令和3年度第2回化学物質のリスク評価検討会(発がん性評価ワーキンググループ) 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

日時

令和3年11月25日(水) 13:30~15:30

場所

TKP新橋カンファレンスセンター 12I
(東京都千代田区内幸町1-3-1 幸ビルディング12階)

議題

  1. (1)日本バイオアッセイ研究センターにおける試験手順書からの逸脱行為事案による規制等への影響評価に関する検討会報告書について
  2. (2)中期発がん性試験(2020年度実施分)の結果の評価について
    日本バイオアッセイ研究センター実施分
    3,5,5-トリメチルヘキサン酸
    炭酸ジフェニル
  3. (3)遺伝子改変動物を用いた試験結果の評価について
    1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン
    クロロエタン
  4. (4)第1回で審議した2物質の遺伝毒性等について
    チモール
    メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル
  5. (5)その他

議事

○福田有害性調査機関査察官 定刻になりましたので、令和3年度第2回発がん性評価ワーキンググループを開催したいと思います。
 本日は、大変お忙しい中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 前回に引き続き、本日、座長に進行をお渡しするまで司会を務めさせていただきます、有害性調査機関査察官の福田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず本日の委員の出席状況についてですが、本日は6名―参集者の先生方5名と特別参集者の先生1名全員に御出席いただいております。
 なお、本日は会場参加とオンライン参加の併用という形で開催させていただいております。4名の先生方がWebでの参加となっております。
 また、本日は、ラット肝中期発がん性試験及び遺伝子改変動物を用いた中期発がん性試験の結果の概要の説明のため、独立行政法人労働者健康安全機構日本バイオアッセイ研究センターの御担当者の方々にも参加いただいております。
 さらに、本日の会議の一般の傍聴者につきましてはWebでの参加といたしまして、音声配信のみをさせていただいております。
 オンライン参加関係の留意点なのですが、オンライン参加の委員の皆様方におかれましては、周囲の音を拾ってしまうこともございますので、御発言される場合を除きましてマイクをミュートにしていただきますようよろしくお願いいたします。
 それでは、今回も平林先生に座長をお願いすることといたしまして、平林先生に以降の議事進行をお願いしたいと思います。
 それでは、よろしくお願いいたします。
○平林座長 よろしくお願いいたします。
 まず、事務局から資料の確認をお願いいたします。
○福田有害性調査機関査察官 それでは、資料の確認をいたします。
 本日の会議もペーパーレスということで、会場にお越しの先生方には紙ではなくお席の上にタブレット端末を配置させていただいております。資料といたしましては資料1~資料6-2までの11種類、参考資料といたしましては参考1~参考6までの11種類を御用意いたしております。何かございましたら事務局まで後で御連絡いただければと思います。
 なお、資料5-1につきましては黄色に塗った部分がございます。第1回でお示しした用量のところ、一部試験の概要の中で誤りがありましたので、そちらを修正しておりますので、その修正した部分を黄色で強調させていただいております。
 また、第1回でお示しさせていただいた試験結果の概要で御指摘があった部分につきましては、第1回の後修正しまして、ファイル名に「(第1回発がん性評価ワーキンググループ後修正)」という表題を付記してホームページの資料を差し替えさせていただいておりますので、御承知置きいただければと思います。
 資料の確認は以上になります。
○平林座長 ありがとうございました。
 それでは、本日の議題に入ります。
 まず議題(1)「日本バイオアッセイ研究センターにおける試験手順書からの逸脱行為事案による規制等への影響評価に関する検討会報告書について」ですが、事務局より説明をお願いいたします。
○福田有害性調査機関査察官 前回、第1回の議事の繰り返しということになりますが、今回は日本バイオアッセイ研究センターで実施しました試験の評価もありますので、改めて簡潔にかいつまんで御説明させていただきたいと思います。
 資料1をお願いします。
 今回の議題につきましては、資料の一番最後のページを開いていただければと思いますが、報告書別添の試験物質の投与が疑わしいとして検討対象となった対象試験リスト13物質がございます。そのうち本日の議題になっておりますのは、試験番号912、913、923、924の1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン―長い名前ですが、略してTGICと呼ばせていただきます―と試験番号940の3,5,5-トリメチルヘキサン酸、試験番号941の炭酸ジフェニルという3物質となっております。
 そのうち要精査動物がいなかった炭酸ジフェニル以外につきましては、4ページの一番下段になりまして、「今後、試験評価を行うに当たっては、……要精査動物の取扱いの考え方を踏まえ試験結果を精査した上で、発がん性評価WGにおいて、適切に評価がなされるべきである」とされております。この逸脱が行われた試験といいますのは強制経口投与の試験でございまして、その部分につきまして、今回の試験では、要精査動物がいなかった炭酸ジフェニルを除きまして、強制経口投与でやった3,5,5-トリメチルヘキサン酸とTGICは規制影響検討会を踏まえた検討が必要ということにされております。
 今回の検討に当たっては、試験結果の表記は要精査動物を除外した試験結果という形で、精査前後で対照という形で試験結果の概要に入れております。相違がある部分については赤字にしておりますので、それを踏まえまして、要精査動物の除外前、除外後で評価に影響がないかというところも踏まえて検討していただきたいと思っております。
 ざっと流して分かりづらい点もありましたけれども、以上でございます。
○平林座長 ありがとうございました。
 内容につきましてはこの次の議題で討議したいと思いますので、次に議題(2)「中期発がん性試験(2020年度実施分)の結果の評価について」です。
 事務局より説明をお願いいたします。
○福田有害性調査機関査察官 先ほどの繰り返しの部分もありますので、その点は御容赦いただければと思いますが、こちらのラット肝中期発がん性試験の評価につきましては、本日は3,5,5-トリメチルヘキサン酸と炭酸ジフェニルの2物質の評価を予定しております。
 これらの2物質はともに令和元年度の形質転換試験の評価の結果で陽性とされまして、令和2年度の発がん性評価ワーキンググループでラット肝中期発がん性試験の対象とされたものです。いずれも日本バイオアッセイ研究センターが試験実施機関となっております。
 先般の第1回で御説明させていただきました「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」報告書を踏まえまして、特化則などへの追加を念頭に国が行ってきた個別の化学物質のリスク評価は新たに始めないこととし、現在有害性やばく露調査などのリスク評価を実施中の物質に関しては事業者が自らリスクアセスメントを実施し、ばく露量を下げていく適切な対応を講じることができるような移行措置ということで、この発がん性試験に関しましては、すなわち、がん原性指針への追加などの要否を検討することによって自主的な管理というか自律的管理につなげていければという形で進めるということになります。
 先ほども申し上げましたが、最初の化学物質、3,5,5-トリメチルヘキサン酸につきましては、規制影響検討会報告書を踏まえまして、要精査動物と整理された試験動物の除外前と除外後で試験結果を比較した上で試験結果を評価していただくということになります。要精査動物の数につきましては、先ほども御覧いただいた資料1の最後のページにまとめられておりますので、改めて御確認いただければと思います。
これらの物質の試験結果につきましては、お手元の参考資料4-3の「中期発がん性試験(ラットがん中期発がん性試験)の結果の評価基準」を踏まえつつ、発がん性の評価、がん原性指針への追加の要否の検討をお願いしたいと思います。
 なお、個別の試験結果につきましては、日本バイオアッセイ研究センターの担当者から説明することとしております。
 以上となります。
○平林座長 ありがとうございます。
 そうしましたら、実施者から説明を頂くわけですが、それに先立ちまして一言御挨拶を頂くということを伺っておりますので、よろしくお願いします。
○日本バイオアッセイ研究センター/加納氏 バイオアッセイ研究センターの加納です。
 先ほど対策課の事務局の方から御説明がありましたように、本日報告する試験結果のうち、ラット肝中期発がん性試験及び遺伝子改変マウスを用いた中期発がん性試験の試験過程におきまして、強制経口投与に係る操作で逸脱行為の事案が確認されました。厚生労働省で立ち上げた検討会の調査を受けまして、対策課の方々をはじめ、厚労省の方々には多大な時間を費やしていただきました。また、検討会のメンバーの方々、また本委員会の先生方におかれましては多大な御心配をおかけいたしました。また、当センターから出しております報告書の信頼性につきましても心配をおかけしております。冒頭をお借りしてお詫びさせていただきます。どうも申し訳ございませんでした。
○平林座長 それでは、3,5,5-トリメチルヘキサン酸につきまして、試験実施者から説明を頂きたいと思います。
○日本バイオアッセイ研究センター/加納氏 資料2-1を御覧ください。
 要精査動物とされた一部の動物を除外した結果を含めて説明いたします。
 3ページ目から要精査動物除外前と除外後を左右に併記し、5ページに体重のグラフ、6ページに肝重量とGST-P陽性細胞巣の結果を併記しています。
 最初に説明しますが、表1と表2で300 mg/kgと600 mg/kgで有効動物が各1匹異なります。表2の注釈a)に記載しましたが、GST-P陽性細胞巣の本解析から、これにつきましては各1匹ずつ除外しています。
 それでは、1ページ目に戻っていただけますでしょうか。
 3,5,5-トリメチルヘキサン酸は、無色からわずかに薄い黄色の液体で、水に難溶であることからオリーブ油に溶解して使用しました。
 有害性情報としては、ラットLD50値が1,160~3,135 mg/kg。刺激性は、ウサギで皮膚・眼で刺激性なし、あるいは中程度との報告があります。遺伝毒性はエームス試験で陰性となっています。また、Bhas42形質転換試験で陽性となっています。
 報告書の3の方法になります。
 被験物質投与3群、媒体対照群、陽性対照群の計5群で、各22匹の雄ラットを用いました。起始物質としてN-ニトロソジエチルアミン(DEN)を単回腹腔内投与し、3週目より6週間、オリーブ油に溶解させた被験物質を0、150、300、600 mg/kgで毎日1回投与しました。陽性対照にはフェノバルビタールナトリウムを毎日1回強制経口投与し、DENの処置後、第3週目の終わりに肝臓の2/3を切除(PH)する手術を行いました。なお、600 mg/kgですが、投与開始後に顕著な体重減少が見られ、死亡も2匹認められたことから、手術後に3日ないし4日間投与量を300 mg/kgに減少させました。動物の回復状況を確認してから600 mg/kgに復帰させ、したがいまして、600 mg/kgはこの条件での評価になります。投与終了後、肝臓の前腫瘍性病変であるGST-P陽性細胞巣の数と面積を計測しました。
 次に4の投与量の設定理由になります。
 用量設定は、3週間反復投与試験と、部分肝切除した動物を用いた2週間反復投与試験から行いました。
 3週間試験では投与量を0、30、100、300、600 mg/kgに設定し、6週齢でDENを腹腔内投与した雄ラットに8週齢から毎日3週間強制経口投与しました。結果、100 mg/kg以上で投与量に対応する肝の実重量、体重比の増加、300 mg/kg以上で体重増加の抑制が見られ、特に600 mg/kgでは投与初期の体重は開始時に比較して減少しましたが、その後増加に転じ、投与期間中に死亡した動物はいませんでした。
 これを基に2週間の試験を実施しました。投与量は0、100、300、600 mg/kgとし、9週齢で部分肝切除した翌日から毎日2週間投与しました。結果、600 mg/kgでは投与開始初期の投与後に自発運動の減少が見られ、投与初期の体重は開始時に比較して減少しましたが、その後回復が認められました。
 以上から、動物は600 mg/kg投与でも部分肝切除及び6週間の投与に耐え得ると判断し、高用量を600 mg/kgとし、公比2で300 mg/kg、150 mg/kgとしました。
 5の結果になります。
 左側の列の要精査動物除外前のところを説明いたします。
 600 mg/kgでは、被験物質投与1週目に体重の急激な減少により2匹が死亡しました。体重推移は5ページ上段の図1に示しています。600 mg/kgでは投与期間を通して、300 mg/kgでは手術後1週間程度、増加抑制が認められました。
 摂餌量は、図はありませんが、600 mg/kgで投与開始1週目に著しい減少が見られましたが、その後は増加に転じています。
 肝重量を6ページの表1に示しています。肝臓、腎臓重量は、150 mg/kg以上で実重量、体重比とも増加し、特に肝重量の増加が顕著でした。この肝重量の増加は、病理組織検査においてはびまん性の肝細胞肥大として観察されました。腎臓には150 mg/kg以上で近位尿細管の好酸滴が観察され、150 mg/kgと300 mg/kgでは近位尿細管上皮の再生も認められました。
 GST-P陽性細胞巣の数、面積を表2に示しています。単位面積当たりの数は150 mg/kg以上、面積は150 mg/kgと600 mg/kgで有意な増加が認められました。中間用量の300 mg/kgでも有意差はありませんが増加が見られています。
 陽性対照は体重、摂餌量ともに高値で推移し、肝臓、腎臓重量も、実重量、体重比ともに高値を示しました。また、GST-P陽性細胞巣については単位面積当たりの数、面積が媒体対照群に比較して有意に高値であったことから、肝臓に対する発がんプロモーション作用は陽性であることを確認しました。
 6の結論です。
 以上の結果から、3,5,5-トリメチルヘキサン酸は、本試験条件下で肝臓に対する発がんプロモーション作用を示すと結論しました。
 もう一回3ページに戻っていただきまして、右の列に要精査動物除外後の結果を併記しております。赤字とアンダーバーがついているところが異なる部分です。
 要精査動物とされた最高用量600 mg/kgの3匹を除外した結果、評価対象とした動物は、媒体対照18匹、150 mg/kg18匹、300 mg/kg20匹、600 mg/kg15匹、陽性対照19匹となりました。
 体重推移は5ページ下段の図2に示しています。600 mg/kgの3匹を除外してもデータ平均値の差はわずかであり、統計検定結果においても差はありませんでした。
 肝重量は6ページの表1、600 mg/kgの下の括弧内に赤字で示しています。剖検時体重と肝重量のデータ平均値の差はわずかであり、統計検定結果においても差はありませんでした。
 GST-P陽性細胞巣の結果は表2に示しています。600 mg/kgのGST-P陽性細胞巣は、検査動物数として15匹となりました。数、面積ともデータ平均値の差はわずかであり、統計検定結果においても差はなく、陽性細胞巣の数は150 mg/kg以上、面積は150 mg/kgと600 mg/kgで有意な増加が認められました。
 整理しますと、600 mg/kgの3匹を除外した結果、体重推移、肝重量、GST-P陽性細胞巣の数と面積、いずれもデータ平均値の差はわずかであり、検定結果においても差はありませんでした。したがいまして、結論では変更はないということになりました。
 これについての結果は以上です。
○平林座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明につきまして御質問、御意見等ございませんでしょうか。
○若林委員 今の発表で、表1、表2からして、明らかに3,5,5-トリメチルヘキサン酸は肝肥大、肝重量を増加させて、GST-P positive fociも明らかに増加させるということは分かったのですけれども、このトリメチルヘキサン酸の類似の化合物もやはり同じようにGST-P positive fociとか肝重量を増加させるような化合物なのでしょうか。要は、作用機序みたいなものがもし類推できるようなエビデンスまたは情報があれば御教示いただけますか。
○日本バイオアッセイ研究センター/加納氏 3,5,5-トリメチルヘキサン酸の今回の資料を作成するに当たりましていろいろ情報を調べたのですが、この物質は最初に説明した遺伝毒性のあたりからなかなか情報が見つからなくて、ドイツ語でまとめた資料が1報見つかった程度で、先生から質問がありました作用機序とかその辺の情報については調べておりません。したがいまして、類似化合物がGST-P陽性細胞巣を増加させるかというような情報も含めて現時点では持っておりません。
○若林委員 分かりました。ありがとうございます。
○平林座長 ほかに。
○西川委員 今出ている表2の脚注にa)という印がついて、細胆管の増殖が広く顕著に認められたので解析から除外したということで、これはほかの動物でも同じような所見はあると思うのですけれども、除外するかどうかという判断はどのようにされたのでしょうか。
○日本バイオアッセイ研究センター/妹尾氏 細胆管の増生というのは、PHの際にどこか胆管を結紮してしまったというようなことが起きていると思います。実際に広く顕著に認められましたので、測定する面積、肝実質細胞の領域の面積が少ないことから、病理測定者とSDの判断により解析を行わないことを決定しました。
○西川委員 除外しなかった動物にはこういう変化はなかったのですか。
○日本バイオアッセイ研究センター/妹尾氏 多少ある動物もありましたが、十分な肝細胞の領域の面積を取れましたので、そこは解析いたしました。
○西川委員 分かりましたけれども、こういう措置をするというルールはどこにもないですよね。そのあたりは大丈夫でしょうか。
○日本バイオアッセイ研究センター/妹尾氏 実際に標本を見て決めたというところで、ルールは特に決めておりません。
○西川委員 大きな影響を及ぼすものではないので結構です。ありがとうございました。
○平林座長 ほかに。
津田先生はよろしゅうございますか。
○津田委員 結構です。溶媒対照群、すなわち被験物質の投与ゼロ群とフェノバルビタール群の差が大体倍になっているので、きちんといけていると思います。
○平林座長 ありがとうございます。
小川先生はいかがですか。
○小川委員 特に問題はないと思います。ただ、先ほど西川先生御指摘の点の、細胆管の増生が肝臓全体にわたってみられた件について、複数の葉を精査することになっていると思うのですけれども、全体にわたって認められ、解析できなかったということなのか、もう少し教えていただけますでしょうか。
○日本バイオアッセイ研究センター/妹尾氏 全体にわたってと聞いてはおりますけれども、実際にどうだったかは分かりません。
○小川委員 伊東法でそういった条件で測らなかったというのはあまり聞いたことがなかったものですから、お聞きしました。ありがとうございます。
○平林座長 小野寺先生はよろしゅうございますか。
○小野寺委員 今回は胆管が増生していたので切片の中の肝細胞の数というか測定面積の場所が減っていると判断して除外したということなのですけれども、例えば肝細胞壊死が広範囲に広がって正常な肝細胞がないと判断した肝毒性というか、肝障害が強いような物質でGST-Pが測定できないというのはあり得ますよね。
○日本バイオアッセイ研究センター/妹尾氏 あり得ますが、実際のところ、そういう濃度はこの実験には持っていかないと思いますので、恐らくは出ないと思います。
○小野寺委員 そうですよね。多分そういう状態が出ていれば体重の増加抑制とか死亡率が高くなって、濃度が高すぎるということで用量設定のほうに問題が出てくるので。今回の胆管増生というのは、ほかの実験でも見られていたというか、これは薬物に起因する影響でしょうか。
○日本バイオアッセイ研究センター/妹尾氏 薬物ではなくて、PHの作業で出たものだと思います。
○小野寺委員 分かりました。
○平林座長 測定できなかったものを除外したということで、結果としてはクリアカットにGST-P陽性細胞巣の増加も認められますし、肝増殖性も認められますので、この6の結論のとおり、3,5,5-トリメチルヘキサン酸はこの試験条件下では肝臓に対する発がんプロモーション作用を示すと結論したということでよろしいかと思います。
 除外動物の件につきましても、途中で非常に弱った状態で投与しなかったものを投与しなかったと記載しなかったということでございました。そういったことがほかの動物でもあったかもしれないということで、具合が悪かった動物を省いてデータを集計し直したところでございますが、その結果についても変わらなかったということですので、この結果を受け入れたいと思いますが、それでよろしゅうございますでしょうか。
○西川委員 結構です。
○平林座長 ありがとうございます。
○西川委員 結構ですが、細かいところで、1.4の有害性情報というところがあります。ここに「形質転換試験」とあるのですが、有害性で急性毒性、刺激性、遺伝毒性という並びからいくと、これは「試験」をつけずに、しかも通常は「細胞形質転換」と呼んでいるので、それに改めたほうがよいかと思います。
○平林座長 ありがとうございます。
 事務局、よろしゅうございますか。
○福田有害性調査機関査察官 はい。修正しておきます。
○平林座長 それでは、これはプロモーション作用が陽性なので、がん原性指針への追加の要否を検討しなければならないわけですが、その点につきましてはいかがでしょうか。結果からすると、当然これまでは追加してきたということでよろしいのでしょうね。
○福田有害性調査機関査察官 そうですね。
○津田委員 フェノバルビタールよりも弱いということなので、発がんポテンシャルはあまり強くないです。この点は今までにどのように扱っていたかというところに当てはめて考えたほうがいいと思います。わざわざお金をかけて2年発がん試験をやる必要はないように思います。
○平林座長 ありがとうございます。
確かにフェノバールよりは強くないですかね。でも最高用量は同じぐらい出ているのですね。ちょうど同じぐらい。若干低いぐらいですか。この程度のときにはどうだったかとかいうのは、事務局は何かありますか。
○津田委員 9.3に対して7.5、フェノバルビタールよりは明らかに弱いです。
○平林座長 面積はあまり変わらないようにも思うのですが、それでも若干小さいということですね。
これは、もしがん原性指針へ追加した場合、その次のステップとしてはどういうことになりましたっけ。
○福田有害性調査機関査察官 追加の要否がありましたら、要になった場合、次は措置です。要するに、作業環境測定法なり保護具の管理なりを、今までであれば委託業者にお願いして検討していただいて、その結果を踏まえてがん原性指針と注意喚起にあたる通達に盛り込んで示していくというか、自律的管理みたいな形になるのですけれども、それを示して、それを実際に取り扱っている事業場に実施してもらうということになっています。
○平林座長 そうすると、直ちに追加の試験をするとかいうことではないということですね。
○福田有害性調査機関査察官 そうですね。リスク評価も終わってしまいますので、長期発がん性試験につなげるというスキームはここで終わりということになりまして、ここで要否があれば、実際の作業環境測定法とかを検討した上で措置検討会で議論して、その後がん原性指針の告示に至るということになります。
○平林座長 そうすると、フェノバールはどういう扱いになっているかということになろうかと思うのです。フェノバールと同じぐらいの強さの懸念物質だとして、それはどういう扱いになりましょうか。必要以上に過剰な労力を割くことがないようにというのが津田先生の御意見だと思いますので。
○福田有害性調査機関査察官 今調べていますのでお待ちいただければと思いますが、そもそもラット肝中期発がん性試験で陽性になったのはこれまで実施した試験で1つしかなくて、参考3-2で1-フェニルアミノ-4-イソプロピルアミノ-ベンゼンというのが、試験としては平成27年度に実施し、その後の評価で陽性とされております。その結果についてがん原性指針でどう扱ったか一回確認してみないと。私もすぐ追いかけられていなくて申し訳ないのですが。
 当時の資料をお借りして確認しました。がん原性指針の要否に関しまして、当時、1-フェニルアミノ-4-イソプロピルアミノ-ベンゼンにつきましては、ラット肝中期発がん性試験陽性と判断された物質は、基準上は、原則として労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づく厚生労働大臣の指針、がん原性指針の対象とするとされていますけれども、労働者に健康影響を与える可能性に鑑みさらなる検討が必要であるとされたという結論で、そこで止まっているかと思います。
○平林座長 そうしますと、これはフェノバールと同じぐらいの、あるいはそれより少し弱いぐらいのプロモーション作用しかないということでございますので、労働環境でどのようなばく露があるかというようなところでどれだけリスクがあるかということになろうかと思います。そのあたりを整理していただいて、結論として、ここではとにかく陽性だということだけは明らかなわけですけれども、直ちに行政的な対処を何かしていただかなければいけないほどの強さではないのではないかということかと思うのです。
津田先生、そういう理解でよろしゅうございますか。
○津田委員 結構です。
○平林座長 若林先生、何か御意見はございますか。
○若林委員 平林先生が指摘したように、こちらの発がんプロモーションの強度に加えてこの化合物に従業員の方々がどれぐらいばく露しているかということがかなり重要なもう一つのファクターになると思うのですけれども、そういうことを兼ね合わせて次のステップに行くかどうかということについて考えればいいのではないかと思いました。
○平林座長 ありがとうございます。
西川先生はいかがですか。
○西川委員 これは明らかに陽性ですし、今出ている表を見ましても、低い用量から有意に差がついているのです。はっきりした用量相関性は見えないのですけれども。そうすると、もっと低い用量でも発がんプロモーション作用がある可能性もあるわけなので、ばく露はともかく、試験結果からは長期の試験が必要な可能性が高いということは言えると思います。
○平林座長 ありがとうございます。
 小野寺先生は。
○小野寺委員 津田先生の意見と同じなのですが、用途が金属石鹸原料というのは一体何なのか私は理解できなかったのですけれども、防錆添加剤とか潤滑油の原料ということで、従事者に対しての注意は必要なのでしょう、これは難溶性でもありますし、物理的にも直接に一般の人たちとか広く有害性があるというようなものではないとこのデータだけ見て感じますので、リスクとしてどの辺まで規制しなければいけないのかということは考えていただいて、必要に応じて、がん原性試験を実施するのか、それともメカニズム的に遺伝毒性なりGST-Pポジティブになる、プロモーション作用を有することになるという議論をさらに必要なのかというのは後の検討課題として残しておいてもよろしいのかなと思います。
○平林座長 ありがとうございます。
 小川先生はいかがですか。
○小川委員 参考2のスキームを拝見すると流れ図のように評価方法がありますが、どういう要件のときは2年間の試験を行うかということまでは特に記載されていないところですけれども、西川先生がおっしゃるように、低用量から明らかにプロモーション作用があるということを考えると、もし肝臓だけにしか変化がないのであればラット特異的という可能性もあると思うのですが、もう少し機序などをしっかり見る必要があるのではないか、ばく露がどういった形で、量的に2,000 tという量がどれぐらいの方に、特定の人にだけばく露されるのか、どういう状況なのかということも含めてリスクと照らし合わせた上で、もう少し総合的に考えて決めないといけないのではないか、2年間の試験をやることも排除しないで精査する必要があるのではないかと思いました。
○平林座長 ありがとうございます。
原則2年の試験はもうしないという方針になったのですよね。とはいうものの、少なくともこの剤の特徴として、この試験で行われた肝臓のプロモーション作用は明らかでございますので、懸念があること自体は疑いようがない事実と言えると思います。一方で、実際にどの程度ばく露されるのかといったことでリスクが決まっていくというところがございますので、そのあたりをきちんと精査していただき、それでも残る懸念につきましては、本来メカニズムなり何なりを検討するような道筋を残しておいていただいたほうがよかったかなとは思います。
○小川委員 もう一度念のために確認なのですけれども、この会会では2年間の試験はもう必ずやらないということは決まっているという御発言でよろしかったでしょうか。その辺がよく理解できていなかったところがあるのですけれども。
○福田有害性調査機関査察官 検討会の結果の報告書は一応方向性が示された形で、正式にはこれから審議会等を通して議論していくということですけれども、リスク評価のスキーム自体が基本的には今年度をもって終わりということですので、そのためのスクリーニングである発がん性試験の評価なり遺伝毒性の評価も含めて、そういったものから長期発がん性試験につながって最後リスク評価につながるというスキーム自体が今のリスク評価の制度自体ではなくなる予定にはなっております。ぼやっとした回答ですみませんけれども、そういうことになっております。
○小川委員 この間決まったものの中でそういう形になったということですね。なので、もし使用者のほうで2年の試験が必要であると理解したら、それは企業さんのほうでやってくださいという枠組みになるという理解でよろしいでしょうか。
○佐藤化学物質評価室長 恐らく本当に必要であればという前提がつくと思うのですけれども、長期の試験はかなりの時間と費用がかかりますので、さらに、もし実験をしたとしても結論が出るまでに数年ということがありますので、新しい化学物質の規制の方向性というのは、とにかく有害性・危険性の情報をどんどん伝達して、それに基づいてリスクアセスメントを実施し適切な措置を講じていただくということですので、今この検討会でいろいろな意見を頂きましたが、そういった情報をこの物質を扱う方々にまず届けて、それを取り扱う際にどのようにしたらいいのかというのを考えていただく。一方で、この物質についてネットで調べたのですけれども、ほとんど情報がなくて、用途も先ほど先生から発言がありましたように界面活性剤、原料、潤滑剤として使われています。そして試薬メーカーさんから試薬として販売されているという情報ぐらいしか出てきておりません。実際にどの程度の量にどの程度の労働者の方が携わっているのかというのは手元に全く情報がありませんので、そういったことも調べつつ、実際に使っている方にこういった化学的な評価の結果なんですよという情報をまずお伝えすることが大事だと思っております。
○小川委員 分かりました。ありがとうございます。
○津田委員 これのばく露形態は何でしょうか。
○平林座長 情報がないそうです。
○津田委員 吸入か皮膚か。
○平林座長 潤滑油ということで使われていると、どうですかね。皮膚ですか。吸入だとちょっと違いますよね。
○佐藤化学物質評価室長 物性からして液体でして、資料2-1の1.2の物理化学的性状のところにありますけれども、融点が-60℃ですので、本当に液体ですね。そして水にほとんど溶けないということで、油みたいな性質のものだと思われますので、呼吸関係では考えにくいと思います。どちらかというと飛沫とか、そういった皮膚からとかですかね。
○小野寺委員 この物性のところは情報が少ないのですけれども、多分これだとトリメチルがついていて、沸点は結構高いのではないかと思うのです。潤滑油に使われているぐらいなので、沸点が200℃以上あるのではないか。データがないので分からないのですけれども、トリメチルヘキサン酸だと沸点が高くて液体で、ある程度の過酷な条件でも安定なので、潤滑油とか防錆剤の添加物といってもほとんど安定剤的に使われているのでしょうか。これ自身は油の系統だと思うので。沸点は230~240℃ですね。そのぐらい高いので、多分吸入ということはなかなかなくて、人へのばく露される形態としては接触が一番高いのかなと思います。経口もほとんどないと思うのですが。
○平林座長 いかがでしょうか。
津田先生、いかがですか。
○津田委員 先ほど申し上げたことですけれども、ほかにもっと危険なものがあったらこれは後になる。そういう意味も含めて申し上げたのです。すごいお金と時間がかかるから、もっと危険なものがあるのではないかという気がします。そうならばこちらは順番としては後にして他のたくさんある危険度の高い物質に予算を使うという方が良いと思います。
○平林座長 ただ、今後の化学物質の管理のあり方としましては、こういった情報を現場に共有して、実際にそういったものにばく露されないようにするにはどうしたらいいかということを考えていただくなり、そういったことで危険を回避していただこうというのが趣旨と理解しておりますので、今日のこの結果をもって、使い方を間違えると危ないよということをきっちり伝えるというようなことをまずしていただく必要があります。その後この剤をどういう条件になったら試験をしなければならないというように進めれば良いのですが、そういうことはもうないのですよね。
○佐藤化学物質評価室長 ないです。
○平林座長 そうすると、この剤に興味を持ってどなたかが解析なさるというようなことがあったら、その結果を皆さんで共有したいということになろうかと思いますが、いかがでしょうか。特に御異論がなければ、この剤の結論としては陽性で、これまでの自動的な結論とすればがん原性指針への追加も必要だということになろうかと思いますが、今後のあり方のこともございまして、必要な情報を提供するとか、ばく露形態を検討するとか、リスクをどうやって下げるかとか、そういったことに活用していただくという方針で進めさせていただければと思います。よろしゅうございますでしょうか。
○津田委員 それでいいと思います。
○平林座長 事務局はそれでよいですか。
○福田有害性調査機関査察官 はい。
○平林座長 では、御異議がなければ、時間がかなり押してしまいましたが、次に炭酸ジフェニルにつきまして御説明いただけますでしょうか。
○日本バイオアッセイ研究センター/加納氏 資料2-2を御覧ください。
 本試験では要精査動物に該当する動物はおりませんでした。
 4ページに体重グラフ、肝重量、GST-P陽性細胞巣の結果を示しています。先ほどと同様、300 mg/kgと600 mg/kgで各1匹、GST-P陽性細胞巣の本解析から除外した動物がおります。
 では、1ページ目から説明いたします。
 炭酸ジフェニルは白色結晶性粉末であり、水に不溶であることから、本試験ではオリーブ油に懸濁させて使用しました。
 有害性情報としては、ラットのLD50値が1,500 mg/kg。刺激性は、ウサギで皮膚・眼で刺激性なしの報告があります。遺伝毒性はエームス試験で陰性、チャイニーズハムスターV79細胞染色体異常試験で構造異常が陽性、マウスを用いた小核試験で陰性の報告があります。細胞形質転換はBhas42形質転換試験で陽性となっています。
 3の方法は先ほどと同様です。投与量も先ほどと同じですが、0、150、300、600 mg/kgです。
 4の濃度設定理由になります。
 用量設定も先ほどと同様に、3週間反復投与試験と、部分肝切除した動物を用いた2週間反復投与試験を実施しました。
 3週間試験では投与量を0、100、300、600、1,000 mg/kgに設定し、6週齢でDENを腹腔内投与した雄ラットに8週齢から毎日3週間投与しました。結果、300 mg/kg以上で投与後に全身の震えが見られ、投与量に対応してその程度や発生持続時間が増加し、それは2時間以内には消失しました。また、投与回数に対応して減少しましたが、3週間の投与期間中にこの症状は消失することはありませんでした。300 mg/kg以上で投与量に対応した肝の実重量と体重比の増加、1,000 mg/kgで体重増加の軽微な抑制が認められましたが、投与期間中に死亡した動物はありませんでした。
 これを基に2週間の試験を行いました。投与量は0、300、600、1,000 mg/kgとし、部分肝切除した翌日から毎日2週間投与しました。結果、300 mg/kg以上で投与後に全身の震えが見られ、1,000 mg/kgでは1回の投与後に痙攣、意識消失が見られた動物があり、翌朝に死亡したことから、1,000 mg/kgの投与は中止しました。600 mg/kgでは体重増加の軽微な抑制も認められました。
 以上の結果から、動物が6週間の投与に耐え得る最大用量として600 mg/kgが妥当であると判断し、高用量を600 mg/kg、公比2で300 mg/kg、150 mg/kgとしました。
 5の試験結果になります。
 投与後の振戦が150 mg/kg以上に観察され、300 mg/kg以上では全動物に認められました。体重推移は4ページの図1に示しています。300 mg/kg以上で体重増加の抑制も見られています。
 肝重量はその下の表1に示しています。肝臓、腎臓重量は、実重量の増加が300 mg/kg以上、体重比の増加は150 mg/kg以上で、投与用量に対応した変化として認められました。病理組織学的検査では、肝臓、腎臓に投与による病変は観察されていません。
 GST-P陽性細胞巣の数と面積をその下の表2に示しています。単位面積当たりの数、面積とも600 mg/kgで有意な増加が認められています。
陽性対照では体重、摂餌量が高値で推移し、肝臓、腎臓重量についても実重量、体重比ともに高値を示しました。また、GST-P陽性細胞巣については単位面積当たりの数、面積が媒体対照に比較して高値であったことから、肝臓に対する発がんプロモーション作用は陽性であることを確認しました。
 6の結論になります。
 以上の結果から、炭酸ジフェニルは、本試験条件下で肝臓に対する発がんプロモーション作用を示すと結論しました。
 以上です。
○平林座長 ありがとうございました。
 では、ただいまの御説明につきまして御質問、御意見等ございますでしょうか。―特にございませんでしょうか。
 この剤は、まずフェノバールが2倍ぐらいコントロールよりも数も増えていて、面積も増えている条件下で、先ほどの剤よりもはるかに弱いところではございますが、明らかに用量依存的に数も増えていますし、面積はちょっと違うかな、でも増えているということで、ただ600 mg/kgのところで有意差がついたというような結果でございます。これをもって、少なくともプロモーション作用は陽性という事業者からの御報告は受け入れたいと思いますが、それでよろしゅうございますでしょうか。
○西川委員 結構です。
○平林座長 ありがとうございます。
 ほかに特に御意見はございませんか。
 そうしますと、この剤の扱いにつきましても先ほどと同じになろうかと思います。剤の性質としては陽性ということではございますが、今後の扱いにつきましては、ばく露形態等を勘案して適切に対応していただきたいということになろうかと思いますが、それでよろしゅうございますか。
○福田有害性調査機関査察官 承知いたしました。
○津田委員 先ほどの物質と比べたらこちらのほうがプライオリティはあると思います。理由は、粉末であるために吸入ばく露の可能性がある。眼への刺激性も。物質
○平林座長 確かに。あと、用途として医薬・農薬原料というのが気になりますね。
○津田委員 そうですね。
○若林委員 バイオアッセイセンターの方にお尋ねします。先ほどと類似の質問になりますけれども、この構造はカルボン酸ジフェニルエステルですので、多分類似の化合物が結構あるのではないかという気がするのです。化合物の類似性についてはいかがですか。
○日本バイオアッセイ研究センター/加納氏 先生の御質問は先ほどと同様の質問なのですが、類似物質あるいは類縁物質を含めた情報までは収集しておりません。
○若林委員 これはフェニル基があって、間がカルボン酸のOCOでつながっているものですよね。
○日本バイオアッセイ研究センター/加納氏 そうですね。資料には構造式がありませんが、おっしゃるとおりです。
○若林委員 そうすると、このような化合物は割合あるのではないかなということが気になったのですけれども、その辺の情報も入れて今後どのようにするのかというようなことについても検討されたらいかがでしょうか。
○平林座長 そうですね。ありがとうございます。
 だから、扱っている事業者への情報提供はもちろんですけれども、類似の物質についても一応御検討いただきたいということと、医薬・農薬原料となると、労働者だけではなくて、原料に入ってそのまま体内に取り込まれるときにどうなっているのかとか、そのあたりは御検討いただいたほうがいいのかなと思いますが。
○福田有害性調査機関査察官 承知しました。
○平林座長 ここでやることではないのかもしれないのですけれども、用途としてそのように書かれていて、少なくともプロモーション作用は明らかだという剤の性質が出ましたので、必要なところとの情報共有なりをしていただいたらいいのではないかと思います。
○福田有害性調査機関査察官 はい。この結果のあり方についてはこれから事務局でも検討しないといけないのかもしれませんけれども、一応今回の結果を踏まえた対応については、何らかの形でできるかどうかも含めて検討していきたいと思います。
○平林座長 ありがとうございます。
先生方、それでよろしゅうございますか。
○小川委員 結論としてはそういうことでよろしいかと思います。確かに医薬・農薬の原料ということなので、どのようなばく露になるのかということも非常に重要かと思うのですが、この剤について、外から見える形の公表というのか、論文化するなりということも含めて公表していただくということを御検討いただきますようによろしくお願いいたします。
○平林座長 いかがでしょうか。
御検討いただけるそうです。
○小川委員 お願いします。
○小野寺委員 これらの試験のデータはどこにも公表されていないのでしょうか。
○福田有害性調査機関査察官 概要ぐらいであればホームページで出しますけれども、詳細になるとさすがに何ページもありますので、それは特に何らかの、うちのほうで保管している限りと、場合によっては論文化されるかもしれませんけれども、それぐらいだと思います。
○小野寺委員 今までの話にも出てきたと思うのですけれども、この物質に対する性質なり試験結果が資料としてあちこちに残っていないと類縁物質としての比較もできなくなってくるので、何らかの形で公表すべきだと思うのですけれども、その辺のところも今後考えていっていただければと思います。
○福田有害性調査機関査察官 承知しました。
○平林座長 ほかによろしゅうございますでしょうか。
 もしよければ、次の議題に移りたいと思いますが、よろしゅうございますか。
 では、次に議題(3)「遺伝子改変動物を用いた試験結果の評価について」でございます。
 事務局より説明をお願いいたします。
○福田有害性調査機関査察官 次が議題(3)ですね。
 本日は、1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン(TGIC)とクロロエタンの2物質の中期発がん性試験の結果の評価を予定しております。
 TGICにつきましては、平成29年度の第1回発がん性評価ワーキンググループでのラット肝中期発がん性試験の評価の結果で陰性とされましたので、その結果を踏まえまして、同年第2回発がん性評価ワーキンググループで遺伝子改変動物を用いた中期発がん性試験の対象とされております。なお、本日の参考6で前回のラット肝中期発がん性試験の概要を紹介させていただいていますので、またそちらのほうは御覧いただければと思います。
 また、クロロエタンにつきましては、経口ばく露による調査が不能なガス状の物質となりますので、平成29年度の第2回発がん性評価ワーキンググループで遺伝子改変動物を用いた中期発がん性試験の対象とされたものとなっております。これは先ほどと同様に日本バイオアッセイ研究センターで試験をやっていただいています。
 また、TGICにつきましては、先ほどと同様、試験物質の投与が疑われている試験動物の除外前と除外後での試験結果を比較し、試験結果を評価することになります。強制経口投与で逸脱の疑いのあるものということで、要精査動物の除外前後での評価をしていただくということでお願いしたいと思います。
 さらに、令和2年度第1回発がん性評価ワーキンググループにおきまして御審議いただいておりますとおり、ラット肝中期発がん性試験のような発がん性の評価基準は定めることができておりません。これらの物質の試験結果につきましては、発がん性の評価、がん原性指針への追加の要否の検討につきましても改めて評価をお願いしたいと思います。
 個別の試験結果につきましては、日本バイオアッセイ研究センターの御担当者から説明をお願いしたいと思います。
 よろしくお願いします。
○平林座長 では、まずTGICについて説明をお願いできますか。
○日本バイオアッセイ研究センター/加納氏 それでは、資料3-1を御覧ください。
 まずp53ヘテロ欠損マウスの結果です。
 被験物質はトリグリシジルイソシアヌレートであり、以下、TGICと略させていただきます。
 TGICは白色からほとんど白色の粉末であり、水に難溶であることから、オリーブ油に懸濁させて使用しました。
 許容濃度等については、管理濃度が未設定、許容濃度は、日本産業衛生学会で未設定、ACGIHではTLV-TWAが0.05 mg/m3、ドイツ研究振興協会では呼吸器、皮膚感作性ありとされています。
 遺伝毒性については、エームス試験で陽性、チャイニーズハムスター肺由来線維芽細胞を用いた染色体異常試験で陽性の結果です。
 3の方法です。
 媒体対照群、被験物質投与3群、陽性対照群、計5群を設け、媒体対照群、被験物質投与群は雌雄とも25匹、陽性対照群は15匹としました。用量は雌雄とも0、3、10、30 mg/kgで、陽性対照群は雌雄とも300 mg/kgとし、投与は毎日1回の強制経口投与で26週間としました。観察・検査として、一般状態、体重、摂餌量、血液学的検査、血液生化学的検査、尿検査、解剖時の肉眼的観察、臓器重量、病理組織学的検査を行いました。
 4の用量設定です。
 用量設定として、4週間毒性試験の結果を基に決定しました。雌雄のC57BL/6Jマウスを用いて、1群各5匹の動物に0、10、30、60、100 mg/kgで毎日4週間強制経口投与しました。
 一般状態では、雌雄100 mg/kgの全例が貧血様を呈し、雄の1匹は試験途中で安楽死させました。また、雌の60 mg/kgの1例にも貧血様所見が見られています。体重は、雌雄100 mg/kgで有意な体重の低値が見られ、投与開始時に比べて減少し、雌60 mg/kgも投与開始時に比べて体重減少が見られました。
 造血系への影響として、病理組織学的に雄30 mg/kg以上、雌60 mg/kg以上で骨髄の造血低下が見られ、血液学的検査では雌雄とも最低用量の10 mg/kgから貧血所見(赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット値の低値)が見られ、投与用量に対応して顕著になりました。雌雄100 mg/kgでは血小板数の減少、白血球数の減少傾向が見られています。
 消化器官の胃・小腸では、雌雄の前胃に潰瘍と過形成、小腸の単細胞壊死がいずれも100 mg/kgで見られました。
 精巣では、精原細胞壊死が10 mg/kg から見られ、投与用量に対応して程度が増強しました。
 以上から、TGICの4週間経口投与により認められた貧血所見及び骨髄の造血低下の程度を根拠に、60 mg/kg以上は長期間の投与に耐えられないが、30 mg/kgは耐え得る用量であると判断しました。高用量を30 mg/kg、以下、10 mg/kg、3 mg/kgとしました。
 5の試験結果になります。
 左の列の要精査動物除外前のところを説明します。
 生存率は、後ろになりますが、10ページの図1の上段に示しています。最終生存率は雌雄とも10 mg/kgと30 mg/kgで低下が認められました。投与群で死因が特定できなかった例を除き、10 mg/kgと30 mg/kgの死因は全例とも白血病、骨髄性白血病ないし胸腺の悪性リンパ腫によるものでした。
 死亡、瀕死動物の一般状態では、30 mg/kgの雌雄で貧血、不整呼吸、雄で腹腔内の内部腫瘤、自発運動減少を呈した動物が多く認められ、10 mg/kgでも雌雄で不整呼吸を呈した動物が多く見られました。
 体重推移は、11ページ、図2の上段に示しています。体重は、雄の30 mg/kgで低値が散見されています。また、グラフはありませんが、摂餌量は雄の30 mg/kgで投与期間の多くの週で低値が認められました。
 病理組織学的検査の結果です。資料ですと3ページから、表で御覧いただく場合は8ページになります。
 雄の腫瘍性病変は表1になります。
 まず骨髄です。骨髄性白血病の発生が10 mg/kgで2匹、30 mg/kgで10匹に認められ、Fisher検定で30 mg/kgで有意な増加、PetoとCochran-Armitage検定で増加傾向を示しました。ヒストリカルコントロールデータ―このときは2試験50匹ですが―では発生がありません。
 次に胸腺です。悪性リンパ腫の発生が10 mg/kgで9匹、30 mg/kgで14匹に認められ、Fisher検定で10 mg/kg以上で有意な増加、PetoとCochran-Armitage検定で増加傾向を示しました。これもヒストリカルコントロールでは発生がありませんでした。
 次に、造血系腫瘍である上記の骨髄性白血病と胸腺の悪性リンパ腫を合わせた発生になります。10 mg/kgで11匹、30 mg/kgで23匹に認められ、Fisher検定で10 mg/kg以上で有意な増加、PetoとCochran-Armitage検定で増加傾向を示しました。
 以上の結果から、雄p53ノックアウトマウスの骨髄及び胸腺における腫瘍の発生増加はがん原性を示す明らかな証拠と判断しました。
 雄の非腫瘍性病変。
 少し説明は略しますが、小腸で上皮の異型過形成、上皮の核巨大化の増加、腎臓で近位尿細管の核腫大の増加、精巣で精細管萎縮の増加、精巣上体で精上皮系細胞の残屑の増加が見られました。
 雄は以上です。
 次に、雌は下の表2になります。
 同じく骨髄です。骨髄性白血病の発生が30 mg/kgで8匹に認められ、Fisher検定では30 mg/kgで有意な増加、PetoとCochran-Armitage検定で増加傾向を示しました。これもヒストリカルコントロールでは発生がありません。
 次に胸腺です。悪性リンパ腫の発生が3 mg/kgで1匹、10 mg/kgで6匹、30 mg/kgで14匹に認められ、Fisher検定で10 mg/kg以上で有意な増加、PetoとCochran-Armitage検定で増加傾向を示しました。これもヒストリカルでは発生がありません。
 次に、上記の骨髄性白血病と胸腺の悪性リンパ腫を合わせた発生です。3 mg/kgで1匹、10 mg/kgで6匹、30 mg/kgで22匹に認められ、Fisher検定で10 mg/kg以上で有意な増加、PetoとCochran-Armitage検定で増加傾向を示しました。
 次に小腸になりますが、腺癌の発生が30 mg/kgのみに1匹認められました。これもヒストリカルでは発生がありません。
 以上の結果から、雌p53ノックアウトマウスの骨髄、胸腺における腫瘍の発生増加及び小腸における腫瘍の発生はがん原性を示す明らかな証拠と判断しました。
 雌の非腫瘍性病変です。
 省略しますが、小腸で上皮の異型過形成、上皮の巨核細胞の増加、胃の腺胃上皮に巨核細胞の増加、卵巣で間質細胞空胞化の増加が認められました。
 6のまとめになります。
 p53ヘテロ欠損マウスを用いてTGICの26週間にわたる強制経口投与による中期発がん性試験を行った結果、雌雄p53ヘテロ欠損マウスに対するがん原性を示す明らかな証拠が得られたと結論しました。
 次に7、今回は陽性対照を置きましたので、陽性対照の評価を加えました。
 腫瘍と前腫瘍性病変の発生は、9ページ、表3と4に示しています。
 陽性対照物質として2-メトキシ-5-メチルアニリンを26週間投与しました。
 腫瘍性病変の発生は膀胱に認められています。雄では移行上皮乳頭腫2匹、移行上皮癌1匹の発生が認められ、両腫瘍を合わせた発生3匹が有意な増加を示しました。雌では扁平上皮乳頭腫1匹、移行上皮乳頭腫1匹の発生が見られましたが、両腫瘍を合わせた発生2匹では統計学的有意差を示されていません。
 下の前腫瘍性病変であるPN過形成(乳頭状ないし結節状過形成)は雌雄とも有意な発生増加を示しました。そのほか、雄で肺に細気管支-肺胞上皮腺腫1匹、雌で鼻腔に腺腫1匹の発生が見られましたが、これはヒストリカルコントロールでは発生がありません。
 以上より、雌雄ともに陽性対照物質による膀胱腫瘍の発生は少数例ではあったものの、前腫瘍性病変の発生増加が認められたことから本試験の有効性が確認されました。
 結果は以上になります。
 もう一度3ページに戻っていただきまして、右の列、要精査動物除外後の結果を赤字で記載しています。
 要精査動物とされた雌3 mg/kgと10 mg/kgの各1匹を除外した結果となり、有効動物数としては、雄は全群25匹、雌は対照群25匹、3 mg/kgと10 mg/kgが24匹、30 mg/kgが25匹となります。
 雌の生存率について、少し下のほうになりますが、10ページの図1の下段の右側に生存率のグラフ、11ページの図2の下段の右側に体重のグラフを示しています。グラフが小さいですが、雌の生存率は、有効動物数が1匹ですが減じたために、ごくわずかな低下がありましたが、体重も同様に平均値にごくわずかな変化がありました。ただし、グラフ上、見た目で分かるような差ではありません。
 雌の腫瘍発生の結果を8ページ、表2の括弧内に有効動物数、胸腺の悪性リンパ腫と骨髄の骨髄性白血病と胸腺の悪性リンパ腫を合わせた発生の下に赤字で統計学的有意差に変化があったものを記載しています。3 mg/kgと10 mg/kgの動物数が25匹から24匹になり、統計検定の結果、10 mg/kgにおいて、胸腺の悪性リンパ腫、骨髄・胸腺の骨髄性白血病と悪性リンパ腫を合わせた発生が、Fisher検定の結果で有意差p値が0.05以下のアスタリスク1個からp値0.01以下のアスタリスク2個に変わりました。
 しかしながら、結論は先ほどと同様、雌雄p53ヘテロ欠損マウスに対するがん原性を示す明らかな証拠が得られたと結論されたと、変わりはありません。
 p53については以上です。
 それでは、引き続きrasH2マウスを説明します。
 資料3-2を御覧ください。
 被験物質に関する部分は省略します。
 方法は先ほどと同様ですが、今回、rasH2については陽性対照群を設けておりません。投与用量も先ほどと同様、0、3、10、30 mg/kgです。
 用量設定理由です。
 4週間毒性試験の結果を基に決定しました。雌雄のrasHマウス(non-Tg)を用いて、5匹の動物に0、10、30、60、100 mg/kgで4週間投与しました。
 結果、雌雄ともTGIC投与に起因する動物の死亡、一般状態の異常は認められませんでした。雌の100 mg/kgで投与開始時に比べて体重減少が見られましたが、その他の投与群では体重の変化は見られていません。
 血液学的検査では、雌雄とも最低用量の10 mg/kgから貧血所見が投与用量に対応して顕著になり、雄の100 mg/kgで白血球数減少も認められました。
 消化器官では、雌雄の胃の腺胃、小腸・大腸の上皮に軽度の壊死(単細胞壊死)が10 mg/kg以上または30 mg/kg以上に認められましたが、投与用量に対応した変化ではありませんでした。前胃には潰瘍または過形成が雌雄の100 mg/kgで少数例ですが見られました。
 精巣では、精原細胞壊死が10 mg/kgから見られ、投与用量に対応してその程度が増強しました。
 以上、TGICの4週間経口投与により、10 mg/kgの用量から貧血、消化管上皮細胞の壊死、精原細胞壊死が認められ、60 mg/kg以上では雌雄とも貧血が顕著でした。貧血所見の程度から60 mg/kg以上の用量は26週間投与の最高用量としては高いと考えられましたが、30 mg/kgは最高用量として耐え得る用量であると判断し、高用量を30 mg/kg、以下、10 mg/kg、3 mg/kgとしました。
 5の結果になります。
 左の列の要精査動物除外前のところになります。
 生存率は9ページになりまして、図1の上段、体重は10ページ、図2の上段に示しています。
 生存率、一般状態、体重、摂餌量は、雌雄とも投与による影響は見られていません。
 次に病理検査の結果です。資料ですと3ページの下の部分、腫瘍発生の表は8ページになります。表を御覧になる方は8ページを御覧ください。
 まず雄の腫瘍性病変、表1になります。
 肺です。細気管支-肺胞上皮腺腫の発生が媒体対照で1匹、3 mg/kgで2匹、10 mg/kgで7匹、30 mg/kgで9匹に認められ、Fisher検定で10 mg/kg以上で有意な増加、PetoとCochran-Armitage検定で増加傾向を示しました。また、細気管支-肺胞上皮癌の発生が10 mg/kgで2匹、30 mg/kgで4匹認められ、PetoとCochran-Armitage検定で増加傾向を示しました。さらに、腺扁平上皮癌の発生が3 mg/kgで1匹ですが見られました。細気管支-肺胞上皮腺腫、細気管支-肺胞上皮癌、腺扁平上皮癌を合わせた発生ですが、媒体対照で1匹、3 mg/kgで3匹、10 mg/kgで9匹、30 mg/kgで13匹となり、Fisher検定で10 mg/kg以上で有意な増加、PetoとCochran-Armitage検定でも増加傾向を示しました。これらの腫瘍をヒストリカルコントロールデータ、過去5試験125匹と比較したところ、細気管支-肺胞上皮腺腫、細気管支-肺胞上皮癌の発生率はいずれも10 mg/kg以上でその最大発生率を超えました。
 次に胸腺になります。悪性リンパ腫の発生が30 mg/kg群のみに3匹認められました。PetoとCochran-Armitage検定で増加傾向を示しました。ヒストリカルコントロールでは発生のない、極めてまれな腫瘍でした。
 以上の結果から、雄rasH2マウスの肺、胸腺における腫瘍の発生増加はがん原性を示す明らかな証拠と判断しました。
 雄の非腫瘍性病変。
 説明は省略しますが、精巣で精原細胞の壊死の増加、精巣上体では精子数の減少と精上皮系細胞の残屑の増加が認められました。
 雄は以上です。
 次に雌の腫瘍性病変の結果になります。表2を御覧ください。
 肺です。細気管支-肺胞上皮腺腫の発生が3 mg/kgで4匹、10 mg/kgで5匹、30 mg/kgで10匹に認められ、Fisher検定では10 mg/kg以上で有意な増加、PetoとCochran-Armitage検定で増加傾向を示しました。次に、細気管支-肺胞上皮癌の発生が3 mg/kgで1匹、10 mg/kgで2匹、30 mg/kgで1匹に認められました。これらの両腫瘍は合わせた発生が3 mg/kg で5匹、10 mg/kg で7匹、30 mg/kg で11匹となり、Fisher検定で3 mg/kg以上で有意な増加、PetoとCochran-Armitage検定で増加傾向を示しました。これらの腫瘍をヒストリカルコントロールデータ5試験124匹と比較したところ、細気管支-肺胞上皮腺腫の発生、細気管支-肺胞上皮腺腫と細気管支-肺胞上皮癌を合わせた発生は、いずれも3 mg/kg以上でその最大発生率を超えていました。
 次に胸腺になります。悪性リンパ腫の発生が30 mg/kgのみに3匹認められました。Peto検定とCochran-Armitage検定で増加傾向を示しています。ヒストリカルコントロールでは、過去124匹中1匹、0.8%と極めてまれな腫瘍で、30 mg/kgではその最大発生率を超えました。
 次にハーダー腺です。腺腫の発生が30 mg/kgのみに3匹認められ、PetoとCochran-Armitage検定で増加傾向を示しました。30 mg/kgで腺腫の発生が見られた3匹のうち1匹は腺癌を伴っていました。ヒストリカルコントロールデータとの比較では、腺腫の発生はヒストリカルコントロールの最大発生率を超えています。また、腺癌の発生はありませんでした。
 以上の結果から、雌rasH2マウスの肺、胸腺、ハーダー腺における腫瘍の発生増加はがん原性を示す明らかな証拠と判断しました。
 非腫瘍性病変は、ハーダー腺の過形成の発生が10 mg/kgと30 mg/kgで各2匹に認められましたが、統計学的有意差はありません。
 まとめになります。
 rasH2マウスを用いてTGICの26週間にわたる強制経口投与による中期発がん性試験を行った結果、雌雄rasH2マウスに対するがん原性を示す明らかな証拠が得られたと結論しました。
 再度資料の3ページに戻っていただきたいと思います。
 右の列に要精査動物除外後の結果を示しています。
 いずれも媒体対照群雌雄各1匹を除外した結果になります。したがいまして、有効動物数は雌雄とも対照群は24匹、3、10、30 mg/kgは各25匹になります。
 生存率は、9ページの図1の下段、体重が10ページの図2の下段になります。
 いずれも対照群の各1匹を除外した結果となりますので、除外前と比較した結果、生存率は、雄の対照群が96%でしたが、これが100%となりました。体重推移は、雌雄の媒体対照群で平均値の差がごくわずかであり、差は見られていません。腫瘍性病変は雌雄いずれも投与群で検定結果に差は見られていません。
 結論としまして、先ほどと同様、雌雄rasH2マウスに対するがん原性を示す明らかな証拠が得られたと結論されたと、変わりはありません。
 以上になります。
○平林座長 ありがとうございます。
 このTGICにつきましては、p53を使ってもrasH2を使っても、雌雄ともにクリアなエビデンスとして造腫瘍性が認められたという結論かと思いますが、御質問、御意見等ございますでしょうか。
○小野寺委員 細かいところなのですけれども、rasH2の8ページの雌のハーダー腺のところで、腺腫と腺がん、C+Dが3になっていますけれども、これは4ではないですか。
○日本バイオアッセイ研究センター/妹尾氏 同じ動物に良性と悪性がある動物が1匹いましたので、動物数では3匹のままです。1匹が、片方に良性、もう片方に悪性というのがいたということです。
○小野寺委員 普通は、診断するときに1匹の動物に悪性と良性があったときには悪性のほうを取るのですけれども、ハーダー腺というのは別の場所に?
○日本バイオアッセイ研究センター/妹尾氏 ええ、右左ありますので、動物の個体数としては3ということになります。
○小野寺委員 分かりました。
○平林座長 ほかに。
○西川委員 まずp53ノックアウトマウスのほうで、これは陽性対照物質として2-メトキシ-5-メチルアニリンを使っているのですが、それほどクリアに腫瘍が増えているわけではなくて、むしろ被験物質のほうがはるかに腫瘍の発生した割合が大きいのですけれども、これを陽性対照物質に使うとなっていたのでしたっけ。
○日本バイオアッセイ研究センター/加納氏 昨年度も違う物質で同じ陽性対照物質を使って報告しましたが、やはり陽性対照としての発生率が低いのではないかという御指摘を受けました。この物質を選んだのは、過去に多くの文献で陽性対照として使用しているという実績がありましたので、それを参考にして前回と今回使用しております。それで、発生率が低くて陽性対照物質として適切かどうかという問題がありましたので、内部でMNUを使って、rasH2マウスではMNUで単回腹腔内投与して腫瘍の明らかな発生増加が見られたという報告がありまして、それを使用しておりました。数十匹の動物を使ってp53KOマウスでも同じようにMNUを単回腹腔内投与して検討した結果、詳細なデータは持ってきておりませんが、悪性リンパ腫が雄で8割程度、雌で100%、小腸の腺癌が雌雄とも20%程度発生しているということで、これは文献でもそのような情報がありまして、発生率についてもほぼそごがありません。それで次回からはMNUを陽性対照として使うということで試験を始めました。
 先生の御質問への回答になっているか分かりませんが、以上になります。
○西川委員 よく分かりました。
 要するに、初めてこれを陽性対照物質として使ったということですね。
○日本バイオアッセイ研究センター/加納氏 今回の物質はTGICと前回報告した物質で2回とも同じ陽性対照を使って、いずれも発生率が少なかったのですが、幸いに前腫瘍性病変も増加しているということで、陽性対照として一応成立するのではないかという判断を下しております。
○西川委員 ぎりぎり成立しているような感じで、もしこれが有意に増えていなければ試験そのものが全部駄目になってしまった可能性がありますので、より確かな陽性対照物質を使ったほうがいいというのは間違いないと思います。ありがとうございました。
 それと、病理所見のまとめで、例えば(資料3-1の)3ページの上から5行目ぐらいに、「全例白血病(骨髄性白血病ないし胸腺の悪性リンパ腫)」とあるのですが、悪性リンパ腫が白血化したらリンパ性白血病ですよね。これをまとめるのは無理があるのではないかと思います。だから、「全例白血病」というところを削除してしまえばいいのかなと思いました。
 それから、同じようなところなのですが、4ページ目の<骨髄及び胸腺>のところで、「造血系腫瘍である」は「胸腺の悪性リンパ腫」まで係るのでしょうか。骨髄性白血病が造血系腫瘍であることは問題ないのですけれども、胸腺の悪性リンパ腫まで造血系腫瘍に入れるのは、もしそれがそういう意図であれば間違いであると思います。
○日本バイオアッセイ研究センター/妹尾氏 おっしゃるとおり、そのように読めるような書き方で記述してしまいました。本来、骨髄性白血病と胸腺の悪性リンパ腫は足し合わせる必要のないものですね。
○西川委員 だから、ここも、「造血系腫瘍である」というところを削除すれば全く問題ないと思いましたけれども、いかがでしょうか。
○日本バイオアッセイ研究センター/妹尾氏 はい。
○平林座長 これは一緒にしないと有意差が出ないとか、そういうことではないですよね。だから、無理にまとめる必要はないと私も思いますので、そこのところは記載の整理をお願いできればと思います。
○日本バイオアッセイ研究センター/妹尾氏 はい。ありがとうございます。
○日本バイオアッセイ研究センター/梅田氏 1匹に両方あるとか、混ざったものが。
○日本バイオアッセイ研究センター/妹尾氏 でも、基本的に足す必要はないということ。
○平林座長 だからそれは一緒にする必要はないです。その所見は所見としてそれぞれ出していただければ。
 西川先生、よろしゅうございますか。
○西川委員 はい、結構です。
○平林座長 ありがとうございます。
 ほかに。
 結果はクリアでございますので、これはエームスももともと陽性ということでございますし、発がん性は陽性ということに評価したいと思います。
それで、またがん原性指針への追加の要否ということで、これは明らかに発がん性物質なわけですけれども、どうされるのでしょうか。
○福田有害性調査機関査察官 去年初めて評価をやって、前例がないというところもあります。昨年の議論の中では1つのデータとして検討したらどうだぐらいで終わってしまって、やはり発がん性の評価まで至っていないので、明確な基準も定まっていませんし、ここがどういう形で落とし込めるかというのは今頭の中で悩んでいるところではあります。
○平林座長 機序についてはいろいろあろうかと思いますし、そこを追究するかどうかは横に置いておくとして、エームスが陽性でここまで陽性ということになると遺伝毒性で発がんしたというようなスキームが書けて、これ以上の動物試験なりをする必要はないと私は思っております。だから、むしろこの発がん性物質をどのように管理するかというようなことのほうが主眼になるかと思うのです。
○福田有害性調査機関査察官 そうしますと、前例があまりないのであれですけれども、基準とかもないので、がん原性指針のほうに要否で判断していただいて、載せられるようだということであれば、また改めて保護具等の検討に回して、措置検討なりして、がん原性指針としてスキームに乗せていきたいとは思います。
○平林座長 あと、これは粉ですよね。
○福田有害性調査機関査察官 粉末ですね。
○平林座長 粉末なので、使われ方によるのですけれども、舞い上がったりすると。
○福田有害性調査機関査察官 経気道ばく露というのですか。
○平林座長 というような危険性も当然考えなければいけないと思いますし、そういったことでの管理をぜひきちんとしていただきたいということかと思うのですが。
○福田有害性調査機関査察官 承知しました。この結果の管理の仕方というか使い方、がん原性指針以外でどういう形で使っていくかについては、今後のあり方のところでリスク評価のスキーム自体はなくなることを予定していますけれども、別のスキームの中で何か使えないかということを含めて検討させていただきたいと思います。
○平林座長 ありがとうございます。
 ほかに追加はよろしゅうございますか。時間も押してきましたので、できれば次の剤に行きたいのですが。
 よろしければ、次にクロロエタンにつきまして説明いただきたいと思います。
○日本バイオアッセイ研究センター/笠井氏 資料4-1、p53ヘテロ欠損マウス、p53ノックアウトマウスの吸入による中期発がん性試験の結果から説明いたします。
 被験物質はクロロエタンです。1個塩素が置換した形のエタンになっております。
 構造式は1-2に示してあります。分子量64.52で、物理化学的性状としては、常温でエーテル臭を持つ無色の気体です。相対蒸気密度が2.22、空気よりも重い物質です。溶解性は、水に微溶、アルコール、エーテルと自由に混和する。保管条件としては、室温で保管です。
 製造量等は、日本で1,000 t、2003年の化学物質排出把握管理促進法における製造・輸入区分でそのようになっております。
 用途といたしましては、オレフィン重合触媒原料、発泡助剤、エチル化剤、農薬等、広く使われております。
 許容濃度等につきましては、日本産業衛生学会では1993年に100 ppmを勧告し、ACGIHでも100 ppm、あと経皮吸収性に注意するようにということでSkinということになって、発がん性についてはA3です。国際がん研究機関IARCでも3、区分できないということになっております。
 遺伝毒性といたしましては、エームス試験で陽性、DNA修復試験では陰性、小核試験でも陰性となっております。
 26週間試験の方法です。
 投与群3群、対照群1群の4群を設けまして、濃度は0、2,400、6,000、15,000 ppmとして、1日6時間、1週5日間、26週間ばく露いたしました。観察・検査項目は、一般状態の観察、体重及び摂餌量の測定、血液学的検査、血液生化学的検査、尿検査、解剖時の肉眼的観察、臓器重量測定及び病理組織学的検査を行っております。
 26週間試験の投与濃度の設定理由といたしまして、4週間の予備試験の結果から決めております。4週間の濃度は、0、2,500、5,000、10,000、15,000 ppmの濃度でばく露を行いましたが、雌雄各群に死亡は認められず、一般状態の変化も観察されておりません。体重も順調で、各群間に差は認められませんでした。病理組織学的検査で濃度依存的な肺の細気管支上皮細胞の空胞変性が認められたということで、15,000 ppmをトップドーズにいたしまして、6,000 ppm、2,400 ppmに振っております。
 26週間投与の結果、まず生存率、一般状態ですけれども、グラフを出していただければと思います。5ページです。生存率は雌雄ともに差は認められておりません。少し見にくいのですけれども、雄で死亡しておりますのがコントロールと2,400 ppm群でそれぞれ1例です。下のグラフの生存率は雌になっておりますが、死亡しておりますのがコントロールで2匹、2,400 ppmで1匹、6,000 ppmで2匹、15,000 ppmは全て生存しております。
 次に6ページをお願いします。こちらが体重推移のグラフになっております。雌雄の15,000 ppm群で有意な体重増加の抑制が認められたという結果です。コントロールに対しまして、15,000 ppmの雄は92%、15,000 ppmの雌は95%となっております。
 次の7ページをお願いいたします。摂餌量は雌雄の15,000 ppm群とも投与期間を通して対照群より若干多く推移したというグラフになっております。
 続きまして、病理組織学的検査の結果です。4ページの表です。
 腫瘍性病変の結果、上の表が雄、下の表が雌になっておりますが、被験物質投与による腫瘍の発生増加は雄では認められませんでした。
 非腫瘍性病変といたしましては、雄で気管支上皮の空胞変性が2,400 ppm以上の群で認められております。精巣で精細管萎縮、これも2,400 ppm以上の群で認められております。肝臓では小葉中心性の脂肪変性の発生が6,000 ppm以上の群で減少しております。
 雌の腫瘍性病変の結果といたしましても、被験物質投与による腫瘍の発生増加は認められませんでした。
 非腫瘍性病変といたしまして、雌では気管支上皮細胞の空胞変性が2,400 ppm以上の群で認められております。病変の程度は軽度から中等度でありました。
 以上をまとめますと、遺伝子改変マウスp53ノックアウトマウスを用いてクロロエタンの26週間の吸入による中期発がん性試験を行った結果、雌雄マウスに対する発がん性を示す証拠は得られなかったと結論いたしました。
 続いて、rasH2マウスを用いた26週間試験です。
 資料4-2を御覧ください。
 物性については同じでございます。
 また、4週間の予備試験も、rasH2マウスのnon-Tgを用いて0、2,500、5,000、10,000、15,000 ppmで4週間ばく露を行った結果、気管支上皮の空胞変性のみの変化でありましたので、先ほどと同様、投与濃度は2,400、6,000、15,000 ppmで行っております。
 8ページをお願いします。26週間試験の投与の結果、一般状態には変化がございませんでした。こちらにお示ししてあるものは雄の生存率です。コントロールと2,400 ppmは死亡がなかったのですが、6,000 ppm群で1匹、15,000 ppm群で2匹死亡がありまして、一番下のものが15,000 ppm群です。下は雌のグラフであります。死亡はコントロールで1匹、2,400 ppmで1匹、6,000 ppmで1匹、15,000 ppmでは全例生存しております。投与の影響は認められなかったという結果であります。
 次のグラフをお願いします。体重です。対照群と比べて全く差はありませんでした。
 次のグラフをお願いいたします。こちらは餌のグラフになりますが、投与期間を通して15,000 ppm群で雌雄とも対照群に比べて多かったという結果です。また、臓器重量測定で雄の15,000 ppm群で腎臓重量の高値が認められましたが、対応する病理組織学的変化はありませんでした。
病理組織学的検査の結果です。表をお願いいたします。
 腫瘍性病変といたしまして、表1が雄であります。細気管支-肺胞上皮腺腫の発生が対照群で4匹、2,400 ppm群で6匹、6,000 ppm群で3匹、15,000 ppm群で10匹に認められ、Peto検定、Cochran-Armitage検定で増加傾向を示しております。
 細気管支-肺胞上皮がんの発生が対照群及び2,400 ppm群で各1匹、6,000 ppm群で0、15,000 ppm群で5匹に認められ、Peto検定及びCochran-Armitage検定で増加傾向となっております。
 細気管支-肺胞上皮腺腫と細気管支-肺胞上皮癌いずれかを有する動物の数は、対照群で4匹、2,400 ppm群で7匹、6,000 ppm群で3匹、15,000 ppm群で13匹、15,000 ppm群ではFisher検定で有意な増加、Peto検定、Cochran-Armitage検定で有意な増加傾向となっております。
 非腫瘍性病変といたしまして、雄は前胃に潰瘍、前胃の過形成。過形成は2,400 ppm以上、潰瘍は15,000 ppm群で認められております。また、肺の細気管支-肺胞上皮過形成が全ての群で認められております。
 引き続きまして、雌の腫瘍性病変、表2です。
 雌は脾臓の血管肉腫の発生が対照群0、2,400 ppm群、6,000 ppm群で各1匹、15,000 ppm群で3匹に認められ、Peto検定で増加傾向を示しております。また、脾臓の血管腫の発生が6,000 ppm群で1匹に認められ、血管腫と血管肉腫を合わせた腫瘍の発生は、対照群で0、2,400 ppm群で1、6,000 ppm群で2、15,000 ppm群で3となり、Peto検定で増加傾向を示しました。
 胃の血管腫が2,400 ppm群で1匹、皮下の血管肉腫が15,000 ppm群で1匹、大腸の血管肉腫が6,000 ppm群で1匹、筋肉の血管肉腫が対照群及び2,400 ppm群で各1匹に認められ、これらの全臓器での血管腫と血管肉腫を合わせた腫瘍の発生は対照群で1匹、2,400 ppm群で3匹、6,000 ppm群で3匹、15,000 ppm群で4匹となり、Peto検定で増加傾向を示しました。
 当センターのヒストリカルコントロールデータでは、脾臓の血管腫と血管肉腫を合わせた発生は最大8%(2匹)であります。本試験における15,000 ppm群の脾臓の血管腫と血管肉腫を合わせた発生は3匹で、ヒストリカルコントロールデータの上限を1匹超えております。また、全臓器の血管腫と血管肉腫を合わせた発生は最大16%(4匹)でありますが、本試験では15,000 ppm群の全臓器での血管腫と血管肉腫を合わせた発生は4匹で、ヒストリカルコントロールデータの上限となっております。
 以上のように、血管腫と血管肉腫の発生がヒストリカルコントロールデータの範囲を超えるものもありましたが、血管腫や血管肉腫は自然発生が非常に多い腫瘍であるということを考慮し、雌では発がん性を示す不確実な証拠と判断いたしました。
 非腫瘍性病変といたしましては、前胃に潰瘍が2,400 ppm群で1匹、15,000 ppm群で6匹に認められております。また、前胃には過形成が認められており、対照群から認められております。ただし、15,000 ppm群では有意な増加を示しました。
 肺でも、細気管支-肺胞上皮過形成が2,400 ppm群で認められました。気管支上皮の空胞変性が2,400 ppm以上の群で認められ、病変の程度が濃度に対応して重篤化しております。
 鼻腔でも嗅上皮のエオジン好性変化が認められました。対照群でも認められるような病変でした。
 まとめますと、遺伝子改変マウスrasH2マウスを用いてクロロエタンの26週間の吸入による中期発がん性試験を行った結果、雄では15,000 ppm群で細気管支-肺胞上皮腺腫と細気管支-肺胞上皮がんを合わせた発生増加が示され、クロロエタンの雄rasH2マウスへの発がん性を示す明らかな証拠が得られたと結論いたしました。雌では全臓器における血管腫と血管肉腫を合わせた腫瘍発生の増加傾向が見られましたが、ヒストリカルコントロールの上限であり、クロロエタンの雌rasH2マウスへの発がん性を示す不確実な証拠が得られたと結論いたしました。
 以上です。
○平林座長 ありがとうございました。
 これはガス状の物質で、エームスは陽性でしたが、p53では雌雄とも明らかな発がんの証拠は見られない、rasH2につきましては、この腫瘍の分類の仕方は少し議論があるかと思いますが、多少発がん性が認められそうだというような結果かと思います。
御質問、御意見はありますでしょうか。
○小野寺委員 一番最初の1-6の許容濃度のところで、日本産業衛生学会でも海外でも許容値が100 ppmですよね。今回行った実験はとてつもない高濃度ですよね。その中でこういう結論が出たというのは何か意味があるのですか。これは実験者ではなくて行政当局の方にお聞きしたいのですけれども、結局、実質で作業なり規制されている量とかけ離れた量での結果ですよね。この結果というのは、例えば逆だったら規制の対象になると思うのですけれども、100 ppmが許容濃度で15,000 ppmで何か出ましたと言ったところで、結果に対するコメントというのは何かできるのでしょうか。
○福田有害性調査機関査察官 確かにそうですね。リスク評価のスキームの中でもACGIHのTLVの評価を二次評価値として比較して、それで実際の作業状況がどの濃度でやっているか、それで上回っていればリスクが高い、下回っていれば低いという形で見るので、先生にそうおっしゃられると確かに高濃度だなという形で見てしまったというのが本音で、これをどのように評価していくか、頭の整理ができていませんけれども、いずれにしてもこの考え方は整理して検討しないといけないかなという気はします。
○平林座長 西川先生。
○西川委員 今の点ですか。
○平林座長 いえ、もちろん全体でも構いません。
○西川委員 今の点で言えば、きちんとした予備試験をやった上で用量を決めているわけですから、動物に対して発がん性があるかないかを見るためにはある意味やむを得なかったような気はします。
 それはともかく、1つ教えていただきたいのは、先ほどと違ってp53ノックアウトマウスの試験では陽性対照を置いていないですよね。これはなぜですか。
○平林座長 吸入毒性の陽性対照の適当なものがなかったということですか。
○日本バイオアッセイ研究センター/加納氏 吸入試験では、現在うちのシステムで吸入ばく露としての陽性対照を置くことは現実的に吸入チャンバーの数とか発生器の問題でできませんし、吸入対象物質としてこの系統の動物に適した陽性対照物質があるのかどうかという確実な証拠を得ない限り、吸入ばく露としての陽性対照を置くことはできません。ただし、先ほど陽性対照としてMNUを置くとかそういう話をしましたが、動物福祉とかの観点から、前は吸入チャンバー内で24時間一生涯飼っていたのですが、今やっている試験から、ばく露以外は飼育室で飼育する、6時間だけは吸入チャンバー内に移動するということを始めたので、新たな吸入試験では飼育室で先ほど言ったMNUを投与した状態で陽性対照を置くことにしております。
○西川委員 分かりました。ありがとうございます。
○平林座長 ほかに。
西川先生、この結果はどう解釈いたしましょうか。
○西川委員 rasH2で肺の腫瘍が有意に増えているので、雄はバイオアッセイさんの評価どおりになるかと思います。雌も同様に、ぎりぎり何か増えているかどうか分からないような状況だということも妥当かと思います。
○平林座長 腺腫とがんを一緒にして評価して、それで有意差がついたからということでよろしゅうございますか。
○西川委員 雄ですね。
○平林座長 はい。
○西川委員 同じ系統の良性腫瘍、悪性腫瘍ですから、まとめて評価してもいいと思います。
○平林座長 それから、雌の血管腫または血管肉腫でございますが、全臓器で足し合わせた。これは、幾つもの臓器に見られたから、匹数としてはこの匹数ということですよね。それがヒストリカルデータぎりぎりというところで、equivocalだという結果をお出しいただいているわけですが、この点に関して何か御異議があったり御質問があったりされる先生はいらっしゃいますか。
○小川委員 多分IARCでもこういう評価の仕方をすると思います。複数臓器に起こるような間葉系の腫瘍の場合はそういったことも加味した上で検討するということになるのかなと思います。ただ、クリアな有意差にはならないので、equivocalという形でよろしいのかなと思っております。肺に関しても良性と悪性と足し合わせてということはされておりますので、正しい評価の仕方かなと思います。ただ、用量としてかなりの高用量のみ有意であり、一応エームス陽性ではあるのですけれども、その辺のばく露比をどう考えるのかというところはあるのかなと思います。ただし、リスク評価ということもありますが、ハザード評価という意味合いでは投与可能な量で発がん性があるかないかという情報自体は必要な情報と思います。
○平林座長 ありがとうございます。
 確かにこの剤の性質としてどういうものかということを知るハザード評価は必要なので、この実験系自体はいいと思います。
 このデータをどう活用するかは行政側の宿題になるということかと思いますので、よろしくお願いします。
○福田有害性調査機関査察官 承知しました。
○平林座長 ですので、結論といたしましては、rasH2の雄の結果をもって発がん性陽性ということにはなろうかと思いますが、これは1/4でいいのでしたっけ。
○小野寺委員 全部で1/4?
○平林座長 はい。でも、1つでも出たからいいのですよね。
 ということで、結論としては陽性ということで評価いたしまして、ただ、ここで投与された用量と実際の現場でのばく露規制値との乖離の問題は、これからのリスク評価に対して提供されるべき情報かと思います。
 それでよろしゅうございますか。
○津田委員 先ほどちょっと言いそびれましたけれども、血管腫を各臓器毎に頻度を取るとばらけてしまいます。それよりだけ血管というのを一つの臓器と取れば、全部足してその頻度をみるというのはやはり正しい方法だと思います。
○平林座長 ありがとうございます。
 よろしゅうございますでしょうか。
 もしよろしければ、この議論はここまでにさせていただいて、大分遅くなってしまいましたが、次に議題(4)に移りたいと思います。「第1回で審議した2物質の遺伝毒性等について」でございます。
 事務局より説明をお願いいたします。
○福田有害性調査機関査察官 時間も押してきていますので、手短にということで。
 前回、第1回の審議におきまして、チモールとメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルにつきましては、先生方から発がん性評価に当たっては遺伝毒性試験の結果も必要という御意見を頂いたところです。このため、今回、平成25年度の遺伝毒性評価ワーキンググループで遺伝毒性を評価した際に用いました資料、こちらは文献調査から引っ張り出したデータになりますけれども、そちらから改めてチモールとメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルの試験結果を抽出したものをそれぞれ資料5-2、6-2として出させていただいております。こちらの資料を踏まえまして、発がん性評価とがん原性指針への追加の要否の再検討をお願いしたいと思います。
 なお、これらの化学物質につきまして、事務局から補足として報告いたします。
 チモールとメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルにつきましては、平成25年度の遺伝毒性評価ワーキンググループにおきまして、当時の委員の先生方の中には「強い遺伝毒性あり」と評価された先生もおりましたけれども、最終的にはこちらの物質のいずれの遺伝毒性の評価結果も「弱い遺伝毒性あり」となっております。しかしながら、令和2年度の発がん性評価ワーキンググループにおきましては、そうした結果を踏まえつつも、先生方の中に遺伝毒性ありという判断をされた先生方もいたということもありまして、事務局の判断といたしまして、これらの化学物質を「強い遺伝毒性あり」の化学物質として中期発がん性試験の候補物質として挙げまして、その中から令和2年度にラット肝中期発がん性試験の対象物質として選定いただいたという結果となっております。
 以上です。
○平林座長 まずチモールですけれども、資料5-2に「チモールの変異原性試験の結果等について」という表がございます。それを御確認いただきますと、遺伝毒性評価の一覧で、エームスは陰性でございまして、染色体異常試験は弱陽性。in vivoの小核試験が3本走ってございまして、マル3のところで陽性ということでございます。ただ、マル2が厚労省のGLP施設での実施試験結果でございまして、これはクリアな陰性と評価されてございます。そういったことを踏まえますと、今回の結果はプロモーション作用はなかったという結果だったと思いますので、この剤は発がん性については懸念は少ないということになろうかと思いますが、御意見はありますでしょうか。
○小川委員 「強い遺伝毒性」とすると、もう少しほかの臓器を確認しないといけないかと思いますけれども、弱いということであればよろしいかと思います。
○平林座長 ほかに。
○西川委員 そうすると、資料5-1の1.4の有害性情報のところには遺伝毒性について書かないということですか。
○平林座長 どうしますか。
○福田有害性調査機関査察官 そもそもこの様式自体が、どの時点かというのは分かりませんけれども、過去の審議の中でこういう様式にということで決まったと確認しておりまして、別の形、今回みたいな形で載せさせていただければと考えております。
 もう一つあるのですが、こうやって遺伝毒性の試験を抜粋だけはさせていただいていますけれども、その当時の資料の中で文献調査の文献の部分、原著論文を私どもは確認できておりませんので、その部分をこの中に盛り込むのは難しいかなと思っていまして、先ほど申し上げたとおり、別の形、今回みたいな形で提示させていただければと思います。
○西川委員 この中期肝発がん性試験を実施した理由みたいなものの1つとして有害性情報があると思うのですけれども、それには試験の結果は出てこないということですね。急性毒性は結構高いし、あまり意味がないですよね。
○福田有害性調査機関査察官 そうですね。こちらの試験の概要のところには出てこず、別の形で、要はラット肝中期発がん性試験の選定のところの一覧というか、そういったところで、形質転換試験でポジティブになったものか、文献調査なり実際の試験で遺伝毒性が出た、もしくは「強い遺伝毒性あり」となったというような別の資料の形で出させていただければと思います。
○西川委員 分かりました。了解です。
○平林座長 そうしますと、チモールにつきましては、プロモーション作用はない、発がん性についてもこの結果を踏まえると懸念は乏しいということで、がん原性指針への追加は必要ないということでまとめさせていただければと思いますが、よろしゅうございますか。
もしよろしければ、その次のメタクリル酸に行きたいのですけれども、これは資料6-2に試験結果がまとまってございます。御覧いただくと、エームス試験が陽性と陰性に分かれておりまして、ただ陽性もそんなに用量が大きくてというか、毒性としてはそんなに強いものではないと聞いております。それから、染色体異常試験が陽性でございますけれども、in vivoの小核試験が2本走っていて、両方とも陰性ということでございまして、最近の評価の仕方からすると、in vivoの試験で陰性であれば生態影響は乏しいだろうという判断をするというようなことになっておろうかと思います。
 そのあたり、御意見いかがでしょうか。
○西川委員 資料6-1を見ると、有害性情報のところで、遺伝毒性試験の試験は削除したほうがいいと思うのですけれども、エームス陽性、染色体異常試験陽性。ただし、これは軽いのですね。
○平林座長 そうです。
○西川委員 だから、そのあたりは。
○平林座長 確かに統一されていませんね。
○西川委員 そうですね。その辺は統一していただけるといいと思うのですが、vivoの小核が陰性なので、何でこれを追加試験にかけたのかがよく分からないのです。でも、先ほどの事務局の説明でそれは別に記載するということでしたので、結構です。
○平林座長 では、ここは消していただくということで、よろしくお願いします。
 ほかに特に御意見はございませんか。
 そうしましたら、これにつきましても、プロモーション作用はないということと、エームスもプラスマイナスでありますので、完全に白と言うのもはばかられるかと思いますが、発がん性の懸念については乏しいということで、がん原性指針への追加は必要ないということにさせていただきたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。
○西川委員 はい、結構です。
○平林座長 ありがとうございます。
そうしますと、大分遅れましたが、「その他」ということでございまして、事務局から何かございますでしょうか。
○福田有害性調査機関査察官 ありがとうございました。検討をお願いしたい案件としましては以上となります。
本日御検討いただきました評価結果につきましては、今後、どのタイミングで開催できるかというのはありますが、有害性評価小検討会にも報告させていただいた上で、特にがん原性指針への追加要という判断をしていただいたものにつきましては、先ほど申し上げた作業環境測定法とか保護具等の検討をして、措置検討会を経てがん原性指針に盛り込んでいくという方向になっていくかと思います。実際に今年度中に有害性評価小検討会ができませんでしたら、次年度も有害性評価小検討会をやっていくことになりまして、また、発がん性評価ワーキンググループも委託事業という形でやるのは今年度限りになるかもしれませんが、まだ発がん性試験が一部残っていまして、それを最後までやっていくということで、次年度、少なくとも発がん性評価ワーキンググループは続くと思いますので、引き続きよろしくお願いしたいと思います。
 事務局からは以上でございます。
○平林座長 そうしましたら、座長の不手際で大変遅れまして申し訳ございませんでした。御協力どうもありがとうございます。
○若林委員 若林ですけれども、簡単なことで。
 次回の議論にしていただければと思うのですけれども、せっかくのp53とかrasH2マウスで得られたデータとか伊東法での多くのデータを日本語または英語で公開していくほうが後々いいと思うのです。その辺について以前にもこの議論をお願いしますと言ったのですけれども、結局うやむやになった経緯があると思うのです。大変難しいかと思うのですけれども、来年何回かにわたってこの議論はぜひ進めて、できればNTPレポートみたいな格好で日本からもちゃんとデータを発信したほうがいいかと思います。1つの意見としてお聞きください。
○平林座長 それは私も必要だと思っておりますし、なかなか動物試験がしにくくなっているということもありまして、日本から質の高いデータを出すということは非常に喜ばれることだと認識しております。小川先生からも同じような御意見を頂戴したところでございますし、ぜひ公開する方向性で検討していただければと考えております。ありがとうございました。
 特になければ、これで閉会ということにさせていただきます。
○福田有害性調査機関査察官 特にございません。
 本日は時間も押してしまいまして、事務局のほうで不手際がありまして申し訳ありませんでした。
 本日はどうもありがとうございました。お疲れさまでした。
○平林座長 ありがとうございました。