令和3年度 第2回職場における化学物質管理に関する意見交換会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

日時

令和4年2月18日(木) 13:30~16:30

場所

エッサム神田ホール1号館 9階 プレゼンルーム1

議題

  1. 基調講演
    「新たな化学物質管理~化学物質への理解を高め自律的な管理を基本とする仕組みへ~」
    吉見友弘 厚生労働省 労働基準局 安全衛生部 化学物質対策課
    化学物質評価室長補佐
    「化学物質管理の大転換 法令準拠型から自律的な管理へ-背景・自律的な管理の概要・対応-」
    城内 博 独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
    化学物質情報管理研究センター長
  2. 意見交換会
    コーディネーター
    堀口逸子 東京理科大学 薬学部 医療薬学教育研究支援センター
    社会連携支援部門 教授
    パネリスト
    城内 博 独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
         化学物質情報管理研究センター長
    梅田真一 日本化薬株式会社 機能化学品事業本部 機能化学品研究所
         分析グループ
    吉見友弘 厚生労働省 労働基準局 安全衛生部 化学物質対策課
         化学物質評価室長補佐

議事

○事務局 それでは、定刻となりましたので、ただいまより令和3年度第2回職場における化学物質に関するリスクコミュニケーションを開催いたします。
 新型コロナウイルス感染症の感染防止のため、対面式の大阪会場の参加を中止とし、Web参加のみとさせていただく運びとなりました。会場参加へお申し込みいただいておりました皆様におかれましてはWeb参加への変更等お手を煩わせてしまったことをおわび申し上げます。
 本日は東京より放映していることも併せて御報告させていただきます。よろしくお願いいたします。
 さて、当会は、働く方の健康障害を防止するために厚生労働省が行っている化学物質管理に当たりまして、関係する事業者の方、また事業者の団体の方との情報共有、意見交換を行うために実施しているものです。厚生労働省からの委託を受けまして、私どもテクノヒルが運営を担当しております。本日司会をさせていただきます鈴木でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、本日のスケジュールについて簡単に御説明いたします。
 まず、「新たな化学物質管理」というタイトルで、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室長補佐の吉見様に35分ほど御講演を頂きます。次に、「化学物質管理の大転換 法令準拠型から自律的な管理へ」というタイトルで、厚生労働省の検討会であります「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」で行われた検討内容につきまして、検討会の座長でいらっしゃいます、独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所化学物質情報管理研究センターの城内先生に同じく35分ほど御講演を頂きます。
以上の基調講演が終わりましたら、一旦15分間の休憩といたします。
 後半の意見交換会では、コーディネーターを東京理科大学薬学部医療薬学教育研究支援センター社会連携支援部門教授の堀口先生にお願いし、パネリストとして基調講演の城内先生、吉見室長補佐、産業界から日本化薬株式会社機能化学品事業本部機能化学品研究所分析グループの梅田様にお入りいただいて、疑問点にお答えしていただきます。
 当会の意見交換会では、あらかじめお寄せいただいた御質問についての回答のほか、ZoomのQ&A機能を利用した質疑応答を実施するようにいたします。
 なお、今開かれているZoomのウィンドウの下にありますウェビナーコントロールのうち、音声、挙手やチャット機能、メール等での質問は、本日、当会終了後ともにお受けしておりませんので、御注意くださいますようお願いいたします。
 今回使わせていただきますQ&A機能を利用した質疑応答は、1番目の基調講演スタートと同時に質問の受付を開始し、基調講演2講演の終了と同時に締め切らせていただきます。
 この質問については、どの基調講演に対する質問であるか判別できるように、厚生労働省の吉見室長補佐の基調講演「新たな化学物質管理」は1番、労働安全衛生総合研究所の城内先生の基調講演「法令準拠型から自律的な管理へ」は2番、その他の質問については3番と定めて、質問の書き始めに番号を入れて質問いただくと幸いです。それと併せて、スライドのページ数がある場合にはスライドのページ数も書いていただくと答えが明確になりますので、よろしくお願いいたします。
 事前に頂いた御質問については基調講演中に回答することがございますので、まずじっくり御視聴いただければと存じます。
 また、御質問、御意見にできる限り答える予定で進行いたしますが、時間の都合の兼ね合いでお答えできない場合もございます。
 また、後半の意見交換の際に頂戴した御質問、御意見を含め、個人情報等を除いた形で議事録及び報告書を作成し、厚生労働省へ提出させていただきますので、あらかじめ御了承ください。
 本日の全体の終了は16時30分を予定しております。よろしくお願いいたします。
 これより基調講演に入ると同時にZoomのQ&A機能を利用した質問の受付を開始いたします。多数の御質問をお寄せいただいた場合については早い時間に質問の受付を終了させていただくことがございますので、あらかじめ御了承くださいませ。
 それでは、最初の基調講演「新たな化学物質管理」を厚生労働省の吉見室長補佐にお願いいたします。
 どうぞお願いいたします。
 
基調講演 1 「新たな化学物質管理 ~化学物質への理解を高め自律的な管理を基本とする仕組みへ~」
 
○吉見化学物質評価室長補佐 ただいま御紹介いただきました、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課の吉見でございます。
 今日は、令和元年9月から約2年にわたる検討を経て昨年7月にまとめられました「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」の報告書の内容を基に、今後の職場における化学物質管理の方向性について御説明します。
 
〔パワーポイントによる説明。以下、画面ごとにスライド番号を表記〕
 
<スライド2>
 
 本日の話の順番といたしましては、初めに「労働安全衛生法令における化学物質管理の体系」、これは現在の体系、続いて「職場における化学物質管理の課題とそれを踏まえた規制の見直し」という順番で御説明させていただきます。
 
<スライド3>
 
 まず初めに「労働安全衛生法令における化学物質管理の体系」についてです。
 
<スライド4>
 
 現在、産業現場ではおよそ7万もの化学物質が使われていると言われておりますが、これについて、労働安全衛生法令の適用は大きく4つの段階に分かれております。
 
<スライド5>
 
 まず、三角形の一番上の石綿など管理使用が困難な物質に関しましては、製造・使用が禁止されております。これが8物質ありございます。
 
<スライド6>
 
 続いてその次の段ですけれども、自主管理が困難で有害性が高い物質123物質につきまして、特化則(特定化学物質障害予防規則)や有機則(有機溶剤中毒予防規則)などで個別具体的な措置義務がかかっております。措置義務の内容として、設備の性能要件とか作業環境測定、健康診断、保護具や作業主任者の選任などが柱となっております。
 
<スライド7>
 
 次に2段目と3段目にまたがる部分、674物質とありますけれども、ここについては、名称や人体に及ぼす作用、貯蔵または取扱い上の注意などを容器に表示するラベル表示、それからさらに詳しい情報を記載した文書を交付する安全データシート、いわゆるSDSの交付が義務づけられております。これらについては、表示とかSDSに基づきまして、製品の譲渡・提供時にその物質の危険有害性情報が製品と一緒に伝達されますので、製品の譲渡・提供を受けた側はその情報に基づいてリスクアセスメントを実施していただくということになっております。
 
<スライド8>
 
 ラベルやSDSの記載内容につきましては、JIS Z7252、7253に準拠した記載を行えば労働安全衛生環境法令の規定を満たすとされております。これらのJISは、国連勧告のいわゆるGHSに基づく内容となっております。
 SDSの項目は、この下にあるようにJISで16項目が定められておりますけれども、この中には製品を安全に取り扱う上で大切な情報がいろいろ入っておりますので、製品の使用前にはこれを一通り確認した上で取り扱っていただきたいと思います。
 
<スライド9>
 
 続いてGHSの絵表示についてですけれども、GHSの枠組みは化学物質が国際的に流通することを念頭に定められておりますので、化学物質の危険有害性を伝達する要素としてこのような絵表示、ピクトグラムのようなものが使われております。
 GHSの絵表示には9種類ございまして、上の段が危険性の絵表示、下の段が有害性の絵表示ということになります。9個の絵表示のうち感嘆符というものは、ほかの絵表示がつけられる有害性の中で比較的有害性の程度が低いものにつけられるものでございます。
 表で御覧いただきますと分かりますように、1つの絵表示の中にも、例えば健康有害性一つとってもいろいろな健康有害性がございますので、絵表示を見たときにはそれだけではなくてSDSもちゃんと確認して読んでいただいた上で対策を取っていただきたいということです。
 
<スライド10>
 
 厚生労働省では、化学物質のリスクアセスメントが義務になりました平成28年度から「ラベルでアクション」というキャンペーンを展開しております。まずラベルを見ていただいて、そこで化学物質の危険有害性があることを認識していただく。さらにラベルを見たらSDSを確認してリスクアセスメントを行う。労働者の方も製品に絵表示があったら危険有害性を確認して、リスクアセスメントの結果を見て取り扱っていただく。こういうことで、化学物質を取り扱う全ての方々がラベルをきっかけにしっかりとした対応を取っていただきたいということです。
 ただ、残念なことに、まだラベル表示やSDS交付を行っていないメーカーも一部にはあるのが現状です。ラベルやSDSの情報は化学物質を安全に取り扱う上で大切なよりどころとなりますので、製品を使う前にまずラベルやSDSを確認する、これを当たり前にしていただくということと、もしラベルやSDSがついていなかったら製品の供給元に確認していただきたいと思います。メーカーの方々も製品を安全に使っていただくために必要な情報は積極的に開示をお願いいたします。
 
<スライド11>
 
 続いて、「職場における化学物質管理の課題とそれを踏まえた規制の見直し」です。
 
<スライド12>
 
 職場における化学物質管理の現状ですけれども、化学物質による休業4日以上の労働災害、これは事業者から労働基準監督署に労働者死傷病報告が提出されたものをまとめたものですけれども、これが年間400件前後発生しております。表に出している件数は平成30年の件数ですけれども、416件ございます。このうち、特化則などの規制対象物質が原因であることが明らかなものが約2割、それ以外が約8割を占めております。
 災害が発生するユーザーさんの中には、下の表にありますけれども、例えば商業とか保健衛生業といったように化学物質の取扱いに比較的なじみの薄い業種もありまして、化学物質の危険有害性を十分に認識しないまま製品を使って被災しているようなケースもあるのが現状です。
表のGHS絵表示というところを見ていただければ分かりますとおり、これを取り扱うときに手袋をつけていれば、あるいは換気をしっかりしていれば防げた、そういうものも少なくないということです。
 それから、先ほどピラミッドの三角形の図でお示ししましたけれども、法令で具体的に規制されている物質というのは全体から見ればごく限定的でして、未規制物質でもGHS分類で危険有害性が認められる物質はたくさんあります。ところが、未規制物質ということで安全という思い込みで、法令で規制されていない物質の危険有害性を十分に確認せずに使うというようなことも結構あるのが現実となっております。
 
<スライド13>
 
 次に中小企業における現状です。
 企業規模が小さいほど法令の遵守が不十分な状況にありまして、労働者の安全性に関する認識についても企業規模が小さいほど低くなっているということです。
 先ほど申し上げましたように、化学物質は種類が多いですが、規制されている物質はごく限定的でございますので、実際、自分たちにはあまり化学物質は関係ないという意識になっている場合もあるのではないかと思っております。
 また、製品を使うときにそもそも何が入っているかをあまり意識せずに取り扱ってしまうということも結構あると思いますので、ラベルやSDSを見て製品の危険有害性を意識しながら使っていくことが大変重要だと考えております。
 
<スライド14>
 
 次に化学物質の管理状況についてです。
 上の段の表につきましては、特化則などの規定により作業環境測定をやってその結果を評価していただくのですけれども、その中で直ちに改善が必要な第三管理区分と評価された事業場の割合が増加傾向にあります。法令では第三管理区分と評価されたら直ちに改善して第一または第二管理区分にしていかなければいけないのですけれども、それがなかなか進んでいないという状況です。
 それから、化学物質のリスクアセスメントは平成28年6月から義務化されておりますけれども、その下のグラフにあるとおり、実施率がまだなかなか上がっていないという状況にあります。リスクアセスメントを実施しない理由として、人材がいない、あるいは方法が分からない、こういった回答が多いということで、先ほど申し上げた中小企業での遵守率の低さと併せて、化学物質管理のやり方を分かりやすい仕組みにしていくことが大きな課題だと認識しております。
 
<スライド15>
 
 こういった状況を踏まえまして、令和元年9月から「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」を立ち上げて、学識経験者と労使関係者による約2年の検討を経て、昨年7月に報告書を公表しております。
 
<スライド16>
 
 検討会の検討内容ですけれども、大きく5点あります。この後順番に御説明いたします。
 
<スライド17>
 
 まず現在の化学物質規制の仕組みについてですが、いわゆる特別則で管理されている物質が123物質あります。それから、このピラミッドの3段目の物質の中から国がリスク評価を行ってリスクが高いということで特化則に追加された物質、これが2007年以降29物質あります。こういうことで規制の強化を順次図ってはいますけれども、3段目から2段目に格上げされると措置義務が細かく法令で規定されるということで、それを避けて別の3段目あるいは4段目の物質に代替する。そのときに危険有害性をちゃんと確認して取り扱っていただければいいのですけれども、法令で個別の規定がないということで、十分に確認せずにシフトし、そこでまた災害が起こるといういたちごっこのような状況が起こっております。
 
<スライド18>
 
 このため、新しい化学物質管理の仕組みでは、国によるGHS分類で危険有害性が確認された全ての物質を順次ラベルやSDSの規制の対象にしていきたいと思っております。
 国によるGHS分類の対象物質と申し上げましたけれども、法令でラベル表示とかSDSの交付を義務づける上で、現在存在する数万物質全てに義務づけるというのは企業側の対応を考えても現実的ではありませんので、国がモデルとなるGHS分類を行って、モデルのラベル・SDSを公表している物質を対象に義務をかけるという趣旨です。
 ちなみに、国がGHS分類を行っていない物質についても、危険有害性が認められた物質は、今、労働安全衛生規則でラベル表示・SDSは努力義務となっていますので、そういった情報をお持ちの場合はできるだけ積極的に出していただきたいと思っております。
 それから、個別具体的な措置を詳細に法令で規制するという仕組みから、国が定める管理基準の達成を求めて達成のための手段は指定しないと書いておりますけれども、企業側の自由度を認める、要は結果を求めるという方式に転換するということにしております。
 ここで一つ注意していただきたいのですけれども、「自律的な管理」というのは全く自由な管理ということではなくて、あくまで国が定める基準の達成を求める、結果を求めるという仕組みですので、自律的なので規制が全く自由になるということではないということを御理解いただきたいと思います。
 一方、ばく露防止の手段については、今までみたいに一律にこういう設備を設置しなければいけないといった要件を求めるのではなくて、作業方法とか化学物質の取扱量などを踏まえてリスクの度合いに応じた措置が取れるようになるということです。
 また、後ほど詳しく説明しますけれども、しっかりとした体制を取ることを条件に保護具によるばく露防止措置も認めるということにしております。
 また、中小企業など化学物質管理に必要なノウハウが乏しい事業場向けについては、標準的な管理方法をまとめたガイドラインなども現在検討しております。
 それから、2つ目の四角でございますけれども、労働災害が多発して自律的な管理が困難な物質や作業が今後仮に出てきた場合は、これは製造の禁止とか許可といった対応を取るということも検討しております。
 また、最後の3つ目の四角でございますが、特化則などの特別規制はしばらくの間は併存させますけれども、SDSの交付率を引き上げて、化学物質管理に関する人材育成とか支援策の充実など自律的な管理に必要な環境整備を進めて、自律的な管理に対応できる環境が整った段階で特別則の適用物質も自律的な管理に一本化するということを想定しております。資料では5年後をめどにと書いてありますけれども、これは5年というのが必ず決まっているということではありませんで、5年後の時点で環境整備の状況を見てどうするかを検討・判断するということになります。
 
<スライド19>
 
 以上を図で示したのがこちらになります。
 この図では左右方向に有害性に関する情報の多い少ないを示しております。左に行くほど有害性情報が多いものということなります。
それから、この有害性に基づく措置の対象となるのは、先ほど申し上げた国によるGHS分類が行われた約2,900物質を対象として予定しております。このうちばく露管理値を設定する物質、数百物質を想定しておりますけれども、これについてはばく露濃度をその管理値以下にすることを義務づける予定です。それから、皮膚への刺激性や経皮吸収がある物質については保護手袋、保護眼鏡などの着用を求めるとしております。
 
<スライド20>
 
 続いて進め方でございますけれども、まず国によるGHS分類、これは2006年度から厚生労働省、経済産業省、環境省の3省で進めてきておりますけれども、今後も毎年50~100物質程度を分類していくということで考えております。この分類に関していろいろ文献調査で情報を集めるわけですけれども、事業者の皆様がお持ちの情報で信頼性のある情報については、そういった情報提供を国で受け付けるという仕組みも今検討しております。それから、分類されましたら、モデルラベル・SDSを順次つくって公表してまいります。
 次に、2段目の現在GHS分類済みの物質ですけれども、これは先ほど申し上げたラベル表示・SDSなどのモデルが既にありますので、順次義務づけをしていきます。既に義務づけられている物質も一部ありますので、これらを除いた約1,800物質を今年度から令和5年度にかけて3年間で順次追加していく予定です。令和6年度以降は、一番上の段にある新たにGHS分類した物質をまた順次追加していくということを予定しております。それから、ばく露濃度基準、ばく露管理値については来年度以降順次設定していくということを予定しております。
 それから、一番下、GHS未分類物質の管理につきましては、こちらも努力義務で自律的な管理をやっていただくということを予定しております。
 
<スライド21>
 
 この赤の部分、規制対象物質の追加の関係でもう少し詳しく御説明します。
 
<スライド22>
 
 先ほど1,800物質を約3年間で追加すると申し上げましたけれども、これについては有害性の高いものから順次ラベル表示・SDSの義務対象としていきます。本年度については、左下の表で赤字になっております急性毒性、生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒性で区分1という最も有害性の高い区分のもの合わせて234物質をラベル・SDSの義務対象に追加いたします。これについては、先般パブリックコメントを行いましたけれども、審議会を経て来週中には公布される予定です。そして令和6年4月1日に施行を予定しております。その次の令和4年度の追加は、今言った4つ以外の有害性クラスで区分1となったもの、令和5年度については区分2以下の区分がついたものを順次対象にしていく予定です。
 こういう順番に追加してまいりますけれども、令和5年度までの指定予定の物質は既にGHS分類済みで、該当の物質は分かっておりますので、こういった物質の危険有害性情報がサプライチェーンを通じて確実に伝達されるように、施行日よりできるだけ早い段階からSDSをつくっていただきたいというお願いをしているところです。
 
<スライド23>
 
 具体的には、労働者健康安全機構の化学物質情報管理研究センターのホームページで対象の物質をCAS登録番号つきで公開しております。ですから、これを御参考にしていただきたいと思います。
 
<スライド24>
 
 それから、こういう追加予定の物質をSDSに記載する場合の記載方法の例、適用法令の欄にどう書いたらいいかというものも本年1月に通知を出しておりますので、こちらも参考にしていただいて、できるだけ早い段階からSDSの更新をお願いいたします。
 
<スライド25>
 
 次に化学物質の管理状況のモニタリングに関してです。
 自律的な管理の場合には、例えば設備対策であったり作業環境測定などでばく露状況をチェックしたりということを一律に義務づけるということはしませんので、リスクアセスメントの結果を踏まえて各事業場で必要な措置を講じていただくことになります。そういった結果については衛生委員会などで調査審議をしていただいて、労使の間で情報を共有していただくとともに、後から検証できるように記録を作成して保存していただくことになります。
 それから、下の部分ですけれども、労働災害を発生させた事業場で管理面などで専門家の指導・助言が必要だということで労働基準監督署が指示した場合には専門家による確認・指導を行うことを義務づけるという予定です。専門家の要件を例としてこういう形で書いておりますけれども、この要件についても今後お示しする予定です。
 それから、このように管理がきちんと行われていないところには監督署あるいは専門家のチェックが入るということになります。
 
<スライド26>
 
 次に化学物質の管理体制についてですけれども、新たな仕組みの中では、現在はリスクアセスメントの指針で指名が望ましいとされております化学物質管理者、この化学物質管理者の選任を化学物質を取り扱う全ての業種・規模の事業場に義務づけるとしております。職務としてはこちらに6つポツで書いております。リスクアセスメントをやって、措置を決めて、労働者教育などをやっていただく、こういったことを管理するということですが、資格要件としましては、GHS分類済み物質を製造する事業者、こちらはリスクの高いものを扱うことになりますので、専門的な講習を定めて、その講習の修了者、大体2日間ほどの講習を想定しておりますけれども、そちらの修了者から選任するということにしております。現在、リスクアセスメントの指針で勧奨されている化学物質管理者については、労働基準協会とかいろいろなところで1日程度の研修をやっていると思うのですけれども、それよりカリキュラムが増えますので、そのままなれるということではなくて、新たに講習を受けていただく必要はあるのですけれども、現在の知識も引き続き役立てて化学物質管理者として職務に就いていただきたいと思います。それから、それ以外の事業者については選任要件は法令で定めませんけれども、基礎的な講習の受講を推奨ということになっております。また、こういう職務を遂行するに当たって参考となる情報については、順次、準備できましたら提供していきたいと考えております。また、非常に職務が多くて1人では難しいという御意見もよく頂くのですけれども、事業場の規模や内容に応じて適切な人数を選任していただければと思います。
 それから、ばく露防止対策として保護具を使うという選択をした場合には、化学物質管理者とは別に保護具着用管理責任者も選任していただくことになります。この方には保護具の選択とか管理を担っていただくことになりますが、この理由といたしましては、保護具による防護は設備対策に比べて初期費用は安いのですけれども、しっかり管理して使っていかないとばく露防止の効果が見込めませんので、しっかり管理していただくために管理責任者を置くということです。
 次に職長とありますけれども、こちらは自律的な管理において特別則における作業主任者の職務を担うこととなる職長さんです。
 それから、化学物質を取り扱う作業者さんに関しても、化学物質管理を適切に行うために必要な知識を身につけるための教育の実施を求めるとしております。
 また、右の欄外にありますけれども、中小企業など自社で人材の確保が難しい場合には外部専門家の活用ができるよう、確保・育成にも努めていくとしております。
 
<スライド27>
 
 次に、情報伝達の強化について、SDSの記載項目についても見直し・追加を一部行う予定です。
 まず「成分及び含有量」ですけれども、GHS及びJISのルールに基づいた形に合わせていくということで、今、安衛法では一律の10%刻みしか認めていないのですが、今後は重量%の記載としつつ合理的な範囲での幅の記載は認めるといった形での変更を予定しています。こちらは、省令の上ではどうしても重量%の記載ということになるのですけれども、実際の運用の上でロットにより幅があるものもありますので、そういったものは幅による記載も認める形での運用を考えております。
 次に「人体に及ぼす作用」ですけれども、ここについては重要な情報になりますので、5年以内に情報の更新状況を確認して、更新があれば内容を変更してSDSを再交付するということで変更を予定しております。
 次に「貯蔵又は取扱い上の注意」のところで、この中に保護具の種類の記載の義務化を予定しております。ただ単に適切な保護具を使用するというような書き方ではなくて、ユーザー側で想定している推奨用途で使うときにどういった保護具を使ったらいいかということを書いていただくということです。
 それから「推奨用途と使用上の制限」、これについてもメーカー側で想定しているものを記載していただくということにしております。
 次に、下はSDSの交付方法の拡大についてです。SDSは文書交付が原則となっているのですが、現在はインターネット等による情報のやり取りが主流になっていますので、容器に二次元コードを印字したり、あるいはホームページ上で閲覧したり、そういった形でのSDSの交付も広く認めるということを予定しております。
 
<スライド28>
 
 次に、情報伝達の強化の中で、事業場内で物質を小分けして扱うときについて書いております。これは、事業場内で小分けして一時的に保管する場合に内容物とか危険有害性情報などが何らかの形で伝達されるようにするということです。図では「表示」と書いていまして、ラベルをそのまま貼るような形に見えますけれども、ラベルというのは一つの方法で、必ずしもラベルでなければいけないということではなくて、必要な情報が伝達できるようにしていただきたいということです。
 それから、下の設備改修の外注時の危険有害性に関する情報伝達の義務拡大でございますが、これは、現在、化学設備とか特定化学設備に限って設備改修を外注するときに危険有害性情報を伝達することになっているのを、SDSの対象物質全てに広げるということです。
 
<スライド29>
 
 続いて、特化則等に基づく措置の柔軟化について御説明します。
 まず特殊健診ですけれども、今は6か月以内ごとに1回とされております特殊健診について、基準と書いておりますような状況、作業環境測定結果が管理区分1が3回連続しているとか、直近3回の健康診断で所見がないとか、こういった条件を満たす場合には次の健診を半年後ではなくて1年後にしてもよいという緩和も予定しています。これが1点目です。
 それから、2点目は粉じん作業に対する発散抑制措置の柔軟化です。こちらはまだ現在制度改正を検討中なのですが、作業環境測定結果が第1管理区分であるなど良好な作業環境を確保できている場合には局所排気装置などの性能要件の一部緩和を認めていますけれども、同じような扱いを粉じんにも認めるということで提言されております。
 
<スライド30>
 
 一方、こちらは対策の強化のほうです。
 作業環境測定結果が第3管理区分が続いたとき、なかなか改善できないというときは、新たな仕組みとして、本当に改善できないのかどうか専門家に意見を聞いてくださいという形にいたします。それで改善できればいいのですけれども、なお改善できないときには保護具による防護を徹底してやっていただくというような仕組みを考えております。
 
<スライド31>
 
 最後に、がん等の遅発性疾病の把握とデータの管理とあります。
 これについては、がんなどの遅発性疾病は発症するまでに時間がかかりますので、業務との関連がなかなか分かりづらいということがあります。その把握のために、同一の事業場で複数の労働者が同種のがんに罹患して、外部機関の医師とか産業医がそれを把握したような場合、これは事業者に都道府県労働局への報告を義務づけるということを予定しております。こういったことで把握していくことで遅発性疾病の原因物質を確実に抑えていくことにつなげていきたいということです。
 それから、下のほうは、これはまだ検討事項なのですけれども、特化物の特殊健診など30年保存が義務づけられているものがありますけれども、これは転職されたり勤めていた会社が倒産したりした場合データが散逸してしまう可能性がありますので、こういったデータについては第三者機関、公的な機関で保存できないかということで、今後課題として厚生労働省で対応を考えていくということになります。
 
<スライド32>
 
 すみません、時間が押してしまっているのですけれども、最後に規制の見直しのスケジュールについて御説明します。
 今言ったような内容の制度改正を順次していくわけですけれども、申し上げたとおり、検討会で約2年間にわたって検討してまいりまして、これらの内容は厚生労働省の審議会に報告しております。
 1つ目の制度改正として、下の*1のところで、ラベル・SDS対象物質の追加、職長教育の対象業種の拡大、それから設備改修の外部委託時の危険有害性に関する情報伝達の拡大、この3点についてはパブリックコメントを経て1月31日に審議会に諮問し、答申を頂きました。2月下旬と書いてありますけれども、来週中の公布を予定しております。
 続いてそれ以外の改正の大部分について、資料では時期未定となっておりますけれども、昨日2月17日からパブリックコメントを開始いたしました。3月18日までパブリックコメントを行う予定です。その後、審議会の諮問を経て公布、今のところの予定ですと5月上旬頃を予定しております。
さらに、一部化学物質管理者の研修カリキュラムなどは告示で定める予定でして、これは3月以降にパブリックコメントの実施を予定しております。
 施行の期日は、一部規制緩和に関する内容は公布日施行のものがありますけれども、ほとんどは令和5年4月または令和6年4月の施行を予定しております。特に準備に時間がかかるSDSの項目追加とか化学物質管理者の選任などは令和6年4月を予定しております。
 
<スライド33>
 
 最後、今の報告書に基づく規制の見直しの内容については化学物質情報管理研究センターのホームページで動画などで御紹介していますので、よろしければ御覧いただきたいと思います。
 すみません、時間をオーバーしてしまいましたけれども、私からの説明は終わります。
 ありがとうございました。

○事務局 吉見室長補佐、どうも御講演ありがとうございました。
 先ほど出ました昨日のパブリックコメントなのですが、2月17日に労働安全衛生規則等の一部改正ということで、ある場所は、もしあれでしたら、テクノヒルのホームページにも出ておりますので、そこからトレースしてください。よろしくお願いします。
 Q&A機能を使っていただいて、今、32の方から御質問を頂いております。第1回の基調講演のスタートでスタートしております。次の城内先生の講演後に締め切らせていただきますので、ぜひ追加で御質問を頂ければと思っています。
 それでは、労働安全衛生総合研究所の城内先生に「法令準拠型から自律的な管理へ」ということで御講演いただきます。
 城内先生、ひとつよろしくお願い申し上げます。
 
基調講演 2 「化学物質管理の大転換 法令準拠型から自律的な管理へ -背景・自律的な管理の概要・対応-」
 
○城内化学物質情報管理研究センター長 皆さん、こんにちは。城内と申します。よろしくお願いいたします。
 
〔パワーポイントによる説明。以下、画面ごとにスライド番号を表記〕
 
<スライド1>
 
 私の演題は「化学物質管理の大転換 法令準拠型から自律的な管理へ」ということなのですが、私は特に背景について述べたいと思います。と申しますのは、法令改正上の重要な点については既に吉見さんから御説明がありましたけれども、これだけ大きな改正になりますと、その背景とか何でそうなるかということが非常に重要だと私は思っていますので、特に背景について述べさせていただきます。
 
<スライド2>
 
 スライドの内容ですけれども、「法令準拠型」から「自律的な管理」への背景、これが大部分です。自律的な管理、事業者さん、業界団体さん等はどういうことをすればいいかというのをまとめました。
 
<スライド3>
 
 早速「法令準拠型」から「自律的な管理」への背景ということでお話をさせていただきます。
 
<スライド4>
 
 「法令準拠型」から「自律的な管理」への転換というのは必然だろうと私は思っています。それは、先ほど吉見さんからお話もありましたが、労働災害に関わる状況、それから世界的な化学物質管理に関する潮流等々からそのように考えています。化学物質管理の国際的な潮流ということで言うと、「ハザード管理からリスク管理へ」、それから「法令準拠型から自律的な管理へ」という流れがありました。
 
<スライド5>
 
 まず「ハザード管理からリスク管理へ」ということです。
 これは大分古い話になりますが、1958年、米国で食品衛生に関するデラニー条項というものがありました。これは、「いかなる量であっても発がん物質を食品に使用してはならない」、つまり発がん物質には閾値がないので発がん性があれば禁止するというものでした。しかし、自然食品も含めて発がん性物質というのはあるわけですから、全て禁止するのはおかしいのではないかというような議論がありました。
 1977年になりまして、米国食品医薬品庁が新しい概念を提示します。「無視し得る発がんリスクレベル」というものを出しました。これは、生涯リスクが100万人に1人だけ増加、つまり、がんを患って亡くなる人が100万人に数人ぐらいの増加であれば社会として容認できるのではないかという考え方です。
 その後、1983年、米国科学アカデミーがリスクアセスメントの枠組みを提示しました。これが現在も続いているリスクアセスメントの枠組みになります。つまり、危険性・有害性をまず特定する、あと量-反応評価を行う、ばく露評価を行う、そして総合的にリスクを判定するというプロセスです。
 1990年になりますと、米国連邦清浄大気法が改正されまして、「安全とはゼロリスクを意味するものではなく、リスクアセスメントに基づいて受容し得るレベルが検討されなければならない」というようになりました。
 1996年にはデラニー条項が廃止されています。
 これが「ハザード管理からリスク管理へ」という一つの流れだったと思っています。
 
<スライド6>
 
 この表にはILO条約及び勧告等から見る化学物質管理の変遷としてまとめたものです。一つ一つの勧告、条約は説明しませんが、これを大きくまとめますと―
 
<スライド7>
 
 このような図になると思っています。つまり、化学物質管理の変遷としては、20世紀初頭には比較的に急性で重篤な中毒作用の対策や補償。20世紀中期、これは日本で言えば高度経済成長期に当たると思いますが、がんなどの慢性的な疾病が多く問題になりました。また公害問題もありました。20世紀末になりますと予防的な対策が主になります。21世紀は自律的な取組が主流になっていると言えると思います。もちろん世界中というわけではないですが、先進国ではこのような流れで来ていると思っています。
 
<スライド8>
 
 次に、もう一つの流れ、「法令準拠型から自律的な管理」ということですが、自律的な管理というのは自主的な管理ということもあります。これは下段を見ていただきたいのですが、1974年、英国で「職場における保健安全法」というものが制定・改正されました。御存じの方も多いと思いますが、ローベンスレポートというものが基になっています。これはどういうものかといいますと、法律は原則のみとして、規則、指針、承認実施準則などで補完する体系、事業者は合理的に実施可能な限りにおいて対策を講じる、訴訟等が起きたときには事業者は十分な防止対策を講じていたことを証明できなければ罰則が適用されるというもので、これがいわゆる自律的な管理の原則と言われているものです。
 
<スライド9>
 
 現在ではもう一つ大きな化学物質管理の流れがあります。それは、化学物質管理は国際的な枠組みで実行され、各国はそれへの対応が求められているということです。これは、御存じのように、地球温暖化対策、オゾン層破壊物質対策、あとGHS導入も入ると思います。一番最近ではSDGsの実行等々があります。
 
<スライド10>
 
 さて、化学物質による事故・健康障害事例ですが―
 
<スライド11>
 
 これは先ほど吉見さんからお話がありましたのであまり詳細には説明しませんけれども、世界には1億8,000万種以上の物質が存在する。これはCASナンバーで数えるとこれぐらいになるということで、現在、1億9,000万種ぐらいになっていると思います。
 10億人の労働者が危険・有害な化学物質にばく露されている。これは2019年にILOが発表している数字です。
 200万人(スライドでは100万人となっていて間違い)が化学物質により死亡している。これは同じく2019年にWHOが発表しています。この200万人が化学物質により死亡しているというのは労働災害のみではありませんので、労働災害に限ると多分3分の1ぐらいになるのではないかと思っています。
 数万の化学品が工業的に使用されているにもかかわらず、行政的に管理が行われているものは数千物質です。
 日本では毎年400~500人の休業4日以上の死傷病が発生しています。原因物質の8割は特別規則の対象外である。これは先ほど吉見さんから御報告があったものです。
 あと、消費者製品による危害も年間1万件以上の報告があります。
 
<スライド12>
 
 これは休業4日以上の労働災害のデータですが、平成15年~平成30年をまとめたものです。紫色のところが有害物です。緑が可燃性のガス、赤が引火性のもの、青いところが爆発性のもので、これらをトータルすると休業4日以上が400~500人ぐらいということになります。
 
<スライド13>
 
 化学物質による健康障害、これは特別規則外が8割で、なおかつ皮膚障害等が多いというのは先ほど報告があったとおりです。
 
<スライド14>
 
 こちらは消費者製品による危害ということで、消費者白書2019年から持ってきたものですが、2014年~2018年のグラフが示されていまして、一番下の青いところが皮膚障害です。これがやはり多いかと思います。
 
<スライド15>
 
 化学物質による健康障害事例ということで、これは、長いこと労働衛生に携わってきて、また自分自身が危険有害性情報の情報伝達ということに1/4世紀ぐらい関わっていますので、そういう観点から見た解析ですが、有害性に関する情報不足が化学物質による健康障害の主なものではないかと思っています。
 まず1番目の「情報がなかった」。黄燐による顎骨壊死、これは、マッチが北欧で発明されて日本にも入ってきます。明治時代、黄燐マッチというものをどんどんつくって、輸出もしていたようです。黄燐マッチそのものには有害性はないのですが、それをつくる工場で労働者に顎骨壊死が発生しました。ILOでも、先ほどの一覧表を見ていただくと分かるのですが、黄燐マッチ製造禁止という勧告が出されます。日本では大分長いこと輸出をしていたという記録もあるようです。そういう黄燐の顎骨壊死、これは当然有害性の情報がなかったということです。有名なベンゼンゴムのりによる再生不良性貧血というのもありました。日本ではたしか17例ぐらい認定されていると思いますが、これもベンゼンゴムのりの製造禁止に結びつきました。私が小学生ぐらいの頃、自転車のパンクの修理で使っていた琥珀色の接着剤はベンゼンゴムのりだったと思いますが、とてもいい匂いがして、琥珀色でいい感じのものだったのですけれども、それは危なかったわけです。その後、代替品としてノルマルヘキサンが出てきましたが、このノルマルヘキサンが今度は末梢神経障害を起こしました。このノルマルヘキサンは、今でも接着剤の中に数%入っているものがあります。これらは代表的に情報がなかった例ということになると思います。
 次に「情報が知らされなかった」。これは10年ぐらい、もうちょっと前ですか、印刷工の胆管がんが問題になりました。ノロウイルス対策製品による皮膚障害というものもありました。今は呼び方が違いますが、危険ドラッグもありました。これらは情報が全くなかったわけではないけれども、情報が知らされなかったということで起きた事故だと思っています。
 あと、「情報を理解しなかった」というものもあります。これは代表的には毛染め剤による皮膚障害などがあるかと思っています。毛染め剤は強力な薬品ですので、当然皮膚炎等も起きるわけですが、注意書きも箱には書いてあります。しかし、読まない人もたくさんいるということで、皮膚障害が起きています。
 さらに「不適正管理・不安全行動によるもの」。これは最近でもいろいろ事故があります。
 
<スライド16>
 
 その危険有害性に関する情報伝達、これは管理する上では必要不可欠なわけですけれども、それがなかなかうまくいっていなかったという現実があります。
 人類は、多分狩猟採集生活時代から何が危険かというのは経験として、それから時代が進むに従って知識としていろいろ蓄積があって、それを文書で伝える等で危険を回避してきたわけですけれども、化学物質は残念ながら視覚、嗅覚、触覚、聴覚があまり役に立ちません。もちろん役に立つものもありますが、役に立たないもののほうが多い。では危険有害性をどう伝えるかということになるわけですが、これはやはり危険性・有害性を見える化する。見える化するということは、つまり表示をしなければいけないことになります。実際、標識、色分け、ラベル、SDSなどを開発してきました。
 
<スライド17>
 
 危険性・有害性に関する情報がなければ予防措置はできない。労働者との情報共有が最も大切だろうと思っているわけです。これは自律的な管理のための前提です。それは消費者であろうが労働者であろうが、取り扱う人が危険性・有害性を知らなければいけないということです。
 
<スライド18>
 
 ではその危険性・有害性を伝えるにはどういうシステムがあるかということですけれども―
 
<スライド19>
 
 欧州では化学品の危険性・有害性を調査して、その結果をラベルに記載しなければ市場に出せないという理事会指令が1970年代には既にありました。これはリスクフレーズということで御存じの方も多いと思います。
 一方、米国では1983年に「危険有害性周知基準」というものがつくられました。労働者には危険有害性を伝えなければならないと決められていました。
 欧米では危険有害性を伝えるということは法律で規制しなければ事業者はやらないのだというのが常識といいますか、そういう考えがあったようです。
 一方、世界統一的なシステムはありませんでした。ただし、国連危険物輸送勧告は1950年代には既に制定されています。これは、御存じのように、船、飛行機、車で危険物を安全に輸送するシステムです。日本ではこの国連危険物輸送勧告は航空と船舶の輸送の法令には導入されています。
 こういう状況の中で、国連危険物輸送勧告は、急性毒性もありますが、主には危険性に関してでしたので、有害性については特に世界統一的なシステムがありませんでした。それで2003年に国際連合からGHSの文書が発表されるということになります。
 
<スライド20>
 
 日本の制度で欠けていたもの、それは化学物質の危険性・有害性に関する情報伝達だと大胆に書きましたが、欧米では法令で規制されています。その根本は、事業者の「知らせる義務」、労働者・消費者の「知る権利」ですが、日本ではこの2つが条文化されていなかったわけです。
 さらに、GHS文書が発行されて以降、米国では労働者の「理解する権利」がうたわれています。この理解する権利というのは非常に重要で、行政あるいは事業者は労働者に理解させなければいけない、つまりそういう教育しなければいけないということになります。
 
<スライド21>
 
 これまでの日本の化学物質管理に関する法令はかなり特徴的です。それは、どこの国もそうだと思いますが、災害や疾病の事後対策として策定されてきました。4則と言われている特別則は特にそうですが、物質や作業列挙によるリスク管理の制度です。そして危険性・有害性の情報伝達に特化した法律はできなかった。
 唯一、労働安全衛生法57条だけが危険性・有害性を包括的に分かりやすく伝えることを規定していました。長年GHSに関わってきましたがが、この労働安全衛生法第57条があるということは非常にラッキーでした。というのは、例えば毒物劇物取締法ですと医薬用外毒物、医薬用外劇物と書くことになっています。危険性・有害性を分かりやすく伝えるということとはちょっと意味が違います。消防法もそうですね。ところが、この57条だけが、危険性・有害性を包括的に分かりやすく、誰でも分かる言葉で書きなさいと規定していたわけです。包括的というのは少し言い過ぎですが。というのは、労働安全衛生法では環境有害性は除いていますので、実は健康有害性と危険性ということになります。
 一方、労働安全衛生法57条はありましたが、物質数が限られていました。御存じのように、ラベルは100前後、SDSは57条の2で640物質だけ規定されていました。そういうことで、条文はあったけれども十分には機能していなかったと言えます。この640と100の違いが、いろいろな化学物質の会議で危険性・有害性の情報伝達が問われると必ず、いや日本では情報伝達(SDS)はうまくいっているという議論に帰着していたのです。ですが、先ほどから申し上げていますけれども、危険有害性の情報を共有するべきなのは労働者あるいは消費者なはずです。SDSは誰も読まないという調査結果があるにもかかわらず、SDSで情報伝達がうまくいっていますという結論で日本はずっと来ています。このあたりが多分日本の情報伝達に関する一番の問題だったのだろうと思っています。
 
<スライド22>
 
 さて、そのGHSですが、適用範囲、物理的危険性、健康有害性、環境有害性は御存じのとおりですね。
 あと、皆さん大体御存じだと思いますが、時々誤解される方がいらっしゃるので赤字で書きました。医薬品、食品添加物、化粧品、食品中の残留農薬等はラベルの対象物質から除くとなっていますが、これは工場などでの生産ラインは除かれませんので、注意していただきたいと思います。
 
<スライド23>
 
 さて、労働安全衛生法・労働安全衛生規則の改正ですが、2006年に危険有害物質の情報伝達の義務化が改正されました。これは57条にJIS-GHSを適用したということです。GHSそのものはかなり分厚い文書ですので、これを法律にそのまま入れることは困難だということで、まずJISにしました。JISをつくって、法がJISを参照するという形にしました。
 もう一つ、2006年に重要な法令改正があります。これは法の28条の2にリスクアセスメントの努力義務化というものができます。
 2006年にGHSが法の57条に入ったわけですが、これは物質数が限られていました。GHSは原則的に危険性・有害性があるものは全て対象になりますので、GHSの導入とはいっても日本のやり方は非常識だったわけです。それで各国からいろいろ質問等も来ました。そのあたりは行政も認識していましたので、2012年に危険有害な全物質を情報伝達の努力義務化しようということで、法ではなくて規則、24条の14、15でそれぞれラベルとSDSの交付を努力義務化したということになります。これで日本でも危険有害な全物質について情報伝達をしなさいということになりました。
 その後、2016年にはリスクアセスメントが、28条の2は今でも努力義務なわけですが、これを57条の3に持ってきてリスクアセスメントも義務化したというのが一連の流れになります。
 
<スライド24>
 
 それをまとめたのがこの図になります。これは似たような図が先ほど吉見さんからも示されました。この左側と右側を見比べていただくと分かりますが、リスクアセスメント、ラベル表示、SDS交付が同じ物質数で義務化されるように改正されたということです。なので、これからここに追加される物質は全部リスクアセスメントとラベル表示とSDSが同時に義務化されていくということになりました。それが平成28年です。
 
<スライド25>
 
 一般消費者の生活の用に供される製品等は除かれるということで、これは皆さん御存じかと思います。表示、文書交付対象とならないものです。
 
<スライド26>
 
 これは先ほども話がありましたが、ラベル・SDS及びリスクアセスメント対象物質の推移です。過去においては大体100物質、640物質に分かれていたものが、2021年現在はその数字が全部そろっていて、今後も同じ数の化学物質で表示、SDS、リスクアセスメント同時に動いていきますという表です。
 
<スライド27>
 
 これは先ほど示されたとおりです。
 
<スライド28>
 
 GHS導入(情報共有)により労働安全衛生法(化学物質管理)が進化したと書きました。これはつまり、自律的な管理の前提となるのは危険性・有害性に関する情報の共有です。これがなければ事業者は多分管理の優先順位もつけられないということになります。ここが一番大事だろうということで私のスライドでは強調しているわけですが、実は頂いた質問の中で、何故情報共有が必要なのだというような御質問も頂きました。それは今までの説明の中で理解していただけたかなと思います。
 法令準拠型から自律的な管理へということでこれから動いていくわけですが、現時点で問題がないわけではありません。それは、義務と努力義務が混在しているということもありますし、50年間親しんできた労働安全衛生法令準拠型から自律的な管理になりますと言われても、一体何がどう変わるのか、多分簡単には御理解いただけないかもしれないと思っています。それは今後行政も我々もかなりの努力をしなければいけないだろうと思います。その中で特に小規模事業場への支援が今までは不十分だったので、これから頑張りたいと思います。
 
<スライド29>
 
 自律的な管理は事業者が対応しなければいけないわけですが、どちらかというと法令準拠型は受け身だと思います。受け身ではなくて、自律的というか前向きに取り組んでいただきたいと思っています。それは自らを守るためでもあるし、もちろん労働者の皆さんが健康でいるためにも必要だと思っています。化学物質による災害に関する近年の判例では、国内法令を遵守していたかどうか以上に事業者がやるべきことをやっていたかどうかが問われています。例えば、1990年代後半ですか、アスベスト訴訟がありました。あのときは、法令も不備だったということは言われていますが、アスベストがどれだけ危険かということはもう世界中で知られていたのに、事業者がそれをちゃんと労働者に伝えたかとか措置をしたかということも問われています。その後、最近のアスベスト訴訟に関してもそうですし、別の化学物質に関する訴訟でもそうですが、やはり世界的にどうだったか、知識のレベルはどうだったか、対策のレベルはどうだったかということが問われています。つまり自律的な管理というのは事業者が自らを守るためにも必要なのだろうと私は思っています。
 
<スライド30>
 
 では業界の皆さん、事業者は何をすればいいかということで、いろいろ書きましたが、一番言いたいのは赤字のところです。業種・作業別リスクアセスメント・マニュアルの作成。多分、従来ですと行政がガイドラインを出して、それをモデルにしていろいろリスクアセスメントのマニュアル等も開発していたと思うのですが、特に今回は業界が音頭を取って業種・作業別リスクアセスメント・マニュアルを作成していただきたいと思っています。それはつまり、事業者さん、業界が内情をよく分かっているからです。つまり、人がつくったものに従うのではなくて、自分たちでつくって自分たちで管理するという立場が非常に重要になるだろうと思います。
 
<スライド31>
 
 では各事業者さんはどうするか。そういうマニュアルができたときに、それは当然参照すればいいわけですけれども、ここでも赤字で書きましたように、労働者が参画する。これはあり方検討会報告書の中でも明確にうたっています。つまり、リスクアセスメントに労働者を参画させなさいということです。つまり、働いている人が危険有害性を知るとどう扱えばいいかというのも一緒に考える、そこで初めてリスクマネジメントがうまくいくというところに結びつくわけです。危険有害性が分からない、何を扱っているか分からないけれども事業者がちゃんと管理してくれるのだろうでは多分もうやっていけなくなると思います。つまりリスクアセスメントもしっかり労働者が参加してリスクマネジメントしていくということが非常に重要です。
 
<スライド32>
 
 時間になりました。
 
<スライド33>
 
 自律的な管理で何が変わるかということですけれども、今までお話をしてきました。
 リスクアセスメントに労働者が参画するということ。
 それから、特別規則の見直しによる資源の適正配分。これは、今までは例えば123物質に偏っていた資源を事業者が優先順位をつけて適正に配分するということも大きいだろうと私は思っています。
 そのほかにもいろいろ書きましたが、時間も迫っていますので以上にしたいと思います。
 
<スライド34>
 
 法令準拠型と自律的な管理の比較ということで一覧も簡単につくっておきました。後で御覧いただければと思います。
 
<スライド36>
 
 以上で私の発表を終わります。ありがとうございました。

○事務局 城内先生、どうもありがとうございました。
 それでは、ここで15分の休憩時間を取らせていただきたいと思っております。Q&A機能による御質問を大変たくさん頂きまして、ありがとうございます。御礼申し上げます。ここで御質問の受付を締め切らせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、後半の意見交換会は今から15分後の15時に再開させていただきたいと思いますので、しばらくお休みくださいませ。よろしくお願いいたします。

午後2時46分 休憩
午後3時00分 再開

○事務局 それでは、お時間となりましたので、後半の意見交換会を始めさせていただきます。
 コーディネーターは、先ほど御紹介いたしました東京理科大学教授の堀口先生にお願いしております。また、パネリストに、基調講演を行っていただきました労働安全衛生総合研究所の城内先生、厚生労働省の吉見室長補佐、日本化薬株式会社の梅田様、以上4名に御出席を頂き、あらかじめ会場から頂きました御質問について先生方から御回答を頂きたいと思います。
 それでは、堀口先生、よろしくお願いいたします。
○堀口教授 御紹介どうもありがとうございました。
 皆さん、事前質問を含めたくさんの御質問、それから御意見も頂いておりますが、どうもありがとうございます。
 時間ももったいないので始めさせていただきますが、今日は既に50問を超える御質問を頂いておりますし、事前質問もそれ相応の数頂いておりますので、全ての御質問に御回答することはこの時間内では困難かと思われます。その分は御了承いただければと思います。
 それでは、始めさせていただきます。
 プレゼンテーションしていただいた順番にいきたいと思います。
 最初に御講演いただきました厚生労働省の資料に関しまして進めていきたいと思います。
 また、御意見も頂いているのですけれども、皆さんの質問に対する回答から理解を深めていただくことを重点的に、質問を重点的にお話しして進めていきたいと思います。
 それでは、スライドの18枚目を御覧ください。
 「自律管理の件ですがということで、粉体、粉じん、ナノ材料といった形状ごとにリスクが変動する対象に対して、既知の有害性が分からないときの暫定措置は、日本産業衛生学会の勧告許容濃度の中から第二種粉じんを許容限界値として作業現場で採用することを国として推奨していただけますでしょうか、あるいはSDSに記載を推奨することなど、国からのサポートは期待できますでしょうか。」という御質問です。
○吉見化学物質評価室長補佐 確かにこういったものについては形状ごとにリスクが異なるということで、なかなか評価が難しいと思います。残念ながら、分からないものについて根拠を持たずに国として示すというのはなかなか難しい面がありますので、現時点ではある情報の範囲内でリスクアセスメントをやって取り扱っていただくということになろうかと思います。また情報が集まってきて、許容限界値といいますか、基準となるようなものが示せるようなことがありましたら、国のほうでもそういう情報を出していきたいと思います。
○堀口教授 ありがとうございます。
 それから、「管理基準は現状の作業環境測定でよろしいでしょうか。」という御質問が来ています。
○吉見化学物質評価室長補佐 先ほどの18枚目ですね。管理基準なのですけれども、ここで言っているのは、今後自律的な管理の中でばく露管理値というものを示していく予定にしております。現状特化則などの対象の物質について定められている管理濃度と制度上は異なるのですけれども、この値以下にしてくださいという意味では似たような形になります。今後、具体的に対象物質と濃度を来年度以降順次設定していく予定です。
○堀口教授 ありがとうございます。
 それから、本日頂いた御質問の中に、「日本国内向けSDSの有害性分類は国によるGHS分類、NITEで作成すべきでしょうか。」、「REACH分類」―いわゆるEUのやつですね―「でのSDS作成でもよろしいでしょうか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 有害性の情報は、海外で得られているものがあればそれも参考に使っていただければと思います。ただ、項目などは国内法令上定められているものがございまして、海外のものがそのまま使えるとは限りませんので、国内法令に従って項目とか内容を書いていただきたいと思います。
○日本化薬/梅田氏 国によるGHS分類は厚生労働省の御説明ではあくまでも参考という形であったと思うのですけれども、EUの分類とか国内の分類を参考にして、基本的には個社で判断するというスタンスだと思いますけれども、それでよろしいですか。
○吉見化学物質評価室長補佐 はい、そのとおりになります。国でGHS分類を行って、国が行った分類としてNITEのホームページで公開はしていますけれども、これはあくまでモデルといいますか、一つの参考となる例ですので、EUの情報とか、あるいは個々の会社でお持ちの情報などでこれと異なる分類にすることが駄目とか、そういうものではありません。
○堀口教授 それから、「同じスライド18で、吸入する濃度を定めるとありますが、作業環境測定でモニタリングしている雰囲気中の濃度との関係はどのようになるのでしょうか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 特化則や有機則など、個別に法令で作業環境測定が義務づけられている物質は引き続き当面は作業環境測定に従ってやっていただく。自律的な管理の中での測定というのもあると思うのですけれども、作業環境測定の対象の物質については、そちらをやっていただければこちらの測定も兼ねられると考えています。
○堀口教授 それでは、先に進みます。厚生労働省資料の19ページになります。
 「ばく露濃度をばく露管理値以下にする義務について、この確認を行うのに実測値を測定して確認することが望ましいと考えますが、この測定と安衛法第65条の作業環境測定との関係はどのようになりますか、この測定を行うのに作業環境測定士などの資格は必要になりますか、ばく露管理値と管理濃度は両方が存在することになりますか。」という御質問です。
○吉見化学物質評価室長補佐 当面、少なくとも5年間は特化則や有機則といった特別則と新たな自律的な管理が併存することになります。ですから、安衛法65条の作業環境測定と19ページで出てくる測定も制度としては併存することになります。
 測定の方法なのですけれども、作業環境測定の形でやっていただくという場合もありますし、物質とか取扱量によってはもう少し簡易な測定法ということもあると思いますので、作業環境測定士でなければできないところとそれ以外でもできるところが出てくると思いますけれども、どういった場合にどういう測定をやってどういう評価をするかというのは今後ガイドラインをお示しする予定です。
○堀口教授 引き続き19枚目です。「国がばく露管理値を設定した物質についてばく露管理値以下とする件ですが、これは必ず測定して確認になりますか、それともクリエイト・シンプルのようなもので使用条件などを入力した結果がばく露管理値以下であればオーケーと判断してもよいのでしょうか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 できるだけ実測が望ましいとは考えておりますけれども、取扱い状況などによって簡易な測定とか先ほど言ったクリエイト・シンプルという簡易な評価方法でできる場合もあるかと思います。その辺も、どういった場合にどういう測定方法が望ましいかといったことについては整理して今後ガイドラインをお示ししたいと考えております。
○日本化薬/梅田氏 対象物質がこれから3年間で随分増えるわけなので、作業環境測定をするという形にしてしまうと企業側としてはかなり負荷が大きい。ですから、簡易的な測定法とか、あるいはクリエイト・シンプルに代表されるような数理モデルをぜひ認めていただけるようにお願いしたいと思います。
○吉見化学物質評価室長補佐 今御意見を頂きましたけれども、おっしゃるとおり、全て実測というのは負担面もあって難しいと考えておりますので、もちろん特別則で作業環境測定をやらなければいけないものはそれに従ってやっていただくのですけれども、自律的な管理の中でどういった場合に簡易な測定法とか数理モデルによる評価を行うとか、そういったものも含めてモデルとなるものをガイドラインでお示しする予定です。
○堀口教授 関連した質問で、「測定による数字が必要になりますか。」というものもありましたので、今のお答えでよろしかったかなと思います。
 あと、20枚目にも関連していくのですが、「労働者が吸入する濃度を国の基準以下にする義務がかかるようですので、ばく露管理値が新たに設定される化学物質について、公表と同時にその管理値以下であると確認する実測方法についても公表いただきたい。」という御意見がありました。
 次の20枚目に行きたいと思います。
 「ばく露限界値は表示・通知物質の公開と同時に設定されるのでしょうか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 同時ではありませんで、既に現在、表示・通知対象物質は674あって、今後順次追加していくわけですけれども、その中から、例えばACGIHのTLVとか日本産業衛生学会の許容濃度等を参考にしながら、ばく露管理値を来年度以降順次設定していく予定です。
○堀口教授 「一般消費者向けの家庭用品については法律上の明確なGHS表示の義務はないと思います、しかし、業界で自主的なガイドラインなどでGHSを表示されている場合があると思います、この場合、GHSの絵表示があっても今回のGHSの絵表示からのリスクアセスメントの対象外と判断してよろしいでしょうか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 自主的に表示をしていただいているものにつきましては、法律上の義務ではないのですけれども、その情報を参考にリスクアセスメントをしていただいて取り扱っていただくのが望ましいと考えております。
○堀口教授 もう一つありました。「今後、国のGHS分類結果に基づき危険有害性区分がついたものは安衛法規制対象に追加されていくことになりますが、国のGHS分類結果、危険有害性区分に異論がある場合、そのような事業者の意見はどこかで受け付けてもらえるのでしょうか、また、事業者からの意見を受けて実際にGHS分類結果の再検討を行ってもらえるのでしょうか。」ということです。仕組みの話だと思うのですけれども。
○吉見化学物質評価室長補佐 これにつきましては、先ほどもちょっとお話ししましたけれども、GHS分類に当たって、事業者がお持ちの情報を国で分類するときに受け付けるという仕組みを今検討しております。ほかにGHS分類を行っている経済産業省、環境省とかNITE等とも仕組みを検討しているところですので、来年度以降、仕組みができましたらまたお知らせさせていただきます。できましたらそれに従って、事業者がお持ちの情報で一定程度信頼性の高い情報につきましてはその窓口を通じて受け付けて、国が分類するときに分類の参考となる情報の一つとして取り扱うということを予定しています。
○堀口教授 ありがとうございます。
 それでは、26ページに行きたいと思います。化学物質管理者と保護具着用管理責任者についてたくさん質問を頂いております。
 例えば、「現在各地の労働基準協会連合会などで主に製造現場の職長向けの化学物質管理者研修が行われていますけれども、これと選任義務化が予定されている化学物質管理者は同じなのでしょうか。」とか、「GHS分類済み物質の製造事業者では専門的講習の修了者の中から選任とあり、それ以外の事業者では基礎的講習の受講を推奨とありますが、両者は知識レベルにかなりの差があると思われるにもかかわらず同じ化学物質管理者として扱うのは違和感があります、特に後者は受講推奨ならば、全く教育などを受けさせることなく任命するだけで終わってしまうことが想定されます、そもそも全体として化学物質管理者に求められる知識レベルや位置付けがあやふやだと思います。化学に関する専門的知識を有する者を想定しているのか、それとも主に製造現場の職長などを想定しているのか、製造現場の職長などを想定しているとするならば職務の範囲を相当に絞らないと業務量的にとても手が回らず、文書の作成などに追われてかえって管理が行き届かなくなることが想像できます。」とか、「化学物質管理者は事業場専属者でなければいけないのか。」、それから、「担当職務ごとに複数人指名することは可能ですか。まだ読んでいったほうがいいですか。」一応ここで切りますか。
 お願いします。
○吉見化学物質評価室長補佐 初めに、今労働基準協会などで行われている化学物質管理者の講習というのは、恐らくリスクアセスメントの指針で選任が望ましいとしている化学物質管理者の講習だと思います。現在基準協会でやっている講習というのは大体1日6時間程度の講習だと思うのですけれども、今度できる製造事業者向けの化学物質管理者の講習は、今カリキュラムは検討中ですが、2日間程度の予定で考えています。例えばクリエイト・シンプルの使い方とか、そういったこともカリキュラムに組み込むようなことを考えていまして、現在労働基準協会で行われている講習で内容的に全てを満たすということにはならないので、製造事業者についてはより広い範囲の講習が必要になると考えていただければと思います。製造事業者とそれ以外の事業者では扱う化学物質の有害性とか量にかなり差がありますので、それで国が定めたカリキュラムの講習が必要か、そうではなくて法令上の選任要件はなしかというのを分けているということになります。
 それから、化学物質管理者は専属でなければいけないかどうかというのは、専属かどうかというよりも、権限がちゃんとあって職務ができるかどうかということが重要だと思いますので、法令上専属でなければいけないという規定をする予定はありません。ちゃんと職務ができて権限が与えられて仕事ができれば専属でなくても大丈夫です。
 それから、事業場によっては職務の内容が多岐にわたりますので、1人でできないということもあろうかと思います。法令上1人とか2人とか人数を規定する予定はありませんので、事業場の体制に応じて複数人でやっていただいて結構です。
○堀口教授 城内先生から何か、そもそもの検討会で議論があったと思うのですけれども、多分定義とかがいまいち分かりづらくなっていると思うので、一度整理をしていただければと思います。
○城内化学物質情報管理研究センター長 化学物質管理者については、専門的講習の修了者から選任というのは、先ほど吉見さんからお話があったように2日間ぐらいのコースをちゃんと受けていただきましょう、それ以外は将来的に受けてくださいというような感じで決められたと思います。というのは、今までは化学物質を製造しているメーカーが主で労働安全衛生法が強力に施行されてきたと思っていますが、化学物質を扱う事業者全てがリスクアセスメントをしなければいけないとなったときに、多分何十万社とかそういう単位で化学物質管理者が必要だろうという想定で議論をしました。そのときに我々が考えたのはボトムアップなのです。つまり、今まで化学物質を使っていたという認識もないかもしれないとか、化学物質を扱っているけれども何をしたらいいか分からないとか、そういう事業者さんも多いであろうと。ではそこで何をするかと考えたときに、まず事業場内で危険有害性の情報を労働者と共有することから始めましょうということで、それを担当するのが化学物質管理者の一番の仕事だと個人的には思っています。職務のところにいろいろ書かれていましたが、実はそういう方にラベル・SDSの作成とかを期待しているわけではないのです。ただ、もちろんできる人がいたらやっていただきたいと思うし、リスクアセスメントも私は作業環境測定をやっていたからリスクアセスメントできるよという人がいればやっていただきたいと思っていますが、これらの職務を全部こなせるという想定はしていませんでした。ただ、先ほど申し上げましたけれども、特に小規模事業場で今まで化学物質管理を考えたことがないところがあるとしたら、そこを動かすためにはどうすればいいかということを一番に考えたのが化学物質管理者です。ですから、今まで化学物質に関する教育は受けたことがあるという方から始めていただいて結構なのですが、その先にはその2日間のコースを受けていただくとか、さらに興味があれば衛生管理者の資格を取っていただくとか、そういうところにつながればいいかなということで設けられたと思っています。
○堀口教授 ありがとうございます。
「化学物質管理者を選任した場合、化学物質管理責任者の職務に対する安全配慮義務は化学物質管理者が負うことになるのでしょうか。」―すみません、ちょっと意味が分からないので、ペンディングしておきます。
 化学物質管理者の講習名は何でしょうかという問いが来ていますが、何かそういうのは決まっていますか。
○吉見化学物質評価室長補佐 講習名はまだ決まっていません。法令でカリキュラムが決まって公表した後にそういった名前も決まるということになります。
○堀口教授 あと、「化学物質管理者及び保護具着用管理責任者の選任は事業所単位で選任することを想定していますか、あるいは製造する部単位で選任が必要でしょうか、自律的な管理の枠組みの組織づくりが大事なので、なるべく早くアウトラインを示していただきたい。」という御質問です。
○吉見化学物質評価室長補佐 事業所単位の選任を想定しています。
○堀口教授 それから、「化学物質管理者の義務化時期は令和6年となるのでしょうか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 はい。化学物質管理者の選任の義務化は令和6年4月を予定しております。
○堀口教授 それから、「事業所内の化学物質管理の体制の事業所内は各工場、各生産拠点において化学物質管理者を選任するという意味ですか、小規模工場、10人以下を複数拠点に置いている企業の場合はそれぞれの工場で選任する必要があるのでしょうか、それとも本社において化学物質管理者を選任して複数拠点を管理するという管理は認められるのでしょうか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 選任は事業場ごとになるのですけれども、先ほど申しましたとおり、必ずしも専属でなければいけないということではありませんので、規模とか取扱いの内容によっては複数の事業場を同じ化学物質管理者が管理するということも可能です。
○堀口教授 あと、「衛生管理者や安全管理者がそのまま化学物質管理者に選任できる要件になることがありますか。」という御質問です。
○吉見化学物質評価室長補佐 そのままというのは予定しておりません。ただ、同じ人ができるかどうかというのは、兼任が駄目というわけではありませんので、ちゃんと権限があってその内容が両方できるということであれば、兼任すること自体は可能です。
○堀口教授 それから、「講習会はいつ頃実施されるのでしょうか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 それは今後カリキュラムが決まって告示等で出た後に決まりますけれども、講習会自体は国が直接やるわけではなくて民間の講習機関などで行うことになりますので、今何月からというのは申し上げられませんが、早くて今年の秋ぐらいに始められるのが望ましいかなとは思っています。実際の施行は令和6年4月ということで、今から約2年ありますので、そこまでに必要な方は受けていただくということです。講習の始まる時期とかその辺は、また決まりましたらアナウンスしたいと思います。
○堀口教授 まだ現状は決まっていないということですね。
○吉見化学物質評価室長補佐 はい。
○堀口教授 あと、確認で、「26ページのGHS分類済みの製造事業者については専門的講習の修了者から化学物質管理者を選任することが義務化とあるが、「製造事業者」の定義はどうなっていますか。」という御質問です。
○吉見化学物質評価室長補佐 これはその名のとおり、その物質を製造する事業者、取扱いではなくて製造する事業者ということです。
○堀口教授 あと、「保護具着用管理責任者は、製造事業者だけでなく、全産業と理解してよろしいでしょうか、聞き漏らしたかもしれませんが、よろしくお願いいたします。」ということです。
○吉見化学物質評価室長補佐 保護具着用管理責任者については、リスクアセスメントの結果保護具を着用するという選択肢を取ったときに選任が義務となるものでして、これは業種や規模は関係なく、そういう形で保護具を使うのであればこの管理責任者の選任が必要となります。
○堀口教授 そんなところですかね。
○城内化学物質情報管理研究センター長 化学物質管理者でいろいろ御質問がおありだと思いますが、ここの教育で一番考えているのは、危険有害性情報をちゃんと労働者と共有してほしいということです。そのためにはGHSをちゃんと教育したいと思っています。というか、カリキュラムがそうなると思います。さらに特にラベルとかSDSでどこを見ればいいのかとか、リスクアセスメントはどういう方法があるのかというところをちゃんと教育しなければいけないだろうと思っています。
 事業場内の化学物質管理がどうなっているのか、情報伝達から始まって、リスクアセスメント、リスクマネジメントがどうなっているのか、どこに問題があるのかが分かるような人が事業場にいなければいけないのではないか、そのトリガーになってくれる人が必要だろうということで化学物質管理者の選任義務ということになりました。ただし、選任要件がない人、当然選任要件は全部つけたかったわけですが、先ほどお話ししたような事情でそれは多分かなり困難であろうということもあって、取りあえず選任していただいて、その後何年かぐらいの間には専門的講習を受けていただきたいということになっています。
○日本化薬/梅田氏 化学物質管理者は講習が必要となるということですが、弊社も製造業者で、日本国内に随分製造業者があると思います。かなりの数の方が受講されるのではないかと想定されますので、そのあたりを踏まえて早めに御対応いただけるとありがたいです。
○堀口教授 今大枠が決まっているというところだと思うのですけれども、「講習に関する内容はこれから決まるということですけれども、いつ頃公開されるのでしょうか。」という御質問が来ているのですけれども。
○吉見化学物質評価室長補佐 これについては今内容の検討を行っておりまして、案ができた段階でまたパブリックコメントを実施する予定です。今のところ3月中ぐらいからパブリックコメントをやりたいと考えております。
○堀口教授 ありがとうございます。
 あと、「以前受けた講習会で、化学物質管理者など化学物質の管理に携わる者はリスクアセスメントに際しては客観的な視点で物質のリスク評価をし、作業の効率などを加味した対応の策定はリスク評価の結果を基に安全衛生に携わる者が行うのが望ましいと聞いたが、今回の説明では化学物質管理者がリスクアセスメント全般を行うことになっているようである、今まで同様に客観的な視点でリスク評価を行うような立場の者を置く必要はないのでしょうか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 資料の書き方が誤解を受けたかもしれませんけれども、リスクアセスメント全部を化学物質管理者が一人でやるということではありません。化学物質のリスクアセスメントに関する技術的な事項について管理するということで、例えば、これは事業場の体制にもよると思うのですけれども、安全管理者、衛生管理者もその職務としてリスクアセスメントの実施の管理を行うことになりますので、そういった方が評価を行うとか、そこは事業場の体制の中で考えていただければと思います。
○日本化薬/梅田氏 これを見て私はリスクアセスメントのマネジメントをするのだなと理解したのですけれども、リスクアセスメントをする以上は、やはり作業者を含めてリスクアセスメントをしないとあまり意味がないと思いますので、そのあたりを企業さんは理解して進めていただければと思います。
○堀口教授 ありがとうございます。
 一旦次に移っていきたいと思います。
 27ページもたくさん御質問を頂いておりまして、まず事前の御質問からいきたいと思いますけれども、「保護具の種類を記載すると27枚目にありますが、材質などの詳細まで記載しないといけないのでしょうか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 ここには保護具の種類ということで書いてありますけれども、どこまで書いたらいいか、詳しい情報があればそのほうがいいのですが、かといって全部書けるわけではないと思いますし、たくさん書き過ぎるとSDSがすごい分量になってしまうのもありますので、例としてどういった情報をどうやって書いたらいいかというのはまた業界団体とも検討しながら今後ガイドラインのようなものを示せればいいかなと考えています。
○堀口教授 ありがとうございます。
○日本化薬/梅田氏 保護具の種類はリスクアセスメントとセットなのです。ですから、リスクアセスメントをしてどのような保護具が必要かということはそれぞれの化学物質を使っている企業が考えなければいけないことだと思っています。SDSに書くのはあくまでもその化学物質を使う上で一般的な情報を書くぐらいしかできませんので、リスクアセスメントを十分にやって進めるべきと考えます。
○吉見化学物質評価室長補佐 ありがとうございます。資料にも「「推奨用途」での使用において」と書いてありますけれども、SDSに書くのは、製造事業者側が想定する推奨用途で使った場合はこういった保護具を使ってくださいという種類を書く。実際にどういう使われ方をするのかというのは事業場によっても違うと思いますし、使用する量も違うと思いますし、そこはSDSの情報も参考にしながら各事業者でリスクアセスメントをやって実際に使う保護具を決めていただくということになろうかと思います。
○堀口教授 似たような御質問がありました。「SDS記載項目の「含有量は……重量%の記載を必須化」について、これまで同様、幅での記載、○~○%は可能なのでしょうか、弊社では天然原料(鉱物)を使用しているため、化学成分値にばらつきがあり、このため、ある程度の幅での記載ができることを希望いたします、また、SDSへの記載項目の追加や見直しがある場合、JIS Z7253の変更も行われる予定でしょうか。」ということで、あと、「幅のところで、成分に幅がある場合、SDSの記載はmax値での記載でも問題ありませんでしょうか。」という御質問です。
○吉見化学物質評価室長補佐 資料には「10%刻みでの記載方法を改め、重量%の記載を必須化」と書いてあるのですけれども、これはどういうことかというと、今の労働安全衛生規則は、10~20%とか、20~30%とか、そういう一律の10%刻みしか認めないような書き方になっています。これを今後どうするかというと、省令の上ではどうしても重量%を記載してください、これが原則ということになるのですけれども、実際はおっしゃるように製品によって含有量に幅があるもの、ロットによって幅があるもの等ありますので、重量%の記載なのですけれども、天然物で幅があるとかそういう合理的な理由がある場合は、その合理的な範囲内での幅の記載は運用で認める予定としております。
 JISについては、JISの見直しのスケジュールも基本5年に1回とかありますので、その機会に合わせて、必要に応じて内容を見直していきたい。行く行くはJISやGHSとこういった法令によるものが原則一致するような形が理想とは考えています。
○堀口教授 ありがとうございます。
○日本化薬/梅田氏 弊社は混合物の製品を多く扱っております。特に混合物ですと含有量というのは非常にデリケートな数字となります。今の10%の幅というのは非常にありがたかったのですけれども、分かっているならば直接の数字を書けとなるとかなりハードルが高くなります。ですから、資料の27ページにもありますけれども、営業上の秘密ということとセットでそのあたりの記載方法は考えなければいけないのかなと考えます。
○吉見化学物質評価室長補佐 ありがとうございます。営業上の秘密に該当するときはその旨記載の上で成分・含有量の記載を省略可とすると書いてあるのですけれども、これについては、今、SDSの記載項目としては成分とその含有量があって、それで伝達するということになっていますが、営業上の秘密に該当するときは、その旨を書いた上で、その事項はSDSとは別に、必要に応じて会社間で秘密保持契約等を結んでいただいて必要な情報を伝達していただく、そのような運用を考えております。
○堀口教授 それに関連する質問が来ていました。「営業上の秘密に該当する場合、成分・含有量の記載を省略できるとあるが、何らかの基準やあらかじめ許可を得たりする必要などがあるのか、それとも各企業の判断でよいのか、御教示ください。」ということです。
○吉見化学物質評価室長補佐 あらかじめ許可とかそういう手続は必要ありません。
○日本化薬/梅田氏 営業上の秘密を認めていただけるということなのですが、これは情報を開示しなくてもいいとは私は取っていないです。しかるべき理由のときには秘密保持契約等を結んで開示しなければいけない性質のものだと理解していますが、そういうことでよろしいでしょうか。
○吉見化学物質評価室長補佐 はい。そういう趣旨です。営業上の秘密なので公開情報のようにオープンに広くしなくてよいけれども、相手方には必要な契約を結んだ上で必要な情報は渡していただくということを考えています。
○堀口教授 幅の話がもう一個ありました。「SDSへの成分表示は重量%だけでなく幅も認められるとのことですが、現在特化則などで規制されているような危険有害性の高い物質のみ%表示とし、それ以外の物質は従来どおり範囲表示は認められないのでしょうか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 これは先ほど御説明したとおりで、原則重量%そのものが書ければそれを書くのが一番いいのですけれども、合理的な範囲で幅の記載も認める。ですから、特化則等の対象物質以外で幅があるものについては幅の記載も合理的な範囲で認めるということです。
○堀口教授 「SDSにおける成分及びその含有量について、営業上の秘密に該当する場合に省略可とされているのは成分名のみという理解で合っているでしょうか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 成分及びその含有量です。
○堀口教授 一方、「含有量については営業秘密とすることができず、今後重量%で必ず記載しなくなると理解しております、この場合、例えば成分名の欄に「営業秘密のため非公開」、含有量の欄に「15%」と記載することになりますが、このような記載をさせるように省令を改定される意図を教えてください、成分名が分からなくても重量%の情報が伝わることで労働現場での化学物質管理において何かよい効果があるのでしょうか。」ちょっと御理解が違うのかな。
○日本化薬/梅田氏 多分、書くのならば、成分は非公開で、その含有量が例えば今言われた15%というような書き方になるのではないかと思います。先ほど申しましたけれども、未来永劫非公開のままで済むべき性質のものではないということは御理解いただいたほうがいいかなと思います。
○堀口教授 何か付け加えますか。特にないですよね。
 あと質問です。27枚目です。「化学物質情報の伝達義務は別表9のみの義務化であるが、GHSの区分がつくのであれば、努力義務なしであったとしてもSDSを提供すべきと思います、そういう意味において別表9の対象物質増加は望ましいと思います、しかし、下剤として扱われた硫酸ナトリウムが下痢を起こしたという理由で単回ばく露区分1がつき、別表9の追加対象となっていることなど、納得のいく物質選定とはなっていません、食品添加物として使用されているにもかかわらずです、機械的に追加するのではなくエキスパートジャッジが必要ではないでしょうか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 これは、化学物質の有害性を広く伝えるという意味で対象にしています。食品添加物となっていて食品の中に入っているものは安衛法上のラベルとかSDSの対象からは除かれますけれども、製造現場でそのものをたくさん扱ったりといった場合にはそれなりのリスクが生じることがありますので対象になっているということです。
○日本化薬/梅田氏 日本のGHS分類、国が定めていただいているGHS分類は比較的厳しめであるのです。ですから、先ほど質問があったように異議申立ができるような場があればいいと思います。
○堀口教授 異議申立は現在できないのですか。
○吉見化学物質評価室長補佐 個別に御意見を頂くことはもちろん可能です。ただ、そういった情報を受け付ける仕組みについては今検討していまして、できれば来年度からそういった受付窓口を設けたいと考えております。ただ、情報を頂くときに、情報の信頼性もいろいろあります。ちゃんとした試験手順、OECDのテストガイドラインとかGLPの試験施設とか、そういうところにのっとってやられた試験もあれば、ある会社、ある研究所の研究レベルの試験もあったり、情報の精度にもいろいろありますので、一定の信頼性のある試験については来年度以降国の窓口を設けて受け付けて、国がGHS分類に当たって参考情報として扱う、分類の根拠の一つとして検討するということを考えております。
○堀口教授 あと、「ばく露管理値が設定されている物質は成分名は省略不可との記載がありますが、逆を言えば設定されていない物質は省略可能ということでしょうか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 ここに書いたのは、営業上の秘密に該当するときは省略可なのですけれども、ただし特化則等の対象物質とかばく露管理値の設定対象物質は省略不可という趣旨です。ですから、そもそも営業上の秘密に該当しないものは当然全て書いていただくということになります。
○堀口教授 ありがとうございます。
 前のページの質問を1個忘れていました。「「GHS分類済物質の製造事業者」とありますが、混合物を製造・販売するような事業所も対象でしょうか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 混合物についても、GHS分類済み物質を含む混合物であれば対象になります。
○堀口教授 それでは、28ページに行きたいと思います。
 「小分けした際に「ラベル表示等により内容物や危険性・有害性情報を伝達すること」と記載があります、ラベル表示だけに限らないとおっしゃったと思いますが、ラベル表示以外にどのような方法があるのでしょうか。」
○日本化薬/梅田氏 JIS Z7253にそのあたりの記載がございます。5.3.3項に「作業場内の表示の代替手段」ということで、作業場への掲示とかラベルあるいはSDSの一覧の備えつけ、ですから、場内に掲示するか、あるいはファイルでラベルなりSDSをまとめておいてすぐ見られるようにしておくという方法が挙げられております。
○堀口教授 ありがとうございます。
 それでいいですか。何か加えますか。
○吉見化学物質評価室長補佐 この小分けに関して補足なのですけれども、今すぐ使うものをその場で小分けして自分で使う分には対象になりません。小分けして保管しておくようなものが対象になるということです。この絵表示とかを全部書いたようなラベルという形でつけなければいけないということではなくて、名称と有害性の情報については非常に重要ですので、それは表示なり先ほど梅田様がおっしゃったような方法なり、そういった形でちゃんと情報を伝達するようにしてくださいという趣旨です。
○堀口教授 ありがとうございます。
 同じ28ページですけれども、事前に頂いていた御質問で、「研究開発業務で毎日20件を超える数mL、数L単位の危険物サンプルを作成しており、全てが譲渡・提供されるわけではなく、社内評価される場合が多い状況です、明らかにGHSに分類される危険物と分かっていますが、原材料由来の未反応成分の影響により正確な情報は分析しないと分からない場合などがあり、すべて表示しようとすると極めて非現実的です、このような譲渡や提供をしない社内保管が目的の場合、危険性・有害性を示すラベルの免除規定や緩和規定などはないでしょうか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 大事なのは危険性・有害性の情報伝達ですので、自社内で使うものも一時保管して次の日に使うとかほかの人が使うということであれば、ラベルと同じということではなくて、何が入っているか、人体に及ぼす作用はどういうものかというものを分かるような形で情報伝達していただければと思います。先ほど申し上げたような方法とか、あるいは作業の指示書で指示したり、いろいろな方法があると思いますので、そういう形で対応いただければと思います。
○堀口教授 何か答えづらい質問が1個あるのですけれども、「大まかな性質が分かっている場合、危険性・有害性を示し労災を防ぐことができれば、正確なラベルである必要はないと解釈していいでしょうか。」「正確な」と使われると厳しいですよね。答えづらいですよね。「正確な」というのは何を指しているのかなと思って。
○吉見化学物質評価室長補佐 分かっている情報に基づいてラベル表示等をしていただければと思います。
○堀口教授 分かっていることはきちんと表示しましょうという趣旨でよろしいですか。
○吉見化学物質評価室長補佐 そうですね。
○堀口教授 そうしましたら、29ページは特に質問がなくて、30ページに対する質問が1個来ておりました。「第3管理区分である事業場に対する措置の強化について、「特化則等」となっていますが、「等」とはどこまでですか、有機則、鉛則も適用範囲となりますか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 これは、特化則、有機則、鉛則、粉じん則の4つです。四アルキル鉛は作業環境測定の規定がないので対象外になりますけれども、先ほど言った特化、有機、鉛、粉じんの4つが対象になります。
○堀口教授 次の31ページも1つ質問を頂いています。「健診結果のデータベース化は理解できるのですが、法的強制力や罰則も考えておられるでしょうか。」という御質問です。
○吉見化学物質評価室長補佐 この項目については今後の検討課題ということで検討会から提言を頂いております。これについては今の省令改正ですぐに制度を改正するということではございません。厚生労働省で今後こういった対応がどういった形で可能かというのを検討してまいります。
○堀口教授 32枚目に行きます。「去年の12月16日から今年の1月14日までに行われたパブリックコメントの意見の数や多く寄せられた意見の概要など、分かる範囲で教えていただきたい。」ということです。
○吉見化学物質評価室長補佐 意見は40件ぐらい頂きました。多くは今回ラベル・SDSの対象に追加される物質の範囲に関する御質問とかラベル・SDSの運用に関係する御意見などです。こちらについては、この関係の政省令は、先ほど講演の中で申し上げましたけれども、2月下旬、来週中ぐらいに公布を予定しています。その公布のときに併せてパブリックコメントの回答も公表する予定になっております。
○堀口教授 ありがとうございます。
 それでは、城内先生の資料に移っていきたいと思います。
 「11ページの化学品ですが、化学品種の範囲について、今回改正では647物質を2026年までに約2,900物質に追加されるとのことですが、SDGsで提唱された2030年までに少なくとも工業的に使用されている数万の化学品に関しては義務化されないとSDGs2030のアジェンダに抵触してしまうと考えます、よって、2026年以降はこれまでよりも急激に増え、2029年のJIS規格改定時期に合わせ法令などの大改正を行い、2030年または2031年までに施行される―という将来予測みたいですけれども―という予定でよろしいでしょうか、つまり、余裕のある事業者は今回の改定を機に使用している化学品全種に対しての対応を開始したほうが10年先楽できると考えていいでしょうか。」
 城内先生、お願いします。
○城内化学物質情報管理研究センター長 分かりません。SDGsに抵触するからそれだけの物質にしようという根拠が私には分からないので。それはGHSの会議でも聞いたことがないので、よく分かりません。物質数が増えていくというのは確実ですが、では欧米でも同じように何万物質を一気に増やすかというと、そうとも言えないと思いますので、その辺は徐々にしかないかなと思っています。
○堀口教授 スライドの13枚目になりますが、「化学物質による健康障害表によると、特別規則以外のSDS交付義務対象物質が全体の約3割、SDS交付義務対象外物質の2倍の障害例を示しています、この結果を見ると自律的管理は有効とは考え難いのですが、どのように改善されるのでしょうか。」
○城内化学物質情報管理研究センター長 私が考える労災予防・防止は情報の共有です。この結果は死傷病報告から来ていますが、名前も特定されないままに提出されてくるなど、それは調べるほうの側の問題もあるし、書類を提出する側の問題もあると思います。その両方について、危険性・有害性の情報が大事だという意識が欠落していると思っているのです。ですから、まずそこを埋めるところからいかなければいけないだろうと思います。
○堀口教授 先ほど先生が御講演でボトムアップが大事なのだと言われていたところに関連すると考えてよろしいでしょうか。
○城内化学物質情報管理研究センター長 そうですね。
○堀口教授 ありがとうございます。
 それから、GHSのところの22ページに該当するかと思うのですけれども、「GHSの対象について、一般の用に供するもの、医薬品、食品添加物などの除外は工場などの生産ラインは除かれる(対象になる)とのことですが、研究のための使用はどうなるのでしょうか。」
○城内化学物質情報管理研究センター長 医薬品、食品添加物等々と書いてある除外規定の根本は、分かっていて口に入れるものです。つまり、医薬品だったら副作用はこういうものがありますよと書いていますし、食品添加物だったらこの濃度だったらそんなに危険はないでしょうというようなことが担保されての話です。工場の中で危険有害性が認識されるというのはそういう扱いとは全く別なので対象外なわけです。では実験室はどうかというと、実験室においても、量の問題はありますけれども、危険有害なものを扱っていれば、それはGHSの分類対象でありリスクアセスメントの対象になります。
○堀口教授 同じページで、「GHSの適用範囲、「医薬品、食品添加物、化粧品、食品中の残留農薬等はラベルの対象物質から除く(工場などの生産ラインは適用範囲)」とありますが、BtoBで食品添加物を販売する際はラベルの対象という認識で間違いないでしょうか。」
○城内化学物質情報管理研究センター長 はい、そうだと思います。危険有害性があれば、ですね。
○堀口教授 あと、薬機法の話の御質問を事前に頂いていまして、薬機法との関連について、GHSに限らないのですけれども、質問を頂いています。「リスクアセスメントや健康診断などの判断について、医療用の消毒剤など薬機法で定められている薬品についてはどう考えるか、薬機法なら毒薬や劇薬だが、試薬として購入すると一般試薬として現状特に試薬としての法規制がないものなどは規制対象になるのか。」という御質問が来ていました。
○吉見化学物質評価室長補佐 薬機法に基づく医薬品や医薬部外品、要は製品としてあるものそのものについては安衛法のラベルやSDSの対象外になっています。先ほど城内先生も言われましたけれども、そちらの法律に基づいて副作用情報とかそういうものもありますし、そういう形で安衛法のラベル・SDSの対象外になっておりますけれども、例えば試薬として購入して使う場合、薬機法の医薬品や医薬部外品などとは別の形で同じ物質を使う場合は安衛法の規制の対象になります。
○堀口教授 「医療用の消毒剤など薬機法で管理されている薬品の扱いについて、絵表示などの設定がないものをほかの容器に移し替え、あるいは小分けした場合の表示はどこまで必要か。」という御質問です。
○吉見化学物質評価室長補佐 法律的には、例えば薬局方のエタノールとかなのかもしれないですけれども、元のものが安衛法の対象外になっているから、それを小分けして法律の義務対象になるかというと、そこはならないかもしれないです。ただ、趣旨としては、そういったものについても、小分けしたときに危険有害性の情報はちゃんと伝達していただかないと、それを誤って扱って労働者が被災する可能性もありますので、法律で義務でないから全部やらなくていいということではなくて、そこの趣旨を考えて必要な情報は伝達していただきたいと思います。
○日本化薬/梅田氏 質問の意図がよく分からないのですけれども、内々で使う分には、自分の作業場で使う分は吉見さんのおっしゃったとおりでよろしいかと思うのですが、ひょっとして外部に売る可能性を考えているのならば、それは移し替えになるので、これは製造になりますよね。そうするとラベルの対象になると私は思います。
○吉見化学物質評価室長補佐 そうですね。そういう形で移し替えて、薬機法の医薬品などとは別の形でほかの事業者に売るということになると、それは対象になってきます。
○堀口教授 ありがとうございます。
 それから、28ページに関連した御質問を頂いています。「化学物質の不適切な管理の事例は産業医のいない50人未満の事業所が多いと考えられます、経営者が不適切な管理を認識しておらず、外部の医師でも職業性がんには気づきにくいと考えます、小規模事業所への行政の支援は何か検討されているのでしょうか。」という御質問です。
○吉見化学物質評価室長補佐 小規模事業所については、どうしてもラベル・SDSの制度とかリスクアセスメントの制度に関する情報が少なかったり、やり方が分からないといったようなことがまず初めにありますので、厚生労働省でも無料の相談窓口を設けて、電話とかメールといった形で相談を受け付けております。それから、希望される事業所については専門家を派遣してアドバイスをするといったようなこともやっております。これは来年度も実施していく予定です。
○堀口教授 ありがとうございます。
 それから、30ページに行こうと思います。リスクアセスメントに関する御質問も事前も含め頂いております。「リスクアセスメントは現在も義務化ですが、罰則規定は資料には含まれていませんでしたが、強化はしないのでしょうか。」という御質問がありました。
○吉見化学物質評価室長補佐 リスクアセスメントについては、労働安全衛生法の第57条の3で規定がありまして、この条文には罰則はかかっておりません。今回法律を改正するわけではないので、罰則自体は現状の制度と変わらず、リスクアセスメントは罰金などの罰則はかかりませんけれども、法令の規定によって実施されていない場合には労働基準監督署が指導する対象になります。
○堀口教授 ありがとうございます。
 それから、本日リスクアセスメントについても質問を頂いていまして、「研究においては基本的に化学物質の知識を持った者が少量の多種多様な化学物質をドラフトで取り扱うことがほとんどである、全ての物質に対してリスクアセスメントを実施することは研究活動を大きく阻害することになるので、リスクアセスメントについては研究活動を除外する、あるいは使用量の閾値や頻度で除外できないでしょうか。」
○城内化学物質情報管理研究センター長 ドラフトの中でこれだけの量を使っているから外に出てこないはずだとか、手にもつかないはずだとか、いろいろな対策を講じている場合、それを文書化すれば、それがもうリスクアセスメントなので、それでいいと思います。ただし、不安があったら、測定をするとか、もう少し精緻なリスクアセスメントをするとかは必要だと思います。
○堀口教授 本日は多くの大学の関係者に参加していただいているので、そういうところがとても気になっておられる点ではないかと思うのですが。
○城内化学物質情報管理研究センター長 同業団体等の対応というところで赤字で書かせていただいたのは、実は大学も入っているのです。既に大学にお願いしたところもあるのですが、大学全体で使えるマニュアル等が出てくれば全国の大学が非常に助かるのではないかと思っています。
○日本化薬/梅田氏 厚生労働省のガイドラインではリスクアセスメントをしなければいけないケースが決められていると思います。新たな有害性が分かったときとか、新たに使用し出したときとか、幾つか項目があったと思いますけれども、使用方法が変わらなければ、新たにリスクアセスメントは―今回は通知対象物が増えましたから必要があるとは思いますが、定常の状態でしたら、新たにリスクアセスメントをする必要はないと思います。大学のような場であれば、新入生が入ったときに教育をしてあげればよろしいかと思います。
○堀口教授 ありがとうございます。
 それから、リスクアセスメントに関して、「現在厚生労働省でクリエイト・シンプルを提供されています、国がGHS分類を行った物質について、現状約1,800物質、将来的には3,000物質弱、全てクリエイト・シンプルに登録していただけるとの認識でよろしいでしょうか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 クリエイト・シンプルについては今後も機能の改修とか情報の追加を順次行っていくことを考えております。
○日本化薬/梅田氏 私の認識では、クリエイト・シンプルは、危険有害性の情報はその閾値も含めて「職場の安全サイト」のモデルSDSから引っ張ってきているはずです。ですので、あそこに情報があれば、そのままデータを入力せずに対応できるはずだと思います。
○堀口教授 あと、「少量の化学物質を多種使う場合、各個にばく露値を求めるのは困難と思います、そのような場合はコントロール・バンディングなどのばく露値を考慮しないリスクアセスメントでも構わないのでしょうか。」という御質問です。
○吉見化学物質評価室長補佐 取扱量とか取扱い方法によっては、今おっしゃったようなコントロール・バンディングとかクリエイト・シンプルなど、実測を伴わない形でのリスクアセスメントも可能だと考えています。
○堀口教授 リスクアセスメントで33ページに関連しているということなのですが、「リスクアセスメントの手法・対策は事業者の選択とあるが、中身の妥当性についてばらついているように思われるのだが、どのようにお考えでしょうか。」という御質問です。
 城内先生、お願いします。
○城内化学物質情報管理研究センター長 ばらつくと思います。それでいいとは言いませんが、どうばらつくかで、事業所によって精緻なリスクアセスメントをしなければいけないところもあるだろうし、先ほどからお話が出ているように定性的でもいいところがあるだろうと思うのです。どういうリスクアセスメントでもいいし、対策でもいいと思いますが、何かが起きたときは全て事業者責任になるのだという意識を持って前向きに取り組んでいただくしかないかなと思います。
○堀口教授 あと、城内先生にだと思います。「適切な情報提供は重要であることは同意します、しかし、日本では化審法、安衛法の規制法令においてCBI保護の仕組みがない、全成分の開示は企業のノウハウ流出などにつながり、持続的な事業活動に大きな影響を与える、今後CBI保護の仕組みを導入することは想定されているのでしょうか。」
○城内化学物質情報管理研究センター長 実はGHSを導入するときに、GHSの中にはこれは所管官庁が決めてくださいといった項目が幾つかあるのですが、日本ではそこは素通りしてJISにして、JISを安衛法等々が参照するようになっていて、それは先ほど来出ているSDSのことでもそうですけれども、行政が決めるのではなくて事業者間でやり取りをしてくださいというようにしているわけです。そういう意味で欧米とは少し違いますが、私はそれはそれで日本的ないい方法かもしれないと思っています。自律的な管理ということもありますし、行政が全部ぎりぎり決めるよりは逆にそのほうがいいという事業者さんも多いのではないかと思っています。
○堀口教授 ありがとうございます。
 御意見とかも頂いているので、おおむねこのようなものだったのですけれども、戻ってすみません、見落としていたりもしているので、進めていきたいと思います。
 最初の講演の27ページです。「「貯蔵又は取扱い上の注意」の項目に保護具の種類の記載を義務化とあります、「貯蔵又は取扱い上の注意」の項目はJIS Z7253において7項の「取扱い及び保管上の注意」に相当すると考えます、しかし、保護具についてはJIS Z7253の8項「ばく露防止及び保護措置」で「適切な保護具を推奨しなければならない」と記載があります、したがって7項と8項両方に保護具の記載が必要となると考えてよろしいでしょうか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 法令上で決められている記載項目とJISの項目と、書き方に違いがあります。内容自体はJISに従って書けば法令上の項目も満たすという形になっているのですけれども、一対一対応になっていない部分があります。保護具の種類をどう書くか、現状JISで定められている項目に書くのが一番整理がいいかなと考えていますが、そこら辺は整理の上で、業界団体ともどういった形でSDSに書くのがいいか調整した上で何らかお示ししたいと考えております。
○堀口教授 ありがとうございます。
 それから、「27ページのSDS交付方法の拡大で、「事前に相手の了承を得なくても以下の方法による交付を可能とする」とのことですが、SDSを変更した場合、ホームページにSDSを閲覧できるようにしていれば化学物質を使用する方に変更通知をしなくてもよろしいのでしょうか、それとも変更したことを連絡したほうがよいのでしょうか、また、連絡する対象はどのぐらいでしょうか、販売した化学物質の品質保証内の方だけでよろしいのでしょうか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 可能であれば連絡はしていただきたいと思います。少なくとも販売した先の情報は企業で持っていると思いますので、その先に連絡をしていただく。ただ、実務的にどうやるかというのは、その企業間で決めるところもあるでしょうし、標準的にはこういうやり方がありますよというのは、また整理ができましたらその辺もSDSの書き方などと併せてお知らせできればしたいと考えております。
○堀口教授 あと、御要望が来ています。「労働者が吸入する濃度を国の基準以下にする義務がかかるようですので、ばく露管理値が新たに設定される化学物質について、公表と同時にその管理値以下であると確認する実測方法についても公表いただきたいです、また、ばく露管理値が設定される化学物質の数が数百になるようなので、極めて容易に実測できる方法でないと対応し切れないと思います、さらに、単一物質のみでなく環境中に混合物として存在する際の考え方について、実測やクリエイト・シンプルに対するガイドラインの公表をお願いしたいです。」という御要望です。
○吉見化学物質評価室長補佐 ばく露管理値を定めるということは、少なくとも何らか測定方法がある。測定方法が全くないものはそもそもその濃度以下かどうか確認する手段もないので、当面は何らか測定方法があるものになってくると思います。その測定方法が容易かどうかは物質によっていろいろ違うと思うのですけれども、こういった場合は実測が望ましいとか、こういった場合はクリエイト・シンプルとかの簡易な評価方法でも可能とか、そのあたりはまたガイドラインを検討しておりますので、まとまりましたらお示ししたいと考えています。
○堀口教授 「特化則などを5年後をめどに撤廃の方針とのことですが、別途国による物質のリスク評価が行われています、このリスク評価によって特化則で規制が必要と判断された物質は引き続き特化則などでの物質指定がされていくのでしょうか、指定のペースが遅くなるといった弊害はないでしょうか。」という御質問です。
○吉見化学物質評価室長補佐 これまで国のリスク評価によって特化則に追加してきた物質が2007年以降29物質あると私の資料の中で御説明しましたけれども、この現状のリスク評価のスキームというのは、自律的な管理を中心とする新たな規制への見直しに伴って今年度で一旦終了することを予定しております。ですので、リスク評価のスキームによって今後新たに特化則に追加していく物質というのはもうない予定です。今後、自律的な管理の中で特化則は5年後をめどに環境が整ったら廃止も検討するということになっていますけれども、今後の状況によって、この物質は特に危ないので製造禁止・許可にすべきだとか、あるいは特化則の規制の枠組みで規制すべきだというものがもし出てきたら、それはそのときに検討するということになります。
○堀口教授 ありがとうございます。
 「リスクアセスメントにSDSとその内容の信憑性が必須となってくると考えられますが、現状、製造元からSDSが提出されない、内容が古くGHSに基づいていないなど、アセスメントができないケースに苦慮しています、製造元へのSDSの作成・提供義務に関する規制強化は想定されているのでしょうか。」という御質問です。
○吉見化学物質評価室長補佐 規制強化といいますか、指導の強化という意味かもしれませんけれども、ラベル・SDSによる情報伝達というのはますます重要になってきますので、我々もいろいろな機会に製造事業者にそういった周知とか指導をしていきたいと思いますし、実際に使う側についてもSDSがついていなかったらメーカーに問い合わせるということをしていただければと思います。
○堀口教授 あと、「保護具の選択で、保護具着用管理責任者は特に選任要件を定めないのでしょうか。」という御質問が抜けていました。すみません。
○吉見化学物質評価室長補佐 法令でその資格要件を定める予定はありません。必要な職務ができる方から選任いただくということになります。
○堀口教授 あと読み忘れていたのは、例の秘密のやつですね。「成分などを営業秘密とした場合、SDS項目15、適用法令の記載方法の例示をお願いします。」という、営業上の秘密としたときの成分情報の書き方の例示もお願いしたいですということです。
 それから、「小分け時の表示は反応装置や試験管などに入っている一時的な使用中でも必要でしょうか。これは先ほど御説明があったかと思います。
あと、職長教育の範囲が拡大されるとのことですが、具体的に職長教育とは何を行うことを指すのでしょうか。」
○吉見化学物質評価室長補佐 職長教育の範囲の拡大については、具体的には、今回、食料品製造業と印刷関連の産業が職長教育の義務対象の範囲になります。例えば建設業とか食料品製造業以外の製造業などは既に職長教育の対象になっていますので、これをそのまま続けていただければ結構です。
○堀口教授 ありがとうございます。
 大事な話が書いてあります。「「事業所」の定義は何か、また、どの条文に書いてあるのか、お教えいただきたい。」と書いてあります。
○吉見化学物質評価室長補佐 労働安全衛生法では「事業者」と「事業場」という言葉があるのですけれども、「事業場」というのは場所の概念で、簡単な言い方をすると、○○株式会社という会社があって、それは「事業者」で、○○工場、○○営業所と一個一個場所が違ってというのが「事業場」。厳密な説明をすると長くなりますので、イメージとしてはそういう形で捉えていただければと思います。
○堀口教授 「有機溶剤作業主任者などの責務の中に保護具の着用監視業務があり、かぶっていませんか。」という質問が来ていました。
○吉見化学物質評価室長補佐 有機則等の対象物質については、当面、少なくとも5年間は今の規制が続きますので、有機則等に従って作業主任者がそういった職務を行う。保護具着用管理責任者という今度新たにできるのは、自律的な管理の中でリスクアセスメントの結果保護具を着用するという選択をした場合に、その管理をするために選任いただくというものです。物質が重なるような場合はもちろん兼ねていただいて構いません。
○堀口教授 ありがとうございます。
 すみません、御意見とか後でだらだら質問がやってきたのにあまり対応できておらず、申し訳ありません。一応時間になりましたので、これにて終了させていただきたいと思います。
○吉見化学物質評価室長補佐 最後に一言だけいいですか。
 この改正については、まだ改正の政省令が公布されておりません。今後公布して、最終的に内容が確定したら、またその確定した内容についていろいろな場で周知とか説明といったものを厚生労働省、あるいは労働局や監督署などでしていきたいと考えております。
○堀口教授 また別途それぞれの業界とかにも、御要望が来ればまた対応していくようなイメージでよろしいですか。
○吉見化学物質評価室長補佐 そうですね。例えば業界団体から説明会で説明してほしいという御要望も幾つかありまして、既に説明しているところもあるのですけれども、そういったところにもなるべく対応していきたいと考えております。
○堀口教授 ありがとうございます。
 それでは、事務局に戻したいと思います。
○事務局 先生方、本当に今日はどうもありがとうございました。
 御参加の皆様、長時間にわたり御清聴、本当にありがとうございました。
 本日いろいろな御質問、御意見を頂きまして、今後も厚生労働省はリスクコミュニケーションを通じてよりよい方向性に持っていきたいと考えておりまして、そのために、今日、終了後、御参加いただいた方に事後アンケートを頂くことになっております。画面表示と御参加いただいた方のメールアドレスにアンケート入力のURLを送信させていただきますので、ぜひ御協力をよろしくお願いいたします。
 なお、今後、当会の議事録を作成し、厚生労働省のホームページに掲載いたします。掲載されるまでに多少のお時間を頂きますことをあらかじめ御了承ください。
 本日は長い間ありがとうございます。
 以上で令和3年度第2回職場における化学物質に関するリスクコミュニケーションを終了いたします。皆様、御参加いただきまして誠にありがとうございました。