2021年12月16日 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録

日時

令和3年12月16日(木)18:00~

場所

新橋8E会議室(8階)

出席者

出席委員(16名)五十音順

 (注)◎部会長 ○部会長代理
 
 他参考人3名
 

欠席委員(7名)五十音順

行政機関出席者
  •  鎌田光明(医薬・生活衛生局長)
  •  山本史(大臣官房審議官)
  •  関野秀人(医療機器審査管理課長)
  •  新井洋由(独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事・審査センター長事務取扱)
  •  山本晴子(独立行政法人医薬品医療機器総合機構医務管理監)
  •  高橋未明(独立行政法人医薬品医療機器総合機構執行役員(機器審査等部門担当)) 他

議事

○医療機器審査管理課長 出席可能な先生方はおそろいでございますので、これより、本日の部会を始めさせていただきたいと思います。
 まず、私事でございますが、10月1日付けで前任の河野課長を引き継ぎまして、医療機器審査管理課長に着任しました関野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、本日の委員の出欠状況を伝えさせていただきます。本日の全体の出席人数ですが、本部会に所属される先生は23名おられまして、現時点で15名の先生方に出席いただいております。また、出席予定の松宮先生は、少し遅れるという旨の連絡を頂いております。それから、座席表との照らし合わせで御覧いただくと、大島先生、河野先生、田島先生に関しましては、欠席ということで急遽御連絡を頂いているところです。そのほか、小西先生、今野先生、森田先生、山上先生からあらかじめ欠席の御連絡を頂いているところです。
 以上のことから、本日の部会は薬事・食品衛生審議会令に基づき、定足数に達しておりますことを報告させていただきます。
 続けて、本日の審議に参考人としてお越しいただいております先生について御紹介をさせていただきます。議題2と議題3の関係で、現在まだお席にはおられませんが、独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院院長の後藤百万先生を参考人としてお呼びしています。それから、議題4の関係で、杏林大学の大浦紀彦先生、帝京大学の池田弘人先生のお二人の先生をお招きしておりますが、お二人はWebでの参加ということで、後ほどスクリーンの方からの御発言等を頂く予定としております。
 続いて、部会を開催する前に、事務局より、所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について報告させていただきます。分科会規程第11条においては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定されています。今回、全ての委員の先生方から、薬事分科会規程第11条に適合している旨の御申告を頂いておりますので、その旨を報告させていただきます。
 委員の皆様におかれましては、会議開催の都度、書面として御提出いただいておりますので、その点、御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解と御協力を賜りますよう何とぞよろしくお願い申し上げます。
 この後、事務局の方から本日の議題それぞれの公開と非公開の取扱いについて説明をさせていただきます。よろしくお願いします。
○事務局 事務局です。本日の公開と非公開の取扱いについて御説明いたします。平成13年1月23日付けの薬事・食品衛生審議会決議に基づき、部会の議題1については会議を公開で行い、議題2以降の議題については、医療機器の承認審査等に関する議題であり、企業情報に関する内容などが含まれるため、非公開といたします。これより議事に入りますので、カメラ撮りはここまでといたします。
 それでは、続いて配布資料の確認をさせていただきます。事前にお知らせしたとおり、本日の部会においてもペーパーレスで会議を進めたく、お手元には議事次第及び座席表のみを紙でお配りしております。タブレット操作について御不明点などがございましたら、事務局までお声かけいただければと思います。
○医療機器審査管理課長 事務局からの説明は以上になります。何か御不明な点等がございましたら頂ければと思いますが、この後は議事に入りますがよろしいでしょうか。よろしければ、荒井部会長、この後の進行をよろしくお願いいたします。
○荒井部会長 それでは、よろしくお願いいたします。いつもよりも時間が大分遅めですが、久々に皆さんとこうしてイン・パーソンの形でお目に掛かれてうれしく思います。今日は議題もいっぱいございますので効率良く進めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 まず、ここまでの事務局からの説明について、何か御質問や御意見等はありますか、よろしいでしょうか。よろしければ、これより議題に入ります。
 それでは、議題1です。「医療用エックス線装置基準の改正の可否について」を始めます。事務局から説明をお願いします。
○事務局 よろしくお願いいたします。資料1に基づき御説明をいたします。マイプライベートファイルより資料1を御覧ください。なお、当日配布資料1として、用語等についての補足資料を用意いたしましたので、適宜御参照いただければと存じます。
 薬機法第42条第2項において、保健衛生上の危害の防止のために必要がある場合は、部会の御意見をお伺いした上で性状や品質、性能等に関し必要な基準を設けることができるとされております。現在、当該規定に基づく基準は「人工呼吸器警報基準」や「生物由来原料基準」「再製造単回使用医療機器基準」などの八つの基準が設けられており、「医療用エックス線装置基準」においては、診断又は治療に用いられる医療用エックス線装置について、遮蔽や濾過、エックス線源からの距離といった、放射線による障害を防止するために講じるべき基準が国際電気標準会議が作成するIEC規格に準拠する形で定められております。
 口腔内に小さなフィルムを挿入して歯を2、3本撮影する口内法撮影について、従来のIEC規格においては、放射線技士や医師等の撮影者が照射野を定めてエックス線装置の位置決めを行った後に、2メートル離れた位置から撮影スイッチを押す方法のみを想定しておりましたが、近年、撮影者が手で保持したままエックス線を照射する手持ち撮影を行う機器が一定程度流通するようになり、これら製品の技術的要求事項の必要性が認識されて、本年5月に口内法撮影に用いるエックス線装置に関わるIEC規格が改正されました。
 今回は、この改正を本邦のエックス線装置基準に反映する改正を行いたいと考えております。具体的なIECの改正内容は、資料1の1ページの2.(1)にあるとおり、一つは装置の漏れ線量について、据置型の装置に求める「エックス線管焦点から1メートルの距離において、0.25ミリグレイ毎時以下」とは別に、手持ち撮影においてはエックス線「装置表面において、0.05ミリグレイ毎時以下」の基準が追加されたこと。二つ目として、手持ち撮影では移動型や携帯型装置に求めている距離の防御を取ることができないことから、患者から反射された後方散乱線などの迷放射線から撮影者を防護するシールド構造の設置が追加されました。3ページの左側部分に各々の改正案を記載しておりまして、このとおりの改正を予定しております。
 なお、本改正案についてパブリックコメントを先月に実施いたしました。資料4ページから5ページにありますとおり2件の御意見が寄せられました。1件目については、用語の誤りについての御指摘でした。こちらについては修正が妥当と確認いたしましたので御指摘のとおり修正をして、本日御提示しております。
 5ページに記載の二つ目の御意見は、口内法撮影以外の撮影法に用いる装置について、手持ち撮影を禁止する規定がないことに対する御指摘と、二つの追記案を提案いただきました。当該装置基準は、現在存在する装置について適切な技術的要求事項を定めるものです。また、新規性を持つ装置について、適切な放射線障害防止の手段が講じられている限りにおいては、当該製品の承認を否定するべきものではないことから、御提案の規定を追記することは適切ではないと考えております。将来的に、そのような機器が一定数開発された場合には、その時点で適切な基準を検討してまいります。
 以上で、事務局からの御説明を終わります。御審議をお願いいたします。
○荒井部会長 それでは、今の事務局の説明について御意見や御質問はいかがでしょうか。どうぞ、梅津委員。
○梅津委員 この改正に関しては異議はありません。従来の機器が、適用の日にちまで今は使えると思うのですが、それ以降こういう装置が使われ続けるということに関して、どういうようにチェックをするのでしょうか。
○事務局 事務局から御回答いたします。今回の基準については、新たに製造販売される装置についての基準ですので、現状、市場にある既に販売された製品については、この基準は適用されません。御指摘の市場品の今後の使用についてですが、使用方法については医療法施行規則の方で規定がなされており、今回エックス線装置基準と同様に改正が行われることになりますが、現在既に医療機関にある製品については、その改正法の適用外であるという規定が設けられると聞いておりますので、引き続き御利用いただくことは可能と考えます。
○梅津委員 分かりました。ありがとうございました。
○荒井部会長 そのほか、御質問や御意見はいかがでしょうか、よろしいですか。ほかに御意見がないようでしたら、部会としての議決を行わせていただきたいと思います。
 ただいまの事務局の説明にありましたとおり、医療用エックス線装置の基準の改正について、部会として差し支えないとさせていただいてよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。御異議がないようですので、このように決議させていただきます。
 これで議題1を終了いたします。事務局の方はよろしいですね。
○医療機器審査管理課長 御審議をありがとうございました。先ほど御案内したとおり、公開での審議事項は以上ですので、ここから先、傍聴の方に関しては御退室ということでよろしくお願いいたします。
 それでは、続けてよろしければ、この後の議題2以降について、引き続き荒井部会長、よろしくお願いいたします。
○荒井部会長 利益相反は。
○医療機器審査管理課長 失礼いたしました。利益相反の説明を事務局からさせていただきます。
○事務局 続いて、本部会の利益相反について御報告をいたします。資料10「競合品目・競合企業リスト等一覧」をお開きください。まず1ページに「セルーション セルセラピーキット SUI」について、2ページに「AQUABEAMロボットシステム」について、3ページに「RECELL自家細胞採取・非培養細胞懸濁液作製キット」について、4ページ及び5ページに「エキシマレーザTurboカテーテル」及び「エキシマレーザTurbo Powerカテーテル」について、6ページに「Brainsway TMSシステム」について、そのほか一般的名称に係る影響企業のリストが7ページ以降にあるので必要に応じて御覧ください。
 本日の審議事項に関する競合企業として、資料10に示す企業について委員の皆様から寄附金・契約金等の受取状況をお伺いしたところ、薬事分科会審議参加規程第13条により、議決に参加できない委員は議題6において松宮委員が該当しております。
 また、議題2の参考人として、本日お越しいただいている後藤先生におかれましては、議題2の申請資料として提出されたAMED研究の代表者であることから、薬事分科会審議参加規程上、「申請資料作成関与者」となります。薬事分科会審議参加規程第5条第2項では、「申請資料作成関与者である委員等は、当該品目についての審議又は議決が行われている間、審議会場から退室する。ただし、当該委員等の発言が特に必要であると分科会等が認めた場合に限り、当該委員等は出席し、意見を述べることができる」と定められております。
 後藤先生は、前立腺肥大症や前立腺癌の治療の専門家であり、また、前立腺手術後の排尿障害についても豊富な御経験と御見識をお持ちであるため、男性腹圧性尿失禁の治療の実態等について、参考人としての御意見を頂くことにつき御確認をお願いいたします。なお、御意見を頂く場合も審議及び議決の間は御退室いただくこととなります。以上、御報告をいたします。
○医療機器審査管理課長 事務局からの非公開の審議に当たっての報告と説明事項は以上です。今、申し上げたとおり、後藤先生は今、この会場の外でお待ちいただいている状態で、この場での今の説明に関して御確認いただいた後、お許しいただければ御入室いただくという流れになっています。
 以降の進行を部会長よろしくお願いいたします。
○荒井部会長 ただいまの事務局の説明について、御意見や御質問等はよろしいですか。後藤先生の件についても御理解いただけたということでよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。御異議がないようですので、この後の議題2ですが、後藤先生には参考人として御意見を述べていただきたいと思います。
── 後藤参考人入室 ──
○荒井部会長 それでは、議題2に入ります。
○医療機器審査管理課長 この間を使って、松宮先生が御到着でございますので、報告いたします。よろしくお願いいたします。
○荒井部会長 それでは、議題2、医療機器「セルーション セルセラピーキット SUI」の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び使用成績評価の要否について、を始めさせていただきます。本議題については、今、お話がありましたように、参考人として後藤百万先生にお越しいただいております。よろしくお願いいたします。
 それでは事務局から説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。資料2「審査報告書(2)」を用いて審査概要を御説明いたします。以降、審査報告書下部中央に記載の黒色のページ番号及び行番号を用いて御説明いたします。なお、審査報告書に修正がありますので、当日配布資料2「正誤表」にてお示ししております。大変、申し訳ございませんでした。
 では、まず審査報告書5ページ3行目、1.審査内容です。本品は本年9月の医療機器・体外診断薬部会において継続審議となった品目です。前回の部会においては、間葉系幹細胞を用いることの臨床的意義や、ピボタル試験が単群デザインであったことの妥当性について御指摘を頂きました。このため、間葉系幹細胞治療に関する基礎的なデータや治験結果以外の臨床情報等を追加した上で、改めて本品の有効性について考察を加えることといたしました。
 まずは、本品の国内外における臨床的位置付けについて御説明いたします。15行目「1)男性腹圧性尿失禁治療に対する注入療法の現状について」です。なお、腹圧性尿失禁のことを以後「SUI」と言います。SUIは、運動時、せき、くしゃみなど、腹圧が上昇することにより、不随意に尿が漏れる症状のことを言います。男性では前立腺肥大症や前立腺癌の手術後の合併症として発症します。本邦における男性SUI治療としては、主に行動療法、薬物療法が最初に選択され、これらが奏功しない場合に外科的療法が選択されます。25行目から記載のとおり、欧米のガイドラインによると、男性SUIに対する外科的治療として、人工尿道括約筋埋め込み術、男性スリング手術、プロアクト術、そして尿道注入療法があります。尿道注入療法について、米国においては様々な注入剤が使用されていますが、これらは全て人工物であるため、生体異物反応による有害事象が発生しやすいと言われています。
 次の6ページの1行目から記載のとおり、米国において複数の治療法が存在している一方で、本邦で男性SUIに対して保険収載されている外科的治療は、人工尿道括約筋埋め込み術と尿道注入療法のみとなっています。しかしながら、尿道注入療法に用いる国内既承認品「バード コンティジェン」は、ウシ由来のコラーゲンを用いていたことから、BSE問題などにより、2009年頃から国内外において販売中止となっております。そのため、現在本邦において使用可能な尿道注入材は存在せず、男性SUIに対する外科的治療は、高度の侵襲を伴う人工尿道括約筋埋め込み術しか選択肢がありません。
 また、9行目から記載のとおり、注入材として自己脂肪組織若しくは生理食塩水を用いた臨床研究が報告されていますが、海外の女性のSUIに対する文献結果では、治療3か月時点の尿失禁改善率は、いずれも20%台にとどまり、また1か月程度しか効果が持続しないことが報告されています。現在の尿失禁治療において、自己脂肪組織や生理食塩水を用いた注入療法は行われていません。
 このような現状に鑑み、本邦では、一定の効果の持続性を保ち、さらに生体異物反応による合併症の懸念が少ない注入材の開発が望まれてきました。
 18行目「2)本品を用いた治療が海外未承認であることについて」です。前述のとおり、海外においては、既に複数の尿道注入剤が存在し、さらにその他の外科的手術もあることから、本邦に比べて男性SUIに対する治療選択肢が多く存在しています。このため、申請者は海外に先駆け、よりニーズの高い本邦において、まず本品の薬事承認を取得することとしました。
 なお、以前の審査報告書に記載のとおり、本品は諸外国において乳房再建や軟組織欠損部への補てつなどの使用実績があります。更に、本品と同一の製品が既に本邦で承認を取得しています。以上のことから、本品は自己脂肪組織に間葉系幹細胞を混和した注入材を得る製品として、販売中止のウシコラーゲンに代わり、男性SUIに対する尿道注入療法に用いることを目的に開発されました。
 ここからは、本品の有効性の考察について御説明いたします。審査報告書7ページ2行目「1)間葉系幹細胞に関する基礎研究及び治験結果以外の臨床情報について」です。自己脂肪組織を採取して移植する治療は、これまでも様々な領域において行われていましたが、組織が吸収されてしまうことが課題でした。そのような中、間葉系幹細胞を脂肪組織に混和することにより、脂肪組織の生着が維持されるということが、基礎研究や臨床研究により示唆されるようになってきました。例えば、ヒトでの乳房再建領域への適用において、脂肪組織のみ移植した群と、脂肪組織に間葉系幹細胞を加えたものを移植した群とを比較した結果、6か月後に間葉系幹細胞群で乳房の厚みがより維持されたことが報告されています。
 これらから、申請者は尿道注入療法の領域においても、自己脂肪組織に間葉系幹細胞を混和した注入材を使用することを検討し、開発が進められました。以前の審査報告書が報告済みのとおり、動物試験などの非臨床試験及びフィージビリティ試験における各種検討が行われた上で、投与する細胞量を決定し、ピボタル試験を開始することとしました。以降、本申請に添付されたピボタル試験の結果について御説明いたします。
 同ページ25行目「マル1ピボタル試験概要」です。ピボタル試験は多施設共同非盲検非対照試験として国内4施設で実施されました。前立腺の手術後1年以上SUIが継続し、行動療法及び薬物療が奏功しない男性SUI患者43例が参加しました。有効性主要評価項目は、投与52週後の尿失禁量のベースラインからの減少率が50%以上であった患者、すなわち尿失禁レスポンダーの割合が評価され、○○○○%という結果が得られ、主要評価項目を達成しました。副次評価項目については、尿失禁量、尿失禁回数、尿パッド枚数、QOL及び治療満足度等が評価され、改善傾向を示しました。
 審査報告書8ページ1行目、尿失禁量について、レスポンダー群においてはベースラインの尿失禁量から、平均○○%の改善が確認されました。また、7行目から記載のとおり、尿パッド枚数については平均1枚程度減少しましたが、尿パッド交換時期については患者の判断に委ねられるため、尿失禁量との明らかな相関は認められませんでした。しかし、QOL及び治療満足度は改善傾向にあることから、本治療は臨床的意義があると考えられます。
 次に、同じページ18行目「マル2注入した脂肪組織の維持について」です。ピボタル試験にて得られたMRI画像によると、図1のとおり、実際に注入後52週までの脂肪組織の立体構造の維持が確認できています。また、次の9ページ1行目から記載のとおり、フィージビリティ試験の長期観察結果によると、60か月後のレスポンダー割合は○○○○%であり、長期に渡る有効性も確認できています。
 ここからピボタル試験のデザインの妥当性について説明します。同ページ6行目3)です。ピボタル試験を単群とした妥当性について、以下3点が挙げられます。まず、本邦でウシコラーゲン注入剤が販売されていない現在において、本治療はアンメットニーズに位置付けられます。また生理食塩水や脂肪組織は早期に吸収され効果がなく、臨床使用されていないことから、比較対照として適切ではありません。
 次に何もしない偽手技群を比較対照とする場合、盲検化のための脂肪吸引が必須となってしまい、偽手技群に割り付けられた患者に対して付加的なリスクが発生してしまいます。更に、対照群を無処置群とする場合については、本治療対象患者はSUIが1年以上継続しており、症状が自然に改善する可能性がないことが既知であることから、無処置群をあえて設定する必要はありません。以上のことから、本品のピボタル試験については、単群による治験デザインが選択されました。
 次に同ページ26行目「4)コラーゲン注入法の成績について」です。前述のとおり、男性SUI治療として、コラーゲン注入法が、かつて実施されていましたが、現在は国内流通品がありません。コラーゲン注入法は、注入後、数週間以内に体内に吸収され、1~3か月以内に尿失禁が再発することから、治療効果の持続性が高くないことが知られています。
 9ページ32行目から10ページにかけて記載のとおり、複数の文献にてコラーゲンの成績が報告されています。一例として、9ページ36行目2.の文献が最も症例数が多い報告となりますが、治癒が10%、高度改善が10%と報告されています。また注入回数も3~15回と、複数回の注入を要しています。これらの結果からも分かるように、コラーゲン注入法は繰り返し注入する必要があり、一部の患者には効果があるものの、奏功しない患者も多くいるような治療法でした。ここまで、ピボタル試験の有効性に関して説明してまいりました。
 次に10ページ7行目(3)において、既承認範囲ではありますが、本品の細胞分離性能について記述しております。本治療では、皮下脂肪を250~300mL吸引し、専用の遠心分離器にかけることで、一定量の細胞が得られ、その生存率は○○○○%であることが確認されています。なお、分離や洗浄について術者が条件を設定することはなく、定められた作業工程が行われます。
 次に15行目「(4)関連学会が策定する予定の適正使用指針の内容について」です。前回の部会でも説明のとおり、本品の承認に当たっては、適正使用指針において、術者及び施設基準を規定し、さらにインフォームドコンセントのひな型も作成する予定です。
 最後に、ここまでの内容を踏まえた総合評価について御説明いたします。30行目「(1)本邦において本品を男性SUI治療に使用することの妥当性について」です。機構は、これまでに述べたとおり、本品のピボタル試験結果について、直接比較はできないものの、既存のコラーゲン治療の臨床成績と比べ、特段劣るようなものではなく、コラーゲンが国内で使用できない現在において、本品はアンメットニーズを満たす臨床的に意義のある製品であると考えます。また、本治療では自己組織を用いるため、原材料由来の安全性上の懸念はありません。これらのことから、既承認のコラーゲン治療に比べ、本品はリスクベネフィットバランスの取れている製品であると考えます。さらに、ピボタル試験の単群デザインについても、これまで述べたとおり、比較対照群の設定が困難であることから、受入れ可能であると考えます。
 次の11ページ1行目から記載のとおり、以上の内容から、ピボタル試験による有効性及び安全性の評価は可能であり、本邦において本品を男性SUI治療に使用することは妥当であると考えます。
 続いて4行目「(2)製造販売後における本品の適正使用について」です。本治療については、関連学会と連携し適正使用指針を策定する予定です。またインフォームドコンセントのひな型を使用し、患者の正しい理解を得た上で、適切に患者の意思確認を行う予定です。さらに、製造販売後は、実施全例に対して使用成績調査を行う予定です。
 なお、今回の御審議に当たり必要な情報として、こちらに記載はありませんが、使用成績調査のスケジュールを改めて読み上げさせていただきます。使用成績調査については以前の審査報告書に記載のとおり、全例調査、最低数120例、準備期間6か月、登録期間36か月、追跡調査期間12か月、解析期間6か月を含めた計5年が妥当と判断しております。
 以上の審査を踏まえ、機構は本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器・体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断いたしました。本品は生物由来製品及び特定生物由来製品には該当しないと判断いたしました。なお、薬事分科会では報告を予定しております。機構からの報告は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○荒井部会長 スッキリとした説明をいただいたので、委員の方々も非常に明確に理解していただけたかと思います。それでは最初に、参考人として御参加いただいた後藤先生から、追加で、特に臨床現場での状況等について御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○後藤参考人 現在、政府部会の尾身先生が理事長をしておられます独立行政法人地域医療機能推進機構の中京病院の院長をしております後藤と申します。よろしくお願い申し上げます。昨年3月までは名古屋大学の医学部泌尿器科学講座の教授、そして昨年の秋までは排尿障害の専門学会であります日本排尿機能学会の理事長を拝命しておりました。今回の治療に関しましては開発者ということではあるのですが、本領域の専門家として参考人に招聘いただきました。機構の御発表と少し重なるところもあるのですが、この脂肪由来幹細胞を用いた男性腹圧性尿失禁治療について意見を述べさせていただきます。
 まず、本治療の開発の経緯を簡単に申し上げます。腹圧性尿失禁は、尿が漏れないように尿道を絞める尿道括約筋が障害され、つまり尿道が緩くなって、腹圧がかかると尿が漏れる疾患です。男性では現在、約90万人が罹患していると推定されますが、原因のほとんどは前立腺癌や前立腺肥大症に対する手術です。手術後1年までは徐々に改善しますが、1年以上では改善しません。命に直接関わる疾患ではありませんが、尿漏れのためにパッドやオムツを使用せざるを得ず、仕事や日常生活に支障をきたし、精神的にもつらく、QOLを大きく損ないます。
 治療には、重症例に対しては、先ほどありました人工尿道括約筋を埋め込む手術がありますが、人工物を体内に埋め込むこと、また感染や故障により、約4分の1の症例が取り出したり、入れ替えが必要となることから、低侵襲とは言えません。他方、軽症から中等症に対しては、以前は経尿道的コラーゲン注入術が行われましたが、長期改善率はせいぜい10%程度と低く、さらにコラーゲンがウシ由来のため、2010年に製造中止となり、現在は使えず。また有効な薬物治療はございません。したがって、軽症から中等症の男性腹圧性尿失禁に対しては、本邦では現在有効な治療法がありません。
 今回の治療では皮下脂肪由来幹細胞を利用していますが、御承知のように、幹細胞治療には胚性幹細胞、iPS細胞、体性幹細胞が利用されます。ヒト体性幹細胞治療は体の中に存在する幹細胞で、間葉系幹細胞はその一種です。生体内にはある程度の体性幹細胞が各組織にあり、それらの幹細胞を回収し、再生医療の細胞ソースとして用いることができます。間葉系幹細胞は骨髄、脂肪組織など、種々の組織から分離でき、骨髄由来の間葉系幹細胞は40年前から血液疾患に対して臨床使用されています。
 近年、脂肪組織が骨髄に比べて100倍以上の間葉系幹細胞を含むことが示され、脂肪組織は骨髄に比べて採取が容易であること、人体には大量の脂肪組織が存在することから、再生治療のための細胞ソースとして注目されるようになりました。
 私たちは、この脂肪由来幹細胞に着目し、2010年から基礎研究を行い、厚労省科学研究費、また2期に渡るAMEDの研究費の支援を得て、臨床試験、医師主導治験を行ってまいりました。本研究は企業を含まない、純粋にアカデミアによる10年に渡るトランスレーショナル研究で、研究の質・信頼性は担保されていると思います。もともと脂肪由来間葉系幹細胞を用いて腹圧性尿失禁を治療する基礎研究を行っておりましたが、このサイトリ社のセルーションにより、体外培養を必要とせず、自己由来の脂肪幹細胞を短時間で抽出できることを知りまして、名古屋大学が、皮下脂肪採取、幹細胞抽出から経尿道的注入までを一連の手術として、3時間程度でできる治療法を開発しました。なお、本治療は日本で開発した世界初の治療であるため、海外でのデータはありません。
 脂肪のみを注入する治療は、2001年前後に臨床研究が海外で行われましたが、複数回の注入にもかかわらず、注入した脂肪は吸収され、有効性は示されず、以後、行われていません。今回、脂肪と脂肪由来幹細胞を混和して注入することにより、長時間、吸収されず、尿道抵抗の増加効果が持続し、実際に先ほどもありましたように、先行臨床研究での4年以上での長期観察で治療効果が持続することが示されています。
 医師主導治験では、主要評価項目である50%以上の尿失禁量の減少を示す症例は○○%でした。この○○%をどう評価するかですが、プロトコール目標は達成され、治験としては成功であったこと、また現在、全く治療法がない疾患に対して○○%で効果が見られたことは意義の高いことと考えます。また50%以上の改善といっても、改善例の平均尿失禁量の減少率は○○%と大きく減少しています。また尿失禁量が減少した全症例を含めれば、改善例は○○%でした。また改善例はQOLが改善しています。また注入そのものに因果関係のある重篤な副作用は認められていません。
 したがって、本治療は、現在、治療法がない軽症から中等症の男性腹圧性尿失禁に対して、重篤な副作用がなく、有効でQOLを改善する治療であり、なにより、尿失禁に悩み、治療をあきらめている多くの患者さんにとっては希望となる治療であると考えます。以上です。よろしくお願いします。
○荒井部会長 後藤先生、ありがとうございます。ちょっと伺いますが、委員の先生方で、今ここでどうしても後藤先生に確認しておきたいということはございますか。よろしいでしょうか。はい、ではどうぞ。
○一色部会長代理 後藤先生、一つ質問させてください。本療法の有効性の指標として漏れの尿量が減るということが示されていたかと思うのですが、漏れが減ったとしても無くなるわけではなく、パッドの使用量はそんなに変わらなかったということが、先ほどの御説明にありました。実質的にQOLを改善する効果は、その漏れの尿量の減る程度でどのくらいのものであるかが感覚的に分からないので、教えていただければと思います。
○後藤参考人 御指摘のように、尿失禁のQOL評価はなかなか難しいと思います。理想を言えば、完全に治れば一番いいのですが、現在、いろいろな尿失禁の治療で、尿失禁が完全に無くなるまでの治療はないのが現状ということと、あとQOLが改善しなかったということではなく、いわゆる尿失禁量が減った症例に関しては、パッドの枚数も減っていますし、QOLの評価票でQOLもよくなっています。1日に4、5回ぐらいパッドを使う人が1枚になれば、これは患者さんにとってはかなり良くなったという感じがあって、ましてオムツを使わなければならないような方がパッドになるだけでも、患者さんのQOLはすごく良くなりますので、究極の目的は尿失禁がゼロになるのがいいのですが、現状ではまだ、ほかの治療も含めてそこまでの治療が無いのが現状かなと思います。
○一色部会長代理 分かりました。ありがとうございました。
○荒井部会長 よろしいでしょうか。宮川委員、どうぞ。
○宮川委員 前回、間葉系幹細胞の臨床意義とは何なのかということでお尋ねしましたが、私もその後、間葉系幹細胞の再生医療における、先ほど言った細胞源、細胞ソースとして非常に有効であるということは、いろいろな基礎文献も含めて全部調べて、よく理解をいたしました。先ほどの機構の話と今の後藤参考人の話を聞いてよく分かったのですが、実際に細胞源として入れた場合に、有効な間葉系細胞数、分離したのは1×○○○ぐらいなければいけないのかと思うのですが、実際、その分離した場合の個数が、この報告書の中では、多少少ないような気がするのですが、それは理由はどうしてなのか、それから、細胞数を増やすことがもう少し組織を維持をさせることにつながるのかどうか、その辺のことについて教えていただければと思います。
○後藤参考人 ありがとうございます。これも大変難しい御質問ですが、本治療は、細胞を培養するものではないものですから、なかなか自由に細胞数をコントロールすることができないので、分離したものをそのまま注入いたします。それはもちろんメリットでもあるわけですが、それが大体、○○○から○○○取れるということで、それだけ取れればこれだけの効果があるということです。実際、治験におきましては、細胞数が取れないものに関しては治験ですので使用していないものですから、非常に細胞が少なくしか取れなかった場合に効果がどうかということに関しては、なかなか難しいです。ただ、基礎実験では、10の何乗レベルで細胞数が減ると、当然効果は減りますので、おっしゃるように、もし本当に細胞数が少ししか取れないような場合があったら、ひょっとしたら効果に関しては低いかもしれないですが、エビデンスがない状況です。
○宮川委員 では後藤先生、その細胞数を増やす何か、ソースとしてどこの脂肪細胞を持ってきたらいいのかという、そういう知見はあるのでしょうか。
○後藤参考人 すみません。ございません。なので明確にはお答えできないのですが、ただ、先行臨床研究において、痩せた方はなかなか腹部から取れなくて、臀部から取るわけですが、臀部からの方が細胞数が多いということはあったのですが、それは単なる1例2例のことですので、とてもきちんとしたお答えをするほどの知見は、すみません、無いのが現状です。
○宮川委員 ありがとうございました。
○荒井部会長 ありがとうございました。松宮委員、後藤参考人に対する御質問ですね。はい、どうぞ。
○松宮委員 よろしくお願いします。間葉系幹細胞と脂肪を混注するということで、乳房再建にも使われているけども、乳房再建では混注したほうが厚みが増すという記載がありましたが、この試験も脂肪組織のみとこの幹細胞を混注する群で比較して、より効果があるというデータがあれば、非常に素直に受け取れるというか、明らかに効果があると証明されると思うのですが残念ながらそれがありません。ただ、その脂肪のみ入れるという試験は、もう20年以上前に行われていて、効果が無かったということなのですが、その試験を今回の試験のヒストリカルコントロールとして比較して、この治療法が効果があるということなのですが、その論文では、同じような対象で同じような評価法が用いられていて、その結果明らかに今回のこの治療法に比べて効果がないと言えるのか、そのような比較に足りるようなデータなのかを教えていただけると有り難く存じます。
○後藤参考人 ありがとうございます。先ほども機構から示されましたように、脂肪のみを注入する報告は、単編ではなく複数ありますし、一応、症例に関しましては、男性の前立腺手術、術後の腹圧性尿失禁ということですので、1例1例を比較したわけではないですが、十分ヒストリカルコントロールとしては比較できると思います。当初、機構との治験のプロトコールの相談のときにも、もちろんRCTをやるとか、脂肪だけ注入する群を設けるとの話はあったのですが、やはり、我々は医師ですので、明らかに効果がないと報告をされているものを、しかも脂肪吸引というかなりの侵襲を加えて、それを患者にするということは倫理以前の問題で、医師としてはできないというところもあり、そこら辺は機構とのプロトコール相談でも、やはりそれはなかなか難しいので、従来の脂肪のみの報告がこれだけあるので、これでコントロールをさせてくださいとお願いをしまして、当時は機構の方でもそれで行きましょうと、そういう経緯になりました。
○荒井部会長 北澤委員、どうぞ。
○北澤委員 北澤と申します。私は医療を受ける立場から質問をさせていただきます。今日の8ページの表1で、レスポンダーとノンレスポンダーに分けた比較の表が載っているのですが、患者として気になるのは、先生が「こういう治療がありますよ」と言われたときに、一体自分はレスポンダーになるのかならないのかというところが一番気になると思うのですが、今のところ、どういう人がレスポンダーになりそうで、どういう人がならなさそうだというところは、どのぐらい分かっているのでしょうか。
○後藤参考人 ありがとうございます。開発者としては、機構からも相当何回も聞かれた質問です。いわゆる先行臨床試験、それから治験も含めて、レスポンダーとノンレスポンダーをあらゆるデータで比較をしたのですが、残念ながら、先ほどの細胞数も含めて、あるいは患者さん側の要因も含めて、あるいは尿失禁量も含めて、○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○のが現状です。あと、言い訳になりますが、今後もしこの治療が実際に臨床でできるようになったら、もう少し症例を増やして、あるいはいろいろなタイプの患者さんを増やして、そういった中で検討できればいいかと思いますが、患者さん側にとっては、効くのか効かないのか初めに教えてくれというのは、とてもよく分かりますが、○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
○北澤委員 ○○○○○○○○○○○ということですね。
○後藤参考人 ○○○○○○○○○○○そういうことです。
○荒井部会長 ありがとうございます。後藤先生、通常は参考人の方はお話だけ頂くというか、余り質問を受けていただくことはないのですが、今日は非常に明快なお答えをいただいて、ありがとうございます。それでは、大変失礼ですが、後藤参考人におかれましては、この議題が終了するまで、別室の方で御待機をいただきますようお願いいたします。ありがとうございました。
── 後藤参考人退室 ──
○荒井部会長 それではこれから審議に入りますが、実は今日御欠席の河野委員、小西委員、森田委員から事前にコメントを頂いております。事務局からご紹介をお願いします。
○事務局 事務局から御紹介させていただきます。本議題について、河野委員より「これまでの知見から○○○○○○○○○○○○○○臨床試験の結果は対象患者に一定の効果があることを示している。○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○」というコメントを頂いております。小西委員より「間葉系幹細胞を用いる治療を承認するということは、社会的にインパクトが大きい。当該治療における間葉系幹細胞の役割とその評価について、適切に説明されるべきである。」とのコメントを頂いております。また、森田委員より「○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○評価を行うことの妥当性の説明が必要。」との事前コメントを頂戴しております。
○荒井部会長 コメントに対する回答は機構からお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 事前にコメントを頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。本日御欠席の3名の先生方から頂いたコメントについては、先ほどの私の説明と、あと後藤先生からの質疑応答の内容と重複する部分はありますが、全てまとめて機構から回答させていただきたいと思います。
 まず、本治療における間葉系幹細胞の役割について回答いたします。本治療における間葉系幹細胞の役割は、注入する脂肪組織の生着性を向上させて、より長期間維持させるものであると考えます。また、間葉系幹細胞を混和させることにより、脂肪組織が生着することについては、非臨床試験結果として、動物を用いた試験報告が複数あるほか、臨床結果においては、繰り返しですが、審査報告書2の7ページ6行目から記載のとおり、他領域ではありますが、乳房再建術時の試験報告があり、いずれも生着性が向上することが示されていました。このような背景から、腹圧性尿失禁治療の尿道注入材として、本品を用いて作成された注入材が、先生方、研究者の皆さんに注目されて治験が計画されているところです。
 次に、脂肪組織との比較を行わずに治験を単群で行った理由について、これも繰り返しで恐縮ですが、改めて御説明いたします。審査報告書2の9ページ6行目から記載がありますので、よろしければ再度御覧ください。前回の部会においても同様の御意見を頂戴しており、治験デザインは対照群があった上で適切に行われるべきという先生方の御意見については、もっともなものであると考えております。
 しかしながら、本品の評価においては、どうしても対照群を置いた試験を実施することが難しい状況にありました。まず、対照群としてもっともふさわしい既承認品のコラーゲンが既に販売中止されていました。さらに、脂肪組織のみを用いてSUI治療を行った報告については、1990年代後半頃から複数ありましたが、注入した脂肪組織が早期に吸収されて、結果は何度も繰り返して注入する必要があることが示されておりました。
 なお、先ほども御説明したとおり、尿道だけではなく、乳房組織中においても脂肪組織の吸収速度は速いことが分っています。残念ながらこのような背景から、現在においても脂肪組織のみを尿道に注入する治療は、実臨床において一切行われていないのが現状です。
 また、仮に脂肪組織のみ注入する群を治験の対照群として設定した場合ですが、本品群と同様に全身麻酔や侵襲性を伴う脂肪吸引の操作が必須となります。さらに、先ほど述べたとおり、脂肪単体の場合はすぐに吸収されてしまいますので、もし一時的に治療効果が出たとしても、長続きはしないかと思います。
 後藤先生の御発言の繰り返しになってしまうのですが、このため、仮に比較試験を行うとした場合は、治験組入れの際の患者同意説明においては、例えば対照群に割り振られた場合は、脂肪吸引の侵襲性がある上に、さらに臨床の効果がなかったり、効果が持続しない治療ですということを、患者様に情報としてお伝えせざるを得ないかと思います。このような場合、恐らくですが、治験参加を躊躇される患者さんが多数出てくるなど、予定数の患者さんが集まらなかったのではないかとも想定しております。
 以上から、本治験においては、適切な比較対照群の設定が困難でしたので、致し方なく単群試験にせざるを得なかったと考えております。
 なお、このような条件下であっても、間葉系幹細胞と脂肪組織とを混和した注入材を用いることによって、一定の有効性及び安全性が治験で示されていることから、本品は前立腺の手術後1年以上、腹圧性尿失禁に悩む患者にとって、必要な治療デバイスであると判断いたしております。機構からの回答は以上です。長くなり申し訳ありません。よろしくお願いいたします。
○荒井部会長 ありがとうございました。先ほどの参考人からの御説明も加え、内容は皆さんかなり明確に御理解いただけたようです。そのほかには、御質問、御意見はいかがでしょうか。
○永井委員 京大の永井です。内容は、今日よく分かりました。全く別角度からの質問ですが、このセル―ションという機械は、恐らく10年以上前から、細胞を取ってそれを戻すという薬事承認があったわけです。しかしながら、疾患が特定されていなかったという点であるがゆえに、保険適用もなかったわけで、自由診療の下に○○○○○○○○乳房再建、豊胸術などにも使われてきたという歴史があるわけです。
 今回、このような形で疾患と病態を特定して薬事承認が取れれば、保険適用までいくのだと思います。そこで質問ですが、以前の薬事承認事項や範囲は、今回のものにリプレースされるということでよろしいのですか。とすれば、乳癌術後の乳房再建やその他の疾患に対しては、全て適用外という整理になるという理解でよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より回答させていただきます。今回申請のありました「セル―ション セルセラピーキット SUI」という腹圧性尿失禁の名前を冠したこの品目は、SUIにしか用いることができないのですが、既承認品の「セル―ション セルセラピーキット」という適用を限定していない品目については、そのまま承認は保持されますので、自由診療下での使用は引き続きできることにはなります。
 ただ、今回のセル―ションシステムを用いた治療については、再生法の中で使用がされることになっておりますので、再生法の中で何か有害事象等が発生したら、報告がされたりとか、定期的に安全性上の確認などもしていく状況になります。
○永井委員 そうなのですか。物としては全く同じものなのに、ちょっとしたラベルの違いによって、従来の承認機器もあり、かつ、今回の腹圧性尿失禁に対する承認機器がある状態が続くということですね。
○医薬品医療機器総合機構 そうですね。再生法の中で再生治療を行うときに、承認を取得したデバイスを用いないといけないというのがありますので、それもあって適用を限定しない形で一旦承認を下ろしているという過去の背景がありました。ただ、今回については、治験の結果が得られておりましたので、はっきり用途を指定し承認を下ろす予定です。
○永井委員 頭が混乱しそうですが、分かりました。
○事務局 事務局から補足させていただきます。今回のものは、既承認のものとは別品目ということになり、確かに見た目は同じではありますが、承認番号とか、あとはラベルで表示といったところは、全て異なるものとなります。
○永井委員 同一の機器と書いてありませんでしたか。私の見間違いですか。
○事務局 そうです。製品そのものとしては同一なのですが、承認としては別の承認品目ということになります。
○医療機器審査管理課長 少し付け加えますと、物は同じなのですが、承認番号が別になって、その承認番号が医療機器の場合は、必ず製品に付けることになっていますので、それで今回の適応に使う装置・機械とそうでない従来品のものとが見分けがつくという、識別性をそこで持たせる形にはなると思います。
○荒井部会長 これは皆保険制度と、あとは機器の承認がほぼ保険と1対1の関係にある、我が国独特の背景の中で発生する話だとは思います。要するに、今回は元々機器としての承認はあったが、今回の対象についてきちっとした承認が取られ、恐らく保険も付くだろうという話です。逆に言うと、よくあるのは、先に承認はとってあるがとても狭い範囲の適用しかなく、結果的に巷では、それが保険外、適用外で広く使われているというパターンです。今回の件は、時間的な経過がその裏返しの形で少し進んだような話だと私は理解していますが、そういう理解でいいのかな。どうぞお願いします。
○医療機器審査管理課長 その理解でおりますが、さらに一言付け加えさせていただくと、ここは保険との相談にはなりますが、実際、今回の尿失禁に使う場合、これは明らかに、今回承認する新たな承認番号が付いたこの製品を使った場合に限り、きちんと保険が伴ってくるというところは、むしろ保険との間で相談して明確にしておかないと、従来品を使った形で尿失禁に使われた場合には、少しややこしい話になるので、そこの区別は付くような形で保険局と相談したいと思います。
○荒井部会長 ありがとうございます。そのほか何か御質問、御意見は。どうぞ、北澤委員。
○北澤委員 度々すみません。今回、前回から引き続きということで、どうして単群試験でなければならなかったのかという理由を御説明になったと思うので、それで理解はしているのですが、一方で、○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○もう一度教えてもらいたいと思います。
 私の素人考えでは、前回の審査報告書でプライマリーアウトカムは52週後のことになっていましたが、表の書き方はベースラインと26週後と52週後を比べていました。○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ことができなかったのかというのは疑問に思っています。それが1点目です。
 2点目は、今日、先ほど質問させていただきましたが、この治療は、○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○というのが、すごく気になります。なので、仮にこれが承認されたとして、使用成績調査として全例調査をやることになっているのですが、それをもっとここに書かれているような、いつもの調査ではなくて、もう少し○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○が分かるような、何かそれを調査できるようなデザインをあらかじめ考えて、それをやってもらうことができないのか。その点について質問します。
○荒井部会長 ありがとうございます。まず1点目からかな。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきありがとうございます。機構から繰り返しのお話になってしまうのですが、治験が、比較試験がやれれば理想的だということは、こちらも十分理解できるところなのですが、例えばシャム群を比較対照としたとしても、やはり盲検下のために脂肪吸引が必要になってしまったりとか、患者に本来やる必要もなかった付加的なリスクを与えてしまうということで、患者安全性の観点からも許容できないのかなと考えているところです。
○荒井部会長 それは先ほども説明いただいていますよね。どうぞ。
○医務管理監 機構の医務管理監の山本です。北澤委員の御指摘は非常にごもっともでして、同時比較群は、この場合は、対照群に対して非常に侵襲性が高いことをしますので、同時対照群を行うのは難しかったと思いますが、北澤委員が御提案されているようなウエイティングの群を作って、つまり、無処置のままで本当に26週間変わらないのかということを確認する。そこで、その無処置群と比較をするというやり方も、確かに医療機器では行うことがあります。
 私はこの開始時には機構にはいなかったのですが、今回それをしていないことの理由としましては、一つには、1年以上も変わっていないということで、臨床的にそれ以上特に大きく予後が変わらないことがほぼ分かっているという状況であったということ。それから、過去にコラーゲン注入とか、脂肪単体の注入とか、そういうものの臨床試験あるいはその研究の文献データがかなりそろっていて、それとの比較をすることも、特に実際にその試験の中で比較しなくても、そのデータを使うことでもある程度このものの有効性は分かるであろうという推測ができたということ。
 それから、26週間対照群を待たせるのが、実際にはなかなか難しいことであります。私も実際に3か月程度待たせて、その間例えばリハビリをして、3か月遅れで治療をするというような、そういうデザインは見たことがあるのですが、26週になりますと、付き合ってくれるかどうかと。実際問題として、対照群がどんどん落ちてしまうと、試験としては成立しない。そういう実施可能性の問題がありますので、恐らく審査チームとしては、その実施可能性の問題と、使える周辺のいわゆるワールドデータがある程度そろった状況があったということで、今回は比較試験ではなくて、単群試験を許容したということだと思っています。以上です。
○荒井部会長 ありがとうございます。実は私もこの辺の試験は縁遠くはないのですが、緩和に近い領域で全く効果的な治療がない場合に、仮に3割の人でも効くかもしれない治療法が出てきた時、そんな緩和の段階でどこまでRCTをやるべきかについては、相当突っ込んだ議論がなされています。北澤委員のおっしゃられたような、無治療群というか、経過観察する群を設ける方法は当然選択肢の一つであって、特に悪性疾患でなくて予後が長い場合には方法論として十分に成立します。ただ、今、管理監からお話があったように、臨床試験では当然試験の全体像をインフォームしなくてはなりませんから、結果として、患者さんの同意が得られず、臨床試験として成立しなくなってしまうという状況が起こるわけです。
 一方、今の北澤委員の御指摘については、簡単に「それはできっこありません」ということではなく、「何とか対照群を設けることを工夫すれば可能な方法が見いだせる場合もある」という姿勢についての貴重な御指摘として受け止めるべきと思います。簡単に、「これは無理だから単群でいいよね」という姿勢は戒めなければいけない、そういう御理解をいただければと思います。どうぞ。
○執行役員(機器審査等部門担当) 北澤先生、御指摘ありがとうございました。機構でも今後、治験の相談とか、そういうのを受けるときに、できるだけそういう観点から相談にきちんと乗って、できるものについては、比較試験をするということで相談に乗っていきたいと思っております。どうもありがとうございました。
○荒井部会長 2点目の方、効く患者さん、効かない患者さんのこの後の承認をした場合のデータ収集から、そこのところが分かってくることが、どうでしょうかという御質問だと思います。いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御意見を頂きどうもありがとうございます。○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○というところは、非常に治療を受ける側として気になるところだと思います。機構側でも、そこは本当に○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○というところは、患者背景とか、後は評価項目、副次評価項目の細かい所も含めて、後はBMIとか、年齢とか、いろいろな項目について、全て調査をしていただいたのですが、明確に、○○○○○○○○○○○○○○○○○というところが、少し分からなかったのです。
 ピボタル試験の中で調査ができていなかった項目として二つあり、お手元の資料の通し番号の36/314ページをご覧ください。こちらは前回の審査報告書の章8という所に主要成績調査の計画の内容があります。こちらの表の一番下の、主な調査、評価項目の一番下の行に、2点、残尿量と術前の尿道狭窄の有無という二つの項目があります。こちらは、ピボタルのときに確認ができていなかったパラメーターでして、残尿量が多い患者さんが尿失禁が多くなってしまったりとか、若しくは術前の尿道狭窄が非常に強い、狭窄が非常に強かった患者さんに対して、経尿道的に内視鏡を挿入することによって、むしろ尿道を開いてしまうとか、そういった可能性もあるのではないかと。今回、審査の中で考察が述べられましたことから、ピボタル試験の方では、収集できていなかった残尿量と尿道狭窄の有無については、今後のPMSの中でしっかりとデータを取っていって、そこから何か分かることがないか。その他、症例数としても、ピボタル試験の43例に比べて全例調査、さらに最低数120例と大きな規模になっておりますので、何か分かることがないかというところを調査してまいりたいと考えております。以上です。
○北澤委員 どうもありがとうございました。先ほど荒井部会長が言われたように、これは単群しかできないから単群でいいよね、とならないでもらいたいのが一番言いたいことでしたので、確認できてよかったです。ありがとうございました。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘いただいてどうもありがとうございました。
○荒井部会長 ピボタルはあくまで全体をまとめてみたら有効率○○%だったという結果であり、それで判断しようとしているわけですが、使われだせば臨床的にさらにいろいろなことが分かってきて、こういう人に使えばもっと有効性が高くなるということが分かってくるかもしれず、是非そういう方向で、進めていただきたいと思いますし、多分、学会の先生方も当然それに興味を持っておられると思います。承認後の試験については、そういった意見があったことを踏まえて、議論を詰めていただければと思います。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。
○荒井部会長 そのほか御意見はいかがでしょうか。御意見、御質問はよろしいでしょうか。この製品に関しては大変長い議論をさせていただきましたが、本当に大分詰めることができ、また貴重な御意見も頂けたと思います。それでは、ほかに御意見がなければ、議決に入らせていただきたいと思います。医療機器「セルーション セルセラピーキット SUI」について、本部会として承認を与えて差し支えないものとし、生物由来製品及び特定生物由来製品として指定しないとしてよろしいでしょうか。また、使用成績評価は、期間を5年として指定することとしてよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。御異議がないようですので、このように議決させていただきます。本件は、分科会にて報告させていただきます。これで長くなりました議題2を終了させていただきます。
 引き続き議題3、医療機器「AQUABEAMロボットシステム」の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否並びに使用成績評価の要否、を始めさせていただきます。本議題についても、議題2に引き続き、参考人として後藤先生に出席いただいています。
── 後藤参考人入室 ──
○荒井部会長 それでは、事務局から説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 よろしくお願いします。機構より御説明いたします。資料3、通し番号1ページ、専門協議委員一覧を御覧ください。本審査に当たり、3名の専門委員から御意見を頂戴しました。それでは、通し番号2ページ、審査報告書を用いて御説明いたします。以降ページ番号は、黒色で記載している審査報告書ページ番号でお伝えします。
 はじめに本品の概要について御説明します。審査報告書6ページ、図1を御覧ください。本品は前立腺肥大症に伴う物理的な閉塞が原因で生じる頻尿や尿閉といった下部尿路症状の改善に使用される医療機器です。本品はコンフォーマルプランニングユニット、ハンドピース、スコープなどで構成されます。
 本品を用いた治療の概要を御説明します。審査報告書7ページ、図2を御覧ください。本品は、術者が事前に設定した切除計画に沿って、ロボットシステムが高圧水噴射により前立腺切除を行う機器です。まず、左上マル1のように、超音波プローブを経肛門的に、治療用ハンドピースを経尿道的に挿入、固定します。次にマル2のように、超音波画像下で切除範囲を決定します。設定された切除範囲に沿って、マル3のように本品のロボットシステムが高圧水噴射による前立腺切除を行います。切除は超音波画像とハンドピースに装填されたスコープ画像によって、リアルタイムモニタリングが可能です。
 次に、本品の開発の経緯について御説明します。審査報告書8ページを御覧ください。3行目(1)開発の経緯にあるように、本邦における前立腺肥大症治療については、日本泌尿器科学会より治療ガイドラインが定められております。主な治療法は、経過観察、行動療法、薬物療法、手術療法に分けられます。積極的な治療が必要となる場合には、薬物療法が第一選択となりますが、これらが効果不十分である場合には、外科的治療が選択されます。
 本邦における標準的な外科的治療としては、TURPと呼ばれる「経尿道的前立腺切除術」をはじめとして、経尿道的手術が広く行われています。TURPは標準治療とされているものの、その技術習得が難しく、術者の経験値に依存しやすい手技とされています。本品は、ロボティクスによる前立腺切除を行うことにより、術者の手技の均てん化に寄与することを目的に開発されました。
 続きまして、海外における使用状況を御説明します。同じページの26行目の表1を御覧ください。本品は、米国、EUを含む諸外国において承認を取得しており、2021年4月までにシステムが○○○台、ハンドピースが○○○○本、スコープが○○○本が販売されております。
 本品の非臨床試験については、審査報告書10~15ページにお示ししておりますが、特段の問題は認められませんでしたので、詳細説明は割愛させていただき、以降、臨床試験成績について御説明します。
 審査報告書16ページを御覧ください。21行目ヘ項よりお示しするとおり、本申請における臨床試験成績として、海外で実施された「WATER試験」と「WATER II試験」の2試験が提出されました。まずはWATER試験について御説明します。
 概要は、審査報告書17ページ表4にお示ししております。WATER試験は、前立腺体積が30~80mLの前立腺肥大症患者を対象に、海外17施設で実施された多施設無作為化二重盲検比較です。患者は、本品を用いた治療を行う本品群116例と、標準的外科治療であるTURPを行うTURP群65例に割り付けられました。
 WATER試験の成績について御説明します。審査報告書18ページを御覧ください。1行目1)有効性評価にお示しするように、有効性主要評価項目は「ベースラインから手技後6か月のIPSSの変化量」が設定されました。「IPSS」とは、国際前立腺症状スコアのことであり、尿路症状に関する質問項目に対して、患者自身が回答することで得られるスコアです。合計点数がより高い方が重症度が高くなります。
 11行目表6でお示ししているとおり、6か月時点で本品群では平均16.9点、TURP群では平均15.1点のIPSSの改善が認められ、本品群がTURP群に対し非劣性であることが示されました。長期成績においても、36か月まで経過観察されており、両群とも同等の改善率が維持されていました。
 次に安全性について御説明します。審査報告書22ページを御覧ください。12行目2)安全性評価にお示しするように、安全性主要評価項目は「手技後3か月までに発現した有害事象のうち、治験機器又は治験手技と因果関係が疑われた有害事象の割合」が設定されました。試験結果については、同じページの22行目表21に示すように、3か月時点で本品群が25%、TURP群が40%であり、本品群のTURP群に対する非劣性が示されました。
 続いて、もう一つの海外臨床試験であるWATER II試験について御説明します。
 審査報告書25ページを御覧ください。試験概要については、10行目表26にお示ししております。本試験は、国内外のガイドラインにおいて、TURPの適応範囲外である前立腺体積が80~150mLの前立腺肥大症患者を対象とした多施設前向き単群試験です。海外16施設において101例が組み込まれました。
 本試験結果について御説明します。審査報告書26ページを御覧ください。6行目1)有効性評価よりお示ししているとおり、有効性主要評価項目は「ベースラインから手技後3か月のIPSSの変化量」が設定されました。結果は13行目表28にお示しするように、3か月時点で16.5点の改善を認めており、設定された基準を達成しました。本試験は術後24か月まで経過観察されておりますが、長期においてもスコアは維持されていました。
 次に本試験の安全性評価について御説明します。審査報告書28ページを御覧ください。22行目2)安全性評価にお示しするとおり、安全性主要評価項目は、WATER試験と同様「手技後3か月までに治験手技又は治験機器と因果関係が疑われた有害事象の発現割合」とされました。試験の結果は、定義された有害事象は45.5%に発生し、これは試験デザインの目標として設定された65%未満を達成しました。
 次に、機構における審査の概要を御説明します。本品の審査における主な論点は4点あります。一つ目の論点は、本品の臨床的位置付けについてです。審査報告書30ページを御覧ください。14行目よりお示しするとおり、本品は海外臨床試験において、本邦における標準的外科治療の一つであるTURPと同等の有効性及び安全性を有することが確認されております。また本品は、ロボットシステムによりあらかじめ設定された範囲を迅速かつ正確に切除し、切除時間短縮に伴う術者負担及び患者負担の軽減及び技術の均てん化が期待されることから、機構は、本品を前立腺肥大症患者に対する外科的治療の選択肢の一つとすることは妥当であると判断しました。
 二つ目の論点は「海外臨床試験成績の本邦への外挿性について」です。審査報告書32ページを御覧ください。1行目よりお示しするとおり、前立腺肥大症に対する治療アルゴリズムは、日本国内と海外のガイドラインにおいて大きな差はなく、本邦、欧米ともに標準的外科治療がTURPであること、TURPの治療成績に国内外で差がないこと、臨床試験の対象患者が、本邦における前立腺肥大症患者の前立腺体積を包含していること、本品の原理上、手技等の差が生じにくいと考えられること、これらを踏まえ機構は、海外臨床試験の成績を本邦における評価に用いることは可能と判断しました。
 三つ目の論点は「本品の有効性及び安全性について」です。まず有効性について御説明します。同じページ12行目1)有効性についてでお示ししているように、本品の有効性については、主要評価項目としてベースラインからのIPSS変化量が設定され、WATER試験において、本品群のTURP群に対する非劣性が示されました。また、WATER II試験においても、WATER試験と同等の改善率が示され、いずれにおいても、長期にわたり改善は維持されていました。
 審査報告書33ページを御覧ください。5行目よりお示しするとおり、機構は、海外臨床試験の対象患者が適切であること、両試験において有効性主要評価項目であるIPSSや各種関連スコアの改善又は維持が示されたことから、前立腺肥大症に対する外科治療選択肢の一つとする本品の臨床的位置付けに鑑みても、本品の有効性は担保されていると考えました。
 次に本品の安全性についてです。同じページ15行目2)安全性についてを御覧ください。両試験ともに安全性主要評価項目として、手技後3か月までに発現した治験機器又は治験手技との因果関係が疑われた有害事象の割合が評価されました。WATER試験では本品群のTURP群に対する非劣性が示され、WATER II試験においても目標基準値を達成しました。
 同じページ25行目、マル2重篤な有害事象についてを御覧ください。発現した有害事象のうち、重篤な有害事象と判断された事象として、出血を多く認めましたが、WATER試験において本品群とTURP群の発現頻度は同等でした。WATER II試験においては、止血方法の違いによる出血率の増加が認められたことから、海外においては止血方法として電気凝固術を行う手順が定められ、以後は重篤な出血率が大きく低下しています。
 審査報告書34ページを御覧ください。15行目よりお示しするとおり、海外市販後に不具合報告として直腸穿孔が報告されておりますが、こちらの原因については、不十分な麻酔による患者の体動や、経直腸的超音波プローブの不適正使用に伴うものと説明されました。以上を踏まえ機構は、本品を用いた前立腺切除後の止血処置や、直腸穿孔に関するリスクマネジメントを含めた情報提供について、市販後トレーニングの内容に反映する必要があると考えます。
 四つ目の論点は「製造販売後の安全性対策について」です。同じページ32行目からお示ししている(4)製造販売後の安全対策についてを御覧ください。本品が高圧水噴射でロボットシステムによる前立腺切除を行う本邦初の治療であることから、前述した関連学会と連携し、本治療の適応基準や術者要件等を含めた適正使用指針を策定の上、トレーニング等により本品の適正な使用に関する情報提供を行う必要があると判断しました。そのため、適正使用指針の遵守を義務付けるため、承認条件を付すこととしました。
 最後に、本品の使用成績評価について御説明します。審査報告書35ページを御覧ください。28行目表39にお示ししているのが、申請者が計画している使用成績調査案になります。機構は、本邦における本品の使用実績がないことから、国内での臨床使用実態下において、期待する有効性が得られること、及び想定されていない本品特有の有害事象の有無を確認し、必要に応じて追加のリスク低減化措置を講ずる必要があると判断しました。使用成績調査案としては、症例数を100例とし、海外臨床試験の成績を踏まえ、調査期間は追跡調査期間12か月を含む計3年9か月が妥当と判断しました。
 以上の審査を踏まえ、機構は、審査報告書39ページに記載している使用目的にて、本品を承認して差し支えないと判断し、本医療機器・体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断しました。本品は、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。なお、薬事分科会では報告を予定しております。機構からの報告は以上です。御審議のほど、よろしくお願いします。
○荒井部会長 後藤参考人から追加の御説明を頂けますか。
○後藤参考人 よろしくお願いします。前立腺肥大症に対する外科的治療は、近年様々なオプションが開発されまして、本邦でも多岐にわたる治療選択肢があります。大まかに言えば、肥大した前立腺腺腫を切除する手術と、切除ではなく前立腺腺腫を熱などで縮小させる低侵襲治療があります。前立腺の切除手術は、尿道から内視鏡を挿入して電気メスで切除する、いわゆる経尿道的前立腺切除術TURPが、現在でも標準的手術すなわちゴールドスタンダードとなっていますが、電気メスの代わりにレーザーを用いて前立腺を核出、すなわちくり抜いたり、あるいは蒸発させたりする手術が、オプションとして保険適用となっています。
 なお、前立腺に針を刺してマイクロ波などで熱を加えて組織を壊死させ、前立腺を縮小する手術は、低侵襲治療に位置付けられますが、治療効果は薬物治療よりは優れるものの、TURPと比較しますと自覚症状改善も尿の勢いなどの他覚所見もTURPよりは劣ります。
 今回申請された治療は、臨床試験において標準治療であるTURPと同等の効果が得られることが示されたもので、合併症についてもTURPと同等であると考えられます。
 なお、80mL以上、特に100mLを超えるような前立腺肥大については、どの泌尿器科医でも一定の水準の手術ができるわけではなく、開腹手術が行われることがあり、大きな前立腺肥大ではTURPにしろ、開腹手術にしろ、出血量も多くなり、輸血が必要となることが少なくありません。合併症の発生頻度も高くなります。
 標準治療であるTURPについて述べますと、若手の泌尿器科医にとってのTURPは一つの登竜門であり、できるだけ完全に前立腺を切除するかどうかという腕を磨くように努力します。しかし、ある程度のラーニングカーブが必要で、実臨床では術者の技量により、手術成績が異なるのが現実です。ただ大きい前立腺肥大、今回言われているような80mL以上の前立腺のTURPは、熟練の技術が必要で、前述のように、手術時間も長くなり、出血量、合併症の発生率も高くなり、小さい肥大前立腺の手術とは一線を画します。おそらく80mLを超えるような前立腺のTURPは、経験の浅い医師の場合には2時間以上掛かる場合もあり、時間が延びれば出血量も増え、輸血も必要となります。
 今回の技術は、前立腺のサイズにかかわらず、特に80mL以上の大きな前立腺でも、10分以内に必要量の前立腺腺腫を切除できるというのは正直驚きです。また、術者の技量にかかわらず、均一な手術ができることも優れた点です。これらは患者にとって極めて有用なことです。しかし泌尿器科医にとっては技術を磨く部分がなくなってしまい面白くないということにはなります。しかしこれが技術革新すなわちイノベーションであり、医学の治療の進歩の歴史を見れば仕方のないことだと思います。
 泌尿器科領域で最近の例を挙げますと、前立腺癌に対するダヴィンチを使ったロボット手術ですが、従来の開腹手術では通常1L以上の出血があり、輸血を行うのは通常のことでしたが、ロボット手術になって出血量は平均200~300ccとなり、通常輸血は不要となりました。
 今回の技術は臨床試験の結果を見る限り、従来の標準手術であるTURPと、成績、合併症頻度は同等であり、前述のように手術時間の短かさ、誰でも均一な手術ができるという点は驚くべき進歩であり、このような技術が従来の技術に置き換わっていくのは我々泌尿器科医にとっては仕方のないことであると思いますが、患者さんにとっては福音であると思います。以上です。
○荒井部会長 ありがとうございます。それでは委員の方々から御質問、御意見はいかがですか。
○大隈委員 関西医大の大隈です。後藤先生にお伺いします。海外の有害事象の報告がありますが、このロボットを使ったとしても、特に多い出血が1%前後を見られておりますが、これが従来のタップと比較して改善してもよさそうな感じもするのですが、同じぐらい出ているのと、結構頻度的にも低くはないと思いますが、これについて今後改善する方法がもしあれば教えていただければと思います。
○後藤参考人 80cc以下の前立腺に関しては、これは出血量も実は術者によって全然違ってきますのでなかなか一概には言えないのですが、ここに示されているような80cc以下の前立腺肥大症に対する出血量の頻度は、そんなに多くないと思います。出血量を下げようと思えば、大きい前立腺であるように必ず切除した後に内視鏡を入れて止血をすれば頻度は減らせると思います。
 もう一つ、80cc以上の大きな前立腺に関しては、輸血率が10%ぐらいと書いてありますが、しかも後で止血をせずに10%と書いてありますが、これは非常に低くて、80cc以上の前立腺肥大症をTURPの従来の手術でやりますと、特に100cc以上でしたらおおむね輸血が必要になると思います。そういう意味では、10%というのは大きい前立腺に対する輸血率としては低いですし、ここに書いてあるように、必ずこの手術を行った後で内視鏡を入れて止血をすれば、更に輸血率が減るのであれば、これもすごく出血量が減るという印象を持ちました。
○大隈委員 そういう意味では、このロボットを使ったとしても、出血に対しては術後に十分注意しておく必要があると考えてもよろしいのですか。
○後藤参考人 やはり前立腺を切除するわけですので、出血がないということはないのではないかと思います。
○荒井部会長 機構からお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 機構から追加で御発言させていただきます。今御質問いただいた内容に関しては、後藤先生が御説明いただいたように、実際起こっている有害事象の出血率は既存の同等の治療と比べても非常に低い。あとはWATER II試験で輸血量が先ほど10%程度あったというお話ですが、今回WATER II試験においては止血のプロトコールが焼灼止血を行うプロトコールになっていなかったということで、ただ、バルーンによる圧迫止血のみが行われるプロトコールになっていました。
 WATER試験においては術者の判断で、焼灼止血を行う手順になっていたのですが、WATER II試験ではそれが行われなかったということで、WATER試験と比べて少し出血率が増えてしまった。増えたと言っても、ほかの治療と比べて低いのですが、ただその結果を踏まえて、現在海外市販後では全て治療後に焼灼止血を行うという止血手順が定められています。
 実際、本邦で使用される際もその手順を用いて止血されることになっています。海外市販後の臨床試験ではそのプロトコールを導入した後は約2,000例の海外市販後調査で、重症の出血率が0.8%まで低下したというデータがありますので、本邦においても同様の焼灼止血を含めた止血手順を使用方法として定めるように、それは市販後トレーニングや適正使用指針等含めて整備いただくように予定しております。
○大隈委員 ありがとうございます。そうしますと、やはりそういう焼灼術を行えるような病院に限られるのか、比較的そういった技術を持った病院は多いのか、その点はいかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 それはおっしゃるとおりです。実際その辺りも少なくともそういった焼灼止血で止血の対応ができるような施設であったり、術者であったりとか、その辺りの要件も適正使用指針の中である程度整備いただくようにはなったと思います。
○大隈委員 分かりました。ありがとうございます。
○荒井部会長 そのほかの委員からはいかがですか。
○梅津委員 エンジニアリングからの質問を一つさせてください。これは切除シミュレーション試験をジャガイモを使ってやっているのですが、その結果、従来の例えばレーザーみたいなものでやったものと、切除面の表面の性状は大分異なるのですか。
○医薬品医療機器総合機構 今回ジャガイモを用いられた理由としては、ジャガイモの密度が、人体の前立腺組織の密度に非常に近いという理由があってジャガイモが用いられた。要は、全く違うものですが、与えたエネルギーに対して出る影響が非常に近いものとして採用された。
○梅津委員 密度のところで言っているわけですね。
○医薬品医療機器総合機構 そうです。
○梅津委員 そうしますと、表面の粗さや表面性状については分からないということですか。
○医薬品医療機器総合機構 表面性状に関しては、性状に関しては組織とはそもそも違いますので、その辺りは動物試験等含めて評価をしていただいていて、動物試験の中で実際に本品を使用して使用模擬をした中で、組織学的にどのような影響があるかという評価が動物の方で見られると思います。
○梅津委員 分かりました。最後にもう一つだけ、これはコメントですが、高圧の水の噴射と書いてありますが、この報告書のどこを見てもそれが何キロパスカルというような定量的な数値が出ていないのです。本当は安全性とか有効性をきちんと言うときにどのぐらいの圧力なのかとかをどこかに記入しておいたほうがよろしいのではないかという気がしました。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。
○荒井部会長 梅津先生、ありがとうございます。今の点は何も言いようがないみたいですね。
○医薬品医療機器総合機構 今の報告書の中にはないので。
○荒井部会長 ほかの委員の方から御質問、御意見はありますか。よろしいですか。それでは議決に入らせていただきます。医療機器「AQUABEAMロボットシステム」について、本部会として承認を与えて差し支えないものとし、生物由来製品及び特定生物由来製品としては指定しないということでよろしいですか。また使用成績評価は、期間を3年9か月として指定することとしてよろしいですか。
 ありがとうございます。御異議がないようですので、このように議決させていただきます。本件も分科会にて報告をさせていただきます。これで議題3を終了します。後藤先生、長時間本当にありがとうございました。
── 後藤参考人退室 ──
○荒井部会長 引き続きまして、議題4、医療機器「RECELL自家細胞採取・非培養細胞懸濁液作製キット」の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否並びに使用成績評価の要否、を始めさせていただきます。本件については、参考人として大浦紀彦先生と池田弘人先生に、Webシステムを用いて御出席いただいております。
── 大浦参考人、池田参考人入室 ──
○荒井部会長 それでは事務局から御説明をお願いします。
○事務局 議題4につきまして、事務局より説明いたします。資料4のファイルをお開きください。本議題では医療機器「RECELL自家細胞採取・非培養細胞懸濁液作製キット」の高度管理医療機器、管理医療機器、又は一般医療機器の指定の要否、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品、及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、並びに使用成績評価の指定の要否について、御審議をお願いいたします。
 ファイル1ページを御覧ください。既存の一般的名称のいずれにも該当しない医療機器に対しては、部会の御意見を聞いて、新たに一般的名称を新設することになります。今回、「RECELL自家細胞採取・非培養細胞懸濁液作製キット」に対応して新設を予定する一般的名称は、「自家皮膚細胞移植用キット」です。定義は「創傷治癒等を目的として、自家皮膚由来の細胞懸濁液を作製するキットである。酵素、トレー、噴霧器等が含まれる場合がある。」としております。本品はクラスIII、高度管理医療機器に指定されるべきものと考えております。一般的名称の新設に関する説明は以上となります。
 次に、審議品目の概要につきまして、機構から説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。まず資料4-2専門協議委員一覧を御覧ください。本審査に当たり、資料にお示しする3名の専門委員の御意見を頂きました。
 それでは、次のページから始まります審査報告書を御覧ください。以降、審査報告書下部中央に記載の黒色のページ番号、及びページの左側に記載されております行番号を用いて御説明いたします。
 はじめに、本品の概要を御説明いたします。審査報告書6ページを御覧ください。1行目、審議品目の概要に示しますとおり、本品は自家皮膚由来の非培養細胞懸濁液の適用による創傷治療を行うことを目的として、患者から採取した皮膚切片から細胞単位への分離を行うための医療機器です。ユニット本体、トリプシンバイアル、滅菌水バイアル、緩衝液バイアル、スプレーノズル、採液針から構成されます。患者から採取された皮膚切片は、トリプシン溶液に浸した状態で15分から20分間加温処理されます。その後、皮膚切片を緩衝液により洗浄し、メス等により表皮細胞を削り取ります。このようにして調整された細胞懸濁液をシリンジ中に吸引し、スプレーノズルを用いて創傷部に噴霧します。本品で作製した細胞懸濁液による治療を、以降「RECELL法」と呼びます。
 次に、本品の開発の経緯について御説明いたします。審査報告書7ページを御覧ください。18行目開発の経緯に示しますとおり、自家植皮が必要となる創傷は、大きく急性創傷と慢性創傷に分類することができます。急性創傷の一つとして熱傷があり、様々な要因により発生します。従来の治療法の一つである植皮においては、熱傷の創傷部位を覆うために、患者自身の別の部位から採取した健常皮膚が用いられます。健常皮膚の採取を「採皮」と言い、この部分は患者にとって新たな傷となります。
 審査報告書8ページを御覧ください。2行目から示しますとおり、現在の植皮においては、採皮面積を最小化し侵襲性を低減するために、採取した皮膚切片に細かい切れ目を入れメッシュ状にして面積を拡大する、網状分層植皮が行われています。網状分層植皮ではメッシュ状の加工を行うことで、シート上の植皮と比較して、最大6倍程度の広い植皮面積を確保できます。しかし、広範囲熱傷の場合は、それでもなお採皮面積が不足する場合があることが課題として指摘されています。一方本品は、より少ない採皮面積により、植皮と同等の上皮化を目指すことをコンセプトに開発された製品です。
 審査報告書9ページを御覧ください。2行目から示しますとおり、本品を用いた治療であるRECELL法では、1㎠の採皮により、最大80㎠の広い創傷部に適用することが可能です。III度熱傷のような深い創傷の場合には、網状分層植皮と併用する必要がありますが、その場合にも、植皮単独の場合よりも網状分層植皮の拡大倍率を上げることができ、採皮面積の削減が期待されます。図2に示しますとおり、RECELL法は患者自身の創傷部を細胞培養環境として利用する方法であり、創傷部の表面で細胞がコロニーのように増殖し、上皮化を促す方法であると言えます。
 続きまして、海外における使用状況を御説明します。審査報告書9ページから10ページにあります表3を御覧ください。本品の外国での許認可状況に示しますとおり、本品は2018年に米国にて承認され、2021年11月時点で米国、欧州を含む国や地域で使用され、およそ8,500キットが販売されています。
 本品の非臨床試験については、審査報告書10ページから17ページにお示ししておりますが、特段の問題は認められませんでしたので、続きまして臨床試験成績について御説明いたします。審査報告書17ページを御覧ください。12行目ヘ項に示しますとおり、本品の臨床試験成績として、海外で行われた二つの臨床試験成績が提出されました。まず、一つ目の海外臨床試験であるCTP001-5試験について説明します。CTP001-5試験は、深達性II度熱傷患者を対象に、同一患者の異なる部位における比較試験として、101例を対象として実施されました。同じ大きさの2か所の創傷部位を選択した後に、無作為に割り付けされ、RECELL法又は対照法である網状分層植皮により、それぞれ治療されました。また、RECELL法の採皮部に対してはRECELL法が適用されました。主要評価項目として「治療部位の4週後の治癒を達成した患者割合」及び「採皮部位の1週後の治癒を達成した患者割合」が設定されました。
 次に、試験の結果について御説明します。審査報告書20ページを御覧ください。2行目主要評価項目の結果に示しますとおり、一つ目の主要評価項目である「治療部位の4週後の治癒を達成した患者割合」は、RECELL法で94.3%、対照法で100%であり、事前に設定した非劣性マージンを満たさず、RECELL法の対照法に対する非劣性は示されませんでした。一方、二つ目の主要評価項目である「採皮部位の1週後の治癒を達成した患者割合」は、RECELL法で22%、対照法で10%であり、対照法に対する優越性が示されました。
 続いて、二つ目の海外臨床試験であるCTP001-6試験について説明します。審査報告書23ページを御覧ください。35行目から始まるCTP001-6試験の項に示しますとおり、CTP001-6試験は、III度熱傷患者を対象に、同一患者の異なる部位における比較試験として、30例を対象として実施されました。同じ大きさの2か所の創傷部位を選択した後に、片方は対照法である網状分層植皮にて、もう片方は網状分層植皮とRECELL法を併用した方法にて、それぞれ治療されました。なお、RECELL法と併用する場合の網状分層植皮は、対照の網状分層植皮よりも高い拡大倍率にて実施されました。有効性主要評価項目として「8週以内に治療部位の治癒を達成した患者割合」及び「採皮面積の拡大倍率」が設定されました。
 次に、本試験の結果について御説明します。審査報告書26ページを御覧ください。4行目主要評価項目の結果に示しますとおり、一つ目の主要評価項目である「8週後までの治療部位の治癒を達成した患者割合」は、RECELL法で92.3%、対照法で84.6%であり、対照法に対する非劣性が示されました。二つ目の主要評価項目である「採皮面積の拡大倍率」においては、対照法に対するRECELL法の優越性が示されました。
 その他、参考として、本邦の医師主導試験の結果が提出されました。概要は審査報告書29ページ表18に示しております。8例を対象として実施され、機器に関連する有害事象はなく、日本人に特有の有害事象も見受けられませんでした。
 次に、機構における審査の概要を御説明します。主な論点は四つあります。一つ目の論点は、本品の有効性・安全性についてです。審査報告書30ページを御覧ください。9行目臨床試験に基づく本品による治療の有効性及び安全性の評価についてに示しますとおり、提出された海外臨床試験のうち、深達性II度熱傷の試験の主要評価項目である「治療部位の4週後の治癒を達成した患者割合」において、対照法に対する非劣性を示すことができませんでした。この原因として、細胞毒性を有する薬剤であるスルファジアジン銀含有製剤の併用が行われていたことが推測されたため、申請者において当該薬剤が併用された4症例を除いて解析が行われ、その結果としてRECELL法の対照法に対する非劣性が確認されました。機構は、深達性II度熱傷に対して、既存の創傷被覆材の成績が80%程度と報告されていることを踏まえると、本品の94%という成績は、既存治療と同等以上の有効性を示唆するものであると考えます。また、事後的な解析ではありますが、細胞毒性のあるスルファジアジン銀の併用により、本品の効果が減弱するという考え方は合理的なものであり、米国及び欧州と同様に、銀含有の外用剤及び創傷被覆材の併用を避けるよう注意喚起を行い、適正使用を図るとする対応は適切と考えます。また安全性に関して、本品に特異的な有害事象は認められず、いずれの事象も継続した治療により回復しています。さらに、提出された2試験の採皮部の治癒の結果は、本品の最大のメリットである「広範囲の熱傷に対して比較的小さな採皮面積にて治療可能であること」を示すものであり、総合的に考えて、本品を臨床現場に導入する一定の意義はあると判断しました。
 二つ目の論点は、臨床試験成績の本邦への外挿性についてです。審査報告書31ページを御覧ください。26行目臨床試験成績の本邦への外挿性についてに示しますとおり、医療環境の差については、使用する機器や標準的な治療に日米の間で差はないことを確認し、本品使用後に用いるドレッシング材においても、本邦で使用可能な製品が存在することを確認しています。また、二つの海外臨床試験において、民族間に有効性及び安全性に差はないことを確認しています。さらに、本邦の医師主導試験において、日本人に特有の有害事象を認めなかった点も踏まえ、海外臨床試験の結果を本邦へ外挿することは可能であると判断しました。
 三つ目の論点は、本品の使用目的についてです。審査報告書35ページを御覧ください。19行目本品の使用目的又は効果についてに示しますとおり、機構は、本品の有効性及び安全性が明確となった「急性熱傷」及び「採皮部」を適応として使用目的に掲げることが妥当と考えました。加えて、本品の作用や使用方法をより適切に表現するために、「自己再建」については「治癒促進」とすること、「必要に応じて真皮再構築」については「原則として自家植皮を併せて実施」とすることが適切と考えました。これらを踏まえ、後に述べる使用目的に改訂することが適切と考えました。
 最後の論点は、製造販売後安全対策についてです。審査報告書36ページを御覧ください。3行目製造販売後安全対策についてに示しますとおり、適正使用のための注意喚起については、論点1で述べましたとおり、銀含有の外用剤及び創傷被覆材の併用により、治療部位の治癒遅延が起こるため、使用しないことを注意喚起することとしました。また、提出された試験においては、いずれの有害事象もその後の治療により治癒しており、本邦の医師主導試験においても、特段注意すべき事象は発生していないことを踏まえ、市販後の使用成績調査は不要と判断しました。また、難易度の高い手技ではないこと、非臨床試験において細胞懸濁液作製の再現性が確認されていることを踏まえ、使用施設や医師に関する特段の要件、適正使用指針を定める必要はないと判断しました。
 以上の審査を踏まえ、機構は、改定後の使用目的にて、本品を承認して差し支えないと判断し、本医療機器・体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断しました。審査報告書39ページを御覧ください。24行目から示しますとおり、改訂後の使用目的は、「本品は、患者から採取した皮膚片から非培養細胞懸濁液を作製し、急性熱傷及び採皮部を対象として創傷部の治癒促進を行うことを目的とする。なお創傷が皮下組織まで及ぶ場合は、原則として自家植皮を併せて実施すること。」となります。本品は、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。なお、薬事分科会では報告を予定しております。機構からの報告は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○荒井部会長 それでは、Webとつながっていると思います。参考人の大浦先生から、追加の御発言ございますでしょうか。
○大浦参考人 形成外科の大浦です。形成外科の観点からコメントいたします。一般的に熱傷創は、早期に上皮化すればするほど瘢痕化、醜状瘢痕になりにくいとされています。ですから本品は、創傷治癒を促進するということが期待できますので、熱傷の創傷に非常に良いのではないかと思っております。
 本品の使用が期待できるケースとして四つ挙げたいと思います。一つが、自家表皮細胞を使用したジェイスという製品があるのですが、これは培養するのに3週間程度掛かります。ということは3週間の間、このジェイスという製品は使えなかったわけなのですが、本品を使えば、その3週間の間のつなぎとして使用が可能になる可能性があるということであります。
 もう一つは、顔面や手掌の熱傷に関しては、比較的保存的に見ることが多く、あえて植皮術を施行するということをしない場合があったのですが、そういった場合に、保存的治療を長く行い過ぎることで機能障害を来すことがありました。そういった部位にも、本品は適用になると思います。
 3番目として、小児においてできるだけ小さい部位から採皮したいというのがあります。donorが小さいというメリットを本品ではいかすことが可能です。
 4番目として、高齢者に対する適用です。高齢者は広範囲熱傷では、熱傷面積と深達度と年齢によってPBIという予後指標が使用されます。高齢であるほど同じ熱傷でも予後が悪いということが分かっています。分層採皮創も熱傷と同等の創であるために、採皮創が小さな本品目は、高齢者の予後を改善する可能性があると考えております。以上です。
○荒井部会長 大浦先生、ありがとうございます。それではもう一人、参考人として御出席していただいております池田先生、御発言いただけますでしょうか。
○池田参考人 帝京大学の池田です。私の方からは、救急領域で診療することになる広範囲熱傷の場合のメリットについてコメントしたいと思います。広範囲熱傷は自家植皮をする皮膚が不足することが大きな問題なのですが、この不足を補って治癒を促進するという意味で、大変大きなメリットがあると思います。創傷被覆を早めるものと、それから自家皮膚植皮の皮膚を補うものとして、様々なものが開発されているのですが、それの中でこのRECELLは、自分の皮膚を使うということで、アレルギー反応やほかの副次的な拒絶反応のようなものが起きる可能性がないということが一つ。
 そして創傷被覆を早めることによって、植皮をすることによって治癒が遷延する場合に起きる様々な合併症、例えば広範囲熱傷の場合は創感染から全身の感染症になって命の危機が訪れたり、たとえ治っても治癒遷延のために創自体が瘢痕化し、非常に醜い瘢痕になったり機能障害を起こすような瘢痕になって、更なる手術が必要になったりすることが避けられる可能性があって、大変そういう意味で魅力的であると思います。ひいては入院期間の短縮や再手術の回避も期待できると思います。以上です。
○荒井部会長 ありがとうございました。それでは、委員の方々から御質問・御意見いかがでしょうか。はい、どうぞ。
○高松委員 日本薬剤師会の高松です。この臨床試験のときに、スルファジアジン銀については、やはり注意喚起をされて試験をしたのだけれど、30ページに書いてあるように、3例ほど使用されていたという結果が出ておりますが、それはそれで間違いないですか。注意喚起をした上でも、こういうことは起こってしまうのですか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。こちらは米国で試験が開始された当初には、このスルファジアジン銀が本品の有効性に不利に働くということが分かっておりませんでしたもので、初めは禁止に関する事項が定められていなかったものになります。
○高松委員 では、しっかり注意喚起していただいて、承認された後に使用される場合には、患者さんに不利益にならないようにしていただければと思います。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。
○荒井部会長 そのほかの委員の方々、いかがでしょうか。先ほど委員の方々に現物が回ったかと思いますが、本当にいかにも簡単だし、随分軽いですね。よろしいですか。ありがとうございます。それでは特に御質問ないようですので、このまま議決に入りたいと思います。よろしいでしょうか。
 まず名称の方です。一般的名称「自家皮膚細胞移植用キット」を高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器としては指定しないこととしてよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。次に医療機器「RECELL自家細胞採取・非培養細胞懸濁液作製キット」につきまして、本部会として承認を与えて差し支えないものとし、生物由来製品及び特定生物由来製品としては指定しないとしてよろしいでしょうか。また、使用成績評価は不要としてよろしいでしょうか。いかがでしょう、よろしいですか。
 御異議がないようですので、このように議決させていただきます。本件は分科会にて報告をさせていただきます。
 それでは、これで議題4を終了いたします。参考人として御参加いただきました池田先生、大浦先生、ありがとうございました。
── 大浦参考人、池田参考人退室 ──
○荒井部会長 よろしいですか。それでは先に進ませていただきます。議題5です。医療機器「エキシマレーザTurboカテーテル」の使用成績評価の調査期間延長の可否、並びに医療機器「エキシマレーザTurbo Powerカテーテル」の使用成績評価の要否についてに入らせていただきます。事務局の方から説明をお願いします。
○事務局 事務局より議題5について御説明いたします。資料5を御覧ください。本議題では、前世代品「エキシマレーザTurboカテーテル」の使用成績評価の調査期間延長の可否及び次世代品「エキシマレーザTurbo Powerカテーテル」の使用成績評価の要否について御審議いただきます。
 1ページを御覧ください。「エキシマレーザTurboカテーテル」の概要となっております。申請者はSpectranetics Corporation、選任製造販売業者は株式会社フィリップス・ジャパンです。本品は、大腿膝窩動脈に留置されたステント内に発生した再狭窄又は再閉塞病変への経皮的血管内治療に用いるレーザ式血管形成術用カテーテルです。
 本品の使用成績評価の要否については、平成30年12月の部会で御審議いただき、調査期間は準備期間8か月、症例登録期間1年、追跡調査期間1年及び解析期間4か月の計3年間とし、200例を登録目標症例数とすることとなりました。本品は平成31年1月23日に製造販売承認を取得したため、令和4年1月22日まで調査の予定でしたが、製造元買収による選任製造販売業者の変更、構成品の一部製造中止及び新型コロナウイルス蔓延の影響により、保険収載まで約1年3か月を要し、症例登録が当初の計画どおりに進まなかったことから、今般、調査期間延長についてお諮りいたします。
 2ページを御覧ください。準備期間は実際に要した期間として7か月の延長となります。症例登録期間は登録施設拡大の見込みや次世代品の導入、新型コロナウイルス感染症発生の影響等を考慮し、当初の1年から3年8か月へ延長となります。追跡調査期間は当初と変更なく1年、解析期間は当初の4か月から解析項目等を考慮し6か月となり、合計で3年5か月の延長となります。以上の延長により、当初指定の際に想定された症例登録の見積り200例程度を登録、評価することが可能と考えております。
 続いて、4ページを御覧ください。「エキシマレーザTurbo Powerカテーテル」の概要となっております。申請者は株式会社フィリップス・ジャパンです。先ほどの前世代品は、全周性にレーザ照射を行うために手動でカテーテル先端の方向を変更しますが、本品はカテーテル先端をモーターによる自動回転とすることで操作を簡便化した製品です。使用目的についても前世代品と同一です。本品は前世代品と実質的に同等であることから、前世代品と同様の考え方に基づき、本品についても使用成績評価を指定し、前世代品の使用成績評価に本品も含めて行うことが妥当と考えております。また調査期間については、前世代品の使用成績評価の調査期間延長をお認めいただいた場合、その残余期間に相当する3年5か月とすることが妥当と考えております。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○荒井部会長 御質問、御意見はいかがでしょうか。よろしいですか。特に御意見がないようでしたら、このまま議決に入らせていただきたいと思います。医療機器「エキシマレーザTurboカテーテル」の使用成績評価の調査期間を6年5か月として、指定することとしてよろしいでしょうか。また、医療機器「エキシマレーザTurbo Powerカテーテル」の使用成績評価の調査期間を3年5か月として指定することとしてよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。御異議がないようですので、このように議決させていただきます。本件も分科会にて報告させていただきます。これで議題5を終了いたします。
 早速ですが議題6に入らせていただきます。議題6は医療機器「Brainsway TMSシステム」の使用成績評価の調査期間延長の可否についてです。事務局から説明をお願いします。
○事務局 事務局より議題6医療機器「Brainsway TMSシステム」の使用成績評価の調査期間延長について御説明いたします。
 資料6を御覧ください。1ページ上段は「Brainsway TMSシステム」の品目概要をお示ししています。申請者とありますが、これは既に承認されておりますので、承認取得者、製造販売業者になりますが、これはセンチュリーメディカル株式会社です。本品は既存の抗うつ剤治療で十分な効果が認められない成人のうつ病患者を対象に、パルス磁場を用いて脳皮質の局所領域に電流を誘導し、ニューロンを刺激することにより治療を行う経頭蓋治療用磁気刺激装置です。
 本品の使用成績評価の要否については、平成30年12月の医療機器部会で御審議いただき、調査期間を3年として300例を目標に使用成績調査を実施することとされております。本品は平成31年1月21日に承認されておりますので、令和4年1月20日までの調査期間の予定でしたが、承認条件として関連学会が作成した適正使用指針の遵守が求められておりますところ、当該指針の改訂に時間を要しており、現段階でまだ保険適用されておらず、使用成績調査の症例登録も開始されていない状況です。こういった状況を踏まえ、当初3年の調査期間で使用成績評価の指定をしておりますが、これを更に3年延長させていただきたいと考えております。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○荒井部会長 委員の方から質問が出る前に、これは、あと3年延ばせば本当に大丈夫なのですか。その辺の、要はコロナの影響があり、ほかの製品に関しても、こういった承認後の調査に関しては、これから延長が出てくる可能性があると思いますが、そこのところの読みというか、どうなのでしょうか。少し不安になったのでお聞きするのですが。
○事務局 これは、企業から聞いているところですと、現在、rTMS適正使用指針、先行品がありますのでそれを対象とした指針が既にあるのですが、これは日本精神神経学会に作っていただいております。これに本品の承認内容を盛り込む改訂を行っていただく方向で、企業から学会に働き掛けていると聞いてはいるのですが、少し調整に難渋していると聞いております。当省からも学会に直接状況を確認し、その状況をきちんとグリップしながら見ていきたいと思っております。
○荒井部会長 ありがとうございます。実は、その台詞をこの場で言っていただきたかったので。どうしても企業側から学会にこのような適正使用指針作成を依頼する場合、学会側が使いたくてウズウズしているような場合はすごく早いのですが、逆の場合は、結構面倒な作業なので学会がその気になってくれないとなかなか動かないことがあります。という訳なので、企業だけ急かしてもダメな場合もあり、行政の立場としてはどこまで口を挟めるかという問題もあるでしょうが、その辺に御配慮をいただければと思う次第です。ただ倍にしたから次も3年でいいかというと、蓋を開けてみたらまた駄目ということがあってもいけないですし、その辺を是非検討していただければと思います。お願いいたします。
○医療機器審査管理課長 かしこまりました。実際、私も学会とはリモートで1回、どういった事情で少し時間が掛かっているかというか、思うような改訂ができていないのかといったことを確認しながら、こちらとしては承認した立場で医療上必要なものとして審議会で御評価いただいておりますので、なるべく速やかに臨床応用、実用化できるよう働き掛けを続けたいと思います。
○荒井部会長 ありがとうございます。委員の方から特に御意見ございますか。
○永井委員 永井です。単純な質問ですが、それは公式な文書で学会に依頼することはできないのですか。
○医療機器審査管理課長 少し堅い言い方になってしまうのですが、一応、品目の御審議をいただいた後に、承認条件の中で作ることが求められている指針ですので、基本的には企業に、学会への働き掛けを含めて課せられた作成となりますので、基本はそこを中心に動かしていくことになりますが、我々としてはそれに対して強制はできない中でも関与していくという意味で、文書というよりもまずは努力というか粘り強くやっていきたいというところで、その先また埒が明かなければどのような方法があるか、先生方からも御助言をいただきながら考えていきたいと思っております。
○荒井部会長 ありがとうございます。そのほか御意見はよろしいでしょうか。それでは、これも議決に入らせていただきます。医療機器「Brainsway TMSシステム」の使用成績評価の調査期間を6年として指定することとしてよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。御異議がないようですので、このように議決させていただきます。本件は分科会にて報告させていただきます。これで議題6を終了し、議題7に入らせていただきます。
 議題7は、医療機器の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定及び特定保守管理医療機器の指定の要否についてです。では、事務局から説明をお願いします。
○事務局 事務局より御説明いたします。資料7を御覧ください。既存の一般的名称のいずれにも該当しない医療機器があり、新たに一般的名称を新設する際には、「高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器への指定」及び「特定保守管理医療機器に指定するか否か」について御審議いただいております。
 今回は医療機器の承認に際し、一般的名称の新設が必要と考えられるものが、議題4にて御審議いただいたもののほかに5品目あります。
 まず1ページを御覧ください。新設予定の一般的名称は「中心循環系血管内近赤外線カテーテル」です。本名称の定義は「近赤外分光法を用いて中心循環系血管内を診断するカテーテルをいう。カテーテルの先端近位部で近赤外線を照射収集する。」です。本品はクラスIVの高度管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、本品は保守点検を行う必要がある医療機器ではないため、特定保守管理医療機器の指定は不要と考えております。
 続いて4ページを御覧ください。新設予定の一般的名称は「血管内近赤外線画像診断装置」です。本名称の定義は「血管内から血管壁の脂質成分等を検出するために設計された近赤外線画像診断装置をいう。本品には血管壁の脂質成分等の情報を表示するためのソフトウェアパッケージが含まれる。生成した近赤外線を標的部へ照射し、その組織成分の特性に基づいて得られる吸収曲線から、近赤外分光法によって、血管壁の脂質成分等の画像を生成するために使用する。」です。本品はクラスIIの管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定については、必要と考えております。
 続いて7ページを御覧ください。新設予定の一般的名称は「体内固定用肋骨髄内釘」です。本名称の定義は「金属製等のロッドをいう。肋骨の髄内に挿入し、骨折又は病的状態にある骨の両端を正しい位置に保持するための固定器具としての役割を果たす。」です。本品はクラスIIIの高度管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定は不要と考えております。
 次に10ページを御覧ください。新設予定の一般的名称は「皮膚疾患用光治療器」です。本名称の定義は「IPL(Intense Pulsed Light)を原理とし、可視光線から赤外線までの連続したスペクトル光を発するランプを備えた皮膚疾患の治療に使用する装置をいう。」です。本品はクラスIIの管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定については、必要と考えております。
 続いて14ページを御覧ください。新設予定の一般的名称は「交番磁界治療器」です。本名称の定義は「経皮的に鎮痛に用いる神経刺激装置をいう。外部刺激装置、パッド等から構成される。交番磁界が痛みのある部位に供給される。」です。本品はクラスIIの管理医療機器に指定されるべきものと考えております。また、特定保守管理医療機器の指定については、必要と考えております。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○荒井部会長 ありがとうございました。御質問、御意見等ございますでしょうか。よろしいですか。それでは、それぞれについて議決をさせていただきたいと思います。
 まずはじめに「中心循環系血管内近赤外線カテーテル」を高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器としては指定しないことでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 次は「血管内近赤外線画像診断装置」を管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器として指定することでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 次は「体内固定用肋骨髄内釘」を高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器としては指定しないことでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 次は「皮膚疾患用光治療器」を管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器として指定することでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 最後に「交番磁界治療器」を管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器として指定することでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 御異議がないようですので、このように議決させていただきます。本件は分科会にて文書報告させていただきます。これで議題7を終了いたします。
 最後に議題8です。議題8医療機器の再審査結果及び使用成績評価の報告についてです。事務局から説明をお願いします。
○事務局 事務局です。再審査は平成25年改正前の薬事法第14条の4の規定に基づき、新医療機器等を対象として再審査期間を定め、承認後の使用成績等の調査を行わせるもので、その調査結果に基づいて有効性及び安全性の再確認を行うことを目的とした制度です。
 資料8-1を御覧ください。販売名は「ミサゴ」、申請者はテルモ株式会社です。この品目は浅大腿動脈領域における狭窄若しくは閉塞した血管に対して管腔の維持を目的として留置するステントであり、平成24年12月5日に承認されております。
 本品の使用成績調査は、本品の臨床使用実態下における不具合事象の状況を把握すること、及び安全性と有効性に影響を与えると考えられる要因を把握し、本品のより適切な使用を図ることを目的として、250例を目標とした全例登録と5年のフォローアップが実施され、295例が登録、うち295例が安全性評価対象、293例が有効性評価対象となりました。本品の有効性及び安全性について確認したところ、特段の問題は認められませんでした。
 以上より、本品の再審査結果の区分は、薬事法第14条第2項第3号イからハまでのいずれにも該当せず、使用目的又は効果、使用方法等の承認事項について変更の必要がない、カテゴリー1と判断しております。
 なお、本品の承認時には、「本使用成績調査」と「収集された情報に基づく適切な措置の実施」についての承認条件が付されておりました。今般の再審査により双方の実施が確認されたため、当該承認条件の解除を行うことが適切と判断しております。
 続いて資料8-2にお移りください。使用成績評価の報告です。販売名は「Hot AXIOSシステム」、申請者はボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社です。本品は、胃壁又は腸壁に密接している症候性膵仮性嚢胞又は70%以上の液体成分を認める症候性被包化壊死に対し、経胃又は経十二指腸的な内視鏡治療に使用される瘻孔形成システムであり、平成29年10月31日に承認されました。
 本品の使用成績調査は、臨床使用実態下における本品の安全性及び有効性を確認することを目的として目標登録症例数100例、登録期間3年として実施され、期間中に登録されました120例130病変が評価対象となりました。医療機器の不具合発生及び安全性について確認したところ、特段の問題は認められませんでした。
 以上より、本品の使用成績評価結果の区分は、薬機法第23条2の5第2項第3号イからハまでのいずれにも該当せず、使用目的又は効果、使用方法等の承認事項について変更の必要はないと判断しております。以上御報告いたします。
○荒井部会長 ありがとうございました。ただいまの事務局からの議題8の報告について、何か御質問ございますでしょうか。よろしいですか。
 よろしければこれで議題8を終了いたします。予定されておりました議題は全て終了です。事務局から何かございますか。
○医療機器審査管理課長 本日は夕方の遅い時間からの部会でしたが、御審議いただき、誠にありがとうございました。3時間を超えずに円滑な審議ができたことに感謝しております。
 次回の御案内ですが、次回は年明け、年度末の3月11日を予定しております。また改めて詳細を含めて御案内させていただきますので何とぞよろしくお願いいたします。年内は本日が最後になりますので、良い年末年始をお過ごしいただき、また年明けにお目にかかりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○荒井部会長 ありがとうございます。それでは、これをもちまして本日の医療機器・体外診断薬部会を閉会いたします。オミクロンなどいろいろありますが、やはり久しぶりに皆さんに集まっていただき、活発な御議論を頂くことができて本当に良かったです。次回もこういった形で開催できればと願っております。本日は本当に長時間ありがとうございました。
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から一部非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

医療機器審査管理課 再生医療等製品審査管理室長 高畑(内線4226)