31回労働政策審議会人材開発分科会 議事録

人材開発総務担当参事官室

日時

令和3年12月10日(金)10:00~12:00

場所

WEB会議

議題

  1. (1) 雇用保険法施行規則及び職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律施行規則の一
    部を改正する省令案要綱 について(諮問)
  2. (2) 今後の人材開発政策について(「リカレントガイドライン(仮称)」の策定等)
     

議事

議事内容

○武石会長 定刻となりましたので、第31回労働政策審議会人材開発分科会を開催いたします。本分科会は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、労働政策審議会運営規程第3条第1項に基づき、オンライン会議の開催といたします。本日の出欠状況ですが、使用者代表の滝澤委員、美野川委員が御欠席です。なお、滝澤委員の代理として中小企業団体中央会事務局次長・労働政策部長の佐久間様が代理出席されております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入ります。議題1、雇用保険法施行規則及び職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)です。内容について、企業内人材開発支援室長及び訓練企画室長より、資料の御説明をお願いいたします。
○吉岡室長 委員の皆様方、おはようございます。企業内人材開発支援室の吉岡と申します。どうぞよろしくお願いいたします。議題1の省令改正につきまして、私からは雇用保険法施行規則の一部改正について説明をさせていただきます。
 資料1-1です。内容としては人材開発支援助成金の改正になります。まず、背景を申し上げます。今回の改正内容ですが、令和4年度予算の概 算要求に盛り込んでいましたが、先月11月19日に閣議決定された新たな経済対策を踏まえまして、今般の補正予算に計上し、前倒しして実施させていただくものです。厚生労働省全体の補正予算案の資料を参考資料1、2に付けていますので、後ほど御覧いただければと思います。
それでは改正の内容です。資料1-1、人材開発支援助成金は事業主が雇用する労働者に対して職業訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。今回の改正ですが、非正規雇用労働者の正社員転換や処遇改善を目的として、職業訓練を行った場合に助成する特別育成訓練コースの改正になります。2点の見直しを図りたいと思っております。
 1点目は、経費助成額の上限を正規雇用労働者対象の訓練水準に引き上げること。もう1点が、生産性要件を導入するとともに正社員化の有無による経費助成率に差異を設け、企業における生産性向上と正社員化のインセンティブを強化することを目的とした改正になります。
1つ目の○ですが、経費助成額の上限引上げです。下の「現行」という箱ですけれども、訓練時間数に応じて経費助成の上限額を設けているところです。こちらにありますとおり、上段の中小企業事業主の場合ですけれども、10万円、20万円、30万円、これを右の変更後の箱のとおり、15万円、30万円、50万円、このように上限額を引き上げるということです。
 それと、下の○の正社員化のインセンティブ強化です。現行の経費助成率は、100%実費助成となっており、生産性要件は設けられておりません。これを右の変更後の箱のとおり、正社員に転換した場合と非正規雇用の維持の場合で、細分化してそれぞれ経費助成率を設ける改正内容となります。
 具体的には、正社員に転換した場合には経費助成率70%、その後、生産性要件が向上した場合にプラス30%の割増しの支給が受けられ、合計で助成率としては100%。非正規雇用の維持のままですと、経費助成率60%、生産性要件が向上すれば15%、合計75%といった経費助成率の見直しをさせていただきたいと思っております。以上、2点です。
 施行期日等ですが、補正予算成立後、省令改正のうえ12月中旬頃を公布・施行の予定とさせていただいております。以上、簡単ですけれども、私からの説明は以上になります。どうぞよろしくお願いいたします。
○平川室長 引き続きまして、資料1-1の2ページ目の説明をいたします。訓練企画室長の平川と申します。求職者支援法の施行規則の改正部分の概要です。改正の趣旨ですけれども、DXの進展が加速する中で高いスキルを持ったIT人材の確保が重要な課題となっている背景を踏まえ、IT分野の資格取得を目指す訓練コースの設定を促進することにより、一定レベル以上のIT人材の育成を促進する。また、それと同時に、そういったコースを全国的に普及することにより、IT人材の地域偏在の解消を図ることを目的とするものです。具体的には一定の要件を満たすIT分野の訓練を実施した実施機関に対し、基本奨励金の額を上乗せするという特例措置を、令和6年度末までの時限措置として設けたいと考えております。奨励金の上乗せの対象となる要件は、人材開発統括官が定める業務取扱要領に規定することになりますけれども、具体的には資料の右の箱の下のほうに①②とあります。まず①ITスキル標準、こちらは各種ITサービスの提供に当たって必要とされる能力の指標で、経済産業省で定めているものに対応したIT分野の資格の取得率、それから、雇用保険適用就職率が一定以上である場合、①の要件を満たしますと奨励金を1万円上乗せする。②ですけれども、①の要件を満たした上で、令和2年度にIT分野の求職者支援訓練が設定されておりませんでした26県で訓練が実施された場合には、さらに奨励金を1万円上乗せしたいということで考えています。今回の省令改正で諮問しますのは、公的職業訓練のうちの求職者支援訓練になりますけれども、公共職業訓練においても都道府県を実施主体とした委託訓練についても、訓練実施機関に支給する委託費について同様の特定措置を設けたいと考えております。
 それから、資料1-2は諮問文と省令案の要綱になっています。要綱の第一は、雇用保険法施行規則改正、こちらは人材開発助成金の関係です。第二は、求職者支援法の施行規則の改正で、こちらは求職者支援訓練の関係になります。内容は今説明したとおりです。第三で施行期日が書いてあり、公布の日から施行するということで定めたいと考えております。以上になります。どうぞよろしくお願いいたします。
○武石座長 御説明ありがとうございました。それでは、ただいまの説明に対する御質問、御意見がございましたら、Zoom機能の「リアクション」から「手を挙げる」マークを押していただき、指名された方は、マイクをオンにして御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。平田委員、お願いいたします。
○平田委員 御説明ありがとうございました。まず資料1-1の1枚目、人材開発支援助成金部分についてです。経費助成額を引き上げる一方で、生産性要件と正社員化の有無によって助成率に差異を設けて重点化を図っていると認識しています。雇用保険財政が逼迫している中では、今後もこうした工夫が求められるのではないかと思っていますので、意見として申し上げておきます。
 それから、2ページ目の認定職業訓練実施基本奨励金部分ですけれども、IT分野における人材の確保という観点での施策ということで趣旨は理解しました。しかし、一方で奨励金の上乗せという方法がIT分野の訓練数の増加につながるのかどうか、政策の効果を検証していくことも必要ではないかと思っておりますので、意見として申し上げておきたいと思います。ありがとうございました。
○武石座長 ありがとうございます。では、手が挙がっていますので、まとめて御質問、御意見をお聞きしたいと思います。佐久間委員、お願いします。
○佐久間次長(滝澤委員代理) 全国中央会の佐久間と申します。今日、私どもは滝澤委員の代理で出席をさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。今、平田委員からも御意見がありました。私も全く同意見でございます。特に職業訓練を促進する意味で事業者、そして労働者になろうとする方々にとっても、助成額、また奨励金の拡大、上乗せすること自体は、こういうDX人材や人材を育成しなければいけないということで、非常に良いことではないかなと思っています。異議を唱えることではありません。
 しかし、実際、雇用保険の二事業財源が枯渇化、また、それを借り入れている失業等給付の積立金、こちらがかなり財政が逼迫しているという中で、引上げという措置が実際に有効に活用するかどうかは検証することが必要になるのではないかと思っています。実際に効果、成果が上がった支援策となっているのかどうか、単にアンケートで良かった、悪かったということではなく、生産性という枠もありますけれども、これを書面上でなかなか、研修、訓練ですから取りにくいことは確かですけれども、もうそろそろそういう数値を上げていくことが必要ではないかと思います。例えば定性的なものを集めて定量的な支援として見ていくとか、そういうことをやる時期にきているのかなと考えています。以上です。
○武石座長 ありがとうございます。では、冨髙委員、お願いいたします。
○冨髙委員 ありがとうございます。内容的には妥当と考えております。一方で、こういった助成金や奨励金が、これまでどの程度活用されて、どのような効果が出たのか、しっかりと実績や効果の検証をしていただきたいと思っております。今、雇用保険財政が非常に厳しい状況の中、限られた財源の中で、こういった助成金や奨励金の役割、意義を踏まえて、きちんとした効果検証を行い、実効性を高めるための取組、適切な改善を図っていただきたいと思います。以上です。
○武石座長 ありがとうございます。3人の方から重複する御意見等もございましたが、今、手が挙がっている方がいらっしゃらないので、事務局から何かあればお願いいたします。
○吉岡室長 企業内室の吉岡です。平田委員、佐久間委員、冨髙委員、御意見どうもありがとうございます。我々としても当然ながら財政当局とも調整しつつ、必要なものかなどの見直しを図っていくという観点から予算要求をしているところですが皆様方の御意見を踏まえまして、今後も効果検証を図りつつ見直していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○平川室長 同じような話になりますけれども、IT訓練の御指摘を頂きましてありがとうございます。今回奨励金を引き上げることの効果ですけれども、IT訓練コースの設定が、やはり若干不足気味のところがありまして、26県などでは設定がされていないという状況もあります。要因は様々かと思いますけれども、1つには、やはり奨励金の引上げが1つの後押しになるのではないかということで、今回させていただこうと思っておりますけれども、貴重な財源ですので、当然検証はしっかりとやっていきたいと思います。数値的な検証もそうですし、きめ細かな検証ということで、前回訓練協議会の見直しという説明をしましたけれども、そういった場でもカリキュラムの効果、政策の効果など検証してまいりますので、きめ細かく検証を特に念入りにやっていきたいと思っております。以上です。
○武石座長 ありがとうございました。3人の方、よろしいでしょうか。貴重な御意見をありがとうございました。ほかに御意見、御質問のある方、いらっしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、特にないようであれば、議題1、雇用保険法施行規則及び職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)は、本分科会として妥当と認める旨を、労働政策審議会会長宛てに御報告申し上げたいと思いますが、御意見等はございますでしょうか。よろしいですか。
                                     (了承)
○武石座長 ありがとうございます。それでは、事務局より報告文(案)の配布をお願いいたします。
                 (事務局より報告文(案)をZoomにおいて資料共有)
○武石座長 共有されております報告文(案)により、労働政策審議会会長宛て、報告することとしてよろしいでしょうか。
                                     (了承)
○武石座長 特に御意見がないようであれば、御了承いただいたということで、ありがとうございました。それでは、そのように報告させていただくことといたします。この議題については、ここまでといたします。
 次に議題2、今後の人材開発政策について(「リカレントガイドライン(仮称)」の策定等)になります。それでは、資料2について人材開発政策担当参事官より説明をお願いいたします。
○宇野参事官 人材開発政策担当参事官の宇野です。10月以来、当分科会で御議論いただきありがとうございます。10月、11月の議論を踏まえまして、今回は事務局からこの報告(骨子案)を資料2として出させていただいております。資料2を御覧いただければと思いますが、資料2の骨子案自体は、大きく2つの柱になっています。1ページ目の1.「はじめに」と、2ページ目の真ん中から中段以降にある「見直しの方向性」と2つの柱となっております。また、後ほど御説明しますが、見直しの方向性の中は3つに分かれていまして、基本的な考え方、労働市場全体における人材開発、企業内における人材開発という3つのセクションに分かれています。
 1ページ目を御覧ください。1ページ目の「はじめに」という所で、人材開発分野における状況の変化について記してあります。1つ目の○は、この4月から開始しています当分科会でも御議論いただきました職業能力開発基本計画の中の文章を引いておりますが、ここにありますとおり、労働者に求められる能力の急速な変化と職業人生の長期化・多様化が同時に進行する中で、企業における人材育成を支援するとともに、労働者の継続的な学びと自律的・主体的なキャリアの形成を支援する人材育成戦略として本計画を位置付け、職業能力開発施策を実施していくと書かれています。
 2つ目の○は、当分科会でも御議論いただきましたが、同計画開始後の変化ということで、1つはデジタルトランスフォーメーションの加速化などの急速かつ広範な経済・社会環境の変化、また非正規雇用労働者への新型コロナウイルス感染症の影響について記しております。
 3つ目の○以降は政府部内の文章です。3つ目の○は、6月に閣議決定された骨太方針ですが、働きながら学べる環境の整備等々に言及しています。
 1ページ目の4つ目の○は、新しい資本主義実現会議の緊急提言です。これは先月8日に決定されましたが、日本企業の人的投資が、先進国に比べて低い水準にあるということ。あとは、職業訓練やトライアル的な雇用、労働移動の支援などについて、人的資本への投資の支援を強化する3年間の施策パッケージを設け、民間の知恵を求めるという記述を紹介しています。
 続きまして2ページ目を御覧ください。次の○では、同じように先月19日に閣議決定された経済対策を紹介しております。一人ひとりの能力が向上し、高まった力を発揮しながら活躍できる社会となって初めて、次なる成長の機会が生まれるとし、こうした成長と分配の好循環の実現を図るため、働く人や成長の恩恵を受けられていない方々への分配機能の強化、リスキリングや労働移動円滑化、さらには少子化対策を含めた人への投資を強化するとされております。
 以上、御紹介しましたところを踏まえて、(2)の今後の在り方ということで、当分科会では上記のような問題意識や状況の変化を踏まえ、本年10月以降、議論を行ってきたところであり、その結果は以下のとおりであるので報告する。本報告を受けて、厚生労働省において、必要な法的整備や企業内の学び・学び直しを促進するためのガイドラインの策定などの措置を講ずることが適当であると書いております。
 その内容は2.見直しの方向性ということで記してあります。まず基本的な考え方ですが、次の○として、今の職業能力開発促進法第4条第1項を引いていますが、事業主は、その雇用する労働者に対し、必要な職業訓練を行うとともに、その労働者が自ら職業に関する教育訓練又は職業能力検定を受ける機会を確保するために必要な援助その他その労働者が職業生活設計に即して自発的な職業能力の開発及び向上を図ることを容易にするために必要な援助を行うこと等によりその労働者に係る職業能力の開発及び向上の促進に努めなければならないとされております。
 その次の2つ目の○です。第4条第1項を確認したところですが、DXの加速化など、労働者を取り巻く環境が急速かつ広範に変化していくことが予想されるとともに、職業人生の長期化が同時に進行する中で、リスキリング・リカレント教育の重要性が高まっている。労働者がこうした変化に対応して、自らのスキルを向上させるためには、企業主導型の職業訓練の強化とともに、労働者がその意義を認識しつつ、自律的・主体的かつ継続的な学び・学び直しを行うことが必要であり、こうした取組に対する広く継続的な支援が重要となる。
 次の3つ目の○は、基本的な考え方のコアな部分です。そのためには、企業をはじめとする関係者の支援によって、労働者自身も長期的なキャリアを自律的・主体的に考え、新たな学び・学び直しを行うことを後押しすることが重要である。こうした関係者の協働が、新たな価値の創造につながるより高いレベルの学びを呼び込み、労働者のスキル・キャリアの向上を促していくという学びの好循環を生み、個人、企業、さらには経済社会の成長につながることが期待される。なお、ここでいう関係者には、労使を基本としつつ、労働者の学び・学び直しを支援するという観点で、厚生労働省をはじめとする関係省庁や教育機関等が広く含まれるということで、なお書きで分科会でも御議論いただいた、厚生労働省だけではない、関係省庁という話もここに書いています。
 次の○が、分科会でも出させていただいた3つのことなのですが、学びの好循環を実現するためには、①として、職務に必要な能力・スキル等を可能な限り明確化し、学びの目標を関係者で共有する。次に②として、職務に必要な能力・スキルを習得するための効果的な教育訓練プログラムの開発・設定及び提供。③で、労働者の自律的・主体的な学び・学び直しを後押しするための支援策の展開。このような3つのプロセスを通じて、経済・社会環境の変化や労働者のライフステージの変化に合わせた形で、労働者が自律的・主体的な学び・学び直しに継続的に取り組み、そのスキル・キャリアの向上を促していくことが重要と書いてあります。
 その後は、その次の○で2つに分けて整理をすると書かれています。
 まず2つ目の労働市場全体における人材開発ですが、ここにありますように、1行目は同じもので、急速かつ広範な経済・社会環境の変化です。プラス非正規雇用労働者のスキル向上やキャリア転換等も求められている中で、精度の高い教育訓練機会の提供が喫緊の課題となっている。欧米のような市場横断的に職務に必要となる標準的なスキルが十分に示されているとは言えない我が国にあって、こうした課題に的確に対応していくためには、関係者ができる限り地域の人材ニーズについて共通認識を形成しつつ、受講者の属性やニーズを踏まえた精度の高い教育訓練につなげていくための適切な訓練コース設定及び学習内容を担保するために、協働できる場が必要であると書いています。
 次の4ページ目の○ですが、具体的にはということで、先ほどの1つ目の○の具体的なことをここに書いています。学びの好循環のプロセスを踏まえ、地域の人材ニーズを良く知る事業主団体、労働者団体、教育訓練を提供する国や都道府県、民間教育訓練機関、大学などの教育機関、そして労働力需給調整を担う労働局、職業紹介事業者等が、連携・協力して、地域の成長分野や人材分野などで求められる能力・スキルのニーズを的確に把握するとともに、求職者の属性やニーズも踏まえた訓練コースの設定、訓練カリキュラムの改善・開発、教育訓練の提供を行えるような協議の場を設ける必要がある。
 また、この協議の場においては、効果的な教育訓練につなげていくためにも、キャリアコンサルティングや就職支援の状況も併せて協議できるようにするほか、訓練受講者や就職企業等に対し、個別事例も検証しつつ訓練コースの改善につなげていけるような配慮、構成員に守秘義務を求める等が重要であるということで、前回ここは協議会について御議論いただきましたが、それを踏まえこういう形で整理しております。
 次の○ですが、公共職業訓練において、育児や介護等、多様な事情を抱える求職者等が職業訓練を受講できるように、国及び都道府県が配慮することが重要だということを書いています。
 また、次の○ですが、さらに、労働者の自律的・主体的な学び・学び直しを促し、キャリアの持続的展開を支援していく上で、労働市場全体及び企業内双方に関わるキャリアコンサルティングの役割が益々重要となる。キャリアコンサルティングは、非正規雇用労働者のスキル・キャリアの向上を促す等の観点からも、重要な役割が期待される。
 具体的な取組として、次のパラグラフですが、企業によるキャリアコンサルティングの機会の確保に当たっては、その雇用する労働者の職業人生の節目ごとや労働者の求めに応じてキャリアコンサルティングを受けられるような環境を整備することを明確化するべきである。また、その際、労働者が安心して相談できるよう、キャリアコンサルティングは、守秘義務が課されている国家資格であるキャリアコンサルタントが行うことが望ましい。また、求職者も含め、労働者が広くキャリアコンサルティングを受ける機会を確保するためにも、国・都道府県が事業主や労働者に対して支援を行うことが重要であるというように整理をしています。
 以上が労働市場の(2)で、次の5ページ目は(3)企業内における人材開発です。こちらは先に申し上げますと、ガイドラインの話なのですが、事務局からもお話しましたように、ガイドライン自体は今年度末を目途にと言っておりますので、まだこれからも御検討いただきたいと思っています。その方向性については、これまでの意見を整理した形で、5、6ページは整理しております。
 まず1つ目の○としては、1の(1)でも指摘されているように、教育訓練費が少ないという話をここに書かせていただきつつ、企業内においても、我が国の企業の実情を踏まえつつ、関係者の協働により、労働者が自律的・主体的に学び・学び直しに取り組む学びの好循環を強力に作り出し、学び・学び直しの企業文化を醸成していくことが必要である。また、その際には、国等の支援も重要となる。
 次の○で、こうした企業内における労働者の自律的・主体的かつ継続的な学び・学び直しの促進に向けて、(1)の基本的な考え方を踏まえつつ、令和3年度中を目途に、基本的な考え方、労使が取り組む事項、国等の支援策等を体系的に示したガイドラインを策定することとし、本分科会において引き続き検討を深めていくこととします。②では、能力、スキル等や学びの目標の明確化や共有、キャリアの棚卸し、学習メニューの提供、時間面や費用面での配慮、キャリアコンサルティング、身につけた能力・スキルの発揮などを例示で示しています。
 次の○については、これまで分科会の意見をまとめたものとなっています。ガイドライン策定に当たっては、主体的な学びは労働者任せにするということではなく、企業も関与するという視点が重要。労働者の自律的かつ主体的なキャリア形成の向けては、働き手の意識改革が求められ、その上で、そういった働き手を企業や政府がどう支援していくのか考えていくという視点が重要。企業や業界によって多種多様な人材要件やスキルがあったり、スキルが明確化できない場合があったりすることから、多様性にも目配りすることが必要。職業人生が長期化する中で、働き手への効果的な支援の1つにキャリアコンサルティングがある。中小企業や非正規雇用労働者、女性、高齢者などのキャリア形成を考える上でも重要。セルフ・キャリアドックや定期的なキャリアコンサルティングは有効。企業内においてキャリアコンサルタントがどこまでの役割を果たすことができるかは疑問。ジョブ・カードは、自分のスキルがどういうものかを明確化し、自律的・主体的な学びにつながるので効果的。企業のマネジメント層が、部下をサポートする能力を持つことができるようにすることが重要。人手不足の中で、人材こそ中小企業の最重要課題であり、労使による学び直しの促進やそれに対する支援は重要などの意見があったことから、こうした意見を踏まえつつ、グッドキャリア企業アワード受賞企業など(中小企業を含む)への企業ヒアリングの結果も参考にしながら、引き続き検討することが適当である。このように整理をしています。以上がこの骨子案ですが、御覧いただきますと分かりますとおり、報告案に近い形となっております。本日、この骨子案を御議論いただきまして、次回、また今日の御議論を踏まえまして、報告案を出させていただきたいと思っています。私からの説明は以上です。
○武石座長 御説明ありがとうございました。欠席の委員の方が増えましたので、御報告しておきます。小倉委員と篠原委員が御欠席との御連絡が入ったとのことです。海老原委員が通信トラブルでまだ入れていらっしゃらないのですが、回復次第、御参加との御連絡を頂いております。事務連絡をさせていただきました。
 それでは、ただいまの御説明に対して御質問、御意見がございましたら、Zoom機能の「リアクション」から「手を挙げる」マークを押していただき、指名された方はマイクをオンにして御発言をお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、増田委員、お願いします。
○増田委員 増田でございます。埼玉県の川口商工会議所から参加させていただいております。説明ありがとうございました。大変よく分かりました。今のテーマの人材開発の政策についての要望的なことになりますが、我が国の経済でも、人口減少下で持続的に成長・発展していくには、働き手一人一人が自ら知識や能力を積極的にアップデートしていく、リスキリングというのでしょうか、学び直しを促進していくことが重要なことは考えております。こうした認識の下に、企業内の労働者における自律的・主体的、かつ継続的な学びや学び直しの促進に向けて、今年度中を目途にリカレントガイドラインが策定されることは、時宜を得た取組であると思っております。
 厚生労働省におかれましても、本ガイドラインの策定を契機に、リスキリングや学び直しの重要性を幅広く周知していただいて、機運を高めていただくことが重要ではないかと考えております。そのためにも、企業の人材開発や教育訓練に役立つ内容にする必要性がありますし、本ガイドラインが企業の現場でどのように実際に活用されていくのかといったことも十分に考慮する必要性があると思います。
 前回の分科会でも、中小企業に対するさらなるヒアリングやアンケートを実施してほしいという、この必要性は申し上げましたが、本ガイドラインは雇用の7割を担う中小企業の実態に即した内容にしていただきたいと強く要望する次第でございます。以上です。よろしくお願いします。
○武石座長 ありがとうございます。多くの方の挙手があるので、3人ぐらいずつ御意見を頂いたところで、事務局から何かあればということで進めたいと思います。手が挙がっている順番で、次は冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。今後の人材開発政策の基本的な考え方について発言したいと思います。これまでの議論を受けて、「企業主導型の職業訓練の強化とともに、労働者がその意義を認識しつつ自律的・主体的かつ継続的な学び・学び直しを行うことが必要」と記載いただいております。この間の議論がある程度網羅されていると思いますが、これまでも申し上げてきたとおり、今回の議論が雇用の流動化や必要以上な労働移動の強化を図るものであってはならないと考えます。あくまで労働者自身が納得できる学び・学び直しが重要なことであり、そのことが主体的な学習の効果が上がることにもつながると思います。今後、ガイドラインの策定などにおいて、その点を踏まえた議論を行っていく必要があると考えておりますので、意見として申し述べておきたいと思います。
 また、冒頭の「DXの加速化など」と記載されていますが、DXだけではなく、グリーン分野などその他の分野の発展や、産業の変化を想定して、プログラムを揃えることも重要であるため、DXのみに注力しているように見えないよう、記載の工夫をお願いします。以上です。
○武石座長 ありがとうございます。それでは宮田委員、岡野委員まで御発言いただいたところで、一旦、事務局に戻したいと思います。宮田委員、お願いいたします。
○宮田委員 宮田でございます。様々な意見がある中で、ここまでのまとめを頂いて、本当にありがとうございます。全体的な方向性のところでの意見となりますが、これまでも議論がありましたように、キャリアを考えるときには、本人がやはり自律的キャリアに対する考え方、これがあって、そこにいかに様々なサポートが加わるかの、この2本柱が不可欠だと思っています。そういう意味では、この流れに沿った考え方になっていると思います。
 もう1つ、キャリア自体も、今までの会社、企業で働いている期間だけではなく、今後、よりライフプランや長い時間的な形の中でキャリアを考えるということが出てくるかと思います。そういう意味では、今回のキーワードにあった「協働」というところで、それぞれのタイミングのところで、それぞれの労働者の人たちがキャリアというものを考えるということでは、やはり個人、企業、国も含めた様々な支援がその時々でうまく絡まっていくことの重要性の協働ということと、そこが学びの好循環になってくるのかと思っております。
 むやみな雇用の流動化につなげるものではもちろんないと思うのですが、やはりコロナを経験した中で、今までの日本の働き方と違う側面、労働者の意識も変わってきておりますので、終身雇用の在り方も含めて、様々なところで、様々なステージの中で、それぞれのキャリアを考えて力が発揮できるようにつなげていければと思っております。私からは以上です。ありがとうございます。
○武石座長 ありがとうございました。では、岡野委員、お願いします。
○岡野委員 自動車総連の岡野でございます。私からは、学びの好循環の実現の観点から1つ意見させていただきます。今後、企業をはじめとした関係者の連携や協働により、新たな価値の創造につながる学びや労働者のスキル・キャリアの向上のサイクルとしての学びの好循環の実現は、非常に重要と考えております。その上で、学びの好循環において、①~③の実施プロセスが記載されておりますが、これらの3項目に加え、労働者がこの実施プロセスを経て得られた成果の共有についても示すことが必要と考えます。具体的には、学びの好循環に記載されている①~③を通して得られた成果をしっかり共有することで、待遇や処遇などにどのように結び付いたのか、また、結び付かなかった場合は何が課題だったのかを、労働者を含めた関係者内で検証しながら、PDCAサイクルのように、より良い学びの好循環につなげていくことが重要と考えております。
 また、労働市場全体の部分において、非正規で働く労働者についても、今後のスキル・キャリアの向上に向けた取組が求められている旨の記載がされていますが、企業内でも同様に、非正規雇用の労働者への実効的な取組を推進していく必要があると考えます。年度内の議論及びガイドラインの今後の策定・運用の議論でも、御留意いただければと思いますが、労働者の自律的・主体的学びを推進するに当たっては、環境整備は当然のことながら、労働者本人の意識が非常に重要だと考えます。いかに労働者本人を巻き込むかがポイントになると思いますので、労働者本人の状況に寄り添った対応の検討が必要だと考えます。
 資料5ページ中段の②の労使が取り組む項目において、企業内労使での様々な議論の場があることは認識しておりますが、正社員を主眼とした内容に注力しがちな傾向が否めないかと思います。非正規で働く労働者のスキル・キャリアの向上の重要性も踏まえて、学びの機会を求める労働者が適切にその機会にマッチングできるよう、さまざまな労働者の視点や立場を考慮した取り組みの推進をお願いしたいと思います。私からは以上です。
○武石座長 貴重な御意見を皆さん、ありがとうございます。御意見、御要望が中心だったのですが、事務局から何かあればお願いします。
○宇野参事官 ありがとうございました。基本的には御意見、御要望なものですから、簡単にお答えさせていただきます。まず、増田委員から、ありがとうございます。特に中小企業の部分は、一番最後の今後のヒアリングという話で、「中小企業も含めて」という言葉を入れさせていただきますので、この問題意識で引き続き、このガイドライン策定については進めていきたいと思います。
 また、冨髙委員の1つ目、基本的な考え方の部分と宮田委員の御意見、ここは同じ部分についてのそれぞれの御意見だと思いますが、私どもといたしましては、関係者の協働が重要だと思っています。関係者の協働が重要で、その中で、労働者方に任せるのではなく、企業ないし関係者がみんな協働してやっていく中で、今回、こういう言葉を入れさせていただいて、御懸念の部分についてはこのように記述させていただきました。今日の分科会の全体の御意見の中で、更に必要なことがあるかどうか、今日の御意見、御議論を踏まえて検討したいと思います。
 また、冨髙委員の御指摘の2番目のDXの所で、DXだけにというのは、確かに我々といたしましても、DXだけということではなく様々な成長分野等で、冨髙委員がおっしゃったグリーン分野なども確かに成長分野ですので、ここは今日の御意見を踏まえまして検討したいと思います。
 岡野委員の1点目です。ここは、まずは我々といたしましても、①~③の全体を、こうした形で整理させていただきました。中には確かに④の中で、企業ヒアリングでも処遇や成果の共有という話はありました。この辺りも、今日のこの後の御意見も踏まえまして、また事務局でも検討したいと思います。
 ②の非正規の部分ですが、ここについてはガイドラインの検討のお話と理解しましたので、今後、ガイドラインの検討は続きますので、事務局のほうから制約的なことを申し上げるのは本当は差し控えなくてはいけないのですが、我々といたしましては、企業内においても非正規雇用労働者の取扱いは非常に重要だと思っていますので、またここは御相談しながら調整ないし検討を進めていきたいと思っております。以上、簡単ですが、事務局からは以上です。
○武石座長 ありがとうございました。御意見を頂いた皆様、よろしいでしょうか。はい、ありがとうございます。
では松浦委員、田村委員、堀委員、早川委員まで、まとめて御意見を頂戴したいと思います。では松浦委員、お願いいたします。
○松浦委員 ありがとうございます。3ページ目の(2)労働市場全体の部分の地域のニーズ、あるいは受講者の属性やニーズを踏まえた精度の高い教育訓練につなげるためには、関係者が協働できる場が必要との御説明がありました。その上で、取組を進めるに当たり、訓練協議会等だけではなく、是非、教育訓練を提供する国の役割として、実施主体となっておりますJEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)といった訓練機関の役割も重要だと考えております。そのため、職業訓練指導員(テクノインストラクター)や、民間教育機関の確保なども含めて、教育訓練が、再就職につながる実効的なものにしていただきたいと1点要望したいと思います。以上です。
○武石座長 ありがとうございます。それでは、田村委員、お願いいたします。
○田村委員 ありがとうございます。国公連合の田村でございます。キャリアコンサルティングについて発言をさせていただきます。キャリアコンサルティングは、労働市場全体と企業内のいずれにおいても重要だと思います。また同時に、不本意に非正規で働かさざるを得ない労働者等の、今後のスキル・キャリアの向上に向けた取組や役割も重要と考えます。
 報告書の骨子案では、守秘義務が課せられたキャリアコンサルタントの活用の促進が記載されていますが、同時に、公的機関としてハローワークの役割や責任も重要だと考えます。求職者にとっては就職の窓口の1つがハローワークであり、就職相談だけではなく、今後のスキル・キャリアの向上に資する相談も行うことができることから、ハローワークの相談機能強化に関しても記載をお願いしたいと思います。以上です。
○武石座長 ありがとうございました。では堀委員、お願いいたします。
○堀委員 どうもありがとうございます。短期間にきれいにまとめていただきまして、とても参考になります。今回、全体的な要望なのですが、今回の骨子案は、主に年齢を重ねた労働者を特に念頭に置いているのかという印象を受けております。ただ、労働者に自律性・主体性を発揮してもらうためには、むしろ、若い人たちへの取組が重要なのではないかと考えておりまして、突然、年齢を重ねて自律性・主体性を発揮しろと言われてもなかなか難しいところもあるのではないかと考えます。よって、職業人生の初期も視野に入れた、そうした骨子案にしていただけると、大変有難く考えております。以上です。
○武石座長 ありがとうございます。それでは、早川委員まで御意見を頂戴したいと思います。一旦、そこで中断させてください。早川委員、お願いいたします。
○早川委員 御指名ありがとうございます。早川です。骨子案もよくまとめてらっしゃって、私からの意見は、まずは、「はじめに」の所ですが、現在はコロナ禍の中でありますが、その後のポストコロナをみすえると、経済社会の世界地図が変わっているだろうという予感の中で、日本のプレゼンスが下がるだろうとか、日本社会もこのままでいられないかもしれないといった不安感が、人々のこころの中だけでなく、国とか企業とか、そういった組織体のメンタルでも、社会全体としての自信の低下、あるいは自己効力感の低下などがあるように感じます。こういった状況に、このガイドラインあるいはそれが示す方向性が、労働者個人の自己効力感の向上のほか、国、地方公共団体、企業などの組織も含めて全体の機運の底上げにつながることを希望いたします。
 その中で、今回、先ほど冨髙委員からデジタルトランスフォーメーションだけに特化しないようにという御指摘はそのとおりと思いますし、多様化をちゃんと維持していただきたい。そのうえで、成長産業の中にDX分野が入るというのは理解できます。とはいえ、IT産業というのは1980年代から成長産業と言われ続けながら、一方で長時間労働の問題等があり、結局多くの離職者を生み出してきて、本来は国の経済の成長に結び付くはずだったのに、どこか成功していない部分が見られます。この辺りの反省なども必要なのかと思っています。例えば、業界として働き方を変えるなど、離職者に再び戻ってきてもれらえるような施策も必要なのかと思います。一方で技術はものすごく変化しているでしょうから、それに対応できるように職業能力の再訓練の機会の提供も必要かと思っております。ということで、成長産業としてのデジタル産業に関して、一言、申し上げました。
 次に、3ページですが、労働市場における人材開発について、「欧米のような市場横断的に職務に必要となる標準的なスキルが十分に示されているとは言えない我が国」という部分は、現状はそうだろうと思います。この部分については、国の施策として、労働移動の円滑化を進める以上はこういった標準的なスキルが示されないといけないと思います。国がビッグデータの収集・分析なども行いつつ、標準的スキルを示す努力を放棄してしまうのではなく、国が、日本版O-NETをより充実させることも含め手標準的なスキルを示す努力をした上であれば、地域ぐるみで人材ニーズについて共通認識を形成するという施策はとても大切だと考えています。
 そこで一つ、佐賀県の事例を紹介しますと、佐賀では2年度にわたって、SAGA Smart Samuraiと言う、プログラミングをゼロから学べるプログラムをサポート企業の協力を得て、県が無料で提供しています。期間は5か月ですが、高校生以上で佐賀県内での就職や起業をお考えの方、佐賀県内企業にお勤めの方であれば誰でも参加できるので、裾野の広い人気の職業訓練プログラムをやっています。こういうのは、良い事例なのではないかと思ったので、紹介させていただきます。
 最後に、キャリアコンサルティングですが、先ほども言いましたように、歴史的な転換点にあって、日本が社会全体としてちょっと自信喪失しているような中で、キャリアコンサルティングの必要性を感じます。もう一回佐賀のことを言いますが、佐賀では、江戸時代に以前は戦いの中に身を置いていた武士が、平和な時代になってしまって武士はどうあるべきかという問題に直面していて、田代さんという人が、リタイアしていた先輩武士の山本さんとのところに話を聴きに行き、聴き取ったメモが『葉隠』です。二人のやりとりはもしかしたら今日のキャリアコンサルティングではなかったかなということで、話を閉めさせていただきます。ありがとうございました。
○武石座長 ありがとうございます。4人の委員の皆様から、これは御要望・御意見が中心でしたが、事務局からコメントがあれば、お願いします。
○宇野参事官 まず、松浦委員のJEEDのお話でした。報告書(骨子案)の4ページの1つ目の○の2行目から3行目ですが、「教育訓練を提供する国や都道府県、民間教育訓練機関」とあります。ここは当然、教育訓練を提供する国の部分は、実際にはJEEDが行っております。そういう意味では、当然この協議の場にはJEEDも参加していただこうと思っておりますので、ものづくり訓練、テクノインストラクター、民間訓練、こういう意味では訓練を実施する機関にも入っていただきます。
 あとは、先ほどの早川先生の佐賀の無料のITの話も絡む話なのですが、今回の協議の場というのは、今後この具体的なことについては検討することになりますけれども、我々としては、できれば公共職業訓練とか求職者支援訓練だけではない地域における人材育成について、幅広く話していただきたいと思っています。そういう意味では、ここにあるとおり、あえて大学などの教育機関と、大学というのが入っています。という意味では、今、早川先生が4番目におっしゃったような各県の取組も、この際紹介していただきながら、やはり地域の関係者が正に協働するために、共通認識を設けていただくと。その上で人材育成に向けて協働を皆でしていこうという場になればと思って運用等を今後、検討していきたいと思っております。
 続いて田村委員からハローワークの話がありました。形式ばった話をさせていただくと、これは人材開発分科会の報告ですので、人材開発分科会の所掌があります。所掌の中で書くというのが基本なのですが、我々としてはキャリアコンサルティングは実際、今ハローワークでもキャリアコンサルティングの資格を持っていらっしゃる方もいらっしゃいますし、田村委員の問題意識は、この訓練協議会の同じ4ページの1つ目の○で、3行目から4行目の労働力需給調整を担う労働局、これは実際にはハローワークになると思いますが、ここに思いを込めたつもりです。そこで単に訓練機関が入るわけではなくて、実際にあっせんする所、これも官だけではなくて民も含めて、非正規の方々が多い募集情報提供等事業者とか、そういう方々も含めて同じ共通認識を持つ場として、これをうまく育てたいと思っているという意味ですので、御理解いただければと思います。
堀先生のお話ですが、私どもは、今回の全体の中では、特に年齢を区切ったつもりはありません。学びの好循環といったものは、恐らく若い人も含めて必要なのではないかと思います。実際は恐らくガイドラインがメインになってくると思いますので、堀先生の今のお話は、それも踏まえながらガイドラインの検討でまた御相談させていただきたいと思っています。
 早川先生の1点目については、先ほどの繰り返しになりますが、人材開発分科会の所掌分野の部分がありますので、どこまで書けるかという制約があります。我々としては我が国が元気になるようにということで、今回学びという場面でこういう形でまとめさせていただいたつもりです。2番目のDXについては、先ほど冨高委員にお答えしたのと同様です。
 評価基準の話は、3ページの一番下の○に、「欧米のような市場横断的に職務に必要となる標準的なスキルが十分に示されているとは言えない」と書かせていただきました。ただ、これはあくまでも現状でして、我々としては先ほども先生から御紹介いただいた日本版O-NETもありますし、実際に今、職業能力評価基準というのを同じ統括官部門の中で別途作業をやっております。それも評価基準が今、事務系職種について56業種整備されています。この評価シートについては今ホームページに掲載していますが、月間大体10万を超えるアクセスがあって関心を示しているということで、我々としてはこういう取組も引き続きやっていきたいと思っております。
 最後の所ですが、キャリアコンサルティングについては佐賀の事例も御紹介いただきましたので、それも参考にさせていただきたいと思っています。雑ぱくですが以上です。
○武石座長 特に協議会に関しては、大変これから期待される役割を担っていくので、きちんと議論ができる方たちに入っていただきたいという皆さんの御意見だったかなと思います。今、御意見を頂いた委員の皆様、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、佐久間代理、平田委員、渡邉委員のお三方の手が挙がっていますので、順番にお願いしたいと思います。では佐久間代理、お願いいたします。
○佐久間次長(滝澤委員代理) まず、この資料の5ページのリカレントガイドラインの策定に当たってはの箇所についてなのですが、私どもの委員の滝澤から発言させていただいた内容を取り入れていただき、感謝申し上げます。ありがとうございます。全体的にこの報告書(骨子案)、報告書ですが、先生方、各委員の発言を十分に踏まえて記載されているのではないかなと思い、同意させていただきたいと思っております。1つの理想形としてはこの方向性として言えると思うのですが、実際に個別の企業、特に多くの社員を抱える大企業と、そこにはもちろん中小も大企業も社員の生涯生活というのがあると思うのですけれども、ようやく組織体として出てきた中小企業、ここにはまだ労組がない組織というのは多数あるわけです。そこも報告書の中では一緒になっているような気がするものですから、もうちょっと中小企業の人数的な規模、組織、そして業種の特性を合わせたものを是非、この報告書の中ではなかなか難しいかもしれませんが、ガイドラインを作成されるということですから、こちらにも是非盛り込んでいただいて、いろいろなタイプの中小企業をどのように取り入れていけばいいのかということも明記していただきたいと思っております。
 もう一点なのですが、4ページの3つ目の○の所、2段落目の最後のほうに、「キャリアコンサルティングは、守秘義務が課されている国家資格であるキャリアコンサルタントが行うことが望ましい」というのがあります。この文面だけを見てしまうと、経営者の方々にとっては推奨されている以上キャリコンを活用しなければいけないということで、比較的義務的に思われてしまうところがあると思います。キャリアコンサルティングを自社内で行う場合、そして、守秘義務が課されているキャリアコンサルタントに依頼する場合が考えられ、適時、各企業の実情に合わせて選択する必要がある、などの表現がより適切なのではないかなと思います。以上です。
○武石座長 ありがとうございました。では平田委員、お願いいたします。
○平田委員 骨子案をで取りまとめていただいて、ありがとうございます。網羅的に整理されていると思いますので、基本的には異論はありません。細かい点なのですが、文言に関連して手短に意見を申し上げたいと思います。まず、1.の「はじめに」の(1)で、環境の変化としてDXについて言及されていますが、御承知のとおりカーボンニュートラルの実現に向けた取組も恐らく雇用や人材育成に大きな影響を与えると考えられることから、GXという言葉にも言及してはどうかという提案です。
 それから、(2)の今後の在り方について、これは中身の問題ではないのですが、この報告書で「法的整備をすることが適当である」と書くことが適切なのかどうかということです。我々は職業能力開発促進法に精通しているわけではありませんので、何らかの措置が必要という書き方にして、それを受けた厚労省が法的整備をするということになるのではないかと思っております。
  2.の(1)の基本的な考え方の3つ目の○について、これは順番の問題なのですが、まずは働き手が主体的にキャリア形成を行って、それを企業が支えていくという順番だと思いますので、ここは少し書き方を工夫していただけないかと考えております。それから、3つ目の○の後半で「学びの好循環」という言葉が出てきますが、趣旨はよく分かりますけれども、この表現ですと、学びの中だけで完結するような印象も受けます。そこで、例えば仕事と学びの好循環とか、そういった形で少し補ってはどうかという意見です。4つ目の○に①~③とる関係者の協働については、主語を明らかにしたほうがいいのではないかと思っております。
 (2)の労働市場全体における人材開発について、2つ目の○の後半の所で、キャリアコンサルティングに関連して「協議」という言葉が出てくるのですが、この「協議」という言葉がどういう意味なのでしょうか。情報共有など、いろいろな意味が含まれるのかなと思いますので、この言葉で適切かどうか、もう一度検討いただければと考えております。4つ目の○ですが、キャリアコンサルティングに関連して、「環境を整備することを明確化すべきである」という表現が少し厳しいのかなと感じています。先ほども御意見がありましたが、義務的なものととらえられかねないので、「明確化することが求められる」程度の表現にしてはどうかと思いました。
 (3)の企業内における人材開発の1つ目の○の所で、我が国の教育訓練費が主要国と比較して少ないという指摘はそのとおりなのかもしれませんが、実際にはOJTを通じて行われる教育訓練もありますので、そういう実態もきちんとこの分科会の報告書では記述してもいいのではないかと思っております。
 長くなりましたが最後です。2つ目の○の②のタイトルに「労使が取り組む事項」とありますが、あくまでも例ということで並べていくだけだと思いますので、取り組むべき事項とか、そういった表現に適正化したほうがいいのではないかと思っております。以上ですが、意見ですのでそれぞれについて回答は不要です。取りまとめに当たって御検討いただければと思っております。以上です。
○武石座長 それでは渡邉委員、お願いいたします。
○渡邉委員 骨子案を取りまとめていただき、事務局、大変御苦労さまです。私どもが考えている内容と方向性、正にこのとおりだろうなと思っております。そんな中で、最近ちょっと個人的に気になっているところで、「労働市場全体における人材開発」という(2)があるわけですが、4ページの2つ目の○で、公共職業訓練における効果的なということで、女性を対象にしていると思うのです。配慮をということで4行ぐらいの文章があるのですが、ここの文をもうちょっと強調できないかなと。というのは、うちの個人的な話なのですが、私どもの会社で新入社員は50%以上の女性社員を採っているのですけれども、中途採用になりますと、労働市場から採るときに7、8割が男性ということで、労働市場でいかに女性比率、これは多様性の中でも女性の活躍推進というのは非常に重要な項目だと思いますので、この辺は是非とも強調していただけたら幸いだし、私どももどうにか市場が活性化して、女性の中間採用というのがよりしやすい状況が生まれればなと思っています。
 もちろん、働く環境で働き方での企業内の改善とか工夫というのは十分に必要だと思っておりますが、その点が非常に気になりますので、是非付け加えていただければなと思う点です。
 それとDX、デジタルトランスフォーメーションによって企業内のそもそもの仕事内容が変わっていくということで、リスキリングという形ですが、単なるイメージなのですが、対象者を限定的に教育をするというのが今までの教育は結構多かったと思うのです。やはり今回のリスキリングというのは、従業員全員なのだと、全員に対しての教育をしていく、ITリテラシーを高めるとか。そういう視点に変わっていくのだというところも何かちょっと触れられるといいのかなと思いましたので、意見です。以上です。
○武石座長 御意見が中心で、特にコメントはなくても大丈夫ですというお話もあったのですが、何か特段あれば事務局からお願いいたします。
○宇野参事官 ありがとうございました。佐久間委員のお話からまずしますと、先ほどのガイドラインについてお答えしますと、ガイドラインについては、中小企業の訓練というのはどのように工夫していけばいいか、またこれは御意見を頂きながら調整していきたいと思っています。キャリアコンサルティングの所ですが、御指摘いただいた部分は、正に相談する労働者の安心・信頼のために守秘義務が課されている国家資格であるキャリアコンサルタントによる支援が望ましいということで書いたところです。今の御意見を踏まえて、先ほど平田委員からもいろいろ御意見を頂きましたので、今日の分科会全体の意見を踏まえて調整をさせていただきたいと思っております。
 渡邉委員の御指摘もありがとうございました。労働市場の所の御意見を2つ頂きましたので、ここも今日の分科会全体の御議論の中で調整させていただきたいと思います。簡単ですが、以上です。
○武石座長 よろしいでしょうか。先ほど法的整備の言い方というのはどうなりますか。
○宇野参事官 法的整備については、実は前回、平成27年の法改正、このときも職業能力開発促進法で確かキャリアコンサルタントを国家資格化したときに、同じように報告の中で、(2)のように分科会報告で法的整備ということで書いており、その上で法案要綱になっていますので、一応、前例ではこのとおりという形にはなっております。
○武石座長 今の点は平田委員からの御意見でしたが、平田委員、何かありますか。
○平田委員 大丈夫です。特にこだわるものではありませんので、ありがとうございました。
○武石座長 ありがとうございます。それでは玄田委員、お願いいたします。
○玄田委員 ちょっと内容に関わる前に、厚労省にお願いなのですが、御発言のときはもう少しゆっくりしゃべっていただけるといいかなと。私、昔20年ぐらい前、ロナルド・ドーアさんに「ゆっくりしゃべりなさい」とすごく怒られたことがあって、大事なことだと思いますので、時間的にも余裕があるし、ゆっくり御回答いただければと思ったのがまず最初です。
 内容については、私も2.の見直しの方向性について2つほど意見を申し上げたいと思います。まず、(1)の基本的な考え方のうちですが、皆さん御意見を言っておられるとおり、私も2ページ最後から登場する労働者の自律的・主体的な学び・学び直しについて、一言申し上げたいと思います。この点に関しては、3ページの2行目などで関係者の協働が強調されていることは大変適切に思っています。その上で、改めて労使を中心とした関係者間での信頼関係がないところに、労働者の自律的・主体的な学び・学び直しはないということは、やはり明記したほうがいいのではないかと思っています。それは、例えば震災などで自律的・主体的に行動ができた被災者というのは、必ずその背景に住民や関係者間での日頃からの信頼関係があったということは明らかな事実だと思いますので、そういうこととも共通していると思っています。
 言い換えれば、労使の信頼関係の下に自律的・主体的な学び・学び直しが実現できた社会というのは、多分その社会においては雇用の長期的な安定というのが実現しているはずなので、その意味でも3ページの上から5行目ぐらいですかね、「さらには経済社会の成長につながることが期待される」という表現の所に、例えば、さらに経済社会の成長と長期的な雇用安定にもつながることが期待されるとか、若しくは長期的な職業生活の安定につながることが期待されるといったような修正も必要なのではないかなというのが、まず感じた1点目です。
 もう一点目は、(2)の労働市場全体における人材開発と、(3)の企業内における人材開発の共通の課題だと思うのですが、やはり報告書案のどこか適当な所に、キャリアコンサルタント自身の専門性と信頼性を一層高めることが必要であるといったようなことをもう少し明確に記載してはどうかなと感じております。更に言えば、そのためにこそキャリアコンサルタントが職場とより深く関わって信頼関係を築きながら、キャリアコンサルタント自身が実際の職場でOJTを豊富に受けられるような社会づくりも求められるといったようなことも記載を考えていいのではないかと思っています。専門性の向上にOJTが有効であるというのはキャリアコンサルタントも変わらないというか、むしろキャリアコンサルタントほどOJT若しくは職場トレーニングというか、それが求められているので、キャリアコンサルタント自身の成長のためにもより職場と深く関わっていくと。
 もともとキャリアコンサルタントの根本的な役割というのは、働く人にとっての快適な職場づくりであるということも忘れてはいけないと思いますし、キャリアコンサルティングの原点というのは中小企業にあるとずっと言われてきているので、その原点を確認するということも今回の報告書の中での重要な論点であるように感じますので、それらの辺りについても是非、記載の検討をお願いできないかなと感じているところです。私からは以上です。
○武石座長 具体的な修正等の御意見でしたが、事務局で何かありますか
○宇野参事官 早口で申し訳ございませんでした。ゆっくり話そうと努力いたします。今、玄田先生から貴重な御意見を承りましたので、これも事務局は真摯に検討したいと思います。どうもありがとうございました。
○武石座長 ほかに御質問、御意見等はございますか。よろしいでしょうか。特にないようであれば、本件についてはここまでとしたいと思います。いろいろ御意見を頂きましたが、これまでの議論を踏まえて、次回分科会で事務局から人材開発分科会報告案をお示しいただくことをお願いしたいと思います。それから、海老原委員がやはり最後まで御参加できなかったということで、お知らせしておきたいと思います。
 それでは、議題については以上となりますが、全体を通して委員の皆様から何かございますか。よろしいですか。特にないようであれば、本日の議論は以上とさせていただきます。次回の開催日程については、決まり次第事務局から御連絡をさせていただきます。それでは、以上をもちまして、第31回労働政策審議会人材開発分科会を終了いたします。皆様、どうもありがとうございました。お疲れさまでした。
○宇野参事官 どうもありがとうございました。