第10回多様化する労働契約のルールに関する検討会(議事録)

日時

令和3年12月22日(水)15:00~17:00

場所

労働基準局第1会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎16階)

出席者(五十音順)

  • (あん)(どう)(むね)(とも) 日本大学経済学部教授
  • (えび)(すの)(すみ)() 立正大学経済学部教授
  • (くわ)(むら)()()() 東北大学大学院法学研究科教授
  • (さか)(づめ)(ひろ)() 法政大学キャリアデザイン学部教授
  • (たけ)(うち)(おく)()寿(ひさし) 早稲田大学法学学術院教授
  • (もろ)(ずみ)(みち)()  慶應義塾大学大学院法務研究科教授
  • (やま)(かわ)(りゅう)(いち) 東京大学大学院法学政治学研究科教授

議題

多様な正社員の雇用ルール等に関する論点について

議事

議事内容

 
○山川座長 それでは、定刻となっておりますので、ただいまから第10回「多様化する労働契約のルールに関する検討会」を開催いたします。
 委員の皆様方、本日も御多忙のところ御参集いただきまして、大変ありがとうございます。
 本日の検討会は、新型コロナウイルス感染症予防の観点も踏まえて、対面とZoomによるオンライン参加を組み合わせた開催になっております。オンライン参加の委員の皆様、こちらの音声・画像は届いておりますでしょうか。ありがとうございます。
 本日は、全員に御出席いただいております。
 議題に入ります前に、事務局からオンライン操作方法の説明、資料の確認をお願いいたします。
○竹中課長補佐 事務局より、操作方法の御説明をいたします。
 御発言の際には、Zoomのリアクションから「手を挙げる」という機能を使用して御発言の意思をお伝えいただき、座長の許可がございましたら御発言ください。御発言時以外はマイクをミュートにしていただき、御発言の際にミュートを解除の上、御質問等いただきますようよろしくお願いいたします。不安定な状態が続く場合には、座長の御判断により、会議を進めさせていただく場合がございますので、御了承ください。
 次に、資料の御確認をお願いいたします。資料1「多様な正社員の雇用ルール等に関する論点について」が今回の資料でございます。参考資料は1~3までございまして、参考資料1は第9回検討会の資料1、参考資料2は裁判例、参考資料3は現在の法制度等となっております。
 不備などがございましたら、事務局までお申しつけください。
○山川座長 ありがとうございました。
 カメラ撮りがありましたら、ここまでとさせていただきます。
 では、議題に入ります。資料1を御覧ください。「多様な正社員の雇用ルール等に関する論点について」ということですが、事務局から説明をお願いします。
○竹中課長補佐 それでは、資料1の御説明をさせていただきます。
 前回御説明させていただいたスライドは適宜割愛させていただきます。
 まず、3ページ目を御覧いただきますと、こちらは論点一覧ということで、基本的に前回と同じですので割愛させていただきます。
 4ページ目のほうで下線を引いているところは前回から修正しているところですが、主な修正は後ほど修正趣旨等を併せて御説明させていただきます。
 続いて、6ページ目を御覧いただきたいと思います。
 こちらの論点につきましては割愛させていただきまして、2の前回までの検討会における議論の整理でございますが、主な点を御紹介しますと、1つ目の○の最後のほうでありますが、労使双方にとって望ましい形で多様な正社員のさらなる普及・促進を推進していくべきではないかという御意見をいただいたほか、2つ目の○の最後のほう、紛争の未然防止の観点から雇用ルールの明確化を図る必要性は高いのではないかということ。
 あとは、3つ目の○につきましては、最後のほうです。雇用ルールの明確化を図り、その上で顕在化する課題について労使双方で対応することで、お互いの納得感の醸成につなげていくべきではないか。
 4つ目の○の最後のほうでありますが、多様な正社員といわゆる正社員を区別することなく両者を念頭に検討を進めるべきではないかといった御意見を頂戴していたところでございます。
 前回御欠席の皆様を中心に、また追加的に何かございましたらいただければと思いますが、(1)総論のその他の資料につきましては、前回御説明したものと同じですので割愛させていただきます。
 続いて、19ページ目を御覧いただきたいと思います。
 19ページ目以降は各論の2(2)雇用ルールの明確化ということでありまして、19ページ目は労働契約の締結時の明示に関する論点であります。このページ自体は前回と同じですので割愛させていただきますが、20ページ目のほうで前回の議論の整理ということで書かせていただいております。
 1つ目の○でありますが、契約の締結時の雇用ルールの明確化については、労働契約法に規定することも考えられるものの、労働基準法第15条1項の労働条件明示に追加することで明確化を図ることが考えられるのではないかという御意見をいただいたところです。
 2つ目の○につきましては宿題のような形でいただきましたが、論点ア・イにつきまして、(a)が労働契約の締結時の明示の話、(b)が変更の明示の話、(c)が労働条件について使用者が労働者に対して行う説明という側面ということで、3つの側面で具体例を挙げて検討を進めるべきではないかということでございました。ちなみに、ここでより細分化して、(a)-1だとか(b)-1と書いておりますのは、雇入れ直後ですとか、変更直後の労働条件の明示の話で、(a)-2、(b)-2というのは労働条件の範囲の明示の話ということでございます。
 これらについて、オレンジの3のところで追加で御議論いただきたい点と書いておりますが、1つ目の○のように、これら(a)から(c)について図で整理しましたので、こちらで問題ないかを御確認いただきたいのが一つ。
 2つ目の○の2行目でありますが、労働基準法15条の労働条件明示に追加する形で措置することを想定した場合に、34ページ目のようなⅠの限定の有無だとかⅡの限定の内容といった確認の内容のパターンが考えられるところ、それらの中でいずれを確認していくべきかということが一つ。また、確認するべき事項として、勤務地・職務のみか、それ以外も含むかというところも併せて御議論いただければと思っております。
 3つ目の○でございます。以上の労働条件明示の話とは別に、規制改革推進会議のほうからは労働契約法や労働基準法89条による措置についても意見が出されていたところですが、この点についてどう考えるかというところでございます。
 次の21ページ目につきましては参考ということでありまして、勤務地や職務などの労働条件の範囲や変更の有無について書面による確実な確認を行った場合の効果ですとか、2つ目のポツは懸念点または留意点ということについて、委員の皆様、ヒアリング先から指摘のあった事項をまとめたものでございます。説明は割愛させていただきますが、これらについても追加すべき観点などがあれば、また後ほど御意見をいただければと思っております。
 続いて、22ページ目でございます。
 こちらは論点イということで、締結時ではなくて変更の際のお話でございます。23ページ目で書いていることもまとめてこの22ページ目で口頭で御説明させていただきますと、まず論点のところで少し変えている下線部のところです。「労働条件が変更された際」と書いております。前回、ここについては「労働条件を変更する際」と記載していましたが、表現を変えましたのは、前回の議論の中で少し混線した部分があった一因としては、変更前の御説明の話なのか、変更後の明示の話なのかというところが資料で明確でなかったからかなと思っておりまして、ここでは明確に変更後の明示の話ということで御議論いただきたいということで書いております。
 続いて、下の点線のところでございます。労働条件の変更の方法として考えられる例ということでございまして、ここで書いている追記部分のうち、③のところだけ言及しますと、「又は個別契約」と入れていますのは、パターンとして網羅するために追加しているものでございます。
 この点線囲みのところで前回の議論を振り返りますに、①から⑤というものがある中で、①から③と④・⑤というのは区別したほうがいいなということでございまして、④・⑤については規定されている変更の範囲内で労働条件が変更された場合ということですので、新しい措置の検討というよりは契約内容の理解促進が大事ではないかということでございました。
 他方で、①から③については、もともと規定されている範囲の外に変更されるということでありますので、23ページの3つ目の○でありますが、労働基準法15条の書面明示が必要か検討する必要があって、ただ、③については使用者の負担も踏まえて慎重に検討するべきではないかということでありました。
 あとは、22ページ目のほうをまた御覧いただきますと、一番下の方策として考えられる例という点線の中の2つ目のポツです。確認内容として考えられる例ということで、まず左側のⅠとⅡにつきましては、前回明示的な御議論がなかったところでございますので、御意見をいただけると幸いです。
 また、今回追加しているAとBというところについても、また御議論いただけるとありがたいなと思っているところであります。
 続いて、23ページ目の話は先ほどしましたので割愛しまして、24ページ目を御覧いただきたいと思います。
 こちらについては、前回の検討会の御議論の中で現行法や現状について整理すべきという御意見も踏まえまして、もろもろの資料を用意させていただいたところであります。それらを踏まえまして、3行目の後ろのほうでありますが、労働基準法15条の労働条件明示に追加する形で措置することを想定した場合に、どのような方策、確認内容が考えられるかということで、①から③に絞って御議論いただければなと思っております。
 2つ目の○でありますが、労働条件の変更の有効性が裁判等で問われるケースも想定されますが、その有効性を問わずに上記の書面による確認が行われるよう措置することを検討するということでよいかというところも確認いただければと思います。
 続いて、25ページ目でございます。
 こちらについては論点ウということで、論点ア・イを踏まえまして、労働契約関係の明確化を図る場合に発生する諸課題への対応ということでございます。2の前回までの議論の整理というところで言えば、1つ目の○の2行目でありますが、限定された職務・勤務地が配置されたとしても当然解雇が正当化されるということにはならないのではないかという御指摘のほか、雇用ルールの明確化から派生して生じるような課題については裁判例等の内容をまとめて考え方を整理して示していくことが考えられるのではないかという御意見をいただいたところです。
 これを踏まえまして、オレンジの3の部分でありますが、後ほど52ページ目以降で整理しておりますので、こうした整理でいいかという点について御意見いただければと思います。
 それでは、ページを飛ばしまして、31ページ目を御覧いただきたいと思います。
 こちらについては、論点アからウと(a)から(c)について図で整理したものでございます。
 まず左側のところです。労働契約の締結時でございます。現行は(a)-1と書いているように雇入れ直後の勤務地や職務の明示をしていただいているほか、(c)労契法の4条などに基づきまして、労働条件について使用者が労働者に対して行う説明というものがございます。他方で、(a)-2でございますが、勤務地などの労働条件の範囲だとか変更の有無の明示というものは現行規定がなく、追加的な明示に関する措置が今回の論点でございます。
 締結の後、矢印のところでありますが、上が範囲外への変更の話、下が範囲内での変更の話ということで分けておりまして、まず上の範囲外のところを御覧いただきますと、変更の申入れ時と変更した後というところで分けていますが、変更の申入れ時につきましては、現行も労契法4条などの説明が求められているというところでございます。変更後につきましては、それに加えて、(b)-1だとか(b)-2のような変更の労働条件の明示を現行は規定上行うこととしておりませんが、そういった明示について行うこととするかどうかということが論点イでございます。
 続いて下のほうの範囲内の変更につきましても、同様に記載をしているというところであります。
 前回指摘のあった現行法の整理だとか現状については次のページ以降で見るものでございます。32ページ目を御覧いただきたいと思います。
 32ページ目のほうは範囲外への変更ということで記載しておりまして、先ほど申し上げた(a)だとか(b)に対応するようなものとして、労働基準法の規定を上のほうで入れているほか、(c)に対応するようなものとして労働契約法の規定を下のほうに入れているところであります。
 また、青い吹き出しのところです。例えば労働基準法のところにある過去5年間に多様な正社員とトラブルがあった企業のデータや就業規則の周知方法といった形で現状に関するデータを入れているほか、関連する裁判例を真ん中のほうに入れているというものであります。
 33ページ目については、範囲内での変更について同様にお示ししたものでございます。
 続いて、34ページ目を御覧いただきたいと思いますが、こちらはタイトルにもありますように論点アでⅠからⅣのそれぞれを明示する場合の具体例でございます。
 左上のますにありますように、契約内容としては勤務地に限った具体例ということでありまして、横軸のほうでAさんは完全限定型ですとか、中間型とか完全無限定型というものを並べていまして、縦軸のほうで現行法の明示を入れているほか、ⅠからⅣのそれぞれを並べているということで、それぞれのケースでⅠからⅣを明示してもらうときにどういう形で明示することが考えられるのかというのを具体例でお示ししたものであります。
 一番左上のAさんの例でいきますと、現行は明示しなければならないのは雇入れ直後のみということですので、新宿事業所ということになるわけですが、例えばⅠのように限定の有無についての明示をしてもらうということになったときには、労働条件通知書で言えば勤務地限定ありということになることは想定されますし、就業規則のほうについては、オレンジのコメント欄の①でも書いていますが、現行の記載事項に就業場所だとか業務はないこととの関係で、ここで一旦バーとしていますが、どう考えるかということで書かせていただいています。
 他方で、次にBさんの例でいきますと、中間型ということでありますので、契約内容の欄でいきますと原則勤務地限定ありということで、一定の事由に該当する場合には一定期間範囲外への配置転換等があり得るとしております。この場合に、Ⅰの限定の有無を明示してもらうときに勤務地限定はありとするのかどうかということです。これはオレンジの②のところでも書いていますけれども、どのような場合に限定ありだとかなしと考えるのかというところが論点となり得ると考えております。
 続きまして、ⅡとⅢでございます。Ⅱが限定の内容でⅢが変更の範囲ということでありまして、この2つについては、右側のほうを見ていただいても分かりますように、基本的に同じ内容を明示することと想定されるところです。ただ、Ⅱの限定の内容につきましては、右側のCさんとかDさんのような、完全無限定型とかどちらかというと限定なしというような場合に、これはオレンジの③のところで書いていますけれども、限定の内容の記載をどう考えるかというところが論点となり得るかと思っております。
 続いて、左側の縦軸のところにもオレンジのコメント欄を入れておりますが、まず④のところでありまして、ⅠだとかⅡの場合の論点アの検討対象については場所だとか業務でよいか、勤務時間等も必要かということであります。
 あとは⑤でありますが、Ⅲの変更の範囲という場合には、検討の対象が場所だとか業務でよいかということでございます。これについては次のページでまた補足させていただきます。
 また、Ⅳの転居を伴う配置転換があり得る場合はその旨というふうに明示してもらうこともあり得るかなと思いますが、これについては⑥のコメント欄で入れていますけれども、転居を伴うかどうかは個々人の判断によることをどう考えるかということと、配置転換と指揮命令との区別をどう考えるかというところが論点になり得ると思います。
 これらを踏まえまして、ⅠからⅣのどれが適切かという点について御議論いただければなと思います。
 次に、今ほど⑤で書きましたⅢの変更の範囲を選ぶ場合に関連して、35ページ目を御覧いただきたいと思います。
 こちらにつきましては、左側が現行の契約締結時の労働条件明示事項でありまして、右が就業規則の必要的記載事項を並べているものでございます。
 まず下のほうを御覧いただきますと、色を変えている2号以下の部分であります。こちらについては右側でも同じように色を変えているところ、就業規則の記載事項等と基本合致しておりまして、契約の締結時点での将来にわたる明示はできているものと考えられます。
 上のほうの1号だとか1号の2については契約期間に関するような話でありますが、期間満了までの将来にわたる明示はできているものと考えられます。
 他方で、1号の3でありますが、赤字でも記載しておりますように、雇入れ直後の就業の場所及び従事すべき業務を明示すれば足りるという通達で記載しておりまして、これに関連して、労使の認識のそごも生じた裁判例もあります。これを踏まえまして、検討の対象が場所、業務のみでいいかというところが検討の課題ということでございます。
 なお、青い吹き出しのところですが、この点については、多様な正社員に関連して雇用管理上の留意事項と保有通達を出しておりまして、その中で、下線部でありますけれども、「限定の内容が当面のものか、将来にわたるものかについて明示することが望ましい」としておりまして、今回の論点はこれに追加してどのような措置が考えられるか御議論いただければと思っております。
続いて、37ページ目を御覧いただきたいと思います。
 こちらは論点イ関連とタイトルで書いていますが、労働条件の変更方法と変更後の明示ということでございます。
 縦軸については論点イでお出ししました①から⑤を入れておりまして、ここでのケースは、一番上にもありますが、Aさんという勤務地限定ありの地域限定社員のケースでございます。この中のまず一番上の①のケースで見てみますと、変更前につきましては、変更の範囲が赤字でもありますが、東京23区内となっている。これが個別契約の変更によって中央区内に限定するとされたときに、変更の範囲は中央区内となるわけですが、上の括弧書きでもありますように、現行は変更後の書面明示義務はないところであります。こういったことを踏まえまして、オレンジのコメント欄でありますが、内容が変更されても書面明示義務がなく、変更の範囲が不明確になるリスクをどう考えるかということでございます。この点については①から③で共通して言えることだろうと思いますし、特に論点アで雇入れ時に変更の範囲などを明示する場合に、そうした課題はより顕在化するものと思われます。
 他方で、③のところであります。就業規則の変更によって規定されている労働条件が変更される場合につきまして、就業規則の規定では地域限定社員の勤務地域は東京23区内に限定するとしていたときに、就業規則の変更があって中央区内に限定するとしたとします。そうすると、変更後につきましては、就業規則の規定が中央区内に限定すると変わりまして、このときに、※で書いてありますが、労基法106条による周知義務というのは別途あるということで、オレンジのコメント欄にも書いていますが、③については労基法106条による周知があることをどう考えるかということで、それも踏まえまして、①から③のいずれを対象に労働条件変更後の明示を考えるべきかという点について御議論いただければと思います。
 なお、下のほうの④とか⑤のようなもともと規定されている変更の範囲内で変更されるようなケースにつきましては、当初から合意している内容の範囲内の話なので、前回の議論を踏まえまして、変更後の明示は不要ではないかと記載しています。
 続いて、次のページ以降は前回御説明したものが多くなっていますので割愛しまして、43ページ目を御覧いただきたいと思います。
 こちらについては就業規則の関係でありまして、規制改革推進会議のほうから、下線部でありますが、転勤を行うことを予定する場合には当該事項、また、労働者の勤務する地域を限定して使用する場合には、その限定に関する事項を追加することとしてはどうかという意見があったところであります。これに対しまして、第4回の議事録を入れていますけれども、使用者側の弁護士の方からは労働契約法12条の問題も指摘されたところであります。
 他方で、労働時間につきましては、3つ目の○の下線部です。施行通達の中で就業規則で個別の労働契約等で定める旨の委任契約を設けることで差し支えないとしておりまして、同様の整理を業務とか場所で行うことも考えられますが、それを踏まえまして、89条の改正についてどう考えるかというところでございます。
 52ページ目を御覧いただきたいと思います。
 次に、論点ウの関連ということで、アとかイの話に派生して生じるような諸課題への対応ということで、これまでの裁判例に基づいてどう考えるかというのをここから整理しているものでありますが、まずこのページについては、多様な正社員に限らず、労働条件の変更に関する裁判例に基づく考え方というものを入れております。左のところでもありますが、範囲外の変更と範囲内の変更と大別しまして入れています。
 内容については前回検討会で御説明した内容ですので割愛させていただきまして、53ページ目を御覧いただきますと、こちらは多様な正社員に限った話ということで、配置転換に関する裁判例に基づく考え方をまとめているということでございます。
 続いて、54ページ目を御覧いただきたいと思いますが、今度は多様の正社員の整理解雇に関する裁判に基づく考え方ということで、ここでは前のページとは少し違いまして、平成26年に取りまとめられた有識者懇談会の報告書において整理された考え方を記載しておりまして、その傾向が直近の裁判例でも変わらないということを確認いただければなと思います。
続いて、55ページ目でも同様に、今度は多様な正社員の能力不足解雇について記載しているほか、下のほうで前回検討会の中で話のあった変更解約告知、つまり、下で括弧書きでも入れていますが、労働条件の変更に応じないことを理由とする解雇の裁判例に基づく考え方も整理しているところでございます。
 続いて、56ページ目でありますが、前回検討会の中で御指摘のあったように、勤務地だとか職務限定合意が認められた労働者との関係で、解雇回避努力義務として配置転換等が検討されるべきとされた裁判例を入れておりますほか、57ページ目で勤務地限定合意が認められた労働者について勤務地が消滅した場合、限定された勤務地と同一地区内での雇用維持努力が求められた裁判例を上で入れています。
 他方で、下のほうでありますが、職務限定合意がある労働者に対して、当該業務の廃止を理由として整理解雇を行う場合に、解雇回避努力を尽くしたかどうかを検討する前提が欠けているとされた裁判例もございます。ただ、これについては、※の参考のところでも記載させていただいているとおり、その判示につきましては主な学説において疑問とされているところでもございます。
 次に、58ページ目以降で変更解約告知に関して説明を入れています。説明は割愛させていただきます。
 続いて、69ページ目を御覧いただきたいと思いますが、今度は論点が変わりまして、2(3)その他でございます。こちらは前回議論していないところでありますが、まず論点アが多様な正社員に係る人事制度等を定めるに当たって、多様な正社員の意見が反映されるようにすることをどう考えるか。イですが、多様な形態の労働者の間のコミュニケーションをどのように図っていくことが考えられるかということで入れています。この点については、無期転換の議論の中でも同様に議論いただいたところですが、多様な正社員に関しましても御議論いただければと思います。
 次のページ以降で関連資料を入れておりますが、以前に説明したものでもありますので、説明は割愛させていただきます。
 私からの御説明は以上でございます。
○山川座長 ありがとうございました。
 それでは、議論に入っていきたいと思います。
 前回は(1)の総論、(2)の雇用ルールの明確化まで御議論いただきました。今回、前回の議論を踏まえて追加されている論点がありますし、また、前回御欠席の委員もいらっしゃることから、本日も(1)の総論、(2)の雇用ルールの明確化、それから、今回は(3)のその他の項目ごとに議論をしていただきたいと思います。その中では、資料の追加等がありました(2)の雇用ルールの明確化が中心になるのではないかと思います。
 (1)の総論についてですけれども、前回御欠席の先生方から御意見等がありましたらお願いいたします。また、前回御出席の先生方でも何か特にということがありましたら、御発言をお願いしたいと思います。
 それでは、(1)総論についてはいかがでしょうか。
 両角委員、お願いします。
○両角委員 ありがとうございます。
 今回欠席いたしましたので、総論に関して1点申し上げます。
 この検討会では、雇用ルールの明確化について、今回の資料にもあるように、非常に精緻な検討がされております。それ自体は必要だし非常に良いことだと思うのですが、最終的に出される報告書では、できる限りシンプルに考え方やルールを示すよう努力する必要があると思います。
 というのも、今回の話は、ヒアリングでは中小企業の使用者の負担も指摘されましたが、同時に労働者が理解できるようにすることが非常に重要ではないかと思っております。労働者が自分の労働契約の内容がどのようになっているのか、例えば公布された書面や就業規則にどんな意味があるのかが分かるようにする。もちろん、書面や就業規則に書いてあることがそのまま労働契約の内容だとは限らないわけで、その辺りは難しい点もありますが、しかし、個々の労働者が基本的なことを理解して、必要であれば労働者の側から使用者に確認するようなことが可能にならないと、法制度を整えても結局絵に描いた餅になってしまうのではないかと思います。したがって、ここでは精緻な検討をしつつも、最終的に出てくるものはできる限り分かりやすいものにすることが大事ではないかなと思いました。
○山川座長 ありがとうございます。最終的なまとめ方に当たって重要な視点を御提示いただいたと思います。
 では、坂爪委員、お願いします。
○坂爪委員 ありがとうございます。
 私も前回欠席しましたので、少しコメントをさせていただきます。
 この多様の正社員というのは、今後これまで以上に労働市場に広がっていくということが期待される働き方だと思っております。そのことを踏まえたときに、もちろん雇用ルールの明確化等をしっかりしていくことは重要なのですが、それが働き手にとっても、人材を活用する企業にとっても、一つの非常に有効な働き方なのだということを併せて雇用者側・労働者側に伝えていくということがとても重要ではないかと考えております。
 もう一点なのですが、特に職務限定正社員というものについては、今私たちが目にしている以上にいろいろな活用方法が今後出てくることが想定されますので、職務限定とはそもそも何なのかというところも併せて雇用者側、労働者側にきちんと伝えていくことが重要なのではないかと考えております。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 ほかはございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 総論については、今後のまとめ方にも関わりますので、また御議論いただく場面があろうかと思います。
 それでは、(2)の雇用ルールの明確化で、アからウまで論点を示していただいておりますけれども、まず論点アについて、資料1の18ページあるいは20ページの前回の御意見を踏まえて、追加で御意見をいただきたい点の整理等が出てきておりますので、これらを中心に、まず論点アについて御意見等がございましたらお願いいたします。何かございますでしょうか。
 竹内委員、どうぞ。
○竹内委員 どうもありがとうございます。
 基本的にはオレンジで示されております追加の論点について発言が期待されているのではないかなと思いますので、今のところで申しますと、 20ページのオレンジ色のところに○が3点ございますけれども、それについて発言させていただければと思います。
 1つ目の○については議論の方向性というかやり方で、これは前回の議論を踏まえて整理いただいたものが31ページに示されているので、基本的にこの形でよろしいのではないかと思います。
 2つ目の○が特に重要な点と考えまして、その点について申し上げさせていただきますと、私、前回の検討会で、労基法15条1項には罰則もあるということ等も考えると、限定があるかないかということを基本的には中心として、それ以外はよりソフトな方法でということを申し上げました。ただ、同時に、前回の検討会では、それでは意味が乏しいのではないかという御意見も種々あったと思っております。
 そういう意味では、なるべく義務内容を明確化する、先ほどシンプルにというお話もございまして、義務内容を明確化する必要はあるとは思いますけれども、そういう前回の御議論も踏まえると、限定があるかないかだけではなく、今34ページでお示しいただいている中身に関しても、法令レベルで、具体的には労基法の15条とそれを受けた労基法施行規則になるかと思いますけれども、検討されてもよいのではないかと考えるに至ったところであります。
 その上で、今ちょうど34ページをせっかく映していただいたので申し上げさせていただきますと、一番左側のところにⅠからⅣでどの程度まで求めるかという形の議論があると思いますけれども、この一番左側のⅠからⅣで言うと、基本的に私としてはⅢの変更の範囲を規定するということでよいのではないかと考えています。変更の範囲が示されることによって、その範囲内では使用者の留保された権限に基づいて一方的な命令で変更があり得る。それは労働者としても分かるし、また、その範囲を超えては変更がないということも同時に意味する。そうすると、Ⅲを示すことでⅡについても同時に限定の内容を示すことを兼ねると思いますので、ⅡとⅢで言えばⅢがよいと考えます。
 あと、Ⅳに関して、34ページのオレンジのところにも書かれていますけれども、転居を伴うかどうかというのは、労働者の側あるいはその労働者の家族の判断もあるという側面があって、ある転勤命令がそれ自体で客観的に転居を伴う性質のものかどうかというのは判断できないということもありますし、Ⅲの変更の範囲を示すことで、その中身を見て、労働者の側が、場合によっては、自分は転居が必要になるような配転もあり得るなといったことは分かるのではないかなと思われます。そういうふうにⅣを兼ねるという意味でも、Ⅲがよいと考えます。そうすると、Ⅰ以上についてやるのであれば、Ⅲを取るということ足りるのではないかなと考えています。
 今回の検討の対象で、どの労働条件の範囲まで検討すべきかということも事項として挙がっているかと思いますけれども、ここまでの議論の検討が念頭に置いてきたものという意味では、勤務地と職務ということでよいのではないかなと考えます。いわゆる限定正社員だと時間の限定というケースもあるかと思いますが、比較的事例が限られているということと、それについては今映していただいている35ページの資料で言うと、労基法のところで言うと施行規則の2号で時間についていろいろ示すことに現行法上に既になっておりまして、時間限定はこれで既にカバーできると考えられます。その意味で、基本的に勤務地と職務というのを念頭に置いてよいのではないかなと思います。
 理論的に言うと、それ以外の賃金とかも含めて労働条件が変わった場合にも改めて明示させるということを否定する理由はないのかなとは思います。ただ、ここまでの議論の流れから言うと、先ほど申し上げた形でよいではないかなと思います。
 あと、20ページのオレンジのところの3つ目の○のところなのですけれども、以上申し上げたように、労基法15条で手当てをするのであれば、労契法4条2項のほうで同じ内容を手当てする必要は、法体系の観点からの考慮を度外視すれば、あえて言えばないと考えています。
 また、就業規則に関する労基法89条の規定を整備するというのは、現実には雇用管理区分ごとに勤務地などを限定するとか、就業規則で雇用管理区分を定めて運用するということを念頭に置いて言われているのではないかなと思いますし、その意味では、そのような就業規則による雇用管理区分がある以上はあってもよいのではないかなと思わなくはないのですが、本来的に言うと、勤務とか職務の限定というのは個々の労働者のライフスタイルだとかキャリア形成というものを踏まえて、個別の労働契約で規律されていくべきものではないかと思います。そういう意味では、合理性等が条件であるとはなっていますけれども、やろうと思えば一方的に変更し得る就業規則でそういうふうな様々な限定的な雇用の仕組みを整備すること自体、本来的にはそぐわないところがあって、そういうふうな意味では、ルールの設計の立場としては、基本的には就業規則であれこれこういうふうな限定の仕組みをつくっていくのは疑問がなくはないというところがあります。ただ、現にそういう制度が就業規則で定められて運用されているということであれば、89条のほうでも勤務地等について同様の規定を置くということはなくはないかと思います。
 長くなりましてすみません。以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 ほかの委員の皆様、いかがでしょうか。
 桑村委員、お願いします。
○桑村委員 ありがとうございます。
 先ほど竹内先生がおっしゃった内容に賛成いたします。34ページの話に戻りますと、私自身は、労働契約の締結時に関しても、就業場所、業務の内容について変更の範囲を明示するという条項を労基法15条の書面明示に加えることがよいと考えています。
 その上でどこまでやるかについて、竹内先生からもお話がありましたけれども、私もⅢの「変更の範囲」で足りると考えます。Ⅰの限定のあり・なしですと、中間型をどちらに区分するのかが不明確です。中間型②-2は「原則限定あり」となっていますが、例外的に一定の場合には使用者が配転を命じることがあるのであれば、本人の同意なく変更しないという意味での限定はないことになり、これは限定がないケースだと捉えられる可能性があります。
 続いて、「限定の内容」については、限定がある労働者のみが対象になると思いますが、限定がない社員についても、それをきっちり認識した上でその働き方を選択することが必要だと思います。これらを全て網羅できるのが変更の範囲です。変更の範囲とすれば、限定の有無、そして、内容が含まれた形での事項が労働者にとって明確になります。両角先生もできるだけシンプルにとおっしゃいましたので、追加事項を増やすのではなく、最小限の必要な範囲内で、と考えますと、やはりⅢのみで足りると思います。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。
 安藤委員、どうぞ。
○安藤委員 ありがとうございます。
 両角先生からあった「分かりやすい仕組み」にということについて、その方向性には同意なのですけれども、今、明確な形で限定した書き方でいいという流れなので、詳細にしたほうが明確になるのではないかという観点から、あえて議論のたたき台として幾つか発言させていただきます。
 まず、限定の有無などという話で、記載がなかった場合とかが③などにもあったりしますが、そもそも限定があるのが原則であって、雇用労働条件というのは明示されていることが前提であって、何もなかったら当初の条件で固定されているというのがベースなのではないかなと私は個人的には思っていました。バイクとかの限定解除みたいなものと同じで、当初は限定されている。特別な合意があったら限定が解除されるのではないかなという観点から、限定しない、無限定とするというのは、イコール使用者側が一方的に、労働者側の意見は聞くかもしれないけれども、労働条件を変えるということですから、そういう場合はきっちり明確に書いてくださいというほうが原則なのかなと思っていました。
 続いて、20ページの辺りで出てきた話で、私が個人的に気になっていたところとして、どこまで書き込めば労働者は納得するのかといったときに、非常に細かい争いになる論点なども含めると、いろいろと書こうと思ったら書けることはあるような気がしています。例えば配置転換の可能性がある。これは契約で理解していた。しかし、これは恣意的な配置転換ではないかと争う可能性もあるわけです。なので、例えばどのような場合に配置転換や転勤の可能性があるのかという労働条件の契約内での変更がどういう場合に行われるのかということについても明示する必要があるのか、ないのか。それがされていない場合には限定していないと、配置転換の可能性がある、転勤があるという場合には、会社側の命令によって変更された場合に不平不満を言えないのか。それとも、ほかの労働者とのバランスによって、やはり争う余地があるのかないのか、この辺りも契約に明記できるのだったらしたほうが、細かい点ですが、より明確になるのかなとも感じています。
 また、私が実際に聞いたことがある事例としては、配置転換の可能性があるという契約をしていて、実際に配置転換された人、そして、実際には配置転換されなかった人、例えば東京本社にずっといる人みたいな人が中にいたときに、配置転換された人から不平不満が出るというような話を聞いたことがあります。配置転換の可能性があるということで賃金の割増しみたいなものがあって、限定されていないことに対する対価が支払われていて、しかし、実質的に重要な職務についている人は東京本社にずっといる。こんな場合に不平不満が出るので、必要はないのだけれども、本来は動かしたくないのだけれども、納得感を醸成するためにあえて時々動かしている、こんな話を聞いたことがあります。
 というわけで、配置転換の可能性などについて、本人がどうかということではなくて、ほかの人とのバランスです。他の人がどういう扱いを受けるのか、実質的には配置転換を受けない人も配置転換を受ける可能性があるとして高い賃金が払われている。こんなことについても不満とか争いが出る可能性もないわけではないという観点から、予防的に企業が振る舞っている。こんな現状もあるので、この辺り、非常に細かいことを言えば、いろいろと書こうと思ったら書けることはあるのかなということを踏まえた上で、書かないということ。配置転換の可能性があるかどうか、転勤の可能性があるかどうかということについて明記をするというだけで足りるのかということが気になっていますということが申し上げたかったことです。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 ほかの委員の皆様、何かございますでしょうか。
 まず両角委員、お願いします。
○両角委員 ありがとうございます。
 安藤先生のおっしゃったこともよく分かるのですけれども、労働契約の内容に関することと、恣意的な配転かどうかというのはまた別のレベルの話という気もして、整理して考えてみる必要があるように思います。
 また、竹内先生が最初に言われた御意見に関して、15条については、桑村先生も言われたようにⅢでよいのかなと思います。
 気になっているのは就業規則のほうなのですが、竹内先生は就業規則に配転の有無とか変更の範囲とかを必要記載事項にしないほうがいいという御意見であるように伺いました。確かに本来的に言えば、転勤するかどうかは個人的な事情によるところもあるとは思うのですが、他方で、多くの会社には就業規則に配転の規定というものがあり、それを根拠に転勤がされているという現実があります。また、限定正社員について例えば転勤はないということが書かれていれば、それが最低基準効により労働者の保障になる面もあります。私も迷うところではあるのですが、就業規則に記載させるのも悪くないのではないかとも思っているところです。
 定まらなくて申し訳ないのですけれども、以上です。ありがとうございました。
○山川座長 ありがとうございます。
 では、次に戎野委員、お願いします。
○戎野委員 私は、やはり先ほどの34ページのところでの皆さんの御意見とほぼ同感であるということです。前回、イメージがなかなか湧かない中での議論だったのですけれども、今回AさんからDさんまでという形で非常にリアルな感じで出てきますと、限定とは何なのか、何が限定されているのかというのが通常多くの労働者にはぴんとこない中で、この3番目の範囲というのが非常に誤解なく、かつ、多くの人にきちんと自分がどうあるのかということが明示されるという意味で、これがベストであるということは私も同感であります。
 配置転換で転居に関しては、同じ人でも置かれた環境によって、家庭の事情等によって転居が必要になる場合もあれば、転居が必要ない場合も出てくるなど、ここのところの定め方というのはかなり難しいと思いますので、やはりこのⅢの中に内包されているのがいいのではないかと。
 それから、労働時間に関しても、勤務地が変わり、仕事が変われば変わるケースが物すごく多いと思うのですが、御説明がありましたように、今映していただいているここのほうでカバーするということであれば、あえて先ほどの34ページのほうの話の中に入れる必要はないのかなという感想を持ちました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 坂爪委員、お願いします。
○坂爪委員 ありがとうございます
 基本的には私もⅢの変更の範囲というのが、企業が実際に行う、それから、受け取った従業員側が理解するというところでいくと、実際の運用からすると、一番やりやすいところなのかなと考えております。
 職務の変更の範囲というものがどういうふうに書かれるのかというのは、私、まだイメージできていないところがあるので、そのところはまたどこかで確認できればと思いますが、そういった課題はあるものの、現時点で御提案いただいた中ではこれが一番いいのではないかと考えております。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 ほかはよろしいでしょうか。
 それでは、竹中課長補佐、どうぞ。
○竹中課長補佐 もろもろコメントありがとうございます。
 今ほど坂爪先生から御指摘のあった職務の変更の範囲についての書き方については、例えば38ページ目などを御覧いただきますと、左上の①のように、労働条件通知書等で従事する業務の内容ということで住宅事業の販売・広告戦略に関する企画・立案ですとか、もしくはその下の②のところは就業規則ということでありますけれども、業務の内容ということで研究会の準備・運営、データ分析・処置等と書くという例もあるかと思います。
 念のための補足でございました。
○山川座長 ありがとうございました。
 ほかに何か追加等はありますか。
 いろいろ御議論いただきまして、そもそも限定と変更の範囲の違いは何かというようななお話が議論されたかと思います。最初に竹内委員が言われたように、34ページのⅢの変更の範囲は、ある意味ⅠとⅡも含むというような御理解であったかと思います。確かに限定というのは変更しないということになるでしょうから、ある意味で重なってくるということかなという感じがします。その意味では、変更の範囲というのも変更が可能である場合の変更の範囲ということで、そうすると、変更しないという場合も、あまりないだろうと思いますけれども、あった場合には、ⅠとⅡも含むということであれば変更の有無及び範囲みたいな形で理解していくということになるのかなと思いました。
 それから、安藤委員の言われた労働者の納得のいくことあるいは恣意的なものを防ぐということでありまして、これは20ページの(c)に関わる。説明だけに限らないかと思いますけれども、罰則規定としての労働基準法の問題と、それから、労働契約法の労働契約内容になるかどうか。すなわち、例えば転勤命令等を出したら、それが恣意的なものとして無効になったりすることもあるわけですけれども、そういう契約上の効力の問題等があって、(c)はそちらのようなことを前提として、(a)と(b)は刑罰法規の適用を前提にしているのかなと整理の仕方としては思ったところであります。
 また、限定という言葉の問題ですけれども、特定と限定は違うということで、何か示すときに、Aという場所ですよというのは特定ではあるけれども、それが将来変更されうる場合には限定ではないということで、判例等でも特定と限定が混同されていることがありますので、言葉の整理はいろいろな点でしておく必要があるのかなという思った次第です。
 あと、就業規則の点はいろいろな御意見があったところかと思います。この点もどこまで書くのかということと、これまで事務局から説明がありましたように、何らかの例外規定を設けない限り、労働者も使用者も納得した上で勤務地限定を外すとか転勤をするということも、例外規定を設けない限りは、納得ずくのものでも最低基準項で無効になるという問題をどう考えるかというようなことが出てくるかなと思った次第です。例外規定を設ければ済むということになるかもしれませんが。
 私の追加的なコメントは以上のとおりになりますが、あと、就業規則の記載事項も厳密に言えば刑罰法規で、ただ、これはもし設ける場合はということなので、そういう制度を設けて記載しなかった場合に限られるということで、絶対的必要事項ではないということになるわけでしょうか。これもコメント的なことになります。
 雑駁なコメントを付してしまいましたけれども、何か追加的な点はありますでしょうか。私のコメントというよりも全般的に論点アについてでありますけれども、よろしいでしょうか。
 追加しますと、明示の対象事項と対象事項における変更は次元の違う問題で、例えば勤務地を明示するという問題と、その勤務地についての変更の有無とか範囲を明示するという問題はいわゆる次元の違う問題で、しかし、勤務地とか職務内容に関する変更の有無とか範囲もまた労働条件であるという整理になるかと思います。何を明示するかについては、就業場所、勤務地、職務ということで、具体的にどう書くかという点は事務局からも説明がありましたけれども、運用上の問題を別にすれば、その2つは比較的御意見が一致していたかなという思うところであります。
 また後で全般的な議論をしていただけると思いますけれども、特段なければ、22ページ、それから、特に23ページ、24ページになりますが、論点イについては、いかがでしょうか。
 竹内先生、どうぞ。お願いします。
○竹内委員 ありがとうございます。
 23ページのオレンジのところは議論のやり方というか方向性でありまして、これは前回の議論も踏まえて私としては異論ございません。
 その上で、24ページのほうがイの論点でより中心的になると思います。御意見はいろいろあるのだと思いますけれども、前回とかこれまでの議論の流れを私なりに踏まえると、労働契約を締結する論点アの場合と同様に、24ページに書かれている1つ目の○の①から③の3つともについて、労基法15条に基づいて個別に労働条件明示の対象とするということになるのではないか、それがむしろ一貫したルールではないかと考えられます。
 前回の議論を思い返すと、③の就業規則の変更の場合については一番議論があるところではないかなと思います。これは関連しているのは37ページの表ではないかと思うのですけれども、37ページの③のところを見ますと、就業規則が変更されて周知される。就業規則がどう変わったかは、労働者は周知されていますので知ろうと思えば知れると言えるわけで、また、その2つ下の欄で、その時点のAさんの労働条件で、法的には、労働契約内容は、右側にある東京都中央区内となっているもの、そちらのほうが妥当するわけなのですけれども、恐らく労働者の手元に従前の労働条件通知書が残っている状況にあろうかと思います。一方で、今申し上げたように、変更後の労働就業規則が周知されています。そうすると、労働者から見ると、就業規則の変更後、自分の労働条件が従前の通知書の内容のまま妥当しているのか、変更後の就業規則によって規律されているのか、どちらの内容で規律されているのか、労働者から見ると恐らく分からない可能性があります。法的にはもちろん優劣関係とかを踏まえて決まるということになるわけなので、例示されている内容であれば中央区内となるわけなのですが、専門的な知識があるとは限らない労働者から見ると分からない可能性があります。しかも、手元の資料や通用している就業規則などを見るとむしろずれているのではないかという形で、労働条件の理解が明確でなくて紛争が生じる可能性もあります。
 そうした状況は、まさしく、この検討会のこれまでの議論で、よろしくないのではないかとして議論してきたものだと思いますので、就業規則を変えた場合にまた一々労働条件明示を個別にやらなくてはいけないのかというような負担の問題というのは確かにあろうかと思うのですけれども、労働条件が明確でないこと、あるいは労働条件に関する理解が不十分であるということからの紛争を防ぐという意味では、①から③について論点アと同じように労基法15条の下での明示の対象とするということがあっていいのかなと思いました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 戎野委員、どうぞ。
○戎野委員 ありがとうございます。
 まさしく今、竹内委員が御指摘いただいたところは、前回、私は中小企業などのことを考えると、③のところは負担がどうなのだろうかということをかなり危惧する意見を申し上げました。
 今回、いわゆる個別契約ということもこの中に言葉が入られて、就労規則または個別契約ということで内容が実感としても非常にきちんと入ってくるような感じでお伝えいただいて、さらに、今、御指摘があった37ページの表を見ますと、企業の業務負担と個々人の理解というものを天秤にかけたときに、今、御指摘があったように、これでは個人の理解がかなり不十分になる懸念というのは大きいなと改めて思いました。したがって、ある程度負担の問題はあるかもしれませんけれども、まさしく最も危惧されている問題を解決するためには、やはりここのところはきちんと記載していく必要があるのではないかと思った次第です。
 さらには、就業規則に関しましても、45ページに調査がありましたけれども、中には申出があったときだけ見せているというところも5.6%ありますし、必ずしもどこの企業でも非常に周知徹底されているとも限らない中で、やはり先ほどの37ページのような個別契約と就労規則との関係が混乱するという労働者は多分に生じるだろうと思いました。したがって、ここのところの明示は企業の負担があってもやはりやるべきではないかと思います。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 今の段階で私から何かコメントするのも何かと思いますが、議論の喚起のために、就業規則で規定されている条件を就業規則で変更するという場合が、労働基準法の施行規則の5条で定められている明示事項に限られるのかという点が、こちらについて明示事項に加えるとすると出てくるかと思います。すなわち、施行規則に入っていない就業規則上の事項の変更をした場合に、それを改めてといいますか、初めて労働条件明示で個別に明示すべきかどうかという問題が生じます。例えばあまり現実的でない例かもしれませんけれども、就業規則に表彰の規定があって、勤続年数5年で表彰するとしていると。ちょっと短過ぎますけれども、それを10年にするとか、あるいは表彰の規定を廃止するという場合には労働条件変更になりそうな感じもしますが、それは労働条件明示事項、労規則の明示事項ではないのですが、そういう場合も個別に明示する必要があるかどうか。あるいは、ここで議論されているのは、労規則の5条の明示事項が就業規則で定められている場合に、就業規則で変更した場合を想定しているのかという点が議論になり得るかと思います。
 表彰の点はあまりに突飛過ぎるかもしれませんけれども、極端な例としてはそういうものも挙げられるということになるかと思います。
 最初の段階で口を挟んでしまいましたが、ほかに皆さんから何かございますでしょうか。
 竹内委員、お願いします。
○竹内委員 ありがとうございます。
 今、座長から御指摘があった点ですけれども、雇入れの際に労働契約を締結して最初に労働条件を決める場合においても、今のような例で言うと、労基法15条で明示の対象となっているのは労基法15条1項と施行規則5条で規定されている事柄に限られるということですので、変更の場合についてもやはりそれと同じように考えて、就業規則で規律されていて、かつもともと労基法で明示の対象となっているものについては明示させるという方向になるのかなと今の御指摘を聞いていて思いました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 すみません。表彰の例は完璧に間違えていました。労基則の5条で表彰も明示事項に入っておりました。失礼しました。別の例を考えなければいけません。
 ほかにいかがでしょうか。
 では、桑村委員のほうが先だったでしょうか。お願いします。
○桑村委員 ありがとうございます。
 就業規則を変更したときにさらに個別に通知するかという問題は、施行規則に挙がっている対象事項についてのみ想定されていると私も理解しています。
 ただ、気になっておりますのは、37ページの整理ですと、変更する手段に着目した整理になっていますが、変更の対象で切り分けるということも理論的にはあり得るのかなと。従前、就業規則により規律されていた労働条件を就業規則で変更する場合と、就業規則とは別にそれよりも有利な個別契約があって、それを後の就業規則で不利益に変更するという、不変更の合意がないケースです。つまり、変更の対象が就業規則上の労働条件なのか、個別契約で定められた労働条件なのかという整理もできるのかなと。
 今までの御指摘ですと、就業規則の場合にもそれがどう適用されるか分からないから個別通知が必要ではないかということですが、私は、就業規則で今まで規律されていた労働条件を就業規則で変更するという場合は、就業規則の周知だけで足りるのではないかと思います。それとは別のケースで、就業規則と異なる労働条件が個別契約で定められていて、それが不変更の合意に当たらず就業規則で不利益に変更するという場合については、労働者としては今までどおり有利な条件が維持されていると考えているケースがあり得て、そういう紛争はあるのかなと思います。そういう場合は就業規則で不利益に変更する場合も個別通知をすることが考えられるかなと思います、繰り返しになりますが、就業規則で規律されていた労働条件を就業規則で変更するという場合については、それにプラスして個別通知までは必要ないのではないかと考えております。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 では、両角委員、お願いします。
○両角委員 ありがとうございます。
 私も基本的には桑村委員と同じ方向かと思いますが、就業規則を就業規則で変更するときは周知義務があるので、それをきちんとやってもらうということになるのではないかと思います。
 さらに、現実的に考えてみると、施行規則の5条には表彰を含めて非常に広い内容が挙がっており、それを全部一々個別に通知しなくてはいけないのは相当大変ではないかとも思われます。今回のテーマである多様な正社員について言えば、通知の範囲をさしあたり職種と勤務地の変更に限定することも考えてもいいのではないかと思います。
 現在もこの通知は電子メールでもできるようになっていますが、将来的にIT化がもっと進んで、例えば各労働者がスマホで自分の労働条件を簡単に検索でき、使用者も簡単に通知ができるようになれば、より広く義務づけていくことが望ましいと思いますが。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 確かに先ほどの論点アの議論と関連していて、変更の有無、範囲等について明示をするのが勤務地と職務であるとしたら、ここでの議論も恐らくそれで横並びになるのかなと思った次第です。なお議論はあるかもしれませんけれども。
 竹内委員、どうぞ。
○竹内委員 ありがとうございます。
 桑村委員と両角委員からいただいた御意見をお伺いして、いろいろとアイデアというか思うところがありまして、申し上げさせていただければと思います。
 桑村委員からの御指摘に関してはなるほどなと思ったところがある一方で、その方向で議論する場合には、もしかしたらというようなことかもしれませんけれども、雇入れ時には就業規則で規律されているような労働条件事項であっても明示の対象となるのではないかなと思うのです。そうすると、今議論している変更された後については、15条で明示しなければいけない場合からは、就業規則によって就業規則所定の条件を変えただけの場合については除かれるというのは一貫しないようにも思えて、もしその方向で行くなら、区別をつけるための説明等を伴った上で整理をする必要があるかなと思いました。
 あと、両角委員から御指摘いただいた点に関してなのですけれども、後半の部分でお話しいただいたこととも関連するのかなと思うのですけれども、私としては15条で示したほうがいいなと思ってはいるのですが、就業規則で周知されているからというお話で重なっているというのは一つの御意見なのだと思うのですけれども、周知というのは、当然ながら両角委員はよく御存じのとおり、知ろうと思えば知れる状態にするということであって、労働条件通知書を示して明示するという、より積極的な使用者から労働者に対する働きかけに比べれば、かなり穏当なと言いますか穏やかにとどまっているところがあるかなと思います。
 そういう意味では、デジタル技術のさらなる利用という側面を念頭に置いての御発言がございましたけれども、周知でよいという方向の場合、何をもって周知とするかということについては改めて議論をしてもいいのではないかなと考えます。基本的な私の考えとしては、15条による明示の方法を志向するわけですけれども、周知の方法を維持するということであっても、周知が何かということについては少なくとも検討が必要ではないかなと思った次第です。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 今の点もある種新たな論点として重要な点になるかと思います。無期転換の個別周知のところで若干議論があったか、あるいはデータの中に何かで出てきたのかと思いますが、例えば誰でもアクセスはできるけれども、本棚に法令集とか規則集が置いてあったということでも今は差し支えないことになっているのですが、少なくともどこにあれば就業規則が見られるかということが分かるようにするとか、そういう周知の実質化のようなことは、先ほどの説明の話とか労働契約法レベルの話にも関わって、議論をする意味はあるのかなとお二人の議論を聞いていて思った次第です。
 安藤委員、どうぞ。
○安藤委員 ありがとうございます。
 今までの議論とは全然違う話で申し訳ないのですが、22ページで最初に下線が引いてある「労働条件が変更された際に」という表現は、最終的には報告書などの段階ではもう少し明確化できるのではないかということが気になっております。31ページ目で範囲内の変更と範囲外の変更という表現がございますが、例えば無限定の場合に、契約に従って無限定なのだから会社側が勤務地を変えたというのは、勤務地が変わっているわけですが、契約自体は変わっていないという形で、労働条件が変更されたというのは、契約が変わった部分と、契約の範囲内で働き方が変わった、31ページの表現でいったら範囲内の変更と範囲外の変更でしょうか。この辺りの適切な用語を使って、契約自体が変わるということと、契約の中で働き方が変わる。この2つをうまく書き分ける。最初に両角先生からもありましたが、一般の人が理解しやすい書き方があるといいかなと思っております。
 もう一点、これは今回の論旨と関係ない話なのですが、先ほどの両角先生からのスマホで労働条件が見られるというのは、私は実は非常にいいことだと思っておりまして、先ほど竹内先生からあった話でしたか。書き換わると、もともと持っていた書面と就業規則が変わってしまう。自分が今適用されているものというのが常にアップデートされて、今日付で私がどの契約に直面しているのかというのが分かるということ。そして、例えばウィキペディアとかもそうですし、過去の変更履歴が全部残っている。何月何日の段階ではこのルールだったものが、何月何日にどういう変更があって現行のルールに変わったのか。これは例えばプログラムだったら今GitHubとかでバージョン管理というものをやるのが一般的になってきておりますが、私は何月何日から何月何日までがこの契約だった。この時点でどういう理由で切り替わって別のものになった。今、この履歴がデジタル技術であまりコストをかけずに保管できるということで、従業員が何万人もいる会社でやるのは難しいと考えられるかもしれませんが、個別契約とかは基本的には残るわけですし、就業規則だったら1つ、またはその事業所に複数あるかもしれませんが、そんなに数がないのであったら、これは今の技術だったら可能なのではないかなとも思っております。
 これは感想でした。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。いずれも重要な点と思います。
 たしか個別の法令では電子メールによる通知を認めているものがあったようで、記憶がはっきりしないところはありますが、その辺りは検討を別途しておく意味はあるのかなと思った次第です。
 それから、最初の点もおっしゃるとおりでして、範囲内、範囲外かというのもよく分からない場合がありますし、範囲外とは一体何なのかというのも、勤務地でいえばセールスパーソンで今日は新宿で明日は銀座でというような場合もありますし、例えば商社か何かで取りあえず日本だけれども今度はカザフスタンに行ってくれというのも契約の範囲内と言えば内で、それは労働条件明示の問題と転勤命令の使用上の有効性、契約法の問題とに分けて考える必要があるのかなと思った次第であります。
 また口を挟んでしまいましたが、ほかに何かございますでしょうか。
 では、竹中課長補佐、お願いします。
○竹中課長補佐 竹内先生、手を挙げていただいているところ、申し訳ありません。
 先ほどの電子の話に関連しまして補足させていただきます。28ページ目を御覧いただきますと、15条の現行の規定についての簡単な概要を記載しているところでございます。こちらの一番下のほうで明示の方法と記載しておりまして、※3と書いていますが、労働者が希望した場合はファクスだとか電子メール等による明示が可能ということで、現行も希望した場合はこういったことが可能であるということを念のため補足させていただきます。
 また別の話といたしまして、先ほど両角先生をはじめとしまして、業務と場所だけ論点イというのを考えるかどうかという点についてご指摘いただきましたが、その点に関連しましては、22ページ目を御覧いただきますと、先ほど簡単に御説明してしまいまして申し訳ありませんが、この右下のところであります。先ほどお話にあったように、こちらで業務、場所の変更のことだけ確認内容として論点イで変更後明示のところで考えるか、それともBのように15条後段で書いてある書面明示事項ということについても対象とするかということで記載しているところであります。
 書面明示事項かどうかということについては35ページ目を御覧いただきたいと思いますが、こちらの中で15条の欄の一番右端のところに明示方法というものを入れておりまして、書面の明示と記載しているところです。基本的には1号から3号の途中までと、あとは4号のところについては書面明示事項ということでございます。この辺りも含めてこの変更後の明示の対象として考えるかどうか、もしくは業務、場所だけ切り出して変更後明示というものを考えていける理屈があるかどうかといったところについて、もし追加的に御意見があれば頂戴できると幸いです。
 私からは以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 では、竹内委員、どうぞ。
○竹内委員 どうもありがとうございます。
 話がここまでの議論とは異なっているところもありますけれども、37ページを映していただけますか。ありがとうございます。ここの表を念頭に置いて議論をされてきているところがあるかと思いますけれども、ふと思ったのですが、この表を見ると、個別の契約と就業規則による条件の変更という形で整理されていて、個別の契約がどうなるかという場合と、就業規則によっていろいろ変わる場合というのは現実的によく考えられる場合かなと思うのですけれども、そのほかにも、例えば労働協約で何か条件が変わったという場合もあり得るとは思うのです。労働協約の場合は、協約が変わったことについて明示とかということはないかと思うのですけれども、協約によって変わった場合に同じような表をどういうふうに整理していくかも検討課題だと思われます。労働条件が変わる場合は、個別契約と就業規則に限らず、労働協約が考えられますし、あえて言うと、更には法令が変わったときにも対応が必要ということもあるかもしれませんけれども、そういう場合をも含めて問題を追加で整理しておいたほうがいいかなと思ったのがもともと手を挙げさせていただいた趣旨であります。
 先ほど竹中課長補佐からお話があった点もふと思ったので追加で申し上げさせていただきますと、理想的に言えば、労基法15条の規律を基本的には労働条件の変更後についてもそのまま及ぼしていくというのが基本方向性だと思いますので、そういう意味では、変更された労働条件については、今の22頁の表で言うとBの方にするほうが理想的かなと思います。先ほどいろいろな事項があって大変だという話もあって、それを踏まえると、あと、ここまでこの検討会というのはいわゆる限定正社員とかを基本的には念頭に置いて議論を、そうした人たちに限るべきではないということは申し上げてきましたけれども、議論をされていて、そういう意味では特に限定の中でも勤務地とか職務に限るというのは分からなくはないかなと思います。
 ただ、35ページだったと思いますけれども、書面明示事項については一定のものに限ると、賃金とかが入っているので毎年賃金が変わるたびに明示しなければいけないのかみたいな話になるかもしれませんけれども、ある程度限られているのであれば、今申し上げた22ページで言うと、Bの方向性で行くことも考えられなくはないかなと思います。それが現実的には難しいということであれば、勤務地とか職務に限るということもなくはないかなと思いました。あまりはっきりしない立場かもしれませんけれども、理想的にはBで、それが難しいということであればAを考える余地もあるかなというのが私の現時点の感触でございます。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 最初の労働協約の点はこれまで挙がっていなかった点ですが、適用対象者の問題等もありますが、労働協約について何か御意見はありますでしょうか。労働協約で変更した場合の明示というものをどう考えるかという点ですけれども、よろしいでしょうか。また何かありましたらお願いします。
 では、時間の関係もありまして、(2)明確化のウの論点についてはいかがでしょうか。こちらにつきましても追加で御議論いただきたい点というのが出てきております。25ページです。それほどたくさんあるわけではなくて、現在の判例等も含めた整理についてということですけれども、何か御意見等はありますでしょうか。
 竹内委員、どうぞ。
○竹内委員 ありがとうございます。何度も恐縮でございます。
 これについては、前回も申し上げたとおり、基本的にはこれまでの裁判例の考え方を整理して、それをもって助けとするということで、この方向でよいのかなと思っているのですけれども、その上で、52ページ以下の判例について2点だけ申し上げさせていただければと思います。
 現在出ている資料で注記等がなされていますので、注意を払われているとは思うのですけれども、一つは今52ページでまさしく映っているところの一番下のあんしん財団事件で、注もついていますが、これは第一審判旨として、下線もつけて引用されているわけですけれども、第一審判決は控訴審判決で取り消されていまして、この判旨自体が消されたと捉えるまでの必要はないのかもしれませんけれども、第一審が検討している論点そのもの自体、検討するまでもなく控訴審判決の結論に至るという判旨になっていますので、その意味では、現在の資料で照会されている判旨が第一審においてなされていることの位置づけをどういうふうに考えるかというのは注意を要するかなと思います。
 あと、次の53ページを見ていただけますか。53ページの東京海上日動火災です。確かに判旨はこのとおりに言っているのですけれども、これは注をつけてあるとおり、特に権威的な立場にあるという考えられる学説からの批判が非常に強くなされているものであります。そういうふうな意味では、この裁判例の位置づけについてもかなり注意を要すると思います。
 やや総論めいて言うと、確かに裁判例の整理ということで、こういうふうな裁判例もある、ああいうふうな裁判例もあるというようなことで、ある以上は整理して示すべきだという考え方はあるのだと思いますけれども、整理に当たっては単純に公刊されている裁判例を並べるだけではなくて、確かに論者によって裁判例をどう評価するかというのは立場が違いますので、難しいところはありますけれども、ある程度やはり検討会としてコンセンサスを踏まえつつ、一定の評価をもって整理をしていくのが適切ではないかなと考えます。単に並べるだけだと、ある意味適切ではないと考えられる内容で情報提供するということにもなりかねませんので、そこは検討会の判断である程度の整理をして、その上で示すということがあってよいのではないかと思いました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 今の点は重要な御指摘で、恐らくこの検討会で出している整理と、例えば報告を踏まえて一般向けに周知するものとは必ずしも一致しないのではないかなと、またその点は別途検討いただくことになるのではないかなと思っております。
 ほかにウについて御意見はいかがでしょうか。
 安藤委員、どうぞ。
○安藤委員 ありがとうございます。
 25ページのお話なのですが、前回までの検討会における議論の整理というところで、
 従前の報告書の議論や裁判を踏まえると、限定があった場合でも、そういう仕事がなくなったときに当然に解雇が正当されることにならずというのは、確かにこれまでの裁判としてはそういうものなのだろうと思うのですが、これが仮に契約に明示されていたらどうなのか。この勤務地がなくなったら雇用関係が終了しますというタイプの契約というのは合法なのかどうかということが気になっております。限定はされているけれども、その限定が満たせる限りには限定がされる。それがなくなった場合には別の仕事、または別の勤務地を探してもらうというタイプの契約だけ、一本槍ではなくて、その仕事がないのだったら、私はこの職種だったら限定でこだわりがあるので、この仕事がなくなるのだったら当然に辞めさせてもらって結構です。でも、その代わりに、限定があって、かつ限定があるけれども、その仕事がなくなったときの雇用保障があるタイプの人よりも、賃金などのほかの条件がいいですという保障は一定程度要らないので、ほかの面で処遇がいいですというようなタイプは、仮にそういう契約を結びたいと労働者本人が言ったときに、それは認められるかどうかというところが気になっています。
 私のコメントは以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 もし裁判例について知見がある方がおられれば、御指摘いただければと思います。
 戎野委員、どうぞ。
○戎野委員 実は私も今のところを質問したいなと思っていたのですけれども、安藤委員とはちょっと違う視点なのですが、事業所閉鎖や職務廃止の場合の話が54ページのほうにもあるのですけれども、直ちに職務を失うということではないということで、解雇回避の努力があるということは分かるのですが、そこにおいて限定の正社員といわゆる普通の正社員と言われるような人たちの間の差というか優位性などはないと理解するのでしょうか。ここのところを教えていただければと思った次第です。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 この点は以前の検討会の裁判例の検討のところでも出てきたところで、恐らく配転の可能性あるいは申出を検討せよとされていたとしても、結果的には整理解雇は有効とされた事例が多かったと記憶していますが、検討会にも参加されていた竹内先生のほうがより詳しいかと思いますので、ちょうど手を挙げられていますので、この点も含めてお願いします。
○竹内委員 ありがとうございます。
 手を挙げた趣旨は、安藤委員の御発言に関することについて申し上げたいと思ったというものであります。
 安藤委員が御指摘された点は、一つには、法的な問題としては、限定正社員に関しては例えば特定の事業所でのみ勤務とするという例をここでは想定させていただきますけれども、その場合に当該特定の事業所が閉鎖されたという場合にどうなるかという問題で、安藤委員が御提起された問題というのは、そういうふうに限定されて勤めている事業所が閉鎖された場合には、当然に解雇は有効とすると雇用契約上の合意約定をするという仕組みと一つ捉えることができます。
 ただ、その場合ですと、労働契約法16条を全く無視して解雇は当然に有効とするという約定を意味しまして、それは労働契約法16条がいわゆる強行規定として、当事者の合意で勝手に左右することができない規定ですので、そういう内容としての合意の効力は恐らく否定されるだろうと考えられます。
 しかしながら、他方で、これは戎野委員の御指摘とも関係してくるのかもしれませんけれども、そういうふうな想定の特定の事業所でのみ勤務するという限定の契約内容になっている人について、現に当該事業所が閉鎖されることになったという場合に解雇するとして、そしてそれが解雇権濫用法理の基づくチェックが及ぶとして、しかし、結論として解雇権濫用になるかならないかが、もう一つ別途問題になってくるわけだと思います。
 それについては、今、座長からお話がありました、従前の懇談会だったと思いますけれども、そこでの裁判例分析という結果も示されていますし、その後、私が個人的に判例集等で見聞している裁判例も幾つかございますが、個々にこの裁判例がどうだということを今すぐこの瞬間でお出しできるわけではないのですけれども、私のここまで裁判例等を見聞した感触から申しますと、ほかに配転ができるような場所とかがあれば、それは配転を検討していただきたいということなので、直ちに解雇をして、しかし当然解雇権濫用にはならない、ということにはならないと思います。
 ただ他方で、現実的に例えば解雇回避努力義務の代表例である配転に関して申しますと、配転の実施を検討しても、やはり、例えば、勤務地が限定されているということは、実際上は仕事の中身とかも制限されている場合が少なからずあるわけですけれども、仕事が限定されていることで職務遂行能力上限定がどうしても生じてしまってきており、そのため、ほかの事業所のほかの仕事とかに移す余地というのが現実的にない、したがって、配転を検討しても検討の余地がほぼないということで、結果として配転を行わなかったとしても、それは解雇回避努力義務との関係では問題がないということで、解雇有効とされる余地はあるわけです。
 座長から先ほど解雇有効とするという結論の裁判例が幾つか見られるのではないかという趣旨のお話があったと思いますけれども、そういうふうに配転を検討することは解雇の場面ではやはり求められるとしても、しかし、配転を行う現実的な可能性は、限定正社員の場合ですと、いわゆる普通の正社員の場合に比べればやはり限られているところがある。その点で、解雇権濫用法理を同じように及ぼしていっても、適用の結果として、限定があるゆえに解雇はやむを得ないという方向に働いている。裁判例の分析から総じて言えば、そのような基本的な方向性にあるのではないかなと思われます。
 その意味で、今申し上げたところは特に戎野委員から御指摘があったところとも関係するかなと思いますけれども、解雇権濫用法理を及ぼしていった上で、結論としては現実的に配転の余地が限られる可能性が比較的より高いということで、それを踏まえた判断をしているということではないかなと思います。裁判例の状況については、私の理解する限りはそういうものではないかと思います。
 以上です。
○山川座長 詳細にありがとうございました。
 ほかに何かウについてございますでしょうか。
 桑村委員、どうぞ。
○桑村委員 ありがとうございます。
 今、竹内委員がおっしゃったことと重なりますが、25ページで指摘されているように、限定社員の場合について、職務、勤務地が廃止されたとしても当然解雇が正当化されることにはならないことを明確にする必要がある一方で、どの程度解雇が厳格に判断されるのかについては、無限定社員よりは解雇が認められやすくなるという形で、そこのところも明確にして周知する必要があると思います。そのような差があることを踏まえて、限定社員を選ぶかどうかを労働者自身が決める必要があると思います。
 先ほど解雇権濫用法理の適用のところについて詳細な御説明がありました。解雇回避努力義務のところで典型例とされている配転に関して、無限定社員の場合は本人の同意がなくとも一方的に命じるところまでが解雇回避努力の一環として求められますが、限定社員の場合本人の同意がなければ限定範囲を超える配置転換はできないということ。しかし、契約の範囲を超えるけれども、これで雇用を保障するという配置転換の選択肢を、使用者が提案するところまでは解雇回避努力で求められることになりますので、その点は強調しておきたいと思います。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。
 以上、議論いただきました点、ここでまとめられたものを周知するという点で非常に有益な御意見だったと思います。裁判例等の状況を客観的に把握できる限りでそれを分かりやすいように周知させていくということかと思います。この検討会議で独自の法理のようなものをつくり出すのは難しいかと思いますが、変更解約告知のように見解が真っ二つに分かれていて結論が出ないというものについては、そういうことだからということでリーガルリスクとして示すようなやり方はあるのかもしれないと思った次第です。
 桑村委員、どうぞ。
○桑村委員 ウについて先ほど指摘するのを忘れました。
 53ページの東京海上日動火災保険事件ですが、これも竹内先生が御指摘になったとおり、理論的に問題が多いと指摘されている裁判例です。ですので、むしろ今後このような裁判例が出ることはないと考えておいた方がよいのではないかと思います。
 限定は、同意がなければ変更できないという意味として全体を整理し、東京日動火災保険事件は、裁判例としてはあるけれども、こういうことは今後はないということを前提に、適切な人事管理を求める必要があると考えております。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 ほかに何かウの追加は。
 安藤委員、どうぞ。
○安藤委員 ありがとうございます。
 先ほど竹内先生からの説明で、労働契約法上、解雇回避努力をしないというのはなかなか難しいという話は現行法としては理解できました。それを踏まえた上で、法律の専門家ではない立場からやはり疑問に感じるのは、この限定するというのが、労働者にとっては一定の範囲を限定する。それを満たせなくなったときには、ほかの選択肢が当然に保障されるというのが前提であり、しかし、竹内先生の先ほどの説明であったら、とはいえ現実的に配置転換できる範囲とかが制約されるから、雇用保障の程度に現実的には差があるというこの立てつけは、多分一般の企業の人から見たら相当に分かりにくい。限定がある形で人を雇ったのだから、例えば1年間契約で雇った人は期間が終わったら当然に期間が満了しますよねというのと同じような日常的な言語感覚で、限定があったらその中で考えるというのが一般的なのではないかと思うわけです。
 なので、これを限定というのは、あくまで労働者側が望まなければ、その仕事がある限りはその限定が効いて、その仕事がなくなった場合には解雇回避努力や別の仕事を探す義務があるということまで明示的に知らしめておかないと、企業側はそこが怖くて採用できないのではないかとも感じています。
 これまで限定社員というのはいろいろなところでたくさんあったわけです。例えば私が授業とかでは、銀行の総合職と一般職みたいな例を出して、銀行の一般職の窓口のテラーさんなんていうのは、大抵の場合、自宅から通える範囲の店舗であって、職場も限定されていて、窓口または総合職の行員のアシスタントみたいな、昔のいかにもな窓口の一般職の人です。お金が足りないとかない限り、3時にお店が閉まって、ちゃんと5時には帰れる。こんな形で非常に限定されていた。その代わりに何を失っていたか。労働者としては、例えば賃金が総合職より低いであったり、昇進の可能性が低い。しかし、雇用保障については特段劣っていると思われていなかったというふうに限定を理解しています。
 その中で、企業として限定正社員を採用するメリットはどこなのだろうということを考えたときに、もちろん限定をすると労働者側から魅力的なので、その労働条件で募集をしたときに人が集まりやすい。相対的に優秀な人に多く応募してもらえるというところがメリットだとして捉えて、雇用保障は限定が満たせなくなったときには雇用保障を頑張って探さないといけないのだよ。これはこれで一つの立てつけとしてあり得るわけですが、別の整理の仕方としては、労働契約法の現行を取りあえず横に置いて、立法論的な考え方をするのであったら、仮に限定された範囲内でだけ保障すればよいと。それを超えた範囲では解雇回避努力をしなくてよいというのだったら、先ほど申し上げた話ですが、別の面で労働者から処遇が上がる、別のところでバランスが取られる可能性もあり得る中、現行法のような整理をするのだったら、限定をするということが労働者にとってどういう価値があり、企業にとっては限定をするというのは無限定の正社員と比べてどういう面でメリット、デメリットがあるのか。ここを明確に示してあげないと、まさに今お示しいただいているページでも、多様な正社員の普及拡大をしたいと思っても、企業側に理解がなかなか及ばないのではないかと感じております。
 感想ですが、一言お伝えしたかったポイントです。
○山川座長 ありがとうございます。
 その意味では、裁判例はこういうものだという周知が非常に重要だということになろうかと思います。
 ウについて、あるいは(3)その他全般にわたってでも結構ですけれども、何かございますでしょうか。論点ア、イについて言い忘れたことでも結構です。
 竹内委員、どうぞ。
○竹内委員 何度も大変恐縮であります。
 最後のその他の論点で、これは前回の検討会で申し上げたかもしれませんけれども、限定の範囲とか有無はもちろん個人の労働者に関わることではありますが、企業の側から見れば、個別に手当てをするというようなこともあると思いますし、それが本来的には一番望ましいのだと思いますけれども、制度的に手当てをする、あるいはいろいろな処遇をするのを企業の全体の人事制度としてどう整合的にあるいはバランスを取ってやっていくかというような意味では、個々の従業員の問題に還元し尽くされるわけではなく、結局、様々な労働者の集団的な意向というものも踏まえて、それで使用者との合意形成の上で制度が構築されて運用されていく必要があると思います。
 そういうふうな意味では、労働組合がちゃんとあれば様々な労働者を代表して取り組むというようなことが必要だと思いますし、労働組合が十分存在しないとかというようなことであれば、従業員代表制を検討するというようなことがあってもいいと思いますし、少なくとも現行法の下では過半数代表制というものがそういうふうな従業員代表的な形でいろいろ使われているわけですけれども、少なくとも過半数代表制は問題がいろいろあるということも既に指摘されていることですので、最低限、過半数代表制についてきちんと制度的手当てをする、このこと自体はこの検討会の守備範囲ではないとは思いますけれども、検討の必要性があるというメッセージ自体は、引き続きこの検討会も含めてメッセージを発信し続けていただきたいと思う次第であります。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 坂爪委員、どうぞ。
○坂爪委員 ありがとうございます。
 企業にとって限定正社員を活用するというのは結構大変だなというのが、本日の議論を聞きながら感じたことです。
 このように労働条件明示をきちんとやっていくというときには、今、私が何をするのかということが働き手には非常にクリアに伝わっていくことになるかと思いますが、やはり限定正社員という働き方が一つの働き方として選ばれるようになるためには、その働き方をすると結局どういうキャリアが描けるのかというような少し長期的な展望というものがないと、今、私がすることは分かったけれども、でも、長期的にみて私はどうなるのということが見えないと、働き手がなかなか選ばないということもあるような気がするのです。
 全体として、限定正社員というのはいわゆる正社員で働けない人が働けるようなという補助的な位置づけになっている感が暗黙の裡にあるような気がするのですが、そうではない形で一つの働き方として成立していくためには、そのような働き方をすることが将来的にどのようなキャリアにつながるのかということを示していくことで、補助的な働き方ではなく一つの働き方として労働者にも認められるようになってくる部分があると思います。そういった部分の議論がこの検討会の議論の範囲なのか範囲ではないのか私は分からないまましゃべっておりますが、本来は何でそれを選ぶのか、企業はなぜそれを活用するのかという議論としてあるべきではないかなと本日議論を聞きながら感じました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 ほかに以上の点につきまして何かございますか。
 お二人の委員の方々の御意見は、私も非常に重要なポイントだと思います。これは無期転換の話とも関係していて、要するに企業の中でのキャリアコースの問題で、これは賃金とかいろいろな問題にも関わってきて、そうであるがゆえに、設計における労働者の意見の吸い上げとか調整、それから、決まったことに対しての周知にもつながってきて、刑罰法規で明示を強制するというのは、キャリアコースとは何かという話もあってなかなか難しいと思いますが、しかし、政策的には重要なので、何らかのメッセージは出せるのではないかなと、ここはまた先生方との御相談次第ですけれども、思っております。どういうキャリアコースを提供しているのかというのが企業の中だけではなくて外に提供されるように至ると、結局市場の選択を左右するというか、有能な人は良いキャリアコースを提供する企業を選ぶ。最終的には企業が市場によって選別されていくというような方向になっていくのかなと長期的には思った次第であります。
 ほかに何か御意見はありますでしょうか。よろしいでしょうか。
 では、竹中補佐、お願いします。
○竹中課長補佐 残り時間は限られていますが、もし可能であれば御意見いただければと思うのが25ページ目の論点ウのところで、オレンジのところでなくて恐縮ですが、最初の論点が書いてあるところの3行目の後ろのほうで、採用時から限定されている場合と、途中で限定される場合や一時的に限定される場合というところで、ここについて明確な裁判例というのは事務局のほうでは探し出せてはおりませんが、こういった採用時からと途中からとで何かしら判断が変わり得ると考えられるかどうかといったところについても、もし何か御所見があれば御教示いただけると幸いです。
○山川座長 今の点、いかがでしょうか。
 竹内委員、どうぞ。
○竹内委員 ありがとうございます。
 ごく簡単に、私も今、裁判例が何か具体的にあるかというのは把握できておりませんけれども、一つには、いわゆる日本的な雇用慣行で雇われてきて、途中で限定になったという場合と、あるいはそういう日本的な雇用慣行から外れた形で限定的にもともと、特に中途採用の場合とかはそうしたものの一つの典型例かもしれませんけれども、雇われて働いている。そういう場合、雇用保障の在り方あるいは雇用保障に対する労使双方の期待というのがそもそも違っていると考えられます。そういう点は、理論的に考えてみれば、ここに書いてあるように採用時から限定されている場合と途中で決定される場合とかついて、例えば、雇用保障の在り方等に関連して、違いが考えられてもおかしくないのではないかなと思います。
 そういう意味では、理論的には何か区別というのはあり得るかなと思うのですけれども、それは当事者が念頭に置いている雇用保障の在り方とか程度というものが影響してくるということが背景にあるのではないかなと思います。
 ちょっと感想めいていますけれども、思ったところを申し上げます。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 今の点についてほかに何かございますか。
 戎野委員、どうぞ。
○戎野委員 ありがとうございます。
 やはり採用時からというのと途中からというのでは、企業はかなり人的投資といいますか、人材へのキャリアコースの設定であったり、求めてくるそこにおける能力であったりが違っているというケースは少なくないと思います。これだけ新卒で一括で採ってくる中で、一般に限定の人が少ない。一方で、途中から限定あるいは限定となってくれば、限られた仕事あるいは限られた地域のことを知っていれば業務遂行において問題ない。そうすると、能力格差とかというものの問題もここで出てくる可能性はありますし、そうすると、先ほどのキャリアの生涯にわたるプランというのも変わってくるかなと思いまして、ここのところの取扱いというのは、企業は別に考えているところが多いでしょうし、また、労働者のほうも違ったイメージで意味を取っているのではないかなと思うので、実は私、以前申し上げたのですけれども、行き来ができるのかどうか。行き来をするためにハードルが低く設定されている。すなわち、そこでの育成とか訓練などがあるのかどうかとか、そういった複合的な課題をここは秘めているのではないかなと改めて思います。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 両角委員、どうぞ。
○両角委員 時間がないのにすみません。
 先ほどのお尋ねについて、完全に当てはまる裁判例は私も知らないのですが、たしか正社員だった人が育児や介護などの事情で、本当は限定正社員になりたかったけれども制度がなかったので、仕方なく契約社員になる、その後雇止めになって争われた事件というのは幾つかあったと思います。裁判所は、最初から有期で雇われた契約社員と、やむを得ない事情で契約社員に転換した人は同じようには考えられないということで、たしか継続の合理的期待が非常に高度であると判断していたような記憶があります。
 同じように、正社員として採用された人が限定正社員になったという場合についても、どういう理由でなったのかとか、また元に戻ることが予定されているのかなどの事情を考慮しないと、労働契約の解釈にどのぐらい違いが出てくるかということは言えなませんが、違いが出てくる可能性はあるということは言えるのではないかと私も思います。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 ほかはございますか。よろしいでしょうか。
 今の点も重要な御指摘かと思います。両角委員のおっしゃった判例は私もあったように記憶していますし、あと、ヒアリングの中で割と個別の事情に応じて一時的に限定するというケースがあったように思います。逆に言うと、制度的に分けるというのは難しくても、フレキシブルに一時的な限定のようなことはやられていて、たしか随分前に議論になったと思いますけれども、フレキシブルな形の一時的限定がある程度は双方向的な異動の仕組みに代わるようなことを機能としては果たしているのかなと感じております。逆に言うと、明示とか限定という場合に、あまりそういうフレキシブルな扱いを制約するようにするのも労使双方にとって不都合な場合があるかもしれないと思う次第です。
もう時間ではありますけれども、特段何かございますでしょうか。
 それでは、本日も非常に有益な御意見、御議論をいただきまして、大変ありがとうございました。では、本日の議論はここまでとさせていただきます。
 次回の日程等について、事務局から何かありますか。
○竹中課長補佐 次回の日程につきましては現在調整中でございます。確定次第、開催場所と併せまして連絡させていただきます。
○山川座長 ありがとうございました。
 それでは、第10回「多様化する労働契約のルールに関する検討会」はこれで終了いたします。お忙しい中、皆様、大変ありがとうございました。
 

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