2022年1月24日 第12回化学物質による疾病に関する分科会 議事録

日時

令和4年1月24日(月) 10:00~12:00

場所

AP虎ノ門 Iルーム
(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル3F)

出席者

参集者:五十音順、敬称略
上野晋、圓藤吟史、武林亨、角田正史、野見山哲生

厚生労働省:事務局
小林高明、西村斗利、児屋野文男、中山始、本間健司 他

議題

  1. (1)労働基準法施行規則第35条別表第1の2第4号の1の物質等の検討について
  2. (3)その他

議事

議事録

○古山係長 定刻より少し早いですが、先生方皆様おそろいですので、これより「労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会」を開催いたします。分科会を開催する前に、傍聴されている方にお願いがあります。携帯電話などの電源は、必ず切るかマナーモードにしていただくようお願いします。そのほか、別途配布しております留意事項をよくお読みいただき、会議の間はこれらの事項を守って傍聴していただくようお願い申し上げます。万一、留意事項に反するような行為があった場合には、この会議室からの退出をお願いすることがありますので、あらかじめ御了承ください。
 では、これより第12回労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会を開催いたします。委員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。それでは、写真撮影等はこれまでとさせていただきます。以後、写真撮影等は御遠慮ください。よろしくお願いいたします。なお、後ほど御説明いたしますが、本日は一部の議事に関する部分を非公開で実施いたします。
 それでは、座長の圓藤先生に議事の進行をお願いしたいと思います。
○圓藤座長 議事に入る前に、事務局から本日の資料の確認をお願いいたします。
○古山係長 本日の資料は、オンラインで御参加の先生方には事前にメールで送付させていただいております。会場に御参集いただいた方は、タブレット等で御確認いただけます。
資料1は化学物質評価シート(シャンプー液等による接触性皮膚炎)、資料2はシャンプー液等による接触皮膚炎検討結果のまとめ(16物質のみ)、資料3はシステアミン塩酸塩(CHC)及びコカミドプロピルベタイン(CAPB)に関するこれまでの検討結果、資料4は大臣告示における「血管運動神経障害」の表記について、資料5-1は労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会検討結果報告書(案)、資料5-2は報告書別添(案)になります。
机上配布資料1は化学物質評価シート(ジアセチル)、机上配布資料2はジアセチルによる労災認定事例の判断理由、机上配布資料3は(委員名入り)化学物質評価シートのシャンプー液等による接触性皮膚炎、机上配布資料4は(委員名入り)シャンプー液等による接触皮膚炎検討結果のまとめ(16物質のみ)となっております。
資料の不足等はございませんでしょうか。以上になります。
○圓藤座長 最初に、事務局から本日の議事及び資料の説明をお願いいたします。
○秋葉中央職業病認定調査官 本日の議事につきましては、ジアセチルによる呼吸器疾患についての検討、シャンプー液等による接触性皮膚炎についての検討、「血管運動神経障害」の告示上の表記についての検討、最後に報告書(案)の検討、以上の4点を予定しています。このうちジアセチルの検討につきましては、個別の労災認定事案の詳細に言及するため、非公開となります。
 続いて、資料について御説明します。資料1は、シャンプー液等による接触皮膚炎に関して、2つの化学物質についての最終評価シートです。資料2は、このシャンプー液等による接触皮膚炎に関して、これまで検討が行われた16物質について、その結果をまとめたものになります。資料3は、資料1に記載の2物質、すなわちシステアミン塩酸塩とコカミドプロピルベタインに関するこれまでの検討結果を整理したものです。資料4は、大臣告示における「血管運動神経障害」の表記について前回の分科会で頂いた御意見と、大臣告示に記載する表記の変更案を記載したものです。資料5-1は分科会の検討結果報告書本文の案、資料5-2は報告書の別添資料の案です。
 そして、机上配布資料1は、ジアセチルによる呼吸器疾患について、検討の契機となった労災認定事例の内容を確認いただき、今回改めて評価を行っていただいた結果を記載した評価シートです。机上配布資料2は、ジアセチルの労災認定事例の詳細を記載した資料です。机上配布資料3は、資料1のシャンプー液等による接触皮膚炎に関する2物質の評価シートに、評価を行っていただいた先生方のお名前を記載したものになります。机上配布資料4は、資料2の16物質の検討結果のまとめ資料に、同じく評価を行っていただいた先生方のお名前を記載したものになります。
先生方には、お忙しい中、今回も評価の作業を行っていただき誠にありがとうございました。資料の説明は以上です。
○圓藤座長 それでは、ジアセチルによる呼吸器疾患についての検討を行いたいと思います。まず、事務局から、説明をお願いいたします。
○古山係長 それでは、ここからは非公開になりますので、傍聴者の方は一旦御退室をお願いいたします。
                                 (非公開)
○圓藤座長 それでは、ジアセチルについての取扱いについて、説明したいと思います。ジアセチルによる呼吸器疾患については、大臣告示に追加しないということにしたいと思っております。その追加しない理由としまして、我が国では労災認定事例1例が報告されておりますが、それ以外にはまだないということでございます。閉塞性細気管支炎というのは難病に指定されており、今後、発症機序とか診断の関係の研究が待たれるところでございます。それから労災認定事案のばく露状況につきましては、海外の文献と比較する上で、不明な点が多い思っております。ということで、大臣告示には今回は見送り、引き続きジアセチルによる労災事例を注視していきたいと考えております。そのようなまとめで、委員の皆様方、それでよろしいでしょうか。
                                   (異議なし)
○圓藤座長 では、ジアセチルについては、大臣告示に追加しないと決定したいと思います。
 続きまして、シャンプー液等による接触皮膚炎について、結論を保留しておりました2物質、システアミン塩酸塩、コカミドプロピルベタインについて検討したいと思います。この2物質については、他の16物質の検討結果を踏まえて結論を出すことにしていました。そこで、事務局から、評価に当たっての説明をお願いいたします。
○秋葉中央職業病認定調査官 資料3を御覧ください。この2物質に関するこれまでの検討において出された意見と論点を整理して記載しております。まず、システアミン塩酸塩については、御覧の3点です。すなわち、2019年のNishiokaらの論文では、日本の症例として美容師に関する事例が7件報告されており、症例数では十分と言えるのではないか。2017年のイトウらの論文では、システアミン塩酸塩も含めて13物質ほどを日本人美容師のアレルギーとして挙げておくことを推奨すると報告されている。我が国での接触皮膚炎に対する考え方をほぼ網羅していると考えられる日本皮膚科学会の「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」では、職業性接触皮膚炎の可能性の高い物質がまとめられているが、システアミン塩酸塩は含まれておらず、この点をどのように評価すべきか。
 次に、コカミドプロピルベタインについては、御覧の3点です。すなわち、国内における非アレルギー性の接触皮膚炎の報告が複数ある。非アレルギー性の皮膚炎である可能性や、コカミドプロピルベタインは界面活性剤であるため、皮膚のバリア機能を破壊し、他のアレルゲンにばく露した際にアレルギー反応が起こる可能性が考えられ、この物質自体はアレルゲンではないと考えられる。2012年のSurronenらの後ろ向き研究では、コカミドプロピルベタインが接触皮膚炎の原因ではないと報告している。以上のとおり整理しております。
以前先生方に評価をいただいた結果は資料1及び机上配布資料3に記載されております。説明は以上です。
○圓藤座長 ありがとうございます。それではシステアミン塩酸塩につきまして、先生方からの意見を求めたいと思います。上野先生、いかがでしょうか。資料3も考慮して、御検討いただきたいと思います。
○上野先生 私はシステアミン塩酸塩については、今回の評価でも○にしておりまして、資料3の上2つの日本の症例として7件報告されている、これは短報ではあったのですけれども、一応7症例あるということとか、日本人の美容師のアレルギーとして挙げておくことが推奨されているというところから、これは入れてもいいのではないかなと思いました。ガイドラインに含まれていないことをどう評価するのかというところは、ちょっと自分の中でも何とも判断しにくいところがあるのですけれども、私は、上2つの点からは、入れてもいいのではないかと考えました。コカミドプロピルベタインについては、これがアレルゲンではないのではないだろうかということが、やはり議論を通して考えられているような気もしますので、今回は外していいのではないかと思っております。以上です。
○圓藤座長 ありがとうございます。武林先生、いかがでしょうか。
○武林先生 上の物質については、7件の症例報告が十分かということで、これまで×にしていました。今、上野先生からお話がありましたように、7件ということを十分と取るということであれば、考慮してもいいのかなと思いますが、なかなか中身が十分、機序的なことも含めて、理解できる中身ではなかったので、×としておりました。これは引き続き検討してもいいのではないかと思います。
 下の物質については、もともと書いてありましたように、これまでの既報を検討しても、むしろ積極的に採用する理由はないと感じておりますので、引き続き私の評価は変わらず×と考えています。以上です。
○圓藤座長 皆様方、両物質について評価していただいていますので、角田先生も両物質について評価をお願いいたします。
○角田先生 最初の方のシステアミン塩酸塩は迷ったのですけれども、上野先生ご提供の論文を読むと7つあるので、これで○。ただ、1つの論文7つなので、それをどう捉えるかというところが問題かと思いまして、論文を読むとかなり短いので、ちょっとどうしたものかなというところです。ただ、7つということに重きを置いて○にいたしました。
 それからコカミドプロピルベタインは、よく各論文を読むと、アトピー性皮膚炎の患者は避けた方がいいと書いていました。つまりバリア機能が駄目な患者はやめておいた方がいいという意味と、それから偽陽性ではないかという指摘もあるので、これは×でいいのではないかと考えました。以上です。
○圓藤座長 ありがとうございます。野見山先生、いかがでしょうか。
○野見山先生 最初の物質については、△にしておりますが、どちらかというと○に近いかなと考えています。このガイドラインに載っていないことについては、検討した上で載せていないのかどうかというところが分かりませんので、そういう意味では、そのものが載っていないからといって、載せないということにはならないと思いますので、△にしますが、○にかなり近いと考えています。
 下については、すみません、これを私は○にしていますけれども、×でよろしいかと思います。既に先生方から御意見が出ているとおりです。以上です。
○圓藤座長 ありがとうございます。私は、システアミン塩酸塩に関しましては、Nishiokaらの論文がありますし、労働者健康福祉機構の報告書にもございますので、○にしてもいいのではないかと判断しておりましたが、接触皮膚炎に関する診療ガイドラインでは、優先順位が高くないということでありますので、一旦、ここでは見合わせてはいかがと考えて△にしております。接触皮膚炎というのは、いろいろな機序で起こってきまして、また交差反応とかがございますので、もう少し知見を待ってからの方がいいのではないかということで、△にしております。
 それから、コカミドプロピルベタインに関しては、これは接触皮膚炎というよりも非アレルギー性の皮膚炎で、バリアフリーが破壊されることによるので、他の接触皮膚炎と同列に扱うのでなく、皮膚障害があるにしても少し機序が違うだろうということで、△にしております。以上です。
 皆様方の意見をまとめていきますと、大臣告示にする場合は、皆様方が一致して、告示するのは適当である、と評価したものに絞っていきたいと考えておりますので、今回は見合わすことにして、引き続き調査を続けていくということにしたいと思っております。
コカミドプロピルベタインに関しては、非アレルギー性の皮膚炎に関しての取扱いについても、今後考えていくことで、今回は大臣告示から外していきたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
                                   (異議なし)
○圓藤座長 では、そのようにさせていただきます。以上、システアミン塩酸塩については追加しないこととしたいと思います。コカミドプロピルベタインについても追加しないことにしたいと思います。
シャンプー液等による接触皮膚炎については、資料2及び机上配布資料4に、今回検討した以外の16物質の検討結果及び追加等の理由をまとめていますので、確認したいと思います。事務局の方で、化学物質名、本分科会における検討結果、追加等の理由を、物質ごとに順番に読み上げていただきますようお願いします。
○秋葉中央職業病認定調査官 資料2又は机上配布資料4を御覧ください。順に読み上げてまいります。
パラトルエンジアミンについては、「皮膚障害」を大臣告示に追加。その理由として、国内において職業性ばく露による皮膚障害の症例報告が複数あることから、症状又は障害として「皮膚障害」を追加することが適当と考えられる。
 オルトニトロパラフェニレジアミンについては、大臣告示に追加しない。その理由として、日本人を対象とした皮膚炎に関する文献があるが、パラフェニレンジアミンとの交差反応かどうか判断ができないとされており知見として不十分であるため現時点では追加する必要はないと考えられる。
 パラアミノフェノールについては、大臣告示に追加しない。その理由として、海外における症例報告や疫学報告はあるが、国内における職業性ばく露に関する知見が不十分であること及びパラフェニレンジアミンとの交差反応かどうか判断ができないとされており、知見として不十分であるため現時点では追加する必要はないと考えられる。
 パラアミノアゾベンゼンについては、大臣告示に追加しない。その理由として、疫学報告があるが、アゾ染料との交差反応を論じており、パラアミノアゾベンゼンのみの影響によるかは不明であり、知見として十分とは言えないことから現時点では追加する必要はないと考えられる。
 赤色225号については、大臣告示に追加しない。その理由として、症例報告はなく、疫学報告1件のみであるが、発症例が少ないこと及び交差反応の可能性が指摘されているため、知見として十分とは言えないことから現時点では追加する必要はないと考えられる。
 過硫酸アンモニウムについては、大臣告示に追加する新たな症状又は障害はない。その理由として、既に告示に皮膚障害又は気道障害が規定されているが、他に追加すべき症状又は障害はなく、現時点では新たに追加する必要はないと考えられる。
 ハイドロキノンについては、大臣告示に追加する新たな症状又は障害はない。理由として、既に告示に皮膚障害が規定されているが、他に追加すべき症状又は障害はなく、現時点では新たに追加する必要はないと考えられる。
 チオグリコール酸アンモニウムについては、「皮膚障害」を大臣告示に追加。その理由として、国内において、職業性ばく露による皮膚障害の症例報告が複数あることから、症状又は障害として「皮膚障害」を追加することが適当と考えられる。
 モノチオグリコール酸グリセロールについては、大臣告示に追加しない。その理由として、海外における症例報告や疫学報告はあるが国内における使用量が減少しており、今後、国内において理・美容師の職業性ばく露による事例が発生する可能性は低いため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
 香料ミックスについては、大臣告示に追加しない。その理由として、香料ミックスは複数の化学物質からなる混合物であり、告示への規定になじまないことから、現時点では新たに追加する必要はないと考えられる。
 ペルーバルサムについては、大臣告示に追加しない。その理由として、職業性ばく露に関する症例があまりなく、他の物質との交差反応の影響も指摘されており因果関係が明確ではないことから、現時点では新たに追加する必要はないと考えられる。
 ケーソンCGについては、大臣告示に追加しない。その理由として、職業性ばく露に関する症例があまりなく、他の物質との交差反応の影響も指摘されており因果関係が明確ではないことから、現時点では新たに追加する必要はないと考えられる。
 クロロクレゾールについては、大臣告示に追加しない。その理由として、皮膚障害に関する症例報告や疫学報告は報告されていないため、現時点では追加する必要はないと考えられる。
 硫酸ニッケルについては、大臣告示に追加する新たな症状又は障害はない。その理由として、既に告示に皮膚障害が規定されているが、他に追加すべき症状又は障害はなく、現時点では新たに追加する必要はないと考えられる。
 塩化コバルトについては、大臣告示に追加する新たな症状又は障害はない。その理由として、既に告示に「皮膚障害」又は「気道・肺障害」が規定されているが、他に追加すべき症状又は障害はなく、現時点では新たに追加する必要はないと考えられる。
 チウラムミックスについては、大臣告示に追加しない。その理由として、チウラムミックスは複数の化学物質から成る混合物であり、告示への規定になじまないことから、現時点では新たに追加する必要はないと考えられる。
以上です。
○圓藤座長 ありがとうございます。これは今まで審議したことのまとめでございますが、議論すべきこと、疑問点、意見はございませんか。ないようでしたら、このまま本分科会による検討結果、並びに追加・追加しない等の理由につきまして、このようにまとめていきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
                                   (異議なし)
○圓藤座長 ありがとうございます。そのようにさせていただきます。報告書にもこの意見で反映させていただきますようお願いいたします。
 次に、前回までの分科会において検討しました、大臣告示における「血管運動神経障害」の表記について検討したいと思います。現在の医学知見を踏まえると、このままの表記は果たして妥当なのか、議論を重ねてまいりましたが、前回の分科会でおおむね方向性は定まり、事務局において、既に告示に規定されている症状又は障害に適当な名称はあるか確認していただきました。その結果を踏まえて、本件の方向性を説明していただきますようお願いします。
○秋葉中央職業病認定調査官 資料4を御覧ください。前回の分科会においては、1に記載のとおり御意見を頂いています。カルシウムシアナミドについては、現行の大臣告示には「血管運動神経障害」が規定されている。しかしながら、現在の知見では、水と反応してシアナミド(H2CN2)を遊離し、最終的にアセトアルデヒドを蓄積すると考えられており、アセトアルデヒドの血管拡張作用により血圧の降下や頻脈が生じることが知られている。
 ニトログリコール及びニトログリセリンについても、現行の大臣告示には「血管運動神経障害」が規定されている。しかしながら、現在の知見では、一酸化窒素(NO)が神経ではなく血管に直接作用し、狭心症の様な症状が生じることが知られている。
 事務局としましては、以上の御意見を踏まえ、また、現行の告示に既に規定されている表記を改めて確認した上で、告示に規定する症状又は障害の表記の変更案を2に記載しております。カルシウムシアナミドについては、「血管運動神経障害」を「不整脈、血圧降下等の循環障害」に変更。ニトログリコールについては、「血管運動神経障害」を削除。なお、この物質については、既に大臣告示において「狭心症様発作」が規定されているため、「血管運動神経障害」の削除のみとなります。ニトログリセリンについては、「血管運動神経障害」を「狭心症様発作」に変更。
説明は以上です。
○圓藤座長 ありがとうございます。下に現行の大臣告示がありますが、カルシウム、シアナミドに関しては、皮膚障害、前眼部障害、気道障害又は不整脈、血圧降下等の循環器障害ということになるのですかね。それからニトログリコールに関しては頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状又は狭心症様発作ということです。ニトログリセリンに関しては、頭痛、めまい、嘔吐等の自覚症状又は狭心症様発作と、そういうような記載になるということです。それでよろしいですね。では、そのようにさせていただきます。
分科会で検討すべき事項はこれで全て終了しました。これから報告書案の検討を行います。前回の分科会での議論を踏まえた修正等を行ったものを、事務局より示していただきました。本文は前回と変更があった部分を中心に事務局から読み上げてもらい、随時、御意見を頂きたいと思います。そのような進め方でよろしいでしょうか。それでは、お願いいたします。
○秋葉中央職業病認定調査官 資料5-1を御覧ください。2ページ目の「1検討の背景」から、3ページ目の「3検討対象物質の選定」につきましては、前回と変更ありません。「4検討に当たっての基本的考え方」については、前回頂いた御意見を踏まえ、一部、記載の順序を変更しています。4ページ目の、「通常労働の場において発生」するとは考えにくいケースとして、➀~➂を記載している部分ですが、前回の案ではこの➀~➂を(1)の文章の最後に載せていましたが、3行目から4行目「以下に該当するものについては『通常労働の場において発生』するとは考えにくい」の直後に入れた方が分かりやすいのではとの御意見を踏まえ、この位置に移動させています。
 「5検討結果」につきましては、(1)~(4)の文末の記載について、前回の案では「何々と考えられる」となっていた所を「何々との結論を得た」という記載に修正しています。
これ以外に前回の案から修正はありませんが、検討結果の内容になりますので、結論を読み上げさせていただきます。
 (1)検討事項1について、大臣告示に追加することが適当であるとの結論を得た症状又は障害は表1のとおりです。No.1弗化水素酸について、「低カルシウム血症、組織壊死」。No.2砒化水素について、「腎障害」。No.3トリクロルエチレンについて、「皮膚障害」。
 (2)検討事項2について、大臣告示に追加することが適当であるとの結論を得た症状又は障害は表2のとおりです。No.1二酸化塩素について、「気道障害」。No.2、2,2-ジクロロ1,1,1-トリフルオロエタンについて、「肝障害」。No.3臭化水素について、「気道障害」。No.4水酸化カルシウムについて、「皮膚障害、前眼部障害」。No.5ヨウ化メチルについて、「中枢神経系抑制」。
 (3)検討事項3について、大臣告示に追加することが適当であるとの結論を得た症状又は障害は表3のとおりです。No.1パラトルエンジアミンについて、「皮膚障害」。No.2チオグリコール酸アンモニウムについて、「皮膚障害」。
 (4)検討事項4です。ここについて修正はありませんが、読み上げます。
木材粉じんによるがんについては、平成23年度及び平成24年度の化学物質による疾病に関する分科会において、新たな国内発症例の報告が見当たらないとして別表1の2への列挙が見送られたが、今回の検討においても、新たな国内発症例の報告は確認できず、国内における現在の木材粉じんへのばく露状況が不明であること、がんの発生するメカニズムについて十分な情報が集まっていないことから現時点において新たに追加する必要はないとの結論を得た。今後、上記について新たな知見が集積された際に改めて検討を行う必要があると考える。
 6ページ目です。「6大臣告示における『血管運動神経障害』について」は、前回はお示ししておらず、今回の分科会で新たにお示しするものです。読み上げます。
 現行の大臣告示において、「カルシウムシアナミド」、「ニトログリコール」、「ニトログリセリン」には症状又は障害として「血管運動神経障害」が規定されている。平成8年3月29日付基発第181号では、「血管運動神経障害」の説明として「『血管運動神経障害』とは、血管を拡張させたり収縮させたりする神経(交感神経等の自律神経)の障害をいい、血圧低下、頻脈、脈圧の縮小、皮膚の紅潮、呼吸困難、視力低下等がみられる。血管運動障害を生じさせる化学物質としてはカルシウムシアナミド、ニトログリコール、ニトログリセリンがある。」とされている。
 現在の知見を踏まえると、カルシウムシアナミド、ニトログリコール、ニトログリセリンによる神経障害は発生せず、血管に直接作用することが知られている。カルシウムシアナミド、ニトログリコールについては、血管が拡張して慣れてしまったときに、心臓に狭心症様症状が出現する。一方、カルシウムシアナミドについては、血圧降下や頻脈等の循環障害が出現する。
 したがって、カルシウムシアナミド、ニトログリコール、ニトログリセリンについては、「血管運動神経障害」を削除し、カルシウムシアナミドには「不整脈、血圧降下等の循環障害」を、ニトログリセリンには「狭心症様発作」を追加することが妥当との結論を得た。
 最後に、「7まとめ」です。
上記検討結果を踏まえ、行政当局においては、有害性の認められる化学物質とこれにばく露することによって生じる疾病について、新たに業務上疾病として大臣告示に掲げることが適当であると判断する。
以上です。
○圓藤座長 ありがとうございます。先生方、今読み上げていただいた部分について、よろしいでしょうか。
○古山係長 すみません、1点よろしいでしょうか。6の2段落目の所ですが、「現在の知見を踏まえると」から始まる段落について、この2行目「血管に直接作用することが知られている」、その後に「カルシウムシアナミド、ニトログリコールについては」と記載しているのですけれども、カルシウムシアナミドは次の文で記載していますので、ここは「ニトログリコール、ニトログリセリンについては、血管が拡張して慣れてしまった」になります。このように訂正させていただきます。大変失礼いたしました。
○圓藤座長 角田先生いかがでしょうか。
○角田委員 ちょっとした文言なのですけれども、2行目の所です。
○圓藤座長 どこの2行目でしょう。
○角田委員 今の所です。「現在の知見を踏まえると、云々、神経障害は発生せず、血管に直接作用することが知られている」と書いているのですけれども、超高濃度だったらあり得たりするかもしれないので、ここは別に「神経障害は発生せず」と入れずに、例えば、ニトログリセリンによる障害は血管に直接作用するメカニズムが知られているとか、あるいはニトログリセリンは血管に直接作用することが知られているというふうにして、「神経障害は発生せず」というのはあえてここで入れなくてもいいのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○圓藤座長 他の先生方、いかがでしょうか。よろしいですか。では、「現在の知見を踏まえると、カルシウムシアナミド、ニトログリコール、ニトログリセリンは血管に直接作用することが知られている」でよろしいですか。
○上野委員 今の箇所、カルシウムシアナミドが代謝され最終的にアルデヒドが蓄積するということなので、ちょっと私のニュアンスでは、カルシウムシアナミドが直接血管に作用するというのは、説明にあったように、直接作用とはなかなか言い難いのかという気がします。3つとも並べて直接作用するというようにしてしまうと、私には違和感があるのですが、いかがでしょうか。
○圓藤座長 そうですね、私も同じように思ったので。元に戻って資料4を御覧ください。「現在の知見を踏まえると、カルシウムシアナミドはアセトアルデヒドの血管拡張作用による」、そして「ニトログリコールとニトログリセリンは血管に直接作用する」と、2つに分けて記載しましょうか。
○角田委員 それでよろしいと思います。
○圓藤座長 それでよろしいですね。そのようにしましょうか。資料4を基にした表現の仕方に戻しましょう。ありがとうございます。ほかに気になる所はありませんか。これは報告書ですので、最終的に残っていく文書ですので、丁寧に見ていきたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 では、本日においては、この報告書の今の修正でいきますが、後日、気になる所がありましたら御連絡ください。修正の上、最終版にしたいと思います。以上で報告書案の本文の検討は終了しました。報告書は本文と別添から構成されていますが、別添については、時間の関係で全てこの場で検討することは難しいので、構成を簡単に説明していただけますか。
○秋葉中央職業病認定調査官 資料5-2は報告書の別添資料の案です。これは別添1から別添5までの資料で構成されています。別添1は、本分科会で検討対象となった化学物質の名称を全て列記したもの。別添2は、大臣告示に規定されている症状又は障害の表現について、疾病の分野ごとに全て列挙したもの。別添3は、分科会での検討の結果、施行規則の別表又は大臣告示に追加するのが適当であると結論付けられた物質の名称とその判断理由、一方で、今回追加する必要がないとされた物質の名称とその判断理由を、検討対象物質全てについて記載したもの。なお、この別添3には、シャンプー液等による接触皮膚炎について検討された物質が入っていますが、結論とその判断理由は、先ほど御覧いただいた資料2及び机上配布資料4と同一ですので、申し添えます。
 別添4は、検討対象となった物質全てについてSDS(安全データシート)などの基本条項を記載したもの。別添5は、検討が行われた物質全てについて参考文献のタイトルを記載したものになります。
別添資料の構成は以上です。
○圓藤座長 ありがとうございます。事務局から本日の検討結果及び御意見等を反映させた報告書案を作成し、それを後日、各委員に送付していただきたいと思います。それを各委員が確認し、何か御意見等があれば事務局に伝えていただきたいと思います。そして、私の方で最終確認し、報告書に仕上げたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。最終的には座長に一任していただく形とさせていただきますが、よろしいでしょうか。
 その後、35条専門検討会に報告させていただきたいと思います。よろしいでしょうか。特に異論がありませんので、そのようにさせていただきます。事務局の方で、本日の検討結果を踏まえた報告書案を、後日各委員に送付していただきますようお願いします。
 先生方におかれましては、これまで熱心に御議論いただき、本分科会の効率的な運営に御協力いただき、ありがとうございました。審議は終了し、事務局にお返ししたいと思います。よろしくお願いします。
○古山係長 圓藤座長ありがとうございました。事務局の方で、本日の検討結果を踏まえた報告書案を後日先生方に送付いたしますので、何かお気づきの点があれば御連絡いただければ幸いです。これをもちまして、12回にわたりまして行われた分科会を終了したいと思いますが、最後に、事務局を代表して小林大臣官房審議官から御挨拶申し上げます。
○小林大臣官房審議官 審議官の小林でございます。本分科会の閉会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。先生方におかれましては、労働基準行政、とりわけ労災補償行政に対し、日頃より格別に御理解と御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
 圓藤座長はじめ、先生方におかれましては、大変御多用の中、令和元年7月の第1回以来、12回にわたり熱心に御議論・御検討いただいたところです。誠にありがとうございました。具体的には、近年の症例報告、あるいは医学的知見の集積状況を踏まえ、労基法施行規則別表第1の2第4号に基づく大臣告示に追加することが適当である物質や、症状又は障害について結論をいただき、検討結果報告書案に取りまとめていただきました。
 今後につきましては、圓藤座長から御紹介いただいたとおり、労基法施行規則第35条専門検討会に報告し、御議論いただくことになりますが、そこでの結論を踏まえて、告示改正等の所要の措置を講じることにより、被災労働者の迅速な救済を実現してまいりたいと思っています。
 また、今回追加しないこととなった物質等についても、引き続き医学的知見等を注視し、必要に応じて告示への追加等の検討を行ってまいります。
 最後になりますが、先生方には専門的見地から非常に示唆に富んだ御意見、御指摘等も幅広く頂戴いたしましたことを、重ねて感謝申し上げますとともに、今後とも労働基準行政への御協力を賜りますようお願い申し上げまして、簡単ではございますが、私からの御礼の御挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。
○圓藤座長 ありがとうございました。
○古山係長 ありがとうございました。それでは、労働基準施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会を終了したいと思います。委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、長期間にわたり御協力いただきまして、誠にありがとうございました。