2022年5月13日 第17回新型インフルエンザ対策に関する小委員会 議事録

健康局結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室

日時

令和4年5月13日(金)10:00~12:00

場所

Web開催
事務局:厚生労働省 共用第9会議室(17階)

議題

抗インフルエンザウイルス薬の今後の備蓄方針について

議事

議事内容
○竹下新型インフルエンザ対策推進室長 おはようございます。事務局の結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室長の竹下です。
それでは、定刻になりましたので、これから開始させていただきたいと思います。
それでは、ただいまから第17回「新型インフルエンザ対策に関する小委員会」を開催させていただきます。
構成員の皆様におかれましては、御多忙にもかかわらず、御出席いただき誠にありがとうございます。
私、本日、議事進行を務めさせていただきます健康局結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室の竹下と申します。よろしくお願いいたします。
なお、本日出席予定でした結核感染症課長の江浪に関しましては、公務のため欠席させていただきます。
本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の方々におかれましては御理解と御協力をお願いいたします。
また、傍聴の方は「傍聴に関しての留意事項」の遵守をお願いいたします。
なお、会議冒頭の頭撮りを除き、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので、御留意ください。
また、本日は、新型コロナウイルス感染症における今般の状況等を勘案し、ウェブ会議で開催することとしております。
まず、ウェブ会議を開催するに当たり、会議の進め方について御連絡させていただきます。
御発言される場合は、まずは挙手機能を用いて挙手していただくか、チャットに発言される旨のコメントを記載していただき、座長から御指名されてからの御発言をお願いいたします。なお、ウェブ会議ですのでタイムラグが生じますが、御了承をお願いします。
会議の途中で長時間音声が聞こえない等のトラブルが生じた場合は、あらかじめお知らせしている番号までお電話をお願いいたします。
続きまして、委員の出欠状況について、御報告いたします。
御出席の委員につきましては、通信の確認も踏まえて、委員のお名前をこちらから申し上げますので、一言お返事をいただければと思います。
五十音順に、押谷委員。
加藤委員。
釜萢委員。
川名委員。
齋藤昭彦委員。
齋藤智也委員。
坂元委員。
谷口委員。
中里委員。
長谷川委員。
なお、大曲委員、吉川委員からは、御欠席の連絡を受けております。
現在、委員12名中10名に御出席いただいておりますので、厚生科学審議会の規定により、本日の会議は成立したことを御報告いたします。
なお、信澤先生におかれましては参考人としての御出席をお願いしております。
次に、審議参加について御報告いたします。
本日御出席の委員の方々の過去3年度における関連企業からの寄附金などの受け取り状況について申告いただいております。事務局で申告内容を確認しましたが、審議に不参加となる基準に該当してございませんでした。
以上でございます。
カメラの頭撮りはここまでとさせていただきますので、申し訳ございませんが、御協力をお願いいたします。
なお、これ以降は、写真撮影、ビデオ撮影、録音をすることはできませんので、御留意ください。
(カメラ撮り終了)
 
○竹下新型インフルエンザ対策推進室長 それでは、議事に入る前に、資料の確認をさせていただきます。
お手元のほうに議事次第及び委員名簿、資料1、参考資料1になります。不備等がございましたら事務局にお申し出ください。
それでは、ここからの進行は谷口座長にお願いいたします。
○谷口委員長 ありがとうございます。
それでは、議事に入りたいと思います。
各委員の皆様には事前に資料を送付いただきまして説明をいただいているところだと思いますが、重要なところにつきましては事務局から簡潔に御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室長 それでは、私から、資料1について御説明させていただきます。資料1を御確認ください。
資料1、最初に書いてある「1.現在の備蓄方針について」ということですけれども、国は、新型インフルエンザ等特別措置法に基づき、新型インフルエンザ等対策行動計画及びガイドラインにおいて、抗インフルエンザウイルス薬の備蓄について方針を定めております。
主に定められている項目は4つございまして、一つは、国と都道府県は、最新の諸外国における備蓄状況や医学的な知見等を踏まえ、全罹患者、大体これが被害想定において全人口の25%が罹患すると推定されています。その治療と、その他の医療対応に必要な量、合わせて4500万人分を目標として抗インフルエンザウイルス薬を備蓄することになっております。
インフルエンザ株によっては、既存の備蓄薬に耐性を示す場合もあることから、国は抗インフルエンザウイルス薬耐性株の検出状況や臨床現場での使用状況等を踏まえ、今後備蓄薬を追加・更新する際には、他の薬剤の備蓄割合を検討することになっております。
また、備蓄薬の種類については、平成27年9月、厚生科学審議会感染症部会の決定を踏まえて、多様化を図ることが決まっております。備蓄割合においては、市場流通割合や想定する新型インフルエンザウイルスによる疾病の重症度等を踏まえること。また、新規の抗インフルエンザウイルス薬の備蓄についても、引き続き検討することになっております。
具体的なその備蓄薬の種類におかれましては、参考資料1のほうのちょうど3ページ目のところに一覧の表になっておりますので、御参考いただければと思います。
このインフルエンザ薬の備蓄の切替えの優先順位については、資料1に戻っていただきたいと思います。
オセルタミビルのドライシロップが季節性インフルエンザでも小児を中心に使用されていること等から、迅速に備蓄を開始すること。
また、ペラミビルについては、点滴静注薬であり重症患者等に使用されることが想定されるため優先的に備蓄を開始すること。
続いて、ラニナミビルについては、既存の備蓄薬が有効期限切れになる時期を勘案しながら、順次、切替えを行っていくことが決められております。
そういった状況を踏まえた上で、現在、備蓄しているのは、先ほどお示ししました参考資料1の3ページ目ですけれども、ここに書いてあるオセルタミビル。オセルタミビルに関しましては、タミフルとオセルタミビル「サワイ」がございますのでその2つ。あと、ザナミビル、ラニナミビル、ペラミビル、ファビピラビルについて、備蓄保管を行っております。
なお、ファビピラビルにつきましては市場流通しているものではございません。ファビピラビルについては他の全ての薬剤に耐性を示すウイルス株の出現に備えて、目標量の4500万人分とは別に200万人分を国のほうで備蓄を行っております。これが現状でございます。
続いて、令和2年の1月、第15回の新型インフルエンザ小委員会で議論していただいた内容ですけれども、今回審議いただきたい内容のバロキサビルに関する検討状況の直近の状況について御説明させていただきたいと思います。
バロキサビルにつきましては平成30年2月に薬事承認されて、翌月の3月14日から薬価収載の下に販売が開始されております。
このバロキサビルにつきましては、従来、市場流通している抗インフルエンザ薬はノイラミニダーゼ阻害薬という作用機序であるのに対して作用機序が異なりまして、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬であるというのが主な特徴でございます。
この件に関しまして、第15回厚生科学審議会感染症部会新型インフルエンザ対策に関する小委員会、これは令和2年の1月に開催しておりますけれども、そのときに御審議いただいて、バロキサビルについては直ちに備蓄することとはせず、基礎及び臨床でのエビデンスの蓄積を基に、関係学会の臨床上の位置づけを踏まえた上で引き続き検討することとなったというのがこれまでの検討の経緯でございます。
そのことに関して、直近、関係学会のステートメントがどういう状況なのかというのを改めてここで示させていただきます。
1つ目が、感染症学会の提言でございます。令和3年12月に日本感染症学会の提言「今冬のインフルエンザに備えて 治療編~前回の提言以降の新しいエビデンス~」において、バロキサビルについては以下のような記載が行われております。
オセルタミビルと比較した場合、臨床症状の改善効果は同等であり、バロキサビルによる有意なウイルス減少効果を認め、有害事象の発現リスクは低い。
また、H1N1、H3N2、B型のいずれにも、バロキサビル低感受性株の増加は認められなかった。これは前回審議のときに、バロキサビルの低感受性株が、当初使用を始めたときに増えてきているのではないのかということが一時示唆されたことがございました。そのことに関して、その後の翌シーズンの結果というのも踏まえた上で、この低感受性株の増加は認められなかったというところでこの記載が加えられていると推察します。
いずれかの薬剤の低感受性ウイルスが示唆された際には、作用機序の異なる薬剤が有用であることも示唆されております。
また、令和3年の10月に日本小児科学会も指針を出しております。「2021/22 シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」において、バロキサビルについては以下のように記載がされております。
12歳未満の小児における治験や臨床研究の結果が報告され、おおむねノイラミニダーゼ阻害薬と同程度の効果や安全性が示されている。
また、同薬の使用経験と有効性は集積され、一部他の薬剤に対する優位性を示唆するデータもある。
一方で、小児には特化した検討が少なく、薬剤耐性ウイルスの出現も認められていることから、今後のさらなるデータの蓄積と検証が望ましいと考え、現時点では12歳未満の小児については積極的な投与は推奨しない。免疫不全患者では、耐性ウイルスの排泄が遷延する可能性があり、単剤で使用すべきではないと考えるという形で、季節性の通常の使用については積極的な推奨というのは出ておりません。
一方で、ノイラミニダーゼ阻害薬耐性株が疑われる状況では、使用が考慮されるということも記載されております。
以上のようなステートメント、学会の位置づけというのを受けまして、今回御提案させていただきたいという点に関しましては2点ございます。
1点目は、備蓄薬の種類の追加について、関係学会においては、バロキサビルの臨床上の位置づけを受けて、備蓄薬の多様化を図るため、バロキサビルを備蓄薬として追加してはどうかということです。
もう一つは、備蓄薬の切替え時の薬剤購入に係る優先順位についてでございます。
従来、先ほど優先順位の件を説明させていただきましたけれども、バロキサビルを追加するとした場合の優先順位というのをこちらのほうで示させていただいております。
オセルタミビルのドライシロップについては、季節性インフルエンザでも小児を中心に使用されていること等から、引き続き、最優先で備蓄するべきである。
続いて、バロキサビルについては、市場流通している抗インフルエンザ薬の中では唯一作用機序が異なり、治療薬の選択の幅を広げるため、次に優先して備蓄を開始するべきである。
ペラミビルについては、点滴静注薬として重症患者等に使用されることが想定され、引き続き優先して備蓄するべきである。
オセルタミビルのカプセル、ザナミビル、ラニナミビルについては、既存の備蓄薬が有効期限切れになる時期を勘案しながら、順次、切替えを行っていくこととするという形で御提案させていただきたいと思います。
御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○谷口委員長 竹下さん、ありがとうございました。
それでは、これまでの事務局からの説明を踏まえて、委員の皆様から御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
坂元先生、どうぞ。
○坂元委員 1つだけ質問ですが、バロキサビルのいわゆる使用有効期限です。たしかタミフルの場合は7年かなんかに延長になったと思うのですけれども、バロキサビルが備蓄になった場合に5年なのか、それとも、7年なのか、もし分かればお教えいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○谷口委員長 ありがとうございます。
竹下さん、いかがでしょうか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室長 タミフルに関しましては、順次、有効期限を延ばしていただいて、現在、10年までになっております。バロキサビルのほうも今、延長が徐々に進んでいまして、現時点では5年ということになっております。
○谷口委員長 ありがとうございます。
ほかはよろしいですか。たしか最初の年は特にバロキサビルはかなり使いやすいし、臨床的には効果もかなりよかったと自分でも思っているのですけれども、特に小児で使うと低感受性株が出やすいというデータが幾つかあって、それでかなり慎重になった記憶があるのですが、いかがでしょうか。
○齋藤(昭)委員 谷口先生、よろしいでしょうか。
○谷口委員長 齋藤先生、どうぞ。
○齋藤(昭)委員
皆さん、おはようございます。新潟大学小児科の齋藤です。
谷口先生の今のコメントは小児科医の立場から、まさにそのとおりでした。最初のシーズンに小児に使うと、バロキサビル耐性のウイルスが高い頻度で発生したため、12歳以下の子どもに使うときには非常に慎重に投与するというステートメントを日本小児科学会から出させていただきました。ですので、この薬剤の使用に関して、小児においてはオセルタミビルのドライシロップなどが非常に優先的に使われている現状では、耐性ウイルスの発生が非常に懸念されるところです。その後、インフルエンザの感染者数がCOVID-19の影響で減少したので、なかなかその検証ができていないままなのですが、耐性ウイルス発生の懸念は小児科医としては非常に心配なところです。
以上です。
○谷口委員長 ありがとうございます。
でも、最近のデータですと、以前に指摘されたほどその耐性は出ていないのではないかという論文も幾つか散見されますが、そこら辺も今、小児科学会で検討されているのですか。
○齋藤(昭)委員 そうですね。やはり新しいデータが出てきましたので、その辺りを含めて今、来シーズンのインフルエンザの指針をどうするのか検討しております。先生の御指摘のとおりです。
○谷口委員長 ありがとうございます。
押谷先生、どうぞ。
○押谷委員 押谷です。ありがとうございます。
バロキサビルを追加するということについては異論はないのですけれども、これは備蓄方針の中に、市場流通割合も考慮しながらその備蓄の割合を考えるという記載があったと思うのですけれども、これはそれぞれの薬をどのくらい備蓄する方針なのかということが資料の中にはなかったと思うのですけれども、これは公開しないような情報なのでしょうか。どのくらいどういう薬が備蓄されるのかというのがよく分からなかったので、もし分かればというか、公開できる情報ならばお教えいただければと思います。
以上です。
○谷口委員長 ありがとうございます。
川名先生、似たような質問でしょうか。
○川名委員 防衛医大の川名です。よろしくお願いします。
今、押谷先生が質問されましたけれども、私もちょっとそれが気になっておりまして、例えば、オセルタミビルがやはり備蓄の最優先になってくるというのは、これはこれまでのエビデンスも最も多いですし、妥当な判断だろうと思いますが、例えば、ドライシロップが最優先になるということと、それから、最終的にそれぞれの薬剤の備蓄目標をどのぐらいに設定するのかということが同じことではないのではないかなというふうに受け止めたのです。
つまり、最終的にそれぞれの薬を、例えば、オセルタミビルだったらどのぐらい、ラニナミビルだったらどのぐらい、というのと、備蓄する上での優先順位というのが必ずしも一致していないのではないかというふうに思ったのですが、その辺をちょっと考える上で、例えば、最終備蓄目標が分かればより良いディスカッションができるのかなと思ったので、押谷先生の質問に関連して質問させていただきました。
以上です。
○谷口委員長 ありがとうございます。
信澤先生、関連しますか。
○信澤参考人 はい。少し関連します。
○谷口委員長 どうぞ。
○信澤参考人 ありがとうございます。
今までに押谷先生や川名先生がおっしゃったようなこととかぶるのですけれども、私もバロキサビルの備蓄そのものには反対しませんけれども、やはり12歳未満には積極的には使わないということは前提として備蓄されたほうがいいと思うのと、どれぐらいの割合で各薬剤が備蓄されるのかというのも可能であれば公開していただきたいというのと、あと、バロキサビルはほかの薬剤と違って作用機序が違うということで、インフルエンザウイルスのH3N2とH1N1とBとそれぞれに対して耐性の出方が微妙に違っていて、H3N2の場合には耐性株が結構出るということが言われていると思いますので、実際にパンデミックが起きたときにそのパンデミックウイルスでどれぐらい耐性が出るのかという検討は、実際に使う前にされたほうがいいように思いました。
以上です。
○谷口委員長 ありがとうございます。
事務局からありますか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室長 ありがとうございます。
市場流通割合に関しましては、毎年、新しく備蓄方針を大幅に変更するときには、各都道府県にこれぐらいの量ですということを事務連絡でお出ししますので、当然、最終的には公開される情報になっております。大体の割合でいきますと、今、細かいところの計算をしているところではございますけれども、恐らく、例えば、令和3年の使用頻度というと、ほとんどインフルエンザは発生していないのでそれを使うことは実際に現実的ではないということを考えると、一番直近でインフルエンザがある程度数が出て使われていたというのが令和元年になると思いますので、令和元年の使用したものを参考に算出することになると思っております。その数字を基に出していくことになっておりますので、それについても当然、公開する情報として考えております。
○谷口委員長 ありがとうございます。
田辺先生が毎年、NDBとNCDAと販売量でそのデータを出していますが、ちょっと今、共有します。今、共有されていますか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室長 はい。
○谷口委員長 これはNDBのデータなのですが、2019年以前はほぼタミフルとラニナミビルで9割ぐらいだったのですけれども、2018年にゾフルーザが出たら、ゾフルーザとタミフルが非常に多くなって、ラニナミビルが減ってという感じなのです。
そして、2019年、一番直近ですけれども、この年にはやはりオセルタミビルでラニナミビル、ゾフルーザが少し減ったという感じになっています。実際に臨床の先生方はこんな感じで使われているという状況なのだろうと思います。
そうすると、大体こういった感じで最終的に考えていかれるのでしょうか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室長 そうですね。先ほどのものですとオセルタミビルが入っていないと思いますので、タミフルで記載がございますので、そういったものも含めてこちらのほうで市場流通割合というのを、これまで算出しているのと同じやり方で算出して最終的に出していくということになると思います。
○谷口委員長 ありがとうございます。
ほかに御意見はいかがでしょうか。
釜萢先生、どうぞ。
○釜萢委員 ありがとうございます。
新型インフルエンザとして流行する株がどういうものになるかということはなかなか予測ができないわけですけれども、そのことは分からないという前提の中で、今、備蓄している薬は、新たに出てくるであろう新型インフルエンザに対しては同等に有効であるという前提で備蓄を考えてよいのかどうかという点について、何か知見があれば教えていただきたいと思います。
○谷口委員長 ありがとうございます。
先ほど、信澤先生から、株によっては耐性パターンも違うかもしれないというお話もありましたが、いかがでしょうか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室長 事務局から回答させていただきます。
基本的には発生したときには、やはりその薬剤の感受性も含めて、その発生したものに対しての調査というのは速やかに対応していく必要性があると考えております。
一方で、そのときに例えば、少ない種類しか備蓄をしていなくて、備蓄をしていないものが有効になるということがあると、そのときの対応というのはなかなか難しい場合がやはりありますので、やはり薬というものが作ってくださいと言ってすぐに例えば、即日に納入できるというものではないということも考えると、備蓄を多様化して対応を考えておくと。
そういう意味でいうと、今回の作用機序が異なるものというのは、従来の市場流通しているのはノイラミニダーゼ阻害薬だけということになりますので、備蓄の対象にしたほうがいいのではないかというのは考えてございます。
○谷口委員長 ありがとうございます。
そういう方針でキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬と、あと、あれですね。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室長 アビガンでしょうか。
○谷口委員長 そうです。アビガンも一緒にということなのですね。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室長 はい。
○釜萢委員 釜萢です。
○谷口委員長 どうぞ。
○釜萢委員 重ねてで恐縮ですが、今、新型インフルエンザに対してどういう株を考えるのかというところは分からないわけですけれども、ある程度予想される株に対しての、ですから、出ていないから何とも言えないといえば言えないのですけれども、現時点において薬剤の有効性についての調査研究というのは引き続き行われているという理解でよろしいでしょうか。今の可能な範囲で、予想されるものに対して可能な範囲で薬剤の有効性が逐次更新されているという理解でよろしいでしょうか。
○谷口委員長 いかがでしょうか。先だって、中国でH5N8の初のヒト感染というのがあったと思うのですが、これは事務局でしょうか、それとも、信澤先生、長谷川先生でしょうか。
○長谷川委員 我々のところでは、その薬剤の有効性についてというのは特には調べていないのですけれども、あと、予想されるというのが非常に難しいと思いまして、パンデミックを起こすものを予測するのは非常に難しいと思います。ただ、動物由来ということで海外でヒトの感染例があるものとか、あとは国内で鳥のH5N1などの高病原性は今年も見つかっていて、さらに北海道では哺乳動物、キタキツネとかタヌキでの死亡例というのが見つかっておりますので、そういったところはちょっと注意したほうがいいのかなと。感受性などがもし可能だったら調べていったほうがいいのかなと思っております。
以上です。
○谷口委員長 ありがとうございます。
押谷先生、どうぞ。
○押谷委員 今の釜萢先生の御質問と関連する話なのですけれども、期待される効果というのが季節性インフルエンザとパンデミックインフルエンザでは本来違うはずで、新型インフルエンザのこういう会議で僕も何回か発言したことがあるのですけれども、今、明確にあるエビデンスというのはオセルタミビルが基準になっているのですけれども、有熱期間がどれだけ短くなったかというぐらいのエビデンスしかなくて、本当に今回のCOVID-19の初期のように非常に多くの人が亡くなるという致死率の高いパンデミックが起きたときに期待する効果というのは本来は重症化阻止なのです。そこの部分に対するエビデンスというのは非常に乏しくて、オセルタミビルを含めて、2009年のパンデミックのオブザベーショナルデータぐらいしかなくて、きちんとしたデータがないのです。
そして、ペラミビルの話で重症化に対してということが事務局から説明がありましたけれども、経口投与ができない重症化した人に対して投与するということはあるかもしれないですけれども、これもこの会議でたしか議論になったと思いますけれども、本当に重症化阻止にどのくらい効いているのかというデータは、多分今もほとんどないのだと思うのです。
そういう意味で、本当に致死率の高いパンデミックが起きたときにどの薬がどのくらい重症化阻止に効くのか、効果があるのかということをきちんと見極めなければいけなくて、今回のCOVID-19でも臨床研究する体制が日本ではほとんどなかったということがファビピラビルとかの臨床研究でも遅れたということにつながっていて、だからこういう議論をする、ちょっと今日の議論とは離れるかもしれませんけれども、パンデミックが起きたときに重症化阻止にどういう効果があるのかということを迅速に見極めるそういう臨床研究体制というのをやはりつくっておかないと、本当にどのくらいの効果がどういう薬であるのかということが分からないし、恐らく、今回のCOVID-19を通して得られた経験からしても、多分いろいろな薬が出てくるのです。新しい薬も出てくると思います。モノクローナル抗体製剤とかRNAポリメラーゼ阻害薬とかそういうものが次々に出てくるのだと思いますけれども、そういう中でどの薬が本当に重症化阻止に効果があるのかということを見極める体制をきちんとつくっておくことが必要なのだと思います。
少し長くなりましたけれども、以上です。
○谷口委員長 ありがとうございます。
おっしゃるとおりだと思います。アメリカのEIP(Emerging Infection Program)みたいな迅速に効果が判定できるようなメカニズムはつくっておかないといけないのだろうと思います。
ほかに御意見はございますか。
○押谷委員 谷口先生、すみません。もう一点よろしいですか。
○谷口委員長 どうぞ。
○押谷委員 多分これもちょっと今日の議題とはずれるかもしれないのですけれども、今、皆さん御存じのようにインフルエンザが全然流行していないという状況の中で市場流通というのがどのくらいあるのかというのを僕はすごく心配しています。なかなか企業としても、恐らく有効期限は切れているので、流行が起きないなかで市場流通分を確保するのは難しいのではないかと思います。どのくらい本当に市場に今、薬があるのかということを少し心配していて、ずっと流行していないので、アメリカとかは今年、割と大きなインフルエンザの流行が起こりましたけれども、日本は起こらなかったので、この次のシーズンはかなり大きな流行が起こる可能性が十分あって、そのときに市場流通分が非常に少ないということになるとかなり問題になる。今のこの備蓄というのは、多分パンデミックでないと放出できないような仕組みになっているのだと思うのですけれども、そういう本当に大きな流行が起きて流通分が足りないというときにこれが使えるのかどうかというのをちょっとお聞きしたいと思っています。
以上です。
○谷口委員長 ありがとうございます。
川名先生、どうぞ。
○川名委員 ありがとうございます。
私はバロキサビルの備蓄の件についてちょっとコメント致します。バロキサビルがやはり低感受性株の出現ということが問題になって、少し使用に慎重になろうという雰囲気がやはりあったと思います。季節性インフルエンザに対して低感受性株の出現に注意しながらできるだけ慎重に使っていこうという考え方は当然だと思うのですけれども、やはりパンデミックインフルエンザということになりますとこれはやはり別の観点から見ていく必要があると思います。
そういう意味からいうと、ノイラミニダーゼ阻害薬とは作用機序の違うバロキサビルを備蓄に追加していくというのは当然の判断だと思いますし、賛成いたします。
以上です。
○谷口委員長 ありがとうございます。
ほかによろしいですか。
今、押谷先生からお話があった、現在、もう今は夏に近づきつつあるわけですけれども、先シーズンとか次シーズンの抗インフルエンザウイルス薬の市場流通量、そして、今回のパンデミック用のものを季節性で万が一カタストロフィックになったら使えるのかという御疑問がありましたが、事務局はいかがでしょうか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室長 市場流通の割合に関しましては、経済課のほうから定期的に報告をしていまして、一番最近のものでいいますと、3月分ということが4月に報告をされています。今の保有分というのはそこのところに公開されていまして、例えば、タミフルでいうと約444万とか、リレンザでいうと約252万みたいな形で、各薬剤についての現在のメーカー及び卸販売業者の保有量が公開されております。
先ほどもう一つ御指摘のありました、仮に季節性で放出できるようなことがあるのかということなのですけれども、通常のいわゆる季節性のままの状況であれば、現時点ではこれはやはり新型インフルエンザではないということになると思いますので、すぐ使用できるというものではないと思います。
一方で、季節性のインフルエンザというものが、例えば、公衆衛生上の大きな影響があって、また別の公衆衛生対応として異なってくるというのであれば、またその季節性インフルエンザがどういう扱いになるのかというところになってきますので、それに合わせて対応が変わってくるのではないかと思います。
ただ、やはり、そういう意味でいうと、通常の季節性インフルエンザを考慮した上でいうと、そのメーカー及び卸売販売業のところである量というのは一定の、これまでのインフルエンザのシーズンのときと同様のものを毎年、シーズン前には報告いただいておりますし、そういった形での準備を通常どおり行っていくということになるのではないかと思います。
○谷口委員長 ありがとうございます。
そうしますと、非常に公衆衛生上の危機になれば、PHEICみたいな状況になれば、改めてその時点でこの備蓄も使えるかもしれないという理解ですか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室長 そのときにまたいろいろと先生方にも御相談することになるのではないかと思います。
○谷口委員長 ありがとうございます。
長谷川先生、どうぞ。
○長谷川委員 その備蓄の仕方についてお伺いしたいのですけれども、これは備蓄が決まったら買い取ってどこかの倉庫にためておくようなものなのでしょうか、それとも、市場の中の流通の全体のバッファーをその備蓄分だけ増やしておくという形を取ったりすることはできないのでしょうか。実際にはどういう形で備蓄されているのでしょうか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室長 ありがとうございます。
ガイドラインで記載があるように、流通備蓄が1000万人分、国がその残りの分の半分1750万人分で、各都道府県で合計で1750万人分を備蓄しております。
○長谷川委員 ということは、流通の部分ということは、その部分は季節性のときに利用が可能だというふうに考えていいのですか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室長 すみません。もう一度お願いいたします。
○長谷川委員 流通でバッファーとして増やしている部分というのは、実際の季節性のインフルエンザで需要が増えたときには市場でそれを使うことは可能だということでしょうか。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室長 それはある意味、市場にもともとあるものですので市場で使うことができます。
○長谷川委員 ありがとうございます。
○谷口委員長 ありがとうございます。
幾つかの御意見をいただいていますが、バロキサビルの追加については大きな異論はないようですけれども、本当に重症化予防効果があるのかというのは恐らくどこかできちんと見つつも、万が一起こった際に迅速にそれが評価できる体制としては、この委員会のマターではありませんが、全体のパンデミック対応としてはしておかなければいけないだろうということだろうと思いますし、万が一季節性でカタストロフィックになればその時点で考えていただく必要があるだろうという御意見だと思います。
切替え優先順位については特に大きな御意見はいただいておりませんが、切替え優先順位につきましては、オセルタミビル、タミフル両方、加えてドライシロップ、ペラミビル、そしてラニナミビルですね。現在のシェアに基づいた考え方だと思いますが、これについては大きな御意見はございませんでしょうか。
信澤先生、どうぞ。
○信澤参考人 ありがとうございます。
先ほどの押谷先生の御意見を考慮しますと、今、市場での流通している割合に応じて備蓄割合を決めていくということになると、それが必ずしも重症化予防に適した薬を大量に備蓄するということにつながるとは限らないので、何かいいアイデアがあるわけではないのですけれども、その備蓄の割合の決め方に関しては、先ほど押谷先生もおっしゃったような重症化予防ということも考慮した上で何か決定する必要がないのかなということをちょっと思いました。
以上です。
○谷口委員長 多分、おっしゃるとおりだろうと思いますが、今、そういうエビデンスというものがなかなか難しいですよね。みんなを均等に備蓄しておけば、どれかが外れてもどれかが当たるということになろうかと思いますが、では、使わなかった分はどうするのだという話になりますのでそれもなかなか難しいのかもしれませんが、何かいいアイデアはございますか。そういったことも今後考えていこうということでしょうか。
ほかに御意見はございませんでしょうか。
加藤先生、どうぞ。
○加藤委員 加藤です。
今の重症化予防というところは大変重要で、私も薬剤の耐性ばかりではなくて、その有効性という点で多様性を持たせるという考え方もあるのかなと思います。ただ、薬剤の有効性を評価するのはパンデミックが起きたそのときに検証するしか恐らくなさそうなのかなと思います。もう一つ、やはりパンデミックというと、今も新型コロナのオミクロン株になって患者さんがたくさん出ていますが、できるだけ通常の医療体制の中で多くの医療機関が関わって患者さんに医療を提供するというところが重要なのではないかと思います。
そうなりますと、新型とはいっても通常の季節性インフルエンザの延長線上で診療ができるという観点から、ふだん使われている薬がそのまま使えるという状況をつくっておくということも大事なのかなと思っております。もちろんそのときにある薬には耐性があったということになると話が変わってきますけれども、通常の医療が非常時でも行えるようなという観点で流通割合というのも参考になるのかなと思いまして、追加で意見させていただきました。
ありがとうございます。
○谷口委員長 ありがとうございます。
いろいろなことを考えてということにきっとなるのだろうと思いますけれども、ただ、今は季節性というのは軽症でも割と抗インフルエンザウイルス薬が投与されているという状況はありますので、恐らく、パンデミックになって、今はコロナの軽症ですと全然薬を使わないわけですけれども、インフルエンザですと使われてしまうという落ちもあるのかなという気はしますので、そのときにはまたきちんとしたガイドラインみたいなものが出て、備蓄量に応じてこういった例には必要ないよみたいなことが必要なのかもしれませんけれども、またそういうのは感染症学会さんとか小児科学会、小児感染症学会、いろいろなところからのリコメンデーションも大きく効いてくるのだろうとは思います。
ほかはよろしいですか。
そうすると、これまでの御意見、バロキサビルの追加には大きな異論はありませんが、その重症化予防効果を考慮した上で、そして、現在の流通状況を考慮した上で備蓄割合を考えていくような、その公開も含めてやっていっていただきたいということかなと。
そして、実際の切替え優先順位については大きな御意見はございませんで、事務局案、現在の流通状況に合わせる、そして、パンデミックになったときに実際に小児が多いかどうかとか、今回のコロナみたいに最初のうちは全然かからないし軽症だみたいなことがあるのかもしれませんが、これも全然分かりませんので、現状ではドライシロップ、そして、点滴静注薬のペラミビル、そして、シェアの高いラニナミビル、こういったことを考えて順次切替えを行っていく。それについて透明性を持って公開していただくという御議論かと思いますが、よろしいでしょうか。
恐らく、今回のパンデミックのように、今回のパンデミックは、人工呼吸のための麻酔薬とかそういうものも結構足りなくなったりしましたので。これはこの委員会が考えるのか別の委員会が考えるのかは分かりませんけれども、先ほどの田辺先生方は、実際にデータベースから人工呼吸器中の鎮静薬もかなり途中でなくなって別のものを使ったというデータを出されていますので、恐らくそういったことも今後考えていかなければいけないのだろうなと思います。
ほかに御意見はございませんか。時間は若干ありますので、もしもこの際に、今後のこういった薬剤の備蓄について全体的な御意見がありましたら。
よろしいようですので、一旦、事務局にお返ししましょうか。
今回の御提案については、審議の結果、承認という形になっているのだろうと思いますが、幾つか御意見をいただいて、それを今後考慮していただくということかと思います。
○竹下新型インフルエンザ対策推進室長 ありがとうございました。
委員の皆様の御意見を踏まえて、進めさせていただきたいと思います。
また、次回については、事務局より改めて御連絡させていただきます。
本日は、お忙しい中、御出席いただきありがとうございました。