第1回転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会議事録

労働基準局安全衛生部安全課

日時

令和4年5月13日(金)10:00~12:00

場所

オンラインにより開催
(労働委員会会館講堂(7階))
(東京都港区芝公園1-5-32)

議題

  1. 3.議 題:
    (1)現状と課題について
    (2)具体的な対策について
    (3)職場において対策を推進するための体制について
    (4)支援施策等について

議事

議事内容
○澤田中央産業安全専門官 それでは定刻となりましたので、ただ今より、第1回転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会を開催いたします。本日の司会を担当します厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課の澤田と申します。座長選任までの間、議事進行を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。カメラ撮影はここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
それではまず、本検討会の開催に当たりまして、武田安全衛生部長から御挨拶を申し上げます。
○武田安全衛生部長 安全衛生部長の武田でございます。本日は大変皆様方お忙しい中、それから今日は足元の悪い中御参集していただきまして、誠にありがとうございます。第1回の転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会、この開催に当たりまして、一言私の方から御挨拶を申し上げます。まず、本検討会の構成員の皆様には、日頃より安全衛生行政の推進に多大な御理解と御尽力を賜っておりますことに、まずはこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。ありがとうございます。さて、第三次産業の労働災害防止対策につきましては、第13次労働災害防止計画におきまして、重点事項の1つに位置付けております。その推進を図ってきたところでございますが、小売業や介護施設等を中心に災害の増加が著しい状況にございます。中でも転倒や腰痛など、労働者の作業行動に起因する労働災害が、全体の4割以上を占めている要因となっておりまして、転倒災害、腰痛災害の防止が喫緊の課題となっているところでございます。従来、安全衛生活動におきましては、製造業や建設業など一般的な災害リスクが高い作業を、常態的に行う業種を重点対象としておりまして、事業場労使の皆様方からの御協力を得ながら、例えば、高所からの墜落・転落や機械による挟まれ、巻き込まれ、これらの災害を大幅に減少させることが出来てきたところでございます。ただ近年の問題となっております転倒災害、腰痛災害は、ともすれば日常生活においても発生しうる災害でございまして、従来型の行政指導のみでは十分に防止を図ることが困難な災害だったという、そういう特徴があるところでございます。さらにこれらの災害が多発しております第三次産業におきましては、製造業や建設業などとは異なり、安全衛生活動の重要性に対する事業場労使の理解が、必ずしも十分に醸成されてはおらず、事業それから業態、労働者属性など、それぞれいろんな因子の実態に適した安全衛生対策の知見も十分に蓄積していないのではないかという課題が、指摘されているところでございます。これら状況を踏まえまして、本年1月から転倒・腰痛等の減少を図る対策の在り方に関する有識者ヒアリング、これを開催させていただきました。各方面の有識者の皆様方から、国が取り組むべき方策についての貴重な御意見等を伺いまして、3月末に提言として取りまとめさせていただいたところでございます。特に本検討会におきましては、この提言も踏まえた上で、転倒や腰痛を防止するための具体的方策につきまして、御議論いただきたいと考えておりまして、その成果につきましては、令和5年度、これを初年度とします第14次労働災害防止計画への反映と計画的な実施、それから転倒・腰痛等の防止に必要な制度改正やガイドラインの作成、更には効果的な周知方法、国民運動の展開等々、転倒・腰痛災害の減少につながるような、具体的な方策につなげてまいりたいというふうに考えているところでございます。本日、御参加いただきました構成員の皆様方には、忌憚のない御意見を賜れればと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○澤田中央産業安全専門官 次に、本検討会に御参集いただきました構成員の皆様を御紹介いたします。資料1の別紙、構成員名簿の順に御紹介させていただきます。まず日本商工会議所・東京商工会議所産業政策第二部調査役の井上智博様。本日オンラインで参加いただいております、公益社団法人日本介護福祉士会副会長の今村文典様。
○今村構成員 今村でございます。よろしくお願いいたします。
○澤田中央産業安全専門官 一般社団法人全国スーパーマーケット協会調査役(青森中央学院大学大学院客員教授)の小澤信夫様。
○小澤構成員 小澤でございます。よろしくお願いします。
○澤田中央産業安全専門官 本日オンラインで参加いただいております、株式会社平和堂健康サポートセンター統括産業医の河津雄一郎様。
○河津構成員 河津です。よろしくお願いします。
○澤田中央産業安全専門官 日本チェーンストア協会労働委員会委員の桑原正廣様。
○桑原構成員 桑原です。よろしくお願いします。
○澤田中央産業安全専門官 日本労働組合総連合会労働法制局局長の小菅元生様。
○小菅構成員 小菅です。よろしくお願いいたします。
○澤田中央産業安全専門官 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所リスク管理研究グループ部長の島田行恭様。
○島田構成員 島田です。よろしくお願いいたします。
○澤田中央産業安全専門官 一般社団法人日本経済団体連合会労働法制本部長の鈴木重也様。
○鈴木構成員 鈴木でございます。よろしくお願いいたします。
○澤田中央産業安全専門官 聖マリアンナ医科大学主任教授の髙田礼子様。
○髙田構成員 髙田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○澤田中央産業安全専門官 女子栄養大学特任教授の津下一代様。
○津下構成員 津下でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○澤田中央産業安全専門官 本日オンラインで参加いただいております、公益社団法人全国老人福祉施設協議会介護人材対策委員会委員の信澤真由美様。
○信澤構成員 信澤です。よろしくお願いいたします。
○澤田中央産業安全専門官 ありがとうございます。同じく本日オンラインで参加いただいております、UAゼンセン総合サービス部門執行委員の山﨑茂治様。
○山﨑構成員 山﨑です。よろしくお願いいたします。
○澤田中央産業安全専門官 ありがとうございます。またオブザーバーとして本日経済産業省商務・サービスグループヘルスケア産業課から丸山課長補佐。それから、厚生労働省老健局高齢者支援課の東課長補佐。認知症施策・地域介護推進課の佐藤課長補佐。老人保健課の迎課長補佐。
続きまして事務局を紹介させていただきます。先ほど御挨拶を申し上げました労働基準局安全衛生部の武田部長。釜石安全課長。船井安全課長補佐。石川労働衛生課長。中村産業保健支援室長。田口副主任中央労働衛生専門官。それと私、中央産業安全専門官の澤田でございます。よろしくお願いいたします。
次に座長の選任に入りたいと思います。事務局といたしましては髙田構成員に座長をお願いしたいと思いますが、皆様いかがでしょうか。
(異議なし)
○澤田中央産業安全専門官 ありがとうございます。それでは髙田先生どうぞよろしくお願いいたします。座長席への御移動をお願いできればと思います。それでは、今後の議事進行につきましては、髙田座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○髙田座長 Web参加の委員の皆様には、私の顔が映らない中の御挨拶で申し訳ございません。この度、座長を拝命させていただきました聖マリアンナ医科大学の髙田でございます。転倒防止・腰痛予防ということで、なかなか災害が減ってこない中、恐らく、その背景にある多様な要因を拾い上げて、丁寧に対策をしていく必要があるかと思っております。従来の有効な対策をどのように進めていくか、また今回、業界の方にも御参画いただいておりますので、いろいろな課題を出していただきながら、多面的な新たな方策といったものを、できるだけ具体化できるように進めてまいりたいと思います。委員の皆様、忌憚ない御意見を頂ければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、着席して進めさせていただきます。議事4に入ります。事務局の方から資料の説明をお願いいたします。
○事務局 かしこまりました。まず、資料1から御説明させていただきます。資料1に、転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会開催要綱をお示ししております。先ほど安全衛生部長からも説明がありましたとおり、趣旨・目的として、第三次産業における労働災害防止対策を、第13次労働災害防止計画における重点事項の1つに位置付け、その推進を図ってきたところですが、十分な成果を上げることができていない状況にあります。このため、関係者や有識者の参画を得て、転倒防止・腰痛予防対策の在り方及び具体的な対策の方針について、規制の見直しも念頭に置いた検討を行っていただくというものです。
検討事項としては、(1)転倒防止や腰痛予防に効果的な啓発の在り方について、(2)今後の具体的な転倒防止対策の在り方について、(3)今後の具体的な腰痛予防対策の在り方について、(4)転倒防止や腰痛予防のために必要な環境整備の在り方について、(5)その他としております。
資料2です。転倒災害・腰痛災害の発生状況と課題としてまとめております。まず2ページ、労働災害の推移です。長期的には減少傾向といえると思いますが、この20年ほどは死傷者数が横ばい、あるいは、この数年は少し増加傾向といえる状況です。
3ページ目です。この内訳を見てみると、製造業や建設業などの第二次産業では災害が減少しているものの、第三次産業、具体的には小売業、社会福祉施設では災害が増加しております。
4ページです。第13次労働災害防止計画では、陸上貨物運送事業、小売業、社会福祉施設、飲食店で死傷者数を死傷年千人率、これは業種における1年当たりの労働者数千人当たりの死傷者災害件数ですが、これを5%以上減少させるという目標を立てておりますが、この死傷年千人率でも増加傾向にあるところです。
5ページ目。「事故の型」のトレンドということで、我々の方で労働者死傷病報告に基づいて、災害をパターンとして類型化して集計しておりますが、30年前には、挟まれ、墜落といった設備に起因するものが多かったものが、近年では転倒、動作の反動、これが腰痛などですが、このような作業方法などに起因する災害が増加してきております。
この背景を少し見ていきたいと思いますが、6ページ。まず左のグラフのとおり、雇用者数に占める60歳以上の割合は、平成12年の約9%から平成30年の約17%まで上昇しております。これに伴った形で、右のグラフにある労働災害による死傷者数に占める60歳以上の割合も、平成12年の約15%から平成30年には約26%に上昇しております。
7ページ。高年齢労働者の労働災害の特徴ということで、墜落・転落や転倒災害の年齢層別の発生率、これは年千人率ですが、これをお示ししております。墜落・転落では、男性で60代後半では20代の約4倍となっております。転倒では、女性で60代後半では20代の約16倍となるなど、高齢化が労働災害増加要因の1つというデータになっております。
また、8ページのとおり、労働災害による休業期間、こちらは労働者死傷病報告で休業見込み期間の報告を求めていて、これを分析したものですが、休業4日以上のデータとなるのですが、これを年齢層別に見てみると、御覧のとおり年齢が上がるにつれて休業期間が長くなっていて、60歳以上では6割強、70歳以上では7割ほどが休業1か月以上となっていて、高年齢者ほど災害が重篤化しやすく、人的資源の観点からも影響が大きいというデータになっております。
このような状況の中で、これまでどのような対策を行ってきたのかということで、次の資料3にお示しをしております。法令レベルでは、労働安全衛生法では、第24条で「事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない」とされております。ただし、転倒や腰痛に関して具体的な基準は定められておりません。転倒については、労働安全衛生規則で安全な通路を設けること、適当な履物を使用させることなどが定められておりますが、具体的な基準は定められていない状況です。
ガイドラインとしては、腰痛については、職場における腰痛予防対策指針を制定して、事業者への取組を求めているところです。転倒については、「STOP!転倒災害プロジェクト」として、4Sの実施等を事業者に求めているというところです。
次に、行政指導による取組として、監督者による個別指導や集団指導、好事例や対策の参考となる動画のコンテンツや資料も作成し、こういったものを使って啓発を図っております。
最後に、事業者への支援策として、令和2年度から高年齢労働者の労働安全衛生対策に要した費用を補助する「エイジフレンドリー補助金」というものを設けて、職場環境改善に取り組む中小企業事業者を支援しているところです。
以上のような労働災害の状況等、これまでの対策の状況も踏まえて、今後の方策について、有識者の方々からヒアリングという形で、いろいろな御意見を伺いまして、提言を頂きました。この次に説明いたしますが、その提言を踏まえて、行政としてすぐに取り組めることはやるべく、今年度から労働局ごとに、小売業と社会福祉施設における協議会というものを設置して、できる対策を検討して進めていくこととしております。
その有識者から頂いた提言について御説明いたします。資料4です。後ろの方で資料5としてお示ししている提言本文の概要になります。1枚目です。今、何を目指すべきかということで「安全・安心に誰もが持続的に活躍できる職場の実現」とされておりますが、これは提言の本文において、こういうことは日本社会にとって、不変の当たり前の目標ではあったのですが、行政の指導のミスマッチ、関係者の理解不足、高齢化、災害態様の変化、産業構造の変化などによって、転倒・腰痛等の災害が増加して、歯止めが効かない状況になってきていることから、新たな切り口による取組で現状を打破していこうということです。そのために必要な取組として、様々な御意見がありまして、これが大きく3つの柱、すなわち転倒・腰痛等を取り巻く課題や背景要因の的確な把握。企業・労働者の行動変容を促すための発信と関係者との連携。企業、労働者、関係団体の主体的な取組の促進と、必要な制度等の見直しと新たな切り口による取組として、取りまとめられております。
そして、先ほども申し上げたように、「行政として実施可能な事項から速やかに実施されることを求めたい」と提言されておりますので、行政として、できることを進めるために取組に着手しております。その上で、取組の具体化、専門家から必要なものについてステークホルダーを交えた行政検討会で、今回、御検討いただきたいという流れになっております。
それでは、この提言について、少しお時間を頂戴して御説明をさせていただきたいと思います。まず提言1、転倒・腰痛等を取り巻く課題や背景要因の的確な把握ということで、課題として、(1)発生した労働災害情報の深掘りができていないのではないか。次に、職場において転倒・腰痛等の予防の取組が進まない要因や、企業・労働者が求めるニーズの把握が足りないのではないか。それから、転倒・腰痛等の予防に効果がある取組のエビデンスの収集が、足りないのではないかというような御指摘がありました。
これらを踏まえて、災害の物理的要因や心理的・内的要因なども含むリスク要因の深掘りや、災害予防を促進する要因、逆にそれを阻害する要因の把握など、取組のエビデンスとなるものを、収集・調査研究すべきという御提言を頂いております。その調査研究に当たっては、職域に限らず、生活者としての高年齢者の体力データを活用したり、取組の企業経営へのメリットあるいはデメリットに関わるデータの収集も、有効ではないかとの御指摘も頂いております。
次に、提言2。企業・労働者の行動変容を促すための情報発信と関係者との連携ということです。課題として、労働災害防止の切り口だけでは、企業や労働者の行動変容を促すことは難しいのではないか。企業にとっては、転倒・腰痛防止に取り組むメリット・デメリットが分かりづらく、企業価値を生み出すイメージが湧かないのではないか。また、働く人にとっても、職場での受動的なやらされる取組として、捉えられやすいのではないかということ。小規模な介護施設やスーパーなどが、自力で取組を推進することは困難ではないか。関係者間のつながりも弱く、効果的にアプローチできる専門家がいないため、取組を推進できる主体がいないのではないか。また、行政の視点が指導に偏って、企業の自主的な取組を促しにくくなっているのではないかということで、はじめに、ポジティブなキーワードで、転倒・腰痛等予防の取組を推進していくべきではないか、つまり、安全衛生対策を経営上のコストとして捉えている企業にも、対策が経営に有効であることを認識、経営に反映してもらうことが必要ではないかという御提言を頂いております。その際、労働者側でも自分事として認識していくためのマインドセット、被災者自身に責任を負わせないための環境作りも必要ではないかということも頂いております。
2つ目。関係機関、関係団体との連携を強化するとともに、周知啓発に協力してもらえる専門家を育成・活用することが必要ではないか。
3つ目。行政機関の意識を指導から育成にシフトしていく意識改革が、必要ではないかという御提言でございました。
最後に提言3として、企業、労働者、関係団体の主体的な取組の促進と、必要な制度等の見直し、新たな切り口による取組ということです。課題として、企業の立場からメリットがないと取り組まず、行政の今までの取組は、プロセスや手法に問題があって、うまくいっていないのではないか。労働安全衛生法令が現下の状況にキャッチアップしていないのではないか。行政等で、教育、周知啓発ツールを作っても、普及についての視点が欠けていて、活用されていないのではないか。労働者へ届いていないということで、1つ目に、転倒・腰痛予防対策を効果的、実効的に推進するため、これまでの行政における取組状況と効果を検証し、効果のあったものは継続し、低調なものはやり方を見直すべきではないかとの御提言を頂いております。具体的には、これまで作成してきた安全衛生教育ツールは効果的に活用しつつ、余り活用できていない関係機関との連携を強化すること。また、優良な取組を行った企業に対して、国が関与した認証や表彰の制度を更に拡充し、水平展開を図るべきではないかという御提言です。
2つ目に、現場の実態に即した企業の主体的取組による災害防止の取組や、効果の高い予防対策が促進されるよう、労働安全衛生法令をはじめ、現行制度の見直しを検討すべきではないか。具体的には、事業場が小規模に分散し、事業場単位でできる取組が限られている小売業などにおいて、企業単位での安全衛生管理の役割の在り方を検討すべき。腰痛予防については、国際的な規制の動向も踏まえつつ、より自主的な管理を促す方向にシフトすべき。転倒予防に効果的と考えられる設備的対策についての規制の在り方を検討すべき。高年齢労働者等が安全で働きやすい職場環境の整備を促進するため、高年齢労働者等に対する個別の保健指導や、就業上の配慮を検討してはどうかとの提言でございました。
また、企業の自主的な取組を促進させる支援、インセンティブ制度を拡充させるべき。具体的かつ効果的な普及啓発の在り方を検討し、推進していくべきとの御提言を頂いております。資料5は、先ほど申し上げたとおり、提言の本文になりますので、割愛させていただきます。
資料6です。先ほど少し申し上げた、実施可能なものは速やかに実行というもので、今年度からの行政の取組も、少し御紹介させていただきたいと思います。提言も踏まえて、意識啓発による行動変容の促進、多店舗展開企業等への自主的な安全衛生活動の普及・定着を図ることを目的に、+Safe協議会、これは仮の名前なのですが、+Safe協議会、+Safeコンソーシアムなどを進めることとしております。まず、労働局ごとに+Safe協議会を設け、管内企業を構成員とし、情報交換や取組の検討、広報活動等を進めていこうとしています。また、+Safeコンソーシアムということで、全国レベルで企業や関係者、専門家に参画していただき、アワードや広報活動によって、国民運動として安全衛生を推進していくべく、準備をしております。
2枚飛ばして後ろの方に、参考資料として、昨年度に我々の方で実施した小売業、社会福祉施設における安全衛生対策に関するアンケートの結果ということで、お付けしております。参考資料2として、ほかの取組とのコラボレーションということで、日本転倒予防学会が制定した10月10日の転倒予防の日に合わせて、転倒労働災害防止の呼び掛けなどを行っておりますので、御紹介をさせていただきました。事務局からの資料の御説明は以上になります。よろしくお願いいたします。
○髙田座長 御説明、ありがとうございました。転倒災害、腰痛災害の発生状況、それから、これまで取り組まれております転倒災害防止対策、腰痛予防対策の概要、3月に取りまとめられた職場における転倒、腰痛等の減少を図る対策の在り方についての提言の概要、令和4年度から実施しております新たな対策の全体像。それから、実際に行いましたアンケートの結果について、多岐にわたって御説明いただきました。この後の意見交換に入る前に、まず、資料の説明について、何か御質問がありましたらお願いいたします。Web参加委員の方には、途中からの画面共有になってしまいましたが、申し訳ありませんでした。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
資料についての御質問は特にないということですので、ここからは、議事5の意見交換に入りたいと思います。まず、事務局から議論のきっかけとなる資料の説明をお願いいたします。
○澤田中央産業安全専門官 ありがとうございます。資料7です。事務局で想定しましたフリーディスカッションをしていただく際のポイントということで、一案御用意させていただきました。
まず1点目、現状と課題についてということで、転倒や腰痛が多発している第三次産業、特に小売業及び社会福祉施設の職場では、災害防止上どのような課題があるかということで挙げました。
2点目として、具体的な対策についてということで、1、転倒や腰痛など、日常生活でも起こり得る災害について、労使双方の災害防止意識を高めるためには、どのような方策が有効か。2、転倒や腰痛予防をするために、現場で取り組むべき対策として、どのようなものが考えられるか。3、転倒や腰痛の予防に効果がある安全衛生教育には、どのようなものが考えられるか。例えば、内容及び実施方法、定着させるための工夫など。4、転倒や腰痛など、労働者の作業行動に起因する災害の防止を、何かほかの取組と一緒に効果的にできないのか。親和性のある既存の取組としては、どのようなものが考えられるか。例えば健康経営やトータルヘルスプロモーションの取組などがありますが、いかがでしょうか。
3点目として、職場において対策を推進するための体制についてということで、1、職場における転倒や腰痛の予防を図る上で、対策の実施にどのような者を参画させることが有効か。2、転倒や腰痛を予防するための効果的な安全衛生管理体制や、安全衛生管理活動として、どのようなものが考えられるかということで上げました。
4点目として、支援施策等についてということで、1、リソースが必ずしも十分でない中小企業では、小規模事業場が対策を進めるためには、どのような支援策が必要か。2、その他、転倒や腰痛などの災害を防止する観点から、検討すべき事項があるかなどについて、御議論いただいてはどうかと考えております。どうぞ、よろしくお願いいたします。
○髙田座長 ありがとうございます。4点挙げていただいております。まず、論点の1番目の現状と課題について、実際に業界からも委員として御参画いただいておりますけれども、何かございますでしょうか。小澤構成員、御発言ございますか。よろしくお願いいたします。
○小澤構成員 資料の御説明、ありがとうございます。まず、現実に確かに第三次産業は、災害が増えています。それはなぜか。非正規雇用の労働者が、非常に増えているのですね。第三次産業の働いている人口というのは6,151万中4,138万人もあり、全体の67.3%は第三次産業で働いている。だから災害が多いのは仕方ない、ではなくて、こういう現実を踏まえて、いろいろな対応をしなければいけないということを強く感じております。さて、災害の背景ですが、一つには、2年間、コロナで行動範囲が大変狭まって動かなくなった。これが急に動き出す、そうすると腰痛になったり、つまずいて転ぶ。こういう2年間の特異な現実があります。分析してみますと、去年の1年間のある会社の分析、1年間で372件起きています。それを分析しますと、生鮮のが51%とほとんど生鮮に集中しているのですね。そして、精肉が15%、鮮魚が17%、惣菜が20%、青果、こんな形なので、これから増える分野については、重点的に対策を進めていく必要があるのではないかという感じがしております。
では、どこで起きているかと言いますと、決して売り場ではないですね。調理をやっているバックヤードでもない、商品を運ぶ過程ではない、開梱する、そういうときに起きています。それについて、対策の必要があるのではないかと思います。
あと感じたことですけれども、労災の事故の内容です。確かに御説明がありましたように転倒が大変多い。これは、特に高齢者雇用安定法が施行されまして、このときより高齢者がどんどん入ってきました。そういう中で転倒が増えた。施行から2年間経過しましたので若干転倒が減ってきましたけれども、まだまだ依然として転倒と腰痛が多いというのが実態です。したがって、労災の内容別で見ると、転倒が約25%あるのですね。それと切れ・こすれが約34%、その2つだけで59%。あとは火傷ですね。あと、、バックヤードから売り場に出るときのスイングドアで手を挟んでしまう。こういうことで発生しているというのが実態です。特に今の時代、体がなまっております。それは若い人も同じで、太っている人も増えています。それでこういう災害が増えている感じが強くしております。そういう中で、その辺を重点的に絞って、対応していくことが必要だろう。特に生肉、鮮魚、惣菜。時間帯は、どういう時間帯が多いかといいますと、やはり開店する時間ですね。10時になると、オープン前にいろいろな作業をする。補充する、開梱する、運搬する。そこで起きています。その後第1次回転、第2次回転とお客さんが集中する時間帯で労働災害が集中している。ポイントを絞って改善していくことが必要だと感じました。以上です。
○髙田座長 具体的な案、見解を基に課題を説明いただきまして、ありがとうございました。ほかにございますか。お願いいたします。
○桑原構成員 株式会社イトーヨーカドーで労務を担当しております。今、小澤委員からも、本当にいろいろな分析された内容をお話いただきました。私も、現場レベルの話しかできない、情報を持っていないのですけれども、現在、パートタイマーさんが8割近く、そういう事業者さんがどんどんが増えてきている。また、パートタイマーさんも、これは弊社だけではなくて、平均年齢50歳代を超えている。子育て世代を終えて、それから更に働くという方が増えてきているというのが、これは傾向だと思います。ですから、確かに30年前との比較で、労災の傾向が変わってきていると思います。30年前というのは、まだ正社員勤務が半数近くあった、そういう時代だったと思いますが、今はパートタイマーさんが多数を占めるようになった中でまだ安全衛生対策というのは対応しきれていないというのが、各企業ごとに当てはまるところではないかと思っています。また働き方の目的というものも多様になってきております。生活のためにしっかりと働かなければいけないという方もいらっしゃれば、子育てが一段落をしたということで、ちょっとした収入を得ようということで、短い時間だけ働きたいという方も増えてきております。弊社だけではないと聞いておりますが、いろいろな方が、7時間から8時間、フルタイムに近い状態で働く方の傾向というのも増えてきております。1週間に1回、3回だけ働きたいという方もおり、そういった働き方の多様化ということも、社員の働く環境に対応していく体作り、ルールであったり、マニュアルであったりということも、しっかり考えていくべきポイントなのかなと感じています。
○髙田座長 ありがとうございました。今、小売業関係で課題が出されておりますけれども、そのほか、委員の先生方から何かコメントがございますでしょうか。
○小澤構成員 働き手の多様化という観点では、外国人労働者、技能実習生の労働災害も増えています。私の把握している企業の例では、280名から300名ぐらい技能実習生を採用しまして、製造、物流センター、加工センター、それから現場の方でお総菜、魚などの調理をしていたわけです。機械や器具の使い方を始めとした安全衛生教育をしっかりやっていく必要があるという感じがしました。外国人雇用、技能実習生の教育がおろそかになっているのでは、どうしたらよいか分からないという意見もたくさんあるので申し上げたわけです。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。労働者の多様性の問題も影響しているという御意見を頂きました。ほかの小売関係も。小菅委員、お願いします。
○小菅構成員 1つ目の内容に関して補足したいと思います。先ほどから話が出ているように、小売業の特徴があると思います。例えば、大型店舗の中には複数の企業が入っており、テナントとして入居する企業もあれば、建物全体を管理する企業もあります。責任の範囲など連携が必要な部分もあると思います。今後の議論になりますが、取組の中では、やはり安全衛生委員会等の労使の取組が有効であると考えます。連合が2020年に実施した労働安全衛生に関する調査では、安全衛生委員会の設置状況を事業場の形態別に見ると、工場などは100%に近いのに対して、店舗では2割強に設置されていないという実態があります。小売業の業態特性に合わせた検討が必要になってくると思います。
○河津構成員 よろしくお願いします。小売業の話ということで、私も小売業の産業医をやっておりますので、労災についていろいろ見ております。特に、産業医ですので、衛生に関しての腰痛についてお話させていただきます。やはり、荷物が重いというところが問題になるのですが、基準が曖昧であるということ。ほかの製造業等に比べて非常に対応が難しいと思っているところに関しては、入ってくる荷物で、小売業は流通業と言うように、メーカーさんから納品されるわけですが、それが非常に重たいのです。結局、メーカーさんが人力で取り扱うにもかかわらず、非常に重たい荷姿で来てしまうと、誰かが取り扱わなければいけないということで、非常に荷物が重たくなってしまうと。これは一企業だけでは対処することができず、経産省の方がオブザーバーで来ていただいているということですが、これは物流そのものに関して人力で取り扱うものの基準を決めるというぐらいまでやらないと、難しいのではないかと思っております。
例えば、これから暑くなりますが、2Lのペットボトルが1ダースとか入ってきますと、ものすごい重さになります。例えば豆腐とか、かご車にドンと高い所に積んでおくと、女性では取り扱えないぐらいの重さになってしまいますので、これはこの検討会でできるかどうか分からないですが、私の印象としてはあります。実際、かご車とかそれを運ぶトラックは完全に規格化されていますので、この規格を変えるのはなかなか難しいとは思いますが、受け取る企業側だけでは対処のしようがないというのが印象です。
もう1点、腰痛に関してお話しますと、腰痛健診というのがあるのですが、この健診をやったら腰痛が減るのかと言ったら、何のエビデンスもない健診が横行してしまっているところがあります。例えば、今、診て側弯がある人は、結局、事後措置としたら気を付けなさいだけなのです。側弯がある人は荷物を運んではいけないとしますと、そこまでの必要があるのかというところがありますので、やはり、事後措置ができないような健康診断をやっていることは、余り意味がないと思いますので、やはり、その辺は健康診断みたいなアプローチは難しいと思っている印象です。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。小売関係はひとまずよろしいですか。社会福祉施設の方から何かありますか。
○今村構成員 御説明ありがとうございました。現状と課題について発言をさせていただきます。私は介護福祉士という職能の団体の役員を務めております。この職能団体として会員向けに、例えばアンケートや統計的なものは、まだ十分取れていない現状があります。様々な場面でこういったことについて、話をする機会が多いことは実感としてはあります。私の本業は社会福祉法人の特別養護老人ホームで、いわゆる介護施設の管理者をしておりますので、実際職場の中で起きていることも踏まえながら、少しお話させていただきます。
我々介護業界は、人材不足が一番大きな理由かなと思っているところです。配置基準を満たさないといけないということもありますので、多様な人材を受け入れざるを得ないという状況と、そこに対する介護の技術面や、そういったものの指導も十分に行えていないのが、現状としてあるかと思います。なおかつ、施設系と在宅系と分かれますが、特に在宅系の場合、訪問介護のヘルパーさんの平均年齢がかなり高くなって、70歳前ぐらいの方たちが現役で働かれている状況です。かつ、訪問するのは基本的に利用される方の御自宅になります。様々な環境面があるということです。古い御自宅、完全バリアフリー化の家は早々ないでしょうが、そういった所に高齢の方々が行かれて、サービスを提供しているというところです。
あと施設に関しても、1人で対応しないといけないような時間帯も非常に多いのが、現状として言えるかと思います。人がたくさんいれば一緒に対応することは可能と思いますし、基本的に対象となる方は高齢者の方や障害者の方と様々ですが、やはり働く職員と対象者の体格差、そういったこともたくさんあると思います。そういった中で対象者の方の急な行動や、不意な動きに柔軟に対応しないと、利用者の方の安全を担保できないことが前提にありますので、そこで無理な姿勢や体勢で対応してしまうことによって、転倒とか腰痛が発生している要因として挙げられると思っております。
昨年9月、前三原厚生労働副大臣からの要請で、我々職能団体の方にもいろいろと現状として、こういう課題がありますとお知らせいただいて、そこについては職能としても都道府県の介護福祉課にも周知をして、会員さん方にもお知らせをしております。いずれにしても、人がいないということによっての影響が非常に大きい現状であり、かつ、そのことによって起きることにも、なかなか対応ができていないことが課題かと思いますので、その旨発言をさせていただきました。以上です。
○髙田座長 今村委員、ありがとうございました。山﨑委員、お願いします。
○山﨑構成員 私はUAゼンセンという産業別組織で、医療・介護・保育を担当している山﨑です。私自身も特別養護老人ホームで約8年働いておりました。その後、小規模多機能の管理者として、また8年ほど勤務しておりましたので、そういった経験からも少し発言をさせていただきたいと思います。
やはり、介護現場としては、転倒もさることながら、腰痛が非常に重要な課題の1つとなっているかと思います。私自身も現場で働きながら、腰痛にはひどく悩まされて、特に、特養とか大規模施設は、1日の勤務で数十回は利用者さんを抱えたり、移乗したりと介助が多いものですから、どうしても腰に対する疲労がたまってくる。またぎっくり腰などは疲労がたまってきますと、筋肉が固まって、それが腰痛の発生に非常に大きな要因となってくるかと思います。
河津委員もおっしゃっておりましたが、腰痛検査を定期的に必ず行わなければいけないのですが、それが腰痛予防には必ずしもつながっていないというのが、私自身も痛感しておりますし、私の周りに関しても、ある程度行政で決まっている制度なので、やってはいますが、これは一体何のための検査なのか。実際にそれで腰痛が軽くなるとか、病院に行ってコルセットを買って、それを付けて終わりみたいなこともあります。実際に行政で取り組んでいることが腰痛予防につながっていないのが、1つの課題かと感じております。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。腰痛健診の課題についても御発言いただきました。信澤委員、御発言お願いします。
○信澤構成員 私は全国の老人ホームの協議会の代表として、今回出させていただいております。私としても、特別養護老人ホームの施設長を30年させていただいている中で、腰痛が増えているという意見で、今回論議されておりますが、30年前から比べますと、腰痛に対しての現場での取組が、昔よりはできているのではないかという感想を持っております。
それは、30年前は、うちの老人ホームで職員が100人いますと、大体半分ぐらいがコルセットをして仕事をしているような時代があった中で、現在は先ほどの今村委員のように、きちんとした資格がある職能団体にいる介護福祉士の方が増えてきてからですが、腰痛ということでコルセットをしなくてはならない仕事を、今やっている職員は、うちの中ではゼロです。それは多分、介護技術ということで、先ほど今村委員からも出ておりましたが、技術がきちんとしていれば、介護をしていても腰痛には基本的にはならない。そのためにきちんとした学校を出たり、勉強をしたりということを進めていくことが、多分腰痛予防に進んでいくのだなと思っております。社会福祉施設で腰痛が増えているのは、急激に増えているのも、社会福祉施設が急激に増えた。施設が急激に増えたことによって、人材不足がずっと発生している。人材不足が発生することに当たって、残念ながら介護施設は無資格の方でも仕事ができるので、むしろ介護技術がままならないうちに、現場ですぐ仕事をしなければならないという現状が、多分こういう形で出てきているのではないかと思っております。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。大変重要な御指摘を頂きました。ほかに社会福祉施設関係のことで御発言をお願いします。
○島田構成員 労働安全衛生総合研究所では、昨年度、安全課からの依頼で社会福祉施設の死傷病報告書の分析調査を行いました。今村様がおっしゃっていたエビデンスを示すという位置付けになると思いますが、社会福祉施設では、被介護者の方の突然の動きなどへの対応、例えば,被介護者が突然、転びそうになった時に、それをカバーしようとして無理な体勢になり腰痛が発生しているという事例が多くありました。それを改善するためには、やはり、従来からの設備的な改善や安全活動活動などだけでは対処ができない。介護する労働者が被介護者の不意な状況変化に備える対策も必要となりますが、その辺りは難しいところと考えます。
もう1つは、サービス系統毎に災害の内容が異なるということです。訪問系、通所系、短期入所系、施設系などの系統別の分析も行いましたが、それぞれに発生している災害の内容は異なっています。例えば、短期入所系や居住系、施設系では、ベッドと車椅子との間の移乗介助中の動作の反動・無理な動作による腰痛などが多いですし、短期入所系や施設系ではつまずきによる転倒、多機能系と訪問系では、すべりによる転倒が多いという傾向がありました。
さらに、先ほどから高齢の方の災害が多いという話がありますが、経験年数についても着目する必要があります。社会福祉施設の労災については、転倒や腰痛発生件数のほぼ半分は経験年数5年未満の労働者が占めていました。そのため、経験年数の浅い労働者への対応を考えるという議論も必要になると思います。被介護者の安全を加味しながら、同時に労働者の方がどうやって自身の安全を確保するのかということも考えなければなりません。
○髙田座長 ありがとうございます。島田委員から調査結果も含めて御説明いただきました。ほかに追加で御発言がある委員の方はいらっしゃいますか。
○今村構成員 補足で、人材不足について先ほど申し上げました。それも立派な要因ですが、ただ単に人材不足と言うだけではなくて、人材不足によって、現場で働いている職員さん方のモチベーションと言いますか、その辺も大きくこういったものには影響しているのかとは感じます。特にこの2年間はコロナという状況の中で、かなり疲弊した現場の方々がたくさんいらっしゃるだろうと思います。それがもとで離職した人も多数いるという事実はあります。課題としてということにはなるのでしょうが、いかにして増やしていくのかということが、一番大きいかとは思います。メンタル的な部分によっても、こういったことは起きるということは、私自身も自分の職場の中では実感をしております。追加でした。
○髙田座長 ありがとうございます。ほかはよろしいですか。それでは具体的な対策について、ここに4つ論点がありますが、こちらは順不同で、それぞれ御意見がありましたら、お聞かせいただければと思います。
○鈴木構成員 鈴木です。事務局からの説明や、委員の先生方から、腰痛災害や転倒災害の実態についてお聞きし、実効性のある対策をしっかり立てていかないといけないという思いを、あらためて強くしたところです。
私からは今後の検討する際の視点についてコメントいたします。対策の焦点を当てるべき職場・産業としては、中小、小規模事業所が多いところ、事務局から説明がありましたとおり、例えば製造業のメーカーと比べますと、安全対策の歴史が一般に長くありません。また、小澤委員が言われたように、労働者が急に増える職場も多いことや、十分な安全衛生教育を行うことも容易でないといった特性があります。こうした実態を考えたとき、取組企業の労災防止体制の発展段階に応じた対策を考え、各社が時間軸をもって無理なく取り組んでいけるよう、施策の体系を整えることが、今後検討していく上での1つの切り口になるのではないかと考えます。こうした切り口は、提言の中で指摘のあった「育成」という観点にもつながると思っています。初めは企業規模が小さくても取り組めるような対策から始めて、ステップ・バイ・ステップで取り組めるようなモデルやロードマップ的なものを業種、業態で策定すると、中小、小規模事業所でも取り組みやすいのではないかという趣旨です。
例えば、いきなりリスクアセスメントをやってくださいとお願いしても、職場に知識・経験をもった方がいないと難しいので、簡易版のアセスメント手法や、チェックリストを一層普及することも課題になるのではないかと感じております。
災害防止意識を高めることは、これから委員の先生方の知見を拝借しながら、深掘りすべき重要な論点だと思っております。労災を自分事として感じ取ってもらうための意識改革としては、例えば、自社の災害事例とかヒヤリハットの事例を定期的に集計して事業所で見える所に掲示するとか、あるいは同じようなシチュエーションで労災が発生した場合に、該当箇所に発生した状況を簡単に解説した案内を出すなど、見える化することが有効ではないか、またこうしたヒヤリハットを含めた見える化の実効性を検証していくことが、あってもいいのではないかと思っております。
自分はこんなヒヤリハットがあったといった経験を仲間同士で共有することで、職場全体でこれは何とかしなければという意識を高める効果が期待できるのではないかと思った次第です。私からは以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。ほかはいかがですか。
○井上構成員 日本商工会議所の井上です。本日は皆様御説明ありがとうございました。先生方からの御意見を賜りまして、大変勉強になりました。ありがとうございます。
まず、商工会議所の考えとしては、やはり会員企業には中小企業が多くありますので、中小企業の目線でお話をさせていただきます。商工会議所の方でも、転倒、腰痛は増加傾向にあり、喫近の課題であるという認識でおります。2017年から健康教育の一環として、メルマガの配信や、中小企業の取組事例の専用ページを作って共有したりとか、自社に健康経営のアドバイザーを育成する講座のようなサービスもスタートしております。
実際にそういったサービスを受けた企業からは、生産性や従業員の活力が向上したとか、組織の活性化につながったと。その結果、企業価値が向上し、採用時の応募数が増えたという多くのプラスの声が寄せられました。しかしながら、中小企業2019年という、少し古いデータですが、調査をしたところ、健康経営に取り組んでいる企業は約10%程度と、まだまだ低い現状です。加えて、健康経営を知っているという質問に対しても、約3割の企業しかよく分からないという回答がありましたので、これからもっともっと取り組んでいく必要があると感じている次第です。
実際、取り組んでいない企業の理由としては、一番多いのが、何から始めていいのか分からないといった本当に基本的なことでした。したがいまして、先ほど来、鈴木委員からもお話があったような、簡易型のチェックシートのガイドラインを作るとか、中小企業でも取り組めるような、ハードルの低いきっかけ作りを提供していく必要があると思います。取組事例の共有や、あとは中小企業に十分にアドバイスできるものが、マンパワー的にも少ないかと思いますので、そういった中小企業に、転倒・腰痛を含む健康経営のアドバイスができるようなアドバイザー派遣なども、御検討いただければと思っております。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。健康経営についても触れていただきました。
○津下構成員 私は労働災害というよりも、介護予防や健康づくりとか健康政策について取り組んでいる立場です。介護の方で言いますと、要介護者を減らすとか、そうした活動に関わっておりますので、委員の皆様、また、先ほどのお話は大変興味深く思いました。
伺った中で、どういう人がどういうシチュエーションで作業をしており、事故につながっているのかが明確になること、そこに対してきちんと留意点を啓発し、対策がおこなわれることが重要だと、まずもって思いました。介護人材の中で短期で離職される方が多い中で、長期に介護の仕事をなさっている方がどのような工夫をして、どのような留意点をしているのか、どういう技術を持っているのか、そういうことを広めていくのことが重要だなと思いました。
一方で、実際に介護、パート勤務の領域では、今まで働いたことがない方が、子育てが終わって少し時間があるから外で働こうとか、そういうことで始められた場合に、十分な準備ができていないまま入ってしまう。運動に関する事故でもそうですが、本人の体力と運動の種類・強度とか行動様式が、マッチしていなければ事故が起きやすくなります。本人が自分自身の体力とか、何ができるかということと、作業の間のギャップに十分目がいかないことがあります。また経営者の方もそこまで配慮できていないことがあります。介護の現場で働いている方に伺ったときに、家庭の仕事の延長だからできると思ったという形で入られて、すぐに務められなくなってしまうというようなケースも見聞きしております。そういうところで、先ほどおっしゃったような教育や技術の教育をし、安全な就労へのモチベーションを高めるというのは重要ですが、小規模の所で実際に教育を十分にすることはなかなか難しい状況もあると聞きます。施設でも様々な業務内容や経営形態もありますので、十分に行き届かないという現実もあるかと思います。
そこで、例えば近年は小規模事業所でも健康経営の概念が広がりつつあります。また、自治体においては、地域・職域連携による健康づくりを進めており、健康づくり、介護予防、体力づくり、また腰痛を起こさないような運動様式などについても取り組んでいくとよいのではないかと思いました。それは労働からという面だけではなくて、本人の健康づくりの一環として、そういう経験を踏んでいただくこと、また地域と職場の連携を取ることによって、小規模なお店とか介護事業所とか、地域ごとに学習の機会を作る仕組みというのも、今後考えていく必要があるのではないかと思います。
小規模事業者単独ではなかなかハードルが高いことかもしれませんが、その業界団体で取り組まれると同時に、地域・職域連携など、地域の取り組みとして進めていくことも一つの方法ではないかと思います。現在、生活習慣病予防の視点で、連携に取り組んでいる自治体も増えていますので、そういう所に高齢者の転倒防止や腰痛防止などの視点について加えていくのはどうかと思いました。まだ自治体には十分に認知されていない状況かなとも思いますので、自治体からの認知度を高めるのが良いのかなと思いました。
また、介護施設では入所者、高齢者、対象者の事故防止に非常に注意を払われていて、就労者よりも対象者を優先されているということになって、自分の事故にもつながっている可能性はあると思います。高齢者・入所者の転倒防止については、非常に注意を払われている職場ではないかと思いますので、働いている人の腰痛、労働災害、行動災害防止に向けて、専門職的な目でもう一度見直してみることも検討していく必要もあるのかなと思った次第です。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。地域職域連携、腰痛・転倒防止対策の所も含めて、健康増進を進めて全体の底上げをしていくということが、対策につながるのではないかという発言だと思います。河津委員、御発言をお願いします。
○河津構成員 よろしくお願いします。具体的な方策ということですが、先ほど来、いろいろな委員の先生がおっしゃっているように、どこから手を付けていいか分からないというところも大きな問題です。特に小売業がそうですが、小規模分散事業場になっていますので、小規模ですと1つの店舗では何年も労災は起きていなくても、それを集めると結構な数、起きているということがあると思います。あと、先ほど厚生労働省からの資料にもありましたけれども、結局、休業見込みしか分からないというところです。提言の中でもあったのですが、情報のフィードバックが全然ないというところは、私は問題ではないかと思っています。
具体的には、例えば労災を起こして、小規模分散の所がいろいろな労基署に労災の申請をしても、それが本当に労災として認められたかどうか分からないというところです。企業が申請しているのに、個人にしかフィードバックがないので、特に腰痛とか起こっても業務上災害として認められないこともあるのですが、それを取りまとめるために社員一人一人に聞かなければいけないとなると、すごく難しいところがあります。もちろん、一例一例の労災を深掘りしようにも、労災になったことも分からないし、何日休んだかも分からない。結局、1か月以上とか2か月以上の見込みというので集計を取っても、そういうラフな統計であれば、なかなか対策を打つのは難しいところがありますので、私は企業単位で考えるというところも、1つの論点としてあると思いますが、労災の情報のフィードバックというものを、もう少し考えていかないと難しいのかなと思っています。具体的には各企業で、あなたの会社で、例えば転倒で何人認めて、具体的に何日休んでいますよということをまとめてあげるだけでも、各事業者は自分の会社の労働損失が、どれぐらいあるのか計算することができますから、そういうのも1つ検討していければいいなと思っています。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。労災情報のフィードバックということで出ていますけれども、事務局側から何かございますか。特にこの時点ではよろしいですか。貴重な御意見を頂きましたので、実際に起きている災害をどういうふうに全体を集約して、それを活かしていくかというところですね。そういったことを事業所単位でなくて、な会社ごとにまとめて分かるようにしていく必要があるのではないかと思いますが、ほかに、小菅委員、お願いします。
○小菅構成員 具体的な対策について、1つ目の意識についてです。転倒災害が第三次産業で増加傾向にあることは大きな問題です。他産業と比較して、深刻な状況であるということを、第三次産業の中でも再認識する必要があると思います。製造業などを含めた産業全体で見たときに、第三次産業の転倒災害が残された課題であるという認識が必要です。また、もし労働者の側に、死亡事故や転落などに比べ、転倒腰痛が軽微な怪我だという認識があるとしたら、転倒による骨折や腰痛の慢性化など、深刻なケースをしっかり認識する必要があると思います。
2つ目の取り組むべき対策に関しては、先ほどから話は出ていますが、これまで第一次、二次産業で行われてきたKY活動やリスクアセスメントの手法を、今一度、第三次産業において活用しやすい形で定着させることにより、災害を防止する余地があるのではないかと思います。現場ではヒヤリハットが発生しており、そこに視点を当てた取組の余地がまだあると思います。転倒、腰痛を中心としつつも、同時に労働災害全体の防止に役立つような体制をしっかり取っていく必要があります。先ほども触れましたが、小規模事業場も含め、安全衛生委員会などをしっかり機能させていくことが重要になると思いますし、その中で現場の意見と使用者側の意見を合わせながら、安全を確保する活動を定着させていきたいと思います。
○髙田座長 小菅委員、ありがとうございました。具体的な内容ということでまとめていただきました。小澤委員、お願いいたします。
○小澤構成員 いろいろ御説明いただきまして、ありがとうございます。まず、基本認識としてメーカーは工場みたいな資本集約産業ですね。対して我々小売業、は労働集約的産業ですね。人の汗を流し、それで売上げを上げる、それで根本的にベースが違う。もう1つ、労働市場から見るとメーカーは80%正社員、本社は90%、工場は70%、正社員、全く流通と合わないですね。我々、85%、今、イトーヨーカドーはなりました。85%、アルバイト、派遣社員です。正社員で副業というのが認められてきていますね。A社で働いた後B社に行く。そうしなければ生活も大変ということがありまして。パートタイマーの話についても、午前中あるところで働く、午後は別のところで働く、こういう労働者もいるということ。そういうものを見ながら、いろいろな決め事をしていかなければいけないだろうということを、最近、痛切に感じています。
一方で、我々の反省として、常に我々、お客様を見て30~40年間、私も仕事をしてきました。お客様ファースト、カスタマーイズキングという中で従業員に対してどれだけ優しい眼差しを向けてきたか。これについてはもう少し視点を当ててフォーカスして、従業員のモチベーション、やりがい、働きがいというのを、お客様にどう分かっていただけるようにやっていくか。その辺からいろいろな改善が生まれてくるのではないかという感じがします。
腰痛というお話が先般ございましたが、40年前は頸肩腕症候群というのがあったかと思いますけれども、手がしびれても分からない。外から見たら本当に痛みは分からないですね。本人の手術によって、これは頸肩腕症候群というと労働問題になったのですけど、労使の問題になりましたけど、大事なことは企業がちゃんと従業員を守ってやる。従業員に誠意に対応していくことが必要だと思います。どうしても会社というのは労災にしたくない。大手は別ですけど、労災は面倒くさい、全くそういうことはしない、これが実態なのです。ちゃんと従業員に優しい眼差しで、業務遂行性があるなら、業務起因性があるなら、しっかりと企業は対応してあげる。このような環境をいつも作っていかなければいけないと強く思います。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。お願いいたします。
○桑原構成員 桑原でございます。私からは定期的にスーパーマーケットであったり、総合スーパーの労務担当との情報交換であったり、弊社が所属しているグループ会社内での、労務担当の情報交換の中でもあった声ですが、ハラスメント法が施行された後に、どの企業もどういった対策をしていかなければいけないのか。それぞれが自主的にいろいろな情報を取って、それまでもやられていましたが、検索でいろいろハラスメント対策と検索すると、厚労省さんの中でもストップ・ザ・ハラスメントでしたか、オレンジ色のページのホームページ等々に行き、そこに事例集や動画をフリーでダウンロードして見られるとか、そういったのが一括でそこにあったと思います。情報交換していると、結構、他社さんもそういったのを活用されていて、現場で我々小売業ですと、本当に座ってゆっくり研修を受けるというのではなく、立ったまま15分ぐらいのミーティングの中で5分だけの研修とか、そういったことしかできないのが現状ですので、そういった中で活用していると。
そういった中で動画を検索したときに、転倒災害の動画を各労働局さんもいろいろ作っていますが、それぞれがばらばらになっていて、それを自分たちで集めるというのではなく、また、中には30分ものの動画を作っている所もあったり、あと短い時間とか、そういったのが、もう少し現場サイドに寄ったものを集約して分かりやすく、それが企業として、今後、しっかりトップの方からもやっていこうというメッセージがあれば、それぞれの企業がやっていきやすいのではないかと思っています。以上です。
○髙田座長 桑原委員、ありがとうございました。津下委員、お願いします。
○津下構成員 先ほど小菅委員からありましたように、労働者、働く人のやりがいとか健康とかを考えた職場づくりというのが基本になって、それが浸透していくといいのかなと強く思いました。そういう中で先ほど信澤委員から、昔はコルセットを使っている人もいっぱいいたけど、本当に減ったんだよという成功事例のご紹介がありましたが、どういう点がポイントなのかというのが業態ごとに違っていますし、また作業工程とか場面ごとに留意事項が違うので、経験値がある団体とか業界団体とかが資料をコンパクトにまとめて、施設用に周知するという取組が必要かなと思いました。自治体に個別ににやってくれと言っても、なかなか現場は全てを見れないし、働き方も多様になってきているので、現場目線でそういうコンテンツを作ろうという動きを共同でされて、それを共有していくと。
それから労働安全衛生教育も、お話しを聞いているだけでは面白くないですが、ヒヤリハットの事例について、自分たちからどうしたら防げたんだろうということを、現場でミーティングをする時間を取ってそこで意識を上げていく。製造系では営業の前に体操したり、体のチェックをしたりというのをルーティン化しているように、作業の前の準備というのが定着していると思いますが、そういうものを、当たり前のようにルーティン化できるパッケージを、業界ごとに作っていく。または職場ごとでそういうものを作っていこうという、ポジティブな安全教育の仕組みを作っていくのがいいかなと思います。業界は非常にコロナの状態であったり、デジタル化の状態であったり、いろいろ変わってくるので思いました。
あと、パッケージが大きすぎると重すぎるという事例が紹介されました。小売の方々が何を困っていてどんな事故につながっているのかというのを、上流側にきちっと伝えていかないと、これはとどまらないと思います。こういう現状を見える化して、そこの上流側の方にどう伝えていくのか。または大きな荷物の場合には小さな荷物に小分けできることや、機械が運ぶところと人が運ぶところ別に重量制限をかけるとか、そういうきめ細かな対策の目を職場ごとに考えていく、また業界全体で申し入れするような仕組みを醸成していくのが重要かなと思いました。
○髙田座長 ありがとうございました。関係者の意識をうまく転換していくというところが重要になってくるかと思います。山﨑委員、手を挙げられていますので御発言をお願いします。
○山﨑構成員 よろしくお願いいたします。先ほど信澤施設長もおっしゃっていましたが、今、介護技術というのは10年、20年前よりも格段に進歩しているなと感じています。というのは、従来は引っ張り上げるとか抱え上げるとか、そういった介護が主流だったのかなと思いますが、今はボディメカニクスを使った介護ということで、なるべく体に負担のかからないように、介護者に負担がかからないということは、利用者に対しても負担がかからないという介助になってくるかなと思うので、そういった意味ではどんどん進歩しているかなと思います。一方で、おっしゃっていましたが、資格がなくて経験の浅い介護者に関しては、人手不足もあってなかなか指導が行き届かないので、腰痛の要因になるかなというふうに思います。
それと、50人以上の事業場においては、安全衛生委員会が設置義務とされていますけれども、小規模、それ未満に関しては、安全衛生委員会の設置義務がないというのも、1つの大きな要因かなと思っています。また、大規模で50人以上の事業場でも、この安全衛生委員会でどれだけ腰痛予防、転倒予防に真剣に取り組んでいるのかなと考えますと、全国に相当数ある施設の中で、これに真剣に取り組んでいる施設がどれだけあるかなというのが、また疑問視しなければいけない部分かなと思います。また、安全衛生委員会でしっかりこの腰痛・転倒に取り組むためには、数年に一度、実地指導が各施設で行われていると思いますけれども、その実地指導の必須項目に入れるとか、そういった具体的な取組を進めなければ、なかなか浸透していかないのかなとも思っています。あと、現場感からすると、先ほど来言っていますけれども、この人手不足の中、新たにこういったことに取り組むとなりますと、業務が増えることになり、なかなか取り組むまでに二の足を踏んでしまうというか、この忙しい中、また新たな業務が増えるとなると、なかなか取り組むのが難しいのかなとも思います。
具体的な方法としては、高知県で取り組んでいるノーリフトケアというのを、皆さんも御存じだと思います。これは単に介護ロボットの導入とかICTの活用だけでなく、本当に日常の労働環境の中で、下にある物を少し上に上げるとか、そういった少しずつの取組を始めるところから入るのですが、それも高知県では官民一体で行政が支援しながら、ノーリフトケアに取り組んでいる所を、市のホームページに載せるとか、そこに載せている所は、ノーリフトケアに取り組んでいるという実証を得られますので、そこに人が集まる。そういったプラスの好循環が生まれているということも伺っています。そういったところも参考にしてはいかがかなと思います。
もう一点、お願いですけれども、この検討会でマニュアルとかガイドラインなど、どんなに素敵なものを作っても、浸透は多分しないと思います。これを浸透させるには調査・検証というのが必ず必要だと思いますので、その辺もしっかりやっていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○髙田座長 ありがとうございます。貴重な御意見と今後に向けての御助言を頂きました。今村委員、発言をお願いいたします。
○今村構成員 ありがとうございます。具体的な対策というところで発言させていただきます。職能団体としての取組ですが、基本的に介護というのは、チームで行うものであろうかと思っています。その中で、様々な環境の中で、いかにこういう労働災害等を防いでいかなければならないかということを踏まえますと、介護福祉士に求められるものとして、チームマネージメントですね、介護職チームにおけるマネージメントを適切に発揮しなければならないということは、明確に求められていますので、現場における機能分化といったことを図っていく必要性が高いと感じているところです。その上で、技術の指導とか教育の方法、マネージメントといったものを学ぶ研修会等を、今、全国で展開しているところです。
次ですが、私の所属法人の中での機能分化ということについて、お話させていただきます。私の施設では外国人の介護人材とか、70代の短時間高齢者の方を多数雇用しています。外国人の介護人材につきましては、いわゆる介護福祉士を持っている人もいれば、留学生といった方々もいらっしゃるのですが、介護の技術という部分については、特に男性になりますと力業でということが、よく見受けられます。それは利用者にとってよろしくないんだよということを、これは言葉の理解も通して覚えていただくという仕掛けをやっています。理屈が、我々日本人と外国人の方では感性が違いますので、そこのところを踏まえながら、言葉の理解を通した介護技術の指導に取り組んでいるところです。
それと、高齢者の方々ですけれども、こういった方々に直接的な介護というのはなかなか難しい。したいとおっしゃる方はいらっしゃいますけれども、そこはしっかりと話をして、直接的な介護は介護福祉士をはじめとする介護の職員が、メインで行うということを明確にお知らせした上で、そのほかの業務を担っていただく。環境整備とか食事の準備、下膳、シーツ交換といったものを担っていただいて、それ以外の職員が、しっかりと介護に向き合うということで、今、私の事業所の方では取り組んでいるところです。
そのほかに、特別養護老人ホームとかになりますと、重度の方ばかりです。その中で人材が足りない中で、一人で担わなければならない時間が多いという施設になりますので、先ほどの山﨑委員のお話ではありませんが、うちの事業所にも安全衛生委員会がございます。その中で腰痛予防について話し合って、移乗動作とか移動介助の2つに着目して、職員にアンケートを取りました。結果として、こういったものがほしいということで出てきたのは、高いロボットは買えませんので、移乗ボードとかそれに付随するような簡易的なものを購入して、今、実際に導入、使用しているところです。感覚としては、非常に楽になっているという声が多数ありますので、そういう腰痛等の軽減、腰への負担軽減といったことには、つながっているのかなと思っているところです。ただ、注意しないといけないのは、職員があっちこっちに行って、一人でいないといけないけど、次はこれをしないといけないということで、時間を気にして使わなくなる。こういったことにならないように、事業所として、私どもの立場として、注意しないといけないかなと思っているところです。発言は以上です。
○髙田座長 今村委員、ありがとうございました。チャットが入っているようですが、そちらは大丈夫ですか。小菅委員、お願いいたします。
○小菅構成員 先ほどの津下先生のヒヤリハットや現場のミーティング等、正にそのとおりだと思いますし、山﨑委員がおっしゃった50人未満の体制も、それに寄与するものだと思います。加えて、労使双方の防災意識を高めることについて、先ほどの資料2の課題⑦にある、労災の発生が重要な経営問題であるという認識も重要だと思います。例えば、第三次産業が第二次産業と異なる点の1つに、職場で目の前にお客様やサービスの提供対象がいるという事があると思います。小売業なら売場における転倒防止は、顧客の安全確保でもあり、企業にとっては顧客サービスの一環でもあります。介護に関しても介護の対象者と一緒に転倒すれば、顧客に迷惑をかけることになります。労働者の安全と同時に顧客対応という経営課題でもあると認識して進めていけるとよいと思います。
○髙田座長 ありがとうございます。ほか、よろしいでしょうか。災害防止意識を高めるということで、何か追加の御発言はよろしいでしょうか。あとは、2番目にあります対策について何か追加で御発言、よろしいでしょうか。安全衛生教育についてはいろいろな御意見を頂きましたが、追加でよろしいでしょうか。それから、災害防止と親和性のある既存の取組ということで健康経営、あとは地域・職域連携とか出てきましたけれども、そのほか何かこういったものということで御意見はございますか。よろしいでしょうか。そうしましたら、既に一部出てきているお話もございますけれども、職場において対策を推進するための体制ということで、どのような者を参画させることが有効か。安全衛生管理体制については既にお話も出てきていますが、このことについて、更に追加で御発言のある委員の方がいらっしゃいましたら、お願いしたいと思います。小菅委員、お願いします。
○小菅構成員 先ほどから話が出ているKYやリスクアセスメントは、第三次産業においてはまだ馴染みがなく、定着していない職場もあると思います。安全衛生コンサルタント等、KY活動のエッセンスを伝えられるような方を入れながら、体制を取っていけるとよいと思います。そして、そのための支援があるとよいと思います。
○髙田座長 ありがとうございます。ほか、ございますか。島田委員、お願いします。
○島田構成員 「対策の実施にどのようなものを参画させることが有効か」という点ですが、基本的には全員だと思います。経営トップの方は職場にどれくらい危険性が潜在するかということを理解した上で、対策を行うためのリソースの配分をする。リソースに関しては資金面とかの課題もあると思いますが、その点は行政からの支援も頂ければと思います。また、安全担当者については、例えば店長や施設長の兼務でも良いと思いますが、作業環境の確認を含む業務全体の安全をチェックするという役割があります。それから現場の作業者には、自身が経験したヒヤリハットの情報や、個人的にこういうふうに安全を意識し、取り組んでいるといった好事例などについて紹介してもらい、同じ現場の同じ作業者と共有してもらうという役割もあると思います。基本的には皆さん集まって、なかなかそういう時間は作れないと思いますけれども、少しでも時間を作りながら、活動していただく必要があると考えます。
○髙田座長 ありがとうございます。ほか、ございますか。小澤委員、御発言をお願いします。
○小澤構成員 先ほどからいろいろとお話いただきまして、大事なことは今の現場を見ていまして、会社の特に意識改革です。考え方をしっかりと、従業員の安心・安全に取り組むという姿勢を示すこと、これをしっかり見なければ、現場でいくら頑張っても、なかなか会社が理解していないということもありますので、その辺はしっかり取り組んでいく必要がある。特に我々流通業というのは売上げに追われていましたら、利益を上げる、生産性を上げるということは、重要なモチベーションではないか。モチベーションを上げるためにも安全衛生をしっかりやる。そういう意味では、労働安全衛生委員会が定着するとか、安全衛生委員会の設置義務がなくても月1回は委員会を小さな店も開く、これを定型化していくと。現場で、安全衛生で話すことないから売上げの話だけだとしても構わない。どういう事故があったとか、ヒヤリハットがあったとか、これを話し合う。これをしっかりと定型化していくということは、大事だという感じがしています。というのは、去年で人口65万人減っていますね。毎年減っていくと2060年に8,200万人、日本人が4,000万人減ってしまうのです。労働力人口が激しく減ってしまう。そういう意味では、今の労働者をしっかりと固めて維持していくということは大事だと思います。人が足りない、足りない。よく分析すると休職しているのです。休職して休んでいる。もしくは精神的にお客様にいじめられて休んでいる。こういう現象がありますので、もう少し従業員に目を向けて安全衛生とか、それが売上げ、利益、労働生産性に結び付いているということを定着させていく。安全衛生委員会、どんな小さいところでもやっていかなければいけない。パートが8割で正社員1割、それでもいいですね。こういうものを是非ともやっていくといいかなと、計画したいなという感じがしています。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。津下委員、お願いします。
○津下構成員 以前、ヒアリングをさせていただいたときに、現場で何が困っているか。今、ミーティングという話がありましたけれども、特別困っていることがないように見えても、普段の仕事の中でどういうところが分からなくて困っているか、また、危険に感じているかということを、話し合う場を持ってから職場の雰囲気が変わりました、自分たちの声を聞いてもらえるようになりましたというパートの方々の声を伺っています。ということで、そういう場が必要なのですが、どうしても忙しいと流されてしまいます。
少し例は違うかもしれませんが、日本のトイレがすごくきれいなのは、何時に誰が掃除した野かをみえる場所に貼ってありますね。汚れていないと思っても定期的に確認する、すべきことを見える化することが重要と思います。ですので、ルーティン化していくこと、短い時間でもいいのでそういう場を作ること、職場の中でルーティン化していくことが重要なのかなというふうに思いました。
一方、人手不足の問題で時間がないとか対策ができないというのは表裏なのですが、長く働ける人、やりがいを持って働ける人が増えることが、人手不足の解消法に直結する話ではないかと思います。その辺りのエビデンスと言いますか、統計的というのは難しいかもしれませんが、事例の横展開ですね、先ほどご紹介の事例でも、安心した職場であれば人が集まっていくと。同じ介護の現場でも、労働者は安全な職場を選ぶことが可能な場合が多いと思いますので、人手不足の業界こそ、どういうふうに安全対策をしているかということをアピールしながら、人手不足と両方一緒に解消していけることにつながればいいのかなと思います。
○髙田座長 ありがとうございます。鈴木委員お願いします。
○鈴木構成員 ありがとうございます。衛生委員会の活用は重要な視点だと思います。先ほど河津委員から、最近は1つの事業所では長年、労災はないが、法人単位でみると労災の件数があるというお話がありました。例えば、安全衛生委員会をオンラインを用いて、複数の事業所で共同開催するとか、設置単位について、複数の50人以上事業所が単一の安全衛生委員会を設置することも、知見や経験を共有して労災防止に効果的であるのであれば、あっても良いと感じた次第です。以上でございます。
○髙田座長 ありがとうございました。ほかに追加は。井上委員、お願いします。
○井上構成員 ありがとうございます。商工会議所の井上です。先ほど、各先生方から、50名以下の企業にも安全衛生委員会の裾野を広げるべきかどうかというお話があったと思います。安全衛生委員会は大変重要なミッション、パーパスをなしているのは十分承知なのですが、商工会議所としては、中小企業も200名規模の企業もあれば、100名、50名、そして、20名、10名、10名未満と、様々な企業がたくさんありますので、例えば、5名の会社に安全衛生委員会の1名、必ず義務化とかになってしまうと、大変業務的に負荷がかかってしまうことが想定できる企業も多くあるかと思われるので、そこは柔軟に検討していく必要があるかと思います。ただ、一方で、全企業が取り組む必要がありますので、小さい企業でも簡単な積重ねから取り組めるような、仕組み、システム、そういったものを広く周知して、全企業で取り組んでいく必要があると思います。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。今、既に中小企業、それから小規模事業所の対策について、支援策というお話が出てきておりますが、さらに追加で何か御発言があればお願いします。
○津下構成員 厚生労働省健康局で地域・職域連携による健康対策に取り組んでいます。これまで生活習慣予防分野で進めてきたのですが、中小企業、小規模事業所の健康課題、健康ニーズに合わせた取組が必要だろうと思います。自治体の保健師とか、介護予防をやっている担当者、健康づくり、運動資源等、自治体が高齢者の介護予防とか健康づくりに資する資源を持っていて、専門家も存在する、そういうような場をうまく活用していただくと。パートタイマーは労働者でもあり地域住民でもあるという視点から、事業所が全てを丸抱えで行うのは難しいが、市町村のインフラなどを一緒に活用して、事業の相乗りをしていくことはどうかと思います。それと、中小企業の健康経営の認定とか、健康宣言事業所とか、そういう所にもつながっていくだろうと。健康宣言事業所の中で、腰痛対策や転倒防止、労働災害防止を頑張っているという宣言をメニューの中に取り入れていただく。その具体的な例が集まってくると、ご近所の事業所の取組事例が分かると、「うちもやらないと、自分の所よりやっていないと思っていた所がやっているのだ」と経営者も考えるようになるかもしれない。小売店とか、いろいろな同業者が地域にありまして、地域で健康宣言に取り組んでいる事業所を自治体等で見える化する。自治体がそういう健康宣言や健康事業所を公表しており、それがきっかけで求人で有利となり、何十年ぶりに新規採用になったという話もあるぐらい、企業イメージのアップにつながる仕組みを作りつつあって、かなり進んでいる所があります。確かに自治体間で取り組みに温度差があるのは問題があるのですが、自治体のそういう取組み、健康増進などをうまく活用していただくのは、どうなのかなと思いました。
○髙田座長 ありがとうございます。自治体の資源、それから健康宣言、健康事業所、そういったものをいろいろ見える化することで、企業にもメリットもあるというお話でしたけれども、ほかに何か、追加でありますか。よろしいですか。そのほか、転倒・腰痛災害を防止する観点から、ここの論点にはないけれど、検討してみた方がいいということで御意見があれば、最後に頂ければと思いますが、何かありますか。河津委員、お願いします。
○河津構成員 お願いします。先ほどの具体的な所でも言えばよかったかと思ったのですが、特に中小企業と、リソースが十分でない企業だと、例えば、デリカシューズとか長靴を自分で買わせているような所があるという話を、チラッと聞いたことがあります。特に転倒予防に関しては、恐らく不安全状態と不安全行動への対策が王道だと思いますが、保護具としての滑りにくい靴などに関しては、何の規制もないというか、本人に買わせても別に問題ない状態になっていますので、やはりその辺も。ただ、規制を変えることになるのですが、それで望ましいという形でもいいと思いますので、安全に関する用具に関しては、事業者に義務付けることも検討していただければと思います。
○髙田座長 ありがとうございました。ほかに。小菅委員、お願いします。
○小菅構成員 今、お話いただいたことは私も同感です。さらには、滑止めのシューズが事業主から支給されても、どうしても歩きやすいスニーカーに履き替えてしまうという話を現場で聞きます。装具や備品の整備と同時に、効果的に使っていく啓発も必要だと思います。また、転倒については靴のほかに床を滑りにくくする対処法もあります。その場合、小売業の店舗形態によっては、テナント企業と店舗を管理する企業の調整が必要になることもあります。転倒の要因や事業所の環境を見極めながら議論していく必要があると思います。第三次産業の現場はかなり多様で、転倒や腰痛の原因も多様だと思いますので、先ほどの提言①にあるように、状況をしっかり把握していく必要があると思います。今後この検討会の中でエビデンスが示されつつ議論が進められるのでしょうか。
○髙田座長 それでは事務局から、お願いします。
○澤田中央産業安全専門官 御指摘いただいたデータや実態ですが、今後も事務局からもお示ししていきたいと思います。
○髙田座長 ありがとうございます。もし何か御要望などございましたら、お伺いしたいと思います。そのほか御意見をお寄せいただきたいと思います。よろしいですか。津下委員、お願いします。
○津下構成員 先ほど、業務分担をして、その人の体力や能力や年齢に合わせた仕事の配分というお話がありました。それは本当に重要なことで、それを適切に判断できる基準といいますか、そういう考え方を示していくのは重要なのですが、一方では業務が片寄ってしまうとか、片方に重い労力が片寄ってしまい、不公平感が出るとか、いろいろなことがあります。また、ボランティアの方と働いている方、介護の現場だと、その辺の雇用形態、賃金の状況とかという問題もあって、賃金体系も含めた働き方の中で、どういう風に働いてもらうのがいいのかと。例えば、社員、パートとして働いているのだから、当然ノルマが出るわけですが、本人がそれをこなせない場合、どうしても頑張ってしまう。間に合わない、体力が追いつかないところで頑張ってしまうと。そういった、働き方そのものの在り方の柔軟性というか、その辺りも検討できるのかどうなのかということがあります。
現実に賃金というのがあって、また、労働の負担も人による違いがあって、本人の納得性と、それから、無理のない働き方、なかなか難しい方程式だと思いますが、皆さんが納得できるような仕組み必要です。本当は有償ボランティアとして社会貢献したいという人が多く集まる職場で、それだと最低賃金に引っかかるからできなくなったという話を伺っています。高齢労働者について、多様な働き方と賃金制度についても併せて検討するべきかと思いました。
○髙田座長 ありがとうございました。その働き方についても多様なニーズがあるという御指摘だと思います。ほかはよろしいですか。Webで参加の多くの先生方もよろしいですか。そうしましたら、本日、様々な御意見を頂き、ありがとうございました。これで意見交換を終了したいと思いますので、今後の進め方について、事務局から説明をお願いします。
○澤田中央産業安全専門官 ありがとうございました。今後の進め方についてですが、本日頂いた議論の内容は事務局で整理して、次回までにお示ししたいと思います。次回の検討会ですが、事前に調整させていただいております。2回目として、6月13日(月)16~18時、この場所で予定しております。詳細は改めて御連絡させていただきます。これをもちまして、第1回検討会を終了としたいと思います。先生の皆様、本日はお忙しいところをありがとうございました。
○髙田座長 ありがとうございました。