2021年7月28日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和3年7月28日(水)17:00~

出席者

出席委員(18名)五十音順
(注)◎部会長 ○部会長代理
欠席委員(3名)
行政機関出席者
  •  鎌田光明(医薬・生活衛生局長)
  •  山本史(大臣官房審議官)
  •  吉田易範(医薬品審査管理課長)
  •  新井洋由(独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事・審査センター長事務取扱)
  •  池田三恵(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監) 他

議事

○医薬品審査管理課長 ただいまから、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会のWeb会議を開催させていただきます。本日はお忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。この度の医薬品部会についても、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、Webでの審議とさせていただいております。
 本日のWeb会議における委員の出席状況です。岡委員、小崎委員より御欠席との連絡を頂いております。また飯島委員、佐藤直樹委員、平石委員は遅れて御出席いただけると認識しておりますので、現在のところ当部会委員21名のうち、16名の委員がこのWeb会議に御出席いただいているという形になり、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
 続いて、事務局に人事異動がありましたので御報告いたします。医薬品医療機器総合機構医薬品安全対策第一部長に、堀内直哉が着任しております。よろしくお願いいたします。
 部会を開始する前に、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について、御報告をさせていただきます。薬事分科会規程第11条においては、「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」というように規定されております。今回、全ての委員の皆様から、薬事分科会規程第11条に適合する旨を御申請いただいておりますので、報告をさせていただきます。委員の皆様には会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしておりますけれども、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。また、本日はWeb会議ですが、いつものように新型コロナウイルス感染拡大防止のため、説明者においてはマスクを着用したまま説明させていただいておりますので、御了承いただければと思います。それでは森部会長、以降の進行をよろしくお願いいたします。
○森部会長 それでは、本日の審議に入らせていただきます。まず、事務局から資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告を行ってください。
○事務局 それでは、本日のWeb会議に係る資料の確認をさせていただきます。本日はあらかじめお送りした資料のうち、資料No.1~資料No.17を用いますので、お手元に御用意いただけますか。このほかに、資料No.18として審議品目の薬事分科会における取扱い等の案を、資料No.19として専門委員リストを、資料No.20として競合品目・競合企業リストを、事前に電子メールにてお送りしております。また、直前の送付となりましたが、その他資料として、不妊治療に関する資料をお送りしております。そちらも御準備をお願いいたします。なお、システムの動作不良などがありましたら、会議の途中でも結構ですので、事務局までお申し付けください。
 続いて、本日のWeb会議における審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告させていただきます。資料No.20の1ページを御覧ください。まず、「フェントステープ」です。本品目は、「非オピオイド鎮痛剤で治療困難な中等度から高度の疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 2ページを御覧ください。「ウプトラビ錠」です。本品目は、「外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 3ページを御覧ください。「ベルケイド注射用」です。本品目は、「全身性ALアミロイドーシス」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 4ページを御覧ください。「フォシーガ錠」です。本品目は、「慢性腎臓病」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 5ページを御覧ください。「ダラキューロ配合皮下注」です。本品目は、「全身性ALアミロイドーシス」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
 6ページを御覧ください。「ラニビズマブBS」です。本品目は、「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性及び病的近視における脈絡膜新生血管」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 7ページを御覧ください。「フェンフルラミン塩酸塩」です。本品目は、「ドラベ症候群に伴うてんかん発作の治療」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 8ページを御覧ください。「ボソリチド」です。本品目は、「骨端線閉鎖を伴わない軟骨無形成症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 9ページを御覧ください。「ナイキサン錠」です。本品目は、「非ステロイド性抗炎症剤」で、同様の薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。
○森部会長 今の事務局からの御説明に、特段の御意見等はありませんか。それでは、本Web会議の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の了解を得たものとさせていただきます。それでは、委員からの申出状況について報告してください。
○事務局 薬事分科会審議参加規程第5条及び第11条に基づく各委員からの申出状況は、次のとおりです。議題1の「フェントス」は、退室委員、議決に参加しない委員はともになし。議題2の「ウプトラビ錠」は、退室委員なし、議決に参加しない委員は佐藤直樹委員、代田委員、武田委員です。議題3の「ベルケイド」は、退室委員、議決に参加しない委員はともになし。議題4の「フォシーガ」は、退室委員なし、議決に参加しない委員は佐藤直樹委員です。議題5の「ダラキューロ」は、退室委員、議決に参加しない委員はともになし。議題6の「ラニビズマブ」は、退室委員なし、議決に参加しない委員は大森委員、佐藤直樹委員、代田委員、武田委員、長谷川委員です。議題7の「フェンフルラミン」は、退室委員なし、議決に参加しない委員は大森委員、川上委員、武田委員、宮川委員です。議題8の「ボソリチド」は、退室委員、議決に参加しない委員はともになし。議題9の「ナイキサン」は、退室委員なし、議決に参加しない委員は大森委員、川上委員、佐藤直樹委員、武田委員、長谷川委員、宮川委員です。以上です。
○森部会長 今の事務局からの御説明に、特段の御意見等はありませんか。よろしければ、皆様に確認いただいたものといたします。
 本日は審議事項9議題、報告事項8議題となっております。それでは、審議事項の議題に移ります。議題1について、機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料No.1、医薬品フェントステープ0.5mgほか5品目の製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明いたします。資料No.1の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、全24ページの通し番号で5ページ、「1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。本剤は、強オピオイド鎮痛剤であるフェンタニルクエン酸塩を有効成分とする経皮吸収型製剤であり、本邦において、成人におけるがん疼痛及び慢性疼痛に関する効能・効果で承認されております。今般、小児がん疼痛患者を対象とした国内臨床試験により、本剤の有効性及び安全性が確認されたとして、がん疼痛に対する小児の用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。なお、海外において本剤が承認されている国又は地域はありませんが、欧米などにおいては、本剤とは異なるフェンタニル貼付剤が、小児がん疼痛を含む適応で承認されております。
 本申請の専門委員として、資料No.19に記載されている5名の委員を指名しております。
 本品目の審査の内容について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。審査報告書の通し番号9ページの「7.R.1有効性について」の項を御覧ください。本剤の小児がん疼痛に対する臨床開発に当たっては、小児がん患者数は成人がん患者数に比べて極めて少ないことも踏まえ、「小児集団における医薬品の臨床試験に関するガイダンスについて」及び「小児集団における医薬品開発の臨床試験に関するガイダンスの補遺について」を参考に、小児がん疼痛患者における薬物動態データを取得した上で、成人がん疼痛患者を対象とした臨床試験の有効性データを小児がん疼痛患者に外挿する計画とされました。この計画に基づき、2歳以上19歳以下の小児がん疼痛患者を対象とした臨床試験は、主に薬物動態及び安全性について検討し、有効性については補足的に検討することとされ、非盲検非対照試験として実施されました。
 小児における薬物動態の結果について、審査報告書の通し番号7ページの表2を御覧ください。年齢区分別の用量0.5mgに基準化した血清中フェンタニル濃度について、過去に実施された20歳以上の成人患者を対象とした臨床試験の結果と比較したところ、年齢区分が6~14歳及び15~19歳の患者では、20歳以上の患者と同程度でしたが、年齢区分が2~5歳の患者では、20歳以上の患者と比べて約1.6倍でした。当該結果に加え、海外で承認されているフェンタニル貼付剤の米国の添付文書において、1.5~5歳の小児では、成人と比較して血漿中フェンタニル濃度が約2倍になり、より年齢の高い小児の薬物動態パラメータは成人と類似すると記載されていることも参考にすると、本剤を2~5歳の患者に投与した際の血清中フェンタニル濃度は、同一用量における成人患者の2倍程度高くなる可能性があり、また、6歳以上の患者においては、成人の患者と同程度になると推察されました。
 続いて、審査報告書の通し番号11ページの一番下の段落を御覧ください。同一用量の本剤を投与するときに、2歳以上の小児においても、少なくとも成人と同程度以上の曝露が得られると考えられたことなどから、2歳以上の小児がん疼痛患者に対して、成人の前治療オピオイド鎮痛剤からの切替え患者を対象とした臨床試験における有効性データを外挿することに大きな問題はないと考えました。なお、小児がん疼痛患者を対象とした臨床試験における各患者の有効性の結果を、同ページの表7に示しております。症例数は限られているものの、前治療オピオイド鎮痛剤から本剤に切り替えたときの疼痛管理に大きな支障は生じていないことを確認いたしました。
 以上から、成人がん疼痛患者と同様に、ほかのオピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する場合における、2歳以上の小児がん疼痛患者に対する本剤の有効性は期待できると判断しました。
 次に、安全性について御説明いたします。審査報告書の通し番号12ページの表8を御覧ください。成人を対象とした臨床試験と比較して、小児では傾眠の発現割合が高い傾向にあり、特に6歳未満の患者においてのみ認められましたが、それ以外に安全性上の懸念は認められませんでした。したがって、現行の添付文書における注意喚起に加えて、6歳未満の患者などでは傾眠の発現により注意するとともに、意識状態及び呼吸状態を含め、患者の状態について観察を十分に行う旨を注意喚起することで、2歳以上の小児がん疼痛患者における本剤の安全性は許容可能と判断しました。なお、小児がん疼痛患者を対象とした臨床試験に組み入れられた症例数は限られていることから、製造販売後には、小児がん拠点病院及び小児がん連携病院などにおける登録期間中の全投与症例を対象とした特定使用成績調査が実施される予定です。
 最後に用法・用量について、審査報告書の通し番号17ページの「機構は」から始まる段落を御覧ください。先ほど御説明した、小児がん疼痛患者を対象とした臨床試験における薬物動態及び安全性の結果を踏まえ、6歳以上の小児に対する初回貼付用量は、成人と同様に、前治療オピオイド鎮痛剤の用法・用量を勘案し、0.5mg~6mgから選択することとした上で、前治療オピオイド鎮痛剤から本剤への切替えに当たっては、成人患者と同一の換算表を用いて初回貼付用量を設定することに大きな問題はないと判断しました。2歳以上6歳未満の患者については、本剤の添付文書で成人における推奨初回貼付用量の上限が6mgとされていること、6歳未満の患者では、同一用量を投与した際の血清中フェンタニル濃度が成人の2倍程度になる可能性があることを踏まえ、初回貼付用量として2mg超を推奨しないことが適切と考えました。その上で、6歳未満の患者において傾眠の発現割合が高い傾向であったことに関する適切な注意喚起を行うことで、初回貼付用量として0.5mg~2mgに切り替える際、基本的には成人と同一の換算表を用いることに大きな問題はないものの、患者の状態などに応じて換算表よりも低い用量への切替えも考慮する旨を添付文書において注意喚起する必要があると判断しました。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本申請は新効能・新用量医薬品としての申請であることから、本申請に係る効能・効果及びその用法・用量の再審査期間は4年とすることが適切と判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。説明は以上となります。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 では、委員の先生方から御質問等がありましたらお願いいたします。
○堀委員 堀です。今回のフェントステープは、2歳以上の小児に対しても適応になったということで、幾つか質問をさせていただきます。まず1点目は、特に2歳児の小児患者において、ほかのオピオイド鎮痛剤で治療困難な中等度から高度のがんの疼痛に対して切り替えることが条件と理解しました。そこで、大変素朴な質問で恐縮なのですけれども、2歳児と言いますと、いつも申し上げているように、正確に自分の痛みを伝えることが難しい、その場合、オピオイド鎮痛剤で治療困難な疼痛というのを、どのような基準で主治医の先生は切替えという判断をなさるのか、教えていただきたいと思います。お願いします。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただき、ありがとうございました。効能・効果として記載されている非オピオイド鎮痛剤で治療困難な場合については、どのような基準で判断するのかという御質問と理解しました。具体的にどのような指標で、どのようになったら効果不十分と判断するのかについて、具体的に決めることは難しいと思っております。お子さんの保護者あるいは医師において、患者さんの状態等を確認していただきながら、また、患者さん自身の言葉も聞きながら、非オピオイド鎮痛剤で疼痛管理がなかなか難しいと御判断された場合、本剤が治療選択肢に入ってくると理解しております。
○堀委員 分かりました。ただ、痛みを伝える方法というのが、患者が6歳以上の方であれば、例えばどこが痛む場所があるか?とか痛みの状況を図る場合、よく10段階で痛みの度合いを言ってくださいとか、顔の表情など、いろいろ確認の方法はあるかと思うのです。しかし、2歳児の場合、その説明を子供自らするのは非常に難しいと思うのです。そのためそこの痛みに関しては、親としても主治医の判断の言葉を信じるしかないのです。ですから、主治医から「痛みの症状はこういうことがあるんだよ」というインフォームドコンセントが、すごく大切になるということを分かっていただきたいと思い、質問させていただきました。
 それに関連するのですけれども、この資材に関しても質問をさせていただきます。添付文書の9ページの14の1の3を御参照ください。ここでは、本剤の使用開始に当たって、患者及び保護者に対して、具体的な使用方法や注意点、保管方法などを「患者及び保護者向けの説明書を用いて指導すること」と書かれていました。この「患者及び保護者向け」の「及び」という言葉の解釈をお聞きいたします。これは患者向けと保護者向けと、別々に資材を作成していただけると理解してよろしいのでしょうか。お答えをお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。資材自体は、お子様用と保護者用とが同じ文書になっております。その中で、「このお薬を使うあなたへ」というページと、「保護者の方へ」というページと、二つに分かれて作成されております。
○堀委員 ありがとうございます。私は、どちらかと言うと、保護者向けのオリジナルの資材を単体として作成していただきたいと要望いたします。というのは、先ほどもお伝えしたように、2歳児では自分の痛みの強さを表すことが非常に難しいと思うのです。痛みの強さなど、例えば副作用に対して、傾眠もそうですけれども、2歳児の場合、どの程度の度合いで、どの程度の長さやタイミングで傾眠が起きたら副作用なのかというのは、保護者の立場から考えると、非常に難しいように思えるのです。そのときに、やはり患者向け、それがもう判断できる年代の方向けの資材と、あくまでも子供を見て判断する保護者向けの資材というのは、今おっしゃったように別々に書かれているとしても、非常に判断基準も迷うように思います。ですので、できれば保護者向けの単体の資材で、特に傾眠の副作用の問題や、どのようなことに対して注意を払ったらいいか、例えば2歳児だと、まだまだいろいろなものに興味を持って口に入れたり、触ったり、特にこのように剥がしたりするテープに関しては、シールが大好きな子供にとってみると、剥がしたり付けたりすることに、非常に興味があると思います。そうしたことを考えた場合、やはり患者向けだけではなく、保護者向けのオリジナルの資材を作っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘いただきましてありがとうございます。傾眠については、御指摘のように、どのような状態になったら気を付けないといけないかを保護者の方で御判断いただくのは難しい部分があると思います。資材では、保護者が単独で判断するのではなく、何かしら気になる症状が出たら医療従事者にすぐに連絡するよう促す内容になっております。
○堀委員 なるほど。今おっしゃったような気になる様子というのが、保護者にとってみると非常に微妙なのです。簡単な言葉で表現できるのですけれども、具体的にどういうことなのかが分からない。それが保護者が非常に不安に思うことだと思いますので、可能でしたら、本当に事細かいことを例という形で具体的に表していただけると有り難いと思います。私からは要望及びお願いです。以上です。ありがとうございました。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘いただきましてありがとうございます。先生がおっしゃるところは非常に重要だと我々も認識しております。実際の資材では、「次のような症状がでた場合」として、息を吸うのが苦しい、回数が不規則になる、浅くなる、遅くなる、意識が薄れる、顔色が悪くなる、不安になる、混乱するなど、具体的な症状を例示した上で、そのような症状が出た場合は医療従事者に連絡をしましょうと注意喚起されているので、現時点の資材の中で、できる限りのことは対応されていると理解しています。
○堀委員 2歳児から適応可能というのは、非常に有り難いことなのですけれども、それを見守る保護者も、本当に必死な思いで子供を見守りたいと思いますので、過敏にならないようにするためには、具体的な資材の提供は非常に大切だと思います。是非、御検討いただきたいと思います。ありがとうございます。私からは以上です。
○森部会長 続いて、宮川委員から御質問があります。
○宮川委員 宮川です。今のことについても一つあります。傾眠というのは非常に難しい判断があります。疼痛のあるお子様だと、非常にぐずって眠れないということがあって、痛みが取れることによって少し休めるという、傾眠傾向に見えるというところがあるのです。ですから、寝るということが一義的なことではないので、その辺の判断は確かに難しいところなのです。しかし、主治医も含めて小児がんをやっている先生方は、そこのところは非常によく分かっていらっしゃいますから、多分問題はないだろうと考えます。傾眠によって起こってくる呼吸抑制などを含めてのことがなければ、少し眠れるという状態は、痛みが取れている状態に近いというように考えていくことも、非常に重要なことなのかもしれません。その表現は非常に難しいので、親御さんと主治医がよく話されているという前提があれば、そこは払拭されるのではないかと私も思います。
 それと今お話になったように、小児による誤用としての剥がすことや、なめてしまうことがないように、しっかりとした管理が必要であるということは保護者にしっかり分かっていただくようなことが、資材の中で必要だろうと思います。
 それからもう一つ。表現として、添付文書の7.の初回の用量の中で、「8mgは推奨されず」と書いてある所が、よく分からないというわけではないのですが、果たしてこういう回りくどい言い方がどうなのかと思ったものですから質問しました。「上限を6mgとする」などのほうが、ダイレクトで分かりやすいのかと思ったのです。これは本質的ではないので、大変申し訳ないのですが、表現の仕方として、8mgをわざと強調するという意味で「8mgは推奨されず」という言い方をされたのか、これを「6mgを上限とする」という形がいいのかどうか。その辺のところだけ教えていただければと思います。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘、御質問を頂きましてありがとうございました。まず、資材に関して御指摘いただいた、誤用に関する注意喚起についてです。我々としてもご指摘の点は非常に重要だと認識しており、資材の中でも誤用については十分に気を付けるよう、保護者向けのページの方で注意喚起されています。
 もう一点の用法・用量に関連する注意における、「8mgは推奨されず」という部分については、用法・用量において、切り替える際には0.5mg、1mg、2mg、4mg、6mgのいずれかの用量を選択するとしており、用法・用量上、初回貼付用量として8mgは基本的に選択されないよう設定されております。その上で、更に注意喚起を強調するという意味で、8mgは推奨されない旨を、用法・用量に関連する注意で注意喚起しています。
○宮川委員 注意喚起として、絶対に使うなと言いたいところで表現されたのかと感じました。それであれば全く問題ないので、つまらない質問をして申し訳ありません。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○森部会長 資材の方には是非、本剤使用後の廃棄に関する注意事項も付記していただくことを願います。そのほかに御質問はございますか。
 それでは、議決に入らせていただきます。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 では、続いて議題2に移ります。議題2について、機構から概要の御説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料No.2、医薬品ウプトラビ錠0.2mg及び同錠0.4mgにつきまして、機構より説明させていただきます。紙資料は、資料No.2の審査報告書を御覧ください。タブレットで御覧になる場合は、資料No.2のフォルダを開き、★が付いている審査報告書ファイルをお開きください。
 審査報告書の一番下、全34ページの通し番号で4ページ、「1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。慢性血栓塞栓性肺高血圧症(以下、「CTEPH」)は、器質化した血栓により肺動脈内腔が慢性的に狭窄・閉塞し、肺動脈圧の上昇を呈する疾患であり、肺高血圧症臨床分類第4群に分類されます。国内の推定患者数は、2019年のCTEPHに対する特定医療費(指定難病)受給者証所持者数によると4,160例です。
 本剤は、プロスタサイクリン受容体作動薬であるセレキシパグを有効成分とし、血管拡張作用及び抗血小板凝集作用により、CTEPHの肺血行動態を改善します。本剤は、2021年5月現在、CTEPHに対する適応ではいずれの国又は地域でも承認されていませんが、2015年以降に日本及び欧米を含む30以上の国又は地域において、肺高血圧症臨床分類第1群であり、CTEPHと病態に類似する点がある肺動脈性肺高血圧症(以下、「PAH」)の治療薬として承認されています。また、本剤は、CTEPHの適応症について希少疾病用医薬品に指定されています。なお、海外では臨床試験を実施中とのことです。
 今般、国内臨床試験成績を基に、本剤に「外科的治療不適応又は外科的治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症」の効能・効果を追加する医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。審査報告書の通し番号13ページの表11を御覧ください。CTEPHの治療の第一選択とされている外科的治療が実施不能な患者、又は外科的治療後に肺高血圧症の持続又は再発が認められたCTEPH患者を対象とした国内第III相試験が実施され、本剤は、既承認のPAH患者に対する用法・用量と同一の用量幅で漸増投与されました。主要評価項目は、投与20週目における肺血管抵抗(以下、「PVR」)のベースラインからの変化量とされ、プラセボ群と比較して本剤群で有意に大きい効果が認められました。本剤によるPVRの低下は、心拍出量の増加を反映したものと推察され、病態の改善が示唆されていることなどから、本剤の効果には臨床的意義があると判断し、その判断について、審査報告書の通し番号31ページの1.2項に示しますように、専門協議においても妥当との御判断を頂きました。
 続いて、安全性について御説明いたします。審査報告書の通し番号21ページから記載している「7.R.3安全性について」の項を御覧ください。CTEPH患者及びPAH患者を対象とした本剤の臨床試験での有害事象の発現状況、並びに国内外の製造販売後に得られた安全性情報からは、CTEPH患者とPAH患者における本剤の安全性プロファイルは同様と評価できたため、現時点では、CTEPHに対する適応の承認に際して、新たに注意が必要な事象はないと判断しました。なお、臨床試験に組み入れられた症例数は限られていることから、製造販売後にCTEPH患者を対象とした使用成績調査を実施し、実臨床でほかの抗血栓薬と本剤を併用したときの出血関連の有害事象の発現状況や、プロスタサイクリン受容体作動薬に特徴的な有害事象の発現状況等について、情報収集をする予定です。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本申請は希少疾病用医薬品としての申請であることから、本申請に係る効能・効果の再審査期間は10年とすることが適切と判断しております。薬事分科会では、報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○森部会長 委員の先生方から質問等がありましたら、お願いします。宮川委員、どうぞ。
○宮川委員 宮川です。よろしいでしょうか。
○森部会長 どうぞ、お願いします。
○宮川委員 教えていただきたいのですが、第II相の6分間歩行試験からIII相に行ったときには、PVRに主要評価項目が変更されているわけなのですが、そのサロゲートエンドポイントによる臨床的意義については慎重に考えるべきかというふうには思うわけです。実際にこの競合品目も含めてですが、リオシグアト(アデムパス錠)の場合の時、どのような評価がされて承認されたのでしょうか。また、比較として同じようにPVRでされたのかどうかを含めてお聞きしたいと思います。市販後のデータがあれば是非とも示していただきたいと思うのですが、いかがなのでしょうか。よろしくお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。まず最初に、先生からコメントを頂いた点で確認させていただきたいのですが、今回、行われたII相試験は、主要評価項目はPVRとしておりました。ですので、今回の開発の中で主要評価項目の変更はございませんでした。
○宮川委員 同効薬との場合の比較というのは、どのようになっているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 主要評価項目についての議論につきましては、審査報告書の通し番号17ページの「7.R.2有効性について」の項のマル1から書いております。リオシグアトの開発が行われた当時は、6分歩行距離がある程度確立した評価項目であったことで主要評価項目として評価されております。PVRにつきましては、副次で評価していたという状況です。ただ、6分間歩行距離はなかなか客観的な評価がしにくく、いろいろな要因の影響を受けたりするといった問題がありますので、今回の開発の中では客観的な評価項目であるPVRのほうが適切という結論になっております。先ほど申し上げましたように、リオシグアトの方でも、データとしては副次ではありますがPVRを評価しておりますので、比較はできております。
○医薬品医療機器総合機構 機構でございます。1点補足させていただきますと、今回のIII相試験ではリオシグアトの併用も可能としておりましたので、PVRという指標自体は試験間で共通していますが、本試験にはリオシグアト投与例も含まれます。ですので、一概に試験間を比較してリオシグアトとの効果の大小を検討することは少し難しいかとも考えております。以上です。
○宮川委員 そうした意味では、比較のデータはありますが、比較の対象にはならないというような形で、サロゲートエンドポイントとしては比較ができないという、考え方でよろしいのでしょうか。本来ならば、そのようなデータもきちんと出していかれるのが良いのではないかと思ったのですが。もちろん6分間歩行も、そうした意味では慣れも含めて、歩行が長くなるというような部分があるので、それもよく分かります。そうした意味では、これからの判断の指標がPVRに変わっていくのかどうか、質問いたしました。そうした意味では、比較があるのかないのか、それは、あれば出していくのが本当なのかと思ったものですから質問いたしました、以上です。
○森部会長 機構、特によろしいでしょうか。では引き続き、代田委員から御質問をお受けいたします。
○代田委員 代田です。最近は、BPAやカテーテル治療をこういうCTEPHでもしばしば行うことがあるかと思いますが、そのような治療等の位置付け、あるいは、そうしたケースに対する治療反応性などのデータがあるかどうかということが1点です。
 もう一点、この新しいお薬の治療効果は、重症度とどのようなインタラクションがあるかという点についてもお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。BPA等の位置付けにつきましては、基本的にBPAが実施可能な場合はBPAが優先されるのではないかというふうには考えております。ただ、BPAが不適応の例や、BPAをやったけれども、その後にPAHが残存している、あるいは再発するといった患者さんもいるかと思われますので、そういった患者さんに対しては、本薬は選択肢の一つになるのではないかと考えております。
 また、データにつきましてですが、審査報告書の通し番号23ページの表20を御覧ください。BPA施行の有無別での有効性のデータ等につきましては、こちらに示しております。また、重症度との関連のデータについてですが、それに関しましてはWHO機能分類別の評価をしており、審査報告書の通し番号27ページの表26にございます。今回組み入れられた患者さんのほとんどは、クラスII又はIIIの患者さんとなっており、クラスIの患者さんは本剤群1例のみでした。また、クラスIVの患者さんは入っていないという状況です。クラスII、IIIの患者さんにつきましては、有効性・安全性に差は見られておりません。クラスI、クラスIVの患者さんにつきましては、有効性・安全性の詳細な検討は今回できていないのですが、投与対象に含めることは可能というふうに考えているところです。以上です。
○代田委員 ありがとうございます。了解しました。
○森部会長 そのほか、先生方から御質問はございますか。それでは、議決に移ってよろしいでしょうか。なお、佐藤直樹委員、代田委員、武田委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことになっております。それでは、本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
○医薬品医療機器総合機構 申し訳ございません。機構です。先ほどBPA施行歴の有無別の有効性につきまして、表20と間違えて言ったように思いますが、表22です。訂正させていただきます。
○森部会長 はい。表22の内容を御確認いただいた上で、先生方の承認に関する御判断に変更がなければ、この場は承認とそのまま進めてよろしいでしょうか。特に御異議がないようですので、承認可といたしまして、薬事分科会に報告いたします。
 続きまして、議題3に移ります。議題3、議題5及び報告事項議題4、議題5につきましては、関連する議題となっております。まとめて御議論いただきますようにお願いいたします。それでは議題3、議題5及び報告事項議題4、議題5につきまして、機構から概要説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 審議事項議題3、医薬品ベルケイド注射用3mg、審議事項議題5、医薬品ダラキューロ配合皮下注、報告事項議題4、医薬品デカドロン錠0.5mg及び同錠4mg、並びに報告事項議題5、医薬品注射用エンドキサン100mg、注射用同500mg、及び同錠50mgについて、全身性ALアミロイドーシスに対する併用レジメンとして承認申請されていることから、4品目まとめて説明申し上げます。資料については、審査報告書の別紙に記載しております内容は同一であるため、資料No.5ダラキューロ配合皮下注の審査報告書を御覧ください。
 通し番号12/66ページに記載しましたように、全身性ALアミロイドーシスは、異常形質細胞より産生されるMタンパク質のL鎖に由来するアミロイド蛋白が全身諸臓器の細胞外に沈着し、臓器障害を来す進行性で予後不良な疾患です。現在、本邦において、全身性ALアミロイドーシスを効能・効果とする医薬品は承認されておりません。全身性ALアミロイドーシスの治療は、「アミロイドーシス診療ガイドライン2010」において、自家造血幹細胞移植又は異常形質細胞を標的とした薬物療法が推奨されているものの、いずれも有効性及び安全性に関する十分なエビデンスは得られていないとされております。
 ダラキューロ配合皮下注は、ダラツムマブ(遺伝子組換え)を主な有効成分とする皮下注製剤で、ヒト細胞で発現しているCD38に特異的に結合し、補体依存性細胞傷害及び抗体依存性細胞傷害により、異常形質細胞の増殖を抑制することから、全身性ALアミロイドーシスにおける有効性が期待され、今回の開発に至りました。
 また、ベルケイド注射用3mgは、有効成分であるボルテゾミブがユビキチン-プロテアソーム系の26Sプロテアソームのキモトリプシン様部位に結合し、26Sプロテアソーム活性を選択的に阻害することで、NF-κBの活性化の抑制等を介して異常形質細胞の増殖を抑制することから、全身性ALアミロイドーシスにおける有効性が期待され、開発に至っております。
 海外において、シクロホスファミド、ボルテゾミブ及びデキサメタゾンの併用(以下、「CyBorDレジメン)」が全身性ALアミロイドーシスの標準的治療の一つとして、診療ガイドライン等で推奨されており、本邦でもCyBorDレジメンの有用性が造血器腫瘍診療ガイドライン等の診療ガイドライン等で報告されております。以上を踏まえ、申請者は、全身性ALアミロイドーシス患者に対し、CyBorDレジメンにダラツムマブ皮下注製剤を上乗せするDCyBorDレジメンの有効性及び安全性を確認する国際共同第III相試験を計画、実施いたしました。今般、当該試験において、DCyBorDレジメンの有効性及び安全性が確認されたとして、4品目の医薬品製造販売承認申請がなされました。なお、ダラキューロ配合皮下注及びベルケイド注射用3mgについては、全身性ALアミロイドーシスを予定される効能・効果として、当部会での御審議を経て、令和2年11月25日付けで希少疾病用医薬品に指定されております。
 海外での承認状況について、ダラツムマブを配合した皮下注製剤は、2021年6月現在、全身性ALアミロイドーシスに係る効能・効果で、米国、カナダ、スイス及びブラジルで承認されており、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾンは全身性ALアミロイドーシスに係る効能・効果で承認されている国又は地域はございません。
 本品目の専門協議では、本日の配付資料No.19に示します専門委員を指名しております。
 以下、DCyBorDレジメンの有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明いたします。有効性に関しては、審査報告書通し番号24/66ページの表12を御覧ください。国際共同第III相試験の主要評価項目である「国際アミロイドーシス統一治療効果判定基準に基づくCR率」について、今回申請のDCyBorD群は既存治療であるCyBorD群に対する優越性が検証されました。日本人集団においては、症例数が極めて限られていることに留意する必要はありますが、全集団と同様の傾向が認められました。以上より、機構は、全身性ALアミロイドーシスに対するDCyBorDレジメンの有効性は示されたと判断いたしました。
 安全性に関しては、審査報告書通し番号28/66ページの表16を御覧ください。国際共同第III相試験において、既存治療であるCyBorD群と比較して、DCyBorD群で、治験薬の投与期間で調整した有害事象、副作用、死亡に至った有害事象及び重篤な有害事象の発現頻度が高くなる傾向は認められておりません。また、認められた有害事象は、各薬剤の既知の安全性プロファイルと同様であることを確認いたしました。日本人集団について、有害事象全体では、全集団と比較してDCyBorD群で発現頻度が高い傾向が認められていますが、認められた事象は各薬剤の既知の安全性プロファイルと同様であり、重篤な有害事象及び死亡に至った有害事象にはCyBorD群と大きな差は認められなかったことも考慮しますと、日本人集団においても、臨床上特段問題となる新たな傾向は示唆されていないと考えております。
 また、DCyBorDレジメンの安全性については、特に次に挙げる3点について添付文書等で適切な注意喚起を行うことで、全身性ALアミロイドーシスの治療に対して十分な知識・経験を持つ医師の下、DCyBorDレジメンの施行が適切と判断される症例に使用されることを前提に、安全性は許容可能であると考えております。1点目、体重65kg以下の患者の安全性について、審査報告書通し番号31/66の7.R.3.2.1項を御覧ください。ダラキューロ配合皮下注では、既承認の多発性骨髄腫において、体重65kg以下では、好中球減少等の骨髄抑制の発現が増加する旨が添付文書で注意喚起されております。全身性ALアミロイドーシスを対象とした国際共同第III相試験においても、DCyBorD群では65kg超の患者と比較して65kg以下の患者で好中球数減少、リンパ球数減少及び血小板数減少の発現割合が高い傾向が見られることから、全身性ALアミロイドーシスでも65kg以下の患者に対する注意喚起は、多発性骨髄腫と同様に引き続き行うことが必要であると考えました。
 2点目、心臓障害に関連した有害事象について、審査報告書通し番号32/66ページの7.R.3.2.2項を御覧ください。治験薬の投与期間で調整した心臓障害に関連した有害事象の発現件数は、CyBorD群よりもDCyBorD群で低く、ダラキューロ配合皮下注の上乗せによる心臓障害のリスクの上昇は認められていません。一方、死亡に至った心臓障害や重篤な心臓障害を発現した被験者の多くは、いずれの群でもベースライン時点で心臓障害を有しており、このことが重篤又は致死的な心臓障害が生じやすい要因になっていると考えられます。このため、全身性ALアミロイドーシス患者を対象とした臨床試験における心臓障害の発現状況を、添付文書等において情報提供することが必要であると考えました。
 3点目、ダラキューロ配合皮下注投与による注目すべき有害事象について、審査報告書通し番号の35/66ページの7.R.3.3項を御覧ください。Infusion reaction及び注射部位反応の発現割合は、多発性骨髄腫患者対象の臨床試験と同程度でした。また、骨髄抑制及び感染症の発現割合が、CyBorD群と比較してDCyBorD群で高い傾向が認められていますが、治験薬の投与期間で調整した発現頻度は、いずれもCyBorD群と比較してDCyBorD群で低く、これらの事象についてはダラツムマブ、ボルテゾミブ、シクロホスファミド及びデキサメタゾンの既知の安全性プロファイルから予測可能であることから、添付文書において新たな注意喚起は必要なく、各薬剤の現行の注意喚起を継続することが適切であると判断いたしました。
 以上より、機構は、DCyBorDレジメンの安全性は、全身性ALアミロイドーシスの治療に対して十分な知識・経験を持つ医師の下、DCyBorD群レジメンの施行が適切と判断される症例に使用されることを前提に、許容可能と考えました。
 以上、機構での審査の結果、全身性ALアミロイドーシスに対するDCyBorDレジメンの有効性が示され、安全性は許容可能と考えられたことから、ダラキューロ配合皮下注及びベルケイド注射用3mgについては、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で承認して差し使えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。また、デカドロン錠0.5mg及び同錠4mg、並びに注射用エンドキサン100mg、注射用同500mg及び同錠50mgについては、本部会で報告することが適当と判断いたしました。なお、本申請に係るダラキューロ配合皮下注及びベルケイド注射用3mgの再審査期間は、いずれも追加される効能が希少疾病用医薬品に指定されていることから、10年間と設定することが適切と判断いたしました。薬事分科会では、ダラキューロ配合皮下注及びベルケイド注射用3mgは報告を予定しております。機構からの説明は以上です。御審議、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○森部会長 委員の先生方から御質問等がありましたら、お願いいたします。
○代田委員 代田ですが、よろしいでしょうか。
○森部会長 お願いいたします。
○代田委員 先ほどの説明の中の33/66の所ですが、ベースラインの時点で心臓障害を有することが重篤又は致死的な心臓障害が生じやすい要因となっているという表現ですけれども、この心臓障害というのは具体的にはどういうことを示しているのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問を頂きありがとうございます。例えば、添付文書の臨床試験の項の5ページの下には、心臓関連障害の有害事象の発現割合等を記載しており、心不全、動悸、心房細動、心停止等となります。
○代田委員 分かりました。そうすると、これはアミロドーシスとは直接関係なくベースラインの合併症という意味合いで、それが重篤な障害につながっているという意味合いですね。
○医薬品医療機器総合機構 これらは、アミロイドーシスの病勢進行に関連する事象を含む記載しております。
○代田委員 アミロイドーシスに関連した心臓障害の発現ということですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい、そのとおりです。
○代田委員 それが、結果的に致死的な心臓障害が生じやすいということにつながっていると。その後の方の心臓障害も同じ意味合いで使っていらっしゃるのですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい、そのとおりです。
○代田委員 ベースラインのアミロイドーシスがあることが合併症を起こしやすいという意味合いは分かるのですけれども、アミロイドーシスをベースに持っているものがアミロイドーシスを起こしやすいというような表現は、少しおかしいかと思って御質問させていただきました。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。審査報告書では副作用に限らず有害事象として報告されている事象も記載しているところです。
○森部会長 続いて、宮川委員から御質問をお願いします。
○宮川委員 今のことに関連することかもしれませんが、ダラツムマブによる心停止や心不全、心原性ショックなどの副作用というのは、同じ用法・用量の多発性骨髄腫の場合でも、今まで副作用として報告があったのかどうかを知りたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。少々お待ちください。
○宮川委員 そうすると、今のことを引きずる話になってしまうのかと思うのですけれども。
○医薬品医療機器総合機構 お待たせいたしました。少なくとも、今回のALアミロイドーシスの審査の前の添付文書では、心臓障害に係る事象について副作用等で報告されている状況ではございません。また、今回の国際共同第III相試験において、CyBorD群とDCyBorD群で心臓障害の発現状況を比較したときに、明らかな差が出ているわけではございませんので、ダラツムマブの上乗せ投与によって副作用が起こりやすくなるということはないと考えております。
○宮川委員 ありがとうございます。基本的なことで大変申し訳ないのですけれども、これは3剤で開始して上乗せするのか、日本では最初から4剤併用という理解でよいのか、その辺りのところが少し曖昧といいますか、書きぶりがよく分からない所があるのですが、そこを教えていただけないでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。基本的には、最初から4剤併用で使うということになります。添付文書上では、詳しい使い方に関しては、関連注意から臨床試験を見ていただくという形にしており、そちらを見ていただくと初めから使うということがお分かりになるかと思います。
○宮川委員 そうすると、海外との比較としては同じなのか、少し異なるのか、どのように解釈したらよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。海外と同じ使い方ということになります。
○宮川委員 了解しました。ありがとうございます。
○森部会長 そのほか御質問はいかがでしょうか。
○赤羽委員 また議論を引き延ばしてしまって申し訳ないのですけれども、心臓の障害に関するところで、確かにダラツムマブに関しては、これまでそれほど過去の添付文書でも心機能に対する障害というのは指摘されていなかったのかと思うのですが、今回、アミロイドーシスの患者さんで特に心臓障害のある方で、重篤な障害が生じていたかもしれないということの一つの要因として、ボルテゾミブはもともと多発性骨髄腫の治療薬として使われている中で、一定の割合で心機能に対する有害事象や心毒性があるということが知られているかと思うのです。そういった意味で、このDCyBorDの中に含まれているボルテゾミブがそういった心機能障害を引き起こしている可能性があるということは考えられないでしょうか。今回のディスカッションや御提示いただいているデータは、ダラツムマブの有り無しでのディスカッションの方に終始していたように思われたので、その点について質問いたします。
○医薬品医療機器総合機構 ご指摘のとおりで、DCyBorDレジメンに含まれるベルケイドとほかの薬剤でも従来より心障害関連の事象は認められており、その点に関してはこれまでと同様の注意喚起を継続して行うことになっています。その観点においてダラツムマブ以外の添付文書においても既に注意喚起はされておりますので、今回のALアミロイドーシスの審査としては、特に新たな対応は不要とは考えております。
○赤羽委員 ありがとうございます。もう一点質問させていただきたいのですが、よろしいでしょうか。海外で承認されているダラツムマブのDARSCという薬剤と、今回申請が上がっていますDCyBorDというもののアミロイドーシスに対する有効性は、違いがあるのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 海外で承認されているものも、今回データが出されている国際共同第III相試験のデータを基に評価されています。
○赤羽委員 分かりました。ありがとうございました。
○森部会長 そのほか御質問はございますか。それでは議決に入ります。議題3について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告いたします。
 次に、議題5の議決に入ります。議題5について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告いたします。また、報告事項の議題4及び議題5については、御確認いただいたものといたします。
 続いて、議題4に移ります。機構から概要説明をお願いいたします。
○医薬品医療機器総合機構 それでは、議題4、資料No.4、医薬品フォシーガ錠5mg及び同錠10mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。
 慢性腎臓病(CKD)は、日本腎臓学会のCKDガイドライン又は国際腎臓学会のガイドラインにおいて、タンパク尿の存在や糸球体濾過量(GFR)の低下等が3か月以上持続する状態とされています。病勢が進行すると、末期腎不全に至り、透析や腎移植が必要となります。また、末期腎不全は、心不全や全死亡リスクの増加とも関連することが知られています。
 本薬は、ナトリウム・グルコース共輪送体2(SGLT2)の阻害薬であり、本邦においては、2014年3月に「2型糖尿病」の効能・効果で承認されて以降、「1型糖尿病」及び「慢性心不全」に対して承認されています。また、本薬は糸球体血行動態の改善による腎保護作用が期待され、CKDに対しても開発されました。今般、申請者はCKD患者を対象とした国際共同第III相試験を実施し、本薬の有効性及び安全性が確認できたとして、製造販売承認事項一部変更承認申請を行いました。
 2021年6月現在、CKDに係る効能・効果については、米国、ニュージーランド、インド及びエクアドルで承認されています。欧州EMAでは、6月末の諮問委員会(CHMP)にて、承認勧告が出されています。
 本品目の専門協議では、本日の配付資料No.19に示します専門委員を指名しております。
 以下、本薬の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性に関しては、審査報告書の青字の通し番号9ページ、表4を御覧ください。CKD患者を対象とした国際共同第III相試験において、主要評価項目である「主要複合エンドポイントのうち、いずれかのイベントを発現するまでの期間」について、本薬群ではプラセボ群と比較して初回イベント発現までの期間が有意に延長しました。また、審査報告書の青字の通し番号10ページ、図2を御覧ください。日本人集団においても、全集団とおおむね同様の傾向であったことから、本薬の有効性が示されたと判断しました。
 次に、安全性について、審査報告書の通し番号22ページ、表23を御覧ください。国際共同第III相試験において、プラセボ群と比較して本薬群で臨床的に大きな問題となる傾向は認められていないことを確認しました。主な有害事象はいずれも既知の事象であり、CKDについても既承認効能・効果と同様の注意喚起を行うことで、本薬の安全性は許容可能と考えます。また、日本人集団において全集団と比較し臨床的に大きな問題となるような安全性の違いはなく、日本人に特有の新たな安全性上の懸念は認められていないことを確認しました。
 以上、機構での審査の結果、本薬のCKDに対する有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、承認しても差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。本申請は、新効能医薬品に係るものであることから、再審査期間は4年とすることが適切と判断しました。また、薬事分科会では報告を予定しています。
 機構からの説明は以上になります。御審議どうぞよろしくお願い申し上げます。
○森部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問等ございましたら、お願いいたします。
○柴田委員 柴田ですが、よろしいでしょうか。
○森部会長 柴田委員、お願いします。
○柴田委員 添付文書の記載について質問させてください。添付文書の臨床成績の項に2点あります。一つは、添付文書(案)の6ページ、表9に複合エンドポイントの成績が書いてあります。今回、CKDを対象としてこの薬が承認されるに当たって、この複合エンドポイントというのは、一般の臨床の先生方が見たときに、どういう内容のエンドポイントであるのか。あるいは、どういうイベントが上がった、下がったというのが把握できるエンドポイントなのでしょうか。質問を言い換えると、この複合エンドポイントの内訳のイベントを書いておかないといけないのではないかという質問です。
 もう一つは、1ページの5.7節、効能・効果に関連する注意の5.7節にいろいろ注意が書いてありますけれども、臨床試験の成績からこの注意喚起、投与の必要性を慎重に判断することというのを判断するような情報は、添付文書に記載されていないと思います。今の添付文書で、この投与の必要性を慎重に判断するために参考になるような臨床試験のサブグループ解析等のデータを載せるべきではないかという気がしますが、それについてどうでしょう。そのサブグループについて、審査報告書の中では31ページ、通し番号で21/43ページや20/43ページの所に、eGFRの値別のエンドポイントやUACRの値別のエンドポイントが書いてありますけれども、実際には、この二つの要因を組み合わせてリスクが判断されているという日常診療での状況を踏まえると、これを組み合わせたサブグループ解析を見ることで、逆に軽症の方に対する投与の必要性などの判断も可能となるようなデータを提示するべきではないでしょうか。以上、2点について御回答いただければと思います。
○医薬品医療機器総合機構 まず、御質問の一つ目の表9にある複合エンドポイントの件について、CKD治療薬の臨床評価においてこれまでに一般的に使用されているイベントであり、またESKDの具体的な定義は添付文書6ページの左下に、eGFRの15mLの持続等と記載しております。また、臨床評価に用いる一般的なエンドポイントであることか否かは専門協議でも確認し、特に異論はありませんでした。
○柴田委員 質問は、例えば腎臓死などは抑えませんね、腎臓死などは減らないと思いますけれども、こういう書き方でミスリーディングではないのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 確認させていただきたいのですが、審査報告書の通し番号9ページの表5にあるようなデータを添付文書に記載すべきではないかというのがコメントの御趣旨でしょうか。
○柴田委員 趣旨はそうです。それについても検討した上で記載しないということになったのであれば、その理由について教えていただきたいと思います。
○医薬品医療機器総合機構 こちらについては、添付文書では主要なデータを掲載することが重要だといったところで、こちらの副次的な結果については記載しなくてもよいのではないかと考えました。これらの詳細なデータに関しては、資材等で企業から臨床現場に情報提供していただきたいと考えております。
○柴田委員 分かりました。ほかの委員の先生方がそれでいいという御判断であれば、これについては追加のコメントはしません。
○森部会長 ここで、ほかの委員の先生方の御意見を求めてよろしいですか。もしこの点で御質問、御意見がございましたら、御発言いただく方はいらっしゃいますか。若しくは、後ほどまとめてお伺いしますが、今はよろしいでしょうか。
○森部会長 宮川先生でしょうか。
○宮川委員 今、柴田先生がおっしゃったことは気掛かりなところだったので、私もお聞きしようと思ったところです。釈然としないお話だったので、もう少し明確な点をお出ししていただければ有り難いと思った次第です。柴田先生と同じ意見です。
○森部会長 添付文書にも表5の内容について記載されるべきかどうか、検討されるべきだという御意見でしょうか。
○宮川委員 私もそう思います。この系統の薬というのは、薬の特性からして心不全領域から始まって、いろいろメーカーが適応拡大の流れがあるところがあるので、しっかりとした注意喚起というものは、慢性腎臓病(CKD)においても非常に必要ではないかと思った次第です。以上です。
○森部会長 委員の先生方の御意見がほかにございませんでしたら、今、宮川委員の御意見を承りました。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。添付文書の臨床成績の項には、一般的に主たる解析を記載していることが多いので、こういった記載とさせていただいたところです。しかしながら、柴田委員と宮川委員からの御指摘も踏まえて、添付文書の臨床成績の項に、審査報告書の表5のような各イベントを反映できるような内容を記載することを検討させていただきたいと考えています。
○森部会長 よろしいでしょうか。では、次は2番目の御質問の方に御回答をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 こちらも先ほどと共通するところですけれども、主たる解析結果を記載して、副次評価結果については資材等で情報提供することが重要かと考えています。添付文書の効能・効果に関連する注意の項で記載している「臨床成績の項を熟知し」については、臨床試験における患者の背景を特に留意していただきたいといった趣旨で記載しています。具体的には、添付文書の17.1.4のeGFR、UACR、ACE阻害薬等を服用している患者が治験の対象であったといった所を確認してほしいというのが趣旨です。以上です。
○柴田委員 御回答について追加で御質問ですが、米国FDAにおいては、添付文書の中でインディケーションをリスクの高い人に絞っていると思います。今回、そのような縛りを掛けないままこういう書き方をすることで、先ほどの注意の所はリスクが高い人の方だと思いますけれども、逆に臨床試験の中でリスクが低い人では余り大きな差がないような傾向にある中で、漫然とそのまま使われ続けてもよいと、広い範囲に使われてもよいという機構の御判断なのでしょうか。御質問を変えると、FDAが承認している範囲よりも広く承認してよいとお考えなのかという質問になります。
○医薬品医療機器総合機構 投与対象についてはFDAと考えはおおむね同様であるものと理解しており、添付文書の記載の仕方の違いだと思っています。米国では効能・効果の書き方はかなり自由になっており、日本では承認範囲は同じように考えていますが、添付文書では効能・効果だけではなく関連する注意の項等も含めて適切な投与対象が選択される記載となっています。
○柴田委員 最後に付け加えたeGFRだけのサブグループ、あるいはUACRだけのサブグループでは、サブグループの検討が不十分ではないかと思います。例えばeGFRのサブグループの中にも、CKDのリスク分類の複数のリスクレベルのものが含まれていますし、そのサブグループを見ることで、臨床試験には入っていない隣接する状態の患者さん、軽症であるとか重症であるとか、上下両方、それぞれの傾向を把握することができるのではないかと思いますが、そうした検討をされないのはなぜですか。
○医薬品医療機器総合機構 今、御指摘いただいた点については、それぞれの各グループでプラセボ群よりも本薬群で有効性は認められていることを確認しています。ただ、添付文書に各部分集団解析の結果をどこまで記載するかといった点については、通常の添付文書の書き方に沿って、この程度の内容まででよいのではないか。また、資材等で情報提供していくと。実際の使い方については、今後、関連学会とも協議した上で、使い方に関するガイダンス等を発出いただくことを、今、検討しているところです。
○柴田委員 確認ですが、点推定値で差があるというだけではなく、傾向としてリスクレベルに応じて、CKDの重症度分類の各リスクレベルに応じて、治療効果に大きな差がないと解釈していいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 点推定値では、おおむね本薬が勝っているといったところは確認しております。
○柴田委員 点推定値で勝っているかどうかでなく、治療効果の大きさについての質問です。
○医薬品医療機器総合機構 その点については、各グループで治療効果の大きさに差はあることは認識しています。それをどのように注意喚起に落とし込むかといったところは、安全性上の観点からの制限ではないので、添付文書にどこまで表記することが適切であるか検討した結果、臨床現場に誤解を与えないように今の記載内容以上はなかなか書き込めないのではないかと思い、現行案の記載とさせていただいております。
○柴田委員 添付文書に記載しないという説明は一定の理解ができますが、それを審査報告書の中でも検討しないというのは、おかしいのではないかと思います。つまり、例えば通し番号21ページや20ページのサブグループ解析を見ると、サブグループの中で点推定値では勝っていても、治療効果の大きさ、実際のハザード比でなくて絶対リスクの差ではサブグループ間でかなりの差があります。これをそのまま外挿できるような状況であるならば、臨床試験の対象から外れている集団において治療効果が見込めないのだと、上乗せが見込めないのだということを推察させるに足る情報といいますか、そうしたことを推測するのに必要な情報になると思います。そうしたことが検討されないまま、効果の一様性であるとかが検討されないまま、そうした根拠情報が示されることもないまま臨床現場に丸投げというのは、少し不親切なのではないかと思います。
○医薬品医療機器総合機構 少しお待ちください。
○柴田委員 全ての組合せのサブグループ解析を出すべきだなどという、訳の分からないことを言っていると誤解されているといけないので補足しますが、CKDの治療においてCKDの重症度分類が使われているわけですから、その重症度分類の各分類ごとでどういう傾向であったかというのは、臨床の先生方にとっては重要な情報なのではないかと思う次第です。
○宮川委員 宮川ですけれども、申し訳ないですが、付け加えさせてください。今、柴田先生のおっしゃったことは非常に重要なことなのです。実臨床の中で、腎不全などある程度腎臓を扱っている人間にとっては重要なことですから、是非明らかにしていきたいと思います。柴田先生の御意見に賛同しています。重症度分類によってはかなり違いがあります。全部、CKDという大きな分類で丸投げされるのは、実臨床にとっては非常に不幸なことだと思います。以上です。
○医薬品医療機器総合機構 機構からです。まず確認させていただきたいのですが、よろしいですか。
○森部会長 どうぞ。
○医薬品医療機器総合機構 今回、臨床試験に組み入れられている患者さんは、UACR200以上とですので、主に顕性アルブミン尿の患者となります。これらの患者では、eGFRを押さえることが重要と考えベースライン時のeGFR重症度別のデータは、審査報告書の通し番号20ページの表20に結果を記載しております。
○柴田委員 確認ですが、一部、例えばG3aのA2に該当するような患者さんは含まれていないのですか。
○医薬品医療機器総合機構 若干名は組み入れられていると思います。A2が30~299なので200~299の患者は登録されています。
○柴田委員 実際にその若干が、やってみたら解析に足るほどいなかったという話であれば理解できますが、そうしたことも全部伏せられているのであれば、検討が不足しているのではないかというコメントをせざるを得ない。そこは説明していただければと思いますし、添付文書に記載されないにしても資材等に記載されるべきだと思いますし、これから改訂しろとは申し上げませんが、本来は審査報告書に書かれるべき点だと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。今、実際のデータを手元に持ち合わせていないのですが、300未満の患者、200~300未満の患者については解析対象としてはかなり限られていましたので、これらの部分集団解析は審査報告書には記載していませんでした。ご指摘のデータについては臨床使用において重要であることは、審査側でも理解しましたので、資材で適切に情報提供し、臨床現場に届けたいと思っております。
○柴田委員 ありがとうございます。私からは以上です。
○森部会長 宮川委員、どうぞ。
○宮川委員 宮川もそう思います。臨床現場に届けるときに、重症度分類の中の各集団ごとに落とし込んだ形の中でやっていかないと、非常に問題が多く起こります。そうしたことが患者さんにとって不幸なことになりかねないので、是非ともそのような記載というものがあって然るべきだと思います。機構も厚労省も大変だろうとは思いますが、是非、そのような形で臨床現場が困らないようにしていただければと思います。柴田先生の御指摘は非常に重要なことなので、お考えいただければ幸いかと思います。是非ともよろしくお願い申し上げます。
○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。適切に対応させていただきます。
○森部会長 柴田委員、宮川委員からの御質問内容を少し要約させていただきます。一つ目は、添付文書上の17.1.4の本国際臨床試験に関するデータの表記につきまして、現在、表5にまとめられている複合エンドポイントの発現割合、各イベントごとのデータを開示するという御指摘がありました。
 2点目については、今回の国際臨床試験が、UACRが200mg/gCr以上の方を対象にしており、一方、200mg/gCr未満の方を除外していることについての記載が少し分かりにくくなっている点です。この点に関して、例としましては、注12の所に改めてUACRが200未満の症例が除外されているという部分を追記して分かりやすくしていただく工夫も一案ではないかと、私の方から提案させていただきます。
 三つ目につきましては、臨床現場でこの薬剤がCKDの方に使用される場合に、CKDの重症度に関連した様々な分類に従って、どういった方にどの程度有効なのかということの詳細を、是非、臨床現場に提供していただきたいというご要望がありました。CKDの重症度分類は、現在、eGFRに基づく分類と尿中アルブミン、ACRが30未満であるか、30~299であるか、300以上であるかという、A1、A2、A3の三つの分類とを合わせて分類されています。今回のこの国際臨床試験は、A1の方は全て除外されており、A2の中でも200~300の方が少数例含まれているという状況ですので、大半がA3の方を対象にしています。eGFRが25~75の方をエントリーしている臨床試験であり、表22のようにeGFRのベースラインの値ごとに4分割して有効性が検討されています。さらに、表22では尿中アルブミンによっても、500以下、500~1,000、1,000~2,000、2,000以上という4群で区分されて有効性が検討されています。それぞれの検討データはありますけれども、実臨床では尿中アルブミンとeGFRの二つの評価項目を用いて重症度を判定することが一般治療で行われていますので、今回の臨床現場に御提供いただく内容についても、この二つの観点を組み合わせた有効性に関する情報提供を是非ともお願いしたいというご要望として理解しています。
 そういった観点から、現在の添付文書の中で、どのように記載整理をしておくことが適正かということの議論に焦点を絞ってまいりたいと思います。この点で、柴田委員、宮川委員並びにほかの委員の先生方から、何か追加の御発言はございますか。
○宮川委員 座長、おまとめいただきましてありがとうございました。私はそれで異存ございませんので、柴田委員から御意見を伺いたいと思います。以上です。
○柴田委員 ありがとうございます。私も森先生にまとめていただきました内容で異存ございません。添付文書にどこまで書くかについては、先ほどの議論を踏まえて臨床の先生方の御意見をお伺いしたいと思います。
○森部会長 分かりました。私から一つ提案ですが、添付文書1ページの5の8、「臨床成績の項の内容を熟知して」のくだりから始まる部分ですけれども、慢性腎臓病に対するガイドラインにおける診断基準等を参考に、適応患者を選択することという一文があります。これは、今後、重症度に応じた情報も提供されることをかんがみますと、「診断基準及び重症度等を参考に」というふうに御変更いただくことも一案かと存じますが、先生方の御意見はいかがでしょうか。
○宮川委員 私も異存ございません。そのような書きぶりでしていただけると臨床現場は非常に有り難いと思います。明確だと思いますが、柴田先生、いかがでしょうか。
○柴田委員 私も同様に感じました。ありがとうございます。
○森部会長 委員の先生方から追加の御発言がございましたら是非ともお願いします。機構の方から御発言、いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 添付文書の効能・効果に関連する注意の項についても、併せて記載の修正を検討させていただきます。ありがとうございました。
○森部会長 ありがとうございました。最後に、厚労省の方にお伺いしたい点がございます。現在の実臨床では、尿中アルブミンの測定が、原則、糖尿病の方に限られて運用されています。今回、慢性腎臓病への薬剤の使用を審査しているわけですが、今後の検査のあり方についての方向性はございますか。
○事務局 そうですね。学会からの要望がありましたら、それに基づいて今後、適切に対応していこうと思います。現時点で動くような、そういった状況を確認できていませんので、今後、またそういった動きがあれば適切に対応していくことになると思います。
○森部会長 それでは、今、御発言いただきましたように、関連学会との御相談を踏まえた上で、尿中アルブミンの測定に関する適用についても御検討いただくという方向性で、いかがでしょうか。特にこの点、御質問はございませんか。よろしいですか。修正いただく点も明確になってきましたので、この後、議決に移らせていただいてよろしいでしょうか。
 それでは、議決に移らせていただきます。なお、佐藤直樹委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことになっています。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続きまして、議題6に移ります。議題6及び報告事項議題2につきましては関連する議題ですので、まとめて御議論いただきたいと思います。議題6及び報告事項議題2につきまして、機構から概要説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 機構より、審議事項の議題6と報告事項の議題2について説明いたします。資料No.6となります。まず審議事項の議題6、医薬品ラニビズマブBS硝子体内注射用キット10mg/mL「センジュ」の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否及び毒薬又は劇薬の指定の要否について説明いたします。資料No.6の別紙(3)毒薬・劇薬等の指定審査資料のまとめを適宜御覧ください。
 本剤は、ヒト化抗VEGFモノクローナル抗体のFab断片であるラニビズマブ(遺伝子組換え)[ラニビズマブ後続1]を有効成分とする製剤であり、ルセンティスを先行バイオ医薬品とするバイオ後続品として、千寿製薬株式会社により製造販売承認申請がなされました。
 本剤は大腸菌を用いて製造され、原料等に生物由来の成分は使用されていないことから、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないとすることが適当と考えております。また、先行バイオ医薬品のルセンティスは、原体・製剤ともに劇薬に指定されていることから、ルセンティスと同等/同質である本剤についても、原体・製剤ともに劇薬とすることが適当と考えております。
 審議事項の議題6、本剤の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否並びに毒薬又は劇薬の指定の要否につきまして、御審議のほどよろしくお願いいたします。
 同一品目に係る報告事項の議題2についても、併せて御説明いたします。機構における審査の結果、本剤とルセンティスの同等性/同質性が確認されたことから、本剤をルセンティスのバイオ後続品として承認して差し支えないと判断いたしました。以上となります。
○森部会長 ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等がございましたらお願いいたします。特段御発言はございませんでしょうか。それでは議決に入らせていただきます。なお大森委員、佐藤直樹委員、代田委員、武田委員、長谷川委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことになっています。
 それでは、本議題について、生物由来製品及び特定生物由来製品には指定せず、原体及び製剤をいずれも劇薬に指定することとしてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、生物由来製品及び特定生物由来製品には指定せず、原体及び製剤をいずれも劇薬に指定することを可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて、議題7に移ります。議題7について、事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 議題7、資料No.7、フェンフルラミン塩酸塩を希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。資料No.7のうち、「2事前評価報告書」をお開きください。報告書1ページの中段を御覧ください。申請者は、「Zogenix Japan株式会社」、予定される効能・効果は、「ドラベ症候群に伴うてんかん発作の治療」になります。
 まず1ページの対象患者数について御説明します。ドラベ症候群は指定難病で、本邦におけるドラベ症候群の患者数は約3,000人と推定されています。以上より、患者数は5万人未満という基準を満たしているものと考えています。
 次に、医療上の必要性について御説明します。ドラベ症候群は、重症な形態のてんかんであり、精神運動発達、行動発達及び神経学的発達の重大な障害につながる進行性の脳機能障害も伴うとされています。ドラベ症候群のてんかん発作に対する薬物治療については、本邦ではスチリペントールが承認されており、ガイドラインにおきましては、バルプロ酸ナトリウムやトピラマートといった薬剤も記載がありますが、いずれもてんかん発作等の完全な抑制は困難であったとの報告もあるという課題があります。以上の検討から、医療上の必要性は高いと考えています。
 最後に、開発の可能性について御説明します。2歳以上のドラベ症候群患者を対象に、本剤の有効性、安全性を検討した海外第III相試験の結果、本剤のプラセボ群に対する有効性が示唆される結果が認められています。現在、ドラベ症候群患者を対象とした国際共同第III相試験も実施されていることから、本剤の開発の可能性は高いと考えています。
 したがって、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えます。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等がございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、議決に移らせていただきます。なお、大森委員、川上委員、武田委員、宮川委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことになっています。それでは本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて、議題8に移ります。議題8について、事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 議題8、資料No.8、ボソリチド(遺伝子組換え)を希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明します。資料No.8の中の「2事前評価報告書」のファイルをお開きください。報告書1ページ中段を御覧ください。申請者は、「BioMarin Pharmaceutical Japan株式会社」、予定される効能・効果は、「骨端線閉鎖を伴わない軟骨無形成症」です。
 まず、1ページの対象者数について御説明します。軟骨無形成症、以下、「ACH」と略させていただきますが、ACHは指定難病であり、本邦におけるACHの患者数は6,000人と推定されています。以上より、対象者数は5万人未満という基準を満たしているものと考えています。
 次に、医療上の必要性について御説明します。ACHでは主な症状として、四肢短縮型の低身長等が認められ、さらに脊柱管狭窄症等の深刻な合併症が認められる場合もあり、また死亡率の増加も報告されています。本剤は、ヒトC型ナトリウム利尿ペプチドに2個のアミノ酸を付加した遺伝子組換えペプチドであり、MAPK経路の活性化抑制を介して、軟骨細胞の増殖及び分化並びに骨形成に至ると考えています。現在、本邦では、ヒト成長ホルモン製剤による治療が行われています。しかしながら、ヒト成長ホルモン製剤では投与を長期間継続すると成長作用が低下することが報告されており、その一方、本剤の国際共同試験においては長期にわたる効果の維持が示唆されています。以上より、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。
 最後に、開発の可能性について御説明します。5歳以上18歳未満のACH患者を対象とした国際共同第III相試験において、本剤の優越性が示され、また5歳未満の国際共同試験も現在実施中です。以上より、本剤の開発の可能性は高いと考えています。
 したがって、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えています。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問がありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは、議決に移らせていただきます。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。特に御異議がないようですので、指定を可として、薬事分科会に報告させていただきます。
 続いて、議題9に移ります。議題9について、事務局から概要説明をお願いします。
○事務局 議題9、資料No.9、医薬品ナイキサン錠100mgの劇薬の指定の要否について御説明します。まず背景ですが、ナプロキセンについては昭和53年に開発され、薬事法施行規則において、その原体と製剤がいずれも劇薬に指定されています。現在は、医療用医薬品としてナイキサン錠100mgのみ承認されています。
 今般、このナプロキセン100mg錠が要指導・一般用医薬品として開発されていることを受けて、医療用医薬品であるナイキサン錠についても、その製造販売業者の田辺三菱製薬株式会社から、劇薬から除外することの要望がありましたので、本部会において劇薬への該当性を御審議いただきたいと考えています。
 この2ポツ目、該当性についてですが、ナイキサン錠100mgについて、改めて提出された資料を確認した結果、例えば薬用量を超える用量による動物への長期連続投与において、機能又は組織に障害が認められていないことや、副作用発現率が低いことを踏まえますと、このナプロキセン100mg以下を含有する製剤については、劇薬指定から除外することが適切であると判断しました。なお、原体については、急性毒性のデータから、劇薬指定のままとすることが適切であると判断しています。
 なお、要指導・一般用医薬品たるナプロキセン錠については、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社から、医薬品モートリンNXとして平成30年に承認申請されており、今年6月2日に開催の要指導・一般用医薬品部会において承認が可とされ、こちらにおいても劇薬に該当しないとされているところです。
 今後の対応については、この製剤を劇薬から除外することについて、施行規則の一部改正を8月下旬を予定として公布した上で、施行については、公布日から4か月ほどの経過措置を置いた上でさせていただければと思っています。以上、御審議のほどよろしくお願いいたします。
○森部会長 ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問等がありましたらお願いいたします。特にありませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、議決に移らせていただきます。なお大森委員、川上委員、佐藤直樹委員、武田委員、長谷川委員、宮川委員におかれましては、利益相反に関するお申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことになっております。それでは、本議題について、劇薬からの除外を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、劇薬からの除外を可とし、薬事分科会に報告することとします。
 続いて、報告事項に移ります。報告事項議題1、3、6、7、8について、事務局から御説明をお願いします。
○事務局 報告事項について事務局から御説明します。まず議題1、リクシアナ錠の製造販売承認事項一部変更承認についてです。資料No.10を御覧ください。本剤は、血液凝固第Ⅹa因子阻害薬であるエドキサバントシル酸塩水和物を有効成分とする薬剤です。本邦では、既に本薬の錠剤及びOD錠が承認されているところです。
 今般、第一三共株式会社より、出血リスクが高い高齢の非弁膜症性心房細動患者における減量用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断いただいています。
 続いて議題3、資料No.12を御覧ください。イヌリード注の製造販売承認事項一部変更承認申請についてです。本剤は、イヌリンを有効成分とする注射剤であり、本邦では、2005年に「糸球体ろ過量の測定による腎機能検査」の効能・効果で承認されています。
 現在、本剤を用いたイヌリンクリアランスの測定には、年齢による違いはなく、既承認の用法・用量も年齢により使い分けるものではありませんが、小児におきましては、採血、飲水、採尿による負荷が大きいということ、また、成長に伴い体格が大きく変動することから、これらの負荷を低減しつつ、体格等に合わせてイヌリンクリアランスの測定に適した本剤の投与量を算出する、新たな用法・用量を検討する国内第III相試験が実施されました。その成績を基に、今般、株式会社富士薬品より、一部変更承認申請がなされたものです。機構における審査の結果、本申請は承認して差し支えないと判断しました。
 続いて議題6、資料No.15を御覧ください。ニトプロ持続静注液の製造販売承認事項一部変更承認についてです。本剤は、ニトロプルシドナトリウム水和物を有効成分とする血管拡張薬であり、本邦においては、ニトプロ注として1998年に承認され、2021年現在では、「手術時の低血圧維持、手術時の異常高血圧の救急措置」の効能・効果で承認されています。
 本剤については、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議におきまして、小児の急性のうっ血性心不全及び小児の高血圧性緊急症に対する効能・効果、また、用法・用量に関する公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、これにつきましては、今年の1月27日に開催された本部会における事前評価を頂いています。この内容を踏まえ、今般、丸石製薬株式会社から、小児のこれらの効能・効果及び用法・用量に関する一部変更承認申請がなされたものです。機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断しました。
 なお、御覧いただいている添付文書に修正がありますので御報告します。資料No.15の別紙2、添付文書(案)の2ページを御覧ください。添付文書(案)の2ページにおける重要な基本的注意の8.6項ですが、この8.6項につきましては、審査の過程で、本申請に当たって記載する必要はないと機構において判断された内容ですので、その削除をしたいと思いますが、この資料ではそれが反映されていなかったため、これを削除とさせていただければと思います。8.6項全体を削除とさせていただきます。資料の差替えが間に合わず、大変失礼いたしました。以上、御報告させていただきます。
 続きまして、報告事項の議題7について御説明いたします。資料No.17をお開きください。希少疾病用医薬品の指定の取消しについてです。モガムリズマブ、届出者は「協和キリン株式会社」ですが、本剤は、平成29年12月21日に「HTLV-1関連脊髄症」を予定される効能・効果として、希少疾病用医薬品に指定されています。今般、協和キリン株式会社から、検証的試験における主要評価項目が未達成であり、この開発を中止することに関する届出がなされましたので、これと合わせまして、希少疾病用医薬品の指定を取り消すこととしました。以上、御報告いたします。
 続いて、再審査に関する議題を御説明します。資料No.16を御覧ください。資料No.16-1については、医薬品グラッシュビスタに関するもの、資料No.16-2は医薬品キックリンカプセルに関するもの、資料No.16-3はサインバルタカプセルのうち適応症としてうつ病等に関するもの、資料No.16-4は同じく医薬品サインバルタカプセルのうち適応症として慢性腰痛に関するもの、また資料No.16-5は医薬品ソマチュリン皮下注に関するものです。
 これらの品目については、いずれも製造販売後調査等に基づき再審査申請が行われて、審査の結果、承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量等のいずれも変更の必要がないものと判定されたものです。御説明は以上となります。
○森部会長 ありがとうございました。では、以上の報告事項について、委員の先生方から御質問がありましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。特段、御質問事項はありませんでしょうか。それでは、報告事項議題1、3、6、7、8については御確認いただいたものとさせていただきます。
 本日の議題は以上ですが、事務局から報告がありますのでお願いします。
○事務局 その他資料「不妊治療について」という資料を御確認ください。不妊治療において使用されている医療用医薬品の適応外使用に係る取扱いについてということで御説明します。
 2ページを御覧ください。不妊治療の保険適用に関しては、既に報道等で御存じかと思いますが、令和2年5月の段階で少子化社会対策大綱というものが出されております。その中では、不妊治療の経済的負担の軽減という観点で、不妊治療の保険適用について検討するということが記載されております。その後、令和2年12月に全世代型社会保障改革の方針というものが出されております。その中で、令和4年度当初から不妊治療に対して保険適用を実施するということが書かれておりまして、工程表が策定されております。工程表の中では、この3月末に実態調査の最終報告が行われ、また、この夏頃に学会がガイドラインを完成させる予定となっておりまして、最終的には、令和4年4月から不妊治療に対しての保険適用という予定です。
 その夏頃の学会ガイドライン完成(予定)について詳細を御説明します。3ページを御覧ください。学会というのは日本生殖医学会になりますが、関連学会である日本産科婦人科学会や日本泌尿器科学会等々の意見を踏まえて、日本生殖医学会において不妊治療の診療ガイドラインが作成されております。この6月23日にガイドラインが公表されておりまして、全部ではないのですが、既に一部がホームページ上で公開されている状況です。全体のバージョンは年末に冊子として公表される予定と聞いております。
 このガイドラインの構成及び作成の基本方針について、4ページに記載しております。このガイドライン上では、40項目のCQ(クリニカルクエスチョン)を設定して、それに対してそれぞれアンサーということで回答を示す形で、ガイドラインは作成されております。それぞれのアンサーの中では、5ページに記載しておりますが、推奨レベルが設定されております。推奨レベルはA、B、Cの3段階で決められておりまして、Aが「強く勧められる」、Bが「勧められる」、Cが「考慮される」ということで、それぞれのアンサーに対するエビデンスの質や、さらには日本の医療現場での浸透度、あるいはコスト面と、いろいろな観点を総合的に勘案して、学会の方で推奨レベルを記載していると聞いております。なお、実際にアンサーにひもづく解説の部分はまだ公表されておりませんが、その中には、それぞれ根拠となった文献も記載される予定と聞いております。その文献それぞれについては、エビデンスレベルI、II、IIIということで、その文献のエビデンスがまた3段階で記載されているという状況です。
 このように、生殖医学会の方で取りまとめられたガイドラインを踏まえて、今後、不妊治療で標準的に使用されている医薬品についてですが、現在、基本的には物としての承認はあるものが大半ですが、適応として不妊治療に係る適応を持っていないものが多いという状況であるため、不妊治療に係る適応を取るために薬事承認が必要ということで、その薬事承認に向けた要望書が学会の方から上げられて来る予定です。
 実際に要望書が上がってきたときに、どのように薬事承認に向けて進めていくかですが、まず、一般論として、6ページに未承認薬・適応外薬検討会議での検討の進め方を記載しております。右上に学会・患者会等と書いてありますが、そういった団体等からの要望を受けたときに、この検討会議の中で実際にその要望が医療上の必要性があるのかどうかを評価し、さらに、医療上の必要性があるということになった場合には、企業に対してその開発の要請をするというスキームになっております。その際に、エビデンスとして追加で臨床試験が必要という判断をする場合もありますが、今ある論文や海外の承認状況、ガイドラインの記載状況等を踏まえれば、新たに試験を実施することなく公知申請ができるのではないかと企業が判断した場合には、改めて検討会議の中で公知申請の該当性の評価を行っていただきまして、そこで公知に該当ということになりましたら、薬事・食品衛生審議会でも公知該当の事前評価を行っていただきます。未承認薬検討会議、薬事・食品衛生審議会での2回の公知該当性の評価を踏まえ、そこで公知該当ということになりましたら、その時点から、承認を待たずに保険適用できるという運用で、これまでも進めてきております。一方で、未承認薬・適応外薬検討会議の中で、学会等から要望を受け取るためには、その要望を受け付ける要件がありまして、それが7ページの左上のピンクの所に書いてあります。欧米等6か国における承認の状況や、ガイドライン等の記載状況を踏まえて、その要望を受け付けるかどうかが決められているというのが現状のスキームです。
 ここまでが一般論ですが、今回、不妊治療において使用されている医薬品の取扱いを検討するに当たりまして、8ページを御覧ください。まずは、薬事承認に係る学会からの要望書が提出された場合に、今御説明した未承認薬・適応外薬検討会議の要望受け付け要件に当てはまるかどうかというところで振り分けることを考えております。要件に当てはまるものは、通常どおり、未承認薬・適応外薬検討会議の中で医療上の必要性、さらに公知該当性について判断を頂く。一方で、該当しないという場合には、企業による承認申請をしていただくスキームを考えております。
 続いて9ページです。その際に、2番の企業による承認申請については、実際に不妊治療というものが保険診療外でかなり使用実態があるという特殊な事情も勘案して、また、使われている薬剤は、例えばホルモン剤などが多いのですが、用途においておおむね薬理作用が明らかであるようなものが多いということ、既に日本において保険診療外でそういった薬理作用を期待した十分な使用実績があるということがありますので、こういった背景を踏まえれば、今から新たに試験をするということがなくても、例えばカルテを遡るなど、後向きの調査などで一定の有効性が示されていると判断できるものも実際には存在するのでないかと考えております。ですので、この企業による承認申請のスキームとしては、実際に生殖医学会がガイドラインを作るときに用いた厚生労働科学研究費等がありますが、そういった公的な研究事業の中で、後向きの調査をしていただいた結果についても、これまで公知の判断には臨床試験が必要と書いてありましたが、試験と同等の扱いができるのではないかと考えております。
 そういった判断をすることを前提に考えると、通常、改めて治験等の成績がなくても承認を可とするという判断をしたときには、承認条件を付けるということは基本的にはしないことになりますが、こういった背景事情を踏まえて、有効性・安全性がより頑健であるということを確認するために、必要に応じて市販後にも追加で安全性監視活動等を承認条件として求めることができるという、不妊治療においての取扱いを考えております。
 実際には、通知として、12~13ページに通知の案を載せておりますが、不妊治療において使用されている医療用医薬品の適応外使用に係る取扱いについてということで、前段は御紹介した不妊治療への支援の背景等を書いておりますが、記以下の所で、1.が調査の結果を試験の成績と同様に取り扱うという話、2.が市販後に承認条件を求められるという話、3.は令和4年4月からの保険適用ということで、時間も限られているということを考えて、我々としても迅速に承認審査を行っていきたいと書かせていただいております。こういった内容で、不妊治療に係る医薬品については、企業から承認申請があれば取り扱っていきたいと考えております。本日、この場で御確認いただいて、問題ないようであれば、この通知については近日中に発出をさせていただきたいと思います。以上です。よろしくお願いします。
○森部会長 ありがとうございました。委員の先生方から、この点について御質問がありましたらお願いします。
○代田委員 この分野の欧米での動きといいますか、認可の状況については何かしら情報があるのですか。
○事務局 海外の承認状況として、不妊治療に適応を持っている剤もありますし、また、今回日本で作られたような不妊治療の診療ガイドラインというものが欧米にもあります。その中で、実際に推奨されている医薬品も多くありますので、そういったものについては、そうしたものを参考にしながら、我々として承認ができるのかどうかを考えていくことになると思っています。
○代田委員 海外で使われていなくて、国内で使われているものも結構あるのですか。
○事務局 日本独自で進化したと言いますか、そういった治療方法もあるとは聞いておりますので、物自体は日本では承認されているものですが、不妊治療での使い方という意味で日本独自のものもあるやには聞いております。それも含めて、日本の中でこれまで使われてきた使用実態等をかんがみて、実際にそれが有効性・安全性を確認できるレベルなのかどうかを御判断いただくことになるかと思います。
○代田委員 分かりました。ありがとうございます。
○森部会長 ほかにいかがですか。
○堀委員 今の資料の9ページの所で、この上記の調査結果に基づいて承認された医薬品などについては、必要に応じて市販後における追加の安全性監視活動などを承認条件として求めることができると書いてありますが、この期間や安全性の監視活動というのは、一応決まってはいるのですか。期間の設定などは、もうなさる予定ですか。
○事務局 コメントありがとうございます。実際に剤ごとに、どういった有効性・安全性の指標を確認しなければいけないのかということも含めて、今後検討していくことになるかと思います。ですので、各剤について一律にこの承認条件を設定するわけではなくて、それぞれの剤に必要な期間、必要な指標は、個別に御議論いただくものだと考えております。
○堀委員 やはり不妊治療というのは、かなり長期間にわたる可能性もありますので、そこにおいて、受ける側としてみたら、その薬に対していわゆる副作用など、いろいろと心配な点というのが出てくると思います。特に今回の承認において不妊治療に適応する医薬品として承認されるということであるならば、その安全性が担保されることになり、不妊治療を迷っていた人もやっぱりやってみようと思う方は非常に増えると思うのです。そうなったときに、承認後の安全性ということは非常に懸念するところですので、是非、そこの部分は継続した監視を宜しくお願いいたします。私からは以上です。
○事務局 ありがとうございます。安全性については、我々も必要に応じて、そういった形で確認できるようにしたいと思っています。
○森部会長 そのほかに御質問はいかがですか。令和4年、すなわち来年の4月から保険適用が不妊治療で始まるということですので、タイムスケジュール的には今年度中にも幾つかの取組はあるということでしょうか。
○事務局 まず一つ、未承認薬検討会議の方で公知該当になるというルートで進むものについては、先ほど御説明したとおり、公知該当の判断が保険適用のきっかけになりますので、そこまでの段階を令和4年4月までに行わないといけないというスケジュール感になります。一方で、企業からの承認申請のものについては、実際に承認申請をしていただいて承認までしないと、その後、薬価等の手続が必要なものもあれば、そういった手続も含めて令和4年4月までに終わらせないといけないということであるため、かなりスケジュールとしてはタイトなスケジュールで御議論をお願いすることになるかと思います。秋以降に、個別の剤については、先生方にもご確認を頂くことになるかと思います。
○森部会長 先生方から追加で御発言、御質問はありませんか。
○柴田委員 御提案に全く異存はないのですが、確認を一つさせてください。7ページに、医療上の必要性の評価基準というのがあるのですが、適応疾病の重篤性が次のいずれかの場合、ア、イ、ウのどれに該当するのかというのは、もう整理をつけるというふうに、何らかの決め事として、ウにするのかなどを決めた上で前に進められるという認識でよろしいでしょうか。念のための確認です。
○事務局 未承認薬検討会議の中で、最終的には決められるものかと思いますが、我々としてはウに該当するものだろうと現時点では考えております。
○柴田委員 分かりました。ありがとうございます。
○森部会長 一つ確認させてください。今回、御説明いただいた手続によって承認した薬剤と、従来のルールで承認した薬剤で、何らかの社会的な公表といいますか、開示に関しては手続上違いはないのですか。承認薬という位置付けには特に変わりないということですか。
○事務局 そうですね。承認自体は同じ法令に基づく承認と考えておりますので、その手続は同じかと思います。
○森部会長 変わらないということですね。そのほかに御質問はありませんか。それでは、その他の事項についても御確認いただいたものとさせていただきます。そのほか、事務局から御報告はございますか。
○事務局 次回の部会は8月30日(月)午後4時から開催させていただく予定です。よろしくお願いします。
○森部会長 本日は大変長時間になりましたが、活発な御審議、どうもありがとうございました。本日はこれで終了させていただきます。
( 了 )
備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局 

医薬品審査管理課 課長補佐 柳沼(内線2746)