309回労働政策審議会人材開発分科会 議事録

人材開発総務担当参事官室

日時

令和3年11月24日(水)14:00~16:00

場所

WEB会議

議題

  1. (1) 今後の人材開発政策について(「リカレントガイドライン(仮称)」の策定等)

     

議事

議事内容

○武石会長 それでは定刻となりましたので、ただいまから第30回労働政策審議会人材開発分科会を開催いたします。本分科会が新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、労働政策審議会運営規程第3条第1項に基づき、オンライン会議の開催といたします。本日の出欠状況ですが、労働者代表の小倉委員、篠原委員、使用者代表の美野川委員が御欠席です。
 それでは議事に入ります。議題1、今後の人材開発政策について(「リカレントガイドライン(仮称)」の策定等)です。本日は、前回に引き続き御議論いただきますが、事務局から4点の資料が提出されております。そのうち、資料1、前回の分科会の議題2に対する御意見と、資料2、学び直しに関する企業へのヒアリング概要は、議題全体に関する資料であり、資料3、訓練協議会についてと、資料4、キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタントの現状は、個別施策に関する資料になります。このため、本日は資料1及び資料2という塊と、資料3及び資料4という塊で分けて、資料説明と質疑を行うという形で進めたいと考えておりますが、それでよろしいでしょうか。それでは、御異議がないようですので、まず、資料1及び資料2について、政策企画室長より御説明をお願いいたします。
○黒田室長 厚生労働省人材開発統括官付政策企画室長の黒田です。聞こえていますでしょうか。それでは早速、今日は議題1のみです。資料1の説明に入ります。資料1、前回の分科会の議題2に対する御意見を御覧ください。前回分科会において、この資料の最終ページに添付しております前回分科会資料3に掲げました、1~3までの検討の視点(例)の全体について御議論をいただきました。委員の皆様から頂いた御意見を、項目ごとに整理したのが資料1です。
 1ページ目にお戻りください。まず、上ですが、1.リカレントガイドライン(仮称)等に関する総論的な御意見です。その中でも、上から4つ目の○までがより総論的な御意見です。上から申し上げますと、ガイドラインの策定の目的や、どのように活かされるのか明確にして欲しいですとか、企業現場の教育訓練や労働者の主体的な学びの促進に役立つものにして欲しい、関係者が持つイメージなどをすり合わせた上で議論をしていくことが必要、企業内でのリスキリングは非常に重要という御意見がありました。こうした御意見を頂きましたので、このページの最下段に「(事務局注)」としまして、年度末を目途に検討するリカレントガイドライン(仮称)のイメージを記載しております。「労働者の主体的かつ継続的な学び・学び直しの促進に向けた、基本的考え方、労使が取り組む事項、国の支援策等を体系的に示したもの」という形で考えております。
 続いて、上の5つ目の○以降に戻ります。5つ目の○、労働者の主体的な学びは重要だが、人材育成については、基本的に企業の責任において実施されることが重要、労働者の教育訓練機会を保障するための環境整備が重要という視点を、ガイドラインに盛り込む必要があるという御意見がありました。次に、自律的かつ主体的なキャリア形成に向けて、働き手の意識改革が求められる。そういう働き手を企業や政府がどう支援していくのか考えていくのが基本、ですとか、会社と政府だけではなく、労働者一人ひとりが、それぞれの年代で、自分のキャリアを常に考える姿勢を持つことが大切」といった御意見を頂きました。このほか、ジョブ・カードは、自分のスキルがどういうものかを明確にすることができるので非常に良い、ですとか、ジョブ型雇用という言葉の使い方は考えていく必要があり、不安定雇用につながらないようにすべき。特に、日本人は組織の中でいかされる安定雇用の中でこそ生産性が上がるというところもあるという御意見、雇用の流動化を進めることありきの議論にならないことが必要などの御意見を頂きました。
 次に、2ページ目を御覧ください。2.「求められる人材要件やスキルの明確化・共有」に関する御意見です。前回の資料3、1の①について、同じく前回資料3、3の(1)企業内における人材開発の場面と、3の(2)労働市場全体における人材開発の場面に分けまして、委員の皆様方から頂いた御意見を整理いたしました。まず、上の企業内の方ですけれども、上から、スキルを明確化してそこに導いていかなくてはいけない人がいる一方で、企業としてどんなスキルが必要かも分からないという部分もあるという御意見と、次は、要件やスキルについて、各業界、企業の状況を踏まえて、多角的な検討が必要、さらに、人材開発分野でも、多様性を活かして、軸がしっかりある教育をすることが大事などの御意見を頂きました。
 次に、下の労働市場全体の方を御覧ください。一番下ですが、中央、地方の訓練協議会での議論を通じ、産業界のニーズを公共職業訓練の内容に反映していく視点が大事という御意見を頂きました。この御意見がありましたので、本日は資料3を準備しております。後ほど御説明します。
 続きまして、3ページ目を御覧ください。3.「効果的な教育訓練プログラムの開発・提供」に関する御意見です。これも前回資料3、1の②について、企業内と労働市場全体と分けて意見を整理いたしました。まず、上の企業内の方ですが、企業の人材育成、労働者の学び直しに関するニーズを踏まえたものが必要、今後の産業の変化を想定しつつ、長期的、安定的な雇用につながるプログラムをそろえていくことが重要、労使がしっかりと連携して、教育訓練給付制度の活用・促進していく視点や、各企業の教育訓練を後押しする施策を強化することが重要、などの御意見や、各企業が教育原資をどのように確保するのかという視点を踏まえることが必要、社内でIT人材を育てたいが、担い手がいないといった御意見を頂きました。
 次に、下の労働市場全体の方ですが、公的職業訓練において、デジタル関連のプログラムを拡充していく視点が大事ですとか、専門実践教育訓練給付の第四次産業革命スキル習得講座の対象講座数を増やしていくべきという御意見を頂きました。その下ですけれども、雇用の安定や生産性、賃金の上昇につながる訓練であるという視点は必要、学校段階からの働くことの意識の啓発などが重要、一番下ですが、他省庁との連携も非常に重要などの御意見を頂きました。
 最後、4ページ目です。4.「労働者が目標を持ち効果的な学びを進めるための伴走支援」に関する御意見です。キャリアコンサルティング関係と、それ以外という形で御意見を整理いたしました。前回資料3、1の③関係というところです。上の2つの○が総論的な御意見です。1つ目の○は、キャリアコンサルティングが企業内や労働市場全体の中で、現状どのような効果や役割を果たしてきたのか、客観的な評価を総括した上で議論をする必要がある、その次として、キャリアコンサルティングがこれまで果たしてきた役割をまとめて、その上で、今後どのような役割が求められていくのかを整理していくことが大事、との御意見を頂きました。これを受けまして、本日は資料4を準備しております。そのほか、キャリアコンサルティングの重要性が高まっていくのではないかや、就労や働き方、仕事に対する意識の変化に合わせた対応が必要ではないか、企業内でキャリアコンサルティングがうまくいっている事例はないのではないか、キャリアコンサルティングが、いつ、どのようなタイミングで何を相談しているのかなどの御意見や御質問、あとは伴走支援という言葉がいいのかどうかという御意見を頂きました。それと、下に2つ、ハローワークに関する御意見も頂きました。資料1の説明は以上です。
 説明を続けます。資料2、学び直しに関する企業へのヒアリング概要について御説明いたします。1ページ目ですが、今回、6社をヒアリングしておりまして、大企業が4社、中小企業は2社ということで、A、C、E、F社が大企業、B、D社が中小企業ということで、学び直しに関する取組状況などについてヒアリングを行いました。業種も、小売業、建設業、保険業、教育・学習支援業、電気機器業、電気機器業は製造業ですけれども、あとは通信業と様々です。
 2ページ目、企業における取組事例(ヒアリング結果)概要です。(1)求められる人材要件やスキルの明確化・共有については、一番上ですが、6社とも全社、経営層が関与して人材育成の方針を明確化しておりました。その上で、事業部門ごとに具体的な方向性を検討している企業ですとか、各部門から人を集めて、社内横断的な委員会を作って、そこで具体的な方向性ですとか、スキルの明確化を検討する企業がありました。この(1)の一番下ですが、ポストごとですとか、部門ごとなど、その粒度はまちまちでしたが、何らかの形で、その職務に求められる能力や知識・スキルを職務記述書などの形によって公開して、社内に周知している企業というものもありました。(2)は、教育訓練プログラムの開発・提供についてです。具体的なプログラムの内容を各部門で検討しているという会社ですとか、一方で、先ほどの社内横断的な委員会で各部門が使用する教育訓練プログラムを策定するといった例がありました。全社に共通していたのは、3つ目のポツですが、各部門やポストで働くために必要な能力等を身につけるための教育訓練プログラムを、会社側が社員に提供しているということでした。また、下から2つ目のポツですが、部下を持つ人の人材養成力を強化するためのプログラムというものを提供しているという会社が3社ほどありました。
 3ページ目です。(3)労働者が目標を持ち効果的な学びを進めるための支援については、上から3つがキャリアコンサルティング、キャリアコンサルタントに関係する内容です。一番上ですが、セルフ・キャリアドックを実施している企業が5社ありまして、そのうち1社、中小企業の教育サービス業D社は、希望する社員全員がキャリアコンサルティングを受けられる仕組みを構築しているとのことでした。また、大手のE社は、20代からキャリアコンサルティングを推奨して、40代以降は5年に1回の相談を必須としていると、そういった会社もありました。4つ目のポツからは、また別の話になります。社員と上司とで行う1on1ミーティングを通じて、目指すポストに必要なスキル・能力と、自身のスキル・能力との間のギャップをキャリア計画書の作成等により把握して、社員に応じた訓練を実施するというサイクルで支援しているという会社が3社ほどありました。そのほか、自己啓発への支援として、金銭的支援等を行っている会社ですとか、学び直しをする際に、休暇を取得することができる仕組みがある会社もありました。
 最後、(4)その他についてです。社内公募制のようなものを行っている会社が複数ある中で、一番上ですけれども、配置を希望する部門に関係する教育訓練プログラムを修了した場合に、将来的にその分野へ配置を認める制度があるという会社がありました。また、下から3つ目のポツですが、スキルアップした場合に、手当を支給することで処遇に反映するという会社もありました。一番下ですが、全ての会社が何らかの形で企業の方針を社内に浸透させるための取組を実施していたというヒアリング結果です。資料2の説明は以上です。よろしくお願いいたします。
○武石会長 ありがとうございました。資料1と2を御説明いただきました。それでは、ただいまの御説明に対する御質問、御意見がありましたら、Zoom機能のリアクションから「手を挙げる」マークを押していただいて、指名された方がマイクをオンにして御発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。岡野委員、お願いいたします。
○岡野委員 御説明ありがとうございました。私からは資料1で御説明いただいた前回の分科会の議題2に対する意見について、2点発言させていただきます。資料1ページ目のリカレントガイドラインのイメージの中で、最下段の仮称の事務局注の箇所において、労働者の主体的かつ継続的な学び・学び直しの促進とありますが、基本的には、企業内の人材育成は企業の責任で実施されるものであり、企業が人材育成のビジョンや方針の明確化、そのための休暇制度などの環境整備が必要と考えており、労働者任せとならないよう、改めて留意いただきたいと思います。また、リカレントガイドライン策定において、「関係者間の連携」と記載いただいておりますが、そちらは労使だけではなく、他省庁などとの横断的な連携が重要であるということについても、改めて発言させていただきます。以上です。
○武石会長 御意見ということで承っておきたいと思います。ほかにいかがでしょうか。平田委員、お願いいたします。
○平田委員 資料1の事務局注の1行目の最後に「労使が取り組む事項」という表現がありますが、あくまでもガイドラインですので、「組むことが望ましい」という表現がふさわしいのではないかと思っていますので、御検討をお願いします。
 それから質問ですが、このガイドラインは国の支援策等を体系的に示したものとありますが、その射程はどこまであるのでしょうか。厚労省の枠の中なのか、それとも、もっと全体を見た上でということなのか、もし、今の時点でイメージがあれば、教えていただければと思います。以上でございます。
○武石会長 1点目は御意見ですが、もし、事務局の方でお考えがあればお答えいただきたいのと、あとは御質問でしたので事務局からお願いいたします。
○黒田室長 事務局です。平田委員、ありがとうございます。まず、1点目の御意見として受け止めつつ、年度末を目途に検討するガイドライン、これは労働者の主体的かつ継続的な学び・学び直しを促進するためのものということで書かせていただいておりますので、何らかの規制をかけるようなものではないと考えております。ここは皆様方に入念的に申し上げますが、他方で、今後また、引き続き年度末に向けて先生方に御議論いただきますけれども、労使双方のその前向きかつ積極的な取組が重要になってくるのも事実でございますので、それが促進されるよう、引き続き本分科会において御議論いただければと思ってございます。
 2点目は、国の支援策の射程ということですが、当然、少なくとも厚労省の支援策は入ってきますけれども、前回の分科会でも他省庁との連携も重要という御指摘も受けておりますので、今後、年度末を目途に検討していく中で、他省庁の施策の掲載も含めて、また御議論いただければと考えてございます。事務局から以上でございます。
○武石会長 平田委員、よろしいでしょうか。
○平田委員 よく分かりました。ありがとうございます。
○武石会長 ほかにいかがでしょうか。増田委員、お願いいたします。
○増田委員 埼玉県の川口商工会議所から出向しております増田と申します。私は中小企業の経営をしておりますので、中小企業の経営者という立場から御質問があります。資料2の学び直しに関する企業へのヒアリングについての御説明を頂きました。ありがとうございました。中小企業は御存じのとおり、深刻的な人手不足でございまして、最も重要な経営資源が人材であるという認識をしております。中小企業では、自社の人材の成長が会社全体の成長に直結いたしますので、人材育成や学び直しに対する支援は、非常に重要なことであると認識しております。
 一方で、今回、御説明いただきました資料2の学び直しに関する企業へのヒアリングにつきましては、冒頭に御説明がありましたとおり、中小企業が2社にとどまっておりまして、かなり大企業の御意見が多いように感じました。リカレントガイドラインの策定に向けましては、今後の議論に際して、中小企業への更なるヒアリングの実施をお願いしたく、また、アンケートなどにより定量的なデータを幅広く収集していただく必要性があるのではないかと感じた次第でございます。また、ヒアリングやアンケートの実施に当たりましては、中小企業が実施している教育訓練の具体的な内容や、欠けている費用も把握することが重要でありますし、教育訓練に際しましては、課題や求められる支援の内容も深掘りしていただく必要があるのではないかと感じた次第でございます。以上でございます。
○武石会長 ガイドラインについては、タイトな日程の中でやっていて、新たにいろいろな調査をというのは難しいかもしれないのですが、既存のデータや調査なども踏まえて、事務局の方から今の御意見についてはいかがでしょうか。
○黒田室長 事務局です。増田委員、御意見ありがとうございます。今回、6社にヒアリングしたうちの中小企業は2社にとどまったということで、御心配を掛けてしまって、すみません。特に、中小企業を軽視したというわけではなくて、人材育成を取り組む企業の中で中小企業にもヒアリングをした結果ですけれども、結果的に4対2の形になってしまいましたが、事務局として中小企業をないがしろにしようとか、そういうことは一切考えてございませんので、中小企業が何を必要と考えているのか、その御意見などもどういった形でこれからも吸い上げていくかということは、いろいろ考えていきますけれども、中小企業にも役立つような形のガイドラインということは、前回も御指摘を受けていますので、引き続き、そういった形で中小企業のことも考えながら役立つものをと考えてございます。お答えになっていますでしょうか。
○増田委員 はい、商工会議所というのは、そういうのにはいい団体になっておりますので、是非御利用ください。
○黒田室長 引き続き御指導いただければと思います。どうもありがとうございます。
○増田委員 ありがとうございました。
○武石会長 では、橋本委員、お願いいたします。
○橋本委員 学習院大学の橋本です。よろしくお願いいたします。リカレントガイドラインをこれから議論していくに当たりまして、労使の取組なども大事だということが前回から議論になっておりますけれども、そこでいわれている労使の取組というのが、個々の労働者の自覚というか、自分のスキルアップに対する自覚を促すということで、個別の労働者という意味でもっぱら理解されているのかなと理解しています。労働者の関与といったときに、一般的に、労働政策では労働組合や過半数代表の意義というのが非常に重視されていると思います。というのも、ドイツでは在職中の労働者に対する職業訓練助成というのが最近強化されているのですが、その助成の前提として、事業所協定の締結が要件になっています。ドイツの事業所協定に相当するのは、日本では労使協定になりますが、いずれにしても、集団的な関与を組み込むことで、より労働者も主体的に関われるのではないかと思いますので、労働者代表の役割についても確認する必要があるのではないかと思います。先ほどご紹介のありました、従業員のスキルアップに取り組む良い企業の事例の中でも、経営側が率先して必要なスキルを明確化し、プログラムを策定しているとありましたけれども、そこで労働組合はどのくらい関与していたのかということにも関心がございます。この委員会にも労働者側、経営側のそれぞれの実務の一線に携われている方もいらっしゃるので、それぞれの御意見も聞きながら労働者代表の役割というものも議論していければと思っております。以上です。
○武石会長 労使の労というのが労働者一人ひとりの場合と、集団の場合と、このガイドラインは両方が重要なのかなと思うのですが、ヒアリングのこともありましたので、橋本委員の御意見で、ヒアリングでフォローできている部分があればお願いできますでしょうか。
○黒田室長 事務局です。橋本先生、ありがとうございます。ヒアリングの方ですが、具体的に労働者代表の役割について突っ込んで質問したわけではないのですけれども、ヒアリングの中でいろいろ出てきた話としては、例えば職務に必要な能力やスキルを明確化するときや、教育訓練プログラムを各部門ごとに開発するときなど、様々な場面でその労働組合とそこを話し合った上でやっていますという企業が複数ありましたので、そういう意味では、当然、今、座長がおっしゃったように、その個別の労働者だけではなくて、その労働者代表たる組合の役割も非常に重要な役割を果たしているというのが、この企業ヒアリングでは何件というわけではないですけれども、どの企業もやはりそういうような形で組合の役割は大きいという形だと思っています。そのようなお話も幾つかの企業からは伺いましたので、個別にそのような質問を設けたわけではないのですけれども、話の流れではそのような話が複数社出てきていましたので、橋本委員の御指摘のとおりだと思います。組合としての役割も非常に重要だということで考えてございます。以上です。
○武石会長 ほかに御意見、御質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。この後、資料3、4に入りますが、また戻っていただいて御意見を頂いても大丈夫です。それでは続きまして、資料3及び資料4に移りたいと思います。資料3については企画訓練室長から、資料4についてはキャリア形成支援室長から、それぞれ説明をお願いいたします。
○平川室長 訓練企画室長の平川でございます。私から資料3について御説明します。職業訓練については、産業界や地域の人材ニーズを的確に踏まえたものとすることが重要と御意見も頂いているところですが、現行、そのための仕組みといたしまして訓練協議会を開催しております。中央訓練協議会と地域訓練協議会がありますが、中央訓練協議会は厚生労働省が、地域訓練協議会は都道府県労働局が事務局となって開催をしています。それぞれの協議会には有識者、労使、訓練実施機関、自治体、関係省庁等の関係者の皆様に構成員として御参加を頂いております。
 この協議会では、構成員の皆様方から産業界や地域の人材ニーズをお伺いをした上で、どの分野の訓練コースを、どの程度の定員数で実施するかを定めました職業訓練実施計画、中央訓練協議会ですと全国の計画、地域訓練協議会ですと都道府県レベルの計画をそれぞれ作成しております。
 人材ニーズを踏まえた訓練コースの設定については、現行、このようなスキームで取り組んでおりますが、デジタル化やDXが急速に進展する中で、デジタル分野等の成長分野への円滑な労働移動、あらゆる産業分野において求められるスキルの修得を更に促進するために、人材ニーズや訓練の実施状況について更に詳細に把握し、訓練コース設定や訓練カリキュラムの改善、受講あっせんや就職支援の強化を図っていくことが求められております。このために、現行の訓練協議会、特に地域訓練協議会について、体制の拡充と機能の強化を図ることとしてはどうかと考えております。
 具体的には次の2ページを御覧ください。左側が職業訓練のコース設定及び効果的な実施にあたっての主な課題、右側が訓練協議会の強化にあたっての視点(例)です。課題の①は訓練コースの設定です。地域訓練協議会では、これまで地域の人材ニーズを踏まえた訓練コースの設定に取り組んでまいりましたが、ニーズの詳細な把握、それを踏まえたコース設定を更に推進すべきではないかということが課題です。
 その課題の解決のための訓練協議会の強化にあたっての視点が、右側で4つ○で書いてあります。一番上ですが、地域の企業の人材ニーズを詳細に把握するとともに、現在、訓練コースの設定が、訓練実施主体別、分野別で見てどうなっているのかの「見える化」が必要ではないか、ということが1つ目の視点です。2つ目は、公的職業訓練の実施機関以外の機関、地域で資格取得や技能修得のための学習支援サービスを提供している民間の機関がありますが、そういった方々が実施している人材育成サービスの状況についても把握をして、地域の人材育成の総合的なコース設定を推進すべきではないかという視点です。3つ目、ハローワークを利用する求人者や求職者の方々のニーズについては、労働局でも一定程度は把握をしておりますが、民間の職業仲介機関、あるいは募集情報等提供事業者の方々も参加いただく協議会とすることにより、あまりハローワークを利用されない方々のニーズも把握できるのではないかと考えております。例えば、求人サイトを運営している募集情報等提供事業者には、非正規雇用労働者の方なども多く登録されていると考えられますので、そういった事業者の方々から求職者ニーズの情報を頂くことにより、より幅広い求職者のニーズを踏まえたコース設定を促進すべきというのが3番目の視点です。それから、在職者や育児中の方など、平日・日中の訓練を受講しにくい方々が受講しやすい訓練コースの設定を促進すべきというのが4つ目の視点です。
 課題の②です。訓練協議会では、今申し上げましたように、ニーズを踏まえた訓練コース設定については一定程度取り組んできておりますが、実際に実施されている訓練コースについて、ニーズに即したものになっているのか、あるいは訓練効果・就職効果が上がっているのかの検証や、検証を踏まえた見直しなどは、これまであまり行われてきておりませんでした。強化にあたっての視点ですが、訓練修了者や訓練修了者を採用した企業からの直接のヒアリング・アンケート調査などの実施によって、訓練の内容がニーズに即しているか、訓練効果や就職効果が上がっているかについて、個別の事例も含めて、把握・検証をしてカリキュラムの見直しにつなげるべきではないかという視点です。
 課題の③受講者へのキャリアコンサルティングです。訓練実施機関は、委託訓練や求職者支援訓練をやっていただいている民間の実施機関も含め、訓練期間中に訓練効果の向上や就職支援のためのキャリアコンサルティングを行うこととなっています。これについては、これまでは、それぞれの実施機関で具体的にどのようなキャリアコンサルティングが行われているか、実体の把握が不十分であったところもありますので、個別の事例も含めまして、こちらもヒアリング等によって把握をして、好事例について共有することとしてはどうかという視点です。
 最後、課題の④求職者への訓練受講あっせん・就職支援として、特に受講あっせんについては、単に求職者の方が希望する訓練コースを紹介するだけではなく、成長分野への就職促進や求職者の方の将来的なキャリア形成を見据えたきめ細かな受講あっせんの促進が必要です。強化にあたっての視点ですが、まず上の○、訓練受講あっせん・就職支援について、実施状況を把握して好事例について共有することとしてはどうかということです。その下の○、適切な受講あっせんの促進に当たっては、民間の職業仲介機関との連携も重要だと考えております。①の課題の所の、上から3つ目の○でも御説明しましたが、民間の職業仲介機関、職業紹介事業者ですとか募集情報等提供事業者ですが、そういった機関にも御参加いただく協議会としたいと考えております。例えば、こういった機関に地域で実施している教育訓練の情報を提供して、登録者の中で職業訓練を受講するのが望ましい方について、受講を促進するよう協力をお願いしてはどうかという視点です。以上、資料3の御説明でした。よろしくお願いいたします。
○國分室長 キャリア形成支援室の國分と申します。私からは、続きまして資料4について御説明いたします。前半の資料1のところでも説明がありましたが、前回の分科会でキャリアコンサルタントの役割、効果、専門性、相談のタイミング・内容など御指摘を頂きました。今回、それらの点を含めまして、現状について整理したものがこちらの資料4です。
 1ページ、概要をまとめた資料です。まずキャリアコンサルティングについては、能開法第2条に規定をされておりますが、一般的には本人の希望、能力、課題の明確化、いわゆるキャリアの振り返りや棚卸しといわれる部分と、長期的なキャリアプランや当面の目標を設定する、能力開発、就職活動など具体的な行動に移す、それから新たな職業やキャリアアップにつなげるという一連のサイクルを、節目ごと、あるいは職務ごとに繰り返して長い目で見てキャリア形成を図っていく、そういう相談になります。キャリアコンサルタントについては、このキャリアコンサルティングを行う専門家としまして、平成28年4月から能開法において名称独占の国家資格として法制化されています。5年ごとの更新制、それから守秘義務等を課すことによって、安心して相談できる体制を整備しております。キャリアコンサルタントの活動内容については、下の右側、ハローワーク等官民の需給調整機関や教育機関における就職活動等の支援、それから左側の、企業におけるリテンション(定着支援機能)、あるいはエンゲージメント(働きがい促進)昨日の大きく2つの役割があろうかと思っています。もともとは欧米の理論ですとか資格を基に日本に導入されまして、右側の、外部労働市場での対応が主でありましたが、日本型の雇用システムを背景として、内部労働市場での対応が日本独自に発展してきたものと理解をしています。今後、こちらの内部労働市場、企業への対応として、更に力を入れていく必要があると思っております。
 2、3ページは専門性の部分です。まず2ページ、「キャリアコンサルタントになるには」として、右側のスキーム図の下にありますとおり、入口の受験要件としては大きく2つあります。1つが、厚生労働大臣が認定する150時間の講習を修了した者、2つ目が、企業や需給調整機関での職業に関する実際の相談が3年以上の実務経験がある者、この2つです。試験に合格していただき、国家資格のキャリアコンサルタントとして登録をする、そして5年ごとに更新をするという仕組みがあります。より上位の技能検定2級、1級とつなげまして、それらを含めまして専門性を高めていく仕組みになっています。国家資格の登録者数は、今年9月末で約6万人となっております。3ページが、先ほど申上げました、150時間の養成講習のカリキュラム要件です。昨年の4月に従来の140時間から10時間拡充しました。能力開発や企業に関する知識の部分、それから右側にあります技能の演習の部分を増やして、時代の要請に応えて、より実践力を高めるように変更しております。
 続きまして4ページからが活動状況、実施状況のデータになります。まず4ページ、キャリアコンサルタントの活動状況です。こちらは国家資格化2年目の平成29年度に、当時の登録者約1万6,000人を対象に調査を行ったもので、約3,200人から回答を得たデータになります。主な活動の場としましては、企業が4割、需給調整機関が4分の1、教育機関が2割、地域その他が10数%と、その数年前の同様の調査に比べまして、企業の割合が増加、需給調整機関が減少となっております。右側の就業形態については、必ずしもキャリアコンサルタントとして活動しているものではなく、正確には登録者がどういう就業形態で働いているかを示したデータになります。正社員が4割、非正規雇用が3割、その他はフリー・自営ですとかボランティアとして活動している状況です。ここには載せておりませんが、キャリアコンサルティングに関する活動について、ほぼ毎日活動をしている方が32%、週2、3回活動しているという方が13%になり、半数近くの方が週の過半で活動している状況です。一方で、不定期に活動している方が28%、活動していない方も20%いらっしゃいますので、まだ登録者の活動の余地の部分には課題があると認識をしています。
 5ページ、企業における導入状況です。例年行っております能開基本調査のデータです。4割の事業所がキャリアコンサルティングを行う仕組みを導入しています。左側の下、中小規模、あるいは正社員以外においては、このキャリアコンサルティングを行う仕組みが低くなっていますので、この辺りは課題であると認識をしています。
 6ページ、導入に当たっての課題・問題点です。上のグラフは仕組みがない事業所が導入していない理由を答えたものです。「労働者からの相談がない」、「人材育成が難しい」、「コストがかかる」、「時間の確保が難しい」といった内容になっています。労働者からの相談がない点については、希望がないから導入しない、あるいはその反対で、導入していないから相談が出てこないと、因果関係としては両面あるのではないかと思います。下のグラフについては、仕組みがある事業所が導入した上での問題点を挙げたものです。「効果が見えにくい」、「時間の確保が難しい」、「相談が少ない」、「人材育成が難しい」など、仕組みがない場合とほぼ似た傾向にあるかと思っております。また相談が少ないという点については、時間的な制約等、ほかの要因とリンクしている面もあるかと考えております。
 7ページは導入した効果です。左側の効果では、「仕事への意欲が高まった」、「自己啓発する者が増えた」、「人事管理制度に希望等を反映できるようになった」となっております。右側はJILPTの調査ですが、キャリアの専門家への相談経験によりまして、相談経験がない方に比べて「職業生活全般」、「仕事の内容」、「仕事上の地位など」、各項目について満足度が有意に高い結果になっております。これは専門家への相談の効果があることを示したものと受け止めております。以上がデータの部分です。
 8ページからは、私どもで取り組んでおります関連施策についてまとめたものになります。8ページがキャリア形成サポートセンター事業についてです。今のこの形になったのは昨年度からですが、労働者の方、特に在職中の方が、ジョブ・カードも活用しながらキャリアコンサルティングを受けることができる環境を整備するものです。全国42か所に拠点を設けまして相談に応じております。拠点がない5か所の県については、近隣の拠点で対応しておりますので全国をカバーしております。また、在職中の方でも企業の方でも相談しやすいように平日夜間ですとか土曜日にも対応しており、オンラインでも相談に応じております。企業にキャリアコンサルティングの仕組みのない労働者の方ですとか、あるいは企業の方でこれから仕組みを導入しようという方への相談・支援に対応しておりまして、セルフ・キャリアドックの導入支援として、労働者・企業、双方に働き掛けも行っております。9ページが、そのセルフ・キャリアドックについてまとめたものです。企業が人材育成方針に基づいて、個別の面談とキャリア研修等を組み合わせて体系的・定期的に労働者のキャリア形成を支援する仕組みが、このセルフ・キャリアドックになります。職業生活の節目、例えば、若年層の入社時、3年目、5年目などの若い方の職場定着の支援や、あるいは様々な仕事上・生活上での課題が生じてきますこの中堅層への支援、あるいはシニア層の定年を見据えた今後の働き方の相談支援など、個人の課題と企業組織の人材育成の課題の両面に対応するものです。
 10ページ、セルフ・キャリアドックにおいて、実際に企業に説明する際の資料になります。人材育成上の課題ですとか、一番に取り組みたいことをまず企業からお聞きしまして、どういった対象者層に面談・支援を行うのか、確認を行いながら進めていくものです。若年層、中堅層、シニア層といった年代に着目するケースもありますし、両立支援として行う場合もあります。また人事担当者、それから各部門の役職者、経営者等のケースもあります。11ページが、実際に実施した効果です。労働者の方からは「将来が具体化できた」、「自身の強みや課題の再確認と将来のキャリアプランを考える上で役立った」、「ライフも含めたキャリアについて相談できるいい機会となった」などの声を頂いております。企業の人事担当者等からは、部下へのマネジメントに当たって、キャリア・将来ビジョンを同時に支援する重要性や、組織におけるキャリア研修の重要性、あるいは求める人材像や期待する役割を明確にする必要性について認識したという声が挙がっております。企業からの効果については、導入支援ということもあり、まだまだ具体的な成果とは言い切れない部分もありますが、人材育成に関して、気づき、きっかけを与える役割は果たしているかと思っております。
 12、13ページは、ある企業での取組事例ですので、こちらは御参考として付けております。以上、現状について御説明いたしました。変化の激しい今の時代に、労使の方をはじめとして、関係者が共働してキャリア支援に取り組んでいけるよう、キャリアコンサルタントがその仲立ちとして役割を果たしていけるものと考えております。引き続き、このキャリアコンサルティング・キャリアコンサルタントの普及、専門性向上も併せて取り組んでまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。以上です。
○武石会長 ありがとうございました。前回、御意見が出てきた訓練協議会、それからキャリアコンサルティング・キャリアコンサルタントについて詳しく御説明を頂きました。それでは、ただいまの御説明に関しまして御質問、御意見がございましたら、Zoom機能のリアクションから「手を挙げる」マークを押していただいて、指名された方はマイクをオンにして御発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。田村委員、宮田委員、堀委員と手が挙がっていますので順番にお願いします。田村委員、お願いします。
○田村委員 資料3の訓練協議会について意見させていただきます。中央・地方訓練協議会などの職業訓練実施主体の強化・拡充について、産業が求める人材ニーズや地域における訓練ニーズをこれまで以上に把握し、実態を踏まえた訓練コースの設定ができることの意義は大きいと考えます。
 一方で、産業や地域のニーズだけではなく、受講者である就職氷河期世代の方や子育て、介護を行う方、あるいは高齢者、障害者などが希望する安定就労や再就職につながることができるように、受講者の属性やニーズなどを踏まえた訓練設定も必要だと考えます。また、そのような対象者を含め、そもそも職業訓練制度を知らない場合も多くあると想定され、そういうことを踏まえ、対象者への幅広い制度周知もお願いしたいと思います。加えて、今回の職業訓練主体の強化・拡充を図るに当たっては、実効性が高いものとするため、十分な予算の確保や、主体となる労働局の人員体制の強化も必要だと考えます。私からは以上です。
○武石会長 御意見もあると思いますが、まとめてお聞きしてから事務局にお答えいただきたいと思いますので、次は宮田委員、お願いいたします。
○宮田委員 ANAの宮田でございます。御丁寧な説明、ありがとうございます。私の方からは、今、御説明いただきましたキャリアコンサルティングのところについて意見を述べさせていただければと思います。キャリアコンサルティングの実効性についていろいろ意見はあったと思いますけれども、今、御説明いただいたように、キャリアを考えざるを得ないときに支援があるのではなく、何よりも主体的に自らキャリアを考えることが基本だと思っています。その中で、キャリアコンサルタントの活動内容で企業の部分が触れられていたと思いますが、本当に考えざるを得ないときではなく、ある意味、学生のときから入社したそれぞれの間のところで、今、やっている仕事の能力開発、それからいろいろな転機の中でキャリアを考える。そういう一端の中で相談できるところが重要だと思いますし、急に何かがあったときに考えるのではなく、自らライフプランの中でキャリアをどう考え、どうしていくか。その助けになるようなものができることが重要かと思っています。
 特にコロナを経て終身雇用というところも変わってきていますし、そういう意味では意識が変わっているところで、それぞれが自らのキャリアをしっかり考えて外に出ても通用するし、いろいろなものが選択できる状況を作っていくことはすごく重要かと思っています。そういう意味で、社内でのいろいろな相談ができるキャリアのあり方も重要だと思っています。個人的には、マネジメント層は専門的な内容は知らなくても、反対にこういったことを部下にサポートできるようなことが、資質として求められる時代になっているのではないかと思っています。私からは以上です。ありがとうございます。
○武石会長 もう一方、堀委員まで御発言いただいたところで事務局の方から何かあればということで、一旦、そこで事務局にお返ししたいと思います。堀委員、お願いします。
○堀委員 私からは2点申し上げたいと思います。まず、訓練協議会について意見を申し上げたいのですが、ここ数年、中央訓練協議会の委員を務めておりまして、かねてよりこの枠組みはもっと活用できるのではないかと思っていました。したがいまして、現在、地域訓練協議会は大枠の訓練コースの設定を主に行ってきたのですが、それだけではなく、現在実施している訓練コースについて訓練効果等の検証を行い、カリキュラムの見直しにつなげていく。このことにより公的な職業訓練が様々なニーズに合ったカリキュラムを提供し、求職者の円滑な再就職につながるような良いサイクルが描けるのではないかと考えていますし、大変重要だと考えています。こうした観点を踏まえ、地域訓練協議会がしっかりとした枠組みとなるように、また、きめ細かな議論が活発になされるように、法律面も含めて必要な措置を講じていただければと考えています。また、キャリコンについては感想ですが、詳細な御説明によりましてキャリコンの重要性であるとか今後の可能性が本当によく伝わってきましたし、今後、この重要性が高まっていくのは間違いないと思っております。ただ、懸念点としましては、ややキャリコンの責任が重いのではないかということも感じておりまして、例えばキャリコンの処遇や労働条件等の整備なども併せて行っていただけると、よろしいのではないかと感じました。キャリコンについては感想です。以上です。
○武石会長 御意見が多かったと思いますが、事務局から何かあればお願いいたします。
○平川室長 訓練企画室長の平川です。田村委員から御意見、御指摘を頂きました。訓練協議会の見直しは意義があるということで御意見を頂きまして、ありがとうございます。求職者ニーズを踏まえたものにしていくことも重要だという御指摘を頂きまして、ありがとうございます。訓練協議会、産業界、地域の人材ニーズに沿った訓練設定ということだけでなく、当然、求職者のニーズを踏まえた訓練設定も大事だと考えています。例えば民間の仲介機関に求職者の方は登録されていますので、そちらの方からも求職者のニーズを伺うことができるかと思いますし、訓練実施機関の方からも、求職者の方がどういった訓練を欲しているか、ニーズを伺うことができるかと思いますので、今般、そういったところも強化してニーズの把握に努めていきたいと考えています。
 それから、制度がなかなか知られていないので周知をという御指摘もございました。今回、訓練協議会の強化の中で訓練のコース設定とか、実施状況について見える化もしていければと考えていますので、そういったものも含めて分かりやすく周知を今後も進めていければと思っています。
 それと、実効性が高まるように予算、人員という御指摘がございました。それにつきましては引き続き検討してまいりますけれども、訓練協議会を強化することにした場合ですと、それが実際に回るような仕組みづくりが非常に大事だと思っていますので、そちらの方も引き続き取り組んでいきたいと思っています。
 引き続き、堀委員から協議会のお話がございましたので、そちらについてもお答えを申し上げます。カリキュラムの見直しを進めていくということで、そのために個別事例まで踏み込んだきめ細かな検証というのが必要になってくるというご指摘です。協議会の方でしっかりとした枠組みで、きめ細かな議論ができるようにということで御指摘を頂きました。そういった議論がしっかり行えるように法律面も含めた必要な措置をという御指摘を頂きましたが、必要な措置について検討していきたいと思っています。以上です。
○武石会長 増田委員と海老原委員はこの後にさせてください。今、3人のところで一旦、事務局にお返ししています。
○國分室長 宮田委員、堀委員から、キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタントに関して御意見を頂きましたので簡単に触れさせていただきます。宮田委員からは、急に何かあったときだけではなく常日頃からというお話があって、正にそのとおりかと思います。企業、労働者に任せるのではなく、国としても先ほど申し上げた事業を通じてキャリアコンサルティングを受け入れられるように、仕組みを整備していくことが必要と思っています。また、企業の中でもマネジメント層の重要性というお話もありましたが、こちらにつきましてもセルフ・キャリアドックなどで、そういう働きかけなども行うことができればと思っています。
 堀委員からは、キャリアコンサルタントの条件とか処遇という指摘がございましたけれども、こちらはキャリアコンサルタントの活動の場をどうやって広げていくのか、専門性をどう高めていくのかという話につながる部分だと思っていますので、その辺りの環境整備については業界の方とも協力し、全体としての底上げを図っていけるように取り組んでまいりたいと思っています。以上です。
○武石会長 御発言いただいた3人の方、よろしいでしょうか。それでは、増田委員と海老原委員から挙手がありましたので順番にお願いします。まず増田委員、お願いします。それから平田委員まで御意見を頂戴したいと思います。
○増田委員 増田でございます。資料4について要望ということで申し上げます。國分さんの説明は非常に分かりやすく、ありがとうございました。キャリアコンサルティングについては、今、内部労働市場での対応もかなり進んでいるということで非常に期待しています。これは労働者の能力開発や意識の向上に非常に有効であり、特に中小企業は先ほど申し上げたとおり、人手不足の中、女性やシニア人材など多様な人材の活躍が期待されている中で、このキャリアコンサルティングの重要性は中小企業者も認識しているのではないかと感じています。
 しかしながら、資料4の5ページの左下のように事業規模別のデータを見ますと、キャリアコンサルティングを行う仕組みがある事業所が、やはり事業規模が小さくなるに連れて低下しているのが数字としても表れていますし、商工会議所の会員企業は、恐らくこのデータにない30人以下の従業員規模の会社の方が割合的に多いわけですから、この辺のところにも支援の手を延ばしていただきたいと感じている次第です。
 7ページの左下ですが、このデータは中小企業も大企業も恐らく重なってのデータかと思いますけれども、これを見ると労働者の仕事への意欲向上や自己啓発に対する意欲の増加など、また、若年労働者の定着などに幅広い効果が得られることが期待されていると思います。労使と連携して更なるキャリアコンサルティングの周知を図ることで、特に中小企業において人的面、費用面でも脆弱な中小零細企業に、この導入の推進、また支援策の強化・充実をお願いしたいということを要望させていただきます。以上です。
○武石会長 海老原委員、お願いいたします。
○海老原委員 皆さんから賛成の意見しか出ないので、私は反対の意見という意味で是非、記載しておいていただきたいです。質問ではないのでお答えは必要ないです。まず自律的キャリア開発というのは、何度も言いますけど世界中でそんなにうまくいっていないと私は思います。なぜかと言えば、格差がかなり出てしまうからです。ドイツなどではどうなのかというと、自律的キャリアのためにとキャリアラダーが出てきていますけれども、頑張る人は頑張って、頑張らない人は頑張らないことになるので、どんどん格差が開いていくのは確かですね。継続学習で資格を得て、その資格をどんどん積み上げていくのは、やはり院卒、それもマスター、博士、つまり高学歴になればなるほどラダーをどんどん上っていく傾向にある。それに対して、いわゆる学歴が低めの人たちは、彼らこそ本当はキャリアアップして給料を上げていかなければいけないのに、そこは上がらないでそのままになっている現状が1個目にあります。
 2つ目ですが、今回の政策案ではそれを労働市場でなく社内でやるというのですけれども、実際、社内でできるのか。各社ごとに確かに仕組みや考え方が違うから社内でやるというのは日本では合理的だと思いますが、その水先案内役ともなるキャリアコンサルタントに、みんなが納得するような優秀な人が来るのか。キャリアコンサルタントになるのは、どちらかというと冷飯を食べているような窓際の人が来るのではないか。そういう意味で、誰も尊敬せずにうまくいかないのではないかというのが2つ目のお話です。
 3つ目の話ですが、キャリアコンサルティングを中小企業に入れるといいますけれども、やる気、モチベーションを上げるくらいのことはできると思います。ただ、実際に、キャリアを成就するためには、労働時間の問題とか求職制度やフレックスタイム制度など、大企業並みの制度を作ってくれと、キャリアカウンセラーはこういうことを経営者に言ってくるようになるのではないか。そこのところに中小企業の経営者はちゃんと応えられるのか。応えられない限り、そうでなければ育児対象者は働けません、イクメンをやりたいと言っても、制度がないからできませんという話になってしまうのです。そのときに経営者がこうしたキャリアカウンセラーを通じた要望を受け入れられるか。そうすると、中小企業はかなり大変な決断になりますよ、このキャリアカウンセリングを受け入れると。相当な要望、それが例えば労働者の方とみんなで一体になり、組合の方と一緒になって、経営者にこういうことを言ってくるという状況に耐えられるのかどうか。これが3つ目の話です。
 4つ目の話は、私が否定的な意見ばかり言っていると単なる悪い人になるので、じゃ、どうしようかという話です。ではどうしようかという話のときに、今、欧州がどんどん舵を切っているのは訓練でなくて雇用なのです。要するに雇用と訓練の敷居をどんどん小さくしているのです。例えば、フランスだとアグパ(AGPA)とグレタ(GRETTA)という仕組みがあります。これは職業訓練校で例えば失業者の訓練をしますけれども、今、その訓練のうちのかなりの部分が、企業に派遣して企業の中で実務をやらせるのです。アメリカにLOMINGERという会社があってHRMについて色々と調べていますが、この中でも、仕事をやらせない限り、机上の空論では何もならないよという結論が出ているのです。そういう意味で言えば、例えばキャリアコンサルティングに使う金、それから訓練に使うお金を企業に支払、安く雇ってもらえたら、それでかなりのことはできるのです。1960年代だって失業対策で、例えば船舶とか鉄鋼の人たちを自動車に移したりするとき、受入企業内内で教育することでどうにかなったじゃないですか。結局、働かせながら覚えるのが一番良くて、そのためには企業にもう少しお金を上げて敷居を低くしてあげる。雇用義務もなくしてあげる。例えばフランスだと新卒がうまくいかないので、新卒採用のときにCFAという仕組みがあります。このCFAの中の職業訓練はデュアルシステムと同じですが、このうち7割の人が教育訓練、いわゆるOff-JTは受けていないと言っています。7割の人がOff-JTを全く受けていないんですよ。結局、新卒で就職するためにその企業で安く働く。企業は多分、忘れましたが、最低時給の半額ぐらいで働かせられるのです。それも、継続雇用責任もない。この仕組みなら、とても気楽に未経験者を雇えます。こうやって企業に入って企業で覚えてもらうという仕組みに、どんどん舵を切っていると思います。日本だけ既得権でどんどん箱物が大きくなることに、ものすごく私は不満があります。
○武石会長 海老原委員、よろしいですか。
○海老原委員 はい。
○武石会長 平田委員まで御意見を聞いたところで、一旦、事務局の方にお預けしたいと思います。平田委員、お願いします。
○平田委員 意見として申し上げますので特に回答は要りません。まず訓練協議会についてですが、地域の体制を強化するということに異論はありません。必要な人材を効率的に育成していくことが非常に大事だと思っています。また、地方だけでなく中央の役割というのも当然あると思います。デジタルとかグリーンといった新しい成長分野もありますし、各地域の取組を牽引していくことが必要なのではないかと考えますので、関係省庁が連携して取り組んでいくことが非常に重要です。最後に、キャリコンについてですが、宮田委員の御指摘に私も賛同します。職業人生が長くなる中、そういった観点からも働き手に対する効率的、効果的な支援が必要になり、その1つの手段が、このキャリコンなのではないかと考えます。以上です。
○武石会長 特に御回答は要らないという方も何人かいらしたのですが、事務局の方から何かあれば、御意見が多かったと思いますが。
○國分室長 ありがとうございます。キャリアコンサルタントにつきまして増田委員、海老原委員、平田委員から御意見を頂戴しました。増田委員からございました特に中小企業への支援につきましては、私どもも同様に考えています。国の事業につきましては、中小企業とか企業の中で仕組みがない方にも積極的に対応できるように、我々も努めてまいりたいと思っています。
 海老原委員からは厳しい御意見を頂戴しました。キャリアコンサルティングがどういう関わりができるのかというところは、難しいところもあるかと思いますけれども、特に最後の方でございました訓練ではなく雇用、OJTの重要性など大切だと受け止めました。このキャリアコンサルティングのコスト的な企業への支援につきましては、人材開発支援助成金などとの連動についても考えていかなければならないと思います。この辺りはどういう形がいいのかというのは、政策としても事業としても考える必要があろうかなということで受け止めさせていただきました。
  平田委員からも、キャリアコンサルティングについて長い目で見てという御意見を頂戴しました。この辺りは先ほどお答えしたとおりですけれども、国としてどういう形が取れるのかということは、しっかり踏まえて対応させていただければと思います。取り急ぎ以上です。
○武石会長 いろいろな御意見が出ていますので、一旦、御意見を受け止めてということになるかと思います。海老原委員、再度、御意見はございますか。
○海老原委員 いやいや、ないです。
○武石会長 大丈夫ですね。では、冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 前回の分科会で、キャリアコンサルティングがどのような効果や役割を果たしてきたのかと発言したことを受け、今回調査結果を出していただいたと思いますが、中身を見ると、労働者からの希望がないという回答や、相談を行ってもキャリコンの効果が見えにくいといった回答が出ています。また、それ以外にも、例えばキャリアコンサルティングが本人が望まない形での転職等に誘導されるのではないかという懸念する声も一部ではあり、現状、キャリアコンサルティングの重要性やキャリアコンサルタントの役割等が、企業や労働者に十分周知されていないのではないかと考えています。
 キャリアコンサルティング自体は、労働者本人にとって職業人生を豊かにするという意味でも必要だと思いますが、キャリアコンサルタントが企業等の中で有効に活用されているかという点について、もう少し深掘りが必要と思いますので、引き続き検討すべきではないかと考えています。
加えて、大企業の中では、既にキャリアコンサルティングの仕組み等が整備されている所が多いと思いますが、中小企業ではそのような仕組みがなかなか整っていないのではないかと思います。また、正社員だけでなく非正規で働く方や女性、高齢者などの方たちがキャリア形成をきちんと考えられる道筋を考えることも必要だと思いますので、そういった視点を含めて、どういうことができるのか検討すべきと考えます。以上です。
○武石会長 御意見と今後への御注文だったかと思いますが、ほかに挙手がないので今のことに関して事務局から何かございますか。
○國分室長 繰り返しになりますけれども、特に事業所規模別で規模の小さい所とか、あるいは非正規雇用の方など、なかなか企業だけでは届きにくいところについては、私どもの事業、あるいは最近ですと各自治体とか地域レベルでのNPOなど、いろいろな支援団体の方でもこのキャリアコンサルティングというか、キャリアコンサルティング的なところも含めた支援を行う所が出てきているように思っています。そういった所とどういう関わりを持ちながら、環境を作っていくのかというところが大事だと思っていますので、御意見を受け止めて今後についても考えて進めてまいりたいと思います。以上です。
○武石会長 ほかに御意見、御質問等はございますか。よろしいでしょうか。いろいろな御意見が出て、今後につながる重要な御意見がそれぞれあったと思います。そもそもこの人材育成というものをどういう仕組みの中でやっていくのか。そこに公的な仕組みであったりキャリコンがどう関わるのか。かなり本質的な問題提起もあったのではないかと思います。今すぐにそれが解決できるということではないと思いますが、人材育成について非常に混沌としていて、企業の皆さん、そして労働者側としても先が見えない中で非常に難しい局面にあると思いますので、いろいろな御意見が出たことは大変良かったかなと私は受け止めました。ありがとうございました。
 それでは、ほかに御意見等がないようであれば、これまでの議論を踏まえまして、事務局から今後のことも含めて何かあればお願いしたいと思います。
○宇野参事官 人材開発政策担当参事官の宇野でございます。委員の皆様、本日は貴重な御意見を頂きまして、どうもありがとうございました。事務局といたしましては前回の分科会において、年末までに大要の方向性について分科会として一定の整理をお願いし、ガイドラインについては年度末を目途に策定をお願いしたところでございます。次回の分科会においては年明け以降のガイドライン等の検討につながるよう、これまでの議論を踏まえました大要の方向性について、一定の整理をした資料を用意させていただきたいと考えています。本資料のイメージは、年末までに取りまとめをお願いしている分科会としての一定の整理の骨子案のような位置付けだと認識しています。事務局からは以上です。
○武石会長 ただいまの参事官の御説明に関して御質問、御意見はございますか。よろしいでしょうか。玄田委員。
○玄田委員 確認だけ、よろしいですか。
○武石会長 お願いします。
○玄田委員 今日もたくさんの貴重な御意見を伺って、大変考えるところが多かったのですが、いろいろ御意見がありながら、これからの人材育成は変わらず労使の協調が極めて重要だという点に関しては、改めて確認ができている部分ではないかと思っています。私が伺いたいのは、これまでの人材活性策の中で人材育成は労使の協調を軸としつつ、地域社会全体で人材育成していくのだという大きな方針というのは、今、能開行政の中で出されているのかどうか。地域全体を巻き込んで人材育成をするんだということは、比較的、合意になりつつあるような気もするのですが、そういうふうな形をこれまで盛り込んでいたのかどうかだけ確認させていただけますか。
○武石会長 お願いします。
○宇野参事官 地域という視点はこれまでもあったと思いますけれども、確かに玄田分科会長代理がおっしゃったように、地域全体の人材育成というのを今までも強く打ち出していたかどうかというのは、今、私の記憶では定かではございません。今回、いろいろ御意見を頂きました。第11次の職業能力開発基本計画を策定していただいた後も、正に分科会長がおっしゃった混沌とした状況でございます。そういった中で、今までの公共職業訓練とか人材開発統括官部門のツール、これはこれで重要ですが、先ほど来出ている各省庁、政府全体としての連携、かつ、全体としては人への投資とか、正に人材育成というのは政府全体の課題になっていますので、こういった視点も踏まえて我々としましては今日の貴重な御意見、御議論を踏まえまして、今後、また次回以降に向けまして引き続き御議論、御検討をお願いしたいと思っています。きちんとした答えになっていませんけれども、私からは以上です。
○玄田委員 了解しました。ありがとうございました。
○武石会長 ほかに、いかがでしょうか。よろしいですか。それでは、今日も活発な御議論を頂きまして大変ありがとうございます。議題は以上となります。いろいろと事務局にも今後の取りまとめに向けて御苦労をお掛けいたしますが、よろしくお願いいたします。次回の開催日程につきましては決まり次第、事務局から御連絡させていただきます。以上をもちまして、第30回労働政策審議会人材開発分科会を終了いたします。ありがとうございました。