2021年8月30日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和3年8月30日(月)16:00~

出席者

出席委員(16名)五十音順

(注)◎部会長 ○部会長代理

 他参考人2名
 
欠席委員(5名)五十音順

行政機関出席者
  •  鎌田光明(医薬・生活衛生局長)
  •  吉田易範(医薬品審査管理課長)
  •  新井洋由(独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事・審査センター長事務取扱)
  •  池田三恵(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監) 他

議事

○医薬品審査管理課長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会のWeb会議を開催させていただきます。本日もお忙しい中を御参集いただきまして、誠にありがとうございます。この度の医薬品部会につきましても、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、Webでの議論とさせていただきたいと思います。
 本日のWeb会議における委員の出席状況ですが、飯島委員、小崎委員、佐藤直樹委員、平石委員、松野委員から御欠席との御連絡を頂いております。また、赤羽委員、大谷委員におかれましては、後ほど御参加いただけるというように承知しております。したがいまして、現在のところ、当部会委員数21名のうち14名の委員に御出席いただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
 なお、本日ですが、報告事項議題2に関しまして、日本循環器学会より、佐賀大学医学部循環器内科主任教授の野出孝一先生に、それから日本高血圧学会より、大阪大学大学院医学系研究科老年・総合内科学教授の楽木宏実先生に参考人として御参加をお願いしております。よろしくお願いいたします。
 続きまして、部会を開始する前に、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果につきまして御報告をさせていただきます。薬事分科会規程第11条におきましては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」というように規定されております。今回、全ての委員の皆様から、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、報告をさせていただきます。委員の皆様におかれましては、会議開催の都度、書面を御提出いただいており、大変御負担をお掛けしておりますけれども、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 また、本日のWeb会議に際しましても、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、説明者においてはマスクを着用したまま説明させていただきますので、御了承いただければと思います。それでは、森部会長、以降の進行をよろしくお願いいたします。
○森部会長 それでは、本日の審議に入らせていただきます。まず、事務局から資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告を行ってください。
○事務局 では、本日のWeb会議に係る資料の確認をさせていただきます。本日はあらかじめお送りさせていただいた資料のうち、資料No.1~資料No.16と製剤写真を用いますので、お手元に御用意いただけますでしょうか。このほか、資料No.17として審議品目の薬事分科会における取扱い等の案を、資料No.18として専門委員リストを、資料No.19として競合品目・競合企業リストを事前に電子メールにてお送りしております。なお、システムの動作不良などがありましたら、会議の途中でも結構ですので、事務局までお申し付けください。
 続きまして、本日のWeb会議における審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告させていただきます。資料No.19の1ページを御覧ください。まず、「モイゼルト軟膏」です。本品目は「アトピー性皮膚炎」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 2ページを御覧ください。「ヒュミラ皮下注」です。本品目は「中等症又は重症の潰瘍性大腸炎の治療」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 3ページを御覧ください。「イムブルビカカプセル」です。本品目は「造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 4ページを御覧ください。「ラパリムス錠」です。本品目は「難治性リンパ管疾患」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 5ページを御覧ください。「ネクスビアザイム点滴静注」です。本品目は「ポンペ病」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤が自社製品のみであることから、競合品目はなしとしております。
 6ページを御覧ください。「アジルバ顆粒及びアジルバ錠」です。本品目は「高血圧症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 7ページを御覧ください。「エンレスト錠」です。本品目は「高血圧症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 8ページを御覧ください。「ビンマックカプセル」です。本品目は「トランスサイレチン型心アミロイドーシス」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 9ページを御覧ください。「オンデキサ静注用」です。本品目は「直接作用型第Ⅹa因子阻害剤投与中の患者における生命を脅かす出血又は止血困難な出血発現時の抗凝固作用の中和」であり、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 10ページを御覧ください。「エフメノカプセル」です。本品目は「更年期障害及び卵巣欠落症状に対する卵胞ホルモン剤投与時の子宮内膜増殖症の発症抑制」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 11ページを御覧ください。「ミダフレッサ静注」です。本品目は「てんかん重積状態」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 12ページを御覧ください。「Nipocalimab」です。本品目は「全身型重症筋無力症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 13ページを御覧ください。「ブトリシランナトリウム」です。本品目は「トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上でございます。
○森部会長 今の事務局からの御説明について、特段の御質問、御意見等はございますか。それでは、本Web会議の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様に了解いただいたものといたします。それでは、委員からの申出状況について御報告をお願いします。
○事務局 薬事分科会審議参加規程第5条及び第11条に基づく各委員からの申出状況は、次のとおりです。
 議題1の「モイゼルト」は、退室委員なし、議決に参加しない委員は大森委員です。
 議題2の「ヒュミラ」は、退室委員、議決に参加しない委員ともにいらっしゃいません。
 議題3の「イムブルビカ」は、退室委員なし、議決に参加しない委員は大森委員、長谷川委員です。
 議題4の「ラパリムス」は、退室委員、議決に参加しない委員ともにいらっしゃいません。
 議題5の「ネクスビアザイム」は、退室委員なし、議決に参加しない委員は川上委員です。
 議題6の「アジルバ」は、退室委員なし、議決に参加しない委員は大森委員、川上委員、武田委員、長谷川委員、宮川委員です。
 議題7の「エンレスト」は、退室委員なし、議決に参加しない委員は大森委員、川上委員、武田委員、長谷川委員、宮川委員です。
 議題8の「ビンマック」は、退室委員なし、議決に参加しない委員は川上委員です。
 議題9の「オンデキサ」は、退室委員、議決に参加しない委員ともにいらっしゃいません。
 議題10の「エフメノ」は、退室委員、議決に参加しない委員ともにいらっしゃいません。
 議題11の「ミダフレッサ」は、退室委員、議決に参加しない委員ともにいらっしゃいません。
 議題12の「Nipocalimab」は、退室委員なし、議決に参加しない委員は大森委員、武田委員、長谷川委員です。
 議題13の「ブトリシラン」は、退室委員なし、議決に参加しない委員は川上委員です。以上でございます。
○森部会長 今の事務局からの御説明について、特段の御意見、御質問等はございますか。よろしければ、皆様の御確認いただいたものといたします。
 本日は審議事項13議題、報告事項2議題、その他の事項1議題となっております。それでは、審議事項の議題に移ります。議題1につきまして、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題1、資料No.1、医薬品モイゼルト軟膏0.3%及び同軟膏1%の製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。タブレットを御覧になる際は、資料No.1のフォルダを開き、★が付いている審査報告書のファイルをお開きください。
 アトピー性皮膚炎に対する基本的な薬物治療は外用療法とされており、ステロイド外用剤、タクロリムス軟膏等に加え、昨年ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤であるデルゴシチニブ軟膏が承認され、使用されています。本薬は、ジファラミストを有効成分とし、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)に対する阻害作用により炎症性サイトカイン等の産生を抑制することで、アトピー性皮膚炎に対して効果を発揮することが期待され、開発に至りました。
 今般、アトピー性皮膚炎患者を対象とした国内臨床試験により、本薬の有効性及び安全性が確認され、医薬品製造販売承認申請がなされました。なお、2021年6月時点において、本剤は海外において承認されていません。本品目の専門の協議では、本日の配布資料No.18に示します専門委員を指名しております。
 以下、本薬の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性に関しては、審査報告書、青字で表記しております通し番号30ページの表37を御覧ください。15歳以上のアトピー性皮膚炎患者を対象とした国内第III相試験の主要評価項目である投与4週後のIGA反応割合について、本薬1%群はプラセボ群に対する優越性が検証されました。
 また、審査報告書、通し番号32ページの表40を御覧ください。2歳以上14歳以下のアトピー性皮膚炎患者を対象とした国内第III相試験の主要評価項目である投与4週後のIGA反応割合について、本薬0.3及び1%群はプラセボ群に対する優越性が検証されました。以上より、機構は、アトピー性皮膚炎患者に対する本剤の有効性は示されたと判断しました。
 安全性に関しては、審査報告書の通し番号37ページ、7.R.2.1の項を御覧ください。プラセボ群と本薬群で有害事象の発現割合等に臨床的に問題となるような違いは認められないことを確認しました。さらに、審査報告書の通し番号40ページ、7.R.2.3の項を御覧ください。本薬の長期投与時の有害事象の発現状況を示しております。投与期間の長期化に伴い、有害事象の発現割合が増加する傾向は認められませんでした。
 続きまして、審査報告書の通し番号42ページ、7.R.2.5の項を御覧ください。皮膚感染症の発現状況について、発現割合はプラセボと比較して明らかに高い傾向はないこと、長期投与時に皮膚感染症の発現が増加する傾向はないこと、重篤な事象や高度な事象は認められなかったことを確認しました。しかしながら、本薬は免疫抑制作用を有することから皮膚感染症のリスクが想定され、臨床試験において、発現割合は高くないものの皮膚感染症の副作用が認められたこと等を踏まえ、添付文書において皮膚感染部位に塗布することを避けるよう注意喚起する必要があると考えました。以上より、機構は、皮膚感染症の発現に注意しながら使用することで、本剤の安全性は許容可能と考えました。
 以上、機構での審査の結果、アトピー性皮膚炎に対する本剤の有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で、本剤は承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。
 なお、本品目は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体は劇薬に該当し、製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しました。薬事分科会では報告を予定しております。機構からの説明は以上になります。御審議どうぞよろしくお願い申し上げます。
○森部会長 ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等がありましたらお願いいたします。
○堀委員 堀ですけれども、私からは、添付文書の1ページにあります特定の背景を有する患者に関する注意の部分について、質問及びお願いをさせていただきたいと思います。1ページを見ていただくと分かるのですが、9-4、生殖能を有するもの、つまり妊娠可能な女性、それから9-5の妊婦、9-6の授乳婦、要するに赤ちゃんに乳をあげているお母さんということなのですけれども、この方たちには、このお薬を控えるよう書いてあると私は理解いたしました。このことに関しまして、患者向けの資材というのは、既にお作りになる御予定はあるのでしょうか。まず、それに対しての御返答をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えさせていただきます。御質問の件につきまして、妊娠可能な女性に対する投与等は資材に分かりやすく記載して情報提供することを計画しております。
○堀委員 ありがとうございます。どうして私がこのことに関してすごく心配しているかをお伝えいたします。アトピー性皮膚炎ですと大体、ステロイド軟膏、ステロイド剤の外用を皆さん使うということは、私たち一般市民も理解しております。でも、ステロイド軟膏の使用に関しては、ここまで厳しい制限が書かれているにも関わらず、そのランクにもよるかと思いますけれども、ステロイドを使用することに慣れてしまっているので、そこまで気にはしないと思うのです。ですからこのお薬に関しては、ここの所にきちんと控えるようにと書いてあるのは、つまりステロイド剤からモイゼルト軟膏に変更した患者さん、特に女性の場合は、自分が妊娠しているかどうかということもある程度のところにいかないと自分では気付かないので、妊娠の可能性のある女性については、特にインフォームドコンセントにおいて、医師からその部分に関してきちんと説明していただきたいと思います。
 もう一点、アトピー性皮膚炎ですが、今までかかったことのない患者さんでも、特に軟膏というのは薬局で一般用医薬品として簡単に購入することに慣れておりますため、軟膏、外用薬から副作用が起きるという危機意識を持っている方はかなり少ないように思っております。ですので、やはりこういう塗り薬であっても、先ほどおっしゃっていたような注意事項というものを守らないと副作用が起きるということをきちんと伝えていただけるよう、特にインフォームドコンセントを担当なさるお医者様にはお願いしたいと思います。私からは以上です。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。御意見いただいた件につきましては、現在、医療従事者向けの資材や患者向けの資材等でも、分かりやすいように記載させていただこうと考えており、強調したりする等、特に注意喚起が必要ということを、現場にも分かりやすく提供するようにさせていただきます。また本日、堀委員から御意見を頂いた点につきまして、しっかりと情報が伝わるように、我々から申請者に改めて申し伝えたいと思います。ありがとうございました。
○堀委員 こちらこそ御丁寧にありがとうございました。私からは以上です。
○森部会長 ありがとうございました。次に、大谷委員から御質問がありますので、お願いいたします。
○大谷委員 大谷でございます。こちらは2規格ありまして、1%と0.3%という規格があるのですが、これは恐らく1%と0.3%というのは全く互換性がなくて、例えば1%を希釈して、0.3%の軟膏の代わりに使うことは多分できないと思うのですが、特にそれに関する記載が添付文書等にはありません。医療現場で例えば0.3%がないときに、では1%を例えば白色ワセリンなどで希釈して、混和して使ってしまえばいいのではないかみたいなことが起きるといけないような気もするのですが、そういった使用上の注意のような注意喚起をしておかなくて大丈夫でしょうか。以上でございます。
○森部会長 いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。委員からの御意見にありましたとおり、我々も、特に0.3%と1%を互換性をもって使うといったところは想定しておりませんので、特段そうしないでくださいという注意喚起はしませんが、そういったことが起こらないということについては重要だと思いますので、何かしら必要な注意喚起ができるかということについて申請者にも確認したいと思います。ありがとうございます。
○大谷委員 ありがとうございます。添付文書にしっかりと書いておけば、そうしたことは起こらないと思いますので、例えば1%軟膏を希釈して0.3%軟膏の代用とすることは、そうしたことでの有効性、安全性は確保されていないみたいな書き方はしておいたほうがいいのかと思いましたので意見を述べさせていただきました。以上でございます。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。他の軟膏剤等の添付文書における注意喚起等もありますので、添付文書への記載をどうすべきかというところについては検討させていただきたいと思います。
○大谷委員 よろしくお願いいたします。
○森部会長 特に外用薬ですと、ほかの薬剤と混合して使用したりすることが実臨床上あるのですけれども、本薬剤は、それは基本的に行わないようにということでしょうか。機構の方、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。他の薬剤と混ぜて使っていいかどうかということは検討されておらず、混合使用を推奨するようなデータはありません。そのため、本剤は他の薬剤と混合せずに御使用いただくということを考えております。
○森部会長 資材等ではそのことは触れられるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 資材等で注意喚起するということまでは考えておりません。
○森部会長 分かりました。宮川委員、どうぞ御質問をお願いします。
○宮川委員 今のことについてもですけれども、ほかの物と混合して使うことは避けたほうがいいということは、やはり注意喚起として入れておいたほうがいいのではないかと思います。部会長のおっしゃるとおりだろうと思います。
 長期投与のことについて教えていただきたいのですが、36、37ページです。有効性についてですが、ステロイド、それからタクロリムスを併用する患者さんが多いので、表50では、純粋に本剤の有効性を捉えていると言えないのではないかと気になっております。治験では前治療として、これは36ページですが、ほとんどがステロイドからの切替えで投与されている試験デザインであったわけです。長期投与の試験では、併用される患者さんがすごく多いわけです。表55では、成人の併用ありというのが125例で、なしが41例、小児の場合には、併用ありが150例、なしが50例という形で、長期投与の場合では併用されている患者さんというのは多く見られたわけです。添付文書では、必要な場合のみ併用可とされているのですが、審査報告書では、長期投与の際の併用の状況がよく分からないので、併用療法のことで少し確認をしたいと思います。既存の薬ですけれども、コレクチムのようなイメージで、なるべく長期投与の場合というのはきちんと想定して表記していくというほうが好ましいのではないかと思いますので、是非ともそれは御回答いただければ幸いと思います。よろしくお願いいたします。
○新薬審査第一部長 ご質問の1点目は他の薬剤と混合しての使用についてでした。院内製剤として様々な工夫がなされている薬剤も多くあると思いますが、院内製剤としての使用について他の薬剤でも添付文書には特に注意内容を反映しておりません。例えば、臨床現場ではやむを得ず錠剤を粉砕して使用することもあると思いますが、販売されている製剤をそのまま使用していただくというのが原則であります。添付文書等には院内製剤化に関する注意喚起を記載していないというのは、この薬剤もそうですし、他の薬剤も同様となっていると考えます。
 ご質問の2点目の長期投与の件ですが、審査報告書に記載している「併用」というのは、この品目のような外用剤では、例えば顔にこの薬剤を塗布し、顔以外の病変部位にはステロイドを塗布している場合もございますので、必ずしも同時に同じ部位に使用している場合だけではないということになります。
 プラセボ対照の臨床試験の場合には、アトピー性皮膚炎の治療に用いられていたステロイド外用剤等は試験の前にウォッシュアウトし、そこからプラセボと本剤の治療効果を比較するという試験設定となっております。したがって、長期投与のときに非常にこの薬剤の効果が落ちて、急にステロイドを塗布するようになっていないと御理解いただければと思います。比較的短期間の二重盲検試験では、ある程度症状が悪化しても患者さんは耐えていただくことになりますけれども、長期投与試験の場合ですと、一部の使用部位で効果が認められにくいとか、もう少し他の部位に使いたいとかということが出てくる時に他の薬剤も併用可能という形式になっております。機構からの説明は以上です。
○宮川委員 はい、了解いたしました。
○森部会長 追加の御発言、御質問はございますか。複数の薬剤を併用して塗布した場合に、薬剤の濃度が変化してしまうおそれがあるわけですけれども、濃度にかなりセンシティブな薬剤であれば、その辺りのことを厳格に規定する必要があります。本薬剤は、治験としては基本的に単剤で使用されている状況だったのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 今回の試験では、基本は重ね塗りということではなくて、本剤のみ投与をしているということになります。
○森部会長 今後、実臨床で使用される場合に、複数の薬剤を同一部位に塗布する、本剤も含めて塗布する場合には、例えば塗布する時間をずらすとか、同時に塗布してよいとか、その辺りの使い方に関するガイドラインや推奨はあるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 現時点で得られているデータから申し上げられることは、本剤を単独で使った場合にどういう効果があったのか、有効性と安全性を評価させていただいたというところでして、どれだけ時間を空ければとか、どういう塗り方をすればということの細かいところまでのデータは、現時点では持ち合わせておりません。
○森部会長 分かりました。できましたら、実臨床でどのように使われて、有効性に対して影響はなかったかということの評価ができたほうが望ましいわけです。では、宮川委員どうぞ。
○宮川委員 今、部会長がおっしゃったとおりです。実臨床において落とし込むという場合には、そういうような懸念はどうしても出てきてしまいます。そこに対する丁寧な書き込みは実臨床の中ではやはり必要であろうと思うのです。しっかりと実臨床の中で間違いなく使用されるということを目指しているという形でお考えいただければいいのかと思います。是非ともその辺のところは御配慮いただければ幸いかと思います。以上でございます。
○新薬審査第一部長 日常診療の中でどういう薬剤と併用されるのかという情報は、市販後のデータの中で収集する計画となっております。ただ、先ほど申しましたように、外用剤ですので、塗布部位によって異なる薬剤を使用することも当然ございます。
 同一病変に薬剤を2回塗布するというケースでは、保湿剤の塗布後にステロイド外用剤を1回塗布するという場合も考えられますが、本剤は1日2回塗布のため、他の薬剤を塗布するまでに一定の間隔を空けるという時間的余裕は余りない薬剤です。重ねて塗布する必要があれば、より強いクラスのステロイド外用剤を中心に切り替えるという使い方になるかと思いますので、異なる薬剤を重ねて塗布した際の有効性は検討されていませんが、安全性の観点からは他の薬剤を重ねて塗布することについて注意喚起するほどのものではないだろうというのが機構の判断でした。
○森部会長 大谷委員、御質問でしょうか、どうぞ。
○大谷委員 はい。今のことに関しまして、結局私も繰り返しになってしまうのですけれども、情報として重ね塗りしたときの情報はないわけですから、そうした意味では、少なくとも情報はないということをきちんと示すということ。希釈した場合も同じという保証は少なくともないので、希釈して同等になるという保証は全くないという情報を提供するだけでも、かなり現場は違うのかと思います。特にこういった薬ですので、物が物ですので、そうした情報提供があれば、それでいいのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 添付文書の臨床成績の項に、今回の試験の中では重層法等は検討していないということを既に情報は提供しております。また、資材でも、臨床試験での投与方法を情報提供しており、一定の情報提供はできるかと考えております。
○大谷委員 希釈に関しても同じだと思います。安易に希釈するということが、医療現場ではステロイドなどでも結構行われているのですが、それはよろしくないので、そういったところも含めて、希釈したときの0.3濃度の同等性も確保されていないというようなことも、やはりあっていいのかと思います。
○医薬品医療機器総合機構 資材等で情報提供できるのかについては検討させていただきたいと思います。御意見ありがとうございました。
○森部会長 続きまして、岡委員より御質問を承ります。
○岡委員 違う問題なのですが、38ページの表52の下にアトピー性皮膚炎の悪化という、「0.3%群では効果不十分による原疾患のアトピー性皮膚炎の悪化に関連した有害事象が」あるというように書かれています。一方で、34ページには、小児でも成人でもアトピー性皮膚炎が副作用として認定されています。副作用ということは、新たにアトピー性皮膚炎が別の場所にできたというような解釈をしてよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。今回のアトピー性皮膚炎の有害事象、副作用等については、原疾患が悪化したということがメインかと思います。治験を担当された先生が、因果関係がないと判断されたのか、ないと判断できなかったのかということで、有害事象とするのか副作用とするのかを決めたものと考えております。
○岡委員 副作用という表現を使いますと、効きが悪くて悪化していくという感じではなくて、新たに引き起こすというように普通は読めてしまうような気がするのですけれども。
○新薬審査第一部長 治験中に患者に起こってきた好ましくない反応が「有害事象」とされ、そのうち薬剤との因果関係が否定できないものが「副作用」となります。薬剤の塗布中に塗布部位の病勢が悪化した場合には、塗布部位でもあり、かつ全身性の作用も有していることから因果関係を完全に否定できないということで「副作用」という扱いになっているケースもあると考えております。
○岡委員 ということは、薬剤誘発性のほかの皮膚炎とは区別できるということでよろしいでしょうか。
○新薬審査第一部長 薬剤との因果関係は治験担当医師と治験依頼者によりそれぞれ判断され、副作用名はMedDRAの用語集を用いてここの表には記載しております。
○岡委員 分かりました。
○森部会長 よろしいでしょうか。
○岡委員 はい。
○森部会長 臨床試験で有害事象を収集なさる際に、特に皮膚領域の有害事象につきましては、原病部が悪化している状態なのか、他部位に新出したのかということについては、やはり分けて御判断いただくことが将来的な有効性や副作用の判断に大変重要になりますので、治験デザインという上でも、今後御配慮いただければと思っています。岡委員、御質問どうもありがとうございました。それでは、そのほかの御質問はよろしいでしょうか。
 では、議決に移らせていただきます。なお、大谷委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への御参加を御遠慮いただくことになっております。それでは、本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題2に移らせていただきます。御準備がよろしければ、議題2につきまして、機構から概要の説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題2、資料No.2、医薬品ヒュミラ皮下注20mgシリンジ0.2mL他の製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明いたします。
 本薬は、ヒトTNF-αに対するモノクロナール抗体であり、本邦では2008年4月に関節リウマチに係る効能・効果で承認されて以降、クローン病や潰瘍性大腸炎等の効能・効果で承認されています。潰瘍性大腸炎に対しては2013年6月に承認されており、成人における維持用量は40mgの隔週投与とされています。今般、潰瘍性大腸炎患者を対象とした臨床試験に基づき、成人の維持用量及び小児の用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。
 なお、海外において、2021年6月現在、本薬は100以上の国又は地域で承認されており、このうち成人潰瘍性大腸炎に対する40mg週1回投与と80mg隔週投与はいずれも50以上の国又は地域で、また、小児潰瘍性大腸炎に対する用法・用量は15の国又は地域で承認されています。本品目の専門協議では、本日の配布資料No.18に示す専門委員を指名しています。
 以下、本薬の有効性、安全性について、臨床試験成績を中心に説明いたします。なお、今回提出された成人潰瘍性大腸炎患者及び小児潰瘍性大腸炎患者を対象とした臨床試験は、いずれも日本が参加を検討した時点で治験実施計画書の内容を海外規制当局と合意済みであり、症例数等の試験計画の内容を変更することができなかったため、海外で実施された主試験と呼称される試験とは別に、日本ではサブ試験と呼称される試験として実施され、主試験及び日本サブ試験の結果が提出されました。
 成人における有効性について、審査報告書、通し番号16ページの表15を御覧ください。維持期の主要評価項目である「投与8週時に改善例となり、かつ投与52週時に寛解を達成した被験者の割合」について、主試験では週1回投与群の隔週投与群に対する統計学的有意差は示されませんでした。一方、審査報告書、通し番号17ページの表17に示すように、日本サブ試験では主たる解析集団である統合ITT集団で、週1回投与群の隔週投与群に対する統計学的有意差が認められました。以上の試験結果や、海外において維持期の40mg週1回投与と80mg隔週投与が承認されていること等を踏まえると、国内でも成人潰瘍性大腸炎患者における維持期の本薬40mg週1回投与の有効性は期待できると判断しました。
 小児における有効性について、審査報告書、通し番号24ページの表27を御覧ください。主試験において、主要評価項目である「投与8週時に寛解を達成した被験者の割合」について、導入期高用量群と導入期標準用量群の併合群、導入期高用量群で事前に規定された閾値有効率と比較して統計学的に有意な差が認められました。続いて、同じページの表28を御覧ください。もう一つの主要評価項目である「投与8週時に改善例となり、かつ投与52週時に寛解を達成した被験者の割合」について、維持期高用量群と維持期標準用量群の併合群、維持期高用量群で事前に規定された閾値有効率と比較して統計学的に有意な差が認められました。
 また、審査報告書、通し番号25ページの表29及び表30に示しますように、日本サブ試験においても主試験と同様の結果が得られています。
 以上の試験結果から、小児潰瘍性大腸炎患者における導入期及び維持期の有効性は期待できると判断しました。なお、用法・用量は、これらの試験成績に加え、申請者が実施した薬物動態シミュレーションの結果も踏まえて設定されています。
 安全性について、審査報告書、通し番号32~36ページに記載しています。臨床試験で認められた事象はいずれも、本邦における本薬の現行の添付文書で注意喚起されている既知の事象であり、潰瘍性大腸炎に対する既承認の用法・用量と比較して安全性プロファイルが大きく異なる傾向は認められていないことから、新たな安全対策は不要と判断しました。
 以上の審査の結果、成人の既存治療で効果不十分な中等症又は重症の潰瘍性大腸炎に対する維持期の増量時の有効性、及び小児の既存治療で効果不十分な中等症又は重症の潰瘍性大腸炎に対する有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、機構は、本申請を承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。本申請は、小児に係る用法・用量の追加を含む新用量医薬品としての申請であることから、小児に係る用法・用量の再審査期間を4年と設定することが適切と判断しました。薬事分科会では報告を予定しています。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等がありましたらお願いいたします。特段御質問はありませんか。よろしいでしょうか。
 では、議決に移らせていただいてよろしいでしょうか。それでは、議決に入ります。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようですので、承認を可として、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて議題3に移ります。議題3につきまして、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 審議事項議題3、医薬品イムブルビカカプセル140mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否について、機構より御説明いたします。資料については、資料No.3、イムブルビカカプセル140mgの審査報告書を御覧ください。
 造血幹細胞移植後に生じる移植片対宿主病(GVHD)は、移植関連死の主な要因の一つです。GVHDは、病理組織学的所見や臨床徴候により、急性GVHDと慢性GVHDに分類されます。慢性GVHDを発症した患者における死亡率(原疾患の再発による死亡は除く)は発生後1年時点で21%、5年時点で31%と報告されています。また、慢性GVHDの重症度に応じて死亡リスクが上昇し、重症の慢性GVHD患者における生存期間の中央値は30か月と予後不良であることが報告されています。
 現在、本邦において、慢性GVHDの一次治療としてステロイド及びカルシニューリン阻害剤が標準的治療として推奨されていますが、約半数の患者では一次治療で十分な効果が得られず、二次治療が必要となります。しかしながら、現時点で慢性GVHDに対する二次治療は確立していません。
 本薬は低分子の経口ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤であり、慢性GVHDの発症に関与することが示唆されるB細胞の活性化を阻害することから、慢性GVHDに対する有効性が期待されました。以上を踏まえ、申請者は、ステロイド依存性又は抵抗性の慢性GVHD患者を対象とした海外第I/II相試験(1129試験)、国内第III相試験(3001試験)等を実施し、これらの試験において、本薬の有効性及び安全性が確認できたとして、医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請を行いました。
 なお、本薬は、「造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病」を予定される効能・効果として、当部会での御審議を経て令和2年12月25日付けで希少疾病用医薬品に指定されています。
 海外での承認状況について、本薬は2021年6月現在、慢性GVHDの二次治療に係る効能・効果で米国を含む29か国で承認されています。本品目の専門協議では、本日の配布資料No.18に示す専門委員を指名しています。
 以下、本薬の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明いたします。有効性については、審査報告書の通し番号32ページ、表28を御覧ください。ステロイド依存性又は抵抗性の慢性GVHD患者を対象とした海外第I/II相試験(1129試験)が非盲検非対照試験として実施されました。主要評価項目である全奏効率は66.7%であり、95%信頼区間の下限値は50.5と、事前に設定された閾値25%を上回りました。
 続いて、審査報告書の通し番号33ページ、表29を御覧ください。本邦においても、1129試験を参考に、ステロイド依存性又は抵抗性の慢性GVHD患者を対象とした国内第III相試験(3001試験)が実施されました。主要評価項目である全奏効率は73.7%であり、95%信頼区間の下限値は48.8で、事前に設定された閾値25%を上回りました。
 以上より、機構は、いずれの試験においても全奏効率の95%信頼区間の下限値は、事前に設定された閾値を上回ったことから、ステロイド依存性又は抵抗性の慢性GVHDに対する本薬の有効性は示唆されたと考えました。
 安全性に関しては、審査報告書の通し番号35ページ、表32及び表33を御覧ください。ステロイド依存性又は抵抗性の慢性GVHDに対する本薬の安全性を評価するに当たり、有効性を評価した2試験(1129試験及び3001試験)では症例数が限られていることから、両試験に加え、未治療又は1種類以上の全身治療で効果不十分な慢性GVHD患者を対象とした海外第I/II相試験(1146試験)及び未治療の慢性GVHD患者を対象とした国際共同第III相試験(1140試験)についても確認しました。
 1129試験、3001試験及び1146試験について、全有害事象の発現状況はおおむね同様でした。一方、死亡及び重篤な副作用の発現割合は、海外試験である1129試験及び1146試験よりも国内試験である3001試験で高い傾向が認められましたが、本薬の投与期間、慢性GVHDの罹患期間等が影響したものと考えられました。また、3001試験で認められた有害事象は、感染症等、本薬の既知の副作用又は慢性GVHDに伴う症状として知られている事象でした。未治療の慢性GVHD患者を対象とした1140試験について、プラセボ群に対し本薬群で死亡に至った有害事象、重篤な副作用等の発現割合が高い傾向が認められましたが、認められた事象の大半は感染症、出血等の既知の事象でした。
 以上より、機構は、臨床試験で認められた有害事象は、本薬の既知の安全性プロファイルと同様又は慢性GVHDに伴う症状によるものと確認できたことから、本薬をステロイド剤で効果不十分な慢性GVHD患者に投与する場合の安全性については、造血幹細胞移植に対して十分な知識と経験を持つ医師が、現行の添付文書における注意喚起に基づいて使用することを前提として、許容可能と判断しました。
 なお、既存の医薬品リスク管理計画で安全性検討事項とされている出血関連事象、過敏症、感染症、血球減少症、二次性悪性腫瘍等については、引き続き今回の製造販売後調査においても情報収集は必要と考えます。また、本薬の投与対象のうち、12歳以上15歳未満の患者については、臨床試験における被験者数が非常に限られていたことから、当該患者における安全性及び有効性についても製造販売後調査にて情報収集が必要と考えています。
 最後に、本薬の添付文書を御覧ください。本薬はCYP3Aにより代謝されることから、CYP3A阻害作用を有する薬剤について注意喚起をしており、禁忌の項においては、クライスロマイシン、ケトコナゾール及びイトラコナゾールと併用しないよう規定しています。また、用法・用量に関連する注意の項においては、ボリコナゾールと併用する場合には本薬280mg、ポサコナゾールと併用する場合には本薬140mgを、それぞれ1日1回経口投与するよう注意喚起しました。ボリコナゾール併用時の本薬の用量は、既承認の効能での用量(140mg)より高くなります。
 機構の専門協議において、ボリコナゾール併用時の本薬の用量280mgに安全性の懸念がないか専門委員より御意見がありましたので、当該規定の背景を含め簡単に説明いたします。一般的に、慢性GVHD患者は感染症の発現リスクが高く、日常診療において感染症をコントロールしながら慢性GVHDの治療を継続していることから、慢性GVHD治療の観点からは安全性に問題がないと考えられる用量で本薬を投与することが重要と考えられます。このような理由も踏まえ、慢性GVHDに係る第III相試験を実施する段階で、ボリコナゾール併用時の本薬の用量は280mgと設定されました。第III相試験の結果、ボリコナゾール併用例でも有効性及び安全性が確認されたこと、慢性GVHDに対して本薬が承認されている米国等の海外においてもボリコナゾール併用時の本薬用量は280mgとされており、これまでに安全性の問題は認められていないこと等を踏まえ、本邦においても、慢性GVHD患者に対してボリコナゾールを併用する際の本薬の用量を280mgと設定することは差し支えないと判断しました。
 なお、製造販売後調査において、CYP3A阻害作用を有する薬剤を併用した場合の本薬の用量と有害事象の発現状況を調査するとともに、ボリコナゾール併用時の本薬の用量が適応疾患で異なることや、CYP3A阻害作用を有する薬剤との併用時の本薬の用量に関して、資材等を用いて医療現場に適切に情報提供をする予定です。
 以上、機構での審査の結果、ステロイド剤で効果不十分な造血幹細胞移植後の慢性GVHDに対する本薬の有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。なお、本申請に係る本薬の再審査期間は、追加される効能が希少疾病用医薬品に指定されていることから、10年間と設定することが適切と判断しました。薬事分科会では報告を予定しています。
 最後になりますが、審査報告書に誤記載があったので、医薬品審査管理課より追加送付いただいた修正表のとおり訂正させていただきます。本修正について、審査への影響がないことは確認しています。機構からの説明は以上です。御審議どうぞよろしくお願いします。
○森部会長 ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等ありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。特に御不明点はありませんか。
 では、議決に移らせていただきます。なお、大森委員、長谷川委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくこととなっています。それでは、本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。特に御意義がないようですので、承認を可として、薬事分科会に報告させていただきます。ありがとうございました。
 続いて議題4に移ります。準備ができましたら、議題4について機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題4、資料No.4、医薬品ラパリムス錠1mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明いたします。
 リンパ管疾患は、リンパ管の形成異常を呈する疾患であり、主に小児期に発症し、疼痛、潰瘍、患肢の成長異常、機能障害、整容上の問題等を来します。現在、本邦においてリンパ管疾患に係る適応を有する医薬品は承認されておらず、根本的な治療は確立していません。本薬は、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質阻害薬であり、本邦において経口剤がリンパ脈管筋腫症、外用剤が結節性硬化症に伴う皮膚病変に係る適応で、それぞれ承認されています。
 今般、難治性リンパ管疾患患者を対象とした医師主導治験が実施され、本薬の有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。本薬は、難治性リンパ管疾患を含む「難治性脈管腫瘍・脈管奇形」を予定される効能・効果として、当部会での御審議を経て、令和2年11月25日付けで希少疾病用医薬品に指定されています。
 なお、海外において、本薬は2021年3月現在、109の国又は地域で承認されていますが、リンパ管疾患に係る適応で承認されている国又は地域はありません。本品目の専門協議では、本日の配布資料No.18に示します専門委員を指名しています。
 以下、本薬の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明いたします。有効性について、審査報告書の通し番号12ページの表9を御覧ください。難治性リンパ管疾患患者を対象とした医師主導治験として、非盲検非対照試験が実施されました。主要評価項目である投与52週後又は中止時の標的病変の奏効率は54.5%であり、95%信頼区間の下限が事前に規定した閾値である5%を上回りました。以上より、難治性リンパ管疾患患者における本薬の有効性は期待できると判断しました。
 安全性について、審査報告書の通し番号の15~19ページに記載しています。医師主導治験での検討症例数は限られていますが、認められた安全性プロファイルからは新たなリスクは検出されておらず、リンパ管疾患を含む脈管腫瘍・脈管奇形の診断や治療に精通し、本薬の作用とリスクを十分に理解した医師が使用することを前提として、本薬の安全性は許容可能と判断しました。
 なお、国内での治験症例数が極めて限られていることから、製造販売後に全症例を対象とした使用成績調査を実施し、本薬投与時の安全性情報等を収集する必要があると考えました。
 以上の審査の結果、難治性リンパ管疾患に対する本薬の有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、機構は本申請を承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。本薬は難治性リンパ管疾患を含む「難治性脈管腫瘍・脈管奇形」を予定される効能・効果として希少疾病用医薬品に指定されていることから、本申請に係る効能・効果の再審査期間は10年と設定することが適切と判断しました。薬事分科会では報告を予定しています。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問等がございましたら、お願いいたします。代田委員、どうぞ。
○代田委員 医師主導治験で極めて少ない症例で行われていますが、例数の設定の根拠と、劇的に効いているようですが、どういうエンドポイントであったかをもう一回教えていただけますでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。症例数の設定根拠については、通し番号の11ページの脚注の10に記載しております。期待される奏効率を50%と仮定して、奏効率の95%信頼区間の下限値が閾値である5%を上回ることを検出力90%のもとで保証する例数は9例と算出され、中止等の可能性も踏まえて10例と設定されました。結果としては、11例が組み入れられたということになります。
 続きまして、主要評価項目ですが、こちらは病変が縮小したかを評価していまして、抗がん剤のがんが縮小したかどうかの評価を参考としており、病変の消失や、ベースラインからの減少に関しても、審査報告書の12ページの表8に治療効果判定についての表に記載しております。
○代田委員 これは視覚的な判定なのですか。
○医薬品医療機器総合機構 MRIによる中央判定で判定しております。
○代田委員 分かりました。ありがとうございます。
○森部会長 部分奏効に関しても、治療後の体積が20%減少しているという基準が明確に決まっているのですね。確認できました。それでは、宮川委員から御質問いかがでしょうか。
○宮川委員 今のお話にありましたように、これは超希少疾病であり指定難病であるということから非盲検非対照試験ということで、治験デザインがこのようになり、症例数も少ないということは了解しています。承認条件が27/28ページにあって、使用成績調査を全例でするということですが、もう少し踏み込んで、調査をするというよりも、何かしらの比較試験というものができるのかどうか、非常に難しいとは思うのですが、お聞きしたいと思います。
○新薬審査第一部長 調査の内容については、通し番号の27ページの表20に記載しております。予定としては、125例を登録して2年間観察するところです。主な調査項目については、こちらの表に示しているものとなります。
 何らかの比較のデータが取れないものかという御意見も頂いておりますが、本薬が承認されて使用可能な状況となったときには、ほかに治療薬がない領域ですから、ほぼ本薬が使われるということも想定されますので、比較する相手方のデータを得にくいというところもあります。また、過去の治療成績データを利用するに当たっても、恐らく様々な施設でいろいろな治療法が検討されている可能性があり、比較対照としての利用可能性は多少難しいのではないかという印象を持っています。
○宮川委員 ありがとうございます。先ほど代田先生からお尋ねがあったように、奏効率の95%信頼区間の下限値の5%の妥当性というところが、11ページの下に書いてある言葉で了解するのですが、「期待奏効率を50%と仮定し」と、その仮定がどのような意味合いで50%と仮定値したのかということについてお聞きしたいと思います。さらにそういうようなことが想定されるのであれば、表20のようなところを含めて、奏効率がどのようになったのか、50%に設定したようなことがあるのだとすれば、臨床試験と合致するところをきちんと調べるという形で書き込みが必要なのかどうかについてお聞きしたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。奏効率については、この医師主導治験が行われる前に、臨床研究等、国内外でシロリムスをこの疾患に使用して有効であったという報告が複数ありましたので、そういった情報も踏まえて50%と設定されたものと思います。
 閾値の5%については、全国調査がこの疾患について過去に行われておりまして、自然経過で改善した症例がほとんどなかったということで、5%という設定になっております。
○宮川委員 その50%というのが、60数%ではなくて、55%ではなくて、50%になったという根拠というのが非常に分かりにくいので、50%の根拠というのが、なぜそういうことになったのかということは、今までの臨床試験でそういうデータが出ているのであれば、そのデータの根拠の数値が50%だったのかどうかを教えていただければ幸いです。
○新薬審査第一部長 臨床研究の成績について、詳しいデータを探すお時間を頂ければと思います。
○宮川委員 これは希少疾病ですので、大体60%程度なのかと思ったのですが、それを50%と書いてあるのが少し甘めなのかと、よく分からなかったので、その辺はデータがあったら、後でいいのできちんと出してください。
○新薬審査第一部長 期待有効率を60%と推定した場合には、恐らくもっと症例数が少なくなると思います。
○森部会長 パブリケーション・バイアスもありますので、症例報告のベースから有効率の推定は難しいかと思いますけれども、今回の臨床試験の成績が今後の全例調査の基本になるわけですし、全例調査を徹底して行っていただくことが大変重要で、この希少疾患の方々の健康状態に大きく関わってまいりますので、調査徹底について、是非お願いしたいと思っています。では、長谷川委員から御質問をお願いします。
○長谷川委員 11ページの表、主な選択基準・除外基準の一つ目に「体表面積が0.6㎡以上で錠剤が内服可能となっておりますが、15ページの表14の患者背景を見ると、年齢は「3歳~5歳」という欄がございます。実際に錠剤が内服できたのかどうなのかということと、もし飲めなかった場合に粉砕してどうなのかというのを教えていただけないでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 試験では錠剤が飲めるお子様が組み入れられていますので、錠剤が飲めない方は、残念ながら臨床試験には登録できなかったということになります。先ほどの議題1と似ているのですが、この薬は錠剤のままで飲んでいただくというのが基本中の基本ですので、粉砕といったような投与は推奨できないということになります。
○長谷川委員 ありがとうございました。
○医薬品医療機器総合機構 先ほど御質問いただいた奏効率の仮定の50%の根拠について御説明してもよろしいでしょうか。
○森部会長 はい、お願いします。
○医薬品医療機器総合機構 国内における臨床研究において、投与後1年後の奏効率が15例中10例の66.7%であり、そのうち錠剤が内服できないと考えられる低年齢の患者を除いた結果、奏効率が8例中4例の50%であったことから、医師主導治験では奏効率の期待値は50%と設定されました。
○森部会長 ありがとうございました。宮川委員、いかがでしょうか。
○宮川委員 了解いたしました。ありがとうございました。
○森部会長 そのほか、委員の先生から御質問はございますか。よろしいでしょうか。
 では、議決に入ります。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がございませんようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題5に移ります。議題5について、機構から概要の説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 議題5、資料No.5、医薬品ネクスビアザイム点滴静注用100mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。
 本剤はアルグルコシダーゼアルファ(遺伝子組換え)の糖鎖改変体であるアバルグルコシダーゼアルファ(遺伝子組換え)を有効成分とするポンペ病に対する静脈内投与用製剤です。常染色体劣性遺伝性疾患であるポンペ病は、リソソーム中のグリコーゲン分解酵素である酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の遺伝的欠損又は活性低下に起因し、グリコーゲンが心筋、肝、骨格筋等のリソソーム内に蓄積する疾患です。本疾患は乳児期に早期に発症する乳児型ポンペ病(IOPD)と乳児期以降に発症する遅発型ポンペ病(LOPD)に分類され、IOPDでは心肥大、肝腫大、筋力低下を呈し、無治療の場合は、生後1年以内に死に至ることが報告されています。LOPDでは症例ごとに多様な経過をたどりますが、典型的な初期症状は下肢の筋力低下であり、また、呼吸機能障害、運動不耐性等も認められます。
 現在、本邦におけるポンペ病に対する治療薬として、酵素補充療法として用いられる遺伝子組換えGAA製剤であるアルグルコシダーゼアルファが、2007年4月に承認されています。本剤はGAA酵素分子のマンノース6リン酸の含量を増加させることにより、アルグルコシダーゼアルファと比較して、酵素分子の細胞内への取込みを向上させた製剤です。
 本邦におけるポンペ病患者数については、2013年~2016年に実施された全国疫学調査に基づくと134例と推計されており、本剤は当部会での御審議を経て、希少疾病用医薬品に指定されています。本剤は2021年7月に、欧州において承認勧告がなされており、2021年8月に米国において承認されています。本品目の専門協議では、資料No.18に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。
 以下、本品目の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性について、審査報告書の30ページの表30を御覧ください。アルグルコシダーゼアルファで未治療のLOPD患者を対象とし、アルグルコシダーゼアルファを対照薬とした無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されました。その結果、努力肺活量の予測値に対する比率のベースラインから投与49週時までの変化量について、アルグルコシダーゼアルファ群に対する非劣性が示されました。
 続いて、審査報告書の35ページの表38を御覧ください。アルグルコシダーゼアルファを投与しても臨床的悪化又は臨床反応が不十分だったIOPD患者を対象とした非盲検試験が実施されました。その結果、アルグルコシダーゼアルファ投与でも症状が悪化した患者を対象とした第1期では、IOPDに対する臨床推奨用量である本剤40mg/kgの投与により、QMFT総スコア、6分間歩行距離等の運動機能に関する評価項目について、ベースライン時に比較して改善する傾向が認められております。また、アルグルコシダーゼアルファでは臨床反応が不十分だったIOPD患者を対象とした第2期においても、運動機能に関する評価項目について、ベースライン時に比較して改善傾向が認められ、6分間歩行距離や、IPFD、MRD-1等の眼瞼挙筋機能に関する評価項目については、アルグルコシダーゼアルファ群と比較して有効性が大きい傾向が認められました。
 続いて、安全性について審査報告書の42ページの表46を御覧ください。LOPD患者及びIOPD患者を対象とした臨床試験における有害事象の発現状況を示しています。本剤の臨床試験で認められた主な有害事象は、投与関連事象であるIARであり、本剤の安全性プロファイルについて、アルグルコシダーゼアルファと大きく異なる結果は認められませんでした。
 以上のとおり、機構での審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。本剤は希少疾病用医薬品であることから再審査期間は10年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○森部会長 委員の先生方から御質問をお願いいたします。特にございませんでしょうか。よろしいでしょうか。特段、御質問はございませんようですので、議決に移らせていただきます。なお、川上委員においては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議はございませんようですので、承認を可とさせていただき、薬事分科会に報告させていただきます。
 それでは、議題6に移らせていただきます。議題6について、機構から概要の説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題6、資料No.6、医薬品アジルバ錠10mg他3品目について、機構より説明させていただきます。紙資料は資料No.6の審査報告書を御覧ください。タブレットで御覧になる場合は、資料No.6のフォルダを開き、★の付いている審査報告書ファイルをお開きください。
 審査報告書の一番下、全42ページの通し番号で5ページ、1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。本剤はアンジオテンシンII受容体拮抗薬であるアジルサルタンを有効成分とする高血圧症の治療薬であり、本邦において、2012年に高血圧症を効能・効果として承認されています。海外では本剤は開発されていませんが、アジルサルタンのプロドラック体であるTAK-491が高血圧症に対する適応で、2011年に米国で承認されて以降、2021年6月現在、欧米を含む40以上の国又は地域で承認されています。
 今般、国内臨床試験成績を基に、高血圧症の効能・効果に、6歳以上の小児での用法・用量を設定する医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。海外では、TAK-491について、小児の用法・用量が承認されている国又は地域はありませんが、現在、小児の高血圧症に係る開発がなされています。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。審査報告書の通し番号の16ページの表8を御覧ください。本剤の小児を対象とした開発では、成人を対象とした臨床試験で本剤の有効性が検証されていること、高血圧症の病態生理は小児と成人で同様と考えられる一方で、小児の高血圧症患者数は成人と比べて格段に少ないことなどから、成人で有効性が示された血中薬物濃度を目標に、小児での用法・用量を設定し、実施可能な規模で日本人小児を対象とした非対照試験を実施するとともに、外国人小児を対象に実施されたTAK-491のプラセボ対照試験の成績も利用することにより、日本人小児での本剤の有効性及び安全性を説明する開発方針が取られました。
 臨床試験成績について、審査報告書の通し番号の17ページを御覧ください。6歳以上の日本人小児の高血圧症患者27例を対象とした国内第III相試験が実施され、審査報告書の通し番号の18ページの表9に示すように、体重区分別に規定された用量で漸増投与されました。そのときの有効性について、審査報告書の通し番号の19ページの表10に示しました。投与12週である治療期第1期終了時における診察室トラフ時座位拡張期血圧(DBP)及び収縮期血圧(SBP)は、いずれもベースラインより改善し、この効果は投与52週である治療期第2期終了時まで継続しました。
 次に、審査報告書の通し番号の22ページを御覧ください。6歳以上の外国人小児の高血圧症患者を対象としたTAK-491の海外第III相試験が実施され、審査報告書の通し番号の22ページの表14及び23ページの表16に示すように、診察室トラフ時座位DBP及びSBPの投与6週から投与8週までの変化量について、プラセボ群と比較して、TAK-491群で有意な降圧効果が示されました。
 また、国内外の第III相試験の投与4週における診察室トラフ時座位DBP及びSBPのベースラインからの変化量について、審査報告書の通し番号の30ページの表23に示しました。試験デザインの異なる国内外の臨床試験の結果の比較には限界がありますが、国内外で大きな差は認められませんでした。これらの検討結果より、6歳以上の日本人小児の高血圧症患者における本剤の有効性は示されていると判断しました。
 続いて、安全性について御説明いたします。審査報告書の通し番号の31ページから記載している7.R.3、安全性についての項を御覧ください。本剤及びTAK-491の国内外の臨床試験で、6歳以上の小児の高血圧症患者に多く認められた事象は、いずれも成人で同様に報告されていること、本剤及びTAK-491の国内外の製造販売後に得られた安全性情報において新たな懸念は示されていないことなどから、現時点では、6歳以上の小児の高血圧症患者で、成人よりも安全性の懸念が増大する傾向は示されていないと判断しております。
 なお、審査報告書の通し番号の36ページ、7.R.6、6歳未満の患者に対する本薬の開発についての項に示すように、2歳以上6歳未満の高血圧症患者を対象とした臨床試験は、現在実施しているところです。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本申請は新用量医薬品及び剤形追加に係る申請であることから、本申請に係る効能・効果の再審査期間は4年、アジルバ顆粒1%については、製剤は生物学的由来製品及び特定生物由来製品並びに毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から、御質問、御意見がございましたらお願いいたします。
○代田委員 代田ですが、よろしいでしょうか。
○森部会長 代田委員、お願いします。
○代田委員 小児の高血圧症に対しての有効性、安全性はある程度示されていると思いますが、そのほかの降圧剤を含めて、小児の高血圧の治療体系の中でこれがどういう位置付けになるかという点について、少し情報を頂ければと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。本剤はARBですので、既承認の小児に対する適応を有しているARBと同様の位置付けで使われるものと考えております。本剤は、やや降圧効果が強い薬剤になりますので、血圧の状況を見ながら選択していただくことになるかと考えております。
○医薬品医療機器総合機構 補足いたします。用法・用量にも規定されているとおり、小児の対象としては6歳以上となります。既承認の小児に使用可能な降圧剤は対象となる年齢の範囲が薬剤ごとに異なっているところもありますので、本剤に関しては6歳以上に使用されるということと、顆粒製剤がありますので、そういった、ある程度小児の投与に適した剤形がきちんと開発された薬剤ということも考慮されて選択されると考えております。
○代田委員 ありがとうございました。
○森部会長 続きまして、堀委員から御質問を承ります。
○堀委員 薬の推奨について、質問と意見がございます。審査報告書の通し番号39/42ページを御覧ください。上から9行目の「なお」の以下を読ませていただきます。「専門委員より、顆粒剤により本薬5mgを投与可能であるが、小児の服薬アドヒアランスの観点からは剤形の選択肢が多いことが望ましく、今後、医療現場での必要性に応じて5mg錠が医療現場に提供されることが期待されるとの意見が出された」と書いてあります。このことに関しては、今後御検討いただけるのでしょうか。お尋ねいたします。
○医薬品医療機器総合機構 ご意見いただいた部分については、申請者にもこういった臨床からの御意見があることは伝えておりまして、企業でも検討いただいているところです。また、顆粒剤もありまして、本剤5mgを投与できる剤形がないというわけではありませんので、今後、医療現場でのニーズの状況を情報収集しまして、状況に応じて、実際に5mgの錠剤の剤形追加の承認申請も検討していくという説明を受けています。
○堀委員 ありがとうございます。今、小児のために顆粒剤が作られたというように私は理解しているのですが、実際に子供に薬を飲ませる母親の立場からお伝えしますと、6歳ですと、どちらかというと顆粒剤よりは錠剤の方が飲みやすいと思います。というのは、今の食生活において、顆粒のものを6歳の子供が口にするということが余りないので、現場、特に私たち家庭でも、もし顆粒のものを服用させる際には、必ずカプセルに入れる、又は食べ物に混ぜるなど、そうした工夫をしているという話を聞きますし、現に私もそうしておりました。ですので、割り線が入った5mgの錠剤を作っていただくほうが、6歳以上であれば子供は飲みやすいと思いました。
 また、顆粒剤ですと、口の中に入れたときに味覚が錠剤よりも非常に早く子供に伝わってきて、口に入れた途端に吐き出してしまうようなことが顆粒剤には多くあったと思います。顆粒剤はどちらかというと高齢者、飲み込みがしづらいような高齢者といった方がお飲みになるのに適しているので、この顆粒剤に関して、ここで作っていただいたことは大変喜ばしいことかと思うのですが、6歳以上の子供が飲むという現場の声をもう少し聞いていただいて、是非検討いただければ幸いだと思います。
 1点質問なのですが、このように6歳の子には、顆粒剤を2.5mgとか5mgですと、今は顆粒剤しかないので飲ませることになるのですが、何かに混ぜて飲ませても大丈夫なのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。本剤について、まず味についてなのですが、特に苦味などはなく、フレーバーも付いていない甘い顆粒というものでございます。ですので、口に入れた途端に吐き出すという懸念は少なめの製剤設計になっているかと思われます。
 混ぜることに関してですが、例えば本剤をオレンジジュースのような酸性の飲料と混ぜた場合でも、苦味が出る懸念はないと聞いております。
○堀委員 ありがとうございます。私ども患者にとっては、薬は患者のためにあるものだと私は思っています。ですので、患者が飲まなければ、どんなにいい薬が出たとしても、それは患者には効力は出ないと思いますので、是非患者が飲みやすいような形状のものをご検討ください、私たち母親にとっては今の情報はとても大切な情報だと思いますので、是非それも含めた上で各医療現場に伝えていただければ幸いです。
○森部会長 お子様の嗜好やタイプによっても選べるようになっていたほうがいいということですね。是非ご検討をお願いします。宮川委員、どうぞ。
○宮川委員 今の堀委員に少し答える形になるのかもしれませんが、実際にアジルサルタンの前から販売されているカンデサルタンというのがありまして、カンデサルタンは実際には2mg、4mg、8mg、12mgとありまして、8mgが成人用量ですが、2mgがありますので、実際には錠剤という形になれば、それが同系統のARBとなりますので、顆粒でなくても十分にいけるのではないかと思っています。
 それから、ARBはもともとすごく苦いのです。私は粉にして服用してもらったことがあるのですが、とても苦くて駄目で、それで2mgを作っていただいたという経緯があります。ですから、2mg錠剤がカンデサルタンであるので、実臨床の中では、そのように転用していくことができるのではないかと思っていて、今、堀委員がおっしゃったように、高齢者に向けていろいろな施策を製薬会社がしているのかと慮っております。堀委員に対するお答えではないのですが、情報としてお話させていただきました。
 それから質問なのですが、実際には高血圧の患者さん、この中では本態性高血圧と二次性高血圧を含めた形で検討されているとなっていますが、血圧の降下の度合は、実際には表25のように本態性高血圧と二次性高血圧を分けて考えているのですが、そのほかのいろいろな副作用の問題や様々なパラメータに関して、本態性高血圧と二次性高血圧の違いがあるのかどうか、是非教えていただければと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。先生がおっしゃったように、有効性については、先ほど御紹介いただいた表のとおりでして、安全性や薬物動態の方も本態性か二次性かなどで検討はしておりますが、特に違いは見られていないことを確認しております。
○宮川委員 分かりました。二次性の場合ですと、カリウムを含めてですが、非常にパラメータが動きやすいので、同じであれば結構なのですが、違いがあれば心配だったものですからお聞きいたしました。
○森部会長 そのほかに御質問、御意見はございますか。よろしいでしょうか。では、議決に移らせていただきます。なお、大森委員、川上委員、武田委員、長谷川委員、宮川委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。
 では、本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がございませんようですので、承認を可とし、薬事分科会で報告させていただきます。また、複数の委員から、用量や剤形については要望があったことについても、併せて付記しておきたいと思います。ありがとうございました。
 では、続いて議題7に移ります。議題7について、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題7、資料No.7、医薬品エンレスト錠100mg及び同錠200mgについて、機構より御説明いたします。紙資料は資料No.7の審査報告書を御覧ください。タブレットで御覧になる場合は資料No.7のフォルダを開き、★の付いている審査報告書ファイルをお開きください。
 審査報告書の一番下の通し番号5/47、起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。本剤の有効成分であるサクビトリルバルサルタンナトリウム水和物は、経口投与後速やかにサクビトリルとバルサルタンに解離し、サクビトリルによるネプリライシン阻害作用とバルサルタンによるアンジオテンシンII受容体拮抗作用により、ナトリウム排泄作用、利尿作用、血管拡張作用などを発揮する薬剤です。今般、国内臨床試験成績を基に、本剤に高血圧症の効能・効果及び用法・用量を追加する医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。
 本剤は、2015年以降に欧米を含む110以上の国又は地域において、慢性心不全に関連する効能・効果で承認され、本邦でも2020年6月に慢性心不全に係る効能・効果で承認されています。高血圧症に係る効能・効果については、2021年6月時点でロシア及び中国で承認されております。なお、2020年4月に開催された医薬品第一部会において、実質的に本剤は配合剤ではないかという御指摘を頂きましたが、その際に説明させていただいたとおり、本剤の初回の承認申請前に、既に本剤の有効成分に対して一つの医薬品一般的名称が設定されており、また製剤中では1成分として安定した結合を維持していることから、薬事上の取扱いとしては配合剤とせず、一つの有効成分を含有する医薬品として扱うこととなっております。
 それでは、本品目の審査の概略について臨床試験成績を中心に説明いたします。審査報告書の通し番号15ページを御覧ください。本剤200mg及び400mgの有効性及び安全性を、アンジオテンシンII受容体拮抗薬であるオルメサルタン20mgと比較検討する目的で、本態性高血圧症患者を対象とした無作為化二重盲検並行群間比較試験が、国内第III相試験として実施されました。有効性について、審査報告書の通し番号16ページの表15を御覧ください。主要評価項目であるトラフ時座位収縮期血圧のベースラインからの変化量は、本剤200mg群でオルメサルタン群より有意に大きく、また、本剤400mgの降圧効果は200mgと比較して大きいことが示されました。
 続いて、安全性について説明いたします。審査報告書の通し番号32ページから記載しております7.R.4、安全性についての項を御覧ください。高血圧症患者を対象とした本剤の臨床試験での有害事象の発現状況からは、低血圧を含め本剤の既知のリスクが、既承認のオルメサルタンを上回る傾向は示されていないと判断しました。ただし、後ほど説明いたしますように、本剤の降圧効果の大きさ、臨床的位置付けなどを踏まえて、高血圧症の承認に際して適正使用の観点から、添付文書において適切な注意喚起を行う必要があると判断いたしました。
 それでは、本剤の臨床的位置付けについて説明いたします。審査報告書の通し番号25ページ下段から記載しています7.R.1、臨床的位置付けについての項を御覧ください。本剤の特徴として、新規作用機序の降圧薬であり、降圧薬として使用された実績が極めて限られること、本剤の通常用量の降圧効果は、オルメサルタンの通常用量を有意に上回ったこと、本剤は二つに解離して、それぞれ異なる作用機序で降圧効果を示す上に、本剤200mg投与時に解離するバルサルタンの曝露量は、高血圧症で承認されているバルサルタン単剤の通常用量の上限(80mg)投与時を上回ること等があり、これらを踏まえると、本剤の有効成分は単一であるものの、現時点で本剤を高血圧症の治療における既存の第一選択薬と全く同じ位置付けとみなすことはできないと判断いたしました。
 特に未治療の高血圧症患者や、既承認のレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害剤でも低用量からの投与が推奨されているような背景を有する患者については、本剤投与の必要性を慎重に判断すべきであり、投与する場合であっても適切な用量を選択する必要があると判断しました。
 その一方で、早期の降圧が望ましい状況であれば、本剤を未治療及び既治療のいずれの患者にも投与可能な高血圧症治療薬の選択肢の一つとすることは可能であり、そのような位置付けも含めて臨床現場に提供する意義はあるものと判断しました。以上の検討結果を踏まえて、審査報告書の通し番号43ページに記載しているような内容を、用法・用量に関連する注意に記載することとしました。以上の検討を行った結果、本剤を承認して差し使えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。
 なお、本申請は新効能医薬品としての申請ではあるものの、既に付与されている再審査期間の残余期間が4年以上であることから、再審査期間は残余期間と設定することが適当と判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見はありますか。
○代田委員 代田ですが、よろしいですか。
○森部会長 はい、お願いします。
○代田委員 この薬は御存じのように、心不全で欧米から先行発売されたにもかかわらず、ロシアと中国では発売されていながら、欧米で降圧剤として余り認可されていない、その背景がどういうところにあるのかという点についてが1点、それから、これを認可したとして、かなりパワフルな降圧剤ですし、ガイドラインもこれからこれを記載していくことになると思いますけれども、どういう位置付けで使用を推奨することになるかの2点についてお伺いしたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構よりお答えいたします。まず1点目の御質問ですが、高血圧症での開発や承認が海外では限定されている背景について、申請者に確認した限りでは、高血圧症に関する適用については、特に医療ニーズが高いと申請者が判断した国、地域に限って開発申請を行ったということです。特にアジア人に多いとされる食塩感受性高血圧を含む患者に本剤は有効であると申請者が考えたために、中国や日本といったアジア地域を中心に開発が進められたと聞いております。
 続いて、承認された場合の位置付けですが、御指摘いただいたように降圧効果として比較的大きめであり、かつ、通常用量ですと200mgを投与することが、バルサルタン約100mgとネプリライシン阻害薬であるサクビトリルを同時に投与するのに匹敵するような薬剤となりますので、やはり既存の治療薬単剤では効果不十分な患者であったり、あるいは先ほど申し上げたように、早期からの降圧が必要と判断されるような患者さん、あとは臨床成績からは24時間の血圧管理も比較的良好であったというデータが示されておりますので、夜間の血圧低下がコントロールの芳しくない患者さんであったり、いろいろと患者さんの特性に応じて、本剤の投与があくまで適切と考えられる場合に選択される薬剤と考えております。以上です。
○代田委員 ありがとうございます。欧米での判断の中には、医療経済的な判断が加わっているということはないのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 少なくともこの審査等においては、確認した説明の中では、そういった経済的な事情という説明は受けておりません。
○代田委員 ありがとうございます。
○森部会長 続いて、宮川委員から御質問です。
○宮川委員 今、代田委員のお話があったとおり、これがファーストラインから使う薬であるのかということが非常に疑問であるということです。つまり、それは既存のバルサルタンよりは、はるかに強い降圧効果を持っていると。バルサルタンを使うということであれば、実際にはこの中にサクビトリルが入っているわけですね。そうすると、これは配合剤ではないですけれども、ほとんど配合剤に近いような形です。実際にナトリウム排泄作用は利尿作用があると、それに血管拡張作用があるというもの、これがサクビトリルなのです。それが一緒に入った新規薬物であることは先ほど御説明を受けたとおりなのですが、そうなると、実際にファーストラインで使う薬なのか、位置付けがよく理解できないということです。オルメサルタンも強い薬であり、承認用量としてはフルドーズから開始することになります。そうすると、この薬が最初から既定の用量で開始していいのかどうか、既存の薬が効かないとして降圧不十分であるという中で、実際にセカンドラインで入っていくというのが好ましいのではないかと思うのですが、それに対する説明がどのようにされているのかをお聞きしたいと思いました。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。本剤の位置付けについては、御指摘いただいたように、審査上かなり重要な論点となっております。報告書にも記載しておりますように、専門協議でも委員によっては未治療患者に使用する薬剤というよりは、合剤に近い位置付け、使い方とすべきではないかという御指摘も頂きました。その上で、本剤の特性と臨床試験の結果を踏まえて、臨床試験では既治療、未治療患者いずれも組入れ可能な規定において試験が実施されまして、少なくとも安全性の成績を見る限り、本剤が未治療患者さんに投与できないほど低血圧の発現が大きいということや、安全性上の懸念があるといったデータ自体は示されていないと判断いたしました。
 一方で、御指摘いただいたようなバルサルタンの曝露量であったり、作用機序を複数有するといった特性を踏まえて、位置付けとしては配合剤と単一有効成分の単剤の間に位置付けるような形と整理いたしました。ARB単剤であったり、既存の第一選択薬からの治療開始が適切と考えられる場合はそちらを優先していただいて、その上で、通常の既存の選択薬では十分な効果が得られないだろうと想定される場合であったり、あるいは既に実際に投与されて効果不十分な場合に、本剤を選択していただくという位置付けと整理いたしました。
 一方で第一選択薬という言葉と、未治療患者に投与可能である薬剤かというところを、今回の審査では書き分けをしまして、単剤のような第一選択薬と同一の位置付けではないものの、未治療患者への投与を一切認めないという、必ず何かしら先に治療薬が入っていなければ使えない薬剤とするほど危険ではないということを、安全性や有効性の成績から判断したということで、今のような位置付けと用法・用量に関連する注意になったという経緯があります。長くなりましたが以上です。
○宮川委員 これは普通であればセカンドラインといいますか、既存の薬では無効であったということで導入する薬のタイプであろうかと思います。最初から未治療の患者さんに使うのは非常に危険であるということはしっかり考えていかなければいけないので、このような試験の例数で軽々に判断するのは非常におかしいと思います。
 それから、臨床試験が夏であるということで、季節的な変動の中でどのような解析状況であったのかをきちんと踏まえていないと考えます。それから先ほどお話があったように、日本人は確かに食塩感受性ということは非常に問題がありますけれども、それを明確に分けて試験をしているわけではないので、推測で物事を言うのは非常に問題であろうかと思います。日本人特有ということではあるかもしれませんが、それを軽々に言葉を用いてしまうことは非常に危険があるので、これはあくまでもセカンドラインの薬であるということはきちんと明記しないといけないのではないかと思っています。以上です。
○森部会長 宮川委員、御指摘ありがとうございました。機構から何か御意見はありますか。よろしいですか。では、大谷委員から御質問を承ります。
○大谷委員 関連する質問になるのですけれども、バルサルタンに関しては、既にカルシウム拮抗薬や利尿剤など、様々な降圧作用を有する薬剤との配合剤が、降圧剤として高血圧に対する効能・効果で既に市販されているかと思うのですが、私が記憶している範囲では、そのほとんどが、恐らく全てが用法・用量若しくは用法・用量に関する注意の所で、高血圧治療の第一選択としては用いないというような旨の記載があるように記憶しています。まず、その辺の情報について現状をもし把握されていれば、バルサルタンとほかの降圧剤との合剤において第一選択としないと書かれていないようなものがあるのかどうかをお聞かせいただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 その点について機構よりお答えいたします。御指摘のとおり、既承認の有効成分を組み合わせた既存の降圧配合剤は、いずれも第一選択薬としない旨が規定されております。
○大谷委員 ありがとうございます。その上で、先ほど確かにこれは配合剤としては扱わないというようなお話がありましたが、それはあくまで単一成分であって製剤学的には配合剤ではないわけですけれども、薬理学的には明らかに配合剤なわけです。そうすると、今回この2成分を配合したものを第一選択薬としないということを書かないというのは、明らかにほかのバルサルタンの合剤との間のバランスも欠きますし、臨床上いろいろな、むしろ有害事象の発生のリスクの方が高くなるのではないかと私も危惧いたします。以上です。
○森部会長 機構からいかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 すみません、少しだけお時間いただけますか。
○森部会長 はい。赤羽委員と宮川委員からの御質問は、機構の回答を待ってからお受けいたします。少々お待ちください。
○宮川委員 私のは今の関連することですので発言させてください。実際には、そのように認可すべきではないという思いがありますので、もし答えが出るようなことではなければ、継続して審議したいと思います。内容として薬理学的には別なものであることは明らかにここに書いてあるわけですから、承認することはできないというのが本来の薬事の審議であろうかと思います。当然のことだろうと思います。
○新薬審査第二部長 先生方、御意見をありがとうございます。この点については我々も非常に悩んで、専門協議でも両論で議論した上で最終的には投与できる形で残そうということになったのですけれども、専門委員皆さんも悩んだところでございます。
 その中で我々としても非常に悩んで結論付けた際に最終的に思ったところは、今の降圧治療が必ずしも全て満足される状況ではなくて、不足している患者さんもいらっしゃるということと、サクビトリルの新規作用機序を考えたときに最初から投与できるような背景というのもあり得るのではないかということで、今のような審査いたしました。その点については、本部会における今日の御意見はファーストラインとか未治療の患者さんに投与することについて、とても反対だということは理解しました。配合剤の審査の背景があって、このようなことにもなっているかと思いますので、この薬の性質を考えたときにどうだというところを考えたいと思います。
 最後に少し確認させていただきたいのですが、先ほどの食塩感受性の話もありますけれども、作用機序を考えたときにもやはり1番目には選択できないだろうという感覚でしょうか。代田先生、御意見を頂ければ幸いです。いかがでしょうか。
○宮川委員 今、お話ありましたが、しかしながら日本人の降圧目標に達していない話とは、また別ものです。降圧目標に達していないのは、あくまでも臨床現場、私も臨床現場にいますけれども、1剤で納得してしまったり、実質1.7剤というところから踏み込めて増量していません。2剤以上にいっていない日本の降圧現場の現状で、それが降圧目標に達していない現状であるその話とこの二つの薬理作用が合わさった薬の許すか許さないかという話とは全く別ものですので、機構は発言に気を付けていただきたいと思います。以上です。
○代田委員 代田ですけれども、私もやはりこの薬剤をファーストチョイスで使う、そうした症例を臨床的に見付けるといいますか、経験することは余りないと思います。まずは他剤を使ってこの薬に移行するほうが、より自然な臨床の判断だと考えます。
○医薬品医療機器総合機構 機構です。先生方、どうもありがとうございました。我々の判断のみが正しいということではなく、今日の御意見をお伺いして、確かにもう一方の意見、我々が判断しなかった方の意見も正しいと思いました。ただ、この申請自体が、未治療の患者でも投与できるという内容で申請者が出してきておりますので、この場で、我々がセカンドラインという位置づけを決めても、申請者がその位置づけで承認申請を継続するかどうかというところも不明ですので、申請者と話し合わないといけないと思っています。この項は継続審議にしていただいて、次の部会でまた御報告できればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 審査管理課は今後はそのような手続でよろしいでしょうか。
○医薬品審査管理課長 結構です。それでやってください。よろしくお願いします。
○森部会長 今、先生方からの御意見が集約されまして、機構からの意見と審査課の確認も取れましたので、本議題については本日は議決に入らず、継続審議させていただくことが決まりました。
 私から一つお願いですが、添付文書の中で国内第III相試験に組み入れられた患者さんの血圧のエントリー基準が書かれていないので、未治療の方や既治療の方も含めて、どの程度の血圧の方を組み入れて治療したかということを書いておいたほうがいいかと思いましたので、参考にしていただければと思います。また、申請者からの意見も更に集約させていただいて、次回の審議でこの案件について御意見を承っていきたいと思っています。
○合田部会長代理 合田です。一つ教えていただきたいのですが、これは慢性心不全だとファーストラインで使えるのですか。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。慢性心不全の場合は、ACE阻害薬かARBを先行していただいて、そこからの切替えということになります。
○合田部会長代理 分かりました。ありがとうございます。
○森部会長 この薬剤の位置付けは非常に難しいです。ARBともう一つの成分を含有していますが、配合薬には該当しません。ARBと併用することも降圧治療ではできません。また、もともとACE阻害薬とは併用禁忌となっています。実臨床上での使用に当たってはACE阻害薬が併用されてしまうリスクもありますので、情報提供もしっかりしていくという、承認の条件プラス情報提供の両面から、十分な議論を踏まえた上で世の中に出していくという手順を踏んでいこうと思っております。本日は御審議どうもありがとうございました。継続審議とさせていただきます。
 続いて、議題8に移ります。議題8につきまして、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題8、資料No.8、医薬品ビンマックカプセル61mgについて、機構より説明いたします。タブレットで御覧になる場合は資料No.8のフォルダを開き、★が付いている審査報告書ファイルをお開きください。
 審査報告書の一番下、全26ページの通し番号で4ページ、起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。本剤は、タファミジス遊離酸を有効成分とするカプセル剤であり、生体内でトランスサイレチンの4量体に結合し、単量体への解離を抑制し安定化することで、トランスサイレチンの変性及びアミロイド線維形成を抑制する薬剤です。
 本邦では有効成分として、タファミジスメグルミンを20mg含有するカプセル剤(ビンダケルカプセル20mg(以下、タファミジスメグルミン製剤という))が、2013年にトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの末梢神経障害の進行抑制の効能・効果に対し、1日1回20mgの用法・用量で、2019年にトランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型及び変異型)の効能・効果に対し、1日1回80mgの用法・用量で承認されています。
 トランスサイレチン型心アミロイドーシスに対して、タファミジスメグルミン製剤を通常用量投与するためには、比較的大きいカプセルを1回に4カプセル服用する必要があることから、申請者は患者負担の軽減のため、4カプセル分の有効成分を含有する製剤の開発を行いました。当初、既承認製剤と同一の有効成分であるタファミジスメグルミン80mgを含有する製剤の開発が検討されましたが、技術的に困難であったことから、次善の策としてタファミジスメグルミンの活性本体であるタファミジス遊離酸を用いて、タファミジスメグルミン製剤80mgと同程度の曝露量が得られる製剤として、本剤61mg製剤が開発されました。
 今般、国内外の臨床試験成績等に基づき、本剤の製造販売承認申請が行われました。なお、本剤はトランスサイレチン型心アミロイドーシスに関する効能・効果で、米国で2019年5月、欧州で2020年2月にそれぞれ承認されており、2021年5月時点で50以上の国又は地域で承認されています。なお、欧米ともにタファミジスメグルミン製剤も承認されており、両製剤が併存しています。
 本品目の審査の概略について説明いたします。本剤の開発計画について、審査報告書通し番号15ページ、7.R.2、本剤の開発計画の妥当性についての項を御覧ください。本剤の開発は、本剤61mgとタファミジスメグルミン製剤80mgの活性本体であるタファミジスの薬物動態の類似性を示し、タファミジスメグルミン製剤の臨床試験成績を利用して、本剤の有効性及び安全性を説明する方針が取られました。審査報告書通し番号7ページ、6.1.1、相対的BA試験の項に示したとおり、本剤61mg投与時とタファミジスメグルミン製剤80mg投与時のタファミジスの血中濃度のCmaxとAUCが、生物学的同等性を評価する際の基準の範囲内であることが示されたことから、本剤61mg投与時にタファミジスメグルミン製剤80mg投与時と同様の有効性及び安全性が得られることが推定可能な薬物動態の類似性が示されたものと判断しました。
 次に、審査報告書の通し番号15ページ、7.R.3、安全性についての項を御覧ください。タファミジスメグルミン製剤の有効性及び安全性を検討した国際共同第III相試験を完了した又は新たに組み入れられたトランスサイレチン型心アミロイドーシス患者に本剤を投与したときの安全性を検討する非盲検試験において、本剤に特有の安全性の懸念や、本剤への切替え後早期の安全性の懸念は認められないことを確認しました。
 続いて、審査報告書の通し番号18ページ、7.R.4、本剤とタファミジスメグルミン製剤の取り違え、誤投与に対する防止策についての項を御覧ください。冒頭で説明したとおり、既承認のタファミジスメグルミン製剤は、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーに係る効能・効果を有すること、トランスサイレチン型心アミロイドーシスにおける減量用量に対応する必要があることから、本剤が承認された際には、医療現場に両製剤が併存することになります。本剤とタファミジスメグルミン製剤では、承認効能・効果の範囲が異なること、トランスサイレチン型心アミロイドーシス患者に通常用量を投与するために必要な製剤の数が異なることなどから、両製剤の取り違えや誤投与を防止するため、添付文書の用法・用量に関連する注意の7.1~7.3項における注意喚起に加え、医療従事者向け資材等を用いて適性使用に関する情報提供を行う予定です。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品ですが、開発の経緯を踏まえ、再審査期間はビンダケルカプセル20mgのトランスサイレチン型心アミロイドーシスの効能・効果に対する再審査期間の残余期間(2029年3月25日まで)とすることが適当であると判断しております。また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見はございますか。よろしいでしょうか。
 それでは議決に入ります。なお、川上委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて議題9に移るところですが、部会の進行が2時間を超えてきておりますので、5分だけ休憩されますか。このまま進行したほうがよろしいですか。
○事務局 一旦休憩しましょう。
○森部会長 ありがとうございます。では、5分後に再開いたします。少々休憩といたします。
(休憩)
○森部会長 それでは再開いたします。では、議題9につきまして、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題9、資料No.9、医薬品オンデキサ静注用200mgについて、機構より説明いたします。タブレットでは資料No.9のフォルダを開き、★が付いている審査報告書ファイルをお開きください。
 審査報告書の一番下、全85ページの通し番号で6ページ、起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。本剤の有効成分であるアンデキサネットアルファ(遺伝子組換え)は、ヒト血液凝固第Xa因子(Xa)の遺伝子組換え改変デコイタンパク質であり、凝固活性を有さず、抗凝固薬である直接作用型Xa阻害薬に結合することで、直接作用型Xa阻害薬の抗凝固作用を中和する薬剤です。
 今般、国内外の臨床試験及び日本人も参加した国際共同第IIIb/IV相試験の中間集計結果に基づき、製造販売承認申請が行われました。本剤は、米国で2018年5月、欧州で2019年4月に、それぞれ直接作用型Xa阻害薬であるアピキサバン又はリバーロキサバンによる治療中に生命を脅かす出血又は止血困難な出血の発現時における抗凝固作用の中和に係る効能・効果で承認され、2021年6月時点で30か国以上で承認されています。なお、本剤は申請効能・効果について、希少疾病用医薬品に指定されています。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。審査報告書、通し番号で28ページ、6.2.1.2、日本人及び外国人健康被験者を対象とした単回静脈内投与試験の項を御覧ください。本邦で既承認の直接作用型Xa阻害薬であるアピキサバン、リバーロキサバン及びエドキサバンを承認用法・用量で反復投与し、定常状態下にある健康被験者に本剤を静脈内投与したとき、血漿中非結合型Xa阻害薬濃度及び抗Xa活性の低下が認められ、直接作用型Xa阻害薬の抗凝固作用に対する本剤の中和効果が確認されました。
 審査報告書、通し番号で42ページ、7.3、国際共同第IIIB/IV相試験(ANNEXA-4試験)の項を御覧ください。直接作用型Xa阻害薬であるアピキサバン、リバーロキサバン、エドキサバン又はアンチトロンビンIII依存性間接作用型Xa阻害薬であるエノキサパリンナトリウムで治療中の急性の顕性大出血を発現した患者を対象に、本剤を低用量又は高用量の2種類の用法・用量で静脈内投与したときのXa阻害薬の抗凝固作用に対する中和効果及び止血効果等を検討する非盲検非対照試験が実施されました。なお、審査報告書、通し番号で43ページ、表34に示したとおり、本剤の用法・用量は、Xa阻害薬の種類、最終投与時の1回投与量、最終投与時からの経過時間に応じて選択することとされました。本試験の中間集計時点において、本試験が完了した患者は392例であり、うち16例が日本人でした。
 有効性について、審査報告書の通し番号で47ページ、表37及び表38を御覧ください。ANNEXA-4試験の中間集計結果では、一つ目の主要評価項目である抗Xa活性のベースラインから最低値までの変化率の中央値は、アピキサバン、リバーロキサバン、エドキサバン投与例で、それぞれ-93.3%、-94.1%、-71.3%であり、いずれも事前に設定した有効性の目標を達成しました。また、もう一つの主要評価項目である止血効果についても、有効な止血が認められた被験者割合が80.0%であり、事前に設定された有効性の目標を達成しました。さらに、日本人集団においても検討例数は限られていたものの、抗Xa活性変化率及び止血効果について、全体集団と一貫した結果が得られていると判断でき、本薬が臨床的に有用であることを示唆する結果が得られたものと判断しました。
 安全性について、審査報告書の通し番号で68~70ページ、7.R.5、安全性についての項を御覧ください。国内外の臨床試験での有害事象の発現状況及び本剤の海外製造販売後に得られた安全性情報により、本剤の臨床使用における有用性を損なうほどの問題点は認められていないと判断しました。なお、ANNEXA-4試験の中間集計結果では、10.5%に血栓性事象の発現が認められました。本剤は、内因性抗凝固因子であるTFPIとの相互作用により、血液凝固を促進する可能性が示唆されていること、判断の投与対象が抗凝固薬の投与を必要とする血栓塞栓症リスクを有する患者であり、出血時にはXa阻害薬の投与中断と本剤投与による抗凝固作用の中和により、血栓塞栓症リスクを高めると推測されること等から、添付文書の重大な副作用の11.1.1項で血栓塞栓症が発現するおそれがある旨、効能・効果に関連する注意の5.1項で、患者背景等から本剤による有効性が期待できる症例及びタイミングでのみ本剤を使用する旨を注意喚起することが適切と判断しました。また、ANNEXA-4試験の成績から、止血後に抗凝固療法が再開されていなかったことが、血栓性事象のリスク因子と考えられたことから、止血後は抗凝固療法の再開の有益性と再出血のリスクを患者ごとに評価した上で、できる限り速やかに適切な抗凝固療法の再開を考慮する旨を、添付文書の重要な基本的注意の8.2項で注意喚起することとしました。
 製造販売後調査については、本剤投与時の安全性等に関する情報を収集する全投与症例を対象とした使用成績調査を実施することを承認条件とすることが適切と判断しております。なお、本剤は米国で迅速承認制度により承認され、FDAの要求により、承認後に臨床上の有用性を示す評価項目を用いて通常の治療と比較する海外製造販売後臨床試験(ANNEXA-I試験)を実施中であり、本邦においても、当該試験結果を確認の上、必要に応じて適切な対応を行う旨が申請者より説明されています。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、生物由来製品に該当し、原体及び製剤はいずれも毒薬及び劇薬に該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等ございましたら、お願いいたします。
○代田委員 代田ですけど、よろしいでしょうか。
○森部会長 はい、お願いします。
○代田委員 大変重要なお薬だと思うのですが、数年前にダビガトランの中和剤が発売されて、そのときはコストと出血イベントの頻度との関係で導入する施設が少し限られたという、当初そのようなことがあったと思うのですけれども、その点について、この薬剤はどういうふうに考えていらっしゃるかということと、それから先ほどお話があったように、発売後の有効性について、このダビガトランの中和剤についてはどのようなデータがあるか、その2点について教えていただければと思います。
○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えさせていただきます。ダビガトランの中和剤として承認されたプリズバインドのことを御指摘いただいているものと理解いたしました。コストの観点につきましては機構の方で把握をしていないところでして、こちらからお答えできる状況にございません。
○代田委員 有効性についてはいかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 はい、機構よりお答えさせていただきます。プリズバインドにつきましては、製造販売後に全例調査の方を実施しておりまして、有効性については、中和効果及び止血に要した時間等について検討を行っております。特に中和効果及び止血に要した時間等につきましても、製造販売後に何か臨床試験の結果を覆すような情報は得られておりません。具体的なデータをお示ししたほうがよろしいでしょうか。
○代田委員 もしあれば、後でお送りいただければと思います。現在の発売状況から見ると、今回の薬はより臨床的に広く使われている薬剤に対する中和剤ですので、そうした面では価値が高いのではないかというふうに思います。
○森部会長 はい。代田委員、御意見どうもありがとうございました。特に、救急医療を行う医療機関では本当に必要にされている薬剤でございます。抗凝固薬を処方している医療機関以外でも、急患で受診するときが多々あり得ますので、臨床現場としては広く今後有用性についての確認をしていくということにしたいと思います。また、米国での追加の試験につきましても詳細が分かりましたら、この部会でも確認をして、情報提供していくかどうか判断していきたいと思っております。そのほか御質問ございますか。よろしいでしょうか。
 では、議決に移らせていただきます。本議題につきまして承認を可としてよろしいでしょうか。御異議ないようでございますので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題10に移ります。議題10につきまして、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 機構でございます。議題10、資料No.10、エフメノカプセルについて御説明をいたします。紙資料、資料No.10の審査報告書をお開きください。タブレットを御覧になられる場合には、資料No.10のフォルダを開き、★の付いている審査報告書のファイルをお開きください。
 審査報告書の通し番号4ページ、1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況の項を御覧ください。エフメノカプセル100mg(以下、本剤という)は、黄体ホルモンであるプロゲステロンを有効成分とする経口剤であり、1980年にフランスで承認されて以降、欧州諸国を含む100か国以上で承認されております。更年期障害及び卵巣欠落症状に伴うHotflush等の症状に対して卵胞ホルモンを補充する治療(以下、HRTという)は、卵胞ホルモンの子宮内膜増殖作用により、子宮内膜癌を発症する危険が報告されており、子宮を有する患者では黄体ホルモンの併用が国内外で標準的となっております。
 このような状況を踏まえて、日本産科婦人科学会及び日本更年期医学会(現、日本女性医学学会)より、本剤の開発要望書が提出され、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において医療上の必要性が高いと判断され、開発企業の募集が行われました。今般、開発企業の募集に応じた富士製薬工業株式会社より、国内臨床試験成績等に基づき医薬品製造販売承認申請がなされました。本剤の審査に関して、専門委員として資料No.18に記載の委員を指名いたしました。
 本剤の審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明をいたします。有効性について御説明いたします。審査報告書の通し番号13ページ、7.2、国内第III相試験の項を御覧ください。更年期障害及び卵巣欠落症状に伴うHotflush等の症状があり、子宮を有する日本人女性を対象とした非対照試験が実施されました。主要評価項目である本剤投与開始52週時の子宮内膜増殖症を発現した症例の割合は、審査報告書の通し番号14ページ表8のとおり、両側95%信頼区間の上限は事前に定められた基準値である2.0%を下回りました。しかしながら、国内第III相試験では、試験実施中に子宮内膜の判定基準が、審査報告書の通し番号14ページの表6から表7に変更がなされ、マル9疑陽性という基準が追加されるとともに、マル9疑陽性となった場合、再度子宮内膜組織を採取し、再判定を行う規定が追加されました。
 審査報告書の通し番号17ページ、7.R.1.2、国内第III相試験における子宮内膜の判定基準及び国内第III相試験の結果についての項を御覧ください。本項の通し番号18ページより、機構の判断を記載しております。機構は、本剤の有効性を評価する上で、事前に規定した子宮内膜の判定基準は妥当なものであり、本開発で検証的な位置付けの試験とされ、非盲検下で実施された国内第III相試験において組み入れられた症例をあらかじめ計画された同一の基準に基づき評価する重要性は極めて高く、判定基準を変更すべきでなかったと判断いたしました。
 以上を踏まえると、国内第III相試験において本剤の有効性が適切に示されたとは判断できませんが、得られた結果の内容を見れば、本剤の有効性は示唆されており、教科書、公表文献等も含めた外部情報も踏まえて多面的に見れば、本剤のHRTにおける卵胞ホルモンによる子宮内膜増殖症の発症抑制について、再度試験を実施するまでもなく、効果を推定できるものと判断いたしました。
 この点の詳細につきまして、審査報告書の通し番号20ページ、7.R.1.3、本剤の有効性についての項を御覧ください。本剤の有効性について、審査報告書の通し番号21ページ表11に示す海外臨床試験成績、審査報告書の通し番号23ページ表12に示す欧州での承認状況、審査報告書の通し番号24ページ表13に示す海外のガイドラインや教科書の記載から、海外では本剤の有効性が確立しているものと判断できます。また、これらの海外における状況と国内のガイドラインの記載を踏まえると、国内外で診療方針に大きな違いはないと判断されること、本剤の薬物動態に国内外で明らかな差異はないこと、さらに本剤の有効性は黄体ホルモンの生理学的な作用に基づくものであること等を踏まえますと、本剤の有効性は国内外で大きく異ならないと推定できます。これらの状況と国内第III相試験の結果を踏まえると、国内第III相試験を改めて適切な運用方法で実施しても、国内第III相試験と同様、本剤の卵胞ホルモンによる子宮内膜増殖症の抑制効果が示される結果が得られる可能性は高い旨の申請者の説明に、一定の妥当性はあると判断しております。以上を踏まえ、国内第III相試験の結果等から、本剤は日本人においても臨床的に意義のある有効性を有すると解釈できるものと判断いたしました。
 次に、安全性について御説明をいたします。審査報告書の通し番号25ページ、7.R.2.2、乳癌及びその他の乳房に関連する事象についての項を御覧ください。国内の診療ガイドラインには、卵胞ホルモン及び黄体ホルモン併用時の乳癌の発現に及ぼす影響は、主として黄体ホルモンによるものと考えられている旨の記載があります。国内第III相試験においても、本剤との因果関係が否定できない乳腺浸潤性小葉癌が発現した症例が認められ、海外の製造販売後の副作用報告でも乳癌が報告されていることから、本剤投与時もHRTに用いる既存の配合剤と同様に、乳癌のリスク因子を踏まえた投与の可否判断、患者への説明及びHRT施行中の定期的な乳房検診の実施等を行うことが妥当と判断いたしました。
 また、審査報告書の通し番号27ページ、7.R.2.4、血栓症に関連する事象についての項を御覧ください。国内第III相試験では血栓症に関連する有害事象は認められませんでしたが、卵胞ホルモン単独投与と比較して、卵胞ホルモン及び黄体ホルモンの併用により血栓症発現のリスクが上昇するとの報告があることから、既承認の黄体ホルモン含有製剤と同様の血栓症に関連する有害事象の発現への注意を要するものと判断いたしました。
 以上のようなリスクはあるものの、血栓症に関連する事象及び乳癌は、国内のガイドラインにおいて、HRTで予想される有害事象に挙げられており、それらへの対応が医療現場で定着していると判断できることを踏まえると、HRTに用いる限りは、本剤の安全性は、既承認の黄体ホルモン含有製剤と同様の注意喚起の下で臨床使用可能と判断いたしました。
 以上の審査の結果、本剤を更年期障害及び卵巣欠落症状に対する卵胞ホルモン剤投与時の子宮内膜増殖症の発症抑制の効能・効果で承認して差し支えないとの結論に達し、本部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本品目は新投与経路医薬品としての申請であることから、再審査期間は6年が妥当と判断しております。また、本剤は生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等ございましたら、お願いいたします。堀委員、お願いします。
○堀委員 ありがとうございます。服用する患者の年齢についてお尋ねいたします。この用法及び用量に関する注意には、年齢の上限、つまり何歳まで服用をしていいとか、してはいけないとかという記載がありませんでした。でも、添付文書の15.1.4の項では、アメリカにおいて65歳以上の閉経後の女性では認知症の危険性が高いというふうに書いてあったので、大体65歳までということと理解してよろしいのでしょうか。お尋ねいたします。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。機構よりお答えをさせていただきます。15.1.4の項の記載は、そういった報告があるということの情報提供であり、本剤の投与対象が65歳までであることを意図したものではありません。
○堀委員 では、特に年齢制限はないということですね。スタートする年齢も、終える年齢も、特に制限はないと理解してよろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 そのように考えています。
○堀委員 分かりました。では、それはその人その人に応じて、医師と相談してやめる時期を決めるということで、よろしいですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい、そのように考えております。
○堀委員 はい、分かりました。ありがとうございます。私からは以上です。
○森部会長 ありがとうございます。追加の御意見やコメント等ございますか。よろしいでしょうか。私から一つ質問ですが、この治験の遂行中のこの評価項目の変更については、事前に機構に相談はあったのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。ご指摘いただきました変更について、機構に事前の相談はございませんでした。
○森部会長 そうでしたか。分かりました。大変残念な変更でありましたけれども、そこは了解いたしました。それでは、特にそのほか御質問、御意見ございませんでしょうか。
 では、議決に入らせていただきます。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議はございませんでしたので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題11に移ります。議題11について、機構から概要説明の御準備をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題11について説明させていただきます。議題11、資料No.11、医薬品ミダフレッサ静注0.1%の製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明いたします。
 資料No.11の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、全33ページの通し番号で5ページ、1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。てんかん重積状態は、てんかんの発作停止機構の破綻又は異常に遷延するてんかん発作を引き起こす機構が惹起された状態であり、けいれん発作の持続時間が5分以上続いた場合にてんかん重積状態と診断し、治療を開始することが推奨されています。
 本剤は、ミダゾラムを有効成分とする注射剤であり、本邦では、2014年9月に、てんかん重積状態を効能・効果とし、小児に対する用法・用量が承認されています。今般、15歳以上のてんかん重積状態の患者に対する本剤の用法・用量の有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。海外では、2021年5月現在、本剤は承認されていませんが、成人におけるてんかん重積状態に係る効能・効果として、ミダゾラムを有効成分とする筋注製剤が2018年9月に米国で、2019年2月にドイツで承認されています。本申請の専門委員として、資料No.18に記載されている4名の委員を指名しております。
 審査の内容について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。まず、有効性について、審査報告書の通し番号で6ページの7.1、国内第III相試験の項を御覧ください。15歳以上のけいれん性てんかん重積状態の患者を対象に、非盲検非対照試験である国内第III相試験が実施され、7ページの中ほどのとおり、ボーラス期では21例に本剤が静脈内ボーラス投与され、持続静注期では3例に本剤が持続静脈内投与されました。主要評価項目とされた有効性解析対象集団での初回投与又は追加投与を含むボーラス期最終評価におけるけいれん発作消失率は100%であり、帰無仮説をけいれん発作消失率40%とした一標本の割合の検定において統計学的に有意な結果でした。
 次に、審査報告書の通し番号で28ページの1.1、有効性についての項を御覧ください。持続静脈内投与の症例数は3例と限られており、そのうち発作消失が24時間維持されたのは1例のみであったこと、再発が認められた2例はいずれも難治性のてんかん重積状態であった可能性があることを踏まえると、国内第III相試験結果から、本剤の持続静脈内投与の有効性を検討することには限界があると考えました。しかしながら、本薬の持続静脈内投与は国内外のガイドラインでも推奨されていること等を踏まえると、成人のてんかん重積状態の患者に対する本剤の持続静脈内投与の有効性は期待できると判断いたしました。
 次に安全性について、戻って恐縮ですが、審査報告書の通し番号で15ページの7.R.3、安全性についての項を御覧ください。提示された試験成績から、本剤の安全性について小児と成人で明らかな差異は認められておらず、小児と同様の注意喚起を行うことで、成人のてんかん重積状態の患者に対する本剤の安全性は許容可能と考えております。
 最後に用法・用量について、審査報告書の通し番号で29ページ、1.2、用法・用量についての項を御覧ください。成人のてんかん重積状態に対する本剤の用法・用量について、静脈内ボーラス投与及び持続静脈内投与のいずれにおいても国内第III相試験と同様の設定とし、患者の状態に応じて投与量を適宜増減することが適切と判断いたしました。また、静脈内ボーラス投与の投与速度について、国内第III相試験では規定は設けられていなかったものの、成人に対しても小児と同様に、1mg/分を目安と設定することが適切と判断いたしました。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は新用量医薬品としての申請であることから、本剤の再審査期間は4年間と設定することが適当と判断いたしました。薬事分科会には報告を予定しております。
 なお、審査報告書に誤記がございましたので、訂正をさせていただきます。審査報告書の通し番号で11ページ中ほどの「国際抗てんかん連盟では」から始まる段落を御覧ください。「長期的な行為障害を残す可能性がある」と記載されておりますが、「行為」は誤記でして、正しくは「後遺」でございますので、訂正させていただきます。なお、本訂正について審査への影響はございません。申し訳ございませんでした。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございます。では、委員の先生方から御質問、御意見等をお願いいたします。御発言はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 一つ、私から委員の先生方に御意見を伺いたい点がございまして、薬剤の添付文書を少し御確認いただければと思います。添付文書案の6の項の用法及び用量の所をお目通しください。そこに静脈内投与、それから持続静脈内投与というふうに二つに分かれて記載がされております。これは並列的に書かれているのですけれども、実際の患者さんのてんかん重積状態の治療法では、病態によってどちらを優先して行うべきかということの順序もガイドライン等では記載があります。この添付文書の中には、「ガイドライン等に沿って選択する」ということの一文が特に記載はないのですけれども、この静脈内投与と持続静脈内投与の使い分けをガイドライン等を参考にして行うということの一文を、注意喚起すべきかどうか御意見はいかがでしょうか。
○宮川委員 できれば、注意喚起をしているほうがよろしいのではないですかね、こういうものは。
○代田委員 そのほうが親切だと思います。
○森部会長 代田委員から御意見、今、宮川委員からも御意見が、はい、どうぞ。
○宮川委員 使用されるところが非常に限定されることは分かっているのです。そうした意味では、ある程度の注意喚起ではないのですが、分かっていれば問題ないはずなのですけれども、やはり一文記載があるだけでも問題を回避できるかと思いますので、部会長の御意見に賛成いたします。以上でございます。
○森部会長 そのほか御発言いただける先生はおられますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、機構からの御意見をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございました。先生方から頂いた御意見を踏まえまして、ガイドライン等を参考にする旨の文言を添付文書に追記するよう対応させていただきたいと存じます。
○森部会長 ありがとうございました。そのほか、この議題につきまして、先生方から御意見ございますか。よろしいでしょうか。
 では、議決に入らせていただきます。本議題につきまして承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議はないようでございますので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題12に移ります。議題12につきまして、事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 審議事項議題12、資料No.12、Nipocalimabを希少疾病用医薬品として指定することの可否について御説明いたします。資料No.12のうち、機構の事前調査報告書のファイルをお開きいただけますでしょうか。
 報告書1ページ中段を御覧ください。申請者はヤンセンファーマ株式会社、予定される効能・効果は全身型重症筋無力症になります。
 まず、1ページの対象患者数について御説明します。全身型重症筋無力症を含む重症筋無力症は指定難病であり、本邦における全身型重症筋無力症の患者は約1万9,000人と推定されております。以上より、患者数は5万人未満という基準を満たしているものと考えております。
 次に、医療上の必要性についてです。重症筋無力症は神経筋接合部の神経伝達が阻害されることによって、骨格筋の易疲労性を伴う筋力低下を特徴とする自己免疫疾患とされております。病勢の増悪により気管内挿管、機械的人工呼吸が必要となることもあるなど、重篤な疾患と考えられます。本邦においては、経口ステロイド、免疫抑制剤の併用が診療ガイドラインで記載されており、また、本疾病を効能・効果とする医薬品としてはエクリズマブが承認されておりますが、いずれも有効性や副作用等の観点から課題が残されております。
 本剤は、ヒト胎児性Fc受容体に対する抗体製剤であり、病原性のIgG自己抗体を含むIgG抗体の全身循環量を低下させることで、本疾病に対して効果を示すと考えられております。海外第II相試験において、プラセボ群と比較した本剤投与による改善の傾向が認められております。以上の検討から医療上の必要性は高いと考えております。
 最後に、開発の可能性についてです。海外第II相試験において有効性が示唆されていることで、今後、全身型重症筋無力症患者を対象とした国際共同第III相試験が実施される予定となっておりますので、開発の可能性は高いと考え、以上より指定の3要素を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。では、委員の先生方から、御質問、御意見はいかがでしょうか。特にないようでございましたら、議決に進ませていただきます。なお、大森委員、武田委員、長谷川委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととなっております。
 では、本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようでございますので、指定を可といたしまして、薬事分科会に御報告させていただきます。
 続きまして議題13に移ります。議題13につきまして、事務局から概要説明をお願いします。
○事務局 議題13、資料No.13、ブトリシランナトリウムを希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。資料No.13のうち事前評価報告書のファイルをお開きいただけますでしょうか。
 1ページの中段を御覧ください。申請者はAlnylam Japan株式会社、予定される効能・効果はトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーになります。
 まず1ページ、対象疾患について御説明いたします。本疾病は指定難病である全身性アミロイドーシスの一種であり、本邦における患者数は約700名と推定されており、5万人未満の基準を満たしているものと考えております。
 医療上の必要性についてですが、本疾病はトランスサイレチン遺伝子の変異を原因とする遺伝性疾患であり、末梢神経や各種臓器にアミロイド線維やアミロイド斑の生成により、ポリニューロパチーや心筋症等の臓器障害を引き起こすことで、最終的には心不全又は感染によって死亡に至るとされており、重篤な疾病と考えられます。
 本邦における薬物療法といたしましては、タファミジスメグルミンとパチシランナトリウムが承認されておりますが、タファミジスメグルミンについては対象が限定されているということ、パチシランナトリウムについては本剤と同様のsiRNA薬ですが、3週に1回の投与が必要であることや、注射部位反応の発現リスクを抑制するための前投薬を行う必要があるとされており、有効性や患者負担の問題があるとされております。本剤は3か月間隔の投与製剤でもありまして、前投薬についても不要とされており、以上から医療上の必要性は高いと考えております。
 開発の可能性についてです。日本人を含む本疾病を対象として、国際共同第III相試験が実施されており、投与期間9か月までの成績において、本剤の有効性はパチシランナトリウムと同様であるということが分かっておりまして、本剤の安全性に大きな問題は認められないということから、開発の可能性は高いと考えております。以上より、指定の3要件を満たすと考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から、御質問、御意見等ございますか。よろしいでしょうか。
 では、議決に入らせていただきます。なお、川上委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決の参加を御遠慮いただくことになっております。本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。特に御異議はないようでございますので、指定を可といたしまして、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて、報告事項に移らせていただきます。報告事項につきましては、議題の順番を変更させていただき、参考人の先生をお招きしております議題2の方から進めさせていただきたいと思っております。では、報告事項議題2につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 議題2の資料No.15を御覧ください。ミカトリオ配合錠の適正使用についての指針の一部改正につきまして、事務局より説明させていただきます。
 本剤は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬であるテルミサルタン、カルシウムチャネル拮抗薬であるアムロジピンベシル酸塩、サイアザイド系利尿剤であるヒドロクロロチアジドの三つを有効成分とする配合剤であり、平成28年度の医薬品第一部会において、本剤の切替え時の要件等に関する適正使用指針を関連学会と協力して作成することを前提に、製造販売承認は可能と判断されました。
 それを受けて、本剤の販売開始時に伴い、平成28年11月25日付けで「ミカトリオ配合錠の適正な使用についての指針の発出について」の通知が出されております。この指針では、本剤への切替えに当たり、原則として本剤に含まれる3成分と同一成分の併用療法を8週間以上継続して、有効性と安全性の観点から継続が妥当と主治医が判断した場合に、本剤の切替えを検討するという方針が示されてきたところです。
 その後、平成30年及び平成31年に開かれた規制改革推進会議専門チームの会合において、本剤の製造販売後調査の結果等を踏まえて、指針の内容を再検討することとされました。加えて、令和2年6月17日に日本循環器学会及び日本高血圧学会、また、令和3年6月25日に製造販売業者より、指針の記載の変更を求める要望書が医薬品審査管理課に提出されたことを踏まえ、製造販売後調査の結果等の検討を機構にて行いました。
 報告書の3ページの表1を御覧ください。「3成分の前治療を受けたが治療期間が8週未満」等の例外使用集団が29例、本調査では含まれておりました。続いて、4ページの表2を御覧ください。有害事象の発現状況は、例外使用集団において血圧低下が13.79%と、全体集団に比べて割合としては多く観察され、また、表3の低血圧関連事象の発現状況のみの抜粋においても、例外使用集団において低血圧及び血圧低下の割合が、割合としては多く占めておりました。
 一方で、表4には例外使用集団で低血圧関連事象が発現した5例の詳細について記載しております。真ん中の期間の列を御覧ください。患者番号の3~5においては、本剤を服用開始後50日以上経過した時点で血圧低下が生じており、本剤の導入が直接的な原因とは考えにくいと思われました。また、右側の転帰の列を御覧ください。不明の1例を除いて、4例が本剤の減量及び中止によって回復しております。これらを踏まえ、例外使用集団における低血圧関連事象の発現リスクは許容可能な範囲と機構では判断されております。
 続いて、5ページの表5を御覧ください。欧米で販売されている3成分配合剤の添付文書の用法・用量をまとめております。今回のミカトリオと全く同じ組合せの薬剤はありませんが、いずれの薬剤においても、2成分配合剤と単剤の併用又は単剤併用から3成分配合剤への切替えに際して、具体的な期間が記載されている薬剤はありませんでした。また、5ページの2.3.2及び6ページの2.3.3に国内及び海外の診療ガイドラインの記載状況が書かれておりますが、いずれも3成分配合剤への切替えの際の具体的な方法、あるいは期間に関する記載はありませんでした。
 これらの状況から、機構では、本剤投与開始前に2成分配合剤と単剤の併用又は3成分の単剤併用を8週以上継続する必要性は必ずしもなく、患者の血圧コントロール等の状況を踏まえて、医療現場の医師が本剤への切替えをすることが適切と判断した場合であれば、3成分の併用期間が8週未満であっても、本剤への切替えを行うことは可能と判断しております。
 最後に、報告書の16ページを御覧ください。機構の調査報告書及び学会等からの要望書を受け、今般、「ミカトリオ配合錠の適正な使用についての指針の一部改正について」の事務連絡の発出を検討しております。改正内容といたしましては、次のページ、17ページの新旧対照表にありますとおり、3成分と同一成分の併用療法を「8週間以上」継続としてきたところを、「一定の期間」に変更したいと考えております。また、2点目として、こちらは学会の要望書で別途変更希望があった点となりますが、これまで「副作用発現や過降圧等」が認められた場合に本剤を中止するように記載をしていたところを、副作用の発現時には投薬を中止することは特段本剤に限った対応ではないことを踏まえて、「過降圧」に限定した記載への記載整備を考えております。報告は以上になります。
○森部会長 1点確認ですけれども、17ページの新旧対照表の一番下の行ですが、「降圧管理」から「適切な高血圧管理」に変わっているのですね。ここは変更されているのですか。
○医薬品審査管理課長 これは変更する予定はないです。これは間違いです。「適切な高血圧管理」のままです。
○森部会長 これは変更なし、でよろしいですね。それでは、本議題につきましては参考人の先生方お二方をお招きしてお越しいただいております。大変お待たせいたしました。では、野出参考人と楽木参考人の順番でございますが、まずは日本循環器学会より野出参考人から御発言いただくことになっております。お願いいたします。
○野出参考人 日本循環器学会を代表しまして、意見を申し上げます。ミカトリオの変更に際して、8週間の制限をなくすことに関しては、先ほど御説明がございましたように、ヨーロッパの循環器学会、(ESC)のガイドライン、米国のガイドラインでも、8週間という期間を区切ったものはございません。それから、8週間という数字自体も、根拠が少ないということがございます。
 実際に臨床上、主治医の先生が6週間とか7週間で、合剤あるいは3種合剤に変更する場合もございますが、特に大きな有害事象が起こるといったことも通常はないだろうと考えています。したがって今回、8週間という数字が除かれて一定期間ということで、これは主治医が適当という判断をした時点での期間ということでございますので、この数字が外れる一定期間というのは妥当であろうと思っています。
 資料を拝見して質問があるのですけれども、資料の2ページですが、安全性解析対象672例がございます。そのうち、例外使用が29例ございますが、今回は、8週間以内の症例に関してどのような有害事象があったかということが主な目的だと思います。この有害事象に関しては、8週間未満に加えて、2種類の薬剤から3種類に変更したケースも含まれておりますので、本来なら8週間以内に投与した症例でどのような有害事象が起こったかということが、データとしては妥当かと思います。安全性解析対象者672例、それと5ページの本調査以外での例外使用例が181例ございますので、この中で8週間未満に変更した症例だけを抽出して、有害事象を解析して、それをデータとして出されるほうが、今回の変更点に合致したデータになるのではないかと思います。
 後半の副作用に関しては、この薬剤以外で副作用が出るケースもございますので、副作用に関する文言の訂正も妥当であろうと考えています。以上が私の考えでございます。
○森部会長 野出先生、どうも御発言ありがとうございました。では、引き続きまして日本高血圧学会の楽木先生から御発言を頂きます。お願いいたします。
○楽木参考人 楽木でございます。聞こえていますでしょうか。
○森部会長 聞こえております。お願いします。
○楽木参考人 日本高血圧学会を代表いたしまして、意見を述べさせていただきたいと思います。今回は、学会の前の理事長の段階に出された要望書に従って、いろいろ御検討をいただいたものと思っております。8週間以上というのを一定期間という形に変えていただいているといったことに関しては、一定の評価を私どもはしております。
 ただ、要望書の中には、ミカトリオ配合錠の成分を2種類以上同量で継続して使用している場合に、本剤への切替えを検討するといったこともいいのではないかということを書き足させていただいております。期間ということに関しての切替えということだけではなくて、そこまで踏み込んでもいいのではないかということでございます。これは、この一定期間というものが0週というものを含むのであれば、もちろんそれで結構なのですけれども、継続して御検討いただけるのであればそういうことでもいいということで、取りあえずは一定期間といったことで、8週間という明確な記載がなくなるというのは妥当な判断だと思っております。
 一つだけ気になっておりますのが、この一定の期間、あるいは前の8週間以上のときがそうだったのですけれども、平成30年の3月期に出されました保医発の第8号ですか、この通達の中に、血圧の値であるとか使用した薬剤であるとか、前治療の内容を血圧コントロール状況を含めて記載して症状詳記をするといったことが課されております。これ自体は、ちょっと処方医に過度な負担を強いているのではないかと思っております。
 学会の立場ではなく、一臨床医としてもそういうことを感じているということを少し申し上げますけれども、これが必要な理由というのがよく理解できておりません。1剤から2剤の配合剤に変える場合には、そういうことは言われていないわけで、当然そういうものに従ってやってくださいといったことは非常に大事だろうと思いますけれども、症状詳記まで必要かと言われると、非常に使われる頻度も増えてきておりますので、3剤配合剤ということを含めて、あるいは配合剤ではなく併用といったことも、いろいろなことで先生方は十分な御経験を重ねられている段階だと思いますので、このような処方をされる先生方に負担になるようなことはなくしていただければ、この改正をしていただくことが生きるものではないかと思っております。
 また、二つ目の改正事項につきましては、今、野出参考人からお話のあったとおり、私も適切な内容に御改正いただけたのではないかと思っております。以上でございます。
○森部会長 どうもありがとうございました。参考人の先生方から御意見を伺ったところでございます。この後、厚労省の方からお願いします。
○事務局 事務局でございます。まずは、野出先生の方から御指摘いただきました逸脱しているものについて、今回の議論には8週間未満のものに特化したような情報が必要なのではないかということですが、これは機構で何か答えられるようであれば、後ほど補足をお願いします。
 それから、楽木先生の方から頂いた、「一定の期間にゼロというのは含まれるのかどうか」については、「含まれないわけではない」という御回答にはなろうかと思いますが、それぞれの患者さんを診られている主治医の御判断で決めていただくという趣旨で、「一定の期間」という文言にしております。
 最後に、これは当課ではなく医療課側が出している通知のお話だったと思いますけれども、レセプト上にどこまで記載をするかということだと思いますが、今回の改正については、今日御了承いただければ、医療課の方にもこういう改正をするということは伝えた上で、レセプトの書き方についても議論いただけると聞いておりますので、それで御理解いただければと思います。私からは以上です。
○医薬品医療機器総合機構 機構ですけれども、先ほど審査管理課より補足するようあった件について、御説明させていただいてもよろしいでしょうか。
○森部会長 お願いします。
○医薬品医療機器総合機構 野出先生より御質問がありました今回の改定の対象となる3成分で8週間未満投与して本剤に切り替えたという症例は、使用成績調査の中では10例が認められております。その中で、ちょうど審査管理課より説明のあった低血圧の表4の症例一覧があったかと思うのですけれども、その中での一番上の症例が1例、低血圧として副作用が生じております。
 製造販売後の副作用の方についてですが、そういった3成分を併用して、今回のようなミカトリオに切り替えたという症例の状況は、こちらでは把握しておりませんので、ちょっとお答えできることはありません。申し訳ございません。
○野出参考人 よく分かりました。この記載を見ますと、例外事項というのが8週間未満、あるいは2種類からの3種配合剤への変更のデータになっておりますので、先ほど楽木参考人がおっしゃったように、2剤から3剤に対する変更も問題ないというふうに感じまして、結論とこのデータの流れが少し違うのではないかと思いましたので、質問させていただきました。
○森部会長 では、委員の先生方からも御意見等いかがでしょうか。特段、御意見はございませんでしょうか。どうぞ、宮川先生。
○宮川委員 今、お二人の参考人からお伺いして、そのような形になればよろしいと思っております。それから、楽木参考人からお話ありましたような、後段の方、いろいろと記載しなければいけないということですが、今、実臨床の中ではしっかりとした診療をしているということが記録されているわけです。そこに縷々、いろいろな制限を付けるということは、実臨床家にとってはあるまじきものと考えて、しっかりとした診療をしているというところが、やはりこのような薬を使う先生たちであろうかと思います。そのような制約は余り好ましくないので、是非そのような改正の中にはそうした配慮をしていただければと思います。以上でございます。
○森部会長 宮川委員からも御意見承りました。代田委員、どうぞお願いいたします。
○代田委員 代田ですけれども、私もお二人の御意見に賛成であります。適切な改正になっていくだろうと考えております。以上です。
○森部会長 御意見ありがとうございました。降圧療法におけます多剤併用療法の有用性も年々明らかになってきておりますし、また、ポリファーマシー対策ということも大きな課題でございますので、今後の添付文書、用法に関する配慮につきましても、よろしければ本日の御意見を十分かんがみた上で、お決めいただくということでいかがでしょうか。
 それでは、参考人の先生方、御意見いかがでしょうか。御発言ございますか。
○楽木参考人 一言、御礼だけ申し上げたいと思います。宮川先生、代田先生、ありがとうございました。
○野出参考人 私の方からも御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
○森部会長 それでは、報告事項の議題2につきましては、御確認いただいたものとさせていただきます。どうもありがとうございました。では、野出参考人、楽木参考人、誠にありがとうございました。どうぞ御退出いただいて結構でございます。どうもありがとうございました。
 では、もう一つの報告事項につきまして進めてまいります。報告事項議題1につきまして、事務局からお願いいたします。
○事務局 医療用医薬品の再審査の結果について御報告いたします。報告事項の資料No.14をお開きください。今回は、資料No.14-1が医薬品テネリアに関する再審査結果の御報告、また、資料No.14-2がエビリファイに関する再審査結果の通知です。
 エビリファイにつきましては効能が複数ありますが、今回は小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性を対象とする再審査でした。いずれも製造販売後調査等の結果を基に再審査の申請がなされ、機構における審査の結果、効能・効果、用法・用量のいずれも変更ないカテゴリー1として差し支えないとの審査結果が得られております。御報告は以上でございます。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問等ございますか。よろしいでしょうか。では、報告事項議題1につきましては、御確認いただいたものといたします。
 それでは、その他の事項につきまして、事務局から御説明をお願いいたしたいと思います。
○事務局 その他事項議題1、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、公知申請を行うことが適当と判断された適用外薬の事前評価について御説明いたします。資料といたしましては、資料No.16を御覧ください。今回は、令和3年7月12日に開催されました第45回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、公知申請を行うことが適当と判断され、本部会に御報告する品目が2品目ございます。
 まずは3ページを御覧ください。本要望は、グラニセトロン塩酸塩に係る術後の悪心、嘔吐への投与に関する日本麻酔科学会からの要望です。本要望につきましては、令和2年5月の第41回の検討会議において、医療上の必要性が高いと判断され、開発要請が行われておりました。
 13ページを御覧ください。公知申請の妥当性について御説明いたします。まず、(1)の有効性についてです。海外のプラセボ対照無作為化二重盲検比較試験において、プラセボに対する本剤の術後の悪心、嘔吐の予防及び使用効果が審議されております。欧米等6か国の承認状況は、5か国で成人における本薬の効能・効果が承認されております。さらに国内外の教科書、診療ガイドラインにおいて、術後の悪心、嘔吐の予防及び治療における選択肢の一つとして本剤が記載されております。以上より、術後の悪心、嘔吐に対する本剤の有効性は期待できると判断されました。
 次に安全性について、13ページの(2)を御覧ください。海外臨床試験において、本剤投与時に認められた有害事象が、ここに記載のとおりでありまして、いずれも既承認の効能・効果において、添付文書で既に注意喚起されている内容と比較して、新たに問題となるような有害事象は認められていないことから、現在の注意喚起に準じて使用することが妥当と判断されました。以上より、本剤の術後の悪心、嘔吐に対する有効性及び安全性は、医学薬学上公知だと判断されました。
 なお、検討会議において、効能・効果及び用法・用量は、14~16ページに記載の内容とすることが適切と判断されております。
 続いて、オンダンセトロン塩酸塩水和物の公知申請について御説明いたします。18ページを御覧ください。本要望は、オンダンセトロンに係る術後の悪心、嘔吐への投与に関する日本小児麻酔科学会及び小児治験ネットワークからの要望です。本要望については、令和2年5月の第41回の検討会議で医療上の必要性が高いと判断され、開発募集と併せて開発候補先となる企業に対して検討依頼が行われておりました。
 45ページを御覧ください。公知申請の妥当性について御説明いたします。まず、(1)の有効性についてです。海外で実施された成人及び小児を対象としたプラセボ対照試験におきまして、プラセボに対する本剤の術後の悪心、嘔吐の予防、治療効果が示されており、国内においても成人を対象とした臨床試験が実施されております。本剤の術後の悪心、嘔吐の予防効果が示されております。
 また、欧米等6か国の承認状況ですが、成人を対象にカナダを除く5か国で、小児を対象に承認されております。また、国内外の教科書、診療ガイドラインにおいて、成人及び小児の術後の悪心、嘔吐の予防及び治療における標準治療薬として本剤が記載されております。以上より、術後の悪心、嘔吐に対する本剤の有効性は期待できると判断されました。
 また、安全性については46ページの(2)を御覧ください。海外臨床試験、国内臨床試験における副作用の状況については、いずれも既承認の効能・効果において、添付文書に既に注意喚起されている内容と比較して、新たに問題となるような有害事象は認められておりません。
 一方で、日本人小児患者を対象とした術後の悪心、嘔吐に対する臨床試験成績はありませんが、既承認の効能・効果であるシスプラチン等の抗悪性腫瘍剤投与に伴う悪心、嘔吐では、小児に対する用法・用量が承認されており、日本人小児への投与経験はあるということ、既承認の効能・効果と比較して安全性に懸念は認められていないことを踏まえると、小児患者においても安全性は許容可能と判断されました。
 以上より、オンダンセトロンの術後の悪心、嘔吐に対する有効性及び安全性は、医学薬学上公知されると判断されました。検討会議における効能・効果及び用法・用量は47~49ページの記載の内容とすることが適切と判断されております。以上でございます。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から、ここの点につきまして御質問等ございますか。特段ございませんでしたら、では、そのほかの事項につきましては御確認いただいたものとさせていただきます。そのほか、事務局から報告はございますか。
○事務局 本日は長時間にわたって御議論、御審議いただき、ありがとうございました。予定されていた審議事項、議題を全て御議論いただきましたので、次回の部会につきましては11月5日金曜日の午後2時から開催させていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○森部会長 先生方、大変長時間の御討議、誠にありがとうございました。以上で本部会を全て終了させていただきます。どうもありがとうございました。
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局

医薬品審査管理課 課長補佐 柳沼(内線2746)