生活保護制度に関する国と地方の実務者協議 第2回議事要旨

日時

2021年12月6日(月) 15:00~17:00

場所

オンライン開催
 

議事要旨

参加者から以下の意見が出された。
1. 自立支援の在り方について
・ ケースワーカーには、必要な社会資源を組み合わせて支援していくコーディネーターのような役割が求められている。また、効果的に実施するためには対象者へのアセスメントが重要。
・ 就労支援事業等を行う事業者等が担う業務範囲が広くなり、ケースワーカーの経験・専門性が不足している場合がある。困難なケースには、専門機関との連携が必要。
・ 生活保護世帯はケースワーカーがついているからということで、ほかの部署が消極的になることが多いというのが現実。関係機関との連携のため、関係機関の役割を確認する仕組みが必要。一方、調整業務・関係者の制度理解の醸成等の対応が生じ、負担が増える懸念がある。
・ 他制度のように、関係者が集まって個別支援会議を開くといった仕組みを生活保護制度において取り入れることも考えられる。
・ 他部局と連携が必要なケースについては、福祉事務所で組織的に対応することにより、現状でも連携が図れていることから、あえて新しい仕組みを作る必要はないと考えている。一方、自立支援の取組に関する研修などによりスキルアップを図っていく取組は必要と考えている。
 
2. 生活困窮者自立支援制度等との連携について
・ 生活保護と生活困窮者自立支援制度とが、それぞれの入口と出口のタイミングでスムーズに移行できるようになっていると良いのではないか。例えば、生活困窮者自立支援制度の支援プランと生活保護の援助方針の様式の共有など、円滑な支援体制の引継ぎの仕掛けが考えられるのではないか。
・ 生活困窮者自立支援制度の支援を受けていた人が生活保護につないでもらうということはよくあるが、保護受給中や保護廃止になったタイミングにおいては、被保護者が望まない等の事情から、生活困窮者自立支援制度へつなぐケースは少なく、十分な連携ができていない。
・ 生活保護の担当が生活困窮者自立支援制度の担当も兼務している場合には、連携に支障がない一方で、支援の充実そのものに課題がある。
 
3. 就労インセンティブについて
・ 短期間で再就職できた人に支給できる手当があれば強力なインセンティブが働くのではないか。
・ 近年、就労支援による就労率が低下傾向にある。就労可能な被保護者が就職し、残っている方は稼働能力が低かったり、意欲が低くて就労に結びついていないと考えている。
・ 保護廃止後の生活に不安をおぼえる人が少なくない。各種控除を伝えるとその範囲内で就労を制限して廃止にならないよう調整する人もいる。人によって違うが、保護受給中の就職活動費よりも、保護脱却後も安心できるインセンティブのほうが重要ではないか。
 
4. 被保護者就労準備支援事業等自立支援関係事業について
・ ひきこもりも含め、日常生活自立や社会生活自立、生きがいの創出に各種事業は効果的であり、必要性は感じているが、効果の指標化、成果の評価が難しい。
・ 就労準備支援事業は、生活習慣の改善や社会参加のために有効。また、中間就労やボランティア的な働き方は、収入増とはならなくとも、社会とのつながりを持つという観点で意義がある。
・ 就労準備支援事業や家計改善支援事業は、制度としては有効だと考えているため、法定事業であるべき。
・ 一方で、社会資源・対象者が限られる小規模自治体ではすぐに事業を実施することは難しく、必須化されると実施が目的となって中身が伴わない可能性がある。
・ 社会資源がなく苦労しているため、皆が取り組むと言うことであれば、広域的に実施しやすいと考える。
・ 就労後の定着支援は大切であり、定着支援を行う組織につなげれば、定着率が上がるのではないか。
 
5. 被保護者の家計管理の支援について
・ 被保護者の場合、家計支援というよりも、金銭管理の比重が高い。社協の日常生活支援事業のマンパワーが十分でなく、待機が多くなっている。また、自立支援プログラムについて同意が取れず、金銭管理支援につながらないという課題もある。
・ 金銭管理の重要さを被保護者にわかってもらう・説得するのが難しい。
 
6. 子どもの貧困対策について
・ 子どもの分野についても、ケースワーカーがついているからと他の関係部署からの関与が後ろ向きになる傾向がある。
・ 子どもの貧困について、把握が大変難しい。学校など直接子どもと関わる場所との情報共有が必要であるが、難しい。状況がわかったとしてもどのように改善するか、親の意識を変えるのが大変である。
・ 親の教育への意識が必ずしも高くない、子どもに会えない、という課題があり、有効な取組がしづらい。
・ 大学の進学支援について、進学準備給付金はかなり有効だと認識している。ただ、前期の授業料を入学金と一緒に支払わなければいけない場合は、被保護世帯にとってハードルになる部分があると感じている。
・ 大学進学について、学費や入学金のハードルがまだ高い。公平性を十分に検討する必要はあるが、貧困の連鎖を防ぐために、学歴・資格の取得を支援する取組が必要。一方、一般世帯の方も生活が厳しい方も多いので、一般施策で考えていく必要があると考えている。
・ 世帯内修学については、最低限度の生活保障として適当なのかという観点、稼働能力活用という観点から考えると、一般世帯との均衡を少し失するのではないか。
・ 世帯内修学についてはまだ認める時期にないのではないか。 
・ 令和2年4月から始まった高等教育無償化の中で、授業料減免のほか、生活費が出るが、始まってから時間が経っていない制度なので、ケースワーカーから被保護世帯に情報提供していくことが必要と感じた。
 
7. 生活保護基準における級地制度について
・ 例えば級地を1つ・2つにしてしまうということは、特に検討されなかったのか。個別には、級地が異なっても隣の地域であれば変わらないということや、近くにスーパーがなく買い物に交通費がかかるということもある。
・ 部会での検証の結果、6区分に分ける必要性は必ずしもないということで、今回、3区分にするという方法を考えている。
・ 市町村合併によって中山間地の級地が繰り上がり、その他町村との級地差が生じているが、チェーン店のスーパーマーケットを使っていれば、物価に差はない。級地間の差を小さくする必要があるのではないか。
・ 調査研究で行ったデータを見てもそうなっているが、昔に比べると、級地ごとの差がかなり縮まってきていると思う。1つの市町村の中で細かく分けた客観的データというのはほとんど取れない。データがない中で決めていくことになってしまうと検証のしようがなくなってしまうため、市町村単位で考えていくべきだろう。