2022年4月27日 第173回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和4年4月27日(水) 12:30~15:00

場所

労働委員会会館 講堂
(東京都港区芝公園1-5-32 労働委員会会館7階)

出席者

【公益代表委員】
 荒木委員、安藤委員、川田委員、黒田委員、藤村委員、水島委員、両角委員
【労働者代表委員】
 梅田委員、川野委員、東矢委員、冨髙委員、八野委員、世永委員
【使用者代表委員】
 池田委員、佐久間委員、鬼村委員、佐藤(晴)委員、鈴木委員、鳥澤委員、山内委員
【事務局】
 吉永労働基準局長、青山審議官(労働条件政策、賃金担当)、石垣総務課長、松原労働条件政策課長、尾田監督課長、田村労働関係法課長、佐藤賃金課長、岡田監督課過重労働特別対策室長、竹中労働関係法課課長補佐、宮田労働関係法課課長補佐、長澤労働条件企画専門官
【オブザーバー】
 眞下金融庁総合政策局フィンテック監理官、伊藤金融庁総合政策局資金決済モニタリング室長

議題

  1. (1)「多様化する労働契約のルールに関する検討会」報告書について(報告事項)
  2. (2)「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」報告書について(報告事項)
  3. (3)自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の在り方について(報告事項)
  4. (4)資金移動業者の口座への賃金支払について

議事

議事内容
○荒木分科会長 定刻になりましたので、ただいまから、第173回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
本日の分科会も、会場からの御参加とオンラインでの御参加の双方で実施をいたします。
本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の佐藤厚委員、労働者代表の北野眞一委員、櫻田あすか委員、使用者代表の兵藤美希子委員については御欠席と伺っております。
それでは、カメラ撮りはここまでということでお願いいたします。
(カメラ撮り終了)
○荒木分科会長 本日の議事に入りたいと思います。
本日の議題の(1)は「多様化する労働契約のルールに関する検討会」報告書についてです。
それでは、本議題につきまして、事務局より説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 事務局、労働関係法課長の田村でございます。
私のほうから、資料1に基づきまして、厚生労働省において令和3年3月から開催してきました「多様化する労働契約のルールに関する検討会」について、本年3月に報告書を取りまとめましたので、その内容を御報告したいと思います。
まず、1ページ目を御覧ください。1ページ目、本検討会開催の背景と検討事項について御説明したいと思います。本検討会の検討事項は主に2つございます。1点目は、無期転換ルールの見直しです。無期転換ルールというのは、労働契約法に規定されております有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込により期間の定めのない労働契約に転換できる制度でございます。この制度につきましては、平成23年の本審議会からの建議を踏まえて行われました平成24年の労働契約法の改正において設けられたものです。1ページ目の左上、2番目のところにございますけれども、その際の附則におきまして、平成25年の施行から8年後の見直し規定が設けられておりました。これに基づき、今般、見直しの検討を行ったものです。
それから、検討事項の2点目ですけれども、多様な正社員の労働契約関係の明確化です。勤務地、職務、労働時間のいずれかが限定されている正社員を「多様な正社員」としてこれまでも雇用管理上の留意事項などの作成を行ってきたところですけれども、こうした多様な正社員については、無期転換した労働者の受け皿の一つとしても期待されているところです。1ページ目の右上の令和元年の規制改革実施計画におきまして、勤務地、職務、勤務時間等の労働条件について、労働契約の締結時や変更の際に個々の労働者と事業者との間で書面による確認が確実に行われるよう検討を行うとされていたところです。
今回、この2つのテーマについて検討会を設け検討を行いました。1ページ目の下の規制改革実施計画、令和3年6月に決定されたものですけれども、この中で、この検討会において実態調査結果等を踏まえて議論を行い、取りまとめた上で審議会において議論を開始し、その結果に基づいて必要な措置を講ずるとされているところでございます。
資料、2ページを御覧ください。2ページ目の趣旨・目的につきましては、ただいま御説明したとおりです。有識者の先生方に委員として御参画いただきまして、山川先生に座長をお務めいただきました。本検討会、令和3年3月から令和4年3月まで、ヒアリングや実態調査の結果報告など含めて13回開催いたしまして、本年3月30日に取りまとめて公表しております。
3ページ目以降に報告書の概要を付けておりますので、御説明を順次いたしますが、総論の御説明をする前に、まず、無期転換ルールについて、11ページ目の関連データを少し御覧いただければと思います。
この検討会では、無期転換ルールに関する実態調査結果を報告しておりますので、次回以降御議論いただく際には詳細なデータをお示ししたいと考えておりますが、今回は総論として主要なデータのみ御説明いたします。
まず、①について、有期契約労働者の割合は、2021年では24.9%となっております。比率としては減少傾向が見られるところです。
右上の②は、無期転換申込の状況です。2018年度又は2019年度の2年間に無期転換ルールによる無期転換申込権が生じた方のうち、どれぐらい申込をしたかという調査になりますが、申込権を行使した方は約3割、27.8%となっております。残りの7割弱、65.5%の方が、申込はせずに、有期契約のまま継続して雇用されているという状況でありました。
この右側の四角囲みの部分ですけれども、2018年度及び2019年度に無期転換した方の人数は約158万人。これは、例えば5年より前に無期雇用に転換する制度など、企業独自の無期転換制度を含めて転換した労働者の人数となっております。また、5年を超えて申込権が生じる法定の無期転換ルールにより転換した人数は約118万人と推計しているところです。
③の有期契約労働者の無期転換ルールの認知状況について、これは各論にも関わるデータになりますけれども、内容について、知っていることがある方が4割弱、名称だけ聞いたことがある方が2割弱、一方、知らないという方が約4割となっている状況です。
その右の④ですが、有期契約労働者の勤続年数の上限設定について、無期転換ルール導入後の現状において、約8割の事業所では勤続年数の上限は設けていないとしており、設けている割合としては14.2%。これを制度導入前の2011年時点で見ますと、上限を設定している割合は12.3%ということでしたので、微増という状況になっております。
それから⑤で、無期転換後の労働条件等の変化についてです。無期転換ルールにつきましては、契約期間が有期から無期に転換するものでありますので、転換後の労働条件については、別段の定めをしなければ有期契約の際の労働条件で転換するというような仕組みになっておりますけれども、実際にはどうだったかということを御覧いただきますと、約8割の方が右側の区分C、業務量、労働条件の変化がないというような状況になっております。一方、9.2%の方が正社員に転換、それから、9.5%の方が区分Aの、業務量は変化ないけれども、労働条件は改善しているという状況になっております。
こういった状況を踏まえまして、3ページ目に戻っていただいて恐縮ですけれども、報告書の概要を御説明したいと思います。
まず、総論部分です。今、御覧いただいたような制度の活用状況を踏まえると、無期転換ルールの導入の目的である有期契約労働者の雇用の安定に長期雇用を希望する有期契約労働者にとっては一定の効果が見られるとされております。また、通算年数などによる更新上限の導入は、制度導入前と比べて大きくは増加していない。他方で、制度の十分な活用への課題や、望ましくない雇止め、権利行使を抑止する事例等も個別の相談例や裁判例等では見られるところです。
現時点で無期転換ルールを根幹から見直さなければならない問題が生じている状況ではないものの、各企業における有期労働契約や無期転換制度について、労使双方が各企業における人事管理制度における位置づけなどの情報を共有し、企業の実情に応じて適切に活用できるようにしていくことが適当であるとされております。
なお、今後制度のさらなる活用に伴い、引き続き状況を注視し、必要に応じて改めて検討する機会が設けられることが適当とされております。
(2)以下が各論になります。まず1点目として、無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保についてです。これについて、まずは労使ともに無期転換ルールの認知度に課題があり、行政においてさらなる周知が必要であろうとされております。
それから2点目として、労働者が無期転換ルールを理解した上で申込を判断できるように、無期転換申込権が発生する契約更新時に労働基準法の労働条件明示事項として転換申込機会と無期転換後の労働条件について、使用者から個々の労働者に通知することを義務づけることが適当であるとされております。
(3)無期転換前の雇止め等についてです。無期転換前の雇止め等について、法や裁判例、これは無期転換ルールを定めた労働契約法18条ですとか、19条に規定されている雇止め法理等がございますけれども、こういった法や裁判例等に基づく考え方を事例に応じて整理し周知するとともに、民事紛争に関する労働局の個別紛争解決制度において活用していくことが適当とされております。
それから2点目で、紛争の未然防止や解決促進のために、特にトラブルが生じやすい更新上限について、その有無ですとか内容の明示の義務づけ、それから、最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合には、労働者の求めに応じた上限設定の理由説明の義務づけをすることが適当とされております。
それから3点目に、無期転換申込を行ったことを理由とする不利益取扱い、これは解雇、雇止め、労働条件の引下げ等が該当しますけれども、こういった事案について、その内容に応じて司法で救済され得るものであり、労働契約法など現行法や裁判例、判例法理等の周知徹底等が適当である。また、権利行使の妨害自体は許されないものであることから、その妨害の抑止につながるような方策を検討することが適当であるとされたところです。
続いて4ページ目を御覧ください。4ページ目の(4)は、通算契約期間及びクーリング期間についてです。通算契約期間は、法の5年を超えたらというところの5年の期間、それからクーリング期間については、有期契約を締結していない期間が一定期間続いた場合に、それ以前の契約期間を通算しないという仕組みがありますけれども、このクーリング期間についてです。
通算契約期間及びクーリング期間について、制度が実質的に適用されてから長くなく、特に変えるべき強い事情もないことから、制度の安定性も勘案し、現時点で枠組みを見直す必要は生じていないと考えられるとされたところです。
一方で、法の趣旨に照らして望ましいとは言えないようなクーリング期間の設定の事例ですとか、そういったものについてはさらなる周知が適当であろうとされております。
それから、(5)で、無期転換後の労働条件についてです。無期転換後の労働条件については、先ほども申し上げたとおり、別に定めがなければ、有期契約のときと同じ条件ということになりますが、有期契約時と異なる定めを行う場合について、労働契約法には個別契約で労働条件を定める場合ですとか就業規則で定める場合などのルールがありますけれども、こういった法令や裁判例等に基づく考え方を整理し周知することが適当とされております。
また、無期転換した後の活用のあり方ですとか待遇の見直しについては、労使により検討されていくものでありますけれども、正社員登用やキャリアコースの検討など、企業内での無期転換後の労働条件の見直しの参考になるような情報提供を行っていくことが適当だろうとされております。
2点目で、無期転換者と他の無期契約労働者との待遇の均衡についてですけれども、無期転換後も、パートタイムの無期契約労働者であれば、パート有期法の適用というのはありますが、フルタイムの無期契約労働者についても、労働契約法3条2項、均衡を考慮するような規定がございますが、この規定を踏まえて均衡考慮が求められる旨を周知していくことですとか、労働契約法4条に、労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとするといった規定がございますが、こういった規定を踏まえて、使用者に無期転換後の労働条件について考慮した事項の労働者への説明を促す措置を講ずることが適当であろうとされております。
それから3点目で、無期転換後もパート有期法に基づき、短時間・有期契約労働者等の処遇の見直しが行われるような場面があるかと思いますけれども、こういった際には、フルタイムの無期転換者についても併せて法3条2項も踏まえて見直しを検討することが望ましい旨を周知していくことが考えられるとされております。
それから、(6)で有期雇用特別措置法に基づく無期転換ルールの特例についてです。この有期雇用特別措置法につきましては、高度な専門的知識等を有する有期契約労働者及び定年後引き続いて雇用されている有期契約労働者につきまして、無期転換申込権の発生までの期間に関する特例が設けられているところです。これにつきましては、特例が知られていない現状があるため、さらなる周知を行うことが適当であるとされたところです。
無期転換ルールにつきましては以上の内容となっております。
続きまして、多様な正社員の労働契約関係の明確化等に関する部分になります。こちらについても、最初に12ページのデータのほうを御覧いただければと思います。
こちらも、検討会におきまして実態調査の結果を御報告しておりますので、次回以降、詳細データをお示ししたいと考えておりますけれども、総論として、主要なデータのみ取り上げております。
まず、左上の多様な正社員がいる企業の状況について、この調査は30人以上企業を対象として行ったものですけれども、多様な正社員がいる企業の割合としては、2割弱、18.3%となっています。企業規模が大きくなるほど割合としては高くなっております。限定内容別で、こちらではおつけしていないのですけれども、特に大企業では勤務地を限定しているような社員の方が多くなっているところです。
それから②で、今回の論点であります労働条件の明示に関しての調査になります。多様な正社員の限定内容の説明方法について、書面で明示している割合が75%前後、口頭のみが5~7%ぐらい、一方、特に説明していない企業も、少ないけれどもある状況です。
それから③で、多様な正社員の限定した労働条件を変更する際の説明方法です。これにつきましても、書面で明示している割合が8割前後となっている一方で、口頭のみの場合も1割前後あるというような状況になっております。
それから④で、限定内容の説明の有無と企業内でのトラブルの発生状況を見たものですが、書面又は口頭で限定内容について説明している企業に比べますと、特に説明していない企業のほうがトラブルが多いというような状況になっているところです。
こうした状況を踏まえまして、5ページにお戻りいただいて、報告書の内容を御説明したいと思います。
5ページは、まず(1)総論です。職務、勤務地又は労働時間を限定した多様な正社員については、いわゆる正社員と非正規雇用の労働者の働き方の二極化の緩和、労働者のワーク・ライフ・バランス確保や自律的なキャリア形成、優秀な人材の確保や企業への定着の観点から、労使双方にとって望ましい形での普及・促進が必要であろう。また、多様な正社員制度を設けるかどうかは個々の企業で決定されるべきことであるものの、労働契約が多様化する中で、勤務地限定等の個別的な労働契約内容が曖昧になりやすいことに起因する労使紛争の未然防止や、労使双方の予見可能性の向上に加えて、労使間の情報の質・量の格差是正、契約に係る透明性の確保を図っていくことが必要であろうとされたところです。
こうした観点から、そもそも労使自治や契約自由の原則の大前提として、これまでも周知等を行ってまいりましたけれども、運用上の取組に加えて、法令上の措置も含め、労働契約関係の明確化を検討することが適当であろうとされております。
なお、労働契約の多様化が進展する中で、正社員概念自体が曖昧になっていることですとか、いわゆる限定がない社員についてもそういった旨を労使双方で認識することが重要であることなどから、労働契約関係の明確化は、多様な正社員のみならず、全労働者に対しても有益であるため、労働者全般を対象に検討することが適当であろうとされております。
6ページ目が具体的な各論の部分になります。この労働契約関係の明確化に関して、大きく2つ議論しております。1つは労働契約締結時の労働条件、もう一つは労働条件が変更された際の労働条件の確認についてです。
まず、労働契約締結時の労働条件の確認について、現行法上、労働基準法15条に基づく労働契約を締結する際には、賃金、勤務時間、その他の労働条件についての明示義務がございますが、この中で就業の場所、従事すべき業務については、雇入れ直後の場所・業務を明示することとされているところでありまして、勤務場所や業務内容の変更範囲の明示までは求められていないところです。
この点に関して、予見可能性の向上等の観点から、多様な正社員に限らず、労働者全般について、この15条の労働条件明示の対象に、就業場所・業務の変更の範囲を追加することが適当であるとされたところです。
それから次に、労働条件が変更された際の労働条件の確認について、この15条の労働条件明示は契約の締結に際し行われるものとなっておりまして、労働条件が変更された際にまでは現行法上は義務づけられておりません。
この点について、労働条件を個別合意により決定する場合もあるわけですが、個別合意による変更の場合には、労働条件の変更内容の書面の明示が保障されていないといったこと、それから、仮に先ほど御説明した雇入れ労働契約の締結時の明示の対象に就業場所・業務の変更範囲を追加するとした場合に、例えば変更範囲自体が変わった場合に、その変更後の労働条件を書面で明示しなければ、当該変更前の労働条件が存続しているものと誤解したままとなるリスクがあること。こういったことから、労働条件の変更時も、15条の明示の対象とすることが適当であるとされたところです。
具体的には、労働契約の締結時に書面で明示することとされている労働条件、これは勤務場所とか職務とか労働時間、賃金などですけれども、こういった労働条件が変更されたときには、変更の内容を書面で明示する義務を課す措置が考えられるとされたところです。
この括弧の中に記載しておりますが、①就業規則の変更等により労働条件が変更された場合、これは、就業規則は労働基準法上の周知義務があることなどから、個々の労働者への明示までは不要とすることが考えられるとされたところです。また、②について、元々規定されている変更の範囲内で業務命令により変更された場合も、変更時の書面の明示の対象からは除外することが考えられるとされたところです。
一方で、本措置に合わせて、就業規則について、労働者が必要なときに容易に確認できるような方策というものの検討が必要ではないか、あるいは、全ての労働者に対して対象になるということで中小企業への支援の検討も必要ではないかといったような意見も出ております。
このほか、就業場所・業務に限って本措置の対象とすべきとの意見ですとか、就業規則の新設・変更による場合にも明示の対象とすべきとの意見、電子的な方法の明示も検討すべきとの意見もあったところです。
こういった労働契約関係の明確化を図る場合の留意点についても整理しているところですけれども、留意すべき点として、労働条件の変更に関する考え方ですとか、多様な正社員の限定された勤務地等の変更の場合の考え方、それから、事業所が廃止された場合の、例えば解雇回避努力義務などについての考え方、こういった場合の考え方について、裁判例等、幾つか出ているものはありますので、これを整理して周知することが適当とされたところです。これについては報告書の別紙でも整理したものをおつけしているところです。
7ページ目は労使コミュニケーション等についてということで、これは無期転換労働者、それから多様な正社員に、共通するテーマとしてこちらにまとめて記載しているものです。
まず、無期転換に関して、無期転換制度を定める際に、無期転換者・有期契約労働者の意見が反映されるように労使コミュニケーションを促すことが適当であろう。それから、多様な正社員について、多様な正社員の働き方を選びやすくするためにも、いわゆる正社員自体の働き方、これは例えば転勤のあり方ですとか所定外労働時間も含めた働き方についての見直しを含めた労使コミュニケーションを促すことが適当であろう。それから、無期転換や多様な正社員に係る制度等については、労働者全体に関わるものであるほか、それぞれの雇用形態間での待遇の納得感が得られるようにすることも必要であろう。このため、個々の労働者の意見を吸い上げるとともに、労働者全体の意見の調整をすることも必要であろうと指摘しているところです。
こうした観点から、過半数代表者に関する制度的担保ですとか新たな従業員代表制の整備も含めて、多様な労働者全体の意見を反映した労使コミュニケーションの促進を図る方策も中長期的には課題であろうと指摘されたところです。
今回の検討会の報告書の内容につきましては以上となります。私からの説明は以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ただいまの事務局の検討会報告書の説明について、御質問、御意見があればお願いいたします。
なお、オンライン参加の皆様におかれましては、発言の御希望についてはチャットのほうに発言希望と記入してお知らせくださいますようお願いします。
それではいかがでしょうか。
鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。無期転換ルールについて、私から一言申し上げたいと思います。
無期転換ルールを導入する議論が行われた当時、5年経過する前までに雇止めが多発するのではないかと、こういう懸念が強く出されていたところかと思います。経済界といたしましては、施行後、ここに至るまで、この無期転換ルールの周知を積極的にさせていただいたり、また、正社員登用の呼びかけといったところもさせていただいたところでございます。
先ほど田村課長からも御説明ございましたが、無期転換ルールによって無期転換された労働者の方が、2018年、19年、累計で約118万人。また、正社員登用も含めてということだと思いますが、企業独自の無期転換制度によって転換された方も含めると約158万人に上るということだと存じます。また、ちょっとピントがずれているかもしれませんけれども、総務省の労働力調査によりますと、不本意の非正規の方も近年は減っている傾向にあるということも承知しておるところでございます。
こうした現状を鑑みますと、無期転換ルールによって雇用の安定というのが一定程度図られたということは評価することができるのではないかと思っております。その意味で、報告書の方向性として示された、現時点で無期転換ルールを根幹から見直さなければならない問題が生じている状況ではない。ただし、各企業における有期労働契約や無期転換制度について、労使双方が情報共有し、企業の実情に応じて適切に活用できるようにしていくことが適切であるという点は賛同したいと思います。
とりわけ、無期転換ルールの認知度が低い点というのはかなり課題の大きな柱ではないかと思っておりますので、認知度が上がるような観点から建設的な議論を今後行うことが大切ではないかと感じた次第でございます。
私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。オンラインのほうで、先に希望が上がっております池田委員、お願いいたします。
○池田委員 どうもありがとうございます。私のほうからは、多様な正社員について申し上げさせていただきたいと思います。
多様な正社員は、労働者のワーク・ライフ・バランスの実現や自律的なキャリアの形成、企業による優秀な人材の確保や定着の実現に資する面があると思います。ただし、社員に対してどのような雇用、就労形態を提供もしくは用意するかということについては、それぞれの会社の雇用政策によるところが大きいと、そのようにも考えるところです。
例えば労働政策研究・研修機構の多様な正社員の活用状況に関する調査では、多様な正社員の課題として、労務管理が煩雑・複雑になるですとか、区分間での仕事や処遇、労働条件のバランスが難しいなどという意見が挙げられています。また、同じく、同機構の多様化する労働契約のあり方に関する調査においても、多様な正社員がいない理由として、そもそも正社員は多様な働き方が可能だからという意見が半分程度を占めている実態がございます。ですので、多様な正社員の導入は各社の判断によると。その点については引き続き堅持していただきたいと思います。
私のほうからは以上となります。ありがとうございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。続いて、両角委員、お願いいたします。
○両角委員 両角です。
この検討会に出ておりまして、先ほど事務局からも丁寧に御説明があったところですけれども、私からも一言申し上げたいと思います。
非常にたくさんの論点があった検討会でしたけれども、まず無期転換のほうについては、先ほど来御説明がありましたように、制度の根幹は維持しつつ、それがしっかり活用されていくように周知を図っていくという方向性でございます。それから、実際に無期転換をする方も出てきていて、それに係る紛争、例えば雇止めであるとか、転換後の労働条件であるとか、そういった紛争も出てきており、裁判例なども、少しですけれども、出てきているところです。そこで紛争防止の観点から、これらの点に関する法的ルールを整備し周知することも必要としています。ただ、無期転換後の労働条件など、まだ判例、学説ともに固まっていないような難しい論点もございますので、これは今後、裁判例、学説の発展なども見ながら周知していくことが必要ではないかと思います。
それから、多様な正社員のほうですけれども、これは労働基準法15条の労働条件明示義務を、労働契約締結時における勤務場所と職務内容の変更範囲、そして労働契約の内容である労働条件を変更したときにも拡大するという内容になっております。これは、先ほども説明がありましたけれども、多様な正社員というのが特に法律上の概念があるわけではなく、全体として働き方が多様化してきておりますので、全ての労働者に関わる問題であるという観点から検討がされております。
実際にどこまで明示を義務づけていくか、あるいはどういう方法で義務づけていくかということについては、検討会でもいろいろな意見があり、その辺りは政策的な考慮を要する問題でもあるのかなと考えております。
それから、労働契約上、今回、勤務地や勤務内容の限定があるということを締結時に明示していくという方向が示唆されているわけですが、そういうことになると、例えば整理解雇のときに解雇されやすくなってしまうのではないかというような御懸念もあるかと思います。これも検討会で裁判例等を整理いたしまして、確かに労働契約上の限定があるときは、それを超える配置転換を使用者が労働者に命じることはできないわけですけれども、ただ、整理解雇で、例えば事業所が閉鎖されるとか、そういう場合には配転の提案や打診を行う義務はある。強制することはできませんけれども、解雇回避努力として配転の提案や打診を行うことが必要であると裁判所も判断しているということが確認できました。報告書では、そのことについても整理・周知していくことが必要だとしております。
私からは以上になります。ちょっと長くなりましてすみませんでした。
○荒木分科会長 ありがとうございました。続いて、鬼村委員、お願いいたします。
○鬼村委員 鬼村でございます。私のほうからも一言申し上げさせていただければと思います。
無期転換者の処遇改善についてお話をさせてもらえればと思います。処遇の改善そのものは、当然、個社の経営環境、個社の労使の議論のみならず、当該産業界全体での生産性を上げていく活動であるとか、あるいは職業能力の向上支援であるとか、いろんなアプローチがあって、各社の実態に応じてなされていくのがよいものだろうと考えています。
こうした中で、仮に今後、無期転換者に対して処遇改善を強く迫るというような場面がもしあればですけれども、企業としては、多様な正社員、いろいろパターンがあるかもしれませんが、なにかしらの正社員並みの職責であるとか、あるいは配置変更の範囲であるとか、こういうものを無期転換者にも設定せざるを得なくなるという状況が出てくるのだろうと思います。
そうしますと、そうしたことがかえって、多様な労働者に即して、多様な雇用形態や多様な働き方を提供する、こういう流れに反する、場合によってはさらにそれが雇用のミスマッチを生んでしまって、結果的には雇用機会の減少ということにもなりかねないのではないかなと懸念します。
今後、こうしたことが本分科会で議論されていくとは思いますけれども、今回の無期転換ルールそのものが雇用の安定を図っていくということでつくられた制度であるということを前提としつつ、現状どうした課題があって、どういうアプローチが適切なのかということを検討していければいいなと思っております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。続いて、佐藤委員、お願いいたします。
○佐藤(晴)委員 佐藤でございます。ありがとうございます。
私からは、多様化する労働契約のルールに関する検討会報告書で、労働条件明示について意見を申し上げたいと思います。
基本的な方向性として、勤務地ですとか職種等に限定があって、その変更の範囲を明示するということ自体は、トラブルの防止ですとかそういったことに資するものですので前向きに捉えているところですけれども、一方で、各社における雇用契約の実態というのは様々ですし、実務で混乱が生じないような丁寧な議論が必要だなというような印象を得ております。
それから、こちらの報告書で全労働者を対象に検討するということを考えますと、例えば採用の時点でどのように明示するか、仮に変更が一定程度あるとして、変更の範囲を全て明示するということもなかなかちょっと想像がつきにくいところもありまして、現実的な明示方法をどのようにするのかというのが検討としては必要だと感じたことと、また、出向の場合にこれをどのように採用時において明示するのかであったり、さらに働き方の多様化ということでは、近年、テレワークですとか、さらに言えばワーケーションですとか、働く場所というのが恐らくここで想定している勤務地というところからは必ずしも捉え切れない働き方というのがあろうかと思っております。これをどのように位置づけるのか、整理するのかという視点が恐らく報告書では、あったらすみません、なかったように拝見したものですから、この辺りについての整理が必要かと感じておりました。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。それでは、会場から東矢委員、お願いいたします。
○東矢委員 東矢です。
無期転換ルールに関して、調査結果も踏まえますと、無期転換申込の機会や転換後の労働条件に関する通知の義務づけ、また更新上限の有無などについて明示の義務づけを行うことは、無期転換ルールの適切な活用を促していく上で重要な取組だと考えております。
ただ、無期転換前の雇止めやクーリング期間の濫用防止のためには、判例等の単なる周知にとどまらず、さらなる対策が必要ではないかと思います。
特に契約締結後に使用者が一方的に更新上限を定めるようなケースでは紛争も実際に生じておりますし、そのような事案は不利益変更となり得ることを周知徹底いただくとともに、労働者の求めがない場合にも使用者に説明義務を課すべきだと思います。
また、現行の無期転換ルールでは、無期転換に際して労働条件の改善までは求められていませんが、無期転換労働者の処遇改善は大きな課題であります。同一労働同一賃金により有期契約労働者の待遇間格差は是正が期待されますが、施行前に転換した者も含めてさらなる処遇改善及び正社員転換の促進をはかる取組の強化が不可欠だと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。それでは、佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 ありがとうございます。
私も、今の協議にあがっておりました「無期転換ルール」に関する見直しの件ですけれども、この総論で書かれておりますとおり、制度自体を根底から見直さなければいけない問題が生じている状況ではないと考えております。制度を維持していくためには、一番大切なのは、労使双方が情報を共有し、企業の実情に応じて活用するということで、現行のとおり、このまま円滑にいけばよろしいと思っています。
東矢委員からもご意見がありましたとおり、使用者側が一方的に変更する等、そういうのは労働側にとっても一番困るところだと思います。逆に、使用者側としても、こういう制度があるということをもっと浸透させなければいけないとともに、様式、規定例が定められているわけですけれども、この様式に沿って記載をすれば、問題はないということが明確になれば浸透しやすいと思います。様式に沿って記載したにもかかわらず、やはり期待をちょっとさせてしまったとか、あるいは更新についての話がなかなかしにくくなるという状況があって、かえって労働者、従業員とコミュニケーションというのがとりづらくなるということもあります。
使用者が怖いというのは、この規定例のとおりに記載したにもかかわらず、裁判例から使用者側に責任が生じ、ここまでだと違法性があるのではないかとか、そういうものに対してちょっと臆病になってしまう気持ちが生じているのではないかと思います。ここ数年の判例を参考に、明確な規定例をさらにもうちょっと煮詰めていただいて、このような規定を記載しておけば、余り労使間の紛争が出ないような規定例を考えていただければと考えております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。世永委員、お願いいたします。
○世永委員 ありがとうございます。多様な正社員の労働契約関係の明確化等について、報告書では、勤務地、職務、勤務時間を限定した多様な正社員を多様な働き方の選択肢の一つとして、労使双方にとって望ましいという形で普及を図ることが重要と記載されております。しかし、育児・介護と仕事の両立をはじめワーク・ライフ・バランスのとれた多様な働き方を実現していくためには、限定的なかたちでの多様な正社員の普及ではなく、長時間労働の是正や、テレワークをはじめとする柔軟な働き方に関する制度の適正な運用・活用の促進を通じて、雇用形態にかかわらず、誰もが希望する働き方を選択できる社会を実現することこそ優先的に取り組むべき課題であると考えております。
なお、労働条件の書面明示事項の拡充については、契約内容の理解促進など労働者にとって意義がある一方、勤務地の閉鎖などが生じた場合に解雇が促進されてしまう懸念があります。報告書にも記載されていますが、勤務地等がなくなったことを理由として安易な解雇がなされることはあってはいけないということを強く申し上げさせていただきます。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
山内委員、お願いします。
○山内委員 山内のほうからは2つ、御提案いただきました両方についてお話ししたいと思います。意見でございます。
まず最初、無期転換ルールにつきましては、企業側は、多くの経営者は、労働者に納得をしてもらった上で雇用契約を締結するということを、今回を機会にかなり徹底できたと認識しております。今回新たに御提案いただいた労働条件変更時の明示ですね。これについては、むしろ違和感はございません。無期転換ルールは従業員の納得を得た上で契約を交わすということでは違和感は感じておりません。
一方の多様な正社員の労働契約関係の明確化については、違和感を感じております。先ほど何人かの委員さんからもお話がありましたように、総論に書いてございます1つ目のポツですね。「多様な正社員については」と書いてあって、✓が3つほど書いてございます。最初の1つ目の二極化の緩和、これについては同意申し上げたいと思いますが、労働者のワーク・ライフ・バランスの確保や自律的なキャリア形成、そして優秀な人材の確保。これを目的として、契約に、例えば勤務地を明確化する、明示化すると。しかも、一番最後のポツの「労働者全般を対象に検討する」ということについては違和感を覚えております。
例えば、働く地域を限定することで給与が決められるなど、複数の労働条件を併せて明記する必要がある場合、勤務地を契約書に明示するということについては、これは必要かと存じますが、この新型コロナの影響によって在宅勤務など日本人の働き方が大きく転換を迎えようとする中で、勤務地を労働契約に記載することはむしろ選択の幅を制限することにつながりかねないと危惧しております。
在宅勤務は転勤という事象にも変化をもたらし始めていて、必ずしも新たな勤務地に赴任せずに、必要な機会にのみ出社することも可能にすると。そういった状況の変化を踏まえて、いま一度、全労働者を対象とするものではなく、個々の状況に応じた対応ということを考えていただければありがたいと考えております。
山内からは以上であります。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
大変多様な御意見をいただきましたけれども、事務局から何かお答えすべき点等はございますでしょうか。
○労働関係法課長 様々な御意見をいただきましてありがとうございました。無期転換ルールについては、総論としては、方向性としては違和感がないというような御意見もいただきましたけれども、個別の雇止め等の問題もありますので、また次回以降、データ等をお示しして御議論いただければと思っております。多様な正社員の部分についても様々な観点から御指摘いただいたところですけれども、実際にどのように明示していけばよいかという点につきましては、分科会での御議論を踏まえた上で、最終的に方向性がまとまりました場合には、分かりやすい明示の仕方というものを運用も含めて考えていきたいと考えております。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、次回以降、分科会においても実態などの資料等も示していただいた上で議論していきたいと思います。3つ大きな点がございますが、まずは無期転換ルールに関する見直しから順次議論を進めていければと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
本議題につきましてはここまでとさせていただきます。
次の議題に移ります。(2)「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」報告書についてです。事務局より説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 労働関係法課長の田村から引き続き御説明させていただきます。
それでは、お手元の資料3になるかと思いますが、厚生労働省におきまして、平成29年から開催してまいりました「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」につきまして、本年4月に報告書を取りまとめましたので、その内容を御報告させていただきます。
資料のまず1ページ目を御覧ください。解雇無効時の金銭救済制度について、これまでの検討経緯について少し触れさせていただきたいと思います。
このテーマにつきましては2000年代初頭から議論がなされてきたところですけれども、現在の検討会につながる流れといたしましては、2015年に、規制改革実施計画ですとか日本再興戦略におきまして、予見可能性の高い紛争解決システム等のあり方についての具体化に向けた議論の場を立ち上げ、検討を進めるといったことが盛り込まれたところです。
これを受けまして、右側の「厚生労働省における検討状況」の下に記載がございますが、2015年から、「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」が開催されたところです。この検討会構成員としましては、法学者、経済学者、労使の皆様、弁護士の皆様等にお集まりいただきまして、荒木先生に座長をお務めいただいたものです。この検討会では、既存の個別労働紛争の解決手段がより有効に活用されるための方策と、解雇無効時の金銭救済制度の在り方とその必要性について検討いただきまして、2017年に報告書を取りまとめております。
報告書の中で、労働政策審議会において有識者による法技術的な論点についての専門的な検討を加え、さらに検討を深めていくことが適当とされたところです。なお、制度を創設する必要はないとの意見があったことを今後の議論において十分に考慮することが適当とされたということも併せて記載されているところです。
この後、2017年12月の新しい経済政策パッケージにおいても、労働政策審議会において法技術的な論点についての専門的な検討に着手することとされていたところですけれども、この報告書を2017年12月の本分科会に報告した際に、委員からさらに有識者による法技術的な論点に関する専門的な検討を行っていただきたいといった御意見があったことから、分科会長から事務局に御提案をいただきまして、2018年に、「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」を立ち上げたものです。
昨年6月の「成長戦略フォローアップ」、左下に記載しておりますけれども、このフォローアップの中で、2021年度中をめどに法技術的な論点についての専門的な取りまとめを行う、その結果を踏まえて労働政策審議会の結論を得るとされているところでありまして、4月に、この検討会の報告をまとめたところです。
続きまして、2ページ目を御覧ください。2ページ目は検討会の概要ですけれども、趣旨・目的につきましては、先ほど御説明したとおりです。法技術的な検討ということで、労働法、民法、民事訴訟法の先生に御参集いただきまして、山川先生に座長をお務めいただいたところです。この検討会の中でも、労使双方の弁護士等のヒアリング等を含めて17回開催いたしまして、本年4月12日に取りまとめ・公表しております。
3ページ目から報告書の概要をおつけしております。3ページ目は報告書の全体構成を示したものとなっております。
報告書の「はじめに」の部分で、本検討会の検討経緯についてまとめているほか、本報告書の位置づけを記載しているところです。具体的には、報告書本文の中で、本制度導入の是非については、労働政策審議会において本制度が果たすと予想される役割やその影響などを含む政策的観点も踏まえて、労使関係者も含めた場で検討すべきものであるとの前提のもとで、こちらの概要にも記載しておりますが、本報告書は、仮に制度を導入するとした場合に、法技術的に取り得る仕組みや検討の方向性等に係る選択肢等を示すものであるとされているところです。
Ⅱの検討の前提となる事項の部分では、解雇をめぐる紛争の現状ですとか紛争解決システム検討会における検討の状況、諸外国における制度について記載しております。
それから、Ⅲの法技術的論点についてというところで、具体的には次のページ以降に記載しておりますけれども、制度の骨格と取り得る2つの法的な構成、それから権利の法的な性質、労働契約解消金の性質や算定方法等について整理しているというような報告書全体の構成となっております。
4ページから、各論点について法技術的な観点から詳細に整理しているところですけれども、ポイントとなる部分を中心に御説明させていただきます。
まず、1の「形成権構成及び形成判決構成について」です。制度の骨格について、無効な解雇がなされた場合に、労働者の請求によって使用者が一定の金銭を支払い、その支払によって労働契約が終了する仕組み、こういった仕組みを念頭に御議論いただいたところです。
その上で、このような仕組みを制度的に構築する場合の選択肢として、2つの構成について検討いただいたところです。ここに形成権構成、形成判決構成の説明を記載していますが、6ページ目に図で示しておりますので、こちらを御覧いただければと思います。
まず、6ページ目の上の形成権構成について、形成権構成とは、無効な解雇等がなされて一定の要件を満たした場合に、労働者に金銭救済を求める形成権、金銭救済請求権とここでは置いていますけれども、こういった形成権が発生します。労働者がそれを、この図で申し上げますと、訴えの提起ということで意思表示をすることで権利を行使した場合に、2つの効果が発生するものとなっております。
2つの効果は、権利変動①、②と記載しておりまが、まず1つ目は、労働者から使用者に対する労働契約解消に係る金銭を求める債権、ここでは労働契約解消金債権と呼んでいます。ここでは単に解消金債権と書いてありますが、本文中は、労働契約解消金債権と呼んでおります。これが発生するというのが一点。もう一点は、使用者がその解消金を支払った場合にという条件つきで労働契約が終了するという効果が発生するといった構成が形成権構成です。この場合、金額自体は判決確定で判明しますので、それ以降、使用者がその金額を労働者に支払うと、その結果として労働契約が終了するといった仕組みが想定されるところです。
一方、下の形成判決構成ですけれども、形成判決構成とは、要件を満たした労働者に判決により一定の法律関係の形成を求める権利が発生します。労働者が訴えを提起して、その労働者の請求を認める判決が確定した場合に、その効果として、上の形成権構成と同様の2つの効果が発生します。解消金債権の発生と、それを支払ったことを条件とする労働契約の終了といったことが発生するという構成です。形成判決構成の場合にも、判決以降、解消金債権が発生して、その解消金を支払うことで労働契約が終了するといった流れになります。
この2つは法律上の構成としては異なりますので、各論点の中で、法的な整理が異なる部分はあるものの、いずれの構成をとりましても、労働者が権利を行使した結果として労働契約解消金債権が発生し、解消金の支払によって労働契約が終了するといった効果の部分では同じでありまして、どちらの構成も法的には取り得るということを今回整理していただいたものです。
それでは、概要のほうにお戻りいただきまして、4ページの2「権利の法的性質等」の部分です。ポイントとなる部分を御説明させていただきます。
まず、2の(1)対象となる解雇・雇止めについて。本制度の対象となる解雇等をどのように考えるべきかについてですけれども、本制度では、無期労働契約における全ての無効な解雇と有期労働契約における無効な期間中の解雇、それから、労働契約法の19条に該当する雇止めを対象とすることが考えられるとされたところです。
なお、禁止解雇、差別的解雇等の個別の法律により禁止された解雇についても、労働者の選択肢を増やすという観点からは対象とすることが考えられるとされたところです。
(2)労働者の権利の発生要件等についてです。無期労働契約の場合の形成権構成、形成判決構成、いずれもですが、その場合の要件について、3つ整理をしております。
1つは当事者間に労働契約関係が存在すること、2つ目に使用者による解雇の意思表示がされたこと、3つ目に当該解雇が無効であることが考えられると整理されたところです。
なお、ここでの検討は、解雇の無効に係る主張立証責任について、現在の裁判実務を変更する趣旨のものではないと整理されたところです。
(3)で権利の行使の方法です。形成判決構成の場合は、その性質上、権利行使の方法は、裁判上の権利行使に限ることが当然と考えられるとされた一方で、形成権構成の場合は、裁判上の行使に限る必然性があるというものではありませんけれども、仮に裁判外での権利行使を認めた場合に、解消金の額について労使で合意できていない間に使用者が相当と考える金額を一方的に支払った場合に、労働契約が終了しているのかどうか不明確となって、労働者の地位が不安定になる、こういったデメリットもあることから、当面は、権利行使の方法として、訴えの提起及び労働審判の申立てに限ることが考えられるとされたところです。
それから、(4)の債権発生の時期です。これも6ページの図を御覧いただいたほうが分かりやすいかと思いますので、6ページを御参照いただきますと、形成権構成の場合には、金銭救済請求権を有する労働者が訴え提起等によりその権利を行使した時点で労働契約解消金債権という金銭債権が発生することになります。一方で、形成判決構成の場合には、判決等の確定時点で労働契約解消金債権が発生することになります。それぞれの構成で債権の発生時点の違いはありますけれども、いずれの構成でも、判決等の確定時に弁済期、すなわち支払うべき日が到来して、判決等の確定より前に解決金の支払がされた場合であっても、その支払の効果である労働契約の終了は発生しないとすることが考えられると整理されたところです。
続きまして、行ったり来たりで恐縮ですけれども、4ページの概要のほうを御覧いただきたいと思いますが、(9)の権利の消滅等について御覧いただければと思います。
労働者が訴えを提起等する前に、ほかの事由による労働契約が終了した場合、これは例えば死亡ですとか、当初の解雇とは別の理由により新たな有効な解雇がなされた場合などを念頭に置いておりますけれども、こういった場合には、労働契約関係が存在することという権利の発生要件等を欠くことになりますので、本制度の適用は認められないと解されるとされたところです。
また、訴えの提起等をした後で、先ほど申し上げたようなほかの事由により労働契約が終了した場合については労働契約解消金の支払は認められないと考えられるものの、ただしとして、政策的判断としては、労働契約が終了した事由の性質の違いに着目して取扱いを異ならせることはあり得るとされたところです。
例えば辞職については、労働者の再就職を阻害しないよう、労働契約解消金債権の帰趨に影響はないものとの措置を講ずることも考えられるとされたところです。
続きまして、5ページを御覧いただければと思います。5ページでは労働契約解消金の性質等について記載しております。まず、5ページの3の(1)労働契約解消金の定義について。労働契約解消金の定義をどのように考えるべきかということについて、2つの考え方があり得ると整理されております。1つ目が、無効な解雇がなされた労働者の地位を解消する対価というような捉え方、それから2つ目が、無効な解雇により生じた労働者の地位をめぐる紛争について、労働契約の終了により解決する対価といった、1点目よりは少し広義の定義も考えられるとされたところです。
この解消金の定義をどのように定めるかについては、解消金の性質ですとか考慮要素等の検討とも関連しており、本制度の機能等も考慮した上で政策的に判断すべきとされたところです。
その隣の(2)の労働契約解消金の構成及び支払の効果の部分です。解消金債権については、解雇された後に労働契約が解消されるまでの間に発生している賃金債権、いわゆるバックペイと言われますが、このバックペイですとか、解雇に伴ってハラスメントがある場合に、不法行為による損害賠償請求が認められる場合もありますが、こういった損害賠償請求権とは別に根拠規定を有する別個の債権であると整理することが考えられるとされております。その上で、労働契約解消金の支払のみによって労働契約が終了するといった構成だけではなくて、バックペイの履行確保の観点から、解消金に加えてバックペイの支払がなされたときに労働契約が終了するというような構成も考えられるとされたところです。
続いて4の各請求との関係について。今も申し上げたとおり、解消金債権はバックペイや不法行為による損害賠償、あるいは退職手当といった各債権とは別個のものと整理し得るため、それぞれの請求や地位確認訴訟と併合して訴えを提起等することができると考えられるとされております。バックペイについては、現行と同様に、民法の規定に基づいて、使用者による正当な理由ない労務の受領拒否が継続する限り、解雇から労働契約が終了することとなる解消金の支払時までのバックペイが発生すると解することが原則であると考えられるとされております。
5番目の労働契約解消金の算定方法等について。まず算定方法考慮要素について、(1)について、算定方法を検討する際には、予見可能性と個別性という2つの視点が考えられるとされた上で、予見可能性という視点からは、一定の算定式を設けることを検討する必要があると考えられる。一方で、労働者の地位や解雇に関する実態は、個別の事案により千差万別であり、その個別性をどの程度反映する必要があるかといった点も算定方法や考慮要素を考える上では重要であるとされたところです。
法技術的には、客観的かつ定型的な考慮要素のみを前提とした算定式により算定する方法から、あらかじめ算定方法を設けずに、個別事案ごとの状況を考慮して算定する方法まで様々な設定が可能であり、最終的には手続が遅延しないようにすることを含めて制度の機能や役割を踏まえて政策的に判断することが適当と考えるとされたところです。
考慮要素として考えられるものとしましては、定型的なものとして、給与額、年齢、勤続年数、また、ある程度定型的な算定をし得るものとして合理的な再就職期間、さらには、評価的なものである解雇に係る労働者側の事情、解雇の不当性といったものが考えられるとされております。
この算定方法や考慮要素の検討に当たっては、解消金の定義ですとか解消金によって保証すべきものは何かといった点と相互に関連させた上で政策的に判断すべきとされたところです。
補償すべきものの中心となるのは、契約終了後の将来得べかりし賃金等の財産的価値というのが考えられるところですが、そのほか、当該職場でのキャリア、人間関係等の現在の地位にあること自体の非財産的な価値も含まれると考えることもできるとされたところです。
それから、隣の(2)の労働契約解消金の上限・下限について。上下限の設定についても、解消金の算定方法や考慮要素とも密接に関連する問題であります。法技術的な観点からは、例えば算定式の各係数に上下限を設ける方法など様々な方法が考えられるところですが、これらについては政策的に判断することが適当と考えるとされたところです。
6番目の有期労働契約の場合の契約期間中の解雇・雇止めについてです。有期労働契約の場合の権利の発生要件ですとか、特に考慮すべき法的論点について御議論したものをここの部分で整理しております。
特に権利の発生要件等に関し、雇止めの場合については、①から⑤まで記載しておりますけれども、有期労働契約関係が存在すること、その契約につき労働契約法19条1号又は2号のいずれかの要件を満たすこと、労働者により、契約期間中等に遅滞なく更新の申込の意思表示がされたこと、使用者が更新拒絶をしたこと、その更新拒絶が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないことといったように整理をしており、労働契約法19条にいわゆる雇止め法理が規定されていますが、その雇止め法理により雇止めが認められないような場合が対象となると整理しているところです。
8のその他の部分で、この概要では省略しておりますけれども、報告書の本文の中では、制度の設計に際して、労働審判制度の運用への影響を含め、この制度を導入したことによって解雇紛争の解決手続がかえって遅延しないようにすることの考慮ですとか、本制度を導入することとした場合でも、裁判内外での和解による自主的な解決を図ることが阻害されないような配慮、それから、本制度の趣旨に反した安易な解雇がなされないような趣旨等についても指摘されているところでございます。
以上、報告書の中のポイントとなる部分について説明させていただきました。
私からは以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ただいまの事務局に説明につきまして、御質問、御意見があればお願いいたします。オンラインの方は、先ほどと同様、チャットに書き込んでください。
冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 ありがとうございます。
本日は検討会報告を単にいただいたものと受け止めております。そもそも解雇が無効であれば、本来、労働者としての地位は守られるべきだと考えております。そう考えますと、この金銭救済制度というのは、本来行うべき法令遵守や職場環境の改善をせずとも、労働者に対して金銭を支払うことによって、解雇を正当化するようなものだと考えております。そういった意味で、我々としては、従前から申し上げているとおり、この制度は全く必要のないもの、と考えています。
先ほども申し上げましたが、労働者を保護するためには、このような制度をつくることではなく、労働関係法令が遵守されていない職場の改善や、不当解雇が横行しているような状況の改善などが喫緊に解決すべき課題だと私どもとしては捉えております。金銭救済の制度の導入ありきで議論することは我々としては望んでいないということを改めて強く申し上げておきたいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。八野委員、どうぞ。
○八野委員 ありがとうございます。
この話は、もともとの閣議決定が2015年の3月というかなり前であり、労働環境も雇用環境も今の状況はかなり異なっていると思います。解雇の金銭解決は、それだけ雇用環境や社会環境が違う中で継続して検討されてきたわけですが、近々の課題としてやるべきものなのかどうか疑問です。
今、日本においては、これは労使ともに認識は一緒だとは思うのですが、生産年齢人口が急減しています。その中でいかに労働力人口を確保していくのかということが労使ともに非常に重要な課題です。働く者にとっては、労働者が安心して働くことができる職場こそ、魅力ある職場として労働者を集めることができるのではないか。企業側の先ほどの言葉を借りれば、その中でいかに労使の協力によって生産性を上げていくのかということだと思います。
労働行政としては、そうした職場づくりにこそ注力して取り組むべきことが数多くあるのではないでしょうか。もともとこれは無効な解雇ですから、こういうことが起きてはいけない、こういう状況をつくってはいけないのです。「救済」という言葉が入っておりますが、報告書の中から救済は読み取れません。これは無効解雇の金銭解決と捉えるべきだと思っておりますし、こういう制度を導入するのではなく、今、冨髙委員が言ったように、誰もが労働関係法令が遵守された職場で働くことができる雇用環境の整備こそ、やはり労働行政として取り組んでいただきたいと思います。これは労働側の統一した意見だと思っていただければと思います。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
鈴木委員。
○鈴木委員 ありがとうございます。
まず、労働契約法16条、また各種解雇制限の規定というのは、私が言うのもおこがましいのですけれども、労働者保護立法の中核をなすものでありまして、その重要性というのは公労使で十分共有できていると思いますし、また、今、八野委員からも御指摘のございました、職場環境をよくするための各種法令を遵守していくと。まだまだ使用者の中でも完全に守られていないというような実態も承知しているところでございますので、そこの点は重く受け止めたいと思います。
ただ、今回の報告書について一言申し上げますと、こうした16条をはじめとするこれまで我が国で形成されてきた解雇ルールのルールそのものはしっかりと堅持しつつ、ただ、解雇無効時の金銭救済制度を入れた場合の法的な仕組み、これを明らかにしたというようなもので、相当法技術的に難しい議論をされた検討会の委員の先生ですとか事務局の方には敬意を表したいと思います。
ただ重要なのは、他方で制度導入の是非については、過去の在り方検でも結論が出なかったということで、引き続きの検討課題だと認識しております。私自身、この検討の前提というのは労働者保護に資する、ここにあると考えているところでございまして、今後、例えばですけれども、労働者にとって現行の紛争解決機関が十分に機能しているのかどうか、それから、制度導入によって不当解雇を招くのかどうか、また、紛争の解決の早期化に資するのかどうかといった、総合的に労働者保護に資するかどうかということを検討することが大切ではないかと考えております。
そうした中で、労働政策研究・研修機構が現行の紛争解決機関でどのような解決がされているかということを調査したことがございますが、これは2015年に行われた古い調査でありますので、改めて、あっせん、労働審判、それから民事訴訟の調停あるいは和解の実態について、申立提訴から和解、調停までの期間がどのぐらいなのかといったことも含めまして、調査内容の精度を高めて再度調査をしてはいかがかと思った次第でございますので、事務局におかれては御検討いただければと思います。
私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。佐久間委員、お願いします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 ありがとうございます。
私も鈴木委員のお考えに賛成なのですけれども、この解雇無効時の金銭解決ということで解雇するにはなかなか厳しい要件もあって、そこの中で、それを十分知っているかどうか、経営者が短絡的にも解雇と言ってしまった。そういうときの無効の取扱い、まさにこれは労働者保護になる観点だと思っています。
実際、私ども、そうなった場合にも、早期に解決する手段としてどういうものがあるか、それを法的に専門家の先生方に取りまとめをお願いしてということでこの検討会を進めてきていただいたわけでありますが、資料№4、また、取りまとめていただいた概要をお伺いしている中で、この報告書というのは、法技術的な論点の整理がなされているものの、かなり専門的で複雑な議論となっていて、一般の方が理解することはかなり難しいと思っています。
実際にこの制度を使われている場面を考えますと、最後、でき上がった制度としては、できるだけ分かりやすいものにすべきであると考えます。また、今後この制度について検討するに当たっては、労働契約解消金の水準がどの程度で設定されるのか、バックペイと併せて、どの程度の水準になるのかということが中小企業にとっても非常に気になる点であります。この報告書、概要等を見ても、「政策的に判断すべき」という事項が多く含まれております。労働契約解消金については、性質や支払の効果とか、考慮要素などの法的な整理については取りまとめていただいているのですけれども、その水準については具体的に何も示されてはいないのではないかと思います。
この制度について分科会で議論をする際に、労働契約解消金の水準はとても重要なことでありますので、部会等において参考となるデータをぜひお示しいただきたいと思っております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
オンラインのほうで、鳥澤委員から手が挙がっております。お願いします。
○鳥澤委員 ありがとうございます。鳥澤でございます。
本制度について、検討会報告書をお取りまとめいただき、誠にありがとうございます。本制度については、無効な解雇に対し金銭による救済の実効性を高めるものであり、労働者にとって労働契約の解消を求めた場合に速やかに次に進めるものとして、今後の選択肢が増えるものと私は受け止めています。
ただ、本制度の検討については、まずは紛争解決の実態など踏まえて、事業者、労働者それぞれにどのような利点や懸念点があるかを整理していただき、本制度の必要性、有効性について公労使で理解、議論を深めることが必要ではないかと私は思います。その上で、先ほど佐久間委員もご発言されたように、明確なガイドラインをご提示いただきたいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
労使の委員から御意見伺いましたけれども、公益委員からはいかがでしょうか。
川田委員。
○川田委員 ありがとうございます。川田でございます。
本議題のもとになった検討会の報告書、それから、それについての本日の事務局からの御説明とその後の審議の状況を踏まえた上で、私なりに考えたところを述べさせていただきたいと思います。
まず、この検討会の報告書は、先ほどの御説明の中でもあったと思いますが、無効な解雇がなされた場合に、労働者の請求によって使用者が労働契約解消金を支払い、当該支払によって労働契約が終了する仕組みを念頭に置くという前提のもとで、そこにおいて想定される法技術的な論点を検討したものと承知しております。
そういうものとして、一応私自身も法律の分野を専門にしておりますので、そのような目で見た場合に、この報告書における解雇無効時の金銭救済制度についての法技術的な論点の整理はおおむね検討すべき点が尽くされているものと思います。
ただ、そうした法技術的論点を踏まえた上での課題自体については、私としては、さらに検討、あるいは審議していくべきところがあるものと考えております。特に具体的な事項等について、さらに検討を深める必要があるのかなと思っております。
そうした観点からは、ここまでの審議の中にも出てまいりましたが、今後の議論に向けて、今の法制度のもとにおける、例えば民事裁判の手続の中で行われる和解というようなものなど、金銭の支払がなされ、労働契約が終了するような扱いの現状、あるいはそれを含めた関連する解雇紛争解決の現状などについて実態の把握をするということ、その実態の把握を踏まえながら、さらに検討・審議を進めていくということに一定の必要があるのではないかと考えているところです。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはよろしゅうございましょうか。
様々な御意見をいただいたところでございます。本日、詳細に報告いただいた法技術的論点に関する検討会報告書によりまして、解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点の整理は概ね尽くされているとも考えられます。他方で、本制度の導入の是非に関しては、労使関係者も含めた場であるこの労働条件分科会において、政策的観点も踏まえ検討すべきものでありますが、この点について、先ほどから各委員からいただいた意見の中には、議論を始めるに当たっては、現在の解雇に係る紛争解決の実態把握が必要ではないかという御指摘もあったところです。
具体的には、現行の労働審判、あるいは裁判所の和解の解決金額の水準の実態を改めて把握すべきではないかという御指摘です。こうした実態を明らかにするということは、現在起こっております解雇に関する紛争解決システムの活用においても、予見可能性を向上させるという点では有用なものと考えられるところです。
そこで、今後の分科会での議論に資するよう、まずは実態把握に努めるべきではないかと考えます。事務局におかれては、この点の対応についてよろしくお願いしたいと考えております。
事務局としてはいかがでしょうか。
○労働関係法課長 委員の皆様から様々な御意見をいただきまして、ありがとうございました。ただいま、分科会長より御指摘いただいた点につきまして、事務局において改めて実態把握を行うよう検討してまいりたいと思います。
○荒木分科会長 よろしくお願いいたします。
それでは、本議題につきましてはここまでとさせていただきます。
説明担当者の交代がございますので、若干お待ちください。
それでは続きまして、次の議題、(3)自動車運転者の労働時間等の改善のための基準のあり方について、事務局から説明をお願いいたします。
○監督課長 監督課長でございます。
本日、資料6で自動車運転者の専門委員会の中間報告をおつけしておりますが、本日の御説明は、資料5によりまして、経緯、概要を含めて御説明させていただきます。
まず、資料の1ページでございますが、自動車運転者につきましては、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準という告示を設けまして、トラック、バス、タクシーについて、労働時間の改善を図っております。これは長時間労働、交通事故の増加という経緯がございまして、昭和42年から通達で、平成元年には告示化したものでございます。
内容として、拘束時間、休息期間、運転時間といった業務の特性に応じた基準を設けまして、遵守を図っているという特徴がございます。
2ページでございます。この改善基準につきましては、平成30年の働き方改革関連法の附帯決議におきまして、過労死等の防止の観点から早急に見直しを行うということが決議されております。令和元年の11月にこの分科会のもとに自動車運転者労働時間等専門委員会を設置いただきまして、実態調査等を行い、昨年の4月から業態別の作業部会を設けて本格的な議論を進めていただいたところでございます。そして、本年の3月に専門委員会のほうで、ハイヤー、タクシーとバスの見直し内容を取りまとめた中間とりまとめをいただいたという流れでございます。今後、トラックにつきましても議論を本格化いたしまして、本年の夏をめどに取りまとめ、最終的には本年内に改善基準告示を改正したいというスケジュールでございます。
次のページには委員の名簿をつけております。それぞれ公労使の代表に御参画いただいておりますが、本分科会の委員であります両角委員、川田委員、藤村委員の各公益委員におかれましては、それぞれの作業部会の部会長、さらに藤村委員におかれましては専門委員会の委員長として御就任いただいております。また、労働側からは世永委員がトラックの作業部会と専門委員会に御参加いただいているというところでございます。
そして、次のページでございますが、自動車運転者の時間外労働の上限規制についてでございます。自動車運転者につきましては、一般の労働者と異なりまして、現在、上限規制の適用は猶予されております。一般則の施行から5年後でございます令和6年4月から上限規制が適用になりますが、その場合の上限といたしまして、左に、法律による上限、原則の月45、年360、これが適用になりますが、法律による、これは臨時特例の場合の一番上の上限につきましては、一般労働者が年720時間、そして、単月100時間、複数月平均80時間というルールがございますけれども、これらが自動車運転者には適用がございませんで、自動車運転者については年960時間の時間外労働の上限という、こちらのルールのみということになっております。
これを前提といたしまして、改善基準につきましても、この上限規制及び過労死等の防止の観点から見直しを行ってきたという経緯でございます。
次の5ページ以下、ハイヤー・タクシーとバスについて、中間とりまとめの概要について御説明させていただきます。
まず、ハイヤー・タクシーのうちタクシーでございますが、日勤の月の上限が299時間となっておりましたところ、11時間短縮して、288時間ということで合意いただいております。隔日勤務につきましては従来の基準をそのままということです。
そして、1日の上限でございますが、日勤につきましては、現在、拘束時間が13時間で、最大でも16時間となっておりますところ、最大を1時間下げまして15時間、かつ、14時間を超える回数をできるだけ少なくするよう努めるという規定になっております。
一方、休息期間、勤務終了後のいわゆる勤務間インターバルでございますが、現行は8時間以上となっておりますところ、右でございますが、継続11時間以上の休息期間を与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないということで、11時間以上に努めることを基本とした上で絶対的な下限としての9時間、ということで見直しをしたところでございます。
隔日勤務につきましても見直しを図っておりまして、まず、拘束時間は現行21時間でございますが、これにつきまして、2勤務平均で21時間を超えない、1回当たりは22時間を超えないということで、でこぼこが生じてもいいようにということで見直しを図っております。
その一方で、休息期間については現行20時間以上というところを、24時間以上与えるよう努めることを基本とし22時間を下回らない、ということで改善を図ったところでございます。
次のページでございますが、車庫待ち等の自動車運転者に係る規定でございます。車庫待ち等の自動車運転者につきましては、右の※で書いておりますが、普通に流し営業を行っているという実態ではなく、車庫や駅でお客様からの御連絡をお待ちになるような形態を常態とするような自動車運転者に係る基準でございます。
これについては、まず、定義を明確にする、範囲を明確にするということで、右のアイウエ、特にアでございますが、人口30万以上の都市に事業所が所在していないこと。こういった基準を明確にいたしまして、その上で、日勤、隔勤、それぞれ月の上限について一定の改善を図ったというものでございます。
次のページでございますが、例外的な取扱い、この2つはタクシーについて新しく設けたものでございます。まず、予期し得ない事象に遭遇した場合でございますが、ここに記載したアイウエに当たるような事象に遭遇した場合につきましては、先ほど申し上げました1日又は2暦日の拘束時間の規制の適用に当たって除外することができるという規定でございます。
具体的な事象のアイウエでございますが、車両故障の場合、フェリーが欠航した場合、災害事故に伴って道路封鎖、道路渋滞が生じた場合、異常気象に遭遇して正常な運行が困難となった場合、こういった具体的な事象が生じた場合を想定しております。そして、この場合には、上の段の3行目でございますが、「勤務終了後、継続11時間以上(日勤)、又は継続24時間以上(隔勤)の休息期間を与える」ということで、高い水準の休息期間を、こういった勤務の終了後に与えるというルールになっております。
もう一つ、適用除外でございます。これにつきまして、災害対策基本法等に基づいて、緊急通行車両であると認められた車両につきましては告示の適用除外とするというものでございます。これは、トラックにつきましては現行このような扱いになっておりますが、タクシーについてはそうなっておりませんので、新たに適用除外の対象とするということでございます。
休日労働については、変更はございません。
次のページでございますが、ハイヤーについては、現行では、タクシーの規定を適用せずに、左に記載しておりますが、時間外労働の目安時間を設けて、これを守るよう努めるという規定になっております。
ハイヤーにつきましても、今回、働き方改革関連法で上限規制の適用が令和6年からございます。それを踏まえまして、右の見直し後でございますが、上限規制と、36条に基づく指針を踏まえて時間外労働の延長時間を定めることということを告示でもうたいまして、さらに、2つ目の▷ですが、必要な睡眠時間が確保できるよう、勤務終了後に一定の休息期間を与えるということを新しく規定することとしております。
左に、「継続4時間以上の睡眠時間を確保するため少なくとも6時間程度は次の勤務に就かせない」と記載しておりますが、この内容は今通達で規定していることでございますので、今回、告示で右のように記載いたしまして、はっきりと休息期間の必要性をうたうことといたしました。
このほか、タクシーにつきましては、累進歩合制度の廃止につきまして、その趣旨を含めて周知を徹底するということが報告書の中ではうたわれているところでございます。
以上がハイヤー・タクシーです。
続きまして、バスでございます。まず、1か月の拘束時間でございますが、バスは、現状、1か月に関するルールはございませんで、4週平均1週というルールになっております。現行の下でございますが、原則、4週平均1週あたり65時間を超えない。特例として、貸切バス、高速バスについては、年間16週間、ですから、4か月弱につきましては、71.5時間まで延長できるというものになっております。
これにつきまして、労務管理上、1か月のルールをつくったほうがよいという御指摘がございまして、1か月のルールを新しく設けるとともに、一方で、現行のルールからの切り替えが難しい事業者の皆様もいらっしゃるということで、1か月の拘束時間又は4週平均1週の拘束時間、どちらかを守ればいいということを新しいルールにしたいと考えております。
1か月のほうでございますが、まず1つ目、年間3300時間かつ1か月281時間を超えないと。この1か月281時間というのは、現行の4週平均1週の65時間と同水準でございます。一方で、年間3300時間というのは、月でならしますと275時間ということで、それよりも低くなりますので、この両方をにらみながら設定いただくということになります。
そして特例でございますが、年間6か月まで、年間3400時間を超えない範囲で、1か月294時間まで延長可ということで、期間を延ばす一方、1か月当たりの時間を従来よりも下げたということでございます。
ただし、この場合、労働時間の長い月が4か月を超えないということで、連続することによる労働者の健康への配慮という観点から、4か月を超えないというルールを加えております。
また、※で書いておりますが、貸切・高速に加えまして、乗合バスのうち、一時的な需要が生じるものについても、この特例の対象に新たに加えております。
下段の4週平均1週につきましては、今申し上げた1か月と同水準で定めたところでございます。
次のページでございますが、1日の拘束時間、休息期間につきましては、先ほど申し上げましたタクシーと同様の水準で合意いただいているところでございまして、拘束は13時間を超えない、最大15時間、そして14時間を超える回数をできるだけ少なくする。そして、休息期間については、継続11時間以上の休息期間を与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らない、こういう内容でございます。
次の運転時間については、現行の2日平均1日9時間、4週平均1週40時間、これは変わりません。また、特例も変更なしでございますが、対象を、先ほどと同様に、乗合バスのうち一定のものを追加するということになっております。
連続運転時間4時間を超えない、これも変更なしでございますが、右に新しくつけ加えた内容がございます。高速バス及び貸切バスの高速道路の実車運行区間においては、概ね2時間までとするよう努める。これは、国土交通省さんのほうでツアーバスの大規模な交通事故を踏まえまして、平成25年に、交替運転者の配置基準というものを改定されております。
その中で、従来よりも厳しいルールとして、乗客を乗せて運行する予定の区間についてこのような交替運転者のルールということを定めていらっしゃいます。これについて、この改善基準告示の中でも、全く同じ内容について「努める」と規定するということで合意いただいたということでございます。
続きまして例外的な取扱いでございますが、まず、予期し得ない事象は、先ほどのタクシーの内容と同様でございますが、4行目の勤務終了後の休息期間につきましては、バスにつきましては通常どおりの休息期間。具体的には、11時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないという通常ルールどおりの休息期間を与えるという内容になっております。
そして、2つ目の軽微な移動の特例でございますが、これはバスのみでございますが、一旦駐車、停車しているところから、緊急通行車両等が来たことによりまして、どうしても動かざるを得ないという場合には、従来ですと連続運転時間にカウントしていただくことになります。これにつきまして、記録が認められる場合に限りまして、30分を限度として連続運転時間から除くことができるという新たな特例を設けることとしております。
適用除外業務については、先ほどのタクシーと同様に、バスも緊急通行車両を適用除外とするというものでございます。
そして、4つほど、従前から例外的取扱いがございまして、それぞれについて一部見直しをしております。まず、分割休息でございますが、これは休息期間をまとめて与えることができない場合の特例といたしまして、一定期間における全勤務回数の2分の1を限度に分割して休息を与えることができるとなっております。
これにつきまして、2つ目の▷でございますが、合計10時間以上というのを1時間引き上げまして11時間以上。一定期間の区切りでございますが、現行は最大2か月。これを1か月を限度とする。分割は、今、3分割も認められておりますが、これを2分割までとしております。
次が、同時に自動車に2人以上乗務する場合の特例でございますが、現行は最大拘束時間20時間まで延ばせるというものになっております。これにつきまして、ア、イと場合分けいたしまして、現行と同水準の休息の設備を設けている場合には、最大拘束を1時間下げまして19時間。そして、イですが、車両内ベッド、あるいはリクライニングシートでもきちんとカーテンで視線を遮るような措置が講じられている場合につきましては、現行どおり20時間まで延長可ということで場合分けをすることにしております。
最後のページでございますが、フェリー乗船時の特例につきましては、現行は乗船時間のうち2時間を除いて休息期間として扱うという扱いにしておりますが、これについて、原則として全て休息期間として取り扱うということにしております。これは既に先行してトラックのほうがこういった内容に見直されておりまして、トラックと同様の扱いとするということでございます。
休日労働については変更なしということでございます。
駆け足でございましたが、中間とりまとめの内容については以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ただいまの説明につきまして、何か御質問、御意見等があればお願いいたします。
梅田委員、どうぞ。
○梅田委員 ありがとうございます。大きく4点申し上げます。
専門委員会におきまして、我々労働側としては、拘束時間の大幅な短縮や、勤務間インターバルを原則11時間とすることを強く求めて協議を重ねた結果、今ほど報告があったとおり、11時間以上の休息期間付与に努めることが基本とされたと承知しております。
タクシーの運転者、バスの運転者の命と健康を確保することは、同時に利用者の命と安全を守ることにもつながると考えています。今後の個別企業労使における取組が重要であると考えますので、今回の見直しの内容について、関係機関も含めて周知徹底をいただくようお願いしたいと思います。
2点目ですが、現在議論をいただいているトラック運転者につきましては、過労死、精神疾患などの健康被害が深刻な状況にありまして、長時間労働の是正が急務であると考えています。これから就職される若者も含めた労働者にとって、安心して働くことができる職場となるよう、事業者自らの意識改革はもとより、発着荷主への対応につきまして、行政側からも積極的な対応をお願いしたいと思います。
3点目ですが、この改善基準告示の対象は労働者ということで、いわゆる個人タクシー等の個人事業者には適用されないと承知しておりますが、全ての働く者を保護するという観点からも、業界全体での商習慣の是正、働き方の見直しが進みますよう、国交省とも連携をはかりながら取組を強化していただきたいと考えます。
最後、4点目ですが、自動車運転者への上限規制の一般則移行に向けては、医師の働き方改革における時間外労働短縮目標ラインのような具体的な道筋を示し、実効性を高めることも重要であると考えます。
以上です。ありがとうございました。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
両角委員、お願いいたします。
○両角委員 両角でございます。
私、ハイヤー・タクシー部会の部会長を務めさせていただきました。ハイヤー・タクシーの業界では、過労死認定自体の件数はかなり少ない、非常に少ないのですけれども、疲労による事故、交通事故であるとか、あるいはドライバーが非常に高齢化していて、その健康の確保、また他方で、これから若い人がハイヤー・タクシー業界に入っていきたいと思うような、そういう労働条件の整備が必要だと。そういう問題意識は当初から労使ともほぼ一致しておられたように思います。
具体的な改善基準告示の内容、特に1日及び2暦日の拘束時間や休息時間については、当初はかなり労使の意見の隔たりは大きかったのですけれども、非常に双方、率直かつ真摯に意見を交わされまして、その議論の結果、中間とりまとめに至ったということでございます。本当に労使双方の御努力、御尽力に部会長として心から敬意を表したいと思います。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
川田委員、どうぞ。
○川田委員 ありがとうございます。川田でございます。
今ほど両角委員からハイヤー・タクシー部会についてのお話がございました。私からも、私が部会長を務めましたバスの部会について簡単に述べさせていただきたいと思います。
バスの事業、基本的なところといたしましては、ハイヤー・タクシーにおける御議論と共通するようなところも多いと思いますが、やはり基本的な健康被害を防ぐ必要があるということ、それから、そういう中で、特に若い運転手の方にも魅力的な働き方になるようにしていく必要があること、といった点については、労側、使側の委員をはじめ、参加された委員に共通の認識があったものと思います。
その一方でバス事業については、まず、路線バスであるとか高速バス、乗合バスといったような業態が多様で、特に長距離を移動するような路線バスだと、行ってから帰ってくるまでの時間が非常に長く、その間、乗客という、人を安全に運んでもらうという大変重要かつ緊張を伴うような仕事に従事されるというような状況があり、また、他方で、別の状況として、例えば各地域で、街の中を走るような路線バスについては、朝と晩、通勤とか通学の時間帯に多くの人手がいるけれども、昼間の間はそれほどでもなく、ただ、そこを両方やってもらうと、出勤から退勤までの時間が長くて、その間に空白の時間が生じてしまう。結果として、労働から十分に開放される時間が確保できなくなってしまうようなケースが出てきてしまうのではないか。ただ、どうしてもお客さんの需要に対応していくと、朝晩がピークで、その間が少ないというような状況が出てきてしまう。というような状況にどう対応していくのかというような辺りがバス事業における課題になったものと思っております。
そのような中で、このバス部会におきましても、私のほかにもう一人いらっしゃった公益委員の先生から、医学的な見地からの貴重な御意見をいただき、また、何よりも労使、各側の委員がそれぞれの立場を踏まえつつ取りまとめに向けて真摯に御議論していただいたことで、このような取りまとめに至ったと認識しております。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。藤村委員、お願いいたします。
○藤村委員 どうもありがとうございます。
全体の取りまとめを行うとともに、トラックの部会の議論をしております。トラックの部会は、実は荷主との関係が非常に問題になっています。荷物を出すほうは発荷主、その荷物を受け取るほうが着荷主と言うのですが、特に着荷主のほうは時間を守ってくれないという。これによって、トラックの事業者が幾らちゃんと計画を立てても、時間どおり動かないということが発生していると。5分10分でないのですね。1時間2時間、場合によってはそれ以上平気で待たせると。例えば3時に届けてくれということで3時に行くと、今受け取れないから待っていてと。で、4時、5時、6時になってしまう。
これをどうするかというのは、実はトラックの事業者だけがどんなに努力しても解決できない部分があるのですね。ですから、国土交通省との連携とかも図りながら今議論しておりますが、ちょっと難航するかなあという状況でございます。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。関与された委員の皆様からも御発言いただきましたが、ほかにはいかがでしょうか。
それでは、事務局から何かございますか。
○監督課長 委員の皆様におかれましては、御指摘ありがとうございます。私どもといたしましては、この中間報告を踏まえまして、関係する告示・通達の検討や周知を図ってまいりたいと思います。また、周知に当たりましての留意点、あるいは今後の運営に当たっての御指摘等ございましたので、周知に当たりましては、しっかりと関係者に幅広く周知するとともに、今後の自動車の専門委員会、トラック作業部会の運営に当たりましては、御指摘を踏まえてしっかりと対応してまいりたいと思っております。
○荒木分科会長 ありがとうございます。それでは、トラックについてはまだ作業が残っているようですけれども、藤村委員長のもとで、何とぞよろしく進めていただければと存じます。
それでは、本議題につきましてはここまでとさせていただきます。
また説明者の交代がありますので、しばしお待ちください。
それでは続きまして、最後の議題、(4)資金移動業者の口座への賃金支払についてです。
なお、本議題は、金融庁の所管事項に関係することから、労働政策審議会運営規程第4条の規定に基づきまして、金融庁の担当官2名の方に、本日、オブザーバーとして御出席いただいております。ありがとうございます。
それでは、本議題につきまして事務局から説明をお願いいたします。
○賃金課長 賃金課長の佐藤でございます。
3月に引き続きまして、この議題のほう、御説明をさせていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。お手元の資料№7をお開けいただけますでしょうか。
1枚おめくりいただきまして、2ページ目でございます。こちらは、前回も前々回もお示しをしたものでございますけれども、今回の制度の骨子案ということで、大きく3点、これまで申し上げてまいりました。
まずは、同意を得た場合には、賃金の支払について、資金移動業の口座へもできるようにするというのが1つ目でございます。
2つ目でございますけれども、その資金移動業でも全てよいということではなくて、あくまで要件を満たす、厚生労働大臣が指定するものへの振込を認めるということで、具体的な指定の要件として、①から⑤まで全部で5点挙げさせていただいているところでございます。
3つ目でございますけれども、2つ目のところで業者の指定という仕組みが入りますので、これについて、まさに申請、指定について、申請ですとか指定の取消のようなものを定める必要があるというのが今回の制度の骨子案ということになろうかと思っております。
続きまして3ページ目からでございますが、こちらからが今回改めて新しくお出しする資料ということになろうかと思います。前回の議論の最後に、全体像がなかなか分かりにくいという御指摘をいただいておりました。そういった意味で、ある程度、先ほどの2ページ目の骨子案に基づいて、より制度の詳細のその全体像が分かりやすいようにという観点で、左側に、これまでこの審議会でいただいた主な御意見、それを踏まえて右側に、今回の仕組みとして我々としてどのようなことを考えているかというのをお示ししているものでございます。これが3ページ目から9ページ目までということになります。
10ページ以降は、これまでおつけしているような資料になりますので、御参考いただければと思っております。
それでは3ページ目に戻りまして、その制度の全体像というのをここから御説明させていただきたいと思っております。
まず3ページ目でございますけれども、先ほど申し上げました制度の骨子案の1つ目、労働者の同意を得た場合には、資金移動業者の口座に賃金の支払をすることができるようにするという件でございますけれども、ここについては、左側の「主な意見」ということで、これまで、大きく分けますと、まずは同意をする際に強制されないということが大事だろうというのが1点。それからもう一つは、これまでの預金口座とは違って、資金移動業という、預金とは全く違うところに入れるという意味で、その違いをしっかりと理解して同意するというのが必要なのではないかと。大きく申し上げるとこのようなことをこれまで御指摘いただいていたかと思っております。
そういった意味で、「具体的な検討の方向性」として、今回、右側のほうに○で6つほど挙げさせていただいておりますけれども、まず1つ目のところでございます。まず基本になりますが、労働者の同意を得た場合には、厚生労働大臣が指定するその資金移動業者の口座であって、かつ、その要件を満たすところに対して賃金支払ができるようにするというのが基本的な考え方でございます。
2つ目の点でございますけれども、まずは、賃金支払できるものとするということにしますが、その際、使用者は労働者に対して、銀行口座又は証券総合口座への賃金支払も併せて選択肢として提示する。括弧の中に書いてありますけれども、つまりは、使用者が労働者の同意を得ていただく場合に、労働者に対して選択肢を提示していただくわけですけれども、少なくとも現金か資金移動業者の口座かの2択で選択肢を示すというのは認められない。現金か資金移動業者の口座か、それに加えて銀行口座又は証券総合口座というのをちゃんと選択肢として示していただく必要があるようにするということがこの2つ目の○の前半部分でございます。
さらに後段部分でございますけれども、資金移動業者の口座への賃金支払について、しっかりと説明をした上で労働者の同意を得ていただく。ただ同意を得るということでなくて、同意を得る際にしっかりと必要な事項を説明していただくということにさせていただきたいと思っております。
その必要な事項とは何かということで、※印を下のところに書いておりますけれども、まさに資金移動業者の特徴ということになるかと思いますけれども、滞留規制ですとか破綻時の保証、それから不正引出があった際の保証、それから換金性の違いですとかアカウントの有効期限、こういったものを説明した上で労働者の同意を得ていただくというような仕組みにさせていただきたいと思っております。
次に3つ目の○でございますけれども、さらに、資金移動業者につきましても、資金移動業者1社ではなくて、なるべく複数としていただくということで、その便宜に十分配慮して定めていただくというのを、これは銀行なんかと並びで、通達で定めさせていただくということを考えてございます。
さらに4点目の○でございますけれども、ここにつきましては、まず、前回の議論の最後のところで私のほうから口頭でちょっと申し上げましたけれども、同意を得る際に、同意書の様式例のようなものを作成させていただくことを考えております。具体的には何を入れるかといいますと、まさに同意を取るときに必要な事項を説明していただく際に、破綻時の保証の方法ですとか、あとは労働者の利用実績を踏まえた給与振込額としていただく必要があることなどを記載した同意書の様式例を作成する。説明事項だけではなくて、その説明がちゃんと同意書の様式例にも書いてあるという形にさせていただきたいと思っております。また、その説明の内容につきましては相当専門的になることも考えられますので、場合によっては使用者から資金移動業者に委託するということも考えられるのではないかと思っております。
さらに5点目、6点目でございますけれども、5点目につきましては、先ほど申し上げました同意書の様式例の中に、もし強制された場合には、これは労働基準法違反になりますよということも同意書の様式例に記載させていただきますということを書かせていただいております。
最後、6点目でございますけれども、もし同意なくこういったことが行われた場合には、申告があった場合には労働基準監督署において適切に対応させていただきますと。当たり前の話でありますが、改めてそういう取扱いにするということを書かせていただいているところでございます。
続きまして、ページをおめくりいただきまして4ページ目になります。4ページ目は、先ほど申し上げました同意に関する全体像というのを3ページ目でお示ししましたけれども、その同意の部分について、さらに個別に様々な御指摘をこの分科会でいただいておりますので、それに対しての考え方というのを右側に書かせていただいているというものでございます。
まず、主な意見の1点目でございますけれども、資金移動業の口座というのは銀行口座と性質の違うものであって、そうした違いをちゃんと念頭に置いて使っていただかなくてはいけないのではないかということを御指摘いただいていたかと思います。そういったことを踏まえまして、右側でございますけれども、先ほど申し上げました同意書の様式例に、口座の性質ですとか使い方みたいなものを記載して、ちゃんと資金決済法で想定した為替取引の範囲内で利用していただくというようなことを推進したいと考えてございます。
それから、2つ目の○でございますけれども、同意書の様式例だけではなくて、例えばでございますが、賃金の支払について大部分を銀行口座に振込をし、一部の金額を資金移動業者の口座に振り込むと、そういった使い方の例なんかを記載したリーフレットなどを作成して周知させていただきたいと考えてございます。
次に、これまでいただいていた御意見の2点目でございますけれども、外国人労働者でこれを使われる方もいらっしゃることがあるとすると、外国人労働者でも理解できるようにしていただく必要があるということ。それから、なかなか制度が複雑になってまいりますので、使用者もなるべく分かりやすいように使用者への周知もいろいろと工夫してほしい、検討してほしいという御意見をいただいていたかと思っております。
そして、右側のところでございますが、まず外国人につきましては、外国人の方もちゃんと分かっていただけるように、先ほど申し上げました労働者の同意書ですとか周知のパンフレットのようなものについて、なるべく多言語になるように外国語のバージョンというのも作成したいと考えてございます。
次に2点目でございますけれども、使用者の方々にもしっかりと制度を理解していただいてお使いいただくということが必要になってくると思いますので、制度ができた後になるかとは思いますけれども、パンフレットなど、どのような周知方法が効果的かというのを検討させていただいて、しっかり我々としても制度の周知を使用者の方々にもさせていただければと思っております。
さらに、4ページ目の3点目でございますけれども、こちらは、事業場内ルールを設定する場合に、労使協定を締結する取扱いとすることが必要ではないかという御意見をいただいておりました。これはこのとおりかと思っておりまして、事業場内でのルールを設定する際には、銀行口座と同様に、どの労働者の範囲、それから、対象となる賃金の範囲や金額、それから、資金移動業者の範囲、それから、いつからやるかなどについて労使協定を締結していただくということになろうかと思っております。
最後、個別のところの4点目でございますけれども、労働者から同意を得ていただく際には、振込エラー対策の観点などから、必要な情報を確認する必要があるということと、回避先というのをあらかじめ設定しておくことが必要なのではないかということで、これもまさにそのとおりということで、右側に書いてありますけれども、まずは労働者から同意を取っていただく際には、銀行口座と同様でございますが、どの賃金を幾ら入れるのか、どこの業者のどこの口座に入れるのか、いつから入れるのかというのは当然確認していただく必要がありますけれども、さらに資金移動業者の場合は、これに加えて、資金移動業者固有の事項といたしまして、まずは破綻時の保証の受取方法ですとか、あとは振込エラー対策の観点から必要な労働者の情報、上限を超える場合の受取方法、代替口座などについて、銀行口座と比べて付加的な事項を確認する必要があると考えてございます。
ここまでが論点の1点目、労働者の同意に関わって、我々として今考えている事項ということになります。
次の5ページにまいりまして、ここからが論点の2つ目でございます指定要件に関わる部分ということになります。まず、指定要件の一番上のところでございますけれども、これまでこの分科会でるる御意見いただいてまいりました。やはり労働者の保護に欠けることがないように、銀行口座と同等又は同程度の仕組みとすることが必要だろうということで、まさにこれまで御意見いただいたとおり、代替措置含めて銀行口座と同等又は同程度の労働者の保護を図られるようにするという基本的な考え方でやっていきたいと考えてございます。
2点目でございますけれども、前回まさに御議論いただきました資金移動業は、昨年の法改正で1種、2種、3種とできておりますけれども、この1種、2種、3種のうちどれを対象にするのかということでございます。
右側に書いてございますけれども、まず、第1種の高額類型というものは、資金を受け入れる際に、既にどこにいつ幾ら送金するかというのが決まっていないと受け入れられないという仕組みでございますので、給与の振込口座とするには不適当ということかと思ってございます。
また、第3種の少額類型でございますけれども、こちらにつきましては、資金の保全方法として、供託又は供託に類似の仕組みだけでなくて、預金管理という、より簡易な形も可能となっているということを踏まえますと、1種、3種はやはり賃金支払の口座の対象としては不適切なのではないかということで、1種、2種、3種ございますが、賃金支払口座は2種に限定するという形にさせていただければと思っています。
さらに3点目でございますけれども、ここが一番大事なところかと思いますけれども、仮に資金移動業者が破綻した場合に、賃金支払口座の残高全額が支払われることが必要ではないかと。特に労側の皆様からは強く御主張いただいてきたところでございます。
今回の資料にも保証スキームをおつけしておりますけれども、今のところ我々がお示しできている保証スキームというのは、もちろん供託というところが基本にありますので、そこでほぼ全額とはなっておりますけれども、その上で、数日以内に100万を上限として保証するというスキームをお示ししているところでございます。
ただ、ここにつきまして、まだこれでも不十分ということで御意見をいただいている中で、本日具体的な案をここのところでお示しできる状態になっていないというのは非常に心苦しいところでありますけれども、ここについて、労働者保護の観点から保証を強化する方策を引き続き検討させていただきたいと考えてございます。
また、5ページ目の※のところでございますけれども、資金移動業者の指定要件といたしましては、破綻時に十分な額が早期に労働者に支払われる必要があるとこれまで申し上げてまいりましたけれども、その保証スキームにつきましては、今回の資料の41ページ目をちょっと御覧いただければと思いますけれども、これまでこの資金保全のスキームの例として、保証機関と保険会社が入るスキームというのを御説明してまいったところでございます。ただ、この保証機関とか保険会社というのが、絶対に保証機関や保険会社が入らないといけないかというと、様々なバリエーションがあり得ると思っています。
この下の、細かい字で恐縮ですけれども、注のところにございますが、例えば銀行から直接給与残高を支払うスキームを考えている事業者さんもいらっしゃると聞いてございますので、どういう会社が入るかというのは、保証機関が絶対入るというものではなくて、いろんな業者さんが入る可能性があるということかと思っております。
その上で、また資料の5ページ目にちょっとお戻りいただければと思います。※印の続きでございます。必ずしも保証機関が介在する必要はなく、例えば銀行が保証するなどの方法も考えられますが、いずれにしても、破綻時の保証がそれぞれの資金移動業者についてどのようになっているのかというのをちゃんと労働者が理解した上で同意できるという仕組みが必要だと思っておりますので、先ほども御説明しましたとおり、同意書の様式例の中でそのようなことを書かせていただきたいと思ってございます。
以上が指定要件の1つ目の保証に関わる部分ということになります。
ページをおめくりいただきまして、6ページ目を御覧いただけますでしょうか。6ページ目の上のところになりますけれども、今度は、要件で言いますところの2点目になります。不正引出があった場合の補償ということになります。ここにつきましては、インターネット・バンキングが全銀協の申合せでいろいろとなされているということを踏まえて、これと同様、同等となるようにすべきという御意見をこれまでいただいてきたところでございます。
ここにつきまして、まず○の1点目でございますけれども、現在、資金移動業のほうにつきましても資金決済業協会のほうで様々取組が行われておりまして、基本的には、インターネット・バンキングにおける全銀協申し合わせと大体そろっているというのが今の実態かと思っております。
ちょっとずれているところといたしまして、1つ目の○のところでございますが、全銀協申合せのインターネット・バンキングの関係では、損害発生時からの通知期限について、30日は確保してくださいということになってございますが、資金移動業についてはそのようなものが特にないという状況にございました。したがいまして、この点につきましては、2階建ての部分のほうで全銀協のインターネット・バンキング並びとするように、2階建てのところで、賃金支払口座にする場合にはそういう要件を満たしていただく必要があるということにさせていただきたいと考えてございます。
次に2点目の○でございますけれども、インターネット・バンキングでは、過失の場合は個別対応となってございます。労働者に過失がある場合には個別の対応となってございますので、まず、資金移動業者で労働者に過失があった場合に、一律に補償しないとなっている事業者については指定しないということになろうかと思ってございます。
さらに、ここのところにつきましては、業者の指定要件ということではありませんけれども、全銀協がインターネット・バンキングに関しまして様々取組を行われていると御指摘をいただいております。資料で申し上げますと29ページ目と30ページ目におつけしていますが、詳細な説明はちょっと割愛させていただきますけれども、29ページ目はまさに補償が減額される場合、それから補償しないような取扱いとなるその事例について全銀協がホームページで公表されていらっしゃいます。
さらに30ページ目は、四半期ごとに具体的にどの程度の件数、金額が、不正取引があって払戻しをしているかという実績について全銀協さんで取りまとめられてホームページで公表されていると承知しております。
すみません、また6ページ目に戻っていただけますでしょうか。
6ページ目の上の2つ目の○の関係でございますけれども、先ほど、29ページ目、30ページ目で御覧いただきましたとおり、全銀協さんが取組をされていることがございますけれども、その資金決済業協会においても、その資金移動業に関して同様なことができないかということで御相談させていただいておりまして、現在、資金決済業協会さんのほうで補償の状況などの公表に関しまして検討中と伺ってございます。ここについても、また状況の進捗があれば皆様に御報告させていただきたいと思ってございます。
そして6ページ目の下でございますけれども、要件の3つ目になりますが、換金性のところでございます。まさに現金払いの原則との関係で求められている部分になりますけれども、ここについては、右側のところでございます。これはこれまでるる御説明してきたとおりかと思いますが、少なくとも1円単位の移動、受取ができて、かつ、少なくとも毎月1回は手数料を負担なく受取ができるようにする必要があると考えてございます。
さらに次の7ページ目でございます。一番上の四角が、要件でいうところの④となりますけれども、報告体制に係る部分ということになります。報告体制については、右側のほう、1つ目の○でございますけれども、これもこれまでこの場では御説明してきたところでありますが、資金移動業者だけではなくて、保証スキームに関わります保証会社、保険会社に関しましても、厚生労働大臣に報告できる体制というのを求めることにさせていただきたいと考えてございます。それをどうやって求めるのかというのがその続きで書いてありますけれども、資金移動業者が申請する際に、保証スキームに関わる保証会社、保険会社からも同意書を出していただいて、それに基づいて報告していただくという形にさせていただきたいと思っております。
その下の○のところでございますけれども、申請を受けて指定するとき以外も、その指定した後につきましても、まさに厚生労働省におきまして、報告に基づいて資金移動業者、それから資金保全に関わる保証会社、保険会社などの業務の実施状況ですとか財務状況について確認をさせていただきたいと思っております。こうした方が報告を行わないような場合には、指定取消も含めて検討させていただくということになろうかと思っております。
さらに、その次の技術的能力・社会的信用というところになります。ここは要件の⑤ということになりますけれども、まず、その1つ目でございます。賃金支払に当たっては振込エラー対策を行うことが必要という御意見をいただいておりましたが、ここにつきましても、まず資金移動業者の適格要件といたしまして、賃金支払に当たって入金できない場合の振込エラー対策ですとか、あとは労働者がこの口座に入れてくれということで口座を指定するわけでございますけれども、そういった口座が適切か、本当に実在する口座なのかとか、あとは賃金支払口座の要件を満たすのかなどの確認をしていただくというのが要件となろうかと思っています。
続きまして、技術的能力・社会的信用の2つ目のところでございますけれども、資金決済法に基づく行政処分、具体的には業務改善命令と業務停止命令ということになろうかと思いますけれども、こうしたもの、まさに1階建て部分の業務改善命令や業務停止命令を受けていないということも含めて、2階建て部分の指定要件とさせていただきたいと考えてございます。
さらにその下でございます。今度は個人情報の関係になろうかと思います。これまで申し上げてまいりましたとおり、資金移動業者につきましては、個人情報保護法令に基づきまして、各種ガイドラインもありますので、それに基づいて、当然、各社、法に基づく対応をとっていただいているということだと思っております。
ただ、それでも本当に大丈夫かという御指摘をこの間ずっといただいてまいりましたので、これに加えてというところでございますけれども、個人情報の厳格な取扱いについて、第三者機関による認証を取得しているというのを指定要件とさせていただくことを考えているところでございます。
ここまでが大きな2つ目の指定要件に関する部分の全体像ということになろうかと思います。
続きまして8ページ目になります。今度は、骨子の③の指定や指定取消に係る部分ということになります。
まず1点目でございますけれども、これも前回も申し上げましたけれども、指定要件を満たさなくなった場合に、すぐ指定取消をするかというと、既に払込みが行われているということを踏まえますと、満たさなくなった場合に自動的に指定を取消するというのではなく、その要件がどのぐらい満たされていないのか、それから、改善の見込みがどのぐらいあるのかというのも含めて総合的に判断するというのが必要だろうと考えてございます。
次の箱でございますけれども、2階部分の指定要件をちゃんと満たしているのかどうかということについて、厚生労働省でちゃんと把握できるのかという御指摘をいただいてございます。ここにつきましては、右側の1つ目の○でありますけれども、指定に当たっては、業者から提出された書類を確認するだけではなくて、資金移動業者、それから、資金保全に関わる保証会社、保険会社含めて必要に応じてヒアリングさせていただきたいと考えてございます。
また、その際、保証会社等が一時的な資金需要にどのように対応するのか、例えばということで書いてございますが、一時的に必要な金額を調達する契約というのを金融機関と締結するなど、このような形で措置をされているところが多くなるのではないかと思いますけれども、どういう形で措置をしているのか、それは適切かということについて、しっかり審査を行い、指定後においても定期的にそれが守られているか確認をさせていただきたいと思っております。また、具体的な指定要件が決定され次第、必要な体制というのも確保してまいりたいと思っております。
その下でございますけれども、金融庁さんとの連携ということでございます。1階建て部分、2階建て部分とございますので、2階建て部分につきましては、基本的に厚生労働省において審査・対応するというのは当然のことかと思っております。一方で、先ほども指定要件の中で1階建て部分の業務改善命令とか業務停止命令がされていないというのを入れさせていただきたいと申し上げましたとおり、2階建てのところでもやはり1階建てとの連携というのが必要になってくるかと思います。
指定要件が決まらない限り、具体的にどういう場面でどう連携するかというのを申し上げるのもなかなか難しいところはございますけれども、少なくとも下の2つのポツのところは連携としてさせていただくということかと思っています。
1つ目でございますけれども、指定時、それから指定後の定期的な報告の際に、資金移動業者から厚生労働省に提出された内容について、1階建て部分の業務改善命令ですとか業務停止命令がされていないかということなど、指定要件に関連する事項を確認させていただくというもの。それから、指定を受けた資金移動業者に対して金融庁さんのほうが業務改善命令とか業務停止命令を行う際、それから、その資金移動業を廃止する際についても情報連携をさせていただくということかと思ってございます。
さらにもう1ページ目でございます。ここからは、制度そのものと申しますよりは、制度の普及の観点から、このような形がないとなかなか制度が普及しないのではないかということで、この間、どちらかというと使用者側の皆様からいただいていた御意見ということになろうかと思います。
まず1点目でございますけれども、給与専用アカウントのようなものを設けるというのが必要なのではないかということでございます。これまで御説明してまいりましたとおり、我々として、給与専用アカウントのようなものを絶対設けなくてはいけないという形には、現在のところするつもりはございません。一方で、そういったものをサービスの一環として資金移動業者のほうで設けていただくというのはあり得ることだと思いますので、サービスの一環としてそういうことは各社の判断でやっていただければいいのかなと考えてございます。
次の2つ目の箱になりますけれども、実際に行われている銀行振込の支払実務となるべく変わらない形にならないとなかなか参入がしにくい。特に大きな企業さんなんかはそうなのかもしれませんけれども、これにつきまして、右側でございますが、資金移動業者さんの全銀システム参入につきましては、別途、今検討されていると承知しております。資金移動業者の口座への賃金支払の実務につきましては、結局、制度の具体的な内容というのが決定され次第、多分、個々の資金移動業者さんにおいて使用者さんが導入しやすいシステムとなるように検討されるということが想定されます。多分、使用者の方々によって、どれが一番便利かというのは様々なことがあろうかと思いますので、資金移動業者さんのほうでも様々なバリエーションを用意していただくということになろうかと思っております。
いずれにしましても、各企業さんにおきまして、実際の実務、それから手数料、それから労働者のニーズなんかも踏まえつつ、導入するか否かというのを選択していただくということかと思っております。
さらに9ページ目の最後になりますけれども、資金移動業者から厚生労働大臣への報告などについて、なるべく周知、情報の公表というのをしてほしいということかと思っております。
まず1つ目の○でございますけれども、厚生労働大臣による指定の際には、どの業者が指定されたのかという意味で、資金移動業者の業者名というのが必須になりますけれども、それだけではなくて、その業者の保証スキームに関する情報ですとか、あとは、賃金支払の対象となる口座の種類、どのようなサービス名と申しましょうか、その資金移動業者の中のどのサービスがそこの賃金支払の対象となるのかという辺りも含めて公表させていただくというのが必要なのかなと考えてございます。
そして2点目でございますけれども、金融庁さんから業務改善命令ですとか業務停止命令が出た場合には、金融庁さんだけではなくて、厚生労働省のほうでもウェブサイトで周知をさせていただきたいと思っておりまして、このほかのことにつきましても、具体的な報告事項が決まり次第検討させていただきたいと考えているところでございます。
それから、最後になりますけれども、前回、新たなニーズ調査のようなものがないのかという御指摘をいただいていたかと思います。ちょっとここの詳細な御説明は割愛させていただきますけれども、資料の39ページ目に、その後行われたものとして、ちょっと我々が探したものの中でニーズ調査として見つかったものについておつけしておりますので、お時間があれば御覧いただければと思っております。
私からの説明は以上になります。
○荒木分科会長 ありがとうございました。本議題につきましては、本日は時間が限られておりますので、次回以降の分科会でも引き続き議論してまいりたいと考えております。もしこの場で何かということがあれば承りますが、いかがでしょうか。
川野委員、お願いします。
○川野委員 1点は、第二種に限定したということで、賃金決済法における100万円を超える資金については滞留させない体制整備が求められているということは記載のとおりだと思いますが、実質は、その100万円を超える資金の滞留が可能であるというような認識を持っています。資料には、資金保全における保証を強化する方策を検討中と書いてありますが、滞留防止に向けて保証強化をどのような方向で検討することを考えておられるのかというのが1点目の滞留に関する質問です。
もう一つ、アカウントのことが記載されています。アカウントの有効期限について、資金移動業者における実態をお聞かせいただきたいということと、有効期限について、検討の方向性をどのように考えておられるのかということについてお示しいただければと思います。
以上です。
○賃金課長 ありがとうございます。
まず1点目でございますけれども、確かに実態として100万を超えてたまり続ける可能性というのは、1階建て部分ではあり得るということかと思っております。なるべくそうならないようにという努力は各社さんされていると思いますが。その上で、具体的にどんな検討を今しているのかということでございますけれども、先ほどの説明でもちょっと申し上げましたけれども、今この時点で具体的にこうというのは申し上げられないのが大変申し訳ないところではありますけれども、そこについて、より少しでも補償のカバーを広げられるようなやり方について、今いろんなところと調整させていただいているところと御理解いただければと思います。
また、アカウントの有効期限のところでございますけれども、アカウントの有効期限につきましては、各社さん、大どころであれば、大体最後の取引から10年とか、あと5年というところが多くなっておりますけれども、会社によっては6か月とかいうところもございまして、一定でないというのが正直なところかと思っております。
ここについて、この場で今まで余り明確な議論というのは出てきておりませんけれども、そこを2階建て部分で制限をつけるべきだということであればここで御議論いただいて、そういったこともあり得るのかなと考えてございます。
○荒木分科会長 冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員
まず、資料に関しまして、前回より整理していただいていることについては感謝申し上げたいと思います。その上で、先ほど御説明いただいたように、不正引出の対応であったり、資金保全の部分であったり、まだ詰めている最中ということもございました。また、保証機関のところも、記載していただいているとおり、審査を行うということでございますけれども、厚労省でどのように審査できるかというところも含めてまだまだ詰めていただく必要があるかと思います。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、定刻になりましたので、本日の議事はここまでとさせていただきます。
最後に、次回の日程について、事務局からお願いします。
○労働条件企画専門官 次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木分科会長 本日は、長時間、多岐にわたる論点につきまして御議論いただき、ありがとうございました。
これで分科会は終了とさせていただきます。