第7回循環器病対策推進協議会 議事録

厚生労働省健康局がん・疾病対策課

日時

令和4年3月30日(水)13:00~15:00

場所

BasisPoint Lab. 新橋日比谷口店
(オンライン開催)
 

議題

1 開会

2 会長選任及び会長代理指名

3 循環器病対策の取組について

4 厚生労働科学研究班からの報告
 
5 その他

議事

○岩佐課長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第7回「循環器病対策推進協議会」を開催いたします。
 委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 私は事務局を務めさせていただきます厚生労働省健康局がん・疾病対策課の岩佐と申します。協議会の会長が決まるまでの間、進行を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、委員の紹介でございます。基本的には第1期の委員の皆様に継続をいただいているところでございますが、2名の新規の委員がいらっしゃいますので御紹介をさせていただきます。
 宮本委員から小笠原邦昭委員に交代となっております。
○小笠原委員 岩手医科大学の小笠原と申します。よろしくお願いいたします。
○岩佐課長補佐 また、早坂委員から野口百香委員に交代となってございます。
○野口委員 ありがとうございます。
 日本医療ソーシャルワーカー協会の会長の野口です。どうぞよろしくお願いいたします。
○岩佐課長補佐 ありがとうございます。
 他の委員の方々につきましては御継続をいただいておりますので、名簿をもって紹介に代えさせていただきたいと思います。
 本日の出席状況でございますが、大橋未歩委員から御欠席の御連絡をいただいております。また、木澤委員から若干遅れるとの御連絡を頂戴しているところでございます。
 本日は、参考人といたしまして、神戸市立医療センター中央市民病院の坂井信幸参考人、佐賀大学の野出孝一参考人、奈良県立医科大学の今村知明参考人、京都大学の宮本享参考人に御出席をいただいておりますのでよろしくお願いいたします。
 なお、本日は委員20名のうち19名の方が御出席の予定となっておりまして、定足数に達していることを御報告申し上げます。
 続きまして、資料の確認をしたいと思います。議事次第、協議会の名簿、資料1~2-5までございます。それから、参考資料1~4となっておりますので、お手元の御確認をいただければと思います。
 本日、委員の改選を行いまして最初の協議会となってございますので、議題2の「会長選任及び会長代理指名」に移りたいと思います。
 本協議会の運用を定めております循環器病対策推進協議会令第2条におきまして、「協議会に会長を置き、(会長を)委員の互選により選任すること」と定められております。本規定に基づきまして、委員の互選により会長を選任いただきたいと思いますが、どなたか御推薦はございますでしょうか。
 羽鳥委員、よろしくお願いいたします。
○羽鳥委員 前回に引き続き、永井先生に取り仕切っていただくのが妥当ではないかと思います。皆さんの御意見はいかがでしょうか。
○岩佐課長補佐 ただいま羽鳥委員から永井委員を会長にと御推薦がありましたが、ほかに御意見等はございますでしょうか。
 特にございませんようでしたら、永井会長に会長をお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。拍手をいただければと思います。
(拍手)
○岩佐課長補佐 ありがとうございます。
 それでは、永井委員に本協議会の会長をお願いしたいと思います。
 永井会長、引き続き議事の運営をお願いいたします。
○永井会長 ただいま会長を仰せつかりました自治医科大学の永井でございます。
 この協議会は発足してまだ間がありませんけれども、これからいよいよ本番となりますので、皆様方のお力をいただきまして、円滑に進めていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入らせていただきます。会長代理の指名でございますが、協議会令第3条の「会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理すること」に基づき、会長代理を指名することになっております。恐れ入りますが、山本委員にお引き受けいただくということで御了承いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 もし御異議がなければ、山本委員に本協議会の会長代理をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議題3に参ります。「循環器病対策の取組について」に移ります。事務局より説明をお願いいたします。
○桑原課長補佐 事務局でございます。
 お手元の資料1を御覧ください。循環器病対策の取組について説明させていただきます。
 まず、都道府県循環器病対策推進計画の進捗状況につきましてお伝えいたします。
 一昨年10月27日に閣議決定されました循環器病対策推進基本計画に基づき、各都道府県で循環器病対策推進計画を策定することが基本法で定められております。各都道府県の御担当者様、関係者の皆様の御協力のおかげで、ほとんどの都道府県で計画が策定、もしくは近日公表の予定となっております。千葉県、京都府におかれましては、来月以降にパブリックコメントが行われる予定と伺っております。また、奈良県におかれましても、会議体の委員が決まり、計画の策定が進められていく旨を伺っております。
 各都道府県で積極的に循環器病対策に対する取組を進めていただいており、心より御礼申し上げます。引き続き、地域の実情を踏まえた循環器病対策の推進を進めていただきますよう、お願いいたします。
 続いて、令和4年度の循環器病対策の取組の概要についてお伝えいたします。
 先週、国会で成立した予算を含め、循環器病対策の内容についてお伝えいたします。
 本年度に行っていた事業に加え、脳卒中・心臓病等総合支援センターモデル事業を新規で予定しております。
 まず、循環器病特別対策事業では、本年度に続いて各都道府県に国から2分の1助成の形で地域施策の支援を行ってまいります。協議会等の会議体などの運営、人材育成、普及啓発、両立支援、相談支援、多職種連携体制の構築など、基本計画の内容に沿った形で幅広い対策を対象としております。
本事業ですが、本年度は基本計画策定後の初年度でしたが、40都道府県から応募をいただきました。会議体の運営についての応募は多くいただきましたが、その他の対策については、初年度で都道府県の計画策定の前であったこともあり、応募は多くありませんでした。循環器病の総合的な対策を進めるために、来年度、本事業を積極的に御活用いただければと思います。なお、本申請がなかった都道府県において、決して循環器病対策が進んでいないことを意味するものではございません。北海道、秋田県、鳥取県、岡山県などでは、早期に都道府県の計画を策定していただき、循環器病対策に積極的に取り組んでいただいております。あくまで本事業をより有効活用していただきたいという意味合いでお伝えさせていただいております。
 続いて、前回、昨年11月の協議会でも御議論いただきました脳卒中・心臓病等総合支援センターモデル事業を説明させていただきます。3月28日まで、本事業の公募を行っておりましたが、28都道府県から申請をいただいております。先日、協議会の下に設置されました「循環器病総合支援委員会」を中心にこれから選考を行い、4月、5月頃には結果をお伝えできればと考えております。
 本事業では、循環器病の総合的な支援を進めるために、地域の支援の核となる総合支援センターをモデル事業としてまずは全国10か所に設置し、その有効性などを検証することとしています。本モデル事業の有効性が明らかになれば、好事例として横展開を図り、将来的には各都道府県に1か所ずつの設置を目指しております。
 総合支援センターの役割としては、各都道府県と密に連携を取りながら総合的な支援を行っていただくことを考えております。具体的には、患者さんや家族に電話やメールなどでの相談支援を行ったり、地域の病院やかかりつけ医との連携を取りつつ、循環器病の普及啓発や予防、情報提供などを行っていただくことを想定しております。また、将来的に、循環器病のデータベース事業が開始した際には、データ入力の支援なども行っていただきたいと考えております。本事業を通じ、循環器病の総合的な支援を進めてまいります。
 続いて、循環器病に関する普及啓発事業です。
 本年度に続いて、循環器病とはどのような疾患であるのか、循環器病の中には生活習慣などの影響が大きく関わるものが多いこと、循環器病の発症時の症状やその対応など、正しい知識の普及啓発を行っていただく事業となります。本事業につきましては、日本脳卒中協会、日本脳卒中学会、日本循環器学会に互いに連携していただく形で普及啓発を行っていただきます。また、昨年に設立されました日本循環器協会にも、日本循環器学会と協力しながら本普及啓発に取り組んでいただける旨を伺っております。
 続いて、循環器病に関する緩和ケア研修推進事業について説明いたします。2018年度の診療報酬改定から、末期心不全が緩和ケア診療加算及び外来緩和ケア管理料の対象疾患として追加されております。また、2020年度からは、緩和ケア研修の一つとして、日本心不全学会により開催される基本的心不全緩和ケアトレーニングコース、通称HEPTが認められております。本事業では、高齢化に伴い増加している心不全診療の向上を目指して、本心不全緩和ケア研修の推進を行っていただきます。循環器専門医を含め、心不全を診療する全ての医師に本研修を受講していただきたいと考えており、10年間で2万人が本研修を受講できることを目標としています。
 来年度の厚生労働科学研究について紹介させていただきます。
 令和2年度からの継続が2件、令和3年度からの継続が4件、令和4年度の新規が7件、合わせて13件の研究が予定されております。都道府県の循環器病対策推進計画に関する研究や循環器病の再発・重症化のリスク因子に関する研究、救急と循環器の連携に関する研究、循環器病のゲノム・オミックス研究やリハビリテーションに関する研究など、基本計画に基づいて幅広い研究を進めていく予定です。
 続いて、循環器病データベースについてお伝えいたします。
 令和3年度においては、国立循環器病研究センターで仕様書等の作成等を行っていただいていました。これまでのシステムのイメージとしては、患者さんの顕名情報を収集し、その情報を利用することによって、患者さんが循環器病の再発を認めたときに、情報を蓄積されたデータベースから取り出す形で急性期医療への活用を目指すと想定しておりました。しかしながら、この活用には多くの患者さんの情報がこの循環器病のデータベースに入っていなければ、実用面で課題があると指摘されていました。また、循環器病単独でデータベースを個別につくることよりも、他のデータベースなどと連携できる仕組みが求められていると状況もございます。
 国のほかの検討会で電子カルテの標準化などの議論が進められており、その内容をお伝えいたします。先日、3月4日の第8回「健康・医療・介護情報利活用検討会」で示された内容をお伝えいたします。今後、電子カルテ情報の標準化を迅速かつ効率的に進めていくことが求められております。その中で、HL7 FHIRというウェブ技術を活用した標準規格を採用することで、電子カルテ情報の共有、交換を推進していくことが検討されています。また、マイナポータルや民間PHRの拡充・利用促進も検討されております。
 スケジュールとしては、2022年度にHL7 FHIR準拠の電子カルテ情報及び交換方法の整備を、また、2023年度、2024年度以降に機能拡充などが予定されております。この機能拡充の際に、これまで議論をされてきました循環器病の6疾病、具体的には脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、急性冠症候群、大動脈解離、心不全のデータを組み込んでいきたいと考えております。
 現時点でこの連携が想定されている項目としては、医療情報として、傷病名、アレルギー情報、感染症情報、薬剤禁忌情報、救急時に有用な検査情報、生活習慣病関連の検査情報、処方情報の7つが検討されています。また、文書情報として、診療情報提供書、キー画像などを含む退院時サマリー、健康診断結果報告書が検討されています。これらの情報の標準化の後に、循環器病の先ほどの6疾病についても今後の機能拡充の際に連携の検討を進めていきたいと考えております。
 なお、本検討会などで議論されている詳細につきましては、該当のホームページなどを御覧いただけましたら幸いです。
 続いて、令和4年度の循環器病に関する診療報酬改定について御報告をさせていただきます。
 まずは、回復時リハビリテーション病棟入院料に係る内容になります。こちらはこれまで脳卒中、整形疾患、四肢の筋力低下などの廃用症候群が対象疾患とされていました。このたび、急性心筋梗塞、狭心症、大動脈疾患などの心血管疾患も、回復期リハビリテーション病棟入院料の対象疾患に加わりました。
 続いて、地域包括診療料等における対象疾患につきましても変更がございます。こちらは脂質異常症、高血圧症、糖尿病または認知症のうち2つ以上というところが対象でございましたが、それに加えて、心不全、透析を除く慢性腎臓病が加わっております。また、算定要件に予防接種に関する相談も加わっております。
 最後に、今後のスケジュールについてお伝えいたします。
 現在の基本計画が2022年度までを目安とされておりますので、来年度には第2期の循環器病対策推進基本計画を策定していく予定でございます。2022年度中に基本計画を策定し、2023年度に各都道府県で循環器病対策推進計画を策定していただき、2024年度からほかの医療計画、介護計画などと合わせる形で計画を進めていくことを予定しております。
 以上となります。
○永井会長 ありがとうございます。
 それでは、ただいまの説明につきまして、御質問、御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
 峰松委員、どうぞ。
○峰松委員 峰松です。
 7ページで説明していただいた令和3年度の特別事業の申請状況で、会議体が非常にたくさんありましたけれども、それ以外が少なく残念と思いました。令和4年度がどういう展開になるかというのはもちろんまだ分からないわけですよね。それから、これは都道府県単位の事業と理解していますが、場合によっては、全国規模で事業を行って、それを都道府県に反映させるというアプローチもあると思います。このお金は都道府県にだけ配布されるのでしょうか。令和4年度の予測と、都道府県単位なのか、ある一定程度広げてやれるのかという2つの質問です。
○桑原課長補佐 ありがとうございます。事務局でございます。
 こちらの循環器病特別対策事業は、都道府県向けの2分の1の補助金となります。ですので、都道府県の地域施策の支援を行うという形になります。
 また、来年度につきましては、初年度が計画策定前でありまして、議論が進む前の段階での公募となっております。ただ、次年度は、既に計画を策定していただいている都道府県がたくさんございますので、多くの申請をいただけるものと予想しております。
 ありがとうございます。
○峰松委員 了解しました。
○永井会長 磯部委員、どうぞ。
○磯部委員 磯部でございます。
 2点ございます。
 8ページの総合支援センターは大変結構な企画で、来年度に10都道府県でモデル事業を行うということでぜひ進めていただきたいと思いますが、その後、横展開をして各都道府県に1センターを設けるという目標をお伺いしました。内容を見てみますと、相談支援とか講習会、啓発活動、勉強会といったもので、これは人口の多い地域、あるいは面積の広いところで、各都道府県に1か所というのは内容から考えて厳しいのではないかと思います。脳卒中、心臓病はそれぞれ専門性もございますし、面積や人口、専門性等を勘案して施設数については少し柔軟に御検討いただきたいと思います。
 もう一点は、その次の緩和ケア研修推進事業ですけれども、これも大変結構なことでぜひ進めていただきたいのですが、心不全の緩和ケアトレーニングコースを受けられた施設あるいは医師といろいろディスカッションをすることがございましたもともとがんの緩和ケアをモデルとして推進されているものだと思います。ただ、診療報酬の加算要件が病院にとっては非常に厳しくて、常勤精神科医が必要である、あるいは病院の要件も厳しくて、自分たちの病院では到底加算要件を満たすことができないという要望がございます。少しがんと違うこともございますし、がんを通じていろいろ普及してきた部分があると思いますので、実際に推進するためには診療報酬の加算要件を少し柔軟に御検討いただきたいと思います。
 以上です。
○永井会長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 小室委員、どうぞ。
○小室委員 まず、9ページにおいて、循環器病の普及啓発ですけれども、循環器学会とともに循環器協会が協力して行うということに触れていただきまして、どうもありがとうございました。循環器協会の代表理事として、今後、循環器病の普及啓発に尽力したいと思っています。
 私の質問は、19ページです。
 この回復期リハビリテーション病棟入院料に関して「急性心筋梗塞、狭心症発作その他急性発症した心大血管疾患又は手術後の状態」を入れていただいたことは、本当にありがとうございました。大きな一歩だと思います。
 質問は、急性発症した心大血管疾患なのですけれども、恐らく大血管疾患は誰でも緊急症のことだと思うのですが、この前の「心」というところに急性心不全が入っているのかということであります。今、循環器疾患においては、患者さんの多さ、また重症度から考えて心不全が最も重要であると多くの方が考えています。さらに、心不全においては、心筋梗塞とほぼ同じか、またはそれ以上に回復期リハビリテーションが重要だということが言われていますので、非常に重要なところかと思いますが、いかがでしょうか。
○永井会長 事務局、いかがでしょう。
○桑原課長補佐 御質問ありがとうございます。大変貴重な御指摘だと思っております。
心不全につきましては、まだ算定の内容が出たばかりなので、詳細については該当課に確認してまいります。
○永井会長 よろしいでしょうか。
○小室委員 ありがとうございます。
○永井会長 ほかにいかがでしょうか。
 先に横田委員からお願いします。
○横田委員 ありがとうございます。横田でございます。
 説明ありがとうございました。
 私は救急という立場でいつも申し上げているのですけれども、16ページの電子カルテの情報の共有化はぜひお願いしたいところなのですが、共有化できることは非常にありがたいのですが、前回も申し上げたのですが、アクセスする際の迅速性、家族あるいは御本人に承諾を得ないと機能しないというところがあると、特に循環器、脳卒中等では救急医療の場面では時間的な余裕がなかなかないというところです。このシステムをつくるときに救急への対応というところもぜひ考慮していただきたいというのが1つ。
 それから、医療情報で7項目ということなのですが、非常にありがたいのですけれども、これも前回申し上げたのですが、手術歴、特に術式等々がここに入ってくると救急の対応としては非常にありがたいと思います。入る余地があったらぜひ御検討をいただきたいと思います。
 以上です。
○永井会長 ありがとうございます。
 では、羽鳥委員、お願いいたします
○羽鳥委員 日本医師会の羽鳥です。
 先ほども磯部先生から質問がありましたけれども、8ページの総合支援センターなのですが、最初は10程度のモデル事業ということで、そこで問題点を明らかにしていただくのは大変ありがたいのですけれども、やはり地域によっては脳卒中を担っているところ、心臓病を担っているところが異なる場合もあるので、それが認められるのかどうかも10のモデル地区で検討するときには問題点として挙げていただければと思いますので、その辺をぜひ御検討ください。
 それからもう一つ、緩和ケアの話が10ページにありますが、これはやはり在宅をされている開業の先生もかなり大きなテーマとして考えているところなので、この緩和ケアトレーニングについては、ぜひ在宅の先生、開業の先生も巻き込んでやっていただけばと思います。
 そして、先ほどもありましたけれども、電子カルテの共有化の部分ですが、2023年の10月からデータ加算が生活習慣病には加わってくると思います。そういう意味で、九州大学の中島先生とか東大の大江先生が中心にHL7を進めるのだと思いますけれども、できるだけ共通に、開業の先生方も含めて、開業の電子カルテは本当にガラパゴス状態なので、しっかり必要なデータはこういうことだということを早めに明示して、そういうところと連携していただければと思います。
 以上です。
○永井会長 ありがとうございます。
 峰松委員、どうぞ。
○峰松委員 何度もすみません。
 8ページのモデル事業のことです。これは先ほども話が出ていましたが、2億円の予算で10都道府県というのは大体規模が決まってしまっていると思いますけれども、実際に応募されたのが28都道府県ということで、かなりたくさんのところから応募があります。もっと横展開を広げていく必要があると思うので、10都道府県だけというのはもったいないと思います。できれば応募されて落ちてしまったところも何らかの形でこの情報のやり取りができませんかね。もう一つは、令和5年度以降の本事業の規模、展開をもう少し積極的に考えてもらったほうがいいかなと思います。
 以上です。
○永井会長 ありがとうございます。
 小室委員、どうぞ。
○小室委員 20ページですが、地域包括診療料のところに慢性心不全が入ったことも大変大きなことだと思います。心不全患者が大変増えているので、かかりつけ医の先生に心不全患者を見ていただくことは大変重要かと思います。
 そこで、ちょっと心配なのは、ここに挙げてある脂質異常症等、ほかの疾患と比べると慢性心不全の診断治療はほかとは少し違うのではないかなと思います。そこでかかりつけ医の先生のレベルの向上といいますか、教育といったものが必要になってくるかと思うのですけれども、その辺りについてはどのようにお考えでしょうか。
○永井会長 事務局、いかがでしょうか。
○桑原課長補佐 非常に重要な指摘をありがとうございます。地域の先生方、また医師に限らず医療者皆さんへの心不全の知識の普及も、引き続き学会等と協力し、しっかりと普及啓発を行っていければと考えております。
○小室委員 ぜひよろしくお願いします。
○永井会長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。
 よろしければ、次に進めさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 続いて、議題の4「厚生労働科学研究班からの報告」でございます。
 本日は坂井参考人、野出参考人、今村参考人、宮本参考人及び私から5件の報告をさせていただきます。前半3件、後半2件に分けてお話をいただきます。今村参考人からの御報告の後に一度質疑応答の時間を設けます。
 では、資料2-1の説明を坂井参考人からお願いいたします。
○坂井参考人 神戸中央市民病院脳神経外科の坂井でございます。
 私は厚生労働科研「脳卒中の急性期診療提供体制の変革に係る実態把握及び有効性等の検証のための研究」班を代表して発表させていただきます。
 日本脳卒中学会、日本循環器学会は、2016年に「脳卒中と循環器病克服5か年計画」を策定し、2018年にはいわゆる「循環器病対策基本法」が成立したことは皆様も御存じのとおりであります。日本脳卒中学会では、この5か年計画に基づき、2020年から一次脳卒中センターの認定を開始いたしました。一次脳卒中センターは、24時間365日、有効性が確認されたアルテプラーゼ静注療法を施行できる医療機関という定義で認定をしております。2年目の2021年には963施設が認定され、緊急自動車60分以内の人口カバー率は98.8%を確保していることが研究班の調べで分かっております。
 また、機械的血栓回収療法が2015年に有効性が確認され、この2つの重要な血行再建術の実態を先行班と合わせて調査しております。その推移を右側に示しました。
 次に、我々の研究班が発足しました一昨年4月ですが、その直前に、皆様御存じのとおり、新型コロナ感染症が世界中に拡散いたしました。本研究班では、急性期脳卒中診療体制の提供の実態を把握するということが目的でしたので、この新型コロナ感染症の脳卒中急性期医療に与える影響を調べざるを得なくなり、全国の一次脳卒中センターに繰り返し回答を求めました。
 具体的には、6つの医療内容、いわゆる脳神経の一般外来、急性期脳卒中診療、予定の血管障害の外科手術、緊急の手術、予定の血管内治療、緊急血管内治療への影響、具体的にはコロナ拡散前の2019年と比べてA影響がない、B軽度の影響、C中等度の影響、D重度の影響、E停止の5段階に分けての影響調査を行いました。それに加えて、脳卒中の3大病型、すなわち脳梗塞、脳出血、くも膜下出血と2つの血行再建術の月別の実績を調査いたしました。回答率は、60%程度にとどまっておりますが、我が国の実態をある程度は反映しているものと理解しております(スライド2)。
 昨年も報告しておりますが、2019年の青の線と、2020年のコロナが始まってからの赤の線の月別の3大病型の実績です。一昨年の4月、5月のロックダウン、それから第3波が来た12月に、赤の線が前年実績を下回っていることが示されています(スライド3)。
 次に、昨年2021年の実績を緑の線で加えますと、コロナ前にほぼ服していることが分かっております(スライド4)。
 詳細な分析ができております。コロナの拡散前2019年と拡散後2020年の分析結果をお示しいたします。
 コロナ拡散前の症例数で脳卒中センターの規模を3つに分けました。1施設当たり急性期脳卒中の入院患者数が、年間231人以下が小規模、232人~378人が中規模、379人以上が大規模施設に分類されております。この分類に基づきますと、コロナ拡散前とコロナ拡散後で、大規模施設のみが有意に脳卒中入院患者数が減っていることが分かります(スライド5)。
 次は、コロナの発生と脳卒中急性期入院の関係を分析しました。感染拡大期と安定期では、国全体で拡大期に有意に脳卒中入院患者数が減っています。都道府県別でたくさんのコロナ患者が発生し、大きな社会制限が行われた北海道、東京、神奈川、大阪、沖縄の5都道府県では人口100万人当たりの感染者数が2,300人以上でしたので、それ以下の42府県と比較しました。多く患者が発生した5都道府県ではそれ以外の府県より脳卒中入院数の減少が著しく、またそれぞれ感染拡大期に患者さんが有意に減っていることが分かっております(スライド6)。
 我々の班では、継続して入院患者数の増減を見ておりますが、コロナの1波、2波、3波、4波、5波、6波はどれを見ても、コロナ患者さんがたくさん発生している月に脳卒中の急性期入院数は全国では減っていることが分かってまいりました(スライド7)。
 次に、オミクロン株が今年になって急速に拡散いたしました。このオミクロン株は、感染力が非常に強く、医療従事者が濃厚接触指定により、医療業務に従事できないことが特徴的であります。そこで、1月、2月に、全脳卒中センターに脳卒中救急受入れを制限した日があるかどうか、搬送を断ったことがあるか、救急患者を受けられずに転送したことがあるか、濃厚接触指定で脳卒中医療者が勤務停止したことがあるかを尋ねました。まだ回答数が少なく、正確な実態を反映しているかどうか分かりません。なお一次脳卒中センターでは、35%~40%ぐらいが重症までを受け入れており、コロナ患者さんを受け入れていない施設は20%にとどまっていますが、オミクロン株の影響がさらに大きくなった2月には1月より大きな影響を受けたことがこのグラフで分かります(スライド8)。
 6つの医療機能、一般神経外来、脳卒中救急、予定手術、緊急手術、予定血管内治療、緊急血管内治療別にコロナ発生前と比べて同水準の医療を維持できていたのは、1月でおおむね6割台、2月にはそれがさらに低下していることが分かります。また、重度の影響を受けたものも、1月より2月がさらに大きくなっていることが分かります(スライド9)。
 ただし、この回答は少しでも診療に影響があった場合、A水準にはならないという回答になることに留意いただきたいと思います。また、A水準の中には、通常以上に脳卒中診療を担当しているところも含まれます。重度、停止というものが診療を行っていないということではないことにも留意は必要です。
 ちなみに、私が従事しております神戸市では13の脳卒中センターがありますが、脳卒中センター間の連携で、発生した脳卒中患者さんが行き場を失い、転帰が悪くなったというような事例は私が知る限りございません。
 以上、私の班で、今まで調べた結果を御報告させていただきました。
○永井会長 ありがとうございます。
 続きまして、資料2-2の説明を野出参考人からお願いいたします。
○野出参考人 それでは、資料の共有をさせていただきます。
 佐賀大学の野出でございます。私からは、2つの研究の御紹介をさせていただきます。
 まず「新型コロナウイルス感染症拡大による受診控えなどの状況も踏まえた循環器病の医療提供体制の構築に向けた研究」でございます。
 研究代表は私でございますが、脳卒中学会からも坂井先生に分担研究者として御参加いただいているので、先ほどのデータと少しオーバーラップする部分もございます。今回は循環器のほうだけのデータを御紹介いたします。
 これは循環器疾患診療実態調査、JROAD-DPCを用いた解析でございますが、対照期間としては流行前のこの時期です。感染拡大期間は2020年の1月~3月のデータを抽出しまして比較をしております。
 主要エンドポイントは、循環器急性疾患の入院治療ということでこの4疾患、副次はこのような重要度の高い待機的な入院治療ということで、こういった疾患の発症の評価をしてございます。
 循環急性疾患の入院治療に関しては、平均すると感染拡大期間は16%減少しているということです。特に、急性心不全、破裂性大動脈瘤、急性心筋梗塞はそれぞれパーセンテージが低下したということでございます。
 一方で、循環器疾患の予定入院治療も平均すると11%減少しております。最も減少しているのが、大動脈瘤の予定入院治療、心臓弁膜症、下肢閉塞性動脈硬化症がそれぞれ15%程度減少しておりますが、静脈血栓塞栓症に関しては逆に18%増加をしているということが結果として得られてございます。
 これはまた違うデータベースを用いまして解析をいたしましたが、JMDCは母集団が1400万人ということで、健保のレセプト及び検診データを用いたデータベースでございます。これに関しては、バイパス手術、バルブ、大血管の手術後にどれぐらいリハビリテーションが行われているかということを評価した検討でございまして、3,700人のデータを解析しています。
 結果的には、結論から申し上げますと、2020年以前と感染拡大時期を比較すると、外来の合計リハ日数が有意に低下しているということでございまして、主に外来のリハ件数が減少したというデータが得られてございます。
 それから、循環器関連施設への主治医に対して、心疾患の受診控えが起こっているかということをアンケートで調査をしています。受診制限または患者自身の受診控えよって、健康状態の悪化の症例を経験したかというアンケートをいたしましたところ、心不全では44%が悪化を経験した。虚血性心疾患では約30%の方が悪化症例を経験したというデータが得られてございます。不整脈に関しても17%というデータになります。
 これは、また少し違う解析で、CLAVIS-COVIDというコホート研究の発表もしてございますが、循環器関連施設において、特に循環器疾患のハイリスクの方でCOVID感染症に関する予後調査でございます。第1波におきましては、院内死亡が16%と非常にハイリスクのモダリティーであったわけでございますが、特に第1波に関しては、デルタ株でございますが、高齢者のCOVID感染症でかつ循環器のハイリスクの方が約15%を超える死亡率であったというデータも得られてございます。それから、特にBMIと院内死亡率が相関するということで、BMIが30の方が3倍のモダリティーであったことも分かってきております。
 結果としては、JROAD-DPCの解析に関しては、感染拡大時期は循環器急性疾患の入院治療は16%減少した。ただ、予定入院治療は11%減少しましたが、静脈血栓塞栓症は18%増加をしたということになります。
 JMDCデータベースに関しては、心臓の手術後の外来リハビリテーションの日数が減少したということと、アンケート調査においては、受診制限、控えによる健康状態悪化症例を心不全では44%、虚血性心疾患では約30%が経験したという回答がございました。
 これが前半のCOVID感染による受診控えによる影響の報告でございます。
 次は「COVID-19後遺障害に関する実態調査」ということで、研究代表者は呼吸器学会の理事長の横山先生でございます。これのメインは呼吸器疾患の影響を見る研究でございますが、分担研究者として私どもが参画をし、心臓への影響ということで心不全や心筋炎の評価を行った研究でございます。
 TRACE-COVIDという研究でございまして、中等症以上のCOVID-19の患者さんにおいて、慢性期のLong COVIDの影響を見た研究でございます。特に全く血管障害がないという方ではなくて、入院中、もしくは退院後3か月までに、BNPあるいはNT-proBNPがあるレベル以上の方、もしくは高感度トロポニンが上昇した方を対象にしています。すなわち、今BNPが100以上、NT-proBNPが300以上か高感度トロポニンが上昇している方に対して、退院3か月後に心臓MRIを評価するという研究でございます。
 当初は150症例の予定であったわけですけれども、BNP等でスクリーニングをするとかなりこの該当症例が少ないということで、最終的には31症例の解析をしてございます。
 一次エンドポイントが心臓MRI検査において、遅延造影において左室または右室心筋に造影効果がある、あるいは左心機能低下または右心機能低下がある、あるいは心膜の肥厚や造影効果がある、いずれかがあるというのをエンドポイントにしております。
 結果としては、左室の異常造影効果が26%、左心機能低下が13%、右心機能低下が19%ということで、上記のいずれかが陽性ということで評価をしますと、42%が陽性であったということが得られてございます。そのほかはNative T1異常が29%、心筋の浮腫が30%、MRI上で心筋炎の定義に該当する症例に関しては31症例中の8例の26%が該当することになってございます。
 今までの報告と比較をしますと、こういったメタ解析を見ますと、これはBNPやトロポニンなどでスクリーニングしている解析ではございませんが、従来の海外のメタ解析の成績とほぼ同じような結果でございました。
 最初『Journal of Cardiology』に報告されたのはかなりハイレートだったのですが、それ以降のメタ解析と海外のデータとコンパティブルであるというデータが出てございます。
 以上、このTRACE-COVIDに関しては、中等症以上のCOVID感染者において、31症例中3か月後のMRI検査でLGEの異常が26%、機能低下が13%~19%あった。1次エンドポイントの心障害は42%で認められた。心筋浮腫が32%、MRI上で心筋炎の定義に該当する症例は8例、26%でございました。
 現在、厚労省のほうでLong COVIDということで、循環器症状へのアプローチということで、前回の第1回目のこのガイドラインでは、BNPあるいはNT-proBNPをマーカーにして、これ以上があれば、循環的にコンサルトということを提案してございますが、こういったところで、今後、Long COVIDに対する心筋炎、あるいは心不全に対する検討が必要であることを指しているデータではなかったかと思います。
 以上、2つの厚労科研の報告をさせていただきました。
 以上でございます。
○永井会長 ありがとうございます。
 続いて、資料2-3について今村参考人からお願いいたします。
○今村参考人 奈良医大の今村です。
 まず、資料を共有させていただきます。
 私は、厚労科研で、自治体が医療体制をつくるためにどのような指標が好ましいかという、活用できるような指標を作成する研究班をやっておりますので、その成果について御報告させていただきたいと思います。
 我々の研究グループは、主には、NDBなどを用いた医療指標の作成を行っております。
 まず、大きな研究班として医政局の医療計画全体を考える研究班がございまして、こちらのほうで、医療計画や医療構想の基になる数字を、NDBなどを用いて政策指標になるようなものを作成しております。
 例えば、第7次医療計画であれば、5疾病・5事業、在宅の指標を作成しております。その中で循環器系でいうと脳卒中と心筋梗塞などの2つについて指標を作成しておりまして、前回の7次医療計画の際には、例えばAMIのインターベンション実施率などをNDB由来で作成していたり、90分以内の冠動脈再開通達成率の数字をNDBで分析したりしております。
 こういったものを、第7次医療計画でこちらは脳卒中、こちらは心筋梗塞ですけれども、ストラクチャー、プロセス、アウトカムに分けて幾つかの政策指標になるような式とその数字を作成して提示している状況でございます。
 これに続きまして、健康局のほうでも循環器に特化した医療体制を自治体がつくっていくに当たって、いい指標をつくれないかということで、別途、研究班が立ち上がっております。その中で、まずNDBそのものを集計するグループを我々が統括しておりまして、心血管系と脳卒中系の2つの分担研究班が立ち上がって指標作成をしております。
 心血管系につきましては、日本循環器病学会と連携の下に阪大の坂田先生が中心になって指標作成案の作成をいただいております。また、脳卒中班につきましては、日本脳卒中学会と連携して、奈良医大の中瀬先生に指標作成の案を作成していただいております。
 この指標の作成の前段として、NDBの分析の現状について簡単に御説明したいと思います。
 まず、NDB、ナショナルデータベースのレセプトは過去10年分ほどが保管されておりまして、現在、210億枚のレセプトがここに保管されております。我々の研究班では、大体8年分の生データをいただきまして、このデータベース化を進めております。解析可能なデータにしていくということです。
 まず、ぶつぶつに切られたデータでもらうのですけれども、それを連続データとして名寄せするということをいたしております。そして、データ期間分の患者追跡が全体に可能になっております。そして、レセプトから死亡情報を拾うことができるようになりまして、大体医療管理下で亡くなった方の95%ぐらいまではレセプトで死亡を確定することができるところまできております。これを合わせますと、長期間追跡が可能となって死亡も分かりますので、コホートデータ化されてきているという状況でございます。
 これを使って、政策指標にする際にエビデンスをつくるとしたら、標準化死亡比率の計算などができるようになっております。こちらは、例えば、あるオペをした後に、その1年後、3年後に死んだ人の数と一般の人の死亡率と比較したときに、死亡率が何倍上がるかという指標であります。この率が計算できるようになったので、あるイベントの後の死亡の状態を比較することができるようになっております。
 このような技術を使いまして、まず心血管班から指標案を御提案いただいていますので、その内容について御説明をいたします。
 心血管班からは3つほどの新しい指標案をいただいております。
 まずは、AMIに対するPCI実施率、心血管リハの実施件数、大動脈疾患の手術件数の3つであります。それぞれについて、分析の結果のエビデンスを求めましたので、そのことについて触れていきたいと思います。
 AMIに対するPCI実施率ですが、JROADを用いた分析の中でPCIの実施率と院内死亡率の間に、PCIの実施率が高いほど死亡率が低いという関係を見いだしております。JROADが全データではないということから、NDBでもほぼ全てのPCI患者さんを追いかけることができるのですが、NDBでも同様のPCI実施率と死亡率の掛け合わせをしております。
 ただ、NDB上では、心筋梗塞であるかどうかというものの明確な定義がありませんので、幾つかの定義を作成いたしまして、ほぼ心筋梗塞であることが確定できる定義をつくりましたので、それに対して院内死亡率、PCI実施率の関係を見たところ、実施率が高いほど死亡率が低いことを見いだしております。
 次に、心血管リハについても学会のほうから、このエビデンスレベルは高いという御報告をいただいております。それの確認のような作業になるのですが、NDB上でリハを実施した方としなかった方、例えばAMIの後の死亡率をカプラン・マイヤーで見ても明らかに差が出ているという状況であります。
 また、政策指標としてこのリハビリテーションを実施した場合に、各都道府県別に見たときに、実施件数と死亡比率を並べてみたところ、一定の相関があり、これは政策指標としても有効であろうと考えております。
 次に、大血管疾患に関する手術件数で、こちらもJROAD-DPCで先行研究として既にエビデンスがあるのではないかという研究成果をいただいております。これに対して我々のグループでは、この大動脈瘤の切除率の実施件数が人口10万対で多い県と少ない県に分けて、そちらの中でこの大動脈疾患に対してのSMR標準化死亡比を出してみました。その結果、人口10万対で多いところほどSMRが低いという結果が出ておりまして、この手術件数は指標として十分役に立つだろうと考えております。
 続いて、脳卒中班の指標案について御説明をしたいと思います。脳卒中班からは、7つの指標案をいただいております。これについては順次御説明を申し上げたいと思います。
 まず、脳神経内科・外科の医師数であります。脳神経内科・外科の医師数の多い県と少ない県を比較いたしましたところ、多い県のほうがSMRも低いということが言えておりまして、この医師数が指標として使えるのではないかということであります。tPAの実施可能施設では、医療機関でtPA実施件数があるところとないところを脳卒中の患者さんのSMRで比較したところ、SMRが高いということ、そして、都道府県別で見たときにも都道府県別に受入れ可能施設が多いところほどSMRが小さいということが分かっております。
 次に、血栓の回収療法の実施可能施設数で見たときに、実施実績のある医療機関のほうがSMRは短くて、都道府県別で見たときにもSMRが平均以上の県ほど低いということが言えております。ですので、各県の政策指標としても有効であろうと考えています。
 血栓の回収の療法実施件数につきましては、この医療機関の実施件数の平均以上と平均未満で比較いたしました。この結果、平均以上の医療機関のほうがSMRは低いことが言えております。
 また、クリッピング数についても同様に、医療機関でクリッピング件数の多いところと少ないところを比較したところ、平均以上のところのほうがSMRは低いという結果が見てとれております。
 コイル塞栓術につきましても同じでございまして、平均以上を超えて実施している医療機関のほうがSMRは低いという傾向が見てとれております。
 リハビリテーションの可能実施施設は平均施設のほうでやっておりまして、施設数が多いほどSMRが低いことが結果として出ております。
 以上、心血管班から3つ、脳卒中班から7つの新しい指標案を御提示いただきまして、こういったものに対してエビデンスを示しまして、自治体が利用可能な指標となり得るだろうということを考えております。
 これを実際に都道府県に使っていただく際には、医療計画作成用に医政局からデータブックというものが配られておりますので、ここに実際の都道府県別データを載せて各都道府県が使いやすくしてあげるなどの配慮が今後、望まれると考えております。
 御説明としては以上です。
○永井会長 ありがとうございます。
 それでは、今の3件の報告について、御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
 磯部委員、どうぞ。
○磯部委員 磯部です。
 最初の坂井参考人と野出参考人からの資料を拝見して、コメントと厚生労働省にお願いがございます。
 COVIDの流行の波が来るに伴って急性期医療が圧迫されることは、2020年の春先の流行のときからずっと言われているところです。特に坂井参考人からのデータで急性期病院がコロナを受け入れて診療が圧迫されている。それから、野出参考人のほうにもございましたように、急性心筋梗塞の入院が減っているといったデータを拝見しまして、一昨年からそうなのですけれども、特に循環器疾患、脳卒中、心筋梗塞、大動脈疾患は冬場に非常に発生数が高くなっています。第6波におきましても、東京都のCCUネットワークでは、73病院のうち7施設~10施設が常にCCUを閉鎖しているという状況でございました。私どもの病院も実際に40か所、50か所、70か所の診療が断られて、普通の心不全が遠方から運ばれてくる、あるいは山梨県から足の動脈閉塞の患者さんが何か所も断られて来られるということが常態的に発生しておりまして、これは一昨年の春先の流行のときから状況は変わってございません。
 ご承知の通り、循環器病対策推進基本計画にはコロナ診療と循環器診療の両立を図ると明記されております。そこでお願いは、特に循環器系の救急医療というのは守っていかなければいけないし、COVIDがあってもなくても同じ頻度で発生いたしますので、やはり急性期病院の機能を守るように病院の機能分担をしっかりしていただいて、急性期病院をコロナに影響されないような形の施策を取っていただきたいと思います。私どもの病院も普通の中等症のコロナ患者さんの受入れをしておりますけれども、それによって急性期医療の機能が非常に損なわれます。これからまた波が来ると思いますし、ぜひ今後改善していただきたいということをお願いしたいと思います。
 以上です。
○永井会長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 山本委員、どうぞ。
○山本委員 山本でございます。
 坂井先生が示されたデータでお聞きしたいのですけれども、たしか前期のこの会でも坂井先生はCOVIDの影響を少し出しておられたと思いまして、その際もやはりCOVIDがすごく流行ってくると、脳卒中の入院患者が減るということを出されていて、その時点では自然な経過というか、裏腹な関係にあるのか、あるいは人為的な影響なのかというところを、前回はどちらかというと人為的な影響というよりは、恐らく患者さんの行動が変わるとかということで発症率が下がったのかもしれないなという考察をされたような記憶があるのです。
 今回、特に御発表のときにあまりはっきりはおっしゃらなかったのですけれども、特に脳出血やくも膜下出血のような最初に重症度がどんと上がって発症する方ではあまり変化がなかったのに、虚血性の脳卒中で特に変化が見られているというところが、私自身は人為的な影響というか、要は受診控えのようなものが特に虚血性の脳卒中の方にはあったのかなという気がちょっとしたのですけが、坂井先生御自身はこのデータからどういうふうに考察されているのかちょっとお聞きしたいと思いました。
○坂井参考人 山本先生、ありがとうございます。
 その点については、気にはなっているのですけれども、科学的に正確にお答えする材料はございません。ただ、先生の考察のとおり、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血とも急性発症の病気ですので、たとえコロナが非常に拡散している時期でも病院に来ないということはないと思います。確かに、個別の医療機関では非常に機能制限されていますけれども、何とかみんなでカバーし合っていると思っていますので、中等症以上の脳卒中患者さんの実態は全ての脳卒中センターが報告すればある程度把握できると思います。一方、軽症脳卒中が脳卒中センターに来ていない可能性はありますし、本当に脳卒中発生が減ったのかもしれません。まだ根拠を持ってお答えする材料がございません。
○永井会長 よろしいでしょうか。
 ほかにいかがでしょうか。
 小室委員、どうぞ。
○小室委員 野出先生に御質問したいと思います。
 13ページのTRACE-COVIDに関する質問です。
 BNPやトロポニンが上がった方にMRIを撮ったら、かなり高率に心筋炎だったという結果だと思うのですけれども、そもそも何人を調べたところBNPやトロポニンが上がって登録されたのでしょうか。
○野出参考人 ありがとうございます。
 この方は潜在性で顕在的な心不全や心筋炎の症状がなかったということになります。今、手元にはっきりとしたデータはございませんが、スクリーニングをしてもBNPが上昇した方が少なかったということがあります。約10%もない8%ぐらいでBNPが上がっていたことになりますので、非常に少ない症例数ではないかと思っています。
○小室委員 でも、COVID-19感染症の8%でBNPかトロポニンが上がっていて、そのうち2~3割がMRIで心筋炎だったということでよろしいですか。
○野出参考人 そうですね。無症候性、いわゆる潜在的な心不全とか心筋炎ということになるかなと思います。
○小室委員 MRIで異常だった方は、何か症状はあったのでしょうか。
○野出参考人 いや、この方は全く症状がなかったのです。
 いわゆる心不全症状とか心筋炎症状がなくて、BNPでスクリーニングした結果、画像診断上、このような診断に至ったということになります。
○小室委員 そうしますと、心筋炎運動が禁忌ですので、やはりCOVIDに感染した人はトロポニンやBNPを調べて、もし上がっている人は運動を控えることが必要かなと思いました。
○野出参考人 そうですね。ありがとうございます。
○小室委員 ありがとうございます。
○永井会長 ほかにいかがでしょうか。
 私から今村先生、NDBデータの分析ありがとうございます。
 リハビリで確かによくなってはいるのですが、これは結構議論が難しくて、状態がよいのでリハビリができたということではないかと言われてしまうわけです。NDBデータからその辺りの背景の重症度の違いを補正する必要があると思うのですけれども、それは何かなさっていますでしょうか。
○今村参考人 ある程度クリーニング期間とかも設けていまして、何日か以内に亡くなった人は外すとかということはしております。ですので、できるだけ前提条件がNDBでそろえられる限りはそろえるということはやって比較しております。ただ、どうしても重症度などのデータがないのでその部分は弱い部分があります。ですので、JROADとNDBで同じような傾向が出たら大体いけるのではないかと理解して進めております。
○永井会長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それではあと2人、宮本参考人と私から報告させていただきます。資料2-4の説明を宮本参考人からお願いします。
○宮本参考人 宮本でございます。それでは、画面共有をさせていただきます。
 この研究班は「循環器病に関する適切な情報提供・相談支援のための方策と体制等の効果的な展開に向けた研究」ということで、実際に脳卒中あるいは循環器病の患者さんに対して、情報提供・相談支援をどのようにやっていくかというビジネスモデルを研究するという研究班で、日本循環器学会と日本脳卒中学会が共同で応募して採択されたものです。3つのワーキング脳卒中のワーキング、循環器のワーキング、患者支援ワーキングで検討を行いました。
 まず、患者支援ワーキングの検討結果を申し上げます。海外文献のレビューではソーシャルワークの支援あるいは地域コミュニティーにおける心理的社会的介入は抑うつ症状の改善、本人・介護者のQOL、コーピングの改善、ACPについて効果があるという結果でした。
 それを基に、日本医療ソーシャルワーカー協会で、目標をスライドのように13、その目標を達成するために必要な36の支援プログラムの御提案をいただきました。この36のプログラムについて、日本医療ソーシャルワーカー協会の会員5,541名にウェブアンケートを行い、1,339人からお答えをいただき、現状を把握しました。
 現状把握としては、脳卒中については、回復期リハビリテーション病棟の役割が大きい。そして、アウトリーチやネットワーキング、地域資源の開発などはなかなか実施が難しい。脳卒中患者のニーズに応えるためには相談支援専門職の配置が重要である。
 心疾患については、相談支援は脳卒中と異なり急性期病院において主に実践されている。やはりここも地域に目を向けた実施ということについては限界や障壁があって、脳卒中と同じように相談支援の専門職の配置が重要であるという結論になっています。
 すなわち、対患者・対家族といった院内でのミクロ支援の実施率は高いのですけれども、ほかの機関あるいは地域といったもう少し広い支援については、大事だという認識なのですが、実施はなかなかできていないという特徴がございます。そうしますと、そういうことを実施するためには、地域の多職種、多機関との連携が課題であるということで、適切な相談窓口の設置とソーシャルワーカーの配置が望ましいという結論でございました。
 次に、循環器ワーキングの検討に移ります。循環器病の特徴と、循環器疾患患者に対する情報提供・相談支援の特徴をまとめていただいております。すなわち、身体・認知、精神的、社会経済的な問題がある。あらゆる患者のライフステージに合った支援が必要であって、情報提供が必要である。療養支援、再発あるいは増悪などに対する療養方法に関する情報提供・相談支援、在宅や施設での生活の継続、循環器疾患の特徴でございますけれども、医療機器管理に関する情報提供・相談支援が必要であるという特徴が述べられています。
 循環器疾患の施設において施設調査をしていただきまして、相談窓口においてどういう現状と課題があるかというアンケート調査では、医療ソーシャルワーカーあるいは看護師といった医療職の増員と、行政サポート等が必要という結果でございました。
 
 次に、脳卒中ワーキングの検討結果を御紹介いたします。脳卒中ワーキングのほうでも、脳卒中患者の相談支援に関する文献レビューを行いました。そこで幾つかの結論が出まして、まず、介護、リハ、心理サポートは医療者側からのアプローチも、患者側からのニーズも非常に頻度が高い。一方で、就労・訪問サービスについては情報提供が不十分である。
 2番目としては、日本ではもう半分ぐらいは相談支援の半数ぐらいに看護師が関与している。海外では多職の種関与が進んでいるという特徴が分かります。
 3番目に就労支援に関しては、患者側と雇用者側の認識の乖離が大きく、コーディネーターの必要が高い。また、視覚障害など特化した対応が必要な障害に対するサポートが不足しており、サポート、コーディネーターの必要性が分かってまいります。
 4番目に患者・介護者は医療サービスとソーシャルケアサービスの両方が不足しているだけでなく、アクセスしにくいと感じているということで、多職種が協同するワンストップの総合的な情報・相談支援の窓口が必要であるという結論になります。
 5番目としては、患者と介護者・パートナーとの関係の心理的、社会的サポート、患者だけではなく介護者をターゲットとしたサポートの重要性ということが分かりました。
 次に、脳卒中ワーキングの班員の府県、宮城県、栃木県、京都府、熊本県の一次脳卒中センターを対象としたアンケート調査を行い、ほぼ全施設から返答をいただきました。退院前カンファレンスをしているとか、退院前協同指導料を徴収しているとか様々なお答えいただきまして、それをまとめたのが右の円グラフになりますが、回復期・生活期まで含めた情報共有や支援体制が既にできているという答えは3分の2ぐらいでした。反対に言いますと、3分の1ではできていない。これはその体制があるかないかだけの設問ですので、その精度まではなかなか問えていないということになりますが、まだまだ整備が必要だということがこのアンケート調査からも分かりました。
 心臓と同じようにどういうところが必要かといいますと、やはりMSW・PSWの増員、事務員の増員、看護師の増員というマンパワーのこと。それから、とりわけ医師が相談支援に協力しなければならない。そして、診療報酬を追加してもらうなどの行政のサポートが要るだろうという結果になっております。
 ここで、本研究班と日本脳卒中学会との連携について御紹介したいと思います。
 日本脳卒中学会では、厚生労働省の研究班に学会として応募するときに、学会のプロジェクトチームとしても活動するという体制を取っております。これは、研究班で行政的な提言ができても、それが実働するためには臨床現場のアカデミアとの連携が不可欠という認識です。本研究班は、学会の相談支援ワーキングとしての位置づけもあり、急性期から回復期への相談支援について取りまとめたということになります。
 同時に、公募がありました医療介護の連携に関する別の研究にも、日本脳卒中学会と日本循環器学会で協同して応募したのですが、残念ながらそちらは採択されませんでしたので、日本脳卒中学会独自のワーキングとして、医療介護の連携ということで回復期から維持期への医療介護連携について、同様に文献検索あるいはアンケート調査、提言などをまとめつつあります。
 実際には、これらの提言をしまして実行するには、先ほどの文献レビューあるいはアンケート調査からも分かりますように、多職種との連携が必要になってまいります。そこで、脳卒中の分野では昨年末に日本脳卒中学会が中心となりまして、日本脳卒中協会、神経系の看護学会、医療ソーシャルワーカーの日本医療ソーシャルワーカー協会、ケアマネージャーの日本介護支援専門員協会、リハビリ系の作業療法士協会、理学療法士協会、言語聴覚士協会、さらに薬剤師会や日本栄養士会など、日本の脳卒中、特にケアに従事する団体が社員となるような一般社団法人を設立して、横串を刺すような形で組織的な多職種連携を始めております。
 日本脳卒中学会では、既に全国で200余りの一次脳卒中センターコア施設が認定されていまして、そこに、2022年度に脳卒中に関する相談窓口を設置することが以前から決まっております。この脳卒中相談窓口が、患者さんあるいは御家族への情報提供及び相談支援をする。そこでそういう業務をする多職種の人材を育成する。それによって、シームレスな医療の提供をしていくという事業展開でございまして、その中の一つが今回の研究班で検討した内容になっております。
 脳卒中相談窓口に求められる業務をこの研究班で急性期医療機関から退院する患者さんを主な対象として検討しました。1)療養指導、2)情報提供・相談支援と関係部署との連携、そして、3)としては経済的、心理的、社会的な困り事に関する相談というように業務を取りまとめました。
 そして、先ほど御紹介いたしました日本脳卒中医療ケア従事者連合の社員団体の皆様の御協力をいただきまして、脳卒中相談窓口マニュアルというものをすでにまとめました。つまり、脳卒中相談窓口ではどういう業務を行っていくかというテキストを本研究班のプロダクトとしてまとめたことになります。実際に、3月から行われております日本脳卒中学会の学術集会では、多職種を対象とした脳卒中相談窓口の講習会を行っておりまして、日本脳卒中学会が主導して、脳卒中療養の相談に立ち会うような脳卒中療養相談士という人材を育成しつつあるところでございます。
 これが研究班としての報告でございます。以上です。
○永井会長 ありがとうございます。
 最後に、資料2-5の説明を私からさせていただきます。お手元の文字が多い資料を御覧ください。
 これは、厚生労働行政推進調査事業費補助金ということで、特別研究事業を私どもから提案してお認めいただいたものであります。私が代表を務めて、分担者、協力者は1ページ目の表紙にある方々に検討、また報告書をいただきました。
 報告書は、それぞれの先生方からかなり内容の濃いものをいただきましたので、それぞれ報告書としてまとめ、また私が全体を取りまとめました。特に循環器の基本計画に述べられている考え方、脳卒中、心臓病共通の循環器病特有の病態を踏まえて、研究の重要性について、全体のまとめのなかで私が執筆いたしました。
 その前に、先ほどもコロナと循環器病の話題がありましたので、班会議で私が提示させていただいた資料をここでお示ししたいと思います。これは、私が自治医科大学の客員教授である大林千一先生にお願いして公表資料を図にしてもらったものです。
 ページ番号を入れずにすみません。1ページ目の裏に月別死亡者数の2020年と2021年の違いを月別に表示しています。このオレンジの2020年というのは非常に特異な年で、死亡者が減少した年です。恐らくコロナを警戒して生活を自粛したのではないかという気がいたします。受診控えだけではないだろうと思います。
 グレーは昨年です。10月以降、11月、12月がまだ速報値ですので、取りあえず破線で書いていますが、自粛が解けたせいか死亡者は2020年に比べて随分増えました。これは環境因子を見ていく上で重要なデータではないかと思います。
 その次は循環器病ですが、脳卒中と心臓病を合わせて循環器疾患を見ますと、確かに昨年は少し減っていますが、大体の傾向をこれで見ていただければと思います。重要なのは、循環器疾患は冬にたくさん亡くなっているということです。これは明らかに環境因子によるもので、約1.5倍の違いがあります。きちんと対策を立てていけば、背景にある重篤化する冬場の循環器疾患というのは減らすことができる。環境因子の影響を見ることができますし、対策も可能なのだろうと思います。
 次は3つ並んでいますが、一番上が脳血管疾患、脳卒中です。先ほど議論がありましたが、白いひし形のマークは2020年です。コロナ1年目です。この年は確かに5月、6月、7月、8月の脳卒中による死亡者が減っています。ですから、これを見ても受診控えではなくて、生活のストレスが逆に少し軽くなったのではないかと思われます。もちろん冬場に多いということもありますので、こうした社会生活上のストレスとか気候の問題、気温の問題で対策も可能ではないかという意味で重要です。
 次が大動脈疾患で、これが夏と冬の差が一番大きい。約1.7倍の違いがあります。
 次は高血圧を除く心疾患です。これも1.75倍ぐらいの夏と冬の違いがありますので、こうしたことをよく見据えて我々は循環器病対策を考えるべきと思います。
 次は下のほうまで行っているちょっと長い図ですが、2020年と2021年、自粛が解けたのか、今度は社会生活の再開ということだろうと思いますが、それで死亡者が増えている。そのときにどういう疾患が増えたかということでございますが、一番下に「その他の特殊目的用コード」とあるのはコロナです。コロナによる死亡は確かに1万4000人増え、同時に老衰が増えています。
 真ん中辺の7,696名が心疾患、その下に脳卒中、脳血管疾患で、合わせて9,000名が2020年と2021年の間で増えている。これも環境因子あるいはストレスによるものであるならば、ある意味では対策が取れるということです。
 循環器病対策の研究ということで、次の文字の資料になります。御覧になりにくいと思いますけれども、ゴシックで書いてあるところを見ていただければと思いますが、これは循環器病は、がんと違うということを世の中の人に分かっていただく必要があると思い、循環器病の特質、特有の病態を踏まえて、その上でどういう研究が必要であるかということを述べています。
 がんですと、がんになるかならないか、5年たって治ったか治らないかという区分が比較的明確ですけれども、循環器病の場合には一生付き合う病気です。若いときは循環器病は少ないかもしれませんが、高齢になれば誰でも循環器疾患を抱えています。心機能が低下すれば心不全になるわけですし、動脈硬化は避けられません。そういう一生付き合う、また病気とともに生きていくという疾患の特異性を踏まえる必要があります。また状態のよいときと悪いときがあるわけですから、病態の違いに応じた管理の在り方が必要です。がんとは違って非常に多角的、多面的に対応しないといけないのが循環器です。そのための研究、またリアルワードデータが必要であることを述べております。
 よく言われるのは、1に書いたリスク因子のことですけれども、これらの今まで知られているリスク因子だけではなくて、これからは遺伝素因とか、あるいは生活の過ごし方、精神的な問題、いろいろなことに対応しないといけませんし、また、発症直後、急性期、回復期、慢性期、リハビリなどの問題も、今後どのように合併症の発症予防や重症化予防、再発予防、さらに日常生活の中における予防と極めて多角的に対応しないといけない。
 そのための研究、そもそもなぜ循環器病になるのか、あるいはどのようにして急性発症するか、重症化するか、合併症が起こったらどうなるかとか、そういうことを全ての臓器連関の中でも見ていかないといけません。簡単に分析できるバイオマーカー、さらにそれに基づく治療法が大事だということを1ページから2ページにかけて述べています。
 この心不全の問題というのはまた非常に複雑で、バイオマーカーなどの検査値がよくなっても、心不全の予後がよくなるわけではないというのが循環器病の研究の教訓でありまして、そういう意味で長期にわたる生存率、重大な発作の頻度、QOL、健康寿命、こうした指標からも検討する必要があるということです。そのために、患者さんのデータの集積、観察研究、開発研究、臨床試験が必須ですし、これを容易に実施できる体制の整備が大事だということが1に述べてあります。
 また、2が急性期、3が回復期、4が慢性期と、ステージに応じて病態は変わります。それに応じた研究が必要で、しかも、集学的な医療、集学的な分野横断的な研究も重要になってくるということ、患者数が多いということ、バイオマーカーだけではなくて臨床研究、リアルワールドデータに基づいてアウトカムから評価することの重要性、さらに教育啓発活動、2の下に書いてありますけれども、発症早期というのは患者さんだけではなく、医師もそうした危機が迫っていることに気がつかないことがあるわけです。そのため、急変し得るという循環器病の特徴、発症早期の適切な対応、デバイス開発、遠隔医療がいつ様です。さらに教育啓発活動も研究のスコープに入れておく必要があります。
 回復期は、一つはリハビリテーションの問題です。これもどの程度、いつまでどのように進めるかという課題があり、結局はアウトカムからも評価しないといけないわけです。臨床データに基づく研究が必要です。
 4の慢性期になりますと、これで治ったわけではないと。がんで5年たった状態になるわけではなくて、やはり機能が低下してくるわけです。真ん中辺に、例え話として、健常者が高度1万メートルの飛行機とすれば、慢性期の循環器疾患というのは実は高度が下がった飛行機で、高い高度であれば天候の影響を受けにくいけれども、低い高度ですと天候や地形の外的環境の印象を受けやすい、僅かなバランスの乱れが事故に至るわけですので、そのための制御機構とかホメオスタシスということですが、これが高い行動で飛ぶときのホメオスタシスと低い高度で飛ぶときのホメオスタシスは、学術的にも随分違うわけです。そういうことも踏まえて、それぞれの患者さんに適切な医療、さらに日常生活の管理、教育啓発活動、そういうこともきちんと行わないといけませんし、ゲノムの多型性、いわゆるオミックスのデータもこういうところで個別医療に生かされるはずです。
 そうなりますと、今度はそうした臨床の病態を踏まえた研究が必要になるわけで、ゲノムのオミックスも大事ですし細胞機能も重要です。さらに、そうした知見を動物モデルで検証する、それをさらに臨床例と対応させて新しい治療の在り方、特に医薬品とか機器開発、デバイス開発、教育啓発ということをちゃんと踏まえていきますと、循環器病であっても、天寿を全うすることができるということを国民によく理解していただく必要があると思います。
 もう一つは、5番目に循環器病の社会経済的負担です。いわゆる疾病分類別の医科診療費30兆のうちの6兆円、約20%が循環器系疾患です。医療費はがんよりもはるかに多いということ。それは、この循環器病対策の重要性を社会に理解していただく上でよく分かりやすい話ではないかと思います。救急医療についても社会的な負担が非常に大きいということでありますので、研究も、いかによい医療を提供するかだけではなくて、費用対効果についても研究しないといけないわけです。
 6番目に、優先して推進すべき研究課題について、各研究者の方々からたくさん提案をいただきました。枚挙にいとまがないのですが、提案を3つにまとめてみました。
 1番は、何といっても基礎研究が重要です。ただ、バラバラに行うのではなくて、マルチオミックス・動物モデル・臨床の詳細データを統合する「循環器病三位一体研究」とまとめました。さらに様々な分析を統合して、基礎研究から臨床研究を全部含めて統合した上で循環器病対策の方向性を見つけていく。それは、重症化合併症、再発、予後をしっかりつなげる研究が大事です。もう一つは、詳細な臨床データセットの重要性をアンダーラインで強調しています。
 先ほど事務局からも説明がありましたが、まずは6循環器疾患の登録事業を進めないといけないと思います。登録事業をしっかり進めていくと同時に、基礎研究から臨床までつなげていくための詳細なデータセットは、悉皆調査というよりも中核的な高機能病院がネットワークをつくって進める必要があり、一応分けて考えていただきたいということでアンダーラインを引かせていただいています。
 2番目が予防研究、あるいは遠隔医療ということが大事です。これは脳卒中、心臓病いずれも同じであります。そのときに必要になってくるのは健康医療情報です。ただ、研究がしたいので医療情報を出してくださいではなくて、患者さん、市民にとっても、それが意味のある、一般市民が循環器病対策に生かせるようなフィードバック、いわゆる市民と研究者の間でウィン・ウィンの関係がつくられるような研究とすべきなのだろうと思います。それは必ず教育啓発活動にも生かされると思います。
 日本の開発研究が落ちてきたということで、3)は、循環器病研究が中心になって、イノベーションエコシステムを強調しています。最後のページの図に示していますけれども、単にメカニズムの研究とか、現場だけの研究ではなくて、メカニズムを解明して理論から実用化、その上で小規模な実践、さらに社会集団における実践を経て、検証する、評価をする、また新たな仮説を立てて基礎研究に戻すという循環をできるだけ数多く、また速い速度で展開していくことが重要です。なお中心には常に倫理、法、社会との協働があります。
 一番下の赤に書いてありますが、研究は物理的な測定だけではなくて、臨床的な意味とか社会的な意味をしっかり押さえて、市民に還元するかが大事です。
 こうしたことを全部踏まえていけば、少なくとも5年の健康寿命の延伸は可能であると思います。視点としては1)~7)まで書いてありますが、最初にコロナの状況でもお示ししたように、冬と夏であれだけ違うわけですから、そうしたストレスをいかに管理して、多少の病気があっても機能をしっかりと維持すること、これによって健康寿命、場合によっては平均寿命の延伸が可能になります。そうした対策の重要性を国民全体に理解していただくことが大事です。
 以上でございます。
 それでは、宮本参考人と私の報告に何か御質問があれば、お受けしたいと思います。
 羽鳥委員、どうぞ。
○羽鳥委員 どうもありがとうございます。
 永井先生にお伺いしたいのですけれども、冬と夏で1.5倍~1.7倍の死亡の差がある、大動脈疾患、心疾患、脳卒中疾患ということでお示しいただきました。実は「健康・省エネ住宅を推進する国民会議」というのがございまして、そこで慶應大学建築科の伊香賀教授が自治医大の刈尾先生たちと一緒に御発表になっています。北海道は冬の室内の暖房が効いているので18度以上が保たれる。それに比べて、関東の北部、あるいは四国の香川県などでは13度を下回るような場合ももちろんあるということで、実際に血圧の値も違うし、温度環境がこれだけ違うと様々な差が出てくるということが知られています。イギリスのNICEでは、建築の方と医療の方が一緒になって、部屋の環境を18度以上に保とうということを一つの大きな目標にされているということもあります。
 そういうことも含めると、健康日本21第三次の計画などでは、特に冬の寒い環境を守るということも大事なのだろうなと強く感じました。このグラフはとても説得力のあるものだと思いますので、またあちらこちらでもお示しいただければと思います。
 以上です。ありがとうございました。
○永井会長 ありがとうございます。
 では、小笠原委員、どうぞ。
○小笠原委員 私は日本脳卒中学会の理事長を宮本先生から引き継いだのですが、宮本参考人からこの相談窓口のお話がありました。その中でもありましたように、実は問題は相談窓口で出たものをどうやって解決するのかと。要するに、回復期から維持期、生活期に行く問題が山ほどありまして、本来これは厚生労働科研でやられているはずなのですが、今日は出てこなかったものですから、実はこれは脳卒中学会の医療介護連携のワーキングでもう既にほぼできておりますので、我々医療人としてやらなくてはないことと行政がやるべきこととも分けて、それを短期的にやるのか中長期でやるのかということを全て文献等あるいは現場の意見も、先ほどありましたいろいろなソーシャルワーカーとか回復期の病院とかの全てアンケートを取って議論をまとめておりますので、ぜひ、次回のこの協議会で脳卒中学会からの提言として述べさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○永井会長 了解です。ありがとうございました。
 では、峰松委員、どうぞ。
○峰松委員 私も似たような意見なのですが、宮本先生の班で、例えば、脳卒中だと相談窓口のマニュアルまでつくっていただいて、これから事業をやるときに非常に参考になると思います。それで宮本班は今年で終わりということなのですか。令和4年度の研究テーマに宮本班に相当するものは全くなくて、その代わりに8ページに紹介されている総合支援センターのモデル事業を展開するということですが、研究班とこのモデル事業は並行してやらないといけないと思います。先ほど小笠原委員が言われたように、問題が出てきたときにそれをどう評価して、次のステップにどう結びつけるかというのは、多分モデル事業をやる以上に大事なことだと思います。宮本先生はどういうつもりなのか分かりませんが、ぜひ宮本先生のスタイルは何とかつなげて、厚生労働省の支援する研究班か何かの形で続けていただかないと大問題になるのではないでしょうか。これは宮本先生の意見と厚生労働省の意見の両方を聞きたいです。
 以上です。
○宮本参考人 宮本ですけれども、発言よろしいでしょうか。
○永井会長 はい。
○宮本参考人 峰松先生、小笠原先生、ありがとうございました。
 おっしゃるとおりで、今回の研究班はこの3月で終わりです。ただ、脳卒中学会としてはこのワーキングは続けますので、特に今回は急性期から退院する患者さんをメインにした相談窓口の業務マニュアルまでがまとまっているだけで、回復期に転院した患者さんを対象とするマニュアル、さらに、医療介護連携のほうにも広げていかなければなりません。ですから、できれば公的に発言できるような厚生労働省の研究班を組織していただけたら非常にありがたいですけれども、学会としては継続して検討いたします。
 それと、脳卒中・心臓病等相談支援センターですけれども、脳卒中部門について言いますと、一次脳卒中センターコア施設に設置される脳卒中相談窓口の中で、県内で一番核になるところが脳卒中・心臓病等相談支援センターに当たるのかなとは考えておりますので、これはあくまで並行して連携してやっていかないといけない問題だと思っております。
 以上です。
○永井会長 よろしいでしょうか。事務局から何かコメントはありますか。
○桑原課長補佐 研究として今後やっていくべき内容がございましたら、引き続き検討してまいりたいと考えております。一方で、学会などで行っていただいている内容につきましては、引き続き進めていただきながら、連携していく形を考えております。
 御意見ありがとうございました。
○永井会長 小笠原委員。
○小笠原委員 今の話ですけれども、宮本参考人からありましたように、相談窓口でいただいた相談の中で、現場として困っているということを毎年数字としてきちんとまとめて学会の中で報告する予定ではおりますが、恐らく我々学会だけではできない問題が必ず出ますので、この辺はぜひ行政と一緒に解決しなくてはならない。脳卒中協会とも一緒に社会的に解決しなければいけない問題は必ずできますので、これは学会としても継続しますが、ぜひ国としても御協力をお願いいたします。
○永井会長 よろしいでしょうか。
 ほかに発言はございませんでしょうか。
 川勝委員、どうぞ。
○川勝委員 川勝です。
 宮本先生に質問です。宮本先生の資料の中で、海外の文献レビューというのが4枚目にあるのですけれども、左側の脳卒中の1番のポツの下にドイツの事例が書いています。脳卒中支援はアクセスしやすいスポットに全ての病気の患者・その家族・市民がアクセスできる体制を取っている、ドイツの事例と書いてあるのですが、これは具体的にどんなものなのか教えていただけないですか。
○宮本参考人 宮本です。
 これは相談支援ワーキングソーシャルワーカーのグループでまとめていただいたので、具体的なことまでは今日お答えする資料ございません。申し訳ございません。また調べてお答えいたします。
○川勝委員 分かりました。
 私は以前から思っていまして、今日のこのまとめていただいている内容を拝見しても、医療者側の支援ができるプログラムに見えるのです。患者とか家族の日頃の困りごとは幾つか起きているのです。それの集約というか蓄積がなされていないのではないかなと。それが集約された上で解決策を持っていけば、今度の支援センターも有益に動くのではないかなと思っていまして、ドイツではどうもそういうものをやっているのではないかなと今、思ったので質問させていただきました。
○宮本参考人 宮本です。ありがとうございました。
 2年間という非常に限られた研究班の中で、全てを網羅するのは無理でしたので、今回は急性期から直接ご自宅に退院される患者さんに業務を絞って検討いたしましたが、川勝委員のおっしゃるとおりで、いろいろなことをそれぞれのステージに合わせて相談支援事業を展開していかなければならないので、その時点では患者さんがどういうふうに相談しやすい体制をつくるかというのも検討項目になってくると思います。学会としては検討していきたいと思いますけれども、ぜひ行政とも連携しながらそういうことを考えていきたいと思います。ありがとうございました。
○川勝委員 ありがとうございました。
○永井会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 活発な御議論ありがとうございました。その他、全体を通じて何か御発言はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 川勝委員、どうぞ。
○川勝委員 何度もすみません。
 データベースの構築支援事業について、これはたしか診療情報の収集提供体制の整備を目的としたことだと思うのです。あわせて、電子カルテの標準化と一緒になって、脳卒中の実態分析とか緊急入院時のデータ活用で使えるために行うのだと思っています。
 以前、国事の診療体制の分析会に出ていたときに聞いたのですけれども、日本人で同姓同名、同一生年月日の方がおられる確率は0.00幾つある、ゼロではないということもお聞きしまして、緊急入院のときに使うデータとして、運び込まれてすぐに手術をすると。電子カルテで調べたら名前と生年月日がヒットしたからこれだということで、ひょっとして、別人にその情報を使ってしまうリスクがあるのではないかなと思っています。ですから、そういうことがないように運用されることを要望として出しておきたいと思います。
○永井会長 ありがとうございます。
 これは技術的に対応すべき問題だと思いますので、また事務局でも検討をよろしくお願いしたいと思います。
 よろしいでしょうか。
 それでは、長時間ありがとうございました。精力的な御議論に感謝いたします。
 では、事務局から連絡事項をお願いいたします。
○岩佐課長補佐 委員の皆様方、ありがとうございました。
 次回以降の協議会の日程等につきましては、また御連絡の上、調整をさせていただければと思っております。引き続きよろしくお願いいたします。
○永井会長 どうもありがとうございました。これで終了いたします。