第12回多様化する労働契約のルールに関する検討会(議事録)

日時

令和4年2月22日(火)10:00~12:00

場所

労働委員会会館612号室
(東京都港区芝公園1-5-32 労働委員会会館6階)

出席者(五十音順)

  • (あん)(どう)(むね)(とも) 日本大学経済学部教授
  • (えび)(すの)(すみ)() 立正大学経済学部教授
  • (くわ)(むら)()()() 東北大学大学院法学研究科教授
  • (さか)(づめ)(ひろ)() 法政大学キャリアデザイン学部教授
  • (たけ)(うち)(おく)()寿(ひさし) 早稲田大学法学学術院教授
  • (もろ)(ずみ)(みち)()  慶應義塾大学大学院法務研究科教授
  • (やま)(かわ)(りゅう)(いち) 東京大学大学院法学政治学研究科教授

議題

  1. (1)とりまとめに向けた議論
  2. (2)その他

議事

議事内容
 
○山川座長 おはようございます。それでは、定刻となりましたので、ただいまから第12回「多様化する労働契約のルールに関する検討会」を開催いたします。
 委員の皆様方、本日も御多忙のところ、御参加いただきまして大変ありがとうございます。
 本日の検討会につきましては、新型コロナウイルス感染症予防の観点も踏まえまして、対面とZoomによるオンライン参加を組み合わせた開催となります。
 本日は皆様御出席になっております。
 議題に入ります前に、事務局からオンライン操作方法の説明と資料の御確認をお願いします。
○田村課長 事務局です。
 操作の不手際がございまして大変申し訳ございません。 
 操作方法の御説明をいたします。
 御発言の際には、Zoomの手を挙げる機能を御使用して御発言の意思をお伝えいただきまして、座長の許可がございましたら御発言をお願いします。
 御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようよろしくお願いいたします。
 先ほどもありましたけれども、不安定な状態が続く場合には座長の御判断により会議を進めさせていただく場合がございますので、御了承いただきますようお願いいたします。
 次に、お手元の資料の御確認をお願いいたします。
 本日の資料は、資料1「報告書(たたき台)、資料2「その他追加で御確認いただきたい資料」でございます。
 参考資料は1から4までございまして、参考資料1はデータ等の資料、参考資料2は裁判例、参考資料3は参照条文、参考資料4は現行のモデル労働条件通知書となっております。
 参考資料1につきまして、委員の皆様には事前に御説明をしておりますけれども、第11回検討会等、これまでにお示しした資料につきまして修正を行っております。大変申し訳ございません。該当箇所は参考資料1の108ページとなります。
 資料に不備などがございましたら、事務局までお申しつけください。
○山川座長 ありがとうございます。
 カメラ撮りがありましたらここまでにさせていただきます。
 では、議題に入っていきます。
 本日は、報告書案のたたき台と資料2につきまして御議論いただく予定です。
 では、資料1と2を御覧ください。
 事務局から資料の説明をお願いします。
○田村課長 それでは、資料の説明をさせていただきます。
 まず、資料1「報告書(たたき台)」を御覧ください。
 初めに目次をおつけしておりますけれども、「無期転換ルールの見直しについて」、その次に「多様な正社員の労働契約関係の明確化等について」。ここで、労働契約関係の明確化等についてということで、これまで「多様な正社員の雇用ルールの明確化」と記載をしておりましたけれども、検討の内容である労働契約関係の明確化ということがより分かるように修正をしているところです。それから、無期転換と多様な正社員の共通する論点として、労使コミュニケーション等については後ろにまとめて記載するというような形にしております。
 それでは、本文のほうをおめくりいただきまして、まず1ページ目、「はじめに」の部分はこれまでの検討経緯について記載しているものでございます。
 2ページから本論になってまいります。
 2ページは無期転換ルールに関する見直しの総論の部分ですけれども、まず活用状況として、真ん中ほどに平成30年、31年度に無期転換ルールにより無期転換した労働者が約118万人と推計されるという実態。他方、無期転換申込権が生じた者のうち、無期転換を申し込んだ者は約3割である等、権利を行使していない労働者も多いというような実態を記載しているところです。
 3ページ目の1つ目の○、無期転換ルールは法制度上必ずしも労働条件の改善を求めているものではありませんけれども、多くの無期転換者の労働条件は有期労働契約と変わらない。一方で、正社員として登用される者も一定数いるという実態がございます。
 その次の○で、企業においては法律上の無期転換制度に加えて、企業独自の無期転換制度が設けられている場合も少なくないというような状況を記載しております。
 その下の「ⅱ 有期労働契約をはじめとした雇用への影響」の部分です。
 無期転換は、長期雇用を希望する有期契約労働者にとって、ルールの導入の目的である雇用の安定に一定の効果が見られるとしております。
 4ページ目に飛んでいただきますけれども、一番上に記載しておりますとおり、他方、有期契約労働者のうち、無期転換を希望しない者が一定数を占める等、有期雇用のまま働き続けたい者もいることが見受けられたところでございます。この点について、労働者が希望する制度と会社の制度の間にギャップがある可能性や、労働者が自社の制度を正確に把握できていないために無期転換を希望していない可能性があることにも留意が必要としております。
 それから、3つ目の○ですけれども、当初は無期転換ルール導入による雇止めの誘発が懸念されていたところ、更新上限の導入は今のところ大きく増加はしていないものの、今後も引き続き注視することが必要であるとしております。また、法の趣旨に照らして望ましくない雇止めがされた事例や無期転換の権利行使を抑止する事例等も見られたことを踏まえ、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、雇用の安定を図るという制度の趣旨を踏まえた権利行使の実効性確保、紛争の未然防止の観点からの検討が必要であるとしております。
 その下のⅲの見直し検討の重要性についてですけれども、一番下の○でございます。無期転換ルール導入後も、企業の人手不足はますます深刻化し、多様な人材の労働参加や労働者の能力向上・発揮が一層求められている。そのための環境整備として、労働者の希望・特性に応じた就業形態の整備や正社員化、公正な待遇の確保等を推進されているところです。さらに、ワーク・ライフ・バランスの確保や労働者による自律的なキャリア形成も重視されてきているという状況を記載しております。
 その下、2つ目の○ですけれども、こうした状況を踏まえ、無期転換ルールも労働者のキャリア形成、多様な人材活用に資する方向で労働者、使用者に一層活用されるよう促していくことが適当であるとしております。
 その下のⅳですけれども、見直しの検討に際しての基本的な考え方ということで、ⅰ~ⅲを踏まえると、現時点で無期転換ルールを根幹から見直さなければならないような大きな問題が生じている状況ではないが、制度本来の目的や機能である有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図ることが適切に実現されるための対応を行う必要があるとしております。
 その下で、このために、各企業の全体的な人事管理制度における位置づけも踏まえた上で、労使双方が理解し適切な判断ができるように、制度の明確化をはじめ、円滑な活用の促進を図っていくことが適当である。具体的には、1つ目のポツで無期転換を希望する者が確実に権利行使できるような方策を検討することが適当、2つ目のポツで紛争の未然防止や無期転換後の労働条件の明確化等に関する方策が検討されることが適当としております。
 6ページ目、こうした問題意識の下、次の6つの各論について検討することとしたということで、6点挙げております。
 6ページ目の一番下の○ですけれども、現時点で無期転換ルールを根幹から見直す必要性は生じていないとしても、今後、無期転換ルールがさらに活用されるに当たって、制度の認知度、転換権行使の割合とその理由、更新上限設定の状況、有期雇用の活用状況、転換後の企業内での雇用管理の状況などを引き続き注視するべきであり、必要に応じて見直しについて改めて検討する機会が設けられることが適当であろうとしております。
 続いて、7ページ目から各論の記載になっております。
 まず、(2)無期転換を希望する労働者の転換申込機会の確保です。
 1点目の○で、無期転換ルールに関して内容について知っていることがある者は有期契約労働者のうち約4割にとどまっているということ。また、自らの無期転換申込権が発生しているかどうかが分からない労働者も多く見られるという実態。それから、無期転換申込権が発生しても行使しない労働者の割合が高い要因の一つには、こうした無期転換ルールの認知度の低さがあると考えられるとしております。
 4つ目の○で、政府は、労使双方の制度の認知状況を踏まえ、無期転換ルールの趣旨や内容についてさらに効果的な周知に取り組むことが適当であるとしております。
 8ページ目、「ⅱ 使用者から個々の労働者への無期転換申込権に関する通知等」です。
 この部分の総論としては、労働者が無期転換権の行使について検討するために、無期転換ルールによる無期転換に関する個々の労働者への通知等に関する方策について検討したところです。
 3つ目の○にありますけれども、現状や法制度を踏まえると、使用者を通じて無期転換の情報を入手する労働者の割合が高いこと、それから、使用者から説明を受けている有期契約労働者のほうが無期転換権を行使するか否かを主体的に決めることができているとみられること、無期転換後の労働条件は各社により異なり得ること、無期転換後の労働条件が不明確である場合、行使をためらう可能性が高いと考えられること、労使間で理解の相違を解消していくことが紛争の未然防止につながると考えられることから、使用者が要件を満たした個々の労働者に対して、労働契約法18条に基づく無期転換申込みの機会の通知を行うよう義務づけることが適当であるとしております。
 次に、通知のタイミングについてですけれども、9ページになりまして、労働基準法15条に基づく労働条件明示の明示事項とすることが適当である。タイミングについては、これまでの議論の中で①~③の3つのタイミングをお示しして御議論いただいたところですけれども、更新の都度、申込みの有無について労働者が判断する契機となることから、③のタイミングが適当であるとしているところです。
 それから、通知内容についてですけれども、使用者から労働者の無期転換申込機会の通知等とともに無期転換後の労働条件も併せて明示することが適当である。
 2つ目の○の具体的な事項については、10ページ目の上のほうに記載がありますけれども、別段の定めを規定する、または変更した別段の定めの内容を反映した労働条件とすることが適当であり、労働基準法を15章の労働条件明示事項全てを対象とすることが適当であるとしております。その際に、労働基準法15条において書面で明示することとされているものについては、無期転換後の労働条件の明示に当たっても書面事項とすることが適当である。また、別段の定めを設けないのであれば、無期転換後に契約期間以外の労働条件は変わらない旨を明示すれば足りると考えられるとしております。
 2つ目の○ですけれども、現行においても、無期転換申込権を行使した場合には労働基準法15条の労働条件明示が必要である旨について改めて周知徹底することが適当であるとしております。
 それから、通知以外の方法の検討に関してですけれども、11ページに飛んでいただきまして、上から2つ目の○ですが、求職者が求人企業の無期転換ルールの取扱いや実績について知った上で応募できることや、企業の無期転換ルールの取扱いや実績について知った上で権利を行使するか検討できることは有益であるとの意見があったということを記載しております。
 (3)無期転換前の雇止め等に関する施策です。
 総論のところの○の2つ目で、転換ルール導入時には雇止めの誘発が懸念されていたが、更新上限がある事業所の割合は微増にとどまっている。他方で、無期転換ルールによる無期転換前の雇止めや無期転換回避策に関して個別の相談例や裁判例が見られたところです。
 その下の○で、雇用の安定を図るという無期転換ルールの趣旨、雇止め法理や裁判例等に照らし、問題があるケース等について考え方を整理して、ルールの趣旨や内容とともに周知するとともに、個別労働紛争解決制度の助言・指導においても活用していくことが適当としております。
 考え方については、この報告書の後ろに別紙1ということで検討会の中で整理していただいた裁判例をおつけしているところです。
 12ページ目の更新上限設定への対応の1つ目の○ですけれども、更新上限の設定については、それ自体としては違法になるものではないが、上限があるか不明確な場合には労使の認識の相違からトラブルが生じやすい。それから、最初の契約締結より後に更新上限を新たに設定する場合には、その時点で既に労働者に更新の期待がある場合に不利益をもたらすなど紛争の原因となりやすい。
 これを踏まえて、使用者に更新上限の有無及びその内容の労働条件の義務づけ、最初の契約締結より後に更新上限が新たに設けられる場合には、労働者からの求めがあった際に上限を設定する理由の説明の義務づけを措置することが適当であるとしております。
 下から2つ目の○にありますけれども、契約更新のタイミングで更新上限が設定された場合、多くの場合に労働者は同意を余儀なくされることから、司法判断においては自由意思による同意があったかについては厳格に認定される傾向があるといったことについて周知していく必要があるとしているところです。
 13ページ目ですけれども、次に、無期転換申込みを行ったこと等を理由とする不利益取扱いについてです。
 1つ目の○です。無期転換申込みの要件を満たせば、申込みさえすれば無期労働契約が成立しますけれども、実際には無期転換申込みをするのを躊躇していると思われるケースや、申込み後の不当な労働条件の引下げやハラスメント等が疑われるケースがあるとヒアリングで報告されていたところです。
 その下の○で、無期転換申込みを行うこと等を理由とする不利益取扱いについて、報復的な不利益取扱いや申込みを妨害する不利益取扱いは許されるものではなく、無期転換ルールにより無期転換を希望する労働者の権利行使の実効性確保や妨害抑止につなげる観点から、立法で禁止規定を設置すべきとの意見があった。
 一方で、別段の定めにより労働条件を不利益に変更することが直ちに許されないというものではないことからも、何が禁止される不利益な取扱いに該当するかという整理が難しく、どのような事例が申込み等を行ったことを「理由として」に当てはめるかの認定も困難であり、立法措置をとった場合にその解釈・適用に疑義が生じかねないことを懸念する意見もあった。
 その下で、いずれにせよ、不利益取扱いは、その内容に応じて労働契約法や民法の一般条項、判例法理等により司法で救済されるものであり、現行法に基づく考え方の周知徹底を図っていくことが適当。他方、報復的な不利益取扱いや申込みを妨害する不利益取扱いは許されるものではないことから、権利行使の妨害抑止につながるよう、多様な政策的手法の中で方策を検討することが適当としております。
 次に、(4)通算契約期間及びクーリング期間についてです。
 ヒアリングでは、通算契約期間について、雇用の安定の観点から短くすべきという意見もあれば、短縮は雇用の柔軟性、雇用意欲の低下につながるおそれがあり、現行の取扱いを維持すべきとの意見もあったところです。
 また、下のほうですけれども、クーリング期間についても、ヒアリングでは、悪用されている実態があり廃止すべきという意見もあれば、クーリングの仕組みがなくなると同じ企業に再度勤務したい労働者にとってエントリーの機会がなくなる等の影響があるとの意見もあったところです。
 1つ目の○に書いてありますけれども、無期転換ルールが実質的に適用されるに至った施行後5年経過時からそれほど長期間たっていないこと、特に変えるべき強い事情がないと考えられることから、制度の安定性も勘案すれば、通算契約期間及びクーリング期間について現時点で制度枠組みを見直す必要が生じているとは言えないと考えられるとしております。
 一方で、形式的にクーリング期間を設定するなど、法の趣旨に照らして望ましいものと言えないことについて、さらなる周知を行うことが適当であるとしております。
 (5)無期転換後の労働条件についてです。
 最初のほうには実態等を記載しておりますけれども、15ページの下の○、就業規則で別段の定めをすることについては、基本的には無期労働契約が成立するタイミングに着目するのであれば、無期労働契約成立前は労働契約法7条、成立後は不利益変更に関する同法10条の合理性が認められるかどうかの問題になる。ただ、判断枠組みが7条であっても、従前から有期労働契約が存続していたことなどを踏まえて、合理性の有無についてある程度踏み込んだ判断がなされたと解されるものもある。合理性の判断に当たっては労働契約法3条2項の均衡の理念も考慮され得る。こうしたことを周知することが適当であるとしております。
 その次に、個別契約で別段の定めをする場合には、無期転換後の労働条件に労働者が同意しなければ別段の定めは成立せず、有期労働契約の際と同一の労働条件で無期労働契約が成立することとなること。最高裁判決等を踏まえれば、労働条件の不利益変更についての個別合意は、労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足る合理的な理由が客観的に存在する必要があること。こうしたことを労使双方に対して周知することが適当であるとしております。
 下の○ですけれども、こうした原則の枠内で労働条件の変更が可能であることが明確になるよう、施行通達の記載を修正することが適当である。その際、いわゆる有期プレミアムがあった上で別段の定めにより労働条件の変更がなされる場合もあることに留意しつつ、いずれにしても就業規則上の規定の合理性、自由意思に基づく労働者の合意が必要であることを周知していくことが考えられるとしています。
 17ページ目ですけれども、別段の定めにより、転換後の社員区分を正社員とすることや職務内容・責任の程度等を広げることは一般的には不合理と考えにくいと考えるところですけれども、有期契約労働者が負担増をためらって無期転換申込みをしないことも想定される、また、企業としても直ちにいわゆる正社員に転換させることを躊躇する可能性もあるため、転換後の区分として多様な正社員等の多様な選択肢を設けることを促していくことも考えられるとしています。その際、労働者に対しても、企業ごとに無期転換後の雇用管理上の位置づけが異なることを理解した上で、転換後の労働条件を確認することが重要である旨も改めて周知することが適当であるとしています。
 その下の「ⅱ 無期転換後の労働条件の見直しについて」、1つ目の○で、無期転換者の活用の在り方や待遇等は今後も企業ごとに労使で検討されていくものである。労使の話合いが重要であるとしています。その際、無期転換者の雇用が長期にわたることや、労使で情報の非対称性や交渉力の差があることも踏まえて、労使にとって望ましい形でキャリア形成や人事制度設計が行われるためにも、労使間の情報共有やコミュニケーションが促進され、また、無期転換後の働き方の選択肢が多様となることが望ましいとしております。そのために参考となるような情報を提供していくことが適当であるとしています。
 それから、18ページ目にかけてパート・有期法に関連する記載を設けております。前回、両角委員からパート・有期法との関連について御指摘がありましたので、報告書中の関連箇所に記載をしているところです。
 ここの18ページの部分については、パート・有期法13条において、パート・有期労働者について、正規型の労働者ということになりますけれども、通常の労働者への転換を推進するために措置を講じなければならないとされている。フルタイムの無期転換者については、同条の適用はないが、正社員化を支援する助成措置を活用する等により希望する者の正社員への転換を推進するための措置を併せて講ずることが望ましい旨、周知していくことが考えられるとしております。
 次の「ⅲ 無期転換労働者と他の無期契約労働者との待遇の均衡について」で、2つ目の○ですけれども、待遇の均衡は、有期労働契約の時点でパート・有期労働法により通常の労働者との均衡が図られるべきであり、その上で、無期転換後もパートタイムであればパート・有期労働法の適用がある。
 一方で、フルタイムの無期転換者と無期契約労働者との待遇の均衡に関しては、原則として企業内の労使自治に委ねられるものだが、労働契約法3条2項を踏まえた均衡の考慮が無期転換者についても求められるものであり、その点の周知を図ることが適当であるとしております。
 その下の○ですけれども、労使コミュニケーションの前提として、まずは待遇の相違についての労働者の理解が重要。そのために、無期転換後の労働条件に関する徹底をするに当たって、労働契約法3条2項の趣旨を踏まえて均衡を考慮した事項について、労働契約法4条1項の趣旨を踏まえて、労働者の理解を深めるよう促していく措置を講ずることが適当としております。
 19ページ目の一番上の○ですけれども、いずれにせよ、無期転換する前の有期労働契約の時点で、パート・有期法8条に基づき、通常の労働者との均衡が適切に図られるように行政としての取組を一層進めるとともに、無期転換後においても、同法に基づき、パートタイム労働者及び有期契約労働者の処遇の見直しが行われる際には、フルタイムの無期転換者についても併せて労働契約法3条2項も踏まえて見直しを検討することが望ましい旨を周知していくことが考えられるとしております。
 続いて、「(6)有期雇用特別措置法に基づく転換ルールの特例」についてです。
 19ページから20ページにかけて活用状況やヒアリングの状況について記載しております。
 20ページのⅱの活用についてのところで、有期雇用特別措置法がなければ、企業がプロジェクトの進捗状況等に応じて必要な高度専門職を雇用しにくくなるほか、65歳を超える高齢者の継続雇用に慎重になると想定されるため、有期雇用特別措置法があることで雇用が進んでいる面もあると言える。他方、特例の存在が知られていないという課題があるため、さらなる周知を行うことが適当であるとしております。
 また、無期転換申込権の通知について、使用者から労働者に通知することとする場合には、この第一種の対象者についても必要な措置を講ずることが適当であるとしております。
 以上が無期転換ルールに関する記載になっております。
 続きまして、21ページ目から多様な社員の労働契約関係の明確化についてです。
 「(1)総論」の検討経緯につきましては、これまでの経過を記載しておりますので省略させていただきますが、一番下の○で定義を記載しております。本報告書において、「正社員」の定義については、直接雇用されている無期労働契約のうち、各社で正規従業員として位置づけられているものとし、「多様な正社員」の定義については勤務地、職務、労働時間等が限定されている正社員とする。「いわゆる正社員」の定義については、勤務地、職務、労働時間等が限定されていない正社員を指しているとしております。
 22ページ、多様な正社員の現状です。多様な正社員がある事業所の割合は2018年で23%、2020年で28.6%。
 その下の○でも、実際に多様な正社員がいる企業は18.3%。企業規模が大きいほど多様な正社員がいる企業の割合が高いといった状況を記載しているところです。
 ここは現状を記載しているところですけれども、23ページの「ⅲ 多様な正社員の労働契約関係の明確化に関する考え方」のところで、1つ目の○は、過去の「多様な正社員の普及・拡大のための有識者懇談会」の報告書で挙げられている多様な正社員への普及が重要となっている背景を記載しているところです。
 これを踏まえて、その下の○で、多様な正社員について、いわゆる正社員と非正規雇用労働者の働き方の二極化を緩和し、労働者一人一人のワーク・ライフ・バランスや自律的なキャリア形成と企業による優秀な人材の確保、定着のためには、多様な正社員は労使双方にとって引き続き有益であり、多様な労働力の参加を促す観点からも、労使双方にとって望ましい形で多様な正社員のさらなる普及・促進を推進していくことが適当であるとしております。
 24ページ、一方で、労働条件が限定されていることについて、就業規則や労働契約で明示的に定められていないケースもある中、限定の有無そのものが問題になったり、限定された内容が一方的に変更されたりする場合も見られるところ、紛争の未然防止や予見可能性の向上のために、これまでの運用上の取組に加え、法令上の措置も含めて、労働契約関係の明確化を検討することが適当としております。
 その下の○で、もとより多様な正社員制度を設けるかどうかは個々の企業で決定されるべきことであるが、こうした労働契約関係の明確化は労働者と使用者との情報の質及び量の格差の是正や契約に係る透明性の確保を図るものであって、そもそも労使自治や契約自由の原則の大前提とも言えるものであり、労使双方にとって望ましい形で多様な正社員制度を設ける上で重要な環境整備と言えるとしております。
 次にⅳの明確化の検討に当たって留意した点ということで、1つ目の○で、検討に当たっては、精緻な検討を踏まえつつも、労働者が自身の労働契約の内容等について理解できるようにするため、最終的にはできるだけシンプルな考え方やルールを示すことを念頭に置いたとしています。
 2つ目の○で、検討の対象とする労働者の範囲について、多様な正社員といわゆる正社員について法律上の取扱いで区別することは困難であるほか、正社員という概念自体が曖昧になっていると考えられること。2つ目のポツで、いわゆる正社員の場合も限定がないことを労使双方がしっかり認識することが紛争の未然防止等の観点から重要であること。そして、労働契約の多様化の中で個別に労働契約内容を設定したり労働条件を限定したりすることが重要になってきているという点。こうしたことを踏まえて、多様な正社員のみならず、いわゆる正社員や有期契約労働者等も含め、労働契約関係の明確化をどのように図るのが適当かについて検討の対象としたとしております。
 25ページの(2)から各論ですけれども、労働契約関係の明確化でまず現行の制度について記載をしております。現行の労働基準法においては、労働契約の締結に際し、労働条件を明示しなければならないと定められておりますけれども、この点、就業の場所及び従業すべき業務に関する事項については、雇入れ直後の就業の場所及び従事すべき業務を明示すれば足りるものである。現行法上の同法規定の解釈として勤務場所等の変更の範囲の明示までは求められていない。
 また、労働条件の明示は、あくまで労働契約の締結に際し行うものであり、労働契約の変更を行う場合には変更事項の明示をすることまでは要していないといった現行制度について記載をしております。
 26ページ目のⅱ、明確化全体に関わる現状です。
 1つ目の○で、多様な正社員について、労働条件の限定内容に関して特に規定していない企業の割合が1割前項、また、企業における多様な正社員等とのトラブルについて、限定内容について説明をしている企業と比べて説明していない企業のほうがトラブルがあった割合が多いほか、限定内容を規定していない企業では限定内容を規定している企業よりもトラブルがあった割合が多いといった実態を記載しております。
 27ページですけれども、労働契約締結時の労働条件の明示・確認の対象ということで、2つ目の○で、労働契約の多様化・個別化が進展し、国民の権利意識が高まっていく中で、事前に労働者と使用者の権利義務関係を明確化することにより、労使が予見可能性を持って納得した上で行動できるようにするという観点や紛争の予防を図るという観点が一層重要となってきている。
 その下で、加えて、労使双方にとって望ましい形で個々人のニーズに応じた多様な正社員の普及・促進を図る観点から、労働基準法15条による労働条件明示事項として、将来にわたり個々人の状況を踏まえた働き方やワーク・ライフ・バランス、キャリア形成を左右し得るものであり、その契約内容の設定と明確化が特に重要となる就業場所・業務の変更の範囲を追加することが適当と考えるとしております。
 28ページ目の1つ目の○で、こうした変更の範囲を追加する場合、労働者としては、配置転換等がされる可能性のある範囲を認識できるほか、限定がある場合には限定性をより信頼することができ、キャリア形成やワーク・ライフ・バランスを図りやすくなると考えられること。使用者としては、特定された職務や勤務地を志向する優秀な人材を確保しやすくなると考えられること。それから、労使が労働条件を確認し合う契機となり、紛争の未然防止効果も期待できると考えられることを記載しております。
 その次の○で、変更の範囲を追加することに伴い、限定された職務・勤務地が廃止されたとしても、当然解雇が正当化されるということにはならないことなど、裁判例等に基づく考え方を周知することが適当である。それから、労働者にとってはキャリアの固定化、使用者にとっては人事制度の硬直化の懸念の指摘もありますけれども、これに対しては、転換制度の設定・促進や、労働条件変更時の明示ルールの整備、これまでの裁判例の蓄積から整理できることを発信等で対応していくことが考えられる。
 それから、その下のポツの社員区分の違いによる処遇差についての労働者の不満の顕在化といった指摘については、説明や協議など労使コミュニケーションを充実させるとともに、顕在化したそうした不満への対応を促すことで労使の納得感の醸成を図ることが考えられるとしております。
 29ページ目の一番上の○ですけれども、こうした法令改正と併せて、平成26年に作成した「雇用管理上の留意事項」やモデル就業規則の改訂・周知等を通じて周知を行っていくことが適当であるとしております。
 その下ですけれども、労働条件が変更された際の労働条件の確認・明示とその対象です。
 3つ目の○ですけれども、現行、労働条件の明示は労働契約締結時のみ義務づけられており、労働条件が変更された際までは求められていない。しかし、労働契約に定められた範囲外への移動等も一定見られる中、特に個別契約による労働条件の変更がなされた場合に確実に書面で示されることが担保されていないほか、仮に就業場所・業務の変更の範囲の明示を行うこととした場合に、労働条件が変更された場合の変更後の労働条件を明示しなければ、当該労働条件の変更の適否が判断しにくくなるリスクがあることから、労働条件の変更時も明示すべき時期に加えることが適当であるとしております。 
 変更後の労働条件の明示を必要とする場面として、パターンとしては①から⑤までお示しして、検討会の中でも御議論いただいたところです。
 ①の個別契約のケースについて、個別契約によって労働条件が変更された場合については、ほかに変更内容を書面で確認できる制度的担保がないため、労働基準法の労働条件明示と同様に明示の対象とすることが適当。
 ②の就業規則の新設・変更のケースについては、就業規則の変更により労働条件が変更された際に、その内容を個々の労働者に書面等により明示するとすることが本来的には望ましいが、労使双方がその内容を書面等で確認できるようにするという観点からは、就業規則は労基法106条により労働者への周知義務があることや、実際上の有効性が高いとも考え難いこと、さらに使用者側の負担や煩雑さにも鑑み、就業規則の周知を徹底することを前提に、就業規則による変更後の労働条件の明示までは不要と考えられるとしております。
 なお、労働基準法15条の明示と就業規則106条の周知とでは要求される義務内容が異なっていることなどを踏まえて、②の場合も変更後の労働条件明示の対象とすべきとの意見もあった。それから、就業規則の変更に当たり、個別の合意を得る例については、個別の合意を得ていることを踏まえて労働条件明示が必要とする意見があった一方、就業規則と同じ内容で個別契約を締結すること等を踏まえて労働条件明示は不要とする意見もあったということを記載しております。
 ③の労働協約の締結・改廃については、労使自身に委ねられるべきものであり、また、④法令の新設・改廃については、一般に公表され、労働者も知り得る情報であることから、③、④については変更後の労働条件の明示は不要であると考えられること。
 他方、⑤もともと規定されている変更の範囲内での使用者の業務命令等による労働条件の変更については、使用者側の負担や労働者側としての情報の重要性の度合いも勘案し、労基法による書面明示という変更の際の手続の問題として、労働契約法4条を踏まえ、使用者が変更の必要性について労働者に説明し、その理解を促進することが重要と言えるとしております。
 もともと規定されていた変更の範囲を超える変更については、そもそも使用者からの一方的な業務命令では当該変更を行うことができず、個別契約によることが必要となるので、明示が求められることになるものと考えられるとしております。
 その下の32ページの明示事項の1つ目の○ですけれども、変更があった場合に書面で明示すべき明示事項については、現行の労働基準法15条1項後段の書面明示事項はどれも基本的なものであること、それから、変更のパターン①のケースのみ変更後の労働条件の明示を行うとするのであれば、変更後の労働条件明示の対象と考え得る賃金等の書面明示事項は個別的に労働条件が決定・変更される点で業務・場所と区別する理由はないことなどから、締結時に書面明示すべきとされている項目全てとすることが考えられる。
 他方で、33ページになりますけれども、今回の議論は多様な正社員の雇用ルールの明確化を議論の出発点としており、ⅲに記載のとおり、業務・場所は契約内容の設定と明確化が特に重要であることや、変更後の労働条件の明示を必要とする場面の検討ができるだけシンプルになることから、まずは業務・場所を変更後の労働条件明示の対象とし、それ以外の書面明示事項は今後さらに検討すべきという意見もあったとしております。
 その下の○で、なお、明示の必要性や使用者側の負担の軽減の観点から、就業規則に規定された変更の範囲内及び労働契約締結時に明示された変更の範囲内で変更された場合には変更後の労働条件明示の対象外とするほか、変更内容のみの明示で足りることとするなどの配慮が必要であるとしております。
 その他明示事項に関する事項として、34ページですけれども、1つ目の○で、特に中小企業に関して就業規則作成義務のない小規模事業場を中心に、変更後の労働条件明示の実施に当たっての支援が必要と考えられるほか、電子的な方法による明示を幅広く捉えるべきとの意見があったと記載しております。
 それから、34ページ、就業規則の周知方法について、就業規則については、労基法106条において、作業場の見やすい場所に常時掲示するか備え付ける、労働者に交付するなどの方法により周知しなければならないとされている。
 2つ目の○で、労働者に対する交付以外の方法によって就業規則の周知がなされている場合、労働者が当該就業規則に現実には容易にアクセスできない可能性があるため、就業規則を備え付けている場所等が労働者に周知されるような方策、その他労働者が就業規則を必要なときに容易に確認できる方策について検討することが必要である。
 就業規則の変更による労働条件の変更について、前述の労働条件変更時の明示の対象としない場合でも、就業規則を備え付けている場所等の周知がなされることにより周知の実質化が図られることが期待されるとしております。
 ⅴの労働契約関係の明確化を図る場合の留意点として、1つ目の○で、労使の紛争の未然防止や予見可能性の向上の観点から、裁判例等の内容をまとめて考え方を整理して示していくことが重要としております。
 こうした考え方については別紙2のとおり整理をして、この報告書の別紙としておつけしています。
 それから、35ページ目の1つ目の○で、今後、別紙2に記載した考え方について労使に周知していくことが適当。特に、職務や勤務地等についての限定合意が認められる場合、当該限定合意に反する配置転換命令は労働者の自由な意思による同意がない限り効力を有しないものとされること。限定された職務・勤務地が廃止されたとしても、当然解雇が正当化されるということにはならないこと。解雇回避努力義務を尽くすことが求めること。それから、3つ目のポツで、使用者が提示する労働条件の変更に応じないことを理由とする解雇、いわゆる変更解約告知については、その解雇の有効性の判断枠組みに関し、裁判所の判断も分かれていることに注意を要すること。いわゆる正社員も含めて、規定されている変更の範囲内での労働条件変更であったとしても、労働者の個々の具体的な状況への配慮や、労働者の理解を得るための丁寧な説明が必要とされることについて周知していく必要があるとしております。
 最後、36ページ目から労使コミュニケーション等について記載しております。
 まず無期転換関係ですけれども、1つ目の○で、無期転換に係る人事制度等を定めるに当たって、関係する労働者の意見が適切に反映されるよう、労使間でのコミュニケーションを促すことが適当である。特にパート・有期法7条において、有期契約労働者に係る事項について就業規則を作成・変更しようとするときは、有期契約労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めることとされており、無期転換申込みに関する事項を就業規則に定める場合には同条が適用されることを周知することが適当である。
 その下の○で、無期転換に係る人事制度を就業規則で規定する場合、労働契約法7条または10条に照らして合理性があることが必要である。同法7条の枠組みでも対象労働者の意見をどの程度聴いたかが合理性の判断に影響を与える可能性があることを踏まえて、関係当事者の意見を十分に聴くことが望ましいことについて企業に対して周知することが考えられる。
 また、パート・有期法16条において、事業主は有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に関し、その雇用する有期労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければならないこととされているが、無期転換申込権の行使保護についても同条の事項に当たることを解釈として示し、会社内で無期転換について相談できる体制が構築されるよう促すことを検討していくことが適当であるとしております。
 続いて、37ページ目で多様な正社員関係です。
 1つ目の○で、労働契約法3条2項では、労働契約就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、または変更すべきとしているが、いわゆる正社員と多様な正社員の間の均衡も含まれる。同項を踏まえて均衡を考慮することが望ましい。
 2つ目の○で、いわゆる正社員の働き方について、勤務時間限定の働き方を選択しやすくするためのいわゆる正社員の働き方の見直しの検討を労使で進めていくことが望ましいこと。
 また、いわゆる正社員も含め、転勤や配置転換の必要性と意義の点検、その期間の見直しなどを行うことが考えられる。
 さらに、コース区分の変更を伴うことなく、いわゆる正社員についても一定期間だけ勤務地等を固定する方法も考えられる。
 以上は多様な正社員を超えて従業員全体の人事制度の設計・運用に関わるものであるため、これらについての取組を考える場合には、関係する労働者の意見が適切に反映されるよう、労使関係のコミュニケーションを促すことが適当であるとしております。
 (3)無期転換・多様な正社員共通事項として、38ページ目の1つ目の○ですけれども、無期転換や多様な正社員の制度については、従業員全体に関わるものであるほか、雇用形態間の待遇の納得感が得られるようにするため、適切に労使間のコミュニケーションを図りながら制度設計や運用を行うことが求められる。その際、労働組合がある場合には労働組合との間で協議を行い、労働組合がない場合であっても、労使委員会をはじめとした労使協議組織との協議を行うなど、各企業の実情に応じて様々な労働者の利益が広く代表される形での労使コミュケーションを行うことが重要である。また、労働者間の納得感を醸成するためにも、多様な雇用形態の労働者間の情報共有やコミュニケーションが行われることも重要。
 次に4つ目の○ですけれども、一つの企業内に様々な労働者が存在し、特に無期転換者については労働組合の加入資格のある者が半数程度にとどまる中で、無期転換や多様な正社員に係る制度等について、個々の対象となる労働者の意見を吸い上げるとともに、労働者全体の意見を調整することも必要である。そうしたことを踏まえ、過半数代表について、適正な手続で選任されること、不利益な取扱いを受けないようにすること、全ての労働者の利益を代表するよう努めること等を促していくことが適当である。過半数代表者がより適切に多様な労働者の意思を踏まえることができるよう、使用者等は工夫を行うことが望ましい旨を発信していくことが適当である。その上で、過半数代表者に関する適切な選出の確保等の制度的担保や新たな従業員体制整備を含め、多様な労働者全体の意見を反映した労使コミュニケーションの促進を図る方策も中長期的な課題であるとしております。
 たたき台について、その後ろの別紙1、2は裁判例を整理したものをおつけしているところです。
 資料1の説明については以上になります。
 説明が長くなっていて恐縮ですけれども、続けて資料2として、その他追加で御確認いただきたい資料をおつけしております。
 1ページ目ですけれども、まず使用者から個々の労働者への無期転換申込権等に関する通知です。
 通知をすることとした場合に、①無期転換申込権が生じることとなる有期労働契約の更新の時点と、②転換後の無期労働契約の成立時点の2回のタイミングで労働条件明示の義務が生じることになる。①と②の労働条件明示が短期間で重複する場合もあり得ますけれども、そのような場合も①と②の労働条件明示が両方とも必要となると考えてよいか。
 それから、(2)個別契約によって労働条件が変更された場合に、労働基準法15条に基づく書面明示の対象とする場合、以下のケースは変更後労働条件明示の対象となると考えてよいか。ケースとしては、無期転換申込権が生じることとなる有期労働契約の更新の時点、これは①の時点で明示してある無期転換後の労働条件について、①から無期労働契約成立前までの時点において、申込みが行われる前までの時点ということになりますけれども、個別契約によって、無期転換後の労働条件が変更の範囲外に変更されたケースについてどう考えるかということを追加論点として挙げております。
 2ページ目については、仮に当検討会で検討中の事項を労働条件通知書に記載する場合の記載イメージをお示ししております。
 上の吹き出しについては、無期転換申込機会及び転換後の労働条件の明示イメージです。無期転換後、本契約期間中に申込みをしたときには、本契約期間の末日の翌日から無期労働契約での雇用に転換することができます。無期転換後の労働条件について、契約の変更がなければ無と示していただいて、有る場合には例えば就業規則の第何章に記載しておりますとか、あるいは別紙でその内容を記載してつけていただくというようなイメージを考えております。
 右側の吹き出しですけれども、更新上限の有無とその内容について、今は契約の更新の有無について記載する欄がございますけれども、そこに追加をするようなイメージです。
 それから、下の吹き出しですけれども、就業の場所、従事すべき業務について、現行は雇入れ直後について記載しておりますけれども、雇入れ直後のほか、変更の範囲も追加するというようなイメージになっております。
 仮にこの部分について限定がない方の場合に、変更の範囲の例としては、例えば会社の定める事業所、業務という形で記載することが考えられるというようなイメージです。
 3ページについては、これまでの議論を踏まえて、仮に変更後の労働条件明示義務を導入する場合の例として、賃金の場合の例をおつけしているものです。
 ①個別契約によって月給が変更される場合の例として、この場合、個別契約で賃金を月給20万から25万とする。この場合には、賃金の変更後について変更後の月給額を明示することになります。
 それから、②の就業規則の変更によって手当が変更される場合、出張手当を例に挙げていますけれども、もともとの労働条件明示で出張手当2,000円と明示されていて、あるいは就業規則第何条によるという明示をされていた場合に、就業規則の変更で出張手当が3,000円に変更されたときに、変更後の明示に関して、議論の中でありましたとおり、仮に就業規則変更の場合には明示不要とした場合、この場合には明示は不要。就業規則へ変更した場合にも変更後の労働条件を明示することとした場合には、改めて就労規則と同じような記載をして明示をしていただくことになります。
 それから、⑤の就業規則にもともと規定されている変更の範囲内で、人事考課により月額賃金が変更されるような場合の例として挙げています。もともとの賃金等の明示については、明示パターン①、②のような形で、例えば月給20万で別途就業規則によると明示されている。あるいは、賃金等級に基づいて1号と明示されている。これが人事考課で賃金等級が2号に上がった場合に、就業規則の変更の範囲内での変更ということで、変更後の明示は不要と整理をしているところです。
 資料2の説明については以上になります。
 それから、冒頭に御説明するのを失念してしまいましたけれども、今回のたたき台につきましては、これからの取りまとめに向けた議論に資するように、事務局におきまして座長と御相談しまして、これまでの検討会における議論の内容を整理させていただいたものですので、今回以降の委員の皆様方の御意見をさらに反映して、次回、報告書案を作成してまいりますので、御議論いただきますようお願いいたします。
 なお、報告書のたたき台には行数を最初から通しで付しておりますので、御意見等をいただく場合にはこの行数を御指摘いただければ幸いです。
 説明は以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 それでは、御説明をいただきました報告書のたたき台のうち、2の無期転換ルールの見直しについてまで、すなわち20ページまでということでしょうか。それと、今回、追加の論点のあります資料2の無期転換申込権に関する通知の追加の論点、この2つ、要するに無期転換ルールに関する見直しの部分についてまず御議論をいただきたいと思います。
 それでは、委員の皆様方から何か御質問、御意見等はございますでしょうか。
 竹内委員、お願いします。
○竹内委員 非常に大部にわたる報告書のたたき台案の御作成、大変ありがとうございました。
 早速ですけれども、今、座長からお示しいただいた検討の点についてですが、順番的には変かもしれませんけれども、追加論点のほうから申し上げさせていただいてよろしいでしょうか。
○山川座長 どうぞ。
○竹内委員 ありがとうございます。
 資料の2ページ目、追加論点の1につきまして、(1)の①と書かれているところは、無期転換をしたとしたら、その後、更新等の場合の時点において、無期転換した後にどうなるかということについて、通知をする段階で予定されている労働条件を明示するというもので、その目的は無期転換行使権の判断に資するためのものである、ということが、これまで議論してきたこのルールに関する経緯だと理解しております。
 ②のほうは、現に成立して権利義務関係が発生することとなる、あるいは現に従事することとなる労働条件内容について、成立した労働条件に係る紛争の防止のために設けられていると考えております。
 理論的な話に近いかもしれませんけれども、短期間とはいえ、①の通知の後に別段の定めがなされる場合など、無期転換の申込みをした際に現に成立する労働条件というのは、予定されて通知されたものとは異なるということは理論的に十分あり得ますので、したがって、私の考えとしては、追加論点の(1)については両方とも、それぞれについて、果たすべき義務ではないかと考えております。
 もちろん実務的な観点から異論もあり得るかもしれませんけれども、事後的に見た場合に、①の内容で変更がないままに無期転換をして、それで15条の明示の義務を果たすときに、さっきの通知と同じ内容の明示をする、あるいは変更がない旨の明示をするということで義務を果たしたと扱う、つまり、15条の義務違反について実務上慎重に対応するということは実務的にはあり得るかもしれませんが、理論的には別の問題として両方とも義務があるという考えるべきではないかと思います。
 ちょっと話が飛んで恐縮ですけれども、これに関連して、報告書のほうに移っていただけないでしょうか。
 具体的には8ページの269行目あたりのところです。ここで無期転換後の労働条件内容についてのことが書かれているのですけれども、これは表題とかを見ると「通知」と書かれているのです。私はその言葉で正しいと思うのですけれども、見込まれる労働条件を知らせる、あらかじめ案内するということで「通知」と書かれていて、その具体的中身として明示ということ等が本文の中では言われているわけなのですけれども、無期転換後の労働条件がどうなるかという通知と15条に基づく労働条件の明示というのは、別のものとして、分けて理解をしていくことになるのではないかなと思います。本文の中だと明示という言葉も通知に関連して述べられているので、ちょっと紛らわしいところはあるかもしれませんけれども、そのような別のものとして考えることが適切です。したがいまして、先ほど申し上げた追加論点の(1)に関しては、別々の義務なのでそれぞれ義務を果たす必要があるということになるのではないかなと思います。
 追加論点のほかのところもあるのですけれども、長くなってしまったのでここで一旦切らせていただきます。ありがとうございます。
○山川座長 ありがとうございました。
 それでは、また後で御発言いただくことがあろうかと思いますが、ほかの委員の皆様、いかがでしょうか。
 桑村委員、お願いします。
○桑村委員 ありがとうございます。
 今の竹内委員の資料2に関する御意見は私も同意見です。
 それとは別になりますけれども、報告書のたたき台の12ページの410行目、契約締結後に新たに更新上限が設けられる場合について、労働者からの求めがあった際に条件を設定する理由の説明の義務づけに関して、前回の最後に、この義務をどの法律に入れるかの検討が必要ではないかという問題提起をしました。その際には、労基法ではなく労契法ですよねと、労働契約法上の義務ということで指摘はさせていただいたのですが、契約法上の義務として定めても義務違反についてどのような効果が生じるのかが明確でないと、後で考えました。実効性を担保するという点では、いわゆる雇止め告示、労基法14条2項に基づく基準の中でその旨を記載して、違反の場合は行政指導ができるような仕組みとすることが適切であると考えたというところがまず1点です。
 もう1点は、不利益取扱いのところです。13ページの一番下の2行と、それから、14ページに入って、「権利行使の妨害抑止につながるよう、多様な政策的手段の中で方策を検討することが適当である」とあります。ここでは「多様な政策的手段」ということで、あまり具体的なことは書いてありません。これまでの議論では、不利益取扱いを禁止する規定を労契法の中で設けるべきかという論点があり、私は消極の立場なのですが、他方で、何もしないでいいかということをさらに考えまして、ここでも雇止め告示に不利益取扱いを禁止するということが考えられないかと思いました。
 具体的な不利益取扱いの類型については、参考資料1の51ページで書かれています。雇止め告示というのは労基法14条2項に基づく基準で、14条2項は、期間の定めがある労働契約の締結時及びその期間の満了時において紛争を未然防止するためという文言があって、有期労働契約の締結時及び期間の満了時における紛争に関する基準であると理解しております。
 そういうふうに考えると、ここに挙がっている不利益取扱いの類型の中で、雇止め告示の対象とできるのは、(A)解雇・雇止めの中の②の、期間満了時点で雇止めするという場合だけではないかと思いました。私は、雇止め告示に書く内容を広げて行政指導の対象としやすくするという方向性はあまり賛成ではなくて、つまり、14条2項に基づいて契約の締結時と終了時に関する紛争についての基準を定めるというのが条文ですので、それをはみ出すような規定は雇止め告示の中に入れるべきではないと考えています。
 そうすると、不利益取扱いの禁止というのを書いても行政指導の対象とできる範囲はあまり広げられないなと思いまして、それならば労基法14条2項の文言を修正して、有期労働契約の締結時と期間満了時の紛争プラス無期転換に関する紛争についての基準も定めることができるような規定にすれば、さっきの様々な類型の中で明らかに報復的な取扱いの、許されないものについて、雇止め告示の中に書いて行政指導の対象にできる。それが考え得る政策的手法になるのではないかと。ここまで考えましたので、指摘をさせていただきました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。
 竹内委員、どうぞ。
○竹内委員 何度も恐縮であります。
 今、桑村委員がおっしゃった点に関連して申し上げさせていただきます。
 私も13ページの458行目からの不利益取扱いで、具体的な選択肢等は示されていないと感じました。そこは種々議論があったかなと思ってはいるところではありますけれども、今、桑村委員が御提起されたように、方向性については意見が分かれていたので決められないと思いますが、幾つか選択肢は示しておいてもよいのではないかなと思います。
 今、告示あるいは告示に委任されている範囲かということで14条自体を見直すという御意見があったところだと思います。この点、他の委員の先生方から十分に賛成は得られていないかと思いますけれども、桑村委員も初めのほうで少し触れましたが、労働契約法18条の無期転換権に関わる不利益取扱いの案の話であるということですので、一つの案としては、労働契約法18条にそもそも不利益取扱い禁止の規定を入れる、これは、3項を新設するという案ですけれども、それも選択肢として報告書に盛り込むことを御検討していただければと思いました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 桑村委員の先ほどの御発言も含めて、新しい提案も含まれていますので、少し事務局のほうでも、選択肢を検討していただければと思います。
 両角委員、お願いします。
○両角委員 ありがとうございます。
 まず、更新上限を設けた理由の説明については、桑村委員のお考えに私も基本的に賛成です。労基法14条2項に基づく雇止め基準の中に理由の説明を含めるのがよいのではないかと思います。
 それから、不利益取扱い禁止については、私は少なくとも現時点で労働契約法の中に禁止規定を入れるのは反対で、労働条件の不利益変更を含めて何を不利益取扱いとして禁止するべきかがもう少し明らかになってから議論するべきではないかと考えます。
 それでは基準の中に入れるのはどうかという御提案については、必ずしも反対するものではありませんが、ただ、表現として「無期転換の申込み等を理由とする不利益取扱いをしてはいけない」という書き方が適切なのか、これだと「不利益取扱い」とは何かという問題がまた出てくるので、無期転換請求権の行使を妨害する行為、あるいはそれに報復する行為をしてはならないという書き方も考えられるのではないかと思いました。
 もう一つ、報告書の18ページの593行目からの均衡考慮に関する部分で、フルタイムの無期転換者にはパート・有期法の適用がないが、労契法3条2項に基づく均衡考慮は求められるので、そのことを周知していくという記述があります。この均衡考慮や周知について、法律のどこに書き込んだらよいか少し考えました。やはりパート・有期法の中に書くのは法律のつくりから難しいと思いますので、一案として、これも先ほどの基準に入れて、行政指導などにより促進していくという選択肢もあるのかなと考えました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 前者の点は特に先ほどの選択肢に関わることかと思いますので、その点も含めて御検討いただければと思います。
 ほかにございますでしょうか。
 安藤委員、どうぞ。
○安藤委員 安藤です。よろしくお願いします。
 271行目のところで、無期転換後の労働条件を知らなければ、転換を希望するかどうか労働者が検討できないというのはそのとおりだと思います。同時に、無期転換しなかった場合の労働条件についても、その情報がないと無転換するかしないかという判断ができないと思うのです.
 現在の書きぶりだと、無期転換後の労働条件について丁寧に伝えて判断材料を提供せよとしているように理解しているのですが、転換しない場合の労働条件が従前のままかどうかというのはそれほど明らかなことではないと思うのですが、この点、どのような形で無期転換しなかった場合の労働条件についての情報提供が行われるのか、またはそれが求められているのかということが少し分からなかったので、教えていただければと思います。これが1点目です。
 2点目として、497行目、クーリング期間の終了後に再雇用することを約束するような雇止めというのは、法の趣旨から望ましくないという記述がございます。これは、法の趣旨を私がよく分かっていなくて、法律に書いてある内容とはまた別に趣旨というか立法者の意図があるということは理解しますが、少なくとも違法ではない行為についてさらなる周知を行うことが実務上どういう意味があるのかということが分からなかったので、これも確認というか教えていただきたいと思います。
 これについて、さらなる周知を行ったとして望ましくないですよと言ったとしても、使用者側がこのようなことをやったとしても違法ではなく罰則もないというときに、労働者を混乱させるのではないかとか、下手に期待させるのではないかといった点も気になるのですが、この辺りはどのように捉えればいいのかということを教えていただければと思います。
 以上2点です。よろしくお願いします。
○山川座長 ありがとうございます。
 御質問ですので、事務局から何かありますか。
○田村課長 御質問ありがとうございます。
 1点目の無期転換しなかった場合の労働条件についてなのですけれども、無期転換しなかった場合に有期労働契約でまた更新をするかどうかということになるかと思いますので、それについてはまた有期労働契約の更新のときに改めて条件を提示して、合意に基づいて契約を結んでいくということになるかと思っております。
 クーリング期間の部分につきまして、クーリングの趣旨については報告書にも書いているところですけれども、先ほど先生がおっしゃったような形式的にクーリング期間を設定して期間経過後に再雇用することを約束して雇止めすることについて、確かに法律の文言上これを直ちに禁止しているものではありませんが、これは無期転換を避けるために意図的にクーリング期間を設定していることが明らかなケースということになりますので、そういったものについては雇用の安定を図るという無期転換ルールの法の趣旨に照らして望ましいとは言えないのではないかと。
 これについて周知を行うことでどういった効果があるのかというような御質問がありましたけれども、例えば行政指導とかができるものではありませんが、形式的なクーリング期間の設定といったものを最終的に司法等でも判断されることがあり得るのだろうと考えているところです。
 行政としては、望ましくないものについては周知をして、事業者の方にこういった取扱いは留意していただくように促していきたいと考えているところです。
 以上です。
○山川座長 安藤委員、何かございますか。
○安藤委員 ありがとうございました。
 まず1点目について、無期転換せずに有期で更新する場合には、更新するタイミングで情報提供があればいいと聞こえたのですが、それだと検討が十分に行えないような気もするのです。無期転換の話から一回離れるわけですが、例えば有期雇用で1年契約で雇われました。1年後に契約を更新しますかという話になったタイミングで、1年目の最後の日に、来年は労働時間がこれだけ伸びます、勤務地が変わりますという条件をいきなり突きつけられて、今決めてくださいと言われても判断できないように思うのですが、有期雇用の更新をするときでも更新後の労働条件の提示というのはそのタイミングでいいのかということは、私としてはよく分からなかったというのが実感としてございます。
 今の課長の御説明だと、無期転換後の労働条件というものを、決断しないといけないタイミングよりも、一定期間考慮する時間的余裕を持った形で情報提供を行う。その際には、無期転換した場合だけではなくて、無期転換しなかった場合にどうなるのかみたいなことも、本来だったら一定の考慮期間を取ることができるようなタイミングで情報提供されるのが望ましいようにも考えたのですが、今回の議論で検討できているのかどうかということが少し分からなかったので、この辺りも可能であれば明確にできればと思います。
 2点目は、この後の多様な正社員関係にも関連してしまうので、ここで発言するのは適当かどうか分かりませんが、そもそもこの497ページ目からのような6か月クーリング期間を空けて雇うというような場合には、その仕事自体はあるわけです。仕事自体はあるのに、何でこのようなクーリング期間を空けて再雇用するような不自然な行為が行われるのかといったら、無期転換して、恐らくその場合によくあるのは、仕事内容を特定したまま「ただ無期」にしたときに、どういう条件の下で雇用関係が終了できるかということがやはり不明確であることからこのような不自然な行為が行われているように私は理解しております。仮に雇用契約が無期転換されたとしても、仕事内容であったり、勤務地であったりが限定されていて、その場合にどの程度の雇用保障が必要なのかということがより明確になっていれば、企業側が無期転換に抑制的になるということを回避できるのではないかと感じますが、この点については多様な正社員のところに行ってからまたお話ししたいと思います。
 ありがとうございました。
○山川座長 ありがとうございます。
 私からの補足というわけでもないのですけれども、最初の点につきましては、資料1の317行目あたりに書かれていることと若干関連するかもしれないと思います。無期転換制度の説明は比較的初期、有期労働契約の締結時点で説明する。ここでは無期転換制度とは何かみたいなことも説明すると、現在の有期雇用の地位との違いみたいなことが出てくる。これは説明のみですが、実質的にはインタラクティブなものになって、聞いたらさらに詳しくというような形を想定することになると思いますが、おっしゃられた時間的猶予という点も含めると、労契法4条の関係で十分な説明をする。そういう話としてこの説明の中に盛り込んでいくということは考えられるかなと思った次第です。
 それから、2点目の点は、たしか現在の通達でも無期転換の間に何か派遣労働契約みたいなものを挟んで脱法行為として使うことはできないのか、望ましくないということか、文言は忘れましたけれども、現在の通達でもありまして、望ましくないレベルだとしても判例にも影響を実は与えていて、派遣を挟んだものについてそれが認められないとして、法的な請求は忘れましたけれども、司法上の判断にも影響を与えているのではないかという記憶があります。細かい文言等の記憶がはっきりしないのですけれども、以上が補足です。
 ほかに御意見はございますでしょうか。
 坂爪委員、どうぞ。
○坂爪委員 ありがとうございます。
 報告書の御説明、御準備ありがとうございました。348行目にある、「包括的に示すこととしても差し支えないものと考えられる」というところについて少し確認をさせてください。この「包括的」という言葉については、採用内定時と同じ性格なのでこれで問題ないのではないかと考えておりますというような御説明があったと思います。恐らくここで「包括的」となった場合には、資料2にあるような従事すべき業務の内容というものが、例えば会社の定める業務といった表現になるのではないかと推測しております。
 私の理解が追いついていないところがあるかと思うのですけれども、無期雇用者を活用する企業からすると、会社の定める業務としておいたほうが人材としての活用の範囲が広くなるという意味で、「包括的」という記載は企業にとって非常に利便性が高いと思います。
 一方で、無期雇用者から見たとき、この表現にリスクがないのかというところがやや引っかかっております。無期転換した無期雇用者は有期雇用者よりも労働条件を確認する機会が少なくなると私は理解をしております。一方で、正社員は評価を受けるタイミングがあるので、自分の仕事がどういうものなのかということを知る機会があります。現状では無期雇用者は仕事内容や労働条件を確認する機会があまり確保されていない存在だと考えたときに、会社の定める業務というものについたときに、実は無期雇用者側が賃金に対して非常に過負荷な仕事をさせられているといったことが起きるリスクがほかの働き方と比べると多いのではないかと考えています。
 包括的という言葉を必ずしも否定するものではないのですが、企業の側がいろいろな形で包括的という言葉を解釈し、活用するときに無期雇用者にとって不利益な形にならないように、フリーハンドで「差し支えないものとする」という表現よりも留意したほうがいいのではないかという点が気になりましたので、コメントとしてお伝えしたいと思います。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 今の点は恐らく有期契約の時点での労働契約の内容等の変更の問題も少し関わってくるかと思いますので、その辺りも御検討していただくということで、事務局から何かございますか。
○田村課長 今の坂爪先生の御指摘の点ですけれども、ありがとうございます。
 もともと採用内定のときに包括的と言っている趣旨としては、とりわけ限定のない形で採用される社員について、内定の時点では初期配属としてどういう部署に配属されるのかとか、どういう業務につくのかということが分かっていない段階で、業務や場所については包括的に明示することも差し支えないとしていたところです。
 無期転換労働者について考えますと、基本的には労働条件が変わらない方が大半であるというのが現状ではございますので、当然のことながら場所や業務などに変更がなく今までと同じであれば、その部分についてはきちんと明示していただく必要があるかなと思っております。ただ、無期転換者についても、転換後はいわゆる限定のない正社員のような形で転換するというケースも中にはあり得ると考えておりまして、そういう場合には今の通常の労働条件の明示と同じような形で概括的、包括的に書くというパターンもあり得るかなということで書いておりますけれども、そこが無限定に包括的に書けばいいとならないように留意していきたいと考えております。
○山川座長 ありがとうございます。
 坂爪委員、何かございますか。よろしいでしょうか。
○坂爪委員 いえ、大丈夫です。ありがとうございます。
○山川座長 たまたまといいますか、包括的という言葉になっていますけれども、具体的なイメージでどのようになるのかについては、報告書に書くかどうかはともかく、さらに具体的に考えておく必要があろうかなと思った次第です。
 戎野委員、お願いします。
○戎野委員 ありがとうございます。
 これまでの議論を踏まえて、それらを組み込んだ形になっていまして、結論に至るプロセスがよく分かると思います。そのため、労使にとっても注意すべき点や留意するところが分かりやすいと思いました。
 5ページ目の185行目です。最後のコミュニケーションのところでまとめてとも思ったのですが、ここで「労使で協議しつつ検討、確認する」という文言があるのですけれども、この後、労使コミュニケーションだったり労使の協議だったりが出てきます。指しているものが何なのか分かりにくいような気がしたのです。ここでは、労働組合だけを指しているわけではないだろうし、個々の労働者、個別対応も含めた労使のコミュニケーションなのかなと思ったのですけれども、「協議」と言いますと指している範囲が狭いような気がしまして、いわゆる労使協議を意味しているようにも思います。文言の使い方で何か区分しているのであれば教えていただきたいです。ここのところをぱっと見た感じ、私は「協議」というよりも「労使で情報を共有し、議論を深め」といった言葉のほうが現実的なのかなという気もします。その辺りの言葉の使い方に何かルールを設けていたりしたら教えてください。よろしくお願いします。
○山川座長 ありがとうございます。
 この点、事務局から何かありますか。いかがでしょうか。
○田村課長 ありがとうございます。
 ここの部分では、特に無期転換後の労働条件や人事制度といったところも含めて記載しているということから、例えば就業規則で定める場合の協議、意見聴取等も含めて、そういったプロセスも念頭に「協議」という言葉を用いている面はありますけれども、御指摘のとおり、そういった面だけではなくていろいろと情報共有、情報交換をしていくというところもあろうかなと思います。
 全体的に協議とかコミュニケーションという言葉はいろいろなところに出ているのですけれども、その辺りは先生方の御意見も踏まえて、少し整理できるところは考えたいと思います。
○山川座長 戎野委員、よろしいでしょうか。恐らく労使というときに個別労使を指す場合と集団的なものを指す場合と若干混在しているかもしれないので、全般的に確認したほうがよさそうな感じはします。
○戎野委員 ありがとうございます。
○山川座長 ありがとうございます。
 桑村委員、お願いします。
○桑村委員 ありがとうございます。
 先ほどのクーリング期間の話を蒸し返して申し訳ないのですが、497行目の、安藤先生が御指摘になった点です。この○のところの表現なのですが、私は脱法的なものではなくて、単純にこれ以上雇うと5年超になるので、半年間は別の企業で働いてください。しかし、半年たてばもう一回雇いますからという約束をした上で雇止めをするというケースを想定していました。そういうケースは脱法ではなくて、実質的にもクーリング期間を設けているので違法ではないのですが、同一の労働者をもう一度雇う意思があるのであれば、できるだけ継続して無期転換という形で雇用を安定させることが望ましいという意味でここは書いてあるのだろうと思いました。
 形式的にクーリング期間は設定しているけれども、実態としては何も変わっていない。書類上、契約主体が変わったかのような扱いをしているだけであれば、実質的には労働契約が継続しているので、それは労契法18条の要件を満たして無期転換できる場合で、まさに脱法であって、それは望ましい、望ましくないではなくて明らかに違法という評価になると思います。そういう意味で、私の理解だと「形式的に」という表現を完全に取ってしまって、クーリング期間を設定して再雇用をすると約束して雇止めすることは違法ではないけれども、同一人物を雇うという意思があるのであれば、できるだけ雇い続けて無期転換することが望ましいという意味であることを明確にするのが良いと思いましたので、念のため指摘させていただきました。
○山川座長 ありがとうございます。
 確かに形式的にという部分は脱法的な読み方につながる感じがある。ここは表現ぶりを改めて検討していただければと思います。
 竹内委員、どうぞ。
○竹内委員 何度も恐縮であります。
 ここまで話に出てきたのとはまた別の点なのですけれども、320行目以下です。通知の内容等に関わるところで、通知の内容あるいはその前の通知のタイミングの問題なのかもしれませんけれども、無期転換権発生が見込まれるという時点での通知の義務を一度果たしたとします。その後に無期転換後の労働条件について別段の定めがなされた、要するに、通知を受けた後、申し込みするかどうか考えている間に別段の定めがなされた場合というのは、無期転換発生に際しての通知の義務として、変更後、要するに、こちらのほうが現に見込まれる労働条件ですというようなものについて改めて通知をする必要が出てくるのではないかなと思います。
 先ほども申し上げましたけれども、成立する労働条件がどんなものか分かるようにして無期転換権の行使を判断できるようにするということですので、そういうことで、一旦通知したけれども、その後申込みがなされる前に変更があった、別段の定めがなされたという場合には改めて通知義務を果たす必要があるのではないかと考えます。
 報告書を読むと、この通知の内容としてそういう場面、あるいは通知のタイミングとしてそういう場面というのは今書かれていないと思いますので、そこは書いておいたほうがいいのかなと思いました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 今の点は後のお話とも関わってきて、労働条件を変更した場合に、それも無期転換時に無期転換後の条件として明示する事項に含まれるのかという点が関わってくるかなと思います。どこかに追記していた記憶もあるのですけれども、今、すぐ出てこないのですみません。
 先ほどの資料2とはまた別のお話でしょうか。資料2の(1)、(2)、(2)は個別契約によって変更の範囲外に変更されたケースで、今、竹内委員がおっしゃったのは、個別契約以外の場合も含めて一般に無期転換後の条件を通知した後にそれを変更した場合も含むということですね。例えば就業規則の変更によって変更した場合とか、そこは(2)では直接には取り上げられていないのですけれども、趣旨からすると変更された条件についても明示するのかなとは思いましたが、就業規則の場合についてどうなるかは後の話とも関わるところではありますけれども、(2)を敷衍すると個別契約に限らないような感じもするところです。そこは全体をもう一度見直して、漏れがあるかどうか確認していただけるでしょうか。よろしいでしょうか。
 事務局から何かありますか。
○田村課長 無期転換後の労働条件の明示については、既存の労働条件明示のタイミングに合わせて、無期転換後の労働条件についても併せて明示するということでこれまで御議論いただいてきたと考えているところです。
 そういう観点からすると、資料2の(2)で書いたように、労働条件明示全般として労働条件が変更されたときに明示をするということになれば、そのタイミングと合わせて無期転換後の労働条件の変更も明示のスキームに乗ってくるかなと思っているのですけれども、就業規則の変更や個別契約の変更などにかかわらず、申込みをする前の段階で無期転換後の労働条件が変更された場合に、どのような形で労働者に明示をしていくかどうかについてはまた少し整理をさせていただきたいと思います。
○山川座長 ありがとうございます。御指摘を踏まえて、また検討させていただければということになると思います。
 ほかはよろしいでしょうか。
 時間の関係で、多様な正社員の雇用ルールについてもかなり重要な論点がまだ残っておりますので、そちらに移らせていただいて、こちらについてはまた追加があれば改めてということでお願いしたいと思います。
 それでは、多様な正社員の雇用ルール等に関わる部分について御質問、御意見があればお願いしたいと思います。21ページ以降です。
 竹内委員、どうぞ。
○竹内委員 何度も恐縮です。
 今度は一回で発言を終わらせるためにまとめて申し上げてもよろしいでしょうか。
○山川座長 どうぞ。
○竹内委員 まず、34ページ目の1,063行以下ですけれども、周知方法の実質化について触れていただいているところであります。特に1,077行目以下では保管場所について周知するということが述べられているといいますか、それしか述べられていないと私は受け止めておりまして、この点、実態についてのデータで、5%ぐらいだったと思いますけれども、申出があった場合のみ見せる例があったと認識しています。それを踏まえて、そうした方法は周知方法として適切でない、そういう場合は周知義務を果たしているとは言えないとすべきだということを私はこれまでの検討会で申し上げました。いろいろ難しい点があるのかもしれませんが、今申し上げた内容についてぜひ盛り込んでいただきたいなと考えているのが1点目であります。
 もう一つが、順番が逆になってしまって恐縮ですけれども、784行目の段落で、これは読み方の問題かもしれませんが、現在の書きぶりだと多様な正社員制度ということだけを念頭に置いてこういうふうな労働契約関係の明確化ということが書かれているように読めてしまう側面がありますけれども、労働契約関係の明確化という言葉も非常にいいことかなと1ページ目から見ていて思っているのですが、労働契約関係の明確化というのは、いわゆる正社員だとか非典型雇用の人々を含めて、全ての労働者にとって重要なことですので、そういうふうな書きぶりになってほしいなと思いました。
 具体的には、「こうした労働契約関係の明確化は」と785行目にありますけれども、「明確化は」の後に、多様な正社員に限らず、いわゆる正社員とか非典型雇用を含めて、全ての労働者にとって紛争の未然防止や……とするのがいいのかなと思いました。
 あと、関連しますけれども、この段落は非常に重要なことを言っているなと考えておりまして、こういう労働契約関係の明確化、さらに言えば、ひいては、労働契約法の1条などでうたわれている合意原則が全ての労働者にとって実質的なものでなければならないということ、つまり、そうした合意原則を実質化するために、こういう労働契約関係の明確化、具体的には、労働条件等の明示とか、変更があった場合も含めて明示していくということが重要であると考えます。そのような、合意原則との関係でも重要だということを、併せて、この段落に追加できれば幸いだと思っております。
 報告書本体ではないのですけれども、3つ目として、追加論点のところで3ページ目に関して申し上げたいのですが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 2ページ目です。就業の場所とか従事すべき業務の内容ということで、雇入れ直後と変更の範囲というものの2つが掲げられている状態になっているかと思います。私はこれで賛成でありまして、何で賛成かということに関して理由を申し上げておきますと、労基法15条の明示というのは労働契約内容、権利義務についての明示という側面が一方であると思いますけれども、他方で、雇入れ直後の時期に妥当する現時点での労働条件を知らしめる規定であるとも考えております。その点は事実との相違について言及している2項とかの規定を見ると、そうしたものであると理解できるかと思います。
 その意味で、権利義務の内容についての明示、つまり、限定とかについてあるかないかとかの明示ということの規定であるとともに、現に雇入れ直後の労働条件内容が具体的にどんなものかということを明示させるという労働条件の明示の規定でもある。この関係で、雇入れ直後の条件、そして、変更の範囲の2つを示すという形で私は妥当なのではないかなということを確認まで申し上げさせていただきます。
 3つ、長くなりました。以上です。ありがとうございました。
○山川座長 ありがとうございます。
 ほかに御意見等はございますでしょうか。
 両角委員、お願いします。
○両角委員 ありがとうございます。 
 2点あります。
 一つは確認なのですが、報告書33ページ、労働条件変更時に明示すべき事項の範囲、考え方に関する部分です。
 前回の検討会の議論で竹内先生、桑村先生の御意見を伺って、私も、確かに法的・理論的には労基法15条の明示事項を全て通知の対象にするのがシンプルだと思いました。ただ、私は、どちらかといいますと、法的な知識がない労使当事者にも分かりやすいという意味でのシンプルさを考えていたので、その観点から勤務場所と業務内容に絞ることもあり得るかなと考えています。
 もう一つは、34ページの先ほど竹内先生が指摘された周知方法に関する部分です。この部分は、報告書全体の構造からみて相当に重要ではないかと私も思います。つまり、報告書では、労働条件の個別的な明示義務を課す範囲を、個別合意によって労働条件を変更した場合に限定し、就業規則で変更する場合は個別通知までは不要としています。就業規則で変更したときは就業規則の周知がされており、労働者がそれを知ろうと思えば知れる状態にあるという前提があるから、この点が正当化できるのだと思います。
 したがって、現時点で周知義務をどこまで強化できるかという問題はあるかもしれませんが、考え方としては、個別明示義務の範囲を限定するうえで就業規則の周知の強化が前提となることを書いていただくのが良いと思います。そして、具体的な点に関して、就業規則を見られる場所は最低限周知しなければいけないし、変更のタイミングで変更したことを周知するのも当然だと思うのですが、さらに就業規則のどこをどのように変えたのかということも周知する必要があると思います。現行法の下でも、労働契約法10条との関係では、そこがある程度労働者に分かるようになっていないと効力が認められない可能性が高いと思うのですが、労基法106条との関係でもそれが望ましいことだと思います。したがって、この辺りを、もう少し書き込んでいただきたいなと思います。
 以上です。ありがとうございました。
○山川座長 ありがとうございます。
 以上につきましても検討していただければと思います。
 安藤委員、どうぞ。
○安藤委員 1,096行目なのですが、先ほど簡単に申し上げた話とも関連しているのですが、限定がある場合でも解雇回避努力が求められるという点について、今回、多様な正社員というものの活用を推進したいという観点からは、企業の視点からは恐らく解雇回避努力が求められるといったときに、限定することの効果であったり、メリットというものが限定的かつ不明確なのではないかという観点からこれまでこの検討会で何回か発言してきましたが、やはりこの点は今後も大きな課題として残っているように感じております。
 今お示しいただいているように、限定された職務・勤務地が廃止されたとしても、当然解雇が正当化されるわけではないとしても、今後、ガイドラインを示すなど、どういう場合にどの程度の雇用保障が必要なのかということがより明確になることが多様な正社員が活用されるための第一歩かなとも思っております。
 例えば、限定を満たせなくなった場合に、一定期間前に事前にちゃんと告知すること、プラスあらかじめ定められた退職金の支払いをするなどに合意したようなケースであっても、雇用関係を終了することが難しいということだと、やはりこの仕組みはなかなか世の中に普及していかないのかなということも感じておりますので、場合によっては立法的な解決も必要なのかなという気もしております。いずれにせよ、現状では法律的にも裁判からもこう判断されるということは理解しておりますが、今後、この仕組みが活用されるためには、この点、解雇回避努力についての明確化のようなものが必要だと依然として考えているということをコメントさせていただきます。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 この検討会自体の方向性として、契約の明確化のほうに焦点が置かれるようになっていきまして、契約のルール自体を変えるということ自体が検討の主たる対象にならなくなってきてはいるかと思いますけれども、おっしゃったような問題意識自体は受け止めて、何か書きぶりに反映できるかどうか、もう少し検討させていただければと思いますが、事務局から何かありますか。
○田村課長 安藤委員、ありがとうございます。
 報告書の本体では解雇回避努力義務の部分を特に記載しているところですけれども、おつけしております別紙2の多様な正社員の労働契約関係の明確化の裁判例等の中では、例えば46ページにもありますが、高度な専門性を伴う職務限定や他の職務とは内容や処遇を明確に区分できる職務限定については、整理解雇法理の判断に一定の影響があり、配置転換ではなく退職金の上乗せや再就職支援でも解雇回避努力を行ったと認められる場合がある等、少し差がある場合があるということも併せてお示ししておりますので、今後、裁判例を分かりやすく示していくときには、こういった事例もあるということも併せて示していきたいと考えております。
○山川座長 ほかに御質問、御意見等はございますでしょうか。
 桑村委員、どうぞ。
○桑村委員 ありがとうございます。
 非常に細かい点で恐縮なのですが、31ページの993行目からです。⑤の、元々規定されている変更の範囲内での業務命令等によって労働条件を変更する場合についてですが、この場合には新たな変更後の条件明示は不要であると、ここの段落には書いてありませんでしたので、その旨を明記した上で、他方で、労契法4条の趣旨を踏まえて十分に労働者の理解を求めるような働きかけをすることが重要であるという書きぶりにした方がいいと思います。
 後の注の63がついている本文の文章では「労働条件明示の対象外とする」という記述はあったのですが、⑤のところでも、この点は検討会の議論でも明示は不要であるという意見に集約されていたと思いますので、明確に書いた方がいいと思いました。
 それから、座長、4の労使コミュニケーションはまた別になりますでしょうか。
○山川座長 ここも含めて御発言いただいて結構です。
○桑村委員 それでは、38ページの1,210行目で、望ましい意見集約の方法が書いてあるところです。過半数代表者がより適切に多様な労働者の意見を踏まえることができるよう、「使用者等が工夫を行うことが望ましい」と書いてあります。注の70では、使用者が情報を得て、過半数代表者とそれを共有するという書きぶりになっていますが、使用者が主語になっていることが私は気になりました。使用者は過半数代表者と交渉において対峙する相手方になりますので、労働者側の選出手続や意見集約のプロセスに直接関わるというのは適切でないと思っております。適切ではないと思うのは、使用者が自分の意向に合った者が選出されるように働きかけたり、意見を出しにくくしたりする弊害が可能性としては生じ得るからです。労働者代表の選出と意見聴取のプロセスに使用者が関わるのではなく、そこは使用者から完全に切り離して、その部分では労働者側の、例えば元過半数代表者や選挙管理委員会など、それらの労働者側の別の組織が適切な意見の集約をできるように、使用者が支援するという形になるのかなと思います。そこで言う支援とは、無期契約の労働者がどれぐらいいるかなど、そういう必要な情報を例えば提供するとか、意見集約に必要な場所を提供するという形での配慮になると思いますが、ここの書きぶりだと直接工夫を行うは使用者となっていますので、そこは修正した方がよいと思います。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 労使コミュニケーション等の部分についても御発言をいただいていますので、ほかの委員の皆様も全般にわたって何かございましたらお願いいたします。
 戎野委員、どうぞ。
○戎野委員 ありがとうございます。
 では、労使コミュニケーションのところで、1,185行目、ここはスタンスが使用者側かと思います。そして、労働組合がある場合とない場合という流れになっていて、そして、1,202行目が今度は労働組合の話で、1,206行目からが過半数代表者になってくるかと思います。1,202行目の労働組合なのですけれども、ここのところがバランスとして、過半数代表のほうは結構書き込まれているのに対して、労働組合の役割や期待されるべきことについてもう少し書いてもいいのではないかと思いました。ここには労働者の意見を吸い上げて、多様な労働者の意見も俯瞰して、全体を見渡して労働者全体の働き方について考えていくべきだということだと思うのですけれども、それはもちろん労働組合の役割であり、期待すべきことの1点目だと思います。
 ただ、そのほかにも、使用者側に積極的に働きかけていくということで、いわゆる情報共有、情報提供もあると思います。労働者のニーズや諸問題に関して、労働組合しか持っていないような情報も多数ありますので、そういったものを経営側に積極的に提供しつつ、先ほどあった教育も含めてですが、様々なレベルでのコミュニケーションを図って、よりよい制度設計や運用に向けて積極的に働きかけていくという役割も記載してもいいのではないか思います。
 それから、3つ目の役割としては、今は経営側への働きかけでしたけれども、労働者側に積極的に働きかけていく、すなわち労働者に情報提供を図り、キャリア等の支援を行う、相談を行うなど個々人への働きかけを行って、一人一人の労働者が無期転換であったり、多様な正社員であったり、様々な働き方の選択肢が増える中で適切に自らの選択を行うことができるような支援を行っていくということ。このような点も労働組に加えてもいいのではないかと思いました。
 それから、過半数代表については、今、桑村委員がおっしゃったことは私もちょっと気になって、ここの書きぶりについてはご検討いただければと思った次第です。
 以上です。ありがとうございました。
○山川座長 ありがとうございます。
 先ほどの桑村委員のお話も含めて、書きぶりについて検討していただければと思います。
 ほかにございませんでしょうか。
 坂爪委員、お願いします。 
○坂爪委員 ありがとうございます。
 1,195行目からのところで、この報告書からすると今後の課題という部分になるかと思います。制度の設計や運用はバージョンアップされていくということで、もちろん従業員のキャリア形成や働きがいの増進が大事だと思うのですが、きちんとそれが企業の業績の向上にも資する可能性がある。つまり、従業員の利益だけでなく、企業にとってのパフォーマンスにもつながっていくのだというところまで書いてもいいのではというのが一つです。現状ですと企業にとってのメリットは人材獲得のところで止まっていますが、その人たちがその時点で持てる能力を発揮するということは、人材の獲得を超えて企業のパフォーマンスにもつながり得るものなので、効果について言及する範囲を少し広げてもいいのではないかというのが一つです。
 もう一点は、多様な従業員側も自分のニーズに合った働き方をできるようになるということと併せて、働き方のニーズをみたす中で、自らの職務に対しての責任を果たしていく必要があるという点をどこかに入れてもいいように思います。この報告書の趣旨からずれるかもしれないのですが、様々な限定があるとしても、自分のニーズを満たす働き方をする中で、労働者として力を発揮していくことが働く側に求められるので、労使コミュニケーションの一部として組み込んでもいいのではないかと感じました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 今の点は恐らく総論の記述とつながってくるところがあろうかと思いますので、この辺りもさらに付け加えられるかどうか検討していただければと思います。
 ほかにいかがでしょうか。時間がさほど残ってはいないのですけれども、もし何かありましたら、最初に多少ロスタイムがあったものですから、延長することもお許しいただければ、御発言をいただければと思います。よろしいでしょうか。
 竹内委員、どうぞ。
○竹内委員 ありがとうございます。
 戻るのですけれども、追加論点として示されているものの(2)に関して、先ほど関連する報告書のことについては申し上げましたけれども、申し上げてもいいですか。ただ、ちょっと時間を過ぎてしまいそうなのですけれども、時間を過ぎそうだということであれば、関連することは申し上げたので発言しないということでも結構です。
○山川座長 そう言われると聞きたい気もしますので、どうぞ。
○竹内委員 すみません。
 追加論点の(2)のほうなのですけれども、これは趣旨がよく分からなかったところもあるのですが、無期転換に係る通知の後に無期転換申込みがなされて、その後に当該労働者、つまり、無期転換の申込みをした労働者との間で労働条件が変更されたという場面が念頭に置かれているのか、あるいは、通知後に、無転換申込みはまだ、つまり、無期の労働契約は成立していないのだけれども、無期転換する後の条件について初めにした通知とは異なる内容に労働条件を合意したということなのか、この(2)が念頭に置いている場面がそもそもよく分からないというのが質問と言えば質問であります。
 質問に対する回答は待たずに、その2つとものケースを考えて発言いたしますと、通知後に無期転換申込みがなされて、その後に、要するに成立した無期契約について労働条件変更したという場合であれば、これはある意味全く通常のケースと同じでありまして、成立した既存の労働条件を変更する。つまり、多様な正社員関係の論点のところで挙がっている労基法15条の変更における明示義務をそのまま当てはめることになると思います。
 通知後に、無期転換申込みはまだなのだけれども、無期転換する後の条件について何らかの形で合意なるものがなされたというのは想像し難い場合なのですけれども、それはむしろ先ほど報告書の320行目以下で申し上げた無期転換に係る通知義務との関係で問題となると考えます。この点、やや想定例が想像しにくいですが、個別に合意したとすると、その合意をする時点で理論的にはその前提として内容が把握できているはずですので、その時点でそれをもって通知義務を果たしたと考えるということになるのかなと思われます。
 また、同時に新たに成立する労働条件についてのものとして労基法15条の明示が必要となってくると思います。これは(1)の論点に関わってくる点で、要するに、それは義務が2つともあり、それが同時に果たされるということになるのではないかなと思われます。(1)とも関連しますけれども、無期転換に係る通知と労基法15条の明示というのは、理論的に別のものだというところから出発して考えていく必要がどちらについてもあるかと思いました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 この点は先ほども御質問があったところですので、また検討していただきたいと思います。
 竹中課長補佐、どうぞ。
○竹中課長補佐 御質問ありがとうございました。労働関係法課の竹中です。
 先ほどの御質問については、後者といいますか、無期転換権が発生した後にまだ申込みがなされていないという段階のことを想定してここでは記載しておりました。ただ、御指摘いただきまして、確かに少し分かりづらい部分もあったなと思いますので、その点、御指摘を踏まえてまた報告書案のほうにどういった形で反映できるかということも検討したいなと思います。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 御質問は先ほども受けましたので、改めて検討していただければと思います。かなり細かい話になるので、報告書案の中にどこまで書き込めるかというのはまた別途検討するということになろうかと思います。
 今回、通知と明示のお話がありましたように、また、資料2の労働条件通知書のイメージもお示ししていただきましたように、具体的にどうなるかというようなことも考えてきていただいているというところがあります。この点につきましてもいろいろ御意見を伺いましたので、さらに詰めていただければと思います。
 今回、多様な正社員の問題と無期転換の問題が両者関連している部分、多様な正社員の問題といいますか、労働契約関係の明確化の問題と無期転換の問題が相互に関連している部分がありまして、少し追記してはもらったのですけれども、さらに確認するところがあるかなという感じはしております。
 また、先ほどの明示の仕方等につきましても、追加の論点が出てきた趣旨は恐らくあまり煩雑にならないように工夫ができないかというような問題意識があったのかなと思いますので、その辺りも実務的な対応のフィージビリティーを見たものも含めて考えられるのかなと思います。
もう5分近くたってしまいましたけれども、特に表現ぶり等についてさらにありましたら、また事務局のほうに別途メール等でお寄せいただいて検討していただくということでよろしいですね。時間の関係でそういうふうにお願いできればと思います。
 この場で特にということはございますでしょうか。
 それでは、本日いただいた御意見、また、これからいただくこともあろうかと思われる御意見を踏まえまして、たたき台を発展させた報告書案を次回に向けて作成していただきたいと思います。
 また、御指摘のありました点、事務局にさらなる御検討をお願いしたい点もありますので、そちらもよろしくお願いいたします。
 では、次回日程について事務局からお願いします。
○田村課長 本日も活発な御議論をいただきましてありがとうございました。いただいた御意見を踏まえて修正案を作成したいと思います。
 次回の日程につきましては現在調整中でございますので、確定次第、開催場所と併せて御連絡をさせていただきます。
○山川座長 ありがとうございました。
 それでは、これで第12回「多様化する労働契約のルールに関する検討会」を終了いたします。
 お忙しい中、皆様、お集まりいただきまして大変ありがとうございました。終了いたします。

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