第5回労働政策審議会労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会トラック作業部会(議事録)

1 日時

令和4年5月19日(木)10時00分~11時55分

2 場所

航空会館 201号室
(東京都港区新橋1-18-1 2階)

3 出席委員

公益代表委員
立教大学経済学部教授 首藤若菜
法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授 藤村博之
労働者代表委員
全国交通運輸労働組合総連合トラック部会事務局長 貫正和
全日本運輸産業労働組合連合会中央副執行委員長 世永正伸
使用者代表委員
日本通運株式会社取締役執行役員 加藤憲治
公益社団法人全日本トラック協会副会長、松浦通運株式会社代表取締役 馬渡雅敏

4 議題

  1. (1)改善基告示の見直しについて
  2. (2)その他

5 議事

議事内容
 ○副主任中央労働基準監察監督官 定刻になりましたので、ただいまから第5回自動車運転者労働時間等専門委員会トラック作業部会を開催します。本日は御欠席の委員はおられません。定足数が満たされていることを御報告申し上げます。
 事務局で異動がありましたので、御紹介します。過重労働特別対策室長の岡田です。副主任中央労働基準監察監督官の加納です。よろしくお願いいたします。
 また、国土交通省からオブザーバーとして、自動車局安全政策課 蛯原課長補佐、自動車局貨物課トラック事業適正課対策室 齋藤室長に御出席いただいています。よろしくお願いいたします。
 それではカメラ撮りについては、ここまでとさせていただきます。これ以降の進行は藤村部会長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○藤村部会長 皆様、おはようございます。部会長の藤村です。バスとハイヤー・タクシーが決着をみせ、あとはトラックということで鋭意、議論をしていきたいと思います。
 では、本日の議題(1)「改善基準告示の見直しについて」について、事務局から説明をお願いいたします。
○過重労働特別対策室長 事務局より本日の資料について御説明します。まずは、資料1の「改善基準告示の見直しについて」です。資料1の構成としては、各項目ごとに現行の規定、前回までの主な御意見、最後に(参考)として、3月28日に中間とりまとめが行われましたハイヤー・タクシー及びバスの見直し案を付けているところです。現行の規定と、ハイヤー・タクシー及びバスの見直し案については、これまでの説明と重複しますので割愛させていただき、本日は労使の「主なご意見」を中心に御説明します。
 1ページ目の「拘束時間」を御覧ください。主な御意見として、労側委員から、1か月の拘束時間は275時間とし、年3,300時間を超えない範囲で、年6回を限度に294時間まで延長するよう見直してはどうか。脳・心の認定基準を踏まえ、時間外・休日労働が月80時間・100時間を超えない範囲で見直しを図るべきではないか。また、令和3年の実態調査結果は、令和2年に比べて時間がおおむね減少しており、多くの事業者が3,300時間未満で運行できていることが改めて立証されたという認識。医師の時間外労働の上限規制が時間外労働・休日労働を含めて年960時間であることにも留意すべきという御意見がありました。
 一方、使側委員からは、1か月の拘束時間は293時間を維持し、年3,408時間を超えない範囲で、年6回を限度に320時間まで延長するよう見直してはどうか。年960時間の上限規制に休日労働は含まれないので、月1回の休日労働を前提とすると、年の拘束時間は3,408時間が妥当という御意見がありました。
 次に、3ページ目の「1日の拘束時間、休息期間」を御覧ください。主な御意見として、労側委員から、1日の休息期間はバスやタクシーと同様に、11時間を中心に見直しの検討を行うべきではないかという御意見がありました。
 一方、使側委員からは1日の拘束時間は13時間(最大16時間)とし、休息期間は8時間の現行維持としてはどうか。また、例えば宿泊を伴う運行は、1日の最大拘束時間を18時間とし、休息期間を11時間と設定する等、運行実態に応じてメリハリをつけた見直しの検討も必要という御意見がありました。
 次に5ページ目の「運転時間、連続運転時間」を御覧ください。主な御意見として、労側委員から、運転時間及び連続運転時間は、現行どおりとすべき。トラックでは、運転離脱の時間を活用して荷積み・荷卸しを行わせることが通例なので、全く休憩を取らせずに働かせることもある。改善基準告示において労働基準法上の休憩の概念を明記してもらいたいという御意見がありました。
 一方、使側委員からは、拘束時間や休息期間を定めるのであれば、運転時間は廃止すべき。連続運転時間は、高速道路やサービスエリア等の混雑状況を踏まえると、5時間に緩和すべきではないか。運転離脱も、ドライバーがメリハリをつけられるように5分に緩和するのが妥当という御意見がありました。
 次に、「特例」ですが、8ページ目を御覧ください。主な御意見として、労側委員から、分割休息特例はバスと同様の見直しを行うべきではないかという御意見がありました。
 一方、使側委員からは、分割休息特例は分割する休息の単位を2時間若しくは3時間、合計した休息期間を8時間に緩和してもらいたい。また、全勤務回数の2分の1を限度とするという制限は外してもらいたい。2人乗務特例は、基本的には現行どおりと考えるが、特に馬匹輸送は、デリケートで特殊なケース。そういった運行については、車両内にベッドがあって、ドライバーがしっかり休めるような状況であれば、運行中に車両内ベッドで休んでいる時間も休息期間として取り扱うなど緩和してもらいたい。隔日勤務特例は、現行どおりが妥当。フェリー特例は、駐車場で休んでいる時間も休息期間として取り扱うよう、緩和してもらいたいという御意見がありました。
 次に、10ページ目の「その他」を御覧ください。主な御意見として、労側委員から、荷主都合による遅延を例外的な取扱いとすることは、全ての規制が骨抜きとなってしまうので賛成できない。そもそも、荷待ちも、発荷主による荷待ちなのか、元請運送事業者による荷待ちなのか、よく分からない。実態がよく分からない状態で、例外的な取扱いを認めるべきか検討すべきではないという御意見がありました。
 一方で、使側委員からは、例外的な取扱いについては、災害や事故と同様、荷主都合による遅延も、拘束時間や運転時間等の規制から外してもらいたい。日報に書き込んだ荷待ち時間をもとに、例外的な取扱いを認める運用を検討してもらいたいという御意見がありました。資料1は以上です。
 次に資料2、検討の視点について御説明します。1ページ目を御覧ください。まず水色の枠ですが、上限規制の適用などの視点として、自動車運転業務は、令和6年4月以降、新たに時間外労働の上限規制が適用されること (原則は月45時間、年360時間まで。臨時的特別な事情がある場合に限り、年960時間まで。) 。これらについて、違反に対しては罰則の適用があります。また、労働基準法第36条に基づく指針が適用され、36協定の内容をこの指針に適合したものとしなければならないということがあります。
 指針の内容としては、第2条で、時間外労働・休日労働は必要最小限にとどめること。第3条で、労働時間が長くなるほど過労死との関連性が強まることに留意する必要があること。第5条で、臨時的な特別の事情がなければ、限度時間を超えることはできず、この場合も時間外労働は限度時間にできる限り近づけるよう努めること。第7条で、休日労働の日数をできる限り少なくするよう努めることとなっています。
 次に青色の枠ですが、脳・心臓疾患の労災認定基準を踏まえた視点として、脳・心臓疾患の労災認定基準では発症前1か月間に100時間又は2~6か月平均で月80時間を超える時間外・休日労働が認められる場合は、業務と発症との関連性は強いと評価できるとしていること。また、同認定基準において、長期間(発症前おおむね6か月間)の過重業務の判断に当たっては、睡眠時間の確保の観点から、「勤務間インターバル」がおおむね11時間未満の勤務の有無、時間数、頻度、連続性等について検討し、評価することとされています。
 次に2ページ目の赤色の枠ですが、その他の視点として、働き方改革関連法の附帯決議において、改善基準告示について過労死等防止の観点から総拘束時間等の改善を行うこととされていること。また、見直しに当たっては、自動車運転者について、早朝・深夜の勤務、交代制勤務、宿泊を伴う勤務など多様な勤務実態や危険物の配送など、その業務の特性を十分に踏まえて検討し、勤務実態等に応じた基準を定めることが求められていること。「道路貨物運送業」、「貨物自動車運転者」は、脳・心臓疾患の労災請求件数、支給決定件数ともに、最も多くなっており、支給決定件数と雇用者数を対比すると、「道路貨物運送業」は全業種の9.0倍となっていること。令和3年の実態調査においては、令和元年に比べて労働時間等はおおむね改善している状況がみられるが、発荷主の種類、運行種別、地域によって異なる傾向もみられること、とあります。資料2は以上です。
 次に、参考資料1の「改善基準告示の見直しについて」については、新しく追加、修正した部分のみを御説明します。まず1ページ目、「トラック運送事業者数の推移」を追加しています。このグラフのとおり、平成2年の貨物自動車運送事業法によって、免許制から許可制への規制緩和がなされたことにより、事業者数は平成30年比で約1.5倍となっています。
 次の3ページ目に、「トラック運転者の平均年齢の推移」も追加しています。ここでは令和2年と平成元年を比較しています。平成元年に比べ、令和2年は全体的に平均年齢が上昇していますが、特にトラック運転者については全産業平均と比べて平均年齢の上昇幅が約2倍と大きくなっており、高年齢化が進んでいます。
 次に、9ページ目の「睡眠時間」も追加しています。報告書等における睡眠時間に関する記載から、睡眠時間が6時間を下回る場合、疲労回復、身体への影響、事故の発生等に一定程度影響を及ぼす傾向が見られます。報告書等の具体的な記載内容は、下の表にお示ししているとおりです。
 次に11ページ目の「適用猶予業種における時間外労働の上限規制」を追加しています。下の表の黄色い部分にありますとおり、自動車運転者については令和6年4月以降、年960時間の上限規制の適用を受けることとなりますが、一般労働者に適用される45時間超えの上限回数(6か月まで)、単月上限(100時間未満)、複数月平均上限(80時間以内)については適用がないところです。
 次に、15ページ目の「休息期間と睡眠時間」です。こちらは以前お出しした表について、睡眠時間の区切りを1時間ごと、休息期間の区切りを「○○時間超から○○時間以下」から「○○時間以上、○○時間未満」に変更したものです。これは改善基準告示の一日の休息期間の定め方である「継続8時間以上」に合わせたものです。「休息期間が8時間未満」と回答した自動車運転者のうち、最も高い割合は「睡眠時間5時間未満」であり、「休息期間が8時間以上~11時間未満」と回答した場合は、「睡眠時間6時間以上7時間未満」であった。また、「休息期間が11時間以上」と回答した場合は、「睡眠時間7時間以上8時間未満」が最も高い割合でした。このように休息期間が短くなれば、睡眠時間も短くなる傾向にあります。
 最後に28ページです。(参考)「軽微な移動(バス)」を追加しています。今般、バスにおいて新設された軽微な移動について、その考え方を詳しく説明したものです。下の考え方の四角囲みにありますとおり、1ポツ目の一旦駐車又は停車した状態から移動を開始する場合に限るということや、4ポツ目の連続運転時間からは除外できるが、労働時間には該当し、拘束時間及び運転時間の規制の適用に当たっては除外されないといったこと留意をしていただく必要があります。
この図で申し上げますと、現行では、中断後に移動する場合は、軽微であっても運転時間となるため最後の10分が連続運転時間の違反となりますが、見直し後は軽微な移動時間は連続運転時間からは除外できるため違反とはなりません。参考資料1は以上です。
 次に、参考資料2、脳・心臓疾患の労災支給決定件数について御説明します。1ページ目の「脳・心臓疾患の業種別支給決定件数」を御覧ください。令和2年度の脳・心臓疾患の支給決定件数に占める道路貨物運送業の割合は、28.3%と全業種で最も高くなっています。また、業種の中分類の集計を開始した平成21年度は22.1%であり、件数としては道路貨物運送業も65件から55件に減少していますが、全業種の件数の減少のほうが大きいため、道路貨物運送業の比率が上昇している状況です。
 2ページ目の「脳・心臓疾患の職種別支給決定件数」を御覧ください。令和2年度の脳・心臓疾患の支給決定件数に占める貨物自動車運転者の割合は、27.3%と全職種で最も高くなっています。また21年度は22.1%であり、こちらも貨物自動車運転者の件数自体は減っていますが、全職種の件数の減少のほうが大きいため、貨物自動車運転者の比率が上がっているという状況です。
 3ページ目の「脳・心臓疾患の業種別支給決定件数の雇用者に対する割合」を御覧ください。全業種の雇用者に対する脳・心臓疾患の労災支給決定件数の割合を1としたときの業種別の比率です。令和2年度においては、道路貨物運送業は全業種の9.0倍となっています。平成21年度は7.0倍ですので、比率が上昇している状況にあります。参考資料2については以上です。
 参考資料3、4、6は、これまでの資料と同様ですので、説明は省略させていただきます。
 続きまして、参考資料5の「取引環境適正のための荷主対策・連携」の変更点について、国土交通省から御説明いただきます。
○国土交通省オブザーバー 国土交通省自動車局貨物課の齋藤です。変更になっている部分を説明させていただきます。ページで言いますと7ページ、それから11ページ、12ページについて、前回時より新たに追加をしている資料ですが、これまでも中央協議会等の場でも提示をしている資料ですので、説明は省かせていただきます。
 それから、5ページ目は、「ホワイト物流」の自主行動宣言の提出状況という資料になるのですが、数字をリバイスしています。前回は令和3年10月末という数字になっていましたが、今回は令和4年3月末で1,388社ということで、前回時よりも約100社ほど増加しているという状況の資料です。私からは以上です。
○藤村部会長 以上、説明を頂き、ありがとうございました。それでは事務局から説明のありました検討の視点を踏まえまして御議論いただきたいと思います。使用者側、労働側、それぞれから基本的な考え方について、お示しいただきたいと思います。
バスとハイヤー・タクシーが決着をし、それを見ながら私どもトラックも議論していく必要があるわけですが、まずは基本的な考え方の部分について、使用者側からお願いします。馬渡委員、どうぞ。
○馬渡委員 それでは若干、述べさせていただきます。基本的な考え方は、変わっていないです。今、脳疾患、心疾患の部分も御説明ありましたが、悪くなっているという御説明でしたが、我々経営者側も労働者側のほうも多分、運転手さんたちに健康に過ごしてほしいと、ここの部分というのは変わらないと思いますし、昨今の人手不足を考えると、なるだけ健康で長く働いていただきたいというのは、どちらも思っている部分だと思います。
 あとは、アプローチの違いがあるのかなと、何度も申し上げて、藤村先生や首藤先生には申し訳ないのですが、同じような思いを持っているのに、やはり私どもは現場の実態を踏まえると、それを実現したい。今回の改善基準告示をもし厳しくしようというお考えでいらっしゃるのだったら、それは即、現場の実態として反映してほしいということです。以前、商習慣のほうを変えたほうがいいのではないかという有り難い御意見を頂いたのですが、我々としては、商習慣が変わるような施策を、何とか今回を機に実態がきちんと、こういう改善基準告示を守れるような形にしてほしいと思っていますので、それを厚労省さんも公益委員の先生方にもお考えいただいて、そのような商習慣の変わることが定着するまでの間は暫定的に、使用者側のほうとしてはこういう時間でどうですかというようなことを申し上げたいと思っています。使用者側で一番問題視しているのは、来年の4月から月60時間を超えると残業代を5割増しで払いなさいと、これはもし払わない会社があれば問答無用で払いなさいという命令が来るだけですので、60時間を超えないようにしようというインセンティブは働いていると考えていただくと、720時間の議論というのは意外と早くしたいなと考えているところです。でも、実態として今、荷主さんと自主的に我々もアクションプランを定めて、きちんとこういう時間でいかないと駄目ですよと、特に単独荷主さんの場合は、来年60時間を超えると5割増し分をきちんと払っていただかなければいけないというお話をしていますが、そういう荷主さんのほうも、自分のところは守るが、あなたたちは月曜から土曜まで働いてねと、時間が長くなっても我々は週休3日で休むけれども、あなたたちは週6日になりますから土曜日も働いてくださいと言われることがまだまだ多い業界ですので、そういうことを考えると、商習慣が変わるまでの間というのは、なかなか厳しい規定で、それから改善基準告示義務違反については、その違反の状態になるのを我々は避けたいなと思っていますので、何度も繰り返して申し訳ないのですが、やはり脳疾患や心疾患の対策をするということは、荷主さん対策をするというように考えていただきたいなと思います。特に、契約で結ばれていない着荷主に対して、我々の労働時間の問題や改善基準告示の問題を守らないと、脳疾患、心疾患がこんなに多いのですと、いかにして御理解を頂くか。御理解をいただくための時間が必要なのかなと、商習慣が変わってくるまでの時間が必要なのかなと思っています。ただ、そういう実態をきちっと改善基準告示が変わったら、それをみんな守りましょうという形で、実態がきちんと守れる状態に何とかしたいと思っている思いは同じだと思いますので、そのようにして、いろいろな議論は戦わせたいと思っています。
○藤村部会長 ありがとうございます。では労働側委員、どうぞ。
○世永委員 今、使側のほうから商慣行が変わるまでということを言われたのですが、変わるのは今年の7月、8月に取りまとめてから、タイトなスケジュールですが、その中で是非やっていただきたいということです。2024年4月1日実施は変えるつもりはありませんし、そういうことで取り組んでいるかと思います。そこは曲げないということです。
 それと、検討の視点のほうにあったとおり、なぜ、今この議論をしているかということを改めて述べるまでもないと思いますが、やはり過労死等の実態、これについて附帯決議から我々は受けているわけですから、そこへの答えというのは、何回も言いますが、社会に対する約束事だということです。これだけは絶対曲げては駄目だということです。それと、やはり若い人が入職をしてくるということと、非常に年齢が高齢化していますので、そういう人たちが働き続ける環境、そのためには、この告示全体の見直しが必要だということで議論に参画しているということだけは申し上げておきたいと思います。以上です。
○藤村部会長 ありがとうございます。では、公益委員。
○首藤委員 これまでも繰り返し議論してきたことですので、商習慣が変わらないと難しいですよということですね。でも、それを変えていくためにも、ルールを変えていく必要がありますよということで、対立というか、争点なのかなと思います。まず、この議論の出発点は、過労死をどう防止するかということにあったと思っています。休息期間8時間という現行の水準ですと、先ほどのデータにもありましたが、やはり半分が5時間未満しか睡眠は取れていないという実態で、その場合には極めて過労死が起きる可能性が高くなるということなのだと思っています。現実に過労死が起きていると。
 やはり、荷主に問題がある、商習慣がなかなか変わらないということも確かに大切なのですが、商習慣が変わるまでの間に、このままですと多分、たくさんの人が亡くなっていくという状況があるということなのだと思います。その働き過ぎて死んでいく人たちがいる中で、やはり商習慣が変わるまで待ちましょうということになるのだろうかというところですね。やはり改めて考えないといけないのではないかと、私は思っています。
○藤村部会長 基本的な考え方ということで、公労使の委員から御意見を伺いました。
 私も一言申し上げておきたいのですが、テレワークとか在宅勤務をやろうやろうと言いながら、ずっとできなかったのです。新型コロナウイルス感染症によって、やらざるを得ないという状況になって取り組み出したら、できるではないかと。新型コロナウイルス感染症の前は「在宅勤務は無理だ」と、みんな言っていたのに、やればできるということが、この2年半ぐらいで私どもが経験してきたことだと思います。
 馬渡委員が盛んに商習慣ということをおっしゃるのですが、改善基準告示をしっかりと変えて、過労死防止という観点から長時間労働にならないようにするという、ある意味で外枠をはめてしまえば商習慣も変わらざるを得ないのではないか。どちらが先かという話にもなりますが、これをしっかりと議論することによって、商習慣を変えていくのだという考え方を取っていただきたいと私は思っております。
 そこで、「検討の視点」という資料2があるのですが、ここは資料1の労使の意見、拘束時間に始まりまして、運転時間とか特例とか、その辺を詰めていかないと話はまとまらないのではないかと思います。
 そこで、資料1の1ページを御覧ください。労使の意見の隔たりというところで言うと、まず1か月の拘束時間は、労側は275時間、使側は293時間、その差は18時間ということになります。年間について、労側は3,300時間を超えない範囲で、使側は3,408時間を超えない範囲、この差は108時間ということになります。それから、労側は年6回を限度に294時間まで延長するという考え方、使側は年6回を限度に320時間までということで、この差は26時間ということになります。この辺りの時間数を、それぞれどのようにお考えになっていくか、そこを詰めていくことが、この改善基準告示の議論を一歩、二歩進めるためには必要かなと思います。
 そこで、使用者側の委員にお伺いしたいのですが、労側から出ている時間数については、使用者側はどのように考えるのか。ここをお聞かせいただけますでしょうか。
○馬渡委員 1年間の考え方ですけれども、今回960時間という上限規制が入った折に、休日労働を含まないという形で規定をされているわけです。我々としては、そのとおりに運用をしていただきたいというお話をしていましたが、労働者側のほうは、この改善基準告示という枠が、従前から休日労働を含むという形で進んできているので、3,300時間という形で含む時間にしたいというお話でしたので、我々としては、一遍にそこまで、基準を超えていくような話はなかなか難しいですよというお話をしておりましたので、月1回の休日労働も、先ほどの話に戻りますけれども、我々が休日労働を必ず1回やりなさいと言っているわけではなくて、ほとんど荷主さんから、土曜日若しくは日曜日に出てきて仕事を済ませてくださいという要請の中でやっておりますので、それが今は2回までは、この改善基準告示を守りながらできているという形ですけれども、全体の労働時間を減らすということについては、我々も減らしていきましょうと思いますので、それでも、荷主さんから、とにかく休日に仕事はしてくださいというお話があります。業種にもよるのですが、例えば生き物を扱っているような、動物の餌を扱っているような部分だと、どうしても休みの日に途切れるから、この日を入れてくださいというような休日労働の要請もありますので、月一度程度の時間というのは確保しておかないといけないかなと。もちろん、そういった要請も、あらかじめ早めに運んでおくとか、そういう努力はどこの事業者もやっているのですが、突発的に言われる場合が多いということもあって、3,408時間を限度として、年6回、月320時間までは延長可だというように、単月が多ければ、ほかの月が極端に少なくなりますので、その辺のところというのは、議論の余地があるのかなと思いますけれども、全体の時間は休日労働込みということで、ルールではないのですけれども、そういう前提でやるということであれば、我々は3,408時間かなというように思っています。
○藤村部会長 労側はいかがでしょうか。
○貫委員 まず、使用者側から発言のある月の限度時間については、293時間、320時間と。これを現行のままでいくと、先ほど馬渡委員が言われたとおり、全く働けなくなる月が生じてしまうということになったときに、固定給の割合が少ない我々の業界の中で、そのときのドライバーの賃金はどうなるのか、きちんと補償がされるのかという心配が出てくることもあるのではないかと思っています。ですので、この293時間と320時間ということは、総拘束時間を縮めていく中においては、ここは縮めていかないといけない時間なのではないかと思っております。
 この3,408時間という時間ですけれども、休日労働を月に1回という前提というところですが、どの休日を該当させるのかという部分もあると思います。法定休日とか、指定休日、我々は「会社休日」と言っていますけれども、その部分の取扱いをどれだけ分かっているのかという部分もありますので、我々とすると、休日労働、時間外労働については、ドライバーはそれほど区切って考えていませんので、それは含めた中で、一本化の中での議論を進めていくべきではないかと感じております。時間の部分については、議論をして決めるべきだと思っています。別々に考えるものではないのではないかと思っております。以上です。
○世永委員 今、貫委員が言われたとおりなのですが、960時間というのは、土曜日の休日を含むわけですよね。休日労働というのは、法定休日の関係で外枠というように思っているけれども、それで間違いないですよね。通常であれば、960時間の中で、いわゆる土曜日の社休、指定休日はカウントしていくということですから。我々の考えとしては、例えば先ほど馬渡委員が言った60時間の関係でいくと、土曜日の休日は既に月2回あると思っているわけで、そういう考え方でいかなくてはいけないのが、1つです。
 でも、これは60時間を超えているのだから、そこの部分は5割増しなのだということです。そういったことをトータルで考えると、考え方としては、貫委員が言われたとおり、含むということです。
 それと、貫委員が言われたように、繰り返しになりますが、具体的な数字はどうするのかということです。そうなった場合については、また改めて考えを述べるべきかなとは思うのですが、1つはタクシーの削減で、これは11時間で、年間にすると132時間です。それと、さっき言いましたが、貨物の脳・心臓疾患について、発生、支給件数を見ると、この2つのものより大幅に上回る削減がないと、やはり効果が出ないというように思っております。そういった形での議論は進めていっても、それは構いません。
○藤村部会長 はい、首藤委員、どうぞ。
○首藤委員 今のお話に対して、使用者側の見解を是非、教えていただければと思います。
○馬渡委員 今の労側の話ですが、時間そのものについては、前提に思っていることが違うので。私どもが思っている前提というのは、厳しくしたとしても、それを実態としてきちんと守れる。我々ももちろん守ります。当然、罰則もありますから守ります。でも、守らせなくてもいいような荷主さんの方々のしわ寄せが我々にきている部分というのは多々あるのですが、そういうところにきちんとメスを入れていただけるという話にならないと、なかなかそうしましょうよとは。でも、厳しくは決めたのだけれども、実態は全然今と変わりませんねというような話というのは、なしにしましょうというように思っていますので、そこにメスを入れるようなお話をできるのであれば、時間的なものは、合理的に決めていくことは可能だと思いますし、脳疾患、心疾患がきちんと下がっていくように、お互いに議論をして決めましょうよと。実態としては、決められる業種と、ここは難しいのかなという業種の所は当然あるのですが、そういうところも荷主さんと話しながら、メスを入れる部分というのは国にも関与していただかないと、我々だけで幾ら荷主さんにお話をしても、個別案件としては全然聞き入れていただけないというのが現状ですので、こういうことを決めるときに、せめて、このようにやらないと、荷主さんたちも、我々の業界の脳疾患、心疾患を増やしていて、死亡の起因になっていますよというようなことを言えるようにしてほしいなと。それを思っています。
○加藤委員 先ほど部会長から、リモートワークの話が出ました。コロナということで急速に広まったということなのですが、なぜ広がったかというと、通勤者本人が不利益を被るからです。電車で通勤すると、コロナに感染するかもしれないというリスクがあるから、不利益を被るといけないからということで、リモートワークが進んだと思うのです。
 この運送契約というのは特殊な契約だと思います。発荷主と運送事業者の間には契約がありますが、着荷主との間には契約関係は全くないわけです。こういう意味では特殊な契約だと思います。
 今回、改善基準告示をいろいろな形で短縮する方向なのでしょうけれども、短縮したとして、我々には罰則がありますから我々は守ろうとする気持ちはたくさんあるのだけれども、着荷主にとっては何のリスクもないのです。
 先ほど、この説明の中で、発荷主で荷待ちが起きているのか、着荷主で荷待ちが起きているのかが分からないという話も出ていましたが、大半が着荷主なのです。発荷主というのは、自分たちの契約先ですから、上下関係で言えばお客様ですから、そちらのほうが上ですが、粘り強く交渉した結果、発荷主さんについては工夫をしていただいて、荷待ち時間あるいは荷卸しや荷積み時間は極端に短縮されているのですが、着荷主に関しては、いまだに改善が少ない所が非常に多いです。
 これは、いわゆるトラック輸送における取引環境労働時間改善協議会が各都道府県単位で行われていましたが、その中で出た意見で多かったのが、具体的には食品の問屋さんですが、問屋で荷卸しのときは当然、手積み手降ろしなのですが、自分たちが持ってきた荷物の前に同じ種類の荷物がそこにあったとき、賞味期限の早いものを並び変えろという指示までされているのです。契約関係がないにもかかわらず、そこまで求められていて、それが長時間労働になっているというトラック事業者の話もありました。
 ですから、先ほどのコロナがエンジンになったということもあるのですが、着荷主に対して、当然我々も努力をして、お願いベースでいきますけれども、そうではなくて国土交通省さん、あるいは厚生労働省さんが連携して、何らかの形で圧力をかけると言いますか、自分たちもそれで荷待ちをなくしたり、荷卸しについて工夫をしないとリスクがあるという、何らかのエンジンを付けてやらないと、馬渡委員と同じで、我々は守りたいと思っていても外的要因によって守れないケースが出てくるおそれがあるということです。
 それと、私どもは一応大手なのですけれども、例えば馬渡委員のところもきちんとされている会社なので、「発荷主、着荷主がそういう状況であれば手を引きます」と言って困るかと言うと、着荷主も発荷主も困りません。やる業者が必ずいるのです。10台未満のような中小零細企業は、仕事なら何でもやるよと。そういったところが結局、この基準告示を守らない。その結果、ドライバーが亡くなる。それだけは絶対に避けたい。ですから、商習慣を変える何かの強い圧力が必要だということを、私は感じています。
○藤村部会長 この議論の中で、常にそこを使用者側はおっしゃるのですが、事務局として、そこについて言えることはありますか。
○監督課長 今、加藤委員からも御指摘がありましたが、国交省、厚生労働省、関係省庁、トラック協会、荷主団体も交えて、中央協議会、地方協議会という形で従来から取組をしております。そういう中では、特に発荷主だと思うのですが、そこにも御理解いただいて、どのような形で改善を図っていくかということは、少しずつ取組が進んでいるというように認識しております。
 一方で、従来から言われている着荷主の問題については、なかなか難しい課題というように我々も認識しております。これは国交省さんの資料にもございますが、国交省さんのほうでは、荷主への勧告制度、働きかけ制度という形で、従来から、あるいは平成30年の貨物自動車運送事業法の改正によって、よりそれを強化するような形で、そういった情報を得た場合は荷主への注意喚起をするという仕組みもございます。
 厚生労働省としては、従来からの協議会という仕組みも活用しながら、事業面で様々な取組をしていたわけですが、これはまだ具体的にお示しできないことで、今考えているところですが、厚生労働省としても、荷主に対するアプローチを個別に何かできないかということで検討はしております。前回の会議でも申し上げたとおり、労働基準監督官が直接、荷主に対して指導するという権限自体は持ち合わせておりません。ただ、労働時間等設定改善法という法律があります。そこには、「他の事業主との取引を行う場合において取引上必要な配慮をするように努めなければいけない」ということが書かれております。具体的な例示としては、短納期の発注とか、発注内容の頻繁な変更といったことが挙げられております。いずれにしても、労働時間等設定改善法という法律の中で、努力義務として、他の事業主に対して取引上必要な配慮をするということが求められております。そういう点で、厚生労働省としても、荷主に対して直接の監督指導ということではないのですが、改善基準告示の周知啓発とともに、荷主として運送事業者における労働時間の改善に御協力いただきたい、あるいはご協力いただかないと非常に全体的に厳しい状況になるという啓発や要請ということは可能だと思っておりますので、今回、見直しをした内容も含めまして、そういった形で施行までに、あるいは施行後も含めて、しっかりと荷主に対して要請していくことは可能かと思っています。
 その他も含めて、できれば次回に、具体的にどういったことを考えているかということをお示しできればと思っていますが、いずれにしても、私どもとしても、今までの取組を更に一歩進めまして、荷主、特に今まで欠けていた着荷主へのアプローチという点で、何ができるかを考えております。
○藤村部会長 ありがとうございました。馬渡委員に1つお伺いしたいのですが、休日労働が月1回は発生するとおっしゃっていますが、この場合の休日というのは、日曜日とは限らないわけですね。労働者ごとに決められた休日があって、その日に、わざわざ出てきて働いてもらわなければいけないことが発生するのでしょうか。日曜日に運んでくれというのと、休日労働が発生するというのは、必ずしも同じではないと思うのですが、その辺りはどうなのでしょうか。
○馬渡委員 厳密な日にち、祝日、土曜、日曜、4週4休の休日というのが、どの日にちに該当するかというのは各社によって違いますし、業種によって、当然のごとく、土日は当たり前の出勤日で、ほかの日を休みにするという場合もあります。通常ですと、休日労働をしても代休を与える、ほかの日を休みにするというような措置を取っている所もございます。
 ですから、必ず月1回発生するというような考えではないのですけれども、さりとて、日曜日に出てくださいとか、例えば港湾運送などの分野では、船の世界は、遅れれば、その日に荷役をしてくださいというような規定になっています。場合によっては10割増しで休日労働はしますと。要は、そこで10割増しを払うのだったら、しようがないけれどもやりますが、基本的にはそんなに払う荷主さんはいらっしゃらないだろうから、その次の日に、休みは休みとして設定してというような決め事をしている所もありますので、これはおっしゃったようにケース・バイ・ケースで、全ての場合でそういう話をするということではないです。
 ただ、その会社で休日と決めている日に出てきて、代休を取れないということも多いです。なぜかと言うと、普通の日のスケジュールは決まっていますから、この運転手がこれだけの仕事をしますと。プラスアルファで、この日も仕事をしてくださいというようにおっしゃるわけですから、その部分というのは、全ての会社が割増しをもらって、本当は休日の割増しを払わなければいけませんから、お客さんからきちんともらわなければいけないのですが、お客さんのほうは、「この日は出てきてほしいけれども、ほかの日に休ませればいいのではないか」というようなお客さんが、自分の所の仕事しかしていないような感覚の所がおられて、そういうわけではないので、ほかのお客さんのスケジュールが決まっているので、休日労働という捉え方が、お客さんと我々とで、また違うという場合も結構あるのです。
個別の案件については、貫委員がおっしゃったように、こういうときにはこうしましょうというような話は、これからすべき話なのかなと思いますし、今、課長からのお話が少し、光明ではないですけれども、国のやり方があると。我々はずっと「いじめられているのです」というお話をしてきました。弱い者いじめをされているような感覚だったのですが、そういうところに対して、何らかの働きかけと言うか、強制力はないかもしれませんけれども、そういうことをやると問題がありますというような話になるのであれば、先ほど加藤委員がおっしゃったように、着荷主さんは全然関係がないので、トラック屋とか運転手がもし何か文句を言えば「あなたは出入り禁止で、ほかの業者が来ればいいから」ぐらいのことしか思われていないので、そういったものに対して我々が物申すというのはなかなか難しかったのですが、実態としてそういうことがあった場合に、何らかの働きかけができるという部分があれば、我々も、ある程度いろいろなトラックドライバーの健康のことを考えて、このように決めましょうと。でも、決めたことに対して何も考えない荷主さんに対して御指導ができるということであれば、我々も、それぞれの時間に対しては、また改めて考えてこようかなと思っています。
 全く何も考えないでここに臨んでいるわけではなくて、本来であれば、こういう時間だというのは、内部でも話をしますけれども、そう決めても実態としてなるような何かがなければ本当に絵に描いた餅になるので、そこのところは、どうしても厚労省、国交省さんで連携して、お願いをしたいと思いますし、公取さんは優越的地位の濫用とか、ものすごい大鉈のようなものをお持ちなのですが、我々が思っているのは、大鉈でなくても、個別案件でも日々いじめられている部分がどうにかならないのだろうかと。着荷主さんが全く意識をされていないのです。こういうことを言ったら、我々の長時間がすごく延びるというような意識は全くされていないと思うのです。「あなたたちが来なくてもいい、頼んであなたたちに来てもらったわけではないから」というように思われている部分で、少し変わるきっかけがあればいいなというように思っています。
○藤村部会長 分かりました。この件について労側から何かありますか。よろしいでしょうか。
 では、次に「1日の拘束時間、休息期間」という所です。3ページになります。労側は、バスと同様に休息期間11時間を中心に行うべきだとおっしゃいます。使側は、現行維持ということです。まず、労側から伺います。どうでしょうか。
○世永委員 先ほど6時間以上の睡眠との関係でも話が出てきたとおり、11時間が基本と思っています。労働弁護団は当たり前なのですが、日弁連のほうも、11時間の休息を法的義務に位置付けるべきというような要請も出ていますので、これはいろいろな意味で、疾患との関係でいくと、基本は11時間ということになってくるのだと思います。
○藤村部会長 この点について、使用者側はどうですか。
○馬渡委員 原則1日13時間というのは変わらないと思いますが、今は最大16時間まで延長ができるという話をしておりますが、先ほど申し上げたような部分で、何らかの形で、短くしていこうという話になれば、できれば、その日最大何時間という設定をさせていただいて、前後2日の平均を取らせていただきたいと考えております。2日にわたって時間が短くなっていくということです。これも、毎日こうだと決めますと、たまたまこの日がはみ出たということがあった場合、次の日でもっと短い時間で働こうというのは我々の采配でできるのですが、たまたま既に出てしまったものがそのまま固定されると言いますか、事実として残ってしまうということであれば、結局その部分は違反ですよねという話で終わってしまうものですから、そういう工夫ができないかとは思っております。今、1日11時間を意識しなければいけないというのは分かっているのですが、今は継続8時間を下回らないという話をしていますが、先ほど言ったように、時間を11時間に近づけようというプロセスの中では、たまたま起きたものが違反にならないように、事業者が調整できるよう前日若しくは後ろの日の平均を取るという形で進んでいければなと。これは希望ですが、思っております。
○藤村部会長 今、見ていただいている資料の次のページに、タクシーとバスの資料があります。1日の休息期間については、「勤務終了後、継続11時間以上の休息期間を与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないものとする。」と、これであれば受け入れられるということですか。
○馬渡委員 これはバスになるのですか。両方ですか。
○藤村部会長 両方です。
○馬渡委員 この形の中でバスとかタクシーは、自分たちで決められる余地が大きいものですから、多分こういうふうに決められても大丈夫だろうと思いますが、我々は突発的に荷主さんの部分というのが残ることを考えますと、例えば、11時間以上の休息期間を与えるよう努めることを基本として、継続何時間を下回らない場合には、前日と後日の2日平均でどちらか一方がこういうようにと入れていただければ随分、実態としては2日間できちんと守りましょうねと。しかし、突発的に片方に出た場合、経営者は、次の日はそれ以下にして、平均できちんとなるようにやりなさいよというような考え方を取り入れていただけると、随分、現場が対応しやすくなると思います。我々で決められることが1つ出てきます。
○藤村部会長 労側はいかがですか。継続11時間以上の休息期間を与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないものとすることです。合わせるという意味では、私はしたほうがいいと思います。そこに、プラス2日ぐらいで調整するという方式が使側から出ていますが。
○貫委員 基本的に、バス・タクシーと休息期間を合わせるべきだと我々は主張させていただいておりますので、バス・タクシーで今回決まった休息期間の考え方については、労側としては賛同している部分ではあります。
 先ほど、馬渡委員がおっしゃられたのは、2日平均、要は運転時間と同じような考え方ということですよね。言わんとすることは分かるのですが、休息期間が非常にまちまちになってしまわないかなという気がするのです。ある意味、休息期間が5時間ぐらいになって、その翌日が15時間ぐらいになるとか、その前後で調整されるというところですが、それは考え方としては分かるのですが、管理的にも難しいのではないかと思ったりもします。ある意味、長時間労働になりかねないのではないかという気もします。1日の長時間が相当数発生してしまわないかという気もするのです。すごく働き方に凸凹ができて、逆の意味での問題が発生しないかという感じがしたのですが。
○馬渡委員 極端に5時間とか、そういうふうになっていいはずがないので、そこのところはきちんと決めた上で、2日平均で、前後で決められるような形にできたらと。
 そうしますと、いろいろな業種的なものもクリアできることが出てきますし、先ほど言った着荷主の部分で時間が超えそうだという場合は、後ろの日は着荷主が別の荷主さんになるように変更するというのは、経営者側サイド、会社の中でできるので、貫委員がおっしゃったような極端な時間には、当然、お互いに話して決めるわけですから、こんなケースは駄目よねというのは当然あると思います。最低限のところがあって、なおかつ、現場で裁量がしやすいようにしていただきたいなと思います。
 管理をされる方については、バスとタクシーは経営者とお客さんという形になりますので、その中に代理店などが入ってこられるのでしょうが。代理店も、この間の事故の後、代理店に対して非常に強力に指導される状況もあるので、そういった部分を我々としては期待しています。特に、着荷主さんの分に対して、強力にできるかどうかは別にしても、まずは第1歩を始めて、やはりそこがどうしても足かせになっているよねと。720時間にするにしても、そこが足かせになるということであれば、もう少し強力な法律を作っていただくか、あぶり出しができる部分が必要ではないかと思っておりますので、極端に2日平均したから、片方の日は何時間でもいいだろうというつもりはないです。
○世永委員 脳・心臓疾患の件数が多いのは、やはり不規則な出勤が原因ですよね。どうやって、そこに対してインターバルを取らせてあげるのかというのが1つだと思うのです。不規則な人たちに、寝る時間がまちまちでは、なかなか体が休まらないということであれば、一定時間の幅は必要だと思います。私は、これが11時間だと思います。
 そういったことも考えていきますと、あくまで基本は11と9ということです。やはり、ここで寝るのだと言われても、はっきり言ってドライバーは寝られないのです。そこは考慮して幅を取ってあげることが、発症疾患の発症を抑えることになるのだろうと思っています。平均で管理しては不規則な勤務になっちゃうかなと。
○藤村部会長 どうもありがとうございます。それでは、次の点にいきたいと思います。次は、「運転時間、連続運転時間」です。労側の主張は、現行どおりです。ただし、荷積みや荷卸しを行わせるのが通常ですので、本来は休息期間、休憩時間になるはずのものが、結局は休憩ができていないという状態には、何らかの対応が必要ではないかということです。
 逆に、使用者側は運転時間を廃止していいのではないかということです。ここは相当隔たりがあるように見えるのですが、使用者側は労働側の意見についてはどのようにお考えですか。
○馬渡委員 改善基準告示の議論が始まったときに、基本は白紙の状況で、今の実態を踏まえながら、いろいろ考え直しましょうという部分はあったかと思いますので、全体的にこれから着荷主さんに対する働きかけも含めて、いろいろなことをやっていくのであれば、運転時間そのものは廃止しても、結局、守らないといけないものは、休息期間もそうですし、連続運転時間もありますので、いいのではないかと思っておりますが、これは議論の進み方によっては、先ほどお話があったような平均を取ろうとか、こういう時間を超えないように努めましょうとか、そういうものを入れるのは別にやぶさかではないのですが、基本は、いろいろ難しくするよりはシンプルにやろうと思いますので、お客さんにも説明しやすいものですから、細かい項目はほかで担保されているのであれば、なるべくなくしたいと。これは、まだ思っております。しかし、議論を全くしないというつもりはないのですが。
○加藤委員 労側が言っておられる労働基準法上の休憩の概念を明記するというのは、あまり意味がなくて、例えば、トラックドライバー以外の方は、要は、8時間以上は1時間、それまでは45分という休憩時間の規定がありますが、極端に言えば、始業時間や終業時間とくっ付けて取っては駄目ですが、どの時間帯で休憩をしても別に違法ではないわけです。それをトラックドライバーだけに明記するのはおかしいというのが私の感想です。
○藤村部会長 労側はいかがですか。
○貫委員 今、加藤委員が、休憩時間の明記はおかしいと言われましたが、実際にそういうふうに使用者がしているわけです。使用者がそういうふうな働き方をさせておいて、運行を切ったらそれで終わりという形であれば、8時間連続で仕事をしても構わないということですか。日勤勤務の場合ですが。
○加藤委員 そういうことを言っているのではなくて、当然、運行計画を作っておりますが、運行計画できちんと休憩時間を我々は明示しているわけです。8時間連続勤務しろとは誰も言っていないと思います。ただ、実態として、先ほど出たような発荷主や着荷主の都合で、例えば、休憩時間がなかなか取れないという実態はあるでしょうが、使用者側が好き好んで休憩も取らずに走ってこいということは基本的にはないと思います。
 前々回でも申し上げたように、あとは運行計画上、ここで休憩を取ると言っているにもかかわらず、早く家に帰りたいと言って、休憩を取らないで帰ってくるドライバーがいるのも事実です。当然、これは社内の話ですから我々が啓蒙活動をしてやめさせなければいけないですが、使用者が意図的に休憩も取らずに食事もしないで運転しろという事実はないと思います。
○貫委員 そういう事実があったから、私は、休憩を改善基準告示にきちんと入れるべきだと言ったのです。実際、そういう運行が行われているわけです。ですから、必ず入れろと言うわけではないですが、そういう運行実態ができることはどうなのですかという問題提起なのです。全く休憩を取らずに8時間働けるのが実際でしょうと。それは問題ではないですかということです。真ん中に休憩、普通の人であれば30分、30分、休憩を取ることは、長距離の運転手はできますが、それが日勤の運転手であれば、僅か10分ぐらいの休憩しかないというわけです。運行離脱を10分するだけで、8時間の労働になってしまう可能性があると。だから、そういうふうなことはきちんと防止するべきではないかと。どちらかと言いますと、運送事業者の方々で、言葉は悪いかもしれませんが、労働基準法よりも改善基準告示のほうを重視するではないですか。ですから、その中に休憩もきちんとないと駄目なのだよということが書いてあれば、労働者に対して、ドライバーに対してきちんと休憩をさせるでしょうということです。
加藤委員のような、それは大手の所はきちんとやりますが、中小の所はなかなかそこまで考えていない部分があるのです。逆に言うならば、加藤委員が言われたように、ドライバーが勝手にやっている可能性もあります。しかし、運行基準図、運行指示書をきちんと出しているかと言いますと、どこまで出しているか、はっきり言って我々の中小の仲間の所で、運行指示書はありますかと言ったら、そんなものはありませんと言うのが実際です。何時に、どこのお客さんの所に着けと。そういうのが実際のところでは多いと思います。何時には帰ってこいと、そういう部分が多いのではないかと思いますが。
○世永委員 実は、これは手前どものフリーダイヤルで結構入ってくるのです。これは大手からも入ってきます。うちの産別でもありますから、かなり強く指導しているのです。デジタコが止まっているところを、日報を書くときに全部休憩にさせるのです。特に60時間とか、やはり80時間を超えそうなときは、現場の運行管理者の課長がそういう指示をしているということは、これは本当にあります。しっかりした会社でもあるということです。これは実際にそうやってダイヤル相談に入ってきますので、内部は内部で指導しているのですが、労基法の概念を書けないのであれば行政のほうで、どういう指導をするのかということがあると思います。特に、届出を超えそうなときには多いと思います。
 次に、前にもお話したと思いますが、逆に4時間の連続運転の関係で、運行計画でSA・PAに入ろうとしたが、やはり満車だったというときは、逆にタコを見れば、停車しているかが分かるわけです。そういった場合については、連続運転、次のSA・PAまで行く30分を見ていくというのは、この間も主張してきたところです。ただ、そのときの休憩は当然45分になるのだろうということです。そういったことも含めて、そこは幅を持たせていくべきではないかと。なかなか行政のほうから管理するのは難しいと思いますが、移動の場合は4時間半の45分という指導もありますので、そういったことも参考にしてやったらどうかとは思っております。
○藤村部会長 私は、こういうように、やり合うというのが好きなのです。こうしないと本音が出てこないですね。馬渡委員、どうぞ。
○馬渡委員 これは連続運転時間の話だと思いますので、離脱をしているときにどうするかという話は、ケース・バイ・ケースがあるなと思って、どういうときになるかなと。今一番多そうなのは、宅配の個配をしているようなときは、運転はしていない。どこかに止めています。しかし、休んでいるかと言うと、個別の家に届けているというケースは当然あるのかなと思います。ですから、そういった場合、今は個配が置き配に変わってきているので、大分、変わってきたかなと。例えば、ヤマト運輸さんたちも、12時から2時までは、配達に来いと言っても受け付けませんと、やっとなりました。お昼休みを本当に取れないで、運転しながらパンを食べながらみたいな実態があったと思います。実態が分からないので、本当に休憩が取れているか分からないのですが、その2時間を配達の時間として指定をさせないということは、随分、休憩は取りやすくなったのかなと思います。そういう実態をもう少し議論させていただいて。
不合理に決めますと、また他の様態の所で、「何だ、これは」という話も出てきますので、そこはケース・バイ・ケースできちんと見て、こういうときはこういうふうだよねと。しかし、大枠で、こういうふうにできるのだから、ここの部分はきちんと休憩が取れるようにしましょうというような話はすべきではないかと思って聞いていました。いろいろ言われている中で、どういう場合がどうなるかというのを一生懸命考えていたものですから、また、宅配の場合もあれば、長距離の場合は自分で決めてやるというのは基本的にはできます。ただ、世永委員がおっしゃったように、高速の途中でサービスエリアに入れないことは往々にしてありますので、その部分をきちんと決めないでいくのか、それとも、これを超えないように努めるとか、また同じような話ですが、そういうふうに変えていただいて、全体のたがを縛っておこうという話をするのか、もう少し議論をさせていただきたいと思っております。
○世永委員 連続運転の関係は、やはり議論が必要だと思います。あと、先ほどの休憩の概念の関係は特積みの集配業者が多いです、1日何箇所も回る所では。やはり、時間外が累積しそうになるとやるということですから、そういうことも含めて、あってはならないことだと思っております。
 あと、ヤマトの関係は、労使で知恵を出したのがあれなのです。また、特積み集配の関係、通常の集配の関係は、ルート配送の関係とは違いますので、ルート配送だと大体分かってしまうのですが、そういったことについては、もう少し全体像が見えた中で詰めた話をしていきたいと思っております。以上です。
○馬渡委員 私の記憶が定かではないので、ここではっきりは言えないのですが、特積みに関しては、厚労省のほうで扱いが違っていると思いましたが、違いますか。特積みとか、宅配の事業者の場合は、時間のカウントの仕方が違っていると思いましたが、どこかで通達か何かが出ていたと思いましたが。
○監督課長 今、表向きは違うというふうに扱ってはいないと思います。昔の経緯を調べないとよく分からないところがあると思いますが、少なくとも表向きは、今おっしゃったようなところが違いますよということをはっきり示してやっているという状況ではありません。過去の経緯については調べさせていただきます。
○馬渡委員 私も記憶が、いついつの話とは言えないのですが、相当昔にそういう通達が出ていたのかなと思いますので、調べれば分かると思いますから。
○加藤委員 蒸し返すつもりはないのですが、部会長は、こういう議論が好きだとおっしゃるので、もう一度だけ申し上げます。改善告示における休憩の明記のイメージが私は湧かないのです。例えば、連続運転4時間に達したときは、何分休憩を与えなければならないと書くのか、しかし、それはおかしくて、もともと労働基準法に記載があるのだから、また改善基準告示に重ねるのはおかしいと思います。
 もう1つは、先ほどフリーダイヤルでいろいろ入ってきているとおっしゃいましたが、それは改善基準告示に書いてあっても書いていなくても同じです。タコグラフが止まっているところを休憩時間に偽装するのは、そもそも労働基準法違反ですから、わざわざ改善基準告示に書いて、告示違反だからふざけるなということを言わなくても、それは済む話です。逆に、監督署が調査に入っても、改善基準告示に書いてあっても、そういうふうに偽装されていたら分からないです。それを私は無意味だということで申し上げたつもりです。
○貫委員 無意味ですか。改善基準告示は、労働基準法の下部の告示ですから、労働基準法に書いてあるものを再度、改善基準告示に書くことはおかしいと、書く必要はないのではないかという加藤委員の主張に関しては、それもごもっともな話かなと。ただ、守らない事業者をどうやって守らせるのだということです。改善基準告示に、そういう運行実態ができますよと書いてあること、そこに対して休憩も必要なのだよということを、どうやって理解させるかということです。運転離脱が必ず休憩でなければならないと書いてあればいいのですが、運転離脱はあくまでもハンドルを握らずに放している時間ですよという書き回ししかないわけです。これは加藤委員もご承知のとおりではないですか。4時間走って30分運転離脱の間に、45分間をかけて荷卸し作業をしました。これは運転離脱ですよね。4時間かけて、元の所の車庫に帰ろうと思えば帰られるわけですから。そうしますと、8時間30分、仕事をしっ放しではないですか。これが問題だと、私は言っているのです。こういうことがないようにしないといけないのではないですかということです。
そこは、やはり、どこかで30分なり1時間なりの休憩時間をドライバーがきちんと取らないといけない。それは日々の運行に対しても、運行指示書は必ず出しなさいということではないですよね。運行計画書は2日以上の運行にまたがるものに対して出しなさいと、今はなっています。1日の運行に対しては、運行指示書を出さなくても違反にはならないわけですから、どうするのですかということです。それはやはり労働の関係だから、改善基準告示のほうで、休憩のことは縛るべきではないか。それは運輸安全規則、国交省に求めるものではないと、私は思っているわけです。
○加藤委員 それを言いますと、その会社が、もしブラック企業だとすれば、事務所で働いている人間でも同じではないかと思います。同じ会社に務めていて、トラックドライバーだけがここに明記して、例えば、事務所の人間は食事もしないで8時間仕事をしろということを言うのも少しおかしいのではないかということを言っただけです。同じ労働基準法という、同じ労働者を縛る法律があるのなら、全部そこで縛ればいいのであって、あと、そこでそれを守らない事業者がいるのであれば、全日本トラック協会も指導しないわけではないですし、あるいは労働基準監督署で御指導いただかなければいけないと思いますが、それは必ずしも改善基準告示に書いてあるから絶対だということでは、少なくともないと思います。
○貫委員 告示に書いたから絶対だとは、私は言っているわけではないです。書くと絶対になるとは言っていないです。きちんと休憩を取らないといけないのだよということを、皆が分かるようにしておいたほうがいいでしょうということです。ドライバーが労働基準法を見ていますかと聞きますと、ドライバーはなかなか労働基準法なんか見ないではないですか。ドライバーはどちらかと言いますと、4時間走って30分の休憩とか、そういうふうな思いしか持っていないわけですよ。しかし、その30分の休憩のところは、運転離脱をすれば作業をしてもいいのだという認識があるわけですから、そういうふうな部分できちんと休憩も取らないと駄目なのだよということを、告示の中にきちんと、なにがしかの文書でも通達でも何でも構わないのですが、そういうふうな自動車運転者に対しても必要なのだよということを、労働基準法に書いてあるから大丈夫だということでは駄目だと思うのです。もう少し何か踏み込んだものをしないと、本当に休憩を取らないドライバーもたくさんいると思います。大手さんだけではないですからね。
○首藤委員 両者とも、ごもっともだと思います。やはり改善基準告示自体が、従来から運転時間が労働時間であるという認識を与えてきた面があるのではないかと思うのです。そこで、やはり事業者のほうも運転時間さえ管理しておけばいいという認識を抱きやすかった面もあるのかなと少し思っております。
 運転時間イコール労働時間ではないわけです。その間に荷積み、荷卸しがあったりするわけですから、そこを含めての労働時間の管理や休憩の取得が多分徹底されていない部分が、今日の課題としては多分あるのだろうということを前提に、どう書くかということは当然あると思いますし、書く、書ないかというのはあると思いますが、多分、その辺の改善基準告示の在り方が、現状と齟齬をきたしている可能性はあるのかなと思いました。
○監督課長 労使の御指摘を理解した上で、今、改善基準告示の連続運転の所では、運転の中断という表現で、連続10分以上で、かつ合計30分以上の運転の中断ということなので、特に休憩という書き方をしていないのですが、一方で、周知用のリーフレットでは、これを分かりやすく書くために「休憩等」という表現を使っております。ですから、そこで概念の混乱と言いますか、助長している面があるのかもしれませんが、発想としては中断だから当然休憩が大半だよねということで休憩等という言葉を使っているのだと思います。
そこは貫委員のおっしゃるとおりで、そこが改善基準だけを御覧になっている方がいるということであれば、休憩という言葉を十分吟味せずに、中断すればいいのだろうとしている実態があるのかもしれませんので、そこはやり方としては改善基準の中で、本来的には労働基準法で定められているルール、法上の義務を課すような形で書くというのは本来的には必要のないことだとは思っております。ただ、改善基準の基準にならないような形で、注意喚起のような意味で、具体的には第1条等の規定で、改めて休憩等は何ぞやということを書くことはできなくはないと思います。ですから、そこは御判断だと思います。
あるいは、先ほど申し上げたリーフレットのようなもので、休憩時間の趣旨について、はっきりと明記するというやり方もあると思います。いずれにしても、告示なのか通達なのかリーフレットなのか、貫委員の問題意識はごもっともだと思いますので、そういった形で、改めて休憩時間をいずれかの形で理解していただくということは可能だと思います。
○藤村部会長 どうもありがとうございました。使用者側から運転離脱を5分に緩和という意見があるのですが、これは前回も、それはないだろうというのが労側の主張だったと思いますけれども、ここは譲らないということですか。
○馬渡委員 今のところ、連続運転時間5時間を超えないことなのか、若しくは超えないように努めることなのか、そういった表現で、30分以上の運転の中断、中断の分割というのは、1回につき5分以上というようなことを書き込んでほしいとは思っています。そこは、今のところ考えを変える気はないですね。
○藤村部会長 労側は、そこの点はいかがですか。
○貫委員 連続運転時間を4時間、5時間にという部分については、やはり運転時間が長くなるにつれて疲労度が増すというデータが出ている関係もありますので、4時間を5時間に緩和するという部分については、まだまだ今のところでは納得ができないかなと考えております。
5分に緩和という、馬渡委員がおっしゃられた部分については、分かる面もあるのですが、実際にドライバーの方に聞くと、5分はないよねというようなことをやはり言われていますので、現場の声とすると、5分はちょっと厳しいというのがあったかなと思います。以上です。
○馬渡委員 同じ現場に聞いても、質問の方法で、5分だったら助かりますという運転手もいるものですから、そこは運転手さんの勘違いもあるのかなと。5分で、とにかく乗れという話をしているわけではなくて、10分でも15分でもいいのだけれども、合計して30分になるというのをきちんと理解させるということが大事なのかなと思っているのです。10分しなければいけないというのをイライラしながら10分待って、今はデジタコですので、この間も、ある事業者から言われたのは、30秒だけ短かったと。要は、運転手さんは自分のアナログの時計を見て、10分たったと思って出たら、デジタコが付いていたらしいのですが、9分30秒で出て、これは駄目ですねと、簡単に言われたので、何だかなという話もあります。
 それも含めて5分、トイレに行ったりとか、たばこを吸ったりとか、深呼吸をしたりという時間は5分あれば十分ですから、5分で出てもいいし10分になってもいいという指導のほうが大事かと思うのですけれど、そこで30分取ってもいいわけですよ。その指導がないから5分はないよねという、多分そういう反応になるのかなと思いますので、そこのところはやらなければいけないこと、それから先ほどの休憩の問題ですか、その辺も含めて話せば、自ずと落ち着く所に落ち着いてくるのかなと、私は楽観しているのですが。
○藤村部会長 世永委員、何かありますか。
○世永委員 5分はないよねというのは、私はたばこを吸わないのでよく分からないのですが、たばこだけだったら外に出て5分で終わるのかもしれないのですが、トラックを止める所というのは、大体端っこのほうなので、そこからトイレに行ってくると、それで5分はないよねというように発言させていただいたのです。基本的に体を動かしたり何なりするというのを考えると、いろいろな意味で10分と決めた背景があるのだと思いますので、ドライバーからのヒアリングもそうですが、決めた背景というものを、もし分かれば後で教えていただければなと思っています。
○藤村部会長 分かりました。
 では次に、「特例」の所に行きたいと思います。特例については8ページですね、労側は、バスと同様の見直しを行うべきではないかと主張しておられます。バスと同様の見直しというのは、次の9ページにあって、これで労側としてはまとめてほしいということですね。使用者側は、それぞれについて主張しておられますが、労側が使用者側の主張を見て、ここはどうなのだろうかと疑問に思っておられる点をお伺いしましょう。どうですか。
○世永委員 ここは、休息等との関係も含めて、とにかくこの関係については、この間言ってきたとおりです。使用者側が言っているのは、特に全体の回数の2分の1とか、一定期間の関係とかは、やはりバスと一緒にするべきだなと思っております。分割の2時間、3時間というのは、ちょっと忙しいというか、そうではないのだろうと。これは、荷種によっていろいろあって挙げてきているのだと思いますが、ちょっと今の段階では受け入れることはできないなと思っています。
ただ、2人乗務の関係で、特に馬匹を書いていますが、馬匹以外についても、ここの所については全体的な数字が見えてくれば話をしていける1つの所かなと思っています。やはり、運行自体がタイトになってきますので、ツーマンということが可能であれば、そこは何らかのものは必要になってくるのかなと思っています。
 フェリーの関係については、数年前に一度認めた経緯がありますので、今回については変えるつもりはございません。
○藤村部会長 ということで、馬渡委員、どうですか。
○馬渡委員 2時間、3時間というのは、世永委員がおっしゃったとおり、ケース・バイ・ケースでこういうようなことがあるということで言わせていただいていますので、ケース・バイ・ケースで考えるべきだと思っていただければ、最大公約数的な部分にするのか、最小公倍数的なところにあるのかを話し合って決めるということだと思います。
忙しいというのはよく分かるのですが、ちょうど仕事のサイクルというのがあるのです。この時間、フェリーにちょうど2時間乗ってすぐ行きたいのだけれども、休息にするためには、もう2時間ぐらい休まなければいけないとか、いろいろな意見はあります。前回申し上げたように、47都道府県いろいろな荷主さんがいらっしゃって、ケース・バイ・ケースですが、それを全部言っているときりがないのですけれども、我々のほうで考えて、こういうケースが多いなと感じた部分を述べさせていただいています。個別の話で決めるわけにはいかないと思いますから、折り合えるところ、お互いに分かり合える部分というのがあれば、それで決めていきたいなとは思っています。
 固執しているわけではないのですが、分割の話は、全体の時間、早く家に帰らせてあげたいと思えば、業務を短く、全体の時間を短くしていただいたほうが多分、合理的なのかなと。次に業務に入る時間というのを短くしていただいたほうがいいのかなと思われるようなお仕事もありました。
○藤村部会長 この特例という所については、すり合わせていって合意はできそうというところですか。
○馬渡委員 どの部分で合意するかは、先ほど言ったように、最大公約数にするのか最小公倍数のところでやるのかの違いは出ると思いますが、重要度と、頻繁にそれがあるのかどうかというのは、話の中ではお互いに出せると思いますので、御納得いただけるのだったら合わせていただいたほうがうれしいなと思っています。
○藤村部会長 分かりました。もう1つ、「その他」というのがあって、10ページです。荷主都合による遅延というのをどう扱うかということで、労働側は、そもそも、そういう話は入れるべきではないと言っておられます。使用者側は、いやいや、そこが大変なのだと、そういうことですよね。労働側から聞きましょうか。どうですか。
○世永委員 労働側の考えは、変更はございません。荷主都合による遅延については、根本的に、この規制がこのようになっていますので、そこは認めないということです。ただ、今までの議論の中で、荷主への対応、特に着荷主への対応ということが何らかの形で出てくれば、そこでクリアできるものかなと私どもとしては考えております。
○馬渡委員 荷主都合に関しては、従来は、記録がきちんと認められる場合に限り、拘束時間から除いてくださいと。我々の責任なのか、それとも荷主さんの責任なのかをはっきりできる場合は除いてくださいという主張をしておりますが、今おっしゃったように、何でもかんでも荷主都合でクリアしようという気はさらさらなくて、悪い事業者もいらっしゃるものですから、当然そういうことを考える方がいらっしゃるかなというのも想定できます。それよりは、そういう事案が起こったときに、厚労省のほうでも何らかの形で、これは心疾患、脳疾患、惹起していますよというようなことは、大手を振って我々も言えるし、労働組合も言えるし、国も言えるのではないかなと思いますので、何らかの形でそういう牽制ではないですが、そういうことができるようになると、一歩出られるかなと。
 そして、私が思っているのは、720時間っていうのは、こんな議論はしないで、大分良くなってきたから720時間にしましょうという話になる一歩に960時間をしてほしいので、何らかそういう部分を皆さんに考えていただいて、そういう第一歩ができるのであれば、どこに問題があるかというのが、次のもっと短くしようという話のときにあぶり出せるようにしてほしいというのが個人的な意見でもあります。たくさんの事業者がいらっしゃるので、別のことを考えている方もいらっしゃるとは思うのですが、やはり大義名分は必要だから、大義名分というか、こういうようなことを労働者に強いないようにしようよと。我々経営者は強いないようにしますということで、自主的にガイドラインも決めてやっていっているのですが、反面、どうしても守らせたくて、そこが板挟みという事業者が多いのも確かなものですから、そこを何とか今回、担保してあげようと思って出てきておりますので、それの中身によって荷主をどう扱うか、拘束時間から除いたほうがいいのか、こういう事案が出てきたときに、厚労省のほうで把握されて、そこも留保されて、国交省に改善するようにきちんと働きかけをしてくださいという話になるのか、やり方はいろいろあると思うのです。
 けれども、問答無用で改善基準告示に書き込んであるから、あなたたちは違反ですよと、現実に来られたときに、違反したかしないかも、0か1かのデジタルのような話なので、そこは何とか、こういう場合はそこは留保してこうしましょうとか、そういう話にならないかなということを申し上げているつもりです。
○藤村部会長 加藤委員、どうぞ。
○加藤委員 今の馬渡委員の補足なのですが、先ほど厚労省から着荷主に対するアプローチの話があったので少し前進かなと思っているのです。我々は、例えば労働基準監督署の立入りを受けて、改善基準告示違反があるということになると、当然、相互通報制度で国土交通省にも話が行って、今度は運輸支局の監査があって、我々事業者としては処分を受けるという形になると思うのです。今、馬渡委員がおっしゃったことで言うと、例えば改善基準告示違反があったときに、その内容を見ていただいて、当然、悪質事業者が意図的にやっている悪質なものはしようがないわけですが、よく見たら着荷主の都合で、例えば10時間超過してしまったというのであれば、これは当然、我々としても発荷主を通じて着荷主に働きかけをしてもらわなければいけないのですけれども、国土交通省に相互通報するときに、その理由を、なぜ違反したのか、故意なのか、それとも第三者である着荷主の都合によるものなのかということで、言ってみれば処分に軽重を付けていただきたいということです。
 要するに、何でもかんでも自分たちは悪くないのに、着荷主の責任で告示違反になったとしても、例えば車両の運行で120日になってしまうというのであれば、それも情状酌量とは言いませんけれども、60日に短縮しましょうとか、そのようにならないと、現状は悪質な事業者も、そうでなくて、きちんとやっている事業者も同じ処分になってしまいますから、そこは相互通報の中に改善基準告示違反の内容を申し送りしていただければ非常に有り難いなと思っています。
○首藤委員 全体としての部分でもあるのですが、やはり使用者側の意見としては、実態とルールが大きく乖離した場合に、どうしても守れないと。だから、現実的に実効性のあるルールを作っていかないといけないという御指摘だと思います。悪質な荷主の問題などの、そういう面も確かにあると思うのですが、実態とルールがどこまで乖離しているのかということを把握するために、今回はトラックだけで2回も実態調査を行っているわけです。その分、審議も遅れているわけですが、この実態調査の結果から、どういうことで乖離があるのかということも、改めてきちんと確認していく必要があるのかなと。今日、いろいろな個別具体的なお話を伺って大変勉強になりましたし、そういう実態もあるのだということもあるわけですが、同時に、例えば1年の拘束をみれば、年3,300時間未満の所が8割というような実態もあるわけですよね。ですので、根拠に基づいて、どこまで乖離があるのか、どこまで難しいのかというところも改めて確認してみる必要があるのかなと思いました。以上です。
○馬渡委員 今の例外的な取扱いの中で、バスのほうで軽微な移動のものに細かい書き込みがしてあるのですが、我々トラックから言わせていただくと、これも自分の意思で動かす軽微な移動というのは、ほぼほぼないものですから、荷主さんの下であったり、例えば海上コンテナの荷待ちをしているときに、道路に並んでいるのだけれども、ちょっとずつ動かないとゲートまで行き着かないとか、そういう荷主に起因したような部分というのが多々あるものですから、軽微な移動の取扱いは、このバスの書き込みだと我々は使いにくいというか、使えないなと思います。そこは、我々独自で軽微な移動をこのようにしてくださいという、今までも言いましたけれども、それは主張させていただこうかなと思います。
○藤村部会長 世永委員、どうぞ。
○世永委員 馬渡委員、出していただけるのは、それはそれで出していただければと思うのですが、ただ、私が言っているのは、先ほど言ったように、SA・PAの関係は、連続運転の関係も含めて考慮していただきたいということです。それと、海上コンテナの関係は、正直言ってしようがないかなと。海を担当してきた私としても、別な所に話を持っていかないと多分、改善できないと思いますので、そこは議論に入れられると、ちょっと困ってしまうなと思っています。
あとは、あまりしゃべってもあれなのですが、休日の取扱いの関係も、現行は休息期間に24を足して実際は32時間という基準の取扱いで、分割休憩、特例の関連でいきますと、4と6と。6の場合は24を足して30、これを下回ってはいけないということです。バスの場合は4と7なので、当然33になるのだろうと思いますが、まだ、ここの議論も、ちょっと使側のほうから意見は出たと思うのですけれども、我々としても整理していく必要があるし、できればその辺も含めて、行政から全体的なたたき台を出していただければ、整理できるものは整理していきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
○藤村部会長 一応、一通り、最後まで労使双方の御意見を伺ってまいりました。何か更に追加で言いたいということがあれば、お伺いします。よろしいですか。今日の御議論で、どこに違いがあるのかというのが大分明確になってきたように思います。再三、出ておりますように、やはり心疾患、いわゆる過労死、そこを何とかしなければということで、もともとこの議論が始まっておりますので、それに合わせた形での設定ということが必要かと思います。ラジオを聴いておりますと、道路交通情報というのが流れてまいりまして、トラックが事故を起こしているというのを割とよく聞くのです。印象ではありますが、なぜ事故が起こるのかという原因はいろいろあるのでしょうが、長時間の運転の結果として、あるいは十分な休息が取れていないことによる事故、しかも大きくなると高速道路が閉鎖されるとか、これは、ほかの人たちにも非常に迷惑がかかることになります。御本人の健康確保がまず大前提ではあるのですが、そこをないがしろにすると、実はほかの所にも非常に大きな損害が出てしまうというのが現実かなと思います。
 もう1つ、やはり若い人が働きたいと思うような産業になっていかないと、物流が滞ってしまうことになります。これは、荷主側も考えなければいけないことだと思うのです。適正な労働時間、適正な収入、それが確保されて初めて働いてみようかという人が入ってくるわけで、とても大事かなと思います。
 そろそろ時間になりましたので、本日の議論はここまでにしたいと思います。最後に、事務局から連絡事項があれば、お願いいたします。
○副主任中央労働基準監察監督官 ありがとうございました。次回の作業部会の日時、場所については、調整の上、追って御連絡させていただきます。
○藤村部会長 それでは、これをもちまして、第5回自動車運転労働時間等専門委員会トラック作業部会を終了いたします。どうもありがとうございました。