生活保護制度に関する国と地方の実務者協議 第3回議事要旨

日時

2021年12月24日(金) 13:00~15:00

場所

オンライン開催

議事要旨

参加者から以下の意見が出された。
  1. 1.  健康管理支援事業等について
     ・ 健康管理支援事業はまだ始まったばかりなので、まずは実施体制をちゃんと構築していくことが必要。その上で、自治体内のいろいろな関係部局との連携が重要になると考えている。
    ・ 健診の受診勧奨を行うとともに、保健部門の保健師に依頼して保健指導をしていただいているが、保健師も本来業務があり、十分に実施できていない。福祉事務所に保健師がいるのが一番よいが、全庁的に確保することも含めて考えていく必要がある。
    ・ 被保護者のデータを把握・分析し、効果的な支援をするため、一定期間医療機関を受診していない者に対し、健診を受診させる仕組みの検討が必要。
    ・ 医療データの全体分析を国と都道府県が行い、毎年自治体と他の自治体との傾向比較を簡便にできるような仕組みがあるとよい。
    ・ 都道府県がデータ分析を行おうとしても、それだけの事務を担える専門人材がいない。また、個人情報のやりとりや分析にも時間がかかり、タイムリーな情報提供が難しい。
    ・ 頻回受診対策の一環として、査察指導員・ケースワーカーや医療担当で支援検討のカンファレンスを実施している。まだ検討中であり成果は出ていないが、毎日整形外科に通っているような被保護者に対して健康に向けた社会活動への参加を促すことは、生活自立に向けた効果的なアプローチになるのではないかと考えている。
    ・ 頻回受診の背景として不安や孤独があるといった御意見もあり、いろいろと健康上の課題がありつつも、医療だけでケアするよりもまた別の形でケアをしていくことも被保護者への支援の一つの形と思っている。
    ・ 頻回受診をしている人は、健康不安や孤独といったことが背景にあるため、健康管理支援事業において、健康教室への参加や地域活動への参加について取り組んでいるが、実績は上がっていない。
    ・ 精神疾患や依存症の方については自ら健康管理を行うことが難しい。専門職の力を借りながら事業を推進できるよう、専門職の配置に対する助成があればありがたい。
    ・ 子どもの健康管理支援については、親の希望で生活保護を受けていることを知られたくないということでそもそも学校が生活保護世帯であることを把握しておらず、連携できない、ということがあり、何らかの方策が必要。受診が必要な児童について学校側から情報提供がもらえるような流れがあればよい。
     
    2. 頻回受診対策、重複投薬の適正化について
    ・ 頻回受診対策について、現行の指導対象の基準については異論ない。指導の実効性を確保するために、福祉事務所単独での対応が難しい場合、医療機関の理解や協力が必要となる。
    ・ 指導対象の基準については、疾病・診療科により必要な通院日数は違うと思うので、要否意見書等に適正な受診日数を書いていただくことも検討できるのではないか。
    ・ 頻回受診や後発医薬品の原則使用などの指導について、一定の効果をあげているが理解力が低い方やこだわりが強い方については、わかってもらうことが難しい。医師も診察を求められたら拒むことはできないのでなかなか解決に至らない。ケースワーカーからの指導では限界がある。
    ・ 重複投薬・多剤投与等の適正化については、医療機関・薬局間の情報共有の環境整備が大切と考える。
    ・ 重複投薬は、被保護者だけの問題ではないため、国全体として取り組むべき。また、医療機関・薬局間での情報共有でかなり防げると思う。
    ・ 重複投薬について、啓発に取り組んでいるが、本人負担がなく本人が困っていないということもあり、薬局への相談につながらない。
    ・ オンライン資格確認について、要否意見書・嘱託医判定・医療券発券を含め全てオンラインで完結できる仕組みを希望する。
    ・ オンライン資格確認について、医療券等の発券情報がなくともオンラインで生活保護の資格を確認できれば受診できる余地を残さざるを得ず、事実上のフリーアクセスになる可能性は高いと考えている。要否意見書が承認されていないと医療券が発券されないなど、医療機関と連携した仕組みにならないか。
    ・ オンライン資格確認導入にあたって、制度内容によっては頻回受診が増えると思うので、頻回受診の対象者だけでも医療券方式にする、資格確認の際にアラートを出すといったことが考えられるのではないか。
    ・ レセプト点検について、本庁職員は専門性がないため、レセプト選定からカルテ確認までを専門業者委託にしたり、医療機関への指導を都道府県等の関係機関との連携にしたりするやり方が有効と考える。
    ・ レセプト点検については、現在レセプト管理システムの自動点検機能をオプションで使っており、すべての自治体で標準として導入すれば、全体として効果があがるのではないか。
    ・ 医療扶助の一部負担の導入については、前回改正時にも審議会で議論され、最低生活保障との両立が難しくなるという懸念や、医療機関の未収金やケースワーカーの事務負担につながるといった懸念などがあり、慎重な検討が必要。当時と比べ大きな変化がない中、現段階では、具体的に検討する段階にないと考えている。
     
    3. 都道府県による関与等について
    ・ データ分析を進めることや、指定医療機関に助言指導を行うことは、都道府県においてもハードルが高い。
    ・ 都道府県によるガバナンスを強化することについて賛成。
    ・ データ分析で医療扶助費が高い市町村については、都道府県において、原因が患者の受診行動にある場合には助言・指導や後方支援を、指定医療機関にある場合には指定医療機関に対する助言・指導を行うといった取組があればありがたい。
    ・ 医療機関と福祉事務所とで意見が対立した際には、拘束力のある第三者機関において判断をゆだねられることができれば、公正性を担保できるのではないか。
    ・ 明らかに受診が必要な状態であるにも関わらず受診拒否をする者への対応に苦慮しており、助言・指導いただける専門の機関があると効果的だと考える。
    ・ 生活保護受給者の国保等への加入については、保険料や医療費が増えないかなど、どのような課題が生じうるか、慎重に議論する必要がある。
    ・ 国保財政が厳しい中で、負担増や国保料の引き上げということになるのであれば受け入れられないのではないか。