第9回多様化する労働契約のルールに関する検討会(議事録)

日時

令和3年11月12日(金)14:00~16:00

場所

労働委員会会館 612号室
(東京都港区芝公園1-5-32 労働委員会会館6階)

出席者(五十音順)

  • (えび)(すの)(すみ)() 立正大学経済学部教授
  • (くわ)(むら)()()() 東北大学大学院法学研究科教授
  • (たけ)(うち)(おく)()寿(ひさし) 早稲田大学法学学術院教授
  • (やま)(かわ)(りゅう)(いち) 東京大学大学院法学政治学研究科教授

議題

多様な正社員の雇用ルール等に関する論点について

議事

議事内容
○山川座長 ただいまより第9回「多様化する労働契約のルールに関する検討会」を開催いたします。
 委員の皆様方、本日も御多忙のところ御参加いただき、大変ありがとうございます。
 本日の検討会は、新型コロナウイルス感染症予防の観点も踏まえまして、対面とZoomによるオンライン参加を組み合わせた開催になります。オンライン参加の皆様、こちらの音声・画像は届いておられますでしょうか。ありがとうございます。
 本日は、安藤委員、坂爪委員、両角委員が御欠席です。
 吉永労働基準局長は、別途公務のため欠席とのことです。
 議題に入ります前に、事務局からオンライン操作方法等の説明と資料の確認をお願いします。
○竹中課長補佐 それでは、事務局より、操作方法の御説明をいたします。
 御発言の際には、Zoomのリアクションから「手を挙げる」という機能を使用して御発言の意思をお伝えいただき、座長の許可がございましたら御発言ください。御発言時以外はマイクをミュートにしていただき、御発言の際にミュートを解除の上、御質問等をいただきますようよろしくお願いいたします。不安定な状態が続く場合には、座長の御判断により、会議を進めさせていただく場合がございますので、御了承いただければと思います。
 続きまして、資料の確認でございます。まず、資料1が「多様な正社員の雇用ルール等に関する論点について」ということで、今回の資料でございます。参考資料は1~4までございまして、参考資料1は第5回検討会の資料1、参考資料2は第1回検討会の資料6、参考資料3は多様な正社員の雇用ルール等に関する裁判例でございます。また、参考資料4はこれまでに行ったヒアリング結果をまとめたものでございます。
 不備などがございましたら、事務局までお申しつけいただければと思います。
○山川座長 ありがとうございました。
 カメラ撮りはここまでとさせていただきます。
 それでは、本日の議題に入ります。資料1を御覧ください。事務局から「多様な正社員の雇用ルール等に関する論点」につきまして説明をお願いいたします。
○竹中課長補佐 それでは、画面を共有させていただきますので、少々お待ちください。今、画面を共有させていただきました。それでは、資料1に沿って説明させていただきます。前回まで無期転換ルール等に関して御議論いただきまして、論点が一巡いたしましたので、無期転換関係はまた御議論いただく機会もあろうかと思いますが、今回からは「多様な正社員の雇用ルール等に関する論点」でございます。
 まず、論点一覧の総論であります。
 アでありますが、「いわゆる正社員」と「非正規雇用の労働者」の働き方の二極化を緩和し、労働者一人一人のワーク・ライフ・バランスと、企業による優秀な人材の確保や定着の実現のため、職務、勤務地、労働時間を限定した多様な正社員の普及を図ってきた。そこで、労使双方に対する効果や課題をどう考えるかということ。また、労使双方にとって望ましい形でさらなる普及・促進を図るためには、どのような対応が考えられるかということであります。
 イですが、多様な正社員の限定の内容の明示に関し、「雇用管理上の留意事項」という通達を策定しているほか、あとは導入事例の周知などにより周知を行ってきた。その限定された労働条件が明示的に定められていないとか、限定された労働条件が変更される場合もあるという中で、紛争の未然防止や予見可能性の向上のために、雇用ルールの明確化を図ることをどう考えるか。
 ウですが、こちらは第1回の検討会の中でも委員から御意見があったところもありますが、多様な正社員か否かにかかわらず、いわゆる正社員であっても何らかの限定があると言える場合もあり得るところ、いわゆる正社員についても念頭に置いて検討することについて、どう考えるかということであります。
 続いて、4ページ目でありますが、雇用ルールの明確化でございまして、まず、アでございます。勤務地、職務等の労働条件について、その範囲とか変更の有無を個々の労使の間で書面で確実に確認できるようにするため、労使双方にとっての効果とか留意点も考慮しつつ、どのような方策、確認内容が考えられるかということ。
 また、現行の労働条件明示について、雇入れ直後の勤務場所または業務を明示するものであるという中で、勤務地、職務等の範囲や変更の有無について、いわゆる正社員も含めて様々な定め方があることとか、慣行により限定している企業もあることなどを踏まえると、多様な正社員以外も含めた確認の在り方について、どう考えるかというところであります。
 続いて、イでありますが、労働契約の締結時のみならず、変更する際に、個々の労使の間で書面による確認が確実に行われるようにするため、どのような方策、確認内容が考えられるかということで、個別の労働契約により変更される場合や就業規則により労働条件が変更される場合等があるということで、それぞれどう考えるかということであります。
 ウについては、上のアとかイを踏まえまして、雇用ルールの明確化を図る場合に派生する諸課題への対応ということで、特に労働契約において勤務地等が限定されていることと、限定範囲を超えた転勤、配置転換とか、社員区分間の転換、事業所等が廃止される場合の対応について、どう考えるかということでありまして、採用時から限定されている場合と途中で限定される場合や一時的に限定される場合とで違うかどうか。あとは、限定が個別合意による場合と就業規則による場合など、多様なケースも考えられる中で、どのような点に留意すべきかということでございます。
(3)その他ということで、こちらは無期転換ルールのときにも同様の論点を設定させていただきましたが、アであります。多様な正社員に係る人事制度等を定めるに当たって、多様な正社員の意見が反映されるようにすることをどう考えるか。
 イでありますが、多様な形態の労働者の間のコミュニケーションをどのように図っていくことが考えられるかということでございます。
 このうち(3)は時間の都合上、次回以降の御議論ということで考えておりまして、本日は(1)総論と(2)雇用ルールの明確化というところで御議論をお願いできればと思っているところであります。
 続いて、総論のところであります。6ページ目であります。
 まず、論点については、先ほど見ていただきましたので、割愛いたしますが、2の委員からの主な意見等ということで、1つ目の○だけ見ていただきますと、上のウと関連するわけですけれども、多様な正社員だけを念頭に置くのではなく、いわゆる正社員についても念頭に置いて議論していくべきではないかという御意見をいただいたところであります。
 続いて、7ページ目であります。こちらの中で、特に先ほどの論点の中でも、労使双方にとっての多様な正社員の効果とか課題ということで入れさせていただきましたが、このヒアリングの中では、例えば企業からの声として、1つ目の○の2行目であります。非正規雇用であれば退職していたかもしれない人材が社員として会社に定着しているとか。生活に合わせたスタイルで正社員になるステップを導入することができたなどがあります。
 また、上から4つ目であります。雇用区分が異なる人がいると社内の団結が難しくなるというお声もあったところです。
 それとはまた別に、下から3つ目のところでありますが、「正社員」という概念自体が曖昧になりつつあって、「正社員」「非正規」という枠組みから離れる必要があるとの意見もあったところであります。
 続いて、8ページ目でありますが、「多様な正社員」に関してのこれまでの検討の経緯でございまして、左が閣議決定関係で、右が厚労省の動きでありますが、このうち右下から2つ目のところに「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会というものがございます。
 こちらについて、その概要をおつけしたのが9ページ目でございます。この中で、一番上に趣旨を入れていまして、ここでるる書いていますのは、最初の論点・総論のアのところで冒頭書かせていただいたものと基本同じものでありますが、これをもう少し詳細に書いたものが10ページ目であります。こちらは、この「多様な正社員」懇談会の報告書の抜粋でございます。
 続いて、11ページ目・12ページ目でありますが、これは勤務地限定正社員とか各限定正社員について、効果的な活用が期待できるようなケースということで、これも報告書の抜粋でございます。
 続いて、13ページ目でありますが、ここからデータ関係が続きまして、まず、雇用均等基本調査の抜粋でありますが、正社員の内訳でありまして、一番上の全体のところだけ見ていただきますと、この中の薄い青色のところが限定総合職ということで、9.4%ということでございます。
 続いて、14ページ目でありますが、こちらは多様な正社員制度がある事業所の状況ということで、これも雇用均等基本調査でありますが、青いところが2020年で、多様な正社員制度があるというのが28.6%であります。ちなみに、2018年時点は23%でありました。
 続いて、右上であります。こちらについては、以前にも戎野先生のほうから、多様な正社員制度があるかどうかということと、利用者がいるかどうかというのは、また別だろうという御指摘をいただきましたが、利用者の有無ということで、各限定正社員制度それぞれについて見たときに、4割前後が1年間に利用者ありとなっているところであります。
 続いて、15ページ目は以前にもこの検討会の中でお示ししたことがあるデータでありますが、今年1月時点で企業のほうに聞いたものでありまして、多様な正社員がいる企業ということで、先ほどのデータが制度があるかどうかと言っているのに対して、こちらはいる企業全体の中で言えば18.3%で、企業規模別に見たときに、規模が大きいほど、その割合が高くなっているところであります。
 続いて、16ページ目は以前にもお示ししたものですので、割愛しまして、17ページ目であります。こちらは、JILPTの企業の調査でして、多様な正社員に限ったデータではありませんが、性別とか雇用形態、職種等の観点から見た社内人材の多様化の変化ということでありまして、5年先はどうなるか、もしくは5年前と今と比べてどうなっているかということで、多様化が推進されているということが見てとれます。
 続いて、18ページ目であります。こちらは、多様な正社員を導入する理由でありまして、一番多いのは労働力の確保ということであります。あとは、上から4つ目の辺り、非正社員からの転換というものもございます。
 19ページ目は割愛しまして、20ページ目でございます。その多様な正社員がいない理由でありまして、一番多いのは、そもそも正社員は多様な働き方が可能だからということ。
 21ページ目も企業のほうに聞いたものですが、多様な正社員を新設する上での導入が難しい理由というのが、このグラフの中で言うと、青いほうが導入する意向がない企業ということであります。一番高いのは労務管理が煩雑・複雑になるということですとか、2番目がバランスの取り方が難しいということでございました。
 続いて、多様な正社員が今の働き方を選んだ理由ということでありまして、各限定社員区分ごとに見ているものであります。この中で言うと、それぞれの欄の一番下のところが「特に理由はない」ということでありまして、それがそれぞれ一番高くなっている。
23ページ目・24ページ目は、また以前にもお示ししたことのあるデータですので、割愛しますが、25ページ目であります。多様な正社員制度利用に必要だと考える支援ということで、いわゆる正社員の方に聞いたものであります。こちらで見ますと、一番高いのは採用段階から多様な正社員の採用枠を設けてほしいということでありますし、あと、上から3つ目のところですと、将来のキャリア展望の情報公開をしてほしいといったもの。あと、下から5つ目ぐらい、勤務地とか職務などの限定内容を書面等で明示してほしいというものがございます。
 26ページ目が、これまで多様な正社員に関連して、どういった対応をしてきたかということでありまして、次の27ページ目以降が、多様な正社員に関する法令とか告示ということであります。
 一番上が、育介法の中で労働者の配置に関する配慮というものがあるほか、下のところの次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定指針ということで、その真ん中の辺り、コのところで、職務や勤務地等の限定制度の実施というものがございます。
 続いて、28ページ目でございますが、平成27年に告示が出されているところでありますが、こちらの中でも、(一)地域を限定して働ける勤務制度の積極的な導入というものがございます。
 あとは、下半分のところが平成26年に取りまとめられた多様な正社員懇談会に関連して出されている、雇用管理上の留意事項でございまして、それのパンフレットの抜粋、あとは、リーフレット、多様な正社員や無期転換ルールに関するモデル就業規則です。
 30ページ目でありますが、多様な正社員の関係で、制度導入支援セミナーの開催、多様な正社員に関しての企業応援サイトでございます。
 続いて、32ページ目がキャリアアップ助成金ということでして、この中でも多様な正社員関係がございます。
 一番上の正社員化コースの中の助成額という欄の一番下の※のところ、字が小さくて恐縮ですが、勤務地とか職務限定、正社員制度を新たに規定した場合に幾ら加算があるほか、この欄の中の一番上の①とかで、有期から正規になるといったケースで助成があるわけですが、一番下の※のところを御覧いただきたいと思いますけれども、正社員化コースにおいて、多様な正社員へ転換した場合には、正規へ転換したものとみなすとされているところであります。
 33ページ以降は、規制改革推進会議関係でございますが、ジョブ型正社員の雇用ルールの明確化に関する意見が令和元年に出されておりまして、個別紛争の未然防止とか、次の34ページ目の真ん中の改革の方向性というところでございますが、ここでも予測可能性を高められるようにとされているところであります。
 ちなみに、下線は引いておりませんが、下の辺りで①から③とございまして、この中で、労働契約法や労働基準法をこういうふうに改正したらいいのではないかという意見があったところであります。
 続いて、35ページ目でございますが、一番上のところが、今ほど見ていただいた規制改革推進会議の意見を、要約したような形で答申が出されておりまして、その後に令和元年6月に閣議決定ということで、規制改革実施計画がございます。ここで下線を引いておりますが、この中で一番最初に、労働契約の締結時だけじゃなくて、変更の際にも確認が確実に行われるようにとされているところと。
 あとは、1つ目の四角でありますが、労働条件の明示の関係で、勤務地変更の有無ですとか転勤の場合の条件が明示されるような方策。
 2つ目の四角ですが、労働者の勤務地の限定を行う場合には、その旨が就業規則に記載されるような方策。
 3つ目の四角でありますが、職務や勤務地等の限定内容について書面で確実に確認できるような方策ということで、そういったものについて検討して、その結果を踏まえて所要の措置を講ずるとされているところであります。
 その下でありますが、骨太の方針の中でも一定記載がございまして、下線部であります。ジョブ型正社員の更なる普及・促進に向けて、雇用ルールの明確化に取り組むということでございます。
 続いて、36ページ目でありますが、こちらはこれまで厚労省のほうの研究会などで出してきた報告書でございます。
 一番上の有期労働契約研究会といいますのが、平成24年の労契法改正につながるようなものでございます。この中の下線のところでありますが、勤務地限定等の無期労働契約については、勤務場所の閉鎖等の際の雇用保障の在り方等々について、一番下のほう、労使の自主的な取組とか、実例・裁判例の集積の状況も注視しつつ、検討が必要とされています。その下以降は、限定正社員とかに限った話ではなく、労働者一般ということでありますが、2つ目のところは、労働契約法の創設につながるような研究会の報告書であります。そこの下線のところ、書面交付を求めること等を検討するのは、労使自治とか契約自由の原則の大原則とも言えるとしている。
 その下の平成5年の報告でございます。こちらは、行く行くは平成10年労基法改正にもつながるものでありますが、下線のところをご覧いただくと、労働契約関係の明確化ということで、そういったもののための法制の整備により、労使当事者の権利義務意識を喚起し、労働契約関係の自主的な決定、適正な決定を促進することにもなろうということで、新たな法制度等について検討する必要があるとされているところであります。
 今回、検討いただく雇用ルールの明確化についても、この報告の中で言うところの労働契約関係の明確化と、おおよそ同じような意味合いと捉えていただければと思います。
 ここまでが総論の話でございまして、続いて、各論の(2)雇用ルールの明確化でございます。38ページ目でありますが、こちらの論点のところは先ほど見ていただいたものと同じですので、基本的に割愛しますが、論点の中の2パラグラフ目の2行目において、変更の有無については、いわゆる正社員も含めて様々な定め方があるとしていまして、それはどういった定め方があるかということで、そのパターンをお示ししたのが真ん中の点線囲みのところであります。
 パターンとして、①が完全限定型、②が中間型ということで、その中で3つほどパターンがあるのではないかと書いていますが、②-1が、原則無限定であるけれども、一定の事由がある場合は、一定期間、限定が可能となるようなパターン。②-2が、原則限定ありだけれども、一定の事由に該当する場合は、一定期間、限定の範囲外に行くこともある。②-3が、原則限定ありではあるが、一定の事由に該当するのであれば、期間の定めなく、限定の範囲外に行くことがある。③が完全無限定型ということでございます。
 こういった様々なパターンがあるということを念頭に置いていただいた上で、論点のところで書いているような方策をどう考えていくかということでありますが、左下のところでございます。方法として考えられる例ということで言えば、義務化なのか、努力義務化なのか。または、通達とかQ&Aなどで、さらに周知・啓発を行っていくかということがございます。義務というところでるる書いておりますが、関連規定ということで、労契法4条とか労基法15条、89条というのを挙げております。
 右下のところでありますが、確認内容として考えられる例ということでありまして、こちらについては、平成26年に取りまとめられた多様な正社員懇談会における議論なども参考にしつつ記載しています。Ⅰが勤務地や職務等の限定の有無、IIが限定の内容、IIIが変更の範囲で、IVが(転居を伴う)配置転換があり得る場合はその旨ということで記載しております。こういった様々なパターンはあろうかと思いますが、そういったことを踏まえまして、どうしていくことがよいかというところでございます。
 39ページ目は、一方で労働条件などの変更時にどうしていくかということでございます。論点の2文目をご覧いただくと、個別の労働契約により変更される場合や就業規則により労働条件が変更される場合等があるということで、それぞれどう考えるかと記載していますが、これをもう少しブレイクダウンしていくと、どういったパターンが考えられるかということで、真ん中の点線囲みを記載しております。
 ①から⑤までございまして、①が、個別契約によって、個別契約に規定されている労働条件が変更される場合。②が、個別契約によって、就業規則に規定されている労働条件と異なる労働条件に変更される場合。③が、就業規則の変更によって、就業規則に規定されている労働条件が変更される場合。④が、使用者の業務命令等によって、個別契約に規定されている変更の範囲内で労働条件が変更される場合。⑤が、使用者の業務命令等によって、就業規則に規定されている変更の範囲内で労働条件が変更される場合ということで記載しております。
 こういったもろもろのパターンがあるということを前提にしていただいた上で、方策として考えられる例として、先ほどと同じように、いろいろなパターンを記載しておりまして、確認内容として考えられる例というところをもう少し別の内容を書いていますが、変更内容のみなのか、それとも変更後の労働条件全体なのかということで記載しています。
 続いて、40ページ目でありますが、上の論点のところは省略させていただきますが、点線囲みで書いているところであります。多様な正社員の限定の範囲を超えた転勤や社員区分間の転換、事業所等の廃止といった対応に関して、労働関係法令にのっとった対応や、裁判における判断について、どう整理できるかということで、特に平成26年に取りまとまった多様な正社員の懇談会の報告書において、多様な正社員の解雇の裁判例分析というのがまとめられているところですけれども、その後の裁判例を踏まえた場合にどのように考えられるかということで設定させていただいております。
 続いて、41ページ目が、これまでの委員の皆様方の御意見で、42ページ目が、ヒアリング先からの御意見ということでございます。一部、再度御紹介いたしますと、一番上の○のところ、不必要な事務負担拡大は避けるべきということがあるほか、上から3つ目であります。3行目の辺りからで恐縮ですが、こういった限定ということに関して言えば、職務が明確だから、それ以外の仕事を断れるというメリットはあるけれども、デメリットとしては、当該職務がなくなったことが賃金減額とか解雇の理由となり得て、労使の課題と思っているという労働組合の方のコメント。
 あとは、次の4つ目の○でございます。限定正社員等に対する労基法による就業規則への記載義務化というのがあるのなら、それは勤務地とか職種限定等というのが個別の合意によることが多くて、仮にこの点を就業規則の必要記載事項として立法化すると、就業規則の記載と個別合意のどちらを優先するか等をめぐって、かえって誤解やトラブルが生じる可能性があるのではないかという使側の弁護士の方のコメント。
 あとは、一番下の○でありますが、これも使側の弁護士の方のコメントであります。限定正社員等に対する労働条件明示義務という規制を行う必要性は特段認められないということであります。
 43ページ目についても、一部、再度御紹介しますと、上から3つ目であります。これは労側の弁護士の方のコメントでありますが、勤務地変更の有無とか転勤の場合の条件が明示されること自体は、義務づけが使用者に合意内容を遵守させるため役立つので、反対ではない。ただ、明示された勤務地とか職務がなくなったことを理由に不利益が促進されるような悪用につながることはあってはいけないというコメントがあったところであります。
 続いて、44ページ目以降は、基本的な現行の制度の立てつけについて解説するものでありますが、まず、労働条件の明示というところでございます。
 ここでは、左側のほうで労働基準法15条を紹介しておりますが、明示の時点という意味では、15条でカバーしています労働契約締結時ということで、規制改革推進会議などが言っていたような変更時の明示というものは労働基準法上対象になっていない。
あとは、2つ目の明示事項というところでございます。この中の③で、就業の場所とか業務に関する事項というものを今、明示することになっておりまして、※2の右側の点線囲みであります。こちらは、解釈例規において、雇入れ直後の就業の場所とか従事すべき業務を明示すれば足りるとされているということでございます。
 あと、労基法に関して言えば、一番下のところでありますけれども、罰則があるということであります。
 続いて、右側の労働契約法4条のところでありますが、こちらは変更の場面とかも含めて確認していくということも含まれているということであります。
 45ページ目は、その条文関係ということで、まず、労契法4条であります。
 46ページ目で労基法関係を入れています。
 続いて、47ページ目でございます。今度は就業規則の関係でありまして、まず、一番上の太枠内であります。常時10人以上の労働者を使用する使用者というのは、就業規則を作成しないといけないというのが労基法89条にあるところでありますが、記載事項の中で、例えば絶対的必要記載事項の①で労働時間関係がございますが、就業の場所とか業務といったことについて、記載事項になっていないところであります。
 ちなみに、下から2つ目の菱形のところでありますが、就業規則というのを作業場の見やすい場所に常時掲示するか備え付ける、労働者に交付するなどの方法によって周知しなければならない。これは労基法106条の中であるほか、一番下のところで罰則もあるということが見てとれます。
 48ページ目は、その条文の関係であります。49ページ目をご覧いただくと、今ほど見ていただいた明示などに関する法違反の状況でありまして、この中で③が労働条件明示関係でありますが、違反事業者の比率は平成31年だけ見ていきますと10%程度。
 続いて、その下の④の就業規則については8.9%ということでございました。
 50ページ目からは書籍の抜粋をしているところでありますが、まず、労働契約法4条に関連して、どういった規定なのかという解説を入れております。
 この中で言うと、下から2つ目の下線でありますが、本項は訓示規定ということで、その努力義務にとどまるという記載があるところであります。
 続いて、51ページ目であります。こちらも本の抜粋でございますが、下線のところは労働基準法15条と労働契約法4条の関係について記載のあるところでございます。
 52ページ目は、「多様な正社員」の懇談会の報告書の抜粋でございまして、その限定の内容の明示のところであります。
 そこで、限定の内容の明示の必要性という意味で言えば、1つ目の下線のところであります。限定がある場合はその旨と限定の内容について当面のものか、将来的なものかというものを明示していくことが重要であるということが記載されています。
 その続きで、53ページ目でございますが、限定の内容の明示の促進策ということで、この際にもるる記載があったところであります。
(通信不良)
○竹中課長補佐 少々お待ちください。そうしましたら、時間の都合もございますので、先生方のほうでお手元に資料がございましたら、そちらを参照していただきながら聞いていただければと思います。申し訳ございません。
 続きまして、54ページ目以降でありますが、こちらは「多様な正社員」に関連して、そのパンフレットの抜粋でありますが、労働契約書の規定例というのを入れているほか、55ページ目、就業規則の規定例というものを入れております。
 続いて、56ページ目でありますが、こちらは「多様な正社員」に限らず、労働者一般向けのモデル労働条件通知書と就業規則でありまして、まず、左側の労働条件通知書のほうで、場所とか業務、時間の関係を赤囲みしているほか、右側のモデル就業規則であります。こちらは、個別の業務とか場所について記載する立てつけにはしておりませんで、場所とか業務の変更を命ずることがあるとか、配置転換関係のことを記載しているところでございます。
 続いて、57ページ目を御覧いただければと思いますが、こちらは論点イの関連ということで、労働条件とか契約の変更時の明示関係であります。他法令でどういうことをしているかということでありまして、一番上の船員法でありますが、こちらは労働基準法と同じように、違反した場合には罰金があります。こちらの第2項のところ、下線を引いてありますが、雇入契約の内容を変更したときは、遅滞なく、その書面を船員に交付しなければならないとしているところであります。
 真ん中が派遣法でありますが、下線を引いている2号をご覧いただくと、派遣に関する料金の額を変更する場合には、明示しなければならないとされているところであります。
 一番下が労働基準法14条2項にひもづいて出されている告示であります。こちらは、平成24年の労働契約法の改正と併せまして、更新の基準とかについては労働基準法施行規則のほうで明示する事項に移っていったわけですが、その移る前には、この告示の中で規定がありました。そのときの記載ぶりで下線でありますが、更新の有無とか更新の判断基準に関して変更する場合には、速やかにその内容を明示しなければならないということでありました。
 続いて、58ページ目でありますが、過去の厚労省が出した報告書などで、こういった関連する記載がどういったものがあったかというものの紹介であります。
 まず、労働契約法創設につながった研究会の報告書でありますが、一番上のところで、労働条件の変更時にその変更内容の明確化を図ることについても検討すべきではないかという意見もあったということですとか、一番下のところ、転居を伴う配置転換があり得る場合には、これに関する事項を就業規則の必要記載事項とすることが適当だということがございました。
 続いて、59ページ目であります。こちらは、平成5年のときの報告でありますが、この中でも、一番下の第6 就業規則等というところ、就業規則の必要記載事項の中で①でありますが、就業の場所とか配置転換に関する事項というものも入れるべきではないかという話があったところであります。
 続いて、60ページ目であります。こちらは、労働契約法12条ということで、一般的に最低基準項とかと言われますが、就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とするとされているところでありまして、その関連の通達と併せて紹介しているものであります。
 続いて、61ページ目は、論点ウの関連の法令でございます。
 62ページ目を御覧ください。ここから以降は関連するデータということで、基本的には、かつてこの検討会の中でお示ししてきたものですので、適宜割愛していきながら紹介しますが、まず、62ページ目で黒枠囲みをしているところであります。限定正社員に関して、限定内容について、どういうふうに規定しているかというところで、特に規定していないというのが1割前後ぐらいあるということであります。
 続いて、63ページ目でございますが、こちらも黒枠内であります。限定内容について、どう説明しているかというと、書面とかを使わずに口頭で説明しているとか、特に説明していないというのが合わせて1割ぐらいあるということであります。
 64ページ目を御覧いただきますと、こちらは就業規則の実態ということで、特に就業規則の周知方法というのが右上にあるわけですが、特に周知していないといったケースもあるところであります。
 下のほうで、採用内定時の労働条件明示と書いていますが、これはいわば労働契約締結時の労働条件明示が、この採用内定時に多くなされているだろうということでデータを御紹介するものであります。新卒採用がこの中の青いところでありますけれども、その就業の場所とか業務とかについては7割前後が明示しているということでありまして、その明示の仕方としては、右下であります。説明書の配布などもありますが、口頭で説明というものもございます。
 続いて、65ページ目でありますが、個別の労働条件設定をしているかどうかということで、そういうものがあるというのが41.3%でありまして、そういった個別の労働条件を設定している労働者というものが右上であります。一番多いのがパートタイマー等の非正規従業員ということでありますが、あとは限定社員というものも並んでいるということでして、個別に設定している労働条件ということで、賃金、労働時間等々がございます。
 続いて、66ページ目を御覧いただきますと、ここからは限定内容の変更関係であります。
 少しページを飛ばしていきますと、69ページ目を御覧いただきたいと思います。こちらについては個人に聞いたものということで、かつて、この検討会でも御紹介したものですが、過去5年間で会社の都合で変更したことがあるというのが11.9%ということでありまして、左下であります。この11.9%のうち、個別契約で労働条件を変更した場合の本人の同意があったかというと、そういった同意を得ずに労働条件を変更されたというのが25%あったということです。
 あと、右下のところ、説明方法とか説明がなかったことによる限定内容を変更されることへの不安が28.9%あるということでありました。
 続いて、70ページ目でございます。こちらは、「多様な正社員」に限らず、労働者一般のデータということでありまして、直近5年間の労働条件変更の有無で、「あった」というのが73%あったわけですが、変更における手続というのが左下でありまして、就業規則を変更したというのが93%で一番多いわけですけれども、上から3つ目の個別の従業員との労働契約を変更したというのが14.5%でございます。
 次の71ページ目でありますが、企業のほうに聞いた多様な正社員とのトラブルということありまして、トラブルがあったのが2%程度ですけれども、トラブルの原因が右側でありまして、会社から限定区分の変更を申し入れたけれども、拒否されたといったものがございます。
 これの関連で72ページ目でありますけれども、企業における多様な正社員とのトラブルということで、この中で上のほう、限定内容について説明をしている企業と比べて、特に説明をしていない企業のほうが、赤いところでありますけれども、トラブルがあったというのが3倍強あるほか、下のほう、限定内容について規定している企業と比べて、規定していない企業のほうが1.5倍ぐらいトラブルがあったということであります。
 続いて、73ページ目は個人に聞いたものでありまして、説明は割愛させていただきます。
 74ページからは裁判例の御紹介でありまして、まず、明示された職務内容とか勤務地との関係で限定合意が問題になった裁判例でございます。先ほど労働基準法の15条で雇入れ直後のことだけ明示すれば足りるとしていることとの関連でありますが、上のKSAインターナショナル事件にしても、社会福祉法人のものにしても、それぞれ業務なのか、場所なのかという違いはありますが、契約書とか労働条件通知書の中で記載されているものと違うところに行ったじゃないかということで訴えているわけでありますけれども、これらの裁判の中では、採用直後のことだけ記載したものにすぎないとされているところであります。
 続いて、75ページ目であります。ここから以降、何ページかにわたって、各限定合意が問題となった裁判例ということで、ページの構成として、上が限定合意を否定した例で、下が限定合意を肯定した例であります。このページですと職務の限定合意でありますし、76ページ目は勤務地の限定合意ということであります。いずれにしても、一例で76ページ目の下の新日本通信事件というところだけ申し上げれば、下線のところであります。採用面接の中で転勤できない旨を明確に述べているとか、会社側としても何ら留保を付することなく採用しているといったもろもろの事情が勘案されて判断されているところであります。
 続いて、少し飛ばしまして、78ページ目を御覧いただきたいと思います。こちらは、論点イ関連ということで、労働条件の変更の合意が問題となった裁判例であります。
 最初の山梨県民信用組合事件ということで言えば、事案の概要にもありますけれども、退職金の支給基準が変更されることについて、書面に労働者側が署名押印したということでありますが、事案の中の下から3行目ぐらい、当該行為に先立って労働者への情報提供とか説明の内容などに照らして、自由な意思に基づいてされたかどうかというところが問題とされているということであります。
 その次の東武スポーツでありますが、判旨の下線を引いてあるところを見ていただきますと、もともと期間の定めのない契約だったのが、1年の有期契約に変更されるということとか、賃金の変更、退職金制度の廃止といったもろもろについて、数分の社長説明と個別面談で口頭の説明がなされたということであります。その下の下線でありますけれども、労働条件の変更の合意を認定するには、その特定が不十分とされているところであります。
 続いて、79ページ目、技術翻訳事件というのが上のほうでございます。これも変更の合意が問題となった裁判例の一例でありますが、下から4行目辺り、賃金減額に係る将来の紛争を防止する意味からも、労働者に対して賃金減額の必要性などについて十分な説明を行って、その理解を得た上で、その合意内容を書面化しておく必要性が高いということが述べられている。
 その下、論点イ・ウ関連ということで、配置転換命令の際の使用者の説明等が問題となった裁判例を記載しています。こちらは、契約内容の変更時というよりは、先ほど39ページ目の中で御紹介した④とか⑤で、業務命令によって、もともと規定されている変更の範囲内で変更されているという一例と思いますが、この中で、一番最初の下線部でありますが、配置転換命令の業務上の必要性とか目的を丁寧に説明して、その理解を得るように努めるべきであったと言わなければならないとされていまして、そうした手続上の不十分さも踏まえて、配置転換が違法なものだと、この中ではされています。
 続いて、80ページ目であります。ここから配置転換の状況ということでありまして、もろもろのデータをつけていますが、その中で、例えば配置転換を行う企業の中で、転勤があるというのが右上、61.9%。そのうち、その転勤についてのルールの形式はどういうものかというと、就業規則が7割で一番高いということと、左下でありますが、例えば限定社員の予定外の地域への、もしくは職種への配置転換というのが4割前後あるということでありました。
 その次の81ページ目については、ほぼ同じようなデータではありますが、時点として少し新しいということと右下のところで、転勤に関するルールの内容ということで、転勤の期間とか転勤する地域といったものがあるということであります。
 続いて、82ページ目でありますが、出向・配置転換に関する労働局への相談件数等でありまして、※のところであります。令和2年度の内容別の相談件数のうち、出向・配置転換というのが3%ということでありました。
 続いて、83ページ目であります。ここから配置転換関係の裁判例でありまして、最初の東亜ペイント事件といいますのは、一般的な配転法理として有名なものであります。その下で学説として紹介していますけれども、下線部をご覧いただくと、勤務地とか職種が限定された労働者の場合は、本人の同意を得ずに配置転換命令を発することはできないということであります。
 84ページ目に関連の裁判例を載せておりまして、上の新日本通信事件については、限定合意が認められる場合の当該限定合意に反する配転命令については、労働者の同意がない限り効力を有しないと判示された裁判例ですし、その下の安藤運輸事件については、限定合意が認められない場合であっても、特定の業務に従事することの期待が法的保護に値するという判示がされることもございます。
 続いて、85ページ目でありますが、限定がある場合の変更に関する同意というのが、労働者の任意による、自由意思による必要があると判示された裁判例でありまして、その下の東京海上事件では、限定がある場合でも例外的に配転命令が有効とされる場合があると判示されたものであります。こちらは、いわばある職種限定ということで働いていたものの、その職種自体がなくなるということがあったときに、一番下の下線部辺りでありますが、使用者による職種変更の必要性があったかとか、不利益がどうかといった中で、特段の事情が認められる場合には、その合意がなくても他職種への配転が有効とされたところであります。
 86ページ目でございますが、ここからデータの関係で、まず、採用時から多様な正社員が多いというのが上のほうのデータで見てとれるのですが、下から3つ目、無限定正社員からの転換というのも一定あるというところからすると、途中から限定されるケースもあるというのが見てとれます。
 続いて、87ページ目以降、転換の関係でデータをおつけしているほか、89ページ目以降ですと、事業所閉鎖に関するデータというのをおつけしていますが、過去、この検討会の中で御紹介したこともありますので、説明は割愛させていただきます。
 91ページ目は、雇用管理上の留意事項という通達の中で、転換制度について抜粋したものであります。
 あとは、92ページ目は、転換についてですとか事業所閉鎖に関して、就業規則の規定例を御紹介するものであります。
 93ページ目以降については、これは多様な正社員の解雇の関係でありまして、また有識者懇談会の報告書の抜粋をおつけしています。こちらは、多様な正社員の解雇の裁判例分析ということで、下線のところが一定ポイントになると思うところであります。
 こういったそれぞれの下線部分に関連して、直近の裁判例ではどういった判断がされているかということを見ているのが95ページ目以降であります。例えば、95ページ目だけ御紹介しますと、一番下の※参考のところで報告書の抜粋をつけていますが、「限定があることゆえに整理解雇法理の適用を否定する裁判例はなく」とあります。
 それに関連して、上のほうの奈良学園事件、令和2年のものの下線のところでありますが、学校側が、労働者側はいずれも大学教員であるということで、職種限定で整理解雇法理は適用されないのだと主張されていたわけですが、裁判所からは、その整理解雇法理に従うべきものであるとしていて、同じような形で大乗淑徳学園事件というものもございます。
 続いて、96ページ目でありますが、こちらは95ページ目で御紹介した大乗淑徳学園と同じ事件でありますけれども、そういった中で、また別の側面というのも報告書の中で記載されていたことと類似の状況というのがありましたので、御紹介するものであります。
時間の関係上、少し割愛させていただきますが、こういった直近の裁判例というものを踏まえたときに、多様な正社員懇談会報告書でまとめていた内容というものが、今時点でも同様の傾向と言えるかどうかという辺りについて、また先生方の御見解をお伺いできればなと思います。
 99ページ目は、関連するものとして雇用指針の抜粋をおつけしているものであります。
次の101ページ目以降で、また諸外国との比較ということでおつけしておりまして、ここで言いますと、例えばEUとかイギリス、ドイツといった辺り、基本的には日本の労基法のような取締法規ではなくて民事法規と理解していますが、左から2つ目の勤務場所・職務の明示というところで、イギリスのところだけ御紹介します。下線部であります。勤務場所、労働者が複数の場所で勤務することが求められている場合には、その旨を明示しなければいけないとされているところであります。
 また、右から2つ目の欄でありますが、労働条件変更時の明示ということで言えば、例えばEUのところだけ御紹介しますと、下線部です。変更については、できるだけ早期にかつ遅くとも効力発生の初日までに書面の形式で提供されるようにということであります。
韓国については、次のページに和訳をおつけしていますので、そちらで御覧いただきたいと思います。こちらは勤労基準法ということで、日本の労働基準法と同じような形で罰則もございます。17条のところに下線を引いておりますが、労働契約締結時だけでなくて、変更する場合についても明示しなければいけないということで、この下線部については2010年の改正で導入されている。
 あと、(2)でありますが、団体協約とか就業規則の変更などがあったら、勤労者の要求があったときに勤労者に交付しなければいけないとされているところであります。
 説明、長くなりましたけれども、以上でございます。
○山川座長 ありがとうございました。
 それでは、議論に入りたいと思います。本日は、資料1の論点一覧の中で、(1)総論と(2)雇用ルールの明確化の項目ごとに議論いただければと思います。
 (1)総論につきましては、各論とも関連しておりますけれども、すなわち、もう一度改めて議論いただくことがあろうかと思いますけれども、この段階で特に総論について、何か御意見がありましたら、よろしくお願いいたします。
 竹内委員、お願いします。
○竹内委員 ありがとうございます。
 総論は特にあればという、今、座長のお話で、確かに後の各論のところで関わってくるような話にもなってしまうのかもしれず、その意味ではかぶるかもしれませんけれども、せっかくの機会なので発言させていただければと思います。
 今、画面で資料も共有させていただいております、総論のア、イ、ウの点であります。後の各論のところでも、雇用ルールの明確化の1の論点のア、38ページでも労使双方にとっての効果とか留意点ということも考慮してどう考えるかという具体的な問題が挙がっています。今、示していただいている画面のところです。結局、6ページのアに戻るのですけれども、労使双方にとっての効果としては、今回お示ししていただいた資料の中では、私、この多様な正社員関連の議論において非常に有益だなと考えているデータが幾つかございます。
資料の18ページを見ると、上位の項目は基本的に共通していると思うのですけれども、会社から見た場合、人材不足の環境もあろうかと思いますけれども、多様な労働力を確保していくことに資する。労働者側で見ると、22ページで、多様な正社員になったのはたまたまということが一番多いようですけれども、それを除くと、限定的な働き方をせざるを得ない状況にある。そういう中でニーズを満たすことができる点が、労働者側にとっての効果としてはあるのではないかと思います。そういう意味では、労使双方にとって多様な働き方を実現するという意味で、多様な正社員制度の効果というものを考えることができるのではないかと思われます。
 課題面に関して使用者にとってみると、21ページが有益なデータかなと思いますけれども、労務管理が複雑化するとか、処遇バランスが難しくなるとか、あるいはその少し下の辺りの幾つかの項目だと、総じて人事管理が硬直化する懸念というものもあるのではないかと思われます。
労働者側の課題という点では、これは25ページのデータがある程度参考になるのかなと思ってみましたけれども、これは枠とかを増やしてほしいとか、そういうものを除くと、キャリア展望が明らかになるような情報公開とか、もう少し下のほうで事務局からの口頭での説明でもありましたけれども、書面とかによる明示とか、更に、処遇がいわゆる正社員と違う場合における納得性などというのが、もう少し上のほうに順位としてあると思いますけれども、課題としてある。こういう要望があるという点では、これらについて対処するということが、労働側から見て乗り越えるべき課題と考えることもできるのではないかと思います。
 より多様な労働力の参加を促すということは、効果の観点から、あるいは現在の日本の労働市場が置かれた状況から見ても、政策的に促進することがあってよいと十分考えられるわけでありまして、そういう意味では、多様な労働力の参加を促すという効果の観点から、政策的に推進していくということを基本に据えた上で、その上で考えられる課題については、基本的に推進することを前提に適宜対応していくという方向で考えてよいのではないかと考えます。すなわち、効果と課題をどう考えて、どう対応していくかということに関しては、基本的に政策的な推進を図りつつ、個々の問題については、必要に応じて対処するということでよいのではないかと考えられます。
 ちょっと各論的な話にもなってしまうのかもしれませんけれども、せっかくなのでまとめて申し上げさせていただきますと、労働者側から見る課題として、この多様な正社員の話をした場合によく出てくるのが、事業所を閉鎖した場合の雇用保障、つまり解雇の問題がどうなるかということがありますけれども、裁判例について、従前の報告書での議論も紹介しつつ、今回の資料を併せて紹介していただいておりますけれども、私が理解する限りでは、ここまでの裁判例を参考にして考える限り、当然解雇ということにはならないという状況にあるといえます。
 もちろん、限定があることによって、現に配転ができる余地というものが狭まる可能性はあると思うのですけれども、当然に配転等の検討は全くせずに、即解雇ということにならず、個々の置かれた状況の中で配転等の可能性を検討して、それでできるならば講じるべきですし、できないのであれば、その他の要件、要素を踏まえて解雇の有効性を判断していくということになっているのではないかと考えられます。そういう意味では、当然解雇ということにはまずならないのではないかと見ております。
 また、労働者側の25ページのデータとか、あるいはヒアリングでも、労側からキャリアアップが固定されてしまうのではないかという懸念も示されたと記憶しておりますけれども、こういうものは、例えば転換制度を設けることを推進するとか、限定を明示させていく方向と併せて講じるような施策によって対応すべきと、考えております。労働者側から見れば、キャリアの固定という懸念ですし、また使用者側から見れば、人事制度が硬直的になるという懸念とも通じるところがあるのかなと思います。
 そういうものは、今、申し上げた転換制度の推進というものも1つありますし、あと、私、これは非常に重要じゃないかなと思うのですけれども、限定がある場合でも、個別に合意をして、そういうふうな限定を外して、労働条件、勤務地を変えるとか、限定があるけれども、合意で場所は改めるとか、職務を別のものに変えるというふうに、個別に労働条件を変更すること自体は、限定があった場合でもそれは当然可能なわけでして、そういう意味では、限定があるような働き方を推進していく、そのための雇用ルールを整備していくという中では、紛争防止の観点も兼ねて、個別の労働条件変更についての法理について整理することが検討されるべきと考えます。これは、もちろん学説等では既に議論等はいろいろなされているものではありますけれども、こういうものをさらに深めていくということを併せれば、限定正社員とか多様な正社員と呼ばれるものを政策的に推進するとした上で、さらに考えられる懸念等に対応できていくのではないかと考えられます。そういう意味で、個別の労働条件変更法理の整備といいますか、理解の周知・促進ということも含めて、基本的には政策的に推進する方向を取った上で、個々の考えられる問題については、これまでの裁判例の傾向とか積み重ねられている議論を踏まえて対処していくという方向が考えられるのではないかと思います。長くなって恐縮ですけれども、アについてはそういうふうに思いました。
 イとかウについてもあるのですけれども、一旦切り上げたほうがよろしいでしょうか。
○山川座長 そうですね。できれば、ほかの委員の先生方、戎野先生、お願いします。
○戎野委員 私は、イとウについてお話ししようかと思ったのですが、よろしいですか。竹内先生、先にお話しされますか。
○山川座長 お許しいただけましたので、どうぞ。
○戎野委員 まず、ウですけれども、多様な正社員といわゆる正社員という区分が、現場においては結構曖昧なところも実際にあると思うのです。ヒアリングの中でも、比較的規模の小さい企業では臨機応変に対応しているので、どの人が多様な正社員で、どの人がいわゆる正社員というのも区分が難しいような話もあったかと思います。また、アンケートの中でも、この制度を導入しない理由で、そもそも正社員は多様な働き方が可能だからという回答が多かったと思うのです。したがって、ここの多様な正社員というものの実際の把握の仕方というのは、必ずしも一般に共通しているというわけでもないのではないかなと思います。
 もちろん、何を限定しているかということを一つ一つ議論していくことは大事なのですけれども、ウにありますように、我々が議論しているいわゆる正社員というのも念頭に入れながら検討するというのは、これは非常に重要ではないか。現場感覚としては、とても大事なことではないかなというのがウについての意見です。
 それから、イですけれども、雇用ルールの明確化。これは、各論のほうにも非常に関係するので、最初のところで簡単に意見を申し上げますと、今、御説明あった中でも、多様な働き方を選んだ理由が、竹内先生のお話の中にありましたが、明確にこれを限定してという人がいる一方、特になく、たまたまという、非常に漠然として、選んでみたら、結局、この働き方だったみたいな認識の労働者というのもたくさんいるということは、これはまた逆に重要かなと思っています。
 そういった曖昧な理解というか、理解が必ずしも深くない中で働いているときに、いろいろな変更があれば、当然そこに問題が発生する可能性がありますし、先ほどのスライド69辺りの、会社都合で変更になっている人が1割ちょっといるわけで、その中で同意を得ずというのが4分の1いるというのは、私としてはちょっと衝撃を受けた数字でして、こういう実態がある中では、雇用ルールの明確化というのは絶対に必要ではないかと思った次第です。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 では、桑村委員、どうぞ。
○桑村委員 ありがとうございます。簡単に申し上げます。
 この多様な正社員の制度については、今までは育児・介護という特定事由、かつ短期的なものとして制度設計する企業が多かったのではないかと思います。ただ、この検討会では、このような特定の労働者、または短期的なものとして制度設計するのではなく、長期的なキャリアコースの一環として、多様な正社員を設けるという方向性でメッセージを発することが重要なのではないかと思います。ただし、雇用条件や雇用形態について、多様な選択肢を用意するということ自体を強制するものではないと考えています。これは、労使双方にメリットがある場合について、自主的にそれを導入していくという方向が望ましく、限定正社員などについても、それを導入することは努力義務としても強過ぎると思っております。
 本検討会の検討事項を総括すると、大きな方向性としては、手続規制の拡充になると思います。新たに実体的な規制を入れるという性格のものではなく、労使双方の納得を高める、さらに紛争を未然に防止するという観点で、手続的なルールをどう整理し、明確化するかということがより重要だと思います。今後も、正社員の中で、無限定で働くという働き方は残ると思いますが、それは当然の前提ではなく、労働者としてもそのような働き方であることをしっかり認識して、双方の同意の下でそのような雇用を展開していくということが重要であると思います。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 では、お待たせしました。竹内委員、お願いします。
○竹内委員 ありがとうございます。
 イとウに関してなのですけれども、先ほど申し上げたところで大体カバーしているかなと思いますので、ごく簡単に。
 イに関しては、基本的には労働条件の明示ということを何らかの形で、詳細にはわたらないにしても、限定の有無について明示させるということを義務づけつつ、具体的な内容については、より緩やかな方向でその推進を図っていくということが考えられるのではないかと思います。
 併せて、先ほど申し上げましたけれども、派生して生じるような課題については、これまでの裁判例や法令等、内容をまとめて、現行の状況から考えられる考え方を整理して示すということがあるのだと思います。
 ウに関しては、先ほど現場の観点で戎野委員から御意見がありましたけれども、法的に見ても、いわゆる正社員とそれ以外の正社員とを区別して定義し、規制を分けるのは困難だと考えられますし、それ以外にも、いわゆる正社員であっても、その労働契約内容の理解の促進とか明示・明確化というのは妥当することですので、区分することなく、限定等の明示について検討していく必要があると思っています。
 念のため申し上げますと、多様な正社員について政策的に推進していくべきだという形で申し上げましたけれども、これは桑村委員の御発言との関係で言うと、そういう区分自体は強制して設けさせるというものではなくて、それは労使双方にとってメリットがあるからこそ導入していくということが基本であるべきで、その点は桑村委員がおっしゃるとおりだと考えておりまして、政策的に推進していくというものも、そういうメリットを見出す企業がきちんと推進していくことができるようにするということを、そのために助けになるような制度設計をしていくことを念頭に置いておりまして、区分自体を設けさせるということを考えているわけではないということを補足的に申し上げさせていただきたいと思います。
あと、ちょっと長くなって恐縮ですけれども、もう一点だけ気になった点がありまして、限定の明示を義務化させていくというところは、基本、あってよいと考えているわけですけれども、現場においては、これまでも言われているところかと思いますけれども、契約上は無限定だけれども、事実上、雇用の職場の慣行上限定されているという労働者がいたりする。他方で、契約上限定されていて、かつ、契約上限定されているので、その処遇とかについても無限定の人と比べて低いみたいな場合があります。すると、限定の明示というものを進めていくと、配転等については、限定が現にあるということは共通しているのだけれども、処遇が違っているということが顕在化して、ひいてはそれをめぐる不満等が顕在化するということにもつながるかなと思います。
 労務管理の難しさとかを懸念として挙げる企業側の中には、そういったものも含まれるのかもしれませんけれども、労働条件がはっきりしないまま放置していくということ自体が、むしろ問題だと考えられますので、そういったことが顕在化するというのは、むしろ顕在化したものに正面から向き合って解決を図る。それによって、正面から労使の納得とか信頼というものを一層高めていくということが、紛争の未然防止の観点からも最も望ましい方向性ではないかなと思います。
 そういう意味では、現実的な懸念もあるのかもしれませんけれども、限定について、基本的にはその有無というものを明示させる方向で手続的な整理を図っていくということがあってよいのではないかと思います。
 以上です。ありがとうございました。
○山川座長 ありがとうございました。
 3人の委員の方々、基本的には方向性は共通しているかと思います。アとイについては、メリットを生かしつつ、デメリットを減らすような方向での推進の在り方を考える。ウについても、正社員もここでは対象として考えていく。限定正社員と正社員の区別そのものがそもそもはっきりしない面もあるということで、対象を広めに検討するということも、御意見としては共通しているのかなと思った次第です。
 そこで、時間の関係もありまして、論点一覧の(2)雇用ルール明確化のほうに移っていきたいと思います。まず、アについてはいかがでしょうか。一応の分け方としては、アは明示のお話で、イは変更の場合のお話で、ウの場合は、変更等についての問題点への留意という分類になるかと思います。まず、アについてはいかがでしょうか。
 竹内委員、お願いします。
○竹内委員 ありがとうございます。なるべく簡単に済ませたいと思います。
 アの論点に関しては、本来的には契約に係るルールですので、労契法で規定するのが理想的なのではないかなと思うのですけれども、現行法では、いろいろな労働条件の明示について義務づけしている規定は労基法の規定でありまして、政策的にメリットが見込まれる場合にその推進を図るということを考えるのであれば、行政指導等が適宜できるような形を念頭に置けばということですけれども、労基法15条1項の規定の中に盛り込むことが考えられるのではないかと思います。
 ただ、周知のとおり、労基法15条1項は罰則も伴っていますので、仮に資料の中で中間型という形で示していただいたような様々な限定のタイプがあり得るのだとするのであれば、法律の15条の規定としては、限定の有無について示すということを義務内容とする、すなわり、とにかく限定があります、あるいは限定がありませんということを明示さえすればよいという形にとどまることになるのではないかと思われます。それ以上に具体的に何をやって限定することが適切なのかということに関しては、罰則が及ぶような行為違反の形ではなくて、よりソフトな形で行政指導とかガイドラインというものを通じて対応していくことが1つ考えられるのではないかなと思います。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
 桑村委員、お願いします。
○桑村委員 ありがとうございます。
 今、映っている38ページの右下の、確認内容として考えられる例。2の「限定の内容」と3の「変更の範囲」はどう違うのでしたでしょうか。
○山川座長 これは質問ですので、お願いします。
○竹中課長補佐 ありがとうございます。
 限定の内容と変更の範囲で、割と近しいところはあろうかと思います。
 例えば資料1P38の真ん中の点線囲みのいろいろなパターンが考えられますが、限定の内容としたときに、完全限定型であれば「限定」の意味合いは明確でしょうし、中間型であれば一定の事由がある場合は短時間勤務があり得るといったところまで書くこともあり得るかと思います。
 いわゆる正社員については、単に限定なしと示すのではないかと思います。その際、何をもって限定とするのかについて労使で理解が同じものになるかどうかというところが限定の内容で留意すべき点と思います。変更の範囲ということであれば、例えばいわゆる正社員で、どこにでも会社が指定した場所に行くということであれば、そういった「会社が指定した場所」と明示すればよいものと思います。
 以上です。
○桑村委員 ありがとうございました。
 労働者側から見れば、自分が配置されることがない業務なり勤務地を知りたいのだと思うのですね。限定合意があるかないか、そして限定の範囲がどこにあるのかというのが、紛争の実態として一番多いと思うので。全国配転があるのか、一定の勤務地の限定があるのか。その一定というのは、どの範囲で配置されることを意味するのかという変更の範囲を書くことにこそ、紛争の未然防止という観点では意味があると思います。
 それが余り細かく書けないのであれば、ある程度抽象的なものにならざるを得ないかもしれないのですが、限定がある、なしだけだと、実際生じている紛争のことを考えると、紛争の未然防止にはつながらないのかなという気がしておりまして。私としては変更の範囲、どの範囲で配置されるのかが労基法15条の対象として含まれる方がいいのではないかなと思っています。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 ほかに何かございますでしょうか。
 今の点、すみません、確認ないし明示の対象として考えられるのは勤務地とか職務だとして、限定とか変更というのがちょっとそれと次元の違う話になるような、勤務地・職務というものが対象事項としてあって、それを変更できるかどうかというのは、ちょっと次元が別の話になりそうな感じもいたしまして、限定というのは変更ができないということですが、どの程度できる、できないという話があってということになります。
 ただ、この辺りを余り概念的・抽象的に議論してもなかなか分かりにくいので、ちょっと整理していただいたほうがいいかなと思います。具体例を挙げて、こういうものを確認内容として書く。限定というのはどういう場合で、変更の範囲というのは限定に例外を認めるかどうかという点も含んでいるかと思いますので、そこの整理です。確認内容として考えられるというのは、限定に中心を置いていますけれども、そもそも勤務地や職務をどう確認するかが先行するはずのような感じもしますから、ちょっと具体例を挙げた検討をしていただければと思います。
 すみません、私から口を挟んでしまいましたけれども、ほかにアについて何かございますでしょうか。
 戎野委員、お願いします。
○戎野委員 私も、アで言うべきなのか、どこで言うべきなのかなと思っていたのですけれども、今のことと関連するのですけれども、実際に変更になるときに労働者として一番気になるのは、例えば一方通行なのかとか、どういう条件で戻ってくることが可能なのか、どういう仕組みになっていてハードルがどうなっているのかなどだと思います。そして、それに伴い、例えば教育訓練があるのかとか、勤務地限定となったら、もう昇進は限られてくるのかなど、ほかの処遇との関係というものも非常に心配していると思います。そして、こんなはずじゃなかったということは結構聞くところかと思います。今、座長のほうからお話がありましたけれども、私も具体的にこのイメージがわきにくいと思いました。
こういうところに実は労使の齟齬も一番出てきているような気がしますし、不満の原因にもなっているような意見も結構ありますので、その辺りのところがちょっと不明確だなという印象を持ちました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 今の点、実務上、重要な点だと思います。先ほど竹内委員が、中間型とかを考えるといろいろ出てくるとか、桑村委員も手続的なお話しをされましたけれども、明示すべき対象の問題、明示ないし変更のときですか、説明をきちんと尽くすという、いわば手続的な問題という次元も別途ありそうな感じがいたします。変更のときのプロセスとして、どの程度付随的なことについて説明していくのかみたいな観点も、もしかしたら入ってくるのかもしれません。労基法上の罰則を伴っての義務づけということを考えると、そこは分けることもあるかなと直感的に思ったのですけれどもね。
いずれにしても、これは具体的なイメージで議論される材料が出てから、また改めて御議論いただいたほうがいいのかなと、お伺いして思った次第です。
 竹内委員、お願いします。
○竹内委員 ありがとうございます。
 やや確認も兼ねた発言になりますけれども、今の議論の流れを踏まえると、ここで論点として検討すべき点として、労働条件として勤務地とか職務内容がどういうふうなものであるかということの、ある意味、現状ないし当面予定される職務内容とか勤務地の条件の明示ということと、それについて限定があるのかないのかという側面と、そして、その明示とか限定に関して、どのように使用者が労働者に対して説明をなすべき、あるいは労働者の理解を得るべきかという、この3つの側面から、アで挙がっているような論点について検討していくべきだという議論の流れだったと理解して、つまり、その3つの側面での検討になるのだろうという議論の流れであったと理解してよろしいかどうか、その点、確認させていただければと思った次第です。
○山川座長 ありがとうございます。
 私も同じようなイメージで考えておりました。もちろん、委員の皆様方の御意見で、どういうふうに検討していくかというのはあるかと思いますけれども、今、ちょうど竹内委員が整理されたような形に分析ができるのではないかと思った次第です。あとは、具体的に見ていく必要があるなという感じを持ちました。
 また議論の材料が出てから、改めて具体的に御議論いただくということになろうかと思いますが、そういうことで先に進めてよろしいでしょうか。イのお話に移りたいのですけれども、これも今、ちょうど竹内委員が言われた点と、変更のお話ですので、関連しなくもないのですけれども、もともといろいろお考えの点もあったかと思いますので、イについて御意見をお願いいたします。
 桑村委員、お願いします。
○桑村委員 ありがとうございます。
 39ページに論点2の議論の前提で①から⑤がありますが、ここで恐らく注意が必要なのは、契約内容そのものを変更する場合と、契約の内容は変更していなくて、もともと使用者が持っていた業務命令権を行使して具体的な労働条件を定めていく場合。これは、④、⑤に当たる。この2つを区別する必要があると思います。
 私の考えとしては、書面性は契約の内容を変更するものについては必要ですが、使用者が持っている業務命令権を行使して職務なり勤務地を変更する場合には、必要ないと思います。それを企業に求めると煩雑過ぎます。実際の雇用条件が不明確であることによって生じる問題は、まずは契約の内容がどうなっているか、限定があるかどうかですので、その点について書面性を求めることは適切だと思います。
 例えば、私は宮城に住んでいますけれども、東北6県の範囲内でしか配転がないと思っていた人が東京の転勤を命じられたとき、そもそも東北6県の範囲内という限定があったかどうかという、その部分では大きな問題が生じるので、書面性が必要だと思います。これに対して、東北6県の中で宮城から岩手に配置転換を命じられたときは、これも労働条件の変更という、このスライドではそういう概念に入ると思うのですが、そういう場面では、変更後の勤務地を明示するということではなくて、むしろ、なぜそこに自分が配置されるのか、その必要性は何なのかという部分で、労働者の理解を得る努力、説明の方に重点が移っていくので、書面性自体が重要ではなく、労契法4条の内容の理解促進という話になるのかなと思っております。
 労基法15条には、繰り返しになりますけれども、基礎とする書面性については、契約の内容を変更する場合についてのみ必要だと、現時点では考えております。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 ほかは御意見等いかがでしょうか。
 竹内委員、お願いします。
○竹内委員 ありがとうございます。
 今、桑村委員が御指摘なさった、契約内容の変更と現実の労働条件の変更にとどまる場合の区分というのは、確かに重要な区分だと思いました。その上で、これは事務局に確認なのですけれども、労基法15条の労働条件の明示という規定になっているわけですけれども、これは今の2つの区分で言うと、どちらの明示を求められる規定だというものと理解されているか、いま一度、この場で確認させていただければと思います。契約内容が初めに締結されて、決定されるような場面というのを念頭に置いているのか、現実の労働条件を念頭に置いた規定なのかということの確認です。
○山川座長 では、この点、事務局からお願いします。
○竹中課長補佐 15条についてということで、44ページ目のほうで明示の時点ということで書いておりまして、明示の時点としては、労働契約の締結の場面ということでありますので、変更の場面というのは、今時点で含まれていないと理解しています。
以上です。
○竹内委員 すみません、15条の明示の対象となっているのは、契約内容か、現実の労働条件かという確認です。
○竹中課長補佐 失礼しました。
 例えば44ページ目で再度お話ししますと、特に③の就業の場所とか業務ということで言うと、契約の内容ということではなく、雇入れ直後の労働条件であります。
○山川座長 竹内委員、よろしいでしょうか。
○竹内委員 私のほうでも後ほど適宜確認しておきたいと思います。
 桑村委員の御指摘も含めて考えてみた場合に、これは結局先ほどの議論に立ち戻ってしまうのかもしれませんけれども、契約の内容について明示や説明をさせるということを考えているのか、あるいは変更があったときに、限定等について、あるのかないのかということを改めて確認等させるのかなど、どういう場面を念頭に置いて検討するかをもう少し精査する必要があるのではないかと思いました。
 あと、これはどちらかというと行政なり司法なりが対応する場合という側面、観点からかもしれませんけれども、法違反として罰則がかかっているような規定、15条1項とかの規定の違反があった場合はどういうふうなものとして考えるかというときの問題と、あるいは契約内容を判断する、例えば限定があるかないかとか、限定の範囲がどうであるかというときの、それは司法の判断が中心でしょうけれども、そういうときの判断と、今、申し上げたような、どのような場面を念頭に置いているかによっても、考え方を少し分けて整理しうる可能性もあるかもしれません。
 それは、結局説明をさせるということ自体が関心となっているか、あるいは説明などをさせた上で、その契約内容がどういうふうに決まっていくかということが関心になっているかという、先ほどの3分類にまた戻っていくのかもしれませんけれども、いずれにせよ、問題となるような場面とか、念頭に置いているような法的な意義とか効果とか、そういうものを少し整理して検討したほうがいい気がいたしました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 戎野委員、お願いします。
○戎野委員 39のスライドで、今お二方の委員がおっしゃっていただいたことですけれども、①から⑤まである中で、④、⑤と、①、②、③と分けて考えて、そのとおりだと思います。①、②、③については、できる限り書面というのが望ましいと私は思いますが、企業の業務の状況を考えると、企業規模もいろいろある中で、①②については、労使の力関係からいっても、明らかに書面というものが必要だろうと思います。個別ですので、理解が不十分になることも考えられ、書面が非常に必要だなと思います。
 ただ、③もあったら、よりいいと思うのですけれども、①、②と、③を同じだけの強弱をもって言えるかなといったときに、場合によっては、①、②と、③のところに1つ強弱の差があってもいいのではないかという印象を持ちます。これは、企業側が実行に移すに当たって、③についてはかなり抵抗があるのではないかという感じを持っています。もちろん、よりいいと思うのですけれども、最初から全面的に①、②、③、同じ力で押していくことが妥当なのかと思ったときに、場合によっては、①、②と、③のところで1つ強弱の差があっていいのではないかと思いました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 恐らく労働基準法の世界だけで考えますと、施行規則の5条で、明示すべき事項は限定列挙になっていますので、ここにどこまで書くかというお話になる。際限なく書くことは、刑事罰がつきますし、これまで委員の方々から御指摘あったように、なかなか煩雑で対応できないという場合もありますので、結局、5条でどこまで書くかという問題になるのかと思います。
 ただ、さっきのアとの関連があると申しましたのは、変更ができるかとか、その範囲についてというのは、変更のときに問題になるわけでは必ずしもなくて、入社のときに変更について、どうなるのかということが書いてあるということで、それを変更する場合には、変更の範囲についてさらに変更する場合というのが論理的にはあり得るのですが、余りそこは考えなくていいと思いますので、最初の段階で変更について、どう考えるのかということもあろうかと思います。
 そこと、イでは、もう一つ、変更を実際に行うときに、どのようにするとトラブルが起きないかという、変更に関する定め方とは別の次元もちょっと議論に含まれているのかなと思いましたけれども、論点のアとの関連性がかなり高くなるのかなという感じは、さっきの桑村委員からのお話もありました説明の仕方なども関わってきますので、アとイの関連性は高いかなと思った次第です。
 ほかに何かございますか。なければ、また後で戻ってきてもよろしいかと思います。(2)のウについては、いかがでしょうか。ウにつきましては、いろいろな問題が起こり得る。特に、変更の場合の話が多いかと思いますけれども、そのような場合にどういう点について留意すべきかという、割と広めな問題設定になっていますが、何か御意見等があればお願いしたいと思います。
 竹内委員、お願いします。
○竹内委員 ありがとうございます。なるべく簡単に。
 私、総論のところで、今のこの点に関するところをかなり申し上げたところがありまして、限定の有無に関わる明示等の手続的な対応ということが基本にあるのだと思います。その上で、そういう方向性で限定とかが進んでいくとしたら生じるような問題について、どう対応するかというのは、これまでの裁判例とかの考え方を示すというのが現時点での対応の基本的な方向ではないかなと思っております。そういう裁判例とかを踏まえた対応ということで、例えば解雇とかに関して申し上げたこと等が、ここで妥当してくることになるのではないか。そのような意味では、総論で申し上げたところを、ウの論点に関しても関わるものとして申し上げたいと、そこを確認的に申し上げる次第です。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 恐らく、今、お話しされたように、もし多様な正社員等についての明確化を図る場合に、実際にはいろいろな問題が発生し得る。特に、フレキシブルな取扱いが必要になる場合について、どう対応すべきかという点。解雇はまた別かもしれませんけれども、その辺りの様々な留意点ないし工夫の御議論になる。そうすると、今お話のように、裁判例がどうなっているかというのは、具体的な事例を示す上で重要かなと思います。
 少し急いでいただいたおかげで、かえって時間ができてしまいましたけれども、桑村委員、お願いします。
○桑村委員 ありがとうございます。
 多様な正社員と解雇の問題なのですけれども、今、出ている裁判例の紹介とは別に、さらに変更解約告知についても取り上げる必要があるのではないかという気がしています。変更解約告知については、労働法上議論されていて、使用者が労働条件変更の提案をして、それを拒否した場合に解雇するという意思表示です。労働契約の内容が特定されていないことが多かった日本では、あまり使われてこなかったのですが、特に個別契約で労働契約の内容が特定されている労働者が増えていくと、労働条件の変更の手段として変更解約告知の利用も増えてくるのではないかと思います。
 変更解約告知については、まず争い方として、雇用を維持しながら労働条件変更の効力を争うことができるのかという、いわゆる留保つき承諾の可否の問題があります。これは立法的な手当てがないと、現行法上はなかなか難しいところがありますので、その論点を取り上げて、この検討会として派生問題として議論していって、立法的な手当てや提言というのもあり得るのではないかなと。
 変更解約告知による解雇の効力をどの程度厳格に判断するのかについても、裁判例が分かれていますので、スカンジナビア航空事件とか大阪労働衛生センター事件とか、その裁判例も紹介した上で、解雇になった場合にどのようなルールが適用されるのかを、広く労使双方に周知していく必要があるのではないかと考えています。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 確かに個別契約の変更が重要になってくるということでもありますので、裁判例にスカンジナビア航空と、それと対立する立場の裁判例もありますので、追加していただければと思います。ただ、変更解約告知の立法的な手当てをこの検討会でやるかというと、ちょっと時間的に大変かなと。たしかドイツでは、特別な手続があったと思いますので、そこまでここでやれるかどうかというのはあるかと思いますが、少なくともこういう問題が重要になるということは検討の素材に乗せたいと思いますので、また資料を用意していただけるでしょうか。ありがとうございます。
 ほかに何かございますでしょうか。
 戎野委員、お願いします。
○戎野委員 ちょっと話が違うかもしれないのですけれども、ウのところです。採用時から限定されている場合と、途中から限定される場合、いろいろな形での限定があり、また、限定されない形に戻るとか、多様になっていくと思います。先ほどのアンケート調査でも、企業側がいろいろなタイプの労働条件のバランスが難しいという回答があったと思います。一時点での限定されている人、限定されていない人というだけでなくて、このとき限定されていて、今は限定されていないとか、長いスパンで見たときには、その人のキャリアが一層多様になってくると思います。
 そういった中で、妥当な処遇というものを形成していくというのは企業側も非常に苦労するところだと思いますし、また労働者側も納得しにくいところになってくるのではないか。最初に普通のいわゆる正社員で採っている人と、最初から限定の人というのは、必ずしも同じ基準で採用されていないこともありますし、また、その後の教育も違っていたりしますし、そういった、まさに多様なケースがある中で、いかに納得のいく労働条件であったり、処遇というものを生み出していくのかということが、これから問題になってくる一つのポイントかなと思いました。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 その辺りは、実務的にはよく起きていることかと思いますが、なかなか法律の世界で翻訳するとどうなるかというのは、いろいろ検討課題が多くなってくるかなという感じがいたします。これも、先ほどの論点のアと若干関わってくるところがあるかと思います。
 ほかに、ウ以外、全面的な点でも結構ですけれども、何かございますでしょうか。総論も含めて、全般的に何か追加的なコメント、御質問がありましたら、お願いいたします。よろしいでしょうか。申し訳ありません。最初の頃、少し急がせ過ぎてしまったのかもしれませんが、また御議論の機会はあろうかと思います。
 それでは、もうおおむね時間でありますので、本日の御議論はここまでとさせていただきたいと思います。大変有益な御議論をありがとうございました。また、御指摘の点について事務局で資料を追加するようにお願いいたしたいと思います。
 それでは、特にございませんでしたら、次回の日程につきまして事務局からお願いします。
○竹中課長補佐 次回の日程につきましては、現在調整中でございます。確定次第、開催場所と併せまして連絡いたします。
○山川座長 ありがとうございます。
 では、これで第9回「多様化する労働契約のルールに関する検討会」を終了いたします。本日は、お忙しい中、お集まりいただきまして、また非常に有益な御議論をいただきまして、大変ありがとうございました。

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