第79回がん対策推進協議会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

令和4年4月28日(木)14:00~17:00

場所

新橋ビジネスフォーラム

  • ※オンライン開催

議題

  1. (1)第3期がん対策推進基本計画中間評価報告書案について
  2. (2)報告事項
    1. がん対策の主な施策について
    2. 国立がん研究センターがん対策研究所について
  3. (3)その他

議事

議事内容
○岩佐がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第79回「がん対策推進協議会」を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。
事務局を務めさせていただきます健康局がん・疾病対策課の岩佐でございます。よろしくお願いいたします。
なお、本協議会はYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきいただければと思います。
それでは、本日の出欠の状況でございます。本日、小原委員より少し遅れての御参加、谷口委員より途中での御退席、羽鳥委員からも若干遅れての御参加と伺ってございます。
続きまして、資料の確認をさせていただければと思います。資料は厚生労働省のウェブサイトにも掲載してございますが、議事次第、資料1から4、参考資料1から3がございますので、お手元に御確認いただければと思います。
マスコミ等で画像を使われます方は、撮影はここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
以降の進行につきましては山口会長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○山口会長 山口です。司会を務めさせていただきます。
現在、中間評価報告書に向けて皆さんで一緒にやらせていただいているのですけれども、今日が最終回となります。これを取りまとめた上で、次回のこの協議会が6月30日に予定されているそうなので、そこから第4期の基本計画についての議論が始まるということを承知しておりますので、皆様も今日が中間報告書作成の最終であるということを意識していろいろ御発言願いたいなと思っております。
まず、議題1「第3期がん対策推進基本計画中間評価報告書案」について議論を進めたいと思います。
一部は既に前回終了しております。ごく一部ですけれども、そういうことも踏まえながら、資料1について議論を進めていきたいと思っております。
今回提示されておりますのは、これまでの皆様の御意見を踏まえて事務局を中心に修正をさせていただいたものが対象になっておりますので、それを見ながら進めていきたいと思います。さらに、先ほど申しましたように、これから第4期基本計画に向けた議論が始まりますので、重要な視点、これは第4期でぜひということがあったら、積極的に御意見を賜れればと思っております。
では、前置きは以上にさせていただいて、事務局より「1)科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実」について、資料の説明をお願いいたします。
○岩佐がん対策推進官 それでは、説明に先立ちまして、簡単に資料1と2の形式的な御紹介だけさせていただければと思います。今回、資料1に関しましては、がん対策推進基本計画の中間評価報告書案という形で、前回までにいただいた御意見を踏まえ修正を加えたものをお持ちしております。前回13ページまでのところについて御議論をいただいたところでございますので、本日は14ページ目以降のところをまず御議論いただいた上で、最後に全体についても御意見を賜れればと思っております。
資料2は、資料1の進捗状況や、がん対策推進協議会としてさらに推進が必要と考えている事項等の記載を抜粋するような形で概要の資料を作成しております。報告書を公表する際にはこういった概要の資料を併せて公表していこうと考えております。本日は詳細な資料1で御議論いただこうと思っておりますけれども、そういった資料もあるということで御承知おきいただければと思います。
資料1の説明でございますが、前回までの御意見を踏まえまして修正を加えた場所に下線を引かせていただいておりますので、下線の修正部分を中心に御説明をさせていただこうと考えておりますので、御承知おきいただければと思います。
それでは、資料1の14ページからでございます。こちらは「科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実」という項目でございます。
17ページ、喫煙率について、「中間評価の時点で目標を達成できておらず」ということを明記しております。また、「ハイリスク飲酒」の言葉も付け加えております。
さらに、「HPVワクチンの個別の接種勧奨が実施されていること等を踏まえ」ということで、HPVワクチンにも触れつつ、「子宮頸がん検診の受診勧奨を進めるとともに、子宮頸がんの年齢調整罹患率の推移を注視し、それを踏まえて適切な対応を行っていく必要がある」と付け加えさせていただいております。
22ページ目でございます。がん検診の部分につきまして、「新型コロナウイルス感染症の影響ということががん医療にどのような影響を与えたのか、長期的に年齢調整罹患率や年齢調整死亡率等の推移を注視していく必要性がある」ということを加えております。引き続き、「がん検診のあり方に関する検討会」での議論等を踏まえ、しっかりと取り組む必要性がある。また、職域におけるがん検診についての位置づけが不明確であり、実施状況や精密検査の受診状況の把握等々についても引き続き検討をする必要性があるということ。また、「がん検診の精度管理について」ということで、文言を加えております。予防・検診のところにつきまして、22ページまで、修正した内容を中心に御説明をさせていただきました。
○山口会長 ありがとうございました。
基本はアンダーラインの部分が中心なのですが、改めてこの分野全体を眺めていただいて、御発言、御意見があれば、それも併せて賜りたいと思います。それでは、御意見をどうぞお願いします。よろしゅうございますか。それでは、松田委員、お願いいたします。
○松田委員 福井県健康管理協会の松田でございます。
がん検診について22ページにアンダーラインを引いて修正した文言をつけていただいたのですが、がん検診に関する一番の問題点は、やはり職域におけるがん検診だと思っております。何が問題かというと、職域におけるがん検診には法的な根拠がありません。それはまだまだ難しい面はありますが、職域におけるがん検診に関するマニュアルでは、地域の検診と同じように行うということを推奨はしています。もう一つの問題点は、職域で受けられない人たちがいて、それがなかなか改善されていないというところだと思います。ですから、職域におけるがん検診に法的な根拠を持たせることはまだなかなか難しいにしても、マニュアルに書き込んだように、職域でがん検診を受けられない人については、市や町の検診を受けやすいように、検診を受けるための休暇を与えるというところまで事業主の方たちには踏み込んで考えていただきたいと思います。
職域のがん検診の一番の問題点は、項目なども含めて制度がまだ定まっていない面があるということ、受けられない人たちがいるということです。少なくとも受けられない人たちに対する改善から取り組まないといけないかなと思っているところです。
以上です。
○山口会長 今の御意見に対して事務局からコメントがありますか。
○岩佐がん対策推進官 今、松田委員がおっしゃったところは職域、つまり、がん検診を受けることに対して、職場においても一定の責任を持たせる必要性があるということになりますでしょうか。そこに関しては、先ほど法律に関してということもおっしゃっていただいたかと思いますが、がん検診を受けさせるべき主体の問題というところもあるのかなと思っています。ですので、あまりそこまで踏み込んで言えるかというと、その点については今、明言できるものがないところではございますが、仕事等で受けることが難しい人がいるということに対して、何らかその手当てを考えるべきではないか、そういった御意見として少し記載を工夫させていただくという形でいかがでしょうか。
○山口会長 松田委員がおっしゃった前半の部分は、位置づけ不明確、仕組み云々で書かれていると思うのですが、おっしゃっておられることは、同時に、受けようと思っても受けられない人をどうするかというのをここに記載してほしいと。そういう意味だと考えましたけれども、例えば職域の検診を受けられないグループがまだ厳然として存在するので、そういう人たちの状況をしっかり調べ、対応することが望ましいとか、そんな文章でよろしいですか。松田委員、いかがでしょう。
○松田委員 はい。座長がおっしゃったとおりで、職域でがん検診を受けられない人たちをどうするかということが、なかなか議論が進んでいないと思います。法的な根拠までは一足飛びには無理だとしても、受けられない人たちにいかに便宜を図るか。私はがん検診を受けるための特別休暇をぜひ与えていただきたいと個人的に思っていますが、その辺りを今後調査し、議論をし、受けやすい状況をつくっていかないといけないと思います。文言については、事務局、座長にお任せしたいと思います。
以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
それでは、引き続き御意見を求めたいと思います。土岐先生、お願いします。
○土岐委員 私は、たばこ、飲酒のことですけれども、ここに書いていただいたように、なかなか改善しないという現状があるのですが、いろんな啓発活動をされていると思うのですが、もう一つ、これはがんとの共生のほうに関わってくるかもしれないのですけれども、キャンサーサバイバーもやめないと。食道がんの患者さん、治ってもまた飲酒・喫煙を続けて、今度下咽頭がんになるとか、そういうのがすごく多いので。それもハイリスク群なので、これはこの場所で言うべきか、後半の患者さんのケアの、二次がんという形で言うべきなのか、どちらかと思うのですが、がんになった、サバイブした方へ特に集中的にリスクをやっていくような、そういう活動をしていただければと思います。
○山口会長 具体的にこの協議会の事項のところに、先生の御意見ではどのような記載をとお考えでしょうか。
○土岐委員 特にキャンサーサバイバーに対して、特にリスクを通知していく必要があると思うのですが、そういう文言を加えるとすると、ここの場所のほうがいいのか、後半のほうがいいのか。
○山口会長 あくまでもこの文章は一般の国民に対しての文章になっているけれども、その中でも特にキャンサーサバイバーをターゲットとした一文を加えるべきであると。
○土岐委員 そうですね。いろんながんで10%以上の患者さんはもう二次がんという時代なので、1回がんになった人にきっちりとリスクを通達していくと。それをどちらに入れようかなと思ったのですけれども、これを入れられたらいいなと思います。
○山口会長 では、今の御意見を踏まえて、事務局としてどう対応されますか。
○岩佐がん対策推進官 ありがとうございます。
がんの治療等において、我々としてもがん診療連携拠点病院を中心に体制整備に取り組んでいるというところですが、まさにがんサバイバーに対しての禁煙への誘導みたいなところであれば、拠点病院等においてしっかりとそういう取組をしていただくということを推進しやすい側面はあるのかなと。そういう意味で、今回いただいた御意見を踏まえて、がんならではのターゲットということで、啓発することも必要だということを協議会の御意見として入れていただき、それを受けて、我々としても何らか考えていくということにつながりやすいのかなと思っておりますので、入れる言葉自体は会長と一緒に考えさせていただければと思います。
○土岐委員 よろしくお願いします。
○山口会長 ありがとうございました。
飯野委員、お願いいたします。
○飯野委員 17ページの対策協議会の内容ですけれども、これまでHPVワクチンの話をさせていただいて、引き続き子宮頸がん検診の受診勧奨を進めるということを入れていただいたのは非常にありがたいと思います。と同時に、接種勧奨は始まっているのですが、8年余り実質中止状態だったことは非常に大きなことで、お母さんたちにも不安はあるので、接種勧奨についても、引き続き接種の状況を注視しというような。接種が始まったことに対するフォローをしっかりやるもというニュアンスが入ったほうがありがたいかなと思いました。
具体的には、17ページの一番最後の行、「引き続き、接種状況を注視するとともに、子宮頸がん検診の受診勧奨を進める。また」とか、切っていただいてもいいと思うのですけれども、「接種勧奨」で、ワクチンのほうはおしまいというふうにしないほうがいいと思います。
○山口会長 やや微妙なところがある点なのですが、では、事務局から。
○岩佐がん対策推進官 予防接種室さん、何かコメントできますでしょうか。
○渭原予防接種室課長補佐 渭原です。
おっしゃるとおり、HPVワクチンの定期接種の積極的勧奨が4月1日から再開されました。同時に、HPVワクチンを接種したことによって生じた副反応等に対しても、そういった方々にも寄り添った支援を行っていくというのも大事でございますし、積極的勧奨が再開された後のフォローアップは協力医療機関等で診療していくというところ、そちらも重要な点でございますので、委員がおっしゃった点に関しては記載するということも検討されると思っております。
以上です。
○飯野委員 ありがとうございます。
○山口会長 そのほかにいかがでしょうか。ほかはなさそうですね。
私から1点お願いしたいのですけれども、9ページ、年齢調整死亡率の数値が出ているのですが、2017年、2018年までのデータが記載されていて、実際にはつい先日がんの統計が届いて、ここは2020年まで出ております。そうすると、協議会が非常に古いデータで議論した、さらにそういう問題をたった1年の違いだけのデータで議論したというのは、いろいろ批判を浴びる可能性もあるので、私としては、17、18、19、20と全部のデータを出すか、あるいは17年、20年の比較というデータにしておいていただくほうがいいのではないかなと思います。
ただ、たしか前に申し上げたときに事務局側としては17年、18年のデータに基づいて議論していただいたので、さらにその先のデータを出すことはいかがなものかぐらいの返事をいただいたのですが、やはり最新のデータで、傾向としてはそんなに大きく変わりませんので、私は入れていただいたほうがいいかなと思うのですが、事務局、いかがでしょうか。
○岩佐がん対策推進官 ありがとうございます。
この協議会は2年間にわたってこの中間評価の議論をしていただいたところだと認識しております。もう少し早く取りまとめをできればと思っていたところではありますが、議論を始めたとき、特にこういったデータについて評価をしていたときと現時点での数値というのが、傾向は同じにしても、一定程度新しいものが出ているということはあるのかなと思っております。
傾向と評価が果たして数字、別のものを新しく出してきたときに変わらないかということは、一応念のためチェックをさせていただければと思っておりますが、新しいデータを加えるということは可能ではあるかなと思っております。
○山口会長 ありがとうございました。
同じことが10ページ、11ページの表についても言えると思いますので、ここも最新のデータを可能な限り入れていただくようにお願いしておきたいと思います。
この部分について、そのほかに御意見はよろしゅうございますか。
それでは、次に移りたいと思います。22ページから41ページまでです。事務局から御説明をお願いします。
○岩佐がん対策推進官 22ページの一番下の辺り「がん医療の充実」分野から説明をさせていただきます。
24ページです。がんゲノム医療につきまして、一層促進するために、遺伝子パネル検査結果に基づいて提示された治療薬を投与された患者数等、アウトカム評価の手法の検討というところを付け加えております。
30ページでございます。「地域間及び医療機関間において取組状況に差が見られる」ということを記載してございます。さらに、「より適切な中間評価指標の設定」ということも入れさせていただきました。
次に、31ページ目、「チーム医療」というところでございますが、「医療機関同士の連携」ということも追記をさせていただいております。また、「拠点病院等における取組との連携」という形で、各検討会や部会等の議論を踏まえて、そういったことも含めて検討するという形にしております。
34ページ、支持療法のところでございますが、「外来も含めた」という形で追記をしております。
36ページ、希少がん、難治性がんのところにつきまして、「より適切に評価できる中間評価指標についても、次期基本計画において検討が必要である」ということを追記しております。また、「がん研究を推進することで取組を進めてきた」ということを追記しております。
38ページ、小児・AYA世代、高齢者のがん対策ということでございます。ライフステージに応じたがん対策でございますが、「がん医療の充実」分野と「がんとの共生」分野のそれぞれで取り組むべき事項をより明確化していくとともに、それぞれの分野における取組の棲み分けを再検討することも求められるとしてございます。
また、「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」等における検討内容も踏まえ、検討すること。晩期合併症に対する長期フォローアップを考慮した中間評価指標を検討していく必要があるとしております。
41ページ、がん対策推進協議会としてさらに推進が必要な事項としまして、患者のニーズに応じたがん研究、また、がん患者に対して治験や臨床試験に関する情報を提供する体制の整備についても引き続き推進が必要ということを加えさせていただいております。
以上、修正点につきまして御説明をさせていただきました。
○山口会長 ありがとうございました。
この分野について御意見をいただきたいと思います。大西委員、お願いします。
○大西委員 キュアサルコーマの大西です。
私からは希少がん、36ページです。1行目「希少がん対策について、取組の成果が見られる部分もあるが、患者への情報提供や医療機関の連携」と書いてあるのですけれども、「医療機関」の後に「、専門医」というのを一言付け加えていただきたいなと思います。医療機関全体でこの希少がん対策がなかなかできていないところも多いので、専門医との連携というのが我々患者にとっては非常に重要ですので、ぜひその文言を入れていただきたいということ。その後の難治性がん対策につきましても、「がん研究を推進することで取組を進めてきたが」の後、希少がん同様、「情報提供や連携を推進するとともに」ということで、ここにはそういった文言をぜひ入れていただきたいなと思います。ただ単にこの評価指標の話しか書いていないので、その辺りの連携とか情報提供について、難治性がん対策についても入れていただきたいなと思います。
以上です。
○山口会長 事務局、いかがでしょうか。
○岩佐がん対策推進官 御意見ありがとうございます。そういったことを付け加えさせていただくような方向で考えたいと思います。
○山口会長 それでは、大賀委員、お願いいたします。
○大賀委員 日本小児・血液がん学会の大賀でございます。
38ページの2段目「小児がん及びAYA世代のがん対策については」のパラグラフの最後の部分、「また、晩期合併症等に対し長期のフォローアップが求められることを考慮した中間評価指標を検討していく必要がある」という文のところに、「晩期合併症やがん素因」というのを入れていただければと思います。がんゲノムが実装されまして、実際に遺伝性のがん素因というのは、まれながら非常に重要な問題になってきている。先ほど成人でも二次がんのことが問題になっていましたけれども、そこが長期フォローアップの中で同時に問題になってくるところでございます。お願いしたいと思います。
○山口会長 すみません。もう一度文言を繰り返していただけませんか。ちょっと聞き取れなかったものですから。
○大賀委員 失礼しました。「晩期合併症やがん素因等に対し」というところに「やがん素因」というのを入れていただけませんでしょうか。
○山口会長 事務局、どうぞ。
○岩佐がん対策推進官 この辺りはぜひとも先生方に御意見を頂戴したいのですが、がん素因と言いますと、恐らく遺伝子変異によってがんが比較的出やすい特性みたいなものになると思うのですが、そういった方のフォローアップをどうするかであったり、そのフォローアップをすることによってどれくらいよくなっていくのかというのは、その方向性は定まっているものなのでしょうか。
○山口会長 素因のある方に対するフォローアップというのは、ある程度明確なものが各分野でできているとは思いますけれども、その辺りを専門にしておられる委員の方から、今の修正に関する御意見をいただきたいと思います。中釜委員、お願いします。
○中釜委員 中釜です。御指摘ありがとうございました。
「がん素因」という言葉は、今、厚労省から説明がありましたように、遺伝的な素因を含めたことだろうと思うのですが、これをいかにがんの予防あるいはがんのハイリスクの定義につなげていくかというのは、当然重要なテーマであり、これからがんゲノム医療を推進するに当たって、さらにその研究を進めていく必要がある学問です。
現状では、一部の遺伝的な素因については、既に医療実装が行われている部分もあるのですけれども、これはまだまだ議論が深いところです。例えばソマティックな変異によるクローン造血という現象が恐らく全ての人に起きている状況の中で、これをどういうふうにしてリスクの定義につなげていくかというのは、これからの重要なテーマだと思います。ここは「がん素因」という定義があまり明確でない言葉を安易に使うことによる混乱もあるように思うので、もう少し丁寧な書きぶり、あるいは遺伝的な高リスク群というところと整合性をつけながら、言葉の書きぶりと書き込む場所については少し検討が必要かと思いました。
私からは以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
そのほか、専門としておられる方から何か御意見はございますでしょうか。石岡委員。
○石岡委員 東北大学の石岡です。
晩期合併症と遺伝的素因とするのであれば、それは少し幅が広過ぎるということであれば、これは「遺伝性腫瘍」と書いてしまったほうがいいのではないかなと。ここはもう学術分野として確立していますし、ガイドラインも出ています。「素因」にしてしまうと、今、中釜委員が話されたようにかなり幅が広くて、不確定要素もかなり大きいです。一方、「遺伝性腫瘍」というのは、もう既に確立した学問領域で、今のがんゲノム医療の中でも具体的に診療として行われている部分ですので、そういった言葉はどうかなと思いましたので申し上げました。
○山口会長 どうぞ。
○中釜委員 中釜です。
今の石岡委員のご発言も含めて、私も十分に理解するのですけれども、特に小児・AYAがんの場合は、成人に比べると恐らく何らかの遺伝的な素因が関係しているところは大きいと考えられているけれども、まだその実態をつかみ切れていないというところもあろうかと思います。そこを含めて「晩期合併症等」としてしまうのは少し大ざっぱ過ぎるかもしれないのですが、今、いい文言が浮かばないですけれども、「リスクに応じた」とか、そういうところを何か書けるかというのは検討していただくほうがいいのかなと。「遺伝性腫瘍」と書いてしまうと、現在遺伝性腫瘍で定義されているものは非常に限定的になってしまうところもありますし、恐らく大賀委員が御指摘の点はもう少し広い、ただし、まだ実態が十分に定義できない部分も含めてだろうと思うので、そこは書きぶりに注意しながら、ちょっと検討してみてはどうかなと思います。そこは適切な言葉がすぐに思い浮かばないので、申し訳ありません。
○山口会長 実際から言いますと、小児がん及びAYA世代のがんで、大人で遺伝性腫瘍が1~2%、それがもっと高い、5%とか10%ぐらいに。典型的には遺伝性腫瘍ですね。それぐらいになると思うのですけれども、ここの後期合併症というのは、100%、小児がん・AYA世代の遺伝性素因を持っていない人も含めてのことを言っていて、一方で、遺伝性云々というのは5%程度の対象になるのです。2つの言葉を並べてしまうと、かなりニュアンスが異なってしまうような気がしますので、その点を中釜委員も石岡委員もおっしゃっているのではないかなと思うのです。その辺のことを注意しながら書きぶりを検討させていただくということで、大賀委員、よろしゅうございますか。
○大賀委員 お願いいたします。ありがとうございます。
○山口会長 ありがとうございました。
それでは、そのほかの御意見、いかがでしょうか。よろしいですか。
それでは、この分野はそれ以外になさそうなので、引き続き41ページから52ページに移りたいと思います。御説明をお願いします。
○岩佐がん対策推進官 41ページ「尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築」の分野でございます。
まず、43ページの下段でございます。「緩和ケアの提供について、地域の実情や今後のがん診療提供体制のあり方を踏まえ、提供体制やそれらを担う人材のあり方を検討する必要がある」と修正しております。その上で、「緩和ケアの質の向上に向けて、専門的な緩和ケアを提供する人材の育成等々についても検討する必要がある」としております。また、苦痛の部分のところに「心理的・社会的苦痛等」ということも付け加えております。
46ページ、患者への相談支援等のところでございますが、「患者のニーズや課題等を把握した上で」ということ。また、ピアサポーターについての記載も追記をさせていただいております。
47ページの真ん中辺り、在宅緩和ケアに関しまして、「『がんとの共生のあり方に関する検討会』や『がんの緩和ケアに係る部会』での議論も踏まえ」と、追記をしております。また、「在宅緩和ケアの一層の周知」ということも入れさせていただいております。
50ページの真ん中、「がん患者だけでなく、その家族に対しても引き続き充実させていく取組が必要である」ということを入れております。
また、「がん患者の経済的な課題の把握や利用可能な施策の更なる周知」ということで、入れさせていただいております。
52ページでございます。こちらにつきましては、医療機関以外にも、自宅等における支援の充実ということ。それから「高校生に対する教育支援についても」と追記をしております。
また、高齢者について、十分な評価ができなかったということを明確化し、「多様な高齢のがん患者の療養生活を支えるための対策や、評価指標の設定、医療と介護の連携の更なる強化について、引き続き、検討を行っていく必要がある」としてございます。
以上、簡単ではございますが、当該分野の説明でございます。
○山口会長 それでは、ただいま御説明のあった部分について御意見を賜りたいと思います。久村委員、お願いします。
○久村委員 金沢医科大学の久村です。
46ページの相談支援及び情報提供のセクションについてです。46ページの最初のほう、「患者への相談支援や情報提供についての体制整備が進められてきているが、患者のニーズや課題等を把握した上で」という文章になっていますが、「患者だけではなくて、患者と家族への相談支援」、それから「患者や家族のニーズ」と記載していただくほうがよろしいかなと考えております。特に45ページの評価項目の3022番を見ても、家族、特に小児がん患者の家族の悩みや負担に対する相談支援というのは、いまだ十分とは言えないような状況ですので、「家族への相談支援」「家族のニーズ」という文言を入れていただくのがよろしいかなと考えております。
もう一点、50ページ、サバイバーシップ支援についてです。「サバイバーシップ支援について、治療開始前における就労支援に係る情報提供については」と表現されているのですが、治療開始前の就労支援に限定して記載するよりも、治療中、それから復職後の両立支援、それから離職後の再就職支援、それから小児がんサバイバーの新規の就労の支援ということも含めて、様々な状況での就労支援をより一層充実させていく必要があると中間報告では記載したほうがいいのではないかなと考えています。
48ページの評価指標の3044番、3045番にありますように、ハローワークと連携している拠点病院の数であるとか、相談支援センターでの就労相談の件数というのは確かに増加しているのですけれども、実は就労支援に携わるソーシャルワーカーの実感としては、職場復帰とか再就職の支援に関わる情報というのは、いまだに患者さんやその御家族には十分に届いていないというのが現状だなと実感しております。
ですので、例えば「治療開始前及び復職や離職後の再就職の時期を含めて、就労支援に関わる情報提供については」といった文言を追加していただいたほうが、サバイバーシップ支援、長期間にわたって患者さんの生活を支援していくという意味においてもより適切かなと考えています。
以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
御家族を入れるということはそのとおりだと思いますが、後のほうの就労支援の関係は、あえてここに「治療開始前」と書いてある最大の理由は、絶対やめては駄目ですよということを治療前に言わないと、我々の経験でも途中でやめてしまう方が非常に多いので、そこを何とか担保してくださいという心が籠もっているのだと思います。一方で、そこに4つの時期を書き込むというのは、このパートとしてはちょっと長くなり過ぎる、細かくなり過ぎるような気がいたしますが、例えばそれを前のほうの進捗状況の辺りに移した上で、ここは「就労支援」という言葉にするか、あるいはもうワンワードぐらいを入れるかという整理もあるのではないかなと思いますが、事務局として御意見はいかがでしょう。
○岩佐がん対策推進官 ここに関しましては、追記、修正をする際に、「については」というところで限定的になってしまった感があるかなと。先ほど山口会長がおっしゃられたように、あまりここに全部羅列してもと思いますので、1つの案としましては、こういった情報提供をはじめとしてという形で、少し例示のような形にして、より幅広くその支援の充実をしていく必要があるという記載ぶりにするのはどうかと考えておりますが、いかがでしょうか。
○山口会長 久村委員、いかがでしょうか。
○久村委員 時期を限定せずに、広く就労支援をこれからも推進していくというニュアンスを届けていただければ、私のほうはそれでいいと思います。
○山口会長 ありがとうございました。
では、三上委員、お願いいたします。
○三上委員 「にじいろ電車」の三上と申します。
私のほうからは52ページの真ん中辺り、「また、教育支援も含めた、医療機関におけるオンライン環境の整備について検討する必要がある」という文言を加えていただいたことに感謝したいと思います。
文言を特に変更というのはありません。今後、第4期の中でオンライン環境を使った支援の好事例が集まってきて、支援の1つの形になっていくことを願っております。
以上になります。
○山口会長 ありがとうございました。
それでは、看護協会の森内委員、どうぞ。
○森内委員 森内です。よろしくお願いいたします。
47ページ「がん対策推進協議会としてさらに推進が必要と考える事項」について、「在宅緩和ケアの一層の周知が必要である」と追記していただきまして、ありがとうございます。評価指標にありますように、「3034 望んだ場所で過ごせたがん患者の割合」がさらに高まっていくように、在宅緩和ケアの体制整備は急務だと考えております。例えば外来で通院できていた患者も、病気の進行とともに病院への行き来も難しくなってくるという状況がございます。そうなると、訪問系のサービスをうまく利用できるかどうかで住み慣れた場所や望んだ場所での生活を継続できるかどうかというのは変わってきます。そこで、「推進が必要と考える事項」の中に追記をお願いしたいと考えています。
具体的には、2行目「患者の望む場所で過ごすことができるような在宅を含めた地域における」の次に、「訪問看護や訪問診療等の」を追記していただいて、「緩和ケア提供体制の検討、在宅緩和ケアの一層の周知が必要である」としていただけないか、御検討いただきたいと思います。
以上です。
○山口会長 今おっしゃられた追記の2つのキーワードは、緩和ケア提供体制では含ませていませんか。先ほどから申していますように、ここは簡潔明瞭にという基本方針がありますので。木澤委員、お隣にいらっしゃるのですが、いかがでしょうか。
○木澤委員 ありがとうございます。木澤です。
確かにお気持ちは非常によく分かるところで、非常に重要なところだとは思うのですが、患者さんの望む療養場所はかなり多様ですので、必ずしも訪問看護、そして訪問診療だけではないので、十分この文言で様々なオプションを書いているのではないか。その後に「在宅緩和ケア」となっていますので、十分そこでカバーしているのではないかと私は考えます。
○山口会長 森内委員、いかがでしょうか。
○森内委員 分かりました。
訪問看護や訪問診療に「等」というのをあえて追記していただけたらと思いました。先ほど申しましたように、これからはその辺りのことが大変重要になってくると思いましたので、御協議いただきましたけれども、承知いたしました。
○山口会長 結局、「在宅緩和ケア」と言った瞬間に医師、訪問看護師が必須になりますね。そういう理解を私はしているのですが、その2つの職種なしで在宅緩和ケアはできないと思いますから、含まれていると考えていますが、看護協会としてはいかがでしょうか。
○森内委員 私たちもそのようには捉えていますが、あえてここは強調させていただいたほうがより具体的に伝わりやすいのではないかと捉えました。
以上でございます。
○山口会長 分かりました。
ほかとのバランスも考えると、ここはこのままにさせていただくのが妥当かなと思いますので。
○森内委員 了解いたしました。
○山口会長 それでは、谷口委員、お願いします。
○谷口委員 ありがとうございます。島根県の谷口です。
2つありまして、1つは先ほどと同じところで、47ページ目の緩和ケアについての部分です。下から2つ目「緩和ケア提供体制の検討」と書いてありますけれども、検討してから充実があるのだと思いますが、病院での緩和ケア、そして在宅での緩和ケア、その辺りの充実という、もう一歩踏み込んだ言葉でもいいのかなとちょっと思った次第です。検討があって、充実というのがあると思うのですけれども、「何々の検討より」も「何々の充実」という表現はどうかなということが1点。
○山口会長 47ページの「緩和ケア提供体制の検討」を「充実」にするという御意見ですね。
○谷口委員 そうですね。「検討」という言葉よりも一歩踏み込んだほうがいいのではないかなと思った次第です。
○山口会長 もう一件は。
○谷口委員 どこが適切なのか分からなかったのですが、例えば相談支援センターというのが病院にあって、いろいろ相談に応じるというのがありますし、あと、労働部局に就労支援というのがあると。いろんな相談体制があるのですけれども、そういった相談体制のネットワーク化みたいなものが一方で必要なのかなと思って、ただ、どこに入れたらいいのか分からなかったので、これは意見として言わせていただきます。今回、中に盛り込めなくても、ぜひ次の計画の中で検討いただければと思った次第です。
○山口会長 それでは、事務局から「充実」というワードとネットワークの関係について、何かおっしゃっていただけますか。
○岩佐がん対策推進官 「充実」というところでございますが、もちろん協議会の意見としてそういう方向でということはあり得ると思っております。ただ一方で、現時点で「検討」とさせていただいているのは、充実をするにしても具体的にどういうところを充実させていったらいいのか。現状やニーズ、そういったところの把握なども現時点ではなかなかできていないというところもありまして、まずは検討というところから進めさせていただければと考えてございます。
ネットワーク化につきましては、おっしゃるとおり、相談をしても、うちでは対応できないというところが多いようですと、それは患者さんにとって分かりにくいといったところはあるのだと思っております。
例えば46ページ目の前半ぐらいのところに、ニーズや課題等を把握した上で、さらなる活用や相談支援体制のネットワーク化と少し入れさせていただくのはどうかなと思ったところでございます。そこは検討させていただければと思います。
○山口会長 谷口委員、検討、充実については、そういう御説明なのですが。
○谷口委員 それでいいです。検討はしっかりしていただいて、次に充実があると思いますので、それで結構です。ネットワーク化についても、もし入れられるのであれば入れていただけたらありがたいなと思った次第です。結構です。ありがとうございました。
○山口会長 どうもありがとうございました。
この部分について、そのほかに御意見等、いかがでしょうか。土岐先生、お願いします。
○土岐委員 どの部分に落とし込むか、私も悩んでいるところですが、コロナで検診以上に実臨床の場で困ったのが、これは緩和ケアだけではないのですけれども、患者さんが化学療法中とか、術後も含めて、熱発をすると受け入れてくれる病院がないという事態に陥って、患者さんにも大変迷惑をかけました。
多分がん診療連携拠点病院というのは、ほとんどコロナの重点医療機関だと思うのです。なので、2つの役目をやっていたと思うので、がん診療連携病院においては、がん患者に対する、医療逼迫を想定した医療体制をどこかで考えていただけたらなということが、課題のような気がしました。
大阪府でも透析患者とか妊婦さんは、かなり府が中心になってやってくれているのですけれども、がん患者さんというのは数が多過ぎて、そこまで手が回っていないという状況なので、これは拠点病院に頑張ってほしいなと思って、どこかにそういう形の文言を入れていただきたい。次期の4期にはぜひそういうのを目標にしていただきたいと感じております。
以上です。
○山口会長 では、事務局から。コロナの担当でもありますので、どうぞ。
○岩佐がん対策推進官 御意見ありがとうございます。こちらの資料の中では十分反映させているわけではないのですが、次期の拠点病院の整備指針の検討の中でそういった視点は加えておりまして、我々がん対策を進める立場として、BCP、特に感染症に関する対応の中でどのように役割分担をし、がん患者に対する医療の継続をどういうふうに担保していくのかという視点も、拠点病院の取組を進める中では検討いただく必要性があるのだろうと思っておりまして、実際にそういう要件等についても検討を始めているところでございます。現時点ではそういった取組を開始したところでございます。
○土岐委員 それでよろしいと思います。この中間報告書全般に、コロナは検診が減ったという記載は何か所か見たのですが、検診以外についてはあまり記載がなかったもので、そういうのも現場では問題が多かったと感じた次第でございます。
○山口会長 それでは、その点も併せて事務局を中心に検討させていただこうと思います。書きぶりですね。
次に、根岸委員、お願いします。
○根岸委員 根岸です。よろしくお願いいたします。
50ページの協議会としての事項について、「中小企業」という言葉が入っておりまして、これはこれでありがとうございます。感謝しております。一層中小企業で両立支援が進むことを願っているのですが、最近私のところで直面した問題として、両立支援をして、その途上で就労者が亡くなるということが続けて発生いたしました。中小企業の場合には専門職がおりませんし、特に専任義務がない事業場においては両立支援をするのも難しいし、そして就労している者が両立支援をした結果、亡くなるという事態について、私自身も物すごく精神的にダメージを受けましたし、それから一緒に働いている従業員、特に数が少ない、そして専門職が不在という中でそういう事態に立ち向かって、そしてまた自分たちで気持ちを奮い立たせて頑張ろうという気持ちになるまでそれ相当の期間もかかりました。
ですから、患者さんあるいはその御家族に対する情報提供などの支援というのはもちろん必要ですけれども、特に中小企業、私の立場から言わせてもらえれば、企業に対する、中小の規模、そういうところの両立支援を進めていく上でのいろんな課題が出てきているように思いますので、事業場に対する支援というものも今後、4期になるかと思いますが、充実できるような形で入れていただけると大変ありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
○山口会長 根岸委員、具体的に中小企業で専門職を持った方の両立支援をサポートするために、例えばどういうことを考えての御発言ですか。
○根岸委員 例えば、現在さんぽセンターを利用するようにということで、あるいはさんぽセンターにいらっしゃる両立支援コーディネーターの活用ということも言われているのです。そういう方に相談をするという手もあるかと思うのですが、その情報も中小企業では持っていないケースが見受けられます。
さらに、中小企業の中でどういった専門職を具体的にと言うと、非常に難しいと思いますけれども、具体的にどういう職種というのは挙げにくいかと思いますが、産業医であるとか産業保健師であるとか、もちろん両立支援コーディネーターであるとか、支援をしていく上で専門的な知識のある方の存在というのは、両立支援の取組を進める上では重要な方たちになるかと思うのですが、いかがでしょうか。
○山口会長 大企業ではそういう方がいらっしゃるけれども、中小企業ではそういう方がおられない。中小企業の職員の方の両立支援に対して、医学的・社会的なアドバイスをしっかりできるような体制が必要だというふうにまとめていいですか。
○根岸委員 そうですね。そのとおりです。
○羽鳥委員 羽鳥ですけれども、よろしいでしょうか。
○山口会長 どうぞ。
○羽鳥委員 日本医師会では、両立支援という立場からがん患者さんの社会復帰と産業医によるサポートは非常に重要視しております。そして、50人以上の企業であれば、いわゆる産業医を置かなければいけない。東京都では30人以上でも置くべきだという意見を出されていますし、それから今、御指摘のさんぽセンターでもいるのですが、これは事業主、保険者、社内衛生担当の方の熱意の差もあるのだろうなと思います。ただ、日本医師会でも産業医に対する教育の中ではここはとても重視しています。診療報酬上もきちんと加算ができることになっているので、もっともっと強く呼びかけていただければ、産業医の先生たちも動いてくれると思いますので、どうぞよろしくお願いします。
以上です。
○山口会長 根岸委員がおっしゃったことは大変心が痛むのですけれども、両立支援を実施したために亡くなったということは多分ないと思うのですね。
○根岸委員 はい。そういうことではないです。
○山口会長 可能性としては、自分しかいないので、非常に無理をして体を痛めてしまったというのはあるかもしれませんけれども、あまり悔やまないほうがいいと思うのです。
○根岸委員 はい。御本人とか御家族の満足感という上では、就労を続けられたということは、決して否定的に捉える内容ではないです。やれるだけのことはやったし、最後まで仕事ができてというところの満足感はもちろん得られています。ただ、続けてそういうケースがここ半年間であったもので、気持ち的にはどうしても落ち込んでしまう。両立支援をしていくと、こういう問題にも直面せざるを得ないのだなという印象を強く持ちまして、そこも含めた中小企業への支援ということを今後の課題として考えていかなくてはいけないと思っています。
○山口会長 今までの議論を踏まえて、事務局として御意見はいかがですか。
○岩佐がん対策推進官 ありがとうございます。
こういった文章の中でどこに反映させることができるのかというのは、非常に悩ましいものではありますが、サバイバーシップというものの中に、御本人のみならず、その周りの方々、それは家族よりもさらに広がって、周囲の方々へ何らか影響があるというところで、そういったことに対する支援、お互いに支援をしながらということかなと思っています。
ターゲットがどんどん広がっていくと、我々のほうでもどこがどうやってという体制が分かりにくくなることもあるのかなとは思いますけれども、ベースとなる産業医や、先ほど羽鳥委員が仰っていただいた医師会さんでの取組などを含めて、ベースとなるような制度の中で、がんというところでプラスアルファで何ができるのかということかなと思っております。どこかに記載ができるのかというのは検討させていただければと思っております。
○山口会長 根岸委員、そういう形で進めさせていただいてよろしいですか。
○根岸委員 ありがとうございます。今回、具体的にどこにどういう文言を入れるかというところまでは行かなくても、こういう課題もあるのだということで、今後の議論の中に加えていただければありがたいです。よろしくお願いいたします。
○山口会長 ありがとうございました。
そのほかはいかがでしょうか。木澤委員、どうぞ。
○木澤委員 木澤です。
1点、どこに書いたらいいか分からないのですが、52ページで、先ほど御発言いただいたように、小児・AYA世代のところで「医療機関におけるオンライン環境の整備について検討する必要がある」という一文があるのですが、コロナ禍で本当に大きな問題が起きたなと思っているのですけれども、長期入院の中、家族に全く会えずに亡くなっていく方がいて、病院の中にオンライン環境が全く整っていない病院は、本当に孤独のまま患者さんが亡くなるということがかなり頻繁に見られました。大変心を痛め、御家族の気持ちを伺ったり、遺族外来等をやっていた次第ですが、これに加えて、長期療養になる患者さんにとって、がんに対する情報を得るとか、自分の友人であるとか、いわゆるがんに罹患した友人たちとコミュニケーションを取り合うということは非常に重要なのですが、それもできないような状況だったと聞いています。なので、患者さんが容易に利用できるインターネット環境の整備というのは必須だと思うので、ここを強く書けないかと思いましたので、発言させていただきました。
○山口会長 事務局、いかがでしょう。
○岩佐がん対策推進官 ありがとうございます。オンライン環境の必要性が徐々に高まってきているというのは、そのとおりだと思っております。ちょっと難しい点が、がん特有の課題なのかと言われると、恐らくそうではないところがありまして、がん対策としての評価の中には、そういう側面もあるということの問題提起は一定程度あってもいいのかなというところで、こういう書き方をさせていただいているところではございますが、医療全体で本来考えるべきところなのかなというふうにも考えておりまして、現段階においては検討する必要があるというところにとどめさせていただくのがいいのではないかと思ってございます。
○山口会長 木澤委員、いかがですか。
○木澤委員 お気持ちはよく分かりますが、でも、本当に切実な問題なので、何か書いていただきたいなと思いました。
以上です。
○山口会長 たしかしばらく前の調査で、医療機関を全部調べてアンケートを取られて、オンラインは10%、20%の世界だったと思うのです。実際にやろうとすると、病院は非常に特殊で、Wi-Fiで医療機器への影響がどうしても出てきてしまいますので、それを安全にやろうとすると、私どもでも数千万から1億近いお金がそのオンライン化にはかかるということで、断念した経緯もあります。要するに、Wi-Fiでなければ環境は整えてあるのですが、そういう問題も多分入ってくるのだろうなと。結構な予算措置が必要な場面かもしれないので、簡単に書くわけではなくて、しっかり調査をして、それからがんの問題なのか否かということを整理した上で、検討していただくということでいかがかなと思います。
ここにオンラインをあえて入れたのは、事務局で工夫していただいて、小児・AYA世代の教育のために必要だという文案になっているのです。全患者さんということは、ここでは先ほどの問題があるので書き込めなかったというのが真実だと思います。木澤委員、いかがでしょうか。よろしいですか。
○木澤委員 はい。
○山口会長 では、今の問題はそこまでで、そのほかに御意見、いかがでしょうか。
私から最後に1つだけ。委員の皆様に確認しておいていただきたいこともあるものですから。意見は46ページの一番上のところ。ここは相談支援、情報提供の部分ですが、ここに文案を追加したほうがいいのではないかという意見です。
ずっと戻って、7ページの中間評価の要旨、要するに、この中間報告書の根幹に関わる部分が5行で表現されているのですが、この5行の最初の3行は、テーマが「がん医療の均てん」なのです。後半の3行がそれに対をなす形で、一言で言えば「がん情報の均てん」なのです。そういう形で構成がされていて、多分その心は、今期、前期も含めて情報というのが非常に大切だということになったものですから、医療の均てんとともに情報の均てんが必要だというところを要旨に書き込んでいただいたという経緯がございます。
その点で情報のことを考えますと、この報告書全般にこの大事なポイントをどこから引っ張ってきたかという部分が、後でよく読み合わせてみると実はなかったのです。
そこで、46ページの頭に今の要旨の2~3行の文案を入れるか、あるいは前のページに「国民に対するがんの情報提供」という一文がありますので、そこを少し変えて書くか。私はいずれでもいいのですが、情報、相談支援のところの頭に、少なくとも最大のポイントはここからの引用だよというところを残しておいていただけるといいのかなと思って発言をさせていただきました。
コメントをお願いします。
○岩佐がん対策推進官 ありがとうございます。御指摘はそのとおりかと思います。46ページのほうに少し追記をさせていただくような形で検討させていただければと思います。
○山口会長 では、この分野はよろしゅうございますか。
それでは、ここで休憩に入る予定になっておりますので、15時25分再開で、10分間の休憩とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 
(休 憩)
 
○山口会長 それでは、再開させていただきます。
資料1の52ページから60ページです。それでは、事務局から説明をお願いします。
○岩佐がん対策推進官 それでは、52ページから一番最後の60ページまで行きたいと思います。「これらを支える基盤の整備」の分野でございます。
54ページ、中段から下のほうになりますが、「地域間及び医療機関間における差がある」というところ。それから、量的な推進だけでなく、今後のがん医療のあり方も踏まえた取組を文部科学省と連携し、引き続き推進していく必要があると、人材育成について追記をさせていただいております。
56ページ、がん教育でございます。「地域の実情に応じたがん教育」と追記をしております。
59ページでございます。こちらはがん対策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項になっておりますが、その中で、全ての都道府県で患者委員が参画しているところは評価ができるということ、偏りのない性別や世代、様々ながん種のがん患者等ということを追記しております。
60ページ「おわりに」というところで、前回の議論を踏まえまして、(4)(5)のところを追記しております。(4)につきましては、第3期計画では、小児がん、AYA世代のがん及び高齢者のがんや、就労以外の社会的な問題など、大きく異なる分野が1項目にまとめられていたので、各分野の関連性等も考慮した構成ということを記載しております。(5)のところでは、計画策定時に評価指標は決定しておらず、中間評価がやりにくかったということもありましたので、目標の設定と併せて、それらをモニタリングする指標についても検討することが望ましいと追記しております。
以上、簡単ではございますが、説明とさせていただきます。
○山口会長 それでは、ただいまの説明について御意見を賜りたいと思います。三上委員、お願いします。
○三上委員 「にじいろ電車」の三上と申します。
私のほうからは53ページから54ページの人材育成のところについてです。文言に対しては、「がん専門医療人材」という言葉の中に入る内容ですので、文言はこのままでよいのですけれども、今までの議論の際お伝えしていなかったことを第4期への話と絡めて発言させていただければと存じます。
小児がんからの視点にはなってしまいますが、専門職として議論の中でも発言いたしました小児がん専門看護師のほか、小児がんを熟知した臨床心理士、国家資格で言う公認心理師も小児がんを熟知したという点で加えていただければと思います。小児期に病気を発症した子供たちがAYA世代で壁にぶつかることが多く、心理検査を踏まえた、より一人一人に合った支援方法はとても有効であると感じています。
「にじいろ電車」では、臨床心理士による脳腫瘍の子供の心理社会的支援の講演会を毎年開催しておりますが、参加者の多くが臨床心理士さんと出会っていないという場合があることを実感しております。このことを踏まえまして、第4期では人材育成とは少し視点がずれますが、「チーム医療」という言葉がよく聞かれますので、診断後にはどういう専門職の人と出会えるのか、どういう役割があるのかを知ることができるとよいのではと思います。
緩和ケアは診断時からということが言われていますので、気持ちの部分での苦痛を取り除く際に、悩みに合わせたさらなる専門職の方と出会える仕組みが、既にあるかとは思いますが、実際なかなか出会えていないことも事実かと思います。支援に入る入り口のところにたどり着く大切さとしてお伝えしたいと存じます。
また、少し脱線しますが、今年度秋に小児がん患者会ネットワークで「診断時からのグリーフケア」というプログラムを企画しております。診断時からという視点は、第2期の基本計画に挙げられたものですので、やはり患者や家族がそのことを認識してみんなにも広めようと思うまで時間がかかるということも実感しております。
60ページの「第4章 おわりに」の(5)に関連いたしまして、前回の協議会で質の評価に関して議論があったかと存じます。その課題について、小児がん患者会ネットワークの55団体あるうちの11団体で運営委員会を毎月開催しておりますが、そこで話題に出してみました。実際具体的な評価方法には至りませんでしたが、インタビューなどで患者や家族の言葉を拾い上げていったらどうか、好事例がどのぐらいあったかを見ていくのはどうかといった意見がありました。言葉を拾い上げての評価は偏りがあったり、難しいとは思いますが、お伝えさせていただきました。
以上になります。
○山口会長 今の御意見は、特に修文ではなくて、第4期に向けてこういうこともテーマにしてほしいという理解でよろしいですね。
○三上委員 はい。大丈夫です。
○山口会長 今、小児がんの問題でお話しいただいたのですが、チャイルド・ライフ・スペシャリストという職があります。私どもでは大変いい働きをしていて、小児がんの子供さんのケアはさることながら、同時に親をがんで亡くす子供、この場合、子供は健康なのですが、その子供さんをケアする位置づけなのです。医療職とは違って、子供と遊びながら癒すという姿勢なのです。今、全国でまだ百数十名しかいないと思うのですけれども、そういう職があることもぜひ共有しておいていただき、そういう職が本当に将来必要なのかどうかも第4期の議論でやっていただくといいのではないかと思います。これはコメントです。
三上委員、よろしいですか。
○三上委員 大丈夫です。ありがとうございます。
○山口会長 それでは、石岡委員、お願いします。
○石岡委員 人材育成のところで一言申し上げたいと思います。まず、77回、78回の協議会で、私は地域医療格差や医療機関格差という発言をいたしましたが、この件につきましては、書き加えていただきましてどうもありがとうございます。
54ページのところですが、その後、少し人材養成について見直して考えてみましたが、これまで皆様の議論で分野別の1から3までの議論は、非常に有意義な議論、そしてまた課題が非常に見えてきたかと思うのですが、そこで非常に多岐にわたった課題を見ると、人材養成の部分が4行だけというのはちょっと物足りないというのが私の印象です。先ほど議論があった検診のところは14行ですし、小児・AYA世代のところは17~18行も書かれてありますので、もう少し書き込んでもバランスは悪くないかなと思います。これは先ほどの三上委員のお話ともちょっと関連します。
具体的に、3行目のところに「今後のがん医療のあり方も踏まえた取組」と書いてあるのですが、これは当然4期を意識してこういう書き方にはなっているかと思いますけれども、やはり4期、完成させるのが間近な時期にはちょっと消極的ではないかというのが私の意見です。
そこで、その部分を例えば「急速ながん医療の高度化に伴い新たな課題が生じてきた」というような言いっぷりにして、さらに踏み込んで具体例として幾つかのことを書き込んだほうがいいのではないかと思います。今、ゲノムの議論が行われていますが、ゲノムからゲノム以外のマルチオミクス、プロテオームとかそういうのも議論になっていますので、この際、医療ビッグデータに基づくがん予防やがん医療、それから新しいがん関連学際領域への対応。これはかなり専門的ですが、今、我々学会のほうで腫瘍循環器学とか腫瘍腎臓病学、様々な境界領域が非常に活発な議論が行われてきて、医療に非常に大きなインパクトを与えている。
3番目には、御承知のとおり、抗がん薬の開発が非常に加速しておりまして、現場、医師だけでなくて、薬剤師も看護師もその薬の使い方から患者への情報提供というのは非常に苦労している。ですから、創薬から医療現場をつなぐ医療というようなキーワードはどうかと。
さらに、先ほどから議論になっていますが、がんサバイバーのケアや再発予防、その生活支援、さらに在宅緩和を含む終末期ケア。これは複数の委員からも御発言があったと思います。
また、先ほど木澤委員からも実際コロナ禍で面談ができないということで、例えば均てん化にも遠隔医療というのは非常に重要なツールになっておりますので、こういった新しいニーズ、急速ながん医療の高度化に伴うニーズというのは、中間評価報告書ではありますが、具体的に書き込んでもらいたいなと思っています。
何度も申し上げますが、6年目の最終年度で中間評価報告書を作成中ということで、4期をすぐつくらなければいけないという状況ですので、議論する時間はあまりないので、人材養成のところはもう少しボリュームを増やして明確に記載したほうがいいのではないかというのが私の意見です。
以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
全般を通しての話になると思うのですが、先ほど小児がんだけ考えても幾つかの職種が出てきております。一番の問題、あるいは今のがん医療に係る人材不足という観点から言うと、大きく3つに分かれるのではないかと思います。1番目が地域格差、医療機関間格差。要するに、標準的ながん医療を実践する人材が不足している。2番目に、患者・家族ケアに必要な人材が全国的にまだまだ充足していない。3番目に、今、先生がおっしゃったような高度医療、非常に進化するがんの高度医療に追いつけていない分野が非常に多いと。多分大きく分けて3つの分野での人材不足が逆に悪化しているのかもしれないなと思っています。
しかし、非常に幅広い分野なので一部の職種だけをこの部分には書けないと思いますので、それを大きな言葉で書いて、その上で、今の3つのグループの中で、第4期に向けて、委員の皆様それぞれから各分野においてどういう人材が必要なのか、さらには今、テレビ会議を聞いていただいている皆さんからもいろんな御意見があるだろうなと思いますので、そういうことを大きく取りまとめて、それを4期の重要な課題にしていくという方針でないと、今、ほとんどまとまりかけた中間報告書に特殊な職種だけ入れて、逆に言うとこの職種だけ充足すればいいのだという誤った誤解を与えてしまわないかなというのがございますので、私としてはこの形を取ればいいのではないかなと思っております。
ただ、先生に伺いたいのは、キーワードとしてどういうキーワードをこの短い文章の中に入れるべきか。細かい職種は別にしていただいて、その点はどう思われますか。
○石岡委員 私はそもそも先ほど職種のことは一言も言わなかったと思います。がん医療ビッグデータ、がん関連の新しい学際領域、がんサバイバー、終末期医療の充実、その4つぐらいです。私からは。
○山口会長 その言葉を入れることは多分可能だと思うのです。この協議会からの推進事由の中に。ただ、今の4つ以上にたくさんあるだろうなと思いますので、そこだけ飛び出すのではなくて、一度しっかりとした整理が必要なのではないかなと思いますので、書くに当たってはそういう形で。ですので、ともかく人材不足、大きな分野で必要なのだ。先ほどのビッグデータに関しては、例えば「がんの高度医療に伴って」とかという言葉で合わせて、3つにグループ分けできると思うのですけれども、そういう形ではいかがですか。
○石岡委員 ぜひそういうふうにしていただきたいなと思います。
○山口会長 この件は大変重要な問題なので、委員の皆様からぜひ御意見をいただきたいと思います。どなたでも結構です。土岐先生はこの件に関してでよろしいですか。
○土岐委員 はい。私は先ほど飲酒・喫煙の話もしたのですけれども、我々の学会では昨年度、ナレッジギャップ、いわゆる知識。先ほど山口先生もおっしゃったように、知識、情報が隅々までちゃんと伝わっていないと、ナレッジギャップというテーマで公募研究を募集したところ、非常に多数の応募がありました。なので、ナレッジギャップを埋める人材を育成してほしいと。そこに一つステップがあるような気がしました。先ほど地域格差と医療機関というのもありましたが、先ほど先生が言われました情報の格差もかなり大きな問題なので、それを埋めるような人材の育成をお願いしたいと思って、1つのグループとして提案させていただきます。
以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
森内委員。
○森内委員 54ページのこのことにつきましては、とても重要なテーマになってきますので、今後しっかり検討していくということは理解いたしました。その上で、2017年当時とはがん医療や支援を取り巻く環境も大きく変わってきていますので、専門医療人材の育成というのは、時代のニーズに応じてさらに充実・強化していくことが必要であると考えております。日本看護協会としましても、がん分野におきまして、専門看護師や認定看護師を毎年育成、輩出しておりますが、これらも含めまして計画的に専門医療人材の育成を進めていただきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
○山口会長 ありがとうございました。
中釜委員、この件に関してでしょうか。
○中釜委員 人材育成に関して、先ほど山口会長が3つの種類があるのではないかと御指摘をされまして、私もそのような整理でいいかなと思うのですけれども、その中で、ここに書かれている文部科学省との連携という意味では、先ほど石岡委員がおっしゃっていたようながんの高度化される医療、例えばゲノム医療等の医療ビッグデータ駆動型の新しい医療にはデータの分析から臨床展開を含めたところには、かなり専門的な人材が必要です。これは大学等々で育成が絶対に必要な部分だと思うので、その辺りについて目標を明確にし、かつ、あまり職種を限定しないような文言が良いと思います。どういう書きぶりが適切かは検討いただきたいと思うのですけれども、高度医療の一部である医療ビッグデータドリブンな、駆動型の医療を支えるような人材育成は、ぜひ書き込んでいただくのが良いと考えますので、追加で発言させていただきます。
○山口会長 ありがとうございました。
大西委員、どうぞ。
○大西委員 先ほど1つ目の地域間及び医療機関における差という話がありましたが、がん種による差も我々希少がん、難治がんにとったら、専門医というのが非常に抜け落ちている部分がありまして、いつまでたっても専門医が育てられていないという現状があるので、私どもとしたら、地域間、医療機関及びがん種における差というのも入れていただきたいなと思いますが、御検討いただけないでしょうか。
以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
ここの修文の過程で検討させていただこうと思います。
飯野委員、お願いします。
○飯野委員 ありがとうございます。
今、山口先生がおっしゃったように、3分野の人材育成はそのとおりだと思います。もちろん、それぞれ人材不足、専門的な人材は必要だと思うのですけれども、人口減少が進んでいく中で、いろんな分野の人材を育てようと思っても限りがあることは確かなので、限られた人材を有効活用するといった視点も重要だと思います。
例えばオンラインとかICTを活用した遠隔の相談とか診療とか遠隔の手術とか、そういうことも含めて、もうちょっとICTの活用をしながら均てん化を図っていくのだというニュアンスがどこかに必要なのかなと。これは4期に向けてかもしれませんけれども、ちょっと外れた話かもしれませんが、そういうふうに感じています。
○山口会長 ありがとうございました。
大賀委員、お願いします。
○大賀委員 土岐先生と中釜先生が言われたことを私も支持いたします。そして、3種の職種のことが出ましたが、今回短く入れるとすれば、例えば「専門医療職」とか「専門医療人」という言葉で一まとめにして、短いキーワードで入れるといいかなと思いました。
以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
そのほか、今の件に関して御発言ございますでしょうか。どうぞ。
○木澤委員 木澤です。
今の修文に加える形で御検討いただきたいのですが、54ページの上から5行目、緩和ケアのことを書いてくださっているのですが、確かに医学部に講座を置いている大学の数は増加しており、評価できるのですが、24大学というのは、全国80大学あるうち3分の1にも満たず、まだ全然足りていない状況なので、「評価できるが、さらなる充実が必要である」と書いていただければ大変助かるなと。緩和ケアの人材は非常に少ないので、そうしていただけるといいかなと思ったのが1つ。
もう一つ、最後の「推進が必要と考える事項」のところですが、簡単に文章を直すのであれば、「医療機関における差があり、人材育成はいまだ不十分である」という一文を入れるのが。不十分だと書いていないので、差があって、不十分であるということを書いたらどうかなと思いました。
○山口会長 ありがとうございました。
今の件に関して、ほかに御意見はありますか。
それでは、会長としての意見を申し上げておくと、先ほどもちょっと申しましたけれども、この人材育成に当たっては、今、御意見があったように、まだまだ不足している部分があると。それは地域格差、病院間格差をまだ埋められていないという点が第1点。それから、患者のケア、家族のケア、多分その中に緩和ケアを入れてもいいのではないかなと思いますけれども、そういう人材も不足している。さらに、がんの高度医療についていくために、石岡先生がおっしゃったような新たな人材もこれからどんどん必要になってくる。そういうことを踏まえて、今後の人材育成あるいは有効活用の在り方についてさらなる検討が必要だろうと。
その上で、どうやってやるのかという点に関しては、文部科学省とも連携しつつ、医療関係職能団体、医師会、歯科医師会、薬剤師会、日本看護協会等が入りますけれども、それから各種学会、拠点病院等の協力。やはり拠点病院でのオン・ザ・ジョブ・トレーニングで最も多くの医師、ほかの職種も確保されていますので、そういうことを踏まえて推進する必要があるというのを協議会の意見にさせていただくのはどうかなと思います。ここは非常に重要な問題なので、後で会長が簡単に変えられる問題でもありませんので。
さらに、文部科学省との連携というところがちょっと漠然としているので、文部科学省との連携の中で生まれてきたがんプロフェッショナルというのは非常にいい働きをしていると思うのです。そういうことを少し具体的に書いて、あるいは文部科学省としては当然大学、医学部教育、看護学部教育等々がありますから、それだけ特記することが可能かどうかは分かりませんけれども、その辺りの最終的な修文に関しては厚労省事務局と文部科学省との間で御相談をいただくと。そういう形で持っていったらどうかなと思うのですが、委員の皆様から御意見を賜った上で、事務局に伺ってみようかと思います。石岡先生、お願いします。
○石岡委員 山口先生、ありがとうございます。私は、先生が今、御発言いただいた内容にしていただけると、非常に厚労の事業、文科事業、人材養成が加速するのではないかと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
○山口会長 ありがとうございました。
そのほかの御意見、いかがでしょうか。
それでは、事務局から今のことを踏まえて、極めて大きな問題なのですが、現時点でおっしゃれることを言っていただければ。
○岩佐がん対策推進官 ありがとうございます。私たちとしても非常に重要なポイントだと捉えております。少し補足と言うと恐縮ですが、飯野委員からありました人口減少という中でますます専門分化していくものをどう均てん化していくのか。そこは二律背反する課題をどう解決していくのかという点があると考えておりますので、その要素も少し入れさせていただいた上で、文科省と相談をしながら修文をさせていただければと思っております。
文科省さんからも何か御意見がございましたらいただければと思います。
○降籏医学教育課医学教育係長 文部科学省医学教育課の降籏でございます。
いろいろと御意見いただきまして、どうもありがとうございました。我々もこれまで育成してきた人材、これから育成すべき人材というところできちんと整理をしていきたいと思っていますので、いただいた方向を基に、記述について厚労省さんと連携して修文の作業を進めさせていただきたいと思っております。
どうもありがとうございます。
○山口会長 それでは、この人材育成の問題は、さらなる御発言がなければ、ここまでにさせていただきます。どうぞ。
○石岡委員 石岡です。
今の議論に反対するものでも何でもないです。ただ、人口が減少しというところもありますし、医療従事者を有効に活用するというのは全く異論がないのですが、1つの大きな視点として、日本において医療従事者、特に医師とか看護師が欧州の先進国と比べて多いか少ないかという議論、圧倒的に少ないということは、このがん対策とはまた別に大枠としてあるということを私たちは忘れないでおく必要があると思います。私も当然遠隔医療は大賛成ですので、余計な話かもしれませんが、そこは一言コメントを申し上げます。
○山口会長 この問題を進めると、また非常に大問題になるので、がん対策推進協議会としてはここまでの議論にさせていただこうと思います。
それでは、人材育成以外に御意見がありましたら、どうぞよろしくお願いします。中釜委員、お願いします。
○中釜委員 中釜です。
60ページ「おわりに」のところですが、本日の議論の中でも、例えばどこに書いてよいのか分かりにくいような案件であるとか、あるいはがん以外の疾患、あるいは公衆衛生的な問題に係るような課題、新型コロナウイルス感染症など今後の新興感染症診療への影響など、逆にこうした視点から見たときのがんの課題というのもあると思いますので、そういうものをまとめて「おわりに」のところに記載するという考えもあるのかなと思いました。
例えば広く公衆衛生問題に係るような課題に関して、今後のがん医療の提供体制そのものも変わる必要性が生じることも考えられます。そういうものも今後の可能性として、意識するべきものとして書き込んでおくと、全体を通して統括的に見られるのかなと思いましたので、追加して発言させていただきます。
例えばオンライン環境の整備などもこういうところに一言書き込んでおくなどです。オンライン整備をするには費用がかかるという山口会長の御指摘もありましたが、恐らく今後は重要な一つの医療提供の形になるだろうと思うので、「おわりに」のところに書き込むのはどうかなと思いました。御検討いただければと思います。
私からは以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
今のお話に加えて、本編のほうにあまり入れることができなかったけれども、第4期ではこういうのが非常に重要になるのではないかということ。将来のことを規定してはいけないという考えもありますので書けない場面もあるのですが、そういう差し障りのない形で、本編になかなか書き込めなかったことをここに加えておくということは賛成ですので、この点、事務局、どうぞよろしくお願いします。
○岩佐がん対策推進官 まさに「検討します」と言ったものの、どこに入れようかなと思っていたものもございますので、確かに「おわりに」というところで、第3期計画の中では想定していなかった、もしくは十分に対応できていなかった分野についての取組等について、少しここに追記をということもあるのかなと思いましたので、いただいた御意見を踏まえて検討いたします。
○山口会長 ありがとうございました。
土岐委員、どうぞ。
○土岐委員 これは全般を通じてのことになると思うのですけれども、「地域間格差と医療機関格差」という文言は何回も出てくるのですが、最近地域間格差ということでナーバスになっておりまして、これだったら、地域間格差は都市部と地方なのかとか、具体的なデータが今回の中間指標ではないような気がしております。本当に地域とは何ぞやと。それに対してどういう差があるのか。一方、施設間というのは、都道府県の拠点とその地域の拠点で違うのかとか、その辺りも言葉がたくさん出てくる以上、もう少し検証するような方向で。今回は無理であっても、次期のときはそういう方向の検証をしていかなければ。地域間格差というのが、専門医とかをやっていると、どうも逆パワハラではないですが、シーリングとかでかなり逆的なことも感じておりますので、ちょっと述べさせていただきました。
○山口会長 いかがですか。
○岩佐がん対策推進官 今回、先生方の御意見を踏まえて地域間格差、施設間格差というものを出させていただいたところですけれども、そこがどこまでデータに基づいて言えるのかということは、我々としても一つ課題かなと思いますし、ぜひとも先生方も関連するデータなどがあれば、お寄せいただければと思っております。
その辺り、対策を考えていく段階になるのであれば、それはきちんと評価した、具体的にどういう格差がある。だから、こういうふうにしていきますというふうにする必要があると思っております。今回中間評価ということですので、先生方のご意見を踏まえて記載させていただいているものと思っております。
○土岐委員 追加で言わせていただくと、いわゆる地方の場合は小さな病院がたくさんあるけれども集約化がうまくいってないというケースもあるので、何をもって地方と都会のゴールにするのか、その辺りも明確に示していただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
○山口会長 私自身、都道府県拠点、地域拠点の指定委員会の委員、さらには座長を十数年間やらせていただいたのです。その中でも明らかに医療機関の差というのはありますし、要件というのはミニマムリクワイアメントなので、それで満足できるかというと、なかなかそうはいかないという点を十数年間ずっと見てきたわけですが、ただ、それの数値化とか、なかなか難しいなと思うのですけれども、土岐委員におかれて、地域間格差、医療機関間格差を例えば数値上でうまく示すような工夫ができるかどうかというのは、いかがですか。
○土岐委員 専門医制度は医師の人数と診療科の医療で、単純な割り算で言っているのですが、実はその実態は診療所と病院が一緒になっているとか、かなり難しい計算方法をされていて、これは日本中でかなり大きな議論を呼んでいますけれども、これを議論し出すとどこまで行っても誰も満足できないというところがあるのですが、ただ、一定の指数、例えば患者さん当たりの数とか、そういった明確なもので出していただけたらと思います。
○山口会長 拠点病院の要件の中にある程度の数字は出すようになっているのです。これは保っていただかなければいけないという形で。それから集約のところがあまり。今回の報告書もその点、一番最初の辺りで均てんということが強調されているのですが、そこは「集約」という言葉をちょっと入れておいたほうがいいのではないかと事務局には申し上げているのですけれども、そういう問題の中で次に来るのが、飯野委員がいつもおっしゃっている質をさらにどう担保していくかという問題です。非常に課題だと思いますので、今の御意見を念頭に、次の基本計画等で何とか言葉を入れていくようなことを考えたらいかがかなと思っております。そのようにさせていただこうと思います。
○土岐委員 よろしくお願いします。
○山口会長 石岡委員。
○石岡委員 今の件ですが、土岐先生の話された格差の問題というのは、多様な格差があるということが明らかです。私が78回までに申し上げたように、実際調べてみると、がん拠点のアンケート調査等では分からない格差が当然見えてくるという状況がございます。学会や職能団体等が協力して幾つかの指標で全国調査をやることによって、今までのがん拠点やがんゲノム拠点、小児がん拠点だけでは見えてこない格差が浮き彫りにできると思いますので、次の4期のときにはこういった明確な評価指標を事前に決めておくということが大事だし、可能だと思います。いろいろな団体で協力してやればいいのではないかなと思います。
集約化のほうは、実際がんゲノムが代表例ですけれども、見かけ上集約化しているように見えても、結局、取り残される地域は調査に出てこないのです。東北地方などはその典型ですけれども、一見集約化して、連携している病院にがんゲノム医療の必要な人が集まってきているように見えますが、実際そうではない。半分以上の人はがんゲノムとは何ですかという病院に通っている。そういったところは幾ら拠点病院を調査しても絶対出てこないデータですので、調査の仕方を4期は気合を入れて工夫する必要があると思います。
○山口会長 ありがとうございました。
がん診療連携拠点病院、ゲノム拠点、小児がん拠点の新たな要件等の議論が今、多分進んでいるはずですので、また事務局から拠点病院から聞いただけでは分からない問題点も何とか吸い上げてもらうように、取りあえずそういう部会の方々に申し上げておいていただけるとありがたいなと思いますが、事務局、それでよろしいですか。
○岩佐がん対策推進官 ありがとうございます。拠点病院の要件等を検討する中で、果たして拠点病院以外のところからの視点をどこまで入れられるか。データを収集することも含めて課題だと思っております。緩和ケアの領域で議論を行っているのですけれども、緩和ケアの主体が必ずしも拠点病院だけではない。拠点病院以外のところでの緩和ケアをどう底上げしていくのかという課題はあり、そもそも実態の把握から難しいというところになっているというのも実態ではございますので、石岡委員が実態の把握から工夫するべきだとおっしゃいましたが、少し基本的なたてつけを含めて考える必要性があると思っております。
○山口会長 ありがとうございました。
羽鳥委員、まだいらっしゃれば、その点について医師会としてもコメントございますか。
○羽鳥委員 やはり疾患の特性があるのだろうなと思います。今、並行して動いているのが脳卒中・循環器病対策基本法だと思います。そこでは脳卒中も3時間以内、あるいは心筋梗塞も6時間以内とか、対応できる急性期病院には一定の時間・距離の関係があると思います。そういうところで心筋梗塞で心カテ更にSTENT挿入対応や、脳梗塞でTPA静注や血栓の機械的改修ができるなどある一定レベルの初期治療が受けられないと大きな禍根を残すようなことになると思います。それに比べて、がんは精密で確かな治療を受けられることが必要だということは当然だと思いますので、先ほど皆様方がおっしゃっている大規模集約化の議論をしっかりしていくということも大事なのだろうと思います。
もちろん、がんのスクリーニング検査や終末期の医療とか、その辺に関しては、医師会もできるだけ協力できるところはあると思いますけれども、その議論と最先端のがん治療の話はまた少し違うかと思うので、その辺を切り分けてきちんと議論していただければと思います。僕もがん拠点病院の委員会に入っているのですが、あれっ、これががん拠点病院なのかというようなところもないわけではないので、もう少し集約化して、よりレベルの高いことをしていただくのがいいのではないかなと感じます。
以上です。
○山口会長 ありがとうございました。
そのほかの委員の方からこの問題について追加の御意見はございますでしょうか。よろしゅうございますか。
それでは、今の取りまとめに従って、あるいは御意見を拝聴した上で、必要な修文があれば考えていきたいと思います。
では、さらにこの分野でそのほかの御意見、テーマについて何かございますでしょうか。
私から1点お願い、あるいは正しいかどうかの確認です。53ページの真ん中のところに「『がん研究10か年戦略』に基づき、順調な進捗」と書いてあるのですが、全ゲノム解析の話をちょっとさせていただきたいのですけれども、国家プロジェクトはAMEDの研究費の1~2割を使った大きな研究で、がんにはもちろん密接に関係しているし、私の個人的な思いとしては、その実行計画をまとめた立場で、ここにあの言葉が一言も入っていないというのは、いいのかな。「がん研究10か年戦略」に全ゲノム解析が入っているのだったら、これでいいと思うのですが、タイミングからいって入っていないのではないかなと思うのですが、事務局からこの点について教えていただけますか。
○岩佐がん対策推進官 御意見ありがとうございます。事実関係から申し上げますと、10か年戦略の中には全ゲノムというのは入っていないところでございますので、研究という中では全ゲノム解析等実行計画に基づいて実施しておりますので、そこについても追記をするような形にさせていただければと思います。
○山口会長 やはり小児のがん、AYA世代のがん、希少がん、この辺りは非常に重要な発展がある可能性が高いものですから、ぜひ進捗のところに入れておいていただくといいのではないかなと思います。
この部分でほかに御意見があればお願いいたします。
それでは、特になさそうなので、これまでの議論を踏まえて修文をさせていただくことになろうかと思います。ただ、関連して、この後2つの報告事項がございますので、それも聞いていただいた上で、予算が入ってきますので、ここについては協議会の意見の中にこういうことも入れておいたほうがいいのではないかということが出てくるかもしれませんので、ここで打ち切りではなくて、最後にもう一回戻ろうと思いますので、事務局から議題2の「報告事項」の中の「がん対策の主な施策について」の報告をお願いしたいと思います。
○岩佐がん対策推進官 それでは、資料3を御覧いただければと思います。「がん対策の主な施策について」ということで、前回関連する予算事業等について、どのようになっているのかということをまとめて紹介してほしいということでしたので、資料にまとめさせていただきました。
ページをおめくりいただきたいと思います。基本計画とその事業ということでしたので、最初に第1期計画、次のページに第2期の計画、第3期の計画というふうに基本計画を3枚並べさせていただいております。特に現時点におきましては第3期計画に基づいて実施しているというところでございますが、第1期、第2期等も参考にというところです。
5ページ目は「がん対策予算の概要」ということで、全体像を示しているところでございます。この中には第3期計画の予防、医療、共生という3つの柱に合わせて、それぞれの事業がどのように入っているのかということを書かせていただいております。
個々に少し簡単に説明をさせていただければと思っておりますので、次のページに進めさせていただきます。
6ページは「がん予防」の分野というところで、さらに次のページをお願いいたします。がん予防の分野における特に大きなものとしてはがん検診の推進というところになります。がん検診の実施そのものについては、各市区町村において地方交付税によって措置されている予算の中で、それぞれの自治体が主体的に行うという形になっておりますので、国として何か補助をしているというものではないというところでございますが、その中で強く受診勧奨等を推進するという観点で、子宮頸がん検診、乳がん検診の初回の検診時のクーポン券の配布や、さらなる受診勧奨のための各資材等をつくるための予算などを国としても用意をしているというところです。
次のページをおめくりいただきたいと思います。がん検診につきましては、受診率をさらに上げていくということが重要であるということから、アクセシビリティを向上するための大規模実証事業というものを今年度までの3か年で実施をしているというところでございます。それぞれ検診の受診勧奨策というのが様々あり、最近ではナッジ理論やソーシャル・マーケティングの手法等を用いて、どういった方法を使うとより効果的なのかというところを、各市町村のフィールドを使った実証事業を進めているというところです。この結果が出てくれば、各市町村で比較的費用対効果が高い勧奨策などがある程度示せるのではと考えておりまして、その結果を踏まえて、次期計画の中ではしっかりと検診の受診勧奨を進めていくという形にしていきたいと思っております。
次のページは、「がん医療の充実」の分野でございます。
ページをおめくりいただきまして、こちらはがん診療連携拠点病院機能強化事業でございます。国が指定するがん診療連携拠点病院等における各事業を充実・強化するために必要な予算ということで、これらを確保してございます。
次のページが小児がんの拠点病院の強化事業。
その次ががんゲノム医療中核病院の機能強化事業という形になってございます。
これら拠点病院等の強化に資するものとしまして、今回資料としては掲載してございませんけれども、診療報酬上も拠点病院等における診療の評価ということもしておりますので、そういったものも医療の充実につながっているものと思っております。
次のページは、希少がん中央機関として国立がん研究センターへ補助をしまして、希少がんセンターを設け、希少がん対策をやっておりまして、それらに資する予算として希少がん中央機関の強化事業や、希少がん診断のための病理医育成事業といったものを行っております。
14ページは、小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業ということで、令和3年度からがん患者等につきまして、将来妊孕性が低下するリスクが高い方について、その精子や卵子を温存する事業について開始をしたところでございます。それらについて、今年度からはさらにこの事業で採取した精子や卵子を用いて妊娠に向けた治療もできるような制度となっております。これらについては、しっかりとしたデータを出すことによって、将来的には保険診療の中で見ていくことができるようにということで、研究事業という形で実施をしております。
次のページは「がんとの共生」の分野。
さらにページをおめくりいただきまして、がん患者の就労に関する総合支援事業という形で、がん診療連携拠点病院におけるがん患者の就労に対して、その専門家、社労士等を配置して相談の支援をするとか、拠点病院に両立支援コーディネーターの研修を受講した相談支援の配置などの事業を実施しております。こちらはがん診療連携拠点病院機能強化事業の中で行っているものになりますが、ここに特出ししております。
17ページは緩和ケアの推進事業という形で、拠点病院内に緩和ケアセンター等を設ける、そういったことを推進するための事業費となっております。
18ページ目は、がん等における新たな緩和ケア研修等事業ということで、全ての医療従事者が身につけるべき基本的な緩和ケアを幅広く受講していただくために、各拠点病院等で実施していただく緩和ケア研修会、それらに関する運営等々の補助ということで事業を実施してございます。
19ページ目は、がん総合相談に携わる者に対する研修事業ということです。日本サイコオンコロジー学会への委託により相談支援を行う者に対する研修プログラム等を策定していただいたり、実際にその研修を実施していただくための予算となっております。
20ページ目は、小児・AYA世代の長期フォローアップ体制整備事業としまして、長期フォローアップが必要な方々に対して、継ぎ目なく診療や長期フォローアップを受けられるような体制整備ということで、日本小児血液・がん学会に委託し、そういった多職種協働チームを育成するためのプログラム作成や研修の実施を支援しております。
さらにページをおめくりいただきまして、「これらを支える基盤の整備」の分野でございます。
22ページ、特に研究の分野になりますが、革新的がん医療実用化研究事業。こちらはAMED(日本医療研究開発機構)において実施するための研究開発費として確保しているものでございます。AMEDにおいてはモダリティに応じた5つのプロジェクトを実施しており、革新的がん医療実用化研究事業では、その5つに全て該当するような形になっており、横断的にがん対策を実施するための研究事業として実施しているところでございます。
23ページ目はがん対策推進総合研究事業ということでございますが、厚生労働科学研究費の事業になっております。がんに関する政策的な研究課題につきまして、様々な観点から必要な研究を行い、それらをこの計画の作成、実行等々に反映させていく、そういう研究事業としてやっているものでございます。
非常に簡単ではございますが、厚生労働省、特にがん・疾病対策課が中心となって実施する予算事業等をこちらにまとめさせていただきましたので、御報告をさせていただきました。
以上でございます。
○山口会長 ありがとうございました。
資料3の2ページから3ページまでは私がお願いして、委員の皆様方に第1期、第2期、第3期とどのような形でテーマが選ばれてきたのかというのを見ていただくためにつけていただいたページです。
今、御説明があったように、がん対策予算も非常に幅広くて、どこまでががんで、どこまでがそうでないというのは難しい話で、いつも厚生科学審議会でも難しいなと思って聞いているのですが、大きく分けてAMEDとしての研究費。これは将来医薬品につながるというところがキーワードになっていると思うのですが、同時に、共生とかがん検診とかそういった部分に厚労省の独自の予算でついているものがあるというのが、最後の2ページの説明だったと思います。
なかなか全体像を把握するのは難しいと思いますが、委員の皆様におかれてはそういうことを把握しておいていただくと、さらなる理解ができるのではないかなと思います。ただいまの御説明に関して御質問あるいは御意見があれば、どうぞお願いいたします。松田委員、お願いします。
○松田委員 がん検診についてお伺いしたいと思います。今、御説明いただいた資料の7ページと8ページになりますが、がん検診の受診勧奨をする、あるいは精検未受診の方の精検受診勧奨をするというのは極めて重要だと思います。
2番の子宮頸がんと乳がんのクーポン券の配布について、10年前にも乳がん・子宮頸がんの無料クーポン券の配布があって、あまり効果を発揮しなかったと理解しています。10年前の事業と違って、今回の事業ではこのような工夫をしているという点があれば教えていただけますでしょうか。
○岩佐がん対策推進官 ありがとうございます。この事業につきましては、正確な年度に関しては今、手元にないのですけれども、10年前頃に全ての方々に対してクーポン券を配って、5年間ぐらいかけて、40歳、45歳、50歳と5歳刻みの年齢の対象の方々に検診を受けていただくという形で実施しておりました。その後、様々な議論、経緯を経まして、現時点の事業としましては、まさに検診を初めて受ける、子宮頸がんであれば20歳の方、乳がん検診であれば40歳の方が最初の検診を受けやすくするように、もともと各市町村において補助しているものがあったとしても、さらに負担を軽減してまず1回受けていただくと。そういうことを目指したものになってございます。
先生がおっしゃるように、実際にこの事業につきましても昨年度、財務省のほうで評価をいただいておりまして、その中では、受診者が比較的少なくて十分に効果を上げていないのではないかという御意見があったところで、その点を踏まえて、検診のあり方に関する検討会の中で、この事業をより効果的に進めるためにどういう工夫ができるのかということを今、考えているところでございますので、できる限り効果的にできるようにという形を考えながら対応を進めさせていただいております。
○松田委員 ありがとうございます。
もう一つ御質問させていただきたいのですが、8ページです。がん検診の受診率を高めるためにナッジ理論とかソーシャル・マーケティングの手法を使うというのは、極めて重要だと思っております。ただし、それには前提条件があって、先ほど職域におけるがん検診のところでも申し上げたのですが、がん検診を受けやすい状況にあるにもかかわらず受けていない人たちには有効かなと思います。今、日本のがん検診は、感覚的なものになるかもしれませんが、以前と比べて受けやすい環境になっているのでしょうか。事務局のお考えはいかがでしょうか。
○岩佐がん対策推進官 ナッジ理論、ソーシャル・マーケティングの手法等を用いたという形でやっておりますけれども、その下にさらに「特定検診とがん検診の同時実施」ということも書かせていただいております。先生おっしゃるように、受けやすい環境にしてあげるということも非常に大事だと考えておりまして、特定検診とがん検診、実施主体が異なったとしてもそれを同時に実施するという場を設けることによって、特定検診を受けに来たついでにがん検診も受けるということもできる。そういった取組もこういった実証事業の中でやっておりまして、またその成果を踏まえて全国展開ができるようにと考えているところでございます。
○松田委員 ありがとうございます。
がん検診が受けやすい体制・制度をぜひ整備していただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
以上です。ありがとうございます。
○山口会長 ありがとうございました。
そのほか、いかがでしょうか。今の予算等の御説明に関してですが、ございませんか。
最後に、昔話みたいなものですが、研究の重要性を改めて強調しておきたいと思うのです。私、まだ若い頃でしたが、対がん10か年総合戦略というのが一番最初に始まった、「中曽根がん対策」とも言われた経緯ですが、そのときに当時の中曽根総理がおっしゃったのは、日本政府としてはがん研究を充実させたい。ただし、今はこれだけの金しか出せないのだと。このお金で最大の効果を発揮できることは多分研究だろうから、そこでぜひ研究を中心に使ってもらいたいということで、10か年総合戦略ができて、それが今、4期まで来ています。そういう40年の歴史がありますので、この協議会の皆さんにおかれても、この研究の内容等については可能な限り把握し、自分の専門でない分野についてもいろいろ御意見を賜ると、よりよいがん対策につなげていけるのではないかなと思っておりますので、これは会長としてお願いをさせていただこうと思っております。
それでは、報告のもう一つのほうで、中釜委員よりがん対策研究所、新たにできた組織についての御説明をいただこうと思います。よろしくお願いします。
○中釜委員 ありがとうございます。お時間をいただきまして感謝いたします。
資料4、国立がん研究センターのがん対策研究所についてお話させていただきます。今日のお話でも今の日本のがん対策は、がんの予防、医療の充実、さらにはがんとの共生が基盤の整備の下で推進されているということでありますが、がん対策にはいろんな課題があり、その課題も多様化しています。特に社会医学的な課題、公衆衛生の課題に関しては、ますます多様で複雑になってきています。我々センターとしても、公衆衛生的な課題、社会医学的な課題に関してもセンターを挙げて取り組み、がん対策につなげるための対策に資する研究をセンター全体で推進するのだということで、がん対策研究所を昨年9月に組織改編によってつくりました。
次のスライドは、今、山口会長からご説明がありましたけれども、日本のがん対策の歴史の中で我々センターの社会医学分野の組織の変遷を簡単にまとめたものであります。1894年に策定された対がん10か年戦略、それに続く第3次までの10か年戦略。一番最近ではがん研究10か年戦略の下で進んでおり、この中で日本のがん対策が進められてきました。現在は、2006年に成立したがん対策基本法に基づくがん対策推進基本計画の下でがん対策が進められているという状況であります。
国立がん研究センターでは2004年にがん予防・検診研究センターを、さらに2006年にはがん対策情報センターを設けまして、科学的根拠に基づくがんの予防、検診、モニタリング、さらには情報提供の分野を担って参りました。その後、がん対策情報センターの組織の拡充、2016年には社会と健康研究センターを開設し、がん患者・サバイバーの支援、支持療法を含めたがん医療支援の組み込み、社会的、経済的、倫理的な諸問題に関する研究・事業を展開してきたわけであります。
昨今では遺伝子レベルでのがんの本態解明が進む中、各種がんの予防、危険因子の発見や、それらを踏まえた高リスク群の把握、早期発見方法の確立、様々な技術進歩によりがん患者の生存率が向上するとともに、侵襲や副作用の少ない治療法の確立によって、がん患者の生活の質も向上してきているということであります。しかしながら、同時にがんとの共生の課題といった社会医学的な問題も非常に大きくなったということを実感するわけであります。
次のスライドをお願いいたします。当センターの社会医学的な取組としては、これまで旧社会と健康研究センターにおいては、いわゆる疫学的な研究に基づいたエビデンスの構築やガイドライン・予防法の作成を中心に、また、旧がん対策情報センターにおいては、がん登録、患者体験調査など国からの委託事業、都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会の事務局としてがん医療の均てん化に努め、また、がん情報サービスを中心とした情報提供を行ってきたわけです。さらに、各研究者が検討会やワーキンググループを通してがん対策に資する研究を推進してきたわけであります。
次のスライドをお願いいたします。これまではこういった研究が各部、各組織、各研究者単位で進められてきたところがあります。本日の話のように、がんにおける公衆衛生的な研究が非常に多様で複雑化する中においては、部単位のアプローチ、あるいはグループ単位のアプローチでは不十分ではないかということで、このたび組織統合によって、NCC、がんセンター全体の社会医学系の専門家の力を結集し、公衆衛生的なエビデンスの創出から政策への提言、実装とそのモニタリングまでを一貫して実施できる組織体制を構築したわけであります。このエビデンスを基にした政策立案への積極的な関与を目指す組織体制がこの組織統合によってできたと思います。この組織統合が目指すものの3番目、4番目、5番目、国民のがん対策・情報ニーズの高度化・多様化への対応、さらには患者・市民参画による、より実効性のある研究立案・政策提言、こういうものを中心に据えて新しいがん対策研究所では進めていきたいと思います。
次のスライドをお願いいたします。これまでの活動による社会医学的な問題として抽出したエビデンスとして、幾つかのこれまでの実績を紹介させていただきたいと思います。
次のスライドをお願いいたします。当センター及び日本中の疫学研究基盤の連携によってがん対策向上のためのエビデンス創出を行ってきました。このスライドは日本で発している幾つかのコホート研究をリストしたものであります。その中でJPHC-1、JPHC-2は厚生労働省の支援を受けながら、1990年から15万人規模の症例を対象に住民コホートを行ってきましたが、これ以外にも日本の主たる10コホート、約52万人に基づく、様々な疾病に関するリスクあるいはその要因に関する定量評価を行う体制を2006年の日本国内のコホート研究統合解析基盤、JCCというもので進めてきました。
1つの成果としては、例えばコホートサイズが大きくなることによって、10万規模程度では抽出できなかった要因についても、科学的なエビデンスの高いものが抽出できるようになります。その例として低用量の喫煙と喫煙関連がんの死亡のリスクについて、ここでは1日当たり1~2本という非常に低用量の喫煙であっても、非喫煙者と比べると死亡リスクが高いということが有意に示されているものであります。こういうものを含め、今後日本中の主たるコホート研究を基に、日本人の疾患予防、特にがん予防のためのエビデンスを構築するものは引き続き続けていきたいと思っています。
次のスライドをお願いいたします。2016年から施行されている全国がん登録事業についても、このデータを基に様々な日本における実態が把握されるわけですが、同時に日本における実態を国際比較することも非常に重要であります。そういうことができる環境が整ってきたということが言えます。例えば子宮頸がんに関する事例をでは、国際比較をすることで、1980年代頃は、日本は子宮頸がんにおいてはほかの国々と比べても年齢調整死亡率が低かったわけですが、それ以降、各国においては子宮頸がんにおける死亡率が年々低下してきている。これには検診の充実やワクチンなど様々な要因があると思いますが、日本は子宮頸がんによる死亡率は年齢調整をしても、直近20年間少しずつ増えている状況であり、最近では各国と比べても子宮頸がんによる年齢調整死亡率が高い国になってしししししまっています。そこには、恐らく検診のほかに喫煙対策も要因として考えられます。喫煙も子宮頸がんの発症に大きな要因として関わっていることがエビデンスとして抽出されており、そういうものを含めて統合的に、さらには国際比較をすることによって日本の立ち位置や課題を明確にしながら対策を進めていくことが必要であり、それに資するデータを抽出することが求められると考えています。
次のスライドをお願いいたします。よりタイムリーなデータとしては院内がん登録です。これは全国がん登録の基盤となっているデータで、院内がん登録は、全国がん登録よりも比較的早くがんの動向を把握することが可能であります。もちろん、十分に早いとは言えない状況なので、院内がん登録制度の体制もさらに強化する必要があると思いますが、本日議論になりました新型コロナウイルス感染症によるがん診療への影響ということに関しても、この院内がん登録データを使うことによって、これは昨年の暮れに公表させていただきましたが、がんの発見率が平均して4.6%低下したということがこの院内がん登録データから見えてくるわけです。
タイムリーながん対策への反映という形で、こういうデータを有効に活用しながら、さらにはこのデータを広く利活用できる環境を整えて、日本の研究者がこのようなデータにアクセスし、活用できるような仕組みが重要と考えます。そのためには、課題としてあるような個人情報保護法の問題等々を十分に勘案しながら、データをより実際のがん対策、がん医療実装に活用していくような仕組みを作っていければ良いと考えているところであります。
次のスライドをお願いいたします。先ほど紹介させていただきました当センターが委託事業で行っている事業で、人生の最終段階で患者が受けた医療の質や療養生活の質の実態調査に関する集計結果となります。今日の話お話にもありましたが、がん患者の遺族においては、患者と主治医の間で最期の療養場所や医療について話し合ったと回答した割合は、全体の35.7%という状況であります。しかも、これは施設によって多少ばらつきがありますが、まだまだ十分とは言えません。今後話し合いが十分にできていくことで生じる影響を明らかにし、それをがん対策につなげていくことも必要かと思います。
また、からだの苦痛に関しても、がん患者の遺族において、患者が死亡する前に、からだの苦痛が少なく過ごせたと感じていた割合が全体の41.5%で、まだまだ十分とは言えない割合であります。こういうデータに基づいて、さらにより実効性の高い対策へとつなげていくことが必要かと考えます。
次のスライドをお願いいたします。日本国内でのがんの実態を把握すると同時に、それを予防するような対策。を打ち出していくことが重要です。これは本日ご紹介した10コホート等を使って抽出されていくわけですけれども、日本に限らず、遺伝的な背景が近いアジアの国々でも恐らく共通のテーマ、課題として取り組んでいくべきだろうと考えます。逆に海外での課題が日本の課題解決に資するようなエビデンスを抽出していく可能性もあると思います。さらにはデータが増えることによって抽出力が増してくるので、そういう意味でも、国内だけではなくて、アジアでのがん予防も視野に入れた試みが今後重要になってくるだろうということです。実際2021年から組織横断的なプロジェクトの一部として開始したものとして、がん対策研究所が中心となってアジアでのがん予防のための共通のがん対策の提言というものを進めていきたいと思います。まずは各国のがん対策の取組、罹患率、生存率を把握し、対策等の項目立てとしてシミュレーションに基づいたアジア共通の数値目標を設定し、アジア共通のがん対策を提案する活動に取り組んでいきたいと思います。
次は最後のスライドですが、これらの社会医学関係の活動を基に、がん対策研究所の設立により社会医学専門家が結集したことによって、エビデンスの創出から社会実装、情報を届けるところまで一貫して行う組織ができたと思います。
今後がん対策研究所全体として、科学的根拠に基づくがん対策の立案への支援により、がん対策のさらなる向上に貢献していきたいと考えております。本日議論にあったがん対策の推進、評価における課題に積極的に取り組んでいきます。さらにはこれが我々センターだけではなく、日本中の研究者が共通してそこで議論し、解析をできるような基盤を構築し、人材育成に資するような体制を整え、がん対策に資する研究を進めていく、そのための研究所設立であることを本日紹介させていただきました。
お時間を取っていただきありがとうございました。
○山口会長 ありがとうございました。
今のプレゼンについて、委員の皆様から御質問があればお願いいたします。よろしいですか。コメントでもよろしいかと思いますが。
特になさそうなのですが、私から1点だけ。こういう組織ができて、将来の日本のがん対策を担う組織に育っていく、発展していくということは大変期待しております。多分このがん対策推進基本計画のようなものもそういうサポートがあって、非常にいいものにどんどんなっていくだろうなと期待しているのですが、1点気になるのは、やはり社会医学系だけだと、全般のがん対策、患者さんと向き合った、それで診断・治療を行うというところはちょっと弱いだろうなと思いますので、例えば希少がんセンターとかJCOGとか、既存の組織とこのがん対策研究所との連携、スムーズな意見交換、これは将来そうなっていくだろうなと思うのですけれども、そこを強化していただいて、予防・検診、診断・治療、がんとの共生、この分野にしっかりと意見が言えるような組織に育てていただけると大変ありがたいなと思います。コメントです。できたばかりで、余計なことを言っているのかもしれませんが。
○中釜委員 御指摘ありがとうございます。今日はお話ししませんでしたが、実際にはがん対策研究所と研究所の連携、病院との連携、さらには臨床試験との連携は非常に重要だと認識しております。実際JCOGとの連携としては、例えばJ-SUPPORT、支持療法の技術開発に関してはJCOGのの本体、あるいはその一部の機能と連携して進めていますし、今、先生が指摘された希少がんにおいては、希少がん中央機関として今後病理コンサルテーション等を含めたネットワークの構築による、より実効性の高い希少がん対策を進めていく必要があります。その際には、これはがんの治療だけではなくてがん対策全般において、治療と共生、サバイバーシップの問題は不可分ですので、そういうところにも希少がんのネットワークを広げると同時に、こういう社会医学的な視点からがん対策研究所が関わっていくことが重要だと思います。つい先日の会合でもそういう指摘をさせていただきましたが、まさに研究においてもそういう意識は高まっております。
それから、疫学研究とゲノムをつなげてよりハイリスクなグループに対する積極的な介入という意味でも、がん対策・公衆衛生の課題ですけれども、そこにはがん対策研究所の基礎的な技術が反映されます。そこをうまく使っていくことは非常に重要ですので、今日はがん対策研究所を中心にお話をしましたが、センターとしては、先生御指摘のように、様々な部門との連携、センター間での組織内の連携が非常に重要だと思いますので、またその辺りの実績・成果を示しながら、課題をさらに抽出して進めていきたいと思います。
加えて言うと、これは我々センターだけでできることではなくて、我々センターができること、さらにはほかの医療機関やアカデミアと連携しながら進めていけるものを明確にしながら、連携をこれまで以上に密にするようなありようも同時に議論しながら進めていきたいと思います。
どうも御指摘ありがとうございました。
○山口会長 ほかの委員の方からさらに御意見、御質問、よろしゅうございますか。土岐委員、お願いします。
○土岐委員 せっかくの機会ですので、個人的な興味に近いのですけれども、アジアの中での社会医学の進み具合というのは、御存じのように、自然科学のほうは、アジアの各国のほうが経済力を背景に大分台頭しておりますし、医学においてもそういう傾向。学会などの連携においてもアジアと勝負するのは厳しくなってきているのですが、社会医学という面ではアジア各国の度合いというのはどうなのですか。教えていただけたらと思います。
○中釜委員 私が把握している限りとなりますが、例えば中国、韓国、香港、シンガポール、こういうところは非常に先進的な取組をしていて、我々も参考にするところが多いと思います。同時に、さらに多くの方々が住まれているASEANの国々においては、がん登録事業、医療開発事業を含めてまだまだ十分でないことも事実です。がんの実態を把握するためには登録事業は非常に重要なのですが、その辺りのことは充実していく必要があるだろうと思います。
その点においては、フランスにあるIARC(国際がん研究機関)主導でがんの登録事業ということを推進していますし、インドにアジア地区のセンターがあるのですけれども、その協力機関として我々日本が関わっている。そういうものを通して登録の指導をしていく、実態を把握することが進められています。その中において、現在アジア各国のがんセンターというのが16ございまして、そこがANCCAという組織をつくっているのです。十数年前に当時垣添総長がつくられたのですが、数年前からより具体的に何か活動を進めようということで、今、情報の共有や課題の共有ということを進めております。その中で登録事業の推進においては、韓国、日本といった国々の先進的な技術を参考にしながらぜひ広めていきたいと考えておりますし、そういうものから逆に日本の課題が見えてきたりすることもあるかなと思っています。
1つの活動の成果としては、昨年COVID感染によるがん診療状況の影響ということをANCCAの傘下施設において情報共有をして論文を作成しました。これによって、各国それぞれ特徴があるのですけれども、何が足りていないか、どういう視点が不足しているのかということを各国で共有することによって、アジア全体のがん対策、健康増進、公衆衛生環境の増進ということにつなげていければと思いますし、そこで日本がリードできる形があるのかなと思います。
今日は直接関係ないですが、臨床開発に関してもまだまだアジア全体で進めていくポテンシャルは高いと思います。これはAMEDの別事業としてATLASという事業をスタートしています。こういうものを通じてアジアに多いがん、アジアに多い希少ながん種に対する開発研究を加速、促進することによって、多くの方々にアフォーダブルな形での医薬品の提供ができればよいと思います。そういうことも取り組んでいきながら、アジアの諸国とともにがん対策に取り組む姿勢も我々センターとして強化する必要があるかなと考えているところです。
どうも御指摘ありがとうございました。
○土岐委員 どうもありがとうございました。勉強になりました。
○山口会長 そのほかに御意見はいかがでしょうか。
特になさそうなので、中釜委員、御報告どうもありがとうございました。
○中釜委員 時間をいただきありがとうございました。
○山口会長 報告事項2点、済ませていただきました。
一番最初に申し上げましたように、中間報告書の議論は今日で最終となります。最終案を確定させるために、私と事務局で最終的な修文等は責任を持ってさせていただこうと思うのですが、とても私だけでは手に負えない部分に関しましては、先ほど議論の中で人材育成の部分とか、皆様の御意見を伺いましたので、それを参考にしてまとめていきたいと思います。その他の部分に関しては、多分字句の修正等で十分対応できるかと思います。ただ、必要になったら、委員の皆様それぞれに事務局のほうから尋ねさせていただくこともあろうかと思いますので、その節はどうぞよろしくお願いいたします。
そういう形で進められればと思っておるのですが、それではちょっとまずいとか、いやいや、もっとこうしてくれとかという御意見があれば、進め方について御意見を賜れればと思います。
特にそんなのは駄目だという御意見はなさそうですので、では、皆さんから特に異議が出なかったということで、こういう形で進めさせていただこうと思います。
それから、第4期の基本計画に向けて、6月30日からその議論が始まるということを申し上げましたが、特に中間報告での議論、あるいは皆様のお考え、さらには御自身のいろんな経験、そういったものがそういうものに反映されなければいけないと思いますので、第4期の基本計画に向けてのテーマあるいはやり方等をぜひお考いただいてというのが私からのお願いになります。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、私はここまでにさせていただいて、事務局に進行をお願いいたします。
○岩佐がん対策推進官 先生方、長い間ありがとうございました。
最後に、課長より御挨拶をさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○中谷がん・疾病対策課長 がん・疾病対策課長の中谷でございます。
閉会に当たり一言御挨拶を申し上げます。まず、委員の皆様におかれましては、第3期基本計画に基づく各分野につきまして大変熱心に、またコロナ禍の影響など示唆に富む御意見を多々いただきまして、厚く御礼申し上げます。ありがとうございます。
この中間評価に当たりましては、ちょうどその評価を始めようとしたときにコロナウイルスの流行拡大がございまして、なかなか思うようなスケジューリングができなかったということもございます。その点においては本当に遅くなってしまって誠に申し訳なかったのですが、担当課としましてはこのピンチをチャンスに変えるといいますか、逆にコロナ禍の影響を踏まえて、BCPに関する医療の提供を途絶えさせないようにするにはどうしておいたらいいかとか、オンラインの環境の整備等についても御意見をいただけたと思っておりますので、第3期計画、残り僅かでございますが、しっかりと最後までやり遂げるとともに、今、山口会長からもお話があったように、第4期の検討もしっかりこの御意見も踏まえて進めていきたいと思っております。
最後になりますが、がん対策のさらなる推進に向けましては、各委員それぞれのお立場からさらなる御支援、御協力を賜れれば幸いに存じます。本当に本日はどうもありがとうございました。
以上でございます。
○岩佐がん対策推進官 それでは、次回以降の日程につきましては、また追って御調整をさせていただければと思います。
それでは、本日は、ありがとうございました。
 

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健康局がん・疾病対策課

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