第33回がん検診のあり方に関する検討会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

日時

令和3年8月5日(木)13:00~15:00

場所

オンライン

議題

(1)「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」改正について
(2)今後の我が国におけるがん検診事業評価の在り方について
(3)がん検診の推進策について
(4)新型コロナウイルス感染症が発生している中でのがん検診の推進策について
(5)その他

議事

議事内容

○事務局 定刻となりましたので、ただいまより第33回「がん検診のあり方に関する検討会」を開催いたします。
構成員の皆様方、画面をオンにしていただければと思います。構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。事務局を務めさせていただきます、厚生労働省健康局がん・疾病対策課の岩佐と申します。
今回も新型コロナウイルス感染症の社会的状況等を踏まえまして、ウェブでの開催とさせていただいております。また、本日の検討会については、You Tubeで配信しております。これらの機器等を含め、御迷惑をおかけすることもあろうかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
初めに、構成員の出欠状況でございます。本日は、祖父江構成員、中川構成員より御欠席の連絡をいただいております。本日の検討会の構成員定数11名に対しまして、現在出席構成員9名となっております。
また、本日は、国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター検診研究部室長の高橋宏和参考人をお招きしておりますので、御承知おきいただければと思います。
それでは、以降の進行を大内座長のほうにお願いいたします。
○大内座長 皆さん、こんにちは。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。
では最初に、事務局より資料の確認をお願いいたします。
○がん・疾病対策課長補佐 事務局です。厚生労働省健康局がん・疾病対策課の渭原と申します。本日は、よろしくお願いいたします。
それでは、資料の確認をさせていただきます。資料は事前にメールでお送りさせていただいておりますが、厚生労働省のウェブサイトにも掲載しております。議事次第、資料1-1と1-2、資料2-1から2-3、資料3、資料4、及び参考資料1から5がございますので、御確認ください。
資料の不足、落丁等がございましたら、事務局までお申しつけください。
それでは、大内座長、議題をよろしくお願いいたします。
○大内座長 では、議題1「「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」の改正について」であります。まずは、事務局から資料1-1、1-2について説明をお願いいたします。
○がん・疾病対策課長補佐 それでは、資料1-1を共有いただけますか。議題1は指針改正についてでございます。資料1-1は指針改正の主な項目と新旧対照表をお示ししたものであり、資料1-2は乳がん検診の質問票と実施計画書になります。
それでは、資料1-1をまず御説明させていただきます。スライドをおめくりいただいて、スライド2枚目に、今回の指針の主な改正ポイントをお示ししております。
1つ目としまして、診療放射線技師法施行規則が改正され、令和3年10月1日に施行予定ですので、それに伴って、医師立会いなしでの診療放射線技師による乳房エックス線撮影が可能となることへ対応した改訂を行っております。
また、がん検診の利益・不利益の説明を行う重要性を周知すること。
がん検診対象者のうち、特に受診を推奨する者を明記すること。
自分の乳房の状態に関心を持つ生活習慣であるブレスト・アウェアネスを普及させること。
その他、技術的修正を反映して改訂しております。
それでは、具体的に今、申し上げた主な改訂ポイントを軸に、新旧対照表に沿って報告いたします。
スライドをおめくりください。スライド3枚目です。
乳がんに対する健康教育として、これまで使用されてきた乳房の自己触診という表現から、乳房の普段の状態を知る、変化に気をつける等の生活習慣を取り入れる考え方として「自分の乳房の状態に関心を持つ生活習慣」(ブレスト・アウェアネス)に変更しております。
スライドをおめくりください。スライド4枚目です。
がん検診対象者に対して、参考資料3にある令和元年度の「がん検診のあり方に関する検討会」における議論の中間整理を基に、がん検診の利益・不利益の説明を行うことと、利益・不利益の詳細例を記載しております。特に、がん検診の不利益である偽陰性、偽陽性、過剰診断についての定義を含めて、検診受診者・実施者にこれらを認知していただけるよう記載しました。
次のスライドをお願いします。スライド5枚目です。
下の部分から、これまでどおり、5つのがん検診はそれぞれの初回対象年齢以上を受診対象者としていますが、今回、受診対象者のうち、特に受診を推奨する者を記載します。こちらも令和元年度の中間整理を基に記載しています。
こちらがスライド5から続いていきまして、スライド6までですので、次のスライドもお願いします。
先ほどお話ししましたように、受診を特に推奨する者に該当しない者であっても、これまでと変わらず受診の機会を提供するよう留意いただくように、としております。
以後のスライド、10枚目までは技術的修正点を含めて記載しておりまして、スライド11枚目に移っていただけますか。スライド11枚目から13枚目が、医師の立会いなしで診療放射線技師による乳房エックス線撮影が可能となるように、記載を見直しております。
スライド11枚目は、医師以外の医療従事者による対応が可能となるよう、「問診」を「質問」に変更しており、その際に使用するものが資料1-2の乳がん検診質問用紙及び乳がん検診実施計画書になります。こちらは、肺がん検診での質問用紙に倣って作成していますが、質問項目に、乳房エックス線検査を避けるべきとされている豊胸術実施者、ペースメーカー装着者、V-Pシャント施行者について情報を得られるよう、乳房エックス線検査の実施可否に係る事項を追加しております。この質問用紙及び実施計画書は、指針改正の通知の際に自治体にお示しする予定です。
次のスライドに移ってください。スライド12枚目です。
スライド12、13枚目には、医師の立会いなく乳房エックス線検査を実施する場合、例えば事前に乳房エックス線写真撮影を行う診療放射線技師に対して指示をする責任医師、及び緊急時等に対応する医師を明示した計画書を市町村に提出するなどの留意事項について記載しています。
また、乳房エックス線写真の読影について、過去の写真と比較読影することが望ましい点についても追記しています。
その他については、文言の修正・追記や、出典となるものの最新版への更新を行っております。
このスライドに関しては以上になります。
○大内座長 1-2については。
○がん・疾病対策課長補佐 では、1-2も申し上げます。1-2を共有させていただきます。1-2が乳がん検診の質問用紙、乳がん検診実施計画書になります。
先ほど申し上げた点、質問用紙の7番に、乳房エックス線検査を避けるべきとされている豊胸術実施者、ペースメーカー装着者、V-Pシャント施行者について、情報を得られるように項目を設けております。
その次の乳がん検診実施計画書が自治体にお示しするものでございます。
以上になります。
○大内座長 ただいま、資料1-1及び1-2について説明がございました。
では、構成員の皆様から御質問をいただきたいと思います。
中山構成員。
○中山構成員 中山です。
1点、資料1-1の指針の改正の5ページですけれども、対象者で、胃がん検診については、なお受診を特に推奨する者を50歳以上として、括弧して「胃部エックス線検査は40歳以上も可」ということにしているのですけれども、こう書いてしまうと、胃のエックス線検査は40歳以上を推奨する。胃の内視鏡検査は50歳以上を推奨するという、ちょっと矛盾した話になってしまうので、1行上に「当分の間、40歳以上の者を対象としても差し支えない」と書いてあるので、括弧の「胃部エックス線検査は40歳以上も可」のところは取ってもいいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○大内座長 大変貴重な御指摘ありがとうございました。
5ページの左側、(3)対象者のマル1の胃がん検診についての括弧書きの「胃部エックス線検査は40歳以上も可」については、ここに記載は不要ではないか。前段のほうに40歳ということが書いてあるということなのですが、いかがでしょうか。皆様の御意見をお願いいたします。
松田構成員 いかがですか。
○松田構成員 中山構成員の御意見に私は賛成いたします。
以上です。
○大内座長 ほかに御意見ありますか。
中野構成員。
○中野構成員 私も御指摘のとおりで、同意したいと思います。同じ意見でございます。
○大内座長 井上構成員、いかがでしょうか。
○井上構成員 全く異存ございません。
以上です。
○大内座長 福田構成員、お願いいたします。
○福田構成員 私も、40歳以上と上に書いてあるので、結構かなと思います。賛成です。
○大内座長 若尾構成員、お願いします。
○若尾構成員 明確でいいと思います。
○大内座長 羽鳥構成員。
○羽鳥構成員 日本医師会のほうも、これで賛成で、いいと思うのですけれども、バリウムの検診は、個別検診でなく集団検診を行っている検診機関がまだ執着しているところだと思うのです。検診機関のほうで十分納得してもらえれば、この文章、中山構成員のおっしゃった主張で問題ないと思います。
以上です。
○大内座長 すみません、羽鳥構成員にお尋ねしますが、検診機関は具体的にどなたを指しておられますか。
○羽鳥構成員 ここだと松田先生は賛成ですとおっしゃっていたので、それはそれでいいのかもしれませんけれども、例えば予防医学協会とか、そういうところはバリウムの検診にかなり頼っているところもあるのかなと思うので、そのところの皆さんが納得されるなら、僕は賛成いたしますという意味です。
○大内座長 この件について、構成員の中では、消化器がん検診に関する松田構成員ですか。具体には、消化器がん検診学会がございますね。そのようなところの観点から見ていかがでしょうか。
○松田構成員 内視鏡検診が始まった際に、対象年齢50歳以上として、しかも2年に1回。ただし、胃の内視鏡検診のキャパシティのこともあって、エックス線検査が地域によって随分差はあろうかと思いますが、まだ広く行われているということもありますので、その地域等を含めて、40歳代も対象にして構わない。こんな考え方でやってきております。それはそのとおりでよろしいと思います。
○大内座長 ほかに御意見ございますか。
では、田中構成員、どうぞ。
○田中構成員 大阪市の田中です。
今の観点ではないのですけれども、別のことでちょっと御説明といいますか。医師の立会いなしで、技師による撮影が可能となることにつきましては、前回の検討会でも議題であったと思います。私、検討会の後に、がん検診を移動検診車で実施する、いわゆる巡回検診での巡回先というのは、法律上、医療機関の扱いになりますので、保健所に届出をして、当日に専従する医師を置くことが求められているということで、大阪市も巡回先に医師を配置しまして保健所への届出をしておるところなのですが、今回、医師の立会いなしで診療放射線技師による撮影が可能となるのであれば、医療機関の扱いである巡回先の医師も不要ということでよいのでしょうかというメールをさせていただきました。
しかしながら、いただきました御回答なのですけれども、僻地などを除いては、診療放射線技師のみにより、肺がんや乳がん検診を巡回検診として行う場合であっても、実施責任者である医師が移動検診車において巡回検診を管理する必要があるというものでした。実際、自治体としては検診をしておりますので、巡回先に医師が不要ということになりましたら、検診回数の増加ですとか、多様な場所で実施できるということになりますので、受診者数の増加が期待できるところとなりまして、楽しみにしておったのですけれども、これまでどおり、少なくとも大阪市については医師が必要ということで、正直言って残念な思いがあります。
できれば、今後、関係部局と調整していただけたらと思うのですが、そうは言っても、現時点でドクターが必要ということなのであれば、改正された指針を見て、私のように医師が不要と自治体の方が誤解しないように、その旨を明記されたほうがよいのではないかと考えます。
以上です。
○大内座長 田中構成員から大変貴重な御意見をいただきました。本件は、医師法第17条に関することでございますね。
○田中構成員 医療法だと思います。
○大内座長 この資料1-1の12ページ、左側の(5)検診実施機関の中で、マル6の医師の立会いなくというところですが、これについて、医療法あるいは医師法の中での件を明記すべきではないかというごもっともな御意見だと思っております。
今回、1-2に様式例が出ております。この2面の市町村長への届出の表の中に4の責任医師とありますけれども、これだけでは不十分と考えてよろしいでしょうか。
田中構成員。
○田中構成員 こちらは届出ということかと思っているのですけれども、医療法上は、実際に移動検診車のほうに医師がいる必要があるということでお聞きしているのですけれどもね。
○大内座長 医師の立会いの法的な根拠等については、付記すべきところがあるのですが、どこにどのような形で盛り込むかということを今、検討しております。事務局のほうからお答えできますか。
○事務局 事務局でございます。
今、言われている話につきましては、医政局の医療法の担当部局とも相談しておりまして、今回、診療放射線技師法の省令改正においてできるというのは、基本的には検査においての立会いというところであって、必ずしも診療所における責任医師というものがいなくてもよいというものではないと。その辺りは、議論としては全く違うものだという意見はいただいております。そういった中ですので、基本的には、様式例の中にも責任医師というものをきちんと設け、それらにきちんと連絡できる体制ということを求めているところでございます。
この巡回検診において、必ず責任医師がその巡回に帯同する必要性があるのかについては、医政局の今の見解においては、これは診療所に当たるということなので、原則として常勤いただく必要性があるということにはなっております。ただ、僻地等であったり、医師少数区域等の診療所であったりという、幾つかの例外的な事項もあって、この指針の中だけで、その辺りの例外的な事項とかも含めて、どう正確に誤解がないように示せるのかという点はあろうかと思っておりますので、そこは我々のほうでも医政局と相談して記載の方向性というものを決めさせていただければと思っております。
○大内座長 よろしいでしょうか。
○田中構成員 ありがとうございました。
○大内座長 ほかに、この1-1に関しまして御質問があれば、どうぞ。
井上構成員。
○井上構成員 1-1の3ページの記述の新旧対照表のところなのですが、2番目のがん予防重点健康教育の線が引いてあるところで、特に記述が間違っているとか、そういう話ではなくて、違和感があるので。
自分の乳房の状態に関心を持ちチェックを行う生活習慣というのが何となく引っかかりまして、これは「習慣」では駄目なのでしょうか。後のほうにも出てくる記述のところは、特に「生活習慣」というのはないのですけれども、同じ資料の2ページ目のマル3、ブレスト・アウェアネスの括弧のところが、そのままそこへ反映されたものと思うのですが、「生活習慣」という言葉とは、また少し違うもののような気もして、差し支えなければ「習慣」と言ったほうがいいように思ったのですが、いかがでしょうか。
○大内座長 ただいま、ブレスト・アウェアネスの日本語訳について、乳房を意識する生活習慣。これは、厚労省の研究班が過去2年間行われまして、その研究代表者の笠原善郎先生にもお尋ねしたところなのですが、これが今、基本的な日本語としてふさわしいのではないかということで意見をいただいております。
今、井上構成員から御指摘の、3ページの(4)に関して、このように「生活」を入れることについての異議でしょうか。
○井上構成員 そうです。間違ってはいないと思うのですけれども、この言葉で行くのだということであれば、別にそれはそれで、どうしても反対というわけでもないのですけれども、初めて見た場合に、「生活」がないほうがしっくり入ってくるような気もするので、科学的というよりは、印象で物を申していますけれども、「習慣」でもいいのではないかと思いました。
○大内座長 では、この件について、私もどちらかというと専門的な立場にいるのですが、先生の御意見を承って、改めて研究班の考え方について確認させてください。井上構成員、宿題としてよろしいでしょうか。
○井上構成員 お願いします。
○大内座長 現時点ではこのままで残しますが、笠原善郎福井済生会病院副院長がこの高濃度乳房に関する研究班の班長でした。関係者に、今日、参考人として入られています高橋宏和先生も加わっておられましたが、何かコメントございますか。
○高橋参考人 厚生労働科学研究笠原班では、ブレスト・アウェアネスは、これまで自己触診と記載されていた指針のもと、臨床現場、がん検診の現場において、自己触診を逆にやり過ぎて、良性のしこりなどを見つけて偽陽性が増えるなどの不利益の増加があったという反省から、しこりを探す触診ではなくて、意識して違いに気づくという生活習慣に変えるべきではないかという意見がありました。
そのため、習慣なのか、生活習慣なのかという議論ではなくて、指針の記載事項を変更するに当たって、自己触診ではなくて、意識するという行動変容につなげる場合にふさわしい文言として「生活習慣」という言葉が選ばれたのではないかと理解しておりますが、座長の言うとおり、班長など、班員の先生の御意見も踏まえた御意見返しをさせていただきたいと思います。
○大内座長 ただいま、言葉として、2ページの指針改正の主な項目の2のマル3には「乳房を意識する生活習慣」となっています。一方で、3の指針の改正後の案では「自分の乳房の状態に関心を持つ生活習慣」と、ちょっとニュアンスが変わってきているかもしれません。「生活」という言葉を入れるかについても含めて、研究班に出席された方々の意見を聴取した後で皆様にお示ししようと思います。よろしいでしょうか。
ほかに御意見ありますか。
若尾構成員。
○若尾構成員 若尾です。よろしくお願いします。
こうやって細かい明細を、検討会等で統一見解としてみんなが持ち合わせることはいいと思いますが、冒頭で「検診受診者・実施者にこれらを認知」してもらうことの重要性」を述べていました。しかし現実は、検診の受診者・実施者の理解が深まるための統一したツールが少ないのですね。こういった細かい、例えばブレスト・アウェアネスの定義をどうするかということ、これもとても大切なことなのですけれども、一受診者・実施者が情報を正確に簡便に理解できるような統一された情報提供は、後のがん検診の推進策のほうでも述べたいと思いますけれども、すべての国民に届くような形で、全ての基礎自治体が同じような情報提供ができるようにすることも、これから考えていったほうがいいのではないかと思います。そこで、この改正をするに当たって、情報を届けるということの意義ももうちょっと深めていただきたいなと思います。
以上です。
○大内座長 御要望ということで承ります。
では、指針改正に向けて事務局で準備を進めていただきたいと思います。
続きまして、2つ目の議題「今後の我が国におけるがん検診事業評価の在り方について」に移ります。はい。
○若尾構成員 ごめんなさい。2つ目の課題に行く前に、1-2の乳がん検診の質問票に関しては、今、言ってしまっていいですか。
○大内座長 どうぞ。
○若尾構成員 はい。先ほど乳がん検診の質問票を見せていただいた中で、家族歴のことを書く項目がございます。これは、受診する当事者にとってみると、とてもどっきりするのですね。衝撃が走る人も多いと思います。これは重要な情報になりますので、ここに書くときに、書き込む人が安心して書けるような記載が必要なのではないかと思うのです。これだけゲノム解析とかHBOCのことが言われていると、ここに書いて、もし漏れたらどうしようという懸念は、受診者の中にはあるかもしれません。
ですので、家族歴を書く欄、もしくはそれ以外のところでもいいのですけれども、情報はかたく守られますとか、守秘義務にのっとった取扱いをしますというような、安心して書き込めるようなコメントが必要だと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○大内座長 若尾構成員がおっしゃっているのは、マル3の点ですか。マル2も含めてですか。
○若尾構成員 1-2の乳がん検診の質問票のマル3です。「血縁者に乳がんになった方はいますか」という欄です。
○大内座長 その件でよろしいですね。これを聞くに当たっては、目的を明記すること。それから、守秘義務、個人情報の保護に配慮することという御意見ですね。
○若尾構成員 そうです。
○大内座長 了解しました。
ほかに御意見よろしいですね。
では、2の議題に移ります。高橋参考人から、資料2-1から2-3について御説明をお願いいたします。
○高橋参考人 国立がん研究センターの高橋と申します。
私からは、資料2-1を用いまして「がん検診事業の評価について」、御説明いたします。なお、資料2-2及び2-3も適宜御利用いただきながら、参考にしていただければと思います。
では、資料2-1を御提示いただけますでしょうか。こちらは、がん検診事業の評価についてで、今回は都道府県チェックリストの改定についての御報告となります。なお、こちらは、厚生労働科学研究におけます、がん検診事業の評価に関する研究班での成果となることを御容赦いただければと思います。
では、次のスライドをお願いいたします。
この研究班は、2か年の研究で、今年が2年目となります。本研究班では、がん検診の精度管理・事業評価に関する「今後の我が国におけるがん検診事業評価の在り方について 報告書」の改定を目指した研究班です。
「報告書」と略させていただきますが、平成20年に発表されました報告書は、本「がん検診のあり方に関する検討会」の前身となります「がん検診に関する検討会」での議論をまとめていただいて、平成20年に公表したという経緯がありますが、以降13年の間、改定が行われなかったということから、現在のがん検診の状況などが当時と比べて変化した箇所もありますので、そのような観点から改定を行うということを目指しております。
班員構成は、御覧のとおりとなります。
では、次のスライドをお願いいたします。
この報告書は、本検討会の初めの議題にありました、がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針の中に位置づけられております。今回は、この指針改正に合わせた、非常によいタイミングかと思いますが、指針の中では、がん検診の種類や検査法、並びに対象の年齢や受診間隔についての記載がありますが、それに加えて、検診の事業評価(精度管理)の記載もあります。
事業評価の基本的な考え方は「今後の我が国におけるがん検診事業評価の在り方について 報告書」を参照することということで別出ししており、それが20年の報告書となります。この報告書の改定は、指針に準ずる検診の精度管理に関する取り決めなどを改定することになります。
20年の報告書では、検診の精度管理の指標や活用方法、そして都道府県、市町村、検診機関の役割などを示しております。
次のスライドをお願いいたします。この報告書の改定に関する検討事項は、4つに大きく分けられます。
本研究班での議論において、重要視したのが1つ目の報告書の構成についてです。報告書は本文と別添を切り分けることで、更新されない情報と、更新のあり得る情報を別に分けて、更新されない情報は本文に記載、更新され得る情報は別添に記載して、変化が起きたときに迅速に対応できるような構成にしました。
2つ目は、指針外検診についてです。指針においては、このがん検診を行ってくださいという記載が中心ですが、このがん検診はしないでくださいという記載はありません。がん検診においては、指針に基づかない検診をしている自治体が多くあります。こうした指針に基づかない検診の実施は、検診の利益よりも不利益が大きくなるという懸念から、指針外の検診をおこなわないことについて記載するも検討はしました。改定版には記載しないものの、指針に沿った検診の実施が前提であることということを明記することといたしました。
3つ目は、職域におけるがん検診の精度管理についてです。職域検診でも住民検診と同様の精度管理が必要であることと、平成30年に公表されました職域におけるがん検診に関するマニュアルを参考にすることを、基本的な考え方として本文に明記すべきと議論しましたが、精度管理手法については、現段階では記載するのは難しいのではないかという意見もありました。
職域におけるがん検診は、現在のところ法的な後ろ盾がなく、事業主や保険者が福利厚生として行う場合が多いことから、精度管理に関する記載は、現時点では難しいのではないかという意見もあり、現在積み残し案件としています。

では、次のスライドをお願いします。
4つ目は、20年の報告書の改定における基本的な方針は、20年の報告書では、精度管理に特化した報告書でしたが、多くの自治体の担当者、関係者の目に触れることから、網羅的に検診のことが理解できるような構成にすべきという観点から、有効性評価並びに受診率についても取り扱うということとしました。
また、「職域におけるがん検診に関するマニュアル」を踏襲して、職域におけるがん検診の精度管理について記載すること、目指すべき検診のあり方の項目の中に、利益・不利益など指針とそごのないように記載すること、受診者に届くような形での公表を考慮することとしました。
さらに、がん検診の事業評価以外の検討項目は、別建てで積み残し案件として厚生労働省の当検討会に報告することしました。
特に、最後の項目については、本研究班で多くの意見があり、がん検診の報告書よりも大きな枠組みでのがん検診の取組について議論すべきとの意見がありました。具体的には、職域におけるがん検診の法的整備や、骨太の方針でも取り扱われたように、がん検診に関するデータ管理体制の整備、がん検診の理解を広めるため、様々な場面でのがん検診教育を行うべきという意見もありました。
このように、報告書に記載できない項目は別建てとして、再度本検討会に報告させていただきます。
次のスライドをお願いいたします。
精度管理の指標は、当該がんの死亡率がアウトカムの指標になりますが、この死亡率が下がるまでには数十年の期間が必要となります。そのため、単年度の事業として行われているがん検診を評価して、次年度のがん検診をよりよいものにするためには、短期的な指標が必要であるという観点から、技術・体制指標並びにプロセス指標の2つの指標を用いて、がん検診の精度管理を行っています。
本発表では、このうちの一つとなる、技術・体制指標のチェックリストの、都道府県用についての改定に関するものとなります。がん検診のチェックリストには、市区町村用、検診機関用、都道府県用の3つおよび、指針で推奨する5つのがん種、計15種類がありますが、そのうち都道府県用の、5つのチェックリストの改定になります。
次のスライドをお願いいたします。
20年の報告書の時点で、がん検診において当該がんの死亡率を下げるためには、各部門がそれぞれ与えられた役割を果たすことが重要であるとされ、それに則して検診機関、市区町村、都道府県に役割が明確に示されています。
このうち、都道府県の役割は、県内全体、所管する市区町村の事業評価を実施することと、市区町村と検診機関への事業評価をフィードバックする。さらに、助言、指導、住民への事業評価を公表などが都道府県の役割として求められます。
次のスライドをお願いいたします。
この役割を適切に果たすためにチェックリストが存在します。役割を果たすにはどうしたらいいのかという疑問に答えるように、構成されています。都道府県用は約60の項目があり、がん部会を設置して運営すること、都道府県全体の検診の結果を集計し、分析すること、不利益を把握すること、事業評価の結果の公表、評価に基づく指導・助言をすることが都道府県に与えられた役割であり、このチェックリストの項目を満たすということで、これらが実施可能となるという構成になっています。
次のスライドをお願いいたします。今回の都道府県のチェックリスト改定の要点を4つにまとめました。都道府県のチェックリスト以外の市区町村用のチェックリスト、並びに検診機関用のチェックリストは、これまでマイナーチェンジを行っておりましたが、都道府県用のチェックリストはこれまで改定が行われていなかったことも踏まえて、ほかの変更点と齟齬のないようにしました。
1つ目は、がん登録推進法の施行に伴って、全国がん登録が進んでいますが、がん登録の活用による検診を評価することです。この点に関しては、本日お休みである祖父江構成員から、レセプトデータを活用した、職域のがん検診を評価するような仕組みが必要だという意見をいただいています。
2つ目は、県が設置する生活習慣病検診等管理指導協議会及びがん部会の役割を明確化することです。これまでは、設置することは記載していましたが、何をしたらよいのか分からないという意見を踏まえて、役割を明確化して記載するということを今回の改定に盛り込みました。
3つ目は、実効性のあるフィードバックを実施して、改善策の実行状況を確認することです。
4つ目は、細かな文言修正です。
以上が今回の都道府県のチェックリスト改定の説明になりますが、資料2-2にその改定前と改定後の記載があます。資料2-2を御提示ください。
こちらは、5がん同様の記載になっているので、本日は胃がんを説明します。
胃がんにおいては、改定案で、特に「医師会を1医療機関とみなしても構わない」という記載を盛り込みました。自治体によっては、医師会と集合契約などをしているため、医師会が医療機関としての役割を果たしているような地域もあります。こうした地域においては、医師会が精度管理を担う機関になることから、医師会の役割を明記しました。
都道府県が単独で実施できない項目については、関係機関、これは市区町村、検診機関に加えて医師会を明記して連携することを記載しています。
その1つ下に、胃がん検診の関係者を記載していますが、今回の診療放射線技師法の改正なども踏まえて、胃がんの検診のところにも「診療放射線技師等」を記載しました。同様の記載を、画像系のがん検診、胃エックス線、胸部エックス線、マンモグラフィに加えました。子宮頸がん検診につきましては「細胞診判定施設」を記載し、子宮頸がん検診に関わる方をより具体的に明示しました。
大きな枠の2にある、受診者数・受診者率の集計、3.要精検率の集計、さらにその下の精検受診率の集計、次のページ5の精密検査結果の集計という記載に変更しました。というのは、これは変更前は「把握」という書き方でしたが、把握だと、把握のみで止まってしまう事例がありましたので、集計して公表するところまでを意図して変更しました。
さらに、6.偶発症の把握、7.追加調査、8.精度管理に関する検討と続きますが、これは項目変更による変更ですので、記載されている内容について大きな変更はありません。
6ページ目では、要精検の定義が曖昧であったため、そこを明記しました。要精検の定義が、自治体や検診実施機関で異なることが、事例としてあり、比較性や評価が難しくなったことから、要精検の定義を記載しました。
これまで、胃がんに関する改定について説明しましたが、他がんに関しても同様の変更をしています。これらの変更したものを資料2-3に変更案として記載したので、こちらも御覧ください。
○大内座長 ただいま議題2「がん検診事業の評価のあり方について」に関しまして、2-1で評価についての骨子案が示されて、2-2にその事例、5大がんについての改正案を提示されています。2-3には、その都道府県用のチェックリストが5大がんについて記載されております。
では、構成員の皆様から御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
若尾構成員。
○若尾構成員 若尾です。ありがとうございます。
乳がん検診のことでちょっとお尋ねしたいことがあります。表記の中に、マンモグラフィの撮影の方向性、例えば、40歳から50歳の場合は2方向、50歳以上だと1方向でいいという情報は、受診者はほとんど知りません。このような中、こういった直接受診者に関わるような情報は、受診者は他者と比較します。「私は2方向だったよ」、「えっ、私は1方向だったよ」ということが現実に起こっています。受診者も明確に理解できるような形で評価できるようにしていただきたいです。今、都道府県の役割というところになっていますので、都道府県は管轄する全ての市区町村が同じような記述で、受診者にとって同じような情報提供ができるようにするということも中に入れていただきたいなと思います。
○高橋参考人 ありがとうございます。
ただいまいただきました御意見、特に乳がんのマンモグラフィの撮影法などを例に挙げていただきました。今回の都道府県チェックリストの改定では、市区町村が質の保たれたがん検診を提供するための情報提供、または指導などをすべきという御意見かと思います。 先ほど、若尾構成員がおっしゃられていたように、このような変更があった場合の情報共有につきましては、国立がん研究センターでは、都道府県など自治体に向けた研修を毎年行っておりまして、変更点などにつきましては、随時お知らせし、都道府県から市町村に伝える・指導する体制が整っております。ただ、それでも届いていないというご意見だと思いますので、情報伝達の方法や自治体との連携などにつきまして、より受診者の方が理解していただけるような体制を整えるように検討させていただきます。
○大内座長 ただいまの若尾構成員からの御質問。これは、指針の中に明記されているのですね。参考資料2の12ページには、40歳以上50歳未満の対象者についてはということで、2方向についての記載があります。問題は、このことが受診者に伝わっていないのではないか。これを伝えるべく、きちんとした情報を提供するということでよろしいでしょうか。
○若尾構成員 はい、そのとおりです。実施者は理解していると思いますが。
○大内座長 では、本件について対応を考えたいと思います。
ほかに御意見ありますか。
福田構成員。
○福田構成員 福田でございます。よろしくお願いいたします。
高橋先生から御説明いただいた改定案については、特段意見はございません。適切なものだと思うのですが、私の勉強不足で、1つ教えてほしいのですけれども、資料2-1の6枚目を拝見すると、そもそもこの評価の体系の中で、このチェックリストの位置づけが「技術・体制指標」ということだと思うのですが、続いてあるのがプロセスとアウトカムという言い方なので、通常ですと「ストラクチャー」という言い方を用いることが多いような気がするのですが、「ストラクチャー」と、この「技術・体制指標」というのは同じことを言っているのか、違うことを言っているのかというのを教えていただけると。
というのは、保健指導とか、ほかの保健事業の評価などでは、ストラクチャー、プロセス、アウトカム、間にアウトプットと入れる場合もあるのですけれども、という形で自治体にも説明を。我々も研修等をやっているのですが、通常はそういう視点でやりますよという説明をしているので、受け取るほうで、これは同じことを言っているのだなということであれば、それでいいですし、ちょっと違うのですということであれば、少しそこが伝わるような解説をしていただくとか、対応をもしお願いできたらいいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○高橋参考人 御意見ありがとうございます。
福田先生のご所属の国立保健医療科学院では、全国の保健師の方や保健医療に携わる方の教育を担ってられますので、参考になる意見です。
ストラクチャー、プロセス、アウトカムですが、がん検診において、ほかのがん検診以外の事業や枠組みと比べられての御意見かと思います。
今回、短期的指標として、この技術・体制指標を説明しましたが、がん検診の分野では、私よりも構成員の皆様のほうが長く携わっておられるので、この文言になった経緯というのはよく御存じかもしれませんが、この文言が長く使われており、浸透したため、記載に関しては、今回はこのような記載としながら、自治体などで、ほかの取組との比較の際に混乱のないよう、適宜状況に応じて説明したいと思います。
○福田構成員 ありがとうございます。
○大内座長 今、福田構成員が言われたことは、そのとおりなのです。これは、平成20年3月に、この文言をかなり苦労してつくったのですけれども、ほかの分野等との調整を含めて、基本的にはストラクチャーだと私も思っています。ですので、厚生労働省全体としても、そういった文言の整理も必要かと思いますが、今回の指摘を受けて、この文言についても、例えばストラクチャーとイコールに近いといったことをどこかに書き加えるような体制でいかがでしょうか。福田構成員、いかがですか。
○福田構成員 私は、そのようにしていただけると現場で混乱がないのではないかと思います。
○大内座長 ありがとうございました。
私からちょっと質問があるのですけれども、2-1の6ページにプロセス指標で5項目あって、一番下に「陽性反応適中度」という言葉が明記されているのですが、これは皆さん御存じのように、精密検査者数で発見がん数を割れば出る数値なのですね。
ところが、資料2-2の2ページで、陽性反応的中度を把握しているかは、5の(3)になります。これが削除になっています。その右側の注釈に「陽性反応的中度は国の基準値設定の対象から外れるため(予定)」となっていますけれども、そうであったとしても、私は、これは非常に重要なプロセス指標と思っています。これが全てのがん検診から外れるということは、大きな精度指標を失うことになるのではないかと危惧いたしますが、松田構成員、いかがですか。
○松田構成員 松田です。
大内座長の御指摘のとおりだと思います。陽性反応的中度というのは、基本的に精度管理の中において、精検受診率と同等に極めて重要なもの。ただし、陽性反応的中度が妥当かどうかを判断するということは、なかなか難しいという意味合いもあろうかと思いますが、これが重要であることは、私は全く異論ございません。
以上です。
○大内座長 中山構成員、お願いします。
○中山構成員 私は、これをつくる研究班のメンバーということなので、当時の意見としては、陽性反応的中度は確かに精度管理指標と言われたけれども、実際上、それをきれいに比較してどうのこうのという議論が余りされてこなかった。それはなぜかというと、がん発見ということがどうしても分子に含まれるのですが、そこの把握率がどうしても十分でないところが多いので、ちょっと難しいということで、陽性反応的中度は外したらどうだという意見を研究班のときにも出した覚えがございます。結局、がん発見というところがうまく把握できていないというところで、把握できていれば、この指標は非常にいいのですけれども、そこにちょっと問題があるというふうに意見した次第です。
○大内座長 現状ではどう考えられますか。がん発見は非常に大事なことで、それが曖昧ということは。
○中山構成員 もちろんおっしゃるとおりですけれども、我々も声を高くして、そこを上げるようにということを指摘しておりますけれども、なかなかそこがうまくいっていない。それで、陽性反応的中度だけ出して高い、低いというのも、かなり誤差のある話だと思っています。要精検率と精検受診率というところに関しては、これまで随分と議論してきたところでございますので、そこについては、かなりメッセージは伝わっているというところで、これからはがん発見をどうやって高めていくのか、それから、がん登録で把握するとかレセプトで把握するという方法もありますけれども、その辺が普及してからだと私は思っています。
○大内座長 ただ、ここで消えることは、相当、精度の質が落ちるのではないかという気がします。
高橋参考人、いかがですか。これは議論の余地はないのですか。
○高橋参考人 先ほど中山構成員がおっしゃられたように、班会議の中では、この陽性反応的中度がうまく評価や活用されていないのではないかという懸念と、がん発見率などと同様に、対象となる集団の疾患存在割合に依存してしまうので、そのような率をもって、評価するのは、がん検診の質の向上に資さないのではないかという意見がありました。
ただ、一方で、陽性反応的中度を残すべきという意見は、その話の中では検討されなかったため、再度、研究班で検討いたします。
○大内座長 がんのプレバランス(有病率)、インシデンス(罹患率)については年齢階級とか、あるいは、がん種で地域性が時にありますけれども、同じ日本人のデータを比較するのに、どうしてこれがばらつくのですか。それは、検診の精度そのものじゃないですか。なので、陽性反応適中度を削除することについては、ちょっと私は疑問だと思います。ですので、事務局とも相談させていただいて、検討させてください。
中山先生、よろしいですか。
○中山構成員 はい。
○大内座長 ありがとうございます。
ほかに本件に関しまして御質問ないですか。
欠席された構成員からの意見紹介はいいですか。
○がん・疾病対策課長補佐 事務局です。
先ほど高橋先生が、欠席されている祖父江構成員の御意見として、資料2-1の9枚目、レセプトデータの活用も併記すべきというところを御紹介いただいておりますので、そちらをもって祖父江構成員からの意見の紹介とさせていただきます。
○大内座長 ありがとうございました。
祖父江構成員のほうで、レセプトデータの活用に関する研究課題研究を今、実施されておりまして、がん登録もそうですけれども、レセプトを使った場合にかなり精緻なデータが出そうだということが分かってきました。そういったことも含めて、書き入れておくべきではないかということでした。
では、都道府県チェックリストの改定について、この方針で進めさせていただきます。
続きまして、3つ目の課題「がん検診の推進策について」に移ります。資料3について事務局より説明をお願いいたします。
○がん・疾病対策課長補佐 事務局です。
資料3を共有してください。事務局から「がん検診の推進策について」ということで議題を上げさせていただきます。
次のスライドをお願いします。スライド2枚目にございますが、現在、国としては、新たなステージに入ったがん検診の総合支援事業として、市区町村に対し、個別の受診勧奨・再勧奨や、子宮頸がん検診・乳がん検診の初年度の受診対象者へのクーポン券配布、また精密検査未受診者に対する受診再勧奨を行っています。本日は、当事業のうち、子宮頸がん検診のクーポン券配布の取組について、皆様から御意見をいただきたく存じます。
次のスライドをお願いします。
まず、現状を御報告いたします。スライド3枚目は、令和2年度の当事業の実績報告から算出した、子宮頸がん検診・乳がん検診のクーポン券利用状況についてお示ししています。40歳に配布する乳がん検診のクーポン券利用率に比べて、20歳に配布する子宮頸がん検診のクーポン券利用率は高くなく、全国平均で10%に満たない状況です。
次のスライドをお願いします。
スライド4枚目の年齢階級別の子宮頸がん検診受診率を見ますと、特に20から25歳の年齢層で受診率が低くなっています。
次のスライドをお願いします。
これまでお示ししたように、20歳のクーポン券利用率が低く、子宮頸がん検診受診率も低い状況です。しかしながら、子宮頸がんの罹患率は20歳代で上昇するため、この年齢層での子宮頸がん検診受診率の向上は、重要な課題と考えています。
子宮頸がん検診のクーポン券利用率が全国平均で10%を下回っている状況の主な原因は、20歳の年齢では、まだがん検診の必要性等について十分理解が得られていない可能性。また、居住地と住民票が異なる等の理由により、クーポン券が本人の手元に速やかに届いておらず、利用の機会を逃している可能性等が考えられます。
当事業において、クーポン券を初年度対象者に送付する意図は、子宮頸がん検診の啓発を含み、初回のみならず、その後も継続してがん検診を定期的に受診していただくような受診行動の変容を促すことです。クーポン券の利用率を高めることは、将来的ながん検診受診率の向上にもつながります。
こうしたことから、本日は、特に子宮頸がん検診について、クーポン券の利用率向上を含めたクーポン券の効果を高める方策について、皆様から御意見を頂戴し、今後の施策の参考とさせていただきたいと考えています。
事務局からは以上です。
○大内座長 ただいま資料3について説明がございました。
では、御質問等、お願いいたします。
松田構成員。
○松田構成員 松田でございます。
子宮頸がん検診の20歳から25歳の受診率が極めて低いということは、よく分かりました。ただ、以前、乳がん検診と子宮頸がん検診の無料クーポン券配布事業が行われて、その当時も利用率が余り高くなかったということがあろうかと思います。その反省を踏まえて、今度はどのようにするのかという視点が必要ではないかなと思います。
今回も、検診手帳とともにクーポン券を配ったにもかかわらず、受診に結びつかなかったというのでは、その反省を余り踏まえていないという気がするのです。それで、子宮頸がんで言うと、対象年齢は20歳が妥当なのかどうか。例えば、24歳とか26歳がいいのかとか。あと、前回の無料クーポン券のときもあったのですが、年齢が20歳だとしても、それは年度内年齢が20歳なのか、4月1日時点で20歳なのかによっても、違った面があろうかと思います。クーポン券が手元に届いても使わずに受診に至らなかったとすれば、なぜ今回受診する気がないのかという、そのような意向調査が同時になされることが必要なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○大内座長 貴重な御意見だと思います。意向調査はどうされますか。
○事務局 厚生労働省です。
調査をすることによって、実態がもし明らかになるのであれば、ぜひそれはしたほうがいいのかなと思いますが、一方で、結局、クーポン券をもらって、行かなかった人たちとなると、調査をしても回答自体も低かったりというところもあり得るのかなと思います。また、何らかの形で実態を把握するという手段を考えるというのはあり得るのかなと思います。むしろ、どういった調査をすれば、この辺りの実態というのが分かるのかというところで、アイデアがあればぜひお聞かせいただければと思います。
○大内座長 松田構成員からのもう一点は、20歳のときだけでいいのかという御質問があったのですが、確かに1回限りの配布ですと、なかなか意識が定着しにくいと思いますが、この点に関してはいかがでしょうか。事務局のほうで何かありますか。
○事務局 この辺りも、ぜひ皆様方から意見をいただきたいところでございますが、まず基本的な建て付けとしては、がん検診自体が市町村の自治事務の中に入っておりまして、基本的には、その支援、財源というものは、各自治体において確保いただくとなっております。そういったベースに加えて、さらに受診行動を促すための措置として、こういった事業を国が実施しているという建て付けになっておりますので、全部に対して、万遍なく撒くようなやり方というのはそぐわないと思っておりまして、より効果的なところにスポット的な支援をするということが必要ではないかと思っております。ちょっと突っ込んで言いますと、必ずしもクーポン券にこだわる必要性もないというのは、あると考えております。
○大内座長 松田構成員。
○松田構成員 松田です。
先ほど20歳ということがどうなのかと、ちょっと疑問を呈したのですが、場合によっては20歳じゃなくて24歳でもいいのではないかとか、26歳のほうがより妥当ではないかということも検討の必要があるのではないかという意味で申し上げました。
もう一つ、先ほどもお話ししたように、以前行った無料クーポン券事業の二の舞にならないために、今回は何か新しい視点に立って、受診率を高めるために、こんな事業を行うということがないといけないと思います。前の20歳を対象にした無料クーポン券事業と今回と何が違うのかという疑問があるのですが、その点はいかがでしょうか。
○大内座長 事務局のほうからお願いいたします。
○事務局 平成21年度から平成25年度に実施した事業の中では、5年間で全ての方に一度ずつ、まずは無料で受けていただけるようにということで、5年刻みでクーポン券を配布する事業を実施しました。一応、そのときの整理では、そのときに受けられなかった人を2年ぐらい、そういった形で実施し、全ての年代について、一定程度、一巡したという上で、今の事業としては、新たに検診の対象年齢となった20歳、40歳を対象にしたクーポン券を配布する事業を実施しているというのが、今の実施状況になっております。
ただ、実際にそういう事業として実施していても、実態としてはなかなか十分な活用がされていないという状況であるということを踏まえて、さらに効果的にこういった検診受診率向上のための効果的な策というものがないのか。それは、対象年齢を24歳、26歳にしたほうがいいのではないかであったり、受ける機会を複数回受けられるようにしたほうがいいのではないかなど、いろいろな形があり得ると思うのですけれども、どういった形がより効果的なのかということでの御意見を頂戴したいと思っております。
○大内座長 いかがでしょうか。
若尾構成員。
○若尾構成員 若尾です。よろしくお願いします。
今、対象年齢が20歳じゃなくてもいいのではないかという意見が出てしまったので、ちょっと申し上げにくいなと思ったのですけれども、もし20歳からということで進めるとしたら、成人式というのが1つのきっかけになるのではないかと思うのですね。山梨県の基礎自治体をちょっと調べたのですけれども、今年度から山梨県は2年に1回、子宮頸がんの検診を、医師会、婦人科医会、県、県施設が協力してしっかり行うということをしたので、去年した人は21歳からという形、去年していない人は20歳からという形で、年齢を厳密に考え過ぎている傾向が見えるのですが。
それで、今回こうやって検討会を開き、とりあえず子宮頸がんのクーポン券なりを使って受診率を上げるのだということを第1目標とするのであれば、日本中、男性も女性も含めた成人式のときに、子宮頸がんはヒトパピローマウイルス感染が原因で、性交渉を行うときから気をつけたほうがいいので、検診を受けましょうという形で受診を勧奨するなり、男性にも渡してもいいと思うのですけれども、クーポン券とか受診券のようなものを渡すというのも1つの案ではないかなと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○大内座長 では、検討いたしますね。
羽鳥構成員、お願いします。
○羽鳥構成員 まず、先ほど年齢の話が出ましたけれども、胃がん検診などで40から50に上げたように、このときにも厳密な学問的な検証があったと思うのです。勝手に20を24、26に変えるというのはいいのかどうかということが1つ。
それから、もう一つ、欧米では受診率が非常に高いと聞いていますけれども、何か工夫の差があるのではないか。例えば、今、政府が進めているデジタルトランスフォーメーション、あるいはマイナンバーとか、そういうものを活用しながら、もう少し周知する方法はたくさんあると思うので、それを徹底したらどうかと思います。住所と実際に住んでいる住所が異なる方もおられるでしょうから、周知を徹底するのは大変だと思います。
20を、例えばある程度落ち着いた24、26に変えてもいいのですけれども、それは学問的な妥当性があったら、それをやってもいいと思うのですけれども、そうでないならば、きっちりした議論が必要だろうと思います。
あとは、いろいろな周知の方法、それから受診したかどうかの把握をマイナンバーできっちり追うとか、そういう工夫を、まさにがん対策は悉皆性を目指して、いろいろな事業をやっているわけでありますので、マイナンバーを活用しない手はないと思います。
以上です。
○大内座長 中山構成員。
○中山構成員 中山です。
今、羽鳥構成員のほうから意見が出ましたけれども、アメリカやイギリスでも、全体の受診率は高いのですけれども、20代前半の受診率がかなり低くて、そこをどうやって上げるのかという研究もやられているので、日本だけの問題ではないと思うのです。ただ、この年齢の人が受けるというよりも、そもそもヘルスリテラシーということで、御自分がこんな病気にかかることというのは全く知識がないだろうと思います。
今、私はHPVワクチンの研究班に幾つか入っているのですけれども、そういうところでは、ワクチンをどう思うとか、そういうふうなインタビューとかアンケート調査を、SNSを使ったり、あるいは看護学生さんにインタビューしたりということでいろいろやっているのですけれども、そういう方々でさえ、ワクチンの副反応の話と検診の話をごちゃごちゃに理解して、検診を受けたらああいう副反応が起こるという誤解さえある状況なので、かなり難しくて、情報提供をきっちりしないと無理だなというのは実感しているところです。
だから、いきなり施策としてクーポンを配るというよりも、まずそういう若い世代の人たちがどういう知識を持って、何を誤解しているのかというのを調査して、それに対応して、どういう介入をしたら、どのぐらい受診率がアップしますかという研究をやってみて、それがうまくいったら、それを施策としてどんと投入するというのがいいのかなと思います。
○大内座長 がん検診の情報提供の在り方と、それから、羽鳥構成員から言われた統計ですね。マイナンバーのお話が出ましたけれども、これはいずれいろいろなデータベースが突合されていくのだろうと思いますけれども、もう少し狙いを定めて、特に今回の子宮頸がん検診の啓発について、もう少し踏み込んでいけないかということでございます。
田中構成員、どうぞ。
○田中構成員 大阪市、田中です。
自治体の立場から発言させていただきますと、大阪市では無料クーポンの利用率の増加も含め、若年層の受診者数の増加を図るために、先ほどお話でも出ましたように、成人式での啓発ビラの配布ですとか、一部の大学でがん検診だけではないのですが、複数の健康行動の啓発と併せて子宮頸がん検診の勧奨を行っています。具体には、ビラの配布とか短時間の動画の放映などを行っているところです。一定の効果はあるのかなと考えておるのですけれども、残念ながら、その受診者数の増加というところがはっきりと分かるようなところまでは行っていないかなと考えています。
現場の実感としては、子宮頸がん検診を知らない方というのがとても多いのではないかと思っています。ですので、20歳のクーポン利用を促進するのであれば、10代後半への教育や啓発というところが重要ではないかと考えています。そういった意味では、今後、大学生などの学生さんに対して、どのように効果的にアプローチしていったらいいのかなというところを今、考えています。
例えば、個人的な考えで言いますと、先ほど申し上げた大学での啓発なのですけれども、動画を見ておられた学生さんは一定数おられたということですので、その動画を見てもらうために、例えば学生さんのメールとかライン等のSNSのほうに何かしらのアプローチがもしできるとすれば、動画から自治体へのホームページの閲覧、ひいては受診につながっていく可能性はあるのかなと考えています。もちろん、その前提としましては、大学の協力を得られるということなのですけれどもね。
また、利便性の向上ということで言いますと、資料の5ページに受診されていない理由・原因というところで、居住地と住民票が異なる等の理由により、クーポン券が本人さんの手元に届いていなくて、利用の機会を逃している可能性と書かれていますけれども、これは十分あると思います。ですので、こういう居住地と住民票が異なっておられる方のために、住民票のある自治体の医療機関だけではなくて、ほかの自治体の医療機関などでもクーポン券で受診できるということであれば、受診者数は伸びるのではないかと考えています。
先ほどから、20歳でなくて、24、26の方にクーポンというところ。自治体としても、正直言いまして、20歳の方に受診させるというのはなかなか難しい面があるかなと言っているところですので、自治体としても20歳だけではなくて、24、25、26辺りの方にも推進事業をさせていただければありがたいかなと考えています。
以上です。
○大内座長 では、福田構成員。
○福田構成員 福田でございます。
私、今、田中構成員がおっしゃったことと全く同じ考えでありまして、20歳ぐらいの女性のアプローチを考えたときに、大学というのは1つ大きな場ではないかなと思っています。今、既にお考えということなので、ああ、そうなのかなと思ったのですが。何となく情報収集をホームページとかでしていても、一部の自治体においては、既に大学と県が連携してセミナーをやったり、場合によっては体験検診をするみたいなことを書いているところもあるので、ビラの配布等だけではなくて、時間をかけて伝えていくということもやっているようですので、例えばそういう事例で、結果としてどうなったのかという情報も収集しながら、大学と自治体が連携しながらやっていくような仕組みを推進するというは、1つあるかもしれないなと思いました。
これは1つ課題でありました、居住地と住民票が違う。1つの要因が、大学に行っているのだけれども、住民票を移していないというのもあると思うので、そういうものを聞けば、地元の実家のほうに連絡して、クーポンで来ているのとか、そういう話になっていれば、また受診率にも影響するのではないかということで、私も大学へのアプローチというのはあるのではないかと思って、言おうと思っていました。
○大内座長 欠席されている方々からの御意見もありますので、事務局のほうから紹介願います。
○がん・疾病対策課長補佐 本日御欠席されている中川構成員からの御意見です。クーポン券の使用可能期間を長く設定しておき、例えば高校卒業時にクーポン券を渡して、対象年齢となる際にがん検診を受診いただくというのはいかがかという御意見をいただいています。その際、できれば子宮頸がん検診の受診は、20歳で受診していただくことを推奨するようにということでございました。
あと、祖父江構成員からは、子宮頸がん検診の提供の機会を、地域のみならず、職域また大学にも拡大することで、受診率の増加が期待できるのではないか。特に、職域では子宮頸がん検診を提供していないところが多いので、そのような御意見をいただいております。
事務局からは以上です。
○大内座長 皆様からの意見、20歳のときの1回、初年度のみということに関して、機会を増やすべきでないか、期間を延ばすべきでないかということ。
もう一点は、啓発ですね。大学における教育。ちょうど学生時代あるいは就職のときですので、大学や職域においての啓発等も関わってくると思います。
そのような形で御意見いただいたということで、よろしいでしょうか。
若尾構成員。
○若尾構成員 今、啓発する年齢、大学という言葉が出ましたが、来年度から高校のがん教育が義務化されます。ですので、高校生は20代ということはまずないですけれども、高校生のときから子宮頸がんの要因とか、異形成で見つけられるというようなことなどをあらかじめの教育として提供できるようになると思いますので、教育する機関が大学だけを視野に入れるのではなくて、高校生からの予備知識ということも含めて、子宮頸がんの受診率につながるような施策と結びついていったらいいのではないかなと思います。
○大内座長 よろしいでしょうか。
では、次の議題に移らせていただきます。最後の議題になりますが、「新型コロナウイルス感染症が発生している中でのがん検診等の状況について」と題しまして、資料4と参考資料5に基づいて、高橋参考人から御報告をお願いいたします。
○高橋参考人 国立がん研究センターの高橋と申します。
本発表では、資料4に沿って「新型コロナウイルス感染症によるがん診療及びがん検診などへの影響について」の中間報告をいたします。それでは、資料4を御覧ください。こちらは、厚生労働科学研究、「新型コロナウイルス感染症によるがん診療及びがん検診などの受診状況の変化及び健康影響の解明に向けた研究」班の成果の一環として発表いたします。
こちらの研究班では、新型コロナウイルス感染症の影響を、がん検診の受診状況やがんの医療の受診行動などを検討項目として解析することを目的としております。
表の左側にあります検討項目は、がん検診の受診者数、こちらは御協力いただきました日本対がん協会、全国労働衛生団体連合会、聖隷福祉事業団、宮城県対がん協会のデータを基にお伝えいたします。
また、本日はまだ発表できないのですが、今後検討する項目といたしまして、がんの罹患者数、こちらは院内がん登録による罹患者数の推計。また、受療行動としては、Webによる全国調査やJMDCデータ、並びにがんの診療状況の調査などを検討しています。こちらの報告は、恐らく11月以降ぐらいにはまとまってくる予定ですので、改めて御報告させていただきます。

それでは、次のスライドをお願いいたします。こちらは、聖隷福祉事業団における、がん検診受診者数の推移です。
前回の検討会では、聖隷福祉事業団は12月までのデータでの報告でしたので、左の棒グラフの中で赤い2020年度の棒グラフの1月、2月、3月が追加された情報です。こちらの対前年度比が緑色の折れ線グラフで示しますが、1月、2月、3月と、100%を超える月が増えていることから、左側の図において、がん検診の受診者数の対前年同月比で見ますと、4月、5月が減少しましたが、6月以降は100%以上という状況です。
右側の表ですが、聖隷福祉事業団では、住民検診と職域検診を別に計上しており、2020年度と2019年度の数が算出されたため、対前年度比お示しできます。
こちら、対前年度比、一番右側のデータを見てまいりますと、住民検診においては、5つのがんにおいて、おおよそ90%。ですので、2019年度に比べると、2020年度は、住民検診は1割減くらいの受診者数でした。
続いて、下の表ですが、こちらは職域検診となり、右側の対前年度比をみると、おおよそ100%ですので、2020年度も2019年度と同程度の数のがん検診受診者数であったことが、聖隷福祉事業団のデータから分かります。
では、次のスライドをお願いいたします。続きまして、こちらは宮城県の対がん協会です。前回の検討会で御報告したのは、対がん協会の29支部のデータでしたが、対がん協会に問い合わせたところ、まだそれ以降は追加していないようでしたので、既に集計が終わっている宮城県の対がん協会のデータを報告します。対がん協会からの前回の報告では、7月までのデータでしたので、8月以降がその進捗になりますが、7月の時点では、前年同月比は少ないという状況でしたが、その後は数を増やし、100%を超える月が続きました。
右側の表は肺がんを除く4つのがんとなりますが、対前年度比となります。先ほどの聖隷福祉事業団と同じような傾向であり、住民検診ではおおよそ1割減、職域検診では前年度と同じぐらいでした。住民検診と職域検診を比べると、職域検診のほうが年度で見たときには多く、4月、5月は減少したものの、年度で見ると、おおよそ例年並みに数は回復しているという状況でした。
次のスライドをお願いいたします。こちらは、日本総合健診医学会と全国労働衛生団体連合会のデータであり、がん検診だけではなくて、健診すべての受診者数の推移です。数が非常に大きいので、がん検診だけではなく、特定健診などを含めた日本全体の健診の動向をつかむのには、非常に有用なデータです。
前回は、9月までのデータでしたので、10月以降がその進捗となりますが、10月以降3月まで100%以上で終えたという状況でした。
健診の対象別で集計されており、事業者健診、特定健診、人間ドック、学校健診、その他健診とありますが、がん検診は、一番下のその他健診の中に含まれます。その他健診ががん検診として見ると、右側の対前年度比では81.4%ですので、おおよそ2割減でした。

まとめますと、2020年の4月から5月は、がん検診及び健診受診者数は、前年同月と比べ大幅に減少しました。
2020年6月以降は、前年同月と同程度以上に受診者数は回復して、年度で比較した場合の2020年度のがん検診の受診者数は、2019年度と比べて、およそ2割から0割減であり、職域検診に比べて住民検診の減少が大きいという状況でした。
今後、がん検診以外の受療行動や罹患者数などのデータが把握できたら、また随時御報告させていただきます。

○大内座長 参考資料5についての説明は。
○高橋参考人 すみません、参考資料5は、国立がん研究センター中央病院の診療データの推移となります。こちらは、がんに特化した病院ですので、全国の状況を反映するような悉皆性のあるデータではありませんが、1つの参考として解釈いただければと思います。
5年度分のデータをこちらに計上しておりまして、コロナの影響を受けた2020年度は、赤で示しております一番下の枠で数を示しています。データの項目は1から8までで、入院の平均患者数、外来患者数、新入院患者数などとなります。これらは、2020年度は、それまでの年度と比べて減少しました。平均の在院日数や手術件数、内視鏡、内視鏡の治療などの件数も、およそ1割から2割ぐらい減ったという状況です。
これらの月別の変化を棒グラフで示します。左のバーから、年度が2016から2020年度で、2020年度はオレンジ色のバーで示しておりますが、特に4月と5月が、ほかの青のバーに比べるとオレンジのバーが少し低くなっていて、6月、7月と月を経るごとに、徐々に例年どおりに持ち直しています。
これは、入院1日平均患者数と外来1日平均患者数のデータですが、新入院の患者数、並びに1日の初診患者数も同じような傾向です。ただ、項目によっては、4月、5月の落ち込みが大きいものあり、外来1日平均初診患者数は、かなり減少しました。
平均の在院日数および、手術件数も、4月、5月は減少しましたが、その後徐々に増加しました。
内視鏡の件数については、専門学会や厚生労働省から、内視鏡は控えるよう通知されたために影響を大きく受けて、4月、5月は大きく減少しましたが、それ以降は例年並みに回復しました。1つの施設のデータですので、参考までに紹介いたしました。
○大内座長 ありがとうございました。
それでは、資料4、参考資料5について、皆様から御意見をいただきたいと思います。
松田構成員。
○松田構成員 松田です。
高橋参考人が御説明いただいたとおりだと私は思います。福井のデータを見てみましても、職域の検診は実はほとんど減っていません。むしろ、検診機関によっては、前年度より増えているところもあるぐらいです。あとは、住民検診は集団検診と個別検診に分かれるのですが、集団検診では密を避けないといけないということで、受診の人数を減らしているという関係上、かなり落ち込みが大きいところが多いのではないかなと思います。
一方で、個別検診は余り減っていません。したがって、それぞれの検診機関や事業団が誰を対象にした検診を行っているかによって、おのずと数字が異なってしまいます。このようにコロナの影響を分析する際には、日本全国で一体どの程度がん検診が行われているかという数字をしっかりと集計する仕組みがあって、それでどう変化したのかを見ていく必要があろうかと思います。
以上です。
○大内座長 ほかに御意見ありますか。
中山構成員。
○中山構成員 中山です。
昨日、ほかの都道府県の同じような会議で意見が出たのですけれども、受診率の低下は予想よりも小さいけれども、精密検査を受けていないのではないかという意見が検診をやっている機関から出まして、特に胃の内視鏡とか大腸の内視鏡というのは、手近で受けられる場合もありますけれども、都市部とか県庁所在地に出ていかないといけないので、それをコロナの感染患者が多いところに出たくないということで、精密検査を受けない方が増えているのではないかという意見が出たのです。
ただ、そのデータは入手に時間がかかるので、ちょっと分からないのですけれども、検診は受けたけれども、精密検査は余り受けていないという懸念があるので、ちょっとそこは不安に思っています。
○大内座長 受療行動について萎縮しているという雰囲気がございます。高橋参考人にお伺いしたいのですが、精密検査受診率等のデータについては、どのようなスケジュールでこれから把握されていくのでしょうか。
○高橋参考人 今、いただきました松田構成員と中山構成員の御懸念の精密検査の受診者数・受診率、並びに検診の受診機会別の受診者数や精密検査の受診率、また要精検率などについて地域保健・健康増進事業報告では、公表までにかなり時間がかかります。御質問の予定に関しては、即時性があるデータでは、御協力いただいております聖隷福祉事業団や全衛連、対がん協会などの検診実施機関から頂くことを想定しております。
これらのデータの弱点としては、悉皆性に欠けるため、地域保健・健康増進事業報告などのデータが出次第、お伝えいたします。
日本では、要精検率や精検受診率などのデータについて、ここの場で議論ができないことがもどかしいということを松田構成員もおっしゃっておられましたが、例えばオランダなどでは、検診の受診者数などのデータが国で一元管理されており、月ごとのデータが、およそ半月後には論文として報告できる、即時性のあるデータをエビデンスにしているというところもあります。
そのため、今回の検討事項ではありませんが、がん検診に関するデータの取扱いに関しても、特に有事の際は適切な政策を行うための基礎資料として非常に重要なものとなりますので、体制整備について検討することは重要かと思います。
御質問にあったデータは、協力いただいている検診実施機関からの分析の進み具合にもよりますが、順次報告させていただきます。
○大内座長 諸外国の事例は結構出てきていまして、今、高橋参考人が触れられたオランダのデータは週ごとですね。
○高橋参考人 そうです。
○大内座長 オランダでは毎週更新されていまして、そういった集め方もやろうと思えばできるということが分かってきましたので、ぜひその流れをくんで、日本のがん検診受診状況あるいは治療状況についても、スピーディーに把握していければと思っております。
ほかに御意見。
羽鳥構成員。
○羽鳥構成員 日本医師会の羽鳥ですけれども、昨年の4、5、6月辺りは、内視鏡検診をストップしていたところが多かったと思うのですけれども、それを皆さんの御努力で上部内視鏡に関しては取り返してきたと思うのですが、さすがに下部内視鏡はちょっと遅れたのかなということも思います。
検診のレベルとして、容易さという意味だと、胸のレントゲン、検便などについては、比較的コロナの影響を受けにくい検診だと思うのですけれども、内視鏡の場合は飛沫をダイレクトに被検者が浴びてしまう可能性があるので、ストップがかかったと思います。今、さすがにしっかりした防御体制を取りながらやっていると思うのですけれども、先ほどの報告は、その影響も1年たってみれば取り返したということでよろしかったのですね。そういう意味でも、現場の先生方は非常に頑張っているということが分かって、よかったと思います。
ありがとうございました。
○大内座長 高橋参考人、どうぞ。
○高橋参考人 ありがとうございました。回答です。
羽鳥構成員のおっしゃるように、確かに第1回目の緊急事態宣言の後の影響というのは、2020年4月、5月に大きく受けておりますが、その後3回目、現在も第4回目の緊急事態宣言下ですが、その2回から3回、4回目の緊急事態宣言の影響というのは、大きくないように思います。その理由としては、それぞれの感染予防対策や学会・医師会などからの情報の周知など、医療と検診の連携などがある程度進んで、当初心配されていたよりも影響を少なくできたという評価もできるかと思いますが、結論づけるには少し早いかと思いますので、1つの意見として述べさせていただきます。
○羽鳥構成員 ありがとうございました。
もう一点、高橋先生が御指摘された検診のリアルデータというのは、とても大事だと思いますので、ぜひこの会から仕組みを提案していただければと思います。ありがとうございました。
○大内座長 ほかに御質問等ございますか。
中野構成員。
○中野構成員 検診とは離れてしまいますが、がんセンターのデータの中で、平均在院日数が落ちていますね。これは、どういうふうに理解したほうがいいのでしょうか。なぜ在院日数まで落ちていくのかということについて教えていただければと思います。
○高橋参考人 ありがとうございます。
実は、その点は気になっておりましたが、まだ詳細な分析はできておらず、推測となりますが、この間、国立がん研究センター中央病院も感染者の受入病院としての機能を果たすために、コロナ対策の病床を準備する必要がありました。そのような影響などにより、在院日数が長くなる状況を取りにくくなったのではないかと推測します。○中野構成員 ありがとうございました。
○大内座長 若尾構成員。
○若尾構成員 本論からちょっと外れてしまうかもしれないのですけれども、思っていたよりもコロナに対する影響が、全部を通して見ると少ないなということを見ると、関係者の御努力というのはとても大変なものだったと思いますので、まず1点目は、そこに敬意を表したいなと思います。受診者としてはありがたいことです。
2点あって、もう一点目なのですけれども、こうやって宮城県とか聖隷とかのグラフを出していただいた場合、がん検診、例えば宮城のデータの中では肺がん検診が入っていないのです。4がんになっています。それから、検診受診者の推移で日本総合健診医学会などは、その他の検診の中にがん検診が入っているということだったのですけれども、こういった見える化されたデータを一般の国民が見たときに、果たしてがん検診の項目がうまく国民に通じるかと言われると、がん検診は4がんなのだろうか、5がんなのだろうか、がん検診なのだろうか、総合健診なのだろうかという戸惑いがあります。
なので、こういうデータを出すときには、少なくとも項目はそろえていただいたほうがいいのではないか、伝わりやすいのではないかと思うのですけれども、この点、考慮していただけると、一般国民としてはありがたいです。
○高橋参考人 ありがとうございます。
御懸念の点は、そのとおりだと思います。1点、この検討をする際に必要としていたのは即時性です。先ほども議論がありましたが、即時性のあるデータの収集体制や解析のシステムは、残念ながら日本では整備されていない状況です。今回、報告した3つの団体は、データの集計も非常に早く、加えて議論しうる分類も集計ができるという点では、非常にすばらしいデータの収集システムをお持ちだと思います。
若尾構成員がおっしゃるように、がん検診に特化した集計の仕方を、平時から準備する必要があると思います。 今後、国策として、がん検診データの包括的な収集システムの構築も議論の場に上げてもよいのではないかと思います。
以上です。
○大内座長 では、本日の議論は以上といたします。
事務局から連絡事項をお願いいたします。
○事務局 本日も様々な御意見ありがとうございました。
次回以降の検討会の詳細につきましては、また調整の上、改めて御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。
○大内座長 それでは、本日の検討会をこれにて終了したいと思います。構成員、また参考人の皆様におかれましては、誠にありがとうございました。
 

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