が曖昧だと、協力できなくなると思います。そのときに、私のような立場からすると、データのガバナンスはしっかりつくるべきだと思っています。どのように利用目的通り使われているか管理すること。これがないと、場合によっては、こういうことから遺伝情報の差別、データ利用の差別とかが始まっていくのですね。これは非常に重要なことで、先に、このデータはどういうことに使っていいのか悪いのかというガバナンスとルールがしっかりしていないといけないと思います。私のような人間からすると、データをどういうふうにコントロールしていいのかというのが困ってしまうのですね。
もう一個が、いろいろなところでプラットフォームをつくられると、私は専門としているセキュリティ対策の面もあるので、最近は電子カルテも毎月のように止まっていまして、ここで説明することではないのですけれども、相当高度な攻撃をされています。そういう面と、C班でつくろうとしている、今後、統一的なパイプラインのデータに、実は今、解析したデータが移行できないかもしれないとか、場合によっては移行がすごく困難であるかもしれない。もしくは、今あるプラットフォームは、過去のセキュリティタイプの防御しかしていないかもしれないということになると、一大事になってくるなと思うのですね。
いわゆる事業的信頼性を失うので、そういう意味では、システムの可用性であるとか、システムのセキュリティのルールとか、細かなシステムのガバナンスを先につくらないとまずいと思います。データ利用のガバナンスとITやセキュリティのガバナンス、両方つくった上で、それを守っていただきながら、最終的に移行する場合には、こういう契約で今の研究を進めてください。それから、最終的にはC班のものが流通していく際に支障がないようにやりましょうというのが、そういうマイグレーションプランをつくっていかないと、今やっていることが全部無駄になってしまうのではないかという、非常に危うさを今日、感じました。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
今の御指摘に関して、例えば角南参考人、A班の中で3つの班が経験を踏まえた上で情報を共有し、ゴールとしては、レポート参照を含めて共通の解析あるいは患者還元のパイプラインをつくっていくというふうに理解します。今、A班の中でそのような議論は行われているか。あるいは、後ほどC班のところで井元先生にお答えいただくのがいいのか、角南先生、何かございますか。
○角南参考人 ありがとうございます。
今、A班の横のつながりの中では、1つは統合解析というところまではないのですけれども、今後のC班との連携の在り方というところは議論しているところかなと思っております。その中で基本コホートの話が出ておりますので、そういったものと連携しながらデータをまとめていくというところが現実的なのかなと思っておりますが、いかがでしょうか。
ありがとうございます。
○中釜委員長 それから、C班の井元先生から何かこの段階で御発言ございますか。
○井元参考人 ありがとうございます。井元でございます。
データガバナンスにつきましては、出口戦略チームの基本コホートがA班の前向き症例に関しては肝だと認識しております。セキュリティに関しましては、私のところで少しお話させていただければと思っています。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
今の御回答で葛西参考人、よろしいでしょうか。
○葛西参考人 別に何かを否定しているわけではなくて、システムのルールというのは諸外国、かなりテクニカルにつくられているので、もちろん連携しなければいけないでしょうし、移行する際にもデータの移行の契約がどうであるとか、手順がどうであるとか、データの形式がどうであるとか、そういったものを全て精査しなければいけないので、そういったことを今後ルール化していったほうがいいのではないかというだけの御提案なので、別に現状に対して、何かすごく大きな問題があるというわけではないので、それは誤解のないようにお伝えしておきたいと思います。
○中釜委員長 ありがとうございました。
ほかに御質問、御意見ございますか。よろしいでしょうか。
続きまして、AMED研究データの解析班C班、資料2-3になります。こちらの説明をお願いしたいと思います。井元先生から順次説明をお願いできればと思います。
○井元参考人 ありがとうございます。井元でございます。C班の代表を務めております。まず、私のほうから全体のことをお話しさしあげて、それから、各チームの説明に進みたいと思います。
次、お願いいたします。このスライドは令和3年度の解析班の内容をイメージ図にしたものです。左側に医療機関がございます。患者さんからの検体が検体会社に移されて、シークエンス解析され生成されたデータが解析・データセンターに送られます。一方、医師からは電子カルテにあります患者さんの臨床情報を、解析班のEDCのシステムに入力頂き、収集されます。その後、解析・データセンターでレポートがつくられて、患者さんに還元されていくことが令和3年度の内容でした。この内容と比較し、今年度、解析班の研究内容は非常に多く広い範囲をカバーするようになっております。
次、お願いいたします。このスライドが解析班の令和4年度の事業内容の全体像を示しております。先ほどの令和3年度の内容に加えて、ゲノムデータ解析がクラウド上で行われるようになっていく。また、電子カルテの臨床情報がオートマチックに送られる、もしくは解析班のシステムから取りに行くようなシステムを考える。その際にはFHIRによる標準化されたデータベースを用いること。また、二重登録を避けるようなシステムを考えていく。解析結果については、APIを使ったエキスパートパネルのレポート作成。アカデミックフォーラム・産業フォーラムに対するデータ提供、研究支援。最後には、出口戦略として基本コホート・戦略コホートへのデータ提供がございます。
この事業全体を進めるために、次のスライドをお願いいたします。6つのチームを組織いたしました。それぞれのカラーがチームの担当範囲を示しております。
次のスライドをお願いいたします。6つのチームの主たる研究者をあげています。この後、下線を引いた方々から、それぞれのチームの内容について説明をさしあげます。
次、お願いいたします。まずは、私の担当いたします、ゲノム解析・クラウド基盤・監視システムの構築について説明致します。何をやっているのか、ざっくり申し上げると、現在集まってきているゲノムデータの解析を逐次行っていくと共に、解析・データセンターが事業を実施できるよう、情報インフラを構築しております。
その内容につきまして、簡単に紹介したいと思います。
このスライドは、ロードマップです。次、お願いいたします。5月、6月に行われたAMEDの全体会議でお示しした進捗、達成状況と検討事項を示しています。ゲノムデータの受領に関しましては、現在、6月20日時点で2.5PBと書いていますが、現在、大体2.6~2.7PBほどのデータを受領しまして、その解析を進めております。
また、この一次解析をクラウド上で高効率に実現するために、クラウドにおける性能検証の調査研究支援に関して入札公示を行いました。
また、6月の4番目にあげております、システム運用、セキュリティ対策に関しましても技術仕様書を作成し、現在、調達を行っているところでございます。この業務によって、しっかりとセキュリティ対策の比較検証を行いシステム運用が可能なように、葛西参与からもコメントがありましたよう、しっかりと進めてまいります。
また、今後1か月の検討事項について簡単に説明致します、一番下をご覧下さい。問題点・指摘事項への対応の2番目に、IDの誤記等トラブルを避けるシステムの導入の検討と記載致しました。これを踏まえて、今後1か月間の検討事項の中の4番、データ受領・整合性確認オートメーションシステムと連動したID採番システムの検討を進めてまいります。
その理由について簡単に説明いたします。次のスライドをお示しいただけますか。シークエンスデータを我々が受け取る際には、研究班からNとTの検体ペアの情報を表す対応表をまず頂きます。それに加えて、研究班がDNA等検体をシークエンス解析受託会社に出検される際に同時に送られている出検サンプルリスト、いわゆるオーダーリストも我々に送って頂きます。それらのリストに書かれているIDの整合性について、そのマッチングを確認します。最後に、シークエンス解析受託会社から送られてくるシークエンスデータ及びメタデータが、NTペアの対応表、出検サンプルリストにあるIDと正しくマッチするかを確認し、最後にファイルの正常性を確認し、QCを実施した後に解析することになります。
この解析に至るまでに、多数の確認事項がございましたが、現時点ではこれらを人手で確認しているという状況でございます。これらの処理を自動化すると共に、検体を出された研究班や病院の方々が、解析班においてデータを無事に確認されたのか、また解析がどの段階に進んでいるかを見える化できるシステムを構築することが、事業実施組織が事業を進める際に必ず必要であろうと考えて、このシステムの構築に着手しております。
以上でゲノム解析の部分は終了いたします。
次、お願いいたします。次は、松田先生、よろしくお願いいたします。
○松田参考人 よろしくお願いします。東京大学の松田です。私、これまでB班で希少がんの解析を担当させていただいておりましたが、今年度、C班で新たに集中管理システムの構築も担当させていただくことになりました。
こちらの図のほうに、本プロジェクトにおける検体、臨床情報とゲノムデータのフローを示しておりますが、一番右側のほうで、解析後の残余検体については、産業フォーラムもしくはアカデミアフォーラム等で2次利用等が想定されており、検体の適切な保管というのが推奨されております。一方、今後、医療機関が大幅に増えていくことを想定すると、個々の検体を適切に保管することが困難な医療機関も考え得るということで、そのような医療機関ではバンキング機関での保管を予定しております。
検体の保管については、これまで外部研究グループの保管委託実績のあるバイオバンク・ジャパンでの保管を予定しております。また、バンキングを適切に行うには、検体及びデータのフロースキームを正確に行う必要があるため、集中管理システムの構築も松田チームの中では予定しております。
さらに、今回、検体が医療機関から出されて、それから核酸抽出、そして検査会社に送られてバンキングされるという、複数の機関が検体に触るということで、今後の医療実装及び適切なバンキングを行う上では、各ステップのSOP作成というものを予定しており、この点についても各機関と連携してSOPの作成を予定しております。
具体的には、一番左側の検体処理のSOP作成に関しては、日本病理学会との共同で、真ん中部分の検査会社におけるNGS解析のSOP作成については、日本衛生検査所協会との連携。また、残余検体の保管SOP作成については、バイオバンク・ジャパンと連携して進めていく予定ですし、医療機関もしくは検査機関で核酸抽出というのはそれぞれで行われる可能性がありますので、核酸抽出及び検体の運送のSOP作成については、東京大学及び病理学会、衛生検査所協会の連携で行う予定です。
また、集中管理システムは、ここにあるような機関及び解析班、そして臨床情報のレポート作成チーム等と連携して進めていく予定です。
次のスライド、よろしくお願いします。まず、病理学会との連携について、こちらのほうで御説明させていただきたいと思います。これまで病理学会は、右のほうに示しておりますが、2016年に、右下のほうです。ゲノム研究用病理検体取扱い規程というものを作成いただいています。また、2018年にゲノム診療用病理組織検体取扱い規程というものが作成されております。
今回は、医療現場でのゲノム解析ということで、右上のゲノム診療用の規程というものが実際には近いのですけれども、ゲノム診療用の規程というのはFFPEを対象としたものでした。今回、ホールゲノムシークエンスに関しては、凍結検体が一般的に使われるということで、ゲノム診療用規程を今年度中にホールゲノムシークエンスに対応できる形で改訂のほうを予定しております。規程の策定のWG委員長である北大の畑中先生、及びWGの主要メンバーの先生方に分担研究者に入っていただき、ホールゲノムシークエンス解析に即した形での診療用規程の改訂作業を行っていただくことになりました。改訂作業の公開は来年度中を予定しているのですが、今年度中に作成いただける見込みですので、年度内に予定されているSOP作成は完了する見込みになっています。
また、実際に作成に当たっては、A班の角南先生と連携して精密なフローも構築いただける予定です。
次のスライド、お願いします。検体のバンキングに関しては、先ほど述べましたが、バイオバンク・ジャパンでの保管を予定しております。バイオバンク・ジャパンでは、凍結検体及び4度Cで検体を保管するバンキングシステムが導入されておりまして、右側のほうに示していますが、これまで既に幾つかの研究グループや医療機関、企業等の保管委託で実施しております。運用のほうの実績もあるということで、今回、バイオバンク・ジャパンでの残余検体については、希望する医療機関については保管のほうを予定しております。
次のスライド、よろしくお願いします。
現在の準備状況、その他の部分ですが、日本衛生検査所協会とも打合せを進めており、7月1日に契約変更を行って、分担として加わっていただくことになりました。現在、ホールゲノムシークエンスは、国内の8つの企業が受託されているということで、今後増える可能性もありますが、各企業とも必要に応じてヒアリング等の実施を行い、SOP作成のほうを年度内に進めていく予定です。
また、核酸抽出、検体運搬のSOPについては、東大、病理学会、衛生検査所協会や、A班・B班に含まれている9つのグループにも適宜ヒアリングを行って、核酸抽出の適切なプロトコルの作成を進めていく予定です。
また、集中管理システムについては、加入する機関が多いですので、システム要件を確認しながら年度内にシステム構築を進めていく予定です。
以上になります。
○中釜委員長 ありがとうございます。
続きまして、美代先生、お願いいたします。
○美代参考人 NCGMの美代です。よろしくお願いいたします。臨床情報収集について説明、御報告申し上げます。
本年度の目標ですけれども、現行、EDCで情報収集しておりますので、それは継続しつつ、そこの改修を行いつつ、併せて新しいWeb APIを用いて電子カルテから直接データを収集する方法、特に、HL7 FHIRを用いて収集する仕様を作成します。A班の3施設に対して、今年度の中でプロトタイプ実装をして評価していくことを目標としております。それに向けて、後ほど御説明いたしますが、幾つかの打合せ、設計等を進めております。
次、お願いいたします。従来、EDCでデータを集めているということですけれども、労力がかかる、入力側の負担が大きいということですので、電子カルテから取れるものは直接取るということで、ダイレクトデータキャプチャーの略でございますが、DDCで集められるところは集めていこうということを計画しております。入力された情報は診療情報として電子カルテに残ることで、後ほど電子カルテから集めることができます。
2番目ですけれども、1回で大きなテンプレートに全部の情報を入れるというのは非常に困難ですので、診療フローに沿ってテンプレートを設計することで入力負担を減らしていきます。
それから、記録された項目は電子カルテにも保存されますけれども、FHIRサーバーにも保存されて活用していくことができます。これは、入力のインセンティブになるかと思います。「しっかりと構造化したテンプレートの形で保存されていれば、後ほどいろいろな形で活用できます」ということで、入力される先生方の御理解を得つつ進めたいと思っております。
負担がどのぐらい軽減されるかというのは、国立がん研究センターの玉井先生が調査をなさっておりまして、これは現行のEDCの項目がどれくらい電子カルテに入っていて、FHIRサーバーだとどれぐらいかということが記載されております。電子カルテの既存情報をそのまま利用できるのは44%ぐらい。それをFHIRリソースに変換した場合、今、提示されているFHIRリソースでは6%に減ってしまうという状況です。
それから、一意に定まらなくて、ユーザーが電子カルテに保存されている複数選択肢から選択するような項目は、手入力よりは選択肢を提示することで負担は軽減できるというのが18%。FHIRの場合は、この割合より少し減りますということになります。
電子カルテから抽出困難なものは38%ですという状況ですけれども、この数値を上げていくために、テンプレートで診療の中で必要な項目があれば構造化して入れていくことで、自動的に取れる項目を増やしていこうと思っております。
この後、次のスライドで御説明いたしますけれども、A班の先生方とその辺りを協力してつくっていく必要があると考えております。今、非常に大きなEDCのテンプレートができております。これを、例えば初診時、検査後、病理結果後、入院時、手術後、がんゲノム登録のときと、それぞれ診療の流れに沿って、その時々の診療の中で入力できる項目を入れてためっていただいて、最後に登録のときにそれを合わせて登録するという仕組みを考えております。
電子カルテデータベースに入ったものがFHIR Repositoryに入りまして、その次に、対応表があるので仮名化という形になってしまうかと思うのですけれども、仮名化されたFHIR Repositoryにさらに移しまして、これをデータセンターで取得すると考えています。
次のスライド、お願いいたします。大まかなシステムとこれからの開発の項目になりますけれども、左側が医療機関、真ん中が中央の集めるセンター側ということで、まずは電子カルテ側にテンプレートを導入していくことになります。このテンプレートに入力したものをFHIR Repositoryにためていく。FHIR Repositoryにたまったものを仮名化のFHIR Repositoryに移す。それをセンター側で集めるという機能を、これから詳細な設計をして開発を進めていくということになります。現在、大阪公立大学様と一緒に開発しております。主に医療機関側のところはNCGM、センター側の部分を大阪公立大学ということで協力して進めていこうと考えております。
仮名化FHIR Repositoryに関しましては、理想はクラウドのセンターに置いて、そこに全て集まってくるという形でありますけれども、いろいろと医療機関の事情等を考えながら進んでいくということで、まずは医療機関の中に置かせていただいて、密なやり取りができる状況で開発をおこない、将来的にどういう形にするかというのは、またこの先、御相談させていただければと考えております。
次のスライド、お願いします。進捗の報告になりますけれども、現在の達成状況としては、EDCでは臨床情報を収集しております。新しい重複がん、出口戦略コホートに対応するEDCの検討を進めています。EDCの概要の設計。医療機関側のシステム構成の概要の設計。それから、EDCからDDCへ移行していくために、どのようにフローに沿った形で切っていくかというところの検討を達成したところになります。
今後1か月は、この流れを受けていくということと。あと、診療フローの中でということですので、A班の先生方と調整しながら進めていきたいと考えております。
以上になります。
○中釜委員長 ありがとうございます。
続きまして、レポート作成について、間野先生お願いします。
○間野参考人 国立がん研究センターの間野でございます。全ゲノム解析レポートの作成をやっております。
これがロードマップですけれども、これまでにレポート様式の確定に関して何回か議論してほぼ決まりましたので、現在、実際、レポートをつくるためのデータベースの構築とか作成パイプライン、返却システムの構築等をやっております。できれば10月頭にはレポートを実際にA班の方々、出口戦略班の方々にお返しするという方向で進めております。
次の19ページ、お願いします。達成状況については、大体順調に進んでおりまして、今後の検討事項としては、レポートに記載する遺伝子やアノテーション等を最終確定するということがテーマになっております。後でまた御説明いたします。
次のスライド、お願いします。流れですけれども、医科学研究所の井元先生のグループにつくっていただいた変異リストを送っていただいて、それから、現在はEDCで集めている診療情報の中からレポート作成に必要な情報を抜き出して、その両方を合わせた形で臨床試験等のデータベース、臨床試験や遺伝子変異ごとの臨床的意義づけをつけるデータベース、クリニカル・アノテーションのデータベースにそれを当てて、その結果をがんの全ゲノムレポートとして作成して医療機関にお返しするという流れになります。
次のスライド、お願いします。メインの議論のところである全ゲノムレポートに関して、これまで実際に経験豊富なA班の先生方にヒアリングをして、C班の基本レポート案というのは一応作成しました。
そこに書いてありますけれども、エキスパートパネルの議論を目的とした全ゲノム解析レポートを作成して、これは直接患者さんに渡るものではなくて、エキスパートパネルでの議論の参考にしていただいて、その結果、もし治療介入する場合には、全ゲノムで見つけた変異等が本当のものかどうかということの確認検査をしていただいた上で、患者さんにお返しするという形のものを想定しています。
レポートに返却する遺伝子としては、確認検査ができるということを前提としていますので、例えば保険診療や先進医療で行われているパネル検査に含まれている遺伝子とか、生殖細胞系列に関しては、小杉班のガイドラインが出ていますので、それの推奨遺伝子を載せることを考えております。
遺伝子変化のどれをレポートするかに関しては、そこに書いてあるようなところです。
エビデンスレベルとしては、国内のガイダンスや海外のデータベース、ClinVarとかOncoKBとかBRCA Exchangesといったデータベースからアノテーションをつけて、遺伝子変異にマッチした臨床試験と合わせた形でレポートを作成したいと考えています。
ただ、そういうレポートとはまた別に、例えばIGVでの目視確認のような専門的な、より詳細な解析結果の検討というのも、後で白石先生のほうでお話しになるかもしれませんけれども、そこと連携してできるような形をつくっていきたいと考えています。
私からは以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
続きまして、データ共有チームから、白石先生、お願いいたします。
○白石参考人 国立がん研究センターの白石と申します。データ共有・研究支援システムの構築について説明します。
次の次のスライドを映していただけますでしょうか。まず、この解析・データセンターのデータ共有システムでどういったことを目指すのかについて簡単に説明させてください。解析・データセンターのほうでは、利活用システムとして、オープンなAPIを使った参加型の利活用システムをつくっていきたいと考えております。最近、金融の世界で、そこにあるデータを自社だけで使うのではなくて、他社がいろいろな形で加工して、新しいイノベーティブなサービスを開発できるという体制をつくるということが、いろいろなところで進められていると思いますけれども、そういった世界の潮流もあって、解析・データセンターのほうでもそういった体制にしようと考えております。
具体的には、解析・データセンターのほうでゲノム解析・臨床情報の収集などを行いますけれども、そういった集めたデータに対して、それをオープンな形でアクセス可能な形のAPIシステムを整備しまして、それによって、企業とか大学等で様々な研究者が独自の考えに基づいたイノベーティブなアプリケーションを開発する体制をつくろうと考えています。
例えば、それによって解析・データセンターのデータリソースをうまく加工して、解析結果を一番供出できるようなポータルサイトをつくったり、ゲノム変異を確認できるようなプラットフォーム、先ほど間野先生がおっしゃっていただいた、患者還元で実際にできているかを確認できるようなプラットフォームをつくることを考えています。そういったプラットフォームをつくることができるようなAPIをつくることを考えております。
1つ前のスライドに戻っていただきまして、現在の達成状況として、左の5月20日の達成状況というのは、これは昨年度からやっておりますプロジェクトですので、昨年度達成したものになります。
まず、データベースの設計をしました。利活用の中で、それぞれのデータリソース、ゲノムデータとか臨床情報を、どういった形の構造でメタデータを持つかという設計をしまして、その後に各種APIの構築をして、それぞれのリソースをどういった形で、どういうコマンドで抽出するかといったコマンドの設計を一通りスタートしております。もちろん、これもセキュアな環境でやらないといけないので、実態はAWSの中で、データベースや様々なセキュリティのシステムがついているのですけれども、そういった一連のインフラシステムを昨年構築しております。
あと、このAPIを使う中で、実際にセキュアなAPIを実現していく中で、どういった形でアプリケーションをつくれるかとか、実際にAPIを管理する場合は、どういった形でルールを遵守していけばいいかというセキュリティのガイドラインについても、一旦はサービスレベル仕様書というひな形を作成しております。
さらに、このアプリケーションをつくって、どういったところが問題かということを、例示的なアプリケーションをつくって、実際にはJupyter NotebookでAPIを連携させていくような形でアプリケーションをつくって、それが動くことを確認しております。
それまでが昨年度でして、今年度は、実際に今まではどちらかというと解析・データセンターでないところで動くことを確認していたのですけれども、今度は実際に患者還元などで必要とされる事柄に対して、今後、APIシステムを運転して実行することを目指しています。本年度は課題抽出をしまして仕様書を作成して、現在、調達の準備をしているところになります。
次の次のスライドをお願いします。最後に、今、患者レポートに対して統一的なレポートということで議論されていると思うのですけれども、もともとはこういったことを考えていましたということで、簡単に紹介させていただきますと、APIを使って患者レポートを、1つの企業だけじゃなくて、いろいろな企業が独自のデータベースとか強みに応じて、独自にレポートを公表・作成できるということも考えておりました。恐らくいろいろな企業とか大学のほうで、それぞれの機関の事情もあったりすると思いますので、そういったことも考えていくような形で、今のところはつくっております。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
最後、出口戦略チームの山本先生、お願いいたします。
○山本参考人 出口戦略チームの報告をさせていただきます国立がん研究センター中央病院 山本です。この出口戦略は、私のほかに東病院 吉野先生、静岡がんセンター 釼持先生、がん研究有明病院 北野先生と共同で取り組んでおります。
次、お願いします。これは出口戦略の全体像で、今、我々4名が取り組んでいるのは、上の表の2つの部分です。早期に患者に還元するということと、2番目の新規臨床試験により、個別化医療を勘案するという部分です。
次、お願いします。その基本コホートと戦略コホートの概要です。
基本コホートは、先ほど申し上げたように、全ゲノム解析を受けた患者に対して、解析結果に基づく治療へのつながりを構築する。同時に、遺伝性疾患の把握、全ゲノム解析によって診断できた腫瘍タイプの把握を行います。
戦略コホートは、先ほど申し上げました全ゲノム解析によって個別化治療実現を目指した戦略を、前向き臨床研究の中で行います。
また、両コホートの連動も行います。
次、お願いいたします。A班で既にR3年度から症例登録が行われていますが、R3年度、R4年度に登録された症例のうち、死亡例を除いた方はエキスパートパネルを経て、基本コホートに登録されるというイメージ図でございます。基本コホートに登録された患者さん、一部アクショナブルな遺伝子でない方も存在しますが、アクショナブルな遺伝子変異があった患者さんのうち、治療につながる方を、最後の下のほうにあります薬剤到達に向けて進めていくというフローでございます。
薬剤到達の対象は、保険診療、治験参加、患者申出などがあります。診断補助は、最終的に遺伝性疾患、希少がんの診断などが視野に入ると思いますが、それらを最終的に、どういった患者さんがどんな治療を受けたかというのを集計するために、観察研究を行う準備をしております。
次をお願いいたします。
これは、個々の患者さんがどういった流れになるかを左から右へイメージ化した図でございます。各病院から登録された症例がエキスパートパネルを経て、基本コホートに登録されます。基本コホートの中では臨床情報も追加されるわけですが、そこで最終的に右側の治療に結びついていくことになります。そこで、真ん中に確認検査とありますが、ここでCGP検査などの検査を経て、全ゲノム解析の確認を行って、最終的に右側の治療選択に進んでいくことになります。
戦略コホートにつきましては、後で御紹介しますが、周術期のがん患者さんを対象としていますので、当面は基本コホートにすぐ登録されることはないのですが、一部の患者さんで再発してしまいますと、再発後の治療が必要になりますので、そういった患者さんにつきましては基本コホートに登録されるというフローにしております。
次をお願いいたします。基本コホートの準備状況です。現在、7月ですから、体制構築の準備を進めております。そのほか、EDCの改修、そして観察研究のプロトコル作成と進めております。研究用CGP検査の契約も進めております。実際の症例登録は、今年の下半期、10月以降を目指して準備を進めております。
次をお願いいたします。具体的準備状況です。
症例登録に向けて準備しているというのが左上の達成状況でありますが、6月20日の達成状況を御覧ください。研究用CGP検査の委託先を決定しまして、現在、契約準備を進めております。EDC改修作業も取りかかりまして、ほぼ入力項目を固めつつあります。
プロトコル作成につきましては、ドラフトが完成しまして、参加予定の施設の先生方へのレビュー依頼を出す予定でございます。
次をお願いいたします。ここから戦略コホート、3つについて簡単に御紹介いたします。これは、東病院 吉野先生を代表としました局所進行直腸腺がんに対するランダム課題3相試験です。左から右へ治療が流れていく図でございます。ランダム化の後は、放射線治療と化学療法が行われます。化学療法は、上は薬物療法A、薬物療法Bとありますように、治療の内容が若干異なっております。その後、再評価を経て、臓器温存する患者さん、手術に向かう患者さんとなっております。
この試験の中で、一番最初のランダム化の下に小さいTissue samplingで得られた組織を基に全ゲノム解析を行いまして、最終的にはどちらの治療がよりふさわしいか、または臓器温存手術といった個別化治療に、全ゲノム解析がどういう形で貢献し得るかというのを勘案するデザインになっております。
次をお願いいたします。この試験は、今年度中の症例登録を開始すべく準備が進められております。この図を見ていただきますと、試験開始が今年の11月として急速に準備が進められております。既にEDCの構築も進みまして、11月に登録が始められる見込みでございます。
次をお願いいたします。
具体的には5月20日の発生状況を御覧ください。研究計画書、同意文書の原案が作成されまして、運営委員会、そしてAROとの協議が進められております。
右側の6月27日付の達成状況を御覧ください。参加予定施設への説明会、そして、プロトコル、ICF文書の原案作成。そして、SRLとの打合せなどが進められております。
次、お願いいたします。2つ目の試験は、静岡がんセンター 釼持先生を中心とする、術後の非小細胞肺がんにおける観察研究でございます。
左下の図を御覧ください。手術を受けた患者さんは、術後化学療法を行いますが、シスプラチンベース、CCDPベースとありますが、術後化学療法を行った後、EGFR阻害薬のOsimertinibまたはPD-L1阻害薬Atezolizumabなどの治療が行われますが、手術のときに得られましたサンプルを用いまして、これらの治療がより貢献し得る患者さん像の特定などを進める予定でございます。また、それらの解析によりまして、より治癒に結びつく患者さんが絞り込まれるものと期待されます。
次をお願いします。この試験は、今年度中に体制構築、そして準備を行いまして、来年度、R5年度からの症例登録を開始すべく準備を進めております。
次をお願いいたします。6月20日時点での達成状況を御覧ください。現在は、プロトコル作成に着手されまして、多施設共同研究になりますので、参加施設の選定を進めている状況でございます。
次、お願いします。3つ目の試験は、がん研有明病院 北野先生を代表とする乳がんを対象にした試験でございます。この試験は2つあります。上がトリプルネガティブ乳がんに対する観察研究、下がルミナール乳がんに対する観察研究でございます。
この試験の特徴は、赤枠で囲んでいますように、腫瘍サンプルを用いた検討が2回入っているというところでございます。上はトリプルネガティブ乳がんに対して、術前に2種類の化学療法を行いますが、治療2番を御覧ください。Pembrolizumab、PD-L1抗体が入っております。その後で手術を行いまして、術後、CapecitabineまたはPembrolizumabとなっていますが、それぞれの場面で腫瘍生検、腫瘍採取を行いまして、pCR予測マーカーの探索、そして右側ではnon-pCR症例における背景の探索などが行われます。
下のルミナール乳がんに対しましては、同じように術前に化学療法が行われる際に腫瘍生検、ここでpCR予測マーカーの探索が行われまして、手術の際に採られたサンプルに対しまして、その後、至適な術後療法を勘案するための解析を行うというものでございます。
次のスライド、お願いいたします。この試験の準備状況は、今年度中に体制構築を行いまして、来年度からの症例登録を目指すべく、準備しております。
次、お願いいたします。準備状況を申し上げます。6月20日現在の達成状況を御覧ください。右上です。当院単施設と書いてありますが、まず有明病院単独施設で実施することになっております。そのためのプロトコルの作成が開始されております。
ここでの心配点は、一番下にありますように、全ゲノム解析をこの試験において1症例当たり2回行うことになりますので、それに必要な予算を確保する必要があるだろうというのが現在の検案事項でございます。
私のほうからは以上でございます。
○中釜委員長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの資料2-3、AMEDデータ解析研究班の説明につきまして、御質問、御意見ありましたら、よろしくお願いいたします。
宮野委員、お願いいたします。
○宮野委員 宮野です。
全体を伺っていて、多くのソフトウエアの開発の設計も含めた委託業務などがあるかと思うのですが、データのハンドリングの委託もあるかと思うのですが、先日、尼崎市でありましたような、業務委託をするという会社が再度業務委託をやって、そして変なことが起こってしまったわけですが、これは通常起こっていることで、そこに契約はきちんとしているつもりなのでしょうけれども、リスクがあるという認識の下で、この全ゲノムのプロジェクトではどのようにそのリスクを減らしていくということをお考えなのか、どなたか御回答いただければありがたいと思います。
昔、防衛庁のときですが、25年以上前のソフトの外注を、ある日本の大手のICTの企業が受け、それが再委託、再委託で、最終的に到達した企業が、実はサリン事件を起こしたところの人たちがやっている企業であったということが普通に起こっております。また、神奈川県庁でも、ハードディスクの交換を請け負っている企業の人が、そのハードディスクがまだ使えるのでオークションに出していたりすることがあって、これはソフト関係及びデータ関係ですけれども、その辺りのリスクヘッジを契約の中でどのようにされていくのか、方針があるといいのではないかと思いました。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
では、この点について、まず、C班の井元先生にお答えいただきます。
○井元参考人 ありがとうございます。非常に重要な点であると認識しています。
まず、ゲノムデータに関しましては、データの持ち出しはできないとしています。現在の全ての作業は、AMED革新がんの経費で購入しましたオンプレミスのサーバーと、ヒトゲノム解析センターで運用しているスーパーコンピュータSHIROKANEで閉じているものになります。EDCについてもクラウド上ですが同様と認識しております。また、再委託はないと認識しております。さまざまなリスクがあるという前提に立って、再度、徹底して調べリスク回避の方策を取りたいと思っております。
以上です。
○中釜委員長 何か追加で御発言ございますか。C班の方、よろしいですか。宮野先生、今の回答でよろしいでしょうか。
○宮野委員 美代先生のところは、業務委託を外に結構されるのではないかと推察しているのですが、間野先生も一部そうだと思うのですが、大丈夫なのでしょうかという漠然とした不安が上がってきているので、その辺りを解消していただけるとありがたいです。
○中釜委員長 美代先生。
○美代参考人 業務委託というか、委託して開発していただくことになるかと思います。尼崎のところは、開発というより運用の委託のときに、いろいろな保守の中で起こったことだと思うのですけれども、その辺り、再委託、どのような業務をしているのかというのは確認しながら進めることになるのかなと思います。
○宮野委員 それは確認だけでよろしいことなのですか。先ほどの防衛庁時代のソフトウエア開発の業務委託、開発委託の末端のところで起こった事故ということもあって、非常に重要な部分を単に確認していくということだけで、私はちょっと納得できないのですが。
○中釜委員長 美代先生、何かコメントございますか。
○美代参考人 今のソフトウエアというのは、1社だけで全てできるものというのはかなり少なくなってきていて、いろいろなモジュールを組み込んでいく必要があります。それについて、どこまで追えるのかというのは非常に難しい問題だと思っています。私たちのところ、例えばNCGMは政府の組織ですので、これまでの事故を踏まえた政府の指針にのっとった形で調達は行っておりますので、少なくとも我々のところで行う開発は政府の調達指針にのっとった形で調達を行うということになります。
○宮野委員 通常、政府の調達にのっとった格好で開発委託などが行われているわけですけれども、先ほどの防衛庁時代の例など、一番ひどい例だと思うのですが、それがもしこの全ゲノムの臨床情報も含む中で起こった場合、起こる可能性を秘めていますので、それについてちゃんと配慮をどうするかということを考えておかないといけないと、私は強く思っているところです。それが単に開発委託の契約の中に書かれているということがあるかもしれませんけれども、例えば開発の再委託はできないとか、そういうやり方もあるかと思います。ですから、請け負った会社が全責任を契約という格好で負う。
今回、尼崎の場合は、請け負ったところが、実はさらに再委託したところで起こったことだと言って逃げたりしていることがあるわけで、こういうことは日常茶飯事で起こっていることだと思うのですね。
○美代参考人 それは、当然契約した相手が責任を負うということになると思います。さらに、例えばソフトウエアを開発するのであれば、再委託先に対する監督責任というのは、発注を受けた側にあると思っております。
○中釜委員長 間野先生、何か追加で御発言ございますか。
○間野参考人 ありがとうございます。
EDCに関しても、もちろんもともと契約する業者に再委託を禁じるような形で契約していますので、今おっしゃったようなリスクは少し減っていると思います。しかも、EDCの場合には基本的にクラウドですので、企業の中のハードディスクに個人情報が入っているということはありませんので、その意味においても少し安全かなと思います。ただし、先生がおっしゃることはもっともですので、これを今後の契約内容において、そういうことが十分に縛れるような形のものであるように努めていきたいと思います。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
今の御回答でよろしいでしょうか。御指摘は大事なところですので、その辺りもきちんと議論しながら進めていただきたいと思います。
美代参考人。
○美代参考人 契約のところも大事だと思うのですけれども、いわゆるどういうリスクが潜在的にあってという、そのリスクの評価をしながら、それに対する対応策を取っていくということも重要かと思いますので、併せて我々のほうでは進めたいと思います。
○中釜委員長 よろしくお願いいたします。
続きまして、天野委員、お願いいたします。
○天野委員 ありがとうございます。
1点確認です。資料2-3の21ページになるのですが、中段のところの記載として、「項目を限定した患者手渡し用のレポートの作成」という文章があるのですけれども、この患者手渡し用のレポートというのは、既にひな形等は完成しているのでしょうか。また、もし完成している場合は、患者さんなどのレビューは既にいただいているのでしょうかという確認です。
以上です。
○中釜委員長 この点については、間野先生。
○間野参考人 このレポートは、基本的にはこの事業自体は全ゲノムの今の重複度で読んだデータが、どれぐらい偽陽性か偽陰性があるのか、まだ不明なところですので、例えば今回のA班での解析で、がんセンター中央病院のプロジェクトでは、パネル検査を同時に行った患者さんに全ゲノム解析をやっていますので、そこで偽陽性とか偽陰性がどのぐらいあるのか。パネルが500x以上あるような深度で読むのに比べて、全ゲノムはずっと低い深度で読みますから、果たしてどこを返すのが危ないのかということも科学的に突き止めていく必要があると思います。
その上で、今回つくった案に関しては、少なくとも先ほども申し上げましたけれども、全ゲノムでやったデータに直接基づいて患者さんに治療介入するということのリスクはありますので、確認検査を行ったうえで治療を考慮いただきます。今の時点では、まだ患者会の方々に見ていただいていませんけれども、当然のことながら、そのレポートに関しては、そういう患者会の方の御意見も伺った上で最終決定する形になると思います。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
続きまして、中村委員、お願いします。
○中村委員 今の宮野先生と美代先生の議論を聞いていて思うのですけれども、実施組織が最終的にデータベースを運用する際に、一体誰がどういう形でデータを移管するのか。先ほど葛西参考人も言われたように、実施組織が何をするのか。データを誰がどう責任を持って運用するのかという最終形を考えていったときに、本当に今のような議論でいいのか。一旦できてしまったものを、実施組織は単に受け付けるだけなのかという点を考えると、何か議論がちぐはぐのようだし、個人情報を守るという観点からも、もう少しデータベースをどうするのか、最終的に誰が責任を持つのかという議論を詰めていかないと、データをどう移すのかという議論になったときに、何となく責任が曖昧になって、いろいろな責任の観点で問題があると思います。
最終形をちゃんと想定した上で、最終的に実施組織として責任を持つ方がもっとコミットしないと、私はおかしいと思うので、いつも議論が前後しますけれども、何となく進んでいって、最終的に実施組織が何をするのか分からないという形になってしまいかねないと思いますので、その点はぜひ至急検討していただきたいと思います。
○中釜委員長 重要な御指摘、ありがとうございます。
この点について、現時点で、厚労省から実施機関のありようの説明をお願いします。
○岩佐推進官 御意見いただきまして、ありがとうございます。
厚生労働省のほうとしても、できる限り実施組織の議論を先んじて進めていけるようにしたい。かなりいろいろな組織をどうつくるのかということも含めて、検討が必要な点ではありますけれども、最優先にしっかりと検討していきたいと考えております。
○中釜委員長 今の回答でよろしいでしょうか。実施機関をつくるに当たっては、いろいろなリスクがあるということを踏まえつつ、AMEDの研究事業を通して共有しながら、よりよいシステムをつくり上げていく必要があると思います。迅速に最終的な実施機関のありようを想定することは、非常に重要なことだと私も理解していますので、その方向でお願いしたいと思います。
○中村委員 多分、クラウドのデータの維持管理というのは、相当な予算が要ると思いますので、それを想定して、できるだけ安全に、できるだけ効率的に運用できるようなシステムを今から考えておくべきだと思いますので、よろしくお願いします。
○中釜委員長 ありがとうございます。
続きまして、葛西参考人、お願いします。
○葛西参考人 ありがとうございます。
私は少しテクニカルな話で、こういう機能が必要なのではないかというお話をちょっとしたいのですが、まず、これはゲノムに限った話じゃないのですけれども、臨床情報もそうですが、いわゆる個情報である。欧州ですとGDPRがありますけれども、そうではなくて、最近、医療に特化するEHDS(ヨーロピアン・ヘルスケア・データ・スペース)の規則ができ上がってきました。その内容をよく確認すると、何となく日本の雰囲気ですとオプトインを丁寧にするという発想がすごく強いのですが、言い方を変えると、オプトインをした後、どういうふうにデータが使われたのかというのは、意外と患者が追いかけにくいという状態にあります。
逆に、EHDSの場合ですと、オプトアウト、使いたくないものは使いたくないというコントロールはしているのですが、逆にその後、どこにデータが使われているかということのトレーサビリティがしっかりされているのですね。これはヨーロッパの法律ですから、日本が必ずそれを守れというわけではないのですが、だんだんそういう方向になってきているなということを感じます。そうなると、1つは、データがどこに使われたのかということを患者自身が見えるようにしていかなければいけないかなということを、今後検討する必要があるなと思います。私もシステム開発、つくる人たちとお話をさせていただくので、結構大変だなと思いながら、一応そういうことは意識する必要がある。
それから、今回のゲノムのデータが、宮野先生がおっしゃるとおりで、開発段階でどこに使われるかということの挙動を確認するとか、個人情報であれば、それは誰が持ち出したのかということも確認できるようなトレーサブルなシステムというものが今、入っていないなということを1つ感じました。これを入れないとまずいかなと思います。
もう一つが、資料の15ページでしょうか、visiting型解析スペースというところは、Genomics Englandでもこのような仕組みになっていますので、これはそうだろうなと思っているのですが、そうしたときに、産業フォーラムの方々の要望で、例えばデータを提供した際に、その中のデータでさらにHPOが欲しいとか、各社がオミックスに持っていく場合に、このAPIのパイプラインがそのまま継続性があるかとか、リコンタクトしていいのか悪いのか、その制御はどこでするのかといった、産業フォーラム系レポーティングの制御システムが今、存在していないかと思います。
これは追加で開発しないとまずいですし、いきなり産業フォーラムの方が産業フォーラムに入る、入らないという議論が多いですが、そういうことではなくて、官民ともに使えるシステムとしてプラットフォームを構築する必要があるかと思っていますので、そういう機能が必要なのではないでしょうかということを発言しておきたいと思います。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
最初のポイントについては、井元先生がよろしいですか。患者のデータトレーサビリティと利活用に関する共同確認についてです。
○井元参考人 ありがとうございます。
データがどのように活用されたかということを患者さんが知ることができるというのは、非常に大切な観点だと思いました。これは、集中管理システムを構築されています松田先生とともに検討したいと考えています。
○中釜委員長 ありがとうございます。
2点目の産業フォーラムを意識したビジティングの管理について、白石先生。
○白石参考人 白石です。
葛西参与がおっしゃるように、ビジティング環境が全ゲノム解析にどこまで利活用できるようなユーザビリティを考えてつくれるかというと、結構大変なのではないかと考えています。例えば、DNAnexusとかですと、最近、200億円を調達して、その単位で世界的にはつくっていますので、桁が2つぐらい違っている気がしております。いろいろ考えると、例えば解析環境をクラウドの中で閉じたものにすると、データを企業のほうにあるセキュリティのレベルでお渡しするという形をきちんと。もちろん、データが漏れないような形で、そういう運用を含めて今後議論が必要かと思います。
○中釜委員長 ありがとうございます。
今の回答で葛西参考人、よろしいでしょうか。今後もまださらに詰めていく議論をする必要があるということであります。
○葛西参考人 井元先生とテクニカルな話は時々させていただくので、私が言いたいポイントは、解析スペースだけつくったら産業フォーラムの方ができるのというわけではないですねということと、今、白石先生がおっしゃったとおり、そこから先のコストというのは結構かかることを皆さんに御理解いただきたいなと思ってお伝えしたのですね。ですので、予算確保も必要でしょうし。
もう一つが、データを提供してから、その先、いきなり製薬会社というわけではなくて、Genomics Englandもそうなのですが、データを橋渡しする企業が間に入ったりします。そういったコンサルタントではないのですけれども、データハンドリングをする会社が間に介在して、初めて製薬会社が使えるようになったりする場面もありますので、そういった産業体制を意識して、この先をつくらないと創薬に行かないなということで、そういった予算編成を含めて、検討が必要なのではないか。あとは、官民で連携するような体制が必要かなということがお伝えしたかっただけです。
以上です。
○中釜委員長 重要な御指摘ありがとうございます。
ほかに御質問ございますか。よろしいでしょうか。
○宮野委員 宮野です。
葛西参与のお話の中で、GDPRに加えて、EUのほうではEHDSという、医療の情報のデータの扱いについては特別法的なものをつくっているというお話がありましたが、これはレギュレーションに反した場合は、医師の免許剥奪という厳しいことになっている国もあるようです。ですから、それくらいの厳しさをもって、このプロジェクトを進めていただきたいなと強く思っております。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございます。
ほか、よろしいでしょうか。
それでは、ここで一旦休憩させていただきたいと思います。5分後の4時20分まで休憩させていただきます。
 
(休 憩)
 
○中釜委員長 それでは、時間になりましたので、再開させていただきたいと思いますが、委員の先生方、参加されていますでしょうか。よろしいですか。
続きまして、全ゲノム解析等に係る厚生労科学研究班より資料3の説明をお願いします。予定時間よりもかなり時間が押していますので、説明はできるだけ簡潔にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。最初に、専門委員の先生方におかれましては、各専門のWGの方針等について、AMED研究班のこれまでの経験等の報告を踏まえて御協議いただきますようお願いいたします。また、AMED研究班におきましては、本協議結果に基づいて研究を実施していただきますようお願いいたします。
では、最初、患者還元WGの班長 河野先生、お願いします。
○河野参考人 次のスライドをお願いします。こちらは、先ほども出していただいたものですが、患者還元WGの右上、4年度の部分について説明させていただきます。
次、お願いします。こちらも先ほど出していただいた部分ですが、患者還元というところでは、もちろん創薬などの利活用を進めるという患者還元と、もう一つ、直接その患者さんに結果をお返しする、あるいは患者さんに結果を届ける、何らかの形で患者還元するという直接的なものがある。この文書の中では、緑色で書かせていただいたところにそれが上がっているのかなと思います。
次のスライド、お願いいたします。こちらは、患者還元WGで今年度の活動ですけれども、まずは、A班に代表されます前向きの患者還元施設に分担施設などが入ってまいります。ですので、その拡充の方法。
そして、山本先生などからお話がありましたけれども、出口をどうするのかということ。
また、3番目ですけれども、新たなQCを説明させていただきたいと思います。
そして、4番目ですけれども、昨年から話が上がっておりますが、電子的なICということ。こちらは、準備室のWGと連携しながら、またELSI WGと連携しながら実現に結びつけたいと思っております。
次、お願いします。まずは、医療機関の拡充の方法ですが、上の4分の3ぐらいに書かれていますのは、これまでに議論してきたところでありまして、主にがんゲノム医療の中核拠点病院を主体として、中核拠点の施設などで行うべきということでした。しかしながら、実際には、出口戦略の中で臨床試験を行うというところでは、必ずしも中核拠点あるいは拠点病院だけでは難しいというところもございます。
ですので、国際的競争力なども考えなければいけませんし、症例の集積ということも大事ということになりますので、上の要件を満たすような、そのほか拠点や連携病院も順次参加していくというところがあるのかなと思います。
次、お願いします。こちらも間野先生から先ほど説明いただいたものでありますけれども、患者還元WGとして、A班の代表施設の御経験に基づいて、C班の基本レポートというものがどういうものがよいのかということを3回にわたり議論してまいりました。A班の中では、先駆的な施設でありますので、多くの遺伝子の結果をレポート化しているだろうという特徴がございます。
ただ、実際にこれから新たな医療機関が加わって、現行のA班の代表施設のようなレベルにはまだ達していないということも考えられますので、基本レポートとしては、大事なもの、しかし、医療現場を混乱させるものではないというところで、先ほど間野先生から説明がありましたように、遺伝子の種類あるいは返却の範囲というものをこちらにまとめさせていただいて、これを間野先生のほうに、これで基本レポートをお考えくださいとお渡ししたものです。
先ほど天野委員から1つ御質問があった、患者向けの手渡し用レポートの作成。これは、非常に誤解を招く表現で申し訳ありませんでした。ここにはそのような希望も上がっていたということで、これを間野先生たちのほうにつくってくださいと言ったわけではございません。こういう希望もあって、より医療現場で進めていくためには、この全てのレポートを患者さんに渡すわけではないですけれども、患者さんに対するエンゲージメントを高めていただくというところで、こういうものの作成も検討する価値があるのではないかという意見が上がったということで、ここに挙げさせていただいているところです。
また、一番下の*印で書かれていますけれども、ほかの先生からも意見が上がっておりましたが、がん以外の遺伝性疾患をどういうふうに返却していくのかというような、遺伝子の範囲の議論も今後大事ですし、また何よりも全ゲノムシーケンスというのが研究で行われるというところから、そのコールの精度というものが、レポートをC班がつくるといっても、それは保険検査とは違うレベルであるというところで、きちんとそのレポートを受け取る医療者の先生方とコミュニケーションして、レベルというものを理解していただくことが何よりも重要であるということをこちらに書かせていただいております。
次のスライド、お願いいたします。こちら、最後のスライドになると思いますけれども、当初から厚労科研の中釜班では、この全ゲノムシークエンスのクオリティーチェック、クオリティーコントロールを行うと言っております。今、シークエンスの企業あるいは井元先生の解析班から、徐々にそのQCのデータが上がっておりますので、それを総合的に分析して、患者還元を行うのに今の体制でよいのかというところ。あるいは、企業別には何か落ち度があるところがないかとか、そういうことも今後考えながらまいりたいと思います。
以上です。ありがとうございます。
○中釜委員長 ありがとうございました。
続きまして、解析・データセンターWG班長 井元先生、よろしくお願いいたします。
○井元参考人 井元でございます。
次のスライドをお願いいたします。去年の7月からでしょうか、約1年間かけて解析・データセンターの機能的な要件等について議論をしてきまして、各機能についての要件をまとめてきたところでございます。最初のスライドでは、解析班における業務から実際に経験した内容を踏まえて、各項目について追加するべきことをまとめました。
まず、1つ目は、ゲノムデータベースの構築についてです。先ほどから少し話が出ていますけれども、ロングリードでの解析を進めていくところでございます。解析・データセンターとしては、ロングリードシークエンスデータに対応できるよう解析パイプラインを拡張するべきです。更に、ロングリードは新しい技術ですので、コスト面も評価できるように、そのメタデータを取得することと書き加えさせていただいています。
2番目としまして、臨床情報データベースの構築になります。これは、先ほど美代先生からも説明がありましたが、二重登録を回避することがマスト事項であると考えております。そのための方策を考えるということを書き加えさせていただいております。
3番目としまして、情報管理・システム構築に関しまして、シークエンスセンターからのデータの受領を円滑に行えるシステムの構築と記載しています。実際に解析班のほうではIDのつけ間違いに対応しています。もちろん、数は多くございませんが、その修正対応にはかなり多くのヒューマンリソースを割くということになります。IDの採番について、管理できるシステムが必要となります。
もう一つは、先ほど解析班の報告もありましたが、データの受領を自動化できるように、受け取り情報の整合性、正常性を自動的に判定できるシステムを構築することと書かせていただいています。
また、事業実施組織が円滑に事業を開始できる準備としまして、準備室WGと解析班、及び関係者において十分な情報共有が可能な会議を開始することとしております。この1枚目のスライドがまとめということになります。これまでこの専門委員会に提出させていただいています各資料について、具体的な記述を次のスライドから示しております。
次をお願いいたします。ゲノムデータベースのところです。赤の文言が今回新しく書き加えたものとなります。ロングリードを実施することになりましたので、これまでのショートリードと区別しなければならなくなりました。そのため、short readと上のほうでは書いております。
また、QCをまとめることについて記載されておりませんでしたので、改めて加えさせていただきました。
ロングリードにつきましても同様でございます。
次、お願いいたします。ツールにつきましても、ショートリードとロングリードにも対応することと加えさせてもらいました。
次、お願いいたします。臨床情報DBのところは、二重登録の回避の部分を書き加えさせていただいています。一番下です。
次、お願いいたします。先ほどのIDの問題になります。IDを採番すること、それを管理することは、集中管理システムの中で検討するべき事項であろうと考え、この項目に書き加えさせていただきました。
次、お願いいたします。情報管理の項目に、データの整合性の自動判定。データセンターにおける処理プロセスの見える化、およびその自動化を検討することと書き加えさせていただいています。
これが最後のスライドとなります。以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
続きまして、ELSI WGの横野先生、よろしくお願いします。
○横野参考人 よろしくお願いいたします。
スライド、次、お願いいたします。ELSI WGをこれまでに開催しております。今年度、主に取り組んでいきます事項としては、ICFやIC手続に関しては、先ほどもありましたように、昨年度作成しましたモデル文案について、運用面も含めた見直しを行っていくということ。また、広報という面もありますが、ICの補助資材とか関連する周知広報の方法については、準備室WG等と連携しながら、全体としての計画立案を行っていくということを目標としております。
そのほか、事業全体としてのELSI関連の相談対応や方針検討体制というものも、今後の事業実施組織の在り方を含めて検討していく必要はあると思っています。
今、いろいろなお話、議論が出ていましたけれども、何がELSIの課題かということに関しては、ELSI関係者以外の方のほうが意外と狭く捉えているようにも思いますので、いろいろなことに関して、ELSIの観点からの検討というのは可能ですので、御相談いただければと思っております。
次のページ、お願いします。それから、先ほど天野委員からも御指摘があったのですけれども、最近、日本医学会等からの共同声明とか、業界団体からの周知文書の公開等、ゲノム情報の取扱いに関する新しい動きも出てきています。現状、どのような形でゲノム情報を取り扱えるのかということについて、1つは、現在の状況をまとめてAMED研究班の方々に情報提供し、また患者さんへの情報提供を含めて、適切・正確な情報を提供できるような準備をしたいと考えております。恐らく、こういったことに関して、現場で御質問があることもあると思いますので、その際には適切な説明ができるようにということを目指しております。
この点に関しましては、今の段階では現状の説明ということにとどまってしまうのですけれども、先ほど御議論ありましたように、制度としてどう担保していくのかということが非常に重要だと思っていますので、引き続き、厚労省をはじめとした取組を強化していただきたいと考えております。
令和4年度の主な取組としては、こちらのほうで考えているものとしては、先ほどのICFに関する見直しや拡充。それから、周知・広報に関わる計画の策定や作成についての監修。そのほかの必要な課題の検討を行っていきたいと思っております。
今後は、準備室WGと連携しながら、全体の体制づくりを含めて検討を進めていきたいと考えております。
今、右側のスライドのほうにお示ししているのは、昨年度作成した今回の全ゲノム解析等実行計画に関するパンフレットです。昨年度は予算や時間が限られていたために、私たちのほうで作成したのはこれだけなのですけれども、全体として何が必要かという広い視点から検討していきたいと考えております。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
続きまして、事業実施準備室WGの青木先生、お願いいたします。
○青木参考人 準備室WGを担当しています国立がん研究センター研究所の青木です。国際医療研究センターの徳永先生も分担研究者となっています。どうぞよろしくお願いいたします。準備室WGは、中釜班第4のWGとして4月中に活動を開始いたしました。
次のスライドをお願いいたします。これは全体のスケジュールを示しておりますけれども、準備室WGは、厚労の中釜班、それから、難病の水澤班、及びAMED研究班、これはがんと難病がありますが、その検討結果を実施準備室に反映させて、準備室をつくっていくということを行ってまいります。
現在、事業実施組織の最終的な組織形態は決まっておりませんが、準備室はJH内に令和4年度中につくることになっております。この準備室WGは組織をつくるということもありますので、特に厚労省とよくコンタクトを取りながら、がんと難病側が密接に連携しながら進めております。
次のスライドをお願いします。これは、3月の専門委員会の資料に基づいて、実施組織にはこのような分野が必要であろうということを示しています。この分野というのが、一般に言う部に相当すると思いますが、大きく事務部門と事業部門に分かれていて、事務部門としては、総務、財務、人事、情報基盤、ELSI、PPIなどの部を記載しております。事業部門は、この実施組織の柱になるであろう解析・データセンター、患者還元、利活用推進を記載しております。
ただ、これらは現時点での案でありまして、厚労班、AMED班、専門委員会の検討が進むにつれて、この部の構成や役割は変わってくるのではないかと考えております。なお、一般の組織が必要であるということで、総務、財務、人事なども記載してありますけれども、これらに関しては最終的な組織形態が決まっていないということもあって、特に検討いたしておりません。現在は、厚労省のほうからも、利活用推進の体制構築を進めるべきという指示もありまして、特に利活用推進に関して、患者還元WGと連携して検討を優先して行っております。
本日の資料にありますように、データ利活用や準備室に関わる事項を検討しており、具体的にはデータ共有ルールの作成やデータ利活用審査委員会の構築を進めております。
また、先ほど横野先生からもおっしゃっていただきましたように、ELSI WGとも連携して、ELSIやPPIに関しても具体的な連携を開始しているところです。
以上です。
○中釜委員長 ありがとうございました。
それでは、4つのWGの発表・報告を踏まえて質疑応答に入りたいと思うのですが、その前に、本日欠席されております栗原委員からコメントをいただいておりますので、読み上げさせていただきます。
全ゲノム解析等にかかる厚生労働科学研究班からの報告に対してですが、準備室WGによる準備室の設置や実施組織の検討を進めている点は、事業を進めるため重要と考えます。実施組織ができた際、あるいは準備室ができた際には、準備室WGはその役割を終えるのか。その際に、患者還元WGとか解析・データWG、ELSI WGも、諮問委員会を含めた実施組織に引き継がれていくのか。こういう点を詰めていくといいのかなと、今後の議論で確認していく必要があるというコメントをいただいています。
それでは、委員の先生方から御質問、御意見ありましたら、お願いします。
宮野委員、お願いいたします。
○宮野委員 ありがとうございます。
井元先生に細かい質問になりますが、ロングリードに取り組んでいくということで、これはサイエンスとしてはよいことで、未来を見据えたことだと思っているのですが、お話の中にありましたように、コスト面とQCの面、この両面のマネジメントはどういうふうにされるのでしょうか。単純に言いますと、シークエンサーを自分のところに持ってやっておられる方は、毎年、高額のメンテナンス料を払い、かつ検体数が少なかった場合は、試薬のコストが高くなったりしているという現実に直面しているかと思うのですが、そこのところのマネジメントはどんなふうにお考えでしょうか。すみません、返事しにくいことかもしれませんが。
○井元参考人 私の方から説明するのが適切かどうか判断に迷いますが、本事業のシークエンス解析には、幾つか基準が設けられております。その中で、シークエンス解析は衛生検査所の資格を持った受託企業で行うことになっていると理解しております。前回の専門委員会の持ち回り審査の資料においても、特段の事情がない限りは、それに例外はないとあったと思います。もし、特段の事情がある場合には、専門委員会にて審議を行うということになっていると思っています。従いまして、私としましては、このコスト計算に関しましては、受託会社での解析のコストであると認識しています。
また、金銭的なコストと同時に、DNA量が非常に多くかかるなど、金銭以外のコストもございますので、合わせてコストと認識して、私どものほうできちんと精査しようと思っております。
以上です。
○宮野委員 ありがとうございます。
○中釜委員長 続きまして、神里委員、お願いいたします。
○神里委員 ありがとうございます。
河野先生と横野先生に1つずつ質問させてください。
まず、河野先生からですけれども、電子的ICに応用可能な統一ICFの作成ということが書かれていますけれども、こちらはどのようなイメージのものを考えていらっしゃるのでしょうか。例えば、機能など、何かの事業で特別のものをお考えであれば教えていただきたいと思います。
そして、横野先生に関しましては、令和3年度は説明文書を患者さんと御家族と一緒に検討するという会合が開かれていたと思うのですが、今年度はそのような患者さんとか一般市民の方と共同作業するという計画はございますでしょうか。よろしくお願いいたします。
○中釜委員長 では、河野参考人、横野参考人の順にお願いします。
○河野参考人 今回、挙げさせていただいている電子的ICに応用可能な統一ICFの作成ということで、まず、いきなり物すごく先駆的なものをつくるというところではございません。統一ICFの作成ということになっておりますので、電子的なICというのが、スマートフォンのような、患者さん御自身の持たれるデバイスを使うのか、あるいは病院において、逆にデバイスを渡して、そこに入れていただく。いろいろなパターンが考え得ると思います。まずは、今、ICFとして考えなければいけない内容ということ。
それと、再三議論が上がっておりますけれども、個情法、特に利活用などでは、海外にデータが渡るということも考えていかないといけないので、そういう情報を電子的ICのほうが取りやすいのではないかという意見もありますので、そういうところ、かなり地に足をつけて議論していきたいと私自身は思っております。
以上です。
○中釜委員長 続いて、横野参考人、お願いいたします。
○横野参考人 今年度に関しましても、特にウェブサイトを含めた周知広報の在り方について検討するということが1つの大きな目的になっていますので、その際には、具体的に準備室WGと協力しながらということになると思うのですけれども、ELSI WGのほうにも天野委員に入っていただいていますし、そのルーチンでの検討に加えて、それぞれの個別のものに関しても、そういったプロセスを入れていくことが必須だろうと考えています。
以上です。
○神里委員 ありがとうございます。
ほかに御意見、御質問ございますか。
中村委員、お願いします。
○中村委員 電子的ICの話ですけれども、内閣府のプロジェクトでは、ゲノムではないですけれども、電子的にインフォームドコンセントを取っています。いろいろなやり方があって、人工知能アバターが説明しているようなケースもありますし、タッチパネルで患者さんが見ながらやっていくのもありますので、ぜひそういうものも参考にしていただければと思います。
それから、実施組織の話ですけれども、いろいろなものがつくられていって、最終的に責任者が決まると思いますけれども、最終的に実施組織の責任者になる方がスーパーバイズしてやっていくというのが普通のやり方のはずです。組織ができてからヘッドが行って、それから、また違う考えだと、めちゃくちゃになると思います。
ですので、そこは言いにくいし、厚労省としてもまだいろいろ検討されていると思いますけれども、実態があるものをつくるときに、責任者をシミュレーションしないと物事は動かないと思いますので、具体案を練るには、具体的な人とか具体的なチームが必要だと思うので、準備チームというのはいいですけれども、最終的な責任者がそこにコミットしていく必要があると思いますので、できるだけ早く検討していただければと思います。よろしくお願いいたします。
○中釜委員長 ありがとうございます。準備室WGの役割としては、準備室をつくるに当たって必要な機能や立てつけなどを検討して準備を進めていただくことにあります。実際に準備室ができた段階で、そこから本格的な実施機関ということを見据えて、かなり責任を持った体制をつくり上げていくものと私は理解していますが、青木先生、何か追加で御発言ございますか。
○青木参考人 ありがとうございます。
中釜先生がおっしゃっていただきましたように、この準備室WGでは、取りあえず部門構成と役割等を考えていますが、最終的な組織形態、それはどのような方をトップにするかもあると思いますし、かつ、これからの検討によって大分変わるものと思っております。そのような種々の検討に合わせて、部門構成あるいは準備室の検討方針なども柔軟に対応していきたいと思っています。
○中釜委員長 厚労省からも追加で御発言ございますか。
○岩佐推進官 ありがとうございます。そういった御意見を踏まえつつ、総合的にしっかりと取り組めるよう、検討を引き続き、特に厚労科研中釜班と一緒になってしっかりと検討を進めていきたいと思っております。
○中村委員 いずれにしても、実装化するというか、社会に還元していくということが大事なので、そこは本格的に動かすことを視野に入れていろいろなことをやっていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
○中釜委員長 重要な御指摘、ありがとうございます。
それでは、葛西参考人、お願いします。
○葛西参考人 私はちょっと簡単にですが、準備室WGで経営基盤部門の検討は今、されていないということなので、もちろん経営基盤部門の検討をしなければいけないなと感じています。その中で、そういう人員がうまく入っていけるといいなと思っているのですが、先に研究事業が結構進んでいるので、順番としては、Genomics Englandで言うところのデータアクセスにかかる諮問委員会、この辺りは逆にかなり急がれたほうがいいのではないかなと思います。
それから、調達が始まって実事業が始まりますから、監査のルールづくりとか知財のルールづくりは経営基盤でも基本になりますので。ITとかは、私が余りそういうことを言うとよくないですが、なるようにしかならないところがあるのですが、まず、組織ガバナンスとしてのルールづくりはちょっと急がれたほうがいいのではないでしょうかということだけでございます。
以上です。
○中釜委員長 重要な御指摘、ありがとうございます。組織ガバナンス、ルールづくりは準備室で検討いただければと思います。青木先生、よろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。
ほかに御質問ございますか。よろしいでしょうか。
それでは、今回の専門WGの議論につきましては、幾つか重要な御指摘もいただきました。議論の中で、開発委託する際の契約の問題や、データ利活用する際の環境整備の重要性、最後に葛西参考人が御指摘になったような監査体制、組織づくり、組織ガバナンスという、幾つか重要なところで、より重点的に注力すべき点があることを御指摘いただきました。方向性としては、おおむね、今日、報告させていただいた内容の方向でよいと合意いただいたと私自身、判断させていただきましたので、私のほうで取りまとめを預からせていただき、微修正につきましては、先生方の御意見を反映させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(委員首肯)
○中釜委員長 特に御異議ございませんので、その方向で進めさせていただきたいと思います。
続きまして、厚生労働省健康局がん・疾病対策課より資料4「全ゲノム解析等実行計画2022(仮称)」についての説明をお願いいたします。
○中原課長補佐 厚生労働省健康局がん・疾病対策課の中原です。「全ゲノム解析等実行計画2022(仮称)」として資料4-1が抜粋分、4-2が本文になっております。本文は非常に長いですので、今回は説明を割愛させていただきます。
今回、抜粋ですけれども、2番目のスライドをお願いいたします。既にこれまで本委員会において、前は第2版と呼んでおりましたけれども、素案ができておりまして、この2022におきましては、これまでの議論を踏まえて、「6.本事業の運営方針と内容」という章を加えまして、これまで議論いただいた内容をしっかり各論、本論を書き込ませていただいております。
一方で、こちらの抜粋の次のスライドをお願いいたします。これまでの取組を踏まえた基本方針で、具体的にどういう患者さんを対象にして、どういう医療機関で患者還元を行いまして、かつ、どういうデータセンターで何を集めていって、どういう利活用を行うのかということにつきましては、これまでの素案とほとんど原則的に変わっておりません。
がん領域におきましては、対象患者さんは希少がん、AYA世代のがん、小児がん、遺伝性のがん、治療抵抗性の難治性のがん、症例数が少なく、日本人に特徴的に多いがんを主目的として対象患者を選ぶ。
難病領域におきましては、単一遺伝子性疾患、多因子性疾患、診断困難な疾患ということに変更はございません。
また、患者還元を行う医療機関におきましても、がん領域につきましては、がんゲノム医療中核拠点病院、またはがんゲノム医療拠点病院であることを第1の要件としております。患者還元WGの河野先生のほうから御説明がありましたように、今後、治験を見据えて、連携病院等と医療機関の拡充を図っていくための要件をまとめていただくことになるかと思います。
難病領域につきましても、これまでの事業で行っておりました5医療機関を中心にしまして、今後、医療機関を増やしていくという方針を書かせていただいております。
次、お願いいたします。
解析・データセンターにつきましては、これまでと全く同じ記述になっておりますので、割愛させていただきます。
検体集中管理センターですけれども、前の案では、検体集中管理利活用センターと呼んでいたのですけれども、ちょっと名称を変更しております。こちら、今日、AMEDのC班の松田先生のほうから御説明がありましたけれども、実際に一括管理を行うシステムを令和4年度中に試行的に構築して、令和5年度以降の本格的な運用を目指すという文言については、変更ございません。
また、これも素案から全く変わっておりませんが、アカデミアの役割、産業界の役割について書かせていただいております。
最後に、全体のまとめの7ポツ目、8ポツ目の抜粋ですけれども、今日の御議論でもたくさん上がってきましたが、ELSIについても、今後の「事業全体として適切に配慮しつつ、計画を実施するために必要な取り組みについて、研究、検討、対応を行う」という文言を記載しております。
また、患者・市民参画(PPI)もこれまでと同様に、患者・市民の視点を取り入れるための体制を設け、これらを通じて広く国民向けの情報発信・周知活動を実施するとともに、患者・市民からの意見を集約し事業に反映させるための体制を構築するという方針については、全く変更はございません。すみません、これは次のスライドでした。
以上です。
○中釜委員長 御説明ありがとうございました。
それでは、資料4の説明につきまして御質問を受けたいと思いますが、その際に、再度、本日御欠席の栗原委員から1点だけコメントいただいていますので、私のほうで紹介させていただきます。
アカデミアフォーラム・産業フォーラムについては、参加する各アカデミア・各企業がデータを利活用して、患者還元の充実や創薬診断技術の研究開発をすることが期待されている。その組織については、実施組織とは別に組織されることが想定されていることから、外部関係者に働きかけて組織化を進めるとともに、フォーラムに参加する各アカデミア・各企業、フォーラム自体、実施組織の三者の関係性、役割分担、研究開発等の守秘性の確保と情報共有のあり方等については、今後、具体的に整理していく必要があると思います。とのコメントをいただきました。
それでは、委員の先生方から御質問ありましたら。
まず、森参考人、お願いいたします。
○森(和)参考人 製薬協の立場から、産業界として、今まさしく栗原委員からのコメントにありましたように、産業フォーラムを設けるということについての期限を切った形で、令和4年度末までにというふうに、この資料には書かれておりますので、時間は非常にタイトな話になっていると見受けられるわけですが、いつまでに、何を行うための、どんな体制をつくるということを、私どもが考えるという部分もあると思いますが、関係するステークホルダーの方々がいろいろいらっしゃいます。
患者さんたちもいらっしゃるし、あるいは医療側の関係者もいらっしゃいますし、行政側の関係者もいらっしゃいます。それぞれどのようなことを期待されているのかということも、よくお聞かせいただきながら、相談しながら、タイトなスケジュールですけれども、検討していくことが必要だということは、ぜひ御理解いただきたいと思います。
それともう一つ、この資料の中を読ませていただきますと、かなり多様なメンバーを参加させるのだということが書き込まれております。例えば、医療産業、非医療産業にかかわらず、またベンチャー企業も含め、多くの企業がと。確かにいろいろな関係者が参加することが大事だということは分かるのですが、余りにもたくさんいろいろな企業が参加すると、多分収拾がつかなくなるということも懸念されます。
ですので、その辺りの現実的な立ち上がりのフェーズにおける姿・形ということについても、よく相談させていただきたいと思いますし、その際、相談する先は、恐らく準備室の方々になると思いますが、それについてもはっきり担当を決めていただいて、よく相談させていただきたい。この段階においてですけれども、時間も余りなさそうに思われますので、申し上げさせていただきました。
以上でございます。
○中釜委員長 重要な御指摘ありがとうございます。準備室WGでの検討で、時間がないということはまさにそうですので、ぜひその辺りを検討していただきたいと思います。
それから企業に関して、先ほど葛西参考人からご指摘のあった、データハンドリングをするような計画については、恐らくデータ利活用の整備に産業フォーラムは重要な役割を果たすものになると思うので、その点も考慮した上で、よりスムーズな産業利活用ができるような仕組みづくりを準備室の中で検討していくべきだと、改めて思いました。
厚労省からよろしいですか。そのような形で書かせていただきます。
それでは、複数の委員から手が挙がっていますので、先に松原委員、森幸子委員から御質問を受けまして、まとめてお答えしたいと思います。まず、松原委員、お願いいたします。
○松原委員 お願いします。
今の抜粋のところには書かれていないのですけれども、資料4-2の本文の19ページを見ると、今回の全ゲノム解析に関しては、全てシークエンス企業に外注するということが書かれています。それ以外の余地はないという書きぶりになっているのですけれども、運営面で少し困ったことが出てくるということを心配しております。私たちは、今、IRUD研究を、外注を基本でやっておりますけれども、外注の場合、会計年度との関係で、検体を出してからデータが戻るまで、同じ会計年度で処理しないと大変まずいことになるのです。ということで、実際には年度末の2月、3月になると検体を外注できないのです。結局、結果が返ってくるのは新年度になります。
ということで、2月、3月は実質的には解析が動かないということになります。1年12か月のうち2か月ぐらいロスしてしまう。稼動率として80数%ということになってしまいます。実際、研究に参加していただく患者さんにしても、2月、3月に来ていただいた方は、その時点では採血ができない、参加していただくことができないということになります。また数か月後に来てくださいということになるのか、あるいはICUに入院してアップアップしていて診断がつかない場合には、本当に困ってしまう。そういった場合に、外注しないで施設内で全ゲノム解析ができるという余地を残しておかないとまずいかなと思います。
私からの提案としましては、全ゲノム解析は、原則としてシークエンス企業に外注するという「原則として」という言葉を入れていただいて、中でも解析できる余地を残していただきたいと思います。
以上です。
○中釜委員長 御指摘ありがとうございます。研究事業としてやっている全ゲノム解析の計画の課題点だと認識しましたので、その辺りも考慮しながら進めていければと思います。
厚労省のほうから何か追加で御発言ございますか。よろしいですか。ありがとうございます。
それでは、森委員、お願いいたします。
○森(幸)委員 ありがとうございます。
患者・市民参画(PPI)を入れていただきまして、5ページの2行目です。こちらに「患者・市民の視点の導入に努めることが必要である」とありますけれども、もう一歩進んで、同意の仕方もいろいろありますので、「患者・市民の視点の導入が必要である」としていただきたいと思います。
また、本文の序文のところですけれども、これも取り巻く環境を踏まえながらというところから着実に進めていくということで、「患者起点・患者還元原則の下」という言葉はあるのですけれども、こういったところにも患者家族や市民の視点を取り入れながら進めていくものだということをはっきりと記載していただきたいと思います。
また、誤解が非常に多くあって、難病であっても、国民の誰もが発症する可能性があるとは言われていますけれども、難病を抱えて、この社会の中で生きていかないといけない当事者にとっては、まだまだとても現実は厳しいものですし、ゲノム解析といえば、患者自身だけじゃなくて、患者や家族や親族にまで及んで影響が出るものですので、理解不足によって親族間の中で犯人探しのようなことが起こらないように、正しい知識が周知されて国民の理解が得られるための施策というのも急いでいただきたいですし、そのためにも患者視点というところは強調していただきたいと思っています。御検討お願いします。
○中釜委員長 ありがとうございます。重要な御指摘と思います。御指摘の点を考慮しながら、今後、文章の修正を行っていただこうと思います。よろしくお願いいたします。
ほかに御意見ございますか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、資料2については、今日いただいた御意見を参考にして、次回の専門委員会で取りまとめる予定でおりますので、その際にまた議論していただきたいと思います。
それでは、最後に全体を通じて、何か御質問、御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、以上で本委員会を終了したいと思います。追加の御意見等がございましたら、適宜、事務局までお寄せいただければと思います。
委員の皆様には、多少時間をオーバーしてしまいましたが、スムーズな議事進行に御協力いただき、ありがとうございました。
それでは、事務局にお返しいたします。
○岩佐推進官 中釜先生、議事の進行をありがとうございました。
次回の専門委員会の日程調整につきましては、改めて御連絡さしあげますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了したいと思います。ありがとうございます。