2022年3月22日 第3回目安制度の在り方に関する全員協議会 議事録

日時

令和4年3月22日(火)  13:00~13:49

 

場所

厚生労働省省議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館9階)
 

出席者

  
公益代表委員
 藤村会長、鹿住委員、権丈委員、小西委員、中窪委員、松浦委員
労働者代表委員
 伊藤委員、古賀委員、小原委員、永井委員、仁平委員、平野委員
使用者代表委員
 大下委員、佐久間委員、志賀委員、新田委員、堀内委員
事務局
 青山大臣官房審議官、佐藤賃金課長、小城主任中央賃金指導官、
 高松調査官、長山賃金課長補佐、尾崎賃金課長補佐
 

議題

(1)目安制度の在り方について
(2)その他
 

議事

○藤村会長 
 それでは時間になりましたので、これから第3回目安制度の在り方に関する全員協議会を開催いたします。本日は、所用により高原委員は御欠席です。また、各委員にはオンラインで御出席いただいております。まず初めに、委員に一部交代がありましたので、御紹介いたします。日本労働組合総連合会の冨田珠代委員が退任されました。その後任として、3月11日付けで新たに就任されました委員を御紹介いたします。労働者代表委員といたしまして、日本労働組合総連合会の仁平章委員です。仁平委員、一言、お願いいたします。
 
○仁平委員 
 今回から参加させていただきます連合の仁平です。どうぞよろしくお願いいたします。
 
○藤村会長 
 よろしくお願いいたします。では、議題1「目安制度の在り方について」の資料№1~5について、事務局から説明をお願いいたします。
 
○尾崎課長補佐 
 事務局です。これまでの目安制度の経緯について御説明させていただきます。資料は№1~5と、参考資料№1です。過去の全員協議会で提出されている資料を更新したものとなります。本日は、主に資料№1と資料№4を用いて、20分程度で御説明できればと思います。
 それでは、資料№1を御覧ください。上のほうに「地域別最低賃金と目安制度」と記載されている資料です。資料№2は、この資料を時系列にした年表となっておりますので、後ほど御覧いただければと思います。
 まず、目安制度創設までの経緯について御説明いたします。1ページ目の1番目に、昭和32年「最低賃金に関する答申」とありますが、ここで最低賃金法の制定を提言しております。答申の内容の①ですが、最低賃金制度は労働条件の向上、企業の公正競争の確保、雇用の質的改善等にも寄与するものであり、法制化に前進すべきとあります。その下の②には、業者間協定方式による最低賃金には法的拘束力を付与することが必要とあり、③で、最低賃金制は業種、職種、地域別の実態に応じて設定し、漸次拡大することが適当とされております。
 この答申を受けまして、2番目ですが、昭和34年に最低賃金法が制定されております。ここから目安制度の創設までに20年程度ありますが、大きく2つの動きがあります。
 1つ目は、最低賃金の決定方式です。1ページ目の4番、最低賃金法の改正が昭和43年にあります。ここで、業者間協定が廃止となり、最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金が中心となっていきます。
 2つ目は、最低賃金の適用範囲の拡大です。次の2ページ目を御覧ください。一番上の7番に、最低賃金の普及促進とあります。(1)の年次計画の②に、産業別、職業別の最低賃金と並んで、特に地域別最低賃金の活用を進めていくとあります。これに基づき、(2)ですが、昭和47年3月の岐阜県から、昭和51年1月に最後の宮城県も適用され、全県で地域別最低賃金が設定されています。
 その下の8番です。同時期に、全国一律の最低賃金制の提案がなされています。9番ですが、昭和50年に、この問題も含め、今後の最低賃金の在り方について中賃に諮問がなされています。
 さらに、11番の四角囲みの所ですが、この諮問に対して昭和52年に答申がなされています。内容としましては、①都道府県ごとの地賃の決定を原則とする現行の決定方式は、今日なお地域間等の賃金格差が大きいことから有効であるとされております。②しかしながら、現行の地賃による決定方式は、全国的な整合性に欠けるとあります。資料にはないのですが、全国的な整合性を取るためには他の都道府県の状況を見る必要があり、地賃の審議が長期化したことも、当時は指摘されていました。③ですが、したがって、当面の最低賃金制の在り方としては、地賃の決定を基本としつつ、全国的な整合性に資する見地から、中賃の指導性を強化する次の措置を構ずることが必要とされています。
 3ページ目を御覧ください。その具体的な内容が、正に「目安制度の創設」であり、上のほうの「ロ」の部分になります。ロの1つ目ですが、毎年、中賃は47都道府県を幾つかのランクに分けて地域別最低額の改定についての目安を提示する。2つ目、目安は一定時期までに示す。3つ目、目安の提示は昭和53年度から行うとされています。
 その下の四角囲みですが、この答申の直前の小委員会最終報告として、2つの事項が合意されています。まず、「イ」です。目安は、都道府県の地域格差、産業格差等を一切考慮しない各都道府県の低賃金層の平均状態を前提として示されるものであること。その下の「ロ」の最後の3行に、目安の性質に関する記載がありますが、「中央最低賃金審議会が提示した目安を参考にするものであって、目安は地方最低審議会の審議決定を拘束するものではない」といった合意がなされています。
 次に、その下の12番の「昭和53年の小委員会報告」を御覧ください。目安制度に基づく最初の審議が昭和53年度に行われており、(1)にありますとおり、第1小委員会にて議論されています。報告の①の最後ですが、この年の引上げ率は、消費者物価上昇率を下回らないようにする必要があると判断されています。次の②ですが、本年の春季賃上げ状況及び労働省の特別賃金調査、今の賃金改定状況調査の結果を検討して、この年の目安が作成されています。以上が目安制度の創設の経緯となります。
 続いて4ページ目、目安制度に基づく審議について御説明いたします。1番の①~⑧は、毎年の審議の流れですが、現在と同様ですので説明は割愛させていただきます。資料№3に、この流れを図式化した資料がありますので、後ほど御覧ください。
 次に4ページに戻ってください。2番の目安の決定状況です。①目安制度を創設した昭和53年度から昭和55年度までの3年間は、労使が合意して「目安」を作成していましたが、昭和56年度以降は、労使の主張に隔たりが大きく、中賃の公益委員の考え方を「公益委員見解」として各地賃に提示するという方式に移行しております。
 ここから先は、目安あるいは地域別最低賃金の決定状況のデータになりますので、資料№4を御覧ください。4-(1)は、目安ないし目安の公益委員見解の推移の資料になります。表の中の金額は、ランクごとの引上げ額、括弧内は引上げ率を示すものになります。括弧内の引上げ率を御覧ください。昭和55年度から平成17年度までは、各ランク同率の引上げ率となっております。引上げ率の最高は昭和55年度の7.0%、最低は平成15年度の0.0%となっています。ちなみに、表の右上の平成14年度と16年度、左下の21年度と令和2年度で、各ランクで「―」の記載となっていますが、これは何円という目安が示されなかったことを意味しています。
 続いて、資料4-(2)は、ランク別加重平均額と引上げ率の推移です。先ほどと同様に、表中の金額は加重平均額、括弧内は引上げ率です。括弧内の引上げ率で見ますと、これまでの最高は昭和55年度の7.04%、最低は平成14年度の0%となっています。
 次のページから数ページは、資料4-(3)で、最低賃金額と引上げ率の推移を都道府県別に見たものですので、後ほど御覧ください。
 次の資料4-(4)は、地域別最低賃金額の最高額と最低額の格差の推移の資料になります。表の3段目が「格差」で、最高額を100とした場合の最低額の割合を示しています。昭和53年度は84.4だったところ、表の右上の平成11年度には86.3と改善しております。その後、表の下段の平成26年度には76.2と格差が拡大していますが、その後は7年連続で改善しておりまして、令和3年度は78.8となっています。
 最後に、資料4-(5)です。目安額と改定額の関係の推移の資料です。目安どおりの改定額だった都道府県の数を御覧いただきますと、表の一番左の数になります。最高は、昭和62年度の45、最低は平成16年度の3となっています。なお、直近の令和3年度は、40の都道府県で目安と同額になっています。
 そのあとの資料は、平成26年度以降の目安額と改定額の関係の推移、最後のページは平成16年度以降の改定答申時の採決状況の推移を都道府県別に示した資料です。後ほど御覧ください。
 資料№1の5ページに戻ってください。目安制度の在り方に関する検討の経緯を御説明します。検討の経過における労働者側、使用者側の主張を、資料№5に整理しておりますので後ほど御覧ください。
 まず、1の昭和57年の全員協議会設置までの経緯です。先ほど昭和53年度に目安制度が創設されたと申し上げましたが、その年の毎年の目安の金額審議の中で労使から、そもそも目安制度のあり方についての議論が提起されていました。例えば、(1)昭和54年度の目安小委の中で、先ほど御説明しました目安の性質に関する議論が、主に使用者側からなされ、答申文に改めて記載されることで合意されています。さらに、(2)昭和55年度の目安小委でも、目安の形態に関する議論がなされています。具体的には資料№5にありますが、労働者側からは「目安を最低賃金額の絶対額で示すべき」、使用者側からは「Dランクを2つに分けてランク区分を5ランクにすべき」といった議論がなされており、(4)にもありますとおり、昭和56年の目安小委でも労使から同様の主張がなされています。
 (5)ですが、昭和57年度の目安小委でも同様の意見が表明され、公益委員の考え方として2点示されています。イとして、労使の主張は目安の基本に関わるものであり、慎重な検討を要すること。次にロは、目安制度の運用について、目安の地域区分、表示方法、賃金実態調査の方法などを基本的に検討することが望ましいとされています。これを受けて、全員協議会が設置され、「今後の目安制度のあり方について」議論することが決定されています。
 2ですが、最初の検討は、昭和57年7月に開始されております。 (2)のとおり、労使の意見の隔たりが大きく、引き続き検討となっています。
 6ページ目、3の平成元年2月及び、4の平成2年3月に設置の全員協議会で断続的な検討が進められています。
 7ページ目、5の平成5年3月設置の全員協議会における検討です。中段の(4)平成7年4月に、報告が取りまとめられています。この平成7年報告では、初めてランク区分の見直しが提言されています。②ランク区分及び表示方法の1つ目のポツに、各都道府県の経済実態に基づいて各ランクへの振分けを見直し、今後は見直し後のランクで目安を示すとされております。2つ目のポツですが、各都道府県の経済実態は、賃金動向を始めとする20の諸指標を総合化した指数で表して、ランク区分するとなっております。3つ目のポツは、ランク数は従前どおり4ランクを維持することにしています。1つ飛ばして最後のポツですが、ランク区分については、総合指数に基づいて5年ごとに見直しを行うことも合意されております。
 さらに、一番下の④今後の見直しですが、ランク区分以外の事項も含めて目安制度のあり方について、今後おおむね5年ごとに見直しを行うことが適当とされています。この平成7年の合意に基づきまして、全員協議会を定期的に開催し、おおむね5年ごとの見直しがこれまで行われてきております。
 8ページ目ですが、平成11年設置の全員協議会では、(3)平成12年3月に中間報告がなされています。①のランクについてですが、3つ目のポツに、総合指数とは、あくまで中賃のランク区分を見直すための基礎データに過ぎず、地賃において最低賃金額の順を是正すべく措置されることまでは予定しないとされています。②の目安の決定のあり方ですが、3つ目のポツで、目安は地賃の審議決定を拘束するものではないことが改めて確認されています。
 続いて9ページ目です。(4)で中間報告の後に、平成12年12月に報告が取りまとめられています。①表示単位期間については、就業形態の多様化や、最低賃金の影響を受ける労働者が時給制の労働者が多いことも踏まえ、現行の日額・時間額併用方式から時間額単独方式に一本化することが適当とされています。
 7番ですが、時間額単独方式への移行の条件整備について検討するために、平成13年4月に時間額表示問題全員協議会が設定されています。(3)の四角囲みの報告を受けまして、目安についても最低賃金額についても、平成14年度から時間額表示に移行しております。
 続きまして、8番の平成15年設置の全員協議会と、9番の平成21年設置の全員協議会の検討内容がありますが、いずれもランク区分や、賃金改定状況調査等の参考資料のあり方や、目安審議のあり方などについて議論されておりますので、後ほど御覧ください。
 最後に11ページ目ですが、10番は、直近の平成26年6月設置の全員協議会についてです。(2)検討内容ですが、目安制度の意義、ランク区分の在り方、目安審議の在り方、参考資料の在り方などについて議論されています。(3)の四角囲みですが、平成29年3月に報告が出ております。まず①の目安制度の意義ですが、目安制度については、できる限り全国的に整合性ある決定が行われるようにすべきであること、また、制度として定着し、地賃の円滑な審議に重要な役割を果たしていることから、ランク制度の必要性については改めて確認しております。
 次に②のランク区分の在り方ですが、平成7年以来の考え方を踏襲しながら、経済実態を見る指標については19指標に見直しており、その上で見直しがなされています。ランク数は引き続き4ランクとなっています。
 その下の③目安審議の在り方です。今後の目安審議については、公労使三者が、その真摯な話し合いを通じて、法の原則及び目安制度に基づき、時々の事情を勘案しつつ総合的に行うことが重要とされております。その際、地賃に対して目安の合理的な根拠を示すための努力など、目安への信頼感を確保するための取組を一層進めていくことが必要とされています。
 12ページ、④参考資料の在り方です。1つ目のポツですが、まず賃金改定状況調査については、当面は現行の方法を維持することが適当とされています。2つ目のポツで、その他の参考資料については各種統計資料の取捨選択を行うとともに、引き続き見直しについては検討することが必要とされております。3つ目のポツですが、最低賃金引上げが及ぼす影響については継続的に検討していくことが必要とされております。
 最後に、⑤今後の見直しです。ランク区分については、平成7年報告に復して5年ごとに見直しを行い、2022年度以後、つまり来年度からは、見直しの結果に基づいて目安審議を行うことが適当とされていますが、御案内のとおり、前回の全員協議会の中で、1年延期して2023年度めどでの取りまとめを目指すことが合意されました。目安制度の経緯に関する資料の説明は以上です。
 
○藤村会長 
 どうもありがとうございました。いろいろなことがあって、今日この時点に私たちは立っているということをお分かりいただけたかと思います。ただいま御説明いただきました資料の1から5について、これから質問を受けていきたいと思いますが、いかがでしょうか。画面上で挙手をしていただくと、多分、私から見えると思いますが、いかがですか。あるいは声を上げていただいても結構です。これまでのいろいろな経緯、私は平成19年から関わってきましたが、こういうことがあったなと今、思い出していました。特段の質問がないようでしたら、次の点にいきたいと思います。
 次は、資料№6です。事務局から説明をお願いしたいと思います。
 
○賃金課長 
 それでは、資料の№6について、事務局賃金課長の佐藤から御説明をさせていただきたいと思います。資料の№6ですが、議論すべきものとして御意見を頂いた事項ということで、前回は、この(1)、(2)、(3)、(4)の柱書きの部分だけを出していましたが、これまでの議論や前回の御意見等々を踏まえまして、それぞれの項目としてポツ、ポツ、ポツというところまで挙げさせていただいたということです。今回は、正にこれらの項目について、労使の皆様からいろいろと御意見を頂き、この中で、更にどういうことについて優先的に、今回の全協で議論をしていくのかという御議論を、本日いただければと思っております。
 まず(1)ですが、大括りで目安審議の在り方という中で、前々回、第1回の全協のときに今後やっていこうということで、一応御了解いただいた「議事の公開」に関すること、2つ目は、どういう水準を目指していくべきかという「あるべき水準」に関するもの、3つ目は「政府方針への配意の在り方」、4点目は「発効日」に関してのことです。そして、先ほど資料1の説明の中でもありましたが、5点目は「目安の位置付け」に関することです。以上が(1)に関することです。
 続いて(2)のランク制度の在り方ですが、基本的にはランク制度の見直しについても5年に1回ということで、これまでも議論いただいてきたところですが、今回もそもそもランク制度の在り方についてどう考えるのか。ランク制度を維持するとして、どのような区分けにし、どのような指標で見直すのかといった「ランク制度の在り方」、それから「ランク区分の見直し」という点についてが、(2)のランク制度の在り方に関する部分です。
 続きまして(3)ですが、こちらは目安の審議をする際の「参考資料の在り方」ということです。正に、目安小委で、どのような資料をもとに御議論いただくのかという点かと思いますが、1点目については現在の主要統計資料で足りない部分がないか、いらないものはないかという点を御議論いただきつつ、さらに、そのデータの取得時点、より最新のものが取れるものがないかということについても確認したいということかと思っています。
 2点目の所ですが、新しくデータを取ることができなくなってしまった項目がありますので、こういった項目についてどのように考えるのかということかと思います。
 3点目ですが、賃金改定状況調査、いわゆる4表の位置付けということで挙げさせていただいています。
 (4)その他に関しては、現時点で何かしら事務局として念頭に置いているものはありませんが、もし何かありましたら(4)その他ということで、皆様から御意見を頂ければと思っています。本日、これに関して労使の皆様から忌憚のない御意見を頂ければと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 
○藤村会長 
 どうもありがとうございました。では、ここから皆さん方の御意見、御質問を受けていきたいと思います。いかがでしょうか。仁平さん、どうぞ。
 
○仁平委員 
 ありがとうございます。これまでの経緯について、先ほど事務局から説明いただいてありがとうございました。説明の中にもありましたが、目安制度発足以来、労使で議論を積み重ねてきて、説明にあったとおりこの間改善を重ねてきているわけです。そういう中で、現在の制度の定着が図られてきたのだろうと思っています。今回の全協でも目安制度、中賃の役割を維持、発展させていく、こういう観点から労使で率直な意見交換を行って、合意できる点は前進させるべきだということで、前向きな議論を労側としてもしていきたいと思っている次第です。
 1月の全協では、労側として「あるべき水準論」の議論の必要性、それと「賃金改定状況調査の位置付け」について問題提起させていただいたところですが、本日、重複を避けながら、補足も含めて3点ほど意見を申し上げたいと思っています。
 まず1点目ですが、「政府方針への配意の在り方」についてです。中賃では、2016年の審議から政府方針に配意した審議が求められてきたと認識をしています。最低賃金は労働者保護政策としての側面があって、政府が一定の方向性を示す必要性は理解できす。しかしながら、一方で、最低賃金の決定プロセスでもっとも重要な点は、この中賃の審議において、現場実態を熟知する労使が議論をしっかりと尽して合意形成を図る、こういうプロセスなのではないかと考えています。したがって、政府方針に一定程度配意するとしても、中賃としての役割発揮、決定機能は重視されるべきだと思います。そうした認識に立つのであれば、労使で目標水準を議論した上で、年々の審議では最賃決定の3要素を踏まえながら目標水準への到達の年数、引上げ額を議論する。こうした中で着実な引上げのプロセスを踏んでいくということが重要なのではないか。この点をまず強調させていただきたいと思います。
 2点目です。「参考資料の在り方」についてです。1月の第2回全協でその位置付けについての課題認識を申し上げたところですが、本日はその他の参考資料の扱いについて一言申し上げておきたいと思います。目安審議で直接に議論に活用されていないものもあるとは思いますが、審議に当たって予めやはり事前に確認し、委員として承知しておくものもあります。また、地方審議の段階で活用されるデータなどもあるのだろうと思っています。したがいまして、参考資料の棚卸しするのであれば、地方審議会の意見等も聞いた上で検討する必要があるのではないかということが2点目です。
 最後、3点目、「議事の公開」についてです。これについては議論することは既に合意事項であって、やぶさかでないわけですが、公開の範囲やタイミングなどについては、地方審議会への影響なども考慮して議論をする必要があるのではないかということを申し上げておきたいと思います。以上です。
 
○藤村会長 
 どうもありがとうございました。3番目におっしゃった議事の公開のタイミングというのは、具体的にいつ頃と考えていらっしゃいますか。
 
○仁平委員 
 これについては、しっかりこの取りまとめも含めて来年と言いますか、来年の春ということが念頭に議論されていくのではないかなと思っていますので、そういうことを考えています。
 
○藤村会長 
 ということは、今年は、まだ公開はしない。来年の審議において、これを公開する。どこまで公開するかは、正に議論する必要がある、というお考えだという理解でよろしいですか。
 
○仁平委員 
 はい、そのとおりです。今夏の目安審議も踏まえて、その前に検討の機会を何回持てるのかということもあると思いますので、中途半端な議論のまま、公開の話を進めないほうがいいという立場です。
 
○藤村会長 
 分かりました。ありがとうございます。佐久間委員から手が挙がっています。どうぞ。
 
○佐久間委員 
 ありがとうございます。全国中央会の佐久間です。今回の資料№6に関してですが、これから議論すべきものとして、いままで公労使からの御意見を集めた事項となっております。「(1)目安審議の在り方」から「(4)その他」になっていますが、これについては異議ありません。話の流れでまた議論していかなければならない項目が出てくるかもしれませんが、概ねこの水準というか、この項目で、まず議論をすべきだろうなと思います。
 ただ今、仁平委員からも発言がありました議事の公開については、私も同意です。やはり、この全員協議会でしっかり議論をして、そこで1つの取りまとめや報告を行うために、今回、そして、次回の審議については、これからはじまる中央最低賃金審議会の審議が地賃に及ぼす影響ということも加味しなくてはいけないと思いますので、報告をとりまとめてから、議事をどこまで公開していくのか、その議論を行っていく必要があると思います。
 また、あるべき水準、そして政府方針への配慮の在り方についてですが、前回の繰り返しになるかもしれませんが、前回というか今年度、コロナの影響で、全く先の分からない状況が一昨年から続いてきて、そして業界によっては巣ごもり需要と言いますか、うまく対応しながら好調な業績を残してきたというか、収益、利益を生み出してきた業種や企業などが増えてきた一方で、多くの業種や企業の中では、売上は何とか維持又は減少しながら、コロナの波と言いますか、これに身を委ねながら何とか経営を維持してきたというのが現状であることに変わりはないと思います。その中で、今年度、過去最高額となる最低賃金の引上げがなされて、これだけ引き上げても「やはり企業はつぶれない」という意見も交渉過程で出ていたわけですが、これだけの大きな引上げはなされたということは、私どもは中小企業の代表として参加させていただいている以上、私どもだから、あえて反対をしなければいけないということで採決をさせていただいたわけです。しかしながら、この公益、労働、使用者側の三者構成での話合いの重要性というのは、これも繰り返しになりますが、忘れたことはなく、今後もこの体制は是非とも維持していただきたいと思っています。
 これから全員協議会を来年度に向けて実施をしていくわけですが、やはり「成長と分配の好循環」、それから「生産性の向上」、そして「賃金の引上げ」が今、正にクローズアップされている状況ですから、政府のほうでも新しい会議体や、それから今までの骨太の方針など、いわゆる政府の方針については、特に労使の意見を聞いていただきながら、その時々の事情ではなく、賃上げ率や物価の上昇、そして物価の指数などを勘案して、データに基づいた数字を是非、提示を頂きたいと考えます。その方向性によって、ある程度幅を持たせた額というものも提示を頂ければ、分かりやすいのではないかなと思います。
 「(1)の目安審議の在り方」の項目の中には、発効日や目安の位置付けということがあります。これは先ほどご説明のあった今までの経過等を伺いますと、地方最低賃金審議会のほうでも審議は可能であるということも出ていました。地方最低賃金審議会の委員には中央最低賃金審議会で示された目安金額を固定的に考えて、地賃の役割はないのではないかという意見を持っている方が、私ども中央会の委員にもおります。特に、使用者側の委員には、そういう意見を持っている方もいらっしゃると思います。中央最低賃金審議会で決定された金額は、あくまで目安であり、労働者の賃金、それから生活費、事業者の支払能力によって、より地域の、より地方の実態に合った最低賃金の引上げを実施していただくことが必要であることから、発効日についても同様に、これは労使、また公労使で話合って、その地域、地方が決めていくわけですから、是非もう一度、労働局のほうから審議が始まる前に「目安金額のとらえ方や発効日については固定的ではないので協議することは可能」といった文書を出したり、意見に沿うような説明をしていただければとよろしいのかなと思っています。
 ランク制度の在り方、区分の見直しについては、次回以降、水準の在り方などを審議をしていきたいと思っています。
 なお、追加資料の関係ですが、いわゆる未満率や影響率の資料は、例年、目安に係る小委員会の概ね第2回目の会議で提示していただくわけですが、何かこの辺の深掘りした資料として、例えば最低賃金の一致比率を出していただいたくのも良いのではないかと。影響率はどちらかというと予測値として捉えることも出来ることから、公益の先生方から引上げ額の案を頂いたときに、どのぐらいの予測値として影響率がどれくらいになりそうだとか、そういう数値を提示していただくということもよろしいのではないかなと考えていました。以上です。
 
○藤村会長 
 分かりました。ありがとうございます。大下委員、どうぞ。
 
○大下委員 
 ありがとうございます。日本商工会議所の大下です。お示しいただいた議論すべきものとして全体で挙げられている項目について、今後の審議の中で議論することに大きく異論はありません。前回も申し上げましたが、議論は5年に一度のものですので、今回、冒頭に御説明いただいた制度の歴史的な経緯、それから雇用、労働、賃金等を取り巻いている今の環境の変化、あるいはこれから先、見通される環境の変化等も踏まえながら、各項目についてしっかり意見交換をしておく必要があると思います。なお、議論した際に、労使で明確な結論に至らない項目があるかもしれませんが、次の検討は5年後になりますので、そのときの議論のためにも、それぞれ結論が得られなかったものについて、おおむねどのような意見があったのかを記録としてしっかり残し、また公開をしていくべきと考えています。
 個々の項目については、今、お二人から御意見を伺っていたものと、そう変わらない部分がありますが、従前から我々が主張しています政府方針への配意の在り方の部分と、それから連合の仁平委員からお話された「あるべき水準」、ここは少し相互に関わりがあるところと思っています。この点について、これまで述べてきたことの繰り返しになって大変恐縮ですが、今、考えているところを改めて申し述べておきたいと思っています。
 政府方針を最低賃金について示されるのであれば、議論の場に労使の代表がしっかり参画して、その意見を踏まえた上で決定されるべきだということを繰り返し述べてきました。もう1つ大事なことは、仁平委員の御意見にもありましたが、その定められた政府方針が実質的に地方の最低賃金審議会の議論を縛るようなことがあってはならないというところだと思っています。前回、これは最賃決定のプロセス全体における問題で、目安審議の在り方そのものとは異なるため、全員協議会で議論して結論が得られるもの、あるいは得るべきものではないということを申し述べました。逆に言えば、政府方針が目安審議を実質的に縛るようなことがないという状況をどう作るべきなのか。目安審議の意義を明確にするためにも、政府方針への配意というものを目安審議の中でどう考えるのかということについては、これも結論が得られるかどうかは悩ましい部分がありますし、もう1つには、その政府方針の議論の場に労使の代表が参画するという状況がきちんと守られるか、実現されるのかによっても変わってくると思いますが、今回の5年に一度の議論の中では、しっかりと議論をしておく必要があるのではないかと思っています。
 それ以外の各項目については、特段、今日の時点では申し述べることはありませんが、是非、皆さんで議論をして、繰り返しになりますが、5年先を見据えながら方向性をしっかり示すことができればと思っています。私からは以上です。ありがとうございます。
 
○藤村会長 
 どうもありがとうございます。経団連の新田さん、どうぞ。
 
○新田委員 
 経団連の新田です。仁平委員、佐久間委員、大下委員の発言を聞いていて、基本的に今回の審議に臨む考え方は、おおよそ合っていると思いました。見解は違うにしても、真摯にこの場を通じて議論を重ねて、合意できるところがあれば、それをきちんと報告書に記載をしていく、あるいは合意には至らなかった点があったとしても、その点についても報告書にこういう意見があったということをしっかりと残しておいて、今後の議論につなげていくことは非常に大事なことではないかと改めて感じたところです。
 今回の資料№6として示されているものについては、私も異論はありません。正にこういった点について議論を重ねさせていただいて、先ほど申し上げたとおり、合意できるものなら合意し、しっかりと書いていくということが非常に大事ではないかと思っています。しかし、個々の中身についてはこれからの議論でありますし、これから意見等の開陳はしていきたいと思いますが、ただ1点だけ申し上げておきます。前回のときに私から議論したい、あるいは議論すべきということで申し上げた(1)の目安審議の在り方の発効日と目安の位置付けについて、特に目安の位置付けについては、今回、議論すべきものの事項に挙げられていますが、この内容については、議論すべきというより、先ほどの目安審議等々のこれまでの御説明の中にあったとおり、そもそも目安というものは地方最低賃金審議会の審議決定を拘束するものではないということを、改めて、この目安全協で確認させていただきたいという趣旨で申し上げました。この点については事実関係を含めて、恐らく皆さんも異議や相違はないと思っています。
 発効日については、各地賃で公労使が合意すれば設定ができるということで、これも事実として、異論はないところだと思います。発効日の在り方については、議論したいと思っていますので、補足として申し上げておきたいと思います。
 いずれにしても、今後、こういった項目について労側の皆様、公益の先生方と一緒に議論を重ねて、より良い制度にしていければと思っています。私からは以上です。
 
○藤村会長 
 分かりました。ありがとうございます。労働者側委員からも手が挙がっているようですので、伊藤さん、どうぞ。
 
○伊藤委員 
 すみません、労側としても少し意見を追加で述べさせていただきたいと思います。2つありまして、1つは「発効日」についてです。今ほども使用者側の先生から御意見を頂戴していましたが、本日、冒頭の事務局の御説明にもあったとおり、発効日については春闘における賃上げ結果を、未組織労働者を中心とする最低賃金近傍で働く者へ速やかに波及させるために10月1日を一定程度の目安として決めてきた経過があります。この趣旨や経過というのは、引上げ額の多寡によって変わるものではないと思います。したがいまして、10月1日発効としてきた趣旨は、地方審議会の関係者にも丁寧に説明する必要があります。むしろ、今、申し上げた趣旨を踏まえれば、10月1日にこだわらず、労側としては10月1日より前倒しでの発効も有用ではないかと考えています。そうした点も含めて総合的な観点から、発効日については御議論させていただければと思っています。
 2点目は、「目安の位置付け」です。こちらについても使用者側の先生方から課題提起もありましたが、労側としても中賃が示す目安を踏まえた上で、地方審議会が自主性を発揮して審議を行うことが非常に重要だと考えています。併せて、全国整合性を図るために導入したという目安制度の意義、これについても重要であると考えています。であるからこそ、我々労側としては、かつての全協で、これも何度もですが、この両者の達成の観点から目安をゾーンで示すということを三度にわたって提案してきたのです。この点は使用者側の先生の反対で、当時は見送られたわけですが、もし今回、「目安の位置付け」について議論するということであれば、目安をゾーンで表示することも検討に値すると考えています。少なくとも地方審議会に対しては、全国整合性を図るために目安制度を導入したという趣旨を含めて、丁寧に説明していくことが必要であると考えます。以上です。
 
○藤村会長 
 分かりました。ありがとうございます。そのほかにはありませんか。大体よろしいですか。今日は、ここで何か決めるとか、合意するというものではなく、今日は第3回目ですから、これから4回目以降に、どういう点について議論すべきかということを出していただくということで、労使双方から補足意見も含めて、今、大分出てきました。資料№6に挙げられている項目については、異論はないということだと思います。これを今後、この目安全協で議論していくことになります。具体的な御意見については、個々にそれぞれあると思いますが、とりあえず、項目としてはこれでいいのではないかという合意ができたように思います。追加で何かありますか。よろしいですか。分かりました。どうもありがとうございます。
 今日お出しいただいた点については、第4回以降、引き続き議論していきたいと思います。今日は、ここまでということですので、次回の開催日程については事務局で別途調整をお願いしたいと思います。これで終わりますが、何か発言のある方はいらっしゃいますか。いいですか。では、以上をもちまして、本日の全員協議会を終了したいと思います。どうもありがとうございました。