第18回厚生科学審議会がん登録部会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

令和3年12月9日(木)13:00~16:00

場所

オンライン開催

議題

  1. (1)全国がん登録及び院内がん登録における課題について公開
  2. (2)新規申出の全国がん登録情報の提供について非公開

議事

議事内容
○がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第18回厚生科学審議会がん登録部会を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。健康局がん・疾病対策課の岩佐でございます。
本日の部会はYouTubeで配信しておりますので、御承知おきいただければと思います。委員の皆様方におかれましては、参加中、基本的には画像はオンにし、マイクはミュートにしていただければと思います。また、御意見等ございましたら、手を挙げる、もしくは挙手ボタンを押していただきまして、部会長から御指名があった際にミュートを解除いたしまして、最初にお名乗りいただいて御発言いただければと思います。
委員の出席状況でございます。本日は有賀悦子委員、祖父江友孝委員、名越澄子委員、本田麻由美委員より御欠席の連絡をいただいております。また、亀井美和子委員、山本秀樹委員より、少し遅れるとの御連絡を頂戴してございます。
本日のがん登録部会の委員定数19名に対しまして、現在出席委員が13名となってございます。議事運営に必要な定足数10名に達していることを御報告申し上げます。
また、本日、3名の参考人に御出席をいただいております。
国立がん研究センターがん対策研究所がん登録センターのセンター長、東尚弘参考人。
弁護士法人英知法律事務所弁護士、森亮二参考人。
それから、NTT社会情報研究所主席研究員、高橋克巳参考人のお三方に御出席をいただいております。
また、健康局長は、本日、公務のため欠席とさせていただきます。
また、11月1日付で、がん・疾病対策課長に中谷祐貴子が就任しておりますので、御報告させていただきます。
それでは、以降の進行につきまして、辻部会長のほうにお願いいたします。
○辻部会長 皆様、本日もどうぞよろしくお願いいたします。
では最初に、事務局から資料の確認をお願いいたします。
○事務局 事務局の渭原です。
それでは、資料の確認をさせていただきます。資料は厚生労働省のウェブサイトにも掲載しております。委員の皆様方におかれましては、事前にメールで送付をさせていただいております。
それでは、資料の確認です。
議事次第
資料1 全国がん登録及び院内がん登録における課題について
資料2は、1と2に分けて、申出文書の一式、それぞれ申出番号X2021-0005番と0006番となっております。
資料3 申出者に対する質問事項と回答書
資料4 申出番号X2021-0006に対する参考人意見書となっております。
以下、参考資料ですが、参考資料1番から10番までございます。こちらは、議事次第に記載してありますので、御確認ください。
なお、資料2-1から4、そして参考資料9、10は非公開資料となっております。
資料の不足、落丁等がございましたら、事務局までお申し出ください。
 
事務局からは以上です。
○辻部会長 資料に問題ございませんでしょうか。
それでは、議事に入りたいと思います。
今日の議題は「全国がん登録及び院内がん登録における課題について」ということでございます。
令和3年7月7日に第16回厚生科学審議会がん登録部会が開催されまして、そこでがん登録推進法の現状の課題と具体的な対応案が報告されました。当該報告を踏まえまして事務局で整理した課題のうち、特に今回のがん登録部会で皆様に御議論いただきたい課題につきまして、「検討に当たっての論点」と、今後さらなる議論が必要な事項として「検討のポイント」というものが本日示されております。つきましては、それぞれの課題ごとに議論の時間を設けますので、「検討に当たっての論点」及び「検討のポイント」も踏まえつつ、委員の皆様方から様々な御意見を頂戴したいと思います。どうぞよろしくお願いします。
では、最初に、事務局から資料の説明をお願いします。
○事務局 それでは、資料1の共有をお願いします。資料1の説明をいたします。
次のスライドをお願いします。
平成28年1月に施行されたがん登録等の推進に関する法律において、政府は、「法律の施行の状況等を勘案して必要があると認めるときは、全国がん登録のための情報の収集の方法、全国がん登録情報の利用及び提供の在り方その他がん登録等に関する施策について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」こととされております。
これを受けて、令和2年度厚生労働行政推進調査事業費補助金がん対策推進総合研究事業において「がん登録等の推進に関する法律の改正に向けての課題に関する研究」を実施し、その研究報告書において示された現状の課題及び具体的な対応案が、前回、7月7日のがん登録部会で報告されました。
前回の部会で報告のあった課題を事務局で改めて整理し、参考資料4に一覧表としてお示ししております。本日は、その一部を議題1~4として取り上げ、それぞれ「検討に当たっての論点(案)」、今後さらなる議論が必要な事項として「検討のポイント(例)」をお示ししました。構成員の皆様におかれては、特に「検討のポイント(例)」について御議論いただきつつも、それにとどまらない幅広い御意見をいただきたいと思います。
次のスライドをお願いします。
こちらは令和2年度の「がん登録等の推進に関する法律の改正に向けての課題に関する研究」の概要をお示ししております。
次のスライドをお願いします。
先ほど申し上げたように、本日は課題のうち、特に「1.全国がん登録情報等の利用範囲、匿名化の定義等の明確化」「2.他のDBとの連結・解析」「3.申出から提供までの手続の簡略化」「4.院内がん登録全国収集データの利活用」について御議論いただきたいと存じます。
次のスライドをお願いします。
まず、「1.全国がん登録情報等の利用範囲、匿名化の定義等の明確化」についてです。
次のスライドをお願いします。
利用範囲については、7ページでもお示ししているとおり、現在、がん登録法においては3つの利用目的が規定されております。このうち、特にマル2の第21条第3項、第4項、第8項、第9項に規定されている、「がんに係る調査研究のため」という規定については、これに民間事業者による利用が含まれるのかどうか等、利用範囲が不明瞭であることが課題とされております。
次のスライドをお願いします。
こちらが全国がん登録情報等の提供に係る規定を、利用目的の別に、マル1行政利用、マル2その他の研究利用、マル3届出病院等への提供に整理したものです。このうち、マル1行政利用とマル3届出病院等への提供は、比較的議論のないところでございますが、マル2その他の研究利用につきましては、利用目的、利用者・提供先が「がんに係る調査研究のため」、「がんに係る調査研究を行う者」としか規定されておらず、不明瞭です。
次のスライドをお願いします。
一方で、例えばNDBと介護DBでは、令和元年5月の法改正におきまして、相当の公益性を有する研究等を行う場合については、自治体・研究者・民間事業者等の幅広い主体に対して、両データベースの情報を提供することができることを法律上明確化しております。
高齢者の医療の確保に関する法律第16条の2第1項第3号に規定されている民間事業者等による利用については、「特定の商品又は役務の広告又は宣伝に利用するために行うものを除く」ことを明確に規定しているほか、次のスライド、9ページにあるように、相当の公益性が認められる業務とその要件を省令で規定しております。
次のスライドをお願いします。
こちらが相当の公益性が認められる業務として挙げられているものです。
次のスライドをお願いします。
また、匿名化につきましては、加工基準や識別行為の禁止規定が法律上明確でなく、取扱いが不明瞭であることが課題とされております。
次のスライドをお願いします。
具体的な加工基準につきましては、平成30年のがん登録部会において、原則、独立行政法人等非識別加工情報と同等の加工基準によることと整理されております。
次のスライドをお願いします。
こちらの表は、左端に独立行政法人非識別加工情報の加工基準をお示しし、真ん中に、加工が必要になり得る全国がん登録における情報項目、右端に、現在運用している匿名化の加工の例を整理しております。ただし、法令上の根拠がないために、実際には個別の申出ごとに判断している状況でございます。
次のスライドをお願いします。
参考として、NDBや介護DBでは、省令において加工基準が明文化されていることをご紹介しております。
次のスライドをお願いします。
また、匿名化情報を取り扱う際には、その匿名性を守るため、提供された匿名化情報の識別行為を禁止する必要がありますが、全国がん登録においては法律上に明確な規定はなく、利用規約において定められています。
また、個人だけでなく、病院等の特定も同様に禁止されております。
次のスライドをお願いします。
識別行為の禁止については、個人情報保護法やNDB、介護DBでは、法律上明確に規定されております。
次のスライドをお願いします。
以上を踏まえまして、論点を以下のとおり整理いたしました。
1つ目の利用範囲につきましては、全国がん登録情報等の提供に係る規定のうち、利用範囲が不明瞭である第21条第3項、第4項、第8項及び第9項について、全国がん登録が健康関連情報という機微な情報を取り扱うものであること、公費を用いて収集したデータであること等を踏まえつつ、その利用及び提供が認められる範囲について、改めて検討・整理することとしてはどうでしょうか。この際、検討のポイントにあるとおり、民間事業者による利用が認められるか、また認められる場合、どのような点に留意すべきかという点について、特に御意見をいただきたいと存じます。
匿名化につきましては、匿名化の定義等について、匿名化の加工基準や提供後の識別行為のルールについて、他の制度との整合性を考慮しつつ、どのような見直しが必要か、検討することとしてはいかがでしょうか、としました。これについては、幅広に御意見をいただくとともに、検討ポイントの3つ目にございますように、現在の利用規約において病院等の識別行為が禁止されている点についても御意見をいただきたいと考えております。
議題1について、事務局からは以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
ただいま御説明した「1.全国がん登録情報等の利用範囲、匿名化の定義等の明確化」ということにつきまして、最初に本日御欠席の委員の方々から御意見をいただいていますので、それを御紹介して、その後、皆様から御意見、御質問をいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
まず最初に、事務局からお願いいたします。
○事務局 御意見を紹介いたします。
祖父江委員からは、次の3点の御意見をいただいております。
全国がん登録の民間事業者による利用目的は、高齢者医療確保法に準ずるのが適切と考えます。
個人情報保護法に定める仮名加工情報と匿名加工情報の違いを、例を提示して理解を進めることが必要です。
特定の病院を識別することと、個人を識別することとは意味が異なりますので、同様に禁止すべきではありません。特に、病院を識別することは、がん研究やがん対策を進める上で必要な場合が多いです。
事務局からは以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
それでは、委員の皆様から御意見、御質問等をいただきたいと思います。どなたからでも結構ですので、どうぞよろしくお願いします。
まず、大木先生、その後、山本隆一先生でお願いします。
○大木委員 埼玉県立大学の大木です。
御説明ありがとうございました。
まず、私たち、がん登録を実際に実施している者として、がん登録は様々な形でがん対策や国民の健康と福祉に役立って発展してほしい、使ってほしいと考えています。そのためには、精度を保ち、個人情報を適切に守りながら利活用することになると思います。
今回の民間利用ですけれども、我々は法律の中で、その利用目的が正当であり、なおかつ個人情報管理が正当であれば、活用を認めるという方向でよいのではないかと考えています。そのために必要な手続や方法については、取り入れるべきと思いますが、そういった方向で考えております。
○辻部会長 ありがとうございます。
では、山本隆一先生、お願いします。
○山本(隆)委員 私も、民間事業者を排除する理由はないと思っていますけれども、相当程度の公益性の確認が多分重要だろうと思います。その公益性を保つというルールと公益性の基準に関しましては、NDB、介護DBの基準でおおむねよいのではないかと思います。
匿名加工ですけれども、より具体的な基準として、次世代医療基盤法のガイドラインに記載されている基準、これは基本的には個人情報保護法の匿名加工等を踏襲しているのですけれども、より医療情報に特化した具体的な基準になっていますので、それも参考にして、このがん登録に関して決めていけばいいのではないかと思います。
それから、再特定の禁止等のルールは、これは必ず必要で、匿名加工したデータにある程度有用性を残そうとすると、例えば外部のデータベースとの突合とかをやってしまうと個人が識別できる危険性はあると思うのです。したがって、再識別の禁止と、その実効性の担保というのも多分大事だと思いますので、それに関しても議論を進めていけばいいのではないかと考えております。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
では、羽鳥先生、お願いします。
○羽鳥委員 日本医師会の羽鳥です。
山本先生のおっしゃるのと同じかと思いますけれども、7ページ目にあるように、その他の研究利用の対象になっているのは、恐らく製薬会社が、自社製品を販売促進の営業活動に使われてしまう場合もあるかもしれない。ここの病院では、うちのこの抗がん剤が使われていないので、そういう意図を持って営業するようなことは禁止されるべきだと思いますが、新薬開発などがん研究のためには、症例も全国から集める必要があるでしょう。個人情報の保護が徹底できるならば、それに基づいて、民間の方にもある程度解放していくのが必要なことだろうと思いますので、この辺に関しては賛成です。
それから、先ほど山本先生がおっしゃったJ-MIMO(次世代医療基盤法)の規定がより現実的な方法だと思いますので、それを活用していただきたいと思います。僕も難病の委員会、循環器病対策の委員会とか、ほかのものも出ているのですけれども、このがん対策のところに少しでこぼこがあるのではないかなと。法律が古い分、そうなのかもしれませんけれども、その辺、少し全国的にそろえて、世界に打って出られる研究になれるようにしていただきたいと思います。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
ほかの委員の先生から。
小俣先生、その後、天野先生、お願いします。
○小俣委員 ありがとうございます。
今、皆さんがおっしゃっていたこととほぼ変わらないことなのですが、民間事業の方たちに関しては、羽鳥先生がおっしゃったように、営利目的ということではなく、がん医療とか患者家族の支援に資するものであれば、ぜひ何らかの、例えば審査会とかで確認しつつ進めていただくということがよろしいのではないかと思います。
それから、3番目の識別に関してですが、先ほど山本先生もおっしゃってくださいましたが、医療機関・病院の名称で個人が識別されてしまうことがもしあるとしたら、それは患者・家族にとってはとてもマイナスのことでありますので、何らかの方策・対策ということを検討していただくことが必要なのではないかなと思います。
以上です。ありがとうございます。
○辻部会長 ありがとうございます。
天野委員、お願いします。
○天野委員 ありがとうございます。
私も皆様の意見と同様で、民間企業の利活用を妨げるものではない。特に目的に合致すれば問題ないと考えますが、1点、先日の部会の議論でもありましたが、海外の企業への情報提供の場合、どこまで厚生労働省や当部会、もしくは審査会によるチェックが働くのか、実効性をどのように担保するのかというのは課題の部分があるかと思いますので、海外企業への提供に関してはさらなる検討が必要かと思いました。
私からは以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
中村先生、いかがでしょうか。
○中村委員 全日病の中村でございます。
今まで発言された先生方の御意見とほとんど一緒なのですけれども、加工基準に関してはNDB等を使っていただくのが一番いいのかと思っています。
そして、民間事業者の参入なのですけれども、いろいろなルールを決める中で、例えば厚労省とか、そういうところで認定するとか、そういう形で入れる民間事業者を決めた上で、何かレギュレーションに合わない場合にはその認定を取り消すとか、そういう運用方法を行えたらいいのかなと思いました。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
家原先生、手が挙がっていますね。はい。
○家原委員 家原でございます。ありがとうございます。
病院の公表を規定から外すに関しては、病院等を出してもよいのではないかと思うのですが、一方で、希少がん、特に小児がんのような、まれな疾患で5例以下とか3例以下とか、非常に少ない場合に個人が特定されてしまう場合もございますので、その辺りの配慮が必要で、どういったところで線を引くかという新たな規定は要るのではないかと考えました。
以上でございます。
○辻部会長 すみません、事務局にちょっとお聞きしたいのですが、祖父江先生からの御意見は、特定の病院を識別することは認めていいのではないかというお話だったと理解していいですか。全体の議論の中では、特定の病院を特定化するのはいかがなものかという議論が幾つかあるような気がしますけれどもね。
東先生、それに関連するような御意見ですか。違いますか。
○東参考人 違います。順番に並んだだけです。すみません。
○辻部会長 分かりました。
○事務局 今、おっしゃっていただいたとおりの理解だと思っております。
○辻部会長 分かりました。その辺の議論がまたこれから少し必要かもしれませんね。
家原先生、まだ手が挙がっていますけれども、もう少し追加はございますか。
○家原委員 いえ、もう終了です。失礼いたしました。
○辻部会長 では、坂元先生、その後、東先生お願いします。
○坂元委員 私も民間事業者が入るのは構わないと思うのですが、先ほど来出ている営業活動というものをどう捉えるかだと思います。例えば、製薬会社が薬を開発するのは営業活動だと思うのですが、その薬によって恩恵を受ける患者さんもいるということです。そこの基準というのをある程度明確にしておかないと、営利団体が営利以外の事業をやるということは多分余りないと思うので、その辺の基準をもうちょっと明確にしておかないと、実際は混乱が起こるのではないかと思っております。これは意見でございます。
○辻部会長 ありがとうございます。
では、東先生、お願いします。
○東参考人 ありがとうございます。
窓口組織の運営と匿名審議委員会の事務局としての疑問なのですが、目的で縛るということは法律にも書いてありますので、そのとおりだと思うのですが、先ほど坂元先生がおっしゃったように、営業活動、または営利活動と研究活動というものが分けられないというところが、実際の審議の運営担当としては気になるところです。当然営利活動であっても、薬を届けるというところは、患者さんにとって、患者さんが受けるがん医療の質を上げるということにもなります。
逆に、研究者であっても、このデータを使って何か開発したものに特許を取ってやっていくとか、もしくはそれをもって、営利活動ということまで行くのか分からないですけれども、そういったことを何かしようということはあり得るということで、そこをどういうふうに考えるのかという何か基準があれば、御意見があれば、非常に助かるなと思いました。
もう一つ、病院の識別行為に関してですが、そこは別に、病院だけが特定されるということであれば、特に問題はないと私も考えております。一方で、病院が特定されることによって、たとえ匿名データであっても、個人の同定性というのは飛躍的に上がってしまう。k-匿名化といった評価をしてみると、ユニークになるような個票の数というのが、病院を特定することによって非常に上がります。また、病院がどこにあるということが分かれば個人に非常に結びつきやすいというのがあるので、それをそのまま匿名の審議会で審議してもいいものかということも、私としては運用上、何か整理がお願いできればとても助かります。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
特に、今の病院の特定に関しては、その辺の問題が非常に出てきますね。詳しく指摘していただいて、どうもありがとうございました。
松本委員、お願いします。
○松本委員 ありがとうございます。松本でございます。
今の病院の識別性の件についてです。私は地方に住んでおります。地方ですと、病院が特定されますとかなり特定されてしまうということを感じますので、ぜひこの点については慎重に御検討いただきたいと思います。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
ほかにどなたかございますでしょうか。
石井先生、どうぞ。
○石井委員 中央大学国際情報学部の石井です。御説明ありがとうございました。
御議論を伺っていまして、ポイントの1つ目は、がんに係る調査研究のためという目的の点、2つ目は、がんに係る調査研究を行う者、この2つの点について、どこまで明確化できるのかという議論であると認識しております。
1点目のがんに係る調査研究のためのところでは、全国がん登録データベースが本人の同意に基づいてつくられるようなものではない、また、悉皆性のある、法律に基づき作られるデータベースであること、それを使うことがどのような意味を持つのかを、きちんと整理しておく必要があると思いました。特に、利用するのであれば、公益性のある用途に使うということが正当化理由になり、その中には当然学術研究、がんに係る調査研究というものも含まれるということだろうと認識しております。
その上で、事務局に資料として御用意いただいています8ページ目から9ページ目の、高齢者の医療の確保に関する法律、施行規則に書き下されているようなレベルで具体化していくことが求められると考えています。
がんに係る調査研究目的は、個人情報保護法における学術研究目的に含まれるという理解でおりますけれども、個人情報保護法上、学術研究目的かどうかは、主たる目的が何であるかによって決まるとなっておりまして、営利目的と併存するような場合は、主たる目的が何かによって変わってくる。事案によって違いますという話になります。そのため、明確なルールとして、ここから先は駄目ですよとか、ここまではいいですよという線引きがきれいにできる話ではないというところが、難しい話かと思います。
その関係で、事務局にお聞きしたい点が1点あります。高齢者の医療の確保に関する法律の中で、16条の2の1項3号で括弧書きがありまして、特定の商品又は役務の広告又は宣伝に利用するために行うものを除くとされています。この解釈が、一部でも入っていたら駄目という解釈なのか、その辺りの運用上、どのような扱いになっているかということについて、お分かりになる範囲で御教示いただければと思います。特に機微性の高い情報を扱うという点からすると、厳格に運用されている可能性もあるかと思った次第です。
長くりましたが、2点目のがんに係る調査研究を行う者については、現状、文言上は民間を排除するものではないと思います。個人情報保護法上も学術研究目的による個人情報の取扱いについては、令和3年改正法が制定される前までは、個人情報取扱事業者の義務から適用除外されていたということもあります。そのため、以前は、学術研究目的についてはかなり広い例外が認められてきたという状況がありました。令和3年改正によって、官民一体の法制度を実現し、目的外利用、要配慮個人情報の取得、第三者提供において、個別の例外規定が設けられるようになったわけですが、それでも個人情報の取扱いについては、一定学術研究目的による例外が認められています。このことからしても、民間を排除するという趣旨はないと思います。
ただし、海外提供については、移転先のコントロールが難しくなるという点がありますので、慎重に考えていくべきということは述べておきたいと思います。
匿名化については、せっかく参考人に御出席いただいているところでもありますので、高橋先生とかに御意見を伺えればと思いました。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
事務局から何かありますか。
○がん対策推進官 事務局のほうから1点、8ページの高齢者の医療の確保に関する法律の第16条の2第1項第3号の括弧内の、「特定の商品又は役務の広告又は宣伝に利用するために行うものを除く」について、ここがどの程度厳密に運用されているのかという御質問だったと認識しております。詳細については、担当している部局への確認も必要ではありますけれども、我々の認識としましては、最終的に何らかの営利活動に繋がるような場合が全てダメというわけではなく、それが公益性を有するかどうかが個別に審査されていると考えております。
一方で、完全に単に広告をするための情報収集という利用はなかなか難しい。そこは、実際の運用の中でも明確に線が引けるのか、運用していく中で、審議会などで検討しながら進めていくものなのか、その辺りは今後議論しながらやっていくのかなと思っております。
○辻部会長 ありがとうございます。
この点につきましては、時間の関係もありますので、これくらいにしたいと思うのですけれども、取りあえず、今回の議論の到達点と今後の課題をまとめてみたいと思います。
到達点としましては、基本的には利用目的と情報保護が適正であれば、この利用はもっと推進すべきだということで、具体的には民間の利用も問題ないだろうということですが、そのときの公益性が問題になってきますので、公益性あるいは営利目的というのをどのように考えていくかということについて、ケース・バイ・ケースで審議会でやってもいいのですが、一定の基準が必要じゃないかというところが皆さんの御意見かなと思います。
さらに、今後の課題として検討しなければいけないのは、病院の特定について、どう考えるかというところが慎重な方と、よろしいのではないかという方で、それぞれまだ議論があるということ。
それから、海外企業についての情報提供について、これから考えなければいけないのかなというところが課題だと思いました。よろしいでしょうか。
続きまして、次の課題「2.他のDBとの連結・解析」に移りたいと思います。事務局から資料の説明をお願いします。
○事務局 スライド17ページの共有をお願いします。
次のスライドをお願いします。
「2.他のDBとの連結・解析」についてです。こちらにつきましては、現在のがん登録推進法に他のデータベースとの連結・解析に係る規定が置かれておらず、連結・解析によるさらなる利活用に向けた体制整備が課題とされております。
次のスライドをお願いします。
平成30年に取りまとめられた「医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」の報告書におきましては、NDB、介護DBと保健医療分野のデータベースとの連結の有用性が指摘されており、第三者提供の要件(利用目的、提供範囲等)や手続(審査方法等)、匿名性の担保等に留意して連結に向け検討すべきとされております。
次のスライドをお願いします。
こちらのスライドは、保健医療分野の主なデータベースの状況をお示ししております。連結・解析の状況としましては、既にNDB、介護DBの連結・解析が令和2年10月から施行されており、またDPCデータベースとNDB、介護DBの連結・解析につきましても、令和4年度の4月から開始されることとなっております。
次のスライドをお願いします。
全国がん登録データベースと、ほかの公的データベースの連結・解析を検討するに当たって、まずは連結・解析により得られるメリットを整理する必要があります。そこで、既に連結・解析が行われているNDB、介護DBについて、その期待される事項を整理しました。こちらに今お示ししてあるものは事務局で作成したたたき台でございまして、今回の議論において皆様から御意見をいただき、さらに整理していきたいと考えております。
次のスライドをお願いします。
以上を踏まえまして、検討に当たっての論点としましては、全国がん登録データベースについて、NDBその他の公的データベース等との連結・解析が可能となるよう検討してはいかがでしょうか。
その際、「医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議報告書」の内容も踏まえ、まずは連結・解析の具体的ニーズについて整理を行いつつ、連結先のデータベースの範囲や提供方法等、必要な対応を検討することとしてはいかがでしょうかとしました。前のスライド21ページでお示しした案について、また検討のポイントを踏まえつつ、皆様から幅広く御意見をいただきたいと存じます。
事務局からは以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
ただいま御説明した、他のデータベースとの連結・解析につきまして、東参考人から追加で御発言いただきます。先生、お願いします。
○東参考人 国立がん研究センターの東です。御指名ありがとうございます。
1点だけ補足させていただきたいのは、20枚目です。ここのテーマが大きくは他のデータベースとの連結ということなのですが、この表では、基本的には全部公的なデータベース、国が保有するデータベースが並べられておりまして、民間のデータベースというのも1列ありますけれども、これは次世代医療基盤法の法律に基づくもので集めたものだけが載っているところです。
ただ、実際のニーズとしまして、私のほうに要望として御相談のある部分などを含めますと、各専門学会、臨床の先生方がつくっている学会が保有するデータと何かしらで連携できないかという相談を受けることが多いのです。今回は公的なデータベースについての観点の検討かもしれませんが、何かの機会で研究者が持ってくるデータベースとの連携というのはどうあるべきかというのも、どこかで議論していただけると幸いです。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
続きまして、御欠席の委員の先生方からお預かりした御意見を御紹介したいと思います。これにつきまして事務局からお願いいたします。
○事務局 御意見を紹介いたします。
有賀委員からは、次の3点の御意見をいただいております。
まず、他の公的データベースとの連結・解析が可能な体制をつくることは、医療の向上に大変重要なことです。匿名での連結・解析を可能とする識別子等の技術的対応の開発について、早急に進めていただくことを希望します。
次に、学術団体(学会等)が独自に臨床データベースをがん症例登録等として作成しており、全国がん登録情報との連結を希望している声が大きいです。一方で、がん症例登録は、学会ごとの規則の中で収集され、顕名情報を含んでいたり、管理体制が曖昧であるなど不明瞭な点が少なくありません。しかしながら、医療の質の向上を目的とした他の研究等に安全に利用拡大されていく体制を構築することは重要です。学術団体が有する個別の臨床データベースとの連結の安全性や法的・倫理的問題等についても議論する必要があると考えます。
最後に、全国がん登録情報を外部の顕名情報に連結させることはできませんが、その逆は技術的・法律的に可能でしょうか。例えば、学会など民間団体の雑多な医療情報に識別子をつけ、提出があったものを全国がん登録側で連結させ、匿名化を行った上で提供するといったようなものです。
続いて、祖父江委員から次の4点の御意見をいただいております。
まず、全国がん登録とNDBや介護DBを個人レベルで連結して解析ができれば、がん患者の医療経済分析、薬効分析、死亡時の診療状況分析等の実施可能性が飛躍的に高まります。
次に、連結に使用する識別子として、どのようなものが適切かについては、どのようなものが使用可能かをまず提示してほしいところです。
3つ目として、連結後のデータの取扱いや提供については、一定レベルの要件の下で審査をして実施すべきと考えますが、別途ランダムに抽出したサンプルデータをあらかじめ作成して、研究利用のために提供することが考えられます。
最後に、研究者の保有するデータベース(例えばコホート対象者名簿等)と全国がん登録との連結をしてがん罹患状況を把握し、関連研究を実施する場合、現状では、安全管理措置をクリアした施設の研究者しか利用できません。安全管理措置をクリアできない施設のグループ内研究者とデータを共有することができるように、研究者側での匿名加工処理を認めてはいかがでしょうか。
事務局からは以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
他のデータベースとの連結・解析というのがうまくいきますと、がん登録情報の利用可能性が非常に高まっていきますので、それによってがん医療、がん予防にかなり貢献すると思いますので、これからのポイントとして大きく議論したいと思っています。
まず、羽鳥先生から手が挙がっています。それから、天野委員、お願いいたします。
○羽鳥委員 基本的に賛成です。特に、難病・小児慢性疾患のほうの、いわゆる難病データベース、小慢のデータベースがありますが、この2つはまだ法律に基づいていないということですけれども、今、データベースをつくる努力をしています。特に、がんの希少疾患と難病などにおきましては、重なるところもあるかと思いますので、しっかり議論してほしいと思います。
もう一つ、介護DBですけれども、がんの5年生存率、10年生存率が非常に長くなってきているので、最終的な予後がどうなったかというのを調べるのは、がん登録だけではなかなか難しいところがあると思いますので、大きな研究をしていくためには、介護DBもしっかり識別していくことが大事だと思います。ただ、データベースを複数つければ、個人の識別も比較的容易になってくるということもあると思いますので、先ほども欠席の方からの御意見がありましたけれども、この辺については、2つのデータベースをくっつけるときにはしっかり議論していただきたいと思います。
それから、もう一つ、学会のデータベース、特に専門医機構のほうの仕事をしていると、外科系の先生方のナショナル・クリニカル・データベースに自分の手術症例を全て登録しているわけですが、これもある意味で悉皆性のあるデータになっているかと思うので、この辺のことは必要ですけれども、学会でやっているものは少し緩い面もあると思うので、別途新たにきちんと検討して使うということをするのが大事じゃないかなと思います。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
天野委員、どうぞ。
○天野委員 ありがとうございます。
今、羽鳥委員がおっしゃっていただいたこととほぼ同じになります。学会のデータベースについても、私は必要に応じて、例えばNCDのようにしっかりしたものもありますので、そういったものについては連結をぜひ検討していただきたいと思うのですが、一方で、がん登録法が相当厳しく個人情報保護とか倫理的な面に配慮して運用されているのに比較しますと、学会のデータベースは緩いというか、不十分な場合が見受けられますので、今後、学会のデータベースの在り方についても併せて検討することによって、連結を検討していく方向で進めていただきたいと思います。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
では、山本隆一先生、お願いします。
○山本(隆)委員 お二人の意見とほぼ同じなのですけれども、こういう公的データベース以外のレジストリデータベースとかNCDに関しても、扉を閉ざすというのは私はできないと思っていまして、継続して検討するということを明確にした上で、当面は無理だと思うのですね。利用の仕方とかの規定がそれぞれ全部違いますし、安全管理規定も違いますので、これを一律に論じていいとか悪いとかは多分無理だと思いますので、継続して検討を続けるという前提で、今回は、まず、この公的なデータベースとの連結に関して議論を進めていけばと思っています。
○辻部会長 ありがとうございます。
ほかにどなたかございますか。
石井先生、どうぞ。その後、白井先生、お願いします。
○石井委員 中央大学国際情報学部の石井です。
データベースの連結の話は、医療の質の向上に資するべきとか、がん対策の質の向上などの一般論で議論すると、プライバシーの問題がなおざりにされてしまうリスクがあると感じているところです。
データベースについては、20ページでリストをまとめていただいていますが、例えば匿名データベースと書いてある匿名性の匿名のレベルは、全て一律で同じレベルの匿名化なのかどうかも、この表からだとよく分からないですし、特定の人ががんにかかった情報で、その予後がどうなっているかを追跡していくと、プライバシーの観点からは相当侵害レベルの高い取扱いになってしまいます。その点について、公益性といかにバランスを図り、用途を限定したり主体を限定するなどによってプライバシーリスクを下げるような使い方を検討すべきかについて、個別具体的に考えていく必要があるだろうと思います。
がん対策にとって情報の利用が必要だということは十分理解しておりますが、一般論でやるべきだという議論を推し進めることは避けていただくことが望ましいと考えます。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。大変貴重な御意見だったと思います。
では、白井先生、その後、東先生、森内先生、お願いします。まず、白井先生からお願いします。
○白井委員 ここの場所で議論になるか分からないのですけれども、個人情報の保護について、かなり慎重にということでこういう議論が行われていると思うのですが、場合によって、保護してコントロールしてということにおいても、どうしても漏えいがあったり、個人に被害が生じた場合の救済ということをどこまで保障するかということも、バックアップとして取っておく必要があるのではないかなと思いました。その上で個人情報が守られるということで、連結したりということも、それは民間においてもそうなのですけれども、どこが責任を持つかというのも併せて議論する必要があるかなと思いました。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
東先生、お願いします。
○東参考人 2点ほど思ったことがあるのですが、1点目は、連結ということはいいのですけれども、それが都度連結なのか、それともデータベースとしてずっと連携していく、もしくは提供したものを提供先でさらに再提供することも考えられるのかということも、ちょっと念頭に置きながら連結というのは考えなければいけないのではないかなと思いました。これは今回じゃなくてもいいかもしれません。
2点目ですが、匿名である中で連結ということが議論されているように思います。顕名だったら、連結というのは普通に同意ベースでやられていますので、匿名のほうじゃないかと思うのですが、というと、国立がん研究センター、我々のほうで事務局をしている匿名審議会でこれを全て考えていくのかということが、少し気になっているところです。この辺の匿名なのか、顕名なのかの整理も、連結ということが出てきた機会に少し考え直すというのも必要なのではないかという問題提起です。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
森内先生、お願いします。
○森内委員 森内です。よろしくお願いします。
先ほど来、先生たちのお話にありましたように、私も他のデータベースと連結・解析が可能になるようになるのは、これからの医療を考えますととても重要なことだと考えています。ただ、個人情報や取扱いの安全性というものをしっかりと慎重にしていかなければならないなと感じながら、その辺りの検討がこれから進められていくといいなと思っています。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
ほかにどなたかございますか。
松本委員、お願いします。
○松本委員 ありがとうございます。松本でございます。
患者の立場から申し上げたいと思います。先ほど来、先生方からも御発言がありましたように、個人情報が守られるというのは大前提で、その上で患者として考えますのは、これは進めていただきたいと思っています。例えば、小慢のデータベースで、小児のときにかかった疾患と成人になってからのがんとの関係性。あるいは、介護DBとの関係で、私たち幸いに医学の進歩によって長く生きられるようになった。介護を受けることによって生活がどうなっていったのか、そこもまた見られるようになれば、がん罹患後もよりよい人生を送ることにつながる、そういう研究もされるのではないかということを期待したいと思います。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
石井先生、手が挙がっていますけれども、追加ございますか。お願いします。
○石井委員 中央大学国際情報学部の石井です。
課題1と2の議論を通じて、透明性の議論が全然出てきていないところが気になっております。全国がん登録データベースについては、本人が関与する余地がほとんどない仕組みになっていますので、国民の理解を得るために、どういう取扱いを行っているかとか、データベースと連結・解析するのであれば、そうした活動もきちんとオープンにして国民全体の理解を得ていくという観点の取組を考慮していただくとよろしいかと思いました。
○辻部会長 ありがとうございます。
ほかにどなたかございますか。
家原先生、お願いします。
○家原委員 家原でございます。ありがとうございます。
公的機関のデータベースとの連結は、ぜひ進める方向で、様々なプロセスの中で障害があることも承知しておりますが、先ほどお話のありました難治性疾患、難病の問題や小慢のデータとかは、まだ公的に連結等がなされていない状況で、得られる情報も多いと思いますので、進めていく方向で検討していければと考えております。
なお、学会のデータベースも、もちろん将来的には連結できる方向で進めていければ、我々の活動も研究内容としても非常に発展性があると考えますので、その次の段階としても考慮していければと考えております。
以上でございます。
○辻部会長 ありがとうございます。
では、高橋参考人、その後、山本先生、お願いします。
○高橋参考人 NTTの高橋克巳です。
連結は、いろいろな個人情報保護、セキュリティ上のリスクがあるのは事実ですけれども、きちんと場合分けをしていけば安全にできるケースがあると考えます。そして、その場合分けのケースとして必要なのは、検討のポイントでも出ていますが、恒常的な連結をするかとか、最終的に分析した結果がどの程度あるかということを一つ一つ分析していく必要があると思います。
それから、1個目の論点のときに発言し損ないましたが、この根底となっている匿名化の定義とか考え方について、きちんと明らかにしていくことが大事だと考えます。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
では、山本先生、お願いします。
○山本(隆)委員 ありがとうございます。
介護総合データベースとNDBの審査会に参加しておりますので、特に連結提供の例が幾つかございまして、そのときの経験を少しお話ししたいと思うのですけれども、一応ルールとしては、両方の審査会で審査します。それで、結論が異なった場合は合同審査会を開いて審査することになっています。
それから、東先生から御質問がありました、都度突合なのか、突合したデータをそのまま永続的に使うのかという話ですけれども、これは都度突合以外は認めていないです。突合した上で別の識別子をつけてお渡しするという形になって、違うテーマで同じような突合をしても、それがエンドユーザーレベルというか、研究者レベルでは比べられないような形で突合する。そうすることによってリスクが増えるのを最小限にしているということで、今、運用しています。恐らくDPCも令和4年から始まりますけれども、ほぼ同じ考えで進むのではないかと思っております。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
それでは、時間も大分迫ってきましたので、私のほうで簡単にまとめさせていただきますけれども、介護DBとかNDBといった公的なデータベースと突合して研究利用していくということについては、多くの方々が御賛成だと思いますので、現在行われているような、今、山本隆一委員から御紹介がありましたような様々な手続、もう既にありますので、そういったことも参考にしながら、がん登録データの公的データベースとのリンケージについては御議論いただきたいということで、大体のコンセンサスは得られたのかなと思うのですけれどもね。
もう一つ、学会のデータベース、学会主導で行われているような臓器別のがん登録、あるいは外科学会がやっているようなNCDといったものとの連携については、今日、まとまるものではないと思っていますけれども、私にとっては非常に感慨深く思っているところがあります。というのは、この学会の臓器別がん登録などは、その後ずっと予後を追跡するのですが、学会主導でやっていますと、5年もたつと追跡率が二、三割まで下がってしまうものもあるのです。
それに対して、がん登録ときっちりリンクすることによって、ほぼ100%の追跡になっていけば、がん医療に対するフィードバックというのは非常に大きなものがありますので、何とかしたいなと最初は思っていいたのですが、実際、がん登録が始まってきたら、そうそう簡単なものではないことが分かってきて、がんの臨床系の先生方からかなり落胆といいますか、不満といいますか、そういったところもあって、どちらかというと全く使えないものじゃないかという印象を臨床の先生方はお持ちになっているのが現状であります。
それに対して、今日、どなたかおっしゃいましたけれども、これは基本的には扉はいつでもオープンにしておいて閉ざすものではない。その一方、個人情報保護といったことについて、きっちりと体制が整ったところから始めたほうがいいのではないかというところがありましたので、その辺、この部会のほうもいろいろ議論を深めないといけないと思うのですが、そういった議論はできるだけオープンにしていって、臨床の学会あるいはNCDといったところにもフィードバックして体制整備していただくようなことをやっていけば、この貴重なデータががん医療にかなり貢献していくと思いますので、そういったところで今日は課題を明らかにしたとさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
それでは、次の課題「3.申出から提供までの手続の簡略化」に移りたいと思います。事務局から資料の説明をお願いします。
○事務局 それでは、スライド23ページ目の共有をお願いします。「3.申出から提供までの手続の簡略化」について御説明いたします。
次のスライドをお願いします。
現在、全国がん登録情報等の提供に当たっては、法律の規定に基づき、審議会等の意見を聴かなければならないこととされております。また、利用の申出・審査等に当たっては、提供マニュアルなどで定められた基準に従って運用しております。
これにつきましては、申出から審査、情報の提供までに時間がかかっており、調査研究の効果的な実施のためには、事務負担の軽減や審査時間の短縮、手続の効率化が課題とされています。
また、利用申出におきましては、電子申請のシステムを導入する等による効率化も必要です。
次のスライドをお願いします。
当該課題につきましては、全国がん登録情報等の提供に係る窓口組織である国立がん研究センターがん登録センターから、こちらのスライドにお示ししますような提案がございました。
例えば、Aでは、審査の簡略化が可能な定型業務として、マル1全国がん登録罹患数・率報告の作成業務、マル2国立がん研究センターがん登録センターにおける全国がん登録データベースの管理業務、マル3厚生労働大臣によるがん対策のための集計値利用に関して御提案いただいております。現在は、法律上、全ての申出に審査が求められており、またマニュアル上も全ての申出について一律の運用を行っているところでございますが、これらについて見直す必要があるとされています。
また、Bは、主に窓口組織としての業務負担について改善を求める提案であり、申出文書を受理した後、実際の審査では申出者本人が立ち会うことや、提供する際の加工を申出者自身ができるような仕組みづくりが必要とされています。
次のスライドをお願いします。
以上を踏まえまして、論点としては、現在は全ての申出について同様の手続を課しており、今後さらなる利活用を推進していく上で、事務負担の増加が障壁となることが懸念されていること等を踏まえ、事務負担の軽減や審査時間の短縮、手続の効率化を行うため、必要な見直しを行うこととしてはいかがでしょうか。
電子申請につきましては、現在システムを構築中でございます。電子申請を促進するための方策について、政府全体の電子化の動きを踏まえつつ、提供マニュアル等について必要な見直しを行うこととしてはいかがでしょうかとしました。
事務負担の軽減や審査時間の短縮、手続の効率化につきましては、スライド25ページ目において御紹介した提案への御意見をいただくとともに、それにとどまらず、現在の審査形態の見直しや、特に非匿名化情報の提供に係る審査会の会議体制の見直し、簡易審査で問題ない申出や、逆に対面審査を導入すべき申出として、どのようなものが考えられるか、申出に必要な各種提出書類の削減として、どのような対応が考えられるかなど、幅広に御議論いただきたく存じます。
また、電子申請を促進するに当たっては、現行の運用における懸念等があれば御意見いただきたいと存じます。
事務局からは以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
ただいま御説明した「3.申出から提供までの手続の簡略化」につきまして、東参考人から追加で御発言いただきます。先生、お願いします。
○東参考人 ありがとうございます。国立がん研究センターの東です。
25枚目のスライドを我々のほうで作成させていただいたのですが、運用していて、かなりいろいろなものが見えてきて、要望させていただきたいことが多かったので、細かいスライドになってしまって申し訳ございません。
いろいろ書いてあるのですが、我々のほうで一番お願いしたい部分は、Aのマル2と、Bのマル1です。
ほかのところは事務局から御説明があったとおりなのですけれども、特にAのマル2については、これは管理業務において、我々、どの程度のがんの届出施設があるのかとか、それが変遷するのかとか、いろいろなプレリミナリーな解析をして運用業務に充てなければいけないというニーズはあるのですが、絶対必要な部分はやりますし、システム上も出るようになっているのですけれども、新しい部分とか、これはやってもいいのかどうかというのが常によく分からない中で、普通はほかのものは全て審査を通して解析している中で、これはいいのだろうかというのが、「もやもや感」が拭えないものがあります。
ですので、ここは少し認めていただくということを事前に御了解いただけないか。次に公表するというところが出てきた場合には、もちろん審査を受けて、その扱いについては慎重にするとしたいと考えている次第です。
次に、Bのマル1の部分ですが、先ほど事務局から御説明いただいたとおり、申出者本人が審議会に参加する。質疑に答えるといったところを導入できないものかと考えています。これが出てきた背景といたしましては、最近、様々な申出が出てくるようになりましたし、先ほどから少しずつ出てきているリンケージをする、これは、集計値同士でリンケージするというものもあったりします。また、専門的な解析をしたいというのも非常に多くあります。これを我々事務局の担当者が全て理解して、それを審議会に説明するというのはなかなか負担が大きいところもありますし、その確認をしている間に時間がどんどん過ぎていくというのも、少しもったいない気もしております。
ですので、これはある程度の整理はもちろん必要だと思いますけれども、本人に聞いていただいて、ここはお願いしますと本人に御参加いただくような形、それをお認めいただければ、もう少し楽に審議を進めることもできますし、本人としても納得が行くようなディスカッションができるのではないかと考えた次第です。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。私も今の先生のお話で、Bのマル1申請者本人が概要説明、質疑応答という話ですけれども、私も全国がん登録の委員会、それから、宮城県がん登録の委員会で審査をやっていますけれども、本人がいてくれたほうが早い、しかも正確に進むと非常に感じますので、これも含めて御議論いただきたいと思いますが、その前に御欠席の委員の先生方からお預かりした意見を御紹介したいと思います。
では、事務局からお願いします。
○事務局 御意見を御紹介いたします。
有賀委員からは、スライド25ページ目のAマル1からマル3、Bのマル1とマル2、いずれも賛成との御意見をいただいております。
祖父江委員からは、次の2点の御意見をいただいております。
1つ目は、匿名化情報提供審査委員会については、申請の内容により、2人程度の委員の持ち回りによる迅速審査を制度化します。
2つ目は、サンプルデータをあらかじめ利用して、簡略化した手続での利用を可能としますとのことです。
事務局からは以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
それでは、委員の皆様から御質問、御意見いただきたいと思います。どなたからでも結構です。よろしくお願いします。
大木先生、どうぞお願いします。
○大木委員 大木です。
申請の簡略化については、おおむね賛成です。特にBのマル1については、出す側からもその要望は大きかったです。
もう一点、オンサイト集計というのも、もし考えていただければ、個人情報保護の点からも有用ではないかと考えております。
また、申請のオンラインも、出すほう側からの意見では大変助かるのですが、それがシステムとか、いろいろな点でまだ進まないのであれば、運用面で、例えば押印省略とか、そういったところを御検討いただけると大変ありがたいと思っております。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
ほかに御意見、御質問ございますでしょうか。
山本先生、どうぞ。
○山本(隆)委員 今日の御提案は全て賛成なのですけれども、オンサイトセンターの解析なのですけれども、これはNDBでもやっていて、全国に3か所、オンサイトステーションをつくったのですけれども、待ち行列が多くて、もう回らなくなってきて、今、何をしようとしているかというと、次世代のNDBからは、HICと呼ばれているクラウド上の解析システムを導入しようとしています。これは、米国のCMSなどでバーチャル・リサーチ・データセンターがございまして、これはそれぞれの研究者のところにある端末から、安全な接続をした上で、一定の検索条件はあるのですけれども、その条件の中であれば自由に解析できるというシステムがあります。
オンサイトに比べれば、どうしてもその物理的な守りが少し弱くなるので、考慮は必要だと思うのですけれども、多分どんどん使い勝手がよくなると申請者がどんどん増えてきますので、例えば国立がんセンターにオンサイト研究センターを1個置くだけでも、多分行列になってしまうということがあるので、これから検討するのであれば、そういったNDBのHICのようなバーチャル・オンサイトセンターみたいなものも同時に検討を進めていってはいかがかと思います。
以上です。
○辻部会長 山本先生、大変貴重な御意見ありがとうございました。
ほかにどなたか、皆さんから御意見ございますか。
東先生、お願いします。
○東参考人 ありがとうございます。
今の山本先生のお話は、私たちも非常にありがたいことだと思っています。実際に私たちとしてオンサイトセンターということを考えていたのですけれども、場所もどんどんなくなっていくというのが現状であります。クラウドのほうで、それに類似したものができるようになれば、本当にそれが行くべき、追求すべき道だと思います。
ありがとうございます。以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
ほかにございませんか。よろしいでしょうか。
特にないようでしたらばまとめたいと思いますが、この件につきましては、資料の25ページのAのマル1、マル2、マル3と、Bのマル1、マル2とございますけれども、基本的には皆さん、この方向で進めてくださいということでよろしゅうございますね。ということでまとめたいと思います。
そして、オンサイト解析も結構多くの先生方からポジティブな御反応をいただいていると思うのですけれども、そのやり方ですね。国がんの負担が余り増えないようにといったことも踏まえながら、次世代型のさっきのNDBですか、そういった新しいシステムも参考にしながら、研究者も運営しているほうも、お互いそんなに負担が増えずに生産的な仕事ができるような、そういった体制にしてほしいということが御意見だと思いますので、それでまとめてよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○辻部会長 ありがとうございます。
それでは、最後の課題になります。「4.院内がん登録全国収集データの利活用」に移りたいと思います。事務局から資料の御説明をお願いします。
○事務局 それでは、スライド27ページの共有をお願いします。「4.院内がん登録全国収集データの利活用」です。
次のスライドをお願いします。
院内がん登録は、専門的ながん医療の提供を行う病院等におきまして、がん登録推進法の施行前から実施されておりました。こちらは、国立がん研究センターによる全国集計が2007年から実施されてきております。
その後、平成25年のがん登録推進法の制定により、専門的ながん医療の提供を行う病院その他の地域におけるがん医療の確保について重要な役割を担う病院における努力義務という形で法的に位置づけられました。実際の運用につきましては、「院内がん登録の実施に係る指針」が定められておりますが、国立がん研究センターにおける院内がん登録の全国集計の法的位置づけや利用範囲、利用手続等が明確に整理されていないため、院内がん登録全国収集データの利活用が進んでいないことが課題とされております。
次のスライドをお願いします。
こちらは、がん登録推進法における院内がん登録の規定でございます。
次のスライドをお願いします。
先ほどのスライド29ページ目を受けまして、各病院における情報の収集につきましては、過去の通知において、個人情報保護法との関係が明確に整理されているところでございます。
次のスライドをお願いします。
一方で、院内がん登録全国収集につきましては、実施指針に以下のとおり規定されておりますが、その利用及び提供に係るルールがいまだ整理されておらず、不明確であるため、整理が必要でございます。
次のスライドをお願いします。
こちらのスライドでは、全国がん登録情報における院内がん登録情報のカバー率をお示ししております。現在は、全国がん登録で登録された部位別罹患数のうち、院内がん登録でも登録されている割合は、全部位でおよそ7割、部位別に見ますと6割から9割弱となっております。
次のスライドをお願いします。
以上を踏まえまして、検討に当たっての論点としては、院内がん登録全国収集データの利活用について、当面の間、全国収集データを収集・報告している国立がん研究センターが従うべき個人情報保護法制に従って、その利用・提供を進めることとしてはいかがでしょうか。
また、院内がん登録全国収集データのさらなる利活用を促進するため、今後の在り方を検討することとしてはいかがでしょうかとしました。
論点の1ポツ目につきましては、院内がん登録の全国収集の実施主体である国立がん研究センターが従うべき個人情報保護法制に従って提供していくこととしてよいのか。また、その場合、審査や手続について、どのように行っていくかについて御議論いただきたいと存じます。
それと並行しまして、2ポツ目のとおり、そもそも今後の院内がん登録の在り方について、情報の利用範囲や提供先、利用主体、提供できる情報の匿名性等、どのような在り方が望ましいのか、御意見があればお願いしたく存じます。
また、今後、院内がん登録の全国収集データの利活用を進めていくに当たっては、院内がん登録の実施率の向上を目指すべきか、さらなる利活用のために検討すべき点がないか等、御意見をいただきたいと存じます。
事務局からは以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
ただいま御説明した「4.院内がん登録全国収集データの利活用」につきまして、本日御欠席の委員の方々からお預かりした御意見を御紹介したいと思います。では、事務局、お願いいたします。
○事務局 御意見を紹介いたします。
有賀委員からは、次のような意見をいただいております。
全国がん登録開始後、院内がん登録を独立させて維持していく意義を十分理解できていませんでした。これは、利用目的が明確となっていないことが理由の一つです。国立がん研究センターを中心にして、課題の整理とその対策について検討していくことが必要と考えます。
祖父江委員からは、次の意見をいただいております。
院内がん登録全国集計は、病院が実施主体である院内がん登録データを個人識別子を外して国立がん研究センターが収集している事業であり、全国がん登録のような国の事業ではありません。それは、がん登録法施行以前から実施されておりましたし、全がん協加盟施設、National Clinical Database、各学会の臓器がん登録でも同様のデータ収集は行われているからです。院内がん登録全国集計情報の利活用は、拠点病院連絡協議会がん登録部会において管理することが適切であると考えます。
事務局からは以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
それでは、委員の皆様から御質問、御意見いただきたいと思います。
天野委員、手が挙がっていますが、お願いできますでしょうか。
○天野委員 御説明ありがとうございました。
私からは、検討に当たっての論点の2ポツ目、院内がん登録全国収集データのさらなる利活用を促進するため、今後の在り方を検討することとしてはどうかに関連してなのですが、この論点そのものに関して、患者還元という視点をぜひ入れて、今後御検討いただきたいと考えております。申し上げるまでもなく、がん登録はがん対策全般を科学的知見に基づいて実施するために、またがんに係る調査研究のために活用されることを前提として実施されていますので、もちろんがん登録についての様々な推進自体が患者に還元されることには間違いないのですが、そうでなくて、がん登録のデータ自体が直接的に患者に還元されるということが、現時点においてまだまだ不十分ではないかと考えております。
また、実際、臨床の現場に携わっている先生方からは、例えば院内がん登録については、採取する項目について、より実践的な内容も入れることは可能なのではないかという御意見もあると聞いておりますので、患者へ還元する、また臨床の現場へ還元するという視点から、ぜひこの院内がん登録について検討していただきたいと思います。
また、本日の議題1~4まで挙げていただいている中でも、本日の議論全体が基本的にがん登録をいかに問題なく遂行するのかということに視点が置かれている。もちろんそれも重要なのですが、それに加えて、患者還元に資するようなことが何かできないのかということを新たに検討していただきたいと考えておりまして、今までの期間は、全国がん登録というものをトラブルなく遂行することに重点が置かれてきましたが、今後、より患者への還元という観点について、ぜひ検討していただきたいと願っております。
私からは以上です。
○辻部会長 天野委員、大変貴重な御意見をいただきまして、どうもありがとうございました。まさに、今まではこの制度を円滑に立ち上げていくというところが重要だったのですけれども、これからは本格的に国民あるいは患者さんのために役に立つようながん登録に付加価値をもっと高めなければいけないと思っていますので、貴重な御意見、どうもありがとうございました。
続きまして、大木先生から御意見いただきます。
○大木委員 大木です。
まず、この議論の前に、院内がん登録というのは、各医療機関が自分の病院でどれぐらいの患者さんをどうやって治療したり、診断しているかというのを把握して、そして自分たちの病院のために還元して、さらなる医療に生かすというところで、経年的にも、それからほかの病院との比較においても使ってきた経緯があります。今回は、論点が、全国で収集したデータについて、院内がん登録のデータの利用についてですが、各病院、それから都道府県が院内がん登録をどうやって使っていくかということについても考慮いただけるとありがたいと思っております。
もう一点は、実施率の件ですが、院内がん登録は全国がん登録に比較して、より細かい内容を収集するものであり、常に勉強してアップデートしないと簡単に登録できず、大変な努力と研修のおかげで今の精度を保っています。私としては院内がん登録は、その病院対象を広げる、実施率を上げるというよりは、質を上げて、拠点病院といった病院のデータをがっちりと収集することが使命かと思っております。院内がん登録がよくなれば、全国がん登録もそれによってよくなりますし、さらに進むと考えております。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
ほかに皆さんから御意見ございますか。
石井先生、どうぞ。
○石井委員 中央大学国際情報学部の石井です。
私のほうから、個人情報保護法制との関係について意見を述べたいと思います。
33ページの検討に当たっての論点(案)のところで、院内がん登録全国収集データの利活用については、当面の間、院内がん登録の全国収集の実施主体である国立がん研究センターが従うべき個人情報保護法制に従って、その利用・提供を進めることとしてはどうかという点についてです。確かに国立がん研究センターが従うべき個人情報保護法制はありますが、30ページの整理のとおり、要配慮個人情報の取得であれ、個人情報の利用提供であれ、ほかの法令上の根拠があれば個人情報保護法制の規律を抜けることができるというルールになっている中で、国立がん研究センターが従うべき個人情報保護法制に従ってというのはどういう意味を持っているのかを再度検討していただく必要があるのではないかと思いました。
ほかの法令、これはがん登録推進法が当たるわけですけれども、ほかの法令に当たるものの中に、保護措置や利活用の条件とかがきちんと書いていない状況であれば、それは何もないルールにのっとりますと言っているのと等しいことになりかねないと思いますので、その辺りについて整理いただく必要があると思います。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
先ほど東先生から手が挙がっていましたけれども、東先生よろしいですか。
○東参考人 すみません。ありがとうございます。
後でいいかもしれないと思ったのですけれども、言いたいことが増えてしまったのですが、石井先生の今の御指摘について、私も疑問に思ったので、少しお伺いしたいのです。
集める段階で、個人情報保護法ではなくて、がん登録推進法に従って集めているとなったものですから、確かに例外として個人情報保護から外れていると思うのですが、国立がん研究センターにデータが来た後でその情報をどうしたものかといったときに、がん登録推進法に規定がない部分というのは、そこは個人情報保護法が補完して何か規定してくるのかと、そこは戻るといいますか、ない部分については全体に係っていくのだと私は理解していたのですけれども、そういう理解は法律上は余り一般的じゃないということになるのでしょうか。
○辻部会長 石井先生、何か御発言ございますか。
○石井委員 一般法と特別法の関係ですと、東先生がおっしゃったとおりで、特別法の規定がない場合には一般法の個人情報保護法の規律がかかります。安全管理措置とか開示請求とかの適用対象になってくるということではあります。
ただし、ここで申し上げたいのは、要配慮個人情報の取得や利用提供という個人情報取扱いにおける主要な規定が、法令上の根拠があれば例外扱いになるという点です。例外になるにもかかわらず、国立がん研究センターが従うべき個人情報保護法制となると、先ほど申し上げたような安全管理措置ぐらいしかないのではないかと思ったということです。がん登録推進法の中で一定の保護措置とか利活用の条件を定めておく必要はないのですかというのが私の問題意識です。
お答えになっておりますでしょうか。
○辻部会長 どうぞ、東参考人。
○東参考人 ありがとうございます。
一定の安全措置が係るのはそのとおりで、がん登録推進法で何か規定を設けたほうがいいという御意見には全く賛成です。ただ、現状として、それが細かく規定はないという状況がありますので、その場合においては、独法ですから、独法の個人情報保護法もしくは改正個人情報保護法が施行されたら、そちらのほうで規定されるものに従うというのを原則にしつつ、運用していくのかな。
これを当面的に考えているのは、学術研究に対する提供だと考えていて、それ以外のことについては個別に考えなければいけないのですが、そうなると研究の倫理指針に従って管理することになるのかなと考えていた次第です。
以上です。
○辻部会長 分かりました。この辺はもう少し詰める必要がありそうだなという感じですね。
羽鳥先生、このテーマですか。お願いします。松本さん、もう少し待ってください。すみません。
○羽鳥委員 ちょっとずれるかもしれないですけれども、もしかしたら後のほうがいいかもしれないですけれども、院内がん登録と国のがん登録推進法のがん登録を2つ、事業として分けて登録するのは現場にとってかなり負担なので、ここら辺は一本化したらどうなのでしょうか。
そして、もちろん院内がん登録のほうが詳細に調べるというのはよく分かるので、そして、それが学問の進歩につながると思うので、例えばがん拠点病院にはこれを義務と課すとか、そういうこと、あるいは、既に拠点病院ではないけれども、一生懸命がん登録されているところは今後も続けてもらうとか、それは構わないと思うのですけれども、一定のルールを一本化したらいいのではないかと思うのですけれども、その辺の議論はどうなのでしょうか。
これは後のほうがよければ、後で結構です。
○辻部会長 分かりました。とても大事なお話で、それについても後で議論したいと思うのですが、その前に、松本委員にずっと手を挙げていただいていたので、申し訳ありません、松本さんからまず御意見いただきたいと思います。
○松本委員 ありがとうございます。
私からも、今の羽鳥委員からの御発言に近い内容になります。大前提として、先ほど天野委員も言いましたけれども、患者還元、私たちに還元されることがとても大事であるということを、私からも重ねて申し上げたいと思います。そのためにはデータの利活用ということがとても重要である。その利活用のために、全国がん登録がよくなるためには院内がん登録がよくならなければいけないという大木委員からの御発言も先ほどありました。その院内がん登録をよくしていくために、今、羽鳥委員から御指摘がありましたように、一定のルール化が必要なのではないか。
これは、先生方に伺いますと、取組への非常に大きな濃度の差があるというふうにも聞いておりますので、そこについては何らかのルールの明確化が必要なのではないかということを思っております。
そして、ちょっと逆の流れになるのかもしれませんけれども、全国がん登録が院内がん登録へ戻されたときの扱い方についても十分でないところがある。例えば、死亡情報のみが返ってくる、生存情報の確認ができないということが、ひいては症例のアウトカムにも影響を及ぼしているということも先生方から伺っておりますので、そういったことも含めて、よりよい利活用につながるということを期待したいと思います。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
東先生、これに関連しての御意見ですか。
○東参考人 ありがとうございます。
今、繰り返し提起されております院内がん登録を全国がん登録と分けて運用する意味ということを少しコメントさせていただきたいと思います。
違いが2つ大きくありまして、1つは病院が主体であるということ。もう一つは、即時性とまでは言わないですけれども、早くいろいろなことが分かるという、この2つがあるのですね。病院が主体であるということは、裏返すと病院単位での集計ができる。または、それを主眼に置いているということでありまして、基本的に報告書も病院単位で公表されております。生存率についても病院単位で公表しております。こういったものをいろいろなところで利活用していただければという病院単位のデータであるというのが、全国がん登録とは大きく違うところです。
全国がん登録は、複数の病院に行くと、それが1つにまとめられてデータ化されてしまいますので、病院情報というのはもともとあるのですけれども、現在のところ、提供データにおいては、それはまとめられたものしか出てこないということがありますので、病院にフォーカスした解析が現行のシステムではできません。なので、それをやるのだったら院内がん登録を使わないことにはほとんどできないとお考えいただければと思います。
即時性というのはちょっと大げさだったのですが、同じように全国がん登録はそういった集約のプロセスであるとか、死亡情報による漏れの補完といった、いろいろなプロセスを経て正確な統計情報を出すということをしておりますので、どうしても時間がかかってしまう。院内がん登録のほうは、匿名化といいますか、個人情報を削除して提出したら、もうそれで集計が可能になりますので、それでかなり早く、翌年には統計が出るといったところがありますので、ここの2つが分かれて存在するというのは意味があると考えています。
羽鳥先生の御指摘いただいた、二重になっているというのは、これは来年解消する予定です。こちら側のシステムとしては、院内がん登録、全国がん登録、データベースとは別に持ちはしますけれども、病院側から提出するというところは一本化して、それを国立がん研究センターのほうで分けるというふうにつくっておりますので、そこは一応進歩しているということで御報告させていただければと思います。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
大木先生、お願いいたします。
○大木委員 大木です。
先ほどの院内がん登録と全国がん登録の違いについて、もう一点追加させてください。院内がん登録も全国がん登録も重要なのですが、全国がん登録は悉皆性のもと、地域でどれだけがんが発生したかという罹患率を求めるもので、それは院内がん登録では求めることができません。
ただし、院内がん登録はもっと詳しいデータがありますので、医療情報とかをもっと細かく収集分析することができるというメリットがあります。なので、医療とか、そういったことをきちんと分析したいということであれば院内がん登録が向いていますし、その地域全般の住民を対象にするなら、例えば検診や予防も含めて、そして死亡情報も拾っていますし、がん診療連携拠点等にかからないかもしれない高齢者のデータも全部網羅されている全国がん登録が向いています。目的が違いますので、それを1つにするというのであれば、先ほどの東先生のご発言のように、入り口を同じにして分けてやっていくというのが一番妥当かなと考えています。
○辻部会長 この辺につきましては、一度事務局から交通整理といいますか、御意見いただきたいと思います。よろしくお願いします。
○がん対策推進官 ありがとうございます。
今の議論のところは、我々としても非常に重要だと思っております。要すれば、院内がん登録というものをがん登録推進法にしっかりと位置づけをして、全国がん登録と同じような運用を目指していく形にするのか、または、どちらかというと、これまでのものと同じように、一定の個人情報保護法制の下に、全国がん登録とは切り分けた形で運用していくものとするのかということになるのかなと思っています。
特に、祖父江委員からの御意見については、どちらかというと後者の現行法のような形について、そのままでいいのではないかという御意見であるように、我々としては思っているところです。これは、どちらのほうがより適正な利活用が進むのかという観点で議論する必要があると考えておりまして、ぜひともしっかりと御議論いただきたいなと思っています。
それから、天野委員、松本委員からは、患者還元という言葉がありました。基本的な考え方としては、私たちとしても、そこは必須だと考えております。一方で、その中身、具体的なものについての認識を共有しておく必要性があると思っています。松本委員が先ほど御説明されたように、積極的に利活用し、そこで得られた成果というものを返していくという方向性というのは、今のがん登録の構成、議論の中身としても、大体その方向に向かっているのではないかと思っているところです。
ですが、その中でさらに院内がん登録における患者還元ということを強調されることになる場合に、それは直接的に本人にがん登録情報を基にした何かを返していくということを想定されているのかどうか。そういったことを目指すべきだという御意見なのかどうかというのは、ちょっとお伺いしておきたいなと思っています。
あとは、大木委員の意見の中で気になった点としては、医療機関ごとの利活用をどうしていくのかということも大事だと言われたと思うのですけれども、その点も最初に申し上げたように、院内がん登録というものを法律上、どう位置づけていくのかという議論と同じような形ではあるのですけれども、我々の認識としては、医療機関としては自分の医療機関の情報というものを、その医療機関が適用を受ける個人情報保護法制などを基に適切に利活用できるのかなと思っておりましたところですので、どういったところに課題があるのか、どういったところを目指すべきなのかという辺りは、もう少し皆様方の御意見をいただきたいと思っております。
以上でございます。
○辻部会長 ありがとうございました。
ということでございます。御意見いただければと思います。
まず、東先生からですか。お願いします。
○東参考人 1点だけ。今の患者個人に対しての情報提供ということについては、かなり不完全な状況で、いつも天野委員からおしかりを受けているのですけれども、相談支援センターで院内がん登録のデータベースをたたいて、あなたのがん種だったら、どの病院が何例見ているというのは、データベース上、こうなって出てきますという案内はできるように体制整備をしています。
ただ、このデータベースの使い方が非常に複雑で、またその内容も専門性があって、相談支援員ですら、どうやって教育すればいいかというのを今、模索しているところがあって、それで時間がたってしまっているのですけれども、今、そういったものを限定的に始めていて、そこはやっているということはコメントさせていただきたい。全国の相談支援員の方々が頑張ってくださっていますということです。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
羽鳥先生、いかがでしょうか。
○羽鳥委員
先ほど1つの症例、1人の患者さんから2つの病院で登録されることもあるというお話がありましたけれども、僕も神奈川県のがん対策担当理事のときに院内がん登録の受領をやっていたのですけれども、そのときは、例えば初診でがんを発見された、そこから登録する場合もあるけれども、それが例えば県立がんセンターへ行った、あるいは国立がんセンターへ行ったときには、再度登録するけれども、それを最終的には一本化されるという話を聞いたように思うのです。
ですから、1つの症例が2つの病院から出てくるというのは、ある意味でちょっとおかしなことになると思うので、患者さんベースで考えるとか、症例ベースで考えるのが妥当なことだと思うので、何かそういう場合にはフラグを立てるようなことをしていただければと思います。そして、何回も言いますけれども、二重登録になってしまうというか、二度手間になってしまうようなことは避けてほしいし、もしかしたらがん登録法のあれがもっと精度を高めていくのがいいのかもしれないし、ここから先はもう少し議論していただければと思います。希望としては一本化してほしいということであります。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
様々な議論があろうかと思いますけれども、最後に松本委員、天野委員から、患者還元も含めて、何か御意見いただければと思います。お願いします。
○松本委員 では、松本から先に申し上げたいと思います。
先ほど東委員から、難渋はしているけれども、前を向いて進めているのだというお話がありました。ありがとうございました。そこは大変なのは重々理解するのですけれども、がん登録推進法ができて、ある程度の期間がたっていますので、私たちが提供したものがこういうふうに役に立っているのだということが、私たちの目に見えて実感できるようなことが望まれますので、ぜひそこは取り組んでいただきたいですし、また、私たちが何らかの御協力ができることがあれば、どうすれば私たちにそれが見やすくなるのか、そういうことについて御協力ができればと思っております。
私からは以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
では、天野委員、お願いします。
○天野委員 ありがとうございます。
先ほど東先生から、天野委員からおしかりを受けているという御指摘がありましたが、私はしかっているというわけではなくて、がん研究センターを応援している立場でございます。
具体的にどういうことかというと、データが集まっているわけですから、私たちとしては、これだけたくさんの方々、がん登録に関わる方々がデータを集めている、データがあるにもかかわらず、医療関係者の方々から反対などがあると聞いているのですけれども、データをそのまま公開すると患者さんが誤解するからというお話があって、それで相談支援センターの相談員を介してデータを公開するという形になっているところも含めて、仕組みにまだまだ不完全なところがあるのではないかというのが私の考え方であって、これだけ多大な労力をかけて集めているデータが、患者にダイレクトに還元されるようにしてほしいというのがまず1点です。
もう一点は、がん登録の、特に院内がん登録のデータを通じて、治療成績とか、ある程度のことが分かるようになっているわけで、それを直接患者さんに返すという意味ではなくて、それを基に医療の質をはかることが多分できるはずなのですが、そこはまだ十分に行えるような体制になっていないと考えていますし、例えば都道府県のがん対策においても、院内がん登録のデータに拠点病院ごとの治療成績とか治療の内容とか、そういったものを基に比較することが可能なはずなのですが、今まで不十分になっているという意味において、患者への還元が不完全だという趣旨で申し上げた次第です。なので、直接患者還元するという点も含めて、ぜひ次回以降の部会で改めて御検討いただければと願っております。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。
では、東先生にお話いただいて、これを最後にしたいと思います。
○東参考人 最後です。すみません、ありがとうございます。
患者委員の方々からの御要望については、本当に身にしみて、早くやらなければと思っている次第です。そこは、別途いろいろ御指導いただいてやっていきたいと思います。
今回、私、ちょっと懸念しているのが、院内がん登録の全国データが、結局この部会の議論で使えるようになったのか、ならないのかがよく分からないということで、がん登録推進法ができてから院内がん登録が、我々の国立がん研究センターでは二次利用目的には提供できないというのが続いています。これは、すみません、どうしたらいいのでしょうか。次回、整理してから持ってくるということになっているのか、それとも祖父江委員の伝言があったような形で進めるべきなのか、どうなのでしょうか。すみません。
○辻部会長 事務局、これについて何かありますか。
○がん対策推進官 事務局としては、33ページの検討に当たっての論点(案)の1つ目の、院内がん登録の全国収集データの利活用については、当面の間、個人情報保護法制に従って、その利用・提供を進めることとしてはどうかとしてありますとおり、現行法の中で一定の利活用は可能ではないかと考えておりまして、その点について、今までの議論というのがどっちに振れているのかというのは明確化されていなかったように思いますので、加えて御意見をいただければと思っております。
○辻部会長 よろしいでしょうか。時間が若干まだありますので、どなたか、これについて追加があればお受けしたいと思います。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
今日のところは、院内がん登録と全国がん登録の関係、あるいは役割の違いといったところについて共通認識をいただいたということにしまして、今後の在り方については、また別途行うべきだ、あるいは一緒にやるべきだという、いろいろな議論がありましたので、そういうことも含めて、今後また事務局と議論しながら御提案させていただきたいということで、取りあえずは33ページのポイントの1つ目、当面の間、院内がん登録の全国収集の実施主体である国立がん研究センターが従うべき個人情報保護法制に従って提供していくこととしてよいかということで、これについては大筋お認めいただけるということでよろしいでしょうか。そういった、ちょっともやっとした感じのまとめに、このテーマについてはさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
それでは、本日の議論4点について、委員の皆様から大変貴重な御意見をいただいたこと、改めて御礼申し上げたいと思います。一個一個について、コンセンサスと今後の検討すべき課題はその都度出させていただきましたので、改めて申し上げることはないと思います。
ということで、全体を通して、予定した時間よりもまだ若干残っていますので、改めて何かおっしゃりたいとか追加したいとか、ございましたらばお受けいたしますけれども、いかがでしょうか。
石井先生、どうぞ。
○石井委員 ありがとうございます。
課題4の「院内がん登録の全国収集データの利活用」のところですけれども、東先生の先ほどのコメントに従って考えると、法令に基づいて収集を行う。そこから先は、学術研究目的による利用・提供を認めていく。個人情報保護法制の中の令和3年改正の規定に則した用途を模索していくというのが、1つ方法としてはあろうと思います。
患者本人への還元のところは東先生に確認させていただきたい点でですが、患者本人に対しては、個人情報の開示請求が直接にあったときには、その情報自体は提供していないということでしょうか。その点について。
○辻部会長 お願いします。
○東参考人 東です。
さっき申し上げた患者様本人への提供というのは、集計データのことです。基本的に施設単位で各がん種の登録数が何例あるのかということを御提供しているというところです。
別途、患者さん本人の請求ということに関しては、これは院内がん登録のデータ自体が個人識別情報を外した形で国立がん研究センターのほうに来ますので、これは我々のところに来られてもちょっと分かりませんので、病院のほうに行ってくださいと言うしかないのが現状です。
以上です。
○石井委員 個別の病院のほうで個人情報保護法にのっとった対応をしている状況ということで承知しました。ありがとうございます。
○辻部会長 よろしいでしょうか。
ほかにどなたかございますか。どなたでも結構です。テーマも、今日の1~4、どれでも結構ですけれども、補足の御意見とか御質問とかございましたらお受けできますが。
小俣先生、どうぞ。
○小俣委員 ありがとうございます。小俣です。
言い忘れてしまったというか、戻ってしまって申し訳ないのですけれども、2番目の「他のDBとの連結・解析」のところで、先ほどの御意見もあったと思うのですが、小慢のほうに悪性新生物で小児がんということがあります。なので、がん登録のほうと小慢のほう、どちらを優先するということももちろん検討する必要があると思いますし、そこを忘れないで、もちろんがん登録のほうが優先になるのかなと思うのですが、そちらの検討が必要なのではないかな。混乱しないように進めていただきたい。重複しているということがあったので、そこが少し心配になりましたので、意見としてお話ししたいと思います。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございます。小慢との関係ですね。分かりました。今後、またそういったことについても議論していきたいと思います。よろしくお願いします。ありがとうございました。
ほかにどなたかいらっしゃいますか。
東先生、どうぞ。
○東参考人 ありがとうございます。 連結に関して、先ほど少し申し上げた、連結を始めたときには、匿名なのか、それとも顕名に準じた扱いが必要なのかということについて、何か時間がある範囲で御意見をいただけるととても助かります。我々、交通整理をすることになっていますので、どうしても連結と言われると、それは顕名のほうに送ったほうがいいのではないかという話も考えてしまうので、こういう場合には匿名のままでやったらいいよということとか、ほかも含めて御意見いただければ、ちょっと参考にさせていただきたいと思いました。
以上です。
○辻部会長 どなたかお答えされる方、いらっしゃいますか。
山本先生、それから高橋先生、お願いします。
○山本(隆)委員 NDBと介護DBの連結の場合は、両方とも定義上、匿名データベースとして連結しています。というのは、識別子に関しましてはあるのですけれども、それをハッシュ化した状態で突合させた上で、なおかつ、それをさらに別のIDに変換して提供するということにしています。
ただ、あくまでも建前上、匿名としていますけれども、当然ながら複雑なデータ構造を持っていますので、他の要素で特定につながる可能性がありますというのも事実ですから、そのリスク評価はしないといけないということになります。
したがって、これは提供申出があった場合のデータ構造に従って、特定性のリスク評価をした上で提供するかどうかを決めているという現状で、出すデータは識別性がゼロではないですけれども、匿名加工した情報だということで提供しています。
○辻部会長 高橋先生、どうぞ。
○高橋参考人 高橋です。
山本先生の話と大きく変わらないのですけれども、基本的に例えば同じ個人で、ある病気と、また別のデータベースからある病気ということを突合した場合、そのことから個人が識別される可能性は極めて低いと言われるわけです。その意味において匿名が保たれるという考えです。
他方で、個人情報保護法の文脈で言うと、個人を識別するに足る情報が結合によって増える場合は、そこは個人情報になる場合があり得ると思います。例えばすごく極端な話ですけれども、Aというデータベースで住所がある。Bというデータベースで生年月日があるというケースでくっつけると個人が分かるというケースがあると思います。まとめますと、個人を識別する情報が増える場合は、個人になる場合があり得るという考え方かと思います。
○辻部会長 ありがとうございます。
ほかにどなたかいらっしゃいますか。
森先生。
○森参考人 本日は遅れまして申し訳ありませんでした。御挨拶方々申し上げたいと思いますが、御挨拶と言いながらぎすぎすしたことを申し上げて大変恐縮でございます。
今のデータベースの連結のところなのですけれども、先ほど高橋さんから、匿名性についての問題があるのではないかというお話がありまして、これは20ページの図を拝見しますと、匿名データベースでそういうところとの連結が可能である。別のところで、確かに通院情報等のフィンガープリントを使って連結することは可能だと伺いましたので、匿名データベース側から見た場合、匿名状態で連結することができるのかもしれませんが、その場合であっても高橋さんの言われるような顕名になってしまう、特定の個人が識別できてしまうリスクがあるわけでございます。
しかし、そもそもそれよりも非常に問題なのは、このがん登録推進法によって集められたデータベースというのは、がん登録情報の特別な公益性、がんという治療困難で、かつ患者数の多い疾病に対する対策として、特に法律を定めて悉皆の顕名のデータベースをつくっているということでございます。当然のことながら、どのような項目、これはデータの中の氏名とか住所とか年齢とか症状という、1行目の上に書くものを、法律上、項目と言いますけれども、そういったことも決まっておりますし、つまり、どんな情報を集めるのかということについての上限と下限が決まっているものかと思いますし、それはもしかしたら他のデータベース、特に難病データベースとか小慢データベースも同じではないかと推測するわけでございます。
これをちょこちょこ結合してしまうということは、そのような法律で定めた一定の権力的な背景によって国民のデータを集めて、それを公益目的で使う、この範囲なら使う、この範囲で使っていいですよということで病院に義務を課して、そのデータを集めてきていることとの関係で、立法の趣旨から外れてしまうのではないかという懸念があります。ですので、データベースをくっつけるということが、果たして個々の法律、ここで我々が問題としているのはがん登録推進法ですけれども、それのみならず、他のデータベースをつくる基礎となっている法令との関係で、それらの法令が許容されるものなのかどうなのかということを検討していただいてからでないと、くっつけることはできないのではないかと思っております。
以上です。
○辻部会長 ありがとうございました。
ほかにどなたか御意見ございますか。よろしいでしょうか。
東先生、こんな感じでいかがでしょうか。
○東参考人 ありがとうございます。
すみません、その点については、連結等々に関しまして、どんなデータなのかによるというのが高橋参考人のお話であり、それは危ないからいろいろ考えなければいけないという、すみません、私の理解が余り及ばないので、森先生のお話がそういうまとめになってしまうのですけれどもね。
我々、実務的な窓口組織として考えることといえば、多分、匿名なのか顕名なのか、その審議の場もそうですけれども、安全管理措置です。匿名と顕名とを二択で安全管理措置のマニュアルをつくっているのですが、その辺の間のグラデーションがもしかしたらあるのかなと。匿名と顕名の間みたいなもので管理しなければいけないのかなと、ちょっと思いました。これは、また別の機会に御検討なのかなと思っております。
すみません、感想です。
○辻部会長 ありがとうございます。
この問題、すぐには結論が出ないと思うのですけれども、次回以降の検討に当たっての論点としては非常に重要なポイントを先生方からいただいたと思いますので、どうもありがとうございました。
それでは、本日の公開部分の議事はこれで終了ということにさせていただきまして、ここで次の議題に入る前に10分間休憩をいただきたいと思います。
これより非公開の議事となりますので、YouTubeを切断させていただきます。よろしくお願いします。
 
(休憩)
(以下、非公開)

照会先

健康局がん・疾病対策課

代表03-5253-1111(内線 3825岩佐、2150渭原)