生活保護制度に関する国と地方の実務者協議 第5回議事要旨

日時

2022年2月15日(火) 13:00~16:00

場所

オンライン開催

議事要旨

参加者から以下の意見が出された。
1.  事務負担の軽減等について
・ 事務負担の軽減を図りながら支援の質の確保をしていくために、支援方針についてケース診断会議等により組織的な判断をしていくこと、特に困難事例等については、関係他機関等の仕組みを使いながらチームで対応していくことが重要。
・ 複雑な課題を抱える方や家族・地域のつながりが希薄な方も多い中で、全ての支援をケースワーカーが行っていくのは難しい。関係機関との連携を図りながら、チームで支援を行っていくことが重要。
・ 関係機関との連携を進めるに当たっては、ケースワーカーと関係機関の役割分担の整理が必要。
・ 福祉事務所が関係機関の関与を引き出せるような仕掛けが必要。ケースワーカーがどういう支援をするのか、ほかの機関には何をやってもらうのかといたことを関係者が集まって計画などを考えられる場を設けるのはいいのではないかと考えている。
・ 他機関との連携を通じて被保護者の生活実態をより丁寧に把握し、ケースワークの質向上を図るため、他制度における会議体に参画した場合の訪問調査活動の規定を見直すことも考えられる。
・ 関係機関との連携は効果的なケースワークと負担軽減につながる可能性もあるが、かえって手間が増えるケースもある。効率化が見込めるケースは実施して、連携を必要としないようなケースは連携を不要にするなど、柔軟に対応できるようになれば、効率化につながると思う。
・ 定型的な業務のデジタル化や医療券・調剤券等の電子化、各種調査の効率化等について、事務の合理化が考えられるのではないか。他機関の調査業務が多い中で、オンライン照会ができれば少しは軽減になるのではないか。
・ 医療券の紙媒体でのやりとりは、電子媒体でのやりとりになれば、事務負担の軽減につながるのではないか。
・ システムの標準化が進められるということだが、並行してデジタル化による効率化が進展するようにしてほしい。
・ 金融機関等への一括照会等でのICT化をお願いしたい。
・ 調査物と言われるような事務が多いので、それを減らせないか。あるいは、ICTやAIを活用することによって効率化が図れないか。
・ 生活保護に関わる業務の外部委託にあたっては、委託事業者の質の向上が必要だと思っている。事業者の質の向上が図れれば、結果としてケースワークの質の向上や負担軽減につながる。
・ 外部委託するときに、偽装請負にならないようにするという難しさを感じるところがある。
・ 外部委託の活用について、特に小規模自治体では、委託できる社会資源がないといった問題がある。広域的に取り組んだほうがやりやすいのではないかと考えている。
・ 外部委託を活用しない場合でも、OBなどの嘱託員での雇用・活用も考えられる。
・ 自立支援プログラムを初めとする委託の活用については、困窮制度との一体的実施をすることによって事業規模を少しでも拡大できるというようなやり方もあると思っている。制度的にもそのような困窮制度との一体的実施をより後押しできるようなやり方もあるのではないか。
 
2. 生活保護費の適正支給の確保策等について
・ 年金や各種手当の給付決定や金額改訂等の際に、申告が遅れるケースや本人が気づかず申告しないケースがある程度存在している。福祉事務所で直接確認できれば、適正支給と事務負担の軽減につながるのではないか。
・ 不適正受給となる事案について、内容的には、ケースワーカーの説明不足といったところに起因するものも多いため、徹底をお願いしている。
・ 複数の福祉事務所で保護費を受給する事案の防止のため、住民票上の住所地と異なる場合について、住民票所在地の自治体への受給確認等を必要に応じて行っている。
・ 偽名を使う方もいるが、氏名や生年月日などを全国の自治体で照会できるようになれば、ある程度効果があるのではないか。
・ 住民登録がない・分からない人や抹消された人について、重複して保護費を受給することのないようにどういった対応をしたらいいのか苦慮をしている。
・ 居住地特例について、特定施設入居者生活介護の有無にかかわらず特定施設については一律居住地特例の対象とした方が、現場の判断も迷わなくてよいのではないか。
・ 居住地特例の対象範囲の拡大については、明確に反対といったことはないが、範囲を広げ過ぎることによって特に遠方の施設に入られた方の生活実態の把握が難しくなってくる懸念がある。
 
3. 新型コロナウイルス感染症対策に伴う対応等について
・ コロナ禍によって失業や保護申請に至る事例はあまりない状況。その理由としては、特例貸付など、困窮者に対する施策が機能しているのではないかという声があがっている。一方、その中でも、生活に不安を感じる方や単身高齢者世帯の保護申請が増えているため、注視は必要。
・ 生活保護受給者の急激な増加に至っていない理由として、各種の給付金の支給が功を奏していると思う。そのほかに、支援団体の活動が活発になっているということも挙げられる。
・ コロナ禍の影響について、自立支援相談機関の相談件数が倍以上増えている。生活福祉資金の貸付、住居確保給付金や自立支援給付金の制度があるため保護申請には至っていないのではないか。また、貸付が延長まで含めるとかなり長期間受けることができるため、この間に収入状況を改善した方が多かったのではないか。
・ 入りやすく出やすい制度にすべきと言われることについては、自立に向けての支援を強めていくことが、今後取り組むべきことと考えている。
 
4. 生活困窮者自立支援制度との連携について
・ 生活困窮者自立支援制度の家計改善支援事業について、被保護者も対象にできるということであれば、一定のノウハウを持った方がいるため、効果があるのではないか。また、ケースワーカーの負担軽減にもつながるのではないか。
・ 生活困窮者自立支援制度との連携や一体的実施は有用であると認めるが、すみ分けも必要と考えている。
・ 生活保護制度と生活困窮者自立支援制度で事業を一体的に実施していくことについては、生活保護を廃止になった方で、引き続き支援が必要な方も一定数いるため、非常に意義がある。
・ 生活困窮者自立支援制度との連携強化の観点から、生活困窮者就労準備支援事業、生活困窮者家計改善支援事業等の中で、被保護者の支援を行うことができるようにすることが考えられる。
・ 生活保護制度について入りやすく出やすい制度とすべきとの指摘があるが、これについては、どうしても生活保護だけは受けたくないという感情的な問題があるため、生活困窮者自立支援制度との乗り入れをどのようにするかが課題と考える。例えば、生活困窮者自立支援制度でも使っているようなスキームを生活保護に取り込み、引継ぎしやすくすることについて、検討の余地があると思う。また、就労についての強力なインセンティブがあるとよいと考えている。
 
5. 生活保護基準における級地区分について
・ 生活費の水準に差がほとんどなくなってきたということであれば、3つに分ける意味がよく分からない。
・ 基準部会で統計的な分析をして、必ずしも6区分を維持する合理的な根拠はないという結果になった。都道府県に実施したアンケートの結果を踏まえ、今後は、枝番によって差を設ける必要は特にないということで、3つの級地区分に戻すということで検討を進めていきたいと思っている。
・ 枝番を廃止するということについては、妥当だと思う。実際に当てはめるときに、級地区分の引上げがあるところはよいが、引下げになるところはどうしてそうなるかという説明をどのようにするかが難しい。
・ 級地の指定については、福祉事務所または自治体の要望を丁寧に聞いて対応いただけるよう、配慮をお願いしたい。
・ 個別の自治体の級地指定については、統計的な手法を用いて、指定を見直し得る自治体を厚生労働省でピックアップし、個別に自治体と調整させていただこうと考えている。
 
6. その他
・ 生活保護受給者の半数以上を高齢者世帯が占め、経済的支援のみを必要とする世帯が存在する状況に鑑み、例えば居住支援の重要性に着目して、借家に暮らす高齢者のうち、少額預金又は少額年金である者に対し、家賃相当額を扶助する制度を創設してはどうか。
・ 高齢単身化を踏まえ、高齢者の状態像に対応した支援が必要であること、また、居住安定確保するための支援が重要であるという問題意識については、同意見である。一方で、住宅政策を所管する国交省などを含めた政府全体での検討が必要でること、財源の問題や公平性の問題もある。また、生活保障の関係での年金生活者支援給付金等との整合性などの、多岐にわたる課題があるのではないかと考えており、中長期的な課題であると考えている。
・ 被保護者の場合は、家計をうまくやっていく世帯が少なく、特に子供がいる世帯では、子供の養育もうまくいっていないところもあるため、そこを補完するような仕組みが必要。
・ 指定医療機関の指導に関して、お願いベースのことが多く、勧告・公表等の仕組みを設けることも考えられるが、実際どれぐらい効果があるか、ということもある。