- ホーム >
- 政策について >
- 審議会・研究会等 >
- 労働基準局が実施する検討会等 >
- 多様化する労働契約のルールに関する検討会 >
- 第13回多様化する労働契約のルールに関する検討会(議事録)
第13回多様化する労働契約のルールに関する検討会(議事録)
日時
令和4年3月17日(木)10:00~12:00
場所
労働委員会会館612号室
(東京都港区芝公園1-5-32 労働委員会会館6階)
(東京都港区芝公園1-5-32 労働委員会会館6階)
出席者(五十音順)
- 安藤至大 日本大学経済学部教授
- 戎野淑子 立正大学経済学部教授
- 桑村裕美子 東北大学大学院法学研究科教授
- 坂爪洋美 法政大学キャリアデザイン学部教授
- 竹内(奥野)寿 早稲田大学法学学術院教授
- 両角道代 慶應義塾大学大学院法務研究科教授
- 山川隆一 東京大学大学院法学政治学研究科教授
議題
とりまとめに向けた議論
議事
- 議事内容
-
○山川座長 おはようございます。
それでは、定刻になっておりますので、ただいまから第13回「多様化する労働契約のルールに関する検討会」を開催いたします。
委員の皆様方、本日も、御多忙のところ、御参加いただきまして、大変ありがとうございます。
本日の検討会も、新型コロナウイルス感染症予防の観点も踏まえて、対面とZoomによるオンライン参加を組み合わせた開催になります。オンライン参加の皆様、こちらの音声や画像は届いているでしょうか。ありがとうございます。
本日は、全員御出席いただいております。
今日の議題に入ります前に、事務局からオンライン操作方法等の説明と資料の御確認をお願いします。
○竹中課長補佐 そうしましたら、事務局から御説明いたします。
まず、御発言の際には、Zoomのリアクションから「手を挙げる」という機能を使用して御発言の意思をお伝えいただき、座長の許可がございましたら、御発言ください。御発言以外はマイクをミュートにしていただき、御発言の際に、ミュートを解除の上、御質問等をいただきますようよろしくお願いいたします。不安定な状態が続く場合には、座長の御判断により会議を進めさせていただく場合がございますので、御了承ください。
続きまして、資料についてでございます。今回の資料につきましては、資料1-1が報告書案、資料1-2が、同じく報告書案なのですが、第12回の報告書たたき台からの変更履歴ありのもの、資料2が報告書案の概要でございます。参考資料1はデータ等の資料で、参考資料2は裁判例でございます。
不備などがございましたら、事務局までお申しつけください。
以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
カメラ撮りがありましたら、ここまでとさせていただきます。
(カメラ退室)
○山川座長 本日の議題に入ります。
本日は、前回の報告書たたき台についての議論に引き続きまして、報告書案について御議論いただく予定です。資料1~2を御覧ください。
資料の説明を、事務局からお願いします。
○竹中課長補佐 事務局から、資料の御説明をいたします。
報告書案につきましては、前回の議論や前回の検討会の後の御指摘を踏まえまして、資料1-1のとおり、修正をしております。資料1-2で前回検討会でお出しした報告書のたたき台からの変更点を記載しておりますので、こちらで前回からの主な変更点を御説明いたします。なお、表現の適正化などにつきましては、説明を割愛させていただきます。
資料1-2の2ページ目を御覧いただきたいと思います。
2ページ目からは無期転換ルールに関する見直しで、(1)総論でありますが、1ページの下、注釈1におきまして、言葉の使い方につきまして追記 しております。この中で追記しているものとしましては、この報告書を通じて、特に断りがない限り、「無期転換」は無期転換ルールによる無期転換を指し、断りを入れた箇所におきましてはその企業独自の制度による無期転換も含むこととしておりまして、以後、逐一「無期転換ルールによる無期転換」とは書かないこととしております。
続いて、182行目を御覧いただきたいと思います。こちらにつきましては、前回戎野委員から御指摘いただいた点を踏まえまして修正しておりまして、「労使で情報共有し、議論を深めつつ確認、協議することを促す」としてあります。
これに関連しまして、216行目を御覧いただきたいと思います。こちらでは、「労使コミュニケーション」という言葉自体は前回のたたき台の中でも使用しておりましたが、その言葉の定義が明確ではなかったということでありまして、この注釈で定義を入れております。
続いて、266行目を御覧いただきたいと思います。ここからは、使用者から個々の労働者への無期転換申込権に関する通知等でございます。
この283行目のところは、趣旨の変更ではございませんが、どういう理由によって使用者の方から個々の労働者に通知をしていただくことがよいのかということに関連しまして、データから言えることをベースに追記もしくは変更しているところでございます。
続いて、297行目を御覧いただきたいと思います。こちらが通知のタイミング等であります。
この関連で、316行目を御覧いただきますと、注釈21を入れております。このページの下のほうで注釈を入れているわけですが、通知のタイミングに関連して注を入れています。前回の検討会の資料2の(2)に関連して追記しておりまして、少し読み上げますと、「無期転換申込権が生じる有期労働契約の更新時点で明示した無期転換後の労働条件について、無期労働契約が成立する前までの時点において当該労働条件が変更されたケースについては、後記3(2)ivの取扱いに準じる」。つまり、どういうことかといいますと、変更後の労働条件の明示に関して御議論いただいていたわけですが、そういった取扱いに準じることが考えられるということで追記しております。
続いて、少し戻りまして、328行目でございます。いろいろと変更履歴を入れておりますが、この328行目から始まるパラグラフにつきましては、言わば記載の順番を入れ替えているということでありまして、まず、明示事項自体は労基法15条の所定の事項ということを書いた上で、その後に、「別段の定め」がある場合のことを書いて、「別段の定め」のない場合を書くことにしております。
続いて、359行目を御覧いただきたいと思います。転換後の労働条件につきまして、前回、包括的に示すということで差し支えないと書いていたわけですが、そうしたことが認められる場面を追記したほか、原則的な発想の考え方としまして、366行目の辺りでもありますが、こういった労働条件の明示は「労働者の無期転換申込権の行使の判断に資するよう、できるだけ具体的に行われることが望ましい」と書いているということであります。
11ページ目、注釈25で書いておりますものは、前回の御議論の中でこういった運用につきましては具体的に考えておく必要性があると御指摘いただきましたので、その関連で記載しているものであります。
続いて、368行目を御覧いただきたいと思います。前回の資料2、1ページ目の(1)で御議論いただいた内容を追記しているところでありますが、言わば無期転換の申込権が発生した時点の通知をした後、その無期転換権を行使した際にも明示が必要だということですが、「この点、短期間の間に同じ内容の労働条件を知らせることとなる場合には、簡便な対応を可能とすることも考えられるとの意見があった」ということで追記しております。
続いて、374行目であります。前回の検討会で安藤委員からの御指摘をいただきまして、要は、無期転換に関して、無期転換権が発生したタイミングで明示をするということでここまで御議論いただいたわけですが、それだけではなくて無期転換をせずに有期労働契約を更新した場合の労働条件も併せて説明することが望ましいという御意見があったということで、今回、追記しております。
続いて、402行目を御覧いただきたいと思います。こちらからは、無期転換前の雇い止め等ということで書いております。
429行目で、その更新上限設定への対応ということで書いております。
440行目のように、前回から、使用者の方には、最初の契約締結より後に更新上限を新たに設ける場合には、労働者からの求めに応じて上限を設定する理由の説明の義務づけと書いていたわけですが、前回議論の中で、労働基準法の14条にひもづく括弧書きのところ、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」という告示があるわけですが、この労働基準法告示で規定を追加するという方法があると御指摘いただきまして、追記しているものであります。
続いて、469行目を御覧いただきたいと思います。無期転換の申込みを行ったことなどを理由とする不利益取扱いで、前回の御議論の中で、委員の皆様から、具体的にどういった法体系などで対応することが考えられるかということでコメントをいただいております。
まず、482行目でありますが、これまでは「立法」とだけ書いていたのですけれども、竹内委員から労働契約法で規定することが考えられるだろうというコメントをいただいたほか、これに関連しまして、492行目で、両角委員から事例の積み重ねが不足しているため立法化は時期尚早という御意見があったので、そちらを追記しております。
続いて、502行目を御覧いただきたいと思いますが、いずれにしても、無期転換権の行使の妨害抑止につながるよう多様な政策的手法の中で方策を検討することが適当と書いていたわけですが、こちらについても、前回の御意見を踏まえまして、注釈29を入れておりまして、この中で、両角先生や桑村先生の御指摘を踏まえまして、先ほど御紹介した労基法14条に基づく告示ですが、労働基準法告示で対応できるようにすることが考えられるとの意見等があったと追記しているものであります。
続いて、505行目の(4)通算契約期間及びクーリング期間についても、一定の修正をしているものがあります。
542行目を御覧いただきたいと思います。前回の御議論の中で、契約更新上限を設けた上で、クーリング期間を設定し、期間経過後に再雇用することを約束して雇い止めを行うことは、その法の趣旨に照らして望ましいものとは言えないと書いていたわけですが、「法の趣旨」とだけ書いていたものをより明確に書いたものでございます。
続いて、548行目、(5)無期転換後の労働条件、i、転換後の労働条件の「別段の定め」について、関連して幾つか修正しているものであります。
そのうち、590行目を御覧いただきたいと思います。御指摘をいただきまして、追記しております。少し読み上げますと、無期転換に際し、言わば既存の枠内で「労働条件の設定や変更が可能であり、労働条件の見直しが無制限に認められるわけではないこと、特に労働条件を引き下げる場合にはその効力が司法において慎重に判断される可能性が高いことが明確になるよう」と追記しているものでございます。
続いて、653行目を御覧いただきたいと思います。ここからは、iii、無期転換労働者とほかの無期契約労働者との待遇の均衡についてでございます。
この関係で、668行目でありますが、前回のたたき台の中でも記載していた話でありますが、無期転換者とほかの無期契約労働者との待遇の相違については、673行目のように、労働者の理解が重要であると記載していたところです。
この点に関して、677行目のように、「労働者の理解を深めるため、使用者に十分な説明をするよう促していく措置」と少し言葉を補っておりますほか、注釈40を追加しておりまして、前回の御議論の中でいただいた発言を踏まえまして、先ほどと同じ労基法14条にひもづく労働基準法の告示でそうした措置を講じることが考えられるとの意見があったと追記しております。
ここまでが無期転換に関しての説明でありまして、続いて、多様な正社員の労働契約関係の明確化の関係であります。少しページは飛びまして、817行目を御覧いただきたいと思います。iii、多様な正社員の労働契約関係の明確化に関する考え方という総論的なことを書いている部分であります。
こちらの859行目を御覧ください。労働契約関係の明確化がどういう観点で予見可能性の向上につながるのかと少し追記しているものであります。
また、この849行目のパラグラフで多様な正社員に焦点を当てて言及していたところ、前回、竹内委員から御指摘をいただきまして、857行目のパラグラフを追加しているところであります。少し読み上げさせていただきますと、「多様な正社員以外の労働者全般についても、労働契約法1条及び6条を踏まえれば個々の労働契約を基礎としてその権利義務関係が定められていると理解されるべきところ、多様な正社員の普及・促進を推進するにあたり、労働者全般について、そうした理解を促し、そうした理解に基づく労働契約関係の明確化がなされることは、合意原則を定める労働契約法1条の意義に照らしても重要と考えられる」と追記しております。
続いて、953行目を御覧いただきたいと思います。iii、労働契約締結時の労働条件の明示・確認の対象でありまして、就業場所や従事すべき業務の変更の範囲の明示について、御議論いただいていたことを書いている部分であります。
975行目を御覧いただきたいと思いますが、前回、竹内委員から御指摘をいただいて、追加しているものでございます。少し読み上げさせていただきますと、「就業場所・業務の変更の範囲を明示することとしたとしても、現行の労働基準法15条1項に基づき行われている「雇入れ直後の就業の場所及び従事すべき業務の明示」についても、労働契約締結に当たり予期に反した場所や業務での労働を強いられることのないよう、引き続き求めることが適当である」と追加しております。
続いて、1006行目を御覧いただきたいと思います。転勤の場合の条件ということでたたき台のときからも書いておりましたが、どういうものか具体的に書くべきではないかという御指摘もいただきまして、この括弧書きを書いております。言わば、どのような場合に転勤する可能性があるかなどということでございます。
続いて、1022行目を御覧いただきたいと思います。iv、労働条件が変更された際の労働条件の確認・明示とその対象でございます。
1030行目から書いておりますものは、変更後の労働条件の明示をしていただく必要があるのではないかと御議論いただいたわけですが、その趣旨をより明確に記載するべきという御指摘もいただきまして、修正をしております。
特に追記しておりますものは1036行目の辺りでありまして、「特に個別合意による労働条件の変更がなされた場合に、書面で変更及びその内容を示されることが現行法上は保障されていないが、労働条件の変更とその内容を示すこととすることで、労使双方ともその内容の確認の機会が保障され、変更をめぐる紛争の防止等に資すること」と前に記述しているように、仮に就業場所や業務の変更の範囲の明示を契約締結時に義務づけるとした場合に、変更後の労働条件を明示しなければ当該変更前の労働条件を誤解したままとなるリスクがあることから、労基法15条に基づく書面明示については、労働条件の変更時も明示すべき時期に加えることが適当という部分であります。
1049行目につきましても、前の文からのつながりが分かるように少し追記しているところでございます。
続いて、1090行目を御覧いただきたいと思います。前回桑村委員から御指摘いただいたことを反映して修正しているところでございまして、いろいろな変更のケースがある中で、マル5でもともと規定されている変更の範囲内での使用者の業務命令等による労働条件の変更という点についても議論いただいてきたわけですが、こちらについて、この1093行目の辺りのように、変更後の労働条件の明示は不要と明記しているところであります。
続いて、1164行目を御覧いただきたいと思います。39ページ目であります。就業規則の周知方法ということで始まります。
1173行目を御覧いただきたいと思いますが、前回の検討会での両角委員からの指摘を踏まえまして、追記しております。変更後の労働条件の明示を必要とする場面の検討において、就業規則の新設・変更によって労働条件が変更された場合については、就業規則は労働基準法106条1項に労働者への周知義務があることなどに鑑みて、就業規則の周知の徹底を前提に、労働基準法15条に基づく労働条件明示までは不要と考えられるとしていることからも、労働契約関係の明確化を図るに当たって、就業規則の周知の徹底は重要であると記載しています。
この追記に伴いまして、1185行目の「なお」と書いている部分につきましては、削除しているということ。
1188行目であります。前回までの竹内委員からの御指摘を踏まえまして追記しているところでありまして、少し読み上げますと、「労働者から申し出があったときにのみ就業規則を見せているような取扱いでは必ずしも労働者が必要なときに容易に確認できる状態とはいえないのではないかとの意見があり、就業規則を必要なときに容易に確認できる方策について、検討することが必要である」と追記しております。
続いて、そのすぐ下、1192行目でありますが、両角委員から御指摘がありまして、就業規則の変更のタイミングで、変更があったことだけではなくて変更の内容も周知することを促していくことが重要としております。
続いて、1195行目からが、v、労働契約関係の明確化を図る場合の留意点ということで記載しておりまして、これまでの取組として「雇用管理上の留意事項」もあると追記しております。
続いて、労使コミュニケーション等ということで、1230行目を御覧いただきたいと思います。
労使コミュニケーションで、るる修正もありますが、特に1243行目からのパラグラフで多くの修正が入っていますが、基本は意見を聞く義務がある主体はあくまでも使用者であると修正しているものでございます。
続いて、1271行目を御覧いただきたいと思います。
こちらについては、(2)多様な正社員関係でありまして、この中でも1289行目のところに関連して、この検討会では、特に初期の頃、多様な正社員といわゆる正社員の転換制度について御意見をいただいていたことも踏まえまして、追加しているものであります。ここで書いてありますものは、少し読み上げますと、「労働契約法3条3項では、労働契約は労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものであることを規定しており、これには多様な正社員といわゆる正社員の間の転換制度も含まれる。同項を踏まえて転換ができるようにすることが望ましい」と記載しておりまして、こちらの記載については、平成26年に取りまとまった多様な正社員懇談会の報告書でも記載していた内容と同じではありますが、ここでも記載しているものであります。
続いて、1300行目、(3)無期転換・多様な正社員共通という部分でございます。
まず、1318行目です。前回の検討会の中で坂爪委員から御指摘をいただきまして、追記しております。書いておりますものは、その労働者自身も、自らの働き方や求められる役割を認識した上で、その能力を発揮し、職責を果たしていくことが期待されるということでございます。
続いて、その次の1321行目のところでも修正をしておりまして、これも同じく坂爪委員からコメントをいただいた部分でございますが、労使コミュニケーションのプロセスを経ての制度の設計や運用がフィードバックされることについては、1324行目のとおり、有益な人材の獲得だけではなくて、ひいては企業のパフォーマンス向上にも資するということで、追記しております。
続いて、1334行目でありますが、戎野委員から御指摘をいただきまして、労働組合について追記しているということで、少し読み上げますと、「労働組合については、随時、使用者と労働者のニーズや諸問題に関する情報共有や議論を行うこと、無期転換や多様な正社員等の多様な 働き方の選択肢を労働者自らが適切に選択できるような支援を行うよう努めること」と記載しております。併せて、もともと記載していた内容を含めてマル1からマル3と整理し直しまして、記載しているところであります。
続いて、1346行目で注83をつけておりまして、前回、この注釈83の中で記載しているように、過半数代表がより適切に多様な労働者の意思を踏まえることができるような工夫の例としまして、主語が使用者等の例を挙げているものは修正すべきという御指摘をいただきまして、その点を踏まえて修正しているものでございます。
続いて、その次のページで別紙1がございます。別紙2も続いているわけですが、いずれにしても、検討会後に委員の皆様から御指摘をいただきまして、表現の適正化を行っており、その点は赤字の修正履歴のとおりに修正しているものでございます。
続いて、資料2を御覧いただきたいと思います。
資料2の内容につきましては、これまで報告書たたき台もしくは報告書案の中で御確認いただいてきたものと同じですので、詳細な説明は割愛させていただきますが、言わば報告書案の内容のうち主な結論の部分はこの2枚で分かるように事務局でまとめているものでございます。
事務局からの説明は、以上でございます。
○山川座長 ありがとうございました。
それでは、報告書案につきまして、前回と同様、主に2つに分けて議論を進めたいと思います。
まずは、報告書のうち、「1.はじめに」、「2.無期転換ルールに関する見直しについて」につきまして、御意見がありましたら、お願いいたします。
両角先生、お願いします。
○両角委員 大部の報告書をまとめていただいて、ありがとうございました。
私からは、1点、申し上げたいと思います。
さっき説明していただいた資料だと、660行目あたりの、無期転換者に関して労働契約法3条2項の均衡について考慮した点を説明するように促していくというところです。この点について、本来、労契法3条2項は、無期転換者だけではなく全ての労働者を対象とする規定です。無期転換者はパート・有期法の適用がないので、労契法3条2項の均衡が問題になると書かれているわけです。この報告書では、すべての労働者ではなく、特に無期転換者について労契法3条2項の均衡について使用者に説明を求めるという内容になっているので、なぜそれが必要なのか、なぜ特に無期転換者についてそれに言及するのかを少し説明すると、より説得力が増すのではないかと思いました。
私の思うところ、2つぐらい理由があるかと思います。
1つは、無期転換者については、労契法3条2項の均衡が確保されないリスクが高いことです。例えば、パート・有期法の下では当然不合理とされるような労働条件の違いが「別段の定め」のないままに維持されてしまう、あるいは、「別段の定め」があった場合に正社員並みに負担が増えるけれども処遇は相応に改善されないということも考えられます。
もう一つの問題として、無期転換者と正社員との処遇格差については、労使の認識にずれが生じて紛争が起きるリスクも高いと思われます。労働側としてはパート・有期法の延長線で考えることが多いように思いますし、また、使用者側は逆に転換したのだから均衡は関係ないという意識になりやすいこともあるかと思います。
その2つの点から、無期転換者については特に均衡について注意する必要がある、丁寧に対応する必要があるということを少し書いて、したがって、無期転換者については、使用者に対して労契法の均衡を考慮した点について労働者に説明するよう促すニーズがあるとしてはどうかと思いました。
以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
今の点に関して、あるいは、ほかの点でも結構かもしれませんけれども、御意見等がありましたら、お願いいたします。
まず、今の両角委員の御指摘の点につきましては、特に皆さんに御異存はないようですので、事務局で今の御意見を踏まえて検討していただけるでしょうか。
ありがとうございます。
桑村委員、お願いします。
○桑村委員 ありがとうございます。
今回追加された注21です。前回に少しだけ議論したことなのですが、無期転換申込権が生じる有期労働契約の更新時点で無期転換後の労働条件を明示して、その後、無期転換権を行使する前に明示された内容が変更される場合について、この書き方だと、労働条件が変更された場合についての通知の要否の考え方に準じるということです。確認なのですが、労働条件変更の際に、就業規則で労働条件を変更する場合については個別の通知が必要ないという考え方に立つ場合は、まず、無期転換申込権が発生する契約、有期契約の更新時点では、就業規則で規律されている労働条件も一緒に通知して、その後、無期転換権を行使する前に通知した内容が変更された場合、その変更の手段が就業規則である場合には、その変更の内容を改めて労働者に通知する必要はなく、その後、無期転換権を行使した場合、無期労働契約が成立した時点では、現在の労基法15条の解釈に則って、就業規則で規律されている場合に、改めて「就業規則の何条による」という記述も含めた通知が必要になるという理解でいいのかどうか、お聞きしたいです。つまり、就業規則で規律されている場合、有期契約更新後、無期転換権が発生する前に通知した内容を変更する場合に、その変更の手段が就業規則の場合には、改めて個別の通知は必要ないという考え方になるのかどうか、確認させていただきたいです。
○山川座長 ありがとうございます。
御質問ですので、事務局から、いかがでしょうか。
○竹中課長補佐 御質問をありがとうございます。
事務局としましても、今桑村先生がおっしゃったとおりの理解でございます。
○桑村委員 ありがとうございました。
かなり複雑なことになるかと思いまして、少なくとも無期転換権を行使する前に個別契約で労働条件を変更するケースはまれだと思いますので、大部分は就業規則をつくって変更するパターンになり、そういうときに、転換権を行使する前に就業規則を新たにつくって労働条件の内容を変更する場合は個別通知が不要だということは、実務的にも重要だと思いますので、注21の文章は本文のどこかで明確に書いたほうがいいのではないかという気がしております。
以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
この点は、前半部分、無期転換に関する部分と後半の労働条件の変更に関する部分が言わば交錯する論点であります。確かに実務的に重要となる可能性がありますので、これも本文に移すことを御検討いただければと思います。
今の点あるいはほかの点につきまして、何かございますでしょうか。
竹内委員、お願いします。
○竹内委員 どうもありがとうございます。
今の桑村委員ご指摘の点に関し、報告書の記載の場所というお話もありましたけれども、恐らくこの報告書が取りまとめられて以降、また場が変わって検討されていくことになると思っておりますけれども、複雑になるのではないかという御指摘があった点にかかわる事項について、改めて慎重に検討されればよりよいのではないかと思ったことだけ、申し上げさせていただければと思います。
ありがとうございます。
○山川座長 ありがとうございます。
この点も、恐らくはこの後の労働条件の変更に関わる論点の影響によるものと思いますので、その辺りは、例えば、またこの後に審議会等で出てくるとしたら、検討されることになるかと思います。
ほかに何かございますか。
ございませんでしたら、また後で戻ってくることもあり得るかもしれませんけれども、「3.多様な正社員の労働契約関係の明確化等について」、「4.労使コミュニケーション等について」の御意見をお願いいたします。また、別紙も今回はいろいろと修正がありますので、別紙も含めて、全体につきまして、1.と2.に戻っていただいても結構ですけれども、御意見がありましたら、お願いいたします。
竹内委員、お願いします。
○竹内委員 続けて恐縮でございます。
資料1-2で申し上げますと1245行目、「使用者に伝えることが重要である」という文章になっておりますけれども、文法上、文章の流れからいうと、使用者に伝えられることが重要であると直さないといけないと思いますので、よろしくお願いいたします。
以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
これはそのように直していただけるでしょうか。
戎野委員、お願いします。
○戎野委員 ありがとうございます。
労使コミュニケーションの1265になるのでしょうか。「更に」というパラグラフ、いわゆる更新時の労働条件に関する交渉機会がなくなること、正社員と同様の人事評価がないことも無期転換者にはあるので、企業がどのようにマネジメントをしていくのか、どのようにそのような人材を生かしていくのかということを、好事例とともに示していくことが考えられるというところです。前のほうには、労働者自身も能力向上を図ることや正社員に向けたステップアップにもつながっていくものと考えることができますということが、これでいくと177にあります。それを受けた形で、労働者側にも、雇用の安定性が増すに当たって、どのようなキャリア設計ができるのか、能力形成が可能になるのか、そういうことも好事例として示していくことが考えられるというように、両方にメッセージを投げてはどうかと思いました。
以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
以上の点について、何かほかに御意見等はありますでしょうか。
坂爪委員、お願いします。
○坂爪委員 ありがとうございます。
私も今のところなのですが、この1267の主語が誰なのか確認させていただきたくて、「好事例とともに示していくことが考えられる」ということは、企業が示すことなのか、それとも、行政としてやるのか、誰がやることを想定しているのかがクリアになるといいと思いましたので、その確認をさせていただきたいのと、もし複数の主体が想定されているのだったら誰がというところを書いてもいいかと思いました。
以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
恐らくは「マネジメントすればいいか」の主体は使用者で、「示していく」は行政だろうと思いますが、事務局から何かありますか。
○竹中課長補佐 今山川先生からお示しいただいたとおりの理解でございます。
○山川座長 そこを明確化するということでよろしいでしょうか。
戎野委員からもお話のありました好事例を示すということは、労働者側にとっても非常に有益になるかと思いますので、御指摘のあったようなことも加えられるかと思います。
坂爪委員、よろしいでしょうか。
ありがとうございます。
ほかの点も含めて、何かございましたら、お願いいたします。
安藤委員、どうぞ。
○安藤委員 ありがとうございます。
修正が入っているほうですね。資料1-2ですと774行目なのですけれども、本報告書における「正社員」の定義で、ここに参加されている皆さんの間では多分共通の理解ができていると思いますが、この報告書が出回った際に理解が統一されるかというところが気になるので、1点、コメントです。最後の777行のところなのですが、「いわゆる正社員」の定義について、これを勤務地、職務、勤務時間等が限定されていない正社員といったときに、この勤務時間が限定されていない正社員とはどんなものだろうかという疑問を詳しくない方は持つのではないかという懸念を持ちました。多くの企業では、正社員に対しては就業規則等において時間外労働が求められていて原則応じないといけないということが書いてあったりもするわけですが、勤務時間については、法定労働時間と36協定、また、新たに上限規制によって規律がされているわけですね。その観点から、「限定されていない」としてしまうと、どんな人が「正社員」なのかと言われてしまう気もするわけで、もう少しだけ、脚注でも結構ですから、この「勤務時間等が限定されていない」とは、就業規則等を通じて会社側の求めに応じて時間外労働とかが必要になることを指しているのか、または、多様な正社員の中に、通常、ここではその会社で正社員として位置づけられているものとしていますが、よくある定義では、無期・直接・フルタイムといって、フルタイムという条件を考えますよね。「短時間正社員」と俗に呼称で言われているようなものは、講学上はフルタイムではないので正社員ではないのではないかという気もする一方、企業の中の位置づけとしては企業のメンバーとして正社員扱いされているみたいなところがありますので、この辺りは、脚注で結構ですので、少しだけ明確化できたらよろしいかと考えました。
以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
確かに、この議論に参加している皆さんとしては無限定ということはある程度前提とした上で議論をしていますけれども、より正確を期す、あるいは一般的に周知するに当たっては重要なポイントかと思います。この中でも「正社員」の定義と「いわゆる正社員」を区別しているところもありまして、その辺りが定義の微妙さの反映ではないかと思います。この辺りは、御指摘を踏まえて、工夫していただけるでしょうか。
○竹中課長補佐 承知しました。
○山川座長 ありがとうございます。
ほかにございますでしょうか。
よろしいでしょうか。
今の安藤委員のお話を伺っていて、気がついたといいますか、考えたのですけれども、前提となっている契約内容が限定されている場合には原則として同意がなければ変更できないというルールは、法律家からすれば契約上の原則として極めて当たり前なのですけれども、それがこの中で明確に書かれていないかもしれない。
竹中課長補佐、どうぞ。
○竹中課長補佐 今御指摘いただいた点に関しましては、修正履歴ありのものでいいますと1209行目のところで、要は、労働契約関係の明確化を図る場合の留意点に関して、別紙2の中でも記載していたことではありましたが、本文の中でも特出しをしまして、「限定合意を変更するための労働者の同意は、労働者の任意(自由意志)によるものであることが必要となること」を追記しているところでございます。
○山川座長 ありがとうございます。
そのとおりなのですけれども、周知すべき内容として書かれていて、原則として書かれていないということがあります。今、気がついたことなので。その原則は、資料1-2ですと、前のほうで、28ページ、842行目の段落、ほかでもあり得るかもしれませんが、この辺りに、契約内容を限定された場合には同意がなければ変更できないのが原則であるみたいなことを、当たり前のことですけれども、念のために書いておいてはいかがかと思いました。記載箇所はいろいろとあり得るかと思います。また、同じ資料1-2の1098行目からの段落も同じことで、もともとの変更の範囲を超える変更については一方的には変更できないということで、これも今の原則の表れですけれども、マル5のところに書いてあったので、位置がどうかということがあります。これも事態としては割と起こりそうで、変更の範囲を超えたけれどもそれを一方的に命じてしまったという事例があるかもしれませんので、マル1に戻るということを注か何かで念のために書いておいてはいかがかと思いました。それに伴って、表現もまた変わるかもしれません。今の安藤委員のお話で、原則論的なことを確認的にでも書いたほうがいいのかなと思ったところであります。
安藤委員、どうぞ。
○安藤委員 ありがとうございます。
今座長からあった点について、修正履歴ありの1206行目からのところで少し関連して気になったので、コメントを差し上げたいと思います。1206行目で、職務や勤務地等について限定合意が認められている場合に「合意に反する配置転換命令」となっていますが、そもそも「命令」はできないのですよね。契約上、命令する人事権を持っていない中で、この「命令」という書き方が適切なのか。配置転換に関する「依頼」がいいのか、何と言うことが適切か、私は法律上の文言は分からないのですが、少なくとも一方的に命令できる契約の関係ではないような気がするのです。もちろん、これを「命令」として、命令されたけれどもそれは必要ないということを明確にするのだとすると、まずは原則で従う必要がないということがあって、仮に労働者側が自由な意思によってその依頼に応えた場合には受け入れる場合もあると、こんなことが言いたいのかなという気がするので、これも、できるだけ誤解を避けるという観点から、書きぶりを少し変えられないかとも感じました。
続いて、先ほど座長からあった1209行目と1210行目について、私の日常的な感覚では、ここの文章の2行は、2つ、似ているけれども違うことを含んでいるように感じました。「限定合意を変更するための労働者の同意」といったときに、例えば、限定合意はあって、労働時間に関して残業はしませんという契約になっているとします。しかし、「今日はどうしても」とお願いされて、「今日は特別にやりましょう」となった、しかし、明日以降はまだこの労働時間についての限定は続いているというように、契約の本体はずっと限定が続いている話なのか、それとも、限定合意を変更するといったときに、今日以降または明日以降、時間外労働がずっとありになるという形なのか、このように一時的に変更するものと今後修正するものの両方が現場ではあり得る気がするのです。実際に、職務範囲が限定されていたとしても、どうしても手が足りなかったら、「これを手伝ってよ」と言われたり、もちろん「手伝って」と言われてノーと言うことも可能なわけですが、自分から進んで手伝ってしまうこともあったりすると思うのですよね。この辺りは、「限定合意を変更する」といったときに、契約本体を変更するものと、現場ではありそうな一時的にその範囲を踏み越えるみたいなものについて、区別できたら現場の方は困らないのではないかと思ったのですが、こちらについての細かい書きぶりについては、アイデアがうまく出ないので、コメントとして差し上げます。
○山川座長 ありがとうございます。
書きぶりに関わることですけれども、前者のお話は、恐らく、「配置転換命令」は、そういう意思表示として成立していれば、命令にはなっていて、しかし、それは効力を発しないという説明になるかと思います。それは法律っぽい説明なので、工夫があり得るかどうか検討していただきたいと思います。
○安藤委員 誤解がなければ、これでも結構です。
○山川座長 ありがとうございます。
2番目も、細かく考え出すとなかなか難しい点が含まれてくるかと思います。契約内容自体の変更とそれ以外の例外的な合意の区別は、最終的には自由意思によるかどうかということでその内容が左右されるかと思いますけれども、この点も工夫があり得るかどうか検討していただけるでしょうか。
○竹中課長補佐 承知しました。
○山川座長 今の点も含めて、あるいは、ほかの点も含めて、何かございますでしょうか。
両角委員、お願いします。
○両角委員 ありがとうございます。
今の点なのですけれども、安藤先生が指摘された2番目の点ですが、一時的に仕事がすごく忙しいからやってくれないかと言われて応じるかどうかということは1206行目からの点の問題で、1209行目からの「限定合意を変更する」は契約自体を変更する話を書いていると私は読んでいたのですけれども、そういう理解でよろしいのでしょうか。
○山川座長 ありがとうございます。
これは事務局にお伺いします。
○竹中課長補佐 ありがとうございます。
事務局としても、今両角委員からおっしゃっていただいたような理解でおります。
○山川座長 分かりました。
むしろ「限定合意を変更」とは契約内容を変更することであるという形が分かるようにしたほうがいいかと思いました。
以上の点も含めて、検討していただけるでしょうか。
○竹中課長補佐 承知しました。
○山川座長 今の点で、細かいことで、ここで言うようなことでもないのですが、自由意思は「志」ではなくて「思」が法律上の表現ですので、そちらで統一をお願いします。
○竹中課長補佐 大変失礼しました。
○山川座長 ほかに、全般にわたってでも結構ですので、お願いいたします。
安藤委員、どうぞ。
○安藤委員 ありがとうございます。
これは今さら言う話ではないのかもしれませんが、1点、基本的な考え方の整理として教えていただきたいのですけれども、今回、この議論では、多様な正社員を活用していく、普及させるという観点から議論していたと理解しているのですが、その観点から、先ほど私が持ち出した一時的に変更するものを含めて、今の「限定合意を変更する」という話をどのように現場の人たちは捉えればいいのかという考え方について、理解したいと思うので、質問します。
限定した働き方、多様な正社員として、職務、勤務地、労働時間について限定をしたら、それは守ることが絶対的なものであって、企業は、限定正社員や多様な正社員を導入した場合には、その契約を乗り越えて、先ほど例として挙げたように、一時的にどうしても手が足りないから今日は時間外労働をしてくれとか、契約にない仕事を手伝ってくれみたいなことを言って、申し出て、もちろん労働者側にノーと言われたら難しいわけですが、労働者がイエスと言ったら、それをやってもらってもいいというスタンスで捉えるとすれば、企業側はこの限定をかなり受け入れやすくなると思うのですね。一方で、そのような取扱いをすると、企業側にこれをやってくれと言われたときに、労働者側は契約で限定されていたとしてもノーとなかなか言いにくいのではないかという力関係の問題もあるわけですね。そうすると、実質的に限定があることによって処遇が一定的にバランスを取ることで少し低下していたにもかかわらず、実際に依頼される仕事としてはほかのものも依頼され、また、実質的にその依頼を断れないみたいなことがあったら問題だとも思うわけです。このような視点から、この「限定する」というものは、使用者の視点から、必要なときには修正を依頼しても全く構わないものなのか、それとも、少なくとも限定した内容または限定に期間があったとすると、その範囲ではできるだけ踏み越えないようにするまたは全く踏み越えないようにすることが原則なのか、この辺りをどう捉えればいいのかによって、活用され具合も変わりますし、実質的な活用のされ方も変わってくると思うのですが、この辺りを法律家の先生たちでどのように捉えているのかを教えていただけませんか。よろしくお願いします。
○山川座長 ありがとうございます。
法律家の先生方への御質問ですので、法律家の先生方、いかがでしょうか。
竹内委員、お手が挙がっていますでしょうか。
○竹内委員 ありがとうございます。
法律家として発言する立場にあるかどうかは分かりませんけれども、現場の人事労務管理の視点はともあれ、私なりの法的な理解の仕方からいうと、例えば、勤務地とか、具体的な例だと、日常的によく生じがちと考えられるのは時間で、時間外労働をしないという意味での限定があるという例がより生じやすいかもしれませんけれども、法的に見れば、限定がある以上、労働者は応じる義務がないことになっておりまして、それをやすやすと柔軟に変えられてしまうということは現実においてもなされるべきではない、そういう意味で、限定されているからには限定されていることを尊重して行動すべきだと考えられます。もちろん、個別に契約で限定されているということであれば、例えば、契約によって一時的に別途時間外労働をすることも、合意をすれば、その合意に基づいて行うことは不可能ではないと思いますけれども、それが柔軟になされていいのだと、要するに、個別の変更を頻繁に日常的に行ってもいいのだというメッセージにはなるべきではないというのが私なりの考えです。
以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。
さっき私も申しましたけれども、個別的な場合での例外を認めるときには、自由意思に基づく同意があるかどうかが問題になって、それを得るプロセスをどうするかということが重要になるという感じがいたします。
いずれにしても、フレキシブルな取扱いということが出てきていたかと思いますが、フレキシブルな取扱いには2つありまして、勤務時間等の限定がない、いわゆる正社員について、例えば、家庭の事情で労働時間や残業について配慮してほしいというフレキシブルな取扱いは現在でも相当程度なされていて、それは阻害されないようにということはどこかに書いてあったかと思いますけれども、逆の意味でのフレキシブルな取扱い、限定されているけれども事情によっては例外を認めるということもまたフレキシブルの一つの意味かもしれませんが、それはこの報告書の中では直接は書いていなかったという理解でよかったでしょうか。
○竹中課長補佐 ありがとうございます。
今御質問いただいたところについては、特に記載はなかったかと思います。
ちなみに、山川先生がおっしゃった、いわゆる正社員のフレキシブルさという点でいうと、恐らく1286行目辺りのことを指しているのかなと思いました。
以上です。
○山川座長 そうです。ありがとうございました。
2つのフレキシブルな面は、法理論的には違う面が含まれている感じもいたします。法律家の先生に限らず、ほかの委員の方々もいかがでしょうか。恐らく、今の法理論でいうと、自由意思をどのように得ていくかという話になるかと。それは、さっき言いましたように、契約内容を永続的に変更する場合と個別的な例外を認める場合で事案に応じて違いが生じるのかなという感じもしますけれども、何かございますでしょうか。
桑村委員、どうぞ。
○桑村委員 ありがとうございます。
「限定」という言葉の意味は、現場の捉え方によって様々なものがあり得るということをこれまでの検討会でも指摘したことがあったと思うのですが、私の理解だと、「限定」は、ある程度、相当の期間にわたって就く業務ないし勤務地についてのものになるかと思います。ですから、先ほど安藤委員がおっしゃったような、今ここが忙しいので1日だけ手伝ってくれないかという応援を単発的にやる、1日だけというものであれば、それは契約内容を変更することには当たらなくて、もともと業務命令の範囲内で対応できることなのかなという気がしております。「限定」は相当長期間にわたって仕事なり勤務地を変更するというパターンで、その部分を変更するには自由意思による同意が必要だということかと理解しておりました。
以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
結構実質的な議論になってきていますけれども、いかがでしょうか。
どうぞ、両角委員。
○両角委員 私は、そこは桑村先生とちょっと違うふうに理解しておりまして、契約上勤務地が限定されている以上は、他の場所で1日の応援を頼むことが、全く認められないわけではないですけれども、それは命令ではなくて、基本的には同意に基づく必要があるのではないかと思います。その同意が自由意思に基づくかという認定が、契約自体を変更する場合は厳格に認定されるのに対して、1日だけの応援の場合は緩やかに認定され得るという違いはありうると思いますが、基本は同意を要するのではないかと私は考えておりました。
以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
そこは多分限定合意の意思解釈の問題になる場合もあり得るかなという気もしました。東京海上日動火災保険事件でしたか、職種限定でも例外を認め得るという理論的にはおかしなところがあるという批判がありますけれども、合意の解釈で、場合によってはこういうものは認め得ると解し得る場合もあるかもしれないということ、桑村先生がおっしゃっていることは、そういうものを許容する合意が認定できる場合になるのかもしれないと思いました。
以上の点を書き込むとなると結構大変そうですけれども、どうしましょうか。書き込んだほうがよろしいでしょうか。「限定」の持つ意味について前のほうに書くことにするという方向ですけれども、そこで何か書くことがあればということはあるかもしれません。
桑村委員、どうぞ。
○桑村委員 ありがとうございます。
報告書に書くべきかということなのですけれども、その辺を書くと、「限定」の意味合いが曖昧になってしまって、報告書の立ち位置が不明確になる気がいたします。同意がなければ一方的に命じることができないものを「限定」という言葉として捉えて、報告書として記載すべきものだと思います。先ほど私が言った1日単位のものについては場合によって業務命令でなし得るのではないかということは、合意の解釈、契約の解釈として、一時的なものについてはあり得るということを踏まえた、一定の例外のあり得る契約上の制約になるので、それを限定「あり」とするか「なし」とするか、と書き分けてしまうと、報告書の趣旨が不明確になってしまうと思いますので、書かなくてもいい気がしています。
○山川座長 ありがとうございます。
限定の合意はどういうものであるかということは、事実認定の問題になろうかと思います。
事務局で趣旨を損なわない範囲で工夫ができるかどうか検討していただくということでよろしいでしょうか。基本的には書かない方向でという御意見が多かったということにさせていただければと思います。
最終回の予定なのですけれども、議論をし出すと非常にいろいろと新たな点が出てきて、面白いといえば面白いのですが、事務局でのまとめが大変になるかもしれません。
ほかはいかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、特に追加でございませんでしたら、本日御議論いただいた内容あるいは御確認いただいた内容を含めて、いただいた意見については、先ほど申しましたように事務局に検討していただく部分はありますけれども、基本的には、私、座長にお任せいただきたいと、もちろん必要に応じて委員の皆様に改めて確認することはあろうかと思いますけれども、そのような方向で報告書を取りまとめたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○山川座長 ありがとうございます。
それでは、特段御異存はないようでしたので、報告書につきまして、本日の議論も踏まえた上で、最終的に、私のほうで確認して、事務局で完成していただいたものを、必要に応じて御確認いただく部分はあろうかと思いますけれども、それをもって完成させたいと思っております。
よろしいでしょうか。
先ほど申し上げてしまいましたけれども、今回で最終回となります。委員の皆様方には、昨年3月から1年に及ぶ長い間の検討に御参加いただきまして、非常に熱心かつ活発な御意見をいただきました。このテーマは、法律はもちろんのこと、労働市場や人事管理や労使関係の多様な側面に関わるものでありましたけれども、委員の皆様方の知見のおかげで、非常に綿密な検討ができたかと思っております。これを今後の政策の形成あるいは実施に当たって活用いただければと思っております。どうもありがとうございました。
それでは、事務局から何かございますか。
○竹中課長補佐 長期間にわたりまして検討会に御参加いただきまして、事務局からも厚く御礼を申し上げます。
ただいま座長から御発言のありましたとおり、多様化する労働契約のルールに関する検討会報告書につきましては、事務局において、座長の最終的な御確認と御指示をいただき、また、必要に応じて委員の皆様にも御確認いただきながら、完成させていただくこととしたいと思います。
それでは、本検討会の最後に当たりまして、吉永局長から御礼の御挨拶がございます。
○吉永局長 労働基準局長でございます。
多様化する労働契約のルールに関する検討会の取りまとめに当たりまして、一言、御挨拶を申し上げます。
委員の皆様方におかれましては、非常にお忙しい中、昨年3月から、13回にわたりまして、非常に活発・熱心な御議論をいただきましたことに感謝いたしたいと思います。
本検討会におきましては、労働契約法改正法の附則の検討規定に基づきます無期転換ルールの見直しと、規制改革実施計画に基づきますいわゆる多様な正社員の労働契約関係の明確化につきまして、御検討いただいたところでございます。これらの検討事項に関します様々な論点につきまして、労使のヒアリングなどを踏まえつつ、多角的な視点から多くの御意見をいただきまして、おかげさまで検討会報告書として取りまとめの段階を迎えたところでございます。改めて、感謝を申し上げたいと考えてございます。
本日いただきました御意見につきましては、山川座長とも御相談しつつ、最終的な報告書としての完成を目指したいと考えてございます。その後につきましては、この報告書を労働政策審議会に報告し、引き続き議論に努めてまいりたいと考えてございます。
委員の皆様方におかれましては、引き続き、労働基準行政の推進に当たりまして御意見などを頂戴できれば幸いでございます。
簡単ではございますけれども、皆様の本日までの多大なお力添えに重ねて御礼を申し上げまして、挨拶とさせていただきます。本当にありがとうございました。
○山川座長 ありがとうございました。
それでは、これで「多様化する労働契約のルールに関する検討会」を終了いたします。
本日も、お忙しい中、お集まりいただきまして、大変ありがとうございました。
照会先
労働基準局労働関係法課
(代表電話) 03(5253)1111 (内線5370)
(直通電話) 03(3502)6734