2022年6月22日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録

日時

令和4年6月22日(水)18:00~

出席者

出席委員(20名)五十音順

 (注)◎部会長 ○部会長代理
 

欠席委員(1名)五十音順

行政機関出席者
  •  鎌田光明(医薬・生活衛生局長)
  •  山本史(大臣官房審議官)
  •  吉田易範(医薬品審査管理課長)
  •  中井清人(医薬安全対策課長)
  •  鈴木洋史(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長) 他

議事

○医薬品審査管理課長 それでは、定刻になりましたので薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会のウェブ会議を開催させていただきます。
 本日は、お忙しい中、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 この度の医薬品部会につきましても、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、ウェブでの審議とさせていただきます。
 まず本日のウェブ会議におきます委員の出席状況についてでございますが、小崎委員より御欠席との御連絡をいただいております。
 このほか、川上委員、松下委員、南委員は、まだ御参加をいただいておりませんが、後ほど会議に参加されるとお聞きしております。
 したがいまして、本日は、現在のところ、当部会委員数21名のうち17名の委員がウェブ会議に御出席いただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
 部会を開始する前に、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について、御報告をさせていただきます。
 薬事分科会規程第11条におきましては「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定されております。
 今回、全ての委員の皆様から、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告をさせていただきます。
 委員の皆様には、会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をおかけしておりますけれども、引き続き御理解、御協力を賜りますよう何とぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、清田部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。
○清田部会長 皆様、こんばんは。清田でございます。
 それでは、本日の審議に入ります。
 まず事務局から資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて、御報告をお願いいたします。
○事務局 それでは、本日のウェブ会議に係る資料の確認をさせていただきます。
 本日、あらかじめお送りさせていただいた資料として、資料No.1と製剤写真を用いますので、お手元に御用意いただけますでしょうか。
 このほか、資料2として「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」。
 資料3として「専門員リスト」。
 資料4として「競合品目・競合企業リスト」をお送りしております。
 さらに参考資料として、参考資料1-1から参考資料1-4までを事前に電子メールにてお送りさせていただいております。
 なお、システムの動作不良などがございましたら、会議の途中でも結構ですので、事務局までお申し出ください。
 続きまして、本日のウェブ会議における審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて、御報告させていただきます。
 資料4の1ページを御覧ください。ゾコーバ錠でございますが、本品目は、SARS-CoV-2による感染症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 以上でございます。
○清田部会長 ただいまの事務局からの御説明に特段の御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、本ウェブ会議の審議事項に関する競合品目・競合企業リストにつきましては、皆様の御了解をいただいたものといたします。
 それでは、委員からの申出状況について、御報告をお願いします。
○事務局 薬事分科会審議参加規程第11条に基づく各委員からの申出状況及び第5条に基づく取扱いについては、次のとおりでございます。
 議題1、ゾコーバ錠。
 退室委員、大曲委員。
 議決に参加しない委員、亀田委員、川上委員、中野委員、横幕委員でございます。
 なお、薬事分科会審議参加規程第5条において「申請資料作成関与者である委員等は、審議又は議決が行われている間、審議会場から退室する」とされておりますが、同条のただし書で「当該委員等の発言が特に必要であると分科会等が認めた場合に限り、当該委員等は出席し、意見を述べることができる」となっております。
 以上でございます。
○清田部会長 ありがとうございます。
 ここで、今回、議題1の審議に関しましては、SARS-CoV-2による感染症に関する治験の実施経験がある大曲委員の意見は参考になるのではないかと思われます。当部会として大曲委員には御出席いただき、御意見を述べていただいてはどうかと考えておりますが、いかがでしょうか。
 ありがとうございます。御異議がないようですので、了解いただいたものとし、大曲委員には御出席、御意見をいただくことといたします。
 今の事務局からの説明に特段の御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 よろしければ、皆様に御確認をいただいたものといたします。
 本日は、審議事項1議題となっております。
 それでは、審議事項の議題に移ります。
 まず緊急承認制度の概要と審議の進め方について、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 事務局でございます。
 まず緊急承認制度の概要について、御説明させていただきますので、参考資料1-1を御覧いただけますでしょうか。
 今年の5月20日に薬機法の一部を改正する法律が成立、公布・施行いたしまして、緊急承認制度が新たに設けられました。緊急承認制度は、1枚目の改正の概要の1.のマル1にありますとおり、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病の蔓延その他の健康被害の拡大を防止するために、緊急に使用されることが必要な医薬品等について、他に代替手段が存在しない場合に適用される承認制度でございます。
 この制度の概略につきましては、資料の4ページに他の制度との比較を示しておりますので、こちらを御確認いただけますでしょうか。4枚目には、現在の薬事承認制度を比較した表をつけておりますが、一番左には通常の承認のもの、中ほどの2列は平時の承認制度として条件付承認制度、再生医療等製品の条件・期限付承認制度を記載しておりますが、右側2列が緊急時の迅速な承認に関する制度として、これまでも御審議いただいてきた特例承認制度と、今回、新たに御審議いただく緊急承認制度の記載を行っています。
 一番上に対象の違いを記載していますが、特例承認制度は、外国で流通している医薬品等が対象でしたが、緊急承認制度は、国内で開発されたものを含めて全ての医薬品等が対象になります。
 下から2列目の有効性・安全性についてですが、特例承認制度におきましては、有効性及び安全性について確認されることが必要でしたが、緊急承認制度におきましては、安全性は確認した上で、有効性については推定した段階で承認することができる制度となっております。
 有効性の推定に関してどのぐらいのイメージの水準のものなのかということを5枚目の表に簡単に記しておりますが、ワクチン、治療薬それぞれについて、それぞれの臨床試験の状況などが適用されるものと考えております。
 こういった考え方を一番最後の8枚目に「緊急承認制度における承認審査の考え方(ガイドライン)」ということでまとめさせていただいておりまして、具体的には通知を発出しておりますので、それは参考資料1-2に示しております。そちらについても、適宜御参照いただければと思っております。
 続きまして、今回、創設した緊急承認制度の御審議をいただくに当たり、審議の今後の進め方について、御説明させていただければと思います。
 参考資料1-3でございますが、緊急承認制度の創設に伴いまして、薬事分科会規程の改正を行っております。
 この中で具体的に審議の取扱いについて規程を改正しておりますが、これを踏まえた具体的な進め方を参考資料1-4に示しておりますので、こちらを御覧いただけますでしょうか。
 参考資料1-4ですが、「医薬品ゾコーバ錠125mgの審議の進め方について」でございます。
 一つ目の○ですが、緊急承認制度における承認の可否の審議であることから、薬事分科会規程第7条第3項の規定に基づき、部会審議に加えて分科会での審議を行うことが基本となると考えております。先ほど申し上げた参考資料1-3において、薬事分科会規程の第7条第3項を新設しておりますが、それに基づいて、緊急承認制度においては、部会審議において分科会での審議を行うことが基本となっております。
 二つ目の○ですが、分科会審議は、審議の透明性確保の観点から、公開で行うこととしてはどうかと考えております。
 最後に、分科会審議は、専門的な議論を行う観点ですとか、審議を充実させる観点から、部会と合同で開催し、部会委員の先生方にも御参加いただければと考えております。
 以上でございます。
○清田部会長 ありがとうございました。
 今の事務局からの御説明に対しまして、特段の御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 よろしければ、皆様に御確認いただいたものといたします。
 それでは、議題1について、機構から概要の御説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料No.1、医薬品ゾコーバ錠125mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。
 審査報告書のファイルをお開きください。
 本剤の有効成分であるエンシトレルビルフマル酸は、SARS-CoV-2の3CLプロテアーゼ阻害剤であり、ポリタンパク質の切断を阻止することにより、ウイルス複製を抑制します。
 本品目は、SARS-CoV-2による感染症患者等を対象とした国際共同第II/III相試験(T1221試験)の第IIa相パート及び第IIb相パートの成績に基づき承認申請され、その後、医薬品医療機器等法の改正に伴い、緊急承認制度の適用を希望する申請に切り替えられました。
 本申請の専門委員として、資料No.3に記載の10名の委員を指名しました。
 以下、報告書のページ数は、各ページの下部に○分の○で示したページ数で御説明いたします。審査の概要について、臨床試験成績を中心に説明いたします。
 なお、臨床試験において、本薬は2用量が用いられているため、御説明の際は、本薬375/125mg群を低用量群、本薬750/250mg群を高用量群として説明させていただきます。
 有効性につきまして、通し番号55ページ、表35を御覧ください。酸素投与を要しないSARS-CoV-2による感染症患者を対象とした国際共同第II/III相試験の第IIb相パートの結果を示します。
 主要評価項目は、SARS-CoV-2による感染症の12症状合計スコアの治験薬投与開始から120時間までの単位時間当たりの変化量及びDay4におけるSARS-CoV-2のウイルス力価のベースラインからの変化量のco-primary endpointとされ、事前に規定された本試験の成功基準は満たされませんでした。
 次に有効性に関する申請者の説明について、御説明いたします。通し番号52ページ、図4を御覧ください。第IIa相パートにおいて、主要評価項目である各時点におけるSARS-CoV-2のウイルス力価のベースラインからの変化量について、Day4時点で変化量の平均値がプラセボ群と比較して低用量群で0.88log10 TCID50/mL、高用量群で1.27log10 TCID50/mL大きく、本薬群でウイルス力価が減少する傾向が認められています。
 続いて、通し番号55ページ、表35を御覧ください。第IIb相パートのウイルス力価について、低用量群とプラセボ群、高用量群とプラセボ群の間で仮説検定の多重性が調整された結果ではありませんが、統計学的に有意な差が認められ、いずれの本薬群でもプラセボ群と比較して変化量が0.41log10 TCID50/mL大きく、ウイルス力価が減少する傾向が認められました。
 一方で、SARS-CoV-2による感染症の12症状合計スコアの変化量について、プラセボ群と比較していずれの本薬群でも統計学的な有意差は認められず、本パートの主要目的は達成されませんでした。
 通し番号62ページ、表38を御覧ください。第IIb相パートの副次評価項目の一つであるSARS-CoV-2による感染症の12症状の分類別スコアの治験薬投与開始から120時間までの単位時間当たりの変化量のうち、オミクロン株に特徴的な呼吸器症状[鼻水または鼻詰まり、のどの痛み、せき、息切れ(呼吸困難)]について、仮説検定の多重性は調整されていないものの、プラセボ群と比較して低用量群及び高用量群のいずれにおいても、統計学的に有意な差が認められました。
 表の下の部分を御覧ください。オミクロン株に特徴的な症状に対する臨床症状改善効果を確認するために、第IIb相パートの事後解析としてSARS-CoV-2による感染症の12症状のうち、ベースラインにおけるスコアの平均値が1以上であった症状、つまり鼻水または鼻詰まり、のどの痛み、せき、熱っぽさ又は発熱に、SARS-CoV-2による感染症の重症度分類の指標の一つである息切れ(呼吸困難)を加えた5症状について、治験薬投与開始から120時間までの単位時間当たりの変化量を確認したところ、低用量群で-3.17、高用量群で-3.26、プラセボ群で-2.49であり、低用量群とプラセボ群、高用量群とプラセボ群の群間差の最小二乗平均値は、それぞれ-0.40、-0.48であり、仮説検定の多重性は調整されていないものの、プラセボ群と比較していずれの本薬群においても統計学的に有意な差が認められました。
 加えて、第IIa相パート及び第IIb相パートのいずれにおいても、Day4のウイルスRNA量のベースラインからの変化量の平均値が、プラセボ群と比較して本薬群において約1log10 copies/mL減少する傾向が認められました。
 以上より、申請者は、これらの情報を総合的に勘案すると、本剤のSARS-CoV-2に対する抗ウイルス効果及び臨床症状改善効果が確認されたと述べています。
 続きまして、有効性に関する機構の評価について、御説明いたします。
 通し番号55ページ、表35を御覧ください。第IIb相パートにおいて、事前に規定した本試験の有効性の主要評価項目について、成功基準は満たされませんでした。
 なお、第IIb相パートでは、二つの主要評価項目をco-primary endpointと位置づけており、二つの主要評価項目の間で仮説検定の多重性の調整は計画されておらず、12症状合計スコアの治験薬投与開始から120時間までの単位時間当たりの変化量について、統計学的な有意差が認められていないため、Day4におけるSARS-CoV-2のウイルス力価のベースラインからの変化量についての統計学的な有意差についての評価はできません。
 また、第IIb相パートの主要評価項目の一つとして、SARS-CoV-2による感染症の12症状合計スコアの単位時間当たりの変化量(AUCを120時間で割った値)が設定されましたが、最終評価時点の転帰と評価が一致しない可能性もあるなど、症状スコアの推移をAUCにより評価することの意義は不明であり、主要評価項目としての適切性には課題があると考えます。
 通し番号56ページ、図5を御覧ください。こちらはAUCではなく、12症状合計スコアの推移を確認した結果であり、本薬群とプラセボ群でおおむね同様でした。
 通し番号63ページ、二つ目の点を御覧ください。申請者が有効性の根拠となると説明している12症状のうち、オミクロン株に特徴的と考えられる呼吸器症状及びベースラインにおけるスコアの平均値が1以上であった症状に息切れ(呼吸困難)を加えた症状の合計スコアについては、次の点を踏まえると、臨床症状の改善効果が確認できたとは判断できないと考えます。
 多様な症状を呈するSARS-CoV-2による感染症において、一部の症状スコアの結果から臨床症状の改善効果を解釈することには限界があること。
 また、単位時間当たりの変化量の比較では、プラセボ群と比較して本薬群の変化量が大きい傾向が認められていますが、群間差の推定値は、各症状スコアの最小単位である1を下回り、これらの症状について意義のある群間差が認められているとは解釈できないこと。
 また、臨床症状に係るいずれの副次評価項目についても、プラセボ群と本薬群の結果に明らかな相違は認められておりません。
 申請者は、第IIa相パート及び第IIb相パートにおいて、Day4のウイルス力価のベースラインからの変化量の平均値が、プラセボ群と比較して本薬群において減少したと説明しています。臨床試験において、プラセボ群と比較して本薬群でウイルスRNA量やウイルス力価が低下すること(または早期に低下すること)を確認することは重要であると考えますが、次の点を踏まえると、当該ウイルス力価の減少の臨床的意義を評価することは困難であると考えます。
 SARS-CoV-2による感染症は、通常は自然経過においても比較的短期間でウイルス量が減少すること。
 プラセボに対するウイルス量の減少がどのような株の場合に、どの部位、採取方法及び測定方法で得られた検体において、どの時点で、どの程度の差をもって確認できた場合に、薬剤投与による意義のある臨床効果が得られるかについて、十分な知見の集積には至っていないこと。
 また、同様の理由により試験実施時期やウイルスの測定条件等が異なる他剤の臨床試験で認められたウイルス減少の程度との単純比較にも限界があること。
 前述のとおり、本試験の第IIb相パートにおいて、ウイルス力価の減少に伴う臨床的に意義のある臨床症状の変化は確認されていないこと。
 なお、各国の規制当局における議論において、SARS-CoV-2による感染症治療薬の評価では、生存や患者の状態等において臨床的意義がある効果が示されることが重要であるとされています。
 以上より、機構は本薬の有効性について、次のように考えます。
 第IIa相パート及び第IIb相パートの成績に基づき、本薬によりウイルス量が減少する傾向が認められていることは否定しませんが、申請効能・効果に対する有効性が推定できるものとは判断できず、第III相パートの結果等を踏まえて、改めて検討する必要があると考えます。
 有効性の評価は御説明したとおりであるものの、医療・社会的観点から本剤をより早期に使用可能とすることの検討も可能と考えますが、現時点で得られている情報等を踏まえて本剤が承認される場合には、第III相パートの成績等に基づき有効性を再検討し、その結果に応じ製造販売承認の見直しを含めた適切な対応を取る必要があると考えます。
 安全性につきまして、通し番号64ページ、表39を御覧ください。第IIa相パート及び第IIb相パートにおける安全性の概要を示しております。本薬では、重篤な有害事象及び死亡に至った有害事象は確認されておりませんが、プラセボ群と比較して本薬群で有害事象及び副作用の発現割合が高い傾向が認められています。
 通し番号65ページ、表40を御覧ください。特に高比重リポ蛋白減少(HDLコレステロール減少)が本薬群で高頻度に認められており、高用量群では、他の脂質関連事象の発現割合もプラセボ群より高い傾向が認められています。
 いずれの脂質関連事象も非重篤であり、転帰はDay14及びDay28の検体が回収できず未回復であった5例及び軽快1例を除き回復であったことから、現時点では臨床上の大きな懸念となる可能性は低いと考えますが、本剤が承認される場合には、申請用量である低用量群でプラセボ群と比較して高頻度に発現している高比重リポ蛋白減少について、添付文書において注意喚起する必要があると考えます。
 通し番号66ページの2段落目の本薬の安全性についてから始まる段落を御覧ください。第IIa相パート及び第IIb相パートの結果を踏まえると、安全性上の大きな懸念は認められず、一定の忍容性は示されていると考えますが、SARS-CoV-2による感染症の患者に対する本薬の投与経験は限られており、本剤が製造販売後に多くの患者に使用された場合に、新たな安全性上の懸念が生じる可能性は否定できないと考えます。したがって、本薬の安全性について、実施中の第IIb/III相及び第III相パートの情報を含め、さらに検討をする必要があると考えます。
 なお、現時点で得られている情報を踏まえて本剤が承認される場合には、特に次の三つの事項に対応する必要があると考えます。
 一つ目として、非臨床試験において、胎児に奇形を示唆する所見が認められており、本薬は潜在的な催奇形性リスクを有することなどを踏まえ、妊婦または妊娠している可能性のある女性に対する本剤の投与は禁忌とすること。
 二つ目として、本薬はCYP3Aの阻害作用を有するなど、他の薬剤との相互作用が生じる可能性があることから、適切に注意喚起を行うこと。
 三つ目として、本薬が投与された患者は324例と限られていることから、安全性情報を確実に収集できる体制を確保することが必要と考えます。
 同じページの通し番号66ページ、「7.R.4、臨床的位置づけについて」を御覧ください。まず申請者の臨床的位置づけに関する説明について、御説明いたします。
 無症状のSARS-CoV-2病原体保有者及び酸素投与を要しないSARS-CoV-2による感染症患者を対象として実施した第IIa相パート及び第IIb相パートの結果から、本薬のSARS-CoV-2に対する抗ウイルス効果及び臨床症状改善効果が確認されており、安全性上の特段の懸念は認められていないことから、ウイルス感染後、早期に本剤の投与を開始することで、ウイルス増殖を速やかに抑制し、ウイルス感染に起因する過剰な炎症や免疫反応を抑えて臨床症状を改善し、さらには入院または宿泊療養等による隔離期間を短縮することで、ウイルス感染による患者への負担及び医療資源の逼迫の軽減にもつながると考えること。
 また、第IIa相パート及び第IIb相パートにおいて、SARS-CoV-2に対するワクチンを1回以上接種済みであった被験者の割合は約8割であったこと、第IIb相パートにおけるSARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有する被験者の割合は約3割であったことを踏まえると、本剤はワクチン接種の有無やSARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子の有無にかかわらず、無症状のSARS-CoV-2病原体保有者及び酸素投与を要しないSARS-CoV-2による感染症患者に対して、広く使用される抗ウイルス薬として新たな治療選択肢となり得ると述べています。
 機構は、臨床的位置づけについて、次のように考えます。
 第IIb相パートの成績に基づき、本剤の有効性が推定できるとは判断できず、現時点では本剤がSARS-CoV-2による感染症の治療選択肢になるとは判断できないと考えます。
 なお、現時点で得られている情報に基づき本剤が承認される場合には、効能・効果及び適用対象は、既承認の経口治療薬と同様に、SARS-CoV-2による感染症及びSARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有する等、治療薬の投与が必要と考えられる患者とし、禁忌等に該当する場合や供給量の関係で入手できない場合等で他の治療薬が使用できない場合に限り、本剤を使用することが妥当と考えます。
 通し番号67ページ、「7.R.5、用法・用量について」を御覧ください。第IIa相パート及び第IIb相パートの用法・用量等を踏まえ、本剤が承認される場合には、12歳以上の小児及び成人患者における用法・用量を、1日目は本薬375mgを1日1回、2日目から5日目は本薬125mgを1日1回経口投与とすることが妥当と考えます。
 また、審査報告(1)に対して申請者から意見が提出され、通し番号69ページ以降に添付しておりますので、御参照ください。
 通し番号74ページ、「1.1、有効性について」を御覧ください。審査報告(1)及び申請者からの意見を踏まえて、専門協議を開催いたしました。専門協議において、有効性が推定できるものとは判断できないものの、医療・社会的観点から本剤をより早期に使用可能とすることの検討も可能との機構の判断は、専門委員からおおむね支持された一方、1名の専門委員から有効性が推定されるものであることを否定することはできないとの意見も出されました。主な意見は次のとおりでした。
 提示された結果の解釈には、多様な症状の一部症状スコアの結果から臨床症状の改善を解釈することは限界があること、群間差の推定値は、各症状スコアの最小単位である1を下回り、意義を解釈しづらいことも考慮すべきであるが、一方で、デルタ株からオミクロン株に置き換わり、臨床症状も変化しており、さらなる変異を続けるSARS-CoV-2による感染症の治療薬を開発するに当たり、臨床症状の改善を検証することの困難さも考慮せざるを得ないことを勘案すると、申請に係る効能または効果を有すると推定されるものであることを否定することはできないという御意見。
 医療・社会的観点からの要望に応えるため、早期に使用可能とすることの重要性は否定しないが、一方で、臨床的有効性を期待する根拠が全くないまま使用可能としてしまうことは、単に不要な治療法かもしれないといったことだけでなく、他の治療法を受ける機会を奪ったり、リスクに対してベネフィットが大きく下回ったりする治療法を広く使用可能としてしまう潜在的危険性もあり、医療・社会的観点からもその期待に大きく反することになりかねないことも考慮すべきであるという御意見。
 有効性が示されていない状況で本剤が承認される場合には、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有する等、治療薬の投与が必要と考えられる患者を対象とし、禁忌等に該当する場合や供給量の関係で入手できない場合等で他の治療薬が使用できない場合に限り、本剤を使用することが妥当であるという御意見。
 専門協議の結果、機構の有効性等に関する判断に変更はなく、次のように考えます。
 緊急承認制度においては、検証的試験の成績が得られていない状況においても、探索的な臨床試験の成績に基づき早期に有効性の評価を行うことが可能とされています。機構は、探索的な臨床試験成績に基づく有効性の推定評価に当たっては、情報が不確実な探索段階での評価であるからこそ、検証的試験の主要評価項目と同一の主要評価項目を設定し、その他の評価項目と含め一貫した有効性が示唆される、もしくは検証的試験の主要評価項目のサロゲートエンドポイントとして明確に位置づけられた指標で有効性が示されるなど、適切に計画・実施された臨床試験において、試験の成功基準を満たすまたはそれに準じた成績が得られていることが重要であると考えます。
 最後に、通し番号79ページ、「4、総合評価」を御覧ください。以上の審査を踏まえ、機構は、有効性について、第IIa相パート及び第IIb相パートの成績に基づき本薬によりウイルス量が減少する傾向が認められていることは否定しませんが、申請効能・効果に対する有効性が推定できるものとは判断できず、当該試験の第III相パートの結果等を踏まえて改めて検討する必要があると考えます。
 有効性の評価は御説明したとおりであるものの、医療・社会的観点から本剤をより早期に使用可能とすることの検討も可能と考えます。ただし、現時点で得られている情報等を踏まえて本剤が承認される場合には、第III相パートの成績等に基づき有効性を再検討し、その結果に応じ、製造販売承認の見直しを含めた適切な対応を取る必要があると考えます。
 なお、第III相パートの総括報告書の提出可能時期は2022年11月を予定していると申請者が説明していること等を踏まえ、医薬品医療機器等法第14条の2の2第1項における緊急承認の期間は1年が適当と考えます。
 また、本剤が承認される場合には、ここに記載した承認条件を付した上で、承認申請された効能・効果及び用法・用量を以下のように整備する必要があると考えます。本品目は生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しました。
 御審議のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○清田部会長 ありがとうございました。
 それでは、開発治験に関係されて、多くのSARS-CoV-2の患者さんを診ておられる大曲先生の御意見を先に伺いたいと思います。
 大曲先生、コメントをいただけますでしょうか。
○大曲委員 清田先生、ありがとうございます。
 国立国際医療研究センターの大曲です。
 まず立場としては、清田部会長がおっしゃったとおり、私はこのお薬の治験に関わっております。計画と実際の医療機関での登録という点にも関わっていることを明らかにしておきます。
 2点あります。一つ目は、現場の感覚としても、治験の経過を見ても感じたことなのですが、デルタ株までのCOVID-19の臨床像、あるいは重大性、それとオミクロン株以降、正確に言いますと、オミクロン株が流行の中心になって、なおかつ予防接種の接種率が非常に高まって以降の臨床像の変化が極めて大きくて、これは先生方もお感じになっているとおりだと思います。
 でも、それは薬の効果を見ていくという観点では非常に難しい面があって、従来の多くの抗体薬、内服薬で行われてきたような枠組みで、いわゆる評価指標を決めて、デルタ株以前の株を対象とした場合の治験ではそうされてきたわけなのですが、それと同じ物差しをもってオミクロン株以降の流行における薬の効果を見ていくことは、本当に難しいというのが実感であります。
 ただ、一方で、そこで感じるのは、株の大きなシフトが起こった中で、病気の社会での位置づけもかなり変わってきたと思っています。もちろん死亡者を防ぐ、重症者を防ぐことも大事なのですが、今後はそれは当然として、社会のもろもろの負荷です。学校に行けないとか、仕事ができないとか、そういったものをどう減らすのかという観点での評価です。それ以外にもあると思いますが、そういうことで、私は治験の具体的なところの専門ではありませんが、少なくとも評価指標を変えていく必要があるのだろうというのは感じています。
 もう一つ言えば、そういう意味でフェアに考えれば、これまで承認されてきた抗体薬ですとか、内服薬がオミクロン株の流行下でワクチンの接種率が高い状況で、どういうパフォーマンスを示すのかということも併せて評価をしていく必要があるのだろうと思います。全てがデルタ株以前の状況でのデータだと思いますので、これが1点です。
 もう1点は、社会的な観点から1点だけ申し上げておきたいことは、どちらかといえば、一医師が考えていることもありますし、都道府県単位の対策に関わる者としての実感でもあるのですけれども、非常によかったことは、内服薬、抗体薬が世の中に出てきて、重症化リスクを下げることができる、入院リスクを下げることができることが実体的にできるようになってきたことは、社会にとってすごく大きいところだと思います。
 ただ、これも時期的にはオミクロン株以降の話なのですが、我々が使えて当然と思っている内服薬、あるいは抗体薬の存在意義が揺るがさざるを得ない実態はあると思っています。例えば抗体製剤に関して言いますと、オミクロン株の出現以降、様々な系と流行は、患者さんが感染したウイルスの種類と抗体製剤の組合せによっては、in vitroで示された中和活性の低下という観点ではありますけれども、要は臨床的にも効果は期待できないかもしれない、そういったことが起こってきています。なかなか難しい話です。
 もう1点は、内服薬がもともと出てきたときに関しては、非常に死亡リスクを下げる、あるいは重篤になるリスクを下げるということで効果が示されてきたわけなのですけれども、どうも見ていくと、治療の終了後に臨床的な所見がぶり返す、あるいはウイルス学的にもバイアラブルな、つまり増殖可能なウイルスがまた検出されて再治療がされる、ニルマトレルビルの話ですけれども、そういった事例も出てきています。FDAはそれに対して再治療の許可をしたことも聞いています。
 そういうことで、長々言いましたが、要は今後の治療のことを考えていくと、そうした抗体製剤とか、今ある抗体製剤や内服製剤がいろいろな事情で使えなくなることも、社会として準備をするという意味では、想定はしておくべきなのかと思います。社会的な意味を考えるという意味では、そうした前提も入れておくべきだと思いましたので、申し上げさせていただきました。そのための準備も考えておく必要があるのではないかということです。
 私からは以上です。
○清田部会長 ありがとうございました。
 これから委員の先生方の御質問、御意見を受けるわけですけれども、機構の評価は御説明があったとおりです。ただ、ここのところ、また患者数が少し増えてきて、恐らく第七波が来るだろうと予想する方が多いのです。これは誰にも分かりません。
 それから、ウイルスの変異の速度が速いものですから、オミクロンがそのまま流行するのか、あるいは別の変異株が入ってくるのか、これも全く予想がつきません。
 そういう意味で、緊急承認というのは、一つ曖昧な点も残しつつ、武器として持っていくという考え方があろうかと思います。第III相試験の結果を待って再評価されるという機構の御意見でございますけれども、これに対して、御意見、御質問がございましたら、受け付けたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ。
○島田(美)委員 島田です。
 機構としてこれを承認するということであれば、現場での使い方が非常に重要になってくるかと思います。
 このお薬ですけれども、CYP3Aで代謝された代謝物がCYP3A4のヘム鉄に配位するという不可逆的な阻害をする薬と考えられます。そのため、併用禁忌ということで、添付文書上の相互作用のところでありますけれども、患者さんはいろんな合併症を持っていて、実際のお薬、御自分の治療薬を再開したらいいかというような、そこら辺の不可逆的な阻害の場合には、3~4日ぐらいは酵素としてCYP3A4が機能しないと考えられますので、再開のタイミングとか、そういったところもある程度ここに記載をしていく必要があるかと考えております。
 要するに今回の、ゾコーバ錠の添付文書の相互作用の欄には、成分であるエンシトレルビルがCYP3A4を時間依存的に阻害することの記載がありません。添付文書に併用禁忌だけではなく、不可逆的な阻害を起こす可能性が高いことを相互作用の項にも記載して、現場での注意を十分にしていく必要があるかと考えております。
 以上です。
○清田部会長 機構からお答えいただけますでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。
 御指摘いただいた点も踏まえまして、今後、添付文書の記載については検討させていただきたいと考えております。
○清田部会長 島田先生、よろしいでしょうか。
○島田(美)委員 はい。ぜひよろしくお願いいたします。
○清田部会長 それでは、島田眞路先生、どうぞ。
○島田(眞)委員 ありがとうございます。
 今のお話は承認されたときのお話をされているので、これを本当に承認するかどうかというか、緊急時の承認ということで、塩野義さんからは申請があったということで、今、大曲先生も部会長の清田先生からも、新しい薬が必要だというお話はお伺いしました。それは誰も否定できません。今の状況で新しい薬が必要なのは当たり前なのですけれども、この薬が新しい薬として認められるかどうかが、今、一番問題になっているところだと思います。
 今、お話になったように、ウイルス量は減るけれども、臨床的なはっきりとした効果は示されない状況であるということは、機構から4回も5回もお聞きしました。塩野義さんは、それでもウイルス量が減るのだから、感染を抑える能力があるとか、あとは重症化を抑えるとか、いろんなことをおっしゃっているけれども、そこから先は想像にすぎません。臨床症状があまり変わらないというところが克服されていないことが一番問題で、だから、第III相の試験と併せて本当に有意差が出るような、要するに臨床症状の改善が見られるのだったら、これは承認に値すると思うのですけれども、今のところ、臨床的にはあまり効いていない印象があります。これがはっきりしない限り、ウイルス量が多少減るからという理由だけで承認というのは非常に危険であると思います。
 機構さんも5~6回にわたって、55ページ、64ページ、67ページ、75ページ、79ページ、全部同じステートメントです。ウイルス量が減るのは否定されないものの、臨床症状としてどうか、はっきりとした効果が現れていないということをおっしゃっていまして、これでも臨床的な有効性が推定されるから緊急承認するという意見は、私は暴論だと思います。
 しかも、これは新しい薬ではないのです。プロテアーゼインヒビターとしては新しくないのです。既にパキロビッド(パクスロビド)があります。でも、内服薬としては三つ目です。モルヌピラビル、パクスロビド、これです。三つ目なのです。最初の二つは重症化を抑えるところでははっきりとした効果が示されていて、オミクロン株でものin vitroではある程度効くという報告も幾つか出ています。今回の薬は、そういう意味では、新しさも本当はあまりないのです。そういう意味でこれは効果も弱いし、難しい。
 副作用が全くないかというと、許容範囲であるとはおっしゃっていますけれども、今も島田美樹先生がおっしゃったように、CYP3Aはこれを阻害することが分かっていて、ミダゾラムは8.8倍になったとか、はっきりと阻害するのです。相互作用による阻害には、かなりこれに注意しなければいけないし、催奇形性に関しても、機構としてはあると考えざるを得ないと判断されているわけです。だから、もしこれが発売されれば、添付文書にきっちりと妊婦への投与は禁忌というようなことが必要であるとおっしゃっていますし、私もそのとおりだと思います。
 副作用に関しても、ほかの薬よりも本当に少ないかどうかということに関しては、そうではなくて、はっきりとあるのです。これが一般にばんばん使われるようになって、軽い症状の方でもどんどん使っていいみたいな感じになると、当然妊婦のような方にまで使ってしまうということがあり得るので、物すごく危険な状況になると思います。
 そういうわけで、今の状況でこんなものをこの部会で審査すること自体がおかしいと思います。機構が何回も否定されているような薬を何でここで審査しなければいけないかということに、私は疑問を感じます。申し訳ないですけれども、清田部会長も大曲さんもよく分からないというのは新しい薬では当たり前でしょう、それ以外のことはおっしゃっていないので、これは問題だと思います。
 以上です。
○清田部会長 ありがとうございました。
 機構から何かございますか。ございませんか。
○医薬品医療機器総合機構 機構からは特にございません。
○清田部会長 ありがとうございました。
 御質問はあと4名いらっしゃいます。亀田先生、宗林先生、大隈先生、山口先生の順で伺ってまいります。亀田先生、よろしくお願いいたします。
○亀田委員 御指名ありがとうございます。
 東邦大学の亀田です。
 私はファビピラビルとの関連から2点質問させてください。
 1点目なのですけれども、確かに有効性というものがウイルス学的には認められたけれども、臨床的には認められていない。仮にこういった状態でこれを承認したときに、私たちがファビピラビルを承認しなかったこととの関連で、そこはきちんと線引きができて、説明が可能なのかということが1点です。
 もう1点は、将来的な有効性で承認するということは、ファビピラビルが新型インフルエンザ感染症に対して、もしかしたら有効かもしれないといった期待で承認したという経緯があったようですけれども、それと同じようなことにならないかということです。新型コロナウイルス感染症に対して、ファビピラビルの有効性はどうかという承認に上がったときにも、実際には有効性が確認されていない段階で、新型インフルエンザウイルス感染症に対する適応ということで俎上に上がってきたということがあります。それと同じような間違いにつながらないかどうかという懸念があります。
 ファビピラビルという前例に対して、新型コロナウイルス感染症と比較してどうかということ、そして、新型インフルエンザウイルス感染症に対して承認したということを踏まえてどうかということ、その2点について機構から御意見をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○清田部会長 機構からお答えください。
○医薬品医療機器総合機構 機構の評価といたしましては、本剤につきましては、本日御説明したとおりの評価をさせていただいております。また、ファビピラビルにつきましても、当時の部会で御説明させていただいたような有効性・安全性に関する評価をさせていただいたところでございます。それぞれで提出されたデータに基づいて評価をしているところでございます。
 制度の違いによる評価の差異ですとか、そういったところについては、厚労省から御説明いただくのがよいのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
○清田部会長 それでは、事務局からお答えできますでしょうか。
○事務局 事務局でございます。
 亀田先生の御質問は、ファビピラビルについて、今回の緊急承認制度を適用したら、承認されたのではないかという趣旨の御質問かと理解しておりますけれども、緊急承認制度においての審査をファビピラビルについて行ったわけではございませんので、明確な回答を差し上げるのは難しいと思っております。
○清田部会長 もう一つ御質問がありましたね。
○医薬品審査管理課長 いわゆるアビガンについて、新型インフルに対しての評価ということだと思いますが、それについては、当時の承認制度の中で、有効性・安全性、一定の評価がされた形で認められたと認識しています。
○清田部会長 よろしいでしょうか。
○亀田委員 インフルエンザウイルス感染症に対する試験で、新型に関してはデータのないところでということでしたので、ここでもしかしたらという承認をすることが、同じ過ちにつながらないかという懸念がございます。
 そして、今回これで承認することは、ファビピラビルの不承認ときちんとクリアに分けられるのだろうか、説明ができるのだろうかという懸念がございます。
 以上です。
○清田部会長 ありがとうございます。
○医薬品審査管理課長 アビガンにつきましては、まだ不承認というわけではございません。出されたデータが単盲検試験であったということで、データの評価上の問題だと認識しております。アビガンは継続的に審議しているということについては、御理解いただきたいと思います。
○亀田委員 もちろんそれは理解しておりますので、これも同じだと感じました。
 以上です。
○清田部会長 宗林先生、どうぞ。
○宗林委員 宗林です。
 2点伺いたいと思います。
 1点目、今日の承認のゾコーバは5日間投与というものですけれども、例えば55/82ページのところです。症状のスコアは6日目で見ていますが、ウイルス量の変化は4日目で見ています。52/82ページを見ると、表32ですけれども、Day4のところは確かにプラセボ群との間で差があるのですが、これをDay6にした場合には、有意差をもってプラセボ群との差があるのでしょうか。まずそれが御質問です。6日目になると、プラセボ群も下がってきますので、9日目になるとほぼ同じだと思うのですが、6日目の時点では差があると言えるのかどうかということをまずお聞きしたいと思います。
 もし有意差があるということであれば、例えば64/82分ページの機構の記載で、本薬によりウイルス量が減少する傾向が認められていることは否定しないがという文章になっていますので、もともと有意差がないということの判断であるのか、もし有意差があるのであれば、こういう書き方はなかなかないと思うのですが、その辺をお聞きしたいと思っています。私としては、症状を6日目で見ているのであれば、5日間投与ですけれども、6日目のウイルス量の差、有意差があるかどうかということが知りたいと思います。それが1点目です。
 もう1点は、本当に簡単なことなのですが、先ほどの酵素の阻害の話もそうですが、添付文書で生殖能を有する者が一定期間適切な避妊を行うという言葉がありますが、もし承認された場合、こういう言葉は具体的に何日以上とか、明確にしていただいたほうがいいと思っています。これは意見です。
 以上です。
○清田部会長 ありがとうございます。
 それでは、機構からお答えいただけますか。
○医薬品医療機器総合機構 資料を確認いたしますので、少々お待ちいただけますでしょうか。
○清田部会長 宗林先生、ちょっとお待ちください。
○宗林委員 はい。
 調べていただいている間に、添付文書にもウイルス量の変化の図が載っているのですが、6日目までのグラフになっているので、やはり6日目まで見ていると思いました。
○医薬品医療機器総合機構 機構でございます。
 大変お待たせして申し訳ありません。
 1点目の御質問ですが、表32のウイルス量は、IIa相パートの結果であり、本パートに関しましては、Day6の時点ではいずれの本薬群においても有意差は認められておりません。また、御指摘いただいた通し番号64ページで、ウイルス量が減少する傾向が認められていることは否定しないという表現についてですけれども、こちらはIIa相パート、IIb相パート、両方合わせて評価をしているところでございますが、多重性が調整されていないということもありまして、こういった表現をさせていただいているところでございます。
 2点目にいただいた添付文書の避妊期間の記載でございますが、添付文書には一定期間と書いてございますけれども、企業が作成する資材においては、具体的な日数を情報提供するように指導する予定でございます。
 機構からは以上でございます。
○宗林委員 ありがとうございました。
 確認までですけれども、表32で4日目は有意差があるということが書かれていますが、6日目になると、プラセボ群との差で、ウイルスの減る量についても差はないという結果だということですね。そうすると、今、ウイルスは下がって有意に減少させられるけれども、症状はあまり差がないと言っていますが、少し説明が違う感想をもちました。
○清田部会長 機構からお答えください。
○医薬品医療機器総合機構 日数が経つにつれて、プラセボ群との差が小さくなっていく傾向はあると思いますけれども、ウイルス量が減少することについては、傾向が認められていることは否定するものではないと考えております。
○清田部会長 宗林先生、いかがですか。
○宗林委員 6日目まで行ってしまうと、プラセボ群との間での有意差はないということですね。5日目まで飲んで、6日目で皆さん症状の判断をされておりますけれども、ウイルス量も6日目まで行くと、プラセボ群との間で有意差がないということですね。
○医薬品医療機器総合機構 ご指摘の表32、IIa相パートにつきましては、そういった結果になっております。
○宗林委員 分かりました。ありがとうございました。
○清田部会長 4日目は差がありそうだ、6日目になると差がなさそうだということになります。ですから、よく解釈すれば、4日目までの減少が強く出て、その間の実効再生産数が減るのではないかという解釈もできると私個人は思いました。
 大隈先生、どうぞ。
○大隈委員 関西医大の大隈です。
 2点質問させてください。
 本剤はパキロビッドパックと同じような作用機序を有する薬剤だと思いますけれども、この薬と比べて本剤はどういった位置づけになるのでしょうか。代替医薬としての使用なのか、あるいは併用が可能なのか、その点、お教えください。
 2点目は、添付文書案のことなのですけれども、機構案を見ると、申請者案調整中というところが何か所もあるのですが、こういった状況だというのは理解しているのですけれども、これは今後どういった経緯で確定していくものなのでしょうか。今の時点では確認ができにくいのですけれども、どういった時点で確定されて示されるようなものなのでしょうか。
 以上2点です。
○清田部会長 それでは、機構からお答えください。
○医薬品医療機器総合機構 すみません、少々お待ちいただけますでしょうか。
○清田部会長 大隈先生、ちょっとお待ちください。
○大隈委員 分かりました。
○医薬品医療機器総合機構 大変お待たせいたしました。
 1点目にいただいていた御質問ですが、パキロビッドパックとの位置づけの違いでございますが、報告書の通し番号の67ページを御覧ください。上から2段落目ですけれども、こちらに記載していますとおり、作用機序が同じであるからということではなく、臨床試験成績の評価結果も踏まえまして、現時点で本剤が承認される場合には、投与対象といたしましては、重症化リスク因子を有する等、治療薬の投与が必要と考えられる患者とし、パキロビッドパックを含め、他の治療薬が使用できない場合に限って、本剤を使用することが妥当だと考えているところでございます。
 2点目にいただいた御質問ですけれども、添付文書につきましては、本日の部会での御議論、また、分科会での御審議が予定されていると思いますので、そちらでの議論も踏まえまして、どういった形にするのが適切か検討していきたいと考えております。
 以上となります。
○清田部会長 大隈先生、よろしいでしょうか。
○大隈委員 添付文書案については、次の分科会での審議に向けて、調整されていくということでよろしいですか。
○清田部会長 そういうことだろうと思います。
○大隈委員 分かりました。承知しました。
○清田部会長 それでは、山口先生、お願いします。
○山口委員 手短にいたします。
 緊急承認の条件で、探索的試験で一定の有効性が示されている等々があったかと思います。個人的な意見としては、機構さんもお示ししていたとおり、II相試験で、特にIIbのところ、臨床症状スコアで有効性が示されていない。結果的に二つの主要評価項目はco-primaryという形で結果が示せなかった、臨床試験としては失敗というところで、有効性は推定できていないのではないかというのが私の意見です。
 先ほど大曲先生からは、臨床像の変化が大きいとか、その辺りの御説明がありまして、重々承知はしておりますけれども、ただ、もし評価項目の問題等であれば、II相の段階では評価項目を変えて、事後的に後づけで評価されていて、有意差があったとか、なかったとか、そういう話で、結局、評価項目の問題なのか、本当に効くのか効かないのかというところは、正直、今回の結果からは区別はできないということで、繰り返しになりますが、そういう意味で有効性が推定できていないと個人的に考えています。これは私のコメントです。
 一つお伺いしたいのは、機構さんでも厚労省さんでもいいのですけれども、有効性の推定ができてという条件があると思うのですが、今回の結果に関しては、有効性は推定できていないけれども、医療・社会的観点からという御説明なのか、あるいは有効性に関してもエンドポイントを変えたりして推定はできるのではないか、プラス医療・社会的観点という御主張なのか、どちらになりますでしょうか。それだけ御質問させてください。
○医薬品審査管理課長 私の理解としましては、機構の評価は一応ここに書いたとおりです。その妥当性も含め、加えて医療・社会的な観点からの評価はどうなのかということだと思います。御質問の答えとしましては、後者のような評価が可能かということになると考えております。
○山口委員 そうすると、事後的な解析になるけれども、推定できる部分もあるのではないかということで、プラス医療・社会的観点から御議論いただきたいという理解で正しいでしょうか。
○医薬品審査管理課長 繰り返しになりますけれども、機構、我々の評価の妥当性も含めということだと思いますので、そういう観点で議論できるかという理解でよろしいかと思います。
○山口委員 分かりました。了解いたしました。
 以上です。
○清田部会長 ほかに御質問がある先生はいらっしゃいますでしょうか。宮川先生、どうぞ。
○宮川委員 宮川です。
 今の山口先生の御指摘はすごく重要だと思います。何となく今の答えだと曖昧な形になってしまっているような気がします。有効性はここでは見いだせないということになるほうが、当たり前の反応だろうと私は思います。III相が出てくるまで有効性を見出すことができるのかどうか。これをもしそのまま認めて緊急承認した場合、今後臨床現場で使うという段階になったら、国民がそれを納得できるのかどうかが問われます。安全性は確認され、有効性は推定という、有効性がはっきり示されない段階でのお薬を国民が自ら服用するのかどうかということになってしまうので、国民に対する説明、その辺のところは曖昧にしないほうがいいのではないかと思います。
 以上です。
○清田部会長 ありがとうございました。
○医薬品審査管理課長 これは私が口を挟む話ではありませんが、あくまでも審議会、この部会、あるいは分科会になりますが、そこで最終的にどう評価するのかということを決めていただければいいと思います。その結果をもって、緊急承認できるのか、できないのかという決定をしていただければいいと理解しています。
○宮川委員 ありがとうございます。
○清田部会長 ほかに御質問はないようでございますけれども、本日の議論を踏まえますと、さらに慎重な審議が必要と考えられますので、今後、薬事分科会と合同で開催される部会におきまして、引き続き審議を行うこととしたいと思います。
 事務局におきましては、今日の議論を文書として取りまとめていただきたいと思います。
 それから、その内容に基づいて、次回の薬事分科会・医薬品第二部会の合同審議におきましては、引き続き審議を行いたいと思います。
 本日の議題は以上です。
 事務局から何かありますでしょうか。
○医薬品審査管理課長 それでは、今の清田部会長からの御指摘でございますけれども、今日の部会としての議論については、私どもで審議会あるいは部会としての審議結果、あるいは審議の内容という形でまとめさせていただきたいと思っております。
 その上で、先ほどもございましたとおり、一定の迅速性を持った評価を行う観点から、次回においては、分科会と部会の合同での開催という形にさせていただきまして、部会としての結論、分科会としての結論を併せて行っていただくような形で御議論をいただければと思っています。
 それまでの間に、先ほどもございましたとおり、必要であれば、添付文書、その辺の内容についても調整をさせていただき、その内容も含めまして、御議論いただければと考えております。そういった形を考えています。
○清田部会長 ありがとうございます。
○宗林委員 すみません。ちょっとだけ質問させてもらいたいのですけれども、今日は結論が出なかった、そして、薬事分科会と合同で検討しましょうということの結論であることは承知しています。これから緊急承認が出た場合のやり方ですけれども、この部会の結論に次がどうつながるのか教えていただけますか。
○事務局 事務局でございます。
 そうしましたら、参考資料1-3を改めて御覧いただけませんでしょうか。参考資料1-3をめくって、しばらく流していただいて、ページ数で申しますと、13/16ページを御覧いただけますでしょうか。
 第7条のところに部会の議決として、議決の取扱いについて定められております。今回、第3項のところを追加してございますが、第3項は法第14条の2の2第1項の規定による法第14条の承認、これがまさしく緊急承認に関することでございます。その後も並んでいますが、これらは医薬品・医療機器・再生医療等製品にそれぞれ対応する緊急承認制度が該当しています。
 そこは飛ばしまして、これらの事項については、第1項の規定にかかわらず、第1項というのは手前の通常の取扱いです。通常の取扱いにかかわらず、部会における調査審議に加えて、分科会において調査審議を行うものとするとされています。
 その後、ただし書がございまして、「ただし、当該部会において、分科会において改めて審議を行う必要はないとの決定がなされた場合は、分科会長の同意を得て、当該部会の議決をもって分科会の議決とすることができる」とされております。ですので、部会で御審議していただいた結果、改めて審議を行う必要はないという御判断をされ、その旨について分科会長の同意が得られた場合には、部会の議決をもって分科会の議決とするということになります。
○宗林委員 分かりました。ちゃんと読んでいなくて、申し訳ありませんでした。ありがとうございました。
○清田部会長 それでは、皆様、お疲れさまでした。
 まだ連絡事項がありました。失礼しました。
○事務局 最後に次回の部会の日程について、御連絡させていただきます。次回、薬事分科会・医薬品第二部会の合同開催の日程につきましては、追って御連絡をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○清田部会長 二度目になりますけれども、皆様、お疲れさまでした。ありがとうございました。
 
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

医薬品審査管理課 課長補佐 柳沼(内線2746)