2022年2月25日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和4年2月25日(金)16:00~

出席者

出席委員(16名)五十音順
(注)◎部会長 ○部会長代理
 他参考人2名

欠席委員(5名)五十音順

行政機関出席者
  •  鎌田光明(医薬・生活衛生局長)
  •  山本史(大臣官房審議官)
  •  吉田易範(医薬品審査管理課長)
  •  新井洋由(独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事・審査センター長事務取扱)
  •  池田三恵(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監) 他

議事

○医薬品審査管理課長 ただいまから、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会のWeb会議を開催させていただきます。本日は、お忙しい中を御参集いただきまして誠にありがとうございます。この度の医薬品部会についても、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、Webでの審議とさせていただきます。
 本日のWeb会議における委員の出席状況についてです。大谷委員、大森委員、小崎委員、佐藤雄一郎委員、武田委員より欠席の御連絡を頂いております。佐藤直樹委員からは、遅れての参加との御連絡を頂いております。その他にも、現時点において石川委員、田﨑委員、松野委員はまだ会議には参加されておりませんが、後ほど御参加いただけるものと認識しております。したがって、本日は現在のところ当部会委員数21名のうち13名の委員の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
 なお、本日は審議事項議題1に関して、医療法人社団靭生会メディカルプラザ市川駅院長の佐中孜先生、東海大学医学部腎内分泌代謝内科教授の深川雅史先生を参考人としてお呼びしております。どうぞよろしくお願いいたします。
 部会を始める前に、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について報告させていただきます。薬事分科会規程第11条においては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には辞任しなければならない」と規定されております。今回、全ての委員の皆様から薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので御報告させていただきます。委員の皆様には、会議開催の都度書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしておりますけれども、引き続き御理解・御協力を賜りますよう何とぞよろしくお願い申し上げます。以降の議事進行は森部会長にお願いいたします。
○森部会長 本日の審議に入ります。事務局から、資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告をお願いします。
○事務局 本日のWeb会議に係る資料の確認をさせていただきます。本日は、あらかじめお送りした資料のうち、資料1~資料20と製剤写真を用いますのでお手元に御用意ください。この他に資料21として審議品目の薬事分科会における取扱い等の案、資料22として専門委員リスト、資料23として競合品目・競合企業リスト、資料24として特定用途医薬品指定制度についてを事前に電子メールにてお送りしております。なお、システムの動作不良などがありましたら、会議の途中でも結構ですので事務局までお申し出ください。
 本日のWeb会議における審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告させていただきます。資料23の1ページを御覧ください。ケレンディア錠です。本品目は2型糖尿病を合併する慢性腎臓病を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 2ページを御覧ください。サムタス点滴静注用です。本品目は、ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから競合品目はなしとしております。
 3ページを御覧ください。アロカリス点滴静注です。本品目は、抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 4ページを御覧ください。モノヴァー静注です。本品目は鉄欠乏性貧血を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 5ページを御覧ください。ジセレカ錠です。本品目は、中等症~重症の潰瘍性大腸炎の治療及び維持療法を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 6ページを御覧ください。カログラ錠です。本品目は、中等症の潰瘍性大腸炎を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 7ページを御覧ください。ゼンフォザイム点滴静注用です。本品目は酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 8ページを御覧ください。ジスバルカプセルです。本品目は、遅発性ジスキネジアを予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 9ページを御覧ください。タリージェ錠です。本品目は、神経障害性疼痛を予定効能・効果とし、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 10ページを御覧ください。バビースモ硝子体内注射液です。本品目は、中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 11ページを御覧ください。エンタイビオ点滴静注用です。本品目は、中等症~重症の潰瘍性大腸炎の治療及び維持療法等を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 12ページを御覧ください。乾燥ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリンです。本品目は、自己免疫性脳炎を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 13ページを御覧ください。デクスメデトミジン塩酸塩です。本品目は、小児における非挿菅での非侵襲的な処置及び検査時の鎮静を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。
○森部会長 事務局の説明に特段の御意見等はありますか。ないようですので、本Web会議の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては皆様の御了解を得たものとさせていただきます。それでは、委員からの申出について報告してください。
○事務局 薬事分科会審議参加規程第11条に基づく各委員からの申出状況及び第5条に基づく取扱いについては次のとおりです。議題1のケレンディアについて、退室委員は佐藤直樹委員、議決に参加しない委員は代田委員、長谷川委員です。議題2のサムタスについて、退室委員は佐藤直樹委員、議決に参加しない委員はなしです。議題3のアロカリスについて、退室委員はなし、議決に参加しない委員は佐藤直樹委員、田﨑委員です。議題4のモノヴァーについて、退室委員はなし、議決に参加しない委員は代田委員です。議題5のジセレカについて、退室委員はなし、議決に参加しない委員は川上委員、長谷川委員、宮川委員です。議題6のカログラについて、退室委員は平石委員、議決に参加しない委員は川上委員、長谷川委員です。議題7のゼンフォザイムについて、退室委員はなし、議決に参加しない委員は川上委員です。議題8のジスバルについて、退室委員はなし、議決に参加しない委員は長谷川委員です。議題9のタリージェについて、退室委員はなし、議決に参加しない委員は飯島委員、川上委員、佐藤直樹委員、長谷川委員、宮川委員です。議題10のバビースモについて、退室委員はなし、議決に参加しない委員は佐藤直樹委員、代田委員、長谷川委員です。議題11のエンタイビオについて、退室委員はなし、議決に参加しない委員は川上委員、長谷川委員、宮川委員です。議題12の乾燥ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリンについて、退室委員及び議決に参加しない委員はともになしです。議題13のデクスメデトミジン塩酸塩について、退室委員はなし、議決に参加しない委員は川上委員です。以上です。
○森部会長 事務局からの説明に特段の御意見等はありますか。よろしければ、皆様の御確認を頂いたものとさせていただきます。本日は、審議事項13議題、報告事項6議題、その他1議題となっております。
 審議事項の議題に移ります。審議事項1です。審議事項1については、佐藤直樹委員におかれましては、薬事分科会審議参加規程第5条及び利益相反の申出に基づいて、議題1及び議題2の審議の間、会議から御退出して御待機いただくこととします。佐藤直樹委員は御退室をお願いいたします。
── 佐藤直樹委員 退室 ──
○森部会長 それでは、議題1について機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料No.1、医薬品ケレンディア錠10mg及び同錠20mgについて、前回の部会以降の状況を御説明いたします。資料No.1の「ケレンディア錠に係る第一部会での御指摘及び対応について」を御確認ください。1ページの2.に、前回の第一部会で御指摘を頂いた内容を記載しております。
 1点目は、国際共同第III相試験、腎保護作用を検証した16244試験(以下「腎保護試験」)及び心保護作用を検証した試験17530(以下「心保護試験」)において、試験の目標は達成されましたが、いずれも日本人部分集団では、腎不全イベントについて、本剤のプラセボに対するハザード比は1を上回っている等、日本人における腎イベントの発現抑制効果に疑義を生じる結果と捉えられるとの御指摘、2点目は、効能・効果は国際共同第III相試験の結果から、本剤投与によって期待される効果が誤解なく伝わるような記載とすべきとの御指摘、3点目は、製造販売後調査の計画について、本剤が日本人患者でも腎イベント抑制効果を示すことが適切に評価できるデザインとする必要があり、可能な限り早期に評価結果を臨床現場に提供できるよう方策を講じる必要があるとの御指摘を頂きました。
 2ページを御覧ください。御指摘の1点目の、日本人における腎イベント抑制効果について説明します。まず、腎複合エンドポイントを用いた評価の妥当性に関して改めて説明させていただきます。CKD患者において、eGFRがベースラインから40%以上低下の持続を抑制すること等、腎機能の一定の低下抑制は、将来的な腎不全発現の減少につながり、一定の臨床的意義があることには、従前より国内外でコンセンサスが得られています。そのため、実施された二つの国際共同第III相試験では日本だけではなく、欧米の規制当局と合意を形成した上で、当該イベントも含めた四つのイベントを腎複合エンドポイントとして臨床試験を実施しています。
 腎不全等のハードなエンドポイントのみによる有効性の検証が容易でなく、工夫された複合エンドポイントが採用された経緯と、世界的に認められている状況を踏まえれば、二つの国際共同第III相試験での腎イベント抑制効果に関する評価は、主に腎複合エンドポイントの結果に基づき行うことが妥当といえます。腎複合エンドポイントが主要評価項目とされた腎保護試験では、全体集団と同様に、日本人集団でハザード比が1を下回る結果であったものの、心血管イベント抑制効果の検討が主目的とされた心保護試験では、副次評価項目とされた腎複合エンドポイントが日本人集団でハザード比が1を上回っていました。
 心保護試験については、心保護作用の評価に適した患者を組み入れるに当たり、腎イベントの発現リスクが腎保護試験より低いCKD患者の重症度が比較的低い患者を対象に含める組入れ基準で実施され、目標被験者数や観察期間は、腎イベントの群間比較の観点からは十分とは言えないものとなっていました。実際の試験結果としても、腎複合エンドポイントの発現割合は、腎保護試験と比べて少なかったことから、群間比較には最適でなく、腎イベントの抑制効果の評価においては、腎保護試験の結果をより重視することが適切と考えています。
 さらに、いずれの国際共同第III相試験でも、日本人において全死亡イベントの発現割合が、本剤群と比較してプラセボ群で高く、腎複合エンドポイントを発現することなく死亡に至ったことにより、想定していた長さの期間での追跡が不可能となった被験者数が群間で偏ったため、限られた症例数での腎複合エンドポイントの群間比較が更に困難となった可能性も考えられました。
 以上より、腎イベントの抑制効果の評価に当たり、最も重要な腎保護試験の腎複合エンドポイントの結果を主な根拠として、日本人を含む全体集団において、腎イベント抑制効果を支持する結果が得られていると判断して差し支えないと考えております。
 次に、腎不全イベントに関して説明します。各試験の主要評価項目は、それぞれ腎複合エンドポイント及び心血管複合エンドポイントであり、特に心保護試験においては、設定された組入れ基準では腎イベントは起きにくく、腎複合エンドポイントの構成要素の一つである腎不全に対して、全体集団と日本人集団の成績の一貫性について十分に検討可能な日本人症例数は、実施可能性の観点から設定困難でした。そのため、日本人のデータは重要ではあるものの、「日本人部分集団」に限定しての「複合エンドポイントの一要素」という集団及びエンドポイントの一部分に着目した評価のみで有効性を評価することは難しいと考えられ、この考え方については専門協議にて全ての委員から支持されています。
 また、審査報告書P62、図5及び図6を御覧ください。両試験で、腎不全イベントの本剤のプラセボに対するハザード比が1を超えた地域は、日本以外にも複数(アルゼンチン、ブラジル及び南アフリカ)認められていますが、日本を含めたこれらの地域に共通し、かつ全体集団とは異なる明らかな民族的要因はなく、地域特有のリスク要因があり、結果に影響したとは考えにくいと判断しています。
 なお、前回部会時に御指摘のあった、日本人部分集団での腎不全イベントが本剤のプラセボに対するハザード比が1を下回る確率については、いずれの試験でも腎不全イベント自体が主要評価項目ではなかったことから、試験計画時に検討されていませんでした。そのため、事後的ではありますが、参考までにそれぞれの試験結果を見積り値として用い、試験実施期間、年間追跡不能率、年間中止率等については、試験の計画時に想定していたものと同じであると仮定して、日本人部分集団での腎不全イベントが本剤のプラセボに対するハザード比が1を下回る確率が計算されました。その結果、事後的に算出したことに留意する必要はありますが、両試験でハザード比が1以上となる確率は約14.5%であることが申請者より説明されています。
 また、本剤群の日本人被験者に認められた個別の腎不全イベント発現状況の詳細を確認した結果、本剤投与と腎機能の悪化に明らかな関連は示唆されませんでした。症例数及びイベント数が限られている中で、イベントに基づく評価には限界があることから、腎イベントに関連するその他の評価項目についても考察しました。
 まず、腎機能を反映する検査値であるeGFRについてです。ベースラインから治験薬投与中止時来院又は試験終了時来院までの変化は、いずれの試験においても日本人集団では、プラセボ群と比較して本剤群でeGFRの低下の抑制傾向は見られなかったものの、本剤の作用機序に基づく投与初期のeGFR低下の影響が消失した後と考えられる投与4か月後時点からのeGFRの変化の傾き、いわゆる年間変化量についてはプラセボ群と比較して本剤群で小さく、本剤の長期的なeGFRの低下に対する抑制効果は日本人集団でも示唆されています。
 次に、腎障害マーカーの一つとされているUACRについて、国内外の第II相試験の結果からは、ベースラインから投与90日後までの変化率の用量反応関係に、国内外差は示されておらず、国際共同第III相試験においてもベースラインから投与4か月後までのUACRの変化率に、全体集団と日本人集団で異なる傾向は認められていません。
 また、本資料の表1及び表2にお示ししたとおり、各試験における腎複合エンドポイントの発現集団及び非発現集団のそれぞれのベースラインから投与4か月後までのUACRの変化率の結果からは、全体集団及び日本人集団ともに、本剤群の腎複合エンドポイントの発現ともに、本剤群の腎複合エンドポイント発現集団では、非発現集団と比較してUACRの低下率が小さい傾向が認められており、更に表3に示したとおり、本剤群及びプラセボ群のいずれもUACRの低下率が大きい集団ほど腎複合エンドポイントの発現割合が低い傾向が認められました。
 以上の検討を踏まえた結論として、繰り返しになりますが、本剤の腎イベント抑制効果は主に腎保護試験の主要評価項目である腎複合エンドポイントに基づき判断することが妥当と考えており、この試験の日本人集団では、全体集団と同様に、本剤のプラセボに対するハザード比が1を下回る結果でした。加えて、全体集団において、UACRの低下が大きいほど、腎複合エンドポイントの発現割合が低くなる傾向が示唆されており、日本人集団においてeGFRからだけでなく、UACRからも腎保護効果を支持する結果が示唆されていることを踏まえ、本剤の腎イベント抑制効果は、日本人の2型糖尿病を合併するCKD患者でも期待できると判断しました。
 一方、国際共同第III相試験の日本人部分集団において、腎不全イベントの本剤のプラセボに対するハザード比が1を上回ったこと、eGFRの変化の傾きの群間差が日本人集団で、全体集団と比べてやや小さかったこと等を踏まえると、全体集団と比べて日本人集団では、本剤の腎イベント抑制効果が小さい可能性は完全には否定できないと考えております。そのため、各試験の日本人集団の結果やその解釈に関しては、適切な注意喚起や情報提供を行うことで対応することが適切と考えました。
 4ページを御覧ください。御指摘の2点目の、効能・効果に関連する注意喚起の記載について御説明いたします。実施された二つの国際共同第III相試験は、いずれも日本人部分集団ではなく、全体集団において有効性の検証が可能となる検出力を有するデザインであり、結果でも計画時の想定どおり、全体集団において有効性が統計学的に有意であることが検証できたと判断できる成績が得られています。
 国際共同治験の結果解釈においては、原則として全体集団と特定の地域の集団、本申請では日本人集団になりますが、臨床的に重要な差が認められない場合は、全体集団で見られた治療効果は、当該地域でも適用されるということが一般的な考え方となります。腎イベント抑制効果については、先ほども説明させていただいた上記1.での検討結果から、効果の大きさが全体集団と同程度ではない可能性があるものの、日本人集団でも期待できると考えています。また、心血管イベント抑制効果については、心保護試験の結果等を踏まえ、日本人でも期待できると判断しています。以上より、効能・効果に関連する注意で4ページに示したような情報提供を行うことで対応することが妥当と判断いたしました。
 最後に5ページです。御指摘の3点目の製造販売後調査の計画についてです。本調査では、使用実態下における腎複合エンドポイントの発現抑制効果を、本剤非投与患者と比較することとし、実施可能性の観点から集積可能な症例数が限られていることが想定されることを考慮し、本剤群の比較対照群に対するハザード比の点推定値が1.0を下回ることを確認する計画としました。また、有効性に対して大きな懸念がないことを確認するための中間解析を実施することで、可能な限り早期に本剤を現時点で想定している臨床的位置付けで使用し続けることの妥当性を確認する計画も追加いたしました。
 以上の機構の判断について、本剤の専門協議に参加いただいた専門委員にも改めて御確認いただいておりますので申し添えます。この説明の後、本剤のCKD治療における医療上の必要性や期待される効果等について、参考人の佐中先生及び深川先生より御専門の立場から御意見を頂ければと思います。
 また、宮川委員より事前にコメントを頂きました。CKDの重症度分類別の腎複合エンドポイントの発現状況について質問を受けました。腎保護試験及び心保護試験を併合した結果を提示いたします。こちらに示したのが併合した結果です。腎複合エンドポイントの発現率は、CKDの重症度が高いほど高くなる傾向が見られました。各カテゴリーに含まれる患者数が少ないため、結果の解釈は困難でありますが、本薬の腎複合エンドポイントの発現抑制効果は、どのカテゴリーでも、おおむね期待できると判断しております。
 最後に、前回の部会での議論を踏まえ、機構としては、日本人に対する腎イベント抑制効果は全体集団より弱い可能性はあるが、全くないとは言えないと判断し、添付文書の修正案の最後を、「腎不全への進展抑制効果が弱い可能性がある」という形の添付文書案とすることが妥当と考え、修正案を提示しております。
 大谷委員から事前のコメントとして、効能・効果関連注意の最後の部分を「腎不全への進展抑制効果を確認するには十分な情報が得られていない」としてはどうかという御意見があったことから、この点も含めて議論していただければと思います。説明は以上となります。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 本日は、本議題について参考人の先生から御発言をお願いします。まず、佐中先生からお願いいたします。
○佐中参考人 佐中です。今回のこの薬剤について実臨床の立場から申し上げます。率直に申し上げて大変期待しております。これまでも、ミネラルコルチコイドを抑制するというのは、蛋白尿の軽減であるとか、腎低下の抑制であるということで言われてきましたし、そういう論文もたくさんあります。しかし、高カリウム血症ということが常に念頭にあって、実際にはなかなか使いにくい。具体的には、例えばアルドステロン拮抗利尿薬であるアルダクトンAという考え方もありましたが、実臨床ではなかなかそういうわけにはいかないということで見送られてきました。
 今回の薬剤は、そういう意味では同じ線上にあるのですけれども、それ以上に腎不全進行抑制に貢献できるということが今回の治験で明らかになったのではないかと思います。eGFRが一過性に最初の4か月間に下がるということをSGLT2阻害薬で我々は経験しています。最初は大丈夫かなと思っていたのですが、だんだん使い方が分かってくると、余りそういうことも心配の種にはならずに良い結果が出始めています。本剤についても非常に期待しています。
 あとは、機構からの説明のとおりです。高カリウム血症に対する注意点も非常にきめ細かく組まれているので、それも安心して使えるかと考えております。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。続いて深川先生から御発言をお願いします。
○深川参考人 東海大学の深川です。レニン-アンギオテンシン・アルドステロン系のブロックに関しては、もちろんCKDの進行に対して良いというのはずっと分かっているわけです。日本を中心に、以前はACEとARBのダブルブロッケードが試されたことがあったのですけれども、これはそれだけの御利益がないという結論に達しています。そうすると、今度はミネラルコルチコイドレセプターの受容体拮抗薬を使ったらどうかということになるわけです。これまであるお薬に関しては保険適用上、腎機能が低下してくると禁忌という扱いになっていましたので、腎臓内科医にとっては非常に使いにくくて、むしろ循環器から回ってきた患者さんに既に入っているというパターンが非常に多かったわけです。
 今回のお薬は、グローバルなスタディがかなりきちんとされていると思います。日本人の集団ではっきりしたことが言えなかったというのは確かに同意せざるを得ません。それは、機構から説明があったこと以外に、恐らくeGFRが20を切った後の診療パターンが大分欧米と日本では違っていることにあると思います。欧米ではeGFRが15を切ると、末期腎不全と定義され、腎代替療法を選択し、導入することが多いようですが、日本ではeGFRが10を切って5に近くなってから導入するということが多いです。そこから先の予後も欧米人と日本人ではかなり違いますし、これら二つの理由で影響が出たのではないかと思います。これは、恐らくきちんとしたスタディを、市販後調査の中などでやることによって解消されると思います。
 ACE、ARB以来、ほとんどCKDの進行を遅延させる薬はなかったわけですけれども、最近登場したSGLT2阻害薬には驚くべき効果があることが報告されているので、このお薬はどうかということで期待してデータをよく見てみました。確かにハザードレーショの下がり方については、SGLT2よりはこちらのほうが少し少ないように思いました。ただ、つい最近比較したポストホックのアナリシスがあります。それは、eGFRの低下度合とか蛋白尿の度合をそろえて、さらに心不全の度合をそろえて、CREDENCEというSGLT2阻害薬で有名なスタディと、このスタディを比較したものです。
 それで比較すると、実は心腎の複合アウトカムだけではなくて、腎に特化したアウトカムについても同等の低下作用が見られたということが分かっています。本薬のスタディでも既にSGLT2を使っている人がいて、それにかぶせてどうだったかということも少し見ています。両方の薬剤を使うということも将来は考えられるので、こういうMRの拮抗薬が腎臓領域でも広く使われるようになると予想されるので、非常に適したものではないかと思いました。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方からの御意見、御発言等がありましたらお願いいたします。
○宮川委員 少し教えていただきたいところがあります。機構の方にお尋ねします。添付文書の5.1です。ACE又はARB投与されている患者を対象とするならば、2型糖尿病を合併するだけではなくて、高血圧症の合併も入れたほうがいいのではないかと、ここの文章からは読めます。逆にその場合には、2型糖尿病の方は治療薬を特定しなくてもいいのかどうか。その添付文書の5.1の記載についてお尋ねします。
○医薬品医療機器総合機構 機構から説明いたします。5.1の記載に関して、ACE阻害薬、ARBによる治療が適さない場合を除き、これらの薬剤が投与されている患者に投与することの記載については、実施された二つの国際共同第III相試験において、投与目的によらずACE阻害薬、ARBが標準治療として投与されている患者に対して上乗せするデザインとして実施されております。それに従った注意喚起となっておりますので、この記載をすること自体は妥当と考えております。
○宮川委員 それでなければ、この効果は期待できないということでしょうか。上乗せ効果であるから期待できるのであって、それが使われていない場合には効果がないという、そういう臨床試験の結果がないということでよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。作用機序上は独立した作用機序ですので、ACE阻害薬、ARBがなくても期待できるとは考えておりますが、試験のデザイン上こうなっていることもありますので、今回のような記載をすることが妥当と考えております。
○宮川委員 それは考えるだけで、この結果からは読み取れないということでいいのですね。この結果からどのように導かれるかということで、考えを聞いているのではなくて、導かれるか導かれないかということなのです。これは、ARBとACEが乗っているという前提条件で試験がされているのであれば、それは全て乗せていないと意味がないということになるわけです。
 そうすると、それは適応として使われているのが高血圧なのかどうかという形になってしまいます。前提条件がどうなのかということを教えてください。この5.1は、前提条件になるということになれば、それは使われている条件が加味されなければなりません。それで臨床試験がされているということであれば、何の目的で薬が入っていたのかということになります。それは高血圧症が前提なのか、ということでお聞きしたわけです。
 考える、考えないではなくて、前提条件がどうなのかということで、それが疾患に結び付くとすれば、これは単なる薬の2型糖尿病を合併する慢性腎臓病だけではなくて、高血圧も合併していなければ、この薬の前提条件がないという形になってしまうので、お聞きしたわけです。これは臨床試験から導かれるものが何なのかということをしっかり議論しなければいけないのかと思ってお聞きしました。
○森部会長 宮川委員から御発言があった点は、専門協議でも同様の議論があったとお聞きしております。専門協議ではどのような議論になったか内容を伺ってもよろしいですか。参考人の先生方、もしよろしければ、専門協議ではこの点についてはどのような御議論があったのでしょうか。
○佐中参考人 これは実臨床の中での話ですけれども、糖尿病性腎症、糖尿病性腎臓病の方の大部分、90%以上に高血圧があって、そのままARBを使っているものですから、これは当然のこととして受け止めたのですが、今の話だと高血圧というのも、それがあるからARBを使うからなのです。それをあえて記述するということですが、あってもいいかもしれないと思います。
○森部会長 深川先生から御発言はありますか。
○深川参考人 もちろん、ほとんどの場合使われているわけです。要するに高血圧がない場合に、蛋白尿に対して使っている場合というのも、すべてではないですが保険で認められています。なので、ここの表現は確かに微妙で、高血圧に対してとあえて入れると、ややこしいことになるかという気はいたします。
○宮川委員 お聞きしたいのですが、高血圧の合併例は何割あったのかということなのです。臨床試験の中で出ているはずなのです。高血圧を抜いたものの中でのACE、ARBが乗っている、もちろん乗っていない、その中での部分集団の解析がなければ、そのような形の発言はできないのではないかと推察するのですが、いかがなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より補足説明いたします。委員の皆様方は、今、審査報告を御覧になれますか。審査報告書の通し番号ではないかもしれませんが、小さいページ数の58ページ、表40と表41が並んでいる箇所があります。そこで、高血圧症の合併割合が記載されております。2試験とも合併割合自体は95%以上とほぼ全てに近い症例では高血圧症が合併しておりました。
 試験の規定としてACE阻害薬又はARBが一定期間以上投与されているという条件でしたが、このACE阻害薬、ARBのいずれかが高血圧症に対する治療目的で使用されていたのか、先ほど来先生方がおっしゃっているように、基本的にはCKDの標準治療としてほぼ確立しているので、CKDの治療目的も兼ねて使用されていたのか、そのいずれの疾患に対しての使用目的であったのかというところまでは区別されておりません。
 事実としては、そういう状況で有効性が検討されたということになります。まず、高血圧症がこれだけ大半でありますので、合併なしの集団での検討というのは少数例すぎて行っていないという状況です。ただし、高血圧の合併が必須という規定ではありませんでした。
○宮川委員 それでは答えになっていないです。実際に高血圧がない症例が少なかったとおっしゃったのですが、少なかったということでよろしいのですね。しっかりとこの薬を使うためには、どのような形にすればいいのかということでお聞きしたいのです。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。別の観点というか、先生の御質問に直接の回答ではないのですけれども、なぜこの組入れ基準ができたかと申しますと、ACE阻害薬、ARBは腎機能に影響することがほぼ分かっております。試験の中では、本薬の位置付けを考える上で、標準治療の後に使うお薬だということで、二つの観点からACE阻害薬、ARBを投与されていて安定している患者さんにこのお薬を上乗せしてみたということになります。
 この疾患の特徴として高血圧が多いというのは事実で、結果としてこのような組み入れの状況になっているということですが、このお薬を使う場面を考えたときと、きちっと今現在ある標準治療をした上でというところと、高血圧の合併というところでこのような書き方になっています。この添付文書については、位置付けを考えるときにACE阻害薬、ARBを投与できる方には投与した上で、それでも必要な方にこのお薬を使ってくださいという注意喚起になっています。
○宮川委員 よく理解できました。そのような形が全面的に出ていないと、本当は問題なのです。5.1のような小さい記載で、果たして実臨床の中での使用の仕方が問題です。多くのメーカーが行うことですが、そういう臨床結果を無視して、あらゆる症例に適応するという話がどんどん進んでいくのは非常に困ると思うので、注意喚起というのはしっかりすべきと思います。
 先ほど佐中先生がおっしゃったように、実臨床で使っているのは、実際に勧められて使っている先生も確かにおられるはずなのです。専門家が使っている場面だけではなくて、そのような形で使う中で、CKDの治療が混乱してくると困るので、そこの記載はしっかりとした前提条件として提示されるべきであろうと思ったので御質問いたしました。
○森部会長 これは、先生方の御意見を伺います。添付文書の臨床試験成績の17の項目ですが、ここで国際共同第III相試験が二つ行われています。この試験のそれぞれに参加された方の背景として、高血圧症の合併率はどのぐらいあったかということが付記されていてもよいかと思います。先ほど伺った95%以上という数字も具体的に出ていますので、例えば※の2番とか、その前後の所で、高血圧症の合併率について書いておけば、先生方の御理解もより深まると思います。この点はいかがですか、御検討いただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。御指摘ありがとうございました。臨床成績の項に、高血圧の合併例がどのぐらいいたかについては情報提供する形で対応いたします。
○森部会長 その他に先生方からの御発言はいかがでしょうか。1点、事前に大谷委員から御意見を頂いております。今回、添付文書に追記する予定となっている文言の一番最後の部分の表記の内容です。今回の資料No.1の通し番号4ページの下から4行目の、この4行分の追記の所です。一番最後の文言ですが、日本人では本剤への腎不全の進展抑制効果の、続きをどう表記するかということについて、現在の文面、また大谷先生から御提案のあった「進展抑制効果を確認するには十分な情報が得られていない」といった文面など、いろいろな可能性があります。この点について御意見はありますか。参考人の先生の御意見を伺ってもよろしいでしょうか。該当箇所はお分かりでしょうか。
○深川参考人 私も、この文末の所だけちょっと考えないといけないと思いながら見ていました。これは、あとの能書の所にきちんとハザード比とかが出ていますから、それがきちんと解釈できる、人は余り効かないのではないかと判断してしまう可能性があります。そう思われないようにするということもとても大事だと思うので、弱い可能性があるというか、可能性は否定できないという、かなりあやふやな表現にしてしまってはどうかと思いました。佐中先生、どうでしょうか。ここが保険の査定に響くことは多分ないと思うのです。
○森部会長 佐中先生から御発言いただけますか。
○佐中参考人 そうなってしまうのです。深川先生のおっしゃるとおりで、分かりやすくしておいたほうがいいと思うのです。せっかくきめ細かく注意喚起しようとしていますから、付記したほうがいいと思うのです。
○森部会長 現在の添付文書(案)に書かれている、「弱い可能性がある」という文言で適正か、若しくはそこを少し修正すべきか、先生方の御意見はいかがでしょうか。
○佐中参考人 このままでも分からないことはないと思うのですが、どうでしょうか。
○深川参考人 可能性があり、再度検討する必要があるみたいなのは、能書としては余り良くないですか。
○森部会長 厚労省の方で、その部分に関してはどうですか。
○事務局 可能性がありは添付文書だとちょっと趣旨が違うかもしれません。
○森部会長 その動向を受けて、今後の市販後調査の詳細計画を練っていくという段階も提案されております。添付文書には、そこまで記載する必要は今のところないかと考えておりました。腎保護効果を見るための主試験である試験16244の日本人における集団でも、主要評価項目である腎複合エンドポイントのハザード比は約0.9でした。全体の0.8よりはやや劣る結果ではありましたが、一定の有用性を示唆する所見としては最も重要な所見として確認されています。程度はともかくとしても、一定の抑制効果があり得るということは、今回の承認の前提になっています。腎不全という部分的なイベントに関しての所見が、全体と少し異なっていたという点について注意喚起しているという意味合いの文面です。現在提案されている、「弱い可能性がある」ということについては、事実としては比較的妥当な表現ではないかと考えておりますけれども、先生方の御意見としてはいかがでしょうか。
○佐中参考人 事実をそのまま率直に述べるだけでいいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○森部会長 深川先生から御発言ございますか。
○深川参考人 複合エンドポイントでは、一応ちゃんと効いているということをもうちょっとはっきり言った上で、ただ、その中の腎不全に関しては日本では有意ではなかった、という感じで伝わったほうがいいかと思います。
○森部会長 今、大変重要な御指摘を頂きました。そうすると、今論点になっている添付文書の5.3の項目ですが、日本人の部分集団では、国際共同第III相試験の主要評価項目の腎複合エンドポイントのその全体結果をまずそこで書いて、その腎複合エンドポイントの評価が、これは審査報告書の表33で、このハザード比が0.911でよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 はい、大丈夫です。
○森部会長 そのようになっていますので、ハザード比が0.911であったということをまず記載して、その後に、「及び構成要素の腎不全」「及び国際共同第III相試験の副次評価項目の腎複合エンドポイントにおいて」というような表記に続けて記載したほうが、より事実を明確に記載しているという位置付けでよろしいでしょうか。
○深川参考人 はい、そう思います。少なくとも後ろの表まで読んでくれるかどうか分からないですし。
○森部会長 参考人の先生方からの御助言も頂きました。5.3の表記については、日本人の部分集団の成績の概要をまとめるということで、まずは16244試験の腎複合エンドポイントのハザード比の記載を適切に行い、その上でその構成要素に関する腎不全や、また別の国際共同第III相試験の副次評価項目に関する腎複合エンドポイントに関するハザード比が上回ったことを付記するということで、総合的に考えて試験の対象となった全体集団と比べて、日本人では本剤の腎不全への進展抑制効果は弱い可能性があるというようにまとめるということでよろしいでしょうか。
○佐中参考人 いいと思います。
○森部会長 どうもありがとうございます。その他の委員の先生方から、この点について疑義や御意見等はありますか。大変良い御提案を頂いたと思いますけれども、いかがでしょうか。
○宮川委員 先ほど機構に教えていただいた、日本人集団の表、60/108の小さい文字で58と書いてある所です。日本人の特性の検討の所で教えていただきたいのです。その表の中で、明らかに日本人の集団で喫煙と高尿酸血症が多い。そして、脂質異常と肥満が少ない。こういう特徴がどのような影響をするのか。これは、機構だけではなくて、専門家の先生方の御協議の中で、このアウトカムに影響を与えると考えられる因子の違いを踏まえた議論があったのかどうか、その辺のところについて教えてください。先ほどの表があって、それを見て余計に気が付いたものですから教えてもらいたいと思って質問いたします。
○森部会長 審査報告書の通しナンバー60ページの表41ですね。
○宮川委員 はい。
○森部会長 これに関する背景因子で、全体集団と日本人集団の違い。日本人では、喫煙率が高いことや、肥満の人が少ないといった点が、どういうアウトカム評価に影響するかということですね。
○宮川委員 はい。
○森部会長 特に、専門協議でその点についての御議論等はありましたか。
○佐中参考人 これは確かに影響すると思うのです。しかし、それをやっていると、この薬剤のこれまでの結果が非常に複雑になってしまうので、ここは臨床で使われている中で明らかにしていけばいいのではないかと考えました。だから、市販後の調査は非常に重要だと思います。
○森部会長 どうもありがとうございます。
○医薬品医療機器総合機構 機構から補足の発言をいたします。これらの個別の要因一つ一つについて、専門協議で個別に議論させていただいたわけではありません。まず、こういう違いが見られた要因について、それぞれ要因の有無別のイベント発現状況を、審査の過程における照会回答という形で申請者には確認を求めました。先生が御指摘のように、これらの要因が全体的なイベント発現に影響することは確かですが、本薬とプラセボとの位置関係、本薬によるイベント抑制効果という点に関しては、これらの要因の有無で大きな影響がないことを確認いたしました。
 これらの要因の、日本人と全体集団の違いとして、何かこういう違いがあったことによって、日本人では有効性が今回は見えにくかったということではない、という検討の結果は行いました。それも専門協議で簡潔ではありますが御説明いたしました。
○宮川委員 そういうしっかりした御回答があれば、日本人集団でのこのような結果というものも少し見やすくなってくるのかと理解しました。そこが影響されていないということであれば大変結構なことだと思います。そこから市販後の調査も、しっかりとその辺のところで追いかけていくことが妥当であることがそこからも示唆されるというか、強調される部分だろうと思います。ありがとうございました。
○森部会長 深川先生から御発言はございますか。
○深川参考人 文中にそれが書いてあったので。ただ、それを個別にやるには正直、他の国がどうなっているかというのまで調べないといけなくなってしまうので、そこまでは無理かなと思って見ていました。
○森部会長 分かりました。日本人で喫煙の方が多い点は、将来的な腎不全や心血管イベントの両者に悪影響を及ぼす原点ですので、そういうことも、こういう治療薬が求められている背景の一つだと考えています。その他に、本議題について先生方からの御質問、御意見等はございますか。柴田委員お願いいたします。
○柴田委員 3番目の製造販売後調査の件についてです。こちらは今回、「ハザード比の点推定値が1を下回ることを確認する計画とする」と書いてあります。前回の審議のときに、比較対照となる集団は、別の薬が投与されている可能性もあるし、既存の標準治療に対してこちらの群だけが上乗せしている状況になる、臨床試験で言うとプラセボ・アドオンとの比較をしているような状況になるケースがある、どちらもあり得るという御説明でした。どういう患者さんを登録するかによって、ハザード比が1を下回ればいいかどうかという判断基準は当然変わってくると思うのですけれども、そこはどのようにお考えなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。説明が不足していて申し訳ございませんでした。想定している比較対照群としては、本薬投与群も比較対照群もSGLT2阻害剤が入っていない患者を対象とする予定です。その群間での比較において、点推定値が1を下回るということで検討する予定としております。
○柴田委員 分かりました。2点質問というかコメントです。本当に効果がある場合に1を下回る確率は多分確認されていると思うのです。効果がなかったとしても、たまたま1を下回る確率はそれなりにあるわけです。例えば、プラセボ・アドオンの状況を想定して考えるのであれば、ハザード比が1以下になる確率は50%ぐらいです。実際にハザード1を下回ったという結果が得られたときに、本剤の効果を示唆するものであるのか否かを判断しようとしたときに、そのいずれの場合でも、それぞれの場合でどのような見込みで1を下回るのかを詰めた上で調査計画を立てなければいけないと思うのですが、その辺はどうされているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。御質問をありがとうございました。本調査における腎複合エンドポイントの発現率については、想定として本薬投与群1.96%、比較対照群2.55%/年と想定しています。そういう形で、観察期間3年として、打切りもちょっと考慮した上でシミュレーションを実施した場合、ハザード比の点推定値が1を下回るとしては86.2%と推定されております。
 本来、真のハザード比が1を上回る、例えば1.2とか1.5と仮定した場合に、ハザード比の点推定値が1を下回る確率も確認いたしました。それはそれぞれ21%及び3%と推定されており、真の値が1を上回る場合でも1を下回ってしまう確率は一定程度ありますが、比較的低いと考えております。
○柴田委員 分かりました。2点目は、中間解析をされるということですけれども、今回ランダマイズトライアルではなくて、対照群のデータをデータベース等外部のデータから集めるということになるのであれば、実務は結構難しくなると思うのですが、そこはきちんと詰められているのかということ。あとは、どのようなデータが観察されたら更なる対策が必要と判断されるのかについて説明していただけますか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。中間解析に関しては、本来の販売日から1年時点と、それ以降は6か月ごとにデータベースに対して横断的なデータ抽出を依頼して、本剤の使用患者数を確認することとしておりますので、実施可能性はあると考えております。
 中間解析の実施に関しては、有用性を適切に評価するためには一定数のイベントの発現が必要と考えておりますので、基本的に腎イベントの発現例数が全体で今回は45例に到達したことが確認された時点で実施を予定しております。これにおいて、再現性が疑われるような結果が出たら、必要に応じた検討が必要と考えております。中間解析におけるそういう対応をする場合の具体的な基準等については、現在検討中です。
○柴田委員 分かりました。最終的には総合的に判断されることになるとは思うのです。実際に検討するためのトリガーをどのような状況で引くのかというところまではあらかじめ大よそ詰めておかないといけないと思います。計画のところでしっかり詰めていただければと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。
○森部会長 柴田委員、少し御助言いただきたいところがあります。今回の市販後調査を、製造販売後調査のときにどういう項目をそのイベントとして収集するかという点です。例えば、複合エンドポイントとして評価する観点や、eGFRの40%の低下も含めた複合エンドポイントという観点と、それから腎不全イベントという観点、また腎死に関する様々なパラメーターを収集して、多面的に解析していくことのほうが利点が大きいでしょうか、いかがでしょうか。
○柴田委員 私、個人的には今おっしゃられたような項目を採っていただいたほうがいいと思います。ただし、その辺は臨床現場の先生方の御負担との関係もあります。例えば、腎死等でしたらほとんど出ないようなシチュエーションもあるかと思いますので、そこはバランスが必要だと思います。可能な限り、そういう多面的なデータを取っていただくほうがいいのではないかと思います。主たる解析としてはどういうエンドポイントにするかというのは明確に定めていただくとして、他もエンドポイントとして取っていただくほうがよいと思います。
○森部会長 参考人の先生方から、製造販売後調査に関する御助言等何かありますか。佐中先生、何かありますか。
○佐中参考人 私は、副作用の方ばかり考えていて、あくまでもカリウムに対する発生率と対応のことばかりを考えていました。今のような効果は、改めてどういうプロトコールになるかというのは今のところ考えていませんでした。大変参考になる意見を聞かせていただきました。これからの参考にしたいと思います。
○森部会長 深川先生はいかがですか。
○深川参考人 治験のときには確かeGFR25ぐらいまでの人が入っていたと思うのです。
○森部会長 そうです。
○深川参考人 要するに、これによって進行が遅延する効果があるためにはどのぐらいから始めるのが妥当かというのを本当は分かったほうがいいと思うのです。それでないと、進行遅延に効いても腎代替療法が必要になる時期は変わらないみたいな結果になってしまうと、余り御利益はない。それも少し分かるような形で解析していただければと思います。
○森部会長 深川先生、1点教えてください。これは、薬剤の作用機序的には、eGFRが25未満の方でも、腎保護効果を期待することも機序的には可能なのでしょうか。
○深川参考人 いろいろな薬もそうなのですけれども、eGFRの傾きが緩やかになることは確実なのです。最初は少し下がるにしても、傾きは緩やかになりますが、どのぐらい先が伸びるかということは、余りにも悪い人が始めた場合にはほとんど変わらない可能性が高いです。eGFRが10を切るとeGFRだけの話ではなく、症状や電解質異常の程度によって導入が判断され、これは人によってかなり異なります。現実には、MR阻害薬は循環器の先生が先に入れてこられるような気がするので、我々もものすごく悪い人に入れることはそんなにはないのではないかと思っています。でも、この問題は、明示しておいたほうがいいかと思いました。
○佐中参考人 深川先生の言うとおりで、25以下でも、やはり使ってみたくなります。SGLT2阻害薬でも25というのは一つのラインになっていますが、私は使ったりします。使ってはいけないとは書いていないので。要するに、注意して使えということです。案外良い結果が出てきたりします。
 今回の薬剤の場合は、その場合に副作用として、先ほど申し上げましたけれども高カリウム血症があり、これは通常の臨床では御しがたいものがあります。販売後の調査の中で、高カリウムに対する注意には特に力を込めてプロトコールを作っていただきたいと思います。
○森部会長 eGFRが低い方でやはり高カリウムの発生が多くなりやすいというリスクがありますでしょうか。
○佐中参考人 あります。
○森部会長 臨床上のリスクとベネフィットの詳細については実臨床での調査を詳細にしていくということが大変重要かと思いました。御発言をどうもありがとうございました。その他に全体を通して先生方から御意見等はいかがでしょうか。
○宮川委員 5.2で、eGFRが25未満の患者さんにはリスクとベネフィットを考慮した上で、本薬剤の適否を慎重に判断すること。佐中先生がおっしゃっていましたけれども、それを慎重に判断することということも書いてあります。今まではeGFRが25まで到達した速度とか、そのバックグラウンドも踏まえながら、慎重にしっかりとやっていく中で、市販後の試験も含めてですけれども、どのように表現するかというのは、先ほど柴田先生がおっしゃったように、いろいろなものを加味してしっかりと書き込みをしていかないと、やはりこの薬をうまく実臨床の中に生かすことにならないので、その辺のところは慎重にお願いしたいと思います。いろいろな問題として最終的には算定ルールも含めてですけれども、5.2がいろいろなところに効いてしまうこともあるので、その辺の書き込みというか、そういうのをしっかりとお願いしたいと思います。
○森部会長 事務的なことで恐縮ですが、添付文書に臨床成績を記載している17の項目の二つの国際共同第III相試験の名称について、審査報告書に書かれていない、いわゆる研究名というのが書かれています。審査報告書内では、ずっとコード番号で書かれていましたので、コードを必ず併記していただくか、この点について先生方の御意見はありますか。今までもこの名前が出ていることは少ないのですけれども、添付文書にこういう研究名を記載することについて何か御意見はありますか。審査報告書内の研究番号に統一すべきであるのか、このような臨床研究名として広く先生方に知られている名称も併記してよいか、どういう御意見をお持ちでしょうか。代田委員、お願いいたします。
○代田委員 今までは数字で記載されていましたけれども、このように一般的な名称で書いたほうが一般の先生方には分かりやすいのではないかと思います。
○森部会長 分かりました。ですが、報告書との整合性もありますので併記していただくということで、今後は両方記載するようにしていきます。
○代田委員 はい、よろしくお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 FIDELIO-DKD試験と試験16244を併記する形で臨床成績を記載、承知しました。
○森部会長 赤羽先生からも併記で御賛同いただいています。御発言いただきましてありがとうございました。それでは、併記するように修正させていただくことでおまとめいただきました。他に御意見がないようでしたら、議決に入らせていただきます。なお、代田委員と長谷川委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づいて議決への参加を御遠慮いただきます。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議はないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告いたします。佐中参考人、深川参考人におかれましては誠にありがとうございました。御礼申し上げます。
── 佐中参考人、深川参考人 退室 ──
○森部会長 それでは議題2について、機構より概要説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料No.2、医薬品サムタス点滴静注用8mg及び同点滴静注用16mgについて機構より説明いたします。審査報告書の一番下、全68ページの通し番号で4ページ、起源又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。
 本剤は既承認のバソプレシンV-受容体拮抗薬であるトルバプタンの静脈内投与を可能とするため、プロドラッグとしたトルバプタンリン酸エステルナトリウムを有効成分とする製剤であり、腎集合管でのパソプレシンによる水再吸収を阻害することで、水利尿作用を示します。本邦ではトルバプタンを有効成分とする経口剤が2010年10月にループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留の効能・効果で承認され、その後、肝硬変における体液貯留、常染色体優性多発性嚢胞腎、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)における低ナトリウム血症に係る効能・効果がそれぞれ追加承認されています。
 今般、国内臨床試験成績等に基づき、トルバプタンの経口剤が初回承認時に取得した、ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留に係る効能・効果を申請効能・効果として本剤の製造販売承認申請が行われました。なお、海外では2021年10月時点でトルバプタンの経口剤は、欧米を含む47の国又は地域で承認されていますが、本剤はいずれの国又は地域においても申請又は承認されていません。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。有効性について二つの国内臨床試験で検討されました。まず、審査報告書の通し番号35ページ、表26を御覧ください。国内第III相試験(263-102-00003試験)として、V-受容体拮抗薬以外の既存の利尿薬を投与しても過剰な体液貯留が認められるうっ血性心不全患者を対象に、トルバプタン経口剤15mg1日1回経口投与を対照とした無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されました。
 本剤の用法・用量は、トルバプタン経口剤の通常用量と同程度の血中トルバプタン曝露量が得られるように設定され、本剤16mgが1日1回1時間かけて点滴静脈内投与されました。主要評価項目は体重のベースラインから治験薬最終投与翌日までの変化量とされ、トルバプタン経口剤に対する本剤の非劣性が検証され、臨床的に意義のある有効性が示されました。
 また、審査報告書の通し番号39ページ、表31を御覧ください。本剤は経口剤の投与が困難又は不可能な心不全患者における体液貯留の治療において、重要な選択肢とすることを想定して開発されたことから、経口摂取が困難又は不可能な患者を対象とした非対照試験(263-102-00004試験)が実施されました。本剤の用法・用量は1日1回8mgから投与開始し、翌日以降に16mgに増量の可否を判断することとされました。異なる試験結果の比較であり、結果の解釈に限界はあるものの、体重のベースラインから治験薬最終投与翌日までの変化量等について、00003試験の本剤群とおおむね同程度以上の有効性が示され、経口剤の投与が困難又は不可能な患者において臨床的意義のある有効性を示すことが期待できるものと判断しました。
 次に、安全性について御説明いたします。審査報告書通し番号44ページから記載している7.R.3、安全性についての項を御覧ください。トルバプタンで既知のリスクである血中ナトリウム濃度上昇に関連する事象の発現状況を確認し、後述する経口水分摂取が困難な患者を除く本剤の投与対象では、入院下での投与開始、増量又は再開する旨を添付文書で注意喚起する等、トルバプタン経口剤と同等の注意喚起を行うことにより管理可能と判断しました。
 一方で血中カリウム濃度上昇に関連する事象については、トルバプタン経口剤対照試験の併合解析において、本剤16mg群でのみ重篤な高カリウム血症が認められたこと等を踏まえ、本剤の添付文書では高カリウム血症を重大な副作用とし、血清カリウム濃度の具体的な測定頻度を情報提供するとともに、血清カリウム濃度高値の患者及び腎機能障害のある患者では特に注意を要する旨を注意喚起することが妥当であると判断しました。
 続いて審査報告書の通し番号57ページから記載している7.R.5、効能・効果及び投与対象についての項を御覧ください。トルバプタン経口剤では、口渇を感じない又は水分摂取が困難な患者及び適切な水分補給が困難な肝性脳症の患者は、経口摂取による水分補給が困難であり、高ナトリウム血症及び脱水のリスクが特に高いことから、禁忌とされました。
 本剤では、経口摂取が困難又は不可能と判断されたうっ血性心不全患者を対象とした00004試験において、本剤の有効性が示唆され、規定されたモニタリング下において許容可能な安全性が示されたことから、医療従事者による適切なモニタリングと輸液による体液管理下であれば、経口水分摂取が困難な患者も本剤の投与対象とすることは可能と判断しました。添付文書では、経口水分摂取が困難な患者に対し、半量(8mg)からの投与を開始すること、00004試験におけるモニタリング規定に基づき、水分出納バランスの観察・管理を行う必要がある旨等を注意喚起することが適切と判断しました。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品としての申請であることから、再審査期間は8年とすることが適当と判断しております。また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 どうもありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等がありましたらお願いいたします。
○代田委員 代田ですけれどもよろしいでしょうか。今、経口で使っているものが静注で使えるようになるので期待できるお薬だと思いますけれども、投与した後の経口投与剤への切替えに関しては何か情報があるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。00004試験においてはもともと経口水分摂取や経口剤の投与が困難な患者を対象とした試験が実施されておりました。00004試験においては全45例が対象とされており、審査報告書の通し番号で38ページの上から7行目辺りに、投与期間の規定を記載しております。最長5日間とし、担当医師がうっ血性所見が消失して体液貯留の更なる改善が必要でないと判断した場合、あるいは経口摂取のみで体液管理が可能と判断した場合には投与を終了することとされておりました。
最終投与の翌日以降に経口剤に切り替えられた症例が、45例中25例認められており、その切替え前後における安全性等については、照会回答の中で確認をしております。
○代田委員 ありがとうございます。そうすると、その経口の切替えについて何か特別な指示とかそういうものがこの中には出てこないということでよろしいですか。添付文書などには特に出てこないということでよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。添付文書において静注剤と経口剤の切替えに関して特に注意喚起等はしておりません。ご参考までですが、審査報告書の通し番号で56ページの7.R.4.4項で、経口剤から静注剤、あるいは静注剤から経口剤への切替えにおいて想定される状況と用量の関係等については、審査報告の中でも議論しております。
○代田委員 ありがとうございます。恐らく使い始めて経口をどういうふうにしたらいいか、切り替えたらいいかなというふうに臨床的には思うと思いますので、その辺の情報提供があるといいかなと思ってお聞きしました。以上です。
○森部会長 では、引き続き岡委員から御発言いただきます。
○岡委員 岡です。添付文書を見ますと、7.1にナトリウムを排泄しないからほかの利尿薬を併用して使用することとありますけれども、報告書にはそういう記述はなかったように思いますが。それと、抗アルドステロン薬だとカリウムはどうなるのでしょうか。影響はないのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。この7.1項の注意喚起についてはトルバプタンの経口剤、サムスカのOD錠等と同様の注意喚起をしております。トルバプタンの経口剤についても本剤についても同様ですけれども、基本的にはループ利尿薬等の他の利尿薬を使っていただいた上で、効果不十分な場合に上乗せで更なる体液貯留の改善を期待して投与するという位置付けの薬剤ですので、経口剤と静注剤で同様の位置付けとしてこのような注意喚起を記載しております。
○岡委員 そうすると、注意事項でここに書いてあるからいいのですけれども、用法・用量の所か効能の所か、何か併用薬として使うというようなことをほかの分類の薬ではよく書いてあると思いますけれども、そういう必要はないのですか。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。すみません、少しお時間を頂戴いたします。
○岡委員 はい。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。少し御意見の趣旨を確認させていただきたいのですけれども、ただいまの御指摘は本剤が使用される位置付けということであれば、用法・用量に関連する注意というよりは、ほかの記載箇所の方が適切なのではないかといった御趣旨でしょうか。
○岡委員 いいえ、この「注意」はこのままで結構ですけれども、「併用して使用すること」というのは強い表現ですので4.または6.にも「他の利尿薬と併用で」という文言を入れた方が良いのではないかと思うのですけれども。ほかの薬なんかですと単剤ではなくて併用薬という記載が適応の所にあるのですけれども。そこは構わないのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。先生おっしゃるように、特定の併用薬を併用しないと例えば効かないとか危ないとかそういう場合については特定の併用薬を記載することもありますが、本剤は順番で更に上乗せをしていくお薬で、その上乗せされる側については今の標準治療的であって、それほど何かものすごく特定されているわけではなくて、こういった薬群だという場合にはこういう所に載せているという状況が多いです。しかも、この薬については、今までトルバプタン経口剤でこの記載をしていたところで、それと同じ記載がいいのかなということと、トルバプタン経口剤のときにそれで臨床上特に問題になっていないということなので、このままにさせていただければなと思っております。以上です。
○岡委員 分かりました。では特に、例えばてんかんの薬なんかですと、既存薬との併用療法というのがはっきり効能の所に出てくるのですけれども、それは別に全部の薬で同じようにする必要はないということでよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。すべての薬で完全に統一されているかと言われると、そこまで検討していないのですけれども、併用の必要性の度合というか、特定の度合によって、あるいは臨床のプラクティスの中の位置付けによって書く位置が決まりますが、特に近年の考え方としては、先ほど申しましたような方針としています。もし今後ちょっと突出して当てはまらないものがあれば、また添付文書については機会があったときに考えさせていただければと思っています。以上です。
○森部会長 慢性心不全が急性増悪した治療の際に、急性期にしっかり使う薬と慢性的に維持薬として使う薬剤のいろいろな組合せが考えられますので、恐らく患者さんの病態に応じて使用していくという意味付けでこういう表記になっているのだと理解していますが、よろしかったでしょうか。その他御発言ありますでしょうか。いかがでしょうか。
○合田部会長代理 合田ですけれども、最初に議論があった経口剤との切替えについての添付文書の記載というのは、結局ないということでよろしいですか。これはあったほうがいいのかなと思ったのですけれど。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。結論として添付文書において特に切替えについての注意喚起等はしておりません。この点に関しては、先ほど来お話に出ておりますように、既にこういった急性心不全あるいは慢性心不全の急性増悪期に、体液貯留に対して使用される利尿薬として同じ有効成分の経口剤・静注剤というものが使用されておりますけれども、それらの既存の利尿薬に関しても、投与経路に基づく切替時の注意喚起というところは特段なされておりませんで、そういったものも横目で見つつ、今回このような結論に至っているというところです。
○医薬品医療機器総合機構 補足をいたしますと、そうやって既に存在している既存の経口薬と静注薬がそろっている利尿剤と比べて、本剤の切替時に何かそれらの既存薬と比べて特段の注意を要するような事項や特殊なものが必要かという観点で見ると、切替えの観点では同じような使い方をすることで、本剤に関しても切替可能だろうということで、添付文書上特記するような注意事項はないという判断をしております。
○合田部会長代理 基本的に類縁化合物で最終的に同じものが効いているのですけれども、ものが違うから大丈夫かなと、少し量的に重さが違うので若干違ってきましたよね。その辺でどういう用量うんぬんということについて、機構の先生方がそういうことで全然問題がないと言われるなら、私は全く気にしないのですけれども、一番最初にそういう御質問があったので、そういうことがあるのだったら入れたほうがいいのかなと思った次第です。
○森部会長 すみません、1点確認なのですが、これは静注薬と経口薬で用量の相同性といいますか、曝露の相同性については報告書には記載がありますし、項目も作っていただいていますね。確か先ほど御紹介いただいた。
○合田部会長代理 報告書にありますね。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明します。今回経口剤の15mgと本剤16mgを投与したときの曝露量の関係を、添付文書の5ページ、16.1.2項の表16-2でお示ししていまして、表16-2の大きいくくりの二つ目、トルバプタン本剤静脈内投与時の16mgの所と、一番下のトルバプタン経口投与時の15mgの所を御覧いただきますと、CmaxあるいはAUCとしておおむね同等の曝露量が得られる用量関係であるというところは、情報提供しています。
○森部会長 そうしますと、今御紹介いただきました添付文書の16.1.2を受ける形で、その概要について、もう少し上の方の項目に概要を御紹介していただくという運用は可能なのでしょうか。つまり、経口薬と注射薬でどの程度相同性があるかということ。16mg、15mgについて、曝露に関して同等だということについては、何らかの情報提供をすることは可能なのか、それともそれは避けるべきなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。恐らくトルバプタン経口剤と本剤の用量の関係性といったところを、別の形で添付文書内で情報提供してはどうかという御提案と理解いたしました。そういった情報提供ができない、あるいは不適切ということではありませんので、少し添付文書内で何か関係性について記載ができないかということを検討いたします。
○森部会長 はい、助かります。例えば7.6とか作っていただくか、若しくは8番に少し御紹介いただくとか、幾つか御検討いただいて適切な所に情報提供いただくというのは、先生、実臨床上いかがでしょうか。有益性があると考えてよろしいでしょうか。
○宮川委員 宮川です。そのときにはデータとしては1日1回の5日間投与という形での血中濃度の上がり方、それから維持、そういうことが示されているので、単回投与で1日でそれを切り替えたときどうなのかというのが分からないので、そこは書きぶりとしては、5日間の中でそういうようなデータがその後の恒常性として得られたということを、しっかりと使う側が分かっていないといけないと感じます。
 ですから経口薬のときには、その後に漫然と投与しないとか、そういう文言が付いたという形なので、経口薬と点滴静注の場合のどこから維持されるのか、どこまでがしっかりとした記載が必要です。今回の点滴静注は、最初から1日1回投与と書いてあるだけなのです。しかしながら、それが1日1回で効いているデータがどこにもないのです。つまり、5日間投与した中での臨床データなので、それがこのままだと単回投与で1日1回投与しただけで、ではこれは同じような効果が得られるのかということになると、非常に難しいと私は理解したのです。
 話を蒸し返して申し訳なかったのですが、非常に難しい表現だろうなと、機構の方も御苦労されているなというのはよく分かるので、どのようにこれを取り扱ったら整合性が取られた文言になるのかということです。ですから、経口薬と点滴静注薬、そしてその特性というものを考えていかないと、表現としては難しいのかなと思います。
○森部会長 そうしますと、より慎重な対応としては、16.1.2の反復投与の項目に、何か補足をしておくことに留めるという方法もあるということですね。
○宮川委員 そうですね、本来からするとそうですし、点滴静注の用法で、1日1回1時間かけて点滴静注するというだけの文言では、本来からするとこの薬剤のしっかりとした効能が得られないというのが、臨床試験から言えば1日1回投与で5日間ということでデータが得られているので、それが経口薬の今までのものとの整合性として得られているという形なのだろうと思うので、非常に難しい表現になるのだろうと思います。
○代田委員 代田ですけれども、宮川先生がおっしゃるように、この薬はすぐに単回投与で効果が出るというものではないのと、経口薬のときにも皆さん経験されていると思うのですね。だから、そこはどこかで表現があったほうがいい。それからもう1点は、経口投与した場合は、その前の静注投与と連続しながら投与していくことになると思いますので、効果はある程度持続するだろうと予測はされると思います。表現はなかなか難しいかもしれませんけれども、その辺りはメーカーの情報提供と添付文書と分けながら、どこまで書き込むかということになるかと思いますので、表には少なくとも何らかの表現をしておいたほうが、我々としては助かるのではないかと思っています。以上です。
○森部会長 はい、どうもありがとうございました。でしたら、表の所に補足していただいて、そして実臨床上の切替えに関しては資材等で提供いただくというのが、よさそうです。御発言ありがとうございました。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。機構です。御指摘いただいた内容については、添付文書の16項で事実に関する補足をするというところと、切替えに関しては資材等の中で何が書けるかを検討させていただきたいと思います。
○宮川委員 宮川です。用法・用量の所、それからそれに対する注意という所で、これは単回投与だけでは効果が出ないのだということもしっかりと書きぶりとしてないと問題です。これは臨床試験を読んでいない人はこのまま単回投与でいいのか、1回でいいのかということになるので、その辺の臨床試験との整合性も何らかの表現として工夫がされるといいのではないかなと考えます。それは今、代田先生がおっしゃったことにつながってくるのだろうと思います。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘いただきましてありがとうございます。投与期間に関しまして、事実関係として補足しますと、経口剤とのパワーの比較をしたという非劣性試験に関しては、投与期間5日間で実施されまして、もう一つ非対照試験として実施された、経口摂取が困難な患者さんを対象とした試験は、8mgから開始して効果の観点と安全性の観点の両方の基準を用いて、翌日以降に増量可否あるいは投与中止という判断を行っています。
 結果としては、00004試験を、審査報告書でいいますと通し番号38ページの表30に、何日間投与されたかという結果をお示ししています。大体8割ぐらいの患者さんが、3日間までの投与でおおむね効果十分あるいは経口水分摂取が可能と判断されたことによって、本剤の投与を中止しています。
 先ほど申し上げたように、この中の半分以上程度の患者さんが経口剤に切り替えて、投与されていたという状況でした。投与期間については、やはり体液貯留に関してはその所見、うっ血の所見とあるいは患者さんの体重の変化を見て、個別に判断せざるを得ないというところは、専門協議等でも先生方に御意見を頂いていまして、個々の患者さんで5日間より短くなるケースもあれば、あるいは5日間を超える投与が必要となる状況もあり得ると考えています。
○森部会長 はい、御回答ありがとうございました。添付文書の17.1.1に書かれている臨床試験成績や試験デザインを参考にして使用すべきという一文が、用法の所に書かれていてもいい可能性がありますね。7番の項目だと思いますけれども、臨床試験のデザインや成績を参考に使用すべきと、7のどこかに加えていただくのがよろしいのではないでしょうか。それが一番御使用になる先生方にはヒントだと思います。よろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。恐らく7.5項などで、どちらかというと添付文書では中止する場合の基準に重視して記載していましたが、本日頂いた御指摘では、きちんとどういった状況になるまでは続けなければいけないというニュアンスが少し不足しているのではないかという御指摘と理解しました。こういう状況が得られるまでは継続し、消失した際には中止することというような情報提供ができないか、少し検討させていただければと思います。
○森部会長 どうもありがとうございました。そのほか先生方から御質問、御発言よろしいでしょうか。では議決に入らせていただいてよろしいですか。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議ないようです。承認を可とし薬事分科会に報告させていただきます。
 それでは、ロビーで御待機されています佐藤直樹委員をお呼びいただきたいと思います。
── 佐藤直樹委員 入室 ──
○森部会長 先生、どうもお待たせしました。では続いて議題3に移ります。議題3について、機構より概要説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは議題3、資料No.3、医薬品アロカリス点滴静注235mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明します。本邦における制吐薬適正使用ガイドラインでは、高度催吐性抗悪性腫瘍剤投与に伴う悪心・嘔吐(CINV)に対してNK受容体拮抗薬、5-HT受容体拮抗型制吐剤及びデキサメタゾンの3剤併用療法が基本とされ、また中等度催吐性抗悪性腫瘍剤投与に伴うCINVに対しては、5-HT受容体拮抗型制吐剤及びデキサメタゾンの2剤併用療法が基本とされ、催吐性リスクに応じてNK受容体拮抗薬を追加投与することが推奨されています。本薬は選択的NK受容体拮抗作用を有するネツピタントのリン酸化プロドラッグです。
 今般、シスプラチン等の抗悪性腫瘍剤投与患者を対象とした国内第III相試験により、本薬の有効性及び安全性が確認され、製造販売承認申請がなされました。なお、海外では2021年10月時点で本剤が単剤として承認されている国又は地域はありませんが、本薬と5-HT受容体拮抗型制吐剤であるパロノセトロン塩酸塩との配合剤(静注製剤及び経口製剤)が、成人のCINVに対して欧米等で承認されております。本品目の専門協議では、本日の配布資料No.22に示します専門委員を指名しております。
 以下、本薬の有効性、安全性について、臨床試験成績を中心に説明いたします。有効性について、審査報告書に青字で表記しております通し番号42ページの表39を御覧ください。シスプラチン投与患者を対象とした国内第III相試験(10057030試験)において、主要評価項目である単回投与パートにおける全期間(高度催吐性抗悪性腫瘍剤投与開始後0~120時間)の嘔吐完全抑制率について、本薬群のホスアプレピタント群に対する非劣性が検証されました。
 また、審査報告書通し番号48ページの表50を御覧ください。国内第III相試験(10057030試験)の単回投与パートの後に実施した繰り返し投与パートにおいて、抗悪性腫瘍剤最大4コースまでの繰り返し投与で、本薬の有効性が減弱する傾向は認められないことを確認しました。以上より、本薬の有効性は示されたと判断しました。
 続いて安全性について、審査報告書通し番号49ページの表52及び通し番号50ページの表53を御覧ください。国内第II相試験(10057020試験)及び国内第III相試験(10057030試験)及び国内第III相試験(10057040試験)における有害事象の概要を記載しております。国内第II相試験において、プラセボ群と比較して本薬各群で有害事象等の発現割合が高い傾向や、本薬群で特定の事象の発現割合が高くなる傾向がないことを確認しました。また、国内第III相試験において、ホスアプレピタント群と比較して本薬群の有害事象等の発現割合が高い傾向や、本薬群で特定の事象の発現割合が高くなる傾向はないことを確認しました。なお、国内第III相試験(10057030試験)では、抗悪性腫瘍剤最大4コースまでの本薬の繰り返し投与において、本薬の有害事象の発現割合及び特定の有害事象が増加する傾向はないことを確認しました。以上より、本薬の安全性が確認されたと判断しました。
 以上の審査の結果、抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心・嘔吐)(遅発期を含む)に対する本薬の有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。
 本申請は新有効成分含有医薬品であることから再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原薬及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しました。また、薬事分科会では報告を予定しております。説明は以上です。御審議のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○森部会長 はい、どうもありがとうございました。では、委員の方々から御質問等ありましたらお願いします。御意見いかがでしょうか。特にございませんでしょうか。それでは議決に入らせていただいてよろしいでしょうか。なお、佐藤直樹委員、田﨑委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。それでは、本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。御異議ないようですので、承認を可とし薬事分科会に報告させていただきます。では、続いて議題4に移ります。議題4について、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題4、資料No.4、医薬品モノヴァー静注500mg、同静注1,000mgの製造販売承認の可否等について機構より御説明します。鉄欠乏性貧血では、不足している鉄を補充する必要があります。鉄欠乏性貧血治療の第一選択薬は経口鉄剤ですが、多量出血で鉄の損失が多く、経口鉄剤では補充が不足する場合や、副作用等により経口鉄剤が服用できない場合など、経口鉄剤が適さないときに静注鉄剤が選択されます。本薬は、安定性の高い鉄複合体であるデルイソマルトース第二鉄を有効成分とする静注鉄剤です。
 今般、鉄欠乏性貧血患者を対象とした国内第III相試験により、本薬の有効性及び安全性が確認され、製造販売承認申請がなされました。なお、海外では、2021年10月時点で、欧米を含む46の国又は地域において、鉄欠乏性貧血等で承認されています。本品目の専門協議では、本日の配布資料No.22に示します専門委員を指名しております。
 以下、本薬の有効性、安全性について、臨床試験成績を中心に説明いたします。有効性について、審査報告書に青字で表記している通し番号22ページの表20を御覧ください。過多月経を伴う鉄欠乏性貧血患者を対象とした国内第III相試験(32-P3-01試験)において、主要評価項目である、ベースラインから投与開始後12週までの血中Hb濃度の最大変化量について、本薬群の含糖酸化鉄群に対する非劣性が検証されました。また、審査報告書通し番号24ページの表25及び審査報告書通し番号26ページの表30を御覧ください。消化管障害を伴う鉄欠乏性貧血患者を対象とした国内第III相試験(NS32-P3-02試験)及び分娩後出血に伴う鉄欠乏性貧血患者を対象とした国内第III相試験(NS32-P3-03試験)において、本薬投与により、いずれも血中Hb濃度の増加が認められました。以上より、本薬の鉄欠乏性貧血患者に対する有効性は示されたと判断しました。
 続いて、安全性について御説明します。審査報告書通し番号22ページの表21及び通し番号23ページの表22を御覧ください。過多月経を伴う鉄欠乏性貧血患者を対象とした国内第III相試験において、含糖酸化鉄群と比較した際の有害事象及び副作用の発現状況について、本薬群で有害事象等の発現割合が高い傾向は認められず、また、本薬群で特定の事象の発現割合が高くなる傾向はないことを確認しました。また、通し番号24ページの表26及び表27を御覧ください。消化管障害に伴う鉄欠乏性貧血患者を対象とした国内第III相試験における有害事象及び副作用の発現状況について、静脈内注射群と点滴静注群で臨床的に問題となるような違いは認められていないことを確認しました。また、本薬群全体の有害事象等の発現割合及び認められた事象は、過多月経を伴う鉄欠乏性貧血患者を対象とした国内第III相試験の本薬群と比較して、臨床的に問題となるような傾向はないことを確認しました。
 続いて、審査報告書通し番号26ページの表31を御覧ください。分娩後出血に伴う鉄欠乏性貧血患者を対象とした国内第III相試験における本薬投与例の有害事象等の発現割合は、過多月経を伴う鉄欠乏性貧血患者を対象とした国内第III相試験の本薬群と比較して高い傾向が認められたものの、その多くは創合併症、乳腺炎等の被験者背景に起因した事象によるものと考えられ、これらの患者背景に関連した事象を除き、特定の事象の発現割合が高くなる傾向は認められていないことを確認しました。以上より、静注鉄剤の適応となる鉄欠乏性貧血患者に対して、本薬が適切に使用されるのであれば、鉄欠乏性貧血における本薬の安全性は許容可能と考えました。
 以上の審査の結果、鉄欠乏性貧血に対する本薬の有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、承認して差し支えないと判断し、本部会で御審議されることが適当と判断しました。
 本申請は、新有効成分含有医薬品であることから再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原薬及び製剤は、いずれも毒薬及び劇薬に該当しないと判断しました。また、薬事分科会では報告を予定しています。説明は以上です。御審議どうぞよろしくお願いいたします。
○森部会長 どうもありがとうございました。では、委員の先生方から御質問ございましたらお願いします。
○堀委員 堀です。よろしいでしょうか。
○森部会長 お願いします。
○堀委員 まず、この鉄剤の点滴のお薬ですが、1,000mgになったということで、投与回数が少なくなって、通院する患者にとってはとても有り難いことだと思っております。私から1点確認をしたいのですが、投薬を受けることができる年齢についてお尋ねします。添付文書の2ページの9.7の「小児等」という所を御覧ください。小児等を対象とした臨床試験は実施していないことが書いてあるのですが、15歳未満の重篤な思春期貧血で、例えば鉄剤の経口投与が、お薬がちょっと臭かったり苦かったりして飲めない患者さんもいらっしゃると思うのですが、そういう患者さんや、又は月経の出血がすごくひどくて、経口投与ではちょっとなかなか無理という患者さんには、このお薬は服用はできないと考えてよろしいのでしょうか。教えていただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構よりお答えいたします。本薬については、国内臨床試験において、成人を対象として有効性、安全性が確認されておりますので、本薬の用法及び用量の項において、「通常、成人には」という形で記載しております。その上で、本薬の添付文書の小児等の項において、臨床試験は実施していない旨を注意喚起しております。したがいまして、添付文書に基づいて適切に使われるのであれば、本薬は成人に対して投与されるものと考えております。
○堀委員 御回答ありがとうございました。今、中学生とかでも、かなり重篤な思春期の貧血で、保健室で保健師さんがいろいろと対応なさる際に、なかなか鉄剤の経口投与や食事で改善できないような患者さんもかなり増えていると聞きましたので、確認をいたしました。ありがとうございます。私からは以上です。
○森部会長 ありがとうございました。そのほか、先生方から御質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。では、議決に入らせていただきます。なお、代田委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。では、本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。どうもありがとうございます。では、御異議ないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。続いて、議題5に移ります。御準備よろしければ、議題5につきまして、機構から概要説明をお願いしたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題5、資料No.5、医薬品ジセレカ錠100mg、同錠200mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明します。資料については、資料No.5、ジセレカ錠100mg、同錠200mgの審査報告書を御覧ください。
 本邦における潰瘍性大腸炎の薬物治療は、治療指針等に基づき、5-アミノサリチル酸製剤、ステロイド、免疫抑制剤、生物学的製剤、JAK阻害剤等が使用されており、主に重症度に応じて治療法が選択されております。本薬はJAK阻害剤であり、今般、既存治療で効果不十分な中等症~重症の潰瘍性大腸炎患者を対象とした国際共同第II/III相試験を実施し、有効性及び安全性が確認できたとして医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。なお、本薬は、本邦において、2020年に関節リウマチに係る効能・効果で承認されており、潰瘍性大腸炎の適応は、2021年にEUで承認されております。本品目の専門協議では、本日の配布資料No.22に示します専門委員を指名しております。
 以下、本薬の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明いたします。有効性に関しては、審査報告書通し番号の15ページ、表12を御覧ください。導入期の有効性に関して、国際共同第II/III相試験において、生物学的製剤未治療の潰瘍性大腸炎患者を対象としたコホートAでは、主要評価項目である、10週時点でEBS寛解を達成した被験者の割合について、本薬200mg群はプラセボ群に対する優越性が検証されました。一方、生物学的製剤既治療の潰瘍性大腸炎患者を対象としたコホートBでは、コホートAと同じ主要評価項目について、本薬200mg群はプラセボ群に対する優越性が検証されませんでした。
 続いて、審査報告書、同じページの表13を御覧ください。導入期で一定の治療反応が認められた患者を対象とした維持期の有効性に関する検討では、主要評価項目である、58週時点でEBS寛解を達成した被験者の割合について、本薬200mg群及び100mg群は、それぞれ対応するプラセボ群に対し優越性が検証されました。日本人集団においては、症例数が極めて限られていることに留意する必要はありますが、導入期は審査報告書通し番号の24ページ~25ページの表26及び表27、維持期については審査報告書通し番号28ページの表34にそれぞれ記載のとおり、全集団と同様の傾向が認められました。以上より、機構は、導入期における本薬の有効性について、コホートAの結果から、本薬200mgは生物学的製剤未治療の潰瘍性大腸炎患者に対し有効性が示されたと判断しました。
 また、コホートBの本薬200mgでは、主要評価項目において有効性が確認されなかったものの、審査報告書通し番号26ページ、表31のとおり、維持期への移行基準である、10週時点でMCS改善を達成した被験者の割合は、コホートBにおいて、プラセボ群の18.0%に対し、本薬200mg群で53.1%と高く、本薬による一定の改善効果は期待できること、維持期の本薬の有効性は、コホートBを含め、導入期で治療反応が認められた集団で検証されたことを踏まえると、生物学的製剤としての治療歴の有無によらず、中等症~重症の潰瘍性大腸炎患者に対する本薬の導入期の改善効果は期待できると考えました。また、機構は、維持期における有効性について、本薬200mgは潰瘍性大腸炎患者に対する維持効果が示され、本薬100mgにおいても潰瘍性大腸炎患者に対する一定の維持効果が示されたと判断しました。
 安全性に関しては、審査報告書通し番号31~32ページ、表38、表39及び表40を御覧ください。国際共同第II/III相試験における導入期及び維持期の有害事象の発現状況について、本薬群はプラセボ群に比べ問題となる傾向は認められませんでした。また、第II/III相試験で認められた事象は、いずれも本薬の現行の添付文書で注意喚起されており、既承認の関節リウマチと同様に、留意して対応することで安全性は許容可能であると考えました。
 以上、機構での審査の結果、中等症~重症の潰瘍性大腸炎患者に対する本薬の有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、医薬品リスク管理計画に係る承認条件及び一定数の症例データが蓄積されるまで全症例を対象とした製造販売後調査を行う旨の承認条件を付した上で、効能・効果等の追加について承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。なお、本申請は、新効能及び新用量医薬品としての申請であるものの、既承認の関節リウマチの再審査期間の残余が4年以上あることから、本申請に係る効能・効果及びその用法・用量の再審査期間は、既に付与されている再審査期間の期限である令和10年9月24日までとすることが適当と判断しました。薬事分科会では報告を予定しております。機構からの御説明は以上になります。御審議をどうぞよろしくお願いします。
○森部会長 どうもありがとうございました。では、委員の先生方から、御質問、御意見等ございましたらお願いします。
○堀委員 堀です。よろしいでしょうか。
○森部会長 お願いします。
○堀委員 ただいま、30/51で安全性についてお話があり、そこにも書いてあるのですが、日本人の潰瘍性大腸炎の症例数が限られていたということで、この後、製造販売後調査でそのデータを収集することが添付文書の7ページの承認条件の所にも書かれています。そこに「本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し」と書いてあるのですが、この早期というのは、今、おっしゃった令和10年9月24日までと判断してよろしいのでしょうか。それとも、もっと早くということであるならば、それは大体いつ頃という基準があるのか教えてください。この文言があったことによって、患者にとっては、症例数が少ないということをちょっと不安に思う方がいらっしゃるかと思いましたので御質問いたしました。お願いします。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。製販後の調査ですが、審査報告書通し番号47ページに概略を記載しております。予定症例数としては、470例を1年半かけて登録して60週間観察していくという計画がされております。全例調査ですので、投与された方全ての方に早めに調査に入っていただくという意味で早期という記載をしております。
○堀委員 分かりました。ありがとうございます。大変待ち望んでいらっしゃる患者さんも多いと思いますので、是非。ただ、安全・安心ということがやはり確実にされないと、使用する患者の中に不安に思われる方もいらっしゃると思いましたので質問しました。以上です。
○森部会長 そのほか、御質問等いかがでしょうか。
○宮川委員 宮川です。
○森部会長 どうぞ、宮川委員、お願いします。
○宮川委員 宮川ですが、お願いします。細かい点で申し訳ないのですが、添付文書の6ページの臨床試験の記載のうち、17.1.4の(2)で、P値が0.0261で統計学的な有意差は認められなかったということなのですが、よくよく見てみると、15/51ページで、先ほど御説明されたコホートBですが、ここで0.0261というのは、結局、有意水準が両側の2.5%だったということなので、通常であれば両側というのは5%という形になるのだろうと思うのです。これは補正されても駄目だったのか、2.5%だったから有意性が認められなかったのか、この辺の解釈は機構に聞いたほうがいいのか、専門の柴田先生に聞いたほうがいいのかよく分からないので、この辺の所を教えていただきたいと思います。
○森部会長 まず、機構から御回答を頂けますでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 審査報告書15ページの表12の脚注の下のc)に記載しておりますが、今回、中間解析が事前に計画されており、その部分でαを消費してしまった結果、0.02499未満であった場合に有意と定義して試験を実施しております。この結果からいきますと、200mgのコホートBですが、仮説は検証されていないという結論となります。
○宮川委員 分かりました。それが少し弱めな表現になったのかということでちょっと懸念したのですが、それは特段、大筋には問題ないということでよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。御認識のとおりで、コホートBで有効性評価時に除外した集団を除く前の集団で有効性が確認できている点ですとか、改善効果が確認できている点からも、大きな懸念等はないとは考えております。
○宮川委員 ありがとうございます。
○森部会長 特に、柴田委員から、この点の補足点はございますでしょうか。
○柴田委員 柴田です。先ほど御説明いただきましたように、15/51ページにテクニカルなところは書いてありますので、内容としては間違っていないのですが、ただ、ちょっと添付文書に、いきなり0.0261と書いてあって有意差がないというのが分かりにくいというのは御指摘のとおりなので、本来、0.02499にするべきであったという、その閾値を添えておかれてもいいのかなと思いました。ただ、ここは分量との兼ね合いがありますので、最終的にはお任せします。
○宮川委員 先生、ありがとうございます。何かそのような補足がないと、ぱっと見た瞬間、添付文書上ではよく分かりにくい表現だったものですからご指摘しました。
○森部会長 ありがとうございました。赤羽先生が今、お手を挙げていらっしゃるのですが、御発言はよろしいのでしょうか。はい、お願いします、どうぞ。
○赤羽委員 この臨床試験期間中には、特段、悪性新生物とか死亡のリスクは認められなかったということだったのですが、関節リウマチの治療薬としては、やはりそこは懸念されているところかと思います。御説明の中にはなかったのですが、これは、今後の安全性検討事項としては、やはり関節リウマチ治療薬と同じように、悪性腫瘍とかそういったものもモニタリングしていくということでよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきありがとうございます。機構よりお答えします。御理解のとおりです。悪性腫瘍について、この効能に関しても製販後の調査の中で見ていきますし、現在、引き続きリウマチの方でも調査が行われているところですので、それと同じような形で見ていくことになります。
○赤羽委員 ありがとうございます。
○森部会長 平石先生、御発言をどうぞお願いします。
○平石委員 お願いします。このお薬は、生物学的製剤の治療歴がある、あるいはないにかかわらず認可されるということですが、バイオ製剤による治療の中での位置付け、これについてコメントを頂ければと思いますが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきありがとうございます。機構より回答します。現状の臨床試験等のデータから、例えば同列に位置付けられる生物学的製剤、若しくは類薬ですと同じJAK阻害剤もありますが、その中での使用の優先順位等は今のところはない状態ですので、これから使われていく中でその辺りがより分かるようになっていくものと考えております。
○平石委員 そうしますと、今後の課題という理解でよろしいですね。
○医薬品医療機器総合機構 ご理解のとおりで、現状としては、こういったケースではこの薬剤をとはっきり線引きするのは難しいと思いますので、今後検討していくということになるかと思います。
○平石委員 難しい質問を、どうも失礼しました。
○森部会長 今の点について、専門協議で何か御意見はありましたか。
○医薬品医療機器総合機構 専門協議の中で、使い分けについては特に意見等はありませんでした。
○森部会長 分かりました。そのほか、先生方から御発言、御意見等ございますか。よろしいですか。議決に入ってよろしいでしょうか。なお、川上委員、長谷川委員、宮川委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。では、本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議ないようですので、承認を可とし薬事分科会に御報告させていただきます。
 では続いて、議題6に移ります。議題6ですが、平石委員におかれましては、薬事分科会審議参加規程第5条に基づきまして、議題6の審議の間、会場から御退室いただき御待機いただくことになっております。平石委員におかれましては御退室をお願いします。
○平石委員 了解しました。
── 平石委員 退室 ──
○森部会長 それでは、議題6について、機構から概要説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 議題6、資料No.6、医薬品カログラ錠120mgの製造販売承認の可否等について、機構より説明いたします。本薬はα4インテグリン阻害薬のプロドラッグであり、今般、5-アミノサリチル酸製剤による治療で効果不十分又は不耐の中等症の潰瘍性大腸炎患者を対象とした臨床試験等に基づき、製造販売承認申請がなされました。なお、現時点で本薬は海外では開発されておらず、本薬が承認されている国又は地域はありません。本品目の専門協議では、本日の配布資料No.22に示します専門委員を指名しています。
 以下、本薬の有効性、安全性について、臨床試験成績を中心に説明いたします。本薬の第III相試験として、CT2試験とCT3試験の二つの臨床試験が実施されました。有効性について、審査報告書通し番号48ページの7.R.1.1、「第III相試験の試験計画について」を御覧ください。CT2試験において、主要評価項目である「初回投与期8週時のMayoスコアによる改善率」について、プラセボ群49.2%、本薬960mg群61.3%であり、本薬群でプラセボ群に対して高い値を示したものの、統計学的有意差は認められませんでした。そのため、表43に示しますように、事前観察期の設定や対象患者を薬効評価のためにより適した設定に変更するとともに、主要評価項目について臨床的意義をより明確化できるような達成基準に変更する等の試験計画の見直しがなされ、新たにCT3試験が実施されました。
 審査報告書通し番号46ページの表39を御覧ください。CT3試験の主要評価項目である「初回投与期8週時のMayoスコアによる改善率マル1」について、プラセボ群20.8%、本薬群45.1%であり、本薬群のプラセボ群に対する統計学的有意差が認められました。以上の試験結果を踏まえ、本薬の有効性は示されたと判断しました。
 安全性について、審査報告書通し番号52~57ページに記載しています。臨床試験における有害事象の発現状況について、プラセボ群と比較して本薬群で臨床的に問題となる傾向は認められませんでした。しかしながら、本薬のα4インテグリン阻害作用により、感染症に対する免疫能に影響を及ぼす可能性があること、本薬と同様にα4インテグリン阻害作用を有する多発性硬化症治療薬であるナタリズマブにおいて、進行性多巣性白質脳症(PML)が報告されており、本薬においてもPML発症リスクが懸念されることから、添付文書等で感染症及びPMLについて注意喚起を行うことが適切と判断しました。
 以上の審査の結果、5-アミノサリチル酸製剤による治療で効果不十分な中等症の潰瘍性大腸炎に対する有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、機構は本申請を承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。本申請は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しました。薬事分科会では報告を予定しています。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 どうもありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見等がありましたらお願いいたします。
○堀委員 堀ですが、よろしいですか。
○森部会長 はい、お願いします。
○堀委員 私からは、添付文書の併用注意の所についてお尋ねいたします。2ページの10.2、併用注意の上の欄なのですが、併用するときの薬剤がミダゾラムとかアトルバスタチンなどの高脂血症の治療薬が書かれております。この高脂血症の治療薬なのですが、今、OTC市販薬で、このアトルバスタチン配合の高脂血症の薬とかは、処方箋なく手軽に私たち消費者が買うことができるのですが、これはOTC市販薬の高脂血症の薬との併用も駄目と判断してよろしいのでしょうか。
 アトルバスタチン配合のOTCの薬があると、私が調べた中ではあったのですが、それはないと判断してよろしいのでしょうか。すみません、私が間違っていたのかもしれませんが。
○森部会長 アトルバスタチン含有のものはないと理解しています。
○堀委員 では、OTCでこういう高脂血症の治療薬はないと判断してよろしいですか。
○森部会長 機構からいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 高脂血症については、基本的には医師の診断の下に薬が処方されるものであり、現時点でアトルバスタチン含有のOTCは把握しておりません。本剤の添付文書では、本剤との薬物相互作用の試験を実施しているミダゾラムとアトルバスタチンを例として記載しております。市販薬であっても、同じようにCYP3A4の基質となる薬剤であれば、同様に注意が必要であるとは考えております。
○堀委員 ありがとうございます。高コレステロールの方がOTC医薬品を服用している方がすごく多いと聞いており、その方たちが気付かないでこの薬を服用し、かつ主治医の方に自分が高コレステロールのOTC医薬品を飲んでいることをいちいち伝えることが患者さんにとってあるかどうか考えたときに、この高脂血症や高コレステロールの薬と、OTC医薬品との服用との併用ということはありえるのではないかなと思って質問いたしました。OTC医薬品ではこの薬に該当するものがないということが分かれば納得いたしましたので、私からは以上です。ありがとうございます。
○森部会長 どうもありがとうございました。
○合田委員  EPAと間違われたのではないですか。エパデールか何かと間違われたのではないですか。
○堀委員 そうかもしれません、すみません、ありがとうございます。ちょっと心配だったものなので。それに関しては大丈夫と判断してよろしいですね。
○森部会長 オメガ-3脂肪酸製剤がOTCでありますが、こちらは特に相互作用ないと考えていいと思います。
○堀委員 分かりました。ありがとうございます。
○森部会長 そのほか、先生方から御意見、御発言はありますか。特段先生方から御発言はありませんか。一つお伺いしたいのですが、専門協議のときに7.R.3、すなわちこの薬剤の位置付けについては、どんな御議論があったか確認したいのですが。というのは、本剤はステロイドの効果不十分や不耐の対象から除外していて、5-ASAの不応の方に対象を変更して臨床試験を行っているということですので、対象としては早期の治療で不応な方ということですので、大きく変わっていると理解しているのですが、実臨床上どういった使用を見込んでいるのか、どんな御議論があったかを紹介していただけないでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。ただいま御指摘があった点について、審査報告書の通し番号57ページの中段に、7.R.3、「臨床的位置付けについて」に記載しております。こちらの項では、5-ASA製剤による治療で効果不十分又は不耐の場合に、副作用によりステロイドが使用できない患者や、ステロイドの使用を避け早期の段階でタクロリムスや生物学的製剤等を使用していた患者にも使用できる新たな治療選択肢として記載しています。専門協議では、このような位置付けや本薬の使用方法について、専門委員の先生方から御支持を頂きました。また、関連するコメントとしては、CT3試験の結果を踏まえると、ステロイド効果不十分例を除外していることもあり、薬剤のパワーとしてはそれほど強くないと考えられるので、この7.R.3に記載のように、副作用によりステロイドが使用できない患者等について本薬の使用を考慮すべきであって、本薬がステロイドに優先して広く使用されることはないのではないか、という御意見もありました。位置付けについて、専門協議での議論は以上です。
○森部会長 分かりました。ありがとうございました。
○宮川委員 そういう意味では、この中等症ぐらいの薬ができたことは非常に喜ばしいことと、新しい作用機序だということで、今、部会長のおっしゃったように位置付けは非常に難しいなと思います。そういう意味では、臨床試験の中で後付けでそういうことが分かってきただけで、それが目的として作られたわけではないので、その位置付けをきちんと定めるということは、この7.R.3の中だけではちょっと弱いのかなと私も思いましたので、その辺りはしっかりと、使われるときには書き込みがあったほうがいいのかなと思っております。
○森部会長 もう1点御質問があります。この薬剤に類薬の薬剤でPMLの発現が知られているということで、長期連用することに対しての注意喚起がなされているのですが、もともと増悪・寛解を繰り返す潰瘍性大腸炎という疾患特性を考えると、この薬剤を繰り返し増悪時に使用して累積使用期間が長くなる患者さんが出る可能性があると考えているのです。そういった場合に、PMLリスクについてはどういった考察がされているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 PMLについては、審査報告書の通し番号56ページの7.R.2.4で記載をしております。類薬のナタリズマブでは、リスク因子として投与期間と免疫調節剤との併用とJCウイルスの三つのリスク要因が知られており、中でも継続投与の期間、特に2年間を超える治療が最も重要な因子であると考えられておりますので、そういった情報を踏まえて継続の投与期間を臨床試験では最大24週間、すなわち6か月に限定し、製造販売後においても継続の投与としては臨床試験と同様に最大6か月であることを添付文書で情報提供する予定です。累積投与期間については、ナタリズマブでは累積よりも継続投与の期間の方が寄与が高いであろうということで、本薬の臨床試験で特に累積の期間については制限はありませんでした。そのため、疾患の再燃後には8週間以上の休薬を置いて本薬による再治療が可能となっておりました。累積の投与期間については、臨床試験では最大で累積70週までの投与経験があり、PMLの発現は認められていない状況です。状況としては以上になります。
○森部会長 添付文書上に記載する情報として、臨床試験で最大どの週まで使用した症例があるかといったことについて、情報提供することも一案かと思いますが、その点はいかがでしょうか。それ以上使用した実例がないといったことも記載することが可能かと思いますが、この点について専門の先生方から何か御発言はありますか。では、機構の御意見はいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 累積の期間については、どの程度であれば安全とか、どの程度であれば危ないといった線引きがなかなか難しいとは考えておりますので、添付文書で情報提供するのであれば、17の臨床成績の項で、投与期間に関する記載をすることがよいのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
○森部会長 すみません、もう一度、添付文書のどの項目ですか。
○医薬品医療機器総合機構 臨床成績の17の項です。17の項に、投与期間に関する情報提供をして、資材等でも丁寧に説明することを考えておりますが、いかがでしょうか。
○森部会長 委員の先生方から御意見はありますか。
○宮川委員 宮川です。それは分かるのですが、用法・用量に関する注意の所で、やはり7.3ぐらいの所でそれ以上の臨床経験はないのだということが入ると、より優しいのだろうと思います。やはりこれは中等度で、繰り返しやられる方は確かにおられると思うので、そこの書き込みがあると非常に丁寧であるかなと私も理解しておりますが、いかがでしょうか。
○森部会長 宮川委員、どうもありがとうございました。特にその他の先生方から御発言はいかがでしょうか。
○堀委員 堀です。チャットにも書かせていただいたのですが、リピトール錠というものがネットで処方箋がなく簡単に販売されていたので、ちょっと私が誤解をしてしまいました。よく確認したところ、やはり海外からのものだったようです。ただ、そうやって海外から処方箋薬が、日本では処方箋薬であるべきものを購入するような方もいらっしゃるということも含めた上で、先生方には対応していただけたら有り難いと思います。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。
○医薬品医療機器総合機構 先ほど先生方から御意見を頂いた累積投与期間の件ですが、担当からお話させていただいたように、臨床試験の中でその累積の投与期間というのは一定の期間があったというところです。ただ、実際にそれを超えていって投与したときにリスクが高くなるのかというところも、はっきりしておりません。先生の御指摘のように、この薬は再燃した場合にある程度繰り返し使われる可能性もあるので、日常診療では臨床試験での累積期間を超えて投与されるケースも考えられます。実際に臨床試験での範囲までしか投与できない状況とした際には、現場にもいろいろと使いづらさが出てくるのではないかと心配していたところです。先ほど担当から提案させていただいたのは、17の項で臨床試験の中ではこれぐらいまで投与されていたという情報を提供してはどうかという提案ですが、記載する場所は検討した方がよいという感じでしょうか。
○森部会長 機構にお伺いいたしますが、PMLが実際に発症した場合には、今はどんな治療法があるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 先生方よく御承知かと思いますが、PMLはなかなか難しい状態ですので、主には神経内科の先生方が何度か治療に関するガイドラインを策定されてきました。一番新しいのは、私どもの理解では2020年の版がありますが、そちらの版には幾つかの試験的な治療については解説がありますが、何か明確にデータが出て、このように治療しましょうというような話にはなっていません。それから念のため申し上げれば、早期の発見と早い時期のシグナルが出た時点での治療薬の休止というものが、ガイドラインには記載されております。以上です。
○森部会長 石川委員から御発言があります。お願いします。
○石川委員 今御説明くださったように、PMLはやはりなかなか難しい、治りにくい病気で、シタラビンなどを使われることがあると思います。それがJCウイルスの旺盛を阻害するような薬ですが、やはり早期発見。現在は多発性硬化症などの免疫抑制剤を使っている方に起きやすいことがよく分かっていますので、そういう方は定期的にフォローアップして少しでも早く見つけて、薬剤が関与しているものはそれをストップすることが多く、あとはシタラビンなどを使うことになっていると思います。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。石川先生、ちょっと質問させてください。先ほどの臨床試験での使用期間に関しては、記載をしたほうがよいでしょうか、いかがでしょうか。
○石川委員 私も是非書いたほうが、臨床の現場では参考になると思いますので、例えばどれぐらいの期間を投与して、累積してどれぐらいになった場合には、どの程度の頻度でそういう兆候が見られたという情報があったほうが、断然いいと感じます。
○森部会長 機構の方、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 今、石川委員より御指摘いただいた、書いたほうがいいというのは、臨床成績の項での情報提供という形なのか、もっと上の項で書いたほうがいいという御指摘なのか、どちらでしょうか。
○石川委員 直接それを見てみないと分からないのですが、森先生の御質問が、私の理解では、そういう情報がないとなかなか現場で安心して使えないとか、使う目安が得られないという御意見だったのではないかと理解いたしました。そういう意味では、累積投与量がどのぐらいになったときに危険になるという確かな情報があれば、それを出していただくのがいいとお答えした次第です。理解が間違っていたら申し訳ございません。
○医薬品医療機器総合機構 石川先生、ありがとうございました。先生御承知のように、類薬ははっきり申し上げればタイサブリですが、ナタリズマブを含めて、PMLの発現状況についてしっかりとしたデータが海外でありますので、これは先生方がお作りいただいた2020年版のPMLに関するガイドラインにおいても、このぐらいの頻度でこういうものが出てきているという数字が明確に書かれています。それは発症率においても、あるいは人年においても記載があります。残念ながらこの品目については、そういった濃厚なデータがなく、これまでには発症していないという状況ですので、あくまでも類薬の情報を基にしてこのような注意喚起が必要であろうというのが現在、7.2項の用法・用量に関連する注意に記載の案として提示しているものです。以上です。
○森部会長 どうもありがとうございました。
○石川委員 ありがとうございました。理解いたしました。
○森部会長 今回の臨床試験の中では、このカログラを使用した症例でPMLを発症した患者さんはおられなかったので、その詳細について確認することは現時点では困難ではありますが、潜在的なリスクが知られていることと、ナタリズマブが承認されている状況と今回のカログラ錠は少し状況が違って、慢性的に長期に治療なされる潰瘍性大腸炎の患者さんの症状悪化時のレスキューに使われるという位置付けになっています。患者さんによっては、やはり繰り返し繰り返し使用されるということが十分見込まれている状況ではあります。
 その中で消化器内科の先生が御使用なさる中で、PMLという疾患に対しては皆さんほとんど知識がない中でこの薬剤を使われますし、患者さんにもPMLという疾患のリスクはほとんど知られていないので、やはりここはきちんと注意喚起をした上で使用するように位置付けておくことが重要ではないかと考えている次第です。
○医薬品医療機器総合機構 機構から少し補足をいたします。潰瘍性大腸炎を含めて炎症性腸疾患の領域では、これまでも幾つかPMLのリスクに関して注意喚起している品目はあり、実際にこのIBDに関する効能、それから別の同じ品目に関しての他効能でのPMLが出ているものもあれば、出ていないものもありますが、それぞれの得られている段階の情報において必要な情報提供をしております。炎症性腸疾患の専門の先生方については、過去何年かにわたりPMLに関する情報はよく届いているのではないかということを私どもは認識もしていますし、今後もそういう情報提供は企業、あるいは学会の先生方で行われていると理解をしております。以上です。
○森部会長 機構の方に一つお伺いします。これまでPMLのリスクがあると知られている既存の潰瘍性大腸炎の薬剤の位置付けで、5-ASAが治療効果不十分な患者さんの段階で使われる薬剤というのは、多数ありますか。
○医薬品医療機器総合機構 多数ではありませんが、例えばエンタイビオが該当するのではないかと考えられます。
○森部会長 では、委員の先生方にお伺いします。機構からの御提案のように、臨床成績の項目17にその内容を追記することか、若しくは7番の用法・用量に関連する注意事項に記載するか、どちらがよろしいでしょうか。御意見がありましたらお願いします。石川先生、御意見いかがでしょうか。
○石川委員 どちらでもいいように思います。先生の御質問に答えられないのですが、今の機構の御説明では消化器内科の先生方もよく御存じだということで安心したのですが、やはり慎重にどちらかに書いていただくと。用量の所の方がよりいいのかなとは思いますが、どちらでも書かれていればいいのではないかと思いました。
○森部会長 はい、分かりました。ありがとうございました。
○宮川委員 日本医師会の宮川ですが、よろしいでしょうか。
○森部会長 お願いします。
○宮川委員 石川先生のおっしゃるように、やはり7の項目に書いたほうが親切ではあろうと私も思います。しかしながら、機構が7では嫌だというのであればそれは仕方ないかもしれませんが、実臨床の中では7の方がいいのかなと推察します。どうしてもそれは今までの慣例の中で臨床成績の方に収めるのが妥当であると機構が判断するのであれば、その責任でそこにされるのが一番よろしいのかなと思っております。
○森部会長 機構の御意見はいかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 コメントありがとうございます。御指摘を踏まえ、どのような記載とするかを検討させていただきたいと思います。
○森部会長 どうありがとうございました。では、御検討いただければと思います。そのほかの先生方から御意見、御発言はありますか。では、議決に入ります。なお、川上委員、長谷川委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議はありませんので、承認を可とし薬事分科会に報告いたします。では、ロビーで待機されています平石委員をお呼びいただきたいと思います。お願いします。平石委員、御入室ください。
── 平石委員 入室 ──
○森部会長 続いて議題7について、機構から概要説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 議題7、資料No.7、医薬品ゼンフォザイム点滴静注用20mgの製造販売承認の可否等について、機構より説明いたします。本剤は遺伝子組換えヒト酸性スフィンゴミエリナーゼであるオリプダーゼアルファ(遺伝子組換え)を有効成分とする酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(以下「ASMD」)に対する静脈内投与用製剤です。
 常染色体劣性遺伝性疾患であるASMDは、従前はニーマン・ピック病A型及びB型とも呼称されています。本疾患はリソソーム加水分解酵素である酸性スフィンゴミエリナーゼをコードするSMPD1遺伝子の変異により、その酵素活性が低下し、脾臓、肝臓、肺などのリソソーム内にスフィンゴミエリンが蓄積する疾患であり、スフィンゴミエリンの蓄積により浸潤性の肺疾患、肝臓及び脾臓の腫大、成長遅延などを呈します。現在、本邦におけるASMDに対する治療薬は承認されていません。海外では20○○年○月に欧州、同年○月に米国で本剤の承認申請が行われ、現在審査中であり、2021年12月現在、本剤はいずれの国及び地域においても承認されていません。
 本邦におけるASMDの患者数は、2018年度に実施された全国疫学調査によると3例と報告されており、本薬は希少疾病用医薬品に指定されています。また本品目は、先駆け審査指定制度の対象に指定されています。本品目の専門協議では、資料No.22に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。
 本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明いたします。まず有効性について、審査報告書38ページの表37を御覧ください。成人ASMD患者を対象としたプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されました。その結果、一酸化炭素肺拡散能の予測正常値に対する割合(以下「予測%DLco」)及び脾容積の、ベースラインから投与52週時までの変化率について、いずれもプラセボ群に対する優越性が示されました。続いて、審査報告書41ページの表43を御覧ください。小児ASMD患者を対象とした非盲検非対照試験が実施されました。その結果、脾容積、予測%DLcoや身長Zスコア等について、ベースライン時に比較して改善する傾向が認められています。
 続いて安全性について、審査報告書39ページの表41を御覧ください。成人ASMD患者を対象とした臨床試験における有害事象の発現状況を示しています。各事象の発現割合について、注入関連反応等については、本剤群でプラセボ群に比較して発現割合が高い傾向が認められましたが、安全性の懸念により本剤の投与が中止された症例は認められませんでした。小児ASMD患者を対象とした臨床試験における有害事象の発現状況については、審査報告書41ページの表44を御覧ください。発現した有害事象の種類は成人患者とおおむね同様でした。
 続いて審査報告書47ページの7.R.2.2、スフィンゴミエリンの異化代謝産物による影響の項を御覧ください。非臨床試験においては、蓄積したスフィンゴミエリンの急激な代謝に伴い、炎症誘発性異化代謝産物であるセラミドの増大が認められ、それに起因すると考えられる心拍数及び血圧の低下、炎症誘発性サイトカインの増加や死亡した個体も認められました。
 以上を踏まえ、臨床試験においては低用量からの用量漸増法が用いられ、その結果サイトカインが上昇する傾向は認められておらず、心血管系の影響についても血圧及び心拍数の低下が認められた症例の割合は、プラセボ群と比較して本剤群で同程度でした。また、スフィンゴミエリンの異化代謝産物の上昇に伴って生じる可能性があると考えられるトランスアミナーゼ上昇についても検討した結果、各臨床試験の用量漸増期において、本剤を投与した後にトランスアミナーゼが上昇した症例も一部で認められていますが、いずれも一過性であり、本剤の投与は継続されました。以上の検討の結果、適切な注意喚起がなされることを前提とすれば、本剤の安全性は許容可能と判断しました。
 なお、日本人における投与経験が極めて限られることから、製造販売後は全投与症例を対象に製造販売後調査を実施して、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じる旨の承認条件を付すことが適当と判断しております。以上のとおり、機構での審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。
○森部会長 どうもありがとうございました。では、委員の先生方から御質問、御意見等ありましたらお願いします。よろしいでしょうか。それでは、議決に入ります。なお、川上委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。では、承認を可として、薬事分科会に報告させていただきます。続いて議題8に移ります。準備ができましたら、議題8について機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは議題8、資料No.8、医薬品ジスバルカプセル40mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明します。
 資料No.8の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、全98ページの通し番号で4ページ、1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。遅発性ジスキネジアは、口腔顔面領域、四肢及び体幹の不随意運動を特徴とする神経障害であり、米国精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアル第5版では、神経遮断薬の少なくとも2~3か月以上の使用に関連して発現するアテトーゼ様又は舞踏病様の少なくとも2~3週間持続する不随意運動と定義されています。ドパミン受容体拮抗作用を有する薬剤等の長期投与により、黒質線条体のドパミン受容体の感受性が亢進することで発症すると考えられていますが、発症機序は十分に明らかにされておらず、原因として疑われる薬剤を中止又は変更しても持続することもあります。また、抗精神病薬による治療継続が必要な精神疾患患者において、遅発性ジスキネジアが発現し、処置として原因薬剤を減量又は中止した場合、遅発性ジスキネジアが軽快に至ったとしても、精神症状の増悪や再発につながるリスクが高いとする報告もあります。本邦において、遅発性ジスキネジアに関して承認されている薬剤はありません。
 本剤は、バルベナジントシル酸塩を有効成分とする小胞モノアミントランスポーター2(以下「VMAT2」)阻害剤であり、シナプス前部の小胞に存在するVMAT2を選択的に阻害して、モノアミンの取り込みを抑制することで遅発性ジスキネジア患者における不随意運動を改善することが期待されています。
 今般、遅発性ジスキネジアに対する本剤の有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認申請が行われました。海外では米国において、2017年4月に遅発性ジスキネジアに係る効能・効果で承認されています。本申請の専門委員として、資料No.22に記載されている10名の委員を指名しています。
 審査の内容について、臨床試験成績を中心に説明いたします。まず有効性について、審査報告書の通し番号で54ページの表48を御覧ください。遅発性ジスキネジアを有する統合失調症、統合失調感情障害、双極性障害又は抑うつ障害の患者を対象とした国内第II/III相試験(以下「国内J02試験」)において、主要評価項目であるITT解析対象集団における治験薬投与6週後の中央評価による異常不随意運動評価尺度(以下「AIMS」)の合計スコアのベースラインからの変化量について、本剤40mg群及び本剤80mg群とプラセボ群との間に統計学的な有意差が認められました。
 次に安全性について、審査報告書の通し番号62ページから始まる7.R.3、安全性についての項を御覧ください。国内J02試験では、本剤投与期間に7例、後観察期に1例の死亡が認められたことから、死亡例について詳細に確認しました。審査報告書の通し番号で64ページの「機構は」から始まる段落において、死亡例について詳細に確認をしたところ、死亡例において本剤の用量及び投与期間に明確な傾向は認められず、合併症・既往歴との関連及び併用薬との関連について、死亡との関連が示唆される特定の要因は認められておらず、未変化体及び活性代謝物の曝露量が高い傾向も認められませんでした。また、国内J02試験で認められた死亡例の割合は、遅発性ジスキネジア患者における死亡割合と比較すると明らかに高いとは言えないと考えました。
 また、審査報告書通し番号の92ページの1.3.2、QT/QTc間隔延長作用の注意喚起についてを御覧ください。本剤のQT/QTc間隔に及ぼす影響を検討した臨床薬理試験である海外1401試験において、本剤160mg投与時にQTc間隔の延長が認められており、薬物濃度QT解析において未変化体については濃度依存的なQTc間隔の延長は認められなかった一方、活性代謝物であるNBI-98782の血漿中濃度依存的なQTc間隔の延長が認められたことから、活性代謝物の曝露量上昇の要因のある患者ではQT間隔延長のリスクが増加することが考えられました。また、遅発性ジスキネジアは抗精神病薬投与後に生じる病態であり、抗精神病薬はQT延長作用を有するものが多いことから、活性代謝物の曝露量上昇の要因のある患者、QT延長を起こしやすい患者、QT延長を起こすことが知られている薬剤を投与中の患者について、定期的に心電図検査を行う等の注意喚起を行うことが適切であると判断しました。
 今般提出された臨床試験成績、本剤の作用機序等に基づき、個別の有害事象について検討した結果、本剤投与に当たっては特にうつ病及び自殺、鎮静及び傾眠、錐体外路症状、QT延長等について注意する必要があるものの、適切な注意喚起の下で副作用を注意深く観察しながら本剤を投与するのであれば、本剤の安全性は許容可能と判断しました。
 次に用法・用量について、戻って恐縮ですが、審査報告書の通し番号90ページの1.3.1、用法・用量の設定及び曝露量上昇の要因を有する患者に対する用法・用量についてを御覧ください。国内J02試験では、本剤40mg群と比較して本剤80mg群で中央評価によるAIMS合計スコアが改善する傾向が認められる一方、本剤40mg群と比較して本剤80mg群で投与中止に至った有害事象及び減量に至った有害事象の発現割合が高く、本剤40mg投与時と比較して本剤80mg投与時の忍容性は低いと考えられることから、本剤を増量する際には本剤40mgを1週間以上投与し、忍容性を確認した上で患者の状態に応じて慎重に行う必要があると考えました。また、本剤の曝露量が上昇する要因のある患者においては、本剤40mgを投与することとし、80mgへの増量は行わない旨の注意喚起を行った上で、用量調節が必要な患者及び併用時に注意が必要な薬剤については、添付文書及び医療従事者向け資材において注意喚起及び情報提供を行うことが適切であると判断しました。なお、現時点では、国内市販予定製剤は40mgの規格のみであり、曝露量が上昇する要因のある患者に対して40mgの忍容性が認められない場合には減量ができないことから、今後、これらの患者に対して20mg製剤による投与が可能となるようにするため、現在開発中の20mg製剤の開発を継続し、早期に承認申請できるようにすることが適切であると判断しました。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本剤は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年間、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しています。薬事分科会には報告を予定しています。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 どうもありがとうございました。では、委員の先生方から御質問、御意見等がありましたらお願いいたします。
○堀委員 度々申し訳ありません。堀です。私からは製剤の性状についてお尋ねします。このジスキネジアの症状の患者さんからすると、このカプセルは長径が19.4で短径が6.9と書かれてありますが、少し大きいのではないかと思いました。また、カプセルなので口の中が渇いていたりすると、カプセルが口の中に付いてしまってかなり飲みにくいのではないかと思いますが、この飲みやすさというものはいかがでしょうか。教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきましてありがとうございます。現時点で臨床試験の中で特段飲みやすさの観点で製剤の投与が困難といったような報告等がなされたというようなことは特にありませんでしたので、現時点ではそのような懸念は特段明らかにはなっていないと考えています。
○堀委員 ありがとうございます。この薬に関しては、患者さん向けの資材というものはお作りになるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。本剤では、患者向け資材を作成する予定としています。
○堀委員 ありがとうございます。この患者さんの中には精神的に不安定な患者さんもいらっしゃるかと思うので、これを服用するときはやはり周りにいらっしゃる御家族の方や介護の方が服用の際のお手伝いをするかと思います。ですので、この症状が例えば口をもぐもぐしたり、なかなか投与しづらいような状態だった場合、何か留意点のようなものなども記載していただく御予定はあるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきましてありがとうございます。本剤の患者向け資材については、患者さん及び御家族の方へという形で資材を作成させていただく予定になっておりまして、本剤の投与に当たっては必ず医師の指示に従って、医師と相談しながら服用するようにということについても、資材の中で記載させていただく予定にしています。
○堀委員 ありがとうございます。そうすると患者の症状に応じて、主治医から指示があるということなのですね、それに伴いまして添付文書の7.4の用法及び用量の所で、空腹時に本剤を投与した場合は血中濃度が上昇するおそれがあるため、食後にというようなことが書いてありましたが、これも要するに患者さんの状況に応じて主治医から空腹時なのか、それとも食後なのかということは指示があると判断してよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきましてありがとうございます。御質問いただきました添付文書の7.4項の内容についても、資材の中で記載し、患者さん向けに情報提供させていただく予定です。
○堀委員 そうすると、食後の方がいいということではないということで、患者さんに応じて主治医と相談という内容が書かれていると判断してよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。ご理解のとおりです。
○堀委員 分かりました。ありがとうございます。介護する者にとって、服用させる時になかなか薬を飲ませることが非常に難しいのではないかなと思いましたので、是非、その部分が懇切丁寧に書いていただけると有り難いです。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。1点、確認ですが、これはカプセルの中身を出して服用することはいけないのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきありがとうございます。基本的には、そのような服用はされないと考えています。特にそのカプセル剤の中身を出した安定性なども確認されていませんので、そのような服用の仕方は想定しておりません。
○森部会長 遅発性ジスキネジアの方では、通常、薬剤の内服は余り支障はないのでしょうか。これは神経内科の先生に少しお伺いしたいのですが、いかがでしょうか。
○石川委員 遅発性ジスキネジアは、この書類にも書かれていますが、私どもパーキンソン病の患者さんなどで実は出てくることもあって、以前はよく見ていました。最近は少なくなっているという実感を持っていますが、それで併用薬剤に関してはパーキンソニズムを悪化させたりすることがあるので、この書類にも書いてありますが、こういった薬を使ったときに余計パーキンソニズムが悪化するなど、あるいは統合失調症の患者さんにパーキンソニズムがより強く出てくるなど、そういった注意が必要になってくるのではないかと想像します。以上です。
○森部会長 どうもありがとうございました。
○代田委員 代田ですが、よろしいでしょうか。安全性について、ちょっとお伺いします。もう御説明いただいたかもしれませんが、やはり日本の死亡例は、その後倒れているのを発見されたという表現や虚血性心疾患など、突然死等を疑われるケースが多いように思います。この安全性については、海外ではQT延長と突然死辺りに関して、十分な安全性が確認できているデータがあるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきましてありがとうございます。御説明させていただいた審査報告書の通し番号64ページで、死亡例を詳細に確認した結果を記載しています。死亡例について今回詳細に機構でも確認しましたが、死亡に至った症例と本剤との関連性について、明確な傾向は認められていなかったこと、死亡までの期間についても特段本剤の投与期間に明確な傾向は認められていないという状況でした。
 また、海外データの御質問について、海外臨床試験として既に第III相試験等が行われていまして、その中で死亡例でQT延長が問題になっているといったことは、特にない状況です。また、審査報告書の通し番号66ページの表58を御覧いただければと思いますが、今回、国内臨床試験と海外臨床試験において患者背景の背景因子の比較も行いましたが、国内外の臨床試験の中で背景因子に特段の差異は認められていなかったという状況です。以上、確認されている状況についての説明になります。
○代田委員 ありがとうございます。海外の死亡例もプラセボ1例、本剤8例と書いてあって、サンプルサイズがそんなに大きくないので余り差にはならないかもしれませんが、少しQT延長も含めて気になるデータかなと思ってお伺いしました。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。次に赤羽委員から御質問いただきます。
○赤羽委員 今の御質問とも関係あるのですが、安全性に関して、活性代謝物の血中濃度が高くなりやすいとき、特にQT延長などがリスクとしてあるということで、この審査報告書にはそういった患者さんの場合には80mgの増量は行わないようにしたほうがよいというようなことが説明されていました。添付文書の方でそのようなことがきちんと伝わるように、少しそこが弱いのかなと思ったのですが、もしかして私が見落としていますか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきましてありがとうございます。添付文書がお手元にありましたら御覧いただければと思いますが、最初の1ページ目の8.3項の重要な基本的注意において、活性代謝物の血中濃度が上昇した際にQT延長が現れるおそれがあるということで、心電図検査等の記載もしています。
○赤羽委員 なぜそれをお尋ねしたかと言いますと、臨床試験の成績などは40mgと80mgで比較をしていて、80mgの方が有効性が強かった結果もあり、余りそういうリスクがある場合には80mgという選択はしないことというような強い言い方はされていないので、そこをもう少し強く説明したほうがよいのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。先ほど説明が不足していまして、失礼しました。8.3項でQT延長を記載していることに加えまして、7.2項の用法及び用量に関連する注意で、QT延長が懸念される患者の注意として、本剤40mgを投与して増量を行わないことという注意もしていますので、7.2項の患者に対しては増量がなされない注意喚起としています。
○赤羽委員 ありがとうございます。すみません、見落としていたかもしれませんが、何かもう少し強く言ってもいいのかなと思いました。
○森部会長 確認してよろしいでしょうか。今の機構からの御発言で、7.2と8.3の点ですが、ここでQT延長を起こしやすい患者(著明な徐脈等々)の所は、これは8.3にはありますが、7.2にはないように思います。これはどういった背景でしょうか。ここは7.3ですか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきましてありがとうございます。7.2項で記載している患者は、曝露量上昇が想定される患者に対して、QT延長に限らず副作用のおそれがあるため、このような患者では増量を行わないことというように注意喚起をしています。
○森部会長 でしたら、8.3に書かれているQT延長を起こしやすい患者さんというのは、心電図のモニタリングはしたほうがよいが、80mgは使っても特に支障はないという位置付けでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 基本的に7.2項に記載している患者に対しては、増量を行わずに心電図検査も行っていただくような注意喚起になっています。
○森部会長 分かりました。この点は委員の先生方から御発言は何かありませんか。
○代田委員 代田ですが、80にするとQT延長のリスクがない人たちのリスクがかなり上がるというデータがもうあるのであれば、7.2にもそういう記載があってもいいかなと思いました。以上です。
○森部会長 ありがとうございます。機構の方、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。8.3項を相互参照していますが、頂いた御意見を踏まえまして、7.2項で、以下の患者では活性代謝物の血中濃度が上昇し、QT延長等の副作用を発現するおそれがあるため本剤40mgを1日1回投与とし、増量を行わないことというように記載を修正させていただくことでいかがでしょうか。
○森部会長 それはよいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。
○森部会長 もう1点教えてください。20mg製剤の開発状況は、今、どうなっているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。現在、申請者が開発中ですが、ただ、海外で20mg製剤がないということもありまして、開発に時間を要しています。治験相談時から、20mg製剤の低含量製剤の開発を行うように申請者に伝達しており、現時点では、○○○○○に承認申請を予定しているということが申請者より説明されています。
○森部会長 これまで活性代謝産物の血中濃度がどういった方で上がりやすいかというリスク分析をされている中で、40mgを服用している状況でも活性代謝物の血中濃度がQT延長を起こし得るレベルまで上昇し得る集団がいるということでしょうか。専門協議の中でもそういった御指摘があった箇所があると思いますが。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきありがとうございます。40mgを投与してもQT延長を起こすような患者さんはいらっしゃるということもありますので、海外の添付文書では、特に心電図の定期的なモニタリングまでの注意喚起は行われていないのですが、本邦においては少し慎重にしていただきたいということもありまして、8.3項で曝露量の上昇する患者を保守的に検討いたしまして、定期的に心電図検査を行うようにする注意喚起をしています。
○森部会長 それでしたら20mg製剤も準備されてから上市したほうがよいと思いますが、どうでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 審査報告書の臨床的位置付けの項に記載していますが、米国では本剤とデューテトラベナジンという薬剤が使用可能になっていまして、欧州ではテトラベナジンという薬剤が使用可能になっています。本邦では、この遅発性ジスキネジアに対して承認されている薬剤がないというような状況です。審査報告書の通し番号87ページに専門委員の先生の御意見を記載しており、遅発性ジスキネジアはから始まるポツの一番最後の行の辺りになりますが、遅発性ジスキネジアを発現した患者さんではこれまで適切な治療方法がほとんどなく、日常生活に支障を来していることも少なくないということで、本剤は高い臨床的意義があるというような御意見を頂いています。
 臨床試験の安全性についても慎重に確認いたしましたが、曝露量の上昇に伴い発現が増加するような事象としては、先ほどのQT延長に加えて、傾眠関連、パーキンソニズム関連、またアカシジア関連の有害事象になりますが、これらの事象については患者自身が自覚できる症状であり、添付文書の重大な副作用の項でも注意喚起しています。また、患者向け資材の方でも、十分分かりやすく説明するような形で対応しています。
 このように高い臨床的意義があり、本邦では遅発性ジスキネジアに対しての承認薬剤がないというような状況を鑑みますと、本剤を医療現場に提供する意義はあると考えています。また、先ほどお伝えいたしましたが、定期的な心電図検査や副作用を十分モニタリングしながら使用することで40mgを投与したとしても、慎重に投与していけば、本剤については安全性上許容可能と考えています。なお、米国での推奨用量は80mgのみとなっていまして、本邦では、国内臨床試験において40mgと80mgの両方が検証され、有効性、安全性が確認されているということもあり、推奨用量は40mgと80mgとしています。また、曝露量が上昇する患者については、40mgのみとしていただくというようにしています。
○森部会長 石川委員から御発言がありますので、お願いいたします。
○石川委員 私も遅発性ジスキネジアに対する薬剤が開発されることはとても重要だと機構がおっしゃるのはよく理解できるのですが、一方でほかの先生方がおっしゃっているように、突然亡くなるということは非常に大きい問題だと思いまして、ちょっとお尋ねします。65ページで、80mg投与していた方が上室性期外収縮が認められたが異常なく、その後、突然死したというような記載があると思います。質問は、こういう方々も心電図のチェックがなされていたのではないかということで、機構がおっしゃるような心電図のチェックだけで十分なのかどうかということは、ちょっと疑問に思うのですが、その点はいかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 すみません、質問の意図を確認させていただきたいのですが、臨床試験の中で心電図モニタリングをしていて、突然死なりの症例も一部見受けられる中で、安全性上問題ないのかということでしょうか。
○石川委員 そのとおりです。すみません、分かりにくくて。
○医薬品医療機器総合機構 とんでもないです。先ほど述べましたとおり、今回、死亡例が少し見受けられたので詳細に確認いたしましたが、何らかの本剤との因果関係が疑われるようなものは見受けられないと判断しています。
 また、今回の背景となる患者は統合失調症や双極性障害の患者になるのですが、それらの患者における長期投与試験の死亡の症例の割合と比べて、一概には臨床試験の対象が違うので比較できないのですが、本剤で特段すごく高くなっているというわけではないというような状況になります。
 また、先ほどお伝えいたしましたとおり、遅発性ジスキネジアの死亡率の割合と比較しても明らかに高いわけではないということからも、本剤については添付文書で注意喚起している内容で慎重に投与していただければ、本剤を医療現場に届ける意義があるのではないかと考えています。
○森部会長 石川委員、どうぞ。
○石川委員 循環器の御専門の代田先生にお伺いしたいのですが、この定期的な心電図のチェックというようなことで、QT延長を十分予見できるのかどうかということも含めて、これで十分なのかなというのはちょっと疑問に思うのです。今の機構がおっしゃったような頻度という意味では、そんなに突出していないから異常がないということになるのかもしれないのですが、致死的な疾患ではないものですから、と私は遅発性ジスキネジアについて考えるのです。それに対する治療薬を飲んでいることが、そういう致命的なことになるということは非常に重大だと思うので、慎重に考えまして、あえて質問させていただく次第なのですが、いかがでしょうか。
○代田委員 代田ですが、それで先ほどお伺いしたのは、やはり今の死亡例と、それから突然死が多いので、結局QT延長との因果関係がなかなか証明しにくいケースばかりではないかなと思います。それで海外では、その心電図のモニタリングというものとイベントという関係がある程度確認されていたかどうかということは、データがないという理解でよろしいのですか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。本剤はQT/QTc間隔に対しての作用を確認する試験というものが行われていまして、160mg投与において信頼区間上限が10msecを越えるというような結果になっています。試験結果については、審査報告書の通し番号39ページの表36に記載しています。
○森部会長 では、続いて松野委員から御発言いただきます。お待たせしました。お願いいたします。
○松野委員 日本歯科大学の松野と申します。我々歯科の領域では、顎顔面領域のジスキネジアは非常に治療に苦慮しているというか、治療法がない段階で、今回の遅発性ジスキネジアに対する薬には非常に期待しているところです。ただし、今、お話にあったように非常に問題視されるような副作用があるということで、慎重投与が必要かとは思いますが、61ページの表55の臨床試験の結果を見ますと、やはり上肢や下肢等に比べて顎など、そういった所の改善率、特に不随意運動をする顎で、ここが入れ歯が落ちてしまったり、あるいは上肢もほぼそうなのですが、ブラッシングができなかったりということで、こういった所の改善に関しての有効性というのは、歯科においては非常に有り難い話だと思います。ですので、先ほどの慎重なモニタリングの上で40mgから始めるというようなスタンスで、私はよろしいのかなと思っています。追加という形で発言いたしました。
○森部会長 ありがとうございました。
○代田委員 代田ですが、先ほどのQT延長の表を拝見しましたが、症例数が少ないので、どういうタイプの人がここに入っているかによって、あるいはいろいろなお薬が入っていることによって、たまたまQTが延長する人が中に出てくるというリスクが、どうしても避けられないのだろうなと思います。ですから、そこのリスクはどうやって避けるかというと、内服されて何時間のところで心電図を取るなど、そういうことにもなっていくわけで、この部分はかなり慎重にリスクとベネフィットを考えながら投与していくということぐらいしか、今のところはこのデータからは言えないのではないかとは思います。ただ、今後もしそういうリスクが高いということであれば、再検討の必要もあるかなと思いますが。
○森部会長 御意見どうもありがとうございます。
○医薬品医療機器総合機構 少し説明を補足させてください。このQT/QTc間隔に及ぼす影響の試験ですが、ICHE14ガイドラインにおいて、一般的には健康成人を対象に、モキシフロキサシンという陽性対照を置いて、本剤の臨床用量でQT延長作用があるのか、それとも臨床用量より高曝露量になる、曝露量の上昇の要因のある患者さんの曝露量を考慮したときにQT延長作用があるのかということを評価するような試験になっていまして、本剤160mgの投与でのQT延長の程度が信頼区間上限値で10msec程度ということになります。世の中に出ている既存の薬剤においても、このICHE14ガイドラインに基づく試験は実施されていますが、臨床用量でQT延長作用を有するものに対しては、全ての患者で心電図モニタリング、曝露量が上昇する患者でQT延長が起きるものに対しては当該患者で心電図モニタリングを行うというような注意喚起になっています。本剤についても、曝露量上昇の要因のある患者やQT延長を起こしやすい患者で、心電図モニタリングをするというような、ほかの薬剤と同様の対応をしているということを少し補足いたします。
○代田委員 ありがとうございます。確かにそういうスタンダードがあって、それをクリアすればよろしいということかもしれませんが、実際のデータを見ると若干まだ不安が残るというところはあるかと思って、注意喚起を十分にすることは今されているように必要だという認識です。以上です。
○森部会長 先生、ありがとうございました。機構の方に繰り返し伺ってすみません。40mgの基本量を服用することが、それでも代謝産物の血中濃度が危険な濃度に達する可能性がある集団というのは、CYP2D6のプアーメタボライザーの方が強い又は中程度のCYP3A阻害薬を服用した場合は該当するのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。御質問いただきました箇所は、用法及び用量に関連する注意の7.3項の患者と考えています。御説明いただきましたとおり、遺伝的にCYP2D6の活性が欠損していて、中程度以上のCYP3A阻害剤を使用する患者というのは、曝露量が上昇するおそれがあります。そのため、このような患者については本剤との併用は可能な限り避けるというような形で記載しています。
○森部会長 ここはもう少し強く表記すると、どういったことがあり得るのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 「本剤との併用は避けること」というような形になるかと思います。
○森部会長 現状では、そのほうがよいですか。20mg製剤が上市されればもう少し対応は変わると思いますが、現状40mgしか上市されないという状況では、一定の制約を掛けておくことは重要だと思いますが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 少し確認させてください。この避けることとさせていただいたところは、例えば中程度以上のCYP2D6阻害剤と中程度以上のCYP3A阻害剤を使用する患者、あとは遺伝的にCYP2D6活性が欠損していて中程度以上のCYP3A阻害剤を使用する患者に対して、本剤を慎重に投与してみれば、投与できるかもしれないという場合になります。今の注意喚起は、なるべく避けていただきたいのですが、その薬剤がかなり治療として必要で、どうしても避けられない場合に、まずモニタリングして問題がなければ、その40mgを使っていただくという機会を残しておいたほうがよいかと思いまして、7.3項の注意喚起としています。御意見としては20mg製剤が出るまでの間は、本剤との併用は避けることという注意喚起にして、その後ろの「やむを得ず併用する場合は」という箇所を除いたほうがよいのではないかというような御指摘と捉えればよろしいでしょうか。すみません、少し意図を確認させていただければと思います。
○森部会長 これは患者さんがCYP2D6の活性が、全員調べられているのであれば問題はないのですが、実際使用なされる患者さんではCYP2D6の活性は測定されるのでしょうか。実臨床ではされますか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。本剤の投与前に分かっている場合は、添付文書の記載のように対応していただきたいと思っていますが、本剤の投与前に必ず測定するというわけではありません。
○森部会長 そうしますと、それが分かっていない患者さんが、中程度以上のCYP3A阻害剤を服用することはあり得るということですか。
○医薬品医療機器総合機構 重要な基本的注意の8.3項の心電図検査を行うという所で、中程度以上のCYP3A阻害剤の併用の患者も記載させていただいていますので、まずどのような併用薬を服用しているかを患者さんが医師にお伝えし、医療従事者向け資材ではCYP3A阻害剤の薬剤としてどのようなものがあるのかなどを情報提供するようにしていますので、注意を要する患者であるのかどうかが分かるようにしています。
○森部会長 やはり避けることとしておくことが、現状ではよいと考えますが、委員の先生方、御意見いかがでしょうか。
○宮川委員 日本医師会の宮川ですが、よろしいでしょうか。今の部会長のおっしゃったことは非常に建設的だと思われますが、いろいろな理由を今機構は考えられておるとは思います。そのようなことをしていくと、審議としては、この薬は20mgが出るまで駄目になってしまうというおそれの方が強くなるのではないかなと、実臨床の中では懸念されてしまうので、やはりしっかりと書き込みをされて、実臨床の中で安全に使うところから始めていくのも一つの手ではないかなと私は考えますが、ほかの委員の方の御意見も待ちたいと思います。
○代田委員 代田ですが、具体的にどういう形で直されるかということを、ちょっと提案していただくと判断しやすいかと思うので、今の記載以上に入れ込むとすれば、どこを変えられるのかということを御提案いただければといいかと思います。
○医薬品医療機器総合機構 恐らく委員の先生方は7.3項を御覧いただいていて、7.3項の5行目の後半になりますが、「本剤との併用は可能な限り避けることが望ましい」という部分を、「本剤との併用は避けること」ということにするというのを、部会長から代案として頂いたと機構としては理解しています。委員の先生方が、20mg製剤が出るまではこのような対応が適切ということであれば、そのように対応させいただければと思いますが、いかがでしょうか。
○森部会長 委員の先生方、いかがでしょうか。御意見はありませんか。特に御異論はありませんか。今の現行案の方がよろしいでしょうか。代田委員、お願いいたします。
○代田委員 一応このデータでは、今のように踏み込んだ形の表現を頂ければ、40mgでいけるのではないかと私は判断します。以上です。
○森部会長 御発言ありがとうございました。では、機構から御提案がありました修正案ということで、修正いただくようにさせていただきたいと思っています。そのほか先生方から御意見はありませんか。
○合田部会長代理 合田ですが、非常につまらないところで1点だけ、よろしいですか。
○森部会長 お願いいたします。
○合田部会長代理 資料8の1枚目の日本語名と英名が正しくないのです。小さい所ですが、英名のisoquinolin-2ylの間にハイフンがありません。それと、その次のL-valinateのLがイタリックになっています。これはイタリックにしたらおかしいですね。それから、その上の日本名の2イルの間に同じようにハイフンが入っていません。それから、その次の所のビスの後の4-メチルの間に、今度は英名にハイフンが入っていないのです。こういう細かい所は、少なくとも1枚目だから直したほうがよいかなとは思いました。目立ちますので、気になり指摘いたしました。よろしくお願いします。
○森部会長 貴重な御指摘どうもありがとうございました。修正いただくようにお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 修正させていただきます。
○森部会長 そのほか先生方から、この薬剤について御意見はありませんか。よろしいでしょうか。
 では、議決に入らせていただきたいと思います。なお、長谷川委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づいて、議決への参加を御遠慮いただくことになっております。本議題について、承認を可としてよろしいですか。では、御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 では続いて、議題9に移ります。大変長時間の委員会となっています。先生方の御健康を考え、僅かですが小休止させていただいてよろしいでしょうか。
(休憩)
○事務局 事務局です。再開させていただければと思います。審議が大変長時間にわたり、申し訳ございません。既に時間も大分超過しておりますので、本日御審議いただく内容ですが、審議事項の議題13までは御審議いただければと思っております。その後の御報告事項については、次回の部会に回させていただくというやり方をさせていただければと思っています。ただ、その他事項の公知申請の件については、本日中に是非御確認いただければと思っておりますので、それらについて、この後お願いできればと思っております。また、時間も少なくなっていますので、機構からの説明についても少し早めにというか、簡略的に行っていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○森部会長 では、審議事項9に移らせていただきます。議題9について、機構より概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題9、資料No.9、医薬品タリージェ錠2.5mg他の製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明いたします。資料No.9の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、全47ページの通し番号で3ページ、1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。神経障害性疼痛は、体性感覚神経系の病変や疾患によって引き起こされる疼痛と定義され、原因となる神経の損傷部位の解剖学的な位置により、末梢性神経障害性疼痛及び中枢性神経障害性疼痛に大別されております。末梢性神経障害性疼痛に含まれる代表的な疾患として、糖尿病性末梢神経障害性疼痛や帯状疱疹後神経痛が、中枢性神経障害性疼痛に含まれる代表的な疾患として、脊髄損傷後神経痛や脳卒中後疼痛、パーキンソン病による中枢性神経障害性疼痛があります。
 本剤は、ミロガバリンベシル酸塩を有効成分とする電位依存性カルシウムチャネルのα2δサブユニットに対するリガンドであり、本邦では2019年1月に、末梢性神経障害性疼痛の効能・効果で承認されております。今般、中枢性神経障害性疼痛に対する本剤の有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。海外での状況について、2021年4月現在、末梢性神経障害性疼痛に係る効能・効果で韓国及び台湾で承認されておりますが、中枢性神経障害性疼痛に係る効能・効果で承認されている国又は地域はありません。本申請の専門委員として、資料No.22に記載されている4名の委員を指名しております。
 本品目の審査の内容について、臨床試験成績を中心に説明いたします。まず有効性について、審査報告書の一番下、全47ページの通し番号で7ページの表2を御覧ください。中枢性神経障害性疼痛の代表的な疾患である脊髄損傷後神経痛患者を対象とした国際共同第III相試験において、主要評価項目であるmITT集団における投与14週時の平均疼痛スコアのベースラインからの変化量について、本剤群とプラセボ群の間に統計学的な有意差が認められました。また、審査報告書の一番下、全47ページの通し番号で14ページの表10の下部、J314試験から始まる段落を御覧ください。投与14週時の主要評価項目である平均疼痛スコアのベースラインからの変化量の部分集団解析において、脊髄損傷の種類が対麻痺の集団では本剤群とプラセボ群との群間差が認められなかったことから、要因を検討いたしました。
 ベースラインの疼痛スコアが高いほど分析感度は高くなるとの文献報告があり、末梢性神経障害性疼痛の代表的な疾患である糖尿病性末梢神経障害性疼痛又は帯状疱疹後神経痛患者を対象とした国際共同第III相試験においても、ベースラインの平均疼痛スコアが6未満の集団では、6以上の集団と比較してプラセボ群との群間差が小さかったことから、要因の一つとしてベースラインの平均疼痛スコアが6未満の患者で有効性が低かったことが影響した可能性が考えられました。
 審査報告書の一番下、全47ページの通し番号で16ページ、表12を御覧ください。対麻痺の集団及び四肢麻痺の集団のいずれにおいても、平均疼痛スコアが6以上の集団ではプラセボ群と比較して有効性が示唆されておりました。脊髄損傷による麻痺の種類により病態メカニズムは異ならないと考えられることを踏まえると、本剤の有効性に対して脊髄損傷により麻痺の種類が臨床的に問題となる影響を及ぼす可能性は低いと考えることから、中枢性神経障害性疼痛の代表的な疾患である脊髄損傷後神経痛に対する本剤の有効性は示されたと判断いたしました。
 次に、安全性について、審査報告書の一番下、全47ページの通し番号で18ページ、表14及び表15を御覧ください。中枢性神経障害性疼痛患者における本剤の安全性プロファイルは、末梢性神経障害性疼痛患者における安全性プロファイルと明らかな差異は認められなかったことから、既承認効能・効果と同様の注意喚起の下で適正に使用されることを前提とすれば、中枢性神経障害性疼痛患者に対する本薬の安全性については、許容可能であると考えました。
 最後に、効能・効果について、審査報告書の一番下、全47ページの通し番号で33ページ、7.R.4の効能・効果についての項を御覧ください。中枢性神経障害性疼痛については、代表的な疾患である脊髄損傷後神経痛患者を対象とした国際共同第III相試験で本剤の有効性が検証され、非盲検長期投与期に新たに組み入れられた脳卒中後疼痛及びパーキンソン病による中枢性神経障害性疼痛患者においても本剤の有効性が示唆されており、安全性について中枢性神経障害性疼痛患者で新たな懸念は認められていませんでした。本剤は、既に末梢性神経障害性疼痛の代表的な疾患である糖尿病性末梢神経障害性疼痛及び帯状疱疹後神経痛に対する臨床試験で有効性及び安全性が確認されています。そのため、国内の神経障害性疼痛治療薬の臨床評価ガイドラインを参考に、本剤の効能・効果を神経障害性疼痛とすることに問題はないと判断いたしました。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本申請は新効能医薬品としての申請であり、既に付与されている再審査期間の残余期間が4年以上であることから、再審査期間は残余期間である令和9年1月7日までと設定することが適切と判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 では、委員の先生方から、御質問、御意見等をお願いいたします。いかがでしょうか。特に御発言はございませんか。ちょっと確認です。19ページの表16の中枢神経系の有害事象における傾眠の頻度なのですが、末梢神経障害の既存の事例ですと、本薬群で傾眠傾向が11%~18%、中枢神経障害性疼痛の本剤群ですと29.8%という比率であることが分かります。もう1点、転倒に関するリスクは、21ページの表18ですが、転倒のリスクもやや多いのではないかという印象でしたけれども、この点はこの方は、御説明はいかがでしたか。転倒がちょっと多いかな、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構より回答いたします。ただいま御指摘いただきましたとおり、通し番号で19ページの表16に示しておりますように、傾眠に関しては、中枢性神経障害性疼痛患者を対象とした臨床試験で発現割合が多い傾向が認められております。ただし、重篤な有害事象等に関しては、中枢性神経障害性疼痛患者で多いという傾向は認められておりませんでした。また、転倒外傷関連の事象については、通し番号21ページ、表18に示しておりますとおり、転倒に関しては中枢性神経障害性疼痛患者で3.3%、末梢性神経障害性疼痛患者で0.4~1.3%でして、転倒関連のリスクに関して大きな差異が認められているとは言えないと考えているところです。
○森部会長 傾眠のリスクについて添付文書で何らかの注意喚起を行うか、若しくは現行の記載で十分とするかということについて、委員の先生方から御意見がございましたらお願いいたします。現行の記載で十分と考えてよろしいでしょうか。何か補足しておくことがありましたらお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 少し補足してもよろしいでしょうか。
○森部会長 どうぞ、お願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 まず、添付文書における注意喚起について、添付文書の重大な副作用の項の11.1.1において傾眠について記載し、転倒し骨折等を起こすおそれがあることについて注意喚起をしております。また、添付文書の17項、臨床成績の項において、各臨床試験における副作用の発現頻度を記載しており、末梢性神経障害性疼痛又は中枢性神経障害性疼痛患者を対象とした臨床試験における傾眠等の発現状況について情報提供しております。
○森部会長 特に委員の先生方から御指摘がなければ、現行の記載でそのままということにしたいと思います。そのほか、委員の方々から御質問、御発言はございますか。では、議決に入らせていただきます。なお、飯島委員、川上委員、佐藤直樹委員、長谷川委員、宮川委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づいて議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。では、本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議はございませんので、承認を可として薬事分科会に報告させていただきます。続いて、議題10に移ります。議題10について、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題10、資料No.10、医薬品バビースモ硝子体内注射液120mg/mLの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。資料No.10の審査報告書を御覧ください。審査報告書の通し番号6/91ページの1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。本剤は、スイスのF.Hoffmann-La Roche社で創製された血管内皮増殖因子(VEGF)及びアンジオポエチン-2に対する二重特異性抗体であり、新生血管を伴う加齢黄斑変性(nAMD)及び糖尿病黄斑浮腫(DME)の病態形成に関与することが報告されているVEGF-Aとアンジオポエチン-2の作用を同時に阻害することで、各疾患に対する治療効果を示すと考えられています。本邦においては、2017年8月から臨床試験が開始され、今般、nAMD及びDMEに対する有効性及び安全性が確認されたとして、本剤の製造販売承認申請がなされました。なお、海外では2022年1月末時点で、米国において同適応にて承認されており、欧州では現在、審査中です。本品目の審査に関して、専門委員として資料No.22に記載されております9名の委員を指名いたしました。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。有効性について、まずnAMD患者を対象とした試験成績を御説明いたします。審査報告書の通し番号43/91ページの7.3、nAMD患者対象第III相試験の項を御覧ください。nAMD患者を対象に、nAMDに対して本邦既承認の眼科用VEGF阻害薬であるアフリベルセプトを対照とした無作為化二重遮蔽並行群間比較試験が同一デザインで2試験実施されました。日本を含む国際共同試験の主要評価項目の結果については、審査報告書の通し番号45/91ページ、表42を御覧ください。ベースラインから40、44及び48週時までの最高矯正視力の変化量の平均値について、本剤群とアフリベルセプト群の群間差の95%信頼区間の下限値は-1.1文字であり、非劣性マージンである-4文字を上回ったことから、本剤群のアフリベルセプト群に対する非劣性が示されました。海外で実施されたもう一つの試験の結果については、通し番号47/91ページ、表44にお示ししており、この試験においても同様の結果が得られております。以上から、本剤のnAMDに対する有効性は示されたと判断いたしました。
 次に、DME患者を対象とした試験成績を御説明いたします。審査報告書の通し番号48/91ページ、7.4のDME患者対象第III相試験の項を御覧ください。DME患者を対象に、DMEに対して本邦既承認のアフリベルセプトを対象とした無作為化二重遮蔽並行群間比較試験が同一デザインで2試験実施されました。これらの試験において、本剤群としては4週間隔で計6回硝子体内投与した後に、8週間隔で維持投与するQ8W群と、4週間隔で計4回硝子体内投与した後、徐々に投与間隔を延長し、疾患活動性に基づき4~16週間隔の範囲で適宜調節しながら維持投与する群(PTI群)の2群が設定されました。日本を含む国際共同試験の主要評価項目の結果については、審査報告書の通し番号50/91ページ、表47を御覧ください。ベースラインから48、52及び56週時までの最高矯正視力の変化量の平均値について、ITT集団における群間差の97.5%信頼区間の下限は、本剤Q8W群とアフリベルセプト群との比較におては-2.0文字、本剤PTI群とアフリベルセプト群との比較では-1.1文字であり、いずれの対比較においても非劣性マージンである-4文字を上回ったことから、本剤両群のアフリベルセプト群に対する非劣性が示されました。海外で実施されたもう一つの試験の結果については、審査報告書の通し番号52/91ページ、表49に示しており、この試験においても同様の結果が得られております。以上から、本剤のDMEに対する有効性は示されたと判断いたしました。なお、両試験において本剤Q8W群と本剤PTI群の有効性に大きな差異はなく、本剤Q8W群よりも本剤PTI群の方がより柔軟な投与方法であることから、用法・用量の設定に当たっては、本剤PTI群の投与方法を基に設定しております。
 続いて、安全性について、nAMDとDMEについてまとめて御説明いたします。各疾患を対象とした第III相試験の眼における有害事象の発現状況について、61/91ページ、表57を御覧ください。nAMDにおける投与中止に至った有害事象や、DMEにおける重篤な有害事象などの一部の事象の発現割合について、アフリベルセプト群と比較して本剤群で高い傾向にあったものの、その傾向は顕著なものではなく、個々の事象は既承認のVEGF阻害薬で知られている事象でした。このうち、本剤群で特に発現割合が高い傾向にあった個別事象である眼内炎症について、更に御説明いたします。第III相試験における眼内炎症の発現状況について、64/91ページ、表60を御覧ください。本剤群の眼内炎症の発現割合は、アフリベルセプト群と比較して高い傾向にあり、重篤又は重度の事象の発現割合も、アフリベルセプト群よりも高い傾向にあったことから、本剤投与時において十分な注意が必要と考えました。
 一方、発現割合自体はそれほど高くなく、多くの症例で治療により回復又は軽快していることなどを踏まえると、添付文書で適切な注意喚起を行うとともに、患者向け資材を使用して早期発見及び早期治療を図ることで、本剤の眼内炎症リスクは管理可能と判断いたしました。なお、使用実態下における眼内炎症の発現状況については、製造販売後調査において更に検討を行うことになっております。以上より、本剤の使用に当たっては、適切な注意喚起や情報提供を実施した上で、眼内炎症を含め類薬で知られている副作用について十分注意しながら使用することで、本剤の安全性は許容可能と判断いたしました。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品に該当し、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 では、委員の先生方から御質問、御意見等をお願いいたします。いかがでしょうか。1点、確認させてください。審査報告書の65ページの7.R.3.3に関することです。65ページの7.R.3.3の一番最後の所ですが、本薬を使用して眼内炎症を生じた方に再投与した場合の眼内炎症再発率が25.8%と高い傾向にあるというように機構の方におまとめいただいています。これに関しては、資材等で情報提供するというように書かれているのですけれども、添付文書にも書かれてはいかがかと思いますが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構より回答いたします。今、御指摘いただきましたように、今回の治験における眼内炎症の再発割合は25.8%と高い傾向にありましたが、眼内炎症が発現した患者に再投与された症例数は限られていますので、現時点で本剤の眼内炎症の再発リスクを正確に判断することは困難と考えており、添付文書での注意喚起までは不要と考えました。一方で、実際に本剤を使って診療を行う医師に対しては、再投与の可否や再投与時の眼内炎症に関する管理方法を検討する上で、再発割合のデータは有用な情報になり得ると考え、医療従事者向け資材で情報提供する必要があると考えました。
○森部会長 17番の項目の臨床成績にも記載されていませんが、ここにも書かれませんか。
○医薬品医療機器総合機構 先ほど申し上げたように、現時点で情報が限られているため、添付文書においては臨床成績の項も含めて注意喚起を行うことは予定しておりません。
○森部会長 先生方はふだん、資材を見て診療することは少ないので、添付文書上に何らかの注意喚起があれば、そういうこともあるかというようにお気付きになると思うのですが、限られている情報の中でも構わないので、記載をしておくことを御検討いただければと思っていましたけれども、いかがでしょうか。不適切な情報になり得るでしょうか。これは、比較されている類薬と比べても高いのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。現時点でアフリベルセプト等の類薬の眼内炎症の再発割合のデータは持ち合わせておりません。
○森部会長 分かりました。適切に記載できる箇所があるのであれば、臨床成績に記載していただくことが望ましいと考えています。委員の先生方からその点について御意見はございますか。
○宮川委員 日本医師会の宮川ですが、よろしいでしょうか。
○森部会長 はい。
○宮川委員 8.3.5の重要な基本的注意という中に眼内炎症があるのですが、機序としては違うところもありますので、注意喚起という意味でも8.の中に少し盛り込んでいかれるのがやはりよろしいのではないかなと考えます。機構、どうでしょうか。そういうような形でもう少し注意喚起をするということが、実臨床においては非常に助かるので、そのような御姿勢はいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 8.3.5項で注意喚起をするとの御提案を頂き、ありがとうございます。8.3.5の注意喚起としては、眼内炎症などの初期症状などが認められた場合には、直ちに連絡するよう患者さんに指導するという趣旨の注意喚起ですが、ここの所で眼内炎症の再発リスクについても言及するというような御趣旨でしょうか。
○宮川委員 そのようなつもりで発言いたしましたので、是非お考えいただければと思います。
○森部会長 分かりました。赤羽委員からは、チャットを通じて、添付文書への記載に賛同するという御意見を頂きました。8.3.6を新設されて御記載いただくのでもいいかと思っていますので、御検討いただければと思っています。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。先ほど8.3項に追記ということで御提案を頂きましたが、記載箇所も含めてどのような注意喚起ができるのか機構内部で検討させていただければと思います。
○森部会長 お願いいたします。そのほか御質問、御意見はございますか。よろしいでしょうか。では、議決に入らせていただきます。なお、佐藤直樹委員、代田委員、長谷川委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。では、本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議はございませんので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。続いて、議題11に移ります。議題11は、再審査期間延長の可否に関するものです。事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 議題11、再審査期間延長の可否についてです。資料No.11、エンタイビオ点滴静注用を御覧ください。申請企業は武田薬品工業株式会社です。品目名はエンタイビオ点滴静注用300mgです。開発対象の効能・効果については、資料をご参照ください。初回承認日は平成30年7月2日です。医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律第14条4第3項の規定に基づき、小児の用量設定等のための臨床試験を計画する場合で必要があると認められた場合には、個別に部会に諮った上で再審査期間を延長しています。今般、申請者から再審査期間の延長を初回承認より2年延長し、令和10年7月1日までの10年とする要望が提出されました。この度、小児の潰瘍性大腸炎及びクローン病を対象とした本剤の有効性、安全性を検討する臨床試験の治験計画届が提出されていることから、再審査期間を10年に延長することは適切と判断しています。以上となります。
○森部会長 ありがとうございました。では、先生方から御質問、御意見等ございましたらお願いします。よろしいでしょうか。では、議決に入らせていただきます。なお、川上委員、長谷川委員、宮川委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして議決の参加を御遠慮いただくこととなっております。では、本議題について、延長を可としてよろしいでしょうか。御異議ございませんようですので、延長を可とし薬事分科会に報告させていただきます。続いて議題12に移ります。議題12については事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 議題12、資料No.12、乾燥ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリンを希少疾病用医薬品として指定することの可否について御説明いたします。機構の事前評価報告書のファイルをお開きください。まず、1ページの中ほどですが、申請者は日本製薬、予定される効能・効果は自己免疫性脳炎(ステロイドパルス療法で効果不十分であった場合)です。対象者数ですが、本邦における患者数は659例程度。有病率の観点から推定した場合でも2万2,833例と推定されており、5万人未満の要件を満たすと考えております。
 次に、2ページの医療上の必要性についてですが、本疾患は自己免疫機序によって生じる急性又は亜急性の脳の炎症性疾患で、長期予後調査においては24か月のフォローアップ期間において10%が死亡といったことも確認されており、重篤な疾患であると判断しております。また、2ページの下から3ページにかけて自己免疫性脳炎に対する薬物療法について記載しておりますけれども、本邦において学会による自己免疫性脳炎の治療ガイドラインはなく、確立した治療法はありません。本邦では第一選択免疫療法として、ステロイドパルス療法が広く実施されておりますが、これについても治療法が不十分であること、また副作用の懸念があることが報告されております。
 最後に開発の可能性についてですが、現在、国内第III相試験を実施中で、本剤の開発の可能性も高いと考えております。以上より、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 どうもありがとうございました。では、委員の先生方から御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。特に御意見ございませんようですので、議決に入らせていただきます。本議題について指定を可としてよろしいでしょうか。特に御異議ないようですので、指定を可とし薬事分科会に報告させていただきます。続いて議題13に移らせていただきます。特定用途医薬品として指定することの可否についてです。では、議題13について事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 審議事項13、議題13、特定用途医薬品の指定についてです。資料No.13、デクスメデトミジン塩酸塩を特定用途医薬品として指定することの可否について事務局より御説明いたします。特定用途医薬品について当日配布資料としてお配りしております資料No.24の参考資料を御覧ください。令和元年の薬事法改正で導入され、令和2年8月に施行された医薬品の指定制度です。小児やAМRを対象に医療上のニーズが著しく充足されていない医薬品を指定し、開発促進をするものです。今回は小児の疾病の診断、治療・予防を用途とするものに関するものです。
 指定要件ですけれども、資料No.24の1枚目にありますが、該当性はア、イ、ウと3点ありますので御覧ください。この3点の要件の詳細については割愛させていただきますが、参考資料の4ページ以降にありますので併せて御覧いただければと思います。該当性の評価については2枚目のスライドにありますように、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議にて行われ、本部会で御審議いただくものとなっています。指定後ですが、主要な試験成績が得られた段階で承認申請が行われ、3ページにありますように、その審査期間が通常12か月の目標のところ、9か月の優先審査と同様となります。
 それでは、資料13の中の2.特定用途医薬品該当性事前評価報告書のファイルを御覧ください。2ページをご覧ください。開発提案者はファイザー株式会社、予定される効能・効果は、小児における非挿管での非侵襲的な処置及び検査時の鎮静となっております。「特定用途医薬品への該当性に関するワーキングの評価」の欄を御覧ください。指定要件1は「対象とする用途に用いるために必要な開発の該当性」ですが、小児では処置及び検査時に自発的な安静を得ることが難しく、疼痛や侵襲の有無によらず体動抑制を目的とした鎮静が必要となることがあります。本開発提案は、小児における本剤の用法・用量の追加を目的としたものであることから、指定要件アのマル1に該当すると考えています。
 指定要件2についてですが、「対象とする用途の需要が著しく充足していないことの該当性」となります。本邦において小児における検査時等の鎮静に関する効能・効果を有する医薬品はトリクロホスナトリウム等が承認されています。作用発現までの時間が長く、速やかな鎮静に関して不充分であります。投与後の作用持続期間が長いことで、検査終了後の速やかな覚醒が困難であり、患者等の負担となっています。さらにMRI等では体動の完全な抑制が必要であり、検査時間も長く、かつ安全性上の問題が生じた際に、検査室内での緊急対応も限られていることから、単剤での速やかな鎮静の導入・維持並びに検査後の速やかな覚醒が可能であり、鎮静の合併症リスクが低い鎮静剤が必要とされていることから、指定要件イのマル2に該当すると考えています。
 指定要件3については、「対象とする用途に対して特に優れた使用価値を有することの該当性」となっています。指定要件ウのマル1については、本剤の用途であるMRI検査の対象となる疾患には、脳梗塞や脳腫瘍等の重篤なものが一定程度含まれ、診断の遅れや不正確な診断により重篤化するおそれがあります。これら重篤な疾患の診断や治療に不可欠な検査を迅速かつ正確に行うために用いるものであり、指定要件ウのマル1に該当するものと考えております。
 次に指定要件ウのマル2についてですけれども、海外にて実施された複数の前向き無作為化比較試験において、本剤の臨床的有用性が示されています。海外の教科書においても本剤は単剤で安全に使用できることが記載されており、これらの臨床試験成績及び教科書等の記載を踏まえると、本剤の小児における非侵襲的な検査等の鎮静に用いることの臨床的有用性は期待できることから、指定要件ウのマル2に該当すると考えています。
 なお、開発提案された用法・用量は前述の複数の前向き無作為化比較試験における用法・用量とは一部異なるものですが、ファイザー株式会社により小児患者を対象として提案された用法・用量を含めた本剤の臨床推奨用量を検討するための無作為化二重盲検比較国際共同試験が本邦を含め実施中でありましたが、今般、結果が出てきたところです。今後承認申請が行われ、審査の過程において当該試験で得られたデータを踏まえて用法・用量の適切性等について検討されることになります。したがいまして、特定用途医薬品の指定の3要件を満たしていると考えています。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 どうもありがとうございました。では、委員の先生方から御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。この薬剤の作用は個体差の特定の要因はありますか。
○事務局 それは代謝とかそういったものですか。
○森部会長 はい、そうです。
○事務局 そういったものもあるかもしれないのですけれども、承認申請がなされてから審査の過程で確認されるものと考えております。
○森部会長 成人では知られていますか。
○事務局 申し訳ございません。今、データを持ち合わせてございません。
○森部会長 分かりました。
○宮川委員 宮川です。よろしいでしょうか。審議の中に私も入っていたのですけれども、報告の中では非常に有用だということで、臨床現場からは待ち焦がれているというような形で報告を受けておりました。詳細な内容は私も存じ上げておりますけれども、成人に対してとか用量に関しては、私も資料を持ち合わせておりません。重要な薬だというような位置付けは理解しております。
○森部会長 機構から何か補足はございますか。なければ結構ですが。もしございましたら。
○医薬品医療機器総合機構 特に機構からはございません。ありがとうございます。
○森部会長 では、長谷川先生、お願いします。
○長谷川委員 小児科ですのでちょっと教えていただきたいのですけれども、これによって呼吸抑制は従来のものよりかなり少ないという理解でよろしいのでしょうか。
○事務局 呼吸抑制等についても審査の過程で検討されるものと思います。特定用途医薬品の指定は、オーファン指定と同じようなもので、承認申請の前にまず内容として該当性があるかを確認させていただいて、該当するということが部会で了承されましたら、次に承認申請がなされます。承認申請をされた後に今おっしゃられたような部分、呼吸抑制などについて一つ一つ確認されていくものと考えております。
○長谷川委員 幾つかデータがありますけれども、その中でも非劣性であるとか、その辺りの情報はまだこれからの検証ということでよろしいでしょうか。理解としては。
○事務局 今申し上げたところだと、評価報告書4ページの指定要件ウのマル2の下部に記載がございますが、開発提案者であるファイザー株式会社より前向きの無作為化比較試験が国際共同で行われており、日本人小児の患者さんも組み入れられてございます。こちらの試験を基に承認申請されると聞いており、本試験以上に追加の試験を求めているものではないと承知しております。
○長谷川委員 分かりました。検査で用いるものなので、やはり安全性が一番なのかなと思いましたので、御質問させていただきました。ありがとうございました。
○事務局 ありがとうございます。
○森部会長 そのほか特に御質問、御意見ございませんでしょうか。では、議決に入らせていただきます。なお、川上委員におかれましては利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。では、本議題について指定を可としてよろしいでしょうか。御異議ないようですので、指定を可とし薬事分科会に報告させていただきます。では、その他事項、議題1に進めさせていただきます。医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、公知申請を行うことが適当と判断された適応外薬の事前評価についてです。では、その点について事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 事務局より御説明いたします。その他事項の資料20、事前評価報告書についてのファイルです。今回、検討会議において公知申請を行うことが適当と判断され、本部会で御報告する品目が8品目あります。これらは全て不妊治療に係る医薬品に関する品目であり、日本生殖医学会より要望がなされたものとなっています。今回は品目も多いことから、御要望とワーキングによる検討の結果、要望内容から少し変更となった箇所を中心に御説明いたします。
 3ページを御覧ください。精製下垂体性性腺刺激ホルモンについて、生殖補助医療における調節卵巣刺激の効能・効果で御要望を頂いており、要望の用法・用量については資料のとおりとなっています。こちらの要望については、要望の効能・効果、用法・用量で公知該当性ありと判断されています。
 次に21ページを御覧ください。セトロレリクス酢酸塩ですが、効能・効果は既存効能となっています。用法・用量として、卵巣の反応に応じて本剤を投与開始し、最終的な卵胞成熟の誘発当日までセトロレリクスとして0.25mgを1日1回腹部皮下に連日投与するという御要望を頂いています。こちらについても、要望の用法・用量に関して、公知該当性ありと判断されています。
 次に33ページを御覧ください。クロミフェンクエン酸塩について、生殖補助医療における調節卵巣刺激の効能・効果で、クロミフェンクエン塩酸塩として50~100mg/日で月経周期3日目から投与を開始し、卵胞が十分発育するまで継続するという用法・用量で御要望を頂いていました。こちらですが、効能・効果については要望内容で検討会議の了承が認められているものの、用法・用量については51ページの下方に詳細の記載がありますので御覧いただければと思いますが、特に投与期間については、海外のエビデンス及び国内使用実態等を踏まえて、通常クロミフェンクエン酸塩として1日50mgを月経周期3日目から5日間投与する。効果不十分な場合には、次周期以降の用量を1日100mg増量できるという内容とすることが適切であることが議論され、この範囲において公知該当性ありと判断されております。
 次に59ページを御覧ください。ジドロゲステロンについて、生殖補助医療における黄体補充で要望がなされ、用法・用量については資料のとおりとなっています。要望の効能・効果、用法・用量で公知該当性ありと判断されています。
 次にメトホルミンになりますが、79ページに多嚢胞性卵巣症候群における排卵誘発、つまり一般不妊治療に対する要望又は113ページに多嚢胞性卵巣症候群の生殖補助医療における調節卵巣刺激、つまり生殖補助医療に関する御要望が出ています。こちらについては国内のガイドラインを踏まえ、いずれの効能に対しても、ただし肥満、耐糖能異常又はインスリン抵抗性のいずれかを呈する患者に限ると患者を限定した上で、公知該当性ありとの判断がなされました。
 続いて136ページを御覧ください。レトロゾールですが、原因不明不妊における排卵誘発として要望がなされ、用法・用量については資料のとおりとなっています。要望の効能・効果、用法・用量で公知該当性ありと判断されています。なお、先ほどのメトホルミン及びレトロゾールですが、妊娠初期の使用が禁忌である医薬品ではあるものの、使用時期は妊娠に至る前の排卵誘発に用いるものであり、この妊娠初期の使用には当たらないというところで、議論がなされております。しかし、妊娠初期の意図しない投薬を避けるための適切な対策が必要であり、そちらについては添付文書で注意喚起がなされる予定となっています。
 続いて158ページを御覧ください。カベルゴリンですが、生殖補助医療に伴う卵巣過剰刺激症候群の発症抑制として要望がなされ、用法・用量については資料のとおりとなっています。要望の効能・効果、用法・用量で公知該当性ありと判断しています。
 最後に、今回の不妊治療に関する医薬品については、不妊治療に十分な知識と経験のある医師の下で使用すること及び本剤の投与により予測されるリスク及び注意すべき症状について、あらかじめ患者に説明を行うこと等、注意喚起をすることで適切な使用がなされると考えており、添付文書で必要な注意喚起がなされる予定となっています。
 これら要望された8品目について、検討会議ではそれぞれの要望用法・用量、効能・効果について、先ほど申し上げた範囲において、海外ガイドライン、国内の使用実態を踏まえ、要望医薬品の有効性、安全性は医学薬学上公知であると判断しています。以上です。
○森部会長 どうもありがとうございました。では、委員の先生方から、御質問等がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。特段、御意見はありませんか。私から1点だけ、メトホルミンについての質問です。日本では2型糖尿病で使われているのですが、腎排泄性薬剤なので重度腎障害の方では禁忌の規定があったり、eGFRに応じて使用量の目安が決められている糖尿病治療薬なのです。今回、この不妊治療で使われる場合は、特に腎機能に関する制約等は余り明記はないのですが、実際、添付文書ではその点が配慮されるのでしょうか。今、私も資料を見ていましたが、記載がなかったところが気になりましたので、確認としてお伝えしました。機構から何か御見解はいかがですか、お願いいたします。乳酸アシドーシスの発症リスクに関係して、eGFRに対応した基準が決められているのですが。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御回答させていただいてもよろしいでしょうか。
○森部会長 お願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 先生から御指摘いただきました点を踏まえて、審査の中で検討の上、適切な注意喚起を行っていきたいと思います。以上です。
○森部会長 どうもありがとうございました。そのほか特に先生方から、御指摘事項等はありますか。よろしいでしょうか。それでは、その他の事項については、御確認いただいたものとさせていただきます。そのほか事務局から御報告はありますか。
○事務局 ありがとうございます。次回の部会は令和4年3月9日金曜日午後6時から開催させていただく予定です。本日、御報告できなかった事項について、次回のこの部会の際に御報告させていただければと思います。資料については返送はこの段階でしていただかなくても結構ですので、その日が終わった後に御返送いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○森部会長 大変長時間の審議になりましたことを心からおわび申し上げます。長時間ありがとうございました。失礼します。
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

医薬品審査管理課 課長補佐 柳沼(内線2746)