第2回転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会議事録

労働基準局安全衛生部安全課

日時

令和4年6月13日(金)16:00~18:00

場所

オンラインにより開催
(労働委員会会館講堂(7階))
(東京都港区芝公園1-5-32)

議題

  1. 3.議 題:
    (1)第1回検討会を踏まえた論点について
    (2)その他
     

議事

議事内容
○澤田中央産業安全専門官 ただいまより「第2回転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会」を開催いたします。カメラ撮影はここまでとさせていただきます。
まず、本日から新たに御参加いただく構成員がいらっしゃいますので御紹介をさせていただきます。前回、御説明させていただきましたとおり、高年齢者による労働災害が増加してきておりますが、加齢に伴う筋量の低下、筋肉の低下等による労働災害の発生を防ぐためには、運動の習慣化等の健康保持増進も有効とされておりまして、このような観点からのアプローチについて御意見を伺いたく、医療法人社団緑生会あらい整形外科院長の新井貞男様に御参画いただきました。よろしくお願いいたします。
○新井構成員 どうぞよろしくお願いいたします。
○澤田中央産業安全専門官 ありがとうございます。また、本日はオブザーバーとして、経済産業省商務・サービスグループヘルスケア産業課より、今回からは山崎課長補佐が出席しております。
○経済産業省山崎課長補佐 よろしくお願いいたします。
○澤田中央産業安全専門官 それから、本日は今村構成員、井上構成員、河津構成員、津下構成員はオンラインで御出席いただいております。信澤構成員は御都合により欠席されております。それでは、これ以降の議事進行を髙田座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○髙田座長 それでは、議事に入りたいと思います。事務局から資料の説明をお願いいたします。
○澤田中央産業安全専門官 ありがとうございます。資料を御説明させていただきます。まず、資料1は検討会開催要綱を改正したものでございます。
次に議事に関する資料といたしまして、資料2として、5月13日の第1回検討会での御意見を概要としてまとめさせていただきましたので、御紹介させていただきます。
まず、実態に関する御意見、御指摘です。小売業では50代以上のパートタイマーが増えており、正社員比率は30年前と比較して大幅に変化している。働き手の目的が多様化し、人の入れ替わりも激しい。また、小売業において災害はバックヤードで多く、顧客の流れに合わせて集中して発生する時間帯があることの御指摘がございました。また、社会福祉施設では、サービス系統ごとに災害のタイプが異なる。入居者の急な挙動に対応、不意に対応する際の災害も多く、設備改善等の対策だけでは必ずしも有効ではない。人材不足の問題や高年齢の労働者も増えてきていること、介護技術が確立されてきているものの、習得な不十分なまま作業に就いて被災するという実態もあるという御指摘がございました。
対策の方向性に関する御意見です。労使が何から取り組んでいいか分からないという状況があり、取組を進めていくためのハードルが低い仕掛けが必要なのではないか。第二次産業では一般に取り込まれているKYやリスクアセスメントを、第三次産業向けに取り組みやすいようにアレンジして定着を図ることが必要ではないか。安全衛生委員会等を活用した取組の強化が必要なのではないか。散在している安全衛生教育ツールを集約し、分かりやすく、使いやすくする必要があるのではないかという御意見を頂きました。
また、腰痛予防のために重量物のユニット重量、持ち手等の工夫が必要ではないかという御意見の一方、腰痛の健診にはエビデンスがなく、事後措置に結び付かないのではないかという御指摘もございました。それから、特に社会福祉施設を中心に、自治体が実施する介護予防、健康づくり、優良な取組を行っている事業場の公表などの取組との連携を進めるべきではないかとの御意見もございました。
それから、健康経営のメニューに転倒や腰痛災害防止を追加するなどしつつ普及を図ることも必要ではないかという御意見や、「お客様ファースト」となってしまいがちであるが、企業等が従業員を守るという意識を強く持てるような取組が必要ではないか。また、顧客や利用者の安全対策はしっかり行われているので、それを労働者の安全確保にもいかしていくことが必要ではないかとの御意見を頂きました。
資料3の御説明をさせていただきます。これまでの御意見も踏まえまして、このような形で議論を整理させていただいてはどうかということで、論点として一案作成させていただいております。全体を1から5の項目に分けて作っております。
1つ目、対策を進めるためのエビデンスについてということで、これは次の2から5まで、全体の前提としてエビデンスに基づいて進めていくことが重要ではないか。具体的には、効果的な対策に結び付く情報を収集、分析し、活用していくことが必要ではないかということで、更に御議論いただいてはいかがかと思います。
2つ目、安全衛生教育の在り方や関係者の意識改革についてということです。(1)としまして、パートやアルバイト労働者が多かったり、労働者の入れ替わりが激しくなっているという実態や、業種における変則的な勤務時間へのシフト等の実態も踏まえ、より効率的に効果が得られるような安全衛生教育のやり方を導入するべきではないか。例えば、作業に入る前のミーティング等で、立ったまま5分でできるというようなものがあるのではないかということについて、更に御議論を頂いてはどうかと考えております。
(2)としまして、健康経営等の企業の関心の高いスキームと連携して、転倒や腰痛災害防止を促進していくことについても更に御議論を頂いてはどうかと考えております。
また、(3)といたしまして、健康経営などの取組のメリットを追求するようなこともさることながら、転倒・腰痛災害による経済的損失の見える化、経営上の課題であることの明確化も図るべきではないかということ、(4)といたしまして、行動経済学的観点(ナッジの活用等)による取組について検討してはどうかということについても更に御議論を頂いてはどうかと考えております。
次に、3といたしまして、業種や業務の特性に応じた取組についてということです。(1)といたしまして、転倒・腰痛防止のため、事業者が遵守すべき事項を明確化すべきではないかということについて、(2)といたしまして、何から取り組んでいいか分からないという問題に対応するため、小売や介護の業種の実態、状況を踏まえた取り組みやすい方法を示していくことが考えられないかということについて、(3)といたしまして、重量物のパッケージの重さ、大きさの標準化等、川上の産業における取組が考えられないか、(4)といたしまして、新しい機器や新規技術、テクノロジーを活用できないかということについて御議論を進めていただいてはどうかと考えております。
次に、4といたしまして、職場における対策の実施体制の強化についてということです。(1)といたしまして、1つの事業場のみでは実施できない取組や法人、企業全体に及ぶ取組について、パートタイム労働者などの参画も得て、実効的な議論が行えるよう、安全衛生委員会等について、法人単位やオンラインで複数の事業場が参加できる形で実施することについて御議論を進めていただいてはどうかと考えています。また、(2)といたしまして、職場における対策の効果的な推進のため、自治体が実施する取組との連携を深めるということについて更に御議論を進めていただくのはいかがかと考えております。
最後に、5といたしまして、労働者の健康づくりによるアプローチについてということです。(1)といたしまして、労働者の高齢化等に伴う身体機能の低下による影響、労働災害増加に対する対策について、(2)といたしまして、労働災害防止のために、若年期から運動を通じて筋肉量や持久力などを維持していく取組が考えられないかということについて更に御議論いただいてはいかがかと思っております。
なお、この検討会で御議論いただいた内容は、当然ながら既に行政として着手しているSAFEコンソーシアムや労働局ごとのSAFE協議会というもので、取り組むべきものは取り組んでいくという予定にしております。コンソーシアムなどについては、参考資料3を使って、前回簡単に御説明、御紹介させていただきましたので、今回は割愛させていただきます。
次に、資料4ということで、論点5の(2)の御参考情報として、神奈川産業保健総合支援センターにおける取組について御紹介をさせていただこうと考えまして、資料をこのようにお付けいたしました。簡単に御説明、御紹介させていただきたいと思います。
御案内のとおり、転倒災害や腰痛災害の増加要因といたしまして、労働力の高齢化に伴う身体機能の衰えが大きく影響していることが考えられること、また、企業内に安全管理者、衛生管理者、産業医がいても、必ずしも転倒や腰痛をコーチングできるスタッフが存在しないという場合が多い状況にあることを踏まえまして、神奈川産保センターでは転倒、腰痛対策の専門家を事業場に派遣して、身体機能の維持、改善を図って、転倒や腰痛災害を減少させるための無料支援サービスを展開しております。
具体的には、理学療法士や健康運動指導士などの専門家を事業場に派遣しまして、これまで事業場内だけでは十分に把握することができなかった転倒・腰痛に関する健康課題を調査、企業にフィードバックいたしまして、転倒・腰痛対策も含めた健康保持増進計画の策定につなげるような提案、支援を行っているということで、御紹介させていただきました。
次に、資料5は御参考でございます。御議論に関係しそうな労働安全衛生関係法令を挙げさせていただきました。その後に、参考資料を3点ほど付けさせていただいております。前回と同じ資料でございますが、「転倒災害・腰痛災害の発生状況と課題」、「職場における転倒・腰痛等の減少を図る対策の在り方について(提言)」、それから「令和4年度より行政として実施する新たな対策の全体像について」ということで、前回お示しした資料を添付させていただきました。事務局からの御説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
○髙田座長 御説明ありがとうございました。
○髙田座長 ちょっとインターネット回線が不安定なようで、少し音声が途切れがちになるかもしれませんので、私のほうもなるべく、はっきりと話をしていきたいと思います。
今、事務局のほうから御説明がありましたけれども、第1回検討会での御意見については、資料2に構成員の先生方の意見をまとめておりますので、既に御覧になっているかと思いますが、何かありましたら事務局のほうに御連絡いただければと思います。
それでは、資料3を踏まえて、議事の(1)の意見交換に入りたいと思います。テーマが多岐にわたりますし、また、新井先生が新たに構成員として入っていただきましたこともありますので、今回は時間配分を考えまして、論点が5つありますけれども、1、2、5について順次意見交換を進めていきたいと思います。御意見等があります方は、手を挙げていただくか、御発言がある旨をチャットに書き込みをお願いいたします。Web参加の先生方につきましては、こちらのほうから発言者を指名させていただきます。
それでは、まず論点1の「対策を進めるためのエビデンスについて」ということですが、委員の先生方から何かコメントはございますでしょうか。小菅委員、お願いします。
○小菅構成員 連合の小菅です。エビデンスに関して有識者ヒアリングの提言でも指摘されていますが、労災情報の深掘りや、過去の取組に関する定量的、定性的双方のエビデンスが不足していると感じます。
例えば、労災情報に関して、休業4日以上の労働災害が報告されていますが、転倒や腰痛は4日未満のケースも多いと推測します。4日未満の死傷病報告における災害発生状況欄の分析など、行政担当者の業務負荷を配慮しながらではありますが、行っていく必要があります。
また、過去の取組に関しても、取組が進まなかった理由の更なる検証が必要です。有識者会議の提言や前回の検討会でも様々な対応策が示されていますが、その中から効果的な対策を選び、注力していくには、過去の取組の課題や好事例の検証をしっかり行う必要があります。
○髙田座長 ありがとうございます。河津先生、お願いいたします。
○河津構成員 ありがとうございます。私も全く同意見でして、やはり過去の労災情報のフィードバックが全くないというところが問題ではないかなと思ってます。これは前回もお話しましたが、労働者死傷病報告の休業日数というのは、けがをしたときの見込みの情報であって、実際に何日休んだのかというのは、労災保険を申請している場合は、そちらの保険のほうに恐らく何日休んだという正確なデータがあると思います。特に高齢者の場合、どれだけ長引くかわからず、けがをした時点の見込みの情報だけ集めた統計というのではデータが非常に不正確です。不正確な情報を基に対策を練るというのは難しいかなというところだと思います。
転倒に関して、その転倒がつまづきなのか、滑りなのかといったことについては、ある程度の分類をしてまとめるということをそろそろ考えていただければいいなと思っています。労働者死傷病報告と労災保険のデータがそれぞればらばらで、何も集計されていなくて、結局日本ではどのような転倒が多いのかということも全く分からないということに関してはやはり考えていただきたいと思います。
エビデンスに関してですが、前回もお話しましたが、やはり腰痛健診ですね。腰痛というのは集学的に治療するべきであるというふうに令和の時代に言われているのに、昭和の時代に決めてしまった整形外科的・神経学的な項目ばかりであって、しかもこの項目が将来の腰痛発生を予測しないということは、ある程度蓄積してきていると思いますので、ちゃんと根拠のあることをやっていくということをそろそろ考えていただければと思いますし、前回お話しましたが、そちらの検討のほうもよろしくお願いいたします。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。津下先生、お願いいたします。
○津下構成員 このエビデンス収集については、適切な対策を行うために非常に重要なことだと思います。ただ、河津先生がおっしゃったように、過去に既に取ったデータで推論していくということでは、やはり不十分かなと思ったりします。行動災害、転倒・腰痛等、小売業や介護の施設等の問題が挙がっておりますが、そういうことに対して、集中的にフォーマットを決めて前向きにデータを収集していくことが必要と思います。これはある程度の規模で半年とか1年とかやれば、その次には具体的な検討の材料になっていくと思います。まずは研究事業としてでも早めに立ち上げていくことが必要ではないかと思います。前向きに、どういう対策をしているか。個人についても、職場の対策についても、現行やっていることがどういうことで、どういうことがやれていないのかということについて明らかにしていくような調査事業を、できるだけ早く立ち上げたほうがいいのではないかと思います。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。先ほど小澤委員の手が挙がっていたと思いますので、お願いいたします。
○小澤構成員 小澤です。一番大事なことはアフターフォローではなくてビフォー、事前にどう感じて労働災害をなくすかということだと思うのです。議論を聞いていると、アフターをどうするかというよりも、それをどう未然に防止するかということであろうと思います。そういう意味では、この労働災害がどういう形で、どういう状況で起きているかというファクトをしっかりつかむということだと思います。この辺りがしっかりつかまれていないと思うのです。それを分析して対応していくということだと思うのです。
偉そうなことを言って申し訳ないのですが、では事実はどうなっているかということで、今日私は実際に3社ほど調べてまいりました。1つは1,500億の企業で、首都圏に170店舗を擁するスーパーマーケットです。去年1年間で労働災害が約67件起きています。そのうち腰痛が20%、転倒が15%、2つで35%を占めてました。我々が捉えているよりも転倒が少ないなと思いました。このスーパーマーケットは若干広いのですね。ヨーカドーなども大きいのですが、どうしても小さな店で起きているのです。都市型の150坪、100坪といったようなスーパーがどんどんできていまして、そうするとバックルームがない、作業場が狭いという形で転倒が起きています。問題提起としていただいたのは、いろいろな問題が起きた場合には必ず共有化して、170店舗に全部並行展開して知らしめているということです。
一方で、労働安全衛生委員会、そして店舗での安全衛生委員会を必ずマンスリーで行って、そこで警告情報を流しているという形で防いでいるということで、この会社はある意味では大変少ない労災の実態であろうと思いました。この企業の規模においては5分間の体操とか言っていましたが、これはメーカーの言葉なのです。スーパーマーケットでは常にお客様がいて、バックルームが狭いので、体操を5分間する時間がないのです。ある所では、3分間で体操ということがありましたが、それでもできないというのが現状なのです。したがって、2分ぐらいでちょっとした柔軟体操ができて、腰痛を防ぐというのができないだろうかと。いろいろな資料を見ると、大体メーカーの工場で、ゆったりと体操ができるという状況なのです。第三次産業の現場はそんなに甘くないですから、しっかり環境を見た中で作ってほしいという、1,500億の企業の人事部長の意見でした。
もう1つは、3,700億ぐらいで320店舗、1部上場企業です。いろいろな指導書、チェックリストを、国からも委員会からも頂きますと。ただ、チェックポイントが多くて、何をチェックするか分からないと、これが現場の声だと思うのです。もう少しシンプルにまとめて、必要なものだけをまとめて作っていただけないだろうかとのことでした。この企業は3,600億で、やはり我々が捉えたとおり、労働災害は年間で370件起きています。60%が転倒でした。なぜかなと調べてみると、皆さん御存じのように、今は首都圏、東京、区に130~150坪の小さなスーパーマーケットがどんどんできています。コンビニエンスストアには生鮮食品がないのですが、スーパーマーケットには生鮮があります。ですから、生鮮で切ったり、通路が狭い、バックルームに置く所がないという、そういう都市型のスーパーマーケットで多発しているのが現状であろうと思います。コンビニエンスストアは生鮮がないから、ほとんど起きていないのです。イトーヨーカドーなどの大きい所は管理もされていますし、起きていないという現状ですから、その辺りを捉えて対応していく必要があると思います。
労働災害370件は余りにも多いですから、ZD、ゼロディフェクトという会社がやっていたゼロ運動をやっているけども、朝礼や終礼で従業員に周知させる道具や、ちょっとした体操ができないだろうかと。見てみると、5分も3分も掛かるような、そんな悠長なことは現場はできないだろうと。我々はお客様と常に接している状況なわけですから、その辺りの環境や状況、営業時間とか、お客様と常に接している中でどうしたらいいかということを是非とも考えてほしいなというのが、現場からの素直な声であると思います。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。エビデンスのこと以外に、対策の問題点についても小売業のお話を頂きました。鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木構成員 この検討会を進めていく上で、エビデンスベースで考えていくという視点が必要であり、皆様方がおっしゃったように、例えば転倒災害が起こった状況の分析、分類をするなどの労災情報の分析は大変重要であると考えます。特に転倒については身体的機能の低下が影響しているということですので、どのような身体的機能の低下が労災リスクを高めるのかについて現場の情報収集だけでなく、専門家の科学的な検討も含め、多角的・中長期的に行っていくことが重要ではないかと思った次第です。
○髙田座長 ありがとうございます。ほかによろしいでしょうか。新井委員、お願いします。
○新井構成員 初めての出席なので、ポイントを押さえられなくて、うまく話せないのですが、まず過去の労災で上がっているという全体像での分析が必要なのかなと思います。私は整形外科医ですが、労災がたくさん上がってきて、報告書をこれでいいですかと確認しますが、それを見ていると、個人の問題のものなのか、それとも教育で防げたものなのかとか、その辺りの分析ができるのではないかと思うのです。ですから、こういうレベルのものが個人の持っているポテンシャル、転倒しやすさ、腰痛のなりやすさは、ある程度個人の持っている身体的特性とか職業歴のようなものが影響してくると思いますし、そういうものではなくて、職場環境の問題とすれば、例えば介護の現場でしたら、患者さんの抱き方の問題、要領のよい人は腰痛を起こさないように力を使わず抱え上げている。介護する側が結構高齢でも働いています。若い人のほうが、かえって腰痛を起こしやすいのです。なぜかというと、恐らく力でやってしまうのです。ですから、介護される人の力をうまく利用してやっていくと腰痛にもならないのですが、若い人は力があるものですから、力任せにトランスファーとかをやってしまうので、それで腰痛になってしまうのではないかと思うのです。発生の現場の状況というのを、個人のポテンシャルなのか、環境要因、周りの教育でどうにかなるものかという分析をすると、ある程度対策も見えてくるのではないかと思うのです。
○髙田座長 ありがとうございました。島田委員、お願いします。
○島田構成員 労働安全衛生総合研究所の島田と申します。前回もお話したのですが、私たちは研究所で死傷病報告書の分析を行っています。死傷病報告書には、一部の、事故が起こったときの状況しか記載されておらず、転倒したのはつまずきによるものなのか、滑りによるものなのかという区別は付きません。また、その後実際にどれぐらい入院されたとか、けがが治るのにどれくらいの時間が掛かったかということなどは分かりません。一方、何が原因であったのかを知るためには、より具体的な分析のための項目を洗い出していく必要がありますし、どうすれば(災害を)防ぐことができたのかを探るためには、事故前の長期的な対応状況などを確認する必要があり、そのとき着眼すべき指標を前もって整理しておく必要があると思います。そして、そういった点について、今後、研究を始めていくことができればと考えています。
もう1つ、御紹介になりますが、【提言】の中には「国際的な規格等を採用していく」という項目が含まれていますが、ある学会で翻訳作業を行ったものとして、ISO11228-1があります。これは、手作業でものを持ち上げたり、下ろしたり、運搬したりということに限定されるのですが、対象物をどのように設計しておけばいいのか、作業環境をどのように設計すればいいのか、作業者がどういう状況で作業するかを考慮すべきであることなどがまとめられた指針です。そのような切り口での取り組みは海外ではかなり受け入れられているようですので、日本でもそのような指針を利用して、例えば腰痛対策を考えるときの参考にする、先ほどの死傷病報告書の話に限らず、事故原因解明のための追加調査に役立てるようにしてはどうかと思いました。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。津下委員、お願いいたします。
○津下構成員 すみません、少し聞き取りが悪くて、もしかしたら重なっていることを言っているかもしれませんが御容赦ください。
このエビデンスについては、発生した障害、労働災害になったものについては把握できるけれども、分母を明確にしないといけないとおもいます。同じ性や年代の方が何人働いていて、その中で何人発生したという割合をみる必要があります。発生率を見るには分母が必要です。また、少し例は違うのですが、心筋梗塞を減らしたいとなったときに、心筋梗塞の事例だけを見ていても、その前の段階、つまりリスク保有者がどのくらいの頻度でいるのかなどがわからないと、予防的な対策が打てないのと同じです。労災まではいかない軽度なものも含めて、氷山の隠れている所も把握していける仕組みをつくらないと、予防的な対策をきちんと積み重ねていくことが難しい気がします。もちろん、最終的には労災発生を減らすということが目的ですが、その前の段階、リスク保有状態やヒヤリハットなどをつかまえるようなこと、例えば試験的にそういう調査や質問票をしっかりやっていただいて、その頻度がどうなっているかを見ること、同業者において同性・同年齢層においても発生率が高い職場について、労働様式や強度がどうなっているのかということを併せて見ていくことにより、議論が積み上がっていくと思います。
これを機会に、前向きの調査をおこない、できるだけ幅広に腰痛や行動災害、転倒しそうになったことについても把握していくことが必要と思います。また、転倒があった場合に骨粗鬆症があると重症化しやすいということがありますので、個人の持つ要因と行動で起こった要因というのを併せて評価できるようなエビデンスの蓄積が期待されると考えます。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。労働災害、死傷病報告は、後ろ向きのものですが、そちらをどのように掘り起こしたらいいかということと、前向きにエビデンスをどのように積み重ねていくか、それも労働者個人の要因に注目する部分、行動に注目する部分、それから実際の環境に着目して見ていく、そのようなことでエビデンスを積み重ねていくというようなことが方向性として示されておりますが、ほかに何か追加でありますか。よろしいでしょうか。
○今村構成員 今村ですが、よろしいでしょうか。
○髙田座長 今村先生、お願いします。
○今村構成員 介護福祉会の今村です。よろしくお願いいたします。所々音声が途切れて聞こえない部分もあったものですから、もしかしたら同じような発言があったかもしれません。
確か最初のほうに津下先生もおっしゃっていたのですが、こういったことに対しての調査研究的なものは、やはり早急にやっていくべきではないかと思います。私たち、いわゆる高齢者福祉、介護の業界に関しては、確か1回目の検討会の中でも、労働安全衛生総合研究所の島田先生が御発言なさっていたと記憶しているのですが、私たち介護の業界というのは通所系、訪問系、施設系によって、それぞれの場面が違ってくるのかなとも思っています。
それと、私も前回発言させていただいたかと思うのですが、経験年数や指導、教育といったものでも全く違ってくるかなとは思います。一定程度年齢がいかれている方で、きちんとした技術を持っていらっしゃる方よりも、経験も少なく学びも少ない若い人たちのほうが逆に腰痛を起こすとか、そういったこともあったかと思いますので、仮に調査、研究的なものをやっていただくとしても、1回ではなく、それを継続して続けていっていただくことに意味があるかなとも思います。併せて、場面ごとでも違うということも含まえた形で御検討いただければ有り難いなと思います。私からは以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。ほかのWeb参加の委員のほうからはコメントございますでしょうか。よろしいでしょうか。大丈夫ですか。会場の委員のほうからの追加での御発言はよろしいでしょうか。そうしましたら、論点1はここまでとさせていただきたいと思います。
それでは、論点2のほうに入ります。「安全衛生教育の在り方や関係者の意識改革について」です。まず1つ目です。パートやアルバイト労働者の多い実態とか、労働者の入れ替りが激しいという実態等がありますが、その中で効率的に効果が得られるような安全衛生教育の手法の導入ということでして、安全衛生教育について、なかなか浸透していかないとか、教育上で課題があると思いますので、先ほど小澤委員のほうから小売業については御発言ありましたが、ほかに小売業の関係で課題などがございましたらお願いします。
○桑原構成員 桑原でございます。よろしくお願いします。前回もお話させていただいたのですが、ここの論点の中にもありますように、やはり小売業というのは、動き回る働き方、商売上そういうのが多くありますので、ミーティングも立ったまま数分程度しか行わないというのが現状でございます。
管理者の方に関しましても、安全教育というものはそれぞれの企業としては行ってはおりますが、店舗ごとで日々環境が変化していくという、そういう業態ですので、そういう中でしっかり従業員の方とコミュニケーションをする時間も取らなければいけないのですが、やはり取り切れていない事業者さんも多いというふうに聞いております。私が所属している企業だけでもなくて、ほかの企業さんも、そういう教育というのはとても苦労されていると聞いております。
特に今、小規模店舗、専門店さんやショップというような形態のお店というのは、本当に数名程度で1店舗を回している、運営しているというのも多くあると聞いております。そんな中で、従業員の皆さんにいろんなことを教育していくということもラウンドされている、いわゆるスーパーバイザーさんのような方やエリアマネージャーさんとかいう方が、何日かに1回巡回してきてコミュニケーションを取るということが、今の現状だというふうに聞いております。
そういう中で安全衛生教育というものも、これは実際聞いたわけではないですが、最近ですとコロナ禍の中でオンラインのツール等も増えてきてますので、そういうものを基に行っているのだろうと思っております。というのは、私が所属している事業所も全国に展開させていただいていますが、やはり今、オンラインでの安全教育というものを複数取り入れております。ですので、これまではというよりは、これから先の時代を踏まえた安全衛生教育というものは、しっかり発信していくべきかなと考えております。以上でございます。
○髙田座長 ありがとうございました。ほかにございますでしょうか。河津先生、お願いします。
○河津構成員 ありがとうございます。正に小売業の話ということでしたので、小売の産業医としてお話させていただきます。やはり体操するとかという話にどうしてもなってくると思うのですが、こちらに書いてあるように、シフト勤務で働いていることから、朝礼などに掛ける時間が短くなってしまいますので、新たに体操を導入するのだったら手間ばかり増えてしまいますので、そこはちゃんと最低でもある程度の介入をして、明らかにこれで腰痛が減少するということが分かったものだけを導入するということを考えていただけると有り難いかなというふうに思います。
あと、安全衛生教育に関しては、ツールが少ないというのが問題かと思ってまして、よく転倒対策や安全教育のパンフレットを頂くと、作業服を着て作業帽かぶった男の人が体操しているというものが多くて、それを社員に配っても、なんか関係のない話だなというふうに感じてしまいますので、やはり安全衛生のツールは結構いろいろございますが、製造業だけでなくて、今だと第二次産業よりも第三次産業のほうが多いわけですから、第三次産業向けのものも用意していただけると、その中から導入できる所も増えるんじゃないかなと思います。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。津下委員、お願いします。
○津下構成員 ありがとうございます。私も、先ほど神奈川産保総合支援センターのパンフレットを拝見して、いいなと思った面と、このちょうど真ん中の所にある転倒しそうな人たちが、ヘルメットをかぶって作業服を着ているという絵でありまして、介護の現場でも小売の現場でも、こういう服装をして作業しているわけではないので、対象者により訴求するような表現を使っていただくとか、言葉もより分かりやすくしていただくといいかなと思いました。
就業者、アルバイト、パートの人が出勤したら、ルーティンで体調チェックを行うことを組み入れるよう進めていくのはいかがでしょうか。例えばスポーツクラブなどではジムに行くと、まずは体調チェックをして、今日の体調はどう、腰痛はどうでしょうと。腰痛も、慢性的にある方々もいらっしゃいますし、急性に起こることもありますが、そういう意味ではルーティンで体調チェックを入れていただくとか。
それからリーフレットのように一方通行のものではなく、双方向になるような工夫があるとよいと思います。eラーニング的ではありますが、「あなたならどうする」とか「あなたはしてますか」とか、そういうような投げかけを入れて回答していただくような形式とか。先ほどの体操の例も幾つかの中で自分の所の作業に馴染むものを自分たちで選択していくなど、選択肢を提供することで、その現場の主体性がいかされるような形で安全衛生教育が提案されるといいのではないかなと感じました。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。小澤委員、お願いします。
○小澤構成員 今、正にお二人の方が、以前私が発言したとおりのことをおっしゃって大変うれしく思ったのですけど、いろんなマニュアルを見ると、ヘルメットかぶって、防護服を着て、そして安全衛生だと、安全管理だと言っているのです。流通ではあり得ないことなのです。ソフト化、サービス化社会ではあり得ないことなのです。だから、サービス産業に合った服装、様子というものに作り直さなければいけないと思うのです。ヘルメットかぶって、台車を押していると、現場では「あ、これ関係ないや」と、見た時点で排除されるのです。これは毎回言ってるのですけど、なかなか直っていないというのが現状です。
私が驚いたのは、物事の決まり方が、ものを作るというメーカーの論理で作られているというマニュアルなのです。70%の労働者が第三次産業にいながらです。ものを作る立場でマニュアルが作られているのです。例えば、これは改善したのですが、台車を押すとなると、工場ですと台車をこうして押してもいいのです。お客様がいないからです。我々お店では、台車を押すとお客様にぶつけてけがをさせてしまう可能性があります。お客様に傷害を与えてしまう。だから、台車は絶対に押しません。バックルームでも売り場でも引っ張っていくようにしているのです。それならあなたがお客様に先にぶつかるでしょうと、こういう教育をしているのです。それをしっかり表に出した中で、サービス化、ソフト化、お客様という視点の上で作らなければいけないと思うのです。ことを言っても、70%を占める労働者なのに、何を言ってるのだと排除されてきた状況です。それだけしっかりと、今お二人の話があったので、正にそのとおりだと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。新井委員、お願いします。
○新井構成員 予防ということでいったら、安全衛生教育という、ものの持ち方というのは教えていますか。
○小澤構成員 もちろん教えています。
○新井構成員 うちの病院にも労災の患者さんがたくさん来院してきます。どういうふうにものを持ったのと聞いたときに、知りませんと。持ち方を知らないのです。どういう姿勢でものを持ったらいいのか、どういう姿勢でものに対してスタンスを取るべきだとか、そういう本当に基本的なことが分かっておられないので、腰痛になっている患者さんがおります。
本当はみんなを集めて教育するといいのでしょうけど、なかなか難しくて、パートで入れ替わってしまうということであれば、何かビデオみたいなのを作って、就労する前に見ていただくとか、個別に指導するのが一番いいのでしょうけど、それができなければ、そういったツールを使ってやるとか、本当に基本的なことをやらないと、意外に実際の現場では、脚を曲げてものを持ちなさいとか、ものに対しては両足を揃えるのではなく前後にずらすとか、ちょっとした工夫というか知識も欠けているのです。だから起きているのかなと私は思っています。ですから、先のことももちろん大切ですが、まず最初にそういった簡単な教育も大事なお願いかなと思います。
○髙田座長 ありがとうございます。介護のほうで、安全衛生教育のことで御発言はございますでしょうか。では、井上委員、御発言をお願いします。
○井上構成員 日本商工会議所の井上です。労働者における転倒や腰痛などが近年増加傾向にあるため、企業の経営者並びに労務担当者がしっかりと意識を高めて取り組んでいくことは本当に重要であると、商工会議所でも認識しております。
私からは、中小企業の経営者、関係者の意識改革について意見を述べたいと思います。商工会議所の会員企業は約120万社いるのですが、昨今の状況を見てみますと、やはり今後も続くことが予想される深刻な人手不足の問題を背景に、自社の社員の働きやすい環境を整備すること、人材の確保や生産性向上に図ることができるという健康経営に大変注目している企業が増えております。したがって、転倒腰痛対策につきましても、経産省様の管轄になるとは思いますが、健康経営の評価基準に盛り込んでいただくことなど、何らかの形で健康経営と絡めていただくと、企業取組の促進につながるのではないかと考えております。
加えて、健康経営優良法人認定制度の認定など、中小企業が気軽に取り組めるような基本的な取組に直結した支援と、周知の強化をより講じていただくと、企業側の取組も進むのではないかと考えております。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。その次の健康経営のことについても触れていただきました。山﨑委員、お願いいたします。
○山﨑構成員 よろしくお願いいたします。安全衛生教育に関しまして、各企業が取り組んでいらっしゃるかなとは思います。ただ、どこか個人に委ねている部分が非常に多いのかなと思います。腰痛予防や、そういった研修は行いつつも、組織としてそれに向けて何か組織ぐるみで取り組んでいることや、引き継ぎの時間というのは、なかなか余裕がない中でも、組織でしっかりと力を入れれば、2分、3分の時間は取れないこともないのかなとは思います。工夫次第ということにはなると思いますが、そういったことで、企業もそうですが、行政としてそういった部分をしっかりと方針、方向付けをして、この第三次産業も組織としてしっかりと取り組むところをもう少し発信していければ、組織の強化にもつながるかなと思いました。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。今村委員、お願いします。
○今村構成員 安全衛生教育は、我々業界的にはしっかり取り組んでいらっしゃる法人さん、事業所さんはあるとは思っておりますが、数的には限りなく少ないのではないかなと思うところです。
前回も発言しましたが、これは介護業界に限らずだと思いますが、やはり慢性的な人材不足はずっと続いている状況でして、その中でも配置基準を満たさないことには、例えば報酬が減算されたりといったような、ぎりぎりの中で回している現状があります。
小規模の事業所さんになればなるほど、いろんなことをやるので、そういった時間が取れないとか、引き継ぎも十分ではない、書面上でといったような中で、その取組を進めていくのはなかなか厳しいのかなと思うところではありますが、何かしらの、法的にはなかなか難しいことは承知はしているところではありますが、何かのきっかけとなるようなものがあればいいのかなと思います。現状、やはり個人に任せている部分がありますし、出勤したら、まず引き継ぎ、申送りを確認して、すぐ現場に入る中で、「じゃあ、家で体操してきてね」と言うことはできますが、どれだけの人がしているかは分かりませんし、その辺のことも、先ほどの調査研究はないですが、そういった項目に付け加えていただいてもいいのかなと思います。
あとは、多様な方が介護業界には入ってこられていますし、特に外国人介護人材の方も少しずつ増えてきております。これが、コロナ禍の状況によっては、間違いなくどんどん増えていくだろうということで、そういった方々にも、そうした安全衛生教育をしっかりと受けていただきながら対策をしていっていただくことも含めて、様々なことがまだまだ課題かなと思っております。そういう意味におきましては、この検討会の中で出たものは、我々業界団体、いろいろな団体さんがありますので、そういったところで共有していただくことも是非お願いできればと思います。私の発言は以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。介護の実態について御意見を頂きました。津下委員、お願いいたします。
○津下構成員 先ほど健康経営の指標の中にしっかり取り込んでいくということがありましたが、経産省の会議に出ていますと、健康経営に取り組むことで、どれだけの経済的なメリットがあるのかというような指標の取り方をされますので、医学的にどうということよりも、むしろ経営者に分かりやすい指標で示すとよいかもしれないと思います。こういう取組をすることのメリット、しないことの経済的な損失を見える化することが、まずは経営者に向けて体制を取っていただくことにつながるといいかなと思います。
また、非常に厳しい現状はあるのですが、あきらめるのではなく、やれることから始めるということが大切と思います。やれることとして、例えば職員の意識を高めるとか、運動について、先ほど新井先生がおっしゃったように、介護の姿勢についてもきちんと学習する機会を提供しているとか、そういうことについて、実施している施設については、介護報酬上の評価を高くするのはなかなか難しいかもしれませんが、例えば施設の特徴として、安全衛生の研究をしている施設であるとの表示(認証)ができないか。施設の入居者にとってみたら、慣れ親しんだ介護者に長く接していてほしいということもあると思うので、そういうことが施設としてもメリットとして表現できるようにしていくような工夫はどうかなと思ったりします。
経営者にとって、従業員がどんどん辞める、交替し、どんどん入れ替わることのコストの大きさを実感していただくような指標の出し方なども必要ではないかなと思いますし、また、健康経営をしている事業所が、人が集まりやすいというような、人材確保につながるメリットもあるので、そういうメリットをしっかり出していくような取組が必要ではないかと思います。その上で、実際に従業員に対して、従業員が主体的に予防活動に取り組める体制作りを行ってほしいと感じています。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。小菅委員、お願いします。
○小菅構成員 連合の小菅です。第三次産業の現場の実態を踏まえた、利用しやすい教育手法の開発や提供は大変重要ですし、労使の取組の中で現場の実態に合わせて活用できれば、本当によいことだと思います。
一方で、小売業では多様な雇用形態やシフト制の勤務形態は、通常に見られる状況です。その前提の上で、様々な顧客サービスや企業運営をしている業界です。その中で、通常の業務指示が可能ならば、最も基本的な指示である安全対策を徹底させることは可能だし、しなければいけないと思います。1つ目の議題にも関わるかもしれませんが、やはりこれまでの取組をもう一度検証し、教育の在り方も検討していけるとよいと思います。
○髙田座長 ありがとうございます。島田委員、お願いします。
○島田構成員 先ほど、やれるところから始めるべきとのご発言もありましたが、経験年数が浅い労働者が5分ぐらいのミーティングでできることといえば、基本的なことに立ち戻ったことをやるのが一番(効果がある)と思います。例えば、転倒の原因となる荷物が通路を塞いでいるとか、廊下が濡れているといったことなどは、作業前の点検を通じて気付くこと、普段の4S活動を徹底してやることが大事だと思います。また、不安全行動については、例えば無理な体勢で荷物を運ぼうとしたとか、あるいは介護であれば、一人介助をすることが、危険を伴う行動であり、腰痛につながるといったことを知っていただくことも重要で、そういった点を短時間で理解していただく取り組みが必要と考えます。
また、ヒヤリハットはいろいろな所で経験されていると思いますので、そういう情報の活用が有効です。第三次産業用には、先ほど製造業でのやり方をそのまま持ってきても駄目だというお話もありましたが、私たちが社会福祉施設の事故の分析をした際、こういう災害が頻繁に起こっているという事例をイラスト付きで紹介するリーフレットを作りました。そういうものを短時間、5分間のミーティングの中で活用し、これにより危険を伴う作業なのだということを知っていただくような教育であれば簡単に導入することができると考えます。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。桑原委員、お願いします。
○桑原構成員 小売の現場で今、一番近い所にいる人間かなと思いまして、教育ということで、管理者、使用者側もいろいろな方法を取りながらやっているというのは、これはどこの企業さんも同じだと思います。ただし、先ほど新井先生からもありましたが、荷物の持ち方とかといったものも、やっていないのではなくて、本人に伝わっていない、本人には伝えたつもりでも本人に伝わっていないということがあるのかなと。どの企業さんも、小売業ですと、荷物の持ち方で腰痛になりやすいというのは周知されていますので、何らかをしているのに伝わっていないというのが一番の原因かなと思って聞いておりました。今も2S、4Sとか、そういったものも、管理者としては絶対やらなければいけないことですし、そういったことに対して関心がないのではなくて、関心があるのでしょうが、そこが今回この現場の経営側の皆さんにどう理解をしてもらえるかということが一番重要なのだろうなと、率直な感想的なことなのですが思いました。
あと、厚労省さんから、スーパーマーケットの労災のリスクとか、いろいろなチラシとか、すごくたくさんいろいろなものを出されています。それは、私も現場で活用させていただいていますので、何も出されていないというわけではなくて、介護現場ではこういった所にリスクがあるよとか、そういったものはあるのですが、恐らくそういう情報が現場に伝わっていなかったり、ペーパーで用意はされているのだけれども、それも伝え方が難しいのかなというところを、この先一歩踏み込まなければいけないのかなと感じております。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。ほかはよろしいでしょうか。業種に合った周知方法等、まだ課題があると思いますので、そういったところもやっていただければと思います。少しお話が出ていますが、健康経営に関して、追加で御発言がありましたら頂ければと思いますが、いかがでしょうか。先ほど、中小企業の支援のことなどが出てきましたが、津下委員、よろしくお願いします。
○津下構成員 健康経営は大企業の部門と中小企業の部門があって、中小企業のほうは商工会議所とか、また協会けんぽとか自治体など、様々な所が応援しているのではないかと思います。指標の大項目の中に健康のストレスチェックをやっているかとかいろいろあるのですけれども、そういう割と大きな項目の中に、腰痛とか行動災害に関する教育をやっているかとかというのが入ると、インパクトがあるのではないかなと思います。現在も大企業向けの健康経営度調査の小項目にはあるのですが、中小規模事業所向けの調査票の中にも項目として、中位以上のランクで出てくると、インパクトがあって目に付きやすいかなと思います。また、中小企業では健康宣言を行うところが多いですが、腰痛にしても転倒にしても、従業員の皆様がやはり関心の高いこと、働く中でそれは避けたいと思っていることではないかなと思いますので、そういう項目を健康宣言の中に選択する事業所が増えてくるような取り組みというのが、次の段階として期待できるかなと思います。
それから、中小企業の健康経営については、自治体が地域職域連携の中でかなり応援して認定事業所を増やそうという取組をされていますので、そういう所にも、このような転倒・腰痛などの対策について、自治体の保健師さん等へも周知をしていくというようなことも必要と思います。中小企業を取り巻く保険者や商工会議所、自治体などに対して情報を提供し、サポートしてもらいやすくするということです。
もう1つ、健診機関でもロコモ度テストをやっている所も出てきましたので、そういう取組をより見える化していくこともいいのではないかなと思いました。多角的に、中小企業の問題とせずに、関係者にもこの問題を周知して、そこを健康宣言の課題としても取り上げていくような支援が必要かなと思いました。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。小澤委員、お願いします。
○小澤構成員 健康経営という形で少しくくりを大きくして、ちょっと問題提起したいと思っています。労働安全衛生法では、安全衛生委員会というのをマンスリーで行わなければいけない、このようになっていますが、ほとんどの企業、上場企業は全てやっていると思うのですが、95%が小さなスーパーマーケットですので、その辺を徹底して教育をやっていくことが必要であろうと思います。いろいろなやり方がありますが、それはビデオであったり、機器に頼ったり、頼っているのですが、機械がもう死んでしまっているのです、システムで。やはり、ヒューマン・トゥ・ヒューマンと言いますが、人がちゃんと指導するということです。私は昔、「小澤さん、教育しない者は売場へ出すな。事故を起こすだろう。休むだろう。徹底して教育して売場に出しなさい。教育はできないことをできるようにするのだ」といつも言われたのものですが、現場は人がいないから、採用したらすぐに現場に出してしまう。それで包丁で手を切る、滑って転んでしまう。この繰り返しなのです。慢性的人材不足ですから、それについて、我慢して教育しなければ現場に出さないということも大事であろうし、一方で、ハザードマップといいますか、危険情報をしっかりと新しい人に教えていくということが必要であろうと思います。
5分という問題提起がありましたが、とても流通産業では長くてできません。アッパーで2分だという問題提起をしているわけです。それはやはり、売上とか利益とかお客様のクレームとかがあります。
それと同時に、安全というものについての警鐘をリーダーが促していくことが必要であると思います。今、お話がありましたように、いろいろな意味で見える化をしていくということです。なぜ人手不足、労働災害で休んでいるんじゃないかと。退職、なぜ60%なのか、環境が悪いからじゃないかと。それをしっかりとリーダーに、経営トップにちゃんとインプットしていく、これが必要ではないかなということです。どうしても売上、利益と、数字だけに追われて、従業員に対して優しい眼差しでと言っているのですが、それが大きく不足しているのです。私自身の経験から言っても、その辺はカスタマー・サティスファクションではなくして、エンプロイ・サティスファクションという面でしっかりとやっていく必要があるだろうと思います。
数値化というのがありましたが、労働災害の度数率といいますか、それがちょっとややこしい数字ですが、その辺も合わせて、労働災害で休職がどうなっているのだ、どれだけの欠勤があるのだ、どれだけ損失があるのだ、それが経営にどういうマイナスインパクトを与えているかということもしっかりやっていく必要があるのかなと思います。
ただ、具体的に、では何をしたらいいかと。やはり、やるべきことが実施されていないのが現場であろうと思うのです。今、山﨑さんのお話があったのですが、決められたことがなかなか実行されていないのです。ここにありましたが、行動経済学的視点、とてもそこまで行かないです。気分よく相手に合わせてやっていくというレベルにはまだまだ達していないです。当たり前のことを当たり前にやる、当たり前のことを当たり前にできる、こうなれば労働災害は減ってくるのです。これができないから、災害は増えているわけですから、しっかりと対応していく必要がある。そのためには、やはりルール化です。中央労働安全衛生委員会をしっかりやる。そして、現場の労働安全衛生委員会をやる。地区の安全衛生委員会をやる。それをレポートラインにして毎月のワーニング情報を流す、情報の共有化をしていくということ、大変クラッシックですが、しっかりとやっていくことです。バック・トゥ・ベーシック、基本に返るということが大変必要であろうと思います。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。基本に返ってやっていくということの重要性について御指摘を頂きました。今、転倒・腰痛による災害の経済的損失の見える化ということも含めての御意見が出ておりますので、健康経営だけではなくて、そちらの(3)に関しても御意見がありましたらと思います。河津先生、お願いします。
○河津構成員 経済的損失の見える化ということに関してですが、これも先ほどの論点1と重なるのですが、やはり各企業に対して、今まで余りにもフィードバックがなさすぎたのではないかと感じています。結局、労災を起こすと、たくさん使うと労災保険のメリット制がなくなってしまうので、支払いが増えるのですが、企業が受け取るのは、あなたの会社はトータルで幾ら使いましたという情報しか返ってこないのです。あなたの会社は、転倒でこれだけ掛かっているから、これだけメリット制の減免がありませんよということを返すだけでも、企業としたら、恐らくどれぐらいの労働損失があるのかが分かるのではないかと思いますので、先ほどと全く重なりますが、労災保険の情報をそろそろフィードバックすることも考えていただけると有り難いかなと思います。
労災保険というのは、事業者に掛けている保険であるにもかかわらず、事業者には労災に認定されたかどうかという情報すらフィードバックされずに、本人にだけフィードバックされるので、結局、労働者死傷病報告で提出しているものが本当に労災の件数なのかというのは誰にも分からないのです。ましてや、休業日数というのは全く見える化できていないということが問題です。
当社の場合は、専従の社員がおりますので、最終的に何日休んだのかということを計算することができますから、それに標準報酬月額を掛ければ、転倒による会社の直接損失が幾らということが出せて、それは事業所のトップに提示することによって、これは減らさなければ駄目ですよねというのは非常に分かりやすくできるのですが、ほとんどの企業はそういうことはできていないと思いますので、やはり私は、労災保険の情報のフィードバックというのは検討していただければ有り難いなと思っています。自動車保険のように、あなたはここの事故で幾ら使ったから幾ら高くなったと言われると、それなら気を付けますという話になると思いますので、あなたの会社は転倒で幾ら使ったからこれだけ保険料を上げるぞと言うだけでも、大分分かりやすいのではないかなと思います。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。新井委員、お願いします。
○新井構成員 津下先生もおっしゃっていましたが、健康経営メニューの中で、会社というのは今、採血や血圧を測るとかやっていますね。そのときに、ロコモ度テストをやっていただくのも一案です。また、ロコモ年齢というのができました。ロコモがどの程度なのか、あなたは実際60歳だけれど、移動機能のレベルは70歳だよとかというものがわかるようになりました。そういったものを通じて、現在自分がどの程度なのかということを測っておけば、自分が運動不足であるとかがはっきり分かりますので、運動しなければいけないというモチベーションにもなりますし、自分はちょっと普通の人より危ないのだなと思えば気を付けるといった面もあると思うので、健康診断のときにロコモ度テストのチェックを加えていただければ、かなり違うのではないかなと思います。
○髙田座長 ありがとうございます。今村委員、お願いします。
○今村構成員 私は正直なところ、健康経営という言葉は知っていましたが、具体的にどういうものなのかというのは余り存じ上げておりません。ちょっと見ていたのですが、私たち介護業界で、営利でやられている所もありますが、社会福祉法人ですとか非営利の所もかなり数として多いなとは思っているところです。そういう中で、基本的に介護保険の中で事業運営をしていくということを考えますと、アッパーが、マックスが決まっているのです。やればやっただけということではなくて、100%で稼働したら幾らというのは事業所単位で分かるのです。そういう中で、例えば損失とかという部分は、先ほどの話になるのかもしれませんが、例えば職員が腰痛とか転倒で来れなくなって、そういう人数が増えてしまうことによって、配置基準を満たさなくなったら、必ず行政に報告をしないといけません。その改善が見られなければ、報酬が減算ということになってしまうので、そこをとにかく避けなければいけないということで、あの手この手を使って、ちょっと話が逸れるのかもしれませんが、いわゆる人材派遣会社に多額のお金を払って何とか入れてということの繰り返しが、ずっとこの何年間も続いているという状況なのかなと思います。
健康経営の部分に戻るのですが、見させていただいて、「健康経営銘柄2022」という経済産業省のホームページを見ますと、業界的には、介護の業界は全く入っていないのだなというのを、初めて見て改めて実感しました。過去に選定された所はあるのかもしれませんが、こういった部分も、業界的にはもう少し知っていく必要性というのはあるのかなとは個人的には思うところです。
基本的に、私たちの業界はやはり厚生労働省がメインといいますか、なかなかほかの省庁を覗くといいますか、どういう動きをしているとかということに余り目を向けていないというのが多分あるかなと思いますので、その辺での情報とかというのを、例えば省庁を通して業界団体等への周知とか、そういったことも少し行っていただくと、考え方として、確かに健康経営と全く同じだと思うのです、私たちも。やはり、人がきちっと確保できて定着することがより良い質の高いサービスを提供することにつながり、結果として稼働率を安定させ、安定した経営ができるというところは同じだと思いますので、違った部分で、そういう広報的なことも少し御検討いただければと思いまして発言させていただきました。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。鈴木委員、お願いします。
○鈴木構成員 河津委員から御発言いただいた労災保険の認定情報のフィードバックについて、一言コメントさせていただきたいと思います。労災の申請にあたり、企業側は災害の原因や発生状況等の証明について真摯に協力しておりますが、申請自体は労働者が行うのが原則であるため、支給・不支給の決定を労働者にフィードバックすることが基本になっていると考えます。企業に対してもフィードバックすることについては、労災保険制度全体に関わる問題として、慎重に議論する必要があるように感じました。一方で、企業は労働者の休業が業務によるものか、私傷病によるものかを把握しているはずですので、労災保険制度の見直しとは別に、災害発生件数などをそれぞれの企業で蓄積し、対策を取っていくということが大変重要と考えます。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。小菅委員、お願いします。
○小菅構成員 連合の小菅です。この問題を経営の課題として認識することは、大変重要だと思います。休業による労働力の損失ももちろんそうです。加えて、サービス産業の特徴は目の前に顧客がいることです。前回も触れましたが、店頭で顧客にけがをさせてしまったり、介護現場で顧客と一緒にけがをしてしまうこともありえます。また、自分のけがの対応で顧客対応の時間を削ってしまうことにもなりかねません。労働者、自分自身の安全確保が顧客のためでもあるという認識を持つと、労使ともに進めていきやすいのではないかと思います。
○髙田座長 ありがとうございます。Web参加の先生方から追加で御意見はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。会場の委員の方からは追加でございますでしょうか。あと、(4)で行動経済学的観点による取組について検討してはどうかということで、まだその段階にはなく、まず基本からという御発言もありましたが、そのほか、こういう取組はいいのではないかとか、何か御発言がございましたら頂ければと思います。小菅委員、お願いします。
○小菅構成員 転倒・腰痛は日常生活でも発生するのでもあり、普段、職場で危険を意識しにくいものだと思います。意識しにくいものであるがゆえに、無意識に働き掛けるナッジによって不安全行動を回避できる取組は、期待したい思います。もし職場でそういうものが開発できるのであれば、逆に日常生活でも応用できると思いますし、是非進めていっていただきたいと思います。
○髙田座長 ありがとうございます。津下委員、お願いします。
○津下構成員 最近、ナッジについては随分活用されてきていて、経産省の健康経営の結果を社長さんに伝えるのにも、その対象者に合わせて、ナッジの理論を活用したメッセージを入れるものと、そうではないものの検証をしたりしています。同じ情報提供をするのであれば、指導目線とか指示ではなく、自然にそうしたくなるような情報提供の仕方とか、分かりやすさとか、メッセージ性を、きちっとその人の視点でもって考えていくということは、今、進んでいると思うので、ナッジですよということをわざわざ言わなくてもいいとは思うのですが、そういう考え方を応用しながら、この分野の情報が発信できるといいかなと思います。というのは、指示、命令でするというよりも、一人一人の従業員、経営者のやる気を高めるところがあったり、行動を修正することがメインになりますので、その辺りの手法は、言われたからやるではない方向で設計されたほうがいいのではないかと思いました。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。ほかはよろしいでしょうか。行動変容をしていくために必要な手法の1つだと思いますので、研究的な視点からのスタートになるかもしれませんが、是非とも検討に入れていただければと思います。そうしましたら、2の安全衛生教育の在り方や関係者の意識改革について、全体的に追加で御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
では、今度は論点の5に進みまして、「労働者の健康づくりによるアプローチについて」ということで、身体機能の低下による影響に対する対策、それから災害防止のために若年期から運動を通じて筋肉量や持久力などを維持していく取組ということですが、2つ分けるというよりは、多分両方関わってくると思いますので、健康づくりのことに関して御意見を頂ければと思います。新井先生、よろしくお願いいたします。
○新井構成員 これは労働者というようにこだわらないで、国民全体にということで、私は学校現場のほうに関わっておりまして、小・中・高校生の運動器検診もやっているのですけれども、かなり運動機能が低下、明らかに低下しています。
今回、コロナ禍に際し、約1万2千人の運動量を調べました。コロナの初期第1時緊急事態宣言が出たところには20代から60代の運動量は増えたのです。恐らく危機感からだと思うのです。ところが、1年後にもう1回同じアンケートを行ったら、みんな運動量が減っていました。20代から、60代、みんな運動量が減っているのです。何が原因かなと思うと、1つには危機感が薄れたというか飽きてきたのではないかと思います。もう一つは通勤です。通勤しなくなって、歩かなくなって、リモートになって、最初は皆さん喜んでいて、私は田舎にいるものですから、皆さん昼間はゴルフに行って、夜に仕事すると言って、非常にコロナの影響を喜んでいたのですけれども、だんだん運動量が減ってきて、今は腰痛が増えています。
子供たちもコロナで自粛が半年ほど続きましたけれども、その後に何が起きたかというと、足の怪我とか、骨折が増えました。捻挫とか非常に増えています。統計的に明らかに増えているのです。なぜかというと、やはり運動量が減ったわけです。これはコロナでの短期間の影響ですが、明らかに運動量が減っていて、これは厚生労働省の担当というよりは、スポーツ庁のほうがやるべきかもしれないですけれど、全体に対して運動量を増やすアプローチをするようなことをやらなくてはいけないというのが私の意見なのですが、取りあえず単純なことで、歩くことだけでもいいからやっていかないとしょうがないのかなと思います。お答えになっていなくて申し訳ありません。
○髙田座長 ありがとうございます。津下委員、お願いします。
○津下構成員 ありがとうございます。何度もすみません。まず、身体機能の低下による影響というのは、加齢に伴ってとか、運動不足に伴ってとか、身体機能が低下しているのですけれども、意外と自覚されてないように思います。駅でエスカレーターと階段があったときに、あれだけ長く待ってもエスカレーターに並んでいる人たちが結構多くて、階段を使わない暮らしにもなっているのかなと。あるのだけれど使ってないということで、それは恐らく体力が落ちているのだろうと思うのですけれども、階段を使って体力を維持しようと思っている人は少なくて、エスカレーターに並んでいらっしゃいます。そうすると、どんどんまた歩けなくなり、筋力は低下してきます。ということで、身体機能の低下を自覚する場面がとても大事だと思います。
例えば、製造系の企業では、体力テストを健診と同時に行っている企業もたくさんあります。本人が自分の体力の変化について気づく方法として、開眼片足立ちで何秒立てるか、もしくは閉眼片足だけをやってもらう。暗い所だと視覚の調整が少なくなり、体を片足で保持するのが難しいという現実を知ってもらう。だから転倒しやすいのだよということを一人一人が自覚していくことが重要と思います。大げさな体力テストではなくてもいいのですけれども、例えば開眼片足立ち又は閉眼片足立ち、それからスクワットなどが10回ぐらいできるかとか、簡単なものをまずは取り入れていただけるといいのかなと思います。ロコモ度テストなどをきちんと行うとか、骨粗鬆症のチェックとかも、実施するチャンスがあれば、そういうものもお勧めしてもいいのではないかなと思います。
また、若年期から運動を通じて筋肉量や持久力を維持するということは大切です。若いうちは体力を使っていたけれど、主任になったりして、デスクワークとかで労働量が減ってきて体力が低下する。その後定年延長で現場仕事に戻ると、体力の低下のためにもともとできていた仕事が実施しにくいということがあると思います。主婦の方についても筋肉や持久力の低下をなかなか自覚する場面がないということになります。そこのところを簡単なチェックをできるだけ普及するような方策を、健康局やスポーツ省などと一緒になって進めていけるといいのではないかなと思います。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。河津委員、お願いします。
○河津構成員 ありがとうございます。身体機能の低下についてなのですが、当社でもやはり転倒が一番大きな問題ですので、健康状態としてファンクショナルリーチや閉眼開眼片足立ちのようなロコモに関する項目を測定して、それが転倒に影響しているのかなと調べたら、全く影響がなかったのです。
運動量に関していうと、健保組合がデータヘルスとかで他社と比較すると、当社の特にパートの女性社員は運動量が多い人が多いのです。というのは、仕事で歩き回っているので、トータルの運動量でいくと結構な運動量なのです。基本的に立ち仕事で、ずっと立って歩き回っていたりしますので、運動量そのものが結構あるにもかかわらず、これ以上運動させるのはどうかなというのは個人的には感じているところです。それで結局、いろいろ当社でも調べて、公衆衛生学会に出したのでいうと、影響しているのは年齢とBMIで、BMIが高いほどよく転ぶということしか分からなかったのです。
最近、社内で高齢労働者が増えてきているので、高齢労働者がどのような健康要因で転んでいるのかなと見ると、一番大きいのは視力低下でした。面白いのが、若年者、60歳未満に関しては、視力が低下しても転ばないのです。60歳超えると、てき面にというか、3倍ぐらい転ぶのです。恐らく若い人は筋力や平衡感覚などの予備能力が高いことが効いているのかなと思いますし、例えば20代の視力低下だったら近視が進んでいるとかいろいろなことが考えられるかもしれないのですけれども、年齢が進むと白内障等の眼科疾患が影響している可能性もあるかなと思いますので、そちらの身体機能の低下による影響に入るのではないかなと思っています。しかし、運動に関する問診項目では、全く差がありませんでした。健康診断項目は、症状を自覚するよりも先に検査結果に変化があるものであり、かつ介入することによって予後に変化があるものでなければ調べても何の意味がありませんので、新たに運動に関する検査を導入するということについては、慎重に考えていただきたいところです。それでもあくまでも新たに体力測定をしてなんらかの運動を勧めるというのであれば、どのような検査でカットオフ値がどれくらいの人に対して、どのような運動をどれくらいやれば本当に効果があるのか、最低でも、小さな集団でかまいませんので、介入群と介入しない群とを比較して、本当に転倒や腰痛が減少するというエビデンスがあるということがわかってから導入していただきたいところです。
 
○髙田座長 桑原委員、お願いいたします。
○桑原構成員 今、先生方のいろいろなお話をお伺いしていて、体力が低下しているというのは、多分経営者側の皆さんも認識はされていると思うのですけれども、私などは実務をやる人間とすると、社内で共有、情報発信していくときのデータの出所というのが、今は調べていくといろいろな所にデータがあるのかなと思うのです。ですので、どれを使っていいのかなとか、今後私もやっていく人間として、その辺りも少しまとめていただいたほうがいいのではないかなと思っております。
また、先ほどからの教育ということにも関連するのですけれども、労働者の皆さんに、経営側として労災の対策ということで、こういうことはしてはいけないとか、こういうことをしなさいということは言ってはいるけれども伝わっていないことがあるというお話をさせていただいたと思うのですが、やはり自分のこととして認識をしてもらうというのが必要なのかなと思います。ですので、先ほど津下先生から片足立ちをしてみて、どれぐらい自分が耐えられるのかとか、スクワットを10回できるかやってみるとか、そういったものは1分程度でできるのかなと思っておりました。そうすると、仕事に入る前のミーティング等で、1、2分で、労災に対して自分で認識をする時間につなげていけるのではないかなと。
先ほどの河津先生の視力の低下なども、やはり年々視力が下がっていても余り認識がない方というのも多いのかなと思うので、そういうツール等について案内をしてあげれば、1分、2分程度でも、自分というのはこれだけ体力が落ちているのではないかなと、この前、経営側が言っていたこういったことも対策しなければいけないなというように認識されるのではないかなと思いましたので、発言させていただきました。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。新井委員、お願いします。
○新井構成員 すみません。先ほど言えばよかったのですが、健康づくりには、まず自分を知ることから始めないといけないと思うのです。誰も意識しないので、体力が落ちているということが分からないのです。ロコモ度テスト、ロコモチェックというのがあって、それをやるとかなり分かります。先ほど津下先生が片足立ちと言いましたけれども、片足で椅子から立ち上がるというテストがあります。両足で立ち上がるのはできるのです。片足で立ち上がるというのは結構できないのです。大体椅子は40cmぐらいで、40cmを片足で立ち上がれなくなったら、もうかなり落ちています。片方の足で立ち上がるというのができなくなることは、大腿四頭筋が落ちてきていることを示しており、かなり転倒しやすくなります。体を踏ん張れないのです。そういうものがありますので、こうしたものを含めて、予防とチェックというのを作るといいです。先ほども言いましたが、ツールの1つとして利用できるのではないかなと。参考にしていただければと思います。
○髙田座長 ありがとうございます。小菅委員、お願いします。
○小菅構成員 連合の小菅です。私も加齢に伴う体力の低下と、それを自覚することは大事だと考えています。一方で、65歳以上の雇用をしている企業では「自分はまだできる、大丈夫だ」という自己認識と、周りから見る認識が必ずしも一致しないケースがあると聞きます。外部から本人に体力低下を指摘しても受け入れてもらえない難しいケースもありますので、本人が素直に受け入れられるような、自己診断などの手法を作るべきだと思います。
○髙田座長 ありがとうございます。今村委員、お願いいたします。
○今村構成員 ありがとうございます。個人的な意見といいますか、先ほど河津先生もおっしゃいましたが、我々の業界も基本的に肉体労働に近いものがありますので、それなりに元気だと思います。体力が落ちたなとか、機能が落ちたなというのは、皆さん申告してきます。といいますのも、やはり人の命を預かる仕事ですので、今までできていた介護ができなくなった場合のリスクは、現場にいる職員さん方はほとんど自覚されていると思います。一緒に倒れることも怖いですし、そこで何かがあったらという責任ですとか、そういった部分は、業界的には結構、皆さん自覚されて、もし難しいとなった場合には申告されているような気がします。私も自分の事業所で自信がなくなりましたということはちゃんと言ってくださいと伝えますし、大丈夫だと思っている職員さんがちょっと最近難しいんですよねという話はされますので、そういう意味での対策とはちょっと違うのかもしれませんけれども、肌感覚としてはそういったところがあるということです。
あと、腰痛ですので違うのかもしれませんが、最近思うのは膝痛です。膝が悪くて、それで踏ん張りが利かなくて、ヒヤリハットがちょこちょことあるかなと思っています。確かに、腰痛のほうが多いだろうとは思うのですが、決して太っていらっしゃる、体重があるからということではないのですが、結構膝が最近多いなと感じます。原因的なものが何なのかは個人によると思うのですが、その辺を情報提供的に発言させていただきました。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。新井委員、お願いします。
○新井構成員 今、膝痛のことがありましたが、膝痛の原因は、ほとんど大腿四頭筋の低下です。大腿四頭筋が落ちて、ダイレクトに膝の軟骨や関節に力がかかるので、膝痛が起きます。先ほど立ち上がりテストみたいな話がありましたけれども、そういったものでチェックができます。
あと、やれなくなったから自己申告とおっしゃっていましたが、私はちょっと違うと思っています。医師側からみて、もう駄目なんじゃないのと思っても、結構頑張っている方がおられます。その辺のニュアンスは難しい気がします。すみません、ちょっと違う意見になってしまうのですけど。
○髙田座長 ありがとうございます。恐らく業種の特性もあるのかなと思いますけれど、申告しやすい環境を整えていくことが大事ですし、気付かれた方もいらっしゃると思いますので、そこは高齢者に限らず、若いうちから早めに気付いて対策できるのは必要なのではないかと思います。津下委員、お願いいたします。
○津下構成員 ありがとうございます。膝の関節障害は、運動の場合は本当に多く出ますし、中高年女性はかなり変形性膝関節症を持ってる方が多いので、そこに加重が掛かることで、発生率が非常に高いのかなと思います。なので、性、年齢別にどういうリスクがあるかを事前に知っていただくことが重要かなと思います。
それから、もう駄目ですというか、ちょっと無理ですと申告されるレベルと、体力テストやちょっとしたテストで気付くレベルでは、ちょっとフェーズが違うと思います。本人がもうこれ以上だと危ないと自覚されることは、すごく大事なのですが、そうなる前の対策が重要です。どうやったらより自分の体を維持できるか、膝のストレッチや筋力トレーニングとかを組み合わせて、予防に心がけていただくか。あるいは介護の仕方で、患部に負担が掛からないように作業していくことは可能なのかということを考える時間ができるのではないかなと。本人が駄目と思うまでの時間を生み出すためにも、早めにチェックしたほうがいいのではないかなと感じています。自己申告プラス気付きの場面を組み合わせていただくといいのかなと思いました。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。予防していくという観点は、非常に重要かと思います。河津先生、お願いします。
○河津構成員 ありがとうございます。まず、その介入で本当に減るのかというところ、例えばこの検査をして介入をすれば本当に減るということは、ちゃんと調べてから、導入するのだったら導入していただきたいことがまず1点です。
あと、もう1つは、加齢に伴う体力の低下であるのだったら、早く見付けて介入というのは、これは運動などをすれば回復するのが前提でしょうか。もし、加齢に伴う変化で下がってきて、これ以下の人はすごく転びやすいですよとか、腰痛になりますよという人がいた場合に、その方の就業が続けられなくなってしまうという可能性は非常に危惧するところです。特に、非正規雇用労働者は雇用が不安定なところがありますので、何か検査をするとなって、それでもし何かのフィードバックがあって、会社の労災保険料があなたのせいで上がるみたいなことになってしまうと、やはりそれは倫理的にどうなのかなというところがあります。やはりまず1つは、せめてその介入があるとしても、強固なエビデンスがあって、明らかに働くことによってあなたの危険に関わりますよということであるのであれば、ある程度いいのかもしれないのですが、そのような危険性があるような検査を導入することに関しては、非常に慎重に慎重を重ねて検討していただければと思います。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。貴重な御意見だと思います。島田委員、お願いします。
○島田構成員 今回は論点の3番は対象としていないので、ここまでの話とは視点が異なるのですが、学術的な話として、そもそも転倒とか腰痛というのは、労災の発生過程を考えたときに、結果的に転びました、腰痛になりましたということになります。死傷病報告書を分析をした際、なぜ腰痛になったか、転倒したかというシナリオを考えるためには、原因となっているものが何だったのかということを知る必要があります。先ほど「基本的なところから」と言ったのですが、廊下が濡れていたなどの転倒しやすい環境が作り出されていた、あるいは無理な姿勢で対応したから腰痛になったといった例がいくつもあります。これらは原因への対策を考えるのに必要です。一方、健康づくりが重要というのは、どちらかというと転びそうになったときに耐えて転ばなくてよかった、腰痛にならなくて済んだというのは、影響を緩和することができたということであり、リスクの概念でいえば重篤度を下げるために実施する対策になります。
労災防止の観点では、これも3番の論点になるのですが、やはり原因の元となることを無くすことが大事で、労働災害が発生する頻度を下げるために、つまり、転倒や腰痛の原因を除去するためには、作業方法など工夫することや作業手順の遵守が基本であるということを考える必要があります。そのため、工学的な対策として補助設備を導入する、管理的な対策として4S活動を徹底するなどの対策について検討することも重要であり、是非、検討して欲しいと思います。
健康づくりについて、先ほどの産保センターの事例を見ていたときに異和感を持ったことで、「安全面のみの対策を進めても、なかなか減少に結び付かない」と書かれていましたが、実際には事故の発生頻度は下がると思います。健康づくりはどちらかといえば体への影響(負担)を緩和するための取り組みであり、その点(原因除去の対策と影響緩和の対策)を区別しながら、検討した方がよいと思いました。
○髙田座長 ありがとうございます。論点3については次回になりますけれども、それ以外のことでありますでしょうか。津下委員、お願いします。
○津下構成員 何度もすみません。先ほど河津先生がおっしゃった体力テストの結果とかで、どういう働き方がいいかというのを検討することはいいと思うのですが、雇用に直接影響があるような形というのは、当然制約を掛けなければいけないように思います。その目的とか結果の扱いなどについてしっかりルール化していく必要があると思います。循環器疾患があったとしても、それで雇い止めということにはならないと思うのですが、その人に合った職場とか仕事の仕方を、労使で話し合って決めていかなければいけないと思います。情報については十分に気を付けながら取っていっく必要があります。本人にとっても、それで就業できなくなることは大きなマイナスですので、どういう働き方がいいのかを選べる、考える材料になるような使い方をしっかりと出していくならば、やることは意義があるかなと思いました。
それから、もう1つ、例えば体力のデータとかを経営者が知ることで、こういう体力が落ちてきている人たちが働いているんだなと知っていただくことも重要と思います。これは次の3になってくると思うのですが、どういうような仕事の仕方をしなければいけないとか、経営者に考えていただける材料としてデータが活用されるのがいいのかなと思います。対個人ではなく、職場の安全管理のためにそういうデータも活用しながら、配置や労働強度などをしっかりと考えられるようなデータの扱い方や、職場での評価としても活用するというような考え方でやっていただくのがどうかなと思いました。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。追加での御発言はよろしいでしょうか。そうしましたら、本日の意見交換についてはこの辺りにしまして、次回は先ほど申し上げましたとおり、3、4について意見交換をしていきたいと思います。
次に、議事の(2)その他ということですけれども、事務局から何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。委員の先生方からはよろしいでしょうか。
それでは、本日の議事はここまでといたします。事務局のほうで、本日頂きました意見の整理をお願いいたします。進行を事務局のほうにお返しいたします。
○澤田中央産業安全専門官 髙田先生、ありがとうございました。本日は通信が所々途切れました。御迷惑をお掛けしまして申し訳ございませんでした。次回ですが、3回目が7月29日(金)14時から、この場所でということで予定をさせていただいております。詳細は改めて御連絡をさせていただきます。
それでは、以上をもちまして第2回検討回を終了とさせていただきます。本日はお忙しいところありがとうございました。
○髙田座長 ありがとうございました。