令和3年度 第1回職場における化学物質管理に関する意見交換会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

日時

令和4年2月3日(木) 13:30~16:30

場所

エッサム神田ホール2号館 3階大会議室

議題

  1. 1 基調講演
    「新たな化学物質管理~化学物質への理解を高め自律的な管理を基本とする仕組みへ~」
     厚生労働省 労働基準局 安全衛生部 化学物質対策課 課長 木口 昌子
    「化学物質管理の大転換 法令準拠型から自律的な管理へ-背景・自律的な管理の概要・対応-」
     独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
     化学物質情報管理研究センター長 城内 博
  2. 2 意見交換会
    【コーディネーター】
     東京理科大学 薬学部 医療薬学教育研究支援センター
     社会連携支援部門 教授 堀口 逸子
    【パネリスト】
     独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
     化学物質情報管理研究センター長 城内 博
     日本化薬株式会社 機能化学品事業本部
     機能化学品研究所 分析グループ 梅田 真一
     厚生労働省 労働基準局 安全衛生部 化学物質対策課 課長 木口昌子
     厚生労働省 労働基準局 安全衛生部 化学物質対策課
     化学物質評価室長補佐 吉見友弘

議事

○事務局 それでは、定刻となりましたので、ただいまより令和3年度第1回職場における化学物質に関するリスクコミュニケーションを開催いたします。
 新型コロナウイルス感染症の感染防止のため、対面式の会場参加を中止とし、Web参加のみとさせていただく運びとなりました。会場参加へのお申込みを頂いた皆様におかれましては、Web参加への参加変更等お手を煩わせてしまいましたことをおわび申し上げます。
 さて、当会は、働く方の健康障害を防止するために厚生労働省が行っている化学物質管理に当たりまして、関係する事業者の方、また事業者の団体の方と情報共有、意見交換を行うために実施しているものです。厚生労働省からの委託を受けまして、私どもテクノヒルが事務局を担当しています。鈴木と申します。今日はよろしくお願いいたします。
 それでは、本日のスケジュールについて簡単に御説明いたします。
 まず初めに、「新たな化学物質管理」というタイトルで、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課の課長、木口様に35分ほど御講演を頂きます。次に、「化学物質管理の大転換 法令準拠型から自律的な管理へ」というタイトルで、厚生労働省の検討会である「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」で行われた検討内容につきまして、検討会座長でいらっしゃいます、独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所化学物質情報管理研究センターの城内先生に30分ほど御講演いただきます。
 以上の講演が終わりましたら、一旦15分の休憩とさせていただきます。
 後半の意見交換会では、コーディネーターを東京理科大学薬学部医療薬学教育研究支援センター社会連携支援部門教授の堀口先生にお願いし、パネリストとして基調講演の城内先生、木口課長、日本化薬株式会社機能化学品事業本部機能化学品研究所分析グループの梅田様に企業のほうからもお入りいただいて、疑問点についてお答えいただきます。
 また、当会の意見交換会にあらかじめ頂いた御質問についての回答のほか、ZoomでのQ&Aの機能を利用した質疑応答を実施いたします。
 なお、音声や挙手、チャット機能、メール等での御質問は本日及び当会終了後ともにお受けしておりませんので、御注意ください。今皆さんが開かれているZoom画面の下のバナーにQ&A機能、挙手、チャット機能がありますが、今回はQ&A機能だけ使いますので、皆さん、お気をつけいただきますようお願いいたします。
 Q&A機能を利用した質疑応答は1番目の基調講演スタートと同時に開始し、基調講演2個が終わった後に終了とさせていただきます。
 また、皆様のQ&A機能を使った質問については、どのような質問であるか判別できるよう、1番目、厚生労働省・木口課長の基調講演「新たな化学物質管理」は1番、労働安全衛生研究所・城内先生の基調講演「法令準拠型の自律管理」は2番、その他については3番と定めて、質問の書き始めに番号を入力していただくと幸いでございます。
 また、既に事前に頂いている質問については講演中に一部盛り込みますので、皆様じっくり聞いていただければと思っております。
 本日頂いた質問に関してはできるだけ回答する予定で進行しますが、時間の都合等との兼ね合いで回答できない場合もございます。
 また、後半の意見交換の際に頂戴した質問、意見を含め、個人情報等を省いた形での議事録及び報告書を作成し、厚生労働省へ提出させていただきますので、あらかじめ御了承ください。
 全体の終了は16時30分を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、これより基調講演に入ると同時に、ZoomのQ&A機能を利用した質問の受付を開始いたします。多数の御質問をお寄せいただいた場合、状況によっては早い時期に質問を終了させていただくことがございますので、あらかじめ御了承ください。
 それでは、最初の基調講演「新たな化学物質管理」を厚生労働省の木口課長にお願いいたします。
 それでは、木口課長、よろしくお願い申し上げます。
 
基調講演 1「新たな化学物質管理~化学物質への理解を高め自律的な管理を基本とする仕組みへ~」
 
○木口化学物質対策課長 皆さん、こんにちは。厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長の木口です。
〔パワーポイントによる説明。以下、画面ごとに スライド番号を表記〕
 
<スライド1>
 
 今日は、令和元年9月から2年近くにわたる検討を経て昨年7月に取りまとめられました「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」の報告書の内容を基に、今後の職場における化学物質管理のあり方について御説明いたしたいと思います。
 
<スライド2>
 
 お話の順番として、現在の化学物質管理の課題についてお話しした上で今後の話をしたいと思います。
 
<スライド3>
 
 まず現在の労働安全衛生法令における化学物質管理の体系について説明します。
 
<スライド4>
 
 産業現場ではおよそ7万もの化学物質が使われていると言われておりますが、労働安全衛生法令の適用は大きく4つの段階に分かれております。
 
<スライド5>
 
 まず一番上の石綿など管理使用が困難な物質に関しましては、製造や使用が禁止されております。この該当が8物質ございます。
 
<スライド6>
 
 次の2段目ですけれども、自主管理が困難で有害性が高い物質、これが123物質ありまして、特定化学物質障害予防規則や有機溶剤中毒予防規則などで個別具体的な措置義務がかかっております。措置義務の内容としては、作業環境管理、作業管理、健康管理のいわゆる労働衛生3管理の考え方に基づきまして、設備の性能要件、作業環境測定、健康診断、保護具、作業主任者の選任などが柱となっております。
 
<スライド7>
 
 次に2段目と3段目にまたがる部分ですけれども、ここに含まれる674物質には、名称、人体に及ぼす作用、貯蔵または取扱い上の注意などを容器に表示するラベル表示、それからさらに詳細な事項を記載した文書を交付するSDS、いわゆる安全データシートの交付が義務づけられております。これらの規定によりまして、これらの製品の譲渡・提供時にその物質を安全に取り扱う上で必要な情報が製品と一緒に伝達されますので、製品の譲渡・提供を受けた側にはそれらの情報に基づくリスクアセスメントの実施が義務づけられ、その結果に基づいて必要な対策を講ずるということになります。
 
<スライド8>
 
 ラベルやSDSの記載内容については、JIS Z7252、7253に準拠した記載を行えば労働安全衛生法の規定を満たすということとされております。これらのJISは「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」、いわゆるGHSに基づく内容となっております。
 SDSの項目は、この下にありますように1番から16番まで16の項目に及んでいますが、製品を安全に取り扱う上で大切な情報、例えば取扱い上の注意事項とかばく露防止保護措置など大切な情報が入っておりますので、製品の使用前には一通り目を通していただきたいと思います。15番には適用法令が書いてありますので、こちらも御確認いただきたいと思います。
 
<スライド9>
 
 GHS、世界調和システムとありますように、この枠組みは化学物質が国境を越えて流通することを念頭に置いておりますので、化学物質の危険性・有害性を伝達する要素として絵表示というものが使われております。
 GHSの絵表示には9種類あります。上の段の4つは危険性の絵表示で、下の段の左端は腐食性の絵表示、次の2つ、どくろと人のマークが健康有害性の絵表示です。この感嘆符はほかの絵表示がつけられる危険有害性で比較的程度が低いものにつけられるものです。最後、下段の右端が環境有害性の絵表示となっております。
 表で御覧いただくと分かるとおり、1つの絵表示、例えば健康有害性といってもいろいろな健康有害性が割り当てられております。特に健康有害性は標的臓器も様々ですし、とにかく体内に取り込まないようにということに尽きるので、絵表示を見た場合にはそれ単独ではなくて、具体的にどのような有害性なのかということはSDSのほうをきちんと読み込んで対策につなげていただきたいと思います。
 
<スライド10>
 
 厚生労働省では、化学物質のリスクアセスメントが義務になりました平成28年度から「ラベルでアクションキャンペーン」を展開しております。まずラベルを見て、危険性・有害性があることに気づき、事業者はさらにSDSを確認してリスクアセスメントを行う。労働者の方も、製品に絵表示があったら危険・有害性を確認して、リスクアセスメントの結果を見て対策を行うということで、化学物質に関わる全ての人がこういったラベルをきっかけにしてきちんとした対応を取っていただきたいということです。
 このアクションは製品にきちんとラベルがついていることが前提になっております。ただ、残念なことに、現在も客先から求められないことを理由にしてラベル表示やSDS交付を行わないメーカーも存在しております。先ほども申し上げましたとおり、ラベルやSDSの情報は化学物質を安全に取り扱う上で重要なよりどころですので、製品を使う前にまずラベルやSDSを見る、これを当たり前にすることと、もしそれがついていなかった場合には製品の供給元に請求してほしいと思います。メーカーの方々も製品を安全に使ってもらうために必要な情報は積極的に開示していただくようにお願いいたしたいと思います。
 
<スライド11>
 
 以上を踏まえまして、まず職場における化学物質管理の課題とそれを踏まえた規制の見直しについて御説明いたします。
 
<スライド12>
 
 職場における化学物質管理の現状でございますが、化学物質による休業4日以上の労働災害、これは労働基準監督署に労働者死傷病報告が出されたものですが、これが年間400件前後発生しております。このうち特別規則などの規制対象物質が原因であることが明らかであるものを除きますと、大体8割強を占めています。災害が発生するエンドユーザーさんには、下の表にもありますように第三次産業、商業とか保健衛生業など化学に明るくない業種もありまして、結構不用意に化学製品を使って被災しているというのが現状です。
 原因物質の絵表示を見てお分かりいただけるように、手袋をつけていれば、あるいは換気をしていれば防げた、そういうのはラベルやSDSをきちんと見てそういう措置を取っていればこういった災害を未然に防げただろうというのも少なくないです。
 それから、先ほどピラミッド図をお示ししましたが、法令で規制されている物質というのはごくごく限定的で、未規制物質でもGHS分類で危険・有害性が認められる物質というのは結構あります。ところが、未規制物質は安全だという思い込みが結構根強くて、法令で規制されている物質が入っていませんよということを売り文句にするような製品もあるというのが現実です。
 
<スライド13>
 
 次に中小企業における状況です。企業規模が小さいほど法令の遵守が不十分な状況にあり、労働者の安全性に関する認識についても企業規模が小さいほど低くなっているということです。
 先ほど申し上げたとおり、化学物質は種類が多いですが、規制されている物質が結構限定されていますので、有害業務は他人事みたいになっている面もあるのではないかと思っております。
 また、そもそも製品を使うときに含有成分に何が入っているかを意識せずに取り扱ってしまうことも多いと思われますので、製品の危険性・有害性を意識しながら使っていくことが大変重要となっております。
 
<スライド14>
 
 次に化学物質の管理状況についてです。まず上の段の表は、特定化学物質障害予防規則などの規定により作業環境測定をやって、その結果を評価していただくのですけれども、その中で直ちに改善を必要とする一番悪い状況である第三管理区分と評価された事業場の割合が増加傾向にあります。法令では第三管理区分になったら直ちに改善して第一または第二にしていかなければいけないのですけれども、それがなかなか進んでおりません。
 それから、化学物質のリスクアセスメントは平成28年6月から義務化されていますが、この実施率がなかなか上がりません。リスクアセスメントを実施しない理由として人材がいないとか方法が分からないといった割合が高いということで、先ほど申し上げました中小企業での遵守率の低迷と併せて化学物質管理をとにかく分かりやすい仕組みにしていくことが喫緊の課題と認識しております。
 
<スライド15>
 
 このような状況を踏まえまして、また国際的に見ますと化学物質の危険性・有害性情報の伝達とその情報を活用したリスクに基づく管理が行われていることなども念頭に置きまして、冒頭申し上げましたが、令和元年9月に「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」を立ち上げて、2年近くにわたる検討を経て昨年の7月に報告書を公表しております。
 この参集者は学識経験者と労使関係者から構成されていまして、国におけるリスク評価のあり方についてさらに専門的な観点から検討するワーキンググループも立ち上げておりました。
 
<スライド16>
 
 検討会の検討内容ですけれども、大きく5点ございます。これを順番に御説明したいと思います。
 
<スライド17>
 
 まず、現在の化学物質規制の仕組みに関してはこのように整理しているのですけれども、いわゆる特別則で管理されている物質が123物質あります。それから、この3段目の物質の中から国によるリスク評価で特化則に追加された物質が2007年以降29物質あります。こういうことで規制の強化は図っていますが、残念なことに、3段目から2段目に物質が格上げになりますと措置義務が細かくかかってくるということで、それを嫌がって別の3段目以降の物質にシフトして災害が発生するといういたちごっこが発生しております。
 
<スライド18>
 
 このために、新しい仕組みでは、国によるGHS分類で危険性・有害性が確認された全ての物質を規制の対象としたいと思っております。
 国によるGHS分類物質に対象を絞り込む理由ですけれども、法令でラベル表示・SDS交付を義務づける上で、数万種類の物質全てに義務づけると特に中小企業さんで対応が難しいので、国がGHS分類を行って、その参考情報となるモデルラベル、モデルSDSが公表されている物質のみ義務をかけたという趣旨でございます。
 ちなみに、労働安全衛生規則の中でそれ以外の物質に関してもラベル表示・SDS交付は努力義務になっておりますので、情報がある場合にはできるだけ積極的に出していただきたいと思っております。
 それから、こちらの囲みの中に書いてありますけれども、個別具体的な措置を詳細にわたって法令で規制する方式から、管理の目標である到達目標、管理基準の達成を求めて、そこに至る手段については自由度を認めるという方式に転換するということにしております。
 ただ、ここで一つ念押しをしたいのですが、この「自律的な管理」という語感で全てがフリーハンドになって何をやってもいいと早合点される方もおられるようなのですけれども、ばく露濃度を国が定める基準以下に抑えるという結果を求める仕組みですので、決して何をやってもいいという話ではないということをまず御認識いただきたいと思います。
 一方で、ばく露防止手段は、今みたいに制御風速は0.5 m/sみたいな一律の設備要件を求めるのではなくて、作業方法とか化学物質の取扱量などに応じて、例えば化学物質の発散量がとても少ない作業であればもう少し風速は緩めてもいいとか、リスクの度合いに応じた措置が取れるようになるということでございます。
 また、後ほど詳しく説明しますが、しかるべき体制を取ることを条件に保護具によるばく露防止も認めるということにしております。
 また、中小企業など化学物質管理に必要なノウハウに乏しい事業場向けに標準的な管理方法をまとめたガイドラインなども公表するとしております。
 2つ目のポツですけれども、一方で労働災害が多発するなど自律的な管理が困難な物質、作業というのが今後出てきた場合には、これらの物質に関して製造禁止とか、あるいは許可制の導入も検討しております。
 また、最後のところですけれども、特化則などの特別規制はしばらくの間は併存させますが、SDSの交付率を引き上げ、人材育成、支援策の充実など自律的な管理に必要な環境整備を進めて、中小企業も含め自律的な管理に対応できる環境が整った段階で特別則の適用物質も自律的な管理に一本化するということを想定しております。5年後を目途にと書いてありますけれども、これは5年間で環境を整えることを目指すということですので、もしその環境が整い切らなかったら一本化はさらに延びるということになります。
 
<スライド19>
 
 以上を図で示したのがこちらになります。これは左右方向に有害性に関する情報の多い少ないで区分をしております。この有害性に基づく対象となるのは、先ほど申しました国によるGHS分類が行われてモデルラベル・モデルSDSが作成された物質で、約2,900物質が対象になります。そのうちばく露管理値が設定できる物質が約数百物質としておりますけれども、これはばく露濃度をばく露管理値以下にすることを義務づけるものです。それから、皮膚への刺激性や経皮吸収がある物質については保護手袋などの着用を求めるとしております。
 
<スライド20>
 
 進め方ですが、まず国によるGHS分類、これは平成18年度から厚生労働省、環境省、経済産業省の3省で進めております。今後も毎年50~100物質程度を分類していくということで考えております。この分類に関していろいろと情報を集めなければいけないのですけれども、事業者さんがお持ちの情報で信頼性のある情報がある場合にはそういった情報提供を受ける仕組みというのも検討するとしております。分類されたら、これらについてもモデルラベル・SDSを公表していきます。
 次にGHS分類済みの物質ですけれども、これは先ほど申しましたとおりラベル表示・SDSなどの義務づけをしていきます。先ほど2,900物質と申しましたけれども、既にラベル表示やSDSが義務づけされている物質もありますので、それを除きますと今後追加する物質は約1,800物質あります。これを令和3年~5年にかけて3つに分けて順次追加していきます。令和6年度以降は上の段の新たにGHS分類したものを順次追加していくこととしております。ばく露濃度基準に関しては令和4年度以降順次設定をしていくということにしております。
 あと、国によるGHS分類が行われていない物質も努力義務で自律的な管理をやっていただくということにしております。
 
<スライド21>
 
 この規制対象物質の追加の関係でもう少し詳しく御説明したいと思います。
 
<スライド22>
 
 先ほど申しました1,800物質に関しては、有害性の高いものから順次ラベル表示・SDSの義務対象にしていきます。まず第一段階の令和3年度に追加する分ですが、GHSの分類ガイダンスに基づく有害性区分の急性毒性、生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒性、この4つの区分のいずれかで区分1になった234物質を追加いたします。先般パブリックコメントも行いましたけれども、令和6年4月から施行する予定となっております。その次の令和4年度の追加は、それ以外の有害性区分で区分1になったもの、令和5年度はその残りの物質ということで順次追加していくこととしております。
 こういう順番に追加していきますが、令和3年~5年までの該当物質は既にGHS分類済みで分かっておりますので、こういった物質の危険・有害性情報がサプライチェーンを通じて下流まで確実に伝達されるように、施行日より早い段階からどんどんSDSをつくっていただきたいという要請をしております。
 
<スライド23>
 
 具体的には、労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の化学物質情報管理研究センターのホームページに、令和3年度の追加物質のほかに令和4年度・令和5年度追加予定物質のリストがCAS登録番号つきで公開されております。ですから、これを御参照いただきたいと思っております。
 
<スライド24>
 
 また、こういう追加予定の物質をSDSに記載する際の記載の方法、適用法令の欄にどのように記載したらいいかということについても、本年1月に化学物質対策課長名の通知を出しておりますので、こちらも御覧いただいて、できるだけ前倒しでSDSを更新していただければと思っております。どうぞ御協力をよろしくお願いいたします。
 
<スライド25>
 
 次に、化学物質の管理状況のモニタリングに関してです。
 自律的な管理の場合にはリスクアセスメントに基づく措置、例えば設備対策であったり作業環境測定などでばく露の状況をチェックしたりということを一律に義務づけることはしませんので、実施頻度も含めてリスクアセスメントの結果を踏まえて事業者のほうで決めていただくことになります。そういったモニタリングの結果については衛生委員会などで調査審議し、他の労使で共有していただくとともに、後から検証できるように記録を作成して保存していただきたいと思います。
 労働災害を発生させた事業場で管理の面などで外部専門家の指導・助言が必要だと労働基準監督署長が認めた場合には外部専門家による確認・指導を行うことを義務づけるとしております。外部専門家の要件はこのような形になっておりますけれども、このように、管理がきちんと行われていないところにはチェックが入るということになります。
 
<スライド26>
 
 次に化学物質の管理体制についてですけれども、新たな仕組みの中では、現在リスクアセスメントの指針で指名が望ましいとされております化学物質管理者、この方の選任を化学物質を取り扱う全ての業種、規模の事業場に義務づけるとしております。職務としてはこちら書いたとおりです。リスクアセスメントをやって、措置を決めて、労働者教育などなどやっていただくということですが、資格要件としては、GHS分類済み物質の製造事業者、こちらはリスクの高いものなども扱っておられると思いますので、専門的講習の修了者、大体2日ほどの講習を想定しておりますが、そちらの修了者から選任するということにしております。それ以外の事業者に対しては選任要件は設けないのですけれども、一応こういった業務をやっていただきますので、基礎的な講習の受講は推奨したいと思います。また、こういう職務を遂行するために必要となる参考情報のようなものは順次化学物質管理のポータルサイトのほうに上げてサポートできるようにいたしたいと思っております。
 それから、ばく露防止対策として保護具、マスクなどを使うという選択をした場合には、化学物質管理者とは別に保護具着用管理責任者も選任していただくことになります。この方には保護具の選択とか管理などを担っていただくことになるのですけれども、この理由としては、保護具による防護は設備対策に比べて初期費用は確かに抑えられるものの、適切な保護具を使って、しかもきっちり管理をしないとばく露防止の効果が見込めないので、きっちり管理していただく意味で担当者を決めていただくことを求めております。ですから、ばく露防止対策として保護具を採用する場合には、管理に必要な工数なども含めて総合的に御判断いただきたいと思っております。
 次に職長とありますけれども、今後、自律的な管理においては特別則における作業主任者の職務を担うこととなる職長さん、それから化学物質を取り扱う作業者さんに関しても化学物質管理を適切に行うために必要な知識を身につけるための教育の実施を求めるとしております。
また、こちらの欄外にありますけれども、中小企業など自社内で知識のある人材の確保が難しい場合に助言・指導が行える外部専門家の確保・育成にも努めていくとしております。
 
<スライド27>
 
 次に情報伝達の強化についてです。
 SDSの記載項目につきましても追加見直し等を行うとしております。
 まず「成分及び含有量」です。こちらは対象物質が増えていくので、GHSのルールに基づいた適正化を図っていこうとしております。10%刻みを重量%に必須化するということの趣旨ですが、これは、今は10%刻みという一律のやり方しか認めていないのですけれども、それを現実に即したある程度幅のある記載も認めるということで、GHSとかJISのルールにのっとった形で認めていくという趣旨です。決してピンポイントで重量%で書いてくださいという趣旨ではありませんので、ここは御理解を頂きたいと思います。
 次に「人体に及ぼす作用」ですけれども、この情報が一番重要な情報ですので、5年以内ごとに情報の更新状況を確認いただいて、もし内容に変更があった場合にはSDSを修正していただきたいということを書いております。
 次の「貯蔵又は取扱い上の注意」ですけれども、この中に保護具の種類の記載の義務化とあります。また、適切な保護具を使用するというような書き方をされている場合があるのですけれども、ユーザー側でどのような保護具を使ったらいいか情報が分からないという御指摘などもありましたので、できるだけ具体的に書いていただきたいという趣旨です。
 それから「推奨用途と使用上の制限」、これは記載項目を追加するとしております。これは保護具の種類とも兼ね合いがあるのですけれども、例えば取扱い上の注意事項など、どういった使われ方をするときの注意事項だということを明確にするために書いていただきます。ですから、推奨用途に外れるような使われ方をする場合には、そこまで製造者さんのほうでリスク評価が行われていないので、ユーザーさんのほうでより丁寧にリスクアセスメントをやっていただきたいという趣旨で書いております。
 次にSDSの交付方法の拡大です。SDSは文書交付が原則となっておりますけれども、最近はインターネットとかデジタルで情報のやりとりなどできるようになっていますので、容器に二次元コードを印字して確認できるようにするとか、ホームページで閲覧できるとか、そういった方法も広く認めるということになっております。
 
<スライド28>
 
 次に、伝達の強化の中で、企業間の譲渡・提供でない場合の小分けなどの場合の扱いについて書いております。これは、譲渡・提供時以外でも容器を移し替えるとか一時的に保管するというような場合に、内容物とか危険・有害性情報などが何らかの形で伝達されるようにするということです。絵の中ではラベルを貼るように書いていますけれども、ラベルでなければいけないということではなくて、方法はいろいろあると思うのですが、必要な情報が伝達できるようにしていただきたいということでございます。
 それから、その下は設備改修などを外部に委託する場合の情報伝達で、現在、設備の改造、修理、清掃などを外注する場合に、危険物の製造取扱い設備である化学設備、それから特化則の特定第2類物質、第3類物質の取扱い設備である特定化学設備については作業上の注意事項などを記載した文書交付を義務にしているのですけれども、これを、いわゆる通知対象物質、実際に譲渡・提供のときにSDSが渡されるような物質を製造取扱いする設備全てに対象を拡大するということです。ここはいわゆる製品の譲渡・提供の場ではないですが、同じように危険性・有害性情報を伝達できるようにしてほしいという趣旨でございます。
 
<スライド29>
 
 次に、特化則などについても措置の柔軟化と強化が一部ありますので、御説明します。
 まず特殊健康診断です。今は6か月以内ごとに1回とされております特殊健康診断について、作業環境測定結果が良好である、健康診断でも所見が見られない、ばく露に大きな影響を与えるような作業内容の変更がない、こういった条件を満たす場合には次の健康診断を半年後ではなくて1年後にしてもよいと、緩和できることにするというのが1点目です。
 それから、粉じん作業に関する発散抑制措置の柔軟化とありますけれども、これは、有機則とか特化則では、作業環境測定の結果が第1管理区分であるなど良好な作業環境を確保できている場合には局排などの性能要件の一部緩和を認めておりますけれども、同じような扱いを粉じんにも認めることを提言されております。
 
<スライド30>
 
 一方、こちらは対策の強化のほうです。
 先ほど第3管理区分である事業場の割合が増えているというお話をいたしました。作業環境測定をやった後は結果の評価をして、第3管理区分であれば改善措置を講じて第1か第2にしなければいけないのですけれども、改善措置を講じてもなお第3管理区分であった場合には、新たな仕組みとして、改善が本当にできないのかどうか外部専門家の意見を聞いてくださいという形にいたします。外部専門家の意見を聞いて、こういう改善措置はどうですかと提案され、それをやってみて第1か第2になれば一番いいのですけれども、それをやっても第1、第2にならなかった、あるいはこの時点でこれ以上の改善は困難であると専門家に言われたという場合には、保護具による防護に切替えて、保護具による防護を徹底してやっていただく。具体的には、今溶接業務でやっているように、個人サンプラーによる測定で有効な保護具を選んでフィットテストを実施していただくことと、保護具着用責任者にきちんと管理していただく、そちらに管理をシフトしていただくこととしております。
 また、行政としてもどのような事例が改善困難になるのか情報を集めたいという趣旨で、こういったときには労基署に届出を頂きたいとしております。
 
<スライド31>
 
 最後に、遅発性疾病の把握とデータ管理のあり方とあります。
 これは、がんなどの遅発性疾病に関しましてはばく露から時間がたってから発症するため、業務との関連がなかなか意識されづらいので、どのように把握するかが課題になっております。検討会報告書では、化学物質を取り扱う同一の事業場で複数の労働者が同種のがんに罹患して、外部機関の医師が必要と認めた場合、または事業場の産業医がそのような事実を把握して必要と認めた場合には、所轄の都道府県労働局に報告することを義務づけるとしております。労働局はこの報告を受けましたら、労働衛生指導医などとの協力の下で、同じ化学物質を使うほかの事業場で同じようなことが起きていないかどうかの調査をしていくことで、遅発性疾病の原因物質を確実に抑えていくということにつなげていきたいということです。
 最後に、健診結果等の長期保存が必要なデータの保存とあります。これは今後の課題ですが、特定化学物質などで30年以上健診データなどを保存しなければいけないのですが、例えば転職されたり、あるいは所属していた会社が倒産したりした場合にそのデータが散逸してしまう、あるいはなかなかアクセスしにくくなるといったおそれがあります。そこで、こういう長期保存が必要なデータを第三者機関、公的な機関で保存する仕組みを検討する必要があるのではないかという提言を受けました。これは今後の課題として厚生労働省でどういった形を取れるか対応を考えていくこととなります。
 
<スライド32>
 
 以上のような内容を順次規制のほうに持っていくわけですけれども、まずは規制に持っていくまでの段取りについて御説明いたしたいと思います。
 元年の9月に検討会をやって、中間取りまとめ、報告書、これはいずれも厚生労働省の審議会に報告しております。昨年の12月から今年の1月14日までパブリックコメントを行ったのを御存じの方もいらっしゃるかもしれません。これはこの報告書の内容のごく一部ですが、ラベル・SDS対象物質の追加の第一弾234物質の追加、職長教育の対象業種を拡大すること、それから設備改修の外部委託時の情報伝達の義務拡大、この部分のみ1月31日の審議会に諮問いたしまして答申を頂きました。この改正の政令・省令は2月下旬頃に公布予定となっております。
 それ以外の部分については、今、法令の調整を鋭意進めているところで、残りの部分も改めてパブリックコメントをかけて、同じように分科会に諮問をして、公布をしていくということになります。この第二弾の時期は未定ですけれども、改めてパブリックコメントがかかるということで御承知いただきたいと思っております。
 
<スライド33>
 
 最後に、今の報告書に基づく化学物質規制の見直しについては、化学物質情報管理研究センターのホームページで動画など紹介されておりますので、ぜひ御覧いただきたいと思います。
 
<スライド34>
 
 以上で私からの御説明は終わります。御清聴ありがとうございました。

○事務局 木口課長、御講演ありがとうございました。
 冒頭、事務局の連絡の際に音声につきまして不具合があり、お聞き苦しいところがございました。大変申し訳なく思うとともに、改善しておりますので、よろしくお願いいたします。
 それから、Q&A機能につきましては第2講の城内先生の終了後で締め切りますので、もう一度御確認いただければと思います。
 続きまして、労働安全衛生総合研究所の城内先生に「化学物質管理の大転換 法令準拠型から自律的な管理へ」を御講演いただきます。
 それでは城内先生、よろしくお願いいたします。
 
基調講演 2「化学物質管理の大転換 法令準拠型から自律的な管理へ-背景・自律的な管理の概要・対応-」
 
○城内化学物質情報管理研究センター長 こんにちは、城内と申します。よろしくお願いいたします。
〔パワーポイントによる説明。以下、画面ごとに スライド番号で表記〕
 
<スライド1>
 
 私は、今、木口課長からお話がありましたけれども、化学物質管理のあり方を変えようということで政省令改正が進んでいます。その背景についてお話しさせていただきたいと思います。
 「注目!!」と書いているケミちゃんがいますけれども、このケミちゃんは、実はGHSからできています。頭と体幹が小文字の「g」で、「H」が口で、手が「S」なのです。ケミちゃんにはこれからもっともっと活躍してほしいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
 
<スライド2>
 
 本日のスライドの内容ですが、先ほども申し上げましたように法令準拠型から自律的な管理への背景、これは、諸外国の状況、それから先ほど木口課長からも御説明がありましたけれども国内状況等から、私は自律的な管理というのが必然だろうと思っています。それから、自律的な管理で事業者はどういう対応をしなければいけないかも簡単にまとめてありますので、説明させていただきたいと思います。
 
<スライド3>
 
 「法令準拠型」から「自律的な管理」への背景です。
 
<スライド4>
 
 これは大きな流れが2つあったと思っています。まず「ハザード管理からリスク管理へ」ということと「法令準拠型から自律的な管理へ」ということです。
 
<スライド5>
 「ハザード管理からリスク管理へ」という流れですけれども、御存じのように、1958年、米国で食品衛生に関するデラニー条項というものがつくられました。これは「いかなる量であっても発がん物質を食品に使用してはならない」というものでした。発がん物質には閾値は存在しないと言われていますので、そうすると発がん性があれば使えないということになります。一方、自然食品も含めた全ての発がん性を有する物質の禁止は不合理ではないかという意見もあったわけです。私が化学を勉強していたのは1970年代ですが、実はそのときに豆腐、大豆に含まれるサポニン、界面活性剤が発がん物質なのだというニュースが突然飛び込んできまして、では日本人はみんながんになるのかというようなこともありました。そういう時代ですね。
 ところが、これはやはり不合理だということになりまして、1977年に米国食品医薬品庁が新しい概念を提示します。これは「無視し得る発がんリスクレベル」、100万人とか数十万人に数人増加するようなレベルであれば発がんのリスクレベルは社会として受け入れてもいいのではないかという考え方なわけです。実は、100万人、数十万人に数人というのはこれまでの自然災害のリスクにかなり近いものだと私は思っています。ただ、最近自然災害があまりにも大きくて、犠牲者も多かったりしますので、ちょっと桁が違っているなという感じはしますが、従来このようなレベルだったということですね。
 1983年、米国科学アカデミーからリスクアセスメントの枠組みが提示されました。これが今でもずっと続いているわけですけれども、まずリスクアセスメントについては、危険性・有害性を特定しましょう。その次に、ある有害性について量-反応評価をしましょう。あと、ばく露評価もして、それでリスクの総合判定ということをしましょうということで、これは今後自律管理の中でも進められるリスクアセスメントの基礎にもなっていくわけです。
 1990年、米国連邦清浄大気法改正がありまして、「安全とはゼロリスクを意味するものではなく、リスクアセスメントに基づいて受容し得るレベルが検討されなければならない」ということになりました。
 1996年、随分時間がたつのですが、デラニー条項が廃止ということになります。
 これが「ハザード管理からリスク管理へ」の大きな流れだと理解しています。
 
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 あと、ILO条約及び勧告から見た化学物質管理の変遷で、これは御存じのように、黄燐マッチの顎骨壊死とかいろいろありました。これらの条約は細かくは説明しませんが、最近は2006年、「職業上の安全及び健康を促進するための枠組みに関する条約」、包括的な条約というのに変わってきているわけですね。
 
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 これを大きく見ると、20世紀初頭は比較的に急性で重篤な中毒作用の対策や補償。20世紀中期、これは日本の高度経済成長期に当たるかもしれませんが、がんなどの慢性的な疾病が問題になりました。20世紀末には予防的対策。21世紀になって自律的な取組が主流、これは自律的に管理をしていきましょうということで、マネジメントシステム等が出てくる時期に相当します。
 
<スライド8>
 もう一つ、「法令準拠型から自律的な管理」というのがあります。
 これは、下の段のほうを見ていただきたいのですが、1974年、英国で「職場における保健安全法」というものが出されます。これは聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、ローベンスレポートというものが基礎になってできた法律です。この中で、自律的な管理、これは「自主的な管理」とも言われていますが、ここでは「自律的な管理」と言っています。どういうものかというと、法律は原則のみとし、規則、指針、承認実施準則などで補完する体系、事業者は合理的に実施可能な限りにおいて対策を講じる、訴訟等が起きたときには事業者は十分な防止対策を講じていたことを証明できなければ罰則が適用されるというものです。これは私の解釈だと、大企業のように何でもやれるところはやるけれども、小規模事業場も同じことをしなければいけないかというとそうではなくて、おそらく事業場にあってそのときやれるものをどれだけやっていたかが問われるということだと思っています。
 こういう背景がありまして、実は最近になって国が全ての化学物質を法令のみで管理することを諦めたというように書きました。これは欧州でもそうですけれども、以前は既存化学物質の危険・有害性は政府、行政が特定していくのだとなっていたわけです。それが、物質数がこれだけ増えて使用形態も多様化してくるとやっていられないということがだんだん分かってきます。それで2007年にREACHというものに置き換わりまして、危険・有害性の情報伝達とか管理は事業者の責任になっていったという歴史があります。日本でも2年遅れて、同様の理由だと思いますが、化審法が改正されました。
 労働安全衛生マネジメントシステム、これは自律的な管理ですけれども、これの前提となっているのは化学物質の危険性・有害性に関する情報の提供です。つまり、労働安全衛生マネジメントシステム、自律的な管理は、事業者が危険・有害性情報を集めて、優先順位をつけて管理をしていくという方法ですから、危険・有害性が分からないとそれができないわけです。つまり、自律的な管理の前提となっているのは危険・有害性に関する情報ということになります。
 
<スライド9>
 
 さて、もう一つ大きな流れがありまして、化学物質管理は国際的な枠組みで実行され、各国はそれへの対応が求められている。これは地球温暖化対策、オゾン層破壊物質対策、GHS導入もそうですし、現在ではSDGsですが、こういうものを世界各国が守っていかなければならないというような背景があるわけです。
 
<スライド10>
 
 では、実際に化学物質による事故・健康障害事例はどれだけあるかということです。
 
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 これはもう皆さん大体御存じだと思いますが、世界には1億8,000万、今はもう2億ぐらいになっていると思いますが、化学物質が存在すると言われています。これはCASナンバーからの数です。全部が使われているわけではないのですが、登録数としてはこれだけあります。
 10億人の労働者が危険・有害な化学物質にばく露されている。これは2019年にILOが発表しています。
 それから、100万人が化学物質により死亡している。これは同じ2019年にWHOが発表しています。この100万人というのは、実は労働災害だけではなくて、一般の人も含まれます。労働災害だと多分3分の1ぐらいになるのではないかと思っています。
 数万の化学品が工業的に使用されているにもかかわらず、行政的に管理が行われているものは数千物質である。これは日本の現状を考えても御理解いただけると思います。
 日本では毎年500人の死傷病(休業4日以上)が発生しており、原因物質の8割は特別規則の対象外である。これは先ほど木口課長から発表があったとおりです。
 消費者製品による危害も年間1万件以上の報告がある。
 
<スライド12>
 
 これは、化学物質に起因する労働災害(休業4日以上)を平成15年から30年までまとめたものです。ここで色分けしてありますけれども、紫の一番高いところが有害物です。ここが一番頻度が高いといいますか、件数が多いわけです。もちろん爆発、引火もあります。
 
<スライド13>
 
 これは、先ほど規制対象物質外の労働災害が8割であるという木口課長のお話の中でもありました。
 赤いところを見ていただきたいのですが、左側の「特別規則以外のSDS交付義務対象物質」、「SDS交付義務対象外物質」、「物質名が特定できていないもの」を足すと8割になります。
 もう一つ注目していただきたいのは、実は皮膚障害が多いということです。これは自律管理のための対策のところにもつながるのですが、保護具が大事であるということになるわけです。
 
<スライド14>
 
 これは消費者製品による危害ということで、消費者白書2019年版ですので、後で御覧いただければと思います。ここでも皮膚障害等が結構あるというのが分かります。
 
<スライド15>
 
 化学物質による健康障害事例ですけれども、これは私が長年労働衛生に携わってきて、こうなのだろうなということでまとめたのですが、まず情報不足による労働災害が多いです。これは昔から今もずっとそうだと思っています。先ほども言いましたが、黄燐マッチ製造工場による顎骨壊死、ベンゼンによる再生不良性貧血、その後出てきたノルマルヘキサンの接着剤等の使用による末梢神経障害、これらは当時危険・有害性情報がなかったのです、分からなくて使っていた。それで災害が起きたという例です。
 その次、情報が知らされなかった。これは15年ぐらい前ですか、印刷工の胆管がんというのがありました。ノロウイルス対策製品による皮膚障害というのもあります。今は呼び名が変わりましたけれども、危険ドラッグ。これは情報としてはあったけれども、それがちゃんと伝わっていなかった例だと思っています。
 それから、情報を理解しない。これは毛染め剤でひどい皮膚炎になっている人もいるのですが、毛染め剤ですから当然強力な薬剤が使われていまして、パッケージにはちゃんと注意書きも書いてありますが、読もうとしない、情報を理解しようとしないというようなことがあります。
 それから4番目、これは情報不足というよりは不適正管理・不安全行動によるものと言えるものもあるわけです。
 全体としては危険・有害性に関する情報が足りない、それで事故が起きているというものがほとんどだと思っています。
 
<スライド16>
 
 では危険・有害性に関する情報伝達というのはどういうことか。
 人類は多分大昔から、何が危険かということを認識して、それを家族、友人に伝える、国の中でそういう情報を流すというようなことをやってきました。化学物質はちょっと特殊で、これは視覚、嗅覚、触覚、聴覚が―嗅覚は役に立つものもありますが―ほとんど役に立たないという特徴があります。ではどうやって災害を防ぐかというと、危険・有害性を見える化する必要があるわけです。これは現在、有機則でもそうですし、ほかの法令でもそうですが、危険・有害性を見える化しようというものはある程度あります。それが表示であり、標識、色で分ける、ラベル、SDSということになるわけです。
 
<スライド17>
 
 危険・有害性に関する情報がなければ予防措置はできないと思います。この危険・有害性情報をどう使うかというと、労働者との情報共有というのが一番大切です。それがなければ災害は絶対防げないのですが、実はここのところがあまりうまくいっていなかったということがあります。この情報共有ということが、先ほども言いましたけれども、自律管理の前提である。つまり、事業者にとっても危険・有害性を知って対策の優先順位をつけるということでも重要ですし、労働者が危険・有害性を知れば、どう扱えば良いかが分かるという意味でも非常に重要になります。
 
<スライド18>
 
 その危険・有害性に関する情報伝達はどういうところからやればいいかということで、GHSの導入というところにつながります。GHSというのは「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」といいますが、このGlobally Harmonized Systemのところを取ってGHSと呼んでいます。
 
<スライド19>
 
 この危険・有害性に関する表示―表示というのはラベル・SDSを含んだ言葉で「Labelling」と使っていますけれども、実は欧州では1970年代には既にありました。ちょっと年を取られた方だとR-フレーズとか御存じかもしれませんが、欧州ではそういうものがずっと使われていました。その危険・有害性をラベルに記載しなければ市場に出してはいけないという法律が欧州では1970年代にありました。
 米国では1983年に「危険有害性周知基準」、これは労働者対応ですが、この法律で労働者に危険・有害性を伝えなければならないという法律が施行されていました。ただし、これは欧州のような具体性はなくて、概念としてそういうものがあったということです。
 つまり欧米では法で規制する必要があると認識されていました。ところが我が国はという話になるわけです。
 危険・有害性に関する表示制度というのは、実は世界的な統一システムはなかったのです。ただし、国連危険物輸送勧告が、これは特に航空、船舶、それから大陸間では陸上輸送もそうですが、国境をまたぐときには特に危険物を運ぶのは気をつけなければいけないということで、1950年代に制定されて、これは日本では海と空の輸送の規則には既に入っていました。
 ところが、消費者、労働者環境で使うような危険・有害性に関しては統一的なシステムがなかったということでGHSが策定されて、これが2003年に国際連合から発行されます。
 
<スライド20>
 
 「日本の制度で欠けていたもの」と書きましたが、化学物質の危険性・有害性に関する情報伝達が実は日本では欠けていた。欧米では法令で規制されています。事業者の「知らせる義務」、労働者・消費者の「知る権利」、これが欧米ではちゃんと明文化されているのですが、日本の法律の中ではこのような書き方をされたものがありません。労働安全衛生法でもないのです。
 さらに、これは皆さん知っておかれたほうがいいかもしれませんが、GHSが導入されて以降、米国では労働者の「理解する権利」というのが加わったのです。労働者の理解する権利とはどういうことかというと、政府あるいは事業者は労働者がラベル表示とかを理解するように教育しなければいけないということにつながります。これはつまり、今までだったらラベルが貼ってあったでしょう、SDSがあったでしょう、それは知らせたよね、それを分からないのは分からない人の責任だよというようなところがあったわけです。そうではなくて、これからは、裁判になったら、分からせる努力はしたのか、そういう教育をしたのかということが多分問題になるだろうと私は理解しています。実際にそうなるかどうかは何年後かでないと分からないすが、そういう方向に行くだろうと思っています。
 
<スライド21>
 
 日本の化学物質管理に関する法令の特徴。
 災害や疾病の事後対策として策定されてきました。公害とか労働災害がたくさんあって法律がつくられたわけです。物質や作業列挙によるリスク管理の制度です。ということは、包括的な情報伝達システムとしては法律ができていないのです。
 ここがとても重要なのですが、唯一日本で労働安全衛生法第57条だけが危険・有害性を包括的に分かりやすく伝えることを規定しているのです。これはほとんどの方が認識されていないと思うのですが、労働安全衛生法だけなのです。それはどういうことかというと、労働安全衛生法57条には危険・有害な物質については分かりやすく情報伝達しなさいと書いてあります。ところが、これが以前はたった100物質ぐらいでした。100物質だけだったらそれは注目されません、そんなに認識されなかった。ところが、57条の2ではSDSを規定していて、これは640あった。だから、皆さん、情報伝達というとSDSと言っていたのです。だけど、一番重要な情報は労働者に行かなければならないのだから、それはラベルのはずなのです。だけど日本ではそれが常識にならなかった。
 この労働安全衛生法57条というのはGHSから見るととてもラッキーでした。というのは、この法律しか日本ではないのです。例えば毒物劇物取締法での表示は「毒物」又は「劇物」と書くかだけです。消防法も分かりやすい言葉で言っているわけではなくて、責任者が知っていればいいという、つまり分類の言葉で情報伝達をしているだけです。そういうわけで、この労働安全衛生法57条というのはぜひ頭に入れておいていただければと思います。
 ただし、分類及び表示の対象となる物質数が限定されていた。危険性・有害性情報も十分ではなかった。これは、残念ながら環境有害性が労働安全衛生法では抜けているということもあります。
 
<スライド22>
 
 GHS、これはもう皆さん御存じだと思いますので説明する必要はないかと思いますので、飛ばします。
 
<スライド23>
 
 労働安全衛生法57条があってラッキーだったのですが、どういうアクションがあったかというと、2006年、危険有害物質の情報伝達の義務化、これは法の57条を改正したわけです。このときに、ラベルの貼付が107物質、SDSが640だけでした。さらにGHSは何百ページにもなる文書ですので、これは57条にそのまま入らなかったわけです。それでどうしたかというと、JISにしたのです。これは行政の人はとても頭がいいなと私は当時思いました。JISは民間のものですが、いやそういう例は結構あるのだと言うことでした。それでJISでGHSをカバーして、法令が参照するというようになっています。それは今でも続いています。
 もう一つ画期的なことがありました。それは、2006年にリスクアセスメントの努力義務化ということで、法の28条の2で、これは調査と言っていますけれども、リスクアセスメントの努力義務化というのが施行されます。2012年になって危険有害な全物質の情報伝達の努力義務化、57条のほうは義務ですけれども、これは努力義務、つまりこれは規則のほうで、GHSに基づいて57条でカバーしている物質があまりにも少ないということで、海外からも、たくさん質問を受けました。何で日本はGHSをそんなに早く導入できるのと言われたのです。日本はラベル100、SDS640だけなのですと説明したのですが、それは理解されないのです。なぜかというと、GHSというのは全ての危険有害な物質が対象だからです。説明はしたけれども、欧米の人たちは何だそれは、という感じだったと思います。ただし、これが日本の第一歩だったので、それはそれでよかったのですが。
 2016年には、リスクアセスメントの義務化ということが規定されるわけです。
 
<スライド24>
 
 これが平成28年5月31日までと平成28年6月1日以降の法律の改正をざっと示したものですが、左と右の違いが分かりますか。つまり、28年6月1日以降はリスクアセスメントが義務化になっています。それからラベル表示の義務化が下に延びています。物質数が増えています。SDSは同じですけれども、SDSとラベル表示とリスクアセスメントの物質がここで初めてそろうわけです。平成28年6月1日以降ここがそろったということで、先ほど木口課長から御説明があったように、物質数が増えていくとここが全部増えていくということになります。つまり1,800物質追加されますよということは、SDS、ラベル、リスクアセスメントが同時に増えていくということになるわけです。事業者さんからすれば大変な負荷がかかるということにもなります。
 
<スライド25>
 
 表示・文書交付対象とならないもの、これは一般消費者の生活の用に供される製品等は除かれる。これは皆さん御存じだと思いますので、飛ばします。
 
<スライド26>
 
 これはラベル・SDS及びリスクアセスメント対象物質の推移。先ほどお話があったとおりですが、過去においては、ラベル表示は100物質ぐらいだったのが増えてきたということです。SDSも徐々に増えてきた、リスクアセスメントも増えてきて、この3つがそろった。遠い未来では多分危険有害な全物質に義務がかかるかもしれない、かからないかもしれない。それは5年後に議論をして、もっと先のことを見通しを持って決めていくということになると思います。
 
<スライド27>
 
 これは先ほどもっと詳しい図が出ましたので、ここは飛ばします。
 
<スライド28>
 
 GHSの導入、つまり情報共有によって労働安全衛生法の化学物質管理が進化したと私は思っています。これは法令準拠型から自律的な管理になったということです。
 現時点での問題点、義務(罰則付)と努力義務が混在しています。これは先ほど法律の枠組みをお話ししたとおりです。
 事業者等関係者の意識が法令準拠型のままである。これは当たり前ですね。今そうなのだから。それで、政府でもいろいろパンフレットをつくったり、こういう会で情報発信したりしています。
 もう一つ、小規模事業場への支援が不十分である。これは労働安全衛生法にも問題があると私は思っていまして、つまり50人以上と50人以下で明らかに労働者の健康に対する責任の度合いが違います。実は工業会等さんを回って説明させていただいているのですが、その中で工業会の方に言われて私がはっとしたことがあります。これでやっと労働者の権利が平等になりますねと言われたのです。これはどういうことかというと、事業場の規模に関係なく化学物質管理者の選任義務がつきました。この化学物質管理者の選任義務をつけた意図は、化学物質管理をボトムアップするというか、上から下への命令ではなくて、下から積み上げていくという意味がすごく大きいです。つまり労働者に近いところで化学物質管理ができるということで、労働者の健康に対する権利が向上したのですねと言われたのです。私はまさにそのとおりだと思いました。皆さんもそういう意識でもって取り組んでいただければとてもうれしいと思います。
 
<スライド29>
 
 自律的な管理、事業者の対応で、今も申し上げましたけれども、これはボトムアップ、自らを守るための自律的な管理。自らというのは事業者が事業者を守るし、労働者も自分を守るという意味があります。
 今日は時間がないので紹介できないのですが、化学物質による災害に関する近年の判例というのがあります。これはアスベストから始まって、膀胱がんとか胆管がんとかの例もいっぱい出てきているのですが、1990年代後半から判例ががらっと変わってきたと私は思っています。それはどういうことかというと、もう国内法令を遵守していたかどうかだけが問題ではないのです。事業者が国際的、世界的なレベルで何をやっていたか、つまり危険・有害性が情報として入る状況にあったのであれば、事業者はそれに対して何をやっていたかが問われているのです。従来ですと労働安全衛生法を守っていたか守っていないかが問われていたと思います。今は全く違いますので、事業者自身がそこを認識して自律管理をしっかりやっていくしかないのだろうと思っています。
 
<スライド30>
 
 同業団体等の対応ということでまとめました。
 同業各社における化学物質による労災事故ゼロ、これは当たり前ですね。
 いろいろ書きましたが、一番やっていただきたいのは、業種・作業別リスクアセスメント・マニュアルの作成です。これは、従来であれば、例えば政府がガイドラインを出すとか、中央労働災害防止協会がつくるとか、あったと思いますが、そうではなくて、業界・業種別に自らリスクアセスメントのマニュアルをつくってほしいのです。我々センターとしても支援していきたいと考えています。というのは、各業界で今までのリスクアセスメントの法律施行以来、経験のある企業がたくさんあります。ですから、業界としてそこをまとめていただいて、自分たちが守れるリスクアセスメント・マニュアルをつくる。余計な測定はしなくてもいいものをつくるということでもあります。だから、ぜひぜひここをやっていただきたいと思っています。これは業界としてやっていただきたいと思っています。
 
<スライド31>
 
 では各事業者さんは何をしなければいけないか。
 ここもいろいろ書きました。化学物質管理者の選任ですね。それから保護具管理責任者もありましたけれども、今までと全く違うところ、赤字で書いたところ、リスクアセスメントの実施というのは今までは事業者がやると書いていました。ここに労働者を参画させるということが入っています。これがとても重要で、労働者がリスクアセスメントに参加するということは、労働者も危険・有害性を知らなければいけないということです。その教育は化学物質管理者がちゃんとやる。どう扱えばいいかは扱っている人が一番よく知っているはずなのです。だけど、今までの例だと、危険・有害性に関する情報が労働者に行っていないと、こういう言い方をしては失礼かもしれないですけれども、でたらめな使い方をしているのです。「労働衛生のしおり」に災害調査の結果がたくさん載っています。あれを読んでいただけると分かるのですが、災害が起きるときは何かとんでもないことをやっていることのほうが多いです。特に危険・有害性情報がないときにそうです。ですから、まず労働者がリスクアセスメントに参画するような土壌をつくる、そのためには労働者、働いている人が扱っているものの危険・有害性情報を把握する、これが一番大事だと私は思っています。
 
<スライド32>
 
 これで終わりたいと思いますが、後ろのほうにまとめておきましたので、後でお読みいただければと思います。
 では、これで私のお話を終わります。ありがとうございました。

○事務局 城内先生、御講演どうもありがとうございました。
 また、Q&A機能による質問受付をここで締め切らせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 ここから休憩用時間を取らせていただいて、リスクコミュニケーションの準備に入ります。現在2時47分でございますが、3時まで休憩を取らせていただきたいと思っております。3時からまた開始させていただきますので、皆様よろしくお願いいたします。

  午後2時47分 休憩
  午後3時00分 再開

○事務局 それでは、お時間となりましたので、後半の意見交換会を始めさせていただきます。
 コーディネーターは、先ほど御紹介いたしました東京理科大学の教授、堀口先生にお願いしております。また、パネリストに、基調講演を頂きました労働安全衛生総合研究所の城内先生、厚生労働省の木口課長と吉見様、それから日本化薬の梅田様に御出席いただきまして、皆さんから改めて頂いたいろいろな質問について先生から御回答を頂きたいと思います。
 それでは、バトンを堀口先生に渡したいと思いますので、堀口先生、ひとつよろしくお願いいたします。
○堀口教授 皆さん、こんにちは。東京理科大学の堀口です。
 事前にも多くの質問を頂いておりますので、早速、事前の質問、それから本日いただいた質問に順番に回答をお願いしたいと思います。時間の関係で全て回答ができない場合も起こり得ますので、その分はすみませんが御了承いただければと思います。
 それでは、早速始めさせていただきます。
 SDSに関する御質問が多々寄せられておりますので、まずSDSに関する質問からいきたいと思います。
 「パワーポイントの22枚目に記載があります国によるGHS分類とモデルSDS作成・公表について、スケジュールの確認でございますが、GHSは1年置きに改定されており、直近では2021年に第9版が発行されています、毎年少しずつ内容や文言が変わっていますが、国によるGHS分類やSDS作成は常に公表時点での最新版GHSを使用したものでしょうか、また、公表済み品目について、改定されたGHSに従って逐次更新版を公表していただける計画はありますでしょうか。」
 木口課長、お願いします。
○木口化学物質対策課長 お答えします。分類に使うGHSは、分類の実施時の最新のものに基づいて実施しております。いつ分類をしたか、モデルSDSなどをいつ作成したかも書いております。今後も順次計画的に更新をしてまいりたいと思っております。
○堀口教授 ありがとうございます。
 それでは、「資料の27ページのSDSの交付方法の拡大ということで、容器二次元コードから、またはホームページからSDS入手可能としてもよいとあります、現在、SDSの配布先管理と最新版管理のため配布先管理とSDS履歴管理を行っていますが、ラベルホームページから自由に閲覧できる場合、履歴配布先の記録は必要なくなるということでしょうか、ホームページから閲覧する際、記録を残すため会員登録させてSDSを配布させるとなるとユーザーが見るのを諦める結果になると思います、最新版を提供するのは当たり前ですが、実際には取扱いが大きく変わることはないので自由に閲覧できることを優先させるべきだと思います。」というお話ですが、吉見さん、お答えされますか。お願いします。
○吉見室長補佐 SDSの閲覧については、情報提供の方法を拡大するということでインターネットとか二次元コードも今後可能とするようにしていきたいと考えております。
 それで、閲覧した記録を記録しておく必要があるかどうか、そこまでは法令で決めておりませんけれども、譲渡・提供される会社の間でそこの情報を保存すべきかどうか検討いただければと思います。
○堀口教授 関連していると思うのですけれども、「27ページのSDSの交付方法の拡大で、商品販売ホームページなどでSDSを閲覧できるようにする方法が事前に相手の了承を得なくても可能になると書かれています、通常、ホームページには様々な情報が載せられており、SDSまでたどり着けなかったり、数百もの商品の中から目的の商品のSDSが探せないケースが多くあると思います、この場合でもホームページから入手してくださいと相手に伝えればSDS提供の義務を果たしたことになるのでしょうか。」
 梅田さん、実務的なところでどのようにお考えですか。
○日本化薬/梅田氏 弊社はBtoBの製品が多いもので、ホームページにSDSを公開するということはしていないのですけれども、一般的に考えてこれは企業のホームページのつくり方の問題で、分かりやすいようにつくっていただくようにお願いするしかないのかなとは考えます。
○堀口教授 補足で厚労省から何かありますか。
○吉見室長補佐 補足ですけれども、やはり見る側がたどり着きやすいホームページの構成にすることが必要だと思います。どういった形にするかというのはそれぞれの会社のホームページの構成とかによって変わってくるとは思いますけれども、やはりユーザー側がたどり着きやすい方法、あるいは例えば商品の二次元コードから直接各物質のSDSにたどり着くようにするとか、いずれにしてもユーザー側がたどり着きやすい構成にしていただければと思います。
○堀口教授 SDSに関しては本日も頂いているのですけれども、「安衛令別表第9に追加される物質数がこれまでにない勢いで追加されます、中小規模事業者の中には複数の化学物質を混合して製品化するものも多く、百数十ものSDSの作成義務がかかる事業者も確認しています、混合物のSDSは一定の専門知識が必要であるため、SDSの作成を外注する事業者が多いと思われます、現状、混合物のSDSの作成費は10万円程度であり、SDSの整備のみでも数百万円単位の費用がかかる事業者は多いと思われる、中小零細規模の事業者にはこうした業務に当たる専門人材や費用の確保が困難であることから、ぜひ技術的及び経済的支援の仕組みを整備していただきたい、現時点で何らかのお考えがありますか。」ということで、城内先生、先ほど中小規模、零細のサポートのお話もされましたが、何かお考えはありますでしょうか。
○城内化学物質情報管理研究センター長 私はお金は持っていないので、そういう意味での支援はできません。ただ、SDSをつけるというのはやはり製品を売る側の義務だと私は思っていますので、それは時間がかかってもやらなければいけないのではないかと。つまり、それで売った先で情報がちゃんと労働者に伝達されるということになると思いますし、もっと前に製品をつくっている工場でも危険・有害性情報はあるはずなので、その情報を今はコンピューターの世界で、SDSをつくるのも大変だと思いますが、昔ほどではないかなという気もしていますので、やっていただきたいと思っています。
 それについて、行政とか私が勤めているセンターで具体的に支援というのは多分アイデアとして今はないです。具体的にしてあげるとか、そういうことは多分できないかなと思っています。
○堀口教授 厚労省で中小零細の支援について何か検討されているとかそういうことはあるのでしょうか。
○吉見室長補佐 直接SDSをつくる会社にお金ということではないのですけれども、SDSのつくり方が分からないとかそういった会社の方向けに無料の相談窓口は設けておりまして、これは来年度以降も続けていく予定でございます。
○堀口教授 ありがとうございます。
 とても大変だと思うのですが。どうぞ、梅田さん、お願いします。
○日本化薬/梅田氏 大変だというお話は非常によく分かります。弊社も、ここに来る前に確認したところ、それほど大きな会社ではないのですが、約3,000のSDSを持っている。ということは、この3,000のSDSを見直さなければいけない。これは作業が大変なことで、一定の猶予期間は頂きましたのでその間に対応するのですけれども、それでもやはり実務的には作業量が多いということは御認識いただければと思います。
 弊社はSDS作成のソフトを購入して使っているのですけれども、それでもお客様に提供できるSDSにするまでには確認も必要ですし、そのまま使えればいいのですけれども、やはりチェックをして出さなければいけないということもあって、一つ一つ見ていくしかないのかなということです。中小の方は手作業でつくられるとなると相当な作業だと思います。ラベルまでは厚生労働省のほうでGmiccsというソフトを今公開されておりますので、そのあたりを活用されてはいかがかなとは思います。
○吉見室長補佐 厚労省から補足ですけれども、今御紹介いただいたGmiccsはNITEでつくっているシステムでして、それで混合物のラベル等をつくるようなことも可能でございます。
○堀口教授 少し糸口が見つかるようなコメントを頂いたと思います。
 「令和3年度から5年度までに義務化予定の物質が1,800程度あるようですけれども、同じ製品にそれぞれの年の義務化予定物質が1つずつ閾値以上含有されている場合には毎年SDSをアップデートさせる必要があるという理解でよろしいでしょうか。」という御質問ですが、お願いします。
○木口化学物質対策課長 先ほどの説明の中で労働安全衛生総合研究所のセンターに今年と来年と再来年の義務化予定物質のリストをそれぞれ公開したという話をいたしました。適用法令のSDSのところにもまだ公布前、施行前のものであってもこのような形でSDSに書いていいということを通知しておりますので、例えば今の時点で令和3年から5年までの1,800物質全てを一遍に追加するという対応も可能です。ですから、できるだけ前倒しでSDSの整備は進めていただければと思います。1年ごとに改正しなければいけないということではありません。
○堀口教授 ありがとうございます。
 それでは、次に行きます。「SDS記載の成分含有量については、海外より購入する原料は重量%の開示がされない場合も考えられます、EU等他国では範囲での記載が認められている場合が多く、国際整合性の観点からも従来どおり10%刻みの含量幅での記載を認めていただきたい、また、営業上秘密に該当する際はその旨記載の上省略可とされていますが、弊社業界は配分成分の含有量情報は非常に重要な機密情報となるため、煩雑な手続を取らなくても記載を省略できるような制度としていただきたい。」という御意見ですが、幅の記載の御質問が幾つかあったと思います。今の御意見について厚労省から何かありますか。
○木口化学物質対策課長 説明のときにも申し上げたのですけれども、10%刻みから重量%でという話はピンポイントの重量%で必ず書いていただきたいという趣旨ではないです。そのあたり、GHSやJISなどとも齟齬を来さないような形にしていきたいと思いますが、具体的な運用については現在制度改正の検討中ですので、その方針が決まりましたら改めてパブリックコメントをさせていただきたいと思っております。よろしくお願いします。
○堀口教授 同じように、「含有量10%刻みから重量%必須化とのことですが、これでは対象品を原料として二次、三次で使用する際に出来上がったものについてGHS評価をすることができません、GHSで可としている範囲のパーセントに統一して、含有量は従来どおりSDSに記載する方法が望ましいと考えますが、いかがでしょうか。」という御質問も頂いています。また、パブリックコメントもかかるということですので、城内先生、追加でお願いします。
○城内化学物質情報管理研究センター長 10%刻みでいいとか、10%以下は無視していいとか、最初はたしかそういう案だったと思います。これがどうして数値を書いたほうがいいことになったかというと、検討会の議論の中で、日本ではSDSに基づいて危険・有害性を分類することになっていて、そうすると、10%刻みでいいというのが何回か重なっていくと分類ができなくなっていく可能性がすごく高くて、それはやはりまずいのではないかと。危険・有害性をちゃんと伝えるということが趣旨なのにそれができなくなるのはまずいだろうということで、できるだけ実態に合ったパーセンテージを示しましょうということになりました。現実的には重量%をすごく詳細に書くことは不可能だというのは議論の中でも分かっていまして、例えば全体が何Lになればいいよねといって足していくような場合もあるわけです。そういうものは実際には何%~何%という書き方でSDSが出回っているのだろうと思っています。
 それから、何%刻みでというような議論が今あったのですが、EUの場合もその物質のパーセントあるいは範囲で書いてもいいというような書き方になっていて、多分それは実際の作製等の状況も勘案してそういう記述になっていると思っています。だから、先ほど木口課長からも説明がありましたけれども、日本で何が何でもピンポイントで何%にしなければいけないとは考えていなくて、現実に合った方法でいいでしょうというのが検討会でも議論されています。
○堀口教授 ありがとうございます。検討会の議論についても城内先生から今追加で頂きました。
 それで、「追加されたリスクアセスメント対象物質の適切なSDSをメーカーがどの程度対応していただけるのか、輸入品の場合は代理店がどの程度対応してくれるのかが大きな課題と認識しています、特に混合物はどのような対策を行う予定でしょうか。」という御質問が輸入品に関してあるのですけれども、厚労省はどうですか。何か特に考えておられますか。
○吉見室長補佐 SDSに関しましては、今回施行に先だってなるべく前倒しで対応をお願いしたいということで、主な化学製品の製造団体とか、あるいは輸出入協会といったところに前倒しで対応をお願いしているところでして、輸入を行う事業者においても前倒しでSDSの作成をしていただくように今後周知の強化をしていきたいと考えています。
○堀口教授 梅田さんのほうは輸入品に関してどのようなことを今想定しておられますでしょうか。
○日本化薬/梅田氏 輸入品に関してですけれども、弊社が混合物を購入するということはケースとしてはあまり多くないです。逆のケースはあるのですが。特にヨーロッパ等に出す場合、SDSの濃度は幅で書いておりますけれども、やはり厳密なもっと細かい数字が欲しいという要望は時々ございます。その場合は秘密保持契約等を交わして情報を出すというような対応を取っております。営業上の秘密という記載が明確に出ましたけれども、これは未来永劫出さなくてもいいということではなくて、しかるべき要求があったらお互いに秘密保持契約を結んで開示しなければいけないとは認識しております。
○堀口教授 ありがとうございます。
 SDSと、あとはそれを作成するお話で、人の話も出てくるので、進めていきたいと思います。
 「ラベルSDSの作成を全社の専門部署が対応して、そのほかは各現場でやっています、この場合、化学物質管理者はラベルSDS作成分野とラベルSDS作成分野を除くものと職務を分担して選任することは可能ですか。」という御質問があるのですけれども。
○木口化学物質対策課長 現場にいなければできないことと集約できることがある場合には、それは可能と考えております。ただ、現場で管理をしていただくことも大事ですので、現場に化学物質管理者を置いた上で専門部署はまた置くというような形で対応していただければと思います。
○堀口教授 ありがとうございます。
 化学物質管理者についての御質問も幾つか頂いておりまして、「資料26ページに化学物質管理者について書いてあるのですけれども、専門的講習の修了者というのはどのような講習や資格を指すのか、化学物質管理者の人数というのは事業所の規模で変わるのか、化学物質管理者に求める職位とか地位がありますかというのと、化学物質管理者の区分けは製造事業者とその他の事業者となっていますが、輸入事業者はどちらに入りますか、また、化学物質の製造を外部に委託する事業者は製造事業者に含まれますか。」という化学物質管理者についての御質問が来ております。
○木口化学物質対策課長 化学物質管理者の講習につきましては、現在カリキュラムの内容について詰めているところで、2日程度の講習を受けていただくことを想定しております。
 人数につきましては、事業所の規模によって、どの程度化学物質管理の業務があるかによって変わってくるかと思いますが、事業所の規模に応じて一律に何人選任しなさいと規定することは考えておりません。実情に応じて必要な人数を選任いただきたいと思っております。
 それから、職位や地位につきましても化学物質管理者の職務をちゃんと果たせる方ということで、社内のいろいろな体制などにもよるかと思いますので、それで御対応いただきたいと思っております。
 それから、区分けについてですけれども、輸入事業者さんに関しては、この図で言うところの「左記以外の事業者」というところに入ると思っております。
 それから、製造を外部に委託する場合は、最終的に委託元の製品として出荷されることになると思いますので、その委託する事業者さんは製造事業者に含まれると考えております。
○堀口教授 追加で、「化学物質管理者、保護具着用管理責任者というのは、衛生管理者、安全管理者、作業主任者といった既に資格を取得した人で構わないのでしょうか。」という御質問。
○木口化学物質対策課長 それにつきましても、化学物質管理は基本的に今までの労働衛生3管理の考え方に基づいて管理をしていくことになると思いますが、SDSに基づいてリスクアセスメントをやるとか、そういった自律的な管理の要素もありまして、そういった方にどのような付加的な研修を受けていただくかについても今整理をしているところですので、まとまりましたらお示しいたしたいと思っております。
○堀口教授 今整理をされているということで、一応御質問があったことを読み上げますと、「工事現場においても接着剤などの化学物質の取扱いがあるのだけれども、現場ごとにこれらの選任・常駐が必要になるのか。」というような御質問も来ております。
○木口化学物質対策課長 基本的には事業場ごとにということで、その方に御担当の工事現場について見ていただくという対応になろうかと思います。
○堀口教授 化学物質管理者についてはほかは来ていましたかね。「輸入者の場合にGHS分類済み物質の製造事業者と同等という理解でよろしいでしょうか、GHS分類済み物質の製造事業者に該当する場合、国内取引のみの事業場は選任要件なし、国内取引及び輸入取引がある事業場は専門的講習の修了者から選任という理解でよろしいでしょうか。」という御質問が来ているのですけれども、お願いできますか。
○吉見室長補佐 選任要件については、製造事業場については講習を受けていただく。輸入事業者で製造等を行わない場合、これは左記以外の事業場、講習が必要ない形になります。
○堀口教授 ありがとうございます。
 たくさん来ているので五月雨的になっているかもしれませんが、申し訳ございません。
 スライドで御質問が幾つか来ていますので、スライドに沿っていきたいと思います。
 「スライド19に「ばく露濃度を「ばく露管理値」以下とする」とありますが、事業者が取り扱う化学物質について、そのばく露濃度がばく露管理値以下となっていることを実測または推定するツールが必要です、化学メーカーでは多数の化学物質を取り扱うため、新しい仕組み導入でばく露評価の数を懸念しています、事業者が簡易的に広く使えるツールを提供・紹介いただきたいということですが、ばく露評価に関しては何かございますか。ツールや今頂いた質問なのですけれども。ばく露評価に関して、ばく露管理値以下となっていることを実測または推定するツールが必要で、そのツールというものを提供してもらいたい、紹介していただきたい。」ということです。
○日本化薬/梅田氏 今、個人的に一番使いやすいと思うのは、厚労省の「職場のあんぜんサイト」に掲載されていますCREATE-SIMPLEが比較的簡単に使えて評価がしやすいのかなとは思っております。
○堀口教授 御紹介いただきまして、ありがとうございます。
○吉見室長補佐 厚労省から追加ですけれども、ばく露評価の方法については、今後ガイドラインをお示しする予定にしております。現在内容は検討中でございます。そこで、実測をする場合とか、あるいは先ほど御紹介があったCREATE-SIMPLEを使う場合、簡易な評価法でできる場合、そういったケースについてどうやって評価していくか、ガイドラインを示す予定としておりますので、こちらは検討が進んで決まりましたらお知らせさせていただきます。
○堀口教授 ありがとうございます。
「パワーポイントの18枚目のリスクアセスメントの実施で、経皮ばく露に対するリスクアセスメントの実施も義務づけされるのでしょうか、もしそうだとすれば、経皮ばく露限界値が分からないと定量的なリスクアセスメントの実施が難しいのですが、国からこの値を示していただけますでしょうか。」というような経皮ばく露についてのお尋ねがあります。
○木口化学物質対策課長 現在想定している濃度管理、濃度規制は吸入ばく露を念頭に置いたものですけれども、経皮のリスクアセスメント手法については現在研究開発中ということですので、これまたある程度知見が集積いたしましたらガイドラインのような形で御提示いたしたいと思っております。
○堀口教授 ありがとうございます。
○日本化薬/梅田氏 経皮ばく露に関しては、日本に限らず、世界的にばく露基準値が定められている物質がかなり少ないです。ですから、経皮ばく露の評価をするに際して、そのばく露基準値を探すことがそもそも大変で、このあたりをどうしていくのかというのは御検討いただきたいとは思います。CREATE-SIMPLEで経皮のばく露評価はできるのですけれども、これもある一定のシミュレーションを使って吸入ばく露から類推するという方法です。これが全てとは思いませんが、何かいい方法がないのかなと思っているところでございます。
○堀口教授 ありがとうございます。
 「同じ18ページですけれども、一番下の文章につきまして、最終的には特化則、有機則の主要な規制事項、発散防止主任者、測定、健診、保護具は全て自律管理に転換されるという意味ですか。また、特化則、有機則の規則が残ったまま自律管理による措置の義務づけが始まって、二重規制になるようなことはありませんか。」という御質問です。
○木口化学物質対策課長 ここに書いてあるとおり5年後を目途にとありますので、それまでの間は現在の特化則などと自律的な管理が併存するという形になります。特別則を廃止するとした場合も、報告書の中では特別則のうち自律的な管理の中に残す規定を除きという文言もございまして、自律的な管理の中で今の特別則による仕組みの中で残すべきものにつきましても自律的な管理の進捗の状況なども見据えた上で今後判断していくことになります。
○堀口教授 今後判断されるということで、同様の質問が来ていましたので読み上げますが、「特定化学物質作業主任者、有機溶剤作業主任者の選任義務がなくなるのでしょうか。」というのと、「特定化学物質作業主任者、有機溶剤作業主任者の国家資格も消滅するのでしょうか。」という2つの御質問が来ておりました。
○木口化学物質対策課長 これにつきましても、作業主任者さんがこれまで担っていた業務を化学物質管理者なり職長さんなりが今後受け継いでいくということになろうかと思いますので、規則がもし廃止された場合にはその作業主任者という名称はなくなってしまうかもしれないですが、職務は新しい仕組みに受け継がれるということで御理解いただきたいと思います。それから、現在作業主任者の資格をお持ちの方は新たな仕組みの中でまたその役目を果たしていただくということになろうかと思います。
○堀口教授 同じようなことで、「有機溶剤とかそういうものの作業主任者制度が廃止になりますか。」という御質問がほかにも来ておりました。
そして、「基本となる規則は残したほうがいいのではないですか。」という御意見。
 それから、「作業主任者の取得は意味がなくなるのではないか。」というような御意見も来ております。
 それから、25ページの外部専門家についての御質問も幾つか来ておりました。「外部専門家とありますが、どのようにコンタクトを取ればいいのでしょうか、監督署などに専門家としての登録など事業者が紹介してもらう手段を設けてほしいのではないでしょうか。」という御質問があるのですが。
○木口化学物質対策課長 現在も労働安全衛生法に基づく外部専門家として、例えば労働衛生コンサルタントですとか、作業環境測定士といった専門職がございます。現在そういった職種の関係団体などとも調整していますが、こういった外部専門家として御活躍いただける方をリストアップし、必要とする方がアクセスしやすいような環境を整えていただくことについても、今後もこういったところと御相談をしながら環境を整えてまいりたいと思っております。
○堀口教授 質問を見つけられていないのですが、その外部というのは資格さえ持っていれば同じ社内でもいいのかみたいな質問があったのですけれども、外部というのは組織が別という意味でしょうか。外部専門家の外部というのは。
○木口化学物質対策課長 考え方としては社内で対応し切れないので外の力を借りるということになると思いますので、外部というのは少なくとも事業場の外ということになると考えております。
○堀口教授 ありがとうございます。要するに内部で対応できるときはちゃんと内部で対応していればそれで構わないということでよろしいですよね。
 「スライドの24、今後の追加予定対象物質の情報を15項へ優先的に記載する趣旨は理解しました、最初の234物質の追加が令和6年4月施行となりますが、川上の事業者はおおよそいつ頃より情報記載を開始することを想定しておられるでしょうか、情報を追加するに当たりシステム改修が必要になりますが、この時期、来年度の予算枠は既に確定済みであり、かつ、ようやく改正JIS対応システムが完成したところですので、事業者側の負担が大きいです、少なくとも再来年度以降からは開始するといったスケジュールを示していただけると現実的に対応できありがたいのですが。」という、多分川上と川下の時間差のお話かと思うのですが、スケジュール感としてはどのようなイメージでおられますでしょうか。
 梅田さんからは何かありますか。
○日本化薬/梅田氏 弊社は川上のほうのメーカーだと思っているのですけれども、難しいですね。上流側の企業がSDSを出して対応するということならばそれなりの基盤整備が必要で、先ほど申しましたけれども、3,000ぐらいSDSがございますので、それを全部見直さなければいけない。それをすぐにやれと言われてもなかなか対応は取れないかなということです。
 ただ、今までの私の経験からすると、こういう法改正があった場合は大体川下のメーカーから調査の依頼が来ます。例えば今回ですと、安衛法が変わって物質が追加されましたけれども、使っていますか、使っていませんかというような調査が入ります。ですから、そういうことを活用していただいて早く情報を得るということが必要かなと思います。物質が分かれば危険、有害性の情報は「職場のあんぜんサイト」のモデルSDSに記載されておりますので、まずはそちらで確認いただければよろしいかなと思います。
○堀口教授 ありがとうございます。
 何かつけ加えますか。
○吉見室長補佐 厚労省から補足ですけれども、これまでラベル・SDSの対象物質を追加したとき、これは1回に追加する物質が数物質とか多くても10物質とかそれぐらいの単位で追加してきたときというのは、実は法令改正から施行までは数か月とか長くても1年ぐらいでした。今回、多くの物質を一斉に追加すること、それから企業側でのそういったシステム改修とか準備に時間がかかるということもございまして丸2年取らせていただいておりますので、令和4年度、さらに令和5年度の予算の中で対応をお願いする、その中でできるだけ早い段階でお願いしたいと考えております。
○堀口教授 ありがとうございます。
 「資料の27ページですが、SDSの内容が変わった場合に1年以内に再交付となっていますが、再交付先は販売後何年間遡って行うことを想定されていますか、また、製造中止としたものの再交付は必要ですか。」という御質問です。お願いできますか。
○吉見室長補佐 情報更新をして再交付というのは、制度改正はこれからですけれども、制度改正をして施行した時点から5年の間に情報更新をして、その後伝達をする、再交付をするというようなことを考えております。例えばその後製造を中止したりといったものについては、譲渡・提供をやめたものまで遡って再交付を義務づけるというようなところまでは今のところ考えておりません。
○堀口教授 何かつけ加えることありますか。特にない。分かりました。ありがとうございます。
 すみません、五月雨的で。自律的な管理についての御質問ですけれども、「従業員20名程度の研究施設です、500種のリスクアセスメント対象物質を所有しており、日々これらのうち数種類を少量ずつ使用しています、リスクアセスメントにかかる作業を極力軽減したいと考えており、省力的かつ効果的な方法がありましたら御紹介いただけないでしょうか、多種類の物質を扱っている小規模な施設の実例を挙げていただけると助かります。」ということで、どこかにそういう事例みたいなものを引っ張ってくるようなサイトはあるのですか。
城内先生、どうですか。
○城内化学物質情報管理研究センター長 今はそういうサイトはないと思いますけれども、先ほど申し上げた各工業界の作業を熟知している皆さんにリスクアセスメントのマニュアルをつくっていただきたいというのはそこに関わっていまして、例えば500扱っていたら500全部測定しなければいけないというような状況はないのではないかと想像しています。つまり、定性的にすごく少量を使っていて、それが発がん性があるとかとなると別ですけれども、そんなに毒性が強くない、なおかつ数も少ないのをドラフトで使っているといったら、多分測定は必要ないだろうと思います。そのような定性的な評価で、なおかつ確認のために簡易測定するとかすれば、全ての物質について詳細なリスクアセスメントをしなくてもいいのではないかと想像しています。ただ、それは現場のことを知っている方がやらないといけないので、一般的なガイドラインとしては出せないと思うのです。なので現場でリスクアセスメントのマニュアルをつくってくださいということをお願いしているわけで、半年ぐらいしたら結構その例が集まってくるのではないかと思っています。その上で、例えば業界から、あるいはセンターから、こういう例がありますよというのを公表していきたいと思っています。
○堀口教授 ありがとうございます。
○日本化薬/梅田氏 500ぐらいの物質を使われるということですけれども、今、城内先生もおっしゃったように、500全てを毎日使うわけではないと思います。ですから、使用実績の多いもの、あるいは有害性の高いものから優先順位をつけてリスクアセスメントをしていって、その際に、数が多いわけですから、なるべく簡単な方法、例えば先ほど紹介したCREATE-SIMPLEなどを使ってスクリーニングしていって、リスクがあるようなものに関しては実測してみるというような形がよろしいかと思います。その優先順位をつけるということ自体がリスクアセスメントですので、そういうことからまずは進められてはいかがかなと思います。
○堀口教授 ありがとうございます。優先順位をしっかりつけてやって、その段階からもうリスクアセスメントの一歩が始まっているという考え方だと思われます。
 あと、「28ページの事業場内の情報の表示の義務化で小分けの場合とありますが、ばく露作業、例えばサンプリングや洗浄などを行うときにもその作業場の中にラベル表示も義務づけとなるのでしょうか。」
○木口化学物質対策課長 ラベル表示による伝達は一つの例ですので、例えば作業指示書にこういう物質が入っていますと書いて伝達するとか、やり方はいろいろあると思います。現場の実情に即した形で、とにかく情報が伝達されることが実現すればいいので、ラベルにこだわる必要はありません
○堀口教授 ありがとうございます。
○日本化薬/梅田氏 補足させていただきますけれども、JIS Z7253にそのようなサンプルを扱う場合やラベルが貼れないような場合に関しての例がありますので、そちらを一度御覧になっていただければよろしいかと思います。
○堀口教授 あと、「25ページの自律的な管理の実施状況の項目は化学品を扱う全ての作業で必要か、キッチンハイターなど家庭用製品を扱う作業でも作業環境測定などが必要となるのでしょうか。」という御質問です。
○木口化学物質対策課長 ラベル表示などのリスクアセスメントの義務に関しては、一般消費者の生活の用に供するための製品は除外をしておりますので、キッチンハイター的なものはそちらに入るのではないかと思っております。
○堀口教授 ありがとうございます。
保護具についても質問などが来ているのですが、1つは要望かな、「譲渡・提供を受ける側としては、保護具の種類について単に防毒・防じんマスクなどと書かれるだけですと分かりにくく、吸収缶の種類やこのぐらいの性能が求められるといった既出の保護具の指針に沿う形で記載を求めていただけたらと思います。」という御要望が来ております。
 それから、「保護具着用管理責任者は化学物質管理者と同じ人でもいいのですか。」という御質問が来ています。
○木口化学物質対策課長 保護具の種類に関しては、その製品の使用量とか使われ方によっても適切な保護具というのは変わってくると思うのですけれども、推奨用途を書くという話もありますし、メーカーさんとしては推奨用途で使った場合を想定して保護具の種類をお書きいただくことをやっていただければと思っております。使う側はそれに比べてばく露が大きい作業だと思ったらもう一段高い保護具を使うなど、それはリスクアセスメントの過程でやっていただきたいと思っております。
 それから、保護具の着用管理責任者は、その職務を遂行できる方であれば化学物質管理者と兼任になることも差し支えないです。
○日本化薬/梅田氏 今、木口課長のおっしゃったとおりで、化学物質のリスクは使い方によって随分変わりますので、一概にこの保護具を使えばいいという記載をメーカーに求めるのはかなり厳しいかと思います。
 厚生労働省にお願いしたいのは、やはり保護具のガイドラインです。使い方のガイドラインをぜひ整備していただければと思います。呼吸用保護具に関しては比較的つくりやすいかと思います。保護手袋はなかなか難しいのですが、お願いできればと思います。
○堀口教授 お願いがここにも書いてありまして、「保護具装着を認めるということですが、化学防護手袋についての情報が少なく、適切なものの選択が非常に難しい状況です、メーカーからは純物質の情報は比較的頂けますが、混合物は困難です、実測定を行える機関も少なく、安価に実測定を行える体制を整えていただきたく思います。」というような、先ほど梅田さんがおっしゃったガイドラインであったり、そういうものがあると今のこの実際に測定しますというところにも関係してくるのかなと思います。
 雑駁な目についたお話としましては、結構皆さんにいろいろな御質問を頂いているのですけれども、「28ページで、問題点として義務と努力義務が混在している。」と―多分城内先生のやつではないかと思うのですけれども―「今回の改正においても義務の物質が674から2,900に増えますけれども、努力義務との混在は変わりません、受け取る側の意識次第で法令準拠型のままになってしまわないでしょうか。」城内先生、どのようにお考えでしょうか。
○城内化学物質情報管理研究センター長 2,000物質を法令準拠型にしたら、それは回らないと思います。今は123物質にいろいろなものがかかっているわけです。それでも大変なのが、2,000物質、例えば健診から局排から作業環境測定からみたいなものが現実的かといったら、私はそれは現実的ではないと思っていますので、混在はしているけれども、だからこそどちらかにしなければいけないのではないかということで、自律管理のほうがより実現可能性が多いだろうと思います。
 もう一つ極端なことを言うと、自律管理なのだから全て自律管理でやったらどうかという話もあるわけです。物質そのものを指定しないで。でも、先ほど発表の中でも言いましたけれども、事業者はあるところを決めないとやらないというのが欧米の常識なのです。それは情報伝達もそうだし、例えば欧州で7,000物質ぐらいについてはリスクフレーズとかつけてずっとやってきたわけですが、それは、最低限決めなければならないところがあるのだというのが今までの歴史の中で我々の前の人たちが獲得してきた経験だと思います。なので、自律管理ということについて何をどれだけ行政が押さえればいいかということの結果が、何をリストアップするか、何はしなくていいかというところだと思っています。
○堀口教授 同じ城内先生の資料の13ページですけれども、「物質名が特定できないというのが38.9%―多分事故の―で一番多いです、物質名が特定できないのにSDSやラベルを強化しても対応できないのではないでしょうか。」と。
○城内化学物質情報管理研究センター長 鋭い質問をありがとうございます。実はこの物質が特定できないというのは、これは傷病報告のデータなのですが、監督官の方が事故が起きたときにそこに行ってデータを集めるわけです。そのときにラベルは貼ってあったけれども中身が分からなかったとかいろいろなものがここに含まれていて、何とも言えないのですけれども、現状ではそういうこともあるので、今後は情報伝達をしっかりしましょうというところに行っています。それがSDS何%以上やりましょうとか、ラベルはちゃんとつけましょうというところに帰着しているかなと思います。
○木口化学物質対策課長 補足します。労働者死傷病報告というのは事業場から出てくる報告ですが、こういう作業をしていたら中毒を起こしましたみたいなことだけ書いてあって、何を使っていてそれが起こったかというところがきっちり書いていない事例がございます。そうすると、そもそもどういう物質を使っていたか分からないのでここのカテゴリーに入ってしまうということです。こういうことでは困りますので、化学物質の災害に関する死傷病報告を出す場合には、そのときにどういう物質を使っていたか、物質が分からなければせめて製品名はきちんと書いていただきたいという指示を出しておりますので、今後このあたりの統計は正確になってくると思いますし、そういうデータから例えばこの物質の災害が増えているねということであれば改めてリスク評価をするとか、そういったことにもつなげていきたいと思っています。
○堀口教授 ありがとうございます。
城内先生の資料で、「企業としてやるべきことをやっていたかどうかが問われるということに対して、現場を考えると完璧な対応は非現実的で、義務を課しても、化学企業は対応できるでしょうが、企業規模は大きくても化学以外の企業は対応が困難と思われます、大企業であっても化学以外の企業に対しての支援策の御検討をお願いします。」となっていましたが。
○城内化学物質情報管理研究センター長 ちょっと過激な書き方をしていますが、私が重篤な職業病とかの事例を見ている限り、ちょっとしたことでは起きていないのです。やはり使い方がそれはあんまりだよねということのほうが多いです。やるべきことをやっているというのは、先ほど簡単な例で、事業者が労働者と危険・有害性情報を共有するとか、これは危ないんだよとちゃんと伝えるとか、実は重篤な災害というのはそういうことさえもしていない。だから、やるべきことをやるという、そのやるべきというのは、先ほどから出ていますけれども、例えば健診をやるとか、局排をつけるとか、作業環境測定も全部やるとか、そういう意味ではなくて、もっとベーシックなところでやるべきことをやればかなりリスクマネジメントができるのではないかという意味で書いています。
○堀口教授 労働者と経営者というか管理者とのコミュニケーションは、それはそれでリスクコミュニケーションなので、日頃から地道にやっていただきたいところかなと思います。
 あと、「JISの7252及びJISの7253に従えば安衛法に準拠できるということですが、今回の改正でSDSに記載義務項目が追加されると思いますが、その分についてもJISでカバーされているのでしょうか。」という質問です。
 城内先生、お願いします。
○城内化学物質情報管理研究センター長 はっきり言うと、JISと安衛法の齟齬も結構あります。それは仕方がないのですが、両方を見ているとやはり一致させてほしいなと思うのですが、労働安全衛生法は労働安全衛生法で歴史があって、JISのほうはどちらかというと企業サイドの解釈のほうが多いですから、やはり使いやすいようにしたいというのがあるわけです。そうするとどうしてもそこで違いが生じていて、今のような形になっている。ただし、JISにも書いていますけれども、法令が優先されるのです。だから、そこのところは、現状ではうまく対応していただくしかないかなと思っていますが、将来的には、安衛法がJISを参照しろと書いてあるのであれば一致させるべきだと思っています。
○堀口教授 厚労省から何か追加することはありますか。
○吉見室長補佐 現状、先ほど城内先生がおっしゃったようなことがあるのですけれども、将来的にはGHSなりJISなりのルールの原則に従っていくというような方向で今後変えていきたいとは考えていまして、今すぐということにはならないかもしれませんけれども、その辺は今後の制度の検討とか、あるいは逆にJISの改定のときとか、そういったときに検討していきたいと考えています。
○堀口教授 ありがとうございます。行く行く変わっていくべきところであり、今回そのための第一歩を大きく踏み出したのかなという印象を今日お二人の発表を聞きながら持っておりました。
 あと、「卸売業など密封状態の品目を貯蔵・運搬するだけの事業所においても保護具の使用管理が必要ですか。」という御質問。
○木口化学物質対策課長 密封状態で製品にばく露されるおそれがないのであれば、保護具の使用というのには当たらないかと思います。
○堀口教授 ありがとうございます。
 それから健診の御質問も来ていまして、「健診を年1回に緩和する際も現状の特別規則での対応同様に労基署申請が必要となる見込みでしょうか。」という御質問です。
○吉見室長補佐 具体的な制度運用については今検討中でございます。また、制度の案ができました段階でパブリックコメントを実施したいと考えております。
○堀口教授 ありがとうございます。
 「健康診断以外の措置は考えられていないのでしょうか、作業環境測定の緩和などは考えられていないのでしょうか。」というような御質問が来ているのですけれども。
○木口化学物質対策課長 現時点で緩和を考えているのは健康診断だけでございます。
○堀口教授 「作業環境測定前には工程を大掃除したり、測定当日には局所排気装置の効果を強めたり、大量にばく露する可能性のある業務を中止したりするのが現場では当たり前になっているところがほとんどだと思いますが、このような現状を踏まえて今後の対策は大丈夫なのか不安です。」というお話。梅田さん。
○日本化薬/梅田氏 すみません、私の会社ではそういうことはないと思いますが、何のために作業環境測定をするのかということはよく考えてやっていただきたいと思います。作業者が作業できる環境なのか、そうでないのか。これを超えてしまっても管理区分が上がるというシステムで、改善の義務は発生しますが、それで処罰されるというわけではないので、要するに改善の方向に向かうような形で対応を取られるべきなのかなとは思います。
○堀口教授 まさに今の不安は経営者というか事業のトップの方と先ほど城内先生が言われたリスクのお話をきちんとしてやりとりをしないといけないということですし、万が一のことがあったときに今のような方が証言となって、ちゃんとやっていなかったよねという話につながると思いますので、ぜひコミュニケーションを取っていただければと思います。
 まだ質問がありますので、引き続きいきます。
 「国のGHS分類結果は、GHS分類する際、義務となりますか、合理的な理由、例えば自社で取得した安全データがあるなどがあれば違う分類となってもよろしいのでしょうか。」
○木口化学物質対策課長 国のGHS分類はあくまで参考情報としてお使いいただければと思います。違う情報を使われる場合、もちろん判断の根拠などを明らかにしてお使いいただければ、それを使っていただいても結構です。
○堀口教授 課長のスライドの22ページで御質問ですが、「ばく露管理値は数百物質に対し設定される予定であるようですが、対象物質は基本的にACGIHで許容濃度が定められている物質と考えればよろしいでしょうか。」
○木口化学物質対策課長 ばく露基準値はこれから決めていきますけれども、既存のそういったデータなどを参考にしますので、そういう物質になるという御認識で間違いないです。
○堀口教授 保護具の質問がありました。「保護具の具体的記載が必要となるとのことだが、環境によって必要な保護具のレベルが変わると思われる、どの程度の具体的な記載が望まれるのか分からない、記載の保護具着用でユーザーに問題が起きた場合はメーカーは責任が問われることになるのでしょうか。」という質問です。
○木口化学物質対策課長 保護具の種類はリスクアセスメントのよりどころになりますが、それに従ったのでそれによって生じた問題がSDSの提供者のところにはね返るというものではなくて、事業者が化学物質の使われ方に応じて適切に選ぶという原則は変わりませんので、あくまで参考情報として使うものだということで御認識いただきたいと思います。
○日本化薬/梅田氏 木口課長のおっしゃるとおりではあると思うのですが、メーカーとしてはメーカーのSDSに推奨する保護具を書くということはそれなりの責任を持って書かなければいけなくなってしまいますので、そのあたりは厳しめ、厳しめの保護具を書くような形になることは仕方がないかなと思います。このあたりも先ほどお願いしたガイドラインを整備していただくという形につなげていただければと思います。
○堀口教授 ありがとうございます。
 課長のスライドの19と18のところですが、「19ページのほうの本文4行目の「引き続き同規則」とは何の規則でしょうか、18ページで「特化則は廃止を想定」とあるので、そごがあるように感じます、御教示ください。」ということです。
○木口化学物質対策課長 特化則などの対象物質は、少なくとも今後5年間は自律的な管理と特別則による管理が併存するという意味で、特化則の対象物質は少なくとも特化則が廃止されるまでの間は特化則をそのまま適用しますという意味でございます。
○堀口教授 ありがとうございます。
 それから、「海外からの情報や文献情報や類似物質からの類推を考えると、GHS分類をもし実施すれば分類ありに該当するであろうことが推定されていても、政府によるGHS分類が未実施である物質はSDSの提供、GHSラベル添付の義務まではないという理解でよろしいでしょうか。」
○木口化学物質対策課長 法令上は義務まではかかりませんけれども、そういった情報をお持ちのものに関してはできるだけ情報を伝達していただきたいという努力義務にはなっていますので、ぜひ積極的に情報伝達をお願いいたしたいと思います。
○堀口教授 「衛生委員会の設置が法令で義務づけられていないような小規模事業場に対してリスクアセスメントに基づく化学物質管理を根づかせることは一朝一夕にはできないと思われます、現状でもリスクアセスメントに係る委託事業を実施していますが、小規模事業場ではどの程度活用されているのでしょうか、また、その活用状況について行政としてはどのように評価しておりますでしょうか。」というお尋ねがあるのですが、何か分かっていることがありますでしょうか。
○吉見室長補佐 今、手元に小規模事業場でどれぐらいというようなデータはないのですけれども、小規模事業場でも実際活用していただいている企業はございます。まだまだリスクアセスメントの定着が不十分という部分がございますので、こういった相談窓口とか、あるいは御希望のある会社には訪問しての支援など、こういったことは来年度も継続してやっていきたいと考えております。
○堀口教授 「自律的な管理への考え方はとてもよく理解できます、しかしながら、適切なSDSを提供していただけるかがキーポイントです、適切なSDS提供を受けられない場合に事業者は十分な防止措置を講じていたことの証明は困難かと思われます、コメントを頂きたくお願いします。」ということですが。
 梅田さん、どうですか。BtoBと言われていたので。
○日本化薬/梅田氏 弊社は基本的に有害性情報を国内に限らず信頼性のあるデータであればGHS分類に反映させてSDSを提供させていただいております。
○堀口教授 何か厚労省から。
○木口化学物質対策課長 SDSの提供を受けられない場合にはできるだけサプライヤーに請求していただきたいのですけれども、もしどうしても入手できなかった場合には、その情報でリスクアセスメントを行っていただいた上で、これだけしか情報が得られなかったということを含めてきちんと記録に残していただきたいと思います。それで精いっぱいの範囲でリスクアセスメントをされたかとかが後で検証できるようにしておいていただきたいと思います。
○堀口教授 「国による管理濃度が決められていない物質については、ばく露濃度をなるべく低くする措置を講じる義務とされていますが、「なるべく低く」という表現が曖昧で、どこまで低減すればよいのか判断に困るのではないかと思いますが、どのように考えればよいのでしょうか。」
梅田さんだったらどのようにお考えになりますでしょうか。
○日本化薬/梅田氏 ばく露基準がないものですね。ただ、国内にない、要するに法律で決まっていないのか、あるいは本当にまるきりないのかによると思いますけれども、海外を含めて、ACGIHや各国の規制の値があるものもありますので、そのあたりを参考にされてリスク管理をなさるのがよろしいのではないかと思います。
 今の安衛法の計画ですと、まず来年度は150ぐらい、その後も―今回資料にはないですね。あり方検討会の報告書には記載がありますけれども、来年度150のばく露基準値を計画しており、それ以降は毎年200物質程度のばく露基準値を定めていこうという計画になっていますので、ばく露基準値自体、決められるものがそんなに多くはないですね。ですから、何らかの情報は自律管理ですので御自身で持ってくる必要があるのかなとは思います。
○堀口教授 城内先生、お願いします。
○城内化学物質情報管理研究センター長 先ほども御質問があったと思うのですが、ACGIHのTLVとかが定められているのは大体700ぐらいなのです。それはこれから行政から発表されるであろうばく露管理値になっていくと思います。ACGIHでも産業衛生学会でもそんなにたくさん同時に許容濃度は決められませんので、今後どうするかという議論は検討会でもあって、GHS分類ができていれば、例えば急性毒性だとか、発がん性があるとかないとかいうことは分かっているわけです。そこから発がん性に関しては閾値がないという前提であれば極力低くするしかないのですが、急性毒性に気をつければいいということだったら推定ができないことはない。例えば何百分の1にするとか、そういう仮定を設ければ可能なので、そういう形のガイドラインみたいなものも必要かなと思っています。
 今の御質問はとても鋭くて、700から800まではできるけれども、それ以降は3,000になったらかなりしんどいことになると思います。そこのところは多分5年後ぐらいに再度検討する必要があるだろうと個人的には思っています。
○堀口教授 なので、今後の状況をきちんと日々手に入れるようにして、情報を常にリニューアルしていっていただければということでよろしいですかね。
 「「職場のあんぜんサイト」のモデルSDSがJIS 7253、2012版となっている物質があります、酸化カルシウムが例だそうですが、モデルSDSを2019年版に更新しないのでしょうか。」という御質問です。お願いします。
○吉見室長補佐 現在、「職場のあんぜんサイト」に掲載されているモデルSDSは、そのモデルSDSをつくった当時の最新のJISに基づいておりまして、2018年以前につくったものはJIS2012年版で現在掲載されております。これにつきましては、今後何年かかかるとは思うのですけれども、計画的に順次情報を更新していきたいと考えております。
○堀口教授 ありがとうございます。
 「城内先生はプレゼンテーションの中で日本の有害性を使用者、消費者に知らせる義務について言及されました、世界的に見てもGHS有害性に区分される化学物質・混合物につき一律的にSDS、ラベル提供を課さない国はまれと思いますが、今回の国による分類された物質のみに義務を限定するのは有害性を知らせるには不十分ではないかと私は思いますが、そのあたりはどうお考えでしょうか、努力義務というのは強制力がなく意味がないと思います、どちらのプレゼンターでも構いませんので、御意見を伺えればと思います。」ということなので、城内先生、どうでしょうか。
○城内化学物質情報管理研究センター長 努力義務は、今までは守らなくてもいい範疇に皆さん入れていたと思いますが、脅かすようで申し訳ないのですが、判例を見ると義務かどうかでは判断されていないのです。情報があったのに出さなかったというほうに裁判官は考えるのではないかと私は思っているので、そういうプレッシャーみたいなものをいい方向に使っていただければと思っています。
○堀口教授 それで城内先生の御意見を聞きたい方がいらっしゃいまして、「化学物質のリスク評価の専門人材について、政府機関や民間のいずれにおいても欧米と比較して我が国はインフラ整備が遅れている中で事業者に自律管理を求めることになりました、今後急ピッチで我が国でも専門人材の育成が行われるようですが、正しい知識と理解の下であらゆる事業者が適切に自律管理を行うことができるまでには、国も事業者も経験を積みつつ管理制度や手法をつくっていくしかないと思います、当面の現場のリスク管理について、城内先生はどうあればよいとお考えでしょうか。」
○城内化学物質情報管理研究センター長 ありがとうございます。先ほども言いましたけれども、私はボトムアップをまず目指すべきだと思っています。検討会でも、実は最初に出てきた意見は専門家を育てましょうという意見が出されました。それには私は全く反対しないのですが、専門家を育てようとすると、今、インダストリアルハイジニスト、オキュペイショナルハイジニストを育てましょうと言っていますけれども、何年かかかっても50人ぐらいなのです。それはそれとしてやらなければいけないですが、ボトムアップをするにはどうすればいいかを議論した結果、化学物質管理者を置いて、まず労働者を巻き込んで危険・有害性情報を共有しましょうというところから始めました。私はこちらのほうが、専門家が上から指導するよりも絶対に裾野の広がりとか小規模事業場対策としては正しいと信じていますので、これを推進していきたいと思っています。
○堀口教授 ありがとうございます。
 「その化学物質管理者ですが、社外の人材でも選任できるのでしょうか。」という御質問があるのですけれども。化学物質管理者は社外の人材(専門家など)でも選任できるのでしょうか。
○城内化学物質情報管理研究センター長 これは社内ですね。基本的には社内で考えていたと思います。というのは、先ほど木口課長からも説明がありましたが、資格要件を緩くしているのです。例えば作業環境測定で勉強したことがあるとか、主任者で勉強したことがあるとか、そういう安全衛生、化学物質管理に関して知識がある人だったら誰でも選任していいことになっていますので、まずそこから始めようという発想だと思います。
○堀口教授 つけ加えますか。
○木口化学物質対策課長 社内の方を選任していただきたいということで考えております。それで足りない部分があれば社外の専門家に助言を求めるということはあってもいいと思います。
○堀口教授 社内でということです。
 あと、「18ページで、この改正施行後は有機則の除外規定、労基署の署長が認めた場合の除外の確認も行いやすくなるのか、現状、除外の認定はかなり厳しいと聞いています。」と書いてあるのですけれども。
○木口化学物質対策課長 有機則は少なくとも今後5年は存続いたしますので、発散抑制措置の特例措置に関しては現状どおりではあるのですけれども、スライドの19ページで2つ目のポツですけれども、「特化則等の対象物質は引き続き同規則を適用。一定の要件を満たした企業は、特化則等の対象物質にも自律的な管理を容認」としております。これは、一定の体制が整っているとか管理が良好に保たれている企業さんに関しては特化物や有機溶剤も自律的な管理で、今の特別則のやり方には捉われずに管理することを容認するという道を開いておりますので、そういった要件が満たされれば自主的に今の発散抑制措置の特例許可のようなことが自律的な管理という形で行えるということはあると思います。
○堀口教授 厚労省のホームページの化学物質対策に関するQ&Aの問の29に、商社などの場合、メーカーの名称と連絡先の記載に加え、販売者の名称と連絡先を追記する方法などが考えられると書いてあります、製造業者が容器に二次元コードを印字しSDSを確認できるようにする方法や、商品販売ホームページなどでSDSを閲覧できるようにする方法を採択した場合、商社が販売者の名称・連絡先を追記することは難しいと思いますが、運用の見直しなどは御検討されているのでしょうか。
○吉見室長補佐 そこら辺の運用については、整理の上、今後お示ししていきたいと考えております。
○堀口教授 ありがとうございます。
 あと、「表示・通知対象選定の元となる国によるGHS分類については、必要に応じて事業者からの情報も考慮して決定・見直しをするとされていますが、今回公開された令和3年、4年、5年度指定予定の物質に関するGHS分類結果及びその根拠はNITEが公開しているものであるという理解でよろしいでしょうか、また、令和3年から5年の指定予定物質のNITE分類に疑義がある場合や分類変更に資する情報を有している場合はどのようにしたらいいでしょうか。」
○木口化学物質対策課長 令和3年、4年、5年の物質に関しては、おっしゃるとおり、GHSの政府分類の結果をNITEのホームページで公表しております。
○城内化学物質情報管理研究センター長 日本ではREACHのようなシステムにはなっていなくて、疑義があった場合にどこか窓口があるというようにはなっていないですが、個々に厚労省とか経産省とかNITEとかに企業側から情報があれば、それは検討会のほうに行くようになっているはずです。
○吉見室長補佐 厚労省から補足ですけれども、来年度以降、そういった疑義があった場合、具体的な有害性の信頼の置けるデータをお持ちの企業がありましたら、そういったものの国への提出窓口を設けることを検討しておりまして、ここは今、経済産業省、環境省あるいはNITEなどとも一緒に具体的な運用を検討しているところです。それができましたら、その窓口を通しまして、御質問とか、具体的に企業でこういった有害性情報を持っているのだけれどもということで出していただければと思います。それを基に国のほうでも検討の対象にしたいと考えています。
○堀口教授 ありがとうございます。
 「GHS分類済み物質の製造事業者とは単一物質と捉えてよろしいでしょうか、混合物の製造事業者は26ページにおける「左記以外の事業者」に含まれると考えてよろしいでしょうか。」
○吉見室長補佐 混合物についても、表示・通知の対象物質に掲げられている物質が入っている場合には対象となります。ですので、「左記以外の事業者」ではなくて「製造事業者」のほうに該当します。
○堀口教授 城内先生に質問が来ていまして、「食品添加物の事業者さんから、食品添加物はGHSの対象から除くとされていますけれども、今回のGHS、SDSの対象外と考えてよいのでしょうか。」
○城内化学物質情報管理研究センター長 食品添加物がGHSの分類から除かれるというのは、食品中にあるものに関してだけです。工場の中で使う場合、その添加物に危険・有害性が認められるのであれば、それはGHSの分類対象であるし、リスクアセスメントの対象になります。それでよろしいでしょうか。
○堀口教授 はい、大丈夫です。
 ちょっと時間が来てしまったのですが、「パネラーの方の御所属を最後に御案内いただけますか。」と。
○日本化薬/梅田氏 日本化薬の梅田と申します。今日は貴重なお時間を頂き、どうもありがとうございます。
○堀口教授 お願いできますか。順番に。
○城内化学物質情報管理研究センター長 労働安全衛生総合研究所の城内と申します。
○木口化学物質対策課長 厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課の木口です。
○吉見室長補佐 同じく厚生労働省の化学物質対策課の吉見と申します。
○堀口教授 東京理科大学の堀口です。
 吉見さんは、次回、木口課長が所用でお見えになれないので、御発表されるということです。
 すみません、何とかさばきましたが、次々と質問が入ってきてこの程度になってしまいました。申し訳ございません。
 お時間が来ましたので、事務局にバトンタッチしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○事務局 先生方、長い間どうもありがとうございました。
 御参加の皆様、長い間、御清聴ありがとうございました。また、多くの御質問を頂きまして、どこまでこなせたかは分からないのですが、今日はたくさんの御質問に対して御返答させていただいたと思っております。
 それから、お願いなのですが、今後のリスクコミュニケーション活動の参考のために事後アンケートを実施させていただきます。終了後に、画面に表示のほか、参加いただいた方のメールアドレス宛てにアンケート入力のURLを発信させていただきますので、御協力のほうをひとつよろしくお願いいたします。
 化学物質管理につきましては厚生労働省で重点的にこれから動きがあると思います。その中で、今日は長い間御清聴いただきましてありがとうございます。
 以上で令和3年度第1回職場における化学物質に関するリスクコミュニケーションを終了いたします。皆様、御参加どうもありがとうございました。