第9回 日中韓少子高齢化セミナーについて

2021年12月9日(木)に、第9回日中韓少子高齢化セミナーをオンライン形式で開催しました。

1 経緯

 高齢化対策に関する経験交流を目的として2010年から「日中韓高齢化セミナー」を開催してきました。2018年の第8回セミナーにおいて、内閣府参加のもと少子化対策も含めて交流を続けることに合意し、「日中韓少子高齢化セミナー」として第9回を実施することとなりました。

2 これまでの実績

 日中韓3か国が持ち回りで開催し、第8回以降は少子高齢化対策に係るセミナーを行っています。テーマは開催毎に3か国間で協議して決定しています。

第8回 2018年7月 韓国(済州)開催「人口構造の変化と少子化対策」「活気に満ちた老後のための中高齢者再就職支援政策」

3 第9回日中韓少子高齢化セミナーの概要

(1)プログラム
 ・開会挨拶
 ・日本、中国、韓国代表による基調講演
 ・セッション1「少子化の状況と対応」
 ・セッション2「介護の担い手の確保」
 ・第10回セミナー開催に関する議論

(2)出席者
 日本側は、厚生労働省から土生 栄二老健局長ほか、内閣府から相川 哲也子ども・子育て本部審議官ほかが参加しました。中国側は、斉 新傑国家衛生健康委員会老齢健康司二級巡視員ほか、韓国側は、イ・ミンウォン保健福祉部人口児童政策官ほかが参加しました。

(3)概要
■基調講演
 日本の土生 栄二 厚生労働省老健局長による開会挨拶の後、3か国の代表による基調講演が行われました。
 日本の相川 哲也 内閣府子ども・子育て本部審議官は、日本の少子高齢化の状況や少子化社会対策大綱及び高齢社会対策大綱について紹介するとともに、こどもをめぐる様々な課題に対して切れ目のない対応をしていくため、こども政策の在り方に関する議論が進んでいることを説明しました。
 中国の斉 新傑 国家衛生健康委員会老齢健康司二級巡視員からは、中国の高齢化が世界平均と比べても急速に進行していること、高齢化への積極的な対応が国家戦略となっていること、その中で高齢者の健康管理サービスや医療提供の充実、福利厚生やシルバー産業の改善が進んでいることなどが発表されました。
 韓国のイ・ミンウォン 保健福祉部人口児童政策官からは、少子化対策としての第4次低出産・高齢社会基本計画の紹介のほか、高齢化対策としての介護人材の専門性強化や介護施設の公共性向上に向けた取組などについて発表がありました。

■セッション1「少子化の状況と対応」
 韓国は、韓国国際政策大学院大学校のチェ・スルキ教授から、出生数が急激に減少している状況について説明があった後、その先行変数である結婚に着目し、結婚意欲の低さへの懸念とともに、意欲のある方への政策的な支援の必要性が述べられました。また、コロナ禍の長期化が少子化を加速させる可能性があることへの懸念を示しつつ、離婚数の減少や、テレワークの普及などプラスの面もあることを意識しながら政策を進める必要があると指摘しました。
 日本は、国立社会保障・人口問題研究所人口動向研究部の守泉 理恵 第1室長から、結婚・出産に関する「希望と現実のギャップ」が少子化の主因であり、希望者への支援が少子化対策につながるという発表がありました。また、日本の少子化対策の課題として、次世代育成・支援施策の全体像の整理や各施策の量的拡大にとどまらない質の向上の必要性、エリート教育競争や教育費負担など子どもの教育に関わる施策について一層議論する必要があることについて指摘しました。
 中国は、中国人口と発展研究センターの賀丹主任から、中国における出生率の変化の特徴として人口抑制政策の影響や地域差があることが説明され、あわせて、「少なく生んで大事に育てる」という選択肢が増えていることや女性の地位向上などが関係要因として述べられました。支援策としては、経済的な支援や育児サービスの提供を充実させるとともに、政策や文化的な側面からの環境づくりを行っていくことが説明されました。

■セッション2「介護の担い手の確保」
 韓国は、韓国健康保険研究院地域社会統合介護研究センターのユ・エジュン センター長から、地域社会中心の統合サービスを提供するためコミュニティケアを推進していること、介護従事者の専門性向上に向けた取組の現状や介護人材確保・定着のために処遇改善を行う必要性、統合在宅サービスの仕組みづくりを行っていることなどが発表されました。
 日本は、慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科の堀田聰子教授から、処遇改善や定着促進などの介護人材確保のための取組と並行して、地域におけるインフォーマルケアへの支援など介護職の需要の伸びを減らすための取組の必要性などについて発表されました。また、ヘルスケアやソーシャルケアにおける支援観のパラダイムシフトを前提として対人支援職に共通するコンピテンシーをとらえ、各資格に共通する基礎課程を検討する必要性があることが述べられました。
 中国は、北京大学護理学院の尚少梅院長から、健康な高齢化の考え方のもとに介護サービスを位置付けていること、様々な高齢者ケアのニーズに対応できるよう多層的で他分野と連続的な人材育成システムを整備していることなどが発表されました。

■第10回セミナー
 次回の第10回セミナーは、中国にて来年夏頃に開催する方針とし、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえながら調整することとなりました(テーマ等の詳細についても今後調整予定です。)。

(4)セミナーの様子