第7回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会季節性インフルエンザワクチンの製造株について検討する小委員会議事録

健康局 健康課予防接種室

日時

令和4年4月7日(木) 15:00~

場所

Web会議
中央合同庁舎5号館 専用第21会議室
(東京都千代田区霞ヶ関1-2-2)

議題

  1. (1)2022/23シーズン向けインフルエンザワクチンの製造株について
  2. (2)その他

議事

議事内容
○大塚室長補佐 ただいまより、第7回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会季節性インフルエンザワクチンの製造株について検討する小委員会を開催いたします。本日は御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
 本日の議事は公開となります。議事の様子はユーチューブで配信いたしますので、あらかじめ御了承ください。なお、事務局で用意しているユーチューブの撮影用以外のカメラ撮りは、議事に入るまでとさせていただきます。プレス関係者の方々におかれましては、御理解と御協力のほどお願いいたします。また、傍聴の方は傍聴に関しての留意事項の遵守をお願いいたします。会議冒頭の頭撮りを除き、写真撮影、ビデオ撮影、録音することはできませんので、御留意ください。
 本日は、一部Web会議で開催することになります。Web会議を開催するに当たり、会議の進め方について連絡させていただきます。御発言される場合は、まずお名前をおっしゃっていただき、部会長から指名されてから御発言をお願いいたします。なお、Web会議ですので、タイムラグが生じる可能性があります。御了承いただければと思います。会議の途中で長時間音声が聞こえない等のトラブルが生じた場合は、あらかじめお知らせしている番号までお電話を頂ければと思います。
 続いて、委員の出欠状況について、御報告いたします。現在7名の委員にWebにて御出席を頂いております。大曲委員、脇田委員からは、欠席の御連絡を頂いております。委員9名中7名の委員に御参加いただいておりますので、厚生科学審議会の規定により定足数を満たしており、本日の会議は成立することを御報告いたします。
 また、本日は6名の方に参考人として御出席を頂いております。御紹介させていただきたいと思います。国立感染症研究所インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センター長の長谷川参考人です。また、国立感染症研究所インフルエンザ・呼吸器系ウイルス研究センター第一室長の渡邉真治参考人です。続いて、日本ワクチン産業協会インフルエンザ専門委員の4名の方にも、参考人として御出席いただいております。金子参考人、中川参考人、松浦参考人、渡辺隆雄参考人に御出席を頂いております。
 これから議事に入らせていただきますので、これ以降は写真撮影、ビデオ撮影、録音することができませんので、御留意いただければと思います。
 議事に先立ち、資料の確認をさせていただきたいと思います。本日、委員会の資料は、あらかじめ送付した電子ファイルを使用させていただきたいと思っております。番号01の議事次第及び委員名簿から番号07の利益相反関係書類の用意をさせていただいております。資料の不足等がありましたら、事務局員にお申出いただければと思います。
 それでは、ここからの進行については、坂元委員長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○坂元委員長 皆様、本日は御出席ありがとうございます。川崎市の坂元です。本日の御審議、よろしくお願いします。まず事務局から、審議参加に関する遵守事項について、御報告をお願いします。
○大塚室長補佐 事務局です。審議参加の取扱いについて御報告いたします。本日御出席いただきました委員及び参考人から、予防接種・ワクチン分科会審議参加規程に基づき、ワクチンの製造販売業者からの寄附金等の受取状況、また、申請資料への関与について、申告いただいております。各委員・参考人からの申告内容については、資料07の利益相反関係書類を御確認いただければと思います。本委員会での調査審議を行う品目は、季節性インフルエンザワクチンとなっております。本日の出席委員及び参考人の寄附金等の受取状況から、参加規程第5条により、中野委員、また、日本ワクチン産業協会の中川参考人及び渡辺参考人が、調査審議を行う品目の申請書類に関与されておりますので、審議時に退室に該当します。また、参加規程第6条により、日本ワクチン産業協会の中川参考人、金子参考人、松浦参考人及び渡辺参考人が、調査審議されるワクチンを製造販売する企業との間で、特別の利害関係を有すると考えられますので、審議時に退室に該当します。また、参加規程第8条により、岡田委員が寄附金受取の実績があり、かつ、その額が500万円を超える年度があることから、審議不参加の基準に該当しますので、審議時に退室に該当します。また、参加規程第9条により、中野委員が寄附金受取の実績があり、かつ、その額が50万超~500万円以下の年度があることから、議決不参加の基準に該当しますので、審議の際、議決に参加しないに該当いたします。なお、そのほか、退室や審議又は議決に参加しないに該当される委員等はいらっしゃいません。以上です。
○坂元委員長 どうもありがとうございました。ただいま、事務局から本日の審議参加について、御報告がありました。もう一度繰り返しますと、参加規程第5条により中野委員、日本ワクチン産業協会の中川参考人及び渡辺参考人が、参加規程第6条により日本ワクチン産業協会中川参考人、金子参考人、松浦参考人及び渡辺参考人が、審議時に退室に該当します。また、岡田委員が参加規程第8条により審議時に退室に該当し、中野委員が第9条により審議の際、議決に参加しないに該当します。
 しかしながら、参加規程によりますと、審議会場から退室するとの取扱いについては、当該委員等の発言が特に必要であると本委員会が認めた場合は、出席し意見を述べることができるとなっております。今回の審議では、私委員長として、岡田委員、中野委員には、専門家としての意見を述べていただきたいと思います。もちろん、意見を述べる際には、あくまでも学識者としての中立な立場でお願いしたいということです。また、日本ワクチン産業協会の中川参考人、金子参考人、松浦参考人及び渡辺参考人には、ワクチン製造候補株の検討について、資料を準備していただいており、これら4名の方につきましても、専門家としての意見を述べていただきたいこと。また、意見を述べる際には、あらためて公平な立場でお願いしたいと思っておりますが、以上、委員会として審議参加するという形でお認めいただけますでしょうか。御異議はありませんか。その他、本委員会での意見の取りまとめは、議決には当たりませんが、先ほど報告のありました岡田委員においては、参加規程第9条に準ずる形で、中野委員と同様に、意見取りまとめの際には御参加いただけないこととしたいと思いますが、委員の皆様方これもよろしいでしょうか。
(異議なし)
○坂元委員長 異議がないということでございますので、本委員会の皆様方の御了解が得られたということで、早速議事に入りたいと思います。
 本日の議事は、2022/23シーズン向けインフルエンザワクチンの製造株についてです。まず、事務局より御説明をお願いいたします。なお、質疑応答につきましては、全ての資料について御説明いただいた後に時間を設けます。では、事務局からお願いいたします。
○稲角室長補佐 資料1「2022/23シーズン向けインフルエンザワクチンの製造株について」を御覧ください。資料の2枚目を御覧ください。季節性インフルエンザワクチン製造株の選定に当たっての基本的な考え方をまとめた資料です。資料の上のほうにありますが、基本的な考え方については、WHOが推奨する株の中から、有効性と供給可能量の双方を考慮して検討を行うということで、これまで進めてきております。
 3枚目のスライドを御覧ください。上のほうに、ワクチンが出荷されるまでの基本的な流れを記載しております。そこから出ている吹出しの所にあるとおり、WHOの推奨株については、例年並の2月下旬に公表されていまして、それを拝見すると、ワクチン4株のうち2株が昨シーズンから変更となっております。具体的には下の表のWHOの推奨の概要の所にございますが、A型のH3N2とB型のビクトリア系統の2種類が、昨シーズンの推奨の内容から変更がございます。後ほど感染研の先生方から御説明いただけると思いますけれども、右には感染研で御検討いただいた推奨順位も併せて記載しております。
 資料の4枚目を御覧ください。これはインフルエンザワクチンの製造の特徴ということで、概念的なことを記載したものです。一番下を御覧ください。ワクチンの製造に当たっては、各原液をバランスよく製造することが重要です。また、5枚目のスライドにございますが、今回はWHOの推奨株の2株が昨年と変わっている状況ですので、下の箱に記載しておりますが、4月のなるべく早い時期に、これら2株の製造株を確定することを製造側からお願いしたいということです。
 6枚目のスライドを御覧ください。インフルエンザワクチン製造候補株の製造効率について概要をまとめたものです。上のほうに推計方法のイメージとして記載しておりますが、製造量は基本的に各製造株の製造効率と、それを作るための卵の数が大きく影響するものです。実際に製造効率の部分を御覧いただきますと、下の表にございますけれども、昨シーズンかから比べると、1.1倍ぐらいの製造効率ではないかと推計しております。例年、製造に苦労しているA型のH3N2についても、今年は良好な数字が出ている状況です。
 資料の7枚目を御覧ください。これは参考ですが、インフルエンザワクチンの供給量の推移を記載しております。8枚目が、過去5年間のインフルエンザワクチンの製造株についてまとめたものです。資料1の説明は以上です。
○坂元委員長 続いて、同じ2022/23シーズンのインフルエンザワクチンについて、国立感染症研究所の御意見を伺いたいと思います。長谷川参考人から、資料2-1の御説明をお願いいたします。
○長谷川参考人 国立感染症研究所インフルエンザ呼吸器系ウイルス研究センターの長谷川と申します。資料2-1を御覧ください。こちらに2022/23シーズン向けの季節性インフルエンザワクチン製造候補株の検討について、まとめております。令和4年度インフルエンザワクチン用製造株とその推奨理由についてです。新型コロナウイルスの流行に対する対策の副次的な効果と考えられますが、2020/21シーズンに引き続き、2021/22シーズンも、国内のインフルエンザウイルスの流行は極めて小さなものとなりました。定点当たりの報告数も、コロナ発生の前と比べまして、1/2000であります。また、ウイルスの分離報告に関しては2株のみで、H3N2の2株が報告されております。世界的には、特に新型コロナウイルスの流行に対する対策の緩和が見られた地域において、新型コロナウイルス流行以前より少ないのですが、インフルエンザウイルスの流行が確認されております。世界的な流行状況は、A型が約75%を占め、そのうち亜型まで同定されたものでは、A/H3が93%でした。B型はほぼビクトリア系統でありました。
 国立感染症研究所では、WHOワクチン推奨株選定会議で議論された流行株の解析成績、また、令和3年度のワクチン接種後のヒト血清抗体と流行株との反応性及びワクチン製造候補株の製造効率などを総合的に評価して、令和4年度(2022/23シーズン)のインフルエンザワクチン製造候補株として、以下の株を推奨することといたしました。
 A/H1N1pdm09亜型の推奨株から御説明いたします。推奨株に挙げさせていただいたのは、A/Victoria/1/2020(IVR-217)です。最近のA/H1N1pdm09亜型ウイルスは、赤血球凝集素HAの遺伝子系統樹上は、6B.1A.5a.1と6B.1A.5a.2の群に分かれております。2021年9月以降解析されたウイルスでは、ほぼ同数のウイルスが両群に属しております。地域別では、ヨーロッパでは5a.1群が、アジア・オセアニアでは5a.2群が主に検出されました。国内では分離報告はありませんでした。
 フェレット感染血清を用いた抗原性解析では、5a.1群のウイルスに対する血清は、5a.1群とはよく反応しますが、5a.2群とは反応性はよくありませんでした。また、一方で、5a.2群のウイルスに対する血清は5a.2群のウイルスとはよく反応しましたが、5a.1群のウイルスとの反応性はよくなかったという形で、抗原性の乖離が見られました。
 A/Victoria/2570/2019類似株(5a.2に群に属する)を含む昨シーズン(2021/22シーズン)のワクチンを接種したヒトの血清を用いた血清学的試験では、5a.2群のウイルスに対する良好な反応性を示し、かつ、5a.1群のウイルスに対してもある程度の反応性を示していました。以上の結果から、WHOは2022/23シーズンの北半球用A(H1N1)pdm09ワクチン推奨株として、今シーズンと同じく、5a.2群に属するA/Victoria/2570/2019類似株を推奨しました。
 国内のA(H1N1)pdm09ワクチン製造用としては、令和3年度において高増殖株A/Victoria/1/2020(IVR-217)の製造実績があるため、令和4年度の同ウイルスのワクチン株として、令和3年度と同一であるA/Victoria/1/2020(IVR-217)を推奨いたしました。以上が、A/H1N1pdm09亜型であります。
 続きまして、A/H3N2亜型の説明をさせていただきます。推奨株は、A/Darwin/9/2021(SAN-010)です。最近のA(H3N2)亜型ウイルスはHA遺伝子系統樹上多様化しておりまして、直近のウイルスは3C.2a1b.1群あるいは3C.2a1b.2群に属し、さらに3C.2a1b.1群は3C.2a1b.1a群及び3C.2a1b.1b群に、3C.2a1b.2群は3C.2a1b.2a群及び3C.2a1b.2b群に分かれております。また、3C.2a1b.2a群は3C.2a1b.2a.1群と3C.2a1b.2a.2群に分かれ、今シーズンのウイルスはほとんどが、そのうちの2a.2群に属しております。一部、1a群及び1b群に属したウイルスも検出されましたが、国内で分離された2株は2a.2群に属していました。
 フェレット感染血清を用いた抗原性解析では、今シーズンのワクチン推奨株A/Cambodia/e0826360/2020類似株(2a.1群に属する)に対する血清は、1a群、1b群及び2a.1群のウイルスとは反応性はよかったのですが、2a.2群のウイルスとの反応性はよくありませんでした。一方で、2a.2群のウイルス(2022シーズン南半球用ワクチン推奨株A/Darwin/9/2021類似株)に対する血清は、同じ2a.2群のウイルスとはよく反応しましたが、それ以外の群のウイルスとの反応性はよくありませんでした。A/Cambodia/e0826360/2020類似株(2a.1群に属する)を含む2021/22シーズンワクチンを接種したヒトの血清を用いた血清学的試験では、A/Cambodia/e0826360/2020株に対する反応性と比較した場合、1a群、1b群及び2a.1群ウイルスとは良好な反応性を示しましたが、2a.2群のウイルスに対しては反応性の低下が見られました。以上の成績から、WHOは2022/23シーズンの北半球用のA(H3N2)のワクチン推奨株を2a.1群に属するA/Cambodia/e0826360/2020類似株から2a.2群に属するA/Darwin/9/2021類似株に変更しました。
 本類似株のワクチン製造候補株としては、そこ(資料)に挙げた複数の株がございます。いずれも国内のワクチン製造所により増殖性、ショ糖クッション法によるウイルス蛋白収量、エーテル処理によるスプリット工程及びろ過工程まで行った生産性が評価されました。増殖性についてはIVR-228において問題がありましたが、他の候補株については問題はありませんでした。ウイルス蛋白収量については、今シーズンのワクチン製造株であるA/Tasmania/503/2020 (IVR-221)と比較したところ、SAN-010が4社平均で124%と最もよかった結果が出ています。この結果を受けて、SAN-010について抗原性解析と生産性評価が実施され、生産性については、今シーズンのワクチン製造株であるA/Tasmania/503/2020 (IVR-221)と比較したところ、4社平均で156%と大変良好でありました。抗原性解析については、継代による抗原性の乖離は認められませんでした。
 以上のことから、令和4年度のA/H3N2亜型ウイルスのワクチン株として、A/Darwin/9/2021 (SAN-010)を推奨としました。
 続きましてB型です。ビクトリア系統です。推奨株として、B/Austria/1359417/2021 (BVR-26)を推奨株といたしました。推奨理由は、最近のB/ビクトリア系統のウイルスは、HA遺伝子系統樹上で、HA蛋白質に3アミノ酸欠損(162-164番目)と136E変異を持つV1A.3群内の、さらに変異を有するV1A.3a群に属しました。V1A.3aは、さらにV1A.3a.1群とV1A.3a.2群に分かれております。3a.1群のウイルスは中国のみで検出されました。3a.2群のウイルスは中国を含む様々な国で検出されました。中国で検出されている3a.2群のウイルスは、他の国で検出されているウイルスとは異なる変異を有していました。2021年9月以降では、3a.2群のウイルスが多く検出されました。国内からの分離報告はありませんでした。
 フェレット感染血清を用いた抗原性解析では、今シーズンのワクチン推奨株B/Washington/02/2019類似株(V1A.3群に属する)に対する血清は、3a.1群及び3a.2群の両ウイルスとの反応性がよくありませんでした。また、3a.1群のウイルスに対する血清は、同じ3a.1群のウイルスとはよく反応したが、3a.2群のウイルスとの反応性はよくありませんでした。一方で、3a.2群のウイルス(2022シーズン南半球用ワクチン推奨株B/Austria/1359417/2021類似株)に対する血清は、同じ3a.2群のウイルスとはよく反応しましたが、3a.1群のウイルスとの反応性はよくありませんでした。B/Washington/02/2019類似株(V1A.3群に属する)を含む2021/22シーズンワクチンを接種したヒトの血清を用いた血清学的試験では、B/Washington/02/2019株に対する反応性と比較した場合、3a.1群及び3a.2群のウイルスに対して反応性の低下が見られました。
 以上の成績から、WHOは2022/23シーズンの北半球用のB/ビクトリア系統ワクチン推奨株を、V1A.3群に属するB/Washington/02/2019類似株から3a.2群に属するB/Austria/1359417/2021類似株に変更しました。
 B/Austria/1359417/2021類似株のワクチン製造候補株としては、B/Austria/1359417/2021野生株、B/Austria/1359417/2021(BVR-26)(高増殖株)、B/Singapore/WUH4618/2021野生株、B/Michigan/01/2021野生株があり、国内のワクチン製造所により増殖性、ウイルス蛋白収量及び生産性が評価されました。増殖性については株間に差は見られませんでした。ウイルス蛋白収量について、今シーズンのワクチン製造株であるB/Victoria/705/2018(BVR-11)と比較したところ、BVR-26が4社平均で約90%と最も良好でした。この結果を受けて、BVR-26について抗原性解析と生産性評価が実施され、抗原性解析については継代による抗原性の乖離は認められず、また生産性については今シーズンのワクチン製造株であるB/Victoria/705/2018(BVR-11)と同等の成績が得られました。
 以上の結果から、令和4年度のB/ビクトリア系統ウイルスのワクチン株として、B/Austria/1359417/2021 (BVR-26)を推奨しました。
 最後にB型の山形系統です。推奨株はB/Phuket/3073/2013です。理由は、過去2シーズンと同様に2021/22シーズンにおいても山形系統ウイルスはほとんど検出されておらず、またWHO協力センターで解析された株はありませんでした。この状況は2020年3月以降からです。解析結果がなく詳細は不明です。しかし、完全になくなったという確証がないため、WHOでは引き続き山形系統のウイルスを含む4価ワクチン用のウイルス株を推奨しました。
 これまで推奨されていたB/Phuket/3073/2013類似株から変更する理由がないため、WHOは、2022/23シーズンの北半球用のB/山形系統ワクチン株にB/Phuket/3073/2013類似株を再度推奨しました。
 我が国では、B/Phuket/3073/2013はワクチン製造株としての製造実績もあることから、令和4年度のB/山形系統のワクチン株として、令和3年度と同一株であるB/Phuket/3073/2013を推奨しました。以上になります。
○坂元委員長 長谷川先生、ありがとうございました。引き続いて、参考人の日本ワクチン産業協会から御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○金子参考人 よろしくお願いいたします。日本ワクチン産業協会インフルエンザ専門委員の金子です。日本ワクチン産業協会からは、資料3の「2022/23シーズン インフルエンザHAワクチン製造候補株の検討成績」を御報告いたします。
 まず、2ページ目です。製造候補株の製造適性評価の方法を簡単に説明させていただきます。製造候補株の製造適性評価は、小スケールの実験系でワクチン製造と同じように、発育鶏卵にウイルス株を接種して培養します。発育鶏卵からウイルス液を採取し、濃縮、しょ糖クッション法遠心を行います。得られた精製ウイルス液についてウイルス蛋白質の収量を評価します。これを中間評価と呼びます。2017/18シーズンまでは、収量の評価はここまででしたが、2017/18シーズンの埼玉株におけるエーテルスプリット工程での収率低下を受け、2018/19シーズンからは小スケール実験系でスプリット工程、ろ過工程を行い、模擬ワクチン原液まで作成して、ウイルス蛋白の収量を評価するように変更いたしました。これを最終評価と呼んでおります。
 3ページ目です。A/H3N2製造候補株の中間評価の結果です。感染研から7株の製造候補株を分与されましたので、これらの株について検討を行いました。その結果、蛋白収量が高いダーウイン(SAN-010)株は、昨年の製造株であるタスマニア(IVR-221)株に対して124%という結果になりました。
 4ページ目です。ダーウイン(SAN-010)株のウイルス粒子形状を電子顕微鏡で観察した画像となります。ほとんどが球状のウイルス粒子が観察されましたので、ウイルス粒子形状による製造への影響はないものと考えております。
 5ページ目です。ダーウイン(SAN-010)株の最終評価の結果です。最終評価の模擬ワクチン原液段階では、昨年の製造株であるIVR-221株に対してSAN-010株の156%の収量という結果でした。表には示しておりませんが、最終評価を行う際に、精製ウイルス液の段階での収量も確認しております。この結果は、昨年の製造株に対する137%となり、中間評価結果である124%と同等の結果となりました。また、スプリット工程でも顕著な収量低下は見られず、電子顕微鏡観察におけるウイルス粒子の形状からも製造への影響はないものと考えられます。このことから、日本ワクチン産業協会としては、ダーウイン(SAN-010)株の製造適性は十分にあるというように結論付けております。
 6ページ目です。B/ビクトリア系統製造候補株の中間結果となります。感染研からは4株の製造候補株が分与されたので、これらの株について検討しました。その結果、オーストリア(BVR-26)株の蛋白収量が昨年度製造株であるビクトリア(BVR-11)株に対して88%という結果になりました。
 7ページ目です。オーストリア(BVR-26)株のウイルス粒子形状を電子顕微鏡で観察した画像となります。ほとんどが球状のウイルス粒子が観察されましたので、ウイルス粒子形状による製造への影響はないものと考えております。
 最後、8ページ目です。B/ビクトリア系統製造候補株の最終評価の結果になります。最終評価の模擬ワクチン原液段階では、昨年の製造株であるBVR-11株に対して、オーストリア(BVR-26)株は98%の収量という結果でした。スプリット工程でも顕著な収量低下は見られず、電子顕微鏡観察におけるウイルス粒子の形状からも製造への影響はないものと考えております。このことから、日本ワクチン産業協会としては、オーストリア(BVR-26)株の製造適性は十分にあると結論付けました。
 日本ワクチン産業協会からの報告は以上となります。
○坂元委員長 どうもありがとうございました。続いて、事務局のほうから何か補足説明や追加事項などはありませんか。
○稲角室長補佐 事務局です。残りの資料2-2については、WHOの推奨株、類似株を示したものを引用したものですので適宜御参考ください。本日、資料1の3ページ目でお示ししたように、WHOの推奨の概要と、感染研の先生方に御検討いただいた推奨の株について一覧にまとめておりますので、審議の御参考にしていただければと思います。本日は、製造株を1つずつ決めていただく形でお願いしたいと考えておりますので、どうぞ御審議のほどをよろしくお願いいたします。以上です。
○坂元委員長 どうもありがとうございました。ただいま、感染症研究所と日本ワクチン産業協会のほうから御説明がありました。これから質疑の時間とさせていただきたいと思います。御意見等がありましたら、挙手又はリアクションの「挙手」ボタンを押していただければと思います。どうぞ、どなたかありませんか。釜萢先生、よろしくお願いします。
○釜萢委員 これまでのワクチン株の選定に当たっては、株を選定した後で、A型H3N2の実際の収量が予想外に少なかったりして、全体としての供給量が減ってしまうというようなことも見られたわけですが、22/23シーズンについては、今日の御説明の内容で大変心強く思っております。今日の資料1の7ページを御覧いただくと、令和2年の所はかなり供給量も増え、かつ使用量も多かったわけです。令和3年のグラフを見ると、供給量はその前の年よりも下がりましたが、一方で、使用量もかなり下がってしまっているという状況です。今回、ワクチンの供給量がある程度増えたとした場合に、供給されたワクチンが有効に利用されることが望ましいと考えております。せっかく作っていただいても、接種が進まないという状態をできるだけ避ける必要があると考えております。
 一方、季節性インフルエンザワクチンを接種する時期に、新型コロナのワクチンを同時に接種しなければいけないという状況になると、混乱も予想されます。基本的には10月から医療現場においては季節性インフルエンザワクチンの接種を始めますので、10月の接種開始の段階で十分量が確保されるということが極めて重要です。接種を円滑に進めるためには、早い時期に十分量のワクチンを供給していただくということが極めて重要で、12月終わり頃になって供給量が増えても、もうその頃にはほとんどワクチンを打てなくなってしまうということが多いものですから、ワクチンを供給してくださる方々には、10月初めの段階で、なるべく立ち上がりを早く、量を多く、その部分で供給していただきますように、また、国においては、感染研もそうですが、検定の作業についても、その辺りも含めて是非よろしくお願いしたいというように要望を申し上げます。以上です。
○坂元委員長 釜萢先生、どうも御意見をありがとうございました。やはりワクチンの供給が非常に大きな課題だと思っております。釜萢先生から御指摘がありましたように、製造メーカーの方、国ともに早い立ち上がりを是非よろしくお願いいたします。今の釜萢先生の御要望に対して、国や産業協会のほうで、何か付け加えることはありますか。よろしいですか。釜萢先生、ありがとうございました。そのほか、御意見等はありますか。よろしいですか、では、特に御質問や御意見がなければ、ワクチン株の選定に関しての審議に入りたいと思います。
 次のシーズンです。感染研のほうから御説明がありました次のシーズンに、インフルエンザワクチンの製造株として選定することが適当と考える株について御意見を頂きたいということで、ここからが審議なのですが、既に幾つかの候補株の説明を頂いておりますが、その候補株に関して、皆様方から何か御意見はありますか。ただいま、感染研の長谷川先生から推奨株を4つ御提示いただきましたが、それに対して、何か御意見はありますか。これもよろしいですか。
 ありがとうございました。では、本日の議論のまとめに移りたいと思います。1、A型のH1N1については、昨年度と同じくビクトリア株(IVR-217)を選定すること。2、A型のH3N2についてはダーウイン株(SAN-010)を選定すること。3、B型のビクトリア系統についてはオーストリア株(BVR-26)を選定すること。4、B型の山形系統については、昨年度と同じくプーケット株を選定することとしたいと思いますが、皆様方、御異論はありませんか、よろしいでしょうか。
(異議なし)
○坂元委員長 では、「異議なし」とのことですので、そのようにしたいと思います。以上で、非常にスムーズな審議が行われましたので、本日の予定していた議事は終了ということになりますが、その他、何か事務局から追加すること等はありますか。
○稲角室長補佐 今月の25日にも、今年のインフルエンザの製造株について、この会議の第8回用に先生方の御予定を押さえているのですが、本日、結論が出ておりますので、それについてはなしということで、そのような形で追って御連絡をさせていただく予定ですのでよろしくお願いいたします。
○坂元委員長 どうもありがとうございました。次回の候補日は、今日決したということで、なくなったということです。
 それでは、本日の季節性インフルエンザワクチンの製造株について検討する小委員会を終了したいと思います。皆様、どうも御審議ありがとうございました。