2022年3月11日 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会議事録

日時

令和4年3月11日(金)14:00~17:00

場所

オンライン会議
事務局設置場所:AP虎ノ門 11階 会議室C

出席者

委員
佐藤部会長、桒形委員、笹本委員、杉本委員、瀧本委員、戸塚委員、中島委員、原委員、二村委員、松藤委員、三浦委員、渡辺委員
事務局
田中室長、福澤専門官、冨士原主査、重田技官
参考人
国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター病理部 小川部長

議題

  1. (1)審議事項
    • L-酒石酸カルシウムの新規指定の可否等について
    • フェロシアン化カリウムの規格基準改正について
  2. (2)報告事項

議事録

  

○事務局 定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会を開催いたします。本日は御多忙のところ御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず初めに、本部会はオンラインで実施いたしますので、以前同様ですが、注意いただきたい点について確認をいたします。発言以外の際には、基本的にマイクをミュートにしていただきますようにお願いいたします。発言時以外にマイクがオンになっている場合には、事務局でミュートにさせていただく場合がありますので、御了承ください。また、御発言がある場合には、まず挙手機能やコメント機能を用いて意思表示をお願いいたします。意思表示を頂きましたら部会長又は事務局が指名をいたしますので、その後に発言をお願いいたします。発言の際には最初にお名前をおっしゃっていただくようにお願いいたします。部会長から委員の皆様に審議事項について認めることでよろしいか等を確認いただく場面がありますが、チャット機能で意思表示をした後に発言をお願いいたします。了承を頂ける場合にはチャットで「異議なし」等を入力いただきますようにお願いいたします。オンラインでの注意事項は以上です。
 なお、本部会の傍聴については、報道関係者のみ事務局設置場所にて可としております。このような事情に鑑み、審議結果を広く速やかにお知らせをする目的で、結果の概要を議事概要として、この部会が終わりましたら速やかに厚生労働省のホームページに公開することとしたいと考えております。議事概要の内容については、速やかに公開をする観点から、部会長に一任ということを御了承いただければと考えております。なお、改めて議事録を公開する予定です。
 続いて、本日の委員の皆様の出席状況を報告いたします。頭金委員より御欠席の連絡を頂いております。原委員と二村委員より遅れて参加されるとの御連絡を頂いております。現時点で、添加物部会委員13名中10名の委員の方々に御出席いただいておりますので、本日の部会が成立をしておりますことを報告申し上げます。また、本日の報告事項の「3-アセチル-2,5-ジメチルフランの取扱いについて」に関して、参考人として国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター病理部の小川久美子部長に御出席を頂く予定です。また、急な所用で、近澤課長が欠席となっております。
 次に、資料の確認をいたします。あらかじめ議事次第、委員名簿、資料1-1~1-3、資料2-1~2-3、資料3-1~3-2、資料4及び参考資料1をお送りしております。問題はありませんか。
 最後に、本日3月11日は、2011年に東日本大震災が発生した日です。佐藤部会長より発災の時刻になりましたら黙とうを捧げるという御提案を頂いております。時刻になりましたらお声掛けをさせていただきますので、黙とうに御協力を頂ければ幸いです。
 それでは、議事の進行を部会長にお願いいたします。
○佐藤部会長 御説明ありがとうございます。部会長の佐藤です。よろしくお願いいたします。早速本日の議題に移ります。事務局から、本日の部会の審議品目に関する利益相反の確認結果について報告をお願いいたします。
○事務局 本日の部会においては、利益相反の確認対象がありません。以上です。
○佐藤部会長 よろしいでしょうか。それでは、議題1、L-酒石酸カルシウムの新規指定の可否等に関して審議を行います。まずは事務局からL-酒石酸カルシウムの添加物としての概要の説明をお願いいたします。
○事務局 参考資料1を御覧ください。こちらに本日御審議いただく品目のワイン製造工程で使用されるタイミングの資料を示しております。下の表に示していますとおり、本日御審議いただくL-酒石酸カルシウムとフェロシアン化カリウムについては、こちらの図の○2に示すワインの発酵中から発酵終了後のろ過前までに使用される品目となります。
 続いて資料1の説明に移ります。資料1-1が、厚生労働大臣から薬食審への諮問書となります。L-酒石酸カルシウムの添加物としての指定及び規格基準の設定について、薬食審に諮問しているものです。内容について、資料1-2を用いて詳しく説明いたします。資料1-2、L-酒石酸カルシウムの食品添加物の指定に関する部会報告書(案)を御覧ください。1.品目名は和名「L-酒石酸カルシウム」。2.構造式がこちらのように示されております。3.本品の用途は、製造用剤です。主にワインの酒質安定剤又は酸度調整剤として用いられるものになります。
 次に、本品の品目としての概要を説明いたします。⑴概要です。ぶどう酒では、ぶどう酒中に存在する酒石酸がカルシウムやカリウムと反応し、不溶性の酒石酸水素カリウムや酒石酸カルシウムを形成し、酒石として沈殿することで酒石混濁が発生する場合があります。この酒石混濁は消費者からは異物の混入と思われることが多いため、これを防ぐために酒質の安定化処理が必要とされております。また、ぶどう酒中に過剰に存在する酒石酸は、強い酸味によって香味のバランスを崩し品質を損なうため、酸度の調整が必要とされております。本日御審議いただくL-酒石酸カルシウムは、種晶としてぶどう酒に添加されることにより、酒石酸カルシウムの結晶形成を促進し、生じた沈殿をろ過によって除去することにより、酒石の発生を抑制し酒質を安定化させるものになります。また、ぶどう酒中の過剰な酒石酸を減少させることによる酸度調整効果を期待して使用されます。
 次に、本品の諸外国での使用状況等を説明いたします。2ページ目の⑵です。EUではワインへの使用が認められており、上限量として200 g/hLが適用されます。また米国においては、L-酒石酸カルシウムで処理したワインをEUから輸入し、国内で流通させることが認められております。
 次に、5.添加物としての有用性について説明いたします。先ほど酒質の成分として、酒石酸水素カリウムと酒石酸カルシウムがあるということを申し上げましたが、これらの酒石の主要成分のうち酒石酸水素カリウムについては、短期間で冷却等により結晶形成が起こるとされる一方、酒石酸カルシウムは結晶化に時間が掛かり除去は難しいため、特にカルシウム含有量が多いぶどう酒において、瓶詰め後に酒石が発生することが多いとされております。したがってこのようなことを防ぐため、酒石酸カルシウムの形成による酒石発生を防止するために、あらかじめ酒石酸及びカルシウム濃度を低く保持することが有効とされております。
 具体的な酒石酸カルシウムの作用について説明いたします。まず図1は、L-酒石酸カルシウムをぶどう酒に添加することによる、ぶどう酒のカルシウムの濃度の変化を見たものになります。L-酒石酸カルシウムの添加によるカルシウム濃度の変化を示したものは、図1中のカルシウム濃度が低下している折れ線になります。このように、酒石酸カルシウムを添加することにより、ぶどう酒中のカルシウム濃度が低下することが示されております。
 続いて3ページ目に移ります。別の実験において、炭酸カルシウムをカルシウム源として加えたぶどう酒に酒石酸カルシウムを種晶として添加した実験がなされており、酒石酸カルシウムの添加後にぶどう酒中の酒石酸濃度が減少し、その減少量はぶどう酒中のカルシウムの減少量とほぼ一致するということが示されております。この結果は表1に示されているとおりですが、表の左から4列目が酒石酸の減少量で、右から2列目にカルシウムの減少量が示されており、その減少量の比率が一番右の列に示されております。このように、酒石酸カルシウムの種晶添加による酒石酸とカルシウムの減少量はほぼ一致するということが示されています。これらの有効性の情報より、ぶどう酒中へのL-酒石酸カルシウムの添加により、ぶどう酒中のカルシウムと酒石酸濃度がほぼ同程度減少することから、L-酒石酸カルシウムはぶどう酒中のカルシウムと酒石酸の結晶形成に有効であるということが考えられます。
 また、既に指定されている類似の品目として、L-酒石酸水素カリウムがあります。図2は、L-酒石酸水素カリウム又はL-酒石酸カルシウムを添加したものにおいて、カリウムの減少量を比較したものです。大きくカリウムの濃度が下がっているものがL-酒石酸水素カリウムになりますが、酒石酸カルシウムの添加によってはカリウムの濃度は大きく低下しないということが示されております。このようにL-酒石酸カルシウムは、図1で先ほど示したように、カルシウムの濃度を低下させることに大きく有効であることが分かります。
 次に、食品中での安定性について説明いたします。ぶどう酒中のアルコール分は大部分が11~13%にあり、このアルコール濃度における酒石酸カルシウムの溶解度は最大0.113 g/Lとされております。そのため、最大0.113 g/Lが酒石酸カルシウムを添加した場合に、酒石酸イオンとカルシウムイオンとして溶解し、それ以外の溶解しない酒石酸カルシウムについては全て結晶として沈殿すると考えられます。なお、ぶどう酒中の製造工程において、沈殿した酒石酸カルシウムは、滓引きやろ過によって除去されます。
 次に、食品中の栄養成分に及ぼす影響です。L-酒石酸カルシウムの添加により、ぶどう酒中の酒石酸とカルシウムの濃度は減少しますが、これは過剰な酒石酸とカルシウムを減少させることを目的とするものですので、ぶどう酒中の栄養成分に及ぼす影響は無視できると考えられます。添加物の概要についての説明は以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。ここまでで委員の先生方から御質問等はありますか。中島先生、お願いします。
○中島委員 よろしいでしょうか。安全性、有効性については特に問題はないかと思います。資料1-2の1ページで、細かいことで恐縮ですが、酒石酸カルシウムの構造式がC4H4CaO6となっております。カルシウムは普通ここに書くかなということなのですが、何か理由はありますか。一般に化学式は、陽性の原子から順に書くという習慣がありますから、先頭にカルシウムを書くか、それとも酒石酸に対して塩ですのでカルシウムを最後に書くかというのが普通で、酸素と水素の間にカルシウムがくるというのは普通はない書き方なのですけれども、これは何か理由はありますか。
○佐藤部会長 ありがとうございます。これについては、杉本委員、お答えいただけますか。
○杉本委員 国立衛研の杉本です。これは昔からこういう書き方になっています。このように書くというのは前からそうなっていて、この書き方についても作成の解説のほうで、当部のホームページでこのように書くということを示してあります。そのとおり書かれていると思います。
○佐藤部会長 補足しますと、公定書においての書き方ということで、CHは先に書いてその後はアルファベット順で記載するというのが公定書の今までの書き方となっているので、このように書かれています。よろしいでしょうか。
○中島委員 余りよろしくないですけれども、そういうルールということであればそれで。あえて言うならば、これは化学的には絶対おかしいので、検討したほうがよろしいかと思います。以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。それに関しては、今後検討していきたいと思います。ほかの先生方、何かありますか。よろしいでしょうか。それでは、続いてL-酒石酸カルシウムの食品安全委員会における評価結果について、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 L-酒石酸カルシウムについては、食品安全委員会から令和3年7月27日付けで結果が通知されております。L-酒石酸カルシウムについては、添加物「L-酒石酸カリウム」、「メタ酒石酸」及び「L-酒石酸カルシウム」(以下「評価対象品目」)のグループとしての評価が検討され、L-酒石酸カリウム、メタ酒石酸及びL-酒石酸カルシウムのグループの許容一日摂取量をL-酒石酸として24 mg/kg体重/日と設定するという評価結果が通知されております。その概要を説明いたします。
 5ページ目の6行目の⑴から、安全性に係る知見の概要を説明いたします。L-酒石酸カリウム、メタ酒石酸とL-酒石酸カルシウムは、L-酒石酸イオンとして吸収されると考えられるため、L-酒石酸及び酒石酸塩としての試験成績全般を用いて、グループとして総合的に評価対象品目の毒性評価を行うことは可能であると判断され、それぞれについて評価がされております。まずL-酒石酸については、生体にとって特段問題となる遺伝毒性はないとされております。L-酒石酸塩の2年間反復投与・発がん性併合試験について評価された結果、ラットにL-酒石酸として最高用量2,440mg/kg体重/日を投与しても、毒性及び発がん性は認められなかったとされております。
 また、ヒトにおける知見からは、添加物として適切に使用された場合の摂取量範囲よりも高用量では影響が認められたものの、NOAELを得ることはできないと判断されております。これらのことから、L-酒石酸のNOAELが2,440mg/kg体重/日と評価されております。
 また、カリウムイオンについては過去に評価が行われており、新たな体内動態と毒性に関する検討は行われませんでしたが、カリウムが人の体内において広く分布する物質であり、栄養素として摂取すべき目標量が定められていること、及び添加物「L-酒石酸カリウム」からのカリウムの一日摂取量が現在のカリウムの一日摂取量の約4%と非常に少ないことを考慮して評価され、結果として添加物として適切に使用される場合、「L-酒石酸カリウム」に由来するカリウムは安全性に懸念がないと判断されております。
 また、カリウムイオンについても過去に評価が行われており、Upper Level for Supplements(ULS)として2,000mg/人/日とすることが適切と判断されております。今回新たな体内動態と毒性に関する検討は行われませんでしたが、L-酒石酸カルシウムを含む添加物由来のカルシウムの一日摂取量がULSの36%であることと、添加物「L-酒石酸カルシウム」由来のカルシウムの一日摂取量が、現在のカルシウムの一日摂取量に比べて約1.5%と非常に少ないことを考慮し評価されております。結果として、添加物として適切に使用される場合、添加物「L-酒石酸カルシウム」に由来するカルシウムは、安全性に懸念がないと判断されております。
 次に、⑵一日摂取量の推計等について説明いたします。6ページの6行目からです。L-酒石酸については、評価対象品目以外からのL-酒石酸の一日摂取量を1.22 mg/kg体重/日と推計され、評価対象品目のうちL-酒石酸カリウムからの摂取量は3.0 mg/kg体重/日、メタ酒石酸からの一日摂取量は0.084 mg/kg体重/日と推計されております。また、添加物「L-酒石酸カルシウム」については、ぶどう酒に添加するとぶどう酒中の酒石酸が添加前よりも減少すると考えられるため、実質的にL-酒石酸の摂取量は増えないと考えられております。以上のことから、L-酒石酸としての推定一日摂取量は4.3 mg/kg体重/日と推計されております。
 次に⑶食品健康影響評価です。先ほど⑴と⑵で説明したことを踏まえて、添加物L-酒石酸カリウム、メタ酒石酸及びL-酒石酸カルシウムのグループの評価としてADIを設定することが適切と判断され、21行目からに記載していますとおり、これらのことを踏まえて2年間反復投与・発がん性併合試験から得られたNOAELを根拠として、それを安全係数100で除した24 mg/kg体重/日が添加物「L-酒石酸カリウム」、「メタ酒石酸」及び「L-酒石酸カルシウム」のグループADIとして設定されました。概要についての説明は以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。食品安全委員会における安全性に係る評価の概要について、委員より簡単に御説明をお願いします。まず一般毒性について、桒形委員、いかがでしょうか。
○桒形委員 桒形です。資料1-3の食品安全委員会からの添加物評価書を御覧ください。毒性については38ページから記載があります。以前、御説明申し上げたときからアップデートされていないのですが、一応簡単に御説明いたします。38ページから急性毒性試験が報告されていますが、L-酒石酸、酒石酸塩を被験物質とした急性毒性に関する知見はございません。酒石酸、酒石酸塩の急性毒性は、表19にラットの試験、表20にマウス、ウサギを用いた試験が報告されています。いずれもLD50、あるいはLD10の値は非常に大きい値を示しており、生体にとって特段の急性毒性はないと考えられます。
 続いて39ページ○3反復投与毒性試験です。ラットを用いた2年間反復投与・発がん性併合試験の報告があります。この試験は試料添加濃度の5%を超える投与量を最高用量として、高い濃度で実施しているのですが、この高濃度においても投与による毒性はないと判断されており、NOAELはL-酒石酸として、2,440 mg/kg体重/日と、高い値で設定されております。また、L-酒石酸投与による発がん性も認められておりません。
 続いて41ページ○5生殖発生毒性試験です。生殖発生毒性試験はマウスとラットを用いた発生毒性試験の結果が報告されています。41ページのa.マウス、42ページのb.ラット、これはいずれもレビュー論文から引用された結果です。原著が確認できていないということから、NOAELは設定されておりませんが、それぞれの最高用量においても特段の母動物毒性、あるいは胎児毒性、催奇形性はなかったということは留意すべきと判断されております。
 42ページの一番下、c.参考資料の項目ですが、こちらは混合物を投与したラットの試験ということで参考資料になっています。酒石酸モノコハク酸ナトリウム及び酒石酸ジコハク酸ナトリウム量として、最高用量の1,000 mg/kg体重/日まで母動物及び胎児への有害影響はないと判断されております。
 続いて43ページの○6ヒトにおける知見です。L-酒石酸ナトリウム、あるいは酒石酸ナトリウムの介入研究報告、また酒石酸を摂取した症例報告が記載されております。酒石酸30 mg摂取により死亡例、10 mg程度の摂取により吐き気、嘔吐、痙攣が認められておりますが、45ページの一番下のf.ヒトにおける知見のまとめに記載もありますとおり、今御説明したような事例というのは、添加物として適切に使用された場合の摂取量範囲よりも非常に高い用量で認められた影響であるために、NOAELを得ることはできておりません。
 以上の結果から毒性関係のまとめとして、2年間反復投与・発がん性併合試験では、最高用量まで投与による影響は認められていないということから、NOAELはL-酒石酸として2,440 mg/kg体重/日と、非常に高い用量で評価されております。毒性については以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。続いて遺伝毒性について、戸塚委員、いかがでしょうか。
○戸塚委員 お手元の資料、今写っている資料の遺伝毒性に関しましては32ページからになります。まず、L-酒石酸カリウムの遺伝毒性に関しましては、試験成績がネズミチフス菌を用いたAmes試験のみに限られておりますが、陰性と出ております。メタ酒石酸ですが、こちらも同じAmes試験での結果のみになりますが、陰性という結果が得られております。次は少しページが飛びまして34ページ、L-酒石酸カルシウムです。こちらは遺伝毒性に関する知見はございません。また、同じページの酒石酸、酒石酸塩の遺伝毒性になりますが、表16に幾つかの試験が報告されております。ほとんどがAmes試験等は陰性なのですが、36ページの一番上、培養細胞を用いた染色体異常試験は陽性という結果が得られております。そして酒石酸、酒石酸塩に関する遺伝毒性の試験ですが、表17においては同じチャイニーズハムスターを用いた染色体異常試験ですが、こちらは陰性という結果になっております。また、37ページの表18に関しましては、これは参考資料ですが、酒石酸及び酒石酸塩そのものの遺伝毒性を見たものではなくて、加熱によって生成するようなものの評価を行っているので、こちらは参考資料に落とし込まれています。
 以上の結果をまとめたものが37ページのc.に書かれているのですが、Ames試験を含むほとんどの試験系において陰性の結果だったことと、中には1つ、染色体異常試験において陽性を示した結果が出ておりましたが、こちらは細胞障害性の可能性を考慮せずに陽性というように出されているということで、これをin vivoでの試験で確認するように、in vivoの小核試験等を実施した結果が示されており、それでは陰性であったことなどを鑑みまして、食品安全委員会では最終的に、総合的に考えて38ページの上のほうになりますが、L-酒石酸及び酒石酸塩の遺伝毒性は生体にとって特段問題となる遺伝毒性はないものと考えたというようにまとめております。以上になります。
○佐藤部会長 ありがとうございます。続いて本日御欠席の頭金委員から、体内動態についてコメントを頂いております。事務局から説明をお願いします。
○事務局 紹介させていただきます。L-酒石酸カルシウムの体内動態について、経口投与されたL-酒石酸カルシウムの多くは、腸内細菌によって分解されるものの、一部はL-酒石酸イオンとして吸収されます。吸収されたL-酒石酸イオンは、主として尿中に排泄されます。L-酒石酸塩の体内動態については、動物間の種差が示唆されていること、また吸収率はラットよりヒトのほうが低いとされています。以上でございます。
○佐藤部会長 ありがとうございます。ここまでで委員の先生方から、食品健康影響評価における評価結果について、御質問等ございますか。よろしいでしょうか。
 では、続いてL-酒石酸カルシウム使用基準案と成分規格案等について、事務局から説明をお願いします。
○事務局 それでは資料1-2に戻ります。資料1-2の6ページ目の27行目からの7.新規指定についてです。諮問した内容について、L-酒石酸カルシウムについては、食品安全委員会における健康影響評価を踏まえ、添加物として指定することは差し支えないという結論を記載しています。
 次に8.規格基準の設定についてです。指定された場合には同時に成分規格と使用基準を設定することになりますが、⑴の使用基準について、諸外国での使用状況、添加物としての有効性、食品安全委員会の評価結果、摂取量の推計等を踏まえて、7ページからの記載のとおり、L-酒石酸カルシウムはぶどう酒以外の食品に使用してはならない、L-酒石酸カルシウムの使用量はL-酒石酸カルシウムとしてぶどう酒1Lにつき2.0g以下でなければならないという使用基準案を記載しています。
 次に⑵成分規格です。成分規格については別紙1のとおり設定するということです。別紙1は9ページ目からになりますが、簡単に御説明させていただきますと、名称としてL-酒石酸カルシウム、構造式、化学名等が記載されており、含量、性状については記載のとおりです。確認試験については旋光度やカルシウム塩、酒石酸塩の確認試験を設定しております。比旋光度やpHは記載のとおりで、純度試験については鉛やヒ素、硫酸塩の純度を規定しており、塩基性残渣として炭酸カルシウムの限度量を設定しております。乾燥減量や定量法も設定しており、記載のとおりです。説明は以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。それでは、使用基準案及び成分規格案等について、委員の先生方からコメントがあればお願いしたいと思います。まず、成分規格案についてですが、杉本委員、いかがでしょうか。
○杉本委員 杉本です。資料1-2の別紙2、11ページに、成分規格設定の根拠が示されております。ここに書かれているとおりですが、EUの規格、OIVの規格、第9版食品添加物公定書の規格で類似したもの、L-酒石酸、DL-酒石酸、L-酒石酸水素カリウム及びL-酒石酸ナトリウムなどの規格を参照しながら、L-酒石酸カルシウムの成分規格の設定を行っております。これは高純度のもので、比較的ほかの酒石酸類と同じような規格になっています。特に本品は2水和物と4水和物が存在していまして、そのために他国、EUの規格とは乾燥減量の所が少し違っております。
 12ページの27行目から乾燥減量の根拠について示しておりますが、2水和物と4水和物が想定されることから、乾燥減量を求めるときに、この4水和物の水が飛ぶ温度が191℃なので、200℃で7時間の乾燥を行って、30%以下という規格に設定しております。ここが大きく異なる所で、それ以外に大きく異なる所はありません。
 もう1つ少し違う所ですが、比旋光度です。比旋光度のほうも、大体ほかの国と同じ規格になっていますが、旋光度を求める上で他国の方法では、濃度が低いためだと思われるのですが、旋光度の判定がはっきりとしないということから、しっかりと旋光度が測れるような濃度設定として、この規格を設定しています。違う所は以上になります。
○佐藤部会長 ありがとうございます。それでは、L-酒石酸カルシウムの使用基準案及び成分規格案について、委員の先生方から御質問等はございますか。よろしいでしょうか。全体を通してL-酒石酸カルシウム新規指定等の可否について、御意見等ありましたらお願いいたします。ありがとうございます。それでは、一通り御審議を頂いたようですので、L-酒石酸カルシウムの新規指定等の可否については認めるということでよろしいでしょうか。御意見がある場合は御発言をお願いします。中島委員、どうぞ。
○中島委員 意見ではありません。同意いたします。
○佐藤部会長 御了承いただける場合は、コメント欄に「異議なし」と入力をお願いいたします。異議がないということですので、部会報告を取りまとめ、分科会報告の手続を取りたいと思います。事務局からそのほかございますか。
○事務局 本件は添加物の新規指定ですので、分科会では審議事項とされております。また、細かい文言等の軽微な修正が必要となった場合については、修正内容を部会長に御確認いただいた上で、手続を進めることとしてよろしいでしょうか。
○佐藤部会長 事務局からの提案ですが、そのように進めてよろしいでしょうか。御意見がある場合は御発言ください。よろしいですね。それでは、今後のスケジュールはどのようになりますか。
○事務局 今回の審議結果について、食品衛生分科会での審議のほか、所定の事務手続を開始したいと思っております。
○佐藤部会長 ありがとうございます。それでは、適切に手続を進めていただきたいと思います。
 それでは議題2、フェロシアン化カリウムの規格基準改正について、審議を行いたいと思います。事務局からフェロシアン化カリウムの添加物としての概要の説明をお願いいたします。
○事務局 それでは、議題2のフェロシアン化カリウムについて、御説明させていただきます。資料2-1を御覧ください。こちらは厚生労働大臣から薬事・食品衛生審議会へ、フェロシアン化カリウムの使用基準の改正についての諮問がなされているところです。
 次に、資料2-2を御覧ください。フェロシアン化カリウムの規格基準改正に関する部会報告書(案)となっています。今般、厚生労働大臣から要請した食品健康影響評価が食品安全委員会から回答されたことを踏まえ、それに基づいて審議を行います。
 品目名ですが、和名はフェロシアン化カリウム、別名としてはヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸カリウムとなっています。構造式、化学式及び式量については、こちらに示しているとおりに、既に成分規格が設定されています。
 用途ですが、製造用剤となっています。具体的には、ワインに用いる清澄剤ということで、混濁を防止する目的で使用するものとなります。
 概要ですが、まず国内での指定状況としては、フェロシアン化カリウムは平成14年に指定されて、食塩の固結防止を目的に使用されています。また、今回の新規の用途であるぶどう酒への使用については、フェロシアン化カリウムはぶどう酒中でフェロシアン化物イオンとカリウムイオンに解離します。この解離したフェロシアン化物イオンが、ブドウ酒中の鉄イオンと反応して、フェロシアン化鉄(Ⅲ)となって沈殿するとされています。この沈殿したフェロシアン化鉄(Ⅲ)を滓引き、ろ過等の工程によって除去することによって、ぶどう酒の混濁の原因となる鉄イオンを除く効果があるという形になっています。
○事務局 説明の途中ですが、冒頭申し上げたように東日本大震災の犠牲者の方々への黙とうに御協力をお願いいたします。1分間の黙とうをお願いいたします。
                                    (黙とう)
○事務局 お直りください。御協力ありがとうございました。
 それでは説明を再開させていただきます。先ほどに続いて、2ページ目の諸外国での使用状況等についてです。JECFAにおいては、1974年の第18回会合においてフェロシアン化カリウムを含むフェロシアン化物グループの許容一日摂取量(ADI)を、フェロシアン化ナトリウムとして0~0.025 mg/kg体重/日と評価しています。
 EUにおいては、ワインへの加工助剤として使用が認められています。使用上限量は定められていませんが、使用時の基準としてフェロシアン化カリウムで処理した後、ワインには微量の鉄が含まれていなければならないと規定されています。米国においては、一般に安全と認められる物質、GRASとしてフェロシアン化物、こちらは注釈にありますが、どの塩というところは明確ではないのですが、Ferrocyanide compoundsとして、GRASとして認められていまして、ワインへの使用を行うことができ、最終製品に残存するフェロシアン化物の不溶性及び可溶性残分の合計が1 ppmを超えないことという形で規定されています。またオーストラリアでは、ワインの加工助剤として0.1 mg/kgを超えない範囲での使用が認められています。国内においては、先ほどのとおり食塩以外の食品に使用してはならないというものが使用基準として設定されているところです。
 続いて、添加物としての有効性です。まず清澄剤としての機能について、鉄イオンについての御説明ですが、ぶどう酒中に高濃度の鉄イオンが含まれていますと、混濁の原因となり、ぶどう酒の品質を著しく低下させることになります。一般に、鉄イオンはぶどう酒中に1~10 mg/L程度含まれ、これが5 mg/L以上になると混濁のリスクが高くなるとされています。フェロシアン化カリウムについては、このぶどう酒中の鉄イオンと結合して沈殿を除去することができるため、鉄イオンが原因となる混濁の抑制効果を示すとされています。
 表1にフェロシアン化カリウムの添加によって、鉄がどれぐらい除去されるのかということを示しています。フェロシアン化カリウムを添加していくことによって、鉄の残存濃度が減少していくということが示されています。表1の下の所は、先ほど御説明した内容ですが、こちらを具体的に反応式で示しますと3ページ目の上にあるとおり、3つのフェロシアン化物イオンと4つの3価の鉄イオンが結合して、フェロシアン化鉄(Ⅲ)として沈殿してくるということになります。
 ほかの添加物との比較ですが、現在、清澄効果を有する添加物としては、指定添加物のイオン交換樹脂や既存添加物のベントナイトといったものが存在しますが、これらの添加物と比較しますと、色の減少や過剰な清澄化といったぶどう酒の品質への悪影響が少ないとされています。
 表2に色調や品質等の悪化に対する各清澄剤の効果の比較を示しています。効果が大きい、影響が大きいものが上に記載されています。一番左では、色の減少は炭素を添加した場合には多く見られ、フェロシアン化物については最も影響が少ないものとされています。一番右の総合的な品質の低下は、フェロシアン化物がほかの添加物に比べて低いものと評価がされているところです。
 続いて、食品中の安定性ですが、フェロシアン化カリウムについては、ぶどう酒中においてフェロシアン化物イオンとカリウムイオンに解離します。フェロシアン化物イオンについては、鉄イオンとの反応によって沈殿を生成して、除去されることになります。また、フェロシアン化物イオンの構造の中にシアン化物イオンが含まれていますが、水溶液においては、このフェロシアン化物イオンからシアン化物イオンが解離するときの性質に関連する解離定数は10-35と見積もられており、一般的にこのシアンと鉄の結合は強固であるとされています。
 続いて、食品中の栄養成分に及ぼす影響です。フェロシアン化カリウムに由来するフェロシアン化物イオンは、過剰に添加された場合にはぶどう酒中のビタミンやアミノ酸が減少するとされています。一方で、既に使用が認められているベントナイトについても、同様にビタミンやアミノ酸の減少が起こるとされており、ほかの清澄剤と比べてぶどう酒中の栄養成分に及ぼす影響は大きくないと考えられているところです。
 また、フェロシアン化カリウムに由来するカリウムイオンは、ぶどう酒自体においても白のぶどう酒は約800 mg/L、赤のぶどう酒は1,100 mg/Lといった程度の濃度が平均して含まれていると報告があり、カリウムイオン自体も、過剰に摂取しても尿中に排泄されるということから、ぶどう酒自体の栄養成分に及ぼす影響はほぼないと考えられています。ここで一旦、説明を切らせていただきます。
○佐藤部会長 ありがとうございます。ここまでで委員の先生方から御質問等はありますか。よろしいでしょうか。それでは、続いてフェロシアン化カリウムの食品安全委員会における評価結果について、事務局より御説明をお願いいたします。
○事務局 4ページ目の食品安全委員会における評価結果です。今般の規格基準改正のために、食品安全委員会に意見を求めまして、その食品健康影響評価の結果が令和4年2月24日付けで通知されていまして、「フェロシアン化カリウムが添加物として適切に使用される場合、安全性に懸念はない」と評価されています。
 結果の概要について、まずフェロシアン化カリウムはぶどう酒に使用すると溶解して、フェロシアン化物イオンとカリウムイオンに解離するということ。また、シアン化物イオンがフェロシアン化物イオンから生じる可能性があるということから、これら3つの物質についての評価が行われています。
 まず、フェロシアン化カリウムについては、安全性に関する知見として、フェロシアン化カリウム自体に関する知見は限られていますが、ぶどう酒及び胃の中でのフェロシアン化物イオン及びカリウムイオンへ解離すると考えられるということから、同様に胃内でフェロシアン化物イオンを生じると考えられるフェロシアン化ナトリウム及びフェロシアン化鉄カリウムに係る知見も併せて、総合的に評価を行うことは可能とされています。
 ラットに経口投与した結果として、フェロシアン化カリウムの投与によって、フェロシアン化物イオンはほとんど吸収されることがなくて糞便中に排泄され、吸収されてもほとんどが尿中に排泄されるとされています。ウサギ、イヌ、ヒトでフェロシアン化ナトリウムを静脈内投与した結果でも、速やかに尿中に排泄されており、吸収されたとしてもほとんど尿中に排泄されると考えられます。
 フェロシアン化カリウムについては、生体に特段問題となる遺伝毒性はないと判断されています。
 各種試験成績を検討した結果、ラット2年間及び49週間反復経口投与試験の所見をもとにして、最小のNOAELは、4.4 mg/kg体重/日、無水フェロシアン化ナトリウムとしてです。これは無水フェロシアン化カリウムとして換算すると、5.3 mg/kg体重/日と評価が行われています。また、発がん性はないと判断されています。
 フェロシアン化カリウムの一日摂取量の推計ですが、最終製品からほとんどろ過等によって除去されるということを踏まえ、ばく露マージンによる評価が実施されています。無水フェロシアン化カリウムのNOAELと推定一日摂取量、こちらが1.5×10- mg/kg体重/日となっていまして、十分なマージンが存在することから、フェロシアン化カリウムが添加物として適切に使用される場合には、安全性に懸念はないと判断がされています。
 次に、カリウムイオンについては、もともとのカリウムがヒトの血中などの各器官において広く分布する物質であるということ、栄養素として摂取すべき目標量が定められていること、また、フェロシアン化カリウムの一日摂取量の推計値が現在のカリウムの一日摂取量と比較して、非常に少ないこと等を総合的に評価した結果、添加物として適切に使用される場合には、フェロシアン化カリウムに由来するカリウムについては安全性に懸念がないと判断されています。
 続いて、フェロシアン化物から生じる可能性があるシアン化物イオンについては、ぶどう酒中、消化管内などの体内での生成について検討した結果、安全性に懸念がないと結論されています。具体的には、まず先ほど説明しましたとおり解離定数が非常に小さく、結合が強固であるため、シアン化物の生成が無視できると考えられるということ。また、ヒトを含めた体内動態の試験の結果から、フェロシアン化カリウムを経口投与したときのシアン化物イオンの吸収は低く、体内での生成も少ないと考えられたということ。さらに、ぶどう酒に添加されたフェロシアン化カリウムの一日摂取量が全てシアン化物イオンに分解したと仮定しても、その値はシアン化物イオンのTDIの8%であるということ。これらを踏まえて、安全性に懸念はないと結論されているところです。
 最後に食品健康影響評価ですが、これらを踏まえ、フェロシアン化カリウムについては、推定一日摂取量とNOAELとの間に十分なマージンが存在しており、カリウムイオン、シアン化物イオンの検討結果も併せてフェロシアン化カリウムが添加物として適切に使用される場合には、安全性に懸念はないという結論となっています。説明は以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。食品安全委員会における安全性に係る評価の概要について、委員より簡単に御説明をお願いいたします。まず一般毒性について、桒形委員、いかがでしょうか。
○桒形委員 桒形です。御説明します。資料2-3の食品安全委員会から提出されています添加物評価書を御覧ください。28ページから毒性試験の結果があります。まず急性毒性の項目ですが、ラットを用いたフェロシアン化カリウム、あるいはフェロシアン化ナトリウムを用いた急性毒性試験が報告されていますが、LD50は非常に大きな値を示しており、生体にとって特段の急性毒性はないと考えられます。
 続いて、28ページの一番下、(3)反復投与毒性試験です。そのまま次の29ページに続きますが、フェロシアン化カリウムの毒性試験の知見は提出されていません。フェロシアン化ナトリウムを用いた反復投与毒性試験では、ラットとイヌの結果が報告されています。
 29ページの表12に、ラットを用いた90日間反復投与試験の毒性所見がまとめられていますが、0.5%以上のフェロシアン化ナトリウムが混ぜられた餌を摂取した結果、この0.5%群以上の投与群で腎臓に影響が認められています。腎臓重量が増加し、腎臓皮質の尿細管や腎盂上皮に病理組織学的な変化が認められています。この0.5%というのは、換算しますと250 mg/kg体重/日になります。
 続いて、30ページのb.ビーグル犬を用いた13週間反復経口投与試験です。こちらは最高用量の1,000 ppm、換算しますと26 mg/kg体重/日ですが、1,000 ppm投与群においても投与による影響は認められていません。
 31ページのc.ラットを用いた発がん性試験ですが、同じページの表15に毒性所見がまとめられています。500 ppm以上の長期投与により、尿中排泄細胞数の増加や尿の濃度の高値が認められています。しかし、発がん性は認められていません。このようにフェロシアン化物の標的臓器は、腎臓であることが分かります。
 33ページ、(5)生殖発生毒性試験の記載があります。フェロシアン化カリウムの生殖毒性に関する知見は提出されていません。フェロシアン化ナトリウムのラットを用いた発生毒性試験が実施されていますが、母動物の一般毒性、胚・胎児の発生に係るNOAELは最高用量の1,000 mg/kg体重/日と評価されており、催奇形性も報告されていません。
 以上の結果から、毒性試験の最小のNOAELは、ラットを用いた2年間及び49週間反復投与毒性試験から求められ、フェロシアン化ナトリウムの値に換算しますと雄で5.3 mg、雌で7.5 mg/kg体重/日と報告されています。
 最後にヒトにおける所見ですが、こちらはフェロシアン化カリウム、ナトリウムともに報告がありません。以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。続いて遺伝毒性について、戸塚委員、いかがでしょうか。
○戸塚委員 それでは、ただいまと同じ資料を用いて、遺伝毒性に関しては26ページからになります。まず、こちらにはフェロシアン化カリウムの遺伝毒性に関して、表6にまとめられています。バクテリアを用いたAmes試験やそれ以外のin vitroの試験の記載がありますが、一番下のコメットアッセイ、ヒトリンパ球を用いたコメットアッセイでのみ陽性の結果となっています。
 続いて、27ページはフェロシアン化ナトリウムに関する遺伝毒性の試験成績になっています。表7です。こちらは、Ames試験や先ほどフェロシアン化カリウムでは陽性となっていたヒトリンパ球を用いた同じアッセイ系で、フェロシアン化ナトリウムの場合では陰性という結果になっています。塩類不明のフェロシアン化物に関しても、いずれもin vitroの試験ですが陰性という結果になっています。
 27ページの下から遺伝毒性のまとめについて記載がされています。食品安全委員会では、フェロシアン化カリウム及びフェロシアン化ナトリウムの遺伝毒性に関する試験はin vitroに限られていますが、複数の試験で陰性結果が得られています。なお、コメットアッセイで1件のみ陽性という判定がされていましたが、こちらは細胞毒性が観察されている濃度での結果であることから、間接的なメカニズムであろうと考えていることに加え、全く同じ試験系でフェロシアン化ナトリウムでは、遺伝毒性が認められなかったということも併せて考えまして、最終的にフェロシアン化カリウムは生体にとって特段問題となる遺伝毒性はないと判断しています。以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。続いて、本日御欠席の頭金委員から体内動態についてコメントを頂いています。事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 頭金委員からのコメントを読み上げさせていただきます。フェロシアン化カリウムの体内動態について、経口投与されたフェロシアン化カリウムは胃内でフェロシアン化物イオン及びカリウムイオンに解離します。フェロシアン化物イオンについては、ほとんどが吸収されることなく糞便として排泄され、吸収されてもほとんどが尿中に排泄されます。尿中への排泄速度については、イヌとヒトで差が認められるとされています。フェロシアン化物イオンからシアン化物イオンが生じる可能性がありますが、生体内ではほとんど起こらないとされています。以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。ここまでで委員の先生方から食品健康影響評価における評価結果について、御質問等はありますか。よろしいでしょうか。
 それでは、続いてフェロシアン化カリウム使用基準案等について、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 資料2-2、6ページにお戻りください。規格基準の改正について御説明します。
 まず、使用基準案についてですが、諸外国での使用状況、添加物としての有効性、食品安全委員会の健康影響評価の結果、摂取量の推計等を踏まえて、次のとおり使用基準を改正することとして、使用基準案を示しています。改正前は、食塩以外の食品に使用してはならないとなっていますが、ここにぶどう酒を追加する形となります。
 また、使用量に関する規定の一番最後に、フェロシアン化カリウムをぶどう酒に使用する場合は、1Lにつき0.001 gを超えて残存しないように使用しなければならないという規定を追加する案となっています。なお、この使用基準案については、後ろのほうに参考として付けています、9ページからですが、使用基準案の改正の根拠として、EUでの基準やアメリカでの残存量の規定などを総合的に検討されていまして、使用基準案として0.001 g/Lを設定する案として、これをもとに食品安全委員会で摂取量推計等の評価がなされているところです。
 次に成分規格です。こちらは8ページに現行の案を示していますが、今回の改正においては成分規格は変更がないことになります。説明は以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。それでは、フェロシアン化カリウムの使用基準案について、委員の先生方から御質問等はありますか。よろしいですか。ありがとうございます。それでは、全体を通してフェロシアン化カリウム規格基準改正について、御意見等がありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、フェロシアン化カリウムの規格基準改正については、認めるということでよろしいでしょうか。御了解いただける場合は、コメント欄に「異議なし」などの入力をお願いいたします。ありがとうございます。それでは、部会報告書をまとめ、分科会報告をする手続を取りたいと思います。事務局からそのほか何かありますか。
○事務局 本件は添加物の規格基準に関する改正ですが、分科会規程において規格基準改正については、起源、製法、用途等から見て慎重に審議をする必要があるという部会の意見に基づいて分科会長が決定する場合以外は、分科会での審議事項ではなく報告事項とされています。本件について、報告事項として進めさせていただくことでよろしいでしょうか。
○佐藤部会長 事務局からの御提案ですが、そのように進めてよろしいでしょうか。御意見がある場合は、御発言をお願いいたします。よろしいですね。それでは、今後のスケジュールはどのようになりますか。
○事務局 今回の審議結果については、食品衛生分科会での報告のほか、所定の事務手続を開始したいと思います。
○佐藤部会長 ありがとうございます。それでは、適切に手続を進めてください。
 では、続いて報告事項、3-アセチル-2,5-ジメチルフランの取扱いについて、事務局より御説明をお願いいたします。
○事務局 よろしくお願いします。報告事項1、3-アセチル-2,5-ジメチルフラン(香料)についてということで、資料3-1を御覧ください。本件は、香料である3-アセチル-2,5-ジメチルフランについて、遺伝毒性・発がん性が疑われることから、今後使用の自粛を求めていきたいという内容です。説明の途中で国立医薬品食品衛生研究所の病理部部長の小川先生に御発言いただきます。
○小川参考人 小川です。よろしくお願いします。
○事務局 資料3-1に沿って説明いたします。まず、経緯ですが、3-アセチル-2,5-ジメチルフランというものが香料のケトン類の1つとしてありまして、香料としての使用が認められております。下の※を御覧いただくと分かるのですが、香料については、個別に指定されている添加物もありますが、類似構造を有するものについては、ケトン類やエステル類のように一括名称で指定されているものがあります。このように一括名称で指定されているものについては、具体的な品目を通知により例示しておりまして、そこに載っているものについては、ケトン類やエステル類に該当しているので、使用することができます。
 2段落目ですが、この物質について、国立医薬品食品衛生研究所等において実施された復帰突然変異試験及び一般毒性・遺伝毒性・発がん性包括毒性試験の結果により、発がん性等が疑われたものですから、同研究所の安全性生物試験研究の専門家に意見を求めたところ、本物質については、遺伝毒性発がん性物質である懸念が否定できないとされました。その議論の結果については、報告書として資料3-2にまとめていただいております。この内容について、小川先生、御説明いただけますか。
○小川参考人 それでは資料3-2を御覧ください。安全性試験の概要ですが、急性毒性試験については情報はありません。反復投与毒性試験については、ラットを用いた3-アセチル-2,5-ジメチルフランの14日間の反復投与毒性試験の結果、NOAELは10 mg/kg体重/日であると評価されておりますが、これはWHOに提出されている企業データで、特に詳細なことは明記されておらずNOAELの記載のみとなっております。
 今回、厚労科研費研究で、香料の中で特に構造的に何か懸念があるかもしれないと、Ames/QSARで引っ掛かってきたものとして、病理部でgpt deltaのレポーター遺伝子を持った6週齢の雄性F344ラットを用いて、1群10匹にコーンオイルに混じた3-アセチル-2,5-ジメチルフランを0、30又は300 mg/kg体重/日の濃度で1日1回、13週間の反復経口投与後、一般状態、体重、摂餌量、血液検査、生化学検査と臓器重量測定や肉眼病理及び病理組織学的検査を実施しております。
 その結果、300の群では、全例において1週目から鼻出血が認められておりましたが、症状は3週目以降には観察されておりませんでした。300 mg/kg体重の投与群においては、投与1週目から投与最後まで、統計学的に有意な体重増加抑制が認められておりました。摂餌量は被験物質投与群において低下する傾向が認められておりました。血液学的検査では、30 mg/kg体重以上の赤血球数及びヘモグロビン濃度や好酸球比の有意な低値を認めております。300では、血小板や好中球比は有意な高値を示しておりました。血清生化学的検査の結果は、30以上の投与群において総蛋白、トリグリセリド、総コレステロール及びリン脂質に有意な低値と、A/G比の有意な高値が認められています。
 臓器重量については、300の投与群で、肝臓及び腎臓の絶対及び相対重量は有意な高値を示しておりました。病理組織学的検査の結果では、300 mg/kg体重の投与群では、肝臓における軽度の小葉中心性肝細胞肥大と鼻腔における嗅上皮の変性/壊死、呼吸上皮化生及び鉱質沈着が認められておりました。こういったことから、この試験自体は定型的なものではなく、群構成など限られていることから、NOAELを設定するには少し足りないところはありますが、少なくとも300 mg/kg体重/日では明らかな毒性が認められているということになります。
 66行目ですが、この実験においては、肝臓の前がん病変とされるGST-P陽性細胞巣の定量解析も行っております。その結果、300において、GST-P陽性細胞巣の数及び面積に有意な増加が認められて、肝臓の前がん病変が増加するということが分かりました。遺伝毒性については私自身は専門ではありませんが、2019年にAmes試験が実施されております。こちらについては、明らかな陽性が認められております。
 今回我々のほうでは、85行目からですが、先ほどの実験の動物の肝臓においてgpt assayによるin vivo変異原性試験を行ったところ、300 mg/kg体重の投与群においては、gptの変異体の頻度が対照群に対して有意な高値を示したということです。一方で、変異体スペクトラムの解析においては、変異パターンに統計学的に有意な変化は認められなかったということです。この3-アセチル-2,5-ジメチルフランに対して実施されたAmes試験とin vivo変異原性試験の結果は陽性と判断されるということから、こちらの化合物については遺伝毒性を有する可能性があると考えられます。
 JECFAにおいては、これは構造クラスⅢと分類されております。推定摂取量が200 μg/人/日でクラスⅢの化合物である90 μg/人/日を上回っており、NOAELの詳細なデータは分かっていないのですが、10 mg/kg体重/日とされていることを考えると、ばく露マージンとしては十分にあるのではないかと、JECFAではそのような判断になっているという状況です。
 以上から、評価検討会の結論としては、3-アセチル-2,5-ジメチルフランは遺伝毒性発がん物質である懸念が否定できないということですが、これまでの年間使用量に基づく我が国の推定摂取量は最大で0.025μg/人/日であり、FDAの毒性不明な化合物の発がん性に関する懸念の閾値として設けられている1.5μg/人/日を下回っているので、香料として使用される状況からは人における発がん性の懸念は高くはないと考えるというのが評価検討会の結論です。説明は以上です。
○事務局 ありがとうございました。以上の検討結果を頂きまして、今後の対応については3.です。その前に、2.で我が国における流通等の状況について分かっていることについて記載しております。下の表では、2001年から2020年までの間の使用量を示しています。推定摂取量が右に示されております。一番多いは、2015年時点での推定摂取量で、0.025μgとなっております。
 海外での使用例ですが、菓子類や肉製品、ソフトドリンク等に使用されているとの報告があります。なお、日本香料工業会においては、国立医薬品食品衛生研究所からの当該研究の結果の公表を踏まえて会内で検討された結果、本年1月12日に会員各社に周知を行い、使用等の自粛を求めている状況と伺っております。
 以上の状況を踏まえて、今後の対応ですが、当該香料については、これまでの使用実績に基づく我が国における推定摂取量は、最大で0.025μg/人/日で、米国FDAが毒性不明な化合物の発がんに関する懸念の閾値として設定した1.5μgを下回っていること、現時点では、国内では使用はされていないか、又は使用されていても極めて微量と思われることから、直ちに国民の健康に影響を及ぼすとは考えにくいが、遺伝毒性発がん性物質である懸念が否定できないことに鑑み、当該香料をケトン類に分類される物質の例示のリストから削除するとともに、当該香料及びこれを含む食品の製造販売等の自粛を指導するよう、都道府県等に対して通知を行いたいと考えております。本報告については以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。ただいまの御報告について御意見、御質問等はありますか。
○二村委員 御報告ありがとうございます。詳細に調査、研究していただいて非常によく分かる御説明を頂きました。その上で、この結果を受けて、工業会で使用の自粛を呼び掛けていただいたことは非常に適切な対応だと思います。また、今後の進め方についても基本的にはこのように進めていただければ安心だと思っています。
 質問と、その上で是非今後進めていただきたいということを申し上げます。質問のほうは、資料3-2、107行目からの諸外国における使用状況等で、111行目にEUが書いてあるのですが、Non-supportというのはどういう意味なのか教えていただきたいと思います。
 また、この部分を見ますと、日本では今回こういう対応にするのですが、JECFAでは安全性に懸念をもたらすものではないとしてあったり、中国、韓国、アメリカでは認められているということです。国内では使われないとしても、当然輸入食品などで違反になってしまうとか、そういったことも出てくるかと思いますので、国際的にこの情報を共有していただいて、JECFAでの再評価を働き掛けていただくなどの対応を今後進めていただければと思いました。以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。事務局からお願いします。
○事務局 EUのNon-supportの状況については、EUの工業会や事業者においては、この香料は使用しないことになっていることから、これについての安全性情報等の収集をしていない、という状況がNon-supportに当たるものと伺っております。
 海外に対する情報提供に関しては、現時点で既に方針については発信しておりますので、適切に進めてまいりたいと考えております。
○佐藤部会長 ありがとうございます。ほかに御質問等ありますか。よろしいですか。続いて2つ目の報告事項、食品添加物一日摂取量調査の部会報告資料の修正等に関して、事務局より説明をお願いします。
○事務局 資料4を用いて御説明いたします。6行目からです。厚生労働省では、食品添加物の摂取実態を明らかにするために、マーケットバスケット方式で、年齢層別の食品添加物の一日摂取量調査を継続して毎年実施しております。その結果については毎年添加物部会でも御報告はさせていただいておりますが、これまで当部会で報告した資料のうち、平成27年度、平成28年度、令和元年度の報告資料をそれぞれ次の理由により、別添に示しているとおり修正することとしたいと考えております。別添には正誤表のようなものを付けております。
 まず、具体的な修正内容については、13行目からお示ししているとおりです。それについて御説明いたします。1 体重の選択については、該当箇所は、平成27年度の資料の表4と、令和元年度の資料の表4における全員又は年によっては全年齢層と書いてある所もありますが、その体重値と全員の各添加物の対ADI比の値になります。
 この修正理由としては、平成26年以降の調査では、食品健康影響評価に用いる平均体重の変更について、以下「食安委決定」と略させていただきますが、それに基づく平均体重、全員では55.1kg、小児では16.5kgを計算に使用することが適切でしたが、そのうち全員については、平成25年以前に調査に使用していた体重値を使用して対ADI比の計算を行っておりました。
 次は2体重値の記載についてです。こちらの該当箇所は、平成28年度の資料の表5、このうち全員の体重値になります。また、令和元年度の資料の表4のうち、小児の体重値です。こちらの修正理由としては、対ADI比の計算においては、食安委決定に基づく新しい平均体重を用いて算出しておりましたが、報告資料には平成25年度以前の調査に使用していた体重値を記載しておりました。そのための修正です。
 2ページ、なお、本修正により生じた対ADI比の変更は、最も大きいものでもパーセントとして0.03ポイントでした。そのほかの修正についても、調査対象の添加物について、安全性に特段の問題はないという結論に影響するものはありませんでした。ただし、再発防止のため、体重値と調査で使用すべき基礎情報について、調査実施関係者間で再確認するとともに、調査過程においては確認体制を強化することとしたいと考えております。御説明は以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。ただいまの御報告について御質問、御意見等ありますか。よろしいですか。本日の審議、報告は以上です。部会員の皆様からそのほか何か御発言はありますか。御発言がないようでしたら、次回の予定について事務局より説明をお願いします。
○事務局 次回の添加物部会については、日程調整をさせていただきます。それによりまして、日時、場所等、改めて御案内をさせていただきます。
○佐藤部会長 ありがとうございます。皆様、お忙しい中、添加物部会に御参集いただきありがとうございました。本日の部会についてはこれで終了いたします。

照会先

 

厚生労働省 医薬・生活衛生局 食品基準審査課
03-5253-1111(内線4274)