第4回がんの緩和ケアに係る部会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

令和4年1月14日(金)13:30~15:30

議題

  1. (1)「治療期の緩和ケア」について
  2. (2)その他

議事

議事内容
○がん・疾病対策課長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第4回「がんの緩和ケアに係る部会」を開催いたします。
 構成員の皆様におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 事務局を務めます健康局がん・疾病対策課長の中谷です。よろしくお願いいたします。
 なお、本部会はYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきください。
 それでは、初めに佐藤英道厚生労働副大臣より御挨拶申し上げます。
○佐藤厚生労働副大臣 厚生労働副大臣の佐藤英道です。第4回「がんの緩和ケアに係る部会」の開催にあたりまして、一言御挨拶を申し上げます。
 本日は大変お忙しい中、「がんの緩和ケアに係る部会」への御出席を賜り、御礼を申し上げたいと思います。
 第4回となります今回は、がんの「治療期における課題」のうち、緩和ケアチームによる緩和ケアや、麻酔科医や放射線治療医による専門的な疼痛緩和、外来における緩和ケアの提供のあり方について御議論を賜りたいと存じます。
 がんになっても自分らしく生きることができるよう、迅速かつ適切な緩和ケアを十分に提供できる体制を構築することは大変重要なことであります。そのため、厚生労働省では拠点病院等を中心に、緩和ケアチームや緩和ケア外来の設置等を推進してまいりました。
 一方で、遺族調査結果から、がんで亡くなる患者さんの4割が痛みを抱えていらっしゃるという実態も明らかになりました。当部会では、そのようなことも踏まえての議論になろうかと思います。
 緩和ケアのさらなる充実・推進に向け、皆様の現場での御経験なども踏まえまして、活発に御議論をいただきますようお願いを申し上げたいと思います。
 簡単ではございますが、私の挨拶とさせていただきます。
 本日は、何とぞよろしくお願いいたします。
○がん・疾病対策課長 ありがとうございました。
 なお、佐藤副大臣は、公務のため途中退席させていただきます。
○事務局 本日は、全ての構成員に御出席いただいております。
 また、本日は参考人として、埼玉医科大学総合医療センター放射線腫瘍科教授、髙橋健夫先生、中部徳洲会病院疼痛治療科統括部長兼麻酔ペインクリニック部長、服部政治先生に御出席いただいております。
 それでは、資料の確認をさせていただきます。資料は、厚生労働省のウェブサイトに掲載しております。議事次第、資料1及び参考資料1から参考資料6がございますので、御確認ください。
 なお、参考資料6につきましては公開資料となっております。時間の都合上、御説明は割愛させていただきますが、議論に際して適宜、御参照いただけますと幸いです。
 事務局からは以上でございます。
 これ以降の進行は、中川座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○中川座長 皆様、あけましておめでとうございます。中川でございます。
 では、早速ですが、議題1の「治療期の緩和ケア」について、事務局より資料1を用いて説明をお願いします。
○事務局 では、資料1「治療期の課題:専門的な緩和ケアについて」の御説明をさせていただきます。
 2ページ目を御覧ください。本部会では、がんの治療の段階ごとに検討すべき緩和ケアの議題について御議論いただいております。今回も、がんの治療期の課題について御議論いただきます。
 3ページ目を御覧ください。今回御議論いただく「治療期の緩和ケア」の議題として、議題1から3をお示ししております。
 なお、今回の部会では、各議題の現在の問題点について御議論いただき、それを基に次回の部会において各議題の対応方針案について改めて御議論いただきたいと考えております。
 4ページ目を御覧ください。1点目の議題は「緩和ケアチームの技術、提供するケアの質を向上させ、均てん化を図るべきではないか」についてです。
 5ページ目を御覧ください。平成28年度と令和元年度のがん診療連携拠点病院等の現況報告書の集計結果をお示ししています。緩和ケアチームの新規介入患者数について、年間50件未満であった施設は大きく減少が見られたものの、依然として一定程度存在しております。
 6ページ目を御覧ください。がん診療連携拠点病院等の整備指針より、緩和ケアチームの医師に関する要件を抜粋しております。特に専門資格に関して、身体症状の緩和に携わる医師については専門資格を有する者であることが望ましいとされており、また、精神症状の緩和に携わる医師については専門資格に関する規定はなく、ともに必須とはされておりません。
 7ページ目を御覧ください。これら「緩和ケアチームの医師の配置に関する状況」を令和元年度の現況報告書より集計いたしました。身体症状の緩和に携わる医師のうち、専門資格を有する者は約6割でした。身体症状の緩和に携わる医師については、専任であること、専従が望ましいとされていますが、専従の医師がいる施設は約7割でした。
 一方、精神症状の緩和に携わる医師については、専任であることが望ましいとされていますが、これを満たす施設は約8割でした。
 8ページ目を御覧ください。がん診療連携拠点病院等の整備指針より、緩和ケアチームの医師以外の診療従事者に関する要件を抜粋しております。看護師については、がん看護、または緩和ケアに関する専門資格を要する者であることとされている一方、薬剤師、医療心理に携わる者、相談支援に携わる者については、その配置及び専門資格の有無についてはいずれも望ましいとされており、必須とされておりません。
 9ページ目を御覧ください。こちらは、緩和ケアチームの薬剤師、医療心理に携わる者、相談支援に携わる者について、その配置状況と、専門資格を有するか否かについて、令和元年度の現況報告書より集計しております。
 薬剤師は全ての、相談支援に携わる者についても、ほぼ全ての拠点病院の緩和ケアチームに配置されている一方、医療心理に携わる者については約8割にとどまっています。
 また、その専門資格の有無については職種により様々で、薬剤師では約6割、医療心理に携わる者については8割弱、相談支援に携わる者については約9割が専門資格を有しておりました。
 10ページ目を御覧ください。がん診療連携拠点病院の整備指針では、緩和ケアの提供体制について、院内の医療従事者と緩和ケアチームの連携に関して、医師や看護師、薬剤師などの診療従事者が緩和ケアチームへがん患者の診療を依頼するという観点で記載がされており、緩和ケアチームが院内のがん患者の苦痛やそれに対する緩和ケアの提供についての情報を把握し、必要に応じて主体的に診療に関わっていくという方法については記載がありません。
 11ページ目を御覧ください。1つ目の議題についての検討の視点として、以下のものを挙げております。
 令和元年度の現況報告書によると、緩和ケアチームの新規介入患者数は平成28年度の現況報告書と比較し、改善が見られておりますが、一方で、年間新規介入患者数が50件未満の施設も依然として存在しております。
 また、現況報告書によるデータでは依頼件数等の数的な評価しかできず、チームの質の評価は困難であることから、緩和ケアチームの技術や提供するケアの質を評価し、その向上を図るための方策を検討するべきではないかと考えます。
 緩和ケアチームの医師については、身体症状及び精神症状の緩和に携わる医師の専門資格は、ともに必須とされておりません。また、緩和ケアチームに協力する薬剤師、医療心理に携わる者及び相談支援に携わる者について、その配置と専門資格の有無については必須とされておりません。
 がん診療連携拠点病院の整備指針は、院内の医療従事者と緩和ケアチームとの連携に関して、院内の診療従事者が緩和ケアチームへがん患者の診療を依頼するという観点で記載がされており、緩和ケアチームががん患者の苦痛や緩和ケアの提供状況を把握し、主体的に関わっていくという観点では記載がされておりません。
 12ページ目を御覧ください。2点目の議題は、「主治医等の対応と、麻酔科医・放射線治療医との連携について」です。
 13ページ目を御覧ください。こちらは、平成30年度に実施された遺族調査の結果をお示ししています。亡くなる1か月前の療養生活の質について、「痛みが少なく過ごせた」と回答している割合は約5割で、痛みがあったとの回答が4割程度でした。
 14ページ目を御覧ください。こちらは、遺族調査において、亡くなる1週間前の痛みについて調査した結果を集計しております。痛みが「とてもひどい」「ひどい」と回答した割合は3割弱でした。
 15ページ目を御覧ください。先ほどの亡くなる1週間前に強い痛みがあった方について、その原因を調査した結果をお示ししております。こちらによると、痛みがあった理由については「痛みに気づき対応したが対応が不十分であった」場合と、「痛みに気づいていない」場合とに分けることができ、医師が患者の痛みに気づき対応したものの、対応が十分ではなかったケースが一定程度存在することが分かります。このほか、認知機能等による痛みの評価の問題や、がん以外の原因による疼痛が存在するケースなどもあることが分かります。
 なお、これらのデータは疼痛が取り切れていない理由について検討するために掲載しておりますが、あくまで遺族調査の結果であり、タイムラインが必ずしも治療期に限ったものではないという点については注意が必要であります。
 16ページ目を御覧ください。こちらは、がん緩和ケアガイドブックにおいて示されている「疼痛への対応」を基に事務局で作成したものです。このガイドブックの中で、放射線治療や神経ブロックなどについては、薬物治療のSTEPにかかわらず考慮することとされております。
 17ページ目を御覧ください。厚労科研の里見班において難治性がん疼痛に関する研究を行っていただいており、その一部を御紹介させていただきます。
 まず、難治性がん疼痛に対する認定医・専門医の認識や、治療の実態を明らかにすることを目的に、緩和医療専門医・認定医、ペインクリニック専門医、IVR専門医、在宅医療専門医、がん治療認定医に対して質問紙を郵送する横断的調査を実施した結果について御説明いたします。
 なお、難治性がん疼痛の治療として、メサドン、神経ブロック、放射線治療、IVRについて調査を実施しておりますが、今回は神経ブロックと放射線治療について取り上げております。
 18ページ目を御覧ください。がんの疼痛を十分に緩和するための方策についての考えを調査したところ、放射線治療や神経ブロックなどの薬物療法以外の方法が確実に実施できることが有用であると考えられていることが分かります。
 19ページ目を御覧ください。がんの痛みに対する対応の現状に関しては、在宅医療専門医とがん治療認定医の中には、難治性疼痛に対して専門家にコンサルテーションを受けることができないと考えている医師が一定程度存在していることが分かります。
 また、両分野の医師の約9割が、専門的な疼痛治療をもっと実施できるようにする必要があると考えていることが分かります。
 20ページ目を御覧ください。専門的な疼痛治療のうち、膵臓がんによる痛みに対する腹腔神経叢ブロックについて、ペインクリニック専門医やIVR専門医の多くが有用であると考えている一方、5割前後の専門医が、適応のあるがん患者が治療可能な時期に紹介されていないと考えていることが分かります。
 21ページ目を御覧ください。一方で、膵臓がんの疼痛に対し、腹腔神経叢ブロックを実施できるか否かをペインクリニック専門医とIVR専門医に調査したところ、実施できると回答した割合はペインクリニック専門医で約5割、IVR専門医で約2割でした。
 22ページ目を御覧ください。また、腹腔神経叢ブロックの実施状況については、ペインクリニックの専門医の約6割が過去3年間での実施例がゼロであったと回答しております。
 23ページ目を御覧ください。同じく里見班による研究では、難治性がん疼痛に対する治療の実態を明らかにするために、拠点病院、拠点病院以外の病院、在宅療養支援診療所に対して質問紙による調査を実施しております。
 なお、拠点病院等のうち、地域がん診療病院については、自施設における放射線治療の実施体制の整備が必須とされておりませんので、本調査では拠点病院以外の病院として調査が行われております。
 24ページ目を御覧ください。拠点病院に対して、膵がんによる痛みに対し、腹腔神経叢ブロックをどのように実施しているかを調査したところ、自施設で実施している割合は約半数にとどまっており、1割が他施設へ紹介して実施しており、約4割は実施していないという結果でした。
 25ページ目を御覧ください。拠点病院において、腹腔神経叢ブロックを実施、または他施設に紹介して利用する上で障壁となっていることを調査したところ、主に実施できる医師がいない、あるいは少ないこと、または医師はいるが勤務状況のために実施できないことなどが挙げられました。
 26ページ目を御覧ください。一方、非拠点病院や在宅療養支援診療所に対する調査では、腹腔神経叢ブロックを自施設で実施、もしくは他施設に紹介して利用している割合は限定的であり、約8割から9割の施設が実施できていないという状況でした。
 27ページ目を御覧ください。非拠点病院や在宅療養支援診療所において、腹腔神経叢ブロックを自施設で実施、もしくは他施設に紹介して利用する上で障壁となっていることを調査したところ、適応が判断できないことに加え、それを相談できる窓口が分からないこと、実施可能な施設についての情報や紹介先とのつながりがないことなどが挙げられました。
 28ページ目を御覧ください。次に、非拠点病院や在宅療養支援診療所に対して、鎮痛を目的とした放射線治療をどのように実施しているかを調査したところ、自施設で実施している非拠点病院は16%、他施設に紹介して利用している非拠点病院や在宅療養支援診療所は約3割と限定的でした。
 29ページ目を御覧ください。非拠点病院や在宅療養支援診療所において、鎮痛を目的とした放射線治療を他施設に紹介して実施する上での障壁等を調査したところ、適応が判断できないことに加え、それを相談できる窓口が分からないこと、実施可能な施設についての情報や紹介先とのつながりがないことなどが挙げられました。
 30ページ目を御覧ください。2点目の議題についての検討の視点として、以下のものを挙げております。
 患者に苦痛があった理由について、対応がなされたものの、十分に苦痛の緩和が得られなかったケースが一定程度存在していると考えられます。
 がん緩和ケアガイドブックによると、主治医や担当医は把握した患者の苦痛について薬物治療等の基本的緩和ケアを行うとともに、その段階にかかわらず、放射線治療や神経ブロック等について考慮すべきであり、治療目的の達成が困難な場合には緩和ケアチームをはじめとする専門家へのコンサルテーションを積極的に行う必要があるとされております。
 難治性がん疼痛に対する専門医を対象とした調査の結果、多くの医師が薬物療法以外の専門的な疼痛治療ががんの疼痛を十分に緩和するための方策として有用であると考えている一方、専門的な疼痛治療に対して、必要なときにアクセスできていない可能性が示唆されました。
 また、膵臓がんの疼痛に対する腹腔神経叢ブロックについて、実施できると回答したペインクリニック専門医は約5割、IVR専門医は約2割にとどまり、ペインクリニック専門医の約6割は過去3年間の実施例がゼロでした。
 さらに、難治性がん疼痛に関する施設を対象とした調査から、自施設で腹腔神経叢ブロックを実施している拠点病院は約半数であり、主に実施できる医師に関する障壁があることが示唆されました。
 一方、非拠点病院や在宅医療においては、腹腔神経叢ブロックや緩和的放射線治療を自施設で実施、もしくは他施設に紹介して利用している医療機関は限定的であり、適応が判断できないことに加え、それを相談できる窓口が分からないこと、実施可能な施設に関する情報やつながりがないことが障壁となっている可能性が示唆されました。
 31ページ目を御覧ください。3点目の議題は「緩和ケア外来、外来医療における緩和ケアをさらに充実させるべきではないか」です。
 32ページ目を御覧ください。がん診療連携拠点病院等の整備指針より、がん診療連携拠点病院等においては外来における専門的な緩和ケアを提供する体制の整備が求められております。
 33ページ目を御覧ください。拠点病院における緩和ケア外来の設定の有無及び他施設でがんの治療中、もしくは治療していた患者の受入れ状況について令和元年度の現況報告書より集計しております。全ての施設において、緩和ケア外来の設定がされておりました。また、約9割の施設が、他施設でがん診療を受けている、または受けていた患者の受入れを行っていると回答しております。
 34ページ目を御覧ください。一方、平成28年度及び令和元年度の現況報告書によると、緩和ケア外来の年間新規診療症例数が10件未満であった施設の数は110施設ほどであり、平成28年度と令和元年度では大きく変わっていないことが分かりました。
 35ページ目を御覧ください。令和元年度の現況報告書によると、42%の施設において地域の医療機関からの年間新規紹介患者数がゼロであるという結果でした。
 36ページ目を御覧ください。3点目の議題についての検討の視点として、以下のものを挙げております。
 がん診療連携拠点病院等の指定要件において、外来における専門的な緩和ケアを提供する体制の整備が求められております。
 全ての施設が、現況報告書において緩和ケア外来を設定していると回答しており、また、多くの施設が他の施設で治療中のがん患者を受け入れていると回答しておりました。
 一方で、年間の新規診療症例数や地域からの紹介患者数は極めて少なく、外来での緩和ケアの提供が十分に進んでいない可能性が示されました。
 以上が、資料1の御説明でございます。
○中川座長 ありがとうございました。
 では、引き続き、髙橋参考人より、参考資料の3を用いて御発表をお願いいたします。
○髙橋参考人 御紹介ありがとうございます。では、資料を共有させていただきます。
 それでは、始めさせていただきます。本日は、このような機会を与えていただきましてありがとうございます。埼玉医科大学の髙橋です。それでは「緩和的放射線治療 現状と充実の必要性」についてお話しいたします。
 本日の発表内容は、緩和的放射線治療について、それから現状、充実の必要性について、であります。
 まず、がん治療の放射線治療の目標ということですが、根治的な放射線治療はもちろん治癒を目標とするわけですが、緩和的放射線治療は症状の緩和、QOLの向上が目的となります。
 がん症状緩和の実際について見てみますと、基本的なアプローチは、痛みの原因となっている病巣を治療する。痛みに関する感覚を中枢で制御する。中枢神経系への痛みの伝達を制御する、遮断する等がありますが、緩和的放射線治療の場合は、放射線治療により、痛みの原因病巣を治療して、その結果として症状の緩和を得るということになります。がん症状緩和については、鎮痛剤とともに放射線治療も重要な役割を担っていると言えます。
 緩和的放射線治療の適応ですが、何と言っても骨転移が代表でありまして、疼痛を有する骨転移の疼痛緩和、それから脊椎圧迫の解除、骨折予防等が挙げられます。それ以外にも脳転移、肺がん等による上大静脈症候群、肺がん等の腫瘍による気道狭窄、腫瘍出血等が適応となります。十分に症状、QOLの改善が得られます。
 一つ一つ、少し見ていきますと、疼痛を有する骨転移の場合ですが、疼痛を有する骨転移に対する放射線治療の疼痛緩和効果ですが、症状、疼痛が6割から9割ほど改善いたします。それに伴って、QOLの改善も認められます。
 痛みを伴う骨転移の放射線治療の方法は、8Gy/単回照射、20Gy/5回照射、30Gy/10回照射等が一般的でありますが、疼痛の場合に関してだけ言うと、疼痛緩和効果はこの3つの群で差異がありません。8Gy/単回照射は患者さんの通院の機会が非常に少なくて済みますので、地域連携には非常に有利であると私たちは考えております。
 2つ目といたしまして、脊椎圧迫についてお話しいたします。
 椎体骨の転移で脊椎圧迫を来すと麻痺が生じてしまうため、脊髄圧迫は腫瘍学的緊急症の代表と言えます。脊椎圧迫により麻痺が出現してしまうと、48時間以内に放射線治療を開始することが望ましいと言われています。麻痺が発生してからでは、放射線治療による運動改善率は40%程度と報告されています。いかに早く、麻痺が軽い段階で放射線治療を行うかということが重要です。
 具体例をお示しいたします。乳がんの骨転移で、胸椎に大きな転移巣がありまして脊椎を圧迫しています。これにより、不全麻痺を生じていました。そこで、骨転移の病変に対して速やかに放射線治療を開始いたしました。右が緩和的放射線治療1年後の写真でありますが、腫瘍が縮小しておりまして通常歩行が可能となりました。4年間、この方は通常歩行が可能でありました。放射線治療前の運動機能が歩行可能、つたい歩行ができる場合で放射線治療を行うと、その後の歩行機能も高い確率で維持できます。
 一方、対麻痺になってしまってからでは改善率は10%程度と非常に悪くなるということで、症状が起こってから速やかな対応が極めて重要ということが言えます。
 もう一つ、気道狭窄についてもお話しいたします。
 左上の写真は、中枢性の肺がんで、気道が狭窄して左肺は無気肺となり重度の呼吸困難を呈していました。この中枢性の肺がんに放射線治療を緩和照射30Gy/10回行うことで、気道狭窄ならびに無気肺が改善し、呼吸困難も消失して元気に退院されております。私たちの施設でも、非常に進行した症例を入れても6割程度にこのような改善が認められます。
 そういうことで、これからは私たちが今まで取り組んできていた仕事について少しお話ししたいと思います。厚生労働科学研究費「がん治療における緩和的放射線治療の評価と普及啓発のための研究」を行ってきております。
 評価、それから普及啓発、この2つの大きな項目でそれぞれ細かく検討を進めてまいりました。
 まず評価のところで、患者・家族のニーズ・認知度・満足度についてですが、これは次のスライドでアンケート調査結果をお示ししたいと思います。
 それから、評価において重要な緩和照射の質評価のためのQuality Indicatorを、日本緩和医療学会の宮下教授等の御協力も得て開発いたしました。骨転移、脳転移について開発いたしまして、そのIndicatorを用いてこれから全国の放射線治療施設で緩和照射の質評価を行っていきたいと考えております。
 次に普及啓発についてですが、やはり骨転移に対する診療ガイドラインの整備等が非常に重要であるわけで、これの基になるデータを得るため、骨転移に対する放射線治療の多施設共同の前向き観察研究を実施し、現在、結果を解析中であります。従来なかった非常に大きなデータとなりますので、非常に有用な結果が得られることが期待されています。
 それから、仕事との両立支援等も非常に大事だと思っています。放射線治療は仕事の両立において非常に親和性が高いというふうに考えていますが、その両立支援のマニュアル等も作成いたしました。
 それから職種連携、医師の連携等では骨転移キャンサーボードの推進も重要だと考えています。現在、がん拠点病院での保有割合は13%程度にすぎません。ですので、いかに効率的に骨転移キャンサーボードが設置できるか等のポイントについても検討しています。
 患者・家族に対する情報提供は、リーフレットを作成いたしまして現在、日本放射線腫瘍学会のホームページ等でも公開中であります。
 さて、アンケート結果について少しお話しいたします。一般市民・患者について、500人にアンケート調査をいたしました。スライドの左側が緩和ケアの認知度ですが、患者群のほうが一般群より少しいいのですけれども、それでも50%強でしかありません。それから、右側が放射線治療ががんの様々な症状を和らげる効果があることを知っていますかという問いですが、よく知っている・知っているを合わせても、一般で40%、患者で50%程度にとどまっています。
 やはり緩和ケア、緩和照射に関する情報発信がさらに重要ということで、その対象は一般市民・患者だけではなくて医療者、病院管理者、それから行政等も含まれると思いますが、そのようなところに積極的に啓発・広報をしていく必要があると考えております。
 それから、地域連携についても少しお話ししたいと思います。これは先ほどの厚生労働科学研究費研究の一環で行っていますが、緩和照射における放射線治療装置のない施設からの紹介に関する全国実態調査についてお話しいたします。
 現状としては地域連携は、先ほどのアンケート結果にもありましたとおりまだまだ不十分ということですが、左の下のグラフを見てみますと、療養型や在宅ケア医、そういう施設からの放射線治療のニーズは充足しているかという問いを放射線治療医側にしたところ、潜在的なニーズはあると考えているが充足していない。全く把握できない。これを合わせると4分の3程度に上ります。
 また、右上のグラフで、緩和的放射線治療症例のうち自施設以外からの紹介割合は30%未満が8割ということでありまして、さらにその症例数について聞いたところ、他施設から紹介された緩和照射の件数は年間10例以下が半数あるということですので、地域連携を促進する必要があります。
 そのためにはどうすればいいかというと、連携の障壁を地域・病院の特性に応じて検討して改善案を提示する必要があるということです。必要な患者に速やかに放射線治療を行える体制づくり、あとは地域のニーズに合わせたモデル施設づくり等が必要というふうに考えられます。また、院内においては緩和ケアチームとの連携、骨キャンサーボードの推進等が有用であると考えます。
 これは私たちの地域連携モデルの例も示していますが、放射線治療部門、それから当該診療科、地域連携、これらは連携するのは当たり前でありますが、私たちは地域緩和ケアネットワークを活用して顔の見える連携、先ほど顔が見えないという話もありましたが、やはり顔の見える連携を進める必要があります。そのためには、事前の相談システムというものが必要かと考えています。
 こういう連携ができると、放射線治療スケジュールの検討とか通院状況の検討等もできますので、必要な時期に患者さん、家族の負担が少なく放射線治療が開始できるというふうに考えております。
 そのようなことを踏まえて、私たち日本放射線腫瘍学会では「がん診療における「緩和的放射線治療」の積極的な活用に向けて」という提言書を作成いたしました。これには放射線治療医だけではなく、緩和ケア医の先生方、整形外科の先生、それから画像診断の先生や診療放射線技師の方々、あとは在宅の先生、そのような方々が加わって作成しています。
 右が【要旨】になります。その2番目の項目をご覧ください。緩和照射は、骨転移に伴う痛みなど、がんの進行に伴う様々な症状の軽減・緩和に有効であり、患者のQOLの改善のみならず、医療資源の有効活用等の観点からも、普及・定着することが望ましいと考えていますが、まだまだ欧米に比べて件数が少ない。
 その要因は、地域医療における骨転移等の診断・治療に関する医療機関間の連携が十分でない。
 それから、多職種連携の仕組みがまだ不十分。
 3番目に、がん治療に携わる一般医師の緩和照射についての知識が十分でないというようなことも考えられます。
 その上で、幾つかの施策というのを考えていかなければいけないということになります。
 地域での骨転移等の診断・治療に関する医療機関の連携ですが、やはり他院への紹介・他院での放射線治療を容易にする仕組みづくり、インセンティブをつける等のこと、それからいろいろな連携窓口を整えていく。そのようなことが今後必要になってくると考えています。
 院内での骨転移等の診断治療に関する多職種連携は、骨転移キャンサーボードの推進がやはり重要だと思います。これだけあれば全て解決するわけではありませんが、突破口の一つにはなるのではないかと思います。さらにインセンティブがつけば、より設置がしやすいのではないかと考えます。
 それから、がん治療に携わる一般医師の緩和照射についての知識ですけれども、これは様々な研修会や講習会等で、eラーニング等を活用して緩和照射の普及が進められればよいのではないかということも考えております。
 最後に、一般市民への緩和照射についての正しい情報を得られる機会が乏しい点については、やはり普及啓発の工夫、情報提供をさらに推し進めるということが重要ではないかと考えております。
 私からの発表は以上でございます。ありがとうございました。
○中川座長 髙橋参考人、ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして服部参考人より参考資料4を用いて御発表をお願いいたします。
〇服部参考人 皆さん、こんにちは。沖縄中部徳洲会病院の服部です。このたびは、こういう部会に参考人として呼んでいただきましてありがとうございます。
 では、始めさせていただきます。私は、一介の臨床医の立場からがん疼痛治療に携わることが多いので、麻酔科・ペインクリニックの医師の立場として発表させていただきます。
 先ほどの里見班、あとは加藤先生の出しているいろいろなデータからもう皆さんも御存じかと思いますが、4割の方が苦痛がある状態で最期を過ごしていたということが分かります。
 ここで一つ問題になっているのは、20年ぐらい前のデータで、手法は異なりますが、がんセンターにいらっしゃいました平賀先生がした調査でも、大学病院やホスピス等で痛みを抱えている方が4割だったということから、20年経ってもやはりあまり痛み自体が取れていないんじゃないかという疑問が出るわけです。
 先ほど髙橋先生のお話にもありましたが、がんの痛みというのは、皆さんから向かって上と左側ですね。飲み薬や注射薬だけで痛みが取れるというものではなくて、がんそのものの治療や病態の治療が重要です。大きくなっている腫瘍を小さくするとか、麻痺を起こす可能性のある腫瘍に放射線を当てて小さくするとか、場合によっては手術をするといった、原因の除去ということも考えなければいけません。
 また、痛みの伝達を抑えるという意味で、痛みの治療に特化したペインクリニックや麻酔科で行う神経ブロック療法、こういった治療法を組み合わせてがんの痛みをたたくということが非常に大事です。
 ところが、先ほどの里見班では、腹腔神経叢ブロックが焦点になっていましたけれども、御覧になって分かりますように、この黄色の帯のほうへのアクセスというものが非常に少ないというのが今の日本の緩和医療の現状ではないかと思います。
 激しいがんの痛みの患者さんはいっぱいいます。ここでぱっと見ただけでも、がんの痛みの治療を経験している先生方であれば、どんなに医療用麻薬を増量しようが、鎮痛補助薬を使おうが、取れる痛みではないということは見てすぐ分かるかと思います。こういった症例に対してどういった治療が必要かということを、真剣に考えていかなければいけないのではないかと思っています。
 我々、ペインクリニックの医師ができることにはいろいろあります。「がんの痛みに行うIntervention」として、紫色の帯でくくってありますのが、いわゆる神経を破壊して神経が痛みを伝達しにくくする神経ブロック療法のいくつかです。
 そして、水色の帯にしてあるのは、脊髄にカテーテルを入れて、全身投与ではなく直接痛みを伝えている脊髄にオピオイドを投与して痛みを取るという方法です。
 主にこういった治療を駆使して我々はがんの痛み、特に激しいがんの患者さんの痛みに対処しているわけです。
 実際、里見班でも腹腔神経叢ブロックにフォーカスしていたので、腹腔神経叢ブロックの海外からの論文報告を少しまとめさせていただきました。膵がん患者に対する腹腔神経叢ブロックの報告で、薬物療法との比較が幾つかあります。どれも共通しているのは、オピオイドの使用量が有意に低下しているということです。もちろん、痛みも減っているということになります。
 また、上腹部の痛みに対して本当に効くのかどうか。膵がんだけではなく、胆管がんや進行した胃がん、そういったものに効くかどうかということに関しても、上腹部に対して痛みが有意に軽減している。長期間の鎮痛が得られているという報告があります。
 また、もう一つ問題になるのが、施行時期についてです。この2つの論文では、早期に行うべきであるということが報告されています。我々も臨床の現場にいると、なかなか紹介されない、末期の末期になってから紹介されるというケースが非常に多いというのが我々の印象です。
 これは、腹腔神経叢ブロックを私がかつていた施設で行ったときの成績ですけれども、もともと6あった痛みが、腹腔神経叢ブロックをすることによって痛みが2に下がるというデータが出ています。
 左上に出ています透視画像は腹腔神経叢ブロックをしているところですが、以前いた施設での話しですが、モルヒネ換算での数字を出しています。実際にオピオイドはモルヒネではないのですけれども、特定の薬が効かないというふうに誤解されるといけないので、モルヒネ換算にした値で出しています。この実際の患者さんはモルヒネ換算で1日600mgの投与をされています。
 ところが、腹腔神経叢ブロックをした後は、内服のモルヒネ換算60mgでおうちに帰ることができたという膵がんの患者さんのケースです。
 これをちょっと深く掘り下げてみようかと思います。この患者さんを亡くなる90日前まで遡ってみてみました。以前いた施設の緩和ケアチームが一生懸命頑張ってオピオイドや鎮痛補助薬、新しいいろいろなオピオイドを使いながら76日間にわたって痛みを何とか取ろうと努力をしたんだと思います。その結果としてモルヒネ換算で1日600mgの量まで達しても痛みが取れなかったということです。
 ところが、そこで神経ブロックをすることになったんですね。これはほかの医療スタッフのほうから、ちょっとこれでは痛みが全然取れないのではないかという疑問から我々のところにコンサルタントが来ました。神経ブロックをしたところ、著しく痛みが改善して、これだけのオピオイド量ですので、量を下げるために1週間かかりました。そして、内服でおうちに帰りましたが、帰って家で過ごせた時間は7日間です。
 腹腔神経叢ブロックはCT下でやる場合もありますし、我々のように透視下でやる場合もあります。実際には神経破壊薬を使って、99.5%の無水エタノール15から30cc使って、腹腔神経叢が痛みを伝えられないようにするというのがこの膵がんに対するブロックですね。
 それで、先ほどの患者さん以外に、我々が沖縄に来て最初に膵がんの患者さんに神経ブロックを依頼されたものと比べてみました。これは当院の外科の先生が、膵がんの患者さんの腹痛というのは非常に激しいものだから、神経ブロックができるのであれば、とお願いされました。それまでは当院では麻酔科はいますが、神経ブロックはしていなかったとのことで、今回は神経ブロックを早期に実施しました。モルヒネ換算で30mgもない状況でしたが、主治医の先生が先を見越して神経ブロックを依頼したということになります。神経ブロックをしたところ、痛みはすぐ改善しておうちに帰ることができました。
 その後、黄疸が出て減黄処置をして入院したり、腎瘻の処置をして入院したりしていますが、最期は本人が家に迷惑をかけたくないということでホスピスで貼布剤を使った状態で亡くなりました。痛みに関してはそれほど強くないまま最期を迎えられたとのことです。
 このお二人を比較して分かると思いますが、早い時期に神経ブロックをすれば、家に帰って在宅で過ごす時間は長くなるのではないかということを見ることができるかと思います。
 ちょっとだけコストのことも見てみたいと思います。例えば、先ほどの600㎎の患者さんですが、これは実はコスト面でも問題になって我々に紹介されたという経緯があります。なぜなら、鎮痛薬で使うお薬だけで1日1万8000円、病院から手出しになってしまうということ、それを神経破壊した後に内服に変えたら1日1,400円でおうちに帰ることができるということになります。
 医療経済的な面でも好結果ですし、患者さんは場合によっては家に帰って仕事まで開始できるようになれば、経済の活性化にもなるんじゃないかと思います。
 さて、ではこれは特別なケースかというと決してそうではありません。私たちのところには県外の麻酔科からよく相談があります。例えば、「緩和ケア病棟のほうから神経ブロックか何かやってほしいというふうに相談されて困っている。注射と貼付剤を合わせて、モルヒネ換算で1日4,500mgになる。でも、ぼっーとして寝ているようだし、痛みでうなっているのを看護師が見かねて相談してきた。全身状態がこの1か月で悪化していて、神経ブロックに耐えられるか不安です」と。
 実際、この麻酔科の先生がなぜ困ったかというと、緩和ケアの先生が、看護師さんが麻酔科医に頼んだのが気に入らなかったのか、「ではもう麻酔科医で診てもらえよ」という感じで放り出されてしまった。そして、その麻酔科の先生は自分に任せられてしまったということで悩まれていました。
 相談されたことは非常にいいことだとは思うのですけれども、大量になるまでその患者さんが放置されていたということは、院内での啓発が不足しているのではないかということをちょっと注意しました。
 それと、全身状態が悪化した上で神経ブロックをすると、その数日後に仮に亡くなった場合、この神経ブロックのせいで亡くなったというふうに勘違いされることがあるから、やるのであれば、よく患者さんや家族に話をした上でやりなさいということを注意しました。ですから、先ほどの症例が特別なわけではなくて、臨床の現場ではこういったケースがいろいろなところで起きているという可能性が示唆されます。
 少しだけ、脊髄鎮痛についても紹介したいと思います。あまりなじみのない方もいるかもしれないのですが、手術などでする硬膜外鎮痛、通称でルンバールと言われている脊髄くも膜下鎮痛です。これの有用性は何がいいかというと、硬膜外腔にモルヒネを投与した場合には20倍から30倍の鎮痛効果、脊髄くも膜下腔では200倍から300倍の鎮痛効果が上がるというふうに、理論値ですけれどもされています。これはどういうことかというと、全身投与で大量のオピオイドになる患者さんも、かなり少ない量のお薬で痛みを取ることができるということなのです。
 オピオイドの副作用は体に入る総量で規定されますから、量が少なければそれだけ副作用も少ない。副作用が少なくて、痛みを取れた状態で家で過ごすことができるというわけです。ですから、我々はオピオイドが大量になる、もしくはがん疼痛が非常に強い場合には、早いうちに脊髄鎮痛法があるということを患者さんや主治医の先生に説明して、脊髄くも膜下鎮痛にした上で在宅へ返すという方法をとっています。在宅医療も我々はやっていますので、そこも含めて患者さんによく説明して治療しております。
 これは、実際の脊髄くも膜下鎮痛の成績ですけれども、ちょっと見にくいので説明しますと、上の帯の7.62というのが痛みのスコアです。これは、脊髄くも膜下鎮痛をする前のスコアです。それが脊髄くも膜下鎮痛をしたことによって下のブルーの2.17に下がります。
 使っているモルヒネ量も、1日に700㎎近く使っていた患者さんが、脊髄くも膜下投与にすれば10mgから20mgの間で済むということになります。これだけ鎮痛効果が上がるということが分かっています。
 これは、実際に我々が独自でやっているというわけではなくて、海外でも普通に行われている激しいがんの痛みに対する治療です。このバートン先生も、脊髄くも膜下鎮痛をすることでペインスコアが8から4に下がったということを過去に報告しております。我々のデータとほとんど矛盾しません。
 実際、我々が1年間にやっているインターベンション、2020年10月からの1年間で、63症例になります。また、神経ブロックは比較的適応が限られますので、どうしてもそれでも痛みが取れない場合、もちろん普通に全身にオピオイドも使いますが、脊髄鎮痛法を加えるということをしています。
 脊髄くも膜下鎮痛に至ったケースは49例あります。実際、脊髄鎮痛で硬膜外も合わせますと100例以上、年間実施しております。これは、100例以上こういったケースがあるということも裏を返せば言えるんじゃないかと思います。
 さて、今はがん治療もどんどん進んでいるので、必ずしもこうやって全身状態が悪くなっていくとは限らないかもしれません。経過中、いろいろな鎮痛薬を使ったり、オピオイド、鎮痛補助薬を使ったりしますが、鎮痛薬を使っても、どうしても駄目だったら次の手段として神経ブロックをお願いするとか、脊髄鎮痛をやってみよう、というように勘違いされるところがあるのですが、正直言うと一緒にやるということが大事です。
 神経ブロックはいつやるかというのは、神経ブロックをする医師にしか適応は分かりません。先ほど、適応が分からないから紹介できないという報告が里見班でもありましたけれども、やはり適応に関しても聞くという姿勢が必要なのではないかと思います。
 我々も患者さんが来たときに、大きな腫瘍があって脊髄鎮痛や神経ブロックをしたときに、兄弟病院で南部徳洲会病院というのがありますが、そこの放射線科の先生に、緩和照射の適応はあるかと必ず聞きます。なぜなら、その緩和照射の適応があるかどうかは私たちには分からないからです。適応に関して緩和ケアの先生、主治医の先生は分からないから紹介しづらいというのではなくて、適応に関しては専門家に聞くという姿勢が大事なのではないかと考えています。
 つまり、一人の医師、これは緩和ケア医でもがんの治療医でもそうですが、自分のできる範囲で最大限まで頑張るのではなく、神経ブロック等、痛みの専門的治療に関しては、オピオイド開始と同時か、それより前に同時に専門家にコンサルトしていくことが重要です。そして、自分に何ができるかではなくて、患者さんにとって何が必要なのかといったことを考える教育というのを、ぜひ緩和ケアの中で取り入れていただければと考えております。
 まとめますけれども、がん患者の痛みが取り除けていない理由は定かではありませんが、4割も苦痛を緩和できていない。しかも、20年にわたってあまり変化していないという事実は見過ごすことはできないと思います。
 その一つの要因として考えられるのは、臨床の現場で専門的技術の導入が不十分なのではないかと思っています。がんの痛みの治療には、神経ブロックや脊髄鎮痛を、髙橋先生が先ほど言われた放射線治療を、または画像診断などでする腫瘍塞栓、IVRの技術をと、いろいろな有効な治療法があるのです。それをぜひ知っていただいて、利用していただきたいと思います。
 これらがなかなか利用できない理由、問題点として挙げさせてもらいました。
 これも髙橋先生の最後の結論とすごく似通ってしまうんですが、がん治療医や緩和ケア医が専門的治療に対する認識が不十分なのではないか。また、そういった技術を持っている施設だとしてもそこへのアクセス、協力体制が不十分なのではないかと思います。
 また、麻酔科やペインクリニックの我々が自戒の念を持って、こういうインターベンション技術を啓発、歩み寄る姿勢というのが不十分なのではないかと考えます。
 こういった問題点を解決することで、いい方向に今回の議題が動くことを期待しています。この問題点を解決する方法を考えること、これから始めてはどうかというふうに思います。
 以上が私の発表です。どうも御清聴ありがとうございました。
〇中川座長 服部参考人、ありがとうございました。
 それでは、これまでの事務局と参考人の説明を踏まえて議論をお願いしたいと思います。
 まず「1.緩和ケアチームの技術、提供するケアの質を向上させ、均てん化を図るべきではないか」という点ですね。資料1のスライドの4から11に相当する部分であります。構成員の皆様の御意見をいただきたいと思います。御意見のある方は手を挙げていただけますでしょうか。
 前川構成員、お願いします。
〇前川構成員 今、3人の方から資料説明があってまず思ったことは、痛みのあるがん患者さんのために国も医療者も患者自身も本気で考える。それが今日の議論だと、これに尽きると感じました。そして、まず意見を言います。
 資料1の7ページの緩和ケアチームの医師の配置についてです。緩和ケアチームで、身体症状の緩和に関わる医師で緩和ケアに関する専門資格を持っていない医師が42%とあります。これは、本当にびっくりしました。専門資格を持つことが必須となっていないからということなのかもしれませんが、患者は緩和ケアチームの医師は専門的な知識と技術を持っていると思って信頼しております。それを裏切ってはいけないということですね。
 国として、緩和ケアチームの医師には専門資格を持たせるようにするのが、患者に対する国の誠意ではないでしょうか。そのためにも、私は緩和ケア医が専門資格を持つことを指定要件の必須項目にするべきだと考えています。
 ただし、今、経過措置として3、4年は資格を持つための準備期間とすることなどと思います。現在の指定要件でも、緩和ケアに関する専門資格を有する者であるということが望ましいとなっているのですから、要件化に踏み切るべきだと思います。いつまでもこういう状態を放置するのは、がん対策基本法の本来の趣旨から外れているのではないかと考えております。
 以上です。
〇中川座長 ありがとうございました。よく分かりますが、ほかはいかがでしょうか。
 木澤構成員、今の前川構成員の専門資格を指定要件にする。長期的にはそういう方向なのだと思うのですけれども、現実的に可能かどうか、あるいはどれぐらいの猶予期間があれば可能か。その辺、学会のお立場を踏まえて少し教えていただけますか。
〇木澤構成員 ありがとうございます。
 ここは、後で橋口先生にもぜひサポートしていただきたいのですけれども、現在、専門医の数が拠点病院の数をカバーできるだけ育成されていないという問題がやはりあります。ですので、我々も専門医の質を担保したまま、しっかり育成していく必要があるということを改めて痛感しました。
 何年あれば大丈夫かというふうに言われると、何とも言えないところはあるんですけれども、今、服部先生、髙橋先生に御発言いただいて、緩和ケア医というふうに呼ばれている人たちの質がやはり担保できていないというのは大きな問題だと思っています。ですので、やはり業界全体の問題と考えてしっかり取り組んでいきたいと感じました。
 今、あと何年必要かと言うことですが、大変申し訳ないですが、5年程度見ていただく必要があるのではないかと思います。
 以上です。
〇中川座長 ありがとうございました。
 橋口構成員、何か補足はございますか。
〇橋口構成員 緩和医療というのが、割と新しい分野と言われてからも、もうそこそこ10年以上たっていますので、学会として暫定指導医の制度をつくり、それから専門医をつくるような仕組みつくりをやってきたのですけれども、残念ながら今まで増えてこなかったというのが反省点でもあります。
 それで、その質を上げるのと、それから数を増やすことができるような仕組みというのを今、非常に急いで考えていて次の議論で会議のときあたりにある程度の決着がつくと思っているのですけれども、変更させている最中ですので、それが終わりましたらある程度のことは言えると思うのですが、木澤先生が先ほどおっしゃったように、私も5年程度必要なんじゃないかと思っております。鋭意、進めていきたいと思っております。
〇中川座長 ありがとうございます。
 前川さん、5年待てますか。
〇前川構成員 今まで10年、緩和ケアのことをすごく考えてきたんですけれども、待てと言われれば待たないといけないのかなと思いつつ、頑張って一生懸命やってほしいと思います。
〇中川座長 皆さん、現場で忙しくしている医師にとって、必須でなければ毎日の仕事を優先しようというのは私自身も含めてよく分かります。ですから、あまり現実と乖離してしまうと、良くないのですが、やはり要件の厳格化を進める中で、それを必要だと思って資格を取っていただく方向も必要なのかなという気がいたします。この辺り、ほかに何か構成員の方からございますか。
 谷口構成員、お願いします。
〇谷口構成員 島根県の谷口です。衛生部長会の代表として参加させていただいています。
 がん患者の方から言われて、その後、ちょっと発言しにくいんですけれども、先ほど人材育成の話というのがありました。日本の中で、島根県もそうなのですけれども、面的な均てん化というのがあって、非常に大病院の多い地域とそうでない地域がございます。
 それで、要件をどんどん上げていくというのが必要なことではありますが、そうすると拠点病院がどんどん少なくなって、その地域に拠点病院があることがその地域のレベルを一定程度上げていっているという側面もありますので、もちろん人材の問題とか、それからその人材を確保することで経営的にちゃんとペイするかどうかというインセンティブの問題とか、そういう問題を総合的に考えて拠点病院を絞り込んで質を向上していくという方法もありますけれども、面的に底上げをして、より一層向上して均てん化するといった発想も必要なのかなと思いながら話を聞いておりましたし、ちょっと発言をさせていただきます。
 以上です。
〇中川座長 ありがとうございます。私も随分、島根など行かせていただきましたので、その辺りの事情は分かります。
 羽鳥構成員、お願いいたします。
〇羽鳥構成員 日本医師会の羽鳥です。今は、日本医師会の立場ではなくて専門医機構の理事としての立場でお話しします。
 緩和ケア学会は、まだ専門医機構のいわゆる機構認定サブスペを目指しておられるのでしょうか。木澤先生も橋口先生も、質の高いもの、数を増やすことを目指すということをおっしゃっていたので、医学生、研修医、専攻医など、若い先生の立場に立つと、やはり内科をマスターした、あるいは外科をマスターして、そしてがんの専門医をマスターして、それから緩和ケア専門医をとることになるのかと思います。
 そうすると、今、専門医機構ではサブスペに相当する部分は2つ以上は維持していくのは困難だろうと思います。緩和ケアの先生方から見れば、必要なんだから3つ目のサブスペが必要でしょうという意見も強く申し出ていただけたらとも思いますので、その辺はちょっと作戦をお考えいただければと思います。
 それから、日本医師会の立場から申しますと、やはり臨床現場の先生から見ると、先ほどの放射線治療、放射線の緩和ケアを十分熟知していない先生は私自身も含めて非常に多いと思います。
 そして、先ほどの検討会、聖マリアンナの中村先生も入っておられますが、地域でなかなか放射線の講習会があって、レントゲン読影講習会はあるのですが、緩和ケアの話はあまり出てこないので、その辺の講習会を行政が絡んでもいいと思いますけれども、もっと頻繁に一般の先生にも熟知して、私たちがその患者さんに説明するときにも使えるようなものをしていかなければいけないんだろうなと思いますので、ぜひその辺も御検討いただければと思います。
 患者さんへの啓蒙とともに、医師への啓蒙もかなり必要なのではないかというふうに感じました。
 以上です。
〇中川座長 ありがとうございました。
 木澤先生、お願いします。
〇木澤構成員 ありがとうございます。
 羽鳥先生、機構のほうには機構認定のサブスペ申請はしているんです。
〇羽鳥構成員 失礼しました。
〇木澤構成員 先生、ぜひ御助力をいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
 以上です。すみません。
〇中川座長 羽鳥先生、よろしくお願いします。
 今の前川構成員からの提言は身体症状の医師だったのですが、精神症状の緩和に携わる医師については、現在、規定がないわけで、これについては小川構成員から何か御意見ありますか。
〇小川構成員 ありがとうございます。
 精神症状に関しても、やはり医師が拠点病院でも充足していない状況がある。その中で、一つ緩和ケア以上に課題もあるのかなと認識しています。
 このがん診療連携拠点病院の指定要件で、前回、精神症状の緩和に関しては常勤の医師をというふうな形になって、非常勤から常勤というふうに縛りは出てきているんですけれども、一方、その中で精神症状の緩和に携わる医師の専門資格に関する規定がない。これに関しては、やはりかなり大きな課題になっているのかなと思います。
 実際に、緩和ケアの質の向上を図るという意味では、精神症状に関してはせん妄等の意識障害の対応や、あるいはほかのこの会でも出てきておりますような自殺企図への対応等、やはり専門診療は必要になりますので、その辺でいけばある程度、精神症状に関する専門資格、これがいきなり厳しければまず診療科等での対応というのも考える必要が出てくるのかなとは思います。
 また、学会に関しては、やはりこちらのサイコオンコロジー学会等でもこの資格等に関しては今、議論が出てきているところですので、今後のレベルアップという点では何らかの動きをそろえて現場のレベルアップに貢献できるように進めていきたいと思っております。
 以上です。ありがとうございました。
〇中川座長 ありがとうございます。
 それともう一つ、10ページ、11ページにあります、「主治医等から緩和ケアチームへ依頼する」という形を今、取っているわけですが、これも議論になるところで、いわゆる緩和ケアチームが主体的に動ける環境をつくっていくということも必要かと思いますが、この点についてどなたかございますか。
 前川構成員、お願いします。
〇前川構成員 たびたびすみません。11ページのマルポツの4ですね。「院内の医療従事者と緩和ケアチームとの連携に関して、緩和ケアチームへがん患者の診療を依頼する、という観点で記載がされている」とあります。病院で、それができているところもあります。院内で医師同士の関係性にもよると思います。緩和ケアの先生は、依頼されても、主治医がネックになっているように感じます。ここの検討の視点となっている意味が現場でも十分理解できているわけではないのかなというふうな気がします。
 それで、緩和ケアチームの緩和ケアの先生は、自主的に動くべきではない、出過ぎてはいけないと思って動かないと言われている先生もおられます。例えば、がんの患者さんが痛みを訴えたときに看護師さんが、主治医が今、手が離せないのでと言って緩和ケアの先生にお伝えしても、処方だけして立ち去るということを聞いたことがあります。だから、それが何か壁になっているような気がします。
 ですから、状況によっては緩和ケアの医師が主体的に動くような書きぶりになってほしいなというふうに私は思います。お願いいたします。
〇中川座長 ありがとうございます。
 岸田構成員、お願いします。
〇岸田構成員 ありがとうございます。先ほど前川構成員がおっしゃっていただいたことは、まさにそのとおりだと思っておりまして、私も数々の患者さんの話を聞いている中で、あるがんの専門病院ですけれども、自分の主治医がオピオイドみたいなものを出してくれてそれで緩和している。
 ただ、その患者さんは、本当にこれで大丈夫なのかどうか、これで本当に緩和しているのかちょっと微妙だなと思って、医師に緩和ケアの専門の方を紹介してくださいと患者さん側から言うことで緩和ケア専門医につながったり、チームにつながったというケースも実際あったりしています。
 がんの治療の専門医は治療の専門医でもちろんいてほしいのですけれども、主体的に緩和ケアのチームがそこの先生に、患者さんに関わってくれたら、患者さんから紹介してくれと言うのはそもそもちょっと違うのかなということを思っているので、今までコンサルテーション的に行っていたというところを緩和ケアチームから積極的にマネジメントしてもらえると、患者としてもすぐつながることができていいのではないかと考えております。
〇中川座長 ありがとうございます。
 江口構成員、お願いします。
〇江口構成員 江口でございます。
 今、前川構成員、岸田構成員がおっしゃったように、積極的に緩和ケアのほうからアプローチというのは本当に理想だと思います。
 一方で、患者さんの数と、それから緩和ケア医の数を考えますと、積極的に患者さん全員に目配せをするというのはやはり難しいというのは事実だとは思います。そのためにも、抜本的には緩和ケア医の数を増やさないといけないということは真面目に考えないといけない。国を挙げて考えないといけないと思います。
 一方で、私は今、大学で教職にも携わっている者として考えますと、やはり日本のがん教育については内科治療、あるいは外科治療、私は外科医ですので手術に対してはロボット治療とか、最先端のことはもちろんいいのですが、それに若干偏り過ぎていて緩和医療の重要性という卒前教育がまだまだ不十分なのかなというふうな気がしております。それをきちんとさせて、それを目指すドクターそのものを増やす必要があるだろうと感じております。
 以上でございます。
〇中川座長 ありがとうございました。
 時間もありますので申し訳ありませんが、前田構成員からはちょっと手短に。
〇前田構成員 進行の阻害をして申し訳ありません。
 本日、身体症状の緩和、精神症状の緩和について議論があったのですが、拠点病院が提供すべき全人的な緩和ケアに含まれる社会的苦痛の解消というのは今回あまり話題に挙がっていません。なので、ぜひ次回、それが実際にどこまでできているのか。例えば、社会的苦痛の軽減の中に含まれます両立支援の例えば指導管理料がこの間どれぐらいちゃんと取れているのかといったようなことも、ぜひ次回で構いませんので話題に挙げていただけたら幸いです。
 以上です。
〇中川座長 岸田構成員、手短にお願いします。
〇岸田構成員 私も9ページのところで、緩和ケアチームに協力する相談支援に携わる人が4%いないといったところもありまして、やはり社会的苦痛に関してどこを相談したらいいのか、そこに社会福祉士だったり、臨床心理士だったり、精神的な苦痛といったところも、この「いいえ」といったところがなくなるような施策も今後考えていければいいのかなと思っております。
 以上です。
〇中川座長 木澤構成員、最後にお願いします。
〇木澤構成員 根本的な11ページの問題なんですけれども、11ページの緩和ケアチームの質の評価が困難であるという点なのですが、ここについて今日は全く議論していないと私は思っています。
 これについては、やはり実際に緩和ケアチームにコンサルテーションがあったケースがその後どうなったかをケースベースで追跡して、それぞれの病院の診療の質を評価する仕組みをつくらない限り診られないので、そのような仕組みづくりをぜひ進めていただきたいと考えていますので、次回検討させていただければと思います。
 以上です。
〇中川座長 分かりました。これは木澤構成員からも少し教えていただき、学会にも努力していただきながらというふうに思います。
 それでは、様々な意見をいただきましたが、次回にも少し議論できればとは思いますが、私、座長と事務局とで一応相談して対応方針案というものを協議して次回の部会に提出したいと思いますが、それに当たってもう少し追加の御意見を事務局から個別に伺うということもあるかもしれません。
 それでは、時間の都合もありますので、続いて「2.主治医等の対応と、麻酔科医・放射線治療医との連携について」、資料1の12から30ページになります。
 まず、髙橋参考人、服部参考人の説明に対して御質問のある方、どうぞお願いいたします。
 前川構成員、お願いします。
〇前川構成員 服部先生から、がん疼痛治療の現状をお聞きしてとても驚きました。こんなふうにやるんだと、患者はあまりそこまで知らないです。詳しく知りません。ペインクリニックという言葉は知っているかもしれないけれども、詳しいことを知らないからがんの激痛に耐えている患者さんが多いのではないかと思います。このペインクリニックの恩恵を受ける患者さんが多いことを心から願っております。
 そこで、服部先生にお尋ねします。先生のところでは、神経ブロックを依頼されることがどのくらいでしょうかというのが1点です。よく、麻酔科医に頼んだけれども、断られたという話を聞くことがあります。それでお尋ねする次第です。
 2点目は、私たちは麻酔科の医師だったら神経ブロックは皆さんできるのではと思っているのですが、先ほどの説明で、そうじゃないんだなとちょっと理解したんですけれども、この2点をお尋ねしたいと思います。
〇中川座長 服部参考人、お願いします。
〇服部参考人 御質問ありがとうございます。
 まず、ブロックをよく依頼されるかということに関してですが、それはかなり依頼されます。特に膵がんや胆管がんのそういった腹痛の症状が出始めたときには、うちの科にブロックを依頼するというよりも併診をお願いされます。
 そこで、主治医の先生と我々で吟味しながら神経ブロックの適応、今後の痛みの治療をどうするべきかということを考えるんですね。私たちは、痛みを取ることで主治医の先生がさらに化学療法とか、PSを保つと言うんですけれども、全身状態を保って次の治療に生かせるような、そういった議論をしながら痛みを、我々ができる治療を駆使するということになっています。
 あともう一つは何でしたか。前川さん、ごめんなさい。
〇前川構成員 2つ目ですね。私たちは、麻酔科医の医師だったら神経ブロックは皆さんできると思っているのですが、先ほどの服部先生の御説明で、できない麻酔科のお医者さんも多いんだとは思いましたけれども、服部先生からお聞きしたいと思います。
〇服部参考人 羽鳥先生などの年齢の世代の方は思い出していただきたいんですけれども、腹腔神経叢ブロックは結構どこの大学でも麻酔科に頼めばやってくれるブロックだったんですね。
 ところが、先ほどの里見班のデータで分かるように、半分の方ができないと言っている。そして、多くの先生たちが3年間はやっていない。これはどういうことかというと、やはり腹腔神経叢ブロックを依頼されることが少なくなったということなんですね。その結果、やれる医師が少なくなった。実は、橋口先生、木澤先生も御存じかと思いますけれども、私も昔から緩和医療学会も含めて、この治療というのはがん患者さんの痛みを取るために必要なんだということをかなり言ってきました。
 ところが、緩和ケアを推進していくと、オピオイドの使用をどんどん増やしていこうということがどうしても進んでしまう。そうすると緩和ケアの先生たちもそちらにフォーカスがいってしまう。その結果、この20年間、我々のような専門家に依頼しなくなったのです。依頼しなくなれば当然、教育もできなくなる。20年前にできていた腹腔神経叢ブロック、これは全ての県、ほとんどの大学病院ではできていたと思います。
 私は特別すごい腕の持ち主というわけではなくて、絶滅危惧種で残っているようなものなんです。基本的に、20年前にできていた先生たちは20年後の今は引退しているわけです。その20年間に、育てて教育することができていないんです。その結果が、今のデータで、50%の人がやれない。かつ、3年間はやったことがないという状況なのです。
 そこで、私は前から厚労省の方々にも、こういうのが大事なんですよと言ってきました。当時は教育施設が足りないのが問題と言われましたが、今うちは先ほど症例数を示したように、教育施設として成り立つようにかなりの症例数を持っています。実際、疼痛治療科だけで今うちの科は6人いて教育しています。1年間で全ての先生が腹腔神経叢ブロックを1人でできるようになっていますので、末端の末端ではありますけれども、これからもどんどん進めていこうと思っています。
 これでよかったでしょうか、前川さん。
〇前川構成員 すごく教育が大切というのと、20年間のブランクが非常にあるというので、これからどのようにして教育できるのか、するのかということなどもあり、今日は時間がないと思うので、ぜひ中川座長、今回の放射線科の髙橋先生と服部先生に次回も来ていただいて、もっと話を深めていただきたいなと思います。
〇中川座長 ありがとうございました。
 この腹腔神経叢ブロックは膵がん等に非常に有効なわけですが、ちょっと事務局に依頼してこのレセプト上の件数を調べてもらったところ、平成29年度だと338件、それが平成30年度で303件、31年度で315件と、確かに服部参考人がおっしゃるように減少傾向にあって、しかし300人なんですよね。
 膵がんの罹患者は2018年で4万2000名ぐらいで、死亡者は2019年で3万6000名です。3万6000名の方に対して300ですから、これはもう明らかに足りないですね。
 髙橋参考人に対する質問、どなたかございますでしょうか。
〇前川構成員 すみません、続けていいですか。
〇中川座長 どうぞ。
〇前川構成員 髙橋先生に、今日の御説明ですごく理解できたということをお伝えしたいです。ありがとうございます。それで、3点ちょっとお尋ねします。
 即効性のある解決策を示せるのでしょうかということと、2つ目は症状緩和目的の放射線治療が効きにくいタイプもありますかということと、3つ目は緩和ケア研修のカリキュラムの中で緩和放射線治療は十分に取り上げられていますか。
 この3点をお尋ねしたいと思います。よろしくお願いします。
〇髙橋参考人 前川様、どうも御質問ありがとうございます。
 まず1点目の即効性のある解決策ですね。私たち放射線治療医も緩和ケアの先生たちと長年努力してきたのですけれども、今回、日本放射線腫瘍学会で緩和的放射線治療委員会を立ち上げまして様々な方面から検討を進めています。啓発普及にはリーフレットを配ったりとか、先ほどいろいろお話ししたキャンサーボードの普及については緩和ケアの先生方、整形外科の先生方と今チームを組んで、いかに有効にキャンサーボードが立ち上げられるか等、計画を進めています。
 進めていますので、解決策は順次できてくることを期待しているんですけれども、即効性と言われると、どの程度即効性かということではあるのですが、着々と前に進んでいるかとは思います。
 それから、最後の緩和ケア研修会の件ですけれども、残念ながら今、放射線治療の項目が必須化にはなっていないので、その辺りはできれば木澤先生と御連携させていただいて放射線治療の項目が必須化されると、がん拠点病院の先生方は緩和ケア研修会を受けなければいけませんので、そういう病院の先生方が全員受講していただけると知識的にもついていく。それだけで解決できるものではないと思っていますが、ただ、ベースラインの向上の点から、そういう方法も非常に重要なのではないかと思います。
 それから、先ほどいろいろな地域での研修会も必要だという大変貴重な御助言もいただきましたので、そういう試みも併せて医療者側の啓発も進めていければと思います。
 2つ目の御質問ですけれども、症状緩和しにくいタイプがあるかについてですが、確かに疼痛緩和で、例えば腎細胞がんなどの骨転移だと多少効きにくい、というものはありますけれども、効かないわけではございませんので、十分に制御はできます。多少、効果に差があるものは確かにありますが、一般的にはきちんと症状緩和に対応できると考えられます。
 そういうところで、よろしいでしょうか。
〇前川構成員 ありがとうございます。
〇中川座長 ついでに補足しますと、がんに伴う症状に対しては全て緩和照射の適応かと思います。全ての症状に対して緩和効果があるということですね。
〇髙橋参考人 中川先生、ありがとうございます。
〇中川座長 膵臓がんになったら、放射線をかけた後、多分1回8Gy照射された後に腹腔神経叢ブロックを続けてやっていただくというふうにしたいなと今から思っております。
 木澤構成員、先ほど出た緩和ケア研修における放射線治療の扱いについて、何か御意見ございますでしょうか。
〇木澤構成員 重要なことはとてもよく分かっているので、今も全く扱っていないわけではなくてしっかり扱っています。先ほど小川先生が出してくれているガイドブックでも、治療と並行して放射線治療、そして神経ブロック、麻酔科的鎮痛は考えてくださいということは基本的なこととして教育させていただいているつもりでおります。
 これについては、本当に多様な内容の御要望をいただくんですね。必修になっているので、例えば高齢者総合評価を入れなさいとか、様々なことを言われていますので、適宜また御相談させていただいて取捨選択しながら、さらに研修内容の充実は図っていきたいと思います。ありがとうございます。
〇中川座長 あまり座長が話してはいけないのかもしれませんが、日本のがん医療の中でやはり緩和的照射の部分はかなり足りないというふうに思っております。どうぞ、前向きな御検討をお願いできればと思います。
 それでは、両参考人への質問を踏まえまして、「主治医等の対応と、麻酔科医・放射線治療医との連携について」、皆様の様々な御意見をいただきたいと思います。
 参考人のお二人も御発言いただいて構いませんので、どうぞ自由に御意見、コメントを頂戴したいと思います。
 林構成員、お願いします。
○林構成員 今ずっとお話を聞いていたんですけれども、やはり膵がんが4万4000件ある中で三百何件というのはあり得ないと思うんです。それで、緩和研修を一生懸命やっていただいて、先ほどのデータにもありましたけれども、一般の専門医ではない方々、内科や外科の先生方で緩和ケア研修を受けた方々はみんな重要だとは思って知っているんですね。
 でも、では何でやっていないんだという話で、そこがすごく重要だと思うんです。その意識がない。成功体験がないのも確かだと思うんです。若い層はそうです。私はもともと消化器外科医なんですけれども、腹腔神経叢ブロックはCT下で自分でやっていましたから、あるいは超音波内視鏡下で胃壁越しにずっとやってきました。
 でも、ある時期から、おっしゃるように疼痛緩和のフォーカスが薬剤、薬物にかなり全体的にいってしまった傾向が絶対あると思うんです。特に、若い世代に成功体験がないんですよ。
 私は昔、橋口先生のような麻酔科にペインクリニックをお願いしたときに、本当に魔法のような感動を覚えたんです。あんなに大変だったのにぴんぴんして帰ってくるじゃないかと、その成功体験が今の若い人たちにない。だから、形だけの研修をやっても多分伝わらなくて、今のデータがまた10年後も持ち越しになると思うんです。重要なことは知っている。だから、そこを強制化するような、やはり行政の会議ですから行政の仕組みの中で何とかできないかということを議論すべきだと思うんです。
 そういった中で、例えば先ほどの専門資格の話もそうですけれども、ずっと待っていて変わらないならばやはり多少強制力を持つというのは、患者さんに早く届ける、いつまで待てばいいんだという点から考えると、やはり行政誘導の部分が必要になってくるのではないかと思っています。
 以上です。
〇中川座長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。
 林構成員、その強制力というのは例えば拠点病院の指定要件などに麻酔科医との連携を入れるとか、そんな感じですか。
〇林構成員 例えば、自分のところで神経ブロックをやっているかどうか。では、やっているのならば誰がやっているんだとか、今、例えば拠点病院の要件などを患者さんが見られるようになっていたりもするので、そういうところをオープンにしていると一種の強制力になるかなと思います。
 例えば、拠点病院でしたら連携病院が幾つかある中で、地域のそういった連携病院や一般の病院の疼痛緩和を何例やったというのを要件にするとか、その要件があることで意識が高まるという点もあると思うんです。やっているよと言っても、実際にゼロ件という病院が続出すると私は思うんです。
 そうしたら、では何でゼロ件なんですか。この地域からどうして相談がないんですかとか、もっと言えばおたくの病院ではないんですか、膵臓がんが100例あるじゃないですか、どうしてやらないんですかというような話まで持っていける可能性もあると思うので、拠点病院の年次報告みたいなものをただの提出にしたら意味がないと思います。
 以上です。
〇中川座長 ありがとうございます。
 それでは、木澤構成員お願いします。
〇木澤構成員 ありがとうございます。
 今、ぜひ橋口先生や服部先生にも御意見いただきたいんですけれども、神経ブロックに関してはやはり適応のある方がいらっしゃった場合、もしくは服部先生の御意見だと、適応がなくても実際に必要かなと思ったときに、すぐにコンサルテーションできるようなルートを確保するというのを少なくとも各拠点病院に義務づけて、誰にコンサルテーションするという相手を明確化しておく。それがちゃんと活用されているかどうかを検証するというのが一つの方法かなというふうに思います。
 以上です。
〇中川座長 すばらしい。
 橋口先生、お願いします。
〇橋口構成員 ありがとうございます。
 先ほど来、服部先生からのお話もあるとおり、今、麻酔科が全員いわゆる神経のブロックというのは、局所麻酔薬を使ったような簡単なと言ったら変ですけれども、そういうブロックは日々の麻酔の臨床の中でやっているのですが、神経破壊薬を使うようなブロックというのは残念ながら本当にやらない方向になっていて、それができる方というのは各都道府県とか地域とかで限られていると思います。
 それで、ある程度そういう難しい神経のブロックであるとか、脊髄刺激電極リードの埋め込みであるとかという侵襲的なことができるように、ペインクリニック学会なども協力いただいてということになると思うのですが、ある程度センター化をして、ここに行けばそういうものができるよというのを明確にして、拠点病院はどこかそこのセンターとつながれるようにしないと、多分、拠点病院の側も、どこの先生がこのブロックをやってくれるかは分からないと思います。
 そういう意味で、残念ながら施設によってかなり鎮痛の質の差というのは出てきてしまっているのが現状だと思います。
 私たちのところは、緩和ケアチームにペインクリニックの先生が毎週月曜日に一緒にラウンドをしていただいて、そこで適応がありそうな人をお話ししておくと、その週末までには神経のブロックをやっておいてくださるという割と恵まれた環境にありますけれども、そういうところはすごく少ないと思います。
 あとは、放射線治療科の中村先生もいらっしゃるのですぐに緩和的照射もやってくださるし、IVRの計画までしてくれるという割と恵まれたところにいますが、そうじゃないところのほうが多分、圧倒的に多いと思いますので、センターとしてそういうことができるのが医療従事者に分かるようにしてあげるような施策というのを行政のほうからも少し協力をいただいてつくり上げる方向でいくのがいいのではないかとは思っております。
〇中川座長 ありがとうございます。
 伊東構成員、お願いします。
〇伊東構成員 伊東でございます。
 先ほどの服部先生の話にもありますし、それから木澤先生、橋口先生のお話にもあったかと思いますが、ブロックに関して、特に神経破壊薬に関しては数が少ないという御指摘を座長のほうからもいただいておりますけれども、一つの要素としてエタノールに関しては適応外使用ですし、それからフェノールにしましても院内製剤できる病院が非常に限られているというところの背景があるかと思います。なるべく早くこういったものを承認薬として発売するというような方向性にしない限り、やはり数は増えていかないのかなと考えています。
 また、服部先生の御発表の中にもありましたが、頑張り過ぎるという側面でいうと、やはり主治医の先生方、それからチームの先生方もそうなのですが、一つのやり方、あるいは多方面のやり方に関しても薬物療法でかなり頑張り過ぎてしまう。「絶対効いていないよね」ということを指摘する人が周りにいないと、やはり暴走しがちというところは否定できないかなと思っています。
 先ほどの資料の中の11ページにも薬剤師の介入は100%で、資格を持っている人間はそのうちの60%というところですが、ぜひこういった資格者のマスト化、必須化をしたほうがいいかなと考えています。先生、これは効いていませんよ、これはもうオーバードーズですよと言う人がそばにいることがとても大事で、そうでない限り、今、議論いただいている放射線であったり、あるいは神経ブロック、それから脊椎鎮痛法も含めた形での介入というのがなかなか進んでいかない背景は、そういったところにもあるのではないかと考えています。
 以前、服部先生と同じ施設で仕事をさせていただいたときに、やはり劇的に改善していくのを私も目の当たりに見ていますし、今、現場においても、これはもう効かないから別の方法を考えましょうということを現状でも私のほうから指摘をさせていただいております。そういった観点からも、薬剤師の利活用は前回の会議のときにも申し上げたとおり、ぜひ検討いただければよろしいかと思います。
 以上です。
〇中川座長 伊東構成員、質問なんですが、例えばモルヒネ換算で600mgだとか1,000mgとかという患者さんに対して薬剤師側から、ちょっとおかしいというか、検討してくれというようなことを言われることはありますか。
〇伊東構成員 あります。1,000mgの段階でも、ここ最近は異常な量だと感じます。これが20年前だったら、まあ1,000mgだったらあるかなと思いますけれども、最近は1,000mgなんて言ったら、一体何をしたんですかというのが最初の印象です。
〇中川座長 それを、どの施設でも薬剤師側が言える体制をつくる必要はあると思いますね。ナースでもいいんですよ。
〇伊東構成員 とてもあると思います。要するに、特に薬剤師の介入は大変重要で、緩和医療薬学会のほうでもそういったプロパガンダ、それから教育を今、強力に進めているところでございます。
〇中川座長 服部構成員、ちょっと追加で御発言いただけますか。
〇服部参考人 木澤先生、橋口先生、伊東先生、あとは先ほどの岸田さん、前川さん、いろいろな意見をまとめて考えると、神経ブロック等の話になるんですけれども、やはり必ず近くに誰かブロックができる先生がいる可能性があるわけですね。これを拠点病院の緩和ケアチームに調べさせたらどうでしょうか。調べて報告させるというのが一つの手ではないかと思うんです。調べて、報告して、協力体制をつくってホームページに載せる。そのことで、岸田さんや前川さんみたいに患者さん側もそれを知る。
 そして、それを主治医の先生に、ここの緩和ケアチームはこういうブロックとか放射線治療を連携しているじゃないかということを言ったら、主治医の先生も紹介せざるを得ない。患者さん側から誘導するより、私たちが本当は導いてあげないといけないんだけれども、やはり患者さん側も含めてそういう知識を共有できるような形に少なくとも拠点病院がするというのはどうでしょうか。
 我々が、誰ができるかというのを調べるというのはちょっと時間がかかると思うので、拠点病院に調べさせて、厚労省に報告させて、そしてその協力体制をつくった上で載せる。放射線治療はここ、うちはここでやっています、神経ブロック等のインターベンション、専門的な疼痛治療はここと提携してやっていますというのを載せるというのが、一番私は早いんじゃないかなという気がします。
 以上です。
〇中川座長 ありがとうございます。
 岸田構成員、お願いします。
〇岸田構成員 ありがとうございます。
 まさに言いたかったことを今、服部参考人がおっしゃってくださって、やはり患者側も見えるように可視化することは本当に大事かなと思っています。どこに相談したらいいのかといったところを見えるように、紹介先の医師とつながれないというような拠点病院であったり、在宅の医療従事者もいらっしゃるというデータも出ていますし、多分これに関してはさっきの5年を待たなくてもすぐできるようなことだと思うので、これは速やかに患者としてやっていただきたいことかなと思っております。
 以上です。
〇中川座長 木澤構成員、お願いします。
〇木澤構成員 服部先生がうまくまとめていただいて、ありがとうございます。おっしゃるとおりだというふうに思います。
 多分そのときに、こんなことを言うと怒られちゃうかもしれないですけれども、その紹介する、連携するペインクリニシャンの先生たちの質を確保するために、やはりペインクリニック学会にも御協力いただいて、これで大丈夫だよというようにうまく質保証をしてもらいながら進めたほうがいいかなと思います。
 これは、もう一つは地域連携とも絡めたほうがいいと思っていまして、先ほどの拠点病院以外の病院であるとか、診療所の先生方、在宅の先生方へのアクセシビリティーもそれによって確保できると思うので、情報をやはり地域に公開することが重要だと思いますので、患者会の皆さんにも協力していただきながら、地域のリソースとして公開するということが必要だと思いますし、放射線科の先生方の緩和的放射線照射についても同様に公開し、病院の中で緩和的放射線照射の適応になる人を受けるような何らかのシステム、放射線治療の先生方だけでは多分、中には入院しなければいけない方が出てくるかと思いますので、そこら辺のところも相談して体制づくりというのを進める必要があるかと感じました。
 以上です。
〇中川座長 ありがとうございます。
 服部参考人、お願いします。
〇服部参考人 木澤先生ありがとうございます。
 ペインクリニック学会はもちろん協力してくれていると思うし、そこは麻酔学会の橋口先生、ペインクリニック学会にお願いするとして、教育施設というのは非常に大事になってくるのですが、皆さんも御存じのように私が所属している徳洲会病院というのは日本全国にいっぱいあるんですけれども、実は皆さん近くにその病院があれば、うちの科のスタッフはいつでも飛んで行って診療することができるんです。あまり細かい手続なしにできますので、そういう意味でははしりとして皆さんの地域で近くにそういう病院があって、そこにちょっと聞いてみて、そしてブロックをする先生がいないと言っても、もしかしたらうちの関連病院があればそこにオファーをすると私たちを呼んでそこで治療をしてくれる。それも数に入れてもいいんじゃないかと思います。
 つまり、私たちは縦横無尽に動けるタイプなので、それも進めていっていいんじゃないかなという気がします。木澤先生も分かると思うのですけれども、本当に麻酔科の先生たちができなくなってしまったんですよ。これは言いにくいんですけれども、正直言って緩和医療学会にもその原因はあったんですね。やはり放射線治療というものを最初の段階から入れておくべきだったのか、私自身もその責任者になっていたので後悔していますけれども、今から何とか復活させるためにそういう連携ですね。
 木澤先生はペインクリニックの医師の質と言いましたけれども、開業している先生が腹腔神経叢ブロックを自分のクリニックでしてくれるかといったら、やはりリスクがありますからなかなかそうはいかないのが実情だと思います。
 でも、そこは少し大手の病院の麻酔科医であればできる可能性があるので、ぜひ皆さんで探してファイルアップをしていただければと思います。
 以上です。
〇中川座長 ありがとうございます。
 前川構成員、お願いします。
〇前川構成員 とても先行きの明るい、でも話だけに終わらないで、ぜひ国としても拠点病院のホームページの話とか実現するように、言いっ放し、話しっ放しではなく実現するようにお願いしたいと思います。そして、服部先生の今のお話はとても明るく、今日の会はすごくよかったなというふうに感じました。
 以上です。
〇中川座長 それはよかったです。ありがとうございます。
 ちょっと補足をしますと、拠点病院の指定要件の中に放射線治療自体が含まれていますので、そこはペインクリニックとちょっと違うところなんです。ですから、やはりやるべきことが多いという点ではペインクリニックのほうになると思います。
 一方、放射線治療の問題に関しては、放射線治療を専門とする医者が緩和的照射をできないということはゼロですので、それは全員できます。
 ただし、その地域の病院からの受入れという点ではまだまだ課題があって、同じ地域連携なんですけれども、髙橋参考人、何かこの地域連携で先生が取り組まれているモデルケースみたいなものをもうちょっと御紹介いただけますか。
〇髙橋参考人 そうですね。それと、先ほど地域連携がまだ不十分だと言いましたけれども、アンケート調査で自由記載を書いていただきますと、逆にうまくいっている施設というのも当然あるわけで、そういうところはやはり週1回の緩和ケアカンファレンスをしっかり地域でやられているとか、地域の講習会で放射線治療医が話す機会を持っているとか、情報を提供しているということがありますので、ただ各施設の頑張りだけではなくて、何か行政とかの後押しがもう少しあると、さらにそういうことが広がっていくように思います。
 あとは、地域連携は地域の緩和ケアの先生方とか、そういうネットワークをうまく使って、放射線治療医と連携を取るのが一番よろしいかなというふうに思います。やはり情報の提供のアクセスですよね。もちろん放射線治療も外来だけではなくて、病診連携等を含めるのが効率的な場合も多分あるかと思いますけれども、そういうところの連携のシステムをうまくつくって、平均的な力量の先生というとちょっと語弊がありますが、無理に頑張らなくてもどなたでもできるようなシステムづくりに取り組んでいかなければいけないかなと思っています。
〇中川座長 髙橋参考人、例えば医師会の関与などはありますか。
〇髙橋参考人 十分にあると思います。先ほども御助言いただきましたけれども、地域のところで講習会を開くとか、医師会の先生方と連携するというのは非常に強力な手段の一つかとは思います。
〇中川座長 羽鳥構成員、お願いします。
〇羽鳥構成員 神奈川県内の在宅の先生方とミーティングをしまして、在宅、特に終末期を診ていらっしゃる先生方、がんの患者さんが3分の1をみておられる方に対する疼痛除去ということに関すると、今は本当にオピオイド、麻薬を増やすことが主流になっていて、なかなか先ほどの放射線治療、ペインクリニックの治療までつながっているところは多くないと思います。
 そういう意味では、このような処置の可能な施設、例えば拠点病院に紹介する。拠点病院じゃなくても、地域連携病院でこういう処置をしてもらえるという評価をやはり積極的に取り上げてくれることがとても大事だと思います。先ほどどなたかおっしゃっていましたように、拠点病院プラス連携病院でその地域がどういうふうに積極的に取り組んでいるかということでもって、例えば診療報酬上の評価をするとか、連携をどれだけきちんとやっているか、在宅の先生とどれだけきちんとやっているか、あるいは講習会、勉強会を何回やったかとか、そういうことでもって診療報酬上の評価をする。
 以上です。
〇中川座長 ありがとうございます。
 谷口構成員、お願いします。
〇谷口構成員 島根県の谷口です。
 いろいろ御議論を伺っていて、実はそれぞれの地域の診療提供体制を見える化するというのは、もう既に医療計画などは5疾病5事業で、5疾病の中にがんは入っているんですけれども、緩和ケアがそんなにウエートがあるものではないですが、そういう中でそれぞれの病院の機能を調べて、それでどこかどういう機能を提供できるかというのは既に事例としてありますので、医療計画の中に入れるかどうかは別にして、例えば都道府県のがん拠点病院がその地域の緩和ケア、先ほどの放射線治療とか疼痛治療とかをどういうふうに提供できるのかという図式化をすることというのはそんなに難しい話ではないと思いますので、そういうことで見える化をしてPR、ホームページ等で周知していくことはできるのではないかと思いました。
 以上です。
〇中川座長 ありがとうございます。特にペインクリニックについては、拠点病院の中では院内、あるいは院外、多くの場合院外になるんだと思いますが、どこと提携するということ、それを指定要件というか、きちんと登録しておく。そして、そのことを各病院のホームページに載せる。それで、そこは患者さん、市民が見られるようにするということですね。それは大変重要かと感じました。
 ほかに御意見ございませんでしょうか。
 高野構成員、今日御発言がありませんので、全体を通していかがですか。
〇高野構成員 ありがとうございます。
 前半の議論にありました専門医ですね。日本緩和医療学会の専門医は確かに少ないので、これを増やそうという議論がございました。
 一方で、この専門医の先生方に頼ることができるかというと、緩和ケアにもいろいろあるんだなというのは今日学んだことかなと思います。ペインクリニックであり、放射線治療であり、その部分に関してはこの専門医の先生方ではなく、ほかに頼らなければいけない。
 ただ、そのリストはホームページで見ることはできないということで、本当に手がけなければいけないことはたくさんあるんだなということを感じた次第です。ですので、緩和ケアの専門医を増やして、その要件にするというのが前半の議論で、それもぜひ進めていただきたいと思いつつ、それだけで解決できるわけではないということで、要件としていろいろ今日議論があったことをちゃんと進めるのと同時に、専門医の数、専門医もそうですし、緩和ケアの専門医が何なのかというところもぜひお伺いしたいところですけれども、それ以外にペインクリニックのドクターもぜひ増やす方策ですね。今いる人たちをリストアップして見える化するのと同時に、ぜひ教育で増やしていただきたい。
 放射線治療の先生ももちろん十分いらっしゃいますけれども、さらに緩和ケアにおいて活躍できるような体制を整えてほしいということを感じた次第です。
 以上です。
〇中川座長 ありがとうございます。
 森住構成員、先ほど伊東構成員のほうから、例えばモルヒネ換算600mgだったらこれはもう方法をほかに考えたほうがいいと言うとか、そういうことは最も患者さんの身近におられるナースがそういう声を上げていただく。例えば、麻酔科の先生に相談してはとかドクター側に言うようなことに関しては、実際そういう経験がおありなのか、あるいはそういったことに関してちょっと御意見いただけますか。
〇森住構成員 ありがとうございます。
 先ほどの先生方もおっしゃっていましたけれども、主治医が一人で頑張るというのはやはりどこの病院でもあるんだなと思って聞いていましたが、看護師もすごく問題を感じていながらも、主治医の考えというものになかなか反対意見を言いづらいというのは正直ありますので、要件とかには看護師からも緩和ケアチームとかに依頼できるというふうなシステムにはなっていますけれども、実際にそれを大々的にやっているというのはなかなか現実的には難しい問題があるかと思うので、主科の先生にもやはり看護師とかコメディカルから声を上げて、緩和ケアチームなり専門家にコンサルトできるというのをもっと大々的に言ってほしいなと思いながら聞いていました。
 以上です。
〇中川座長 実際、おかしいだろうと思っているナースの方は多いと思います。その声が上がるようにしなければいけなくて、正面から言えるのが一番なんですけれども、例えばオピオイドがちょっと多過ぎるんじゃないかというときに、薬剤師の先生と相談して薬剤側から言っていただくとか、そういうことをしていくことは患者さんのためにはなりますよね。
 時間もそろそろ迫っているのですが、資料1の16ページをちょっとお出しいただけますか。これはとても重要で、日本医師会と、これは緩和医療学会も共同でされているんだと思うんですけれども。
〇木澤構成員 そのとおりです。
〇中川座長 これは非常に重要なガイドラインの一部であって、これをきちんと周知させることも必要だろうと思います。
 ただ、ちょっとだけ気になるのは、この一番下に四角が2個あって、その上のほうの四角で、「ペインクリニシャン、がん治療医、精神科・心療内科医など」と書いてあって、ここのテーマは放射線治療と神経ブロックなんですね。これは放射線治療医というのを入れないとちょっと内容と齟齬があるので、ここだけ改編していただくように事務局にお願いしたいと思いますが、これが当たり前のように行われる。もちろん、薬物療法は非常に基礎ではあるものの、それとともにこういう考えがあるということを多くの医療者、患者さんも含めて知っていただくのはとても重要かと思っております。
 そろそろ時間が近づいてまいりましたが、木澤構成員お願いします。
〇木澤構成員 中川先生、ひょっとして終わりになるならば1つだけお話ししておきたいことがあります。
 それは、治療期の課題になると、今日は疼痛の話題だけがほとんど扱われているかと思うんですけれども、例えば不安や抑鬱、せん妄、そして治療期の最大の頻度が高いのは倦怠感なのですが、それらの苦痛に対する対応というのはやはり議論しておくべきなので、ぜひ次回扱っていただきたいというふうに思います。
 以上です。
〇中川座長 分かりました。了解です。
 先ほど木澤構成員がおっしゃった評価の部分も次回、時間が限られていますけれども、もう少しお話を進めた上で、いろいろ議論が出ました。基本的には私と事務局で相談しながら対応案を協議して次回の部会に示しながら、そして追加の議論もまたさせていただきたいと思います。
 今日は3つのテーマで議論するという運びだったのですが、活発な議論のために2番目までのところで時間となりつつあります。座長の不手際もあり、申し訳ありませんでした。残る3つ目の「緩和ケア外来、外来医療における緩和ケアをさらに充実させるべきではないか」、スライドでいうと資料1の31から36まで、これも次回に議論したいと思います。場合によっては、事務局から構成員の方、あるいは参考人の方、皆さんにも次回の議論について御意見を個別に頂戴することもあるかと思います。その際は、どうぞよろしくお願いいたします。
 今日も、大変活発かつ有意義な議論ができたと思っております。ありがとうございました。
 最後に、事務局から連絡事項等がありましたらお願いいたします。
〇事務局 次回の部会に関しては、事務局より追って御連絡いたします。お忙しい中、大変恐縮ですが、日程の御調整等よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の会議を終了いたします。構成員の皆様、長時間にわたり誠にありがとうございました。

照会先

健康局がん・疾病対策課

代表 03-5253-1111(内線4604)