2021年11月26日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和3年11月26日(金)14:00~

出席者

出席委員(16名)五十音順
 他参考人2名
欠席委員(5名)五十音順

 (注)◎部会長 ○部会長代理


行政機関出席者
  •  鎌田光明(医薬・生活衛生局長)
  •    山本史(大臣官房審議官)
  •  吉田易範(医薬品審査管理課長)
  •    中井清人(医薬安全対策課長)
  •  新井洋由(独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事・審査センター長事務取扱)
  •  池田三恵(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監) 他

議事

○医薬品審査管理課長 それでは、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会のWeb会議を開催させていただきます。本日は、お忙しい中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。この度の医薬品部会につきましても、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からWebでの審議とさせていただきます。
 本日のWeb会議における委員の出席状況ですが、大森委員、合田委員、小崎委員、佐藤直樹委員、長谷川委員より御欠席との御連絡を頂いております。したがって、本日は現在のところ、当部会委員数21名のうち16名の委員に、このWeb会議に御出席いただいておりますので、定足数に達していますことを御報告いたします。
 なお、本日ですが、審議事項議題1に関して、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院の病院長阿部康二先生、それから、兵庫医科大学脳神経外科学講座主任教授の吉村紳一先生を参考人としてお呼びしております。どうぞよろしくお願いいたします。
 部会を開始する前に、事務局より、所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について報告をさせていただきます。薬事分科会規程第11条におきましては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定されております。今回、全ての委員の皆様から、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告をさせていただきます。委員の皆様には会議開催の都度、書面を御提出いただいており、大変御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解と御協力を賜りますようよろしくお願いいたします。
 それでは、森部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。
○森部会長 それでは、本日の審議に入ります。まず、事務局から資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについての報告を行ってください。
○事務局 それでは、本日のWeb会議に係る資料の確認をさせていただきます。本日は、あらかじめお送りした資料のうち、資料No.1から資料No.11-9までと製剤写真を用いますので、お手元に御用意ください。このほか、資料No.12として「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料No.13として「専門委員リスト」、資料No.14として「競合品目・競合企業リスト」を事前に電子メールにてお送りしております。なお、システムの動作不良などがあれば、会議の途中でも結構ですので事務局までお申し付けください。
 なお、本日の議題のうち、審議事項議題6及び報告事項議題2のダルベポエチンアルファBS注についてですが、申請者から、部会開催の案内後に、製造上の問題が発覚したとの連絡がありました。このため、今後詳細を確認したいと思いますので、大変申し訳ございませんが、本日の議題からは取下げをさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 続いて、本日のWeb会議における審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告いたします。資料14の1ページを御覧ください。エフィエント錠ですが、本品目は虚血性脳血管障害後の再発抑制を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 2ページです。ラピフォートワイプですが、本品目は原発性腋窩多汗症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 3ページです。エヌジェンラ皮下注ですが、本品目は骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 4ページです。ピヴラッツ点滴静注液ですが、本品目は脳動脈瘤によるくも膜下出血術後の脳血管攣縮等を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 5ページです。ウィフガート点滴静注ですが、本品目は全身型重症筋無力症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 6ページについては、議題を取り下げさせていただきますので省略いたします。
 7ページを御覧ください。レイボー錠ですが、本品目は片頭痛を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 8ページです。トレプロスチニルですが、本品目は間質性肺疾患に伴う肺高血圧症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。以上です。
○森部会長 今の事務局からの御説明について、特段の御意見等はございませんでしょうか。それでは、本Web会議の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の了解を得たものといたします。
 次に、委員からの申出状況について報告してください。
○事務局 薬事分科会審議参加規程第11条に基づく各委員からの申出状況及び第5条に基づく取扱いについては次のとおりです。
 議題1、エフィエント、退室委員なし、議決に参加しない委員は川上委員、代田委員、武田委員、宮川委員です。議題2、ラピフォート、退室委員なし、議決に参加しない委員は川上委員です。議題3、エヌジェンラ、退室委員なし、議決に参加しない委員は川上委員です。議題4、ピヴラッツ、退室委員、議決に参加しない委員は共になしです。議題5、ウィフガート、退室委員なし、議決に参加しない委員は武田委員です。議題7、レイボー、退室委員、議決に参加しない委員は共になしです。議題8、トレプロスチニル、退室委員、議決に参加しない委員は共になしです。以上です。
○森部会長 今の事務局からの御説明に特段の御意見等はありますか。よろしければ、皆様の御了解を頂いたものといたします。本日は、議題の取下げがありましたので、審議事項7議題、報告事項2議題となっております。
 では、審議事項の議題に移ります。議題1について、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題1、資料1-1及び1-2、医薬品エフィエント錠2.5mg及び同錠3.75mgについて、前回の部会以降の状況を機構より説明いたします。資料1-2を御覧ください。1ページの2項に、前回の第一部会で御指摘いただいた内容を整理しております。
 1点目は、脳梗塞の再発抑制に使用可能な新たな抗血小板薬の選択肢を求める医療現場からのニーズに基づき本薬の開発が進められ、有効性の検証が十分になされた臨床試験成績を含まない臨床データパッケージで承認申請された経緯があることから、脳梗塞の再発抑制における本薬の必要性や、投与対象とすべき範囲に関する意見を医学専門家の参考人からも詳しく聞いた上で承認の可否を判断すべきという点でした。
 2点目は、本薬の対象を絞った追加の国内第III相試験(J305試験)において、有効性が十分に検証されていない本薬を、標準治療薬であるクロピドグレルと同じ位置付けで使用可能とすることに疑義があり、クロピドグレルで効果不十分な患者に限定するなど、本薬の投与対象について検討が必要であるという点でした。
 3点目は、最初に実施された国内第III相試験(J303試験)の結果を踏まえ、J305試験の対象に含めなかった脳梗塞の病型、つまりTOAST分類の「その他の原因によるもの」、「原因不明」には、本薬の投与が推奨されない旨を添付文書に明記するなどして情報提供することも検討すべきであるという点でした。
 4点目は、J303試験及びJ305試験に含まれていなかった一過性脳虚血発作(TIA)を投与対象に含めることなどの妥当性についても、改めて検討が必要であるという点でした。
 それでは、2ページを御覧ください。御指摘の1点目、本薬の虚血性脳血管障害の再発抑制における医療上の必要性について説明いたします。J303試験の結果が公開された後の2017年10月に、日本脳卒中学会から本薬の早期承認に係る要望書が厚生労働省に提出され、現在の医療環境は要望書が提出された当時から大きな変化はなく、依然として、可能な限り早期に医療現場に提供することが求められていると考えております。
 また、審査報告書の通し番号45ページに記載しているとおり、機構における専門協議においても、専門委員より、脳梗塞の再発抑制を目的として、アスピリンやクロピドグレルといった既存の抗血小板薬を投与していても、脳梗塞を再発する患者は少なからず存在し、そのような患者を含め、新たな抗血小板薬を選択することが望ましい患者がおり、虚血性脳血管障害患者における脳梗塞の再発抑制に使用可能な新たな抗血小板薬の医療ニーズは高いとの御意見を頂いています。以上の状況を踏まえると、本薬の虚血性脳血管障害の再発抑制における医療上の必要性は高いと考えます。
 続いて、御指摘の2点目、投与対象をクロピドグレル効果不十分例に限定する必要性について説明いたします。まず、本薬の投与対象からは、J303試験の結果及び最新の脳梗塞の病型分類等を踏まえ、本薬の有効性が期待できない可能性がある集団である「その他の原因による」又は「原因不明」の虚血性脳血管障害患者は、既に除外されております。
 そして、そのように絞り込んだ対象集団における本薬の脳心血管系イベント発現の抑制効果について、J303試験の脳梗塞再発のリスク因子を有するアテローム血栓性脳梗塞及びラクナ梗塞の集団での部分集団解析、並びに実施可能性から小規模となったJ305試験といった、いずれも十分な検証とは言えないものの、複数の試験の成績から、クロピドグレルと同程度の有効性が期待できることが示されたと考えております。
 また、クロピドグレルには、CYP2C19の遺伝子多型によっては反応性が低い患者、いわゆるプア・レスポンダーが存在し、これらの患者はクロピドグレルを投与していても、脳心血管系イベントの発現リスクが高いことが報告されておりますが、前回も紹介させていただいた審査報告書の通し番号32ページ、表25に記載のとおり、本薬はCYP2C19の表現型によらず、脳心血管系イベントの発現抑制効果が期待できると考えられます。
 以上のような状況から、患者の状態によっては、クロピドグレルより本薬が選択される可能性もあり、クロピドグレルの効果が不十分であること、つまり、脳梗塞の再発という患者の予後やQOLを著しく損ねるおそれのある事象が確認されるまで本薬投与が選択できないということは患者さんの不利益となる懸念があると考えられることを踏まえて、本薬の投与対象患者をクロピドグレル投与により効果不十分な患者等、J305試験の対象集団より更に限定する必要性は高くないと判断いたしました。
 なお、J305試験の対象集団は、クロピドグレルの対象集団より絞られており、現状の記載でも、本薬の使用範囲はクロピドグレルの使用範囲の一部であるということも改めて申し上げます。
 御指摘の3点目、J305試験の対象に含めなかった脳梗塞の病型に対する注意喚起については、部会での御指摘を踏まえ、添付文書の「5、効能・効果に関連する注意」の5.3項を、資料1-2の3ページの上部に下線で記載しているように修正するとともに、添付文書の「17、臨床成績」の項に、J303試験における脳梗塞の病型別の脳心血管系イベントの発現状況も追記するといった対応を取ることとしました。
 御指摘の4点目、TIA患者を投与対象に含めることの妥当性については、TIAの主な原因は、主幹動脈のアテローム硬化性病変に形成された微小血栓の遊離や、主幹動脈の血栓形成による狭窄に伴う血行力学的機序、穿通枝病変、心疾患に伴う心原性塞栓などであり、神経機能障害の持続期間や脳の梗塞巣の画像上の有無の違いはあるものの、脳梗塞と共通する病態とされています。
 また、脳卒中治療ガイドライン2021において、TIAを発症した患者は脳梗塞を発症するリスクが高いことから、脳梗塞発症時と同様に、発症機序に応じた脳梗塞発症抑制のための治療を直ちに開始することが推奨されております。
 以上より、TIA患者においても、主幹動脈のアテローム病変又は穿通枝病変、つまり小血管の閉塞が原因であれば、J305試験で得られた試験成績と同様の有用性が期待でき、本薬の投与対象になり得ると判断しました。なお、クロピドグレルの承認時の国内第III相試験においても、TIA患者は含まれていませんでしたが、海外臨床試験や類薬の添付文書の記載状況を踏まえて、投与対象に含めることが可能と判断されております。
 最後に、製造販売後の検討事項についても改めて御説明いたします。本申請で提出された複数の臨床試験成績などから、総合的に本薬の投与対象となる集団における本薬の有効性がクロピドグレルと同程度である可能性が示唆されたとはいえ、当該患者での有効性が十分に検証されたとまでは判断できないことから、特定使用成績調査及び製造販売後データベース調査で、使用実態下における有効性及び安全性の情報を集積し、既存治療との比較を行うことで、本薬を現時点で想定している臨床的位置付けで使用し続けることの妥当性を確認することとしました。また、臨床試験で検討されていないTIA患者に本薬を投与したときの安全性なども検討する予定です。
 以上の機構の判断については、本薬の専門協議に参加いただいた専門委員にも改めて確認いただき同意を頂いております。また、この説明の後、本薬の虚血性脳血管障害の再発抑制における医療上の必要性や投与対象については、参考人の阿部先生及び吉村先生より、御専門の立場からも御意見を頂ければと思います。機構からの説明は以上となります。御審議のほどよろしくお願いします。
○森部会長 一つ確認をさせてください。今、タブレットで拝見している資料1-2については、令和3年11月19日付けになっている資料でして、事前配布されている資料の一部が11月17日付けになっているものがあるようですが、今、委員の先生方には、どちらが配られているのでしょうか。
○事務局 委員の先生方に送付した資料が、恐らく17日版の資料になっているのではないかと思います。今、差分について確認しておりますが、大きな違いはないと思われるので、一度この範囲で御審議いただければと思います。差分については御報告をさせていただけたらと思います。
○森部会長 修正箇所ということですか。
○事務局 そうです。
○森部会長 了解いたしました。タブレットで供覧している資料1-2は委員の先生方は見られてないのでしょうか。
○事務局 そうですね。先生方は紙で配布された資料だと思います。
○森部会長 分かりました。では、修正点については、後ほどまとめて御報告いただくことにいたします。
 それでは、本日は参考人の先生、お二方に御参加いただいております。本議題について御発言をお願いしたいと思います。まず、阿部先生より御発言をお願いしてよろしいでしょうか。
○阿部参考人 国立精神・神経センター病院の阿部でございます。委員の先生方、日頃から大変お世話になりありがとうございます。本件は、私ども日頃から脳卒中を診ている立場からしますと、できるだけ早く認めていただきたいというのが率直なところです。
 前回の委員会で御指摘いただきました本薬の必要性があるのかという御質問ですが、先ほど御説明がありましたように、現在では抗血小板薬というのは、主にクロピドグレルとアスピリンとチクロピジンの3剤しかないのです。チクロピジンは様々な副作用があって、ほとんど現在は絶滅状態で使われておりません。アスピリンは有名な古典的な薬なのですが、有名な副作用である出血が多数ありまして、これも今はかなり使われなくなってきておりますので、実質的にはこのクロピドグレルが唯一使われているというような状況でございます。
 そんな中にありまして、今回のプラスグレルが現場に出てきますと、先ほども御指摘がありましたが、クロピドグレルはノン・レスポンダーという方が結構いらっしゃるものですから、このプラスグレルでノン・レスポンダーへの有効性が期待できますので、是非現場としては選択肢を増やしていただきたいということが本音のところです。同様の作用機序ではありますが、このクロピドグレルの場合には、遺伝子多型でノン・レスポンダーが一定数ありますので、そこを少し勘案しますと、プラスグレルの有利な点もあるという意味で、臨床現場の必要性は当然あるだろうと思われます。
 それから、クロピドグレルが効かなかった症例にという可能性を御指摘いただきましたが、これも臨床現場でこの抗血小板剤をやるに当たって、その都度遺伝子多型を調べてから薬を投与するということは時間的に間に合いませんので、通常はまず薬をやってしまうわけです。そして、効かなくなって初めてクロピドからプラスへ切り替えるということになりますと、その間に患者さんは再発してしまう危険性も当然ありますが、このプラスグレルがありますと、そのようなノン・レスポンダーを考える必要なくできますので、そういうベネフィットは当然あろうかと思います。したがって、タンデムにクロピドをまずやって、効かない症例にプラスグレルというものではなくて、むしろ並行して、どちらか一方を使うということのほうが、臨床現場からすると大変有り難いということになろうかと思います。
 第3点の除外基準、J303試験における脳梗塞病型別に関することなのですが、現場としては一応臨床診断して治療に取りかかっているのですが、実際のところは結構迷う症例も多いのです。したがって、日々迷いながら、この臨床診断でいくということになっております。この分類のその他の原因による原因不明の虚血性脳血管障害の患者には有効性が認められていないということに対して、どのように考えるかということなのですが、こういう形で追記していただければ、むやみに使うことにもつながりませんし、迷いながらやっている現場としても、ここのところはこれぐらい表現していただければ大変助かるというような感じです。
 4番目のTIA、これは過去ではアスピリンも、特にクロピドグレルもTIA患者にやっていなかったのですが、病態機序は全く同じですので、本当はベストな認可行政を考えますと、TIAにこの臨床試験をやってみて、その効果を判定した上で、認可するかしないかを議論するのが本当は筋なのですが、過去の抗血小板剤もそれなしに認可されてきた経緯もありますし、TIAに関してこのプラスグレルが他剤と比べて格別悪さをするということは考えられませんので、これはこれでTIA患者を含めるという形にしていただいてよろしいのではないかと思っております。私からは以上です。
○森部会長 どうもありがとうございました。続きまして、吉村先生から御発言よろしいでしょうか。
○吉村参考人 吉村です。今、阿部先生がおっしゃったとおり、ほぼ全て同じであります。一つずつお答えしますと、医療上の必要性については、私たち脳神経外科では非常に高いと考えておりまして、この薬剤とクロピドグレルの両方があることでより多くの患者さんを治療できるということで、大きく期待しております。
 そして、同じ位置付けで使用可能かどうか、効果不十分な患者さんに限定するということですけれども、先ほども出ましたように、効果不十分ということは再発したということになりますので、これは脳の場合にはそれによって致死的な脳梗塞を起こす、あるいは元に戻らないような重度な後遺症を抱えるということになりますので、これもやはり現実的ではないということです。
 3番目ですが、このような記載をするということに同意いたします。
 4番目、TIAを含めるかどうかですが、これは絶対含めていただきたいところです。脳梗塞の区別が今、曖昧になっておりますので、是非これも含めていただきたいということで、先ほどの阿部先生の御説明とほぼ同じ見解です。よろしくお願いいたします。
○森部会長 どうもありがとうございました。事務局から、資料のアップロードを準備しています。少しお待ちください。
○事務局 口頭で御紹介してもよろしいでしょうか。
○森部会長 はい。では、お願いします。
○事務局 申し訳ございません。資料の修正箇所を今、口頭で御説明させていただきます。
 まず、1点目が「2.前回の第一部会での御指摘」の2ポツ目ですが、「標準治療として確立しているクロピドグレル硫酸塩」を「標準治療薬であるクロピドグレル硫酸塩」と記載の整備をさせていただいております。
 それから、2点目が「3.対応」の「1.本薬の医療上の必要性について」の1ポツ目ですが、「2017年10月に」を「J303試験の結果公開後の2017年10月に」と文言の挿入をさせていただいております。
 次が3点目ですが、「2.投与対象をクロピドグレル効果不十分例に限定する必要性について」の2ポツ目、「解析及びJ305試験」を「解析及び実施可能性から小規模となったJ305試験」というように説明を加えております。
 それから、「J305試験といった複数の試験から、十分な検証とは言えず、実施可能な範囲でではあるが当該対象集団における本薬の脳心血管系イベント発現の抑制効果についてクロピドグレルに劣らないことが示されたと判断できること」を「J305試験といった、いずれも十分な検証とは言えないものの複数の試験の成績から、絞り込んだ対象集団における本薬の脳心血管系イベント発現の抑制効果についてクロピドグレルと同程度の有効性が期待できること」と修正しています。
○森部会長 もう一度読み上げていただけますか。
○事務局 今の所をまとめて読み上げます。「J303試験の部分集団(脳梗塞再発のリスク因子を有するアテローム血栓性脳梗塞及びラクナ脳梗塞の集団)解析及び実施可能性から小規模となったJ305試験といった、いずれも十分な検証とは言えないものの複数の試験の成績から、絞り込んだ対象集団における本薬の脳心血管系イベント発現の抑制効果についてクロピドグレルと同程度の有効性が期待できること」という文章にさせていただいています。修正点としては以上です。
○森部会長 審議を進めてよろしいですか。
○事務局 進めていただければと思います。
○森部会長 今、お二方の参考人の先生から御意見を頂きました。御発言どうもありがとうございました。
 それではこの後、委員の先生方からの御質問についてお受けさせていただきます。いかがでしょうか。宮川先生、お願いします。
○宮川委員 日本医師会の宮川です。阿部先生、吉村先生、御説明ありがとうございました。臨床現場ということでは私どもも同じでして、こういう使い分けとして、その薬の使用ということについてはよく理解できました。
 しかしながら、例えばクロピドグレルに関して、プア・レスポンダーが存在する、その割合がどのぐらいかということを教えていただきたいと思います。初期の段階でどちらかを使うのだという臨床現場の中で、実際にプラスグレルを先に使うのかという議論に進んでしまうのかと危惧するのですが、実際にはプア・レスポンダーが多ければ、先ほどお話になったように、第1番目に使うものと2番目に使うものを、臨床現場でどのように判断するのかということが不明なので教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○阿部参考人 これは、吉村先生、お願いします。
○吉村参考人 御質問ありがとうございます。私たちはカテーテル治療等を脳梗塞の患者さんに行わざるを得ない場合が結構多くて、かなりの患者さんに遺伝子多型等を調べております。また、この薬剤が効かない患者さんは、日本人の場合には大体20~30%おりますので、かなりの%に上ります。そういった方を事前に選び出せるかというと、なかなかこれは臨床現場では難しいということになりますので、この効きの悪い患者さんたちをお救いするために、この薬剤が要ると考えております。欧米人は実は5%にも満たないということで、白人とアジア人の差と言われております。
 2点目は、どのように薬剤選択をするかという御質問ですが、これまでの臨床試験のデータを現場の医師とも見ながら選ぶと思いますので、いたずらにこの薬剤をクロピドがあるのに全例で使うということは恐らくないだろうと考えます。したがいまして、比較的再発を起こすと重症になり得る方にこの薬剤を使い、クロピドグレルも今後も使われていくのではないかと考えております。以上です。
○宮川委員 ありがとうございました。TIAに関しても、同じようなプア・レスポンダーと言いますか、そういうものは存在すると考えてよろしいのでしょうか。
○吉村参考人 おっしゃるとおりです。TIAを起こした患者さんが、非常に小さなラクナ梗塞のTIAであるのか、あるいはMRI等を撮って、非常に危ない大血管の狭窄を伴う患者さんなのか、恐らくそういったリスクを見ながら薬剤が選ばれていくのではないかと考えます。
○宮川委員 ありがとうございます。選択の根拠と言いますか、最初にどちらを選択するのかというと非常に迷うところですが、まだそこまでは十分に言い切れないということで考えてよろしいですか。
○吉村参考人 おっしゃるとおりだと思います。いずれにしても、現在はクロピドグレルは効かなかった場合の選択肢がない状態ですので、その意味でもこの薬剤が脳関係に使えるようになること、そうすれば現場では、恐らく先生がおっしゃるように、きちんとした基準はないものの、現場でこの患者さんにはこちらの薬剤を先に使ったほうがいいだろうということが選ばれていくと思います。恐らくそういった臨床的なデータをきちんと取っていく、そういうスタディが始まっていくのではないかと考えます。
○宮川委員 ありがとうございました。これからはそういうような臨床の中でしっかりとした検証を行うということが約束されれば、どちらを利用していくのかといったことが明確になっていくということで理解してよろしいですか。
○吉村参考人 はい、そのように考えます。
○宮川委員 ありがとうございました。
○森部会長 吉村先生に1点教えていただきたいと思います。クロピドグレルのプア・レスポンダー若しくはノン・レスポンダーの方を先生方が判定される場合は、CYP2C19の遺伝子多型の解析をもってなされているか、若しくはクロピドグレル服薬中に何らかの抗血小板効果を機器で測定された上で検討されていらっしゃるのか、いずれでしょうか。
○吉村参考人 おっしゃるとおりです。実際には血小板凝集能検査が行われて、それによって判定されることが多いと思います。その検査法ですが、一部保険適用の機械もありますので、私たちの施設ではほぼ全例にこれを行っております。
○森部会長 その検査の結果を参考にされて、プア・レスポンダーかどうかを決めておられるということですね。
○吉村参考人 実は一部保険適用になっていると申したのは、保険適用になっている機械は、検査技師さんの手間が要るものですから、これは夜間・土日はできない所がほとんどだと思います。大きな病院でも検査ができない施設のほうが多いので、これが非常に問題であるところです。もう一つは、ベリファイナウという、これは欧米でスタンダードな方法ですが、これは保険適用になっておりませんので、研究として行われているということで、血小板凝集能でさえ日本の多くの病院ではできない状況ですので、効かなくて初めて気付くという病院が恐らく多いのではないかと考えます。
○森部会長 ありがとうございました。CYP2C19の遺伝子多型検査はいかがですか。
○吉村参考人 これは研究目的で我々は行っていて、その血小板凝集能の効いていない患者さんとそれが一致するかどうかということを検証したということであって、ルーチンで行われるような検査ではないと考えます。
○森部会長 どうもありがとうございました。続きまして、柴田委員から御質問を承ります。
○柴田委員 阿部先生、吉村先生、どうもありがとうございました。御説明を伺って、とても明解に状況が把握できました。
 1点、吉村先生と機構の方にお伺いしたいことがあります。先ほど、CYP2C19のPMの方が大体2、3割いらっしゃるというお話でした。今回の試験、今回の評価のややこしいところは、その2、3割の既存のクロピドグレルが効かない方を救える可能性がある本薬を使うことで、7、8割の方には、クロピドグレルに比べるとエビデンスがしっかり確立していない薬を使うことになるというところが問題だと私は考えております。そこで、7、8割の方に、クロピドグレルよりも劣らないということが、確信を持って言えるのであれば問題ないと思います。逆に、そこが不十分であるという可能性が十分詰められていなかったので、前回のような議論になったと私は理解しております。
 現状のデータではそこは区別が付かないので、実際に使ってみていただくことになるのですが、先ほど吉村先生もおっしゃったように調べていただくということになると思いますが、具体的にどういうことを調べると、トータルで問題が生じていないことが安心できるというように先生方はお考えなのですか。
○阿部参考人 柴田先生、ありがとうございます。最初に、阿部からお話させていただきたいと思います。2、3割のクロピドグレル無反応、低反応の方々がいらっしゃって、その部分については、先生がおっしゃるとおり、間違いなくベネフィットがこのプラスグレルにはあろうかと思います。ただ、残りの7、8割に全く効かないわけではありませんので、本来はヘッドトゥヘッドで、クロピドとプラスグレルの試験をすれば優劣がはっきり付くのですが、なかなかそうはできなかったわけです。ただ、このプラスグレルの臨床試験を見ても、クロピドグレルの脳梗塞再発効果と比べて劣ることはなく、ほぼ同等と考えてよろしいのではないかと私は思っております。吉村先生、いかがですか。
○吉村参考人 先生のおっしゃるとおりで、2、3割のプアレスポンダーをレスキューできる、7、8割の方に関してもほぼ同等の結果が得られるのではないかと推測しております。
○柴田委員 ありがとうございます。
○医薬品医療機器総合機構 機構からも補足の説明をよろしいですか。
○森部会長 お願いします。
○医薬品医療機器総合機構 プア・レスポンダーとそれ以外の集団での有効性については、再度の御紹介となりますが、審査報告書、通し番号32ページの表25を御覧いただけますでしょうか。こちらは第III相試験の併合解析となっており、表の中段にCYP2C19の表現型ごとのハザード比がございます。PM以外の集団におきましても、この併合解析の結果としては、本薬群とクロピドグレル群で脳心血管系イベントの発現状況が同程度ということで、当然、非劣性検証レベルではありませんが、1,300例の併合集団においてこのような結果が得られているということから、プア・レスポンダー以外の集団でも、本薬の有効性がクロピドグレルに劣る可能性は低いと考えております。また、これまでの開発で、第II相試験などで薬力学的作用もある程度比較はしておりますが、そういった点からも本薬が劣るような傾向は示されていないと考えております。
 もう一点、前回御指摘いただいたとおり、J305試験のこの規模での評価の精度はどうだったのかという御指摘も踏まえて、一応シミュレーションとして、J305試験の症例数設定の仮定に用いたイベント発現割合などを用いてシミュレーションを実施して、例えばですが、真のリスク比が2であるにもかかわらず、J305試験で点推定値が1未満となってしまうような確率は8.1%と、比較的低いということで、本剤の有効性が許容できないほど低い場合に、誤ってそれを有効であると検出する確率は、この試験の規模でも低かったと考えております。以上です。
○柴田委員 今の最後の部分についてお伺いします。もともと非劣性試験の非劣性マージンの設定の根拠を考えますと、2ではなくて、非劣性マージンぐらいのときにどういうことが起こるのかというのは考察されていると思いますが、それはどうなのですか。
○医薬品医療機器総合機構 非劣性マージンが1.35でしたので、例えば許容するラインを超えるとした場合を1.5としますと、点推定値が1未満となる確率は20%となります。逆に言えば、80%では1未満であるということが言える程度だったと考えます。
○柴田委員 分かりました。でも、20%ぐらいはこれが起こるというのはかなり大きな確率であって、そういうことをきちんと専門協議の場で臨床の先生方に説明された上で議論はされたのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 失礼しました。このシミュレーション結果自体は、部会の後にこちらとして確認したものですので、委員の先生方にはそこまで詳細な情報は御提示できておりません。大変失礼しました。
○柴田委員 分かりました。あと二つありますが、今の話は添付文書から読み取れるのですか。J305試験が不十分な精度しかない、通常の意味でのクロピドグレルと同じ水準のエビデンスがあることを保証する試験ではないということは、添付文書からどういうふうに読み取れるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 添付文書の17項の試験成績の説明では、本試験の主たる目的が点推定値1を下回ることの確認であったと記載しているにとどまっておりますので、今御指摘いただいた内容が十分に記載されているかと言えば、少し足りない部分があるかと考えます。
○柴田委員 前回及び今回の宮川先生の御指摘を統計家の立場で翻訳し直しますと、そういうところに対する情報が不十分で、誤解されたまま全ての患者さんに一律に使われるようなことがあるとまずいというのが根本にあると私は考えております。それが、ハザード比でいうと1.35とか1.5とか、そういうリスクが高い、効果が弱い薬を7、8割の方に使ってしまうことのリスクをきちんと踏まえて考察して、それに対して、そういうことはほとんど起こらないであろうから、トータルでならしたとしても、CYP2C19のPMの方が2、3割いるという現実を踏まえますと、トータルでデメリットはなく、メリットがあるだろうという判断を下したなどという立論をされているのであれば理解できます。でも、そこのところを曖昧にされているので、製販後にどういうデータを取るべきかというところの詰めが甘いではないかと思った次第です。そこはどのようにお考えですか。
○医薬品医療機器総合機構 まず、今御指摘いただいたようなJ305試験の症例数の設定根拠の点については、添付文書等で追記して情報を補強させていただければと思います。製造販売後の調査におきましては、J303試験の非劣性マージンと同様、1.35を基準として、本薬と既存治療との比較を行う調査とすることを検討しております。
○柴田委員 分かりました。最後ですが、資料1-2の2ページ、2番の4ポツ目、「以上の状況から、患者の状態によっては」うんぬんとあって、「選択される可能性がある」と書いてありますが、先ほど来お話があるように、例えばこれは遺伝子多型の検査をして投与するとか、血小板凝集能の検査をしつつ薬を選ぶということができるのであれば、当然選べるわけですが、現状では今回、臨床試験J305試験の対象になった、あるいは先ほどの表25の対象になったような患者さんが来た場合、クロピドグレルを使ったほうがいいのか、本剤を使ったほうがいいのかというのを選別することはできるのでしょうか。機構としては、何に基づいて選別可能だとお考えですか。
○医薬品医療機器総合機構 先ほど吉村先生からその点を補足いただいたとおり、患者さんの重症度等によって再発リスクがより大きいと見込まれる患者さんであったり、あるいは可能性はどこまで多いか分かりませんが、血小板凝集能の検査結果やCYP多型の情報が何らかの形で入手できている場合は、それらの情報を基にクロピドグレルか本剤かの選択がなされるものと想定しております。
○柴田委員 それについては、きちんと明確に議論すべきことだと思います。前者については、現在得られているデータからは、それを積極的に推奨できるようなデータはないのではないかと思います。例えば、CYP2C19のプア・メタボライザーの方が再発リスクの高い集団の中にたくさん入っていて、それは4割、5割となれば、確かにそのとおりかもしれませんが、そこのところが分からないのであれば、再発リスクの高い方に対して、クロピドグレルがいいのか、本剤がいいのかというのは、先ほどの7割、8割の患者さんにとってはやはり分からないので、ここについては慎重にデータを見る必要があります。特に、製販後に得られたデータの中で、そのようなことについて丁寧に分析していく必要があるのではないかと思います。機構の方はどうお考えですか。
○医薬品医療機器総合機構 現状の試験成績で、御指摘いただいたように説明できることが限られておりますので、その部分は申請者との製造販売後の調査において詳細な検討ができるよう、計画を精査してまいりたいと思います。
○柴田委員 質問は以上です。手続的なことですが、今回資料1-2に書いてあるような内容は、審査報告書の中には書いてない情報が書いてあると思いますが、今後、審査報告書に上乗せされることはあるのですか。結構大事なことが書いてあるのですが、それが審査報告書に載らないままになるのですか。
○事務局 事務局です。本日御審議いただいた内容については、審査報告書の表紙の所に当たる審議結果報告書の中に追記をさせていただければと思います。
○柴田委員 承知いたしました。本日、特に阿部先生、吉村先生からお話を伺った中で、例えばPM、プア・メタボライザーに相当する方が2割、3割いらっしゃるということ、治験では15%ぐらいだったわけですが、そういう方が臨床現場ではもっとたくさんいらっしゃるということをお伺いしましたので、そういう方に対するニーズが高いというのはよく理解できましたし、そういうところも踏まえて全体の判断を下されたという経緯はきちんと記録に残していただく必要があると思った次第です。以上です。
○森部会長 柴田委員、どうも御発言ありがとうございました。そのほか、委員の先生方から御発言、御質問はありますか。参考人の先生方から、追加の御発言等ありましたらお願いします。よろしいですか。宮川先生、どうぞ。
○宮川委員 柴田委員、いろいろ御説明と言いますか、補足をありがとうございました。前回議論したことがしっかりと記録に残ることが私も必要だと思います。部会でのいろいろな議論というものが、使われる先生方にしっかりと届くようにしないと、一律に物事が使われるということはよくないことと思います。ですので、そのところのしっかりとした議論が書いてあって、先生方の臨床的な今までの考え方の中で選択ができるような文言が盛り込まれることが必要であると思っております。そのように厚労省も考えていただければ幸いかと思います。ありがとうございました。
○森部会長 そのほか御発言はいかがですか。少し確認事項があります。先ほど御指摘された表25に関する層別化した解析で、CYP2C19の遺伝子多型などの情報も含まれている表25がありますが、この表25の内容というのはどのように医療現場に提供されていくことが必要なものでしょうか。御意見いかがですか。何らかの資材等で提供されるべき内容でしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 現在の医療提供者向け資材におきましては、この部分集団解析の結果は記載されておりません。非常にこの試験成績の解釈が難しいところで、PMにおける有用性を示唆する重要なデータであると考える一方で、PMにおける有用性を過度に強調し、販売の促進に使われるようになるというのも本意ではないと考えております。現状では、情報提供資材に記載することまでは行っていない状況です。
○森部会長 インタビューフォームはいかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 インタビューフォームにつきましては、まだ確認をしておりませんので、今後必要という御指摘があれば検討させていただきます。
○森部会長 委員の先生から御意見はいかがですか。石川委員、どうぞ。
○石川委員 これまでの御議論ありがとうございました。脳神経内科医として脳卒中の患者さんを拝見している者として、今の表25は少し仔細し過ぎて、なかなか分かりにくいし、迷われることが多いのではないかと感じます。ですので、実際に載せていただく内容としては、今まで御議論いただいたように、クロピドグレルにおいてはプア・メタボライザーの人がいるというのはほぼ常識になっておりますので、その方々に関するサジェスチョンと、そうでない方々の70%、80%ぐらいの多くの方々に関してのエビデンスがまだ十分に確立されていないという内容を、例えば下線を引くなりして載せていただくほうがよろしいかと思います。
○森部会長 それでは、添付文書について先生方から御意見を承りたいと思います。本日、阿部先生、吉村先生の参考人の先生方からの御発言、並びに柴田委員からの御発言等々の意見交換の中で、この薬剤が必要な方に適切に届くように、どのような添付文書を提出することで最適化されるか、先生方から何か御意見やお知恵がありましたら、御発言いただけますか。現行の記載で十分と考えてよろしいでしょうか。
 先生方から御発言がなければ、私から2点ピンポイントに先生方に御意見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。添付文書の4番、効能又は効果の項目の記載です。この記載については、現在、虚血性脳血管障害(大血管アテローム硬化又は小血管の閉塞に伴う)後の再発抑制、脳梗塞発症リスクが高い場合に限ると記載されております。
 審査報告書の通し番号3ページの真ん中辺りに、申請時の効能・効果に関する記載では、脳梗塞発症リスクが高い虚血性脳血管障害患者(アテローム硬化又は小血管の閉塞に伴う)での再発抑制というように、記載の順序が一部入れ換わっておりますが、添付文書(案)では現行の記載になっております。先生方の中で、どちらの記載が良いか、特に御意見はありますか。現行の添付文書(案)の方がよいとお考えの先生は結構ですが、変更したほうがよいという御意見はありますでしょうか。参考人の先生方、いかがですか。特に現行の案でよろしいですか。
○阿部参考人 このままでよろしいかと思いますが。
○森部会長 どうもありがとうございました。それでは、この点は現行どおりとさせていただきます。もう一点確認させてください。今回の臨床試験は、第III相試験という形で二つの試験が記載されておりますが、J303試験では非劣性が検証されず、J305試験では点推定という統計学的な一部制約があります。その中で、本剤を適応疾患として承認する上で、エビデンスの状況を分かりやすく添付文書の中にも記載すべきではないかという御意見もあるかと思います。その点を記載する上で、例えばですが、添付文書の2ページ、5.4の下の項に、虚血性脳血管障害の再発抑制に関する内容の5.5として、既存の抗血小板薬に対する優越性を示すデータは得られていないなどの文言を追記したほうがよいでしょうか。
○阿部参考人 その点は、先ほどコメントがありましたように、きちんと記載して、それを読んだ先生方が、このエフィエントの位置付けをきちんと理解した上で投与できるような形にしてあげるのが本来の筋ではないかと思います。
○森部会長 阿部先生、どうもありがとうございます。
○吉村参考人 私もその文章を加えたほうがよいと思います。
○森部会長 どうもありがとうございます。委員の先生方から御発言はいかがですか。
○宮川委員 今お話があったように、しっかりとした書き込みが必要だろうと思います。私はこの前、点推定のことに関しても懸念しているということで議事録に残っているはずですが、ここはしっかりとした書き込みがないとよく分からないだろうと思います。非常に問題の箇所だと理解しております。これに関しては、柴田先生から理解しやすいように教えていただいたので、柴田先生からも何かコメントを頂ければ、理解しやすいのではないかと思います。部会長を差し置いて申し訳ないのですが、柴田先生、何かお考えはありますか。
○森部会長 柴田先生、是非お願いします。
○柴田委員 私も、先ほど森先生がお話になった方針が書かれることが必要だと思います。逆に、それが書かれるのであれば、専門家の先生方のお話を伺って、本薬を承認することに対して異存はありません。
 具体的な書きぶりについては、てにをは等も含めて、先ほど機構の方がおっしゃっていたように、逆に、過度にエビデンスがあるように誤解されないような書き方などの工夫は必要かもしれませんが、先ほど森先生がおっしゃったような書き方であれば問題ないと思いますし、そういうものが書かれる必要はあると思います。
○森部会長 柴田先生、どうもありがとうございました。石川先生、何か御発言はありますか。よろしいですか。では、機構の方、御発言をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 今、御提案いただいたような記載の、優越性が示されていないという点について、今回の開発において、優越性の検証を目指した試験を実施していたわけではありませんので、できれば正確を期すために、非劣性は検証されていないといった試験の目的に沿った記載とさせていただくことを提案したいと思います。
○阿部参考人 そのとおりだと思います。
○柴田委員 機構の方のおっしゃることに異存はありません。
○森部会長 そうしましたら、5.5の内容としては、今、先生方から御了解いただいた文面を追記して進めていくことで御意見を頂きました。ほかの委員の先生方から御発言、御意見はありますか。非劣性が統計学的有意を持って示されていないということでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 それをもって検証されていないという文言になるかと考えております。
○森部会長 柴田委員、文言については、後ほど少し詰めたほうがよろしいですか。
○柴田委員 本件については、全集団に対しては統計学的に有意に非劣性が検証されたわけではないので、先ほどのお話のように、5.4の所にまとめて書くのであれば、非劣性が検証されていないことはここは省略していただいて、臨床試験の詳細の所にその内容が示されていればよいかと思います。
 森先生がおっしゃった話は、もしかしたらプア・メタボライザー等における勝る部分というのもサブグループ解析等であるために、見た目ではよいかもしれませんが、それもあくまでサブグループ解析であるという話もあるかもしれませんが、そこまで書くかどうかは、ほかの先生方の御意見も伺いたいと思います。私個人としては、全体で非劣性が検証されている薬ではないということが書かれていれば、先ほどの7割、8割の部分の患者さんに対するエビデンスが少し弱い薬であるということは伝わるかとは思いますが、いかがですか。
○森部会長 柴田委員、5.4にまとめて追記するということでもよろしいですね。
○柴田委員 はい。5.4の冒頭に書いてある話を膨らませていただくような形でもいいかと思います。
○森部会長 それでは、記載していただく内容は決まりましたので、体裁については機構の方で工夫いただいて確認させていただきたいと思います。よろしいですか。先生方からたくさん御議論いただきまして、どうもありがとうございました。そのほか、特に御意見、御発言がないようでしたら、議決に入らせていただきます。なお、川上委員、代田委員、武田委員、宮川委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づいて、議決への参加を御遠慮いただくことになっております。
 本議題について、承認を可としてよろしいですか。御異議ないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。阿部参考人、吉村参考人、本日は誠にどうもありがとうございました。
○阿部参考人 どうもありがとうございました。
○吉村参考人 ありがとうございました。
○森部会長 厚く御礼申し上げます。
── 阿部参考人、吉村参考人、退室  ──
○森部会長 それでは、引き続きまして、議題2に移らせていただきます。議題2につきまして、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題2、資料No.2-1及び2-2、医薬品ラピフォートワイプ2.5%の製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。資料につきましては、資料No.2-1、ラピフォートワイプ2.5%の審査報告書を御覧ください。
 原発性腋窩多汗症は、日常生活に支障を来す大量の発汗を腋窩に生じる疾患です。本剤は、グリコピロニウムトシル酸塩水和物を有効成分をとする外用剤であり、コリン作動性神経により調節されている汗腺のアセチルコリン受容体とアセチルコリンとの結合を阻害することで、多汗症による発汗を抑制することが期待され開発に至りました。
 今般、原発性腋窩多汗症患者を対象とした国内臨床試験により、当該患者に対する本剤の有効性及び安全性が確認され、医薬品製造販売承認申請がなされました。海外におきましては、本剤と同一の有効成分を含有する医薬品であるQbrexzaが2018年に米国で承認されております。本品目の専門協議では、本日の配布資料No.13に示します専門委員を指名しております。
 以下、本剤の有効性及び安全性につきまして、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性に関しては、審査報告書通し番号の25ページの表20を御覧ください。第II/III相試験の主要評価項目である「4週後の自覚症状をスコア化したHDSSが2段階以上改善かつ両腋窩平均発汗重量が50%以上改善した被験者割合」について、本剤2.5%群及び3.75%群は、いずれもプラセボ群に対する優越性が検証されました。以上より、機構は、原発性腋窩多汗症患者に対する本剤の有効性は示されたと判断しました。
 安全性に関しては、審査報告書、同じく通し番号25ページの表21及び表22を御覧ください。第II/III相試験の投与4週後までの有害事象及び副作用の発現状況を示しております。プラセボ群と比較して、本剤各群で有害事象の発現割合に大きな差はありませんでした。また、副作用の発現割合について、プラセボ群に対し、本剤2.5%群では大きな差はありませんでした。本剤3.75%群ではプラセボ群に比べ、やや副作用の発現割合が高かったものの、認められた事象はいずれも軽度でございました。
 さらに、審査報告書の通し番号34ページ、表29を御覧ください。本剤の長期投与時の有害事象の発現状況を示しております。投与期間の長期化に伴い、有害事象の発現割合が増加する傾向は認められませんでした。
 続きまして、審査報告書の通し番号35ページ、7.R.2.5の項を御覧ください。抗コリン作用に関する有害事象の発現状況について検討を行いました。第II/III相試験では、プラセボ群と比較して、本剤群で羞明、散瞳及び排尿困難な発現割合がやや高く、本剤3.75%群では口渇の発現割合もやや高かったものの、その他はプラセボ群と大きな差はありませんでした。また、長期投与試験において認められた有害事象の発現割合が、第II/III相試験と比較して高くなる傾向は認められませんでした。
 第II/III相試験及び長期投与試験で認められた抗コリン作用関連の有害事象のほとんどは、軽度又は中等度であるものの、一定の割合で認められており、抗コリン作用に関連するリスクを添付文書で注意喚起し、製造販売後調査等において引き続き情報収集する必要があると考えました。
 以上より、機構は、本剤の安全性について、添付文書における注意喚起等の対応を取ることで許容可能と考えました。なお、原発性腋窩多汗症は慢性疾患であり、重症度にかかわらず、幅広く継続して使用できる薬剤が求められていることから、国内臨床試験における安全性の結果を踏まえ、より忍容性が高い2.5%を臨床推奨濃度として選択しております。
 最後に、製剤見本の写真を御覧いただければと思います。本剤は、剤形が特徴的であることから、適切に使用されるように資材等を用いて情報提供を徹底するよう、申請者に指示しております。
 以上、機構での審査の結果、原発性腋窩多汗症に対する本剤の有効性は示され、安全性は許用可能と考えられたことから、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で、本剤を承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。なお、本品目は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しました。薬事分科会では報告を予定しております。機構からの説明は以上になります。御審議どうぞよろしくお願いいたします。
○森部会長 どうもありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等がありましたらお願いします。
○堀委員 COMLの堀です。よろしいでしょうか。
○森部会長 お願いします。
○堀委員 私からは2点お伺いしたい点があります。今、御説明いただきました製剤の内装デザインについて確認させてください。昨日お送りくださいました製剤の内装デザインの資料の13分の2を御覧ください。こちらに関しましては、変更前と変更後と書かれています。つまり、これは今回承認されましたら、患者の手元に届く内装は変更後と理解してよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構より回答を申し上げます。御理解のとおりでして、変更後のもので対応いただけるように申請者にお願いしているところです。
○堀委員 かしこまりました。ありがとうございます。この変更していただいた点は、普通のボディシートやフェイスシートと区別をする上においてはとてもよいことだと思います。本当に有り難く思っています。
 1点、私が懸念する点がありましたので、御指摘させていただきます。変更後の部分の裏面を御覧ください。使用方法の2の部分の絵を御覧いただきたいのですが、ここの絵では、御家族等が誤って触れないように注意して、適切に処理してくださいということで、このシートをごみ箱にそのまま入れていらっしゃる絵がかかれています。本当に素朴な心配なのですが、私なども日々生活の中でごみを処理する立場から申しますと、このシートは、特に普段使いのフェイスシートやボティシートと見た目が、使い終わった薬液を含むシートとは特に区別することができないと思います。特に今、アルコール除菌が家庭内でも非常によく行われていて、その際に除菌シートをよく利用し、ゴミ箱にそのまま捨てています。その場合、この絵ですと、ごみ箱に同様に、外用剤のシートのまま入れてしまうことを推奨しているように私は感じました。その際、患者よりも、患者の家族の方がごみを処理する時、素手で触ってごみを処理したとき、その方が例えば目を触ったりした場合、一番懸念する目に入れてはいけないというようなことが起こる気がします。
 今、マスクの処理のマナーなどが言われていますが、マスクを処理する際には、ビニール袋などに入れて直接触れないように処理をすることが、皆さん認知はされていると思うのです。ですので、できましたら、このシートを捨てる際には何かしらほかのシートと区別をするような捨て方を、特にこの図ですと、この捨て方を推奨しているように見えますので、それを是非変更していただけるように御検討いただければと思います。いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘いただき、ありがとうございます。機構より回答を申し上げます。今、堀先生から御指摘いただいたように、現行の図案では、直接手に触れる機会が生じる懸念があると考えます。まずは申請者に、今回の部会でご意見が出たことを伝え、イラストや説明の適切性を検討するよう伝えさせていただきます。
○堀委員 是非よろしくお願いします。あと、もう一点質問です。これが腋の下を拭く薬ということは、例えば目やその他の個所、例えばここの注意書きに書いてあるような発疹や傷口以外の体の部分を間違って拭いてしまっても、特に問題はないのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。添付文書等で注意喚起しているように、腋窩以外の部位を拭いてしまうことは適切ではございません。なお、誤って1回拭いてしまった、あるいは少し触れてしまったといったことで、直ちに重大な有害事象が起こるような懸念はないということです。
○堀委員 ありがとうございます。特に男性の若い方が多いかと思うのですが、ボディシートやフェイスシートに慣れていらっしゃると、そのようなことはないと思うのですが、腋の下以外の所を拭いてしまう可能性もあるかと思いましたので、質問させていただきました。それほど頻繁に拭かなければ、特に副作用はないと考えてよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。内包や添付文書、資材等で、注意喚起をしておりますが、本部会で頂いたご意見を、改めて申請者に伝えさせていただきます。
○堀委員 どうぞよろしくお願いします。私からは以上です。ありがとうございます。
○森部会長 そのほか、委員の御発言いかがでしょうか。宮川委員、どうぞよろしくお願いします。
○宮川委員 日本医師会の宮川です。少し教えていただきたいのは、45分の23の薬物相互作用についてですが、プロベネシドとの併用が必要な患者さんが確かにそれほど多いわけではないと考えられるものの、in vitroで想定されるOAT3のトランスポーター阻害の機序があるにもかかわらず、添付文書では紹介されてないのは、記載上の何かルールがあるのかどうかについてお聞きしたいと思います。
 それから、プロベネシド以外で、このようなOAT3阻害が分かっている薬があるのかということを教えていただきたいと思います。
 それから、「臨床用量を超えて本剤を投与した際においても安全性上の問題となる有害事象が認められていない」と下段の方に記載が書いてあるのですが、そもそも治験で過量投与になることは非常に稀だと思うので、II相/III相試験とか長期投与試験のみで、そのような判断をすることは危ないのではないかと思うので、その辺の書きぶりは少し注意をしなくてはいけないのだろうと思っています。
 また、先ほどの抗コリン作用の場合と同じで、注意喚起はしっかりとしないといけないのではないかと思うので、是非教えていただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただき、ありがとうございます。機構より回答申し上げます。プロベネシドとの併用について、曝露量が2倍程度上昇するという点は、過量投与を想定したことではなく、今回の推奨用量2.5%に対して、3.75%製剤が使用されたことを指します。プロベネシドとの併用による曝露量の2倍程度上昇が、3.75%を塗布した時の曝露量と大体同じぐらいであること、臨床試験における3.75%製剤使用時の安全性が許容可能と判断したことを踏まえて、このような判断に至りました。
 プロベネシドのほかに、OAT3への阻害作用を有する薬剤として想定されるものは、この場ですぐに回答できませんので、改めて検討させていただきたいと思います。
○宮川委員 ありがとうございます。そういう意味では、添付文書に記載するというような、そこまではないという御判断でよろしいのですか。
○医薬品医療機器総合機構 はい、御認識のとおりです。
○宮川委員 はい。
○森部会長 そのほか、御意見いかがでしょうか。御発言よろしいでしょうか。私から、1点質問があります。臨床現場では、アルコール過敏の方に配慮しているのですが、本製剤で特にアルコール過敏の方への注意喚起等は必要なものなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。アルコールを使ったようなほかの剤に関しても、そのような注意喚起を具体的にしているわけではないので、ほかと併せて、今回も注意喚起はしておりません。
○森部会長 臨床試験の対象者には含まれていますか。除外されていますか。
○医薬品医療機器総合機構 除外基準として、薬物治療を要するアルコール過敏症が規定されており、アルコール過敏症の患者は除外されております。
○森部会長 分かりました。大谷委員から御質問がありますので、お願いします。
○大谷委員 非常に細かいことで申し訳ないのですが、薬物動態の観点から1点お願いします。添付文書の内容を見ますと、薬物の排泄経路がなかなか分かりにくい記載になっています。16.4の項で代謝経路の説明があって、その後の16.5の項では排泄がありますが、こちらは放射活性体としての放射能の回収率という形で表示されていまして、ここだけ見ますと、この薬物の主排泄経路、消失経路が、腎排泄なのか肝代謝なのかが非常に分かりにくい記載になっています。
 例えば、海外における使用状況に関する資料で、海外の添付文書を見ますと、ここは明確に書かれており、未変化体の割合が非常に尿中で高いということから、主に腎排泄型だということがすぐに読み取れる記載になっています。この辺りは、外用剤ですので余り本質的ではないかもしれませんが、やはり全身からの消失経路が肝代謝、肝消失なのか、腎からの尿中の排泄なのかが、添付文書の記載で明確に分かるように、例えば排泄の放射能の回収されたもののうち、未変化体が占める割合をきちっと明確に書いておくとか、そういったような御配慮を頂けるとよろしいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘いただき、ありがとうございます。排泄経路を明確にすることに関して、御意見を承りました。添付文書の記載について、検討させていただきたいと思います。
○大谷委員 ありがとうございます。よろしくお願いします。
○森部会長 ありがとうございました。ほかに御質問はありますか。よろしいでしょうか。それでは、議決へ入ります。なお、川上委員においては、利益相反に関するお申出に基づき、議決の参加を御遠慮いただくことになっています。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議はありませんようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続いて、議題3に移ります。議題3について、機構から概要説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題3、資料No.3、医薬品エヌジェンラ皮下注24mgペン他の製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。
 本剤は、ヒト成長ホルモンにヒト絨毛性性腺刺激ホルモンのβサブユニットのC末端ペプチドを融合したソムアトロゴン(遺伝子組換え)を有効成分とする週1回投与の成長ホルモン製剤です。骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症患者に対する成長ホルモン補充療法では、これまで1週間に6~7回の皮下投与が必要であり、頻回の注射は患者やその保護者等の負担となっていることから、週1回投与の成長ホルモン製剤は、注射回数を減らすことで、これらの負担が軽減され、アドヒアランスの向上が期待されます。
 本剤は、2021年11月現在、米国及び欧州において審査中です。本品目の専門協議では、資料No.13に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。
 以下、本剤の有効性及び安全性について臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性については、審査報告書30ページの表30を御覧ください。成長ホルモン製剤で未治療の成長ホルモン分泌不全性低身長症患者を対象に、国内第III相試験が実施され、主要評価項目である投与12か月時の年間成長速度について、本剤群とジェノトロピン群で同様の改善傾向が認められました。なお、本試験は、実施可能性の観点から、国内試験として対照薬との非劣性を検証する規模の試験を実施することは困難であったことから、海外第III相試験の非劣性マージンを閾値として有効性評価が可能な規模で実施されました。
 また、審査報告書33ページの表35を御覧ください。成長ホルモン製剤で未治療の成長ホルモン分泌不全性低身長症患者を対象に、海外第III相試験が実施され、主要評価項目である投与12か月時の年間成長速度について、本剤群のジェノトロピン群に対する非劣性が示されました。以上の結果等から、本剤の有効性は示されていると判断しました。
 安全性については、審査報告書38ページの表42を御覧ください。ここでは、国内第III相試験及び海外第III相試験における有害事象の発現状況を示しております。本剤の安全性について、実施された各第III相試験における発現状況を中心に確認した結果、発現している主な事象は既存の成長ホルモン製剤で既知の事象でした。また、注射部位反応に関する事象等、発現割合がジェノトロピン群と比べて、本剤群で高い傾向にある事象も認められていますが、当該事象も含め、糖代謝障害や新生物等の個別の事象について検討した結果から、適切な注意喚起がなされることを前提とすれば、本剤の安全性は許容可能と判断しました。
 以上のとおり、機構での審査の結果、既存の成長ホルモン製剤と同様に、骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症を効能・効果として、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。
 本剤は新有効成分含有医薬品であるため、再審査期間は8年、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。
○森部会長 ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等ございましたらお願いいたします。堀委員、お願いします。
○堀委員 COMLの堀です。私からは1点質問です。今までの週6~7回の皮下注射の既存の成長ホルモン製剤から、簡単に切り換えることは可能なのでしょうか。お伺いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構より御説明申し上げます。切り換えていただくことは可能と思います。臨床試験におきましても、ジェノトロピンから本剤に切り換えて投与された群がございまして、問題なく使用できていることを確認しております。
○堀委員 ありがとうございます。では、特に間を空けるとか、そういうことはないということで大丈夫ということでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。御理解のとおりです。
○堀委員 どうもありがとうございました。私からは以上です。
○森部会長 そのほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。宮川委員、お願いします。
○宮川委員 日本医師会の宮川でございます。この疼痛のことについて教えていただきたいのですが、ジェノトロピンの注射に比べて、投与時、注射のときの痛みが強いようです。41ページですが、これは週1回投与し続けるうちに慣れてくるのかどうか、治験は週1回で12か月としているようですけれども、表49で、最も重度のスコアを用いて集計していると書いているのですが、それが初回なのか何週目なのか何回目なのかがよく分からないので、それを教えていただきたいのです。痛みがあったのは、何回目で多かったのかとか、最後が多かったのか、最初のときが多かったのかということです。
 年齢によっても耐性があると思うのですけれども、それがこの表ではよく分からないのです。副作用がないという、これは一番問題なので、親御さんとかもすごく心配されるのだろうと思うので、この辺りを少しより分かりやすいようにしていただければと思うので、教えていただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきありがとうございます。機構より御説明申し上げます。注射部位反応の疼痛の評価は、審査報告書では一番痛いと評価された事象の表を記載しておりますが、発現時期については、例えば初期が多いとか、中間が多いとか、後ろが多いとか、何か一定の傾向はございませんでした。例えば、審査報告書の42ページの表50、表51に、発現時期別の発現状況を単位時間当たりの発現件数含めて示しておりますが、こちらの結果を見ましても、例えば投与を継続していくうちに注射部位反応の事象が増えるとか、そういった傾向はございませんでした。
○宮川委員 分かりました。ありがとうございます。
○森部会長 そのほか御意見いかがでしょうか。機構の方、すみませんが、注射デバイスについて少し補足していただけないでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 承知いたしました。機構より御説明申し上げます。注射デバイスはペン型注入器でございまして、製剤は2規格あるのですけれども、患者さんの年齢、体重に応じて投与量が変わりますので、より良い方を適宜選んでいただくことになります。ダイヤルがございまして、適切な用量に合わせて投与するペン型のデバイスでございます。取扱説明書は同梱されておりますので、それに従って投与いただくということになります。
○森部会長 この目盛がミリグラムに対応しているのですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい、御理解のとおりです。取扱説明書にも、窓をみてどの投与量に合わせるかというような図も入りますので、取扱説明書を見ていただければ適切に扱っていただけるかと思っております。
○森部会長 分かりました。インスリンと同じ針を使って注射できるということでいいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 はい、御理解のとおりです。A型の針を使って投与いただくものになります。
○森部会長 どうもありがとうございました。そのほか先生方から御質問ございましたらお願いいたします。よろしかったでしょうか。では、議決に入らせていただきます。なお、川上委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただくことになっております。
 本議題につきまして承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議ございませんようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 では、続きまして、議題4に移ります。
○医薬品医療機器総合機構 議題4、資料No.4、医薬品ピヴラッツ点滴静注液150mgについて、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。タブレットで御覧になる場合、資料No.4のフォルダを開き、審査報告書ファイルをお開きください。以降の説明では、審査報告書の下部に青字で記載されております通し番号で御説明いたします。
 審査報告書4ページ、1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。本剤は、クラゾセンタンナトリウムを有効成分とし、エンドセリンA受容体と選択的に結合することにより、脳血管収縮を抑制することで、くも膜下出血後の脳血管攣縮の発症を抑制する薬剤で、くも膜下出血後に用いる既承認薬とは異なる作用機序を有します。
 今般、国内臨床試験成績等を基に、脳動脈瘤によるくも膜下出血術後の脳血管攣縮及びこれに伴う脳梗塞及び脳虚血症状の発症抑制を効能・効果として製造販売承認申請されました。なお、本剤は2021年8月時点で、いずれの国又は地域においても申請又は承認されておりません。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。審査報告書30ページ、表17を御覧ください。本剤の開発では、国内第III相試験として、脳動脈瘤によるくも膜下出血に対して一般的に実施される再出血予防手術であるクリッピング術又はコイリング術後の患者を対象に、それぞれ独立したプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されました。本剤の用法・用量は、いずれの国内第III相試験においても、くも膜下出血発症後48時間以内に可能な限り速やかに投与開始し、本剤10mg/hをくも膜下出血発症15日目まで静脈内持続投与することとされました。
 有効性について、審査報告書38ページ、表26を御覧ください。いずれの国内第III相試験においても、主要評価項目は、全死亡、新規脳梗塞、遅発性虚血性神経脱落症状からなるMorbidity/Mortalityイベントの、動脈瘤性くも膜下出血発症後6週までの発現割合とされました。また、一つ目の主要評価項目である脳血管攣縮に関連したMorbidity/Mortalityイベントの発現割合に群間で有意差が認められた場合は、二つ目の主要評価項目であるあらゆる理由によるMorbidity/Mortalityイベントの発現割合についても、群間比較を実施する計画とされました。その結果、クリッピング術後患者を対象としたAC-054-306試験では、一つ目の主要評価項目について、プラセボ群と比較して本剤群で有意なイベント発現抑制効果が認められ、主要評価項目の構成要素の各イベントや副次評価項目である中等度以上の脳血管攣縮のいずれについても、本剤群でプラセボ群と比較して発現割合が低い結果でした。
 また、審査報告書41ページ、表28を御覧ください。コイリング術後患者を対象としたAC-054-305試験においても、一つ目の主要評価項目について、プラセボ群と比較して本剤群で有意なイベント発現抑制効果が認められ、主要評価項目の構成要素及び中等度以上の脳血管攣縮についてもAC-054-306試験と同様の結果でした。いずれの国内第III相試験においても、二つ目の主要評価項目については投与群間で有意差が示されなかったものの、発現割合の点推定値では、プラセボ群に対し、本剤群で低い傾向が認められており、本剤の有効性を否定する結果ではないと判断しました。
 以上の結果から、総合的に、脳血管攣縮に関連した予後と関連する臨床的イベントを抑制する薬剤として、臨床的意義のある有効性は示されたものと判断しました。なお、国内第III相試験に先行して実施された本剤の海外第III相試験では、本剤5mg/hとプラセボの比較が行われた結果、脳血管攣縮に関連したMorbidity/Mortalityイベントの発現に、本剤5mg/h群とプラセボ群で有意差が認められなかったことから、現在、用量等を変更した追加の第III相試験を実施中とのことです。
 次に、審査報告書47ページから記載している7.R.2.3、有効性に影響を与える因子についての項を御覧ください。国内第III相試験では、くも膜下出血の重症度分類に用いられるWFNS分類I~IVの患者及びくも膜下出血の程度分類に用いられるFischer分類3の患者が対象とされました。
 審査報告書48ページ、表33に示したとおり、組み入れられた範囲においてWFNS分類及び血腫量によらず本剤の有効性が示唆されたこと、脳血管攣縮が発現した場合のリスクは同様と考えられること等から、最重症例であるWFNS分類Vの患者及びくも膜下出血の血腫量が少ないFischer分類3以外の患者を、一律に本剤の投与対象から除外する必要はないと判断しました。
 とはいえ、くも膜下出血の重症度及び血腫量によって脳血管攣縮や脳血管攣縮に関連したイベント発現リスクは異なると考えられていること、臨床試験における検討対象は限られていることから、添付文書の効能・効果に関連する注意において、くも膜下出血の重症度や血腫量等の患者の状態を考慮して本剤投与の要否を判断する旨、また、WFNS分類Vの患者やFischer分類3以外の患者における有効性及び安全性は確立していない旨を情報提供することが適切と判断しました。
 続いて、安全性について御説明いたします。審査報告書49ページから記載している7.R.3、安全性についての項を御覧ください。国内外の臨床試験での有害事象の発現状況等から、本剤の臨床使用における有用性を損なうほどの問題点は認められていないと判断しました。なお、審査報告書51ページ、表34に示したとおり、胸水、肺水腫及び脳浮腫等の体液貯留関連の有害事象が、プラセボ群と比較して本剤群で多く認められていることを踏まえ、添付文書の重大な副作用及び重要な基本的注意の項において注意喚起することが適切と判断しました。
 また、審査報告書53ページ、表35に示したとおり、国内第III相試験において、出血関連の有害事象が本剤群で多く発現する傾向は認められませんでしたが、本剤は血管拡張作用を有し、脳動脈瘤破裂後かつ観血的処置を実施された後の血管に障害を有する患者では、出血を助長する可能性があると推定されること、臨床試験において本剤群で因果関係が否定されない重篤な頭蓋内出血が認められたこと等から、添付文書では、投与開始時点で頭蓋内出血が継続している患者は禁忌とし、破裂脳動脈瘤に対して適切に止血が達成された患者を投与対象とするとともに、頭蓋内出血を重大な副作用として注意喚起することが適切と判断しました。
 以上のような注意喚起の必要はあるものの、臨床試験で認められた有効性を考慮すると、本剤を既承認薬とは異なる作用機序を有する新たな治療選択肢として臨床現場に提供する意義はあると判断いたしました。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 どうもありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等ございましたらお願いいたします。宮川委員、どうぞ。
○宮川委員 審査報告書32ページこの治験時の除外の基準要件が非常に多いのです。除外基準が非常に多いので、実臨床において実践可能なのかと不安に感じます。これは治験の選択基準で、術前だけでなく術後のWFNS分類がI~IVであるという患者になっているわけですが、この最初の手術からどのぐらい経過して術後という判断になるのか、術前、術後をどのようなところで判断をしているのかが分かりにくかったので、まずそれを教えていただきたいと思います。
 もう一つは、審査報告書51ページ、表34の所で示されたように、体液貯留が非常に多いので、選択基準と除外基準、患者の要件が非常に重要になってくると思います。それから、治療法がどのようにあるべきなのかということも、この後の問題で、有効な治療がどのようにあるのかということのある程度の記載がないと、これは臨床上使えないと思います。その辺についても教えていただきたいと思います。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。1点目の、術後のWFNS分類をどの時点で判断しているかという御質問に関しては、まず第II相試験においては、くも膜下出血発症後56時間以内の患者さんが対象とされており、第III相試験では48時間以内の患者さんが対象とされております。その間に手術施行というタイミングが入っておりまして、その基準から言いますと、少なくとも56時間あるいは48時間以内の術後の時点で判断をされた患者さんたちが、臨床試験の対象とされていたという状況です。
○宮川委員 ありがとうございます。その時間が違うのは何か意味があったのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構より回答いたします。まず、臨床試験で発症後の時間を規定した理由ですが、くも膜下出血を発症した後に医療機関に搬送され、諸々の診断・検査が実施され、更に手術を実施する時間を確保するために必要な時間ということと、一方で、臨床試験において、可能な限り均一な被験者背景での評価をすることを目的として、発症後経過時間に関する規定を設けて実施されております。
 56時間についても、第II相試験あるいは海外で実施された第III相試験もなのですが、発症後56時間以内ということが、試験実施時点における実施可能性を踏まえて設定され、国内第III相試験を計画する際に、本邦での医療環境を考慮した場合、48時間でも実施可能というところで変更がなされ、経過時間によって何か有効性や安全性に懸念があったということではなく、日本ではそのような規定が可能ということで48時間以内と設定されて実施されております。
○宮川委員 ありがとうございます。
○医薬品医療機器総合機構 その発症後の経過時間の目安に関しては、添付文書の用法・用量に関連する注意の所に記載しておりますが、目安として実績を踏まえて記載をしている状況です。
○宮川委員 体液貯留に関しての治療については。
○医薬品医療機器総合機構 体液貯留の発現状況、作用機序も踏まえますと、体液貯留が本剤での主要なリスクとなってくるかと思います。添付文書の9項で特定の背景を有する患者に関する注意の所の9.1.2項、9.1.3項の辺りを御覧いただきますと、もともと体液貯留のリスクの高い患者さんとして、脳浮腫や頭蓋内圧上昇のある患者さん、あるいは肺水腫、胸水のある患者さんについては、注意を要する旨の注意喚起をしております。
 また、重要な基本的注意の8.2項についても、体液量の調節に留意をしていただいて、体液貯留に関する初期症状の発現について十分留意していただくことは注意喚起をしております。
○宮川委員 分かりました。
○森部会長 そのほか、先生方から御意見、御質問はいかがでしょうか。先ほどの臨床試験の除外基準がかなり詳細に決まっている点については、特に専門医の先生方から、添付文書上の臨床成績の記載の欄に情報提供するように御発言はありましたでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。臨床試験ですので、基準としてはいろいろあるわけですが、その中で、例えば有効性あるいは安全性に影響し得る因子の影響についてを審査の中では確認しておりまして、その結果として、例えば添付文書の5.1項の効能・効果に関連する注意ですが、先ほど少し御説明いたしましたWFNS分類や血腫量という臨床的に重要と考えられるものについては、こうした患者さんの状態を踏まえて対象を選択するという旨と、臨床試験における実績の状況を情報提供するという方針としており、ここについて専門協議で専門委員の先生方からも、リーズナブルではないかと御同意いただいているところです。
○森部会長 どうもありがとうございました。そのほか、先生方から御発言、御質問はございますでしょうか。よろしいですか。では、議決に入ってよろしいでしょうか。
 本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて、議題5に移ります。議題5について、機構から概要の御説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題5、資料No.5、医薬品ウィフガート点滴静注400mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。
 資料No.5の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、全79ページの通し番号で5ページの「1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。重症筋無力症(以下、「MG」と略す)は、全身の筋力低下を特徴とする自己免疫疾患です。MGでは、神経筋接合部のシナプス後膜上にあるアセチルコリンレセプター(以下、「AChR」と略す)等に対する自己抗体により、神経から筋へのシグナル伝達が障害されます。
 MGは、障害が出ている筋群によって、眼筋型及び全身型に大別されますが、初発症状として眼筋症状が高頻度で認められ、80%以上の患者が発症2年以内に眼筋型から全身型に進展するとされています。全身の筋力低下については、運動、発語、嚥下及び視力の障害に加えて、呼吸機能障害及び極度の疲労の原因となり、15~20%の患者では気管内挿管及び人工呼吸器管理が必要なMGクリーゼを発現するとされています。
 全身型重症筋無力症(以下、「gMG」と略す)に対する治療選択肢として、本邦では副腎皮質ステロイド、カルシニューリン阻害薬、コリンエステラーゼ阻害薬、ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン及びエクリズマブが承認されております。
 本邦の診療ガイドラインでは、免疫療法が基本とされており、補助的にコリンエステラーゼ阻害薬を使用することが推奨され、これらの治療において十分な有効性が認められず、症状の増悪に対して速やかな改善が必要な場合は、免疫グロブリン大量静注療法(以下、「IVIg」と略す)、血液浄化療法又はステロイドパルス療法が行われております。
 抗AChR抗体陽性のgMG患者では、IVIg又は血液浄化療法による症状の管理が困難な場合に限り、エクリズマブが用いられていますが、髄膜炎菌感染症の発現に注意が必要になります。また、gMGに対する既存治療を行っているにもかかわらず、約10~15%の患者では症状の改善が得られず、難治性のgMG患者では、長期にわたって症状が持続するとされております。
 本薬は、IgGの輸送及び恒常性維持に関与する胎児性Fc受容体(以下、「FcRn」と略す)を標的とするアミノ酸残基を改変したヒトIgG1抗体Fcフラグメントであり、FcRnを介したIgGのリサイクルを阻害し、病因となるIgG自己抗体を含め、IgG濃度を低下させることで、gMGに対して効果を示すことが期待されております。
 今般、国際共同第III相試験の成績等に基づき、有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認申請が行われました。海外での状況について、米国では2020年12月に、欧州では2021年8月に承認申請が行われていますが、2021年9月現在、本剤が承認されている国又は地域はございません。なお、本剤は希少疾病用医薬品に指定されております。本申請の専門委員として、資料No.13にお示ししている9名の委員を指名しております。
 本品目の審査の内容について、臨床試験成績を中心に説明いたします。有効性について、審査報告書の通し番号で40ページの表33を御覧ください。gMG患者を対象とした国際共同第III相試験(以下、「1704試験」と略す)において、日常生活動作に関連する機能障害について、患者の申告に基づき評価する指標であるMG-ADL総スコアを用い、MG-ADLレスポンダーとして、治療サイクルの治験薬最終投与1週間後までに、MG-ADL総スコアが治療サイクルのベースラインから2点以上減少し、かつその減少が連続して4週間以上維持された被験者を定義し、有効性が評価されました。
 その結果、主要評価項目であります抗AChR抗体陽性患者における初回治療サイクルのMG-ADLレスポンダーの割合について、日本人及び外国人を含む全体集団において、本剤群でプラセボ群と比較し、統計学的な有意差が認められました。
 一方、日本人患者における有効性については、審査報告書の通し番号で46ページの表41に示しますように、1704試験の主要評価項目であるMG-ADLレスポンダーの割合において、日本人集団では本剤群と比較してプラセボ群で高い傾向が認められ、日本人集団と外国人集団で一貫性は確認できませんでした。しかしながら、1704試験では、重要な副次評価項目の一つとして、眼、球症状、四肢等の機能を定量的な検査結果に基づき医師が評価する指標であるQMG総スコアを用いて、治療サイクルの治験薬最終投与1週間後までに、QMG総スコアが治療サイクルのベースラインから3点以上減少し、かつその減少が連続して4週間以上維持された被験者をQMGレスポンダーとして評価しておりました。
 この審査報告書の通し番号で46ページの表41に示しますように、重要な副次評価項目であるQMGレスポンダーの割合は、日本人集団と外国人集団のいずれにおいても、プラセボ群と比較して本剤群で高い傾向が認められました。また、審査報告書の通し番号で48ページの表43及び表44に示しますように、1704試験の継続試験であります国際共同長期継続投与試験(以下、「1705試験」と略す)において、日本人集団では外国人集団と同様に、MG-ADL総スコア及びQMG総スコアの変化量の低下が認められ、効果の持続が認められました。さらに、1704試験における総IgG濃度及び各IgGサブタイプ濃度の変化率では、国内外で同様の傾向が認められていること等を含めて総合的に解釈すれば、全体集団の結果を用いて、日本人患者の有効性及び安全性を評価することに大きな問題はないと判断いたしました。
 次に、抗AChR抗体陰性患者に対する本剤の有効性について、審査報告書の通し番号で50ページの表46を御覧ください。1704試験では、抗AChR抗体陰性集団における初回治療サイクルのMG-ADLレスポンダーの割合が、プラセボ群で高く、プラセボ群と本剤群でMG-ADLレスポンダーの割合に大きな違いは認められませんでした。抗AChR抗体陰性集団の被験者数は限られており、その要因は明らかではないものの、表46に示しますように、QMGレスポンダーの割合は、抗AChR抗体陰性集団において、プラセボ群と比較して本剤群で高い傾向が認められていたことから、患者の申告に基づき評価するMG-ADL総スコアでは、プラセボ反応性が高くなった可能性が考えられました。
 また、審査報告書の通し番号で51ページの表47に示しますように、ベースラインから4週目までのMG-ADL総スコア及びQMG総スコアの変化量について、抗AChR抗体陽性集団及び抗AChR抗体陰性集団ともに、プラセボ群と比較して本剤群で変化量が大きい傾向が認められました。さらに、審査報告書の通し番号で52ページの表50及び審査報告書の53ページの表51に示しますように、1705試験において抗AChR抗体陽性集団及び抗AChR抗体陰性集団ともに、いずれのスコアについても低下し、効果の持続が認められ、有効性に大きな違いは認められませんでした。
 以上を踏まえ、抗AChR抗体陰性の患者についても、本剤の有効性は期待できると考えられることから、本剤の投与対象を抗AChR抗体陽性の患者に限定せずに、抗AChR抗体陰性の患者も含めることについて、大きな問題はないと判断いたしました。
 次に、効能・効果について、審査報告書の通し番号で71ページの「1.4 臨床的位置付け及び効能・効果について」の項を御覧ください。1704試験では、コリンエステラーゼ阻害薬、副腎皮質ステロイド又は非ステロイド性免疫抑制剤の標準治療薬を使用している患者に本剤が投与され、有効性及び安全性が示されていること及び本邦の診療ガイドラインを踏まえると、本剤は副腎皮質ステロイド又は非ステロイド性免疫抑制剤を使用し、十分に効果が認められていない患者に対して投与することが適切と判断いたしました。
 最後に安全性についてです。戻って恐縮ですが、審査報告書の通し番号55ページから始まる「7.R.3 安全性について」の項を御覧ください。今般、提出された臨床試験成績、本剤の作用機序等に基づき個別の事象について検討した結果、本剤投与にあたっては、特に感染症について注意する必要があるものの、適切な注意喚起の下であれば管理可能であり、本剤の安全性は許容可能と判断いたしました。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であり、希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、生物由来製品に該当し、原体及び製剤は劇薬に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。機構からの説明は以上となります。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 どうもありがとうございました。では、委員の先生方から、御質問、御意見いかがでしょうか。何か御発言はございませんでしょうか。添付文書には、全体成績のみ表記があるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。添付文書の臨床試験成績の項において、抗AChR抗体陽性集団と陰性集団、そして抗AChR抗体陽性集団と陰性集団を含む全体集団のそれぞれの結果を提示しています。
○森部会長 ありがとうございます。日本人の症例数が少ないので、この情報公開をどうするかという点が大変悩ましいところです。委員の先生方から御意見ございますでしょうか。日本人の症例数がもう少し多いと傾向等の比較がしやすいのですが、かなり少ないので、先生方もお悩みかもしれません。何らかの形で、医療現場の先生方がそれを確認できる機会があったほうがいいかと思いますが、それにはどういった方向性があるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。日本人の成績につきましては、添付文書では限られたスペースであることから、現時点では資材において、日本人、外国人それぞれについて、有効性及び安全性の結果を情報提供するよう申請者に指導しているところでございます。
○森部会長 ありがとうございます。先生方、よろしかったでしょうか。では、特に御発言ないようでございますので、議決に入らせていただきます。なお、武田委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。
 本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようでございますので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 では、議題6は飛ばして、議題7に移らせていただきます。議題7につきまして、事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 事務局でございます。議題7のレイボー錠の再審査期間延長の可否について、事務局より説明させていただきます。資料7を御覧ください。品目名はレイボー錠50mg及び同100mg錠であります。開発対象の効果・効能としては片頭痛であります。申請者は日本イーライリリー株式会社です。本品目は、前回の部会において、成人の適応について承認を可とされた品目でございます。初回の承認日は令和4年1月20日を予定しております。
 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律の第14条の4第3項において、新医薬品の再審査を適正に行うため特に必要があると認められるときは、薬事・食品衛生審議会の意見を聞いて、再審査期間をその製造販売承認があった日から10年を超えない範囲のうちにおいて延長することができる旨の規定がございます。この規定に基づき、小児の用量設定等のための臨床試験を計画する場合で、必要があると認められる場合には、個別に部会に諮った上で再審査期間を延長しております。
 今回、申請者より、再審査期間を初回承認より2年間延長して、令和14年1月19日までの10年間とする要望が提出されております。小児の片頭痛については、国内で承認を取得している薬剤はなく、治療のほとんどが成人患者でのエビデンスに基づいており、適切なエビデンスを創出する開発が望まれております。
 現時点で、小児に対する用法・用量は設定されておらず、小児の片頭痛に対する本剤の有効性、安全性等を検討する臨床試験の治験計画届が提出されていることから、再審査期間を10年間に延長することは適切と判断しております。以上、御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございます。では、委員の先生方から御質問等ございましたら、お願いいたします。よろしいでしょうか。
 では、議決に入らせていただきます。本議題につきまして、再審査期間の延長を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようでございます。延長を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続きまして、議題8に移ります。議題8につきまして、事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 議題8、トレプロスチニルを希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より説明させていただきます。資料8を御覧ください。
 報告書1ページの中段を御覧ください。申請者は持田製薬株式会社、予定される効果・効能は間質性肺疾患(気腫合併肺線維症を含む)に伴う肺高血圧症です。
 まず、1ページの対象者数についてですが、肺高血圧症(以下、PHという)は、肺動脈圧の上昇を認める病態の総称であり、治療ガイドラインではPHは病因・病態から五つの分類がされております。そのうち本申請の対象疾患は、第3群とされる「肺疾患・低酸素血症に伴う肺高血圧症」のうち、間質性肺疾患に伴う肺高血圧症(以下、ILD-PHという)及び気腫合併肺線維症に伴う肺高血圧症(以下、CPFE-PHという)が該当します。このCPFE-PHにつきましては、第6回の肺高血圧症ワールドシンポジウムにおいて、気腫の程度が大きくなければ、ILD-PHを対象とした臨床試験に含めることが許容されると提言されていること等から、本申請の対象疾患に含めることとされました。本邦における本申請の対象患者数は、約3,000~1万例と推定されていることから、希少疾病用医薬品の指定基準を満たしているものと考えております。
 続いて、医療上の必要性についてですが、PHの合併はILD及びCPFEにおける予後不良因子であり、現時点ではILD-PH及びCPFE-PHに対する確立された治療法は存在していないという問題があります。本剤は、血中半減期の短いプロスタグランジンIを化学的に修飾して安定化した化合物であり、肺において血管拡張作用及び血小板凝集抑制作用を示して、ILD-PH及びCPFE-PHの病態を改善することが期待されます。以上より、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。
 最後に開発の可能性についてですが、海外で実施されたプラセボ対照無作為化二重盲検試験において、ILD(CPFEを含む)に伴うPH患者を対象に、有効性及び安全性が検討され、その臨床試験成績に基づき、2021年に米国においてILDに伴うPHの効能・効果で承認されております。また現在、本邦においても国内第II/III相試験が実施中であることから、本剤の開発の可能性は高いと考えております。
 したがいまして、本品目を希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。以上、御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 どうもありがとうございました。では、先生方から御質問、御発言いかがでしょうか。大変臨床上のニーズが高い病気だと思います。よろしいでしょうか。
 では、議決に入らせていただきます。本議題につきまして指定を可としてよろしいでしょうか。特に御異議はございませんようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続きまして、報告事項に移らせていただきます。報告事項の議題1、3につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 報告事項議題1、資料9、レルミナ錠40mgの製造販売承認事項一部変更承認について御報告いたします。資料9を御覧ください。本剤は、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアンタゴニストであるレルゴリクスを有効成分とする錠剤であり、本邦では2019年1月に子宮筋腫に基づく諸症状の改善の効能・効果で承認されております。
 今般、あすか製薬株式会社から、国内臨床試験成績に基づき、本剤の子宮内膜症に基づく疼痛の改善の効能・効果を追加する一部変更の申請がなされました。機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断されております。
 続きまして、議題3について御報告いたします。議題3は、資料11-1~11-9まででございます。医療用医薬品の再審査結果について御報告いたします。
 資料順に該当する品目がアミティーザカプセル、ボトックスビスタ注用、アルチバ静注用、ヴォリブリス錠、ルティナス膣錠、ウトロゲスタン膣用カプセル、ルテウム膣用坐剤、ワンクリノン膣用ゲル、ミカトリオ配合錠でございます。これらの品目につきまして、製造販売後調査等に基づいて再審査申請が行われ、機構における審査の結果、いずれにおいても、効能・効果、用法・用量の承認事項について変更の必要のないカテゴリー1と判定されております。以上でございます。
○森部会長 どうもありがとうございました。では、委員の先生方から御質問、御発言等ございましたらお願いします。特によろしいでしょうか。それでは、報告事項の議題1、3につきましては、御確認いただいたものとさせていただきます。そのほか、事務局から報告等ございますでしょうか。
○事務局 次回の部会については、追って御連絡をさせていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○森部会長 それでは、本日は少し予定時間を超過してしまい申し訳ございません。御審議どうもありがとうございました。終了させていただきます。
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

医薬品審査管理課 課長補佐 柳沼(内線2746)