第一種健康診断特例区域等の検証に関する検討会(第6回)議事録

日時

令和4年4月28日(木)10:00~12:00

場所

BasisPoint Lab.新橋日比谷口店
東京都港区新橋2-6-2 新橋アイマークビル4F

出席者(五十音順)

構成員
  • 荒井 史男
  • 一ノ瀬 正樹 《web出席》
  • 鎌田 七男 《web出席》
  • 木戸 季市
  • 小池 信之 《web出席》
  • ◎佐々木 康人
  • 柴田 義貞 《web出席》
  • 永山 雄二 《web出席》
  • 増田 善信
  • 山澤 弘実 《web出席》

◎は座長

荒井構成員の「荒」の草冠は、正しくは間が空いている四画草冠
参考人
  • 五十嵐 康人(京都大学複合原子力研究所 教授) 《web出席》
  • 高宮 幸一(京都大学複合原子力研究所 准教授) 《web出席》
  • 石川  裕彦(京都大学複合原子力研究所 研究員) 《web出席》
  • 上村 健(国立広島原爆死没者追悼平和祈念 館副館長) 《web出席》
  • 坂本 美穂子(国立広島原爆死没者追悼平和祈念館 主事) 《web出席》
  • 高橋 秀人(国立保健医療科学院 統括研究官) 《web出席》

議題

(1) 検証の進捗状況について
(2) その他

議事

議事内容
○山本室長 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第6回「第一種健康診断特例区域等の検証に関する検討会」を開催いたします。
 構成員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
本日の出欠について御案内いたします。荒井構成員、木戸構成員、増田構成員には本会場にて御参加いただいております。また、一ノ瀬構成員、鎌田構成員、小池構成員、柴田構成員、永山構成員、山澤構成員はオンラインの参加となっております。岩崎構成員は欠席となっております。
 また、議事の2番目に関しまして、参考人にも御出席いただいております。気象シミュレーション及び土壌調査ワーキンググループとして京都大学複合原子力研究所の五十嵐先生、及び同研究所の高宮先生及び石川先生、健康影響ワーキンググループとして国立保健医療科学院の高橋先生、祈念館における体験記調査の担当者として国立広島原爆死没者追悼平和祈念館副館長の上村様及び主事の坂本様にオンラインにて参加いただいております。
 なお、健康局長は公務の都合により欠席いたしております。
 また、事務局に異動がありましたので御報告いたします。総務課長の伊澤でございます。
○伊澤課長 総務課長の伊澤でございます。本日はよろしくお願いいたします。
○山本室長 本日の傍聴ですが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、マスコミの方のみの傍聴とし、会議の模様をYouTubeによるライブ配信にて公開しておりますので、御承知おきください。
 ここで、YouTube配信に関する注意事項を御連絡いたします。この動画、映像と音声になりますけれども、これは本検討会の公式記録ではありません。公式記録である議事録は厚生労働省ホームページ内に会議終了後に追って掲載いたします。また、配信している画面あるいは内容につきましては、この後、会場におられるマスコミの方々の冒頭のカメラ撮り終了時までは使用することが可能です。
 それから、オンラインでの参加の方に何点かお願いをさせていただきます。ビデオ、カメラはオンにしてください。マイクはミュートにしていただき、御発言のときのみマイクをオンにしてください。御発言時には名前をおっしゃった上で御発言ください。御発言が終わりましたら、マイクをミュートに戻してください。
 以上、よろしくお願いいたします。
 操作方法等につきまして御不明な点がございましたら、事前にお伝えしております電話番号におかけいただければ御案内いたしますので、いつでもお問い合わせください。
 それでは、冒頭のカメラにつきましてはここまでといたします。

(カメラ退室)

○山本室長 それでは、以降の進行は佐々木座長にお願いいたします。
○佐々木座長 皆様、おはようございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
 早速ですが、事務局より本日の資料の確認をお願いいたします。
○南川課長補佐 それでは、資料の御確認をお願いします。
 座席表、議事次第、資料1、資料2、資料3、資料4、参考資料1、2の計8つ、第5回までの検討会における資料は別途1冊のファイルにまとめております。
 そのほか、机上配付資料は増田構成員からの机上配付資料が2種類追加となっております。
 資料の不足等がございましたら、議事の途中でも結構ですので、事務局までお声がけください。
○佐々木座長 皆様、資料はお手元にありますでしょうか。大丈夫でしょうか。もしなければ、御連絡いただくようにお願いいたします。
 それでは、議事に入ります。
 前回開催から時間が空きましたので、少しこれまでの経緯の説明を私からさせていただければと思います。
 本検討会は、被爆者援護法第一種健康診断特例区域という昭和49年・51年に設定された区域について、最新の科学技術を用いて可能な限り検証をし、その在り方等の意見集約をするため、一昨年の11月に設けられました。
 これまで着手できる調査を進めるとともに、本検討会も5回開催し、昨年の9月に「これまでの議論の経過及び今後の方向性について」という形で検討会でのこれまでの議論を一旦整理させていただきました。
 その議論を踏まえて、気象・土壌ワーキンググループ、健康影響ワーキンググループにおいては、これまで検証作業を進めていただいておりますので、本日はその進捗報告をいただき、その結果を踏まえて議論ができればと思っております。
皆様におかれましても、円滑な議事進行に御協力をお願いいたします。
 なお、増田構成員から御意見が出ておりまして、机上配付してございます。これにつきましては、この後、放射性降下物の拡散状況について五十嵐参考人の御説明をいただきますが、その後に増田構成員から御発言をいただき、議論をしたいと思っております。
 増田構成員、それでよろしいでしょうか。
 では早速、事務局より資料1「検証の進捗状況について」及び参考資料の説明をお願いいたします。
○南川課長補佐 それでは、資料1について御確認ください。
 「検証の進捗状況」というタイトルになっておりますが、本検討会の下で行われている検証の全体像について、まず事務局のほうから御説明させていただきたいと思います。
 1枚目をおめくりください。
 「これまでの検証の進捗状況」とさせていただいておりますが、昨年7月に御議論いただいた「これまでの議論の経過及び今後の方向性について」を受けまして、マル1原爆由来の放射性物質を確認する課題、マル2健康影響が生じているか確認する課題に関する新たな科学的知見を得るための検証をそれぞれのワーキングにおいて加速してやっていただいております。
 まず、マル1の原爆由来の放射性物質を確認する課題は気象・土壌ワーキングの担当課題になりますが、大きく3つに分けて進捗状況を御説明させていただきます。
 1つ目は気象シミュレーションでございます。これについては、現状としましては原爆雲、衝撃塵、街区火災の3つに気象場を加えた構成要素に分けてモデルを構築いただいております。これらの個々のモデルについて試験シミュレーションを実施し、課題改善点の洗い出しを行っている途中でございます。
 2つ目につきましては土壌調査です。これについては、黒い雨の報告がある地域をできる限り包含した100区域について、30cmの深さまで層別化した土壌を採取しております。この土壌の採取そのものは100区域とも昨年度中に終わっております。うち10区域について放射能等を測定し、これにより解析方法の有効性であったり、限界、そして、今後の効率的な調査方法が明らかになったところでございます。
 そして、3つ目については原爆投下時の気象状況等に関する文献調査、祈念館における体験記調査等とさせていただいております。米国公文書館及びトルーマン大統領図書館等のオンライン検索の上、得られた候補文献のうち、入手可能だった文献については気象・土壌ワーキングにおいて内容を精査し、後ほど御報告いただきます。体験記調査については、前回この検討会で御議論があったとおり、雨以外の飛散物の記載の有無について追加で確認をさせていただいているところです。
 続きまして、健康影響が生じているかを確認する課題、健康影響ワーキングの担当課題になります。
 1つ目は疾患罹患状況等調査ですけれども、健康影響ワーキングが主体となって、広島県・市の協力を得つつ、実現可能性や対象者への負担を含めて検討し、調査計画を昨年度策定しております。
 2つ目につきましては広島赤十字・原爆病院におけるカルテ調査です。これも既に御報告のところですが、被爆者約500例のカルテの記載の有無を精査し、被爆直後の症状や被爆後40年以降の疾病状況の比較を実施しましたが、雨の曝露の記載のみにおいての健康状況の違いは報告されておりません。
 続きまして、2ページ目を御確認ください。
 令和4年度の検証の方向性ですが、第一種健康診断特例区域の在り方等の検討に向けて、気象・土壌ワーキング及び健康影響ワーキングにおいて一定の科学的な知見が得られるよう、可能な限り検証を進めるとさせていただいております。
 マル1の課題につきましては、気象シミュレーションにつきましては、個別のシミュレーションの実施と改善を図る中で構築した各モデルを精緻化し、原爆投下時の気象シミュレーションを可能な限り構築する。
 土壌調査については、年度内に100区画について測定・分析を進めることによって、区域ごとの土壌に残留する原爆由来の放射性物質の程度について可能な限り明らかにしていくとさせていただいています。
 原爆投下時の気象状況における文献調査、祈念館における体験記調査については、まだ公文書館等の現地調査ができておりませんので、できるようになったら実施した上で、さらに文献を入手、精査等を行っていきたいと思っております。
 疾患罹患状況調査につきましては、昨年度策定された調査計画に基づき、年内には調査が終了、年度内にはデータ解析・調査報告ができるよう、調査を実施していきたいと考えております。
 広島赤十字・原爆病院におけるカルテ調査については、本調査については終了済みとさせていただいております。
御説明は以上です。
詳細については、後ほどそれぞれのワーキングのほうから御報告がある予定です。どうぞよろしくお願いします。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 昨年7月以降の作業の進捗状況や令和4年度の検証の方向性(案)について総括的に説明していただきました。
 ただいまの事務局の御説明について議論をしていただきたいと思います。
 なお、個々の調査項目については、この後気象・土壌ワーキンググループと健康影響ワーキンググループからそれぞれ詳細な進捗状況の説明がありますので、個々の調査に関する質問はその際にワーキンググループに直接聞いていただくこととして、まず、ここでは検証の進捗状況全体に関して何か御意見がありましたら挙手をお願いいたします。
 また、オンライン参加の構成員の皆様におかれましては、Zoomの挙手機能を御利用いただくなどしていただき、私が指名しましたら、ミュートを解除して御発言をお願いいたします。
 発言につきましては、お一人1分程度の簡潔な御発言にしていただきますようお願いいたします。
 いかがでしょうか。御発言をお願いいたします。
 増田構成員、どうぞ。
○増田構成員 増田でございます。
 私は年を取っているから耳が遠いので、ただいまの説明は少し声を大きくしていただかないと十分聞き取れませんでしたが、一応聞き取りはしたつもりですけれども、そういう関係で今後はもうちょっと声を大きくしていただきたいと思います。
 これまでの検証に係る進捗状況(全体)でございますが、国立原爆死没者追悼平和祈念館から出された問題については、以前から私はあれでは不十分だという意見を述べています。というのは、検討された範囲がいわゆる大瀧雨域の中に限定されているという問題とか、あるいはせっかくやるのに雨だけをやっている問題です。いわゆる急性原爆症と考えられる歯茎からの出血だとか、そういうような問題が全く検索されていないのです。そういう点ではこの検討は不十分だと思っていますが、どこにもそのことが書かれていないようなのですが、どういうふうにお取り計らいいただいたのかお答えいただきたいと思います。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 それでは、事務局からお声を少し大きくして、ゆっくりと御説明をいただけますでしょうか。
○南川課長補佐 失礼いたしました。
 それでは、事務局から御説明させていただきます。
 御指摘の祈念館の体験記調査については、詳細はこの後の資料4で改めて御説明させていただきます。ただ、前回御指摘いただいた雨だけではなく飛散物も必要ではないかという点も含めてもう一回調査をさせていただいておりますし、これまで第1回目、第2回目の調査、そして、新たに飛散物を加えた調査の総括も記載させていただいていますので、またそのときに改めて御質問いただければと思います。
 御説明は以上です。
○佐々木座長 ほかに御質問、御意見はありますでしょうか。
 鎌田構成員、どうぞ。お願いします。
○鎌田構成員 9か月たちまして、広島での現状を御報告したいと思います。よろしいでしょうか。
○佐々木座長 簡潔にお願いいたします。
○鎌田構成員 現時点で申請予定者1万数千人のうち、2,300名の方が申請をされている状態です。それに際しては、当時住んでいたという学校ないしは事業所の書類と医師の診断書を提出するということになっております。それは資料に既に出ていますが、それを県や市に出して、それを該当者とみなして、あなたは第一種になりますということが返ってくるわけですが、そうしますと、今までこの検討会が7月9日に皆さんと合意しましたように科学的根拠の検証をしていくという目的が全然ないわけです。というのは、住民の2つの書類の申請でもって資格が取れるということになる。ということは、この検討会の目的をなくしてしまったというのが現状なわけです。ですから、皆さんはそれをどうお考えでしょうか。
もう一つは、住民の方々は内科診療あるいは眼科、整形外科のいずれか、場合によっては複数の診療科から診断書あるいは診察を受けなくてはいけない。初診料を払い、検査料を払い、診断書を払ってもらうということで、さらに負担を受けているわけです。だから、そういう関係諸費用については、国あるいは県や市が後払いするとかという考慮があってもいいのではないかな。
 あるいは、場合によっては診断書を提供する必要はないのではないか。といいますのは、現在の1号、2号、3号、4号の被爆者の中で、健康管理手当等をもらっている方は93%に当たるわけです。広島市が91%、広島県が93%ということになる。ですから、いずれそうなるわけです。それを前もって提出させて、しかも住民の負担になっているという現状です。
 その2点、とにかくこの検討会は9か月たった段階で目的がないので、この検討会は何か目的があるのでしょうか。それをお伺いしたいというのと、実務上の問題点について、御報告と同時に御意見を頂戴したいと思います。
以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 事務局、今ここでお答えいただけますか。
○南川課長補佐 御質問いただきありがとうございます。
 まず、この検討会の目的であったり、4月1日から開始した新たな「黒い雨」訴訟を踏まえた手帳交付の仕組みに関する御質問だと思っております。我々としましては、参考資料2のほうにつけてありますけれども、昨年7月の「黒い雨」の高裁判決を受けて、総理談話を発表しまして、その後、4月1日から新たな「黒い雨」手帳交付の制度を開始しました。ただ、これにつきましては、被爆者援護法上、手帳を交付するに当たって、被爆者の範囲を、地域要件を基に判断するものと、個別審査によって判断するものに分かれていると我々としては考えておりまして、例えば地域要件を基に判断するものは、被爆者援護法の1条1号の直接被爆や、2号の入市被爆。個別に判断するものというのは、法1条3号の例えば当時被爆して負傷した者の救護、看護等に従事した方については個別に判断するものと考えております。
 今回の昨年の「黒い雨」訴訟を受けた「黒い雨」に関する個別認定指針につきましては、法1条3号に関するもので、原告84名それぞれの事情に基づいて広島県・市とともに判決内容を分析し、広島地裁、高裁の事実認定を踏まえて一定の基準を定めたものとさせていただいております。
 一方、この検討会が対象にしております第一種健康診断特例区域につきましては、当時の降雨状況や土壌の放射能測定、その後同区域に移住されていた方々の健康状態を踏まえてもともと設定されておりますし、地域にいることを要件として判断するものと考えております。
これまで被爆地域の指定については、新たな不公平を生み出すことにならないように科学的、合理的な根拠があることも要件としてきております。このため、第一種健康診断特例区域の拡大を視野に入れた検証については、この検討会で行われているように科学的、合理的な根拠に基づいて進める必要があると考えておりまして、先ほど鎌田構成員がおっしゃった4月1日から始めた個別認定指針とは別に検討する必要があるものと我々としては考えているところでございます。
 御説明は以上です。
○佐々木座長 鎌田構成員、御発言がありますか。
○鎌田構成員 確認ですけれども、ということは、援護法に基づいた第一種特例地区というものと広島県、広島市が認めた第一種該当者の2つに分かれると理解してよろしいのでしょうか。国が認めた第一種特例地域と県、市が認めた第一種というものと2つに分かれているよという理解でよろしいのですか。
○南川課長補佐 今の御質問ですけれども、手帳交付という意味では被爆者援護法上の手帳交付ですので、基本的には県市が事務を委任されており、県市が出すという意味では同じものなのですけれども、今回、基本的に手帳交付に当たって、法律の中で当時の被爆者と認めるために地域に住んでいることをもって要件とする場合と、例えばある特定の施設で救護、看護をしていることを、御本人であったり、証人であったり、いろいろな方のお話を聞きながら、その他の様々な資料を含めて個別にお一人お一人判断する、そういう要件の確認の仕方の違いがございまして、今回の第一種健康診断特例区域というのは、ある区域に住んでいる方については皆さん健康診断が受けられるということで、この区域を定めるという議論ですので、個々の一人一人ではなくてその区域ということについての検討をするに当たっては、個々の一人一人の事情に基づいて手帳を判断する個別認定指針とは異なるという趣旨での発言でした。
 以上となります。
○佐々木座長 よろしいですか。
 鎌田構成員、どうぞ。
○鎌田構成員 原爆行政に関していろいろと学生さん等に講義をしておるわけですけれども、その場合に、援護法に基づいて被爆者行政がなされますと説明するわけですが、今回の4月以降に関しては、個人の住民の申請に基づいて出されているというところ。これは、地域や個人という言葉を使って今説明してくださいましたけれども、実質、それは最初から援護法に基づいているというすっきりした形のほうでやっていただければいいと思います。はっきり言って、私はまだ理解ができていないのです。
 だから、それのためには、昨年7月9日にこの検討会で皆さんの合意を得て、前のときは案でして、今は正のもので参考資料1として出てきているわけですが、文言が現状のものに合わないのです。合わないものが今日の資料2として出されてきているわけです。あれは今説明いただいたことには合致しません。去年の7月9日の段階では納得できます。でも、今の段階でこの検討会の目的ということをするのであれば、新たにあれに手を加えないと、検討会は検討し続けていくことができないと私は思います。ぜひそれを御検討いただきたいと思います。
○佐々木座長 分かりました。ありがとうございました。
 事務局としては、今日の最後にもう一度御説明いただければそうしていただきますし、あるいは次回までにもう少し整理をして御説明していただきたいと思います。
 先に進みたいと思います。
 木戸構成員、お願いします。
○木戸構成員 参考資料2ですけれども、黒い雨に遭った者というのがマル1、マル2で説明されております。そして、2のほうで疾病にかかっている者ということですけれども、3号被爆者で疾病にかかったというのがこれまではなかったと思うのです。それを条件として被爆者として認定する、認定しないというのはなかったと思うのです。なぜこういうものが入ってきているのか。これはやはり除くべきだと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○佐々木座長 今のことに説明はありますか。
○南川課長補佐 先ほどのお答えと同じになってしまうかもしれないのですけれども、今回のこの検討会議というのは地域要件という形を検証する会議になっておりますので、今回参考資料2でつけさせていただいている「黒い雨」訴訟判決の部分については個別の認定指針という形で、当時の判決後の総理談話を受けて、その後、原告の84名の方に対して手帳を交付させていただいたわけなのですけれども、手帳を交付させていただいた現行84名の一人一人の事情を確認して、同じような事情として一定の基準を設けた中にこの84名の方が皆さん疾病に罹患していたということを踏まえて設定されたものでございます。
○佐々木座長 木戸構成員。
○木戸構成員 被爆者健康手帳を取得するこの「黒い雨」とは関係なく、それも全部申請しないと駄目なのです。自然にあなたはこういう条件にいましたね、だから与えますよという形はないので、全てそれは申請なのですから、その申請で被爆者として認定するに当たって11の疾病は条件には付されていない。だから、これは援護法といいますか、現行法を逸脱しているのではないかと思うのです。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 御質問の要点はお分かりいただけるように思いますので、もう一度整理をして分かりやすく御説明いただくということでよろしいでしょうか。今日時間があれば今日しますし、そうでなければ改めて御説明をいただくようにしたいと思います。
 先ほどの事務局からの御説明に関して、ほかに御発言があればお願いいたします。
 増田構成員。
○増田構成員 増田です。
 先ほどから今後の進め方の問題が議論されていると思いますが、実は皆さんのお手元に今配られているものは私の案として出しているのですが、それは、今度の第6回検討会がどのような形で進められるかということが、最後まで資料が来なかったから、分からなかったのです。率直に申し上げまして、昨年7月14日の広島高裁の判決が出て、私の資料には88名と書いてありますが、84名の違いですけれども、84名の原告が全員少なくとも被爆手帳が交付されることになった。そういう新しい条件の中で、一体今までのような検討会の進め方でいいのかどうか。これは大きな問題だと思うのです。
 というのは、行政学の先生もおいででいらっしゃると思いますが、少なくとも行政的な立場から考えると、判決で決められたことを勝手に行政が変えるというようなことはあってはならないのではないかと思うのです。これは行政学の先生が専門で、私はそういう専門ではありませんが、そういうふうに伺っているのです。そういう中で、この新しい検討会を続ける以上、どういうふうにやっていくかということが非常に重要になってくると思うのです。
 そういう点で、先ほど事務局もお話しになりましたが、この会の目的というところをよく精査いたしますと、やはり最新の科学的事実を基にして精密な審議をするとなっていると思います。そういう意味で言えば、先ほどお話しした国立原爆死没者追悼平和祈念館の資料などをもっと広範に取り扱うべきだと思って、実は私は案を作っていたのですが、一体どのような方向でこの第6回検討会が行われるかというのが昨夜になるまで分からなかったのです。従って、前もって準備していたものをそのまま提案させていただきました。
 そういう意味では、今回のこの検討会というのは、少なくとも昨年7月14日の広島高裁の判決後の問題を考えて、しかも、この検討会の目的に合うように、最新の科学的な技術を使って検討するということをやるべきではないかという意味の提案がしてあります。そういう点でぜひ御審議をお願いしたいと思います。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 大変重要な問題提起でありますが、先ほど申し上げましたように、増田構成員からの御意見につきましては後ほど改めて御説明をいただいて、議論をさせていただきたいと思いますので、一旦この議論はここまでにさせていただきたいと思います。引き続き議論すべき問題であると思います。
 ほかに。
 山澤構成員からお願いします。
○山澤構成員 名古屋大学の山澤です。
 今までの議論とちょっと関連するかもしれないのですけれども、この検討会のスコープとスパンが私もだんだん理解できなくなってきたというところがありまして、最初の出だしからすると2年くらいで終わるのかなと感じておりました。
 ただ、今お話があったように、行政とのつながりで特に健康影響の部分というのはかなり重要なところで、議論が必要な部分だろうと思います。
一方で、マル1の気象・土壌関係について言うと、これがそういったところに使えるかどうかを科学的に検討しましょうというステージにあるというような気がするのです。そうすると、これを一緒にして議論を進めるというのはかなり難しい。あまりかみ合わないような中身になっていて、この検討会の進め方あるいは構成をやはり考える必要があるのではないか。現時点において1年2年進めてきた段階で、特にマル1の部分についてこういう現状で、私、今回の報告も昨日の夜から今朝にかけてちらっと見たのですけれども、このままいくとやはり何年もかかるといったイメージを持っていますので、その辺のスコープとスパンを年度の初めですのでもう一回はっきりしていただいて、進め方も検討していただいたほうがいいのかなと考えております。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 引き続き同じ話題ですので、今日準備されている御説明等は終えてしまいたいと思っておりますので、できるだけ簡潔に議事を進めて、ただいま御提言のありました重要な課題については後ほど、あるいは回を改めることになるかもしれませんけれども、きちんと議論をする必要があるかと存じております。
 ほかに関連した御発言はありますでしょうか。
 ありがとうございました。
 それでは、資料2の「原子爆弾投下に伴う放射性降下物の拡散状況等に関する調査等一式」に沿って、気象・土壌ワーキンググループの五十嵐参考人に御説明をいただきたいと思います。20分ほど用意をしておりますので、よろしくお願いいたします。
○五十嵐参考人 ありがとうございます。京都大学複合原子力科学研究所の五十嵐です。
 20分ということですけれども、非常に盛りだくさんの内容なので、できれば結果の部分を重点にお話ししたいと思います。
 冒頭、厚労省さんからお話がありましたように、気象シミュレーションのお話、それから、これを検証するための土壌中の原爆由来物質というものを調べております。それから、研究班全体の寄与というか、我々が進めている中で有用な情報をピックアップしたいということで、この3つの形で進めているということです。昨年夏の御議論があって、研究を加速化したいということでありましたので、そこの部分に対しての対応を列挙しております。
 また、メンバーですけれども、私が心もとない部分で、気象チームで高名な先生方に御参画いただくことになりました。また、御協力はいただいていたのですけれども、正式のメンバーとして大阪市大の微粒子の炭素を専門とされている先生に加わっていただいたということで、放射性物質の測定につきましても、我が国を代表するような機関であったり、財団であったりというようなところの御協力を仰いだということになります。また、一部のデータは気象庁からも入手いたしました。
 分担表はこのようになっております。文献調査につきましては、高名な我が研究所におられる先生にお入りいただくということで対応しているところです。
 では、モデルの調査の実際の進捗状況です。原爆雲、衝撃塵、火災煙というものをどうやって見ていくかということになります。冒頭のお話にあったとおりですけれども、この3つに加えまして、気象場というものがどのくらいモデルで正確に再現されるのかということから見ていくということで、気象モデル、爆発モデル、ここからはまだなかなか実行できていないわけですが、この2つにつきまして重点で解析、評価を進めてきたということになります。
 進捗の概要で書いてありますように、モデルの性能評価、歴史的な再解析と呼ばれるデータにつきまして調べる。Weather Research and Forecasting Model(WRF)という米国製のモデルでありますけれども、残念ながら気象庁のモデルでは使われていないのですが、そういったものを使いまして検討する。それから、WRFもいろいろなサブバージョンがあるのですが、こういったことにつきましても検討しようということです。
爆発モデルにつきましては、圧縮性の流体力学モデルを使って再現ができるということ。それから、衝撃塵についても再現できるのではないかというということになりました。
 こちらは今後の検討課題になっておりまして、街区火災としてやはり計算するほうがいい。WRF-fireという話があったのですけれども、こちらのほうがよろしいのではないかという議論になっております。
 それから、物質輸送ですので、そこのモデルを入れたいということなのですが、幾つか選択肢があるのですけれども、この中で専門とされる先生を招き入れたということもあるのですが、FLEXPARTと呼ばれるものを使おうというような方向になっています。
実際の進捗です。かなり細かいので、全部をしっかりお話しできないかもしれませんが、検討していることの雰囲気だけでもお伝えしたいと思います。
 当時の気象状況です。これは地上気象の天気図になりますけれども、鯨の尾が張り出しているような太平洋の高気圧が日本列島を覆っているというところです。この状況では一般風が非常に弱いということですので、海陸風、山谷風などの局地循環というものがどこまで反映できるかということで、モデルの性能が試される事例になりますよということです。
 このモデル性能を試すために、1945年当時は密な高層観測、衛星はないわけですので、こういったデータがしっかりとモデルに同化されて作成されたデータセットになっていないということです。最近のこういうデータセットというのは1980年以降にありまして、そちらと当時1945年を包含した歴史的な再解析のデータセットは作られておりますので、こちらをオーバーラップした期間におきまして比較しようということです。最近はこういった事例を選んでまいりまして、特に2006年8月のこういったデータを中心にしまして解析をしようということです。
 まずは風の場になります。歴史的再解析(ER-20C)というものですけれども、こちらと最新のInterimというものを比べていくということになります。
 右のグラフにあるのですけれども、緑が歴史的再解析で赤が最新の再解析になります。黒が実測です。風向、風速を米子におきまして比較したということになります。歴史的な再解析は、やはり地上のほうがしっかり拘束がかかっているのですけれども、上層に行くとどうも合わないねと。これはまだ一例なのですが、出ております。
 それから、熱力学場として積雲対流と降水を可降水量というもので表しております。こちらが歴史的な再解析で、こちら側が最新の再解析となります。最新再解析がより実態に近いと考えられますけれども、やや過剰な積雲対流の発達のしやすさのデータが見えているように思われます。
 また、可降水量につきましては、こちらが最新のものですけれども、九州の西方と南方に可降水量がやや多い分布になっておりますが、歴史的なデータについてはそういうものが見えないという状態です。やはり差があるということです。
 これら類似の図でデータセットはちゃんと最終のものがありますので、見ながら比べていって限界を知ろうということです。
 それから、数値モデルの性能ということで、局地循環をどこまで再現できるかということです。最新のデータ、再解析データを入れて、こういった条件で計算をしている。広島におきまして、こういう総観の気象状況で風速と風向を見ております。これは離れているように見えますが、風向ですので、こちらがゼロということは360ということになりますので、かなりよく再現している。タイミングは若干ずれていたりはするのですけれども、風速についてかなり追随できているということで、モデルとしては精度として十分あるのではないかと考えるところです。
 また、大気境界層や降水物理の扱いにつきまして、幾つかオプションがWRFにはあるということで、若干細かい格子で計算されているということですけれども、広島の風速と広島の風向につきまして、こういったパラメーターで計算する。こういうオプションのスキームで計算するということでどれぐらいの差があるかということなのですが、比較的ばらつきは小さいのではないかと考えております。つまり、モデルとしては信頼できると判断したということです。
 広島原爆にも適用ということで、気象モデルでの計算が破綻しないかということなのですが、原爆としてこの熱量を与えまして降水が形成されるということです。ネバダでやった事例は、雨は降らない。日本は湿潤地域ですので雨が降るよということなのですが、これはちょっと大きめな値になっておりますけれども、領域は正確にどの大きさか忘れてしまいましたが、その熱量を地表から600メートル付近に与えまして、それでモデルを動かす。これは理想実験として単にWRFの中で動かしてみたというだけですが、15分後は雨水の水が形成されて、それが20分後には地表に届くようになって、25分後にはさらにもっと降ってくるという状況が再現できる。つまり、計算は破綻しなかったということです。
 さらに、2006年8月6日、これは1945年8月6日に近いというところで選んでおりますけれども、そこの条件下で計算をいたしますと、このような積算の雨量分布になったということです。ですから、モデルの中でやっと雨が降ったということです。これは原爆のエネルギーだと入れております。
 さらに街区火災ですけれども、これは空間分布、時間変化というものはHiSoFにAoyama et al.等で与えられておりますので、こちらを使おうと考えておりますけれども、ここに書かれている評価の7倍ぐらいです。7ペタジュールと書かれておりましたので、そういった熱を与えて変化をさせて、さらに雨を降らせるということになります。
 それから、拡散計算はこれからですけれども、粒子の輸送を扱うモデルに入れていくということになります。
 以上はおおよその気象モデルの状況です。爆発モデルですが、私、詳細はなかなか理解できていない部分がありますけれども、原爆の起爆から数ms後から初期状況として560秒ぐらいまで画像を示してございます。これは4分の1秒ということだそうです。
 火球の上昇速度につきましては、直交座標で計算しているということです。DS86のSTLAMBというような流体力学モデルがあったり、ネバダの核実験の観測値が報告されていますけれども、それとほぼ同等。
 衝撃波の圧力につきましても、外務省から平成26年だったか、28年だったか、報告が出ておりますけれども、これがほぼ同等ということです。こちらが全密度になって空気の温度です。
 それから、これは衝撃塵として粉塵をある領域に与えておりますけれども、そちらの結果ということになります。このようにきのこ雲状に上がっていくということが分かりました。
 これを別な形態で表した図になります。ボリュームレンダリングという手法だそうですけれども、これは10のマイナス10乗から10のマイナス6乗キログラム毎立米といった物量に対して色をつけるということになります。こちらは、衝撃波で浮き上がったものが上がっていくのが見えているという形になります。こちらの別の表現で全密度と衝撃塵のある濃度での領域がどのように変化していったかということを表します。このような状況でモデルが進歩しているということになります。
 まとめがこの表ですけれども、時間がございませんので、詳細は割愛させていただきます。
 土壌調査です。どのようなところで採取するかいうことと、どのように採取していくかということ。さらにどのような性状を分析するということが書かれております。我々、5キロ格子を作りまして、全体で60掛ける50キロという形にしました。120取れるのですけれども、山岳地域、それから、なかなか入れないということ、あるいは地点がなかったりしますので、特にこちらによった100地域、これは正確なものではないのですけれども、例として出しておりますが、こういった区域を選定しまして、土壌を30センチの深さ、1センチごと剥いでいくというスクレーパープレートという手法、これは福島第一原発事故後に導入されたものですけれども、そういう手法を適用したということでございます。
 100取りまして、そのうち10につきましては、様々な分析とセシウム137と、それから、こちらに書いてありますが、自然の放射性核種、鉛210というものを測っております。さらに、原爆由来物質ではないかと考えておりました酸化鉄の球状の粒子であったり、これは街区火災、火災煙の証拠物ではないかと考えておりますけれども、微粒子状の炭素というものを分析したということになります。
 こちらの地図が実際の区域に近いものになります。5キロ掛ける5キロというものを10掛ける12で配分しました。戦前から存在して現状確認が可能であるという寺社につきまして、それを探しまして、現地の写真も参考にしながら採取を進めてもらいました。
 採取もかなり労力がかかります。土地家屋調査士という方に地権者を探していただいて、その地権者から同意を得た上で実施しています。採取自体は風評等が発生しないように開示しないということにいたしておりますので、これが同意条件になります。第1層目からどんどん入るということになります。土色帳と色を比べながら記録している。最終的に我が研究所に送っていただくということでした。
 これもかなり大変な作業でございました。こういったまとめのカルテというものを作ったり、こういった進捗管理のテーブルを作りまして、見える化しながら進めたということになります。
 実際に送られてきてからの前処理というのもかなり大変なことになりまして、破傷風菌とかいろいろな感染症が起きないように、あるいはカビが発生しないようにということで、ガンマ線滅菌で処理をしております。その後乾燥しまして、恒量にしまして、2ミリのふるいで篩いまして、ちゃんとはかろうという部分をしっかり取り分けて、こういった形で試料発送を各機関等にさせていただいております。
 多数の機関が参画していますので、ものさしが狂わないようにということで、IAEAの標準試料というものを使いまして、鉛210とセシウム137の値がついているわけです。こういうもので校正を確認し、これは半導体検出器なのですが、液体窒素のタンクで液体窒素で冷やしながら、ここでゲルマニウムの結晶でもって放射線を感知しているということになります。
 これが結果の一例になります。長崎、広島のものです。これは前年度、前年度と申しましても昨年2月とか3月に取ったものですが、長崎と広島のそれぞれの地点におきまして、こういった地点です。恐らく未攪乱の土壌であったと思っておりますが、鉛210濃度が表面で高く指数的に徐々に下がっている。土壌の中にあるラジウムの放射壊変で出来てくるのですが、一部は大気に放出されているラドンの壊変からも生じます。上空にも輸送され降水で沈着しておりますので、土壌の上層で濃度が高いわけです。こういったプロファイルが得られないと、その地点は攪乱されているということになります。
 恐らくなのですが、確証はまだついておりませんけれども、セシウムにはこういったピークがありまして、広島、長崎ともございます。この形状というのはよく似ているなと思っております。こういったものを各地点で得たいというのが我々の狙いでありまして、実際に未攪乱の地点で採取ができたと思っております。
 ところで、10区域につきまして測定をしましたところ、かなり違うデータというか、我々が期待していないデータも得られてきて、これは大変だという状況であります。己斐の古城のデータというのを対照として赤で示してございます。3地点ぐらい同じようなパターンになっていまして、1地点ちょっと飛び跳ねているということです。多くのデータはここの0のところでプロットしていますが、実はこれは0ではなくてND(検出下限値以下)ということで、300試料のうち133は一生懸命はかったのですが、セシウムを検出できないということであります。この後示しますが、鉛の鉛直分布もNDも含めましてちょっと低いというようなこともあって、どうも攪乱された地域から取れたのではないかということです。
 それから、こういったセシウムの濃度ピークなのですけれども、ここには原爆由来の成分だけではなくて、50年代から70年代に実施された大気圏内の核実験由来の成分がありまして、これをどういう具合に考えるかということです。そういう意味では、この分別というのにはまだ届いていない状況です。鉛直輸送モデルというものを適用したいと考えておりますし、こういう状況ですので、水平方向の分布というのはまだ議論できません。
 我々が想像していたよりもかなり大変な結果ということなのですけれども、実際に己斐古城のグラフを赤で示してあります。これは、ほかはバツと書いてあるのですが、表面の鉛濃度がそんなになくて、あとはNDでは必ずしもないのですが、NDもありますし、低いレベルで出ていて、これはどうも攪乱を受けている土壌を取ってしまったのではないかということです。思っていた以上に客土というか埋められているような状況らしいです。我々もあまり認識していなかったのですが、証言では改変していないと言われるのですけれども、実は実態としては改変されているということです。
 一方、パターンが見えたものは、このように鉛の表面濃度が高くて下に向けて指数的に減る。これはちょっと低いのが若干気にはなっているのですけれども、表面の濃度が高いということでマルという具合に現状では判断しています。これはやはり統計的に見ていかないと当然いけないわけですけれども、10地点のうち3地点ということでなかなか厳しいなという状況であります。大変残念なのですけれども、証言は安易には信用してはいけないということが分かりました。
 一方、炭素の分析なのですが、長崎の事例につきまして表層15層をはかっていただいたということです。顕微鏡で最終的には見ています。ここの濃度ピークの部分がセシウムのところをどう見るかということはあるのですけれども、下のほうの領域に該当するということなので、どうも原爆被災により地表へ物が降ったという状況を反映しているのではないかという推定をしています。
 それから、熔融した微粒子ということで、球状の粒子です。球になるということは一旦液体になって自由落下したということの証拠なわけですけれども、こういうものがなぜか元宇品の海岸からたくさん取れるということで、鉄を含むものを磁石で取りました。非常にたくさんありまして、1ミリ以下の砂に対して10のマイナス5乗とか10のマイナス3乗ぐらいの割合になるということで、何でこんなものがたくさんあるのか非常に不思議でしようがないのですが、平均粒径としては250μmぐらいの粒径です。かなり大きいです。
 こういうものは電顕の写真だけではなくて、電顕のX線の分析では鉄の酸化物で若干あるというようなものです。こちらが5グラム、6グラム集まったということで、半導体検出器でガンマ線の分析をしましたところ、セシウムはどうもあるのですが、量的に非常に少ない。トリムやウランもあるのですけれども、特にウランですが、特に広島の原爆由来であるという結論は残念ながら得られませんでした。ですから、恐らく原爆由来のものとほかの発生源が多くあるのだと思うのですが、そういうものと混ざっているということで、現状では明確に断定できない状況に至っております。これがすごくよい指標だと期待したのですが、なかなか難しいということが分かりました。
 こういったことで、課題対応なのですが、現状、土地改変があったかどうかというのは、精密な分析を行う前にもっとたくさんの試料でもって半導体検出器の遮へい体の中にぽんと置きまして、セシウムがまず出てくるか出てこないかの判定をしようということを今進めております。かなりの領域でバツ、出てこないということで、大変残念ながら再度サンプリングを実施しないといけないということが分かりました。また、セシウム単独とか炭素単独ということではなくて、複数の成分で被爆面を推定して指標を評価しないといけないということに至りました。
 それから、やはり黒い雨の本体という何であったかというのを改めて見てみたいということであります。試掘をして掘ったというような、いろいろな注意を払いながら作業してもらったのですけれども、なかなか難しいということが分かったということです。
 あと、全体の寄与ということで、レビュー会議、アドバイザリー会議を実施いたしました。これについては詳細は述べませんけれども、多数の会合を行いまして、皆さんで勉強してしっかり対応を強化するということで、大原先生、石川先生にはそのメンバーとして加わっていただくというようなことになっています。
 文献調査は今中先生に分担いただきましたものが全体で12件ありました。精査したところ、残念ながら本調査研究に寄与するものは多くなかったということであります。幾つかシミュレーションの図というものを見つけました。長崎の図があったということですが、これは最新の知見ではないので役に立たないなということなのですが、ほかの文献はその後さらに検索をいたしましたところ、2021年に雑誌で報告がございました。これはWRFというモデルを使いまして、ネスティングと呼ばれる手法、領域を細かに分割していって我々がやっているものと同じなのですが、我々が使おうとしているモデルと同じもので、これはトレーサーと呼ばれるものを流しているものなのですが、小さくて見にくくて申し訳ないのですけれども、ここで原爆のきのこ雲が上がって、軸も含めて流れていく様子をシミュレーションにしたものになります。
 非常に雑駁な話になりましたけれども、20分ということでちょっとオーバーしたかもしれませんが、総括としてはここにあるような5点ぐらいを並べてございます。後でしっかりお読みいただければありがたいなと思っております。
 以上であります。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 気象・土壌ワーキンググループの進捗状況について御説明をいただきました。ただいまの御説明について議論をしたいと思いますので、御意見がありましたら挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。
 増田構成員、お願いします。
○増田構成員 増田でございます。
 いろいろおやりになっていて、率直に申し上げて説明がよく分からないというのが結論です。
 それで、お伺いしたいのは、先ほどもお話がございました原爆雲と衝撃塵あるいは火災煙というものをシミュレーションされようとして、ある意味では初めて歴史的再解析データを出していただきました。これは何回も前から、実際にAIで天気図ができているなら、それを示してほしいということをお願いして、やっとそれが出てきたというところです。初めて見るところですから、十分な検討はできないのですが、当時の気象のデータの問題で言えば、少なくともまだ地上観測はほとんど実施されていたのですから、AIをわざわざ使わなくたって、地上観測は実はほぼかなりの精度で得られると思うのです。そういう点では、8ページに気象庁が作った当時の印刷天気図、その当時に実際にこれが放送されて、私たち自身が使わせていただいていた天気図です。これは後で印刷されたのですが、現場で使われていたものですが、AIの天気図と比べてもかなりの精度で表現できています。私に言わせれば、わざわざAIなどを使わなくたって、元のデータがあるのだからそれをそのまま使えばいいと感じました。
 まず1つ教えていただきたいのは、最初の爆発のシミュレーションでいろいろな放射性物質が飛び出してくるわけですが、それと気象のシミュレーションはどうやってつないでおられるのか。連続してつなげることができるのかどうか。私は専門ではないですからよく分かりませんが、恐らく最初の爆発に伴って出る衝撃塵などをまずシミュレーションして、それを今度はそのまま与えて気象のシミュレーションにつないでいく予定なのかどうか教えてください。実際の原爆の場合は、最初に出る原爆雲に関する限りはそうでしょうが、衝撃塵や火災煙は連続して発生しています。それはどういうふうにシミュレーションの中に組み入れて、先ほどの場合とどのようにして連続して計算ができるのかどうか教えてください。まずこのことを1つ質問いたします。
 もう一つは、いわゆる歴史的再解析は、最近2006年の天気図が出ていますが、本当に1945年のものをお使いになって、そのときと同じデータでおやりになったのか。それとも、現在のデータを使っておやりになったのか。その点で言えば、現在のデータを使ってAIでやれば、かなり精度はよくなると思いますが、1945年8月6日のときは、少なくとも日本付近ではラジオゾンデはほとんどやられていません。何故かというと、戦争が激しくなって、風船がほとんど来なくなったのです。ですから、私もいろいろ調べましたが、少なくともそのときには上空の観測はなされておりません。ただ、パイバルといういわゆる測風気球は何とか数か所でやられております。しかし、あとはほとんど資材が来なくて中止と書いてあります。そういうデータですから、地面付近はまずかなりの精度でできるとしても、上空の初期値はどのような精度で表現できているのか、そのことをまず教えていただきたいと思います。それが2番目の質問です。
 3番目の質問は土壌の問題です。土壌は1976年、1978年の2回、昭和で言うと51年と53年に非常に広範囲に、当時は厚生省ですが、測定をなさいました。その結果は、核実験の影響があって、対象地域と比較しても差がなかったということで、これは諦められたものなのです。それが果たして出来るのか。現在のように、これも先ほどは福島のような最近の例をお使いになっておられるけれども、そして、広島では非常に放射能の強い己斐だとか、長崎の場合も非常に放射能が強かったところはおやりになっていますが、私たちが今度対象にしているのは、いわゆる広い範囲の黒い雨の地域です。果たしてちゃんとディテクトできるのかどうか。その点について本当に確信があっておやりになるつもりなのかどうか。
時間がありませんので、その3つについて質問をさせていただきます。よろしくお願いします。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 五十嵐参考人、御発言いただけますでしょうか。
○五十嵐参考人 最初の質問なのですけれども、まだ爆発モデルとつなげるというところまでは届いておりません。広島原爆事例の適用ということで、エネルギーを入れて計算したという事例をお見せしていますけれども、まだここではエネルギーだけを与えているわけですけれども、物質輸送のモデルというものも含めて検討していきますので、爆発モデルで得られた結果、爆発から一定程度経過した時間の形状であったり、それぞれのパラメーターを気象モデルに引き継いでいこうと考えております。これはある一定の大きさが広がった領域で熱を与えているわけですけれども、こういう事例で計算が途中で止まってしまう、落ちてしまうということがないということを確認したということです。
 それから、雨が原爆雲だけで降るということをまず確かめました。その上で、次の街区火災を入れて、10の15乗の7倍ぐらいの総熱量だったと評価されていますけれども、そういうものの空間分布、時間変化を、これは平らになってしまうかもしれませんけれども、ある程度入れていきたいというのが我々の希望です。
 それから、既にここで御説明したのですが、最新の再解析データのも入れてモデルを走らせた結果と比べますと、増田先生が御指摘のとおり、歴史的再解析では上層のデータはありませんので、風向、風速も違ってきてしまいます。このことが何に効くかというと、原爆雲あるいは衝撃塵の流れです。時間が経過したときの流れというものがやはり変わってくる可能性があります。雨域についても影響を及ぼす可能性はありますので、それは御指摘のとおりなので、そこら辺がどの程度食い違っているのかということを見ていきたい。ただ、モデルについては恐らくかなり精度はよくなっているのだと考えております。
 それから、土壌の問題です。土壌は確かに難しい問題であることは間違いありません。被爆から76年、77年というような時間が経過しておりますので、セシウムにつきましても半世紀以上たっているわけです。それから、1960年代中心のグローバルフォールアウトにしても60年ぐらいたっているわけですので、そういう意味では、セシウムは非常に減衰していますけれども、現状の測定装置の感度はかなり高いので、今回の手法によりまして、測定は、土壌が改変されていなければ測れるであろうと思っています。こういうものがどこまで出てくるのかしっかり確かめるということで、これはもっと早く実行しておくべきであったのは間違いないのですけれども、今が最後の機会であると捉えて、やはり全面的な調査というものは推進したいと考えております。
 また、セシウムだけに頼るのではなくて、今日お見せした炭素であったり、あるいは粒子につきましてももっとちゃんと分析をしていきたいと思っております。時間は当然かかるのですけれども、しっかりやるということがその限界を示すということなので、それは厚労省さんにお願いしたいのですが、調査は継続させていただきたいと切に要望いたします。
 以上です。
○佐々木座長 増田構成員、いいですか。追加の発言があれば簡潔にお願いします。
○増田構成員 時間がないのにたびたび発言して申し訳ないのですけれども、最後の土壌の問題は、先ほど言いましたように、非常に強いところだけを取り上げたって意味がない。それは、今回、私たちは少なくとも黒い雨の地域の全体の中で一体どのような放射性物質が落ちていたかということが基本になるわけですから、そういうことができないような可能性が非常に強いのではないか。しかも、それは全くの杞憂ではなくて、実際に核実験の影響というのが非常に強くて、せっかく厚生省が昭和51年と53年に大規模にやられて、結果としてそれは採用できなかったわけでしょう。そういうものをもう一度、幾ら研究が進んでいると言っても、果たして可能性が出るのかどうか。それについてはどうお考えかもう一度お答えいただきたいと思います。
○佐々木座長 五十嵐参考人、御発言いただけますか。
○五十嵐参考人 先生も御承知のように、モデルはモデル結果でしかないので、あくまでシミュレーションです。むしろ物質的な証拠というものがもっとしっかりと観察されるということのほうが私は重要ではないかと思っております。
 また、見過ごされてきたのは、やはり過去の測定というのは放射能しか見ていなくて他の物質をしっかり見ていないのです。そこに限界があるのではないかなと思っております。なので、現時点でほかの視点でもう一度見ていくということはできますので、それはやはり物質を扱っている人、私は環境屋ですけれども、そこはもう少しやらせていただきたいなと思います。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ほかに御質問、御意見はございますでしょうか。
 まず山澤構成員、それから一ノ瀬構成員、お願いいたします。
○山澤構成員 山澤です。ありがとうございます。
 まずモデルについては、本当は時間があれば2時間、3時間かけていろいろお聞きしたいところがあるのですけれども、この会議の中ではとてもできませんので、率直な感想として、極めて基本的な要件をモデルが満たしているということは大分見えてきたといった理解であって、このままいけば何とかできる部分はあるのかなといった感触を持っているところですので、精力的にやられていると思っています。
ただ、全体として、これを実際に使って最終的に範囲を決めるという作業に行くわけですよね。そうすると、こういった場で出していただく際には全体を集約するような方向で出していただいて、現在は感度解析等いろいろやってこういう結果ですということなのですけれども、ちょっと広がっている状態になっていますので、それをまとめたような形で見せていただけたほうがいいかなというお願いをしたいと思います。
それから、今お話のあった土壌の調査についてですけれども、セシウムではかなり難しいというのは最初から分かっていたところだろうと思います。今回の五十嵐先生からの御提案で、そのほかの炭素関係で見えるかもしれないとか、粒子状物質で見えるかもしれないという可能性があるので、私は現段階ではできるところはしっかりやっておくというのがいいかなと思っております。ただ、サンプリングのストラテジーというのは結構重要で、今回かなり無駄だと言ったら失礼かもしれませんけれども、残念な結果も出てきているということで、その辺は少し慎重にというか検討されてやっていただけたらありがたいなと思います。
 もう一点だけ、モデル全体の話について、細かいところは聞けないのですけれども、最後のほうでレビュー会議、アドバイザリー会議ということで、今回新しく先生に入っていただいて議論されているのだと思うのですが、そこではかなりしっかり中身について議論していただいてという形で進んでいるのでしょうか。なおかつ、そこからアドバイザリー的な方から出てきた意見なり、質問なりといったものを集約したような形でこの場で見せていただけたほうが全体として我々も理解しやすいのかなという気がいたします。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 五十嵐参考人、御発言いただけますでしょうか。
○五十嵐参考人 ありがとうございます。
 指摘の点は全くおっしゃるとおりだと思います。
 モデル関係では、今回参考人で出ていただいていますけれども、京大防災研におられた石川先生に入っていただいていますので、できましたら会議の状況とかも簡単にお話しいただけたらと思うのですが、よろしいでしょうか。
○石川参考人 石川です。初めまして。今回から参加させていただきます。
 アドバイザリーグループの中で、こうした集まりとは別にウェブ会議等で議論しています。昨日も議論いたしました。
 そういう中で、おっしゃるとおり非常に技術的にとてもとても詳しい内容まで入り込んで議論しています。どこをいじったらいいとか、それは難しいとか、ここの場で話すような内容では全然ない部分まで話して、意思の疎通を図りながら、ルールをどうやってまとめていくかという議論をしていますということだけ御報告しておきます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 それでは、一ノ瀬構成員から御発言いただけますか。
○一ノ瀬構成員 ありがとうございます。
 まず、五十嵐先生の非常に丹念で誠実な調査に非常に感服というか感銘を受けましたということをまず申し上げた上で、2点ほど確認させていただきたいと思います。
 一つは、先ほどから問題になっている原爆由来のセシウムと地表核実験時代由来のセシウムとの区分をどうするかということなのですけれども、これは先ほど五十嵐先生は区別できるようなやり方が分かりつつあるみたいな感じのことをおっしゃったように私は理解したのですが、これを例えば地層の厚さ、深さということで区別するという手だては全くないのでしょうか。その点、何かヒントがあればと思って、一つ伺いたいと思います。
 もう一つは、これは単純に知識としての質問というか確認なのですけれども、放射性セシウムというのは、私が知っている限りで申し上げますと、水溶性だと。けれども、別の農学関係の方の御発表を聞いたときに私が知ったことなのですけれども、セシウムは地面に蓄積していくと、土壌に固着していくという性格を持っていると。私自身はその2つをどういうふうに整合的に理解していいか分からないので、その辺り、もし何かヒントがあればと思ったので、お伺いしたいと思います。農学関係の方は、福島原発事故の後、セシウムが農業をする場所、田畑に散らばってしまって、農作物に吸収されてしまうのではないかという心配をする人に対して調査をしたところ、放射性セシウムというのは、土壌に固着してしまうので、農作物に吸収されることはほとんどないのだというような発表を聞いたことあるのです。ただ、一般にセシウムというのは水溶性のものだという知識も私はあるので、その辺りをどういうふうに整合的に理解していいのかということを、せっかくの機会なので2点目としてお伺いしたいと思います。
 以上です。
○佐々木座長 五十嵐参考人、御発言いただけますでしょうか。
○五十嵐参考人 ありがとうございます。
 まず、セシウムのほうにつきまして回答します。
 セシウムにつきましては、大半が水溶性であった可能性は高いと思います。ただ、一部は沈着時点においても衝撃塵あるいは原爆の構成材料といったものが凝結したものに含まれて溶けにくい形態になったということは想定できます。そういうものが降ったという可能性が一つです。
 その上で、原発事故では明らかなのですが、セシウムがガラスの中のシリカというものに反応して入っている。それで、ガラス状の物質で、水には溶けない形態で微粒子として放出されております。原発周辺にもそういうものはたくさん落ちましたし、さらには長距離輸送されたより微少な成分というのもあるということは明らかになっておりまして、我々、それは解明いたしました。その上で、実際に地面に落ちました後は、土壌の鉱物、雲母を中心とした鉱物ですけれども、端っこがミルフィーユ状に開いていく。そこにセシウムがカリウムと置換して入ってくるということで、固着するということになります。これは水にもなかなか溶けないということなのですが、全く非水溶性のもので溶けないということではなくて、徐々には溶脱していく可能性があるかと思います。
 ですので、このようにプロファイルは非常にややこしいものができているのですけれども、歴史的には、私、以前の所属ですけれども、気象研究所で毎年毎年降ってくるセシウム、大気から降るものを測定しております。そういったデータの蓄積がありますので、そういったものをインプットデータとしまして、土壌の中の鉛直拡散、それから、下方への輸送を表すモデルというもので再現できないかなと考えております。そうすると、このプロファイルが説明できて、量的には少なくてもどこに、恐らく広島の原爆あるいは長崎の原爆由来のピークが入っているよということが推定できるのではないかと。そうすると、そこの地層部分の辺りを、数センチだと思いますが、炭素であったり、あるいはほかの成分を探そうと。そうすると、そこに降ったものが推定できないかという発想に至っております。
 その意味では、こちらの炭素はまだ15センチしかデータはないのですけれども、もっと広範に測っていただいて、セシウムのプロファイルであるものでどこに炭素の濃度ピークが出るということで、ともにピークがあるのであれば、そこは被災した都市から出たものが沈着したのだろうという場合には推定が成り立つだろうというロジックでやっております。
 回答になりましたでしょうか。
○一ノ瀬構成員 ありがとうございます。
 原爆由来と核実験由来のセシウムの識別については、今のところどういう感じなのでしょうか。
○五十嵐参考人 先ほどお話ししたような鉛直のモデルの中で、1945年のインプットと1960年代、70年代のインプットということで時期が違うことになりますので、鉛直プロファイルがずれてまいります。そのことで推定できないかなと。まだ「かな」です。本当にできるという確信はまだありませんけれども、そういうものを検討していきたいというところです。
○一ノ瀬構成員 ありがとうございました。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ほかに御発言はありますでしょうか。
 ありがとうございました。
 それでは、ここで増田構成員から提出されました机上配付資料、オンライン参加の方々にも届いていると思いますが、御意見等に関しまして、簡潔な御説明を伺った上で議論をしたいと思います。
 増田構成員、よろしくお願いします。
○増田構成員 ありがとうございます。
 それでは、この会の資料が遅く出たものですから、果たして十分今の審議に合っているかどうかは分かりませんが、一応作ったものですから、まず、原本が行方不明の昭和48年に広島県・市が行ったものと湯来町の実施したアンケートは確実に別々なものだったということが私の調査によって明らかになったと思いますので、その点だけをどういうふうにしてそういうことが言えるかというのは、この資料の後ろのほうに、これは広島高裁のときに厚労省がお出しになった資料だろうと思いますが、そこに2つの陳情書が載っております。最初の陳情書が、それが基で現在の第一種健康診断特例区域が決められたときのアンケートです。それを見ますと、ページ数を繰っていただきますと分かりますように、非常に克明な設問で非常にいい結果が出されております。この結果については、このほかにも数枚の資料が既に出ておりますけれども、非常に立派なものが出ております。実は宇田雨域の大雨域以外の人たちが再度要請をして、年度は忘れましたが、広島県と市がそのときに提出した資料を見ますと、それにもちゃんと資料がついています。ただ、所帯数であるのを人口に直してあるだけの違いだと思います。
 そして、これは私が確認しているわけではありませんが、この裁判の資料かどうかは分かりませんが、村上さんの持っておられた資料の中からだと思いますが、最後のページに実は湯来町の設問が載っております。これは、明らかに違った調査として10月25日までに返答しろと書かれています。内容的にはそれほど変わっているわけではありませんが、広島県・市がやったほうが非常に立派な設問がなされているので、恐らくそれに合流したのではないかと思います。
 そういう意味では、別々に実施されたが、実際にはその1つだけが使われていたということです。しかも、後になって同じ資料が使われていたことが分かったのです。その原本がなくなったという点については、この検討会でも問題になったわけですから、もう一度よく探していただいて、その原本を提出していただくと、かなりいい資料が得られるのではないかと思います。そういう意味では、この二つの調査結果が提出され、私がもしそれを使わせていただけるならば、私の雨域をもう少し精密にすることもできると思いますので、ぜひ二つのアンケート調査結果の発掘をお願いしたいと思います。それが第一の報告です。
 第二の問題は、今後の検討会の進め方の問題について、先ほどもお話がございましたし、既に非常に進んでいるわけですけれども、私はやはり最初に質問でも言いましたように、もう一度国立原爆死没者追悼平和祈念館の被爆者の手記のいわゆる電子化した資料を使って、いろいろな雨だけの問題ではなくて、もう少しチリなどの問題も、そして、今問題になっています放射性の疾病の問題なども含めて、せっかくそういう資料が使えるわけですから、それをまず使うようなことを、ワーキンググループをつくってやっていただければと思って提案をさせていただいております。
あとの問題は、先ほど五十嵐先生からもお話があったし、数値シミュレーションの問題、私は率直に申し上げて、今の段階では数値シミュレーションは中止すべきだということを提案しております。しかし、それは皆さんがお決めになることです。ただ、そこで1つだけ数値シミュレーションというのが非常に大きな問題をはらんでいる。その結果を使うことによって、大きな問題をはらんでいるということを強調させていただきたいのです。
 というのは、最後のほうにありますように、1988年から広島県と市がそれぞれ半分ずつ予算を出して、いわゆる黒い雨に関する専門家会議というものを、確か9回か10回おやりになったと思います。そして、その結論として吉川さんという方が作られた論文と丸山さんと吉川さんが作られた論文が報告集には載っています。そして、記者会見で発表されていない吉川論文の雨域が、少し東のほうに膨らんでいるけれども、ほぼ宇田雨域と同じところに放射能を含んだ雨が降っていたということで、それ以外には乾燥のものはあるけれども、雨は降っていなかったという結論で、宇田雨域を広げる問題は検討する必要はないというか、採用する必要はないということになったのです。
 ところが、その報告書の中にもう一つ丸山・吉川論文というものがあります。この図を作るのに大変苦労したのですが、格子点の値までさかのぼってやりました。その結果分かったことは、驚いたことに少し違っているのです。最初の吉川論文の結果と次の丸山・吉川論文とは違いがあったのです。同じ方程式を使い、同じ境界条件や初期条件を使っているのにどうしてこういうことが起こるのだろうかということで、非常に奇異に思いました。それで、私は何回も読んでみたのです。まさかそういうことが起こっているとは思ってなかったのですが、実はよく読んでみますと、今回は風向を少し修正したとたった1行書かれているのです。それだから少し結果が違っていますと書いてあったのです。これは由々しい問題だと思います。私はシミュレーションという問題がこういう使い方をされるということについて大変奇異に感じました。特にそれが行政の施策に反映されるのです。この結果、この検討会では、たしか土壌の問題と染色体の問題と、このシミュレーションの3つの問題で検討されておりまして、染色体と土壌のほうは、先ほどお話ししたように、土壌についてはほとんど難しい、染色体も対象地域を比べてみると統計的に意味がなかったということで、これでは駄目だということが明らかになったのです。唯一、シミュレーションが、宇田雨域の大雨域以外には放射性物質を含んだ雨は降らなかったという結論になったのです。これは大変大きな問題だと私は思います。シミュレーションをやられる場合には十分このことを考えてやっていただきたい。そのことを強く申し上げたいと思います。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 特に最初に出されているものに関連しているのでしょうか。まず事務局から何か御発言がありますか。あればいただいて、その後、五十嵐参考人からもただいまの御指摘に対して御発言いただければと思っております。
○南川課長補佐 事務局です。
 最初の増田先生からいただいた広島県・市が実施した昭和48年調査の件については、いただいた資料を確認した上で、また対応を検討させていただきたいと思います。
○佐々木座長 五十嵐参考人からただいまの御意見に対して何か御発言がありますか。
○五十嵐参考人 増田先生がおっしゃったことに対してということでしょうか。先人として非常に貴重な教訓をお伝えいただいていると考えております。研究者、科学者としてデータに忠実であるべきだという御趣旨の御発言だったと思いますので、そこは深く受け止めてまいりたいと考えております。
 また、我々もデータを公開要請があった場合にしっかり表に出していけるような準備というものをしないといけないと考えておりまして、データベースであったり、サンプルのアーカイブ、それから、計算結果のデータセットを残そうといたしておりますので、そういった御懸念を解消できるような準備というのは必要かなと思っております。
 あとは、信念というか、研究者としてどれだけ研究に忠実かということに尽きるかなと思っております。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 構成員の方々から発言をどうぞ。
 荒井構成員からお願いいたします。
○荒井構成員 専門外のことで、増田先生の先ほどの御説明と、今日いただいたペーパーの2つ目の紙の一番終わりのところでこの検討会の目的ということについて触れながら、最後の最後のところに以上の理由から五十嵐教授のシミュレーションは中止すべきであるという御意見が出ておりまして、先ほど五十嵐先生からの御説明をお聞きしたのですが、ここは、今、我々がお聞きしたことを頭に置きながら研究を進めていただくというようなことで増田先生としてはよろしいのでしょうか。この改めるべき、中止すべきであるというのはかなり激しい御意見なのですが、これで一応終わったわけですか。よろしいですか。
○佐々木座長 増田構成員、御発言を。
○増田構成員 先ほどの五十嵐先生の説明に、山澤先生がかなり専門的な点で支持をなさっておられたように思います。私は専門という点で、かつてはシミュレーションをやっておりましたけれども、今はやっていないわけです。したがって、私の意見としてはこういう意見を出している。皆さんでお決めになっていただくことでいいのではないか。これをあくまで案として私は提案しているだけです。それは構成員の皆さん方の御意見でお決めになる必要があると思っているだけです。
○佐々木座長 荒井構成員、よろしいですか。
○荒井構成員 理解できました。
○佐々木座長 ほかに構成員から。
 山澤構成員、お願いします。
○山澤構成員 山澤です。
 今のポイントなのですけれども、増田先生からお話があった点は非常に重要で、シミュレーション結果をそのまま使用できるとは私は思っていません。五十嵐先生は今回のシミュレーションをやられていて、これは科学的にかなりチャレンジングなことをやられていて、かなり精力的に進められているという印象は持っています。だけれども、それが成功したとしても、その結果得られる結果から、すぐにそれを使って何らか行政に反映できるような、あるいは参考資料になるようなものが出てくるとは私は当初から考えておりませんで、最初からかなり難しいですよというお話をさせていただいています。それも踏まえまして、ただ、現時点においてどこまでのことができるのかということを進めていくことはやっておくべきというかやる価値はあるのかなと私は考えています。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ほかに。
 一ノ瀬構成員からお願いします。
○一ノ瀬構成員 ありがとうございます。
 過去の何十年か前のことについては私は詳しく存じ上げないのですけれども、御意見をいろいろ伺っていて思ったのは、当時の気象の状況のデータの解析あるいは研究と土壌の研究とでどちらにプライオリティーを置くのかということを意思決定しておいたほうがいいのではないかと思うのです。2つの側面からの研究を同時に行うということは意味があると思うのです。つまり、気象の条件の研究と土壌の研究との結果が合致したということならば、科学的に蓋然性が高いということになると思うのですけれども、ただ、もし万が一必ずしも2つの方面からの研究が整合しないようになったという場合に、どちらに重きを置いて資料というか参考データとして用いるかということは一定程度合意を得ておいたほうがいいと思うのです。だから、私の個人的な感覚で申し上げますと、現状ではやはり気象データのほうに重きがあるのかなというような感じは個人的にはいたしております。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 ほかに御発言はありますでしょうか。
 木戸構成員からお願いします。
○木戸構成員 実は被爆77年なのです。それで、77年たって原爆が人間に何をやっているのかということで、今、こういう研究を本当に真剣にしていただいているということに、五十嵐先生をはじめ、増田先生、感動しているというか、私は一人の被爆者として感謝を申し上げたい。
ところが、77年という年間は、明治維新から敗戦の年までが77年なのです。物すごく長い期間なのです。それでもなお、問題がまだ山積しているのということなのです。だから、原爆というか核兵器というものがいかに私たち、大きく言えば人類に対してどういう影響を与えているのだと。まだ未解明だということをやはり考えていかなければいけない。
 もう一つは、申し訳ないのだけれども、5歳で被爆した私自身、あのとき見た光景というのは忘れられませんが、日にちがたって、今、80過ぎまして、実はもっと大きくよみがえるのです。もっと大きくあの日が思い出されて、同時に胸を締めつける。これが原爆被害なのです。
 だから、そういう意味からいくと、大変申し訳ないのですけれども、この検証というのは原爆被害からどんどん離れていっているような印象があるのです。だから、この検討会というのは、やはり被害の全面的な丸ごと人間の調査と。増田先生はずっとそう言われているのですけれども、そういう記録とかはいろいろいっぱいあるので、被爆者の思いに応える検討会。そのことは、先ほど裁判の例がありましたけれども、原爆症は個人個人が、私が仮に肺がんになったとしたら、それは原爆が原因で肺がんになりましたと論証できないのです。それが集団になることによって、集団的な調査をすることによって、これは核兵器、原爆の被害なのだよということが明らかになるわけです。そういう意味で、やはり原爆被害全体の調査検討。そのことを実は広島高裁は言ったと思うのです。要するに、原爆の影響ではないと明らかにしたもの以外は、やはり原爆被害と認めるべきではないかと。だから、今までの行政というか政府の在り方と、あの原爆の高裁判決は、過去の原爆の裁判だとか、そういうものをずっと見ながら、新たにこういう方向で原爆被害を考えるべきであると提案しているので、それに基づいた検討会ということにしていただければと思います。
 皆さんの御研究とか真摯な態度に本当に感謝しながら、同時にお願いを申し上げました。ありがとうございました。
○佐々木座長 ありがとうございます。
 関連した御発言は最後にしたいと思いますけれども、まだ御発言がありますでしょうか。
 荒井構成員、どうぞ。お願いします。
○荒井構成員 ただいまの木戸構成員の御意見、それから、五十嵐先生の御説明の前にも広島高裁の裁判の結果をどういうふうに受け止めてこの検討会に反映させるべきかということで、今後の進め方にどういうふうに関連させるのか、させないのかないのかという観点からの御意見がほかにもあったと思いますので、それに関連して私の意見を申し述べておきたいと思いますが、広島高裁の裁判も、それから、長年やってこられた厚生労働省あるいは厚生省から厚生労働省における被爆者行政というのは、もともと法律に基づいての裁判であり、法律に基づいての被爆者援護行政だろうと思うのです。そこで、行政と裁判というのは同じ法律に基づいての行政であり、裁判であるのですけれども、おのずから役割がもともと違うわけで、そこで結果が違ってくると食い違いが出てくるということが間々起こることになります。これは国の機構の問題ですからやむを得ないことだろうと私は思います。
 広島高裁の判決が、上告をしないという結果によっていわゆる確定をした。ただし、広島高裁の判決の中に書いてあるのは、今、木戸構成員が御指摘になったように、いわば疑わしければ影響があったとみなすべきだというような考え方に基づいての判断を示しているわけですが、問題は裁判を起こした当事者八十何人の方々に手帳を交付するかどうかということが、言ってみれば一番の肝心の裁判の目的だったわけで、それについては、言いたいことはあるけれども、やはりいろいろなことを考えて上告はしないことにしたと当時の総理談話で全国に説明されました。しかし、呑めないところもある、理解できないところもあるから整理して臨みましょうというのがあの段階での政府の考え方だったと思います。あくまでも私が申し上げたいのは、判決の中でそういう説明あるいは考え方に触れられてはいるかもしれませんが、要は、判決に拘束されるのは、あの当事者について手帳を交付するということは動かせない。しかし、そこで判決の中にいろいろ書いてあることについては、ほかの裁判に必ずしも影響、拘束力を持つようなものではないと。これは法律の世界の常識になっております。その判決をどう受け止めていくかどうかというのは、厚生労働省、行政としてはまた別の問題として考えるべきであろうと思うのですが、やはり基本的には裁判というのは個別の問題だというところを一番押さえておくべきだろうと私は思います。
 それで、今後この検討会をどうするかということに少し触れてこざるを得ないのですが、先ほどいみじくも増田構成員が御指摘になりました。やはり出発点が、第1回会議で提示された資料1に検討会の開催要綱というのが示されておりまして、端的に言えばこれを修正する必要があるのかどうかと。これは、厚生労働省が必要を感じているのはこういう動機でもって、こういう趣旨でこの検討会を開催するのだということでありますが、裁判をどういうふうに受け止めるかというのは、厚生労働省として、既に一つ現れたのは、同じような条件の下にある関係者については手帳交付の道を開く。これは一つの影響と言えば影響です。しかし、全体として制度設計にどういうふうに影響させるかというようなことについては、今のところは何も触れていない。むしろ、黒い雨起因のいろいろな問題点をこの機会に新しい知見も含めてさらに検討を深めていこうではないかということで検討会が立ち上がってきているわけなので、私に言わせると、第1回の資料1で示された開催要綱からはみ出る、あるいはそれと違ったような進め方に持っていくというのは趣旨が違うのではないかと。
 そういう意味で言えば、今のままで進めていって、一定の専門の検討が出た、結果が出た段階で構成員を中心にして議論をして進めていくべきだろうと思うので、この段階で進め方について、広島高裁判決の今までの経過を踏まえて、この検討会の方向を何か新しく改める必要はないというのが私の意見でありますし、希望であります。
 以上です。
○佐々木座長 ありがとうございます。
 木戸構成員、お願いします。
○木戸構成員 私は第1回の最初のときから、この方針、基本懇の意見に基づいてやるのは駄目ですよと。だから、それは除きなさいと言いました。
 それから、勉強会をやりました。勉強会で、その点、なぜそうなのかということをかなり詳しく御説明したと思っています。
 それで、先ほどの広島高裁判決も、この判決というよりは、やはりずっと原爆に関する裁判、大きく言えば原爆裁判、それから、集団訴訟という中で得られた結論として、この裁判ではないわけです。そういう歴史的な流れがありますので、その点では、基本的に基本懇の意見に基づく検討会ではなくて、原爆被害の実態に応える検討会という形で進められることを、そういう意味では、内容を変えるということは被爆者の一人として強くお願いしたいです。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 検討会の今後の在り方については大変に重要な問題でありまして、どこかできちんと議論しなければならない問題であると思っておりますが、本日用意しております資料がもう一つございます。そこはできれば今日のうちに終わらせたいと思っているのですが、既に12時になりまして、予定の時間になっておりますが、ここで御提案なのですが、この会場は30分間は延長ができるということなので、12時半まで本日の検討会を延長することを御了承いただけますでしょうか。皆様、それぞれ御予定がおありかと思いますけれども、ここにおられる構成員の方はよろしいでしょうか。

(委員首肯)

○佐々木座長 それでは、5分休憩した後でと思います。
 その前に、オンラインの方々、延長してあと30分後御出席いただけますでしょうか。

(首肯する委員あり)

○佐々木座長 大変恐れ入りますけれども、皆様御出席いただけそうなので30分間延長したいと思いますが、その前に5分間休憩を取りたいと思います。その後で12時半まで続けたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
(休 憩)
 
○佐々木座長 それでは、再開いたします。
 資料3の「疾患罹患状況等に関する調査について」に沿って、高橋参考人から御説明をいただきたいと思います。時間がなくて申し訳ありませんが、できるだけ簡潔に10分程度で御説明をお願いしたいと思います。
よろしくお願いします。
○高橋参考人 国立保健医療科学院の高橋でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 健康影響ワーキンググループから疾患罹患状況調査について御報告いたします
 本日の資料ですが、これから調査を実施するため、無用なバイアス等の混入を避けるという観点や研究途中の議論であることを考慮し、最小限になっている点、御了解いただければと思います。
 では、進めます。
 スライドの2枚目でございます。
 まずは健康ワーキンググループに求められる検証課題でございます。令和3年7月9日付の「第一種健康診断特例区域等の検証に関するこれまでの議論の経過及び今後の方向性について」の中で、ここに示しました検証課題が示されております。
 すなわち、(1)検討に当たっての背景・目的として、本検討会はこれまで蓄積されてきたデータを最大限活用するとともに、最新の科学技術の活用を含めた新たな調査を追加的に行うこと等により、可能な限り検証を新たに行い、それらの検証の進捗・成果を踏まえ、第一種健康診断特例区域の在り方等について意見を集約することを目的とすること。
 (2)検討会におけるこれまでの意見として、検証の進め方について、健康影響調査に関しては、疫学調査でしっかりとした科学的知見を得るには、交絡要因等の影響を除外できるように研究計画(コホートの選び方、その数、対照の選び方、交絡因子の扱い等)をしっかり企画・立案して実践すべきではないか。
 院内がん登録は生活習慣の影響なども含めた解析が難しいなどの制約があるが、郵便番号まで特定できるため、作業のしやすさも含め、積極的に活用すべきではないか。
 がんの原因は無数にあり、生活習慣とか喫煙というほうの寄与度が高いと言われており、調査対象者の移動もあるだろうから、地域のがん罹患状況だけをもって当該地区の放射線の影響を説明するのは論理的に困難ではないか。全国との比較も必要ではないか。
 いわゆる放射線が例えば食物の中に入ってきた場合の内部被曝に関する放射線医科学の科学的知見を踏まえて検討すべきではないか。
 そして、(3)検証課題の進捗状況と今後の方針について、健康影響が生じているか確認する課題として、相談支援事業受診者の疾患罹患状況等の調査を実施する。これに関する今後の方向性として、選定された調査実施主体において広島県・市の協力を得つつ、実現可能な調査方法を検討し、必要な手続を踏まえて、事業利用者に対する疾患罹患状況調査を実施する。
 調査の実施、解析、報告に当たっては、放射線医科学、統計、がん登録の専門家から成る健康影響ワーキンググループの体制を速やかに構築し、これまで検討会において出された意見も踏まえて調査を行う。
 調査結果については、これまでの検討会の議論を踏まえ、健康影響ワーキンググループにおいて科学的検証もした上で、定期的に検討会に報告することとなります。
 スライドの3枚目です。
 まず、この検証課題に対して、岡山大学が実施主体となり、統計学、精神医学、放射線疫学に関する専門的な知識を有する研究者によって構成された健康影響ワーキンググループを発足させ、委託事業を開始いたしました。
 健康影響ワーキンググループでは2か月に1回程度の会合を開催し、並行して広島県・市との協議も行いながら、次のように実施準備を行ってきました。
 スライドの4枚目です。
 まず第一に、質問紙調査・電話調査に基づく健康状態調査の内容及び計画の策定でございます。相談支援事業対象地域居住者の健康影響が被爆者、被爆地域居住者または第一種健康診断特例区域居住者の健康影響に類似しているかどうかを判断するため、質問紙調査・電話調査の内容並びに調査計画の策定を行いました。
 これは、平成20年に広島市によって実施された原爆体験者等健康意識調査により、広島の被爆地中心に原爆投下時から住み続けていたという事実が、実質的な放射線被曝がなくても、地域住民のメンタルヘルス不調に関連しているという調査結果が発表されていることを鑑み、黒い雨体験者相談支援事業の相談者及び原爆体験者等健康意識調査の回答者を対象とする調査を行うことを検討しました。これは後ほど次のスライドで補足いたします。
 また、研究実施方法については、ワーキンググループ内でも科学的な厳密性と実現可能性に関する様々な議論を行いましたが、対象者が極めて高齢であることから、コロナ禍でもあり、個別訪問や対面の面接調査は困難であること。幼児期、健忘の期間を考えれば調査対象者は少なくとも83歳以上が望ましいこと。対象者の負担を軽くするため、質問項目を減らしたほうがいいこと。それから、認知症への配慮が必要などを考慮し、質問紙調査として同意いただいた研究者に対して、可能な限り簡便な形で鬱やPTSD関連の心の健康状態に関するスクリーニング調査や放射線に関する体の疾患罹患の有無を確認すること。この際、体の疾病については、可能な範囲で、御本人だけではなくかかりつけの医師についても御協力いただくような形の調査を予定しております。
 また、電話調査としまして、質問紙調査に回答いただいた方のうち、さらに同意いただいた研究対象者に対して、PTSD症状や被爆時に黒い雨が降ったときの体験等を定型の質問から対象者の回答に沿った形で聞き取る、いわゆる半構造化調査として回答いただくことを計画しております。
 スライドの5枚目です。
 対象者について、もともとはこの図にあるとおり、黒い雨相談支援事業受診者や利用者等とされておりましたが、健康影響ワーキングの中で議論の上、制約の多い今回の調査の中で可能な限り検証するという意味では、黒い雨を浴びた方とそうでない方に関する情報のある広島の平成20年の原爆体験者等健康意識調査参加者のうち御同意いただける方も対象者とさせていただくことにしました。
 この点につきましては、広島県・市の御担当者とも何度も相談させていただきました。御協力いただいたことをこの場を借りて感謝申し上げます。
 再びスライド4に戻ります。
 また、本検討会でも議論のあったがん登録からのアプローチも検討しております。ただ、この実現に当たっては、がん登録の専門家も交えて議論をしていますが、幾つか越えなければならない課題があることが分かってきました。大きく申し上げると、妥当性と実行可能性の部分がありますが、ここでは実行可能性の部分だけ簡単に御紹介させていただきます。
 実行可能性からは4つの課題、すなわち、まず第一に院内がん登録情報の外部へのデータ提供は困難であるという制度的な課題。
 第二に、院内がん登録はあくまでもその病院のがん患者の発生に関する情報のため、A拠点病院を受診後にB拠点に紹介されて治療された場合、それぞれの病院で別々に院内がん登録に登録されてしまうというような課題や、近郊8拠点の病院以外のC病院を受診した場合は把握できないなどの課題があること。
 第三として、院内がん登録では郵便番号の収集が2016年からと郵便番号を一部しか利用できないという課題があること。
 それから、第四に、代表者の同意として、例えば1946年5月30日以前に既に当該地域に居住しており、2008年の国勢調査時点もその地域に居住している対象者のリストを作成するためには、1946年の住民情報と2008年の国勢調査時点の住民情報の個人情報を利用した突合が必要になり、これには住民の同意や対象となる地域を管轄する自治会の御理解と御協力が不可欠となること。また、別に新たな個人情報を用いてコホート集団を設定してがん登録を突合するためには、研究所の手続として対象者の同意取得が必要になるなどの課題があることが分かりました。
 現在、疫学研究として、また、がん登録のメリットを最大限活用して、できる限りの形状を提案し実施することを検討しております。
 スライド7枚目です。
 以上を基に、今年度はこのスライドのような計画を立てております。
 発表は以上になります。ありがとうございました。
○佐々木座長 高橋参考人、ありがとうございました。
 ただいまの御説明について、御意見、御質問等ありましたら御発言をお願いいたします。よろしいでしょうか。
 柴田構成員、お願いいたします。
○柴田構成員 柴田です。
 1つだけお伺いしたいのですけれども、質問紙調査のところで鬱、PTSD関連の有無ということが書かれているのですが、これは質問の仕方によって、つまり、原爆被爆とは関係なくその後鬱になる人だっているわけで、あるいはPTSDも何か非常に大変なことに遭遇していればあるわけで、その辺が区別できるような質問でないとまずいのではないかなと思ったのです。
○佐々木座長 高橋参考人から御発言いただけますか。
○高橋参考人 その点は我々も非常に考慮しておりまして、黒い雨関連の質問にPTSDを聞くというような形で、黒い雨をメインにした形で聞いております。確かにPTSD症状のいくつかは抑うつに関連した症状があるものの、それだけでPTSDと診断されず、通常うつ病とは明確に区別できるとのことです。ただ、回答者の状況としまして、質問項目はそうであっても、現在の状況と併存されている場合に関しては、分離は難しいところはございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 まだいろいろ御意見はあろうかと思いますけれども、時間の都合でここで打ち切らせていただきます。
 引き続きまして、資料4「国立広島原爆死没者追悼平和祈念館所蔵の被爆体験記調査について」に沿って、事務局から簡潔な御説明をお願いいたします。
○南川課長補佐 事務局のほうから御説明させていただきます。
 これも既に何度か御説明させていただいていますので、前回から違う部分を中心に御説明させていただきます。
 1ページ目を御確認ください。
 これはこの調査の概要ですので、既に御説明しましたが、15万件の体験記の中から被爆地であるもの、そして、登場地の区分が8月6日の体験記を抽出したものでございます。
 2ページ目は収集元の体験記でございます。
 3ページ目を御確認ください。
 今回、もともと雨の情報だけではなく飛散物の情報も集めた形で、後ほど分布をお示しさせていただきます。
 続きまして、4ページ目を御確認ください。
 これまでの1回目、2回目、3回目の調査の部分で、1回目は体験記の場所が拡大要望地域の中という前提で抽出したときに、最終的な入力件数は5,799件。そして、2回目はそのときの拡大要望地の外もちゃんと調査すべきという御意見を踏まえて、3,333件追加しました。今回、さらに飛散物ということもちゃんと確認すべきということで211件を追加した上で、最終的に9,313件の体験記を確認しております。
 この中で、4ページ目に様々な分析をしていますが、実際の体験記からこの中の飛散物というところは体験に泥、塵、すす、ほこりだったり、ごみだったりと当時宇田先生が行った調査で出されたものを参考に抽出するようにしております。
 この結果につきましては、6ページ目がまず体験記から雨という情報を抽出した結果になっております。小さい丸が1件、中ぐらいの丸が2~9件、大きい丸が10件以上です。
 続きまして、飛散物については次の7ページ目を御確認いただければと思いますが、ここの中でだいだい色で小さい丸が1件、中ぐらいの丸が2~9件、大きい丸が10件以上という形でプロットさせていただいています。
 御説明は以上です。よろしくお願いします。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 これについてもし御意見、御質問がありましたら、事務局のほうに御連絡をいただきたいと思います。ありがとうございました。
 検証の進捗状況の議題については、ここまでで一旦終わらせていただきたいと思います。
 その他の議題について、事務局から何かありますでしょうか。
○南川課長補佐 特にございません。
○佐々木座長 参考資料についてもよろしいですか。
○南川課長補佐 参考資料については、参考資料1が前回の中間取りまとめで、参考資料2がこれまで出てきておりました「黒い雨」訴訟後の行政としての総理の談話、そして、その後の手帳交付に関する手続についての資料をつけさせていただいております。
 ただ、先ほどおっしゃったとおり、この第一種健康診断特例区域については、第1回の開催要綱にございますとおり、新たな区域の設定の再検討を行うため、これまで蓄積されたデータの最大限の活用等により、最新の科学技術を用いて可能な限りの検証を行うこととしておりまして、現在、その検証の結果を定期的に報告するという形の報告を本日させていただいたものと思っております。ただ、気象・土壌、健康影響についての検証はまだ出そろっていない部分がありますので、厚生労働省としてはなるべく早く今年度中に一定の科学的知見が得られるように、引き続き検証を続けていきたいと事務局として思っております。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 本日はワーキンググループの進捗状況についての御説明をいただき、御議論をいただきました。その間に、この検討会の在り方についての御意見が出ておりまして、これは非常に重要な課題であると思います。御意見は必ずしも一つの方向を示しているわけでもありませんので、この点について、私といたしましては、構成員の方々の間での意見交換、厚労省との考え方にできるだけ整合性を持たせるような議論があるべきではないかと思っております。以前に勉強会という形で集まっていただいたことがございますので、そういう形でできるだけ早い時期に意見交換の場を持てたらと思いますが、御賛同いただけますでしょうか。

(首肯する委員あり)

○佐々木座長 事務局としてはいかがでしょうか。そういうような機会を持つことができますでしょうか。
○南川課長補佐 本日は特にモデルの部分とか専門的な部分の十分御説明し切れない部分の勉強会等について、また座長と御相談させていただければと思います
○佐々木座長 ということで、今後についてはまた御連絡をさせていただいて、意見交換、勉強会のような場を持たせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、そのほかに事務局から特に御連絡はありますか。
○山本室長 事務連絡でございますけれども、机上配付の参考資料のファイルは再利用いたしますので、そのままにしていただければと思います。その他の資料はお持ち帰りいただいて結構でございます。
 先ほど座長から御指示がありました勉強会等の日程も含めまして、別途事務局より御連絡をさせていただきたいと思います。
以上でございます。
○佐々木座長 ありがとうございました。
 それでは、本日の会議はこれで終了いたします。
 大変活発な御議論をいただきましてありがとうございました。
 また、参考人として御出席いただいて、貴重な進捗状況の御説明をいただきました方々に御礼を申し上げます。ありがとうございました。