2021年11月5日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和3年11月5日(金)14:00~

出席者

出席委員(17名)五十音順
(注)◎部会長 ○部会長代理
 
欠席委員(4名)五十音順

行政機関出席者
  •  鎌田光明(医薬・生活衛生局長)
  •    山本史(大臣官房審議官)
  •  吉田易範(医薬品審査管理課長)
  •    中井清人(医薬安全対策課長)
  •  新井洋由(独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事・審査センター長事務取扱)
  •  池田三恵(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監) 他

議事

○医薬品審査管理課長 定刻を過ぎましたので、ただいまから薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会のWeb会議を開催させていただきます。本日はお忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。この度の医薬品部会につきましても、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、Webでの審議とさせていただきます。
 本日のWeb会議における委員の出席状況ですが、大森委員、佐藤雄一郎委員、代田委員、武田委員より御欠席との御連絡を頂いております。また、現在のところ佐藤直樹委員、川上委員におかれましては、まだ会議に御参加されておりませんが、後ほど御参加いただくものと推測しております。したがいまして、本日は現在のところ、当部会委員数21名のうち15名の委員の方にこの部会に御出席いただいておりますので、定足数に達していますことを御報告いたします。
 続きまして、事務局に人事異動がありましたので、御報告をいたします。医薬品医療機器総合機構審査マネジメント部長の安川孝志でございます。同じく、医薬品医療機器総合機構執行役員(再生医療製品・ワクチン等審査等部問担当)の伯野春彦でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、部会を開始する前に、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について報告をさせていただきます。薬事分科会規程第11条におきましては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当概企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定されております。今回、全ての委員の皆様から、薬事分科会規程第11条に適合している旨を申告いただいておりますので、御報告をさせていただきます。委員の皆様におかれましては、会議開催の都度書面を御提出いただいておりまして、御負担をお掛けしておりますけれども、引き続き御理解、御協力を賜りますよう何とぞよろしくお願い申し上げます。
 また、本日のWeb会議に際しましても、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、説明者におきましてはマスクを着用したまま御説明させていただきますので、御了承いただければと思います。それでは、森部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。
○森部会長 それでは、本日の審議に入ります。まず、事務局から資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告を行ってください。
○事務局 それでは、本日のWeb会議に係る資料の確認をいたします。本日は、あらかじめお送りしました資料のうち、資料No.1~資料No.7-6と製剤写真を用いますので、お手元に御用意ください。このほか、資料No.8として「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料No.9として「専門委員リスト」、資料No.10として「競合品目・競合企業リスト」を事前に電子メールにてお送りしております。なお、システムの動作不良などがありましたら、会議の途中でも結構ですので、事務局までお申し付けください。
 続いて、本日のWeb会議における審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告します。資料No.10を御覧ください。
 1ページ、「メプセヴィ点滴静注液」です。本品目は、ムコ多糖症VII型を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 2ページ、「レイボー錠」です。本品目は、片頭痛を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 3ページ、「ジャディアンス錠」です。本品目は、慢性心不全を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 4ページ、「エフィエント錠」です。本品目は、虚血性脳血管障害後の再発抑制を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 5ページ、「Pegvaliase」です。本品目は、フェニルケトン尿症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。
○森部会長 今の説明について、特段の御意見はございますでしょうか。それでは、本Web会議の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の了解を頂いたものとします。
 次に、委員からの申出状況について報告してください。
○事務局 薬事分科会審議参加規程第11条に基づく各委員からの申出状況及び第5条に基づく取扱いについては、次のとおりです。
 議題1、メプセヴィ、退室委員、議決に参加しない委員ともになしです。議題2、レイボー、退室委員、議決に参加しない委員ともになしです。議題3、ジャディアンス、退室委員なし、議決に参加しない委員は佐藤直樹委員です。議題4、エフィエント、退室委員は佐藤直樹委員、議決に参加しない委員は川上委員、宮川委員です。議題5、Pegvaliase、退室委員なし、議決に参加しない委員は川上委員、佐藤直樹委員、宮川委員です。以上です。
○森部会長 今の事務局からの説明について、特段の御意見等ございますでしょうか。よろしければ、皆様の御了解を頂いたものといたします。本日は、審議事項5議題、報告事項2題となっております。
 それでは、審議事項の議題に移ります。議題1について、機構から概要の御説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料No.1、医薬品メプセヴィ点滴静注液10mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。本剤は、ベストロニダーゼアルファ(遺伝子組換え)を有効成分とするムコ多糖症VII型に対する静脈内投与用製剤です。ムコ多糖症VII型は、生体の組織、特に結合組織の構成成分であるムコ多糖の一種であるグリコサミノグリカンの代謝経路を担うリソソーム酵素であるβ-グルクロニダーゼの遺伝的欠損又は活性低下に起因し、グリコサミノグリカンであるデルマタン硫酸等が細胞内に蓄積することで、関節拘縮、肺障害、認知障害、特異顔貌等の全身症状が発現します。
 現在、本邦におけるムコ多糖症VII型に対する治療薬として承認されたものはありません。本邦におけるムコ多糖症VII型の患者数については、現時点で5例確認されており、本薬は希少疾病用医薬品に指定されています。さらに、本剤は、第35回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、医療上の必要性が高いと判断されています。2021年8月現在、本剤は35の国又は地域で承認されています。本品目の専門協議では、資料No.9に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。
 以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性について、審査報告書25ページの表26を御覧ください。海外において、ムコ多糖症VII型患者を対象とした第III相試験が実施されました。その結果、ベースラインから本剤投与24週時までの尿中デルマタン硫酸濃度の変化率について、有意な減少が認められました。続いて、審査報告書26ページの表28を御覧ください。ムコ多糖症VII型は、患者に応じて様々な臨床症状を呈することから、複数の臨床症状に関する項目が評価されました。ここでは、六つの臨床症状に関する評価指標について、臨床的な変化の程度を最少重要差として規定の上で検討されましたが、本剤投与により、6分間歩行距離等の運動機能に関する評価項目等で改善している被験者が多い傾向が示されました。
 国内試験の成績について、審査報告書22ページの表22を御覧ください。尿中デルマタン硫酸濃度の変化率について、本剤の投与により減少が認められ、また、6分間歩行距離での改善傾向も含め、臨床症状に関する複数の評価項目で海外試験の成績と同様の傾向が認められました。
 安全性について、審査報告書34ページの表38を御覧ください。各試験で認められた主な有害事象の発現状況を示しています。また、本剤の臨床試験で認められた主な有害事象は過敏症及びIAR等であり、これらの事象に関する適切な注意喚起がなされることを前提とすれば、本剤の安全性は許容可能と判断しました。なお、本剤の投与された症例数が極めて限られていることから、製造販売後は全投与症例を対象に製造販売後調査を実施して、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じる旨の承認条件を付すことが適当と判断しております。
 以上のとおり、機構での審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断しました。本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。
○森部会長 どうもありがとうございました。では、委員の先生方から、御質問等ございましたらお願いします。いかがでしょうか。データなど、特に御質問ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、議決に入ります。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。
 特に御異議がございませんようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて、議題2に移ります。議題2について、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料No.2、医薬品レイボー錠50mg及び同錠100mgにつきまして、医薬品医療機器総合機構より説明させていただきます。審査報告書のファイルをお開きください。
 審査報告書の一番下、全95ページの通し番号で4ページの1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。本剤は、ラスミジタンコハク酸塩を有効成分とし、三叉神経系神経細胞に発現するセロトニン1F受容体に選択的に結合することにより、三叉神経からの神経伝達物質(CGRP)の放出を抑制することで、片頭痛の症状を軽減する新規作用機序の片頭痛治療薬です。
 今般、国内外の臨床試験成績等を基に、片頭痛を申請効能・効果として製造販売承認申請されました。なお、本剤は、2021年7月現在、米国を含む3か国で承認されています。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。審査報告書の通し番号45ページを御覧ください。本剤の開発は、本剤の有効性が検証された海外第III相試験の成績を日本人に外挿するブリッジング戦略に基づくものであり、本剤50mg群、100mg群及び200mg群が設定された海外第III相試験(LAHK試験)をブリッジング対象試験として、国内第II相試験がブリッジング試験として実施されました。
 審査報告書の通し番号48ページ、表36を御覧ください。国内第II相試験では、ブリッジング対象試験と同様に、主要評価項目は治験薬投与2時間後に頭痛消失が認められた被験者の割合とされ、本薬200mg群ではプラセボ群と比較して有意に高く、プラセボ群を含む4用量群間で線形の用量反応性が認められ、審査報告書の53ページ、表43に示しましたブリッジング対象試験である海外第III相試験マル2(LAHK試験)との用量反応関係の類似性が示されました。また、これらの結果に加え、ブリッジング成立要件として、国内第II相試験の本薬100mg群においては、重要な副次評価項目である治験薬投与2時間後に頭痛改善が認められた被験者の割合について、プラセボと比較して有意差を示すことが事前に規定され、期待した結果が得られました。したがいまして、国内第II相試験から、審査報告書の通し番号60ページの7.R.2項の臨床データパッケージの適切性の項に示した事前に規定したブリッジング成立要件を満たす結果が得られ、審査報告書の通し番号49ページ、7.3.1項に示しました海外第III相試験マル1(LAHJ試験)及び海外第III相試験マル2(LAHK試験)の有効性の結果を日本人に外挿することが可能と判断いたしました。
 加えまして、審査報告書の通し番号63ページ、7.R.3.2項に示すとおり、国内外の臨床試験の結果、表54のとおり頭痛の随伴症状(MBS)の消失においても、本剤の有効性を支持する結果が得られており、表53のとおり頭痛の消失について間接的な比較ではあるものの、既承認のトリプタン系薬剤で得られた有効性と大きな違いはないこと、早期の効果発現と一定の効果持続が期待できる試験成績が得られていることも踏まえ、日本人片頭痛患者の急性期治療における本剤の効果には臨床的意義があると判断し、専門協議においても妥当の御意見を頂きました。
 続いて、安全性について御説明いたします。審査報告書の通し番号67ページから記載している7.R.4、安全性についての項を御覧ください。国内外の臨床試験での有害事象の発現状況及び本剤の海外製造販売後に得られた安全性情報より、本剤の臨床使用における有用性を損なうほどの問題点は認められていないと判断いたしました。なお、浮動性めまい、傾眠等の神経系障害関連の事象がプラセボ群と比較して本剤群で多く認められ、自動車運転に及ぼす影響を検討した臨床試験の結果から、本薬による運転機能及び能力の低下が認められていることを踏まえ、本剤投与後は運転や機械操作等を行わないように添付文書の「重要な基本的注意」の項において注意喚起すること、自動車運転等の危険を伴う機械操作に従事できない期間について、臨床試験の結果等の参考となる情報を臨床現場に提供することが適切と判断いたしました。さらに、めまい、傾眠等の中枢神経症状の発現時期や持続期間については、製造販売後調査で情報収集する必要があると判断いたしました。
 用法・用量について御説明いたします。審査報告書81ページから記載している7.R.6、用法・用量についての項を御覧ください。国内外の臨床試験の結果から、本薬100mg以上の用量で、より確実な有効性が期待できると考えられる一方、神経系障害関連の有害事象等の発現が用量依存的に増加することを踏まえて、100mgを通常用量とし、本薬100mgで有効性が十分得られない患者や、100mgでは副作用により投与継続が困難な場合等の選択肢として、200mgや50mgの投与を考慮することが適切と判断いたしました。この用量選択の考え方は、用法・用量に関連する注意に記載しております。
 また、審査報告書84ページの表66に記載のとおり、本剤投与後に頭痛消失が認められなかった片頭痛発作に対する追加投与については、臨床試験の成績から有効性は示されておらず、推奨できないと判断しましたが、本剤投与で頭痛が一旦消失した後に再発した片頭痛発作に対しては、本剤投与後24時間以内の総投与量が200mgを超えない範囲であれば、再投与は可能と判断いたしました。
 なお、このような再発治療時の投与方法を誤解なく理解してもらうために、医療従事者向け及び患者向け資材を用いて、想定される複数の投与パターンの図解を含めて情報提供することが適切と判断いたしました。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤は、いずれも劇薬に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等がありましたらお願いいたします。堀委員、どうぞ。
○堀委員 堀です。私からは添付文書について3点質問があります。よろしくお願いいたします。まず、添付文書の6番、用法及び用量を御覧ください。これを読みますと、通常、鎮痛剤又は片頭痛の薬とかにあるような、例えば1日何回投与するとか、食前食後に飲むとか、そのような指示が全く書かれておりませんでした。ということは、今お話がありましたように、あくまでも患者はその飲み方に関しては、診察を受けた先生からの判断に従って飲むというように理解してよろしいのでしょうか。まず、1点目の御質問をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。用法・用量に関しては、片頭痛発作時に使用するという用法ですので、食事の規定は特に設けておりません。1日の服用回数に規定はありませんが、24時間以内の総投与量が200mgを超えない範囲で投与する必要があり、今の記載となっております。
○堀委員 分かりました。ありがとうございます。それでは、関連質問なのですけれども、同じく添付文書の7を御覧ください。7.3に「本剤投与により全く効果が認められない場合は、その発作に対して追加投与しないこと」と書かれています。その追加投与しないことというのが、今の御説明ですと、1日200mgを超えるのであれば追加投与してはいけないということなのか、それとも、その診察のときに診断された錠数を超えてはいけないということなのか、そこが不明確だったので教えていただけますか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問は7.3項に記載の内容でしょうか。
○堀委員 そうですね。追加投与ということは、どういうことなのか教えていただきたいのです。
○医薬品医療機器総合機構 追加投与というのは、想定しているのは、この7.3項の記載に関しては、効果が認められない場合にはほかの疾患等も疑われるので、その場合は追加投与しないこととしております。今回、追加投与が考慮されるシチュエーションに、頭痛の発作が起こって本剤を投与したときに消失するパターンと、それが全く軽減しないで改善が認められないパターンがあり、消失なり改善が得られた場合は、その後また頭痛が起きたときの追加投与、再投与というものは認める一方で、全く効果が得られなかった発作に対して、更に上乗せして飲めば治まるかもしれないと思って追加投与するという使い方については、今回の試験からは有効性が示されなかったので、後者の使い方はしないでいただきたいという趣旨でこの注意を記載しております。
○堀委員 御回答ありがとうございます。どうして私がここの質問をさせていただいたかというと、一般の市販薬、鎮痛薬ですと、用法・用量の所に、例えば1日に飲む上限を超えない限りにおいては、それを服用したときに、まだ痛みが続いているときに関しては、例えば錠数を1錠から2錠に増やしたり、あとは回数、例えば投与間の6時間を空けてくださいというようなことを満たしていれば、1日1回から2回、2回から3回に変えてもいいというような、要するに患者の、OTC医薬品でしたら消費者の判断で薬を飲むことに、鎮痛薬については慣れてしまっている患者さんが非常に多いと思うのです。そこの部分に関して、この追加投与ということが、今おっしゃったように、具体的に明示していただかないと、どういうことが追加投与なのだということが、一般の患者は分かりにくいと思ったのです。ですので、それに対して、先ほどの御説明でも資材を作っていただけるということだったのですけれども、そこに関してはどのように記載はされるのでしょうか。教えてください。
○森部会長 機構の方、どうぞ。
○医薬品医療機器総合機構 少々お待ちください。
○堀委員 患者にとってこの追加投与というのは、皆さん有識者の方たちはお分かりだと思いますけれども、非常に分かりにくいところがあるので、できましたら具体的に分かりやすく書いていただけたら有り難いと思い、質問をいたしました。
○森部会長 堀委員の御指摘のように、全く従来の頭痛薬とは違った使い方になりますので、そこはちゃんと分かるように資材を作っていく必要があります。機構の方、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構ですが、今、資材の案を手元に有しておりまして、これをWebで共有して視覚的に御覧いただくか、口頭で説明するか、お時間を頂ければ共有することも可能だと思いますが、映したほうがよろしいでしょうか。
○森部会長 では、供覧をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、少々お時間いただければと思います。
○森部会長 はい。
○堀委員 もう一つなのですけれども、同じく添付文書の15、その他の注意の所を御覧ください。その他の注意の15.1の臨床使用に基づく情報の所に、「娯楽目的の多剤使用経験のある」というように書いてありました。この「娯楽目的」というのは、私たち一般患者だと「えっ、どういうこと」というような、いろいろな推測はできるのですけれども、これはどういうことなのか、具体的に教えていただけたらと思います。お願いします。
○森部会長 まずは最初の御質問ですね。
○医薬品医療機器総合機構 共有できておりますでしょうか。
○堀委員 はい、見えております。
○医薬品医療機器総合機構 これは患者向け資材になるのですけれども、今の追加投与に関しては、この痛みが治まらなかった場合に追加で服用したとき、「効果は認められませんでした」という記載をすることで、追加投与しない旨の情報提供はしていると考えております。
○堀委員 ありがとうございます。今、私、そこの部分だけ拝見したのですけれども、「効果は認められませんでした」と、だからどうなのということがちょっと分からないかと思ったのです。つまり、痛みが治まらなかった場合、追加で服用した場合、効果は認められません、だから追加服用はやめましょうなのですか。それとも、追加投与は認められないので、この薬の服用をやめるのかは、それに関しては全部患者に委ねるというように判断していいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 そちらに関しては、添付文書に記載のとおりで、再検査の上、頭痛の原因を改めて検討していただくということが適切と考えております。
○堀委員 ということは、「認められませんでした」という状況のみで、これだけだと、追加投与していいのか、いけないのかということが明確ではないように私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より追加で御説明させていただきます。二つのパターンに分けて考えていただければと思います。
 一つ目は、その頭痛が片頭痛発作だった場合についてなのですが、1回本剤を内服して効果が認められなかった場合に追加投与しても有効性は認められないという結果が得られているので、そのようなときには追加投与はされないという形で考えていただければと思います。
 一方、その頭痛の原因が片頭痛発作以外のものだった場合ということも想定しておりまして、7.3の記載につきましては、二つ目の方、片頭痛発作以外の原因で頭痛が出ている場合には、本剤を投与しても効果がなく、かつ、ほかの頭痛の原因についてきちんと調べていただくということが必要と考えておりまして、現在のような記載で注意喚起をしております。以上となります。
○堀委員 ありがとうございます。今の御説明だと、非常に分かりやすいのですけれども、今のこの御説明が、私はこの添付文書からは感じられないので、できましたら書いていただけたらと思います。
 あと、先ほどおっしゃっていました片頭痛以外の症状によって痛みがあった場合というのは、患者はそれが片頭痛以外の痛みなのかということは分かるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明を申し上げます。その点につきましては、一般的には片頭痛発作の特徴というものを患者さんは御自身で理解をされている状況ですので、多くの場合には、患者さん自身で片頭痛発作かそうでないかというところは、ある程度判断できるものと考えております。ただ、一方で片頭痛発作に似たような頭痛が出て、本剤を投与し、効果がなかったときに、やはりその情報も踏まえて、片頭痛以外の原因の頭痛ではないかというところに目を向けていただいて、必要に応じて病院等を受診していただくという判断を、患者さん自身がしていただくということが重要と考えております。
○堀委員 分かりました。非常に分かりやすい御説明をありがとうございました。それも記載していただけたらと。
○森部会長 今、7ページの資材を拝見しています。ここでは、二つ枠線で囲んだブロックがあり、当日に痛みが再発したときの服用の仕方と、翌日にわたり24時間以内に痛みが再発したときの服用の仕方とが図示されています。これを三つにして、服用したけれども痛みが治まらなかった場合というのを作ったらどうでしょうか。その場合は、再服用しないということと、医療機関にお問い合わせする、という注意喚起をしないと不十分だと思いますが、いかがでしょうか。
○堀委員 森部会長、ありがとうございます。
○森部会長 機構の方もそういう趣旨でお話されていましたので、資材にもそのように反映されるようにしていただけないでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 頂いたコメントを踏まえて対応させていただきます。
○森部会長 色も少し変えて、分かりやすくしていただくと、なおよろしいかと思います。
 では、堀委員の三つ目の御質問について、機構の方から御回答はいかがでしょうか。先ほどの15.1に関してはいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 審査報告書の通し番号39ページを御覧ください。この下段の6.2.5.3、薬物嗜好性の評価という臨床薬理試験の結果に言及した添付文書の記載になっておりまして、審査報告書では、娯楽目的の多剤使用者と記載されている、試験の対象の定義に関する記載であり、審査報告書では脚注に、実際にどういった選択基準で定義したかという、細かい条件を入れておりますが、こちらの説明が添付文書でも補足可能か検討させていただきたいと思います。
○堀委員 ありがとうございます。娯楽目的というのは、私はどちらかというと、飲んだことによる副作用で睡眠導入剤のような、ボヤッとした感じを受けてしまうとか、いろいろと想像してしまうのですけれども、副作用に関してそういう明確なことが書かれていなかったので、なぜ娯楽目的というようにあえて書かれたのかというのが少し疑問に思いましたので質問させていただきました。もし可能でしたら、ここの娯楽目的に関して、なぜ、どういうものなのかということも記入していただけると有り難いと思います。以上です。長々とありがとうございました。
○森部会長 それでは、大谷委員から御質問を頂いておりますので、お願いいたします。
○大谷委員 こちらの薬は片頭痛に使われるということで、従来のトリプタンとの兼ね合いというのが少し問題になるのかと思うのですが、余りこの添付文書とかそういった所にトリプタンとの兼ね合いのお話が載ってきていないような気がするのです。一つは、トリプタンとの交叉性、これは臨床試験の方では、ないらしいというようなことがあって、これが一つ大事な情報なのではないかということ。それからもう一つは、逆にトリプタンとの併用で薬効を見た試験はないので、逆に、その併用したときの上乗せ効果に関しては全く情報がない。それで、併用すると、もしかしたらセロトニン症候群とかのリスクが高まるかもしれないという危惧もなくはないわけですね。そういった辺りの情報を、やはり添付文書等で何らかの形で御提供いただいたほうが、多くの患者さんがトリプタンを使用していて効かないから、こちらにスイッチしてくるということは十分考えられますので、この辺りを少し情報提供していただけないかと思いますが、いかがなものなのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。トリプタン系薬剤との併用に関しては、試験の中で何例か認められておりまして、併用といいますか、同時期に使用した患者さんでの安全性としては、特に問題ないと判断しております。ですので、本薬とトリプタン系薬剤の使用に当たって、併用や投与間隔等の制限を添付文書で規定することは不要と判断しております。そういった同時期に服用した際の安全性等の情報については、部分集団における安全性情報となるので、資材等で情報提供できないか検討させていただければと思います。
○大谷委員 その際の上乗せ効果はあったのですか。
○医薬品医療機器総合機構 トリプタンを含めた上乗せというような観点では確認していない状況で、今回の試験は有効性を見るフェーズでは、あくまでトリプタンがない状況で本薬を投与して、プラセボより有効性が見られたというようなことのみで、併用したときの有効性については確認していない状況です。
○医薬品医療機器総合機構 補足させていただきます。有効性については本薬単独での評価を優先して、24時間以内の薬効評価の中でトリプタンは使用しないというのが基本でしたけれども、試験の対象にはトリプタンを前治療として使用していても効果不十分の被験者が含まれておりまして、こういった前治療、効果不十分例を含めても本薬の有効性が確認できています。ただし、これは部分集団解析結果になりますので、添付文書上でこういったトリプタン効果不十分例における有効性というのは情報提供できるスペースが基本的にはありませんので、違い等を含めた情報提供のさせ方を検討させていただけないかと考えています。
 安全性につきましては、先ほど申しましたように、長期間の安全性評価をメインとした試験の中で併用例が何例か認められ、その安全性を確認していますが、添付文書上で記載するのは併用したときに安全性上の懸念がある場合ですので、今回、特に注意喚起するような懸念が認められなかったことから、併用時の有害事象発現状況等を含めて、こちらも資材で情報提供させていただけないかと考えております。以上です。
○大谷委員 分かりました。おっしゃっている併用というのは、正に同時、同じ発作に対して両剤をかけて併用しているという、そういう理解でよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 少々お待ちください。
○大谷委員 報告書を読んだときは、トリプタンの使用経験のある患者さんに対して臨床試験に入る前まではトリプタンを使っていたけれども、そこからこれに切り替えたときにも、薬効が低下するような、そういう結果は認められなかったというようなことは読めたのですけれども、例えば2錠をまとめて本剤とトリプタンを飲むというようなことが臨床試験において認められていたのでしょうか、この臨床試験では。
○医薬品医療機器総合機構 そういった同時服用の症例は認められなかったと認識しております。
○大谷委員 そうだとすると、同時服用に関しては何も情報がないので、臨床試験ではそういう同時服用の効果や安全性については検討されていないと、明確に書いておいたほうがいいのではないでしょうか。
○森部会長 大谷委員の御指摘については大変支持します。全く同感です。機構の方、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 少々お待ちください。
○大谷委員 このままいくと、この添付文書だと、同時に2剤で投与して、患者さんが同時に飲みますね。
○宮川委員 日本医師会の宮川です。今のことに関してですが、79/95ページの記載というのはどのように関連付けられるのでしょうか。「既存の急性期治療薬との併用について」という所ですが、機構は、今の所、トリプタン系の薬剤と関連が少し書いてあるような気がするのですけれども、それについてお知らせください。今の先生の御懸念があるところだと思いますので。
○森部会長 では、今の宮川委員の御発言を踏まえた大谷委員への御発言についての御回答をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。報告書の該当記載の紹介が遅れて申し訳ございません。今、御指摘いただいた79ページの所で、有効性を検証する盲検期では、24時間以内のトリプタンの併用は行っておりませんでしたが、非盲検期において併用を許容した試験の中で、完全に同時に服用された症例というところまで特定には至っておりませんが、本剤投与の24時間前、ないし24時間以内であったり、投与から2時間未満の間にトリプタンは使われたケースと、ある程度の時間ごとで、恐らく同じ発作に対して、本剤とトリプタンが同時あるいは数時間のずれで使用された実績というのは、試験でも数回はあるという認識でございます。
○大谷委員 これは、24時間なのか、6時間なのか、同時なのか、2時間なのかというのは、かなり大きな違いだと思うのです。この薬剤は大体6時間ぐらいで血中から消失しますから、そのずれているところで同時併用されているのか、それともトリプタンを飲んで効かなかったから2、3時間空けて本剤を飲んだのかということによって、かなり話が違ってくると思います。現在の添付文書だと、正に同時に飲むという、こういう経験はないということなのですけれども、それが行われる可能性がなくはないと。少なくともドクターは、それはちょっと気持ち悪いと思われるかもしれませんが、切替えだと患者さんはトリプタンを手元に持っていて、予備で幾つか持っていて、新しい薬が出たときに、効かなかった、ではトリプタンも一緒に飲んでみようということが絶対起こると思うのです。臨床試験では一切行われていないことが、実臨床でいきなり行われているというのは非常に危険ではないかと思いますが、いかがでしょうか。同時併用で安全性があるとか、たくさん知見が確立されているというのならいいのですけれども、全く臨床試験の段階で経験がなかったことが、実臨床で起こる可能性があるような添付文書の記載になっていると私は思います。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。同時併用の成績がない旨の記載ができるか検討させていただきます。
○大谷委員 是非、御検討いただきたいと思います。患者さん、苦しいですから、手元のトリプタンをずっと飲んでいて、ちょっと効くのだけれども効きが悪いというときに、勝手にかぶせる人が絶対出てくると思うのです。安全ならいいのですが、保障がないですので、是非よろしくお願いいたします。
○森部会長 今、拝見している資材への反映も是非御検討ください。大谷委員、これでよろしいでしょうか。
○大谷委員 はい、結構でございます。よろしくお願いいたします。
○森部会長 続きまして、合田委員から御質問がございます。お願いいたします。
○合田部会長代理 私は非常にマイナーなことで、余り重要ではないのですけれども、明らかな間違いがあったので、品質の所にNMRと化学シフトの参照にするのは重水素化DMSOと書かれているのですけれども、それだと参照できないのです。ですから、混在する軽水素化という言葉にしておかないとまずいので、最終的な承認書にはそういう形で書き直されたほうがいいと思います。以上です。
○森部会長 御指摘どうもありがとうございました。機構の方、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 すみません、合田先生、もう一度コメントいただいてもよろしいでしょうか。
○合田部会長代理 品質の部分、承認書の方ですが、例えば確認試験で、化学シフトを確認する際の化学シフトの基準物質が重水素化DMSOと書かれているのです。重水素化DMSOだと、NMRはシグナルが出ないのです。それは混在する軽水素化体のシグナルを基本としているので、要するに混在する軽水素化ジメチルスルホキシドという言葉に変えないと、化学的にはおかしくなります。ですから、それは文章を変えられたほうがよいと思います。例えば日本薬局方などでもそういう形になっておりますので、それを御覧になって、訂正されたほうがよいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 コメントを頂きましてありがとうございます。確認の上、対応させていただきます。
○森部会長 そのほかの先生方からの御意見はございますでしょうか。片頭痛診療に当たられる先生方、御意見がございましたらお願いいたします。
○石川委員 石川です。片頭痛の薬はいろいろ最近増えてきて、先ほど大谷先生でしたか、併用した場合のコメント、試験で経験がないということを記載したほうがいいというコメントに関しては、実際にほとんどの患者さんはお医者さんとよく話し合って、どれが効く、どれが効かないかというのが分かっているケースが多くて、よほどのことでない限り、そういう併用ということはないだろうなと思うのです。しかし、先ほど先生もおっしゃっていたとおり、全くそういう懸念がないとは言えないので、事前の試験でそういう経験がないということを添付文書において明記しておいたほうがいいという御指摘のとおりだと思います。以上です。
○森部会長 どうもありがとうございました。そのほかの御発言はございますでしょうか。それでは、先生方から御指摘を頂きました点について、今後、機構で改善するということで御対応いただくということになっておりますけれども、本案件の議決に進んでよろしいでしょうか。
 それでは、本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。
 御異議がないようですので、修正を経た上での承認を可としまして、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題3に移ります。議題3につきまして、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題3、資料No.3、医薬品ジャディアンス錠10mgにつきまして、機構より御説明させていただきます。タブレットでは、資料No.3のフォルダを開き、星印が付いている審査報告書ファイルをお開きください。以降の説明では、審査報告書の下部に青字で記載されております通し番号で御説明いたします。
 本剤の有効成分であるエンパグリフロジンは、SGLT2阻害作用を有する薬剤であり、腎近位尿細管では、尿中へのグルコース排泄促進によって血糖降下作用を発現することから、糖尿病治療薬として開発され、本邦において2014年12月に2型糖尿病の効能・効果で承認されており、海外では2型糖尿病に係る効能・効果で、100か国以上で承認されています。
 この開発の中で、本剤による慢性心不全への有効性が示唆されたことから、慢性心不全治療薬としての開発が開始され、今般、国際共同第III相試験の成績に基づき、慢性心不全に係る効能・効果及び用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。海外では、慢性心不全に関連する効能・効果で、2021年6月に欧州、8月に米国でそれぞれ承認されています。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。有効性について、審査報告書11ページの表3を御覧ください。国際共同第III相試験として、心不全の標準治療を受けている左室駆出率が低下した慢性心不全患者を、2型糖尿病の合併の有無によらず組み入れたプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されました。本剤の用法・用量は、10mgを1日1回投与することとされました。
 主要評価項目は、心血管死又は心不全による入院の初回発現までの期間とされ、本剤群でプラセボ群と比較して有意に主要評価項目のイベント発現が少なく、日本人集団においても全体集団と一貫した成績が認められました。
 また、日本人集団では、主要評価項目の構成要素の一つである心血管死及び副次評価項目の全死亡のハザード比の点推定値が、1をやや上回ったことについて考察いたしました。全死亡の群間差は、非心血管死が本剤群でのみ認められたことに起因していたものの、非心血管死に至った有害事象と本剤との関連性は否定されており、当該判断はおおむね妥当と考えております。
 心血管死については、突然死等の発現に影響する可能性のある民族的要因として、基礎治療として用いられた植込み型除細動器の使用の有無別の有効性及びβ遮断薬の各地域における推奨用量に対する用量分布の国内外差等を確認し、本試験において、これらの背景因子が有効性に影響した可能性は低く、本試験の全体集団で認められた有効性が左室駆出率の低下した日本人慢性心不全患者でも期待できると判断し、当該判断は専門委員にも支持されました。
 次に、安全性について御説明いたします。審査報告書25ページから記載している7.R.3、安全性についての項を御覧ください。国際共同第III相試験において、既承認時に特定された注目すべき有害事象等について、既承認時と比較して新たな安全性の懸念は認められず、添付文書において既に注意喚起がなされていることから、追加の注意喚起を行う必要はないと判断しました。
 続いて、審査報告書33ページの表18を御覧ください。国際共同第III相試験における2型糖尿病の合併の有無別の有効性について確認した結果、2型糖尿病の合併の有無によらず本剤の有効性は期待できると判断しました。また、安全性についても、本適応追加にあたって、現時点で追加の注意喚起を要する事項はないと判断しました。
 なお、効能・効果については、以前、当部会で御報告させていただいた方針に基づき、効能・効果は慢性心不全とした上で、効能・効果に関連する注意において臨床試験成績に基づき、現時点で投与が推奨される対象は左室駆出率が低下した慢性心不全である旨を注意喚起することとしております。
 本剤については、左室駆出率の保たれた慢性心不全患者を対象とした国際共同第III相試験を終了しており、当該試験成績が提示されましたら、○○○○○○○○○適切な対応を行う予定です。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は、新効能医薬品及び新用量医薬品としての申請であることから、本申請に係る効能・効果及びその用法・用量の再審査期間は4年とすることが適当であると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等がございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、議決に入らせていただいてよろしいでしょうか。なお、佐藤直樹委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への御参加を御遠慮いただくことになっております。
 では、本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。 
 御異議ないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題4に移らせていただきます。議題4につきまして、佐藤直樹委員におかれましては、利益相反のお申出に基づきまして、議題4の審議の間、会議から一旦御退室いただくことになっております。佐藤直樹委員につきましては、御退室をお願いいたします。
── 佐藤(直)委員退室 ──
○森部会長 それでは、議題4につきまして、機構から概要の説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題4、資料No.4、医薬品エフィエント錠2.5mg及び同錠3.75mgについて、機構より説明させていただきます。
 審査報告書の一番下、全52ページの通し番号で5ページ、1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。本剤の有効成分であるプラスグレル塩酸塩は、選択的かつ不可逆的に血小板膜上のADP受容体P2Y12を阻害する抗血小板薬であり、本邦で、本剤は経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群、安定狭心症、陳旧性心筋梗塞について、2014年に承認され、広く使用されています。
 今般、国内臨床試験成績を基に、本剤に虚血性脳血管障害(大血管アテローム硬化又は小血管の閉塞に伴う)後の再発抑制に係る効能・効果及び用法・用量を追加する医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。
 なお、本剤は、海外では経皮的冠動脈形成術が適用される急性冠症候群に係る効能・効果で、85の国又は地域で承認されていますが、虚血性脳血管障害に係る効能・効果について承認されている国又は地域はありません。
 国内外での開発状況の違いについて、補足で説明させていただきます。審査報告書の通し番号28ページ、7.R.2、開発の経緯及び臨床データパッケージの適切性についての項を御覧ください。本薬の開発は、脳領域に先行して心臓領域で行われました。欧米では、急性冠症候群患者を対象とした海外第III相試験の結果、脳梗塞又は一過性脳虚血発作(TIA)の既往歴を有する集団で、脳出血の発現率が対照群のクロピドグレルより高かったことから、脳卒中又はTIAの既往歴のある急性冠症候群等の患者への使用は禁忌とされております。
 一方で、本邦での心臓領域の開発では、国内用量設定試験の結果から、海外より低用量を選択し、国内第III相試験の成績から、日本人患者では脳梗塞又はTIAの既往歴を有していても投与可能と判断されたこと等から、それら患者も対象に含めて承認がなされました。また、現在においても、本邦で脳卒中又はTIAの既往を有する患者に対して、追加の注意が必要と判断されていない状況です。なお、そのような用法・用量と注意喚起の国内外差が生じたため、虚血性脳血管障害の開発は本邦のみで実施されています。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。審査報告書の通し番号18ページの表15を御覧ください。心原性脳塞栓症を除く虚血性脳血管障害患者を対象とした国内第III相試験(J303試験)では、主要評価項目とされた脳梗塞、心筋梗塞及びその他の血管死から構成される脳心血管系イベントの発現割合について、クロピドグレル群に対する本薬群のリスク比の95%信頼区間の上限は、事前に設定した非劣性限界値を上回り、国内の標準薬であるクロピドグレルに対する本薬の非劣性は検証されませんでした。
 審査報告書の通し番号28ページの7.R.2、開発の経緯及び臨床データパッケージの適切性についての項を御覧ください。J303試験で本薬のクロピドグレルに対する非劣性が検証されなかった要因として、塞栓源不明の脳塞栓症、ESUSと呼ばれる近年提唱された病型に該当する患者がJ303試験に含まれ、その患者の組入れ割合に群間で違いが認められたためと申請者は考察し、ESUSに類似する集団を除いたアテローム血栓性脳梗塞及びラクナ梗塞の集団での事後的な部分集団解析の結果、本薬の有効性が示唆されました。
 この結果から、対象集団をアテローム血栓性脳梗塞及びラクナ梗塞患者とし、加えて、本邦のガイドライン等を参考に、脳梗塞再発のリスク因子(高血圧症、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病、最終発作前の脳梗塞の既往)を有する患者に限定して、改めて国内第III相試験(J305試験)を実施する方針を申請者は採りました。
 審査報告書の通し番号24ページ、表21を御覧ください。脳梗塞再発のリスク因子を有する血栓性脳梗塞患者を対象としたJ305試験は、試験の実施可能性から症例数が限られ、リスク比の点推定値を用いた評価とせざるを得ませんでしたが、主要評価項目とされた脳梗塞、心筋梗塞及びその他の血管死から構成される脳心血管系イベントについて、クロピドグレル群に対する本薬群のリスク比の点推定値は、事前に規定した有効性評価の基準である1を下回りました。
 これらの試験結果に基づく機構の判断について、審査報告書30ページ、7.R.3.1、脳梗塞再発抑制に関する有効性についての項を御覧ください。J303試験の部分集団解析から推察された仮定に基づき、対象集団を再検討して実施したJ305試験では、リスク比の点推定値を用いた評価となったものの、クロピドグレルに劣らない本薬の脳心血管系イベントに対する発症抑制効果が示唆され、再検討後の対象集団において本薬の有効性を支持する結果が改めて得られたことを考慮すると、脳梗塞再発のリスク因子を一つ以上有するアテローム血栓性脳梗塞及びラクナ梗塞患者においては、本薬はクロピドグレルと同程度の有効性が期待できると判断しました。専門協議においても、有効性に関する判断は支持されました。
 加えて、審査報告書の通し番号45ページ、1.1、臨床的位置付けについての項を御覧ください。複数の専門委員より、脳梗塞の再発抑制を目的として、アスピリンやクロピドグレル等の既存の抗血小板薬を投与していても、脳梗塞を再発する患者は少なからず存在し、そのような患者を含め、虚血性脳血管障害患者における脳梗塞の再発抑制に使用可能な抗血小板薬の選択肢を求める医療ニーズは高いとの意見が出されました。既存の抗血小板薬を投与していても脳梗塞を再発した患者に対する有効性については、審査報告書の通し番号33ページの表26を御覧ください。最終発作前の脳梗塞既往を有する患者は、本薬以外の抗血小板薬を服用している状況で脳梗塞を発症したことが推察され、この部分集団の結果から、当該患者への有効性も示唆されると考えます。
 以上より、提出された臨床試験からは、本薬の有効性が検証されたとは言えないものの、医療現場への早期の提供が求められていること、複数の臨床試験から本薬がクロピドグレルと同程度の有効性が示唆されていること、本薬と同様の作用機序であるクロピドグレルが既に脳領域で承認されていること、心臓領域では本邦で本薬とクロピドグレルが同様の位置付けで広く使用されていること等を踏まえれば、提出された臨床試験結果に基づき、医療現場に提供する意義のある有効性は期待できると判断しました。
 続いて、安全性について御説明いたします。審査報告書の通し番号33ページから記載されている7.R.4、安全性についての項を御覧ください。脳梗塞患者を対象とした臨床試験での有害事象の発現状況からは、出血に関する注意喚起を含めて、現時点で追加の注意喚起を要する内容はないと判断しました。
 本薬の投与対象及び効能・効果について御説明いたします。審査報告書の通し番号43ページ、7.R.5、本薬の投与対象及び効能・効果についての項を御覧ください。J303試験の結果等を踏まえ、より本薬の有用性が期待できる患者集団を探索し、脳梗塞の病型及び再発のリスク因子により選択された集団を対象にJ305試験を実施した結果、有効性が示唆されたという経緯を踏まえますと、本薬の投与が推奨される集団は、J305試験の対象集団に基づく集団と同様とすることが妥当と判断しました。以上より、効能・効果は、J305試験の対象集団に従い、「虚血性脳血管障害(大血管アテローム硬化又は小血管の閉塞に伴う)後の再発抑制(脳梗塞発症リスクが高い場合に限る)」とし、当該試験で「脳梗塞発症リスクが高い」の要件とされた患者背景を、添付文書の効能・効果に関連する注意の項に記載することが適切と判断しました。
 製造販売後調査について、審査報告書の通し番号47ページ、1.7、医薬品リスク管理計画(案)についての項を御覧ください。先ほど説明したとおり、提出された臨床試験では本薬の有効性が検証されたとまでは判断できないことから、製造販売後に使用実態下での本薬投与時の脳梗塞の発現状況を、適切な対照と比較する等して確認することが妥当であり、その観点から、製造販売後データベース調査及び特定使用成績調査を実施し、本薬又はクロピドグレル投与症例での脳梗塞の再発率を評価する計画としております。これらの調査の詳細は、今後、申請者と疫学調査相談等を活用して決定する予定ではありますが、脳梗塞再発率について、クロピドグレルと大きな違いがないことを確認するために、J303試験で用いた非劣性マージンを参考とした基準を設けて評価する予定です。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。なお、本申請は新効能医薬品及び新用量医薬品としての申請であることから、本申請に係る効能・効果及びその用法・用量の再審査期間は4年とすることが適切と判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いします。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問等ありましたらお願いします。宮川先生、どうぞ。
○宮川委員 日本医師会の宮川です。御説明ありがとうございました。ここは繰り返し繰り返しいろいろお話になっておりますが、やはり本剤の有効性に関する問題というのは非常に多いだろうと思っています。24/52ですが、御説明は頂きましたけども、リスク比の点推定というのは非常に幅が広くて、このような形で一応下回ったということであっても、部分解析や併合集団の解析において、やっとクロピドグレルに劣らない有効性を得られることが推定できるという形でのお話ということです。機構は繰り返し説明されていますが、今お話になった数値を見ても、クロピドグレルと遜色ないみたいな言い方で、添付文書も含めて書かれてしまいますと、非常に問題であろうと思います。32/52、製造販売後の検討事項としてそのような形にしておくということがあるのですが、さすがにこれは臨床試験としては非常に乏しい結果です。これをもって、薬事の審査を通していくのは、本来からしますと問題であろうと考えます。これをクロピドグレルと同じように認めていくことには、私は異議を唱えたいと思います。以上です。
○森部会長 機構から、いかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。最初に実施したJ303試験では、現在承認されているクロピドグレルと同じ対象集団で試験を実施して、非劣性は検証されなかったのですが、様々な解析をした結果、次に行ったJ305試験では、クロピドグレルよりは対象を絞って試験は実施しております。本薬がより有効である集団に絞った上で、改めて試験を実施して、クロピドグレルと同様の有効性が確認できたということで、本薬の有効性は、その集団であればクロピドグレルと同様だろうと考えます。
○医薬品医療機器総合機構 追加させていただきます。今、担当から説明がありましたように、まず、効能・効果という点においては、クロピドグレルよりも本薬の方が対象を絞った集団としております。その時点で、クロピドグレルと全く同じ位置付けで使える薬剤ではないという点は強調させていただいております。一方で、有効性の解釈については御指摘のとおりでして、添付文書上でどう表現するかということは非常に難しいところですが、17項では点推定値による比較であったということと、非劣性は検証されなかったことを明記させていただいております。説明として充足していないかも知れませんが、ひとまず説明としては以上です。
○宮川委員 御説明ありがとうございます。今、機構がお話したそのとおりなのです。結局、CYPの表現型の問題が存在することは理解しますが、そういうものを前提としてなされた臨床試験にしても、このような表現で認めていくのはどうかと感じたものですから、一応疑義を申し上げたいと思って御質問させていただきました。以上です。
○森部会長 そのほか、委員の先生方から御質問はいかがですか。柴田委員、お願いします。
○柴田委員 審査報告書の45/52の臨床的位置付けという項の最後の段落に、「複数の専門委員より、脳梗塞の再発抑制を目的として、アスピリンやクロピドグレル等の既存の抗血小板薬を投与していても脳梗塞を再発する患者は少なからず存在し、そのような患者を含め、虚血性脳血管障害患者における脳梗塞の再発抑制に使用可能な新たな抗血小板薬の医療ニーズは高いとの意見が出された」と書いてあります。今回の申請資料の中に、クロピドグレル等の既存の抗血小板薬を投与しても脳梗塞を再発する患者さんに対して、本剤が有効であるというエビデンスは入っていたのですか。なかったような気がするのですが。
○医薬品医療機器総合機構 審査報告書の33ページの表26を御覧ください。こちらに記載しているリスク因子という欄に、「最終発作前の脳梗塞既往」という記載があります。この患者さんは、通常脳梗塞の再発予防のために抗血小板薬を服用している患者と推定されるので、このイベント発現状況を踏まえると、クロピドグレルと同程度のハザード比が示されているかと考えております。残念ながらこの被験者さんで実際にどの既承認の抗血小板薬が使用されていたかというところまで、この治験では情報が収集できておりませんので、推察を含みますが、現行の医療体制の中で脳梗塞の既往のある患者さんで、既承認の抗血小板薬が全く投与されていないという状況はほぼ想定されないということで、このような推定が成立すると判断した次第です。
○柴田委員 その推定は仮に推定として認めるとしても、クロピドグレルよりも良いというエビデンスには足りないですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい。おっしゃるとおり、こちらといたしましてもクロピドグレルを上回るという判断はしておりません。
○柴田委員 つまり、新たな抗血小板薬の医療ニーズは高いと書いてある先ほどの段落に対して、この薬が応えるというエビデンスまではないということだと思います。可能性としてクロピドグレルと、対象を絞り込めばクロピドグレルと同じぐらいの効果があるかもしれないというレベルの話であって、クロピドグレルで不十分だから、この薬を導入すればその問題が解決するということではないと理解しますが、そういう解釈でよろしいですね。
○医薬品医療機器総合機構 その点ですが、専門協議等でも各専門委員の先生方から意見を確認して、通常、やはりクロピドグレルを服用していて、脳梗塞が再発した場合に、再度抗血小板薬治療は継続しなければいけないけれども、一度発作が起きてしまった抗血小板薬を更に使い続けるという処方行動は、別の選択肢があれば通常は取り得ないということですので、それに変わるものとして、現行では例えばクロピドグレルからアスピリンへの投与という選択肢もないわけではないですが、アスピリンはアスピリンで投与できる集団にある程度限りがあったり、副作用の問題等もあって、選択肢が限られるという現状で、そこからスイッチできる選択肢が増えたほうがよいという御意見も頂いております。以上です。
○柴田委員 分かりました。今の御説明でしたら理解できました。ありがとうございます。
○森部会長 スイッチできる選択肢がある、ただしスイッチの選択肢の方がより優れているという証明がないという理解でいいのですね。
○医薬品医療機器総合機構 その証明はありません。
○森部会長 ということは、臨床現場では選択肢はあるけども、そこに優劣は付けられないという状況の中で本剤を上市するということですか。
○医薬品医療機器総合機構 そうです。あくまで選択肢が増えるという考えです。
○森部会長 分かりました。審査報告書の表25にCYPの2C19の表現型によるイベント発現状況の報告がありますが、日本人ではクロピドグレルの代謝がやや遅い、若しくは遅い方というのが欧米よりも圧倒的に多く、特にPMの方を見ますと、クロピドグレル群ではイベント発現が多いのに比して、本薬群では少ない傾向が読み取れるかとは思います。ただし、個々の患者さんで、このリスクが必ずしも正確に評価されている現状に今はないと思いますので、臨床現場にこの薬剤を出す際に一定の問題になるのではないかと、現状では理解をしているところではあります。続きまして、石川委員から御質問を頂きます。どうぞお願いします。
○石川委員 私の質問は添付文書の確認なのですが、添付文書の禁忌の2.1、「出血している患者」という文言について、これが妥当かどうかということを確認したいのです。出血しているというのはどういう意味でお書きになっているのか、当然、現在出血している人にこういう薬は出さないわけですが、一般的にこの文言で趣旨の通る書き方なのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。この記載は心臓領域での承認時から記載されているものでして、類薬のクロピドグレルとも同じような記載となっておりますので、この記載を変えることは難しいところです。
○石川委員 そうなのですね。これは重大の出血の既往がある人も、実際には禁忌という意味ではないかと思いますが、それでよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 特定の背景を有する患者に関する注意の項において、出血の素因のある患者や既往のある患者の記載があるので、禁忌にはしておらず、慎重投与の対象と考えております。
○石川委員 分かりました。ありがとうございます。
○森部会長 そのほか、先生方から御質問はいかがですか。宮川委員、どうぞお願いします。
○宮川委員 先ほどからお話をしていて、部会長からもいろいろ補足していただいて大変ありがとうございます。31/52の所に、機構が考えておられることが書いてあります。ESUSのこと、実際に疾患の範囲を狭くして認めるという形、しかしながら、これはクロピドグレルで無効であった患者さんに対して使えるような形と、幾ら疾患を絞っても対照薬と比べても有意性があるわけではないので、使用においてはかなり範囲が狭くなってくるのではないかと思うのです。添付文書にも書いてありますが、4.の二つ目の○ですが、そういう疾患を絞っていても、無効例というような形でないと、これは余り推奨できる薬ではないと考えるのですが、それに関してはどのように考えたらよろしいのでしょうか。CYPのことも先ほどお話を頂いて、ある程度理解しておりますが、二次的に使うという形を考えるのが本筋だろうと私はいます。それを、ただ疾患名だけ絞ったということの意味合いが本当に正しいのかどうかお聞かせいただければ幸いです。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 治験で検討したのは、そういった対象を絞った状態でのクロピドグレルと本薬を直接比較したものであって、クロピドグレルに対する効果不十分例に限って試験を行ったものではありません。そのため、クロピドグレルの効果不十分例に使う薬としての位置付けで臨床試験はしていないことから、現在の効能・効果のような記載が適切と考えております。
○医薬品医療機器総合機構 補足をさせていただきます。添付文書の5.4項を御覧ください。「「17.臨床成績」の項の内容を熟知し、臨床試験の対象患者や結果等を十分に理解した上で、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病、最終発作前の脳梗塞既往のいずれかを有する患者に投与すること」という形で注意を示しております。今回、J305試験におきまして、脳梗塞の再発のリスクが高い患者という点も対象集団の要素として加えて検討しております。クロピドグレルが投与される患者という点においては、やはり脳梗塞の再発のリスクが高い患者において、しっかりと再発の抑制ができることがこの剤で確認されている状況でして、クロピドグレル無効例というわけではないのですが、本剤が必要な対象患者を、よりここで明確にさせていただいているということがあります。この点を補足させていただきます。以上です。
○宮川委員 ありがとうございました。機構の方でも書かれていますが、頑健性が非常に乏しいということは確かにあろうかと思いますので、これは引き続きしっかりと確認していく作業を全面に出していただかないと、やはり問題があるのではないかと思っています。以上です。
○森部会長 それでは、順に御発言を頂きます。続いて、石川委員からどうぞ御発言ください。
○石川委員 脳神経内科医として、今の宮川先生の御質問、コメントに関して、少しコメントさせていただきます。先生も御存じのように、最近、脳梗塞は病型分類を考えてから投薬し、二次再発予防をするのが常識になっております。ここの書き方では、脳梗塞の中の限定的な使用のように理解されてしまうかもしれませんが、実際の臨床においては、このような病型の方にどういうお薬を使うということは普通に行われていることですので、私ども普通の臨床医としては、このコメントは特別に違和感はないと思っております。
 ただ、宮川先生が最後におっしゃったとおり、こういうお薬が本当に有効かどうかを確認するという御示唆については私も同感です。そういうことは、可能な範囲で今後も御検討いただければと思います。以上です。
○宮川委員 石川先生、ありがとうございます。
○森部会長 続いて、柴田委員から御発言いただきます。
○柴田委員 石川先生、御発言ありがとうございました。機構の方に1点確認いたします。先ほど来、指摘されている23/52の今回追加になった試験の解釈についてです。脚注の9番に、この試験にはどのぐらいの精度があるのかということが書いてあります。けれども、きちんと整理しておかないといけない点として、逆に本剤がクロピドグレルに劣っていたとしても点推定値が1を下回る確率は結構高いのですが、それを踏まえてこの試験の結果は、リスクの高い患者さんに対してクロピドグレルと横並びで使っていいというエビデンスと解釈していいのでしょうか。そこのところについて、審査報告書に書いてある話だけでは納得できないところもあるので、改めて確認させていただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 J305試験の目的としては、J303試験の結果に基づき適切と示唆された集団での有効性がJ305試験でも再現されるということです。J305試験単独での頑健性には限界がありますが、もともとそのベースとなったJ303試験の全体集団においても非劣性は検証できなかった一方で、結果を見れば、クロピドグレルに明らかに劣っているという傾向はなく、そこから部分集団解析によって導かれた集団ではより成績が良好な方に変化するだろうという仮説の元となったデータと、それがこのJ305試験でもある程度再現できたという、その試験のトータルでの結果をもって、承認には足ると判断しております。
 一方で、冒頭から申し上げているように、医薬品として通常承認される頑健性というレベルでは充足しているとは言えないので、製造販売後調査では対照を設定した評価は通常は行っていないところ、対照を設けた製造販売後調査によって確認するという、各試験の成績と製造販売後の対応のトータルで、今回判断をしたということです。以上です。
○柴田委員 今の御発言について2点お伺いしたいことがございます。一つ目は、その話ですが、再現性というのはどこから読み取れるのでしょうか。一つの試験としては頑健ではないけれども、トータルで一定のエビデンスだと考えることができるという話は、審査報告書に書いてありますか。感想としてではなく、トータルで見ると頑健だと考えられるという話は書いてありますか。
○医薬品医療機器総合機構 審査報告書の通し番号31ページの表24及びその下に記載した機構の考察部分を御覧ください。まず、試験間での結果の類似性については、表24でも2試験間の結果を比較する形でお示ししております。また、その下の機構の考察の中段ぐらいからですが、「しかしながら、J303試験の部分集団解析から推察された仮定に基づき対象集団を再検討して実施したJ305試験では、試験の実施可能性から症例数が限られ、リスク比の点推定値を用いた評価となったものの、クロピドグレルに劣らない本薬の脳心血管系イベントに対する発症抑制効果が示唆され、投与対象を絞った際の本薬の有効性を支持する結果が改めて得られたことを考慮すると」という、この辺りにその意図を込めたつもりです。
○柴田委員 分かりました。「改めて」という3文字に込められているということですね。確認ですが、そうなのですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○柴田委員 分かりました。二つ目の質問です。今回、対象をリスクの高い方に絞られています。リスクの高い方にはクロピドグレルは実績がある、今回は実績が曖昧である、トータルでは頑健であるという、一定のレベルのエビデンスであるとはおっしゃるものの、通常の薬の基準で考えると、エビデンスが不十分であるとおっしゃっているところで、患者さんの立場で見たときに、クロピドグレルに先行してこれが使われるハイリスクの患者さんに対する治療の選択は、この試験の結果から妥当な解釈になるのでしょうか。
 形式的には、横並びで評価したから添付文書には横並びで記載するというのは、手続としてはそうかもしれませんが、このエビデンスをもってハイリスクの患者さんに対してはしっかり効く薬が必要であるにもかかわらず、しっかりしたエビデンスのある薬としっかりしたエビデンスのない薬を横並びで使っていいと言われることに対して、結果の解釈、あるいはその対策の取り方に対して疑問を持っているのですが、その辺りはいかがでしょうか。私は形式主義に過ぎると思うのです。
○医薬品医療機器総合機構 今回の試験の集団や開発経緯も踏まえた投与対象の解釈として、機構としては、クロピドグレルについても必ずしもハイリスクに絞った集団での有効性を、本剤よりも更に頑健に確立させたというところまでの成績は得られていないだろうということで、今回このように絞ったハイリスク集団で、クロピドグレルと本剤の有効性を直接比較したのは、恐らく本剤のJ303の部分集団とJ305試験の結果がメインとなります。そこから得られる解釈としては、この集団においての使用に関しては、必ずしもどちらか一方を優先させる必要があるという判断には至らず、添付文書の5.4項を再度御説明いたしますが、この臨床試験の結果も十分に理解した上で対象患者の選択をしていただきたいという現場への提供の仕方がよいのではないかと機構としては考えたところです。
○柴田委員 クロピドグレルについては、この集団に絞ったエビデンスがなかったとしても、一定のエビデンスに基づいて使われているという実績があるので、そこは対称ではないと個人的には思います。一方で、市販後の対策等が必要であるとおっしゃっているということは、それなりにウォッチしていかないといけないという、そういう使い方を踏まえた上での御判断だと思いますので、ここでこれ以上申し上げるのはやめようと思いますが、私個人としては、今の御説明については、その御説明だけ取り上げるとおかしいと思います。
 繰り返しになりますが、ただし市販後できちんとした対策を取る、あるいはそこで、もしまずいというデータやシグナルが出てくるようであれば、機構として責任を取る、次の対策を講じられるということであるならば、総合的に見て、これを前に進めることについて反対するということまでは申し上げません。以上です。
○森部会長 ありがとうございました。ここで少し論点整理をさせていただきたいと思います。添付文書の内容を中心に、先生方に確認事項を一つ一つ伺っていきたいと思います。
 まず、今回のプラスグレル、エフィエント錠についての添付文書の4番の項目、効能又は効果の所で「虚血性脳血管障害」という言葉が使われています。これは、脳梗塞とTIAを含む概念ということになっています。本剤のこれまでの臨床試験の成績を鑑みて、TIAを含めることが妥当かどうか御意見を伺いたいと思います。委員の先生から御発言を頂ければ助かります。いかがでしょうか。宮川委員、お願いいたします。
○宮川委員 私は最初から申し上げておりますように、これは該当しないと思います。このように広げることは非常に困難であろうと思っています。
○森部会長 ありがとうございます。先ほど、機構の方からの御説明でも、J305の対象症例を承認の念頭に置いているということで、J305の試験は脳梗塞の方の再発予防として行われておりますので、TIAの方の有効性に関して適応に含めることが妥当ではない可能性を指摘したいと思います。
 2点目については、大血管アテローム硬化又は小血管の閉塞に伴うということで、脳梗塞の病型に応じているきめ細やかな配慮というのは、J305研究から得られた本薬の有効性が期待できる症例ということで、ここについては先生方からは余り御指摘がなく、私も妥当だと思います。
 その後の、虚血性脳血管障害後の「再発抑制(脳梗塞発症リスクが高い場合に限る)」という表記についてです。これまで開発する経緯としては、従来の抗血小板薬治療では、なかなか十分な効果が得られなかった方がおられるということが、今回の開発の大きな医療ニーズになっています。今回得られた臨床成績については、もともとプラセボとの比較試験はできませんので、クロピドグレルの実薬との比較の中で行われていたという制約がありますが、この薬剤が、既存の抗血小板薬、バイアスピリンやクロピドグレルの中のどういう位置付けになるのかということについて、並列でよいのか、若しくは既存の治療の効果が不十分な場合に本薬剤を使うように検討すべきかということについては、どのようにお考えでしょうか。宮川委員、お願いいたします。
○宮川委員 今、部会長がおっしゃったように2番目だと思います。しかしながら、その場合でも、最初からその患者さんはそういうものであるということが限定できないので、現場では非常に困窮するわけです。ですから、先ほど私がクロピドグレルが有効でない症例に対して使うのかというお話をしたのはそういうことなのです。ですから、これはそれに当たらないということで、2番目の話だろうと思っています。以上です。
○森部会長 そのほかに御意見はございますか。石川委員、お願いいたします。
○石川委員 部会長の整理については大変賛成ですが、私は若干考え方が違っています。ここの審査会は、どこまで許可することを任されているのかという点なのです。私は普段の診療において、虚血性脳梗塞の場合はTIAも含めているという考えでおります。なぜなら、大血管性の動脈硬化によってTIAも起きます。ですから、もしクロピドグレルなどが有効でない患者さんで、脳梗塞になりそうな方において、ほかの薬のチョイスがあるのであれば、それを使えるというようなチョイスができるということは大変いいことなのではないかとポジティブに思うのです。
 現在、TIAの病型分類は塞栓性から血栓性までいろいろありますので、私の考えとしては、ここの添付文書に書いてある動脈硬化性の虚血性脳疾患の場合において、チョイスがあるという形にして、臨床医にそれを判断させるということは決して間違いではない。現場の混乱というものは、単純には導かれないというふうに思っております。
 先ほどおっしゃっていたとおり、今回の臨床試験の成績によってどこまで明らかになったかというと、クロピドグレルを使ってもやはり発作を起こす人はいます。それから、動脈硬化性の脳梗塞の場合は、抗血小板剤が非常に有効だとは言われていないのです。御存じのように、高血圧など様々なファクターがあります。ですので、クロピドグレルを使っていても梗塞を起こす人はいますから、そういう人の場合にこういうお薬が使えるという趣旨は、開発側あるいは機構側のおっしゃっていることは理解できると私は思うのです。今後使用されたときに、更にこの部分を詰めていく検討ができるのであれば、宮川先生もおっしゃっていましたが、私も賛成です。
○森部会長 御意見どうもありがとうございました。J303研究から得られた情報は、本薬が大血管アテローム硬化や小血管の閉塞の症例には有効性が認められますが、クロピドグレルと比較した場合に、他の原因や原因不明の脳梗塞に対してはハザードが1.5ぐらいの値だと思いますけれども、本薬の有効性がクロピドグレルよりも劣る可能性が指摘されています。その情報は、添付文書に含まれる必要はあるでしょうか。つまり、使用すべきでない症例を特定する情報は添付文書に含まれるべきでしょうか。その点はいかがでしょうか。石川委員、お願いいたします。
○石川委員 私も、それはそうだと思います。できるだけ得られた情報を正確にお伝えして、使用する医師がきちんとした情報に基づいて正確に処方できるのがいいと思いますので、添付文書で今回の試験で分かった範囲をできるだけ正確にお伝えする必要はあると思います。
○森部会長 柴田委員、お願いいたします。
○柴田委員 今の石川先生の御発言と同じように、データは提示される必要があると思います。添付文書の記載の要領等の制限があるのかもしれませんが、今回の効能・効果の書き方のみを見ると、しっかりしたエビデンスがあって、ハイリスクの方に効く薬であるかのように読めてしまいます。実際、点推定値だけで曖昧なエビデンスしかありませんということだけでは、臨床の先生方には分かりにくいので、先行研究でうまくいかなかったところや、今回の点推定値がある程度緩いものであるという情報も含めて情報提供した上で、臨床の先生方の判断に資する情報が必要になるのではないかと考える次第です。
○森部会長 ありがとうございます。宮川委員、お願いいたします。
○宮川委員 私も石川委員と柴田委員に同意します。そのようにしていただければ、実臨床においては非常に有効だろうと思っております。
○森部会長 今回、既存の抗血小板薬であるクロピドグレルとの非劣性が証明できなかったことは、承認上とても大きな問題点で、本薬の位置付けを大変難しくしている中での審査ということになっています。それから、75歳以上の高齢者の扱いはどうしたらいいでしょうか。この点について少し御助言いただけないでしょうか。
○石川委員 私がコメントをする者として適当かどうか分かりませんが、75歳以上の方において副作用、出血が多いなどの情報があるのでしたら載せたほうがいいと思います。私が見た限り、年齢ごとの差をはっきり確認できなかったのですが、そういうことはございますか。
○森部会長 J304研究でしょうか、高齢者、低体重の方を対象にした臨床試験をされているとお見受けしました。赤羽委員、お願いいたします。
○赤羽委員 多分、通し番号32ページの表25の結果に基づいてということでよろしいでしょうか。
○森部会長 これはフェーズ3の方になっているので、75歳以上の方がそれぞれ145名、144名含まれているのですね。それで、脳血管イベントに関する情報はあるのですが、安全性に関する情報はどうでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 審査報告書通し番号36ページの表29に、年齢別の出血の発現状況の記載がありまして、生命を脅かす出血、大出血及び臨床的に重要な出血、それと個々の構成要素の出血の発現状況の記載がされております。75歳未満と比べて、75歳以上で出血のイベントが増加する傾向は認められていないと考えております。
○森部会長 そうしますと、特に高齢者の方に特定の注意喚起をする必要は、もともと高齢者に関する一定の注意喚起の文書がありますので、それを更に増補する必要はないという判断でよろしいでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 はい。既承認効能と同様の注意喚起が行われていれば十分と考えております。
○森部会長 宮川委員、お願いいたします。
○宮川委員 部会長、本当にありがとうございます。皆さん、ありがとうございます。論点をきちんと整理したほうがいいので、1回クーリングの時間を頂けると有り難いと思うので、継続というわけにはいかないでしょうか。次回きちんと頭を整理しながら皆さんで考えるということが、駄目ならばしょうがないのですけれども、いかがでしょうか。部会長、よろしくお願いいたします。
○森部会長 まず、今回の薬剤の開発には、医療現場の先生方からのニーズがあるということが非常に大きな開発の根拠になっています。今回は石川委員にたくさん御発言いただきましたが、できましたら専門医の先生方、若しくはどなたか参考人の方に詳しく、医療現場における抗血小板薬の位置付けや使い分け、プラスグレルが脳梗塞に使われるようになった場合の位置付けについて、意見交換したいと思っております。
 その意見交換をしておかないと、既に得られている臨床成績だけでは承認するだけの頑健な根拠に乏しいと困っていましたので、次回、先生方に医療ニーズについて十分意見交換していただいた上で、本案件の審議に入るのが妥当かと思っておりますが、いかがでしょうか。赤羽委員、お願いいたします。
○赤羽委員 先ほどから先生方が御議論されていた効能・効果の適応範囲だけではなく、J303試験で非劣性が示せなかったこと、逆にこういう患者さんの場合は、もしかすると余り良い結果が得られないかもしれないということも踏まえた添付文書の書きぶりの改定案のようなものも、可能であれば次回お示しいただけるといいのかと思ったのですが、いかがでしょうか。
○森部会長 是非そのように考えていますが、機構の方はいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 本日御議論いただいた本剤の有効性が期待しにくい患者集団、その他の原因による脳梗塞や原因不明の脳梗塞といった患者さんには、投与が推奨されないという点は、添付文書上で注意喚起することは可能と考えております。
○森部会長 今の御指摘も踏まえて、添付文書の臨床成績の項目を、より丁寧に詳しい情報を提供する形で臨床現場に情報を提供したいと思っています。宮川委員からも添付文書に関する御助言がございましたが、より臨床現場の先生方が、どの患者さんに適して使いやすいかということのヒントになる情報を提供していただきたいと思っています。
○医薬品審査管理課長 次回に向けて、今日出た御意見を踏まえて、添付文書への反映等を御検討いただき、さらに次回は医療の現場のニーズを聞けるように、場合によっては参考人の先生などにも御参加いただいた上で、もう一度しっかりと御議論いただくという形で進めていければと思います。よろしいでしょうか
○宮川委員 賛成します。非常に良い解決法だと思います。
○森部会長 議題4については、次回の審議に持ち越しとさせていただきます。それでは、佐藤直樹委員に御入室いただきます。
── 佐藤(直)委員入室 ──
○森部会長 続いて、議題5に移ります。議題5につきまして、事務局から概要説明をお願いします。
○事務局 議題5、資料5、Pegvaliaseを希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。希少疾病用医薬品該当性事前評価報告書のファイルをお開きください。
 報告書の1ページの中段を御覧ください。申請者は、BioMarin Pharmaceutical Japan株式会社です。予定される効能・効果はフェニルケトン尿症です。
 まず、1ページの対象者数について御説明いたします。フェニルケトン尿症は、指定難病のフェニルアラニン水酸化酵素欠損症に含まれる疾患であり、希少疾病用医薬品該当性事前評価報告書に記載の平成30年度の報告を踏まえて指定基準を満たしているものと考えております。
 次に、医療上の必要性についてです。フェニルケトン尿症は、フェニルアラニン水酸化酵素遺伝子の変異により血中のフェニルアラニン濃度が高値を示す遺伝性疾患で、フェニルケトン尿症患者に対する薬物療法としてはサプロプテリンがあるものの、投与対象は限られること、また、十分な効果が得られていないこと等の問題があります。本剤は、フェニルアラニンを分解することで血中フェニルアラニン濃度を低下させることからも、対象患者が限定されることなく新たな治療薬となることが期待され、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。
 最後に、開発の可能性についてです。海外において第III相臨床試験が実施され、また、現在本邦においても臨床試験が実施中であることから、本剤の開発の可能性は高いと考えております。したがって、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしているものと考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 それでは、委員の先生方から御質問をお願いいたします。特にございませんか。
 それでは、議決に入ります。なお、川上委員、佐藤直樹委員、宮川委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。では、本議題について指定を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようですので指定を可とさせていただき、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて、報告事項に移ります。報告事項、議題1、2について、事務局から説明をお願いします。
○事務局 報告事項の議題1、資料No.6を御覧ください。希少疾病用医薬品の指定の取消しについてです。献血ベニロンについては、平成26年に顕微鏡的多発血管炎に関する希少疾病用医薬品の指定を受けておりました。この度、実施中だった臨床試験において良好な結果が得られなかったということ等を踏まえ、開発を中止する旨の届出がされておりますので、併せて希少疾病用医薬品の指定についても取消しをさせていただければと思っております。こちらについては以上です。
 それから、議題2、資料7-1~7-6までです。医療用医薬品の再審査結果についてです。今回の再審査の対象品目については、順に、ドボベット軟膏及びドボベットゲル、イーケプラ錠及び同ドライシロップ、イーケプラ点滴静注、プロトピック軟膏、スイニー錠、イニシンク配合錠です。これらの品目については、製造販売後調査等に基づき再審査申請が行われ、審査の結果、承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要がないカテゴリー1と判断されたものです。御報告は以上です。
○森部会長 ありがとうございます。先生方から御質問はございますか。それでは、報告事項の議題1、2については御確認いただいたことといたします。
 その他、事務局から報告はございますか。
○事務局 次回の部会は、11月26日(金)の午後2時から開催する予定です。よろしくお願いいたします。
○森部会長 先生方、本日は大変御多用の中、御参加いただき心より御礼申し上げます。これで、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を終了いたします。
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

医薬品審査管理課 課長補佐 柳沼(内線2746)