第41回 社会保障審議会生活保護基準部会議事録

日時

令和3年11月18日(木) 13:30~15:30

場所

AP虎ノ門11階B室(オンライン)
(東京都港区西新橋1-6-15NS虎ノ門ビル)

出席者(五十音順)

議題

  • 新たな検証手法の開発に関する調査研究事業の報告
  • 全国家計構造調査のデータの取扱いについて
  • その他

議事

(議事録)
■小塩部会長 皆さん、こんにちは。
 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第41回「社会保障審議会生活保護基準部会」を開催いたします。
 最初に事務局より、本日の委員の出欠状況と資料の確認をお願いいたします。それから、オンラインで出席されている委員の方がいらっしゃいますので、会議の発言方法等についても、改めて御説明をお願いいたします。
■大熊社会・援護局保護課長補佐 よろしくお願いします。
 本日の委員の御出欠状況でございますが、全ての委員に御出席をいただいております。
 阿部委員は、途中で御退席されます。
 本多審議官は、公務のため欠席となっております。
 なお、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、本日は一般の方の傍聴は御遠慮いただいており、報道機関の方のみの傍聴とさせていただいております。
 議事録につきましては、後日ホームページに掲載いたしますので、御承知おき願います。
 事務局側において幹部の交代がありましたので、御紹介させていただきます。
 山本社会・援護局長です。
 駒木社会・援護局総務課長です。
 池上社会・援護局保護課長です。
 続きまして、山本社会・援護局長より、一言御挨拶申し上げます。
■山本社会・援護局長 このたび、橋本に代わりまして社会・援護局長に着任いたしました、山本でございます。本日の生活保護基準部会の開催に当たり、一言御挨拶を申し上げます。
 委員の皆様におかれましては、大変御多忙中、審議会の委員という重責をお引き受けいただき、また、本年4月に本部会が再開されてから、これまで3回の議論を重ねていただきまして、心より御礼を申し上げます。
 生活保護制度につきましては、国民の健康で文化的な最低限度の生活を保障する最後のセーフティーネットでございます。新型コロナウイルス感染症の影響が長期にわたる中、生活保護制度の果たす役割につきましても、国民の関心を集めているところでございます。
 生活保護の基準につきましては、これまでも本部会で御議論いただいた上で必要な見直しを実施してまいりましたが、これからも生活保護制度が有効に機能し、国民の信頼・納得の得られる制度であり続けるよう、引き続き適切な水準が保たれているかなど、必要な検証・検討を進めてまいりたいと考えております。
 委員の皆様におかれましては、専門的かつ客観的に評価・検証していただくために、引き続き忌憚のない御意見を賜りたいと考えております。それぞれの御専門の知見を存分に発揮していただき、御議論いただきますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
■大熊社会・援護局保護課長補佐 それでは、本日の資料でございます。
 議事次第に続きまして、資料1-1「新たな検証手法の開発に関する調査研究事業の報告」。
 資料1-2「MIS手法による最低生活費の試算に関する調査研究事業について」。
 資料1-3「主観的最低生活費の試算に関する調査研究事業について」。
 資料1-4「『マーケットバスケット方式』による諸外国の最低生活費の算出事例(概要)」。
 資料1-5「マーケットバスケット方式に関する調査研究事業について」。
 資料2「全国家計構造調査のデータの取扱いについて」。
 参考資料1「被保護者調査(概数)の結果(令和3年8月分)」。
 参考資料2-1「2019年全国家計構造調査 家計収支に関する結果」。
 参考資料2-2「全国家計構造調査 用語の解説」。
 参考資料2-3「2019年全国家計構造調査 収支項目分類一覧」。
 参考資料2-4「2019年全国家計構造調査 利用上の注意」となっております。
 資料に不足等ございましたら、事務局までお申しつけください。
 会議の進行に当たっては、お手元の資料を御覧になりながら御参加いただければと思いますが、事務局からの資料説明の際にはZoomの画面にも資料を表示するようにいたします。
 また、会議中、発言を希望される際は、カメラに向かって挙手をお願いいたします。部会長の指名を受けた後、マイクのミュートを解除して御発言いただき、御発言終了後は再度マイクのミュートをお願いいたします。
 それでは、これからの議事運営につきましては、小塩部会長にお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
■小塩部会長 分かりました。
 それでは、恐縮ですが、カメラ撮影の方がいらっしゃったら、ここで退室をお願いいたします。
(報道関係者退室)
■小塩部会長 それでは、早速、本日の議事に入りたいと思います。
 事務局から、関連する資料について、説明をお願いいたします。
■大熊社会・援護局保護課長補佐 まず資料1-1より資料1-5まで一通り説明させていただいた後、質疑応答とさせていただきたいと思っております。
 それでは、資料1-1「新たな検証手法の開発に関する調査研究事業の報告」について、説明させていただきます。
 平成29年の基準部会報告書において、一般低所得世帯との均衡のみで生活保護基準の水準を捉えていると、比較する消費水準が低下すると、絶対的な水準を割ってしまう懸念があることからも、これ以上下回ってはならないという水準の設定について考える必要があるという御指摘があったことなどを受けまして、平成31年から2年間にわたり、「生活保護基準の新たな検証手法の開発等に関する検討会」が開催され、下支えとなる最低生活の水準の設定について議論が行われたところです。
 その際に過去に基準部会委員から御報告のあった各検証手法について、調査研究事業を実施したことから、基準部会において、その調査研究結果の報告をさせていただくものです。
 1ページになります。こちらは過去、基準部会の委員から提案のあった検証手法の概要を整理したものとなっています。
 「マーケットバスケット方式」は、専門家が最低生活に必要な品目を選定し、それを積み上げて最低生活費を算出する方法。
 「MIS手法」は、属性が近い一般市民が複数回議論して品目を選定し、積み上げる方法。
 「主観的最低生活費」は、一般市民を対象として、生活に最低限必要な額に関するアンケート調査を行い、その結果を基に算出する方法となっています。
 2ページになります。「MIS手法」と「主観的最低生活費」については、令和元年度の調査研究事業で具体的な試算を行っています。
 「マーケットバスケット方式」については、具体的な試算は行っておりませんが、令和元年度・令和2年度の調査研究事業で国内外の事例を整理していますので、あとの資料でそれぞれ御報告させていただきます。
 3ページになります。こちらは「生活保護基準の新たな検証手法の開発等に関する検討会」において、各検証手法に関して整理された論点となります。
 資料1-2になります。「MIS手法による最低生活費の試算に関する調査研究事業について」です。
 1ページになります。この調査研究は、阿部委員が中心となって実施していただきました。一般市民の最低生活費に関する意識を調査し、それに基づいて最低生活費を推計したものとなります。
 2ページです。具体的な手順としましては、若年・高齢の単身世帯を男女別にモデル世帯として設定し、各モデル世帯の最低生活に必要な物品等について、一般市民の方々が複数回にわたって毎回異なるメンバーで議論して、その物品等のリストを作成・確認して、最低生活費を積み上げていく手法です。
 4ページにお進みください。ページの右側になりますが、今回のグループインタビューで合意された住居に関する最低生活に必要な具体的条件となります。若年であれば、駅から徒歩10分以内で、高齢であれば、バス利用も可となっています。
 5ページをお願いします。献立のリストとなります。
 こちらに掲載しているものは、若年男性の1か月分の献立リストです。自炊と購入品と外食を組み合わせています。1週間分を4倍して28日分として、残り29日、30日については、その中に通常より費用のかかる外食が採用されています。
 6ページから10ページは、詳細な品目と価格のリストになります。
 11ページをお願いします。各モデル世帯のMIS手法による最低生活費の試算結果になります。
 (b)のところが最低生活に要する1か月の消費支出額で、若年男性で約22万円、若年女性で約25万円、高齢男性で約16万円、高齢女性で約17万円となっています。
 12ページです。試算結果と平成26年の全国消費実態調査による一般単身世帯の消費支出額の平均値と比較したものです。
 赤い点線枠のところが住居費用を除く消費支出額となり、若年世帯では、一般単身世帯の平均的な消費支出を上回る結果となり、高齢世帯では、一般単身世帯の平均的な消費支出の7~8割程度という結果となりました。
 13ページです。試算結果と生活扶助基準を比較したものです。
 一番下の行、赤い点線枠の(b)/(c)が生活扶助基準額の何倍かを示す数値となります。若年男性では2倍近く、若年女性では1.8倍程度となり、高齢世帯の男女は共に1.3倍となりました。
 以上となります。
 こちらの資料につきまして、主に調査に携われた阿部委員から補足説明等はありますでしょうか。
■阿部委員 ありがとうございます。
 この調査に関わらせていただいた都立大学の阿部彩です。
 この調査は、何回かのグループインタビューを繰り返して、一般市民の方々に何が必要かを積み上げていただく手法です。
 1つ補足として申し上げたいことといえば、グループインタビューですので、もちろんそのときに参加している8名程度の方の意向が反映されるのですけれども、それを数回繰り返すことによって、驚くほど結果が頑強であることです。つまり年度の違う年にやっても、男性と女性の中のリストは全く違うのですけれども、かなり近い数値になってくるところですので、通常考えるようなインタビューよりも恣意性はかなり排除されているのではないかと思われます。
 もう一つは、この手法の一番の特徴的なところは、予算制約がない中で必要なものは何かということを市民に問いているところです。つまり通常であれば、家計の中では何十万円などの予算制約があり、その中から項目を選んできますので、当然ですけれども、支出が低い方々というのは、必要なものを諦めたり、そういったやりくりをしているわけです。また、人によっては、収入が多い方であれば、必要でないものを購入してしまうというようなことをやっています。
 消費実態というのは、そのような両方の方々を含んでいるものの平均値になるわけですけれども、ここでいただいたのは、一つ一つのアイテムを全て聞くのですけれども、鉛筆1本、フォーク1本、これは必要ですかということで積み上げた上で、最終的に幾らになりますかということを計算しております。そういった意味では、最低生活費といったものにはかなり近いものと考えることができるのではないかと思っております。
 私はしゃべればいくらでもしゃべられるのですけれども、取りあえずこのぐらいの2点だけは申し上げたいと思います。ありがとうございました。
■大熊社会・援護局保護課長補佐 ありがとうございます。
 続きまして、資料1-3「主観的最低生活費の試算に関する調査研究事業について」になります。
 1ページになります。こちらは山田委員が検討会の座長となって実施いただいた調査研究となります。インターネットモニター調査を使って、一般国民における最低限度の生活の認識を調査し、主観的最低生活費の算出を試みたものです。
 2ページになります。この調査では、「切り詰めるだけ切り詰め最低限いくら必要ですか」という質問のK調査と、「つつましいながらも人前で恥ずかしくない社会生活をおくるためにいくら必要ですか」という質問のT調査の2種類を行い、それぞれ1万世帯程度を対象としました。
 3ページになります。こちらの表は世帯主の年齢区分別、世帯類型別、級地別のサンプル数となります。
 5ページにお進みください。こちらが主観的最低生活費の試算結果です。調査結果の中央値となります。
 金額はおおむねK調査よりもT調査のほうが高くなっています。K調査とT調査とも、世帯人員が増えるにつれ金額が大きくなり、また、30~50代の夫婦子あり世帯では、級地が高くなるにつれて金額も高くなる傾向が見られます。
 6ページから9ページについては、「月々かかる費用」と「年単位で必要となる費用」に分けて集計・分析しているものとなります。
 10ページをお願いします。調査結果と生活扶助基準の比較になります。
 K調査については、単身世帯、夫婦のみ世帯、夫婦子1人世帯などで、また、50代以上では、ほぼ全ての世帯類型で調査結果が生活扶助基準より高い傾向が見られました。
 T調査では、多くの年齢階級、世帯類型で調査結果が生活扶助基準より高い傾向が見られました。
 11ページは、結果を図で示したものです。
 12ページをお願いします。一般世帯の消費実態との比較になります。
 夫婦子1人世帯の主観的最低生活費の平均値は、2人以上世帯の年間収入五分位第Ⅰ階級、第Ⅱ階級の消費額よりも高くなっています。
 13ページです。様々な貧困線の試算に関する先行研究について記載しています。
 14ページをお願いします。図のように、実際の可処分所得の低下とともに最低限必要となる額の認識も低下するので、両者が一致する点を貧困線として算出しました。
 その結果が15ページで、中央値での比較と同様の結果となっています。
 以上となります。
 こちらの資料につきまして、検討会の座長を務められました山田委員から補足の説明などはありますでしょうか。
■山田委員 御紹介ありがとうございます。
 MISとも共通することなのですけれども、最低生活費がどれくらい必要かというものを算出するに当たり、素朴な考え方としては、低所得者の実態的な生計費を見ることがあり得るのですけれども、それはあまりよろしくない。成り立たない考え方であります。
 どうしてかというと、そうした低所得者の実態的な生計費を見るというと、生計費そのものが低所得という予算制約に決定的な影響を受けているため、それによって必要な最低生活費という、あるべき姿が算定されるはずがない。
 このことについては、厚生省の委託事業で70年も前に同じような委託事業があるのですけれども、そこでも指摘されていることです。
 この主観的最低生活費も、MISと同様に予算制約がない場合にどれくらいの最低生活費が必要になるのかということを、今、御紹介ありましたように、2つの方法の定義で聞いています。
 一つは、2ページの上の四角にありますように、切り詰めるだけ切り詰め、最低限いくら必要ですかというK調査と、T調査では、つつましいながらも人前で恥ずかしくない社会生活を送るためにいくら必要ですか、という定義です。
 これは2009年の10年ほど前にやったときには、生活扶助基準はちょうどK調査とT調査の間に入ってきたといった結果が得られているのですけれども、今回、資料1-3の10ページとか、15ページで見られるのは、不等号が書かれているのですが、K調査の、切り詰めるだけ切り詰め、という非常に厳しい定義で見ても、生活扶助基準の方が最低生活費より低くなっている世帯類型が多くなっています。2009年にやったときには、単身世帯のみ生活扶助基準がK調査よりも低いということだったのですけれども、現在では、子どもがいる世帯で見ても、K調査の最低生活費より生活扶助基準が下回っている世帯類型、もしくは級地が多いということです。
 前回、前々回も話しましたけれども、級地で枝番を取るのは、今、1級地の1でも、K調査の最低生活費を生活扶助基準が下回っていたり、そういう部分がありますので、補足としては、そういったことも気をつけて見なくてはいけない。2009年と比較したときに、現在ではK調査より生活扶助基準が下回っている世帯類型がかなり多くなっているということです。
 頑健性のテストではないのですけれども、中央値だけではなくて、報告書では信頼区間で見たりとか、あと、13ページにも御紹介がありますように、それ以外のやり方でもやってみて、色々なやり方で最低生活費を求めてみてどうかというのも見ました。それでも生活扶助基準の方がK調査での最低生活費を下回っている世帯類型とかが多い、級地の特に枝番1で多い、というところが重要だと思います。
 以上が補足になります。ありがとうございます。
■大熊社会・援護局保護課長補佐 ありがとうございます。
 それでは、次の資料に移ります。
 資料1-4「『マーケットバスケット方式』による諸外国の最低生活費の算出事例(概要)」になります。
 先ほども申し上げたところですが、マーケットバスケット方式による最低生活費については、今回、具体的な試算結果は示されていません。調査研究においては、国内外の事例を整理した形となります。
 なお、検討会の論点整理におきましても、「諸外国における公的扶助制度は、その制度設計や社会保障上の位置づけが国によって様々であるため、日本の生活保護制度と単純比較ができない」ということが指摘されている点は御留意ください。
 1ページになります。令和元年度に実施した調査研究では、ドイツ、スウェーデン、チェコ、韓国の事例を整理しています。
 2ページから5ページについては、ドイツについてまとめています。
 ドイツでは、就労できる者とその家族については求職者基礎保障、就労できない者は社会扶助の対象となります。社会扶助についても、一時的に就労できない者と長期的に就労できない者や高齢者とで給付が分かれています。
 基準額の設定方法は、所得下位15%などの世帯における消費支出を参照し、アルコール等の最低生活外の支出を除外する形となっています。
 6ページから9ページは、スウェーデンについてまとめています。
 スウェーデンの社会扶助は、基本的に18歳から64歳の者が対象となります。食費や衣服費など、幾つかの特定の品目について、必要なコストを積み上げて設定しているものとなります。
 10ページから14ページは、チェコについてまとめています。
 チェコでは、生活扶助として最低生活水準の他に、懲戒的手段として最低生存水準が設定されていることが特徴です。食費については、医学的に必要とされる栄養量から算出し、その他の品目については、主に収入第1・十分位の支出の平均などを基に調整したものが採用されています。
 15ページから20ページは、韓国についてまとめられています。
 韓国では、2015年以前は全物量方式が採用されていましたが、導入以前から研究者の志向する価値と恣意性が介在することが指摘されていたことから、現在は国民の中位所得を基準とする制度に変更されています。
 資料1-5「マーケットバスケット方式に関する調査研究事業について」になります。
 1ページです。令和2年度に実施した調査研究では、国内外の事例を整理するとともに、マーケットバスケット方式で最低生活費を算出する場合に、必要となる具体的な手順などを整理しています。
 2ページになります。調査対象は、日本で過去に研究者が行った例と、韓国とカナダにおける貧困線の設定と、EUにおけるリファレンスバジェットになります。
 2ページから3ページで、実施主体、目的、前提とする生活水準、市民参加の有無、留意点など、基本的な情報を整理しています。
 4ページ以降、4ページから6ページにわたって、それぞれの事例について算出主体、目的、前提とする生活水準などを一覧にしています。
 7ページ以降で具体的な対象品目の積み上げ方法を整理しています。
 以上となります。
■小塩部会長 御説明ありがとうございました。
 これまで阿部委員、山田委員を中心に新しい手法について、色々検討していただきました。今日、改めて概要を紹介していただいたわけですけれども、ただいま御説明のあった資料に基づいて、今後の研究課題等々を含めて御意見、御質問があれば、伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。宇南山委員のお手が挙がっていますので、よろしくお願いいたします。
■宇南山委員 ありがとうございます。宇南山です。
 私は前期、この部会に参加していなかったので、もう一度確認させていただきたいと思いますが、最低生活費がどういう位置づけのものなのか、まだよく理解できていません。山田先生がおっしゃったように、実態としても貧困の人を追いかけていったら、実態が底割れで下がってしまい、何も維持できないというのは理解できます。けれども、日本は水準均衡方式でやっていますので、実態として現に暮らしている人がいても、これは切り詰めても生きていけない水準だという判断を下すことになる。その理論的根拠、例えば、絶対的貧困とか、生存水準とどのように関係するのかを確認させていただければと思います。もしかすると、これは事務局というよりは、他の先生方に教えていただければいいと思うのですけれども、それがメインの質問です。
 あと、技術的なところで、阿部先生のMIS手法です。数字としてというか、モデルケースとして、例えば男女で住宅の条件が違うことは一体なぜなのだろうということがあります。若者は高齢者の生活はなかなか分からないし、高齢者は若者の実態が分からないとすると、どういう属性の人がつくったのかという情報がここの中にはなかったので、それが属性によってどういう違いが生まれるのか、もし分かったら教えていただければと思います。
 以上です。 
■小塩部会長 ありがとうございます。
 宇南山委員から根本的な問いかけがあったのですけれども、いかがでしょうか。実際に新しい手法をずっと検討されてきた阿部委員、山田委員は、最低生活というのはどういう意味をそれぞれの開発の手法についてのお考えをいただきたいと思います。
 阿部委員におかれましては、先ほど宇南山委員からありました属性の御質問について、回答いただければと思います。
 阿部委員から発言をお願いいたします。
■阿部委員 最初の御質問の最低生活費という話については、これは生活保護法において最低生活費がきちんと歴史的に規定されてきたものでありますので、私よりも岡部先生とか、栃本先生とか、生活保護の歴史的経緯をよく御存じの方に御説明いただいたほうがいいと思いますので、そちらにお願いしたいと思います。
 2つ目の属性については、各グループのモデルケースに近い属性の方々です。例えば32歳の男性であれば、32歳きっちりではないのですけれども、30歳前半の男性で、しかも、足立区という設定でしたので、足立区の近郊に住んでいる方々ということで集めております。
 モデルケースの方々の生活を本当に知っている方は、その属性に近い方で、しかも、その場にいる方でないと、推定のものを言ってしまうところがあります。例えば高齢者の方々のグループのときは、高齢者の方々でどこどこに住んでいるということで、お買物をするのであれば、こういったお店があって、大量量販店みたいなものは、他の一般の地域に住んでいる方にとってはアベイラブルであっても、その地域に住んでいる方、しかも、高齢者にとってはそうではないかもしれないということで、そこの高齢者です。そうすると、私たちが徒歩で行けるというのは、こういったお店ですということで出てきますので、非常に具体的な話をしますので、そういった点で一番属性が近い方々を集めるようにはしています。
 住宅費が男性と女性で違うのは、グループの方が女性であれば、例えばこの地域で1階に住むのは危ないとか、駅から夜中に20分歩かなければいけないというのは怖いとか、お子さんがいる人であれば、この地域には学校がないから駄目だとか、それぞれの属性の方々でそれぞれの理由があって、防犯ベルがついていなければいけないという女性のグループがあるけれども、男性はそれがないとか、ですので、持ち物も住宅も全て、その属性の方々が絶対にこれだけは外せない、これだけは必要だというものだけを入れていることなので、違ってむしろ当たり前だと思います。
■小塩部会長 ありがとうございます。
 最低生活費の解釈について、岡部委員、お手が挙がっていますので、コメントをお願いいたします。
■岡部委員 私からは極めて教科書的な説明になると思いますが、お話しをさせて頂きます。健康で文化的な生活とは、憲法25条の健康で文化的な生活から最低生活を規定されています。そこで健康で文化的な生活とは何かということになるのですが、これは生活保護法の最低生活となり、私たちが論議している8条で決められます。
 その中で、健康で文化的な生活を営むことは国民の権利であるといったときには、日本の社会において、国民として、市民として最低限の生活が営む水準とは何か、それを最低生活として規定することになります。
 それともう一つ、これは先ほど絶対的か、相対的かというお話がありましたが、社会の中でどのような生活を営めるかはその時代の生活水準に規定されますので、その中で基本的なとらえ方として述べれば、先ほどお話ししたように社会の中で最低限度の生活は、ある意味では絶対的なものですし、また、相対的なものである。そのように解釈をしてはいいのではないでしょうか。
 そこでよく一般的に絶対的貧困は生存水準、そして相対的貧困は時代や社会の中で相対化して捉えられるものであることと言われますが、ある意味では、これは相対的であり、絶対的であるという理解をしていただくことが、一般的な説明になると思います。そのため、水準均衡方式で議論された中で、水準均衡方式が一般低所得の方の消費水準と生活保護基準の見合いで行っている。これは絶対的な基準に見合っているかどうかを検証しましょうということで、今回、報告をしていただいた幾つかのアプローチでの報告が、それに当たるのではないかと思います。
 それが、理論的に、また、いかにそれを実証し根拠づけるか、一定の客観性・合理性を持っているかどうかが、今日、報告をされた中で、検討されているのではないかと考えます。
 宇南山先生、よろしいでしょうか。
■小塩部会長 今、2人からコメントがありましたけれども、宇南山先生、いかがでしょうか。
■宇南山委員 まだよく理解できていないのが、絶対的な部分です。割り込んではいけない部分が相対とは別に存在するのは理解できるのですが、その水準は、どのようなものでしょうか。生存水準であれば、文字どおり、ある種の生物学的に計算ができると思いますが、社会的に最低限のものを規定しようとすると、国民の理解も必要だし、現実もあるというところで様々な定義があると思います。私が読む限りだと、そこが統一されていない状態で複数の手法が出されているようで、どのような基準を実証的に示しているかが分からず、こちらの手法がいいとか、あちらの手法がいいという比較ができないと思います。MISと主観的とマーケットバスケットで、基準となる水準自体も食い違っているのに手法も違ったら、どれがすぐれているという議論が成り立つのだろうかという疑問があります。
■小塩部会長 お願いします。
■岡部委員 これは水準均衡方式が持っている一つの大きな課題です。そもそも水準均衡方式は1984年度から導入されています。これまでの検討会や審議会部会の中で私もお話をしましたし、皆さんも議論されたことがあると思います。改めて述べますが、これまでの算定方式はこれまでの貧困研究の蓄積をベースにしながら行っています。
 篭山京先生(上智大学)や中鉢正美先生(慶應大学)の考え方と実証研究を基にして、低所得者と生活保護受給者の一定均衡を失しないようにする。ある意味では、当時の時代的背景の下で一般の勤労者の賃金水準、消費水準が上昇する中で、生活保護世帯の方の均衡を失しないようにする。それを積極的に行ったのが、その前の格差縮小方式という算定方式であり、これはある程度改善されましたので、一定の水準で均衡を保とうということで水準均衡方式が導入されてきたという経緯があります。
 しかしながら、賃金水準が上昇する、消費水準が上昇する時代から、賃金水準がさほど上昇しないまたは低下する、あるいは消費水準が低下する傾向の中で、低所得者世帯と生活保護基準の均衡を図ることは、そもそも生活保護基準でいう最低生活に資するものなのかどうかが各委員の中から議論が交わされ、それを報告書にまとめて、新たな水準均衡方式に代わるという意味ではなく、水準均衡方式を検証するあるいは補強する方向で検討開始に至ったという経緯があります。
 今回、山田先生のグループで主観的なアプローチを、もう一つは、阿部先生のグループで、別のアプローチであるMIS手法を出されています。それぞれのアプローチでデータを取り試算を行っています。後者は他国でも検討し、成果が上がっておりますので、それを参考にし、日本で行ったという経緯があります。
 宇南山委員がおっしゃったように、これが次の最低生活の算定方式になるということではなく、議論をして、より有効なものとしていく選択肢の一つとして、または方式を補強や参考にして現行方式をブラッシュアップしていく方法でも考えられるのではないかと思っています。
 私は最後まで部会におりますので、途中退室される阿部先生や他の先生にお話ししていただいたほうがよいと思います。
■小塩部会長 どんどん発言していただいて結構です。
 栃本部会長代理から御説明をお願いいたします。
■栃本部会長代理 今、御専門の岡部先生にお話しいただいたのですけれども、別の表現の言い方で言いますと、格差縮小を目指した方式、その後、それが一定達成されたという事で均衡ということになって、水準均衡方式を採用して、それで長くきたわけなのですけれども、そもそも均衡方式は一体理論なのかということです。
■岡部委員 理論と考えないほうがよいと考えます。
■栃本部会長代理 まさにそうなのです。つまり今までの科学的な、私は篭山先生とか、中鉢先生に直接教えを請いましたので、大学院時代、教育されましたので、よく覚えているのです。そのような日本の構成要素の中で、また、生活保護の定めるもので、世界に冠たる生活の履歴効果というのがありまして、そういう中でこういうものが進められて、ある種の積み上げが行われてきたのですけれども、ある段階から政策的にというか、一定水準に達したので、これからは均衡で見ることが妥当だろうということがありましたので、それで長らく見てきたわけです。
 先ほど岡部先生が話されたのはまさにそのとおりなのですけれども、ただ、それを見てきたのですけれども、現実に経済変動などを細かく見ていくと、インフレとか、デフレとか、そういう状況の中で、果たしてこのままでいいのかどうかは、基準部会の先生方の頭の中にというか、色々と検証作業をする中ですごくありまして、それをもう一度きちっと次回のもの、次回というのは今回の4月から始まったものですけれども、その前に研究としてそういうものをやるべきではないかということで、今日のそれぞれの先生方の御発表だと思うのです。
 前回、級地のことで色々議論がありましたけれども、級地についても、現在の基準部会の主要なメンバーの方々が既に入られて、それを検討されてきたわけでして、いわゆる均衡方式は、現時点においてはこれでいく形になっているわけですけれども、そうはいっても、一般的に主観的と言いますが、主観の反対は客観かということで、客観は一体何をもって客観なのかということもありまして、そういうことから主観的というと、表面的に見ると恣意的だと思うかもしれない。
 ただ、これを実際に幾つかのアプローチで検討してみる中で、ちなみに、今日御発表いただいたものは、どれを新しい基準にするという意味ではないわけでして、非常に重要な知見であり、なおかつ、今回のものを検討するに当たって、前回からのお約束として必須の作業だと思っていますので、この知見をうまく生かした形で考えていくことが一番大事です。
 その際に我々の生活も予算制約などの色々な制約がある中で我々は生活していますし、私も生活しているわけなのですけれども、ただ、それを外してみることはやってみるべきことなのです。その上でそれをどのように評価して判断するか、なおかつ、新しい生活扶助の基準を考えた際に、幅を持ってと言うと言い方は変ですけれども、それをどういう形で今回の知見を取り入れるかということに尽きると思うのです。
 そういうことで、現時点では均衡方式をやっていまして、それに変わり得るものは、現時点ではすぱっとこれだという形では提示していなくて、なおかつ、それぞれの御専門の先生方は、諸外国における一定の到達水準や代替的なサブの参考にすべき指標であるとか、そういうものを示されているわけで、そういう意味では、今回は相対的な部分をきちっとどのぐらいの幅で見たらいいのかというための非常に重要なデータというか、研究と私は理解しています。
 以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
 もう一方、新しい指標について携わっていらっしゃった山田委員、御発言はありますでしょうか。
■山田委員 ありがとうございます。
 宇南山先生、非常に根源的な質問をありがとうございます。
 また、栃本部会長代理、岡部委員、大所高所からの最低生活に関する御解説をありがとうございました。
 最低生活とは何かについては、MISはMISで、阿部委員から補足があると思いますけれども、これは一般市民が最低生活とは何ぞや、という定義を話すところから始めているのがMISの特徴であります。私のほうでは、最低生活を、K調査では、切り詰めるだけ切り詰めてとか、T調査では、人前で恥ずかしくない、という2つの定義を最初からぽんと提示しております。
 ただ、宇南山先生と同じ経済学ですので、経済学ではどういう風に絶対とか、相対などが考えられているかということの補足ですけれども、貧困について著名なアマルティア・センは、貧困に関連深いファンクション、機能といいますけれども、これは要するに人間という存在の質を決める生き方は、ファンクションの集合から成るのですが、機能は何かであることとか、何かをすること、ビーイングとか、ドゥーイングで構成されます。その貧困に関連深い機能とは何か、ということで、センは例示として5つ挙げています。
 1つ目は、十分に栄養を取っている。
 2つ目は、医療や住居が満たされている。
 3つ目は、予防可能な病気にかからない。
 4つ目、5つ目がより重要ですけれども、4つ目は、コミュニティーの一員として社会生活に参加する。
 5つ目は、恥をかかずに人前に出ることができる。
 先ほど岡部委員からも説明がありましたけれども、市民としての生活というのは、前提として当然社会参加を想定しているわけです。アマルティア・センの貧困に関連深い機能の例示にも、恥をかかずに人前に出るとか、コミュニティーの一員として社会生活に参加することが機能として入っているわけです。ですから、機能という空間においては、少なくとも5つを満たすかどうかが、貧困の絶対的な基準になります。
 それがどう満たされるかというのは、現代の生活においては、例えば携帯が必要とか、そういうことで相対的に決まってくるものでありますけれども、機能としては絶対的な水準であるわけです。少なくとも経済学ではそのように考えているので、それを翻訳するときに相対とか、絶対というと、何となくイメージが異なってくるかもしれませんけれども、少なくとも経済学的な貧困に関連深い機能は、絶対的な基準としてコミュニティーの一員として社会生活に参加するとか、恥をかかずに人前に出ることができるというものも入っておりまして、実際に主観的最低生活費で提示したときには、人前で恥ずかしくない社会生活を送るためにいくら必要なのか。T調査の定義は、アマルティア・センの絶対的な貧困の基準を想定しています。そのように主観的最低生活費を考えています。
 私からは以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
 ここの問題は非常に重要な問題ですので、この場で決着するのはほとんど無理だと思うのですけれども、他に御意見はいかがでしょうか。宇南山先生のお手が挙がっています。
■宇南山委員 ありがとうございます。
 大分分かってきまして、現状だとまずは多様な尺度で測ってみようということだと理解しました。多様な手法で多様な尺度で、取りあえず今の水準均衡方式を再度評価しておこうということだと思いますが、そのように理解した上で、コメントします。
山田先生の主観的な方法も、阿部先生のMISの方法も、それぞれの文脈で伝統があるとは思いますが、仮に将来的にこれを実装する、どういう手法がいいかということを決めるためには定義の統一は不可欠だと思います。例えば阿部先生のものですと、資料の4ページ目の定義のまとめのところに「人との交流、人間関係、自由に移動する手段の要素を含まなければならない」と書いてあるわけですが、ここの部分は主観的最低生活費の定義と合わすことはできると思うのです。それが今までやってきた研究との連続性を失わせ、それぞれの分野の蓄積と離れてしまうかもしれないのですけれども、MISと主観的な最低生活費という2つの手法でどれほどの違いが出るのかを比較するには、これをそろえて検証したほうが良いと思います。定義を統一すれば、この手法だと高めに出るとか、低めに出るということが判断できると思いますが、いかがでしょうかというのが1点です。
 もう一つ、私の理解ですと、水準均衡方式のある種のメリットとして、行政上の保護基準を、例えば十分位の一番下と決めると、原理的には10分の1以下の人が生活保護の対象になるようなイメージと理解できます。つまり十分位の一番下の人よりも低ければ、それは最低限の生活を満たしていないことになりますので、10分の1の人が生活保護を潜在的には受給するような原理になっています。仮にそれから離れるとすると、経済がすごく悪くなったときには、ものすごく沢山生活保護を認定しなければいけないし、逆にすごく景気がよくなると、すごく少なくなってしまうような、行政上の運用もすごく難しくなるのではないかと思います。その辺の運用はどのように理解すればよいのでしょうか。
 今日全てを解決するつもりはありません。私の素朴な疑問で申し訳ありません。ありがとうございます。
■小塩部会長 ありがとうございます。
 これもお答えしにくい御質問かもしれませんけれども、回答の御用意がある方はいらっしゃいますか。阿部先生、お手が挙がっています。それから、渡辺委員、新保委員も御発言をよろしくお願いいたします。
 阿部委員、お願いいたします。
■阿部委員 私はあと10分ほどで出なければいけないので、全てきちんとお答えできる形ではないのですけれども、最後の点については、生活保護はまさに景気が悪くなったら増え、景気がよくなったら減るという、それをするべき制度ですので、運用上というのは、私たちとしては検討するべきことではないと思います。国民の最低生活が守られている基準かどうかということだけを議論することがこの部会です。
 そういった意味では、今は第1十分位に設定しているのはありますけれども、だからといって、その人たち全員が生活保護の要件を満たすかというと、そうではないので、そこのところは、10%の保護率になるのだろうというのは違うと思うのです。これはあくまでも所得だけで見たこともありますし、他の要件もたくさんあります。
 私としては、相対的だけで決めるものではない絶対的なものをつくるというのは、まさに生活保護が果たすべき役割をするには、今、このような経済状況が以前は第1十分位の生活水準は、当然のごとく最低生活を満たすものだという前提でやっていたわけなのですけれども、それが崩れてしまった以上は、また違う形でやらざるを得ないのではないかということではないかと思います。
 もう一つは、今、MISとか、山田先生の主観的アンケート調査からの方法などの御提示がありましたけれども、この部会の中でこの方法が一番なので、この方法で決めましょうということではないと思うのです。それはほとんど不可能だと思います。ですので、今までやってきた消費実態調査を軸としながら、その他の手法でそれが低過ぎないか、高過ぎないかというような検証に用いる幅をつくるとか、または一部に使うことができるのではないか、消費実態でどうしても品目的に小さくなってしまうようなもの、例えば交際費などがあるので、そこのところは違う手法でそこをサプリメントするような形にするのではないか。そういう使われ方をするしかないのではないのかと思うのです。
 がらがらぽんと手法を変えることは絶対にできないので、その幅をつくるという意味では、こういったやり方でやったということも、定義のところから若干違うことも、手法が違うので、私としては、憲法25条とか、そういったものしかお見せしていなくて、その他にあなたたちの中で話し合ってくださいと言って、一般市民の方々に決めてもらったものなのです。
 山田先生のものは、経済学をベースにアマルティア・センの議論などを提示したものですので、違って当然と言えば当然で、それによって幅ができる。その幅も勘案して、どこら辺にするべきかという議論の一つの材料にしていきましょうということだと思います。
■小塩部会長 ありがとうございます。
 渡辺委員、お手が挙がっていますので、お願いいたします。
■渡辺専門委員 ありがとうございます。
 生活保護の水準はどうあるべきか、どのような算定方式がいいのかというのは、生活保護制度が始まって以来、ずっと議論されてきています。現行の水準均衡方式になってからも、その水準をどう担保しまた検証できるのかということを長年やっているわけですが、それは当然ながら生存水準ではないわけです。イグジスティングレベルでは当然ながらないわけで、健康で文化的な最低限度の生活を守らなければならない。
 しかし、一方でその水準はどこですかということを導き出すのは大変に難しいわけです。なかなか一意に定まらず、それゆえ、各国でも様々な方法が取られているわけです。
 水準均衡方式が採用されたのは1980年代でして、基本的には経済は上り調子の前提だったわけです。そのため、水準均衡方式で改定しても、ある種の絶対的な水準というのは、下回らないようなところがありました。ところが、ここ10年~20年ぐらい消費水準の低迷が大きくて、むしろ縮小している状況です。そういう場面になるというのは、水準均衡方式を定めたときにはあまり想定がされていなかったわけです。
 水準均衡方式はある種の相対的貧困基準ですが、相対的貧困基準については、世銀でも色々な協力をされているラヴァリオンが批判しています。たとえば、全員の所得がゼロの場合、貧困基準もゼロになってしまって、貧困率もゼロになってしまうことが理論的にはあり得るわけです。あるいは全員が低所得の場合、貧困基準が相当に低くなり、ある種の絶対的な、それこそイグジスティングレベルでさえ下回ってしまう可能性が、理論的にはあり得るわけです。
 生活保護の場合は、当然ですけれども、健康的で文化的な最低限度の生活は守らなければならないわけです。ところが、経済成長していかない、世帯所得や消費が落ちている局面で相対的に貧困基準を定めると、そのレベルを割ってしまわないかという懸念が生じることになります。そこで、ある種の絶対的な水準は今の現代日本においてはどこなのかというところを、MISや主観的最低生活費はじめ様々なアプローチから検証する必要性がでてきます。唯一絶対的に正しい水準を決定することはできませんが、この辺がそうなのではないか、大体この辺に収れんするのではないかということを、様々な研究調査から導き出そうとしているわけです。そのように見ていくと、主観的最低生活費でも、MISでも、どうやら単身世帯は特にきつい、高齢単身世帯は下回っているのではないかという懸念が読み取れるわけです。
 一方で、複数人世帯の場合は、比較的大丈夫なのではないかとなると、これは世帯規模の経済性の調整がうまくいっていない可能性がある、そういうところは注意深くしなければいけないわけです。今、3人世帯から展開していますけれども、展開するときに1人世帯を割り引き過ぎてしまっている。そういうことが考えられるので、最後に展開していくときに、下支えとなる水準を割っていないかという検証は、特に経済が縮小しかかっているときには、必要になってきたという経緯があります。
 当然ですが、困窮世帯が増えた場合には、生活保護で全て受け止めるわけですので、経済不況になったときには、これまでも生活保護を受ける世帯は増えてきています。もちろん経済が回復すると、被保護世帯は歴史的に減っていく傾向があります。経済変動を最後は受け止めるのは生活保護だということだと思っております。
 以上です。
■小塩部会長 ありがとうございます。
 栃本部会長代理から御発言をお願いします。
■栃本部会長代理 今の最後の部分の2番目に挙げた展開の際の留意点という話が出たと思うのです。これは前回の議論の際にも3人世帯でモデルにしたのだけれども、1人世帯がそもそも多いわけです。ただ、標本数が追いつかないという議論もあったとは思うのですが、今のお話は、今日はまだだろうけれども、さらに次回とか、実際の作業をする上では極めて重要なお話だと思うのです。再度確認したと思います。
 それと、先ほど言い忘れたのだけれども、ヨーロッパのいわゆる生活扶助に関するマーケットバスケットの方式についての比較表を検討されているわけなのですが、あの中でいわゆる制度論というか、組立て論として欠けているところがあって、一つは生計扶助だけ見ると、あの理屈になるのだけれども、その概定としてもう少し別のもので、ドイツであれば、ドイツの社会扶助の中で、ある意味ではいわゆるかつての特別な生活に対する扶助などもあり、かなり幅があるのです。それはある程度まさに相対的の部分が相当強調されている部分です。
 もう一つ言いたいのは、先ほどK調査とT調査での経済学の話をされて、5つのファンクションが必須だと、そもそも条件なのだという話がありました。私は社会学なのですけれども、社会学でもそういうことを言いますので、必ずしも経済学だけではないのです。その上で何を言いたいかというと、ヨーロッパのマーケットバスケットを調べている際に、色々調べてくださったのですけれども、EUがまとまった議論をしているのです。貧困メジャーのチェックをどうするかなどです。
 その中で結構重要なのは、今までヒューマンライツというのは、人間の諸権利とか、最低限の営む権利を有するという、権利という形でこれはとても重要なのだけれども、今の言葉は、ヨーロッパがいいわけではないのだけれども、ヒューマンライツ・アンド・デグニティーです。つまり人間の諸権利と尊厳です。尊厳に値する生活を実現することは、単に動物として食べていればいいというわけではなくて、だからこそ恥ずかしくないというものが大切にされるし、ディーセントワークと言われる非ディーセントなものを避けることだと思うのです。
 先ほどの調査に関して言えば、ヒューマンデグニティーが規定にあるのですが、たとえばドイツ法では、そういうものを書かれていなかったので、もともと今日の議論でもそうだけれども、単に国民の権利としてはもちろんそうなのですが、それプラス何を実現するかというと、山田先生が話されたように、言ってみれば、人間の尊厳に値する生活を維持するためだと思うのです。
 最後に主観的な何とかという調査名で言っているわけですけれども、主観的何とかという言い方をするから、主観からみたいに思ってしまうのですが、これは極めて重要な共同主観とはいいませんけれども、ある種の共有されたものをつくり上げるということで、これは今までの基準部会の議論をさらに前進させるものに確実になっております。
 以上です。
■小塩部会長 ありがとうございました。
 実は阿部委員が御都合で御退室されるということですので、阿部先生、資料2に関するコメントがあれば、次の基準部会でいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 引き続き、岡部委員から発言があります。お願いします。
■岡部委員 手短に言います。2点です。
 1点目は、宇南山委員に対しての応答になりますが、国民が最も国家に対する信頼を持つ点は国民の生活が社会保障で守られている、保障していることにあります。それと最後のセーフティーネットとして生活保護制度が重しになり機能していることが非常に大きいと考えます。
 2点目は、山田委員がアマルティア・センのお話をしましたけれども、社会福祉の領域でもアマルティア・センを取り上げております。特に貧困の捉え方については、算定方式に非常に影響を与えたB.S.ラウントリー、エルンスト・エンゲル、そして水準均衡方式の背景のところでは、ピーター・タウンゼンドがあります。
 それで相対的という考え方と絶対的という言い方で言われていますけれども、アマルティア・センは、ある意味では絶対的貧困という立場をとります。その中で相対的な考え方はどの社会においても絶対的なものはある、その上で社会に合ったものをどうつくるのかという考えを述べています。アマルティア・センの考え方は、国連の開発指標等の尺度で活用されております。この点が先ほどお話がありましたように、これまでの篭山先生、中鉢先生等の日本の貧困研究は世界に冠たるものだと思いますが、その上で日本の生活保護基準の算定方式に取り入れられています。アマルティア・センの考え方も、今、おっしゃっていただいたようにその考えをとり入れながら行っていくことも考えられるのではないかと思っています。
 以上です。
■小塩部会長 ありがとうございました。
 この問題は非常に奥が深くて、今日で私たちの検証に向けての方針を固めるのは難しいと思うのですけれども、先ほど阿部委員がおっしゃったように、色々な観点から見ていくことが重要ではないかと思っております。本日、多くの貴重な御意見をいただきましたので、その意見を踏まえてさらに検証に向けて議論を続けていきたいと思います。
 山田委員、どうぞ。
■山田委員 次の論点に移行されると思いましたが、新保先生のほうが最初です。
■小塩部会長 山田先生、ちょっと待ってください。
 新保委員からお手が挙がっていますので、御発言を先にお願いいたします。
■新保委員 ありがとうございます。
 MISも、主観的最低生活費の試算に関する調査研究も、大変多くの示唆に富む調査研究で、学ばせていただきました。それぞれの調査から導かれた「あるべき、望むべく水準」は、現在の最低生活費よりも高いという結果については、しっかり受け止めて、今後どういう形で、どういう部分を基準として保障していくことが必要なのかというところにつなげていくことができるのではないかと思いました。
 以上です。ありがとうございました。
■小塩部会長 ありがとうございました。
 山田委員、御発言をお願いいたします。
■山田委員 ありがとうございます。
 宇南山先生からも定義をそろえたほうがいいとおっしゃっていたのですけれども、今までの議論でそこら辺が明快になったと思うのですが、概念的にはかなり一致していることになります。経済学だけではなく、御指摘がありましたように社会学や社会福祉学、いずれにしても似たような定義で、言葉は違うかもしれませんけれども、概念としては同じものを指しています。
 そうした中で、概念は同じだけれども、色々な方法で算定してみたところ、今、新保委員からも御指摘がありましたように、生活扶助基準のほうが低いということについては、同じ方向を向いていますので、こちらについては、今後の議論の前提の確認として捉えることができればと思います。
 また、ここでは議論に出ませんでしたけれども、かつて老齢加算を廃止したことによって、実はOECDの相対的貧困基準よりも、老齢加算が廃止された後の生活扶助基準は低くなっておりますので、そういったことまで考えますと、色々な手法は使っていますけれども、どのように低くなっている生活扶助基準を考えるべきかの示唆を与えるのではないかと思います。
 失礼しました。以上です。
■小塩部会長 議論が尽きないのですけれども、この問題は引き続き議論してまいりたいと思いますありがとうございました。
 それでは、次の議事に移りたいと思います。
 私たちはこれから検証へ向けて作業を進めるのですけれども、一番ベースになる統計が変わるという非常に重要なテーマでございますので、事務局より御説明をお願いいたします。
■大熊社会・援護局保護課長補佐 資料2になります。「2019年全国家計構造調査のデータの取扱いについて」になります。
 「2019年全国家計構造調査」は、5年ごとに実施されてきた「全国消費実態調査」を見直して実施されたもので、その調査内容にもいくつか変更点がありました。この資料は、その調査結果データを取扱う上で留意する点をあらかじめ整理しておくものとなります。
 2ページを御覧ください。「生活扶助相当支出品目について」になります。
 「検討事項」の欄の1点目にありますように、生活扶助基準については、消費実態との比較検証を行うに当たって、生活保護制度上の取扱いを踏まえて、消費支出項目のうち「生活扶助」によるべき需要に相当する項目を「生活扶助相当」とし、その内訳として、「第1類相当」、「第2類相当」に区分して、その消費支出額を検証に用いてきました。
 2点目になります。2019年全国家計構造調査では、2014年全国消費実態調査から支出品目の分類変更がありました。その変更箇所について、検証作業で用いる「生活扶助相当」及び「第1類相当」、「第2類相当」の区分の取扱いをあらかじめ整理する必要があるというものでございます。
 参考として、点線枠内になりますが、基準生活費における第1類と第2類については、第1類の経費は、飲食物費、被服費のように個人単位に算定できる生計費です。第2類の経費は、家具什器費用や光熱費等のように世帯共通的な経費となります。
 方針(案)の枠内に記載していますが、2019年全国家計構造調査の支出品目のうち、「生活扶助相当」及び「第1類相当」、「第2類相当」の区分については、次のページ以降で(案)をお示ししています。
 3ページです。表の左側が2014年の全国消費実態調査の支出項目の分類と2019年の検証時の「第1類」、「第2類」の取扱いです。
 次の列の赤字のところが調査項目の変更内容になります。
 表の右側が2019年全国家計構造調査の支出項目の分類と、今回の検証作業での取扱い(案)となっています。
 「食料」の支出項目については、項目が統合されておりますが、こちらのページの項目は、「第1類」とする取扱いに変更はありません。
 4ページになります。「食料」の続きになります。こちらも調査項目が統合されていますが、「第1類」とする取扱いに変更はありません。
 5ページです。こちらも「食料」の続きになります。「学校給食」については、これまでも生活扶助の対象には含まれず、引き続き「対象外」として取り扱います。これ以外は調査項目が統合されていますが、「第1類」とする取扱いに変更はありません。
 6ページです。上段が「住居」になります。「修繕材料」については、引き続き「第2類」、それ以外については、調査項目の統合・分割はありますが、「対象外」とする取扱いに変更はありません。
 下段が「光熱・水道」になります。こちらは調査項目に変更はなく、全て「第2類」とする取扱いに変更はありません。
 7ページです。「家具・家事用品」になります。調査項目の統合・分割はありますが、いずれの品目も引き続き「第2類」とする取扱いを変更していません。
 8ページです。「家具・家事用品」の続きになります。こちらも調査項目の統合・分割はありますが、いずれの品目も引き続き「第2類」とする取扱いを変更していません。
 9ページです。「被服及び履物」になります。赤い枠囲みですが、これまで除外品目としていた「男子用学校制服」、「女子用学校制服」につきまして、調査項目が「洋服」に統合されています。「洋服」は「第1類」として取り扱います。
 10ページです。「被服及び履物」の続きです。調査項目の統合・分割はありますが、いずれの品目も引き続き「第1類」とする取扱いを変更していません。
 11ページです。「保健医療」になります。「医薬品」は調査項目が分割されていますが、引き続き「第2類」とする取扱いを変更していません。
 「紙おむつ」の調査項目が統合されていますが、引き続き「第1類」とする取扱いを変更していません。
 12ページの「交通・通信」になります。「自動車等維持費」の調査項目が一部分割されていますが、引き続き「対象外」とする取扱いに変更はありません。
 13ページです。上段が「交通・通信」の続きになります。「運送料」については、調査項目が統合されていますが、引き続き「第2類」とする取扱いに変更はありません。
 下段は「教育」になります。「授業料」の調査項目が統合され、「教科書、学習参考教材」の調査項目が分割されていますが、引き続き「対象外」とする取扱いに変更はありません。
 14ページ、「教養娯楽」になります。「教養娯楽用耐久財」、「教養娯楽用品」の調査項目に統合・分割がありますが、引き続き「第2類」とする取扱いに変更はありません。
 15ページです。「教養娯楽」の続きになります。「教養娯楽サービス」の一部の調査項目に統合・分割がありますが、「第1類」、「第2類」の取扱いに変更はありません。
 16ページです。「その他の消費支出」になります。「諸雑費」の調査項目の幾つかが分割されています。基本的に「第1類」、「第2類」の取扱いに変更はありませんが、赤い枠囲みの「ヘアコンディショナー」については、これまで「化粧品」として「第1類」に区分していたところですが、調査項目として分割されたため、「シャンプー」や「歯磨き」と同様に「第2類」として取り扱うように変更しています。
 17ページです。「その他の消費支出」になります。調査項目として、「介護施設費用」が「訪問介護・通所サービス等費用」に統合されていますが、引き続き「対象外」とする取扱いを変更していません。
 19ページです。「検討事項」の枠内です。1点目、生活保護受給世帯の約8割が単身世帯であることからも、単身世帯の生活実態を把握することは重要である。
 2点目、全国消費実態調査については、現在実施されている消費支出に関する調査の中では、サンプル数も多く、構造分析が可能な調査ではあるが、単身世帯のデータは、サンプルの確保などに課題がある、という点が、平成29年の基準部会報告書で指摘されていたところです。
 3点目、2019年全国家計構造調査においては、2014年全国消費実態調査から単身世帯の標本規模が拡大され、統計精度の向上が図られましたが、当該調査のデータを用いるに当たって、そのサンプル数の規模や統計精度をどのように評価するかという点が検討事項としてあります。
 真ん中の表ですが、2014年の「全国消費実態調査」と2019年の「全国家計構造調査」の集計世帯数になります。2人以上世帯では集計世帯数が減っており、単身世帯では集計世帯数が増えています。
 これに関しては、方針(案)を枠内に記載していますが、消費支出に関する集計に当たっては、集計対象となるサンプル数等に留意して検証を行うこととしてはどうかと考えています。
 21ページです。今後の全国家計構造調査のデータの取扱いに関する次の事項について、月次の動向を把握できる家計調査による集計を基に検討を行うこととしてはどうか、と考えています。
 御検討いただく点の一つは、調査の対象月が10月・11月の2か月間であることについて、消費支出の季節性の観点からの評価です。
 もう一点は、2019年10月に消費税率が改定されたことに伴う、いわゆる駆け込み需要の反動による改定後の消費支出への影響の評価です。
 今回、具体的な数字はお示ししておりませんが、今後必要な集計を行ってお示しし、検討を行うこととしてはどうか、と考えています。
 資料2の説明は以上となります。
■小塩部会長 どうもありがとうございました。
 今、御説明がありましたように、今まで私たちの議論のメインになっておりました全国消費実態調査が様変わりいたしまして、全国家計構造調査となります。品目が一部変わりましたので、その扱いをどうするかという問題、あるいは集計世帯数にも変動がございました。これをどう評価するか。消費支出の季節性の問題、消費税引上げによる駆け込み需要の反動です。そういうややテクニカルな問題が出てまいりました。これについて御意見をいただきたいと思います。
 御質問がある方はいらっしゃると思うのですけれども、その質問はまとめて事務局でお答えできるものがあれば、回答していただきたいと思います。
 どなたからいきましょうか。山田委員、お願いいたします。
■山田委員 詳しい御説明をありがとうございました。
 今、課題になっている点について、4点ほどコメントと質問があります。
 1つ目としては、前回、被保護世帯を調査の中から抜くという作業をしてから分析に入ったわけです。それをしないと、循環参照という問題が起きるので。必須品目の入替えがあったのですけれども、今回も被保護世帯を除く、ということができるのか。
 2つ目としては、2人以上世帯のサンプルサイズが小さくなっています。標準世帯から我々は出発するので、それがどれぐらい減っているのかということが気になります。様々な分析でサンプルサイズによる制約が出てくるかもしれません。
 3つ目は、消費税増税による駆け込み需要の反動がどれぐらい大きかったかということで、まず低所得層で大きかったかどうかを確認して、場合によっては、出てきた結果を補正する必要があるかもしれませんというのが3つ目になります。
 4つ目は、2つ目と3つ目に関わってくることですけれども、ひょっとしたら、前回よりも時間がかかるかもしれないので、十分な作業時間を確保していただきたい。これはお願いでございます。それが可能かどうかということになります。
 以上、4点をお願いいたします。
■小塩部会長 ありがとうございます。
 他の委員の方々からコメント、御質問はございますでしょうか。渡辺委員、お願いいたします。
■渡辺専門委員 生活扶助相当で第1類、第2類の項目について詳細に表を出していただいて、大変ありがたく思っています。かなり細かい点なのですけれども、教えていただきたいと思うところが幾つかあります。
 9ページです。学校制服です。事実関係なのですけれども、学校制服については、今まで義務教育課程の子供は一時扶助から出ていて、高校生等については生業扶助から支給されるという理解でよろしいでしょうか。事務局に教えていただけたらと思います。
■小塩部会長 ありがとうございます。
 渡辺委員、他に御質問がありましたら、まとめてお願いします。
■渡辺専門委員 収支項目が統合されて学校制服が取れなくなるので全て第1類に含めるということですが、そうすると学校制服が生活扶助の第1類になってしまうのではないかという懸念がありまして、つまりこれまで一時扶助だったものが生活扶助に切り替わってしまうのかどうか、この辺りをどう整理されるのかということを伺いたいところです。
 この整理について続けてまいりますが、11ページに紙おむつがあるのです。これは第1類になっているのですけれども、制度上も第1類なのか、一時扶助でも支給されるように思っていまして、この辺りはどのように整理されるのかというのが2点目です。
 13ページの教育支出の中に補修教育があって、これは第1類になっているのですけれども、補習教育は学習支援費の対象ではないのかどうかを確認したい、以上3点が生活扶助相当支出品目についての事実関係の確認です。
 既に山田先生が御指摘されていますけれども、単身世帯が増えたのは、全国家計構造調査においてはすごくよかったことではないのかと思うのですが、基準検証に当たっては、3人世帯をモデル世帯として展開していきます。ですので、2人以上世帯が約5万から3万世帯に減ってしまって、5分の3なので、40%減というのは、モデル世帯のサンプルサイズがきちんと取れるようになっているのかというのは、懸念としてあります。
 それから、たしか家計調査の調査対象者も一部、家計構造調査に入れ込んで全てのサンプルをつくっていたように思っています。ただ、家計調査は何か月か連続でパネルになっていたと思うのですけれども、それとこのワンショットでの家計構造調査でサンプル上のゆがみ等々が生じていないのかというのは気になるところでして、この辺りは宇南山先生が御専門だと思いますし、統計委員会等々でも議論されていたところだと思っているのですけれども、この辺りも注意深く見なければいけないと思いました。最後は感想です。
 以上です。
■小塩部会長 ありがとうございました。
 既に多くの御質問をいただいているのですけれども、他はよろしいですか。栃本部会長代理、お願いいたします。
■栃本部会長代理 本当に簡単なことなのですけれども、前に個々の教育費の関係で、前回の議論でもあったのですが、13ページのところの授業料等というのは、もちろん対象外でその理由が書いてあるのだけれども、「授業料等」の「等」の部分があります。「等」の部分というのは、個々の福祉事務所が個別に対応する形で、これは算定のあれではないのだけれども、どうだったのでしょうか。言っている意味は分かりますか。
 それぞれ対象外があります。対象外というのは、例えば介護保険だったら、介護保険で対応するとか、教育扶助などで省いてしまうのだけれども、例えば13ページのところに「授業等」となっていて、「等」となっているものだから、色々な学校に通っていて、授業料以外のもので色々なことが派生するわけで、派生した場合には、もちろん第1類に含めるとか、第2類に含めるのはもともと対象外だという整理で書いてあるもので、それはもちろんいいのだけれども、「等」のところに色々あります。あれというのは、今回の議論とはちょっと違うのですが、個々の福祉事務所で色々な形で対応するという形になっているのでしたか。言っている意味は分かりますか。
 それともう一つは、自動車を保有することは想定されないから、自動車の免許を取るための講習会は必要ないことになっています。これは昔からそうなのだけれども、この期に及んでそれでいいのかという非常に素朴なことで申し訳ありません。
■小塩部会長 ありがとうございます。
 他はよろしいですか。宇南山委員に対する御質問もありましたけれども、よろしくお願いいたします。
■宇南山委員 宇南山です。ありがとうございます。
 御質問があったところで、私、今、家計構造調査の報告に関する総務省の研究会に出ていまして、その中で家計調査のサンプルが入ったことの影響についての検証はされていて、非常に大ざっぱに言うと、大きな影響はない。属性に大きな差はないとされています。もちろん平均として若干の差が出ているのですが、それが本当に偏りなのか、標本上のぶれなのかというのは、家計調査から取ってきたサンプルがそんなに大きくないので、厳密な検証は難しいですという取扱いになっています。最低限言えることは、属性、収入、資産などについて標本間で大きい差が見つかっているわけではないということです。
 追加で1点、私からで、駆け込み需要については、何らかの対応が必要なのかどうかという議論があると思います。もしそれに対応しようとすると、恐らく前後の年などと平均するという話が出てくると思うのですが、そうなると、今度はコロナが出てきて、コロナについてはどういうふうに考えるのか。駆け込み需要を考えないのであれば、コロナはもしかしたらタッチせずに、2019年でいきますという方向もあり得ると思うのですけれども、仮に何らかの対応をしようとすると、コロナは避けて通れないと思います。そこについての方針も検討が必要だと思いました。
 以上です。
■小塩部会長 御質問にお答えいただき、ありがとうございました。
 他によろしいですか。
 先生方から幾つか御質問をいただいておりますので、現時点で事務局で回答していただけるものがありましたら、解説をお願いいたします。
■森口社会・援護局保護課長補佐 事務局です。
 幾つか御質問をいただきました。順に回答させていただきます。漏れがあったら、都度言っていただければと思います。
 山田先生からの御質問でございますけれども、1点目、生活扶助基準の検証に当たっては、生活保護を受給していると見込まれる世帯を除外していると思いますが、この判定に用いる品目がちゃんと項目にあるか、ということだと思います。
 こちらにつきましては、前回、平成29年の検証の報告書によりますと、支出項目として参照しているのが、NHK放送受信料、医科診療代、歯科診療代、個人住民税、土地家屋借金返済、そして、収入項目として参照しているのが、他の社会保障給付になります。本日の参考資料2-3などでも御確認いただけると思いますが、いずれも集計項目となっているところでございます。
 この他に、住宅ローンの有無についても判定に用いていると承知しております。これも今回の調査項目となっていると承知しておりますので、一通りあるかと存じております。
 山田先生からの御質問の2点目、それから、渡辺先生も同じ質問をされていますけれども、データのサンプル数について、モデル世帯として用いる夫婦子1人の3人世帯のサンプルがどうかというところだと思いますが、夫婦子1人という類型にまで絞ってしまうと、こちらはどうしても特別集計しないと具体的な数字が分からないので、具体的な数字は分からないのですけれども、総務省から公表されているベースの数字で申し上げますと、3人世帯で勤労世帯というところになりますと、やはり2人以上世帯と同様に、集計世帯数は減少しているところとなってございます。いずれにしても、本日の資料にも記載させていただいておりますように、サンプル数等には留意して検証に用いていくものではないかと考えているところでございます。
 消費税率の改定に伴う影響のことですが、夫婦子1人なり、低所得者世帯なりで動向を見てみて、ということについては、当然やらせていただこうと思いますけれども、御質問というか、御意見ということだと思っております。
 それから、十分な作業時間を確保ということで、まだ各統計データのデータセットができていない状況でございますので、もちろん努力はさせていただきたいと思っているところでございますが、進め方については、検討させてくださいという形です。
■岡本社会・援護局保護基準検証専門官 それでは、渡辺委員から御質問のあった学校制服の件ですけれども、こちらは生活扶助相当支出項目、今回見直されて統合されたので、こちらを除外して集計するのは難しいということで、今回こういった形で示させていただいたのですが、実際に一時扶助で出ている制服などを本体に入れ込むという話まで念頭に置いて入れているかというと、そういうことではなくて、今回は生活扶助相当の支出項目として切り分けられないので、こういう形で分類してはどうかという御提案にとどまるものでございます。
 もう一つ、紙おむつの御説明があったかと思うのですけれども、紙おむつについては一時扶助で確かに支給をしておるのですが、紙おむつの大人と子供の支給対象は、支出項目の範囲に比べて狭い形で出しています。具体的に言うと、大人の場合、常時失禁状態にある者であったり、例えば子供であったら新生児ということで、非常に限られた範囲での支給になりますので、こちらを支給しているからといって除いてしまうことにはなりませんので、対象に入れております。
 あと、補習教育になるのですけれども、補習教育というのは学習塾へ通うための経費ということで、例えば家庭内での参考書などは入っておりません。以前から学習支援費、参考書などは教育扶助で出しているのですけれども、そちらとは違って、あくまで学習塾へ通うための経費で、これは従来から第1類費相当で計上させていただいております。
 渡辺委員の御質問は以上です。
 あと、栃本先生の御質問ですけれども、授業料等なのですが、支出項目の中に、例えば学級費とか、テキスト代も入っているのですけれども、こちらは教育扶助の実費のほうで対応している経費になります。
■栃本部会長代理 あと、旅行とか、そういうものもそうですね。
■岡本社会・援護局保護基準検証専門官 修学旅行みたいなものですか。
■栃本部会長代理 そうです。
■岡本社会・援護局保護基準検証専門官 それは他法で出ています。
■栃本部会長代理 その確認でした。すみません。
 あとは、自動車免許のことです。従来からそうなのだろうけれども、技能を身につけるとか、子供がするとか、そういうものはどうなのですか。生活保護世帯は自動車を保有しないというのが基本的には原則だと仮にしても、それと技能を習得することとは別だと思うんですが。これは大切だと思います。
■岡本社会・援護局保護基準検証専門官 自動車は現行の運用が通勤であったり、通院ということの中で、様々な限定した条件がかかっているのと、まず第一に自動車の維持費などを、言ってみれば、収入とか、そういったもので賄えるという前提で条件がついていますので、その上で、従来から生活扶助相当から除外されています。例えば働いている方であれば、収入認定の控除の額で維持費などが賄われています。
■栃本部会長代理 自動車免許を取ることはどうなのですか。
■池上社会・援護局保護課長 就職が決まって内定が取れて、職場で免許が必要ということになる場合には、生業扶助でそこのところはカバーさせていただいています。
■栃本部会長代理 分かりました。ありがとうございました。
■森口社会・援護局保護課長補佐 一点、渡辺先生からの御質問ですが、もう必要ないかもしれないのですけれども、家計調査のサンプルが入ったということで、宇南山先生から御回答いただきましたとおり、基本的にその影響はかなり限定的で、大きくはないだろうということで、総務省でまとめられていると承知しております。
 一方で、集計にするに当たって、その影響を見るために、それだけを除いた集計などにより、影響の程度を、我々の対象の範囲の中で比較することは、恐らく可能だと思いますので、一点、補足として申し上げさせていただきます。
■小塩部会長 よろしいでしょうか。渡辺委員、お願いします。
■渡辺専門委員 生活扶助相当品目について御整理をお示しいただいて、ありがとうございます。
 念のための確認ですが、学校制服については、現行でも一時扶助から必要に応じて支給されている。今回、全消の収支項目が変わって、被服費の一部に計上されてしまったが、当該費用を生活扶助相当費から除くということはしないものの、今後も引き続き一時扶助の対象になるという理解でよろしいですか。
■岡本社会・援護局保護基準検証専門官 そう考えております。
■渡辺専門委員 ありがとうございます。
■小塩部会長 ありがとうございます。
 具体的に数字を見てから、また色々な問題が出てくるかもしれませんが、その都度、検討させていただきたいと思っております。
 今日御用意させていただいた議題は以上ですけれども、事務局から追加の御連絡等々はございますでしょうか。
■大熊社会・援護局保護課長補佐 山田委員より、前回の議題に関して幾つか御質問があると事前に伺っておりますので、山田委員、よろしくお願いいたします。
■小塩部会長 山田委員、お願いいたします。
■山田委員 ありがとうございます。
 前回の部会で一部音声が悪くて、きちんと理解できていない御発言について、お尋ねしたくて。前回の部会で森口補佐の御発言で、審議されなかった委託事業の報告書内容でも最大限考慮するという趣旨の御発言があったと記憶しています。ただ、議事録を読んで気になりましたのは、審議されなかった報告書内容でも、政策決定に重要な根拠として使用されるのであれば、やはりそこは生活保護基準部会できちんと議論されるよう、明示的に俎上に上げていただければと思います。
 極端な例になるかもしれませんけれども、1,000ページもの委託事業の報告書がもし存在したとして、議論されなかった部分、あるいは部会に示されなかった箇所があったとして、それを全て政策決定の根拠として用いていいということを、生活保護基準部会メンバーが承認したことにはならないと思います。そうでないと、生活保護基準部会自体も形骸化してしまうということを憂慮しておりまして、この点について、私の誤解もあるかもしれませんので、事務局の御発言の趣旨を確認させていただければと思います。
 閉会時間が迫る中、大変申し訳ありません。
■小塩部会長 ありがとうございます。
 それでは、事務局、御回答をお願いいたします。
■森口社会・援護局保護課長補佐 前回の第40回の生活保護基準部会の議事録を見返しての御質問であると理解しております。
 御指摘のあった私からの発言につきましては、山田委員から資料中の文言の「分析内容と矛盾のないように」という部分を、事務局がどういう趣旨で理解しているのか、ということを問う質問がありましたことから、その回答として発言した内容の一部になるかと思います。
 まず、級地の在り方については、生活保護基準部会での統計的な分析結果の他、地域に居住する生活保護受給者等への影響や制度的な経緯等も踏まえまして、保護の実施責任を持つ自治体等と調整しつつ、厚生労働省において検討するものとなってまいります。
 その際に、前回、事務局からも申し上げましたとおり、基本的には生活保護基準部会の審議結果を踏まえて検討することになりますけれども、審議の結論が得られなかった、そうした部分については、結論が得られなかったから無視します、ということではなくて、生活保護基準部会で示された分析内容と矛盾のないように配慮いたしますという趣旨で書かせていただいているものとなってございますので、そのため、御質問の意図される懸念には当たらないと考えております。
 1,000ページという例が出ましたけれども、生活保護基準部会でお諮りした資料につきましては、メインの部分で、スライド20枚ぐらいということで、その辺りについては、皆様、お目通しいただいていると承知しているところでございます。
 生活扶助基準につきましては、一般低所得者世帯の消費の実態との均衡が図られているか否かを見極めるために、消費実態に係る統計調査のデータ、こうしたものを用いて専門的かつ客観的に検証されることが必要となってきます。このため、生活保護基準部会では、それを審議事項として、生活保護基準の定期的な評価・検証を行うべく、専門の部会として設置されていると承知しているところでございまして、事務局としても、この審議に必要となるような資料はちゃんと提出して、御審議いただきたいと考えているところでございます。その上で、生活保護の基準については、生活保護法に基づき厚生労働大臣が定めることとされておりますので、御審議いただいた結果を踏まえて、基準を定めていくという形で考えているところでございます。
■小塩部会長 ありがとうございます。
 山田委員、よろしいですか。
■山田委員 ありがとうございます。
 繰り返しになりますけれども、審議の俎上にのらなかったような委託事業の中、どこか隅にあるような色々な数値は使われないという、そういう理解でよろしいですか。貴重な時間を賜り、御確認ありがとうございます。
 あと、先ほど森口補佐から新たな御発言がありましたけれども、審議結果ではなくて、審議内容も含めてだと理解しておりますので、そちらも含めて考慮していただくということだったと思いますので、念のため、それも確認をお願いいたします。
 閉会時間間際に大変申し訳ありませんでした。
■小塩部会長 よろしいですか。
■森口社会・援護局保護課長補佐 御認識のとおりでよろしいかと思います。
■小塩部会長 ありがとうございました。
 これから検証に向けて作業が本格化いたしますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 以上で今日の議題は終了させていただきます。
 次回の開催スケジュールは調整中と伺っておりますので、追って事務局より御連絡いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議題は以上とさせていただきます。御多忙中、ありがとうございました。